(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ラテラルフロー試験を実施するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240227BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20240227BHJP
G01N 27/48 20060101ALI20240227BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20240227BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N27/02 D
G01N27/48 301
G01N27/28 321F
G01N27/333 331N
G01N27/333 331Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553387
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 GB2022050558
(87)【国際公開番号】W WO2022185061
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523331740
【氏名又は名称】エクラテラル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ベンジャミン・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】モスクワ,デスピナ
(72)【発明者】
【氏名】コ・フェリーニョ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】エストレーラ,ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】チャップマン,サラ・メイ・オリヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ズパニッチ,ウロシュ
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC00
2G060AE17
2G060AF06
2G060AF10
2G060FA01
2G060FA10
2G060JA06
2G060KA05
(57)【要約】
本開示は、液体試料に対してラテラルフロー試験を実施するためのラテラルフロー試験デバイスであって、試験ストリップであって、試験ラインに沿って第1の表面に配置された第1の捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、第1の捕捉試薬が液体試料の第1の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜と;液体試料を受け入れるように構成されたニトロセルロース膜の第1の端部に配置された試料パッドと;試料パッドと試験ラインとの間の位置で第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、標識分子が第1の分析物に結合するように構成された標識試薬とを備える試験ストリップ;およびニトロセルロース膜の上に配置され、第1の表面を横切って電位を印加するように構成された電極アレイ;を備える、デバイスに関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料に対してラテラルフロー試験を実施するためのラテラルフロー試験デバイスであって、
試験ストリップであって、
試験ラインに沿って第1の表面に配置された第1の捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、前記第1の捕捉試薬が前記液体試料の第1の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜と;
前記液体試料を受け入れるように構成された前記ニトロセルロース膜の第1の端部に配置された試料パッドと;
前記試料パッドと前記試験ラインとの間の位置で前記第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、前記標識分子が前記第1の分析物に結合するように構成された標識試薬とを備える試験ストリップ;
前記ニトロセルロース膜の上に配置され、前記第1の表面を横切って電位を印加するように構成された電極アレイ;および
前記試験ストリップおよび前記電極アレイを囲むハウジングであって、前記電極アレイが前記試験ストリップから離間している初期の位置において前記電極アレイおよび前記試験ストリップを支持するように構成された支持要素を備える、ハウジングを備える、デバイス。
【請求項2】
前記ハウジングが、前記圧縮性部分が圧縮されたときに前記電極アレイを前記初期の位置から変位させるように構成された圧縮性部分を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記支持要素が、前記電極アレイが回転することを可能にするために前記電極アレイに結合されたピボットを備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記支持要素が、前記電極アレイの後端部に結合されたピンをさらに備え、前記ピンが、前記ハウジングの直線状の切り欠きを通って延び、前記ピンの移動が、前記ピボットを中心として前記電極アレイを回転させる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ハウジングがウェッジ要素をさらに備え、圧縮時に、前記ウェッジ要素が前記圧縮性部分を圧縮して、前記電極アレイを前記ピボットの周りで回転させる、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記電極アレイが、絶縁材料で形成されたコアと、前記コアに配置された複数の電極とを備える、請求項1から5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記コアおよび/または前記電極アレイが可撓性材料で形成される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電極アレイが、前記電極アレイが屈曲することを可能にする開口部を有する、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記ハウジングが、前記試験ストリップを傾斜位置で支持するように構成された傾斜部分を備える、請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記ニトロセルロース膜の第2の端部に配置され、前記液体試料を前記試料パッドから前記ニトロセルロース膜に沿って駆動するための毛細管力を設けるように構成された高い液体吸収能力を有するウィッキングパッドをさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記標識試薬が含浸された前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面に配置された共役パッドをさらに備える、請求項1から10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記ニトロセルロース膜が、制御ラインに沿って前記第1の表面に配置された第2の捕捉試薬をさらに備え、前記第2の捕捉試薬が、前記標識分子を捕捉するように構成されている、請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の電極は、前記試験ラインおよび前記ニトロセルロース膜のバックグラウンド部分に重なるように配置された1または複数の作用電極を備え、前記1または複数の作用電極は、前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面に電位を印加するように構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数の電極は、それぞれが対応する作用電極に対向して配置されて電気回路を完成させる、1または複数のカウンター電極を備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の電極は、前記作用電極によって印加される前記電位の参照点として作用するように構成された1または複数の参照電極を備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記または各参照電極は、カウンター電極に隣接して配置される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
少なくとも1つの作用電極-カウンター電極対が、前記電極アレイの窪みに配置され、前記試験ストリップと接触したときに前記窪みがサンプリングウェルを形成するようにする、請求項14、15または16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記電極アレイが、プリント回路基板PCBに配置されている、請求項1から17のいずれかに記載のデバイス。
【請求項19】
前記PCBが複数の導電層を備える、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記複数の導電層のうちの1または複数の導電層が、ソルダーマスク層で覆われている、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記標識分子が、金ナノ粒子などの触媒活性を示す分子を備える、請求項1から20のいずれかに記載のデバイス。
【請求項22】
前記標識分子の電気化学的検出のために前記標識分子の表面に沈殿するように構成された、前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面または前記試料パッドに配置されたシグナルエンハンサーをさらに備える、請求項1から21のいずれかに記載のデバイス。
【請求項23】
前記シグナルエンハンサーが含浸された前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面に配置された追加の共役パッドをさらに備える、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記シグナルエンハンサーが複数の金属イオンを備え、前記複数の金属イオンが銀塩に由来していてもよい、請求項22または23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記電極アレイが複数の金メッキ電極を備え、前記ニトロセルロース膜の上に配置された前記複数の金メッキ電極が、前記金メッキ電極の前記銀塩に由来する銀イオンの還元を開始する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記複数の金属イオンが、還元剤と組み合わせて設けられる、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記還元剤がヒドロキノン溶液である、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記デバイスには固有の識別子が設けられ、前記固有の識別子は、バーコード、QRコード(登録商標)、またはそれらの組み合わせを備えていてもよい、請求項1から27のいずれかに記載のデバイス。
【請求項29】
