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特表2024-509842水素ガスを作製するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】水素ガスを作製するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/02 20060101AFI20240227BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240227BHJP
   C25B 15/031 20210101ALI20240227BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240227BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20240227BHJP
【FI】
C25B1/02
C25B9/19
C25B15/031
C25B15/02
C25B1/01 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553422
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 US2022070891
(87)【国際公開番号】W WO2022187810
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,167
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/249,126
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523331876
【氏名又は名称】ベルダジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】セルフ, カイル
(72)【発明者】
【氏名】ギリアム, ライアン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BB01
4K021BB02
4K021BB03
4K021BB04
4K021DB36
4K021DC03
(57)【要約】
本明細書では、金属オキシアニオンの金属イオンまたは非金属オキシアニオンの非金属イオンを、より低い酸化状態からより高い酸化状態に、アノードで酸化し、水素ガスをカソードで発生させることに関する方法およびシステムが開示される。次いで金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、熱反応または第2の電気化学反応に供されて、酸素ガスを形成すると共に、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンをそれぞれ再生する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、前記アノード電解質は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること、
前記アノードで、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること、
カソードおよびカソード電解質を前記電気化学セル内に提供すること、ならびに
水素ガスおよび水酸化物イオンを前記カソードで形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法。
【請求項2】
アニオン交換膜によって前記アノード電解質を前記カソード電解質から分離すること、および前記水酸化物イオンを前記カソード電解質から前記アノード電解質へ移動させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属オキシアニオン中の前記金属イオンが、マンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属オキシアニオン中の前記金属イオンが、マンガン、クロム、銅、鉄、スズ、セレン、タンタル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンが、MnO 2-、FeO 2-、RuO 2-、OsO 2-、HSnO 、SeO 2-、CuO、CrO 3-、およびTeO 2-からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンが、MnO 、HFeO 、RuO 、OsO 2-、SnO 2-、SeO 2-、CuO 2-、CrO 2-、およびTeO 2-からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがMnO 2-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがMnO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがFeO 2-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがHFeO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがRuO 2-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがRuO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがOsO 2-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがOsO 2-であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがHSnO であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSnO 2-であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSeO 2-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSeO 2-であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCuOであり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCuO 2-であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCrO 3-であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCrO 2-であり、または
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがTeO 2-であり、および前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがTeO 2-である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、ハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨード原子から選択されるハロゲンである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンが、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO、ClO 、ClO 、BrO、BrO 、BrO 、IO、IO 、およびIO からなる群から選択され、そして/または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンが、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがNO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがNO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがPO 3-であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがPO 3-であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがSO 2-であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがSO 2-であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClOであり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrOであり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIOであり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、または
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.1Mから約1Mである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.2Mから約1.5Mである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電気化学セルの動作電圧が、約1.5Vから約2.5Vである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記電気化学セルの温度が、約50℃から約100℃である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アノード電解質と前記カソード電解質との間で約1から約6の、定常状態のpH差を維持することをさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
酸素ガスが前記アノードで形成されず、またはファラデー効率の25%未満が前記アノードでの酸素発生反応に関するものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アノードで水酸化イオンを酸化して、酸素ガスを形成することをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アノードで、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンから前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンへの酸化のために、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンから前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンへの酸化のために、より低い電流密度で前記電気化学セルを動作させること、および
前記アノードで、前記水酸化物イオンの酸化のために、より高い電流密度で前記電気化学セルを動作させて、酸素ガスを形成すること
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質を、熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成することをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記熱反応が、前記水酸化物イオンの存在下、10もしくはそれよりも高いpHで、および/または触媒の存在下で実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が金属酸化物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属酸化物が、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、または酸化アルミニウムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱反応の温度が、約50℃から約500℃である、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記熱反応の後、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを再循環させて、前記電気化学セル内の前記アノード電解質に戻すことをさらに含む、請求項20から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記熱反応で使用される熱の一部分または全てを、廃熱ならびに/または太陽熱プロセス、地熱プロセス、および/もしくは核プロセスから選択されるクリーンな熱源からなる群から選択される別のプロセスから提供することをさらに含む、請求項20から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記熱反応で使用される熱の一部分または全てを、前記水素ガスの圧縮により発生した熱から提供することをさらに含む、請求項20から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記熱反応から離れる溶液から前記熱反応に進入する流れに熱を回収するように働く熱交換器を、前記電気化学セルと前記熱反応との間に設けることをさらに含む、請求項20から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記電気化学セルまたは前記熱反応の少なくとも1つを高圧で動作させることをさらに含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電気化学セルを高圧で動作させることが、前記水素ガスの圧縮コストを削減し、前記熱プロセスをより低い圧力で動作させることが、酸素発生を容易にする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電気化学セルが、約40psiから約500psiの圧力で動作する、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記熱反応が、約14psiから約300psiの圧力で動作する、請求項20から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を、前記電気化学セルから出して、第2の電気化学セルのカソード電解質に移送すること、
前記第2の電気化学セルの第2のカソードで、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに還元し、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを、前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンに還元すること
をさらに含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
水酸化物イオンを第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、前記第2の電気化学セル内のアニオン交換膜を通して移動させること、および前記第2の電気化学セル内の第2のアノードで前記水酸化物イオンを酸化して、酸素ガスを形成することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アノード電解質のpHが、約10またはそれよりも高い、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記電気化学セルが、2V未満の理論的電圧を有する、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記金属オキシアニオンまたは前記非金属オキシアニオンに対応するカチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記アルカリ金属または前記アルカリ土類金属を、前記アノード電解質から前記カソード電解質に移動させることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を前記カソード電解質中で形成することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記電気化学セルの動作電圧が、より低い過電位、より低いサーモニュートラル電圧、より低い半電池電位、またはこれらの組合せの1つまたは複数に起因して、前記アノードで酸素ガスを形成するセルの対応する動作電圧よりも低い、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アノード電解質が、アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物をさらに含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アノード電解質が、水をさらに含み、前記金属オキシアニオンまたは前記非金属オキシアニオンが、部分的にまたは完全に前記アノード電解質に可溶である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、前記アノードは、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と、
カソード、および水を含むカソード電解質であって、前記カソードは、前記水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む、水素ガスを発生させるシステム。
【請求項44】
前記電気化学セルに動作可能に接続され、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつ前記アノード電解質の前記部分を熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成するように構成されている、熱反応器をさらに含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記アノード電解質と前記カソード電解質との間に配置され、前記水酸化物イオンを前記カソード電解質から前記アノード電解質に移動させるように構成されている、アニオン交換膜をさらに含む、請求項43または44に記載のシステム。
【請求項46】
前記電気化学セルが、前記アノード電解質と前記カソード電解質との間で約1から約6の定常状態のpH差を維持するように構成されている、請求項43から45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記アノードが、前記水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成するようにさらに構成されている、請求項43から46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記電気化学セルに動作可能に接続された第2の電気化学セルをさらに含み、前記第2の電気化学セルが、
第2のアノードおよび第2のアノード電解質、
第2のカソードおよび第2のカソード電解質であって、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソード電解質は、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む、前記電気化学セルの前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように構成されており、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソードは、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを還元して前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを還元して前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンにするようにそれぞれ構成されている、第2のカソードおよび第2のカソード電解質
