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特表2024-509834新興感染症のポイントオブニード診断のための保護された等温核酸増幅(PINA)方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】新興感染症のポイントオブニード診断のための保護された等温核酸増幅(PINA)方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240227BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553357
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022055307
(87)【国際公開番号】W WO2022184784
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21160578.7
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523139641
【氏名又は名称】ミッジ・メディカル・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ヴァイドマン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・リースター
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ10
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR39
4B063QS24
(57)【要約】
本発明は、DNA及びRNAの保護された等温核酸増幅(PINA)のための迅速かつ信頼性のある方法に関する。特に、本発明は、例えば、目的の生物学的プローブ中の感染因子を迅速に診断するための診断方法に関する。特に、方法は、非実験室環境において増幅方法を実施するための手持ち式の携帯可能な診断システム(「家庭用検査」)で実施されるのに適切である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは生物学的サンプル中の、少なくとも1つの標的配列の核酸増幅の等温方法であって、前記方法が、適切な反応成分と共に、用意する工程、
a)少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの標的配列特異的プライマー、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、及び必要に応じて、少なくとも1種の逆転写酵素を用意する工程;
b)前記少なくとも1つの標的配列の存在について分析される少なくとも1つの生物学的サンプルを用意する工程、及び必要に応じて、前記生物学的サンプルを得るための抽出キット、好ましくは無菌の抽出キットを用意する工程;
c)必要に応じて、少なくとも1つのプローブを用意する工程、及び必要に応じて、検出可能なシグナルが生成されるように前記プローブを活性化する少なくとも1種の酵素を用意する工程;
d)少なくとも1種の開始試薬を添加することによって、並びに/又は(a)、(b)及び必要に応じて(c)の成分を接触させることによって、増幅反応を開始させる工程であって、好ましくは、前記開始試薬が、酸化亜鉛が含まれる、少なくとも1種の金属酸化物、より好ましくは少なくとも1種の金属酸化物ナノ粒子を含む、工程;並びに
e)少なくとも1つの増幅された標的配列を得る工程及び/又は少なくとも1つの検出可能なシグナルを得る工程であって、各シグナルが、増幅されたそれぞれの標的配列の増幅の成功を示す、工程
を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1種の逆転写酵素が用意され、好ましくは、前記少なくとも1種の逆転写酵素の機能性及び前記少なくとも1種のDNAポリメラーゼの機能性が、単一のタンパク質としてもたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的配列が、一本鎖又は二本鎖DNA及び/又はRNA核酸配列である、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
標的配列としての一本鎖又は二本鎖DNA及びRNA核酸配列が用意される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、約20℃~約50℃の、好ましくは約22℃~約45℃の、最も好ましくは約25℃~約42℃の温度で実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのフォワードプライマー及び少なくとも1つのリバースプライマーが、標的配列特異的プライマーとして用意され、これらのプライマーのうち少なくとも一方、好ましくは前記リバースプライマーが、他方のプライマーと比較して、より高い量又は濃度で用意される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのプローブ及び/又は標識が用意され、前記少なくとも1つのプローブ及び/又は前記少なくとも1つの標識が、直接的又は間接的に検出可能な部分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質が、エシェリキアファージRB69に由来し、好ましくは、前記一本鎖結合タンパク質が、参照配列NP_861936.1として開示される配列、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列、又はこの配列の機能的アナログを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記タンパク質又は酵素のいずれかが、少なくとも1つのタグ及び/又は標識を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、前記キットが、
(i)適切な反応成分と共に、少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、及び必要に応じて、少なくとも1種の逆転写酵素、
(ii)少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの標的配列特異的プライマー;
(iii)少なくとも1種の酵素のための少なくとも1種の補因子、dNTP、又はdNTPとddNTPとの混合物、少なくとも1つの緩衝系、及び少なくとも1種の還元剤を含む適切な反応成分;
(iv)分析される生物学的プローブを抽出し、前記プローブを分析するためのシステムに適用されるように構成された少なくとも1つの成分を含むための、少なくとも1つの無菌セット;
(v)必要に応じて、少なくとも1つのプローブ、及び必要に応じて、前記プローブを活性化する少なくとも1種の酵素
を含み;
(vi)必要に応じて、前記キットが、(i)~(v)を含む第2の部分を更に含み、前記第2の部分が、陽性対照として作用する所定の第2の標的配列、及び前記第2の標的配列に特異的な少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのプライマー、及び好ましくは、第2のプローブを含む
キット。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの標的配列の核酸増幅の等温方法を実施するための、少なくとも、請求項10に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、DNA及びRNAの保護された等温核酸増幅(protected isothermal nucleic acids amplification)(PINA)のための迅速かつ信頼性のある方法に関する。特に、本発明は、例えば、目的の生物学的プローブ中の感染因子を迅速に診断するための診断方法に関する。特に、方法は、非実験室環境において増幅方法を実施するための手持ち式の携帯可能な診断システム(「家庭用検査」)で実施されるのに適切である。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
2020年3月にWHOによって世界的パンデミックと宣言されたSARS-CoV-2ウイルスの大流行は、特に、それに対する予防的ワクチンも治療薬も入手不能な新たに出現した感染症に対する信頼性のある迅速な診断法の必要性を、非常に際立って実証した。これまでに、SARS-CoV-2ウイルスを短時間で信頼性よく同定する高感度の迅速な診断ツールは、いまだ入手不能である。検査と検査結果の入手可能性との間には著しいタイムギャップが存在し、その結果、感染個体の隔離は、多くの場合、更なるウイルス伝播が生じることができた後にしか開始できないので、これは、高度に問題がある。
【0003】
一般に、いくつかの抗原ベースのイムノアッセイ及びPCRベースの技法が、潜在的なSARS-CoV-2感染を、それぞれタンパク質レベル及び核酸レベルで診断するために、現在使用されている。感度、特異性及び速度(結果が出るまでの時間)は、信頼性のある診断アッセイ又はキットにとって、最も重要である。
【0004】
核酸ベースの調製技法、クローニング技法及び診断技法に関して、科学者が、数百万コピーの目的のDNA標的分子を短時間に得る機会を突然得ることになったので、1980年代の、後のノーベル賞受賞者Kary Mullis及び彼のチームによる、DNAを増幅するための迅速かつ信頼性のある方法としての、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の開発は、一般に、分子生物学を変革した。単純さ及び効率(例えば、単一分子/細胞PCRを実施するための現今の可能性)は、PCR技法の著しい利点を示す。
【0005】
