(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】バイポーラ板をコーティングするための方法およびバイポーラ板
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0228 20160101AFI20240227BHJP
H01M 8/0226 20160101ALI20240227BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20240227BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240227BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20240227BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0226
H01M8/0221
H01M8/0213
H01M8/0247
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547374
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2022053451
(87)【国際公開番号】W WO2022171844
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021000763.8
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100316
【氏名又は名称】セルセントリック・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】マーク-ヴァンサン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハオスマン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126DD05
5H126DD15
5H126EE05
5H126EE06
5H126GG05
5H126GG18
5H126HH00
5H126HH04
5H126HH08
5H126HH10
(57)【要約】
本発明はバイポーラ板(1)をコーティングするための方法に関する。それは、少なくとも以下のプロセスステップ、すなわち
- バイポーラ板(1)の少なくとも1つのコーティングされるべき面(S)において少なくとも一部の領域にエポキシ樹脂・炭素混合物(2)をつけるステップ、
- バイポーラ板(1)のエポキシ樹脂・炭素混合物(2)でコーティングされた面(S)に押し型(3)を載せ、かつバイポーラ板に対し押し型(3)を、バイポーラ板(1)と押し型(3)との間の規定の間隔(x)で固定するステップ、
- エポキシ樹脂・炭素混合物(2)を硬化させ、かつ押し型(3)を取り除くステップ、
- 硬化したエポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)を少なくとも一部の領域で粗面化するステップ、
- 少なくとも粗面化された領域(4.1)を低圧プラズマ(5)に曝すことにより、エポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)の少なくとも粗面化された領域(4.1)を親水化するステップ、により特徴付けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ板(1)をコーティングするための方法であって、
少なくとも以下のプロセスステップ、すなわち
- バイポーラ板(1)の少なくとも1つのコーティングされるべき面(S)において少なくとも一部の領域にエポキシ樹脂・炭素混合物(2)をつけるステップ、
- 前記バイポーラ板(1)の前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)でコーティングされた前記面(S)に押し型(3)を載せ、かつ前記バイポーラ板に対し前記押し型(3)を、前記バイポーラ板(1)と前記押し型(3)との間の規定の間隔(x)で固定するステップ、
- 前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)を硬化させ、かつ前記押し型(3)を取り除くステップ、
- 前記硬化したエポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)を少なくとも一部の領域で粗面化するステップ、
- 少なくとも前記粗面化された領域(4.1)を低圧プラズマ(5)に曝すことにより、前記エポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)の少なくとも前記粗面化された領域(4.1)を親水化するステップ、
により特徴付けられる、前記方法。
【請求項2】
