(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】窯道具
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20240227BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
F27D3/12 S
C04B35/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549597
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022056912
(87)【国際公開番号】W WO2022194978
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヨヒムス ヴィルヘルム ヘルベルト
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055AA08
4K055HA02
4K055HA12
4K055HA27
(57)【要約】
本開示は、窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具Tカセットに関し、(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、および側面、を有する支持体;(b)側面に位置する1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に位置する、1又は複数の脚部;(c)別の窯道具カセット(例えば、別の窯道具Tカセット)の適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を有する前記1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部;及び(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に位置する1又は複数の雄型係合部を、を備える。本開示はさらに、Tカセットを含む組立体および部品キット、Tカセットを使用して窯で焼成される対象物を支持するための窯道具組立体を形成する方法、並びに窯で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するためのTカセットの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具Tカセットであって、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、前記1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、
を備える窯道具Tカセット。
【請求項2】
(i)前記雄型係合部および雌型係合部は、前記支持面に対して実質的に平行に配置され、及び/又は、前記1又は複数の脚部に対して実質的に垂直に配置され、及び/又は、
(ii)前記雄型係合部と雌型係合部は、対向する側面に配置されている、請求項1に記載の窯道具Tカセット。
【請求項3】
窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具組立体であって、
(a)請求項1又は2に記載の、1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)1又は複数の窯道具Hカセットであって、
(i)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(ii)対向する2つの側面の各々に設けられた1又は複数の脚部と、
(iii)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための1又は複数の雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、前記対向する2つの側面の各々に設けられた前記1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、を備える、1又は複数の窯道具Hカセットと、
を備え、少なくとも1つのTカセットと少なくとも1つのHカセットが、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続されている、窯道具組立体。
【請求項4】
前記カセットは、1230℃までの温度に加熱されるとき、各雄型係合部および雌型係合部が制限なく熱膨張を受けることが可能なように構成されており、好ましくは、熱膨張率が、前記Tカセットの寸法に基づいて、約0.15%以上である、請求項3に記載の窯道具組立体。
【請求項5】
前記窯道具Tカセットの数が、前記窯道具Hカセットの数と同じ又はそれ以上である、請求項3又は4に記載の窯道具組立体。
【請求項6】
前記窯道具Hカセットの数がnであり、窯道具Tカセットの数がa・nであり、a及びnが0より大きい整数である、請求項3~5のいずれか一項に記載の窯道具組立体。
【請求項7】
窯道具カセットの前記支持面は、孔があけられており、及び/又は、実質的に矩形形状を有する、請求項1又は2に記載の窯道具Tカセット、又は、請求項3~6のいずれか一項に記載の窯道具組立体。
【請求項8】
窯道具カセットの前記支持面は、穿孔されておらず、前記支持面は、実質的に矩形形状を有する、請求項1又は2に記載の窯道具Tカセット、又は、請求項3~6のいずれか一項に記載の窯道具組立体。
【請求項9】
窯道具カセットの前記脚部は、窯道具カセットを互いに積み重ねることを可能とするように形状付けられている、請求項1、2、7又は8のいずれか一項に記載の窯道具Tカセット、又は、請求項3~8のいずれか一項に記載の窯道具組立体。
【請求項10】
各カセットがリバーシブルである、請求項1、2、7~9のいずれか一項に記載の窯道具Tカセット、又は、請求項3~9のいずれか一項に記載の窯道具組立体。
【請求項11】
窯内で焼成される対象物を支持するための窯道具組立体を形成する方法であって、
(a)請求項1、2、7~10のいずれか一項に記載のTカセットを少なくとも1つ準備することと、
(b)請求項3~10のいずれか一項に記載のHカセットを少なくとも1つ準備することと、
(c)1つのTカセットと1つのHカセットを、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続し、列を形成することと、
(d)任意的に、ステップ(c)のTカセット及び/又はHカセットにさらなるTカセットを接続することにより、ステップ(c)の列を拡張することと、
(e)任意的に、ステップ(c)及び(d)を1回又は数回繰り返すことにより、さらなる列を形成することと、
(f)ステップ(e)がある場合、任意的に2つ以上の列を互いに積み重ねてブレードを形成することと、を備える方法。
【請求項12】
前記カセットは、1230℃までの温度に加熱されるとき、各雄型係合部および雌型係合部が制限なく熱膨張を受けることが可能なように構成されており、好ましくは、熱膨張率が、前記Tカセットの寸法に基づいて、約0.15%以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
窯内で焼成される対象物を支持するための部品キットであって、
(a)請求項1、2、7~10のいずれか一項に記載の、1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)請求項3~10のいずれか一項に記載の、1又は複数の窯道具Hカセットと、を備える、部品キット。
【請求項14】
複数のTカセット及び複数のHカセットを備え、少なくとも1つのTカセットが、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して各Hカセットに接続される、請求項13に記載の部品キット。
