(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】非終端抗体創製方法及び単一細胞アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240227BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240227BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/543 501A
G01N33/53 M
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547076
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022015279
(87)【国際公開番号】W WO2022170071
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクファデン,カリン・イー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ブライアン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ムロースキー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウィンターズ,アーロン・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】サントス,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA13
(57)【要約】
本明細書においては、(a)非ヒト動物を免疫原で免疫することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の生成のために血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることを含む、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターする方法が提供される。選択抗体の産生のために非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法もまた提供される。例示的な実施形態では、方法は、上記のように(a)~(c)のサイクルを実施し、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合にサイクルを繰り返すことを含む。様々な態様において、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上になるまで、サイクルを繰り返す。単一細胞アッセイが、本明細書においてさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターする方法であって、
a.非ヒト動物を免疫原により免疫化するステップと、
b.前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得るステップと、
c.選択抗体の産生について、前記血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイするステップと
を含む方法。
【請求項2】
選択抗体の生成のために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法であって、
a.免疫原により非ヒト動物に初回免疫化を実施するステップと、
b.前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得るステップと、
c.選択抗体の産生について、前記血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイするステップと、
d.選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、ステップのサイクルを実施するステップと
を含み、前記サイクルは、
i.選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原により前記非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、
ii.前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、
iii.選択抗体の産生について、前記血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることと
を含む方法。
【請求項3】
前記アッセイするステップは、単一細胞生細胞アッセイを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数のASCが同時にアッセイされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記血液試料又はその画分をマトリックスに適用し、前記マトリックスの固有のアドレスを各ASCに割り当てることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイするステップの結果は、選択抗体を産生する各ASCの特定である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結果は、選択抗体を産生する各ASCの固有のアドレスの特定を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サイクルは、少なくとも1回行われる、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サイクルは、(iii)のアッセイで、選択抗体を産生するASCの数が閾値以上になるまで繰り返される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サイクルは、少なくとも2回繰り返される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
その後の免疫化の免疫原は、初回の免疫の免疫原とは異なる、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各その後の免疫化は、(A)異なる免疫原、アジュバント、及び/若しくは免疫調節剤が非ヒト動物に投与される、(B)異なる用量の免疫原が非ヒト動物に投与される、(C)免疫原、アジュバント、免疫調節剤の各投与間の時間が異なる、並びに/又は(D)免疫原、アジュバント、免疫調節剤の各投与の経路が異なるという点で、それ以前の免疫化とは異なる、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非ヒト動物が免疫化される都度、異なる免疫原が使用される、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
非ヒト動物において選択抗体を生成する方法であって、
a.免疫原により非ヒト動物に初回免疫化を実施するステップと、
b.前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得るステップと、
c.選択抗体の産生について、前記血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイするステップと、
d.選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、ステップのサイクルを実施するステップと、ここで、前記サイクルは、
i.選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原により前記非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、
ii.前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、
iii.選択抗体の産生について、前記血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることと
を含む、
e.前記選択抗体及び/又は前記選択抗体を産生するASCを単離するステップと
を含む方法。
【請求項15】
ASCによって産生される前記選択抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びASCによって産生される前記選択抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を決定するステップと、
前記選択抗体の前記重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む第1のベクター、及び前記選択抗体の前記軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む第2のベクターを宿主細胞に導入するステップと、
前記宿主細胞によって産生される抗体を単離するステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アッセイするステップは、
a.前記マトリックス内の前記ASCを、(i)前記選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬、(ii)前記選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)前記選択抗体が結合する標識標的と組み合わせるステップと、ここで、前記標識標的は、前記第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む、
b.前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識についてアッセイするステップと、
c.前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識の両方が検出される前記マトリックス内の位置を特定するステップと、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉剤は、固体支持体に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出剤は、第1の検出可能な標識に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記捕捉剤の抗体Fcドメインに結合する前記抗体は、前記検出剤の同じ抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組み合わせるステップはウェル中で行われ、前記捕捉剤は前記ウェル中で単層を形成し、任意選択により、前記ASCは前記捕捉試薬、検出試薬及び/又は標識標的に前記ウェル中で最初に曝露されるか、又は前記ウェルに添加される直前に曝露される、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識の両方が検出される前記ウェル内の位置を特定するステップを含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組み合わせるステップは、マイクロ流体チャンバー若しくはナノ流体チャンバー、マイクロウェルデバイス若しくはナノウェルデバイス、マイクロ毛細管若しくはナノ毛細管、又はナノ流体チップのナノペン内で行われる、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組み合わせるステップは、ナノ流体チップのナノペン内で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識の両方が検出される前記ナノ流体チップ内の各ペンの位置を特定するステップを含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血液試料の単一ASCは、optoelectro positioning(OEP)によって前記ナノ流体チップのペン内に移動される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記選択抗体は、前記非ヒト動物を免疫化するために使用される前記免疫原と同じか又は類似している標的に結合する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記選択抗体は、1つ以上の競合結合剤の存在下で前記標的に結合する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記競合結合剤は、前記アッセイ中に、前記ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記選択抗体は、標的親和性をもって標的に結合し、任意選択により、前記標的に対する前記選択抗体のK
Dは約10
-11M~約10
-9Mである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記アッセイするステップは、第1ラウンドにおいては、第1の量の前記標識標的で実施され、第2ラウンドにおいては、第2の量の前記標識標的で実施され、ここで、前記第1の量は前記第2の量よりも多く、任意選択により、前記アッセイするステップはさらに、第3ラウンドにおいて、第3の量の前記標識標的で実施され、前記第3の量は前記第2の量未満であり、各ラウンドにおいて前記ASCが前記標識標的に結合すると、前記ASCは選択抗体を産生する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記選択抗体は標的及びそのオルソログ又はパラログに結合し、任意選択により、前記標的はヒトタンパク質であり、前記オルソログはカニクイザルタンパク質である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
第2の標識標的が、前記ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ、ここで、前記第2の標識標的は、前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合されたオルソログを含み、
前記方法は、前記第3の検出可能な標識についてアッセイするステップと、前記第1の検出可能な標識、前記第2の検出可能な標識、及び前記第3の検出可能な標識が検出される位置を特定するステップとをさらに含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記選択抗体は標的に結合し、そのオルソログ又はパラログには結合しない、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
第2の標識標的が、前記ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ、ここで、前記第2の標識標的は、前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合されたオルソログを含み、
前記方法は、前記第3の検出可能な標識についてアッセイするステップと、前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識のみが検出され、前記第3の検出可能な標識は検出されない位置を特定するステップとをさらに含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記選択抗体は、前記標的の一部に結合する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
第2の標識標的が、前記ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ、ここで、前記第2の標識標的は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合された前記標的の一部を含み、
前記方法は、前記第3の検出可能な標識についてアッセイするステップと、前記第1の検出可能な標識、前記第2の検出可能な標識、及び前記第3の検出可能な標識が検出される位置を特定するステップとをさらに含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記標的は、複数のドメインを含むタンパク質であり、前記選択抗体は、前記標的の1つのドメインのみに結合し、前記標識標的は、前記第2の検出可能な標識に結合した前記標的の細胞外ドメインを含み、前記第2の標識標的は、第3の検出可能な標識に結合した1つのドメインを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記選択抗体は、前記標的の二量体化又は多量体化の際に形成される立体構造エピトープに結合し、前記標的は、二量体化ドメイン又は多量体化ドメインを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記標識標的は、前記第2の検出可能な標識に結合した前記免疫原の細胞外ドメインを含み、前記第2の標識標的は、前記ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ、前記第2の標識標的は、前記第1の検出可能な標識及び前記第2の検出可能な標識とは異なる前記第3の検出可能な標識に結合した前記免疫原の前記二量体化ドメイン又は多量体化ドメインを含み、
前記方法は、前記第3の検出可能な標識についてアッセイするステップと、前記第1の検出可能な標識、前記第2の検出可能な標識、及び前記第3の検出可能な標識が検出される位置を特定するステップとをさらに含み、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記血液試料は、前記免疫化ステップの約3日~約7日後に前記非ヒト動物から得られる、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記非ヒト動物から得られる前記血液試料は、約500μL以下である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記血液試料は、約100μL~約250μLである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ASCは、CD138+B細胞である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記ASCは、遊走形質芽球を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
アッセイの前に、前記非ヒト動物から得られた前記血液試料の1つ以上の成分を除去するステップをさらに含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
赤血球、血漿、及び/又は血小板が、前記血液試料から除去される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記血液試料の前記画分は、CD138
+細胞を選択することによって調製される、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記非ヒト動物は、1つ以上の二次リンパ器官の除去にも安楽死にも供されることはない、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記血液試料からのASCは、ハイブリドーマの作製に使用されない、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記非ヒト動物は、一連の非ヒト動物の1つであり、前記アッセイの結果は、選択抗体を産生するASCの数が閾値未満であり、且つ/又はさらに免疫化を必要とする非ヒト動物の特定である、請求項2~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法のステップが一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに前記血液試料のB細胞レパトアをプロファイリングするステップと、標的B細胞プロファイルを有する一連のサブセットを選択するステップとを含む、請求項2~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合に、前記非ヒト動物を致死させ、前記非ヒト動物から組織を採取するステップを含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記非ヒト動物から脾臓を採取することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記脾臓のB細胞をスクリーニングするステップ、及び/又は前記脾臓の細胞からハイブリドーマを生成するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
選択抗体を産生する抗体分泌細胞(ASC)について一連の非ヒト動物をスクリーニングする方法であって、
請求項1~54のいずれか一項に記載の方法に従って一連の非ヒト動物中の非ヒト動物抗体において選択抗体の産生をモニターするステップ
を含み、
前記一連の各非ヒト動物について、前記選択抗体を産生するASCの数を特定する方法。
【請求項56】
動物について、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、その後の免疫化を行うステップを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
動物について、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、前記動物から二次リンパ器官を採取するステップをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
その後の免疫化のために免疫された非ヒト動物を選択する方法であって、
請求項1~57のいずれか一項に記載の方法に従って非ヒト動物において選択抗体の産生をモニターするステップと、ここで、各非ヒト動物について、前記選択抗体を産生するASCの数が特定される、
動物について、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、前記動物をその後の免疫のために選択するステップと
を含む方法。
【請求項59】
致死及び二次リンパ採取のために非ヒト動物を選択する方法であって、
請求項1~58のいずれか一項に記載の方法に従って非ヒト動物において選択抗体の産生をモニターするステップと、ここで、各非ヒト動物について、前記選択抗体を産生するASCの数が特定される、
動物について、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、前記動物を致死及び二次リンパ採取のために選択するステップと
を含む方法。
【請求項60】
選択抗体を産生するASCをアッセイする方法であって、
a.ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分、ここで、前記血液試料は抗体分泌細胞(ASC)を含む、(ii)前記選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)前記選択抗体が結合する標的を組み合わせるステップと
ここで、
(A)前記標的は、前記第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む標識標的であり、前記選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬が、前記ウェル内でさらに組み合わされて、前記ウェル内で単層を形成する、又は
(B)前記標的は、前記細胞の表面で発現され、前記細胞がウェル内で組み合わされて、前記ウェル内で単層を形成する、
b.前記第1の検出可能な標識についてアッセイし、任意選択により、前記標的が標識標的である場合、前記第2の検出可能な標識についてアッセイするステップと、
c.前記第1の検出可能な標識が検出される前記ウェル内の位置、又は前記第1及び第2の検出可能な標識が検出される前記ウェル内の位置を特定するステップと、ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す、
を含む方法。
【請求項61】
前記ASCは前記検出試薬及び/又は標的に前記ウェル中で最初に曝露されるか、又は前記ウェルに添加される直前に曝露される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記選択抗体は、前記非ヒト動物を免疫化するために使用される前記免疫原と同じか又は類似している標的に結合する、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記検出試薬は、固体支持体に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含み、且つ/又は前記検出試薬は、第1の検出可能な標識に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記捕捉剤の抗体Fcドメインに結合する前記抗体は、前記検出剤の同じ抗体である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記血液試料は、前記免疫化ステップの約3日~約7日後に前記非ヒト動物から得られる、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記非ヒト動物から得られる前記血液試料は、約500μL以下であり、任意選択により、約100μL~約250μLである、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ASCは、CD138
+B細胞である、請求項60~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記ASCは、遊走形質芽球を含む、請求項60~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ウェル内での組み合わせの前に、前記非ヒト動物から得られた前記血液試料の1つ以上の成分を除去するステップをさらに含む、請求項60~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
赤血球、血漿、及び/又は血小板が、前記血液試料から除去される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記血液試料の前記画分は、CD138
+細胞を選択することによって調製される、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
