(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】プラスチック由来の合成原料のための安定添加剤
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552524
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 US2022019813
(87)【国際公開番号】W WO2022192577
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】セオドア シー.アーンスト
(72)【発明者】
【氏名】カリナ ユーレステ
(72)【発明者】
【氏名】カムズワラ ビャカラナム
(72)【発明者】
【氏名】ヤン バン バウベル
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ ダーワン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA30
4F401CA70
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4F401CB01
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4F401CB35
4F401DC00
4F401EA61
4F401EA67
4F401EA78
4F401EA79
4F401FA01Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】プラスチックからの合成原料のガム形成又は沈殿物の減少などの、プラスチックに由来する合成燃料の安定性を改善するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】プラスチックに由来する合成原料を安定化するための組成物及び方法において使用される酸化防止剤が開示される。本明細書に開示されるいくつかの方法は、酸化防止剤組成物をプラスチック由来合成原料組成物に添加することを含む。本明細書に開示されるいくつかの方法は、実質的に酸素を含まない条件下で約400℃~約800℃の温度でプラスチックを加熱して熱分解流出物を生成することと、熱分解流出物を蒸留することと、合成原料を回収することと、合成原料に安定剤を添加して汚染を低減することと、を含む。本開示はまた、プラスチックに由来する合成原料及び酸化防止剤を含む組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック由来の合成原料組成物を安定化する方法であって、
酸化防止剤組成物をプラスチック由来の合成原料組成物に添加することを含む、方法。
【請求項2】
前記合成原料は、約2重量%~約30重量%のガス(C
1~C
4炭化水素)と、(2)約10重量%~約50重量%の油(C
5~C
15炭化水素)と、(3)約10重量%~約40重量%のワックス(≧C
16炭化水素)と、(4)約1重量%~約5重量%のチャー及びタールと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原料は、約35重量%~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10重量%~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5重量%~約25重量%のナフテン、並びに約5重量%~約35重量%の芳香族化合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤は、アルキル化フェノール、芳香族ジアミン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル化フェノールは、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族ジアミンは、フェニレンジアミンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記合成原料組成物は、他の安定剤及び酸化防止剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記添加は、熱分解反応器の出口、急冷塔の入口、蒸留塔の入口、急冷塔の出口、蒸留塔の出口、蒸留塔の後、濾過スキッドの入口、サージドラムの出口若しくは塔底生成物の出口の前若しくは後、及び/又は還流ドラムの後で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤は、前記合成原料組成物に約1ppm~5000ppm添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
合成原料を得る方法であって、前記方法は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約800℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)前記熱分解流出物を蒸留することと、
(c)前記合成原料を回収することと、
(d)前記合成原料に安定剤を添加して汚染を低減することと、を含む方法。
【請求項11】
前記回収された合成原料を急冷塔又は蒸留塔において冷却することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びそれらの組み合わせを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記合成原料は、約2重量%~約30重量%のガス(C
1~C
4炭化水素)と、(2)約10重量%~約50重量%の油(C
5~C
15炭化水素)と、(3)約10重量%~約40重量%のワックス(≧C