核酸検出技法、例えば、分子リアルタイムPCRアッセイは、通常、非常に高感度であり、標的特異性を提供するが、ある特定の欠点になおも悩まされている。PCRでは、プライマーアニーリングは、二本鎖DNA(dsDNA)の熱変性を可能にする高い温度と、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼによるプライマー伸長を可能にするより低い温度との間での反復的サイクリングを介することで、やっと生じることができる。迅速な冷却及び加熱の継続するサイクル(2~3回の温度交代の20~50サイクル)、正確な温度制御、並びに高い(>90℃)温度の使用に対する固有の必要性は、専門の熱サイクラーを要求し、エネルギーを高度に消費する。したがって、DNA増幅のためのPCRベースの方法は、高度に設備が整った実験室及び十分に訓練された人材を要求するという大きな不利点を有する。更に、PCR方法についての最も高い可能な効率は、必然的に、1サイクルにつき2倍に制限され、これが、高い収量を維持しながらの迅速な(10~20分間の)増幅を不可能にしている。SARS-CoV-2の大流行は、専門の実験室によるPCRベースの診断が、感染事象の即応性のモニタリングのためには、あまりに遅く煩雑であることを示している。したがって、局地的なウイルス大流行に迅速に反応し、ウイルス伝播を効果的に停止させることは、いまだに不可能である。抗原ベースの診断ツールによる迅速かつ容易な検査及びポイントオブニード(point-of-need)診断のための明白な要件を満たすことが試みられた。しかし、ウイルス感染の正確な診断のために重要なウイルスRNA又はDNAの検出は、遅く煩雑なままである。したがって、高い感度及び特異性を有し、検査の場所で信頼性のある結果を提供することができる新たな携帯可能な診断解法が、緊急に必要とされている。
【0006】
迅速なポイントオブニード診断及びウイルスRNA又はDNAの検出の両方を可能にする解決策は、PCR代替法、いわゆる等温増幅方法であると思われる(総論については、Zanoli及びSpoto、Biosensors(Basel)、2013 3(1):18~43)を参照されたい)。PCRを超える大きな利点は、等温核酸増幅方法が、熱サイクリングを全く要求せず、むしろ、一定の温度で実施できるという事実である。これが、増幅プロセスを、PCR方法よりも、操作及び制御がはるかに容易であり、エネルギー消費の低いものにしている。等温方法の一定の温度は、完全に閉鎖された微細構造デバイスの使用を更に可能にし、このことが、サンプル汚染のリスクを低減し、低いサンプル消費、多重DNA分析、及び携帯可能なデバイスの実現をもたらす。最後に、一定の温度は、本出願人(ドイツ102020109 744.1)によって最近開発されたポイントオブニード及び/又は携帯可能な診断デバイスのために、高度に好ましい。
【0007】
核酸配列ベースの増幅(NASBA)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、及びニッキング酵素増幅反応(NEAR/EXPAR)(Zanoli及びSpoto、2013、Biosensors(Basel).2013年3月;3(1):18~43;現今のRPA技法に関する包括的な調査については、Liら、Analyst、2019、144、31、31~67頁、又は鎖侵入ベースの増幅(SIBA(登録商標)-以下においてSIBA)Hoserら、2014 PLoS ONE 9(11):e112656、又はNEAR/EXPAR:Van Nessら、2003、PNAS 2003年4月15日、100(8)4504~4509を参照されたい)が含まれる、今日までに利用可能な多数の等温増幅戦略が存在する。種々の等温増幅戦略が共通して有するものは、それらが全て、ポリメラーゼ反応の開始を可能にするための特定の方法を提供することである。従来のPCRでは、これは、変性後にプライマーが一本鎖DNA(ssDNA)にアニールすることを可能にする熱サイクリングを介して達成される。
【0008】
LAMPは、置換性DNAポリメラーゼと組み合わせて、ヘアピンの形成を可能にするプライマーを使用して、更なるプライマー分子がアニールできる露出されたssDNAを生成する(Notomiら、2000、Nucleic Acids Research 28:e63)。しかし、困難なプライマー設計とは別に、要求に応じた、多数の大きなプライマーの使用が、偽陽性結果を生じ得るというリスクもまた存在する。これは、診断への適用の間、特に、偽陽性結果が非常に有害となり得る感染症を診断するために、疑いなく回避すべき結果である。更に、LAMP反応が、規制上及び実務上の問題に起因して、携帯可能なデバイス、特に、家庭環境での使用のための診断デバイスにとってはあまり実用的でない高い温度を要求するという問題が存在する。一般に、リアルタイム(RT)-LAMPアッセイは、約30分間の実行時間を有し、65℃の増幅温度を維持するためのデバイスを必要とする。結果として、LAMPは、非実験室使用のために適切であるためにある特定の規制上の要件を満たさなければならい手持ち式のデバイスにおける迅速かつ信頼性のある診断的核酸増幅結果のための好ましい方法ではない。
【0009】
RPA及びSIBA技術は共に、結合及び増幅プロセスの間のリコンビナーゼの使用に依存する。最初に、オリゴヌクレオチドプライマー及びリコンビナーゼタンパク質によって構成される核タンパク質複合体が、RPA型及びSIBA型の核酸増幅戦略のために形成される。これらの複合体は、鋳型DNAへのプライマー結合を促進する(Boyleら、2013、doi:10.1128/mBio.00135-13;Daherら、2014、DOI:10.1016/j.mcp.2014.11.005)。
【0010】
核酸増幅における生化学的進歩と並行して、核酸増幅を最適に実施するための適切な反応及び検出チャンバーを含むデバイスの開発もまた、着実に発展してきた。大きなトレンドは、微小流体デバイスの開発であり、一般に、「反応チャンバーを」小型化又は「ナノ化(nanotizing)する」、即ち、それらをナノ形態(nanoform)にするトレンドは、サンプル体積、したがって、必要とされる試薬の量を減少させるため、並びに生化学的検出、結果が出るまでの時間、より迅速な熱移動における利点を達成するため、並びに自動化及び一体化の可能性を有するために、大きな興味を持たれてきた。
【0011】
2020年~2021年のコロナパンデミックの間に明確に示されたように、専門の診断センターで独占的に実施できるのではなく、検査される人から生物学的サンプルが得られる場所で直ぐに実施することができる、迅速かつ信頼性のある核酸増幅技法を提供することに対する進行中の世界的な必要性がなおも存在する。更に、厳格な予防的隔離の規則が適用されない限り、目下24~36時間又はそれよりも長い期間持続し得る、感染しているが無症状の患者が、(信頼性のある)検査結果を受け取るまで感染症を伝播させ得る大きなリスクが存在するので、結果が出るまでの時間が最優先で重要であることが、世界規模で観察されている。
【0012】
迅速なポイントオブニード診断法の必要性の観点からは、RPA戦略は、プライマー結合のための中心的な要素としてのリコンビナーゼに依存するという大きな不利点を有する。残念ながら、リコンビナーゼは、リコンビナーゼにおいて負荷因子(loading factor)及び一本鎖結合(SSB)タンパク質を更に要求する。リコンビナーゼは、その活性のためにエネルギーを要求するので、アデノシン三リン酸(ATP)、並びにホスホクレアチン及び追加の酵素クレアチンキナーゼからなるエネルギー再生系を更に要求する。したがって、RPAは、多数の異なる酵素、タンパク質及び他の補因子を要求することで、高度に複雑でコスト集中的な反応アプローチになっており、したがって、いずれも、必要とされる場所(point of need)において広く使用することができる迅速な診断ツールのための好ましい方法ではない。
【0013】
これは、診断ツールがRNAを検出することも目的とする場合に特に当てはまり、これは、RNAウイルス由来の核酸材料の直接的検出、及びまた任意のウイルス転写物DNAウイルスの検出を可能にするので、このことは大きな利点である。RNAも検出される場合、既に高度に複雑な反応ミックスは、更に別の酵素である逆転写酵素を要求する。逆転写酵素は、RNAを相同なDNA配列に書き換え、これは次いで、PCR又は等温増幅方法によって検出され得る。
【0014】
技術的には、天然に高度に専門の酵素、例えば、リコンビナーゼを置換すること、又は重要な成分を除外しながら望ましい感度及び特異性を得ることができる解法を見出すことは、非常に複雑である。しかし、診断ツールをより単純かつあまりエラープローンでないものにするために、診断的DNA増幅方法の複雑さを低減させることは、特に、訓練された専門家が取り扱うのではなく家庭用検査として使用される場合には、重要な課題である。更に、低減された複雑さ、特に、要求される酵素の低減は、かかる診断ツールのコストを低減させ、これは、大量での迅速かつ幅広い診断による感染事象のモニタリングのために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ102020109 744.1
【特許文献2】欧州2336361A2
【特許文献3】欧州特許出願EP20201885.9
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Zanoli及びSpoto、Biosensors(Basel)、2013 3(1):18~43
【非特許文献2】Liら、Analyst、2019、144、31、31~67頁
【非特許文献3】Hoserら、2014 PLoS ONE 9(11):e112656
【非特許文献4】Van Nessら、2003、PNAS 2003年4月15日、100(8)4504~4509
【非特許文献5】Notomiら、2000、Nucleic Acids Research 28:e63