前記選択抗体は、1つ以上の競合結合剤の存在下で前記標的に結合する、請求項60~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記競合結合剤は、前記アッセイ中に、前記ASC、検出試薬、及び前記標的を発現する細胞と組み合わされる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記選択抗体は、標的親和性をもって標的に結合し、任意選択により、前記標的に対する前記選択抗体のKDは約10
-11M~約10
-9Mである、請求項60~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記アッセイは、第1ラウンドにおいては、第1の量の前記標的を発現する前記細胞で実施され、第2ラウンドにおいては、第2の量の前記標的発現する前記細胞で実施され、ここで、前記第1の量は前記第2の量よりも多く、任意選択により、前記アッセイはさらに、第3ラウンドにおいて、第3の量の前記標的を発現する前記細胞で実施され、前記第3の量は前記第2の量未満であり、各ラウンドにおいて前記ASCが前記標識標的に結合すると、前記ASCは選択抗体を産生する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記選択抗体は標的及びそのオルソログ又はパラログに結合し、任意選択により、前記標的はヒトタンパク質であり、前記オルソログはカニクイザルタンパク質である、請求項60~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞は、前記標的、及びそのオルソログ又はパラログを発現する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記選択抗体は標的に結合し、そのオルソログ又はパラログには結合しない、請求項60~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記選択抗体は、前記標的の一部に結合する、請求項60~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記標的は、複数のドメインを含むタンパク質であり、前記選択抗体は、前記標的の1つのドメインのみに結合し、前記標識標的は、前記第2の検出可能な標識に結合した前記標的の細胞外ドメインを含み、前記第2の標識標的は、第3の検出可能な標識に結合した1つのドメインを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記選択抗体は、前記標的の二量体化又は多量体化の際に形成される立体構造エピトープに結合し、前記標的は、二量体化ドメイン又は多量体化ドメインを含む、請求項60~80のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年2月5日に出願された米国仮特許出願第63/146,135号の優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来の動物に基づく抗体創製方法には、様々な複雑さを有するタンパク質標的に対するポリクローナル血清力価に基づいて動物を致死させることが含まれる。抗体創製キャンペーンのなかには単純な設計目標(例えば、標的への結合)を有するものもあるが、ほとんどはより複雑であり、所望の抗体に様々な特徴(例えば、交差反応性、特定のエピトープへの結合、特異的親和性を有する結合など)を求める。従来の抗体創製のアプローチは、B細胞の採取及び抗体生成用の動物を選択するためにポリクローナル分泌抗体(血清)反応を調べることに依存している。「血清力価」によるアプローチは、分泌された全ての抗体(すなわち、それはポリクローナル混合物である)の総反応性を測定し、検出された抗体のB細胞供給源を特定するために使用することができない(すなわち、ソースB細胞からの物理的に切り離されたもの及び一時的に切り離されたものの両方が存在する)ので、理想的とは言えない。表現型(抗体力価測定)と遺伝子型(抗体をコードする重要なB細胞供給源)との間に直接的な関連性がないことは、B細胞応答の質の解釈を困難にする。可溶性の抗原特異的抗体が血清中に存在するかどうかを決定すること以外に、このポリクローナル分析から動物選択に役立つことができるさらなる有用な情報を得ることは困難である。
【0003】
さらに、従来の方法論は動物に関しては最終的なものであり、したがって、動物の関連するB細胞レパトアを捕捉する「1回限りの」試みである。技術的な問題、抗体産生が最適ではない動物の選択、及び/又はレパトアのサンプリング深度の欠如(すなわち、非常に少ないB細胞レパトア(0.1%未満)の融合をもたらす従来のウイルス不死化及びハイブリドーマプロセスの効率の低さ)によって引き起こされ得る、このレパトアを捕捉することができないことは、貴重な資源の浪費をもたらし、代替の免疫動物又は完全に新しい免疫化キャンペーンの使用を強いる。さらに、従来の方法は、同じ動物の免疫系を利用して抗体反応を進化させる連続プロセスの可能性を排除する。
【0004】
こうした制限にもかかわらず、従来の方法は、免疫レパトアの許容可能な画分の捕捉を可能にし、下流のアッセイに適合するように容易にスケーリングすることができる抗体の再生可能な供給源を提供するため、部分的に広く使用されている。
【0005】
これらの従来の方法では、時間がかかりすぎてプロジェクトのスケジュールに対応できない、間違ったB細胞集団を捕捉する、B細胞レパトアを十分にサンプリングすることができない、又は進化するB細胞応答のリアルタイムのモニタリングができないという状況が増えている。加えて、多くの抗体標的クラス(例えば、複合膜タンパク質、最小エピトープ空間を有する標的、オルソログに非常に類似するタンパク質など)の困難な性質が、強固な免疫原性の欠如のために、動物におけるB細胞応答を惹起することを困難にし得る。一部の抗体設計目標の極端な複雑さと相まって、所望の免疫プロファイル(すなわち、B細胞レパトア)を有する免疫動物を作製することは困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮すると、より効率的な抗体創製方法が必要とされている。例えば、従来の動物免疫化をより良好に位置づけることができる抗体創製方法、及び抗体創製が成功するためのB細胞法は、動物に基づく抗体創製を大きく増強させるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
抗体創製に有用な技術を実証する理論的根拠、実験方法、及びデータが初めて提供される。例示的な態様では、方法は、生きている非ヒト動物の末梢血から直接抗原特異的抗体を特定することを含む。有利には、そのような本明細書で提供される方法により、動物安楽死後に免疫臓器を採取する(例えば、脾臓、リンパ節、及び骨髄)従来の方法とは異なり、動物を致死させる必要がない抗体創製が可能になる。このような方法は非終端である(例えば、抗体産生動物の安楽死を伴わない)ため、方法は、例えば、目的の抗体が得られるまで、同じ動物で何回も繰り返すことができる。同じ動物で方法を繰り返すことが可能であることは、従来の方法に比べていくつかの利点がある。例えば、同じ動物で方法を繰り返すことにより、抗体創製プロセス全体に要するコストが低減される。また、本開示の方法では、動物は生存しているので、抗体レパトアのリアルタイム、インライフのサンプリングが可能であり、例えば、動物が目的の標的抗体を発現するB細胞を産生しない場合、(前の免疫で)観察されたB細胞応答に基づいて、(その後の免疫化に使用する)免疫化プロトコルに対して戦略的調整を行うことができる。それによって、本発明の方法では、合理的なレパトア形成及び/又は抗体設計目標に適合する意図を持った免疫応答のステアリングが可能になる。本開示の例示的なプロセスを
図1B~1Eに示す。
図1Bは、免疫化した動物の血液試料から得た単一細胞をスクリーニングすることを含む、免疫応答をモニターするための例示的な非終端方法を示す。単一細胞スクリーニングの結果に基づいて、動物は免疫化の反復ラウンド(例えば、別の免疫化)に供し、続いて、免疫化した動物から得られた血液試料からの細胞を単一細胞スクリーニングに供するか、又は、動物が所望の表現型を示すことがスクリーニングによって決定された場合、組織を採取し得る。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする例示的な非終端方法を示し、この方法では、免疫化動物から得られた血液試料から精製された抗体分泌細胞(ASC)を単一細胞レベルでスクリーニングする。設計目標を達成し、且つ/又は選択抗体が産生されるまで、プロセスを繰り返す。
図1Dは、選択抗体を産生するための抗体産生を誘導する例示的な非終端方法を示し、この方法では、一次戦略を用いて動物を免疫化し、免疫化された動物から単離されたPBMCから得られたASCを所望の表現型についてスクリーニングする。スクリーニングで設計目標が達成されていないと決定された場合、動物を(例えば、一次戦略とは異なる)別の戦略で免疫化し、この免疫化された動物から単離したPBMCから得られたASCを所望の表現型についてスクリーニングする。設計目標が達成されたとスクリーニングで決定されるまで、このプロセスを繰り返す。設計目標が達成された場合、ハイブリドーマ、単一細胞プラットフォーム、又は配列ベースの創製を使用して、抗体レスキューのために最終の組織を採取することができる。
図1Eは、動物をスクリーニングし、B細胞プロファイリングする例示的な非終端方法を示し、この方法では、一連の動物を免疫原で免疫化し、各動物から得られた血液試料から得られたASCをスクリーニングし、B細胞レパトアをプロファイリングする。例示的なプロセスの様々な態様では、抗体分泌細胞(ASC)、例えば、形質芽球を、免疫化したマウスの末梢血から精製し、次いで、関連する活性又は表現型について単一細胞解像度でスクリーニングする。典型的には約8週間を必要とし、高度の技術的熟練を必要とする従来のハイブリドーマ作製プロセス(
図1Aに示す)と比較して、本開示のプロセスは、労働集約度が低く、要する時間は少ない。
【0008】
したがって、本開示は、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターする方法を提供する。例示的な実施形態において、方法は、(a)非ヒト動物を免疫原で免疫化することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることとを含む。様々な例において、本方法は、設計目標が達成されるまで、例えば、選択抗体が産生されるまで、(b)及び(c)を1回以上繰り返すことをさらに含む。
図1Cは、本開示のこの例示的な態様を示す。本開示はまた、選択抗体の生成のために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、(a)免疫原で非ヒト動物に初回免疫化を実施することと、(b)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることと、(d)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合にステップのサイクルを実施することとを含み、サイクルは(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることとを含む。
【0009】
様々な態様において、アッセイすることは、単一細胞生細胞アッセイを含む。本明細書で使用される場合、「ASCを個々にアッセイする」という語句は、ASCを単一細胞レベル又は単一細胞解像度でアッセイ又は分析することを意味する。例示的な例において、「ASCを個々にアッセイする」ことにより、単一のASCに関連する結果が得られる。任意選択により、複数のASCが同時にアッセイされる。様々な態様において、複数のASCが同時に個々にアッセイされる。例示的な態様では、血液試料は非ヒト動物から非終端方法で得られ、例えば、非ヒト動物は血液試料採取中に殺されることはない。例示的な例では、本方法は、非ヒト動物からの非終端採血を実施することを含む。様々な例では、本方法は、血液試料又はその画分をマトリックスに適用し、マトリックスの固有のアドレスを各ASCに割り当てることを含む。アッセイの結果は、任意選択により、選択抗体を産生する各ASCの特定である。特定の態様では、アッセイの結果は、選択抗体を産生する各ASCの固有のアドレスの特定である。例示的な例では、本方法は、(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることとの少なくとも1サイクルを含む。任意選択により、サイクルは、(iii)のアッセイで、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上になるまで繰り返される。様々な例において、サイクルは少なくとも2回繰り返される。
【0010】
その後の免疫化の免疫原は、例示的な態様において、初回免疫化の免疫原とは異なり得る。例えば、例示的な態様では、各その後の免疫化は、(A)異なる免疫原、アジュバント、及び/若しくは免疫調節剤が非ヒト動物に投与される、(B)異なる用量の免疫原が非ヒト動物に投与される、(C)免疫原、アジュバント、免疫調節剤の各投与間の時間が異なる、並びに/又は(D)免疫原、アジュバント、免疫調節剤の各投与の経路が異なるという点で、それ以前の免疫化とは異なる。任意選択により、非ヒト動物が免疫化される都度、異なる免疫原が使用される。
図1Dは、選択抗体の産生のために抗体産生を誘導する例示的な方法を示す。
【0011】
本開示はさらに、非ヒト動物において選択抗体を生成する方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、抗体産生を誘導する本開示の方法に従って選択抗体の産生のために非ヒト動物において抗体産生を誘導し、次いで、選択抗体及び/又は選択抗体を産生するASCを単離することを含む。例示的な実施形態において、本方法は、(a)免疫原で非ヒト動物に初回免疫化キャンペーンを実施することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることと、(d)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合にステップのサイクルを実施すること(ここで、サイクルは(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする、例えば個々にアッセイすることとを含む)と、(e)選択抗体及び/又は選択抗体を産生するASCを単離することとを含む。様々な態様において、本方法は、(f)ASC(例えば、選択抗体を産生する単離されたASC)によって産生される選択抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びASCによって産生される選択抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を決定することと、(g)選択抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む第1のベクター、及び選択抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む第2のベクターを宿主細胞に導入することと、(h)宿主細胞によって産生される抗体を単離することとを含む。
【0012】
例示的な態様において、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、選択抗体に結合し、選択抗体に結合すると検出可能なシグナル、例えば蛍光シグナルを生じる試薬と組み合わせることを含む。様々な態様において、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、選択抗体のFcドメインに結合する少なくとも1つの試薬、及び選択抗体が結合する少なくとも1つの試薬(例えば、選択抗体の抗原結合ドメインに結合する試薬)と組み合わせることを含み、これらの試薬の少なくとも1つは、検出可能な標識に結合している。例示的な例において、ASCは、選択抗体のFcドメインに結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び選択抗体が結合する標的(例えば、選択抗体の抗原結合ドメインに結合する試薬)と組み合わされる。
図2A~2Cは、本開示の方法の文脈における例示的なアッセイを示す。様々な例において、標的は、第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識によって標識されている。いくつかの例では、選択抗体のFcドメインに結合し、固体支持体を含む捕捉試薬が、ASC、検出試薬及び標識標的とさらに組み合わされる。様々な例において、本方法は、(b)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識についてアッセイすること;並びに(c)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識が検出されるマトリックス内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)をさらに含む。
図2A及び
図2Bは、このような標識標的及び捕捉試薬を用いた例示的なアッセイを示している。
図2Aは、マトリックスをウェルとして示す。
図2Bは、マトリックスをマルチペンチップ又はマルチウェルプレートとして示し、各ASCは、単一のペン又はウェル内に配置される。様々な例において、標的は細胞によって発現され、標的を発現する細胞がASC及び検出試薬と組み合わされる。例示的な態様において、本方法は、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすること、及び(c)第1の検出可能な標識が検出されるマトリックス内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)をさらに含む。
図2Cは、このような標的を発現する細胞を用いた例示的なアッセイを示している。例示的な例において、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、(i)選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬、(ii)選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標識標的(ここで、標識標的は、第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む)と組み合わせることと、(b)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるマトリックス内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。任意選択により、捕捉剤は、固体支持体に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む。検出剤は、例示的な例において、第1の検出可能な標識に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む。様々な態様において、捕捉剤の抗体Fcドメインに結合する抗体は、検出剤と同じ抗体である。例示的な例において、組み合わせることはウェル中で行われ、捕捉剤はウェル中で単層を形成する。様々な態様において、本方法は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)を含む。
【0013】
本開示はさらに、選択抗体を産生するASCを特定するための単一細胞アッセイを提供する。本開示は、選択抗体を産生するASCについてアッセイする方法を提供する。例示的な実施形態において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分(ここで、血液試料はASCを含む)、(ii)選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標的を組み合わせること(ここで、(A)標的は、第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む標識標的であり、選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬が、ウェル内でさらに組み合わされて、ウェル内で単層を形成するか、又は(B)標的は細胞の表面で発現され、細胞がウェル内で組み合わされて、ウェル内で単層を形成する)と、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイし、任意選択により、標的が標識標的である場合、第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識が検出されるか、又は第1及び第2の検出可能な標識が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。様々な態様において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分、(ii)固体支持体に結合した抗体のFcに結合する、抗体を含む捕捉試薬、(iii)第1の検出可能な標識に結合した抗体のFcに結合する、抗体を含む検出試薬、及び(iv)第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識に結合した、免疫原又はその一部を含む標識標的とを組み合わせること(ここで、捕捉剤は、ウェル内で単層を形成する)と、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(d)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。様々な態様において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分、(ii)選択抗体に結合する検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標的を細胞表面で発現する細胞であって、ウェル内で組み合わされてウェル内に単層を形成する細胞を組み合わせることと、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。
【0014】
本開示の方法の様々な態様において、非ヒト動物は、1つ以上の二次リンパ器官の除去も安楽死も受けない。また、様々な例において、血液試料からのASCは、ハイブリドーマの作製には使用されない。例示的な態様において、非ヒト動物は、一連の非ヒト動物の1つであり、アッセイの結果は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満であり、且つ/又はさらなる免疫化を必要とする非ヒト動物の特定である。別の態様では、方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、非ヒト動物を致死させ、非ヒト動物から組織を採取することを含む。様々な例において、本方法のステップは、一連の非ヒト動物に対して実施され、方法は、一連の非ヒト動物ごとに血液試料のB細胞レパトアをプロファイリングすることと、標的B細胞プロファイルを有する一連のサブセットを選択することとを含む。
図1Eは、このようなステップを示す。
【0015】
合理的な免疫レパトアの生成及び選択は、動物に基づく抗体創製技術における重要な構成要素である。従来のB細胞不死化から、NanOBLAST(ナノ流体Beacon(登録商標)機器による抗体創製プロセス)及びマイクロカプセル化など(これらに限定されない)の直接的なB細胞プラットフォームへの進歩にもかかわらず、入力B細胞の多様性及び品質は、引き続き抗体設計目標を達成する上で必須の決定因子である。免疫動物を評価するための従来のアプローチは、免疫応答を評価し、B細胞の採取及び抗体生成用の動物を選択するためにポリクローナル分泌抗体(血清)調べることに依存している。「血清力価」によるアプローチは、分泌された全ての抗体の総反応性を測定し、検出された抗体の個々のB細胞供給源の質を測定しないので、理想的とは言えない。抗体力価測定と重要なB細胞供給源との間に直接的な関連性がないことは、B細胞応答の質の解釈を困難にする。可溶性の抗原特異的抗体が血清中に存在するかどうかを決定すること以外に、このポリクローナル分析から動物選択又は免疫ステアリング戦略に役立つさらなる有用な情報を得ることは困難である。これらの課題に対処する、非終端末梢血に由来する試料を使用して、免疫動物のB細胞応答を調べるためのASCアッセイが、本明細書において提供される。したがって、本開示は、選択抗体を産生する抗体分泌細胞(ASC)について非ヒト動物をスクリーニングする方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、(a)一連の非ヒト動物を免疫原で免疫化することと、(b)一連の各非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとを含み、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの割合が決定される。様々な態様において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、その非ヒト動物を致死及び/又は組織採取のために選択することをさらに含む。様々な態様において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、その非ヒト動物をその後の免疫化のために選択することをさらに含む。したがって、様々な実施形態において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合に基づいて、致死対象の動物とその後の免疫化対象の動物とを識別する。
【0016】
上記と一致して、その後の免疫化のために、免疫化された非ヒト動物を選択する方法が提供される。例示的な実施形態では、本方法は、本開示の方法のいずれか1つに従って、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターすることを含み、この方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの数が特定され、動物に対する選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、その動物をその後の免疫化のために選択する。また、安楽死及び二次リンパ系採取のために、免疫化された非ヒト動物を選択する方法が本明細書において提供される。例示的な実施形態では、本方法は、本開示の方法のいずれか1つに従って、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターすることを含み、この方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの数が特定され、動物に対する選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、その動物を安楽死及び二次リンパ系採取のために選択する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、従来のトランスジェニックマウスハイブリドーマ作製方法を説明する図である。
