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特表2024-509737少なくとも1つのレーザスキャナ装置の走査場補正のための方法、レーザスキャナ装置、散乱パターン要素、散乱パターン保持装置、及び走査場補正システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つのレーザスキャナ装置の走査場補正のための方法、レーザスキャナ装置、散乱パターン要素、散乱パターン保持装置、及び走査場補正システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/066 20140101AFI20240227BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240227BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240227BHJP
【FI】
B23K26/066
B23K26/082
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548870
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022052982
(87)【国際公開番号】W WO2022171609
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021103493.0
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】522029327
【氏名又は名称】ノヴァンタ ユーロップ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NOVANTA EUROPE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラフ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クレマー、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バッカート、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン、マーティン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA03
4E168CA06
4E168CA13
4E168CB04
4E168EA04
4E168EA15
4E168EA19
(57)【要約】
本発明は、-加工平面(11)上に散乱パターン要素(30)を設けるステップであって、前記散乱パターン要素(30)が、散乱パターン(M)で配置される少なくとも1つの散乱領域(31)を有する、ステップと、-スキャナ座標(x、y、z)に沿って前記少なくとも1つのレーザスキャナ装置(300)のレーザビーム(12)により前記加工平面(11)上の前記散乱パターン要素(30)の少なくとも一部をそれぞれ通り過ぎる又は走査するステップであって、前記レーザビームが、偏向ユニット(10)と前記加工平面(11)との間で、少なくとも1つの窓(20)、好ましくは保護ガラスを通過する、ステップと、-前記少なくとも1つの散乱領域(31)をそれぞれ通り過ぎる又は走査する際に前記レーザビーム(12)の散乱及び/又は反射によって生成され得る散乱放射線(13)を検出するステップと、-前記検出された散乱放射線(13)と前記スキャナ座標(x、y、z)との相関によって輪郭線図(K)を作成するステップと、-前記輪郭線図(K)を前記散乱パターン(M)の基準画像と比較し、前記散乱パターン(M)の前記基準画像からの前記輪郭線図(K)の偏差を決定するステップと、-前記決定された偏差に基づいて前記偏向ユニット(10)の較正された制御のための較正関数を計算するステップと、を有する少なくともレーザスキャナ装置(300)の走査場補正のための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレーザスキャナ装置(300)の走査場補正のための方法であって、
-加工平面(11)上に散乱パターン要素(30)を設けるステップであって、前記散乱パターン要素(30)が、散乱パターン(M)で配置される少なくとも1つの散乱領域(31)を有する、ステップと、
-スキャナ座標(x、y、z)に沿って前記少なくとも1つのレーザスキャナ装置(300)のレーザビーム(12)により前記加工平面(11)上の前記散乱パターン要素(30)の少なくとも一部をそれぞれ通り過ぎる又は走査するステップであって、前記レーザビームが、偏向ユニット(10)と前記加工平面(11)との間で、少なくとも1つの窓(20)、好ましくは保護ガラスを通過する、ステップと、
-前記少なくとも1つの散乱領域(31)をそれぞれ通り過ぎる又は走査する際に前記レーザビーム(12)の散乱及び/又は反射によって生成され得る散乱放射線(13)を検出するステップと、
-前記検出された散乱放射線(13)と前記スキャナ座標(x、y、z)との相関によって輪郭線図(K)を作成するステップと、
-前記輪郭線図(K)を前記散乱パターン(M)の基準画像と比較し、前記散乱パターン(M)の前記基準画像からの前記輪郭線図(K)の偏差を決定するステップと、
-前記決定された偏差に基づいて前記偏向ユニット(10)の較正された制御のための較正関数を計算するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記散乱放射線(13)の一部は、前記散乱放射線(13)が前記窓(20)の窓縁部(23)から逃げてそこで検出され得るように、少なくとも前記窓(20)の前記窓縁部(23)の一部に向かって前記窓(20)内において窓上面(21)と窓下面(22)との間で反射及び/又は散乱によって広がることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記散乱放射線(13)の前記検出が前記窓(20)の前記窓縁部(23)の少なくとも一部分で行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記散乱放射線の前記検出は、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは少なくとも3つのフォトダイオード(PD、PD、PD)によって行なわれ、幾つかのフォトダイオード(PD、PD、PD)が好ましくは等距離に分布されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記輪郭線図(K)の振幅は、前記検出された散乱放射線(13)に本質的に比例することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記輪郭線図(K)が散乱パターン画像(M’)を備え、該散乱パターン画像(M’)は、前記散乱パターン要素(30)の前記少なくとも1つの散乱領域(31)に割り当てられ得る、特に明確に割り当てられ得る少なくとも1つの散乱領域画像(31’)を前記輪郭線図(K)が有するように、前記散乱パターン要素(30)の前記散乱パターン(M)の歪み図に対応することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記散乱パターン(M)からの前記輪郭線図(K)の偏差を決定するための前記ステップは、前記輪郭線図(K)の好ましくは部分的なフィッティング及び/又は補間のためのステップを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記散乱パターン(M)からの前記輪郭線図(K)の偏差を決定するための前記ステップは、特に前記輪郭線図(K)の幾つかの散乱領域画像(31’)の焦点及び/又は中心点及び/又は形状歪みの輪郭線図基準点を決定するためのステップを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項、特に請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記散乱パターン(M)からの前記輪郭線図(K)の偏差を決定するための前記ステップは、前記散乱パターン(M)の前記基準画像の対応する基準点からの輪郭線図基準点の偏差及び/又は形状歪みを決定するためのステップを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