前記ハウジングには、前記試験ラインの目視評価のために前記試験ラインの上方に窓が設けられている、請求項1から28のいずれか記載のデバイス。
【請求項30】
前記ハウジング内に組み込まれた複数の試験ストリップをさらに備える、請求項1から29のいずれかに記載のデバイス。
【請求項31】
前記電極アレイを介して電気信号を生成して前記試験ストリップの電気化学反応を駆動し、結果として生じる電気化学信号を前記試験ストリップから前記電極アレイを介して受信するように構成された一体型電子リーダ;および
前記電子リーダを介して前記電極アレイに電力を供給するように構成された電源をさらに備える、請求項1から30のいずれかに記載のデバイス。
【請求項32】
前記受信した電気化学信号を送信するために外部電子デバイスと通信するように構成された通信インターフェースをさらに備える、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記電極アレイが少なくとも一対の電極を備え、前記結果として生じる電気化学信号が、前記少なくとも一対の電極にわたる電流、または前記少なくとも一対の電極間の電気回路のコンダクタンス、抵抗、キャパシタンスもしくはインピーダンスの変化、またはそれらの組み合わせを備える、請求項31または32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記第1の捕捉試薬が、前記第1の試験ラインとは異なる濃度で第2の試験ラインに沿って前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面にさらに配置される、請求項1から33のいずれかに記載のデバイス。
【請求項35】
前記ニトロセルロース膜が、第3の試験ラインに沿って前記第1の表面に配置された第3の捕捉試薬をさらに備え、前記第3の捕捉試薬が、前記第1の分析物とは異なる前記液体試料の第3の分析物を捕捉するように構成される、請求項1から34のいずれかに記載のデバイス。
【請求項36】
前記電極アレイは、複数の対応する電極の対を備え、前記複数のうちの対応する電極の対が前記ニトロセルロース膜のバックグラウンドを覆い、対応する電極の対が、前記第1の試験ラインを覆い、前記複数のうちの対応する電極の対が、前記制御ラインおよび/または前記第2の試験ラインおよび/または前記第3の試験ラインの各々を覆っていてもよいように前記複数の電極が配置される、請求項1から35のいずれかに記載のデバイス。
【請求項37】
ラテラルフロー試験デバイスからの結果を読み取るための電子リーダであって、前記ラテラルフロー試験デバイスは圧縮性部分を備え、
前記ラテラルフロー試験デバイスの前記圧縮性部分を圧縮するように構成された放出機構を備える前記ラテラルフロー試験デバイスを受けるための受け部;および
前記ラテラルフロー試験デバイスと電気的に結合して、前記ラテラルフロー試験デバイス内部の電気化学反応を駆動するための電気信号を生成し、前記電気化学反応を示す結果として生じる電気化学信号を受信するように構成された通信ポートを備える、電子リーダ。
【請求項38】
前記電子リーダは、外部ソースからの電力を受け取るための電力接続部をさらに備える、請求項37に記載の電子リーダ。
【請求項39】
前記電子リーダが、一体型電源をさらに備える、請求項37または38に記載の電子リーダ。
【請求項40】
前記電子リーダが、前記ラテラルフロー試験デバイスの固有の識別子を読み取るための光学リーダをさらに備える、請求項37から39のいずれかに記載の電子リーダ。
【請求項41】
前記放出機構が、前記ラテラルフロー試験デバイスを前記受け部に挿入すると、前記ラテラルフロー試験デバイスの前記圧縮性部分を圧縮するように構成されたリニアアクチュエータを備える、請求項37から40のいずれかに記載の電子リーダ。
【請求項42】
前記電子リーダが、前記結果を測定するのに必要な時間の長さによって定められる測定時間をカウントダウンするように構成されたタイマをさらに備える、請求項37から41のいずれかに記載の電子リーダ。
【請求項43】
液体試料に対してラテラルフロー試験を実行するためのシステムであって、
ラテラルフロー試験デバイスであって、
試験ストリップであって、
試験ラインに沿って第1の表面に配置された第1の捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、前記第1の捕捉試薬が前記液体試料の第1の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜;
前記液体試料を受け入れるように構成された前記ニトロセルロース膜の第1の端部に配置された試料パッド;
前記試料パッドと前記試験ラインとの間の位置で前記第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、前記標識分子が前記第1の分析物に結合するように構成された標識試薬;
前記ニトロセルロース膜の上に配置され、前記第1の表面を横切って電位を印加するように構成された電極アレイ;および
前記試験ストリップおよび前記電極アレイを囲むハウジングであって、前記電極アレイが前記試験ストリップから離間している初期の位置において前記電極アレイおよび前記試験ストリップを支持するように構成された支持要素を備える、ハウジングを備える、試験ストリップ;および
電子リーダであって、
前記電極アレイを読み取り準備完了位置において前記試験ストリップと接触させるように前記ラテラルフロー試験デバイスの前記ハウジングを圧縮するように構成された放出機構を備える前記ラテラルフロー試験デバイスを受けるための受け部;および
前記ラテラルフロー試験デバイスの前記電極アレイと電気的に結合して、前記試験ストリップの電気化学反応を駆動するために前記電極アレイにおいて電気信号を生成し、前記試験ストリップの前記電気化学反応を示す結果として生じる電気化学信号を前記電極アレイから測定するように構成された通信ポートを備える、電子リーダを備える、ラテラルフロー試験デバイスを備えるシステム。
【請求項44】
前記ハウジングが、前記圧縮性部分が圧縮されたときに前記電極アレイを前記初期の位置から変位させるように構成された圧縮性部分を備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記放出機構が、前記ラテラルフロー試験デバイスを前記受け部に挿入する動作によって作動される、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記支持要素が、前記電極アレイに結合されたピボットを備え、前記放出機構が、前記ラテラルフロー試験デバイスが前記受け部に挿入されると前記電極アレイを回転させるために前記圧縮性部分に突出するように構成された突出要素を備える、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記突出要素は、弾性要素によって前記受け部の中心線に向かって偏向され、前記突出要素は、前記ラテラルフロー試験デバイスが前記受け部に挿入されると、前記弾性要素によって前記圧縮性部分に放出される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記支持要素は、前記電極アレイが回転することを可能にするために前記電極アレイに結合されたピボットと、前記電極アレイの後端部に結合されたピンとを備え、前記ピンは、前記ハウジングの直線状の切り欠きを通って延在し;
前記放出機構は、前記受け部の内面に誘導溝を備え、前記誘導溝は、前記受け部の中心線に向かって傾斜しており、前記電極アレイを回転させるために前記ラテラルフロー試験デバイスを前記受け部に挿入すると、前記ピンを前記中心線に向かって誘導するために前記ピンを受容するように構成される、請求項45に記載のシステム。
【請求項49】
前記支持要素は、前記電極アレイに結合されたピボットを備え、前記ハウジングは、ウェッジ要素をさらに備え、前記放出機構は、前記ラテラルフロー試験デバイスが前記受け部に挿入されると、前記ウェッジ要素が前記圧縮性部分を圧縮して前記電極アレイを回転させるように前記ウェッジ要素が押す表面を備える、請求項45に記載のシステム。
【請求項50】
前記放出機構が、作動時に前記受け部の中心線に向かって延びるように構成されたリニアアクチュエータを備える、請求項45に記載のシステム。
【請求項51】
前記放出機構が、1N~50Nの範囲の圧力で前記圧縮性部分を圧縮するように構成される、請求項44から50のいずれかに記載のシステム。
【請求項52】
前記ラテラルフロー試験デバイスは、前記電極アレイの露出部分を有するポートを備え、前記ポートは、前記電子リーダの前記通信ポートと結合するように配置される、請求項43から51のいずれかに記載のシステム。
【請求項53】
ラテラルフロー試験ストリップを使用して液体試料に対してラテラルフロー試験を実行する方法であって、前記ラテラルフロー試験ストリップが、試験ラインに沿って第1の表面に配置された捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、前記捕捉試薬が前記液体試料の所定の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜;前記液体試料を受け入れるように構成された前記ニトロセルロース膜の一端部に配置された試料パッド;および前記試料パッドと前記試験ラインとの間の前記第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、前記標識分子が前記所定の分析物に結合するように構成された標識試薬を備え、
前記ラテラルフロー試験ストリップの電気化学反応を駆動するために、前記ニトロセルロース膜の上に配置された電極アレイを介して前記第1の表面にわたって電位を印加すること;および
前記電極アレイを通る前記ラテラルフロー試験ストリップからの、結果として生じた電気化学信号を測定すること、を含む方法。
【請求項54】
前記試料パッドに前記液体試料を堆積させることをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記電極アレイが複数の対応する電極の対を備え、前記ニトロセルロース膜のバックグラウンドの上に対応する電極の対を、また前記試験ラインの上に対応する電極の対を重ねること、および前記バックグラウンドに重なる前記電極の対と前記試験ラインの上に重なる前記電極の対との間の前記結果として生じた電気化学信号の差を判定することをさらに含む、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
電位を印加する前に、前記試料パッドを介して緩衝液で前記ニトロセルロース膜を洗浄することをさらに含む、請求項53から55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
電位を印加する前に、複数の金属イオンを含むシグナルエンハンサー溶液を前記試料パッドを介して前記ニトロセルロース膜に堆積させることをさらに含む、請求項53から55のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記複数の金属イオンが銀塩に由来する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記シグナルエンハンサー溶液を展開剤と合わせる活性化工程をさらに含む、請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
