(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】下水汚泥及び場合によっては生物由来廃棄物からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240227BHJP
C01B 25/28 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C02F11/00 C
C01B25/28 C ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547645
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 DE2022100126
(87)【国際公開番号】W WO2022171252
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021103522.8
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021000786.7
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516324984
【氏名又は名称】レモンディス アクア ゲーエムベーハ アンド シーオー.ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーベク,マーティン
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA05
4D059BB01
4D059BD03
4D059BK11
4D059BK22
4D059CA14
4D059CC01
4D059DA03
4D059DA39
(57)【要約】
本発明は、下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法に関する。本発明の核心的課題は、下水汚泥灰からリンを回収すること、並びに下水汚泥乾燥の蒸気及び液体肥料からの窒素を用いてリンをNP肥料リン酸二アンモニウムへ変換することである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法(1)であって、以下の方法段階を包含する、すなわち
段階(1A1):前記下水汚泥を任意的に解砕し、
段階(1A2):前記下水汚泥を乾燥させ、NH
3に富む蒸気と乾燥下水汚泥とが生じ、
段階(1B1):段階(1A2)からのNH
3に富む蒸気を任意的に凝縮させ、
段階(1B2):アンモニア[NH
3]を放出させて、段階(1B1)からの凝縮させた前記NH
3に富む蒸気を任意的にアルカリ化し、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて前記アンモニア[NH
3]を追い出し(アンモニアストリッピング1)、
段階(1D2):段階(1A2)からの前記乾燥下水汚泥を焼却して下水汚泥灰とし、
段階(1D3):段階(1D2)からの前記下水汚泥灰をリン酸で処理し、
段階(1D4):段階(1D3)からの処理された前記下水汚泥灰の酸不溶性部分を分離し、それにより酸不溶性部分と、リン酸含有液の形態の濾過液又は上澄み液が生じ、
段階(1D5):段階(1D3)で使用するために、段階(1D4)からの前記リン酸含有液の少なくとも一部を任意的に戻し、
段階(1D6):段階(1D4)からの前記リン酸含有液に硫酸を添加することによって段階(1D4)からの前記リン酸含有液を精製し、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離され、並びに/或いはイオン交換又は液液抽出を適用することによって、精製リン酸含有液が生じ、
段階(1D7):段階(1D6)からの前記精製リン酸含有液の少なくとも一部を任意的に濃縮し、それによりリン酸が取得及び分離され、
段階(1E):段階(1B1)からの凝縮させた前記NH
3に富む蒸気及び/又は段階(1B2)で得られた前記アンモニア[NH
3]を、段階(1D4)からの前記リン酸含有液、段階(1D6)からの前記精製リン酸含有液、及び/又は段階(1D7)からの前記リン酸の形態のリン酸[H
3PO
4]と反応させ、アンモニウム-リン酸塩化合物を得、得られた前記アンモニウム-リン酸塩化合物を任意的に分離する、
方法。
【請求項2】
下水汚泥、及び生物由来廃棄物であって、少なくとも尿素及びアンモニウム化合物と、無機及び有機結合リン酸塩が溶解された、並びに/或いは粒子の形態で含有される水性液相を含む生物由来廃棄物からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収するための組合せ方法(2)であって、以下の方法段階を包含する、すなわち
段階(2A1):前記下水汚泥を任意的に解砕し、
段階(2A2):前記下水汚泥を乾燥させ、NH
3に富む蒸気と乾燥下水汚泥とが生じ、
段階(2B1):段階(2A2)からの前記NH
3に富む蒸気を任意的に凝縮させ、
段階(2B2):アンモニア[NH
3]を放出させて、段階(2B1)からの凝縮させた前記NH
3に富む蒸気を任意的にアルカリ化し、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて前記アンモニア[NH
3]を追い出し(アンモニアストリッピング2)、
段階(2C1):生物由来廃棄物の固形物を液相から任意的に分離し、
段階(2C2):粒子結合リン酸塩を溶解するために、高圧下の二酸化炭素ガス[CO
2]、又は超臨界二酸化炭素を生物由来廃棄物の液相に導入し、
段階(2C3):液相を酸性化することと、溶解したCO
2及び/又は炭酸塩として結合したCO
2を追い出すこととによって、段階(2C2)からの液相中のCO
2含有量を低減し、
段階(2C4):前記アンモニア[NH
3]を放出させて、段階(2C3)からの液相をアルカリ化し、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて前記アンモニア[NH
3]を追い出し(アンモニアストリッピング3)、
段階(2C5):段階(2C4)からの液相からカルシウム-リン酸塩を沈殿させて分離し、
段階(2D1):段階(2C5)からの沈殿させて分離した前記カルシウム-リン酸塩を段階(2A)からの前記乾燥下水汚泥に混合し、