を含む、請求項43から47のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる2021年3月1日に出願された「SYSTEMS AND METHODS TO MAKE HYDROGEN GAS USING METAL OR NON-METAL OXYANIONS(金属または非金属オキシアニオンを使用して水素ガスを作製するシステムおよび方法)」という発明の名称の米国仮特許出願第63/155,167号および2021年9月28日に出願された「SYSTEMS AND METHODS TO MAKE HYDROGEN GAS USING METAL OXYANIONS OR NON-METAL OXYANIONS(金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを使用して水素ガスを作製するシステムおよび方法)」という発明の名称の米国仮特許出願第63/249,126号の、優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
電力生産が、低CO2フットプリント技術に移行するにつれ、電気を低炭素/ゼロ炭素輸送燃料に変換する能力は、世界のCO2排出量を軽減する際に益々重要な課題になりつつある。そのような燃料の選択肢の中で、水素(H2)は、その酸化生成物が水であるという点で、独自の利点を有し得る。このように水素は、低炭素フットプリントで製造できる場合、低炭素輸送燃料である。
【0003】
水素は、水蒸気分解およびクロル-アルカリプロセスなどのいくつかの工業的に重要なプロセスにおける副生成物として発生され得る。意図的な水素生成は、典型的には、メタンおよび水の両方における水素原子を水素ガスに変換する、水蒸気メタン改質(SMR)として公知のプロセスを介して実現され得る。このプロセスは大量の水素を生成できるが、メタン中に当初存在した炭素原子は最終的にはCO排出としてプロセスから離れる。ゼロ炭素または低炭素輸送燃料として水素を使用するあらゆる試みは、別のプロセスを必要とする可能性がある。
【0004】
概要
本明細書では、水素ガスおよびその他の商業的に価値ある生成物の生成に関する方法およびシステムが提供される。
【発明の概要】
【0005】
本開示は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを含み、またはアノード電解質は、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;ならびに
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、水素ガスおよび水酸化物イオンをカソードで形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法について記述する。
【0006】
一部の実施例では、方法はさらに、アニオン交換膜によってアノード電解質をカソード電解質から分離すること、および水酸化物イオンをカソード電解質からアノード電解質へ移動させることを含む。一部の実施例では、金属オキシアニオンの金属イオンは:マンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施例では、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 2-、FeO 2-、RuO 2-、OsO 2-、HSnO 、SeO 2-、CuO、CrO 3-、およびTeO 2-からなる群から選択される。一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 、HFeO 、RuO 、OsO 2-、SnO 2-、SeO 2-、CuO 2-、CrO 2-、およびTeO 2-からなる群から選択される。一部の実施例では、非金属オキシアニオン中の非金属イオンは、ハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンからなる群から選択される。一部の実施例では、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO、ClO 、ClO 、BrO、BrO 、BrO 、IO、IO 、およびIO からなる群から選択され、および/または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO からなる群から選択される。一部の実施例では、方法はさらに、約1から約6の、アノード電解質とカソード電解質との間での定常状態のpH差を維持することを含む。一部の実施例では、酸素ガスがアノードで形成されず、または25%未満のファラデー効率がアノードでの酸素発生反応に関する。一部の実施例では、方法はさらに、アノードで水酸化イオンを酸化して、酸素ガスを形成することを含む。一部の実施例では、方法はさらに、アノードでの、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンから金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンへの酸化のために、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンから非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンへの酸化のために、より低い電流密度で電気化学セルを動作させること;およびアノードでの、酸素ガスを形成する水酸化物イオンの酸化のために、より高い電流密度で電気化学セルを動作させることを含む。一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを含むアノード電解質、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質を、熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成することを含む。一部の実施例では、熱反応は、水酸化物イオンの存在下で;10よりも高いpHで;および/または触媒の存在下で実施される。一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を電気化学セルから出して、第2の電気化学セルの第2のカソード電解質に移送すること、および第2の電気化学セルの第2のカソードで、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンをより低い酸化状態に還元し、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンをより低い酸化状態に還元することを含む。一部の実施例では、方法はさらに、水酸化物イオンを第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、第2の電気化学セル内のAEMを通して移動させ、第2の電気化学セル内の第2のアノードで水酸化物イオンを酸化して、酸素ガスを形成することを含む。
【0007】
本開示は:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む、水素ガスを発生させるシステムについても記述する。
【0008】
一部の実施例では、システムはさらに、電気化学セルに動作可能に接続される熱反応器を含み、この熱反応器は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつアノード電解質のその部分を熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成するように構成される。一部の実施例では、システムはさらに、アノード電解質とカソード電解質との間に配置され、かつ水酸化物イオンをカソード電解質からアノード電解質へと移動させるように構成されている、アニオン交換膜を含む。一部の実施例では、電気化学セルは、アノード電解質とカソード電解質との間で定常状態のpH差を約1から約6に維持するように構成される。一部の実施例では、アノードはさらに、水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成するように構成される。
【0009】
本開示は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを含み、またはアノード電解質が、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;ならびに
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、カソードで水素ガスを形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法についても記述する。
【0010】
一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を、熱反応にまたは第2の電気化学反応に移送して、酸素ガスを発生させることを含む。これらの態様および実施形態の全ては、本明細書に記述されている。
【0011】
本開示は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、水素ガスをカソードで形成すること;
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質の少なくとも一部分を、電気化学セルの外側に移送すること;ならびに
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質のその部分を、熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法についても記述する。
【0012】
一部の実施例では、方法はさらに、水をカソードで還元して、水酸化物イオンおよび水素ガスを形成することを含む。一部の実施例では、方法はさらに、水酸化物イオンをカソード電解質からアノード電解質に移動させることを含む。一部の実施例では、アノード電解質はさらに、水酸化物イオンを含む。
【0013】
一部の実施例では、アノード電解質のpHは10よりも高い。
【0014】
一部の実施例では、電気化学セルは、2V未満の理論的電圧を有する。
【0015】
一部の実施例では、酸素ガスがアノードで形成されず、またはファラデー効率の25%未満がアノードでの酸素発生反応に関するものである。
【0016】
一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンに対応するカチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。一部の実施例では、方法はさらに、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをアノード電解質からカソード電解質に移動させることを含む。一部の実施例では、方法はさらに、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物をカソード電解質中で形成することを含む。一部の実施例では、方法はさらに、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含むカソード電解質を、熱反応に移動させることを含む。
【0017】
一部の実施例では、熱反応は、水酸化物イオンの存在下で実施される。
【0018】
一部の実施例では、電気化学セルの動作電圧は、アノードで酸素ガスを形成するセルの動作電圧よりも低い。一部の実施例では、電気化学セルの動作電圧は、より低い過電位、より低いサーモニュートラル電圧、より低い半電池電位、またはこれらの組合せの1つまたは複数に起因して、アノードで酸素ガスを形成するセルの動作電圧よりも低い。
【0019】
一部の実施例では、アノード電解質はさらに、アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を含む。
【0020】
一部の実施例では、方法はさらに、アニオン交換膜によってアノードをカソードから分離することを含む。
【0021】
一部の実施例では、アノード電解質はさらに水を含み、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンは、部分的にまたは完全にアノード電解質に可溶である。
【0022】
一部の実施例では、方法はさらに、熱反応の前および/または後に、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンをアノード電解質から分離することを含む。
【0023】
一部の実施例では、金属オキシアニオン中の金属イオンは、マンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施例では、金属オキシアニオン中の金属イオンは、マンガン、クロム、銅、鉄、スズ、セレン、タンタル、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0024】
一部の実施例では、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 2-、FeO 2-、RuO 2-、OsO 2-、HSnO 、SeO 2-、CuO、CrO 3-、およびTeO 2-からなる群から選択される。
【0025】
一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 、HFeO 、RuO 、OsO 2-、SnO 2-、SeO 2-、CuO 2-、CrO 2-、およびTeO 2-からなる群から選択される。
【0026】
一部の実施例では、
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはMnO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはMnO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはFeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはHFeO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはRuO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはRuO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはOsO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはOsO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはHSnO であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはSnO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはSeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはSeO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはCuOであり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはCuO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはCrO 3-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはCrO 2-であり;または
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはTeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはTeO 2-である。
【0027】
一部の実施例では、非金属オキシアニオン中の非金属イオンは、ハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンからなる群から選択される。一部の実施例では、非金属オキシアニオン中の非金属イオンは、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨード原子から選択されるハロゲンである。
【0028】
一部の実施例では、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO、ClO 、ClO 、BrO、BrO 、BrO 、IO、IO 、およびIO からなる群から選択される。
【0029】
一部の実施例では、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO からなる群から選択される。
【0030】
一部の実施例では、
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはNO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはNO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはPO 3-であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはPO 3-であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはSO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはSO 2-であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり;または
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO である。
【0031】
一部の実施例では、金属イオンまたは非金属イオンがそれぞれより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度は、約0.1Mから1Mの間である。
【0032】
一部の実施例では、金属イオンまたは非金属イオンがそれぞれより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度は、約0.2Mから1.5Mの間である。
【0033】
一部の実施例では、電気化学セルの動作電圧は、約1.5Vから約2.5Vである。
【0034】
一部の実施例では、電気化学セルの温度は、約50℃から約100℃である。
【0035】
一部の実施例では、方法はさらに、熱反応を水酸化物イオンの存在下で実施することを含む。一部の実施例では、水酸化物イオンは、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物として存在する。
【0036】
一部の実施例では、方法はさらに、熱反応を10よりも高いpHで実施することを含む。
【0037】
一部の実施例では、方法はさらに、熱反応を触媒の存在下で実施することを含む。一部の実施例では、触媒は金属酸化物である。一部の実施例では、金属酸化物は、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、または酸化アルミニウムである。
【0038】
一部の実施例では、熱反応の温度は約50℃から約500℃である。
【0039】
一部の実施例では、方法はさらに、熱反応の後、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを再循環させて、電気化学セル内のアノード電解質に戻すことを含む。
【0040】
一部の実施例では、方法はさらに:廃熱ならびに/または太陽熱プロセス、地熱プロセス、および/もしくは核プロセスから選択されるクリーンな熱源からなる群から選択される、別のプロセスからの熱反応に使用される熱の一部分または全てを提供することを含む。
【0041】
一部の実施例では、方法はさらに、水素ガスの圧縮により発生した熱から熱反応で使用される熱の一部分または全てを提供することを含む。
【0042】
一部の実施例では、方法はさらに、電気化学セルと熱反応との間に、熱反応から離れる溶液から、熱反応に進入する流れに熱を回収するように働く熱交換器を設けることを含む。
【0043】
一部の実施例では、方法はさらに、高圧で、電気化学セルまたは熱反応の少なくとも1つを動作させることを含む。
【0044】
一部の実施例では、電気化学セルを高圧で動作させることは、水素ガスの圧縮のコストを削減し、熱プロセスをより低い圧力で動作させることは、酸素発生を容易にする。
【0045】
一部の実施例では、電気化学セルは、約40psiから約500psiの圧力で動作する。
【0046】
一部の実施例では、熱反応は、約14psiから約300psiの圧力で動作する。
【0047】
一部の実施例では、方法はさらに、アノード電解質とカソード電解質との間で、1よりも大きい定常状態のpH差、または約1から約6のpH差を維持することを含む。
【0048】
本開示は:
第1のアノードおよび第1のアノード電解質を第1の電気化学セル内に提供することであって、第1のアノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
第1のアノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