図1Bは、免疫応答をモニターするための非終端方法を説明する図である。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする非終端方法を説明する図である。
図1Dは、選択抗体産生のために抗体産生を誘導する非終端方法を説明する図である。
図1Eは、動物のスクリーニング及びB細胞プロファイリングの非終端方法を説明する図である。
【
図1B】
図1Aは、従来のトランスジェニックマウスハイブリドーマ作製方法を説明する図である。
図1Bは、免疫応答をモニターするための非終端方法を説明する図である。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする非終端方法を説明する図である。
図1Dは、選択抗体産生のために抗体産生を誘導する非終端方法を説明する図である。
図1Eは、動物のスクリーニング及びB細胞プロファイリングの非終端方法を説明する図である。
【
図1C】
図1Aは、従来のトランスジェニックマウスハイブリドーマ作製方法を説明する図である。
図1Bは、免疫応答をモニターするための非終端方法を説明する図である。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする非終端方法を説明する図である。
図1Dは、選択抗体産生のために抗体産生を誘導する非終端方法を説明する図である。
図1Eは、動物のスクリーニング及びB細胞プロファイリングの非終端方法を説明する図である。
【
図1D】
図1Aは、従来のトランスジェニックマウスハイブリドーマ作製方法を説明する図である。
図1Bは、免疫応答をモニターするための非終端方法を説明する図である。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする非終端方法を説明する図である。
図1Dは、選択抗体産生のために抗体産生を誘導する非終端方法を説明する図である。
図1Eは、動物のスクリーニング及びB細胞プロファイリングの非終端方法を説明する図である。
【
図1E】
図1Aは、従来のトランスジェニックマウスハイブリドーマ作製方法を説明する図である。
図1Bは、免疫応答をモニターするための非終端方法を説明する図である。
図1Cは、選択抗体の産生をモニターする非終端方法を説明する図である。
図1Dは、選択抗体産生のために抗体産生を誘導する非終端方法を説明する図である。
図1Eは、動物のスクリーニング及びB細胞プロファイリングの非終端方法を説明する図である。
【
図2A】
図2Aは、選択抗体を産生するASCを特定するための例示的な単一細胞アッセイの適用を説明する図である。
図2Bは、選択抗体を産生するASCを特定するための別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
図2Cは、選択抗体を産生するASCを特定するためのさらに別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
【
図2B】
図2Aは、選択抗体を産生するASCを特定するための例示的な単一細胞アッセイの適用を説明する図である。
図2Bは、選択抗体を産生するASCを特定するための別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
図2Cは、選択抗体を産生するASCを特定するためのさらに別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
【
図2C】
図2Aは、選択抗体を産生するASCを特定するための例示的な単一細胞アッセイの適用を説明する図である。
図2Bは、選択抗体を産生するASCを特定するための別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
図2Cは、選択抗体を産生するASCを特定するためのさらに別の例示的な単一細胞アッセイを説明する図である。
【
図3】
図3は、抗イディオトープ抗体に結合する抗体の説明図である。パラトープ、イディオタイプ、イディオトープを示す。
【
図4】
図4は、抗体1で免疫化された示されたマウスから得られた血清のポリクローナル力価のグラフである。
【
図5A】
図5Aは、例示的な単一細胞スクリーニングの構成要素を説明する図であり、
図5Bは、抗原に結合する抗体の存在下で、単一細胞アッセイの構成要素がどのように相互作用するかを説明する図である。
図5Cは、蛍光「ブルーム」を作り出すためにポリスチレンビーズと相互作用するASC分泌抗体を保持する個々のペンを説明する図である。IgG分泌及び抗原特異的抗体は、アッセイによって検出される。
【
図5B】
図5Aは、例示的な単一細胞スクリーニングの構成要素を説明する図であり、
図5Bは、抗原に結合する抗体の存在下で、単一細胞アッセイの構成要素がどのように相互作用するかを説明する図である。
図5Cは、蛍光「ブルーム」を作り出すためにポリスチレンビーズと相互作用するASC分泌抗体を保持する個々のペンを説明する図である。IgG分泌及び抗原特異的抗体は、アッセイによって検出される。
【
図5C】
図5Aは、例示的な単一細胞スクリーニングの構成要素を説明する図であり、
図5Bは、抗原に結合する抗体の存在下で、単一細胞アッセイの構成要素がどのように相互作用するかを説明する図である。
図5Cは、蛍光「ブルーム」を作り出すためにポリスチレンビーズと相互作用するASC分泌抗体を保持する個々のペンを説明する図である。IgG分泌及び抗原特異的抗体は、アッセイによって検出される。
【
図6】
図6は、単一細胞を保持する個々のペン上の二重ブルーム、ウェルへの細胞のエクスポート、並びに抗体クローニング、発現、精製及び分析のためのPCR分析を説明する図である。
【
図7A-C】
図7Aは、適切な抗体対を選択するために使用されるサンドイッチELISAフォーマットを説明する図である。
図7Bは、抗体1の濃度の関数としてプロットしたELISAシグナルのグラフである。
図7Cは、抗体濃度の関数としてプロットしたPD1機能のグラフである。
【
図8A-D】
図8Aは、抗体を分泌するASCが単一のウェルに位置する緑色蛍光スポットの画像である。
図8Bは、ASCによって分泌される抗原特異的抗体が単一のウェルに位置する赤色蛍光スポットの画像である。
図8Cは、ASC分泌抗体が単一ウェルに位置する着色スポット、ASCによって分泌される抗原特異的抗体が単一ウェルに位置するスポット、及び抗原特異的抗体を分泌するASCが単一ウェルに位置するスポットの画像である。
図8Dは、293T細胞によって発現された抗原が、B細胞によって産生され、Alexa 488で標識されたヤギ抗ヒトFc抗体で標識された抗体に結合する、複数の蛍光スポットを有する標識されたトランスフェクト細胞の例示的な画像である。
【
図9】
図9は、示されたハイブリドーマクローン(又は無関係なクローン)の単一細胞の一連の画像であり、緑色チャネル(上)のRFUは抗体分泌を表し、又は赤色チャネル(下)のRFUは抗原(EGFR)結合を表す。
【
図10】
図10は、ハイブリドーマのKDの関数としてプロットしたRFU緑色/RFU赤色比のグラフである。
【
図11】
図11は、全てのマウスに用いられる免疫化プロトコルの概略図である。採血と抗原の移動のタイミングが示されている。
【
図12】
図12は、第1群及び第2群のマウスの最初の採血の血清力価のグラフである。グラフは、ヒト抗原力価対カニクイザル抗原力価をプロットする。
【
図13】
図13は、ヒト抗原結合を示す赤色チャネル(左)、カニクイザル抗原結合を示す緑色チャネル(中央)、及びヒト抗原及びカニクイザル抗原の結合を示す複合チャネル(右)上のRFUを有する単一細胞の一連の画像である。採血1から得られた血清のデータ。
【
図14】
図14は、ヒト抗原のみ、カニクイザル抗原のみ、又はヒト抗原及びカニクイザル抗原の両方に反応する第1群(黒丸)及び第2群(白丸)のマウスの抗原陽性ASCのパーセントのグラフである。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られた採血1からの細胞のデータ。
【
図15】
図15は、ヒト抗原のみ、カニクイザル抗原のみ、又はヒト抗原及びカニクイザル抗原の両方に反応する第1群(黒丸)及び第2群(白丸)の抗原陽性ASCのパーセントのグラフである。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られた採血2からの細胞のデータ。
【
図16】
図16は、ヒト抗原のみ、カニクイザル抗原のみ、又はヒト抗原及びカニクイザル抗原の両方に反応する第1A群(ヒトブースト)及び第1B群(カニクイザルブースト)の抗原陽性ASCのパーセントのグラフである。採血2からの細胞のデータを黒丸で示し、採血3からの細胞のデータを白丸で示す。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られたデータ。
【
図17】
図17は、第1A群(ヒトブースト)及び第1B群(カニクイザルブースト)の(採血1に対する)交差反応性ASC頻度の変化のグラフである。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られたデータ。
【
図18】
図18は、ヒト抗原に対する反応性の血清力価の関数としてプロットされたカニクイザル抗原に対する反応性の血清力価のグラフである。交差反応性ASCのパーセントを記す。採取のために選択する目的動物を赤色で囲む。
【
図19】
図19は、マルチドメインタンパク質(抗原)のヒトサブドメインオルソログ及びカニクイザルサブドメインオルソログの両方に結合するヒト/カニクイザル交差反応性抗体の産生に向けた免疫ステアリングを伴う免疫化キャンペーンの概略図である。
【
図20】
図20は、ヒト抗原に対する反応性の血清力価の関数としてプロットされたカニクイザル抗原に対する反応性の血清力価のグラフである。採血1からの血清。
【
図21】
図21は、ヒトのみの結合剤、カニクイザルのみの結合剤、及びヒト/カニクイザル交差反応性結合剤について、t=0時間(下)及びt=23時間(上)での緑色及び赤色のチャネル上のRFUでの単一細胞の一連の画像である。単一細胞Incucyteスクリーニングを用いて採血1から得られた血清のデータ。
【
図22】
図22は、ヒト抗原のみ、カニクイザル抗原のみ、又はヒト抗原及びカニクイザル抗原の両方に反応する抗原陽性ASCのパーセントのグラフである。採血1からの細胞のデータを示す。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られたデータ。
【
図23】
図23は、採血1及び採血3からの血清における(関係のないクローンに対する)交差反応性ASC頻度の変化のグラフである。
【
図24】
図24は、採血1及び採血3における、カニクイザル抗原のみ(黒丸)又はカニクイザル抗原及びヒト抗原の両方(白抜きの四角形)に反応する抗体を分泌するASCのパーセントのグラフである。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られたデータ。
【
図25】
図25は、ヒト-カニクイザル交差反応性結合剤のパーセントのグラフである。採取のために選択する目的動物を四角で示す。単一細胞Incucyteスクリーニングによって得られたデータ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
B細胞機能並びに抗体産生の非終端モニタリング及びステアリング
二次リンパ器官(例えば、脾臓及びリンパ節)の胚中心(GC)において抗原に最近遭遇した抗原特異的B細胞は、刺激されて分裂し、複数の経路で分化するようになる。例えば、Klein and Dalla-Favera,Nature Reviews Immunol 8:22-33(2008)を参照されたい。抗原のチャレンジに応答して血清中に抗体を分泌する主なB細胞系統はプラズマ細胞である。プラズマ細胞の分化は二次リンパ器官で始まり、そこでGC内の細胞-細胞相互作用が、抗原に特異的な抗体を表面に発現するB細胞を、形質芽球として知られる未成熟プラズマ細胞に分化させる。形質芽球は、可溶性抗体を産生し分泌する急速に分裂するB細胞である。しかしながら、形質芽球は本質的に一過性であり、生存し、増殖し続けるために、かなりの栄養サポートを必要とする。形質芽球の主な生存ニッチは二次リンパ器官であるが、これらのキューは暫定的であり、同族抗原の存在に依存する。
【0019】
B細胞は、抗原に対する長期の体液性記憶を維持するために次の2つの主要な戦略を使用する:IgG+記憶B細胞の形成及び長寿命の成熟プラズマ細胞の形成。記憶B細胞は、B細胞受容体(BCR)として知られる、それらの同族抗体の細胞表面結合型を発現するが、可溶性抗体を分泌しない。これらの細胞は体内の様々な場所に存在し、二次リンパ器官内に豊富に存在する。抗原と再遭遇すると、記憶B細胞は増殖し(すなわち、それら自身のクローンを生成し)、抗体分泌プラズマ細胞に分化するように誘導され得る。長期記憶への他の経路は、長寿命の成熟プラズマ細胞の形成を介する。成熟プラズマ細胞は、栄養サポートを提供し、炎症組織内、腸管に関連する特殊構造(腸管関連リンパ組織-GALT)内、及び骨髄内に見出すことができる非常に特殊な生存ニッチを必要とする。例えば、Fairfax et al.,Semin Immunol 20(1):49-58(2008)を参照されたい。ニッチ間質細胞によって作り出される局所環境は、最終分化プラズマ細胞の寿命を維持するために必要なシグナルを提供する。
【0020】
B細胞が長期的に間質ニッチに定住するには、血液によってこれらの目的地に移動しなければならない。実際、GCにおける抗原への曝露、形質芽球への分化、及び続く二次リンパ器官内の増殖の後、遊走形質芽球の波が循環血液中に検出され得る。マウスにおいて、血液中の形質芽球のこのうねりは抗原曝露の3~7日後に起こり、適切なニッチに定住し、長命のプラズマ細胞に分化するにつれて、時間とともに減少する。
【0021】
最近の抗原により刺激された形質芽細胞及びプラズマ細胞(抗体分泌細胞、(ASC))を、それらが血液中を移動する際に捕捉し、目的の抗体、例えば、選択抗体を産生するそれらの細胞を特定することを含む方法が、本明細書において提供される。本開示の方法は血液試料を利用するものであり、血液の細胞環境は、特にB細胞系統の観点から、二次リンパ器官のものよりも実質的に複雑ではないので、本開示の方法は、有利にはより複雑ではない。本開示の方法は、このASC集団へのアクセスの困難性に対処するものであり、これは、それらの全体的な存在量が相対的に低いために歴史的に困難なものであった。
【0022】
したがって、本開示は、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターする方法を提供する。例示的な実施形態において、方法は、(a)非ヒト動物を免疫原で免疫化することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする(任意選択により、個々にアッセイする)こととを含む。本開示はまた、選択抗体の生成のために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、(a)免疫原で非ヒト動物に初回免疫化キャンペーンを実施することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCをアッセイする(任意選択により。個々にアッセイする)ことと、(d)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合にステップのサイクルを実施すること(ここで、サイクルは(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとを含む)とを含む。例示的な態様では、閾値は、約1%~約10%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%である。例示的な態様では、閾値は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%である。別の態様では、閾値は、50%超、例えば55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上である。
【0023】
このような方法の例示的な態様では、非ヒト動物は、安楽死も1つ以上の二次リンパ器官の除去も受けないか、又は目的の抗体、例えば選択抗体を産生する十分な数のASCを有すると動物がみなされた後にのみ、二次リンパ器官のために安楽死され、採取される。例示的な態様では、方法は、一連の非ヒト動物を用いて実施される。様々な例において、アッセイの結果は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満であり、且つ/又はさらなる免疫化を必要とする一連の非ヒト動物の特定である。このような非ヒト動物は、その後、例えば、選択抗体の産生を増加させるために、ステップのサイクル((d)、上記)に供され得る。
【0024】
別の例では、アッセイの結果は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である一連の非ヒト動物の特定である。このような非ヒト動物は、その後、殺され、このような非ヒト動物から組織が採取され得る。別の態様では、アッセイされたASCの総数に対する選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、方法は、非ヒト動物を殺し、非ヒト動物から組織を採取することを含む。
【0025】
したがって、選択抗体の産生をモニターし、誘導又はステアリングする本開示の方法は、不必要に殺される動物(例えば、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満の動物)の数が少なく、最終的に選択抗体を産生する免疫化動物の割合がより高くなるので、非常に効率的である。また、様々な例において、そのような本開示の方法はハイブリドーマを作製することを含まず、したがって、有利には消費する時間及び材料がより少なくてすむ。
【0026】
免疫化
本開示の様々な態様において、方法は、非ヒト動物を免疫原で免疫化することを含む。本明細書で使用される場合、「免疫化」という用語は、前記免疫原に対する免疫応答を開始させるために「免疫化キャンペーン」又は「免疫化プロトコル」又は「キャンペーン」を実施乃至実行することを指す。例示的な態様では、免疫応答は、前記免疫原に対するB細胞免疫応答及び/又は体液性免疫応答を含む。例示的な態様では、非ヒト動物において開始される免疫応答には、抗体分泌細胞(ASC)、例えば、抗体分泌プラズマ細胞、形質芽球、プラズマ細胞(例えば、高レベルの可溶性抗体を産生し分泌する急速に分裂するB細胞)の産生が含まれる。様々な例において、免疫応答には、血液中を移動し二次リンパ器官に至る移動性ASC(例えば、プラズマ細胞、形質芽球)が含まれる。様々な態様において、二次リンパ器官は、(例えば、膝窩、鼠径、腸間膜、及び上腕の)リンパ節、脾臓、パイアー斑、又は粘膜組織である。例示的な例において、ASCは、抗原曝露の約1~7日後に産生される。場合により、ASC、例えば、遊走形質芽球は抗原曝露の約3日~約7日(例えば、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日)後に血液中に見出される。いくつかの例では、ASC、例えば、遊走形質芽球は、抗原曝露の約8日後、約9日後、又は約10日後に血液中に見出される。
【0027】
非ヒト動物の免疫化に好適な技術は、当該技術分野で知られている。例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,3rd ed.,Academic Press Limited,San Diego,CA,1996を参照されたい。例えば、Barry et al.,Biotechniques.16(4):616-8,620(1994);Tang et al.,Nature.12;356(6365):152-4(1992);Bergmann-Leitner and Leitner,Methods Mol Biol 1325:289-302(2015);Aravindaram and Yang,Methods Mol Biol 542:167-178(2009);Johnston and Tang,Methods Cell Biol 43 PtA:353-365(1994);及びDileo et al.,Human Gene Ther 14(1):79-87(2003)に記載される遺伝子銃法もまた、非ヒト動物の免疫化に使用し得る。さらに、本明細書に例示されるように、免疫化は、非ヒト動物に抗原を発現する細胞を投与すること、又は抗原負荷樹状細胞、腫瘍細胞ワクチン、若しくは免疫細胞ベースのワクチンを投与することを含み得る。例えば、Sabado et al.,Cell Res 27(1):74-95(2017)、Bot et al.,“Cancer Vaccines”in Plotkin’s Vaccines,7th ed.,Editors:Plotkin et al.,Elsevier Inc.,2018、及びLee and Dy,“The Current Status of Immunotherapy in Thoraic Malignancies”in Immune Checkpoint Inhibitors in Cancer,Editors:Ito and Ernstoff,Elsevier Inc.,2019を参照されたい。様々な例において、免疫化は、マイクロニードル送達(例えば、Song et al.,Clin Vaccine Immunol 17(9):1381-1389(2010)を参照されたい)、ウイルス様粒子(VLP)(例えば、Temchura et al.,Viruses 6(8):3334-3347(2014)を参照されたい)、又は当該技術分野で知られる任意の手段によって実施され得る。例えば、Shakya et al.,Vaccine 33(33):4060-4064(2015)及びCai et al.,Vaccine 31(9):1353-1356(2013)を参照されたい。例えば、抗原へのT細胞エピトープの付加を含む、免疫化及び免疫原調製のためのさらなる戦略は、Chen and Murawsky,Front Immunol 9:460(2018)に記載されている。
【0028】
様々な態様において、方法は、非ヒト動物を免疫原で免疫することを含み、前記免疫原は非ヒト動物に1回以上(例えば、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上)投与される。様々な態様において、免疫原は、注射、例えば、腹腔内、皮下、筋肉内、皮内、又は静脈内注射によって投与される。様々な態様において、方法は、免疫原の一連の注射を投与することによって非ヒト動物を免疫することを含む。例示的な態様において、各投与、例えば、注射は、約10日~約18日間隔で、任意選択により、約12日~約16日間隔で、又は約14日間隔で、非ヒト動物に対し実施される。例示的な態様において、各投与、例えば、注射は、約10日~約18日間隔よりも頻繁に非ヒト動物に実施される。例えば、例示的な態様において、免疫原の非ヒト動物への投与間隔は、約1日~約9日間隔、任意選択により、約1日~約8日間隔、約1日~約7日間隔、約1日~約6日間隔、約1日~約5日間隔、約1日~約4日間隔、約1日~約3日間隔、約1日~約2日間隔、約2日~約9日間隔、約3日~約9日間隔、約4日~約9日間隔、約5日~約9日間隔、約6日~約9日間隔、約7日~約9日間隔、約8日~約9日間隔、約4日~約8日間隔、約5日~約8日間隔、又は約6日~約8日間隔である。非ヒト動物への免疫原の投与間隔は、様々な態様において、さらに長くてもよい。例えば、非ヒト動物への免疫原の投与間隔は、約1週~約20週以上、例えば、約1か月~約20か月であり得る。任意選択により、免疫原の非ヒト動物への投与間隔は、約1週~約19週、約1週~約18週、約1週~約17週、約1週~約16週、約1週~約15週、約1週~約14週、約1週~約13週、約1週~約12週、約1週~約11週、約1週~約10週、約1週~約9週、約1週~約8週、約1週~約7週、約1週~約6週、約1週~約5週、約1週~約4週、約1週~約3週、約1週~約2週、約2週~約20週、約3週~約20週、約4週~約20週、約5週~約20週、約6週~約20週、約7週~約20週、約8週~約20週、約9週~約20週、約10週~約20週、約11週~約20週、約12週~約20週、約13週~約20週、約14週~約20週、約15週~約20週、約16週~約20週、約17週~約20週、約18週~約20週、又は約19週~約20週である。様々な態様において、免疫原の投与間隔は、8日又は9日より長くてもよい。任意選択により、免疫原の投与間隔は、約1か月~約8か月、約1か月~約7か月、約1か月~約6か月、約1か月~約5か月、約1か月~約4か月、約1か月~約3か月、約1か月~約2か月、約2か月~約9か月、約3か月~約9か月、約4か月~約9か月、約5か月~約9か月、約6か月~約9か月、約7か月~約9か月、約8か月~約9か月、約4か月~約8か月、約5か月~約8か月、又は約6か月~約8か月である。
【0029】
様々な例において、免疫化の間、免疫原の各投与(例えば、注射)は、同じ(A)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせ、(B)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせの量若しくは用量、(C)免疫原を送達する投与経路又は方法、(D)非ヒト動物への投与部位、又は(E)これらの組み合わせで行われる。或いは、免疫化の間、免疫原の各投与(例えば、注射)は、異なる(A)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせ、(B)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせの量若しくは用量、(C)免疫原を送達する投与経路又は方法、(D)非ヒト動物への投与部位、又は(E)これらの組み合わせで行われる。任意選択により、免疫原の量は、その後の投与、例えば注射によって減少又は増加される。いくつかの態様では、1回おきの投与、例えば注射は、1回目及び3回目の注射と比較して、減少又は増加された量の免疫原を含む。例示的な免疫化は、本明細書に提供される実施例に記載される。
【0030】
非ヒト動物