【請求項15】
窯道具Tカセットを使用する方法であって、
前記Tカセットが、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、前記1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、を備え、
前記Tカセットを、窯内で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するために使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、窯道具Tカセット、Tカセットを備える組立体、及びこの組立体を形成する方法に関する。さらに、本出願は、Tカセットを備える部品キット、及び窯内で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するためのTカセットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック製品の製造工程では、セラミック製品の前駆体(すなわちグリーンセラミック製品)が窯内で焼成される。窯での焼成温度は、1230℃までであり、加熱、浸漬、及び冷却の時間は、72時間までに及ぶ。焼成中のグリーンセラミック製品の軟化による変形を避けるため、このような製品は、一般的に耐火性の窯道具Tカセット上に支持される。このようなカセットは当技術分野でよく知られており、例えば先行技術文献、欧州特許第0965809B1号明細書、国際公開第2007/132276A1号公報、欧州特許第2631583B1号明細書、又は独国出願公開第202010005560U1号明細書に記載されているように、多種多様な形状およびサイズがある。
【0003】
屋根瓦のような比較的重い規則的な形状の対象物の場合、例えば
図1に示すようなH形のカセットが現在好まれており、というには、これらは、良好な安定性を提供し、互いに積み重ねて安定した組立体を形成することができからであり、さらに、H形のカセットは、各カセットが、焼成される1又は複数のセラミック製品を支持し且つ空気循環を許容することができるように、実質的に矩形の支持部の間に十分な空間を残すからである。
【0004】
したがって、一般に、H形のカセットは、その上に焼成される対象物を支持し、その後、カセットの複数の積み重ね/ブレードを並列配置することを可能にするように、支持部の間に十分な空間が残されるように、H形のカセットを互いに積み重ね、窯内に配置される。このような既知の寸法の同一のカセットを規則正しく配置するパターンは、窯に収まるカセットの数、したがって一回の焼成作業で焼成できる単一のセラミック対象物の数の単純な計算を可能にする。カセットの配列は、通常、機械によって行われ、機械はカセットを迅速かつ正確に配列する。
【0005】
カセットスタック/ブレードの最下段のカセットの脚部は、焼成対象物を保持するカセットを窯に出し入れするためのキルンカーの補強された載置場所に載置される。1230℃までの焼成温度に加熱される間、カセットとキルンカー(及び、かくして、キルンカーの補強された載置場所)は異なる熱膨張を受けるが、これは、カセットとキルンカーの異なる材料によるだけでなく、キルンカーがカセットに比べてより重い構造であり、より遅い加熱膨張となることにもよる。従って、キルンカーの補強された載置場所に載置されたHカセットの脚部は、補強された載置場所に対して相対的に移動し、その結果、これらの間に摩擦が生じる。これは材量への余分な負荷につながり、カセット材量の磨耗及び欠けにつながる。その結果、焼成中に窯内の積み重ねられたカセットの倒壊が起こるので、安定したデッキを形成するためにカセットが使用できなくなり、それぞれの製造装填又はチャージが使用できなくなるか、又は窯のメンテナンスが必要になることさえある。しかし、経済的および環境上の理由から、このようなカセットをできるだけ頻繁に使用することが望ましい。
【0006】
さらに、焼成工程では、焼成されるグリーンセラミック対象物とカセットの両方を含む窯の内容物すべてを加熱するためのエネルギーが必要となる。したがって、焼成対象物の質量に対して、使用する窯道具の質量をできるだけ減らすことが望ましい。カセットの相対質量の低減は、焼成工程のエネルギー効率の向上につながる。
図1に示すように、支持面に孔をあけたり、支持面の側面の全長にわたって延びない脚部を使用したりすることによって、Hカセットの質量を低減することはすでに知られている。しかし、カセットの熱質量をさらに低減することが望まれている。
【0007】
窯又はキルンの寸法は、窯内に同時に導入するカセットの数、ひいては各焼成作業中に焼成するセラミック対象物の数に物理的な制限を設定する。しかしながら、Hカセットは、熱膨張のための十分なスペースを確保するために、互いに一定の間隔を空けて配置する必要がある。従って、現在のHカセットで可能なように、より多くのグリーンセラミック製品を同時に窯内で焼成する方が効率が上がる可能性がある。
【0008】
加えて、例えば欧州特許第2631583B1号明細書のHカセット配列では、偶数又は奇数のカセットであろうと、必要なカセット数を正確に揃えることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0965809B1号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/132276A1号公報
【特許文献3】欧州特許第2631583B1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第202010005560U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、先行技術の1又は複数の問題に対処する窯道具を提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、添付の特許請求の範囲に定義されている。
【0012】
第1の態様に従って、窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具Tカセットが提供され、窯道具Tカセットは、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面を有する支持体と、
(b)側面に位置する1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に位置する、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセット、例えば別の窯道具Tカセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む1つ又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、を備える。
【0013】
第2の態様によれば、窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具組立体が提供され、窯道具組立体は、
(a)本開示による1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)1又は複数の窯道具Hカセットであって、
(i)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(ii)対向する2つの側面の各々に配置された1又は複数の脚部と、
(iii)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、対向する2つの側面の各々に配置された1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、を備える、1又は複数の窯道具Hカセットと、