【非特許文献6】Boyleら、2013、doi:10.1128/mBio.00135-13
【非特許文献7】Daherら、2014、DOI:10.1016/j.mcp.2014.11.005
【非特許文献8】Yaqoobら、Front Chem. 2020;8:341、doi:10.3389/fchem.2020.00341
【非特許文献9】Singh, S.P.、Arya, S.K.、Pandey, P.、Malhotra, B.D.、Saha, S.、Sreenivas, K.、Gupta, V.、2007. Cholesterol biosensor based on rf sputtered zinc oxide nonporous thinfilm. Appl. Phys. Lett. 91、63901~63903
【非特許文献10】Zhao, Z.W.、Chen, X.J.、Tay, B.K.、Chen, J.S.、Han, Z.J.、Khor, K.A.、2007. A novel Amperometric biosensor based on ZnO: Co nanoclusters for biosensing glucose. Biosens. Bioelectron. 23、135~139
【非特許文献11】McCallら、Nanomaterials(Basel). 2017年11月;7(11):378、2017年11月8日にオンライン公開、doi:10.3390/nano7110378
【非特許文献12】http://id.nlm.nih.gov/mesh/D015336
【非特許文献13】Royら、Biosens Bioelectron. 2016年12月15日;doi:10.1016/j.bios.2016.06.065
【非特許文献14】Skerra、Nucleic Acids Res 20、3551~3554、doi:10.1093/nar/20.14.3551(1992)
【非特許文献15】https://www.ncbi.nlm.nih.gov/
【非特許文献16】James L. Keck(編)、Single-Stranded DNA Binding Proteins:Methods and Protocols、Methods in Molecular Biology、第922巻、DOI 10.1007/978-1-62703-032-8、# Springer Science+Business Media、LLC 2012
【非特許文献17】Maら、Virus Res.、2017、232:34~40. doi:10.1016/j.virusres.2017.01.021
【非特許文献18】Abd El Wahedら、2021、Suitcase lab for rapid detection of SARS-CoV-2 based on recombinase polymerase amplification assay、Anal. Chem. 2021、93、4、2627~2634
【非特許文献19】Behrmann, O.ら、Rapid detection of SARS-CoV-2 by low volume real-time single tube reverse transcription recombinase polymerase amplification using an exo probe with an internally linked quencher(exo-IQ). Clin Chem、doi:10.1093/clinchem/hvaa116(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、家庭環境下であってもポイントオブニード診断感染を可能にするための手持ち式の又は携帯可能な診断デバイスで非実験室条件下で実施されるのに適切でありかつ特に最適化された新たな等温核増幅方法(isothermal nucleic amplification method)を提供すること、及び診断デバイスに直接的に適用される検査サンプルにおける潜在的な感染を診断するための迅速かつ信頼性のある診断結果を提供することであった。特に、安価ではあるがなおも高度に信頼性のある迅速な検査ツールを提供するという要求に合致するために、反応に必要とされる酵素成分の複雑さを大幅に低減させることが目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の概要
本発明は、特許請求の範囲の添付のセットで規定される通りである。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】Sars-CoV2 RdRP遺伝子を標的として使用し、RB69 GP32及びT4 GP32を一本鎖結合タンパク質として使用した、保護された等温DNA増幅結果の視覚化を示す図である。
図2】RPA及びPINAアプローチにおけるT4 GP32を使用したSars-CoV2 RdRP遺伝子の等温増幅の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
等温増幅戦略を含む核酸増幅技法は、過去数十年間にわたり厖大な進歩を遂げてきたが、これらの技法全てのための決定的な有効酵素は、通常、交換されていないか、又は段階的にわずかに改変されただけである。
【0021】
簡潔に述べると、先行技術の等温DNA/RNA増幅のための確立された技法は、負荷因子として作用するT4 UvsYによって補助される中心的なリコンビナーゼとしてのファージ由来T4 UvsXタンパク質の、プライマーへの結合で通常は始まる。この複合体は、二本鎖(ds)DNAに侵入して、プライマーがその中で鋳型鎖とハイブリダイズして鎖交換反応を開始するいわゆるD-ループを形成する。巻き戻された相補鎖は、一本鎖結合(SSB)タンパク質によって安定化され、このとき、通常、T4由来のgp32タンパク質が使用される。プライマー取込みは、鎖置換DNAポリメラーゼ、通常、Bsu(バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)由来)又はSau(スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来)ポリメラーゼに、プライマーの遊離3'-OHからの合成を開始させる。重合が継続するにつれ、2つの親鎖は、分離し続ける。次いで、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方の取込みが、鎖合成が両方の方向で同時に起こることを可能にし、フォワードプライマーとリバースプライマーとの間の配列からなる増幅された二重鎖DNAの指数関数的蓄積を最終的に生じる。結果として、標準的なRPAは、効率的なDNA/RNA増幅を保証するために、著しい量のタンパク質/酵素相互作用パートナーを要求する。
【0022】
安価であり、かつ実験室環境において訓練された専門家によって使用される必要がない診断ツールを提供するために、効果的な等温核酸増幅を可能にしつつ比較的低い複雑さを有する等温増幅方法を提供することが、本発明の特定の目的である。
【0023】
したがって、リコンビナーゼを全く要求しないことが、本発明の特定の利点である。機能的リコンビナーゼを必要としないので、任意のリコンビナーゼ負荷因子の必要性もまた、陳腐化される。更に、リコンビナーゼは、その機能を果たすためにATPを加水分解し、したがって、リコンビナーゼがなければ、ATP、並びにホスホクレアチン及び更には追加の酵素クレアチンキナーゼを典型的には含む任意のエネルギー再生系を反応ミックスに添加する必要がない。したがって、本発明に従う方法では、反応添加物、並びに異なるタンパク質及び酵素の数は、大幅に低減され得る。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明の任意の態様に従う方法は、エネルギー再生酵素を添加することなしに進行する。
【0025】
本発明の重要な特色は、実施例2に示されるように、特に直鎖状標的分子もまた含まれる任意の種類の核酸配列を信頼性よく増幅するその能力である。ウイルス感染に対する診断ツールとして使用される方法については、直鎖状標的を検出するためのその方法の適切さが重要である。異なるウイルスは、直鎖状又は環状の二本鎖又は一本鎖DNA又はRNA等、種々の異なる形態で遺伝材料を含有する。したがって、ウイルス核酸材料を検出するための等温増幅方法は、全ての可能な種々の形態のウイルス核酸材料を検出できることが必要である。直鎖状核酸標的の検出は、直鎖状DNAを有するウイルスにとって必要であるが、RNAは、直鎖状の相補的DNA(cDNA)へと逆転写される必要があるので、全てのRNAウイルスにとっても必要である。更に、直鎖状核酸標的の検出は、DNAウイルス由来のRNA転写物を検出するためにも要求される。
【0026】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、好ましくは生物学的サンプル中の、少なくとも1つの標的配列の核酸増幅の等温方法であって、適切な反応成分と共に、用意する工程、a)少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの標的配列特異的プライマー、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、及び必要に応じて、少なくとも1種の逆転写酵素を用意する工程;b)少なくとも1つの標的配列の存在について分析される少なくとも1つの生物学的サンプルを用意する工程、及び必要に応じて、生物学的サンプルを得るための、好ましくは無菌の抽出キットを用意する工程;c)必要に応じて、少なくとも1つのプローブを用意する工程、及び必要に応じて、検出可能なシグナルが生成されるようにプローブを活性化する少なくとも1種の酵素を用意する工程;d)少なくとも1種の開始試薬を添加することによって、並びに/又は(a)、(b)及び必要に応じて(c)の成分を接触させることによって、増幅反応を開始させる工程;並びにe)少なくとも1つの増幅された標的配列を得る工程及び/又は少なくとも1つの検出可能なシグナルを得る工程であって、各シグナルが、増幅されたそれぞれの標的配列の増幅の成功を示す、工程、を含む方法が提供され得る。