有利には、本開示の方法は、任意の特定の非ヒト動物に限定されない。例示的な態様における非ヒト動物は、任意の非ヒト哺乳動物である。例示的な実施形態では、非ヒト動物は、限定されるものではないが、マウス、ラット、モルモット、スナネズミ及びハムスターなどのげっ歯目(Rodentia)の哺乳動物、及びウサギなどの兎形目(Logomorpha)の哺乳動物、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む食肉目(Carnivora)の哺乳動物、ウシ科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含む偶蹄目(Artiodactyla)の哺乳動物、又はウマ科(ウマ)を含む奇蹄目(Perssodactyla)の哺乳動物を含む哺乳動物である。いくつかの態様では、哺乳動物は、霊長目(Primates)、セボイド目(Ceboids)若しくはシモイド目(Simoids)(サル)の哺乳動物、又は類人猿目(類人猿)の哺乳動物である。様々な態様において、非ヒト動物は、ヤギ、ラマ、アルパカ、ニワトリ、アヒル、魚(例えば、サケ)、ヒツジ、又はラムである。
【0031】
例示的な例において、本開示の方法において使用される非ヒト動物は、キメラ又は完全ヒト抗体を産生するように、改変、例えば、遺伝子改変されている。このような非ヒト動物は、トランスジェニック動物と称される。トランスジェニック動物におけるヒト抗体の産生は、Bruggemann et al.,Arch Immunol Ther Exp(Warsz)63(2):101-108(2015)に記載されている。本発明においては、以下に限定はされないが、トランスジェニックニワトリ(例えば、OmniChicken(登録商標))、トランスジェニックラット(例えば、OmniRat(登録商標))、トランスジェニックラマ、及びトランスジェニックウシ(例えば、Tc Bovine(商標))を含む任意のトランスジェニック動物を使用することができる。特定の実施形態では、非ヒト動物は、XenoMouse(登録商標)、Alloy mouse、Trianni mouse、OmniMouse(登録商標)、及びHuMAb-Mouse(登録商標)などのトランスジェニックマウスである。XenoMouse(登録商標)は、完全ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスの種である。XenoMouse(登録商標)の概要は、Foltz et al.,Immunol Rev 270(1):51-64(2016)及び米国特許第5,939,598号明細書によって提供されている。例示的な態様では、非ヒト動物は、トランスジェニックラットである。様々な態様におけるトランスジェニックラットは、Unirat(登録商標)又はOmniFlic(登録商標)であり、これらはそれぞれClarke et al.,Front Immunol 9:3037(2019);doi:10.3389/fimmu.2018.03037及びHarris et al.,Front Immunol 9:889(2018):doi:10.3389/fimmu.2018.00889に記載されている。
【0032】
例示的な例において、本開示の方法は、非ヒト動物に関して非終端である。本明細書で使用される場合、非ヒト動物の文脈における「非終端」という用語は、方法が実施されている間、非ヒト動物の生命が終結しない(例えば、安楽死させられることも、他の方法で殺されることも、死に至らされることもない)ことを意味する。例示的な態様では、非ヒト動物は、1つ以上の二次リンパ器官の除去にも安楽死にも供されることはないが、本発明ではそのような器官(例えば、脾臓)を生検するなどの処置は可能である。
【0033】
免疫原
有利には、本開示の方法は、任意の特定の免疫原に限定されない。様々な態様における免疫原は、任意の抗原、任意選択により、タンパク質、又はその断片、融合体、若しくはバリアントであり得る。様々な例において、免疫原は、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、細胞外マトリックスタンパク質、腫瘍関連抗原、チェックポイント阻害剤分子、細胞表面受容体、又はそのリガンドである。例示的な免疫原を単に説明することを目的として、非ヒト動物の免疫化に使用される免疫原は、以下の抗体のいずれか1つが結合する標的又は抗原であり得る:ムロモナブ-CD3(商品名Orthoclone Okt3(登録商標)で市販の製品)、アブシキシマブ(商品名Reopro(登録商標)で市販の製品)、リツキシマブ(商品名MabThera(登録商標)、Rituxan(登録商標)で市販の製品)、バシリキシマブ(商品名Simulect(登録商標)で市販の製品)、ダクリズマブ(商品名Zenapax(登録商標)で市販の製品)、パリビズマブ(商品名Synagis(登録商標)で市販の製品)、インフリキシマブ(商品名Remicade(登録商標)で市販の製品)、トラスツズマブ(商品名Herceptin(登録商標)で市販の製品)、アレムツズマブ(商品名MabCampath(登録商標)、Campath-1H(登録商標)で市販の製品)、アダリムマブ(商品名Humira(登録商標)で市販の製品)、トシツモマブ-I131(商品名Bexxar(登録商標)で市販の製品)、エファリズマブ(商品名Raptiva(登録商標)で市販の製品)、セツキシマブ(商品名Erbitux(登録商標)で市販の製品)、イブリツモマブチウキセタン(商品名Zevalin(登録商標)で市販の製品)、オマリズマブ(商品名Xolair(登録商標)で市販の製品)、ベバシズマブ(商品名Avastin(登録商標)で市販の製品)、ナタリズマブ(商品名Tysabri(登録商標)で市販の製品)、ラニビズマブ(商品名Lucentis(登録商標)で市販の製品)、パニツムマブ(商品名Vectibix(登録商標)で市販の製品)、エクリズマブ(商品名Soliris(登録商標)で市販の製品)、セルトリズマブペゴル(商品名Cimzia(登録商標)で市販の製品)、ゴリムマブ(商品名Simponi(登録商標)で市販の製品)、カナキヌマブ(商品名Ilaris(登録商標)で市販の製品)、カツマキソマブ(商品名Removab(登録商標)で市販の製品)、ウステキヌマブ(商品名Stelara(登録商標)で市販の製品)、トシリズマブ(商品名RoActemra(登録商標)、Actemra(登録商標)で市販の製品)、オファツムマブ(商品名Arzerra(登録商標)で市販の製品)、デノスマブ(商品名Prolia(登録商標)で市販の製品)、ベリムマブ(商品名Benlysta(登録商標)で市販の製品)、ラキシバクマブ、イピリムマブ(商品名Yervoy(登録商標)で市販の製品)、及びペルツズマブ(商品名Perjeta(登録商標)で市販の製品)。例示的な実施形態では、抗体は、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、及びセルトリズマブペゴルなどの抗TNFアルファ抗体;カナキヌマブなどの抗IL1β抗体;ウステキヌマブ及びブリアキヌマブなどの抗IL12/23(p40)抗体;並びにダクリズマブなどの抗IL2R抗体のうちの1つである。
【0034】
免疫化ステップで使用するための免疫原を調製する方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Fuller et al.,Curr Protoc Mol Biol,Chapter 11,Unit 11.4,(2001);Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols,2nd ed.,Ossipow et al.(Eds.),Humana Press 2014を参照されたい。様々な例において、免疫原は、非ヒト動物への投与の前に、アジュバント又は他の溶液と混合される。当該技術分野では多くのアジュバントが知られており、例示的な例では、油、ミョウバン、アルミニウム塩、又はリポ多糖を含む。様々な態様では、アジュバントは無機物である。別の態様では、アジュバントは有機物である。様々な態様では、アジュバントは以下を含む:ミョウバン、アルミニウム塩(例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム)、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、RIBIアジュバント系(RAS)、リピドA、Sigma Adjuvant system(登録商標)、TiterMax(登録商標)Classic、TiterMax(登録商標)Gold、Montanideワクチンアジュバント(例えば、Montanide 103、Montanide ISA720、Montanide不完全Seppicアジュバント、Montanide ISA51)、AF03アジュバント、AS03アジュバント、Specol、SPT、ナノエマルション、VSA3、油又は脂質ベース溶液(例えば、スクアレン、MF59(登録商標)、QS21、サポニン、モノホスホリルリピドA(MPL))、ジコリノ酸ミコール酸トレハロース(TDM)、sTDMアジュバント、ビロソーム、及びPRRリガンド。例えば、https://www.invivogen.com/review-vaccine-adjuvantsの“Vaccine Adjuvants Review”、及びhttps://info.gbiosciences.com/blog/role-of-adjuvants-in-antibody-productionに2016年6月2日に投稿された“Role of Adjuvants in Antibody Production”,The Protein Man’s Blog:A Discussion of Protein Researchを参照されたい。様々な例において、アジュバントは、リゾレシチン、pluronicポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、及びジニトロフェノールなどの界面活性物質を含む。BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)。
【0035】
血液試料及びその画分
非ヒト動物の免疫化の後、前記免疫化された非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得る。ASCは体液性免疫応答の最終分化細胞であり、ASCはリンパ節中の活性化B細胞から分化し、血液中を一時的に循環する。例示的な態様では、血液試料は非ヒト動物から非終端方法で得られ、例えば、非ヒト動物は血液試料採取中に殺されることはない。例示的な例では、本方法は、非ヒト動物からの非終端採血を実施することを含む。例示的な態様では、血液試料は、非ヒト動物が免疫化されてから約1日~約2日後に非ヒト動物から得られる。様々な例において、血液試料は、免疫化の約3日~約7日(例えば、3、4、5、6、又は7日)後に非ヒト動物から得られる。免疫化の間に免疫原を2回以上投与される場合、血液試料は、いくつかの態様では、免疫原の最後の投与から約3日~約7日後に動物から得られる。様々な態様では、血液試料は、非ヒト動物を免疫化した約8~約12日後に非ヒト動物から得られるが、いくつかの態様では、前記血液試料中に存在するASCはより少ないと予想される。
【0036】
例示的な態様では、血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む。任意選択により、血液試料は、B細胞としても知られるBリンパ球を含む。様々な例において、血液試料は、プラズマ系統、プラズマ細胞及び/又は形質芽球、例えば、遊走形質芽球のASCを含む。様々な態様において、ASCはCD138+B細胞である。任意選択により、ASCは、遊走形質芽球を含む。
【0037】
採取できる血液試料の量は、非ヒト動物に依る。様々な例では、非ヒト動物から得られる血液試料は、1L、500mL又は100mL未満であり、任意選択により、約50mL未満、約25mL未満、約15mL若しくは10mL未満、又は約5mL未満(例えば、約4mL、3mL、2mL、1mL若しくはそれ以下)である。いくつかの例では、非ヒト動物から得られる血液試料は、約1L、500mL又は100mLであり、任意選択により、約50mL未満、約25mL未満、約15mL若しくは10mL未満、又は約5mL未満(例えば、約4mL、3mL、2mL、1mL若しくはそれ以下)である。いくつかの例では、500μL以下の血液が、非ヒト動物から得られる。非ヒト動物がマウスである実施形態では、得られる血液試料は、200μL未満、190μL未満、180μL未満、170μL未満、160μL未満、150μL未満、140μL未満、130μL未満、120μL未満、110μL未満、100μL未満、90μL未満、80μL未満、70μL未満、60μL未満、50μL未満、40μL未満、30μL未満、20μL未満、10μL未満、5μL未満、4μL未満、3μL未満、2μL未満、又は1μL未満である。非ヒト動物がマウスである他の実施形態では、得られる血液試料は、約200μL、190μL、180μL、170μL、160μL、150μL、140μL、130μL、120μL、110μL、100μL、90μL、80μL、70μL、60μL、50μL、40μL、30μL、20μL、10μL、5μL、4μL、3μL、2μL、又は1μLである。例示的な例において、非ヒト動物から得られる血液試料は、約500μL以下である。任意選択により、血液試料の容量は、約100μL~約250μLである。様々な例において、血液試料の容量は、その動物において循環する血液の総量の10%以下である。様々な態様において、血液試料の容量は、その動物において循環する血液量の10%を超えない。例示的な態様において、動物の血液の総容量の約10%以下が採取される。様々な例において、血液試料の容量は、動物内に循環する血液容量の約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、又は約5%以下である。様々な例において、血液試料は、動物の体重の10%以下である。様々な態様において、血液試料は、動物の体重の9%以下、8%以下、又は7%以下である。
【0038】
例示的な態様では、血液試料を非ヒト動物から得た後、血液試料を処理、例えば濃縮又は分画する。様々な例において、本方法は、例えば、血液検体から赤血球、血漿及び/又は血小板を枯渇させることによって、ASCについて血液検体を濃縮することを含む。特定の態様では、本方法は、抗IgM抗体を用いて、細胞表面IgMを含むB細胞を除去する枯渇ステップを含む。例示的な例において、本方法は、目的の特異的B細胞集団を特定する1つ以上の細胞表面マーカーを発現する細胞を実行する選択ステップを含む。いくつかの態様では、細胞表面マーカーは、CD138、CD19、B220、IgG、TACI、SLAM7、BCMA、CD98、SCA-1、Ly6C1/2などである。PBMC由来B細胞が所望される場合、本方法は、CD138陽性細胞を選択することを含む。例示的な態様では、本方法は、アッセイの前に、非ヒト動物から得られた血液試料の1つ以上の成分を除去することを含む。任意選択により、赤血球、血漿、及び/又は血小板が、血液試料から除去される。いくつかの態様では、血液試料の画分が、CD138+細胞を選択することによって調製される。
【0039】
単一細胞アッセイ
本開示の方法の様々な態様では、血液試料又はその画分中に存在するASCを、選択抗体の産生について個々にアッセイする。様々な例において、アッセイは、1つ以上の個々の細胞を分析する単一細胞アッセイを含む。様々な例において、アッセイは、1つ以上の生細胞を分析する生細胞アッセイを含む。例示的な態様において、免疫化した非ヒト動物から得られた血液試料中に存在する複数の細胞、例えばASCを、同時にアッセイする。例示的な態様において、約10超、約100超、約500超、約1000超、約2000超、約3000超、約4000超、約5000超、約6000超、約7000超、約8000超、約9000超、又は約10,000超のASCを、単一細胞生細胞アッセイによって同時にアッセイする。
【0040】
様々な例において、本方法は、血液試料又はその画分をマトリックスに適用し、マトリックスの固有のアドレスを各ASCに割り当てることを含む。マトリックスは2次元であってもよく(この場合、マトリックスの各一意のアドレスは水平(X)軸及び垂直(Y)軸に沿った位置で定義される)、又はマトリックスは例えば多孔質のフォーム、ゲル若しくはポリマーを含む3次元マトリックスである(この場合、マトリックスの各一意のアドレスは幅(X)軸、高さ(Y)軸、及び深さ(Z)軸に沿った位置で定義される)。様々な態様では、アッセイの結果は、各ASC産生選択抗体の特定であり、特定の態様では、結果は、各ASC産生選択抗体の一意のアドレスの特定である。
【0041】
例示的な態様では、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、選択抗体に結合し、選択抗体に結合すると検出可能なシグナル、例えば蛍光シグナルを生じる試薬と組み合わせることを含む。様々な態様において、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、選択抗体のFcドメインに結合する少なくとも1つの試薬、及び選択抗体が結合する少なくとも1つの試薬(例えば、選択抗体の抗原結合ドメインに結合する試薬)と組み合わせることを含み、これらの試薬の少なくとも1つは、検出可能な標識に結合している。例示的な例において、ASCは、選択抗体のFcドメインに結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び選択抗体が結合する標的(例えば、選択抗体の抗原結合ドメインに結合する試薬)と組み合わされる。様々な例において、標的は細胞によって発現され、標的を発現する細胞がASC及び検出試薬と組み合わされる。例示的な態様において、本方法は、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすること、及び(c)第1の検出可能な標識が検出されるマトリックス内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)をさらに含む。
【0042】
例示的な例において、本開示の方法のアッセイは、(a)マトリックス内のASCを、(i)選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬、(ii)選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標識標的(ここで、標識標的は、第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む)と組み合わせることと、(b)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるマトリックス内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。任意選択により、捕捉剤は、固体支持体に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む。固体支持体は、抗Fcドメイン抗体及び抗Fcドメイン抗体が結合する抗体を固定する、ポリマービーズ、フィルム、スライド、ウェル底部などの任意の固体支持材料であってよい。検出剤は、例示的な例において、第1の検出可能な標識に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む。様々な態様において、捕捉剤の抗体Fcドメインに結合する抗体は検出剤の同じ抗体であるが、捕捉試薬の抗Fc抗体は検出可能な標識に結合せず、検出試薬の抗体は固体支持体に結合しない。
【0043】
例示的な例において、組み合わせることはウェル中で行われ、捕捉剤はウェル中で単層を形成する。様々な態様において、本方法は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)を含む。
【0044】
例示的な例では、組み合わせは、マイクロ流体チャンバー若しくはナノ流体チャンバー、マイクロウェルデバイス若しくはナノウェルデバイス、マイクロ毛細管若しくはナノ毛細管、又はナノ流体チップのナノペン内で行われる。例示的な例では、組み合わせは、ナノ流体チップのナノペン内で行われる。例示的な例では、本方法は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるナノ流体チップ内の各ペンの位置を特定することを含む(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)。任意選択により、血液試料の単一ASCは、optoelectro positioning(OEP)によってナノ流体チップのペン内に移動される。このような技術は、Winters et al.,MAbs 11(6):1025-1035(2016)に記載されている。
【0045】
二次リンパ器官(例えば、脾臓及びリンパ節)の胚中心(GC)において抗原に最近遭遇した抗原特異的B細胞は、刺激されて分裂し、複数の経路で分化するようになる。抗原のチャレンジに応答して血清中に抗体を分泌する主なB細胞系統はプラズマ細胞である。プラズマ細胞の分化は二次リンパ器官で始まり、そこでGC内の細胞-細胞相互作用が、抗原に特異的な抗体を表面に発現するB細胞を、形質芽球として知られる未成熟プラズマ細胞に分化させる。形質芽球は、高レベルの可溶性抗体を産生し分泌する急速に分裂するB細胞である。GCにおける抗原への曝露、形質芽球への分化、及び続く増殖の後、遊走形質芽球の波が循環血液中に検出され得る。マウスにおいて、血液中の形質芽球は抗原曝露の3~7日後に起こり、適切なニッチに定住し、長命のプラズマ細胞に分化するにつれて、時間とともに減少する。最近刺激された抗原特異的形質芽球の血液中の移動は、ポリクローナル血清力価による調査よりもむしろ、動物免疫応答及び特徴を単一細胞レベルで評価するために使用することができる。例示的な実施形態では、非終端採血をマウスから採取し、洗浄して血漿及び可溶性抗体を除去し、末梢血単核細胞(PBMC)をASCについて直接アッセイする。小抗体捕捉ビーズを添加して、ASCから分泌された抗体を捕捉し、局在化させ、それによって単一細胞レベルでの特徴付けを可能にする。赤血球(RBC)混入物は蛍光プラーク形成を妨害するが、アッセイをより多い容量に希釈することによって軽減することができる。しかしながら、これにより、プレーティング容量が多くなり、アッセイスループットの低下がもたらされる。或いは、プレーティング前に、RBCを直接除去するか、又は所望の細胞を血液試料から単離することができ、したがって、プレーティング容量を減少させ、アッセイスループットを高めることができる。好適な方法としては、以下に限定されるものではないが、RBC溶解、密度勾配遠心分離(例えば、HetaSep、Ficoll(登録商標))、及び自動洗浄器具(例えば、Curiox Laminar Wash(商標))の使用の有無にかかわらず、陰性選択(例えば、抗マウスTER119 RBC枯渇)又は陽性選択(例えば、マウスCD138+単離)細胞分離キットの使用が挙げられる。目的の標的を発現する細胞を、ビーズの代わりに使用することもできる。このような技術は、マウスにおいて種反応性抗体を生成するための戦略を調べるために使用することができる。
【0046】
例示的な実施形態では、ヒト-カニクイザル交差反応性抗体は、抗原のヒト型及びカニクイザル型の交互ブーストで動物を免疫することによって産生され得る。各抗原に対する反応性は、免疫化した動物からのポリクローナル血清を用いる簡単な結合アッセイを使用して容易にモニターすることができる。しかしながら、動物は両抗原で免疫化されており、個々の抗原は共通のエピトープと固有のエピトープの両方を有するので、ポリクローナル血清には両方のタイプのエピトープに反応する抗体が含まれる。残念ながら、この分析のみからは、両抗原に対して観察された血清反応性が真に交差反応性抗体に起因するか、又はいずれかの抗原のみに特異性を有する複数の抗体に由来するかを決定することはできない。しかしながら、PBMC集団に由来するASCを用いたB細胞応答の調査は、抗体創製のためのさらなる免疫レパトア形成又は動物選択を導くことができる単一細胞からの抗体特異性を局在化しスクリーニングすることによって、この問題を克服する。免疫レパトアの形成には、(以下に限定されないが)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、抗原の用量、免疫化のタイミング、及び投与経路を異なる形態へ切り替えるなどの免疫化戦略に対する変更が含まれ得る。
【0047】
したがって、本開示はさらに、選択抗体を産生するASCを特定するための単一細胞アッセイを提供する。本開示は、選択抗体を産生するASCについてアッセイする方法を提供する。例示的な実施形態において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分(ここで、血液試料はASCを含む)、(ii)選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標的を組み合わせること(ここで、(A)標的は、第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識を含む標識標的であり、選択抗体に結合し、固体支持体を含む捕捉試薬が、ウェル内でさらに組み合わされて、ウェル内で単層を形成するか、又は(B)標的は、細胞の表面で発現され、細胞がウェル内で組み合わされて、ウェル内で単層を形成する)と、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイし、任意選択により、標的が標識標的である場合、第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識が検出されるか、又は第1及び第2の検出可能な標識が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。
【0048】
様々な態様において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分、(ii)固体支持体に結合した抗体のFcに結合する、固体を含む捕捉試薬、(iii)第1の検出可能な標識に結合した抗体のFcに結合する、抗体を含む検出試薬、及び(iv)第1の検出可能な標識とは異なる第2の検出可能な標識に結合した、免疫原又はその一部を含む標識標的とを組み合わせること(ここで、捕捉剤は、ウェル内で単層を形成する)と、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第2の検出可能な標識についてアッセイすることと、(d)第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識の両方が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。
【0049】