を備え、少なくとも1つのTカセットと少なくとも1つのHカセットが、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続されている。
【0014】
第3の態様によれば、窯内で焼成される対象物を支持するための窯道具組立体を形成する方法が提供され、方法は、
(a)本開示による少なくとも1つのTカセットを準備することと、
(b)本開示で定義される少なくとも1つのHカセットを準備することと、
(c)1つのTカセットと1つのHカセットを、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続し、列を形成することと、
(d)任意的に、ステップ(c)のTカセット及び/又はHカセットにさらなるTカセットを接続することにより、ステップ(c)の列を拡張することと、
(e)任意的に、ステップ(c)及び(d)を1回又は数回繰り返すことにより、さらなる列を形成することと、
(f)ステップ(e)がある場合、任意的に2つ以上の列を互いに重ねてブレードを形成することと、を備える。
【0015】
第4の態様によれば、窯内で焼成される対象物を支持するための部品キットが提供され、部品キットは、
(a)開示による1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)本開示で定義される1又は複数の窯道具Hカセットと、を備える。
【0016】
第5の態様によれば、窯道具Tカセットの使用方法が提供され、使用方法は、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、を備える窯道具Tカセットを、窯内で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するために使用する方法である。
【0017】
本発明の特定の実施形態は、以下の利点の1つ以上を提供し得る。
・望ましい低減されたカセットの熱質量
・カセットの磨耗及び欠けの望ましい減少
・カセットの向上された寿命
・望ましいコスト削減
・交換が必要になる前の望ましいより長い使用
・窯内の焼成対象物のより狭い配置の可能性、したがって、より多くの焼成対象物を同時に窯内で焼成することを可能にする
・雌型係合部と雄型係合部を介したカセットの接続による安定したカセットブレード
【0018】
本発明の任意の特定の1又は複数の記載された態様に関連して提供される詳細、例、及び選択は、本発明のすべての態様に等しく適用される。本明細書に記載された実施形態、実施例、および選択のあらゆる可能な変形例の組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0019】
以下の図を参照して、本発明をさらに説明する:
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一般的に使用されているHカセットの一例を示しており、本開示による組立体、方法、部品キットにも使用可能である。
【
図2a】
図2aは、先行技術で使用されている隣接するHカセットの列の一例を示す。
【
図2b】
図2bは、本開示によるHカセットと2つのTカセットの接続前の例を示す。
【
図3a】
図3aは、接続前のHカセットと、Hカセットの両側にある構造的に異なるTカセットの例を示している。
【
図4】
図4は、本開示のカセットを使用して窯内で焼成され得る屋根瓦の例を示す。
【
図5a】
図5aは、接続前の本開示に適した雄型係合部と雌型係合部を有するカセットの例を示す。
【
図5c】
図5cは、接続前の本開示に適した雄型係合部と雌型係合部を有するカセットの別の例を示す。
【
図6a】
図6aは、接続前の本開示に適した雄型係合部と雌型係合部を有するカセットの別の例を示す。
【
図7a】
図7aは、接続前の本開示に適した雄型係合部と雌型係合部を有するカセットの別の例を示す。
【
図8a】
図8aは、本願の例で使用するカセットを接続する前の、Hカセット、Tカセット、及び窯内で焼成する2枚の同一屋根瓦を示す図である。
【
図8b】
図8bは、
図8aのカセットとセラミック対象物の別の図である。
【
図9a】
図9aは、Hカセットに接続されたTカセットの複数の列が互いに積み重ねられ、本願の例で使用される焼成される屋根瓦が装填された状態を示す。
【
図9b】
図9bは、
図9aのカセットとセラミック対象物の別の図である。
【
図10】
図10は、先行技術による使用後の通常のHカセットを示す。
【
図11】
図11は、使用後の本開示の実施形態によるカセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明および図への言及は、本発明の例示的な実施形態に関するものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0022】
本発明は、窯道具において多くのHカセットをTカセットに置き換えることが、窯内で対象物を効率的に焼成する方法につながるという驚くべき発見に基づいている。さらに、驚くべきことに、本発明に記載されるように、伸張及び収縮時にカセットの動きを妨げないジョイントを用いてカセットを接続することにより、カセットの寿命が延び、使用による損傷が少なくなることが見出された。
【0023】
本開示において、用語「脚部」は、反対のことが明示的に記載されていない限り、及び/又は文脈上明らかにそうでないことが指示されていない限り、例えば「1又は複数の脚部」という表現において、単一の脚部並びに1又は複数の脚部を包含する。
【0024】
Tカセット
以上概説したように、第1の態様によれば、窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具Tカセットが提供され、窯道具Tカセットは、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、前記1又は複数の脚部は、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、
を備える。
【0025】
本開示によるTカセットは、項目(b)で定義される脚部以外のさらなる脚部を含まない。
【0026】
各側面は、支持面と1つの縁部を共有し、支持体内に2つの支持面が含まれる場合、前記側面は、この第2の支持面とさらなる縁部を共有する。一実施形態では、該当する場合、前記2つの縁部は、前記側面の対向する縁部であり、例えば、互いに実質的に平行であってもよい。さらに、各側面は、2つの縁部を2つのさらなる側面と共有する。一実施形態において、前記2つの縁部は、前記側面の対向する縁部であり、例えば、互いに実質的に平行であってもよい。一実施形態では、側面は、1つ又は2つの支持面の少なくとも1つに対して実質的に垂直である。一実施形態では、2つの支持面が支持体に構成され、例えば、前記支持面は互いに実質的に平行である。
【0027】
一実施形態では、項目(b)で定義される1又は複数の脚部は、1つ又は2つの支持面の少なくとも1つに対して実質的に垂直である。
【0028】
一実施形態では、支持面(単複)の2つの寸法(本明細書では後に支持体の幅及び長さと呼ぶ)は、第3の寸法(本明細書では後に支持体の厚さと呼ぶ)よりもかなり大きく、例えば、4.0倍、又は5.0倍、又は6.0倍大きい。
【0029】
一実施形態では、支持体の幅は約5.0cm~約60cmであり、支持体の長さは約20cm~約60cmである。例えば、支持体の幅は約4.0cm~約55cmであり、支持体の長さは約4.0cm~約55cmである。
【0030】
一実施形態では、支持体の厚さは約0.4cm~約20cmであり、例えば約0.4cm~約10cmである。
【0031】