16炭化水素)と、(4)約1重量%~約5重量%のチャー及びタールと、を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記合成原料は、約35重量%~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10重量%~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5重量%~約25重量%のナフテン、並びに約5重量%~約35重量%の芳香族化合物を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記安定剤は、酸化防止剤を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化防止剤は、前記合成原料組成物に約1ppm~5000ppm添加される、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プラスチックに由来する合成原料、及び酸化防止剤を含む、組成物。
【請求項18】
前記合成原料は、約2重量%~約30重量%のガス(C
1~C
4炭化水素)と、(2)約10重量%~約50重量%の油(C
5~C
15炭化水素)と、(3)約10重量%~約40重量%のワックス(≧C
16炭化水素)と、(4)約1重量%~約5重量%のチャー及びタールと、を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記合成原料は、約35重量%~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10重量%~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5重量%~約25重量%のナフテン、並びに約5重量%~約35重量%の芳香族化合物を含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記アルキル化フェノールは、ヒンダードフェノールである、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、プラスチックに由来する合成原料を安定化することに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは最も急速に増加している廃棄物であり、深刻な環境問題を引き起こしている。廃プラスチックを、原油、又はスチームクラッカー内でのオレフィンの生成のための原料などの有用で価値の高い生成物に変換することにより、プラスチック廃棄物問題に対処する機会が提供される。
【0003】
プラスチックは、主に、ポリエチレン及びポリプロピレンで構成されている。熱分解などの様々なプロセスを通じて、プラスチックの炭素-炭素結合及び炭素-水素結合は、より短い鎖に分解される。プラスチックの分解は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン及び他の不飽和物(例えば、複数の反応性単位を有し得るα-ωジオレフィン)が多いオリゴマー鎖又はモノマーの様々なタイプ及び量をもたらし得る。
【0004】
不飽和成分は本質的に不安定であり、酸化による劣化を受けやすい、又はモノマーが再重合する可能性があり、その結果、プラスチック由来の合成原料内にガム又は沈降物が生じる可能性がある。
【0005】
酸化及びガムは、合成原料の回収、輸送、貯蔵又は使用中に問題を引き起こし、様々なプロセス機器を汚損して、様々な製造ユニットの詰まり及び腐食などの問題を引き起こす可能性がある。沈殿したガム様物質は、フィルタ、ポンプ、パイプライン、及び他の設備を塞ぐか、又はタンク内に堆積する場合があり、したがって、追加の洗浄及び費用が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチックからの合成原料のガム形成又は沈殿物の減少などの、プラスチックに由来する合成燃料の安定性を改善するための組成物及び方法が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一態様は、プラスチック由来の合成原料組成物を安定化する方法であって、酸化防止剤組成物をプラスチック由来の合成原料組成物に添加することを含む方法である。
【0008】
本出願の別の態様では、合成原料を得る方法であって、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約800℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を蒸留することと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)合成原料に安定剤を添加して汚染を低減することと、を含む。
【0009】
本出願の更に別の態様は、プラスチックに由来する合成原料と酸化防止剤とを含む組成物である。
【0010】
本出願の別の態様では、酸化防止剤及び合成原料を含む組成物であって、酸化防止剤が合成原料に添加され、合成原料は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約800℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解を蒸留することと、
(c)蒸留からの熱分解流出物を凝縮又は急冷して、合成原料を提供することと、
(d)凝縮の後に、合成原料に酸化防止剤を添加することと、を含む。
【0011】
安定剤組成物及び方法は、プラスチックに由来する合成原料の回収、輸送、貯蔵又は使用中のポリマーの酸化、ガム又は残留物の形成、変色又はそれらの組み合わせを防止又は低減するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0013】
【
図2】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0014】
【
図3】安定剤組成物による処理及び処理後の試料の収集を示す、プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、様々な実施形態への言及を提供するが、当業者は、本出願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更がなされ得ることを認識するであろう。様々な実施形態が、図面を参照して詳述される。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。更に、本出願に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に記載するものである。
