(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240227BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546394
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 FI2022050058
(87)【国際公開番号】W WO2022162280
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490985
【氏名又は名称】ナイチンゲール ヘルス オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ユルクネン ヘリ
(72)【発明者】
【氏名】ウルツ ピーター
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA02
2G045DA35
2G045DA36
2G045FA36
(57)【要約】
対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、前記生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
ヒスチジン
の定量値を決定する工程と、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか又は糖タンパク質アセチルである、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生体試料において、複数のバイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多いバイオマーカーの定量値を決定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
ヒスチジン、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記前立腺癌は、前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)を含むか又は前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は核磁気共鳴分光法を使用して測定される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しくは絶対リスクは、前記対象の特徴等の少なくとも1つのさらなる指標に基づいて計算される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、癌の家族歴、及び/又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングからの情報のうちの1つ以上を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対照試料又は対照値は、前立腺癌の既知の診断がない男性、又は前立腺癌と既に診断された男性を表す請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、前立腺癌の既知の診断がない男性である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象は、一般集団スクリーニング設定、例えば前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査における男性である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、前立腺癌と既に診断された男性である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
ヒスチジン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌及び前立腺癌は、それぞれ女性及び男性の間で一般的な癌であり、癌関連死の原因であることが多い。それらは、健康管理システムにも大きい負担をかけ、罹患した患者及びその家族に著しい社会的及び財務的影響を及ぼす。幸いなことに、改善された治療選択肢に起因して、これらの癌は、早期に検出されると潜在的に治癒可能であると考えられ、従って、疾病負荷に影響を及ぼすことが可能である。
【0003】
乳癌及び前立腺癌の生存の予測、並びに以降の生活でこれらの癌が原因で死亡するリスクが高い個体の正確な特定は、早期治療を支援し、これらの疾患のより重篤な症状の提示を予防するために重要である可能性がある。様々なバイオマーカーが、乳癌及び前立腺癌の生存、並びに/又は個体が将来これらの癌が原因で死亡するリスクが高いか否かを予測するのに有用である可能性がある。このようなバイオマーカーは、様々な生体試料(生物学的試料)から、例えば、血液試料又は関連する生体液(生物学的流体)から測定されてもよい。これらの癌からの重篤な症状の提示及び死亡のリスクを予測するバイオマーカーは、予防的乳房切除に関する決定のためのガイダンスを含む、標的スクリーニング、早期の診断及び早期治療を支援することができる可能性がある。そのような方法は、乳癌又は前立腺癌の既知の診断なしに一般集団をスクリーニングするため、並びに治療選択肢を導くために乳癌又は前立腺癌と診断された個体の予後及び生存を予測するための両方の有用性を有することができよう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法が開示される。当該方法は、上記対象から得られた生体試料において、以下の
糖タンパク質アセチル、
総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、種々の実施形態を例証する。
【0006】
【
図1】
図1は、バイオマーカー濃度が研究集団の標準偏差にスケーリングされた絶対濃度で分析された場合の、一般集団(母集団)スクリーニング設定(例えばマンモグラフィ検査による)における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と乳癌死亡率(死亡記録における、乳房の悪性新生物<腫瘍>、ICD-10診断コードC50)との関係を示す。
【
図2】
図2は、バイオマーカー濃度が研究集団の標準偏差にスケーリングされた絶対濃度で分析された場合の、一般集団スクリーニング設定(例えば前立腺特異抗原(PSA)検査と組み合わせて)における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と前立腺癌死亡率(死亡記録における、前立腺の悪性新生物<腫瘍>、ICD-10診断コードC51)との関係を示す。
【
図3】
図3は、バイオマーカー濃度が研究集団の標準偏差にスケーリングされた絶対濃度で分析された場合の、血液サンプリング時に既に診断された優勢な乳癌(病院記録におけるICD-10診断コードC50)を有する女性における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、乳癌死亡率(死亡記録における、乳房の悪性新生物<腫瘍>、ICD-10診断コードC50)として分析される乳癌生存率との関係を示す。
【
図4】
図4は、バイオマーカー濃度が研究集団の標準偏差にスケーリングされた絶対濃度で分析された場合の、血液サンプリング時に既に診断された優勢な前立腺癌(病院記録におけるICD-10診断コードC61)を有する男性における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、前立腺癌死亡率(死亡記録における、前立腺の悪性新生物<腫瘍>、ICD-10診断コードC61)として分析される前立腺癌生存率との関係を示す。
【
図5a】
図5aは、一般集団スクリーニング設定(例えばマンモグラフィ検査による)における乳癌死亡リスクを予測するための、複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図5b】
図5bは、乳癌死亡のリスクの予測が、異なる人口統計及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能し、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【
図6a】
図6aは、一般集団スクリーニング設定(例えば前立腺特異抗原(PSA)検査による)における前立腺癌死亡リスクを予測するための、複数バイオマーカースコアの意図される使用事例を示す。
【
図6b】
図6bは、前立腺癌死亡のリスクの予測が、異なる人口統計及びリスク因子プロファイルを有する人々に対して効果的に機能し、短期リスク予測について実質的により強い結果を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法が開示される。
【0008】
当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下の
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ヒスチジン
のうちの少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す。
【0009】
一実施形態では、当該方法は、対象が乳癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法である。このような実施形態では、対象は女性、すなわち雌性であってもよい。
【0010】