第1のカソードおよび第1のカソード電解質を第1の電気化学セル内に提供し、第1のカソードで水素ガスを形成すること;
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む第1のアノード電解質の少なくとも一部分を、第1の電気化学セルから出して第2の電気化学セルの第2のカソード電解質に移送すること;
第2の電気化学セルの第2のカソードで、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを、より低い酸化状態に還元し、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを、より低い酸化状態に還元すること;ならびに
水酸化物イオンを第2の電気化学セル内の第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、第2の電気化学セルのAEMを通して移動し、第2の電気化学セル内の第2のアノードで水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法についても記述する。
【0049】
本開示は:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む電気化学セルと;
電気化学セルに動作可能に接続された熱反応器であって;
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつアノード電解質のその部分を熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンをそれぞれ形成するように構成されている熱反応器と
を含む、水素ガスを発生させるシステムについても記述する。
【0050】
一部の実施例では、システムはさらに、アノード電解質とカソード電解質との間に配置されたアニオン交換膜を含む。
【0051】
一部の実施例では、システムはさらに、アノード電解質とカソード電解質との間に配置されたカチオン交換膜を含む。
【0052】
本開示は:
第1のアノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む第1のアノード電解質であって、第1のアノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、第1のアノードおよび第1のアノード電解質と;
第1のカソード、および水を含む第1のカソード電解質であって、第1のカソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、第1のカソードおよび第1のカソード電解質と
を含む第1の電気化学セルと;
第1の電気化学セルに動作可能に接続された第2の電気化学セルであって;
第2のアノードおよび第2のアノード電解質;
第2のカソードおよび第2のカソード電解質であって、第2のカソード電解質は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、第1の電気化学セルの第1のアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつ金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを還元して金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを形成し、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを還元して非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを形成するように構成されている、第2のカソードおよび第2のカソード電解質
を含む、第2の電気化学セルと
を含む、水素ガスを発生させるシステムについても記述する。
【0053】
一部の実施例では、第2の電気化学セルはさらに、水酸化物イオンを第2の電気化学セルの第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に移送し、第2の電気化学セルの第2のアノードの水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成するように構成されている、AEMを含む。
【0054】
一部の実施例では、電気化学セルは、アノード電解質とカソード電解質との間で1よりも大きい、または約1から約6の、定常状態のpH差を維持するように構成される。
【0055】
図面は、概して、例として、しかし如何様にも限定することなく、本文書で論じられる様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、カソードでの水素ガスの形成;アノードでの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化;および酸化された金属オキシアニオンまたは酸化された非金属オキシアニオンの、酸素ガスを形成するための熱反応のための、例示的なシステムの図である。
【0057】
図2図2は、カソードでの水素ガスおよび水酸化物イオンの形成;カソード電解質からアノード電解質への水酸化物イオンの移動;アノードでの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化;および酸化された金属オキシアニオンまたは酸化された非金属オキシアニオンの、酸素ガスを形成するための熱反応のための、例示的なシステムの図である。
【0058】
図3図3は、カソードでの水素ガスおよび水酸化物イオンの形成;カソード電解質からアノード電解質への水酸化物イオンの移動;およびアノードでのマンガン酸イオンから過マンガン酸イオンへの酸化のための例示的なシステムの図である。
【0059】
図4図4は、第1の電気化学セルのカソードでの水素ガスの形成;第1の電気化学セルのアノードでの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化;および第2の電気化学セルのカソードでの、酸化された金属オキシアニオンまたは酸化された非金属オキシアニオンの還元のための、例示的なシステムの図である。
【0060】
図5図5は、カソードでの水素ガスの形成;アノード電解質からカソード電解質へのカチオンの移動;アノードでの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化;および酸化された金属オキシアニオンまたは酸化された非金属オキシアニオンの、酸素ガスを形成するための熱反応のための、例示的なシステムの図である。
【0061】
図6図6は、カソードでの水素ガスの形成;アノードでのマンガン酸イオンから過マンガン酸イオンへの酸化;およびアノード電解質からカソード電解質へのカチオンの移動のための、例示的なシステムの図である。
【0062】
図7図7は、カソードでの水素ガスの形成;アノードでの、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化;アノードでの酸素ガスの形成;ならびにアノードでの、酸化された金属オキシアニオンまたは酸化された非金属オキシアニオンの、酸素ガスを形成する熱反応および/または第2の電気化学反応のための、例示的なシステムの図である。
【0063】
図8図8は、本明細書の実施例1に記述される、マンガネート酸化の半電池反応を示す。
【0064】
図9図9は、本明細書の実施例2に記述されるパーマンガネートの熱反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
詳細な説明
本明細書には、水素ガスおよびその他の商業的に価値ある生成物の、環境に優しく低コストの生成に関するシステムおよび方法が開示される。その他の商業的に価値のある生成物は、限定するものではないが酸素ガスを含むことができる。
【0066】
水素ガスは、水が電気化学セルのアノードとカソードでそれぞれ酸素ガスと水素ガスとに分解する水分解反応によって電気化学的に形成される。そのような電気化学的プロセスの例には、限定するものではないがプロトン電解質膜(PEM)電気分解およびアルカリ水電気分解(AWE)が含まれる。しかしながら、そのような電気化学反応では、様々なエネルギー非効率の結果としての追加のエネルギーコストに起因して、セルの動作エネルギーは比較的高い。例えば、電極間のイオン種の望ましくない移動を低減するため、カソードおよびアノードは、これらの移動を低減し得るダイアフラムまたは膜などの構成要素によって分離されてもよい。これらの構成要素はセルの全体効率を改善し得るが、セルにおける追加の抵抗損失という犠牲を払う可能性があり、それが動作電圧を増大させ得る。水の電気分解におけるその他の非効率には、とりわけ溶液抵抗損失、導電性非効率、および/または電極過電位が含まれる。これらの様々な非効率およびそれらの低減に関連する資本コストは、水分解電気分解を介した水素発生の経済的実現可能性において重要な役割を演じ得る。
【0067】
上述の水分解反応に関連したエネルギーコストに加え、別の重要なコストは、水素圧縮のコストであり得る。実現可能な輸送燃料として採用されるように、水分解電気分解によって生成された水素もまた、燃料補給所に送達され得る。この送達プロセスを実現可能にするため、水分解電気分解によって発生した水素は、輸送および燃料補給用に圧縮される。水素が大規模に輸送燃料として使用されることになる場合、燃料補給圧力は、約5,000から約10,000psiになると予測され得る。その結果、圧縮コストは、電気分解による水素ガス生成の全体コストの有意なパーセンテージになり得る。
【0068】
本明細書に記述される方法およびシステムは、電気化学的および熱化学的または熱的プロセスの独自の組合せ、ならびに/あるいは2つの電気化学的プロセスの組合せであって、組み合わされたときに、水素ガスの効率的で低コストの、および低エネルギー生成をもたらす組合せに関する。
【0069】
当業者により理解されるように、本発明は、本明細書に記述される特定の実施形態に限定されず、したがって当然ながら様々になり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を記述する目的のためのみであり、限定するものではないことも理解されたい。
【0070】
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各値、およびその言及される範囲における任意のその他の言及されるまたは介入する値は、文脈が他に明示しない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、言及される範囲において何らかの特に排除される限界が存在することを条件として、より小さい範囲に含まれ得る。言及される範囲がその限界の1つあるいは両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかあるいは両方を除外した範囲も、その範囲に含まれる。
【0071】
本明細書で使用される「約」という用語は、値または範囲の変動率を、言及される値または言及される範囲の限界の例えば10%以内、5%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、0.01%以内、0.005%以内、または0.001%以内にすることができ、厳密な言及される値または範囲の限界を含む。
【0072】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%もしくはそれよりも多くなどの大部分もしくは大半、または100%を指す。
【0073】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記述されるものに類似するまたは等しい任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用することができ、代表的な例示的な方法および材料を、次に記述する。
【0074】
本明細書に引用される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許のそれぞれが参照により組み込まれることを具体的におよび個々に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用されるものに関連して方法および/または材料を開示し記述するように参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためであり、本発明が、先行発明によるそのような公開に先行する権利を持たないことを認めると解釈すべきではない。さらに、提供される公開日は実際の公開日と異なっているかもしれず、独立して確認する必要があり得る。
【0075】
本明細書でおよび添付される特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。請求項は、いずれかの必要に応じた要素を除外するように起草されているかもしれないことにさらに留意されたい。したがってこの言及は、請求項の要素の言及に関連した「単に」および「~のみ」などの排他的用語の使用の、または「否定的」限定の使用の、先行詞として働くものとする。
【0076】
本開示を読むことにより当業者に明らかにされるように、本明細書に記述され例示される個々の実施例のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、その他のいくつかの実施例のいずれかの特徴から容易に分離されても組み合わされてもよい個別の構成要素および特徴を有する。任意の記載される方法は、記載される事象の順序でまたは論理的に可能な任意のその他の順序で実施することができる。
【0077】
方法およびシステム
カソードで水素ガスを生成する様々な方法およびシステムが、本明細書に記述され、様々な反応は、限定するものではないが:金属オキシアニオンの酸化、非金属オキシアニオンの酸化、酸素ガスの形成、またはこれらの組合せなど、アノードで実施することができる。
【0078】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質を、電気化学セル内に提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;ならびに
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、水素ガスをカソードで形成すること
を含む。
【0079】
一態様では、水素ガスを発生させるシステムは:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソードおよびカソード電解質であって、カソードが水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む。
【0080】
一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンあるいは両方を含む、アノード電解質の少なくとも一部分が、電気化学セルの外側に移送され、熱的に還元され(例えば、熱反応器内で)および/または電気化学的に還元され(例えば、第2の電気化学セル内で)て、酸素ガスと、還元形態の金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを形成する。酸素ガスを形成する熱反応/反応器と電気化学反応/セルとの両方について、以下に、より詳細に記述する。酸素ガスを形成する熱反応/反応器および第2の電気化学反応/セルは、同時に(熱反応および第2の電気化学反応の両方が同時に実施される)、逐次(熱反応および第2の電気化学反応の両方が順次実施される)、または独立して実施されてもよく、これらの組合せの全ては本開示の十分範囲内にある。
【0081】
一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質の少なくとも一部分を、電気化学セルの外側に移送し、アノード電解質を熱反応に供して、酸素ガスを形成することを含む。
【0082】
一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンあるいは両方を含む、アノード電解質の少なくとも一部分を、電気化学セルから出して第2の電気化学セルの第2のカソード電解質に移送すること、および第2の電気化学セルの第2のカソードで、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを還元してより低い酸化状態にし、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを還元してより低い酸化状態にすることを含む。一部の実施例では、方法はさらに、第2電気化学セルの第2のカソードで水酸化物イオンを形成し、水酸化物イオンを第2の電気化学セルの第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、第2の電気化学セルの第2のAEMを通して移動させ、第2の電気化学セル内の第2のアノードで水酸化物イオンを酸化して、酸素ガスを形成することを含む。
【0083】
これらの方法およびシステムに関するさらなる詳細について、以下に記述する。本明細書で提供される様々な態様および実施例を、図1~7に例示する。
【0084】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供すること;
水素ガスをカソードで形成すること;
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質の少なくとも一部分を、電気化学セルの外側に移送すること;ならびに
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質のその部分を熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成すること
を含む。
【0085】
一態様では:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む電気化学セルと;
電気化学セルに動作可能に接続された熱反応器であって、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつアノード電解質のその部分を熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンをそれぞれ形成するように構成されている熱反応器と
を含む、水素ガスを発生させるシステムが提供される。
【0086】
水素ガスは、商用目的で捕獲され貯蔵されてもよい。酸素ガスは、排出されてもよく、または商用目的で捕獲され貯蔵されてもよい。
【0087】
図1および2は、アノード104およびアノード電解質106を収容するアノードチャンバー102を持つ、例示的な電気化学セル100の様々な態様を示す。アノード電解質106は、1種または複数種のオキシアニオン化合物を含む。実施例では、1種または複数種のオキシアニオン化合物は、金属イオンがより低い酸化状態にある(図1および2では、「M(L)オキシアニオン」と表される)金属オキシアニオン(金属が、図1および2では「M」と表される)を含む。別の実施例では、アノード電解質106中の1種または複数種のオキシアニオン化合物は、非金属イオンがより低い酸化状態にある(図1および2では、「NM(L)オキシアニオン」と表される)非金属オキシアニオン(非金属は、図1および2で「NM」と表される)を含む。電気化学セル100は、カソード110およびカソード電解質112(本明細書では、「カソライト112」とも呼ぶ)を収容するカソードチャンバー108も含む。膜116またはその他のセパレーターは、アノードチャンバー102をカソードチャンバー108から隔離する。
【0088】
存在する場合、アノード104で、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)は酸化されて、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)になる。同様に、アノード104で、存在する場合には非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオンと表される)が酸化されて、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオンと表される)になる。水素ガス114はカソードで形成される。金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方を現在含有するアノード電解質の少なくとも一部分を含む溶液118を、電気化学セル102から出して熱反応器120に移送し、そこで溶液118を熱反応に供する。より高い酸化状態にあるオキシアニオン化合物、即ちM(H)オキシアニオン、NM(H)オキシアニオン、あるいは両方を含有する、アノード電解質溶液118の熱反応は、アノード電解質106を加熱すること(例えば、熱122を加えること)を含み、その結果、酸素ガス124が、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方の還元により発生して、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方をそれぞれ形成する。アノード電解質と、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)とで得られる溶液126の少なくとも一部分は、溶液126中の、より低い酸化状態にあるオキシアニオン化合物、即ち金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方をアノード104で酸化して再び、より高い酸化状態にあるオキシアニオン化合物、即ち金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方を形成することができるように、移送して電気化学セル100のアノードチャンバー108に戻すことができる。
