(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】変性低密度ポリエチレン樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20240227BHJP
C08J 3/28 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C08F8/00
C08J3/28 CER
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548903
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022017133
(87)【国際公開番号】W WO2022178344
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ドン、イーファン ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】バウィスカル、サントーシュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】カージャラ、テレサ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン、プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】カルドス、ロリ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ビスコグリオ、マイケル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン、ジョン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボー ザ サード、ダニエル ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB09
4F070AB21
4F070AB22
4F070AB23
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4J100JA44
4J100JA58
4J100JA59
4J100JA60
4J100JA64
(57)【要約】
出発LDPE樹脂及び照射レベルが適切に選択される場合、電子ビームによる低密度ポリエチレン樹脂の照射は、著しく改善された溶融強度を有し、有用なメルトインデックスを保持し、架橋ゲルをほとんど有さない変性ポリエチレン樹脂を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を変性させるプロセスであって、前記プロセスは、
a)
i)0.91g/cm
3~0.94g/cm
3の密度と、
ii)5dg/分~18dg/分のメルトインデックス(I
2)と、
iii)6以上の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、を有する出発LDPE樹脂を提供する工程と、
b)前記出発LDPE樹脂に、
i)1dg/分以上のメルトインデックス(I
2)と、
ii)10以上の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、
iii)15cN以上の溶融強度と、
iv)95パーセント以上のGPC質量回収率と、を有する変性LDPE樹脂を提供するのに有効な強度及び時間で電子ビームを照射する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記出発LDPE樹脂は、0.25MRad~1.25MRadの平均線量を受ける、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記出発LDPE樹脂は、0.45MRad~1.0MRadの平均線量を受ける、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記出発LDPE樹脂は、5dg/分~17dg/分のメルトインデックス(I
2)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記変性LDPE樹脂の前記従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))は、前記出発LDPE樹脂の前記分子量分布の140%~200%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記変性LDPE樹脂の前記溶融強度は、前記出発LDPE樹脂の溶融強度よりも10cN以上高い、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記変性LDPE樹脂の前記メルトインデックスは、前記出発LDPE樹脂の前記メルトインデックスの20%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記出発LDPE樹脂は、管状反応器系由来の生成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
以下の特性:
a)0.91g/cm
3~0.94g/cm
3の密度と、
b)1.5dg/分~6dg/分のメルトインデックス(I
2)と、
c)10~20の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、
d)25cN以上の溶融強度と、
e)95パーセント以上のGPC質量回収率と、を有する、LDPE樹脂。
【請求項10】
前記変性LDPE樹脂は、3.75以上のgpcBRを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の発明。
【請求項11】
前記変性LDPE樹脂は、3以上の比(M
w(Abs)/M
w(Conv))を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の発明。
【請求項12】
前記変性LDPE樹脂は、190℃で9以上の粘度比を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の発明。
【請求項13】
前記変性LDPE樹脂のメルトインデックス(dg/分)に対する溶融強度(cN)の比は2~25である、請求項1~12のいずれか一項に記載の発明。
【請求項14】
(a)請求項1~13のいずれか一項に記載の変性LDPE樹脂と、(2)高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、又は別の低密度ポリエチレンと、を含有するポリマーブレンド。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の変性LDPE樹脂を含有する加工物品であって、前記加工物品は、押出単層若しくは多層フィルム及びシート、押出コーティング又は発泡物品である、加工物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低密度ポリエチレン樹脂、及び低密度ポリエチレン樹脂を変性して、低密度ポリエチレン樹脂の物理的特性を改善するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を製造するためのプロセスは周知であり、以下の特許:米国特許第7,741,415(B2)号、同第8,415,442(B2)号、同第8,729,186(B2)号、同第8,871,887(B2)号、同第9,120,880(B2)号、同第10,435,489(B2)号、同第10,465,024(B2)号、同第10,494,457(B2)号、国際公開第2010/144784号、同第2011/019563号、同第2012/082393号、同第2009/114661号、米国特許第8,916,667号、同第9,303,107号、及び欧州特許第2239283(Bl)号などの多くの刊行物に記載されている。
【0003】
LDPE樹脂(「高圧エチレンポリマー」又は「高分岐ポリエチレン」とも呼ばれる)は、フリーラジカル、高圧(≧100MPa(例えば、100~400MPa))重合を使用して調製されるエチレンポリマーである。LDPE樹脂は、典型的には、0.915~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0004】
高圧フリーラジカル開始重合プロセスの2つの異なるタイプが知られている。第1のタイプでは、1つ以上の反応ゾーンを有する撹拌オートクレーブ容器が使用される。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤若しくはモノマー供給物、又はその両方のためのいくつかの注入点を有する。第2のタイプでは、ジャケット付き管が、1つ以上の反応ゾーンを有する管状反応器として使用される。限定するものではないが、反応器の長さは、100~3000メートル(m)、又は1000~2000mが好適であり得る。反応器の反応ゾーンの開始は、典型的には、反応の開始剤、エチレン、連鎖移動剤(又はテロマー)、コモノマー(複数可)、並びにそれらの任意の組み合わせのいずれかのサイドインジェクション(side injection)によって定義される。高圧プロセスはまた、1つ以上の反応ゾーンを有するオートクレーブ若しくは管状反応器において、又はそれぞれが1つ以上の反応ゾーンを含むオートクレーブと管状反応器との組み合わせにおいても実施され得る。