【0027】
本発明の任意の態様において使用されるDNAポリメラーゼは、好ましくは、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼである、即ち、重合反応において、その上でポリメラーゼが重合反応を実施しているDNA鎖にハイブリダイズされる又は部分的にハイブリダイズされるDNA鎖を置換することができる。開始試薬は、本明細書で使用される場合、その活性においてDNAポリメラーゼを補助するために使用され得る。
【0028】
「生物学的サンプル」は、広く理解されるべきであり、生きた生物由来の、及び/或いは(更に)その生物に感染した若しくは浸潤した、又はこの生物と共生して生きている病原体(病原性原核生物又は真核生物)又はウイルス(RNA若しくはDNAゲノムを有する、一本鎖若しくは二本鎖である、又はレトロウイルスである)由来の遺伝材料等を含有する、この生物から単離された任意の材料に関連する。生物学的サンプルには、例えば、鼻咽頭及び中咽頭スワブ又は唾液が含まれるスワブ及び唾液サンプルが含まれるが、痰、血液、尿及び糞便等もまた含まれる。好ましくは、非実験室環境において検査される生物学的サンプルは、訓練された医療人材の補助なしに回収することができるスワブ、唾液、尿又は糞便サンプル等である。
【0029】
生物学的サンプルは、分析/増幅される1つの、又は1つよりも多くの標的配列を含み得る。
【0030】
一実施形態では、好ましくは、使用される同じサンプル中の、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又は6つよりも多くの異なる標的配列が増幅され得る。この実施形態では、デバイス又はシステムは、個々のカスタマイズ可能なプライマー及び必要に応じてプローブを含む別々の反応環境を示す1つよりも多くの増幅チャンバーを備える。各増幅チャンバーは、サンプル、好ましくは、溶解された又は他の方法で事前処置され、必要に応じて不活性化された(除染された)サンプルを個々に受け取ることができる。したがって、1回のサンプル抽出のみが必要であり、このことは、実験室へのサンプルの輸送の間の交差汚染又は感染のリスクを有意に減少させる。家庭用検査、又は空港等で実施される検査の例では、この検査は、20分未満で、全てのマルチマー的に(multimerically)検査されたサンプルについて信頼性のある結果をもたらすので、感染因子に潜在的に感染した人を、更なる方法(隔離、薬物療法)を即座に開始することができるように、可能な感染因子のある特定の関連するパネルについて即座に検査することができる。
【0031】
一実施形態では、標的配列は、エボラウイルス、スーダン型ウイルス、マールブルグウイルス、ブンディブギョ型ウイルス、サル痘ウイルス、黄熱ウイルス、ジカウイルス、日本脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、デングウイルス、チクングニアウイルス、狂犬病ウイルス、H5N1及びH7N9が含まれるインフルエンザウイルスA(FluA)若しくはB(FluB)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、アデノウイルス1,4.7が含まれるアデノウイルス、パライフルエンザウイルス(Paraifluenzavirus)3、MERS CoV、SARS-CoV-2、パルボウイルスB19、ウエストナイルウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹(Varizella Zoster)ウイルス(VZV)、ノロウイルス、ウシコロナウイルス、口蹄疫ウイルス、ランピースキン病ウイルスから選択されるウイルスの標的配列が含まれる、或いは抗菌剤耐性遺伝子が含まれる、スタフィロコッカス・アウレウスが含まれる細菌の標的配列が含まれる、或いはマイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、フランシエラ・ツラレンシス(Fransciella tularensis)、pacA/capCが含まれるバチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、tcdB/tcdAが含まれるクロストリダム・ディフィシル(Clostridum difficile)、汎リケッチア(Pan-Ricketsia)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)若しくはサルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクローシス(Mycobacterium avium subs. Paratuberculosis)、サイトメガロウイルス(CMV)又はエンテロウイルスの標的配列が含まれる、感染因子の標的配列からなる群から個々に選択され得る。
【0032】
具体的な実施形態では、少なくとも少なくとも2つの標的配列は、体系的パネルの一部として供することができ、このパネルは、急性感染(infectous)症パネル、髄膜脳炎パネル、重症呼吸器疾患パネル、アルボウイルスパネル、抗生物質耐性遺伝子パネル、国特異的な旅行帰国者パネル、妊娠の間のスクリーニングに特異的なパネル、計画された若しくは急性の入院の前に個体を検査するのに特異的なパネル、紅斑症に関連する小児疾患が含まれる小児感染症についてスクリーニングするためのスクリーニング(screeniung)するためのパネル、及び/又は家畜動物を検査するためのパネルからなる群から選択される。
【0033】
したがって、使用者(医療部門又は公的部門)の要求及び技能に基づいて、種々の容易にカスタマイズ可能な変化が可能である。例えば、髄膜脳炎パネルは、HSV、VMV、VZVの標的配列を検出するための個々に備えられた増幅チャンバーを含み得、第4のチャンバーとして、少なくとも1つのエンテロウイルスの標的配列を検出するための増幅チャンバーを含み得る。
【0034】
小児科医は、小児患者を正確に処置し、両親に情報提供し、人としかるべく連絡を取るために、紅斑症に関連する小児疾患が含まれる小児感染症についてスクリーニングするためのパネル、又は即座の場所で関連する下痢性疾患(ノロウイルス及びロタウイルス)についてスクリーニングするためのパネルを必要とし得る。臨床的に重要な別のキットは、標的としてのFluA、FluB、SARSウイルス及び/又はRSVが含まれる重症呼吸器感染症パネルの場合があり、その核酸配列は、全く同じプローブ又はサンプルから並行して個々にスクリーニングされる。最後に、特に、それぞれの疾患が頻繁に発生する国からの帰国者について、チクングニアウイルス、ジカウイルス及びデングウイルス、並びに必要に応じて、ウエストナイルウイルスの標的配列が含まれるアルボビウルス(arboviurus)パネルが、目的とされ得る。
【0035】
更に、本明細書で開示される多重化された検査システム及びキット及び方法は、抗生物質耐性遺伝子保有生物について、例えば、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)について、個体並びに潜在的に汚染された(contamined)表面をスクリーニングするために、特に適切となり得る。
【0036】
そのようにすることによって、病院又は老人ホームでの衛生管理は、有意に改善され得る。
【0037】
酵素反応のための適切な反応成分並びにそれらの濃度及び配合は、これらの適切な反応成分が意図される酵素及び反応が公知である場合、当業者によって容易に決定され得る。本発明の方法と特定の関連性があるある特定の態様は、以下に詳細に開示される。
【0038】
「開始試薬」は、種々の方法に従って本明細書で使用される場合、特に適切となり得るが、それは、この試薬が、反応の正確かつ制御可能な開始を可能にするからである。開始試薬は、それなしでは酵素反応が開始できない、少なくとも1種の酵素の必須補因子でもよい。例えば、開始試薬は、マグネシウム若しくはその塩、又はマグネシウム含有溶液、例えば、酢酸マグネシウムでもよい。或いは、マンガンが検討され得る。濃度は変動することができ、5nMと20mMとの間でもよい。開始試薬は、反応の開始が厳密に制御できるように、別々の区画中に活性化可能な形態で、又は熱活性化可能なように供し得る。したがって、開始試薬は、本明細書で使用される場合、本明細書で開示される等温増幅方法がより効率的に進行できるような、酵素反応を開始させる薬剤(例えば、補因子、脱遮断剤等)、又は試薬の安定性及び/若しくは活性を増強若しくは促進する薬剤(有機又は無機)(例えば、本明細書で使用される場合、安定剤、又はプライマー、プローブ及び/若しくは酵素のための触媒)を指し得る。
【0039】