段階(2D2):段階(2C4)からの沈殿させて分離した前記カルシウム-リン酸塩と段階(2A)からの前記乾燥下水汚泥との混合物を焼却して下水汚泥灰とし、
段階(2D3):段階(2D2)からの前記下水汚泥灰をリン酸で処理し、
段階(2D4):段階(2D3)からの処理された前記下水汚泥灰の酸不溶性部分を分離し、それにより酸不溶性部分とリン酸含有液の形態の濾過液又は上澄み液が生じ、
段階(2D5):段階(2D3)で使用するために、段階(2D4)からのリン酸含有液の少なくとも一部を任意的に戻し、
段階(2D6):段階(2D4)からの前記リン酸含有液に硫酸を添加することによって段階(2D4)からの前記リン酸含有液を精製し、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離され、並びに/或いはイオン交換又は液液抽出を適用することによって、精製リン酸含有液が生じ、
段階(2D7):段階(2D6)からの前記精製リン酸含有液の少なくとも一部を任意的に濃縮し、それによりリン酸が取得及び分離され、
段階(2E):段階(2B1)からの前記凝縮させたNH
3に富む蒸気及び/又は段階(2B2)で得られた前記アンモニア[NH
3]と、段階(2C4)で得られた前記アンモニア[NH
3]を、段階(2D4)からの前記リン酸含有液、段階(2D6)からの前記精製リン酸含有液、及び/又は段階(2D7)からの前記リン酸の形態のリン酸[H
3PO
4]と反応させ、アンモニウム-リン酸塩化合物を得、前記得られたアンモニウム-リン酸塩化合物を任意的に分離する、
組合せ方法。
【請求項3】
段階(1D4)又は(2D4)からの前記リン酸含有液を段階(1D3)又は(2D3)で使用するために戻す段階(1D5)又は(2D5)が実行され、段階(1D4)又は(2D4)からの前記リン酸含有液の殊に少なくとも10%、特に好ましくは前記段階(1D4)又は(2D4)からの前記リン酸含有液の全含有量に対して、少なくとも20%、更に好ましくは20%~80%、最も好ましくは40%~60%が段階(1D3)又は(2D3)で使用するために戻される、請求項1に記載の方法(1)又は請求項2に記載の組合せ方法(2)。
【請求項4】
段階(1A2)又は(2A2)の前に、前記下水汚泥を解砕する段階(1A1)又は(2A1)は、殊に、例えばボールミルを用いて機械的に処理することによって、超音波による並びに/或いは高圧及び高温で処理することによって実行される、請求項1又は3に記載の方法(1)或いは請求項2又は3に記載の組合せ方法(2)。
【請求項5】
段階(1B1)又は(2B1)からの凝縮させた前記NH
3に富む蒸気をアルカリ化する段階(1B2)又は(2B2)は、殊にNaOHの添加により、場合によってはCaO又はCa(OH)
2(石灰乳)の更なる添加により、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて実行される、請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の方法(1)或いは請求項2~4のいずれか一項に記載の組合せ方法(2)。
【請求項6】
段階(2D6)からの前記精製リン酸含有液の少なくとも一部を濃縮し、それによりリン酸が取得及び分離される、段階(1D7)又は(2D7)は、殊に蒸発濃縮によって実行される、請求項1及び3~5のいずれか一項に記載の方法(1)或いは請求項2~5のいずれか一項に記載の組合せ方法(2)。
【請求項7】
段階(1D4)また(2D4)からの、硫酸を添加することによって前記リン酸含有液を精製し、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離され、前記精製リン酸含有液が生じる段階(1D6)又は(2D6)が実行される、請求項1及び3~6のいずれか一項に記載の方法(1)、或いは請求項2~6のいずれか一項に記載の組合せ方法(2)。
【請求項8】
段階(1D6)又は(2D6)において、硫酸を添加することによる段階(1D4)又は(2D4)からの前記リン酸含有液の精製に、イオン交換又は液液抽出を適用することによる、特に好ましくはイオン交換による更なる精製が続く、請求項7に記載の方法(1)又は組合せ方法(2)。
【請求項9】
段階(1E)において、段階(1B2)で得られた前記アンモニアをリン酸と反応させる、或いは段階(2E)において、段階(2B2)で得られた前記アンモニア及び段階(2C4)で得られた前記アンモニアをリン酸と反応させ、殊に、段階(1D6)又は(2D6)からの前記精製リン酸含有液の形態のリン酸、並びに/或いは段階(1D7)又は(2D7)からのリン酸が使用される、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載の方法(1)或いは請求項2~8のいずれか一項に記載の組合せ方法(2)。
【請求項10】
前記生物由来廃棄物の固形物を液相から分離する段階(2C1)は、段階(2C2)の前に、好ましくは遠心分離によって実行される、請求項2~9のいずれか一項に記載の組合せ方法(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の主題
本発明は、水性液相を含む、下水汚泥及び場合によっては液体肥料などの生物由来廃棄物からリン酸塩及び窒素を組み合わせて回収する方法に関する。本発明の核心的課題は、下水汚泥灰からリンを回収すること、並びに下水汚泥乾燥の蒸気及び液体肥料からの窒素を用いてリンをNP肥料リン酸二アンモニウムへ変換することである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
全ての化合物中のリンは生命にとって不可欠である。人間、動物、植物はその可給性に頼っている。しかし、リン酸塩は主に堆積鉱床(モロッコ、中国、米国)のリン酸塩含有岩石から採取される。ドイツは100%輸入に頼っている。このことから生じる問題は、これらの鉱床が有限であり、採掘深さが増すにつれてカドミウムとウランによる重金属汚染が増加するということである。資源及び環境保護の理由から、リンのリサイクルは不可欠な一歩である。
【0003】
資源としての下水汚泥は、リンのリサイクル可能性が最も高いため、これを背景として、下水汚泥廃棄物令(AbfKlarV)を改正することにより、新しい政治的及び法的枠組み条件が連邦レベルで創設された。将来的に、ドイツでは下水汚泥処理の過程でリンを回収することが極めて重要になり、法律で義務付けられることになる。