【0005】
連鎖移動剤を使用して、分子量を制御することができる。好ましい実施形態では、1つ以上の連鎖移動剤(chain transfer agent、CTA)が、重合プロセスに添加され得る。典型的なCTAとしては、プロピレン、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、メチルエチルケトン、アセトン、及びプロピオンアルデヒドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0006】
LDPE樹脂は、単層及び多層フィルム;成形物品、例えば、ブロー成形物品、射出成形物品、キャスト成形物品、又は回転成形物品;コーティング;繊維;織布又は不織布を含む、有用な物品を生産するための多くの従来の熱可塑性作製プロセスにおいて使用される。フィルムとしては、押出コーティング、食品包装用、消費者用、工業用、農業用(塗布剤又はフィルム)、積層フィルム、フレッシュカットプロデュースフィルム(fresh cut produce film)、キャストフィルム、インフレーションフィルム、熱成形フィルム、肉用フィルム、チーズ用フィルム、キャンディ用フィルム、透明収縮フィルム、照合収縮フィルム、延伸フィルム、サイレージ用フィルム、温室用フィルム、燻蒸用フィルム、裏地フィルム、延伸フード、丈夫な輸送用袋、ペットフード、サンドイッチ用バッグ、シーラント、及びおむつのバックシートなどが挙げられる。
【0007】
LDPE樹脂はまた、ワイヤ及びケーブルコーティング操作において、真空成形操作のためのシート押出において、かつ射出成形、ブロー成形、又は回転成形プロセスの使用を含む成形物品の形成において、器具ハンドルなどのソフトタッチ製品において、ガスケット及びプロファイルにおいて、自動車内装部品及びプロファイルにおいて、発泡製品(連続気泡及び独立気泡の両方)において、かつ高密度ポリエチレンなどの他の熱可塑性ポリマーのための耐衝撃性改良剤として使用され得る。
【0008】
これらの用途において使用されるLDPE樹脂は、良好な加工性を提供するために、高い溶融強度、高いせん断減粘、及び比較的低いメルトインデックスを有することが望ましい。特にブレンドにおいて、LDPEは典型的にはブレンドに柔軟性及び加工性を付加し、一方、HDPE又はLLDPEは剛性及び強度を付加する。
【0009】
例えば、インフレーションフィルム生産ラインは、典型的には、バブルの安定性によって生産量が制限される。LDPEを直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)とブレンドすると、一部にはLDPEの溶融強度が高くなることにより、バブルの安定性が向上する。より高い溶融強度を有するLDPE樹脂の場合、押出ブレンドにおいて、より少量の使用が可能であり、かつ/又はより速いフィルム生産を可能にすることができる。しかしながら、溶融強度が高すぎると、ゲルの生成及びフィルムの品質低下が生じ得る。更に、いくつかの高溶融強度LDPE樹脂は、メルトインデックスが低く、せん断減粘性をほとんど有さない場合が多く、高溶融強度LDPE樹脂を加工することをより困難にしている。したがって、溶融強度、メルトインデックス、及びレオロジー特性の最適化されたバランスを有する、新たなエチレン系ポリマー、例えばLDPEに対するニーズが存在している。
【0010】
多くの後処理方法によって、ポリエチレン(HDPE、LLDPE及びLDPE)における架橋又は長鎖分岐の形成が誘導されることが知られている。既知の後処理手法の例としては、酸素、フリーラジカル開始剤、高エネルギー電磁放射線及び電子ビームによる処理が挙げられる。後処理技術の例は、以下の米国特許及び特許出願:米国特許第4,586,995号、同第7,094,472(B2)号、同第7,892,446(B2)号、同第10,844,210(B2)号、米国特許出願公開第2014/0342141(A1)号、米国特許出願公開第2019/0100644(A1)号、及び以下の国際出願PCT公開2010/009024(A2)号、並びに論文、Ono et al.,Gamma Irradiation Effects in Low Density Polyethylene,2011 International Nuclear Atlantic Conference(October 24-28,2011)に記載されている。LDPE樹脂の場合、LDPE樹脂は既に高度に長鎖分岐しているので、後処理研究は、長鎖分岐よりも架橋に焦点を当ててきた。樹脂の意図される使用のために改善された特性を提供することができる特定の樹脂及び処理の選択肢を特定することが所望されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、出発LDPE樹脂及び照射レベルが適切に選択された場合、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を電子ビームで照射すると、著しく改善された溶融強度を有し、良好な加工性を伴う有用なメルトインデックスを保持し、架橋ゲルがほとんどない変性ポリエチレン樹脂が生成されることを発見した。
【0012】
本発明の一実施形態は、LDPE樹脂を変性させるプロセスであって、プロセスは、
a.
i. 0.91g/cm3~0.94g/cm3の密度と、
ii. 5~18dg/分のメルトインデックス(I2)と、
iii. 6以上の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))と、を有する出発LDPE樹脂を提供する工程と、
b.出発ポリエチレン樹脂に、
i. 1dg/分以上のメルトインデックス(I2)と、
ii. 10以上の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))と、
iii. 15cN以上の溶融強度と、
iv. 95%以上のGPC質量回収率と、を有する変性ポリエチレン樹脂を提供するのに有効な線量を提供するように、電子ビームを照射する工程と、を含む。
【0013】
本発明の第2の実施形態は、以下の特性:
a. 0.91g/cm3~0.94g/cm3の密度と、
b. 1.5dg/分~6dg/分のメルトインデックス(I2)と、
c. 10~20の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))と、
d. 25cN以上の溶融強度と、
e. 95%以上のGPC質量回収率と、を有するLDPE樹脂である。
【0014】
本発明の第3の実施形態は、変性ポリエチレン配合物を含む製品である。
【0015】
本出願は、出発LDPE樹脂及び変性LDPE樹脂のいくつかの特性、例えば、密度、メルトインデックス、従来の分子量及び絶対分子量、並びに様々な分岐及びレオロジー測定値を記載する。それぞれの場合において、記載される特性は、本出願の「試験方法」のセクションに列挙される試験方法によって測定される。測定された特性への言及は、列挙された試験方法によって測定されるような特性を意味するものとして解釈されるべきである。代替的な試験方法は、異なる結果をもたらす場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプロセスにおいて、出発LDPE樹脂は。電子ビーム照射を受ける。
【0017】
本発明における出発LDPE樹脂及び変性LDPE樹脂は、ポリエチレンポリマーである。本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類であろうと、又は異なる種類であろうと、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、以下に定義されるようなホモポリマー及びインターポリマーの両方を包含する。ポリエチレンホモポリマーは、連鎖移動剤などの少量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、ほとんどエチレンのみから誘導される繰り返し単位を含有する。不純物は、好ましくはホモポリマーの1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.3重量%未満を構成する。ポリエチレンインターポリマーは、エチレンモノマーと、少なくとも1種の異なる種類のモノマーとの重合によって調製されるポリマーである。インターポリマーという総称は、エチレンコポリマー(エチレン及び1つの他のコモノマーから調製されるポリマーを指すために使用される)、並びにエチレン及び2つ以上のコモノマーから調製されるポリマーを含む。ポリエチレンインターポリマーはまた、ポリマー構造に組み込むことができる連鎖移動剤などの不純物を少量含有してもよい。本発明のポリエチレンインターポリマーにおいて、好ましくは50重量%以上の繰り返し単位がエチレンモノマーから誘導される。出発LDPE樹脂及び変性LDPE樹脂は、より好ましくはエチレンホモポリマーである。