一実施形態では、当該方法は、対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法である。このような実施形態では、対象は、男性、すなわち雄性であってもよい。
【0011】
対照試料又は対照値は、例えば集団スクリーニング設定(例えば、それぞれマンモグラフィ又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査による)における、既知の乳癌又は前立腺癌診断のない女性又は男性を表してもよい。代替的に又は追加的に、対照試料又は対照値は、乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性を表してもよい。これは、癌の予後の予測を可能にしてもよい。
【0012】
対象は、乳癌又は前立腺癌の既知の診断のない女性又は男性であってもよい。
【0013】
対象は、一般集団スクリーニング設定、例えばマンモグラフィ又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査における女性又は男性であってもよい。
【0014】
対象は、乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性であってもよい。
【0015】
様々な血液バイオマーカーが、個体が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いか否かを予測するために有用である可能性がある。このようなバイオマーカーは、生体試料から、例えば血液試料又は関連する生体液から測定されてもよい。
【0016】
乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクを予測するバイオマーカーは、より有効なスクリーニング及びより良好な標的化予防的処置を可能にすること、並びに/又は、例えば予防的乳房切除の決定を導くことに役立つことができよう。
【0017】
一実施形態では、当該方法は、糖タンパク質アセチルの定量値を決定することを含む。
【0018】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比の定量値を決定することを含む。
【0019】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値を決定することを含む。
【0020】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比の定量値を決定することを含む。
【0021】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比の定量値を決定することを含む。
【0022】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比の定量値を決定することを含む。
【0023】
一実施形態では、当該方法は、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値を決定することを含む。
【0024】
一実施形態では、当該方法は、脂肪酸不飽和度の定量値を決定することを含む。
【0025】
一実施形態では、当該方法は、ヒスチジンの定量値を決定することを含む。
【0026】
本明細書に記載される代謝バイオマーカーは、有意に異なることが見出されており、すなわち、それらの定量値(量及び/又は濃度等)は、後に乳癌又は前立腺癌が原因で死亡した対象に関して、有意に高いか又は低いことが見出されている。このバイオマーカーは、血液、血清、若しくは血漿、乾燥血液スポット、又は他の適切な生体試料から検出及び定量されてもよく、単独で、又は他のバイオマーカーと組み合わせて、予後及び/又は生存を予測するために、すなわち、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクを判定するために使用されてもよい。
【0027】
さらには、このバイオマーカーは、年齢、家族歴、喫煙状態、肥満度指数(BMI)、既存の併存疾患、C-反応性タンパク質及び/若しくはアルブミン等の炎症性タンパク質バイオマーカー、癌及び転移のステージ(病期)、BRCA1及びBRCA2対立遺伝子を含む遺伝子変異体(遺伝的変異体)、腫瘍サイズ、腫瘍悪性度、癌細胞の特定の形質、並びに/若しくは治療に対する応答等の、予後並びに/若しくは生存の予測に現在使用されてもよい確立された因子と組み合わせてさえ、並びに/又はそれを考慮するときでさえ、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがある対象を特定する可能性を大きく改善する可能性がある。本明細書に記載されるバイオマーカーは、単独で、又はリスクスコア(複数バイオマーカーリスクスコア等)、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクとして、又は他のリスク因子及び検査、例えば、マンモグラフィ及び前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査と組み合わせて、予測精度を改善する可能性がある。これは、他のリスク因子からの予測情報を補完することによって、又は他の分析の必要性を置き換えることによって、予測精度を改善することを含んでもよい。従って、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に係るバイオマーカー若しくはリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、他のリスク因子指標がそれほど実現可能でない条件においても、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクを効率的に評価することを可能にする可能性がある。
【0028】
一実施形態では、当該方法は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法である。例えば、当該方法は、例えばマンモグラフィ若しくは前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査による一般集団スクリーニング設定において適用されてもよく、又は乳癌若しくは前立腺癌と既に診断された個体間で適用されて、癌の予後を予測してもよい。
【0029】
一実施形態では、当該方法は、対象が(以降の)3年のうちに乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法である。
【0030】
当該方法は、上記生体試料において、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上等の複数のバイオマーカーの定量値を決定することを含んでもよい。例えば、複数のバイオマーカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のバイオマーカー(すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、又はすべてのバイオマーカー)を含んでもよい。従って、用語「複数のバイオマーカー」は、本明細書内では、(1を超える)任意の数のバイオマーカーを指すものとして理解されてもよい。従って、用語「複数のバイオマーカー」は、(1を超える)任意の数の本明細書に記載されるバイオマーカー及び/又は本明細書に記載されるバイオマーカーの組み合わせ若しくはサブセットを指すものとして理解されてもよい。複数のバイオマーカーを決定することにより、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かの予測の精度を高められる場合がある。概して、バイオマーカーの数が多いほど、当該方法はより正確又は予測的になりうる。しかしながら、本明細書に記載される単独のバイオマーカーでさえ、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定することを可能にするか、又はそれを支援する可能性がある。この複数のバイオマーカーは、同じ生体試料から又は別々の生体試料から、同じ分析方法又は異なる分析方法を使用して測定されてもよい。一実施形態では、複数のバイオマーカーは、複数のバイオマーカーのパネルであってもよい。
【0031】
本明細書の文脈では、語句「バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する」は、当業者なら理解するように、例えば、単一の(個々の)バイオマーカーの定量値が決定されるか、又は複数のバイオマーカーの定量値が決定されるかに応じて、バイオマーカーの定量値を、個々に、又は複数のバイオマーカーとして(例えば、リスクスコアが複数のバイオマーカーの定量値から計算される場合)、対照試料又は対照値と比較することを指すものとして理解されてもよい。対照試料又は対照値は、例えば集団スクリーニング設定(例えば、それぞれマンモグラフィ若しくは前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査による)におけるように、既知の乳癌若しくは前立腺癌診断のないそれぞれ女性若しくは男性を表してもよく、又は癌の予後を予測するために乳癌若しくは前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性若しくは男性を表してもよい。
【0032】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー:
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ヒスチジン