様々な態様において、アッセイ又は方法は、(a)ウェル内で、(i)免疫原で免疫化された非ヒト動物から得られた血液試料、又はその画分、(ii)選択抗体に結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬、及び(iii)選択抗体が結合する標的を細胞表面で発現する細胞であって、ウェル内で組み合わされてウェル内に単層を形成する細胞を組み合わせることと、(b)第1の検出可能な標識についてアッセイすることと、(c)第1の検出可能な標識が検出されるウェル内の位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とを含む。
【0050】
例示的な態様において、第1の検出可能な標識、及び/又は標識標的の第2の検出可能な標識は、発色団又はフルオロフォアを含む。任意選択により、フルオロフォアは、キサンテン誘導体(例えば、フルオレセイン、ローダミン、Oregon green、エオシン及びTexas red)、シアニン誘導体(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、及びメロシアニン)、スクアライン誘導体(例えば、Seta色素及びSquare色素)、スクアラインロタキサン誘導体(例えば、Tau色素)、ナフタレン誘導体(例えば、ダンシル誘導体及びプロダン誘導体)、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体(例えば、ピリジルオキサゾール、ニトロベンゾオキサジアゾール及びベンゾオキサジアゾール)、アントラセン誘導体(例えば、DRAQ5、DRAQ7及びCyTRAK Orangeを含むアントラキノン)、ピレン誘導体(例えば、cascade blue)、オキサジン誘導体(例えば、ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170)、アクリジン誘導体(例えば、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリールメチン誘導体(例えば、オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)、テトラピロール誘導体(例えば、ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン)、又はジピロメテン誘導体(例えば、BODIPY、aza-BODIPY)を含む。様々な例において、第1の検出可能な標識、及び/又は標識標的の第2の検出可能な標識は、CF色素(Biotium)、DRAQ若しくはCyTRAKプローブ(BioStatus)、BODIPY(Invitrogen)、EverFluor(Setareh Biotech)、Alexa Fluor(Invitrogen)、Bella Fluor(Setareh Biotech)、CyLight Fluor(Thermo Scientific、Pierce)、Atto若しくはTracy(Sigma Aldrich)、FluoProbe(Interchim)、Abberior色素(Abberior)、DY若しくはMegaStokes色素(Dyomics)、Sulfo Cy色素(Cyandye)、HiLyte Fluor(AnaSpec)、Seta、SeTau、Square色素(SETA BioMedicals)、Quasar若しくはCal Fluor色素(SETA BioMedicals)、SureLight色素(APC、RPEPerCP、フィコビオリソーム(Columbia Biosciences)、APC、APCXL、RPE、BPE(Phyco-Biotech、Greensea、Prozyme、Flogen)、又はVio色素(Miltenyi Biotec)を含む。例示的な態様では、フルオロフォアは、3-ヒドロキシイソニコチンアルデヒド、アロフィコシアニン(APC)、アミノクマリン、APC-Cy7コンジュゲート、BODIPY-FL、Cascade Blue、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy3B、Cy5、Cy5.5、Cy7、フルオレセイン、FluorX、G-Dye100、G-Dye200、G-Dye300、G-Dye400、ヒドロキシクマリン、LissamineローダミンB、ルシファーイエロー、メトキシクマリン、NBD、Pacific Blue、Pacific Orange、PE-Cy5コンジュゲート、PE-Cy7コンジュゲート、PerCP、R-フィコエリスリン(PE)、Red613、Texas Red、TRITC、TruRed、又はX-ローダミンを含む。様々な態様において、第1の検出可能な標識及び/又は第2の検出可能な標識についてアッセイすることは、第1の検出可能な標識及び/又は第2の検出可能な標識からのシグナルを検出することを含む。例示的な例では、シグナルは蛍光シグナルである。例示的な態様において、第1の検出可能な標識及び/又は第2の検出可能な標識についてアッセイすることは、第1の検出可能な標識及び/又は第2の検出可能な標識からのシグナルを定量することを含む。様々な例において、本方法は、第1の検出可能な標識及び/又は第2の検出可能な標識からのシグナルを定量し、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識からのシグナルを比として表すことによってシグナルを正規化することを含む。様々な態様において、この比は、(第1の検出可能な標識からのシグナルの相対蛍光単位(RFU))/(第2の検出可能な標識からのシグナルのRFU)、又はその逆数である。
【0051】
例示的な態様において、ASCは検出試薬及び/又は標的にウェル中で最初に曝露されるか、又はウェルに添加される直前に曝露される。様々な態様において、ASCは、検出試薬及び標的とともに、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも90分間、又は少なくとも120分間インキュベートされる。任意選択により、選択抗体は、非ヒト動物を免疫化するために使用される免疫原と同じか又は類似している標的に結合する。例示的な例において、検出試薬は、第1の検出可能な標識に結合した抗体Fcドメインに結合する抗体を含む。任意選択により、捕捉剤の抗体Fcドメインに結合する抗体は、検出剤と同じ抗体である。様々な態様において、血液試料は、免疫化ステップの約3日~約7日後に非ヒト動物から得られる。様々な例において、非ヒト動物から得られる血液試料は、約500μL以下であり、任意選択により、約100μL~約250μLである。特定の態様において、ASCはCD138+B細胞である。任意選択により、ASCは、遊走形質芽球を含む。例示的な態様では、本方法は、ウェル中での組み合わせの前に、非ヒト動物から得られた血液試料の1つ以上の成分を除去することをさらに含む。いくつかの例では、赤血球、血漿、及び/又は血小板が、血液試料から除去される。様々な態様において、血液試料の画分は、CD138+細胞を選択することによって調製される。様々な例において、選択抗体は、1つ以上の競合結合剤の存在下で標的に結合する。任意選択により、競合結合剤は、アッセイ中に、ASC、検出試薬、及び標的を発現する細胞と組み合わされる。例示的な態様では、選択抗体は、標的親和性をもって標的に結合し、任意選択により、標的に対する選択抗体のKDは約10-11M~約10-9Mである。任意選択により、アッセイは、第1ラウンドにおいては、標的を発現する第1の量の細胞で実施され、第2ラウンドにおいては、標的を発現する第2の量の細胞で実施される(ここで、第1の量は第2の量よりも多い)。いくつかの態様では、アッセイは、第3ラウンドにおいては、標的を発現する第3の量でさらに実施され、第3の量は第2の量未満であり、各ラウンドにおいてASCが標識標的に結合すると、ASCは選択抗体を産生する。
【0052】
本開示の方法のアッセイは、個々のASCによる選択抗体の産生を試験する。「選択抗体」という用語は、設計目標を満たし、且つ/又は標的表現型を示す抗体を指す。様々な例において、選択抗体は、非ヒト動物を免疫化するために使用される免疫原と同じか又は類似している可能性のある標的に結合する。標的は、本明細書に列挙される免疫原のいずれかであり得る。例示的な例において、選択抗体は、標的特異的抗体、例えば抗原特異的抗体である。様々な例において、選択抗体は、標的(又は抗原)に対し、少なくとも約10-9MのKDによって表される結合親和性を示す。様々な態様において、選択抗体は、ピコモル範囲のKD(例えば、約1×10-12M~9.9×10-12MのKD)を示す。様々な態様において、選択抗体は、1つ以上の競合結合剤の存在下で標的に結合する。様々な例において、競合結合剤は、ヒト血液、例えばヒトの血漿又は血清内の成分である。このような例では、競合結合剤、例えばヒト血清は、アッセイの間、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされる。例えば、実施例1を参照されたい。様々な態様において、競合結合剤は、ヒト又は非ヒト動物体内の標的に結合する天然リガンドであり、標的に結合する選択抗体は、天然リガンドの標的への結合を阻止又は阻害する。例えば、選択抗体は抗PD-1抗体であり、競合結合剤はPD-L1及び/又はPD-L2である。このような例では、競合結合剤、例えばPD-L1及び/又はPD-L2は、アッセイの間、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされる。例えば、実施例7を参照されたい。
【0053】
本開示の方法のスクリーニングは、選択抗体を産生するASCのその後の分子レスキューのために、より大きなウェル(例えば、4ウェルプレート又はOmniTray(商標))で完了することができる。ELISpotアッセイ又はFluoroSpotアッセイとは異なり、本開示の方法は、当該技術分野で知られるマイクロマニピュレーション又は自動蛍光単一細胞ピッキングシステム(例えば、CellCelector(商標))を備えたマイクロマニピュレーションに修正可能な均質生細胞アッセイである。IgG捕捉ビーズのコンフルエントな単層は、明確に定義された蛍光プラークを可能にする場所にASCを固定し、選択抗体を産生する個々のASCの位置を特定する。
【0054】
本開示の方法は、抗体創製のための選択抗体を産生する動物の選択及び採取を誘導することができる。動物を選択するための従来のアプローチは、個々の抗体の品質ではなく、分泌された全ての抗体の全体的な反応性及び品質を測定するポリクローナル血清力価を調査するものである。PBMC集団に由来するASCを用いたB細胞応答の調査は、さもなければ解釈が困難であるか、又はポリクローナル血清力価に隠れてしまう選択抗体を産生する個々のASCを特定することによって、この問題を克服することができる。終端組織採取のための動物選択の例示的な方法は、
図1D及び1E、並びに実施例12及び13に記載されている。
【0055】
例示的な態様では、選択抗体は、標的親和性で標的に結合し、任意選択により、標的に対する選択抗体のKDは、10-11M~10-9Mの範囲内である。様々な例において、標的に対する選択抗体のKDは、ピコモル範囲内又は約10-12M内である。様々な例において、標的に対する選択抗体のKDは、サブピコモルの範囲、例えば<10-12Mである。様々な態様において、アッセイは、第1ラウンドでは、第2の検出可能なラベルに結合した免疫原又はその一部を含む第1の量の標識標的を、ASC、捕捉試薬、及び検出試薬と組み合わせ、第2ラウンドでは、第2の検出可能なラベルに結合した免疫原又はその一部を含む第2の量の標識標的と、ASC、捕捉試薬、及び検出試薬と組み合わせることを含む(ここで、第1の量は第2の量よりも多い)。いくつかの例では、アッセイは、第3の量の標識標的を使用する第3のラウンドを含むことができる(ここで、第3の量は第2の量よりも少ない)。各ラウンドを通して第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識を検出することによって特定されるASCは、標的に対して高い親和性を有する選択抗体を産生するASCであり得る。例えば、実施例8を参照されたい。
【0056】
選択抗体は、標的親和性で標的に結合する。様々な態様において、アッセイは、ASCを、選択抗体のFcドメインに結合し、第1の検出可能な標識を含む検出試薬と、選択抗体が第2の標識として結合する標的と組み合わせることを含む。これに続いて、蛍光シグナルの定量、及びIgG分泌第1標識RFU(相対蛍光単位)と標的第2標識RFUとの比を決定することによる分泌の正規化が行われる。最小比(IgG RFU/標的RFU)で特定されたASCが、標的に対して高い親和性を有する選択抗体を産生するASCであり得る。ASC IgG正規化RFUを、検証されたハイブリドーマ又は細胞株において発現された組換え抗体からの既知の標的親和性のASCと比較して、大まかな相対的親和性ランキングを提供することができる。例えば、実施例11を参照されたい。
【0057】
様々な態様において、選択抗体は標的及びそのオルソログ又はパラログに結合し、任意選択により、標的はヒトタンパク質であり、オルソログはカニクイザルタンパク質である。様々な例において、アッセイ中に、第2の標識標的が、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ(ここで、第2の標識標的は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合されたオルソログを含む)、方法は、第3の検出可能な標識についてアッセイすることと、第1の検出可能な標識、第2の検出可能な標識、及び第3の検出可能な標識が検出される位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とをさらに含む。
【0058】
様々な例において、選択抗体は標的に結合し、そのオルソログ又はパラログには結合しない。任意選択により、アッセイ中に、第2の標識標的が、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ(ここで、第2の標識標的は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合されたオルソログを含む)、方法は、第3の検出可能な標識についてアッセイすることと、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識のみが検出され、第3の検出可能な標識は検出されない位置を特定することとをさらに含む(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)。例えば、実施例6を参照されたい。
【0059】
様々な態様において、選択抗体は、標的の一部に結合する。任意選択により、アッセイ中に、第2の標識標的が、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ(ここで、第2の標識標的は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合された標的の一部を含む)、方法は、第3の検出可能な標識についてアッセイすることと、第1の検出可能な標識、第2の検出可能な標識、及び第3の検出可能な標識が検出される位置を特定すること(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)とをさらに含む。様々な例において、標的は、複数のドメインを含むタンパク質であり、選択抗体は、標的の1つのドメインのみに結合する。様々な態様において、アッセイ中、標識標的は、第2の検出可能な標識に結合した標的の細胞外ドメインを含み、第2の標識標的は、第3の検出可能な標識に結合した1つのドメインを含む。例えば、実施例9を参照されたい。様々な態様において、選択抗体は、標的の二量体化又は多量体化の際に形成される立体構造エピトープに結合し、標的は、二量体化ドメイン又は多量体化ドメインを含む。任意選択により、アッセイ中、標識標的は、第2の検出可能な標識に結合した免疫原の細胞外ドメインを含み、第2の標識標的は、ASC、捕捉試薬、検出試薬、及び標識標的と組み合わされ、第2の標識標的は、第1の検出可能な標識及び第2の検出可能な標識とは異なる第3の検出可能な標識に結合した免疫原の二量体化ドメイン又は多量体化ドメインを含み、方法は、第3の検出可能な標識についてアッセイすることと、第1の検出可能な標識、第2の検出可能な標識、及び第3の検出可能な標識が検出される位置を特定することとをさらに含む(ここで、各特定された位置は、選択抗体を産生する個々のASCの位置を示す)。例えば、実施例10を参照されたい。
【0060】
反復免疫による抗体産生の誘導
様々な態様において、方法は、非ヒト動物を繰り返し免疫化することを含む。本明細書に例示されるように、様々な態様において、方法は、非ヒト動物を2回以上免疫化することを含む。様々な態様において、方法は、初期免疫化及び1回以上のその後の免疫化を行うことを含む。様々な例において、非ヒト動物から血液試料を得て、選択抗体を産生するASCについてアッセイした後、各その後の免疫化を繰り返す。様々な態様において、非ヒト動物は、少なくとも2回以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回、又はそれ以上免疫化される。様々な態様において、方法は、初回免疫化、及び1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回のその後の免疫化を行うことを含む。任意選択により、免疫化は、選択抗体を産生するASCが特定されるか、又は選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上になるまで繰り返される。様々な例において、各免疫化は、それより前の免疫化又は初回免疫化と比較して、同じ(A)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせ、(B)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせの量若しくは用量、(C)免疫化のタイミング、(D)免疫原を送達する投与経路又は方法、(E)非ヒト動物への投与部位、又は(F)これらの組み合わせで繰り返される。或いは、各免疫化は、それより前の免疫化又は初回免疫化と比較して、異なる(A)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせ、(B)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせの量若しくは用量、(C)免疫化のタイミング、(D)免疫原を送達する投与経路又は方法、(E)非ヒト動物への投与部位、又は(F)これらの組み合わせで繰り返される。例示的な態様において、動物は毎回、それより前の免疫化又は初回免疫化と比較して、異なる(A)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせ、(B)免疫原、アジュバント、免疫調節剤、若しくはこれらの組み合わせの量若しくは用量、(C)免疫化のタイミング、(D)免疫原を送達する投与経路又は方法、(E)非ヒト動物への投与部位、又は(F)これらの組み合わせを使用して免疫化される。様々な態様では、免疫化によって非ヒト動物に誘発される免疫応答が事前の免疫化によって引き起こされる事前の免疫応答と比較して変化するように、行われるたびに免疫化が変化する。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、同じ動物に対して複数の異なる免疫化キャンペーンを実施することにより、選択抗体の産生に向けて免疫応答を誘導する。
【0061】
例示的な例において、選択抗体の産生のために非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、ステップのサイクルを実施することを含み、そのサイクルは(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、免疫原を用いて非ヒト動物に対してその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとを含む。
【0062】
例示的な例では、方法は、(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとのサイクルを含む。様々な例において、サイクルは、少なくとも1回、2回、又は3回若しくはそれ以上繰り返される。様々な態様において、サイクルは、(iii)のアッセイで、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上になるまで繰り返される。例示的な態様において、反復サイクル後に、免疫化された非ヒト動物の10%超、20%超、30%超、40%超、又は50%超が、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上となる。様々な態様において、免疫化された非ヒト動物の75%超、又は85%超、又は90%超が、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上となる。例示的な態様において、その後の免疫化の免疫原は、初回免疫化の免疫原と異なる。例えば、例示的な態様において、(A)異なる免疫原、アジュバント、及び/若しくは免疫調節剤が非ヒト動物に投与される、(B)初回免疫化と異なる用量の免疫原が非ヒト動物に投与される、(C)初回免疫化に使用される免疫原、アジュバント、及び/若しくは免疫調節剤の各投与の間の時間が異なる、及び/又は(D)初回免疫化に使用される免疫原、アジュバント、及び/又は免疫調節剤の各投与の投与経路が異なるという点で、各その後の免疫化が事前の免疫化とは異なる。任意選択により、非ヒト動物が免疫化される都度、異なる免疫原が使用される。
【0063】
本明細書で論じられるように、免疫化は、(任意選択により、アジュバントとともに調製された)免疫原が非ヒト動物に1回以上投与することを含む。本発明の方法は、異なる免疫化条件による複数の免疫化ステップを含み得、これは、免疫化された非ヒト動物が最終的に所望の表現型を有する抗体を生成するように、免疫応答をステアリングするために使用することができる。目的の表現型、又は表現型の組み合わせに応じて、免疫応答が所望の表現型を有する抗体を生成するようにステアリングされるように、連続する免疫化ステップ中に免疫化条件を変化させることができる。例示的な実施形態では、ヒト-カニクイザル交差反応性抗体を産生するために、抗原のヒト型及びカニクイザル型の交互ブーストで非ヒト動物を免疫することができる。例えば、免疫化は、合計4回の注射を含むことができ、1回目及び3回目の注射で、組換えヒト抗原を使用し、2回目及び4回目の注射で、組換えカニクイザル抗原を使用することができる。例示的な免疫化は、本明細書の実施例4に記載されている。実施例5には、異なる免疫化が使用される、ヒト-カニクイザル交差反応性抗体を作製するさらなる方法を記載する。例示的な実施形態では、マルチドメインタンパク質のドメインに特異的な抗体を産生するために、免疫化は次の3つのタイプの免疫原の1つ以上で起こり得る:マルチドメインタンパク質の完全細胞外ドメイン、ドメイン、及び/又は完全長タンパク質。例えば、実施例9を参照されたい。例示的な実施形態では、二量体又は多量体タンパク質の二量体化又は多量体化の際に形成されるエピトープに特異的な抗体を産生するために、免疫化は次の3つのタイプの免疫原の1つ以上で起こり得る:二量体又は多量体タンパク質の完全細胞外ドメイン、多量体化ドメイン及び/又は完全長タンパク質。例えば、実施例10を参照されたい。さらなる例示的な免疫化を本明細書に提供する。実施例の項を参照されたい。
【0064】
追加のステップ
本明細書に開示される方法は、さらなるステップを含み得る。例示的な例において、方法は、血液試料が得られた後に、免疫原に対する抗体応答をアッセイすることを含む。例示的な例において、方法は、血液試料が得られた後、試料の抗体力価をアッセイすることを含む。例示的な例において、方法は、血液試料中に存在する抗体の抗原特異性をアッセイすること、任意選択により、免疫原を使用する結合アッセイを含む。
【0065】
様々な態様において、方法は、選択抗体を産生するASCを単離すること、又は選択抗体を単離することを含む。様々な例において、抗体の単離は、選択抗体を産生する単一ASCを単離することによって達成される。様々な態様において、ASCを単離することは、希釈ステップ、任意選択により連続希釈ステップを含み、細胞濃度が、統計的に、1つの細胞が所与の計算された体積中に存在するように減少し、計算された体積がマルチウェルプレートの個別の容器又はウェル中に配置される。様々な態様において、血液試料のASCを単離することは、単一のASCをウェル内又は気泡内にマイクロ流体で移動させることを含む。そこでは、選択抗体が培養培地中に分泌され、且つ/又はASCが細胞分裂を受けるまで、ASCは培養物中に維持される。任意選択により、少なくとも又は約3分~約30分、6時間、24時間、又はそれ以上の間、維持される。様々な態様において、ASCの単離は、マイクロ流体、磁気、毛管作用、重力、FACS、又はoptoelectro positioning(OEP)によって行われる。
【0066】
様々な態様において、本開示の方法は、標的表現型を有する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列を決定することを含む。任意選択により、配列決定は、RT-PCRによって行われる。任意選択により、本方法は、標的表現型を有する抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸で細胞をトランスフェクトすること、トランスフェクトされた細胞を培養すること、及び培養物から抗体を採取することをさらに含む。いくつかの態様において、本方法のステップは、一連の非ヒト動物に対して実施され、本方法は、一連の非ヒト動物ごとに血液試料のB細胞レパトアをプロファイリングすること、及び標的B細胞プロファイルを有する一連のサブセットを選択することを含む。このような方法は、実施例1に記載されている。
【0067】
また、様々な態様において、本方法は、抗体を産生し、精製し、製剤化することに関与する1つ以上の上流ステップ又は下流ステップを含む。任意選択により、下流ステップは、本明細書に記載されるか、又は当該技術分野で知られる下流プロセスステップのいずれか1つである。例示的な実施形態では、本方法は、標的表現型を有する抗体を発現する宿主細胞を作製するためのステップを含む。宿主細胞は、いくつかの態様では、原核宿主細胞、例えばE.コリ(E.coli)若しくはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)であるか、又は宿主細胞は、いくつかの態様では、真核宿主細胞、例えば、酵母細胞、糸状菌細胞、原生動物細胞、昆虫細胞、若しくは哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)である。このような宿主細胞は、当該技術分野で記載されている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)を参照されたい。例えば、いくつかの例において、本方法は、抗体、又はその軽鎖若しくは重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを宿主細胞に導入することを含む。例示的な態様では、方法は、細胞を細胞培養物中に維持することを含む。任意選択により、このようなステップには、特定の温度、pH、浸透圧、溶存酸素、湿度、又はグルコース、フコース、乳酸塩、アンモニア、グルタミン及び/若しくはグルタミン酸塩の1つ以上を含む培養培地中を維持することが含まれ得る。