【0018】
出発LDPE樹脂
出発LDPE樹脂は、以下の特性:(i)0.91g/cm3~0.94g/cm3の密度と、(ii)5~18dg/分のメルトインデックス(I2)と、(iii)6以上の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))と、を有する。
【0019】
出発LDPE樹脂の密度は、0.91g/cm3~0.94g/cm3である。出発LDPE樹脂の密度は、好ましくは0.912g/cm3以上、より好ましくは0.915g/cm3以上、最も好ましくは0.917g/cm3以上である。出発LDPE樹脂の密度は、好ましくは0.935g/cm3以下、より好ましくは0.930g/cm3以下、最も好ましくは0.925g/cm3以下である。
【0020】
出発LDPE樹脂成分のメルトインデックス(I2)は、5dg/分~18dg/分の範囲である。メルトインデックスは、好ましくは6dg/分以上、より好ましくは6.5dg/分以上、最も好ましくは7dg/分以上である。メルトインデックスは、好ましくは17.5dg/分以下、より好ましくは17dg/分以下である。
【0021】
LDPE樹脂の分子量は、2つの異なる方法:(1)「従来型」又は「相対」GPC法、及び(2)「絶対」法によって測定され得る。絶対法は、典型的には、LDPE樹脂などの高レベルの長鎖分岐を有するポリマーについて、従来の方法よりも大きい分子量をもたらす。
【0022】
出発LDPE樹脂の従来の数平均分子量(Mn(conv))は、好ましくは7,000g/mol以上、より好ましくは12,000g/mol以上、最も好ましくは13,000g/mol以上である。出発LDPE樹脂の従来の数平均分子量(Mn(conv))は、好ましくは30,000g/mol以下、より好ましくは25,000g/mol以下、更により好ましくは18,000g/mol以下、最も好ましくは16,000g/mol以下である。
【0023】
出発LDPE樹脂の従来の重量平均分子量(Mw(conv))は、好ましくは35,000g/mol以上、より好ましくは45,000g/mol以上、最も好ましくは100,000g/mol以上である。出発LDPE樹脂の従来の重量平均分子量(Mw(conv))は、好ましくは300,000g/mol以下、より好ましくは180,000g/mol以下である。
【0024】
出発LDPE樹脂は、6以上の従来の分子量分布(Mw(conv)/Mn(conv))を有する。出発LDPE樹脂の従来の分子量分布は、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、最も好ましくは8以上である。出発LDPE樹脂の従来の分子量分布は、好ましくは13以下、より好ましくは12以下、最も好ましくは11以下である。
【0025】
出発LDPE樹脂の絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、好ましくは100,000g/mol以上、より好ましくは270,000g/mol以上である。出発LDPE樹脂の絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、好ましくは750,000g/mol以下、より好ましくは500,000g/mol以下、最も好ましくは450,000g/mol以下である。
【0026】
出発LDPE樹脂について、出発LDPE樹脂についての従来の分子量に対する絶対分子量の比(Mw(Abs)/Mw(Conv))は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、最も好ましくは2.2以上である。出発LDPE樹脂についての従来の分子量に対する絶対分子量の比(Mw(Abs)/Mw(Conv))は、好ましくは5以下、より好ましくは3.5以下、最も好ましくは2.8以下である。
【0027】
ポリマー中の長鎖分岐はまた、いくつかの異なる測定によって特徴付けられる。以下の試験方法に記載される分岐についての測定は、分岐指数(g’)、長鎖分岐頻度(long chain branching frequency、LCBf)及びGPC分岐指数(GPC branching index、gpcBR)を含む。
【0028】
出発LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、最も好ましくは1.2以上である。出発LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.5以下、最も好ましくは3.0以下である。
【0029】
出発LDPE樹脂のGPC分岐指数(gpcBR)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.5以上、最も好ましくは1.6以上である。出発LDPE樹脂のGPC分岐指数(gpcBR)は、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。
【0030】
出発LDPE樹脂の190℃での溶融強度は、好ましくは20cN以下、より好ましくは10cN以下、最も好ましくは8cN以下である。出発LDPE樹脂の溶融強度(cN)/メルトインデックス(dg/分)の比は、好ましくは0.1以上である。出発LDPE樹脂の溶融強度(cN)/メルトインデックス(dg/分)の比は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは1以下である。
【0031】
好ましくは、出発LDPE樹脂中のゲル含有量は最小化されている。(ゲルは、トリクロロベンゼン、デカヒドロナフタレン、若しくはキシレンに不溶性である架橋ポリマーであるか、又は容易に溶解しない高度に絡み合った高分子量ポリマー鎖である)。ゲル含有量は、試験方法に記載されているように、ゲル透過クロマトグラフィによって回収された(GPC回収)樹脂の量を測定することによって簡便に測定される。より高い樹脂回収率は、より低いゲル含有量に対応する。出発LDPE樹脂のGPC回収率は、好ましくは95パーセント以上、より好ましくは97パーセント以上、更により好ましくは99パーセント以上、最も好ましくは99.5パーセント以上である。最大の好ましいGPC回収率は存在せず、GPC回収率は、本質的に100パーセントであり得る。
【0032】
粘度比は、両方とも190℃の温度における、低せん断条件下(0.1rad/s)の樹脂の粘度を高せん断条件下(100rad/s)の樹脂の粘度で割った比である。出発LDPE樹脂の粘度比は、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、最も好ましくは5以上である。出発LDPE樹脂の粘度比は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは9以下である。
【0033】
位相角の正接δ(tan-δ)は、190℃の温度で低せん断条件(0.1rad/s)下で損失弾性率(G’)を貯蔵弾性率(G’)で割った比を示す粘弾性測定値である。出発LDPE樹脂は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、最も好ましくは6以上の0.1rad/sでのtan-δを有する。出発LDPE樹脂のtan-δは、好ましくは50以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは8以下である。
【0034】
出発LDPE樹脂は、単一のポリマー又は2つ以上のポリマーのブレンドであってもよい。ブレンドである場合、上記の好ましい実施形態は、個々のポリマー成分に適用される。好ましくは、出発LDPE樹脂は、単一のポリマーである。出発LDPE樹脂は、任意選択で、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、充填剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、UV安定剤、成核剤、エルカミドなどのスリップ剤、タルクなどの粘着防止剤、及びそれらの組み合わせなどの一般的な添加剤を含有してもよい。好ましくは、出発LDPE樹脂中の添加剤は、長鎖分岐形成を妨げない。より好ましくは、出発LDPE樹脂は、本質的に添加剤を含有しない。
【0035】
出発LDPE樹脂は市販されているか、又は背景技術のセクションで上述したような既知の方法によって製造することができる。出発LDPE樹脂は、好ましくは、180℃~350℃の温度及び14,500psi~58,000psi(100~400MPa)の圧力でのエチレンモノマー及び任意選択的にコモノマーのフリーラジカル重合によって製造される。重合は、有機過酸化物開始剤などの一般的なフリーラジカル開始剤によって開始される。鎖長は、ブタン、イソブタン、ブテン、プロピレン、プロピオンアルデヒド、又はメチルエチルケトンなどの連鎖移動剤を添加することによって制御することができる。反応器系は、1つ以上のオートクレーブ又は高圧管状反応器を含んでいてもよい。しかしながら、本発明における出発LDPE樹脂は、LDPE樹脂について一般的である範囲のより広い末端に分子量分布を有し、広い分子量分布を有する。LDPE樹脂は、オートクレーブ反応器においてより一般的に製造される。管状反応器系が使用される場合、条件は、所望の分子量分布を生じるように適合されるべきである。