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値(複数可)を対照試料又は対照値(複数可)と比較することと
を含んでもよく、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す。
【0033】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである。当該方法は、本明細書に記載される他のバイオマーカーのうち少なくとも1つの定量値を決定することをさらに含んでもよい。
【0034】
対象はヒトであってもよい。このヒトは健康であるか、又は既存の癌等の既存の疾患を有してもよい。具体的には、ヒトは、既に存在する形態の乳癌又は前立腺癌を有してもよく、これらの癌のより重篤な形態を発症するリスク及び/又はこれらの癌が原因で死亡するリスクが判定及び/又は計算されてもよい。対象は、追加的又は代替的に、動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ又はげっ歯類であってもよい。対象は雌性又は雄性であってもよい。
【0035】
本明細書の文脈では、用語「バイオマーカー」は、疾患の重度の経過又は疾患による死亡のリスクと関連すると見出されてもよいバイオマーカー、例えば、化学マーカー又は分子マーカーを指してもよい。それは、臨床の現場において具体的な有効性を有するものとして統計的に十分に検証されるバイオマーカーを必ずしも指さない。バイオマーカーは、代謝産物、化合物、脂質、タンパク質、部分、官能基、組成物、2つ以上の代謝産物及び/若しくは化合物の組み合わせ、それらの(測定可能な又は測定された)量、それらから誘導される比率若しくは他の値、又は原則として、疾患が原因で死亡することと関連することが見出されてもよい化学的及び/若しくは生物学的成分を反映する任意の測定値であってもよい。バイオマーカー及びその任意の組み合わせは、任意選択でさらなる分析及び/又は指標と組み合わせて、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクを示す生物学的プロセスを測定するために使用されてもよい。
【0036】
本明細書の文脈では、用語「乳癌又は前立腺癌が原因で死亡する」は、乳癌又は前立腺癌によって引き起こされる死亡を指すものとして理解されてもよい。言い換えれば、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高い対象は、致命的な乳癌又は前立腺癌を発症するリスクが高い対象、すなわち、乳癌若しくは前立腺癌が原因の死亡又は乳癌若しくは前立腺癌に起因する死亡のリスクが高い対象として理解されてもよく、これは、例えば、(例えば集団スクリーニング設定において)これらの癌の既知の診断がない個体については、以降の生活でこれらの癌の致死的形態を発症するリスクを反映し、又はこれらの癌の既存の診断がある個体については、診断後の生存を反映するかのいずれかである。
【0037】
対象は、乳癌又は前立腺癌の既知の診断がない対象、例えば女性又は男性であってもよい。対象は、追加的又は代替的に、一般集団スクリーニング設定、例えばマンモグラフィ又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査における女性又は男性であってもよい。対象は、追加的又は代替的に、乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性であってもよい。
【0038】
本明細書に記載される乳癌及び/又は前立腺癌は、以下のように分類されてもよい。「ICD-10」は、International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 10th Revision(ICD-10) - WHO Version for 2019(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂(ICD-10) - 2019年のWHOバージョン)を指すものとして理解されてもよい。ICD-9又はICD-11等のICD-10以外の他の疾患分類システムによって分類又は診断された類似の癌も適用されてもよい。
【0039】
乳癌及び前立腺癌は、乳癌及び前立腺癌についての3文字ICD-10診断(C50:乳房の悪性新生物<腫瘍>、C61:前立腺の悪性新生物<腫瘍>)内に分類される疾患を指すものとして理解されてもよい。
【0040】
一実施形態では、乳癌又は前立腺癌は、ICD-10 3文字コード診断によって定義されるような特定の疾患である。
【0041】
一実施形態では、乳癌又は前立腺癌は、以下のICD-10 3文字診断:
・C50:乳房の悪性新生物<腫瘍>
・C61:前立腺の悪性新生物<腫瘍>
のうちの1つである。
【0042】
一実施形態では、乳癌又は前立腺癌が原因の死亡は、上に列挙されたICD-10コードのいずれか1つによって表される疾患が原因の死亡等の乳癌又は前立腺癌による死亡を含んでもよく、又はそれらであってもよい。
【0043】
一実施形態では、乳癌は、乳房の悪性新生物(腫瘍)を含むか若しくは乳房の悪性新生物(腫瘍)であり、かつ/又は前立腺癌は、前立腺の悪性新生物(腫瘍)を含むか若しくは前立腺の悪性新生物(腫瘍)である。
【0044】
当該方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の上記バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定することをさらに含んでもよい。
【0045】
リスクスコア、ハザード比、並びに/若しくは予測される絶対リスク及び/若しくは相対リスクの増加又は減少は、対象が乳癌若しくは前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。予測は、例えば、マンモグラフィ若しくは前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査等による等の、一般集団スクリーニング設定におけるように、既知の乳癌若しくは前立腺癌の診断がないそれぞれ女性若しくは男性において、又は生存を予測するために、乳癌若しくは前立腺癌と既に診断された個体において適用されてもよい。
【0046】
リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、本明細書に記載されるバイオマーカーの任意の複数、組み合わせ又はサブセットに基づいて計算されてもよい。
【0047】
リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、例えば、以下の実施例に示されるように計算されてもよい。例えば、適切な方法を用いて、例えば核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて測定された複数のバイオマーカーが、回帰アルゴリズム及び多変量分析を用いて、並びに/又は機械学習分析を用いて組み合わされてもよい。回帰分析又は機械学習の前に、バイオマーカー中の欠落値があればその欠落値が、データセットに対する各バイオマーカーの平均値で補完されてもよい。上記疾患が原因の死亡と最も関連があると考えられ得るバイオマーカーの数、例えば5が、予測モデルで使用するために選択されてもよい。他のモデリングアプローチを使用して、個々のバイオマーカーの組み合わせ又はサブセット、すなわち複数のバイオマーカーに基づいて、リスクスコア及び/又はハザード比及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクが計算されてもよい。
【0048】
リスクスコアは、例えば、個々のバイオマーカー、すなわち複数のバイオマーカーの加重和として計算されてもよい。加重和は、例えば、Σi[βi
*ci]+β0として定義される複数バイオマーカースコアの形態であってもよく、式中、iは個々のバイオマーカーにわたる和(合計)の添え字(インデックス)であり、βiはバイオマーカーiに帰属される加重係数であり、ciはバイオマーカーiの血中濃度であり、β0は切片項である。
【0049】
例えば、リスクスコアは、β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸比)+β3
*濃度(ヒスチジン)+β0として定義することができ、式中、β1、β2、β3は、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクとの関連性の大きさに応じた各バイオマーカーについての乗数であり、β0は切片項である。当業者が理解するように、この例において言及されるバイオマーカーは、本明細書に記載される任意の他のバイオマーカー(複数可)によって置き換えられてもよい。概して、より多くのバイオマーカーがリスクスコアに含まれるほど、予測性能はより強くなる可能性がある。追加のバイオマーカーがリスクスコアに含まれる場合、βi重みは、乳癌又は前立腺癌が原因の死亡の予測のための最適な組み合わせに従って、すべてのバイオマーカーについて変化してもよい。
【0050】
リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しく絶対リスクは、少なくとも1つのさらなる指標、例えば対象の特徴に基づいて計算されてもよい。そのような特徴は、生体試料が対象から得られる前、得られるのと同時に、又は得られた後に決定されてもよい。当業者が理解するように、その特徴のいくつかは、例えばアンケートを使用して収集された情報、又は以前に収集された臨床データであってもよい。特徴のいくつかは、生化学的測定若しくは臨床的診断測定及び/又は医学的診断によって決定されてもよい(又はすでに決定されていてもよい)。このような特徴は、例えば、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、癌の家族歴、並びに/又はマンモグラフィ及び/若しくは前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングからの情報のうちの1つ以上を含むことができる。