【0089】
本明細書で使用される「金属オキシアニオン」という用語は、2個またはそれよりも多くの原子を含有し、少なくとも1個の原子が金属であり、少なくとも1個のその他の原子が酸素である、多原子アニオンを指す。本明細書で使用される「非金属オキシアニオン」という用語は、2個またはそれよりも多くの原子を含有し、少なくとも1個の原子が非金属であり、少なくとも1個のその他の原子が酸素である、多原子アニオンを指す。金属オキシアニオンのまたは非金属オキシアニオンの様々な例を、以下に提示する。金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンは、それぞれ任意の数の金属または非金属原子を、および任意の数の酸素原子を許容される価数に応じて含有し得ることを理解されたい。非金属オキシアニオンの部分とすることができる非金属原子には、限定するものではないが:ハロゲン(例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I))、炭素(C)、硫黄(S)、窒素(N)、およびリン(P)が含まれる。
【0090】
一部の実施例では、アノード電解質溶液118は、より低い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、アノード電解質溶液106を形成する当初の原液の部分として)およびより高い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、アノード104での酸化後に形成される)の両方を含む。例えば、原液アノード電解質106が金属オキシアニオンを含む場合、アノード電解質溶液118は、未反応の、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)、および酸化された、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)の両方を含むことができる。同様に、原液アノード電解質106が非金属オキシアニオンを含む場合、アノード電解質溶液118は、未反応の、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)、および酸化された、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)の両方を、含むことができる。
【0091】
本明細書に記述される、レドックス金属または非金属としての金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの使用(例えば、より低い酸化状態からより高い酸化状態に移り、およびその逆も同様である)は、半電池電圧が酸素発生の半電池電圧よりも上である場合であっても、電気化学セル100の動作電圧をさらに低くすることを可能にする。典型的には、カソードで水素ガスが発生するセルと同じセル内でのアノードでの酸素発生は、妥当な電流密度で分子状酸素を発生させるために、アノードでの、理論的最小値を超える過電位を必要とし得る。したがって、アノードでの1種または複数種のオキシアニオン化合物の酸化に関係する、本明細書で提供される態様で必要とされる過電位の低減は、理論的電圧が僅かに高くなる場合であっても動作電圧を低下させることができる。
【0092】
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)の形成は、非触媒電子移動ステップ、例えば金属または非金属イオンの酸化であり得る。酸化された金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンはセルから出されて、例えば熱反応器120に輸送され、ここで次いで、熱122を使用して、酸化された金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンから酸素ガスを遊離させ、酸素ガス形成に必要とされるエネルギーを熱的に提供できるようにする。上述のように、1種または複数種のオキシアニオン化合物の金属および/または非金属イオンを、より低い酸化状態からより高い酸化状態に酸化する、半電池反応におけるこのタイプの変化は、過電位の省力により基本的な半電池電位が高くなる場合であっても、より低い動作電圧をもたらすことができる。
【0093】
より低い酸化状態からより高い酸化状態への、それぞれ金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの金属または非金属イオンの酸化は、サーモニュートラル電圧を低減させることによって動作電圧をさらに低減させることができる。典型的には、電気化学セル100の抵抗損失以外の供給源から熱が供給される場合、セル100は、より低い電圧で動作することができる。しかしながら、セル100内に熱を付加する抵抗損失は、セル電圧がサーモニュートラル電圧を超えるまで損失と見なされないかもしれない。金属または非金属オキシアニオンをアノード104で酸化することにより、サーモニュートラル電圧を低減させることによって動作電圧を低下させることが可能になり得る。例えば、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンをアノード104で酸化することは、サーモニュートラル電圧を約1.48Vよりも低下させることによって全電圧を低下させることができる。本明細書に記述される、より低いサーモニュートラル電圧は、電気化学セル100の全動作電圧を低下させるのに使用することができる。
【0094】
動作電圧の低減は、アノード106での酸素発生にまたはカソード110での水素発生に必要とされると考えられるよりも低い半電池電位の結果であってもよい。ギブスの自由エネルギーは、所与の変換(例えば、水から水素および酸素への変換)を実現するのに必要とされる、最小限に抑えられた外部仕事を含み得るので、熱力学的最小電圧よりも下での動作は、追加のエネルギーが仕事としてまたは熱としてシステム内に提供される場合に可能になり得る。熱が、セル100内で抵抗損失以外の供給源から得られる場合(これらの損失は、限定するものではないが膜116内での損失、伝導性抵抗、溶液抵抗、および電極過電位を含み得る)、正味の効果は、電力の需要減少になる。
【0095】
従って、一部の実施例では、酸素ガスが、電気化学セル100のアノード104で形成されない。別の実施例では、電気化学セル100の25%未満のファラデー効率が、アノード104での酸素発生反応に関する。
【0096】
一部の実施例では、カソード電解質112は水を含み、この水は、カソード110で還元されて水酸化物イオンおよび水素ガス114を形成する。一部の実施例では、アノードチャンバー102内のアノード電解質106およびカソードチャンバー108内のカソード電解質112を分離する膜116は、アニオン交換膜(AEM)またはダイアフラムである。一部の実施例では、水の還元によって形成された水酸化物イオンは、カソードチャンバー108内のカソード電解質112からアノードチャンバー102内のアノード電解質106に、AEMまたはダイアフラム116を通って移動する。
【0097】
一部の実施例では、電気化学セル100から移送されるアノード電解質溶液118はさらに、水酸化物イオンを含む。この態様を、図2に示されるシステムに例示する。わかるように、図2は、アノード104と、上述のように1種または複数種のオキシアニオン化合物、例えば金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含むアノード電解質106とを収容する、アノードチャンバー102を含む電気化学セル100を例示する。図2の電気化学セル100は、カソード110およびカソード電解質112を収容するカソードチャンバー108も含む。電気化学セル100は、1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンを持つ金属オキシアニオンまたは非金属イオンを持つ非金属オキシアニオン)をアノード104で酸化することが可能な任意の構成を有することができる。金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方は、酸化されて、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオンとして)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方をそれぞれアノード104で形成し、水素ガス114がカソード110で、例えば水(HO)から水酸化物イオン(OH)および水素ガス114への電気分解によって形成される。一部の実施例では、アノード電解質106は、1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンあるいは両方)と水とを含む。他の実施例では、アノード電解質106は、1種または複数種のオキシアニオン化合物と、塩水(さらに以下に記述する)とを含む。一部の実施例では、非金属オキシアニオン系の塩の存在(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物;塩は以下に記述する)は、熱プロセスの効率を改善し得る。
【0098】
電気化学セル100は、図2の垂直破線116として示されるアニオン交換膜(AEM)によって分離された、アノードチャンバー102およびカソードチャンバー108を収容する。本明細書に記述される図2の実施例では、電極チャンバー102、108を分離するために、プロトン電解質膜(PEM)が使用されるよりも、AEM 116が使用される。AEM 116の使用は、アノード電解質106中に存在する、金属イオンを持つ金属オキシアニオンまたは非金属イオンを持つ非金属オキシアニオンの、アノードチャンバー102からカソードチャンバー108への輸送を低減させまたは最小限に抑え、カソード電解質112の汚染を低減させまたは最小限に抑え、プロセスの効率を改善する。カソード電解質113は、水を含むことができ、カソード114はこの水を還元して水素ガス114および水酸化物イオン128を形成する(図2でOH 128として示される)。一部の実施例では、水酸化物イオン128は、AEM 116を通って、カソードチャンバー108のカソード電解質112からアノードチャンバー102のアノード電解質106へと移送されまたは移動する。金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方と、水酸化物イオン128とを含む、得られるアノード電解質溶液118は、電気化学セル100から出されて、例えば熱反応器120に移送され、そこでアノード電解質溶液118は熱反応に供され、酸素ガス124の発生が、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方の還元と共に生じて、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方をそれぞれ形成する。実施例では、これらの、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)を含む、得られる溶液126は、移送されて電気化学セル100のアノードチャンバー102に戻り得、そこで溶液126が、アノードチャンバー102内に既に存在するアノード電解質106と合わされる。
【0099】
一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)を含む溶液118の、アノードチャンバー102から熱プロセス(例えば、熱反応器120)への移送は、固体形態でまたは溶液形態でなすことができる。一部の実施例では、金属イオンがより低い酸化状態にある(M(L)オキシアニオン)および/またはより高い酸化状態にある(M(H)オキシアニオン)金属オキシアニオン、あるいは非金属イオンがより低い酸化状態にある(NM(L)オキシアニオン)および/またはより高い酸化状態にある(NM(H)オキシアニオン)非金属オキシアニオンは、アノード電解質106に部分的にまたは完全に不溶性であり得る。一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンは、アノード電解質106から分離されていてもそうでなくてもよい。様々な公知の技法、限定するものではないが液-固分離のための技法、例えば濾過を含む技法を、分離のために使用することができる。
【0100】
本明細書に記述される方法およびシステムは、時には閉ループプロセスであり、本明細書で提供される1つまたは複数のステップの順序は、交互になされても再構成されてもよく、ステップは必ずしも連続的手法で配置構成する必要はない。
【0101】
金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン中の金属イオンまたは非金属イオンは、任意のレドックス金属または非金属とすることができる。金属または非金属または金属イオンまたは非金属イオンの様々な例は、本明細書に記述される。一部の実施例では、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方は、電気化学セル100のアノードチャンバー102に進入し、そこで酸化されて、アノード104で、より高い酸化状態(M(H)オキシアニオンまたはNM(H)オキシアニオンあるいは両方)になる。例示的な実施例では、オキシアニオン化合物は、マンガン含有金属イオンを持つ金属オキシアニオンを含む。マンガンオキシアニオンの酸化は、以下の半電池反応で示される:
アノード反応:MnO 2-→MnO +e
カソード反応:HO+e→OH+1/2H
【0102】
前述の例示的な実施例を、図3に例示する。上述の反応において、アノード104では、Mnがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンが、マンガン酸イオン(MnO 2-)であり、これが酸化されて、Mnがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを、過マンガン酸イオン(MnO )の形で形成する。カソード110では、水が還元されて水素ガス114および水酸化物イオン128になる。水酸化物イオン128は、カソードチャンバー108のカソード電解質112からアノードチャンバー102のアノード電解質106に、AEM 116を通って移動する。次いで、より高い酸化状態の過マンガン酸イオン(MnO )および水酸化物イオンを含有するアノード電解質溶液118は、アノードチャンバー102の外に移送され、熱反応器120に移送されて、酸素ガス124と、より低い酸化状態のマンガン酸イオンとを、下記の通り形成する:
熱反応:MnO +OH→MnO 2-+1/2HO+1/4O
【0103】
MnO 2-/MnO 系の全反応は、以下に示される通りである:
全体:1/2HO→1/2H+1/4O
【0104】
熱反応器120で形成された水130は、電気化学セル100のカソードチャンバー108に、部分的にまたは完全に移送することができる(図3に示される)。
【0105】
一部の実施例では、アノードチャンバー102のアノード電解質106のpHは、その他のいずれの競合する酸化反応にも勝る、熱反応器120で酸素ガス124を形成するための金属オキシアニオンもしくは非金属オキシアニオンの酸化および/またはヒドロキシイオンの酸化に影響を及ぼし得る。実施例では、アノード電解質106のpHは、約5よりも高く、例えば約6よりも高く、約7よりも高いなど、例えば約8よりも高く、約9よりも高いなど、例えば約10よりも高く、約5から約15など、例えば約5から約10、約5から約9など、例えば約9から約15、約9から約14など、例えば約9から約13、約9から約12など、例えば約9から約11、約9から約10など、例えば約10から約12、約10から約14など、例えば約10から約11.5、約11から約15など、例えば約9、約10など、例えば約11、約11.5などである。一部の実施例では、アノード電解質106のpHは、カソード電解質112からアノード電解質106に移動する、水酸化物イオン128の酸化よりも、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化を容易にし得る。一部の実施例では、方法はさらに、約1から約6のpH差など、アノード電解質106とカソード電解質112との間で1よりも大きい定常状態のpH差を維持することを含む。
【0106】
一部の実施例では、酸素ガス124を発生させる熱反応器120は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)を還元して金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)にするように、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)を還元して非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)にするように、またはその両方である電気化学反応を提供する、第2の電気化学セルによって置き換えることができる。
【0107】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
第1のアノードおよび第1のアノード電解質を第1の電気化学セル内に提供することであって、第1のアノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
第1のアノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
第1のカソードおよび第1のカソード電解質を第1の電気化学セル内に提供し、水素ガスを第1のカソードで形成すること;
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、第1のアノード電解質の少なくとも一部分を、第1の電気化学セルから出して第2の電気化学セルの第2のカソード電解質に移送すること;ならびに
第2の電気化学セルの第2のカソードで、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを還元してより低い酸化状態にし、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを還元してより低い酸化状態にすること
を含む。
【0108】
一部の実施例では、方法はさらに、水酸化物イオンを第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、第2の電気化学セル内で第2のAEMを通って移動させ、水酸化物イオンを第2の電気化学セル内の第2のアノードで酸化して、酸素ガスを形成することを含む。
【0109】
一部の実施例では、方法はさらに、水酸化物イオンを第1のカソード電解質から第1のアノード電解質に、第1の電気化学セル内の第1のAEMを通して移送することを含む。一部の実施例では、方法はさらに、第2の電気化学セルの第2のカソード電解質の少なくとも一部分(金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方を含む)を移送して、第1の電気化学セルの第1のアノードチャンバーに戻すことを含む。
【0110】
一態様では、水素ガスを発生させるシステムは:
第1のアノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む第1のアノード電解質であって、第1のアノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、第1のアノードおよび第1のアノード電解質と;
第1のカソード、および水を含む第1のカソード電解質であって、第1のカソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、第1のカソードおよび第1のカソード電解質と
を含む第1の電気化学セルと;
第1の電気化学セルに動作可能に接続された第2の電気化学セルであって;
第2のアノードおよび第2のアノード電解質;