【0016】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。本明細書で説明されるものと同様又は同等の方法及び材料が、本出願の実施又は試験に使用され得るが、方法及び材料を以下で説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0017】
本明細書で使用される「酸化防止剤」という用語は、酸化、劣化、分解及びガム形成を阻害、防止又は低減することができる化合物である。酸化防止剤は、フリーラジカル形成を防止するスカベンジャーとして作用することができる。
【0018】
本明細書で使用されるとき、用語「プロセス機器」とは、圧縮機、中間冷却器、センサ、凝縮器、急冷塔などを意味し、これらは、汚れの影響を受ける可能性があるプロセスに関連付けられている。この用語はまた、流体連通又はガス連通している構成要素のセットを含む。
【0019】
本明細書で使用される「安定剤」という用語は、合成原料の変色を防止又は低減し、不溶性生成物(例えば、ガム)の形成又は沈降を防止又は低減する組成物、又はそれらの組み合わせを指す。
【0020】
「合成原料」という用語は、プラスチックの熱化学変換などのプラスチックの処理又はプロセスから得られる炭化水素を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含有する(contain(s))」、及びそれらの変形は、追加の作用又は構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、又は単語であることが意図される。単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態又は要素を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「任意選択の」又は「任意選択に」は、その後に記載された事象、又は状況が発生する可能性があるが発生する必要はなく、並びにその説明に事象又は状況が生じる事例及び生じない事例が含まれることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の配合成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用配合物を作製するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質若しくは配合成分の製造、供給源、又は純度の違いにより、及び同様の近似考慮事項により生じる可能性がある数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する配合物の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する配合物を混合又は加工することに起因して異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されている場合、添付の特許請求の範囲は、これらの量と同等のものを含む。いくつかの実施形態では、「約」は、例えば、引用された値の5%以内を指し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、「から本質的になる」を意味し、「からなる」を含む。「から本質的になる」及び「からなる」は、米国特許法に準じて解釈される。例えば、特定の化合物又は材料を「実質的に含まない」溶液は、その化合物又は材料を含まなくてもよいか、あるいは意図しない汚染、副反応、若しくは不完全な精製などによって存在する少量のその化合物又は材料を有してもよい。「少量」は、微量、測定不可能な量、価値若しくは特性を妨げない量、又は文脈で提供されるような何らかの他の量であり得る。提供された成分のリスト「のみ実質的に」有する組成物は、それらの成分のみからなるか、又は存在する微量のいくつかの他の成分を有するか、又は組成物の特性に物質的に影響を及ぼさない1つ以上の更なる成分を有し得る。更に、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分のタイプ若しくは量、特性、測定可能な量、方法、値、又は範囲を修飾する「実質的に」とは、意図された組成物、特性、量、方法、値、又は範囲を無効にする様式で、記載された組成物、特性、量、方法、値、又はその範囲に全体的に影響を及ぼさない変動を指す。用語「実質的に」で修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、この定義による等価物を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内の全ての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。例として、1~5の範囲に関する本明細書における開示は、次の範囲、すなわち、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、及び4~5のうちのいずれかに対する特許請求の範囲を支持するものとみなされるものとする。
【0026】
プラスチックに由来する合成原料を安定化させ、それによって合成原料の品質を改善する組成物及び方法が記載される。合成原料の安定性は、ガム形成、変色及び酸化を抑制、防止又は低減する添加剤によって改善することができる。いくつかの実施形態では、安定性は、酸化防止剤の使用によって達成される。
【0027】
プラスチック(例えば、廃プラスチック)をより低い分子量の炭化水素材料、特に炭化水素燃料材料に変換するいくつかのプロセスが知られている。例えば、米国特許第6,150,577号、同第9,200,207号及び同第9,624,439号を参照されたい。これらの刊行物の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。広く説明されているそのようなプロセスは、酸素が制限されているか又は酸素がなく、かつ大気圧を上回る、熱分解-高熱(例えば、約400℃~約850℃)などの熱化学変換によって長鎖プラスチックポリマーを破壊することを含む。熱分解条件は、約500~約700℃の温度を含む。得られた熱分解流出物は、蒸留され、次いで凝縮される。