【0051】
当該方法は、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがある対象に治療を施し、これによりその対象におけるそれら疾患を予防及び/又は治療することをさらに含んでもよい。上記バイオマーカーの1つ以上に基づいて誘導される乳癌又は前立腺癌が原因の死亡のリスク予測は、アルコール及び喫煙の意識、健康な食事、身体活動、臨床スクリーニング頻度及び/又は治療決定等の、癌の重度の経過に対する治療及び予防的努力を誘導するために使用することができる。例えば、乳癌又は前立腺癌が原因の死亡のリスクの情報は、癌スクリーニングの頻度、予防的乳房切除の決定、並びに/又は例えばアスピリン及び他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばタモキシフェン及び/若しくはラロキシフェン、並びに/若しくはジヒドロテストステロン(DHT)遮断薬、例えばフィナステリド及び/若しくはデュタステリドによる治療を導くために使用することができる。
【0052】
本明細書の文脈では、用語「糖タンパク質アセチル」、「糖タンパク質アセチル化」、又は「GlycA」は、循環糖化タンパク質の存在量、及び/又は循環糖化タンパク質、すなわちN-アセチル化糖タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法(NMR)シグナルを指してもよい。糖タンパク質アセチルは、例えば、α-1-酸糖タンパク質、α-1アンチトリプシン、ハプトグロビン、トランスフェリン、及び/又はα-1アンチキモトリプシンを含む、複数の異なる糖タンパク質からのシグナルを含んでもよい。心臓代謝バイオマーカーに関する科学文献において、用語「糖タンパク質アセチル」又は「GlycA」は、通常、循環糖化タンパク質のNMRシグナルを指してもよい(例えば、Ritchieら、Cell Systems 2015 1(4):293-301;Connellyら、J Transl Med. 2017;15(1):219)。糖タンパク質アセチル及びそれらを測定する方法は、例えば、Kettunenら、2018、Circ Genom Precis Med. 11:e002234及びSoininenら、2009、Analyst 134、1781-1785に記載されている。NMRシグナルに寄与する個々のタンパク質の測定を上回るリスク予測のために糖タンパク質アセチルのNMRシグナルを使用することの利益、例えば、より良好な分析精度及び経時的な安定性、並びに測定のより低いコスト、並びに多くの他のバイオマーカーと同時にNMRシグナルを測定する可能性、がある場合がある。
【0053】
本明細書の文脈では、用語「オメガ-3脂肪酸」は、全オメガ-3脂肪酸、すなわち全オメガ-3脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるオメガ-3脂肪酸の合計を指してもよい。オメガ-3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。オメガ-3脂肪酸において、脂肪酸鎖中の最後の二重結合は、メチル末端から数えて3番目の結合である。ドコサヘキサエン酸はオメガ-3脂肪酸の一例である。
【0054】
本明細書の文脈では、用語「オメガ-6脂肪酸」は、全オメガ-6脂肪酸、すなわち全オメガ-6脂肪酸の量及び/又は濃度、すなわち異なるオメガ-6脂肪酸の量及び/又は濃度の合計を指してもよい。オメガ-6脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸である。オメガ-6脂肪酸において、脂肪酸鎖中の最後の二重結合は、メチル末端から数えて6番目の結合である。
【0055】
1つの実施形態では、オメガ-6脂肪酸はリノール酸であってもよい。リノール酸(18:2ω-6)は、最も豊富なタイプのオメガ-6脂肪酸であり、それゆえ、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡することのリスク予測のための全オメガ-6脂肪酸の良好な近似と考えられてもよい。
【0056】
本明細書の文脈では、用語「一価不飽和脂肪酸」(MUFA)は、全一価不飽和脂肪酸、すなわち全MUFAの量及び/又は濃度を指してもよい。あるいは、一価不飽和脂肪酸は、ヒト血清中で最も豊富な一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸を指してもよい。一価不飽和脂肪酸は、それらの脂肪酸鎖中に1つの二重結合を有する。一価不飽和脂肪酸は、オメガ-9脂肪酸及びオメガ-7脂肪酸を含んでもよい。オレイン酸(18:1ω-9)、パルミトレイン酸(16:1ω-7)及びcis-バクセン酸(18:1ω-7)は、ヒト血清中の一般的な一価不飽和脂肪酸の例である。
【0057】
1つの実施形態では、一価不飽和脂肪酸はオレイン酸であってもよい。オレイン酸は、最も豊富な一価不飽和脂肪酸であり、それゆえ、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡することのリスク予測のための全一価不飽和脂肪酸についての良好な近似と見なされてもよい。
【0058】
本明細書の文脈では、用語「飽和脂肪酸」(SFA)は、全飽和脂肪酸を指してもよい。飽和脂肪酸は、その構造中に二重結合を有さない脂肪酸であってもよく、又はそれを含んでもよい。パルミチン酸(16:0)及びステアリン酸(18:0)は、ヒト血清中の豊富なSFAの例である。
【0059】
オメガ-6、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、一価不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸を含むすべての脂肪酸指標について、脂肪酸指標は、血液(又は血清/血漿)遊離脂肪酸、結合脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含んでもよい。エステル化脂肪酸は、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、若しくはホスホグリセリドにおけるようにグリセロールに、又はコレステロールエステルにおけるようにコレステロールにエステル化されていてもよい。
【0060】
本明細書の文脈では、用語「脂肪酸不飽和度」又は「不飽和」は、全脂肪酸中の二重結合の数、例えば全脂肪酸中の二重結合の平均数を指すものとして理解されてもよい。
【0061】
本明細書の文脈では、用語「ヒスチジン」は、例えば、血液、血漿若しくは血清又は関連する生体液中のヒスチジンアミノ酸を指してもよい。
【0062】
本明細書の文脈では、用語「定量値」は、バイオマーカーの量及び/又は濃度を特徴付ける任意の定量値を指してもよい。例えば、それは、生体試料中のバイオマーカーの量若しくは濃度であってもよく、又は核磁気共鳴分光法(NMR)若しくはバイオマーカーを定量的に検出するのに適した他の方法から導出されるシグナルであってもよい。このようなシグナルは、バイオマーカーの量若しくは濃度を示してもよいし、又はそれと相関してもよい。定量値は、NMR測定又は他の測定から導出される1つ以上のシグナルから計算される定量値であってもよい。定量値は、追加的又は代替的に、様々な技術を用いて測定されてもよい。このような方法としては、質量分析(MS)、MSと組み合わせたガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー単独又はMSと組み合わせた高速液体クロマトグラフィー、免疫比濁測定、超遠心分離、イオン移動度、酵素による分析、比色分析又は蛍光分析、免疫ブロット分析、免疫組織化学的方法(例えば、代謝産物の抗体検出に基づくインサイツ(in situ)法)、及びイムノアッセイ(例えば、ELISA)を挙げてもよい。様々な方法の例が以下に示される。対象における定量値を決定するために使用される方法は、対照対象(複数可)又は対照試料(複数可)における定量値を決定するために使用される方法と同じであってもよい。
【0063】
少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの定量値又は初期定量値は、核磁気共鳴(NMR)分光法、例えば1H-NMRを用いて測定されてもよい。少なくとも1つの追加のバイオマーカー又は複数の追加のバイオマーカーも、NMRを使用して測定されてもよい。NMRは、多数のバイオマーカーを含むバイオマーカーを同時に測定するための特に効率的で迅速な方法を提供してもよく、それらについての定量値を提供することができる。しかもNMRは、典型的には、試料の前処理又は調製をほとんど必要としない。NMRで測定されるバイオマーカーは、Soininenら、2015、Circulation:Cardiovascular Genetics 8、212-206(DOI:10.1161/CIRCGENETICS.114.000216)、Soininenら、2009、Analyst 134、1781-1785、及びWuertzら、2017、American Journal of Epidemiology 186(9)、1084-1096(DOI:10.1093/aje/kwx016)によって以前に公開された血液(血清又は血漿)NMRメタボロミクスについてのアッセイを使用して、大量の試料について効果的に測定することができる。これは、上記の科学論文に詳細に記載されているように、試料あたり250個のバイオマーカーに関するデータを提供する。