第2のカソードおよび第2のカソード電解質であって、第2のカソード電解質は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、第1の電気化学セルの第1のアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように構成されており、第2のカソードは、それぞれ金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを還元して金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンにし、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを還元して非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを形成するように構成されている、第2のカソードおよび第2のカソード電解質
を含む第2の電気化学セルと
を含む。
【0111】
一部の実施例では、システムはさらに、第1の電気化学セルの第1のアノードと第1のカソードとの間に第1のAEMを、および/または第2の電気化学セルの第2のアノードと第2のカソードとの間に第2のAEMを含む。第1のAEMまたは第2のAEMあるいは両方は、水酸化物イオンを対応するカソード電解質から対応するアノード電解質に、第1のAEMまたは第2のAEMあるいは両方を通して移送するように構成することができる。一部の実施例では、システムにおいて、第2の電気化学セルの第2のアノードは、水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成するように構成される。
【0112】
一部の実施例では、第1の電気化学セルと第2の電気化学セルとは、それらのそれぞれのアノード反応を選択的に行うように、異なる電流および電圧で動作する。
【0113】
前述の方法およびシステムを、図4に例示する。図4に見られるように、システムは、第1の電気化学セル150および第2の電気化学セル170を含む。第1の電気化学セル150は、図1~3に関して既に記述された電気化学セル100に実質的に類似または同一にすることができる。例えば、第1の電気化学セル150は、第1のアノード154および第1のアノード電解質156を収容する第1のアノードチャンバー152、第1のカソード160および第1のカソード電解質162を収容する第1のカソードチャンバー158、ならびに第1のアノードチャンバー152と第1のカソードチャンバー158との間の第1の膜(AEMなど)166を、含むことができる。第2の電気化学セル170は、第1の電気化学セル150に類似した概略的構造を有することができる。例えば、第2の電気化学セル170は、第2のアノード174および第2のアノード電解質176を収容する第2のアノードチャンバー172、第2のカソード180および第2のカソード電解質182を収容する第2のカソードチャンバー178、ならびに第2のアノードチャンバー172と第2のカソードチャンバー178との間の第2の膜(AEMなど)186を含むことができる。一部の実施例では、より高い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方)を含む、第2のアノード電解質156の少なくとも一部分が、第1の電気化学セル100の第1のアノードチャンバー152から、アノード電解質溶液184として移送される。アノード電解質溶液184は、第2の電気化学セル170の第2のカソード電解質182に加えられる。第2の電気化学セル170では、より高い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン、あるいは両方)が還元されて、より低い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン、あるいは両方)を、第2のカソード180で形成する。第2の電気化学セル200では、第2のカソード180でも形成された水酸化物イオン188が、第2のカソードチャンバーの第2のカソード電解質182から、第2のアノードチャンバー172の第2のアノード電解質176に、第2のAEM 186を介して移動できる。第2のアノード174は、水酸化物イオン188を酸化して酸素ガス190を形成する。金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方を含む、第2のカソード電解質182の少なくとも一部分は、より高い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物の第2のカソード180での還元後、カソード電解質溶液192として移送されて、第1の電気化学セル150のアノードチャンバー152に戻されことができる。
【0114】
出願人らは、アノード電解質とカソード電解質との間で定常状態のpH差を維持する、例えばアノード電解質のpHを上昇させおよび/またはカソード電解質のpHを低下させ、アノードおよびカソードでの反応を合わせた結果、約1.23V未満の理論的電位をもたらし得る、独自の方法およびシステムを見出した。
【0115】
本明細書で提供される方法およびシステムは、NaOHまたはKOHなどであるがこれらに限定されないアルカリ電解質をそのそれぞれが使用する2つの電極チャンバーを分離するのに、アニオン交換膜(AEM)などの膜を用いる、アルカリ水電気分解を含む。一部の実施例では、カソード電解質は、アノード電解質よりも低いpHにすることができ、アノード電解質は、比較的高いpHの溶液にすることができる。実施例では、アノード電解質およびカソード電解質の両方を、それらのそれぞれのpHで、水の収支のための熱的手段を介して維持することができる。水電解質反応全体に関する理論的電圧は、1.23-0.059×ΔpHボルトであり得、式中、ΔpHは、アノライトとカソライトとの間のpH差である。例えば、15のアノライトpHおよび11のカソライトpHは、約0.994V、すなわち1.23Vの理論的電位よりも約0.236V低い理論的水電解質電位を有し得る。
【0116】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質が、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、水素ガスおよび水酸化物イオンをカソードで形成すること;
アノード電解質を、アニオン交換膜(AEM)によってカソード電解質から分離すること;
水酸化物イオンをカソード電解質からアノード電解質に、AEMを通して移動させること;および
アノード電解質とカソード電解質との間で1よりも大きい定常状態のpH差を維持すること
を含む。
【0117】
一部の実施例では、方法はさらに、電気化学セルを約1.23V未満の理論的電圧で動作させることを含む。
【0118】
一態様では、水素ガスを発生させる電気化学セルは:
アノードと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質とであって、アノードが、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするようにまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードとアノード電解質;
カソードと、水を含むカソード電解質とであって、カソードが、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードとカソード電解質;ならびに
アノード電解質とカソード電解質との間に配置され、水酸化物イオンをカソード電解質からアノード電解質に移動するように構成されている、アニオン交換膜
を含み;
電気化学セルは、アノード電解質とカソード電解質との間で1よりも大きい定常状態のpH差を維持するように構成されている。
【0119】
一部の実施例では、電気化学セルシステムは、約1.23V未満の理論的電圧で動作するように構成される。
【0120】
一部の実施例では、カソード電解質のpHがアノード電解質のpHよりも低い。一部の実施例では、アノード電解質のpHが約10から約15であり、カソード電解質のpHが約8から約13である。一部の実施例では、アノード電解質のpHが約10から約15であり、カソード電解質のpHが約8から約13であり、それと共にアノード電解質とカソード電解質との間で1よりも大きい定常状態のpH差が維持される。
【0121】
一部の実施例では、アノード電解質のpHは、約10から約15、例えば約10から約14、約10から約13など、例えば約10から約12、約10から約11など、例えば約11から約15、約11から約14など、例えば約11から約13、約11から約12など、例えば約12から約15、約12から約14など、例えば約12から約13、約13から約15など、例えば約13から約14、約14から約15などである。
【0122】
一部の実施例では、カソード電解質のpHは、約8から約13、例えば約8から約12、約8から約11など、例えば約8から約10、約8から約9など、例えば約9から約13、約9から約12など、例えば約9から約11、約9から約10など、例えば約10から約13、約10から約12など、例えば約10から約11、約11から約13など、例えば約11から約12、約12から約13などである。
【0123】
一部の実施例では、アノード電解質のpHは、約10から約15、例えば約10から約14、約10から約13など、例えば約10から約12、約10から約11などであり;カソード電解質のpHは、約8から約13、例えば約8から約12、約8から約11など、例えば約8から約10、約8から約9などである。一部の実施例では、アノード電解質のpHは、約10から約15、例えば約10から約14、約10から約13など、例えば約10から約12、約10から約11などであり;カソード電解質のpHは、約8から約13、例えば約8から約12、約8から約11など、例えば約8から約10、約8から約9などであり;アノード電解質とカソード電解質との間の定常状態のpH差は、約1から約6、例えば約1から約5、約1から約4など、例えば約1から約3、約1から約2などである。
【0124】
一部の実施例では、アノード電解質のpHは、約12から約15、例えば約12から約14、約12から約13など、例えば約13から約15、約13から約14など、例えば約14から約15であり;カソード電解質のpHは、約11から約13、例えば約11から約12、約12から約13などである。
【0125】
一部の実施例では、アノード電解質とカソード電解質との間の定常状態のpH差は、1よりも大きく、例えば約1から約7、約1から約6など、例えば約1から約5、約1から約4など、例えば約1から約3、約1から約2など、例えば約2から約7、約2から約6など、例えば約2から約5、約2から約4など、例えば約2から約3、約3から約7など、例えば約3から約6、約3から約5など、例えば約3から約4、約4から約7など、例えば約4から約6、約4から約5など、例えば約5から約7、約5から約6など、例えば約6から約7である。
【0126】
カソード電解質およびアノード電解質のpHは、水の収支のための熱的手段を介して維持することができる。一部の実施例では、カソードチャンバーに添加される水は、外部原液からとすることができ、および/またはアノードチャンバーから再循環することができる。一部の実施例では、水の一部分が、アノードチャンバーから、内部熱または外部熱により除去され、カソードチャンバーに移送されてもよい。そのような移送手段は、当技術分野で周知であり、貯蔵および/または移送のためのコンジット、パイプ、および/またはタンクを含むがこれらに限定するものではない。
【0127】
一部の実施例では、カソード電解質の導電率とそのpHとの間のバランスは、カソード電解質のpHがアノード電解質のpHよりも低くなるように、かつカソード電解質が、大きい抵抗によりセル電圧に悪影響を及ぼさない導電率を有するように維持される。一部の実施例では、本明細書に提供される方法およびシステムは、カソード電解質中に多原子アニオンを含む塩をさらに含む。本明細書で使用される「多原子アニオン」という用語は、この塩を指すとき、ゼロではない正味の電荷を有する2個またはそれよりも多くの原子の、共有結合した組を含む。塩内の多原子アニオンの例には、限定するものではないが炭酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マレイン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、またはこれらの組合せを含む。一部の実施例では、多原子アニオンを含む塩内の対カチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される。カソード電解質中のこの「塩内の多原子アニオン」または「多原子アニオンを含む塩」は、本明細書に記述される、アノード電解質中の「金属オキシアニオン」または「非金属オキシアニオン」あるいは電解質中の任意のその他の「塩」または「塩水」とは異なることが理解されよう。
【0128】
一部の実施例では、カチオンおよび多原子アニオンを含む前述の塩は、塩がアルカリ条件(例えば、pH>7)で安定であり可溶であるように、かつ1つまたは複数の性質、例えば限定するものではないが膜輸送メカニズムを妨げず、膜を通って移動せず、カソードで反応せず、および/または水酸化物、水素、もしくは酸素と反応しない性質を保有するように、選択される。一部の実施例において、多原子アニオンは、pH差を維持するため、水酸化物イオンのみがAEMを横断してカソードチャンバーからアノードチャンバーに輸送されるように、アニオンがAEMによって選択的に拒絶するようになされる。一部の実施例では、多原子アニオンはまた、多原子アニオンの代わりにカソードで水が還元されるよう、還元環境でアニオンが安定であるように選択されてもよい。一部の実施例では、塩内の対応するカチオンは、カチオンが膜を通ってカソードチャンバーからアノードチャンバーに拡散しないように、かつカソードで還元されないように、選択される。
【0129】
一部の実施例では、カソード電解質中に多原子アニオンを含む前述の塩の濃度は、約0.1Mから約3M、例えば約0.1Mから約2.5M、約0.1Mから約2Mなど、例えば約0.1Mから約1.5M、約0.1Mから約1Mなど、例えば約0.1Mから約0.5M、約0.5Mから約3Mなど、例えば約0.5Mから約2.5M、約0.5Mから約2Mなど、例えば約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1Mなど、例えば約1Mから約3M、約1Mから約2.5Mなど、例えば約1Mから約2M、約1Mから約1.5Mなど、例えば約1.5Mから約3M、約1.5Mから約2.5Mなど、例えば約1.5Mから約2M、約2Mから約3Mなど、例えば約2Mから約2.5Mである。
【0130】
一部の実施例では、方法およびシステムは、電気化学セルの、1.3V未満、または1.5V未満、または2V未満、または2.5V未満の理論的電圧を有する。一部の実施例では、方法およびシステムは、電気化学セルの、1.3Vから約3Vの間、例えば1.5Vから約3V、2Vから約3Vなど、例えば1Vから約3V、1.5Vから約2.5Vなどの動作電圧を有する。
【0131】
一部の実施例では、アノード電解質およびカソード電解質は、アノード電解質からカソード電解質へのカチオンの移動を容易にするカチオン交換膜(CEM)によって分離される。カチオンは、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの、対応するカチオンに関する。一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンに対応するカチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属の例には、限定するものではないがナトリウム、カリウム、リチウム、またはセシウムが含まれる。アルカリ土類金属の例には、限定するものではないがカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、およびバリウムが含まれる。一部の実施例では、カチオンがナトリウムイオンまたはカリウムイオンまたはリチウムイオンである。CEMは、カチオンの移動を容易にしつつ、アノード電解質からカソード電解質への金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの移動を防止する。
【0132】
したがって一部の実施例では、方法およびシステムはさらに、カチオン、例えばアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをアノード電解質からカソード電解質に移動させ、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物をそれぞれ、カソード電解質中で形成することを含む。この態様を、図5に概略的に示す。図6は、上述のようにオキシアニオン化合物としてマンガン酸/過マンガン酸塩の組合せを使用する実施例を示す。
【0133】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、アノード電解質は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
カソードおよびカソード電解質を電気化学セル内に提供し、水素ガスをカソードで形成すること;
アノード電解質とカソード電解質との間にCEMを設けること;
アノード電解質からカソード電解質にカチオンを移送すること;ならびに
金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含む、アノード電解質の少なくとも一部分を、電気化学セルの外側に移送すること
を含む。
【0134】
一部の実施例では、方法はさらに、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを含むアノード電解質、または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質を、熱反応または第2の電気化学反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成することを含む。熱反応および第2の電気化学反応の両方は、本明細書に記述されている。
【0135】
一態様では、水素ガスを発生させるシステムは:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを含むアノード電解質または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と;
アノード電解質とカソード電解質との間に配置されたCEMであって、カチオンをアノード電解質からカソード電解質に移送するように構成されている、CEMと
を含む、電気化学セルを含む。
【0136】
一部の実施例では、システムはさらに、電気化学セルに動作可能に接続された熱反応器を含み、熱反応器は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつアノード電解質のその部分を熱反応に供して、酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成するように構成される。
【0137】
一部の実施例では、システムはさらに、電気化学セルに動作可能に接続され、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつ酸素ガスと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンをそれぞれ形成するように構成されている、第2の電気化学セルを含む。
【0138】
熱反応器および第2の電気化学セルの両方は、本明細書に記述されている。
【0139】
一部の実施例では、カチオンは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを含み、方法およびシステムはさらに、カソード電解質中でアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を形成することを含む。
【0140】
図5に示されるように、例示的なシステムは、アノード204およびアノード電解質206を収容するアノードチャンバー202を含む、電気化学セル200を含むことができる。アノード電解質206は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)などのより低い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物と、対応するカチオン(図5ではAと総称的に示され、ここでAは任意のカチオンである)とを含むことができる。電気化学セル200は、カソード210およびカソード電解質212を収容するカソードチャンバー208も含む。カチオン交換膜(CEM)などの膜214は、アノードチャンバー202とカソードチャンバー208との間に位置決めされて、アノード電解質206をカソード電解質212から分離する。電気化学セル200は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方をアノード204で酸化するように構成されている、任意のタイプの電気化学セルとすることができる。具体的には、アノード204は、金属オキシアニオンの金属イオンまたは非金属オキシアニオンの非金属イオンを、より低い酸化状態(M(L)オキシアニオンまたはNM(L)オキシアニオン)からより高い酸化状態(M(H)オキシアニオンまたはNM(H)オキシアニオン)に酸化する。カソード210は、水をカソードチャンバー208内で還元して水酸化物イオンおよび水素ガス216にする。図6は、図5におけるものと同じシステムの使用の具体例を示し、1種または複数種のオキシアニオン化合物は、より低い酸化状態にあるときにマンガン酸イオン(MnO 2-)であり、より高い酸化状態にあるときに過マンガン酸イオン(MnO )であるマンガン金属オキシアニオンを含み、対応するカチオンはカリウムイオン(K+)である。
