(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】耐炎性造形材料および関連するプリントされた3D物品
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20240227BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240227BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240227BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240227BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C08F220/10
B29C64/106
B29C64/314
B33Y70/00
C08F2/44 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549871
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022019446
(87)【国際公開番号】W WO2022192330
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ムサ,カリル
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA44
4F213AB04
4F213AB05
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
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4F213WL96
4J011PA46
4J011PB29
4J011PC02
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4J011QA22
4J011QA27
4J011QB24
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4J011SA05
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4J011SA15
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA08
4J011WA07
4J100AL08R
4J100AL66Q
4J100AL67P
4J100AQ21S
4J100BA11P
4J100BA39Q
4J100BB03R
4J100BC75P
4J100BC79Q
4J100CA06
4J100FA18
(57)【要約】
3Dプリント用途向けの重合性液体が本明細書にきさいされ、いくつかの実施形態において、液体からプリントされた物品に耐炎性および/または難燃性を付与する。重合性液体はまた、物品に所望の機械的特性を与えることができる。いくつかの実施形態において、重合性液体は、重合性液体の総重量に基づいて少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分と、臭素化アクリレートエステル成分とを含む。さらに、前記重合性液体を用いて三次元物品をプリントする方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液体であって、
前記重合性液体の総重量に基づいて、少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分;および
臭素化アクリレートエステル成分
を含む、重合性液体。
【請求項2】
前記硬化性イソシアヌレート成分が、フリーラジカル重合を介して重合可能であることを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項3】
前記硬化性イソシアヌレート成分が、イソシアヌレートポリアクリレート、ポリアリルイソシアヌレートまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の重合性液体。
【請求項4】
前記イソシアヌレートポリアクリレートが、式II:
【化1】
のものであり、
式中、R
1~R
3はそれぞれ独立して、水素およびアルキルからなる群から選択され、m、nおよびpはそれぞれ独立して1~10の範囲の整数である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の重合性液体。
【請求項5】
前記ポリアリルイソシアヌレートが、式III:
【化2】
のものであり、
式中、m、nおよびpは独立して1~10の整数である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の重合性液体。
【請求項6】
前記臭素化アクリレートエステル成分が、以下の式:
【化3】
の1つまたは複数の化合物を含み、
式中、R
1は水素およびメチルからなる群から選択され、R
2は臭素化アルキルおよび臭素化アルケニルからなる群から選択される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項7】
前記臭素化アクリレートエステル成分が、トリノールアクリレートを含むことを特徴とする、請求項6に記載の重合性液体。
【請求項8】
前記臭素化アクリレートエステル成分が、前記重合性液体の総重量に基づいて、10~40質量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項9】
前記重合性液体がさらに、1つまたは複数の有機リン酸化合物を含む有機リン酸成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項10】
前記有機リン酸成分が、前記重合性液体の総重量に基づいて、5~40質量%の量で存在することを特徴とする、請求項9に記載の重合性液体。
【請求項11】
前記1つまたは複数の有機リン酸化合物が、以下の式:
【化4】
のものであり、
式中、R
1~R
3は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される、
ことを特徴とする、請求項9に記載の重合性液体。
【請求項12】
前記1つまたは複数の有機リン酸化合物が、ビス(オルガノホスフェート)を含むことを特徴とする、請求項9に記載の重合性液体。
【請求項13】
前記硬化性イソシアヌレート成分が、前記重合性液体の総重量に基づいて、30~70質量パーセントの量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項14】
