(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ポリマー色素-抗体コンジュゲート間の非特異的相互作用を阻止する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/533 20060101AFI20240227BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240227BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240227BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240227BHJP
C09B 69/10 20060101ALI20240227BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20240227BHJP
C08G 65/334 20060101ALI20240227BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20240227BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/533
G01N33/48 P ZNA
G01N33/53 Y
C12Q1/02
C09B69/10 B
C08G61/12
C08G65/334
C08L65/00
C08L71/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548239
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022015296
(87)【国際公開番号】W WO2022170084
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Beckman Coulter, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 S. Kraemer Boulevard, Brea, CA 92821, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モンソニス, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】サン, ボイ ホア
(72)【発明者】
【氏名】イーシュワラン, アルンクマール
(72)【発明者】
【氏名】トマスロ, マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】グルニック, セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテシュ, ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン, シヴァ ランジニ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4J002
4J005
4J032
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045CA01
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2G045CB01
2G045CB03
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4B063QA01
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4J032CA12
4J032CA36
4J032CB03
4J032CF01
4J032CG00
(57)【要約】
本開示は、例えば、生物学的試料のフローサイトメトリー分析における、ポリマー色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用を低減するための、ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素および/または消光性部分を含むポリマー色素などのポリマー色素の非蛍光構成成分を含む組成物に関する。このような組成物を使用する方法、およびこのような組成物を含むキットもまた、提供される。ポリマー色素コンジュゲートは、その性質のため、互いに相互作用することができ、非特異的結合をもたらす。本開示は、ポリマー色素コンジュゲート間の非特異的相互作用を低減する、または阻止する組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料の染色に使用するための、結合パートナーにコンジュゲートされている少なくとも1種の蛍光ポリマー色素と共に使用する組成物であって、
第1のポリマー色素の少なくとも1種の非蛍光構成成分
非イオン性界面活性剤、および
生物学用緩衝液
を含み、
前記組成物の非存在下での前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートと比較した場合、前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートの非特異的結合を低減する組成物。
【請求項2】
第1のポリマー色素の前記非蛍光構成成分が、以下:
0.1以下、0.06以下または0.056以下の量子収率(QY)
405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の任意蛍光単位(AFU)、および
405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光
のうちの少なくとも1つを示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のポリマー色素の前記非蛍光構成成分が、ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素、消光性部分を含むポリマー色素および非蛍光ポリマー色素からなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマー色素のモノマー構成成分および光退色されたポリマー色素を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー色素のモノマー構成成分および消光性部分を含むポリマー色素を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、ポロキサマー非イオン性界面活性剤である、請求項1から5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリマー色素が、2種またはそれより多いポリマー色素を含み、各々が、結合パートナーにコンジュゲートされている、請求項1から5に記載の組成物。
【請求項8】
前記2種またはそれより多いポリマー色素コンジュゲートが、異なるポリマー色素を含むか、または同じポリマー色素を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素が、式(I)による構造
【化59】
を有するポリマーであり、
式中、
Aはそれぞれ、芳香族コモノマーおよび複素芳香族コモノマーからなる群から独立して選択され、
Lはそれぞれ、リンカー部分であり、
Mはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、
G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、
a、cおよびdは、各々が、均等にまたはランダムに反復され得る、前記構造内の各単位のmol%を独立して定義し、aはそれぞれ、10~100%のmol%であり、cはそれぞれ、0~90%のmol%であり、dはそれぞれ、0~25%のmol%であり、
bはそれぞれ、独立して、0または1であり、
mは、1~約10,000の整数である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素が、式(XX)による構造:
【化60】
を有するポリマーであり、
式中、
Aはそれぞれ、芳香族コモノマーおよび複素芳香族コモノマーからなる群から独立して選択され、
Bはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、
Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、機能的部分または結合パートナーであり、
G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、
L
1、L
2およびL
3は、リンカー部分であり、
Wは、水可溶化部分であり、
下付き文字nおよびmは、独立して、1~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字pは、0~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字n、mおよびpの合計は、2~10,000の範囲であり、
下付き文字qは、1、2、3または4であり、
下付き文字rは、1、2、3または4であり、
下付き文字sは、0、1、2または3であり、
下付き文字tは、1または2であり、
下付き文字rおよびsの合計は、1~4の範囲であり、
AおよびBは、前記コンジュゲートされているポリマー中に、ランダムにまたは非ランダムに分布されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
L
1が、スルホンアミド、スルホンアミド、サルタム、ジスルフィンアミド、アミド、ホスホンアミド、ホスホンアミデート、ホスフィンアミドおよび二級アミンからなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のポリマー色素にコンジュゲートされている前記結合パートナーが、標的分析対象に特異的に結合することができる分子または分子の複合体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のポリマー色素にコンジュゲートされている前記結合パートナーが、タンパク質、親和性リガンド、抗体、抗体断片およびオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記結合パートナーが、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記結合パートナーが、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの免疫学的活性部分である、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記結合パートナーが、単鎖抗体、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、FvまたはFab発現ライブラリである、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種のポリマー色素のモノマー構成成分が、ジヒドロフェナントレン(DHP)部分およびフルオレン部分からなる群から選択される部分を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリマー色素の前記モノマー構成成分が、式(XXII)による化学構造:
【化61】
を有するジヒドロフェナントレン(DHP)ベースの水溶性モノマーを含み、
式中、
G
1、G
2はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、C
1~C
6アルキルおよびPEGからなる群から独立して選択され、
R
2はそれぞれ、水可溶化部分、アルケン、アルキン、シクロアルキル、ハロアルキル、(ヘテロ)アリールオキシ、(ヘテロ)アリールアミノ、スルホンアミド-PEG、ホスホロアミド-PEG、アンモニウムアルキル塩、アンモニウムアルキルオキシ塩、アンモニウムオリゴエーテル塩、スルホネートアルキル塩、スルホネートアルコキシ塩、スルホネートオリゴエーテル塩、スルホンアミドオリゴエーテル、スルホンアミド、スルフィンアミド、ホスホンアミデート、ホスフィンアミド、
【化62】
からなる群から独立して選択され、
R
3はそれぞれ、水可溶化部分であり、
R
4はそれぞれ、H、アルキル、PEG、水可溶化部分、リンカー部分、発色団、カルボキシルアミン、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボン酸エステル、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒドもしくはチオール、またはそれらの保護された基からなる群から独立して選択され、
R
5はそれぞれ、H、ヒドロキシル、C
1~C
12アルキル、C
2~C
12アルケン、C
2~C
12アルキン、C
3~C
12シクロアルキル、C
1~C
12ハロアルキル、C
1~C
12アルコキシ、C
2~C
18(ヘテロ)アリールオキシ、C
2~C
18(ヘテロ)アリールアミノ、C
2~C
12カルボン酸およびC
2~C
12カルボン酸エステルからなる群から独立して選択され、
Qはそれぞれ、独立して、結合、NR
4または-CH
2であり、
Zはそれぞれ、独立して、CH
2、OまたはNR
4であり、
fはそれぞれ、独立して、0~50の整数であり、
nはそれぞれ、独立して、1~20の整数である、
請求項3から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
G
1およびG
2が、それぞれ、ハロであり、Zがそれぞれ、Oであり、R
2がそれぞれ、Hであり、nがそれぞれ、独立して、2~4であり、fがそれぞれ、独立して、5~20であり、必要に応じて、nがそれぞれ3である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種のポリマー色素の前記モノマー構成成分が、式(XXIII)による化学構造:
【化63】
を有するフルオレンベースまたはカルバゾールベースの水溶性モノマーであり、
式中、
G1、G2はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、C
1~C
6アルキルおよびPEGからなる群から独立して選択され、
Xはそれぞれ、C、NまたはSiであり、
R
4はそれぞれ、H、アルキル、PEG、水可溶化部分、リンカー部分、発色団、カルボキシルアミン、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボン酸エステル、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒドもしくはチオール、またはそれらの保護された基からなる群から独立して選択され、
R5はそれぞれ、H、ヒドロキシル、C
1~C
12アルキル、C
2~C
12アルケン、C
2~C
12アルキン、C
3~C
12シクロアルキル、C
1~C
12ハロアルキル、C
1~C
12アルコキシ、C
2~C
18(ヘテロ)アリールオキシ、C
2~C
18(ヘテロ)アリールアミノ、C
2~C
12カルボン酸、C
2~C
12カルボン酸エステルおよびC
1~C
12アルコキシからなる群から独立して選択され、
Zはそれぞれ、独立して、CH
2、OまたはNR
4であり、
fはそれぞれ、独立して、0~50の整数であり、
nはそれぞれ、独立して、1~20の整数である、
請求項3から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
G
1およびG
2が、それぞれ、ハロであり、Zがそれぞれ、Oであり、R
2がそれぞれ、Hであり、nがそれぞれ、独立して、2~4であり、fがそれぞれ、独立して、5~20であり、必要に応じて、nがそれぞれ3である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記光退色されたポリマー色素が、以下:
0.1以下、0.06以下または0.056以下の量子収率(QY)
必要に応じて、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)、および
405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光
のうちの少なくとも1つを示すよう、式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XVIII)、(XIX)または(XX)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露させることによって調製される、請求項3から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
消光性部分を含む前記ポリマー色素が、式(XX)による構造:
【化64】
を含み、
式中、
Aはそれぞれ、芳香族コモノマーおよび複素芳香族コモノマーからなる群から独立して選択され、
Bはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、
Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、機能的部分または消光性部分であり、少なくとも1つまたは複数のEは、消光性部分であり、
G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、
L
1、L
2およびL
3は、リンカー部分であり、
Wは、水可溶化部分であり、
下付き文字nは、1~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字mは、1~25の範囲の整数であり、
下付き文字pは、0~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字n、mおよびpの合計は、2~10,000の範囲であり、
下付き文字qは、1、2、3または4であり、
下付き文字rは、1、2、3または4であり、
下付き文字sは、0、1、2または3であり、
下付き文字tは、1または2であり、
下付き文字rおよびsの合計は、1~4の範囲であり、
AおよびBは、前記コンジュゲートされているポリマー中に、ランダムにまたは非ランダムに分布されており、
Eは、消光性部分であり、
必要に応じて、
消光性部分を含む前記ポリマー色素が、0.1以下の量子収率を示し、さらに必要に応じて、消光性部分を含む前記ポリマー色素が、50未満のAFUとなる蛍光プロファイルを示す、
請求項3から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記消光性部分が、Dabcyl、Dabsyl、DYQ425、DYQ505、BHQ1、QSY7、QSY9、QSY35およびTAMRA消光性部分からなる群から選択され、必要に応じて、m=2~20、3~15または5~8である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマーである、請求項5から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記非イオン性界面活性剤が、式(XXI)による構造
【化65】
を含み、aはそれぞれ、独立して、2~130の範囲にあり、bは、15~67の範囲にある、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、複数の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含み、前記組成物が、前記複数の蛍光ポリマー色素コンジュゲート間の前記非特異的結合を実質的に低減する、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
双性イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
試料中の分析対象を検出する方法であって、
少なくとも1種のポリマー色素コンジュゲートを、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物に添加して、ポリマー色素コンジュゲート組成物を形成させるステップ
分析対象を含有することが疑われる生物学的試料に前記ポリマー色素コンジュゲート組成物を接触させて、前記分析対象との蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体を形成させるステップ
少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体を励起させることができる光源を前記試料に適用するステップ、および
前記蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体から放射された光を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項30】
前記生物学的試料が、血液、骨髄、脾臓細胞、リンパ細胞、骨髄穿刺液、尿、血清、唾液、脳脊髄液、尿、羊水、間質液、便、粘液または組織からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記生物学的試料が血液試料である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記生物学的試料が全血である、請求項29から31のいずれか一項の記載の方法。
【請求項33】
前記生物学的試料が、全血の1種または複数種の細胞を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
全血の前記1つまたは複数の細胞が、赤血球、白血球、リンパ球、食細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好塩基球、好中球、好酸球、血小板、または1種もしくは複数種の検出可能なマーカーを含む任意の細胞である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的試料が細胞培養物に由来する、請求項29から34のいずれか一項の記載の方法。
【請求項36】
前記光源からの光が、約340nm~約800nmの間または約340nm~約450nmの間の波長を有する、請求項29から35のいずれか一項の記載の方法。
【請求項37】
前記放射された光が、約400nm~約800nmの間の波長を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
光を検出する前記ステップが、フローサイトメトリーによって分析して、第1のフローサイトメトリープロットを得るステップをさらに含み、
前記生物学的試料を、前記非イオン性界面活性剤および前記第1のポリマー色素の前記非蛍光構成成分を含まない組成物に接触させるステップを含むことで得られる第2のフローサイトメトリープロットと比較した場合、前記第1のフローサイトメトリープロットが、
ポリマー色素コンジュゲートの非特異的相互作用の低減、および
ポリマー色素コンジュゲートの凝集の低減
からなる群のうちの1つまたは複数を示す、請求項29から37のいずれか一項の記載の方法。
【請求項39】
請求項1から28のいずれか一項の記載の組成物を含むキットであって、第1のポリマー色素の前記1種または複数種の非蛍光構成成分;および前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含む個別の容器を含む、キット。
【請求項40】
前記1種または複数種の非蛍光構成成分を含む前記容器中に非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
請求項1から28のいずれか一項の記載の組成物を含むキットであって、1つの容器中に第1のポリマー色素の前記非蛍光構成成分を1種または複数種、および前記非イオン性界面活性剤;ならびに別の容器中に前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含む、キット。
【請求項42】
請求項1から28のいずれか一項の記載の組成物を含むキットであって、1つの容器中に第1のポリマー色素の2種またはそれより多い前記非蛍光構成成分;および別の容器中に前記少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、PCT国際特許出願として、2022年2月04日に出願されており、その全体が参照により組み込まれている、2021年2月05日に出願の米国仮出願第63/146,498号の利益およびこれに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
ポリマー色素コンジュゲートは明るく、多色フローサイトメトリーアッセイにおいて利用することができる優れた性能をもたらす。一般に、ポリマー色素コンジュゲートは、その特有の複雑な構造のために、高い輝度を示す。しかし、そのような同じ特有の複雑な構造はまた、いくつかの深刻な制限をもたらす。
【0003】
ポリマー色素は、疎水性であり、大きな見かけ分子量を有しており、これによって、ポリマー色素は水性緩衝液中で凝集する傾向がある。したがって、ポリマー色素が抗体にコンジュゲートされると、得られたコンジュゲートもまた、相互に、および/または同一試料中に存在する他のポリマー色素コンジュゲートと相互作用する傾向を有することがある。同じ試料を染色するために1種より多いポリマー色素コンジュゲートを使用する場合、ポリマー色素同士の非特異的相互作用が起こることがあり、これによって、データの補正不十分(under-compensation)がもたらされる恐れがある。
【0004】
ポリマー色素コンジュゲート間の非特異的相互作用を排除することができる専用染色緩衝液が高度に望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
ポリマー色素コンジュゲートは、その性質のため、互いに相互作用することができ、非特異的結合をもたらす。本開示は、ポリマー色素コンジュゲート間の非特異的相互作用を低減する、または阻止する組成物を提供する。
【0006】
本開示は、ポリマー色素の1種または複数種の非蛍光構成成分および緩衝液を含む、色素コンジュゲート間の非特異的相互作用を低減することが可能な組成物を提供する。本組成物は、非イオン性界面活性剤を必要に応じてさらに含んでもよい。本組成物は、タンパク質安定剤を必要に応じてさらに含んでもよい。本組成物は、保存剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0007】
本開示は、ポリマー色素の1種または複数種の非蛍光構成成分、非イオン性界面活性剤および緩衝液を含む染色用緩衝組成物であって、1種または複数種の蛍光ポリマー色素コンジュゲート間のポリマー-ポリマー相互作用などの非特異的結合を低減することが可能な、染色用緩衝組成物を提供する。
【0008】
ポリマー色素の非蛍光構成成分は、ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素、および消光されたポリマー色素などの消光性部分を含むポリマー色素のうちの1つまたは複数であってよい。
【0009】
本開示は、緩衝液中にポリマー色素のモノマー構成成分を含む組成物を提供する。
【0010】
本開示は、緩衝液中に光退色された色素を含む組成物を提供する。
【0011】
本開示は、緩衝液中に消光されたポリマー色素を含む組成物を提供する。
【0012】
本開示は、緩衝液中にポリマー色素のモノマー構成成分および消光されたポリマー色素を含む組成物を提供する。
【0013】
本開示は、緩衝液中にポリマー色素のモノマー構成成分および光退色された色素を含む組成物を提供する。
【0014】
本開示の組成物は、タンパク質安定剤、非イオン性界面活性剤および/または保存剤を必要に応じてさらに含んでもよい。例えば、本開示の作業濃度の組成物(1×)は、タンパク質安定剤を0.1~10mg/mL、0.5~5mg/mL、1~3mg/mLまたは約2mg/mLでさらに含んでもよい。
【0015】
本開示の濃染色用緩衝組成物(10×)は、タンパク質安定剤を1~100mg/mL、2~50mg/mL、5~40mg/mL、10~30mg/mLまたは約20mg/mLでさらに含んでもよい。一部の実施形態では、タンパク質安定剤は、0.1~100mg/mL、0.2~50mg/mL、1~20mg/mLまたは1~10mg/mLで存在する。
【0016】
本開示の作業濃度の組成物(1×)は、非イオン性界面活性剤を0.01~10%、0.01~4%、0.01~2%、0.01~0.4%または約0.02%(重量/体積)で含んでよい。
【0017】
本開示の濃染色用緩衝組成物(10×)は、非イオン性界面活性剤を0.1~40%、0.5~20%、1~10%または約5%(重量/体積)で含んでよい。
【0018】
本開示の組成物は、保存剤を0.01~0.5%、0.03~0.3%または0.05~0.2%または約0.1%(重量/体積)で必要に応じてさらに含んでよい。
【0019】
例えば、本開示は、0.01~10%または0.1~4%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤および必要に応じて0.1~10mg/mLまたは0.2~5mg/mLのタンパク質安定剤を含む、PBS緩衝液などの生物学用緩衝液中に、0.3~1.5mg/mL、0.5~1.2mg/mLまたは約1mg/mLの消光されたポリマー色素を含む作業濃度の染色用緩衝組成物(1×)を提供する。
【0020】
本開示は、0.1~40%または1~10%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤および必要に応じて1~100mg/mLまたは2~50mg/mLのタンパク質安定剤を含む、PBS緩衝液などの生物学用緩衝液中に、3~15mg/mL、5~12mg/mLまたは約10mg/mLの消光されたポリマー色素を含む濃染色用緩衝組成物(10×)を提供する。この組成物は、多色色素コンジュゲートパネルにおいて、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を顕著に低減することが見出された。これは、消光されたポリマー色素を含まない同じ試料と比較した場合の、染色して溶解した血液試料のFCAフローサイトメトリー分析において立証された。
【0021】
