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特表2024-509773温熱癌治療のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】温熱癌治療のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
A61M1/36 175
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550644
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022019376
(87)【国際公開番号】W WO2022192282
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,263
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ホグランド、マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ボールヒーズ、マーク イー.
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077DD07
4C077DD18
4C077DD21
4C077EE01
4C077HH18
(57)【要約】
熱癌治療のためのシステム及び方法が開示されている。例えば、システムは、熱交換器、制御モジュール、一次流体送達ライン(FDL)、静脈内カテーテル、および蠕動ポンプを含み得る。制御モジュールは、温度制御された流体を提供するように構成された流体システムを少なくとも含み得る。一次FDLは、温度制御された流体を供給流体として熱交換器に搬送し、戻り流体として流体システムに戻すように構成され得る。静脈内カテーテルは、患者の血液を熱交換器に搬送するように構成された一次管腔と、蠕動ポンプを使用して血液を患者に戻すように搬送するように構成された二次管腔とを含むことができる。また、カテーテルは、患者に癌治療を施す前に患者が温熱状態にあることを確実にするために、患者の深部体温を測定するためのサーミスタを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温熱癌治療のためのシステムであって、
熱交換器と、
温度制御されたシステム流体を提供するように構成された流体システムを少なくとも含む制御モジュールと、
前記温度制御されたシステム流体を供給流体として前記熱交換器に搬送し、戻り流体を前記流体システムに搬送して戻すように構成された一次流体送達ライン(FDL)と、
2つ以上の管腔を含む静脈内カテーテルであって、前記2つ以上の管腔のうちの一次管腔は、患者の血液を前記熱交換器に搬送するように構成され、前記2つ以上の管腔のうちの二次管腔は、前記血液を前記患者に搬送して戻すように構成される、静脈内カテーテルと、
前記患者から前記熱交換器に前記血液を送り出し、前記患者に前記血液を送り出して戻すように構成された蠕動ポンプであって、前記システムは、同時に行われる癌治療のために前記患者に高体温を誘発するように構成されている、蠕動ポンプと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記2つ以上の管腔は、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を患者へ静脈内投与するために構成される三次管腔を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルは、該カテーテルの遠位部分に配置されるとともに、前記患者の深部体温を測定するように構成されたサーミスタを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルは、該カテーテルの近位部分に配置されたサーミスタコネクタをさらに含み、前記サーミスタコネクタは、前記制御モジュールまたは前記サーミスタコネクタと前記制御モジュールとの間の介在デバイスへの有線接続のために構成された電力およびデータコネクタである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記患者の深部体温を測定するように構成されたサーミスタを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項6】
前記熱交換器および前記蠕動ポンプは、前記制御モジュールとは別体の熱交換モジュール内にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記熱交換器および前記蠕動ポンプは、前記制御モジュールに一体化されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステムであって、前記流体システムはさらに、
流体加熱用に構成された加熱器と、
流体冷却用に構成された冷却蒸発器であって、前記加熱器および前記冷却蒸発器は共に、温度制御されたシステム流体を提供するように構成される、冷却蒸発器と、
前記流体システムから前記供給流体を排出するように構成される流体システム出口と、
前記温度制御されたシステム流体を生成し続けるべく、前記流体システムに戻り流体を充填するように構成される流体システム入口と
を備えるシステム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とをさらに含み、前記命令は、前記制御モジュールを用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成され、前記1つ以上の処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って温度制御されたシステム流体の温度を調整するように構成される温度調整処理を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
温熱癌治療のためのシステムであって、
温度制御されたシステム流体を提供するように構成された流体システムを少なくとも含む制御モジュールと、
前記温度制御されたシステム流体を前記流体システムからの供給流体として搬送するとともに、戻り流体を前記流体システムに搬送して戻すように構成された一次流体送達ライン(FDL)と、
患者の身体の1つ以上の部分にそれぞれ配置されるように構成される1つ以上の流体パッドと、
前記患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段であって、前記システムは、同時に行われる癌治療のために前記患者に高体温を誘発するように構成される、深部体温測定手段と
を備えるシステム。
【請求項11】
前記深部体温測定手段は、鼓膜温度計、直腸温度計、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、サーミスタ付きカテーテル、または深部体温のために皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度のための医療用赤外線温度計を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のシステムであって、前記1つ以上の流体パッドの各パッドは、
多層パッド本体であって、
前記流体システムから前記供給流体を搬送するとともに、前記流体システムに前記戻り流体を搬送して戻すように構成される1つ以上の導管を含む導管層と、
前記導管層の上方に設けられ、前記患者の前記身体の前記1つ以上の部分の一部に配置されるように構成される熱伝導性接着層と
を含む多層パッド本体と、
前記導管層に前記供給流体を充填するように構成されたパッド入口を含むパッド入口コネクタと、
前記導管層から戻り流体を排出するように構成されたパッド出口を含むパッド出口コネクタと
を含む、システム。
【請求項13】
前記パッド本体は、前記導管層と前記接着層との間に、前記供給流体を前記導管層内に保持するように構成された不透過性フィルムをさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記接着層は、ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲル、アルギン酸塩ベースのヒドロゲル、キトサンベースのヒドロゲル、コラーゲンベースのヒドロゲル、デキストランベースのヒドロゲル、ヒアルロナンベースのヒドロゲル、キサンタンベースのヒドロゲル、コンニャクベースのヒドロゲル、ゼラチンベースのヒドロゲル、および前記ヒドロゲルのうちの2つ以上の組み合わせから選択されるヒドロゲルを含む、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の流体パッドの各パッドは、前記パッドの使用準備完了状態において前記接着層の上方に設けられた剥離ライナをさらに含み、前記剥離ライナは、前記パッドの使用前に少なくとも前記接着層の完全性を維持するように構成される、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか一項に記載のシステムは、前記供給流体を前記一次FDLから搬送するとともに、前記戻り流体を前記一次FDLに搬送して戻すように構成された、前記1つ以上の流体パッドの各パッド用の二次FDLをさらに備え、前記二次FDLは、前記二次FDLのパッド接続端部で分割され、前記二次FDLの前記パッド接続端部は、前記パッド入口コネクタに流体接続するように構成された二次FDL出口コネクタと、前記パッド出口コネクタに流体接続するように構成された二次FDL入口コネクタとを含む一対の二次FDLコネクタを含む、システム。
【請求項17】
請求項10乃至16のいずれか一項に記載のシステムであって、前記流体システムは、
流体加熱用に構成された加熱器と、