【0028】
図1に示されるように、熱分解プロセスの実施形態は、廃プラスチックの供給器12、反応器14、及び凝縮器システム18を含む。ポリマー含有材料は、供給器内の入口10から供給され、反応器14に熱が加えられる。凝縮器システム18からの出口20は、生成物が出ることを可能にする。
図2は、プラスチックの熱分解プロセスの別の実施形態を示す。
図3は、熱分解流出物の凝縮又は急冷及び収集のためのプロセスを示す更に別の実施形態を示す。
【0029】
この熱分解反応を実現するための熱クラッキング反応器は、いくつかの特許、例えば、米国特許第9,624,439号、同第10,131,847号、同第10,208,253号、及び国際公開第2013/123377(A1)号を参照されたい。これらの刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、触媒の存在下又は非存在下である。
【0030】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約800℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を蒸留して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)合成原料に安定添加剤を添加して、合成原料を安定化させることと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、合成原料を回収することは、合成原料を得るために、熱分解流出物を分離すること若しくは急冷すること、又はその両方に関する。いくつかの実施形態では、安定添加剤は、原料が急冷カラムを出た後に合成原料に添加される。いくつかの実施形態では、安定添加剤は、
図3に示されるように、位置A、B、C、D、又はそれらの任意の組み合わせにて添加される。
【0032】
熱分解反応は、ガス(約10℃~約50℃の温度及び約0.5~約1.5大気圧で、5個以下の炭素を有する)、低沸点液体(ガソリン(約40~約200℃)又はディーゼル燃料(約180~約360℃)など)、-より高い(例えば、約250~約475℃)沸点の液体(油及びワックス)、及び一般にチャーと呼ばれるいくつかの固体残留物、から様々な炭化水素生成物を生成する。チャーは、熱分解プロセスが完了して燃料が回収された後に残る材料である。チャーは、原料の一部としてシステムに入る添加物及び汚染物質を含有する。チャーは、重油成分を有するスラッジに似た粉末状の残留物又は物質であり得る。ガラス、金属、炭酸カルシウム/酸化カルシウム、粘土、及びカーボンブラックは、変換プロセスが完了した後に残り、チャーの一部になるほんのわずかな汚染物質及び添加物である。
【0033】
熱可塑性及び熱硬化性廃プラスチックなどの様々なプラスチックタイプを、上記のプロセスで使用することができる。廃プラスチック原料において一般的に遭遇するプラスチックのタイプとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、約2~約30重量%のガス(C1~C4炭化水素)、約10~約50重量%の油(C5~C15炭化水素)、約10~約40重量%のワックス(≧C16炭化水素)、約1~約5重量%のチャー及びタール、を含む合成原料をもたらす。
【0035】
廃プラスチックの熱分解に由来する炭化水素は、アルカン、アルケン、オレフィン及びジオレフィンの混合物であり、オレフィン基は一般にC1とC2の間にある、すなわちα-オレフィンであり、いくらかのアルク-2-エンも生成され、ジエンは一般にアルファ及びオメガ位にある、すなわちアルク-α,ω-ジエンである。いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、パラフィン化合物、イソパラフィン、オレフィン、ジオレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物を生成する。いくつかの実施形態では、熱分解流出物中の1-オレフィンのパーセンテージは、約25~約75重量%、若しくは約35~約65重量%である。
【0036】
処理条件に依存して、石油源からの原油と同様の特徴を有することができる合成原料であるが、有するオレフィンとジオレフィンの量は異なり得る。いくつかの実施形態では、廃プラスチックに由来する合成原料は、約35~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5~約25重量%のナフテン、並びに約5~約35重量%の芳香族化合物を含有する。いくつかの実施形態では、合成原料は、約15~約20重量%のC9~C16、約75~約87重量%のC16~C29;約2~約5重量%のC30+を有し、ここで炭素鎖は、主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。他の実施形態では、合成原料は、約10重量%の<C12、約25重量%のC12~C20、約30重量%のC21~C40及び約35重量%の>C41を有し、ここで炭素鎖は、主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。
【0037】
いくつかの実施形態では、合成原料組成物は、その所望の又は意図された貯蔵、輸送、又は使用温度中よりも高い温度で合成原料組成物から沈殿し得るある範囲のアルファ又はオメガオレフィンモノマー成分を有する。いくつかの実施形態では、合成原料は、約25~約70重量%のオレフィン及びジオレフィン、約35~約65重量%、約35~約60重量%、又は約5~約50重量%のオレフィン及び/又はジオレフィンである。
【0038】