産生コスト、酵素活性及び安定性、制御可能性、並びに本明細書で開示されるPINA反応の標的部位へのプライマーのアクセスを更に最適化するために、適切な開始試薬としての適切な非毒性の酵素安定化剤及び酵素活性化剤を試験して、家庭環境における使用のためにPINAを最適化した。この目的のために、金属粒子、特に金属ナノ粒子(M-NP)を、非毒性であり、したがって、生物医学的適用において特に適切であることが当該分野で公知の金属酸化物ナノ粒子(MO-NP)及び金属ナノ粒子に特に焦点を当てて試験した(Yaqoobら、Front Chem. 2020;8:341、doi:10.3389/fchem.2020.00341を参照されたい)。この意味では、ナノ粒子は、個数粒度分布において粒子の少なくとも半分の粒径が100nm又はそれ未満であるような、おおよそ200nm未満のサイズ、好ましくは、おおよそ100nm未満のサイズを有する任意の小さい粒子を意味し、有機金属、金属硫化物、金属、金属酸化物及びドープされた/修飾された金属/金属酸化物ナノ粒子が含まれる。いくつかの金属(Ag、Au、Cu、Pt、Zn、Fe、Niが含まれる)及び金属酸化物(AgO2、ZnO、CuO、TiO2)の金属ベースナノ材料をここで使用することができ、ナノ構造化された酸化亜鉛(ZnO NP)が含まれるある特定の材料は、非毒性であり、比較的安価であり、ZnOが酵素活性を支持することが示されたので、特に適切となり得る(Singh, S.P.、Arya, S.K.、Pandey, P.、Malhotra, B.D.、Saha, S.、Sreenivas, K.、Gupta, V.、2007. Cholesterol biosensor based on rf sputtered zinc oxide nonporous thinfilm. Appl. Phys. Lett. 91、63901~63903;Zhao, Z.W.、Chen, X.J.、Tay, B.K.、Chen, J.S.、Han, Z.J.、Khor, K.A.、2007. A novel Amperometric biosensor based on ZnO: Co nanoclusters for biosensing glucose. Biosens. Bioelectron. 23、135~139)。更に、銀ナノ粒子もまた、本開示に従う開始剤として特に有用であるが、それは、これらが、致死的ウイルス、微生物(microbe/germ)及び他の核含有微生物(microorganism)に対する優れた抗菌特性を有するからである。したがって、銀NPの添加は、潜在的に伝染性のサンプルが供される場合、検査の安全性を更に増加させることができる。
【0040】
更に、迅速かつ信頼性のある検査結果が必要とされる場合に、MO及びMO-NPを、PINA反応の速度論的パラメーターを更に最適化するために検査した。本明細書で開示される等温増幅反応のある特定の律速工程は、酵素の活性化、並びに供された少なくとも1つのプライマー及び/又はプローブが分解なしにそれぞれの標的部位へのアクセスを有する時間である。非毒性のものが含まれるある特定のMOは、DNA及びRNAを安定化し、したがって、特に、あまり安定でないRNA分子を保護するために記載されてきた。更に、特に(partcualrly)、MO-NPは、増幅される標的部位をよりアクセス可能なものにすることを補助することができるが、それは、MO及びMO-NPが、0.1~50nMの範囲の適切な担体及びカーゴ分子として頻繁に報告されているからである(McCallら、Nanomaterials(Basel). 2017年11月;7(11):378、2017年11月8日にオンライン公開、doi:10.3390/nano7110378)。
【0041】
更に、核酸増幅反応は、dNTP(ヌクレオチド三リン酸)、例えば、dATP、dGTP、dCTP及びdTTPを要求する。リーディング鎖及びラギング鎖の増幅では、ATP、GTP、CTP及びUTPもまた、RNAプライマーの合成のために含まれ得る。更に、ddNTP(ddATP、ddTTP、ddGTP及びddGTP)が、断片ラダーを生成するために使用され得る。dNTPは、1μM~200mMの間の濃度の各NTP種で使用され得る。dNTP及びddNTPの混合物は、dNTPの濃度(1μM~200mM)の1/100~1/1000のddNTP濃度で使用され得る。UTPの使用は、キャリーオーバー防止キット(例えば、いわゆるAmpEraseを使用するThermo Fisher社)が使用される場合に、特に適切となり得る。これらの実施形態では、適切な、通常は組換えのウラシルN-グリコシラーゼ(UNG)が、増幅産物が引き続く反応において再度増幅されることを防止するために、使用され得る。この目的のために、反応は、より迅速に進むことができ、偽陽性結果は回避され得る。
【0042】
更に、還元剤を使用することができ、使用される還元剤には、ジチオスレイトール(DTT)が含まれる。DTT濃度は、1mMと50mMとの間でもよい。
【0043】
本発明の等温方法における緩衝溶液は、トリス-HCl緩衝液、トリス酢酸緩衝液、又はそれらの組み合わせでもよいが、他の緩衝系も適切である。緩衝剤は、おおよそ10nm~500mMの間の濃度で存在し得るが、これは、使用される緩衝系及び達成すべき反応のpHに依存する。後者は、当業者に公知のように、目的の酵素の最適な活性によって影響される。
【0044】
本明細書で開示される等温方法のための標準的な適切な反応条件、及び薬剤の濃度(例えば、酵素、プライマー、プローブ、dNTP、ATP、緩衝剤、pH等)は、当業者に公知であり、例えば、Zanoli及びSpoto、上記、Liら、上記、Hoserら、上記、Van Nessら、上記から得ることができる(cancan)が、考慮に入れるべき特別な条件は、特別な実施形態について本明細書で開示される。
【0045】
本発明の目的のために、短いアンプリコン長さが、増幅の効率を増加させるので、通常は好ましい。更に、増幅される標的が短くなるほど(したがって、アンプリコンが短くなるほど)、同様の検査の結果がより迅速に入手可能になる。もちろん、これは、例えば、家庭で実施される迅速な検査が、可能な感染に対する迅速な確実性を有するという、大きな利点を示す。
【0046】
プライマー及び必要に応じてプローブの設計は、本明細書で開示される方法が、信頼性のある診断結果を提供するために実施される場合、特に重要である。本発明の方法に従う好ましい実施形態では、特に、診断目的で使用される場合、対応するプライマー設計によって影響され得る一般的なアンプリコン長さは、通常、約50~約400塩基対(bp)、好ましくは、100~約200bp、最も好ましくは、約120~約150bpの範囲である。アンプリコンの長さは、アンプリコン増幅の効率に対して影響を有し、したがって、反応の分析感度に直接的に関連するので、200bp未満のアンプリコン長さは、診断目的のために好都合であるとみなされる。ある特定の実施形態では、MO若しくはMO-NPは、プライマー若しくはプローブのいずれかを安定化するために使用され得、又はMO-NPは、改変される生物学的サンプル中の標的部位へのプライマー若しくはプローブのより容易なアクセスを可能にするために使用され得る。
【0047】
PCRとは異なり、プライマーは、本発明の文脈では、通常、比較的長い(約30ヌクレオチドと35ヌクレオチドとの間)。より短いPCRプライマー(18ヌクレオチドと25ヌクレオチドとの間)もまた本発明において使用され得るが、反応速度及び感度を減少させ得、これは、診断設定では回避すべきである。
【0048】
等温増幅は、DNAのための核酸増幅方法であることが最初に実証された。等温増幅はまた、追加の酵素である逆転写酵素(例えば、マウス白血病ウイルス(MuLV)逆転写酵素)が同じ反応区画に添加されるRNA増幅に適切であることが後に示された。ウイルス診断法の文脈では、RNA増幅、及びしたがって、ウイルスRNAの検出は、非常に重要である。これは、RNAウイルス由来の遺伝材料の検出を可能にするだけでなく、DNAウイルス由来のウイルス転写物の検出を更に可能にする。後者は、例えば、ウイルス転写物が血流中に放出され、その一方で、ウイルス粒子及びウイルスDNAの大部分が、生物学的サンプルを容易に供することができない組織内に残存する場合に、非常に重要となり得る。
【0049】
しかし、別の酵素である逆転写酵素の添加は、診断ツールの複雑さ及びコストを増加させる。したがって、低減された複雑さを有する安価な検査ツールを提供することを目的とした本発明の文脈では、DNAポリメラーゼ及び逆転写酵素の両方の機能性を含む1つのタンパク質を提供することが、特に目的とされる。
【0050】
逆転写酵素は、鋳型RNA分子から相補的DNA(cDNA)鎖を生成することができる任意の酵素でもよい。「機能性」は、本発明の文脈では、本発明の観点からの、ある特定の酵素の機能を果たす能力を指す。したがって、逆転写酵素の機能性は、反応ミックス中の標的RNAからcDNAを生成する能力を指し、DNAポリメラーゼの機能性は、反応ミックス中の標的DNA鎖上に(in on)DNAを重合させる能力を指す。
【0051】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、少なくとも1種の逆転写酵素が提供され、好ましくは、少なくとも1種の逆転写酵素の機能性及び少なくとも1種のDNAポリメラーゼの機能性は、単一のタンパク質としてもたらされる。
【0052】
単一のタンパク質は、本明細書で使用される場合、1つの連続したポリペプチド鎖、又は密接に相互作用する2つ若しくはそれよりも多くのサブユニット、例えば、ホモダイマー又はヘテロダイマーからなるタンパク質を指し、単一のタンパク質は、1つよりも多くの明確に区別できる機能を有し得る。
【0053】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、一本鎖又は二本鎖DNA、cDNA及び/又はRNA配列である標的配列のために使用され得る。次に、方法は、全ての種類の核酸材料に対する全ての種類の増幅反応のために使用され得る。
【0054】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、標的配列は、一本鎖又は二本鎖DNA及び/又はRNA核酸配列である。
【0055】
本発明の第1の態様に従う好ましい実施形態では、標的配列としてのDNA及びRNA核酸配列が提供される。DNAウイルス又はレトロウイルスの検出のために、ウイルスDNA及びウイルスRNA(同じ手順における逆転写による)の両方の組み合わされた検出は、サンプル中に存在し得る全ての可能な標的、例えば、ウイルスDNA自体、及び更に、ウイルスDNAのRNA転写物を一緒に検出できるので、感度が強く増加されるという大きな利点をもたらす。
【0056】
