(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】チロシンが末端に位置するペプチドを有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防、改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/18 20160101AFI20240227BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240227BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240227BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240227BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240227BHJP
A61K 38/04 20060101ALI20240227BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240227BHJP
C07K 2/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A23L33/18
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/28
A61P25/08
A61P25/00
A61P21/00
A61P13/12
A61P3/10
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P39/02
A61P9/10
A61P39/06
A61K38/04
A61K38/16
C07K2/00 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551234
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2022002673
(87)【国際公開番号】W WO2022182141
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0024072
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516172857
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション キョンサン ナショナル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ブム・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・スン・カン
(72)【発明者】
【氏名】スンウン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ミヨン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒョン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ファジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヨン・ユ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
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4B018LE02
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4B018MD19
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4B018ME14
4C084AA02
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4C084BA02
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4C084BA19
4C084BA23
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4H045AA30
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045EA01
4H045EA20
(57)【要約】
本発明のチロシンが末端に位置するペプチドは、タンパク質のニトロ化を抑制する効果に優れ、慢性身体拘束ストレス鬱病/認知機能障害誘導モデル、アルツハイマー型認知症モデル、てんかん発作モデル、脳卒中モデル、第2型糖尿病モデル、急性腎不全モデル、または高アンモニア血症モデルにおいて疾患の症状を予防、改善または治療する効果に優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項2】
前記チロシンが末端に位置するペプチドは、チロシンが両側末端または一側末端に位置し、チロシンと連結されたアミノ酸は、1~29個であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項3】
前記タンパク質は、グルタミン合成酵素(glutamine synthetase)、インスリン受容体βサブユニット(insulin receptor β subunit)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn Superoxide dismutase)、熱衝撃タンパク質60(heat shock protein 60)、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn Superoxide dismutase)及びカタラーゼ(catalase)のうちから選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項4】
前記タンパク質のニトロ化によって発生する疾患は、鬱病(depressive disorder)、不安障害(anxiety disorder)、脳卒中(stroke)、てんかん(epilepsy)、発作(seizure)、認知機能障害(cognitive impairment)、アルツハイマー病(Alzheimer disease)、認知症(dementia)、第2型糖尿病(type 2 diabetes)、糖尿腎症、筋肉減少症、脂質異常血症(dyslipidemia)、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患、急性腎障害(Acute kidney injury)、高アンモニア血症(Hyperammonemia)及び肝性脳症のうちから選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項5】
チロシンが末端に位置するペプチドまたは、薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
チロシンが末端に位置するペプチドまたは、薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質内のチロシンのニトロ化阻害用組成物。
【請求項7】
ニトロ化チロシンを含むタンパク質にチロシンが末端に位置するペプチドを処理してニトロ化チロシンからニトロ基を除去する方法。
【請求項8】
チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項9】
チロシンが末端に位置するペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患は、鬱病(depressive disorder)、不安障害(anxiety disorder)、脳卒中(stroke)、てんかん(epilepsy)、発作(seizure)、認知機能障害(cognitive impairment)、アルツハイマー病(Alzheimer disease)、認知症(dementia)、第2型糖尿病(type 2 diabetes)、糖尿腎症、筋肉減少症、脂質異常血症(dyslipidemia)、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患、急性腎障害(Acute kidney injury)、高アンモニア血症(Hyperammonemia)及び肝性脳症のうちから選択されたいずれか1つであることを特徴とする請求項9に記載の活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドを有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレス(oxidative stress)は、新陳代謝過程で生成された酸素が自由ラジカル(free radical)として作用して細胞に損傷を与えてさまざまな疾病を誘発すると知られている。特に、細胞内に存在する活性酸素種(ROS)または活性窒素種(RNS)によってタンパク質のチロシン部位に過酸化窒素(peroxynitrite, ONOO-)が生成されれば、タンパク質がニトロ化(nitraion)される。そのようなタンパク質のニトロ化現象は、酸化過程に伴われる付随的な現象と知られており、特定タンパク質がニトロ化されれば、構造的変異によって活性が低下するか、正常な機能を行うことができず、これにより、さまざまな疾病が発生する。タンパク質のニトロ化は、細胞内信号伝達、炎症反応による疾病、退行性神経疾患、老化などに密接に関連していると報告されており、最近には、喘息、糖尿、癌、慢性ストレス鬱病、第2型糖尿病または、急性腎臓疾患などにも影響を与えると報告されている。したがって、タンパク質のニトロ化に対する研究は、生物学的、臨床学的に非常に重要な役割を遂行し、タンパク質のニトロ化を抑制する物質開発に対する研究が必要な実情である。
【0003】
