(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】バスシステム及びそのようなバスシステムを備えた支持装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
H02J1/00 304A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545238
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021055916
(87)【国際公開番号】W WO2022188956
(87)【国際公開日】2022-09-15
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516239921
【氏名又は名称】エスエーエス-イマーゴタグ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】レースル・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165CA01
5G165GA07
5G165HA01
5G165HA05
5G165HA06
5G165LA01
(57)【要約】
バスシステム、特に、ラックレール用バスシステムであって、基準電位を定めるための第一の配線と、この基準電位に対する目標値としての供給電圧を提供するための第二の配線と、信号及び/又はデータを通信するための少なくとも一つの第三の配線、有利には、単一の第三の配線と、これらの配線と通電接続され、このバスシステムに繋げることが可能な電子機器に電力を供給するとともに、通信も提供するように構成された供給設備とを備え、この供給設備が、異なる種類の機器に電力を供給するとともに、特に、機器の種類に特有の通信技術も提供するように構成されているバスシステムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスシステム、特に、ラックレール用バスシステムであって、
基準電位(GND)を定めるための第一の配線(L1)と、
この基準電位(GND)に対する目標値を有する供給電圧(VCC1)を提供するための第二の配線(L2)と、
信号及び/又はデータを通信するための少なくとも一つの第三の配線(L3)、有利には、単一の第三の配線(L3)と、
これらの配線(L1,L2,L3)と通電接続され、このバスシステムに繋げることが可能な電子機器(7A,7B,7C)に電力を供給するとともに、通信も提供するように構成された供給設備(4)と、
を備え、
この供給設備(4)が、異なる種類の機器に電力を供給するとともに、その識別子に基づき機器の種類に特有の通信技術も提供するように構成されている当該バスシステム。
【請求項2】
前記の供給設備(4)が、動作モードの変更を開始するために、供給電圧(VCC1)を一時的に変更するように構成されている請求項1に記載のバスシステム。
【請求項3】
前記の供給設備(4)が、予め定義された信号形状に基づき供給電圧(VCC1)を変更するように構成されている請求項2に記載のバスシステム。
【請求項4】
前記の供給電圧の予め定義された第一の信号形状が、以下に列挙したグループ、即ち、
a)立下り、特に、立下りの推移を定義された立下り、有利には、立下りの勾配の値が定義された数値範囲内である立下り、特に有利には、電圧値の差を定義された立下り、
b)立上り、特に、立上りの推移を定義された立上り、有利には、立上りの勾配の値が定義された数値範囲内である立上り、特に有利には、電圧値の差を定義された立上り、
c)供給電圧の目標値と異なる、有利には、供給電圧の値よりも低い値である、より有利には、デジタルの低状態に対応する値である、特に有利には、基準電位(GND)に対応する値である、時間期間中に生じる電圧値の中の少なくとも一つのパラメータによって定義される請求項3に記載のバスシステム。
【請求項5】
前記の供給電圧の一時的な変更の時間長、特に、この変更の開始と基準電位(GND)に対して供給電圧が目標値になる供給電圧(VCC1)の復旧との間の時間長が、500μs未満、有利には、250μs未満、特に有利には、100μsのオーダーである請求項2~4のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項6】
前記の供給設備(4)が、供給電圧を変更することを目的として、
目標値の供給電圧(VCC1)を発生させて、出力に供給電圧(VCC1)を出力するように構成された第一の電圧発生ステージ(21)と、
制御信号(VCCS)に依存して切換可能な形で第二の配線(L2)を第一の配線(L1)と接続するか、或いは第二の配線(L2)を電圧発生ステージ(24)の出力と接続するように構成された、制御信号(VCCS)により駆動可能な切換ステージ(24)と、
出力が切換ステージ(24)と接続され、切換ステージ(24)に制御信号(VCCS)を出力するように構成されたマイクロコントローラ(18)と、
を備えているように構成されている請求項2~5のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項7】
前記の供給設備(4)が収集モードを有し、このモードでは、供給設備(4)が、配線(L1,L2,L3)と接続された一つ又は複数の電子機器(7A,7B)の中からバスシステムと接続される一つの電子機器(7A,7B)を一義的に識別するための識別データを収集するように構成されるとともに、前記の供給設備(4)が、その動作モードの変更を開始することを目的として収集モードに入るように構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項8】
前記の供給設備(4)が、更なる識別データを最早受信しなくなるまで、収集モードに留まって、識別データを受信するように構成されている請求項7に記載のバスシステム。
【請求項9】
前記の供給設備(4)が、収集モードにおいて、低速通信オペレーションで、特に、毎秒100kボーまでのシンボル速度で識別データを受信するように構成されている請求項7又は8に記載のバスシステム。
【請求項10】
収集モードにおいて、バスシステムで更に活動を続けさせるため、前記の供給設備(4)は、識別データを受信した単一の機器(7A,7B)を選定するように構成されている請求項7~9のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項11】
前記の供給設備(4)が個別通信モードを有し、このモードでは、この供給設備(4)が、選定された単一の機器(7A,7B)と高速通信オペレーションで、有利には、毎秒100kボーよりも高い、特に有利には、1,000kボーのオーダーのシンボル速度で両方向通信するように構成され、前記の供給設備(4)が、単一の機器(7A,7B)の選定の実施後に、収集モードから個別通信モードに切り換わるように構成されている請求項1~10いずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項12】
前記の供給設備(4)が、機器特有又は機器の種類に特有のパラメータを保存するデータ構造を保存しており、前記の供給設備(4)が、このデータ構造を用いて、機器特有又は機器の種類に特有の通信プロトコル及び/又は命令セットに基づき、選定された単一の機器(7A,7B)との高速通信オペレーションを実行するように構成されている請求項11に記載のバスシステム。
【請求項13】
前記の供給設備(4)が、バスシステムに繋がれた機器(7A,7B)による第三の配線(L3)に対する一時的な凡そ高インピーダンスによる負荷を検知して、有利には、如何なる数の繋がれた機器(7A,7B)がこの負荷を同時に発生させているのかも見分けて、この負荷を検知した結果として、請求項7~12に基づく動作モードに入るように構成されている請求項1~12のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項14】
前記の供給設備(4)が、この設備への電力供給を目的として、外部のエネルギー貯蔵器(6)と連結されており、この外部のエネルギー貯蔵器が、有利には、「スマートエネルギー貯蔵器」であり、前記の供給設備(4)が、データ配線又は信号配線を介して、この外部のエネルギー貯蔵器(6)から、エネルギー貯蔵器の種類、電気貯蔵容量、使用履歴及びエネルギー供給ステータスの中の一つ以上に関する情報を取得して、処理するように構成されている請求項1~13のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項15】
前記の供給設備(4)が、この設備への電力供給を目的として、外部のエネルギー貯蔵器(6)と連結されており、この外部のエネルギー貯蔵器が、特に、セキュリティチップにより実現された安全部品を備え、この部品を用いて、この外部のエネルギー貯蔵器がこの供給設備に対して認証可能である請求項1~14のいずれか1項に記載のバスシステム。
【請求項16】
電子機器(7A,7B,7C)であって、この電子機器(7A,7B,7C)が、バスシステムの配線との接続のために構成されたバスインタフェースを備え、このバスシステムが、
基準電位(GND)を定めるための第一の配線(L1)と、
この基準電位(GND)に対する供給電圧(VCC1)を提供するための第二の配線(L2)と、
信号及び/又はデータを通信するための少なくとも一つの第三の配線(L3)、有利には、単一の第三の配線(L3)と、
これらの配線(L1,L2,L3)と通電接続され、このバスシステムに繋げることが可能な電子機器(7A,7B,7C)に電力を供給するとともに、通信も提供するように構成された供給設備(4)と、
を備え、
この機器(7A,7B,7C)が、この供給設備とのその後の機器特有の通信を目的として、この供給設備(4)に対して識別されるように構成されている電子機器(7A,7B,7C)。
【請求項17】
この機器が、供給電圧の一時的な変更を検出するように構成された検出ステージ(29;37)を備え、
この機器(7A,7B,7C)が、そのような検出時に、その動作モードを変更するように構成されている請求項16に記載の機器(7A,7B,7C)。
【請求項18】
前記の検出ステージ(29;37)が、供給電圧(VCC1)の予め定義された信号形状を検出するように構成されている請求項16に記載の機器(7A,7B,7C)。
【請求項19】
この機器(7A,7B)がマイクロコントローラ(29)を備え、前記の検出ステージが、このマイクロコントローラ(29)を用いて実現され、このマイクロコントローラ(29)では、前記の予め定義された信号形状を検出するために、マイクロコントローラ(29)の割込み入力(IRQ)が利用され、このマイクロコントローラ(29)の割込み入力(IRQ)が第二の配線(L2)と接続され、この予め定義された信号形状の出現が、このマイクロコントローラ(29)の割込み入力(IRQ)を発動して、このことが、この機器の動作モードを変更する請求項16~18のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項20】
この機器(7A,7B)が、バスシステムの第二の配線(L2)を介して供給電圧(VCC1)を受けて、この供給電圧(VCC1)を利用して、機器内部の機器用供給電圧(VCC3)を発生させるように構成された第二の電圧発生器(30)を備え、
この第二の電圧発生器(30)が、入力側で緩衝コンデンサー(31)によって、供給電圧の一時的な変更に対して防護されており、
この緩衝コンデンサー(31)が、供給電圧を取り込むことを目的として、第二の配線(L2)と直に接続されるように配備された、緩衝コンデンサー(31)に向かって順方向となる極性のダイオード(32)によって、第二の配線(L2)への緩衝コンデンサー(31)の放電に対して防護されている請求項16~19のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項21】
この機器(7A,7B)が、機器(7A,7B)を一義的に識別する役割を果たす識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を有し、
この機器(7A,7B)が識別モードを有し、このモードでは、この機器(7A,7B)が少なくとも一つの第三の配線(L3)を介して識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を出力するように構成されており、
この機器(7A,7B)が、その動作モードを変更することを目的として、識別モードに入るように構成されている請求項16~20のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項22】
この機器(7A,7B)が、識別モードにおいて、識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を妨害無しに完全に出力できるまで、その識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を出力するように、場合によっては、この出力を繰り返すように構成されている請求項21に記載の機器(7A,7B)。
【請求項23】
この機器(7A,7B)が、識別モードにおいて、識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を出力するために、少なくとも一つの第三の配線(L3)とのオープン・ドレイン接続を備えている請求項21又は22に記載の機器(7A,7B)。
【請求項24】
この機器(7A,7B)が、識別モードにおいて、識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)の出力と同時に、少なくとも一つの第三の配線(L3)で生じる信号シーケンスが、識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)を定義するための論理状態のシーケンスと一致するのかを検査して、少なくとも一つの第三の配線(L3)のその時々の信号状態とその時々の論理状態の間のずれが発生したら、識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)の出力を中断して、少なくとも一つの第三の配線(L3)が識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)の新たな送出に関して空いていると検知された場合に、この出力を漸く再び新たに開始するように構成されている請求項21~23に記載の機器(7A,7B)。
【請求項25】
この機器(7A,7B)が、識別モードにおいて、低速度通信オペレーションで、特に、毎秒100kボーまでのシンボル速度で識別データを出力するように構成されている請求項21~24のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項26】
