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特表2024-509811ベルトリトラクタユニット及びそのようなベルトリトラクタユニットを有する車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ベルトリトラクタユニット及びそのようなベルトリトラクタユニットを有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/343 20060101AFI20240227BHJP
   B60R 22/40 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B60R22/343
B60R22/40 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552996
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022054640
(87)【国際公開番号】W WO2022184541
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105277.7
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】リングス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】パウロフスキー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリッヒス,ヒーコ
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018HA02
3D018HB03
3D018HC01
3D018HD02
3D018HE02
(57)【要約】
【解決手段】 ベルトリトラクタユニットであって、ハウジング(12)と、回転可能に取り付けられたベルトリール(20)と、ベルトリール(20)をブロックするためのブロッキングユニットであって、電気的に制御可能なアクチュエータユニット(40)を有する、ブロッキングユニットと、アクチュエータユニット(40)を制御するための制御装置(50)であって、少なくとも1つの水平加速度値を測定するためのセンサ装置(60)と、少なくとも少なくとも1つの水平加速度値に応じてアクチュエータユニット(40)を制御するためのスイッチング装置(70)と、を有する制御装置と、を有し、ベルトリトラクタユニットは、水平加速度値(|aXY|)の大きさが第1の限界値(a )を上回り、ベルトリール(20)がブロックされていない第1の緊急状態と、水平加速度値(|aXY|)の大きさが第1の限界値(a )を下回り、ベルトリール(20)がブロックされていない非ブロック状態とを有し、ベルト引き込みユニットが、第1の緊急状態から開始して、水平加速度値(|aXY|)の大きさが第2の限界値(a )を下回らない限り、非ブロック状態に移行しない、ベルトリトラクタユニット。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトリトラクタユニットであって、
ハウジング(12)と、
前記ハウジング(12)内に回転可能に取り付けられたベルトスプール(20)と、
前記ハウジング(12)に対して前記ベルトリール(20)をブロックするためのブロッキングユニットであって、前記ブロッキングユニットは電気的に作動可能なアクチュエータユニット(40)を有する、ブロッキングユニットと、
前記アクチュエータユニット(40)を作動させるための制御装置(50)であって、少なくとも1つの水平加速度値を連続的に測定するためのセンサ装置(60)と、少なくとも前記少なくとも1つの水平加速度値に応じて前記アクチュエータユニット(40)を作動させるためのスイッチング装置(70)と、を有する、制御装置(50)と、を有し、
前記ベルトリトラクタユニットは、前記少なくとも1つの水平加速度値(|aXY|)の大きさが第1の限界値(a )を上回り、前記ベルトリール(20)が前記ハウジング(12)に対してブロックされる第1の緊急状態と、前記少なくとも1つの水平加速度値(|aXY|)の大きさが前記第1の限界値(a )を下回り、前記ベルトリール(20)が前記ハウジング(12)に対してブロックされない解放状態と、を有し、
前記ベルトリトラクタユニットは、前記少なくとも1つの水平加速度値(|aXY|)の大きさが前記第1の限界値(a )よりも小さい第2の限界値(a )を下回らない限り、前記第1の緊急状態から前記解放状態に移行しないことを特徴とする、ベルトリトラクタユニット。