一方、韓国登録特許第1897400号には「チロシンデカルボキシラーゼの活性阻害用組成物及びそれを用いた発酵食品の製造方法」が開示されており、韓国公開特許第2018-0021746号には「ニトロ化工程からニトロ化された芳香族化合物を錠剤する方法」が開示されているが、本発明の「チロシンが末端に位置するペプチドを有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防、改善または治療用組成物」については記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記のような要求によって導出されたものであって、本発明者らは、チロシンが末端に位置するペプチドを有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防、改善または治療用組成物を提供し、本発明の有効成分であるチロシンが末端に位置するペプチドがタンパク質のニトロ化を抑制し、慢性身体拘束ストレス鬱病/認知機能障害誘導モデル、アルツハイマー型認知症モデル、てんかん発作モデル、脳卒中モデル、第2型糖尿病モデル、急性腎不全モデルまたは、高アンモニア血症モデルにおいて疾病症状を予防、改善または治療することができることを確認することで、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0006】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは、薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは、薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質内のチロシンのニトロ化阻害用組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、ニトロ化チロシンを含むタンパク質にチロシンが末端に位置するペプチドを処理してニトロ化チロシンからニトロ基を除去する方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチロシンが末端に位置するペプチドは、タンパク質のニトロ化を抑制する効果に優れ、ストレスによって増加したグルタミン合成酵素内のチロシンのニトロ化レベルを減少させ、ストレスによって減少したグルタミン合成酵素の活性を増加させ、慢性身体拘束ストレス鬱病/認知機能障害誘導モデル、アルツハイマー型認知症モデル、てんかん発作モデル、脳卒中モデル、第2型糖尿病モデル、急性腎不全モデルまたは、高アンモニア血症モデルにおいて疾病症状を予防、改善または治療効果が優秀である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のペプチド食餌による動物の長期記憶能力を分析するために実施した事物認知技能検査(object recognition test, ORT)及び事物位置認知技能検査(object location recognition test, OLT)過程を示すものである。
【
図2】本発明によるペプチドのタンパク質ニトロ化抑制効果を確認したものであって、Aは、PFC(前頭葉前部)組織内のニトロチロシンタンパク質に対するウェスタンブロット結果であり、Bは、肝組織内のニトロチロシンタンパク質に対するウェスタンブロット結果である。
【
図3】本発明によるペプチドのタンパク質発現量調節効果を確認するための肝組織内のインスリン受容体β及びリン酸化インスリン受容体βタンパク質に対するウェスタンブロット結果である。
【
図4】チロシンが末端に位置したペプチドによるCu/ZnSOD(A)及びMnSOD(B)のニトロ化抑制効果を確認した結果である。PNは、タンパク質のニトロ化を誘導するペルオキシナイトライト(peroxynitrite)である。*、***は、PN単独処理群対比でペプチド処理群のCu/ZnSODまたはMnSODの活性が統計的に有意に増加したということを意味し、*は、P<0.05、***は、P<0.001である。
【
図5】チロシンが末端に位置したペプチドによるグルタミン合成酵素のニトロ化抑制効果を確認した結果である。PNは、タンパク質のニトロ化を誘導するペルオキシナイトライト(peroxynitrite)である。**は、PN単独処理群対比でペプチド処理群のグルタミン合成酵素の活性が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.01である。
【
図6】チロシンが末端に位置したペプチドによるカタラーゼのニトロ化抑制効果を確認したウェスタンブロット結果である。
【
図7】チロシンが末端に位置したペプチドによるHSP60(heat shock protein 60)のリフォールディング(refolding)活性測定によるニトロ化抑制効果を確認した結果である。RLUは、Time0とTime60で測定された吸光度差値(relative light unit)を意味する。
【
図8】慢性身体拘束ストレス誘導群(STR)におけるチロシン-グルタミンペプチド食餌(PD)によるGS活性(A)、GS発現量(B)及びGSに含まれたチロシンのニトロ化レベル(C及びD)を確認した結果である。
【
図9】慢性身体拘束ストレス誘導群(STR)におけるグルタミン-チロシンペプチド食餌(PD)によるGS活性(A)、GS発現量(B)及びGSに含まれたチロシンのニトロ化レベル(C及びD)を確認した結果である。
【
図10】慢性身体拘束ストレス誘導群(STR)におけるチロシン-グルタミンペプチド食餌(PD)による血漿内コルチコステロン濃度(A)、ショ糖選好度(B)、血漿内ROS/RNS濃度(C)及びPFC組織内のROS/RNS濃度(D)を確認した結果である。
【
図11】慢性身体拘束ストレス誘導群(STR)におけるグルタミン-チロシンペプチド食餌(PD)による血漿内コルチコステロン濃度(A)、ショ糖選好度(B)、血漿内ROS/RNS濃度(C)及びPFC組織内のROS/RNS濃度(D)を確認した結果である。
【
図12】慢性身体拘束ストレス動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)またはチロシン-トリプトファン(YW)ペプチド食餌による記憶能力分析結果を示した弁別力指数であって、Aは、1xYQペプチド食餌による事物認知技能検査(object recognition test, ORT)結果であり、Bは、2xYQペプチド食餌による事物認知技能検査(ORT)結果であり、Cは、1xYQまたは1xYWペプチド食餌による事物位置認知技能検査(object location recognition test, OLT)結果である。*、**は、対照群(CTL)対比でストレス処理群(STR)の事物認知機能指数または事物位置認知機能指数が統計的に有意に減少したということを意味し、*は、P<0.05、**は、P<0.01である。#は、ストレス処理群において一般食餌群(ND)対比でペプチド食餌群(1xYQまたは2xYQ)の事物認知機能指数が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05である。
【
図13】アルツハイマー型認知症動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド食餌による事物認知技能検査(object recognition test, ORT)結果であり、Aは、2ヶ月齢の動物に実験した結果であり、Bは、8ヶ月齢の動物に実験した結果であり、Cは、2ヶ月齢及び8ヶ月齢の動物に実験した結果であり、Dは、6ヶ月間の認知機能減少幅に対する結果である。*、**は、正常群(WT)対比で認知症動物モデル(3xTG)の事物認知機能指数が統計的に有意に減少したということを意味し、*は、P<0.05、**は、P<0.01である。#は、2ヶ月齢対比で8ヶ月齢の事物認知機能指数が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。
【
図14】アルツハイマー型認知症動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド食餌によるROS/RNS濃度を示すものである。*は、正常群(WT)対比で認知症動物モデル(3xTG)のROS/RNS濃度が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05であり、#は、認知症動物モデルにおいて一般食餌群(ND)対比でペプチド食餌群(YQ)のROS/RNS濃度が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。DCFは、2’、7’-ジクロロフルオレセイン(2’,7’-Dichlorofluorescin)である。
【
図15】グルタミン酸作動性ニューロン蛍光標識アルツハイマー型認知症動物モデルに関するものであって、Aは、グルタミン酸作動性ニューロンを赤色標識することができる動物モデルであることを確認した結果であり、Bは、チロシン-グルタミン(YQ)ペプチド食餌によるグルタミン酸作動性ニューロンの活性度を示すものである。*は、正常群(WT)対比でグルタミン酸作動性ニューロン蛍光標識アルツハイマー型認知症動物モデル(3xTG-vGluT2-Cre::tdTomato)のグルタミン酸作動性ニューロンの活性度が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05であり、#は、グルタミン酸作動性ニューロン蛍光標識アルツハイマー型認知症動物モデルにおいて一般食餌群(ND)対比でペプチド食餌群(YQ)のグルタミン酸作動性ニューロンの活性度が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05である。
【
図16】てんかん発作動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)またはチロシン-トリプトファン(YW)ペプチド処理による発作レベル(A、B)及びA、Bの曲線下部面積(C、D)を示すものである。*、**、***は、一般食餌群(ND)対比でペプチド処理群(5xL-Tyr、3xYQ、YQi.p、1xYWまたは3xYQ)の発作レベルが統計的に有意に減少したということを意味し、*は、P<0.05、**は、P<0.01、***は、P<0.001である。
【
図17】てんかん発作動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)またはチロシン-トリプトファン(YW)ペプチド処理によるROS/RNS濃度を示すものである。*は、対照群(CTL)対比でカイニン酸処理群のROS/RNS濃度が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05であり、#は、カイニン酸処理群において一般食餌群(ND)対比でペプチド食餌群(3xYWまたは3xYQ)のROS/RNS濃度が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。