【0036】
出発LDPE樹脂は、好ましくは粉末、顆粒又はペレットであり、より好ましくはペレットである。ペレットは一般に、1グラム当たり10~60個のペレットである。
【0037】
電子ビームによる変性
本発明のプロセスにおいて、出発LDPE樹脂は、電子ビームによる照射によって変性される。限定するものではないが、電子ビームがポリマーに入ると、電子ビームは分子をイオン化し、励起し、水素原子の転位及びフリーラジカルの形成をもたらすと本発明者らは理論を立てている。2つのフリーラジカルの組み合わせが長鎖分岐を形成する。更なる長鎖分岐により、溶融強度が増加する。本発明者らは、放射線の線量は、長鎖分岐を開始するのに十分高いが、ゲルである高度に架橋された網状組織の形成を回避するのに十分低くあるべきであると更に理論付けている。
【0038】
電子ビーム放射源は既知であり、市販されている。電子ビームは、線形電子ビーム加速器から放出されることが好ましい。一般に、電子ビームは、加熱された陰極フィラメント(典型的にはタングステン)から放出される。線形加速器において、陰極から放出された電子は、陰極と陽極との間に印加された電界で加速される。電子ビームのエネルギー利得は加速電圧に比例する。エネルギーはeV(electron-volt、電子ボルト)単位で測定され、最大12MeVの加速器が市販されている。物質によって吸収される電子ビームの線量は、メガラド(MRad、1Rad=0.01Gy=0.01J/kg)単位で測定される。
【0039】
照射レベルは、以下の結果を達成するように選択されるべきである。
i. 1dg/分以上のメルトインデックス(I2)、及び
ii. 10以上の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))、及び
iii. 20cN以上の溶融強度、及び
iv. 95%以上のGPC質量回収率
【0040】
出発LDPE樹脂は、好ましくは0.2MRad以上、より好ましくは0.25MRad以上、更により好ましくは0.4MRad以上、最も好ましくは0.45MRad以上の平均線量を受ける。出発LDPE樹脂は、好ましくは1.25MRad以下、より好ましくは1MRad以下、最も好ましくは0.8MRad以下の平均線量を受ける。
【0041】
一般に、照射が低すぎる場合、変性LDPE樹脂において所望の溶融強度を達成することができない。照射が高すぎると、変性LDPE樹脂のメルトインデックスが低すぎ、GPC回収率が低すぎる。
【0042】
所望の照射レベルを達成するために、線形電子ビーム加速器は、好ましくは以下の特性を有する。
・線形電子ビーム加速器は、好ましくは、2MeV以上、より好ましくは3MeV以上、最も好ましくは4MeV以上のビームエネルギー範囲で動作する。線形電子ビーム加速器は、好ましくは12MeV以下、より好ましくは8MeV以下、最も好ましくは5MeV以下のエネルギー範囲で動作する。
・電子ビームパワーは、ビームエネルギー及びビーム電流に依存する。全エネルギー範囲にわたる電子ビームパワーは、好ましくは20kW以上、より好ましくは30kW以上、最も好ましくは75kW以上である。全エネルギー範囲にわたる電子ビームパワーは、好ましくは350kW以下、より好ましくは200kW以下、最も好ましくは175kW以下である。
【0043】
照射の間の出発LDPE樹脂の電子ビーム侵入深さは、好ましくは、出発LDPE樹脂の全てが均一な所望の線量の電子ビーム照射を受けることを可能にするのに十分に浅い。いかなる理論にも束縛されるものではないが、電子ビームの侵入深さは、LDPEの密度及びビームエネルギー(MeV)に依存する。例えば、4.5MeVのビームを好ましくは使用して、出発LDPE樹脂を6cm以下、より好ましくは4.5cm以下、最も好ましくは3.5cm以下の侵入深さまで照射して、出発LDPE樹脂の全てが放射線への適切かつ均一な曝露を受けることを確実にする。
【0044】
照射は、好ましくは真空、空気又は不活性雰囲気中で行われる。より好ましくは、照射は空気中で行われる。電子ビームの発射は、バッチプロセス又は連続プロセスで実行され得る。出発LDPE樹脂がベルト上で運ばれ、電子ビームカーテンに曝露される連続プロセスが好ましい。
【0045】
好ましい照射時間は、電子ビーム源の強度(ビームエネルギー、電流及びビームパワー)に依存する。当業者であれば、使用するポリマー及び装置に基づいて最適な照射時間を実験により容易に決定することができる。
【0046】
仮定で、X線又はガンマ線などのより高いエネルギーの電磁放射線を同じレベルの線量で照射することによって同様の結果を得ることができる。しかしながら、このプロセスは、好適な供給源を得ることが実際上困難であるために調査されなかった。
【0047】
変性LDPE樹脂
照射の生成物は変性LDPE樹脂である。照射プロセスは、出発LDPE樹脂の以下の特性を実質的に変化させないので、照射後の変性LDPE樹脂の以下の特性の限界及び好ましい実施形態は、出発PE樹脂についての限界及び好ましい実施形態と同じである:密度、モノマー及びコモノマー含有量、単一ポリマー又はポリマーのブレンド、添加剤含有量、並びに物理的形態(粉末、顆粒又はペレット)。
【0048】
変性LDPE樹脂のメルトインデックス(I2)は、好ましくは1.0dg/分以上、より好ましくは1.5dg/分以上、最も好ましくは2dg/分以上である。変性LDPE樹脂のメルトインデックスは、好ましくは10dg/分以下、より好ましくは6dg/分以下、最も好ましくは3dg/分以下である。
【0049】
変性LDPE樹脂のメルトインデックス(I2)は、好ましくは、出発LDPE樹脂のメルトインデックスの10%以上、より好ましくは20%以上である。変性LDPE樹脂のメルトインデックス(I2)は、好ましくは出発LDPE樹脂のメルトインデックスの60%以下であり、より好ましくは出発LDPE樹脂のメルトインデックスの30%以下である。
【0050】
変性LDPE樹脂の従来の数平均分子量(Mn(conv))は、好ましくは7,000g/mol以上、より好ましくは9,000g/mol以上、最も好ましくは13,000g/mol以上である。変性LDPE樹脂の従来の数平均分子量(Mn(Conv))は、好ましくは30,000g/mol以下、より好ましくは19,000g/mol以下、最も好ましくは15,500g/mol以下である。
【0051】
変性LDPE樹脂の従来の重量平均分子量(Mw(conv))は、好ましくは45,000g/mol以上、より好ましくは100,000g/mol以上、最も好ましくは120,000g/mol以上である。変性LDPE樹脂の従来の重量平均分子量は、好ましくは400,000g/mol以下、より好ましくは300,000g/mol以下、最も好ましくは265,000g/mol以下である。
【0052】
変性LDPE樹脂の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))は、10以上である。変性LDPE樹脂の従来の分子量分布は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上である。変性LDPE樹脂の従来の分子量分布は、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、最も好ましくは18以下である。
【0053】
変性LDPE樹脂の絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、好ましくは100,000g/mol以上、より好ましくは200,000g/mol以上、最も好ましくは350,000g/mol以上である。変性LDPE樹脂の絶対重量平均分子量は、好ましくは2,500,000g/mol以下、より好ましくは1,700,000g/mol以下、最も好ましくは1,250,000g/mol以下である。
【0054】
変性LDPE樹脂について、従来の重量平均分子量に対する絶対重量平均分子量の比(Mw(Abs)/Mw(Conv))は、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.8以上、最も好ましくは3.5以上である。変性LDPE樹脂の場合、従来の重量平均分子量に対する絶対重量平均分子量の比(Mw(Abs)/Mw(Conv))は、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、最も好ましくは5以下である。
【0055】
変性LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは1.0以上、更により好ましくは3.5以上、最も好ましくは5以上である。変性LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、好ましくは10以下、より好ましくは8.0以下、最も好ましくは7.6以下である。
【0056】
