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特表2024-509822分子バーコードならびに関連する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】分子バーコードならびに関連する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240227BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20240227BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240227BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K2/00 ZNA
C12N15/10 110Z
C07K17/00
C12Q1/68
C12M1/34 Z
C12N9/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553204
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 US2022019045
(87)【国際公開番号】W WO2022187719
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/156,858
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511106053
【氏名又は名称】オレゴン・ヘルス・アンド・サイエンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ダンバッハー コーリー エム.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR56
4B063QS32
4B063QX02
4H045AA10
4H045BA60
4H045BA70
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、1つまたは複数のアイデンティマーのセットを含む分子バーコードに関する。例えば材料を分類するために、前記分子バーコードを使用する方法が開示される。前記分子バーコードを作製する方法、および前記分子バーコードを使用するためのシステムが本明細書において開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のアイデンティマーのセットを含む分子バーコードであって、
前記アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーが、スキャフォールド部に機能的に接続された1つまたは複数の検出可能な標識のセットを含み、前記スキャフォールド部が、
前記アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの認識部分と直交する認識部分と、
前記分子バーコードを符号化および形成するように三次元配置で互いに連鎖されている前記1つまたは複数の検出可能な標識のセットに機能的に接続された、切断部位と
を含む、前記分子バーコード。
【請求項2】
前記認識部分に対して直交反応性の切断物質(cleavage agent)を適用することによって、少なくとも1つのアイデンティマーの切断部位で前記分子バーコードが切断されて、前記1つまたは複数の検出可能な標識が、前記アイデンティマーの直交性に従って三次元配置から解離し、それによって、検出可能なシグナル応答が誘導されて前記分子バーコードが復号される、請求項1記載の分子バーコード。
【請求項3】
前記スキャフォールド部が、ポリペプチド、アミノ酸、環式ペプチド、核酸、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または請求項2記載の分子バーコード。
【請求項4】
前記スキャフォールド部が二本鎖DNA(dsDNA)を含み、前記認識部分がヌクレアーゼ認識部分を含み、かつ前記1つまたは複数の検出可能な標識がフルオロフォアを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項5】
前記スキャフォールド部が二本鎖DNAを含み、前記認識部分がプロテアーゼ認識部分を含み、かつ前記1つまたは複数の検出可能な標識がフルオロフォアを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項6】
前記スキャフォールド部が二本鎖DNAを含み、前記認識部分が化学切断認識部分を含み、かつ前記1つまたは複数の検出可能な標識がフルオロフォアを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項7】
前記スキャフォールド部がアミノ酸を含み、前記認識部分がプロテアーゼ認識部分を含み、かつ前記1つまたは複数の検出可能な標識がフルオロフォアを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項8】
前記スキャフォールド部がアミノ酸を含み、前記認識部分が化学切断認識部分を含み、かつ前記1つまたは複数の検出可能な標識がフルオロフォアを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項9】
前記認識部分が切断部位を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項10】
前記アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマー間にアイデンティマーリンカーをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項11】
前記アイデンティマーリンカーが、クリックケミストリー部分、天然化学連結リンカー、および酵素媒介性連結リンカーの群より選択される、請求項10記載の分子バーコード。
【請求項12】
前記アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの前記認識部分が化学リンカー、ペプチド、または核酸を含む、請求項1~11のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項13】
前記アイデンティマーのセット中の前記検出可能な標識のうちの少なくとも1つまたは複数がフルオロフォアを含む、請求項1~12のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項14】
前記アイデンティマーのセット中のそれぞれの認識部分が、プロテアーゼ認識部分、エンドヌクレアーゼ認識部分、親和性試薬によって認識可能なエピトープ、核酸プローブ認識部分、改変されたペプチド側鎖、および非天然ペプチド側鎖より選択される少なくとも1つの部分を含む、請求項1~13のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項15】
前記分子バーコードがビーズに結合している、請求項1~14のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項16】
前記ビーズが試験物質にさらに結合している、請求項15記載の分子バーコード。
【請求項17】
前記ビーズが化学的構成要素にさらに結合している、請求項15記載の分子バーコード。
【請求項18】
前記分子バーコードの三次元配置との相互情報を有する材料をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項記載の分子バーコード。
【請求項19】
以下の工程を含む、材料を分類する方法:
請求項1~18のいずれか一項記載の1つまたは複数の分子バーコードのセットを環境に導入する工程であって、前記セット中の少なくとも1つの分子バーコードが材料との相互情報を有する、前記工程;
前記分子バーコードを直交反応性切断物質(cleaving agent)と反応する切断部位で切断して、アイデンティマーの前記検出可能な標識を前記アイデンティマーの直交性に従って三次元配置から解離するために、前記分子バーコードのセットに前記切断物質を選択的に適用し、それによって、検出可能なシグナル応答を誘導して前記分子バーコードを復号する工程。
【請求項20】
以下の工程を含む、スクリーニングする方法:
複数の試験構築物を環境に導入する工程であって、それぞれの試験構築物が、請求項1~18のいずれか一項記載の分子バーコードに機能的にカップリングされた試験物質を含み、前記分子バーコードの三次元配置が前記試験物質との相互情報を有する、前記工程;
1つまたは複数の標的のセットに対して前記複数の試験構築物をスクリーニングする工程;
前記試験構築物のうちの1つまたは複数の活性を検出する工程;
カップリングされた分子バーコードを直交反応性切断物質と反応する切断部位で切断して、アイデンティマーの前記検出可能な標識を前記アイデンティマーの直交性に従って三次元配置から解離するために、前記複数の試験構築物に前記切断物質を選択的に適用し、それによって、検出可能なシグナル応答を誘導して前記カップリングされたバーコードを復号し、それによって、前記標的のセットに対して活性を有する試験物質を同定する工程。
【請求項21】
前記検出可能なシグナル応答が、濃縮なしで誘導される、請求項19または請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記複数の試験構築物に直交反応性切断物質を選択的に適用することが、切断試薬を逐次的に適用することを含む、請求項20または請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記切断試薬を逐次的に適用することが、1種類の切断物質を反復して適用すること、または2種類もしくはそれ以上の切断物質を逐次的に適用することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記検出可能なシグナル応答が、1つもしくは複数の解離した検出可能な標識の有無を検出すること、またはシグナル周波数もしくはシグナル振幅の変調を検出することを含む、請求項19~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
以下の工程を含む、分子バーコードを作製するための方法:
1つまたは複数のアイデンティマーのセットを提供する工程であって、前記アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーが、スキャフォールド部に機能的に接続された1つまたは複数の検出可能な標識のセットを含み、前記スキャフォールド部が、前記アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの認識部分と直交する認識部分と、1つまたは複数の検出可能な標識のセットに機能的に接続された切断部位とを含む、前記工程;
前記アイデンティマーのセットから第1のアイデンティマーおよび第2のアイデンティマーを選択し、かつ分子バーコードを符号化および形成するように三次元配置で前記第1のアイデンティマーを前記第2のアイデンティマーと連鎖する工程;
(任意で)前記アイデンティマーのセットからアイデンティマーを選択し、かつ前記アイデンティマーを前記分子バーコードと連鎖して三次元配置を改変し、かつ前記分子バーコードをさらに符号化および形成する工程;
(任意で)前記アイデンティマーのセットからアイデンティマーを選択し、かつ前記アイデンティマーを前記分子バーコードと連鎖する工程を、1~n回繰り返す工程。
【請求項26】
前記第1のアイデンティマーを材料に機能的に結合させる工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記材料が表面である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記表面が微粒子またはビーズの外面または内面を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
高親和性結合タンパク質によって前記第1のアイデンティマーを前記表面に機能的に結合させる工程を含む、請求項27または請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記第1のアイデンティマーを、3つのアームを有するリンカーに結合させる工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項31】
1つまたは複数のアイデンティマーのセットを提供する工程が、直前のアイデンティマーと連鎖するように、かつ、直鎖三次元配置でアイデンティマーの連鎖を容易にし、それによって、前記分子バーコードを連続して形成および符号化するように、前記アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーを構成する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
直前のアイデンティマーに特異的に結合するように前記アイデンティマーのセットを構成することが、前記直前のアイデンティマーとの連結、前記直前のアイデンティマーからの延長、または前記直前のアイデンティマー上への合成によって連鎖することを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
1つまたは複数の化学的構成要素のセットを提供する工程であって、前記化学的構成要素のセット中のそれぞれの化学的構成要素が、直前の化学的構成要素と連鎖するように構成されている、前記工程;
前記化学的構成要素のセットから第1の化学的構成要素を選択し、かつ前記第1の化学的構成要素を前記第1のアイデンティマーと連鎖する工程;
(任意で)前記直前の化学的構成要素と連鎖するように構成された、化学的構成要素のセットから、化学的構成要素を選択して、前記化学的構成要素を前記直前の化学的構成要素と連鎖し、それによって、一連の化学的構成要素を形成する工程;および
(任意で)前記直前の化学的構成要素と連鎖するように構成された、前記化学的構成要素のセットから、化学的構成要素を選択し、かつ、前記化学的構成要素を前記直前の化学的構成要素と連鎖する工程を、1~n回繰り返す工程
をさらに含む、請求項25~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記一連の化学的構成要素と連鎖することが非核酸適合性反応の使用を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下を備える、分子バーコードを符号化および復号するためのシステム:
請求項1~8のいずれか一項記載の1つまたは複数の符号化された分子バーコードのセットを環境に導入するように構成されたバーコード符号化システムであって、前記セット中の少なくとも1つの分子バーコードが材料との相互情報を有する、前記バーコード符号化システム;
前記分子バーコードのセットを直交反応性切断物質と反応する認識部分を有するアイデンティマーの切断部位で切断して、前記検出可能な標識を、前記アイデンティマーの直交性に従って前記分子バーコードのセット中の分子バーコードの三次元配置から解離するために、環境に前記切断物質を選択的に適用し、それによって、前記分子バーコードから検出可能なシグナル応答を誘導して前記分子バーコードのセットを復号するように構成された、切断システム;
(任意で)光を前記分子バーコードのセットに選択的に伝達して前記検出可能なシグナル応答を誘導するように構成された、照明システム;
前記分子バーコードのセットからの前記検出可能なシグナル応答を検出するための検出システム;ならびに
前記照明システムおよび光学検出システムに結合され、かつ前記分子バーコードのセットの復号を容易にするように構成された、プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
著作権表示
(著作権)2022 Oregon Health & Science University。この特許書類の開示の一部は著作権保護を受ける資料を収録している。著作権の所有者は、それが特許商標庁の特許ファイル又は記録に表示されている特許書類または特許開示を何人かが複製することに対しては異議を唱えないが、それ以外にはすべての著作権の権利を留保する。37CFR§1.71(d)。
【0002】
技術分野
本開示はバイオテクノロジーに関する。さらに具体的には、本開示は分子バーコードならびに関連する方法およびシステムに関する。
【発明の概要】
【0003】
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】非DNAバーコード用の構築工程の図表である。
図2】次世代シークエンシング(NGS)バーコードに連結されたバーコード用の構築工程の図表である。
図3】非核酸バーコードと、バーコードのデコンボリューション中の可能性のある画像化結果の図表である。
図4】NGSバーコードに連結された非標識バーコード用の構築工程の図表である。これらは任意で標識されてもよい。
図5】DNAを用いずに化合物ライブラリーを符号化するための構築工程の図表である。
図6】NGSバーコードに連結された切断可能なバーコード用の構築工程の図表である。
図7】非DNA分子バーコードを同定するための復号工程の図表である。
図8】NGSバーコードに連結されたバーコードを同定するための復号工程の図表である。
図9】エンドヌクレアーゼ認識部位を有する二本鎖DNA NGS適合バーコードと、バーコードのデコンボリューション中の可能性のある画像化結果の図表である。
図10】直交プロテアーゼ認識部位を有する非核酸NGS適合バーコードと、バーコードのデコンボリューション中の可能性のある画像化結果の図表である。
図11】視覚的NGSバーコードのデコンボリューション工程の図表である。
図12】化学的構成要素に連結された非DNAバーコードの構築の図表である。
図13】非DNAバーコードによって符号化された化合物ライブラリーと、バーコードのデコンボリューション中の可能性のある画像化結果の図表である。
図14】例示的な二重標識二本鎖DNAアイデンティマーの図表である。
図15】検出可能な標識に接続されたスキャフォールディング作用物質の図表である。
図16】二重標識された環式ペプチド構成要素を有する非核酸バーコードと、このバーコードが復号される可能性のある手法の図表である。
図17】シングル細胞分析用バーコードを結合させるための、表面でありうるキャッピングビーズ付きミニウェルの図表である。
図18】直交性粘着末端、直交性認識部分および切断部位、ならびに改変されたヌクレオチドを用いて構成されたスキャフォールド部分を有する、5つの単一標識FNDアイデンティマーのセットのテキスト表示である。
図19A】ビオチン部分を介してビーズに結合した非標識dsDNAとの連結を介して結合した第1の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id1/HindIII-AF750)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。
図19B】第2の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id2/SpeI-AF647)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。
図19C】第3の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id3/XhoI-ATTO550)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。
図19D】第4の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id4/NotI-ATTO488)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。
図20A】4蛍光チャンネル;647nm(上向き斜めの縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、488nm(水平の縞模様)、および750nm(点々模様)で画像化された非切断ビーズを表す。それぞれのフルオロフォアについて得られた平均強度値を右側にプロットした。
図20B】NotI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。
図20C】XhoI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。
図20D】SpeI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。
図21A】分析のためにサイクルの順序を逆にした、単一標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を表す棒グラフを示す。
図21B】分析のためにサイクルの順序を逆にした、混合標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を表す棒グラフを示す。
図22A】、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6つのlビーズの1番目を表す。
図22B】3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6つのlビーズの2番目を表す。
図22C】3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する3番目のビーズを表す。
図22D】3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する4番目のビーズを表す。
図22E】3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する5番目のビーズを表す。
図22F】3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6番目のビーズを表す。
図23A】OCS実験全体にわたって、配列Id1/HindIII-AF647--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-ATTO488--Id4/NotI-ATTO488で標識されたビーズについてビーズライブラリーをグラフ化する。
図23B】OCS実験全体にわたって、配列Id1/HindIII-ATTO488--Id2/SpeI-ATTO550--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488で標識されたビーズについてビーズライブラリーをグラフ化する。
図23C】OCS実験全体にわたって、配列Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-ATTO488--Id4/NotI-AF750で標識されたビーズについてビーズライブラリーをグラフ化する。
図24A】2つのAF-750標識を含有するAF-750標識ヘアピンオリゴのSpel酵素切断を表す。
図24B】Spel酵素切断前とSpel酵素切断後のAF-647標識とAF-750標識の両方からのシグナルのグラフを示す。
図25A】ストレプトアビジンビーズからのATTO550標識の連結と蛍光画像化による確認を表す。
図25B】ビーズ上にある3つのアクセプターオリゴのうちの2番目に連結することで直交に結合したAF-647標識を含有する第2の標識DNAヘアピンと、蛍光画像化による確認を表す。
図25C】ビーズ上にある3つのアクセプターオリゴのうちの最後に連結することで直交に結合したATTO-488標識を含有する第3の標識DNAヘアピンと、蛍光画像化による確認を表す。
図26A】Spel酵素切断前とSpel酵素切断後の、3つの異なるリングアイデンティマーId1/SpeI-ATTO-550、Id2/XhoI-AF-647、およびId3/NotI-ATTO-488を有するビーズを表す。
図26B】ATTO-550標識の効率的なSpel切断を証明する棒グラフを示す。
図27A】ビオチン部分を介してビーズに結合した第1の非標識ssDNAにハイブリダイズされた第1の標識ssDNAを含有するストレプトアビジンビーズの第1の符号化サイクル(ATTO-488標識)を表す。
図27B】ストレプトアビジンビーズの第2の符号化サイクル(AF-647標識)を表す。
図28A】3つの異なるハイブリダイズされたアイデンティマー、Id1/NotI-ATTO-488、Id2/SpeI-AF-647、およびId3/XhoI-ATTO-550を含有するビーズ上での第1の酵素(Notl)による第1の切断を表す。
図28B】3つの異なるハイブリダイズされたアイデンティマーを含有するビーズ上での第2の酵素(Spel)による第2の切断を表す。
図28C】効率的なNotlおよびSpel酵素による切断の蛍光画像化確認のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
詳細な説明
第1の態様では、本明細書に記載の分子バーコードは、1つまたは複数のアイデンティマーのセットを含み、それぞれのアイデンティマーは、スキャフォールド部に機能的に接続された1つまたは複数の検出可能な標識を含む。スキャフォールド部は、アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの認識部分と直交する認識部分と、分子バーコードを符号化および形成するように三次元配置で互いに連鎖されている1つまたは複数の検出可能な標識に機能的に接続された切断部位とを含む。
【0006】
分子バーコードが、切断不可能なアイデンティマーを含む事例がある場合がある(図2)。一部の態様では、切断可能なアイデンティマートークンの検出可能な標識が分子バーコードから解離した後に分子バーコードのシグナル応答の検出を容易にするために、切断不可能なアイデンティマートークンが分子バーコードに含まれてもよい。一部の態様では、切断不可能なアイデンティマートークンは、最初に符号化されるアイデンティマートークンとして固相材料に機能的に接続されてもよい。一部の態様では、切断不可能なアイデンティマーは、化学反応性の認識部分または切断部位を欠くスキャフォールディング部を含む。
【0007】
「に機能的にカップリングされた」および「にカップリングされた」という句は、静電、酵素、共有結合、イオンの、または他の化学的相互作用を含む、2つまたはそれ以上の実体間の任意の種類の相互作用を指す。2つの実体は互いに直接接触していなくても互いに相互作用し得る。例えば、2つの実体は中間の実体を介して互いに相互作用し得る。
【0008】
本明細書で使用するプロテアーゼ切断部位配列およびプロテアーゼ認識配列は、直交反応性プロテアーゼが結合するペプチド配列である。本明細書で使用するプロテアーゼ切断部位配列は、そのペプチド配列内に切断部位をさらに含む。
【0009】
分子バーコードに直交反応性切断物質(cleaving agent)の適用によって、切断物質と反応する認識部分を有するアイデンティマーの切断部位で分子バーコードが切断されて、アイデンティマーの検出可能な標識が、アイデンティマーの直交性に従って三次元配置から解離し、それによって、検出可能なシグナル応答が誘導されて分子バーコードが復号される。
【0010】
分子バーコードのスキャフォールド部はポリペプチド、アミノ酸、環式ペプチド、核酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。スキャフォールド部はポリエチレングリコール(PEG)nを含んでもよい。「n」は1~12、より好ましくは1~6、最も好ましくは2~5に等しくてもよい。標識された環式ペプチドの例を図15および図16に示した。検出可能な標識は、例えば、フルオロフォアまたは化学的に保護された量子ドットでもよい。検出可能な標識の間隔を互いに離してあけると、クエンチングおよび/またはスペクトルシフトを阻止することができる。切断部位は、低分子による切断の場合は化学リンカー、プロテアーゼによる切断の場合はペプチド、エンドヌクレアーゼによる切断の場合はssDNA、dsDNA、またはRNAseHによる切断の場合はRNAでもよい。
【0011】
一部の態様では、スキャフォールド部はN末端リジン残基を含み、N末端リジン残基は、C末端メチルテトラジン基を含有する他のアイデンティマーのスキャフォールド部と連鎖するのに適合する化学基(例えば、NHS-PEG4-TCOを用いてトランスシクロオクテン(TCO))によって改変可能である。アイデンティマーのC末端改変は、設置されたシステインスルフヒドリル基に結合させるためにマレイミド反応性部分を含有する市販のヘテロ二機能性クロスリンカー(メチルテトラジン-PEG4-マレイミド)を用いて成し遂げられ得る。一部の態様では、スキャフォールド部は、C末端システイン残基を介して、DBCO基を含有するように(DBCO-PEG4-マレイミドを用いて)改変されてもよく、これに対して、N末端溶解産物を有するアイデンティマーのスキャフォールド部は、N末端リジン残基を介して、アジド基を含有するように改変されてもよい。一部の態様では、末端アイデンティマーが「キャッピング」アイデンティマーとして働くように分子バーコードに含まれてもよく、従って、そのC末端では、化学反応性クリック部分を含有するように改変されない。
【0012】
一部の態様では、アイデンティマースキャフォールド部分は、そのN末端およびC末端を介して、分割-プールアプローチを用いたアイデンティマートークンの直交化学的連鎖を可能にする化学反応基を含有するリンカー試薬に共有結合により連結されたペプチド断片を含む。一部の態様では、アイデンティマーの認識部分はプロテアーゼ切断部位配列である。一部の態様では、アイデンティマーの認識部分はプロテアーゼ認識配列である。一部の態様では、アイデンティマースキャフォールド部は、N末端リジン残基、C末端システイン残基、およびアジド基を有する内部非天然アミノ酸を含有するように改変されたポリペプチド断片を含み、民間供給業者(例えば、34801 Campus Dr. Fremont, CA 94555にあるAnaspec Inc.)から取り寄せられてもよい。
【0013】
一部の態様では、スキャフォールド部は、天然化学連結によって、N末端システインを有するアイデンティマーを互いに連鎖するのを容易にするためにN末端システイン残基を含む。一部の態様では、スキャフォールド部分は、酵素認識タグを有するアイデンティマーの連鎖を容易にするために酵素認識タグを含む。
【0014】
一部の態様では、アイデンティマーを連鎖するためにクリックケミストリーが用いられてもよい。なぜなら、クリック反応は直交性であり、天然化学連結と比較して望ましい反応キネティクスがあり、そのため、おそらく分子バーコードを形成するのに必要なアイデンティマーが少なくなり、それによって、コストが低減する可能性があるからである。
【0015】
一部の態様では、スキャフォールディング部は、化学連結を介したアイデンティマーの連鎖を容易にするために環式ペプチド、スペーシングリンカー、または他のスペーシング分子を含む。ここで、環式ペプチド、スペーシングリンカー、またはスペーシング分子は、環式ペプチド、スペーシングリンカー、またはスペーシング分子の分子距離によってアイデンティマー単量体ユニットの互いとの間隔をあけるように働く。
【0016】
好ましい態様では、スキャフォールディング部は、1つまたは複数の検出可能な標識のセットに機能的に接続される。2つまたはそれ以上の検出可能な標識(すなわち、二重標識)に機能的に接続されたスキャフォールディング部を含む態様では、スキャフォールディング部は、アイデンティマーの検出可能な標識の間隔を互いから離してあけるように構成されてもよい。例えば、検出可能な標識の間隔を互いに離してあけると、アイデンティマーの組み合わせ標識性能が強化され得る。
【0017】
図16に示したように、スキャフォールディング部は環式ペプチドを含み、2つのアイデンティマー間に適合して結合し(または挿入され)得る。図16に示した構成では、それぞれのアイデンティマーの方向は重要性がないと考えられる(N末端またはC末端のいずれかを結合させることでアイデンティマーを連鎖することができる)。なぜなら、検出可能な標識を、アイデンティマー間のスキャフォールディング部に結合させることができ、タンパク質分解部位の方向はプロテアーゼ活性に影響を及ぼさないからである。
【0018】
一部の態様では、スキャフォールド部は、改変された内部塩基を介して検出可能な標識で蛍光標識された、5’末端および3’末端を有する一本鎖DNA(ssDNA)分子を含み、dsDNA二重鎖を形成するように相補的ssDNAとプレハイブリダイズされる。形成されたdsDNA二重鎖は、単一エンドヌクレアーゼ制限配列(または部位タイプ)の1つまたは複数のコピーを符号化してもよい。当業者は、本開示の恩典を受けて、スキャフォールド部に沿ってエンドヌクレアーゼ制限配列の間隔を選択的にあけることで、形成および符号化された分子バーコードから検出可能な標識を効率的に解離することが容易になり得ると理解する。一部の態様では、ヌクレアーゼ認識配列を含有するdsDNA二重鎖の一方の鎖は、予め指定されたフルオロフォアを結合させるための内部アミノ改変を含む。
【0019】
好ましい態様では、検出可能な標識は、明るさ(すなわち、量子収量)と多重化能力のために1つまたは複数のQドットを含む。一部の態様では、検出可能な標識は、アイデンティマーのスキャフォールド部分に共有結合により結合し得る、異なる発光波長を有する複数のフルオロフォアを含む。一部の態様では、形成および符号化された分子バーコードの検出可能なシグナル応答の組み合わせは、連続した発光スペクトルを含んでもよく、含まなくてもよい。なぜなら、分子バーコードを形成するアイデンティマートークンの三次元配置は変化することがあるからである。
【0020】
一部の態様では、Qドットが分割-プールによって並列に用いられたら、分子バーコードは約100万(106)のアイデンティマークラスバリエーションを含むように形成および符号化され得る。組み合わせQドット標識で、それぞれのアイデンティマーを二重標識すると、この数は、約10億(1010)のアイデンティマークラスバリエーションに拡大する可能性がある。一部の態様では、フルオロフォアを加えたナノ粒子を使用すると、さらなるアイデンティマークラスバリエーションが生じる可能性がある。
【0021】
アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの認識部分は、化学リンカー、ペプチド、または核酸を含んでもよい。切断部位は認識部分の中にあってもよい。特に、アイデンティマーのセット中の、それぞれの認識部分は、プロテアーゼ認識部分、エンドヌクレアーゼ認識部分、親和性試薬によって認識可能なエピトープ、核酸プローブ認識部分、改変されたペプチド側鎖、および非天然ペプチド側鎖より選択される少なくとも1つの部分を含んでもよい。
【0022】
2種類の検出可能な標識と2つの同じ認識部位を有する例示的なアイデンティマーを図14に示した。
【0023】
本明細書において開示される分子バーコードは、特定の適合する化学、例えば、クリックケミストリー部分、天然化学連結リンカー、または酵素媒介性連結リンカー、例えば、T4 DNAリガーゼによるDNA連結を介してアイデンティマーを別のアイデンティマーに結合させることによって構築され得る。分子バーコードは、アイデンティマーのセット中の、それぞれのアイデンティマー間にアイデンティマーリンカーをさらに含んでもよい。アイデンティマーリンカーは、クリックケミストリー部分、天然化学連結リンカー、および酵素媒介性連結リンカーの群より選択されてもよい。
【0024】
一部の態様では、アイデンティマーは、連続ラウンドの分割およびプールにわたってバーコードを形成するように予め規定された順序で連続して付加され得る。各ラウンドのアイデンティマー付加によって直交化学連結を介してアイデンティマーを連鎖することができる。
【0025】
一部の態様では、連結によるアイデンティマーの連鎖は、連鎖しようとするモル過剰の入ってくるアイデンティマーを用いて同じ反応緩衝液(1×リン酸緩衝食塩水(PBS)または1×T4 DNAリガーゼ緩衝液)の中で行われてもよい。
【0026】
一部の態様では、スキャフォールド部の内部に設置されたN末端リジン残基は、C末端メチルテトラジン基を含有する他のアイデンティマーへの結合に適合する化学基(NHS-PEG4-TCOを使用する、トランスシクロオクテン(TCO))によって改変されてもよい。アイデンティマーのC末端改変は、設置されたシステインスルフヒドリル基に結合させるためにマレイミド反応性部分(メチルテトラジン-PEG4-マレイミド)を含有する市販のヘテロ二機能性クロスリンカーを用いて成し遂げられてもよい。一部の態様では、一部のアイデンティマーは、C末端システイン残基を介してDBCO基を含有するように(DBCO-PEG4-マレイミドを用いて)改変されてもよく、これに対して、一部のアイデンティマーは、N末端リジン残基を介してアジド基を含有するように改変されてもよい。一部の態様では、末端アイデンティマーが、形成された分子バーコードに含まれ、「キャッピング」アイデンティマーとして働き、従って、そのC末端では、化学反応性クリック部分を含有するように改変されない。
【0027】
次世代シークエンシングバーコードに連結された分子バーコードは、二本鎖DNAを含むスキャフォールディング部と、タンパク質、DNA、RNA、または化学的切断可能部分を含む認識部分とを有してもよい。二本鎖DNAは、例えば、ポリ(T)、ユニーク分子識別子、および/または5’PCRハンドルを捕捉するために3’オーバーラップを有してもよい(図9および図10)。
【0028】
認識部分は、バーコードを構成するそれぞれのアイデンティマークラス用に単一エンドヌクレアーゼ切断部位タイプを含んでもよい(図5)。これらの分子バーコードの切断物質(cleavage agent)は、プロテアーゼ(図8図10)、ヌクレアーゼ(図7図9)、または化学的切断物質でもよい。多くのエンドヌクレアーゼは互いに対して直交反応性を有することが当技術分野において公知である。例えば、NotI、XhoI、SpeI、およびHindIIIは、それぞれ、GCGGCCGC、CTCGAG、ACTAGT、およびAAGCTTを含有するdsDNA配列に対して特異性を有する。従って、一部の態様では、NotIは、XhoI、SpeI、またはHindIIIが認識する部位を高効率で特異的に切断してはならない。同じことが、列挙されたヌクレアーゼのそれぞれについて当てはまる。なぜなら、それぞれのヌクレアーゼは、他のヌクレアーゼが認識する基質の存在下では、それぞれの基質だけを(主として)切断できなければならないからである。
【0029】
分子バーコードは、二本鎖DNAを含むスキャフォールド部と、ヌクレアーゼ認識部分を含む認識部分と、フルオロフォアを含む1つまたは複数の検出可能な標識とを有してもよい。または、分子バーコードは、二本鎖DNAを含むスキャフォールド部と、プロテアーゼ認識部分を含む認識部分と、フルオロフォアを含む1つまたは複数の検出可能な標識とを有してもよい。さらに、または、第1の態様の分子バーコードは、二本鎖DNAを含むスキャフォールド部と、化学的切断認識部分を含む認識部分と、フルオロフォアを含む1つまたは複数の検出可能な標識とを有してもよい。
【0030】
非DNA分子バーコードは、アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質を含むスキャフォールディング部を有してもよい。認識部分は化学的切断可能部分で作られてもよく、複数の検出可能な標識、例えば、2つ以上の異なる標識の組み合わせを含んでもよい。これらのバーコードの切断物質は、逐次的に添加されてもよい、プロテアーゼまたは化学的切断物質でもよい。または、分子バーコードは、アミノ酸を含むスキャフォールド部と、化学切断認識部分を含む認識部分と、フルオロフォアを含む1つまたは複数の検出可能な標識とを有してもよい。さらに、または、分子バーコードは、アミノ酸を含むスキャフォールド部と、プロテアーゼ認識部分を含む認識部分と、フルオロフォアを含む1つまたは複数の検出可能な標識とを有してもよい。
【0031】
認識部分は化学リンカー、ペプチド、または核酸を含んでもよい。上記の認識モチーフのペプチドを含有するアイデンティマーは様々なクラスに属する。1つのクラスは、認識モチーフのペプチドによって同定されるプロテアーゼによって規定される。
【0032】
検出可能な標識の1つまたは複数はフルオロフォアを含んでもよい。
【0033】
本開示の恩典は、分子バーコードを、分子バーコードの三次元配置との相互情報を有する材料と関連付けることができることである。従って、分子バーコードを復号することによって材料を分類することができる。例えば、1つまたは複数の分子バーコードのセットを環境(例えば、化学系または生化学系)に導入することができ、セット中の少なくとも1つの分子バーコードが、環境にも存在する材料との相互情報を有する。切断物質と反応する切断部位で分子バーコードを切断するために、分子バーコードのセットに対する直交反応性切断物質が選択的に適用され得る。切断によって、アイデンティマーの直交性に従って三次元配置から、アイデンティマーの検出可能な標識が解離する。検出可能な標識の解離によって、検出可能なシグナル応答が誘導される。シグナル応答は、1つまたは複数の分子バーコードのセットを復号するのに(すなわち、特定のアイデンティマーの身元および順序を決定するのに)使用され得る。1つまたは複数の分子バーコードのセットを復号することにより、材料と共有される相互情報(例えば、材料の身元および/または濃度)が明らかになる。この材料も、その身元を符号化するのに用いられた分子バーコードと同じビーズと連結され得る。
【0034】
本明細書で使用する「符号化する」とは、情報、データ、または分類指示を、変換されたフォーマットに変換することを指す。
【0035】
本明細書で使用する「復号する」とは、変換されたフォーマットから情報を抽出するために符号化プロセスを逆転させることを指す。
【0036】
本明細書で使用する「相互情報」とは、第2の変数を観察することで第1の変数について入手可能な量的情報を指す。
【0037】
本明細書で使用する「直交の」とは、特定の一組の反応条件下で特定の試薬との化学反応性を有する、多成分系における成分を指し、多成分系における全ての成分が同じ環境に存在するが、多成分系における他の少なくとも1種類の成分と試薬との反応性は限られているか、またはない。
【0038】
本明細書で使用する「直交反応性」とは、特定の一組の反応条件下で特定の試薬との化学反応性を有する、多成分系中の成分を指し、系における全ての成分が同じ環境に存在するが、系における少なくとも1種類または複数種の成分は、特定の一組の反応条件下での特定の試薬との化学反応性がない。同様に、「直交反応性」とは、直交反応性を有する材料を指す。
【0039】
本明細書で使用する「アイデンティマー」とは、1種類の「識別分子」に付けられた名前である。本明細書において開示されるように、1種類のアイデンティマー分子は、スキャフォールド部に機能的に接続された1つまたは複数の検出可能な標識のセットを含み、スキャフォールド部は分子バーコードへの組み込みおよび分子バーコードの符号化の前に認識部分と切断部位を含む。
【0040】
本明細書で使用する「アイデンティマークラス」とは、本質的に同一の構成を有する1つまたは複数のアイデンティマーのセットに付けられた名前である。従って、あるクラスのアイデンティマーは、ある刺激に対して本質的に同一に反応するはずである。
【0041】
本明細書で使用する「アイデンティマートークン」とは、分子バーコードに組み込まれており、材料と物理的に結び付けられているアイデンティマークラスの、実体のある事例である。
【0042】
本明細書で使用する「認識部分」および「認識部」は同義で用いられ、化学的切断物質または酵素的切断物質と反応する化学的部分を指す。
【0043】
本明細書で使用する「切断部位」とは、2つの解離される分子の間にある切断点である。一部の態様では、切断部位は認識部分の内部に位置する。一部の態様では、切断部位は認識部分の外部に位置するか、または認識部分から離れている。
【0044】
本明細書で使用する「トークン」とは、情報、例えば、事実、品質、データ、または他の種類の情報の目に見えるか、または実体のある表示として働くものである。
【0045】
例えば、材料は、分子バーコードに機能的にカップリングされた試験物質(「試験構築物」と総称する)を含んでもよく、分子バーコードの三次元配置は試験物質との相互情報を有する。本実施例では、バーコードを復号することで、試験物質が、分子バーコードと一緒に環境に存在しているか、または存在していたことが分かる。従って、バーコードを用いた試験構築物はスクリーニングにおいて使用され得る。
【0046】
例えば、スクリーニング方法は、複数の試験構築物を環境に導入する工程であって、それぞれの試験構築物が、ユニークな分子バーコードに機能的にカップリングされた試験物質を含み、分子バーコードの三次元配置が試験物質との相互情報を有する、工程を含んでもよい。1つまたは複数の標的のセットに対して、複数の試験構築物がスクリーニングされる。試験構築物のうちの1つまたは複数の活性が確かめられる。カップリングされた分子バーコードを、切断物質と反応する切断部位で切断する(すなわち、主として、切断物質と反応する認識部分を有するアイデンティマーだけの切断部位で切断する)ように、複数の試験構築物に直交反応性切断物質が選択的に適用される。これにより、アイデンティマーの直交性だけに従って三次元配置からアイデンティマーの検出可能な標識が解離する。従って、検出可能なシグナル応答を用いて、前記バーコードを復号し(すなわち、本実施例ではバーコードアイデンティマー配列を同定し)、それによって、標的のセットに対して活性を有する対応する試験物質を同定することができる。
【0047】
配列中で、ビーズに対して最も外側のセグメントから、一部の分子バーコードにある検出可能な標識の認識および切断が実施される必要がある場合がある(例えば、図7)。または、バーコード情報が失われることがある。さらに、バーコード情報を保持するために既知配列中で、一部の分子バーコードにある検出可能な標識の認識および切断が実施される必要がある場合がある(例えば、図8図11)。認識部分はタンパク質または化学的切断可能部分で作られてもよい。任意で、認識部分は、複数の検出可能な標識、例えば、2つまたはそれ以上の異なる標識の組み合わせを含有する。
【0048】
有益なことに、検出可能なシグナル応答は濃縮なしで誘導されてもよい。検出可能なシグナル応答は蛍光強度などのシグナル強度の増加または減少でもよい。
【0049】
複数の試験構築物に直交反応性切断物質を選択的に適用することは、切断試薬を逐次的に適用すること(例えば、1種類の切断物質を反復して適用すること、または2種類もしくはそれ以上の切断物質を個々におよび逐次的に適用すること)を含んでもよい。切断物質は異なるプロテアーゼおよび/または異なる化学的切断物質でもよい。
【0050】
分子バーコードを作製するための方法は、1つまたは複数のアイデンティマーのセットを提供する工程であって、アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーが、スキャフォールド部に機能的に接続された1つまたは複数の検出可能な標識のセットを含み、スキャフォールド部が、アイデンティマーのセット中の少なくとも1つのアイデンティマーの認識部分と直交する認識部分と、1つまたは複数の検出可能な標識のセットに機能的に接続された切断部位とを含む、工程を含む。アイデンティマーは組み合わせ的に標識されてもよい。例えば、7アイデンティマーバーコード中のそれぞれのアイデンティマーについて、同じプロテアーゼ部位を用いて10の異なる量子ドットが符号化されてもよく、これにより、おそらく、1000万の異なるバーコードまたはビーズを符号化することができる。前記方法は、第1のアイデンティマーおよび第2のアイデンティマーをアイデンティマーのセットから選択し、かつ、分子バーコードを符号化および形成するように三次元配置で第1のアイデンティマーを第2のアイデンティマーと連鎖する工程を含む。前記方法は、アイデンティマーをアイデンティマーのセットから選択し、かつアイデンティマーを分子バーコードに連鎖して三次元配置を改変し、かつ分子バーコードをさらに符号化および形成する工程を続けてもよい。この最後の工程は1~n回繰り返されてもよい。
【0051】
アイデンティマー鎖は連続した分割-プールアプローチによって組み立てられてもよく、各ラウンドに異なるクラスが付加される。一部の態様では、DNAシークエンシングベースの復号に頼らずに、分割-プール連結によって分子バーコードを符号化および形成して分子バーコードのコンビナトリアルライブラリーを作り出すために様々なアイデンティマークラスが同時に使用され得る。一部の態様では、個々の分子バーコードは、同時に形成および符号化されている他の分子バーコードの存在下で作製され得る。このような他の分子バーコードは、アイデンティマーバーコード結合部位以外のビーズ上の部位に結合した次世代シークエンシングバーコードを含んでもよい。
【0052】
一部の態様では、ビーズの分割とプールによってアイデンティマーベース分子バーコードの組み合わせ鎖を組み立てるためにアイデンティマーが用いられる場合がある。本質的に、各ラウンドの付加によって、ユニークなアイデンティマートークンが、それぞれの組み合わせ鎖に付加される。本質的に、それぞれの結果として生じた分子バーコードは、分子バーコードに組み込まれたアイデンティマートークンの三次元配置に従って組織化された検出可能な標識の組み合わせを含有する。
【0053】
アイデンティマーは、例えば、天然化学連結、クリックケミストリーによって結合されてもよく、ペプチドリガーゼ、ソルターゼまたはSFP合成酵素によって酵素により結合されてもよい。それぞれの切断サイクルの間に、バーコードの内部にある1つのアイデンティマークラスだけが同定される。
【0054】
第1のアイデンティマーは、材料、例えば、材料の表面、例えば、ビーズの表面に機能的にカップリングされてもよい。第1のアイデンティマーは一般的な化学反応を用いることでビーズに結合されてもよい。第1のアイデンティマーはオリゴマーでもよく、その5’末端によってビーズに結合されてもよい(図6)。ビーズは試験物質に機能的にカップリングされてもよい。ビーズはキャッピングビーズ(図17)でもよい。第1のアイデンティマーは、高親和性結合タンパク質または3つのアームを有するリンカーによって材料の表面に機能的にカップリングされてもよい。
【0055】
1つまたは複数のアイデンティマーのセットを提供する工程は、直前のアイデンティマーと連鎖するように、かつ、直鎖三次元配置でアイデンティマーの連鎖を容易にし、それによって、分子バーコードを連続して形成および符号化するように、アイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーを構成することを含んでもよい。直前のアイデンティマーに特異的に結合するようにアイデンティマーのセットを構成することは、直前のアイデンティマーとの連結、直前のアイデンティマーからの延長、または直前のアイデンティマー上への合成によって連鎖することを含んでもよい。例えば、二本鎖DNAを含むアイデンティマーは連結のために突出末端を有してもよい。
【0056】
前記方法は、1つまたは複数の化学的構成要素のセットを準備する工程であって、化学的構成要素のセット中のそれぞれの化学的構成要素が、直前の化学的構成要素と連鎖するように構成されている、工程;化学的構成要素のセットから第1の化学的構成要素を選択し、かつ第1の化学的構成要素を第1のアイデンティマーと連鎖する工程を含んでもよい。言い換えると、化学的構成要素の結合の後に、この構成要素は視覚的バーコードセグメントによって符号化される(図12および図13)。前記方法は、直前の化学的構成要素と連鎖するように構成された、化学的構成要素のセットから、化学的構成要素を選択し、かつ化学的構成要素を直前の化学的構成要素と連鎖し、それによって、一連の化学的構成要素を形成する工程を続けてもよい。この最後の工程は1~n回繰り返されてもよい。
【0057】
有益なことに、一連の化学的構成要素を連鎖することは非核酸適合性反応の使用を含んでもよい。従って、反応物は、主として核酸ベースのバーコードには通常用いることができない分子バーコードを組み立てるのに使用され得る。
【0058】
化合物ライブラリーが組み立てられた後に、それぞれのビーズは、組み合わせ視覚的バーコードの内部で身元が符号化されているユニークな化合物を表示することができる。次いで、化合物ライブラリーは、様々な公知の選択スキームを用いて選択され得る。選択後に、選択された化合物を非生産的な化合物より多く濃縮することは必要とされない場合がある。このバーコードタイプを用いると、DNAを用いずに、多種多様な化合物ライブラリーの構築および符号化が可能になる場合がある。ライブラリーメンバーは、以前に説明したように、例えば、バーコードセグメントの直交切断を用いて大規模に並列したやり方で識別され得る。
【0059】
一部の態様では、ビーズ上に分子バーコードライブラリーが形成されてもよく、ビーズを表面に固定化し、実験溶液との接触前および接触後に画像化することができる。固定化されたビーズは、最初に、関心対象の所定の視野または領域で、それぞれのバーコードを構成する視覚的に検出可能な標識の組み合わせを記録するように、適切な励起波長および発光フィルターを用いて構成された標準的な蛍光顕微鏡を用いて画像化されてもよい。
【0060】
標準的な蛍光顕微鏡の代わりに、倒立蛍光顕微鏡、任意の拡大器具、例えば、蛍光ビーズを画像化することができる器具において組み立てられた適切な構成をもつ蛍光スキャナーが動作し得る。自動イメージャーが様々な用途で有用になるかもしれない。例えば、標準的な4種類のフルオロフォアを用いた細胞アレイ用途の場合、Molecular DynamicsスキャナーまたはNexcelomスキャナーが用いられる場合がある。Qドットを検出するために、特別な構成、例えば、可能性のある11種類全てのQドットを識別できるフィルターホイール(filter wheel)が必要とされる。
【0061】
特定の態様では、ある特定の数のフルオロフォアが結合された後に、一色のコンスタントカラー(constant color)が全ての組み立てられたアイデンティマー上にある必要がある場合がある。例えば、11種類の区別可能なQドットがある場合、バーコードは10種類のQドットを用いて組み立てられてもよく、11番目のQドットは、全アイデンティマー上にあるコンスタントとして用いられる標準色として使用されてもよい。これは有益な場合がある。なぜなら、このフルオロフォアは、各画像において任意の所定の鎖にある他のフルオロフォアと比較できる量的標準として働く可能性があるからである。これにより、ユーザーは、他のシグナルが、その1つのコンスタントシグナルと比べてどのくらい匹敵するか調べ、より大きな正確度でシグナルの割合を測定することが可能になる場合がある。当業者は、本開示の恩典を受けて、他のタイプの内部標準も使用できることを理解するであろう。
【0062】
分子バーコードを符号化および復号するためのシステムも本明細書において開示される。このようなシステムは、1つまたは複数の符号化された分子バーコードのセットを環境に導入するように構成されたバーコード符号化システムを備え、符号化された分子バーコードのセット中の少なくとも1つの分子バーコードは材料との相互情報を有する。前記システムは、分子バーコードのセットを、直交反応性切断物質と反応する認識部分が存在する、アイデンティマーの切断部位で切断して、検出可能な標識を、アイデンティマーの直交性に従って、分子バーコードセット中の分子バーコードの三次元配置から解離するために、環境に切断物質を選択的に適用し、それによって、検出可能なシグナル応答を分子バーコードから誘導して分子バーコードのセットを復号するように構成された、切断システムをさらに備える。前記システムは、分子バーコードのセットからの検出可能なシグナル応答を検出するための検出システムをさらに備え、光を分子バーコードのセットに選択的に伝達して、検出可能なシグナル応答を誘導するように構成された、照明システムをさらに備えてもよい。
【0063】
フローセル
スライドに装着したら16の個々のレーンを生じるように切断した、MicrofluidicChipShopから購入した組み立て式プラスチックカバーと接着剤を用いてフローセルを構築した。それぞれのフローセルレーンの体積は約15~20μlであった。フローセルを構築するためにポリ-L-リジンコーティングガラススライドを使用した。このやり方では、NHS-LC-ビオチン(NHS結合体化用緩衝液中に500μMの濃度で室温で少なくとも1時間)で改変するために、リジン側鎖にある遊離第1級アミンを使用することができた。ビオチン化後に、固定化および下流復号実験のためにオリゴヌクレオチドコーティングストレプトアビジンビーズ導入の準備をする目的で、フローセルレーンに200μlの2×ハイブリダイゼーション用緩衝液を流した。
【0064】
分子バーコードのデコンボリューション
0.2~1mg/mlの分子バーコードコーティングストレプトアビジンビーズ20μlを、1×ハイブリダイゼーション用緩衝液が入っているフローセルレーンの中に導入した。表面への結合を促進するためにビーズを少なくとも1時間沈殿させた。次いで、結合しなかったビーズを除去するために、フローセルレーンに200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液を流し、次いで、100μlの1×Cutsmart緩衝液を流した。全てのアイデンティマー復号実験を、50~500Uの1種類の制限酵素を含有する切断溶液を用いて実施した。一部の態様では、約5U/ulの濃度の1種類の制限酵素を使用した。これらの溶液は、最初に酵素ストックを1×Cutsmart緩衝液(NEB)で2倍に希釈し、7K MWCO Zebaカラム(ThermoFisher, Inc.から市販されている)を介して1×Cutsmart緩衝液に対して緩衝液交換することによってグリセロールから実質的に取り出された。第1の切断物質を導入する前に、様々な分子バーコードでコーティングされた、切断されなかった1μM MyOne T1ビーズの画像を取得した。切断溶液をフローセルレーンの中に導入し、ヒートブロック上でのそれぞれの復号サイクルの間に37℃で15~30分間インキュベートした。それぞれの復号サイクルの後に、ビーズ画像を取得し、下流分析のために編集した。
【0065】
ストレプトアビジンビーズ画像の収集
ストレプトアビジンビーズの画像化は、HCX PL FLUOTAR L 40x(NA-0.6)CORR PH2対物レンズとLumencor Spectra X Light Engine(395、440、470、550、640、748)とLeica DFC9000 GTCカメラを備えたLeica Thunderシステムにおいて実施した。画像取得のために、以下のフィルターセット(Quad Cube- Ex:375-407、462-496、542-566、622-654、DC:415、500、572、660、Em:420-450、506-532、578-610、666-724、およびY7 cube Ex:672-748、DC:760、Em:765-855)を用いた。さらなるDFT5ファストフィルターホイール(fast filter wheel)はキューブ(cube)よりも後ろにあり、以下のLPフィルター:440、510、590、700、および100%を搭載した。
【0066】
ストレプトアビジンビーズに結合した分子バーコードの環式復号(Cyclic Decoding)の画像分析
画像を
データベースにロードし、以下のように分析した。最初に、1枚1枚の画像を、画像を取得した逆の順序で時系列にした。次いで、画像をブレ修正し、不均一な証明を最小限にするために視野の中央部からの領域にトリミングした。各画像について、バックグラウンドサブトラクションを計算するために、10個のビーズと1つのバックグラウンド領域の周囲で同じサイズのROIを得た。サイクルの次の画像から、それぞれの標識について得られた値を差し引いて、それぞれの切断サイクルの間に放出されたフルオロフォア標識をはっきりと同定した。例えば、3つの画像(非切断、RE1による切断、およびRE2による切断)のOCS実験では、最後の画像から2番目(RE1による切断後)において取得したデータから、最後の画像(RE2による切断後)において取得したデータを差し引いた。1番目の画像(非切断)において取得したデータから、最後の画像から2番目(RE1による切断後)において取得したデータを差し引いた。これにより、それぞれの切断サイクルの間にシグナル消失を正確に同定することが可能になった。
【0067】
ビオチン部分を介してビーズに結合された非標識dsDNAに連結することで結合された第1の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id1/HindIII-AF750)を含有するストレプトアビジンビーズを図19Aに示した。これもビーズの右側に示した、dsDNAアイデンティマーセグメントは、NHS-AF750を用いて内部アミノ改変塩基を介してDNA二重鎖のオリゴのうちの1つに結合されたAF750標識(AF-750)(下向き斜めの縞模様)を含有する。結合された標識アイデンティマーはまた、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(HindIII)も含有する。Id1/HindIII-AF750オリゴ二重鎖は、認識可能な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有しないが(切断不可能)、ストレプトアビジンビーズに結合させるために5'-ビオチン改変を含有する非標識オリゴ(Id0)に対する連結反応を介してビーズに結合される。dsDNAアイデンティマーの連結を溶液中で行い、ビーズを洗浄し、ビーズの試料を、画像化のためにフローセル中のビオチン改変表面上に固定化した。Id1/HindIII-AF750がビーズに結合されたことは、4蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、647nm、および750nmでの蛍光画像化によって確認された。この場合、750nm波長にしか強力な発光シグナルは観察されなかった。Id1/HindIII-AF750 dsDNAアイデンティマーとId0オリゴ二重鎖との効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された4種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(上向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)、および750nm(下向き斜めの縞模様)から取得したデータ、ならびに同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)を用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された4種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0068】
第2の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id2/SpeI-AF647)を含有するストレプトアビジンビーズを図19Bに示した。これもビーズの右側に示した、第2のdsDNAアイデンティマーセグメントは、NHS-AF647を用いて内部アミノ改変塩基を介してDNA二重鎖のオリゴのうちの1つに結合されたAF647標識(AF-647)(点々模様)を含有する。鎖における第2の結合された標識アイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(SpeI)も含有する。Id2/SpeI-AF647オリゴ二重鎖は、第1の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id1/HindIII-AF750)二重鎖への連結反応を介してビーズに結合される。dsDNAアイデンティマーの連結を溶液中で行い、ビーズを洗浄し、ビーズの試料を、画像化のためにフローセル中のビオチン改変表面上に固定化した。ビーズ上にあるId1/HindIII-AF750--Id2/SpeI-AF647連結産物の形成の成功は、4蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、647nm、および750nmにおける蛍光画像化によって確認された。今度は、強力なシグナルが750nmおよび647nm発光波長の両方で観察されたが、550nmまたは488nm波長では観察されなかった。Id2/SpeI-AF647 dsDNAアイデンティマーとId1/HindIII-AF750 dsDNAアイデンティマーとの効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された4種類全ての発光波長、488nm(水平の縞模様)、550nm(上向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)、および750nm(下向き斜めの縞模様)から取得したデータ、ならびに同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)を用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された4種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0069】
第3の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id3/XhoI-ATTO550)を含有するストレプトアビジンビーズを図19Cに示した。これもビーズの右側に示した、第3のdsDNAアイデンティマーセグメントは、NHS-ATTO550を用いて内部アミノ改変塩基を介してDNA二重鎖のオリゴのうちの1つに結合されたATTO550標識(ATTO-550)(上向き斜めの縞模様)を含有する。鎖における第3の結合された標識アイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(XhoI)も含有する。Id3/XhoI-ATTO550オリゴ二重鎖は、第2の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id2/XhoI-AF647)二重鎖への連結反応を介してビーズに結合される。dsDNAアイデンティマーの連結を溶液中で行い、ビーズを洗浄し、ビーズの試料を、画像化のためにフローセル中のビオチン改変表面上に固定化した。ビーズ上にあるId1/HindIII-AF750--Id2/SpeI-AF647--Id3/XhoI-ATTO550連結産物の形成の成功は、4蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、647nm、および750nmにおける蛍光画像化によって確認された。今度は、強力なシグナルが750nm、647nmおよび550nm発光波長で観察されたが、488nm波長では観察されなかった。Id3/XhoI-ATTO550dsDNAアイデンティマーと、成長中のアイデンティマー鎖との効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された4種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(上向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)、および750nm(下向き斜めの縞模様)から取得したデータ、ならびに同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)を用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された4種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0070】