走査場補正可能偏向ユニット(10)を備えるレーザスキャナ装置(300)であって、
-所定のスキャナ座標(x、y、z)に沿ってレーザビーム(12)により加工場(11)をそれぞれ通り過ぎる又は走査するように形成される少なくとも1つの偏向ユニット(10)であって、散乱パターン要素(30)を前記加工平面上に配置することができ、前記散乱パターン要素(30)が散乱パターン(M)内に配置される少なくとも1つの散乱領域(31)を有する、少なくとも1つの偏向ユニット(10)と、
-前記偏向ユニット(10)と前記加工場(11)との間に配置される少なくとも1つの窓(20)、好ましくは保護ガラスと、
-前記散乱パターン要素(30)の前記少なくとも1つの散乱領域(31)を通り過ぎるときに前記レーザビームの散乱及び/又は反射によって生成され得る散乱放射線(13)を検出するように形成される少なくとも1つのフォトダイオード(PD、PD、PD)と、
-前記検出された散乱放射線(13)と前記スキャナ座標(x、y、z)との相関によって輪郭線図(K)を作成するとともに、前記散乱パターン(M)の基準画像からの前記輪郭線図(K)の偏差に基づいて前記偏向ユニット(10)の較正された制御のための較正関数を計算するように形成される計算ユニットと、
を有するレーザスキャナ装置(300)。
【請求項11】
前記窓(20)の窓縁部(23)の一部分上に配置される2つ、好ましくは少なくとも3つのフォトダイオード(PD、PD、PD)を備えることを特徴とする、請求項10に記載のレーザスキャナ装置(300)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのフォトダイオード、好ましくは2つ、より好ましくは少なくとも3つのフォトダイオード(PD、PD、PD)は、前記散乱放射線(13)の一部を検出するように形成及び/又は配置され、前記散乱放射線は、前記窓(20)の窓縁部(23)の一部に向かって前記窓(20)内において窓上面(21)と窓下面(22)との間で反射及び/又は散乱によって広がることを特徴とする、請求項10又は11に記載のレーザスキャナ装置(300)。
【請求項13】
少なくとも1つのフォトダイオード(PD、PD、PD)は、前記検出された散乱放射線(13)に本質的に比例する測定信号を前記計算ユニットに出力するように形成されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置(300)。
【請求項14】
前記輪郭線図(K)の振幅は、前記検出された散乱放射線(13)又は前記少なくとも1つのフォトダイオード(PD、PD、PD)の前記測定信号にそれぞれ本質的に比例することを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項、特に請求項13に記載のレーザスキャナ装置(300)。
【請求項15】
特に請求項1~9に記載の方法を実行するレーザスキャナ装置(300)の走査場補正のための方法を実行するための散乱パターン要素(30)、及び/又は、レーザスキャナ装置、特に請求項10~14のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置(300)のための散乱パターン要素(30)であって、
前記散乱パターン要素(30)は、好ましくはガラス又はガラスセラミック、特に溶融シリカ又はZerodur(登録商標)又はBorofloatから板状に形成されるとともに、散乱パターン(M)を有し、前記散乱パターン(M)が幾つかの散乱領域(31)を含み、
前記散乱領域(31)は、前記散乱パターン要素(30)の粗面化及び/又はインプリントされた表面領域及び/又は穴として、又は前記散乱パターン要素(30)の容積内に形成され、
前記散乱領域(31)は、前記散乱パターン(M)又はその一部の画像を各回転又は形状歪み又は反射又はスケーリング又は並進において明確に特定できるように前記散乱パターン(M)内に配置される、散乱パターン要素(30)。
【請求項16】
前記散乱領域(31)は、第1のマーカ領域(32)、好ましくは本質的に円形の第1のマーカ領域(32)の第1の配列を備え、
前記第1のマーカ領域(32)のそれぞれは、複数の第2のマーカ領域(33)、好ましくは本質的に円形の第2のマーカ領域(33)によって第2の配列で取り囲まれる、
ことを特徴とする、請求項15に記載の散乱パターン要素(30)。
【請求項17】
少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは前記第1のマーカ領域(32)のそれぞれにおける前記複数の第2のマーカ領域(33)の前記第2の配列は、特に角度配置及び/又は前記第2のマーカ領域(33)の数において異なることを特徴とする、請求項16に記載の散乱パターン要素(30)。
【請求項18】
前記散乱領域(31)は、幾つかの多角形(34)、好ましくは長方形(34)を含み、前記多角形が異なるサイズを有し、及び/又は幾つか、特に全ての多角形(34)が好ましくは個々のマーカ付属物(35)を有することを特徴とする、請求項15に記載の散乱パターン要素(30)。
【請求項19】
レーザスキャナ装置、特に請求項10~14のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置(300)の加工平面(11)上に散乱パターン要素(30)を設けるために、散乱パターン要素(30)、特に請求項15~18のいずれか一項に記載の散乱パターン要素(30)を保持するための散乱パターン要素保持装置(40)であって、
-ベース面(41)並びに前記散乱パターン要素保持装置(40)が中空空間(43)を形成するように前記ベース面(41)の周りで回転する側壁(42)であって、上端部(44)における前記側壁(42)が、前記散乱パターン要素(30)を前記上端部(44)に固定されるように支持することができるように形成され、それにより、前記レーザスキャナ装置(300)の光を前記散乱パターン要素(30)を通じて前記中空空間(43)に照射できる、ベース面(41)並びに側壁(42)と、
-前記ベース面(41)上に配置される少なくとも1つの偏向コーン(45)であって、前記偏向コーン(45)が、前記偏向コーン(45)に当たる光を吸収するように及び/又は前記光を前記側壁(42)の内面(46)の方向に偏向させるように形成され、及び/又は配置され、前記側壁(42)の前記内面(46)が、前記側壁(42)の前記内面(46)に当たる光を吸収するように形成される、少なくとも1つの偏向コーン(45)と、
を有する散乱パターン要素保持装置(40)。
【請求項20】
前記側壁(42)の前記内面(46)及び/又は前記偏向コーン(45)が複数の吸収体薄層(47)を有することを特徴とする、請求項19に記載の散乱パターン要素保持装置(40)。
【請求項21】
前記側壁(42)の前記上端部(44)は、前記散乱パターン要素(30)を浮遊して支持できるように形成されることを特徴とする、請求項19又は20に記載の散乱パターン要素保持装置(40)。
【請求項22】
偏向コーンベース面が本質的にベース面(41)全体を覆い、及び/又は前記偏向コーン(45)の高さは、前記側壁(42)の高さの少なくとも半分、好ましくは前記側壁(42)の高さの少なくとも80%に対応することを特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の散乱パターン要素保持装置(40)。
【請求項23】
請求項10~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのレーザスキャナ装置(300)、並びに請求項15~18のいずれか一項に記載の走査場補正のための少なくとも1つの散乱パターン要素(30)、及び好ましくは請求項19から22のいずれか一項に記載の少なくとも1つの散乱パターン要素保持装置(40)を備える、走査場補正システム(200)。
【請求項24】