安定剤組成物は、例えば、汚染を低減するエチレン性不飽和モノマーに対して作用することができる1つ以上の化合物を含み、これは次に、合成原料のガム形成及び変色又はその両方を阻害、防止又は低減する。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は酸化防止剤を含む。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、フェノール系、芳香族アミン、又はそれらの混合物及び組み合わせである。酸化防止剤の例としては、エチレン性不飽和モノマーの酸化及び望ましくない重合(例えば、ラジカル)を防止するための、ヒンダードフェノール及びそのフェニレンジアミンなどのフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、フェノール系酸化防止剤はヒンダードフェノールである。いくつかの実施形態では、ヒンダードフェノールはアルキル化フェノール系酸化防止剤である。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、アルキル置換ヒンダードフェノール及び芳香族アミン又はそれらの混合物及び組み合わせを含むヒンダードフェノールである。いくつかの実施形態では、フェノールは、2又は3個のt-ブチル基を含有するブチル置換フェノールである。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒンダードフェノールは、一般に、次式のアルキルフェノールである:
【化1】
式中、R
aは独立して1~約24個の炭素原子を含有するアルキル基であり、aは1~5、1~4、1~3又は1~2の整数である。いくつかの実施形態では、R
aは、4~18個の炭素原子、又は4~12個の炭素原子を含有する。R
aは、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ter-ブチル、OH、OCH
3メチルフェニル又はそれらの混合物から選択されるアルキルフェノールである。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒンダードフェノールは、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-i-ブチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、2,6-ジノニル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’-メチレンビス4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-ノニル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(6-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス6-(α-メチルベンジル)-4-ノニルフェノール、2,2’-メチレンビス6-(α,α-ジメチルベンジル)-4-ノニルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、1,1’-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,6-ビス(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス3,3-ビス(3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブチレート、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェニルテレフタレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート、ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ジオクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート及びモノエチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート又はtert-ブチルカテコールのカルシウム塩である。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、芳香族アミンである。いくつかの実施形態では、酸化防止剤はアルキル化フェニレンジアミンであり、これにはエチレン性不飽和モノマーを標的とする非置換フェニレンジアミン、N-置換フェニレンジアミン又はN,N’-置換フェニレンジアミン、及びそれらの任意の組み合わせを含むことができる。フェニレンジアミンの例は、1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジメチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-ジブチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルフェニル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、及びそれらの任意の組み合わせである。フェニレンジアミンは、p-又はm-フェニレンジアミン自体(PDA)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N-シクロヘキシルp-フェニレンジアミン、N,N’-ジナフチルp-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニルp-フェニレンジアミン、N-アミノアルキル-N’-フェニルp-フェニレンジアミン、N-(2-メチル-2-アミノプロピル)-N’-フェニルp-フェニレンジアミン、フェニル-b-イソプロピル-アミノフェニルアミン、p-ヒドロキシジフェニルアミン、p-ヒドロキシルフェニル-b-ナフチルアミン、1,8-ナフタレンジアミン、を含むこともできる。
【0043】