前記バイポーラ板(1)の少なくとも前記コーティングされるべき面(S)が、前記バイポーラ板から離れる方に向いた法線ベクトル(N)の方向に、少なくとも1つの隆起部(6)および少なくとも1つの窪み部(7)を有し、前記隆起部(6)が少なくとも一部の区間で親水化され、かつ前記窪み部(7)が少なくとも一部の区間で未処理の表面状態のままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
UV放射(8)によって硬化可能なエポキシ樹脂が使用され、前記押し型(3)が少なくとも一部の領域でUV放射(8)に対する透過性を有し、かつ前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が、前記バイポーラ板(1)のコーティングされた前記面(S)に前記押し型(3)が載った状態で、UV放射(8)の照射によって硬化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイポーラ板(1)の前記コーティングされるべき面(S)に前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)をつけるため、前記コーティングされるべき面(S)に前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が噴霧または塗布され、とりわけスクイージーを使って塗布されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
硬化した前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が、レーザ光線(9)の照射によって、またはアブレイシブジェット、とりわけガラスビーズブラストによって粗面化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
バイポーラ板(1)であって、少なくとも1つのコーティングされるべき面(S)の少なくとも一部の領域でのコーティング(4)により特徴付けられるものであり、前記コーティング(4)の第1の区間(A1)は親水性の特性を有し、かつ前記コーティング(4)の第2の区間(A2)は疎水性の特性を有する、前記バイポーラ板(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のバイポーラ板(1)であって、エポキシ樹脂・炭素混合物(2)による少なくとも一部の領域でのコーティング(4)により特徴付けられるものであり、前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)は請求項1から5のいずれか一項に記載の方法でつけられたものである、前記バイポーラ板(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも1つのバイポーラ板(1)により特徴付けられる、燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つの燃料電池により特徴付けられる、乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ板をコーティングするための方法、バイポーラ板、燃料電池、および乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ板は、いわゆるスタックとも言われる燃料電池積層体の中心的なコンポーネントである。重要なアセンブリとして、バイポーラ板は以下の機能:燃料電池積層体の第1のセルのアノードと、燃料電池積層体の第1のセルに隣接する第2のセルのカソードとの間の導電接続の確立、燃料電池積層体のセルの反応ゾーン内への反応ガスの供給および分配、発生する反応生成物、例えば液状またはガス状の水の搬出、ならびに熱エネルギーの吸収または放出、を果たす。これに関し、反応ガスの供給および反応生成物の搬出のため、典型的には流路のような流れプロファイルがバイポーラ板上に施されており、例えばフライス加工またはプレス加工されている。さらに、バイポーラ板はその内部に冷却路を有することができ、この冷却路に、放散された熱を排出するための冷媒が通される。このためにバイポーラ板は、しばしば2つの半体が背中合わせで組み合わされている。
【0003】
金属のバイポーラ板は、その導電性を高めるため、したがって燃料電池から放出される電力を上昇させるため、コーティングされるのが典型的である。加えてコーティングによりバイポーラ板の化学的耐性が高められ、これによりバイポーラ板が腐食から保護される。このようなコーティングは、たいていいわゆる物理気相成長法(PVD)によって施される。これには真空の生成が必要である。加えてバイポーラ板が高い熱負荷に曝される。よってこのようなコーティングの作製は比較的高価で手間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、比較的高いプロセス信頼性で、より簡単でより安価にバイポーラ板がコーティングされ得るバイポーラ板をコーティングするための方法を提示することである。本発明のさらなる課題は、そのような方法でコーティングされたバイポーラ板を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によればこれらの課題は、請求項1の特徴を有するバイポーラ板をコーティングするための方法および請求項6の特徴を有するバイポーラ板によって解決される。有利な形態および変形形態ならびにこのようなバイポーラ板を備えた燃料電池およびこのような燃料電池を備えた乗り物は、その従属請求項から明らかである。