前記展開剤が、前記標識分子の前記表面の前記複数の金属イオンの自発的な還元を可能にするための還元剤を備える、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ニトロセルロース膜の前記第1の表面に沿って、前記標識分子の表面に沈殿した前記複数の金属イオンの少なくとも一部から結果として生じた金属の分布を測定して、前記第1の表面に沿った標識分子の濃度を判定することをさらに含む、請求項57から60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記ニトロセルロース膜に沿って、前記標識分子と反応しなかった金属イオンの分布を測定することをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、前記電極アレイを介して前記ニトロセルロース膜に沿って電位スイープを実行することを含む、請求項53から62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記電位スイープを少なくとも2回実行することをさらに含み、電位スイープの第1のサイクルが前記電気化学反応をリセットし、電位スイープの第2のサイクルが前記電気化学信号を測定する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
電流ピークの検出が金属イオンの局所濃度を示す、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記試験ラインまたはその近くに電流ピークが存在しないことの検出が、前記液体試料中の前記所定の分析物の存在を示す、請求項63、64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、ボルタンメトリック法、アンペロメトリック法、電位差法、もしくはインピーダンスベースの方法、またはそれらの組み合わせに基づいて行われる、請求項53から66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、線形スイープボルタンメトリー法を使用して行われる、請求項53から67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記線形スイープボルタンメトリー法が、参照電位に対して最小電位から最大電位まで所定の速度での電位スイープを含み、前記所定の速度が毎秒10mV~毎秒1000mVの範囲になっていてもよい、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記参照電位に対する前記最小電位が、-1V~-0.1V、好ましくは-0.5Vの範囲である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記参照電位に対する前記最大電位が、+0.1V~+1V、好ましくは+0.5Vの範囲である、請求項69または70に記載の方法。
【請求項72】
前記線形スイープボルタンメトリー法が、前記電位スイープを所定回数繰り返すことを含む、請求項69から71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記線形スイープボルタンメトリー法が、前記電位スイープを実行する前に所定の期間にわたって低電位を印加すること、および/または前記電位スイープを実行した後に所定の期間にわたって高電位を印加することである堆積工程を含む、請求項69から72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記低電位が前記参照電位に対して-1V~-0.1Vの範囲であり、および/または前記高電位が前記参照電位に対して0.1V~1Vの範囲である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記所定の期間が、1分以下である、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、パルスベースの電気化学技術を使用して行われる、請求項53から75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記パルスベースの電気化学技術が、微分パルスボルタンメトリー法または方形波ボルタメトリー法を含む、請求項76に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラテラルフロー試験に関する。
【背景技術】
【0002】
ラテラルフローアッセイ(LFA)およびラテラルフローデバイス(LFD)としても知られているラテラルフロー試験(LFT)は、医療診断の分野で広く普及しており、環境モニタリングなどの他の状況で広く使用されている。これらは1980年代に導入されたものであり、依然として使い捨て免疫センサの実装に利用可能な最も費用効果の高いプラットフォームの1つである(例えば、Campbell,R.L.,Wagner,D.B.and O’Connel,J.P.(1987)Solid-phase assay with visual readout、米国特許第4,703,017号明細書;Rosenstein,R.W.and Bloomster,T.G.(1989)Solid-phase assay employing capillary flow、米国特許第4,855,240号明細書;O’Farrell(2009)“Evolution in Lateral Flow-Based Immunoassay Systems”,R.C.Wong,H.Y.Tse(eds.),Lateral Flow Immunoassay,1 DOI 10.1007/978-1-59745-240-3_1において引用、を参照されたい)。2006年には、世界中の200社を超える企業が市場でLFTを製造し、その時点では推定21億ドル(O’Farrell、前掲書)であった。
【0003】
LFTは、一般に、一方の端部で試料パッドと、他方の端部でウィッキングパッドと接続する、ニトロセルロース製のストリップを含む。この構成は、液体試料が堆積点からニトロセルロースを通ってウィッキングパッドに向かって試料パッドに適用されるときに均一な毛細管流を保証する。構成は、安定性のために裏当てカードにおいて組み立てられる。分析物の検出および可視化は、分析物における異なる表面に結合する親和性試薬の対によって媒介される。そのような親和性試薬の対は、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体、または目的のために選択された他の親和性試薬として天然に存在し得る。各対の第1の試薬は、顕微鏡ラテックスビーズまたは金ナノ粒子などの光学的に検出可能な試薬で標識され、溶液中で使用される。典型的には、光学的に検出可能な標識は非常に小さいため、個々の粒子は目で検出できず、多数の粒子が特定の位置で非常に高い濃度または量まで蓄積する場合にのみ目で検出可能になる。この効果を達成するために、各対の第2の(標識されていない)試薬が固定化され、分析物および分析物に結合している任意の標識試薬を溶液から捕捉するために使用される。この捕捉試薬は標識されておらず、捕捉ストリップとして知られているものの流れの方向に垂直な可視化線で印刷される。このラインでの標識の蓄積は、捕捉試薬が標識試薬に結合した溶液から分析物を加えたことを示す。
【0004】
典型的には、2本の可視化線がニトロセルロース膜に印刷される。上述のように、試料パッドに最も近く、試料が最初に遭遇するのは捕捉試薬である。これは、いわゆる試験ラインである。第2の印刷されたラインは、標識試薬に直接結合し、したがって溶液から標識粒子を直接加える抗体または他の捕捉試薬を含む:これがいわゆる制御ラインである。それは、試験に添加された標識された成分を加えるので、試験が正しく行われた場合、試験ラインは常に目に見えているはずである。ラテックスビーズまたは金ナノ粒子で標識された結合親和性試薬を含む可溶性試薬は、製造中に試薬パッドに含める、試料パッドとウィッキングパッドとの間の別個の試薬パッドに含める、または膜に塗布する前に試料緩衝液と共に試料に添加することができる。
【0005】
アッセイの能力は調整可能であるが、従来のLFTプラットフォームにはいくつかの問題が存在し得る。
【0006】
・センサの応答の主観的な視覚的読み出しによる結果の曖昧な解釈、中程度の臨床的能力、および視力の悪いユーザが試験を使用することを除外する潜在可能性につながる;
・例えば、分析物が飲料水の試料の中の微量の毒性金属である場合、または新生児もしくは高齢者である患者、または低血圧および/もしくは血管虚脱の患者から血液、血漿もしくは血清の試料が必要とされる場合、大量の試料を得ることが非現実的であるとき、分析物の量または濃度が視覚的検出に見合った検出可能な閾値を超えている必要があることが、問題となることがある;
・定量化の限られた可能性、つまり他の形態のフォローアップ試験が頻?に必要とされ、例えば糖尿病患者のグルコースモニタリングにおいて安価な使い捨て試験が望ましい可能性がある多くの状況では、LFTは使用され得ないことを意味する。
【0007】
・特に、訓練された開業医ではない人物が試験を使用する場合の、多重化の限られた可能性、つまり、試験において2つ以上の分析物またはバイオマーカーを検出する必要がある場合に複数のLFTを使用しなければならないことを意味する。
【0008】
・マイクロリットルレベルに満たない試料の体積要件の小型化は達成されていない;
・オンボードの電子機器および内蔵QC機能との統合が困難な場合がある;
・試験間の再現性が困難であり得る。
【0009】
上記を考慮して、本技術は、ラテラルフロー試験を実施するための改善されたデバイスおよび方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,703,017号明細書
【特許文献2】米国特許第4,855,240号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】O’Farrell(2009)“Evolution in Lateral Flow-Based Immunoassay Systems”,R.C.Wong,H.Y.Tse(eds.),Lateral Flow Immunoassay,1 DOI 10.1007/978-1-59745-240-3_1
【発明の概要】
【0012】
したがって、本技術は、非光学ベースであり、既製のLFTに実装することができる電気化学的ラテラルフロー試験を実行するためのデバイスおよびシステムを提供する。また、本技術は、例えば試験が高感度、定量化、または多重化を必要としているときに、これまでLFTの導入が現実的ではなかったケースにおいて、新たなLFTを製造することを可能にする。本技術はさらに、従来のLFTの結果から電気化学信号を生成および捕捉するためのデバイスおよび方法を提供する。捕捉されたデータは、例えば、分析、記憶、または前方送信のために、例えば、コンピュータ、ディスプレイ、スマートフォン、他のスマートデバイス、データストレージ、または送信デバイスなどに送信され得る。本技術は、ユーザのLFTの結果を解釈するコンピュータ実装方法をさらに提供する。
【0013】