【0068】
例示的な実施形態では、本明細書に開示の方法は、選択抗体を産生するASCを単離及び/若しくは精製するステップ、又は培養物から選択抗体を単離及び/若しくは精製するステップを含む。例示的な態様では、本方法は、以下に限定されないが、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む1つ以上のクロマトグラフィーステップを含む。例示的な態様では、本方法は、組換えグリコシル化タンパク質を含む溶液から結晶性生体分子を生成させるステップを含む。
【0069】
本開示の方法は、様々な態様において、組成物、例えば、いくつかの態様では、精製選択抗体を含む医薬組成物、を調製するための1つ以上のステップを含む。
【0070】
例示的な実施形態では、本方法は、(a)標準的なプロトコルを用いて動物を免疫化すること、及び(b)抗原特異的抗体応答について血清を評価することを含む。例示的な態様では、本方法は、抗原によるブーストのために免疫動物を選択すること、及びこれらの動物から血液を採取する(例えば、ブーストの約4日後)ことをさらに含む。様々な例において、本方法は、B細胞について血液を濃縮するために、動物から採取した血液から赤血球、血漿、及び血小板を除去することを含む。例示的な例において、本方法は、抗体分泌細胞(ASC)を特定し、個々のASCによって産生される抗体の解明及び/又は特徴付けを可能にするためにASCを単一細胞として単離することを含む。任意選択により、単一細胞の単離及びスクリーニングは、当該技術分野で知られた方法、例えば、NanOBLAST(例えば、ナノ流体Beacon機器による)、マイクロカプセル化を使用して達成される。様々な態様において、個々のASCによって産生され、分泌される抗体が、標的表現型について評価される。任意選択により、標的表現型の評価は、様々な異なるスクリーニング戦略を使用することによって達成され、標的表現型を有する1つ以上の抗体、及び抗体を産生及び分泌するASCが特定される。様々な例において、本方法は、(標的表現型を示す抗体を産生し分泌する)ASCから抗体VH及びVL遺伝子を、例えば、単一細胞RT-PCRによって単離すること、並びに組換え産生のために対合したVH及びVL遺伝子の配列を細胞にクローニングすることをさらに含む。
【0071】
スクリーニング、選択、及びプロファイリング方法
本開示は、選択抗体を産生する抗体分泌細胞(ASC)について非ヒト動物をスクリーニングする方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、本開示のモニターする方法に従って、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターすることを含み、本方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの数が特定される。例示的な実施形態において、本方法は、(a)一連の非ヒト動物を免疫原で免疫化することと、(b)一連の各非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとを含み、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの割合が決定される。様々な態様において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、その非ヒト動物を致死及び/又は組織採取(例えば、二次リンパ組織採取)のために選択することをさらに含む。本開示はさらに、その後の免疫化のために免疫化された非ヒト動物を選択する方法を提供する。様々な態様において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、その非ヒト動物をその後の免疫化のために選択することをさらに含む。したがって、様々な実施形態において、スクリーニング方法は、選択抗体を産生するASCの割合に基づいて、致死対象の動物とその後の免疫化対象の動物とを識別する。例示的な実施形態では、本方法は、本開示のモニターする方法に従って、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターすることを含み、この方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの数が特定され、動物に対する選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合、その後の免疫化のための動物を選択する。安楽死及び二次リンパ系採取のための選択抗体を産生する免疫化非ヒト動物を選択する方法もまた、本明細書においてさらに提供される。例示的な実施形態では、本方法は、本開示のモニターする方法に従って、非ヒト動物における選択抗体の産生をモニターすることを含み、この方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、一連の非ヒト動物ごとに、選択抗体を産生するASCの数が特定され、動物に対する選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合、その動物を安楽死及び二次リンパ系採取のために選択する。
【0072】
本開示はさらに、非ヒト動物のB細胞レパトアをプロファイリングする方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、(a)非ヒト動物を免疫原で免疫化することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとを含む。様々な例において、本方法は、一連の非ヒト動物に対して実施され、方法は、一連の非ヒト動物ごとに血液試料のB細胞レパトアをプロファイリングすることと、標的B細胞プロファイルを有する一連のサブセットを選択することとを含む。例示的な例において、サブセットは、再免疫化のために選択される。別の例において、サブセットは、安楽死及び二次リンパ器官の採取のために選択される。
【0073】
したがって、本明細書に記載のスクリーニング及び選択方法は、選択抗体を産生している非ヒト動物の特定を可能にする。このような方法の例示的な利点は、そのような抗体を産生する非ヒト動物を、致死及びB細胞採取の前に特定することができることである。これは、選択抗体を産生する非ヒト動物、したがってB細胞プールを濃縮し、したがって、従来の下流抗体創製方法の非効率性をいくらか軽減するのに役立つ。
【0074】
抗体の生成
本開示はさらに、非ヒト動物において選択抗体を生成する方法を提供する。例示的な実施形態において、本方法は、抗体産生を誘導する本開示の方法に従って選択抗体の産生のために非ヒト動物において抗体産生を誘導し、次いで、選択抗体及び/又は選択抗体を産生するASCを単離することを含む。例示的な実施形態において、本方法は、(a)免疫原で非ヒト動物に初回免疫化キャンペーンを実施することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることと、(d)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(e)選択抗体及び/又は選択抗体を産生するASCを単離することとを含む。様々な態様において、本方法は、(i)選択抗体を産生するASCの割合が閾値未満である場合に、免疫原で非ヒト動物にその後の免疫化を実施することと、(ii)前記非ヒト動物からASCを含む血液試料を得ることと、(iii)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることとからなるサイクルを、選択抗体を産生するASCのパーセンテージが閾値以上になるまで繰り返すことを含む。選択抗体を産生するASCを単離するか、又は選択抗体を単離する方法は、本明細書に記載されている。例えば、追加のステップの項を参照されたい。
【0075】
様々な態様において、本方法はさらに、(f)ASC(例えば、選択抗体を産生する単離されたASC)によって産生される選択抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及びASCによって産生される選択抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を決定することと、(g)選択抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む第1のベクター、及び選択抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む第2のベクターを宿主細胞に導入することと、(h)宿主細胞によって産生される抗体を単離することとを含む。抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列を決定する方法は当該技術分野において知られており、例えば、単一細胞PCRが挙げられる。例えば、Tiller et al.,J Immunol Methods 350:189-193(2009);及びWinters et al.,2019(前掲)を参照されたい。ヌクレオチド配列を含むベクターを作製することは知られている。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(2012)を参照されたい。様々な態様において、選択抗体を生成する方法は、重鎖配列及び/又は軽鎖配列を操作して、操作された選択抗体を得ることを含む。様々な態様において、操作された選択抗体は、非操作選択抗体と比較して、例えば、貯蔵若しくは製造中、製剤化中、充填中、輸送若しくは投与中、又はインビボ条件下で、より高い安定性を示す。様々な態様において、操作された選択抗体は、非操作選択抗体と比較して、標的又はそのオルソログ若しくはパラログに対してより高い親和性を示す。宿主細胞によって産生された抗体を単離するための好適な技術は本明細書に記載されており、当該技術分野において知られている。例えば、本明細書中の追加のステップの項、及びLow et al.,J Chromatog B 848(1):48-63(2007);Ngo et al.,米国特許第4,933,435号明細書;及びAyyar et al.,Methods 56(2):116-129(2012)を参照されたい。
【0076】
本開示の選択抗体を生成する方法の例示的な実施形態では、方法は、(a)免疫原で非ヒト動物に初回免疫化を実施することと、(b)前記非ヒト動物から抗体分泌細胞(ASC)を含む血液試料を得ることと、(c)選択抗体の産生について、血液試料又はその画分中に存在するASCを個々にアッセイすることと、(d)選択抗体を産生するASCの割合が閾値以上である場合に、非ヒト動物から1つ以上の二次リンパ器官を採取することとを含む。様々な態様において、採取された二次リンパ器官から免疫細胞が得られ、それらの免疫細胞、例えばIgG陽性記憶B細胞の少なくとも一部を使用してハイブリドーマを作製する。ハイブリドーマを作製する方法は、当該技術分野において知られており、本明細書に記載されている。例えば、本明細書中のハイブリドーマ作製の強化の項、並びにZhang,Methods Mol Ciol 01:117-135(2012);Tomita and Tsumoto,Immunotherapy 3(3):371-380(2011);Hnasko and Stanker,Methods Mol Biol 1318:15-28(2015);及びZaroff and Tan,Biotechniques 67(3):90-92(2019)を参照されたい。特定の態様において、本開示の方法は、ハイブリドーマを作製することをさらに含む。
【0077】
抗体
抗体構造は種によって異なるが、本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、典型的には、重鎖及び軽鎖を含み、且つ可変領域及び定常領域を含む、従来の免疫グロブリン型を有するタンパク質を指す。本方法によって得られた又は単離された抗体は、様々な用途を有することができる。例えば、本発明の方法によって得られた抗体は、治療薬として使用することができる。本方法によって得られた抗体はまた、例えば、診断アッセイ、例えば画像診断アッセイにおいて、及び他のインビトロ又はインビボイムノアッセイ、例えば、ウェスタンブロット、ラジオイムナンアッセイ、ELISA、EliSpotアッセイなどのために使用される試薬のような非治療的抗体として使用することができる。様々な態様において、抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。例示的な例では、抗体は、哺乳動物抗体、例えばマウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ブタ抗体、ヒト抗体、アルパカ抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体などである。いくつかの態様では、抗体は、任意選択によりトランスジェニック動物によって産生されるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。このような実施形態では、産生される抗体は、2つ以上の種の配列を含むキメラ抗体である。様々な例において、抗体は、ポリペプチド鎖の2つの同一のペアの「Y型」構造であるヒトIgGを有し、各ペアは、1本の「軽」鎖(典型的には、分子量が約25kDa)及び1本の「重」鎖(典型的には、分子量が約50~70kDa)を有する。ヒト抗体は、可変領域と定常領域とを有する。ヒトIgG型では、可変領域は、一般に約100~110個以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に異なる。例えば、Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999)を参照されたい。簡潔に説明すると、ヒト抗体の骨格において、CDRは、重鎖及び軽鎖の可変領域中のフレームワーク内に埋め込まれており、そこで抗原結合及び抗原認識に大きい役割を果たす領域を構成している。ヒト抗体可変領域は、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照されたい)、それらは、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれている;Chothia and Lesk,1987(前掲)も参照されたい)内にある。ヒト軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとそれぞれ定義される。IgGはいくつかのサブクラスを有し、それにはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれるが、これらに限定されない。IgMはサブクラスを有し、それにはIgM1及びIgM2が含まれるが、これらに限定されない。本開示の実施形態は、ヒト抗体のこのようなクラス又はアイソタイプを全て含む。ヒト軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型又はラムダ型の軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型の重鎖定常領域であり得る。したがって、例示的な実施形態では、抗体は、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つである。
【0078】
抗原結合タンパク質は、ヒト抗体の構造とは異なる構造を有し得る。例示的な例において、抗原結合タンパク質は、重鎖断片、例えば重鎖可変領域、重鎖定常領域CH2、重鎖定常領域CH3のみを含む。様々な例において、抗原結合タンパク質は、ナノボディの構造、例えばヒトコブラクダ、ラマ、及びサメによって作製されるものなどを含む。例えば、https://www.sciencemag.org/news/2018/05/mini-antibodies-discovered-sharks-and-camels-could-lead-drugs-cancer-and-other-diseasesにおけるLeslie,Science,“Mini-antibodies discovered in sharks and camels could lead to drugs for cancer and other diseases”,2018を参照されたい。
【0079】
以下の実施例は、本発明を単に例証するために示され、決してその範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0080】
実施例1
この実施例では、マウスにおける選択抗体の産生をモニターする例示的な方法を記載する。
【0081】
この実施例において、選択抗体は、PD-1に特異的な治療用ヒトIgG抗体のイディオトープに結合する抗イディオタイプ抗体(抗ID ab)であった(以下、「抗体1」と称する)。イディオトープは、抗原への結合に通常関与する抗体の可変領域(パラトープ)によって形成される固有の構造である。
図3は、抗体1のイディオトープ及びパラトープ、並びに抗ID抗体を示す。
【0082】
免疫化プロトコル
抗体1の可溶性形態をアジュバント(完全フロイントアジュバント、続いてSigma Adjuvant System(登録商標)(SAS、カタログ番号S6322;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO))中で乳化した。次いで、抗体-アジュバント混合物を、Balb/c、CD1及びB6/129マウスを含む野生型マウスの複数の系統に送達した。完全免疫化キャンペーンは、38日間にわたって2週間隔で送達した3回の注射から構成された。最初の免疫は、100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化した50μgの抗体1からなり、各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射された。14日後、25μgの抗体1を200μlのSigma Adjuvant Systemに懸濁し、この混合物の100μlを各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射し、残りの100μlを腹腔内注射した。3回目の免疫化は14日後に送達され、抗体1の総量を15μgに減少させた以外は、2回目と同じ経路及びアジュバントとした。
【0083】
各マウスからの血清力価のブリッジングELISA分析を、実質的にWinters et al.,mAbs 11(6):1025-1035(2019)に記載されているように実施して、抗原反応性を確認し、最終ブースト用の動物選択を知らせた。
図4に示すように、血清力価レベルはCD1マウスで最も高かったが、Balb/c及びB6/129マウスを含む全ての免疫化マウスが、対照(血清なし)よりも高い血清力価レベルを示した。非終端末梢血単核細胞(PBMC)採取の4日前に、150μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した50μgの抗体1を、腹腔内経路によって各動物(N=12)に注射して、抗原特異的抗体分泌細胞(ASC)を刺激した。
【0084】
採血及び濃縮
各動物から血液を採取し、単一細胞単離及びスクリーニングのために処理した。表1に、各マウスから採取したマウス系統及び血液量を列挙する。
【0085】
【0086】
次いで、採取した採血を処理して、B細胞プールを濃縮した。まず、赤血球(RBC)、血小板、及び血清血漿を、RedSift細胞プロセッサー機器(Aviva Systems Biology,Corp.、San Diego、CA)を用いて、採取した血液から除去した。次いで、EasySep(商標)マウスB細胞単離キット(STEMCELL Technologies,Inc.,Vancouver、British Columbia)を、製造業者の手順に従って実行し、B細胞をさらに濃縮した。細胞表面IgMを発現するナイーブB細胞を効果的に除去するために、社内で作製したラットの抗マウスIgM mAb(クローン8M3.1)を使用する追加のステップを行った。この追加のステップにより、ASC集団内の抗原に特異的なクラススイッチIgG分泌細胞のさらなる濃縮が可能になった。
【0087】
濃縮B細胞プールを蛍光標識した抗CD138抗体とともにインキュベートして、プラズマB細胞系統の細胞を標識した。高レベルのCD138発現がPBMC由来のB細胞からのIgG分泌の最も信頼できる指標であることが証明されているが、本明細書では他の細胞表面マーカー(例えば、B220、CD19、IgG.TACI、SLAM7、BCMA、CD98、SCA-1、Ly6C1/2など)又はマーカーの組み合わせを、目的の特異的B細胞集団を特定するために使用し得ることが企図されている。Tellier et al.,Eur J Immunol 47(8):1276-1279(2017)。
【0088】
単一細胞スクリーニングアッセイ
次に、蛍光標識された細胞を、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォーム(Berkeley Lights,Inc.、Emeryville、CA)を用いてOptoSelect(商標)チップ(Berkeley Lights,Inc.、Emeryville、CA)にロードした。プラットフォームは、個々のB細胞をoptoelectronic positioning(OEP)によりOptoSelect(商標)チップの個別のペンへと操作する。チップは3513個の個々のペンを有し、各ペンは、約740ピコリットルの容量と固有のペン識別番号を有する。チップにロードしたASCを、CD138の発現によって、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォームのオンボード光学系を用いて特定した。この技術を用いて、個々のB細胞によって分泌された抗体が単離されるように、個々のB細胞をチップの別個のペンに隔離した。1つのB細胞によって産生及び分泌された抗体は、別のB細胞によって産生及び分泌された抗体と混合されなかった。この「1つペンに1つのASC」という関係により、単一のB細胞によって産生された抗体の表現型特徴付けが可能になり、ASCは特定の遺伝子型を有するので、表現型と遺伝子型の関連付けを行うことができる。ペンの容積が極めて小さく、形質芽球及びプラズマ細胞の分泌速度が速いため(WenerFaver,et al.,Eur J Immunol 23(8):2038-2040(1993))、各ペン内のASC由来の抗体濃度は急速に上昇した。選択抗体の所望の特徴(例えば、表現型)のスクリーニングに十分に可能なレベルの抗体は、5~15分以内に到達した。
【0089】
関連する抗原特異的抗体(選択抗体)を発現するASCは、一連の反復均質スクリーニングを用いて特定され得る。選択抗体の所望の抗体特性に応じて、これらのスクリーニングは、簡単な結合アッセイ(例えば、抗原結合、種交差反応性など)であっても、さらなる設計目標(例えば、リガンド遮断、競合、機能など)を達成する抗体を特定するように設計されてもよい。ここでは、抗体1(選択抗体)に対する抗ID abを分泌するASCを特定するために、均質なビーズベースの競合アッセイを行った。アッセイを
図5A~5Cに示す。このアッセイでは、3.2μmポリスチレンビーズ(Spherotech Inc、Lake Forest、IL)に結合させた抗マウスIgG抗体(抗mu IgG)を含む捕捉試薬を、蛍光Aで標識した抗マウスIgGを含む検出試薬、蛍光Bで標識した抗体1を含む標識標的、及び過剰のヒト血清(10%正常ヒト血清)と混合した。
図5Aを参照されたい。血清は、競合的結合条件を提供するために含めた。特定の理論に束縛されるものではないが、そのような競合的結合条件下では、所望の治療用IgGパラトープの外側のエピトープに特異的な抗体が標識標的(蛍光B標識抗体1)に結合しない。
【0090】
次いで、このアッセイ混合物を、個々に隔離されたASCを含有する各ペンの口にビーズが配置されるように、チップマイクロ流体チャネルに流した(
図5B)。次いで、抗体を分泌した細胞を含有するペンを、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォーム(Berkeley Lights,Inc.,Emeryville、CA)の蛍光撮像機能、及び蛍光Aを検出可能なフィルターを用いて検出した。ASC由来の抗体レベルが増加するにつれて、それらは、ペンの口から拡散し、そこで捕捉試薬によって捕捉(及び濃縮)された。ビーズに結合した抗体の量が増加すると、次に、蛍光Aに結合した抗マウスIgG抗体が濃縮され、目的のペン(IgG抗体を分泌するASCを含有するペン;
図5C)の口に集中した特徴的な蛍光「ブルーム」パターンが生じる。IgG抗体を分泌するASCを保持する82個のペンが、蛍光Aブルームによって特定され、それらのペン識別番号を記録した。抗体1(選択抗体)に特異的な抗体を分泌するASCを特定するために、第2の蛍光フィルターキューブを使用して、蛍光Bシグナルを検出した。ヒト血清の存在下で標識標的に結合する抗体1に特異的な選択抗体を発現する23個のASCを、蛍光Bブルームによって示された(
図5C)。
【0091】
配列決定、クローニング、及び組換え発現
選択抗体を検証するために、OEPを使用して23個のASCをOptoSelect(商標)チップのペンから個々に移動させ、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォームの統合マイクロ流体を使用して、細胞溶解緩衝液を含有する標準的な96ウェルプレートの別々のウェルにエクスポートした(
図6)。各ウェルのASCによって産生された抗体について、対応する抗体重鎖(HC)及び軽鎖(LC)可変領域の配列を、Winters et al.,2019(前掲)に実質的に記載されているプロトコルに従って、単一細胞RT-PCRによって決定した。次いで、配列を、抗体定常領域を有する哺乳動物発現ベクターにクローニングした。1つのベクターはHC可変領域及び抗体定常領域を担持し、第2のベクターはLC可変領域及び抗体定常領域を担持した。次いで、組換え抗体HC/LC対を293T細胞にトランスフェクトし、可溶性抗体として培養上清中に発現させた。
【0092】
次いで、培養上清中の抗体を、Winters et al.,2019(前掲)に実質的に記載され、