【0141】
一部の実施例では、CEMがアノードチャンバー202からカソードチャンバー208への金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの輸送を低減させることができ、最小限に抑えることができ、またはなくすことができ、したがってカソード電解質212の汚染を低減または最小限に抑えることができ、プロセスの効率を改善することができるので、電極チャンバー202、208を分離するためにPEMではなくCEMが膜214に使用される。
【0142】
一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの対応するカチオン、例えばアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオン(図5ではAまたは図6ではKと表される)は、CEM 214を通ってアノード電解質206からカソード電解質212へと輸送されまたは移動し、そこで水酸化物イオンと化合してA(OH)(式中、nは、Aの価数に応じた任意の整数である)、例えばアルカリ金属水酸化物(NaOH、またはKOH、またはLiOHなど)またはアルカリ土類金属水酸化物(Ca(OH)、Mg(OH)、Ba(OH)など)を、カソード電解質212中に形成する。金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方を含む、アノード電解質206の少なくとも一部分は、アノード電解質溶液218として電気化学セル200の外側に輸送され、熱反応に、例えば熱反応器220で、または第2の電気化学反応に供することができるようになる。
【0143】
一部の実施例では、A(OH)を含むカソード電解質212の一部分が電気化学セル200から引き出され、A(OH)(図には示されていない)は商用目的で使用されまたは販売される。
【0144】
一部の実施例では、A(OH)を含むカソード電解質212の少なくとも一部分が、カソード電解質溶液222としてカソードチャンバー208から引き出され、熱反応器220にまたは第2の電気化学セル(図5または6に示されていないが、図4に示される第2の電気化学反応器170に類似する)に移送され、そこで酸素ガス224の発生が生じ、より高い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(H)オキシアニオン)または非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(H)オキシアニオン)あるいは両方)が還元されて、より低い酸化状態にある1種または複数種のオキシアニオン化合物(例えば、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)あるいは両方)を形成する。この金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン(M(L)オキシアニオン)または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオン(NM(L)オキシアニオン)を含む、得られる電解質溶液226の一部分を移送して、電気化学セル200のアノードチャンバー202に戻し、そこに既に存在するアノード電解質206と混合することができる。アノードチャンバー202から熱反応器220へのまたは第2の電気化学セルへの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの移送をもたらす溶液218は、固体形態であっても液体溶液形態であってもよい。一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンは、アノード電解質206に、部分的にまたは完全に不溶性とすることができる。そのような実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンは、アノード電解質206から分離されても分離されていなくてもよい。液-固分離のための技法、例えば濾過を含むがこれらに限定されない様々な公知の技法を、分離のために使用することができる。
【0145】
上述のように、アノード204での金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化は、気体(例えば、酸素または塩素ガス)を発生させないようにまたは最少量の酸素ガスを発生してセル200内の効率損失を低減させまたは最小限に抑えるように、十分低い電圧でなされる。そのような実施例では、セル200は、酸素に対して約25%より低いファラデー効率で動作することができる(即ち、約75%程度に低い電流が金属または非金属オキシアニオン酸化のためであってもよく、最大で僅かに約25%、例えば最大で僅かに約15%または10%または5%または1%などが酸素発生のためであってもよい)。
【0146】
一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンをアノード204で酸化する電気化学セル200を、酸素ガスをアノード204で、セルにおいて加えられる電流および電圧に応じて同時に、または逐次、または単独で形成するような手法で動作させることもできる。そのような実施例では、セル200は、酸素に対して約95%よりも低いファラデー効率で動作し得る(即ち、最大約95%が酸素発生のためであってもよい)。
【0147】
典型的には、電気化学システムは、各電極での二次反応を防止して、望ましくない生成物の作製における効率損失を低減させまたは最小限に抑えるように設計される。出願人は、意外にも予期せずに、可変電力の利用可能性/価格と協調するようアノード204で種々の生成物を形成するのに、およびより低いコストでカソード210で水素ガス216を形成するのに、可変電力で実行する柔軟性を持つ電気化学システムを有することが経済的に有利であることを見出した。例えば、アノード204での金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化は、最小限に抑えられた酸素ガスがアノード204で形成されまたは全く形成されない状態で、低い電流および電圧で支配的であってもよく、一方、水酸化物イオンから酸素ガスへの酸化は、金属または非金属オキシアニオン酸化が最小限に抑えられたまたは全く生じない状態で、高電流および高電圧で支配的であってもよい。セル200は、ピーク時の電力料金(例えば昼間など)または負荷制限中、低電流で動作して、金属または非金属オキシアニオンをアノード204で酸化することができ、同じセル200は、低い電気料金で高電流または電力増加中に動作して(例えば、夜間、または電力がソーラープラントから来る昼間など)、酸素ガスをアノード204で形成することができる。
【0148】
一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン酸化の選択的酸化は、酸素発生よりも低い電圧で、アノード204で生じ、カソード216での水素生成の効率を増大させる(即ち、より低い全電圧)。出願人は意外にも、一部の実施例で、1種または複数種のオキシアニオン化合物の酸化が、物質移動制限に起因して、より高い電流で持続されないかもしれず、したがって反応性種はアノード204で十分速く補充できなくなることを見出した。システムの電圧は、所望の電流を持続するために増大させてもよく、エネルギー的に2番目に低い反応物、例えば水酸化物イオンを酸素ガスに酸化してもよい。したがって一部の実施例では、金属または非金属オキシアニオンを酸化することができ、酸素ガス228は、電流および電圧を制御することによって、アノード204から同時に(アノード204での酸素発生が破線矢印で示される図7に例示されるように)、または逐次、または単独で生じることができる。方法およびシステムのこの態様は、水素ガス216を全体としてより低い電圧で発生させ、条件が好ましいときに(低い電気料金など)金属または非金属オキシアニオンを酸化しかつ酸素ガス228を発生させることによって、水素生成を増大させる能力を有するという利点を提供する。
【0149】
したがって、一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノードと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質とを電気化学セル内に提供すること;
アノードで、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;ならびに
水酸化物イオンをアノードで酸化して酸素ガスを形成すること;およびカソードと、カソード電解質とを電気化学セル内に提供し、水素ガスをカソードで形成すること
を含む。
【0150】
一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンあるいは両方を含む、アノード電解質の少なくとも一部分は、電気化学セルの外側に移送され、熱的に(例えば、熱反応器220内で)および/または電気化学的に(例えば、第2の電気化学セル内で)還元されて、酸素ガスを形成し、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンをそのより低い酸化状態に還元する。酸素ガスを形成する熱反応と電気化学反応とは共に、本明細書に記述されている(および図に例示されるように)。一部の実施例では、カソードは水酸化物イオンを形成し、水酸化物イオンはカソード電解質からアノード電解質に移送されまたは移動する。
【0151】
一態様では、水素ガスを発生させるシステムは:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように、および/または水酸化物イオンを酸素ガスに酸化するように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む。
【0152】
一部の実施例では、システムはさらに、電気化学セルに動作可能に接続された熱反応器を含み、この熱反応器は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンあるいは両方を含むアノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつアノード電解質のその部分を熱反応器内での熱反応に供して酸素ガスを形成するように、かつ金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンあるいは両方を還元するように構成される。一部の実施例では、電気化学セルはさらに、本明細書に記述されるように第2の電気化学セルに接続される。
【0153】
一部の実施例では、金属オキシアニオンの酸化または非金属オキシアニオンの酸化は、低電流密度でなされ、水酸化物イオンから酸素ガスへの酸化は、より高い電流密度でなされる。
【0154】
一態様では、水素ガスを発生させる方法は:
アノードと、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質とを電気化学セル内に提供すること;
アノードで、約1mA/cmから約1000mA/cm、例えば約1mA/cmから約600mA/cm、約1mA/cmから約500mA/cmなど、例えば約1mA/cmから約300mA/cmの電流密度で、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること;
アノードで、約300mA/cmから約3000mA/cm、例えば約300mA/cmから約2000mA/cm、約300mA/cmから約1000mA/cmなど、例えば約300mA/cmから約500mA/cmの電流密度で水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成すること;ならびに
カソードとカソード電解質とを電気化学セル内に提供し、水素ガスをカソードで形成すること
を含む。
【0155】
一態様では:
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、アノードは:
約1mA/cmから約1000mA/cm、例えば約1mA/cmから約600mA/cm、約1mA/cmから約500mA/cmなど、例えば約1~300mA/cmの電流密度で、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンを酸化して、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、もしくは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを酸化して、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように;および/または
約300mA/cmから約3000mA/cm、例えば約300mA/cmから約2000mA/cm、約300mA/cmから約1000mA/cmなど、例えば約300mA/cmから約500mA/cmの電流密度で、水酸化物イオンを酸素ガスに酸化するように構成されている、アノードおよびアノード電解質と;
カソード、および水を含むカソード電解質であって、カソードは、水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む、水素ガスを発生させるシステムが提供される。
【0156】
一部の実施例では、酸素ガスを形成するためのアノードでの水酸化物イオンの酸化は、金属または非金属オキシアニオンの酸化に対して同時にまたは逐次または単独で生じる。
【0157】
一部の実施例では、セルは、金属または非金属オキシアニオンの酸化中、酸素に対して約25%よりも下のファラデー効率、例えば約0.1%から約25%のファラデー効率で動作し、セルは、酸素ガスを形成するための水酸化物イオンの酸化中、酸素に対して約95%よりも下のファラデー効率、例えば約1%から約95%、または酸素に対して約25%から約95%の間のファラデー効率で動作する。
【0158】
一部の実施例では、セルは、金属または非金属オキシアニオンの酸化中、低電流または高い電気料金でまたは昼間に動作し、セルは、酸素ガスを形成するための水酸化物イオンの酸化中、高電流または低い電気料金でまたは夜間に動作する。
【0159】
一部の実施例では、アノード電解質および/またはカソード電解質はさらに、水を含む。
【0160】
一部の実施例では、アノード電解質および/またはカソード電解質がさらに、塩水を含む。一部の実施例では、アノード電解質および/またはカソード電解質はさらに、アノード電解質が金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含むときに塩水を含む。一部の実施例では、アノード電解質および/またはカソード電解質はさらに、アノード電解質が非金属オキシアニオンを含むときに塩水を含む。本明細書で使用される「塩」または「塩水」という用語は、ナトリウムハロゲン化物、カリウムハロゲン化物、リチウムハロゲン化物、セシウムハロゲン化物などを含むがこれらに限定されないアルカリ金属ハロゲン化物;カルシウムハロゲン化物、ストロンチウムハロゲン化物、マグネシウムハロゲン化物、バリウムハロゲン化物などを含むがこれらに限定されないアルカリ土類金属ハロゲン化物、アンモニウムハロゲン化物;またはランタニドハロゲン化物を含むがこれらに限定されない、いくつかの種々のタイプの塩を指す、その従来の意味を含む。本明細書で使用される「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲンまたはハロゲン化物原子、例えばフッ化物、臭化物、塩化物、またはヨウ化物に関する。一部の実施例では、塩は、アルカリ金属ハロゲン化物および/またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を含む。
【0161】
一部の実施例では、前述の塩が熱反応に存在し得、酸素ガスの発生を容易にし得る。アノード電解質溶液中のこの塩は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン溶液と共に熱反応から電気化学セルのアノード電解質へと再循環されてもよい。したがって塩は、アノード電解質と熱反応との両方で存在していてもよい。
【0162】
本明細書で使用される「ランタニドハロゲン化物」という用語(「塩」として使用される)には、ランタニド系列からの元素のハロゲン化物が含まれる。ランタニド系列からの元素またはランタニドは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。スカンジウムおよびイットリウムなどの化学的に類似する元素は、しばしばまとめて希土類元素として公知であり、本明細書で使用される「ランタニドハロゲン化物」という用語にも含まれる。一部の実施例では、ランタニドハロゲン化物は、セリウムハロゲン化物、例えば塩化セリウムまたは臭化セリウムまたはヨウ化セリウムである。本明細書で使用されるランタニドハロゲン化物は、1種のランタニドハロゲン化物であってもよく、または2種もしくはそれよりも多くのランタニドハロゲン化物の組合せであってもよく、1種または複数種のランタニドハロゲン化物中のランタニドは、上述の通りである。ランタニドハロゲン化物は、無水形態または水和物の形とすることができる。
【0163】
塩は、電気化学セル内のアノード電解質および/またはカソード電解質あるいは熱反応器内の電解質溶液の、約1重量%から約30重量%であってよく、例えば電解質の約1重量%から約20重量%、電解質の約0.1重量%から約5重量%など、例えば電解質の約1重量%から約5重量%、電解質の約2重量%から約5重量%など、例えば電解質の約3重量%から約5重量%、電解質の約5重量%から約10重量%など、例えば電解質の約5重量%から約8重量%、電解質の約2重量%から約6重量%など、例えば電解質の約1重量%から約3重量%である。
【0164】
一部の実施例では、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含むアノード電解質はさらに、塩(例えば、塩化ナトリウム、または塩化カリウム、または塩化リチウム、または塩化カルシウム、または臭化ナトリウム、または臭化カリウム、または臭化リチウム、または臭化カルシウム、またはランタニドハロゲン化物、またはそれぞれのヨウ化物塩、またはこれらの組合せ)を含み、約1重量%から約30重量%の塩、例えば約1重量%から約25重量%の塩、約1重量%から約20重量%などの塩、例えば約1重量%から約10重量%の塩、約1重量%から約5重量%などの塩、例えば約5重量%から約30重量%の塩、約5重量%から約20重量%などの塩、例えば約5重量%から約10重量%の塩、約8重量%から約30重量%などの塩、例えば約8重量%から約25重量%の塩、約8重量%から約20重量%などの塩、例えば約8重量%から約15重量%の塩、約10重量%から約30重量%などの塩、例えば約10重量%から約25重量%の塩、約10重量%から約20重量%などの塩、例えば約10重量%から約15重量%の塩、約15重量%から約30重量%などの塩、例えば約15重量%から約25重量%の塩、約15重量%から約20重量%などの塩、例えば約20重量%から約30重量%の塩、約20重量%から約25重量%などの塩を含む。水中の塩は、本明細書に記述される塩水を形成し得る。
【0165】
本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施例では、アノード電解質および/またはカソード電解質中の水は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの、必要に応じて塩の量に応じて、約10重量%から約80重量%、例えば約20重量%から約80重量%、約40重量%から約80重量%など、例えば約40重量%から約70重量%、約40重量%から約60重量%など、例えば約40重量%から約50重量%、約50重量%から約80重量%など、例えば約50重量%から約70重量%、約50重量%から約60重量%など、例えば約60重量%から約80重量%、約60重量%から約70重量%など、例えば約70重量%から約80重量%、約60重量%から約85重量%など、例えば約60重量%から約75重量%、約60重量%から約65重量%など、例えば約70重量%から約75重量%、約75重量%から約80重量%などであってよい。
【0166】