【請求項2】
前記第1の緊急状態から開始して、前記少なくとも1つの水平加速度値(|aXY|)の大きさが、少なくとも250ms、好ましくは少なくとも500msの間、再び第3の限界値(a )を超えない場合にのみ、前記解放状態に変化することを特徴とする、請求項1に記載のベルトリトラクタユニット。
【請求項3】
前記第3の限界値(a )は、前記第2の限界値(a )よりも大きく、前記第1の限界値(a )以下であることを特徴とする、請求項2に記載のベルトリトラクタユニット。
【請求項4】
前記センサ装置(60)は、更に、垂直軸に対する前記センサ装置(60)の傾斜(ΔZ)を測定し、それを前記スイッチング装置(70)に送信し、しかしながら、これは、前記第1の緊急状態を決定する際に前記傾斜(ΔZ)を考慮しない、請求項1から3のいずれか一項に記載のベルトリトラクタユニット。
【請求項5】
前記ベルトリトラクタユニットは、前記傾斜(ΔZ)が傾斜限界(G)を超え、前記ベルトリール(20)が前記ハウジング(12)に対してブロックされる第2の緊急状態を有することを特徴とする、請求項4に記載のベルトリトラクタユニット。
【請求項6】
前記第2の緊急状態は、前記水平加速度値(|aXY|)の大きさに依存しないことを特徴とする、請求項5に記載のベルトリトラクタユニット。
【請求項7】
前記センサ装置(60)は3軸センサを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のベルトリトラクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のベルトリトラクタユニットに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
全ての現代の乗用車だけでなく、ほとんどのトラック、バスなどもシートベルトシステムを有する。このような安全ベルトシステムは、常にベルトリトラクタユニットを有しており、このベルトリトラクタユニットは、ハウジングと、このハウジング内に回転可能に取り付けられたベルトリールとを備えたベルトリトラクタを有している。安全ベルトシステムストラップの一部は、このベルトリールに巻き付けられ、ユーザは、ベルトリールとハウジングとの間に作用する戻しばねの力に抗してベルトリールから安全ベルトシステムストラップを巻き出すことができる。ベルトスプールがハウジングに対してブロックされない解放状態と、ベルトスプールがハウジングに対してブロックされるブロック状態とを有するブロッキング装置が更に提供される。このブロッキング装置は、通常、2つの独立したセンサ、すなわち、ベルトリールの回転を感知するベルト感知センサと、車両位置及び/又は車両加速度(特に負の車両加速度、すなわち減速度)を感知する車両感知センサとを有する。通常の運転状態では、すなわち、ストラップがあまり速く伸ばされず、車両が異常な層にないか、又は異常な加速度を受けていないとき、ブロッキング装置はそのブロックされていない状態にあり、ユーザはストラップを伸ばすことができ、比較的自由な動きを可能にする。しかしながら、例えば、ストラップがあまりにも速く延ばされ、及び/又は車両があまりにも速く減速し、及び/又は車両がその通常の向きからあまりにも大きく傾く場合、ブロッキング装置はそのブロック状態に入る。
【0003】
現在、ブロッキング装置はほとんど完全に機械的に設計されており、これは、完全なブロッキング装置(センサを含む)がベルトリトラクタのハウジングに堅固に接続されていることを意味する。しかしながら、ブロッキング装置全体のハウジングへのこの堅固な接続は、特にベルトリトラクタユニットが車両シート、特にその背もたれに固定されている場合には、ベルトリトラクタの位置、したがって車両感知センサの位置が車両に対して変化する可能性があるため、欠点を有する。
【0004】
このため、完全に又は部分的に電気的に作動するベルトリトラクタユニットが知られており、そのブロッキング装置は、電磁石及び電磁石を制御するための制御装置を有するハウジングに接続されたブロッキングユニットを有する。この電磁石は、電気的に制御可能なアクチュエータユニットの一部であり、アクチュエータユニットの状態(特に無電流又は通電)が、ブロッキングユニットの状態(ベルトコイルが回転可能である、又はベルトコイルがブロックされている)を決定するようになっている。通常、ブロッキングユニットは、電磁石に対抗する(通常はばねの形態の)戻し要素も有する。このリセット要素はアクチュエータユニットの一部であってもよい。安全上の理由(フェイルセーフ)から、通常、無電流状態はブロック状態(緊急状態)であり、通電状態はロック解除状態(イネーブル状態)である。