流体冷却用に構成された冷却蒸発器であって、前記加熱器および前記冷却蒸発器は共に、温度制御されたシステム流体を提供するように構成される、冷却蒸発器と、
前記流体システムから前記供給流体を排出するように構成される流体システム出口と、
前記温度制御されたシステム流体を生成し続けるべく、前記流体システムに戻り流体を充填するように構成される流体システム入口と
を備えるシステム。
【請求項18】
前記制御モジュールは、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とをさらに含み、前記命令は、前記制御モジュールを用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成され、前記1つ以上の処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って前記温度制御されたシステム流体の温度を調整するための温度調整処理を含む、請求項10乃至17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
温熱癌治療のためのシステムであって、
制御モジュールであって、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とを含み、前記命令は、複数の熱電デバイスを作動させるための1つ以上の処理を実施するように構成される、制御モジュールと、
一次ケーブルと、
患者の身体の1つ以上の部分にそれぞれ配置されるように構成される1つ以上の熱電パッドであって、前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、少なくとも前記一次ケーブルを介して前記制御モジュールによって動作可能な1つ以上の熱電デバイスを含む、1つ以上の熱電パッドと、
前記患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段であって、前記システムは、同時に行われる癌治療のために患者に高体温を誘発するように構成される、深部体温測定手段と
を備えるシステム。
【請求項20】
前記深部体温測定手段は、鼓膜温度計、直腸温度計、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、サーミスタ付きカテーテル、または深部体温のために皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度のための医療用赤外線温度計を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
請求項19または20に記載のシステムであって、前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、
多層パッド本体を含み、該多層パッド本体は、
前記1つ以上の熱電デバイスを横切って電圧を印加する時に温度変化するように構成される前記1つ以上の熱電デバイスを含む熱電層と、
前記患者の前記身体の前記1つ以上の部分の一部に配置されるように構成される熱電層の上方に設けられた熱伝導性接着層と
前記制御モジュールとの動作可能な接続を確立するように構成されるパッドコネクタと
を含む、システム。
【請求項22】
前記接着層は、ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲル、アルギン酸塩ベースのヒドロゲル、キトサンベースのヒドロゲル、コラーゲンベースのヒドロゲル、デキストランベースのヒドロゲル、ヒアルロナンベースのヒドロゲル、キサンタンベースのヒドロゲル、コンニャクベースのヒドロゲル、ゼラチンベースのヒドロゲル、および前記ヒドロゲルのうちの2つ以上の組み合わせから選択されるヒドロゲルを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、前記パッドの使用準備完了状態において前記接着層の上方に設けられた剥離ライナをさらに含み、前記剥離ライナは、前記パッドの使用前に少なくとも前記接着層の完全性を維持するように構成される、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記1つ以上の処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って前記複数の熱電デバイスの温度を調整するように構成される温度調整処理を含む、請求項19乃至23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
温熱治療は、局所的、局部的、または全身の加熱による疾患の治療である。全身加温は、典型的には、癌を含む転移性疾患の温熱治療のために用意されている。このような全身加温は、多くの場合、単に患者を毛布で包むか、または患者の部屋を加熱することによって実施されるが、他にもより複雑な全身加温の方法が使用されている。全身加温における課題は、温熱治療中に深部体温を測定し維持することである。したがって、この課題に対処するシステムおよび方法が、特に世界中で毎年主要な死因である癌の温熱治療のために必要とされている。
【0002】
本明細書で開示されるのは、温熱癌治療のためのシステム及び方法である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示されるのは、温熱癌治療のためのシステムである。前記システムは、同時に行われる癌治療のために患者に高体温を誘発するように構成される。前記システムは、いくつかの実施形態では、熱交換器、制御モジュール、一次流体送達ライン(FDL:fluid delivery line)、静脈内(IV:intravenous)カテーテル、および蠕動ポンプを含む。前記制御モジュールは、温度制御されたシステム流体を提供するように構成された流体システムを少なくとも含む。前記一次FDLは、前記温度制御されたシステム流体を供給流体として前記熱交換器に搬送するように構成される。また、前記一次FDLは、戻り流体を前記流体システムに搬送して戻すように構成される。前記IVカテーテルは、2つ以上の管腔を含む。前記2つ以上の管腔のうちの一次管腔は、前記患者の血液を前記熱交換器に搬送するように構成される。前記2つ以上の管腔のうちの二次管腔は、前記血液を前記患者に搬送して戻すように構成される。前記蠕動ポンプは、前記血液を前記患者から前記熱交換器に送り出すように構成される。また、前記蠕動ポンプは、前記血液を前記患者に送り出して戻すように構成される。
【0004】
いくつかの実施形態では、前記2つ以上の管腔は三次管腔を含む。前記三次管腔は、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を患者へIV投与するために構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、前記カテーテルは、該カテーテルの遠位部分にサーミスタをさらに含む。前記サーミスタは、前記患者の深部体温を測定するように構成される。
いくつかの実施形態では、前記カテーテルは、該カテーテルの近位部分にサーミスタコネクタをさらに含む。前記サーミスタコネクタは、前記制御モジュールまたは前記サーミスタコネクタと前記制御モジュールとの間の介在デバイスへの有線接続のために構成された電力およびデータコネクタである。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記熱交換器は、前記患者の深部体温を測定するように構成されたサーミスタを含む。
いくつかの実施形態では、前記熱交換器および前記蠕動ポンプは、前記制御モジュールとは別体の熱交換モジュール内にある。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記熱交換器および前記蠕動ポンプは、前記制御モジュールに一体化されている。
いくつかの実施形態では、前記流体システムは、流体加熱用に構成された加熱器と、流体冷却用に構成された冷却蒸発器と、流体システム出口と、流体システム入口とをさらに含む。前記加熱器および前記冷却蒸発器は共に、温度制御されたシステム流体を提供するように構成される。前記流体システム出口は、前記流体システムから前記供給流体を排出するように構成される。前記流体システム入口は、温度制御されたシステム流体を生成し続けるべく、前記流体システムに戻り流体を充填するように構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記制御モジュールは、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とを含み、前記命令は、前記制御モジュールを用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成される。前記1つ以上の処理は、温度調整処理を含む。前記温度調整処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って温度制御されたシステム流体の温度を調整するように構成される。
【0009】