この機器(7A,7B)が、識別モードにおいて、その識別データ(ADR-ESL1,ADR-ESL2)の出力後に、バスシステム不活動状態に入るべきのか、或いは更に活動し続けるために供給設備(4)によって選定されたのかを検査するように構成されている請求項21~25のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項27】
この機器が個別通信モードを有し、このモードでは、この機器(7A,7B)が、供給設備(4)と個別に通信するように構成されており、この機器(7A,7B)が、選定を確認した場合に識別モードを抜けて、個別通信モードに入るように構成されている請求項21~26のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項28】
この機器(7A,7B)が、個別通信モードにおいて、高速通信オペレーションで、有利には、毎秒100kボーよりも高い、特に有利には、1,000kボーのオーダーのシンボル速度で供給設備(4)と両方向通信するように構成されている請求項27に記載の機器(7A,7B)。
【請求項29】
この機器(7A,7B)が、機器特有又は機器の種類に特有の通信プロトコル及び/又は命令セットに基づき高速通信オペレーションを実行するように構成されている請求項28に記載の機器(7A,7B)。
【請求項30】
この機器(7A,7B)がバスシステム不活動モードを有し、このモードでは、この機器(7A,7B)がバスシステム不活動状態に入って、第一と第二の配線(L1,L2)を用いて電力を供給されるが、少なくとも一つの第三の配線(L3)から電気的に切り離されており、この機器は、通信要求が生じない場合に、バスシステム不活動モードに入るように構成されている請求項16~29のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項31】
この機器(7A,7B)が接続開始モードを有し、このモードでは、この機器(7A,7B)が、供給設備(4)の少なくとも一つの第三の配線(L3)の負荷、有利には、高インピーダンスによる負荷を一時的に作り出すことによって、その接続構築要求を提示するように構成されている請求項16~30のいずれか1項に記載の機器(7A,7B)。
【請求項32】
この機器(7A,7B)が、接続開始モードに続いて、請求項21~30に基づく動作モードに入るように構成されている請求項31に記載の機器(7A,7B)。
【請求項33】
この機器が、有利には、セキュリティチップにより実現された安全部品を備え、この部品を用いて、供給設備に対して認証可能である請求項16~32のいずれか1項に記載の機器。
【請求項34】
請求項1~13のいずれか1項に記載のバスシステムを備えた支持装置(3)、有利にはラックレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線と、機器に電力を供給するとともに、この機器に通信技術を提供する供給設備とを備えたバスシステム、バスシステムに適合した機器及びそのようなバスシステムを備えた支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電子表示ユニットを機械的に固定するように構成された基本支持体を備えたラックレールの形の支持装置を開示している。その基本支持体は、U字形状に配置された三つの側方壁によって、表示ユニットを収容する収容領域の境界を画定している。即ち、そこでは、収容領域が三つの側から境界を画定されており、表示ユニットは、U字形状の開放された側を通して前方からラックレールに差し込むか、或いはそれから取り出すことができる。
【0003】
中央の第一の側方壁は、板により構成されている。その板は、表示ユニットの後方壁を用いて表示ユニットをラックレールに設置できるようにする基準面又は設置面としての役割を果たしている。その板は、格子状に配置された差込口を有する。それらの差込口は、表示ユニットに電力を供給するために、表示ユニットの接点ピンを電気導体路と接触させる役割を果たしている。それらの導体路は、第一の側方壁の収容領域とは反対側に設置された配線支持体上に配置されている。
【0004】
その支持装置は、表示ユニットに通信技術を提供するとともに、電力を供給する供給設備も備えている。その供給設備は、導体路と通電接続されており、バッテリー動作に必要なバッテリーを支持して、配線支持体の後方に配置されている。そこでは、その支持装置のためのバスシステムが、供給設備と導体路の組合せによって構成されている。
【0005】
そのバスシステムは、専ら一種類の機器、即ち、所要エネルギーが極めて少ない(これは、例えば、「電子インク」技術を用いることによって可能である)スクリーンを備えた表示ユニットと共に動作するように考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許公開第2017/153481号明細書
【特許文献2】国際特許公開第2015/124197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景技術に鑑みて、本発明の課題は、改善されたバスシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載のバスシステムによって解決される。従って、本発明の対象は、バスシステム、特に、ラックレール用バスシステムであって、基準電位を定めるための第一の配線と、この基準電位に対する目標値としての供給電圧を提供するための第二の配線と、信号及び/又はデータを通信するための少なくとも一つの第三の配線、有利には、単一の第三の配線と、これらの配線と通電接続され、このバスシステムに繋げることが可能な電子機器に電力を供給するとともに、通信技術も提供するように構成された供給設備とを備え、この供給設備が、異なる種類の機器に電力を供給するとともに、その識別子に基づき機器特有の通信技術も提供するように構成されているバスシステムである。
【0009】
更に、この課題は、請求項16に記載の電子機器によって解決される。従って、本発明の対象は、電子機器であって、この機器が、バスシステムの配線と接続するように構成されたバスインタフェースを備え、このバスシステムが、基準電位を定めるための第一の配線と、この基準電位に対する供給電圧を提供するための第二の配線と、信号及び/又はデータを通信するための少なくとも一つの第三の配線、有利には、単一の第三の配線と、これらの配線と通電接続され、このバスシステムに繋げることが可能な電子機器に電力を供給するとともに、通信技術も提供するように構成された供給設備とを備え、この機器が、その後の供給設備との機器特有の通信を目的として、供給設備に対して識別されるように構成されている電子機器である。
【0010】
更に、この課題は、請求項34に記載の支持装置によって解決される。従って、本発明の対象は、本発明によるバスシステムを備えた支持装置、特に、ラックレールである。
【0011】
本発明による措置によって、既知のバスシステムと異なり、ここでは、非常に多様な種類の機器を支持装置で動作させることができるとの利点が得られる。このことは、例えば、電子表示ユニット、センサーユニット、入力ユニットや画像検出ユニットなどの種類に関して(即ち、例えば、機器クラスによって)区別することができる機器を支持装置に対して極めて柔軟に装備することを可能にし、そのため、支持装置の機能を事実上任意に拡張するか、或いは個々のニーズに適合させることもできる。
【0012】
しかし、例えば、電子表示ユニットの機器クラスなどの一つの機器クラス内でも、非常に多様な種類の機器を提示することができる。これらの表示ユニットは、その種類に関して、スクリーンサイズや、ピクセル数や、表示可能な色の範囲や、使用する技術(電気泳動、OLED、LCD等)などによっても区別することができる。画像検出ユニットの機器クラスでも同じ状況である。これらの画像検出ユニットは、その画像検出結果の種類、即ち、静止画やビデオストリームに関しても、解像度やスペクトル帯域などに関しても区別することができる。一つの機器クラス内におけるこれら全ての違いは、非常に多様な機能を最適に活用できるようにするために、機器特有の駆動又は通信を必要とする可能性がある。
【0013】
異なる種類の機器の使用可能性は、具体的には、互いに関連する二通りの措置によって得られる。
【0014】
第一の措置は、供給設備が異なる種類の機器と、特に、機器特有の形で通信するように構成されることによって与えられる。このことは、異なる種類の機器に対して、例えば、通信プロトコル及び/又は命令セットなどの柔軟に呼び出し可能な、或いは採用可能な通信技術的なパラメータ設定を保存することによって実現できる。この場合、これらの通信技術的なパラメータ設定は、例えば、供給設備に事前に保存するか、或いは供給設備によって、必要に応じて機器管理サーバーから呼び出すことができる。これらの通信技術的なパラメータ設定は、関連する電子機器から直に提供することもできる。供給電圧又は供給電力の提供が供給設備によって機器特有に適合されると規定することもできる。
【0015】
第二の措置は、各機器が、供給設備との機器特有の通信に関して使用可能となる前に、特に、機器の種類に関して包括的な形又は機器の種類に依存しない形で供給設備に対して識別されるように構成されることによって与えられ、以下では、更に、詳しく、特に、供給設備による識別データの収集と電子機器による識別データの出力の両方と関連して、このことを取り上げる。この機器の種類に依存しない形の識別では、前記の識別データが伝送されて、次に、この識別データが、供給設備とその時々の機器の間の機器特有の通信を可能にする。
【0016】
本発明の別の特に有利な実施形態及び改善形態は従属請求項と以下の記述から明らかになる。
【0017】
以下では、バスシステムにおける通信の構築と通信の実行の詳細を取り上げる。
【0018】
動作状態又は動作モードの変更の開始が、この観点に関連する。この場合、供給設備が、動作モードの変更を開始するために、供給電圧を一時的に変更するように構成されるのが有利であることが分かっている。電子機器の側では、この機器が、供給電圧の一時的な変更を検出するように構成された検出ステージを備えるとともに、この機器が、そのような検出時に、その動作モードを変更するように構成されると規定される。
【0019】
これらの措置により、既知のバスシステムと異なり、動作モードの変更の信号伝送が必ずしもそのために特別に配備された別個の信号配線又はデータ配線を介して行う必要が最早無いとの利点が得られる。むしろ、信号通信及び/又はデータ通信のために配備された少なくとも一つの第三の配線を使用せずに、電力供給のために配備された配線が利用される。従って、バスに繋がれた機器が、動作状態の変更の開始時点で供給設備と同期した状態に在ることも不要である。むしろ、各機器は、例えば、電力消費が少ないか、殆ど無いスリープモード又は休止モードや、機器で情報、信号及び/又はデータの自律的な処理が行われる処理モード又は活動モードなどの機器特有の任意の動作モードに在ることができる。ところで、同じことが、供給設備にも言える。ここで、動作モードの変更が開始されるか、或いは少なくとも供給設備の側で既に開始されていることは、供給電圧の一時的な変更により、供給設備から、バスシステムと接続された電子機器に信号伝送又は通報されて、そこで検出され、場合によっては、実現されたりもする。
【0020】
この場合、動作モードの変更は、専ら供給設備の動作モードの変更であるとすることができる。この場合、この供給設備の動作モードの変更は、それ以外の機器にそれに関する情報を与えるために、それらの機器に単純に伝えられるだけである。そのような情報を与えられた機器は、その独自の動作モード方式に留まることができ、基本的に決して外部に向かって応答するか、或いは反応を示す必要はない。
【0021】
しかし、この動作モードの変更は、例えば、その時々にちょうど出現している供給設備の動作モードによって影響されずに、機器で開始されるべき、供給設備によって求められた機器の動作モードの変更であるとすることもできる。この場合、機器の動作モードの変更の必要性が機器に伝えられて、そこで検出され、実現されたりもする。
【0022】
しかし、この動作モードの変更は、供給設備の動作モードと機器の動作モードの共通の変更であるとすることもできる。この場合、動作モードの変更の必要性が、言わばバスシステム全体に効力が及ぶ形で信号伝送又は通報されて、バスシステムと接続された全ての機器が、この供給設備による要求に従って、例えば、同様に開始された供給設備の動作モードに合わせるために、機器の動作モードの変更を開始する。このことは、供給設備とバスシステムに繋がれた機器の間でちょうど出現している機器特有の動作モードの同期であると理解することもできる。
【0023】
これらの措置は、ほぼ任意の多様な異なる機器又は異なる種類の機器をバスシステムにより動作、駆動させるためのバスシステムの柔軟性を、詳しくは第一に個々の機器特有の通信プロトコル又は機能特性を考慮しなければならないとの強制的な必要性無しに動作、駆動させるためのバスシステムの柔軟性を支援する。バスシステムに繋がれた機器に合った通信プロトコルに基づくデータ通信によって動作モードの変更を通報しなければならない既知の措置と大きく異なり、本発明は、通常は電力供給のためだけに配備されたバスシステムの配線を利用して、供給電圧の一時的な変更によって、動作モードの変更を開始すべきであることをバスシステムに繋がれた機器に知らせる。
【0024】
このことは、少なくとも一つの第三の配線から接続を解除されているか、或いは切り離されていても、それにも関わらず、第一と第二の配線を介して電力を供給されるように電子的に(回路技術的に)構成できる機器をバスシステムで使用することも初めて可能にした。この少なくとも一つの第三の配線から接続を解除されているにも関わらず、バスシステムに繋がれた機器は、供給設備に対して通信技術的又は信号技術的に到達可能なままであり、本文脈において動作モードの変更を開始すべきであるとの制御情報などの「基本情報」の提供を受けることができる。
【0025】
既に前に言及した多数の異なる機器は、最終的に数え尽くすことはできないが、基本機能又は基本構成を保有することができ、例えば、温度センサーや接近センサーなどのセンサー、静止画撮影、ビデオ撮影又は赤外線撮影用のカメラ、例えば、個々のキー、キーパッド、回転ボタン又は回転コントローラ、タッチスクリーンなどの入力機器、例えば、一つ又は複数の発光ダイオード(LED)、ビデオスクリーン、例えば、電子インク、Eペーパーなどの省エネタイプの二色スクリーン技術や、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)などの能動的なスクリーン技術による電子ラック表示器などの表示ユニットを含むことができる。
【0026】
これらの全ての異なる機器は、バスシステムに繋がれて、そこで使用されるために、支持装置のバスシステムと適合するように構成されている。
【0027】