本開示は、生物学用緩衝液中に、20~40mg/mLまたは約30mg/mLの、ポリマー色素のモノマー構成成分;0.2~0.8mg/mLまたは0.3~0.7mg/mLの消光されたポリマー色素;および0.01~10%または0.1~4%の非イオン性界面活性剤を含む、作業濃度の染色用緩衝組成物(1×)を提供する。作業濃度の組成物(1×)は、0.1~10mg/mL、0.5~5mg/mLのタンパク質安定剤をさらに含んでもよい。
【0022】
本開示は、生物学用緩衝液中に、200~400mg/mLまたは約300mg/mLの、ポリマー色素のモノマー構成成分;2~8mg/mLまたは3~7mg/mLの消光されたポリマー色素;および0.1~40%または1~20%の非イオン性界面活性剤を含む、濃染色用緩衝組成物(10×)を提供する。この濃組成物(10×)は、1~100mg/mLまたは5~50mg/mLのタンパク質安定剤をさらに含んでもよい。
【0023】
この組成物は、多色色素コンジュゲートパネルにおいて、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を顕著に低減することが見出された。これは、モノマー構成成分を含まず、かつ消光されたポリマー色素を含まない同じ試料と比較した場合の、染色して溶解した全血試料のフローサイトメトリー分析(FCA)において立証された。
【0024】
本開示は、生物学用緩衝液中に、20~40mg/mLまたは約30mg/mLの、ポリマー色素のモノマー構成成分;0.2~0.8mg/mL、0.3~0.7mg/mLまたは約0.5mg/mLの光退色されたポリマー色素;および0.01~10%または0.1~4%の非イオン性界面活性剤を含む、作業濃度の染色用緩衝組成物(1×)を提供する。作業濃度の組成物(1×)は、0.1~10mg/mLまたは0.5~5mg/mLのタンパク質安定剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本開示は、生物学用緩衝液中に、200~400mg/mLまたは約300mg/mLの、ポリマー色素のモノマー構成成分、2~8mg/mL、3~7mg/mLまたは約5mg/mLの光退色されたポリマー色素および0.1~40%または1~20%の非イオン性界面活性剤を含む、濃染色用緩衝組成物(10×)を提供する。この濃組成物(10×)は、1~100mg/mLまたは2~50mg/mLのタンパク質安定剤をさらに含んでもよい。
【0026】
この組成物は、多色色素コンジュゲートパネルにおいて、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を実質的に低減することが見出された。これは、モノマー構成成分を含まず、かつ光退色されたポリマー色素を含まない同じ試料と比較した場合の、染色して溶解した全血試料のFCA分析において立証された。
【0027】
生物学的試料の染色に使用するための、結合パートナーにコンジュゲートされている少なくとも1種の蛍光ポリマー色素と共に使用するための組成物であって、非イオン性界面活性剤;および生物学用緩衝液を含み、該組成物の非存在下での少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートと比較した場合、少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートの非特異的結合を低減する組成物が提供される。非イオン性界面活性剤は、ポロキサマーであってもよい。
【0028】
試料中の分析対象を検出する方法であって、本開示による染色用緩衝組成物に、少なくとも1種または少なくとも2種のポリマー色素コンジュゲートを添加して、ポリマー色素コンジュゲート組成物を形成させるステップ;分析対象を含有することが疑われる生物学的試料にポリマー色素コンジュゲート組成物を接触させて、分析対象との蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体を形成させるステップ;試料に少なくとも1種または少なくとも2種の蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体を励起させることができる光源を適用するステップ;および蛍光ポリマー色素コンジュゲート複合体から放射された光を検出するステップを含む、方法が提供される。光を検出するステップは、フローサイトメトリーによって分析して、第1のフローサイトメトリープロットを得るステップを含むことができ、生物学的試料を、非イオン性界面活性剤を含まず、かつ第1のポリマー色素の非蛍光構成成分を含まない組成物に接触させるステップを含むことで得られる第2のフローサイトメトリープロットと比較すると、第1のフローサイトメトリープロットが、ポリマー色素コンジュゲートの非特異的相互作用の低減;およびポリマー色素コンジュゲートの凝集の低減からなる群のうちの1つまたは複数を示す。
【0029】
生物学的試料は、血液、骨髄、脾臓細胞、リンパ細胞、骨髄穿刺液、尿、血清、唾液、脳脊髄液、尿、羊水、間質液、便、粘液、組織試料または細胞培養試料とすることができる。生物学的試料は、全血試料であってもよい。
【0030】
光源からの光は、約340nm~約800nmの間の範囲内の波長、または約340nm~約450nmの間の範囲内の波長を有してよい。
【0031】
本開示は、本開示による染色用緩衝組成物を含むキットであって、第1のポリマー色素の1種または複数種の非蛍光構成成分;および少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含む個別の容器を含む、キットを提供する。本染色用緩衝組成物は、1種または複数種の非蛍光構成成分を含む同じ容器中に非イオン性界面活性剤を含んでもよい。本染色用緩衝組成物は、1つの容器中に第1のポリマー色素の2種またはそれより多い非蛍光構成成分および必要に応じて非イオン性界面活性剤;ならびに別の容器中に少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、染色して溶解した全血を含み、試験染色用緩衝液を事前添加した、または事前添加していない、3種のSuperNova(SNv)色素抗体コンジュゲートCD56-SNv428、CD20-SNv605およびCD4-SNv786の混合物を使用した、試験染色用緩衝液のFCAドットプロットの比較を示す。ゲーティングは、リンパ球(LY)に対するものである。上側の3つのパネルに示されている通り、染色の異常は、試験染色用緩衝液の非存在下で起こり得、データは、補正不十分であるように見え得る。3つの下側のパネルに示されている通り、光退色されたポリマー、およびポリマー色素のモノマー構成成分を含む試験染色用緩衝液の存在下では、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用の実質的な低減が起こる。
【0033】
【
図2A】
図2Aは、染色用緩衝液構成成分を含まない、CD56-SNv428+CD19-SNv605+CD4-SNv786を含む3種のSuperNovaバイオレットポリマー色素コンジュゲートの混合物で染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットを示す。このドットプロットにおける陽性および陰性細胞集団は並んでおらず、傾いて見え、非特異的なポリマー色素の相互作用であることを示している。
【0034】
【
図2B】
図2Bは、市販の比較染色用緩衝液を含む、CD56-SNv428+CD19-SNv605+CD4-SNv786を含む3種のSuperNovaバイオレットポリマー色素コンジュゲートの混合物で染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットを示す。
図2Aと比較して、非特異的相互作用がいくらか低減していることが明らかである。
【0035】
【
図2C】
図2Cは、ポロキサマー非イオン性界面活性剤を含む生物学用緩衝液中に、CD56-SNv428+CD19-SNv605+CD4-SNv786を含む3種のSuperNovaバイオレットポリマー色素コンジュゲート、ならびにモノマーAおよび光退色された色素428を含む本開示による試験染色用緩衝液の混合物で染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットを示す。試験染色用緩衝組成物は、
図2Aと比較すると、漏れ込みが低減したこと、および
図2Bにおける先行技術の比較緩衝液と比較して、非特異的なポリマー-ポリマー相互作用がいくらか低減したことを示す。
【0036】
【
図3】
図3は、消光されたポリマーの波長対AFUの蛍光プロファイルのグラフを示す。ポリマー1 Dabcyl(QY0.01)、ポリマー2 Dabcyl(QY0.005)、ポリマー2 DY425Q(QY0.01)、ポリマー3 Dabcyl(QY0.005)、ポリマー3 Dabcyl plus(QY0.015)およびポリマー3 DY425Q(QY0.009)。
図3の挿入図は、消光性部分にコンジュゲートする前、および405nmのレーザーによって励起された場合に蛍光QYの実質的な低下を示す消光されたポリマーを得るために消光性部分にコンジュゲートした後の、代表的な親蛍光ポリマー(ポリマー3 QY0.54)のグラフを示す。QYとは、量子収率を指す。
【0037】
【
図4】
図4は、染色用緩衝液添加剤である消光されたポリマーを使用しないで、リンパ球にゲーティングされた場合の、2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-UV励起性ポリマー色素(CD4-UVEPD)およびCD20-バイオレット励起性ポリマー色素(CD20-VEPD)(どちらも、Beckman Coulter Life Sciences、左上側のパネル)からなる混合物、ならびに2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-BUV395(BD Biosciences)およびCD20-VEPD(Beckman Coulter Life Sciences、右上側のパネル)からなる混合物で染色した後の、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロット(上側の行の左から右へ)を示す。2種の異なる色素コンジュゲートを消光されたポリマーなしに混合した場合、ドットプロットは、非特異的相互作用および関連漏れ込みを示す。CD4-UVEPDおよびCD20-VEPD(下部左側のパネル)またはBUV395-CD4およびCD20-VEPD(下部右側のパネル)で染色している間に、本開示による消光されたポリマー(消光されたポリマー2-DYQ425)を添加すると、非特異的相互作用および漏れ込みが低減した。
【0038】
【
図5】
図5は、染色用緩衝液添加剤である消光されたポリマーを使用しないで、リンパ球にゲーティングされた場合の、2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-UV励起性ポリマー色素(CD4-UVEPD)およびCD20-バイオレット励起性ポリマー色素(CD20-VEPD)(どちらも、Beckman Coulter Life Sciences、左上側のパネル)からなる混合物、ならびに2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-BUV395(BD Biosciences)およびCD20-VEPD(Beckman Coulter Life Sciences、右上側のパネル)からなる混合物で染色した後の、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロット(上側の行の左から右へ)を示す。2種の異なる色素コンジュゲートを消光されたポリマーなしに混合した場合、ドットプロットは、非特異的相互作用および関連漏れ込みを示す。CD4-UVEPDおよびCD20-VEPD(下部左側のパネル)またはBUV395-CD4およびCD20-VEPD(下部右側のパネル)で染色している間に、本開示による消光されたポリマー(消光されたポリマー2-Dabcyl)を添加すると、非特異的相互作用および漏れ込みが低減した。
【0039】
【
図6】
図6は、非効果的に光退色された色素(左側のパネル)を含む組成物を用いて調製し、コンジュゲートの望ましくない漏れ込みをもたらした試料中の、SuperNovaポリマー色素コンジュゲートCD56-SNv428/CD4-SNv786の二次元FCAドットプロットを示す。対照的に、右側のパネルは、405nmのレーザーで励起された場合の、10ug/mLにおいてQY≦0.056および<47AFUを有する、正確に光退色された色素を含む、本開示による組成物の効果を示している。コンジュゲートの漏れ込みは、著しく低減している。
【0040】
【
図7】
図7は、生物学的試料中に添加する前の、モノマーA+ポリ-Dabcyl添加剤を使用してまたはこれを使用しないで個々に予め配合した、2種のSuperNovaポリマー色素コンジュゲートCD3-SNv428/CD19-SNv605の二次元FCAドットプロットを示す。添加剤を使用しない場合(左側のパネル)、非特異的相互作用があることが明白である。モノマーA+ポリ-Dabcyl添加剤の存在下(右側のパネル)では、ポリマー色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用が実質的に低減する。
【0041】
【
図8】
図8は、消光されたポリマーを含まない(上側の左)、1%のPF-68を含む(上側の右)、10ugの消光されたポリマー2-Dabcylを含む(下側の左)、10ugの消光されたポリマー2-Dabcylおよび1%のPF-68非イオン性界面活性剤を含む(下側の右)、血液試料中の色素コンジュゲートCD19-SNv428(Beckman Coulter Life Sciences)とCD4-BV650(BD Biosciences)との混合物で染色して溶解した細胞のFCAドットプロットを示す。10ugの消光されたポリマー2-Dabcyl(MFI 2172)および1%のPF-68(MFI 2400)を含む試験試料組成物は、緩衝液を含まない対照試料(MFI 7804)と比較して、非特異的結合の低減を示した。10ugの消光されたポリマー2-Dabcylおよび1%のPF-68(MFI 1327)を含む試験試料組成物は、対照試料と比較して、MFIの低下の改善、非特異的結合の低減の改善、およびポリマー-ポリマー相互作用の低減の改善を示した。
【0042】
【
図9】
図9は、緩衝液を含まない(上部パネル)、0.1%の非イオン性界面活性剤を含む(下側の左パネル)、0.5%非イオン性界面活性剤を含む(下側の中央のパネル)、および1%の非イオン性界面活性剤(重量/体積)を含む(下側の右のパネル)、CD4-BV650(BD Biosciences)とCD19-SNv428(Beckman Coulter Life Sciences)との混合物で染色して溶解した細胞のFCAドットプロットを示す。上昇した濃度の非イオン性界面活性剤(0.1~1%重量/体積)の存在により、非イオン性界面活性剤が存在しない場合と比較して分離が改善されたことによって立証される通り、混合物中の漏れ込みおよび非特異的相互作用の低減を伴う。
【0043】
【
図10】
図10は、染色用緩衝組成物でのFCA分析における、非特異的相互作用および漏れ込みの低減に有用な、2種の非蛍光ポリマー色素の415~700nmの範囲の発光スペクトルのグラフ、および量子収率を示す。DHP-ピロールポリマー(QY0.043)およびDHP-ニトロキャップポリマー(QY0.092)の構造もまた示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
説明
これより、開示されている主題のある特定の実施形態について詳細に述べ、それらの例を、添付の図面および実施例に一部を例示する。開示されている主題は、列挙されている特許請求の範囲と連携して記載されているが、例となる主題は、特許請求の範囲を開示されている主題に限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0045】
例えば、色素コンジュゲートの多重度を含む多色パネルにおける、ポリマー色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用を低減する組成物および方法が、本明細書において提供される。本組成物および方法は、例えば、フローサイトメトリーにおいて、他のチャネルへの漏れ込みの増大をもたらす恐れのある、ポリマー-ポリマー相互作用を低減するために有用である。
【0046】
本開示は、概して、蛍光ポリマー色素コンジュゲート間の非特異的相互作用を低減するよう設計された染色用緩衝液、このようなポリマーを含む組成物、および結合パートナーにコンジュゲートされている蛍光ポリマー(例えば、本明細書において「ポリマー色素コンジュゲート」と称される、抗体にコンジュゲートされているポリマー色素)を含む組成物を使用する、試料中の分析対象を検出する方法に関する。例えば、本開示による組成物は、ポリマー色素の少なくとも1種または少なくとも2種の非蛍光構成成分、緩衝液、および必要に応じて非イオン性界面活性剤を含む液状染色用緩衝液を含む。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素、および消光性部分を含むポリマー色素のうちの1つまたは複数であってよい。
【0047】
例えば、本明細書に記載されている組成物は、ポリマー色素のモノマー構成成分および光退色されたポリマー色素;ポリマー色素のモノマー構成成分および消光性部分を含むポリマー色素;または光退色されたポリマー色素および非イオン性界面活性剤を含んでもよい。本開示による組成物は、多色パネルにおける、様々なポリマー色素コンジュゲート間の非特異的なポリマー-ポリマー相互作用を低減することが可能である。
【0048】
ポリマー色素
本開示の染色用緩衝組成物は、ポリマー色素の1種または複数種の非蛍光構成成分を含んでよい。非蛍光構成成分は、非蛍光ポリマー色素であってよい。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、消光性部分を含むポリマー色素であってよい。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、光退色されたポリマー色素であってもよい。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、ポリマー色素のモノマー構成成分(「モノマー」)であってもよい。一部の実施形態では、ポリマー色素の非蛍光構成成分は、結合パートナーを含まない。一部の実施形態では、ポリマー色素はまた、ポリマータンデム色素を含む。一部の実施形態では、ポリマー色素はまた、機能的部分にコンジュゲートされているポリマー色素を含む。
【0049】
本開示の組成物は、1種または複数種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートと共に使用することができる。一部の実施形態では、ポリマー色素はまた、結合パートナーにコンジュゲートされているポリマー色素を含む。一部の実施形態では、ポリマー色素はまた、機能的部分にコンジュゲートされているポリマー色素を含む。
蛍光ポリマー色素は、化学的および生物的標的分析対象の分析に特に有用である。蛍光ポリマー色素は、高度に応答性の光学的リポーターであり、それらが含む複数の発色団のために、効率的な光吸収剤である。
【0050】
ポリマー色素は、任意の以前に開示されている蛍光ポリマー色素または市販の蛍光ポリマー色素を含むことができる。例えば、ポリマー色素は、PCT出願公開第WO2022/013198号;PCT出願公開第WO2017/180998号;米国出願第2021/0047476号;米国出願第2020/0190253号;米国出願第2020/0048469号;米国出願第2020/0147615号;米国出願第2021/0108083号;米国出願第2019/0194467号;米国出願第2018/0364245号;米国出願第2018/0224460号;米国特許第11,034,840号;米国特許第11,119,107号;米国特許第10,962,546号;米国特許第10,920,082号;米国特許第10,001,475号;米国特許第10,107,818号;米国特許第10,228,375号;米国特許第10,844,228号;米国特許第10,604,657号;米国特許第10,545,137(B2)号;米国特許第10,533,092号;米国特許第10,472,521号;米国特許第10,240,000号;米国特許第9,758,625号;米国特許第9,719,998号;米国特許第7,214,489号;米国特許第9,012,643号;米国特許第8,623,332号;米国特許第8,431,416号;米国特許第8,354,239号;米国特許第8,575,303号;米国特許第8,969,509号に開示されている任意の色素とすることができ、それらの各々は、それらの全体が本明細書において完全に説明されているかのごとく、参照により組み込まれている。ポリマー色素は、その全体が、あたかも本明細書に完全に説明されているかのごとく、参照により組み込まれている、米国出願公開第2020/0190253(A1)号に開示されている任意の水溶性蛍光ポリマー色素の構造を有することができる。ポリマー色素コンジュゲートは、その全体が、あたかも本明細書に完全に説明されているかのごとく、参照により組み込まれている、米国出願公開第2019/0144601号に開示されている任意の水溶性蛍光ポリマー色素の構造を有することができる。
【0051】
ポリマー色素は、任意の市販のポリマー色素とすることができる。一部の実施形態では、ポリマー色素は、例えば、紫外(例えば、351nm、355nm、375nm、334~364nm、351~356nm)、バイオレット(例えば、405nm、407nm、414nm、395~425nm)、ブルー(例えば、436nm、458nm)、ブルー-グリーン(例えば、488nm)、グリーン(例えば、514nm、532nm、541nm、552nm)、イエロー-グリーン(例えば、561nm、563nm)、イエロー(例えば、568nm)、レッド(例えば、627~640nm、633nm、637nm、640nm、647nm)および/または近赤外レーザー(例えば、673nm、750nm、780nm、または660~800nmの範囲)によって励起可能であり得る。ポリマー色素は、バイオレットレーザーによって励起可能なポリマー色素を含むことができる。ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、約395nm~約425nm、例えば、405nm、407nmまたは414nmの波長のバイオレットレーザーによって励起可能なポリマー色素を含んでもよい。ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、バイオレットレーザー(405nm)により励起可能なポリマー色素を含んでもよい。一部の実施形態では、ポリマー色素は、非蛍光ポリマー色素であってもよい。
【0052】
一部の実施形態では、ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、SuperNovaポリマー色素(SN)(Beckman Coulter,Inc.)を含んでもよい。SuperNovaポリマー色素は、フローサイトメトリー用途に有用な、新世代ポリマー色素である。ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、SNv428、SNv605またはSNv786を含むことができる。SNv428は、抗体または他の結合パートナーにコンジュゲートされている場合、かなり明るいコンジュゲートをもたらす、特有の光物理特性を有する。例えば、SNv428は、414nmの励起極大、428nmの発光ピークを有するバイオレットレーザー(例えば、405nm)によって最適に励起されるポリマー色素であり、450/50バンドパスフィルターまたは等価物を使用して検出することができる。
【0053】
SNv428は、バイオレットレーザーによって励起可能な最高輝度の色素の1つであり、したがって、微かに発現されるマーカーの評価に特に適している。抗体とコンジュゲートされているSuperNovaポリマー色素には、抗CD19抗体-SNv428、抗CD22抗体-SNv428、抗CD25抗体-SNv428および抗CD38抗体-SNv428である、抗体-ポリマー色素コンジュゲートが含まれ得る。
【0054】
SNv605およびSNv786(Beckman Coulter,Inc.)は、コアSNv428から誘導されたタンデムポリマー色素である。どちらも、414nmに極大励起を有する、同じ吸光度特徴を共有する。SNv605およびSNv786は、それぞれ605nmおよび786nmに発光ピークを有するので、それらは、フローサイトメータの610/20および780/60nmバンドパスフィルターを使用すると最適に検出される。SNv605およびSNv786は、例えば、抗CD19抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体または抗CD38抗体などの結合パートナーとコンジュゲートされ得る。
【0055】
ポリマー色素は、紫外(「UV」)レーザーによって励起可能なポリマー色素を含んでもよい。ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、320nm~380nm、340nm~360nm、345nm~356nm、または380nm未満もしくはこれに等しいが、320nmより長いまたはこれに等しい波長のUVレーザーによって励起可能なポリマー色素を含んでもよい。ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、UV励起可能なポリマー色素を含んでもよい。UV励起可能なポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、通常、380nm~430nm、406nm~415nm、または430nm未満もしくはこれに等しいが、380nmより長いまたはこれに等しい波長において発光することができる。
【0056】
ポリマー色素は、Brilliant Violet 421(商標)(励起極大405nm、発光極大421nm、450/50フィルター)、Brilliant Violet 510(商標)(励起極大405nm、発光極大510nm、510/50フィルター)、Brilliant Violet 570(商標)(励起極大405nm、発光極大570nm、585/42フィルター)、Brilliant Violet 605(商標)(励起極大405nm、発光極大603nm、610/20フィルター)、Brilliant Violet 650(商標)(励起極大405nm、発光極大645nm、660/20フィルター)、Brilliant Violet 711(商標)(励起極大405nm、発光極大711nm、710/50フィルター)、Brilliant Violet 750(商標)(励起極大405nm、発光極大750nm、780/60フィルター)、Brilliant Violet 785(商標)(励起極大405nm、発光極大785nm、780/60フィルター)などのBrilliant Violet(商標)色素(BioLegend(登録商標)/Sirigen Group Ltd.)を含むことができる。
【0057】
ポリマー色素またはポリマー色素コンジュゲートは、BD Horizon Brilliant(商標)Violet(「BV」)ポリマー色素(Becton、Dickinson and Co.、BD Life Sciences)を含んでよい。ポリマー色素は、BD Horizon Brilliant(商標)BV421(450/40または431/28フィルター)、BV480(525/40フィルター)、BV510(525/40フィルター)、BV605(610/20フィルター)、BV650(660/20フィルター)、BV711(710/50フィルター)、BV786(786/60フィルター)であってもよい。
【0058】
ポリマー色素は、モノマーの重合によって合成的に調製されてもよく、これによって、高度にコンジュゲートされた蛍光主鎖の形成がもたらされる。キャッピングは、適切な官能基を使用する活性化によりポリマー上に行われてよく、これによって、結合パートナーにコンジュゲートすることができるポリマーをもたらす。代替的に、ポリマーは、ポリマー主鎖からの適切な官能基を結合することによって、アクセプター色素をコンジュゲートまたは結合するために、活性化されてもよい。活性化ポリマーは、例えば、結合パートナー、アクセプター色素または消光性部分にコンジュゲートすることができる。任意の適切な結合パートナー、例えば、抗体が使用され得、次いで、例えば、標準手順を使用することにより精製されてよい。官能基は、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および基質または結合パートナーにコンジュゲートするためのそれらの保護された基からなる群から選択することができる。
【0059】
ポリマー色素は、以下に限定されないが、ジヒドロフェナントレン(DHP)、フルオレンおよびそれらの組合せを含めた、アリールおよび/またはヘテロアリールモノマーサブユニットを有する蛍光ポリマー色素を含んでもよい。一部の実施形態では、ポリマー色素は、式Iの構造:
【化1】
を有することができ、
式中、
モノマーAはそれぞれ、独立して、芳香族コモノマーまたは複素芳香族コモノマーであり、
必要に応じたMはそれぞれ、芳香族コモノマーまたは複素芳香族コモノマーであり、必要に応じたLはそれぞれ、リンカーであり、
G
1およびG
2は、それぞれ、修飾ポリマー末端または非修飾ポリマー末端であり、
aはそれぞれ、10~100%のmol%であり、cはそれぞれ、0~90%のmol%であり、dはそれぞれ、0~25%のmol%であり;bはそれぞれ、独立して、0または1であり;mはそれぞれ、1~約10,000の整数である。
【0060】
本開示全体を通して使用される場合、「a」、「b」、「c」および「d」は、各単位のmol%を定義し、これらはそれぞれ、均等にまたはランダムに反復され得る。
【0061】
モノマーAはそれぞれ、水可溶化基、および/または例えば、アクセプター色素、結合パートナーもしくは消光性部分とコンジュゲートされ得る必要に応じた官能基により置換されていてもよい。式Iの構造を有するポリマー中のモノマーAはそれぞれ、同じモノマーであってもよい。式Iの構造を有するポリマー色素中のモノマーAはそれぞれ、異なるモノマーであってもよい。モノマーAは、例えば、9,10-フェナントレンジオンベースのモノマー(例えば、ジヒドロフェナントレン(DHP)ベースのモノマー)、フルオレンベースのモノマー、フルオレノオキセピンベースのモノマーであってもよい。