第4の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id4/NotI-ATTO488)を含有するストレプトアビジンビーズを図19Dに示した。これもビーズの右側に示した、第4のdsDNAアイデンティマーセグメントは、NHS-ATTO488を用いて内部アミノ改変塩基を介してDNA二重鎖のオリゴのうちの1つに結合されたATTO488標識(ATTO-488)(水平の縞模様)を含有する。鎖における第4の結合された標識アイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(NotI)も含有する。Id4/NotI-ATTO488オリゴ二重鎖は、第3の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id3/XhoI-AF647)二重鎖への連結反応を介してビーズに結合される。dsDNAアイデンティマーの連結を溶液中で行い、ビーズを洗浄し、ビーズの試料を、画像化のためにフローセル中のビオチン改変表面上に固定化した。ビーズ上にあるId1/HindIII-AF750--Id2/SpeI-AF647--Id3/XhoI-ATTO550--Id4/NotI-ATTO488連結産物の形成の成功は、4蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、647nm、および750nmにおける蛍光画像化によって確認された。今度は、強力なシグナルが750nm、647nm、550nm、および488nm発光波長で観察された。Id4/NotI-ATTO488dsDNAアイデンティマーと、成長中のアイデンティマー鎖との効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された4種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(上向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)、および750nm(下向き斜めの縞模様)から取得したデータ、ならびに同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)を用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された4種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0071】
標識dsDNAアイデンティマー鎖の復号;3つの切断サイクル:
4つの異なるフルオロフォア標識の単一の組み合わせを用いてビーズを符号化した。この場合、それぞれのユニークな標識を、dsDNAアイデンティマー鎖の内部にある異なるアイデンティマーセグメントに結合させた。以前に説明したように、および図19に示したように4ラウンドの連結によってdsDNAアイデンティマー鎖を形成した。この実験のための鎖配列は、Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488であった。従って、このようなdsDNAアイデンティマー鎖配列を有するビーズは、第1の直交切断サイクルではNotI酵素にのみ曝露された後に488nmチャンネルにおける蛍光シグナルを消失し、第2の直交切断サイクルではXhoI酵素にのみ曝露された後に647nmチャンネルにおける蛍光シグナルを消失し、第3の直交切断サイクルではSpeI酵素にのみ曝露された後に750nmチャンネルにおける蛍光シグナルを消失すると予想される。ここでは、ビーズをフローセル表面に固定化し、上記のサイクリング順序で、これらの酵素を用いて3つの直交切断シークエンシング(OCS)サイクルに供し、それぞれのサイクルの前後に画像を取得した。最初に、非切断ビーズ(図20A)を4蛍光チャンネル;647nm(上向き斜めの縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、488nm(水平の縞模様)、および750nm(点々模様)で画像化した。それぞれのフルオロフォアについて得られた平均強度値を右側にプロットした。取得した非切断ビーズ画像において4種類全てのフルオロフォアのシグナルが観察された(棒グラフの右側)。次いで、フローセルを37Cヒートブロック上に置き、1×CutSmart緩衝液と5U/ul濃度のNotI酵素を含有する溶液に15分間曝露した。次いで、フローセルレーンに1×CutSmart緩衝液を流し、画像化のためにフローセルを顕微鏡に戻した。NotI酵素への曝露後のビーズ画像(図20B)を、非切断ビーズ定量のために画像化した同じフローセルレーンの同じ場所から取得した。(フローセルを顕微鏡から取り出し、それぞれの切断サイクルの間にインキュベーションのためにヒートブロック上に置いたが、顕微鏡に戻し、このFOVを、実験中に取得した全画像にわたって維持した)。ビーズは、図20Bに示したように(平均強度プロットの右側)、NotIへの曝露後に488nmチャンネルにおいて有意に小さなシグナルを示した。NotI曝露前のビーズからの488nmシグナル発光の平均強度は約9,300FUであり、NotIへの曝露後に、このシグナルは約2,000FUに低下した。重要なことに、他の全ての蛍光標識について観察されたシグナル強度は実質的に不変のままであった。第2の直交切断サイクルを開始するために、フローセルを37Cヒートブロックに戻し、1×CutSmart緩衝液と5U/ul濃度のXhoI酵素を含有する溶液に15分間曝露した。次いで、フローセルレーンに1×CutSmart緩衝液を流し、画像化のためにフローセルを顕微鏡に戻した。XhoI酵素への曝露後のビーズ画像(図20C)から、AF647標識からのシグナル発光が大幅に低下したことが分かった。XhoI曝露前のビーズからの647nmシグナル発光の平均強度は約8,000FUであり、XhoIへの曝露後に、このシグナルは約1,000FUに低下した。重要なことに、2つの非切断蛍光標識について観察されたシグナル強度は実質的に不変のままであった。第3の直交切断サイクルを開始するために、フローセルを37Cヒートブロックに戻し、1×CutSmart緩衝液と5U/ul濃度のSpeI酵素とを含有する溶液に15分間曝露した。次いで、フローセルレーンに1×CutSmart緩衝液を流し、画像化のためにフローセルを顕微鏡に戻した。SpeI酵素への曝露後のビーズ画像から、AF750標識からのシグナル発光が大幅に低下したことが分かった(図20D)。SpeI曝露前のビーズからの750nmシグナル発光の平均強度は約5,500FUであり、SpeIへの曝露後に、このシグナルは約400FUに低下した。重要なことに、最後の非切断蛍光標識(ATTO550)について観察されたシグナル強度は実質的に不変のままであった。鎖配列:Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488を、NotIに、次いで、XhoIに、これに続いてSpeIに曝露すると、予想された復号結果が得られた。
【0072】
異なって標識されたdsDNAアイデンティマー鎖の復号:単一セグメントおよび混合セグメント
単一標識鎖を構築した。ここでは、Id1/HindIII、Id2/SpeI、Id3/XhoI、およびId4/NotIセグメントのそれぞれを、以前に列挙した4種類のフルオロフォア(ATTO488、ATTO550、AF647、およびAF750)で異なって標識して、合計16の異なる標識dsDNAアイデンティマーセグメントを作った。予め規定された鎖配列を符号化するために、それぞれのタイプ(Id1/HindIII、Id2/SpeI、Id3/XhoI、およびId4/NotI)の1つの異なって標識されたセグメントを選択した。ここで使用した単一標識dsDNAアイデンティマー鎖配列は、以下:Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488)であった。予め規定された単一標識鎖配列を含有するストレプトアビジンビーズを、以前に説明した分割-プール連結戦略によって構築し、画像化のためにフローセルの1レーンにおけるビオチン改変表面上に固定化した。制限酵素を含有する溶液と接触させる前に、1つのFOVにある多くのビーズを4種類全ての蛍光チャンネルにおいて画像化した。次いで、ビーズを、以前に説明したように3つのOCSサイクル(サイクル1ではNotI、サイクル2ではXhoI、およびSpeI)に供し、その後に、それぞれのサイクルの後に画像化した。画像化シリーズにおけるそれぞれの取得のために、1つのFOVにある多くのビーズのデータを平均し、OCS実験の全サイクルにわたって同じFOVを画像化した。Id1はHindIIIによって切断可能であり、ATTO488で標識されたが、このIdセグメントは、ここでは切断されなかった。なぜなら、このセグメントを切断する必要なく、単一フルオロフォア標識からのシグナルが容易に視覚化されたからである。サイクルを日付の古い順に列挙して、それぞれの切断サイクルの前後に4種類全ての標識を画像化することによって得られた強度データを表に入力した。それぞれのOCSサイクルの間に、どのフルオロフォアが切断されたかは生データから明らかであった。しかしながら、鎖におけるそれぞれのIdセグメントに結合した標識の順序を、もっとはっきりと規定するために、ビーズ「読み取りデータ(read)」から入手した配列としてデータをプロットした。単一標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を、図21Aに示した棒グラフで示した。図中では、分析のためにサイクルの順序を逆にした。このやり方では、この実験において最後の直交切断サイクル(SpeIによる切断)後に撮影した画像が、このシリーズの「第1の」画像になり、XhoI切断後に取得した画像が、このシリーズの「第2の」画像になり、NotI切断後に取得した画像が、このシリーズの「第3の」画像になり、非切断ビーズの取得した画像が、このシリーズの「最後の」画像になった。日付の新しい順で、「前の」サイクルから4種類全てのフルオロフォアの強度データを差し引いた。次いで、図21Aに示したように、結果として生じた4種類全てのフルオロフォアのデータを、単一標識dsDNAアイデンティマー鎖を復号した画像化シリーズで、それぞれのサイクルについてプロットした。本実施例ではSpeI切断後にビーズを画像化した。強力なシグナルは、Id1に結合した、ビーズ上に残っているただ一つのフルオロフォア、ATTO550(下向き斜めの縞模様)にしか観察されなかった。SpeI切断サイクル中に切断され、Id2に結合した明瞭な単一標識、AF750(薄い点々模様)に到達するように、XhoI切断後に取得した画像から、SpeI切断後の画像にある4種類全てのフルオロフォアの観察された強度データを差し引いた。同様に、XhoI切断後に除去され、Id3に結合した単一標識、AF647(濃い点々模様)を観察できるように、NotI切断後に取得した画像から、XhoI切断後にビーズ上に観察された4種類全てのチャンネルにおけるシグナルを差し引いた。最後に、NotI切断時に除去され、Id4に結合した単一標識、ATTO488(水平の縞模様)を観察できるように、非切断ビーズの取得した画像から入手したフルオロフォア強度から、NotI切断後に画像のビーズ上に観察された全ての強度を差し引いた。
【0073】
dsDNAアイデンティマー鎖を用いて符号化されるライブラリーの理論的多様性を増加させるために混合セグメント鎖を構築した。これによって、セグメント連結前に、共通するタイプの2つの異なって標識されたdsDNAアイデンティマーを、10の異なる、予め規定された、視覚的に識別可能な組み合わせで1:1モル比で等しく混合した(例えば、Id2/SpeI-ATTO488をId2/SpeI-AF647と混合した)。4つの異なる標識を使用して10通りのフルオロフォア組み合わせ;488/488、488/550、488/647、488/750、550/550、550-/647、550/750、647/647、647-/750、および750/750を視覚的に区別可能にすることができる。鎖中の、それぞれのIdセグメント位置で混合標識を用いて、予め規定された鎖配列を符号化するために、それぞれのタイプの異なって標識されたセグメントの1つの組み合わせ(Id1/HindIII、Id2/SpeI、Id3/XhoI、およびId4/NotI)を選択した。ここで使用した混合標識dsDNAアイデンティマー鎖配列は、以下:Id1/HindIII-ATTO550/AF750--Id2/SpeI-AF647/ATTO488--Id3/XhoI-ATTO550/AF647--Id4/NotI-AF750/ATTO488)であった。予め規定された混合標識鎖配列を含有するストレプトアビジンビーズを、以前に説明した分割-プール連結戦略によって構築し、画像化のためにフローセルの1レーンにおけるビオチン改変表面上に固定化した。制限酵素を含有する溶液と接触させる前に、1つのFOVにある多くのビーズを4種類全ての蛍光チャンネルにおいて画像化した。次いで、ビーズを、以前に説明したように3つのOCSサイクル(サイクル1ではNotI、サイクル2ではXhoI、およびSpeI)に供し、その後に、それぞれのサイクルの後に画像化した。画像化シリーズにおけるそれぞれの取得のために、1つのFOVにある多くのビーズのデータを平均し、OCSシリーズの全サイクルにわたって同じFOVを画像化した。Id1はHindIIIによって切断可能であり、AF750とATTO488の両方で標識された1:1混合物として用いられたが、このIdセグメントは、ここでは切断されなかった。なぜなら、このセグメントを切断する必要なく、2つしか残っていないフルオロフォア標識からのシグナルが(SpeI切断後に)容易に視覚化されたからである。サイクルを日付の古い順に列挙して、それぞれの切断サイクルの前後に4種類全ての標識を画像化することによって得られた強度データを表に入力した。それぞれのOCSサイクルの間に、どのフルオロフォアが切断されたかは生データから最初から明らかでなかった。鎖におけるそれぞれのIdセグメントに結合した標識の順序を、もっとはっきりと規定するために、単一標識鎖データを用いて実施したように、データをビーズ「読み取りデータ」から入手した配列としてプロットした。混合標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を、図21Bに示した棒グラフで示した。図中では、単一標識鎖データについて実施したように、分析のためにサイクルの順序を逆にした。このやり方では、この実験において最後の直交切断サイクル(SpeIによる切断)後に撮影した画像が、このシリーズの「第1の」画像になり、XhoI切断後に取得した画像が、このシリーズの「第2の」画像になり、NotI切断後に取得した画像が、このシリーズの「第3の」画像になり、非切断ビーズの取得した画像が、このシリーズの「最後の」画像になった。日付の新しい順で、「前の」サイクルから4種類全てのフルオロフォアの強度データを差し引いた。次いで、図3Bに示したように、結果として生じた4種類全てのフルオロフォアのデータを、混合標識dsDNAアイデンティマー鎖を復号した画像化シリーズで、それぞれのサイクルについてプロットした。本実施例ではSpeI切断後にビーズを画像化した。強力なシグナルは、ビーズ上にある2つしか残っていないフルオロフォア、ATTO550およびAF750(それぞれ、下向き斜めの縞模様および薄い点々模様の棒)にしか観察されなかった。これらのフルオロフォアは、Id1に結合した標識の予め規定された組み合わせであった。SpeI切断サイクル中に切断された2種類のはっきりと分離した標識、ATTO488およびAF647(それぞれ、水平の縞模様および濃い点々模様の棒)に到達するように、XhoI切断後に取得した画像から、SpeI切断後の画像にある4種類全てのフルオロフォアの観察された強度データを差し引いた。これらの標識は、Id2に結合した標識の予め規定された組み合わせであった。同様に、XhoI切断後に除去された標識を観察できるように、NotI切断後に取得した画像から、XhoI切断後にビーズ上に観察された4種類全てのチャンネルにおけるシグナルを差し引いた(残念なことに、画像化のエラーによって、Id3に結合したフルオロフォアは、この実験において区別不可能になった)。最後に、NotI切断後に除去された2種類の標識、ATTO488およびAF750(それぞれ、水平の縞模様および薄い点々模様の棒)を同定できるように、非切断ビーズの取得した画像から入手したフルオロフォア強度から、NotI切断後に画像のビーズ上に観察された全ての強度を差し引いた。これらの標識は、Id4に結合した標識の組み合わせであった。
【0074】
dsDNAアイデンティマー鎖の復号:3サイクルにわたる個々のビーズの追跡(4枚の画像)
高度な多様性のビーズライブラリーを符号化および復号するために、OCS復号実験の全サイクルにわたって複数の蛍光チャンネルにおいて個々のビーズから蛍光強度を正確に追跡することが必要とされる。図22A~22Fは、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した、同じ単一標識アイデンティマー鎖配列(Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488;図21A)を有し、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した6つの個々のビーズを示す。以前に説明したようにビーズをフローセル中に固定化し、上記のように割り当てられたサイクルの間に、それぞれの切断物質とインキュベートするために、フローセルをヒートブロックに移した。それぞれのOCSサイクルの前後に、4種類全てのフルオロフォアの画像化後に得られたデータを、図21の作成について上記したように日付の新しい順にサイクルを分析した後にプロットした。この実験において追跡した全ての個々のビーズ(合計10;6つを図21に示した)は、3つのOCSサイクルにわたってフルオロフォア除去の予想された順序を示した。最初に、NotIによってId4セグメントからATTO488(水平の縞模様)が切断され、その後に、XhoIによってId3からAF647(濃い点々模様)が切断され、その後に、SpeIによってId2セグメントからAF750(薄い点々模様)が切断され、Id1セグメントは、SpeI切断後、ビーズ上に、ATTO550(下向き斜めの縞模様)を含有する、ただ一つの標識セグメントとして残った。これらのデータに基づいて、実験用かつ分析用の構成は、少なくとも3つのOCSサイクルにわたって多くの個々のビーズを大規模に並列したやり方で同時追跡する準備ができた。
【0075】
標識dsDNAアイデンティマー鎖構造:256個の標識ビーズからなるライブラリーの復号
標識dsDNAアイデンティマー鎖を有するビーズライブラリーの組み合わせ符号化を証明するために、4つの異なる区別可能な標識、ATTO488(水平の縞模様)、ATTO550(下向き斜めの縞模様)、AF647(濃い点々模様)、およびAF750(薄い点々模様)を4種類のdsDNAアイデンティマー鎖セグメント(Id1~4)に結合させて、4つの異なって標識された、それぞれのdsDNAアイデンティマーセグメント位置にある選択肢を作り出した。フルオロフォア標識dsDNAアイデンティマー鎖の256個の異なる配列(組み合わせ」)からなるライブラリーを、連結による4ラウンドの分割とプールにわたって構築した。手短に述べると、Id0連結アクセプターdsDNA二重鎖(この二重鎖は視覚的標識を含有しないが、ビーズに結合させるための5'-ビオチン改変ならびにId1セグメントとの連結に適合する5'オーバーハングを含有する)を含有するビーズを分割して、前記方法セクションに記載のように連結によって第1の標識Idセグメント(Id1/HindIII-ATTO488、Id1/HindIII-ATTO550、Id1/HindIII-AF647、またはId1/HindIII-AF750のいずれか)を結合させるために4つのウェルに入れた。連結をクエンチし、次いで、ビーズを洗浄し、プールして混合した。次いで、ビーズを分割して、連結によって第2の標識Idセグメント(Id2/SpeI-ATTO488、Id2/SpeI-ATTO550、Id2/SpeI-AF647、またはId2/SpeI-AF750のいずれか)を結合させるために4つのウェルに入れた。連結をクエンチし、次いで、ビーズを洗浄し、プールして混合した。次いで、ビーズを分割して、連結によって第3の標識Idセグメント(Id3/XhoI-ATTO488、Id3/XhoI-ATTO550、Id3/XhoI-AF647、またはId3/XhoI-AF750のいずれか)を結合させるために4つのウェルに入れた。連結をクエンチし、次いで、ビーズを洗浄し、プールして混合した。次いで、ビーズを分割して、連結によって第4の標識Idセグメント(Id4/NotI-ATTO488、Id4/NotI-ATTO550、Id4/NotI-AF647、またはId4/NotI-AF750のいずれか)を結合させるために4つのウェルに入れた。最後の連結反応をクエンチした後、ビーズを洗浄し、プールし、フローセルの単一レーンにおけるビオチン改変表面上に固定化した。フローセルレーン中のビーズをOCSワークフローにおいて3サイクルの復号に供した。実験全体を通して追跡した個々のビーズから入手したOCSデータを図23に示した。
【0076】
ここで、制限酵素曝露前にビーズを画像化し、次いで、以前に説明したように、それぞれの個々の酵素への曝露(それぞれの直交切断事象)の後に画像化した。切断サイクル1では、5U/ulのNotI酵素を含有する溶液をフローセルレーンの中に流し、37Cに設定したヒートブロック上で15分間インキュベートした。切断サイクル1の後に、フローセルを顕微鏡に戻し、非切断ビーズを画像化するのに使用した同じFOVを、NotI酵素への曝露後に画像化した。これにより、一連のものにおける最初の2枚の画像にわたって同じ個々のビーズを追跡することが可能になった。このプロセスを、切断サイクル2ではXhoI酵素に曝露して、切断サイクル3ではSpeI酵素に曝露して繰り返した。ここで示したOCS実験全体にわたって追跡した3つのビーズに結合させた4種類全てのフルオロフォア標識について強度値を入手した。日付の新しい順に画像を分析し、上記のように「前の」サイクルから差し引き、標識除去の1サイクルごとの視覚化について値をプロットした。この実験中に全ての切断サイクルにわたって追跡した3つのビーズを図23A、23B、および23Cに示した。図23に示した3つのビーズのそれぞれが、容易に分離されたユニークなdsDNAアイデンティマー鎖配列、a)ビーズ5配列:Id1/HindIII-AF647--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-ATTO488--Id4/NotI-ATTO488;b)ビーズ6配列:Id1/HindIII-ATTO488--Id2/SpeI-ATTO550--Id3/XhoI-AF647--Id4/NotI-ATTO488;およびc)ビーズ2配列:Id1/HindIII-ATTO550--Id2/SpeI-AF750--Id3/XhoI-ATTO488--Id4/NotI-AF750)を含有した。一連のものにおける各画像化工程で入手したデータを示した棒グラフの下に、追跡した3つのビーズについて、それぞれの酵素によって放出された、それぞれのIdセグメント(Id)の図を示した。画像化サイクルは点々模様の垂直線によって隔てられている。
【0077】
標識DNAヘアピン構造
プレハイブリダイズされたdsDNA二重鎖(二重鎖の一方のオリゴ鎖の5'末端にビオチン改変と、二重鎖の他方の鎖に結合した検出可能な標識(AF-647、aおよびbにある水平の縞模様)を含有する)と、2つのAF-750標識(aおよびbにある薄い点々模様)を含有するヘアピンオリゴを連結することによってアイデンティマーを構築した。結果として生じた連結ヘアピンは、3つの検出可能な標識と、ストレプトアビジンビーズに結合させるための5'ビオチン改変と、AF-647標識に隣接する、2つの完全に形成された、かつ直交性の制限部位とを含有する。2つの制限部位のうちの第1の制限部位(SpeIによる切断に特異的なRE1部位)は、ヘアピンのステム内に結合したAF-647標識と、ヘアピンのループに結合したAF-750標識との間に配置されている。このアイデンティマー構造を用いると、直交切断可能なリンカーを介して結合した多くの異なるフルオロフォア組み合わせを用いてビーズを装飾するための短いアイデンティマー鎖を組み立てることが可能になる。このヘアピン構造を用いると、確実に、制限部位が切断前に二本鎖領域として残る。なぜなら、ここで、相補鎖はヘアピン構造のループを通って融合されているからである。連結後に、このオリゴをストレプトアビジンビーズに結合させ、1つのOCSサイクルへの曝露の前後に画像化するためにビーズを、フローセル中のビオチン改変表面上に固定化した(図24A)。単一視野にある多くのビーズから値を入手し、平均強度値をパーセントでプロットした。酵素曝露前に、ビーズは、AF-647とAF-750標識の両方からの明瞭で測定可能なシグナルを示し(図24B前)、従って、これらの値は、切断が起こらなかった場合、切断後の画像から予想されたシグナルの100%であった。SpeI酵素に曝露されると、切断後に撮影した画像において観察されたように(図24B後)、ヘアピンアイデンティマーから二重AF-750標識ヘアピン「キャップ(cap)」が遊離された。切断後に撮影した画像において、ビーズは、切断前に取得した画像において観察されたAF-647シグナルの100%よりもわずかに大きなシグナルを含有したが、SpeIへの曝露後に20%未満のAF-750シグナルを含有した。ヘアピンの第2の標識はXhoIによって切断可能であるが、このフルオロフォアは、ビーズ上にある最も高い残存シグナルとしてはっきりと区別可能であり、従って、その切断は、このフルオロフォアを同定するには不要であった。さらに、ビーズ上に残っている構造が首尾良く切断されることは以前に(ここで)証明されている。
【0078】
段階的連結による、アイデンティマーリング構造の符号化
ビオチン部分を介してビーズに結合された第1の非標識DNAヘアピンに連結することで結合された第1の標識DNAヘアピンを含有するストレプトアビジンビーズを図25Aに示した。第1の標識DNAヘアピンは、ビーズに結合された第1の連結アクセプターDNAヘアピンオリゴとのテンプレート使用連結(templated ligation)時に、dsDNA領域内に、符号化された制限部位を含有するssDNAリングとして標識アイデンティマーセグメントを生じる。それぞれの標識DNAヘアピンの連結は1種類のアクセプターヘアピンオリゴにだけ特異的になるように設計されており、そのため、1種類の標識ヘアピンオリゴを一度に直交段階的連結することが可能になる。これにより、DNAリングで構成されるアイデンティマーを含有するビーズのライブラリーを構築する時に、分割・プールアプローチを採用することが可能になる。ビーズ上でのDNAリングアイデンティマーの段階的構築を証明するために、分割・プールワークフローを模倣するように、3種類の標識DNAヘアピンを3ラウンドの符号化において使用した。ATTO550標識(下向き斜めの縞模様)を含有する第1のヘアピンを、ビーズ上にある3つのアクセプターオリゴのうちの1つに結合させた。新たに形成された標識DNAリングアイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(SpeI)も含有する。ATTO550標識とビーズとの連結が、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、強い発光シグナルは550nm波長にしか観察されなかった。効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。図25Bは、ビーズ上にある3つのアクセプターオリゴの2番目に連結することで直交に結合された、AF-647標識(点々模様)を含有する第2の標識DNAヘアピンを示す。新たに形成された標識DNAリングアイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(XhoI)も含有する。AF-647標識とビーズとの連結が、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、強い発光シグナルは今やATTO-550標識とAF-647標識の両方について観察された。効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。図25Cは、ビーズ上にある3つのアクセプターオリゴのうちの最後(3番目)に連結することで直交に結合された、ATTO-488標識(水平の縞模様)を含有する第3の標識DNAヘアピンを示す。新たに形成された標識DNAリングアイデンティマーは、結合された標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(NotI)も含有する。ATTO-488標識とビーズとの連結が、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、強い発光シグナルは今や3種類全ての標識(ATTO-550、AF-647、およびATTO-488)について観察された。効率的な連結を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0079】
アイデンティマーリング構造の復号
ここで作製した標識アイデンティマーリング構造がOCSワークフローにおいて機能することを確認するために、3ラウンドの異なって標識されたDNAリングアイデンティマー構築に供したビーズを1つの直交切断サイクルに曝露した。(図25)において構築した同じビーズを、フローセル中のビオチン改変表面上に固定化し、ここで使用した。これらのビーズは3つの異なるリングアイデンティマーId1/SpeI-ATTO-550、Id2/XhoI-AF-647、およびId3/NotI-ATTO-488を含有した(図26A)。SpeI酵素への曝露の前後にビーズを画像化した。SpeIへの曝露後に、ビーズからのATTO-550標識の効率的な切断が3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化によって確認された。この場合、他の2種類の標識について得られたシグナルと比べてATTO-550標識の大きなシグナル消失が観察された。効率的なSpeI切断を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した(図26B)。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0080】
段階的なハイブリダイゼーションによるアイデンティマーの符号化
ビオチン部分を介してビーズに結合した第1の非標識ssDNAにハイブリダイズされた第1の標識ssDNAを含有するストレプトアビジンビーズを図27Aに示した。第1の標識DNAは、ビーズに結合した3つの直交性相補鎖のうちの最初のものとのテンプレート使用ハイブリダイゼーション時に、dsDNA領域内に、符号化された制限部位を含有するdsDNA二重鎖として標識アイデンティマーセグメントを生じる。必要とされる制限酵素認識配列の半分は、それぞれの相補鎖において符号化される。それぞれの標識ssDNAのハイブリダイゼーションは、ビーズ上にある1種類の相補的オリゴにだけ特異的になるように設計されており、そのため、1種類の標識ssDNAオリゴを一度に直交段階的にハイブリダイズすることが可能になる。これにより、標識されたハイブリダイズされたdsDNAで構成されるアイデンティマーを含有するビーズのライブラリーを構築する時に、分割・プールアプローチを採用することが可能になる。ビーズ上のハイブリダイズされたアイデンティマーの段階的構築を証明するために、分割・プールワークフローを模倣するように、3種類の標識ssDNA鎖を3ラウンドの符号化において使用した。ATTO-488標識(水平の縞模様)を含有する第1のssDNAオリゴを、ビーズ上にある3つの相補的オリゴのうちの1つにハイブリダイズさせた。新たに形成された、ハイブリダイズされた標識dsDNAアイデンティマーは、結合し標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(NotI)も含有する。ATTO-488標識とビーズとの連結が、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、488nm波長にしか強い発光シグナルは観察されなかった。効率的なハイブリダイゼーションを裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。図27Bは、ビーズ上にある3つの相補的オリゴのうちの2番目に直交にハイブリダイズさせた、AF-647標識(点々模様)を含有する第2の標識ssDNAオリゴを示す。新たに形成された、ハイブリダイズされた標識dsDNAアイデンティマーは、結合した標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(SpeI)も含有する。AF-647標識とビーズとのハイブリダイゼーションが、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、今や、ATTO-488標識とAF-647標識の両方について強い発光シグナルが観察された。効率的なハイブリダイゼーションを裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。図27Cは、ビーズ上にある3つの相補的オリゴのうちの最後(3番目)に直交にハイブリダイズさせた、ATTO-550標識(下向き斜めの縞模様)を含有する第3の標識ssDNAオリゴを示す。新たに形成されたdsDNAアイデンティマーは、結合した標識とビーズの間に配置された、酵素が到達可能な制限エンドヌクレアーゼ部位(XhoI)も含有する。ATTO-550標識とビーズとの連結が、3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、今や、3種類全ての標識(ATTO-550、AF-647、およびATTO-488)について強い発光シグナルが観察された。効率的なハイブリダイゼーションを裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【0081】
ハイブリダイズされたアイデンティマーの復号