即ち、前述した機器は、基本的に一つの基本機能を有する。しかし、そのような機器は、組み合わされた基本機能を有するか、或いは別の支援機能を補完された形の一つの優勢な基本機能を準備することもできる。そのように、これらの機器は、例えば、機器を作動したり、機器との間でデータを伝送したり、(数ミリメートルから数センチメートルまでの)直ぐ近くから機器の機能を制御したり、製品と電子機器の間の接続を構築するためのNFCインタフェースや、広い間隔に渡って適合する装置と無線通信するためのブルートゥース低エネルギー無線モジュールなどの別の補完的な通信機能も準備することができる。
【0028】
これらの機器の各々は、構造的にも、機能的にも異なる回路ブロックに分割できる機器用電子回路を備えている。そのように、この機器用電子回路は、その時々の基本機能のための少なくとも一つの回路ブロックと、場合によっては、追加機能のための回路ブロック及びエネルギー供給のための回路ブロックと、場合によっては、一方における少なくとも一つの第三の配線との接続部と他方における第二の配線との接続部に分割された、バスシステムに接続するための少なくとも一つの回路ブロックとを備えることができる。
【0029】
このバスシステムが適用される事情に応じて、この供給設備に異なる課題又は役割を付与することができる。
【0030】
これらの役割の中の一つは、バスシステムに繋がれた機器に電力を供給するとの基本的な課題である。この目的のために、局所的な、或いは中央のネットワーク機器を用いて、さもなければ無線を介して、例えば、パワー・オーバー・WiFi技術を用いて、供給設備自体に電力を供給することができる。この供給設備は、それに割り当てられた(再充電可能な)バッテリーに繋ぐこともでき、このバッテリーから、その独自の動作のための電力も、バスシステムに繋がれた機器の動作のための電力も受け取る。
【0031】
別の役割は、供給電圧を用いて、動作モードの変更を開始することである。これは、例えば、配線を支持するラックレールに関するラックレールコントローラとして供給設備を使用した場合、例えば、中央の管理部局(例えば、上位の「ソフトウェア・エンティティ」とも呼ばれる、ラックレールに固定された電子機器を管理するための管理ソフトウェアが実行されるクラウドサービス又はローカルサーバー)が、ラックレールの個々の機器を識別して、そのデータを引き出すか、それを駆動するか、或いはそれにデータを供給しなければならない場合に必要であるとすることができる。この場合、供給設備は、中央の管理部局との実際の通信に先立って事前にラックレールに搭載された機器の収集を主体的に実行して、そのように収集した識別データを保存しておき、このデータをその後の時点で漸く中央の管理部局に出力することもできる。
【0032】
このクラウドサービスは、インターネットを介してローカルLAN又はWLANのインフラストラクチャーと接続されており、このインフラストラクチャーでは、一つ又は複数のアクセスポイントが供給設備との接続を提供する。
【0033】
このローカルサーバーも、LAN又はWLANのインフラストラクチャーを介して、そのようなアクセスポイントと接続することができる。
【0034】
各アクセスポイントは、無線接続を介して供給設備と通信するように構成することができる。この場合、(事実上の)標準化された通信方法(例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Low Energy、WLANなど)又は固有の通信方法を使用することができる。そのような固有の通信方法は、例えば、特許文献2から周知であり、この開示を参照して、ここに取り入れる。この場合には、特許文献2と異なり、そこに開示された時分割通信方法が、確かに供給設備と有線接続形態で接続されている、ラックレールに取り付けられた機器で使用されるのではなく、アクセスポイントとの通信のために供給設備で使用される。特許文献2に開示された、(そこでは無線タグとして引用されている)電子表示ユニットと関連して、一方において出来る限り省エネルギーの動作を保証するとともに、他方においてアクセスポイントとの同期を保証するために、極端にエネルギーを節約したスリープ状態とそれに比べてエネルギーを消費する活動状態の間を系統的に切り換える形態が、この場合には供給設備に実装されている。
【0035】
無線通信方法の選定に関係なく、一つのグループの供給設備は、無線技術を提供する一つのアクセスポイントに割り当てることができ、その際、各供給設備は、そのバスシステムと接続された機器に有線接続を提供する。即ち、各供給設備は、例えば、ラックレールなどの支持装置に搭載された機器のためのアクセスノード又はコントロールノードを構成する。
【0036】
基本的に、この供給設備は、その活動の必要性が存在しない場合、常にその極端にエネルギーを節約したスリープ状態に留まると規定することができる。
【0037】
この供給設備も、回路ブロックに分けることができる供給設備用電子回路を備えている。そのように、ここでも、供給設備に電力を供給する回路ブロックが配備されている。これは、例えば、長手方向コントローラなどの電圧コントローラである、特に、LDO(LDOはLow-Drop-Outを表す)リニアコントローラであるとすることができ、このコントローラは、3.7~4.2ボルトの電圧を出力する内部又は外部の(例えば、バッテリー、バッテリーパック又は再充電可能なバッテリーセルの構成などの)エネルギー貯蔵器に繋がっており、供給設備の約3.3ボルトの内部供給電圧を発生させる。
【0038】
別の回路ブロックは、特に、マイクロコントローラを用いて実現された、内部供給電圧を用いて動かされる論理ステージであるとすることができる。このマイクロコントローラは、場合によっては、その周辺機器を含めて、供給設備の異なる機能を提供し、これらの機能は、ハードウェアの特徴を除いて、マイクロコントローラにより実行される、場合によっては、その実行時にハードウェアの特徴を利用する、マイクロコントローラのメモリに保存されたソフトウェアを用いて実現される。
【0039】
別の回路ブロックは、バスシステムの第二の配線のための(外部)供給電圧を発生させるステージであるとすることができ、そのために、例えば、入力側を外部エネルギー貯蔵器と接続された逓昇コンバーターを使用することができる。この逓昇コンバーターは、出力側に、定義された目標値、例えば、5ボルトのバスシステム用供給電圧を発生させる。
【0040】
別の回路ブロックは、少なくとも一つの第三の配線での誤りを検知するように構成され、この少なくとも一つの第三の配線と、マイクロコントローラのアナログデジタル変換器ピン(ADC入力)などのマイクロコントローラの送受信ピンとの間に接続された誤り検知回路によって構成することができる、マイクロコントローラは、ADC入力を用いて、この少なくとも一つの第三の配線に加わる電圧を検出し、場合によっては、測定又は評価することもできる。マイクロコントローラが、この少なくとも一つの第三の配線に加わる電圧を検出し、場合によっては、測定又は評価することもできるように、マイクロコントローラの別のアナログデジタル変換器ピン(ADC入力)を第二の配線と直に接続することもできる。
【0041】
別の回路ブロックは、特に、この少なくとも一つの第三の配線に生じる、バスシステムの過負荷を検知する役割を果たすことができ、過負荷を検知した場合に、逓昇コンバーターの出力を第二の配線から切り離すように構成されている。
【0042】
別の回路ブロックは、前記のアクセスポイントとの無線トラフィックのために使用される無線システムに関連するブロックであるとすることができる。この回路ブロックは、アンテナ構成も、適合ネットワークも備えることができる。同様に、ここでは、無線技術的に受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するともに、その逆に変換する回路が配備されている。この回路ブロックは、マイクロコントローラと接続されており、その結果、マイクロコントローラが、アクセスポイントとの無線トラフィックを受信して、その側では無線信号毎に送信すべきデータを出力することができる。
【0043】
更に、マイクロコントローラにより駆動可能な信号伝送ユニット、最も簡単な場合、単一のLEDを備えた回路ブロックを配備することができる。
【0044】
更に、マイクロコントローラにより照会可能な入力ユニット、最も簡単な場合、キーを備えた回路ブロックも配備することができる。
【0045】
別の回路ブロックとして、例えば、周辺機器用シリアルインタフェース(略して、SPI)を介して、マイクロコントローラにより呼び出すことが可能なメモリステージ、この場合、例えば、フラッシュメモリを配備することもできる。
【0046】
ここで引用した語句において、供給ユニット用電子回路と機器用電子回路が観念的に回路ブロックに基づき考察されている場合でも、ここでは、各電子回路を、例えば、ASIC(特定用途向け集積回路)又は「システム・オン・チップ」として実現することができ、その結果、これらの電子回路を個別の回路ブロックに分割できるというよりも、むしろ一つの集積回路の機能的なユニットに分割できることを述べておきたい。
【0047】
この外部のエネルギー貯蔵器は、通常のバッテリー、或いはバッテリーセル又はバッテリーセルの構成であるとすることができる。しかし、この供給設備が、この設備への電力供給を目的として、外部のエネルギー貯蔵器と連結されるのが特に有利であることが分かっており、この外部のエネルギー貯蔵器は、特に有利には、「スマートエネルギー貯蔵器」であり、この供給設備は、データ配線又は信号配線を介して、外部のエネルギー貯蔵器から、エネルギー貯蔵器の種類、電力蓄積容量、使用履歴及びエネルギー供給ステータスの中の一つ以上に関する情報又はデータを収集して処理するように構成されている。このスマートエネルギー貯蔵器は、内部のバッテリー用マイクロコントローラを備えることができ、このコントローラは、例えば、I2C又はSMBUS(システム管理バス)仕様に基づき実現された通信インタフェースを介して、それと互換の通信インタフェースを備えた供給設備用電子回路と接続するとともに、例えば、ケーブルを介して、特に、論理ステージと接続することができる。このバッテリー用マイクロコントローラを用いて、様々なスマート機能を実現することができ、これらの機能は、例えば、充電状態又は消費状態の精確な検出も、エネルギー貯蔵器に関連する、エネルギー貯蔵器から供給設備に通報可能なそれ以外の情報も包含することができる。このエネルギー貯蔵器を供給設備に統合することができる。しかし、この貯蔵器は、有利には、前述した通り、充電が足りなくなった場合に、供給設備から簡単に取り出すことによって、充電されたエネルギー貯蔵器に交換することができるように、詳しくは、特に、供給設備をそれ自体として支持装置(例えば、ラックレール)から解除する必要がないように、外部に配置されている。
【0048】
更に、外部の(スマート)エネルギー貯蔵器が、有利には、セキュリティチップにより実現された安全部品を備え、この部品を用いて、この外部のエネルギー貯蔵器が供給設備に対して認証可能であるのが有利であるとすることができる。これにより得られる利点と作用は、以下における全般的な説明の文章において、同じくそのような安全部品を備えることができる電子機器を取り上げている所で考察されている。
【0049】
バスシステムの配線を介した信号及び/又はデータの伝送は、少なくとも一つの制御配線と一つ又は複数のデータ配線を用いて同期して実施することができる。このバスシステムでは、実装形態に応じて、複数の第三の配線が配備されている。しかし、有利な実施構成において、信号及び/又はデータの伝送のために配備された少なくとも一つの第三の配線は、それぞれ実際には単一の第三の配線だけで実現されている。そのため、この有利な実施構成では、バスシステムは、純粋に三本の配線システムである。従って、以下において、より容易に読解できるようにするために、それが取り付けられている場合に、単一の第三の配線との意味で一つの第三の配線だけに言及する。
【0050】
これらの三つの配線は、プリント回路で使用されている配線路と同様に、平坦な配線路として実現することができ、そのような配線路に関して典型的な、例えば、「ペルティナクスプレート」に取り付けることができる。しかし、有利には、ほぼ円形の横断面を有する電線により実現される。有利な実施構成では、これらの電線は絶縁層を備えていない。即ち、これらは裸線であり、配線支持体とも呼ばれる絶縁性の、即ち、非導電性の板、有利な、プラスチック板の表面に統合されており、そこで、機器の接点と接触させることができる。
【0051】
以下において、供給電圧の変更を取り上げる。基本的に、機器側で検出可能な供給電圧の或る変更を使用すれば、それで十分である。それを検出するために、この機器は、供給電圧の一時的な変更を検出するように構成された検出ステージを備えており、そのような検出時に、この機器は、その動作モードを変更するように構成されている。しかし、誤検知のリスクを防止するためには、或いはシステムバスと接続された機器の意図しない「リセット」(ハードウェア的なリセット)のリスクも防止するためには、この供給設備が予め定義された信号形状に基づき供給電圧を変更させるように構成されているのが有利であることが分かっている。有利には、この機器の検出ステージも、供給電圧の予め定義された信号形状を検出するように構成されている。それにより、確かに検出すべき信号形状が既に分かっているので、機器側での検出が容易になるとの利点が得られる。そのため、機器側で、供給電圧の予め定義された信号形状を検出するように、検出ステージを目的通り構成することができる。
【0052】
ここで、例えば、所定の機器グループ、機器のタイプ、機器の種類又は機器のクラス、さもなければ個々の機器を目的通り呼び出すことができて、それ以外の機器、機器のタイプ、機器の種類、機器のクラス又は機器のグループが反応する必要がないようにするために、異なる予め定義された信号形状を付与できることにも更に言及しておきたい。
【0053】
このことは、異なる手法で実装することができる。そのように、供給電圧の予め定義された第一の信号形状は、以下に挙げたグループの中の少なくとも一つのパラメータによって定義することができ、これらのグループは、即ち、a)立下り、特に、立下りの推移を定義された立下り、有利には、立下りの勾配(単位時間当たりの電圧変化)の値が定義された値の範囲内である立下り、特に有利には、電圧値の差を定義された立下り、b)立上り、特に、立上りの推移を定義された)立上り、有利には、立上りの勾配(単位時間当たりの電圧変更)の値が定義された値の範囲内である立上り、特に有利には、電圧値の差を定義された立上り、c)供給電圧の目標値と異なる、時間期間中に加わる電圧値、有利には、供給電圧の値よりも低い値である、時間期間中に加わる電圧値、より有利には、デジタルでの低い状態に対応する値である、時間期間中に加わる電圧値、特に有利には、基準電位に等しい値である、時間期間中に加わる電圧値である。
【0054】
これらの変数は、信号伝送の作用に関して、凡そ等価であると見做されるが、ポイントc)に基づく変数を最も容易に実装できる、特に、最も簡単に検出できることが分かっている。
【0055】