また、本明細書に開示されるのは、温熱癌治療のための別のシステムである。前記システムは、同時に行われる癌治療のために患者に高体温を誘発するように構成される。前記システムは、いくつかの実施形態では、制御モジュールと、一次FDLと、1つ以上の流体パッドと、患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段とを含む。前記制御モジュールは、流体システムを少なくとも含む。前記流体システムは、温度制御されたシステム流体を提供するように構成される。前記一次FDLは、前記温度制御されたシステム流体を供給流体として前記熱交換器に搬送するように構成される。また、前記一次FDLは、戻り流体を前記流体システムに搬送して戻すように構成される。1つ以上の流体パッドは、前記患者の身体の1つ以上の部分にそれぞれ配置されるように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、深部体温測定手段は、鼓膜温度計、直腸温度計、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、サーミスタ付きカテーテル、または深部体温のために皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度のための医療用赤外線温度計を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つ以上の流体パッドの各パッドは、多層パッド本体と、パッド入口コネクタと、パッド出口コネクタとを含む。前記パッド本体は、導管層と、該導管層の上方に設けられた熱伝導性接着層とを含む。前記導管層は、1つ以上の導管を含む。前記1つ以上の導管は、前記流体システムから前記供給流体を搬送するように構成される。また、前記1つ以上の導管は、前記戻り流体を前記流体システムに搬送して戻すように構成される。前記接着層は、前記患者の身体の1つ以上の部分の一部に配置されるように構成される。前記パッド入口コネクタはパッド入口を含む。前記パッド入口は、前記導管層に前記供給流体を充填するように構成される。前記パッド出口コネクタはパッド出口を含む。前記パッド出口は、前記導管層から前記戻り流体を排出するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記パッド本体は、前記導管層と前記接着層との間に不透過性フィルムをさらに含む。前記不透過性フィルムは、前記導管層内に前記供給流体を保持するように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記接着層はヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲル、アルギン酸塩ベースのヒドロゲル、キトサンベースのヒドロゲル、コラーゲンベースのヒドロゲル、デキストランベースのヒドロゲル、ヒアルロナンベースのヒドロゲル、キサンタンベースのヒドロゲル、コンニャクベースのヒドロゲル、ゼラチンベースのヒドロゲル、および前記ヒドロゲルのうちの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の流体パッドの各パッドは、前記パッドの使用準備完了状態において前記接着層の上方に設けられた剥離ライナをさらに含む。前記剥離ライナは、前記パッドの使用前に少なくとも接着層の完全性を維持するように構成される。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記システムは、前記1つ以上の流体パッドの各パッドのための二次FDLをさらに含む。前記二次FDLは、前記一次FDLから前記供給流体を搬送するように構成される。また、前記二次FDLは、前記戻り流体を前記一次FDLに搬送して戻すように構成される。前記二次FDLは、前記二次FDLのパッド接続端において分割されている。前記二次FDLの前記パッド接続端は、一対の二次FDLコネクタを含む。前記一対の二次FDLコネクタは、二次FDL出口コネクタおよび二次FDL入口コネクタを含む。前記二次FDL出口コネクタは、前記パッド入口コネクタに流体接続するように構成されている。前記二次FDL入口コネクタは、前記パッド出口コネクタに流体接続するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記流体システムは、流体加熱用に構成された加熱器と、流体冷却用に構成された冷却蒸発器と、流体システム出口と、流体システム入口とをさらに含む。前記加熱器および前記冷却蒸発器は共に、温度制御されたシステム流体を提供するように構成される。前記流体システム出口は、前記流体システムから前記供給流体を排出するように構成される。前記流体システム入口は、温度制御されたシステム流体を生成し続けるべく、前記流体システムに戻り流体を充填するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記制御モジュールは、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とを含み、前記命令は、前記制御モジュールを用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成される。前記1つ以上の処理は、温度調整処理を含む。前記温度調整処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って温度制御されたシステム流体の温度を調整するように構成される。
【0018】
また、本明細書に開示されるのは、温熱癌治療のための別のシステムである。前記システムは、同時に行われる癌治療のために患者に高体温を誘発するように構成される。前記システムは、いくつかの実施形態では、制御モジュールと、一次ケーブルと、1つ以上の熱電パッドと、前記患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段とを含む。前記制御モジュールは、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、前記一次メモリに記憶された命令とを含み、前記命令は、前記熱電デバイスを作動させるための1つ以上の処理を実施するように構成される。前記1つ以上の熱電パッドは、前記患者の身体の1つ以上の部分にそれぞれ配置されるように構成される。前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、1つ以上の熱電デバイスを含む。前記1つ以上の熱電デバイスは、少なくとも前記一次ケーブルを介して前記制御モジュールによって動作可能である。
【0019】
いくつかの実施形態では、深部体温測定手段は、鼓膜温度計、直腸温度計、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、サーミスタ付きカテーテル、または深部体温のために皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度のための医療用赤外線温度計を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、多層パッド本体と、パッドコネクタとを含む。前記パッド本体は、熱電層と、該熱電層の上方に設けられた熱伝導性接着層とを含む。前記熱電層は、前記1つ以上の熱電デバイスを含む。前記1つ以上の熱電デバイスは、前記1つ以上の熱電デバイスを横切って電圧を印加する時に温度変化するように構成される。前記接着層は、前記患者の身体の1つ以上の部分の一部に配置されるように構成される。前記パッドコネクタは、前記制御モジュールとの動作可能な接続を確立するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記接着層はヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲル、アルギン酸塩ベースのヒドロゲル、キトサンベースのヒドロゲル、コラーゲンベースのヒドロゲル、デキストランベースのヒドロゲル、ヒアルロナンベースのヒドロゲル、キサンタンベースのヒドロゲル、コンニャクベースのヒドロゲル、ゼラチンベースのヒドロゲル、および前記ヒドロゲルのうちの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の熱電パッドの各パッドは、前記パッドの使用準備完了状態において前記接着層の上方に設けられた剥離ライナをさらに含む。前記剥離ライナは、前記パッドの使用前に少なくとも接着層の完全性を維持するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の処理は、温度調整処理を含む。前記温度調整処理は、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、深部体温測定値に従って複数の熱電デバイスの温度を調整するように構成される。
【0024】
また、温熱癌治療のための方法が本明細書に開示される。前記方法は、いくつかの実施形態では、温熱誘発ステップと、展開ステップと、癌治療実施ステップとを含む。前記温熱誘発ステップは、温熱癌治療のためのシステムを用いて患者に高体温を誘発することを含む。前記展開ステップは、前記患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段を展開することを含む。前記展開ステップは、前記システムの制御モジュールが、前記温熱癌治療中の前記患者のためにプログラムされた温度プロファイルからのずれを補償すべく、前記患者の前記深部体温を調節することを可能にする。前記癌治療実施ステップは、前記患者が温熱状態にある間に放射線療法、化学療法、または免疫療法を含む癌治療を施すことによって癌治療を補完することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記展開するステップは、IVカテーテルを前記患者に挿入するステップを含む。前記カテーテルは、該カテーテルの遠位部分に配置され、前記患者の深部体温を測定するように構成されたサーミスタを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記方法は、サーミスタ接続ステップをさらに含む。前記サーミスタ接続ステップは、前記カテーテルのサーミスタコネクタを、前記制御モジュールへ、または前記サーミスタコネクタと前記制御モジュールとの間の介在デバイスへ接続することを含む。前記サーミスタ接続ステップは、前記サーミスタに電力を供給するとともに、前記サーミスタと直列の微小電流計からの微小電流計の測定電流に対応する信号またはデータが前記制御モジュールに通信されることを可能にする。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記温熱誘発ステップは、前記カテーテルの一次管腔を介して前記システムの熱交換器に前記患者の血液を搬送することを含む。また、前記温熱誘発ステップは、前記カテーテルの二次管腔を介して前記血液を前記患者に搬送して戻すことを含む。前記熱交換器は、前記血液と、前記熱交換器に搬送される温度制御されたシステム流体との間で熱を交換するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記癌治療実施ステップは、前記カテーテルの三次管腔を介して前記患者に1つ以上の化学療法薬剤の溶液を静脈内投与することを含む。