したがって、車両電気システムに接続された電力入力部と、電磁石に接続された電力出力部と、を有するアクチュエータユニットを駆動する制御装置は、電力入力部から電力出力部への電力供給が遮断されるパッシブスイッチング状態と、電力入力部が電力出力部に接続され、したがって電流が電磁石を通って流れるアクティブスイッチング状態とを有する。この制御装置は、一般に専ら電気的にブロッキングユニットに結合されており、この場合、特に背もたれと共に動かないように、車両の任意の場所に配置することができる。制御装置は、少なくとも1つのセンサ装置と、センサ装置によって供給されたデータに応じてアクチュエータユニットを制御するためのスイッチング装置とを有する。制御装置は、構造ユニットを形成することができるが、そうでなくてもよい。
【0005】
イネーブル状態から緊急状態への移行の最も重要な基準は、少なくとも1つの水平加速度値の大きさが限界値を超えることである。多くの場合、車両の長手方向(X方向)の加速度と車両の横方向(Y方向)の加速度とを区別する必要はなく、XY平面における加速度の大きさのみが考慮される。
【0006】
そのようなブロッキングユニット及びそのような制御装置を有する一般的なベルトリトラクタユニットは、例えば、英国特許第2398824号Bに記載されている。そのような電気的に動作するベルトリトラクタユニットは、ベルトリトラクタユニットの状態(ブロック/非ブロック)を制御するためのより多くの可能性を提供するので、他の利点を有する。
【0007】
これに基づいて、本発明の目的は、一般的なベルトリトラクタユニットを更に改良することである。
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するベルトリトラクタユニットによって解決される。
【0009】
乗員を可能な限り保護するために、シートベルトロックシステムは、早い段階で、特に実際の事故が起こる前であっても、例えば車両が急激に減速するときに作動されることが通常望ましい。この目的のために、それを超えるとウェビングロッキングが開始する水平方向加速度の量の限界値は、比較的低くなければならない。しかしながら、これは、少なくともいくつかの要件プロファイルにおいて、ベルトリトラクタユニットが比較的頻繁にそのブロック状態(以下において緊急状態とも呼ばれる)に切り替わるが、危険は全くない、すなわち、ベルトリールのブロックは結果として不要であり、その後再び取り外されるという結果を有する。これは、それ自体は大きな問題ではなく、乗員安全性の全体的な改善のために受け入れられている。
【0010】
しかしながら、車両乗員の安全のために好ましい限界値(すなわち、低い限界値)が選択される場合、特に悪い道路条件において、ベルトブロッキングシステムが、単に車両の揺れ動作のために、ベルトリールがハウジングに対してブロックされるその緊急状態に切り替わる場合が生じ得ることが分かっている。これもそれ自体は問題ではない。しかしながら、特に上述した場合には、車両に(したがってセンサ方向にも)作用する加速力が悪路状態において選択された限界値付近で頻繁に振動し、その結果、ベルトリトラクタユニットが緊急状態と解放状態との間で比較的頻繁に、また高い頻度で、前後に切り替わるという問題がしばしば生じ得ることも分かっている。一方では、これは、邪魔なノイズの発生と関連付けられ、また、関与する機械構成要素の摩耗の増加につながる。当然ながら、両方とも望ましくなく、増大したノイズは快適性に悪影響を及ぼす。一般的なシートベルトリトラクタユニットの特別な利点は、リトラクタユニットのハウジングがシートバックに配置され、したがって乗員の耳の近くに配置されることであるので、なおさらである。ベルトリトラクタユニットの予想寿命は、車両全体の予想寿命に適合するように設計されるべきであるので、増加した摩耗は、当然ながら既に不利である。
【0011】
上述説明した問題を解決するために、制御装置によるアクチュエータユニットの制御は、ヒステリシスの方法で、すなわち、水平加速度の量について2つの相互に異なる限界値、すなわち、ブロッキングユニットがその解放状態から緊急状態(以下、第1の緊急状態)に変化する第1の限界値と、ベルトリトラクタユニットがその第1の緊急状態から解放状態に戻る第2の限界値とが存在するように行われ、この第2の限界値は、第1の限界値よりも量が小さい。これは、適切な状況において、特に適切な道路条件において、ベルトリトラクタユニットをより長く緊急状態に保つことによって、前後に絶えず切り替わることを防止する。全体として、これは、緊急状態とイネーブル状態との間で恒久的に前後に切り替えるよりも、ユーザにとってはるかに便利である。当然ながら、これはまた、スイッチングサイクルの数を減少させ、これは、ベルトリトラクタユニットの耐用年数にプラスの効果を有する。