ある特定の実施形態では、本発明の全ての態様に従う方法は、上で規定された両方の逆転写酵素活性を使用し、低減された複雑さを有しつつ、迅速かつ信頼性のある重合結果を達成する方法を提供するために、逆転写酵素の機能性及びDNAポリメラーゼの機能性が、二重機能性を有する同じタンパク質上に供されることが好ましい。これは、二重機能性酵素の使用を、アッセイ成分の複雑さを大幅に低減させつつ高い増幅速度及び品質を維持するための好ましい選択肢にしている。使用されるタンパク質/酵素成分に関してアッセイの複雑さを低減させることは、コスト、及び多数の多様な酵素の使用によって引き起こされる有害な干渉に対する感受性を有意に低減させ、各酵素は、機能的であるためのそれ自身の要件を有し、1つの及び同じアッセイ又は反応における酵素機能の円滑な相互作用は、常に容易なわけではない。
【0057】
ある特定の実施形態では、反応ミックスは、RNase阻害剤を更に含み得る。McCallら、は、それを示す(zeigt gerade das)(前の点を参照(siehe vorherige Stelle):(McCallら、Nanomaterials(Basel). 2017年11月;7(11):378、2017年11月8日にオンライン公開、doi:10.3390/nano7110378)。
【0058】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、方法は、約20℃~約50℃の温度、好ましくは、約22℃~約45℃の温度、最も好ましくは、約25℃~約42℃の温度で実施される。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の少なくとも1種の又は好ましくは全ての酵素は、熱安定性酵素である。「高度に熱安定性の酵素」は、本明細書で使用される場合、おおよそ70℃、71℃、72℃、73℃、74℃を上回る温度、好ましくは、75℃を上回る温度及び/又は37℃~約85℃の、好ましくは、約38℃~約80℃の、最も好ましくは、約40℃~約65℃の最適な活性温度でのみ、変性を示すことによって特徴付けることができる。熱安定性酵素の利点は、これらの酵素が、37℃の標準的な温度(体温)よりも上で、最適な触媒活性を意味する最適な活性を有するという事実である。増加した温度は、試薬の互いとの相互作用速度を増加させ、したがって、反応速度を改善する。したがって、増加した温度は、低減された複雑さを有する反応ミックスを有するが、信頼性のある重合結果をなおも達成する本発明の第1の態様において規定された方法を提供するために、本発明の全ての態様に従うある特定の実施形態において使用される。
【0060】
ある特定の実施形態では、本発明の全ての態様に従う方法は、上で規定された両方の逆転写酵素活性を使用し、逆転写酵素の機能性及びDNAポリメラーゼの機能性が、同じタンパク質上に供され、増加した温度が、低減された複雑さを有しつつ信頼性のある重合結果を達成する方法を提供することが好ましい。
【0061】
本発明の方法の一実施形態では、少なくとも1つのフォワードプライマー及び少なくとも1つのリバースプライマーが、標的配列特異的プライマーとして提供され、これらのプライマーのうち少なくとも一方、好ましくは、リバースプライマーは、他方のプライマーと比較して、より高い量又は濃度で供される。通常、多重分析のプライマー、又はプライマーの1つのセット、又はプライマーのいくつかのセットが目的とされ、本明細書で開示される方法に従って提供され得、これらのプライマーは通常、等モル割当量(ration)で供される。また、ある特定の目的のために、例えば、RNAウイルスの診断のために、次のような増幅工程のためのより多くのcDNAを得て反応の性能を増加させるために、一方のプライマーのより高い量又は濃度を(それが(+)ssRNAウイルスであるか(-)ssRNAウイルスであるかという事実に依存して)供することが適切となり得ることが見出された。
【0062】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、少なくとも1つのフォワードプライマー及び少なくとも1つのリバースプライマーが、標的配列特異的プライマーとして提供され、これらのプライマーのうち少なくとも一方、好ましくは、リバースプライマーは、他方のプライマーと比較して、より高い量又は濃度で供される。
【0063】
ある特定の実施形態では、プローブが、本明細書で開示される方法において使用され得、好ましくは、1つは増幅される標的核酸に関連し、1つは陽性対照に関連する、少なくとも2つの異なるプローブが使用される。特に、診断、特に、感染因子、例えば、SARS-CoV-2の診断の分野での、信頼性のある陽性対照の使用は、陽性対照が、反応がそのように動作したかどうかの結論を可能にするので、非常に有用であり、現在入手可能な検査キット中には含まれない。これは、検査が、訓練された専門家によって実験室において実施されるのではなく、家庭環境で又は検査ステーションで実施される場合に、特に重要であり、大きな利点を有する。
【0064】
用語「プローブ」は、本明細書で使用される場合、特性を研究するため、又は診断設定のためには、別の分子の量若しくは目的の構造を研究するために、分子生物学において、特に、本明細書で開示される方法において使用される分子又は原子を広く指す。本明細書で開示される方法と容易に組み合わせることができる種々の異なるプローブが、当業者に入手可能である(Molecular Probe Techniques、Tree Number(s) E05.601、Unique ID D015336、RDF Unique Identifier、http://id.nlm.nih.gov/mesh/D015336を参照されたい)。本明細書で開示される特定のデバイス上で、本明細書で開示される方法を使用するために、検出可能な及び/又は定量化可能なシグナルを供するプローブ、必要に応じて活性化可能なプローブは、好ましくは、例えば、Forster/蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブ等でもよい。本明細書で開示される方法を考慮すると、これは、迅速な診断結果を可能にし得る。これは、1つのプローブに関連する陽性対照、及び実際の標的配列に関連する異なるプローブを含むという利点を提供し、これは、診断結果の信頼性を大幅に増加させ得る。
【0065】
本発明の文脈では、任意の発光検出システムが、迅速かつ信頼性よく目的の増幅結果を検出するために使用され得る。発光は、熱からは生じないが、物質による、光の任意の種類の自発的放射についての、包括的な用語である。発光は、種々の型の発光を含み、本発明の目的のために最も適切なものは、生物発光及びエレクトロルミネッセンスが含まれる化学発光、並びに蛍光及びリン光が含まれるフォトルミネッセンスである。
【0066】
本発明に従う方法の間に取り込まれ得るプローブには、例えば、市販のTwistAmp(商標)exoプローブ(典型的には、約46ヌクレオチドと52ヌクレオチドとの間の長さを有する)及びTwistAmp(登録商標)fpgプローブ(典型的には、32ヌクレオチドと35ヌクレオチドとの間)が含まれる。これらのプローブは、蛍光発生的リアルタイム検出のために使用される。これら2つのプローブは、通常、フルオロフォア、蛍光シグナルを一時的に抑制するためにフルオロフォアにごく接近しているクエンチャー(例えば、BlackHole Quencher)、及び3'末端からのポリメラーゼ伸長を防止するように機能する、3'末端における遮断剤(例えば、C3-スペーサー、リン酸、ビオチン-TEG又はアミン)で標識される(Liら、Analyst、2019、上記、特に、図3A及び図3Bを再び参照されたい)。リアルタイム検出は、フルオロフォアとクエンチャーとの間の脱塩基部位(プリン塩基もピリミジン塩基も有さないDNA中の(低頻度でRNA中の)位置である脱プリン/脱ピリミジン部位としても公知)における蛍光発生的プローブの切断に基づく。脱塩基部位は、テトラヒドロフラン(THF)若しくはdSpacer(THFの誘導体)又はdR基(C-O-Cリンカーを介した脱塩基部位のデオキシリボース)のいずれかでもよい。例えば、エシェリキア・コリ(E. coli)エキソヌクレアーゼIIIは、THF又はdSpacer部位においてTwistAmp(商標)exoプローブを切断するが、エシェリキア・コリグリコシラーゼ/リアーゼfpg(ホルムアミドピリミジン-DNAグリコシラーゼ)は、dR位置においてTwistAmp(商標)fpgプローブを切断する。酵素的切断の後、TwistAmp(登録商標)exoプローブは、フォワードプライマーとして機能することができる。しかし、TwistAmp(商標)fpgプローブは、伸長可能な3'-OH基を生成しないが3'-リン酸基を生成する、エシェリキア・コリグリコシラーゼ/リアーゼfpgタンパク質の異なる触媒様式(ベータ-脱離)に起因して、プライマーとしては機能できない。少なくとも1種の活性化酵素の添加を必要としないプローブが含まれる、検出可能な標識を有する目的の核酸塩基又はヌクレオチドを作製するための種々の異なるプローブ又は標識は、少なくとも1つの適切な光源、並びに検出可能なシグナルを産生することによってプローブ及び/又は標識の存在を特異的に検出する同様の検出デバイスが存在する限り、画像化可能である。
【0067】
別の実施形態では、更なる発光発光団色素が使用され得る(Royら、Biosens Bioelectron. 2016年12月15日;doi:10.1016/j.bios.2016.06.065を参照されたい)。
【0068】
PCRの使用及び等温方法の使用を含む、分子検出技法の分野において公知のように、増幅反応の結果を視覚化する種々の方法が存在する。これらの技法は、当業者に公知であり、本明細書で開示される方法のために使用され得る。
【0069】
