(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】免疫プロファイリングにおける、またはこれに関する改善
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550578
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 GB2022050461
(87)【国際公開番号】W WO2022175683
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518296506
【氏名又は名称】フルイディック・アナリティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】モルグノフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】モーリング,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ノウルズ,ツォーマス
(57)【要約】
個人からの1つまたは複数の試料の定量分析に基づいて予測免疫プロファイルを開発するためのシステムが提供される。本システムは、提供された定量分析データへの流体試料に対して溶液中の1つまたは複数の標的種と1つまたは複数のプローブとの相互作用の定量分析を実施するように構成されるデバイスと、データストアであって、少なくとも1人の個人に関連する個人データ、標的/プローブ相互作用の少なくとも1つのモデルを格納する、データストアと、処理回路であって、データストアにアクセスし、試料に関連性のあるデータを識別および取得し、試料の定量分析データをデバイスから受信し、受信した定量分析データにモデルをフィッティングするために分析を実施し、個人のための予測免疫プロファイルを作成するために、モデルを通じて外挿し、定量分析データでデータストアを更新するように構成される、処理回路と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人からの1つまたは複数の試料の定量分析に基づいて予測免疫プロファイルを開発するためのシステムであって、
提供された定量分析データへの流体試料に対して溶液中の1つまたは複数の標的種と1つまたは複数のプローブとの相互作用の定量分析を実施するように構成されるデバイスと、
データストアであって、
少なくとも1人の個人に関連する個人データ、
標的/プローブ相互作用の少なくとも1つのモデルを格納する、データストアと、
処理回路であって、
前記データストアにアクセスし、前記試料に関連性のあるデータを識別および取得し、
前記試料の定量分析データを前記デバイスから受信し、
前記受信した定量分析データに前記モデルをフィッティングするために分析を実施し、
前記個人のための予測免疫プロファイルを作成するために、前記モデルを通じて外挿し、
前記定量分析データで前記データストアを更新するように構成される、処理回路と、を備える、システム。
【請求項2】
前記予測免疫プロファイルは、患者の免疫が既定のしきい値よりも下がることが予測される日付を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記予測免疫プロファイルは、前記個人が、ワクチンが基づいた株とは異なる病気株に対して免疫を示す信頼度を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記予測免疫プロファイルは、前記個人が感染した株とは異なる病気株に対して前記個人が免疫を示す信頼度を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記データストアは、複数の個人についてのデータを保持する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
各個人についての前記データストア内に保持されるデータは、診療記録、年齢、性別、体重、民族性、遺伝情報、ワクチン接種歴、病状、疾病重症度、処方された薬剤の固有性、および対応する投与計画、のうちの1つまたは複数を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記データストアは、層理ラベルをさらに含み、前記処理回路は、前記受信した定量分析データを前記モデルにフィッティングするために分析を実施するとき、前記層理ラベルを使用するようにさらに構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記データストアは、一般モデルをさらに含み、前記処理回路は、受信した定量分析を前記モデルにフィッティングするために分析を実施するとき、前記一般モデルを使用するようにさらに構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記分析を実施するように構成される回路は、機械学習アルゴリズムを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理回路は、分析される前記個人の試料に関連する前記個人データを更新するようにさらに構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記試料の前記定量分析は、標的/プローブ相互作用の親和性の測定を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記試料の前記定量分析は、前記試料内の標的種の濃度の測定を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記試料の前記定量分析は、前記試料の不均質性の分析を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記デバイスは、分配試料を作成するために試料流体および補助流体の組み合わせおよび分配と、2つ以上の部分への前記分配試料のその後の分割と、前記部分のうちの少なくとも1つの測定とを可能にするように構成される微小流体ネットワークを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記分配は、拡散、電気泳動もしくは磁気泳動、熱拡散、クロマトグラフィ、および等電点電気泳動のうちの1つまたは複数によってもたらされる、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記デバイスは、前記分配試料を3つ以上の部分へと分割するように構成され、測定が各々の分割された部分に対して実行される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムによって生成される各々の予測結果は、関連した正確性スコアを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記データストアを更新するステップは、前記正確性スコアを更新することを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記デバイスの前記定量分析は、蛍光測定を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫プロファイリングに関し、特に、改善された予測プロファイリングにつながる情報収集および知識処理における改善に関する。