用語「実質的に垂直」は、正確な垂直配置は必須ではなく、カセットのサイズや用途によっては、そこからわずかに変わり得ることを表す。用語「実質的に垂直」は、約±5°、又は約±1°、又は約±0.5°の変化を包含する。当業者は、そのようなばらつきを認識する。いくつかの実施例では、脚部は正方形又は矩形であってもよく、又は脚部は台形の形状を有してもよい。
【0032】
用語「実質的に平行」は、正確な平行配列は必須ではなく、カセットのサイズや用途によっては、そこからわずかに変わり得ることを表す。用語「実質的に平行」は、約±5°、又は約±1°、又は約±0.5°の変動を包含する。当業者は、そのようなばらつきを認識する。
【0033】
一実施形態では、項目(b)で定義される1又は複数の脚部は、取り外し可能である。
【0034】
別の実施形態では、項目(b)で定義された1又は複数の脚部は、取り外し不可能である。
【0035】
雄型係合部および雌型係合部は、当技術分野において一般に知られている。本開示によるTカセットでは、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つは、別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔(単複)及び/又は凹部(単複)と、別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雌型係合部のための側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、を備える。
【0036】
本開示によるTカセットは、雄型係合部および雌型係合部を用いて互いに接続することができる。従って、第1のTカセットは、その雄型係合部によって、第2のTカセット又はHカセットの雌型係合部に接続することができる。使用時、第1のTカセットの雄型係合部(単複)は、第2のTカセット又はHカセットの雌型係合部(単複)の底部に載置される。従って、第1のTカセットは、それら自身の1又は複数の脚部と、前記第2のTカセット又はHカセットの1又は複数の脚部で立つ。
【0037】
本開示によれば、第1のTカセットは、Tカセットのさらなる側面に配置されるさらなる脚部を必要とすることなく、キルン又は窯内で焼成されるセラミック対象物を支持することができる。従って、Tカセットは、その側面に配置された1又は複数の脚部、及び当該Tカセットの雄型係合部が接続された隣接するカセットの1又は複数の脚部で自立する。この隣接するカセットは、さらなるTカセット又はHカセットであってよい。従って、同じ数のセラミック対象物を支持するのに必要な脚部の総数は、Hカセットのみを使用する場合に比べて大幅に少なくなり、スペースを節約する。このように多数のTカセットを並列して配置することができる。この列の最も外側のTカセットの雄型係合部は、Hカセットに接続して、キルンカーの補強された載置場所に立設するのに必要な安定性を提供してもよい。この配置については、以下の第2の態様においてより詳細に説明する。
【0038】
本発明によれば、Tカセットの雄型係合部は、カセット同士を接続する際に、隣接するカセット(例えば、別のTカセットやHカセット)の雌型係合部に部分的に挿入される。つまり、隣接するカセットは接続されるが、雄型係合部の端部と雌型係合部の奥面との間には隙間が存在する。それにより、カセットは、以下に詳細に説明される1230℃までの温度に加熱されるとき、各雄型係合部および雌型係合部が制限を受けることなく熱膨張を受けることができるように配置される。この前記隙間は、カセットが損傷を受けることなく接続され、及び/又は、カセットが損傷を受けることなく加熱及び冷却時に膨張及び収縮することを可能にすることができる。本願において、「部分的に挿入される」とは、雄型係合部が雌型係合部上に置かれる場合も含む。そのための非限定的な例が、
図6a及び
図6bに示されている。
【0039】
さらに、本開示によるTカセットは、並置配置された偶数及び奇数のカセット、例えば、Hカセットと1、2、3などのTカセットを可能にし、これにより、窯内の利用可能なスペースの効率的な使用を可能にする。さらに、Hカセットのみの列と比較して、同じ長さにより多くのカセットを並列配置することができ、より多くの対象物を同時に焼成することができる。前記長さは窯の幅によって制限される。
【0040】
一実施形態では、雄型係合部および雌型係合部は、支持面(単複)に対して実質的に平行に配置され、及び/又は、1又は複数の脚部に対して実質的に垂直に配置され、例えば、雄型係合部および雌型係合部は、1又は複数の脚部に対して実質的に垂直に配置され、任意的に、支持面(単複)に対して実質的に平行に配置される。この実施形態では、雄型係合部および雌型係合部を係合及び係合解除する方向もまた、支持面(単複)に対して実質的に平行であり、及び/又は、1又は複数の脚部に対して実質的に垂直であり、例えば、雄型係合部および雌型係合部を係合および係合解除する方向もまた、1又は複数の脚部に対して実質的に垂直であり、任意選択で、支持面(単複)に対して実質的に平行である。
【0041】
一実施形態では、雄型係合部および雌型係合部は、対向する側面に配置されている。一実施形態において、雄型係合部および雌型係合部は、対向する側面に配置され、雌型係合部は、専ら単一の側面に配置された1又は複数の脚部に設けられ、雄型係合部は、脚部が配置された側面とは反対側の側面に配置される。
【0042】
本開示によるTカセットのさらなる実施形態を以下に説明する。
【0043】
さらに、本開示によるTカセットの実施形態は、文脈上そうでないことが指示されない限り、及び/又は反対のことが明示されない限り、本開示で定義されるHカセットにも適用される。
【0044】
組立体
以上概説したように、第2の態様に従って、窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具組立体が提供され、窯道具組立体は、
(a)第1の態様による1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)1又は複数の窯道具Hカセットであって、
(i)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面を有する支持体と、
(ii)対向する2つの側面の各々に設けられた1又は複数の脚部と、
(iii)別の窯道具カセットの適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、対向する2つの側面の各々に設けられた1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、を備える、1又は複数の窯道具Hカセットと、を備え、
少なくとも1つのTカセットと少なくとも1つのHカセットが、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続されている。
【0045】
本開示によるTカセットの実施形態は、本開示による組立体の実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0046】
上記第1の態様について概説したように、多数のTカセットが並列配置され、この配置の最も外側のTカセットの雄型係合部は、Hカセットに接続され、キルンカーの補強された載置場所に立設するのに必要な安定性を提供することができる。Hカセットは依然として磨耗や欠けが生じやすいが、上記組立体により、Hカセットの列の1つのカセットを除くすべてを、本開示によるTカセットで置き換えることができる。従って、例えば、
図2aに示すように互いに隣接して配置された3つの別個のHカセットを、
図2b(雄型係合部および雌型係合部が係合する前)及び
図2c(雄型係合部および雌型係合部が係合した後)に示すように、Hカセット及び2つのTカセットを含む組立体によって置き換えることができ、Hカセットの両側に2つのTカセットが結合される。Hカセットの片側に2つのTカセットを配置することも可能である。もちろん、キルンの大きさに応じて、このような組立体にさらなるTカセットを接続してもよい。