ハイブリダイゼーションによって作製された標識アイデンティマー構造がOCSワークフローにおいて機能するのを確認するために、ハイブリダイゼーションによって、3ラウンドの異なって標識されたssDNAアイデンティマー構築に供したビーズを2サイクルの直交切断に曝露した。(図27)において構築した同じビーズを、フローセル中のビオチン改変表面上に固定化し、ここで使用した。これらのビーズは、3つの異なるハイブリダイズされたアイデンティマー、Id1/NotI-ATTO-488、Id2/SpeI-AF-647、およびId3/XhoI-ATTO-550を含有した。以前に説明したように1サイクルごとに2種類の酵素に既知の順序で(最初にNotI、次いでSpeI)に曝露する前および曝露した後にビーズを画像化した(図28Aおよび28B)。NotIへの曝露後に、ビーズからのATTO-488標識の効率的な切断が3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、他の2種類の標識について得られたシグナルと比べてATTO-488標識の大きなシグナル消失が観察された。効率的なNotI切断を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した(図28C)。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。次いで、ビーズをSpeI酵素による第2の直交切断サイクルに曝露し、再度、画像化した。SpeIへの曝露後に、ビーズからのAF-647標識の効率的な切断が3蛍光発光チャンネル、488nm、550nm、および647nmにおける蛍光画像化において確認された。この場合、SpeI切断前のビーズと比べて、およびビーズ上にある残存シグナル(ATTO-550)と比べて、AF-647標識の大きなシグナル消失が観察された。効率的なSpeI切断を裏付ける画像を、画像化された3種類全ての発光波長;488nm(水平の縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、647nm(点々模様)から取得したデータと、同じオリゴを有する多くのビーズから取得したデータ(平均強度値)とを用いてプロットした棒グラフに示した(図10C)。グラフの棒の高さは、蛍光強度単位(FU)で表した、画像化された3種類全てのチャンネルにおいて観察された発光の相対的な大きさに対応する。
【実施例
【0082】
以下の実施例は、開示される分子バーコードの態様の使用についてさらに説明し、かつこれを証明する。本実施例は例示のためだけに提供され、分子バーコードの使用を制限すると解釈してはならない。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、これらの実施例の多くのバリエーションが可能である。
【0083】
実施例1 フルオロフォア/プロテアーゼサイト(PROTEASEsite)/非DNA(FPND)アイデンティマークラスベース分子バーコード
実施例1は、視覚的復号用に指定された、材料のインサイチュー標識のための分子バーコードにおけるフルオロフォア/プロテアーゼサイト/非DNA(FPND)アイデンティマーの使用を例示する(図1~3、15、16)。一般的に、FPDNアイデンティマーは、ポリペプチドベーススキャフォールド部に機能的に接続された、フルオロフォアベースの検出可能な標識を含み、切断部位は直交反応性プロテアーゼ切断部位であり、認識部分は、直交反応性プロテアーゼのプロテアーゼ切断部位配列またはプロテアーゼ認識配列である。
【0084】
FPNDアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号能力を確認するために、4サイクル直交プロテアーゼ切断実験を実施することができる(実験1)。ここでは、DNAシークエンシングベースの復号に頼らずに、分割-プール連結によって分子バーコードを符号化および形成して分子バーコードコンビナトリアルライブラリーを作り出すために様々なFPNDアイデンティマークラスが同時に使用され得る。
【0085】
実験1のそれぞれの分子バーコードは、1つまたは複数のFPDNアイデンティマークラスに由来する5種類のアイデンティマートークン(Id1~5)のセットを含む。それぞれのId1トークンは切断不可能なFPDNアイデンティマークラスに由来し、Id2、Id3、Id4、およびId5トークンのそれぞれが切断可能なFPDNアイデンティマークラスに由来する。それぞれの切断可能なFPDNアイデンティマーは、タバコエッチウイルスプロテアーゼ(TEVp)、タバコベインモトリングウイルスプロテアーゼ(TVMVp)、カブモザイクウイルスプロテアーゼ(TUMVp)、およびヒマワリマイルドモザイクウイルスプロテアーゼ(SuMMVp)より選択される少なくとも1つのプロテアーゼと直交反応するように構成されている。例えば、TEVpは、ヒトプロテオームにおいて既知のオフターゲット基質を有さないことが当技術分野において知られており、直交反応性切断物質として使用され得る。TEVp、TVMPp1、TUMVp2、およびSuMMVpは直交プロテアーゼ体制で実施されたことがあることが当技術分野において知られている。従って、TEVpは、分子バーコードにある、TVMVp、TUMVp、またはSuMMVが認識する切断部位を高効率で切断してはならない。言い換えると、それぞれのプロテアーゼは、他のプロテアーゼが認識する基質の存在下で、分子バーコードにある、それぞれのプロテアーゼの切断部位配列を含む認識部分を有するアイデンティマーの切断部位を切断できなければならない。第Xa因子も使用することができる。第Xa因子は、その好ましい切断部位Ile-(GluまたはAsp)-Gly-Argにおいてアルギニン残基の後ろを切断する。第Xa因子は、プロリンまたはアルギニンの前にある部位を切断しない。
【0086】
実験1において、FPNDアイデンティマースキャフォールド部は、そのN末端およびC末端を介して、化学反応基を含有するリンカー試薬に共有結合により連結されたペプチド断片を含み、検出可能な標識は1つまたは複数のQドットを含む。Qドットフルオロフォアは、それぞれ、Id1、Id2、Id3、Id4、およびId5に、タンパク質分解部位を含有するペプチド断片中の改変されたアジドを有するアミノ酸に付加される。ライブラリー中の任意の形成されたFPDNアイデンティマーバーコード(ここで示したようなId1、Id2、Id3、Id4、およびId5トークンを含む)に示されたフルオロフォアの組み合わせは、連続した発光スペクトルを有してもよく、有さなくてもよい。なぜなら、ライブラリーを構成する分子バーコードの内部にあるFPNDアイデンティマートークンの三次元配置は変化するからである。
【0087】
FPNDアイデンティマーベース分子バーコードに対するプロテアーゼ直交反応性の再現性を証明するために、切断物質として作用するプロテアーゼの検出限界、特異性、および精度実験(3回繰り返す)が実施されてもよい。
【0088】
A.FPNDアイデンティマー連鎖
以前に説明したように、FPNDアイデンティマーは、そのN末端およびC末端に直交クリックケミストリー改変が付与されてもよい。実験1では、それぞれのId1、Id3、およびId5アイデンティマークラスはN末端にTCO基を含むのに対して、それぞれのId2およびId4アイデンティマークラスはC末端にメチルテトラジン基を含む。Id1およびId3アイデンティマークラスのC末端はDBCO基を含み、Id2およびId4アイデンティマークラスはN末端にアジド基を含む。
【0089】
第1のアイデンティマーの結合(メチルテトラジン改変ビーズに結合させるためのId1の付加)は、37℃でのインキュベーションを伴う45分反応である。全反応の間にビーズは1mg/mlに保たれ、その後の全ての付加のためにアイデンティマーユニットは10μMの濃度で使用される。1×PBSで3回の洗浄工程後に、全てのメチルテトラジン部位が飽和するのを確実にするために、ビーズはこれより高い濃度(100uM)の遊離TCOに供される。1×PBSで3回の洗浄工程後に、ビーズは第2のアイデンティマーユニット(Id2)の付加の用意ができている。FPND分子バーコードにId2を結合させるために、ならびにその後、それぞれのアイデンティマーを付加(すなわち、Id3、Id4、およびId5)するために同じ反応条件が繰り返される。列挙されたクリック反応の反応キネティクスのために、それぞれのアイデンティマー付加後に、次のアイデンティマーの付加前に、アイデンティマー結合に用いられる全反応部位が飽和するのを確実にするために、適切なクリック反応基の付加によって反応が「追跡される(chased)」。
【0090】
B.それぞれのFPNDアイデンティマーライブラリークラスの調製
Id1~5アイデンティマークラスの認識部は、それぞれ、以下のペプチド配列を含む。Id1は、切断不可能でありかつ切断部位を含有せず;Id2は、TUMV切断部位を含有する
を含み;Id3は、SuMMV切断部位を含有する
を含み;Id4は、TVMV切断部位を含有する
を含み;かつId5は、TEV切断部位を含有する
を含む。
【0091】
一般的に、FPNDアイデンティマーは、最初に、視覚化のためにDBCO改変フルオロフォアを用いて、ペプチドを(全ペプチドのC末端の近くに内部に設置された、アジドを有する残基を介して)改変することによって作製され得る。これを成し遂げるために、それぞれのペプチドの40μM試料が、200uMの指定されたDBCO改変フルオロフォアと混合され、1×PBS中、37℃で少なくとも3時間反応させることができる。この反応は室温で一晩放置することもできる。次いで、フルオロフォア改変ペプチドは、過剰な(かつあらゆる未反応の)DBCO-フルオロフォア試薬を除去し、NHS適合反応緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)に対してペプチドを交換するためにHPLC、透析、または脱塩カラムを用いて精製され得る。標識ペプチドはまた、当技術分野において公知の様々な方法を用いて沈殿され、NHS適合反応緩衝液に再懸濁されてもよい。次いで、標識ペプチドはNHS適合反応緩衝液で20μMの濃度にされ、室温で一晩、結合体化するために、100μMのそれらの指定されたNHS試薬(Id1、Id3、およびId5ペプチド断片についてはNHS-PEG4-TCO;Id2およびId4についてはNHS-PEG4-アジド)と混合され得る。N末端に(単独で)クリック改変された標識ペプチドは、過剰な(かつあらゆる未反応の)NHS含有試薬を除去し、かつ1×PBSに対してペプチドを交換するためにHPLC、透析、または脱塩カラムを用いて精製することができる。標識され、かつ単独改変されたペプチドはまた、当技術分野において公知の様々な方法を用いて沈殿され、1×PBS緩衝液に再懸濁されてもよい。次いで、標識され、かつ単独改変されたペプチドは1×PBSで20μMの濃度にされ、室温で一晩、結合体化するために、100μMのそれらの指定されたマレイミド試薬(Id1、Id3、およびId5ペプチド断片についてはマレイミド-PEG4-DBCO;Id2およびId4についてはマレイミド-PEG4-メチルテトラジン)と混合され得る。標識され、かつ二重改変されたペプチドは、過剰な(かつあらゆる未反応の)マレイミド含有試薬を除去し、かつ1×PBSに対してペプチドを交換するためにHPLC、透析、または脱塩カラムを用いて精製され得る。標識され、かつ二重改変されたペプチドはまた、当技術分野において公知の様々な方法を用いて沈殿され、1×PBS緩衝液に再懸濁されてもよい。次いで、FPNDアイデンティマーはすぐに使用されてもよく、4℃で数日間、または長期保管の場合は-20℃で保管されてもよい。
【0092】
C.実験1 - FPNDアイデンティマーベース分子バーコードの検証
FPNDアイデンティマーベース分子バーコード性能の検証は、FPNDアイデンティマーベース分子バーコードを形成および符号化するためのアイデンティマーの連鎖と、直交反応性切断による復号の際のそれらの検出可能なシグナル応答とを確認する切断実験による4サイクルデコンボリューション/復号を用いて成し遂げられ得る。
【0093】
一般的に、検出可能なシグナル応答を検出する目的で、コンビナトリアルライブラリーのメンバーに存在するFPNDアイデンティマーベース分子バーコード(すなわち、ビーズに固定された分子バーコード)を復号するために一連の画像化工程および切断工程が実施される。このプロセスはサイクルで繰り返すことができ、それぞれの切断サイクルの間に次の直交プロテアーゼを導入し、その後に、画像化工程を実施することができる。
【0094】
実験1では、第1の切断工程において、TEVp反応性アイデンティマー(すなわち、Id5)にしか結合していないフルオロフォアの観察されるシグナル強度を減少させるためにTEVプロテアーゼを導入し、その後に、コンビナトリアルライブラリーを構成する分子バーコードに組み込まれたId5トークンから切断された検出可能な標識を視覚的に同定するために第1の画像化工程を行う。切断サイクルによって、以下の順序で、列挙されたプロテアーゼ:サイクル1の間にTEVp;サイクル2中にTVMVp;サイクル3中にSuMMVp;およびサイクル4中にTUMVpが導入される。
【0095】
Id1は、鎖に付加される第1のアイデンティマーであり、従って、固体支持体(ビーズ)に直接結合する。ここでは、Id1は切断部位を含まず、その認識部は[切断不可能なリンカー]でもよい。前記で概説したように、Id1は、固体支持体(ビーズ)に結合させるのに使用することができるN末端TCO改変を含有する。固体支持体の表面は、Id1を結合させるための適合性メチルテトラジン部分を含有するように改変される。Id2、Id3、Id4、およびId5の認識部および切断部位は、それぞれ、TUMVp、SuMMVp、TVMVp、およびTEVプロテアーゼの認識配列および切断部位である。
【0096】
実験1において用いられるように、Id1~5アイデンティマーは、本明細書に記載のようにビーズ上に形成される。次いで、分子バーコードを復号する第1の切断工程では、ビーズは、プロテアーゼ反応緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、0.5mM EDTA、1mM DTT)の中で、2ユニットのTEVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、ビーズは第1の画像化工程において画像化され、TEVpに対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第1の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。洗浄工程後に、ビーズは、第2の切断工程では、プロテアーゼ反応緩衝液の中で、2ユニットのTVMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、TVMVpに対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第2の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。さらなる洗浄工程後に、ビーズは、第3の切断工程では、プロテアーゼ反応緩衝液の中で、2ユニットのSuMMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、ビーズは第3の画像化工程において画像化され、SuMMVpに対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第3の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。最後に、第4の切断工程では、ビーズは、プロテアーゼ反応緩衝液の中で、2ユニットのTUMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、ビーズは第4の画像化工程において画像化され、TUMVp対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。最後の切断可能なアイデンティマー標識が除去された後に、切断不可能な標識が、ビーズから発光される最も強いシグナルとして残り、そのため、ビーズの同定と、定量のための潜在的な使用が可能になる。分割-プールおよび連鎖の間に形成された、それぞれのバーコードのフルオロフォアの配列は視覚的デコンボリューションの間に確かめられ、バーコードが結合しているビーズと相関付けることができる。
【0097】
実施例2 フルオロフォア/NUCLEASEsite(FNS)アイデンティマーベース分子バーコード
実施例2は、視覚的復号用に設計された、材料のインサイチュー標識のためのフルオロフォア/NUCLEASEsite(FNS)アイデンティマーベース分子バーコードの使用を例示する(図5図7図9)。
【0098】
分割-プール連結によって視覚的分子バーコードを符号化および形成して、DNAシークエンシングベースの復号を必要としないバーコードのコンビナトリアルライブラリーを作り出すために、1つまたは複数のFNSアイデンティマークラスのセットが使用され得る。実施例2に示したように、1種類のバーコードが、同じ実験において、かつ同時に構築されている多くの異なるバーコード鎖の存在下で作製され得る。多くのエンドヌクレアーゼは互いに対して直交反応性を有することが当技術分野において知られている。例えば、NotI、XhoI、SpeI、およびHindIIIは、それぞれ、GCGGCCGC、CTCGAG、ACTAGT、およびAAGCTTを含有するdsDNA配列に対して特異性を有する。従って、NotIは、XhoI、SpeI、またはHindIIIが認識する部位を高効率で特異的に切断してはならない。同じことが、列挙されたヌクレアーゼのそれぞれについて当てはまる。なぜなら、それぞれのヌクレアーゼは、他のヌクレアーゼが認識する基質の存在下では、(主として)それぞれの基質だけを切断できなければならないからである。この局面は、アイデンティマーベース分子バーコードの同定の間に直交性を提供する。例示されたアイデンティマーバーコードライブラリーのそれぞれのメンバーは、4種類の切断可能なQ-フルオロフォア/NUCLEASEsiteアイデンティマートークン(Id2、Id3、Id4、およびId5)、ならびに1種類の切断不可能なアイデンティマートークン(Id1)からなる5種類のクラス(Id1~5)を含有する。
【0099】
実験2は、FNSアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号を確認するために実施した、反応性フルオロフォアの視覚的画像化によって確かめた4サイクル直交性ヌクレアーゼ切断実験である。実験2は、ライブラリー(ビーズ)の任意のメンバーに存在するFNSアイデンティマーベース分子バーコードを構成する検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナルを記録するための第1の画像化工程を含む。第1の切断工程では、NotIヌクレアーゼ反応性アイデンティマーにしか結合していないフルオロフォアの観察されたシグナル強度を減少させるためにNotIを導入する。これにより、Id5に結合した標識を視覚的に同定することが可能になる。このプロセスはサイクルで繰り返すことができ、それぞれの切断工程の間に次の直交ヌクレアーゼを導入し、その後に画像化工程を行うことができる。
【0100】
第1の画像化工程の後、実験2のそれぞれのサイクルは切断工程と画像化工程を含む。以下の順序でヌクレアーゼ切断物質:サイクル1の間にNotI;サイクル2の間にXhoI;サイクル3の間にSpeI;およびサイクル4の間にHindIIIが分子バーコードに適用される。それぞれのサイクル後の画像化によって、FNSアイデンティマーベース分子バーコードを構成するそれぞれの視覚的標識が付加された順序のデコンボリューションが可能になる。FNSアイデンティマーベース分子バーコードに対するヌクレアーゼ直交反応性の再現性を証明するために、切断物質として作用するヌクレアーゼの検出限界、特異性、および精度実験(3回繰り返す)が実施されてもよい。
【0101】
一部の態様では、FNSアイデンティマースキャフォールド部は、改変された内部塩基を介して検出可能な標識で蛍光標識された5’末端および3’末端を有するssDNAを含み、dsDNA二重鎖を形成するように相補的ssDNAとプレハイブリダイズされている。形成されたdsDNA二重鎖は単一エンドヌクレアーゼ制限配列(または部位タイプ)の1つまたは複数のコピーを符号化してもよい。当業者は、本開示の恩典を受けて、スキャフォールド部に沿ってエンドヌクレアーゼ制限配列の間隔を選択的にあけることで、形成および符号化された分子バーコードから検出可能な標識を効率的に解離することが容易になり得ると理解する。一部の態様では、ヌクレアーゼ認識配列を含有するdsDNA二重鎖の一方の鎖は、予め指定されたフルオロフォアの結合のための内部アミノ改変を含む。
【0102】
実験2において用いられるように、それぞれのFNSアイデンティマークラスメンバーのスキャフォールド部は同じ制限エンドヌクレアーゼ部位タイプを含むが、異なる、かつはっきりと区別をつけるようなフルオロフォアを受け取る。次いで、アミノ反応性ヘテロ二機能性架橋試薬であるNHS-PEG4-TCOを使用して、dsDNA上にある設置された第1級アミンを、クリック適合TCO基を含有するように化学的に改変し得る。次いで、メチルテトラジン改変フルオロフォアをアイデンティマーdsDNA二重鎖と結合体化し得る。
【0103】
実験2において用いられるように、FNSアイデンティマーのスキャフォールド部は、分割-プールによるアイデンティマーの組み合わせ鎖の構築を容易にするために、他のFNSアイデンティマークラスとの連結に適合する不対3’末端を含む。成長中のFNSアイデンティマー分子バーコードへの、各ラウンドの付加によって、ユニークなアイデンティマートークンが、形成中の分子バーコードに付加される。
【0104】
実験2において用いられるように、Id1は、付加される第1のアイデンティマーであり、従って、固体支持体(すなわち、ビーズ)に直接結合している。Id1は切断部位を含まず、その認識部分は切断不可能なリンカーである。Id1は、固体支持体に結合させるために5’-アミノ改変塩基を含有する。実験2において用いられるように、Id2、Id3、Id4、およびId5の認識部分および切断部位は、それぞれ、HindIII、SpeI、XhoI、およびNotIエンドヌクレアーゼの認識配列および切断部位である。
【0105】
実験2において用いられるように、Id1~5クラスの検出可能な標識は1つまたは複数の量子ドットを含む。それぞれのFNSアイデンティマークラスは、特異的ヌクレアーゼ部位タイプを有するそれぞれのクラス特異的dsDNAの異なる反応混合物(またはプレートウェル)の中で、FNSアイデンティマーに共有結合により結合している、異なる発光波長を有する量子ドットを含む。実験1において用いられるように、量子ドット検出可能な標識は、それぞれ、dsDNA配列の一方または両方の鎖の中に位置する内部改変塩基を介してId1、Id2、Id3、Id4、およびId5に付加される。ライブラリー中の任意の形成および符号化されたFNSアイデンティマーベース分子バーコード(ここで示したId1、Id2、Id3、Id4、およびId5)に示されたフルオロフォアの組み合わせは、連続した発光スペクトルを有してもよく、有さなくてもよい。なぜなら、ライブラリーを構成する分子バーコードを構成するアイデンティマートークンの三次元構成は、本明細書に記載の直交ヌクレアーゼのサイクリングによって決定されるからである。
【0106】
A.FNSアイデンティマー連鎖
実験2において用いられるように、FNSアイデンティマー認識部分は、dsDNA二重鎖を形成する相補的ssDNA鎖を含む。FNSアイデンティマー切断部位は、dsDNA二重鎖に含まれる特異的制限エンドヌクレアーゼ部位を含み、ハイブリダイゼーションによって形成され、これによって、2本の鎖はかなり大きな相補性を共有するが、3’末端では不対のままである。それぞれのFNSアイデンティマークラスの不対3’末端は、隣接するクラスメンバー上にあるアクセプター3’末端と相補的になるように設計されている。
【0107】
一部の態様では、FNSアイデンティマーは、連続ラウンドの分割およびプールにわたってバーコードを形成するように予め規定された順序で連続して付加され得る。各ラウンドの付加によって、ハイブリダイズされたアイデンティマーのssDNA断片の5’末端および3’末端の酵素的連結を介してアイデンティマーdsDNAの連鎖が起こる。それぞれのアイデンティマーの連結は、1×リガーゼ緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、10mM MgCl2、1mM ATP、10mM DTT)中で500~1,000UのT4 DNAリガーゼと20~80Uのポリヌクレオチドキナーゼの存在下で37℃で25分間インキュベートすることで実施され得る。例示されたフルオロフォア/NUCLEASEsiteアイデンティマーバーコードは、酵素的連結で結合された5つのクラスメンバーを含有する。
【0108】
B.FNSアイデンティマーの調製
NotI、XhoI、SpeI、およびHindIIIは、それぞれ、GCGGCCGC、CTCGAG、ACTAGT、およびAAGCTTを含有するdsDNA配列に対して特異性を有するエンドヌクレアーゼである。実験2において用いられるように、Id1は切断不可能になるように構成されており、ID2~5の認識部分は、それぞれ、以下を含む。Id2は、HindIII切断部位を含有する
を含み;Id3は、SpeI切断部位を含有する
を含み;Id4は、XhoI切断部位を含有する
を含み;かつId5は、NotI切断部位を含有する
を含む。Id1の切断不可能なdsDNAは、形成されたFSNアイデンティマーベース分子バーコードを構成する他のクラスメンバーの認識に用いられるどのヌクレアーゼも認識しない任意のDNA配列からなってもよい。
【0109】
本明細書で使用する「iAmMC6T」とは、Integrated DNA Technologies, Inc.(1710 Commercial Park, Coralville, Iowa 52241, USA)から市販されているIntアミノモディファイヤーC6 dTを指す。一部の態様では、改変ヌクレオチド(例えば、iAmMC6T)は、改変ヌクレオチドが標識されたら、認識部分への切断物質の接近を妨害しないように認識部分から十分離れた場所にあるように構成されている。一部の態様では、改変ヌクレオチドは認識部分から少なくとも6bp離れた場所にあるように構成されている。一部の態様では、ループ状dsDNA内の内部に配置される改変ヌクレオチドは、FRETベースクエンチングを回避するように互いから十分離れた場所に配置される。一部の態様では、ループ状dsDNA内の内部に配置される改変ヌクレオチドは、酵素認識部位を回避し、酵素の接近しやすさを促進するように互いから十分離れた場所に配置される。
【0110】
実験2において用いられるように、それぞれのFNSアイデンティマークラスは、最初に、上記で列挙したクラス特異的ssDNA鎖(Id2~5)と一緒に相補鎖をアニールして、実行可能なdsDNA制限部位を生じることによって作製される。これは、ヒートブロック上で、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で1:1モル比で95℃で5分間行われる。次いで、ヒートブロックは取り出され、ベンチトップの上で約2時間の期間に相当する時間にわたって室温まで冷却される。
【0111】
一部の態様では、1種類のエンドヌクレアーゼ部位タイプを有するアイデンティマークラス特異的dsDNAは、下流結合体化のための適合性化学を含有するように、NHS-PEG4-トランスシクロオクテンを用いて(上記の配列に示した内部アミノ改変を介して)改変され得る。これを成し遂げるために、100μMの標識dsDNAが、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で500μMのNHS-PEG4-トランスシクロオクテン(TCO)と混合され、室温で一晩反応させられる。次いで、過剰な(かつあらゆる未反応の)NHS-PEG4-TCO試薬を除去するために脱塩によってTCO改変dsDNA二重鎖が精製され得る。多くのメチルテトラジン改変フルオロフォアが市販されており、指定されたやり方で、それぞれのクラス特異的アイデンティマーを標識するのに使用することができる。これを行うために、それぞれのクラス特異的アイデンティマーを分割して異なるウェルに入れることができ、それぞれのクラスの100μMのTCO改変dsDNAを、NHS適合アニーリング用緩衝液中で200μMで用いられる異なるメチルテトラジン改変フルオロフォアに結合体化することができる。この反応は室温で30分間進行することができる。次いで、結合体化されたFNSアイデンティマーは、保管用緩衝液(100mM NaClを加えた50mM Tris-HCl pH7.5)に対して緩衝液交換されてもよく、すぐに使用されてもよく、4℃で数日間、または長期保管の場合は-20℃で保管されてもよい。
【0112】
C.FNSアイデンティマーベース分子バーコード検証
FNSアイデンティマーベース分子バーコードの同定は、Id1~5の検出可能なシグナル応答を確認し、FNSアイデンティマーベース分子バーコードのそれぞれの連続した連鎖と符号化を確認する切断実験による4サイクルデコンボリューション/復号を用いて成し遂げられ得る。
【0113】
一部の態様では、ビーズ上に分子バーコードライブラリーが形成されてもよく、ビーズが表面に固定化され、実験溶液との接触前および接触後に画像化されてもよい。固定化されたビーズは、最初に、関心対象の所定の視野または領域で、それぞれのバーコードを構成する検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答の組み合わせを記録するように、適切な励起波長および発光フィルターを用いて構成された標準的な蛍光顕微鏡を用いて画像化されてもよい。列挙した、全ての「高忠実度(Hi-Fidelity)」バージョンのエンドヌクレアーゼが、同じ緩衝液(428 Newburyport Turnpike, Rowley, MA 01969, U.S.A.にあるNew England Biolabs, Inc.から入手可能な1×CUTSMART緩衝液)中で100%の効率で機能することができる。
【0114】
実験2において用いられるように、ビーズは、第1の切断工程では、CUTSMART緩衝液(50mM酢酸カリウム、20mMTris-酢酸塩、10mM酢酸マグネシウム、100ug/ml BSA;緩衝液pHは25℃で7.9である)の中で、5ユニットのNotI-HFエンドヌクレアーゼを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、NotIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答を検出するために、ビーズは第2の画像化工程において画像化され得る。ここで、検出可能なシグナル応答は、第1の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNSアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、ビーズを第2の切断工程に曝露する工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0115】
第2の切断工程は、ビーズを、CUTSMART緩衝液中で、5ユニットのXhoI-HFを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、XhoIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第2の切断工の間に分子バーコードから解離されたFNSアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、ビーズを第3の切断工程に曝露する工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0116】
第3の切断工程は、ビーズを、CUTSMART緩衝液中で、5ユニットのSpeI-HFを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、SpeIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第3の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNSアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、ビーズを第4の切断工程に曝露する工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0117】
最後に、第4の切断工程は、ビーズを、CUTSMART緩衝液中で、5ユニットのHindIIIを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第4の画像化工程において画像化され、HindIIIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第4の切断工程の間に分子バーコードから解離されたHindIII FNSアイデンティマートークンの検出可能な標識の波長と関連する発光波長のシグナル強度の低下を含む。
【0118】
任意で、それぞれのサイクルの切断工程の間に複数種の制限エンドヌクレアーゼが導入されてもよいが、これらのエンドヌクレアーゼは、異なるエンドヌクレアーゼが大きく異なる動力学的切断率を有する条件下で導入しなければならず、切断中に複数の画像を取得しなければならない。
【0119】
最後の切断可能なアイデンティマー標識が除去された後に、切断不可能な検出可能な標識は、ビーズから発光される最も強い検出可能なシグナルを伝達し、そのため、ビーズの同定が可能になる。視覚的デコンボリューションの間に確かめられた、それぞれのFSNアイデンティマーバーコードのフルオロフォアの配列は、このようにバーコードに結合した、それぞれのビーズに起因するとみなすことができる。
【0120】
実施例3 フルオロフォア/プロテアーゼサイト/dsDNA(FPD)アイデンティマーベース分子バーコード
実施例3は、視覚的に、ならびにNGS反応環境で復号するように設計された、材料のインサイチュー標識のためのフルオロフォア/プロテアーゼサイト/dsDNA(FPD)アイデンティマーベース分子バーコードの使用を例示する(図6図8図10図11)。分割-プール連結によってNGS適合性視覚的分子バーコードを符号化および形成して、DNAシークエンシングベースの復号を必要としないバーコードのコンビナトリアルライブラリーを作り出すために、1つまたは複数のFPDアイデンティマークラスのセットが使用され得る。実施例3に示したように、1種類のバーコードが、同じ実験において、かつ同時に形成および符号化されている多くの異なる分子バーコード鎖の存在下で作製され得る。実施例3において用いられるように、コンビナトリアルライブラリー中のそれぞれの分子バーコードは、4種類の切断可能なFPDアイデンティマートークン(Id2、Id3、Id4、およびId5)と1種類の切断不可能なFPDアイデンティマートークン(Id1)を含む5種類のFPDアイデンティマークラス(Id1~5)を含有する。
【0121】