【0012】
上述したことは、少なくとも1つの水平加速度値の大きさが、第2の限界値を下回った後、例えば少なくとも500msであり得る所定の期間にわたって第3の限界値を下回ったままであるときにのみ、ベルトリトラクタユニットが、その緊急状態から開始して、解放状態に切り替わるという点で、更に改善され得る。この第3の限界値は、好ましくは第2の限界値と第1の限界値との間にあることが好ましく、特に第1の限界値と同一であってもよい。
【0013】
既に述べたように、ベルトリトラクタユニットのブロッキングは、十分な加速度(大抵は負の加速度、すなわち減速度)が生じたときと、車両がその長手方向軸又はその横方向軸の周りに所定値よりも大きく傾斜したときとの両方で生じなければならない。このような傾斜では、車両のZ軸は常に垂直に対して傾斜しているので、傾斜の大きさを単一の角度で表すことができる。単一の古典的機械センサは、これらの2つの場合を区別することができない。電子センサを使用する場合は状況が異なる。ここでは、加速度と傾斜とを区別することができる。加速度限界値を超えたときと傾斜限界値を超えたときの両方で、ベルトリトラクタユニットがイネーブル状態から緊急状態に変化することが明らかに重要であるので、センサは両方の値を測定すべきである。しかしながら、好ましくは、これらの値は、スイッチング装置によって別々に処理され、すなわち、第1の緊急状態を決定するときに垂直軸に対する傾斜が考慮されないように処理される。これにより、XY平面における加速度に対する悪路の影響は比較的小さいことが多いが、特にX軸周りの車両傾斜に対する影響は比較的大きいことが多いことが分かっているので、特に悪路において、イネーブル状態から第1の緊急状態への不必要な移行の回数を減らすことができる。
【0014】
第1の緊急状態を決定するときに垂直軸の周りの傾斜を考慮しないことを補償するために、ベルトリトラクタユニットは、ベルトリールもハウジングに対してブロックされ、傾斜のみに依存する第2の緊急状態を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
ここで、本発明について、図を参照して好ましい実施形態によってより詳細に説明する。図面は以下の通りである。
図1図1は、ベルトリトラクタユニットの概略図であり、このベルトリトラクタユニットのベルトリトラクタが概略側面図で示され、制御装置が開スイッチング状態にあり、ベルトリトラクタがロック状態にある。
図2図2は、方向R1から見た図1に示されるベルトリトラクタの概略上面図を示す。
図3図3は、図1に示された制御装置を示し、制御装置はその閉スイッチング状態にあり、ベルトリトラクタはそのロック解除状態にある。
図4a図4aは、車の側面図及び対応する座標を示す。
図4b図4bは、図4aの車の上面図及び対応する座標を示す。
図4c図4cは、図4aの車を後ろから見た上面図及び対応する座標を示す。
図5図5は、正面衝突時の図4aの車を示す。
図6図6は、側面衝突時の図4bの車を示す。
図7図7は、Y軸の周りに傾けられたときの図4aの表現における車を示す。
図8図8は、X軸の周りに傾けられたときの図4cの表現における車を示す。
図9a図9aは、図1及び図3に簡略化された制御装置の実施形態のより詳細な図を示し、制御装置は解放状態にある。
図9b図9bは、第1の緊急状態にある図9aの制御装置を示す。
図9c図9cは、第2の緊急状態にある図9aの制御装置を示す。
図9d図9dは、二重緊急状態にある図9aの制御装置を示す。
図10図10は、論理ユニットの第1の好ましい制御シーケンスのフローチャートを示す。
図11a図11aは、図10に示される制御シーケンスの左分岐の機械的類似物の概略図を示す。
図11b図11bは、図10に示される制御シーケンスの左分岐の機械的類似物の概略図を示す。
図12図12は、第1の論理サブユニットの第2の好ましい制御シーケンスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2を参照して、本発明によるベルトリトラクタユニットの本質的な特徴を最初に説明する。ここで、表現は非常に概略的であり、本発明の基本原理のみを表すことに留意すべきである。ベルトリトラクタユニットは、ベルトリトラクタ10及び制御装置50を含むと考えることができる。ここで、制御装置50は、ベルトリトラクタ10のハウジングに直接接続されてもよいが、そうである必要はなく、そのため、制御装置50は、図1及び図3においてハウジングから離れて示されている。当然ながら、制御装置とベルトリトラクタは互いに電気的に接続されていなければならない。
【0017】