いくつかの実施形態では、前記癌治療薬投与ステップは、前記カテーテルの三次管腔を介して前記患者に1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を静脈内投与することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記方法は、パッド配置ステップをさらに含む。前記パッド配置ステップは、前記パッドの多層パッド本体の熱伝導性接着層が前記患者の身体の一部の皮膚と接触した状態で、前記患者の身体の前記一部に前記パッドを配置することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記温熱誘発ステップは、前記接着層を介した熱伝導によって供給流体と前記患者の身体の前記一部との間で熱を交換すべく、前記パッドの導管層に温度制御されたシステム流体の供給流体を充填することを含む。前記供給流体は、流体接続されたFDLの組合せを介して前記制御モジュールの流体システムによって提供される。前記FDLは、二次FDLおよび一次FDLを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記温熱誘発ステップは、前記接着層を介した熱伝導によって1つ以上の熱電デバイスと前記患者の身体の前記一部との間で熱を交換すべく、前記パッドの熱電層の前記1つ以上の熱電デバイスを横切って電圧を印加することを含む。前記電圧は、前記パッドと前記制御モジュールとの間の一次ケーブルを介して前記制御モジュールによって印加される。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記方法は、剥離ライナ除去ステップをさらに含む。前記剥離ライナ除去ステップは、前記接着層を露出させるべく、前記パッド配置ステップの前に前記パッドの剥離ライナを除去することを含む。前記剥離ライナは、前記パッド使用前に少なくとも接着層の完全性を維持するように構成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記展開ステップは、鼓膜温度計、直腸温度計、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、サーミスタ付きカテーテル、または深部体温のために皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度のための医療用赤外線温度計を展開することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記癌治療薬実施ステップは、前記カテーテルを介して前記患者に1つ以上の化学療法薬剤の溶液を静脈内投与することを含む。
いくつかの実施形態では、前記癌治療薬投与ステップは、前記カテーテルを介して前記患者に1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を静脈内投与することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記方法は、正常体温誘発ステップをさらに含む。前記正常体温誘発ステップは、前記癌治療実施ステップ後に前記患者に正常体温を誘発することを含む。
【0036】
本明細書で提供される概念のこのよう特徴および他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に記載する添付の図面および以下の説明を考慮して、当業者にとってより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】いくつかの実施形態による温熱癌治療のためのシステムを示す。
図2】いくつかの実施形態による温熱癌治療のための別のシステムを示す。
図3】いくつかの実施形態による制御モジュールの流体システムを示す。
図4A】いくつかの実施形態による、患者の胴体用の左側および右側流体パッドを示す。
図4B】いくつかの実施形態による、患者の脚用の左側および右側流体パッドを示す。
図5】いくつかの実施形態による、流体パッドの多層パッド本体を示す。
図6】いくつかの実施形態による、温熱癌治療のためのさらに別のシステムを示す。
図7】いくつかの実施形態による、熱電パッドの多層パッド本体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択で、本明細書に開示される他の多数の実施形態のいずれかの特徴と組み合わせるか、または置換することができる特徴を有することができることも理解されたい。
【0039】
本明細書で使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、用語は、本明細書で提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般に、複数の特徴または複数のステップのグループ内の異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用され、連続的な限定または数値制限を提供するものではない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。加えて、前述の特徴またはステップのいずれかは、1つまたは複数の特徴もしくはステップをさらに含むことができる。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」、などのラベルは、便宜上使用されており、例えば、特定の固定位置、向き、又は方向を意味するものではない。代わりに、そのような表記は、例えば、相対的な位置、向き、又は方向を反映するために使用される。単数形の「一」、「1つ」、および「前記」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の参照も含む。
【0040】
他に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
上述したように、温熱治療は、局所的、局部的、または全身の加熱による疾患の治療である。全身加温は、典型的には、癌を含む転移性疾患の温熱治療のために用意されている。このような全身加温は、多くの場合、単に患者を毛布で包むか、または患者の部屋を加熱することによって実施されるが、他にもより複雑な全身加温の方法が使用されている。全身加温における課題は、温熱治療中に深部体温を測定し維持することである。したがって、この課題に対処するシステムおよび方法が、特に世界中で毎年主要な死因である癌の温熱治療のために必要とされている。
【0041】
本明細書で開示されるのは、温熱癌治療のためのシステム及び方法である。しかしながら、癌以外の疾患を有する患者は、温熱状態にある間にこれらの疾患の治療から利益を得ることができることを理解すべきである。例えば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、ライム病等の細菌性疾患を治療するための1つ以上の抗生剤の溶液のIV投与のために、患者に高体温を誘発するように適合されてもよい。別の例では、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、ウイルス性疾患を治療するための1つ以上の抗ウイルス剤の溶液のIV投与のために、患者に高体温を誘発するように適合されてもよい。
【0042】
温熱癌治療のためのシステム
図1および図2は、いくつかの実施形態による、温熱癌治療のためのシステム100および200を示す。
【0043】
図示されるように、システム100および200の各システムは、癌治療のために患者に高体温を誘発するため、または患者を正常体温の状態に戻すための温度制御されたシステム流体を提供するように構成された流体システム104(図3参照)を含む制御モジュール102を含むことができる。システム100または200の少なくとも1つの一次FDL106は、温度制御されたシステム流体を供給流体として1つ以上の下流デバイス(例えば、熱交換器140または以下に記載される1つ以上の流体パッド170)に搬送するとともに、戻り流体を流体システム104に搬送して戻すように構成され得る。システム100および200の各システムは、システム100または200に接続されている間に患者の深部体温を測定するために、本明細書に記載のカテーテル148のような制御モジュール102に直接的にまたは間接的に通信可能に結合された深部体温測定手段(例えば、サーミスタ146を有する熱交換器140などのサーミスタ付き熱交換器、カテーテル148などのサーミスタチップ付きカテーテル、鼓膜温度計、直腸温度計、サーミスタチップ付き留置尿道カテーテル、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、深部体温用の皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度用の医療用赤外線温度計など)をさらに含むことができる。システム100および200の各システムは、患者に高体温を誘発するために使用される1つまたは複数の下流デバイスにおいて他のシステムと異なる。したがって、システム100および200の各システムに共通の特徴の説明を以下に記載し、その後、主にシステム100に見られる特徴を説明した後、システム200に見られる特徴を説明する。