アクリレート成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項15】
前記アクリレート成分が、前記重合性液体の総重量に基づいて、30~70質量%の量で存在することを特徴とする、請求項14に記載の重合性液体。
【請求項16】
前記アクリレート成分が、アクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーとの混合物を含むことを特徴とする、請求項14に記載の重合性液体。
【請求項17】
式Iの添加剤:
【化5】
をさらに含み、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7の整数である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項18】
R
1およびR
2がアルキレンであることを特徴とする、請求項17に記載の重合性液体。
【請求項19】
LおよびZがそれぞれ、ビニル、アリル、ビニルエーテル、アクリレート、およびメタクリレートからなる群から独立して選択される部分を含むことを特徴とする請求項17に記載の重合性液体。
【請求項20】
LおよびZがそれぞれ、シクロ重合性官能基を含むことを特徴とする、請求項17に記載の重合性液体。
【請求項21】
前記シクロ重合性官能基が、以下の式:
【化6】
のものであり、
式中、
【化7】
は、式Iの化合物への前記シクロ重合性官能基の結合点である、
ことを特徴とする、請求項20に記載の重合性液体。
【請求項22】
nが2またはBであることを特徴とする、請求項17に記載の重合性液体。
【請求項23】
LおよびZがそれぞれアクリレート部分を含むことを特徴とする、請求項17に記載の重合性液体。
【請求項24】
LおよびZがそれぞれメタクリレート部分を含むことを特徴とする、請求項17に記載の重合性液体。
【請求項25】
有機リン酸成分、アクリレート成分、および式Iの添加剤:
【化8】
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7の整数である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項26】
光開始剤成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の重合性液体。
【請求項27】
前記光開始剤成分が、前記重合性液体の総重量に基づいて、0.1~5質量パーセントの量で存在することを特徴とする、請求項26に記載の重合性液体。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の重合性液体を提供する工程;および
光を用いて前記重合性液体をプリントおよび硬化させて物品を形成する工程
を含むことを特徴とする、三次元物品をプリントする方法。
【請求項29】
前記重合性液体が層ごとのプロセスで提供されることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記重合性液体が光開始剤成分をさらに含み、前記重合性液体を硬化させる工程がフリーラジカル重合を介して進行することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記物品が、UL 94Vに従ってv0評価を有することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年3月10日に出願された米国仮特許出願第63/159,225号に対する米国特許法第119条による優先権を主張し、その出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、三次元造形材料に関し、特に、重合性液体からプリントされた物品に耐炎性または難燃性特性を付与する重合性液体に関する。
【背景技術】
【0003】
3Dプリンタは、インクとしても知られる造形材料を用いて、コンピュータ生成ファイルに従って様々な3D物体、物品、または部品を形成する。いくつかの例では、造形材料は、周囲温度で固体であり、高い噴射温度で液体に変わる。他の例では、造形材料は、周囲温度で液体である。
【0004】
造形材料は、様々な化学種を含むことができる。造形材料に含まれる化学種の選択は、プリント物品の所望の化学的および/または機械的特性ならびに3Dプリント装置の動作パラメータを含むがこれらに限定されない、様々な考慮事項に従って選択することができる。例えば、紫外線(UV)硬化性アクリレート配合物は、概して、DLPシステムにおいて高い解像度で部品をプリントすることができる。しかしながら、多くの場合、生じる部品は、望ましい機械的特性を欠き、破損または他の劣化経路の傾向がある。このような劣化経路は、物品の性能を損ない、早期故障につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、一部の造形材料および造形材料からプリントされた結果としての物品は、高温用途および/または耐燃焼性を必要とする他の用途に不適切であり得る。その結果、3Dプリント技術は、難燃性または耐炎性の材料および物品を必要とする分野における用途が限られている場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みて、いくつかの実施形態では、3Dプリント用途のための重合性液体が本明細書に記載され、これは、液体からプリントされた物品に耐炎性および/または難燃性を付与する。重合性液体はまた、物品に所望の機械的特性を付与し得る。いくつかの実施形態では、重合性液体は、重合性液体の総重量に基づいて少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分と、臭素化アクリレートエステル成分とを含む。臭素化アクリレートエステル成分は、脂肪族炭素に結合した臭素原子を有する1つまたは複数のアクリレートまたはメタクリレートエステルを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、重合性液体は、1つまたは複数の有機リン酸化合物を含む有機リン酸成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、重合性液体は、アクリレート成分をさらに含む。アクリレート成分は、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0008】
さらに、いくつかの実施形態では、重合性液体はさらに、式Iの添加剤:
【化1】
を含み、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7または1~5の整数である。水素は、任意選択的な置換基R
3~R
6の非存在下で、式Iのアリール環上の位置を占めることが理解される。
【0009】