【0004】
出願人の独国特許発明第102013018650号明細書、独国特許出願公開第102013018652号明細書、及び独国特許発明第102014006278号明細書は、下水汚泥灰からリンを回収する方法を示す。
【0005】
下水汚泥令(AbfKlarV)の2017年10月3日の改正は、特に、下水汚泥の有価成分(リン)をこれまでよりも包括的に経済循環に戻すと同時に、土壌の汚染物質含有量を更に低減する目的で、従来の土壌に関連する下水汚泥の利用を大幅に減らすという目標を追求するものである。AbfKlarVによると、全ての下水処理事業者はリンをリサイクルする義務を負う。将来的に、農業利用は限られた範囲でのみ可能となる。
【0006】
したがって、下水汚泥若しくは下水汚泥灰を経済的に処理すると同時に、そこに含まれる貴重なリン酸塩と窒素を組み合わせて回収することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の課題:
そのことから、下水汚泥若しくは下水汚泥灰からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法を提供することが本発明の課題となった。
【0008】
発明の概要:
上記したように、本発明の核心的課題は、下水汚泥灰からリンを回収すること、並びに下水汚泥乾燥の蒸気及び液体肥料からの窒素を用いてリンをNP肥料リン酸二アンモニウムに変換することである。本発明は、組み合わせられた、かつ統合された方法で下水汚泥若しくは下水汚泥灰からリン酸塩と窒素が回収される方法をここに初めて提供するという、とてつもなく大きな利点をもたらす。
【0009】
下水汚泥からのリンの回収には、液体肥料からの窒素の回収もまた本発明の方法の中心的な構成要素であり、その際、NH3はストリッピングによって得られる。これは、得られたリン酸を用いて、下水汚泥の後乾燥のNH3含有蒸気と一緒にリン酸二アンモニウムに変換される。出願人の独国特許発明第DE102016122869号明細書は、液体肥料を処理する方法を示す。
【0010】
下水汚泥灰の生成は、物質とエネルギーの交差と相乗効果に基づくリンリサイクルの不可欠な構成要素である。次に、この灰からリンがリン酸の形で得られる。これは、リン産業の中心となる基礎化学物質である。リン酸の他に、石膏や金属塩(鉄、アルミニウム)などの副次原料も回収される。有価物質は、建築資材産業(石膏)、及び下水処理場の沈殿剤(金属塩)として利用される。プロセスの最後に残った灰は、建築資材産業で骨材として用いられる。
【0011】
下水汚泥の焼却に必要な約40%DM(乾物)への後乾燥時にNH3に富む蒸気が発生し、リン酸脱酸装置(Riesler)でこの蒸気の凝縮と、リン酸による直接変換とが行われる。生じるリン酸二アンモニウムは、約10%の水溶液であり、肥料剤として現地で(lokal)直接使用されるか、又は蒸発濃縮及び冷却によって結晶化され、乾燥及び粒状化されて一般的なNP肥料とされる。
【0012】
液体肥料は統合プロセス全体で使用される。圧力容器内で、加圧下で液体肥料がCO2で処理され、含有リン酸塩が固体粒子相から液相に移行する。緩和後、遠心分離によって固形物の分離が行われる。肥料に含まれるリンと窒素はここで液相に濃縮される。石灰乳(Ca(OH)2)でアルカリ化し、場合によっては蒸気を導入することにより、NH3がストリッピングされ、リンがリン酸三カルシウム(アパタイト)として沈殿する。上述のように、NH3は、下水汚泥の後乾燥のNH3に富んだ蒸気と一緒に、同様に(例えば脱酸装置)設備内でリン酸二アンモニウムに変換される。沈殿したリン酸三カルシウムは、予定された下水汚泥焼却施設で乾燥した下水汚泥と一緒に熱処理され、続いてリン回収法へ共に送られる。処理プロセスの最後に、液体肥料の残液が残るが、これは微量のリンと窒素しか含まず、カリウムに富み、灌漑に使用することができるか、又は浄化処理法により、水循環に戻すことができるように処理される。脱水された固相は、バイオガス施設で更に使用でき、又は土壌改良に直接使用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】方法(1)の重要な段階の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明:
本発明によれば、上記課題は、下水汚泥、及び場合により水性液相を含む液体肥料などの生物由来廃棄物から(及びそれを再生処理して)リン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法によって解決される。その場合、方法(1)において、下水汚泥のみからリン酸塩と窒素を組み合わせた回収が行われる。組合せ方法(2)において、下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせた再生が、水性液相を含む生物由来廃棄物の再生処理と組み合わせて行われ、生物由来廃棄物は、特に液体肥料、水肥、及びバイオガス施設からの発酵残留物である。
【0015】
本発明の一態様(1)において、本発明は、以下の方法段階を包含する下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法(1)に関する。
段階(1A1):下水汚泥を任意的に解砕し、
段階(1A2):下水汚泥を乾燥させ、NH3に富む蒸気と乾燥下水汚泥とが生じ、
段階(1B1):段階(1A2)からのNH3に富む蒸気を任意的に凝縮させ、
段階(1B2):アンモニア[NH3]を放出させて、段階(1B1)からの凝縮させたNH3に富む蒸気を任意的にアルカリ化し(殊にCaO又はCa(OH)2(石灰乳)を用いて、場合によってはNaOHと混合して)、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いてアンモニア[NH3]を追い出し(アンモニアストリッピング1)、
段階(1D2):段階(1A)からの乾燥下水汚泥を焼却して下水汚泥灰とし、
段階(1D3):段階(1D2)からの下水汚泥灰をリン酸で処理し、
段階(1D4):段階(1D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分を分離し、それにより酸不溶性部分と、リン酸含有液の形態の濾過液又は上澄み液が生じ、