ヒンダードフェノール化合物としては、o-及びp-sec-ブチルフェノール、2,4-ジ-sec-ブチルフェノール、2,6-ジ-sec-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2,6-tert-ブチルp-クレゾールとしても知られる)、2,6-ジブチル-4-メチルフェノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6-ビス(1,6ジメチルエチル-4-(1-メチルプロピル)フェノール),b-ナフトキノン、N-フェニルp-アミノフェノール;及びこれらの組み合わせ、を含むことができる。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、1,2,4-トリメチルベンゼン、N,N’-ジ-sec-ブチル-1,4-フェニレンジアミン又はそれらの組み合わせを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤又はそのブレンドは、約0.1重量%~約100重量%、0.1重量%~約50重量%、又は約1重量%~約50重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約10重量%、約2重量%~約30重量%、約2重量%~約20重量%、約2重量%~約10重量%、約50重量%~約100重量%、約60重量%~約100重量%で存在し、安定剤組成物の約50重量%~約90重量%で存在する。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、表1及び表2に示される製剤を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0045】
安定剤組成物は、1つ以上の溶媒も含んでもよい。適切な溶媒は、酸化防止剤の組み合わせが可溶性又は分散性である、任意の溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、芳香族溶媒、パラフィン系溶媒などの疎水性溶媒である。疎水性溶媒の例には、重質芳香族ナフサ、トルエン、エチルベンゼン、及び異性体ヘキサン、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0046】
安定剤組成物中の1つ以上の溶媒の濃度は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、1つ以上の溶媒の濃度は、安定剤組成物の約10重量%~約50重量%、約20重量%~約50重量%、約30重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%、約10重量%~約30重量%、約20重量%~約40重量%、又は約30重量%~約40重量%であり得る。
【0047】
安定剤組成物は、他の酸化防止剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む他の添加剤を含むことができる。
【0048】
使用される安定剤組成物(例えば、酸化防止剤)の量は、使用されるプラスチックのタイプ、汚染のタイプ、局所的な動作条件などのいくつかの要因に依存するが、フィードストリームへの注入又は各圧縮段階への直接注入(例えば、
図3の位置A、B、C、及び/又はDに示されるような)のいずれかを通して合成原料ストリームを含有するプロセス機器に導入される量の例は、安定剤組成物の組み合わせの約1ppm~約5,000ppm、例えば、安定剤組成物に基づいて、約5ppm~約4,000ppm、約5ppm~約3,000ppm、約5ppm~約2,000ppm、約5ppm~約1,000ppm、約1ppm~約500ppm、約10ppm~約500ppm、約20ppm~約500ppm、約30ppm~約500ppm、約40ppm~約500ppm、約50ppm~約500ppm、約60ppm~約500ppm、約70ppm~約500ppm、約80ppm~約500ppm、約90ppm~約500ppm、約100ppm~約500ppm、約5ppm~約450ppm、約5ppm~約400ppm、約5ppm~約350ppm、約5ppm~約300ppm、約5ppm~約250ppm、約5ppm~約200ppm、約5ppm~約150ppm、約5ppm~約100ppm、約10ppm~約300ppm、約10ppm~約250ppm、約50ppm~約250ppm、又は約50ppm~約200ppmの範囲である。
【0049】
安定剤組成物は、ポリマーの堆積を防止又は低減するのに有用であり、場合によっては、合成原料の生産プロセスにおいて使用される急冷塔又は塔などのプロセス機器内のポリマー形成を防止又は低減するのに有用である。安定剤組成物は、プロセスの1つ以上の場所で添加されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、文字「A」で示す
図3に示されるような急冷塔若しくは蒸留塔の入口、蒸留塔の出口、又は
図3に示され文字「B」で示す塔底生成物若しくはサージドラムへの入口、又はそれらの組み合わせで直接添加することができる。いくつかの実施形態では、これらの入口のうちのいくつかは、冷却装置ユニット及び/又は濾過スキッド等の他の機器及び機械の前に位置するか、又はそれを通過することができる。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、
図3の文字「C」で示す蒸留塔の直後、及び/又は
図3に示すように、文字「D」で示す還流ドラムが蒸留塔に再び入った直後に添加することができる。安定剤組成物は、場所A、B、C及びDの任意の組み合わせに添加することができる。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、熱分解反応器を出る合成原料蒸気が急冷され、ガス約150℃~約200℃又は約160℃~約180℃の温度で冷却及び凝縮されるときに、急冷塔又は蒸留塔の出口で添加される。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、貯蔵中に保持される合成原料に添加される。安定剤組成物は、必要に応じてプロセス機器に連続的又は断続的に添加され得る。
【0050】