本技術の一態様は、液体試料に対してラテラルフロー試験を実施するためのラテラルフロー試験デバイスであって、試験ストリップであって、試験ラインに沿って第1の表面に配置された第1の捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、第1の捕捉試薬が液体試料の第1の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜と;液体試料を受け入れるように構成されたニトロセルロース膜の第1の端部に配置された試料パッドと;試料パッドと試験ラインとの間の位置で第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、標識分子が第1の分析物に結合するように構成された標識試薬とを備える試験ストリップ;ニトロセルロース膜の上に配置され、第1の表面を横切って電位を印加するように構成された電極アレイ;および試験ストリップおよび電極アレイを囲むハウジングであって、電極アレイが試験ストリップから離間している初期の位置において電極アレイおよび試験ストリップを支持するように構成された支持要素を備える、ハウジングを備える、デバイスを提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、圧縮性部分が圧縮されたときに電極アレイを初期の位置から変位させるように構成された圧縮性部分を備え得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、支持要素は、電極アレイが回転することを可能にするために電極アレイに結合されたピボットを備えることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、支持要素は、電極アレイの後端部に結合されたピンをさらに備え得、ピンは、ハウジングの直線状の切り欠きを通って延び、ピンの移動は、ピボットを中心に電極アレイを回転させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ハウジングはウェッジ要素をさらに備え得、圧縮時に、ウェッジ要素は圧縮性部分を圧縮して、電極アレイをピボットの周りで回転させる。
【0018】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、絶縁材料で形成されたコアと、コアに配置された複数の電極とを備えることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、コアおよび/または電極アレイは、可撓性材料で形成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、電極アレイが屈曲することを可能にする開口部を有することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、試験ストリップを傾斜位置で支持するように構成された傾斜部分を備えることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、デバイスは、ニトロセルロース膜の第2の端部に配置され、液体試料を試料パッドからニトロセルロース膜に沿って駆動するための毛細管力を設けるように構成された高い液体吸収能力を有するウィッキングパッドをさらに備え得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、デバイスは、標識試薬が含浸されたニトロセルロース膜の第1の表面に配置された共役パッドをさらに備え得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ニトロセルロース膜は、制御ラインに沿って第1の表面に配置された第2の捕捉試薬をさらに含み得、第2の捕捉試薬は標識分子を捕捉するように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、試験ラインおよびニトロセルロース膜のバックグラウンド部分に重なるように配置された1または複数の作用電極を含むことができ、1または複数の作用電極は、ニトロセルロース膜の第1の表面に電位を印加するように構成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、それぞれが対応する作用電極に対向して配置されて電気回路を完成させる、1または複数のカウンター電極を含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、作用電極によって印加される電位の参照点として作用するように構成された1または複数の参照電極を含むことができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、参照電極または各参照電極は、カウンター電極に隣接して配置されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの作用電極-カウンター電極対が、電極アレイの窪みに配置され得、試験ストリップと接触したときに窪みがサンプリングウェルを形成するようにする。
【0030】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、プリント回路基板PCBに配置されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、PCBは複数の導電層を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、複数の導電層のうちの1または複数の導電層は、ソルダーマスク層で覆われてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、標識分子は、金ナノ粒子などの触媒活性を示す分子を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、デバイスは、標識分子の電気化学的検出のために標識分子の表面に沈殿するように構成されたニトロセルロース膜の第1の表面または試料パッドに配置されたシグナルエンハンサーをさらに備え得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、デバイスは、シグナルエンハンサーが含浸されたニトロセルロース膜の第1の表面に配置された付加的な共役パッドをさらに備え得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、シグナルエンハンサーは、複数の金属イオンを含んでもよく、複数の金属イオンは銀塩に由来していてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、複数の金メッキ電極を含むことができ、ニトロセルロース膜の上に配置された複数の金メッキ電極は、金メッキ電極の銀塩に由来する銀イオンの還元を開始する。
【0038】
いくつかの実施形態では、複数の金属イオンは、還元剤と組み合わせて設けられてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、還元剤はヒドロキノン溶液であり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、デバイスには固有の識別子が設けられてもよく、固有の識別子は、任意選択的にバーコード、QRコード(登録商標)、またはそれらの組み合わせを含めていてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、ハウジングには、試験ラインの目視評価のために試験ラインの上方に窓が設けられてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、デバイスは、ハウジング内に組み込まれた複数の試験ストリップをさらに備え得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、デバイスは、電極アレイを介して電気信号を生成して試験ストリップの電気化学反応を駆動し、結果として生じる電気化学信号を試験ストリップから電極アレイを介して受信するように構成された一体型電子リーダ;および電子リーダを介して電極アレイに電力を供給するように構成された電源をさらに備え得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、少なくとも一対の電極を備え得、結果として生じる電気化学信号が、少なくとも一対の電極にわたる電流、または少なくとも一対の電極間の電気回路のコンダクタンス、抵抗、キャパシタンスもしくはインピーダンスの変化、またはそれらの組み合わせを備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、デバイスは、受信した電気化学信号を送信するために外部電子デバイスと通信するように構成された通信インターフェースをさらに備え得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の捕捉試薬は、第1の試験ラインとは異なる濃度で第2の試験ラインに沿ってニトロセルロース膜の第1の表面にさらに配置され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ニトロセルロース膜は、第3の試験ラインに沿って第1の表面に配置された第3の捕捉試薬をさらに含み得、第3の捕捉試薬は、第1の分析物とは異なる液体試料の第3の分析物を捕捉するように構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、電極アレイは、複数の対応する電極の対を備え得、複数の対応する電極は、複数の対応する電極の対がニトロセルロース膜のバックグラウンドを覆い、対応する電極の対が、第1の試験ラインを覆い、複数のうちの対応する電極の対が、制御ラインおよび/または第2の試験ラインおよび/または第3の試験ラインの各々を覆っていてもよいように配置される。
【0049】
本技術の別の態様は、ラテラルフロー試験デバイスからの結果を読み取るための電子リーダであって、ラテラルフロー試験デバイスは圧縮性部分を備え、ラテラルフロー試験デバイスの圧縮性部分を圧縮するように構成された放出機構を備えるラテラルフロー試験デバイスを受けるための受け部;およびラテラルフロー試験デバイスと電気的に結合して、ラテラルフロー試験デバイス内の電気化学反応を駆動するための電気信号を生成し、電気化学反応を示す結果として生じる電気化学信号を受信するように構成された通信ポートを備える、電子リーダを提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、電子リーダは、外部ソースから電力を受け取るための電力接続部をさらに備え得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、電子リーダは、一体型電源をさらに備え得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、電子リーダは、ラテラルフロー試験デバイス上の固有の識別子を読み取るための光学リーダをさらに備え得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、放出機構は、ラテラルフロー試験デバイスを受け部に挿入すると、ラテラルフロー試験デバイスの圧縮性部分を圧縮するように構成されたリニアアクチュエータを備え得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、電子リーダは、結果を測定するのに必要な時間の長さによって定められる測定時間をカウントダウンするように構成されたタイマをさらに備え得る。
【0055】