【0062】
モノマーAは、例えば、式(II)の構造:
【化2】
を有する、DHPベースのモノマー、フルオレンベースのモノマーまたはカルバゾールモノマーであってもよい。
【0063】
本明細書において使用する場合、「X」はそれぞれ、独立して、C、NまたはSiとすることができる。
【0064】
本明細書において使用する場合、「Y」はそれぞれ、CH2、CR1R2、SiR1R2または結合からなる群から独立して選択される。Yが結合である場合、Xは、両方の環に直接、結合している。
【0065】
本開示全体で使用される場合、「R
1」はそれぞれ、独立して、水可溶化部分、アルケン、アルキン、シクロアルキル、ハロアルキル、(ヘテロ)アリールオキシ、(ヘテロ)アリールアミノ、PEG、カルボン酸、アンモニウムアルキル塩、アンモニウムアルキルオキシ塩、アンモニウムオリゴエーテル塩、スルホネートアルキル塩、スルホネートアルコキシ塩、スルホネートオリゴエーテル塩、スルホンアミドオリゴエーテル、スルホンアミド、スルフィンアミド、ホスホンアミデート、ホスフィンアミド
【化3】
である。
【0066】
本明細書において使用する場合、「R
2」はそれぞれ、独立して、水可溶化部分、リンカー部分、H、アルキル、アルケン、アルキン、シクロアルキル、ハロアルキル、(ヘテロ)アリールオキシ、(ヘテロ)アリールアミノ、スルホンアミド-PEG、ホスホロアミド-PEG、アンモニウムアルキル塩、アンモニウムアルキルオキシ塩、アンモニウムオリゴエーテル塩、スルホネートアルキル塩、スルホネートアルコキシ塩、スルホネートオリゴエーテル塩、スルホンアミドオリゴエーテル、スルホンアミド、スルフィンアミド、ホスホンアミデート、ホスフィンアミド
【化4】
である。
【0067】
本明細書において使用する場合、「R3」はそれぞれ、独立して、水可溶化部分であってよい。「R3」はそれぞれ、独立して、H、アルキル、アルケン、アルキン、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、(ヘテロ)アリールオキシ、アリール、(ヘテロ)アリールアミノまたはPEG基とすることができる。
【0068】
本明細書において使用する場合、「R4」はそれぞれ、独立して、H、アルキル、PEG、水可溶化部分、リンカー部分、発色団、カルボキシルアミン、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボン酸エステル、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒドもしくはチオール、またはそれらの保護された基である。
【0069】
本明細書において使用する場合、「R7」はそれぞれ、H、ヒドロキシル、C1~C12アルキル、C2~C12アルケン、C2~C12アルキン、C3~C12シクロアルキル、C1~C12ハロアルキル、C1~C12アルコキシ、C2~C18(ヘテロ)アリールオキシ、C2~C18(ヘテロ)アリールアミノ、C2~C12カルボン酸、C2~C12カルボン酸エステルまたはC1~C12アルコキシである。
【0070】
本明細書において使用する場合、「Q」はそれぞれ、独立して、結合、NR4または-CH2である。
【0071】
本明細書において使用する場合、「Z」はそれぞれ、独立して、CH2、OまたはNR4である。
【0072】
本明細書において使用する場合、一部の場合、R1、R2、R3またはR4の少なくとも1つは、水可溶化部分を含む。
【0073】
本明細書において使用する場合、fはそれぞれ、独立して、0~50、1~50、2~40、5~20の整数であり、nはそれぞれ、独立して、1~20の整数である。
【0074】
DHPベースのモノマーAは、例えば、式(III)の構造:
【化5】
を有することができる。
【0075】
DHPモノマーは、例えば、式(IV)の構造:
【化6】
を有することができる。
【0076】
式Iの構造を有するポリマー中のモノマーAは、例えば、XがそれぞれCまたはNである式(Va)または(Vb)の構造:
【化7】
を有するフルオレンベースのモノマーまたはカルバゾールベースのモノマーであってもよい。
【0077】
モノマーAはまた、架橋モノマーであってもよい。例えば、架橋モノマーは、式(VIa)、(VIb)または(VIc)の構造:
【化8】
を有してもよい。
【0078】
式Iの構造を有するポリマー中のモノマーAは、例えば、式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)の構造を有するオキセピンベースのモノマー(例えば、フルオレノオキセピンベースのモノマー):
【化9】
であってもよい。
【0079】
式Iの構造を有するポリマー中のモノマーAは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、WO2022/013198に記載されている、ビナフチニルモノマーであってもよい。ビナフチニルベースのモノマーは、式(VIId):
【化10】
を有してもよい。
【0080】
式Iの構造を有するポリマー中の必要に応じたMはそれぞれ、ポリマー鎖に沿って均等にまたはランダムに分布されたポリマー修飾単位であってよく、本明細書において定義されている通り、1つまたは複数の必要に応じて置換されているR1、R2、R3またはR4基により必要に応じて置換されていてもよい。
【0081】
必要に応じたMはそれぞれ、必要に応じて置換されているエチレンまたはエチニレンであってよい。Mはそれぞれ、必要に応じて置換されているエチレン部分、すなわち、式-CR=CR-を有する炭素-炭素二重結合であってもよく、Rはそれぞれ、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、(ヘテロ)アリールオキシ、アリール、(ヘテロ)アリールアミノ、PEG基、アンモニウムアルキル塩、アンモニウムアルキルオキシ塩、アンモニウムオリゴエーテル塩、スルホネートアルキル塩、スルホネートアルコキシ塩、スルホネートオリゴエーテル塩、スルホンアミドオリゴエーテルまたは部分
【化11】
である。Mはそれぞれ、エチニレン部分、すなわち、式-C≡C-を有する炭素-炭素三重結合であってもよい。
【0082】
必要に応じたMはそれぞれ、ポリマー主鎖に沿って均等に分布されていてもランダムに分布されていてもよい。必要に応じたMはそれぞれ、バンドギャップ改変モノマーであってもよい。必要に応じたMはそれぞれ、独立して、以下
【化12】
【化13】
【化14】
であってもよく、式中、Mはそれぞれ、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、アミド、スルホンアミド、エーテル、チオエーテル、チオカルバメート、ヒドロキシル、ヨードアセチル、ヒドラジド、ヒドラジノ、ケトン、ホスフィン、エポキシド、ウレア、チオウレア、チオエステル、イミン、ジスルフィド、および別の基質、アクセプター色素、分子または結合パートナーにコンジュゲートするためのそれらの保護された基から選択される官能基により置換され得る、および終端され得る。
【0083】
本明細書において使用する場合、「R5」はそれぞれ、独立して、H、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C3~C20シクロアルキル、C1~C20ハロアルキル、C1~C20アルコキシ、C2~C26アリールオキシ、C2~C26ヘテロアリールオキシ、C2~C26アリールアミノまたはC2~C26ヘテロアリールアミノである。
【0084】
式Iの構造を有するポリマー中の必要に応じたLはそれぞれ、リンカーである。Lはそれぞれ、ポリマー主鎖に沿って均等にまたはランダムに分布されている、アリール基またはヘテロアリール基であってよい。Lは、ポリマー主鎖に沿って均等にまたはランダムに分布されているアリール基またはヘテロアリール基であってもよく、アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオール、および基質または結合パートナーにコンジュゲートするためのそれらの保護された基からなる群から選択される官能基により終端された1つまたは複数のペンダント鎖により必要に応じて置換されていてもよい。必要に応じたLはそれぞれ、独立して、
【化15】
【化16】
であってもよい。
【0085】
本明細書において使用する場合、R
6はそれぞれ、独立して、H、OH、SH、NHCOO-t-ブチル、(CH
2)
nCOOH、(CH
2)
nCOOCH
3、(CH
2)
nNH
2、(CH
2)
nNH-(CH
2)
n-CH
3、(CH
2)
nNHCOOH、(CH
2)
nNHCO-(CH
2)
n-CO-(CH
2)
n-CH
3、(CH
2)
nNHCOO-(CH
2)
n-CH
3、(CH
2)
nNHCOOC(CH
3)
3、(CH
2)
nNHCO(C
3~C
12)シクロアルキル、(CH
2)
nNHCO(CH
2CH
2O)
f、(CH
2)
nNHCO(CH
2)
nCOOH、(CH
2)
nNHCO(CH
2)
nCOO(CH
2)
nCH
3、(CH
2)
n(OCH
2CH
2)
fOCH
3、N-マレイミド、ハロゲン、C
2~C
12アルケン、C
2~C
12アルキン、C
3~C
12シクロアルキル、C
1~C
12ハロアルキル、C
1~C
12(ヘテロ)アリール、C
1~C
12(ヘテロ)アリールアミノ、ベンジル(1つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシル、C
1~C
12アルコキシまたは(OCH
2CH
2)
fOCH
3により必要に応じて置換されている)
【化17】
である。
【0086】
G
1およびG
2はそれぞれ、独立して、水素、ハロゲン、アルキン、必要に応じて置換されているアリール、必要に応じて置換されているヘテロアリール、ハロゲン置換アリール、シリル、ジアゾニウム塩、トリフレート、アセチルオキシ、アジド、スルホネート、ホスフェート、ボロン酸置換アリール、ボロン酸エステル置換アリール、ボロン酸エステル、ボロン酸、必要に応じて置換されているジヒドロフェナントレン(DHP)、必要に応じて置換されているテトラヒドロピレン(THP)、必要に応じて置換されているフルオレン、またはアリールもしくはヘテロアリール(アミン、カルバメート、カルボン酸、カルボキシレート、マレイミド、活性化エステル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラゾン、アジド、アルキン、アルデヒド、チオールから選択される官能基で終端された1つもしくは複数のペンダント鎖により置換されている)、および基質または結合パートナーにコンジュゲートされていてもよいそれらの保護された基であってよい。G
1およびG
2はそれぞれ独立して、
【化18】
【化19】
であってもよい。
【0087】
キャッピング単位は、当分野で公知の機構により、ならびにこれらの両方の全体が本明細書において組み込まれている米国出願公開第2019/0144601号および米国出願公開第2020/0190253号に教示されている通りに本発明のポリマー主鎖にコンジュゲートされ得る。
【0088】
式(I)の構造を有するポリマー色素は、ジヒドロフェナントレン(DHP)、フルオレン、カルバゾールおよび/またはビナフチルモノマー、ならびにDHP、フルオレン、カルバゾールおよび/またはビナフチルモノマーの組合せ物を利用することができる。式(I)の構造を有するポリマー色素は、式(II)による構造を有するモノマーAを利用することができ、式中、「X」はそれぞれ、独立して、C、NまたはSiであってよく、「Y」はそれぞれ独立して、CH2、CR1R2、SiR1R2または結合であってよい。Yが結合である場合、Xは、両方の環に直接、結合している。
【0089】
例えば、ポリマー色素は、式(VIII)の構造:
【化20】
を有してもよい。
【0090】
ポリマー色素は、式(IX)の構造:
【化21】
を有してもよい。
【0091】
一部の場合、ポリマーは、式(X)の構造:
【化22】
を有してもよい。
【0092】
一部の場合、ポリマーは、式(XI)の構造:
【化23】
を有してもよい。
【0093】
一部の場合、ポリマーはコポリマーであり、式(XII)の構造:
【化24】
を有する。
【0094】
一部の場合、ポリマーはコポリマーであり、式(XIII)の構造:
【化25】
を有する。
【0095】
一部の場合、ポリマーはコポリマーであり、式(XIV)の構造:
【化26】
を有しており、
式中、
Bはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、
Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、機能的部分または結合パートナーであり、
下付き文字nおよびmは、独立して、1~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字pは、0~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字n、mおよびpの合計は、2~10,000の範囲であり、
tはそれぞれ、1~20の範囲の整数である。
【0096】
本明細書に記載されているポリマーは、5,000g/molより大きな、10,000g/molより大きな、15,000g/molより大きな、20,000g/molより大きな、25,000g/molより大きな、30,000g/molより大きな、40,000g/molより大きな、50,000g/molより大きな、60,000g/molより大きな、70,000g/molより大きな、80,000g/molより大きな、90,000g/molより大きな、または100,000g/molより大きな、最小数平均分子量(Mn)を特徴とすることができる。
【0097】
本明細書に記載されているポリマーは、5,000g/molより大きな、10,000g/molより大きな、15,000g/molより大きな、20,000g/molより大きな、25,000g/molより大きな、30,000g/molより大きな、40,000g/molより大きな、50,000g/molより大きな、60,000g/molより大きな、70,000g/molより大きな、80,000g/molより大きな、90,000g/molより大きな、または100,000g/molより大きな、最小重量平均分子量(Mw)を特徴とすることができる。
【0098】
用語「Mw」とは、重量平均分子量を指し、「Mn」とは、数平均分子量を指す。数平均分子量および重量平均分子量の値は、ポリマー標準物質(例えば、ポリスチレンまたは同様の物質)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0099】
コンジュゲートされているポリマー
式(I)の構造を有するポリマーは、アクセプター色素、消光性部分および/または結合パートナーを含めた官能基とコンジュゲートされ得る。コンジュゲートは、式(I)のポリマー構造中のモノマーA、L、G1またはG2などの、ポリマーの様々な位置で行われてよい。
【0100】
例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2019/0144601号に開示されている通り、アクセプター色素は、リンカーLを介してポリマーに結合することができる:
【化27】
【0101】
タンデムポリマー色素および他の官能基化ポリマーは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2020/0190253号に記載されている通り、重合後のポリマー中間体の修飾によって調製することができる。例えば、式(XVI)を有するペンダント可溶化基が、モノマーAに結合されていてもよく:
【化28】
式(XVII)による官能基化可溶化基:
【化29】
に変換されてもよく、式中、Wは、水可溶化部分であり、L
1およびL
2は、連結部分である。一部の例では、式(XVI)の構造を有するL1-W基は、R
1であってもよく、またはR
2であってもよい。一部の実施形態では、Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、消光性部分などの機能的部分または結合パートナーである。一部の実施形態では、Eはそれぞれ、独立して選択される発色団(例えば、および独立して選択される発蛍光団)である。一部の実施形態では、ポリマー中のE部分はすべて、同じ構造を有する。一部の実施形態では、ポリマー中のE部分は、異なる構造を有する。式(XVI)および式(XVII)による基中の水可溶化部分Wは、例えば、アンモニウムアルキル塩、アンモニウムアルキルオキシ塩、アンモニウムオリゴエーテル塩、スルホネートアルキル塩、スルホネートアルコキシ塩、スルホネートオリゴエーテル塩、スルホンアミドオリゴエーテル、オリゴ(エチレングリコール)またはポリ(エチレングリコール)であってよい。
【0102】
連結部分L1およびL2は、独立して、以下に限定されないが、共有結合、C1~8アルキレン、2~8員のヘテロアルキレンであってよい。一部の実施形態では、リンカーは、単一原子、線状鎖、分岐鎖、環式部分である。一部の実施形態では、リンカーは、長さが2~50個の間の主鎖原子、または長さが2~20個の間の主鎖原子などの、長さが2~100個の主鎖原子(例えば、炭素原子)からなる鎖である。ある特定の場合、リンカー主鎖の1個、2個、3個、4個もしくは5個、またはそれより多くの炭素原子は、硫黄、窒素または酸素により必要に応じて置き換えられ得る。主鎖原子の間の結合は、飽和または不飽和であり得、通常、1個、2個または3個以下の不飽和結合が、リンカー主鎖に存在する。リンカーは、1つまたは複数の置換基(例えば、アルキル基またはアリール基)を含むことができる。リンカーは、非限定的に、オリゴ(エチレングリコール);エーテル;チオエーテル;三級アミン;およびアルキレン基(すなわち、二価アルキルラジカル)を含むことができ、これらは、直鎖または分岐鎖であり得る。リンカー主鎖は、環式基、例えば、二価アリールラジカル、二価複素環式ラジカルまたは二価シクロアルキルラジカルを含むことができ、この場合、環式基の2個またはそれより多い原子、例えば、2個、3個または4個の原子が主鎖に含まれる。
【0103】
L1は、スルホンアミド、スルフィンアミド、ジスルホンアミド、ジスルフィンアミド、サルタム、アミド、二級アミン、ホスホンアミド、ホスフィンアミド、ホスホンアミデート、セレノンアミドまたはセレニンアミドを含むことができる。一部の実施形態では、L1は、スルホンアミド、アミド、二級アミンまたはホスホンアミドを含む。一部のこのような実施形態では、L2は、線状または分岐状の、飽和または不飽和C1~30アルキレン基を含み、C1~30アルキレン基中の1個または複数の炭素原子は、O、S、NRaによって必要に応じておよび独立して、置き換えられており、C1~30アルキレン中の隣接炭素原子の2つまたはそれより多い団(grouping)は、必要に応じておよび独立して、-NRa(CO)-または-(CO)NRa-により置き換えられており、Raはそれぞれ、HおよびC1~6アルキルから独立して選択される。
【0104】
ポリマーは、第1の工程において、式(XVI)によるペンダント可溶化基中のL1の内部位置をリンカー部分L2の第1の末端に共有結合させて、次に、第2の工程において、色素または他の官能基または結合パートナーEをリンカー部分L2の第2の末端に共有結合させることによって官能基化することができる。一部の実施形態では、L1中の窒素原子(例えば、アミド窒素、スルホンアミド窒素またはホスホンアミド窒素)は、好適な脱離基を有するリンカー部分L2の第1の末端において、このリンカー部分L2を使用してアルキル化される。一部の実施形態では、例えば、脱離基は、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード)である。一部の実施形態では、脱離基は、スルホン酸エステル(すなわち、-OS(O)2Rであり、Rは、アルキル、ハロアルキル、アリールまたは置換アリールである)である。好適なスルホン酸エステルには、以下に限定されないが、メシレート(メタンスルホネート)、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネート)、ベシレート(ベンゼン-スルホネート)、トシレート(p-トルエンスルホネート)およびブロシレート(4-ブロモベンゼンスルホネート)が含まれる。
【0105】
任意の好適な溶媒が、E基によるポリマーの官能基化の間の、アルキル化工程に使用されてよい。好適な溶媒には、以下に限定されないが、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、石油エーテルおよびそれらの混合物が含まれる。アルキル化反応は、通常、約25℃~約100℃の範囲の温度において、ポリマー中の1つまたは複数のペンダント基に連結部分L2または連結された官能基-L2-Eを導入するのに十分な期間で行われる。反応は、反応に使用されるポリマーおよび試薬に応じて、数分間から数時間の範囲、またはそれより長い間の期間に行うことができる。例えば、反応は、約10分間、または約30分間、または約1時間、または約2時間、または約4時間、または約8時間、または約12時間、約40℃、または約50℃、または約60℃、または約70℃、または約80℃で行うことができる。
【0106】
連結部分L2の第2の末端は、第1の工程(例えば、アルキル化工程)の間に、保護形態で使用される官能基(例えば、アミンまたはカルボン酸)を含むことができ、この官能基は、次に、色素または他の官能基または結合パートナーEを連結部分の第2の末端に共有結合する前に脱保護される。アミン保護基の例には、以下に限定されないが、ベンジルオキシカルボニル;9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc);tert-ブチルオキシカルボニル(Boc);アリルオキシカルボニル(Alloc);p-トルエンスルホニル(Tos);2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc);2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf);メシチル-2-スルホニル(Mts);4-メトキシ-2,3,6-トリメチルフェニルスルホニル(Mtr);アセトアミド;フタルイミドなどが含まれる。アミン、カルボン酸、アルコールおよびさらなる官能基のためのこのような保護基および他の保護基は、例えば、GreenおよびWuts(Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed 2007, Wiley-Interscience, New York)によって記載されている公知技法を使用して、本開示のポリマーに付加および除去することができる。
【0107】
例えば、消光性部分などの、色素、結合パートナーおよび官能基の付加は、任意の好適な方法を使用して行うことができる。例えば、アミド連結は、L2の脱保護した一級アミン基とカルボキシレート官能基化色素との間で形成される。色素は、活性化型で使用されてもよく、例えば、試薬としてE-C(O)X’を使用することができ、ここでX’は脱離基である。活性化カルボキシレート官能基化試薬には、以下に限定されないが、酸無水物(対称な混合酸無水物または環式無水物を含む)、活性化エステル(例えば、p-ニトロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、N-スクシンイミジルエステルなど)、アシルアゾール(例えば、カルボニルジイミダゾールを使用して調製されるアシルイミダゾールなど)、アシルアジドおよび酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)が含まれる。代替的に、カップリング剤を使用して、L2の脱保護した一級アミン基とカルボキシレート官能基化発色団E-C(O)OHとの間でアミド連結結合を形成してもよい。カップリング剤は、ポリマーアミン基との反応前に、活性化された色素試薬を形成するために使用されてよい。任意の好適なカップリング剤が、使用されてよい。一部の実施形態では、カップリング剤は、カルボジイミド、グアニジニウム塩、ホスホニウム塩またはウロニウム塩である。カルボジイミドの例には、以下に限定されないが、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)などが含まれる。ホスホニウム塩の例には、以下に限定されないが、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP);ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BroP)などが含まれる。グアニジニウム/ウロニウム塩の例には、以下に限定されないが、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU);O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU);2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU);1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン-アミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノ)]ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)などが含まれる。溶媒、反応時間および他の反応条件は、具体的なポリマーおよび色素/官能基の性質などの因子に応じて、上記の通り様々となり得る。
【0108】
例えば、色素、結合パートナー、官能基および消光性部分の付加は、式(XVIIIa)によるポリマー
【化30】
を式(XVIII)によるポリマー
【化31】
に変換することを含むことができ、
式中、
Aはそれぞれ、独立して、芳香族コモノマーまたは複素芳香族コモノマーであり、
L1
aはそれぞれ、共有結合、C
1~8アルキレン、C
1~8アルコキシ、2~8員のヘテロアルキレン、-NHC(O)L
a-、-C(O)NHL
a-および-C(O)L
a-からなる群から独立して選択され、
L
2は、共有結合、C
1~8アルキレン、2~8員のヘテロアルキレン、-L
bNHC(O)-、-L
bC(O)NH-、-L
bC(O)-、-C(O)NHL
b-および-C(O)L
b-からなる群から選択され、
L
aおよびL
bは、C
1~8アルキレンおよび2~8員のヘテロアルキレンからなる群から独立して選択され、
Wは、水可溶化部分であり、
Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、機能的部分、消光性部分または結合パートナーであり、
Bはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、
G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、
R
8は、本明細書の上に定義されているR
1、Hまたはアミン保護基からなる群から選択され、
下付き文字nおよびmは、独立して、1~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字pは、0~10,000の範囲の整数であり、
下付き文字n、mおよびpの合計は、2~10,000の範囲であり、
下付き文字qは、1、2、3または4であり、
下付き文字rは、1、2、3または4であり、
下付き文字sは、0、1、2または3であり、
下付き文字tは、1または2であり、
AおよびBは、蛍光ポリマー中に、ランダムにまたは非ランダムに分布している。
【0109】
式(XVIIIa)のポリマーの式(XVIII)によるポリマーへの変換には、上記の通り、1つまたは複数のアルキル化工程あるいは1つまたは複数のアミド形成工程が含まれてもよい。
【0110】
一部の実施形態では、ポリマー色素コンジュゲートは、式(XIX)によるタンデム色素コンジュゲート:
【化32】
である。
【0111】
任意の好適な発色団または発蛍光団は、ポリマーの官能基化使用することができる。一般に、好適な発色団および発蛍光団は、ペンダント可溶化基に共有結合することができる(例えば、上記の連結部分L2を介する)、反応性基(例えば、カルボキシレート部分、アミノ部分、ハロアルキル部分など)を有する。好適な発色団および発蛍光団の例には、以下に限定されないが、米国特許第7,687,282号、同第7,671,214号、同第7,446,202号、同第6,972,326号、同第6,716,979号、同第6,579,718号、同第6,562,632号、同第6,399,392号、同第6,316,267号、同第6,162,931号、同第6,130,101号、同第6,005,113号、同第6,004,536号、同第5,863,753号、同第5,846,737号、同第5,798,276号、同第5,723,218号、同第5,696,157号、同第5,658,751号、同第5,656,449号、同第5,582,977号、同第5,576,424号、同第5,573,909号、および同第5,187,288号に記載されているものが含まれ、これらの特許は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。ポリマー色素およびモノマーはまた、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、US2020/0190253に記載されている。
【0112】
例えば、Eは、FITC、CY3B、Cy55、Alexa 488、Texas red、Cy5、Cy7、Alexa 750または800CWとすることができる。
【0113】
例えば、発色団Eは、以下の構造:
【化33】
を有する、ホウ素-ジピロメテン部分とすることができ、
式中、
R
6a、R
6b、R
6c、R
6d、R
6e、R
6fおよびR
6gのうちの6つは、H、ハロゲン、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
6~10アリール、C
7~16アリールアルキル、C
1~6アシルおよび-SO
3Hから独立して選択され、R
6a、R
6b、R
6c、R
6d、R
6e、R
6fおよびR
6gのうちの1つは、連結部分-L
2-である。R
6aおよびR
6cは、独立して選択されるC