安定剤組成物は、任意の適切な方法によって添加されてもよい。例えば、安定剤組成物は、原液の溶液又は希釈溶液で添加されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、システム内の所望の開口部に、又はプロセス機器若しくはそこに含まれる流体上に、噴霧、滴下、投入、又は注入される溶液、エマルジョン、又は分散液として適用されてもよい。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、連続的な様式で、又はシステムを洗浄するための大容量出水として、システムにポンプ輸送又は注入され得る。
【0051】
安定剤組成物は、処理されたプロセス機器を形成するために、プロセス機器に適用される。いくつかの実施形態では、処理されたプロセス機器は、安定剤組成物を添加しないプロセス機器上でよりも、プロセス機器上でのポリマー堆積が少ないことが観察され得る。ポリマー形成又はポリマー堆積の低減又は防止は、任意の既知の方法又は試験によって評価され得る。合成原料の安定化はまた、EN 12662、ASTM D2274、又はASTM D 4625に従って汚染量を測定して評価することができる。色は、ASTM D1500によって評価することができる。更に、本出願人は、ランシマット(Rancimat)法の修正版を使用して、酸化安定性も同様に決定できることを発見した。
【0052】
いくつかの実施形態では、安定添加剤を含む合成原料は、約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、約5%~約25%、約5%~約15%、約50%~約95%、約50%~約20%、又は約50%~約75%低減された汚染を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、安定添加剤を含む合成原料は、EN 12662に基づいて測定した場合、汚染が約5%~約95%、約5%~約75%、約5%~約50%、約5%~約25%、約5%~約15%、約50%~約95%、約50%~約20%、又は約50%~約75%減少する。いくつかの実施形態では、合成原料の色は、安定剤組成物を添加していない合成原料と比較して明るくなる。
【0054】
いくつかの実施形態では、安定剤は、酸化防止剤である。いくつかの実施形態では、安定剤は、プラスチックから得られる合成原料の中に添加される。いくつかの実施形態では、安定剤組成物は、プラスチックから得られる合成原料に添加される2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、1,2,4-トリメチルベンゼン、N,N’-ジ-sec-ブチルフェニレンジアミン又はそれらの組み合わせを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。他の実施形態では、安定剤組成物は、様々な量のモノマーを含有する合成原料に添加される。
【0055】
いくつかの実施形態では、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、1,2,4-トリメチルベンゼン、N,N’-ジ-sec-ブチルフェニレンジアミン又はこれらの組み合わせは、約35~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィンを含有する合成原料に添加される。
【0056】
いくつかの実施形態では、N,N’-ジ-sec-ブチルフェニレンジアミン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、又はこれらの組み合わせは、急冷後に得られ、約35重量%~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10重量%~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5重量%~約25重量%のナフテン、及び約5重量%~約35重量%の芳香族化合物を有し、炭素鎖が主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である合成原料に添加される。
【0057】
更に他の実施形態では、約35重量%~約65重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10重量%~約50重量%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5重量%~約25重量%のナフテン、及び約5重量%~約35重量%の芳香族化合物を有する合成原料に、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、又はこれらの組み合わせが添加される。
【実施例】
【0058】
実施例
【0059】
以下の実施例は、本発明の異なる態様及び実施形態を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。以下の実施例のいくつかは予言的なものであるが、他のものは既に行われている。特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更がなされ得ることが認識されるであろう。
【0060】
実施例1:プラスチックに由来する合成原料中の安定化添加剤
【0061】
プラスチックに由来する合成原料に対する安定化添加剤の効果は、それが含有する不溶性物質によって決定される。これは、EN12662による総汚染試験、又は別の実質的に同等若しくは類似の試験、及びASTM D1500による色によって評価される。
【0062】
安定化添加剤1又は安定化添加剤2は、
図3の位置A及びDに示されるように、約130℃~約190℃などのその動作温度で蒸留塔の入口で、及び/又は
図3の位置B及びCに示されるその動作温度で蒸留塔の出口で原料ストリームに添加され、原料ストリームの流速に基づいて、およそ50~500ppmの濃度で定常状態が達成されるまで添加される。ブランク試料(添加剤なし)も評価する。
【0063】
安定化添加剤の組成物を表1及び表2に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
安定化添加剤は、約35~65%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10~50%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5~25%のナフテン、及び約5~35%の芳香族化合物を有する原料ストリームに添加される。