【
図18】てんかん発作動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)またはチロシン-トリプトファン(YW)ペプチド処理によるグルタミン合成酵素の活性を示すものである。***は、対照群(CTL)対比でカイニン酸処理群のグルタミン合成酵素の活性が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.001である。#、##は、カイニン酸処理群において一般食餌群(ND)対比でペプチド処理群(3xYQ、YQi.p、1xYW、3xYWまたは3xYQ)のグルタミン合成酵素の活性が統計的に有意に増加したということを意味し、#は、P<0.05、##は、P<0.01である。
【
図19】虚血性脳卒中動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による神経細胞の数(A)、SOD活性(B)及びカタラーゼ活性(C)を示すものである。shamは、偽手術群であり、vehicleは、0.9%サリン(saline)注入群である。*、***は、偽手術群(sham)対比で虚血性脳卒中動物モデル(ischemia)の神経細胞の数、SOD活性またはカタラーゼ活性が統計的に有意に減少したということを意味し、*は、P<0.05、***は、P<0.001である。#は、虚血性脳卒中動物モデルにおいて0.9%サリン注入群(vehicle)対比でペプチド処理群(YQ)の神経細胞の数、SOD活性またはカタラーゼ活性が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05である。
【
図20】虚血性脳卒中動物モデルにおけるチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による神経細胞死滅を確認するための免疫組織化学染色結果を示すものである。shamは、偽手術群であり、vehicleは、0.9%サリン注入群であり、ischemiaは、虚血性脳卒中動物モデルである。NeuNは、錐体細胞を染色したものであり、Iba-1は、星状膠細胞を染色したものであり、GFAPは、ミクログリア細胞を染色したものである。
【
図21】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による体重変化(A)及び飼料摂取量(B)を期間別に確認した結果である。NDは、正常食餌群であり、HFDは、高脂肪食餌群である。
【
図22】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による血糖を期間別に確認した結果である。NDは、正常食餌群であり、HFDは、高脂肪食餌群である。***、****は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)の血糖が統計的に有意に増加したということを意味し、***は、P<0.001、****は、P<0.0001である。##、###は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+1xYQまたはHFD+3xYQ)の血糖が統計的に有意に減少したということを意味し、##は、P<0.01、###は、P<0.001である。
【
図23】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による耐糖能(glucose tolerance test, GTT)を確認した結果である。Aは、経時的な血液内グルコース含量を示したものであり、Bは、Aにおいて曲線下部面積(AUC)を示すものである。***は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)のグルコース含量が統計的に有意に増加したということを意味し、***は、P<0.001である。##は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+3xYQ)のグルコース含量が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.01である。
【
図24】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理によるインスリン感受性(insulin tolerance test, ITT)を確認した結果である。Aは、経時的な血液内グルコース含量を示したものであり、Bは、Aにおいて曲線下部面積(AUC)を示すものである。***は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)のグルコース含量が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.001である。####は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+3xYQ)のグルコース含量が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.0001である。
【
図25】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による排尿量(A)及び脂肪量(B)を確認した結果である。*は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)の排尿量または脂肪量が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05である。##、####は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+3xYQ)の排尿量または脂肪量が統計的に有意に減少したということを意味し、##は、P<0.01、####は、P<0.0001である。
【
図26】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による血漿内インスリン(A)、ALT(B)及びROS/RNS(C)の濃度を確認した結果である。**、***、****は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)の血漿内インスリン、ALTまたはROS/RNSの濃度が統計的に有意に増加したということを意味し、**は、P<0.01、***は、P<0.001、****は、P<0.0001である。##は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+3xYQ)の血漿内インスリン、ALTまたはROS/RNSの濃度が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.01である。
【
図27】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による肝組織の変化を確認するためのH&E染色結果である。NDは、正常食餌群であり、HFDは、高脂肪食餌群である。
【
図28】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理によるインスリン受容体β(IRβ)の発現量を確認した結果である。*は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)のインスリン受容体β(IRβ)の発現量が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。##は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+3xYQ)のインスリン受容体β(IRβ)の発現量が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.01である。
【
図29】高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による小便内のアルブミン/クレアチンの割合(A)、肝組織内の中性脂肪量(B)及び血漿内の中性脂肪量(C)を確認した結果である。*、**は、正常食餌群(ND)対比で高脂肪食餌群(HFD)の小便内のアルブミン/クレアチンの割合、肝組織内の中性脂肪量または血漿内の中性脂肪量が統計的に有意に増加したということを意味し、*は、P<0.05、**は、P<0.01である。#、##は、高脂肪食餌群(HFD)対比でYQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+1xYQまたはHFD+3xYQ)の小便内のアルブミン/クレアチンの割合、肝組織内の中性脂肪量または血漿内の中性脂肪量が統計的に有意に減少したということを意味し、#は、P<0.05、##は、P<0.01である。
【
図30】急性腎不全動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による腎臓損傷を評価するための血漿内クレアチニン濃度(A)、腎臓組織内の炎症反応確認のためのIL-1β(B)、IL-6(C)及びMCP-1(D)の発現量を確認した結果である。shamは、偽手術群であり、renal IRは、急性腎不全誘導群であり、vehは、水投与群である。**は、偽手術群(sham)対比で水投与した急性腎不全誘導群(veh+renal IR)のクレアチニン濃度、IL-1β、IL-6、またはMCP-1の発現量が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.01である。#、##は、水投与した急性腎不全誘導群(veh+renal IR)対比でYQペプチド投与した急性腎不全誘導群(YQ+renal IR)のクレアチニン濃度、IL-1β、IL-6、またはMCP-1の発現量が統計的に有意に減少したということを意味し、#は、P<0.05、##は、P<0.01である。
【