1~6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、R
6e、R
6fおよびR
6gのうちの1つは、連結部分-L
2-である。一部の実施形態では、R
6aおよびR
6cはメチルであり、R
6gは連結部分-L
2-である。
【0114】
発色団Eは、以下の構造:
【化34】
を有する、シアニン部分とすることができ、
式中、
R
6hおよびR
6iは、H、C
1~6アルキル、(CH
2)
tCOOH、(CH
2)
tSO
3Hおよび連結部分L
2から独立して選択され、
下付き文字tはそれぞれ、独立して、1~10の整数であり、
R
6jおよびR
6kは、H、ハロゲン、C
1~6アルキル、必要に応じて置換されている縮合C
6~10アリール(例えば、必要に応じて置換されているベンゾ)、-SO
3H、-PO
3H
2、-OPO
3H
2、-COOHおよび連結部分L
2から独立して選択され、
Yはそれぞれ、O、S、C(R
6l)
2、-CH=CH-およびNR
6lから独立して選択され、R
6lはそれぞれ、独立して、HまたはC
1~6アルキルであり、
下付き文字nは、1~6の整数であり、ただし、R
6h、R
6i、R
6jおよびR
6kの1つだけが、連結部分-L
2-であることを条件とする。
【0115】
発色団Eは、以下の構造:
【化35】
を有する、クマリン部分とすることができ、
式中、
Wは、NまたはCR
6pであり、
Zは、O、SまたはNR
6qであり、
R
6m、R
6n、R
6o、R
6pはそれぞれ、H、ハロゲン、C
1~6アルキル、-CN、-CF
3、-COOR
3v、-CON(R
3v)
2、-OR
3vおよび連結部分-L
2-から独立して選択され、
R
6nは、-OR
3vおよび-N(R
3v)
2から選択され、
R
6qはそれぞれ、H、C
1~6アルキルおよび連結部分-L
2-から独立して選択され、ただし、R
6m、R
6n、R
6o、R
6pおよびR
6qのうちの1つだけが、連結部分-L
2-であることを条件とする。
【0116】
発色団Eは、以下の構造:
【化36】
を有する、キサンテン部分とすることができ、
式中、
Tは、O、S、C(R
6u)
2およびNR
6uから選択され、Uは、OまたはN(R
6u)
2であり、
R
6rはそれぞれ、H、ハロゲン、C
1~6アルキル、-SO
3Hおよび連結部分-L
2-から独立して選択され、
R
6sは、H、-OH、-OR
6u、-N(R
6u)
2および連結部分-L
2-から選択され、
R
6tは、H、C
1~6アルキル、R
6vおよび連結部分-L
2-から選択され、
R
6uはそれぞれ、独立して、HまたはC
1~6アルキルであり、
R
6vは、
【化37】
から選択され、
式中、
R
6wはそれぞれ、Hおよび連結部分-L
2-から独立して選択され、
ただし、R
6r、R
6s、R
6tおよびR
6vのうちの1つだけが、連結部分-L
2-であることを条件とする。
【0117】
キサンテン部分はフルオレセインとすることができ、TおよびUはOであり、R
6sはOHであり、R
6tは、
【化38】
である。
【0118】
キサンテン部分は、エオシンとすることができ、TおよびUはOであり、R
6sはOHであり、R
6rはそれぞれ、ハロゲン(例えば、ブロモ)であり、R
6tは、
【化39】
である。
【0119】
キサンテン部分はローダミンとすることができ、TはOであり、UはN(R
6u)
2(例えば、=NH
2
+)であり、Rは-N(R
6u)
2(例えば、-NH
2)であり、R
6tは、
【化40】
である。
【0120】
キサンテン部分は、以下の構造:
【化41】
を有する、ローダミンとすることができ、
式中、R
6vは、
【化42】
から選択され、
R
6wの1つはHであり、もう一方のR
6wは連結部分-L
2-である。
【0121】
発色団に加えて、他の機能性部分は、本明細書において提供される方法を使用して、官能基化ポリマーに結合され得る。例えば、機能的部分「E」は、ビオチン、ジゴキシゲニン、ペプチドタグ(FLAGペプチドなど)、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとすることができる。本明細書において使用する場合、用語「FLAGペプチド」とは、アミノ酸配列Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(すなわち、DYKDDDDK)を含有する、オリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。FLAGペプチドおよびそのバリアントは、例えば、Hoppらに対する米国特許第4,703,004号に記載されており、この特許は参照により本明細書に組み込まれている。FLAGペプチドの代わりに使用することができる他のペプチドには、以下に限定されないが、配列Tyr-Pro-Tyr-Asp-Val-Pro-Asp-Tyr-Ala(すなわち、YPYDVPDYA)を含有するHAペプチドタグ、配列His-His-His-His-His-His(すなわち、HHHHHH)を含有するHis6ペプチドタグ、および配列Glu-Gln-Lys-Leu-Ile-Ser-Glu-Glu-Asp-Leu(すなわち、EQKLISEEDL)を含有するMycペプチドタグが含まれる。ペプチドタグは、都合のよい同定および/または定量のために、比色試薬、化学発光試薬などと使用するための抗体または他の結合部分によって認識され得る。ヌクレオチド(例えば、RNA、一本鎖DNAまたは二本鎖DNA)は、例えば、その公開公報が参照により本明細書に組み込まれている、WO2016/019929(Navratilら)に記載されている、相補性プライマーまたは他の相補性ヌクレオチドによって認識され得る。本明細書において使用する場合、用語「ジゴキシゲニン」とは、3-[(3S,5R,8R,9S,10S,12R,13S,14S,17R)-3,12,14-トリヒドロキシ-10,13-ジメチル-1,2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]-フェナントレン-17-イル]-2H-フラン-5-オン(CAS登録番号1672-46-4)およびその置換アナログを指す。本明細書において使用する場合、用語「ビオチン」とは、5-[(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル]ペンタン酸(CAS登録番号58-85-5)およびその置換アナログを指す。
【0122】
CD19-SN v428、CD20-SN v605などの結合パートナー-色素コンジュゲートを合成するため、ポリマー色素は、異なる特異度の結合パートナー、例えば、標的分析対象特異的抗体にコンジュゲートされてもよい。
【0123】
本明細書において使用する場合、「結合パートナー」とは、標的分析対象に特異的に結合することができる、任意の分子または分子の複合体を指す。結合パートナーは、例えばタンパク質(例えば、抗体または抗原結合性抗体断片)、有機低分子、炭水化物(例えば、多糖)、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、親和性リガンド、アプタマーなどとすることができる。一部の実施形態では、結合パートナーは、抗体またはその断片である。一部の実施形態では、結合パートナーは、標的分析対象に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性断片である。特異的結合とは、本発明の文脈では、不均一な集団の存在下、標的分析対象の存在を決定づける、結合反応を指す。したがって、ある特定のアッセイ条件下では、指定された結合パートナーは、特定のタンパク質、または特定のタンパク質のアイソフォームに優先的に結合し、試料中に存在する他のタンパク質または他のアイソフォームには有意な量で結合しない。
【0124】
一部の場合、抗体は、静注用免疫グロブリン(IVIG)および/またはIVIGに由来する抗体(例えば、IVIGから富化したもの、IVIGから精製したもの、例えば、IVIGから親和性精製したもの)を含む。IVIGは、多数の(例えば、時に、1,000~60,000に及ぶ)正常かつ健常な血液ドナーからの血漿(例えば、一部の場合、任意の他のタンパク質を含まない)からプールしたIgG(免疫グロブリンG)を含有する血液製剤である。IVIGは、市販されている。IVIGの態様は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2010/0150942号;同第2004/0101909号;同第2013/0177574号;同第2013/0108619号;および同第2013/0011388号に記載されている。
【0125】
結合パートナーが、抗体である場合、それらは、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。用語「抗体」とは、本明細書において使用する場合、免疫グロブリン分子、および例えば、標的分析対象中の抗原に特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性部分を指す。このような抗体には、以下に限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異的ポリクローナル抗体、抗体模倣体、キメラ、単鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、FvおよびFab発現ライブラリが含まれる。一部の場合、抗体は、定義される部分クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、IgA、IgD、IgE、IgG2a、IgG2b、IgG3およびIgM)のモノクローナル抗体である。抗体の組合せ物が使用される場合、抗体は、同じ部分クラスまたは異なる部分クラスに由来し得る。例えば、抗体は、IgG1抗体とすることができる。一部の実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト化される。抗体断片は、Fab、scFv、F(ab’)2およびFab’分子などの分子を含むことができる。抗体誘導体は、抗体、またはキメラ抗体などの付加もしくは置換を有するその断片を含む。抗体は、組換え方法により、または当分野で公知の任意の他の方法で、ヒトまたは動物源から、ハイブリドーマから誘導され得る。
【0126】
抗体、または標的分析対象特異的抗体断片もしくは誘導体以外の結合パートナーもまた、本システムおよび方法に使用することができる。例えば、結合パートナーは、核酸、またはオリゴヌクレオチドもしくはPNAプローブなどの核酸アナログであってもよい。一実施形態では、アプタマーを特異的結合パートナーとして使用することができる。アプタマーは、タンパク質およびペプチドを含む予め選択された標的に、高い親和性および特異性で結合することができる、一本鎖DNAまたはRNA(ssDNAまたはssRNA)分子である。標的分析対象に結合して一対の受容体-リガンド、酵素-基質、酵素-阻害剤および酵素-補因子の対を形成することができる他の結合パートナーもまた、使用することができる。このような結合パートナーの対の具体例には、炭水化物とレクチン、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、葉酸とフォレート結合タンパク質、ビタミンB12と固有因子、プロテインAと免疫グロブリン、およびプロテインGと免疫グロブリンが含まれる。同様に、標的分析対象と共有結合を形成する結合パートナーが含まれる。
【0127】
ポリマー色素コンジュゲートは、当業者に公知の技法を使用して、結合パートナーにコンジュゲートされている任意の公知のポリマー色素を含むことができる。一部の実施形態では、ポリマー色素は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2020/0190253号に記載されている、コアポリマーの直接修飾の方法を使用して、結合パートナーにコンジュゲートさせて、ポリマー色素コンジュゲートを形成することができる。
【0128】
一部の例では、ポリマー色素は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2019/0144601号に記載されている方法を使用して、結合パートナーにコンジュゲートさせて、ポリマー色素コンジュゲートを形成することができる。その方法は、以下のように図示することができる:
【化43】
【0129】
標的分析対象
本開示はまた、試料中の標的分析対象を検出する方法であって、標的分析対象が、標的抗原を含み、その存在量/濃度が何らかの分析手順によって求められる物質、例えば分子とすることができる、方法に関する。本発明は、特定の標的分析対象の存在、および一部の場合、その量を検出するよう設計されている。用語「標的分析対象」とは、生物学的試料中で検出されるべき標的抗原を含有する標的分子、例えば、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、有機分子、糖および他の炭水化物、脂質および低分子を指す。標的分析対象が液体試料中に含まれること、および本発明の標的分析対象特異的結合パートナーに結合するため、接近可能であることまたはある時点において接近可能にされることが、本開示の重要な態様である。標的分析対象は、血液試料、細胞系成長試料、組織培養試料などの、生物学的試料中に観察され得る。
【0130】
標的分析対象は、例えば、核酸(DNA、RNA、mRNA、tRNAまたはrRNA)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、イオン、単糖、オリゴ糖、多糖、リポタンパク質、グリコタンパク質、糖脂質またはそれらの断片とすることができる。標的分析対象は、タンパク質とすることができ、例えば、構造的マイクロフィラメント、微小管および中間体フィラメントタンパク質、細胞小器官特異的マーカー、プロテアソーム、膜貫通タンパク質、表面受容体、核膜孔タンパク質、タンパク質/ペプチドトランスロカーゼ、タンパク質フォールディングシャペロン、シグナル伝達足場、イオンチャネルなどとすることができる。タンパク質は、活性化可能なタンパク質、あるいは以下に限定されないが、転写因子、DNAおよび/またはRNA結合性タンパク質および修飾タンパク質、核内輸入および輸出受容体、アポトーシスまたは生存の調節因子などを含む、罹患細胞または異常細胞において識別的に発現または活性化されるタンパク質とすることができる。
【0131】
標的分析対象は、細胞の表面に存在することができ、接近可能であり得る。有用な分析対象の例示的な例は、以下に限定されないが、以下:1)特異的細胞表面マクロ分子および抗原(ホルモン、タンパク質複合体、および細胞受容体によって認識される分子を含む)、および2)異常なDNAもしくはRNA配列、または異常量のある特定のメッセンジャーRNAを含めた、透過性細胞中の細胞タンパク質、DNAまたはRNAを含む。これらの分析対象の検出は、分析対象が、様々ながんの早期に発見されるなどの、希少細胞中に含まれている、および/または希少細胞の識別子である状況において特に有用となることがある。
【0132】
一部の例では、標的分析対象は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD10、CD11c、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD38、CD45、CD45RA、CD56、CD62L、CD64、CD95、CD103、HLA-DR、IFN-アルファ、IFN-ベータ、TNF-アルファもしくはZAP-70または目的の他の標的分析対象であってよい。
【0133】
ポリマー色素の非蛍光構成成分
本開示による組成物は、ポリマー色素の少なくとも1種または少なくとも2種の非蛍光構成成分を含むことができる。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、ポリマー色素のモノマー構成成分、非蛍光ポリマー色素、光退色されたポリマー色素、および消光性部分を含むポリマー色素からなる群から選択されてよい。一部の実施形態では、ポリマー色素の非蛍光構成成分は、結合パートナーを含まない。
【0134】
ポリマー色素のモノマー構成成分
本明細書に記載されている組成物は、他の構成成分のうち、本明細書に記載されているポリマー色素のモノマー構成成分(本明細書において、「モノマー」、例えば、モノマーAおよび/またはモノマーBとも称される)を含む。ポリマー色素のモノマー構成成分は、水溶性モノマーであってもよい。
【0135】
水溶性モノマーは、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むモノマー単位であってよく、上記の単位の各々は、それらの単位に結合した水可溶化部分を必要に応じて有する。水可溶化部分は、1つまたは複数のポリ(エチレングリコール)部分であってもよい。
【0136】
ポリマー色素のモノマー構成成分は、ジヒドロフェナントレン(DHP)ベースのモノマー、フルオレンベースのモノマーおよび/またはカルバゾールベースのモノマーを含んでよい。
例えば、水溶性モノマーは、アリール部分またはヘテロアリール部分を含むモノマー単位、例えば、(II)、(III)、(IV)、(Va)、(Vb)、(VIa)、(VIb)、(VIc)、(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)、(VIId)、(XXII)および/または(VVIII)による構造を有する本開示のモノマーであってよく、例えば、波線によって表されるモノマーの両末端は、独立して、またはどちらも、Pdもしくはニッケル塩を触媒とする重合反応を受けることができる、ハロゲン原子、ボロン酸エステルまたはボロン酸、シリル、ジアゾニウム塩、トリフレート、アセチルオキシ、スルホネートまたはホスフェートである。本開示のDHPモノマーは、それらの両方の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2019/0144601号および米国出願公開第2020/0190253号に教示されている通りとすることができる。ポリマー色素のモノマー構成成分は、式(XXII)による化学構造を有するジヒドロフェナントレン(DHP)ベースのモノマー:
【化44】
であってもよく、
式中、
G
1、G
2はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、C
1~C
6アルキルおよびPEGからなる群から独立して選択され、R
2、R
4、R
5、Z、nおよびfはそれぞれ、本明細書において先に定義されている通りである。
【0137】
ポリマー色素のモノマー構成成分は、式(XXIII)による化学構造を有するフルオレンベースのモノマーまたはカルバゾールベースのモノマー:
【化45】
であってもよく、
式中、
G
1、G
2はそれぞれ、ハロ(F、Cl、Br、I)、C
1~C
6アルキルおよびPEGからなる群から独立して選択され、
Xはそれぞれ、C、NまたはSiであり、
R
2、R
4、R
5、Z、nおよびfはそれぞれ、本明細書において先に定義されている通りである。
一部の実施形態では、fは、1~50、2~40または5~20である。
一部の実施形態では、nはそれぞれ、1~10、2~5または3である。
一部の実施形態では、mはそれぞれ、11~12である。
【0138】
本明細書において、ポリマー色素のモノマー構成成分の例には、以下:
【化46】
【化47】
が含まれ、これらは、例示的な「モノマーA」および例示的な「モノマーB」と称される。
【0139】
様々なモノマーAおよびB、ならびにそれらの誘導体は、例えば、それらの両方の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国出願公開第2019/0144601号または米国出願公開第2020/0190253号に提示されている、当分野で公知の任意の適切な方法によって調製することができる。
【0140】
例えば、2,7-ジブロモ-trans-9,10-ジヒドロフェナントレン-9,10-ジオール(DHP-OH)は、以下の通り調製することができる。コニカルフラスコ(2000L)内で、約26gのNaBH4を撹拌した水-エタノール混合物(120mL+780mL)に加える。この溶液に、約24gの2,7-ジブロモフェナントレン,9,10-ジオンを小分けであるが、素早く(5分間で)加える。この反応ミックスを1日間、撹拌した。反応の終了までに、溶液の色が、赤オレンジ色から淡黄色、淡黄色から白色に変化する。反応を停止し、希HCl酸で反応混合物を中和する。中和後、白色沈殿物をろ過し、過剰の水で洗浄する。こうして得られた白色沈殿物を非常に冷えた(<-15℃)エタノール(100mL)およびメタノール(100mL)で洗浄した。
【0141】
DHP-O-アルキル-SO3Hは、以下の通り調製することができる。2つ口丸底フラスコ内で、DHP-OH(3.6g)および18C6(500mg)を120mLのTHFに溶解した。この溶液に窒素をパージし(20分間)、窒素のパージが継続している間に、NaH(2g)を加えた。溶液の色が、10~15分間で、無色から淡ピンク色、暗ピンク色、褐色および暗緑色に変化する。別のRBで、20mLのTHFに12gの1,3 プロパンスルトンを溶解し、窒素をパージした。このスルトン溶液を20~30分間かけて、滴下漏斗によって、DHP-OH溶液に加えた。この反応物を室温で4~5時間、撹拌した。溶媒を蒸発させて、沈殿物を水に溶解させた。アセトンを加えて、二ナトリウム塩の形態のDPSの白色沈殿物を得た。沈殿物をろ過して、水(最小量)に再溶解して、HClで中和し、アセトン中に再度、沈殿させた。沈殿を繰り返し(2~3回)、次いで遠心分離し、DPSを白色固体として得た。
【0142】
DHP-O-アルキル-SO2Clは、以下の通り調製することができる。丸底フラスコ内に5gのDHP-O-アルキル-SO3Hをとり、25mLのDMFと共に混合した。ここに、約10mLのSOCl2を滴下して加え、この混合物を一晩、撹拌した。翌朝、反応混合物を200mLの水に注ぎ入れて、沈殿物をろ過して乾燥した。
【0143】
DHP-スルホンアミドPEGは、以下の通り調製することができる。ジクロロメタン/TEA混合物中で、DHP-O-アルキル-SO2Clを2.2当量のPEGアミンと混合した。3時間の超音波照射反応後、粗生成物をジクロロメタンに抽出し、次いで、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH-CHCl3)を行った。
【0144】
DHP-スルホンアミドPEGのジボロン酸エステルは、以下の通り調製することができる。ジブロモ化合物を窒素下でDMSOと混合し、ここに3当量のビスピナコラトジボロンを加えた。試薬を12当量の酢酸カリウムおよび4当量のPd(dppf)Cl2触媒と、80度で5時間、反応させた。反応混合物を冷却し、CHCl3/水で抽出した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH-CHCl3)によって精製した。
【0145】
同様に、本開示のフルオレンモノマーは、以下に記載される通りに作製することができる。例えば、FL-O-アルキル-SO3Hは、以下の通り調製することができる。2つ口丸底フラスコ内で、5gのフルオレンを70のDMSO中で混合した。この溶液に窒素をパージし(20分間)、窒素のパージが継続している間に、50%NaOH(12当量)を加えた。溶液の色が無色から暗褐色に変化する。プロパンスルトン(3当量)を秤量し、DMSO中に溶解する。これをフルオレン反応混合物に5分間かけて、滴下して加えた。この反応物を室温で4~5時間、撹拌した。溶媒を蒸発させて、沈殿物を水に溶解させた。アセトンを加えて、二ナトリウム塩の形態のDPSの白色沈殿物を得た。沈殿物をろ過して、水(最小量)に再溶解して、HClで中和し、アセトン中に再度、沈殿させた。沈殿を繰り返し(2~3回)、次いで遠心分離し、FL-OSO3Hを白色固体として得た。
【0146】
FL-O-アルキル-SO2Clは、以下の通り調製することができる。丸底フラスコ内に5gのFL-O-アルキル-SO3Hをとり、25mLのDMFと共に混合した。ここに、約10mLのSOCl2を滴下して加え、この混合物を一晩、撹拌した。翌朝、反応混合物を200mLの水に注ぎ入れて、沈殿物をろ過して乾燥した。
【0147】
FL-スルホンアミドPEGは、以下の通り調製することができる。ジクロロメタン/TEA混合物中で、FL-O-アルキル-SO2Clを2.2当量のPEGアミンと混合した。3時間の超音波照射反応後、粗生成物をジクロロメタンに抽出し、次いで、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH-CHCl3)を行った。
【0148】
FL-スルホンアミドPEGのジボロン酸エステルは、以下の通り調製することができる。ジブロモ化合物を窒素下でDMSOと混合し、ここに3当量のビスピナコラトジボロンを加えた。これらの試薬を12当量の酢酸カリウムおよび4当量のPd(dppf)Cl2触媒と、80度で5時間、反応させた。反応混合物を冷却し、CHCl3/水で抽出した。有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH-CHCl3)によって精製した。
【0149】
生物学用緩衝液および非イオン性界面活性剤を含む試験染色用緩衝組成物に、100~400ug/試験で、例示的なモノマーAおよび/または例示的なモノマーBなどのポリマー色素のモノマー構成成分を添加することは、ポリマー色素コンジュゲートの間の非特異的相互作用を低減するのに非常に効率的であることが見出された。本開示の染色用緩衝組成物は、10~500mg/mL、20~400mg/mLまたは30~300mg/mLの蛍光色素のモノマー構成成分を含んでよい。作業濃度の染色用緩衝組成物(1×)は、10~50mg/mL、20~40mg/mLまたは約30mg/mLの蛍光ポリマー色素のモノマー構成成分を含んでよい。濃縮された濃度(10×)の染色用緩衝組成物は、100~500mg/mL、200~400mg/mLまたは約300mg/mLの、蛍光ポリマー色素のモノマー構成成分を含んでよい。本開示の組成物は、100~400ug/試験、200~400ug/試験または約300ug/試験を供給するのに十分な量で、蛍光ポリマー色素のモノマー構成成分を含むことができる。
【0150】
消光されたポリマー色素
ポリマー色素の非蛍光構成成分は、消光性部分を含むポリマー色素、すなわち消光されたポリマー色素(「消光されたポリマー」)であってよい。消光されたポリマーは、本開示によるポリマー色素であって、1つもしくは複数、または多数の消光性部分、例えば、1~50、2~25または5~8の消光性部分を含む、ポリマー色素を含んでもよい。一部の実施形態では、消光されたポリマーは、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下、0.05以下、0.02以下、または0.015以下のΦとなる量子収率(QY)を示す。消光されたポリマーは、405nmのレーザーで励起された場合、50AFU未満、40AFU未満、30AFUの蛍光プロファイルを示し得る。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0151】
一部の実施形態では、消光されたポリマー色素は、10マイクログラム/mLの場合、450nmにおいて、≦50AFUを放射する(スリット励起/発光は6nm/4nmである;1cmのキュベット)。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素は、蛍光光度計LS50B Perkin ElmerにおいてAFUスリット励起/発光6nm/4nmを使用して、405nmのレーザーで励起すると、10ug/mLで<47AFUを示す。
【0152】
消光性部分は、非蛍光消光性部分とすることができる。非蛍光消光性部分は、発蛍光団からの励起エネルギーを吸収して、熱として消散させることができる、ダーククエンチャーとすることができる。
【0153】
消光性部分は、例えば、DABCYL、DABSYL、DYQ425ブラックホールクエンチャー1(BHQ1)、QSY7、QSY9、QSY35およびTAMRA(カルボキシテトラメチルローダミン)部分から選択されてよい。消光性部分は、ポリマー色素にコンジュゲートするため、例えば、Thermo Scientificから、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccininide)活性エステル(NHSエステル)として市販されている(例えば、DYQ425;DyLight 425Q NHSエステル)。他の消光性部分は、例えば、Dabcyl Q、Dabcyl plus、Anaspec 490Q、Dyomics 425Q、Dynomics 505Qなどとして、活性エステルとして入手可能である。好ましくは、消光性部分は、約400~550nm、約480~約580nmまたは約500~約600nmの範囲内の蛍光発光を消光することができる。消光性部分の例は、例えば、
【化48】
を含むことができる。
【0154】
例えば、本開示の消光されたポリマーは、式(I)による構造を有するポリマー色素:
【化49】
を利用することができ、
式中、Aはそれぞれ、芳香族コモノマーおよび複素芳香族コモノマーからなる群から独立して選択され、Lはそれぞれ、リンカー部分であり、Mはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、a、cおよびdは、各々が均等にまたはランダムに反復され得る、構造内の各単位のmol%を独立して定義し、aはそれぞれ、10~100%のmol%であり、cはそれぞれ、0~90%のmol%であり、dはそれぞれ、0~25%のmol%であり、bはそれぞれ、独立して、0または1であり、mは、1~約10,000の整数であり、消光されたポリマー色素は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示す。
【0155】
一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(I)は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY);必要に応じて、405nmのレーザーで励起された場合に、50AFU未満、40AFU未満、または30AFU未満の蛍光プロファイルを示す。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(I)は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。用語「親蛍光ポリマー」とは、消光性部分が存在しないポリマー色素を指す。