段階(1D5):段階(1D3)で使用するために、段階(1D4)からのリン酸含有液の少なくとも一部を任意的に戻し、
段階(1D6):段階(1D4)からのリン酸含有液に硫酸を添加することによって段階(1D4)からのリン酸含有液を精製し、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離され、並びに/或いはイオン交換又は液液抽出を適用することによって、精製リン酸含有液が生じ、
段階(1D7):段階(1D6)からの精製リン酸含有液の少なくとも一部を任意的に濃縮し、それによりリン酸が取得及び分離され、
段階(1E):段階(1B1)からの凝縮させたNH3に富む蒸気及び/又は段階(1B2)で得られたアンモニア[NH3]を、段階(1D4)からのリン酸含有液、段階(1D6)からの精製リン酸含有液、及び/又は段階(1D7)からのリン酸の形態のリン酸[H3PO4]と反応させ、アンモニウム-リン酸塩化合物、殊にリン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4]を得、得られたアンモニウム-リン酸塩化合物を任意的に分離する。
【0016】
図1(Fig.1)は、上記のように、方法(1)の重要な段階の概要を説明及び図示する。
【0017】
本発明の別の態様(2)において、本発明は、以下の方法段階を包含する、下水汚泥、及び生物由来廃棄物であって、少なくとも尿素及びアンモニウム化合物と、無機及び有機結合リン酸塩が溶解された、並びに/或いは粒子の形態で含有される水性液相を含む生物由来廃棄物からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収するための組合せ方法(2)に関し、すなわち、
段階(2A1):下水汚泥を任意的に解砕し、
段階(2A2):下水汚泥を乾燥させ、NH3に富む蒸気と乾燥下水汚泥とが生じ、
段階(2B1):段階(2A2)からのNH3に富む蒸気を任意的に凝縮させ、
段階(2B2):アンモニア[NH3]を放出させて、段階(2B1)からの凝縮させたNH3に富む蒸気を任意的にアルカリ化し、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いてアンモニア[NH3]を追い出し(アンモニアストリッピング2)、
段階(2C1):生物由来廃棄物の固形物を液相から分離し、
段階(2C1):粒子結合リン酸塩を溶解するために、高圧下の二酸化炭素ガス[CO2]、又は超臨界二酸化炭素を生物由来廃棄物の液相に導入し、
段階(2C2):液相を酸性化することと、溶解したCO2及び/又は炭酸塩として結合したCO2を追い出すこととによって、段階(2C1)からの液相中のCO2含有量を低減し、
段階(2C4):アンモニア[NH3]を放出させて、段階(2C2)又は(2C3)からの液相をアルカリ化し、かつ加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いてアンモニア[NH3]を追い出し(アンモニアストリッピング3)、
段階(2C5):段階(2C4)からの液相からカルシウム-リン酸塩を沈殿させて分離し、
段階(2D1):段階(2C5)からの沈殿させて分離したカルシウム-リン酸塩を段階(2A)からの乾燥下水汚泥に混合し、
段階(2D2):段階(2C4)からの沈殿させて分離したカルシウム-リン酸塩と段階(2A2)からの乾燥下水汚泥との混合物を焼却して下水汚泥灰とし、
段階(2D3):段階(2D2)からの下水汚泥灰をリン酸で処理し、
段階(2D4):段階(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分を分離し、それにより酸不溶性部分とリン酸含有液の形態の濾過液又は上澄み液が生じ、
段階(2D5):段階(2D3)で使用するために、段階(2D4)からのリン酸含有液の少なくとも一部を任意的に戻し、
段階(2D6):段階(2D4)からのリン酸含有液に硫酸を添加することによって段階(2D4)からのリン酸含有液を精製し、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離され、並びに/或いはイオン交換又は液液抽出を適用することによって、精製リン酸含有液が生じ、
段階(2D7):段階(2D6)からの精製リン酸含有液の少なくとも一部を任意的に濃縮し、それによりリン酸が取得及び分離され、
段階(2E):段階(2B1)からの凝縮させたNH3に富む蒸気及び/又は段階(2B2)で得られたアンモニア[NH3]と、段階(2C4)で得られたアンモニア[NH3]を、段階(2D4)からのリン酸含有液、段階(2D6)からの精製リン酸含有液、及び/又は段階(2D7)からのリン酸の形態のリン酸[H3PO4]と反応させ、アンモニウム-リン酸塩化合物を得、得られたアンモニウム-リン酸塩化合物を任意的に分離する。
【0018】
態様(1)及び/又は態様(2)の好ましい実施形態を以下に説明するが、これらはそれぞれ互いに組み合わせることができ、例えば、1つの段階の特に好ましい実施形態と、1つの段階の、又は複数の段階の少なくとも1つの別の好ましい実施形態とを組み合わせることができるということを付言しておく。
【0019】
本発明の態様(1)の好ましい実施形態において、下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法(1)に、段階(1D2)の下水汚泥灰は、段階(1A1)及び(1A2)からの当初使用された下水汚泥を焼却することによって生じる灰だけである。これはリン酸塩含有下水汚泥である。本発明の態様(1)の一実施形態において、下水汚泥からリン酸塩と窒素を組み合わせて回収する方法(1)に、段階(1D2)の下水汚泥灰に、他のリン酸塩含有灰、例えば廃棄物焼却施設でリン酸塩含有下水汚泥、生分解性廃棄物、生物由来廃棄物及び/又は動物廃棄物を焼却することによって得られるあらゆる灰を付加することもできる。段階(1D2)の下水汚泥(段階(1A1)及び(1A2)で使用される)の焼却から生じる下水汚泥灰は、リン酸塩含有量(P2O5で測定)が、>3重量%、>5重量%、>7重量%、>10重量%、>15重量%、又は>20重量%(>40重量%又は>35重量%のリン酸塩含有量(P2O5で測定)はまれ)、或いはリン含有量(P)が>1重量%、>2重量%、>3重量%、>5重量%、>8重量%、又は>10重量%(>15重量%又は>14重量%のリン含有量(Pで測定)はまれ)である。