その走査場(120,122,124,126,128)が少なくとも部分的に重なり合う少なくとも2つのレーザスキャナ装置(300)を備え、前記散乱パターン要素(30)を用いて前記レーザスキャナ装置(300)を互いに対して較正できる、請求項23に記載の走査場補正システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る少なくとも1つのレーザスキャナ装置の走査場補正のための方法、請求項10に係るレーザスキャナ装置、請求項15に係る散乱パターン要素、請求項19に係る散乱パターン要素保持装置、及び請求項23に係る走査場補正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走査モジュール又はレーザスキャナ装置はそれぞれ、特定の動作容積内において高い精度及び再現性で空間内の3方向全てにレーザスポットを位置決めすることができる。この目的のために必要なx及びy方向のビーム偏向は、一般に、2つの偏向ミラーを介して行なわれるが、z方向の集束は、殆どの場合、光学系の変位によって、又はズームレンズの設定パラメータを変更することによっても行なわれる。
【0003】
設計及び許容誤差の理由から、両方の機械的動作シーケンスは、空間座標x、y、zにおいて非線形であり、したがって、線形制御に応答して所望の軌道に歪み誤差をもたらす。したがって、それに応じて、幾何学的に正しい態様で、すなわち、歪みのない態様でレーザビームを導くべく制御ソフトウェアを事前に補正する必要がある。
【0004】
高精度の要求に起因して、走査場補正のための対応する予歪み関数を実験的にしか決定することができない。
【0005】
走査場補正のためのこのタイプの予歪み関数は、それぞれのレーザスキャナ装置ごとに別々に手動で決定される必要がある。この目的のために、パターンは、様々なステップで加工レーザによって紙又は金属に適用され、時間のかかる態様で測定される。
【0006】
個々のレーザスキャナ装置のそれぞれの要求に応じて、測定は、眼によって、又は例えば座標測定機などの外部測定機によって実行される。したがって、従来の方法は、比較的不正確である(眼によって測定する)、又は非常に時間がかかる(座標測定機)。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、レーザスキャナ装置の高精度の走査場補正を簡単且つ再現可能な態様で実行できるようにする方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、走査場補正可能偏向ユニットを備える更に開発されたレーザスキャナ装置を提供することである。
【0009】
更に、本発明の目的は、特にレーザスキャナ装置の走査場補正のための更なる開発された方法を特に有利な態様で実行することができる、改善された散乱パターン要素を提供することである。
【0010】
更に、本発明の目的は、レーザスキャナ装置の走査場補正のための方法を特に有利な態様で実行できるように、散乱パターン要素、特に本発明に係る散乱パターン要素を固定するのに特によく適している散乱パターン保持装置を特定することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、更に開発された走査場補正システムを特定することである。
【0012】
少なくとも1つのレーザスキャナ装置の走査場補正のための方法に関して、目的は、請求項1の主題によって解決され、レーザスキャナ装置に関しては請求項10の主題によって解決され、散乱パターン要素に関しては請求項15の主題によって解決され、散乱パターン要素保持装置に関しては請求項19の主題によって解決され、並びに走査場補正システムに関しては請求項23の主題によって解決される。
【0013】
この目的は、特に少なくとも1つのレーザスキャナ装置の走査場補正のための方法によって解決され、その方法は以下のステップを有する:
-加工平面上に散乱パターン要素を設けるステップであって、散乱パターン要素が、散乱パターンで配置される少なくとも1つの散乱領域を有する、ステップ;
-スキャナ座標に沿って少なくとも1つのレーザスキャナ装置のレーザビームにより加工平面上の散乱パターン要素の少なくとも一部をそれぞれ通り過ぎる又は走査するステップであって、レーザビームが、偏向ユニットと加工平面との間で、少なくとも1つの窓、好ましくは保護ガラスを通過する、ステップ;
-少なくとも1つの散乱領域をそれぞれ通り過ぎる又は走査する際に、特に好ましくは少なくとも1つの散乱領域の上を通過するとき、および/または走査する際に、レーザビームの散乱及び/又は反射によって生成され得る散乱放射線を検出するステップ;
-検出された散乱放射線とスキャナ座標との相関によって輪郭線図を作成するステップ;
-輪郭線図を散乱パターンの基準画像と比較し、散乱パターンの基準画像からの輪郭線図の偏差を決定するステップ;
-決定された偏差に基づいて偏向ユニットの較正された制御のための較正関数を計算するステップ;
【0014】
本発明の本質的な概念は、動作可能なレーザスキャナ装置、すなわち(レーザ)加工機に既に設置されるレーザスキャナ装置の較正関数又は予歪み関数をそれぞれ、必要な場合に(又は一定の間隔で)オペレータが検査することができ、必要に応じて適合させることができることである。この理由は、例えば、レーザ源、フォトダイオードなどの構成要素の変更、更なる光学構成要素(例えば、洗浄目的のために)の除去及び再設置だけでなく、一定の稼働時間後の日常的な検査でもある。衝撃又は振動などの熱的又は機械的応力によって動作中に引き起こされる位置ずれは、このようにして検出及び補償することができる。
【0015】
したがって、高精度の走査場補正を伴って、ユーザの労力を最小限に抑えることができる。必要な測定機器(ここで、散乱パターン要素)を容易に加工平面上に配置することができ、必要な測定をオペレータから更に入力することなく実行及び評価することができ、走査場補正のための較正関数を輪郭線図に基づいて完全に自動的に計算することができる。
【0016】
輪郭線図は、好ましくは強度(プロファイル)プロットであると理解される。フォトダイオード信号(又は集積フォトダイオード信号)の振幅の輪郭線図の振幅は、例えば「カウント」で指定されるか、又は振幅は1に標準化される(最高のフォトダイオード信号に標準化される)。
【0017】
それによって、特に、(別個の)較正レーザによってではなく、(加工)レーザ又は(加工)レーザビーム自体のそれぞれによって較正を実行することも、本発明の更なる概念である。較正レーザを使用するときに実際のレーザビームに対するオフセットが通常存在し、較正が「通常の条件下」で行われないため、このようにして精度を高めることができる。したがって、例えば、(高いレーザ出力に起因する)走査装置の光学系における加工中に生じる熱を、較正中に直接考慮することができる。したがって、較正又は走査場補正はそれぞれ、外部の影響に対してほぼ不変になる。
【0018】
一つの実施形態において、散乱放射線の一部は、散乱放射線が窓の窓縁部から逃げてそこで検出され得るように、少なくとも窓の窓縁部の一部に向かって窓内において窓上面と窓下面との間で反射及び/又は散乱によって広がることが可能である。
【0019】
窓での反射及び/又は窓を通じた光の透過及び/又は窓の上面及び下面での多重反射は、光を検出する対応する検出器を飽和させないように集中的なレーザビームを弱めるための費用効率が高く簡単な選択肢である。更に、この構成は、特に省スペースで実現することができる。
【0020】
開口全体が利用されるため、このようにして大量の散乱光を更に収集することができる。このようにして、(散乱パターン要素の)散乱放射線をフォトダイオードの直接視野から収集するだけでなく、反射及び/又は窓内の散乱を介して散乱放射線を間接的に検出することも可能になる。したがって、方法又は光検出はそれぞれ、ほぼ方向的に独立して実行することができる。
【0021】
好ましい実施形態において、散乱放射線の検出が窓の窓縁部の少なくとも一部分で行われる。
【0022】
検出器は、このようにして恒久的に配置することができ、例えば較正後に取り外す必要はない。
【0023】
一つの実施形態において、散乱放射線の検出は、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは少なくとも3つのフォトダイオードによって行なわれ、幾つかのフォトダイオードが好ましくは等距離に分布される。
【0024】
言い換えれば、フォトダイオードは、いずれの場合にもフォトダイオードが互いに同じ距離に配置されるように、窓の外周に沿って配置することができる。
【0025】
フォトダイオードは、費用効率良く取得することができ、容易に読み出すことができる。幾つかのフォトダイオードの使用は、特にフォトダイオードが等距離に配置されている場合に、均一な輪郭線図の設定をもたらす。より多くのフォトダイオードが使用されるほど、視野/検出視野が大きくなる。均一な輪郭線図を作成するために、散乱光を発生させるフォトダイオードの数が増加するにつれて、それはますます重要ではなくなる。
【0026】