【0044】
制御モジュール102は、制御モジュール102を操作するためのタッチスクリーンとして構成された一体型表示画面を有するコンソール108を含むことができる。コンソール108は、1つ以上のプロセッサと、一次及び二次メモリと、一次メモリに記憶された命令とを含むことができ、該命令は、制御モジュール102を用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成される。例えば、1つ以上の処理は、温度調整処理を含み得る。温度調整処理は、温熱状態(例えば、摂氏38.3度(華氏101.0度)乃至摂氏39.4度(華氏103.0度)、摂氏37.2度(摂氏99.0度)乃至摂氏40.0度(華氏104.0度)、または10分の1度単位のその間の温度)を達成するか、温熱状態を維持するか、または患者を正常体温状態に戻すかにかかわらず、温熱癌治療中の患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、患者の深部体温測定値に従って温度制御されたシステム流体の温度を調整するように構成される。
【0045】
制御モジュール102は、該制御モジュール102をポール上に都合よく取り付けることができるように、IVポールカート、IVポールスタンドなどのポールを内部に受容するように構成されたチャネル109を含むことができる。
【0046】
図3は、いくつかの実施形態による制御モジュール102の流体システム104を示す。
流体システム104は、冷却回路110と、混合回路112と、温度制御されたシステム流体を提供するための循環回路114とを含むことができる。
【0047】
冷却回路110は、流体(例えば、水、エチレングリコール、水とエチレングリコールとの組み合わせなど)を冷却して冷却流体を生成するように構成することができ、この冷却流体は、次に、以下に説明する混合タンク122内の混合流体と混合されて、患者に高体温を誘発もしくは維持するため、または患者を正常体温の状態に戻すための適切な温度を有する供給流体を生成するためのものとすることができる。冷却回路110は、該冷却回路110を通過するシステム流体を冷却するように構成された冷却蒸発器116を含むことができる。冷却蒸発器116による冷却のためのシステム流体は、冷却回路110の冷却ポンプ120を使用して冷却タンク118によって提供される。
【0048】
混合回路112は、冷却タンク118からの冷却された流体の過剰分を混合回路112の混合タンク122内の混合流体と混合するように構成され得る。混合回路112は、混合流体を加熱して加熱流体を生成するように構成されたヒータ124を混合タンク122内に含むことができ、この加熱流体は、混合タンク122内で冷却流体と混合して、患者に高体温を誘発もしくは維持するため、または患者を正常体温の状態に戻すための適切な温度を有する供給流体を生成するためのものとすることができる。また、混合回路112は、オーバーフロータンク126および混合ポンプ128を含むことができる。混合ポンプ128は、システム流体を混合タンク122から冷却タンク118に送り出して、冷却された流体及び混合タンク122のための冷却された流体の過剰分を生成するように構成され得る。
【0049】
循環回路114は、システム流体がそのために適切な温度であるときに、患者に高体温を誘発もしくは維持するために、または患者を正常体温の状態に戻すために、システム流体を循環させるように構成され得る。そのような構成は、供給流体を流体システム104から1つ以上の下流デバイスに排出するように構成されたマニホールド132の出口130を含むことができる。また、そのような構成は、供給流体を生成し続けるために、1つ以上の下流デバイスからの戻り流体を流体システム104に充填するように構成されたマニホールド132の入口134を含むことができる。循環回路114は、システム流体を循環させるために循環回路114の流量計138によって直接的または間接的に制御される循環ポンプ136を含むことができる。
【0050】
システム100または200は、注入ポンプ139をさらに含むことができる。注入ポンプ139は、以下に記載される1つ以上の二次FDL150のうちの1つの二次FDLを介して、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤(例えば、免疫調節薬)の溶液を患者にIV投与するように構成され得る。注入ポンプ139は、1時間当たり0.1mLという少量の溶液を患者に連続的に投与するか、溶液のボーラスを患者に周期的に投与するか、またはそれらの組み合わせ(例えば、特定の量の溶液を患者に経時的に連続的に投与し、同時間に溶液の追加の周期的ボーラスを患者に投与する)ように構成され得る。
【0051】
図1を参照すると、システム100は、熱交換器140および蠕動ポンプ142、ならびに以下に記載されるカテーテル148および1つ以上の二次FDL150をさらに含むことができる。
【0052】
熱交換器140および蠕動ポンプ142は、制御モジュール102に一体化することができ、または熱交換器140および蠕動ポンプ142は、制御モジュール102とは別体の熱交換モジュール144に一体化することができる。制御モジュール102に一体化されている熱交換器140および蠕動ポンプ142は、温熱癌治療のための1つの便利なユニット(すなわち、制御モジュール102)を提供する。しかしながら、熱交換器140および蠕動ポンプ142が別体の熱交換モジュール144に一体化されることにより、熱交換モジュール144を、即ち蠕動ポンプ142を患者のより近くに配置することが可能になるため、1つ以上の二次FDL150の配線の長さ、および蠕動ポンプ142のポンプ機構の固有の脈動が低減される。
【0053】
熱交換器140は、流体システム104によって提供される供給流体と、カテーテル148によって提供される患者の血液との間で、1つ以上の二次FDL150を介して熱を交換するように構成され得る。熱交換器140は、平行流、向流、または直交流のために構成されたシェルアンドチューブ型熱交換器であり得る。しかしながら、熱交換器140は、シェルアンドチューブ型熱交換器に限定されないことを理解されたい。実際、熱交換器140は、患者の血液が、閉鎖された、1度のみ使用される流体接続システム内に収容される場合、多数の他の熱交換器のうちの任意の熱交換器であってもよい。
【0054】
蠕動ポンプ142は、患者から熱交換器140に血液を送り出すとともに、1つ以上の二次FDL150を介して患者に血液を送り出して戻すように構成することができる。蠕動ポンプ142は、1つ以上の二次FDL150のような1度のみ使用される使い捨て機器とは対照的に、複数回使用される機器であるため、蠕動ポンプ142は、異なる患者のために1つ以上の二次FDL150を容易に切り替えるように構成され得る。
【0055】
システム100は、カテーテル148が患者の静脈内に配置されたときに患者の深部体温を測定するように構成された熱交換器140内に配置されたサーミスタ146または一対のサーミスタをさらに含むことができる。例えば、サーミスタ146およびサーミスタ146と直列の微小電流計は、流入血液によって患者の深部体温を測定するために、熱交換器140内の熱交換器140の血液入口またはその付近に配置され得る。一対のサーミスタが存在する場合、一対のサーミスタのうちの一方のサーミスタは、流入血液によって患者の深部体温を測定するために熱交換器140の血液入口またはその付近に配置され得、一対のサーミスタのうちの他方のサーミスタは、流出血液の温度を測定するために熱交換器140の血液出口に配置され得る。一対のサーミスタの各サーミスタは微小電流計と直列であるため、一対の微小電流計の各微小電流計は、同様に、熱交換器140の血液入口および血液出口に、またはその近くにそれぞれ配置される。有利には、一対のサーミスタについて、流入血液の温度および流出血液の温度を使用して、患者が所望の温熱状態を達成することからどれだけずれているかを瞬時に示すための温度差ΔTを決定することができる。加えて、上述の制御モジュール102の温度調節処理は、患者が所望の温熱状態をいつ達成するかを判断するために、例えば、ニュートンの加熱の法則に従って、経時的な温度差ΔT(ΔT/t)を利用することができる。その後、温度制御されたシステム流体の温度を必要に応じて上昇または低下させて、患者が所望の体温上昇状態に達するのを早めたり遅らせたりすることができる。
【0056】
システム100は、代替的に又は追加的に、サーミスタ164がカテーテル148内に存在する場合、カテーテル側サーミスタコネクタ168への直接的又は間接的な有線接続のために構成された制御モジュール側サーミスタコネクタ147を含み得る。サーミスタコネクタ147は、カテーテル148のサーミスタ164に電力を供給するか、又はサーミスタ164と通信する(例えば、サーミスタ164の測定電流に対応する信号又はデータを受信する)ように構成され得る。代替として、制御モジュール102は、サーミスタ164と通信するために、制御モジュール102とカテーテル148との間の介在無線デバイスへ無線接続するように構成される、無線モジュールを含む。そのような実施形態では、介在無線デバイスは、カテーテル148のサーミスタに給電するように構成され得る。
【0057】
図2を参照すると、システム200は、以下に説明するように、1つ以上の流体パッド170および1つ以上の二次FDL172をさらに含むことができる。
図6は、いくつかの実施形態による、温熱癌治療のためのシステム600を示す。
【0058】