実験3は、FPDアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号を検証するために実施した、反応性フルオロフォアの視覚的画像化によって確かめた4サイクル直交プロテアーゼ切断実験である。実験3は、ライブラリー(ビーズ)の任意のメンバーに存在するFNSアイデンティマーベース分子バーコードの検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナルを記録するための第1の画像化工程を含む。第1のサイクルでは、分子バーコードに組み込まれたTEVプロテアーゼ-反応性FPDアイデンティマートークンのフルオロフォア検出可能な標識のシグナル強度を減少させるためにTEVプロテアーゼを導入する。これにより、Id5から切断された標識を視覚的に同定することが可能になる。このプロセスはサイクルで繰り返される、それによって、それぞれの切断サイクルの間に次の直交プロテアーゼが導入され、その後に画像化工程が実施される。
【0122】
実験3において用いられるように、切断工程中に、以下の順序でプロテアーゼ切断物質:サイクル1の間にTEVp;サイクル2の間にTVMVp;サイクル3の間にSuMMVp;およびサイクル4の間にTUMVpが導入される。それぞれのサイクルの後に画像化すると、FPDアイデンティマーベース分子バーコードの中に組み込まれたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の三次元配置のデコンボリューションが可能になる。フルオロフォア/プロテアーゼサイト/dsDNAアイデンティマーベース分子バーコードに対するプロテアーゼ直交反応性の再現性を証明するために、切断物質として作用するプロテアーゼの検出限界、特異性、および精度実験(3回繰り返す)が実施されてもよい。
【0123】
A.FPDアイデンティマースキャフォールド部
一部の態様では、FPDアイデンティマーのスキャフォールド部は、アミノ反応性ヘテロ二機能性架橋試薬(NHS-PEG4-メチルテトラジン)を用いてssDNA中の内部アミノ改変塩基を介して、3’末端および5’末端を有する一本鎖DNA(ssDNA)断片に共有結合により連結されたポリペプチド断片を含む。ペプチド認識配列を含有するポリペプチド断片はN末端リジン残基を含有するように改変されてもよく、その後、異なるアミノ反応性ヘテロ二機能性架橋試薬(NHS-PEG4-トランスシクロオクテン)を用いて、改変ssDNAへの結合に適合する化学基によって改変することができる。ペプチド断片と改変ssDNAオリゴヌクレオチドとの結合体化後に、他のFPDアイデンティマークラスとの連結に適合する不対3’末端を有するdsDNA種を作製して、分割-プールによるアイデンティマーの組み合わせ鎖を組み立てるために、特異的かつ相補的な(ペプチド断片に結合したssDNAオリゴヌクレオチドと同じ情報を有するが、逆相補方向の)ssDNAオリゴヌクレオチドがスキャフォールド部のssDNAにハイブリダイズされ得る。FPDアイデンティマーベース分子バーコードへの、各ラウンドの付加によって、ユニークなアイデンティマートークンが、形成中の分子バーコードに付加される。ペプチド断片の反対の末端(C末端)には、下記で説明するように検出可能な標識(フルオロフォア)が結合される。それぞれのFPDアイデンティマーに結合した検出可能な標識の発光波長(観察された色)は、結合したdsDNAの配列と相関付けられ、それによって、DNAシークエンシング後に、視覚的バーコードから入手され得る情報は、形成されたNGSバーコードから入手することができる情報と結び付けられる。
【0124】
実験3において用いられるように、Id1は、鎖に付加される第1のアイデンティマーであり、従って、固体支持体(ビーズ)に直接結合している。ここでは、Id1は切断部位を含まず、その認識部は切断不可能なリンカーでもよい。Id1は、固体支持体に結合させるために5’-アミノ改変塩基を含み、検索および下流NGSライブラリー調製のために5’-定常領域を符号化してもよい。Id5は、細胞溶解産物または生物学的試料から高分子を捕捉するために3’-捕捉配列を含む。Id2、Id3、Id4、およびId5の認識部および切断部位は、それぞれ、TUMVp、SuMMVp、TVMVp、およびTEVプロテアーゼの認識配列および切断部位である。
【0125】
B.FPDアイデンティマーの検出可能な標識
実験3において用いられるように、実施例3ではFPDアイデンティマーの組み合わせ標識のために、複数の区別可能な検出可能な標識を含む量子ドットフルオロフォアの検出可能な標識が選択される。それぞれのクラス特異的ペプチドの異なる反応混合物(またはプレートウェル)の中で、検出可能なシグナルの異なる発光波長を伝達する検出可能な標識が、それぞれのFPDアイデンティマークラスに共有結合により結合し得る。
【0126】
一部の態様では、検出可能な標識は、それぞれ、Id1、Id2、Id3、Id4、およびId5の、アイデンティマーのdsDNA部が結合体化される末端とは反対の、スキャフォールド部の末端(C末端)に付加され得る。コンビナトリアルライブラリー中の任意の形成されたFPDアイデンティマーベースバーコード(ここで示したId1、Id2、Id3、Id4、およびId5)に示されたフルオロフォアの組み合わせは、連続した発光スペクトルを有する検出可能なシグナルを伝達してもよく、伝達しなくてもよい。なぜなら、コンビナトリアルライブラリーを構成する分子バーコードに組み込まれたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の三次元配置が、上記のように直交プロテアーゼのサイクリングによって決定されるからである。
【0127】
C.FPDアイデンティマー連鎖
それぞれのssDNA断片の配列は、結合した検出可能な標識の発光波長を記録するように設計されている。それぞれのFPDアイデンティマーのスキャフォールド部を構成する相補的ssDNA鎖はハイブリダイゼーションによって形成され、これによって、2本の鎖はかなりの相補性を共有するが、これらの3’末端では不対のままである。それぞれのFPDアイデンティマークラスの不対3’末端は、分子バーコードに組み込まれる隣接するFPDアイデンティマートークン上のアクセプター3’末端と相補的になるように設計されている。FPDアイデンティマーは、連続ラウンドの分割およびプールにわたって分子バーコードを形成するように予め規定された順序で連続して付加することができる。各ラウンドのFPDアイデンティマー付加によって、ハイブリダイズされたアイデンティマーのssDNA断片の5’末端および3’末端の酵素的連結を介してFPDアイデンティマーdsDNAの連鎖が起こる。それぞれのアイデンティマーの連結は、1×リガーゼ緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、10mM MgCl2、1mM ATP、10mM DTT)中で500~1,000UのT4 DNAリガーゼと20~80Uのポリヌクレオチドキナーゼの存在下で37℃で25分間インキュベートすることで実施され得る。最後の「キャッピング」FPDアイデンティマートークンのdsDNAは、FPDアイデンティマーの検出可能な標識の波長と、細胞溶解産物から高分子を捕捉するように設計された3’捕捉領域の両方を符号化するように設計されてもよい。ユニーク分子識別子(UMI)もまた、キャッピングFPDアイデンティマーの内部にあるランダム化または半ランダム化された塩基の連続領域として含まれてもよく、それぞれのアイデンティマークラスと共に、ランダム化または半ランダム化された塩基のさらに小さな領域においてNGSバーコードに付加されてもよい。
【0128】
D.FPDアイデンティマーの調製
単一プロテアーゼ認識部位を含むように設計されたアイデンティマークラス特異的オリゴペプチドは民間ベンダーから購入することができる。
【0129】
実験3において用いられるように、Id1は切断不可能になるように構成され、Id2~5の認識部は、それぞれ、TUMV切断部位を含有する
を含むId2;SuMMV切断部位を含有する
を含むId3;TVMV切断部位を含有する
を含むId4;およびTEV切断部位を含有する
を含むId5を含む、ペプチド配列を含む。
【0130】
実験3において用いられるように、それぞれのFPDアイデンティマークラスは、下流結合体化のための適合性化学を含有するように、最初に、NHS-PEG4-トランスシクロオクテンを用いて、ペプチドを(ペプチドのN末端に設置されたリジン残基を介して)改変することによって作製される。これを成し遂げるために、100μMのペプチドがNHSペプチド反応緩衝液(80mM KClおよび70mM NaClを加えた100mMリン酸ナトリウム、pH8.5)の中で500μMのNHS-PEG4-トランスシクロオクテン(TCO)と混合され、室温で一晩反応される。過剰な(かつあらゆる未反応の)NHS-PEG4-TCO試薬を除去するために、HPLCを用いてTCO改変ペプチドが精製される。内部アミノ改変を含有し、かつ5’-リン酸基を有する100μMのオリゴヌクレオチドが、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で500μMのNHS-PEG4-メチルテトラジンと室温で一晩インキュベートすることによって改変される。次いで、過剰な、かつあらゆる未反応のNHS-PEG4-メチルテトラジン試薬を除去するために、メチルテトラジン改変オリゴヌクレオチドは、7K MWCO Zeba脱塩カラムを用いてNHS適合アニーリング用緩衝液に対して2回、緩衝液交換される。それぞれのFPDアイデンティマークラスのTCO改変ペプチドは、異なるテトラジン改変ssDNAオリゴヌクレオチド(それぞれが、アイデンティマーに結合体化された検出可能な標識に対応する異なるヌクレオチド配列を含有する)に、それぞれ25μMで1:1比で混合することによって結合体化される。この反応は室温で30分間進められる。相補的ssDNAオリゴヌクレオチドは、ヒートブロック上で、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mMKClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で1:1モル比で結合体と95℃で5分間インキュベートすることによってdsDNAを形成するようにアニールされる。次いで、ヒートブロックは取り出され、ベンチトップの上で約2時間の期間に相当する時間にわたって室温まで冷却される。Id1クラスメンバーは、化学修飾とその後の固体支持体への結合のために5’-アミノ改変を含有する相補的オリゴ鎖を受け取る。全ての相補的ssDNAオリゴヌクレオチドは、バーコード形成中に、隣接するアイデンティマーとの十分な連結のために5’-リン酸修飾を含む。次いで、それぞれのフルオロフォアが、それぞれのFPDアイデンティマークラスに付加されることで、アニールしたアイデンティマーは、C末端にある設置されたシステイン残基を介してマレイミド改変フルオロフォアで標識される(それぞれのFPDアイデンティマークラスは1つの指定されたフルオロフォアを受け取り、このフルオロフォアは、結合したdsDNAの内部で記録される)。次いで、FPDアイデンティマーは、保管用緩衝液(100mM NaClを加えた50mM Tris-HCl pH7.5)に対して緩衝液交換され、すぐに使用されてもよく、4℃で数日間、または長期保管の場合は-20℃で保管されてもよい。
【0131】
E.FPDアイデンティマーベース分子バーコード検証
FPDアイデンティマー分子バーコードの同定は、検出可能なシグナル応答を確認し、FPDアイデンティマー分子バーコードのそれぞれの形成および符号化を確認する切断実験による4サイクルデコンボリューション/復号を用いて成し遂げられ得る。一部の態様では、ビーズ上にFDPアイデンティマーベース分子バーコードライブラリーが形成されてもよく、ビーズが表面上に固定化され、実験溶液との接触前および接触後に画像化されてもよい。関心対象の所定の視野または領域で、それぞれのバーコードを構成する視覚的に検出可能な標識の組み合わせを記録するために、固定化されたビーズは、最初に、適切な励起波長と発光フィルターを用いて構成された標準的な蛍光顕微鏡を用いて画像化される。
【0132】
実験3において用いられるように、第1の切断工程は、第1の切断工程においてビーズを、プロテアーゼ反応緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、0.5mM EDTA、1mM DTT)の中で2ユニットのTEVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第1の画像化工程において画像化され、TEVpに対して検出可能なシグナル応答を伝達するフルオロフォア検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第1の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第2の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0133】
実験3において用いられるように、第2の切断工程は、ビーズを、プロテアーゼ反応緩衝液の中で2ユニットのTVMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、TVMVpに対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第2の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第3の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0134】
実験3において用いられるように、第3の切断工程は、ビーズを、プロテアーゼ反応緩衝液の中で2ユニットのSuMMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、SuMMVpに対する検出可能なシグナル応答を伝達するフルオロフォア検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第3の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第3の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0135】
実験3において用いられるように、第4の切断工程は、ビーズを、プロテアーゼ反応緩衝液の中で2ユニットのTUMVpを含有する溶液に30℃で30~60分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第4の画像化工程において画像化され、TUMVpに対する検出可能なシグナル応答を伝達するフルオロフォア検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第4の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。
【0136】
切断可能なアイデンティマーから最後の検出可能な標識が切断されることで除去された後に、切断不可能な標識は、ビーズから伝達される最も強い検出可能なシグナルとして残り、そのため、ビーズの同定が可能になる。視覚的デコンボリューションの間に確かめられた、それぞれの分子バーコードのフルオロフォアの配列はNGSバーコードの配列で表され、NGS実験後にNGSバーコードの配列を検索し、ビーズと相関付けることができる。
【0137】
F.実施例3 注釈
一部の態様では、あらゆるFPDアイデンティマークラスの認識部は、本質的に同一のプロテアーゼ認識部位を含む。
【0138】
一部の態様では、アイデンティマークラスサイズは、ユニークな検出可能な標識がいくつ用いることができるかに基づいている。Qドットでは、この数は約10であるのに対して、標準的なフルオロフォアでは、この数は約4~約6である。二重標識を用いるとクラスサイズは100になる。なぜなら、それぞれのクラスメンバーは2種類のQドットで標識され得るからである。これも標準的なフルオロフォアの組み合わせを用いて行うことができる。
【0139】
一部の態様では、1つまたは複数のFPDアイデンティマーのセットの構造部は、最初に、異なるssDNA鎖を同じペプチド(全ての場合において同じプロテアーゼ認識部位と同じ結合体化化学とを有する)に、ペプチドのN末端とDNA配列の中央部にある内部ヌクレオチド改変を介して結合体化することによって構築される。これは異なるチューブまたはウェル(例えばウェル1~10)の中で行うことができる。次いで、(FPDアイデンティマーの構造部は依然として1~10個の異なるチューブ/ウェルの中で隔てられているが)、構造部は洗浄されるか、または別の方法で精製され、構造部のそれぞれにたった1種類のQドットタイプが結合しており、それによって、(ペプチドのC末端によって)FPDアイデンティマークラスを構成する。FPDアイデンティマークラスの構築は、FPDアイデンティマーのセットに入れるように、さらなるFPDアイデンティマークラスを作製する異なる反応で実施され得る。これは、どのssDNAが、どのQドットとよくあうか本発明者らが知っているように設計される。次いで、(FPDアイデンティマークラスは依然として1~10個の異なるチューブ/ウェルの中で隔てられているが)、FPDアイデンティマークラスは洗浄されるか、または別の方法で精製され、相補的ssDNAが、FPDアイデンティマーのセット中のそれぞれのアイデンティマーにハイブリダイズされて(相補的ssDNAは、FPDアイデンティマーのセット中のアイデンティマーの構造部のssDNAに相補的になるように構成されている)、3’不対末端を有するdsDNAを形成する。当業者は、相補的ssDNAが間違ったFPDアイデンティマークラスと連結しないことを理解し、従って、ユーザーは、FPDアイデンティマークラスを構成および構築するやり方をある程度管理することができる。一部の態様では、ユーザーは、反応特異性を有するようにFPDアイデンティマークラスを構成し得る。この場合、例えば、クラスBは本質的にクラスAおよびCとだけ連結し、クラス3は本質的にブラス(Blass)BおよびDとだけ連結するなど。一部の態様では、FPDアイデンティマーの構築は、最初に、ペプチドをQドットに結合体化した後に、プレハイブリダイズされたdsDNAセグメントを付加して構造部を完成させ、FPDアイデンティマーを形成する工程を含む。
【0140】
一部の態様では、それぞれのFPDアイデンティマークラス(異なるプロテアーゼ認識部位を含有する、それぞれのペプチド)についてFPDアイデンティマー構築プロセスが繰り返されてもよく、次いで、FPDアイデンティマークラスは、保管のために、それぞれのクラスのサイズとクラスの数に応じてチューブに入れられて、またはプレートに入れられて並べられてもよい。例えば、実施例3に示したように、それぞれが10のアイデンティマーを含む5種類のFPDアイデンティマークラスは50個の異なるプレートウェルに入れられてもよい。従って、ビーズと、1つまたは複数の分子バーコードのセットとを含むコンビナトリアルライブラリーを作る際に、ビーズは、10個の異なるウェルの中でビーズに結合している第1のFPDアイデンティマークラスを有する。次いで、ビーズは洗浄され、プールされ、第2のFPDアイデンティマークラスを付加するために無作為に分割されて次の10個のウェルに入れられてもよい。これはライブラリーの組み合わせ多様性をカバーする(この可能な全ての組み合わせは今や、2種類のクラスにまたがって表される100の異なるメンバーである)。次いで、上記のプロセスは繰り返される。ビーズは洗浄され、プールされ、第3のFPDアイデンティマークラスを付加するために無作為に分割されて次の10個のウェルに入れられてもよく、これにより、3種類のクラスにまたがって表される1,000メンバーのライブラリーが得られる。
【0141】
一部の態様では、1Mメンバーのコンビナトリアルライブラリーを構成する合計5種類のFPDアイデンティマークラスが付加されるまでFPDアイデンティマー構築プロセスが繰り返される。重要なことに、実施例3の最後の「キャッピング」FPDアイデンティマークラスは、反応混合物(例えば、細胞溶解産物)から高分子を捕捉するための3’-捕捉領域を含む。この3’-捕捉領域は、ポリアデニル化RNAを捕捉するためのポリ(T)タグでもよく、アッセイにおいてレポーターとして用いられたヌクレオチドタグ化高分子を捕捉するための特異的タグでもよい。
【0142】
コンビナトリアルライブラリーを構成する形成および符号化された分子バーコードを復号する点から見ると、第1の切断工程の前には、分子バーコードに組み込まれ、それぞれのアイデンティマートークンから伝達される検出可能なシグナルの発光スペクトルは、(虹と同じように)複数の重複するスペクトルと一緒に組み合わされて現れる。従って、第1の切断工程の前に、分子バーコードに組み込まれたFPDアイデンティマートークンの三次元配置は復号できない。しかしながら、FPDアイデンティマークラスがコンビナトリアルライブラリー三次元配置に付加された順序を知っていれば、一度に一種類のプロテアーゼと既知の順序の切断工程を通じてプロテアーゼを循環させることで分子バーコードを復号することができる。なぜなら、それぞれの切断物質プロテアーゼは、切断物質に対して直交反応性を有する認識部を含むFPDアイデンティマークラスに由来するFPDアイデンティマートークンの検出可能な標識しか本質的に切断しないからである。
【0143】
言い換えると、分子バーコードの復号は、対応するプロテアーゼへの曝露中に、どの検出可能なシグナル応答(この態様では色)が伝達されたかを検出することを含む。一部の態様では、第1のプロテアーゼへの曝露後に本発明者らが画像化した時に、虹色ビーズの全体の色を失っているか、ある特定の色の強度が著しく小さくなり、次いで、本発明者らが洗浄し、次のプロテアーゼを添加して、本発明者らが画像化した時に第2の色は失われているか、または強度が著しく小さくなっている。
【0144】
実施例4 フルオロフォア/NUCLEASEsite/dsDNA(FND)アイデンティマーベース分子バーコード
実施例4は、視覚的に、ならびに次世代シークエンシング(NGS)反応環境で復号するように設計された、材料のインサイチュー標識のためのフルオロフォア/NUCLEASEsite/dsDNA(FND)アイデンティマーベース分子バーコードの使用を例示する(図5図7図8図9図11)。分割-プール連結によってNGS適合性視覚的分子バーコードを符号化および形成して、DNAシークエンシングベースの復号を必要としないバーコードのコンビナトリアルライブラリーを作り出すために一連のFNDアイデンティマークラスが使用され得る。実施例4に示したように、1種類のバーコードが、同じ実験において、かつ同時に形成および符号化されている多くの異なる分子バーコードの存在下で作製され得る。
【0145】
当業者は、多くのエンドヌクレアーゼが互いに対して直交反応性を有することを理解する。例えば、NotI、XhoI、SpeI、およびHindIIIは、それぞれ、GCGGCCGC、CTCGAG、ACTAGT、およびAAGCTTを含有するdsDNA配列に対して特異性を有する。従って、NotIは、XhoI、SpeI、またはHindIIIが認識する部位を高効率で特異的に切断してはならない。言い換えると、それぞれのエンドヌクレアーゼは、他のエンドヌクレアーゼが認識する基質の存在下で、それぞれのエンドヌクレアーゼの切断部位配列を含む認識部分を有するアイデンティマーの切断部位で分子バーコードを切断し、従って、FNDアイデンティマーベース分子バーコード復号中にエンドヌクレアーゼ切断物質の直交反応性を容易にできなければならない。
【0146】
実施例4において用いられるように、ビーズと、1つまたは複数のFNDアイデンティマーベース分子バーコードのセットとを含むコンビナトリアルライブラリーは5種類のFNDアイデンティマークラス(Id1~5)を含み、Id1は、切断不可能なアイデンティマークラスになるように構成され、Id2~4は、切断可能なアイデンティマークラスになるように構成されている。実験4は、ビーズ上にあるFNDアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号を検証するために実施した、反応性フルオロフォアの視覚的画像化によって確かめた4サイクル直交性ヌクレアーゼ切断実験である。
【0147】
実験4は4つのサイクルを含み、それぞれのサイクルは、1つまたは複数の切断工程の後に1つまたは複数の画像化工程を含む。切断工程の間に、ビーズ上での形成および符号化された分子バーコードの直交切断を容易にするために、コンビナトリアルライブラリーのビーズに直交切断物質ヌクレアーゼが一度に一つずつ適用されてもよい。任意のビーズに存在する分子バーコードに組み込まれたFNDアイデンティマートークンの検出可能な標識から伝達される検出可能なシグナル応答を検出するために予備の画像化工程が実施されてもよい。
【0148】
実験4に例示されるように、NotIヌクレアーゼと反応するFNDアイデンティマートークン(この場合Id5トークン)の検出可能な標識によって伝達される検出可能なシグナル応答の強度を減少させるために、第1のサイクルの第1の切断工程の間にNotIが導入され、これによって、切断によってId5トークンから解離された検出可能な標識の復号または視覚的同定が可能になる。実験4に例示されるように、切断工程のうちの1つまたは複数の間に以下の順序で直交反応性切断物質ヌクレアーゼ:サイクル1の間にNotI;サイクル2の間にXhoI;サイクル3の間にSpeI;およびサイクル4の間にHindIIIが導入される。画像化工程のうちの1つまたは複数の間に、解離された検出可能な標識から伝達された検出可能なシグナル応答を検出されると、分子バーコードに組み込まれたFNDアイデンティマートークンの三次元配置の復号が容易になる。FNDアイデンティマーベース分子バーコードに対するヌクレアーゼ直交反応性の再現性を証明するために、切断物質として作用するヌクレアーゼの検出限界、特異性、および精度実験(3回繰り返す)が実施されてもよい。
【0149】
A.FNDアイデンティマースキャフォールド組成物
一部の態様では、FNDアイデンティマースキャフォールド部は、単一エンドヌクレアーゼ制限配列の1つまたは複数のコピーを有するプレハイブリダイズされた二本鎖DNA(dsDNA)を含む。エンドヌクレアーゼ認識配列を有するプレハイブリダイズされたdsDNAの一方の鎖は5’-アミノ改変を有する。次いで、アミノ反応性ヘテロ二機能性架橋試薬であるNHS-PEG4-TCOを使用して、プレハイブリダイズされたdsDNA上にある第1級アミンを、クリック適合TCO基を含有するように化学的に改変することができる。プレハイブリダイズされたdsDNAは、アミノ反応性ヘテロ二機能性架橋試薬(NHS-PEG4-メチルテトラジン)を用いてクリック適合メチルテトラジン基に変換することができる、ssDNAにおける内部アミノ改変塩基を介して、3’末端および5’末端を有する一本鎖DNA(ssDNA)断片に共有結合により連結される。プレハイブリダイズされたdsDNA断片と改変ssDNAオリゴとの結合体化後に、他のFNDアイデンティマークラスとの連結に適合する不対3’末端を有するdsDNA種を作製して、分割-プールによるアイデンティマーの組み合わせ鎖の組み立てを容易にするために、特異的かつ相補的な(dsDNA断片に結合したssDNAオリゴヌクレオチドと同じ情報を有するが、逆相補方向の)ssDNAオリゴヌクレオチドがアイデンティマーのssDNAにハイブリダイズされ得る。
【0150】
一部の態様では、少なくとも1種類の検出可能な標識(この場合、フルオロフォア)を含む標識ssDNA鎖は、特異的エンドヌクレアーゼ部位を含有する、結合したssDNA鎖にアニールされる。一部の態様では、標識ssDNA鎖は、4種類の検出可能な標識を含むように、その反対の5’末端および3’末端で二重標識される。一部の態様では、16種類のFNDアイデンティマークラスを提供するように二重標識ssDNAは4つの異なる検出可能な標識を含み、それぞれの検出可能な標識が、ユニークな検出可能なシグナル応答を有する。一部の態様では、検出可能な標識は、蛍光クエンチングまたは検出可能な標識間の他の非特異的反応を低減するように、互いに間隔を空けた距離でスキャフォールド部に機能的に接続される。
【0151】
図14に示したように、標識ssDNA鎖は、その反対の5’末端および3’末端において二重標識され、会合したdsDNA二重鎖の配列は、同じタイプの2つの制限部位を含有する。それぞれのFNDアイデンティマーの検出可能な標識の発光波長(観察された色)は、(連結能力のある)結合したdsDNAの配列と相関付けられ、それによって、分子バーコードから入手することができる情報は、DNAシークエンシング後に、形成されたNGSバーコードから入手することができる情報と結び付けられる。交差反応性を回避するために、形成されたNGSバーコードを構成する設計された配列は、使用された任意の制限酵素で切断され得る配列を含有してはならない。Id1は、付加される第1のアイデンティマーであり、従って、固体支持体(ビーズ)に直接結合している。ここでは、Id1は切断部位を含まず、その認識部分は切断不可能なリンカーである。Id1は、固体支持体に結合させるために5’-アミノ改変塩基を含み、検索および下流NGSライブラリー調製のために5’-定常領域を符号化することができる。Id5の構造部は、細胞溶解産物または生物学的試料から高分子を捕捉するために3’-捕捉配列を含む。Id2、Id3、Id4、およびId5の認識部分および切断部位は、それぞれ、HindIII、SpeI、XhoI、およびNotIエンドヌクレアーゼの認識配列および切断部位である。
【0152】
B.FNDアイデンティマーの検出可能な標識
本実施例ではFNDアイデンティマーの組み合わせ標識のために、複数の区別可能な標識を含む市販のフルオロフォアが選択される。好ましい態様では、FNDアイデンティマーの検出可能な標識は1つまたは複数のQドットを含む。一部の態様では、特異的ヌクレアーゼ部位タイプを有するそれぞれのクラス特異的dsDNAの異なる反応混合物(またはプレートウェル)の中で、異なる発光波長のフルオロフォアが、それぞれのアイデンティマークラスに共有結合により結合し得る。5種類のFNDアイデンティマークラスタイプで構成される単一分子バーコードを実施例4において例示する。フルオロフォアは、それぞれ、Id1、Id2、Id3、Id4、およびId5のアイデンティマーバーコードのNGS部を構成する、連結能力のあるdsDNAセグメントに結合した鎖にアニールしたssDNA鎖のどちらかの末端(3’末端を示した)に付加され得る。コンビナトリアルライブラリーの任意の形成された個々のFNDアイデンティマーベース分子バーコード(ここで示したId1、Id2、Id3、Id4、およびId5)に示されたフルオロフォアの組み合わせは、連続した発光スペクトルを有してもよく、有さなくてもよい。なぜなら、分子バーコードに組み込まれたFNDアイデンティマートークンの三次元配置は、本明細書に記載の直交反応性ヌクレアーゼを用いた切断工程のサイクリングによって決定されるからである。
【0153】
C.FNDアイデンティマー連鎖
それぞれのssDNA断片の配列は、分子バーコードに組み込まれたFNDアイデンティマートークンの解離した検出可能な標識から伝達される検出可能なシグナル応答の発光波長を記録するように設計される。それぞれのFNDアイデンティマーの相補的ssDNA鎖はハイブリダイゼーションによって形成され、これによって、2本の鎖はかなりの相補性を共有するが、これらの3’末端では不対のままである。一部の態様では、連鎖されたFNDアイデンティマートークンの不対3’末端は、隣接するFNDアイデンティマートークンのアクセプター3’末端と相補的になるように構成されている。FNDアイデンティマーは、連続ラウンドの分割およびプールにわたって分子バーコードを形成するように予め規定された順序で連続して付加され得る。各ラウンドのFNDアイデンティマークラス付加によって、ハイブリダイズされたアイデンティマーのssDNA断片の5’末端および3’末端の酵素的連結を介してアイデンティマーdsDNAの連鎖が起こる。それぞれのアイデンティマーの連結は、1×リガーゼ緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、10mM MgCl2、1mM ATP、10mM DTT)中で500~1,000UのT4 DNAリガーゼと20~80Uのポリヌクレオチドキナーゼの存在下で37℃で25分間インキュベートすることで実施され得る。一部の態様では、最後の「キャッピング」FNDアイデンティマークラスは、アイデンティマーポリペプチドプロテアーゼ認識部に結合した標識の波長と、細胞溶解産物から高分子を捕捉するように設計された3’捕捉領域の両方を符号化するようにdsDNA(バーコードのNGS部を構成する)を含む。ユニーク分子識別子(UMI)もまた、キャッピングFNDアイデンティマークラスの内部にあるランダム化または半ランダム化された塩基の連続領域として含まれてもよく、それぞれのアイデンティマークラスと共に、ランダム化または半ランダム化された塩基のさらに小さな領域においてNGSバーコードに付加されてもよい。交差反応性を回避するために、UMIを構成する配列を含む、形成されたNGSバーコードを構成する構成された配列は、使用された任意の制限酵素で切断できる配列を本質的に含有しない。一部の態様では、切断実験による復号に使用した制限部位のうちの1つを含めるのを回避するために、構成された分子バーコードの計算フィルタリングが用いられる場合がある。FNDアイデンティマーバーコードは、酵素的連結で結合された5つのクラスメンバーを含有する。
【0154】
D.FNDアイデンティマークラス調製
NotI、XhoI、SpeI、およびHindIIIは、それぞれ、GCGGCCGC、CTCGAG、ACTAGT、およびAAGCTTを含有するdsDNA配列に対して特異性を有する。1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ部位タイプを含有する標識dsDNAを構成する、それぞれのFNDアイデンティマークラス特異的ssDNAは民間ベンダーから購入することができる。実験4において用いられるように、FNDアイデンティマークラスの認識部および切断部位は、それぞれ、構成されたヌクレオチド配列:(Id1は切断不可能である);HindIII切断部位を含有する
を含むId2;SpeI切断部位を含有する
を含むId3;XhoI切断部位を含有する
を含むId4;およびNotI切断部位を含有する
を含むId5を含む。
【0155】