【0064】
一実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーの(初期)定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される。
【0065】
しかしながら、本明細書に記載される様々なバイオマーカーの定量値は、NMR以外の技術によっても実施されてもよい。例えば、バイオマーカーに応じて、質量分析(MS)、酵素的方法、抗体ベースの検出方法、又は他の生化学的若しくは化学的方法が企図されてもよい。
【0066】
例えば、糖タンパク質アセチルは、(例えば、Ritchieら、2015、Cell Syst. 28;1(4):293-301に記載されているように)α-1-酸糖タンパク質、ハプトグロビン、α-1-アンチトリプシン、及びトランスフェリンの免疫比濁測定によって測定又は近似することができる。
【0067】
例えば、一価不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸及びオメガ-6脂肪酸は、(例えば、Julaら、2005、Arterioscler Thromb Vasc Biol 25、2152-2159に記載されているように)ガスクロマトグラフィーを用いて血清総脂肪酸組成によって定量することができる(すなわち、それらの定量値が決定されてもよい)。
【0068】
本明細書の文脈では、用語「試料」又は「生体試料」は、対象又は対象の群若しくは集団から得られる任意の生体試料を指してもよい。試料は、新鮮なもの、凍結したもの、又は乾燥したものであってもよい。
【0069】
生体試料は、例えば、血液試料、血漿試料、血清試料、又はそれに由来する試料若しくは画分を含んでもよく、又はそれらであってもよい。この生体試料は、例えば、空腹時血液試料、空腹時血漿試料、空腹時血清試料、又はそれから得ることができる画分であってもよい。しかしながら、生体試料は、必ずしも空腹時試料である必要はない。血液試料は静脈血試料であってもよい。
【0070】
血液試料は、乾燥血液試料であってもよい。この乾燥血液試料は、乾燥全血試料、乾燥血漿試料、乾燥血清試料、又はそれらに由来する乾燥試料であってもよい。
【0071】
当該方法は、少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を決定する前に、対象から生体試料を得ることを含んでもよい。対象又は患者の血液試料又は組織試料を採取することは、通常の臨床診療の一部である。集められた血液又は組織試料を調製することができ、血清又は血漿を当業者に周知の技術を用いて分離することができる。血液試料又は組織試料等の生体試料から1つ以上の画分を分離する方法も、当業者に利用可能である。用語「画分」は、本明細書の文脈では、1つ以上の物理的特性、例えば、溶解度、親水性若しくは疎水性、密度、又は分子サイズに従って分離された生体試料の一部分又は成分をも指してもよい。
【0072】
本明細書の文脈では、用語「対照試料」は、対象から得られ、上記疾患若しくは状態に罹患していないか、又は上記疾患若しくは状態を有するか若しくは発症するリスクがないことが既知である試料を指してもよい。一実施形態では、対照試料は、前立腺癌若しくは乳癌の既知の陽性診断がないそれぞれ男性若しくは女性、又は男性若しくは女性の一般化集団等の対象由来の生体試料であってもよい。言い換えれば、対照試料は、前立腺癌又は乳癌と(以前に)診断されたことがないそれぞれ男性若しくは女性又は男性若しくは女性の一般化集団からの生体試料であってもよい。あるいは、一実施形態では、対照集団は、乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性の試料であってもよい。それは、死亡リスクを予測するために、これらの癌を発症し、かつ/又はこれらの癌が原因で死亡した試料と比較されてもよい。対照試料は、マッチしたものであってもよい。用語「対照値」は、対照試料から得ることができる値及び/又はそれから導出可能な定量値として理解されてもよい。一実施形態では、対照値は、前立腺癌又は乳癌の既知の陽性診断がない、それぞれ、1人以上の男性若しくは女性又は男性若しくは女性の一般化集団から導出可能な値であってもよい。例えば、上回るか又は下回ると上記癌が原因で死亡するリスクが上昇するという閾値を、対照試料及び/又は対照値から計算することが可能であってもよい。言い換えれば、(バイオマーカー、リスクスコア、ハザード比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクに応じて)上記閾値より高い又は低い値は、対象がその癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。リスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクは、単独で、又は他のリスク因子及び指標、例えば、マンモグラフィ及び前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査からの情報並びに/若しくは家族歴からの情報と組み合わせて使用されてもよい。
【0073】
対照試料又は対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカー若しくは複数のバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、対象が上記癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。対象が上記癌が原因で死亡するリスクが高いことを増加が示すか又は減少が示すかは、バイオマーカーに依存してもよい。
【0074】
対照試料又は対照値と比較した場合の少なくとも1つのバイオマーカーの(又は複数のバイオマーカーの個々のバイオマーカーにおける)定量値の1.2倍、1.5倍、若しくは例えば2倍、若しくは3倍の増加又は減少が、対象が上記癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0075】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0076】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のドコサヘキサエン酸及び/又は総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比の定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0077】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のリノール酸及び/又は総脂肪酸に対するリノール酸の比の定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0078】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の一価不飽和脂肪酸及び/若しくはオレイン酸並びに/又は総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/若しくはオレイン酸の比の定量値の増加は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0079】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のオメガ-3脂肪酸及び/又は総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比の定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0080】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のオメガ-6脂肪酸及び/又は総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比の定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0081】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の飽和脂肪酸及び/又は総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比の定量値の増加は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0082】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合の脂肪酸不飽和度の定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0083】
一実施形態では、対照試料又は対照値と比較した場合のヒスチジンの定量値の減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0084】