変性プロセスの好ましい目標は、出発LDPE樹脂中の長鎖分岐を増加させることである。変性LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、出発LDPE樹脂と比較して、好ましくは20%以上高く、より好ましくは50%以上高く、最も好ましくは100%以上高い。変性LDPE樹脂の長鎖分岐頻度(LCBf)は、好ましくは、出発LDPE樹脂と比較して、300%以下高い。
【0057】
変性LDPE樹脂のGPC分岐指数(gpcBR)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上、更により好ましくは2.0以上、最も好ましくは3.5以上である。変性LDPE樹脂のGPC分岐指数(gpcBR)は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、最も好ましくは8以下である。
【0058】
変性LDPE樹脂は、好ましくは190℃で15cN以上、より好ましくは20cN以上、最も好ましくは25cN以上の溶融強度を有する。溶融強度は、好ましくは35cN以下、より好ましくは32cN以下である。
【0059】
変性プロセスの1つの目標は、出発LDPE樹脂の溶融強度を増加させることである。変性LDPE樹脂の190℃での溶融強度は、好ましくは出発LDPE樹脂の溶融強度よりも10cN以上高く、より好ましくは15cN以上高く、より好ましくは20cN以上高く、最も好ましくは25cN以上高い。変性LDPE樹脂の溶融強度は、好ましくは、出発LDPE樹脂の溶融強度よりも45cN以下高く、より好ましくは35cN以下高く、最も好ましくは30cN以下高い。通常、管状反応器系は、より高い生産性及びエチレン転化率でLDPE樹脂を生産することができるが、オートクレーブ反応器系で製造されたLDPE樹脂は、より高い溶融強度を有する。本発明の一実施形態では、出発LDPE樹脂は、管状反応器系の生成物であり、それにもかかわらず、変性プロセスは、オートクレーブ反応器系で製造された従来のLDPE樹脂と同様の又はそれよりも更に優れた溶融強度を与えることができる。
【0060】
変性LDPE樹脂は、好ましくは190℃で5以上、より好ましくは9以上、最も好ましくは12以上の粘度比を有する。粘度比は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、最も好ましくは18以下である。変性LDPE樹脂の粘度比は、好ましくは出発LDPE樹脂よりも10%以上高く、より好ましくは20%以上高く、最も好ましくは25%以上高い。粘度比の変化は、変性LDPE樹脂が、インフレーションフィルムの生産においてより高いスループット率でより安定なフィルムを形成することができることを示す。
【0061】
変性LDPE樹脂は、好ましくは190℃及び0.1rad/sで1以上、より好ましくは2以上のtan-δを有する。tan-δは、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。変性LDPE樹脂のtan-δは、開始LDPE樹脂のtan-δの好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下である。変性LDPE樹脂のtan-δが低い場合、変性LDPE樹脂の弾性が改善されたことを示す。
【0062】
変性LDPE樹脂の溶融強度(cN)/メルトインデックス(dg/分)の比は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、最も好ましくは10以上である。変性LDPE樹脂の溶融強度(cN)/メルトインデックス(dg/分)の比は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
【0063】
変性プロセスの1つの目標は、変性LDPE樹脂中のゲルの形成を制限することである。変性LDPE樹脂のゲル含有量は、好ましくは3重量パーセント未満、より好ましくは2.8重量パーセント未満、更により好ましくは2重量パーセント未満、最も好ましくは1重量パーセント未満である。多くの場合、変性LDPE樹脂のゲル含有量は、本質的に0重量パーセントであり得、測定されたゲル含有量は、試験の通常の信頼限界以下であり得る。
【0064】
変性LDPE樹脂のGPC回収率は、変性LDPE樹脂の重量に基づいて、好ましくは95パーセント以上、より好ましくは本質的に100パーセントである。明確にするために、電子ビームによる変性は、ゲル含有量を減少させるとは予想されないが、変性の条件は、好ましくは、追加のゲルの形成を回避又は最小化するように選択される。
【0065】
好ましい変性LDPE樹脂の一例は、以下の特性:
a. 0.91g/cm3~0.94g/cm3の密度と、
b. 1.5dg/分~6dg/分のメルトインデックス(I2)と、
c. 10~20の従来の分子量分布(Mw(Conv)/Mn(Conv))と、
d. 25cN以上の溶融強度と、
e. 95%以上のGPC質量回収率と、を有する。
【0066】
変性ポリエチレン樹脂が粉末又は顆粒として照射された場合、好ましくは押出されて、ペレットを形成する。ペレットは、任意選択で、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、充填剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、UV安定剤、成核剤、エルカミドなどのスリップ剤、タルクなどの粘着防止剤、及びそれらの組み合わせなどの添加剤を含むことができ、好ましくは、実質的な量の添加剤を含まない。
【0067】
粉末、顆粒又はペレットを、HDPE、LLDPE、又は別のLDPEなどの他の樹脂とブレンド及び/又は共押出しして、樹脂ブレンドを製造することができる。ブレンド全体が所望の特性を有するように、選択された特性を有するポリエチレン樹脂を選択し、ブレンドすることは周知である。
【0068】
粉末、顆粒ペレット又はブレンドを押出して、押出単層若しくは多層フィルム及びシート、押出しコーティング及び押出しブロー成形物品並びに他の製品を製造することができる。この技術は周知であり、背景技術において簡単に説明されている。変性LDPE樹脂及びそれらを含有するブレンドの好ましい使用としては、ブロー及びキャスト単層及び多層フィルム、延伸単層及び多層フィルム、並びに押出単層及び多層コーティングが挙げられる。
【0069】
試験方法
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、LDPE樹脂の物理的特性及び化学的特性への言及は、以下の試験方法によって測定される際、特性を意味する。
【0070】
密度:密度はASTM D792,Method Bに従って測定される。
【0071】
メルトインデックス:メルトインデックス、すなわち、I2は、190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定される。結果は、デシグラム/分(dg/分)で報告される。
【0072】
溶融強度:溶融強度は、Goettfert Rheotens 71.97(Goettfert Inc.;Rock Hill,S.C.)を使用して190℃で測定され、溶融物は、長さ30mm及び直径2mmの平坦な入口角度(180度)を備えるGoettfert Rheotester 2000キャピラリレオメータで供給した。ペレットを、所与のダイ直径で壁せん断速度38.2s-1に相当する、一定ピストン速度0.265mm/sで押出される前に、バレル(長さ=300mm、直径=12mm)に供給し、圧縮し、10分間溶融させた。押出物は、ダイ出口の100mm下に位置するRheotensのホイールを通過し、ホイールによって加速度2.4mm/s2で下方へ引っ張られる。ホイールに加えられた力(cN)を、ホイールの速度(mm/s)の関数として記録する。溶融強度は、ストランドが切断される前のプラトー力(cN)として報告され、あるいは有意なドローレゾナンスを有する。
【0073】
照射レベル:線量測定フィルムを使用し、色の変化を測定して電子ビームを較正する。次に、電子ビームエネルギー、電流及びベルト速度に基づいて照射レベルを算出することができる。
【0074】
ゲル含有量。架橋によって生成されるゲル含有量(不溶性画分)は、溶媒デカヒドロナフタレンで抽出することによって決定される。本発明は、充填剤を含有するものを含む全ての密度の架橋エチレンプラスチックに適用可能であり、全てが、これらの化合物の一部に存在する不活性充填剤に対する補正を提供する。ASTM D2765-16、Standard Test Methods for Determination of Gel Content and Swell Ratio of Crosslinked Ethylene Plastics,ASTM International,West Conshohocken,PA,2016,www.astm.orgを参照されたい。
【0075】
ビニル含有量:LDPEのビニル含有量は、Busico,V.,et al.,Macromolecules,2005,38,6988及び米国特許第8,916,667号の第11欄第35行~第12欄第15行に記載されている1H NMR分光法によって決定される。
【0076】