【背景技術】
【0002】
予防接種は、歴史的に、人口全体のモデリング、および脆弱性に基づいたニーズの予測に基づいて提供されてきた。しかしながら、個々の免疫反応特徴は、多次元かつ複雑であり、包括的な免疫戦略は、効率的ではなく、費用対効果も高くもない場合がある。
【0003】
近年では、様々な疾病のためのより高度な診断/医療ツールを開発するのを助けるために、タンパク質などの標的種または生体分子同士の相互作用について多くの研究が行われた。タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)は、タンパク質自己組立、タンパク質凝集、抗体-抗原認識、筋肉収縮および細胞通信を含む、多くの生物学的および生理学的に関連性のあるプロセスの基礎を形成する。それにもかかわらず、タンパク質-タンパク質相互作用を、特に複合培地内の生理学的条件下で、研究することは、いまだに困難である。酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)ビーズベースのマルチプレックスアッセイおよび表面プラズモン共鳴(SPR)分光学などの現在の技術は、1つの結合相手の固定化に依拠する。これらの技術は、偽陽性結果を引き起こし得る表面との潜在的な非特異相互作用、および偽陰性結果を引き起こすフック/プロゾーン効果を含み、以て、半定量分析のみを可能にする。
【0004】
現在、臨床タンパク質検出および定量化のためのすべての周知の手法は、例えば、ELISAアッセイのように、表面固定化またはビーズ固定化に依拠するアッセイに関与する。ELISAアッセイは、比較的高い感度を達成することができる一方で、それらは、溶液中の結合相互作用を説明する生物物理パラメータを決定することができず、したがって、それらは、研究されている生理学的に関連性のあるプロセスの現実的なモデルを提供することは、これらがすべて溶液中で起こることから、できない。
【0005】
代替の戦略は、タンパク質分子を検出するための抗体ペアの使用、および相対強度を読み出すためのフローサイトメトリーのために開発された装置の使用を含め、感度強化を達成するために出現した。しかしながら、これらのアッセイは、依然としてビーズの表面で実施され、したがって、上に説明される表面ベースの技術の通常の欠点に遭遇する。加えて、これらの技術は、しばしば時間がかかる。
【0006】
機械学習アルゴリズムは、タンパク質-タンパク質相互作用研究、ならびに特に、異なる生物学的プロセスに関わるタンパク質機能および経路の研究のためだけでなく、疾病の原因および進行を理解するために、近年使用されている。いくつかの実験技術は、PPIの識別のために用いられているが、これらは、二値出力に限定され、患者のための意義のある結果を提供するにはPPIにおける生物物理特性の識別、分析、および予測においてギャップが依然として存在する。
【0007】
故に、標的/プローブ相互作用に関連する定量的データを照合および分析するため、ならびに、完全に定量的な様式にある、体液中の生体指標およびそれらの特定の標的など、生体分子相互作用の間の測定された生物物理特性のこれらの定量分析と組み合わされる標的/プローブ相互作用のモデルに基づいて、個人に対する結果を推奨するために使用され得る溶液中プラットフォームを提供する必要性がある。
【0008】
さらには、利用可能な生物医学データの幅の増加の微妙な差異を理解することは、予防接種が患者の個々の生物医学データを考慮するように調整され得るように、免疫プロファイリングに対するより個人化された手法を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、個人からの1つまたは複数の試料の定量分析に基づいて予測免疫プロファイルを開発するためのシステムが提供され、本システムは、提供された定量分析データへの流体試料に対して溶液中の1つまたは複数の標的種と1つまたは複数のプローブとの相互作用の定量分析を実施するように構成されるデバイスと、データストアであって、少なくとも1人の個人に関連する個人データ、標的/プローブ相互作用の少なくとも1つのモデルを格納する、データストアと、処理回路であって、データストアにアクセスし、試料に関連性のあるデータを識別および取得し、試料の定量分析データをデバイスから受信し、受信した定量分析データにモデルをフィッティングするために分析を実施し、個人のための予測免疫プロファイルを作成するために、モデルを通じて外挿し、定量分析データでデータストアを更新するように構成される、処理回路と、を備える。
【0010】
本システムは、個人の免疫反応の特徴付けを提供する、1つまたは複数のプローブと1つまたは複数の標的種との相互作用の特徴の定量測定を取得する。第1のシナリオにおける免疫反応の特徴付けは、次いで、第2のシナリオにおける免疫反応の特性を、第2のシナリオの直接的な測定なしに推測するために使用される。第2のシナリオは、測定可能であり得るが、直接的な測定なしに免疫反応を推測することが所望される。例えば、第2のシナリオは、後の時間であってもよく、免疫反応の推測が、前もって所望され得る。
【0011】
プローブは、単一のプローブであってもよいが、それは、しばしば複数のプローブの組み合わせであり、したがって、データストアは、標的種との各プローブの相互作用に関連するモデルを含む。標的種は、しばしば抗体であるが、それは、抗原、受容体、またはプローブとの相互作用の任意の他の生体分子成分であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のプローブと相互作用する1つまたは複数の標的種が存在し得る。
いくつかの実施形態において、本システムは、個人の免疫反応の特徴付けを提供するために、1つまたは複数のプローブと1つまたは複数の標的種との相互作用の特徴の定量測定を同時に取得し得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、本システムは、個人の免疫反応の特徴付けを提供するために、1つまたは複数のプローブと1つまたは複数の標的種との相互作用の特徴の定量測定を連続様式で取得し得る。
【0014】
測定したデータ点からのモデルベースの外挿が、個人に特有である予測免疫プロファイルを作成するために使用される。特定の抗原、抗原のセット、または疾病に対する免疫反応の減衰を説明するモデルの文脈において、免疫の減衰は種にわたって均一ではないことが認められ、異なる個人の免疫のレベルは、いくつかの異なる理由から異なる速度で減衰し得る。したがって、全人口にわたって包括的な免疫プロファイルを予防接種に適用することはもはや十分ではない。
【0015】
個人からの個人データを格納することによって、および行われた各測定に基づいてその個人データを更新することによって、ますます個人化した予測免疫プロファイルが個人のために作成される。
【0016】
データストアは、様々なソースから描写され、すべてのシステム活動に関与する、絶え間なく発展する情報レポジトリである。たとえそれが、低信頼実験データのみで開始するとしても、これは、何らかの値を追加するのには十分であり、また、デバイスが試料の定量分析に着手するとき、この分析から収集される追加のデータは、データストアを増補するために使用される。
【0017】