そのように、例えば、この機器は、マイクロコントローラを備え、このマイクロコントローラを用いて検出ステージを実現することができ、このマイクロコントローラでは、予め定義された信号形状を検出するために、このマイクロコントローラの割込み入力が利用され、このマイクロコントローラの割込み入力が、第二の配線と接続又は連結されており、予め定義された信号形状の出現が、マイクロコントローラの割込み入力を発動させて、このことが、機器の動作モードを変更する。このマイクロコントローラの割込み入力が、場合によっては、割込み入力に対して相応しい立上り又は立下りを用いて、ポイントc)に基づく信号形状を割込みに関するトリガーとして検知するように精確に構成されているので、確実な検出を保証するためには、更なる措置が不要である。
【0056】
前述した通り、動作状態の変更を開始することを目的とした供給電圧の一時的な変更によって、リセットが作動されるべきではない。従って、信号形状だけでなく、特に、その時間長も予め定義するのが有利であることが分かっている。この観点では、供給電圧の一時的な変更の時間長、特に、供給電圧の変更の開始と基準電位に対する目標値への供給電圧の復旧の間の時間長は、500μs未満、有利には、250μs未満、特に有利には、100μsのオーダーである。
【0057】
機器側では、この観点が以下の通り考慮される。この機器が第二の電圧発生器を備え、この発生器が、バスシステムの第二の配線を介して供給電圧を受けるように構成されるとともに、この供給電圧を利用して、機器内部の機器用供給電圧を発生させるように構成されている。ここで、供給電圧を変更する比較的短い時間長は、供給電圧の中断に起因するリセットの望ましくない作動を防止するために、機器側で簡単な措置によって考慮することができる。この考慮は、回路技術的には、第二の電圧供給器が入力側において緩衝コンデンサーを用いて供給電圧の一時的な変更に対して保護されている形で見ることができる。この緩衝コンデンサーは、それ自体、ダイオードを用いて、第二の配線の方への緩衝コンデンサーの放電に対して保護されており、このダイオードは、供給電圧の導入を目的として第二の配線と直に接続されるように配備されるとともに、このコンデンサーに向かって順方向となる極性で配備されている。この緩衝コンデンサーは、供給電圧を変更する時間期間中の機器内部のエネルギー供給を保証するのに十分な電気エネルギーをそこに保存できる大きさに定められる。
【0058】
供給電圧の変更を起こすことを目的として、この供給設備は、目標値の供給電圧を発生させて、出力に供給電圧を出力するように構成された第一の電圧発生ステージと、制御信号に応じて切換可能な形で第二の配線を第一の配線と接続するか、或いは電圧発生ステージの出力と接続するように構成された、制御信号により駆動可能な切換ステージとを備えるように構成するとともに、この供給設備のマイクロコントローラが、その出力を切換ステージと接続され、切換ステージに制御信号を出力するように構成することができる。そのため、このマイクロコントローラは、MOS-FETトランジスタを用いて実現された切換ステージをデジタル手法で制御する。
【0059】
この場合、切換ステージが、二つの部分で構成されるのが特に有利であることが分かっている。第一の切換ステージ部分は、バスシステムの第二の配線を介した電流供給を中断するために配備されている。第二の切換ステージ部分は、第二の配線を基準電位と実際に接続するために配備されている。動作時に、先ずは第一の切換ステージ部分が稼働して、短絡を防止するために、第二の切換ステージ部分を稼働させるための数マイクロ秒の前工程により電流供給を中断する。供給電圧の一時的な変更の終了により、二つの切換ステージ部分の稼働停止が逆の順序で行われる。
【0060】
以下において、動作モードとその変更を取り上げる。ここで例示して考察する観点は、特に、バスシステムと接続された後、それとの通信を展開する機器を収集するのに有用である。
【0061】
本発明の一つの観点において、この供給設備は収集モードを有し、このモードでは、供給設備は、配線と接続された一つ又は複数の電子機器の中から、バスシステムと接続する一つの電子機器を一義的に識別するための識別データを収集するように構成されている。この収集を供給設備の側で開始するために、即ち、それに対応して動作モードを変更するために、この供給設備は、供給電圧の変更を実施する前に、或いはその際に収集モードに入るように構成されている。特別な場合を除いて、バスシステムと接続された、バスシステムにおいて個々にアドレス指定可能な各機器は、識別データを提示し、識別モードに入るように構成され、このモードでは、機器は、少なくとも一つの第三の配線を介して識別データを出力するように構成されている。更に、この機器は、その動作モードを変更することを目的として、識別モードに入るとともに、供給電圧の変更が確認された場合に、それに対応して動作モードを変更して、識別モードに入るように構成されている。
【0062】
この供給設備は、収集モードの開始時に、バスシステムに繋がれた機器の数に関する情報を未だ収集する必要はないので、この供給設備が、最早更なる識別データを受信しなくなるまで、受信モードに留まって、識別データを受信するように構成されるのが特に有利であることが分かっている。前述した通り、基本的に未知の数の機器がバスシステムに繋がれて、その全てが同時に識別モードに入っている可能性があるので、これらの機器には、バスシステムへの接続が競合しているにも関わらず、これらの機器が識別データを確実かつ完全に伝送することを可能にするプロセス又は方法が実装されている。詳しくは、各機器は、識別モードにおいて、識別データを完全に妨害無く出力できるまで、その識別データを出力するように、場合によっては、その出力(場合によっては、識別データの少なくとも部分の出力)を繰り返すようにも構成されている。特に、各機器は、識別モードにおいて、識別データを出力するために少なくとも一つの第三の配線とのオープン・ドレイン接続部を備えている。このことは、機器の送信出力に関して実現されている。識別モードでは、バスシステムにおいて第三の配線と接続されている全ての機器が、この特別な出力構成により互いに並列に繋がれている。これにより、異なる情報単位(ビット)の伝送が競合している場合に、「低」の論理状態又は信号レベル状態又は「0」の論理シンボルが、「高」の論理状態又は信号レベル状態又は「1」の論理シンボルに対して優勢であることが確認される。ここで、一つの機器で、その機器自身が論理「1」の送信を試みる一方、別の機器が、論理「0」を送信していることを確認するために、これらの機器は、識別モードにおいて、それらのデータを送信している間、第三の配線を同時に傍受するように構成されている。即ち、各機器は、識別モードにおいて、識別データの出力により、少なくとも一つの第三の配線で生じた信号シーケンスが、自身の識別データにより定義された論理状態のシーケンスに対応するのかを同時に検査し、少なくとも一つの第三の配線のその時々の信号状態と自身の識別データのその時々の論理状態の間の違いが発生したら、識別データの出力を中断して、少なくとも一つの第三の配線が自身の識別データの新たな発信に関して空いていると検知された場合に漸く再び新たに開始するように構成されている。このことは、時間的推移、信号レベル又は命令の受信によって与えることができる。言い換えると、このことは、別の機器による論理「0」の送信により論理「1」を送信する試みを「否定」された各機器がその識別データの送信を中断することを意味する。各機器が一義的な識別データによって特徴付けられているので、優勢な「0」を同時に送信して、この状態を第三の配線上で前記の同時傍受によって検知する、この別の機器又はこれらの別の機器は、最終的に全ての機器が唯一の機器を除いて送信を中断するまで、識別データの送信を続ける。この残った唯一の機器の識別データが供給設備に伝送されて、そこに保存された後、残る全ての機器は、再び最終的に唯一の機器の識別データだけを完全に伝送するために、新たに競合しつつ個々の識別データの伝送を開始する。この過程は、全ての機器の識別データが完全かつ妨害無く伝送されるまで続けられる。このことは、一つの時間スロット内において最後に伝送する機器の識別データが伝送された後に、最早更なる識別データが受信されない形で供給設備で確認される。
【0063】
更に、前記の「少なくとも一つの第三の配線が識別データの新たな発信に関して空いていると検知された場合に漸く再び新たに開始する」との表現が様々な手法で実現できることを補足しておきたい。そのように、一定の数のシンボルから成る識別データの長さ/出力時間を知って、一つの機器の識別データの全てのシンボルが出力されて、次に、識別データの新たな出力により自動的に開始されるのを待つことができる。識別データのそれぞれの出力後に、供給設備により送信された出力コマンドが受信されて、その後漸く識別データの新たな出力により開始されるのを待つこともできる。
【0064】
ここで考察した通り、識別データの伝送は、その期間中更なる同期信号無しに進行することができる。しかし、このことは、少なくとも期待される最大伝送時間の間互いに同期して機器を動作させなければならないので、この機器の比較的負担のかかる電子回路を前提とする。典型的には、そのために、各機器で、それぞれの機器のためのシステムクロックを発生させる比較的高価な水晶共振回路(水晶共振器)が使用される。
【0065】
機器のこのような高価な構成を回避するために、この供給設備が識別データの収集中に少なくとも一つの第三の配線に同期信号を提供して、識別データの出力を計画している、バスシステムに繋がれた全ての機器が、この信号に同調すると規定することもできる。これは、定義された構造から成る周期的な信号であるとすることができ、この信号は、何れにせよ常に識別モードで傍受している機器によって確かに受信される。
【0066】
有利には、識別データの収集と出力は、そのために所定の数のバイト(例えば、6バイト)を規定又は定義する形で行われる。このバイト数は、システム内の全ての機器に事前に知らされており、即ち、プログラミングされており、有利には、変えることができない。識別データの実際の伝送は、1バイトの伝送の開始毎にスタートビット(論理シンボルの「0」、電力状態の「低」)を送信する、供給設備によるクロックパターンにより行われる。ここで、スタートビットは、同期信号又はクロック信号の機能を有し、その結果、機器が、1バイトの出力の開始毎に、それに同期することができる。この措置によって、前記の高価な水晶共振回路を省いて、これらの機器を極めて安価に製造することができる。
【0067】
この識別データを伝送する有利な方法では、1バイトの伝送のために予約された時間期間の経過後に供給設備により送信されるストップビットを伴うこともできる。このストップビットは、論理シンボルの「1」、電力状態の「高」によって定義される。
【0068】
前に考察した通り、この供給設備は、最早識別データが伝送されなくなるまで、識別データの受信を試みる。定義によると、この状況は、1バイトを伝送するために規定された受信期間全体の間に、「高」のシンボル状態又は電力状態が供給設備により確認されない場合に出現する。このことは、機器の識別データが定義により16進数の値「FF」(ビット表現で「11111111」)のバイトを示してはならないことを意味する。
【0069】
スタートビットとストップビットの間のバイト毎に識別データを埋め込むことが規定されている限り、機器の同期は、全部で10ビットの中のスタートビットによって行われる。即ち、電子回路の変動は、機器の同期が少なくともこの時間期間の間維持される形で許容される。
【0070】
当然のことながら、識別データの伝送に関して規定されたバイト全体が、機器のアドレスデータの伝送のためだけに使用される訳ではないと規定することもできる。むしろ、ステータス情報の伝送又は多数の個々のステータスフラグの伝送のために1バイト又は複数バイトを規定することもできる。各機器を認証するためのデータを事前に識別データに含めることもできる。
【0071】
この供給設備の収集モード及び機器の識別モードでは、二つのエンティティが低速通信オペレーションで通信するように構成されている。この遅い通信モードでは、非常に限られた命令セットだけが利用可能であり、例えば、全ての機器が理解して、その受信後に、全ての機器が、前述した通り、それらの識別データを伝送する照会命令や、単一の機器を選定できる選定命令も利用可能であり、以下において、このことを更に詳しく取り上げる。
【0072】
ここで、識別データを収集するオペレーションを開始するために、そこで供給電圧の一時的な変更によって同期させる全ての機器が、前に考察した通り、スタートビット又はストップビットを考慮すること無く、或いは存在させること無く、それらの識別データを出力する形態を実装することができる。
【0073】
この供給電圧の一時的な変更の検知後に、全ての機器が、少なくとも一つの第三の配線上の信号を傍受する状態に留まると規定することもできる。この変化形態では、この始めの時間期間において、即ち、識別データを収集する前に、供給設備だけが、この少なくとも一つの第三の配線を利用する権限を有する。
【0074】
ここで、識別データの実際の出力は、第一のスタートビットの発生によって開始することができる。
【0075】
この始めの時間期間において、識別データを収集するオペレーションを開始するために、即ち、識別データの出力も開始するために、供給設備が前記の始めの時間期間内に照会命令を送信するのを待つこともできる。その後、実装形態に応じて、スタートビットとストップビットから成るフレームに埋め込まない形で、或いは正にスタートビットとストップビットから成るフレームに埋め込む形で識別データの実際の出力を行うことができる。
【0076】
全ての実施構成又は変化構成において、収集モードでは、供給設備が低速通信オペレーションで、特に、毎秒100kボーまでのシンボル速度で識別データを受信するように構成されている。それと同様に、(バスシステムに含まれる各)機器は、識別モードにおいて、低速通信オペレーションで、特に、毎秒100kボーまでのシンボル速度で識別データを出力するように構成されている。即ち、適用される毎秒のシンボル速度は、事前に定義されており、供給設備にも、バスシステムに含まれる機器にも固定的に設定されている、特に、変更できない形で設定されている。それにより、如何なる機器がシステムバスに繋がれているのかを供給設備が事前に全く知る必要がない形態が達成される。
【0077】
各機器が、その識別データを出力した後、選定命令を供給設備から受信するのを待ち、この命令を用いて、供給設備が、選定命令の構成要素として選定すべき機器のアドレスを指定することによって、更なる個別通信のために識別データの検出に関与する機器のプールから単一の通信相手を選定する。
【0078】
この目的のために、収集モードでは、供給設備が、識別データを収集した単一の機器を選定して、バスシステムにおいて更に稼働を続けさせるように構成されている。このことは、前述した機器を決定するための検知可能な選定命令を用いて行われ、この命令は、供給設備によって尚も低い速度で出力されて、識別データのアドレス成分を有する。
【0079】