以下では、電線管は概略的にのみ示されている(出力導体及び戻り導体と共に示されていない)。ここで、電力線は実線で示され、信号線は「2点鎖線」のパターンを有する線として示されている。
【0018】
ベルトリトラクタ10は、通常のように、ハウジング10と、ハウジング内に回転可能に支持され、ストラップ5の一部が巻き付けられるベルトリール20と、ベルトリール20をハウジング12内でブロックするためのブロッキングユニットとを備える。図示された実施形態では、ハウジング12は、接続ボルト16によって接続された2つのハウジングプレート14a、14bを有するが、これは例示としてのみ理解されるべきである。原則として、これもここに示されているが、ブロッキングユニットは、ベルトリール20に回転可能に固定された態様で接続されたロックホイール22を有する。ロック状態(緊急状態)(図1)では、ロックホイール22、したがってベルトスプール20をハウジング12に対してロックするが、解放状態(図3)ではロックしないロック爪24aが更に設けられている。
【0019】
重要なことに、爪24aの位置は、電磁石42を有するアクチュエータ組立体40によって直接(図示のように)又は間接的に制御される。図示の実施形態では、この影響は、アクチュエータユニット40が、電磁石42に加えて、電磁石によって駆動されるプランジャ44を有するという事実によってもたらされ、プランジャ44は、爪24aを担持するレバー24に作用する。電磁石に十分に強い電流が流れると、電磁石はプランジャ44を外側に押す。しかしながら、既に述べたように、この構成は例示としてのみ理解されるべきであることに留意すべきである。基本的に、ブロッキングユニットは電磁石を有し、アクチュエータユニットは、磁石を流れる電流に依存してブロッキングユニットを制御する。通常、これはまた、アクチュエータユニット40の電磁石42が無電流であり、したがってそれによって駆動されるプランジャにいかなる力も及ぼさないときに、ブロッキングユニットの状態を一意に定めるばね、この場合は引張ばね30、又は別の弾性要素が設けられることを表す。この無電流状態は、図にも示されているように、ロック状態である。
【0020】
電磁石を有するこのような電気的に制御されるブロッキングユニットは、従来技術において知られている。したがって、本発明は、電磁石、すなわち制御装置50の制御のみにも関する。
【0021】
制御装置及びその動作の説明に基づく本発明の詳細な説明の準備として、いくつかの一般的な記述が最初になされ、図4aから図8を参照して定義が与えられる。
【0022】
図4aは、車及び関連する座標、すなわち長手方向X及び垂直方向Zの概略側面図を示し、図4bは、図4aに示す車を平面図で示し、関連する座標、すなわち長手方向X及び横方向Yも示し、図4cは、図4a及び図4bの車を背面図で示し、関連する座標、すなわち横方向Y及び垂直方向Zを示す。
【0023】
図5は、典型的な正面衝突を示す。ここで、速度はX方向に変化し、すなわち、時間に関するX座標の二次導関数は0に等しくなく、dX/dt≠0であり、X方向、したがってXY平面における加速度の大きさは0より大きく、|aXY|>0である。したがって、横方向衝撃の場合(図6)、時間に対するY座標の二次導関数は0に等しくなく:dY/dt≠0、ここでも、XY平面における加速度の大きさは0よりも大きい:|aXY|>0。これは、ストラップをロックするための1つの基準が、XY平面における加速度の量が所定の限界を超えることであることを意味する。
【0024】
図7及び図8は、ストラップのロック、すなわち車両の転倒をもたらすはずの異なるシナリオを示す。車両の傾斜は、常に、車両のZ座標(ここではZ’と呼ぶ)が垂直方向Zに対して傾斜していることを意味する。ここでのロック基準は、ZとZ’との間に含まれる角度ΔZによって表すことができる傾斜が所定の値を超えることであるべきである。ダイナミクス(すなわち、変化の速度又は加速度)はここでは重要ではなく、方向も重要ではないので、ΔZの量をロックの限界として設定することができる。
【0025】
以下に説明する好ましい実施形態では、全ての関連する方位及び加速度データは、共通のセンサ装置によって測定されるが、このセンサ装置の下流のスイッチング装置によって別々に処理される。まず、概略的な回路図を用いて説明する。この概略図は1つの可能性にすぎないことが強調されるべきである。情報の対応する分離は、音響技術又はソフトウェアに関して異なるように行うこともできる。
【0026】
図9aは、制御装置50の概略的な実施形態を示す。この制御装置50は、関連する全ての構成要素を含む制御ユニットとして設計されてもよい。しかしながら、制御装置の個々の要素を「車両に分散させる」ことも可能であるが、これは一般的には好ましくない。
【0027】