【0020】
本発明の態様(2)の好ましい実施形態において、下水汚泥及び生物由来廃棄物の両方からリン酸塩及び窒素を組み合わせて回収する組合せ方法(2)では、生物由来廃棄物は、バイオガス施設からの好ましくは液体肥料、水肥及び/又は発酵残渣である。本発明の態様(2)の好ましい実施形態において、下水汚泥及び生物由来廃棄物の両方からリン酸塩及び窒素を組み合わせて回収する組合せ方法(2)では、段階(2D2)の下水汚泥灰は、段階(2A1)及び(2A2)からの当初使用された下水汚泥を焼却することによって生じる灰だけである。これはリン酸塩含有下水汚泥である。一実施形態では、段階(2D2)の下水汚泥灰に、他のリン酸塩含有灰、例えば廃棄物焼却施設でリン酸塩含有下水汚泥、生分解性廃棄物、生物由来廃棄物及び/又は動物廃棄物を焼却することによって得られるあらゆる灰を付加することもできる。その場合、原則的に、下水汚泥灰は、他の(リン酸塩含有)灰、例えば、廃棄物焼却施設でリン酸塩含有下水汚泥、生分解性廃棄物、生物由来廃棄物及び/又は動物廃棄物を焼却することによって得られる灰も共に含むことができる。段階(2D2)における下水汚泥(段階(2A1)及び(2A2)で使用される)の焼却から生じる下水汚泥灰は、リン酸塩含有量(P2O5で測定)が、>3重量%、>5重量%、>7重量%、>10重量%、>15重量%、又は>20重量%(>40重量%又は>35重量%のリン酸塩含有量(P2O5で測定)はまれ)、或いはリン含有量(P)が>1重量%、>2重量%、>3重量%、>5重量%、>8重量%、又は>10重量%(>15重量%又は>14重量%のリン含有量(Pで測定)はまれ)である。本発明の態様(2)の好ましい実施形態では、組合せ方法(2)に、水性液相を有する生物由来廃棄物中で液相に含まれる尿素が、酵素ウレアーゼを添加することによって加水分解されて、アンモニア及び/又はアンモニウムが得られる。
【0021】
好ましい実施形態では、下水汚泥を解砕する段階(1A1)又は(2A1)は、段階(1A2)又は(2A2)の前に実行され、段階(1A1)又は(2A1)は、好ましくは機械的処理によって(例えばボールミルを用いて)、超音波による処理によって、並びに/或いは高圧及び高温で実行される。解砕は、段階(1A2)又は(2A2)の乾燥によって生じる蒸気中のアンモニア収率を高める。
【0022】
段階(1A2)又は(2A2)の好ましい実施形態では、下水汚泥の乾燥が高温で実行され、及び/又は乾燥によって生じるNH3に富む蒸気は乾燥場所で直接収集される。通常、(機械的に)脱水された下水汚泥は、特に約25%のDM(乾物、重量%)を有する。焼却には、下水汚泥を約40%DM(乾物、重量%)まで乾燥させる必要がある。これはこの段階で行われ、例えばベルト乾燥機又は流動床乾燥機を使用することができ、例えば40℃~95℃又は50℃~80℃、又は60℃~70℃の温度が使用される。
【0023】
段階(1B1)又は(2B1)の好ましい実施形態では、段階(1A2)又は(2A2)からのNH3に富む蒸気の凝縮は、好ましくは乾燥場所で直接行われる。蒸気がすでに液体である場合にはこれらの段階を省略することができる。
【0024】
任意的な段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、段階(1B1)又は(2B1)からの凝縮されたNH3に富む蒸気のアルカリ化は任意的に行われるのではなく、段階(1B1)又は(2B1)に続く。段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、段階(1B1)又は(2B1)からの凝縮されたNH3に富む蒸気のアルカリ化は、NaOHの添加によって、場合によってはCaO又はCa(OH)2(石灰乳)を更に添加して、特に場合によってはCa(OH)2(石灰乳)を更に添加して行われる。段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング1又は2)は、加熱下で行われる。段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング1又は2)は、負圧を印加することによって行われる。段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング1又は2)は、空気流又は蒸気流を用いて行われる。段階(1B2)又は(2B2)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング1又は2)は、加熱下で、空気流又は蒸気流を用いて行われる。本発明による方法の段階(1B2)又は(2B2)の液相中のアンモニアの放出及び追い出しは基本的に知られている。本発明によれば、これは例えばCaO又はCa(OH)2(石灰乳)を用いて、場合によってはNaOHと混合して液相をアルカリ化することによって行われ、ガス状のアンモニアの追い出しは、加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて行われる。その場合、9~14、殊に10~13、特に好ましくは11~12のpH値まで液相をアルカリ化できる。追い出されたガス状のアンモニアは、鉱酸又は水(アンモニア水)に吸収され得る。
【0025】
好ましい実施形態では、段階(2C1)において、生物由来廃棄物の固形物(存在する場合、例えば植物の残骸又はわら等)を、機械的分離によって液相から分離することができる。これは、例えば、篩い分け、レーキを用いて、沈降分離、濾過、遠心分離、又はこれらの方法の組み合わせによって行うことができる。代替的又は追加的に、粗い固形物を機械的に破砕することによって、例えば刻む、挽く、又は同等の適切な方法によって出発材料の流動性を生成することができる。殊に、分離は、遠心分離によって行われる。一実施形態では、生物由来廃棄物の固形物を液相から分離する段階(1C1)又は(2C1)は、段階(2C2)の後に実行される。
【0026】