一実施形態では、β0+β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(脂肪酸指標)として定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に帰属される加重係数であり、β2は脂肪酸指標に帰属される加重係数であるリスクスコアが、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクリスクが高いことを示してもよい。上記脂肪酸指標は、以下の脂肪酸指標のうちの1つであってもよい:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度。
【0085】
一実施形態では、β0+β1
*濃度(糖タンパク質アセチル)+β2
*濃度(ヒスチジン)+β3
*濃度(脂肪酸指標)として定義され、β0は切片項であり、β1は糖タンパク質アセチルの濃度に帰属される加重係数であり、β2はヒスチジンの濃度に帰属される加重係数であり、β3は脂肪酸指標の濃度に帰属される加重係数であるリスクスコアが、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。上記脂肪酸指標は、以下の脂肪酸指標のうちの1つであってもよい:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、不飽和脂肪酸度。
【0086】
用語「組み合わせ」は、少なくともいくつかの実施形態では、当該方法が、バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用することを含むように理解されてもよい。例えば、糖タンパク質アセチル及び脂肪酸指標の両方の定量値が決定される場合、両方のバイオマーカーの定量値は、対照試料若しくは対照値と別々に比較されてもよいし、又は両方のバイオマーカーの定量値に基づいてリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクが計算され、このリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/若しくは予測される絶対リスク若しくは相対リスクが対照試料若しくは対照値と比較されてもよい。
【0087】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加、並びに総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸及び/若しくはリノール酸及び/若しくはオメガ-3脂肪酸及び/若しくはオメガ-6脂肪酸の比並びに/若しくは脂肪酸不飽和度の定量値の減少、並びに/又は総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸の比の定量値の増加は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい.
【0088】
一実施形態では、当該方法は、対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・ヒスチジン、
・以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含んでもよく、
対照試料又は対照値と比較した場合の上記バイオマーカー及び/又はそれらの組み合わせの定量値の増加又は減少は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す。対照試料又は対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加、ヒスチジンの定量値の減少、並びに総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸及び/若しくはリノール酸及び/若しくはオメガ-3脂肪酸及び/若しくはオメガ-6脂肪酸の比並びに/若しくは脂肪酸不飽和度の定量値の減少、並びに/又は総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸の比の定量値の増加、並びに/又は、対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示してもよい。
【0089】
以下の実施形態が開示される。
【0090】
1. 対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法であって、
この方法は、上記対象から得られた生体試料において、その生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
・総脂肪酸に対するリノール酸の比、
・総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
・総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
・脂肪酸不飽和度、
・ヒスチジン
の定量値を決定する工程と、
上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す、方法。
【0091】
2. 上記方法は、生体試料において、複数のバイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多いバイオマーカーの定量値を決定することを含む実施形態1に記載の方法。
【0092】
3. 上記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか、又は糖タンパク質アセチルである実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0093】
4. 上記方法は、上記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
実施形態1から実施形態3のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
5. 上記方法は、上記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
・糖タンパク質アセチル、
・ヒスチジン、
・以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
上記バイオマーカーの定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
上記対照試料又は上記対照値と比較した場合の上記バイオマーカーの定量値の増加又は減少は、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
実施形態1から実施形態4のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
6. 上記乳癌は、乳房の悪性新生物<腫瘍>(C50)を含むか若しくは乳房の悪性新生物<腫瘍>(C50)であり、かつ/又は上記前立腺癌は、前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)を含むか若しくは前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)である実施形態1から実施形態5のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
7. 上記少なくとも1つのバイオマーカーの定量値は、核磁気共鳴分光法を使用して測定される実施形態1から実施形態6のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
8. 上記方法は、上記少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の上記バイオマーカーの定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、上記対象が乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む実施形態1から実施形態7のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
9. 上記対照試料又は対照値は、乳癌若しくは前立腺癌の既知の診断がないそれぞれ女性若しくは男性、又は乳癌若しくは前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性若しくは男性を表す実施形態1から実施形態8のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
10. 上記対象は、乳癌又は前立腺癌の既知の診断のない女性又は男性である実施形態1から実施形態9のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
11. 上記対象は、一般集団スクリーニング設定、例えばマンモグラフィ又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査における女性又は男性である実施形態1から実施形態10のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
12. 上記対象は、乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性である実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0102】
これより様々な実施形態を詳細に参照する。それらの実施形態の例は添付の図面に示されている。以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができる程度に詳細にいくつかの実施形態を開示する。工程又は特徴の多くは本明細書に基づいて当業者に明白となるので、実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に論じられるわけではない。