【0047】
一実施形態では、カセットは、各雄型係合部および雌型係合部が1230℃までの温度に加熱されたときに、制約を受けることなく熱膨張するように構成されている。Tカセットの各雄型係合部の端部と、隣接するカセットの各雌型係合部の端部の間に隙間を残すことで、制限を受けることのない熱膨張が可能となる。従って、キルン内での焼成前に、Tカセットは、原則として、隣接するカセットに向かってさらに移動できるように配置される。カセットが移動されると、雄型係合部を有するTカセットの側面と隣接するカセットとの間には隙間が残る。上記のようにキルンでの焼成に伴い、カセットの各々はキルンカーよりも早く膨張する。従って、熱膨張に伴い、接続された2つのカセットの雄型係合部および雌型係合部は、互いに向かって膨張する。雄型係合部と雌型係合部との間に存在する隙間により、これらは制約なしに熱膨張を受けることができる。この熱膨張は、接続された2つのカセットを互いに押しのけさせることはなく、これにより、キルンカーの補強された載置場所に載置されたカセットの脚部とこの補強された載置場所との間の摩擦を回避する。上述したように、このような摩擦は望ましくない磨耗や欠けにつながる。さらに、目標温度に達すると、キルンカーが最終的な熱膨張に達する前に、カセットは、通常、最終的な熱膨張に達する。これは、キルンカーに比べてカセットの熱質量が小さいためである。しかしながら、キルンカーの最終熱膨張率は、通常、カセットの最終熱膨張率よりも高い。従って、カセットが最終的な熱膨張に達すると、キルンカーは通常まだ膨張し、それによってキルンカーの補強された載置場所が動き、かくしてその上に立っているカセットの脚部が互いに離れる。しかしながら、Tカセットの脚部は、キルンカーの補強された載置場所に対して相対的な移動を強いられることはない。従って、上に説明したように、雄型係合部が雌型係合部内で制限なく動くことができるので、その脚部とこれらの補強された載置場所との間に摩擦は生じない。
【0048】
1230℃までの温度に加熱されたときに、これらの雄型係合部および雌型係合部が制約されることなく熱膨張を受けることを可能にするために、雄型係合部および雌型係合部を介して接続される2つのカセットの間に必要なスペースは、当業者によって、例えば、カセットの寸法、カセットの材料、及びカセットがキルン内で焼成される温度に基づいて、容易に決定することができる。さらに、このようなカセットは、通常、隣接する2つのカセットの間に一定の距離を設定する手段を備える装置によって配置され、これにより、本開示によるカセットが、これらの間に必要なスペースを有して配置されることが保証される。
【0049】
他の状況、すなわち、Tカセットが、隣接するカセット(例えば、別のTカセット又はHカセット)の雌型係合部の奥の表面に端部が達するまで挿入される場合、キルンでの焼成の前に、すなわち、Tカセットは、隣接するカセットに向かってそれ以上移動することができない。キルン内で焼成すると、上記のように、カセットの各々は、キルンカーよりも早く膨張する。従って、接続された2つのカセットは、互いに押しのけ合い、これにより、キルンカーの補強された載置場所に載置されたカセットの脚部とこの補強された載置場所との間に摩擦が生じる。
【0050】
一実施形態では、熱膨張率は、Tカセットの寸法に基づいて約0.15%以上、例えば約0.20%以上、又は約0.25%以上である。通常、熱膨張率は、Tカセットの寸法に基づいて0.50%以下である。当技術分野で周知のように、窯道具カセットは、加熱によりあらゆる方向に膨張する。したがって、Tカセットの寸法に基づくパーセント値が与えられる。本開示では、熱膨張率は、熱膨張を測定する方向の総増加を示す。
【0051】
本開示によれば、熱膨張率は、EN821-1(1998)に従ってNetsch DIL 402PCで測定される。通常、5×5×50mm3の試料がカセットから切り出され、20℃から1000℃の間で、5℃/分の加熱速度で熱膨張率が測定される。
【0052】
ほとんどの場合、カセットの列の方向は、雄型係合部および雌型係合部を介してカセットを接続する方向でもある。カセットの列の方向における熱膨張率は、本開示において特に重要であり、というのは、1又は複数の雄型係合部が配置されるTカセットの支持面(単複)の側部は、熱膨張に伴って、これら雄型係合部が接続される隣接するカセットに向かって移動するからである。従って、一実施形態では、カセットは、(i)熱膨張前に雄型係合部が部分的に挿入されるが完全には挿入されず、及び(ii)熱膨張及びその後の冷却時の収縮中に完全な挿入位置に達しないように、互いに対してある距離を置いて配置される。
【0053】
例えば、幅40cmのTカセットの場合、カセット材料としてコーディエライトを用いた場合、25℃から1230℃まで加熱したときの熱膨張は約1.2mmである。従って、この例では、25℃において、Tカセットの雄型係合部は、それぞれの雌型係合部に完全には挿入されず、カセットの列方向から見て、完全挿入位置から少なくとも約3mm離れた位置にある。
【0054】
一実施形態では、窯道具Tカセット(単複)の数は、窯道具Hカセット(単複)の数と同じ又はより多く、例えば、窯道具Tカセット(単複)の数は、窯道具Hカセット(単複)の数の少なくとも約2倍、又は少なくとも約4倍、又は少なくとも約6倍であってよい。本開示による組立体におけるカセットの総数は、キルン又は窯の大きさによって制限される。従って、窯道具Tカセットの数は、奇数でも偶数でもよい。
【0055】
一実施形態では、窯道具Hカセット(単複)の数はnであり、窯道具Tカセット(単複)の数はa・nであり、a及びnは、ゼロよりも大きい整数であり、奇数でも偶数でもよい。この実施形態の一変形例では、nは少なくとも1、又はnは少なくとも2、又はnは少なくとも3であり、aは少なくとも2、又はaは少なくとも4、又はaは少なくとも6である。
【0056】
一実施形態では、各Hカセットの一方側に取り付けられたTカセットの数xと、各Hカセットの他方側に取り付けられたTカセットの数yは、x=y±3の関係を満たすか、x=y±2の関係を満たすか、x=y±1の関係を満たす。この実施形態は、1又は複数のTカセットの損傷(例えば、Tカセットの雄型係合部が全て破損するか、支持体自体が破損する場合)、及びその後の組立体の崩壊の最悪の状況であっても、組立体がキルン壁面に接触することがない(接触は、キルンの不所望で不要なメンテナンスを要するであろう)というさらなる利点を提供する。
【0057】
Hカセットの一方側に接続されるTカセットは、同じHカセットの反対側に接続されるTカセットと異なっていてもよい。このような組立体の例が、
図3a(接続前)と
図3b(接続後)に示される。Hカセットの両側それぞれにおける異なるTカセットのそのような使用は、焼成されるセラミック対象物の構造が複雑な場合(例えば、
図4に示す屋根瓦のように、支持面に突起及び/又は凹部が存在する場合)であっても、各カセット上に、同じ向きで、キルン内で焼成されるセラミック対象物を配置することを可能にする。
【0058】
一実施形態では、第1の態様によるTカセット及び第2の態様で定義されるHカセットの脚部は、窯道具カセット(単複)を互いの上に積み重ね、それによってブレードを形成することを可能にするように形状付けられている。Hカセットについては、このような手段は当技術分野で一般に知られており、このような手段は本開示によるTカセットにも適している。
【0059】
一実施形態では、窯道具組立体は、複数のHカセットと複数のTカセットを備え、少なくとも1つのTカセットは、それらの係合する雄型係合部と雌型係合部を介して各Hカセットに接続され、それによって列を形成し、各列は、Hカセットと少なくとも1つのTカセットを備え、さらに、これらの列の少なくとも2つが互いに積み重ねられ、それによってブレードを形成する。互いに積み重ねられる列の数は特に限定されないが、窯の高さによって限定される。この実施形態の一変形例では、各列のHカセットが互いに直接積み重ねられる。