図示のように、システム600は、癌治療のために患者に高体温を誘発するか、または患者を正常体温の状態に戻すように構成された制御モジュール602を含むことができる。システム600の一次ケーブル606は、任意選択で以下に記載される1つ以上の二次ケーブル672と共に、1つ以上の下流デバイス(例えば、以下に記載される1つ以上の熱電パッド670)に電力を供給するかまたは制御するように構成され得る。システム600は、システム600に接続されている間に患者の深部体温を測定するために、本明細書に記載のカテーテル148のような制御モジュール602に直接的にまたは間接的に通信可能に結合された深部体温測定手段(例えば、サーミスタ146を有する熱交換器140などのサーミスタ付き熱交換器、カテーテル148などのサーミスタチップ付きカテーテル、鼓膜温度計、直腸温度計、サーミスタチップ付き留置尿道カテーテル、鼻咽頭温度プローブ、食道温度プローブ、深部体温用の皮膚位置および周囲温度で調整された皮膚温度用の医療用赤外線温度計など)をさらに含むことができる。
【0059】
制御モジュール102のように、制御モジュール602は、制御モジュール602を操作するためのタッチスクリーンとして構成された一体型表示画面を有するコンソール608を含むことができる。コンソール608は、1つ以上のプロセッサと、一次メモリと、該一次メモリに記憶された命令とを含み、該命令は、以下に説明される1つ以上の熱電パッド670のような複数の熱電デバイスを作動させることを含む、制御モジュール602を用いた温熱癌治療のための1つ以上の処理を実施するように構成される。また、1つ以上の処理は、温度調整処理を含み得る。温度調整処理は、温熱状態(例えば、38.3℃(101.0°F)乃至39.4℃(103.0°F)、37.2℃(99.0°F)乃至40.0℃(104.0°F)、または10分の1度単位のその間の温度)を達成するか、温熱を維持するか、または患者を正常体温状態に戻すかにかかわらず、温熱癌治療中の患者のためにプログラムされた温度プロファイルからの任意のずれを補償するために、患者の深部体温測定値に従って複数の熱電デバイスの温度を調整するように構成される。
【0060】
制御モジュール102のように、制御モジュール602は、該制御モジュール602をポール上に都合よく取り付けることができるように、IVポールカート、IVポールスタンドなどのポールを内部に受容するように構成されたチャネル609を含むことができる。
【0061】
システム600は、注入ポンプ139をさらに含むことができる。システム100および200について上述したように、注入ポンプ139は、上述した1つ以上の二次FDL150のうちの1つの二次FDLを介して、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤(例えば、免疫調節剤)の溶液を患者にIV投与するように構成され得る。また、注入ポンプ139は、1時間当たり0.1mLという少量の溶液を患者に連続的に投与するか、溶液のボーラスを患者に周期的に投与するか、またはそれらの組み合わせ(例えば、特定の量の溶液を患者に経時的に連続的に投与し、同時間に溶液の追加の周期的ボーラスを患者に投与する)ように構成され得る。
【0062】
システム600は、以下に記載される1つ以上の熱電パッド670をさらに含むことができる。
以下に記載されるカテーテル148および1つ以上の二次FDL150は、複数回使用される資本的設備とは対照的に、1回のみ使用される使い捨てデバイスであるが、これらは、本開示の目的のために上述されるシステム100の一部と見なされ得ることを理解されたい。以下に記載される1つ以上の流体パッド170および1つ以上の二次FDL172も、1回のみ使用される使い捨てデバイスであり、それらは、同様に、本開示の目的のために上述されるシステム200の一部と見なされ得る。同様に、以下に記載される1つ以上の熱電パッド670は、1回のみ使用される使い捨てデバイスであるが、本開示の目的のために上述されるシステム600の一部と見なされ得る。
【0063】
温熱癌治療のためのシステム及び方法
図1は、いくつかの実施形態による、IVカテーテル148および1つ以上の二次FDL150を含む、温熱癌治療のためのシステム100を示す。
【0064】
図示されるように、カテーテル148は、ハブ152と、ハブ152から遠位方向に延びるカテーテルチューブ154と、ハブ152から近位方向に延びるいくつかの延長レッグ156とを含むことができる。カテーテル148は、以下に説明するように、少なくとも患者の血を輸送するように構成されているため、カテーテル148は、1回のみ使用される使い捨てのカテーテルとすることができる。
【0065】
ハブ152は、カテーテルチューブ154の近位部分をハブ152の遠位部分の穴に挿入することなどによって、カテーテルチューブ154の近位部分に連結され得る。また、図示されていないが、ハブ152は、該ハブ152の近位部分に延長レッグ156の数に対応する数の複数のボアを含み得る。ハブ152の遠位部分に位置する複数のボアは、複数の延長レッグ156が複数のボアの中への挿入を受け入れるように構成され得る。
【0066】
ハブ152は、カテーテル148を通って延びる複数の管腔に従って分岐され得る。例えば、ハブ152は、二管腔カテーテル用に二股に分岐するか、または三管腔カテーテル用に三股に分岐してもよい。選択された製造方法に応じて、ハブ152は、カテーテルチューブ154の複数のカテーテルチューブ管腔を複数の延長レッグ156の複数の延長レッグ管腔に流体接続するように構成されたハブ152を通って長手方向に延びる複数の流体経路用の複数のコアピンの上に成形され得る。あるいは、ハブ152は、カテーテルチューブ154の複数のカテーテルチューブ管腔を複数の延長レッグ156の複数の延長レッグ管腔に流体接続するように構成されたハブ152を通って長手方向に延びる複数のカニューレの上に成形されてもよい。
【0067】
複数の延長レッグ156は、それらの遠位部分を経由してハブ152から延びることができる。延長レッグ156の数は、カテーテル148を通って延びる管腔の数と同じであり得る。例えば、カテーテル148が二管腔カテーテルである場合、2つの延長レッグがハブ152から延びることができる。カテーテル148が三管腔カテーテルである場合、3つの延長レッグがハブ152から延びることができる。カテーテル148が四管腔カテーテルである場合、4つの延長レッグがハブ152から延びることができる。
【0068】
また、カテーテル148は、以下に記載される1つ以上の二次FDL172をカテーテル148に流体接続するための複数のルアーコネクタ158を含むことができる。複数の延長レッグ156の各延長レッグは、延長レッグの近位部分に連結された複数のルアーコネクタ158のうちの1つのルアーコネクタを含み得る。任意選択的に、以下に記載されるように、複数のルアーコネクタ158のうちの1つのルアーコネクタは、代わりにサーミスタコネクタ168である。上記を考慮すると、任意のサーミスタコネクタ168を含むルアーコネクタ158の数は、延長レッグ156の数に等しくすることができ、延長レッグ156の数は、カテーテル148を通って延びる管腔の数に等しくすることができる。例えば、カテーテル148が二管腔カテーテルである場合、2つの延長レッグがハブ152から延びることができ、2つのルアーコネクタが2つの延長レッグにそれぞれ連結され得る。カテーテル148が三管腔カテーテルである場合、3つの延長レッグがハブ152から延びることができ、3つのルアーコネクタが3つの延長レッグにそれぞれ連結され得る。カテーテル148が四管腔カテーテルである場合、4つの延長レッグがハブ152から延びることができ、4つのルアーコネクタが4つの延長レッグにそれぞれ連結され得る。
【0069】
カテーテル148は、上述したような二管腔カテーテルまたは三管腔カテーテル、もしくは四管腔カテーテル、五管腔カテーテル、六管腔カテーテルなどの多管腔カテーテルであってもよい。カテーテル148が、図示されるような三管腔カテーテルとして構成される場合、カテーテル148は、一次管腔、二次管腔、および三次管腔を含むことができる。遠位管腔とみなすことができる一次管腔は、複数のルアーコネクタ158のうちの第1のルアーコネクタの近位端の開口部からカテーテルチューブ154の先端または遠位端の開口部まで延びることができる。中間管腔とみなすことができる二次ルーメンは、複数のルアーコネクタ158のうちの第2のルアーコネクタの近位端の開口部からカテーテルチューブ154の遠位部分のアイレット160まで延びることができる。近位管腔とみなすことができる三次管腔は、複数のルアーコネクタ158のうちの第3のルアーコネクタの近位端の開口部からカテーテルチューブ154の遠位部分のアイレット160まで延びることができる。
【0070】
二管腔または三管腔カテーテルなどの多管腔カテーテルである場合、カテーテル148の一次管腔は、患者からの血液を熱交換器140に運ぶように構成され得る。そのようなカテーテルの二次管腔は、血液を熱交換器140から患者に搬送して戻すように構成され得る。カテーテル148の二管腔構成に関して、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤(例えば、免疫調節剤)の溶液の患者へのIV投与は、別のIVデバイスによって行う必要がある。しかしながら、カテーテル148の三管腔構成に関して、三次管腔は、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液の患者へのIV投与のために構成されることができ、これにより、1つのIVデバイスのみが必要とされるという点で有利である。上記にもかかわらず、カテーテル148の管腔は、臨床医が、患者の血液を熱交換器140へ搬送したり、熱交換器140から搬送したりするためにどの管腔を使用すべきか選択することができるように、および1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を患者に投与するために使用すべき管腔を選択することができるように構成され得ることを理解されたい。