さらに、三次元物品をプリントする方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、方法は、重合性液体の総重量に基づいて少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分と、臭素化アクリレートエステル成分とを含む重合性液体を提供する工程を含む。本明細書に詳述されるように、臭素化アクリレートエステル成分は、脂肪族炭素に結合した臭素原子を有する1つまたは複数のアクリレートまたはメタクリレートエステルを含むことができる。いくつかの実施形態では、重合性液体はまた、有機リン酸成分、アクリレート成分、および/または本明細書に記載される式Iの添加剤のうちの1つまたは複数を含有し得る。
【0010】
重合性液体は、プリントされ、硬化されて、物品を形成する。いくつかの実施形態では、物品は、層ごとのプロセスを介して形成され、層形成は、重合性液体の層の堆積および硬化を介して行われる。
【0011】
本明細書にさらに記載されるように、重合性液体は、光開始剤成分をさらに含んでもよく、重合性液体の硬化は、フリーラジカル重合を開始させるのに適切な波長の光による液体の照射によって起こり得る。
【0012】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明においてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】いくつかの実施形態に従った、式Iの添加剤を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載の実施形態は、以下の詳細な説明および実施例を参照することによってより容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に説明される要素、装置、および方法は、詳細な説明および実施例に提示される特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および適合が当業者には容易に明らかであろう。
【0015】
さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される任意のおよび全ての部分的範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1.0~10.0」の規定された範囲は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わる任意のおよび全ての部分的範囲、例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9を含むと見なされるべきである。
【0016】
本明細書に開示される全ての範囲はまた、他に特に明記しない限り、範囲の端点を含むと見なされるべきである。例えば、「5~10の間」の範囲は、概して、端点5および10を含むと見なされるべきである。
【0017】
さらに、語句「最大」が量または数量に関連して使用される場合、その量は少なくとも検出可能な量または数量であることを理解されたい。例えば、「最大」特定量の量で存在する物質は、検出可能な量から最大で特定量および特定量を含む量で存在することができる。
【0018】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、概して、選択的堆積、噴射、溶融堆積モデリング、マルチジェットモデリング、および、造形材料またはインクを使用して三次元物体を製作する当該技術で現在知られているかまたは将来知られ得る他の付加製造技術によって、三次元物品または物体を作製するための様々な固体自由形状製造技術を記載する。
【0019】
定義
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、1つまたは複数の置換基で任意に置換された、直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基を指す。例えば、アルキルは、C1~C30またはC1~C18であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有し、1つまたは複数の置換基で任意に置換された、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0021】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し、1つまたは複数の置換基で任意に置換された、直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。
【0022】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単独でまたは組み合わせて、1つまたは複数の環置換基で任意に置換された、芳香族単環式または多環式環系を指す。
【0023】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、単独でまたは組み合わせて、環原子の1つまたは複数が、窒素、ホウ素、酸素および/または硫黄などの炭素以外の元素である、芳香族単環式または多環式環系を指す。
【0024】
本明細書で使用される「複素環」という用語は、単独でまたは組み合わせて、環系の1つまたは複数の原子が、ホウ素、窒素、酸素および/または硫黄またはリンなどの炭素以外の元素である、単環式または多環式環系を指し、環系が1つまたは複数の環置換基で任意に置換されている。複素環式環系は、1つまたは複数の不飽和点を有する環を含む、芳香族および/または非芳香族環を含み得る。
【0025】
本明細書で使用される「ヘテロアルキル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数のヘテロ原子で置換された、1つまたは複数の炭素原子、例えば、1つ、2つ、または3つの炭素原子を有する、上記で定義されるようなアルキル部分を指す。
【0026】
本明細書で使用される「ヘテロアルケニル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数のヘテロ原子で置換された、1つまたは複数の炭素原子、例えば、1つ、2つ、または3つの炭素原子を有する、上記で定義されるようなアルケニル部分を指す。
【0027】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、1つまたは複数の環置換基で任意に置換された非芳香族、単環式または多環式環系を指す。
【0028】
一態様では、3Dプリント用途で使用するための重合性液体が本明細書に記載される。重合性液体は、例えば、いくつかの実施形態では、DLP、SLA、およびMJPプリント用途で使用することができる。重合性液体は、いくつかの実施形態では、重合性液体の総重量に基づいて少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分と、臭素化アクリレートエステル成分とを含む。