【0060】
Tカセット及びHカセット
以下では、本開示によるTカセット及び本開示で定義されるHカセットのさらなる実施形態について説明する。これらの実施形態は、文脈上別段の指示がない限り、及び/又は、別段の言及がない限り、本開示の全ての態様及び実施形態に適用される。
【0061】
対応する雄型係合部および雌型係合部は、当技術分野において一般に知られており、本願において特に限定されるものではない。
図5a、
図5b、
図5c、
図6aおよび
図6bは、分離しているカセット(
図5a、
図5cおよび
図6a)および接続されたカセット(
図5bおよび
図6b)の雄型係合部および雌型係合部の例を示す。雄型係合部は実線の矢印で、雌型係合部は破線の矢印で示す。視認性のため、
図6aでは、雌側係合部は右端のカセットにのみ示されている。雄型係合部および雌型係合部のさらなる例を
図7aおよび
図7bに示す。
図7bの破線は、雌側係合部と雄側係合部の係合を示す(矢印で示す)。さらに他の例を
図2aから
図3bに示す。
【0062】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持体は、孔が形成されている。これにより、カセットの熱質量が低減され、空気循環が改善される。さらに、特定のハンドリング装置を使用したカセットの取り扱いが容易になる。
【0063】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持体は、孔が形成され、カセットの面積に対する支持体の複数の孔の面積の比は、少なくとも約0.20、例えば少なくとも約0.30又は少なくとも約0.40である。通常、この比は0.60以下である。
【0064】
支持体の孔の面積は、支持面(単複)に対して垂直に見た複数の孔の面積であり、カセットの面積は、支持面(単複)に対して垂直に見たカセットの周囲でカバーされる面積である。
【0065】
別の実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持体は、孔が形成されていない。
【0066】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の脚部は、窯道具カセット(単複)が互いに積み重ねられることを可能にするように形状付けられている。
【0067】
一実施形態では、各カセットはリバーシブルである。リバーシブルカセットは、互いに対向する2つの支持面を有するカセットである。これらの2つの支持面は、通常、互いに実質的に平行である。これら2つの支持面は、異なるセラミック対象物(単複)を支持するのに適したものとすることができ、これにより、カセットの汎用性を高め、焼成する異なるセラミック対象物に対して異なるカセットを保管する必要性を低減又は回避することができる。あるいは、これら2つの支持面は、同じセラミック対象物を支持するのに適することもできる。
【0068】
カセットがリバーシブルであり、カセットが孔形成されている場合、カセットの面積に対する支持体の孔の面積の比は、両方の支持面について上記で定義したように決定され、その値は合計され、2で割られる。
【0069】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持面(単複)は、実質的に矩形の形状である。一実施形態では、カセットはリバーシブルであり、それぞれのカセットの両方の支持面は、実質的に矩形の形状を有する。
【0070】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持体(単複)は、孔が形成されており、支持面(単複)は実質的に矩形の形状を有する。
【0071】
別の実施形態では、窯道具カセット(単複)の支持体(単複)は、孔が形成されておらず、支持面(単複)は実質的に矩形の形状を有する。
【0072】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)の脚部は、平らな上面および下面を有する。
【0073】
一実施形態では、窯道具カセット(単複)は、その支持面が、焼成される製品に形状を適合させるために、1又は複数のインレーを受け入れるように設計されている。
【0074】
本開示の及び本開示において使用される窯道具カセットは、当業者に一般的に知られているような、窯での使用に適した任意の材料で形成することができる。それらは、セラミック耐火物のような、セラミック材料で作られてもよい。上述したように、焼成される製品の質量と比較した窯道具の質量の比は、可能な限り低減することができる。したがって、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2009/077589A1号公報として公開された国際特許出願に開示されているような、セラミックマトリックスとセラミック微小球を含む材料などの、軽量セラミック材料を使用することが有利である。一実施形態において、本発明による前記窯道具カセットの材料は、アルミノシリケートセラミック、コーディエライト、ムライト及び炭化ケイ素のようなセラミック及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。前記窯道具カセットは、材料間の熱膨張係数の差を回避するため(この差は、係合接続された雄型係合部および雌型係合部においてそれぞれ摩耗及び歪みを増大させ、組立体全体としての安定性を低下させ、前記窯道具カセットの寿命を短くする)、同じ材料で形成することができる。
【0075】
窯道具カセットを形成する方法は、当技術分野で知られている。これらの方法は、本開示によるTカセットにも同様に適用できる。
【0076】
窯道具組立品の形成方法
以上のように、第3の態様によれば、窯で焼成される対象物を支持するための窯道具組立体を形成する方法が提供され、この方法は、
(a)本開示による少なくとも1つのTカセットを準備することと、
(b)本開示で定義される少なくとも1つのHカセットを準備することと、
(c)1つのTカセットと1つのHカセットを、これらの雄型係合部と雌型係合部を介して接続し、列を形成することと、
(d)任意的に、ステップ(c)のTカセット及び/又はHカセットにさらなるTカセットを接続することにより、ステップ(c)の列を拡張することと、
(e)任意的に、ステップ(c)および(d)を1回又は数回繰り返すことにより、さらなる列(単複)を形成することと、
(f)ステップ(e)がある場合、任意的に2つ以上の列を互いに積み重ねてブレードを形成することと、を含む。
【0077】
本開示によるTカセットおよびHカセットの実施形態は、第3の態様に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0078】
さらに、本開示の組立体の実施形態は、第3の態様の方法に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0079】
上記の方法では、ステップ(c)で形成され、任意的にステップ(d)で拡張される各列は、1つのHカセットのみを含む。
【0080】
ステップ(f)において、2つ以上の列を互いに積み重ねてブレードを形成する場合、通常は、これらの列の各Hカセットが互いに直接積み重ねられる。
【0081】
一実施形態では、カセットは、1230℃までの温度に加熱されたとき、各雄型係合部および雌型係合部が制約なしに熱膨張を受けることが可能なように配置される。これは、上記の第2の態様について詳細に説明されており、準用される。
【0082】
一実施形態では、熱膨張率は、Tカセットの寸法に基づいて約0.15%以上、例えば約0.20%以上、又は約0.25%以上である。通常、熱膨張率は、Tカセットの寸法に基づいて0.50%以下である。当技術分野で周知のように、窯道具カセットは加熱によりあらゆる方向に膨張する。したがって、Tカセットの寸法に基づくパーセント値が与えられる。本開示では、熱膨張率は、熱膨張を測定する方向の総増加を示す。