ここで、識別データが、純粋なアドレス成分以外に、例えば、機器のタイプ又は機器のクラスなどに関する情報を伝えることが可能な別の情報成分も示せることも言及しておきたい。如何なる場合でも、識別データを収集するために、考察した通り通信相手との間の更なる調整無しに識別データの収集を実施できるように、予め定義された固定数のシンボル又はバイトを定めなければならない。
【0080】
基本的に、各機器がバスシステム不活動モードを有し、このモードでは、各機器がバスシステム不活動状態に入るするのが有利であることが分かっており、この場合、各機器は、第一と第二の配線を用いて電力を供給可能であるが、少なくとも一つの第三の配線から電気的に切り離されており、この機器は、通信要求が生じない場合に、バスシステム不活動モードに入るように構成されている。
【0081】
この識別モードでは、関与する機器又は各機器は、その識別データの出力後に、バスシステム不活動状態に入るべきなのか、或いは供給設備によって選定されたのか、従って、バスシステムにおてい更に稼働を続けるのかを検査するように構成されている。このことは、バスシステム不活動状態に入った機器が、最早第三の配線に影響を及ぼさないか、或いは負荷をかけない、有利には、この第三の配線から電気的に分離されることであると理解する。即ち、この少なくとも一つの第三の配線は、その後、選定されていない全ての機器を第三の配線から分離した状態となり、供給設備と選定された機器の間の通信を除いて、これらの機器は、最早電気的(容量的又は誘導的)な負荷をかけないか、或いは影響を及ぼさない。
【0082】
この供給設備は個別通信モードを有し、このモードでは、供給設備が、選定された単一の機器と高速通信オペレーションにより両方向通信するように構成されている。この場合、毎秒100kボーを上回る、特に有利には、1,000kボーのオーダーのシンボル速度を適用することができる。ここでは、適用されるシンボル速度は、如何なる場合でも、低速通信オペレーションよりも速い。
【0083】
この供給設備は、単一の機器の選定を行った後、収集モードから個別通信モードに切り換わるように構成されている。これと同様に、各機器も、その個別通信モードを有し、このモードでは、機器は、高速通信オペレーションにより供給設備と個別に通信するように構成されており、各機器は、選定が確認された場合に、識別モードを抜けて、個別通信モードに入るように構成されている。
【0084】
通信相手が個別通信モードに切り換わった後、選定された機器の能力と機能に合った通信を行うことができる。
【0085】
有利には、供給設備の側でも、機器の側でも、そこに実装された所謂UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)が作動され、次に、これを用いて、選定された機器と供給設備の間の通信が個別通信モードで展開される。
【0086】
各機器は、機器特有の、或いは機器の種類特有の通信プロトコル及び/又は命令セットに基づき高速通信オペレーションを実行するように構成されている。それにより、識別モードと異なり、通信手段の範囲全体を活用することが可能であり、機器の機能の範囲全体を駆動可能又は使用可能であることが保証される。
【0087】
供給設備の側で、このことを利用するためには、供給設備が、機器特有の、或いは機器の種類特有の通信技術的なパラメータを保存するためのデータ構造を保存しており、この設備が、このデータ構造を用いて、機器特有の、或いは機器の種類特有の通信プロトコル及び/又は命令セットに基づき高速通信オペレーションを実行するように構成されているのが有利である。
【0088】
このデータ構造には、例えば、通信速度を個々に定めるパラメータを保存することができる。このデータ構造には、使用可能な命令又は機器で翻訳可能な命令とこれらの引数に関する情報を含む情報を保存することもできる。即ち、総体的に見て、このデータ構造には、それぞれの機器の種類に関する通信技術的な仕様を保存することができる。
【0089】
そのように、例えば、電子表示ユニットとして機器を実現した場合に、表示ユニットが理解できるデータフォーマットで画像データを伝送して、受信ステータス又は実行ステータスをスクリーンなどで照会することができる。同じことが、例えば、センサーや画像撮影機器などのそれ以外の機能を有するそれ以外の機器に関しても同様に成り立つ。
【0090】
機器を初めて収集する時に、予め定義され、供給設備が理解できて、次に、使用可能な形で保存されている機器の仕様データを機器から呼び出して、次に、機器と効率的に通信又は協働できるようにデータ構造に保存する形態を実装することもできる。同じく、これらの仕様データは、システムに渡って上位の電子管理部局で管理(例えば、中央の管理サーバー又はクラウドに保存)することができるとともに、これらの仕様データは、識別データの収集後に漸く、この中央の管理部局によって、識別データを参照して取り寄せられた後、供給設備のデータ構造に保存することができる。
【0091】
更に、各電子機器が、安全部品を備え、この部品を用いて、供給設備に対して一義的に認証できる、即ち、供給設備に対して認証可能であることが極めて有利であることが分かっている。この安全部品は、ソフトウェア及び/又はハードウェアに基づき、例えば、(英語でも「Secure Element」と呼ばれる)「セキュリティチップ」などを用いて構成することができる。この認証時に、鍵のペアを使用することができる。この安全部品は、各機器が機器特有の形で供給設備と協力して動作することが可能になる、或いは許される前に、供給設備に対する各機器の認証を可能にする。この「認証」との用語は、当該機器を識別するとともに、識別子を検査する役割を果たすプロセス又はオペレーションであると理解する。供給設備で認証できる機器だけが、供給設備によって使用されることを許される。このことは、例えば、「X.509証明」、「トラステッド・プラットフォーム・モジュール(TPM)」又は「対称鍵」などの、「マシン・ツー・マシン(M2M)通信」又はインターネット・オブ・シングズ(IoT)の分野で知られている既知の方法により実装することができる。
【0092】
認証を目的として、例えば、識別データにおいて、アドレス成分以外に、早くも収集モードで供給設備が当該機器を認証できるようにする認証成分をデータに含めることもできる。認証が失敗した場合、供給設備は、個別通信モードに関して当該機器を選定することを拒否する。
【0093】
しかし、認証を目的として、機器の収集が直接的な認証無しに行われ、その後個別通信モードの始めに漸く、認証された機器と機器特有の形で実際に通信できるようになる前に、認証が検査されると規定することもできる。一つの機器の認証が不可能である場合、供給設備は、当該機器との更なる通信を拒否して、個別通信モードを終了する。
【0094】
更に、上位の管理部局を用いて、供給設備によって収集された機器の認証を実施することができ、その結果、識別データの純粋な収集を除いて、そのような機器は、始めに管理部局によってバスシステムにおける使用、特に、所定の供給設備による使用を許可される、或いは認められなければならず、このことは、供給設備がそもそも当該機器との協力した動作を許される、或いは可能になる前に、当該供給設備にも管理部局から伝えられる。このことは、有利には、本システムに新たに収容された機器を当該供給設備に対して利用可能にするために、一回必要であるとすることができる。同じことが、一つの供給設備から別の供給設備に機器を引き渡す場合にも成り立つ。
【0095】
即ち、供給設備は、そのバスシステムに在る機器と協力して動作する許可を検査するための制御部を備えることができ、この許可が認証との意味で得られた場合にのみ、高速通信オペレーションにより機器特有の形で当該機器と通信するか、或いは、場合によっては、この許可が存在しない場合には、早くも前に、この機器に関する選定を実施しない。
【0096】
しかし、この認証は、供給設備に対しても規定することができ、その結果、中央の管理部局に対して、或いはその部局によって認証された供給設備だけが本システムで動作することができる。
【0097】
認証の成功は、機器において、或いは供給設備においても、光学的に感知可能なステータス表示によって表すことができる。このことは、例えば、スクリーンを介して行うことができる。この視覚的な表示は、例えば、人間の眼に感知可能なスペクトル帯域内の光を送出するか、或いは機械的な処理のために人間の眼に感知可能なスペクトル帯域以外のスペクトル帯域内の光を送出するLEDによって行うことができる。
【0098】
ここで考察した認証を用いて、許可された機器だけが本システム又は本バスシステムで使用可能であることを保証できる。この許可は、個々の機器に対して得ることができる。しかし、例えば、機器の形式又は機器のクラスなどのグループ単位で得るか、さもなければ製造業者特有の形で得ることもできる。これにより、品質的に良くない模造品又は出所の怪しい供給設備や機器の使用を確実に阻止することができ、この措置は、有害ソフトウェアの侵入に対して確実に保護するとともに、証明されていない(場合によっては、仕様に合致しない)ハードウェアの使用も阻止するので、このことは、システムの品質に大いに寄与する。更に、これらの措置は、様々な電子機器の使用を可能にし、その際、異なる機器製造業者が彼ら特有のコアコンピタンスを持ち込むことができるが、それと同時にシステムへのアクセスを管理して、システム提供業者の業務上の興味と戦略的な興味の両方に合わせて実行する商店モデルを実現できる。供給設備を用いた振る舞いも同様である。
【0099】
同じことが、前記の目的(識別/認証)のために前記の安全部品を装備することもできる、既に冒頭で述べた供給設備に供給する外部エネルギー貯蔵器(バッテリーパック)にも同様に成り立つ。
【0100】
個別通信モードでの個別通信が終了すると(このことは、命令により機器に伝えることができるか、或いは通信の状況から自動的に明らかにすることができる)、機器は、その動作モードを変更して、バスシステム不活動モードに入る。
【0101】
これ以降、供給設備から機器の中の一つとの収集及び通信の要求が発生した場合に、供給電圧の変更開始を含むプロセス全体を始めから新たに開始することができる。供給電圧の変更開始後に、新たな全体的な収集プロセスが実施されるのではなく、別の機器がその識別データを新たに出力する必要無しに、遅い通信オペレーションで既に検出された識別データに基づき、機器の中の一つが選定されると規定することもできる。この選定後に、速い通信オペレーションにより、選定された機器とデータを交換することができる。
【0102】
専ら供給設備だけが機器と供給設備の間の通信を開始できる形態にしないために、機器と供給設備は、通信を開始するための供給設備による供給電圧の変更がなくとも動作するように構成される。そのために、機器の側で、機器が接続開始モードを有し、このモードでは、機器は、供給設備の少なくとも一つの第三の配線の負荷、特に、高インピーダンスによる負荷を一時的に作り出すことによって、供給設備に対する接続構築の要求を示すように構成されると規定される。更に、この機器は、前に考察した通り、その動作モード、即ち、識別モードに入るための接続開始モードの後に個別通信モードが続くように構成される。
【0103】
この供給設備の側では、バスシステムに繋がれた機器による第三の配線への一時的な、凡そ高インピーダンスによる負荷が検知されるように、場合によって、如何なる数の繋がれた機器が同時に負荷を発生させているのかも見分けられるように、供給設備が構成されると規定されている。この負荷の検知の結果として、供給設備は、その動作モードに、即ち、収集モードに入って、個別通信モードが続くように構成されている。
【0104】
即ち、個別の識別データを供給設備に出力するために、バスシステムに搭載された機器の全部が作動されるのではない。むしろ、供給設備は、ここで、収集モードにおいて、少なくとも一つの第三の配線に負荷を加えている機器の識別データを呼び出すために、信号又はデータのトラフィックのために配備された少なくとも一つの第三の配線上の信号レベルを目的通り変更することによって作動される。
【0105】
このことは、単一の機器だけの識別データを呼び出して、その後直に(即ち、選定命令を必要とすること無く)、この単一の機器と個別に高速通信オペレーションにより通信することに関連付けることができる。
【0106】
しかし、前述した通り、この少なくとも一つの第三の配線の高インピーダンスによる負荷は、複数の機器が同時に負荷を加えることによっても実現することができる。この場合、少なくとも一つの第三の配線には、分圧器によって決まる信号レベルが発生する。この分圧器は、一方における供給設備側の抵抗と、それに対して直列に接続された、少なくとも一つの第三の配線に負荷を加える機器の高インピーダンスの抵抗の並列回路とによって構成されている。これらの供給設備の抵抗と機器の高インピーダンスの抵抗の並列回路の間には、少なくとも一つの第三の配線が通じている。この分圧器は、供給設備内で電圧を供給されて、機器内で基準電位と接続されている。そのため、供給設備では、負荷を加える機器の数に対応して発生する信号レベルを少なくとも一つの第三の配線で直に傍受して、供給設備のアナログデジタル変換器を用いて処理することができる。高インピーダンスの抵抗の値、供給設備の内部抵抗の値及び分圧器に供給される電圧の値が分かっているので、マイクロコントローラは、如何なる数の機器が少なくとも一つの第三の配線に同時に負荷を加えているのかを精確に計算することができる。そして、収集モードにおいて、事前に計算で算出しておいた数の機器に関する識別データを受信することができる。しかし、この計算を実施しないで、前に考察した通り、機器の数を知ること無く、識別データの収集を行うこともできる。
【0107】
それに続いて、収集された機器の中の一つだけとの個別の速い通信が、その機器の選定後に行われる。それ以外の収集された機器は、準備状態に留まって、少なくとも一つの第三の配線をモニターすることができる。
【0108】
この第一に選定された機器との個別の速い通信が終了すると、供給設備は、収集モードを抜けて、直ぐに低速通信オペレーションに切り換わり、既に前に検出された次の機器を選定して、次に、個別通信モードで通信技術的なサービスを提供する。このことは、少なくとも一つの第三の配線に高インピーダンスによる負荷を加える、既に前に検出された全ての機器が通信技術的なサービスを受けるまで何度も繰り返すことができる。
【0109】
ここで、全般的な説明を完成させるために、前に詳しく考察したシステムの異なるコンポーネントと機能に関する全体像を更に述べる。
【0110】