【0029】
ここで特定の成分に目を向けると、硬化性イソシアヌレート成分は、本明細書に記載の技術的目的と矛盾しない任意の硬化性イソシアヌレートを含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性イソシアヌレートは、イソシアヌレート種の1つまたは混合物を含む。
【0030】
硬化性イソシアヌレートは、重合プロセスに関与するように動作可能な少なくとも1つの部分または官能基を含む。いくつかの実施形態では、イソシアヌレートは、複数の重合性部分または官能基を含むことができる。本明細書における参照目的のための「重合性部分」は、重合または硬化されてプリントされた3D物品または物体を提供することができる部分を含む。このような重合または硬化は、本開示の目的と矛盾しない任意の方法で実施することができる。重合性部分または官能基は、例えば、イソシアネートとヒドロキシルとの間の重縮合または反応を含む、非放射線誘導重合機構を受けるように動作可能なものを含み得る。いくつかの実施形態では、硬化性イソシアヌレートは、エポキシ、アミン、およびチオールを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の反応性官能基を含むことができる。あるいは、1つまたは複数の重合性官能基は、フリーラジカル重合に適した1つまたは複数の不飽和点を含むことができる。イソシアヌレートは、いくつかの実施形態では、イソシアヌレートアクリレートまたはイソシアヌレートポリアクリレートである。いくつかの実施形態では、イソシアヌレートポリアクリレートは式II:
【化2】
のものであり、
式中、R
1~R
3はそれぞれ独立して、水素およびアルキルからなる群から選択され、m、nおよびpはそれぞれ独立して1~10の範囲の整数である。
【0031】
いくつかの実施形態では、イソシアヌレートは、ポリアリルイソシアヌレートなどのアリルイソシアヌレートである。ポリアリルイソシアヌレートは、いくつかの実施形態では、式III:
【化3】
のものであり、
式中、m、nおよびpは独立して1~10の範囲の整数である。
【0032】
いくつかの実施形態では、硬化性イソシアヌレートは、重合性液体の総重量に基づいて、30~80質量%または35~70質量%の量で存在する。
【0033】
硬化性イソシアヌレート成分に加えて、重合性液体は臭素化アクリレートエステル成分を含む。臭素化アクリレートエステル成分は、脂肪族炭素に結合した臭素原子を有する1つまたは複数のアクリレートまたはメタクリレートエステルを含むことができる。いくつかの実施形態では、臭素化アクリレートエステル成分は、以下の式:
【化4】
の1つまたは複数の化合物を含み、
式中、R
1は水素およびメチルからなる群から選択され、R
2は臭素化アルキルおよび臭素化アルケニルからなる群から選択される。臭素化アルキルおよび臭素化アルケニル基は、1つまたは複数の臭素置換基を含むアルキルおよびアルケニル基である。いくつかの実施形態では、例えば、臭素化アクリレートエステル成分は、トリノールアクリレート:
【化5】
を含む。
【0034】
臭素化アクリレートエステル成分は、3Dプリント装置において重合性液体からプリントされた物品に耐炎性および/または難燃性を付与するという本明細書に記載の技術的目的に合致する任意の量で、重合性液体中に存在することができる。臭素化アクリレートエステルの量は、重合性液体からプリントされた物品の所望の耐炎性および機械的特性、ならびに重合性液体中に存在する他の種、例えば他の耐炎性種を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に従って選択することができる。いくつかの実施形態では、臭素化アクリレートエステルは、重合性液体の総重量に基づいて、5~50質量%、10~40質量%、または15~35質量%の量で存在する。
【0035】
いくつかの実施形態では、重合性液体は、硬化性イソシアヌレート成分および臭素化アクリレートエステル成分に加えて有機リン酸成分をさらに含み、有機リン酸成分は1つまたは複数の有機リン酸化合物を含む。重合性液体および重合性液体からプリントされた物品に耐炎性または難燃性を付与することに合致する任意の有機リン酸を使用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の有機リン酸化合物は、以下の式:
【化6】
に該当し、
式中、R
1~R
3は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数の有機リン酸化合物は、アリールホスフェートまたはヘテロアリールホスフェートを含む。アリールホスフェートは、いくつかの実施形態では、トリフェニルホスフェートを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のホスフェートは、ビス(オルガノホスフェート)を含む。ビス(オルガノホスフェート)は、いくつかの実施形態において、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)またはそれらの混合物を含み得る。
【0037】
重合性液体の有機リン酸化合物は、いくつかの実施形態では、ハロゲン化されていない。有機リン酸化合物は、例えば、フッ素、塩素または臭素でハロゲン化されていない。あるいは、有機リン酸化合物は、フッ素、塩素、臭素、またはこれらの組合せでハロゲン化される。いくつかの実施形態では、例えば、有機リン酸式中の1~R3の1つまたは複数は、臭素化などのハロゲン化されている。
【0038】
有機リン酸成分は、重合性液体中に任意の所望の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、有機リン酸成分は、重合性液体の総重量に基づいて、5~40質量%または10~30質量%の量で存在する。
【0039】