図31】急性腎不全動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による腎臓組織でのニトロチロシン(nitrotyrosine)及び脂質過酸化産物(4-HNE)の発現量を確認した結果である。*は、偽手術群(sham)対比で水投与した急性腎不全誘導群(veh+renal IR)のニトロチロシン(nitrotyrosine)及び脂質過酸化産物(4-HNE)の発現量が統計的に有意に増加したということを意味し、p<0.05である。#は、水投与した急性腎不全誘導群(veh+renal IR)対比でYQペプチド投与した急性腎不全誘導群(YQ+renal IR)のニトロチロシン(nitrotyrosine)及び脂質過酸化産物(4-HNE)の発現量が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。
【
図32】高アンモニア血症動物モデルにおいてチロシン-グルタミン(YQ)ペプチド処理による血中アンモニア濃度(A)及び肝組織でのニトロチロシン(nitrotyrosine)発現量を確認した結果である。Controlは、正常対照群であり、AOMは、アゾキシメタン(Azoxymethane)による高アンモニア血症誘導群である。*、**は、正常対照群(Control)対比で水投与した高アンモニア血症(veh+AOM)の血中アンモニア濃度及び肝組織でのニトロチロシン(nitrotyrosine)発現量が統計的に有意に増加したということを意味し、*は、P<0.05、**は、P<0.01である。#は、水投与した高アンモニア血症(veh+AOM)対比でYQペプチド投与した高アンモニア血症誘導群(YQ200+AOM)の血中アンモニア濃度及び肝組織でのニトロチロシン(nitrotyrosine)発現量が統計的に有意に減少したということを意味し、p<0.05である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的を達成するために本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0014】
前記チロシンが末端に位置するペプチドは、チロシンが両側末端または一側末端に位置し、チロシンと連結されたアミノ酸は、極性/新水性(例えば、チロシン、グルタミン、スレオニン)、非極性/疎水性(例えば、トリプトファン、バリン)、電荷性(例えば、アルギニン)でもあり、連結されたアミノ酸の数は、1~29個でもあるが、それに制限されない。
【0015】
本発明のタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物において、前記タンパク質は、グルタミン合成酵素(glutamine synthetase)、インスリン受容体βサブユニット(insulin receptor β subunit)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn Superoxide dismutase)、熱衝撃タンパク質60(heat shock protein 60)、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn Superoxide dismutase)及びカタラーゼ(catalase)のうちから選択されたいずれか1つであることが望ましいが、それらに限定しない。
【0016】
また、前記タンパク質のニトロ化によって発生する疾患は、鬱病(depressive disorder)、不安障害(anxiety disorder)、脳卒中(stroke)、てんかん(epilepsy)、発作(seizure)、認知機能障害(cognitive impairment)、アルツハイマー病(Alzheimer disease)、認知症(dementia)、第2型糖尿病(type 2 diabetes)、糖尿腎症、筋肉減少症、脂質異常血症(dyslipidemia)、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患、急性腎障害(Acute kidney injury)、高アンモニア血症(Hyperammonemia)及び肝性脳症のうちから選択されたいずれか1つであることが望ましいが、それらに限定しない。
【0017】
前記タンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物は、丸、錠剤(tablet)、カプセル(capsule)、散剤、粉末、顆粒、キャンデー、シロップ及び飲料のうちから選択されたいずれか1つで製造するか、食品の成分として添加して製造され、通常の方法によって適切に製造されうる。
【0018】
本発明の有効成分を添加することができる食品の一例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤のうちから選択されたいずれか1つの形態でもあり、通常の意味での健康機能食品をいずれも含む。
前記健康機能食品は、さまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成及び天然風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含む。その他、天然果物ジュース及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。そのような成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明の健康機能食品組成物は、さまざまな香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含みうる。前記天然炭水化物は、葡萄糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用することができる。
【0020】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは、薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0021】
本発明のタンパク質のニトロ化によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物において、前記タンパク質及びタンパク質のニトロ化によって発生する疾患は、前述した通りである。
【0022】
前記チロシンが末端に位置するペプチド以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含みうる。本発明の薬学組成物は、経口または非経口投与され、非経口投与時、皮膚外用または腹腔内、直腸、静脈、筋肉または皮下注射方式を選択することが望ましいが、それらに限定されない。
【0023】
本発明の薬学組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤されうる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、そのような固形製剤は、1つ以上の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単なる賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されうる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴ-ル、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使用されうる。
【0024】
本発明による組成物は、薬剤学的に有効な量ほど投与する。本発明において、「薬剤学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重度度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定されうる。
【0025】
本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与され、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与され、単一または多重投与されうる。前記要素をいずれも考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されうる。
【0026】
本発明の組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度によってその範囲が多様に使用されうる。
【0027】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有するタンパク質内のチロシンのニトロ化阻害用組成物を提供する。
【0028】
本発明のタンパク質内のチロシンのニトロ化阻害用組成物において、前記タンパク質は、前述した通りである。
【0029】
また、本発明は、ニトロ化チロシンを含むタンパク質にチロシンが末端に位置するペプチドを処理してニトロ化チロシンからニトロ基を除去する方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは食品学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0031】
また、本発明は、チロシンが末端に位置するペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含有する活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0032】
本発明の活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患の予防または治療用薬学組成物において、前記活性酸素種/活性窒素種増加によって発生する疾患は、鬱病(depressive disorder)、不安障害(anxiety disorder)、脳卒中(stroke)、てんかん(epilepsy)、発作(seizure)、認知機能障害(cognitive impairment)、アルツハイマー病(Alzheimer disease)、認知症(dementia)、第2型糖尿病(type 2 diabetes)、糖尿腎症、筋肉減少症、脂質異常血症(dyslipidemia)、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患、急性腎障害(Acute kidney injury)、高アンモニア血症(Hyperammonemia)及び肝性脳症のうちから選択されたいずれか1つであることが望ましいが、それらに限定されない。