一つの実施形態において、輪郭線図の振幅は、検出された散乱放射線に本質的に比例する。
【0027】
したがって、最適で再現可能なデータ評価は、それに対応して輪郭線図が高い信号対雑音比を有するため可能になる。このようにして、較正関数を正確に決定することができる。したがって、更なる利点は、補間及び/又は適合精度にある。計算労力及び計算時間も、このようにして最適化することができる。
【0028】
一つの実施形態において、輪郭線図が散乱パターン画像を有し、散乱パターン画像は、散乱パターン要素の少なくとも1つの散乱領域に割り当てられ得る、特に明確に割り当てられ得る少なくとも1つの散乱領域画像を輪郭線図が有するように、散乱パターン要素の散乱パターンの歪み図に対応する。
【0029】
幾何学的な、好ましくは明確な割り当て性により、散乱パターン要素又は散乱パターン要素の少なくとも部分領域の向き又は特定は、簡単な方法で確実に決定することができる。容易に特定することができる明確な割り当て性は、較正プロセスを加速するために、このようにして計算労力及び計算時間を節約することができる。これは、特に、2つ又は幾つかのレーザスキャナ装置が、例えば(共通の)加工平面上の(それぞれ単一又は共通)散乱パターン要素を使用することによって、特に互いに又は互いに対してそれぞれ較正される場合にも関連する。
【0030】
一つの実施形態において、散乱パターンからの輪郭線図の偏差を決定するためのステップは、輪郭線図の好ましくは部分的なフィッティング及び/又は補間のためのステップを含む。
【0031】
それにより、計算ユニットによって、及び方法ステップを実行するための対応する命令によって、方法を自動化することが可能になる。したがって、較正の精度を最適化することができる。計算時間は、部分的なフィッティング及び/又は補間のみ(例えば、輪郭線図の関連部分又は特に高コントラスト部分のみ)によって更に短縮することができる。
【0032】
一つの実施形態において、散乱パターンからの輪郭線図の偏差を決定するためのステップは、特に輪郭線図の幾つかの散乱領域画像の焦点及び/又は中心点及び/又は形状歪みの輪郭線図基準点を決定するためのステップを含む。
【0033】
データ評価は、輪郭線図基準点を決定することによって更に最適化することができる。特定の(散乱)領域は、容易に、したがって比較的少ないステップで、又は比較的少ない計算労力で、又は比較的短い計算時間で、フィッティング/補間することができる。例えば、円又は円の中心は、ノイズの多いエッジに関して比較的影響を受けにくい。したがって、データ評価を加速することができ、精度を高めることができる。
【0034】
一つの実施形態において、散乱パターンからの輪郭線図の偏差を決定するためのステップは、散乱パターンの基準画像の対応する基準点からの輪郭線図基準点の偏差及び/又は形状歪みを決定するためのステップを含む。
【0035】
データ評価は、散乱パターンの基準画像の基準点を決定することによって更に最適化することができる。特定の(散乱)領域は、容易に、したがって比較的少ないステップで、又は比較的少ない計算労力で、又は比較的短い計算時間で、フィッティング/補間することができる。例えば、円又は円の中心は、ノイズの多いエッジに関して比較的影響を受けにくい。したがって、データ評価を加速することができ、精度を高めることができる。
【0036】
本発明による目的は、走査場補正可能偏向ユニットを備えるレーザスキャナ装置によって同様に解決され、レーザスキャナ装置は以下を有する:
-所定のスキャナ座標に沿ってレーザビームにより加工場をそれぞれ通り過ぎる又は走査する、特に通り過ぎる又は走査する、特に好ましくは取りすぎ及び/又は走査する、ように形成される少なくとも1つの偏向ユニットであって、散乱パターン要素を加工平面上に配置することができ、散乱パターン要素が散乱パターン内に配置される少なくとも1つの散乱領域を有する、少なくとも1つの偏向ユニット;
-偏向ユニットと加工場との間に配置される少なくとも1つの窓、好ましくは保護ガラス;
-散乱パターン要素の少なくとも1つの散乱領域を通り過ぎるときにレーザビームの散乱及び/又は反射によって生成され得る散乱放射線を検出するように形成される少なくとも1つのフォトダイオード;
-検出された散乱放射線とスキャナ座標との相関によって輪郭線図を作成するとともに、散乱パターンの基準画像からの輪郭線図の偏差に基づいて偏向ユニットの較正された制御のための較正関数を計算するように形成される計算ユニット;
【0037】
これは、方法に関連して既に説明したのと同じ利点をもたらす。輪郭線図のデータ評価は、フィッティング及び/又は補間及び/又はコントラスト強調及び/又は閾値解析及び更なる画像処理ステップによって計算ユニットによって実行することができる。
【0038】
一つの実施形態において、窓の窓縁部の一部分上に配置される2つ、好ましくは少なくとも3つのフォトダイオードを備える。
【0039】
フォトダイオードは、費用効率良く取得することができ、容易に読み出すことができる。幾つかのフォトダイオードの使用は、特にフォトダイオードが等距離に配置されている場合に、均一な輪郭線図の設定をもたらす。より多くのフォトダイオードが使用されるほど、視野/検出視野が大きくなる。均一な輪郭線図を作成するために、散乱光を発生させるフォトダイオードの数が増加するにつれて、それはますます重要ではなくなる。
【0040】
一つの実施形態において、少なくとも1つのフォトダイオード、好ましくは2つ、より好ましくは少なくとも3つのフォトダイオードは、散乱放射線の一部を検出するように形成及び/又は配置され、散乱放射線は、窓の窓縁部の一部に向かって窓内において窓上面と窓下面との間で反射及び/又は散乱によって広がる。
【0041】
窓での反射又は散乱、及び/又は窓を通じた光の透過、及び/又は窓上面及び下面での多重反射は、光を検出する対応する検出器を飽和させないように集中的なレーザビームを弱めるための費用効率が高く簡単な選択肢である。
【0042】
更に、この構成は、特に省スペースで実現することができる。開口全体が利用されるため、このようにして大量の散乱光を更に収集することができる。このようにして、(散乱パターン要素の)散乱放射線をフォトダイオードの直接視野から収集するだけでなく、反射及び/又は窓内の散乱を介して散乱放射線を間接的に検出することも可能になる。したがって、方法又は光検出はそれぞれ、ほぼ方向的に独立して実行することができる。
【0043】
一つの実施形態において、少なくとも1つのフォトダイオードは、検出された散乱放射線に本質的に比例する測定信号を計算ユニットに出力するように形成される。
【0044】
一つの実施形態において、輪郭線図の振幅は、検出された散乱放射線又は少なくとも1つのフォトダイオードの測定信号にそれぞれ本質的に比例する。
【0045】
したがって、輪郭線図の最適で再現可能なデータ評価は、それに対応して輪郭線図が高い信号対雑音比を有するため可能になる。このようにして、較正関数を正確に決定することができる。したがって、更なる利点は、補間及び/又は適合精度にある。計算労力及び計算時間も、このようにして最適化することができる。
【0046】
本発明による目的は、特に上記の方法による、および/または特に上記のレーザスキャナ装置のための、レーザスキャナ装置の走査場補正のための散乱パターン要素によって同様に解決される。
【0047】
散乱パターン要素は、好ましくはガラス又はガラスセラミック、特に溶融シリカ又はZerodur(登録商標)又はBorofloatから板状に形成されるとともに、散乱パターンを有し、散乱パターンが幾つかの散乱領域を含む。
【0048】
散乱領域は、散乱パターン要素の粗面化及び/又はインプリントされた表面領域及び/又は穴として、又は散乱パターン要素の容積内に形成される。
【0049】
散乱領域は、散乱パターン又はその一部の画像を各回転又は形状歪み又は反射又はスケーリング又は並進において明確に特定できるように散乱パターン内に配置される。
【0050】
散乱パターン要素に関しては、高いレーザ出力の照射に応答しても破壊されない「目標」を与えることが不可欠な考え方である。したがって、レーザスキャナ装置を(加工)レーザビームによって直接較正することが可能になる。有利な態様で、別個の較正レーザを省略することが可能である。
【0051】
これは、高いレーザ出力/強度(例えば、>50W又は>100W、例えばCW、又はパルス、例えばNIR、フォーカスサイズ(パターン要素を散乱させる)、例えば約40μm)及び目標精度のために、全ての材料に対して容易に可能ではない。
【0052】