本明細書に記載されるように、重合性液体はさらに、硬化性イソシアヌレートおよび臭素化アクリレートエステル成分に加えて、アクリレート成分を含むことができる。アクリレート成分は、光重合性アクリレート種の1つまたは混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、アクリレート成分は、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、またはこれらの混合物を含むことができる。当業者に知られているように、モノマーは、ポリマーまたはコポリマーの単一の構造単位であり、オリゴマーまたはポリマーではない。対照的に、オリゴマーは、複数の化学的に結合したモノマーを含む。いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート、またはこれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、アクリレート成分は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリルメタクリレート、またはこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、単官能性または二官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、または、単官能性または二官能性ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールジアクリレートのうちの1つまたは複数を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、1,3-または1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エトキシル化またはプロポキシル化ネオペンチルグリコール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたはビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールA、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールFまたはエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールSを含む、脂肪族、脂環式または芳香族ジオールのジアクリレートおよび/またはジメタクリレートエステルを含む。
【0041】
アクリレート成分に含めるのに適した種のさらなる非限定的な例は、以下を含む:SARTOMERからSR 506Aの商品名で市販されているイソボルニルアクリレート(IBOA);SARTOMERからSR 833Sの商品名で市販されている二官能性アクリレート;SARTOMERからSR 533の商品名で市販されている三官能性アクリレートモノマー;SARTOMERからSR 423Aの商品名で市販されているイソボルニルメタクリレート;SARTOMERからSR 611の商品名で市販されているアルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート;RAHN USAからGENOMER 1122の商品名で市販されている単官能性ウレタンアクリレート;ALLNEXからEBECRYL 8402の商品名で市販されている脂肪族ウレタンジアクリレート;DYMAXからBR-952の商品名で市販されている二官能性脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート;SARTOMERからSR 272の商品名で市販されているトリエチレングリコールジアクリラート;およびSARTOMERからSR 205の商品名で市販されているトリエチレングリコールジメタクリレート。他の市販の硬化性成分を使用してもよい。さらに、いくつかの場合において、単官能性または二官能性アクリレートは、脂肪族ポリエステルウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、および/または、EBECRYL 7100などのアクリレートアミンオリゴマー樹脂を含む。いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、アクリロイルモルホリンなどの1つまたは複数のアクリレート誘導体を含む。
【0042】
上記の単官能性および二官能性アクリレート種成分に加えて、場合によっては、本明細書に記載の重合性液体中に三官能性またはより高官能性のアクリレート種を含めることも可能である。例えば、場合によっては、1つまたは複数のトリ(メタ)アクリレートを使用することができる。しかしながら、本明細書に記載されるアクリレート種の官能性(すなわち、モノ-、ジ-、トリ-、またはより高い官能性)および分子量は、所望の3Dプリントシステムにおける使用に適した粘度を有する造形材料を提供するように選択され得ることを理解されたい。本明細書に記載されるいくつかの実施形態における使用に好適であり得る三官能性以上の(メタ)アクリレートの非限定的な例としては、以下が挙げられる:1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ビス(トリメチロールプロパン)およびテトラ(メタ)アクリレート。
【0043】
アクリレート成分は、本明細書に記載の目的に合致する任意の量で重合性液体中に存在することができる。いくつかの実施形態では、アクリレート成分は、最大約80質量%の量で存在する。例えば、アクリレート成分は、重合性液体の総重量に基づいて、30~70質量%、または40~60質量%の量で存在することができる。
【0044】
本明細書に記載されるように、重合性液体はさらに、式Iの添加剤:
【化7】
を含むことができ、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7または1~5の整数である。水素は、任意選択的な置換基R
3~R
6の非存在下で、式Iのアリール環上の位置を占めることが理解される。
【0045】
特定の実装形態において、アルキレンまたはアルケニレン部分R1および/またはR2の一方または両方は、1~8個の炭素原子、例えば1~5個の炭素原子、1~3個の炭素原子、または4~5個の炭素原子の炭素鎖長を有することができる。いくつかの実施形態では、R1および/またはR2は、C1~C10、C1~C8、またはC1~C5アルキレンまたはアルケニレンを含み、「Cn」種(例えば、アルキレンまたはアルケニレン)は、種中に正確に「n」個の炭素原子を含む(例えば、「C5」種は、正確に5個の炭素原子を含む)。
【0046】
本明細書で使用される場合、アルキレン部分は、「エチレン」(-CH2CH2-)部分などの直鎖状または分枝状飽和炭化水素部分である。アルケニレン部分は、「プロペニレン」(-CH2CH=CH-)部分などの1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖状または分枝状炭化水素部分である。
【0047】
いくつかの実施形態において、LおよびZは、ビニル、ビニルエーテル、アリル、アクリレートおよびメタクリレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の部分または官能基を含む。さらに、いくつかの実施形態では、Lおよび/またはZは、シクロ重合性部分または官能基を含むことができる。例えば、Lおよび/またはZは、以下の式のシクロ重合性部分または官能基を含んでもよい:
【化8】
式中、
【化9】