【0103】
図において使用される略語
DHA%:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比
LA%:総脂肪酸に対するリノール酸の比
MUFA%:総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸の比
オメガ-3%:総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比
オメガ-6%:総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比
SFA%:総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比
不飽和:脂肪酸不飽和度
CI:信頼区間
SD:標準偏差
BMI:肥満度指数
【0104】
実施例1
NMR分光法によって定量したバイオマーカー指標を、それらが乳癌又は前立腺癌が原因で死亡することを予測することができるか否かに関して調べた。すべての分析は、UK Biobank(UKバイオバンク)に基づいて、NMR分光法からの血液バイオマーカーデータを利用可能である約115,000人の研究参加者を用いて行った。
【0105】
研究集団
UK Biobankの設計の詳細は、Sudlowら、2015、PLoS Med. 2015;12(3):e1001779によって報告されている。簡単に述べると、UK Biobankは、英国全体にわたる22ヶ所の評価センターで37~73歳の502,639人の参加者を募集した。すべての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを提供し、倫理的承認は、North West Multi-Center Research Ethics Committee(ノースウェストマルチセンター研究倫理委員会)から得られた。血液試料は、2007年から2010年の間にベースラインで採取した。選択基準はこのサンプリングに適用しなかった。
【0106】
バイオマーカープロファイリング
UK Biobank集団全体から、118,466人の個体からのベースライン血漿試料のランダムなサブセットを、Nightingale(ナイチンゲール)NMRバイオマーカープラットフォーム(Nightingale Health Ltd(ナイチンゲール・ヘルス)、フィンランド)を使用して測定した。この血液分析方法は、リポタンパク質脂質、循環脂肪酸、並びにアミノ酸、ケトン体及び糖新生関連代謝産物を含む種々の低分子量代謝産物を含む多くの血液バイオマーカーのモル濃度単位での同時定量を提供する。技術的詳細及び疫学的応用が概説されている(Soininenら、2015、Circ Cardiovasc Genet;2015;8:192-206;Wuertzら、2017、Am J Epidemiol 2017;186:1084-1096)。中央値から4四分位間の範囲外の値を外れ値とみなし、除外した。
【0107】
乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクとバイオマーカーとの関連の疫学的分析
乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクとの血液バイオマーカーの関連付けを、UK Biobankデータに基づいて行った。個々のバイオマーカーが、乳癌又は前立腺癌が原因で死亡するリスクに関連するか否かを判定するために、分析は、血液試料を収集した後の乳癌又は前立腺癌が原因の死亡率に対するバイオマーカーの関係に焦点を当てた。バイオマーカーの加重和の形態の複数バイオマーカースコアを使用する例も、様々な予測設定におけるそれらの有効性を実証するために、検討した。
【0108】
すべての試験参加者の疾患及び死亡の事象に関する情報は、UK Hospital Episode Statistics(英国病院エピソード統計)データ及び死亡登録から記録した。分析は、一般集団スクリーニング設定(例えば、それぞれマンモグラフィ又はPSAスクリーニング検査による)におけるように、前立腺癌又は乳癌の既知の陽性診断のない女性及び男性、並びに、癌の予後を予測するために、血液サンプリング時に乳癌又は前立腺癌と既に診断されたそれぞれ女性又は男性における死亡リスクを分析することによって、2つのアプローチを用いて行った。本研究で分析した乳癌及び前立腺癌は、ICD-10診断コードC50(乳房の悪性新生物<腫瘍>)及びC61(前立腺の悪性新生物<腫瘍>)に従って定義した。登録に基づく追跡調査は、2007~2010年の血液サンプリングから2020年までであった(およそ1100000人・年)。
【0109】
バイオマーカー関連性検定のために、年齢及びUK Biobank評価センターについて調整したコックス(Cox)比例ハザード回帰モデルを使用した。結果を各バイオマーカー指標の標準偏差当たりの大きさでプロットして、関連性の大きさの直接比較を可能にした。
【0110】
結果の概要
バイオマーカー分析のための研究集団のベースライン特性を表1に示す。
【0111】
【0112】
図1は、バイオマーカー濃度を研究集団の標準偏差にスケーリングした絶対濃度で分析した場合の、一般集団スクリーニング設定(例えばマンモグラフィ検査による)における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と乳癌死亡率(死亡記録におけるICD-10診断コードC50)との関係を示す。これらの結果は、UK Biobankからの63859人の女性の統計分析に基づき、そのうち311人が、約10年間の追跡調査の間に、乳癌が原因で死亡した。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルにおいて年齢及びUK Biobank評価センターについて調整した。フォレストプロットでは、統計的に有意な結果を塗りつぶし点として表示し(多重検定補正に対応するP<0.001)、有意でない結果を塗りつぶしのない点として表示する。これらの結果は、上記9種の個々のバイオマーカーが、一般集団設定における乳癌が原因で死亡するリスクを予測することを実証する。
【0113】
図2は、バイオマーカー濃度を研究集団の標準偏差にスケーリングした絶対濃度で分析した場合の、一般集団スクリーニング設定(例えば前立腺特異抗原(PSA)検査による)における、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と前立腺癌死亡率(死亡記録におけるICD-10診断コードC61)との関係を示す。これらの結果は、UK Biobankからの54042人の男性の統計分析に基づき、そのうち256人が、約10年間の追跡調査の間に、前立腺癌が原因で死亡した。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルにおいて年齢及びUK Biobank評価センターについて調整した。フォレストプロットでは、統計的に有意な結果を塗りつぶし点として表示し(多重検定補正に対応するP<0.001)、有意でない結果を塗りつぶしのない点として表示する。これらの結果は、上記9種の個々のバイオマーカーが、一般集団設定における前立腺癌が原因で死亡するリスクを予測することを実証する。
【0114】
図3は、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、この場合は血液サンプリング時に優勢な乳癌診断(病院記録におけるICD-10診断コードC50)がある女性における乳癌(死亡記録におけるICD-10診断コードC50)が原因の死亡率として分析する乳癌生存率との関係を示す。バイオマーカー濃度は、研究集団の標準偏差にスケーリングした絶対濃度で分析する。これらの結果は、血液サンプリング時に優勢な乳癌を有していたUK Biobankからの1526人の女性の統計分析に基づき、そのうち130人が、約10年間の追跡調査の間に、乳癌が原因で死亡した。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルにおいて年齢及びUK Biobank評価センターについて調整した。フォレストプロットでは、統計的に有意な結果を塗りつぶし点として表示し(多重検定補正に対応するP<0.001)、有意でない結果を塗りつぶしのない点として表示する。これらの結果は、上記9種の個々のバイオマーカーが、乳癌の既存の形態を有する女性において乳癌生存率を予測することを実証する。
【0115】
図4は、9種の血液バイオマーカーのベースライン濃度と、この場合は血液サンプリング時に優勢な前立腺癌診断(病院記録におけるICD-10診断コードC61)がある男性における前立腺癌(死亡記録におけるICD-10診断コードC61)が原因の死亡率として分析する前立腺癌生存率との関係を示す。バイオマーカー濃度は、研究集団の標準偏差にスケーリングした絶対濃度で分析する。これらの結果は、血液サンプリング時に優勢な前立腺癌を有していたUK Biobankからの584人の男性の統計分析に基づき、そのうち55人が、約10年間の追跡調査の間に、前立腺癌が原因で死亡した。分析は、コックス比例ハザード回帰モデルにおいて年齢及びUK Biobank評価センターについて調整した。フォレストプロットでは、統計的に有意な結果を塗りつぶし点として表示し(多重検定補正に対応するP<0.001)、有意でない結果を塗りつぶしのない点として表示する。これらの結果は、上記9種の個々のバイオマーカーが、前立腺癌の既存の形態を有する男性において前立腺癌生存率を予測することを実証する。
【0116】