この供給設備は、本システムにおいて、次の機能を提供する。この設備は、エネルギーを節約するために、バスシステムに提供可能な供給電圧を遮断することができる。このことは、例えば、夜間において、或いはバスシステムでエラーが検知された場合に有効であるとすることができる。この設備は、バスシステムにおけるその時々の要求に合わせて、電流制限形態を変更することができる。バスシステムにおいて、例えば、LEDを作動するか、スクリーンの更新が必要であるか、或いはカメラを動作させなければならない時に、より高い電圧又はより大きな電力に対する要求が発生した場合、この設備は、特に、少なくとも一時的に、この要求に合わせて、供給電圧を上昇させることもできる。この設備は、信号又はデータの伝送のために配備された少なくとも一つの第三の配線をその信号レベルに関して、供給電圧の値の方に引き寄せて、前述した通り、機器の中の一つが、この配線をその信号レベルに関して基準電位の方向に引き寄せている、或いは負荷を加えていることを検出するために、アナログデジタル変換器を使用することができる。このことは、一つの機器がバスシステムに新たに接続されて、供給設備に登録してもらうために、自発的に供給設備との通信を求めていることを検知するために使用することができる。しかし、このことは、既にバスシステムと接続されている機器の中の一つが自発的に「注目アラーム」を発出して、それにより供給設備との通信に入りたいことを示すために使用することもでき、そして、この通信では、注目アラームの理由に関する詳細を送ることができる。供給設備は、バスシステムに提供可能な供給電圧を短時間遮断する所謂「バス・リセット」を実行することもできる。このバス・リセットは、冒頭で考察した供給電圧の一時的な変更と同等であると見做される。前述した通り、この設備は、全ての機器により理解される基本的なコマンドと、バスシステムで使用可能な全ての機器を収集する収集オペレーションを実施できるようにするために、「オープン・ドレイン」形態で連結された機器と低速度(100kボー)で通信するようにも構成されている。更に、この設備は、前述した通り、高速度(約1,000kボー)で通信するようにも構成されており、より多くのデータ量を、さもなければより少ないデータ量も単一の機器に速く伝送できるか、或いはその機器から受信できるようにするために、ユニバーサル非同期送受信機(UART)を使用する。この高速通信では、機器特有の形で(両方向の)通信が行われる。この供給設備は、例えば、少なくとも一つの第三の配線が1ms以上の間「低」論理レベルに保持されていることによって検知されるエラーに関してもバスシステムを監視している。
【0111】
各機器は、出来る限り低い電力消費量を発生させる低エネルギーモードに入ることができる。そのためには、多くの場合、機器に配備されたマイクロコントローラを停止させて、場合によっては、機器内で局所的に発生させた供給電圧により、それ以外の機能ブロックを更に動作させれば、それで十分である。しかし、特に、機器内に局所的に配備された供給電力発生部を完全にスイッチオフさせると規定することもできる。それ故、供給設備が、バスシステムにおいて供給電圧の一時的な変更を引き起こす機能を確かに提供するので、このことが可能である。この供給電圧の変更は、機器の側では、機器内に配備された供給電圧発生部を再びスイッチオン又は始動するために利用することができる。基本的に、例えば、主スイッチが手動で操作されるか、機器がバスシステムに繋がれるか、供給設備がバス・リセットを実行するか、或いは任意選択により配備されたNFCモジュール又は(スマートフォン又はPDA等に統合された)外部NFCデバイスを用いて、機器の始動が開始された場合に、機器を自動的にスイッチオンすることができる。要約すると、この機器は、バス・リセットを検出して、その動作モードの変更を開始し、その存在を示すか、或いは前記のアラームを送信するために、少なくとも一つの第三の配線に弱い負荷を加え、その識別データ、特に、そのアドレスを知らせるために、遅い「オープン・ドレイン」連結式通信を実行し、供給設備との個別データ転送のための速いUARTに基づく通信を実行し、供給設備と別の機器の間の高速通信中における、その影響を最小化するか、或いは防止するために、少なくとも一つの第三の配線から切り離される、或いは遮断されるように構成される。
【0112】
このバスシステムは、以下において要約する様々な状態を示すことができる。
【0113】
「電源断」状態では、供給電圧がスイッチオフされている。この少なくとも一つの第三の配線は、場合によっては、機器による短絡を、或いは負荷も検知可能にするために、「高」論理レベルに引き寄せられる。
【0114】
「低電力」状態では、バスシステムは、バッテリーを用いて、電力を供給される。この少なくとも一つの第三の配線は、場合によっては、機器による短絡を、或いは負荷も検知可能にするために、「高」論理レベルに引き寄せられる。例えば、Eペーパースクリーンを備えた表示ユニットを構成する機器は、その内部供給電圧をスイッチオフすることができる。例えば、LCDスクリーンを備えた表示ユニットを有する機器は、その内部マイクロコントローラをスイッチオフして、その内部供給電圧によりLCDスクリーンだけを動作させることができる。センサー機器は、測定を実施するか、或いはそのセンサー素子を用いて物理的なパラメータを収集するために周期的に目覚めさせることができる。この場合、これら全ての機器は、この少なくとも一つの第三の配線から切り離すことができる。
【0115】
「存在又はアラーム通報」状態では、各機器は、供給設備との通信を要求するために、この少なくとも一つの第三の配線を「低」論理レベルに引き寄せることができ、このことは、凡そアラームを意味することができる。バスシステムと新たに接続された各機器は、この少なくとも一つの第三の配線に弱い負荷を加えることによって、その存在を示すことができる。この供給設備は、別の機器をその休止状態から目覚めさせる必要無しに、収集モードに入ることができる。
【0116】
「バス・リセット」状態では、供給設備は、機器を始動させるために、供給電圧をスイッチオフ及びスイッチオンすることができる。この後に、個々の機器の識別データ、特に、アドレスを収集するために、収集モードに入ることができる。
【0117】
「低速通信」状態では、これらの機器は、バスシステムの少なくとも一つの第三の配線と「オープン・ドレイン」形態で連結されており、各機器は、この配線を「低」論理レベルに引き寄せることができる。このモードは、バス・リセットによって開始される。このモードは、バスシステムにおいて機器を収集する役割を果たし、例えば、機器を個別に識別するために48ビットが規定される。一つの命令を用いて、選定された機器を除いて、全ての機器をバスシステムから分離することができる。
【0118】
「高速通信」状態では、両方向通信を実行することができる。この場合、供給設備は、例えば、表示ユニットの場合に画像データを伝送するために、選定された単一の機器とだけ通信する。
【0119】
「エラー」状態は、この少なくとも一つの第三の配線が、通信の際に許される時間よりも長く続く時間期間の間「低」論理レベルに在る場合、高過ぎる電流消費量が確認された場合、或いはこの少なくとも一つの第三の配線が「低」又は「高」論理レベルに引き寄せることができない場合に発生する。このエラー状態の検知に対する反応として、供給設備は、このエラーが最早発生しなくなるまで、供給電圧をスイッチオフすることができる。この目的のために、供給設備は、このエラーが依然として発生しているのか、或いは除去されたのかを周期的に検査するように構成することができる。
【0120】
そのため、供給設備と少なくとも一つの機器を含むバスシステムを備えたシステムは、二つの信号伝送モードと二つの通信モードを有する。
【0121】
第一の信号伝送モードでは、供給設備による動作モードの変更を開始するための供給電圧の一時的な変更が提供される。
【0122】
第二の信号伝送モードでは、少なくとも一つの機器による動作モードの変更を開始するための少なくとも一つの第三の配線の高インピーダンスによる負荷が(一時的な負荷も)提供される。
【0123】
第一の通信モードでは、場合によっては、機器の収集を前置した形でも、単一の機器を選定すして、限定された命令セット、特に、機器に優位な形で使用可能な命令セット(及び/又はパラメータ範囲)(バスシステムに適合する全ての機器がこれを理解する)により機器を制御するための低速通信オペレーションが、供給設備によって提供される。
【0124】
第二の通信モードでは、特に、機器が割り当てられた機器の種類、機器の形式、機器のクラス又は機器のグループに基づき、或いは選定された機器に対して個別に利用可能な機器特有の個別命令セット又は機能範囲により供給設備と正確に一つの選定された機器の間で両方向通信するための高速通信オペレーションが提供される。
【0125】
更に、ラックレールに沿って、機械読取り可能な、特に、光学的に読取り可能なマークが在り、このマークが、各機器に対して、ラックレールに固定されたその位置の計測を可能にすると規定することができる。これらの機器は、その後方側に、それに適合した読取り機器、特に、光学式読み取り機(例えば、小型カメラ)を備えることができ、それを用いて、マークを検出可能であり、その結果、それを用いて提供される位置情報は、機器の電子回路によって更に処理することができる。
【0126】
更に、ここに記載したシステムは、位置が不明な電子機器の位置を計測するように構成することもできる。この場合、支持装置(例えば、ラックレール)に設置された電子機器の位置は、供給設備の位置計測によって場所的に限定することができる。この場合、位置が分かっているアクセスポイントに対する供給設備の位置の計測は、アクセスポイントと供給設備の間の超広帯域無線通信を使用して行われる。この措置によって、既知の措置と異なり、一つ電子機器に関して、さもなければ複数の電子機器に関しても、位置の計測が、それらの既知の措置では位置計測のための静止したアンカーポイントとしての役割を果たす、それ以外の電子機器の絶対位置が既知であることに最早依存しないとの利点が得られる。ここでは、むしろ、供給設備によって実現される動的なアンカーポイントが使用される。このポイントは、例えば、ラックの移動によって、或いはラックレールが固定されたラック底部の再区分によっても、時間の経過とともに、空間内のその位置を変える。即ち、電子機器に関する位置計測が行われる前に、先ずは供給設備に関する位置計測が実施されて、必要な場合に、その上に構築する形で、即ち、供給設備のこの位置に関連して、電子機器の位置が特定又は限定される。この場合、最終的に、位置を特定又は限定される電子機器が支持装置に在り、その支持装置では、それぞれ関連する供給設備も配備されているか、或いは位置を特定されているとの状況が利用される。即ち、供給設備のその時々の位置が特定されると、当該供給設備を用いて提供される電子機器の位置は、この機器の位置を当該供給設備に対してのみ特定できるので、実質的に自動的に得られる。この文脈において、超広帯域無線通信とは、超広帯域(UWB、英語でUltra-Wideband)技術に基づく無線通信であると理解する。最も重要な特徴は、帯域幅が少なくとも500Mhz、或いは利用する周波数帯域の下限周波数と上限周波数の算術平均値の少なくとも20%である極めて広い周波数帯域を利用することである。ここで述べた方法では、電力供給設備の位置の計測は、各超広帯域無線通信を利用した、その位置と関連するアクセスポイントの位置の間の距離計測に基づいている。この場合、「飛行時間」測定が、場合によっては、「到達角度」計測も使用される。それにより、例えば、三角測量などのその後の措置によって、各供給設備の位置の非常に精密な計測が得られる。この措置を実装するためには、アクセスポイントも供給設備も単にUWB無線モジュールを備えて、取得されたUWB無線測定データを中央のデータ処理装置に伝送すればよく、そこでは、そのデータ上に構築する形で、空間(店舗)内の供給設備の精確な位置が特定される。
【0127】
特に、供給設備が標準化された通信プロトコル(例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Low Energy、WLANなど)に基づきアクセスポイントと通信するように構成されて、前記のバッテリーにより電力を供給される場合、この設備は、省エネルギー形態で動作するために、アクセスポイントと通信する無線通信準備が整っていないスリープ状態と、アクセスポイントと通信する無線通信準備が整っている活動状態とを有するのが極めて有利であることが分かっている。供給設備の通信技術的な稼働性を保証するためには、アクセスポイントが、アドレス指定情報と共に目覚まし用無線信号を送信するように構成された追加の目覚まし用送信機を備えるのが有利であることが分かっている。このアドレス指定情報を用いて、所定の供給設備又はそのような供給設備のグループをアドレス指定することができる。供給設備の各々は、目覚まし信号を受信して、当該供給設備がアドレス指定されているのかを検査するように構成された極めて省エネルギーな目覚まし用受信機を更に備えている。アドレス指定が確認された場合、供給設備は、そのスリープ状態から目覚めて、次に、標準化された通信プロセスによりアクセスポイントと通信するために利用可能となる。
【0128】
供給設備によって直に電力を供給されない場合でも、電子機器の動作を可能にするためには、電子機器が、通常配備されている緩衝コンデンサー又は平滑コンデンサー以外に、再充電可能な長時間エネルギー貯蔵器も備えるのが有利であることが分かっている。この貯蔵器は、供給設備による電力供給が行われない時間期間中に電子機器の電子回路を少なくとも一時的に自律的に動作させるために配備されている。電子機器が供給機器と電気的に接続されている場合、即ち、電子機器が支持装置に固定されている場合には、常に長時間エネルギー貯蔵器は充電される。更に、長時間エネルギー貯蔵器を所与の時点で実際に充電すべきか、充電させて良いのか、或いは、例えば、供給設備のバッテリ貯蔵器の充電が目下不利な低レベルに達しているので、それを別の時点で行うべきであるのかを支持装置と当該電子機器の間で調整する形態を実装することができる。同様に、許容される充電時間を交渉又は調整することができる。電子機器では、例えば、電子機器が支持装置から取り外され、従って、供給設備による直接的な供給が最早不可能である場合に、長時間エネルギー貯蔵器が電力の供給を引き受けることができる。そのように、電子機器を支持装置から切り離した後でも、電子機器において、スクリーンの画像内容を変えたり、画像又はビデオ撮影を実行したり、物理的なパラメータを取得したり、機械や人間が理解できる手法で入力又は出力を行うこともできる。有利な実施構成では、この長時間エネルギー貯蔵器は、所謂(「ウルトラコンデンサー」とも呼ばれる)「スーパーコンデンサー」(略して「Supercap」)によって実現することができる。当然のことながら、再充電可能なバッテリー又は蓄電池を使用することもできる。しかし、前述したスーパーコンデンサーの利点は、以下の実情にある。「ウルトラコンデンサー」とも呼ばれるスーパーコンデンサーは、別のコンデンサーよりも容量値がずっと大きい高電力コンデンサーであるが、より低い限界電圧を有し、電解コンデンサーと再充電可能なバッテリーの間の隙間を埋めるものである。このコンデンサーは、典型的には、単位体積又は単位重量当たりのエネルギーを電解コンデンサーよりも10~100倍多く蓄積し、バッテリーよりも大分速く充電されて、出力することができ、再充電可能なバッテリーよりもずっと多い充放電サイクルに耐える。
【0129】