は、式Iの化合物へのシクロ重合性部分または官能基の結合点である。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、
図1に示される構造を有する。
【0048】
1つまたは複数の式Iの添加剤は、重合性液体中に任意の所望の量で存在することができる。重合性液体中の式Iの添加剤の量は、重合性液体からプリントされた物品の所望の機械的特性および/または耐炎性、ならびに重合性液体中の他の種の化学的同一性および/または量を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に従って選択することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の式Iの添加剤は、重合性液体の総重量に基づいて、5~40質量%または10~30質量%の総量で重合性液体中に存在する。
【0049】
以下の実施例に詳述されるように、式Iのイソシアヌレート成分、臭素化アクリレートエステル成分、有機リン酸成分、アクリレート成分および/または添加剤は、任意の組合せおよび/または任意の量で存在することができる。
【0050】
本明細書に記載される重合性液体は、いくつかの実施形態では、適切な波長の光への曝露時に液体の1つまたは複数の成分の重合を開始するための光開始剤成分をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、光開始剤成分は、イソシアヌレートアクリレートなどのフリーラジカル機構を介して重合可能な1つまたは複数の部分を含むイソシアヌレートの重合を開始することができる。同様に、光開始剤を使用して、アクリレート成分を重合することができる。いくつかの実施形態では、硬化性イソシアヌレートは、アクリレート成分と共重合することができる。他の実施形態では、硬化性イソシアヌレートおよびアクリレート成分は、独立して重合される。
【0051】
本開示の目的と矛盾しない任意の光開始剤を使用することができる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、好ましくは約250nm~約420nmまたは約300nm~約385nmの光を吸収してフリーラジカルを生成するように動作可能な、アルファ開裂(単分子分解プロセス)光開始剤または水素抽出光増感剤-三級アミン相乗剤を含む。
【0052】
アルファ開裂光開始剤の例は、Irgacure 184(CAS 947-19-3)、Irgacure 369(CAS 119313-12-1)、およびIrgacure 819(CAS 162881-26-7)である。光増感剤-アミンの組合せの例は、ジエチルアミノエチルメタクリレートを有するDarocur BP(CAS 119-61-9)である。
【0053】
さらに、いくつかの例では、適切な光開始剤は、以下を含む:ベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルおよびベンゾインアセタートを含む、ベンゾイン類、2,2-ジメトキシアセトフェノンおよび1,1-ジクロロアセトフェノンを含むアセトフェノン類、ベンジル、ベンジルジメチルケタールおよびベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンおよび2-アミルアントラキノンを含む、アントラキノン類、トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド類、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(ルシリンTPO)、ベンゾフェノンおよび4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、チオキサントンおよびキサントン、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体または1-フェニル-1,2-プロパンジオン、2-O-ベンゾイルオキシム、1-アミノフェニルケトン類または1-ヒドロキシフェニルケトン類、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトンおよび4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン。
【0054】
適切な光開始剤はまた、アセトフェノン類、2,2-ジアルコキシベンゾフェノン類および1-ヒドロキシフェニルケトン類、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンまたは2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン(=2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン)を含む、HeCdレーザー放射線源と共に使用するために動作可能なものを含んでもよい。さらに、いくつかの場合において、好適な光開始剤は、ベンジルジメチルケタールなどのベンジルケタール類を含む、Arレーザー放射線源と共に使用するために動作可能なものを含む。いくつかの実施形態では、光開始剤は、α-ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタールまたは2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドまたはそれらの混合物を含む。
【0055】
好適な光開始剤の別のクラスは、いくつかの例では、化学線を吸収し、重合開始のためのフリーラジカルを生成することができる、イオン染料-対イオン化合物を含む。いくつかの実施形態では、イオン染料-対イオン化合物を含有する重合性液体は、約400nm~約700nmの調節可能な波長範囲内で可視光に曝露されると重合することができる。イオン染料-対イオン化合物およびそれらの動作モードは、欧州特許出願公開第0223587号明細書および米国特許第4,751,102号明細書;同第4,772,530号明細書;および同第4,772,541号明細書に開示される。
【0056】
光開始剤は、本明細書に記載の重合性液体中に、本開示の目的と矛盾しない任意の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、重合性液体の総重量に基づいて、約5質量%までの量で存在する。いくつかの場合において、光開始剤は、約0.1質量%~約5質量%の範囲の量で存在する。
【0057】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の重合性液体は、1つまたは複数の増感剤をさらに含むことができる。増感剤は、同様に存在し得る1つまたは複数の光開始剤の有効性を増加させるために添加され得る。本開示の目的と矛盾しない任意の増感剤を使用することができる。いくつかの場合において、増感剤は、イソプロピルチオキサントン(ITX)または2-クロロチオキサントン(CTX)を含む。