【0006】
バイポーラ板をコーティングするための方法では、本発明によれば少なくとも以下のプロセスステップ、すなわち
- バイポーラ板の少なくとも1つのコーティングされるべき面において少なくとも一部の領域にエポキシ樹脂・炭素混合物をつけるステップ、
- バイポーラ板のエポキシ樹脂・炭素混合物でコーティングされた面に押し型を載せ、かつバイポーラ板に対し押し型を、バイポーラ板と押し型との間の規定の間隔で固定するステップ、
- エポキシ樹脂・炭素混合物を硬化させ、かつ押し型を取り除くステップ、
- 硬化したエポキシ樹脂・炭素混合物のコーティングを少なくとも一部の領域で粗面化するステップ、
- 少なくとも粗面化された領域を低圧プラズマに曝すことにより、エポキシ樹脂・炭素混合物のコーティングの少なくとも粗面化された領域を親水化するステップ、
が実施される。
【0007】
本発明による方法は、バイポーラ板の、特にプロセス信頼性の高い簡単で安価なコーティングを可能にする。つまりコーティングは、エポキシ樹脂・炭素混合物の形態で、塗料のようにバイポーラ板上に施され得る。このために、PVD法の場合のように真空を生成するまたはバイポーラ板を高い熱負荷に曝す必要はない。その際エポキシ樹脂は、腐食からバイポーラ板を保護するための保護層である。これに関し、炭素を混ぜることでコーティングの導電性が保証され得る。低圧プラズマを使った親水化により、コーティングの表面の化学構造が変化することで、極性官能基がコーティング内に構築される。これによりコーティングの表面の導電性が保証され、これに加え、コーティングされた表面の濡れ性および水分付着性が改善される。低圧プラズマは室温で既に生成可能であり、これが、穏やかな、しかしそれにもかかわらず効果的な表面処理を可能にする。本発明による方法によれば、エポキシ樹脂・炭素混合物のコーティングのうち粗面化された領域だけが親水化される。コーティングのうち表面処理されていない領域は、コーティングの未処理の状態のままであり、したがってエポキシ樹脂に基づいて疎水性の特性を有する。これにより、コーティングが完成したバイポーラ板上には、親水性の特性をもつ部分領域および疎水性の特性をもつ部分領域が存在している。これは、発生する生成水を狙い通りに搬出することを可能にし、かつバイポーラ板上でのガス流動の改善を可能にし得る。これは、燃料電池積層体の個々の燃料電池から放出される電力を上昇させ得る。
【0008】
この方法の有利な一変形形態では、バイポーラ板の少なくともコーティングされるべき面が、バイポーラ板から離れる方に向いた法線ベクトルの方向に、少なくとも1つの隆起部および少なくとも1つの窪み部を有し、隆起部が少なくとも一部の区間で親水化され、かつ窪み部が少なくとも一部の区間で未処理の表面状態のままである。冒頭で言及したように、バイポーラ板はしばしば、ガスおよび液体を狙い通りに導くための流れプロファイルを備えている。バイポーラ板から離れる方に向いた隆起部が親水化され、かつバイポーラ板内へと延びている窪み部が疎水性の状態のままであることにより、バイポーラ板の流体案内特性がさらに一層改善され得る。つまり液体がバイポーラ板の隆起部上にあり続け、これらの隆起部は、典型的にはガス拡散層に対する接触面を形成している。これは、一方ではガス拡散層に対する導電性を、および発生する生成水の搬出のための搬出作用を改善する。
【0009】
この方法のさらなる有利な一形態に従って、UV放射によって硬化可能なエポキシ樹脂が使用され、押し型が少なくとも一部の領域でUV放射に対する透過性を有し、かつエポキシ樹脂・炭素混合物が、バイポーラ板のコーティングされた面に押し型が載った状態で、UV放射の照射によって硬化される。一般的にはエポキシ樹脂・炭素混合物を硬化するには、例えば硬化剤の混入のような典型的な方法が適用され得る。しかしエポキシ樹脂・炭素混合物の硬化がUV放射の照射によって実現されることにより、硬化剤を混入するステップは省略され得る。これに加えて押し型により、バイポーラ板上で狙い通りの層厚を調整することができる。このために押し型はバイポーラ板に対して規定の間隔で調整され得る。このような層厚、つまり押し型とバイポーラ板との間隔は、例えば100μmであり得る。しかしより厚いまたはより薄い層も可能である。押し型は、エポキシ樹脂の硬化中にバイポーラ板上にあり続け、これにより、まだ軟らかいエポキシ樹脂・炭素混合物を損傷および/または汚れから保護する。これに関し押し型は、全体的にUV放射を透過する材料から成るように作製することができ、または押し型は、UV放射を透過する幾つかの開口部を有し得る。その際、これらの開口部は、バイポーラ板のうち、バイポーラ板をコーティングするためにエポキシ樹脂・炭素混合物が施された面領域と重なり合う。バイポーラ板の少なくとも1つの面の表面全体がコーティングされるのが理想である。