別の観点は、電子機器を介して出力される、支持装置への視覚的に感知可能な信号伝送に関し、これは、例えば、電子機器の中の一つのスクリーンを用いて行うことができる。この目的のために、電子機器は、(ところで既に述べた通り、そのスクリーンに追加して)、有利には、LEDとして実現された光出力ユニットを備えることができる。そして、これらの光出力機器は、電子機器の位置に対応して、支持装置に沿って分散されている。それにより、個々の機器又は中央の制御の下で、供給設備によって、位置に応じた光信号を出力することができる。同様に、供給設備は、そのような光出力ユニットを備えることができ、その結果、供給設備の制御の下で、供給設備の位置に光信号を出力することができる。支持装置の機械的な構造が、定義された固定位置に光出力ユニットを備え、これらの光出力ユニットが供給設備と取り外し可能な形で通電接続されており、その結果、供給設備による制御の下で、光出力機器の位置に光信号を出力できると規定することもできる。
【0130】
本発明のこれらの観点及び別の観点は、以下において考察する図面によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
以下において、添付図面を参照して、実施例に基づき本発明を再度詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。この場合、異なる図において、同じコンポーネントには同じ符号を付与している。
【
図1】ラックレール、ラック底部及び側方からラックレールに取り付けられた供給設備を備えたラックの機械的な構造の一部の模式図
【
図2】ラック底部を取り除いて、その結果、その下に配置された、供給設備に電力を供給するバッテリー構造を見えるようにしたラックの模式図
【
図3】電子表示ユニットが前部に差し込まれたラックレールの模式図
【
図4】電子表示ユニットが不完全に差し込まれたラックレールの模式図
【
図5】電子表示ユニットが完全に差し込まれたラックレールの模式図
【
図6】供給設備とラックレールの三本の電気配線の電気接続部の破断形態による斜視図
【
図7】
図6において右からラックレールに平行な視線方向で見た模式図
【
図8】供給設備とその設備の三本の配線との接続部の電気ブロック接続図
【
図9】電子表示ユニットとそのユニットの三本の配線との接続部の電気ブロック接続図
【
図10】三本の配線により動作可能な機器の機能を削減した変化形態の模式図
【
図11】第一の実施例による供給設備と電子機器の間の通信の進行時にラックレールの配線で発生する信号状態の時間シーケンス図
【
図12A】第二の実施例によるラックレールの配線で発生する信号状態の別の時間シーケンス図
【
図12B】第二の実施例によるラックレールの配線で発生する信号状態の別の時間シーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0132】
図1には、鋼鉄から製造されたラック1の一部が図示されており、このラックのラック底部2、ラックレール3及びラックレール3に側方から差し込まれた電力供給設備4が見える。
【0133】
図2には、ラック1の前記の部分が図示されており、ラック底部2が取り除かれている。そのため、供給設備4に電力を供給するために配備されたバッテリー構成6が固定された側方の支持体5を見ることができる。このバッテリー構成6は、(この斜視図では見ることはできないが、
図8に表示されている)ケーブル19を介して供給設備4と接続されている。このバッテリー構成6は、(ここでは、見ることができない)磁石を用いて支持体5に固定されている。
【0134】
図3には、供給設備4とその設備に固定された二つの機器、詳しく言うと、電子表示ユニット、即ち、(以下では、電子棚札、略してESLと称する)第一の表示ユニット7Aと第二の表示ユニット7Bを備えたラックレール3が図示されている。ここでは、ESL7Aと7Bの機械的な固定は、スナップ機構により行われ、この機構は、ESL7Aと7Bの後方側においてラックレール3の基準壁又は主壁9に沿って構成された(この斜視図では見ることができない)切欠きと協力して動作し、その結果、各ESL7A又は7Bが、ラックレール3の(以下では、上方の天井壁10と称する)上方部分に対して上に向かって押し付けられて、ESL7A又は7Bが、この上方部分に上から嵌め込まれ、そこで、主壁9と前方に向かって僅かに下に傾いた天井壁10の間に広がる形で保持される。本特許出願の焦点が電子的な観点に在るので、このスナップ機構の詳細は図面に図示されていない。従って、以下では、この電子的な観点を詳しく取り上げる。
【0135】
図4と5には、ESL7Aと7Bの間におけるラックレール3の断面が図示されている。ここでは、鋼鉄から製造されたラックレール3の構造の横断面とこの構造の上方の領域に差し込まれた配線支持体8が明らかに見える。この配線支持体8は、プラスチックから製造され、ラックレール3の長手方向の延びに沿って延びる3本の導電性の電線(例えば、銅線)L1,L2及びL3を備えており、これらの電線は、絶縁体無しに直に配線支持体8の表面に差し込まれて、そこで配線支持体8に沿って、凡そその全長に沿って、問題無くESL7A及び7Bと接触できるような高さで配線支持体8から突き出ている。これらの三本の電線L1~L3は、それぞれラックレール3の基準壁又は主壁9の方を向いた、配線支持体8の側に設置されており、その結果、これらは、ESL7A及び7Bのスクリーンを観察する方向からは見ることができない。
【0136】
各ESL7A及び7Bは、頭部側スロットを有し、そこに配線支持体8が納まる。ESL7A又は7Bは、これが上方の天井壁10に当接するか、或いは配線支持体8がスロットの最も深い点に到達するまで、下方からラックレール3に押し込むことができる。三本の配線L1~L3を接触させるために、各ESL7A及び7Bは、この場合には、ここでは詳しく見ることができない三つの鋼鉄製ベルトにより製造された三つの接触部品を備えている。これらは、各ESL7A及び7Bの筐体から突き出た(
図4を参照)、その終端区画E1,E2及びE3に、盛り上がった、或いは凸面に形成された接点ゾーンを有する。これらの終端区画E1~E3は、鋼鉄製ベルトの柔軟性によって実質的にばね形態で支えられており、
図5で見ることができる通り、各ESL7A又は7Bがラックレール3に完全に差し込まれると、その付与番号に基づき示される配線L1~L3と接触する。この場合、各鋼鉄製ベルトは、その柔軟性により弾力的な作用を奏し、その結果、配線L1~L3との圧力又は力を加えた形での接触が保証される。これらの鋼鉄製ベルトは、互いに十分な間隔を開けて、即ち、互いに接触しないように設置されるとともに、互いに平行な方向に向けられている。
【0137】
ここでは、完璧にするために、当然のことながら、配線支持体8、基準壁9及び上方の天井壁10を
図1と2でも見れることを更に言及しておきたい。
【0138】
以下では、三本の配線L1~L3への供給設備4の電気的な連結を取り上げ、この関連では、
図6と7を参照する。
図6では、供給設備4の設備用電子回路11と三本の配線L1~L3の連結を見れるようにするために、供給設備4の筐体も無線トラフィックのために配備されたアンテナも取り除かれている。ここでは、設備用電子回路11の中のプリント基板とそこに配置された、図示されていない幾つかの配線路を介して接続された電子部品とを見ることができるが、それらを詳しく取り上げない。この図面では、それぞれ第一の終端領域において電子回路11と接続(半田付け)され、その別の第二の終端領域E4,E5及びE6において接触ゾーンとしての盛り上がった、アーチ形状の構造を有する三つの鋼鉄製ベルトS1,S2及びS3を見ることができる。これらの配線L1~L3は、第二の終端領域E4~E6と接触している。ここでも、各鋼鉄製ベルトS1~S3は、その柔軟性により弾力的な作用を奏し、その結果、配線L1~L3との圧力を加えた形での接触が保証されている。これらの鋼鉄製ベルトS1~S3は、C字形状又はL字形状に構成されており、基準壁9の外側端部が鋼鉄から製造された基準壁9と接触しないように十分な間隔を開けて、その外側端部を取り囲んでいる。更に、これらの鋼鉄製ベルトS1~S3は、互いに十分な間隔を開けて、即ち、互いに接触しないように設置されるとともに、互いに平行な方向に向けられている。
【0139】
この場合、既に
図3でも見える通り、
図7では、この場合プラスチックから製造された、ラックレール3の左側の終止板12が見えることを更に言及したい。
【0140】
この供給設備4は、三本の配線L1~L3と共にラックレール3のバスシステムを形成し、このバスシステムには、全般的な説明で考察した通り、異なる機器を繋ぐことが可能であり、ここでは、ESL7A及び7Bと、機能を大きく削減した機器、即ち、
図10に図示された所謂LED機器7Cとだけに考察を限定する。
【0141】
以下では、
図8を用いた(以下では、短く第一の電子回路11と称する)設備用電子回路11と、
図9を用いた(以下では、短く第二の電子回路13と称する)ESL用電子回路13とのブロック接続図による考察を取り上げる。
【0142】
第一の電子回路11のブロック接続図を図示する
図8では、三本の配線L1~L3以外に、供給設備4を配線L1~L3と接触させるための鋼鉄製ベルトS1~S3の終端領域E4~E6も表示されている。この第一の電子回路11は、フラッシュメモリユニット14と、キー入力ユニット15と、例えば、LEDを備えた第一の表示ユニット16と、特に、(図示されていない)適合したアンテナを備えたブルートゥース低エネルギー無線ユニット17と、中央の第一のマイクロコントローラ18とを有し、このコントローラは、そのメモリに保存されたソフトウェアを用いて、このソフトウェアが実行された場合に、場合によっては、その周辺回路と組み合わせて、供給設備4の機能又は動作モードを提供する。この第一のマイクロコントローラ18は、その周辺機器端子を介して、前記のユニットの利用、駆動又は照会のために、前記のユニット14~16と接続されている。例えば、このマイクロコントローラ18と関連して、Qualcomm Technologies社のCSR1021との名称のチップを指摘しておく。
【0143】
この第一の電子回路11は、供給ケーブル19を介して、インテリジェントで再充電可能なバッテリー構成6と接続されており、この供給ケーブル19には、一方において電気エネルギー供給用の供給配線ライン19Aと、情報伝送用のデータ配線ライン19Bが統合されている。このバッテリー構成6は、データ配線ライン19Bを使用するI2Cバスを介してバッテリー構成6の使用パラメータと状態パラメータを(場合によっては、認証情報も)中央のマイクロコントローラ18に提供するためのスマートバッテリーコントローラ39を備えている。同様に、この供給ケーブル19には、基準電位GNDを定める電位配線ライン19Cも含まれている。
【0144】
第一の電圧コントローラ20は、入力側がバッテリー構成6に繋がっており、供給設備4の動作に関して決められた内部供給電圧VCC2(例えば、約3.3ボルト)を発生させる。この第一の電圧コントローラ20は、「ロー・ドロップアウト」(略してLDO)コントローラとして実現することができる。
【0145】
この第一の電子回路11は、第二の電圧コントローラ21も備え、このコントローラは、同じくバッテリー構成6から電力を供給されて、バスシステム用供給電圧VCC1(例えば、約5ボルト)をバスシステムに提供するために配備されている。これに対しても、LDOコントローラを使用することができる。この第二の電圧コントローラ21は、マイクロコントローラのステータスを呼び出すか、その動作挙動に影響を与えるか、或いはその動作状態を受け取るために、マイクロコントローラ18とも接続されている(マイクロコントローラ18の入力としての配線SC1とマイクロコントローラ18の出力としての配線SC2を参照)。第一の緩衝コンデンサー22が第二の電圧コントローラ21の出力側に繋がれている。
【0146】
更に、この第一の電子回路11は、第三の配線L3の過負荷を検知するために配備された(演算増幅器により表示された)過負荷検知ユニット23を備えている。ここでは、第三の配線L3の電圧の実際値が限界値を下回ることが主に検査される。意図しないスイッチオフを引き起こさないために、この検査は、特に、時間的な関係で行うことができる、即ち、或る時点又は或る時間期間内に実行し、別の時点又は時間期間には全く実行しないことが可能であるが、ここで示したブロック接続図としての図面では、そのことを更に取り上げていない。
【0147】
この過負荷検知ユニット23は、出力側を切換ステージ24と接続されており、このステージは、第二の電圧コントローラにより発生されるバスシステム用供給電圧VCC1の目標値と基準電位GNDの間でバスシステムの供給電圧VCC1の値を切り換えるように構成されている。即ち、過負荷が検知された場合、第二の配線L2が、この切換ステージ24によって基準電位GNDと接続される。
【0148】
更に、第一のマイクロコントローラ18は、第二の配線L2の信号レベルを検知できるように、その第一のアナログデジタル変換器入力ADC1、略してADC入力ADC1を第二の配線L2と接続している。
【0149】
一方のマイクロコントローラ18のシリアル送信出力TX及びシリアル受信入力RXと他方の第三の配線L3の間には、エラー保護ユニット25が配置されており、このユニットを用いて、マイクロコントローラ18のこれらの端子TX及びRXを両立しない信号状況から保護している。このエラー保護ユニット25は、更に、第一のマイクロコントローラ18がその第二のADC入力ADC2を用いて第三の配線L3の信号状態又は信号レベルを取得することを可能にするように構成されており、このことは、これらの機器の中の一つ7A又は7Bが全般的な説明で詳細に考察した第三の配線L3の弱い(高インピーダンスによる)負荷を検知するために必要である。
【0150】
第一のマイクロコントローラ18は、更に、VCC制御信号VCCSを用いて切換ステージ24を駆動して、全般的な説明で詳細に考察した供給電圧VCC1の一時的な変更を引き起こす(このことは、ここでの回路の実現形態では、バスシステム用供給電圧VCC1の一時的なスイッチオフによって実現されている)ために、この切換ステージと接続されている。
【0151】
更に、第三の配線L3との回路技術的な接続は、先ずは第一の電子回路11を過電圧と静電気放電から保護する保護回路が配備されるように実施できることに言及しておきたい。更に、必要又は動作モードに応じて、第三の配線L3の信号レベルを内部供給電圧VCC2の方向により強く、或いはより弱く引き寄せる(即ち、インピーダンスを低くする、或いはインピーダンスを高くする)可変バス・プルアップ回路を配備することができる。この回路は、第一のマイクロコントローラ18によって制御可能であり、保護回路と第一のマイクロコントローラ18の通信端子TX,RXの間で機能する。信号レベルを内部供給電圧VCC2の方により強く引き寄せることは、例えば、値が5kオームのオーダーの抵抗によって実現することができ、例えば、低速通信オペレーション中に用いられる。
【0152】
第二の電子回路12を図示する