【0058】
増感剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の量で重合性液体中に存在することができる。いくつかの実施形態では、増感剤は、重合性液体の総重量に基づいて、約0.1質量%~約2質量%または約0.5質量%~約1質量%の範囲の量で存在する。
【0059】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のUV吸収剤および/または光安定剤が、重合性液体中に存在し得る。いくつかの実施形態では、例えば、1つまたは複数のUV吸収剤および/または光安定剤は、重合性液体の総重量に基づいて、0.1~2質量%の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、UV吸収剤および/または光安定剤は、ニュージャージー州フローラムパークのBASFからTINUVIN(登録商標)の商品表示で市販されている。
【0060】
別の態様では、3D物品または物体をプリントする方法が本明細書に記載される。3D物品または物体をプリントする方法は、本明細書に記載の重合性液体の複数の層から3D物品を層ごとに形成する工程を含むことができる。本明細書に記載の任意の重合性液体または成分を、付加製造による物品の作製に使用することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は、重合性液体の総重量に基づいて、少なくとも20質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分と、1つまたは複数のオルガノホスフェート化合物を含むオルガノホスフェート成分とを含む重合性液体を提供する工程を含む。重合性液体をプリントおよび硬化させて、物品を形成する。いくつかの実施形態では、重合性液体はまた、アクリレート成分を含む。アクリレート成分は、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0062】
本明細書にさらに記載されるように、重合性液体は、光開始剤成分をさらに含んでもよく、重合性液体の硬化は、フリーラジカル重合を開始させるのに適切な波長の光による液体の照射によって起こり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、重合性液体の層は、三次元物品の形成中にコンピュータ可読フォーマットで3D物品の画像に従って堆積させることができる。重合性液体は、予め選択されたコンピュータ支援設計(CAD)パラメータに従って堆積させることができる。さらに、場合によって、本明細書に記載の重合性液体の1つまたは複数の層は、約10μm~約100μm、約10μm~約80μm、約10μm~約50μm、約20μm~約100μm、約20μm~約80μm、または約20μm~約40μmの厚さを有する。他の厚さも可能である。
【0064】
さらに、本明細書に記載の3D物品をプリントする方法は、いわゆる「マルチジェット」または「ステレオリソグラフィ」3Dプリント方法を含んでもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの例では、3D物品をプリントするマルチジェット方法は、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基板上に、本明細書に記載の重合性液体の層を選択的に堆積させる工程を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、重合性液体の層のうちの少なくとも1つを支持材料で支持する工程を含む。本開示の目的と矛盾しない任意の支持材料を使用することができる。
【0065】
ステレオリソグラフィを用いて、本明細書に記載の重合性液体から3D物品を形成することも可能である。例えば、場合によっては、3D物品をプリントする方法は、容器内に重合性液体を保持する工程、および、容器内の重合性液体に選択的にエネルギーを付与して重合性液体の少なくとも一部を固化させ、それによって3D物品の断面を画定する固化層を形成する工程を含む。さらに、本明細書に記載される方法はさらに、固化層を上昇または下降させて、重合性液体の新しいまたは第2の層を提供する工程、その後に、容器内の重合性液体にエネルギーを再び選択的に付与し、3D物品の第2の断面を画定する新しいまたは第2の重合性液体の少なくとも一部分を固化させる工程を含む。さらに、3D物品の第1および第2の断面は、重合性液体を固化させるためのエネルギーの付与によって、z方向(または上記の上昇または下降の方向に対応する造形方向)に互いに結合または接着することができる。さらに、容器内の重合性液体にエネルギーを選択的に付与する工程は、本明細書に記載の重合性材料の重合を開始するのに十分なエネルギーを有する電磁放射線、例えばUVおよび/または可視放射線を付与する工程を含むことができる。さらに、場合によっては、重合性液体の固化層を上昇または下降させる工程は、流体造形材料の容器内に配置されたエレベータプラットフォームを使用して行われる。本明細書に記載される方法はまた、エレベータプラットフォームを上昇または下降させることによって提供される重合性液体の新しい層を平坦化する工程を含むことができる。そのような平坦化は、場合によっては、ワイパまたはローラによって行うことができる。
【0066】
本明細書に記載の方法に従ってプリントされた物品は、1つまたは複数の望ましい機械的特性を示すことができる。本明細書に記載の重合性液体からプリントされた3D物品は、いくつかの実施形態では、2700~3200MPaの引張弾性率を示し得る。本明細書で提供される引張強度および引張弾性率の値は、ASTM D638に従って決定することができる。さらに、本明細書に記載の重合性液体からプリントされた3D物品は、少なくとも100℃、例えば100~130℃のHDTを示すことができる。HDTは、ASTM D648に従って、0.455MPaでDMAを使用して測定される。
【0067】
本明細書に記載の方法に従ってプリントされた物品はまた、所望の耐炎性および/または難燃性特性を示すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従ってプリントされた物品は、燃焼性UL 94V下でv0評価を示す。v0評価を達成する試験サンプルの厚さは、いくつかの実施形態では、2mm未満または1mm未満、例えば0.8mmまたは0.4mmであり得る。
【0068】
これらの前述の実施形態は、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0069】
表1は、本明細書に記載のいくつかの実施形態による重合性液体の配合物を提供する。
【表1】
【0070】