既に述べたように、制御装置50は、搭載電源から電磁石42への電流の流れを制御する、すなわち、イネーブルにしたり遮断したりするために使用される。したがって、それは、車両電気システムに接続された電力入力部55と、ソレノイドに接続された電力出力部56とを有し、それらの間にスイッチングユニット80が配置される。スイッチングユニットの閉状態では、電流が車両電気システムから電磁石を通って流れる。スイッチングユニット80の開状態では、スイッチングユニット80は電流は流れない。この位置において、定電流源として作用するDC-DCコンバータが、スイッチングユニットが閉状態にあるときにソレノイドが必要とするだけの電流をソレノイドに供給するために設けられ得ることも言及されるべきである。これはまた、突入電流及びより低い保持電流を提供するように、2つの段を用いて設計され得る。しかしながら、これは以下に詳細には示されない。
【0028】
上述したスイッチングユニット80に加えて、制御装置50は、センサ装置60及び論理ユニット74を有する。この論理ユニット74及びスイッチングユニット80は共にスイッチング装置70を形成する。
【0029】
図示の好ましい実施形態では、センサ装置60(単にセンサと呼ぶこともできる)は、3つの空間方向全ての方位及び加速度を連続的に測定し、測定データをスイッチング装置70に中継する3軸センサである。このスイッチング装置は、上述したように、少なくとも機能的に論理ユニット74とスイッチングユニット80とからなる。
【0030】
センサ装置60によって提供されるデータは、論理ユニット74によって2つの別個の動作で処理される。1つのプロセスでは、XY平面内の加速度のみが処理され、別のプロセスでは、Z軸周りの傾斜が処理され、そのため、論理ユニット74は、少なくとも機能的に、XY平面内の加速度評価を処理する第1の論理サブユニット74aと、傾斜評価を処理する第2の論理サブユニット74bとを有する。図示の実施形態では、これらの2つの論理サブユニット74a及び74bは、直列に接続された2つのスイッチ80a、80bを制御し、これらのスイッチ80a、80bはスイッチングユニット80を形成する。スイッチングユニットのこの実施形態は、特に説明のために選択されているが、実際にはこのように設計することもできる。
【0031】
上述したように、ソレノイド42の無電流状態はベルトリトラクタ10(図1)のロック状態であり、通電状態はロック解除状態である。
【0032】
上述したように、論理ユニット74は、XY平面内の加速度値を評価する第1の論理サブユニット74aと、傾斜値ΔZを評価する第2の論理サブユニット74bとを有する。当然ながら、ロックされない解放状態(ソレノイドの通電状態)は、両方の論理サブユニット74a、74bが結果「ロック解除」になったときにのみ存在する。回路に関して、これは、ここでは、第1の論理サブユニット74aがスイッチングユニット80の第1のスイッチ80aを作動させ、第2の論理サブユニット74bがスイッチングユニット80の第2のスイッチ80bを作動させるように実施される。これらの2つのスイッチ80a、80bは直列に接続されているので、ロック解除状態(イネーブル状態)を生成するためには、両方のスイッチ80a、80bがフロースルー位置にある、すなわち閉じられていなければならない(図8a)。他の全ての場合(図9b~図9d)において、ロック状態(緊急状態)が存在する。したがって、この回路は、ロック解除状態に関して論理ANDを形成する。
【0033】
次に、図10を参照して、論理ユニット74によって実行される本発明による第1のアルゴリズムについて説明する。上述したように、2つの論理サブユニット74a及び74bは、並列に、好ましくは互いに独立して動作する。図10のフローチャートにおいて、左のツリーは第1の論理サブユニット74aのフローチャートを示し、右のツリーは第2の論理サブユニット74bのフローチャートを示す。第1の論理サブユニット74aに関連する測定変数は、XY平面における加速度の大きさ、すなわち水平加速度|aXY|である。手順は以下の通りである。
【0034】
車両を始動させた後、第1の工程は、XY平面内の加速度の量|aXY|が第1の限界値a 未満であるかどうかをチェックすることであり得る。車両はこの状態にあるべきであるので、例えば、加速度値がこの限界よりも大きい場合、技術的欠陥又は非常に異常な状況のいずれかが存在することを示すので、警報をトリガすることができる。一方、加速度値の大きさが第1の限界値a 未満である場合、第1の論理サブユニット74aは、第1のスイッチ80aが図9aに対応する閉状態に切り替わるように第1のスイッチ80aを制御する。
【0035】