図7Aに示されているように、ヒト血清の存在下で、サンドイッチELISAによって、抗体1への結合について試験した。この方法を用いて、所望の特徴を有し、抗体1に対し抗ID抗体として作用し得る9つの抗体を特定した。9つの抗ID候補のうち、単一抗体(Ab287)が、臨床患者試料において0.5ng/mlの潜在的な定量下限(LLOQ)を示す最良のプロファイルを有した。異なる供給源からの血清の存在下でのサンドイッチELISAにおけるAb287の能力を
図7Bに示す。抗体1のパラトープに結合する抗IDについて予想されるように、抗ID抗体Ab287は、抗体1がその標的(PD-1)に結合するのを、233.9nMのEC50で阻止した(
図7C)。Ab287は、臨床試料中の遊離生物活性抗体1を測定すると予想され、したがって、さらなる開発のために選択された。
【0093】
実施例2
この実施例では、マウスにおける選択抗体の産生をモニターする別の例示的な方法を記載する。
【0094】
免疫化プロトコル
この実施例では、選択抗体は抗ヒトEGFR抗体であった。CD1マウスを、ヒトEGFR(huEGFR)の可溶性細胞外ドメインで、2週間隔で合計4回の免疫化を行った。最初の免疫は、100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化した50μgのヒトhuEGFRからなり、各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射された。14日後、25μgのhuEGFRを200μlのSigma Adjuvant Systemに懸濁し、この混合物の100μlを各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射し、残りの100μlを腹腔内注射した。3回目の免疫化は14日後に送達され、huEGFRの総量を15μgに減少させた以外は、2回目と同じ経路及びアジュバントとした。4回目のブーストは、アジュバントの非存在下で50μgのhuEGFRを含有し、皮下経路及び腹腔内経路の両方で送達された。
【0095】
採血及び濃縮
最終ブーストの1~8日後に血液を採取した。製造業者の手順に従って、磁気CD138陽性選択キット(StemCell Technologies、Vancouver、Canada)を用いて、ASCを濃縮した。
【0096】
単一細胞スクリーニングアッセイ
濃縮したB細胞を、ビーズに結合させたヤギ抗ヒトFcを含む捕捉試薬、緑色蛍光シグナルを生成するAlexa 488で標識したヤギ抗ヒトFc抗体を含む検出試薬、及び赤色蛍光シグナルを生成するAlexa 594で標識したEGFRを含む標識標的と混合した。次いで、この混合物を384ウェルプレートの単一ウェルに移し、混合物の成分を約10分間、ウェル中に静置させた。
【0097】
特異的ASCを特定するために、Incucyte生細胞分析システムを用いて、細胞の撮像を行った。
図8Aは、抗体分泌を示す緑色蛍光シグナルの例示的な画像を提供し、
図8Bは、抗体の抗原特異性を実証する赤色蛍光シグナルの例示的な画像を提供する。
図8Cは、
図8A~8Bに示した同じウェルの例示的な分析合成画像を提供し、抗体分泌を示す緑色蛍光シグナルはマゼンタで示され、赤色蛍光シグナルはシアンで示され、緑色及び赤色シグナルの重なりはロイヤルブルーで示されている。この撮像アッセイから、10個の細胞が抗体分泌を示すことがわかり、1個の細胞のみが抗原(EGFR)特異的である分泌抗体として示された。
【0098】
実施例3
この実施例では、選択ASCを特定するための別の単一細胞撮像アッセイを記載し、標的は、その天然の構造で細胞により発現される。
【0099】
抗CB-1抗体を産生させるために、マウスをCB-1で免疫化した。免疫化したマウスから血液試料を採取し、次いで、実質的に実施例2に記載されるように、IgG分泌B細胞を濃縮した。293fectinを用いて完全長CB1をコードするベクターでトランスフェクトした293T細胞を、培養培地で洗浄し、次いで、40μmストレーナーに通した。次いで、濃縮B細胞、CB-1発現293T細胞、及びAlexa 488で標識したヤギ抗ヒトFc抗体の混合物をウェルに添加し、単層として定着させた。Incucyte撮像システムを用いて、トランスフェクトされた細胞表面の蛍光シグナルを検出し、特異的ASCを特定した。
図8Dは、293T細胞によって発現された抗原が、B細胞によって産生され、Alexa 488で標識されたヤギ抗ヒトFc抗体で標識された抗体に結合する、複数の蛍光スポットを有する標識されたトランスフェクト細胞の例示的な画像である。これらの結果により、濃縮B細胞プールがCB-1に特異的な抗体を分泌する細胞を含有することが実証された。
【0100】
実施例4
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する例示的な方法を記載する。この実施例では、選択抗体は、TNF-アルファに特異的なヒト-カニクイザル交差反応性IgG抗体である。
【0101】
ヒト-カニクイザル交差反応性抗体を産生するために、動物を、抗原のヒト及びカニクイザルバージョンの交互ブーストで免疫化する。この免疫化方法は、ヒト抗原とカニクイザル抗原との間で共有されるエピトープが各ブースト中に免疫系に一貫して提示され、交差反応性抗体をコードする関連するB細胞の持続的刺激を可能にするという仮定に基づいている。各抗原に対する反応性は、簡単な結合アッセイと、免疫化した動物からのポリクローナル血清とを用いて、容易にモニターすることができる。しかしながら、動物は両抗原で免疫されており、個々の抗原は共通のエピトープと固有のエピトープの両方を有するので、ポリクローナル血清は、ヒト抗原に反応する抗体、カニクイザル抗原に反応する抗体、並びに/又はヒト抗原及びカニクイザル抗原に反応する抗体を含有する。ポリクローナル血清のアッセイにより、交差反応性抗体の存在を決定することはできない。PBMC集団に由来する単離された単一ASCを調べることにより、この問題は克服される。単一細胞アッセイは、真に交差反応性を示す抗体を分泌するASCをスクリーニングする。
【0102】
免疫化プロトコル
完全な免疫化キャンペーンは4回の注射からなり、50日間にわたって2週間隔で送達される。1回目及び3回目の注射には、完全フロイントアジュバント、続いてSigma Adjuvant System(登録商標)(カタログ番号S6322;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で乳化した組換えヒトTNF-アルファ(カタログ番号300-01A;PeproTech(登録商標);Rocky Hill、NJ)を使用する。2回目及び4回目の注射には、完全フロイントアジュバント、続いてSigma Adjuvant System(登録商標)(カタログ番号S6322;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で乳化した組換えカニクイザルTNF-アルファ(カタログ番号RP1021Y-005、Kingfisher Biotech,Inc.、St.Paul、MN)を使用する。1回目の注射では、約50μgのヒトTNFをアジュバントに懸濁し、各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射する。14日後、アジュバントに懸濁した50μgのカニクイザルTNFを用いた2回目の注射を、各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射した。2回目の注射の14日後、25μgのヒトTNFを含む3回目の注射を200μlのSigma Adjuvant Systemに懸濁し、この混合物の100μlを各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射し、残りの100μlを腹腔内注射した。14日後、25μgのカニクイザルTNFを含む4回目の注射を200μlのSigma Adjuvant Systemに懸濁し、この混合物の100μlを各マウスの背側の2つのスポットに皮下注射し、残りの100μlを腹腔内注射した。抗原反応性を確認し、非終端抗体創製のための動物選択を知らせるために、各マウスからの血清力価のブリッジングELISA分析を行う。非終端末梢血単核細胞(PBMC)採取の4日前に、150μlのPBS中に懸濁させた25μgのヒトTNF及び25μgのカニクイザルTNFを含む溶液を、各動物(N=12)に腹腔内経路により注射して、抗原特異的抗体分泌細胞(ASC)を刺激する。
【0103】
採血及び濃縮及び単一細胞スクリーニングアッセイ
血液を各マウスから採取し、実質的に実施例1に記載されているようにB細胞を濃縮する。標識した細胞を、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォームを使用してOptoSelect(商標)チップ(Berkeley Lights,Inc.,Emeryville、CA)にロードし、個々のB細胞によって分泌される抗体が単離されるように、個々のB細胞をチップの個別のペンに隔離する。
【0104】
選択抗体(ヒトTNF及びカニクイザルTNFに反応する抗TNF抗体)を分泌するASCを特定するために、実施例1に記載の均質なビーズベースの競合アッセイを実施する。まず、抗マウスIgGに結合したビーズを含む捕捉試薬を、蛍光A標識抗マウスIgGを含む検出試薬、蛍光Bで標識したヒトTNFを含む標識標的、及び過剰のヒト血清と混合する。次いで、このアッセイ混合物を、個々に隔離されたASCを含有する各ペンの口にビーズが配置されるように、チップマイクロ流体チャネルに流す。蛍光Aブルームは、IgG抗体を分泌するASCを保持するペンを示し、一方、蛍光Bブルームは、ヒトTNFに結合する抗体を分泌するASCを保持するペンを示す。各ブルームタイプによって示されたペンのペンID番号を確認し、記録する。
【0105】
ビーズベースのアッセイの第2部では、蛍光Cで標識したカニクイザルTNFを含む検出試薬を添加する。蛍光Cブルームは、カニクイザルTNFに結合する抗体を分泌するASCを保持するペンを示す。蛍光Cブルームで示されたペンドのペンID番号を記録する。
【0106】
3つ全てのブルーム(蛍光Aブルーム、蛍光Bブルーム、及び蛍光Cブルーム)が陽性であると記載されたペンを、選択抗体を分泌する候補ASCとして選択する。候補ASCを、OEPを使用してOptoSelect(商標)チップのペンから個別に移動させ、実質的に実施例1に記載されるように、Beacon(登録商標)オプトフルイディックプラットフォームの統合マイクロ流体を使用して、細胞溶解緩衝液を含有する標準的な96ウェルプレートの個別のウェルにエクスポートする。各候補ASCによって産生された抗体のHC及びLC可変領域を、単一細胞RT-PCRによって決定する。配列をベクターにクローニングし、次いで、ベクターを293T細胞にトランスフェクトする。培養上清中の抗体を回収し、次いで、機能アッセイにおいてヒトTNF及びカニクイザルTNFに対する交差反応性を試験する。
【0107】
3つのブルームの全てが陽性であるペンがない場合、蛍光Aブルーム及び蛍光Bブルームについて二重陽性であるペンを特定する。或いは、蛍光Aブルーム及び蛍光Cブルームについて二重陽性であるペンを特定する。血液が二重陽性ペンのASCを含有するマウスを、第2の免疫化キャンペーンのために選択する。蛍光A及び蛍光Bの二重陽性ASCが得られたマウスでは、第2の免疫化キャンペーンは第1のキャンペーン(上記)と同じ免疫化キャンペーンを含むが、1回目及び3回目の注射は半分の量のヒトTNFで実施される。
【0108】
蛍光A及び蛍光Cの二重陽性ASCが得られたマウスでは、第2の免疫化キャンペーンは第1のキャンペーン(上記)と同じ免疫化キャンペーンを含むが、2回目及び4回目の注射は半分の量のカニクイザルTNFで実施される。
【0109】
免疫化に続く全てのステップ(血液採取からビーズベースのアッセイまで)を、その後、この実施例に記載されるように実施する。3つのブルームの全て(蛍光Aブルーム、蛍光Bブルーム、及び蛍光Cブルーム)が陽性であると記載されたペンを、標的表現型を有する抗体を分泌する候補ASCとして選択する。可変領域を配列決定し、ベクターにクローニングし、ベクターを組換え抗体産生のために細胞にトランスフェクトし、組換えにより産生された抗体を標的表現型について試験する。
【0110】
三重陽性ペンが依然として確認されない場合、第3の免疫化キャンペーンを設計し、第2の免疫化キャンペーンを受けた同じマウスに対して実施する。第3の免疫化キャンペーンでは、蛍光A/蛍光B二重陽性のマウスに対して、2回目及び4回目の注射をカニクイザルTNFの量を増加させて実施し、1回目及び3回目の注射をヒトTNFの量を半分又は4分の1にして実施し、蛍光A/蛍光C二重陽性のマウスに対して、1回目及び3回目の注射をヒトTNFの量を増加させて実施し、2回目及び4回目の注射をカニクイザルTNFの量を半分又は4分の1にして実施する。第3のキャンペーンに続いて、免疫化に続く全てのステップ(血液採取からビーズに基づくアッセイまで)を、その後、この実施例に記載されるように続いて実施する。3つのブルームの全て(蛍光Aブルーム、蛍光Bブルーム、及び蛍光Cブルーム)が陽性であると記載されたペンを、標的表現型を有する抗体を分泌する候補ASCとして選択する。第3のキャンペーン後に三重陽性ペンが依然として確認されない場合、第4の免疫化キャンペーンを設計し、実施する。このプロセスを、標的表現型を有する抗体が確認されるまで繰り返す。
【0111】
この方法は、有利には、長期の生B細胞プロファイリングの能力を提供し、レパトアステアリングを可能にする。免疫動物の発達中のB細胞応答をリアルタイムでモニターし、この情報を用いて免疫化戦略を反復的に改変する。この方法は非終端であるため、動物を殺さずに、免疫系の力を活用して、望ましい結果に向けてB細胞応答を進化させ続けることができる。免疫化戦略の改変には、(以下に限定されないが)異なる形態の免疫原、アジュバント、免疫調節剤、抗原の用量、免疫化のタイミング、及び投与経路が含まれる。このシナリオでは、ヒト抗原を使用する最初の免疫化の試みは、PBMCの非終端ASCスクリーニングによって決定されるように、カニクイザル抗原と交差反応する抗体を産生するB細胞を誘発することができなかった。この方法は、レパトア品質情報を提供するので、免疫化戦略の改変に使用することができる。この実施例では、免疫原をヒト抗原からカニクイザルオルソログに切り替えることができ、交差反応性抗体を発現するB細胞が特定されるまで免疫化キャンペーンを継続した。所望のB細胞レパトアを誘発した動物は、従来の戦略又は本明細書に記載されるような非終端ASC法を使用して、抗体生成のために使用することができる。
【0112】
実施例5
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する別の方法を記載する。この実施例では、選択抗体は、抗原Xに特異的なヒト-カニクイザル交差反応性IgG抗体である。
【0113】
この実施例では、抗原Xのヒトオルソログ及びカニクイザル(cynomolgus)(カニクイザル(cyno))オルソログの両方に交差反応する抗体の特定を記載する。オルソログは低い配列相同性を有し、したがって、交差反応性抗体の生成は稀である。1つの抗原による免疫化は、いくらかの交差反応性抗体を産生し得るが、それらは標準血清力価の検出レベル未満であろう。或いは、ヒト抗原及びカニクイザル抗原の両方による同時免疫化は、主にヒトオルソログ又はカニクイザルオルソログに結合する抗体を生成するが、交差反応するものはほとんどない。標準的な血清力価は、交差反応性抗体を生成したマウスと、ヒト抗原又はカニクイザル抗原に独立して結合する抗体を生成したマウスとを区別しない。したがって、応答マウスにおける真の交差反応性抗体を特定するために、単一細胞スクリーニングが必要である。これは、効率的な回収のために、目的のB細胞の選択的増幅と組み合わせられる。
【0114】
ヒト型の抗原Xを用い、2週間隔で合計4回の注射で、マウスを免疫する。最初のブーストでは、50μgのヒト抗原Xを100μlの完全フロイントアジュバント中に乳化し、混合物を皮下投与する。14日後、25μgのヒト抗原Xを200μlのSigma Adjuvant System中に懸濁し、100μlを皮下注射し、100μlを腹腔内注射する。3回目の注射では、15μgのヒト抗原XをSigma Adjuvan system中に乳化し、2回目のブーストについて記載したように、皮下及び腹腔内の両方に注射する。50μgのヒト抗原Xの最終ブーストを、アジュバントなしで腹腔内注射する。
【0115】
血液を、最終ブーストの4日後にげっ歯類体重の10%の最終体積で採取する。CD138+B細胞を磁気的に単離し、ビーズに結合した抗ヒトIgG抗体を含む捕捉試薬、Alexa488で標識した抗ヒトIgG抗体を含む検出試薬、並びに別個に標識した蛍光ヒト抗原X及びカニクイザル抗原Xの混合物に加える。この混合物をマイクロタイタープレートに単層としてプレーティングし、次いで、インキュベートして、抗体及び抗原捕捉を可能にする。抗原特異的交差反応性ASCを、実質的に実施例2に記載されるように、細胞撮像を用いて二重染色蛍光プラークとして特定する。
【0116】
次いで、交差反応性抗体を分泌するB細胞を産生した動物を、Sigma Adjuvant system(登録商標)と組み合わせたカニクイザル抗原及びヒト抗原の皮下への交互投与で、さらに4週間、1週間に1回、免疫化する。最後のブーストの3日後に血液を採取し、ヒト抗原及びカニクイザル抗原に対するスクリーニングのためにB細胞を単離する。
【0117】
交差反応性抗体の数が増加したと確認された動物を、組織採取及び抗体生成のために安楽死させる。対単反応性抗体に対する交差反応性抗体の比率が低い動物を、抗原Xのヒトオルソログ及びカニクイザルオルソログの別の用量でさらに3週間免疫化し、その後、交差反応性抗体について単一細胞スクリーニングする。このプロセスを、選択抗体(ヒト-カニクイザル交差反応性抗体)を産生するASCの閾値%が満たされるまで継続する。
【0118】
記載したこの方法は、タンパク質の複数のオルソログ又はパラログに対する交差反応性を必要とする任意の抗体創製キャンペーンに適用し得る。異なる種に交差反応する抗体を生成することを必要とすることは、有効性及び安全性の研究のためにはよくあることである。単一B細胞スクリーニングは、一般的な例として、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ又はブタに対する交差反応性を必要とするプログラムに適用することができる。
【0119】
実施例6
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を記載する。この実施例では、選択抗体は、タンパク質、抗原Xの1つのパラログのみに結合するが、密接に関連するファミリーメンバー、抗原Yには結合しない抗体である。
【0120】
抗原Xと抗原Yとの間の類似性により、抗原Xで免疫化された動物は、両タンパク質に対してポリクローナル血清交差反応性を示す。したがって、目的のファミリーメンバーに対し偏った抗体応答を生じる可能性のあるマウスを特定するために、直接単一細胞スクリーニングが必要とされる。抗原Xのみに反応する抗体を産生するB細胞の生成が最大になるように免疫応答をステアリングするために、選択された動物を、別の免疫化プロトコルを用いてさらに免疫化する。
【0121】
げっ歯類に抗原Xを週2回4週間にわたって皮下投与することにより免疫化する。プライミング免疫原複合体は、フロイント完全アジュバントと組み合わされた10μgの抗原を含有し、一方、ブースティング複合体は、Sigma Adjuvant System(登録商標)と組み合わされた5μgの抗原を含有する。最後のブーストの4日後、血液を採取し、CD138+B細胞を血清から分離する。
【0122】
細胞を、実施例1に記載されるように単一細胞アッセイによってアッセイし、蛍光Aタグ付き抗原Xを使用して抗原Xへの結合についてスクリーニングし、且つ/又は蛍光B標識抗原Yを使用して抗原Yへの結合についてスクリーニングする。抗原Aブルームは、抗原Xに特異的な抗体を分泌するASC分泌抗体を含有するペンを示し、蛍光Bブルームは抗原Yに結合する抗体を分泌するASCを含有するペンを示す。蛍光Aブルームのみが陽性である(蛍光Bブルームは陽性ではない)ペンを、実質的に実施例1に記載されるように、OEPによりペンから、単一細胞PCR用のウェルにエクスポートする。ASCによって産生された抗体を、抗原Xへの結合及び抗原Yへの非結合についてアッセイする。
【0123】
ペンが蛍光Aブルームに対して単一陽性でない場合、抗原Xの保存されたドメインはバイオインフォマティクス的に特定される。動物を、保存された抗原Xドメインで、Sigma Adjuvant System(登録商標)と組み合わせて、週1回、皮下免疫し、3回のさらなるブーストを行う。最後のブーストの3日後にげっ歯類から採血し、実質的に実施例1に記載されるように、B細胞を濃縮する。細胞を単一細胞レベルでスクリーニングして、抗原Xにのみ結合し、抗原Yには結合しない抗体を分泌するB細胞を特定する。単一細胞アッセイにおいては、蛍光Cで標識された保存抗原Xドメインを標識標的として使用する。蛍光Cブルームは、選択抗体(抗原Xに特異的で、抗原Yと交差反応しない抗体)を分泌するASCを含有するペンを示す。
【0124】
選択抗体を発現するB細胞の数が改善されたげっ歯類を、組織採取のために安楽死させる。数が改善されないマウスに対し、3回目の免疫化を行う。
【0125】
実施例7
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を記載する。この実施例では、選択抗体は、ヒトPD-1への結合について、天然ヒトPD-L1及び天然ヒトPD-L2との競合に勝つ抗体である。
【0126】
実施例6に記載されるように、PD-1抗原の用量を減少させながら、げっ歯類を週2回免疫化する。
【0127】
個々のB細胞をチップのペンに移し、1細胞対1ペンの比を達成する。ビーズベースのアッセイを、抗マウスIgGに結合したビーズを含む捕捉試薬、蛍光A標識抗マウスIgG抗体を含む検出試薬、蛍光Bで標識されたヒトPD-1を含む標識標的、及び過剰のヒト血清を用いて実施する。次いで、このアッセイ混合物を、個々に隔離されたASCを含有する各ペンの口にビーズが配置されるように、チップマイクロ流体チャネルに流す。蛍光Aブルームは、IgG抗体を分泌するASCを保持するペンを示し、蛍光Bブルームは、PD-1に結合する抗体を分泌するASCを保持するペンを示す。蛍光Aブルーム、蛍光Bブルーム、又は二重陽性蛍光A及び蛍光Bブルームが示されたペンのペンID番号を記録する。
【0128】
ビーズベースのアッセイを2回目に実施し、今回のみ、アッセイに添加するPD-L1の量を増加させる。蛍光A/蛍光B二重ブルームにより、PD-1特異的抗体を産生するASCを含有するペンを特定することができ、PD-L1の存在下でのシグナル強度の維持は、組換えにより産生された抗体がPD-1への結合についてPD-L1との競合に勝ったことを示す。PD-L1の存在下で維持された信号強度で二重ブルームを示すペンのペン番号を記録する。
【0129】
ビーズベースのアッセイを3回目に実施し、今回のみ、アッセイに添加するPD-L2の量を増加させる。蛍光A/蛍光B二重ブルームにより、PD-1特異的抗体を産生するASCを含有するペンを特定することができ、PD-L2の存在下でのシグナル強度の維持は、組換えにより産生された抗体がPD-1への結合についてPD-L2との競合に勝ったことを示す。PD-L2の存在下で維持された信号強度で二重ブルームを示すペンのペン番号を記録する。望ましくは、PD-1への結合についてPD-L1及びPD-L2の両方に勝つことができるPD-1特異的抗体を産生するASCを含有すると特定されるペンが存在する。
【0130】
蛍光A及び蛍光Bのブルームに対して二重陽性であるペンに注目し、これらのペンからの抗体のHC及びLCの可変領域の配列を決定する。配列をベクターにクローニングし、このベクターを、組換え抗体の産生のために、293T細胞にトランスフェクトする。抗体を293T細胞培養物の上清から回収し、次いで、PD-L1の量を増加させながら、組換えPD-1への結合について試験する。ここで、PD-1は、所与の波長でシグナルを発するフルオロフォアで標識されており、組換えにより産生された抗体は免疫沈降アッセイにおけるようにビーズに結合する。標識されたPD-1は、ビーズに結合した抗体と混合される。ビーズを非特異的結合のために洗浄する。標識されたPD-1及び組換え産生された抗体を含む免疫複合体は、所与の波長でシグナルを検出することにより、検出される。次いで、この手順を、PD-L1及び/又はPD-L2の量を増加させながら実施する。PD-L1及び/又はPD-L2の存在下でのシグナル強度の維持は、組換えにより産生された抗体がPD-1への結合についてPD-L1及びPD-L2との競合に勝ったことを示す。
【0131】
PD1に結合するが、PD-L1又はPD-L2と完全には競合しないB細胞を産生する動物を、Sigma Adjuvant System(登録商標)と組み合わせた2.5μgのPD1で免疫し、3回のさらなるブーストを行う。最後のブーストの3日後にマウスから採血し、単離されたB細胞を上記のようにスクリーニングする。
【0132】
実施例8
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を記載する。この例では、選択抗体は、抗原Xに特定の結合親和性を有する抗体である。
【0133】
この実験の目的は、ピコモル未満の親和性で抗原Xに結合する抗体を特定することである。親和性は、抗体のクローン源でのみ測定することができ、したがって、血清は、高親和性抗体を生成したマウスを特定するために使用することはできない。従来、マウスを安楽死させて、ハイブリドーマ融合及び特徴付けのためのB細胞を得て、さらなる免疫ステアリングを全て排除している。リアルタイムの非終端B細胞採取及び調査を適応免疫化戦略と組み合わせることは、競合的なインビボ環境を利用して、より高い親和性のB細胞クローンを進化させ誘導するので、高親和性抗体を生成するための従来の方法を超える大きな利点を提供する。
【0134】
げっ歯類を、2週間ごとに合計4回のブーストで、抗原Xの投与量を減少させて皮下免疫する。プライミング免疫原は、フロイント完全アジュバントと組み合わされた40μgの抗原Xを含有する。その後の3回のブーストは、Sigma Adjuvant Systems(登録商標)と組み合わせて、20μg、10μg又は5μgの抗原Xを含有する。最終ブーストの4日後、血液をげっ歯類から採取し、この採取した血液試料のB細胞を、実質的に実施例1に記載されるように濃縮する。実質的に実施例1に記載されているように、マイクロ流体デバイスを用いて細胞をペンニングし、蛍光標識された抗原Xへの結合についてスクリーニングする。抗抗原X抗体を産生するASCを特定し、続いて、分子回収のために、ペンからウェルに移し、組換えクローンの親和性を、実質的に実施例1に記載されているように決定する。
【0135】
KinExA(Sapidyne)又はCarterraハイスループットスクリーニングデバイス(Carterra)によって、親和性を決定する。
【0136】