散乱パターン要素の静的誤差、例えば散乱領域の自重、均一性、位置決め及び製造精度などによる「偏向」、並びに動的誤差、例えば測定プロセス中の熱膨張などは、輪郭線図の以下のデータ評価において最小化及び/又は考慮されなければならない。
【0053】
一つの実施形態において、散乱領域は、第1のマーカ領域、好ましくは本質的に円形の第1のマーカ領域の第1の配列を備え、第1のマーカ領域のそれぞれは、複数の第2のマーカ領域、好ましくは本質的に円形の第2のマーカ領域(33)によって第2の配列で取り囲まれる。
【0054】
したがって、画像認識/画像処理又はデータ処理をそれぞれ最適化することができる。例えば、パターンを輪郭線図においてそれぞれ効率的に特定又は適合させることができるように第1の配列と第2の配列との間の差を選択することができる。したがって、全体として、容易に製造することができるとともにその散乱パターンに起因してデータ処理を単純化する散乱パターン要素を得ることもできる。較正は、このようにして迅速且つ正確に行なうことができる。
【0055】
一つの実施形態において、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは第1のマーカ領域のそれぞれにおける複数の第2のマーカ領域の第2の配列は、特に角度配置及び/又は第2のマーカ領域の数において異なる。
【0056】
したがって、散乱パターン又は散乱パターンの向きのそれぞれ、特に散乱パターン又は散乱パターンの向き、特に好ましくは散乱パターン及び/又は散乱パターンの向きは、輪郭線図によって検出され得る。
【0057】
一つの実施形態において、散乱領域は、幾つかの多角形、好ましくは長方形を含み、多角形が異なるサイズを有し、及び/又は幾つか、特に全ての多角形が好ましくは個々のマーカ付属物を有する。
【0058】
散乱パターンの向きは、このようにして輪郭線図によって効率的に検出することができる。
【0059】
本発明による目的は、特に、レーザスキャナ装置の加工平面上に散乱パターン要素を設けるために、特に上記のように散乱パターン要素を保持するための散乱パターン要素保持装置によって同様に解決される。散乱パターン要素保持装置は以下を有する:
-ベース面並びに散乱パターン要素保持装置が中空空間を形成するようにベース面の周りで回転する側壁であって、上端部における側壁が、散乱パターン要素を上端部に固定されるように支持することができるように形成され、それにより、レーザスキャナ装置の光を散乱パターン要素を通じて中空空間に照射できる、ベース面並びに側壁;
-ベース面上に配置される少なくとも1つの偏向コーンであって、偏向コーンが、偏向コーンに当たる光を吸収するように及び/又は光を側壁の内面の方向に偏向させるように形成され、及び/又は配置され、側壁の内面が、側壁の内面に当たる光を吸収するように形成される、少なくとも1つの偏向コーン;
【0060】
偏向ユニットの較正された制御のための較正関数を計算する前述の方法の速度及び精度は、例えば、達成することができるコントラストによって決定される。コントラストは、散乱パターン要素の任意選択的に異なる表面粗さ、及びフォトダイオードの方向のレーザ放射の関連する後方散乱によって決定される。しかしながら、散乱パターン要素の材料に応じて、レーザ光のパワーの約90%からほぼ100%までが散乱パターン要素を透過する。試験は、散乱領域で透過される光が約10%少ないことを示している。したがって、この電力がどのように捕捉されるかは、コントラスト及び熱管理にとって重要である。したがって、本発明によれば、光は、散乱パターン要素保持装置の中空空間の内壁上の散乱パターン要素から下流で吸収される。
【0061】
一つの実施形態において、側壁の内面及び/又は偏向コーンが複数の吸収体薄層を有する。吸収体薄層が、好ましくは、三角形断面を有する要素として形成される。吸収体薄層は、ピラミッド形状を有することが可能である。
【0062】
これにより、効率良く光を吸収することができる。したがって、輪郭線図のコントラストが更に増大し、計算時間が短縮され、較正関数の精度が向上する。
【0063】
一つの実施形態において、側壁の上端部は、散乱パターン要素を浮遊して支持できるように形成される。浮動支持体が、散乱パターン要素のそのような支持体として理解されるべきであり、それによれば、散乱パターン要素は、下側の締結セクションに完全には載置されない。散乱パターン要素と偏向コーンとの間に隙間が形成されることが好ましい。
【0064】
側壁の上端部は、散乱パターン要素をこの張出部に配置することができる張り出し状に形成されることが好ましい。
【0065】
上端部の側壁は、例えば、面取りや挿入溝を有する。
【0066】
同様に、側壁は、散乱パターン要素30を取り付けるために、3つ又は4つのベアリング突起、例えばいずれの場合も側壁の側面に1つのベアリング突起を有することが可能である。
【0067】
対応する面取り部、挿入溝、又はベアリング突起は、任意選択的に、上端部44の側壁が散乱パターン要素を(望ましくない)動きに対してそれぞれ位置的に安定化又は固定するように散乱パターン要素を導入できるように、(上端部から見て)凹むように形成することができる。
【0068】
これにより、散乱パターン要素を散乱パターン要素ホルダから熱的及び機械的に結合解除することが可能になり、散乱パターン要素ホルダの熱膨張は、散乱パターン要素に影響を与えないか、又は与えることができない。
【0069】
一つの実施形態において、偏向コーンベース面が本質的にベース面全体を覆い、及び/又は偏向コーンの高さは、側壁の高さの少なくとも半分、好ましくは側壁の高さの少なくとも80%に対応する。
【0070】
このようにして、異なる衝撃方向から内壁に光を効率的に導くことができ、そこで光を吸収することができる。これにより、コントラストがより向上する。
【0071】
散乱パターン要素を幾つかの位置に配置することを可能にするために、散乱パターン要素は、好ましくは変位可能に支持され得る。例えば、散乱パターン要素保持装置をXY平面内で変位可能に支持することができる。
【0072】
散乱パターン要素及び/又は散乱パターン要素保持装置を変位可能に支持するために、例えば、クロステーブル又はXYテーブルにそれぞれ配列を設けることができる。
【0073】
本発明による目的は、同様に、走査場補正システムによって解決され、走査場補正システムは、上述のような少なくとも1つのレーザスキャナ装置と、走査場補正のための少なくとも1つの散乱パターン要素とを備え、上述したように、好ましくは少なくとも1つの散乱パターン要素保持装置を含む。
【0074】
この時点で、本発明に係る方法、本発明に係るレーザスキャナ装置、及び本発明に係る散乱パターン要素との関連で説明した特徴及び利点は、本発明に係る走査場補正システムにも適用されることが指摘される。
【0075】
方法の特徴、特にフォトダイオード信号の検出又は輪郭線図の評価/分析に関する特徴は、対応する装置が対応する方法の特徴を実行するのに適しているように構成されるという点で、本発明に係る補正システムに移し替えることができる。
【0076】
一実施形態では、走査場補正システムは、それらのサイズ及び/又はそれらの散乱パターンが異なる少なくとも2つの散乱パターン要素を含む。
【0077】
例えば、偏向ユニットの較正された制御は、それによって検証又は試験することができる。同様に、第2の較正関数によって較正関数を較正することも考えられる。したがって、偏向ユニットの制御の精度を更に高めることができる。
【0078】
一つの実施形態において、走査場補正システムは、走査場が少なくとも部分的に重なり合う少なくとも2つのレーザスキャナ装置を備え、レーザスキャナ装置は、散乱パターン要素を用いて互いに対して較正できる。
【0079】
幾つかのレーザスキャナ装置の場合、それぞれの走査場は、例えば対応するレーザ走査ヘッドの不正確な(曲がった)組み立てにより、互いに対して回転及び/又は傾斜することができる。幾つかのレーザビームの互いに対するビーム誘導の相対精度は、特に互いに適合された共通の較正の助けを借りて最適化することができる。有利な更なる進展が従属請求項から続く。
【0080】
また、本発明は、図に基づいてより詳細に説明される更なる詳細、特徴、及び利点に関して以下に説明される。
【0081】
図面の図に以下に示され、図面に基づいて記載されるような、記載された特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれの指定された組み合わせで使用することができるだけでなく、したがって本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】3つのフォトダイオードを備える本発明に係るレーザスキャナ装置の典型的な実施形態の概略図を示す。