サンプル1~6の重合性液体から形成された物品の特性が表IIに提供される。燃焼性試験は、UL 94Vに従って行い、厚さ0.8mmのサンプルを使用した。
【表2】
【0071】
いくつかの追加の非限定的な例示的実施形態を以下でさらに説明する。
【0072】
実施形態1。重合性液体は、以下を含む:
重合性液体の総重量に基づいて、少なくとも5質量%の量の硬化性イソシアヌレート成分;および
臭素化アクリレートエステル成分。
【0073】
実施形態2。硬化性イソシアヌレート成分が、フリーラジカル重合を介して重合可能である、実施形態1の重合性液体。
【0074】
実施形態3。硬化性イソシアヌレート成分が、イソシアヌレートポリアクリレート、ポリアリルイソシアヌレートまたはそれらの混合物を含む、実施形態2の重合性液体。
【0075】
実施形態4。イソシアヌレートポリアクリレートが式II:
【化10】
のものであり、
式中、R
1~R
3はそれぞれ独立して、水素およびアルキルからなる群から選択され、m、nおよびpはそれぞれ独立して1~10の範囲の整数である、
実施形態3の重合性液体。
【0076】
実施形態5。ポリアリルイソシアヌレートが式III:
【化11】
のものであり、
式中、m、nおよびpは独立して1~10の整数である、
実施形態3の重合性液体。
【0077】
実施形態6。臭素化アクリレートエステル成分が、以下の式:
【化12】
の1つまたは複数の化合物を含み、
式中、R
1は水素およびメチルからなる群から選択され、R
2は臭素化アルキルおよび臭素化アルケニルからなる群から選択される、
実施形態1~5のいずれかの重合性液体。
【0078】
実施形態7。臭素化アクリレートエステル成分がトリノールアクリレートを含む、実施形態6の重合性液体。
【0079】
実施形態8。臭素化アクリレートエステル成分が、重合性液体の総重量に基づいて、10~40質量%の量で存在する、実施形態1~7のいずれかの重合性液体。
【0080】
実施形態9。重合性液体が、1つまたは複数の有機リン酸化合物を含む有機リン酸成分をさらに含む、実施形態1~8のいずれかの重合性液体。
【0081】
実施形態10。有機リン酸成分が、重合性液体の総重量に基づいて、5~40質量%の量で存在する、実施形態9の重合性液体。
【0082】
実施形態11。1つまたは複数の有機リン酸化合物が、以下の式:
【化13】
のものであり、
式中、R
1~R
3は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される、
実施形態9または10の重合性液体。
【0083】
実施形態12。1つまたは複数の有機リン酸化合物が、ビス(オルガノホスフェート)を含む、実施形態9または10の重合性液体。
【0084】
実施形態13。硬化性イソシアヌレート成分が、重合性液体の総重量に基づいて、30~70質量パーセントの量で存在する、実施形態1~12のいずれかの重合性液体。
【0085】
実施形態14。アクリレート成分をさらに含む、実施形態1~13のいずれかの重合性液体。
【0086】
実施形態15。アクリレート成分が、重合性液体の総重量に基づいて、30~70質量%の量で存在する、実施形態14の重合性液体。
【0087】
実施形態16。アクリレート成分が、アクリレートモノマーとアクリレートオリゴマーとの混合物を含む、実施形態14または15の重合性液体。
【0088】
実施形態17。式I:
【化14】
の添加剤をさらに含み、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7の整数である、
実施形態1~16のいずれかの重合性液体。
【0089】
実施形態18。R1およびR2がアルキレンである、実施形態17の重合性液体。
【0090】
実施形態19。LおよびZがそれぞれ、ビニル、アリル、ビニルエーテル、アクリレートおよびメタクリレートからなる群から独立して選択される部分を含む、実施形態17または18に記載の重合性液体。
【0091】
実施形態20。LおよびZがそれぞれ、シクロ重合性官能基を含む、実施形態17または18の重合性液体。
【0092】
実施形態21。シクロ重合性官能基が、式:
【化15】
のものであり、式中、
【化16】
は、式Iの化合物へのシクロ重合性官能基の結合点である、
実施形態20の重合性液体。
【0093】
実施形態22。nが2または3である、実施形態17~21のいずれかの重合性液体。
【0094】
実施形態23。LおよびZがそれぞれアクリレート部分を含む、実施形態17~22のいずれかの重合性液体。
【0095】
実施形態24。LおよびZがそれぞれメタクリレート部分を含む、実施形態17~22のいずれかの重合性液体。
【0096】
実施形態25。有機リン酸成分、アクリレート成分、および式I:
【化17】
の添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含み、
式中、LおよびZは、少なくとも1つの重合性の不飽和点を含む環置換基であり、R
1およびR
2は、独立して、アルキレンおよびアルケニレンからなる群から選択され、R
3~R
6は、各々、1~4個の任意選択的な環置換基を表し、1~4個の環置換基の各々は、独立して、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミン、アミド、およびエーテルからなる群から選択され、nは、1~7の整数である、
実施形態1~24のいずれかの重合性液体。
【0097】
実施形態26。光開始剤成分をさらに含む、実施形態1~25のいずれかの重合性液体。
【0098】
実施形態27。光開始剤成分が、重合性液体の総重量に基づいて、0.1~5質量パーセントの量で存在する、実施形態26の重合性液体。
【0099】
実施形態28。実施形態1~27のいずれかの重合性液体を提供する工程;および
光を用いて重合性液体をプリントおよび硬化させて物品を形成する工程
を含む、三次元物品をプリントする方法。
【0100】
実施形態29。重合性液体が層ごとのプロセスで提供される、実施形態28の方法。
【0101】
実施形態30。重合性液体が光開始剤成分をさらに含み、重合性液体を硬化させる工程がフリーラジカル重合を介して進行する、実施形態28の方法。
【0102】
実施形態31。物品が、UL 94Vに従ってv0評価を有する、実施形態28の方法。
【0103】
本明細書で言及される全ての特許文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明の様々な目的の達成において、本発明の様々な実施形態を説明してきた。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることを認識されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その多くの修正および適合が当業者には容易に明らかであろう。
【国際調査報告】