図9には、三本の配線L1~L3以外に、ESL7A又は7Bを配線L1~L3と接触させるための鋼鉄製ベルトの終端領域E1~E3も図示されている。この第二の電子回路13は、例えば、LED、Eペーパーディスプレイユニット27、NFC通信ユニット28及び中央の第二のマイクロコントローラ29を備えた第二の識別ユニット26を有し、場合によっては、この回路の周辺機器と組み合わせて、そのメモリに保存されたソフトウェアを用いて、このソフトウェアが実行された時に、全般的な説明で詳細に取り上げた供給設備4の機能又は動作モードを提供する。この第二のマイクロコントローラ29は、前記のユニット26~28の利用、駆動又は照会のために、その周辺機器端子を介して、これらのユニットと接続されている。例えば、第二のマイクロコントローラ29と関連して、Silicon Labs社のEFM32(登録商標)Pearl Gecko 32ビットマイクロコントローラとの名称のチップを指摘しておきたい。
【0153】
この第二の電子回路13は第三の電圧コントローラ30を備え、このコントローラは、第二の配線L2に繋がれており、ESL7A又は7Bの動作に関して定められ内部供給電圧VCC3(例えば、約3.3ボルト)を発生させる。この第三の電圧コントローラ30もLDOコントローラとして構成することができる。入力側には、第二の緩衝コンデンサー31と第一のダイオード32が、第三の電圧コントローラ30に向かう方向を順方向とする極性で配備されている。この第二の緩衝コンデンサー31は、バスシステム用供給電圧VCC1の一時的な変更が起こる時間での第三の電圧コントローラ30の動作を保証する。そのような時間区間中に、第一のダイオード32は、第二の緩衝コンデンサー31が第二の配線L2の方向に放電できないようにする機能も果たす。第二の緩衝コンデンサー31の容量値は、対応すべき時間期間において第二の電子回路13の既知の(最大)電力需要に対する安全性が十分であるように設計されている。
【0154】
更に、第二の電圧コントローラ29の割込み入力IRQは、この割込み入力IRQから第二の配線L2に向かって順方向となる極性の第二のダイオード33を介して第二の配線L2と接続されている。それにより、バスシステム用供給電圧VCC1の値の一時的な変更の発生時(このことは、第二の配線L2に基準電位GNDを短時間(約100マイクロ秒)加えることによって示される)に、第二のマイクロコントローラ29に対する割り込みが発動され、このことは、その時点の動作モードから識別モードへの変更を引き起こし、ここで、識別モードは、全般的な説明で詳細に考察されている。このマイクロコントローラ29では、割り込みの発生が、そのために配備されたソフトウェアの実行を引き起こし、このソフトウェアを用いて、識別モードが提供される。
【0155】
このマイクロコントローラ29のシリアル送信出力TXとシリアル受信入力RXは、高インピーダンスによる(約100kオームの)抵抗34を介して第三の配線L3と接続されている。それにより、接続開始モードにおいて、全般的な説明で詳細に考察した第三の配線L3の高インピーダンスによる負荷を発生させることができる。この高インピーダンスによる負荷は、第三の配線L3において典型的ではあるが、負荷を加える機器の数に依存する信号レベルを発生させ、このレベルは、第一のマイクロコントローラ18によって、その第二のADC入力ADC2を用いて取得されて、評価される。有利には、この信号レベルは、典型的には、論理状態と関連して、(特に、デジタルデータ通信中に)生じる信号レベルと区別されるように考案されている。
【0156】
第三の電圧コントローラ30の方向を順方向として高インピーダンスによる抵抗34を第三の電圧コントローラ30の出力と接続する第二のダイオード35は、短絡の発生時に逆方向の極性になるので、短絡時に第三の電圧コントローラ30を保護する。更に、このダイオードは、抵抗34と組み合わせて、この抵抗34が電流を制限する作用を奏するので、第三の配線L3での過電圧の際に第三の電圧コントローラ30を保護する。
【0157】
更に、先ずは第二の電子回路13を過電圧及び静電気放電から保護する保護回路が配備されるように、第三の配線L3との回路技術的な接続を実施できることに言及しておきたい。これには、バスをスイッチオン又はスイッチオフするための連結回路を繋げることができ、この回路は、第二のマイクロコントローラ29の制御の下で、第二の電子回路13を第三の配線L3と電気的に連結するか、或いはそれから切り離すことを可能にする。ここでは、完全に切り離す代わりに、相対的に高インピーダンスの接続を構築したままにすることもできる。更に、必要又は動作モードに応じて、第三の配線L3の信号レベルを基準電位の方向により強く、或いはより弱く引き寄せる(インピーダンスを低くする、或いはインピーダンスを高くする)可変バス・プルダウン回路を配備することができる。この回路は、第二のマイクロコントローラ29によって制御可能であり、保護回路と連結回路の間に繋がれている。弱い負荷は、例えば、値が100kオーム~1Mオームのオーダーの抵抗によって実現されて、例えば、低速通信オペレーション中に用いられる。更に、ラックレール3に機器(例えば、ESL)を差し込む際に、第一の配線L1と第二の配線L2の間に短絡が起こらないことを保証するソフト開始回路を配備することができる。この回路は、ラックレール3への差し込みの際に内部のコンデンサーが更に放電されるので、その時点での初期の電流消費を制限する。
【0158】
以下では、第三の電子回路36を備えた比較的簡単なLED機器7Cを
図10に図示して考察する。これは、凡そ出力Qに発光ダイオード38が繋がれた双安定フリップフロップ37によって構成されている。ここでも、第一のダイオード32と緩衝コンデンサー31の組合せが、バスシステム用供給電圧VCC1の一時的な変更の時間期間を調整する機能を果たす。このLED機器7Cは、バスシステム用供給電圧VCC1の変更時点にそれぞれ生じる、フリップフロップ37のデータ入力Dと接続された第三の配線L3の論理状態に出力Qの論理状態を適合させる。この場合、フリップフロップ37の(クロック入力とも呼ばれる)タイミング入力に供給されるバスシステム用供給電圧VCC1の一時的な変更が状態引継ぎのためのタイミングとして作用する。このLED機器7Cは、明示的にアドレス指定できない。識別データも提供しない。
【0159】
図11を用いて、第一の実施例に基づきバスシステムにおける供給設備4と二つのESL7A及び7Bの協力した動作を考察する。
【0160】
図11は、互いに上下に配置された四つの時間的に同期したグラフを図示している。最も上のグラフは、時間tに関するバスシステム用供給電圧VCC1の推移を図示している。上から下に数えて二番目のグラフは、第三の配線L3上の信号状態を図示している。上から下に数えて三番目のグラフは、第一のESL7Aが第三の配線L3に出力する論理シンボルESL1_BVを図示している。最も下の四番目のグラフは、第二のESL7Bが第三の配線L3に出力する論理シンボルESL2_BVを図示している。
【0161】
先ずは、ESL7A及び7Bが電流消費が出来る限り少ない休止状態又はスリープ状態に在ると仮定する。
【0162】
時点t0から始まって、供給設備4は、約100マイクロ秒の間バスシステム用供給電圧VCC1の一時的な変更を引き起こし、この時間期間中は、値が5ボルトの目標値からずれている、具体的には、基準電位(GND、0ボルト)を加えられている。遅くともこの時間期間の終わりに、供給設備4は、その収集モードに入る。このバスシステム用供給電圧VCC1の変更は、ESL7A及び7Bの第二のマイクロコントローラ29に対する割込みを発動させ、その結果、これらの機器は、識別モードに入って、低速通信オペレーションで第三の配線L3へのオープン・ドレイン接続により、それらの識別データをアドレスデータADRーESL1及びADR-ESL2として同時に出力することを開始する。第三と第四のグラフの論理シンボルの比較から明らかな通り、そのように二つのESL7A及び7Bは、第三の配線L3の監視によって、そこで生じる信号状態の時間シーケンスがそれらによってそれぞれ提示された論理シンボルESL1_BV及びESL2_BVの時間シーケンスに適合していることを確認するので、アドレスデータADRーESL1及びADR-ESL2のそれらの最初の五つの論理シンボルを提示することができる。即ち、各論理シンボルESL1_BV及びESL2_BVが、第五の論理シンボルまで同じである。しかし、第六の論理シンボル以降、第二のESL7Bは、第三の配線L3の監視によって、別のESL7Aの独自の、即ち、オープン・ドレイン接続時に優勢であるシンボル(具体的には「0」又は「低」)と異なるシンボルを有することを確認するので、その送信を中止する。第一のESL7AによるアドレスデータADR-ESL1の出力が完了した後に、漸く第二のESL7Bが、新たにそのアドレスデータADR-ESL2の伝送を開始して、今回は妨害無く成功する。この第二のESL7BのアドレスデータADR-ESL2全体を遅れて新たに伝送するオペレーションが二つの矢印P1とP2によって示されている。
【0163】
その後、ESLの中の一つ7A又は7Bが、この場合、第一のESL7Aが、低速通信オペレーションにおいて、供給設備4によって選定命令を用いて選定され、即ち、アドレス指定されて呼び出されて(このことは、第二のグラフにおいて選定シーケンスSEL-ESL1で図示されている)、識別通信モードに切り換わる。
【0164】
第二のESL7Bは、再びそのバス不活動モード又は休止モードに切り換わり、このモードでは、高速通信オペレーションを妨害しないようにするために、第三の配線L3から切り離される。
【0165】
ここで、第一のESL7Aが、UARTを用いて、高速通信オペレーションにより供給設備4と両方向通信し、このことは、第二と第三のグラフで通信シーケンスCOM-ESL1により示されており、この場合、例えば、画像データがESL7Aに伝送されて、その受信又は内部処理が確認される。
【0166】
その後、第一のESL7Aも再び休止状態に切り換わる。
【0167】
誤解を避けるために、アドレスデータADR-ESL1及びADR-ESL2がそれらの論理シンボルに関して詳しく図示されているシーケンスと異なり、シーケンスSEL-ESL1及びCOM-ESL1を図示する際に、最早これらのシーケンス内に伝送される、第三の配線L3上に生じる個別の論理シンボルを個別に取り上げていないことに更に言及しておきたい。
【0168】
前述した通り、供給設備4との通信要求を信号伝送するために、ESLの中の一つ7A又は7Bが、或いは両方とも一緒に、第三の配線L3に自発的に高インピーダンスによる負荷を加えることができる。この場合、供給設備4は、バスシステム用供給電圧VCC1の初期の一時的な変更を省いて、その休止状態モードから直に収集モードに切り換わり、この収集モードでは、
図11に図示されている通り、一つ又は複数のESL7A,7Bからのアドレスデータが収集されて、その後、選定された唯一つのESL7A又は7Bとの目的通りの通信が高速通信オペレーションで実行される。これは、バックグラウンドで実行される課題又はESL7A又は7Bの入力ユニットを介したユーザーの入力に関するESL7A又は7Bのステータスレポート、或いはESL7A又は7BにおけるNFCデバイスとの対話などであるとすることができる。これら全ての事象は、バスシステムに繋がれた機器をその休止状態モードから目覚めさせて、供給設備4との通信要求を発出させ、それに対して、ESL7A又は7Bは考察した手法で反応する。
【0169】
時間的に関連する信号状態を二つの図面に分けて図示する
図12Aと12Bでは、バスシステムにおける供給設備4と二つのESL7A及び7Bの協力した動作が、第二の実施例に基づき考察されている。この実施例では、識別データのそれぞれ一つのバイトの送信に先立って、供給設備4によって、スタートビットXが、ここでは、論理値「0」又は信号状態「低」により第三の配線L3に出力される。このことは、第一の実施例による手順に基づき識別データの第一のバイトのビットを出力するが、
図11と関連して述べた理由から第一のバイトの第五ビットの後に第二のESL7Bによる出力を終了するためのESL7A及び7Bに対するトリガーとなる。ここでは、論理値「1」又は信号状態「高」によりストップビットYを第三の配線L3に出力する供給設備4によって、バイト単位の出力が終了される。
【0170】
この供給設備4によるスタートビットXの開始(これは、バスシステムに繋がれた全てのESL7A及び7Bに対する同期信号又はタイミングとして作用する)と、それに続くESLの中の少なくとも一つ7A又は7Bによる、各バイト後のストップビットYにより終わる識別データのバイト単位の出力とから成るシーケンスは、これらの機器の中の一つ(ここでは、第一のESL7A)がその完全な識別データを提示するまで、予め定義された、或いは決められたバイト数(ここでは、考察を分かり易くするために、第一のESL7Aのための各アドレス部分バイトADR-ESL1-B1及びADR-ESL1-B2と第二のESL7Bのための各アドレス部分バイトADR-ESL2-B1及びADR-ESL2-B2の第一のバイトB1及び第二のバイトB2として示された二つの区画)により繰り返すことができる。その後、このオペレーションは、別の機器の(ここでは、第二のESL7Bに関する)別の識別データを収集するために繰り返されて、基本的に、バスシステムに繋がれた全ての機器(ここでは、第一のESL7Aと第二のESL7B)がそれらの識別データを出力するまで何度でも繰り返される。
【0171】
この場合、ここでは2バイトの期間中に、各スタートビットXとストップビットYの間で論理値「1」又は信号状態「高」と異なる信号状態を確認できなかったことにより、供給設備4が識別データの検出の終了を検知するので、取り決めに基づき、識別データが論理値「1」又は信号状態「高」から成るビットだけで構成されることが禁止されている。このことは、
図12BにシーケンスNで図示されている。これは、最後の機器(ここでは、第二のESL7B)までを含む全ての機器(ここでは、第一と第二のESL7A,7B)が既に先行する収集サイクルにおいてそれらの識別データを出力したことを意味する。
【0172】
それにより、識別データの収集が終了して、供給設備4は、選定命令に基づき、当該機器のアドレスの出力によって、これらの機器の中の一つ7A又は7Bを選定し、このことは、
図11と同様に、
図12Bでは、ESL-SEL1による時間的に最後の書き込みとして記入されている。前に
図11と関連して考察した通り、供給設備4と選定された機器(例えば、第一の機器7A)は、個別通信モードに切り換わり、それに対して、それ以外の機器7Bは、再びそのバスシステム不活動状態に入るか、或いは休止状態モードに切り換わる。個別通信の実行後に、第一の機器ESL7Aも第三の配線L3を解放して、休止状態モードに切り換わる。
【0173】
最後に、前に詳しく説明した図は、単に本発明の範囲を逸脱すること無く当業者によって様々な手法で修正できる実施例であることをもう一度指摘しておく。また、完璧にするために、「一つの」との不定詞の使用は、関連する特徴が複数存在する可能性を排除しないことも指摘しておく。
【国際調査報告】