【0033】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、ただ本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がそれらによって制限されないということは、当該技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なものである。
【0034】
材料及び方法
1.ペプチド合成
本発明によるペプチドの効果を分析するために、単独アミノ酸としては、グルタミン(Q)、L-チロシン(L-Y)またはD-チロシン(D-Y)を利用し、チロシンが末端に位置するペプチドとしては、チロシン-グルタミン(YQ)、グルタミン-チロシン(QY)、チロシン-トリプトファン(YW)、トリプトファン-チロシン(WY)、チロシン-スレオニン(YT)、スレオニン-チロシン(TY)、チロシン-アルギニン(YR)、アルギニン-チロシン(RY)、チロシン-バリン(YV)、バリン-チロシン(VY)、チロシン-チロシン-グルタミン(YYQ)、グルタミン-チロシン-チロシン(QYY)、チロシン-スレオニン-グルタミン(YTQ)、グルタミン-スレオニン-チロシン(QTY)、チロシン-トリプトファン-グルタミン(YWQ)、グルタミン-トリプトファン-チロシン(QWY)、チロシン-グルタミン-グルタミン(YQQ)、グルタミン-グルタミン-チロシン(QQY)、チロシン-チロシン-チロシン-グルタミン(YYYQ)、グルタミン-チロシン-チロシン-チロシン(QYYY)、チロシン-トリプトファン-スレオニン-グルタミン(YWTQ)、グルタミン-トリプトファン-スレオニン-チロシン(QWTY)、チロシン-ランダムアミノ酸 8個-チロシン(Y(A)8Y)、チロシン-ランダムアミノ酸 18個-チロシン(Y(A)18Y)またはチロシン-ランダムアミノ酸 28個-チロシン(Y(A)28Y)を利用した。グルタミンは、ニュートリコスト(Nutricost)社の純度100%製品を使用し、L-チロシンは、シグマ(Sigma-Aldrich, #93829, >99.0% BioUltra)製品を、D-チロシンは、シグマ(Sigma-Aldrich, #855456, >99.0% BioUltra)製品を使用し、in vitro実験に使用したペプチドは、ペブトロン(peptron、純度98%以上)に依頼して合成して使用し、in vivo実験に使用したペプチドは、GLバイオケム(GL Biochem、純度95%以上)に依頼して合成して実験に使用した。
【0035】
2.動物実験
本発明では、7週齢C57BL/6雄マウス、アルツハイマー型認知症モデルである3xTG-ADマウス、4週齢ICR雄マウスまたはモンゴルスナネズミ(65~75g)を温度22~24℃、湿度50~70%、12時間明暗周期で飼育し、この際、食餌療法と水を自由に摂取可能にした。
【0036】
本発明で使用した動物は、国立保健院(NIH, Bechesda, MD, USA)指針による慶尚大学校動物保護及び使用委員会(GNU IACUC)によって承認されたプロトコル(GNU-161128-M0068)によって実施した。
【0037】
3.マウスの脳と肝組織試料準備
CO2ガスで痲酔されたマウスから前頭葉前部(prefrontal cortex, PFC)及び肝(liver)組織をそれぞれ採取して重さをはかった後、組織破砕機を用いて組織を破砕し、4℃で12,000rpmで20分間遠心分離した後、上澄み液を取ってPFC及び肝組織破砕物(lysate)を得た。
【0038】
4.チロシン含有ペプチドが添加された飼料準備
本発明のペプチド食餌による動物実験を遂行するために、チロシン含有ペプチドが添加されたマウス用飼料を製造した。チロシン含有ペプチドは、チロシン-グルタミン(YQ)、グルタミン-チロシン(QY)またはチロシン-トリプトファン(YW)を使用し、分子量は、それぞれ309.32g/molまたは367.40g/molであり、一般飼料(AIN-93G)に添加して製造した(表1)。
【表1】
【0039】
5.認知機能検査
本発明のペプチド食餌による動物の長期記憶能力を分析するために事物認知技能検査(object recognition test, ORT)と事物位置認知技能検査(object location recognition test, OLT)を実施した(
図1)。適応(habituation)、親和(familiarization)及び検査(test)の三段階で構成され、試験箱に一日10分ずつ2日間適応させ、3日目の親和段階には、2つの同じ事物を10分間探索するようにした。以後、4日目の試験段階には、2つの事物のうち1つを新たな事物に交換し、10分間探索するようにするが、初期5分間の記録をデータとして使用した。事物認知機能(ORT)指数は、下記のような数式で算出した。
Discrimination index = (N-F)/(N+F)
N:新規事物探索時間
F:見慣れた事物探索時間
【0040】
ORT遂行24時間後に見慣れた事物の位置を変更し、5分間探索するようにし、全体事物探索時間において、位置移動した事物を探索する時間の割合を計算して事物位置認知機能(OLT)指数を算出した。
【0041】
実施例1 タンパク質のニトロ化(nitration)抑制効果分析
1-1 マウスの脳と肝組織内タンパク質のニトロ化抑制効果分析
本発明によるペプチドによるタンパク質のニトロ化抑制効果を分析するために、マウスの脳と肝組織破砕物(lysate)を利用した。前記組織破砕物にタンパク質のニトロ化を誘導するペルオキシナイトライト(peroxynitrite, PN)を添加し、本発明によるペプチドを2mMの濃度でそれぞれ添加した後、5秒間ボルテックス(vortex)して混合し、氷で10分間反応させた。以後、抗ニトロチロシン抗体(1:1,000)、抗インスリン受容体β抗体(1:1,000)または、抗リン酸化インスリン受容体β抗体(1:1,000)を用いてウェスタンブロットを遂行した。
【0042】
その結果、PNによってPFC及び肝組織内のチロシンニトロ化が増加したタンパク質が増加したことを確認し、グルタミン合成酵素(GS)とインスリン受容体βサブユニット(IRb)以外の多くのタンパク質のニトロ化が増加したことを多くのバンドのウェスタンブロットの結果から確認しており、PNによってチロシンニトロ化が増加したタンパク質は、チロシン(Y)が末端に位置したペプチド処理によってニトロ化が減少したことを確認した(
図2)。また、肝組織においてIRbタンパク質は、PNまたはチロシン(Y)が末端に位置したペプチド処理によって発現差がなく、一方、リン酸化-IRbタンパク質は、PNによってニトロ化されて発現が減少し、チロシン(Y)が末端に位置したペプチド処理によって発現が増加することを確認した(
図3)。
【0043】
1-2 Cu/ZnSOD及びMnSODのニトロ化抑制効果分析
本発明によるペプチドによるCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(Cu/Zn Superoxide dismutase, SOD-1)及びマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(Mn Superoxide dismutase, SOD-2)のニトロ化抑制効果を分析するために、SOD比色反応活性キット(Thermo Scientific, #EIASODC)を利用した。PCR用チューブに標準範囲内のヒト組換えCu/ZnSODまたはMnSODを入れ、本発明によるペプチドを1mMの濃度でそれぞれ入れ、1mMのペルオキシナイトライト(peroxynitrite, PN)を添加して混合した後、氷で10分間反応させた。以後、キット提供のキサンチン酸化酵素25μlを入れ、常温で20分間反応させた後、450nmで吸光度を測定した。2次測定吸光度から1次測定吸光度を差し引いたデータを用いてCu/ZnSODまたはMnSODの活性を測定した。
【0044】
その結果、PN処理によってCu/ZnSODまたはMnSODの活性は、急に低下するが、チロシンが末端に位置したペプチドによってCu/ZnSODまたはMnSODの活性が回復することを確認した(
図4)。
【0045】
1-3 グルタミン合成酵素(glutamine synthetase)のニトロ化抑制効果分析
本発明によるペプチドによるグルタミン合成酵素(glutamine synthetase)のニトロ化抑制効果を分析するために、マウスの脳組織破砕物(lysate)を利用した。PCR用チューブに前記PFC組織破砕物を入れ、本発明によるペプチドを1mMの濃度でそれぞれ入れ、1mMのペルオキシナイトライト(peroxynitrite, PN)を添加して混合した後、氷で10分間反応させた。以後、反応させたサンプル50μlを96ウェルプレートに入れ、グルタミン合成酵素アッセイバッファー(50mMイミダゾール-HCl、pH6.8、25mM L-グルタミン、12.5mMヒドロキシルアミン、12.5mMヒ酸ナトリウム、1mM MnCl2、0.08mM ADP)50μlを入れた後、37℃で約40分間反応させた後、560nmで吸光度を測定した。γ-グルタミルヒドロキサム酸(γ-glutamylhydroxamate)を用いて作成された標準曲線からグルタミン合成酵素の活性を計算した。
【0046】
その結果、PN処理によってグルタミン合成酵素の活性は、急に低下するが、チロシンが末端に位置したペプチドによってグルタミン合成酵素の活性が回復することを確認した。
特に、30個のアミノ酸からなる長鎖ペプチドによってもPN処理によってニトロ化されて活性が低下されたグルタミン合成酵素の活性を回復させる効果があることを確認した(
図5)。
【0047】
1-4 カタラーゼ(catalase)のニトロ化抑制効果分析
本発明によるペプチドによるカタラーゼのニトロ化抑制効果を分析するために、ヒト組換えカタラーゼを用いたウェスタンブロットを遂行した。PCR用チューブに0.2μgのヒト組換えカタラーゼを入れ、本発明によるペプチドを2mMの濃度でそれぞれ入れ、1mMのペルオキシナイトライト(peroxynitrite, PN)を添加して混合した後、氷で10分間反応させた。以後、SDSサンプルバッファーを入れ、5分間沸かし、SDS-PAGEゲルに電気泳動した後、PVDFメンブレンにトランスファーし、抗ニトロチロシン抗体(1:1000)を用いてウェスタンブロットを遂行した。