【0156】
例えば、本開示の消光されたポリマーは、例えば、式(VIII):
【化50】
に示されている、ジヒドロフェナントレン(DHP)、フルオレン、カルバゾール、ならびにDHP、カルバゾールおよびフルオレンモノマーの組合せ物を利用することができ、
【0157】
式中、G1、G2、R1、R2、X、Y、M、L、a、b、c、dおよびmは、本明細書においてこれまでに定義されており、ポリマーは、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示す。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(VIII)は、405nmのレーザーで励起された場合、90AFU未満、50AFU未満、40AFU未満、または30AFU未満の蛍光プロファイルを示す。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(VIII)は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0158】
式(VIII)による消光されたポリマーは、R1、R2、L、G1またはG2において、1~50、2~25または5~8の消光性部分を含んでよい。
【0159】
消光されたポリマーは、式(XX)による構造を含んでよく、消光性部分は、L
2に結合しており:
【化51】
式中、A、B、E、G
1、G
2、L
1、L
2、L
3、W、n、m、p、q、r、s、tはそれぞれ、本明細書において先に定義されており、
【0160】
AおよびBは、コンジュゲートされているポリマー中に、ランダムにまたは非ランダムに分布されており、ポリマーは、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示す。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(XX)は、405nmのレーザーで励起された場合、90AFU未満、50AFU未満、40AFU未満、または30AFU未満の蛍光プロファイルを示す。一部の実施形態では、消光されたポリマー色素(XX)は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0161】
一部の実施形態では、Eはそれぞれ、独立して選択される発色団、機能的部分または消光性部分であってもよく、少なくとも1つもしくは複数のE、または少なくとも2つまたはそれより多いEは、消光性部分である。
【0162】
一部の例では、本開示の消光されたポリマー色素は、式(I)、(XVIII)~(XIV)、(XVIII)、(XIX)、(XX)および/または(XXIV)による構造を有するポリマー色素を利用することができる。
【0163】
一部の実施形態では、消光されたポリマーは、2~20、3~15または5~8の消光性部分を含んでよい。一部の実施形態では、m=2~20、3~15または5~8である。
【0164】
一部の実施形態では、消光性部分は、Dabcyl、Dabsyl、BHQ1、DYQ425、DYQ505、QSY7、QSY9、QSY35またはTAMRA消光性部分から選択されてよい。
【0165】
一部の実施形態では、消光されたポリマーは、結合パートナーを含まない。
【0166】
消光されたポリマーは、任意の適切な方法に準拠して調製されてよく、例えば、消光性部分は、NHSエステルなどの活性エステルの形態で商業的に得られ、本開示の方法によりポリマー色素に曝露される。
【0167】
本開示の染色用緩衝液は、0.2~15mg/mL、0.3~12mg/mLまたは0.5~10mg/mLの消光されたポリマーを含んでよい。一部の実施形態では、本開示の作業濃度の(1×)染色用緩衝組成物は、0.2~2.0mg/mL、0.3~1.5mg/mL、0.5~1.2mg/mLまたは約1mg/mLの消光されたポリマー色素を含んでよい。一部の実施形態では、濃染色用緩衝組成物(10×)は、3~15mg/mL、5~12mg/mLまたは約10mg/mLの消光されたポリマーを含んでよい。本開示の染色用緩衝組成物は、2~20ug/試験、3~15ug/試験または約10ug/試験を供給するのに十分な量で、消光されたポリマー色素を含むことができる。
【0168】
光退色されたポリマー色素
本明細書に記載されている組成物は、本開示による構造を有する少なくとも1種の光退色されたポリマー色素を含んでよい。例えば、光退色されたポリマー色素は、本開示による式I、VIII~XIV、XVIII、XIXおよび/またはXXのいずれかによる構造を含んでよい。このような化合物は、それらの全体が本明細書においてあたかも完全に説明されているかのごとく、参照により組み込まれている、PCT出願公開第WO2017/180998号および米国出願公開第2020/0190253(A1)号において、これまでに記載されている。
【0169】
用語「光退色された色素」とは、もはや蛍光を発することができないか、または0.1以下の量子収率(QY)を示すよう、高強度照射を受けた発蛍光団を元々含む色素を指す。一部の実施形態では、光退色されたポリマーは、0.1Φ以下、0.06Φ以下、0.056Φ以下、0.02Φ以下、または0.015Φ以下の量子収率(QY)を示す。一部の実施形態では、光退色されたポリマー色素は、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(arbitrary units of fluorescence:AFU)未満を示す。一部の実施形態では、光退色されたポリマー色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。用語「親蛍光ポリマー」とは、光退色前のポリマー色素を指す。
【0170】
発蛍光団は、蛍光過程を繰り返し受けることができる。このことは、発蛍光団分子は、理論的に複数回、シグナルを発生することができることを意味する。実際には、発蛍光団の励起寿命の間のその構造的不安定性により、発蛍光団は分解し易くなることがある。高強度照射により、発蛍光団にその構造を変化させることができ、その結果、発蛍光団は、蛍光をもはや発することができず、これが光退色と呼ばれるものである。
【0171】
本明細書において使用する場合、用語「光退色されたポリマー色素」とは、一般に、光退色された後に、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示す、ポリマー色素、例えば、バイオレット励起可能なポリマー色素を指す。一部の実施形態では、光退色された色素は、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)、約45AFU未満、約40AFU未満、約35AFU未満、約30AFU未満、約25AFU未満、約20AFU未満、約15AFU未満、約10AFU未満、約5AFU未満、約1AFU未満、約1AFU~約50AFU、約5AFU~約25AFU、約20AFU~約40AFU、約15AFU~約30AFU、約15AFU~約40AFUまたは約20AFU~約36AFUを示す。
【0172】
一部の実施形態では、光退色された色素は、10マイクログラム/mLの場合、450nmにおいて、≦50AFUを放射する(スリット励起/発光は6nm/4nmである;1cmのキュベット)。一部の実施形態では、光退色されたポリマー色素は、蛍光光度計LS50B Perkin ElmerにおいてAFUスリット励起/発光6nm/4nmを使用して、405nmのレーザーで励起すると、10ug/mLで<47AFUを示す。例えば、光退色されたポリマー色素は、もはや蛍光を発することができない、または0.1以下、もしくは0.06以下、もしくは0.056以下の量子収率(QY);必要に応じて、405nmのレーザーによって励起された場合、約50の任意蛍光単位(AFU)未満を示すよう、高強度UV照射を受けた発蛍光団を元々含む、バイオレット色素であり得る。一部の実施形態では、光退色されたポリマー色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0173】
例えば、本開示の光退色されたポリマー色素は、式(I)による構造を有するポリマー色素:
【化52】
を利用することができ、
式中、Aはそれぞれ、芳香族コモノマーおよび複素芳香族コモノマーからなる群から独立して選択され、Lはそれぞれ、リンカー部分であり、Mはそれぞれ、芳香族コモノマー、複素芳香族コモノマー、バンドギャップ改変モノマー、必要に応じて置換されているエチレンおよびエチニレンからなる群から独立して選択され、G
1およびG
2は、非修飾ポリマー末端および修飾ポリマー末端から独立して選択され、a、cおよびdは、各々が、均等にまたはランダムに反復され得る、構造内の各単位のmol%を独立して定義し、aはそれぞれ、10~100%のmol%であり、cはそれぞれ、0~90%のmol%であり、dはそれぞれ、0~25%のmol%であり、bはそれぞれ、独立して、0または1であり、mは、1~約10,000の整数であり、光退色されたポリマー色素は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示すよう、式(I)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露することによって調製され、必要に応じて、光退色されたポリマー色素は、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示し、およびまたは、必要に応じて、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示す。
【0174】
例えば、本開示の光退色されたポリマー色素は、例えば、式(VIII):
【化53】
に示されている、ジヒドロフェナントレン(DHP)、フルオレン、ならびにDHPおよびフルオレンモノマーの組合せ物を利用することができ、
式中、G1、G2、R1、R2、X、Y、M、L、a、b、c、dおよびmは、本明細書の上に記載されており、光退色されたポリマー色素は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY);必要に応じて、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示すよう、およびまたは必要に応じて、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示すよう、式(VIII)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露することによって調製される。
【0175】
例えば、本開示の光退色されたポリマー色素は、式(XX)による構造を有するポリマー色素:
【化54】
を利用することができ、
式中、A、B、E、G
1、G
2、L
1、L
2、L
3、W、n、m、p、q、r、s、tはそれぞれ、本明細書において先に定義されており、
AおよびBは、コンジュゲートされているポリマー中にランダムにまたは非ランダムに分布されており、光退色されたポリマー色素は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY);必要に応じて、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示すよう、式(XX)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露することによって調製される。一部の実施形態では、光退色されたポリマー色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0176】
例えば、本開示の光退色されたポリマー色素は、式(XVIII)による構造を有するポリマー色素を利用してもよく、このポリマー色素は、0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示し、必要に応じて、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示すよう、必要に応じて、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示すよう、式(XVIII)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露することによって調製される。
【0177】
例えば、本開示の光退色されたポリマー色素は、バイオレット励起可能な蛍光ポリマー色素などの蛍光ポリマー色素から調製されてもよく、例えば、SuperNova(商標)(「SN」)v428(Beckman Coulter,Inc.)は、バイオレットレーザー(405nm)によって最適に励起される蛍光ポリマー色素であり、光退色されたポリマー色素は、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示すよう、式(I)による蛍光ポリマー色素をUV光の照射に曝露することによって調製される。一部の実施形態では、光退色された色素は、結合パートナーを含まない。
【0178】
本開示の組成物は、光退色された色素を、約0.2~0.8mg/mL、0.3~0.7mg/mLまたは約0.5mg/mLの作業濃度(1×)で含んでよい。本開示の組成物は、光退色された色素を、濃組成物(10×)中に、約2~8mg/mL、3~7mg/mLまたは約5mg/mLで含んでよい。本開示の組成物は、光退色された色素を、約0.1~約10mg/mL、0.2~8mg/mL、0.3~7mg/mLまたは0.5~5mg/mLの範囲で含んでよい。本開示の組成物は、光退色された色素を、2~8ug/試験、3~7ug/試験または約5ug/試験を供給するのに十分の量で含んでよい。
【0179】
非イオン性界面活性剤
本組成物は、1種または複数種の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。ポリマー色素コンジュゲートの凝集を阻止するため、十分な量の非イオン性界面活性剤が含まれ得る。非イオン性界面活性剤の非限定例には、PLURONIC(商標)F-68(PF-68)などのポロキサマー界面活性剤、TWEEN(登録商標)20およびTWEEN(登録商標)80を含むポリソルベート、および例えば、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(BRIJ(登録商標))、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(TRITON(登録商標))またはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(IGEPAL)界面活性剤などのエーテル連結非イオン性界面活性剤が含まれる。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー非イオン性界面活性剤である。
【0180】
ポロキサマー非イオン性界面活性剤という用語は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEG-PPG-PEG)非イオン性トリブロックコポリマーを指す。ポロキサマー非イオン性界面活性剤という用語は、PLURONIC(登録商標)非イオン性界面活性剤を包含する。PLURONIC(登録商標)界面活性剤の例には、例えば、PLURONIC(登録商標)F68、F77、F87、F98、F108、F127、P103、P104、P105およびP123が含まれる。
【0181】
一部の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー界面活性剤などのポリオキシプロピレン含有界面活性剤である。ポロキサマー界面活性剤は、ポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中央の疎水性鎖がポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖によってはさまれていることを特徴とする、ポリオキシエチレンオキシド-ポリオキシプロピレンオキシド-ポリオキシエチレンオキシド(PEO-PPO-PEO)などの非イオン性トリブロックコポリマーを含む。例示的な非イオン性トリブロックコポリマーは、式(XXI)による構造
【化55】
を含むことができ、
式中、aはそれぞれ独立して、独立して2~130の範囲の整数であり、bは、15~67の範囲の整数である。一部の実施形態では、aは、50~100の範囲にあり、bは、20~40の範囲にある。一部の実施形態では、aは、70~90の範囲にあり、bは、25~30の範囲にある。非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188であってもよい。ポロキサマーの非限定例には、例えば、a=80およびb=27を有する、Pluronic(登録商標)F-68またはKOLLIPHOR(登録商標)P188としてやはり知られている、ポロキサマー188を含んでもよい。他のポロキサマーには、Synperonic(商標)PE/F108としても知られているポロキサマー338、Synperonic(商標)PE/F127としても知られているポロキサマー407、Synperonic(商標)PE/L101としても知られているポロキサマー331が含まれる。
【0182】
ポロキサマー188としても知られている、用語「PLURONIC(登録商標)F68」、「Pluronic(登録商標)F-68」または「PF-68」とは、平均分子量すなわち平均Mnが8350~8400である、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロックポリ(エチレングリコール)コポリマーを指す。
【0183】
ポロキサマー407としても知られている、用語「PLURONIC(登録商標)F127」とは、ポリプロピレングリコールの中央の疎水性ブロックが2つの親水性ブロックのポリエチレングリコール(PEG)によってはさまれていることからなる、トリブロックコポリマーを指す。2つのPEGブロックの長さの概数は、101個の繰り返し単位である一方、プロピレングリコールブロックの長さの概数は、56個の繰り返し単位である。これはまた、平均12,600g/molのCrodaの商標名であるSynperonic PE/F127によって知られている。
【0184】
用語「PLURONIC(登録商標)F108」とは、平均Mnが約14,600である、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロックポリ(エチレングリコール)を指す。
【0185】
用語「PLURONIC(登録商標)P103」とは、平均Mwが約4,950である、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロックポリ(エチレングリコール)を指す。
【0186】
用語「PLURONIC(登録商標)P104」とは、平均Mwが約5,900である、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロックポリ(エチレングリコール)を指す。
【0187】
用語「PLURONIC(登録商標)P123」とは、平均Mnが約5,800である、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロックポリ(エチレングリコール)を指す。
【0188】
ポリマーブロックの長さは、カスタマイズすることができるので、わずかに特性が異なる多数の様々なポロキサマーが存在する。ポロキサマーコポリマーは、文字「P」(ポロキサマーを表す)、次いで3つの桁を用いて一般に命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアの分子質量の概数を示し、最後の桁X10は、ポリオキシエチレン含有量の百分率を示す(例えば、P407=ポリオキシプロピレン分子質量が4,000g/molであり、70%のポリオキシエチレン含有量のポロキサマーである)。Pluronic(登録商標)およびSynperonicポロキサマーの商標名の場合、これらのコポリマーのコード化は、室温におけるその物理形態を定義する文字(L=液体、P=ペースト、F=フレーク(固体))で始まり、2つの桁または3つの桁が続く。数字指定における、最初の桁(3桁数では2桁)に300を乗算したものは、疎水性鎖の分子量の概数を表し、最後の桁×10は、ポリオキシエチレン含有量の百分率を示す(例えば、F-68は、ポリオキシプロピレン分子質量が1,800g/molであり、80%のポリオキシエチレン含有量であることを示す)。例示的なポロキサマー界面活性剤には、以下に限定されないが、Pluronic(登録商標)F-68が含まれる。PF-68は、非イオン性トリブロックコポリマーポリオキシエチレンオキシド-ポリオキシプロピレンオキシド-ポリオキシエチレンオキシド(PEO-PPO-PEO)である。使用される界面活性剤の濃度は、経験的に求めることができる(すなわち、コンジュゲートの沈殿が起こらないように滴定される)。一部の実施形態では、染色用緩衝組成物は、ポロキサマー界面活性剤などの非イオン性界面活性剤を含んでもよい。非イオン性界面活性剤は、Pluronic(登録商標)F-68(ポロキサマー188)であってもよい。非イオン性界面活性剤は、0.01~10%、0.02~8%、0.05~7%、0.1~5%、0.2~2%、0.1~0.4%、または約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%(重量/体積)、または間の任意の値の作業濃度(1×)で、染色用緩衝組成物中に存在してよい。非イオン性界面活性剤は、0.1~40%、0.2~30%、0.5~25%または10~20%(重量/体積)で、濃染色用緩衝組成物(10×)中に存在してよい。一部の実施形態では、本開示の染色用緩衝組成物は、0.01~40%、0.01~20%、0.02~10%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤を含んでよい。
【0189】
生物学用緩衝液
用語「生物学用緩衝液」とは、細胞不含系において、pH6~8、6.5~8または7~8の生物学的範囲のpHを維持する、1種または複数種の生物学用緩衝化剤を含む、生理学的に適合する水溶液を指す。ある特定の実施形態では、生物学用緩衝化剤は、いくつかの緩衝剤のうち、N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸(ACES)、酢酸塩、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸(ADA)、2-アミノエタンスルホン酸(AES)、アンモニア、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、炭酸水素塩、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-グリシン、[ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ]-トリス-(ヒドロキシメチルメタン)(BIS-Tris)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン(BIS-Tris-プロパン)、ホウ酸、ジメチルアルシン酸、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、炭酸塩、シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)、クエン酸塩、3-[N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、ギ酸塩、グリシン、グリシルグリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)、乳酸塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS、EPPS)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)、イミダゾール、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、リン酸塩、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、ピリジン、ポリビニルピロリドン(PVP)、コハク酸塩、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アミノ}-プロパンスルホン酸(TAPS)、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、2-アミノエタンスルホン酸、AES(タウリン)、トレハロース、トリエタノールアミン(TEA)、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-グリシン(トリシン)、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(Tris)、グリセルアルデヒド、マンノース、グルコサミン、マンノヘプツロース、ソルボース-6-ホスフェート、トレハロース-6-ホスフェート、ヨード酢酸塩、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムのうちの1つまたは複数を含むことができる。代表的な緩衝化剤は、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸などの有機酸の塩;Tris、すなわちトロメタミン塩酸塩またはリン酸塩を含むことができる。慣用的な生物学用緩衝液の具体例は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2-([2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]アミノ)エタンスルホン酸(TES)、3-[N-トリス(ヒドロキシ-メチル)エチルアミノ]-2-ヒドロキシエチル]-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、トリス[ヒドロキシメチル]-アミノメタン(THAM)、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)およびトリス[ヒドロキシメチル]メチルアミノメタン(TRIS)の緩衝液を含むことができる。慣用的な生物学用緩衝液は、生理的範囲のpKを有することができ、この範囲で最も効率よく機能することができる。生物学用緩衝液は、例えば、10~100mMまたは5~25mMの濃度で水溶液中に存在してよい。
【0190】
用語「PBS」とは、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化カリウムおよび/またはリン酸二水素カリウムを含有することができる水性緩衝液である、リン酸緩衝生理食塩水を指す。例えば、PBSは、milliQ水または脱イオン水、および137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4を含有してよい。pHは、約pH7.0~7.4とすることができる。PBSは、アジ化ナトリウムなどのアジドと一緒に保存されてもよく、または保存されなくてもよい。PBSは、等張性溶液であってもよい。緩衝液は、PBA緩衝液であってもよい。PBA緩衝液は、PBS、BSAおよびアジ化ナトリウムを含んでもよい。PBA緩衝液は、1×PBS、約2mg/mL BSAおよび約0.1%アジ化ナトリウムを含んでもよい。
【0191】
追加の構成成分
本開示の組成物は、例えば、フローサイトメトリー試料分析において、染色用緩衝組成物として使用することができ、こうして、以下に限定されないが、任意の好適な担体、安定剤、塩、キレート剤(例えば、EDTA)、着色剤または保存剤のうちの1種または複数種を含む、追加の構成成分を含んでもよい。本組成物はまた、追加の1種または複数種の界面活性剤(例えば、イオン性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤)を含むことができる。
【0192】
用語「タンパク質安定剤」とは、非特異的結合を低減するよう、例えば、細胞-細胞相互作用を低減するよう、または抗体と非標的分子との間の非特異的結合を阻止する一助となるよう働くタンパク質を指す。本開示による組成物は、タンパク質安定剤を含んでもよい。タンパク質安定剤は、血清アルブミン、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたはゼラチンからなる群のうちの1つまたは複数から選択されてよい。タンパク質安定剤は、BSAであってもよい。一部の実施形態では、タンパク質安定剤は、0.1~100mg/mL、0.2~50mg/mL、1~20mg/mLまたは1~10mg/mLで存在する。タンパク質安定剤は、0.1~10mg/mL、0.5~5mg/mL、1~3mg/mLまたは約2mg/mLの濃度で、本開示の作業用組成物(1×)中に存在してよい。タンパク質安定剤は、1~100mg/mL、5~50mg/mL、10~30mg/mLまたは約20mg/mLの濃度で、本開示の濃組成物(10×)中に存在してよい。
【0193】
担体は、水、生理食塩水などの水溶液、アルコール、またはPBS、ハンクス溶液、リンゲル液もしくは生理食塩水緩衝液などの生物学用緩衝液とすることができる。
【0194】
担体は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合作用剤を含むことができる。
例えば、染色用緩衝組成物は、水、または例えば、可溶化剤としてのDMSOなどの溶媒などの担体を含有することができる。
【0195】
本組成物はまた、適切な生物学用緩衝液および/またはpH調節剤を含むことができ、通常、緩衝液は、有機酸または有機塩基から調製される塩である。
【0196】
本開示の組成物は、任意の適切な保存剤を含んでもよい。保存剤は、抗酸化剤、殺生物剤または抗微生物剤であってよい。保存剤は、無機塩であってもよい。例えば、保存剤は、アジ化ナトリウム、2-クロロアセトアミド、2-メチルイソチアゾリノン、サリチル酸、ProClin(商標)、Kathon(商標)CG、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンまたは2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとすることができる。保存剤は、0.01~0.5%、0.05~0.3%または約0.1%で、本開示の組成物中に存在してよい。