一実施形態では、例えば、一本鎖及び部分的に二本鎖のプライマーが含まれる少なくとも1つのプライマーは、それ自体、検出可能な標識で標識される。蛍光クエンチャーもまた検出可能な標識とみなされることに留意すべきである。例えば、蛍光クエンチャーは、蛍光色素と接触され得、クエンチングの量が検出される。反応を妨害しないために、検出可能な標識は、増幅反応を妨害しないような標識でなければならない。プライマーが、侵入鎖及び非侵入鎖を伴って部分的に二本鎖である場合、検出可能な標識は、侵入鎖の増幅反応を妨害しないような方法で結合されるべきである。部分的に二本鎖のプライマーの非侵入鎖は、伸長されず、したがって、非侵入鎖の標識化に関する制限は存在せず、唯一の例外は、非侵入鎖上の標識が、侵入鎖の伸長反応を妨害してはならないことである。標識されたプライマーは、増幅された産物のより迅速な検出の利点をもたらす。更に、非取り込み標識、即ち、伸長していない標識オリゴヌクレオチドの検出は、反応状態のモニタリングを可能にする。
【0070】
「標識」は、代謝変換若しくは輸送を通じて、又は特に、核酸増幅の診断的若しくは調製的アッセイの過程の間に、分子、部分又は原子の同定を可能にする、化学修飾又は同位体置換でもよい。
【0071】
別の実施形態では、二本鎖プライマーは、プライマーの2つの鎖の分離が検出され得るように、標識され得る。上で議論したように、複数ラウンドの増幅の後、部分的に二本鎖のプライマーの侵入鎖及び非侵入鎖は、分離される。この分離の後、非侵入鎖は、増幅反応に関与せず、これは次に、増幅反応の結果をオンラインで検出しモニタリングするために使用され得る。
【0072】
更に、検出可能な標識は、蛍光標識又は酵素でもよく、標識クエンチャー(標識阻害剤とも呼ばれる)は、蛍光クエンチャー又は酵素阻害剤でもよい。これらの場合には、標識は、蛍光又は酵素阻害によって検出される。標識のデレクタビリティ(delectability)は、蛍光標識が使用される場合には蛍光であり、酵素が使用される場合には酵素活性である。
【0073】
好ましい実施形態では、標的配列特異的となり得る別々のプローブが提供される。更に、プローブは、増幅反応の結果を都合よくモニタリングするために、検出可能な又は可視的なシグナルを与えるという目的を果たし得る。プローブは、例えば、Twist-RPA反応において使用される酵素、例えば、エキソヌクレアーゼIII(Exo III、本明細書ではexo)の添加によって活性化され得る、活性化可能な標識又はシグナル発生成分を保有し得る。標識はまた、ある特定の実施形態では、少なくとも1つのプライマーに関連し得る。検出可能な部分は、蛍光色素、酵素、蛍光クエンチャー、酵素阻害剤、放射性標識、発色剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得るが、本発明の方法の非実験室使用のために、放射性材料の使用及び/又は一般に、危険な物質(化学的、生物学的又は他の性質の)の使用は、特に、個人的な環境で使用される場合には、システムの最終使用者のための迅速な規制及び安全性を可能にするために、回避すべきである。更に、使用したシステムを容易に廃棄できるので、これは、廃棄物管理にとって好都合となり得る。
【0074】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、少なくとも1つのプローブ及び/又は標識が提供され、少なくとも1つのプローブ及び/又は少なくとも1つの標識は、直接的又は間接的に検出可能な部分を含む。
【0075】
本明細書で開示される方法において使用される全てのプライマー又はプローブは、天然に存在するDNA及び/若しくはRNA配列、或いは天然に存在する塩基及び/若しくは骨格を含む合成プライマー若しくはプローブ、或いはプライマー若しくはプローブに共有結合的及び/若しくは非共有結合的に結合された標識を含む、又はプライマー若しくはプローブの安定性を増加させるため又は校正活性を有するDNAポリメラーゼによるDNA配列の増幅を改善するための少なくとも1つのホスホチオエート(phosphothioate)骨格(Skerra、Nucleic Acids Res 20、3551~3554、doi:10.1093/nar/20.14.3551(1992))を含む、合成エレメント、並びにそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0076】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、少なくとも1種の一本鎖結合(SSB)タンパク質は、エシェリキア(Escherichia)ファージRB69に由来し、好ましくは、一本鎖結合タンパク質は、参照配列NP_861936.1として開示される配列、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列、或いはこの配列の機能的アナログを有する。配列は、アクセッション番号NP_861936、好ましくは、バージョンNP_861936.1として、NC_004928.1(これもまたNCBIにある)として公に入手可能になった同族RB69ファージゲノムを参照するNCBI参照配列として、公に入手可能になっている(データベースNational Center for Biotechnology Information(NCBI);https://www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照されたい)。
【0077】
本発明の任意の態様に従って使用される一本鎖結合タンパク質(一本鎖(DNA)結合タンパク質とも呼ばれる)は、一本鎖結合タンパク質のクラスのタンパク質に関連する(例えば、James L. Keck(編)、Single-Stranded DNA Binding Proteins:Methods and Protocols、Methods in Molecular Biology、第922巻、DOI 10.1007/978-1-62703-032-8、# Springer Science+Business Media、LLC 2012において概説される)。
【0078】
ある特定の実施形態では、本発明の種々の態様に従う一本鎖結合タンパク質は、ファージ由来の一本鎖結合タンパク質でもよい。
【0079】
好ましい実施形態では、一本鎖結合タンパク質は、ファージRB69に由来するタンパク質でもよい(NP_861936.1、上記)。このタンパク質は、一本鎖DNAに優先的に結合し、したがって、二本鎖DNAを不安定化する。その天然の機能として、一本鎖結合タンパク質は、優れた安定化効果を有するので、このタンパク質は、複製フォークが前進する際に一本鎖DNAに結合し、レプリソームのプロセシビティ及び精度を促進し、これはもちろん、本明細書で開示されるPINA反応において活用され得る。更に、本発明者らは、この特定の一本鎖DNAタンパク質の使用が、(i)いずれのリコンビナーゼも必要とせず、したがって、反応を大幅に単純化する効果的なPINA反応を確立すること、及び(ii)環状又は直鎖状(直鎖化された)形態の、全ての種類の一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAを増幅することを可能にすること、の両方を可能にすることを実証できた。
【0080】
本発明の任意の実施形態に従って使用される少なくとも1つのSSBタンパク質は、50ng/μlと1500ng/μlとの間、好ましくは、100ng/μlと800ng/μlとの間、より好ましくは、200ng/μlと600ng/μlとの間、最も好ましくは、300ng/μlと500ng/μlとの間の濃度で使用され得る。
【0081】
本発明の第1の態様に従う一実施形態では、使用されるタンパク質又は酵素のいずれかは、少なくとも1つのタグ及び/又は標識を含む。
【0082】
目的のタンパク質又は酵素のコード配列に付加されたタンパク質タグ、即ち、人工配列は、バイオテクノロジー及び分子生物学の関連する技術分野の当業者に周知である。これらのタグは、その組換え産生後の精製(いわゆる親和性タグ)、タンパク質の視覚化、溶解性等を促進するために、タンパク質に付加される。
【0083】
本発明の種々の実施形態によれば、特許請求され本明細書で開示される方法に従って使用される全ての酵素は、N末端若しくはC末端のいずれかに、又はまたタンパク質配列内に(好ましくは、個々のドメイン間に、タンパク質の機能を乱すことなしに)、或いはそれらの任意の組み合わせ(例えば、通常は異なる、例えば、2つの異なる親和性タグ、又は溶解性タグと視覚化タグとの組み合わせ等である、N末端及びC末端タグ)において、少なくとも1つのタグを含み得る。したがって、用語「タグ」又は「タンパク質タグ」は、種々の位置において、好ましくは、N末端及び/若しくはC末端において、又は明確に区別できる機能的ドメインの間で、目的のタンパク質中に取り込まれ得る、いくつかの異なる機能を実行する種々の異なるポリペプチド配列、又はそれをコードする対応する核酸配列を指す。タンパク質タグは、例えば親和性タグの、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Strep-タグ及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)又はHis-タグでもよい。親和性タグは、目的のタンパク質を特異的に精製するために使用され得る。タンパク質タグの別の例は、特に、細菌細胞培養物中で、その可溶性の形態で目的のタンパク質を得ることを可能にする、可溶化タグである。エピトープタグは、分析的抗体のための結合部位を有するために使用され得る。発光、好ましくは、蛍光タグは、細胞培養物中の目的のタンパク質を検出する可能性をもたらす。タグ又は標識は、容易な同定を可能にするために、目的のタンパク質若しくは酵素、又はその断片を標識するという目的もまた果たし得る。これは、診断目的のために特に目的とされ得る。
【0084】
好ましい実施形態では、本明細書で示唆されるPINA方法を用いたタンパク質/酵素相互作用パートナーの低減は、追加のクラウディング剤の必要性を除去するので、追加のクラウディング剤(crowding agent)を使用する必要はない。
【0085】