【0083】
本開示の方法によって形成される列の長さは、それ自体限定されない。したがって、原理的には、その長さは無限になり得る。しかしながら、上記で説明したように、使用される列のサイズは窯のサイズに依存する。同様に、互いに積み重ねることができる列の数は、窯のサイズに依存する。したがって、本開示の方法は、1つのTカセットおよび1つのHカセットのみからなる単一の列を形成するのに適しているだけでなく、それぞれが複数のTカセット(ステップ(d))を含む複数の列(ステップ(e))を形成するのにも適しており、この複数の列は、互いに積み重ねられ、それによってブレードを形成する。従って、ステップ(d)において使用される更なるTカセットの数、及びステップ(e)において形成される列の数は、窯のサイズに基づいて選択される。当業者であれば、使用する窯に基づいてこれらの数を容易に決定することができる。一実施形態では、任意のステップ(d)、(e)及び/又は(f)は、窯の大きさに応じて繰り返される。
【0084】
例えば、ステップ(d)において使用されるTカセットの数は、少なくとも1つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも5つであり、及び/又はステップ(c)および(d)は、少なくとも1回、又は少なくとも3回、又は少なくとも5回繰り返される。
【0085】
一実施形態では、ステップ(e)が存在し、本方法は、
(e1)ステップ(e)で形成された2つ以上の列を水平方向に平行に並べること、
をさらに含む。
この実施形態では、ステップ(f)において、任意的に、ステップ(e1)において水平方向に互いに平行に配置された列の1又は複数の列の上にさらに列が積み重ねられ、それにより少なくとも1つのブレードが形成され、例えば、ステップ(e1)において水平方向に互いに平行に配置された列のそれぞれの上にさらなる列が積み重ねられ、それにより水平方向に互いに平行に配置された複数のブレードが形成される。
【0086】
部品キット
上記概説したように、第4の態様によれば、窯内で焼成される対象物を支持するための部品キットが提供され、この部品キットは、
(a)本開示による1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)本開示で定義される1又は複数の窯道具Hカセットと、を備える。
【0087】
本開示によるTカセットおよびHカセットの実施形態は、第4の態様に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0088】
さらに、本開示の組立体および方法の実施形態は、第4の態様に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0089】
一実施形態では、窯道具Tカセット(単複)の数は、窯道具Hカセット(単複)の数と同じ又はより多く、例えば、窯道具Tカセット(単複)の数は、窯道具Hカセット(単複)の数の少なくとも約2倍、又は少なくとも約4倍、又は少なくとも約6倍であってよい。本開示による組立体におけるカセットの総数は、窯の大きさによって制限される。従って、窯道具Tカセットの数は、奇数でも偶数でもよい。
【0090】
一実施形態では、窯道具Hカセットの数はnであり、窯道具Tカセットの数はa・nであり、aとnはゼロより大きい整数であり、奇数又は偶数であり得る。この実施形態の一変形例では、nは少なくとも1、又はnは少なくとも2、又はnは少なくとも3であり、aは少なくとも2、又はaは少なくとも4、又はaは少なくとも6である。
【0091】
一実施形態では、部品キットは複数のTカセットと複数のHカセットを備え、少なくとも1つのTカセットが、雄型係合部と係合雌型係合部の係合を介して各Hカセットに接続される。
【0092】
使用法
以上のように、第5の態様に従って、窯道具Tカセットの使用法が提供され、この使用法は、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面、を有する支持体と、
(b)側面に位置する1又は複数の脚部であって、前記1又は複数の脚部が、専ら単一の側面に位置する、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットに適切に形状付けられた雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットに適切に形状付けられた雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、
を備える窯道具Tカセットを、窯内で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するために使用する方法。
【0093】
本開示によるTカセットおよびHカセットの実施形態は、第4の態様に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0094】
さらに、本開示の組立体および方法の実施形態は、第5の態様に従う実施形態でもあり、その逆もまた同様である。
【0095】
本開示において、焼成されるセラミック対象物は粘土の屋根瓦であることができる。
【0096】
本開示によるTカセットは、並例配置されたHカセット等の一般的に使用されている配置を置き換えるために、既存のキルンで使用することができる。さらに、本開示によるT形のカセットは、スペースを節約し、奇数および偶数のカセットを一列に並べることができるため、キルン内の利用可能なスペースを最も効率的に使用することを可能にする。
【0097】
特定の実施形態において、本願発明の態様は、以下の効果のうちの1つ以上を有し得る。
-カセットの熱質量の減少
-カセットの磨耗及び欠けの低減
-カセットのコスト削減
-窯内での焼成される対象物のより狭い配置、かくして工程のより良好なコスト効率
-雌型係合部及び雌型係合部を介したカセットの接続による、より安定したカセットブレード
【0098】
誤解を避けるため、本出願は、以下の番号の段落に記載された主題に向けられている。
【0099】
1.窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具Tカセットであって、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切な形状の雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切な形状の雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、
を備える窯道具Tカセット。
【0100】
2.雄型係合部および雌型係合部は、支持面(単複)に対して実質的に平行に配置され、及び/又は、1又は複数の脚部に対して実質的に垂直に配置されている、段落番号1に記載の窯道具Tカセット。
【0101】
3.1又は複数の脚部が取り外し可能である、段落番号1又は2に記載の窯道具Tカセット。
【0102】
4.1又は複数の脚部が取り外し不能である、段落番号1~3のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット。
【0103】
5.雄型係合部および雌型係合部が、対向する側面に配置されている、段落番号1~4のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット。
【0104】
6.窯内で焼成されるセラミック対象物を支持するための窯道具組立体であって、
(a)段落番号1~5のいずれか1つに記載の、1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)1又は複数の窯道具Hカセットであって、