【0197】
本開示の組成物は、追加の界面活性剤を含んでもよい。本明細書に記載されている方法に準拠して、必要に応じて使用することができる好適な追加の界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン(amidazoliniumbetaine)、アミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン(INCIスルタイン)、およびホスホベタインなどのベタインなどの双性イオン性界面活性剤を含むことができる。好適な双性イオン性界面活性剤の例には、一般式R1’[CO-X(CH2)j]g-N+(R2’)(R3’)-(CH2)f-[CH(OH)CH2]h-Y-の界面活性剤が含まれ、式中、R1’は、C8~18アルキル、飽和C10~16アルキルまたは飽和C12~14アルキルなどの飽和または不飽和C6~22アルキルであり、Xは、NH、NR4’であり、R4’は、C1~4アルキル、OまたはSであり、jは、2~5および3などの1~10の整数であり、gは、0または1であり、R2’およびR3’はそれぞれ、独立して、C1~4アルキル、必要に応じてヒドロキシ(ヒドロキシエチル基またはメチルによって置換されている)であり、fは、1、2または3などの1~4の整数であり、hは、0または1であり、Yは、COO、SO3、OPO(OR5’)OまたはP(O)(OR5’)Oであり、R5’は、HまたはC1~4アルキルである。
【0198】
好適な双性イオン性界面活性剤の例には、以下の式:
R1’-N+(CH3)2-CH2COO-;
R1’-CO-NH(CH2)3-N+(CH3)2-CH2COO-;
R1’-N+(CH3)2-CH2CH(OH)CH2SO3
-;および
R1’-CO-NH-(CH2)3-N+(CH3)2-CH2CH(OH)CH2SO3
-
のものなどのアルキルベタインを含む。
【0199】
好適なベタインおよびスルホベタインの例は、以下(INCIに準拠して示す):アーモンドアミドプロピルベタイン、アプリコットアミドプロピルベタイン、アボカドアミドプロピルベタイン、ババスアミドプロピルベタイン、ベヘンアミドプロピルベタイン、ベヘニルベタイン、キャノーラアミドプロピルベタイン、カプリル/カプラミドプロピルベタイン、カルニチン、セチルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココベタイン、ココヒドロキシスルタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、ココスルタイン、デシルベタイン、ジヒドロキシエチルオレイルグリシネート、ジヒドロキシエチル大豆グリシネート、ジヒドロキシエチルステアリルグリシネート、ジヒドロキシエチル獣脂グリシネート、PG-ベタインのジメチコンプロピル、ドルカミドプロピルヒドロキシスルタイン、水素化獣脂ベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルサルタイン、ミルクアミドプロピルベタイン(milk amidopropyl betaine)、ミルクアミドプロピルベタイン(milkamidopropyl betaine)、ミリスタミドプロピルベタイン、ミリスチルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレイルベタイン、オリバミドプロピルベタイン、パルマミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、パルミトイルカルニチン、パーム核アミドプロピルベタイン、ポリテトラフルオロエチレンアセトキシプロピルベタイン、リシノールアミドプロピルベタイン、セサミドプロピルベタイン、ソイアミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、獣脂アミドプロピルベタイン、獣脂アミドプロピルヒドロキシスルタイン、獣脂ベタイン、獣脂ジヒドロキシエチルベタイン、ウンデシレンアミドプロピルベタインおよび小麦胚芽アミドプロピルベタインである。
【0200】
例えば、ココナッツジメチルベタインは、AMONYL 265(登録商標)という商標名でSeppicから市販されており、ラウリルベタインは、商標名EMPIGEN BB(登録商標)でSigma-Aldrichから市販されている。さらなる例のベタインは、商標名MIRATAINE H2C-HA(登録商標)でRhodiaから販売されているラウリル-イミノ-ジプロピオネートである。染色用緩衝組成物中の必要に応じた双性イオン性界面活性剤の存在は、生物学的試料中の非特異的結合を低減することができ、例えば、単球への非特異的結合を低減することができる。必要に応じた双性イオン性界面活性剤は、0~0.5%、0.05~0.3%で、組成物中に存在することができる。
【0201】
組成物
染色用緩衝組成物は、生物学的試料中のポリマー色素コンジュゲート間のポリマー-ポリマー相互作用を低減するため、および色素コンジュゲートの沈殿を低減するために提供される。染色用緩衝組成物は、2種またはそれより多くのポリマー色素コンジュゲートを含む多色パネル中のポリマー色素コンジュゲート間のポリマー-ポリマー相互作用を低減するため提供される。
【0202】
本開示による組成物は、色素コンジュゲート間のポリマー-ポリマー相互作用などの非特異的結合を低減するため、実質的に低減するため、および/または阻止するため、生物学的試料に添加する前に、添加と同時に、または添加後に、1種もしくは複数種、2種もしくはそれより多くの、または3種もしくはそれより多くのポリマー色素コンジュゲートを含む、色素コンジュゲートの混合物に添加されてよい。色素コンジュゲートの混合物は、例えば、フルオレセイン、クマリン、シアニン、ローダミン色素コンジュゲート、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリスリン)、ECD(フィコエリスリン-Texas Red(登録商標)-X)、PC5(フィコエリスリン-シアニン5.5)、PC5.5(フィコエリスリン-シアニン5.5)、PC7(フィコエリスリン-シアニン7)、APC(アロフィコシアニン)、AA700、AA750、PBE、Alexa Fluor(登録商標)488(AF488)、AF532、AF647、AF700、AF750、Atlantis Bioscience CF(登録商標)350色素、CF(登録商標)405S、CF(登録商標)405、CF(登録商標)405L、CF(登録商標)430、CF(登録商標)440、CF(登録商標)450、CF(登録商標)488A、CF(登録商標)514、AAT Bioquest iFluor(商標)488、iFluor(商標)350、iFluor(商標)405、mFluor(商標)Blue570、mFluor(商標)Blue580、mFluor(商標)Blue590、mFluor(商標)Blue620、mFluor(商標)Blue630、mFluor(商標)Blue660、ThermoFisher Scientific NovaFluor Blue510、NovaFluor Blue530、NovaFluor Blue555、NovaFluor Blue585、NovaFluor Blue610/30S、NovaFluor Blue660/40S、NovaFluor Blue660/120S、BioLegend(登録商標)Kiravia Blue520(商標)、KrO色素コンジュゲートなどの、1種もしくは複数種の、2種もしくはそれより多くの、または3種またはそれより多くのポリマー色素コンジュゲート、および必要に応じて1種または複数種の、2種またはそれより多くの、3種またはそれより多くの従来の蛍光色素コンジュゲートを含むことができる。他の色素または色素コンジュゲートは、Super Brightポリマー色素(Invitrogen、ThermoFisher Scientific)を含むことができる。Super Bright色素は、バイオレットレーザー(405nm)によって励起され得る。Super Bright色素は、Super Bright 436(励起極大414nm、発光極大436nm、450/50バンドパスフィルター)、Super Bright 600(発光極大600nm、610/20バンドパスフィルター)、Super Bright 645(発光極大645nm、660/20バンドパスフィルター)またはSuper Bright 702(発光極大702nm、710/50バンドパスフィルター)であってよい。
【0203】
本開示は、第1のポリマー色素の少なくとも1種の非蛍光構成成分;および生物学用緩衝液を含む組成物を提供する。本組成物は、第1のポリマー色素の少なくとも1種の非蛍光構成成分;生物学用緩衝液;および非イオン性界面活性剤を含むことができる。非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー非イオン性界面活性剤であってよい。例えば、本組成物は、ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素、および消光性部分を含むポリマー色素のうちの1種または複数種から選択される第1のポリマー色素の非蛍光構成成分を含んでよい。
【0204】
ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素および生物学用緩衝液を含む染色用緩衝組成物が提供される。ポリマー色素のモノマー構成成分、光退色されたポリマー色素、非イオン性界面活性剤および生物学用緩衝液を含む染色用緩衝組成物が提供される。一部の実施形態では、10~40mg/mLのモノマーA、0.2~1.5mg/mLの光退色された色素および生物学用緩衝液の作業濃度(1×)を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。一部の実施形態では、10~40mg/mLのモノマーA、0.2~1.5mg/mLの光退色された色素、0.01~10%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤、および生物学用緩衝液の作業濃度(1×)を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。一部の実施形態では、染色用緩衝組成物は、20~40mg/mLのモノマーA、0.2~0.8mg/mLの光退色された色素、0.01~4%(重量/体積)非イオン性界面活性剤、および生物学用緩衝液の作業濃度(1×)を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。
【0205】
ポリマー色素のモノマー構成成分、非イオン性界面活性剤および生物学用緩衝液を含む染色用緩衝組成物が提供される。一部の実施形態では、10~40mg/mLのポリマー色素のモノマー構成成分、0.01~4%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤および生物学用緩衝液の作業濃度(1×)を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。
【0206】
消光性部分を含むポリマー色素、生物学用緩衝液および非イオン性界面活性剤を含む染色用緩衝組成物が提供される。ポリマー色素のモノマー構成成分、消光性部分を含むポリマー色素、生物学用緩衝液および非イオン性界面活性剤を含む染色用緩衝組成物が提供される。必要に応じて、本組成物は、タンパク質安定剤を含んでもよい。必要に応じて、本組成物は、保存剤を含んでもよい。
【0207】
一部の実施形態では、10~40mg/mLのモノマーA、0.2~1.5mg/mLの消光されたポリマー、0.01~4%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤および生物学用緩衝液を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。一部の実施形態では、20~40mg/mLのモノマーA、0.5~1.5mg/mLの消光されたポリマー、0.01~1%(重量/体積)の非イオン性界面活性剤および生物学用緩衝液を含み、必要に応じてタンパク質安定剤および保存剤を含む、染色用緩衝組成物が提供される。
【0208】
本開示による染色用緩衝組成物は、該組成物の非存在下での蛍光ポリマー色素コンジュゲートと比較した場合に、蛍光ポリマー色素コンジュゲート間の非特異的なポリマー-ポリマー相互作用を低減する、実質的に低減する、またはこれを排除する。本開示による組成物は、該組成物の非存在下での少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートと比較した場合に、少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートの非特異的なポリマー-ポリマー相互作用を低減する、実質的に低減する、またはこれを排除する。
【0209】
方法
本開示はまた、分析対象を含有することが疑われる試料に本明細書に記載されている組成物を接触させるステップを含む、試料中の分析対象を検出するための方法に関する。例えば、本明細書に記載されているポリマー色素コンジュゲートに存在する結合パートナーは、分析対象と相互作用して、分析対象とのポリマー色素コンジュゲート複合体を形成することができる。分析対象とのポリマー色素コンジュゲート複合体を励起させることができる光源が試料に適用され、コンジュゲートされているポリマー複合体からの発光が検出される。一部の実施形態では、本明細書に記載されているポリマー色素コンジュゲートは、約340nm~約800nm、約340nm~約450nmの間(例えば、約395nm~約415nmの間)の範囲内の波長を有する光を用いて励起可能である。一部の実施形態では、放射光は、通常、約400nm~約800nm(例えば、約400nm~約500nmまたは約415nm~約475nm)の間である。代替的に、励起光は、約340nm~約370nmの間の波長を有することができ、放射光は、約390nm~約420nmの間であり得る。
【0210】
本開示の方法における試料は、例えば、血液、骨髄、脾臓細胞、リンパ細胞、骨髄穿刺液(または、骨髄から得られる任意の細胞)、尿(洗浄液)、血清、唾液、脳脊髄液、尿、羊水、間質液、便、粘液または組織(例えば、腫瘍試料、解凝集組織、解凝集固形腫瘍)であり得る。試料は、血液試料であり得る。血液試料は、全血とすることができる。標準的な臨床手順を使用して、全血を対象から得ることができる。試料は、全血の1種または複数種の細胞(例えば、赤血球、白血球、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞またはNK細胞)、食細胞、単球、マクロファージ、顆粒球、好塩基球、好中球、好酸球、血小板、または1種もしくは複数種の検出可能なマーカーを含む任意の細胞)のサブセットであり得る。全血試料は、処理済み全血試料であってもよい。試料は、細胞培養物に由来してもよい。
【0211】
対象は、ヒト(例えば、疾患に罹患している患者)、商業的に重要な哺乳動物(例えば、サル、ウシまたはウマを含む)であり得る。試料は、例えば、イヌまたはネコを含めた家庭用ペットから得ることもできる。対象は、疾患の動物モデルまたは薬物スクリーニングのための動物モデルとして使用される実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットであり得る。
【0212】
「分析対象」とは、本明細書において使用する場合、その存在量/濃度が、ある分析手順によって求められる、物質、例えば分子を指す。例えば、本発明において、分析対象は、タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物または低分子であり得る。
【0213】
結合した分子を定量するための結合パートナーおよび蛍光標識を利用するアッセイ系は周知である。このような系の例は、フローサイトメータ、スキャンサイトメータ、イメージングサイトメータ、蛍光顕微鏡および共焦点蛍光顕微鏡を含む。
【0214】
フローサイトメトリーを使用して、蛍光を検出する。このような使用に好適ないくつかのデバイスが、利用可能であり、当業者に公知である。例には、BCI Navios、Gallios、AquiosおよびCytoFLEXフローサイトメータが含まれる。
【0215】
アッセイは、免疫アッセイであり得る。本発明において有用な免疫アッセイの例には、以下に限定されないが、フルオロ発光アッセイ(FLA)などが含まれる。アッセイはまた、タンパク質アレイに行うこともできる。
【0216】
結合パートナーが抗体である場合、抗体または多重抗体サンドイッチアッセイもまた使用することができる。サンドイッチアッセイとは、特定の分析対象の存在の信号を発するための、様々な結合パートナーおよびリポーティングエレメントの層を構築する連続的認識事象の使用を指す。サンドイッチアッセイの例には、米国特許第4,486,530号、およびその中に記されている参照文献に開示されている。
【0217】
キット
本開示は、本開示による染色用緩衝組成物を含むキットを提供する。本キットは、ポリマー色素の1種または複数種の非蛍光構成成分、および生物学用緩衝液を含む染色用緩衝組成物を含む1つまたは複数の容器、ならびに必要に応じて、1種または複数種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含む1つまたは複数の個別の容器を備えることができる。本キットは、1つの容器中に第1のポリマー色素の非蛍光構成成分を1種または複数種、および非イオン性界面活性剤;ならびに別の容器中に少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含むことができる。本キットは、1つの容器中に第1のポリマー色素の2種またはそれより多い非蛍光構成成分;および別の容器中に少なくとも1種の蛍光ポリマー色素コンジュゲートを含むことができる。本キットは、本開示による染色用緩衝液を含む1つまたは複数の容器、および各々が、異なるポリマー色素コンジュゲートを含む、複数の個別の容器を含んでよい。
【0218】
本キットは、細胞を溶解するのに好適な、1種または複数種の構成成分を含んでよい。キットの1種または複数種の追加の構成成分は、個別の容器(例えば、個別の管、ボトル、または多重ウェルストリップもしくはプレートにおけるウェル)で供給されてよい。
【0219】
本キットはまた、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メタノール、アセトン、ホルマリン、またはそれらの任意の組合せもしくは緩衝液などの1種または複数種の細胞固定試薬を含んでもよい。さらに、本キットは、メタノール、アセトンなどの細胞透過性試薬、あるいはtriton(登録商標)、NP-40、サポニン、tween(登録商標)20、ジギトニン、leucoperm、またはそれらの任意の組合せもしくは緩衝液などの洗剤を含んでもよい。
本キットは、例えば、ポリマー色素コンジュゲートの多色パネルと連携して、本開示の染色用緩衝組成物を使用するための使用説明書を含んでもよい。使用説明書は、印刷形態で、キットのパッケージングで、添付文書中で、またはウェブサイトアドレスに存在し得る。
【0220】
定義
本明細書において使用される略称は、その化学分野および生物学分野の範囲内の慣用的な意味を有する。
【0221】
本明細書において使用する場合、用語「アンモニウム」とは、式NHR3+を有する陽イオンを指し、R基はそれぞれ、独立して、水素、または置換もしくは無置換アルキル、アリール、アラルキルもしくはアルコキシ基である。好ましくは、R基はそれぞれ、水素である。
【0222】
本明細書において使用する場合、「オリゴエーテル」は、エーテル官能基を有する構造繰り返し単位を含む、オリゴマーを意味することが理解される。本明細書において使用する場合、「オリゴマー」は、同一または異なる式の1つまたは複数の特定可能な構造繰り返し単位を含む分子を意味することが理解される。
【0223】
用語「スルホネート官能基」または「スルホネート」とは、本明細書において使用する場合、遊離スルホン酸陰イオン(-S(=O)2O-)およびその塩の両方を指す。したがって、用語スルホネートは、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸リチウム、スルホン酸カリウムおよびスルホン酸アンモニウムなどのスルホン酸塩を包含する。
【0224】
用語「スルホンアミド」とは、本明細書において使用する場合、式-SO2NR-の基を指し、Rは、水素、アルキルまたはアリールである。
【0225】
用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、表示されている数の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の飽和脂肪族ラジカルを指す。例えば、C1~C6アルキルには、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが含まれる。他のアルキル基には、以下に限定されないが、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが含まれる。アルキルは、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~6個、1~7個、1~8個、1~9個、1~10個、2~3個、2~4個、2~5個、2~6個、3~4個、3~5個、3~6個、4~5個、4~6個および5~6個などの任意の数の炭素を含むことができる。アルキル基は、通常、一価であるが、アルキル基が、2つの部分を一緒に連結した場合など、二価とすることができる。
【0226】
用語「コモノマー」または「コモノマー基」とは、それ自体が、ポリマーの繰り返し単位の部分であってよい、ポリマーの構造単位を指す。
【0227】
用語「シクロアルキル」とは、本明細書において使用する場合、3~12個の環原子または表示されている数の原子を含有する、飽和もしくは部分不飽和な単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を指し、単環式環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルが含まれる。二環式環および多環式環には、例えば、ノルボルナン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンが含まれる。例えば、C3~8シクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルおよびノルボルナンが含まれる。
【0228】
用語「ハロアルキル」とは、本明細書において使用する場合、水素原子の一部またはすべてが、ハロゲン原子により置換されている、上で定義したアルキルを指す。ハロゲン(ハロ)は、クロロまたはフルオロを好ましくは表すが、ブロモまたはヨードであってもよい。例えば、ハロアルキルには、トリフルオロメチル、フルオロメチル(flouromethyl)、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-フェニルなどが含まれる。用語「パーフルオロ」は、少なくとも2個の利用可能な水素がフッ素により置換された、化合物またはラジカルと定義する。例えば、パーフルオロフェニルとは、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニルを指し、パーフルオロメタンとは、1,1,1-トリフルオロメチルを指し、パーフルオロメトキシとは、1,1,1-トリフルオロメトキシを指す。
【0229】
本明細書において使用する場合、用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を指す。
【0230】
用語「アルコキシ」とは、本明細書において使用する場合、アルキル基を結合点に連結する酸素原子を有する、上で定義したアルキル基を指す。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが含まれる。アルコキシ基は、本明細書内に記載されている様々な置換基によりさらに置換され得る。例えば、アルコキシ基は、ハロゲンにより置換されて、「ハロ-アルコキシ」基を形成することができる。
【0231】
用語「アルケン」とは、本明細書において使用する場合、少なくとも1つの二重結合を有する、直鎖状または分岐状炭化水素のどちらかを指す。アルケン基の例には、以下に限定されないが、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニルまたは1,3,5-ヘキサトリエニルが含まれる。アルケン基は、通常、一価であるが、アルケニル基が、2つの部分を一緒に連結している場合など、二価とすることができる。
【0232】
用語「アルキン」とは、本明細書において使用する場合、少なくとも1つの三重結合を有する、直鎖状または分岐状炭化水素のどちらかを指す。アルキニル基の例には、以下に限定されないが、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、イソブチニル、sec-ブチニル、ブタジイニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジイニル、1,4-ペンタジイニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニルまたは1,3,5-ヘキサトリイニルが含まれる。アルキニル基は、通常、一価であるが、アルキニル基が、2つの部分を一緒に連結している場合など、二価とすることができる。
【0233】
用語「アリール」または「芳香族」とは、本明細書において使用する場合、6~16個の環炭素原子を含有する、単環式、または縮合した二環式、三環式もしくはそれより多い環式の芳香環集合体を指す。例えば、アリールは、フェニル、ベンジル、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル(DHP)、9,10-ジヒドロフェナントレニルまたはフルオレニルとすることができる。「アリーレン」は、アリール基から誘導される二価のラジカルを意味する。アリール基は、アルキル、アルコキシ、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アミノ-アルキル、トリフルオロメチル、アルキレンジオキシおよびオキシ-C2~C3-アルキレンから選択される、1つ、2つまたは3つのラジカルにより一置換され得、二置換され得、または三置換され得、これらはすべて、例えば、本明細書のこれ以前に定義されている通り、必要に応じてさらに置換されているか、または1-もしくは2-ナフチル;または1-もしくは2-フェナントレニルである。アルキレンジオキシは、フェニルの2個の隣接炭素原子に結合した二価の置換基(substitute)、例えば、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシである。オキシ-C2~C3-アルキレンはまた、フェニルの2個の隣接炭素原子に結合した二価置換基、例えばオキシエチレンまたはオキシプロピレンである。オキシ-C2~C3-アルキレン-フェニルの例は、2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イルである。
【0234】
アリールとして好ましいものは、ジヒドロフェナントレニル(DHP)、9,10-ジヒドロフェナントレニル、ナフチル、フェニル、あるいはアルコキシ、フェニル、ハロゲン、アルキルもしくはトリフルオロメチルにより一置換もしくは二置換されたフェニル、とりわけフェニル、またはアルコキシ、ハロゲンもしくはトリフルオロメチルにより一置換または二置換されたフェニル、および特に、フェニルである。
【0235】
用語「アリールオキシ」とは、本明細書において使用する場合、アリールが上で定義されている通りであるO-アリール基を指す。アリールオキシ基は、無置換であり得るか、または好適な1個もしくは2個の置換基により置換され得る。用語「フェノキシ」とは、アリール部分がフェニル環である、アリールオキシ基を指す。用語「ヘテロアリールオキシ」は、本明細書において使用する場合、-O-ヘテロアリール基を意味し、ヘテロアリールは以下に定義されている通りである。用語「(ヘテロ)アリールオキシ」は、その部分がアリールオキシ基またはヘテロアリールオキシ基のどちらか一方であることを示すために使用される。
【0236】
用語「AFU」とは、任意蛍光単位を指す。
【0237】
用語「AUF」とは、蛍光の任意単位を指す。
【0238】
用語「ポリエチレングリコール」または「PEG」とは、本明細書において使用する場合、エチレングリコールモノマー単位に基づく、生体適合性の水可溶化線状ポリマーのファミリーを指す。
【0239】
用語「ヘテロアリール」または「複素芳香族」とは、本明細書において使用する場合、5~16個の環原子を含有し、環原子の1~4個がヘテロ原子であり、各々が、N、OまたはSである、単環式、または縮合した二環式もしくは三環式の複素芳香環集合体を指す。例えば、ヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、カルバゾリル、フラニル、ピロリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、あるいは例えば、アルキル、ニトロもしくはハロゲンによって置換されている、とりわけ一置換されているまたは二置換されている任意の他のラジカルを含む。ピリジルは、2-、3-または4-ピリジル、有利には、2-または3-ピリジルを表す。チエニルは、2-または3-チエニルを表す。キノリニルは、好ましくは、2-、3-または4-キノリニルを表す。イソキノリニルは、好ましくは、1-、3-または4-イソキノリニルを表す。ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニルは、それぞれ、好ましくは3-ベンゾピラニルまたは3-ベンゾチオピラニルを表す。チアゾリルは、好ましくは2-または4-チアゾリル、および最も好ましくは4-チアゾリルを表す。トリアゾリルは、好ましくは1-、2-または5-(1,2,4-トリアゾリル)である。テトラゾリルは、好ましくは、5-テトラゾリルである。
【0240】