図2】本発明に係る散乱パターン要素の典型的な実施形態の上面図を示す。
図3】スキャナ座標に沿ったレーザビームによる加工平面上の散乱パターン要素の少なくとも一部の走査を概略的に示唆することによる、加工平面上の散乱パターン要素の配置の典型的な実施形態の概略図を示す。
図4】検出された散乱放射線とスキャナ座標との相関によって得られる、典型的な実施形態に係る輪郭線図の概略図を示す。
図5】本発明に係る散乱パターン要素の別の典型的な実施形態の上面図を示す。
図6】検出された散乱放射線とスキャナ座標との相関によって得られる、別の典型的な実施形態に係る輪郭線図の概略図を示す。
図7】本発明に係る散乱パターン要素保持装置の典型的な実施形態の断面図を示す。
図8】散乱パターン要素を備える本発明に係る散乱パターン要素保持装置の典型的な実施形態の断面図を示す。
図9】本発明に係る散乱パターン要素保持装置の別の典型的な実施形態の断面図を示す。
図10】典型的な実施形態に係る本発明に係る散乱パターン保持装置の概略上面図を示す。
図11】2つのレーザスキャナ装置と共通の加工平面とを備える走査場補正システムの較正又は走査場補正のそれぞれのための方法における典型的な実施形態を示す。
図12】複数のレーザスキャナ装置と共通の加工平面とを備える走査場補正システムの較正又は走査場補正のそれぞれのための方法における典型的な実施形態を示す。
図13】散乱パターン要素を幾つかの位置に変位させることによるレーザスキャナ装置の較正又は走査場補正のそれぞれのための方法における別の典型的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
本発明に係る走査場補正システム200の本発明に係るレーザスキャナ装置の典型的な実施形態の概略図が図1に示される。
【0084】
これにより、レーザスキャナ装置は、レーザビーム12を放射するための少なくとも1つのレーザ光源(図1には示されない)と、少なくとも1つの偏向ユニット10とを備える。
【0085】
偏向ユニット10は、例えば、(偏向)ミラー及びガルバノメータスキャナを備えることができる。
【0086】
レーザビーム12は、偏向ユニット10及び任意選択的に更なる(図示せず)偏向ユニットによって、3つの空間座標x、y、zで移動させることができる。
【0087】
3つの空間座標x、y、zにおけるレーザビーム12の移動は、レーザビームのスポットが、少なくとも1つの偏向ユニット10によって加工平面11上でx及びy方向(各場合において、加工平面11に平行であり、任意選択的に互いに垂直である)に移動され得ることを理解すべきである。存在し得る焦点位置は、z方向(加工平面11に垂直)に移動/変位させることができる。
【0088】
偏向ユニット10と加工平面11との間には窓20が配置されている。窓20は、例えば、加工平面11が配置された作業領域にレーザビーム12を照射する目的を果たす保護ガラスとすることができる。
【0089】
例示的な一実施形態では、窓は、スキャナ内部を外部からの汚染(塵埃、煙、(水蒸気)蒸気)から保護する目的で機能する。本発明の改良において、レーザスキャナ装置は、窓によって気密に閉じることができる。
【0090】
散乱パターン要素30は、図1の加工平面11上に配置される。散乱パターン要素30は、パターンMに配置することができる幾つかの散乱領域31を有する。
【0091】
図1の例示的な実施形態では、3つのフォトダイオードPD、PD、PDが、それぞれ、窓20の窓縁部23の断面上に配置されている。
【0092】
更に、例えば、第3フォトダイオードPDと反対側に位置するように配置された(図示せず)第4フォトダイオードが存在していてもよい。
【0093】
本発明に係る走査場補正のために、レーザビーム12は、所定のスキャナ座標x及びyに沿って、それぞれ加工平面11又は加工平面上に配置された散乱パターン要素30に沿って移動又は走査することができる。
【0094】
レーザビームは、その後、反射の法則に従って(光が散乱領域31のいずれかに当たらない場合)散乱パターン要素30のパターンMによって偏向されるか、又は散乱領域31もしくはその一部によって(拡散的に)散乱される。
【0095】
後方に反射及び/又は後方に散乱されるレーザ光13(ここでは一般に散乱放射線13と呼ばれ、後方に反射される光も含むことができる)は、窓下面22を通過する。
【0096】
散乱放射線13の一部は、散乱放射線13が窓20の窓縁部23から逃げてそこで検出され得るように、少なくとも窓20の窓縁部23の一部に向かって窓20内において窓上面21と窓下面22との間で(繰り返す)反射及び/又は散乱によって広がる。
【0097】
散乱パターン要素30の異なる表面粗さに起因して、後方に反射/後方に散乱される散乱放射線13にコントラストが生成される。
【0098】
この散乱放射線13は、窓20の(内部)に向けられたフォトダイオードPD、PD、PDを介して収集され、スキャナ座標x、y、zと相関する。
【0099】
フォトダイオードPD、PD、PDのフォトダイオード信号をスキャナ座標x、y、zと合成・相関させて輪郭線図Kを形成すると、前述した歪み誤差に起因して散乱パターンMの歪んだぼやけた画像が生成される。
【0100】
必要な較正関数は、この輪郭線図Kと散乱パターンMの既知の基準画像との比較から計算することができる。
【0101】
この典型的な実施形態に係る散乱パターンMを備える散乱パターン要素30における典型的な実施形態を、図2に関連して以下により詳細に説明する。
【0102】
散乱パターン要素30は、好ましくはガラス又はガラスセラミック、特に溶融シリカ又はZerodur(登録商標)又はBorofloatから板状に形成される。これらの材料は、特に高い損傷閾値を有するため、高性能レーザに特に適している。更に、材料は低い熱膨張係数を有し、それによって熱的影響が最小限に抑えられる。
【0103】
図2に係る散乱パターン要素30は、矩形状に形成されている。しかしながら、本発明によれば、散乱パターン要素は、円形に形成することもでき、又は任意の形状、例えば星形を有することもできる。
【0104】
散乱パターン要素30のためのものは、例えば光の吸収による破壊を回避するために、レーザビーム12の波長を透過するように特に形成される。
【0105】
或いは、散乱パターン要素30はまた、(より低いレーザ出力のために)例えば紙もしくは厚紙又は金属から成ることもできる。
【0106】
散乱パターン要素30は、表面上に散乱パターンMを有し、散乱パターンMは、幾つかの散乱領域31を含み、散乱領域31は、散乱パターン要素(30)の粗面化(例えば、エッチング又はサンドブラストによる)及び/又はインプリント(表面)領域として形成される。
【0107】
これに代えて又は加えて、散乱領域30は、散乱パターン要素30の容積内に少なくとも部分的に配置することができる。例えば、このタイプの散乱領域は、レーザ彫刻によって導入することができる。散乱領域30が孔(穴)を含むことも同様に考えられる。
【0108】
散乱領域31は、散乱パターンMの(任意の)画像が各回転又は形状歪み又は反射又はスケーリング又は並進において明確に特定可能な向きを有するように、散乱パターンMに配置される。言うまでもなく、本発明によれば、散乱領域31が散乱しないように形成され、散乱パターン要素30の残りの領域が散乱するように形成されることも代替的に可能である。したがって、「陰性」は、本発明に係る形成を表すこともできる。
【0109】
この目的のために、散乱領域31は、第1のマーカ領域32の第1の配列及び第2のマーカ領域33の第2の配列を含むことができる。
【0110】
図2による典型的な実施形態では、第1のマーカ領域32は、散乱パターン要素の表面上に規則的な3×3の配列で配置された円として形成される。
【0111】
ここで、第1のマーカ領域32のそれぞれは、複数の第2のマーカ領域33によって囲まれている。
【0112】
複数の第2のマーカ領域33の第2の配列は、第1のマーカ領域32のそれぞれについて、特に角度配置及び/又は幾つかの第2のマーカ領域33において、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは異なる。
【0113】
このようにして、各第1のマーカ領域32を明確に特定することができる。散乱パターンMの画像が各回転、形状歪み及び反射、スケーリング又は並進において明確に特定可能な向きを有するように、パターンMの明確な(幾何学的)割り当て可能性をこのように提供することができる。