その結果、PN処理によってニトロ化されたカタラーゼの発現は増加したが、一方、チロシンが末端に位置したペプチドによってニトロ化されたカタラーゼの発現が減少することを確認した(
図6)。
【0048】
1-5 HSP60(heat shock protein 60)のリフォールディング(refolding)活性測定によるニトロ化抑制効果分析
シャペロンタンパク質の一種であるHSP60の活性度は、タンパク質ニトロ化によって阻害されるものと知られており、これに係わる様々な疾病が知られている。そこで、本発明によるペプチドによるHSP60のニトロ化抑制効果を分析するために、HSP60/HSP10 Glow-Foldタンパク質リフォールディングキット(R&D Systems、#K-300)を利用した。PCR用チューブにキット提供のHSP60溶液を入れ、本発明によるペプチドを1mMの濃度でそれぞれ入れ、1mMのペルオキシナイトライト(peroxynitrite, PN)を添加して混合した後、氷で10分間反応させた。以後、キット提供のHSP10溶液、Mg2+-ATP溶液及びGlow-Fold基質タンパク質を入れ、常温で15~30分間反応させ、反応させたサンプルを45℃で7分間加熱した後、直ちに氷に入れた。96ウェルプレートにルシフェリン溶液50μlとサンプル4μlを混合し、1~2分以内にマイクロプレートリーダーを用いて発光を測定した(Time 0)。残りのサンプルを30℃で60分間反応させた後、96ウェルプレートにルシフェリン溶液50μlとサンプル4μlとを混合し、1~2分以内にマイクロプレートリーダーを用いて発光を測定した(Time 60)。Time 0とTime 60で測定された吸光度差値(RLU, relative light unit)を用いて各サンプルのHSP60リフォールディング活性を分析した。
【0049】
その結果、PN処理によってHSP60のリフォールディング活性度は、急に低下するが、チロシンが末端に位置したペプチドによってHSP60のリフォールディング活性度が回復することを確認した(
図7)。前記結果に基づき、チロシンが末端に位置したペプチドを用いてHSP60の活性低下に誘導される疾病を予防または改善させうると判断された。
【0050】
実施例2 慢性身体拘束ストレス動物モデルにおけるGSニトロ化抑制効果及び抗うつ効果分析
7週齢C57BL/6雄マウス28匹を2グループ(正常群、ストレス群)に分け、ストレス群は、15日間毎日2時間(午後2~4時)個別的に拘束器に強制動員して慢性身体拘束ストレスを与えた。前記正常群(CTL)及びストレス群(STR)は、栄養均衡が取れた一般食餌群(ND)とYQまたはQYペプチドが補充(330mg/kg)された食餌群(PD)に再び分類して給与した。15日間の慢性身体拘束ストレスが完了したマウスは、ショ糖選好度試験(sucrose perference test, SPT)を遂行し、血液及びPFC組織を採取して後続実験を遂行した。
【0051】
(1)GSニトロ化抑制効果分析
慢性身体拘束ストレスが完了したマウスPFC破砕物を用いて前述したような方法でGS活性及びGS発現量を測定した。
【0052】
その結果、GS発現量は、類似していたが、ストレスによってGS活性が減少したことを確認し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはQYペプチド食餌群のGS活性が統計的に有意に増加したことを確認した(
図8A、
図8B、
図9A、
図9B)。
【0053】
また、免疫沈降(IP)-WBを用いてGS内のチロシンがニトロ化されたレベルを測定した。Tyr-nitriation GSの免疫沈降分析は、抗ニトロチロシン抗体(ab61392、Abcam)及びタンパク質A/Gプラスアガロース(Santa Cruz)を用いて製造社のプロトコルによって実施した。
【0054】
その結果、ストレスによってGS内のチロシンがニトロ化されたレベルが統計的に有意に増加し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはQYペプチド食餌群のGS内のチロシンがニトロ化されたレベルが統計的に有意に減少したことを確認した(
図8C、
図8D、
図9C、
図9D)。
【0055】
(2)抗うつ効果分析
慢性身体拘束ストレスが完了したマウスから血液及びPFC組織を採取して抗うつ効果を分析した。マウスから採取した血液を4℃で1,000×gで10分間遠心分離した後、上澄み液を取って血漿(plasma)を分離してPBSで1/20希釈して準備した。コルチコステロンEIAキット(Cayman)を用いて製造社の方法によって血漿内コルチコステロン(corticosterone)濃度を測定した。
【0056】
その結果、ストレスによって血漿内コルチコステロンの濃度が統計的に有意に増加し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはQYペプチド食餌群の血漿内コルチコステロンの濃度が減少したことを確認した(
図10A、11A)。
【0057】
また、PBSで1/3希釈した血漿及び50μgのPFC組織破砕物を準備した。ROS/RNSアッセイキット(Cell Biolabs)を用いて製造社の方法によって血漿及びPFC組織内のROS/RNS(reactive oxygen species/reactive nitrogen species)濃度を測定した。
【0058】
その結果、ストレスによって血漿及びPFC組織内のROS/RNSの濃度が統計的に有意に増加し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはQYペプチド食餌群の血漿及びPFC組織内のROS/RNSの濃度が減少したことを確認した(
図10C、
図10D、
図11C、
図11D)。
【0059】
また、15日間の慢性身体拘束ストレスが完了したマウスのショ糖(sucrose)に対する選好度測定を通じて鬱病を評価した。ショ糖選好度試験は、総4日間行い、同一サイズと形状の飲水桶に同一量の0.1Mのショ糖及び水を供給した。1日目に、0.1Mのショ糖及び水を24時間提供し、2日目に、ショ糖及び水の位置を交換して24時間提供し、3日目には、0.1Mのショ糖及び水を提供しておらず、4日目に、再び同一量の0.1Mのショ糖及び水を3時間提供した後、位置を交換し、また3時間提供した。4日目に、6時間飲用したショ糖及び水の量を測定し、下記式によってショ糖選好度(%)を計算した。
【0060】
ショ糖選好度(%)=ショ糖飲用量/(水飲用量+ショ糖飲用量)×100
その結果、ストレスによってショ糖選好度が減少し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはQYペプチド食餌群のショ糖選好度が増加したことを確認した(
図10B、
図11B)。
【0061】
実施例3 慢性身体拘束ストレス動物モデルにおける認知機能向上分析
7週齢C57BL/6雄マウス28匹を2グループ(正常群、ストレス群)に分け、チロシン含有ペプチド(1xYQ、2xYQまたは1xYW)が添加された飼料を1週間摂食させ、ストレス群に2週毎日2時間(午後2~4時)ずつ個別的に拘束器に強制動員して慢性身体拘束ストレスを与えた。以後、事物認知技能検査(object recognition test, ORT)を遂行した。
【0062】
その結果、ストレスによって事物認知機能が減少し、ストレス群において一般食餌群対比でYQまたはYWペプチド食餌群の事物認知機能が増加したことを確認した(
図12)。
【0063】
実施例4 アルツハイマー型認知症動物モデルにおける認知機能向上分析
4-1 アルツハイマー型認知症遺伝子改変マウスモデル
アルツハイマー型認知症遺伝子改変マウスモデルである3xTG-AD2ヶ月齢及び正常マウスC57BL/62ヶ月齢の認知機能を検査した後、それぞれ2グループに分け、一般飼料(ND)またはチロシン含有ペプチド(1xYQ)が添加された飼料を摂食するようにした。また、3xTG-ADマウスにおいて軽度認知障害が現われると知られた8ヶ月齢に認知機能をまた試してチロシンペプチドの認知機能保護効能を検査した。
【0064】
その結果、正常マウス対比で認知症動物モデルの事物認知機能が減少し、2ヶ月齢よりは、8ヶ月齢の事物認知機能減少幅がさらに大きいことを確認した。また、正常マウス群では、ペプチド食餌による差がないが、一方、認知症動物モデルでは、YQペプチド食餌によって事物認知機能が多少増加することを確認した(
図13)。
【0065】
また、脳組織のうち海馬を組織質量10mg当たりRIPA緩衝溶液100μl(タンパク質加水分解酵素/リン酸加水分解酵素阻害剤を含む)を入れ、ガラスビード及びブレンダーを用いて1分間粉砕した。12,000×g、4℃で15分間遠心分離して上澄み液を分離し、PBSに10倍希釈して活性酸素種/活性窒素種(ROS/RNS)測定に使用した。ROS/RNS濃度は、OxiSelectROS/RNSアッセイキット(Cell Biolabs)を使用しておすすめ実験方法によって測定した。
【0066】
その結果、認知症動物モデルの海馬組織のROS/RNS濃度は、正常群対比で増加したが、YQペプチドによって減少することを確認した(
図14)。
【0067】
4-2 グルタミン酸作動性ニューロン蛍光標識アルツハイマー型認知症モデル
グルタミン酸作動性ニューロンに蛍光標識されたvGluT2-IRES-Cre::tdTomatoマウスとアルツハイマー型認知症遺伝子改変マウスモデルである3xTG-ADマウスを交雑し、グルタミン酸作動性ニューロンに蛍光標識された認知症モデルである3xTG-vGluT2-Cre::tdTomatoを構築し、グルタミン酸作動性ニューロンを赤色標識することができる動物モデルであることを確認した(
図15A)。
【0068】
3xTG-vGluT2-Cre::tdTomatoマウス2ヶ月齢にチロシン含有ペプチド(1xYQ)が添加された飼料を摂食させ、6~8ヶ月齢に自発的興奮性シナプス後に電流(spontaneous excitatory postsynaptic current, sEPSC)を測定してグルタミン酸作動性ニューロンの活性度を測定した。膜電流を記録するために、200μm厚さの横断面脳切片を1.5~2ml/分の人工脳脊髄液が注入された記録チャンバに入れ、-70mVの維持電位で内側前頭葉前部皮質(mPFC)の視覚化されたグルタミン酸作動性ニューロンから全細胞電圧クランプ記録を得た。グルタミン酸作動性電流は、ピクロトキシン(100μM)の添加で分離された。全ての記録は、30±2℃で行われ、ピペット溶液は、130mM KCl、5mM CaCl2、10mM EGTA、10mM HEPES、2mM MgATP、0.5mM Na2GTP及び5mMホスホクレアチンからなる物質を利用した。