好ましくは、ヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、キノリニル、ピロリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チエニル、フラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、イソキノリニル、ベンゾチエニル、オキサゾリル、インダゾリル、または置換されている、とりわけ一置換されているもしくは二置換されているこれらのラジカルのいずれかである。
【0241】
同様に、アリール基およびヘテロアリール基の置換基は様々であり、0から芳香環系上の自由価数の総数までの範囲の数の、-ハロゲン、-OR’、-OC(O)R’、-NR’R”、-SR’、-R’、-CN、-NO2、-CO2R’、-CONR’R”、-C(O)R’、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR”C(O)2R’、-NR’-C(O)NR”R’’’、-NH-C(NH2)=NH、-NR’C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-N3、-CH(Ph)2、パーフルオロ(C1~C4)アルコキシおよびパーフルオロ(C1~C4)アルキルから選択され、R’、R”およびR’’’は、水素、(C1~C5)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリールおよびヘテロアリール、(無置換アリール)-(C1~C4)アルキルおよび(無置換アリール)オキシ-(C1~C4)アルキルから独立して選択される。
【0242】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、必要に応じて、式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基により置き換えられていてもよく、TおよびUは、独立して、-NH-、-O-、-CH2-または単結合であり、qは、0~2の整数である。代替的に、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、式-A-(CH2)r-B-である置換基により必要に応じて置き換えられていてもよく、AおよびBは、独立して、-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-または単結合であり、rは、1~3の整数である。こうして形成された新しい環の単結合の1つは、必要に応じて、二重結合により置き換えられていてもよい。代替的に、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基により必要に応じて置き換えられていてもよく、sおよびtは、独立して、0~3の整数であり、Xは、-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-または-S(O)2NR’-である。-NR’-および-S(O)2NR’-中の置換基R’は、水素または無置換(C1~C6)アルキルから選択される。
【0243】
用語「(ヘテロ)アリールアミノ」とは、本明細書において使用する場合、アリール基により置換されているアミンラジカル(例えば、-NH-アリール)を指す。アリールアミノはまた、アミン基により置換されているアリールラジカル(例えば、-アリール-NH2)であってもよい。アリールアミノは、置換されていてもよく、または無置換であってもよい。
【0244】
用語「アミン」とは、本明細書において使用する場合、1つまたは複数のアミノ基を有する、本明細書内で定義されているアルキル基を指す。アミノ基は、一級、二級または三級とすることができる。アルキルアミンは、ヒドロキシ基によりさらに置換され得る。本発明において有用なアミンには、以下に限定されないが、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミンおよびエタノールアミンが含まれる。アミノ基は、アルキルアミンを化合物の残りとの結合点に連結させることができるか、アルキル基のオメガ位に存在し得るか、またはアルキル基の少なくとも2個の炭素原子を一緒に連結することができる。当業者は、他のアルキルアミンが本発明において有用であることを理解している。
【0245】
用語「カルバメート」とは、本明細書において使用する場合、構造-NR”CO2R’を有する官能基を指し、R’およびR”は、水素、(C1~C8)アルキルおよびヘテロアルキル、無置換アリールおよびヘテロアリール、(無置換アリール)-(C1~C4)アルキルおよび(無置換アリール)オキシ-(C1~C4)アルキルから独立して選択される。カルバメートの例には、t-Boc、Fmoc、ベンジルオキシ-カルボニル、alloc、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9-(2-スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9-(2,7-ジブロモ)フルオレニルメチルカルバメート、Tbfmoc、Climoc、Bimoc、DBD-Tmoc、Bsmoc、Troc、Teoc、2-フェニルエチルカルバメート、Adpoc、2-クロロエチルカルバメート、1,1-ジメチル-2-ハロエチルカルバメート、DB-t-BOC、TCBOC、Bpoc、t-Bumeoc、Pyoc、Bnpeoc、V-(2-ピバロイルアミノ)-1,1-ジメチルエチルカルバメート、NpSSPeocが含まれる。
【0246】
用語「カルボキシレート」とは、本明細書において使用する場合、カルボン酸の共役塩基を指し、これは、一般に、式RCOOによって表すことができる。例えば、用語「カルボン酸マグネシウム」とは、カルボン酸のマグネシウム塩を指す。
【0247】
用語「活性化エステル」とは、本明細書において使用する場合、アミノ酸誘導体のカルボキシル基と遊離アミノ基との容易な縮合を促進するため、ペプチド化学において使用されるカルボキシル活性基を指す。これらのカルボキシル活性基の説明は、ペプチド化学の一般教書、例えばK. D. Kopple, ”Peptides and Amino Acids”, W. A. Benjamin, Inc., New York, 1966, pp. 50-51 and E. Schroder and K. Lubke, ”The Peptides”; Vol. 1, Academic Press, New York, 1965, pp. 77-128に見出される。
【0248】
用語「ヒドラジン」および「ヒドラジド」とは、単結合した窒素を含有し、窒素の1個が一級アミン官能基である化合物を指す。
【0249】
用語「アルデヒド」とは、本明細書において使用する場合、-CHO基を有する化学化合物を指す。
【0250】
用語「チオール」とは、本明細書において使用する場合、硫黄-水素結合からなる官能基を含む化合物を指す。チオール官能基の一般的な化学構造は、R-SHであり、Rは、アルキル、アルケン、アリールまたは他の炭素含有原子団を表す。
【0251】
用語「シリル」とは、本明細書において使用する場合、Si(Rz)3を指し、Rzはそれぞれ、独立して、アルキル アリールまたは他の炭素含有原子団である。
【0252】
用語「ジアゾニウム塩」とは、本明細書において使用する場合、R-N2
+X-の構造を有する有機化合物の基を指し、Rは、任意の有機残基(例えば、アルキルまたはアリール)とすることができ、Xは、無機または有機陰イオン(例えば、ハロゲン)である。
【0253】
トリフルオロメタンスルホネートとも称される用語「トリフレート」は、式CF3SO3を有する基である。
【0254】
用語「ボロン酸」とは、本明細書において使用する場合、構造-B(OH)2を指す。ボロン酸は、クエンチャーの合成の様々な段階において、ボロン酸エステルとして存在し得ることが当業者によって認識されている。ボロン酸は、このようなエステルを含むことが意図される。用語「ボロン酸エステル」または「ボロネートエステル」とは、本明細書において使用する場合、-B(Z1)(Z2)部分を含有する化学化合物を指し、Z1およびZ2は、一緒になって、各場合においてホウ素に結合している原子が酸素原子である部分を形成する。ボロン酸エステル部分は、5員環であり得る。ボロン酸エステル部分は、6員環であり得る。ボロン酸エステル部分は、5員環と6員環との混合物であり得る。
【0255】
用語「DABCYL」とは、4-(ジメチルアミノアゾ)ベンゼン-4-カルボン酸の頭字語である。DABCYLは、消光性部分として使用されてもよい。DABCYLは、約474nmの吸収極大を有する。
【0256】
用語「DABSYL」とは、塩化4-(ジメチルアミノアゾ)ベンゼン-4”-スルホニルを指す。DABSYLは、消光性部分として使用されてもよい。
【0257】
用語「ブラックホールクエンチャー1」(BHQ-1)とは、約534nmの吸収極大を有する消光性部分を指す。
【0258】
範囲形式で表される値は、その範囲の境界値として明示的に記載されている数値を含むだけでなく、各数値および部分範囲があたかも明示的に記載されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲のすべても含むように柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」の範囲は、ただ約0.1%~約5%だけではなく、表示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%および4%)および部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という記載は、他に示さない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Yまたは約Z」という記載は、他に示さない限り、「約X、約Yまたは約Z」と同じ意味を有する。
【0259】
用語「CD」とは、分化抗原群を指す。
【0260】
フローサイトメトリーにおける用語「補正」とは、蛍光の漏れ込み(多重パラメータのフローサイトメトリーデータのスペクトル重なり)を補正する数学的処理のことである。例えば、補正は、所与の蛍光色素の測定に向けた検出器以外のすべての検出器から、そのような色素のいずれのシグナルも除去することによって行われ得る。蛍光色素は、幅広い範囲のスペクトルを有することがあるので、それらは、重なり得、データ分析の間に望ましくない混乱を引き起こす恐れがある。
【0261】
用語「MdFl」または「MDFl」とは、蛍光強度中央値を指す。
【0262】
用語MFI=平均蛍光強度である。
【0263】
用語「%動員」とは、関連集団のゲーティングされた細胞数を指す。
【0264】
用語「多色色素コンジュゲートパネル」または「多色抗体パネル」とは、血液を染色してフローサイトメータでこれを分析するために直接、使用することができる、複数の異なる蛍光色素コンジュゲート(例えば、CD4-FITC、CD8-PE、CD20-APC、CD3-PC5.5、CD16-FITC、CD25-PE、CD3-ECD、CD38-PC5.5、CD27-PC7、CD10-APC、CD14-APCA700、CD45-AA750、CD8-KRO、CD56-SNv428、CD20-SNv605、CD4-SNv786など)を含むカクテルを指す。
【0265】
用語「多重化」とは、本明細書において、複数の分析対象を同時にアッセイすることができる、アッセイまたは他の分析方法を指す。
【0266】
水可溶化部分は、ポリマー色素中に含まれて、水溶解度の増大をもたらすことができる。溶解度の増大は、様々となり得るが、一部の例では、水可溶化部分を含まないポリマー色素と比較した場合の増大は、少なくとも2倍またはそれより高く、例えば、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍またはそれより高いことがある。
【0267】
用語「水可溶化部分」とは、水性環境中、例えば、生理的条件下で、十分に溶媒和された基であって、この基が結合している分子に、水溶解度の改善を付与する、基を指す。水可溶化部分は、水性環境において十分に溶媒和される、任意の適切な親水性基であり得る。一部の場合、親水性水可溶化基は、荷電しており、例えば、正または負に荷電している。ある特定の場合、親水性水可溶化基は、中性の親水性基である。一部の実施形態では、水可溶化部分は、親水性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース、キトサンまたはそれらの誘導体である。水可溶化部分は、以下に限定されないが、カルボキシレート、ホスホネート、ホスフェート、スルホネート、サルフェート、スルフィネート、スルホニウム、エステル、ポリエチレングリコール(PEG)および修飾PEG、ヒドロキシル、アミン、アンモニウム、グアニジニウム、ピリジニウム、ポリアミンおよびスルホニウム、ポリアルコール、直鎖状または環状サッカライド、一級、二級、三級または四級アミンおよびポリアミン、ホスホネート基、ホスフィネート基、アスコルベート基、グリコールを含むことができる。一部の実施形態では、水可溶化部分は、PEGである。
【0268】
用語「PEG」とは、式-(CH2-CH2-O-)n-またはその誘導体によって記載されるエチレングリコールモノマー単位に基づいた、生体適合性の水可溶化線状ポリマーのファミリーである、ポリエチレングリコールまたはポリ(エチレングリコール)を指す。水可溶化部分は、少なくとも10mg/mLの水への溶解度をもたらすことができる。PEG部分は、水可溶化部分として使用されてもよい。一部の実施形態では、「n」は、1000またはそれ未満、500またはそれ未満、200またはそれ未満、100またはそれ未満、50またはそれ未満、40またはそれ未満、30またはそれ未満、20またはそれ未満、15またはそれ未満(3~15または10~15など)である。PEGポリマー基は、任意の好都合な長さのものであってよく、以下に限定されないが、アルキル、アリール、ヒドロキシル、アミノ、アシル、カルボン酸、カルボン酸エステル、アシルオキシおよびアミドの末端基および/または置換基を含めた、様々な末端基および/またはさらなる置換基を含むことができることが理解される。「PEG」の後の数は、平均分子量を指し、Mwは、重量平均分子量を指し、Mnは、数平均分子量を指す。
【0269】
用語「ポリマー色素の非蛍光構成成分」とは、ポリマー色素のモノマー単位、光退色されたポリマー色素、消光性部分を含むポリマー色素、または非蛍光ポリマー色素を指し、ポリマー色素の非蛍光構成成分は、光励起時に再発光する能力をほとんどまたは全く示さない。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、約0.1以下、0.06以下または0.056以下の量子収率を示し得る。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、10マイクログラム/mLに対して、450nm(スリット励起/発光は6nm/4nmである;1cmのキュベット)において、≦50AFUを放射することができる。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、405nmのレーザーによって励起された場合、約50AFU未満を有し得る。ポリマー色素の非蛍光構成成分は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0270】
用語「非蛍光ポリマー色素」とは、光退色なしに、約0.1、0.06または0.056以下の量子収率を示す、式(I)によるポリマー色素であって、消光性部分を含まない、ポリマー色素を指す。非蛍光ポリマー色素は、405nmのレーザーによって励起された場合、約50AFU未満を有し得る。非蛍光ポリマー色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0271】
用語「非特異的結合」とは、本明細書において使用する場合、特異的結合によって引き起こされない任意の結合を一般に指し、より詳細には、標的分析対象への結合パートナーの特異的結合以外の手段による、ポリマー色素コンジュゲートの結合を指す。非特異的結合は、ポリマーの疎水性、免疫複合剤、荷電タンパク質、および染色用緩衝液または生物学的試料中に存在し得る抗体妨害性タンパク質を含めた、いくつかの因子に起因し得る。非特異的結合のタイプの1つは、1つもしくは複数、または2つもしくはそれより多い蛍光ポリマー色素コンジュゲートの間で起こり得る、ポリマー-ポリマー相互作用である。試験染色用緩衝組成物中の非特異的結合は、例えば、本明細書において提供される方法に準拠し、例えば、生物学的試料中の多色蛍光ポリマー色素コンジュゲートの混合物のFCAドットプロットと、同じ試料中の混合物の個々の単色蛍光ポリマー色素コンジュゲートのFCAドットプロットを比較することによって評価することができる。例えば、溶液が、非特異的結合するポリマー-ポリマー相互作用の阻止の効率が高い場合、個々の細胞集団は、個々に使用した単色コンジュゲートを用いて得られた染色と同様に十分に補正されているように思われる。対照的に、溶液の効率が不良である場合、その集団は、整列されておらず、傾いて見えるであろう。
【0272】
ポリマー-ポリマー相互作用などの非特異的結合を低減するための、本開示による染色用緩衝組成物の効率を測定する代替方法は、それらが個々に使用される場合と混合して使用される場合の、コンジュゲートの負の集団および正の集団のMFIを使用する。
【0273】
用語「光退色された色素」とは、もはや蛍光を発することができないように、高強度照射を受けた発蛍光団を元々含む色素を指す。一部の実施形態では、光退色されたポリマーは、0.1Φ以下、または0.06Φ以下、または0.056Φ以下、0.05Φ以下、0.02Φ以下、または0.015Φ以下の量子収率(QY)を示す。一部の実施形態では、光退色されたポリマーは、405nmのレーザーによって励起された場合に、約50未満の蛍光の任意単位(AFU)を示す。光退色された色素は、405nmで励起された場合に、親蛍光ポリマーと比較して、元の最大発光強度の>95%の消光、元の最大発光強度の>98%の消光、最大で100%の消光を示し得る。
【0274】
発蛍光団は、蛍光過程を繰り返し受けることができる。このことは、発蛍光団分子は、複数回、シグナルを理論的に発生することができることを意味する。実際に、発蛍光団の励起寿命の間のその構造的不安定性により、発蛍光団は分解し易くなることがある。高強度照射により、発蛍光団にその構造を変化させることができ、その結果、発蛍光団は、蛍光をもはや発することができず、これが光退色と呼ばれるものである。
【0275】
用語「量子収率」(QY)(Φ)または「蛍光量子収率」とは、吸収されたフォトンの数に対する、放射されたフォトンの数の比を指す。量子収率は、機器設定に無関係であり、発蛍光団がどの程度効率的に励起エネルギーを蛍光に変換するかを説明するものである。実験により、相対蛍光量子収率は、試験色素と同じ実験パラメータ(励起波長、スリット幅、光電子増倍管電圧など)を用いて、既知の量子収率の発蛍光団の蛍光を測定することによって求めることができる。量子収率は、当分野において公知の任意の方法によって求めることができる。例えば、QYは、選択した励起波長において、分光蛍光光度計または蛍光分光計で、製造業者の説明書に従って求めることができる。例えば、量子収率(QY)は、Shimadzu Rf-6000分光蛍光光度計において、405nmに0.05の吸光度(405nmでの励起、励起スリット1.5、発光スリット3.0、1cmの石英キュベット)を有する染色用緩衝液の希PBS溶液から、428nmの発光強度を測定することによって、求めることができる。量子収率は、例えば、同一実験条件下、試料から測定した強度と、NHS Pacific Blue(PBS 1×中、QY=0.78)溶液から測定した強度とを比較することによって計算することができる。一部の実施形態では、QYは、例えば、Lawson-Wood et al., Application Note-Fluorescence Spectroscopy, Determination of relative fluorescence quantum yield using the FL5600 fluorescence spectrometer, 2018, PerkinElmer, Incによって求めることができる。選択される励起波長は、例えば、405nmであってよい。一部の実施形態では、消光されたポリマーまたは光退色されたポリマーのQYは、光退色の存在しない、および消光性部分を含まない親蛍光ポリマーと比較することができる。
【0276】
用語「蛍光色素」とは、光励起時に再発光することができる、光により励起可能な発蛍光団を含む色素を指す。用語「蛍光色素」とは、蛍光モノマーおよび他の従来的な蛍光色素を含めた、蛍光ポリマー色素と蛍光非ポリマー色素の両方を包含する。蛍光ポリマー色素は、例えば、本開示による構造を含む、任意の適切な蛍光ポリマー色素であってよい。蛍光ポリマー色素は、市販もされている。例えば、SuperNova(商標)(「SN」)v428(Beckman Coulter,Inc.)は、バイオレットレーザー(405nm)によって最適に励起され、414nmの励起極大、428nmの発光ピークを有する蛍光ポリマー色素であり、450/50バンドパスフィルターまたは等価物を使用して検出することができる。SN v605およびSN v786は、コアSN v428ポリマー色素から誘導されるタンデムポリマー色素である。どちらも、414nmに極大励起を有する、同じ吸光度特徴を共有する。SN v605およびSN v786の発光ピークはそれぞれ605nmおよび786nmであるので、それらは、フローサイトメータの610/2および780/60nmバンドパスフィルターを使用して最適に検出される。
【0277】
用語「発蛍光団」とは、光励起時に再発光することができる、蛍光化学化合物を指す。発蛍光団は、いくつかの混合芳香族基、またはいくつかのpパイ結合を有する平面および環式分子を通常、含有することができる。
【0278】
用語「患者」、「対象(単数)」または「対象(複数)」は、以下に限定されないが、ヒトを含み、この用語はまた、他の哺乳動物、または家畜動物もしくはエキゾチックアニマル、例えば、イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、トリまたは爬虫類を包含することができる。
【0279】
別段の指定がない限り、用語「室温」という語句とは、18~27℃を指す。
【0280】
別段の指定がない限り、用語「パーセント」または「%」とは、重量パーセントを指す。
【0281】
語句「使用する用意が調っている試薬」、「使用する用意が調っている試薬組成物」、「作業濃度の試薬」および「作業濃度の試薬組成物」とは、例えば、フローサイトメトリー分析(FCA)のために生物学的試料を染色するため、ポリマー色素コンジュゲートの混合物中で使用するのに適切な約1×作業濃度で生成した染色用緩衝組成物を指す。
【0282】
語句「濃厚な染色用緩衝液」または「濃染色用緩衝組成物」とは、フローサイトメトリー分析のために生物学的試料を染色する際に、多色パネルにおける非特異的なポリマー相互作用の低減に有用な作業濃度の染色用緩衝組成物が得られるよう、例えば、生物学用緩衝液または水などの希釈液を用いて希釈するための、例えば、約10倍の濃縮係数(10×)で生成した染色用緩衝組成物を指す。濃染色用緩衝組成物は、作業濃度の染色用緩衝組成物よりも、1倍(1×)から少なくとも10倍(10×)または少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍の濃厚な濃度で製造され得、安定な状態にあることができる。
【0283】
一部の実施形態では、作業濃度の染色用緩衝組成物は、2~8℃の範囲内の温度(15~37℃、または周囲温度19~27℃までの逸脱を伴う)で、密閉した元の容器中で保管した場合、製造日から少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも12か月、少なくとも18か月または少なくとも24か月またはそれより長い間、安定である。一部の実施形態では、濃染色用緩衝組成物は、2~8℃の範囲内の温度(15~37℃、または周囲温度19~27℃までの逸脱を伴う)で、密閉した元の容器中で保管した場合、製造日から少なくとも3か月、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月、30か月、または36か月またはそれより長い間、安定である。
【0284】
頭字語「SN」は、SuperNova(商標)を指す。
【0285】
頭字語「SSC」とは、側方散乱を指す。
【0286】
用語「WBC」とは、白血球を指す。
【0287】
用語「約」は、例えば化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、指定量の10%、5%、1%、0.5%またはさらには0.1%もの変動、および値を測定するための試験方法における少なくとも工業標準偏差を包含することが意図される。
【0288】
本明細書において、用語「a」、「an」または「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、1つまたは1つより多いことを含むよう使用される。用語「または」は、他に示さない限り、非排他的な「または」を指すよう使用される。さらに、本明細書において使用されており、特に定義されていない表現または専門用語は、説明目的に過ぎず、限定ではないことを理解されたい。項目の見出しのいずれの使用も、本明細書を読むことの手助けをすることが意図されており、限定として解釈されるべきではない。さらに、項目の見出しに関連する情報は、そのような特定の項目内または項目外に現れ得る。さらに、本明細書に言及されているすべての刊行物、特許および特許文書は、個々に参照により組み込まれているかのごとく、その全体が参照により本明細書により組み込まれている。本明細書と、参照によりそのように組み込まれている文書との間で、使用法が一致しない場合、組み込まれた参考文献での使用法は、本明細書の使用法を補足するものとみなされるべきであり、一致しない矛盾に関しては、本明細書における使用法が優先する。
【0289】
本明細書において使用する場合、ポリマー色素コンジュゲートの非特異的結合を「低減すること」または「排除すること」とは、第1のポリマー色素の非蛍光構成成分が使用されない場合と比較した%での、「負」(例えば、負の顆粒球、単球およびリンパ球集団)の平均蛍光強度(MFI)が、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも99%またはそれより高い;約50%~約95%、約50%~約75%、約60%~約80%または約65%~約90%)、低下する場合を指すことができる。言い換えると、界面活性剤を使用しない場合と比較した%での、単球、顆粒球およびリンパ球のうちの少なくとも1つのバックグラウンド染色の%低下は、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも99%またはそれより高い;約50%~約95%、約50%~約75%、約60%~約80%または約65%~約90%)、低下する。
【0290】
本明細書に記載されている方法では、時間的順序または操作順序が明示的に記載されている場合を除き、本発明の原理から逸脱することなく、任意の順序で工程を実行することができる。さらに、特定の工程が個別に実施されると明示的な請求項の言語が記載していない限り、それらの工程は同時に実施することができる。例えば、Xを行うという特許請求されている工程、およびYを行うという特許請求されている工程は、単一操作内で同時に実施することができ、結果としての過程は、特許請求されている過程の文言通りの範囲内にあることになる。
【0291】
上記の実施形態はそれぞれ、本明細書に記載されている他の実施形態との各組合せで適用可能であると想定される。例えば、式(I)に対応する実施形態は、式(VIII)~(XIV)、(XVIII)、(XIX)、(XX)に適用可能であると等しく想定される。別の例として、式(VIII)~(XIV)、(XVIII)、(XIX)、(XX)のいずれかに対応する実施形態は、式(I)に適用可能であると等しく想定される。
【0292】
用語「実質的に」とは、本明細書において使用する場合、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%または少なくとも約99.999%、またはそれより高いような、大部分またはほとんどであることを指す。
【0293】
用語「実質的にない」または「実質的に不含である」とは、本明細書において使用する場合、約1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.001%未満、または約0.0005%もしくはこれ未満、約0%、定量限界値未満、検出可能な限界値未満、または0%を指す。
【0294】
当業者は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている実施形態に対する多数の改変が可能であることを認識していよう。したがって、本記載は、示されている例に限定されると解釈されることを意図するものではなく、解釈されるべきでもなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって与えられる全範囲の保護が付与されるべきである。さらに、他の特徴の対応する使用なしに、本開示の特徴の一部を使用することが可能である。したがって、例示的な実施形態の上の記載または例示的な実施形態は、本開示の原理を例示する目的で提供されており、その制限ではなく、それらの改変およびそれらの変形を含むことができる。
【実施例】
【0295】
本発明は、例示により提示される以下の実施例を参照することによってよりよく理解され得る。本発明は、本明細書に示されている実施例に限定されない。
【0296】
(実施例1)
DHPポリマー色素の調製
【化56】
方法1:丸底フラスコ内で、ジブロモDHPおよびジボロンDHPモノマーの両方(1:1)を(DMF-水)混合物にとり、窒素を10分間、パージした。窒素下、約20当量のCsFおよび10%のPd(OAc)
2を混合し、摂氏80度で加熱した。UV-Vis分光法およびSECクロマトグラフィーを使用して重合をモニタリングした。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0297】
方法2:代替的に、重合は、DHP分子のブロモ-ボロン酸エステルを自己重合することによって行うことができる。丸底フラスコ内で、DHPブロモボロン酸エステルを(DMF-水)混合物にとり、窒素を10分間、パージした。窒素下、約10当量のCsFおよび5%のPd(OAc)2を混合し、摂氏80度に加熱した。UV-Vis分光法およびSECクロマトグラフィーを使用して重合をモニタリングした。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0298】