次いで、高親和性抗体を発現するB細胞を生成した動物を、Sigma Adjuvant System(登録商標)と組み合わせた2.5μgの抗原で週1回ブーストし、3回のさらなるブーストを行う。最後のブーストの3日後にマウスから採血し、単離されたB細胞を、実質的に実施例1に記載されているように、抗原Xへの結合についてスクリーニングする。
【0137】
次いで、配列決定、クローニング、発現、及び親和性特徴付けの別のラウンドのために、B細胞をエクスポートする。親和性バーに合致するB細胞を有するげっ歯類を組織採取のために安楽死させる。親和性要件を満たさないB細胞を生成したげっ歯類を、Sigma Adjuvant System(登録商標)と組み合わせた2.5μgの抗原で週1回ブーストし、3回のさらなるブーストを行う。設計目標が達成されるまで、動物をスクリーニングし、ブーストする。1回のスクリーニングのラウンドにおいて、濃縮されたB細胞を、標識標的がEGFRの代わりにAlexa 594で標識した抗原Xを含むことを除いて、実施例2に記載の単一細胞アッセイに供する。シグナルの重なりを示すスポットは、抗原Xに特異的な抗体を分泌するASCを特定する。単一細胞撮像アッセイを、Alexa 594で標識した抗原Xの量未満の約10分の1の、Alexa 488で標識した抗原Xの量で繰り返す。(Alexa 594及びAlexa 488からの)シグナルの重なりを保持するスポットは、抗原Xに対してより高い親和性を示し、したがって、標的に対して所望の高い親和性を示す。
【0138】
実施例9
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を記載する。この実施例では、選択抗体はドメイン特異的抗体である。
【0139】
この実施例は、マルチドメインヒトタンパク質、プロテインZのドメイン1に対する抗体の特定を記載する。プロテインZの完全細胞外ドメインによる免疫化は、不均衡な免疫応答を生じ、一部のドメインは非常に過剰に発現し、ドメイン1抗体はポリクローナル血清力価レベルで検出不能である。ドメイン1単独での免疫化は、天然の細胞外ドメインを認識することができる抗体を生成しない。タンパク質の天然の細胞外ドメインでの免疫化の後に稀なドメイン1抗体を生成したマウスを特定するには、単一細胞スクリーニングが必要とされる。これらのB細胞は、ドメイン1反応性B細胞を増殖させるために、ドメイン1ペプチド及び全長タンパク質のその後のブースティングで増幅されるが、ペプチド単独に対するデノボ応答を生じない。
【0140】
マウスをプロテインZで2週間の間隔をあけて合計4回のブーストで免疫化する。プライミングブーストは、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させた抗原50μgを含有し、皮下投与される。その後のブーストは、それぞれ25μg及び15μgの抗原がSAS中に乳化され、半分が腹腔内に、半分が皮下に投与される。次いで、PBS中の50μgの抗原でマウスをブーストし、4日後に血液を採取する。CD138+B細胞を単離し、IgG捕捉ビーズと、別個に標識した蛍光ドメイン1ペプチドと、完全細胞外ドメインとの混合物に添加する。この混合物をマイクロタイタープレートに単層としてプレーティングし、次いで、実質的に実施例2に記載されるように、インキュベートして、抗体及び抗原捕捉を可能にする。ドメイン1特異的抗体を産生するASCを、細胞撮像を用いて二重染色蛍光プラークとして特定する(実施例2)。
【0141】
ドメイン1特異的B細胞を生成したマウスを、5μgのドメイン1ペプチドで週2回、2週間にわたってブーストする。次いで、PBS中の50μgの完全可溶性細胞外ドメインでマウスをブーストし、4日後に血液を採取する。マウスを、ドメイン1及び完全長タンパク質の両方への結合についてスクリーニングする。目的の動物を組織処理及びスクリーニングのために安楽死させる。このプロセスを、設計目標を達成するまで、他のマウスについて繰り返す。
【0142】
この記載の方法は、免疫応答が主に関心の低いタンパク質の領域に対するものである抗体創製キャンペーンに適用され得る。一般的な例は、抗体レパトアにおいて過剰発現する免疫優性領域を有するタンパク質である。免疫応答は、そのドメインから離れ、目的領域にステアリングする必要がある。
【0143】
実施例10
この実施例では、選択抗体を生成するために、非ヒト動物において抗体産生を誘導する方法を記載する。この実施例では、選択抗体は、多量体抗原の多量体化ドメインに結合する抗体である。
【0144】
この実験は、ヘテロ三量体膜貫通タンパク質に結合する抗体の特定を記載する。天然タンパク質による免疫化では、免疫応答を誘発することができない。可溶性ドメインのみで免疫されたマウスは免疫応答を生じるが、抗体はタンパク質の天然の立体構造を認識しない。マウスを、次第に天然の構造に近くなるように作製された以下の一連の免疫原でマウスを免疫する:免疫原1は抗原Xの細胞外ドメインから構成されるタンパク質を含有し、免疫原2は多量体化ドメインに結合してヘテロ三量体複合体を形成するタンパク質を含有し、免疫原3は、完全複合体をコードするDNAを含有する。
【0145】
げっ歯類を、Sigma Adjuvant System(登録商標)との複合体中の5μgの免疫原1で皮下免疫する。動物を週2回、合計6回ブーストする。最後のブーストの4日後にマウスから血液を採取し、CD138+B細胞を磁気的に単離する。細胞を、IgG捕捉ビーズと、別個に標識した蛍光免疫原1及び免疫原2との混合物に添加する。この混合物をマイクロタイタープレートに単層としてプレーティングし、次いで、実質的に実施例2に記載されるように、インキュベートして、抗体及び抗原捕捉を可能にする。抗原特異的ASCを、細胞撮像を用いて二重染色蛍光プラークとして特定する(実施例2)。免疫原2と天然に交差反応する稀な抗体を生成するマウスを、さらなるステアリングのために特定する。これらのマウスに、Sigma Adjuvant System(登録商標)との複合体中の5μgの免疫原2によるブーストをさらに週2回、合計6回受けさせ、応答を増幅する。最後のブーストの4日後にげっ歯類を採血し、免疫原2及び免疫原3に対する単一細胞スクリーニングのためにB細胞を単離する。免疫原3を認識する抗体をコードするB細胞を保有する動物を、完全複合体をコードするプラスミドで遺伝的に免疫する。これらのげっ歯類を、遺伝子銃弾で週2回、合計6回ブーストする。単一細胞スクリーニングのためにマウスから血液を採取し、目的のマウスを安楽死させ、組織を採取する。より弱い応答を生じるマウスをブーストし、設計目標を達成するまでスクリーニングする。
【0146】
実施例11
この実施例では、ASCによって分泌される抗体の親和性によってASCをランク付けするための単一細胞アッセイの例示的な適用を記載する。
【0147】
EGFR特異的抗体を産生するハイブリドーマクローンを単離し、各クローンのEGFR結合特性を、Octet(登録商標)バイオレイヤー干渉プラットフォーム(Satorius)で決定した。EGFR結合親和性の範囲(KD4.7×10-10~1.1×10-8)の抗体を産生する5つのハイブリドーマクローンを、単一細胞アッセイにおける評価のために選択した。選択されたハイブリドーマクローン及びそれぞれによって産生された抗体の結合特性を表2に列挙する。
【0148】
【0149】
実施例2に記載されるように、表2のハイブリドーマクローンを用いて単一細胞スクリーニングアッセイを実施した。簡潔に記載すると、ハイブリドーマ12B4.1クローンを、ビーズに結合させたヤギ抗ヒトFcを含む捕捉試薬、緑色蛍光シグナルを生成するAlexa 488で標識したヤギ抗ヒトFc抗体を含む検出試薬、及び赤色蛍光シグナルを生成するAlexa 594で標識したEGFRを含む標識標的と混合した。次いで、この捕捉試薬、検出試薬、標識標的及び12B4.1クローンを含む混合物を、384ウェルプレートの単一ウェルに移した。これらのステップは、プレートの各ウェルが単一ハイブリドーマのクローンを含む混合物を含むように(例えば、1つのウェルがハイブリドーマ1C2.1クローン、1つのウェルがハイブリドーマ7C11.1クローン、1つのウェルがハイブリドーマ2G8.1クローン、1つのウェルがハイブリドーマ12B4.1クローン、及び1つのウェルがハイブリドーマ7.35.4クローン)、表2のハイブリドーマクローンのそれぞれのクローンを用いて行った。混合物の成分をウェルに静置させた後、Incucyte生細胞分析システムを用いて、細胞の撮像を行い、各ウェルの6個の個々の細胞(ASC)について、緑色蛍光及び赤色蛍光の相対蛍光単位(RFU)値を決定した。実施例の画像を
図9に示す。RFU値を記録し、赤色RFU(EGFR結合を示す)に対する緑色RFU(IgG分泌を示す)の比を、データの正規化のために決定した(表3)。IgG分泌レベルは、細胞の健康、細胞周期、及びASCの他の特性によって影響され得るので、RFUの正規化は重要である。単一ハイブリドーマの6つのクローンのRFU比を平均し、比の平均として記録した(表3)。
【0150】
【0151】
【0152】
次いで、各ハイブリドーマの比の平均を、表2からのそのKD値の関数としてプロットした(
図10)。
図10に示すように、比の平均及びKD値(Octet(登録商標)バイオレイヤー干渉プラットフォーム(Satorius)で決定)は、統計的有意性(R
2=0.932)をもって相関した。まとめると、これらの結果は、単一クローンの正規化RFUが抗体親和性のランク付けに有用であることを示している。さらに、これらの結果は、本開示の単一細胞アッセイを使用して個々のASCのランク付けをそれらが分泌する抗体の親和性によってランク付けし得ることを示唆している。
【0153】
実施例12
この実施例では、マウスにおける免疫応答を誘導して、抗原のヒトオルソログ及びカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))オルソログの両方に交差反応する抗体を生成する方法を記載する。この実施例では、交差反応性抗体の形成に対する異なる免疫化戦略の影響、及びそれらの変化を検出する単一細胞スクリーニング戦略の能力を調査する。この実施例はまた、免疫ステアリングにおける単一細胞アッセイの適用を実証する。
【0154】
免疫化
CD1マウスを、抗原のヒトオルソログで2週間ごとに免疫した。最初のブーストでは、完全フロイントアジュバント(CFA)中の25μgのヒト抗原でマウスを皮下免疫した。2回目のブーストは、25μgのヒト抗原を50% Sigma Adjuvant System(SAS)と組み合わせて含有し、半分を皮下に、半分を腹腔内に投与した。3回目の用量は、50% SASと組み合わせた15μgのヒト抗原を含み、半分を皮下に、半分を腹腔内に投与した。マウスを14週間休ませた後、アジュバントなしで25μgのヒト抗原(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中)で腹腔内にブーストした。血清検査及び単細胞スクリーニングのために、ブーストの4日後に血液を採取した(
図11、採血1)。
【0155】
次いで、マウスを以下の2つの群に分けた:第2群は、週に1回、皮下にカニクイザル抗原でブーストすることによって、ヒト/カニクイザル交差反応性抗体の産生に向けて免疫ステアリングし、一方、第1群は、対照群として機能させ、ヒト抗原でブーストした。両群のマウスから、8回目のブーストの4日後に採血し(
図11、採血2)、血液を分析のために調製した。
【0156】
8回目のブースト後、第1群のマウスを2つのサブグループ(第1A群及び第1B群)に分け、カニクイザル抗原(第1B群)又はヒト抗原(第1A群)のアジュバントなしの単一のブーストを与えた。ブーストの4日後に両サブグループのマウスから採血し(
図11、採血3)、血液を分析のために調製した。
【0157】
血液調製及び細胞濃縮
図11に示された時間に血液を採取した(採血1、採血2及び採血3)。各場合において、血液を遠心分離して、血液細胞から血清を分離した。血清を以下に記載の血清力価分析に使用し、血液細胞は、CD138濃縮キット(STEMCELL Technologies,Inc.,Vancouver、British Columbia)の標準プロトコルの改変版を使用して、CD138+B細胞を濃縮することによって、ASCを濃縮した。
【0158】
単一細胞スクリーニングアッセイ
実施例2に記載のように、濃縮したCD138+B細胞集団を用いて単一細胞スクリーニングアッセイを行った。簡潔に記載すると、濃縮したCD138+B細胞集団を、3.4μmポリスチレンビーズ(Spherotech Inc、Lake Forest、IL)に結合させたヤギ抗マウスIgG Fcを含む捕捉試薬、緑色蛍光シグナルを生成するAlexa 488で標識したカニクイザル抗原、赤色蛍光シグナルを生成するAlexa 594で標識したヒト抗原と混合し、希釈剤としてB細胞培地を用いて最終濃度にした。異なる蛍光シグナル(カニクイザル抗原については緑色、ヒト抗原については赤色)を使用することで、単一細胞アッセイが、ヒトオルソログのみに結合する単一細胞、カニクイザルオルソログのみに結合する単一細胞、及び両方のオルソログに結合する単一細胞を区別することが可能になった。混合物を384ウェルプレートの単一ウェルに移し、最終濃縮B細胞濃度は、1ウェルあたり約2~3μLの細胞混合物とした。混合物の成分をウェルに約10分間静置した後、Incucyte生細胞分析システムを用いて細胞の撮像を行った。緑色蛍光及び赤色蛍光のRFU値を決定した。
【0159】
血清力価分析
採血1及び3からの血清を、1:100、1:1000及び1:10,000の最終濃度に希釈し、次いで、V底96ウェルプレートにプレーティングした捕捉ビオチン化抗原を有するビーズに添加した。混合物を室温で1時間インキュベートした。次いで、ビーズを洗浄し、30μgのヤギ抗マウスIgG Fc(Jackson Immunoresearch)中に再懸濁して、最終濃度5μg/mLとした。15分間のインキュベーション後、ビーズをFACS緩衝液で洗浄し、再懸濁した。次いで、プレートをフローサイトメトリー用に調製した。
【0160】
結果及び考察
第1群及び第2群のマウスを最初に同じ方法でブーストし、血清力価分析は全てのマウスがヒトオルソログ及びカニクイザルオルソログの両方に対して強い免疫応答を生じたが、力価データではカニクイザルのみの結合体をヒト-カニクイザル交差反応性結合剤と区別することができないことを示した(
図12、採血1)。単一細胞スクリーニングを用いて、各個々のマウスにおいてヒトのみ、カニクイザルのみ、又はカニクイザルオルソログ-ヒトオルソログの両方に結合した抗体の割合を特定した(
図13及び14、採血1)。優性な免疫応答はヒトオルソログに対するものであったが、一部のマウスでは交差反応性抗体を容易に特定できた(
図14)。
【0161】
次いで、免疫条件をシフトさせて、単一細胞スクリーニングが免疫ステアリング後の抗体レパトアの変化を検出できるかどうかを決定した。第1群のマウスはヒトオルソログによるブーストを受け続け、第2群のマウスはカニクイザルオルソログでブーストされた(
図11、採血2)。単一細胞スクリーニングアッセイは、第2群マウスにおいて、カニクイザルオルソログとヒトオルソログに結合した抗体の割合の大きな変化を検出することができ(
図15)、現在カニクイザルのみの抗体の免疫応答が優勢である。第1群の対照マウスは、採血1及び2で同様の応答を有した(
図14対15)。いずれの群も交差反応性抗体の生成に大きな変化はなかった。これらのデータは、単一細胞スクリーニングアッセイが、免疫応答の変化を検出する分解能を有しており、免疫化戦略の小さな変化が抗体レパトアを形成し得ることを示している。
【0162】
次いで、第1群のマウスに最後に1回ブーストして、免疫応答を、カニクイザルのみの応答が最小の交差反応性抗体の増加に向け得るかどうかを決定した。以前のデータは、カニクイザル抗原に対する強いデノボ応答があり、複数回のブーストが必要な応答を生じないことを示した。したがって、デノボ応答を最小限に抑えるために、第1群のマウスに25μgのタンパク質をアジュバントなしで単回ブーストした。第1A群はヒトオルソログによるブーストを受け、第1B群はカニクイザルオルソログによるブーストを受けた。ヒトブーストを受けたマウス(第1A群)では、採血1と比較して交差反応性抗体の割合に変化はなかった(
図16~17)。ヒト抗原でのみブーストしたマウスにおける変動の欠如は、単一細胞スクリーニングの再現性を強調する。対照的に、カニクイザルでブーストした群(第1B群)は、交差反応性抗体の割合が大きく増加し(
図16)、交差反応性抗体は2~16倍の範囲で増加した(
図17)。カニクイザルのみに結合した抗体の割合は最小であり、単回ブーストによりカニクイザルのみの抗体のデノボ産生が最小限に抑えられることが示された。カニクイザルブースト群(第1B群)の全てのマウスが今や設計目標を達成したが、標準的なポリクローナル血清学では上位の動物は識別できなかった(
図18)。これはおそらく、血清が免疫化キャンペーンによって生成された全ての抗体のポリクローナル混合物を含有しており、新たに形成されたASCがレパトアに寄与する割合は非常にわずかに過ぎないからと考えられる。
【0163】
まとめると、これらの結果は、異なる免疫応答が、免疫ステアリングによって、例えば異なるオルソログ抗原によるブースティングによって、達成され得ることを示唆している。これらの結果はさらに、ヒトオルソログのみに結合する抗体と、カニクイザルオルソログにのみ結合する抗体と、両方のオルソログに結合する(ヒトオルソログ及びカニクイザルオルソログの両方に交差反応する)抗体とを区別することができないポリクローナル血清力価分析とは異なり、本開示の単一細胞スクリーニングアッセイは、免疫化戦略において生じる変化が小さな変化に過ぎない場合であっても、抗体産生の追跡又はモニタリングを可能にする、免疫応答及び免疫レパトアにおける変化を検出するために必要な分解能及び感度を有することを支持する。
【0164】
実施例13
この実施例では、マルチドメインタンパク質のヒトオルソログ及びカニクイザルオルソログの両方に交差反応する抗体の割合を増加させるように免疫応答をステアリングする方法を記載する。
【0165】
マルチドメインタンパク質である抗原に対するヒト/カニクイザル交差反応性抗体を産生するという以前の試みが行われた。カニクイザルオルソログ及びヒトオルソログの相同性は、80%未満である。以前の試みでは、ヒト抗原のブーストとカニクイザル抗原のブーストが交互に行われ、このアプローチは各オルソログタンパク質に対する強いデノボ応答をもたらしたが、交差反応性の抗体はほとんど産生されなかった。この実施例では、マウスを、最初に、ヒトタンパク質の完全細胞外ドメイン(抗原1)でブーストし、続いて、タンパク質のサブドメイン(抗原2)でブーストした。カニクイザルサブドメイン及びヒトサブドメインは、80%を超える相同性を有する。
【0166】
免疫化
CD-1マウスを抗原1で2週間ごとに合計4回のブーストで免疫化した(
図19)。最初のブーストは、CFA中に乳化させた50μgの抗原1であり、皮下注射した。2回目のブーストは、50%SASと組み合わせた25μgの抗原1であり、半分を皮下に送達し、残りの半分を腹腔内に送達した。3回目のブーストは、50%SASと組み合わせた15μgの抗原1であり、半分を皮下注射し、半分を腹腔内注射した。4回目のブーストは、アジュバントなしの25μgの抗原1であった。4日後に、単細胞スクリーニングのために血液を採取した(採血1)。2回の追加ブーストを、採血1の後に投与した。それぞれ25μgの抗原2を用い、それぞれの4日後に血液を採取した(採血2及び採血3)。
【0167】
血液調製及び細胞濃縮
図19に示したように、免疫化キャンペーンを通して血液を3回採取した(採血1、採血2、採血3)。各場合において、血液を遠心分離して、血液細胞から血清を分離した。血清を以下に記載の血清力価分析に使用し、血液細胞は、CD138濃縮キット(STEMCELL Technologies,Inc.,Vancouver、British Columbia)の標準プロトコルの改変版を使用して、CD138+B細胞を濃縮することによって、ASCを濃縮した。
【0168】
単一細胞スクリーニングアッセイ
実施例2に記載のように、濃縮したCD138+B細胞集団を用いて単一細胞スクリーニングアッセイを行った。簡潔に記載すると、濃縮したCD138+B細胞集団を、3.4μmポリスチレンビーズ(Spherotech Inc、Lake Forest、IL)に結合させたヤギ抗マウスIgG Fcを含む捕捉試薬、緑色蛍光シグナルを生じるAlexa 488で標識したカニクイザル抗原、赤色蛍光シグナルを生じるAlexa 594で標識したヒト抗原、Hisタグ特定力価と競合するために少なくとも100倍モル過剰のHexaHisタンパク質(GenScript RP11737)と混合し、希釈剤としてB細胞培地を使用して最終濃度にした。異なる蛍光シグナル(カニクイザル抗原については緑色、ヒト抗原については赤色)を使用することで、単一細胞アッセイが、ヒトオルソログのみに結合する単一細胞、カニクイザルオルソログのみに結合する単一細胞、及び両方のオルソログに結合する単一細胞を区別することが可能になった。混合物を384ウェルプレートの単一ウェルに移し、最終濃縮B細胞濃度を、1ウェルあたり約2~3μLの細胞混合物とした。混合物の成分をウェルに約10分間静置した後、Incucyte生細胞分析システムを用いて細胞の撮像を行った。緑色蛍光及び赤色蛍光のRFU値を決定した。
【0169】
血清力価分析
血清を、1:100、1:1000及び1:10,000の最終濃度に希釈し、次いで、V底96ウェルプレートにプレーティングした捕捉ビオチン化抗原を有するビーズに添加した。混合物を室温で1時間インキュベートした。次いで、ビーズを洗浄し、30μgのヤギ抗マウスIgG Fc(Jackson Immunoresearch)中に再懸濁して、最終濃度5μg/mLとした。15分間のインキュベーション後、ビーズをFACS緩衝液で洗浄し、再懸濁した。次いで、プレートをフローサイトメトリー用に調製した。
【0170】
結果及び考察
採血1の血清力価は、ヒト抗原に対する強固な免疫応答を検出することができ、カニクイザル抗原に対する結合は低いが検出可能であった(
図20)。しかし、ポリクローナル力価データは、カニクイザル抗原にのみ結合した抗体と、ヒト及びカニクイザルの両方に交差反応し得る抗体とを区別することができなかった。対照的に、単一細胞スクリーニングは、ヒトのみ、カニクイザルのみ、並びにヒト及びカニクイザル両方の交差反応性抗体への結合を検出することができた(
図21~22)。血清力価及び単一細胞スクリーニングはいずれも、優勢な免疫応答がヒトオルソログにのみ結合する抗体に限定されることを示した。いくらかの交差反応性抗体は生成されたが、カニクイザル応答の大部分はヒトオルソログに結合することができず、さらなる免疫化が必要であった。
【0171】
次いで、マウスを、完全長タンパク質と比較してヒト/カニクイザルの相同性の程度が高いヒト抗原のサブドメイン(抗原2)でブーストした。マウスは最初に、腹腔内にアジュバントなしで25μgの抗原2の注射を受けた。次いで、マウスを採血し(採血2)、この試料をカニクイザルオルソログ及びヒトオルソログへの結合についてスクリーニングした。このブーストにより、交差反応性抗体を確実に特定することができるだけの十分に強い免疫応答は得られなかった。したがって、50% SASと組み合わせた25μgの抗原2で、マウスをさらに1回ブーストした。ブーストの4日後にマウスから採血し(採血3)、CD138+ASCを単離し、上記のようにスクリーニングした。この実験は、必要なときに、調整及びブースト拡大を可能にするために、非終端試料採取を使用することの価値を強調する。
【0172】
抗原2によるブースティングは、抗原のカニクイザルオルソログに対する血清力価を強力に増加させた(
図23)。この観察と一致して、単一細胞アッセイもまた、採血1と比較して、採血3におけるカニクイザルのみの抗体及びカニクイザル-ヒト交差反応性抗体の両方の増加を検出した(
図24)。次いで、ヒト及びカニクイザルの両方のオルソログへの結合に対するカニクイザルのみの結合の割合をプロットすることによって、目的の動物を特定することができた。このプロットにより、一部のマウスはカニクイザルオルソログのみに応答するが、他のマウスは強い交差反応性を有することが明らかになった。これは、標準的なポリクローナル血清学を用いても、識別することはできない。
【0173】
本明細書で引用される刊行物、特許出願及び特許などの全ての参考文献は、それぞれの参考文献が、あたかも個々に且つ具体的に参照により本明細書に組み込まれることが示されており、また本明細書においてその全体が記載されているかのように同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0174】
本開示の説明に関する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関する)「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語、並びに類似の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(すなわち「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されなければならない。
【0175】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役割を果たすものに過ぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0176】
本明細書で説明されている方法の全ては、本明細書で別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本開示をより明らかにすることが意図されているに過ぎず、別途特許請求されない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を、本開示を実施するのに必要不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0177】
本明細書には、本開示の好ましい実施形態が記載されており、それは、本開示を実行するために本発明者らに知られている最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の記載を読むことで当業者に明らかになるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を採用することを期待し、本発明者らは、本明細書中で具体的に記載されている形態以外で本開示が実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用される法により認められるとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙されている主題の全ての変更形態及び均等物を含む。さらに、上記の要素の任意の組み合わせは、別途本明細書で指示されない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形形態で本開示に包含される。
【国際調査報告】