【0114】
画像処理/検出及び散乱パターン要素の製造を可能な限り簡単に設計するために、例えば、円のみをマーカ領域として選択することができる。これにより、例えば、任意のタイプのマスク関連製造(サンドブラスト、エッチング)が可能になり、その場合「島」は不可能である。更なる利点は、円の中心点の決定がノイズの多いエッジに関して影響を受けにくいため、「補間」/「適合精度」にある。
【0115】
図3による典型的な実施形態では、それぞれスキャナ座標x、y、z又は対応する軌道に沿ったレーザスキャナ装置のレーザビーム12による加工平面11上の散乱パターン要素30の少なくとも一部の通過又は走査が示されている。
【0116】
散乱パターン要素の通過又は走査は、コントラストを高めるために、より頻繁に(次々に)、例えば4回行うこともできる。順序(又は開始点、それぞれ)、走査の曲線形状、又は走査の速度もそれによって変えることができる。
【0117】
輪郭線図Kは、スキャナ座標x、y、zと、この目的のためにそれぞれ検出されるフォトダイオード信号との相関に基づいて計算される(スキャナ座標x、y、z毎に1つのフォトダイオード信号データセット)。
【0118】
図4は、図2の典型的な実施形態に係る散乱パターン要素30における検出された散乱放射線13(図1参照)とスキャナ座標x、y、z(図3参照)との相関によって得られる、典型的な実施形態に係る輪郭線図Kの概略図を示す。
【0119】
輪郭線図Kは座標x’、y’、z’を有し、座標x’、y’は本質的にスキャナ座標x、y、z(図3参照)に対応し、z’は輪郭線図の振幅を表す。
【0120】
輪郭線図Kの振幅z’は、幾つかのフォトダイオードPD、PD、PD図1参照)の積分及び/又は平均化された信号(例えば、幾つかの走査にわたって平均化された)に対応する。
【0121】
この目的のために、(本質的に)従来のアナログ-デジタル変換が提供され、その結果、振幅z’の単位は、例えば「カウント」で指定されるか、又は振幅z’は1に標準化される(最高のフォトダイオード信号に標準化される)。
【0122】
したがって、輪郭線図Kは、散乱パターン要素30の散乱パターンMの歪み図に対応する、散乱パターン30の(歪んだ)画像又は散乱パターン画像M’をそれぞれ示す。
【0123】
したがって、輪郭線図Kは、幾つかの散乱領域画像31を有し、これは、好ましくは明確に、散乱パターン要素30の幾つかの散乱領域31に割り当てることができる。
【0124】
輪郭線図Kは、計算ユニット上で散乱パターン要素30の(図示しない)基準画像と比較される。
【0125】
散乱パターン要素30の基準画像は、例えば、散乱パターン要素30の高解像度写真によって、又は座標測定機による散乱パターン要素30の測定によって生成することができる。
【0126】
同様に、例えば、散乱パターン要素30の散乱パターンMを生成するための(レーザ)印刷方法に使用された散乱パターン要素30の基準画像として生データ(座標生データ)を使用することが考えられる。
【0127】
散乱パターンM又は散乱パターン要素30の基準画像からの輪郭線図Kの偏差をそれぞれ決定するために、異なる適合及び/又は補間方法を使用することができる。例えば、コントラスト強調及び/又は閾値分析などの更なる画像処理ステップ/データ処理ステップを任意選択的に実行することができる。
【0128】
特に前の段落で説明したステップを使用して偏差を決定するために、輪郭線図Kの幾つかの散乱領域画像31’の焦点及び/又は中心点及び/又は形状歪み(例えば、「円」ではなく「楕円」)などの輪郭線図基準点が決定される。
【0129】
輪郭線図基準点からグリッドを生成することができ、その場合、各輪郭線図基準点は、x及びy位置並びに(最適な)焦点位置に関する情報を含む。
【0130】
予歪み関数又は較正関数は、それぞれ、散乱パターン要素30(又は、それぞれ、基準画像の所定の基準点)の散乱パターンMの歪んでいない規則的な基準画像に対する輪郭線図基準点の比較から計算することができる。
【0131】
較正関数は、例えば、偏向ユニット10(図1参照)の制御中に生じ得る糸巻きバレルの歪み又は他の歪みを補償する役割を果たす。
【0132】
z値(=(最適な)焦点位置)を含む較正関数は、輪郭線図基準点及び/又は散乱パターンMの基準画像の対応する基準点間の補間を介して完成する。
【0133】
図5は、散乱パターンMを含む本発明に係る散乱パターン要素30の別の典型的な実施形態の上面図を示す。
【0134】
図5の散乱パターン要素30の典型的な実施形態によれば、散乱パターン要素30は、幾つかの多角形34の形態の散乱領域31を有する。
【0135】
これらの多角形は、例えば、長方形又は線又は直線34をそれぞれ含むことができる。これに代えて又は加えて、多角形又は散乱領域はまた、バーコード又はQRコード又は数字及び/又は文字を含むことができる。
【0136】
多角形は、異なるサイズを有し、レチクルを伴うカスケード配列を形成する。
【0137】
多角形34のそれぞれ又は幾つかは、好ましくは個々のマーカ付属物35を有する。
【0138】
図5の典型的な実施形態に係るマーカ付属物35は、ラインマーキングを備え、4つの長方形34は、いずれの場合も、1つ、2つ、3つ、4つのラインマーキングを有する。
【0139】
このようにして、パターンMの明確な(幾何学的)割り当て可能性を提供することができ、その結果、散乱パターンMの画像は、各回転、形状歪み及び反射、スケーリング又は並進において明確に特定可能な向きを有する。
【0140】
図6は、図5の典型的な実施形態に係る散乱パターン要素30における検出された散乱放射線13(図1参照)とスキャナ座標x、y、z(図3参照)との相関によって得られる、典型的な実施形態に係る輪郭線図Kの概略図を示す。
【0141】
更なる記述及び評価又は分析のそれぞれ、並びにそこから計算することができる予歪み関数又は較正関数のそれぞれについては、図4に関する記述を参照されたい。
【0142】
本発明に係る散乱パターン要素保持装置40の典型的な実施形態の断面図が図7に示されている。
【0143】
偏向ユニットの較正された制御のための予歪み関数又は較正関数をそれぞれ計算するための前述の方法の速度及び精度は、例えば、(輪郭線図Kにおいて)達成することができるコントラストによって決定される。コントラストは、散乱パターン要素30の(異なる)表面粗さ、及びフォトダイオードPD、PD、PDの方向におけるレーザ放射13の関連する後方散乱によって決定される(図1参照)。
【0144】
しかしながら、散乱パターン要素の材料に応じて、レーザ光のパワーの約90%からほぼ100%までが散乱パターン要素30を透過する。試験は、散乱領域で透過される光が約10%少ないことを示している。
【0145】
したがって、コントラスト及び熱管理にとって、この電力がどのように捕捉され、好ましくはフォトダイオードに散乱し戻されないかは重要である。
【0146】
したがって、本発明によれば、光は、散乱パターン要素保持装置40の中空空間43の内壁上の散乱パターン要素30を透過した後に吸収される。
【0147】
散乱パターン要素30は、散乱パターン要素保持装置40によって加工平面11(図1参照)上に設けることができる。具体的には、例えば50W又は100W以上の高レーザ出力では、(望ましくない)後方散乱が(殆どの場合)回避されるか、又はそれぞれ大幅に低減されるため、このようにして輪郭線図のコントラストを大幅に改善することができる。
【0148】
散乱パターン要素保持装置40は、ベース面41と、ベース面の周りを回転する側壁42とを有する。
【0149】
したがって、内部では、散乱パターン要素保持装置40は中空空間43を形成する。
【0150】
側壁42は、散乱パターン要素30が上端部44に固定されるように支持され得るように上端部に形成される。
【0151】
側壁42の上端部44は、ベース面41が側壁42に隣接する端部の反対側に位置する。
【0152】
この目的のために、側壁42は、例えば、対応する面取り部又は挿入溝を上端部44に有することができる。更に、側壁42の上端部44は、張り出し状に形成されてもよい。
【0153】
同様に、側壁42は、散乱パターン要素30を取り付けるために、3つ又は4つのベアリング突起、例えばいずれの場合も側壁42の側面に1つのベアリング突起を有することが考えられる。
【0154】
対応する面取り部、挿入溝、又はベアリング突起は、任意選択的に、上端部44の側壁42が散乱パターン要素を(望ましくない)動きに対してそれぞれ位置的に安定化又は固定するように散乱パターン要素30を導入できるように、(上端部44から見て)凹むように形成することができる。