【0069】
その結果、認知症動物モデルのグルタミン酸作動性ニューロンの活性は、正常群対比で減少したが、YQペプチドによって増加することを確認した(
図15B)。
【0070】
実施例5 てんかん発作動物モデルにおける興奮毒性及び酸化ストレス抑制効果分析
4週齢ICR雄マウスに1週間正常食餌、チロシン(L-Tyr)またはチロシン含有ペプチド(3xYQ、1xYWまたは3xYW)が添加された飼料を摂食させ、200mg/kg YQを腹腔注射(YQ i.p)した。カイニン酸(Kainic acid, KA)を湯煎で加熱しながら、生理食塩水に溶解して4.5mg/mlカイニン酸溶液を準備し、カイニン酸溶液を腹腔注射し(36mg/kg)、2時間の間、発作レベルと症状を記録した。カイニン酸を注射し、16時間または5日後、生存したマウスの脳組織(前頭葉前部皮質、海馬)を摘出した。
【0071】
5-1 発作レベルの判断
発作レベルの判断は、下記表2の基準を適用して記録した。
【表2】
【0072】
その結果、一般食餌群対比でペプチド食餌群の発作レベルが顕著に減少することを確認した(
図16)。
【0073】
5-2 活性酸素種/活性窒素種(ROS/RNS)測定
脳組織のうち海馬を組織質量10mg当たりRIPA緩衝溶液100μl(タンパク質加水分解酵素/リン酸加水分解酵素阻害剤を含む)を入れ、ガラスビード及びブレンダーを用いて1分間粉砕した。12,000×g、4℃で15分間遠心分離して上澄み液を分離し、PBSに10倍希釈してROS/RNS測定に使用した。ROS/RNS濃度は、OxiSelectROS/RNSアッセイキット(Cell Biolabs)を使用しておすすめ実験方法によって測定した。
【0074】
その結果、カイニン酸を注射して生存したマウスの海馬組織のROS/RNS濃度は、カイニン酸によって増加したが、3xYQまたは3xYWペプチドによって減少することを確認した(
図17)。
【0075】
5-3 グルタミン合成酵素(GS)活性測定
96ウェルプレートに海馬溶解物2μlを入れ、50mMイミダゾール-HCl緩衝溶液(pH6.8)をさらに入れて50μlを合わせた。GS活性アッセイ緩衝溶液(50mMイミダゾール-HCl、pH6.8、25mMのL-グルタミン、12.5mMのヒドロキシルアミン、12.5mMのヒ酸ナトリウム(sodium arsenate)、1mMのMnCl2及び0.08mMのADP)50μlを入れ、37℃で約40分間反応させた。反応終了後、空ウェルに標準物質であるγ-グルタミルヒドロキサム酸(γ-glutamylhydroxamate)を0.391~25.0mMの濃度になるように添加した。試料と標準物質に100μlの反応停止液(90mMのFeCl3、1.8NのHCl及び1.45%(w/v)卜リクロロ酢酸(trichloroaceticacid)を添加し、560nm波長で吸光度を測定した。
標準曲線との比較を通じて各サンプルのGS活性を求めた。GS活性は、最終生産物であるγ-グルタミルヒドロキサム酸の生成量で表現し、単位は、μM/min/ugタンパク質である。
【0076】
その結果、カイニン酸を注射して生存したマウスの海馬組織のグルタミン合成酵素の活性は、カイニン酸によって減少したが、3xYQ、1xYW、3xYWまたは3xYQペプチドによって増加することを確認した(
図18)。
【0077】
実施例6 虚血性脳卒中動物モデルにおける神経細胞死滅抑制及び恒産化効果分析
3ヶ月齢雄モンゴルスナネズミを3%イソフルラン(isoflurane)で全身痲酔を誘導した後、2.5%のイソフルランガスで痲酔を維持した。首部分を消毒した後、切開して両方の総頸動脈(common carotid artery)を露出させ、小型血管クリップ(micro vessel clip)を用いて5分間血流を閉鎖して虚血を誘発して脳卒中を誘導した。血管クリップ適用時、体温は、37.0±0.5℃に維持し、偽手術(sham operation)を遂行した動物を対照群として利用した。
【0078】
6-1 神経細胞死滅抑制効果分析
虚血を誘発した後、再灌流させながら、YQペプチドを200mg/kgの量で24時間ごとに3回腹腔投与し、4日目に動物を犠牲させて脳組織を摘出して死滅された神経細胞の数を測定した。
【0079】
その結果、虚血性脳卒中動物モデルの神経細胞の数は、偽手術群対比で減少したが、YQペプチドによって増加することを確認した(
図19A)。
【0080】
6-2 SOD及びCAT活性測定
虚血を誘導した後、再灌流させながらYQペプチドを200mg/kgの量で1回腹腔投与し、再灌流し、2時間または24時間後に、アベルチン(avertin)を用いて全身痲酔させた後、頭蓋腔を開いて迅速に脳を取り出した後、海馬組織を摘出して液体窒素に急冷させて超低温冷凍庫に保管した。以後、SOD比色反応活性キット及びカタラーゼ比色反応活性キットを用いてSODとCAT活性を測定した。
【0081】
その結果、虚血性脳卒中動物モデルの再灌流24時間後、SODとCAT活性は、偽手術群対比で減少したが、YQペプチドによって増加することを確認した(
図19B、C)。
【0082】
6-3 神経細胞死滅確認のための免疫組織化学染色
虚血性脳損傷動物モデルの海馬における神経細胞とグルー細胞の変化及び関連因子の変化を確認するために免疫組織化学染色を実施した。虚血を誘発した後、再灌流させながら、YQペプチドを200mg/kgの量で24時間ごとに3回腹腔投与した。ペプチドの代わりに、vehicle(0.9%サリン)を投与して対照群として利用した。4日目に動物を犠牲させて脳組織を摘出して4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で固定した。以後、10、20、30%スクロース溶液に沈積させた後、液体窒素を用いて組織を冷凍させた後、30μm厚さの連続切片に作製し、冷凍保存溶液に入れ、-20℃で保管した。
脳組織切片を0.01M PBSを使用して10分ずつ3回洗浄し、組織内に存在する内因性過酸化酵素を無くすために、0.3% H2O2に30分間反応させた。非特異的な免疫反応を防止するために、切片をそれぞれの抗体に合う5%正常血清で30分間反応させた後、抗-錐体細胞関連抗体(NeuN)、抗星状膠細胞関連抗体(Iba-1)及び抗ミクログリア細胞関連抗体(GFAP)をそれぞれの希釈倍数で希釈して常温で一晩中反応させた後、反応終了組織は、ビオチンが結合されている2次抗体で2時間反応させた後、ABC溶液に1時間反応させた。反応済の組織は、3、3’-DABキットを用いて発色を実施した後、スライドガラスに塗抹した後、室温で12時間乾燥し、通常、脱水透明化過程を経てDPXマウント溶液を用いて封入した後、顕微鏡(Olympus BX53)を用いて観察した。
【0083】
その結果、対照群(0.9%サリン投与群)では、海馬CA1領域に神経細胞がほとんど観察されていないが、YQペプチド投与群では、偽手術群(sham)と比べて、約60.7%の細胞が生き残っていることを確認した。また、虚血性脳卒中動物モデルにおいて対照群(0.9%サリン投与群)では、拡張された細胞質と拡張された細胞突起を有するグリア細胞が観察されたが、YQペプチド投与群では、グリア細胞の形態学的な変化が大きくなく、偽手術群(sham)とほぼ類似した形態を示すことを確認した(
図20)。
【0084】
前記結果に基づき、チロシンが末端に位置するペプチドが虚血による脳組織の酸化的損傷及び免疫反応を抑制させて神経細胞の死滅を防御することが分かった。
【0085】
実施例7 高脂肪食餌第2型糖尿動物モデルbにおけるインスリン敏感度増進効果分析
3週齢C57BL/6雄マウスをコアテックから購入して動物飼育室で恒温(22±2℃)、恒湿(50±5%)、12時間おきの光周期で維持し、ケージ当たり2匹ずつ分離飼育した。1週間適応させた後、4グループに分けて正常食餌(normal diet, ND)、高脂肪食餌(high fat diet, HFD, 60% kcal fat)、YQペプチド添加高脂肪食餌群(HFD+1xYQまたはHFD+3xYQ)で17週間飼育した。
【0086】
7-1 体重、飼料摂取量及び空腹血糖測定
一週間おきに各動物の体重と飼料摂取量を測定し、飼育開始後、1、5または8週には、12時間絶食後、血糖測定検査機(Accu-Check)を用いて空腹血糖を測定した。
【0087】
その結果、全実験群の体重は漸増し、同日付を基準に、ND群対比でHFD群の体重がさらに高いことを確認し、HFD群対比でHFD+3xYQ群の体重がさらに低いことを確認した(
図21A)。飼料摂取量は、同日付を基準に、ND群対比でHFD群、HFD+1xYQ群またはHFD+3xYQ群が低いことを確認し、HFD群、HFD+1xYQ群またはHFD+3xYQ群のグループ間の違いはほとんどないことを確認した(
図21B)。
【0088】
また、HFD群の血糖がND群に比べて増加し、HFD+1xYQ群またはHFD+3xYQ群の血糖がHFD群に比べて経時的に減少することを確認した(
図22)。
【0089】
7-2 耐糖能(glucose tolerance test, GTT)及びインスリン感受性(insulin tolerance test, ITT)検査
飼育開始後、15週にGTT検査を、16週にITT検査を遂行した。GTTは、12時間絶食後、葡萄糖溶液2g/kgを腹腔注射した後、0、20、60、90及び120分に静脈から採血して血糖を測定した。ITTは、6時間絶食後、インスリン0.75U/kgを腹腔注射した後、0、15、30、60及び120分に静脈から採血して血糖を測定した。
【0090】
耐糖能及びインスリン感受性検査結果において、ND群対比でHFD群の血液内グルコース含量が増加し、HFD群対比でHFD+3xYQ群の血液内グルコース含量が減少することを確認した(
図23、24)。
【0091】
7-3 排尿量及び脂肪量測定
排尿量(urine volume)は、16時間の間、代謝ケージで収集した小便量(ml)を測定し、脂肪量(fat mass)は、EchoMRITM機械を使用して各マウスから測定して体重の%で示した。
【0092】
その結果、ND群対比でHFD群の排尿量及び脂肪量が増加し、HFD群対比でHFD+3xYQ群の排尿量及び脂肪量が減少することを確認した(
図25)。
【0093】