試料は、Norell1001-7 10mm NMRチューブにおいて、約0.1~0.2gの試料を、0.001MのCr(AcAc)3及び約75ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有する3.25gの50/50重量比の1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2/ペルクロロエチレンに添加することによって調製された。試料は、管に挿入したピペットを介して、およそ3分間、溶剤を通してN2を通気することによりパージして、酸素を除去し、蓋をし、テフロンテープで密封してから加熱し、115℃でボルテックスして、溶解させ、均一性を確保した。
【0077】
1H NMRは、Bruker高温CryoProbeを装備したBruker AVANCE 600MHz分光計で、120℃の試料温度で実施された。スペクトルは、14秒の緩和遅延で、ZGパルス、1.8秒のAQ、64又は128スキャンで取得された。
【0078】
スペクトルは、6.0ppmにおけるTCEの残留プロトンシグナルを基準とした。約-0.5~2.5ppmのポリマー全体の積分値を任意の値、例えば、2000に設定した。不飽和の対応する積分値(約5.40~5.60ppmのシス-及びトランス-ビニレン、約5.16~5.35ppmの三置換体、約5.0~5.15ppmのビニル、及び約4.75~4.85ppmのビニリデン)を得た。約4.9ppmでのBHT-OHシグナルは積分領域に含まれなかった。
【0079】
ポリマー全体の積分値を2で割って、全ポリマー炭素、この例では1000を得る。その積分に寄与するプロトンの対応する数で割った不飽和基積分は、全ポリマー炭素1000モルあたりの各々のタイプの不飽和のモル数を表す。これは、1000個の炭素当たりの不飽和基と呼ばれる。
【0080】
核磁気共鳴(分岐の13C NMR)
13C NMRのための試料は、10mm NMR管中、25重量%の1,1,2,2-テトラクロロエタン(TCE)-d2及び0.025MのCr(AcAc)3を含む約3gのTCEを約0.25gのポリマー試料に添加することによって調製された。頭部空間を窒素でパージすることにより、試料から酸素を除去した。その後、加熱ブロック及びボルテックスミキサーを使用して、管及びその内容物を120~140℃に加熱することによって、試料を溶解及び均質化させた。各溶解試料を目視検査して、均質性を確保した。分析の直前に試料を十分に混合し、加熱したNMR試料ホルダに挿入するまで冷えないようにした。
【0081】
全てのデータは、10mmの高温クライオプローブを装備したBruker 600MHz分光計を使用して収集された。120℃の試料温度で、7.8秒のパルス繰り返し遅延、90度のフリップ角、及び逆ゲート付きデカップリングを使用して13Cデータを取得した。全ての測定を、ロックモードの非回転試料で行った。試料は、データ取得の前に7分間熱平衡させた。13C NMR化学シフトは、30.0ppmでのEEEトライアドを内部参照とした。表1は、LDPEにおける分岐測定に使用されたピーク帰属を列挙している。「C6+」値はLDPE中のC6+分岐の直接的尺度であり、長い分岐は「鎖末端」とは区別されない。6つ以上の炭素の全ての鎖又は分岐の末端から3番目の炭素を表す、「32.2ppm」ピークを用いて「C6+」値を決定した。
【0082】
【0083】
従来の分子量(Mwconv)、絶対分子量(MwAbs)、長鎖分岐頻度(LCBf)、及びgpcBRの測定のためのゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography、GPC)。
【0084】
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外検出器(IR5)を備えた、PolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフ、Precision Detectors(現在はAgilent Technologies)2角レーザ光散乱(light scattering、LS)検出器モデル2040、及び内臓4-毛細管粘度計からなる。全ての光散乱測定に関して、15度角が使用される。
【0085】
PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準(Mw/Mn>2.7)からの三重検出器log(MW及びIV)の結果を狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正結果に最適化する、Balke、Moureyらによって公開されたものと一致する様式で、多重検出器オフセットを決定するための系統的アプローチを行った。本明細書で使用するとき、「MW」は分子量を指し、MWDは分子量分布を指す。
【0086】
カラム及び較正:GPCクロマトグラフにおけるカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの線形混合床カラム、及び20umのプレカラムである。オートサンプラオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。
【0087】
GPCカラムセットの較正は、580g/mol~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行い、その標準物質は、個々の分子量の間が10倍以上離れた6つの「カクテル」混合物中に配置された。標準品は、Agilent Technologiesから購入する。ポリスチレン標準は、1,000,000g/mol以上の分子量の場合は50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、1,000,000g/mol未満の分子量の場合は50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製する。ポリスチレン標準を、80℃で、30分間穏やかに攪拌しながら溶解させる。ポリスチレン標準ピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
【0088】
【数1】
式中、MWは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0089】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点にあてはめる。(Aに対して小さな調整(約0.3950~0.440)を行い、直鎖状ホモポリマーポリエチレン標準物質が120,000Mwで得られるように、カラム分解能及びバンドブロードニング効果を補正した)。
【0090】
GPCカラムセットの総プレート計数は、デカン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製した)を用いて行われる。プレート計数(式2)及び対称性(式3)を、次式に従って200マイクロリットルの注入で測定する。
【0091】
【数2】
式中、RVはミリリットル単位の保持体積であり、ピーク幅はミリリットル単位であり、ピーク最大はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さであり、
【0092】
【数3】
式中、RVはミリリットル単位での保持体積であり、ピーク幅はミリリットル単位であり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前方を指す。
クロマトグラフィシステムのプレート計数は、20,000以上であるべきであり、対称性は、0.98~1.22であるべきである。
【0093】
LDPE試料の調製及び分離:LDPE試料を以下のように調製する。クロマトグラフィ溶媒は、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する1,2,4トリクロロベンゼンである。溶媒源に窒素をスパージする。試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動式で調製される。これは、試料の目標重量を1mg/mLとし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素注入されたセプタキャップ付きバイアルに溶媒を添加する。試料を、低速オービタル振盪下で、160℃で2時間溶解させる。カラムへの注入体積は、200マイクロリットルであり、流速は、1.0ミリリットル/分であった。
【0094】
経時的な流量偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入する。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を使用して、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークの保持体積(retention volume、RV)を、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正する。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を式4のとおり算出する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアによって行う。許容可能な流量補正は、有効流量が見かけの流量の±1%以内になるはずであるようにする。