上述したレビューは、継続的に実行される。XY平面における加速度の量が第1の限界a を超えない限り、第1のスイッチ80aは閉じたままである。しかしながら、第1の限界a を超えた場合、第1のスイッチ80aが開かれ、第1の緊急状態が存在し、これは、XY平面内の加速度により、電磁石42が無電流であり、したがって、ベルトコイル20がハウジング12に対してロックされることを意味する。本発明による工程は次の通りである。スイッチが開かれた後、第1の論理サブユニット74aは、ここで、XY平面における加速度の量|aXY|が第2の限界値a を下回っているかどうかをチェックし、この第2の限界値a は、第1の限界値a よりも小さい。そうでない限り、第1のスイッチ80aは閉じたままであり、したがって第1の緊急状態が維持される。XY平面内の加速度の大きさ|aXY|もこの第2の限界a を下回るときにのみ、第1のスイッチ80aが再び閉じられ、第1の緊急状態はもはや存在しない。好ましくは、第2の限界a は、第1の限界a の20%~80%である。
【0036】
機械的な類似物が図11a及び図11bに示されている。ボールをその最小値から移動させるために、半径方向Rにおいてボールに作用する力は、ボールがより急な傾斜部を登ることができるように、第1の限界を超えなければならない。次に、それはより平坦な傾斜部上に移動し、半径方向に作用するより低い保持力を加えながらそこに留まる。これが第1の限界値よりも小さい第2の限界値を下回ったときにのみ、ボールはその開始位置に戻ることができる。
【0037】
上述したことと並行して、第2の論理サブユニット74bは、車両の傾斜量|ΔZ|を恒久的にチェックする。ここでも、|ΔZ|が限界値Gを超えているかどうかを始動後に最初にチェックすることができる。これが車両の始動時に既に当てはまる場合、ここでも異常な状態又は技術的欠陥を想定しなければならない。一方、|ΔZ|が限界値Gよりも小さい場合、第2のスイッチ80bも閉じられ、ベルトリトラクタユニットは全体としてその解放状態にある(図9a)。
【0038】
|ΔZ|が限界Gを超えているかどうかのチェックも連続的に行われる。この限界を超えない限り、第2のスイッチ80bは閉じたままであるが、この限界を超えた場合、第2のスイッチ80bは開かれ、ベルトリトラクタユニットは、本明細書で行われる定義に従って、その第2の緊急状態にある。第1の緊急状態も同時に存在するかどうか(そうであってもなくてもよい)に応じて、図9cのスイッチング状態又は図9dのスイッチング状態のいずれかが存在する。しかしながら、AND回路のために、イネーブル状態(図9a)は、両方の緊急状態が存在しない場合にのみ存在する。
【0039】
|ΔZ|が再び限界Gを下回ると、第2のスイッチが再び閉じられる。ヒステリシスはここでは必要ではないが、可能でもある。
【0040】
図12は、左側のフローチャートの第2の実施形態、すなわち、第1の論理サブユニット54aの動作を示す。
【0041】
図から分かるように、機能シーケンスは最初は上述したものと同一であるが、第2の限界a を下回った後、第1のスイッチ80aが再び閉じられる前に別の工程が続く。実際には、タイマが始動され、例えば500ms又は1,000msの選択された時間間隔Δtの間、XY平面内の加速度の大きさ|aXY|が第3の限界a を超えているか否かが連続的にチェックされる。この第3の限界a は、第1の限界a と同一であってもよいが、第1の限界a と第2の限界a との間に位置してもよい。第3の限界a の対応する超過が検出されるとすぐに、時間間隔が再び開始する。連続的な時間間隔Δt内に第3の限界a の超過が生じない場合にのみ、第1のスイッチが再び閉じられ、その結果、ベルトリトラクタユニットはその第1の緊急状態を再び離れる。
【0042】
上述した手段により、ベルトリールのロックのための低い限界値にもかかわらず、多数のスイッチングサイクルが回避されることが達成される。
【符号の説明】
【0043】
10 ベルトリトラクタ
12 ハウジング
14a、b ハウジングプレート
16 接続ボルト
18 ばね及びアクチュエータユニット用ホルダ
20 ベルトリール
22 ロックホイール
24 レバー
24a 爪
30 引張ばね
40 アクチュエータユニット
42 電磁石
44 プランジャ
50 制御装置
55 電力入力部
56 電力出力部
60 センサ装置
70 スイッチング装置
74 論理ユニット
74a 第1の論理サブユニット(X-Y平面における加速度評価)
74b 第2の論理サブユニット(傾斜評価ΔZ)
80 スイッチングユニット
80a 第1のスイッチ
80b 第2のスイッチ

図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10
図11a
図11b
図12
【国際調査報告】