一部の実施例では、アノード電解質はさらに、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の例は、本明細書で提供されている。一部の実施例では、アノード電解質は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む。一部の実施例では、アノード電解質は、アルカリ金属水酸化物、例えばKOHもしくはNaOH、またはアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)もしくはMg(OH)を、約1Mから約6M、例えば約1Mから約5M、約1Mから約4Mなど、例えば約1Mから約3M、約1Mから約2Mなど、例えば約2Mから約7M、約3Mから約6Mなど、例えば約4Mから約6Mの量で含む。
【0167】
本明細書で使用される「金属イオン」または「金属」または「金属オキシアニオンの金属イオン」という用語は、より低い酸化状態からより高い酸化状態に変換することが可能な任意の金属イオンを含む。対応する金属オキシアニオンの金属イオンの例には、限定するものではないがマンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せが含まれる。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンには、限定するものではないが鉄、銅、スズ、クロム、マンガン、セレン、タンタル、またはこれらの組合せが含まれる。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンが銅である。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンがスズである。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンが鉄である。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンがクロムである。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンがマンガンである。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンがセレンである。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンがタンタルである。一部の実施例では、対応する金属オキシアニオン中の金属イオンが白金である。
【0168】
本明細書で使用される「酸化状態」という用語は、金属オキシアニオン中の金属イオンに言及するとき、金属オキシアニオン中の金属イオンの酸化度を含む。一部の実施例では、酸化状態は、金属イオン上の正味の電荷である。本明細書で使用される「より低い酸化状態」という用語は、「より高い酸化状態」と比較したときの相対的酸化状態を指し、即ちより高い酸化状態にあるときの同じ金属イオンの酸化数と比較したときに、より低い酸化数を持つ。「より低い酸化状態」は、金属イオンのより低い酸化状態を示す、金属(L)またはM(L)と表され得る。例えば、金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+、5+、または6+であってよい。同様に、本明細書で使用される「より高い酸化状態」という用語は、「より低い酸化状態」と比較したときの相対的酸化状態を指し、即ちより低い酸化状態にあるときの同じ金属イオンの酸化数と比較したときに、より高い酸化数を持つ。「より高い酸化状態」は、金属イオンのより高い酸化状態を示す、金属またはM(H)と表され得る。例えば、金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+、6+、7+であってよい。
【0169】
一部の実施例では、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 2-、FeO 2-、RuO 2-、OsO 2-、HSnO 、SeO 2-、CuO、CrO 3-、およびTeO 2-からなる群から選択される。
【0170】
一部の実施例では、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンは、MnO 、HFeO 、RuO 、OsO 2-、SnO 2-、SeO 2-、CuO 2-、CrO 2-、およびTeO42-からなる群から選択される。
【0171】
一部の実施例では、
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはMnO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはMnO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはFeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはHFeO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはRuO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはRuO であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはOsO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはOsO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはHSnO であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはSnO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはSeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはSeO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはCuOであり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはCuO 2-であり;
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはCrO 3-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはCrO 2-であり;または
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンはTeO 2-であり、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンはTeO 2-である。
【0172】
水酸化物イオンの存在下、アノードでの金属イオンの酸化の2つの例示的な実施例を、以下に示す:
CuO+6OH→2CuO 2-+3HO+2e
CrO 3-+2OH→CrO 2-+HO+3e
【0173】
本明細書で使用される「非金属イオン」または「非金属」または「非金属オキシアニオンの非金属イオン」という用語は、より低い酸化状態からより高い酸化状態に変換可能な任意の非金属イオンを含む。対応する非金属オキシアニオン中の非金属イオンの例には、限定するものではないがハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンが含まれる。ハロゲンは、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨード原子から選択される。
【0174】
本明細書で使用される「酸化状態」という用語は、非金属オキシアニオン中の非金属イオンを指すとき、非金属オキシアニオン中の非金属イオンの酸化度を含む。一部の実施例では、非金属イオンの酸化状態は、各酸素がマイナス2であると仮定して計算され得、非金属中心は全電荷を得るための残りである。本明細書で使用される「より低い酸化状態」という用語は、「より高い酸化状態」と比較したときの相対的酸化状態を指し、即ちより高い酸化状態にあるときの同じ非金属イオンの酸化数と比較したときの、より低い酸化数を持つものである。「より低い酸化状態」は、非金属イオンのより低い酸化状態を示す、非金属(L)またはNM(L)として表され得る。例えば、非金属イオンのより低い酸化状態は、1+、2+、3+、4+、5+、または6+であってよい。本明細書で使用される、「より高い酸化状態」という用語は、「より低い酸化状態」と比較したときの相対的酸化状態を指し、即ち、より低い酸化状態にあるときの同じ非金属イオンの酸化数と比較したときに、より高い酸化数を持つ。「より高い酸化状態」は、非金属イオンのより高い酸化状態を示す、非金属またはNM(H)と表され得る。例えば、非金属イオンのより高い酸化状態は、2+、3+、4+、5+、6+、7+であってよい。
【0175】
一部の実施例では、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO、ClO 、ClO 、BrO、BrO 、BrO 、IO、IO 、およびIO を含む。
【0176】
一部の実施例では、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンは、NO 、PO 3-、SO 2-、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO を含む。
【0177】
一部の実施例では、
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはNO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはNO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはPO 3-であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはPO 3-であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはSO 2-であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはSO 2-であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはClO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはBrO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIOであり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり;
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり;または
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO であり、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンはIO である。
【0178】
非金属オキシアニオンの酸化状態およびそれらのより高い酸化状態への酸化の、一部の例示的な実施例は、以下の表1に示される通りである:
【表1】
【0179】
非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンのいずれかは、その対応する非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンに酸化することができることを理解されたい。例えば、ClOはClO に酸化することができ、またはClOはClO に酸化することができ、またはClOはClO に酸化することができ、またはClO はClO に酸化することができ、またはClO はClO に酸化することができ、またはClO はClO に酸化することができ、またはこれらの任意の組合せである。一部の実施例では、アノード電解質中に、前述のクロロオキシアニオン酸化種の1種または複数種の組合せが存在してもよい。
【0180】
同様に、BrOはBrO に酸化することができ、またはBrOはBrO に酸化することができ、またはBrOはBrO に酸化することができ、またはBrO はBrO に酸化することができ、またはBrO はBrO に酸化することができ、またはBrO はBrO に酸化することができ、またはこれらの任意の組合せである。一部の実施例では、アノード電解質中に、前述のブロモオキシアニオン酸化種の1種または複数種の組合せが存在してもよい。
【0181】
同様に、IOはIO に酸化することができ、またはIOはIO に酸化することができ、またはIOはIO に酸化することができ、またはIO はIO に酸化することができ、またはIO はIO に酸化することができ、またはIO はIO に酸化することができ、またはこれらの任意の組合せである。一部の実施例では、アノード電解質中に、前述のヨードオキシアニオン酸化種の1種または複数種の組合せが存在してもよい。
【0182】
一部の実施例では、本明細書に記述される金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの金属イオンまたは非金属イオンは、アノード電解質中での金属オキシアニオンもしくは非金属オキシアニオンの溶解度、および/またはより低い酸化状態からより高い酸化状態への金属もしくは非金属酸化に望まれるセル電圧に基づいて、選択され得る。
【0183】
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオン、および金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンは共に、酸化状態に応じてアノードチャンバーに進入するアノード電解質中および/または出て行くアノード電解質中に、存在してもよいことを理解されたい。同様に、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンおよび非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンは共に、酸化に応じてアノードチャンバーに進入するアノード電解質中および/または出て行くアノード電解質中に、存在していてもよいことを理解されたい。
【0184】
アノードでの、より低い酸化状態からより高い酸化状態への金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの酸化により、より低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの量は、アノードチャンバーに進入するアノード電解質中とアノードチャンバーから出て行くアノード電解質中とで異なる。
【0185】
一部の実施例では、アノードチャンバーに進入する、金属イオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度は、約0.01Mよりも高く;例えば約0.05Mよりも高く、約0.01Mから約2Mなど、例えば約0.01Mから約1.8M、約0.01Mから約1.5Mなど、例えば約0.01Mから約1.2M;または0.01Mから約1Mの間、例えば約0.01Mから約0.8M、約0.01Mから約0.6Mなど、例えば約0.01Mから約0.5M;または0.01Mから約0.4Mの間、例えば約0.01Mから約0.1M、約0.01Mから約0.05Mなど、例えば約0.05Mから約2M、約0.05Mから約1.8Mなど、例えば約0.05Mから約1.5M、約0.05Mから約1.2Mなど、例えば約0.05Mから約1M、約0.05Mから約0.8Mなど、例えば約0.05Mから約0.6M、約0.05Mから約0.5Mなど、例えば約0.05Mから約0.4M、約0.05Mから約0.1Mなど、例えば約0.1Mから約2M、約0.1Mから約1.8Mなど、例えば約0.1Mから約1.5M、約0.1Mから約1.2Mなど、例えば約0.1Mから約1M、約0.1Mから約0.8Mなど、例えば約0.1Mから約0.6M、例えば0.1Mから約0.5M、約0.1Mから約0.4Mなど、例えば約0.5Mから約2M、約0.5Mから約1.8Mなど、例えば約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1.2Mなど、例えば約0.5Mから約1M、約0.5Mから約0.8Mなど、例えば約0.5Mから約0.6M、約1Mから約2Mなど、例えば約1Mから約1.8M、約1Mから約1.5Mなど、例えば約1Mから約1.2M、約1.5Mから約2Mなどである。
【0186】
本明細書で提供される方法およびシステムの一部の実施例では、アノードチャンバーから出て行く、金属イオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度は、約0.1Mから約2M、例えば約0.1Mから約1.8M、約0.1Mから約1.5Mなど、例えば約0.1Mから約1.2M、約0.1Mから約1Mなど、例えば約0.1Mから約0.8M、約0.1Mから約0.6Mなど、例えば約0.1Mから約0.5M、約0.1Mから約0.4Mなど、例えば約0.5Mから約2M、約0.5Mから約1.8Mなど、例えば約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1.2Mなど、例えば約0.5Mから約1M、約0.5Mから約0.8Mなど、例えば約0.5Mから約0.6M、約1Mから約2Mなど、例えば約1Mから約1.8M、約1Mから約1.5Mなど、例えば約1Mから約1.2M、約1.5Mから約2Mなどである。
【0187】
金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンおよび金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンに関する前述の濃度の任意の組合せは、高効率が実現されるように組み合わせることができることを、理解されたい。同様に、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンおよび非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンに関する前述の濃度の任意の組合せは、高効率が実現されるように組み合わせることができることを、理解されたい。
【0188】
例えば、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンの濃度は、約0.01Mから約2M、例えば約0.01Mから約1.5M、約0.01Mから約1Mなど、例えば約0.1Mから約1Mであり;金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンの濃度は、約0.2Mから約2M、例えば約0.3Mから約2M、約0.5Mから約1Mなど、例えば約0.3Mから約1Mである。
【0189】
例えば、非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンの濃度は、約0.01Mから約2M、例えば約0.01Mから約1.5M、約0.01Mから約1Mなど、例えば約0.1Mから約1Mであり;非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンの濃度は、約0.2Mから約2M、例えば約0.3Mから約2M、約0.5Mから約1Mなど、例えば約0.3Mから約1Mである。
【0190】
一部の実施例では、金属イオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度、および金属イオンまたは非金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度は、それぞれ個々にまたはまとめて、電気化学セル/反応、および熱反応器/反応のそれぞれの性能に影響を及ぼし得る。
【0191】
一部の実施例では(組合せに応じて)、電気化学反応に進入する金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンの濃度は、約0.1Mから約-1Mであり;熱反応に進入するまたは第2の電気化学反応に進入する(第1の電気化学反応から出て行く)金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンの濃度は、約0.01Mから約0.9Mである。
【0192】
実施例では(組合せに応じて)、電気化学反応に進入する非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンの濃度は、約0.1Mから約1Mであり;熱反応に進入するまたは第2の電気化学反応に進入する(電気化学反応から出て行く)非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンの濃度は、約0.01Mから約0.9Mである。
【0193】
一部の実施例では、電気化学セル/反応におけるアノード電解質の温度は、約50℃から約100℃、例えば約60℃から約100℃、約70℃から約100℃などである。