一部の態様では、アミノ改変は、ビーズに結合しているFNDアイデンティマースキャフォールド部を構成するオリゴヌクレオチドのうちの1つの5’末端にしかない。従って、隣接しているFNDアイデンティマースキャフォールド部を連結するのに末端が使用可能であるように、他の全てのdsDNA FNDアイデンティマースキャフォールド部は内部アミノ改変を含有する。例えば、一部の態様では、アミノ改変は全てのハイブリダイジングFNDアイデンティマーの5’末端にある。なぜなら、それぞれのハイブリダイジング二重鎖について、一方の鎖の5’末端はビオチン化され、二重鎖の他方の鎖は、NHS改変フルオロフォアを介して結合している標識を含有するからである。一部の態様では、アミノ改変は、遊離末端が連結に用いることができるように、環状または円形のdsDNAベースアイデンティマーのセット中の全アイデンティマーのスキャフォールド部の内部位置に含まれる。
【0156】
本明細書で使用する「5AmMC6」とはアミノモディファイヤーC6を指す。当業者は、第1級アミノ基をオリゴヌクレオチドに導入するためにアミノモディファイヤーが用いられることを理解する。例えば、NHSエステルまたはイソチオシアネート蛍光検出可能な標識と一緒にアミノモディファイヤーが用いられる場合がある。当業者は、アミノモディファイヤーC6がオリゴヌクレオチド合成中に組み込まれる場合があり、6炭素スペーサーの末端に第1級アミノ基をもつオリゴヌクレオチドの5’末端を標識するのに使用できると理解する。本明細書で使用する「N-ヒドロキシスクシンイミド」(NHS)とは、式(CH2CO)2NOHを有する有機化合物を指す。当業者は、エステル媒介性誘導体化によって遊離アミノ基上にタンパク質が非選択的にある場合がある手法と同じように、設計された場所で、第1級アミン基を含有する合成オリゴヌクレオチドの内部に設置された、このような基を部位特異的に改変するためにN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは「NHS-エステル」が用いられる場合があると理解する(例えば、Nanda et al., Methods Enzymol., 536:87-94 (2014)を参照されたい)。例えば、当業者は、第1級アミン(R-NH2)またはタンパク質、アミン改変ヌクレオチド、および他のアミン含有分子に対して標識するためにNHS-エステルが用いられる場合があると理解する。従って、本明細書で使用する「NHSフルオロフォア」とは、NHSに結合体化された任意のフルオロフォアを指す。
【0157】
一部の態様では、FNDアイデンティマークラスは、最初に、上記で列挙したクラス特異的ssDNA鎖(Id2~5)と一緒に相補的な標識鎖をアニールして、実行可能なdsDNA制限部位を生じることによって作製され得る。これは、ヒートブロック上で、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で1:1モル比で95℃で5分間行われ得る。次いで、ヒートブロックは取り出され、ベンチトップの上で、約2時間の期間に相当する時間にわたって室温まで冷却される。1種類のエンドヌクレアーゼ部位タイプを有するクラス特異的dsDNAは、下流結合体化のための適合性化学を含有するように、NHS-PEG4-トランスシクロオクテンを用いて(上記の配列に示した5’-アミノ改変を介して)改変され得る。これを成し遂げるために、100μMの標識dsDNAが、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で500μMのNHS-PEG4-トランスシクロオクテン(TCO)と混合され、室温で一晩反応され得る。過剰な(かつあらゆる未反応の)NHS-PEG4-TCO試薬を除去するために脱塩によってTCO改変dsDNA二重鎖が精製され得る。バーコードのNGS部を符号化するdsDNAを形成するために、100μMの内部アミノ改変含有オリゴヌクレオチドが、最初に、NHS適合アニーリング用緩衝液(80mM KClを加えた100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.5)の中で相補的ssDNAとヒートブロックで1:1モル比で95℃で5分間インキュベートすることによってアニールされる。次いで、ヒートブロックは取り出され、ベンチトップの上で、約2時間の期間に相当する時間にわたって室温まで冷却される。
【0158】
実験4において用いられるように、Id1クラスNGSバーコード部は、化学修飾とその後の固体支持体への結合のために5’-アミノ改変を含有する相補的オリゴ鎖を受け取る。全ての相補的ssDNAオリゴヌクレオチドは、バーコード形成中に、隣接するアイデンティマーとの十分な連結のために5’-リン酸修飾を含む。5’-リン酸基も有する内部アミノ改変オリゴは、NHS適合アニーリング用緩衝液中で、500μMのNHS-PEG4-メチルテトラジンと室温で一晩インキュベートされることで改変される。次いで、過剰な、かつあらゆる未反応のNHS-PEG4-メチルテトラジン試薬を除去するために、メチルテトラジン改変オリゴヌクレオチドは、7K MWCO Zeba脱塩カラムを用いてNHS適合アニーリング用緩衝液に対して2回、緩衝液交換される。それぞれのクラスのTCO改変dsDNAは、異なるメチルテトラジン改変ssDNAオリゴヌクレオチド(それぞれが、アイデンティマーに既に結合体化された検出可能な標識に対応する異なるヌクレオチド配列を含有する)に、それぞれ25μMで1:1比で混合することによって結合体化される。この反応は室温で30分間進められてもよい。次いで、結合体化されたFNDアイデンティマーは、保管用緩衝液(100mM NaClを加えた50mM Tris-HCl pH7.5)に対して緩衝液交換されてもよく、すぐに使用されてもよく、4℃で数日間、または長期保管の場合は-20℃で保管されてもよい。
【0159】
E.FNDアイデンティマーベース分子バーコード検証
FNDアイデンティマーベース分子バーコードの同定は、分子バーコードからの切断によって解離された検出可能な標識から伝達された検出可能なシグナル応答を確認して、その符号化された三次元配置を復号する切断実験による4サイクルデコンボリューション/復号を用いて成し遂げられ得る。一部の態様では、ビーズ上に分子バーコードコンビナトリアルライブラリーが形成されてもよく、ビーズが表面上に固定化され、実験溶液との接触前および接触後に画像化されてもよい。固定化されたビーズは、最初に、関心対象の所定の視野または領域で、それぞれのバーコードを構成する視覚的に検出可能な標識の組み合わせを記録するように、適切な励起波長と発光フィルターを用いて構成された標準的な蛍光顕微鏡を用いて画像化される。一般的に、本明細書において列挙した「高忠実度」バージョンのエンドヌクレアーゼは、同じ緩衝液(428 Newburyport Turnpike, Rowley, MA 01969, U.S.AにあるNew England Biolabs, Inc.から入手可能な1×CUTSMART緩衝液)中で100%の効率で機能することができる。
【0160】
実験4において用いられるように、ビーズは、第1の切断工程では、CUTSMART緩衝液(50mM酢酸カリウム、20mMTris-酢酸塩、10mM酢酸マグネシウム、100ug/ml BSA;緩衝液pHは25℃で7.9である)の中で、5ユニットのNotI-HFエンドヌクレアーゼを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露される。インキュベーション後に、ビーズは第1の画像化工程において画像化され、NotIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性の検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第1の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第2の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0161】
実験4において用いられるように、第2の切断工程は、CUTSMART緩衝液中で、ビーズを5ユニットのXhoI-HFを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第2の画像化工程において画像化され、XhoIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォア検出可能な標識が検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第2の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第3の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0162】
実験4において用いられるように、第3の切断工程は、CUTSMART緩衝液中で、ビーズを5ユニットのSpeI-HFを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズは第3の画像化工程において画像化され、SpeIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第3の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。任意で、第4の切断工程の前に洗浄工程が実施されてもよい。
【0163】
実験4において用いられるように、第4の切断工程は、CUTSMART緩衝液中で、ビーズを5ユニットのHindIIIを含有する溶液に37℃で5~10分間のインキュベーションにわたって曝露する工程を含む。インキュベーション後に、ビーズを第4の画像化工程において画像化することができ、HindIIIエンドヌクレアーゼ活性に対して応答性のフルオロフォアが検出される。ここで、検出可能なシグナル応答は、第4の切断工程の間に分子バーコードから解離されたFNDアイデンティマートークンの検出可能な標識の発光波長の強度の低下を含む。
【0164】
一部の態様では、切断による、それぞれの復号サイクルにおいて複数種の制限エンドヌクレアーゼが導入されてもよいが、これらは、異なるエンドヌクレアーゼが大きく異なる動力学的切断率を有する条件下で導入しなければならず、切断中に複数の画像を取得しなければならない。
【0165】
最後の切断可能なアイデンティマー標識が除去された後に、切断不可能な標識は、ビーズから発光される最も強いシグナルとして残り、そのため、ビーズの検出と同定が可能になる。視覚的デコンボリューションの間に確かめられた、それぞれの分子バーコードのフルオロフォアの配列はNGSバーコードの配列で表され、NGS実験後にNGSバーコードの配列を検索し、ビーズと相関付けることができる。
【0166】
実施例5 単一標識FNDアイデンティマーおよび二重標識FNDアイデンティマーの分割-プール連結によって生成された分子バーコード
実施例5に開示されるように、分割-プール連結によって分子バーコードを符号化および形成して分子バーコードコンビナトリアルライブラリーを作り出すために、単一標識フルオロフォア/NUCLEASEsite/dsDNA(FND)アイデンティマークラスと二重標識フルオロフォア/NUCLEASEsite/dsDNA(FND)アイデンティマークラスを生成した。FNDアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号を検証するために、反応性フルオロフォア検出可能な標識の視覚的画像化によって確かめられるマルチサイクル直交性ヌクレアーゼ切断実験を実施した。単一標識FNDアイデンティマークラスおよび二重標識FNDアイデンティマークラスのデコンボリューションを容易にするために、ヌクレアーゼ切断実験には既知の切断物質を既知の順序で適用した。次いで、真のシグナルロスに対する偽の「シグナルゲイン」を観察するために日付の新しい順に画像を分析した。
【0167】
単一標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードコンビナトリアルライブラリーと二重標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードコンビナトリアルライブラリーを、5種類のFNDアイデンティマークラス(FND Id1~5)のセットから作製した。5種類のNHS改変フルオロフォアのセットを、本明細書に記載のようにアミノ改変塩基と直接、結合体化した。単一標識FNDアイデンティマークラスは、切断時に1種類の標識と相関する認識部分を含むのに対して、二重標識FNDアイデンティマークラスは、切断時に2種類の標識と相関する認識部分を含む。例えば、混合されていない体積のAF-750標識HindIIIベースFNDアイデンティマーを用いて組み立てられたコンビナトリアルライブラリーはHindIIIで切断されると750nmスペクトルを失うのに対して、AF-750標識HindIIIベースFNDアイデンティマーとATTO-550 HindIIIベースFNDアイデンティマーをそれぞれ50/50比で組み立てたコンビナトリアルライブラリーは切断されると550nmスペクトルと750nmスペクトルを両方とも失い、そのため、1つの切断サイクル中に収集され得る相互情報が効率的に倍加する。
【0168】
図18は、直交性粘着末端、直交性認識部分および切断部位、ならびに改変されたヌクレオチドを用いて構成されたスキャフォールド部分を有する5種類のFNDアイデンティマー(FND ID1~5)のセットのテキスト表示である。図18に示したように、FND Id1~5のそれぞれのスキャフォールド部分は、相補的な一本鎖の標識オリゴヌクレオチドとアニールして、不対の一本鎖オーバーハング部、すなわち「粘着末端」をもつ二重鎖オリゴヌクレオチドを形成するように構成された非標識一本鎖オリゴヌクレオチドを含んだ。一部の態様では、不対粘着末端は1~5個のヌクレオチドを含んでもよい。一部の態様では、不対粘着末端は5個より多いヌクレオチドを含んでもよい。粘着末端のヌクレオチドの数が増えるにつれて、より多くの直交性粘着末端構成が可能になることが観察された。一部の態様では、連結はテンプレート使用連結(templated ligation)である。本明細書で使用する「テンプレート連結」または「テンプレート使用連結」とは、正しい相補的粘着末端に特異的な連結反応をまとめて指す。当業者は、1塩基と短いオーバーハングを使用できると理解する。なぜなら、これは、当技術分野において公知の多くの既存のキットにおいて、シークエンシングのためにDNA上に一般的に連結されるNGSアダプターに用いられる構成だからである。一部の態様では、直交性の増加は複数のアイデンティマークラスを同時連結するのに有用である。従って、一部の態様では、1セットのアイデンティマークラスを構成する全アイデンティマークラスが1回の反応で一緒に連結され得る。なぜなら、そのセット中のそれぞれの粘着末端ペアが互いに直交するように構成されたからである。例えば、Id2アイデンティマーの粘着末端にアニールするように構成され、依然としてId3アイデンティマーの粘着末端と直交するように構成された粘着末端を有するId1アイデンティマーを用いると、Id1アイデンティマーはId2アイデンティマーにだけ選択的に連結することができる。当業者は、粘着末端連結のプロセスは、相補的粘着末端を有する二重鎖オリゴヌクレオチドペアの選択的連結を容易にすると理解する。
【0169】
A.FNDアイデンティマースキャフォールド組成物
単一標識FNDアイデンティマークラスと二重標識FNDアイデンティマークラスの両方からコンビナトリアルライブラリーを生成する2つの直交性ヌクレアーゼ切断実験を実施するためにFND Id1~5を生成した。FND Id1のスキャフォールド部は、標識されたSEQ ID NO:18にアニールするように構成された非標識のSEQ ID NO:17を含んだ。SEQ ID NO:18の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:19の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。位置1および25を、それぞれ、5'リン酸化によって、および3'アミノモディファイヤーC6 dTになるように改変した。
【0170】
一部の態様では、スキャフォールド部は、切断不可能になるように、既知の切断物質と反応するペプチド配列もヌクレオチド配列もない認識部分を有するように構成された。一部の態様では、切断不可能なアイデンティマーは、最後に視覚化されるアイデンティマーとして有用な場合がある。なぜなら、立体障害の増大に伴って一部の切断物質は効き目が弱くなるからである。例えば、HindIIIは、ストレプトアビジンビーズなどの固相からdsDNAを直接切断する時に効力が弱いことが観察された。ある特定の場合では、切断工程後に単一標識が観察されたら、最後の切断工程を行う必要はないことが観察された。これは、標識された切断不可能な最後のアイデンティマートークンを有することと類似している。例えば、本明細書に記載のFND ID1~5の場合、SpeI切断後に単一標識が観察されたら、分子バーコードの残遺物を形成するHindIII アイデンティマートークンを切断する必要はなかった。従って、一部の態様では、最後に視覚化されるアイデンティマーは、切断可能になるように構成されてもよい。なぜなら、最後に視覚化されるアイデンティマーは画像化によって同定されたら、切断する必要はないからである。
【0171】
FND Id2のスキャフォールド部は、標識されたSEQ ID NO:20にアニールするように構成された非標識SEQ ID NO:19を含んだ。SEQ ID NO:19の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:18の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:19の位置13~18はHindIII認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:19の位置1を5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:20の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:21の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:20の位置16~21はHindIII認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:20の位置1および9を、それぞれ、5'リン酸化によって、およびIntアミノモディファイヤーC6 dTになるように改変した。
【0172】
FND Id3のスキャフォールド部は、標識されたSEQ ID NO:22にアニールするように構成された非標識SEQ ID NO:21を含んだ。SEQ ID NO:21の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:20の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:21の位置13~18はSpeI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:21の位置1を5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:22の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:23の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:22の位置16~21はSpeI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:22の位置1および9を、それぞれ、5'リン酸化によって、およびIntアミノモディファイヤーC6 dTになるように改変した。
【0173】
FND Id4のスキャフォールド部は、標識されたSEQ ID NO:24にアニールするように構成された非標識SEQ ID NO:23を含んだ。SEQ ID NO:23の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:22の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:21の位置13~18はXhoI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:21の位置1を5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:24の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:25の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:22の位置16~21はXhoI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:24の位置1および9を、それぞれ、5'リン酸化によって、およびIntアミノモディファイヤーC6 dTになるように改変した。
【0174】
FND Id5のスキャフォールド部は、標識されたSEQ ID NO:26にアニールするように構成された非標識SEQ ID NO:25を含んだ。SEQ ID NO:25の位置1~5に対応するヌクレオチドは、SEQ ID NO:24の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:25の位置11~18はNotI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:25の位置1を5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:26の位置11~18に対応するヌクレオチドはNotI認識部分および切断部位を含んだ。SEQ ID NO:26の位置1を5AmMC6Tになるように改変した。
【0175】
本明細書で使用する「3AmMC6T」とは、Integrated DNA Technologies, Inc.(IDT)(1710 Commercial Park, Coralville, Iowa 52241, USA)から市販されている改変ヌクレオチドである3'アミノモディファイヤーC6 dTを指す。本明細書で使用する「5'ビオチン-TEG」または「5BiotinTeg」は、IDTによる合成中に設置することができる改変として商業的に入手可能な、15-原子、混合極性トリエテリエングリコールスペーサー(15-atom, mixed polarity triethelyene glycol spacer)に結合したビオチン分子をまとめて指す。当業者は、5'ビオチン-TEGがオリゴヌクレオチドの5'末端または3'末端のいずれかに組み込まれ得ると理解する。本明細書で使用する「5Phos」とは、例えば、オリゴヌクレオチドの5'末端のリン酸化などの5'リン酸化を指す。当業者は、オリゴヌクレオチドがDNAリガーゼ酵素基質として用いられるのであれば5'リン酸化が必要だと理解する。本明細書で使用する「5AmMC6T」とは、Integrated DNA Technologies, Inc.(1710 Commercial Park, Coralville, Iowa 52241, USA)から市販されている改変ヌクレオチドである5'アミノモディファイヤーC6 dTを指す。
【0176】
B.単一標識FNDアイデンティマーおよび二重標識FNDアイデンティマーの検出可能な標識組成物
単一標識直交性ヌクレアーゼ切断実験のために、FND Id1~5の検出可能な標識を、それに合うように構成した。FND Id1は非標識であった。FND Id2は1個のAF-750を含んだ。FND Id3は1個のAF-647を含んだ。FND Id4は1個のATTO-550を含んだ。FND Id5は1個のATTO-488を含んだ。本明細書において開示されるように、FND Id1~5のそれぞれのスキャフォールド部をNHSエステル媒介性誘導体化によって標識した。AF-750を使用して、SEQ ID NO:20の位置9にある3'IntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。AF-647を使用して、SEQ ID NO:22の位置9にあるIntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。ATTO-555を使用して、SEQ ID NO:24の位置9にあるIntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。ATTO-488を使用して、SEQ ID NO:26の位置1にある5'アミノモディファイヤーC6 dTを標識した。
【0177】
二重標識直交性ヌクレアーゼ切断実験のために、FND Id1~5の検出可能な標識を、それに合うように構成した。FND Id1は非標識であった。FND Id2は、約50%のAF-750と約50%のATTO-550を含んだ。FND Id3は約50%のAF-647と約ATTO-488を含んだ。FND Id4は約50%のAF-647と約50%のATTO-550を含んだ。FND Id5は約50%のATTO-488と約50%のAF-750を含んだ。本明細書において開示されるように、FND Id1~5のそれぞれのスキャフォールド部をNHSエステル媒介性誘導体化によって標識した。AF-750とATTO-550を使用して、SEQ ID NO:20の位置9にある3'IntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。AF-647とATTO-488を使用して、SEQ ID NO:22の位置9にあるIntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。AF-647とATTO-555を使用して、SEQ ID NO:24の位置9にあるIntアミノモディファイヤーC6 dTを標識した。ATTO-488とAF-750を使用して、SEQ ID NO:26の位置1にある5'アミノモディファイヤーC6 dTを標識した。
【0178】
本明細書で使用する「ATTO-488」とは、501nmの最大吸収と523nmの最大蛍光をもつATTO蛍光色素である。当業者は、ATTO-488が480nm~515nmの範囲ではより効率的に励起されると理解する。本明細書で使用する「ATTO-550」とは、554nmの最大吸収と576nmの最大蛍光をもつATTO蛍光色素である。当業者は、ATTO-550が540nm~565nmの範囲ではより効率的に励起されると理解する。ATTO-488およびATTO-550はATTO-Tec GmbH (Martinshardt 7, 57074 Siegen; info@att-tec.com; Product No.: AD 488およびProduct No.: AD550.)から市販されている。
【0179】
本明細書で使用する「AF-405」は、401nmに励起ピークを有し、421nmに発光ピークを有する、青色を発する合成フルオロフォアであるAlexa Fluor 405色素である。本明細書で使用する「AF-647」は、594nmまたは633nmレーザーラインに適した励起を有する近赤外蛍光色素であるAlexa Fluor 647色素である。本明細書で使用する「AF-750」は、633nmレーザーラインに適した励起または色素ポンプ(dye-pumped)励起を有する明るい近赤外蛍光色素であるAlexa Fluor 750色素である。AF-405、AF-647、およびAF-750は、ThermoFisher Scientific, Inc.(168 Third Avenue, Waltham, MA 02451, USA; AF-405についてはカタログ番号 A30000; AF-647についてはカタログ番号A20006; AF-750についてはカタログ番号A20011)から市販されている。
【0180】
一部の態様では、AF-405、AF-647、AF-750、ATTO-488、およびATTO-550は、異なるクラスのアイデンティマーを生成するために同義で用いられる場合がある。当業者は、NHSエステル媒介性誘導体化によって任意の遊離アミノ基を標識するために任意のNHS結合フルオロフォア(NHS-フルオロフォア)が用いられる場合があると理解する。NHS結合フルオロフォアは、本明細書において提供されるベンダーから市販されている。
【0181】
C.単一標識FNDアイデンティマーおよび二重標識FNDアイデンティマーの検出可能な標識の構築
最初に、FND Id1~5(SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26)の標識オリゴヌクレオチド上にある遊離アミノ(NH2)基を20μlの200μMオリゴヌクレオチドを用いてフルオロフォアで標識し、pH8.5の100mM NaPO4(リン酸ナトリウム緩衝液)に再懸濁し、次いで、2μlの100mM NHS-フルオロフォア(例えば、無水ジメチルホルムアミド(DMF)に再懸濁したNHS-ATTO-488、NHS-ATTO-550、NHS-AF-647、またはNHS-AF-750)と室温で一晩反応で混合した。
【0182】
次いで、残存しているあらゆる未反応のNHS基をクエンチするするために、標識オリゴヌクレオチドを80μlの2×ハイブリダイゼーション用緩衝液(20mM Tris pH7.5、1M NaCl、1mM EDTA)で希釈して100μl体積にした。後のアニーリングのために、100μlの40μM標識オリゴヌクレオチドを添加し、本明細書に記載のように、その対応する非標識オリゴヌクレオチドと混合した(すなわち、SEQ ID NO:17をSEQ ID NO:18と混合した; SEQ ID NO:19をSEQ ID NO:20と混合した; SEQ ID NO:21をSEQ ID NO:22と混合した; SEQ ID NO:23をSEQ ID NO:24と混合した; SEQ ID NO:25をSEQ ID NO:26と混合した)。
【0183】
C.FNDアイデンティマースキャフォールド部アニーリング
次いで、全てのFND Id1~5スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖をヒートブロックに入れて90℃に約5分間曝露し、次いで、室温に達するまで(約1.5時間)、ヒートブロックをラボベンチの上に置くことによってアニーリングを実施した。
【0184】
10μlのビオチン化FND Id1スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖を90μlのハイブリダイゼーション用緩衝液で10倍希釈して200nMにし、1:1(体積:体積)で均一にコーティングされるように、100μlのそれぞれの異なって標識された二重鎖を、100μlの0.2mg/ml Dynabeads MyOneストレプトアビジンT1ビーズ(ストレプトアビジンビーズ)(ThermoFisher Scientific, Inc. 168 Third Avenue, Waltham, MA 02451, USA; カタログ番号65601から市販されており、次いで、結合前にハイブリダイゼーション用緩衝液で3回予洗し、再懸濁した)と混合した。結合は、チューブを時々タップしながらヒートブロック上で37℃で30分間にわたって実施した。次いで、結合しなかったスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖を除去するために、結合体化ストレプトアビジンビーズを磁石で引き寄せた。溶液を除去し、結合体化ストレプトアビジンビーズを、0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液(Sigma-Aldrich, Inx., PO Box 14508, St. Louis, MO 68178, USA; Cas No. 9005-64-5から市販されている)300μlで3回洗浄し、1×T4 DNAリガーゼ緩衝液(New England Biolabs, Inc. (NEB), 240 County Road, Ipswich, MA 01938-2723, USA; info@neb.comから市販されている)100μlで2回洗浄し、次いで、1×T4 DNAリガーゼ緩衝液に再懸濁した。次いで、ビーズの塊をばらばらにするために、結合体化ストレプトアビジンビーズをウォーターバスソニケーターに入れて3分間超音波処理し、下流連結反応で使用するために4℃または氷上で保管した。
【0185】
連結工程は、室温または37℃までの温度で、NEBによって提供される1×T4 DNAリガーゼ緩衝液中で、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)(NEBから市販されている;(5μl/250μl連結反応);カタログ番号M0201SまたはMo201L)とT4 DNAリガーゼ(NEBから市販されている;(5μl/250μl連結反応);カタログ番号M0202S、M0202T、M0202L、またはM0202M)両方の存在下で実施した。FND Id2スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖を結合させるために、ビーズ上での連結は、本明細書に記載のように(NEBによって提供される1×連結用緩衝液100μlで2回洗浄した)FND Id1スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖でコーティングされた0.1mg/mlストレプトアビジンビーズを用いて実施した。その後のFND Id3~5スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖の連結は全て同じ条件下で実施した。連結間の洗浄は以下の通りであった:0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで1回洗浄、次いで、1×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで2回洗浄、次いで、NEBによって提供される1×連結用緩衝液100μlで2回洗浄。
【0186】