本技術の別の態様は、液体試料に対してラテラルフロー試験を実行するためのシステムであって、ラテラルフロー試験デバイスであって、試験ストリップであって、試験ラインに沿って第1の表面に配置された第1の捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、第1の捕捉試薬が液体試料の第1の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜;液体試料を受け入れるように構成されたニトロセルロース膜の第1の端部に配置された試料パッド;試料パッドと試験ラインとの間の位置で第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、標識分子が第1の分析物に結合するように構成された標識試薬;ニトロセルロース膜の上に配置され、第1の表面を横切って電位を印加するように構成された電極アレイ;および試験ストリップおよび電極アレイを囲むハウジングであって、電極アレイが試験ストリップから離間している初期の位置において電極アレイおよび試験ストリップを支持するように構成された支持要素を備える、ハウジングを備える、試験ストリップ;および電子リーダであって、電極アレイを読み取り準備完了位置において試験ストリップと接触させるようにラテラルフロー試験デバイスのハウジングを圧縮するように構成された放出機構を備えるラテラルフロー試験デバイスを受けるための受け部;およびラテラルフロー試験デバイスの電極アレイと電気的に結合して、試験ストリップの電気化学反応を駆動するために電極アレイにおいて電気信号を生成し、試験ストリップの電気化学反応を示す結果として生じる電気化学信号を電極アレイから測定するように構成された通信ポートを備える、電子リーダを備える、ラテラルフロー試験デバイスを備えるシステムを提供する。
【0056】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、圧縮性部分が圧縮されたときに電極アレイを初期の位置から変位させるように構成された圧縮性部分を備え得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、放出機構は、ラテラルフロー試験デバイスを受け部に挿入する動作によって作動され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、支持要素は、電極アレイに結合されたピボットを備え得、放出機構は、ラテラルフロー試験デバイスを受け部に挿入すると電極アレイを回転させるために圧縮性部分に突出するように構成された突出要素を備え得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、突出要素は、弾性要素によって受け部の中心線に向かって偏向され得、突出要素は、ラテラルフロー試験デバイスを受け部に挿入すると、弾性要素によって圧縮性部分に放出され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、支持要素は、電極アレイが回転することを可能にするために電極アレイに結合されたピボットと、電極アレイの後端部に結合されたピンとを備え得、ピンは、ハウジングの直線状の切り欠きを通って延在し;放出機構は、受け部の内面に誘導溝を備え得、誘導溝は、受け部の中心線に向かって傾斜し得、電極アレイを回転させるためにラテラルフロー試験デバイスを受け部に挿入すると、ピンを中心線に向かって誘導するためにピンを受容するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態では、支持要素は、電極アレイに結合されたピボットを含むことができ、ハウジングは、ウェッジ要素をさらに含み、放出機構は、ラテラルフロー試験デバイスが受け部に挿入されると、ウェッジ要素が圧縮性部分を圧縮して電極アレイを回転させるようにウェッジ要素が押す表面を備える。
【0062】
いくつかの実施形態では、放出機構は、作動時に受け部の中心線に向かって延びるように構成されたリニアアクチュエータを備え得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、放出機構は、1N~50Nの範囲の圧力で圧縮性部分を圧縮するように構成され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験デバイスは、電極アレイの露出部分を有するポートを備え得、ポートは、電子リーダの通信ポートと結合するように配置される。
【0065】
本技術のさらなる態様は、ラテラルフロー試験ストリップを使用して液体試料に対してラテラルフロー試験を実行する方法であって、ラテラルフロー試験ストリップが、試験ラインに沿って第1の表面に配置された捕捉試薬を有するニトロセルロース膜であって、捕捉試薬が液体試料の所定の分析物を捕捉するように構成される、ニトロセルロース膜;液体試料を受け入れるように構成されたニトロセルロース膜の一端部に配置された試料パッド;および試料パッドと試験ラインとの間の第1の表面に配置された複数の標識分子を備え、標識分子が所定の分析物に結合するように構成された標識試薬を備え、ラテラルフロー試験ストリップの電気化学反応を駆動するために、ニトロセルロース膜の上に配置された電極アレイを介して第1の表面にわたって電位を印加すること;および電極アレイを通るラテラルフロー試験ストリップからの、結果として生じた電気化学信号を測定すること、を含む方法を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、方法は、試料パッドに液体試料を堆積させることをさらに含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、電極アレイが複数の対応する電極の対を備え得、方法は、ニトロセルロース膜のバックグラウンドの上に対応する電極の対を、また試験ラインの上に対応する電極の対を重ねること、およびバックグラウンドに重なる電極の対と試験ラインの上に重なる電極の対との間の結果として生じた電気化学信号の差を判定することをさらに含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法は、電位を印加する前に、試料パッドを介して緩衝液でニトロセルロース膜を洗浄することをさらに含み得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、方法は、電位を印加する前に、複数の金属イオンを含むシグナルエンハンサー溶液を試料パッドを介してニトロセルロース膜に堆積させることをさらに含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、複数の金属イオンは銀塩に由来し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、方法は、シグナルエンハンサー溶液を展開剤と合わせる活性化工程をさらに含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、展開剤は、標識分子の表面の複数の金属イオンの自発的な還元を可能にするための還元剤を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法は、ニトロセルロース膜の第1の表面に沿って、標識分子の表面に沈殿した複数の金属イオンの少なくとも一部から結果として生じた金属の分布を測定して、第1の表面に沿った標識分子の濃度を判定することをさらに含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法は、標識分子と反応しなかった(例えば、表面に沈殿しなかった)試薬(例えば、金属イオン)の分布をニトロセルロース膜に沿って測定することをさらに含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法は、電位スイープを少なくとも2回実行することをさらに含んでもよく、電位スイープの第1のサイクルは電気化学反応をリセットし、電位スイープの第2のサイクルは電気化学信号を測定する。
【0076】
いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することは、電極アレイを介してニトロセルロース膜に沿って電位スイープを実行することを含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、電流ピークの検出は、金属イオンの局所的な濃度を示すことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、試験ラインまたはその近くに電流ピークが存在しないことの検出は、液体試料中の所定の分析物の存在を示すことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、ボルタンメトリック法、アンペロメトリック法、電位差法、もしくはインピーダンスベースの方法、またはそれらの組み合わせに基づいて行われてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、線形スイープボルタンメトリー法を使用して実行されてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、線形スイープボルタンメトリー法は、参照電位に対して最小電位から最大電位まで所定の速度での電位スイープを含むことができ、所定の速度が毎秒10mV~毎秒1000mVの範囲内になっていてもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、参照電位に対する最小電位は、-1V~-0.1V、好ましくは-0.5Vの範囲内であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、参照電位に対する最大電位は、+0.1V~+1V、好ましくは+0.5Vの範囲であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、線形スイープボルタンメトリー法は、電位スイープを所定回数繰り返すことを含んでもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、線形スイープボルタンメトリー法は、電位スイープを実行する前に所定の期間にわたって低電位を印加すること、および/または電位スイープを実行した後に所定の期間にわたって高電位を印加することである堆積工程を含むことができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、低電位は、参照電位に対して-1V~-0.1Vの範囲であってもよく、および/または高電位は、参照電位に対して0.1V~1Vの範囲である。
【0087】
いくつかの実施形態では、所定の期間は、1分以下であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験ストリップから結果として生じた電気化学信号を測定することが、パルスベースの電気化学技術を使用して実行することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、パルスベースの電気化学技術は、微分パルスボルタンメトリー法または方形波ボルタメトリー法を含むことができる。
【0090】
実施形態を、添付の図面を参照しながら、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1A】例示的なラテラルフローアッセイストリップを示す。
【
図1B】銀の増強を用いたシグナル増幅を用いた例示的なラテラルフローアッセイを示す。
【
図2】複数の作用電極、カウンター電極および参照電極を有する電極アレイを担持する例示的なプリント回路基板(PCB)を示す。
【
図3A】電極アレイを担持するPCBの底面を、LFTストリップをPCBで被覆する概念図で示す。
【
図3B】LFTストリップと接触する
図3AのPCBとLFTストリップを重ね合わせる概念図を示す。
【
図4A】上部カバーおよび底部カバーを有するLFT PCB電極アレイを包含する例示的なカセットの分解図を示す。
【
図4B】電子的読み出しのための露出した接続部を有する
図4Aの例示的なカセットを示す。
【
図4C】
図4Bのカセットを読み取るように構成された例示的な電子リーダを示す。
【
図6】例示的なラテラルフロー試験デバイスの分解図を示す。