【0010】
バイポーラ板上で押し型を固定するために、硬化プロセス中、バイポーラ板および押し型は共通のプレス機内にあり続け得る。しかしながら押し型がバイポーラ板上に、例えば少なくとも1つの固定要素、例えばネジ、クリップ、ゴム、またはその類似物によって固定されてもよい。これは、バイポーラ板を、固定された押し型と共に、プレス機から取り出して輸送することを可能にする。これに関し、相応の機械からバイポーラ板および押し型を取り出して輸送する間、バイポーラ板と押し型との間の規定の間隔を保証するため、バイポーラ板と押し型との間にスペーサが入れられてもよい。
【0011】
この方法のさらなる有利な一形態では、さらに、バイポーラ板のコーティングされるべき面にエポキシ樹脂・炭素混合物をつけるため、コーティングされるべき面にエポキシ樹脂・炭素混合物が噴霧または塗布され、とりわけスクイージーを使って塗布される。これにより、バイポーラ板のコーティングされるべき面の特に均一で隙間のないコーティングが保証される。これに関し、エポキシ樹脂・炭素混合物は塗料のようにバイポーラ板上に施され得る。さらにスクイージーを使って、はみ出ているエポキシ樹脂・炭素混合物の集塊が掻き取られ得る。
【0012】
硬化したエポキシ樹脂・炭素混合物が、レーザ光線の照射によって、またはアブレイシブジェット、とりわけガラスビーズブラストによって粗面化されることが好ましい。バイポーラ板のコーティングの幾つかの領域の粗面化は、その後の親水化の準備に役立つ。これに関しては、コーティングの幾つかの領域が約5~20μmの高さで除去されるのが典型的である。さらに、親水化の十分な準備には、親水化されるべき領域だけが部分的に粗面化されることで十分である。レーザ光線により、コーティングが特に狙い通りに、したがって確実に粗面化され得る。これは、ガラスビーズブラストを使用しても可能である。ただし一般的には、通常のアブレイシブジェットを使った粗面化も行われ得る。
【0013】
バイポーラ板は本発明によれば、少なくとも1つのコーティングされるべき面において少なくとも一部の領域でコーティングを有し、コーティングの第1の区間は親水性の特性を有し、かつコーティングの第2の区間は疎水性の特性を有する。親水性および疎水性の特性をもつ幾つかのコーティング区間を有することにより、本発明によるバイポーラ板上での水分分布を狙い通りに調整でき、これが、このようなバイポーラ板を備えた燃料電池または燃料電池積層体の出力上昇を可能にする。これに関してはとりわけ、コーティングの親水性の領域がバイポーラ板の隆起部上にもたらされ、コーティングの疎水性の領域がバイポーラ板の窪み部内にもたらされる。
【0014】
これに関し、バイポーラ板の少なくとも一部の領域でのコーティングが、エポキシ樹脂・炭素混合物によって行われていることが好ましく、このエポキシ樹脂・炭素混合物は、前述の方法によってバイポーラ板につけられたものである。このような方法により、バイポーラ板の特に確実で簡単で安価なコーティングが可能である。
【0015】
本発明によれば、燃料電池が少なくとも1つのこのようなバイポーラ板を備えている。これにより、バイポーラ板の改善された液体搬出特性と、ガス拡散層に対するバイポーラ板の接触面の改善された導電性とに基づき、燃料電池から放出される電力が上昇し得る。
【0016】
本発明によれば、乗り物が少なくとも1つのこのような燃料電池を備えている。これに関し、複数のこのような燃料電池が1つの燃料電池積層体へとまとめられていてもよい。その際乗り物は、任意の車両、例えば乗用車、トラック、バン、バス、またはその類似物であり得る。車両は、車両を駆動するために内燃機関および少なくとも1つの電気モータを備えたハイブリッド車両として作製され得る。車両が純粋に電気的に駆動されていてもよい。一般的には、乗り物が鉄道車両、飛行機、または船舶であることも考えられる。
【0017】
本発明による方法および本発明によるバイポーラ板のさらなる有利な形態は、以下に図を参照しながらより詳しく説明する例示的実施形態からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるバイポーラ板をコーティングするための方法の原理図である。
【
図2】代替的な幾何形状をもつバイポーラ板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1はa)欄で、プロセスステップ110においてエポキシ樹脂・炭素混合物2でコーティングされているバイポーラ板1を示している。この場合、エポキシ樹脂・炭素混合物2は、ノズル10によってバイポーラ板1のコーティングされるべき面Sに施されている。バイポーラ板1をコーティングするため、ノズル10がバイポーラ板1に沿って送り方向Vの方向に移動している。一般的にはバイポーラ板1が、定置ノズルまたは可動ノズル10に対して相対的に移動することも考えられる。