【0071】
また、カテーテル148は、カテーテル148の遠位部分にサーミスタ164を含むことができる。例えば、サーミスタ164は、カテーテルチューブ154の壁に配置され得る。サーミスタ164は、カテーテル148が患者の静脈内に配置されたときに患者の深部体温を測定するように構成され得る。サーミスタ164と直列の微小電流計に沿って、ハブ152からサーミスタ164まで遠位方向に延びる電気リード線も、カテーテルチューブ154の壁に配置され得るが、電気リード線および微小電流計は、代替的に、それ専用のカテーテル148の管腔に配置され得る。いずれにしても、ハブ152から近位方向に延びる電気リード線の残りの部分は、延長リード線166またはカテーテル148の近位部分内のサーミスタコネクタ168で終端する複数の延長レッグ156のうちの1つの延長レッグに配置され得る。
【0072】
サーミスタコネクタ168は、制御モジュール102またはサーミスタコネクタ168と制御モジュール102との間の介在デバイス(例えば、専用デバイス、専用ソフトウェアアプリケーションを含むスマートフォンなど)への有線接続のために構成された電力およびデータコネクタであり得る。例えば、サーミスタコネクタ168は、サーミスタ164に電力を供給するとともに、微小電流計からの測定電流に対応する信号を通信するために、制御モジュール102に直接接続するように、または介在ケーブルを介して制御モジュール102に間接的に接続するように構成され得る。あるいは、サーミスタコネクタ168は、サーミスタ164に電力を供給するとともにし、微小電流計からの測定電流に対応する信号を介在デバイスを介して制御モジュール102に無線通信するために、介在デバイスに直接接続するように、または介在ケーブルを介して介在デバイスに間接的に接続するように構成され得る。
【0073】
1つ以上の二次FDL150は、患者の血液、または患者のための1つ以上の化学療法薬剤もしくは1つ以上の免疫療法薬剤(例えば、免疫調節剤)の溶液を搬送するように構成され得る。図示されるように、1つ以上のFDL150のうちの1つの二次FDLは、患者の血液をカテーテル148から(例えば、カテーテル148の一次管腔から)熱交換器140に搬送するように構成され得る。1つ以上の二次FDL150のうちの同じまたは異なる二次FDLは、患者の血液を熱交換器140からカテーテル148に(例えば、カテーテル148の中間管腔に)搬送するように構成され得る。1つ以上のFDL150のうちの別のFDLは、1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を、注入ポンプ139(存在する場合)またはIV注入バッグ(図示せず)から患者に搬送するように構成され得る。
【0074】
温熱癌治療のためのパッド
図1は、いくつかの実施形態による、流体パッド170および1つ以上の二次FDL172を含む、温熱癌治療のためのシステム200を示す。図4Aおよび図4Bは、いくつかの実施形態による、患者の胴体および脚のための1つ以上の流体パッド170のうちの左側パッドおよび右側パッドをそれぞれ示す。しかしながら、1つ以上の流体パッド170は、胴体または脚に限らず、そのような患者の身体の任意の1つ以上の各部位に配置されるように構成され得る。図5は、いくつかの実施形態による、1つ以上の流体パッド170のうちの1つのパッドの多層パッド本体174を示す。
【0075】
1つ以上の流体パッド170のうちの1つのパッドは、パッド本体174と、パッド本体174の上方に設けられた剥離ライナ176と、パッド入口コネクタ(図示せず)と、パッド出口コネクタ(図示せず)とを含むことができる。このようなパッドは、患者の身体の一部に対する放射線治療のために患者の身体の一部を局所的に加熱するような局所的加熱用に構成され得る。あるいは、1つ以上の流体パッド170のうちの複数は、患者への1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液のIV投与のための全身加熱のために構成され得る。
【0076】
パッド本体174は、導管層178と、該導管層178の上方に設けられた不透過性フィルム180と、該不透過性フィルム180及び導管層178の上方に設けられた熱伝導性接着層182とを含むことができる。
【0077】
導管層178は、導管層178から不透過性フィルム180に向かって延びる周壁184及び1つ以上の内壁186を含むことができる。不透過性フィルム180と共に、導管層178の周壁184及び1つ以上の内壁186は、1つ以上の導管188を形成し、導管層178を通して流体システム104から供給流体を搬送するとともに、流体システム104に戻り流体を搬送して戻すように構成される。1つ以上の導管188において導管層178から不透過性フィルム180に向かって延びる複数の突出部190は、供給流体が導管層178を通って搬送されるときに供給流体の均一な流れを促進するように構成され得る。そのような導管層は、絶縁ポリマー(例えば、発泡体)の単一片であり得る。
【0078】
不透過性フィルム180は、供給流体が導管層178を通って搬送されるときに、供給流体を導管層178内に保持するように構成され得る。加えて、不透過性フィルム180は、導管層178と接着層182との間の効率的なエネルギー伝達を可能にするように構成され得る。不透過性フィルム180が針のような鋭い物体によって破られた場合、不透過性フィルム180は、ゴムのセプタムのように自己封止するように構成され得る。
【0079】
接着層182は、患者の身体の一部(例えば、胴体、脚など)の皮膚S(図5参照)上に配置されて、接着層182を介して直接熱伝導するように構成され得る。接着層182は、より良好な熱伝導のために患者に適合して接着するように構成され得るが、患者への接着層182の粘着性は、パッドの除去の際に患者を刺激または創傷することを回避するように最適化され得る。
【0080】
接着層182は、熱伝導率を高めるための任意の添加剤を有するヒドロゲルまたはシリコーンを含むことができる。ヒドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)ヒドロゲル、アルギン酸塩ベースのヒドロゲル、キトサンベースのヒドロゲル、コラーゲンベースのヒドロゲル、デキストランベースのヒドロゲル、ヒアルロナンベースのヒドロゲル、キサンタンベースのヒドロゲル、コンニャクベースのヒドロゲル、ゼラチンベースのヒドロゲル、および前記ヒドロゲルのうちの2つ以上の組み合わせから選択され得る。
【0081】
剥離ライナ176は、パッドの使用準備完了状態で接着層182の上方にあり得る。剥離ライナ176は、パッドの使用前に少なくとも接着層182の完全性を維持するように構成され得る。
【0082】
パッド入口コネクタおよびパッド出口コネクタは、それぞれ、図4Aおよび図4Bにおける二次FDL出口コネクタ192およびその上方の二次FDL入口コネクタ194から推測され得る。パッド入口コネクタは、導管層178に供給流体を充填するように構成されたパッド入口を含むことができる。パッド出口コネクタは、導管層178から戻り流体を排出するように構成されたパッド出口を含むことができる。
【0083】
1つ以上の二次FDL172の各二次FDLは、販売時に1つ以上の流体パッド170のうちの1つのパッドに事前に流体接続され得る。実際、二次FDLは、二次FDLのパッド接続端部で分割され得るものであり、二次FDLのパッド接続端部は、1つ以上の流体パッド170のうちの1つのパッドに接続するように構成された一対の二次FDLコネクタを含むことができる。一対の二次FDLコネクタのうちの1つの二次FDL入口コネクタ192は、販売時にパッドのパッド出口コネクタに事前に流体接続され得る。一対の二次FDLコネクタのうちの1つの二次FDL出口コネクタ194は、販売時にパッドの入口コネクタに事前に流体接続され得る。とは言え、1つ以上の二次FDL172は、販売時に1つ以上の流体パッド170に事前に流体接続される必要はない。上記にかかわらず、システム200の残りの部分に流体接続されると、1つ以上の二次FDL172の各二次FDLは、一次FDL106を介して流体システム104から供給流体を該二次FDLの供給管腔内で搬送することができる。同様に、1つ以上の二次FDL172の各二次FDLは、一次FDL106を介して流体システム104から戻り流体を該二次FDLの戻り管腔内で搬送することができる。
【0084】
図6は、いくつかの実施形態による、1つ以上の熱電パッド670および1つ以上の二次ケーブル672を含む、温熱癌治療のためのシステム600を示す。図4Aおよび図4Bは、いくつかの実施形態による、患者の胴体および脚のための1つ以上の流体パッド170のうちの左側パッドおよび右側パッドをそれぞれ示すが、1つ以上の熱電パッド670は、同様に、図6に示されるように、患者の胴体および脚のためにそれぞれ構成され得る。しかしながら、1つ以上の熱電パッド670は、胴体または脚に限らず、そのような患者の身体の任意の1つ以上の各部位に配置されるように構成され得る。図7は、いくつかの実施形態による、1つ以上の熱電パッド670のうちの1つのパッドの多層パッド本体674を示す。
【0085】
1つ以上の流体パッド170のうちの1つのパッドと同様に、1つ以上の熱電パッド670のうちの1つのパッドは、パッド本体674と、パッド本体674の上方に設けられた剥離ライナ176と、パッドコネクタ(図示せず)とを含むことができる。このようなパッドは、患者の身体の一部に対する放射線治療のために患者の身体の一部を局所的に加熱するような局所的加熱用に構成され得る。あるいは、1つ以上の熱電パッド670のうちの複数は、患者への1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液のIV投与のための全身加熱のために構成され得る。
【0086】