予測免疫プロファイルは、患者の免疫が既定のしきい値よりも下がることが予測される日付を含み得る。免疫がすべてのワクチン接種済みの個人について等しく減衰しないことは明白である。結果として、ブースター接種が必要とされる日付は、個人によって様々である。したがって、一部の個人は、ブースター接種を一般人口に基づいた推奨日よりも早く必要とし得る。これは、時間的外挿である。個人の免疫系の挙動は、デバイスから1つまたは複数の定量分析を通じて記録され、これは、ワクチン接種または疾病回復の日付を含む、個人に関する個人データと組み合わされる。これは、将来の時間点における個人の免疫系の挙動を予測するために、時間的に外挿するために使用される。
【0018】
予測免疫プロファイルは、個人が、ワクチンが基づいた株とは異なる病気株に対して免疫を示す信頼度を含み得る。
予測免疫プロファイルは、個人が感染した株とは異なる病気株に対して免疫を示す信頼度を含み得る。
【0019】
ウイルスは、突然変異したウイルス形態、またはウイルスの異なる変異型を作成するために、抗原ドリフトのプロセスを通じて経時的に変化する。ワクチンは、開発時に最も流行しているウイルスの株(複数可)に基づいて開発される。しかしながら、経時的に、異なる突然変異がより広範に流行し得るため、別の株に対するワクチン接種後の1つの株に対する免疫が、重要になる。このシナリオでは、デバイスは、ワクチンが開発された株であり得る参考株に関連して個人の免疫プロファイルを測定する。次いで、モデルは、個人が異なる変異型に対しても免疫を示す信頼度またはパーセンテージ見込みを予測するために使用される。これは、それが、ワクチンが適用されている株から外挿し、免疫が新規株に対しても存在する信頼度を検討するという点で、縦の外挿と呼ばれ得る。
【0020】
データストアは、複数の個人に関するデータを保持し得る。個人に関連するデータ点の数、およびまた、データストアに含まれている個人のデータの数の両方に関して、データが多いほど、モデルリングはより繊細かつ正確であり得、したがって、個人についての予測された免疫プロファイルにおける信頼はより高くなる。
【0021】
各個人についてのデータストア内に保持されるデータは、診療記録、年齢、性別、体重、民族性、遺伝情報、ワクチン接種歴、病状、疾病重症度、処方された薬剤の固有性、および対応する投与計画、のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0022】
各個人について利用可能である情報が多いほど、モデルはより多くの情報に基づき得、したがって、システムによって出力される予測された免疫プロファイルの正確性に関する確信はより大きくなる。
【0023】
試料は、体液であり得る。特に、試料は、血清および血漿を含む血液であり得るか、もしくはそれから導出され得るか、またはそれは、CSF、唾液、汗、便、もしくは尿であり得る。いくつかの実施形態において、体液は、粘液、滑液、羊水、または母乳であり得る。
【0024】
データストアは、層理ラベルをさらに含み得、処理回路は、受信した定量分析データをモデルにフィッティングするために分析を実施するとき、層理ラベルを使用するようにさらに構成される。
【0025】
層理ラベルは、個人が、個人データ内の1つまたは複数の特徴に基づいてコホートへと分類されることを可能にする。これらのコホートは、個人に関する演繹的知識を補強する、またはその代わりになるために使用され得るモデルに付加的なニュアンスを提供する。
【0026】
例えば、個人の年齢は、個人の免疫プロファイルに影響を及ぼし得る。個人についての典型的なデータは、ワクチン接種の日付、およびしたがって、ワクチン接種と試料提供との間の時間を含む。これは、免疫がいつ既定の許容しきい値よりも下がるか、個人がいつ再接種を受けるべきかを予測するために免疫プロファイルが時間を下って外挿されることを可能にする。個人の年齢に係る層理ラベルはまた、観察されたプロファイルに基づいたモデルを同様の年齢の他の個人に通知し得る。
【0027】
個人の年齢は、層理ラベルの非常に単純な例である。様々な因子が複雑な関係性において相互作用し得、これらが層理ラベルに捕捉され得るということを理解されたい。
データストアは、一般モデルをさらに含み得、処理回路は、受信した定量分析をモデルにフィッティングするために分析を実施するとき、一般モデルを使用するようにさらに構成される。
【0028】
一般モデルは、例えば、タンパク質-タンパク質相互作用自体に関する。モデルのソースは、所有者データセットとしてシステム自体から、または第三者ライブラリデータセットから、任意の実験または患者データを含み得る。タンパク質-タンパク質相互作用自体に一般的であるモデルの作成は、欠損データが既存データの内挿によって予測されることも可能にする。内挿または予測されたデータ点の正確性スコアは、これらのデータ点の性質を反映する。
【0029】
上記分析を実施するように構成される回路は、機械学習アルゴリズムを含み得る。
処理回路は、分析される個人の試料に関連する個人データを更新するようにさらに構成され得る。これは、個人レベルにおいてフィードバックループの閉鎖を提供する。データストア内に保持される個人の個人データは、試料の新規の定量分析で拡張される。このデータは、処理結果、および試料の定量分析から導出される他のメタデータと一緒に、個人の記録と共に格納される。
【0030】
本システムにより開発されるデータソースに関連して、抗体/プローブ相互作用に関連するデータは、個人および実験データからの匿名化データを含み得る。
試料の定量分析は、標的/プローブ相互作用の親和性の測定を含み得る。
【0031】
試料の定量分析は、試料内の標的種の濃度の測定を含み得る。
試料の定量分析は、試料の不均質性の分析を含み得る。
試料の不均質性は、アイソフォーム、翻訳語修飾、異なる化学量論、余分の結合相手、スプライスアイソフォームの存在、および/または程度を含み得るが、これらに限定されない。試料の定量分析は、電荷、可動性、流体力学的半径、タンパク質内のアミノ酸含量、タンパク質の蛍光の分析をさらに含み得る。
【0032】
本デバイスは、分配試料を作成するために試料流体および補助流体の組み合わせおよび分配と、2つ以上の部分への分配試料のその後の分割と、部分のうちの少なくとも1つの測定とを可能にするように構成される微小流体ネットワークを備え得る。
【0033】
分配は、拡散、電気泳動または磁気泳動、熱拡散、クロマトグラフィ、および等電点電気泳動のうちの1つまたは複数によってもたらされ得る。
本デバイスは、分配試料を3つ以上の部分へと分割するように構成され得、測定が各々の分割された部分に対して実行される。サイズ排除クロマトグラフィおよび逆相クロマトグラフィを含むがこれらに限定されない様々な異なるクロマトグラフィ技術も適用可能であり得る。
【0034】
本システムによって生成される各々の予測結果は、関連付けられた正確性スコアを有し得る。さらには、データストアを更新するステップは、正確性スコアを更新することを含み得る。
【0035】
正確性スコアは、データのソース、例えば、データが、本システムに含まれるものに類似したデバイスまたは異なるデバイスを使用して獲得されたかに関して、アルゴリズムに通知する。
【0036】
本システムによって生成される予測された免疫プロファイルは、関連付けられた正確性スコアを有し得る。予測された免疫プロファイル内の正確性スコアは、データの正確性に関連する基本的または偶然の誤差および新規データ点が訓練データセットから開発されるような既存モデルにどれくらい近いかに関連する認識的な誤差の両方を考慮する。