【
図7A】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図7B】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図7C】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図7D】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図7E】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図7F】様々な実施形態による、ラテラルフロー試験デバイスおよびリーダの例示的なシステムを示す。
【
図8A】例示的な信号読み出し中にLFAのバックグラウンド、試験ラインおよび制御ラインの上に重なる別個の作用電極を示す。
【
図8B】
図5Aの例示的な信号読み出し中のLFAのニトロセルロース膜における銀の反応の結果を示す。
【
図8C】免疫複合体の形成に起因して、AuNPが蓄積した場所で、局所的に金属の銀の濃度を増加させる、AuNPにおけるAg
+の還元を示す。
【
図8D】膜の対応する領域において低下しているAg
+の濃度を示す。
【
図8E】金PCBが膜に配置されている例において、電位スイープが金PCB電極に堆積した金属の銀の酸化のピークを明示し、ピークが抑制され、それにおいてAuPNが蓄積していることを示す。
【
図9】膜のバックグラウンドにおける銀の酸化のピークの存在およびAuNPが蓄積する試験/制御ラインにおけるピークの消失を実証する、例示的な線形スイープボルタンメトリーを示す。
【
図10】第1および第3の電極がバックグラウンドを覆い、第2の電極が試験ラインを覆い、第4の電極が制御ラインを覆い、試験ラインと制御ラインの両方が正である、すなわち蓄積されたAuNPを有する、4つのPCB電極の順次走査の結果を示す。
【
図12】例示的な微分パルスのボルタンメトリーを示す。
【
図13A】hCGの濃度を増加させた市販のhCG LFTの視覚的試験を表現したものを示す。
【
図13B】バックグラウンドと比較した市販のhCG LFTの試験/制御ラインの輝度の目視評価を示し、Y軸に沿っている輝度は、試験/制御ラインをバックグラウンドで割った比率である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
最初に
図1Aに移ると、例示的なラテラルフロー試験(LFT)は、共役パッドでオーバーレイされた試料パッド(試料が試験に導入される)を含む。試料が導入されると、分析物は毛細管力によって試料パッドから共役パッドに移動する。共役パッドには、抗体/アフィマー/アプタマーでコーティングされた金またはラテックスナノ粒子であり得る標識分子が含浸されている。導入されると、分析物は所定の標識試薬(例えばAuNP金ナノ粒子)と相互作用し、毛細管力の下で試験中に移動し続ける。共役パッドは、捕捉試薬(捕捉抗体/アフィマー/アプタマーなど)のラインが印刷されているニトロセルロース膜と接触している。関心対象の分析物が捕捉試薬のライン(試験ライン)を流れると、AuNPを試験ラインに引き付ける免疫複合体が形成される。別のラインは、分析物の存在なしにAuNPを捕捉することができる試薬を含む試験ライン(制御ライン)の下流に印刷される。制御ラインにおける免疫複合体の形成は、試験中の試薬が損なわれておらず、試験ラインの結果が有効であることの確認として作用する。試験/制御ラインの下流で、ニトロセルロース膜は、高い液体吸収能力を有し、試料および標識をニトロセルロース膜を通して移動させるのに必要な毛細管作用を駆動するウィッキングパッドに接続する。
【0093】
本技術によれば、AuNPベースのLFTの感度は、とりわけ、銀の増強などの酵素的または非酵素的アプローチを利用するシグナル増強戦略の利用によって増加され得る。
図1Bに示す実施形態では、銀増強戦略は、溶液中のヒドロキノンなどの還元剤と組み合わせた銀塩(乳酸銀/硝酸塩または酢酸銀)の使用に基づいており、金は、還元剤から銀イオンへの電子の移動を可能にする触媒として作用し、金の表面に沈殿して金属の銀を形成する。組み合わせた銀塩および還元剤溶液は、例えば、シグナルエンハンサーを含浸させた追加の共役パッドとして、または手動または自動で破壊することができるカセット内部の一体型リザーバとして供給することができる(また、内部の溶液が放出される)。沈殿した銀は反応を触媒し続け、その結果、銀の層が金表面に堆積し、したがってAuNPを拡大させる。実施形態によれば、増大したAuNPのサイズは、試験/制御ラインの目視評価による銀の増強を利用するLFTのより高い感度に寄与する。
【0094】
実施形態では、電極アレイを構築し、ニトロセルロース膜上に重ねて、LFTの試験ラインおよび制御ラインに発生した信号を捕捉することができる。電極アレイは、不活性絶縁コア材料および導電性「パッド」、または電気信号変換が可能な導電性金属/ポリマー/ナノ材料もしくは有機材料で作られた電極で構成され得る。限定はしないが、フォトリソグラフィ、スクリーン印刷、インクジェット印刷、3D印刷などの付加製造または除去製造技術を電極アレイの製造に使用することができる。
図2に示す実施形態では、電極アレイはプリント回路基板(PCB)に配置することができる。PCBは、望ましくないパッドの露出を防止する薄いソルダーマスク層で覆われていてもよい複数の導電層を含むことができる。図示されているPCBは、LFTからの干渉がない、二面を担持する、コネクタ部との導電性接続部である。実施形態では、PCBは、標準的な3電極セル構成を形成する複数の電極を含み、個々の作用電極(WE)がニトロセルロース膜の試験ライン、制御ラインおよびバックグラウンド(ラインなし)に重ねられている。複数または単一のカウンター電極(CE)がまた、PCBに存在しても、別個の参照電極(RE)に存在してもよい。
【0095】
図3に示されるように、電極アレイは、ストリップのバックグラウンド、試験ラインおよび制御ラインを作用電極およびカウンター電極のそれぞれの対と位置合わせするためにLFTの上部に配置される。PCBの底面は測定中にニトロセルロース膜と接触するが、試験の他の部分(試料パッド、共役パッド、ウィッキングパッド)は回避される。本実施形態では、電極アレイの電極は機能化されておらず、免疫複合体形成は膜マトリックス内に形成され、電極の表面には形成されないので、長い貯蔵寿命を可能にし、任意のコロイド金系LFTを用いて本方法を実施することを可能にする。他の実施形態では、電極アレイの電極は、必要に応じて代替的に官能化されてもよい。
【0096】
実施形態による電子ラテラルフロー試験(eLF)デバイスが
図4Aに示されており、LFTおよび電極アレイは、ハウジングを形成する上部カバーと下部カバーとの間に挟まれている。デバイスは、例えば、使い捨てカセットであってもよく、例えば、堆肥化可能な、例えばトウモロコシベースのプラスチックまたは他の天然複合材料、竹、木材などの再生可能材料で作製することができる。カセットには、試験ラインおよび制御ラインを目視で読み取るための窓が設けられてもよいが、結果が電子的に読み取られるため、これは必須ではない。
【0097】
実施形態では、カセットは、
図4Bに示すように、電子リーダのリーダチップによって測定される結果のために電子リーダに挿入されるように構成された、露出した接続部を有する。実施形態では、カセットには、例えば固有の印刷されたバーコードまたはQRコード(登録商標)を含むことができる接続部品が設けられる。接続部品は、
図4Cに示すように、測定を実行するために電子リーダのポートに挿入されるように構成され得る。代替実施形態では、リーダチップは、通信インターフェース、例えばブルートゥース(登録商標)チップおよびLiポリマー電池などの電源と共にカセットに組み込まれてもよい。いずれの構成においても、一体化された電子LFT(eLF)は、例えば潜在的に感染性の試料のため単回使用および使い捨てであってもよく、または代替の実施形態では、カセットが開かれ、試験ストリップが交換され、カセットが再使用されてもよい。電子リーダは試料と接触しないため、潜在的な汚染は無視でき、したがってリーダは再利用可能である。
【0098】
結果が読み取られると、試験結果は、電子リーダから、または電子機器がカセット内に組み込まれている実施形態ではカセットから、例えばブルートゥース(登録商標)/WiFiを介して無線で、またはUSBポート/AUXポートベースのケーブルなどの物理的接続を介して、即座に送信され得る。試験結果は、例えば、分析のためのコンピュータ、前方送信のための通信デバイス、対応するアプリを有するスマートフォンまたは他のスマートデバイス、または記憶デバイスに送信され得る。データは、健康当局、医療サービス、介護者、雇用者などの関連当事者に、または環境の監視の場合は農業従事者、公益事業、環境機関、公衆衛生機関などにリアルタイムで記憶、分析、および/または送信することができる。
【0099】
実施形態では、リーダは、ポータブルリーダ用の電源と共に、または家庭用もしくは実験室用リーダ用の電源接続を備えた、本体内の特注チップを備え得る。特注のチップおよびファームウェアは、電気化学反応を駆動し、結果として生じた電気化学信号を捕捉するための信号を生成し、これは、電流、またはそのコンダクタンス、抵抗、キャパシタンスもしくはインピーダンスなどの、作用電極とカウンター電極との間の電気回路の特性の変化であり得る。むき出しの膜と位置合わせされた対の電極(バックグラウンド)と、試験ラインと位置合わせされた電極(試験が正しく機能している場合に陽性であると予想される)および捕捉ライン(分析物の存在を測定する)との間に差がある場合、有用な信号が得られる。電気回路の特性は、各ラインに蓄積する標識粒子の数に応じて変化し、信号の強度はこの数の近接読み出しであり、分析物の定量に使用できることは、当業者に明らかであろう。複数の電極対を使用して単一のストリップの複数のラインを監視することができ、結果がデジタル的に解釈されるように結果の測定を実行するために電子リーダを使用することは、混乱のリスクなしに、訓練されていないユーザによる単一の試験で複数の同時読み出しデータを得ることができることを意味することが予想される。
【0100】
別の実施形態では、標識を捕捉するために使用される試薬の濃度の範囲である複数の試験ラインを使用して、アッセイを較正し、および/または分析物の定量を補助することができる。さらに、本実施形態は、視覚的/光学的読み出しが実行される場合には不可能である、複数の試験ストリップを並べてまたは互いに重ねて(例えば、PCBによって分離される)単一のカセットに組み込むことを可能にする。
【0101】
リーダは、一度に1つの試験が読み取られるように単一のポートを有してもよく、またはより高いスループットのため複数の同時の読み取りを可能にするために複数のポートが設けられてもよい。一実施形態では、リーダは、使い捨てまたは再使用可能なカセットの接続部品に印刷された固有のバーコードまたはQRコード(登録商標)などを読み取るために使用されるバーコードリーダ、カメラまたは他の光学デバイスを組み込む。リーダは、カセットがリーダに挿入されたときに試料ポートを開く機械的なボタンを組み込むことができる。リーダは、適切な時間に測定が行われることを保証するためにカウントダウンタイマを組み込むことができる。これはまた、試験の測定範囲を拡大し得る速度論的測定の使用を可能にし、例えば、他の試料中の低レベルの分析物を測定するのに必要な標準的な時間にわたって測定を実行した場合にアッセイの最大限の限界を超える高レベルの分析物の早期の読み出しを可能にする。
【0102】