意図される使用の説明:乳癌又は前立腺癌が原因の死亡のリスク予測についてのバイオマーカースコア
乳癌又は前立腺癌が原因の死亡の予測に関連する意図される応用を例示するために、さらなる疫学的分析を以下に説明する。結果は、
図1~4において取り上げた9種のバイオマーカーを組み合わせたバイオマーカースコアについて示す。わずかに弱いが類似の結果は、2つ又は3つの個々のバイオマーカーのみの組み合わせで得られる。
【0117】
図5aは、9種のバイオマーカーの加重和からなるバイオマーカーリスクスコアのレベルの増加に伴う、一般集団スクリーニング設定(例えば、マンモグラフィ検査との併用)における乳癌死亡(ICD-10診断コードC50)のリスクの増加を示す。リスク増加は、複数バイオマーカースコアの選択した分位点(分位数)についての乳癌が原因の累積死亡率を示すカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)プロットの形態でプロットしている。
【0118】
図5bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、乳癌死亡リスクに関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。第1のパネルは、リスク予測が、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対して効果的に機能することを実証する。第2のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、ハザード比が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0119】
図6aは、9種のバイオマーカーの加重和からなるバイオマーカーリスクスコアのレベルの増加に伴う、一般集団スクリーニング設定(例えば、前立腺特異抗原(PSA)検査との併用)における前立腺癌死亡(ICD-10診断コードC61)のリスクの増加を示す。リスク増加は、複数バイオマーカースコアの選択した分位点についての前立腺癌が原因の累積死亡率を示すカプラン・マイヤープロットの形態でプロットしている。
【0120】
図6bは、研究参加者の関連するリスク因子特徴を考慮するときの、前立腺癌死亡リスクに関する同じ複数バイオマーカースコアのハザード比を示す。第1のパネルは、リスク予測が、血液サンプリング時に異なる年齢の人々に対して効果的に機能することを実証する。第2のパネルは、ハザード比の大きさが、統計モデリングにおいて肥満度指数及び喫煙状態を考慮するときにわずかにしか減衰されないことを示す。最後のパネルは、ハザード比が、短期リスク予測に対して実質的により強いことを示す。
【0121】
当業者には、技術の進歩とともに、基本的なアイデアが様々な方法で実行されてもよいことが明らかである。従って、実施形態は上記の例に限定されない。代わりに、実施形態は請求項の範囲内で様々であってよい。
【0122】
上述の実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。実施形態のうちのいくつかは、さらなる実施形態を形成するようにともに組み合わされてもよい。本明細書に開示される方法は、本明細書の上記の実施形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。上記の利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよいし、又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利益及び利点のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されない。「ある」項目への言及は、1つ以上のこれらの項目を指すことがさらに理解されるであろう。用語「comprising(含む)」は、本明細書において、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、その語句に続く特徴又は行為を含むこと(including)を意味するために使用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定する方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、前記生体試料中の以下の少なくとも1つのバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
ヒスチジン
の定量値を決定する工程と、
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較する工程と
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示し、
前記少なくとも1つのバイオマーカーは、糖タンパク質アセチルを含むか又は糖タンパク質アセチルであ
り、前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の糖タンパク質アセチルの定量値の増加は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示し、糖タンパク質アセチルは、循環糖化タンパク質の存在量を表す核磁気共鳴分光法シグナルを指す、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記生体試料において、複数のバイオマーカー、例えば2つ、3つ、4つ、5つ又はこれよりも多いバイオマーカーの定量値を決定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
ヒスチジン、
以下のうちの少なくとも1つの脂肪酸指標:総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、総脂肪酸に対するリノール酸の比、総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、脂肪酸不飽和度
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記前立腺癌は、前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)を含むか又は前立腺の悪性新生物<腫瘍>(C61)である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記定量値は核磁気共鳴分光法を使用して測定される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、少なくとも1つのバイオマーカー又は複数の前記バイオマーカーの前記定量値に基づいて計算されたリスクスコア、ハザード比、オッズ比、及び/又は予測される絶対リスク若しくは相対リスクを使用して、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクがあるか否かを判定することをさらに含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスクスコア、ハザード比、オッズ比、並びに/又は予測される相対リスク及び/若しくは絶対リスクは、前記対象の特徴等の少なくとも1つのさらなる指標に基づいて計算される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の前記特徴は、年齢、身長、体重、肥満度指数、人種若しくは民族、喫煙、癌の家族歴、及び/又は前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングからの情報のうちの1つ以上を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対照試料又は対照値は、前立腺癌の既知の診断がない男性、又は前立腺癌と既に診断された男性を表す請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、前立腺癌の既知の診断がない男性である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象は、一般集団スクリーニング設定、例えば前立腺特異抗原(PSA)スクリーニング検査における男性である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、前立腺癌と既に診断された男性である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、前記対象から得られた生体試料において、以下のバイオマーカー
糖タンパク質アセチル、
総脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の比、
総脂肪酸に対するリノール酸の比、
総脂肪酸に対する一価不飽和脂肪酸及び/又はオレイン酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-3脂肪酸の比、
総脂肪酸に対するオメガ-6脂肪酸の比、
総脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比、
脂肪酸不飽和度、
ヒスチジン
の定量値を決定することと、
前記バイオマーカーの前記定量値を対照試料又は対照値と比較することと
を含み、
前記対照試料又は前記対照値と比較した場合の前記バイオマーカーの前記定量値の増加又は減少は、前記対象が前立腺癌が原因で死亡するリスクが高いことを示す
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】