【0037】
標的/プローブ相互作用に関連するデータは、隣接するデータに基づいた予測データを含み得る。データのサブセットの正確性スコアが十分に高く、したがって、そのデータの正確性における信頼度が十分に高い場合、機械学習アルゴリズムは、前から存在するデータ点にデータ空間内で隣接して位置する予期される結果の予測を高信頼度で提供するように構成される。
【0038】
デバイスの定量分析は、蛍光測定を含み得る。蛍光は、種のうちの1つもしくは複数に固有であり得るか、またはそれは、標的種もしくはプローブに適用される蛍光ラベルから生じ得る。例えば、抗体、抗原、または受容体は、特定の結合が起こったときに発光し得る蛍光ラベルでラベル化され得る。蛍光を発生させる結合は、単に、ラベル化された成分と第2の成分との間であり得る。代替的に、相互作用は、3つ以上の成分を含んでより複雑であり得、そのうちの少なくとも1つがラベル化され得る。
【0039】
本発明は、これより添付の図面を参照して例を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明のシステムのワークフローを示すフロー図である。
【
図2】本発明のシステム内に提供される微小流体デバイスの概略図である。
【
図3】本発明のシステム内に提供される代替の微小流体デバイスの概略図である。
【
図4】免疫プロファイリングのための中和データを使用して例からの実験データを示す図である。
【
図6】不均質な試料内の1つまたは複数の二分子成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を測定するための流れデバイスを示す図である。
【
図7】本発明のシステムの一部を形成する機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明のシステム100において達成されるワークフローを示す。システム100は、所有者知識データベース122、ときとして一般モデルと称される、タンパク質-タンパク質相互作用または他の関連生体高分子相互作用に係るオープンソース一般データを含む、第三者データベース124を含み得る、データストア120を含む。加えて、データストア120は、個人の個人データ126を含み、そのうちの一部は、デバイス50(
図2および
図3を参照して以下により詳細に示され説明される)上で生成され得る。他の個人データは、少なくとも個人の識別情報、ならびに、以下の関連データ、すなわち、診療記録、年齢、性別、民族性、ワクチン接種歴、病状、服用薬、およびそれぞれの観察される投与計画のうちの1つまたは複数を含む。データストア120は、単一のデータストアであってもよく、またはそれは、特定のソースからのデータを各々が格納する複数のサブストアを含み得る。これらのサブストアは、デバイス50と物理的に一緒に位置付けられ得るか、またはそれらは、特に、クラウドベースで分散され得る。それらの物理的な場所にかかわらず、それらは、機能的に連結され、したがって、一般的にはデータストア120と称される。
【0042】
システム100はまた、生体高分子相互作用に係る少なくとも1つの一般モデル134にアクセスする機械学習アルゴリズム132を含む。機械学習アルゴリズム132は、モデルとの使用のために各々選択される複数の異なるアルゴリズムを配備する。少なくとも1つの一般モデル134および免疫プロファイルの1つの特定モデル136が存在する。
【0043】
試料が個人から獲得されるとき、関連性のある標的/プローブ相互作用に係る一般モデル134にアクセスすることに加えて、機械学習アルゴリズム132は、個人に係る個人データ126を獲得するためにデータストア120にもアクセスする。このデータは、以前の定量分析からのデバイス50からの以前の定量的データを含み得る。加えて、これは、個人の年齢、体重、性別、投薬計画、および他の関連性のあるリスク因子などの個人データを含み得る。さらには、機械学習アルゴリズム132は、免疫反応の特徴付けに係る特定モデル136にアクセスする。デバイス50は、試料調製を行い、試料をデバイス50に流して、横分配をもたらし、例えば、試料の親和性、濃度、または不均質性の測定につながる定量的読み出しを行う。
【0044】
デバイス50から獲得される定量的データは、次いで、プローブ/標的相互作用データの一般モデル、個人の個人データ、および目的の免疫反応に関連する特定モデルと組み合わされる。個人についての個人データおよび目的の免疫反応の特定モデルと多次元のタンパク質-タンパク質相互作用特徴付けとのこのような組み合わせは、測定されたシナリオとは異なるシナリオに関して推測が行われることを可能にする。測定されたデータからのこのような推測または外挿は、個人に与えられるべき臨床的に関連性のある出力として提供され得る。
【0045】
例えば、個人の免疫反応が、親和性の測定を通じて、中和能力の減衰の程度を示すことが特徴付けされている場合、これは、特定のウイルスまたは他の病原体に対する個人の免疫レベルのスナップショットを時間的にもたらす。本システムは、このような測定データとの、一般モデル、経時的なそのウイルス/病原体に対する免疫の減衰の特定モデル、および個人データの組み合わせを通じて、個人の免疫の時間的な外挿をもたらすように構成される。追加的または代替的に、本システムは、ウイルスまたは病原体の異なる変異型の一般モデリングを使用して、ワクチンが最初に開発された変異型、および/または個人が以前に感染したことのある変異型とは異なるウイルスまたは病原体の新規変異型に対する個人の免疫レベルを予測するように構成され得る。
【0046】
個人の免疫機能のこのような特徴付けは、個人の免疫が既定のしきい値よりも下がることが予測される日付に関して、個人またはそれらの臨床医への臨床的に関連性のある出力として、提供され得、繰り返しの予防接種を妥当なものにする。したがって、本明細書に開示されるようなシステムは、臨床医が個人のブースター接種のための正確な日付/時間を推奨するのに特に有用であり得る。特に、臨床医は、個人が一般人口のための推奨日よりも早い日付でブースター接種を必要とするときを決定することができる場合がある。追加的に、異なる変異型に対して開発されたワクチンの複数のバージョンが存在する場合、個人または臨床医は、最も適切なワクチンの選択を決定することができる場合がある。
【0047】
さらなる例において、個人の免疫反応は、親和性の測定を通じて、ウイルスの特定の変異型に対する免疫の程度を示すことが特徴付けされ得る。本システムは、このような測定データと、一般モデル、様々なウイルス株または変異型の特定モデル、および個人の個人データとの組み合わせを通じて、個人が予防接種を受けたことのある、または感染から回復したことのあるものとは異なる株に対する個人の免疫の信頼度を提供するように構成される。この例では、個人のための出力は、パーセンテージである。この例では、初期データは、野生株ウイルスに対する個人の反応の測定に基づいた中和データであり得る。これは、個人に特有ではない突然変異体アッセイについての独立したデータと組み合わされ得る。これらは、個人における異なる突然変異体について予測された免疫プロファイルを外挿および作成するために組み合わされ得る。これは、例えば、個人が以前にウイルスの野生株または参考株に感染して回復したことがあるとき、ウイルスの新規突然変異株に感染する可能性を評価することにおいて、重要である。