【0020】
このバイポーラ板1は、板平面Eから離れていく法線ベクトルNの方向に延びている複数の隆起部6および窪み部7を有している。この隆起部6および窪み部7は、ガスおよび/または液体を案内するための流路を形成している。
【0021】
ここでは図示されていないように、エポキシ樹脂・炭素混合物2がバイポーラ板1上に例えばスクイージーを使って塗布されてもよい。
【0022】
図1b)はプロセスステップ120を示しており、プロセスステップ120では狙い通りのコーティング厚を調整するため、押し型3が、バイポーラ板1と押し型3との間の規定の間隔xでバイポーラ板1に載せられる。狙い通りの層厚を調整するだけでなく、押し型3の全体が、硬化プロセス中にバイポーラ板1上でエポキシ樹脂・炭素混合物2の硬化によって形成されるコーティング4を保護するために役立つ。この押し型3は任意の形状を有することができ、押し型3は、バイポーラ板1のコーティングされるべき面Sに向いた側では、バイポーラ板1にぴったり合う形状を有している。押し型3のこれとは反対の側では、押し型3は例えば実線で示唆したように平らな形状を有することができ、または破線で示したように同様にバイポーラ板1にぴったり合う形状を有することができる。
【0023】
図1c)はプロセスステップ130を示しており、プロセスステップ130ではエポキシ樹脂・炭素混合物2が硬化される。これに関しこの例示的実施形態では、エポキシ樹脂・炭素混合物2の硬化はUV放射8でエポキシ樹脂・炭素混合物2を照射することによって行われている。UV放射8は、例えばUVランプ11によって生成され得る。押し型3は、少なくとも部分的にはまたは全体的にも、UV放射8に対する透過性を有しており、したがってUV放射8は、押し型3を通り抜けて行くことができ、かつエポキシ樹脂・炭素混合物2に当たり得る。
【0024】
図1d)は、プロセスステップ140での、バイポーラ板1上でエポキシ樹脂・炭素混合物2の硬化によって形成されたコーティング4の部分的な領域の粗面化を示している。このために、コーティング4の部分的な領域がレーザ光線9によって処理されている。粗面化される領域4.1は、レーザ光線9の代わりに不図示のアブレイシブジェットによって、例えばガラスビーズブラストによって粗面化されてもよい。
【0025】
図1e)はプロセスステップ150を示しており、プロセスステップ150では粗面化された領域4.1の低圧プラズマ5による表面処理を示している。低圧プラズマ5は、コーティング4の化学構造を変換し、これによりコーティング4内に極性官能基が構築され、それにより、コーティング4のうち低圧プラズマ5で処理された領域が親水化される。これに関しては、粗面化された領域4.1が低圧プラズマで処理される。粗面化された領域4.1から外れた領域は未処理のままであり、それによりこれらの領域は疎水性の特性を有している。これに関し、隆起部6が少なくとも一部の領域で親水化され、かつ窪み部7が少なくとも一部の領域でその未処理の疎水性の状態であり続けるのが理想である。これにより、バイポーラ板1上の水分分布が狙い通りに調整され得る。こうして、隆起部6にはより多くの液体が付着したままになり、これが当該箇所の導電性を改善する。窪み部7内では、液体、とりわけ水が溜まりにくく、それにより、例えば氷点下の温度の際に、窪み部7内でも氷は形成され得ない。よって、燃料電池積層体の個々の燃料電池からの反応液の確実な搬出が保証される。すなわち電力の上昇だけでなく、これにより当該燃料電池または当該燃料電池積層体が確実に動作可能でもある。
【0026】
図2は、代替的な幾何形状をもつ本発明によるバイポーラ板1を示している。このバイポーラ板1は、例えば冷媒を案内するための冷却路12も有し得る。
図2は、一般的にバイポーラ板1が任意の板状の幾何形状を有し得ることを具体的に説明するために役立つ。これに関してはとりわけ、隆起部6および窪み部7は、それぞれバイポーラ板1から離れる方に延びているかまたはバイポーラ板1内へと延びている。
図2の例では、隆起部6または窪み部7が長方形に形成されている。一般的に、隆起部および/または窪み部6、7は任意の幾何形状を有し得る。例えば隆起部および/または窪み部6、7は三角形、楕円形、円形、または任意の多角形の断面形状を有し得る。隆起部6および窪み部7が様々な大きさで作製されていてもよい。これに関し特に有利なのは、親水性の特性を有する第1の区間A1が少なくとも隆起部6の部分領域上に形成され、かつ疎水性の特性を有する第2の区間A2が窪み部7の上または中に少なくとも部分的に形成されることである。その際、各隆起部6上および/または各窪み部7内の個々の区間A1およびA2は、個別に形作ることができ、つまり異なる広さを有し得る。
【0027】
バイポーラ板1は、少なくとも2つの対置する面Sで、少なくとも一部の区間がコーティングされていてもよい。