パッド本体674は、熱電層678と、該熱電層678の上方に設けられた不透過性フィルム180と、該不透過性フィルム180及び熱電層678の上方に設けられた熱伝導性接着層182とを含むことができる。
【0087】
熱電層678は、該熱電層678内に配置された1つ以上の熱電デバイス690を含むことができる。1つ以上の熱電デバイス690は、該1つ以上の熱電デバイス690を横切って電圧を印加する時に温度変化するように構成される。
【0088】
不透過性フィルム180は、熱電層678を接着層182から分離し、電気的に絶縁するように構成され得る。加えて、不透過性フィルム180は、熱電層678と接着層182との間の効率的なエネルギー伝達を可能にするように構成され得る。
【0089】
上述したように、接着層182は、患者の身体の一部(例えば、胴体、脚など)の皮膚S(図7参照)上に配置されて、接着層182を介して直接熱伝導するように構成され得る。
【0090】
上述したように、剥離ライナ176は、パッドの使用準備完了状態で接着層182の上方にあり得る。剥離ライナ176は、パッドの使用前に少なくとも接着層182の完全性を維持するように構成され得る。
【0091】
パッドコネクタは、図7の二次ケーブルコネクタ692から推測され得る。パッドコネクタは、二次ケーブルコネクタ692のプラグを挿入可能に構成されたレセプタクルを含むことができる。
【0092】
1つ以上の二次ケーブル672の各ケーブルは、販売時に1つ以上の熱電パッド670のうちの1つのパッドに作動可能に事前に接続され得る。実際、二次ケーブルは、二次ケーブルのパッド接続端部を含むことができ、二次ケーブルのパッド接続端部は、1つ以上の熱電パッド670のうちの1つのパッドのパッドコネクタに接続するように構成された二次ケーブルコネクタ692を含むことができる。とは言え、1つ以上の二次FDL672は、販売時に1つ以上の熱電パッド670に作動可能に事前に接続される必要はない。上記にかかわらず、システム600の残りの部分に動作可能に接続されると、1つ以上の二次ケーブル672の各二次ケーブルは、一次ケーブル606を介して熱電層678内の1つ以上の熱電デバイス690を含む電子回路に電力を供給するとともに、電子回路と通信することができる。
【0093】
方法
温熱癌治療の方法は、システム100、200、および600の使用に従って変化する。とは言うものの、温熱癌治療の方法は、展開ステップ、温熱誘発ステップ、癌治療実施ステップ、および正常体温誘発ステップを少なくとも含むことができる。そのようなステップの説明は、主にシステム100、200、または600を使用する際のステップの説明に続いて記載される。
【0094】
前記展開ステップは、前記患者の深部体温を測定するための深部体温測定手段を展開することを含む。深部温度測定手段は、本明細書に記載される深部温度測定手段または別の既知の深部温度測定手段であり得る。展開ステップは、システム100、200、または600の制御モジュール102または602が、温熱癌治療中の患者のためにプログラムされた温度プロファイルからのずれを補償すべく、患者の深部体温を調節することを可能にする。
【0095】
温熱誘発ステップは、温熱癌治療のためのシステム100、200、または600を用いて患者に高体温を誘発することを含む。
前記癌治療実施ステップは、前記患者が温熱状態にある間に放射線療法、化学療法、または免疫療法を含む癌治療を施すことによって癌治療を補完することを含む。癌治療実施ステップは、少なくとも癌治療実施ステップの期間、システム100、200、または600を用いて患者の温熱療法を維持することを含むことができる。
【0096】
前記正常体温誘発ステップは、前記癌治療実施ステップ後に前記患者に正常体温を誘発することを含む。
システム100を使用する場合の温熱癌治療の方法に言及すると、展開ステップは、カテーテル148を患者に挿入することをさらに含むことができる。上述したように、カテーテル148は、該カテーテル148の遠位部分に配置され、患者の深部体温を測定するように構成されたサーミスタ164を含む。
【0097】
システム100を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、該方法は、サーミスタ接続ステップを含むことができる。サーミスタ接続ステップは、カテーテル148のサーミスタコネクタ168を、制御モジュール102へ、またはサーミスタコネクタ168と制御モジュール102との間の介在デバイス(例えば、専用デバイス、専用ソフトウェアアプリケーションを含むスマートフォン等)へ接続することを含む。サーミスタ接続ステップは、サーミスタ164に電力を供給するとともに、サーミスタ164と直列の微小電流計からの微小電流計の測定電流に対応する信号またはデータが制御モジュール102に通信されることを可能にする。
【0098】
システム100を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、温熱誘発ステップは、カテーテル148の一次管腔を介して、患者の血液をシステム100の熱交換器140に搬送することを含み得る。また、温熱誘発ステップは、カテーテル148の二次管腔を介して血液を患者に搬送して戻すことを含み得る。上述したように、血液の搬送は、蠕動ポンプ142によって血液を送り出すことによって可能となる。温熱誘発ステップにおいて、熱交換器140は、一次DFL106を介して、血液と、熱交換器140に搬送される温度制御されたシステム流体との間で熱を交換するように構成される。具体的には、熱交換器140は、温熱誘発ステップ中に熱を血液に伝達するように構成される。
【0099】
システム100を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、癌治療実施ステップは、カテーテル148の三次管腔を介して患者に1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を静脈内投与することを含み得る。
【0100】
システム200、600を使用する場合の温熱癌治療に言及すると、該方法は、剥離ライナ除去ステップを含み得る。剥離ライナ除去ステップは、接着層182を露出させるべく、1つ以上の流体パッド170または1つ以上の熱電パッド670のうちの1つのパッドの剥離ライナ176を除去することを含む。上述したように、剥離ライナ176は、パッドの使用前に少なくとも接着層182の完全性を維持するように構成され得る。
【0101】
システム200または600を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、該方法は、パッド配置ステップを含み得る。パッド配置ステップは、パッドの多層パッド本体174または674の熱伝導性接着層182が患者の皮膚S(図5または図7参照)と接触した状態で、患者の身体の一部にパッドを配置することを含む。パッド配置ステップは、パッドをシステム200または600の残りの部分に接続する任意のパッド接続ステップの前または後に実行され得る。
【0102】
システム200を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、温熱誘発ステップは、接着層182を介した熱伝導によって供給流体と患者との間で熱を交換すべく、パッドの導管層178に温度制御されたシステム流体の供給流体を充填することを含む。具体的には、供給流体は、温熱誘発ステップ中に熱を患者に伝達するように構成される。上述したように、供給流体は、一次FDL106および1つ以上の二次FDL172を含む流体接続されたFDLの組合せを介して、制御モジュール102の流体システム104によって提供される。
【0103】
システム600を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、温熱誘発ステップは、接着層182を介して熱伝導によって1つ以上の熱電デバイスと患者との間で熱を交換すべく、パッドの熱電層678の1つ以上の熱電デバイス690を横切って電圧を印加することを含む。具体的には、1つ以上の熱電デバイス690は、温熱誘発ステップ中に患者に熱を伝達するように構成される。上述したように、電圧は、パッドと制御モジュール602との間の一次ケーブル606を介して制御モジュール602によって印加される。
【0104】
システム200または600を使用する場合の温熱癌治療の方法は、1つ以上の流体パッド170または1つ以上の熱電パッド670のうちの単一のパッドを参照して説明されるが、温熱癌治療のための局所的または全身加熱を達成するために、1つ以上の流体パッド170または1つ以上の熱電パッド670のうちの任意の数のパッドが必要に応じて使用され得ることを理解されたい。
【0105】
システム200または600を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、展開ステップは、鼓膜温度計、直腸温度計、またはカテーテル148のようなサーミスタを先端に備えたカテーテルを展開することを含み得る。
【0106】
システム200または600を使用する場合の温熱癌治療の方法に加えて、癌治療実施ステップは、カテーテル148を介して患者に1つ以上の化学療法薬剤または1つ以上の免疫療法薬剤の溶液を静脈内投与する、または線形加速器によって放射線療を施すことを含み得る。
【0107】
いくつかの特定の実施形態が本明細書で開示されており、それら特定の実施形態が、ある程度詳細に開示されているが、それら特定の実施形態が、本明細書で提供される概念の範囲を限定することは意図されていない。更なる適合及び/又は修正が、当業者には明らかとなる可能性があり、より広範な態様においては、これらの適合及び/又は修正も同様に包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態からの展開を実施することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【国際調査報告】