機械学習アルゴリズム
機械学習アルゴリズムという用語は、各々が免疫反応の特徴付け、ならびに1つまたは複数の測定されていないシナリオに対する測定したシナリオの予測または外挿と共に使用するために選択される多数の異なるアルゴリズムの組み合わせを概して指すために使用される。異なるアルゴリズムは、プローブ/標的相互作用の一般モデル、免疫反応の特徴付けの特定モデル、および親和性測定に適切である。
【0048】
例えば、一般モデルの場合、全結合深層ニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、または、トランスフォーマーベースのアーキテクチャなどの自己注意ベースのアーキテクチャが配備され得る。表現学習は、生体高分子のシーケンスおよび構造の埋め込みを生成するために使用され得る。これらのアルゴリズムは、必要に応じて分類器またはリグレッサシステムと組み合わされ得る。一般に適切であり得る分類器の例としては、ランダムフォレスト、勾配ブースティングマシン、ガウス過程、または多層パーセプトロンが挙げられる。単一の分類器が配備され得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、分類器の積み重ねが達成され得る。分類器の効果的な積み重ねを達成するために、分類器は、出力自体よりも、出力における誤差を予測するように訓練される。ガウス過程および多層パーセプトロンの組み合わせは、この文脈において効果的である。
【0049】
分類器の積み重ねは、プローブ/標的、特に、タンパク質-タンパク質相互作用のフィールドが複雑であり、データセットが比較的小さいことから、この文脈において有利である。
【0050】
データを機械学習アルゴリズム内へ導入するために、まず、目的の生体高分子、例えば、タンパク質をベクトル化する必要があり、その結果として、タンパク質の複雑な構造が数値ベクトルとして表され得る。このベクトルは、次いで、分類器によって取り込まれ得、こうして機械学習アルゴリズムにより処理され得る。これは、データが、最初は、機械学習アルゴリズムを訓練するために、および、多くの他の同様にベクトル化された生体高分子データと組み合わせて、その生体高分子の相互作用の新規定量分析の予測を生み出すために、使用されることを可能にする。
【0051】
免疫反応のモデリングに関連する特定モデル、関連データ変換を伴う表形式データセット、およびアルゴリズムのための符号化が配備され得る。一般モデルを参照して上に説明されるような同様の分類器またはリグレッサが配備され得る。加えて、特定モデルは、一般モデルからの情報によって追加的に通知される。
【0052】
図2は、システム100内に組み込まれ得るデバイス50の例を示す。
図2は、不均質な試料内の複数の成分の分離および分析を提供するように構成されるデバイス50を示す。デバイスは、キャピラリー電気泳動区域およびHフィルタ218という2つの区域を組み込む。例証された実施形態においては、キャピラリー電気泳動区域がHフィルタに先行するが、順序は、Hフィルタが最初に配備されるように入れ替えられ得るということを理解されたい。その構成において、キャピラリー電気泳動モジュールは、Hフィルタの出力の各々に適用され得、その結果として、Hフィルタの出力が存在するのと同じだけ多くのキャピラリー電気泳動モジュールが存在する。
【0053】
デバイス50は、試料および緩衝液または補助流体が導入され得る試料流路212および緩衝液流路216を伴うHフィルタ218の構成部品を含む。試料流路212および緩衝液流路216は、第1の方向である細長である分配流路214で終端する。
【0054】
流路の細長い構成の結果として、試料が、試料流路212に沿って、分配流路214内へ、およびこれを通って流れるとき、第1の方向に実質的に垂直である第2の方向における成分の分配が生じる。
【0055】
デバイス50は、電気泳動による分配を駆動するために、Hフィルタ218の分配流路214にわたって電場を提供するように構成される少なくとも1つの電源230を含み得る。
【0056】
Hフィルタ218は、2つの出口220を有し、分配流路214内の流体は、2つの出口の間で分割される。出口の各々において収集される流体の定量分析が行われ得、データは、出口220の間で比較され得る。定量分析は、横分配がもたらされた計画と関連付けられる。したがって、
図2に例証されるデバイスにおいて、電源230が、分配が電気泳動によって達成されるように分配流路214にわたって電場を作り出す場合、定量分析は、試料内の成分に対する電荷の分析である。
【0057】
逆に、
図2内の電源230が活性化されない場合、分配流路214内の分配は、拡散を介してのみ生じ、定量分析は、試料内の成分のサイズに関連する。
代替的に、または追加的に、分配流路内で作り出される分配は、キャピラリー電気泳動によって達成され得る。加えて、横分配は、拡散的に、電気泳動的に、拡散泳動的に、または熱泳動的に作り出され得る。
【0058】
デバイス50は、キャピラリー電気泳動(CE)分離および拡散サイジングを使用して流体試料を分離および分析するように構成される。
図2に示されるように、デバイス50は、1つまたは複数の延長入口222を伴うHフィルタ218を備える。試料の充填は、試料流路212内への試料ポート213を通じて起こり、電気浸透流(EOF)を介して達成されるか、圧力駆動であるかのいずれかである。試料が分離流路214に到達すると、電場が、Hフィルタ218の両端、すなわち、入口222および出口220にわたって印加されて、分配流路214全体を電気浸透的に駆動する。試料流路212に供給されている試料に対する制御を提供するために、試料入口ポート213に対応する試料廃棄ポート215が存在する。
【0059】
図2に示されるように、電圧が試料流路212および補助流路216に印加され得るように、少なくとも1つの電源230が提供される。
図2は、本発明のデバイス50を実行するために使用され得る電圧源230および電気接続のための例示的な構成を示す。電力源230の極性の適切な選択は、試料中の成分に対する予測電荷に依存する。
【0060】
図2に例証される実施形態において、試料流路212および補助流路216は、等しい長さのものである。試料流路212および補助流路216はまた、等しい断面積を有する。等しい寸法の分離流路および補助流路を有することは、同じ電圧が試料流路212および補助流路216の両方にわたって印加され得、以て、試料流路212および補助流路216において、実質的に等しい電気浸透流量を提供するため、デバイスを通じた電気浸透流の制御を単純化する。
【0061】
さらには、補助流路216および試料流路212の対称性は、分配流路214に入る、および/または全Hフィルタ218全体を通じた、等しい流れを確実にする。流れセンサまたは基準試料(添付の図には示されない)が、バルク流量を決定するために含まれ得る。基準試料は、分離流路または補助流路のいずれかの中に導入され得る。
【0062】
さらには、試料は、分離流路214内でCEを介して分離され得、次いで、Hフィルタ218内で拡散サイジングに供され得る。対称性試料流路212および補助流路216、ならびに両方の流路にわたる一定の印加電場は、明確に定義された流量を提供し得る。いくつかの実施形態において、補助キャピラリーはまた、対称性を強化するために試料充填のための交差流路(添付の図には示されない)を含有し得る。