段階(2C2)の好ましい実施形態では、生物由来廃棄物の液相への高圧下の二酸化炭素ガス[CO2]、又は超臨界二酸化炭素の導入は圧力容器で行われる。その目的は、粒子結合したリン酸塩を溶解することである。高圧下の二酸化炭素ガス(CO2)又は超臨界二酸化炭素を液相に導入して下水汚泥生成物からリン酸塩を得る方法は、参照により本明細書に組み込まれる独国特許出願公開第102009020745号明細書から知られる。そこに記載される方法は、本発明による方法の段階(2C2)において、粒子結合リン酸塩を本発明により溶解するために相応に適用され得る。
【0027】
段階(2C3)の好ましい実施形態では、段階(2C2)からの液相中のCO2含有量の低減が、無機酸を用いて液相を酸性化することによって行われる。これによって、溶解した CO2及び/又は炭酸塩として結合したCO2の液相からの追い出しが成功裏に行われる。アンモニアストリッピング(3)の段階(2C4)において、NH3並びに/或いはCaO又はCa(OH)2を用いてアルカリ化することによってpH値を上昇させる場合、液相中のCO2含有量が高いために、望ましいリン酸カルシウムだけでなく、不都合な炭酸カルシウムも高い割合で生じ、沈殿する。したがって、次の段階(2C4)でのアンモニアストリッピングのために液相をアルカリ化する前に、本発明によれば、液相を酸性化することと、溶解したCO2及び/又は炭酸塩として結合したCO2を追い出すこととによって、液相中のCO2含有量が低減される。酸性化は、好ましくはリン酸を用いて行われる。温度を上昇させることにより、及び/又は反応混合物を撹拌若しくはそれ以外の方法で動かすことによってCO2の追い出しを有利に加速させることができる。
【0028】
段階(2C4)の好ましい実施形態では、段階(2C3)からの液相のアルカリ化は、NaOHの添加によって、場合によってはCaO又はCa(OH)2(石灰乳)を更に添加して、特に場合によってはCa(OH)2(石灰乳)を更に添加して行われる。段階(2C4)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング3)は加熱下で行われる。段階(2C4)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング3)は負圧を印加することによって行われる。段階(2C4)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング3)は空気流又は蒸気流を用いて行われる。段階(2C4)の好ましい実施形態では、アンモニア[NH3]の追い出し(アンモニアストリッピング3)は、加熱下で、並びに空気流又は蒸気流を用いて行われる(アンモニアストリッピング3)。本発明による方法の段階(2C4)の液相中のアンモニアの放出及び追い出し、いわゆるアンモニアストリッピングは原理的に知られている。本発明によれば、これは例えばCaO又はCa(OH)2(石灰乳)を用いて、場合によってはNaOHと混合して液相をアルカリ化することによって行われ、ガス状のアンモニアの追い出しは、加熱下で、並びに/或いは負圧を印加することによって、並びに/或いは空気流又は蒸気流を用いて行われる。その場合、9~14、殊に10~13、特に好ましくは11~12のpH値まで液相をアルカリ化できる。追い出されたガス状のアンモニアは、鉱酸又は水(アンモニア水)に吸収され得る。
【0029】
段階(2C4)からの液相からカルシウム-リン酸塩を沈殿させて分離する段階(2C5)の好ましい実施形態では、カルシウム-リン酸塩は、殊にリン酸三カルシウム[Ca3(PO4)2]又はヒドロキシアパタイト[Ca5(PO4)3(OH)]として存在する。しかしこの場合、カルシウム-リン酸塩は、Ca3(PO4)2)、CaHPO4、Ca5(PO4)3(OH)及びCa(H2PO4)2を含む。段階(2C5)の好ましい実施形態では、液相からのカルシウム-リン酸塩の分離は、濾過、遠心分離、沈降分離、又は前述の手法の組み合わせによって行われる。
【0030】
段階(2D1)の好ましい実施形態では、段階(2C5)からの沈殿させて分離したカルシウム-リン酸塩は、段階(2A)からの乾燥下水汚泥と混合され、その場合、混合には様々な手法を使用することができる。この混合の目的は、通常、段階(2C5)からのカルシウム-リン酸塩に付随する有機残留物を、次の段階(2D2)の焼却によって排除することである。
【0031】
段階(2D2)の好ましい実施形態では、段階(2C4)からの沈殿させて分離したカルシウム-リン酸塩と段階(2A2)からの乾燥下水汚泥との混合物が焼却され、その場合、段階(2C4)からのカルシウム-リン酸塩に付着した有機残留物も焼却される。段階(2D2)の好ましい実施形態では、段階(2C4)からの沈殿させて分離したカルシウム-リン酸塩と段階(2A2)からの乾燥下水汚泥との混合物の焼却は、廃棄物焼却施設において、600℃~1,200℃、好ましくは800℃から900℃で行われる。
【0032】
段階(1D2)の好ましい実施形態では、段階(1A2)からの乾燥下水汚泥を焼却して下水汚泥灰とし、その場合、特に有機残留物が焼却される。段階(1D2)の好ましい実施形態では、段階(1A2)からの下水汚泥の下水汚泥灰への焼却は、廃棄物焼却施設において、600℃~1,200℃、殊に800℃~900℃で行われる。
【0033】
段階(1D3)又は(2D3)の好ましい実施形態では、段階(1D2)又は(2D2)からの下水汚泥灰はリン酸で処理される。殊に、この処理は、5分未満、又は2分未満、又は5分~45分、又は2~300分、殊に10~60分、又は2~20分間行われ、殊にこの処理は、40℃を超える、又は50℃を超える、又は20℃~90℃、殊に60℃~80℃又は20℃~80℃又は25℃~50℃の温度で行われる。殊に、酸は、5重量%~50重量%、殊に10重量%~30重量%(水希釈で)の濃度で存在し、並びに/或いは反応器内の下水汚泥灰は酸で処理され、並びに/或いは酸に対する下水汚泥灰の割合は、5重量%~50重量%、殊に20重量%~30重量%又は25重量%~35重量%である。特に好ましくは、段階(1D2)又は(2D2)からの下水汚泥灰のリン酸での処理は、20~80℃又は25~50℃の温度で2分未満又は2~20分間行われ、酸は、(水希釈液中)10重量%~30重量%の濃度で存在し、酸に対する下水汚泥灰の割合は、20重量%~30重量%又は25重量%~35重量%である。特に好ましくは、段階(1D2)又は(2D2)からの下水汚泥灰のリン酸での処理は、25~50℃の温度で2~20分間行われ、酸は(水希釈液中)10重量%~30重量%の濃度で存在し、酸に対する下水汚泥灰の割合は25重量%~35重量%である。