「クラウディング剤」は、本明細書で使用される場合、酵素反応のための最適な反応環境をもたらすことを補助する任意の薬剤を特定する意味である。クラウディング剤の作用様式は、基質と同族酵素との間の反応の確率が増加されるような、より小さい反応区画の創出である。等温増幅反応に通常積極的に添加されるクラウディング剤には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン及びficollが含まれる。クラウディング剤は、通常、反応の1体積%~12体積%(v/v)の間、又は1質量%~12質量%(w/v)の間の濃度でもよい。全てのPEGポリマーが有用であるが、好ましいPEG化合物には、PEG1450、PEG3000、PEG8000、PEG10000、分子量15000~20,000のPEG化合物(Carbowax 20Mとしても公知)、及びそれらの組み合わせが含まれると開示された。
【0086】
或いは又は更に、ナノ構造化された要素、例えば、ZnOナノ構造が、特に、本明細書に詳述される開始試薬の機能において、増幅結果を更に最適化するために、本発明の反応混合物において使用され得る(Maら、Virus Res.、2017、232:34~40. doi:10.1016/j.virusres.2017.01.021)。
【0087】
本発明に従う反応は、5分間と16時間との間、例えば、15分間と3時間との間、又は30分間と2時間との間、インキュベートされ得る。インキュベーションは、所望の程度の増幅が達成されるまで、実施され得る(欧州2336361A2を参照されたい)。ある特定の実施形態では、反応は、種々の成分の接触速度、したがって、方法の有効性を増加させるために、撹拌下で実施され得る。
【0088】
第2の態様本発明に従う一実施形態では、本発明の第1の態様に従う方法を実施するためのキットであって、(i)適切な反応成分と共に、少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質、少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、及び必要に応じて、少なくとも1種の逆転写酵素、(ii)少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの標的配列特異的プライマー;(iii)少なくとも1種の酵素のための少なくとも1種の補因子、dNTP、又はdNTPとddNTPとの混合物、少なくとも1つの緩衝系、及び少なくとも1種の還元剤を含む適切な反応成分;(iv)分析される生物学的プローブを抽出し、プローブを分析するためのシステム(かかるシステムは、欧州特許出願EP20201885.9において開示されている)に適用されるように構成された少なくとも1つの成分を含むための、少なくとも1つの無菌セット;(v)必要に応じて、少なくとも1つのプローブ、及び必要に応じて、プローブを活性化する少なくとも1種の酵素、を含み;(vi)必要に応じて、キットが、(i)~(v)を含む第2の部分を更に含み、第2の部分が、陽性対照として作用する所定の第2の標的配列、及び第2の標的配列に特異的な少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのプライマー、及び好ましくは、第2のプローブを含む、キットが提供され得る。必要に応じて、キットは、使用のための指示書を更に含み得る。
【0089】
キットは、因子、通常は感染因子の遺伝材料を標的配列として高度に特異的に検出するために、最適化されたプライマーを含むことが、非常に適切となり得る。更に、生物学的サンプルを好ましくは非侵襲的に抽出するために、グローブを含む無菌セットを供することが有用である。
【0090】
実験室では、熟練した分子生物学者又は訓練された人材が、本明細書で開示される方法を容易に実施でき、増幅される標的核酸に対するプライマー及び/又はプローブを容易に設計でき、適切な反応条件は、所望により、容易に改変され得る。もちろん、非実験室環境においてこの方法を実施することは、はるかに大きな課題である。特に、後者の状況では、(生)化学的薬剤及び成分が容易に再活性化でき(酵素のために、例えば、フリーズドライの後で)、反応を都合よく開始できるように、全ての必要な成分を既製の無菌バイアル又はチューブ中に含むキットを供することが好都合となり得る。
【0091】
本発明の第3の態様に従う一実施形態では、本発明の第1の態様で規定される少なくとも1つの標的配列の核酸増幅の等温方法を実施するための、本発明の第2の態様で規定されるキットの使用が、提供され得る。
【0092】
本発明の方法について詳述されるように、これらの方法は、複雑さが低減されるような、即ち、公知の等温増幅方法よりも少ない酵素及び化学的薬剤が必要とされるような方法で、設計されている。方法のこの単純さ及び低減された複雑さは、キットをより安価な、かつ家庭環境において使用するのにより容易なものにするために、キットの種々のパーツが低減され得るという利点を有する。
【0093】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して、ここで更に例示される。
【実施例
【0094】
実施例
実施例1(参照例)
SARS-CoV-2のためのRT-RPAを確立する
最初に、SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)、エンベロープタンパク質(E)及びヌクレオカプシド(N)の遺伝子を標的化するリアルタイム逆転写RPA(RT-RPA)を確立して、リアルタイムRT-PCRと比較した、検出限界、交差反応性及び臨床成績を決定した(Abd El Wahedら、2021、Suitcase lab for rapid detection of SARS-CoV-2 based on recombinase polymerase amplification assay、Anal. Chem. 2021、93、4、2627~2634)。
【0095】
アッセイ検証のために、RdRP遺伝子、E遺伝子及びN遺伝子(アクセッション番号:NC_045512、それぞれ、ヌクレオチド:14977~15975、26112~26479及び28280~29536)に基づく分子RNA標準を、GenExpress社(Berlin、Germany)が合成した。RdRP遺伝子及びE遺伝子についてのオリゴヌクレオチドは、SARS-CoV-1及びMERS CoVのための本発明者らの以前の設計(未公表のデータ)からアップデートしたが、N遺伝子アンプリコンは、以前に公開された論文(Behrmann, O.ら、Rapid detection of SARS-CoV-2 by low volume real-time single tube reverse transcription recombinase polymerase amplification using an exo probe with an internally linked quencher(exo-IQ). Clin Chem、doi:10.1093/clinchem/hvaa116(2020))から改変した(Table 1(表1))。全てのオリゴヌクレオチドは、TIB MOLBIOL GmbH社(Berlin、Germany)が合成した。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例2
低減された複雑さを有する等温増幅を検査する
PINAアッセイのための反応条件を、実施例1に記載したように、SARS-CoV-2標的材料を用いて検査した。増幅されたDNA材料の視覚化を、SYBR Greenを使用する定量的ネスティドPCRによって実施した。異なる緩衝条件、異なる温度、プライマー濃度、及び一本鎖結合タンパク質の濃度を検査した。良好な増幅結果を得るために適切な条件は、Table 2(表2)に示され、42℃及びpH8.3において実施され、図1中のサンプル3及び4に対応する。
【0098】
更に、PINAアッセイを、リコンビナーゼを含有するRPA方法と比較した。Table 3(表3)に詳述される、UsvXリコンビナーゼ及びUsvYリコンビナーゼ負荷因子と組み合わせた、T4 GP32を使用する1つの実験(RPA)、又はSSBのみのアプローチ(PINA)は、図2に示される。患者材料から直接的にRNA抽出物を増幅するための更なるPINA検査が、進行中である/計画されている。Table 1(表1)の条件は、患者材料からのRNAの増幅に適切となり得ることが観察されたが、患者サンプル中のウイルス材料の濃度はより低いので、異なる濃度が、上記ガイダンスで適応され得る。
【0099】
したがって、本発明者らの研究は、PINAアッセイが、RNA標準材料及び患者材料の両方について動作し、使用される酵素/タンパク質ミックスのはるかに低い複雑さを必要とすることを実証している。これは、家庭用検査のための大きな利点となり得る。
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
実施例3
逆転写及び等温増幅
PINAベースの増幅の基本原理及び操作性は、実施例2に記載される。更に、本発明者らは、逆転写酵素と組み合わせた、特に、1つのタンパク質中にDNAポリメラーゼ活性及び逆転写酵素活性の両方を有する酵素を使用するアプローチにおける、PINAアッセイを示すことを意図する。かかる酵素は、好ましくは、指向性in vitro進化によって設計され得る酵素である。これらの分析は、事前の逆転写がないことを除き、以前の実施例に記載された通りのRNA標的材料を使用する。検査設定は、別々に、又は二重機能のポリメラーゼ及び逆転写酵素の単一のタンパク質として、異なる逆転写酵素を含む。異なる検査シリーズでは、酵素は、異なる濃度で、異なる標的RNA濃度を用いて、及び異なる温度において、検査される。ある特定の変数パラメーターを扱うために設計された各検査シリーズにおいて、全ての他のパラメーターは、一定に維持される。
図1
図2
【配列表】
2024509834000001.app
【国際調査報告】