一部の態様では、FNDアイデンティマーはストレプトアビジンビーズに連結される前に溶液中で連結されてもよい。例えば、FND Id2のセットをFND Id3のセットに予め連結した後に、FND Id1を介してストレプトアビジンビーズに連結した。これは、例えば、25μlの10×リガーゼ緩衝液(NEB)、205μlのH2O、ならびに5μlのPNK(NEB)と5μlのT4 DNAリガーゼ(NEB)と一緒に、5μlのFND Id2スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖を5μlのFND Id3スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖(20μMストック濃度)と予め混合することによって、または5μlのFND Id4スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖を5μlのFND Id5スキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖と予め混合することによって実施した。これらの予め混合したアイデンティマーの連結は室温~37℃の温度で実施した。次いで、様々な250μl連結反応付加のために、上記のように調製した5μlのストレプトアビジンビーズ(0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、次いで、200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄し、次いで、NEBによって提供される1×連結用緩衝液100μlでもう2回洗浄し、50μlの連結用緩衝液に再懸濁した、Id1オリゴ二重鎖でコーティングされた0.2mgのビーズ)をピペットで取って新しいチューブの底に入れた。
【0187】
連結は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)とT4 DNAリガーゼの両方の存在下で実施した。各回の連結の間に、残存しているリガーゼ活性をクエンチするために0.5~1mM EDTAを用いて、dsDNA二重鎖からリガーゼを除去するために高塩(500mM~1M NaCl)を用いて、二重鎖からリガーゼ酵素を除去するのを助け、ビーズの凝集を阻止するために界面活性剤(0.01%Tween-20)を用いて広範囲にわたる洗浄を実施した。最後の洗浄によって、後の連結の間にビーズが不均一にコーティングされることがある。そのため、これをさらに阻止するために、画像化前と酵素触媒反応への曝露前にビーズを少なくとも3分間超音波処理した。さらなる詳細については方法のセクションを参照されたい。
【0188】
符号化のための連結が全て完了した後に、ストレプトアビジンビーズを、0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄し、20μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液に再懸濁し、3分間超音波処理し、固定化と後の切断実験のためにビオチン改変表面を含有するフローセル中にロードした。
【0189】
D.結果
単一標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードおよび二重標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードの符号化
実施例5に示したように、異なって標識された、プレハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド二重鎖を連結することによってFNDアイデンティマーベース分子バーコードを構築した。組み合わせ連結戦略を用いて、4つの異なる区別可能な標識を有する分子バーコードを5つのセグメントから構築した(すなわち、1つの分子バーコードにつき5種類のアイデンティマートークン)。本明細書において開示されるように、FNDアイデンティマーのセットを、このセット中のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖のオリゴヌクレオチド鎖の一方にある5’-ビオチン改変を介してストレプトアビジンビーズに結合させた。(当業者は、5’-ビオチン改変がオリゴヌクレオチド二重鎖のどちらの鎖にも適用され得ることを理解する)。ここでは、ストレプトアビジンビーズに結合させたFND Id1のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖は非標識であり、FND Id2のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖への連結に適合する5’オーバーハング(リン酸化されている)を生じた。
【0190】
実施例5に開示されるように、FND Id2のスキャフォールド部はAF-750で標識され、酵素が到達可能なHindIII切断部位と、FND Id3のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖への連結に適合する5’オーバーハング(リン酸化されている)とを両方とも含んだ。FND Id2をFND Id1に連結した後に、画像化のために、これらのストレプトアビジンビーズの試料をフローセルの中で固定化した。FND Id1とFND Id2を含有する分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズの画像を4蛍光チャンネルにおいて撮影し、図19に示したように強度値をプロットした。図19Aは、ビオチン部分を介してビーズに結合した非標識dsDNAに連結することで結合された第1の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id1/HindIII-AF750)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。図19Bは、第2の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id2/SpeI-AF647)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。図19Cは、第3の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id3/XhoI-ATTO550)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。図19Dは、第4の標識dsDNAアイデンティマーセグメント(Id4/NotI-ATTO488)で標識されたストレプトアビジンビーズを表す。図20Aは、4蛍光チャンネル;647nm(上向き斜めの縞模様)、550nm(下向き斜めの縞模様)、488nm(水平の縞模様)、および750nm(点々模様)で画像化された非切断ビーズを表す。それぞれのフルオロフォアについて得られた平均強度値を右側にプロットした。
【0191】
FND Id1/FND Id2連結産物を含有するビーズ上では、連結反応が効率的であったことを示唆する明瞭なAF-750標識検出が観察された(図19A)。これに対して、他のどの蛍光チャンネルにもシグナルはほとんど観察されなかったか、全く観察されなかった。次いで、連結された(すなわち、符号化された)FND Id1およびFND Id2アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズを別の回の連結に供し、これによって、成長中の分子バーコードにFND Id3を連結した(すなわち、連鎖した)。実施例5に開示されるように、FND Id3のスキャフォールド部はAF-647で標識され、酵素が到達可能なSpeI切断部位と、FND Id4のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖への連結に適合する5’オーバーハング(リン酸化されている)とを両方とも含んだ。FND Id3を連結した後に、画像化のためにビーズ試料をフローセルの中で固定化した。連結された(すなわち、符号化された)FND Id1/FND Id2/FND Id3/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズの画像を4蛍光チャンネルにおいて撮影し、強度値をプロットした(図19)。連結されたFND Id1/FND Id2/FND Id3/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズ上でAF-750およびAF-647が検出された(図19B)。これにより、FND Id3連結が成功したことが示唆される。連結されたFND Id1/FND Id2/FND Id3/アイデンティマートークンに結合しているストレプトアビジンビーズを画像化した時に、他の2つの蛍光チャンネル(488nmまたは550nm発光)ではシグナルは観察されなかった。次いで、連結された(すなわち、符号化された)FND Id1/FND Id2/FND Id3/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズを別の回の連結に供し、これによって、成長中の分子バーコードにFND Id4を連結した(すなわち、連鎖した)。実施例5に開示されるように、FND Id4のスキャフォールド部はATTO-550で標識され、酵素が到達可能なXhoI制限部位と、FND Id5のスキャフォールド部オリゴヌクレオチド二重鎖への連結に適合する5’オーバーハング(リン酸化されている)とを含んだ。FND Id4を連結した後に、画像化のためにストレプトアビジンビーズ試料をフローセルの中で固定化した。連結された(すなわち、符号化された)FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズの画像を4蛍光チャンネルにおいて撮影し、強度値をプロットした(図19)。FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズ上でAF-750、AF-647、およびATTO-550がはっきりと観察された(図19C)。これにより、FND Id4連結が成功したことが示唆される。FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズを画像化した時に、残りの蛍光チャンネル(488nm発光)ではシグナルは観察されなかった。次いで、FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズを別の回の連結に供し、これによって、成長中の分子バーコードにFND Id5を連結した(すなわち、連鎖した)。実施例5に開示されるように、FND Id5のスキャフォールド部はATTO-488で標識され、酵素が到達可能なNotI制限部位(すなわち、切断部位)を含んだ。FND Id5を連結した後に、画像化のためにストレプトアビジンビーズ試料をフローセルの中で固定化した。FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/FND Id5/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズの画像を4蛍光チャンネルにおいて撮影し、強度値をプロットした(図19)。FND Id1/FND Id2/FND Id3/FND Id4/FND Id5/アイデンティマートークンを含む分子バーコードに結合しているストレプトアビジンビーズ上で4種類全ての標識(AF-750、AF-647、ATTO-550、およびATTO-488)のシグナルが観察された(図19D)。これにより、FND Id5連結が成功したことが示唆される。これらの結果から、標識ビーズのコンビナトリアルライブラリーを作製するために、分割・プールアプローチを用いて、異なって標識されたアイデンティマー鎖(すなわち、分子バーコード)を構築できることが示唆される。連結されたアイデンティマー鎖を図1に示した。他の様々な標識組み合わせを含有する他の鎖を同じように作り(ビーズ上に作製し)、後の復号実験のためにビーズをフローセルのレーンの中に固定化した。
【0192】
単一標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードおよび二重標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードの復号
一部の態様では、三次元配置は直鎖であり、1つまたは2つの開口端を有する。一部の態様では、三次元配置は円形であり、開口端を有さない。一部の態様では、三次元配置はヘアピン形成物であり、ループ状の末端と開口端を有する。当業者は、2つまたはそれ以上のdsDNAオリゴヌクレオチドの粘着末端連結によって一般的にセグメント直鎖が形成され、それぞれのセグメントが一緒に、かつ少なくとも1つの末端で連結されて鎖を形成すると理解する。
【0193】
図20Bは、NotI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。図20Cは、XhoI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。図20Dは、SpeI酵素への曝露後のビーズの平均強度を表す。図20A~Dは、1つまたは複数のFNDアイデンティマーのセットの連鎖によって三次元配置で形成および符号化された分子バーコードの復号を示す。図20A~Dに示したように、連結されたFND Id1~5アイデンティマートークンの直鎖の、セグメントに分かれた鎖とストレプトアビジンビーズから分子バーコードを形成および符号化した。図20A~Dに示したように、FND Id1アイデンティマートークンは非標識であった。FND Id2アイデンティマートークンはATTO-550で標識され、酵素が到達可能なHindIII認識部分を符号化した。FND Id3アイデンティマートークンはAF-647で標識され、酵素が到達可能なSpeI認識部分を符号化した。FND Id4アイデンティマートークンはAF-750で標識され、酵素が到達可能なXhoI認識部分を符号化した。FND Id5アイデンティマートークンはATTO-488で標識され、酵素が到達可能なNotI制限部位を符号化した。復号のために、説明されたアイデンティマー鎖(と標識の組み合わせ)を有するストレプトアビジンビーズをフローセル表面に固定化し、フローセルの単一レーンの内部で画像化した。この復号実験において、どの視野(FOV)にあっても全ビーズが同じアイデンティマー鎖を有する。任意の制限酵素に曝露する前に、フローセルレーン中のストレプトアビジンビーズを画像化した。これによって、4種類全ての検出可能な標識のシグナルが観察された(図20A)。1サイクルごとに1種類の標識が制御されて除去されることを証明するために、最初に、フローセルレーン中のストレプトアビジンビーズを、New England Biolabsによって提供される1×Cutsmart緩衝液(カタログ番号B7204)に溶解した、(脱塩によってグリセロールから実質的に取り出した)200UのNotI酵素を含有する溶液と接触させ、(顕微鏡から外して)温度管理されたヒートブロックチャンバーの中で37℃で30分間インキュベートした。
【0194】
NotI酵素とインキュベートした後に、フローセルレーンに少なくとも100μlの1×Cutsmart緩衝液を流し、フローセルを顕微鏡ステージの上に戻した。(この実験には個々のビーズを追跡することは必要とされなかったので、異なるFOVからの)同じフローセルレーンの画像を4種類全ての蛍光チャンネルにおいて取得した。画像化の際に、直交切断による、この第1の復号サイクルから、NotI切断可能な標識(ATTO-488)がはっきりと除去されたことが観察された(図20B)。他の全てのチャンネル(550nm、647nm、および750nm)において観察されたシグナルは依然として高かった。このことから、NotIによる切断は、アイデンティマー鎖内の他の符号化制限部位と比べて特異的かつ直交性であったことが示唆される。次いで、フローセルを顕微鏡から取り出し、ビーズを、New England Biolabs(NEB)によって提供される1×Cutsmart緩衝液に溶解した、(脱塩によってグリセロールから実質的に取り出した)400UのXhoI酵素を含有する溶液と接触させ、(顕微鏡から外して)温度管理されたヒートブロックチャンバーの中で37℃で30分間インキュベートした。XhoI酵素とインキュベートした後に、フローセルレーンに少なくとも100μlの1×Cutsmart緩衝液を流し、フローセルを顕微鏡ステージの上に戻した。次いで、同じフローセルレーンの画像を4種類全ての蛍光チャンネルにおいて取得した。画像化の際に、直交切断による、この第2の復号サイクルから、XhoI切断可能な標識(AF-750)がはっきりと除去されたことが観察された(図20C)。これらの画像において、ストレプトアビジンビーズはFND Id5結合標識とFND Id4結合標識の両方から取り外されている。このことから、NotIと同様に、XhoI酵素も、その符号化された制限部位にだけ応答して特異的かつ直交性の切断を行うことができたと示唆される。次いで、フローセルを顕微鏡から取り出し、ビーズを、New England Biolabs(NEB)によって提供される1×Cutsmart緩衝液に溶解した、(脱塩によってグリセロールから実質的に取り出した)300UのSpeI酵素を含有する溶液と接触させ、(顕微鏡から外して)温度管理されたヒートブロックチャンバーの中で37℃で30分間インキュベートした。SpeI酵素とインキュベートした後に、フローセルレーンに少なくとも100μlの1×Cutsmart緩衝液を流し、フローセルを顕微鏡ステージの上に戻した。次いで、同じフローセルレーンの画像を4種類全ての蛍光チャンネルにおいて取得した。画像化の際に、直交切断による、この第3の復号サイクルに供したストレプトアビジンビーズは、SpeIによって切断された、FND Id3に機能的に接続されたAF-647から取り外され(図20d)、1種類しか残っていない標識(ATTO-550)の強力なシグナルが観察された。ビーズ上に残っている最後の標識は画像の中ではっきりと区別可能であり、従って、この後に、HindIIIで切断可能な標識(FND Id2)を切断することは不要であった。従って、アイデンティマー鎖の異なって標識された組み合わせは分割・プール連結戦略によって符号化することができ、その後に、直交切断反応サイクルを介して大規模並列式で復号することができる。
【0195】
単一の検出可能な標識を有するFNDアイデンティマートークンおよび二重(混合)の検出可能な標識を有するFNDアイデンティマートークンの復号
図21Bに示したように、分子バーコードは、1つの非標識FNDアイデンティマートークン(FND Id0)と4種類の二重標識FNDアイデンティマートークン(FND Id1-550/750、FND Id2-488/647、FND Id3-750/488、およびFND Id4-488)を含む。
【0196】
図21Aは、単一標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を表す棒グラフを示す。ここでは、分析のためにサイクルの順序を逆にした。
【0197】
図21Bは、混合標識dsDNAアイデンティマー鎖について得られたOCS結果を表す棒グラフを示す。ここでは、分析のためにサイクルの順序を逆にした。
【0198】
図21Aおよび21Bは、それぞれ、単一および二重(混合)の検出可能な標識を有する異なって標識されたFNDアイデンティマートークンで構成される分子バーコードの復号を示した棒グラフである。図21Aに示したように、単一標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードのコンビナトリアルライブラリー理論的能力を証明するために、(FNDアイデンティマークラス:FND Id1-550、FND Id2-750、FND Id3-647、およびFND Id4-488を用いて符号化された)4種類の単一標識FNDアイデンティマートークンを含む分子バーコードを構築し、次いで、復号した。例えば、二重標識されたアイデンティマートークンを含む分子バーコードのセットを構築するために、FND Id2-488をFND Id2-550と等モル比で混合して、(1つの単一標識アイデンティマーにつき4つの異なる可能性に対して)1つの二重標識アイデンティマーにつき、検出可能な標識の合計10通りの視覚的に識別可能な組み合わせを作製した。二重標識アイデンティマー鎖を構築するために混合した、それぞれの二重標識FNDアイデンティマーの視覚的に識別可能な組み合わせは、488/488、488/550、488/647、488/750、550/550、550-/647、550/750、647/647、647-/750、および750/750であった。これらの実験のために、予め決定された鎖構成(すなわち、鎖のそれぞれのアイデンティマー位置にある予め決定された単一標識または標識混合物)を、以前に説明したように(すなわち、連結回と、その間にある洗浄によって)ストレプトアビジンビーズ上に構築した。しかしながら、単一連結反応の中で鎖を構成する全アイデンティマーセグメントを溶液中で連結することで構築し、次いで、その後にストレプトアビジンビーズ上に捕捉した単一標識鎖は性能差を示さなかった(データは示さない)。単一標識アイデンティマー鎖および二重標識アイデンティマー鎖を有するストレプトアビジンビーズについて、それぞれの視野における100個を超えるビーズにわたる平均ビーズ強度を、それぞれのサイクルにおいて4種類全ての蛍光チャンネルにおいて取得した。切断されていないストレプトアビジンビーズ、その後にNotI(サイクル1)で切断されたストレプトアビジンビーズ、その後にXhoI(サイクル2)で切断されたストレプトアビジンビーズ、およびその後にSpeI(サイクル3)で切断されたストレプトアビジンビーズの画像を取得した。次いで、日付の新しい順に画像を分析した。例えば、サイクル3(SpeIによる切断)の後に取得した画像を、シリーズの中の第1の画像として分析した。サイクル2(XhoIによる切断)の後に取得した画像を、シリーズの中の第2の画像として分析した。サイクル1(NotIによる切断)の後に取得した画像を、シリーズの中の第3の画像として分析した。切断されなかったビーズを、シリーズの中の第4の画像として分析した。日付の新しい順で、それぞれのアイデンティマーセグメントに結合した標識を1サイクルごとに確かめるために、「次の」画像から、「前の」画像で入手した4種類全ての蛍光チャンネルの強度値を差し引いた。例えば、XhoI切断後に取得した画像に由来する4種類全ての蛍光チャンネルについて入手した強度値から、SpeI切断後に取得した画像に由来する4種類全ての蛍光チャンネルについて入手した強度値を差し引いた。この分析は、それぞれのサイクルについて、シリーズの中で実施した。分析後に、それぞれのサイクルにおいて、単一標識鎖と二重標識鎖の両方について4種類全ての蛍光チャンネルにおいて入手した強度値をプロットした。図21Aは、単一標識アイデンティマー鎖を有するビーズから放出された標識の配列または順序を示す。図21Bは、二重標識鎖を有するストレプトアビジンビーズから放出された順序を示す。単一標識実験において全ての切断サイクルにわたって放出された標識の順序(すなわち、配列)は容易に分離された。グラフの中では標識FNDアイデンティマートークンだけを数えた(Id0は非標識であり、ビーズに結合している)。画像化のエラーによって二重標識実験におけるId3同定が妨げられたが、鎖における隣接するアイデンティマーセグメントに結合した標識は容易に分離された。単一標識実験において復号されたdsDNAアイデンティマー鎖配列はId1-550、Id2-750、Id3-647、およびId4-488であった。二重標識実験において復号されたdsDNAアイデンティマー鎖配列は、Id1-550/750、Id2-488/647、Id3は確かめられなかった、およびId4-750/488であった。これらの結果から、このアプローチを用いて、蛍光標識ビーズのコンビナトリアルライブラリーを符号化および復号できることが示唆される。例えば、(示した実験に基づいて開発される)このようなコンビナトリアルライブラリーの理論的多様性は単一標識鎖の場合は256、二重標識鎖の場合は10,000になると考えられる。このようなライブラリーを最大の理論的多様性で復号するには、個々のストレプトアビジンビーズを追跡することが必要になると考えられる。
【0199】
FNDアイデンティマーベース分子バーコードの復号:4枚の画像にわたる9つの個々のビーズの追跡(1種類のアイデンティマーにつき単一標識、3回の切断サイクル)
本明細書において以前に開示されたように、FND Id1-550、FND Id2-750、FND Id3-647、およびFND Id4-488トークンを含む分子バーコード(単一連結反応の中で全アイデンティマーを溶液中で連結することで構築し、次いで、ビーズ上に捕捉した)は、それぞれの個々のアイデンティマーを連結し、その間に洗浄することで段階的に構築したFNDアイデンティマーベース分子バーコードと比較した時に明らかな性能差(様々な復号実験からの定性評価および定量評価)を示さなかった。従って、(図22に示したように)単一ビーズ追跡実験のために組み立てた、全体の単一標識FNDアイデンティマーベース分子バーコードを溶液中で予め連結した後に、ビーズをコーティングするのに使用した。
【0200】
全ての切断サイクルにわたって単一ビーズの追跡を証明するために、標識FNDアイデンティマートークンの単一の予め決定された配列を含む分子バーコードに結合体化されたストレプトアビジンビーズをフローセル中に固定化し、それぞれの切断物質(サイクル1ではNotI、サイクル2ではXhoI、およびサイクル3ではSpeI)への曝露の前後に画像化した。全サイクルを画像化した後に、追跡のために9つの個々のビーズを選択した。日付の新しい順に画像を分析し、上記のように「前の」サイクルに由来する値を差し引き、結果として生じた強度値を、それぞれのサイクルで9つ全てのビーズについてプロットした。
【0201】
図22Aは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6lビーズの1番目を表す。図22Bは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6lビーズの2番目を表す。図22Cは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する3番目のビーズを表す。図22Dは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する4番目のビーズを表す。図22Eは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する5番目のビーズを表す。図22Fは、3サイクルのOCS実験にわたって追跡した、FOVにある個々のビーズからデータを作成するのに使用した同じ単一標識アイデンティマー鎖配列を有する6番目のビーズを表す。
【0202】
図22に示したように、9つの個々に追跡されたストレプトアビジンビーズから入手したFNDアイデンティマー「直交切断シークエンシング」(OCS)データを示す。この実験で追跡された全ストレプトアビジンビーズは、予め決定された順序の直交切断物質に曝露された時に、予想された(正しい)順序のフルオロフォア放出を示した。これらの結果から、多くの異なるユニークに標識されたFNDアイデンティマートークン配列を含むFNDアイデンティマーベース分子バーコードに結合体化されたストレプトアビジンビーズを高度に並列したやり方で分離できることが示唆される。
【0203】
256メンバーコンビナトリアルビーズライブラリーの符号化および復号:異なるカラーコードを含むFNDアイデンティマー分子バーコード
多くのストレプトアビジンビーズを並列に符号化するのを証明するために、単一標識FNDアイデンティマーを、他と異なる標識組み合わせを含有する鎖の中に無作為に組み込んだ。組み合わせ分子バーコード構築は、FNDアイデンティマー連結工程の回の間にストレプトアビジンビーズを分割およびプールすることによって実施した。合計256の全多様性を有する蛍光ストレプトアビジンビーズライブラリーを作製するために、4つの異なる標識を4種類のFNDアイデンティマークラス(FND(256)Id1~4)のそれぞれに配置して、考えられる256通りの標識組み合わせを生成した。FND(256)Id0は非標識であり、最初に、FND(256)Id1に連結するためのアクセプターとして働くようにストレプトアビジンビーズに結合させた(本明細書において以前に、単一標識鎖を構築した時に説明した)。FND(256)Id1~3は、それぞれ、HindII、SpeI、XhoI認識部分を有するように構成された。もっと詳細に述べると、実施例5に開示される標識方法によって、FND(256)Id1~4を、最初に、4種類全てのフルオロフォア(ATTO-488、ATTO-550、AF-647、およびAF-750)で標識した。それぞれの標識オリゴヌクレオチド二重鎖を標準的な96ウェルプレートの別々のウェルに取っておいた。このやり方では、各回の分割とプールの間に、4つの異なって標識された選択肢が、それぞれのFNDアイデンティマーに使用可能であった。第1回の分子バーコード構築では、FND(256)Id0でコーティングされた0.2mg/mlビーズを分割して4つのウェルに入れ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)、T4 DNAリガーゼ、および300nM濃度の4つの異なって標識されたFND(256)Id1のうちの1つ(すなわち、FND(256)Id1-488、FND(256)Id1-550、FND(256)Id1-647、またはFND(256)Id1-750)を加えた1×T4 DNAリガーゼ緩衝液を含有する溶液に曝露した。FND(256)Id1の効率的な連結を促進するために(約15~20分間)インキュベートした後に、連結反応をクエンチし、連結されなかったFND(256)Id1を洗い流すために用いられる溶液を用いて、ストレプトアビジンビーズ(磁気)を(ストレプトアビジンビーズが連結された)同じウェルの中で数回洗浄した。次いで、4つの異なって標識されたFND(256)Id1に結合体化されたストレプトアビジンビーズを、均一に混合するために同じチューブにプールした。次いで、ストレプトアビジンビーズを分割して4つのウェルに入れ、FND(256)Id2に使用可能な4つの異なって標識された選択肢のそれぞれを含有する連結溶液に曝露した。FND(256)Id1~4の4種類全てのアイデンティマークラスを連結して256個の異なるビーズのライブラリーを作製するために、この分割・プール手順を繰り返した。本明細書において以前に説明したOCS手順を用いて、ライブラリーから単一ビーズを追跡し、上記のように(「前の」サイクルから差し引いて)日付の新しい順に画像を分析し、それぞれのサイクルについて、4種類全てのチャンネルにおける画像化から入手した蛍光値をプロットした。
【0204】
図23は、256メンバーライブラリーからの3つの個々のストレプトアビジンビーズのOCSシークエンシング読み取りデータを示す。図23に示した3つのビーズからのフルオロフォア放出の順序は、この実験において容易に分離された。二重標識実験と一緒にまとめると、これらのデータから、ここで説明した方法を用いて、10,000のビーズからなるライブラリーを符号化および復号できると示唆される。鎖の中に、もっと多くのアイデンティマーを付加すると、またはさらなる個々に検出可能な標識(例えば、量子ドットなど)を使用すると、OCSを用いて、これよりかなり大きなライブラリーを符号化および復号することができる。
【0205】
実施例6 リングアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号
A.リングアイデンティマー組成物および構築
実施例6に開示されるように、dsDNAの連結されたリング(本明細書では「リングアイデンティマー」または「リングId」と呼ぶ)を含むスキャフォールド部を有する3つのアイデンティマークラス(リングId1~3)を構築し、リングIdベース分子バーコードのセットを構築するのに使用した。リングId1~3のそれぞれのスキャフォールド部は、1つまたは複数の制限部位と、(NHS-LC-ビオチンを介して; Sigma-Aldrich, Inx., PO Box 14508, St. Louis, MO 68178, USA; CAS No.: 35013-72-0から市販されている)ストレプトアビジンビーズを結合させるためのアミノ改変塩基と、NHS-フルオロフォア(ThermoFisher Scientific, Inc. 168 Third Avenue, Waltham, MA 02451, USA; カタログ番号65601から市販されている)とを含むように構成された。本明細書において以前に説明したように全てのオリゴヌクレオチド-ストレプトアビジン結合体化を実施した。
【0206】
リングId1のスキャフォールド部は、Hp_Dual_NH2_XhoIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:27)と、Hp_iNH2_XhoI_beadオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:28)とを含んだ。SEQ ID NO:27の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:27の位置14および20はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:27の位置34~37は、SEQ ID NO:28の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:27の位置13~22はステムループ特徴を含んだ。SEQ ID NO:28の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:28の位置17はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:28の位置34~37は、SEQ ID NO:27の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:27の位置13~21はステムループ特徴を含んだ。
【0207】