【0063】
デバイス50はまた、試料が試料流路212内への導入に備えて調製され得る試料調製モジュール(図示せず)を含み得る。試料調製モジュールは、試料の濃度が制御されることを可能にするために微小滴定器を含む。試料調製モジュールはまた、試料調製モジュールが、推奨される条件下および時間期間にわたって試料を混合および格納できるように、温度および湿度制御された格納条件を含む。試料調製モジュール内で作成される混合物は、三成分以上の混合物を含み得る。
【0064】
図3は、システム100における使用のための代替のデバイス50を示す。
図3に例証されるデバイス50のバージョンは、多分散試料内の1つまたは複数の成分の、生物物理学的特性、例えば、拡散係数を決定する方法を実行するために構成される。
【0065】
デバイス50は、緩衝液などの補助流体のための補助流路312、および多分散試料を含む流体のための試料流路314を備える。多分散試料は、生体分子であり得る少なくとも1つまたは複数の成分を含む。補助流体流が、分別流路316内へ導入される。1つまたは複数の成分を含む多分散試料が、続いて分別流路316内へ導入され得る。試料および補助流体は、分別流路316内で組み合わされて複合流を作成し得る。
【0066】
複合流は、拡散により2つ以上の分画318,320へと分別される。各分画からの2つ以上の成分は、分離流路322内で成分の分配をもたらすことによって分離され得る。
微小流体デバイス50の使用は、移流(流れ方向に従う)および拡散(等方性)へ向かう成分の運動を低減するための手段を提供する。Hフィルタ321は、異なる溶液の2つの流体流が分別流路316内へ合流することを可能にするために、
図3に示されるように、微小流体デバイス50の一部として提供される。Hフィルタ321はまた、分別流路316の一端に2つの分画318,320を有し、ここで複合流は、各分画318,320へと分けられ得る。分別流路316内の2つの溶液の間で起こる混合のみが、流れ方向に垂直の拡散に起因する。
【0067】
溶液の収集は、2つの分画318,320における分別ステップの後に行われ得る。各分画は、拡散係数に応じてある割合の初期濃度の粒子を含有する。拡散係数は、粒子のサイズ(流体力学的半径)に関連する。
【0068】
直接測定は試料全体の流体力学的半径の平均をもたらすため、この情報は、不均質な試料においては隠される。異なる分画が収集されると、各分画内の成分は、溶液中の親和性プローブおよび/または免疫プローブでラベル化され得る。プローブが溶液内の粒子のサイズを変化させるため、このステップは、好ましくは、Hフィルタの前には実施されない。
【0069】
後続ステップにおいて、分画の各々における成分は、分離流路322の各々においてキャピラリー電気泳動を使用して溶液中で分離され得、1つのキャピラリーが各分画を分離するために使用されるか、2つの別個のキャピラリーが各分画に1つ使用されるかのいずれかである。光学検出器は、各々の分離された溶液中成分を分画ごとに順次に記録するが、2つ以上のキャピラリーが、適切な場合には並列で観察され得る。
【0070】
電気泳動は、核酸、ペプチド、および細胞の分離のための技法である。検体の電荷対サイズ比が電場の印加の際に固体マトリックスにおける遅延により査定されるゲル電気泳動は、最も一般的な技法であるが、マトリックスふるい作用自体が相互作用を邪魔し得るため、これは、弱いタンパク質会合事象の研究には好適ではない。キャピラリー電気泳動(CE)は、流路全体にわたる検体の差動電気泳動移動度および電気浸透流に基づいた検体の時間的な分離を伴う。フリーフロー電気泳動(FFE)においては、試料は、圧力または変位駆動流を通じて平坦な流路全体にわたって移動し、電場の印加の際の分離は、流れの方向に対して垂直である。FFEは、定常状態技法であることから、注入および分離は連続的に実施される。微小流体フリーフロー電気泳動(MFFE)、すなわちFFEの微小流体小型化は、ジュール加熱の効果を低減することによって分離分解能を改善すること、および他の分離技法との安易なオンライン統合という利点を有する。
【0071】
キャピラリー電気泳動を使用した成分の分離は、ラベル化された親和性プローブおよび/または免疫プローブを伴う異なるタンパク質複合体などの2つ以上の成分の移動度の差を使用して行われる。異なるピークが、溶液内の異なるタイプの生体分子の移動度の関数に現れるはずである。
【0072】
分離ステップは、多成分系混合物中の他の成分との関係を含む、成分およびその環境の理解を可能にする天然条件下で実施され得る。後続の分析は、分離された成分の正確な識別および特徴付けを可能にするために変性およびラベル化ステップを含み得る。
【0073】
分離流路322から下流の点において、各分画内の2つ以上の成分の各々の特徴が、光ダイオード、光電子増倍管、または高分解能カメラを用いた蛍光検出技法などの高分解能または高感度検出技法を使用して検出され得る。
【0074】
各分画内の各成分の特徴は、多分散試料内の2つ以上の成分の各々の生物物理学的特性を決定するために比較され得る。
各分画は、別々に収集される。この時点で、成分の生物物理学的特性は、抽出可能である必要はない。次いで、分画は、以下に説明されるような処理ステップにおいてさらに処理され得る。分別ステップの後および分離ステップの前に、ラベル化などの何らかの処理が各分画に施され得る。成分のラベル化は、潜在性もしくは非潜在性ラベル化などの蛍光ラベル化、または親和性プローブおよび/もしくは免疫プローブの使用であり得る。
【0075】
本明細書に説明される蛍光ラベル化手順などの定量的ラベル化手順は、成分の濃度が記録された分析信号から直接的に決定されることを可能にする。
場合によっては、非潜在性ラベルは、それらが目的の成分に装着されてもされなくても同じ蛍光強度を有し得る。例えば、ラベルのおよそ30%が成分に装着され、およそ70%が成分に装着されない場合、100%蛍光が存在する。これは、いかなる装着割合についても同じ信号である。したがって、信号は、いかなる情報も提供しない。本発明の方法では、装着および未装着ラベルは、異なる分離種において別にされる。したがって、30%蛍光を有する1つのピークの検出は、70%蛍光を有する別のピークのさらなる検出が存在することになる。故に、本発明の方法は、成分に装着される非潜在性ラベルの効果的な検出、および各分画内の各々の分離された成分の後続の分析を可能にする。
【0076】
追加的または代替的に、予備濃縮ステップを実施する、すなわち、収集された試料内の成分の効果的な濃度を増加させるために、各分画内へ溶質または溶媒イオン/塩を追加することも可能である。
【0077】
追加された溶質/溶媒は、各分画内の分子または粒子または濃度に影響を及ぼし得る。したがって、分別ステップの後にこのステップを実施することは、たとえタンパク質が修飾されるとしても、成分の関連生物物理学的特性を保つことを助け得る。
【0078】
別の例は、免疫沈降のプルダウンアッセイなど、各分画内の成分の濃度を増加させるための濃度アッセイを使用することである。プルダウンアッセイまたは免疫沈降は、収集のために磁気ビーズを使用して実施され得る。典型的には、濃縮装置からの溶出の際、成分は、変性、消化、または捕捉プローブへの結合に起因して変更される。