【0095】
【0096】
データの分析
従来の分子量及びGPC回収率は、内部のIR5検出器(測定チャネル)データから算出される。
【0097】
式5及び式6に従って、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ収集点(i)でのベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1の点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン同等分子量を使用して、Mn(conv)及びMw(conv)を算出する。
【0098】
【0099】
【0100】
GPC回収率は、PolymerChar GPCOne Software内で使用されたものと一致する方法で、IR5ブロードフィルタ検出器によるGPC法によって溶出された試料の全シグナル面積を使用して決定され、供給業者推奨ポリエチレンホモポリマー標準で決定される際の質量定数を使用して調整された。PolymerChar SoGPCテストにおいて得られた分析物質量値を使用して、式M-REC=100×[(初期分析物-濾過された分析物)/初期分析物]によって質量回収率を算出する。内部架橋を有するポリマーが低質量回収率分析によって定量的に検出可能な不溶性ゲルを形成することが理解される。
【0101】
絶対(absolute、abs)分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))及びKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと合致する様式で得られる。
【0102】
絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、溶出体積ごとに(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)の面積積分クロマトグラム(光散乱定数によって因数分解)を、質量定数及び質量検出器(IR5)面積から回収された質量で割って得られる。分子量の判定において使用される全体的な注入濃度は、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、又は既知の重量平均分子量のポリエチレン標準物質のうちの1つに由来する、質量検出器面積及び質量検出器定数から得られる。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)及び光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状ポリエチレン標準物質から決定される。(GPCOne(商標)を使用して)算出された分子量を、以下に述べるポリエチレン標準物質のうちの1つ以上から導き出される、光散乱定数、及び0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得た。
【0103】
大略的に、粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、又は代替として、標準参照材料(Standard Reference Material、SRM)1475a(国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物質の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準物質に関する特定の粘度面積(DV)及び注入された質量を、その固有粘度(intrinsic viscosity、IV)に関連づけることにより、粘度計定数(GPCOne(商標)を使用して得られる)を計算する。クロマトグラフィ濃度は、第二バイラル係数(viral coefficient)効果(分子量に対する濃度効果)の考慮を排除するのに十分に低いと想定される。絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、溶出体積ごとに(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)の面積積分クロマトグラム(光散乱定数を因子とする)を、質量定数及び質量検出器(IR5)面積から回収された質量で割って得られる。分子量及び固有粘度応答は、信号対ノイズが低くなるクロマトグラフィの端部で外挿される(GPCOne(商標)を使用)。
【0104】
粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、又は代替として、標準参照材料(Standard Reference Material、SRM)1475a(国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology、NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物質の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準物質に関する特定の粘度面積(DV)及び注入された質量を、その固有粘度(IV)に関連づけることにより、粘度計定数(GPCOne(商標)を使用して得られる)を計算する。
【0105】
比較分岐(gpcBR)の算出:
長鎖分岐の特徴付けのためのgpcBR分岐指数法は、Yau,Wallace W.,「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」,Macromol.Symp.,2007,257,29-45に記載されている。
【0106】
gpcBR分岐指数を、前述のように、光散乱、粘度、及び濃度検出器からのデータを使用して決定する。光散乱、粘度計、及び濃度のクロマトグラムからベースラインを差し引く。積分ウィンドウを設定して、赤外線(IR5)クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱及び粘度計クロマトグラムにおける低分子量保持体積範囲の全てを確実に積分する。
【0107】
直鎖状ポリエチレン標準物質を使用して、ポリエチレン及びポリスチレンのMark-Houwink定数を確立する。定数を得た後、式(7)及び式(8)に示すように、2つの値を使用して、溶出体積の関数としてのポリエチレン分子量及びポリエチレン固有粘度の2つの直鎖状参照物による従来型較正法を構築する。
【0108】
【0109】
3D-GPCにより、式(9)を使用して試料の固有粘度も独立して得る。この面積の計算は、全体的な試料面積として、ベースライン及び積分限界に対する検出器ノイズ及び3D-GPC設定に起因するばらつきによる影響が非常に少ないため、より高い精度が提供される。更に重要なことに、ピーク面積の算出は、検出器のボリュームオフセットの影響を受けない。同様に、式(9):
【0110】
【数8】
[式中、η
spiは、粘度計検出器から取得した比粘度を表す]に示す面積法によって、高精度の試料の固有粘度(IV)が得られる。
【0111】
gpcBR分岐指数を決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定する。試料ポリマー用の粘度検出器の溶出面積を使用して、試料の固有粘度(IV又は[η])を決定する。
【0112】
最初に、SRM1475a又は等価物などの直鎖状ポリエチレン標準試料の分子量及び固有粘度を、式(10)及び式(11)により、溶出体積の関数としての分子量及び固有粘度の両方について、従来型較正法(「conventional calibration、cc」)を使用して決定する。
【0113】
【0114】
式(11)を使用して、gpcBR分岐指数を決定する:
【0115】
【数10】
[式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]ccは、従来型較正からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、Mw,ccは、従来型較正の重量平均分子量である]。
光散乱(LS)による重量平均分子量は、一般に「絶対重量平均分子量」又は「M
w(Abs)」と称される。従来型GPC分子量較正曲線(「従来型較正」)を使用して得られる式(6)からのMw,ccは、「ポリマー鎖骨格分子量」、「従来型重量平均分子量」及び「Mw(conv)」と称されることが多い。
【0116】
「cc」の下付き文字が付いた全ての統計値は、それぞれの溶出量体積、前述の対応する従来型較正、及び濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、及び粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、直鎖状参照物試料がゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この場合のgpcBRを決定するためのα及びLog Kの最終値は、ポリエチレンの場合はそれぞれ0.725及び-3.391、ポリスチレンの場合はそれぞれ0.722及び-3.993である。一旦前に考察された手順を使用してK値及びα値を決定したら、分岐試料を使用して手順を繰り返す。分岐試料は、直鎖状参照物から得た最終的なMark-Houwink定数を最適な「cc」較正値として使用して分析される。