【0028】
バイポーラ板1は、2つの別々のバイポーラ板半体1.1および1.2から、これらのバイポーラ板半体1.1および1.2がそれらのそれぞれ隆起部6および窪み部7に面していない側で相互に結合されることで作製されるのが典型的である。これに関し、隆起部6および窪み部7を有する側は、コーティングが施されるアノード側およびカソード側を形成している。バイポーラ板半体1.1と1.2とが結合し得る側では、冷却路12を形成するための凹部が施され得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ板(1)をコーティングするための方法であって、
少なくとも以下のプロセスステップ、すなわち
- バイポーラ板(1)の少なくとも1つのコーティングされるべき面(S)において少なくとも一部の領域にエポキシ樹脂・炭素混合物(2)をつけるステップ、
- 前記バイポーラ板(1)の前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)でコーティングされた前記面(S)に押し型(3)を載せ、かつ前記バイポーラ板に対し前記押し型(3)を、前記バイポーラ板(1)と前記押し型(3)との間の規定の間隔(x)で固定するステップ、
- 前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)を硬化させ、かつ前記押し型(3)を取り除くステップ、
- 前記硬化したエポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)を少なくとも一部の領域で粗面化するステップ、
- 少なくとも前記粗面化された領域(4.1)を低圧プラズマ(5)に曝すことにより、前記エポキシ樹脂・炭素混合物のコーティング(4)の少なくとも前記粗面化された領域(4.1)を親水化するステップ、
により特徴付けられる、前記方法。
【請求項2】
前記バイポーラ板(1)の少なくとも前記コーティングされるべき面(S)が、前記バイポーラ板から離れる方に向いた法線ベクトル(N)の方向に、少なくとも1つの隆起部(6)および少なくとも1つの窪み部(7)を有し、前記隆起部(6)が少なくとも一部の区間で親水化され、かつ前記窪み部(7)が少なくとも一部の区間で未処理の表面状態のままであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
UV放射(8)によって硬化可能なエポキシ樹脂が使用され、前記押し型(3)が少なくとも一部の領域でUV放射(8)に対する透過性を有し、かつ前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が、前記バイポーラ板(1)のコーティングされた前記面(S)に前記押し型(3)が載った状態で、UV放射(8)の照射によって硬化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バイポーラ板(1)の前記コーティングされるべき面(S)に前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)をつけるため、前記コーティングされるべき面(S)に前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が噴霧または塗布され、とりわけスクイージーを使って塗布されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
硬化した前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)が、レーザ光線(9)の照射によって、またはアブレイシブジェット、とりわけガラスビーズブラストによって粗面化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
バイポーラ板(1)であって、少なくとも1つのコーティングされるべき面(S)の
エポキシ樹脂・炭素混合物(2)による少なくとも一部の領域でのコーティング(4)により特徴付けられるものであり、前記コーティング(4)の第1の区間(A1)は親水性の特性を有し、かつ前記コーティング(4)の第2の区間(A2)は疎水性の特性を有する、前記バイポーラ板(1)。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂・炭素混合物(2)は
、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法でつけられたものである
ことを特徴とする、
請求項6に記載のバイポーラ板(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも1つのバイポーラ板(1)により特徴付けられる、燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の少なくとも1つの燃料電池により特徴付けられる、乗り物。
【国際調査報告】