【0034】
段階(2D4)の好ましい実施形態では、段階(1D3)又は(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分の分離が行われ、それにより酸不溶性部分及びリン酸含有液の形態の濾過液又は上澄み液が生じる。本発明の好ましい実施形態では、段階(1D3)又は(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分は、機械的な濾過法及び/又は脱水法で分離される。本発明の好ましい実施形態では、段階(1D3)又は(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分の分離は、脱水ユニット(例えば、真空ベルトフィルタ、チャンバフィルタプレス、膜フィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機)により行われる。本発明の好ましい実施形態では、段階(1D3)又は(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分の分離は、真空ベルトフィルタで分離される。本発明の好ましい実施形態では、段階(1D3)又は(2D3)からの処理された下水汚泥灰の酸不溶性部分の分離後、フィルタユニットの残留物が水で洗浄され、洗浄水は段階(1D3)又は(2D3)に戻される。
【0035】
段階(1D5)又は(2D5)の好ましい実施形態では、段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液の少なくとも一部は、段階(1D3)又は(2D3)で使用するために戻される。殊に、段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液の全含有量に対して、段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液の少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%、更により好ましくは20%~80%、最も好ましくは40%~60%が、段階(1D3)又は(2D3)で使用するために戻される。段階(1D5)又は(2D5)の好ましい実施形態では、この段階は、段階(1D6)の後、若しくは段階(2D6)の後、及び段階(1D7)若しくは(2D7)の前に行われる。
【0036】
段階(1D6)又は(2D6)の好ましい実施形態では、段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液に硫酸を添加することによって、段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液が精製され、それにより硫酸カルシウム沈殿物が取得及び分離される。好ましい実施形態に限るが、これにイオン交換又は液液抽出の適用が続くことができ、イオン交換は(特にイオン交換樹脂の使用、及び鉱酸による再生-が好ましい。いずれの場合も、精製リン酸含有液が生じる。
【0037】
段階(1D4)又は(2D4)からのリン酸含有液への硫酸の添加による精製に関しては、硫酸の添加が殊に撹拌反応器で行われる。更に、硫酸は、好ましくは撹拌反応器で10~98重量%、殊に40~80重量%の希釈で添加され、硫酸は、好ましくは、0.5Ca対1.5SO4の溶解したカルシウム濃度、殊に1.0Ca対1.0SO4に相当するモル比で添加される。その場合、硫酸添加後の撹拌反応器での滞留時間は5~60分、殊に10~30分であり、及び/又は撹拌反応器での反応温度(硫酸添加後の硫酸カルシウムの沈殿)は20℃~90℃、好ましくは60~90℃である。更に、硫酸カルシウム沈殿物は、機械的な濾過法及び/又は脱水法を用いて取得及び分離されることが好ましい。好ましくは、硫酸カルシウム沈殿物の分離は、脱水ユニット(例えば、真空ベルトフィルタ、チャンバフィルタプレス、膜フィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機)を使用して行われる。特に好ましくは、硫酸カルシウム沈殿物の分離は、真空ベルトフィルタを用いて行われる。殊に、硫酸カルシウム沈殿物の分離後、フィルタユニット内の残留物が水で洗浄され、洗浄水は、段階(1D3)又は(2D3)で使用するために戻される。
【0038】
段階(1D7)又は(2D7)の好ましい実施形態では、段階(1D6)又は(2D6)からの精製リン酸含有液の少なくとも一部が濃縮され、それによりリン酸が取得及び分離され、これは好ましくは蒸発濃縮によって行われる。
【0039】
段階(2E)の好ましい実施形態では、段階(2B2)で得られたアンモニア[NH3]及び/又は段階(2C4)で得られたアンモニア[NH3]を、段階(2D4)からのリン酸含有液、段階(2D6)からの精製リン酸含有液、及び/又は段階(2D7)からのリン酸の形態のリン酸[H3PO4)と反応させ、アンモニウム-リン酸塩化合物が得られる。殊に、アンモニウム-リン酸塩化合物は、リン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4](肥料)である。生じるリン酸二アンモニウムは、約10%の水溶液であり、肥料剤として現地で直接使用でき、或いは蒸発濃縮及び冷却によって結晶化され、かつ乾燥及び粒状化されて一般的なNP肥料とすることができ、得られたアンモニウム-リン酸塩化合物は任意的に分離される。殊に、リン酸は、段階(1D4)からのリン酸含有液、又は段階(1D6)からの精製リン酸含有液の形態で付加される。殊に、リン酸は、段階(1D4)からのリン酸含有液の形態で付加される。殊に、リン酸は、段階(1D6)からの精製リン酸含有液の形態で、特に硫酸カルシウム沈殿物CaSO4の沈殿後に付加される。殊に、リン酸は10~15%の濃度で使用される。リン酸[H3PO4]を40~89重量%の濃度、又は50~75重量%の濃度で使用することもできる。殊に、アンモニアは、アンモニア水の形態で使用される。殊に、アンモニアは約25%の濃度で使用される。殊に、アンモニアは、約25%の濃度のアンモニア水の形態で使用される。殊に、アンモニアは、脱酸装置(リン酸脱酸装置)においてリン酸と反応させられる。好ましい実施形態では、段階(2E)において、段階(2B2)及び段階(2C4)で得られたアンモニアがリン酸と反応させられる。殊に、リン酸は、段階(2D6)からの精製リン酸含有液及び/又は段階(2D7)からのリン酸の形態で使用される。