【0079】
分画は、いくつかの高分解能分離技法を使用して分離され得る。これは、例えば、ラベル化された免疫プローブには特に重要である。分離は、電気泳動、拡散泳動、pH勾配、磁場などの勾配、および/またはラベル化親和性技法のような間接分離技法に基づき得るが、これらに限定されない。
【0080】
各分画の高分解能分離は、連続して、または並行して(同時に)実施され得る。この分離ステップの結果は、瞬間的であり得、測定は出口において行われる。分離分画もまた、収集され、次いで、後に測定され得る。多数の非常に小さい分離分画は、分離された種を分離されたままにするために迅速に収集され得る。測定は、異なる技法によって行われ得る。各分画内の成分の検出は、例えば、蛍光(自己蛍光、または任意選択のラベル化ステップの助けを伴う)、吸収検出技法、散乱検出技法を使用して光学的に、電磁力的に、電気化学的に行われ得、および/または質量測定であり得る。
【0081】
成分の検出のための検出ゾーンが存在し得る。検出は、分離流路から下流で発生し得る。検出ゾーンは、各分画内の少なくとも1つの成分を分析するための分析または検出デバイスを含み得る。
【0082】
検出または分析デバイスは、特に限定されず、フロー装置と共に使用するのに好適であるデバイス、および特に微小流体デバイスを含む。複数の分析デバイスが、成分の異なる物理的および化学的特徴を決定するために提供され得る。分析デバイスは、順次に、または並列で配置され得る。いくつかの例において、分析デバイスは、水晶振動子マイクロバランスなど、蛍光光度計または乾燥質量測定デバイスであり得る。
【0083】
各分画からの分離結果は比較される。この比較は、分別ステップからの各々の分離された成分の、流体力学的半径などの生物物理学的特性の抽出を可能にする。いくつかの場合において、適切な混合および反応の後、各分画内の成分は比較され得る。
【0084】
成分は、拡散および非拡散曲線を最適化された縮尺係数と交差相関させることによってサイズを計算することによって分析され得る。縮尺係数は、有限要素モデリングまたは分析計算(Hフィルタ幾何学に応じて)により流体力学的半径へと変換され得る。
【0085】
試料流路、補助流路、分別流路、および/または分離流路内の各々の流れの流量は、分別、分離、および分析ステップの間、実質的に一定のレベルに維持され得る。分別、分離、および分析ステップは、安定した流れが各区域の流路内で確立されるときに行われ得る。
【0086】
成分は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくはポリサッカライドであり得るか、またはこれを含み得る。いくつかの実施形態において、成分は、ポリペプチドであるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態において、成分は、タンパク質であるか、またはこれを含む。成分は、多成分系複合物の一部であってもよい。したがって、分離ステップは、成分を他の成分から少なくとも部分的に分離するために使用され得る。例えば、本明細書に説明される技法は、数ある中でも、サイズまたは電荷対サイズ比に基づいた分離を可能にする。いくつかの実施形態において、多成分系複合物は、単量体種、二量体種、および三量体種、または他の高次の凝集物など、タンパク質を含む、成分の凝集物を含む。故に、本明細書に説明される技法は、タンパク質-タンパク質相互作用を分離および分析するために使用され得る。
実施例:免疫プロファイリングのための中和
この例では、個人の免疫プロファイルの特性を、その特定の特性を直接的に尋ねない測定に基づいて外挿することを目指す。この例では、特定の応用は、中和アッセイにおいて直接的に測定されていない突然変異体S1タンパク質に対する個人の中和能力を、野生型S1の個人の中和能力、およびS1の突然変異が、インビトロでACE2受容体に対するその親和性をどのように変化させるかの知識から予測することを求める。
【0087】
アッセイは、以下の式1にまとめられる。
【0088】
【0089】
この文脈では、以下の定義が使用される。
二体相互作用は、2つのタンパク質種、この例では、そのうちの一方が蛍光ラベル化され、他方がそれに対して滴定される2つのタンパク質種の間の「単純な」F1親和性測定である。結果として生じるサイズは、ラベル化された種が複合体を形成すると変化し、ラベル化されていないものは、微小流体拡散サイジングにより測定される明白な流体力学的半径における変化を通じて検出される。
【0090】
頭字語MAAPは、微小流体抗体親和性プロファイリング(Microfluidic Antibody Affinity Profiling)を表す。MAAPアッセイは、蛍光ラベル化されている抗原(例えば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質)によって例示され、一連のヒト血清希釈液がそれに対して測定される。また、血清希釈液だけでなく、ラベル化された種の濃度を変化させることによって、抗原に対する血清中の抗体の親和性およびそれらの濃度の両方が、同時に決定され得る。
【0091】
中和アッセイは、3つの種が反応において役割を果たす競合アッセイである。ラベル化されたACE2受容体は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質と混合され、ヒト血清希釈液がそれに対して測定される。血清中で見つかった抗体が(ラベル化されていない)スパイクタンパク質を結合するために競い合うため、ラベル化されたACE2受容体のますます多くがスパイクタンパク質に結合されずに発見される。ラベル化された種の明白な流体力学的半径におけるこのような低減が検出され、血清中で発見される抗体の中和能力の定量化を可能にする。この反応の3つすべての成分の濃度/希釈を変化させることにより、相互作用親和性およびまた血清中の抗体濃度の両方が同時に決定され得る。しかしながら、二成分相互作用はまた、独立して測定され得、中和は、ACE2およびスパイクタンパク質の固定濃度で実施され得、血清希釈液のみが変化される。
【0092】
以下の実験が含まれる。
1.緩衝液において測定されるACE2に結合するWT S1-二体相互作用
2.緩衝液において測定されるACE2に結合するS1-N501Y-二体相互作用
これらのアッセイは、個人とは独立しており、一回だけ実施される必要がある。それらは、特定の個人とは独立して、この相互作用のための一般モデルを通知する。これらのアッセイにおいて生成されるデータは、これらの相互作用についての親和性、KD、値を決定するために二値モデルにフィッティングされる。
3.患者血清に対するWT S1のMAAPアッセイ
4.患者血清に対するS1-N501YのMAAPアッセイ
5.WT S1、ACE2、および患者血清を用いた中和アッセイ
6.S1-N501Y、ACE2、および患者血清を用いた中和アッセイ
実験3および5は、WT S1を用いて、および任意の他の突然変異体なしに実施される唯一の実験である。実験3および実験5の両方を実施する理由は、実験5の中和アッセイにおいて使用される限られた濃度範囲が存在するためである。原則として、異なるS1、ACE2濃度、および血清希釈液の組み合わせにわたって中和アッセイにおいて多くのデータ点を測定することにより、同じことを達成することが可能である。現在、中和アッセイは、S1およびACE2濃度の両方を固定し、血清希釈液のみを変化させる。いずれは、最初にアッセイ3を実行することなくアッセイ5を実行することが可能になるはずである。同様に、いずれは、アッセイ4を実行することなくアッセイ6を実行することが可能になるはずである。