【0155】
散乱パターン要素保持装置40は、ベース面41上に配置された少なくとも1つの偏向コーン45を更に有する。
【0156】
少なくとも1つの偏向コーン45は、入射光を側壁42の内面46の方向に偏向させるように形成及び/又は配置される。
【0157】
側壁42の内面46は、内面46に当たる光を吸収するように形成される。
【0158】
この目的のために、側壁42は、吸収体薄層47を有することができる。これに代えて又は加えて、中空空間43内に更なる吸収又は拡散散乱要素を設けることができる。
【0159】
偏向コーンベース面は、基本的にベース面41全体を覆い、代替的に、偏向コーンベース面は、ベース面41よりもわずかに小さくなるように形成することもできる。
【0160】
偏向コーン45の高さは、側壁42の高さの少なくとも半分、好ましくは側壁42の高さの少なくとも80%に対応する。このようにして、大きな入射角度範囲にわたって入射光を吸収することができる。
【0161】
図7による散乱要素保持装置40の典型的な実施形態が図8に示されており、散乱要素保持装置40は散乱パターン要素30を保持する。
【0162】
図9は、散乱要素保持装置40の別の典型的な実施形態を示す。
【0163】
偏向コーン45の「先端」又は頂角はそれぞれ、ここではベース面41に向けられている。この典型的な実施形態では、偏向コーン45は、吸収体薄層47を有することができ、又は偏向コーン45(自体)は、側壁42の内面46を形成することができる。
【0164】
典型的な実施形態に係る散乱パターン保持装置40上の概略上面図を図10に示す。
【0165】
散乱パターン保持装置40は、散乱パターン要素30を保持する。散乱パターン要素30は、レーザ波長を透過するように形成されている。レーザ光のうちフォトダイオードPD,PD,PDに散乱されなかった部分(図1参照)は、このようにして中空空間43内(散乱パターン要素30の下方)に進入し、そこで吸収される。
【0166】
散乱パターン要素30は、散乱パターン保持装置40を損傷することなく、伝送された電力が完全に吸収されるように散乱パターン保持装置40に保持される。
【0167】
散乱パターン要素30は、散乱パターン保持装置40から更に熱的及び機械的に切り離されているので、その熱膨張は散乱パターン要素30に影響を与えない。
【0168】
高いレーザ出力の場合、構成要素は著しく加熱される可能性がある。例えば、ここでの散乱パターン要素30の熱膨張による結果として生じる曲率を回避するために、散乱パターン保持装置40は、本発明の更なる形態で、(能動的に)冷却、例えば水冷することができる。
【0169】
散乱パターン要素保持装置40は、熱を放出することができ、レーザ出力によって損傷を受けないように、例えば、(陽極酸化された)アルミニウム又は良好な熱伝導性を有する別の材料から構成することができる。
【0170】
図11は、散乱パターン要素30及び共通加工平面11を備える2つのレーザスキャナ装置300を備える走査場補正システム200の較正又は走査場補正のそれぞれのための方法における概略的な典型的な実施形態を示す。
【0171】
フォトダイオード及び窓はここでは示されていない。散乱パターン要素30の対応する配置又は特徴の説明については、前述の典型的な実施形態を明示的に参照する。
【0172】
この典型的な実施形態に係る方法では、2つのレーザスキャナ装置300のそれぞれについて、本発明に係る較正関数を算出する。
【0173】
較正関数を適用することにより、対応するレーザスキャナ装置300のそれぞれの走査場120,122は、いずれの場合にも、歪みに応じてそれ自体でそれぞれ「歪まされ」又は補正される。
【0174】
しかしながら、幾つかのレーザスキャナ装置300の場合、走査場120,122は、例えばレーザ走査ヘッドの不正確な(曲がった)組み立てによって、(更に)互いに対して回転及び/又は傾斜することができる。図11の右側の加工平面11上の上面図における概略的に提案された(傾斜した)走査場120,122を参照されたい。
【0175】
これが、レーザ走査システムの可能な限り正確な較正を得るために、レーザスキャナ装置300を互いに対して依然として補正/較正しなければならない理由である。
【0176】
幾つかのレーザスキャナ装置300間のこの種の相対誤差を補正するために、2つのレーザスキャナ装置300は、散乱パターン要素30上の同じ重複領域121(2つの走査場120,122の重複領域121)を走査する。
【0177】
結果として得られる2つの輪郭線図Kは、その後、回転/傾斜によって一致させられ、レーザスキャナ装置300は、結果として得られる較正関数によって補正される。
【0178】
図11による典型的な実施形態に関連して説明した方法は、複数のレーザスキャナ装置300に(任意の配置で)移し替えることもできる。
【0179】
図12は、それぞれの走査場120,122,124,126,128,130を含む走査場補正システム200の複数、例えば6つのレーザスキャナ装置300を含む典型的な実施形態を示す。図11に関連しても説明したように、隣接する走査場120,122,124,126,128,130のそれぞれの重複領域121,123,125,127,129を散乱パターン要素30上で走査することができる。
【0180】
結果として得られるそれぞれの輪郭線図Kは、その後、回転/傾斜によって一致させられ、レーザスキャナ装置は、結果として得られる較正関数によって補正される。
【0181】
図11及び図12による典型的な実施形態では、(走査場又は加工平面と比較して)比較的大きな散乱パターン要素30が使用される。
【0182】
図13による別の典型的な実施形態では、前述の方法は、加工平面11上の散乱パターン要素30の再配置(異なる位置の使用)による(大きい)走査場120の走査場補正に使用することができる。
【0183】
それぞれ散乱パターン要素30又は対応する散乱パターン要素保持装置の一般化の目的のために、又は(製造コスト及び労力の観点から)好ましい製造性のために、(著しく)大きい走査場120の走査場補正のために(走査場又は加工平面と比較して)比較的小さい散乱パターン要素30を使用することが有利であり得る。
【0184】
それにもかかわらず、走査場120の全体又は少なくとも大部分の歪みを測定することができるように、走査パターン要素30は走査場120内で再配置される。
【0185】
これにより、走査パターン要素30は、最初に走査場120に対して第1の位置に位置決めされ、レーザビームによって走査され、対応する第1の較正関数が計算される(図13、上部)。
【0186】
続いて、散乱パターン要素30は、まず走査場120に対して第2の位置に配置され、レーザビームによって走査され、対応する第2の較正関数が計算される(図13、下部)。
【0187】
散乱パターン要素30の同じ領域又は同じ散乱領域31の重複測定(レーザビームによる通過/走査)によって、いずれの場合にも走査場120の一部を対象とする較正関数(第1の及び第2の較正関数)を互いに相関させることができる。
【0188】
走査パターン要素30を複数箇所に配置できるようにするためには、走査パターン要素30を変位可能に支持することが好ましい。例えば、散乱パターン要素保持装置をXY平面内で変位可能に支持することができる。
【0189】
この時点で、上記の部品の全てが単独で、任意の組み合わせで、特に図面に示された詳細が本発明に不可欠であると主張されることを指摘することが重要である。
【符号の説明】
【0190】
10 偏向ユニット
11 加工平面
12 レーザビーム
13 散乱放射線
20 窓
21 窓上面
22 窓下面
23 窓縁部
30 散乱パターン要素
31 散乱領域
31’ 散乱領域画像
32 第1のマーカ領域
33 第2のマーカ領域
34 多角形
35 マーカ付属物
40 散乱パターン要素保持装置
41 ベース面
42 側壁
43 中空空間
44 上端部
45 偏向コーン
46 内面
47 吸収体薄層
120、122、124、126、128、130 走査場
121、123、125、127、129 重複領域
200 走査場補正システム
300 レーザスキャナ装置
K 輪郭線図
M 散乱パターン
M’ 散乱パターン画像
PD、PD、PD フォトダイオード
x、y、z スキャナ座標
x’、y’、z’ 輪郭線図の座標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】