7-4 血漿生化学的分析
痲酔後、下行大動脈から血液を採取し、3,000rpmで15分間遠心分離して血漿を分離した。インスリンの濃度は、ELISAキット(Crystal Chem, Ultra Sensitive Mouse Insulin ELISA Kit)を使用して測定し、アラニンアミノ基転移酵素の濃度(ahlanine aminotransferase, ALT)は、アッセイキット(IVD Lab Co., ChemiLab GPT(ALT) assay kit)を使用して測定し、ROS/RNSの濃度は、アッセイキット(Cell Biolabs, Inc., OxiSelectTM In Vitro ROS/RNS Assay Kit)を使用して測定した。
【0094】
その結果、ND群対比でHFD群の血漿内インスリン、ALT及びROS/RNSの濃度が増加し、HFD群対比でHFD+3xYQ群の血漿内インスリン、ALT及びROS/RNSの濃度が減少することを確認した(
図26)。
【0095】
前記結果に基づき、チロシンが末端に位置するペプチドが非アルコール性肝疾患及び活性酸素/活性窒素種による慢性代謝疾患の予防または治療に使用可能であるということが分かった。
【0096】
7-5 組織学的分析
痲酔後の肝組織を摘出して液体窒素に急冷させ、一部は、10%ホルマリンに固定した後、パラフィンブロック(paraffin block)で5μm厚さの組織スライドを作製した。次いで、組織をH&E(hematoxilyn & eosin)で染色し、顕微鏡(Olympus, CKX41)で観察してイメージ化した。
【0097】
その結果、HFD群の肝は、肝細胞内の脂肪滴の跡と組織の纎維化が観察されたが、一方、HFD+3xYQ群は、ND群と類似した肝組織の形状を維持することを確認した(
図27)。
【0098】
7-6 インスリン受容体(insulin receptor)発現量測定
代謝疾患で筋肉のインスリン受容体の減少は、インスリン信号敏感度を減少させて筋肉におけるグルコースを使用する能力を制限させるようになり、筋肉減少症の原因になると知られている。肝組織をRIPAバッファーで均質化し、BCA法でタンパク質を定量して抗インスリン受容体β(insulin receptor-β,IRβ)抗体を用いてウェスタンブロットを実施した。
【0099】
その結果、ND群対比でHFD群のインスリン受容体βの発現量が減少し、HFD群対比でHFD+3xYQ群のインスリン受容体βの発現量が増加することを確認した(
図28)。
【0100】
前記結果に基づき、チロシンが末端に位置するペプチドがインスリン受容体βの発現量を増加させることで、代謝疾患による筋肉減少症の予防効果があるということが分かった。
【0101】
7-7 アルブミン/クレアチン含量及び中性脂肪含量測定
腎臓の機能が低下すれば、小便内のアルブミン(albumin)の含量が増加し、クレアチン(creatinne)の含量が減少すると知られている。そこで、マウスアルブミンELISAキット(Abcam)及びクレアチンアッセイキット(Abcam)を用いて各実験動物の小便からアルブミン及びクレアチンの含量を測定し、アルブミン/クレアチンの割合を計算した。また、血漿10μlまたは均質化した肝組織40mgを10,000gで10分間遠心分離した後、上澄み液を分離して中性脂肪(Triglyceride、TG)測定キット(Cayman)を用いて血漿または肝に存在する中性脂肪の量を測定した。
【0102】
その結果、ND群対比でHFD群のアルブミン/クレアチンの割合及び中性脂肪の量が増加し、HFD群対比でHFD+1xYQまたはHFD+3xYQ群のアルブミン/クレアチンの割合及び中性脂肪の量が減少することを確認した(
図29)。
【0103】
前記結果に基づき、チロシンが末端に位置するペプチドが糖尿による腎臓機能の低下を抑制し、糖尿病合併症の1つである糖尿腎症予防に効果があることが分かり、血中中性脂肪の異常増加現象である脂質異常血症に対する予防または治療効果があることが分かった。
【0104】
実施例8 腎臓虚血再灌流による急性腎不全動物モデルにおけるタンパク質のニトロ化抑制効果分析
23~25gの雄C57BL/6マウスを温度及び湿度が一定に維持される無菌飼育室で自由に水と飼料とを摂取するようにし、1)対照群(sham)、2)水投与した腎臓虚血再灌流誘発群(veh+renal IR)、3)YQペプチド投与した腎臓虚血再灌流誘発群(YQ+renal IR)に分けた。YQ(100mg/kg)は、4日間、一日1回経口投与し、4日目に経口投与30分後、腎臓虚血を誘発した。腎臓虚血は、腹部を切開し、マイクロ血管クランプ(Muller atraumatic vascular clamp)を用いて両側腎血管茎(renal pedicle)をクランプして誘発し、25分虚血後、クランプを除去して再灌流した。対照群(sham)は、クランプを介した虚血誘発を除いた全ての手術過程を同一に施行した。再灌流後、24時間に、実験動物を犠牲させて心臓から血液を採取して腎臓組織を摘出した。
【0105】
8-1 血中クレアチニン濃度測定
採取した血液を3,000rpmで15分間遠心分離して血漿を分離し、Jaffe法を用いて腎臓損傷に対する評価指標である血中クレアチニンの濃度を測定した。Jaffe法は、510nm波長で血漿試料をピクリン酸と反応して測定した吸光度と60%酢酸で反応を終了させた後、測定した吸光度との差でクレアチニンの濃度を計算し、mg/dl単位で示した。
【0106】
その結果、血漿クレアチニンは、腎臓虚血及び再灌流24時間後、対照群(sham)に比べて、顕著に増加し、そのような増加は、YQペプチド投与によって統計的に有意に抑制されることを確認した(
図30A)。
【0107】
8-2 リアルタイムqPCR分析
Trizol法で腎臓組織から総RNAを抽出し、RevertAid逆転写システム(Thermofisher)を使用してcDNAを合成した。 iQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad)を使用して CFX Connect Real-Time PCRシステム(Bio-Rad)で炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6及びMCP-1)に対する定量的 PCR(quantitative PCR, qPCR)を遂行した。GAPDHに補正されたターゲットmRNAの相対的な量は、2
-△Ct法を使用して分析した。実験に使用したプライマーは、下記表3の通りである。
【表3】
【0108】
その結果、急性腎不全の主要発病メカニズムである炎症反応の指標であるIL-1β、IL-6及びMCP-1の発現量は、腎臓虚血及び再灌流24時間後、対照群(sham)に比べて顕著に増加し、そのような増加は、YQペプチド投与によって統計的に有意に抑制されることを確認した(
図30B、C、D)。
【0109】
8-3 腎臓組織におけるニトロ化タンパク質及び脂質過酸化産物発現量の測定
腎臓組織をRIPAバッファーで均質化し、BCA法でタンパク質を定量した後、ニトロチロシン(nitrotyrosine)及び脂質過酸化の産物である4-hydroxynonenal(4-HNE)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを遂行した。
その結果、腎臓虚血及び再灌流24時間後、腎臓組織においてチロシンがニトロ化されたタンパク質の量が対照群(sham)に比べて増加し、そのような増加は、YQペプチド投与によって顕著に減少することを確認した(
図31)。
【0110】
実施例9 高アンモニア血症動物モデルにおける血中アンモニア抑制効果分析
13週齢の雄C57BL/6マウスを温度及び湿度が一定に維持される無菌飼育室で自由に水と飼料と摂取するようにし、(1)対照群(Control)、(2)水投与した高アンモニア血症群(veh+AOM)、(3)100mg/kg YQペプチド投与した高アンモニア血症群(YQ100+AOM)及び(4)200mg/kg YQペプチド投与した高アンモニア血症群(YQ200+AOM)に分けた。YQペプチドを4日間、一日1回経口投与し、4日目に、経口投与2時間後、アゾキシメタン(Azoxymethane, AOM, 100mg/kg)を腹腔に注射して高アンモニア血症を誘導した。AOM投与後、12時間後、脱水を予防するために、0.5%グルコースを含む生理食塩水200μlを腹腔注射し、4時間後、実験動物を犠牲させて心臓から血液を採取し、肝組織を摘出した。
【0111】
9-1 血中アンモニア分析
アンモニアは、アミノ酸と核酸の主な代謝物であり、アンモニアをヨウ素に転換させるヨウ素回路の主要酵素が肝細胞にのみ存在し、アンモニアを濃度を低めるGSとSOD、活性酸素を除去するカタラーゼなども肝組織に豊かに存在するので、肝を経て脳に上がる血管の血中アンモニア濃度変化は、肝性脳症に重要な指標となる。そこで、血中アンモニア量を測定するために、単一波長反射測定法分析用測定器である PocketChem BA PA-4140(Arkray, Japan)を使用した。検査紙に血液20μlを室温で3分間反応させ、測定器に挿入して635nm(LED)波長で吸光度を測定し、結果をμg/dL単位で示した。
【0112】
その結果、水投与した高アンモニア血症群(veh+AOM)は、対照群(Control)に比べて、血中アンモニア濃度が約3.6倍増加し、YQペプチドの投与は、AOMによる血中アンモニア増加を統計的に有意に抑制することを確認した(
図32A)。
【0113】
9-2 肝組織でのニトロ化タンパク質発現量測定
肝組織をRIPAバッファーで均質化し、BCA法でタンパク質を定量した後、ニトロチロシン(nitrotyrosine)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを遂行した。
その結果、AOM投与後の肝組織でニトロチロシンタンパク質が対照群に比べて増加し、そのような増加は、YQペプチドの投与によって顕著に減少しており、その結果は、YQペプチドが肝に存在するタンパク質のニトロ化を抑制し、肝に流入されたアンモニアを除去可能にするということが分かった(
図32)。
【0114】
[統計処理]
本発明の全データは、平均±標準偏差で示し、Dunnetts Multiple Comparison Testを用いた一元配置分散分析(ANOVA)またはGraphPadプリズム5(GraphPad Software)を用いたスチューデントt検定で統計分析された。
【配列表】
【国際調査報告】