家庭で使用するように設計されたリーダの実施形態が提供される。例えば、単回使用バッテリでは、各リーダは200回の試験を実行することができ、例えば4人家族がそれぞれ50日間1日に1回の試験を実行することを可能にする。次いで、リーダは、リーダの持続可能性を高めるために再使用されるように製造業者に返されてもよい。別の実施形態では、リーダは、1日当たりの試料数が多いか、または延長期間使用される外部電源に接続されてもよい。
【0103】
本実施形態によれば、電極アレイは、1または複数の作用電極(WE)と、1または複数のカウンター電極(CE)と、1または複数の参照電極(RE)とを含む。作用電極は、ニトロセルロース膜の試験ラインおよび制御ライン上に整列するように配置され、カウンター電極は、対応する作用電極との回路を完成させるために設けられる。本実施形態によれば、WEは、適切な位置合わせを確実にするためにニトロセルロース膜の試験ラインおよび制御ラインよりも小さい。
【0104】
図5は、実施形態による例示的な電極アレイ500を示す。電極アレイ500は、誘電体コア510に配置された、複数の作用電極501、511および521と、複数のカウンター電極502、512、522と、複数の参照電極503、523とを備える。
【0105】
本実施形態では、WE501は、ニトロセルロース膜のバックグラウンドの試薬を測定するように構成される。CE502は、WE501に対向して近接して配置される。しかしながら、当業者に明らかであろう他の構成も可能である。RE503は、WE501およびCE502に隣接して配置され、WE501への電位の安定した印加を保証する。3つの電極WE501、CE502およびRE503は、サンプリングウェル504(点線で示されている)の構成要素を形成する。サンプリングウェル504は、流体試料がサンプリングウェル504内および電極WE501およびCE502の周りに蓄積することを可能にするために、誘電体コア510と比較して高さが低い。高さの差は、ソルダーマスク、任意のフォトレジスト、または射出成形などの誘電材料の任意の適切かつ望ましい技術を使用して達成することができる。
【0106】
WE511およびCE512は、RE503を有する第2のサンプリングウェル514の構成要素を形成する。2つのサンプリングウェル504および514は同じRE503を共有する。本実施形態では、REがWEに近接しているときにWE501およびWE511における反応に影響を及ぼし得るRE503の電極表面で生じる反応の可能性を低減するために、参照電極トレース505の大部分が誘電体510によって覆われている。同じ理由で、RE503は、CE502およびCE512の側に配置され、RE503で生じる反応がWE501およびWE511で生じる反応に干渉する可能性を低減する。
【0107】
第3のWE521および対応するCE522は、第2のRE523が設けられた第3のサンプリングウェル524の内部に配置される。
【0108】
本実施形態では、CE502、CE512およびCE522は同じ出力に接続されてもよく、RE503およびRE523がまたアナログフロントエンド(AFE)の同じピンに接続されてもよい。
【0109】
本実施形態によれば、電極アレイをニトロセルロース膜と接触させて、単離された試料ウェルを作成して、試薬の濃度を判定するために、様々な機構を使用することができる。試薬の濃度は、ニトロセルロース膜に形成された局所的な免疫複合体に起因して分析物の濃度に比例することに留意されたい。いくつかの実施形態では、以下で説明するように、サンプリングウェルにおける性能を改善するために、ラテラルフロー試験デバイスに圧縮を適用することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、0.8mmのFR-4コアを適切な誘電体コアとして使用することができ、これに銅トレースおよびパッドを充填し、ENIGめっきを施すことができる。代替のめっき技術は、金、銀、白金などの範囲の材料を適用することができる電解または無電解めっきを含むことができる。一般に、めっきの厚さが厚いほど、センサの信頼性が向上する。めっきの厚さは、従来、マイクロインチで記載されており、1、2、および3マイクロインチのめっきは、特に関心がもたれる。様々な表面仕上げが、当業者にとって明らかであろう。
【0111】
本実施形態では、誘電材料は、ある程度の可撓性を設けるガラス繊維系のコアである。代替的または追加的に、可撓性電極アレイは、フレックスPCBとして知られるポリアミドフィルムに基づいて使用されてもよい。他の技術の中でも、スクリーンスピッティングまたはインクジェット印刷がまた、剛性または可撓性の誘電体に導電性材料を堆積させて、ラテラルフロー試験デバイスアセンブリの一部を形成するか、またはラテラルフロー試験デバイスアセンブリのベースのハウジングに(上部または下部)直接印刷するために、使用できる。LFTデバイス内部の電極アレイは、電子リーダがLFTデバイス内部の試料と接触することのない電子リーダとの電気的接続を可能にし、したがって電子リーダを安全に再利用することを可能にする。
【0112】
本技術の実施形態では、LFTデバイスの電極アレイは、最初に電極アレイがニトロセルロース膜と接触しないように、LFTデバイスのニトロセルロース膜から離間したその初期の位置に支持される。液体試料がLFTデバイスの試料ポートに堆積された後、電極アレイは読み取り準備完了位置でニトロセルロースと接触する。
図6は、実施形態による例示的なラテラルフロー試験デバイス600の構造を、分解図で示す。
【0113】
デバイス600は、上部601および底部606を含むハウジングを備える。ハウジングの上部601には、通気孔602と、試験を特定の人に関連付けることを可能にするためにデバイス600を一意的に識別するQRコード(登録商標)603と、液体試料を受け入れるための試料ポート604と、圧縮性部分605とが設けられている。上部601は、底部606に機械的に結合するように構成され、底部は、ラテラルフローアレイストリップ(ニトロセルロース膜)608のためのベッド607を形成して、LFAストリップ608の適切な位置合わせを確実にする。
【0114】
電極アレイ609は、LFAストリップ608を覆い、底部606の対向する位置合わせ特徴610内に位置する位置合わせ特徴611を備えて、水平方向(底部606の平面に平行)で電極アレイが最小限に移動することを確実にする。電極アレイ609には、液体が吸収されるにつれてLFAストリップ608の吸収パッド613が膨張することを可能にする開口部612が設けられる。開口部612は、電極アレイ609が屈曲することをさらに可能にする。圧縮性部分605が圧縮されると、それは電極アレイ609を初期の位置からLFAストリップ608に向かって変位させ、読み取り準備完了位置で、電極アレイ609をLFAストリップ608と接触させる。電極アレイ609の開口部612によって設けられる可撓性は、そのような変位を容易にする。
【0115】
初期の位置から読み取り準備完了位置への移行は、電極アレイ609の水平ではない位置決めをもたらす。電極アレイ609とLFAストリップ608との間の均一な接触を確実にするために、ベッド607は、読み取り準備完了位置における電極アレイ609の水平ではない位置決めに対抗するための傾斜部分614を備えて構成される。支持特徴/要素615は、LFAストリップ608から離間した初期の位置において電極アレイ609を支持し、電極アレイ609が圧縮性部分605によってLFAストリップ608と接触するときに電極アレイ609を正しい位置に保持するように構成された底部606に設けられ、したがって、制御によって2つの位置の間の電極アレイ609の移行を可能にする。
【0116】
重要な考慮事項は、圧縮性部分605の機械的圧縮によってLFAストリップ608が電極アレイ609と接触するときにLFAストリップ608が及ぼす圧力である。本出願人は、圧力の変化がLFAストリップ608の電気化学的読み取り値に様々な影響を及ぼすことを認識している。LFAストリップ608が低圧(例えば1N)で圧縮されると、LFAストリップ608と電極アレイ609との間の電気的接触が行われ、測定を行うことができる。より高い圧力が加えられると(例えば5N)、LFAストリップ608および電極アレイ609に沿ったより均一な圧力分布のために、電気化学的測定がより再現可能になる。ひときわ高い圧力が使用される場合(例えば30N)、膜はより圧縮され、測定中のニトロセルロース膜を通る試料の液体の流れはより効果的に停止され、その結果、電極アレイ609の陥凹/窪みによって生成された局所的なサンプリングプールの分離がより容易になり、より高次のサンプリングの解像度につながる。さらに、圧力の増加は、各サンプリングプールのニトロセルロース膜の体積を減少させ、それは次にサンプリングプールの単位体積当たりの標識分子の数を増加させ、より高い転化率およびアッセイのより高い感度をもたらす。ひときわ高い圧力(例えば50N)では、圧縮が高くなりすぎ、試料の液体の大部分がサンプリングプールから押し出され、電極間の抵抗が高くなり、電流の流れが損なわれる。
【0117】
ハウジングの圧縮性部分605の圧縮は、いくつかの実施形態では、ラテラルフロー試験デバイス600を電子リーダに挿入すると、圧縮性部分605が電子リーダの1または複数の対応する特徴によって圧縮されて電極アレイ609を初期の位置から変位させるように、電子リーダの1または複数の対応する特徴(放出機構)を介して実施されてもよい。以下に、対応する特徴を有するLFTデバイスおよび電子リーダの様々な非限定的な例を記載する。本明細書では、圧縮性部分は、電極アレイを初期の位置から変位させる(または所望であればLFAストリップを変位させる)ために圧縮されるべきハウジングのセクションまたは部分を単に指すことに留意されたい。圧縮性部分605は、圧縮を可能にするために部分的に切断されているものとして
図6に示されているが、必須であるとは考えられず、例えば可撓性材料で形成された切断されていない圧縮性部分または完全に未修正の圧縮部分も可能である。
【0118】
図7Aは、電極アレイがLFAストリップから離間した角度でハウジング内部に支持されているLFTデバイスを示す。対応する電子リーダの受け部の上部内面に設けられた突出レール。LFTデバイスが電子リーダに挿入されると、LFTデバイスは、突出レールがLFTデバイスの圧縮性部分の上方にあり、突出レールが圧縮性部分と係合して電極アレイを変位させる位置に移動し、電極アレイを回転させて電極アレイとLFAストリップとの間の接触を可能にする。
【0119】
図7Bはやはり、電極アレイがLFAストリップから離間した角度でハウジング内部に支持されるLFTデバイスを示す。ばね圧縮ボール戻り止めが対応する電子リーダの受け部に設けられ、ばね(または他の弾性要素)は凹部内に設けられ、ボールベアリングはばねによって付勢された受け部の内部に突出する。LFTデバイスが電子リーダに挿入されると、ボールベアリングが凹部に押し込まれ、ばねが圧縮される。次いで、LFTデバイスがさらに挿入されると、LFTデバイスの圧縮性部分が凹部に向かって移動し、ボールベアリングが圧縮ばねの力の下で圧縮性部分に放出され、圧縮性部分を圧縮して電極アレイを変位させる。
【0120】
図7Cは、電極アレイがLFAストリップから離間した角度でハウジング内部で支持され、電極アレイがハウジングの切り欠き部分を通って延びる一端のピンによって定位置に保持されるLFTデバイスを示す。対応する電子リーダには、電子リーダの受け部の入口から受け部の中心線に向かって下降するガイド溝(または、1対のピンが電極アレイの片側に設けられている場合は1対のガイド溝)が設けられている。LFTデバイスが電子リーダに挿入されると、電極アレイのピンはガイド溝と係合し、ガイド溝はピンを切り欠き部分に沿って誘導して電極アレイを回転させ、電極アレイをLFAストリップと接触させる。
【0121】