【0068】
試料は、
図3に示す位置1及び2などのプロセス流中の複数の場所で、又は
図3に示す塔底生成物、留出生成物、及び還流ドラムを含む様々な熱分解生成物収集/貯蔵容器から直接、数日間連続して毎日収集される。
【0069】
本発明者らは、このデータが、試験した2つの添加剤の各々がガム形成を減少させることを示すと考える。本発明者らはまた、安定化添加剤1が、視覚的により少ない残留物を有するより明るい外観の試料合成原料を生成すると考える。
【0070】
実施例2:プラスチックに由来する合成原料中の安定化添加剤濃度の変化
【0071】
増加する濃度の(実施例1に記載されるような)安定化添加剤1が、約130℃~約190℃などのその動作温度で、かつ増加する濃度(約50~約700ppm)の原料ストリームの流速に基づいて、複数日にわたって毎日、蒸留塔の出口でプラスチックに由来する合成原料のフローストリームに添加される。
【0072】
実施例1に記載されるように、総汚染濃度は、EN12662、又は実質的に同等若しくは類似の試験方法に従って決定され、色は、ASTM D1500に従って決定され、試料は、実施例1に記載されるように位置1及び2で収集される。
【0073】
実施例3~6では、広範囲の熱分解油(異なる供給元から入手)の熱酸化安定性を増強する安定化/酸化防止添加剤の効果を、ランシマット法の修正版によって定量的に実証した。
【0074】
本発明者らによって実施されたランシマット法の修正版によれば、精製空気流を熱分解油試料に通過させ、これを特定の温度に加熱する。これらの等温熱酸化条件は、試料の酸化をもたらす。揮発性の反応生成物/酸化生成物が形成され、これらは空気流によって測定容器に輸送され、測定溶液(脱イオン水)に吸収される。測定溶液の導電率は、反応/酸化生成物の吸収により増加する。導電率の急激な増加が起こるまでの時間は、誘導時間と呼ばれる。酸化安定性は「誘導時間」として表され、より長い誘導時間は、より高い酸化安定性に対応する。
【0075】
実施例3:酸化防止添加剤による処理による熱分解油の安定化
【0076】
この実施例は、熱分解油の熱酸化安定性の改善における、約500ppmの処理率での様々な酸化防止剤の相対的有効性を示す。誘導時間(IT)の決定は、約150℃及び約10L/hの空気で行った。
【0077】
【0078】
試験した酸化防止剤の中で、安定化添加剤3は最良の性能であったが、Irganox(登録商標)L-57は、未処理の熱分解油と比較して誘導時間の有意でない増加を提供したので、最悪の性能であった。
【0079】
実施例4:酸化防止剤の濃度を高めることによる熱分解油の安定性の強化(抗酸化性能と濃度効果)
【0080】
実施例(4a及び4b)は、熱分解油の熱酸化安定性が、酸化防止添加剤の濃度を増加させることによって異なる程度に改善され得ることを実証する。結果は、以下の表に示される。
【0081】
実施例4a:供給元2からの熱分解油について、約140℃、約10L/hの空気での性能に対する安定化添加剤1の濃度の影響。
【0082】
【0083】
実施例4b:供給元3からの熱分解油について、約150℃、約10L/hの空気での性能に対する安定化添加剤3の濃度の影響。
【0084】
【0085】
実施例5:非常に悪い酸化安定性を有する熱分解油の安定化
【0086】
この実施例は、非常に悪いベースライン酸化安定性を有する熱分解油の熱酸化安定性を実質的に改善する際の安定化/酸化防止添加剤の効果を実証する。結果は、以下の表に示される。いかなる酸化防止剤も添加されていないこの熱分解油は、非常に低いOSI値(約130℃で約0.31/h、約10L/hの空気)によって示すように安定性が劣っていた。
【0087】
【0088】
試験した添加剤のうち、安定化添加剤2及び安定化添加剤3は、約500ppmの処理率で、この供給原料について誘導時間の有意な増加(9~10倍)を引き起こした。
【0089】
実施例6:ワックス状プラスチック熱分解生成物の安定化
【0090】
この実施例は、ワックス状のプラスチック熱分解生成物の熱酸化安定性の改善における酸化防止剤の相対的有効性を示す。このワックス状の熱分解生成物(室温では固体であった)を最初に約80℃で溶融し、次いで異なる酸化防止添加剤で処理した。誘導時間(IT)の決定は、約150℃及び約10L/hの空気で行った。
【0091】
【0092】
約250ppmの処理率では、安定化添加剤2及び安定化添加剤3の両方が、未処理の熱分解油と比較して誘導時間を2倍にした。約500ppmの処理率で、これらの2つの添加剤は、誘導時間をほぼ3倍増加させた。
【0093】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される任意の要素、成分、及び/並びに原料、又は本明細書に開示される要素、成分、又は原料のうちの2つ以上の任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0094】
本明細書に開示される任意の方法は、本明細書に開示される任意の方法ステップ、又は本明細書に開示される方法ステップのうちの2つ以上の任意の組み合わせを含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。
【0095】
特に明記されていない限り、本明細書で言及される全ての分子量は、重量平均分子量であり、全ての粘度は、ニート(希釈されていない)ポリマーを用いて25℃で測定した。
【0096】
更に、本発明は、本明細書おいて説明される様々な実施形態の一部又は全部の、あらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書おいて説明される本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者にとって明らかであろうことも理解されるべきである。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行われ得る。したがって、そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】