リングId2のスキャフォールド部は、Hp_Dual_NH2_SpeIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:29)と、Hp_iNH2_SpeI_beadオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:30)とを含んだ。SEQ ID NO:29の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:29の位置14および20はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:29の位置34~37は、SEQ ID NO:30の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:29の位置13~21はステムループ特徴を含んだ。SEQ ID NO:30の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:30の位置17はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:30の位置34~37は、SEQ ID NO:29の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:30の位置13~21はステムループ特徴を含んだ。
【0208】
リングId3のスキャフォールド部は、Hp_Dual_NH2_NotIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:31)とHp_iNH2_NotI_beadオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:32)を含んだ。SEQ ID NO:31の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:31の位置16および22はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:31の位置38~41は、SEQ ID NO:32の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:31の位置13~21はステムループ特徴を含んだ。SEQ ID NO:32の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:32の位置17はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:32の位置34~37は、SEQ ID NO:31の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。SEQ ID NO:32の位置13~21はステムループ特徴を含んだ。
【0209】
1セットのストレプトアビジンビーズとの結合体化に備えて、1セットのHp_iNH2_XhoI_beadオリゴヌクレオチド、1セットのHp_iNH2_SpeI_beadオリゴヌクレオチド、および1セットのHp_iNH2_NotI_beadオリゴヌクレオチド(「HP_iNH2オリゴヌクレオチド」と総称する)を合成した。Hp_iNH2オリゴヌクレオチドをアミン反応性ビオチン(NHS-LC-ビオチン)と組み合わせて、ビオチンをHp_iNH2オリゴヌクレオチド(すなわち、3種類全てのHP_iNH2オリゴヌクレオチドの位置17に対応するヌクレオチド)の遊離アミンと結合体化した。ビオチン化HP_iNH2オリゴヌクレオチドからなるそれぞれのセットを200nMの最終濃度まで懸濁した。
【0210】
1セットのHp_Dual_NH2_Xholオリゴヌクレオチド、1セットのHp_Dual_NH2_SpeIオリゴヌクレオチド、および1セットのHp_Dual_NH2_NotIオリゴヌクレオチド(「Hp_Dual_NH2オリゴヌクレオチド」と総称する)を合成し、それぞれのHp_Dual_NH2オリゴヌクレオチドとの連結に備えてフルオロフォアで標識した。アミン反応性ATTO-550(NHS-ATTO-550)をHp_Dual_NH2_Xholオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの位置14および20に対応するヌクレオチド位置を二重標識した。アミン反応性ATTO-647(NHS-ATTO-647)をHp_Dual_NH2_SpeIオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの位置14および20に対応するヌクレオチドを二重標識した。アミン反応性ATTO-488(NHS-ATTO-488)をHp_Dual_NH2_NotIオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの位置16および22に対応するヌクレオチドを二重標識した。標識されたHp_Dual_NH2オリゴヌクレオチドからなるそれぞれのセットを200nMの最終濃度まで懸濁した。
【0211】
リングIdベース分子バーコードのセットを形成および符号化するために、最初に、本明細書において以前に説明した方法によって、ビオチン化HP_iNH2オリゴヌクレオチドからなる3種類全てのセットをストレプトアビジンビーズのセットに結合させた。結合しなかったオリゴヌクレオチドを除去するために、ストレプトアビジンビーズのセットを洗浄し(0.01%Tween-20を加えた200μlの2×ハイブリダイゼーション用緩衝液で3回、次いで、200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄した)、次いで、NEBによって提供される1×連結用緩衝液100μlでもう2回洗浄し、50μlの連結用緩衝液に再懸濁し、連結反応の前にビーズ凝集塊をばらばらにするために3分間超音波処理した。
【0212】
本明細書において以前に説明したように、連結反応は、HP_iNH2オリゴヌクレオチドからなる3種類全てのセットからのメンバーでコーティングされた0.2mg/mlストレプトアビジンビーズを使用し、別々の連結回においてHp_Dual_NH2オリゴヌクレオチドからなるそれぞれのセットを導入して実施した。言い換えると、ストレプトアビジンビーズのセットを、最初に、第1の連結サイクルではビーズ結合Hp_iNH2_XhoI_beadオリゴヌクレオチドへの粘着末端連結を介してHp_Dual_NH2_Xholオリゴヌクレオチドのセットに連結し、2番目に、第2の連結サイクルではビーズ結合Hp_iNH2_SpeI_beadオリゴヌクレオチドへの粘着末端連結を介してHp_Dual_NH2_SpeIオリゴヌクレオチドのセットに連結し、次いで、3番目に、第3の連結サイクルではHp_iNH2_NotI_beadオリゴヌクレオチドを介してHp_Dual_NH2_NotIオリゴヌクレオチドのセットに連結して、リングId1~3の構築を完了し、リングIdベース分子バーコードのセットを形成した。従って、それぞれのリングIdベース分子バーコードの三次元配置は、符号化された結合体化リングId1~3トークンのセットと、1個のストレプトアビジンビーズとを含んだ。
【0213】
B.リングIdベース分子バーコードの復号
3回の連結ラウンドの符号化が完了した後に、ストレプトアビジンビーズを、0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄し、20μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液に再懸濁し、3分間超音波処理し、固定化と後の切断実験のためにビオチン改変表面を含有するフローセル中にロードした。
【0214】
一部の態様では、OCSコードと協調された成分をもつ他の分子を同時符号化するために、OCS適合ストレプトアビジンビーズライブラリーが用いられる場合がある。例えば、核酸内にあるバーコードは、NGSワークフローにおいて使用したオリゴヌクレオチドを(本明細書に記載のように、または同じビーズに結合される別々の分子として)捕捉する。これは協調連結によって成し遂げることができる。一部の態様では、合成化学反応に抵抗することができるアイデンティマー構成が化合物ライブラリーを符号化するのに有用である。(本明細書において以前に説明したように)これに対処するために、DNA以外のポリマーで構成されるスキャフォールド部からOCS適合ライブラリーを構築することができる。当業者は、DNAの直鎖5’末端および3’末端が露出している時にDNAはおおむね分解されやすく、従って、環状化されていれば、いくつかの化学反応への曝露による分解からもっと保護されることを理解する。
【0215】
OCSワークフローにおける異なるアイデンティマー三次元配置の効力をさらに探索するために、異なる制限酵素認識部位を符号化する長いdsDNA領域を含有する円形ssDNAリングの標識された組み合わせを、本明細書において以前に説明したようにビーズ上で段階的に構築した(図25)。それぞれが、3つの異なる標識されたヘアピンオリゴヌクレオチドのうちの1つのみとの連結に適合する5’オーバーハングを含有する、3つの異なるssDNAヘアピンオリゴヌクレオチドHP_iNH2オリゴヌクレオチドをストレプトアビジンビーズに結合させた。3回の構築(符号化)にわたって、一度に一種類の標識ヘアピンを、上記のように連結溶液中に導入した。各回のリングアイデンティマー構築の後に、(488nm、550nm、および647nm発光のデータを取得するために)関連する蛍光チャンネルにおいて、フローセル中に固定化したビーズの画像を撮影した。所定のFOVにある多くのストレプトアビジンビーズの平均から強度値を入手し、未加工の画像のそばに、それぞれの標識についてプロットした。それぞれの標識ヘアピンによる段階的連結の際に、ビーズは、予想されたチャンネルでしか蛍光強度を増やさなかったことは画像化から明らかであった。
【0216】
このプロセスは、以前に説明したように分割・プールの手順において繰り返すことができ、連結工程は、それぞれのプール工程前の洗浄工程によって隔てられている。これらの結果から、アイデンティマーをDNAリングとして構築することができ、これらの構造を組み合わせて符号化できることが分かる。
【0217】
OCSワークフローにおいてリング構造を試験するために、3つの形成されたリングアイデンティマーを含有するビーズをフローセル中に固定化し、300UのSpeI酵素を含有する溶液に曝露した(図8A)。SpeIによる切断の前後に画像を撮影し、3つの関連する蛍光チャンネルについて、ビーズから入手した全強度値をプロットした(図8B)。実際に、円形生成物は連結されたら、SpeIによる切断に適合する、完全に形成された、酵素が到達可能なdsDNA制限部位を含む。まとめると、これらの結果から、アイデンティマーをDNAリングとして構築できることができ、組み合わせて符号化してOCS適合ライブラリーを作製できること分かる。
【0218】
実施例7 ヘアピンアイデンティマーベース分子バーコードの符号化および復号
OCSワークフローにおける異なるアイデンティマーの三次元構造の効力を探索するために、本明細書において以前に開示した方法によって、標識およびビオチン化されたdsDNAアクセプターを二重標識ヘアピンと連結することによって、酵素が到達可能なSpeI切断部位によって隔てられている2つの他と異なる標識を含む蛍光ssDNAヘアピンアイデンティマーを構築した(図24A)。1×Cutsmart緩衝液(NEB)に溶解した300UのSpeIに曝露する前および曝露した後(図24B)に、FSHアイデンティマーでコーティングした(以前に説明したようにフローセル中に固定化した)ストレプトアビジンビーズから画像を両蛍光チャンネルにおいて取得した。取得した画像は、300UのSpeI酵素に37℃で5分間曝露した後にAF-750がはっきりと除去されたことを示す。これに対して、ビーズ上にはAF-647標識からの強力なシグナルが残っていた。それぞれのFOVにある多くのビーズからの値を合計および平均した(ここでは、個々のビーズは追跡されなかった)。次いで、SpeI切断後のビーズからの全%シグナル消失(750nm発光)の視覚的表示のために蛍光強度値をパーセント値に補正した(図24C)。切断後のAF-750シグナル消失は、この実験において約82%であった。これらの結果から、ここで設計したヘアピン構造は2つのセグメントのアイデンティマーとして機能することができ、そのため、OCS適合ライブラリーの構築および作製(符号化)において、制限部位と視覚的に識別可能な標識の異なる組み合わせを含有する異なるヘアピンの組み合わせを使用することができると示唆される。
【0219】
実施例7に開示されるように、ステム二重鎖部とループ部を含むスキャフォールド部を有する3種類のアイデンティマークラス(ヘアピンId1~3)(本明細書では「ヘアピンアイデンティマー」と呼ぶ)を構築し、ヘアピンIdベース分子バーコードのセットを構築するのに使用した。ヘアピンId1~3のそれぞれのステム二重鎖部は、ハイブリダイズし、連結に使用可能な遊離粘着末端を有するdsDNA二重鎖を形成するように構成された第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドを含んだ。第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドは二重鎖を形成すると第1の制限エンドヌクレアーゼ認識部と第2の制限エンドヌクレアーゼ認識部(本明細書では、それぞれ「RE1部位」および「RE2部位」と呼ぶ)を含んだ。ヘアピンId1~3のそれぞれの第1のオリゴヌクレオチドは、二重鎖をビオチン化するのに使用可能な5AmMC6改変ヌクレオチドを有するように構成された。ヘアピンId1~3のそれぞれの第2のオリゴヌクレオチドは、NHSフルオロフォアによる蛍光標識に使用可能な内部iAmMC6T改変ヌクレオチドを有するように構成された。実施例7において用いられるように、ヘアピンId1~3のそれぞれのループ部は、ステップ-ループ(step-loop)構造を有するdsDNA二重鎖を形成するように構成されたssDNA Hp_Dual_NH2オリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:39)を含んだ。SEQ ID NO:39の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:39の位置14および20はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変オリゴヌクレオチドであった。位置13~21はステム-ループ構造を含む。それぞれのループ部は、NHSフルオロフォアによる蛍光標識に使用可能なステム-ループ構造内の位置に1つまたは複数のiAmMC6T 改変ヌクレオチドを有するように構成された。ヘアピンId1~3のそれぞれのスキャフォールド部は、1つまたは複数の認識部分と、(NHS-LC-ビオチンを介して;Sigma-Aldrich, Inx., PO Box 14508, St. Louis, MO 68178, USA; CAS No.: 35013-72-0から市販されている)ストレプトアビジンビーズに結合させるためのアミノ改変塩基と、NHS-フルオロフォア(ThermoFisher Scientific, Inc. 168 Third Avenue, Waltham, MA 02451, USA; カタログ番号65601から市販されている)とを含むように構成された。本明細書において以前に説明したように、全てのオリゴヌクレオチド-ストレプトアビジン結合体化を実施した。
【0220】
ヘアピンId1のステム二重鎖部の第1のオリゴヌクレオチドはAb_stem1_SpeI_XhoIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:33)を含んだ。SEQ ID NO:33の位置1に対応するヌクレオチドは、アミノモディファイヤーC6改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:33の位置17~22および31~36は、それぞれ、SpeI認識部分およびXhoI認識部分を含んだ。SEQ ID NO:33の位置41~44は、SEQ ID NO:39の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。ヘアピンId1のステム二重鎖部の第2のオリゴヌクレオチドはAb-stem1_compオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:34)を含んだ。SEQ ID NO:34の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:34の位置14はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:28の位置5~10および18~23は、それぞれ、XhoI認識部分およびSpeI認識部分を含んだ。
【0221】
ヘアピンId2のステム二重鎖部の第1のオリゴヌクレオチドオリゴヌクレオチドはAb_stem2_HindIII_SpeIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:35)を含んだ。SEQ ID NO:35の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6によって改変した。SEQ ID NO:35の位置16~21および30~35は、それぞれ、HindIII認識部分およびSpeI認識部分を含んだ。SEQ ID NO:35の位置40~43は、SEQ ID NO:39の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。ヘアピンId2のステム二重鎖部の第2のオリゴヌクレオチドはAb-stem2_compオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:36)を含んだ。SEQ ID NO:36の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:36の位置14はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:36の位置5~10および18~23は、それぞれ、HindIII認識部分およびSpeI認識部分を含んだ。
【0222】
ヘアピンId3のステム二重鎖部の第1のオリゴヌクレオチドはAb_stem3_EcoRI_HindIIIオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:37)を含んだ。SEQ ID NO:37の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6によって改変した。SEQ ID NO:37の位置16~21および30~35は、それぞれ、EcoRI認識部分およびHindIII認識部分を含んだ。SEQ ID NO:33の位置40~43は、SEQ ID NO:39の粘着末端にアニールするように構成された粘着末端を含んだ。ヘアピンId3のステム二重鎖部分の第2のオリゴヌクレオチドはAb-stem3_compオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:38)を含んだ。SEQ ID NO:38の位置1に対応するヌクレオチドを5'リン酸化によって改変した。SEQ ID NO:34の位置14はIntアミノモディファイヤーC6 dT改変ヌクレオチドであった。SEQ ID NO:28の位置5~10および18~23は、それぞれ、HindIII認識部分およびEcoR1認識部分を含んだ。
【0223】
二重鎖形成およびストレプトアビジンビーズのセットとの結合体化に備えて、1セットのAb_stem1_SpeI_XhoIオリゴヌクレオチド、1セットのAb-stem1_SpeI_XhoIオリゴヌクレオチドオリゴヌクレオチド、1セットのAb_stem2_HindIII_SpeI、1セットのAb-stem2_compオリゴヌクレオチド、1セットのAb_stem3_EcoRI_HindIIIオリゴヌクレオチド、および1セットのAb_stem3_compオリゴヌクレオチド(本明細書では「ステムオリゴヌクレオチド」と総称する)を合成した。
【0224】
実施例7において用いられるように、全てのオリゴヌクレオチドを、精製オリゴ(HPLC)として、または標準的な脱塩オリゴとしてIDTから取り寄せた。最初に、5’-アミノ改変を含有する標準的な脱塩オリゴヌクレオチドを脱塩するか、または合成から引き継いだ過剰な遊離アミンを除去するように沈殿させた。無水DMFに再懸濁したNHS-LC-ビオチン(Sigma-Aldrich, Inx., PO Box 14508, St. Louis, MO 68178; Cas No.: 68302-57-8から市販されている)を約2.0mMの最終濃度まで添加することによって、MyOne T1ストレプトアビジンビーズに結合させるのに適切な化学反応によってステムオリゴヌクレオチド(200uM)の5’-アミノ基を改変し、NHS結合体化用緩衝液(NCB: 100mM NaPO4 pH8.5)中で室温で一晩反応させた。次いで、全ての過剰な未反応ビオチンを除去するために、この反応物を、7K MWCO Zeba脱塩カラム(ThermoFisher Scientific, Inc.(168 Third Avenue, Waltham, MA 02451, USA;カタログ番号89891から市販されている)を用いて水に対して2回緩衝液交換した。
【0225】
本明細書において以前に説明したように、内部アミノ改変オリゴヌクレオチド(すなわち、Ab_stem1_comp、Ab_stem2_comp、Ab_stem2_comp、HP_Dual_NH2)を様々なNHS-フルオロフォアで標識した(1mM NHS-フルオロフォア試薬を200μMのオリゴとNHS結合体化用緩衝液中で、フルオロフォア光退色を阻止するために暗所において室温で一晩反応させた)。翌日、2×ハイブリダイゼーション用緩衝液(20mM Tris-HCl pH7.5/1M NaCl/1mM EDTA)で10倍希釈して20uMの濃度にすることによって、これらの反応をクエンチした。
【0226】
図<tbd>に示したように、Ab_stem1_SpeI_XhoIをビオチン化し、Ab_stem1_compをNHS-AF-647で標識し、ヒートブロック中で、90℃で5分間加熱し、約30分間にわたってゆっくりと室温まで冷却することによって1×ハイブリダイゼーション用緩衝液中で2種類のオリゴヌクレオチドを1:1.2モル比(それぞれ;10μMのビオチン化オリゴヌクレオチド:12μMの標識オリゴヌクレオチド)でアニールした。このアニールした、ビオチン化647標識オリゴヌクレオチド二重鎖を、上記のように単一のフルオロフォアタイプ(実施例ではNHS-AF750を示した; Thermo)で予め標識したHP_Dual_NH2オリゴヌクレオチドと溶液中で連結した。溶液中連結は、250μlの連結反応物において、5μlのT4 PNK(NEB)と5μlのT4 DNAリガーゼ(NEB)と共に、最終濃度400nMのAF750標識HP_Dual_NH2オリゴヌクレオチドを含む1×T4 DNAリガーゼ緩衝液(NEB)の中で、200nMのアニールした二重鎖を37℃で30分間混合することによって実施した。連結反応においてビオチン化オリゴヌクレオチドと結合する前に、上記のように予め洗浄した(2×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄した)MyOne T1ストレプトアビジンビーズ上に連結物を直接捕捉した。2×ハイブリダイゼーション用緩衝液に溶解した0.2mg/mlの洗浄済みビーズ250μlを連結反応物250μlと混合することによって結合を開始し、37℃で30分間進行させた。次いで、ビーズを、0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、1×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで2回洗浄し、20μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液に再懸濁し、3分間超音波処理し、固定化と後の切断実験のためにビオチン改変表面を含有するフローセル中にロードした。
【0227】
実施例9 ssDNAハイブリダイゼーション(Hyb)アイデンティマーによって生成された分子バーコードの符号化および復号
実施例9に開示されるように、3つのアイデンティマークラス(Hyb Id1~3)から、3つのHyb Idベース分子バーコードのセットを形成および符号化した。ここでは、それぞれのアイデンティマークラスは、第1のハイブリダイジングオリゴヌクレオチドと第2のハイブリダイジングオリゴヌクレオチドを有するスキャフォールド部を含み、ハイブリダイジングヌクレオチドは、互いにハイブリダイズし、Hyb Idベース分子バーコードのセットを構築するのに使用した1つまたは複数の直交切断部位を有するビオチン化蛍光標識dsDNA二重鎖(「ハイブリダイゼーションアイデンティマー」または「Hyb Id」と総称する)を形成するように構成されている。Hyb Id1~3のスキャフォールド部は、それぞれ、XhoI認識部分、SpeI認識部分、およびNotI認識部分を含む。
【0228】
Hyb Id1のスキャフォールド部は、Hyb_5NH2_XhoI_bead第1のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:40)(本明細書では「Hyb_5NH2_XhoI_beadオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)と、Hyb_5NH2_XhoI_comp第2のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:41)(本明細書では「Hyb_5NH2_XhoI_compオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)とを含んだ。SEQ ID NO:40の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。SEQ ID NO:40の位置22~27はXhoI認識部分(実施例9では「RE3部位」とも呼ぶ)を含んだ。SEQ ID NO:41の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。SEQ ID NO:41の位置8~13はXhoI認識部分を含んだ。
【0229】
Hyb Id2のスキャフォールド部は、Hyb_5NH2_SpeI_bead第1のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:42)(「Hyb_SpeI_XhoI_beadオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)と、Hyb_5NH2_SpeI_comp第2のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:43)(本明細書では「Hyb_5NH2_SpeI_compオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)とを含んだ。SEQ ID NO:42の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。SEQ ID NO:42の位置21~26はSpeI認識部分(実施例9では「RE2部位」とも呼ぶ)を含んだ。SEQ ID NO:43の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。
【0230】
Hyb Id3のスキャフォールド部は、Hyb_5NH2_NotI_bead第1のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:44)(本明細書では「Hyb_5NH2_XhoI_beadオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)と、Hyb_5NH2_XhoI_comp第2のハイブリダイジングオリゴヌクレオチド(SEQ ID NO:45)(本明細書では「Hyb_5NH2_XhoI_compオリゴヌクレオチド」とも呼ぶ)とを含んだ。SEQ ID NO:44の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。SEQ ID NO:44の位置22~27はNotl認識部分(実施例9では「RE3部位」とも呼ぶ)を含んだ。SEQ ID NO:41の位置1に対応するヌクレオチドをアミノモディファイヤーC6で改変した。
【0231】
アミン反応性ATTO-550(NHS-ATTO-550)をHyb_5NH2_XhoI_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:41の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。アミン反応性AF-647(NHS-AF-647)をHyb_5NH2_SpeI_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:43の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。アミン反応性ATTO-488(NHS-ATTO-488)をHyb_5NH2_Notl_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:45の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。
【0232】
Hyb_5NH2_XhoI_compオリゴヌクレオチド、Hyb_5NH2_SpeI_compオリゴヌクレオチド、およびHyb_5NH2_Notl_compオリゴヌクレオチド(実施例9では「compオリゴヌクレオチド」と総称する)からなる標識されたセットを、本明細書において既に説明したようにビオチン化し、3種類全てをコーティングのためにMyOne T1ストレプトアビジンビーズに付加した。compオリゴヌクレオチドを、上記のように様々なNHS-フルオロフォア試薬で標識した。ビオチン化オリゴヌクレオチドでコーティングされたビーズの組み合わせ符号化のために、分割・プールサイクルの間に一度に1種類の標識ハイブリダイジングオリゴヌクレオチドを導入した。これらの標識ハイブリダイジングオリゴヌクレオチドを0.5×ハイブリダイゼーション用緩衝液に溶解して、それぞれの符号化サイクルの間に200nMの濃度で導入した。捕捉を促進するためにチューブと時々タップしながら、標識された鎖をビーズと37℃で30分間インキュベートした。それぞれの符号化サイクルの間に、ビーズを、0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、200μlの1×で2回洗浄した。
【0233】
20μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液に再懸濁し、3分間超音波処理したハイブリダイゼーション用緩衝液。ハイブリダイゼーションによるアイデンティマーの3回の符号化が完了した後に、ビーズを0.01%Tween-20を加えた2×ハイブリダイゼーション用緩衝液200μlで3回洗浄し、200μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液で2回洗浄し、20μlの1×ハイブリダイゼーション用緩衝液に再懸濁し、3分間超音波処理し、固定化と後の切断実験のためにビオチン改変表面を含有するフローセル中にロードした。
【0234】
アミン反応性ATTO-550(NHS-ATTO-550)をHyb_5NH2_XhoI_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:41の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。アミン反応性AF-647(NHS-AF-647)をHyb_5NH2_SpeI_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:43の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。アミン反応性ATTO-488(NHS-ATTO-488)をHyb_5NH2_Notl_compオリゴヌクレオチドのセットと組み合わせて、それらの5’遊離アミン(すなわち、SEQ ID NO:45の位置1に対応するヌクレオチド)を標識した。実施例9の終了。
【0235】
画像化システムダイナミックレンジ
一部の態様では、画像化方法は画像化システムのダイナミックレンジによって制限されることがある(Weissleder et al., IEEE J. Sel. Top Quantum Electron; Jan-Feb; 25(1):6801507 (2019)を参照されたい)。例えば、本明細書に記載のようにライブラリーを構築する時に、一部のストレプトアビジンビーズは複数コピーの同じフルオロフォアを有し、どの蛍光チャンネルにおいてもシグナルを飽和させることが見出されたストレプトアビジンビーズは分離しにくいことがある。従って、一部の態様では、ハイダイナミックレンジ画像化を用いることで、開示される組成物および方法を用いて構築できるライブラリー多様性に改良が加えられる。例えば、それぞれの実験のデータ点について3枚の画像を取得する:1枚は低露出で撮影し、1枚は中露出で撮影し、1枚は高露出で撮影する。これらの3枚の画像を数学的に元どおりに縫い合わせて、非常に高いダイナミックレンジで1枚の連続した「画像」を作り出す。このやり方では、ごくわずかなコピーのフルオロフォアを含有するストレプトアビジンビーズを、多くのコピーの前記フルオロフォアを含有するストレプトアビジンビーズと同じ視野(実験)で画像化することができる。ごくわずかなコピーのフルオロフォアを有するストレプトアビジンビーズは、その値を、正確に定量することができる範囲に上げるために高露出を必要とし、多くのコピーのフルオロフォアを有するビーズは、その値を飽和未満に下げ、正確に定量することができる範囲にするために低露出を必要とする。従って、一部の態様では、ハイダイナミックレンジ画像化を使用すると、同じ実験結果に大きくそれるストレプトアビジンビーズは、本明細書において開示される組成物および方法を用いて構築されるライブラリー多様性を増やすことができる。
【0236】
本開示の根底にある原理から逸脱することなく上記の態様の細部に多くの変更が加えられ得ることは当業者に明らかである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【配列表】
2024509822000001.app
【国際調査報告】