図7Dは、電極アレイがLFAストリップから離間した角度でハウジング内部に支持されているLFTデバイスを示す。LFTデバイスのハウジングは、LFTデバイスの前端で枢動されるくさび形部分を備え、ハウジングの圧縮性部分まで延在する。LFTデバイスが電子リーダに挿入されると、電子リーダの受け部はくさび形部分を押し、最終的にはくさび形部分の厚い端部をハウジングの圧縮性部分に押し込んで電極アレイを変位させ、電極アレイをLFAストリップと接触させる。
【0122】
図7Eは、可撓性または部分的に可撓性の電極アレイが使用されるLFTデバイスを示す。この例では、電極アレイは、可撓性部分と剛性部分との間の分割部で支持される。対応する電子リーダの受け部の内面には、突出レールが設けられている。LFTデバイスが挿入されると、LFTデバイスのハウジングは、圧縮性部分が突出レールに達するまで突出レール上を滑動し、その時点で、圧縮性部分の圧縮が電極アレイの剛性部分を押し、それがLFAストリップに向かって回転して接触することを引き起こす。電極アレイの可撓性部分は、後部剛性部分をLFAストリップから離れるように持ち上げることを可能にしながら、前部剛性部分を電子リーダのコネクタ(通信ポート)と整列して配置することを可能にする。
【0123】
図7Fは、電極アレイがLFAストリップから離間した上昇位置で支持されているLFTデバイスを示す。電極アレイの後部は、ハウジングの圧縮性部分の位置でLFAストリップの前部を覆う。対応する電子リーダには、ボタン、レバー、または作動時に電子リーダの受け部の中心線に向かって内側に延びるように構成された、任意の他の適切かつ所望の機械的起動機構などのリニアアクチュエータが設けられる。LFTデバイスが電子リーダに挿入されると、リニアアクチュエータが作動してLFTデバイスの圧縮性部分を押し下げ、したがって電極アレイを変位させて電極アレイをLFAストリップと接触させる。LFAストリップと接触しているとき、電極アレイは傾斜位置に置かれてもよく、または電極アレイが可撓性である場合、電極アレイはLFTデバイスの間隔にわたって屈曲することが可能である。
【0124】
信号の読み出しは、例えば、電極がPCBの下側にある
図8Aの実施形態に示すように、ニトロセルロース膜と接触している作用電極およびカウンター電極に基づく。
【0125】
本技術が第3者製造業者によって市販のLFTに実装される場合、LFTは、既存のLFT手順に対していずれの変更もすることなく実行される。場合によっては、試料の種類がLFTの化学的性質を妨げるようなものである場合、これは、例えば試薬の添加前に水で(例えば、水道水のシンクにおける)LFTデバイスをすすぐ洗浄工程の添加によって、緩和することができる。洗浄工程は、必要または所望される限り、例えば数秒から数分にわたって実施され得る。洗浄工程は、銀増強反応(例えば水)に有用であり得る種を導入しながら、不要な種(例えばCl-)を除去する。一実施形態では、LFT製造業者のプロトコルに従った後に、ニトロセルロース膜を50μLの水または、試料ポートを介して添加された任意の他の適切な緩衝液で洗浄して、膜から過剰の電解質を除去し、銀エンハンサーなどのシグナルエンハンサーを添加することができる。市販されている典型的な銀エンハンサーは、通常、「展開剤」および「エンハンサー」ストック溶液を1:1の比で組み合わせることによって、使用直前に活性化することを必要とする。展開剤は、金ナノ粒子および/または金メッキ電極の存在下で銀イオンを金属銀に自発的に還元することを可能にする。次いで、結果として生じた活性化銀エンハンサー溶液を試料ポートを介して膜(50μL)に堆積させ、反応が1~25分の時間枠内で生じる。電極とニトロセルロースストリップとの間の接触は、LFA製造業者の試験を通して維持されてもよく、またはLFTが実行され、銀がAuNPと反応した後に、電極アレイをLFTストリップの上部に配置することができる。これは、試験の流れが妨げられないことを確実にするために、いくつかの状況において必要とされ得る。膜と電極アレイとの間の接触は、手動での圧縮(内部ストラットを折り畳むためにカセットを圧迫すること)によって、または電気的読み出しを初期化するためにカセットをリーダに挿入することによって達成され得る。
【0126】
活性化銀溶液の導入後、
図8Bに示すように、AuNPは金属の銀で被覆されるようになる。ニトロセルロース膜に沿って析出した金属の銀の分布は、
図8Cに示すように、遊離している銀イオンの還元をAuNPが触媒し、したがって金属の銀の析出を可能にすることに起因する、AuNPの濃縮を示す。銀沈殿物の量の増加は、
図8Dに示すように、AuNPが免疫複合体を形成している局所的なニトロセルロース膜の遊離している銀イオンの対応する減少をもたらす。ニトロセルロース膜上に金メッキされたPCB電極を配置することにより、金PCB上の銀イオンの還元が開始される。利用可能な銀イオンの量は、金の電極において還元された銀イオンが酸化され、
図8Eに観察される酸化のピークを形成する電位スイープによって定量することができる。したがって、ピークの高さは、ニトロセルロース膜における遊離している銀イオンの局所的な濃縮と相関する。ニトロセルロース膜に蓄積したAuNPが電極の銀イオンの還元と競合すると、
図8Eに示すように、陽性試料の場合、試験/制御ライン上で銀の酸化のピークが消失する。
【0127】
電気化学的読み出しは、ボルタンメトリックベース、アンペロメトリックベース、ポテンショメトリックベースまたはインピーダンスベースの方法などの任意の電気化学的技術を用いて行うことができる。線形スイープボルタンメトリー(LSV)は、
図9に示すように、擬似Au PCB REなどの参照電位に対して-0.5から+0.5Vまで50mV/sの走査速度で首尾よく使用されている。LSVの低い開始電位は、電位が上昇して擬似Au PCB REに対して0.1から0.2Vの間で酸化ピークが観察され得る前に、電極の近傍の正のAg+イオンが最初に電極で還元されてPCB表面上に堆積されることを保証する。電位は擬似Au PCB REに対して+0.5Vまで上昇し続け、PCB電極での銀の完全な酸化を確実にする。
【0128】
図10は、第1および第3の電極がバックグラウンドを覆い、第2の電極が試験ラインを覆い、第4の電極が制御ラインを覆い、試験ラインと制御ラインの両方が正である、すなわち蓄積されたAuPNを有する、4つのPCB電極の順次走査の結果を示す。バーは3回の反復の平均を表し、エラーバーは標準偏差である。PCB電極を最初にLFT膜と接触させると、初期LSV走査は
図9に示すパターンを示さない。
図10から分かるように、4つすべての電極の最初の走査では、ピークの高さはいかなるパターンにも従わない。複数のLSV走査が実行されるときにのみ、試験ラインおよび制御ラインの電流降下を観察することができる。それにもかかわらず、バックグラウンドで覆われた電極からの銀の酸化のピークは、走査2~12を通して安定したままであり、電流の低下は観察され得ない。
【0129】
(LSV測定による)低電位および高電位への繰り返しの曝露により、銀イオンは還元/酸化され、電極から引き離されて反発される。これは、拡散を増加させ、移動するイオンが電極の近くに存在する場合、AuNPと相互作用することを促進する。銀イオンとAuNPとの相互作用は、AuNPでの銀の還元をもたらし、PCB電極での銀イオンの還元と競合する。AuNPは電極表面に固定化されておらず、膜の大部分に存在するので、これは試験/制御ラインの銀イオンの濃度を正確に評価するために特に重要である。
図11に概略的に示すように、LSV測定を繰り返すと、低電位から高電位への電位サイクルが生じ、銀の還元と酸化、ならびに銀イオンの誘引と反発が繰り返される。これにより、銀イオンの拡散が促進され、銀がAuNPとより効率的に反応することが可能になる。
【0130】
アッセイの感度を高めるために、バックグラウンドの電流ピークの高さは、電気化学的「シグナル」の存在を実証するこれらのピークの電流からの偏差であるため、重要である。高い信号対雑音比を得るために、-0.4対擬似Au PCB REなどの低電位を、電位スイープの10秒~1分前などの所定の時間にわたって使用することができる堆積工程を使用することができる。このシナリオでは、正の銀イオンは負に帯電した電極に引き付けられ、電極表面で還元される。堆積電位および時間は、とりわけ、より高いバックグラウンド電流を得るために調整することができる2つのパラメータである。さらに、微分パルスボルタンメトリー(DPV)などのパルスベースの電気化学技術を使用して、低レベルの銀イオンを検出することができる。電気化学堆積およびDVPは、得られる電流レベルの10倍の増加を可能にし、これは、
図12に示すように、AuNPラインにおける走査の回数と共に再び減少する。
【0131】
本明細書に記載された方法は、複数の独立した電位スイープ、ならびに複数の電位スイープの調整された組み合わせを含み得ることに留意されたい。
【0132】
複数の電位スイープが連続して実行される場合、電極の測定値の間の時間差は、電極での触媒事象に影響を及ぼし得る。例えば、電位スイープの終わりにおける高電位は、触媒活性電極の表面に沈殿する1または複数の種、例えば金属の銀を酸化することができる。可能な緩和策は、一連の電位スイープを実行することであり、それにおいて電位スイープの初期のサイクルを使用してベースライン時点を確立する。
【0133】
例えば、第1の電極で電位スイープを行い、続いて第2の電極、第3の電極および第4の電極で同じ電位スイープを行うことができる。この一連の電位スイープは、電位スイープの1サイクルと見なすことができる。第1のサイクルの各スイープが完了した後、すべての銀種が電極の近傍で酸化される。電位スイープの第1のサイクルを完了した後、各電極をLFTデバイスにおいて同じ制御された期間インキュベートするさらなるサイクルを繰り返すことができる。
【0134】
この方法は、市販のhCG LFTを使用して試験されてきた。
図10A、
図10Bおよび
図10Cは、市販のhCG LFTにおける視覚的および電気化学的読み出しの比較を示し、
図13Aは、hCG濃度を増加させた目視評価を表し、
図13Bは、バックグラウンドと比較した試験/制御ラインにおける輝度の視覚的評価を表し、Y軸上に示される輝度は、試験/制御ラインをバックグラウンドで割った比率であり、
図13Cは、
図13Bの同じ試験ストリップに対する電気化学的評価を表し、Y軸上の電流比は、試験/制御ライン電流をバックグラウンドで割った比率である。全データポイントは反復して実施されており(N=3)、記号は平均を表し、エラーバーは標準偏差を示す。エラーバーが見られないデータポイントでは、シンボルはエラーバーよりも大きい。
【0135】
試験は、ImageJソフトウェアを使用して、
図13Aおよび
図13Bに示すバックグラウンドと比較して試験/制御ラインの輝度を読み取ることによって、視覚的に実行および分析された。バックグラウンドのゼロではない輝度のために、信号は、正のhCG試料で最小0.6A.U.に低下している。同じ試験を電気化学的に評価すると、
図13Cに示すように、hCG濃度が高い試料では、ほぼ完全な0に至る信号の降下が観察される。LFTユーザの主観的意思決定を回避する電気化学的検出を用いて、2つの方法を交換可能に使用することができることを示す、同様の知特性が両方の場合で観察され得る。
【0136】
本明細書に記載の技術は、ラテラルフロー試験を改善された精度で実施することを可能にし、電極アレイを使用して試験ラインを測定可能にする標識粒子に沈殿するシグナルエンハンサーを使用して結果を客観的に測定することを可能にする。したがって、本明細書に記載の技術は、LFTの有効性および有用性を改善する。
【0137】
本技術の範囲から逸脱することなく、前述の例示的な実施形態に対して多くの改善および修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】