【0093】
上記の実験1、3、および5によって生成されるデータを使用して、WT中和モデルが、2つのKD値および抗体濃度を1つのフィッティング内で決定するために使用される。
これの後、実験2からのKD値は、突然変異のACE2への結合に対する変化が考慮されるように、中和モデルへと交換される。これにより、中和曲線が、いかなる追加の測定も実施する必要性なしにS1-N501Yに対して患者について予測される。
【0094】
実験4および6は、このモデルリングの出力を検証して、モデル化されたデータが現実と一致することをチェックするために実施される。
この手順に関わる重要な前提は、突然変異がS1タンパク質のための中和抗体の親和性を変化させないということである。典型的には、各々の突然変異は、それが抗体結合に影響がない、またはそれが患者の大半にわたって同様の親和性低減効果を有するという点において、異なる患者にわたって同様に挙動する。モデルは、原則的に、上記のシナリオのうちのいずれかを説明し得る。この仮説は、この重要な前提が保持する妥当な確度を有するために、院内患者血清のセットに対して各突然変異体について検証される必要がある。
【0095】
この例からのデータは、
図4および
図5Aおよび
図5Bに示される。
図4は、実験2、4、および6に基づいた「実際の」中和モデルの比較を示す。これは、///区画で例証される対応する不確実性または信頼度と共に実線で示される。破線曲線は、実験1、3、および5を使用した基線WTモデルに基づいた予測モデルであり、突然変異体S1/ACE2親和性が実験2から交換されている。予測モデルにおける不確実性または信頼度は、\\\\区画に例証される。
【0096】
制御実験データは、
図5Aおよび
図5Bに示される。上の
図4にあるような同じ凡例が使用される。
図5Aにおいて、実験1、3、および5に基づいた「実際の」中和モデルは、1および3にのみ基づいた予測モデルと比較される。
図5Bにおいて、2、4、および6に基づいた「実際の」中和モデルは、2および4にのみ基づいた予測モデルと比較される。N501Y中和データはかなり雑音が多いことに留意されたい。
【0097】
図6を参照すると、試料をデバイス600に装填するための試料ポート611を備えるデバイス600が提供される。デバイス600は、1つまたは複数の生体分子成分を含む試料を細長い分配流路616内へ第1の流量で流すための試料流路612をさらに備え、これは試料ポート611から延びる。補助入口ポート613が、補助流体流を補助流路614内へ装填するために提供される。補助流路614は、補助流体流を第2の流量で細長い分配流路616内へ導入するように構成される。分配流路616は、定常状態分配に達した後に試料流体流から補助流体流への成分の横分配を可能にするように構成される。
【0098】
2つのキャピラリー流路618が、下流に提供され、到達している定常状態流体流の少なくとも一部がキャピラリー流路618の各々の中へ移動するように分配流路616と流体連通状態にある。キャピラリー流路618の各々の一部分は、蛇状または蛇行構成620に配置される。添付の図面において例証されない他の実施形態において、分配流路の下流に提供される3つ以上のキャピラリー流路が存在し得る。
【0099】
出口ポート626が、下流に提供され、キャピラリー流路618と流体連通状態にある。1つまたは複数の検出器を使用した成分の検出および分析は、キャピラリー流路の蛇状または蛇行領域620において、および/または出口ポート626内で実行され得る。
【0100】
いくつかの場合において、検出器(添付の図面には示されない)は、微小流体チップ上のキャピラリー流路618の各々において生体分子成分または各生体分子成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を順次または同時に検出および測定するように構成され得る。追加的または代替的に、検出器は、微小流体チップ上の出口ポート626の各々において成分または各成分の少なくとも1つの生物物理学的特性を順次または同時に検出および測定するように構成され得る。
【0101】
チップは、複数の微小流体回路600を含むために提供され得る。複数の微小流体回路またはデバイス600は、互いに対して平行に配置され得る。微小流体回路または微小流体デバイス600は、試料流体流および/または補助流体流などの1つまたは複数の流体流で充填されるキャピラリーであり得る。複数の測定がチップ上で行われ得る。
【0102】
図7を参照すると、チッププレート704上に存在する複数の微小流体チップ600の各々における流体中の1つまたは複数の成分の1つまたは複数の生物物理学的特性の測定を通信するように構成されるユーザインターフェース702を含む機器700の例が提供される。
【0103】
複数の微小流体チップ600を含むチッププレート704は、どの微小流体チップ600がチッププレート704上で使用されていたかを検出するように動作する機器700内へ挿入されるように構成される。機器は、この情報をユーザに表示するように構成されるディスプレイパネル706を含む。ディスプレイは、各微小流体チップ600に関する情報を提供する。情報は、各微小流体チップ600が使用されていたか否か、およびしたがって、それが次の実験に利用可能であるか否かに関する二値表示であり得る。いくつかの場合において、ディスプレイはまた、実験の間使用中のプレート704の画像を示し得る。
【0104】
機器700はまた、チッププレート704上に位置付けられる、バーコードなどの固有の認証印を検出し、読み取るように構成されるリーダモジュール(添付の図面には示されない)を含み得る。固有の認証コードの他の形態、例えば、固有の数字セット、バッチコード、QRコード、または各チッププレート704に固有の文字および数字の組み合わせが、チッププレート上で使用され得る。代替的に、認証印は、NFCまたはRFIDタグに格納され得る。チッププレート704がその有効期限を過ぎた場合、機器は、この情報をユーザに表示し得る。
【0105】
本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示を考慮して当業者に明白であるものとする。
本明細書で使用される場合、「および/または」は、2つの指定の特徴または構成要素の各々の、他方ありまたはなしでの、特定の開示と見なされるものとする。例えば、「Aおよび/またはB」は、各々が個々に本明細書に明記されるかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々の特定の開示と見なされるものとする。
【0106】
文脈が別途示さない限り、上に明記される特徴の説明および定義は、本発明の任意の特定の態様または実施形態に限定されず、説明されるすべての態様および実施形態に等しく当てはまる。
【0107】
本発明は、いくつかの実施形態を参照して、例として説明されているが、当業者によってさらに理解されるものとする。開示された実施形態に限定されない、および代替の実施形態が、添付の特許請求の範囲に規定されるような発明の範囲から逸脱することなく構築され得る。
【国際調査報告】