(i)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面を有する支持体と、
(ii)対向する2つの側面のそれぞれに配置された1又は複数の脚部と、
(iii)別の窯道具カセットの適切な形状の雄型係合部のための1又は複数の雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、対向する2つの側面の各々に設けられた1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、を備える、1又は複数の窯道具Hカセットと、
を備え、少なくとも1つのTカセットと少なくとも1つのHカセットが、雄型係合部と雌型係合部の係合を介して接続されている、窯道具組立体。
【0105】
7.カセットが、1230℃までの温度に加熱されたとき、各雄型係合部および雌型係合部が制限なく熱膨張を受けることが可能なように構成されている、段落番号6に記載の窯道具組立体。
【0106】
8.熱膨張率が、Tカセットの寸法に基づいて約0.15%以上である、段落番号7に記載の窯道具組立体。
【0107】
9.窯道具Tカセットの数が、窯道具Hカセットの数と同じかそれ以上である、段落番号6~8のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0108】
10.窯道具Hカセットの数がnであり、窯道具Tカセットの数がa・nであり、aおよびnが0より大きい整数である、段落番号6~8のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0109】
11.各Hカセットの一方の側に取り付けられたTカセットの数xと、各Hカセットの反対側に取り付けられたTカセットの数yとが、x=y±3の関係を満たす、段落番号6~10のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0110】
12.複数のHカセットと複数のTカセットとを備え、少なくとも1つのTカセットが、それらの係合する雄型係合部と雌型係合部とを介して各Hカセットに接続され、それにより列を形成し、各列がHカセットと少なくとも1つのTカセットとを備える、段落番号6~11のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0111】
13.これらの列の少なくとも2つの列が互いに積み重ねられ、それによりブレードを形成する、段落番号12に記載の窯道具組立体。
【0112】
15.窯道具カセット(単複)の支持面(単複)は、孔が形成されており、及び/又は、実質的に矩形の形状を有する、段落番号1~5のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット、又は段落番号6~13のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0113】
15.窯道具カセット(単複)の支持面(単複)は、孔が形成されておらず、支持面(単複)が実質的に矩形の形状を有する、段落番号1~5のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット、又は段落番号6~13のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0114】
16.窯道具カセット(単複)の脚部が、窯道具カセット(単複)を互いに積み重ねることを可能にするように形状付けられている、段落番号1~5、14及び15のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット、又は段落番号6~15のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0115】
17.各カセットがリバーシブルである、段落番号1~5又は14~16のいずれか1つに記載の窯道具Tカセット(単複)、又は段落番号6~16のいずれか1つに記載の窯道具組立体。
【0116】
18.窯内で焼成される対象物を支持するための窯道具組立体を形成する方法であって、
(a)段落番号1~17のいずれか1つに記載の少なくとも1つのTカセットを準備することと、
(b)段落番号6~17のいずれか1つに定義される少なくとも1つのHカセットを準備することと、
(c)1つのTカセットと1つのHカセットを、雄型係合部と雌型係合部を介して接続し、列を形成することと、
(d)任意的に、ステップ(c)のTカセット及び/又はHカセットにさらなるTカセットを接続することにより、ステップ(c)の列を拡張することと、
(e)任意的に、ステップ(c)および(d)を、1回又は数回繰り返すことにより、さらなる列(単複)を形成することと、
(f)ステップ(e)がある場合、任意的に2つ以上の列を互いに積み重ねてブレードを形成することと、を備える方法。
【0117】
19.カセットが、1230℃までの温度に加熱されたとき、各雄型係合部および雌型係合部が制限なしに熱膨張を受けることが可能なように配置される、段落番号18に記載の方法。
【0118】
20.熱膨張率が、Tカセットの寸法に基づいて約0.15%以上である、段落番号19に記載の方法。
【0119】
21.窯内で焼成する対象物を支持するための部品キットであって、
(a)段落番号1~17のいずれか1つに記載の1又は複数の窯道具Tカセットと、
(b)段落番号6~17のいずれか1つに定義される1又は複数の窯道具Hカセットと、を備える、部品キット。
【0120】
22.複数のTカセットと複数のHカセットとを含み、少なくとも1つのTカセットが、それらの係合する雄型係合部と雌型係合部とを介して各Hカセットに接続されている、段落番号21記載の部品キット。
【0121】
23.窯道具Tカセットの使用方法であって、
(a)焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するための1つ又は2つの支持面、及び、複数の側面を有する支持体と、
(b)側面に配置された1又は複数の脚部であって、専ら単一の側面に配置されている、1又は複数の脚部と、
(c)別の窯道具カセットの適切な形状の雄型係合部のための雌型係合部として機能するのに適した1又は複数の孔及び/又は凹部を含む、1又は複数の脚部のうちの少なくとも1つの脚部と、
(d)別の窯道具カセットの適切な形状の雌型係合部のための、側面に配置された1又は複数の雄型係合部と、
を備える窯道具Tカセットを、窯内で焼成される1又は複数のセラミック対象物を支持するために使用する方法。
【0122】
実施例
図8aおよび
図8bは、カセットを接続する前における、Hカセット、Tカセット、および窯内で焼成される2枚の同一の屋根瓦を示す2つの図である。
図9aおよび
図9bは、Hカセットに接続された複数のTカセットの列であり、互いに積み重ねられ、焼成される屋根瓦が装填された状態を示す2つの図である。
【0123】
これらの図からわかるように、TカセットはH字カセットに比べて、より少ないスペースを消費するため、窯内で同時に焼成できるセラミック対象物の数を増やすことができる。従って、セラミック対象物1個当たりのコストが削減される。さらに、脚部の数が減るため、カセットの熱質量が減少する。さらに、(上記で詳述したように)各雄型係合部および雌型係合部が加熱時に制限なく熱膨張可能なようにカセットを配置することにより、Tカセットの脚部がキルンカーの補強された載置箇所に対して相対的な移動を強いられないため、摩耗及び欠けが減少する。
【0124】
図10は、使用後の通常のHカセットを示し、脚部が欠けているのがわかる。
図11は、使用後の本発明によるカセットを示しており、脚部のエッジは鋭利なままである。これにより、カセットの寿命が向上し、交換が必要になるまでの使用期間が長くなり、コストをさらに削減できる。
【国際調査報告】