方法3:丸底フラスコ内に、ジブロモジヒドロフェナントレンおよびジボロンジヒドロフェナントレン(dihydrophanenthrene)モノマーの両方(1:1)をとり、10当量のK2CO3および3%Pd(PPh3)4を含有するTHF-水(4:1)混合物に溶解した。反応混合物をシュレンクラインに取り付け、3回の凍結-真空-解凍サイクルで脱気し、次に、窒素下、18時間、激しく撹拌しながら、摂氏80度まで加熱した。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を窒素の過圧下でカニューレから加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0299】
方法4:代替的に、重合は、ジヒドロフェナントレン分子のブロモ-ボロン酸エステルを自己重合することによって行うことができる。丸底フラスコ内に、ジヒドロフェナントレンブロモボロン酸エステルをとり、10当量のK2CO3および3%Pd(PPh3)4を含有するTHF-水(4:1)混合物に溶解した。反応混合物をシュレンクラインに取り付け、3回の凍結-真空-解凍サイクルで脱気し、次に、窒素下、18時間、激しく撹拌しながら、摂氏80度まで加熱した。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を窒素の過圧下でカニューレから加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0300】
(実施例2)
フルオレン-DHPコポリマー色素の調製
【化57】
方法1:丸底フラスコ内で、ジブロモDHPおよびジボロンフルオレンモノマーの両方(1:1)を(DMF-水)混合物にとり、窒素を10分間、パージした。窒素下、約20当量のCsFおよび10%のPd(OAc)2を混合し、摂氏80度で加熱した。UV-Vis分光法およびSECクロマトグラフィーを使用して重合をモニタリングした。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0301】
方法2:丸底フラスコ内で、ジブロモフルオレンおよびジボロンDHPモノマーの両方(1:1)を(DMF-水)混合物にとり、窒素を10分間、パージした。窒素下、約20当量のCsFおよび10%のPd(OAc)2を混合し、摂氏80度で加熱した。UV-Vis分光法およびSECクロマトグラフィーを使用して重合をモニタリングした。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0302】
方法3:丸底フラスコ内に、ジブロモジヒドロフェナントレンおよびジボロンフルオレンモノマーの両方(1:1)をとり、10当量のK2CO3および3%Pd(PPh3)4を含有するTHF-水(4:1)混合物に溶解した。反応混合物をシュレンクラインに取り付け、3回の凍結-真空-解凍サイクルで脱気し、次に、窒素下、18時間、激しく撹拌しながら、摂氏80度まで加熱した。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を窒素の過圧下でカニューレから加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0303】
方法4:丸底フラスコ内に、ジブロモフルオレンおよびジボロンジヒドロフェナントレンモノマー(1:1)をとり、10当量のK2CO3および3%Pd(PPh3)4を含有するTHF-水(4:1)混合物に溶解した。反応混合物をシュレンクラインに取り付け、3回の凍結-真空-解凍サイクルで脱気し、次に、窒素下、18時間、激しく撹拌しながら、摂氏80度まで加熱した。その後に、この反応混合物に、適切な官能基を含有するキャッピング剤(G1から選択される)を窒素の過圧下でカニューレから加え、3時間後、第2のキャッピング剤(G2から選択される)を加えた。反応後、粗製反応混合物を溶媒蒸発させて、ゲルろ過カラムに通して、有機低分子および低MWオリゴマーを除去した。その後に、100KのMWCO膜を装備したタンジェンシャルフローろ過システムに、粗製ポリマーを通した。ろ液の吸収が減少するまで、20%エタノールを使用して洗浄する。
【0304】
(実施例3)
蛍光発光スペクトルの比較
フルオレン(Fl-Fl)、ジヒドロフェナントレン(DHP-DHP)およびフルオレン-DHP(DHP-Fl)ポリマーの蛍光発光スペクトルの比較を行った。DHP含有ポリマーは、426~428nmにあるその蛍光極大の顕著な差異を示す一方、フルオレンベースのポリマーは、421nmの極大を示す。
【0305】
(実施例4)
吸収スペクトルの比較
フルオレン(Fl-Fl)ポリマーおよびジヒドロフェナントレン(DHP-DHP)ポリマーの両方の吸収スペクトルを測定した。グラフは、390および410nmにDHP-DHPポリマーの吸収(黒色曲線)を示す一方、Fl-Fl(灰色曲線)ポリマーは、約400nmに極大を示す。試料は、異なる濃度下で測定した。
【0306】
(実施例5)
CD4シグナル対ノイズ比
新規なポリマーで標識した抗ヒトCD4およびPacific Blue標識CD4で染色した溶解全血のフローサイトメトリー分析を行った。ポリマー色素の陽性シグナル強度は、Pacific Blueよりもほぼ5倍、強かった。
【0307】
(実施例6)
フローサイトメトリーのための試料調製物中の同時固定化緩衝液による表面染色手順
この手順では、色素コンジュゲート間に経時的に起こり得る任意の考えられる非特異的相互作用を避けるため、本開示による染色用緩衝液を試験管に添加した後に、色素コンジュゲートを添加する。固定化は、蛍光抗体による染色後、劣化することなく数時間、白血球調製物を保管することを可能にする段階である。溶解溶液は、フローサイトメトリーのための生物学的試料の調製において、赤血球を溶解するために使用してもよい。
【0308】
1. 25μLの未希釈IOTest 3 10X Fixative Solution(AO7800、Beckman Coulter,Inc.)を1mLのVersaLyse(商標)溶解溶液(AO9777、Beckman Coulter,Inc.)に添加することによって、「固定および溶解」混合物を速やかに調製する。溶解する生物学的試験試料の数に応じて、十分な量のこの「固定および溶解」混合物を調製する(管あたり1mLの混合物)。
2. 各試験管に、10μLの本開示による染色用緩衝液を加える。この染色用緩衝液は、ポリマー色素コンジュゲートのミックスを含有しない試験管には必要としない。
3. 適切な分量の色素コンジュゲートを加える。管を穏やかにボルテックスする。
4. 各管に試験試料100μLを加える。管を穏やかにボルテックスする。
5. 光から保護して、室温(18~25℃)で15~20分間、インキュベートする。次に、赤血球の溶解を行う。
6. 速やかに調製した、「固定および溶解」混合物1mlを加え、直ちに1秒間、ボルテックスする。
7. 光から保護して、室温で10分間、インキュベートする。
8. 室温において、5分間、150×gで遠心分離する。
9. 上清を吸引によって除去する。
10. 3mLのPBSを使用して、細胞ペレットを再懸濁する。
11. 室温において、5分間、150×gで遠心分離する。
12. 上清を吸引によって除去する。
13. 0.5mLのPBSおよび0.1%ホルムアルデヒド(0.1%ホルムアルデヒドPBSは、1mLのPBS中、その10×濃度で、12.5μLのIOTest 3 Fixative Solution(PNに関しては、カタログを参照されたい)を希釈することによって得ることができる)を使用して、細胞ペレットを再懸濁する。
【0309】
これらの調製物は、フローサイトメトリーによる分析前に、2~8℃の間で24時間、光から保護して維持することができる。
【0310】
(実施例7)
光退色性ポリマー色素の手順
光退色されたポリマー色素は以下の通り調製した。手短に述べると、このプロセスは、バイオレットポリマー色素428を解凍すること、PBA/PF-68 0.02%中に1mg/mLでポリマー色素を希釈すること、希釈した色素をRouxガラス製フラスコに入れること、およびこのフラスコをUVチャンバ(Bio-Link-BLX)に入れることを含む。希釈したポリマー色素を、50AFU未満のまたはこれに等しい蛍光値に到達するまで、UV光に曝露させる。光退色された色素の残留蛍光を、蛍光分析法(蛍光光度計LS50B、Perkin Elmer)によって測定する。光退色された色素は、10マイクログラム/mLの場合、450nmにおいて、≦50AFUを放射(スリット励起/発光は6nm/4nmである;1cmのキュベット)し、蛍光分析基準に合格する。ポリマー色素428は、血液試料のFCAにおいて、本開示による組成物中で使用する場合、非特異的な染色が見えるのを回避するため、効果的に光退色させる必要があることが見出された。光退色された色素の残留蛍光は、コンジュゲートの漏れ込みに、したがってフローサイトメトリーの結果に、直接的な影響を及ぼすことが見出された。
図6は、ポリマー色素コンジュゲートCD56-SNv428/CD4-SN786により処理した、染色して溶解した試料の2件のFCAドットプロットを示している。左側のパネルは、コンジュゲートの望ましくない漏れ込みを示す(矢印)、不十分に光退色されたポリマー色素の影響を示している。右側のパネルは、2種のポリマー色素コンジュゲートCD56-SNv428/CD4-SN786のフローサイトメトリーの二次元ドットプロットを示しており、試料は、405nmのレーザーで励起された場合(AFUスリット励起/発光6nm/4nm、蛍光光度計LS50B Perkin Elmer)、10ug/mLでQY0.056以下かつ<47AFUを示す効果的に光退色されたポリマー色素428を含む、本開示による組成物を用いて調製する。コンジュゲート同士の漏れ込みは、実質的に低減した。
【0311】
(実施例8)
ポリマー色素のモノマー構成成分および光退色されたポリマー色素を含む染色用緩衝組成物
染色用緩衝組成物を設計するための最初の取り組みは、2種のバイオレットポリマー色素コンジュゲートのミックスを使用して、PF-68を含むPBS生物学用緩衝液中で、個々の候補構成成分の試験をすること、および性能を評価するためのFCAドットプロットを得ることを含んだ。例示的なモノマーA(100~800ug/試験)、マレイミドバイオレットポリマー色素428(m428)(3.1~100ug/試験)、カルボキシルバイオレットポリマー色素428(3.1~100ug/試験)、アミノポリマー色素428(3.1~100ug/試験)、光退色されたマレイミド428(m428)色素(システアミンHClを含むおよび含まない)、光退色されたカルボキシル428(c428)色素、光退色されたアミノポリマー色素428(a428)、PEG、またはEmpigen双性イオン性界面活性剤を個別に評価した。例示的なモノマーAおよび光退色された色素は、色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用の低減に有効であることが個々に見出された。
【0312】
個々の構成成分を用いた結果に基づき、実施例7による例示的なモノマーAおよび光退色されたバイオレット色素428を使用して、試験染色用緩衝組成物を開発した。
【0313】
PF-68洗剤をPBS/BSA/NaN3に速やかに加え、0.02%の最終濃度に到達させた。緩衝液を配合するために使用するまで、このミックスを室温で保管した。構成成分を混合することによって、組成物を配合し、表1に示されている組成物を得た。
【0314】
【0315】
(実施例9)
ポリマー色素のモノマー構成成分および光退色されたポリマー色素を含む試験染色用緩衝組成物の性能
ポリマー色素抗体コンジュゲートは、一緒に混合されると、非特異的に相互作用し得る、ポリマー色素にコンジュゲートされている抗体である。パネルにおける1種より多いポリマー色素コンジュゲートを使用して、顧客が多色実験を行うことができるよう、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を低減するため、実質的に低減するため、または排除するため、染色用緩衝組成物を設計した。
【0316】
本実施例では、他の染色用緩衝液の製造業者とは異なり、色素蛍光の消光は、本開示により、色素をUV光に曝露することによって行う。手短に述べると、光退色は、UV光(365nm)への色素の曝露によって行った。
【0317】
光退色されたバイオレット色素428は、マレイミドバイオレット色素428を解凍し、これをPBS/PF-68(0.02%)中に1mg/mLで希釈し、希釈した色素をRouxガラス製フラスコに入れ、フラスコをUVチャンバ(Bio-Link-BLX)に入れて、10時間のUV曝露(365nm)を3サイクル施すことによって調製した。光退色された色素は、0.056以下の量子収率(QY)を示した。光退色された色素の残留蛍光も同様に、蛍光分析によって測定し、405nmのレーザーで励起された場合(10ug/mL、AFUスリット励起/発光6nm/4nm、蛍光光度計LS50B Perkin Elmer)、≦47AFUであった。
【0318】
光退色されたバイオレット色素428、例示的なモノマーA(色素428のサブユニット)、PF-68(0.02%)、1×PBS/BSA(2mg/mL)/NaN3(0.1%)を含む試験染色用緩衝組成物を調製した。
【0319】
試験染色用緩衝液を事前添加した、または事前添加しない3種のSuperNova(SNv)色素抗体コンジュゲートの混合物CD56-SNv428、CD20-SNv605およびCD4-SNv786を使用する、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロット比較を
図1に示す。ゲーティングは、リンパ球(LY)に対するものである。取得は、CytExpertアクイジションソフトウェアを使用して、CytoFLEX LXフローサイトメータによった。分析は、Kaluza分析ソフトウェアによる。
図1の上側の3つのパネルに示されている通り、染色の異常は、試験染色用緩衝液の非存在下で起こる可能性があり、データは、補正不十分であるように見え得る。試験染色用緩衝液の存在下では、3つの下側のパネルに示されている通り、コンジュゲート同士の漏れ込みの実質的な低減が実証された。
【0320】
試験染色用緩衝液の効率は、陽性集団に関する漏れ込みの中央値をネガティブ集団の同じ軸上の中央値で除算するFCA分析によって評価することができる。
図1の上部パネルは、染色用緩衝液のないミックスのFCAドットブロットを示しており、ポリマー色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用を示す漏れ込みがあることを示している。対照的に、FCAドットプロットは、試験染色用この緩衝液が非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を低減するのに効率的であることを示していることが、この緩衝液を使用した
図1の下側の3つのパネルにより示される。
【0321】
別の実験で、試験染色用緩衝液を、本明細書に記載されている、PBS/BSA/NaN3/PF-68の溶液中で、例示的なモノマーAおよび光退色された色素428を混合することによって調製した(100試験/バイアル;10μL/試験)。ポリマー色素コンジュゲートを、全血生物学的試料を添加する前に、試験染色用緩衝液の上部に加えた。CD56-SNv428+CD19-SNv605+CD4-SNv786を含む、3種のSuperNovaポリマー色素コンジュゲートの混合物を含む多色パネルを使用した。
図2Aは、染色用緩衝液を含まない、多色パネルを使用した、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットを示している。
図2Bは、比較BD Horizon(商標)Brilliant stain buffer(BD Biosciences)を用いる、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットおよび多色パネルを示す。
図2Cは、試験染色用緩衝液を用いる、全血試料のFCAドットプロットおよび多色パネルを示している。比較緩衝組成物および試験染色用緩衝組成物は、緩衝液を含まない多色パネルと比較して、漏れ込みの低減を示した。試験染色用緩衝組成物は、先行技術の比較緩衝液と比較した場合、ある低度の漏れ込みの低減を示し、非特異的なポリマー-ポリマー相互作用が低減されたことを示している。
【0322】
(実施例10)
消光されたポリマー
様々な消光性部分を含むポリマー色素を調製し、非特異的なポリマー-ポリマー相互作用を阻止するため、染色用緩衝液の使用可能性について検討した。蛍光が低減または排除され、消光されたポリマーを形成するため、蛍光ポリマー色素を消光性部分にコンジュゲートした。2種またはそれより多いポリマー色素コンジュゲートの混合物に消光されたポリマーを添加すると、非特異的なポリマー-ポリマー相互作用が低減または排除されることが見出された。
【0323】
様々なバイオレット励起可能な蛍光ポリマー色素を、様々なクエンチャー部分にコンジュゲートした。本開示の方法に類似した方法によって、約15種の異なる消光されたポリマーをバイオレット励起可能な蛍光ポリマー色素、および約10~15倍モル過剰の様々な市販のクエンチャー部分から調製した。本開示による構造を含む3種の異なるバイオレット励起可能な蛍光ポリマー(ポリマー1、ポリマー2、ポリマー3)は、80~150kDaまたは90~120kDaの様々なMWの範囲から選択した。市販の消光性部分は、Dabcyl Q、Dabcyl plus、Anaspec 490Q、Dylight 425Q、Dyomics 425QおよびDyomics 505Qを含んだ。例示的な消光されたポリマーを、量子収率と共に表2に示す。
【0324】
【0325】
図3は、消光されたポリマーの波長(nm)対AFUにおける蛍光プロファイルのグラフを示す:ポリマー1 Dabcyl(QY0.01)、ポリマー2 Dabcyl(QY0.005)、ポリマー2 DY425Q(QY0.01)、ポリマー3 Dabcyl(QY0.005)、ポリマー3 Dabcyl plus(QY0.015)およびポリマー3 DY425Q(QY0.009)。
図3の挿入図は、消光性部分にコンジュゲートする前、および405nmのレーザーによって励起された場合に蛍光QYの実質的な低下を示す消光されたポリマー3を得るために消光性部分にコンジュゲートした後の、代表的な親蛍光ポリマー(ポリマー3 QY0.54)のグラフを示す。QYとは、量子収率を指す。表2中の消光されたポリマーはそれぞれ、405nmで励起された場合、消光されていないポリマー3(QY0.54)とは対照的に、<0.02、≦0.015または≦0.01の量子収率(QY)を示す。
【0326】
(実施例11)
消光されたポリマーの評価
表2の消光されたポリマーを、以下の通りFCAアッセイにおいて、単一色素コンジュゲートまたは色素コンジュゲートのパネル、および全血試料を使用して評価した。消光されたポリマーを全血100uLに対して10uLの分量(500ug/mL)で加えた。
【0327】
PBS/BSA/NaN3/PF-68(必要な場合)を含む緩衝液中で、消光されたポリマーを1コンジュゲートの場合、5マイクログラム(5ug)、および2コンジュゲートの場合、10マイクログラム(10ug)で使用した。抗体コンジュゲート(それぞれ、1ug)を、全血を添加する前に、添加剤のミックスの上部に加えた。20分間のインキュベート後、1mLのVersaFixを加え、次いで15分間、インキュベートした。最後に、3mLの1×PBSによる洗浄を行った。ペレットを0.5mLの1×PBSまたは1×PBS/0.1% FAで再懸濁させた。
【0328】
消光されたポリマーが非特異的結合を低減する能力、および集団の広がりを低減する能力を検討した。
【0329】
図4は、染色用緩衝液添加剤である消光されたポリマーを使用しないで、リンパ球にゲーティングされた場合の、2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-UV励起性ポリマー色素(CD4-UVEPD)およびCD20-バイオレット励起性ポリマー色素(CD20-VEPD)(どちらも、Beckman Coulter Life Sciences、左上側のパネル)からなる混合物、ならびに2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-BUV395(BD Biosciences)およびCD20-VEPD(Beckman Coulter Life Sciences、右上側のパネル)からなる混合物で染色した後の、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロット(上側の行の左から右へ)を示す。2種の異なる色素コンジュゲートを消光されたポリマーなしに混合した場合、ドットプロットは、非特異的相互作用および関連漏れ込みを示す。CD4-UVEPDおよびCD20-VEPD(下部左側のパネル)またはBUV395-CD4およびCD20-VEPD(下部右側のパネル)で染色している間に、本開示による消光されたポリマー(消光されたポリマー2 DYQ425)を添加すると、非特異的相互作用および漏れ込みが低減した。
【0330】
同様のFCAの改善結果が、消光されたポリマー3 DYQ425(10uL)を含む試験染色用緩衝液を用いて示された。(データは図示せず)。
【0331】
図5は、染色用緩衝液添加剤である消光されたポリマーを使用しないで、リンパ球にゲーティングされた場合の、2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-UV励起性ポリマー色素(CD4-UVEPD)およびCD20-バイオレット励起性ポリマー色素(CD20-VEPD)(どちらも、Beckman Coulter Life Sciences、左上側のパネル)からなる混合物、ならびに2種のポリマー色素コンジュゲートであるCD4-BUV395(BD Biosciences)およびCD20-VEPD(Beckman Coulter Life Sciences、右上側のパネル)からなる混合物を用い、緩衝液なしに染色した後の、染色して溶解した全血試料のFCAドットプロットを示す。2種の異なる色素コンジュゲートの混合物の各々を消光されたポリマーなしに混合した場合、ドットプロットは、非特異的相互作用および関連漏れ込みを示す。CD4-UVEPDおよびCD20-VEPD(下部左側のパネル)またはBUV395-CD4およびCD20-VEPD(下部右側のパネル)での染色中に、本開示による消光されたポリマー(消光されたポリマー2-Dabcyl)を添加すると、非特異的相互作用および漏れ込みが低減した。
【0332】
類似のFCAの改善結果が、他の消光されたポリマー、すなわちポリマー1-Dabcyl、Q/P5.6(10uL)、ポリマー3-Dabcyl、Q/P7.14(10uL)およびポリマー3-Dabcyl plus、Q/P5.4(10uL)を用いた場合に示された(データは図示せず)。ポリマー-Dabcylの消光されたポリマーは、ポリマー色素コンジュゲートにおいて、漏れ込み、ポリマー-ポリマー相互作用を低減する非常に良好な能力があることを示したので、さらなる開発にポリマー-Dabcylの消光されたポリマーを選択した。
【0333】
(実施例12)
消光されたポリマーを含む例示的な染色用緩衝組成物
実施例10による消光されたポリマーを使用して、染色用緩衝組成物を開発した。実施例10に示される通り、染色用緩衝組成物Bは、多色ポリマー色素コンジュゲートパネルにおいて、漏れ込み、非特異的なポリマー-ポリマー相互作用を低減するのに好適であることが見出された。
【0334】
PF-68洗剤をPBS/BSA/NaN3に速やかに加え、0.02%の最終濃度に到達させる。緩衝液を配合するために使用するまで、このミックスを室温で保管した。構成成分を混合することによって、組成物を配合し、表3に示されている組成物を得る。
【0335】
【0336】
(実施例13)
ポリマー色素のモノマー構成成分および消光されたポリマー色素を含む、例示的な染色用緩衝組成物
例示的なモノマーA(バイオレット428SuperNova色素の部分構成成分)およびポリ-Dabcylタンデム色素を含む組成物を開発した。ポリ-Dabcylタンデム色素は、バイオレット428色素モノマーをDabcyl分子にコンジュゲートすることによって作製した。Dabcylは、405nmのレーザーによって励起されると、バイオレット428 SuperNova色素によって放射された蛍光を吸収するクエンチャー分子である。結果として、ポリ-Dabcylタンデム色素は、蛍光をほとんど放射しない。
【0337】
一般的なポリdabcylタンデム色素は、式(XXIV)による構造を有する。各ポリマー主鎖中に、およそ5~8つのdabcyl色素が存在した。
【化58】
【0338】
生物学的試料に添加する前に、2種のSuperNovaポリマー色素コンジュゲート(CD3-SN428およびCD19-SN605)を個別に、すなわち例示的なモノマーA+ポリ-Dabcyl添加剤を含めないで予め配合した。その他の緩衝液およびプロトコルは、実施例10と同様にした。
図7は、添加剤なし(左側のパネル)に、および例示的なモノマーA+ポリ-Dabcyl添加剤を含む(右側のパネル)、CD3-SN428/CD19-SN605の二次元FCAドットプロットを示す。添加剤の存在下では、ポリマー色素コンジュゲート同士の非特異的相互作用が、実質的に低減したことが見出された。
【0339】
ポリ-Dabcylバイオレットポリマー-dabcylタンデム(XXIV)の消光されたポリマーは、様々なポリマー色素間の非特異的相互作用の低減に有効であることが見出された。
【0340】
PF-68洗剤をPBS/BSA/NaN3に速やかに加え、0.02%の最終濃度に到達させる。緩衝液を配合するために使用するまで、このミックスを室温で保管した。構成成分を混合することによって、染色用緩衝組成物Cを配合し、表4に示されている組成物を得る。
【0341】
【0342】
(実施例14)
タンパク質安定剤および非イオン性界面活性剤を含む消光されたポリマー組成物の性能
非イオン性界面活性剤Pluronic(登録商標)F-68(1%)の存在下および非存在下で、消光されたバイオレットポリマー2-Dabcylを含む消光されたポリマー色素組成物の性能を市販のBD Horizon(商標)Brilliant stain buffer Plusと比較して評価した。ドナーA由来の染色して溶解した血液試料のFCAを、色素コンジュゲートSuperNova SN v428-CD19(Beckman Coulter Life Sciences)およびBV650-CD4(Brilliant Violet 650(商標)抗ヒトCD4抗体、BioLegend,Inc.)の、ドナーA由来の処理済み血液試料中の混合物を使用して行った。
【0343】
図8は、消光されたポリマーを含まない(上側の左)、1%のPF-68を含む(上側の右)、10ugの消光されたポリマー2-Dabcylを含む(下側の左)、10ugの消光されたポリマー2-Dabcylおよび1%のPF-68非イオン性界面活性剤を含む(下側の右)、血液試料中の色素コンジュゲートSuperNova SN v428-CD19とBV650-CD4との混合物のFCAドットプロットを示す。10ugの消光されたポリマー2-Dabcyl(MFI 2172)および1%のPF-68(MFI 2400)を含む試験試料組成物は、緩衝液を含まない対照試料(MFI 7804)と比較すると、非特異的結合の低減を示した。10ugの消光されたポリマー2-Dabcylおよび1%のPF-68(MFI 1327)を含む試験試料組成物は、対照試料と比較すると、MFIの低下の改善、非特異的結合の低減という改善、およびポリマー-ポリマー相互作用の低減という改善を示した。
【0344】
(実施例15)
2種の異なるポリマー色素コンジュゲートの混合物中の非イオン性界面活性剤単独のフローサイトメトリー性能
非イオン性界面活性剤は、染色用緩衝組成物において、非特異的なポリマー色素コンジュゲート相互作用を低減する望ましい添加剤であることが見出された。2種の異なるポリマー色素コンジュゲートの混合物を使用して、染色して溶解した血液細胞のFCAに及ぼす様々な濃度の非イオン性界面活性剤単独の影響を評価した。
図9は、緩衝液を含まない(上部パネル)、0.1%のPF-68を含む(下側の左パネル)、0.5%のPF-68を含む(下側の中央のパネル)、および1%のPF-68(重量/体積)を含む(下側の右のパネル)、CD4-BV650(BD Biosciences)とCD19-SNv428(Beckman Coulter Life Sciences)との混合物により染色して溶解した細胞のFCAドットプロットを示す。上昇した濃度のPF-68(0.1~1%重量/体積)の存在により、PF-68が存在しない場合と比較して分離が改善されたことによって立証される通り、混合物中の非特異的相互作用の低減を伴う。
【0345】
(実施例16)
染色用緩衝組成物において使用するための非蛍光ポリマー
光退色されたポリマー色素、消光されたポリマー色素およびまたはポリマー色素のモノマー構成成分を含む、ポリマー色素の非蛍光構成成分を含む染色用緩衝組成物は、本開示において実証される通り、染色した生物学的試料のFCAにおいて、より多くのポリマー色素コンジュゲートのうちの2つの多色パネルでは、漏れ込みおよび非特異的なポリマー-ポリマー相互作用の低減に効果的であることが示された。
【0346】
この実施例では、0.1以下のQYを有する非蛍光ポリマー色素を調製し、発光スペクトルおよびQYを測定し、染色用緩衝組成物中で試験した。
図10は、2種の非蛍光ポリマー色素の415~700nmの範囲の発光スペクトルのグラフ、および量子収率を示す。DHP-ピロールポリマー(QY0.043)およびDHP-ニトロキャップポリマー(QY0.092)の構造も示す。少なくとも2つのポリマー色素コンジュゲートを使用する、溶解して染色した細胞のFCA検討では、DHP-ピロールポリマーおよびDHP-ニトロキャップポリマーは、漏れ込みの低減に有効であることが見出された。(データは図示せず)。0.1以下、または0.06以下、または0.056以下の量子収率(QY)を示す非蛍光ポリマー色素は、染色用緩衝組成物におけるFCA分析において、非特異的相互作用および漏れ込みの低減に有用であることが見出された。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】