【0040】
段階(1E)の好ましい実施形態では、段階(1B2)で得られたアンモニア[NH3]が、段階(1D4)からのリン酸含有液、段階(1D6)からの精製リン酸含有液、及び/又は段階(1D7)からのリン酸の形態のリン酸[H3PO4]と反応させられ、アンモニウム-リン酸塩化合物が得られる。殊に、アンモニウム-リン酸塩化合物は、リン酸水素二アンモニウム[(NH4)2HPO4](肥料)である。生じるリン酸二アンモニウムは、約10%の水溶液であり、肥料剤として現地で直接使用でき、又は蒸発濃縮及び冷却によって結晶化され、かつ乾燥及び粒状化されて一般的なNP肥料とすることができ、得られたアンモニウム-リン酸塩化合物は任意的に分離される。殊に、リン酸は、段階(1D4)からのリン酸含有液、又は段階(1D6)からの精製リン酸含有液の形態で付加される。殊に、リン酸は、段階(1D4)からのリン酸含有液の形態で付加される。殊に、リン酸は、段階(1D6)からの精製リン酸含有液の形態で、特に硫酸カルシウム沈殿物CaSO4の沈殿後に付加される。殊に、リン酸は10~15%の濃度で使用される。リン酸[H3PO4]を40~89重量%の濃度、又は50~75重量%の濃度で使用することもできる。殊に、アンモニアは、アンモニア水の形態で使用される。殊に、アンモニアは約25%の濃度で使用される。殊に、アンモニアは、約25%の濃度のアンモニア水の形態で使用される。殊に、アンモニアは、脱酸装置(リン酸脱酸装置)においてリン酸と反応させられる。好ましい実施形態では、段階(1B2)で得られたアンモニアは、段階(1E)でリン酸と反応させられる。殊に、リン酸は、段階(1D6)からの精製リン酸含有液及び/又は段階(1D7)からのリン酸の形態で使用される。
【0041】
定義:
本発明の意味における「リン酸カルシウム」という用語は、Ca3(PO4)2)、CaHPO4、Ca5(PO4)3(OH)及びCa(H2PO4)2を含む。
【0042】
本発明の意味における「灰」という用語は、有機材料の焼却からのあらゆる残留固形物を指す。本発明の意味において、これは特に下水汚泥の焼却からの残留固形物である。しかし原則的に、これは生分解性廃棄物、生物廃棄物及び/又は動物廃棄物、食肉処理場からの廃棄物、例えば肉骨粉の焼却からの残留固形物でもあり得る。灰は、とりわけ、例えばAl2O3、CaO、Fe2O3、MgO、MnO、P2O5、P4O10、K2O、SiO2、Na2Co3、NaHCO3等の様々な金属の酸化物及び(重)炭酸塩からなる。
【0043】
本発明の意味における「リン酸塩含有灰」という用語は、ここに定義される少なくとも1つのリン酸塩を含むここに定義される灰を指す。
【0044】
本発明の意味における「リン酸塩」という用語は、P2O5及びP4O10を指す。その一方で、「リン酸塩」という用語は、更に、オルトリン酸(H3PO4)の塩及びエステルエステルを指し、オルトリン酸及びそのエステルの凝縮物(ポリマー)も明確に含む。特に、「リン酸塩」という用語は、一般式X(Y)m(PO4)nのリン酸の金属塩を指し、X、及び選択的にYは、アルミニウム、ベリリウム、ビスマス、鉛、カドミウム、クロム、鉄、ガリウム、インジウム、カリウム、コバルト、銅、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、ニッケル、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ストロンチウム、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛、スズからなる群より選択される金属である。
【0045】
本発明の意味における「沈殿物」という用語は、溶液から溶解した物質を固形物として除去することを示し、これは通常、適切な物質(沈殿剤)の添加によって引き起こされる。特に、この用語は、薄片、液滴、又は結晶材料の形態の、あらゆる微結晶、結晶、又は非結晶状の形態の完全又は部分的に不溶性のあらゆる沈殿物を含む。「沈殿物」という用語は、本発明による方法で得られる沈殿物の粉末、微粉末、塵、バルク材料、粒状材料、グリット等へのあらゆる更なる加工、改変、精製等を明確に含む。
【0046】
本発明の意味における「廃棄物焼施設」という用語は、あらゆる種類の廃棄物の大気可燃成分の焼却に適した全ての施設、設備などを指す。
【0047】
本発明の意味における「下水汚泥」という用語は、液体中に細かく分散された固形物の粒子のあらゆる懸濁液を指す。下水汚泥は、一次汚泥、生汚泥、余剰汚泥として、処理された及び/又は安定化された下水汚泥(好気性/嫌気性)として存在し得る。特に/殊に、これは(機械的に)脱水された下水汚泥、及び/又は特に/好ましくは15%~30%の乾物、特に約25%(DM、乾物)を含む下水汚泥である。
【0048】
好ましい実施形態では、粒子が懸濁する液体は、本明細書で定義される廃水である。
【0049】
本発明の意味における「廃水」という用語は、飲料水規則(TrinkwV)、並びに/或いは国内及び/又は国際飲料水基準(例えばドイツのDIN2000)の意味における飲料水の質を有さない、水性の性質及び/又は有機的な性質、或いはそれらの混合の全ての液体を指す。廃水という用語は、更に、水管理法(WHG)第54条第1項に定められた全ての廃水を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の意味における廃水は、使用により汚染された、若しくは特性又はその組成が変化した水である。更に、本発明の意味における「廃水」という用語は、家庭での、商業での、農業での、又はその他の使用によってその特性が変化した水、並びに乾燥した天候で、それと一緒に流れ出る水(汚水)、並びに市街地又は舗装地の領域から降水によって集められ流れ出る水(雨水)を含む。廃棄物の処理、保管、処分する施設から排出及び収集される液体も汚水とみなされる。汚水は、トイレ(糞水又はトイレ廃水)、衛生施設、キッチン及び洗濯機(洗濯水又は家庭雑廃水)からの生活廃水、並びに公共下水システムに排出される営業活動からの廃水(商業廃水又は工業廃水)である。冷却システムからの温水も廃水とみなされる。浄水場の極めて多様な浄化及び処理技術で生じる廃水は、本発明の意味における廃水に属する。
【国際調査報告】