【0117】
直鎖状ポリマーの場合、LS及び粘度計によって測定された値は従来型較正標準に近くなるので、式(11)から算出されたgpcBRはゼロに近くなる。分岐ポリマーの場合、測定されたポリマーの分子量が計算されたMw、ccよりも高くなり、計算されたIVccが測定されたポリマーIVよりも高くなるため、特に長鎖分岐のレベルが高い場合、gpcBRはゼロより高くなることになる。実際、gpcBR値は、ポリマーの分岐の結果としての分子サイズの収縮効果によるIVの分数変化を表している。0.5又は2.0のgpcBR値は、等価重量の直鎖状ポリマー分子に対する、それぞれ50%及び200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。
【0118】
LCB頻度(LCBf)の計算
(1000個の炭素原子当たりの長鎖分岐における)LCBf(LCB1000C)は、各ポリマー試料について、以下の手順によって算出される。
1)光散乱、粘度、及び濃度検出器をNBS1475ホモポリマーポリエチレン(又は相当する直鎖状参照物)を用いて較正する。
2)光散乱及び粘度計検出器のオフセットを、較正のセクションにおいて上述したような濃度検出器に対して補正する(Mourey及びBalkeへの参照を参照されたい)。
3)光散乱、粘度計、及び濃度クロマトグラムからベースラインを差し引き、積分ウィンドウを設定して、屈折計クロマトグラムから観察可能な光散乱クロマトグラムの低分子量保持体積範囲の全てを確実に積分する。
4)3.0以上の多分散性を有する標準物を注入することによって、直鎖状ホモポリマーポリエチレンのMark-Houwink基準線を確立し、(上記の較正法から)データファイルを算出し、各クロマトグラフスライスについての質量定数補正データからの固有粘度及び分子量を記録する。
5)対象となるLDPE試料を分析し、(上記の較正法から)データファイルを算出し、各クロマトグラフィスライスについての質量定数、補正データからの固有粘度及び分子量を記録する。より低い分子量では、測定される分子量及び固有粘度が直鎖状ホモポリマーのGPC較正曲線に漸近的に接近するように、固有粘度及び分子量データを外挿する必要があり得る。
6)ホモポリマーの直鎖状参照物の固有粘度を、以下の因子:IVi=IVi*0.964[式中、IVは固有粘度である]によって各点(i)でシフトさせる。
7)ホモポリマーの直鎖状参照物の分子量を、以下の因子:MW=MW*1.57[式中、Mは分子量である]によりシフトさせる。
8)各クロマトグラフィスライスのg’を、同じMWで以下の式:
g’=(IV(LDPE)/IV(直鎖状参照物))
に従って算出する。IV(直鎖状参照物)は、参照Mark-Houwinkプロットの5次多項式のフィットから算出され、IV(直鎖状参照物)は、直鎖状ホモポリマーポリエチレン参照物の固有粘度である(同じ分子量(MW)で、式5)及び式6)によるバックバイティングを考慮し、所定量のSCB(short chain branching、短鎖分岐)を追加する)。IV比は、光散乱データにおける自然散乱を考慮して、3,500g/mol未満の分子量のものであると想定される。
9)各データスライスにおける分岐の数は、(Zimm,Stockmayer J.Chem.Phys.17,1301(1949))に記載されるような)式(12)に従って算出された。
(12)
10)平均LCB量を、式13:
【0119】
【数11】
に従って、全てのスライス(i)にわたって算出した。
【実施例】
【0120】
以下の出発LDPE樹脂は、ペレット化樹脂の市販ストック:LDPE722、LDPE4016、AGILITY(商標)EC7080、LDPE780E、LDPE993I、及びLDPE955Iから得られる。全ての樹脂は、Dow,Incから入手可能である。LDPE993Iがスリップ剤を含有することを除いて、樹脂は添加剤を含まない。各樹脂の初期特性を、上記の試験方法を用いて測定し、結果を表2に列挙する。
【0121】
【0122】
以下の手順を使用して、表3に列挙される線量まで樹脂のそれぞれを照射する。変性LDPEは、空気中でDYNAMITRON線形電子ビーム加速器を使用して、所定の線量(最大1.15MRad)まで出発LDPEを照射することによって生成される。電子ビーム加速器の動作パラメータは、4.5MeVのエネルギー範囲、150kWの全エネルギー範囲にわたるビームパワー、±10パーセントのビームエネルギー拡散、及び30ミリアンペア(mA)の平均電流である。
【0123】
照射後、各樹脂の特性を再測定する。更に、同じ特性を、照射されていない3つの市販の樹脂試料:Dow Inc.製のLDPE621I、Dow Inc.製のLDPE662I及びSinopec製のLDPE1I2-Aについて測定する。結果を、表3A及び表3Bに示す。表3A及び表3Bにおいて、IE1~IE5は本発明の実施例である。CE1~CE13は比較例である。本発明の実施例4及び比較例5並びにそれらのベース樹脂(AGILITY(商標)EC7080)の密度を測定し、3つ全てが0.919g/cm3であることが明らかになる。この結果は、本発明で使用されるレベルでの照射が樹脂の密度を実質的に変化させないという本発明者らの経験と一致している。
【0124】
ビニル含有量及びNMR分岐分析を、ベース樹脂LDPE722、LDPE4016、AGILITY(商標)EC7080、及びIE1~IE5並びにCE3及びCE4についての試験方法に記載されているように実施する。その結果を表4に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を変性させるプロセスであって、前記プロセスは、
a)
i)0.91g/cm
3~0.94g/cm
3の密度と、
ii)5dg/分~18dg/分のメルトインデックス(I
2)と、
iii)6以上の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、を有する出発LDPE樹脂を提供する工程と、
b)前記出発LDPE樹脂に、
i)1dg/分以上のメルトインデックス(I
2)と、
ii)10以上の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、
iii)15cN以上の溶融強度と、
iv)95パーセント以上のGPC質量回収率と、を有する変性LDPE樹脂を提供するのに有効な強度及び時間で電子ビームを照射する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記出発LDPE樹脂は、0.25MRad~1.25MRadの平均線量を受ける、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記変性LDPE樹脂の前記従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))は、前記出発LDPE樹脂の前記分子量分布の140%~200%である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記出発LDPE樹脂は、管状反応器系由来の生成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
以下の特性:
a)0.91g/cm
3~0.94g/cm
3の密度と、
b)1.5dg/分~6dg/分のメルトインデックス(I
2)と、
c)10~20の従来の分子量分布(M
w(Conv)/M
n(Conv))と、
d)25cN以上の溶融強度と、
e)95パーセント以上のGPC質量回収率と、を有する、LDPE樹脂。
【請求項6】
前記変性LDPE樹脂は、3.75以上のgpcBRを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明。
【請求項7】
前記変性LDPE樹脂は、3以上の比(M
w(Abs)/M
w(Conv))を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の発明。
【請求項8】
前記変性LDPE樹脂は、190℃で9以上の粘度比を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の発明。
【請求項9】
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の変性LDPE樹脂と、(2)高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、又は別の低密度ポリエチレンと、を含有するポリマーブレンド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の変性LDPE樹脂を含有する加工物品であって、前記加工物品は、押出単層若しくは多層フィルム及びシート、押出コーティング又は発泡物品である、加工物品。
【国際調査報告】