【0194】
本明細書に記述される方法およびシステムでの電気化学セルは、膜電解槽であってもよい。電気化学セルは、単一セルであってもよく、または直列にもしくは並列に接続されたセルの積層体であってもよい。電気化学セルは、直列または並列に接続された5または6または50または100個またはそれよりも多くの電解槽の積層体であってもよい。各セルは、アノード、カソード、およびイオン交換膜を含む。
【0195】
一部の実施例では、本明細書で提供される電気化学セルは、単極型電解槽である。単極型電解槽において、電極は並列に接続されてもよく、この場合、全てのアノードおよび全てのカソードが並列に接続されている。そのような単極型電解槽では、動作は高アンペア数および低電圧で生じる。一部の実施例では、本明細書に記述される電気化学セルは、双極型電解槽である。双極型電解槽において、電極は、直列に接続されてもよく、この場合、全てのアノードおよび全てのカソードは直列に接続される。そのような双極型電解槽では、動作は、低アンペア数および高電圧で生じる。一部の実施例では、本明細書に記述される電気化学セルは、単極型および双極型電解槽の組合せであり、ハイブリッド電解槽と呼んでもよい。
【0196】
双極型電解槽の一部の実施例では、セルは、直列に積層されて全体の電解槽を構成し、2つの手法で電気的に接続される。双極型電解槽では、双極型プレートと呼ばれる単一プレートが、カソードおよびアノードの両方に関するベースプレートとして働くことができる。電解質溶液は、共通のマニホールドおよびコレクターを通して液圧によりセル積層体の内部に接続することができる。積層体は、外部から圧縮されて、全てのフレームおよびプレートを互いに対して封止してもよく、これらを典型的にはフィルタープレス設計と呼ぶ。一部の実施例では、双極型電解槽は、個々に封止された、背中合わせの接触を通して電気的に接続された、直列のセルとして設計されてもよく、典型的にはシングルエレメントデザインとして公知である。シングルエレメントデザインは並列に接続されてもよく、その場合、単極型電解槽の可能性がある。
【0197】
一部の実施例では、セルサイズは、アクティブエリア寸法によって示され得る。一部の実施例では、本明細書で使用される電気化学セルのアクティブエリアは、約0.5メートルから約1.5メートルに及ぶことができる高さであり、かつ約0.4メートルから約3メートルに及ぶことができる幅である。一部の実施例では、個々のチャンバーの厚さは、約0.5mmから約50mmに及ぶことができる。
【0198】
本明細書で提供される方法およびシステムで使用される電気化学セルは、耐腐食性材料から作製することができる。そのような耐腐食性材料には、限定するものではないがポリフッ化ビニリデン、バイトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素化エチレンプロピレン、繊維強化型プラスチック、ヘイラー、ウルテム(PEI)、パーフルオロアルコキシ、テフゼル、tyvar、derakane 441-400樹脂でコーティングされた繊維強化型プラスチック、黒鉛、エイコット、タンタル、ハステロイC2000、チタンGr.7、チタンGr.2、またはこれらの組合せを含めることができる。一部の実施例では、これらの材料は、電気化学セルおよび/またはその構成要素であってタンク材料、配管、熱交換器、ポンプ、反応器、セルハウジング、セルフレーム、電極、計器類、弁、およびプラント材料のその他全ての残りのものを含むがこれらに限定されないものを作製するために使用することができる。一部の実施例では、電気化学セルおよびその構成要素を作製するために使用される材料には、限定するものではないがチタンGr.2が含まれる。
【0199】
一部の実施例では、アノードは、非晶質炭素、例えばカーボンブラック、SFC(商標)炭素という商標の下で入手可能なフッ素化炭素などであるがこれらに限定されない、腐食安定な導電性ベース支持体を含有していてもよい。導電性ベース材料のその他の例には、限定するものではないが準化学量論的酸化チタン、例えばMagneli相準化学量論的酸化チタンであって式TiO(式中、xは約1.67から約1.9に及ぶ)を有するものが含まれる。チタン亜酸化物の一部の例には、限定するものではないが酸化チタンTiが含まれる。導電性ベース材料は、限定するものではないが例えばMTiなどのMTiなどのチタン酸金属を含むこともできる。一部のその他の例は、限定するものではないが鉄(合金、例えば鋼の形で)、チタン、ニッケル、およびそれらの合金を含む。一部の実施例では、炭素系材料は、機械的支持体を提供し、または導電率を高めるブレンド材料として提供するが、腐食を防止する触媒担体として使用されないかもしれない。
【0200】
一部の実施例では、アノードは電気触媒でコーティングされない。一部の実施例では、アノードは、電気触媒でコーティングされたまたはコーティングされていないチタンなどの導電性ベース金属で作製される。導電性ベース材料の一部の例には、限定するものではないが準化学量論的酸化チタン、例えばMagneli相準化学量論的酸化チタンであって式TiO(式中、xは約1.67から約1.9に及ぶ)を有するものが含まれる。チタン亜酸化物の一部の例には、限定するものではないが酸化チタンTiが含まれる。導電性ベース材料は、限定するものではないがチタン酸金属、例えばMTiなどのMTiも含む。一部のその他の例には、限定するものではないが鉄(合金、例えば鋼の形をとる)、チタン、ニッケル、およびそれらの合金が含まれる。
【0201】
電気触媒の例には、限定するものではないが、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、またはそれらの組合せ、例えば白金-ロジウム、白金-ルテニウム、PtIr混合金属酸化物でコーティングされたチタンメッシュ、または亜鉛めっきされた白金でコーティングされたチタンなど、白金族金属の高分散金属または合金;電気触媒金属酸化物、例えば限定するものではないがIrO;金、タンタル、炭素、黒鉛、有機金属大環状化合物、および当技術分野で周知のその他の電気触媒が含まれる。電極は、当技術分野で周知のプロセスを使用して、電気触媒でコーティングすることができる。
【0202】
一部の実施例では、本明細書に記述される電極は、多孔質均質複合構造、ならびに不均質な層状化タイプの複合構造であって各層が個別の物理的および組成的構成を有し得るもの、例えばフラッディングおよび三相界面の損失を防止する多孔度および導電性ベースを含むことができ、電極性能がもたらされる。
【0203】
一部の実施例では、電極は、電極のアノライトもしくはカソライト溶液側にまたはそれらに隣接する多孔質ポリマー層を有するアノードおよびカソードを含み、これらの多孔質ポリマー層は浸透および電極汚損を減少させるのを支援し得るものである。安定なポリマー樹脂またはフィルムは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホンなどの非イオン性ポリマー、またはポリスチレンスルホン酸、スチレンおよびビニルベンゼンのスルホン化コポリマー、カルボキシル化ポリマー誘導体、部分的にもしくは全体的にフッ素化された炭化水素鎖を有するスルホン化もしくはカルボキシル化ポリマー、およびポリビニルピリジンのようなアミン化ポリマーから形成されたもののようなイオンタイプの荷電ポリマーから形成された樹脂を含む、アノライトに隣接する複合電極層に含まれてもよい。安定なミクロポーラスポリマーフィルムは、電解質浸透を阻止するよう乾燥側に含まれてもよい。一部の実施例では、気体拡散カソードは、金および/または銀などの貴金属、貴金属合金、およびニッケルなどの高表面積コーティングでコーティングされた、当技術分野で公知のようなカソードを含む。
【0204】
一部の実施例では、本明細書に開示される電気化学セル内のカチオン交換膜は、従来のものとすることができ、例えば日本、東京の旭化成から;またはMembrane International of Glen Rock、NJ、またはDuPont、米国から入手可能である。CEMの例には、限定するものではないがN2030WX(Dupont)、F8020/F8080(Flemion)、およびF6801(Aciplex)が含まれる。本明細書の方法およびシステムに望ましいCEMは、最小限に抑えられた抵抗損失、90%よりも大きい選択率、および高い安定性を有し得る。本明細書の方法およびシステムのAEMは、濃厚な金属または非金属オキシアニオン含有アノライトに曝露することができる。例えば、完全四級化アミン含有ポリマーがAEMとして使用されてもよい。
【0205】
カチオン交換膜の例には、限定するものではないが、アニオン基、例えばスルホン酸基および/またはカルボン酸基を含有する過フッ素化ポリマーを含むカチオン性膜が含まれる。しかしながら一部の実施例では、電解質間での特定のカチオンまたはアニオン種の移動を制限または許容する必要性に応じて、より制限的でありしたがって1種のカチオン種の移動を許容すると共に別のカチオン種の移動を制限するカチオン交換膜が、使用されてもよいことが、理解され得る。同様に、一部の実施例では、電解質間での特定のアニオン種の移動を制限または許容する必要性に応じて、より制限的でありしたがって1種のアニオン種の移動を許容すると共に別のアニオン種の移動を制限するアニオン交換膜が、使用されてもよい。そのような制限的なカチオン交換膜またはアニオン交換膜は、市販されており、当業者により選択されることができる。
【0206】
一部の実施例では、膜は、酸性および/またはアルカリ性電解溶液中で必要に応じて機能できるように選択され得る。膜のその他の所望の特徴は、高いイオン選択率、低いイオン抵抗、高い破裂強度、および室温から150℃またはそれよりも高い温度範囲での電解溶液中の高い安定性を含む。一部の実施例では、イオン交換膜は、アノライトからカソライトへの金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの輸送を低減させまたは最小限に抑えることが望ましい。
【0207】
一部の実施例では、膜は、約0℃から約150℃℃、例えば約0℃から約100℃、約0℃から約90℃など、例えば0℃から約80℃、約0℃から約70℃など、例えば約0℃から約60℃、約0℃から約50℃など、例えば約0℃から約40℃、約0℃から約30℃などの温度範囲で安定であり、またはより高い温度が使用されてもよい。他の実施例では、1つのタイプのカチオンの移動を許容するが別のカチオンの移動を許容せず;または1つのタイプのアニオンの移動を許容して別のアニオンの移動を許容せず、1種または複数種の所望の生成物を電解質中で実現する、イオン特異的イオン交換膜を利用することが有用であり得る。
【0208】
膜のオーム抵抗は、アノードとカソードとの間での電圧降下に影響を及ぼし得、例えば膜のオーム抵抗が増大するにつれ、アノードとカソードとの間の電圧は増大する可能性があり、その逆も同様である。使用することができる膜には、限定するものではないが、比較的低いオーム抵抗および比較的高いイオン易動度を持つ膜、および温度と共に増大する比較的高い水和特性を持つ、したがってオーム抵抗が低下する、膜が含まれる。当技術分野で公知のより低いオーム抵抗を持つ膜を選択することにより、指定された温度でのアノードとカソードとの間の電圧降下を低下させることができる。
【0209】
一部の実施例では、アノード電解質は、約0.3Mから約5M、例えば約0.3Mから約4.5M、約0.3Mから約4Mなど、例えば約0.3Mから約3.5M、約0.3Mから約3Mなど、例えば約0.3Mから約2.5M、約0.3Mから約2Mなど、例えば約0.3Mから約1.5M、約0.3Mから約1Mなど、例えば約0.3Mから約0.5M、約0.5Mから約5Mなど、例えば約0.5Mから約4.5M、約0.5Mから約4Mなど、例えば約0.5Mから約3.5M、約0.5Mから約3Mなど、例えば約0.5Mから約2.5M、約0.5Mから約2Mなど、例えば約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1Mなど、例えば約1Mから約5M、約1Mから約4.5Mなど、例えば約1Mから約4M、約1Mから約3.5Mなど、例えば約1Mから約3M、約1Mから約2.5Mなど、例えば約1Mから約2M、約1Mから約1.5Mなど、例えば約2Mから約5M、約2Mから約4.5Mなど、例えば約2Mから約4M、約2Mから約3.5Mなど、例えば約2Mから約3M、約2Mから約2.5Mなど、例えば約3Mから約5M、約3Mから約4.5Mなど、例えば約3Mから約4M、約3Mから約3.5Mなど、例えば約4Mから約5Mの全金属オキシアニオン溶液(金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンおよび金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンの両方を含む)を含む。
【0210】
一部の実施例では、アノード電解質は、約0.3Mから約5Mの間、例えば約0.3Mから約4.5M、約0.3Mから約4Mなど、例えば約0.3Mから約3.5M、約0.3Mから約3Mなど、例えば約0.3Mから約2.5M、約0.3Mから約2Mなど、例えば約0.3Mから約1.5M、約0.3Mから約1Mなど、例えば約0.3Mから約0.5M、約0.5Mから約5Mなど、例えば約0.5Mから約4.5M、約0.5Mから約4Mなど、例えば約0.5Mから約3.5M、約0.5Mから約3Mなど、例えば約0.5Mから約2.5M、約0.5Mから約2Mなど、例えば約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1Mなど、例えば約1Mから約5M、約1Mから約4.5Mなど、約1Mから約4Mなど、例えば約1Mから約3.5M、約1Mから約3Mなど、例えば約1Mから約2.5M、約1Mから約2Mなど、例えば約1Mから約1.5M、約2Mから約5Mなど、例えば約2Mから約4.5M、約2Mから約4Mなど、例えば約2Mから約3.5M、約2Mから約3Mなど、例えば約2Mから約2.5M、約3Mから約5Mなど、例えば約3Mから約4.5M、約3Mから約4Mなど、例えば約3Mから約3.5M、約4Mから約5Mなどの全非金属オキシアニオン溶液(非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンおよび非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンの両方を含む)を含む。
【0211】
カソード電解質で望まれるアルカリ度に応じて、カソード電解質のpHは調節されてよく、一部の実施例では、約7から約15、例えば約7から約14またはそれよりも大きい、約7から約13など、例えば約7から約12、約7から約11など、例えば約10から約14またはそれよりも大きい、約10から約13など、例えば約10から約12、約10から約11などに維持され得る。一部の実施例では、カソード電解質のpHは、約7から約14またはそれよりも高い任意の値、12未満のpH、または7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、および/またはそれよりも高いpHに調節することができる。
【0212】
アノードとカソードとの間の電圧は、アノード電解質とカソード電解質との間のpHの差を含むいくつかの因子に依存し得る(ネルンストの式により決定できるように)。一部の実施例では、アノード電解質のpHは、アノードとカソードとの間の所望の動作電圧に応じて、約9から約15の値に調節することができる。
【0213】
本明細書で使用される「電圧」という用語は、電気化学セルのアノードとカソードとの間で所望の反応を推進する、電気化学セルに印加されるまたは引き出される電圧またはバイアスを含む。一部の実施例では、所望の反応は、水素ガスがカソードで形成されかつ金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンがアノードで酸化されるような、アノードとカソードとの間の電子移動であり得る。電圧は、電気化学セルのアノードとカソードとの間に電流を印加するための任意の手段によって、電気化学セルに印加されてよい。そのような手段は、当技術分野では周知であり、限定するものではないが電源、燃料電池、太陽光によって電力供給されるデバイス、風によって電力供給されるデバイス、およびこれらの組合せなどのデバイスを含む。電流を提供する電源のタイプは、当業者に公知の任意の電源とすることができる。例えば、一部の実施例では、電圧は、セルのアノードおよびカソードを外部直流(DC)電源に接続することによって印加されてもよい。電源は、DCに整流された交流(AC)とすることができる。DC電源は、必須の量の電圧を電気化学セルに印加するのに調節可能な電圧および電流を有していてもよい。
【0214】
一部の実施例では、電気化学セルに印加される電流は、少なくとも約50mA/cm、例えば少なくとも約100mA/cm、少なくとも約150mA/cmなど、例えば少なくとも約200mA/cm、少なくとも約500mA/cmなど、例えば少なくとも約1000mA/cm、少なくとも約1500mA/cmなど、例えば少なくとも約2000mA/cm、少なくとも約2500mA/cmなど、例えば約100mA/cmから約2500mA/cm、約100mA/cmから約2000mA/cmなど、例えば約100mA/cmから約1500mA/cm、約100mA/cmから約1000mA/cmなど、例えば約100mA/cmから約500mA/cm、約200mA/cmから約2500mA/cmなど、例えば約200mA/cmから約2000mA/cm、約200mA/cmから約1500mA/cmなど、例えば約200mA/cmから約1000mA/cm、約200mA/cmから約500mA/cmなど、例えば約500mA/cmから約2500mA/cm、約500mA/cmから約2000mA/cmなど、例えば約500mA/cmから約1500mA/cm、約500mA/cmから約1000mA/cmなど、例えば約1000mA/cmから約2500mA/cm、約1000mA/cmから約2000mA/cmなど、例えば約1000mA/cmから約1500mA/cm、約1500mA/cmから約2500mA/cmなど、例えば約1500mA/cmから約2000mA/cm、約2000mA/cmから約2500mA/cmなどである。
【0215】
一部の実施例では、アノード電解質の少なくとも一部分が、電気化学セルから出されて熱反応器に、溶液を移送するための任意の手段を使用して移送される。例には、限定するものではないがコンジット、パイプ、チューブ、および液体溶液を移送するためのその他の手段が含まれる。一部の実施例では、システムに取着されたコンジットは、パイプ、チューブ、およびタンクなどであるがこれらに限定されない気体を移送するための手段も含む。
【0216】
一部の実施例では、電気化学的および/または熱的反応の使用は、1日を通して時間と共に様々になり得る。例えば熱反応器/反応は、電気化学セル/反応と比較して、ピーク電力料金時間中に実行されてもよく、それによってエネルギー使用が低減される。エネルギーコストを節約するために、例えば熱反応器/反応は日中に実行されてもよく、一方、電気化学セル/反応は夜間に実行されてもよく、その逆も同様である。
【0217】
本明細書で提供されるシステムは、酸素ガスを形成するように金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含むアノード電解質の熱反応を実施する熱反応器を含むことができる。本明細書で使用される「反応器」という用語は、本明細書で提供される反応が実施される任意の槽またはユニットとすることができる。熱反応器は、金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンを含むアノード電解質を加熱して酸素ガスを形成し、かつ金属オキシアニオンを還元して、より低い酸化状態にある金属イオンにするように構成することができる。同様に熱反応器は、非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質を加熱して酸素ガスを形成し、かつ非金属オキシアニオンを還元して、より低い酸化状態にある非金属イオンにするように構成することができる。反応器は、上述の内容物を接触させるための任意の手段であってよい。そのような手段またはそのような反応器は、当技術分野で周知であり、限定するものではないがパイプ、カラム、ダクト、タンク、一連のタンク、容器、塔、およびコンジットなどを含む。反応器は、反応をモニターし、制御し、および/または容易にする温度センサー、圧力センサー、制御機構、不活性ガスインジェクターなどを制御する制御器の1つまたは複数を備えることができる。一部の実施例では、反応器は、耐腐食性材料から作製される。
【0218】
一部の実施例では、熱反応器システムは、1つの反応器であっても互いに接続された一連の反応器であってもよい。熱反応器は、撹拌タンクであってもよい。撹拌は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンへの熱の分布を容易にし得、それによって、熱反応を加速させて酸素ガスを形成する。熱反応器は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含有する水または塩水の流れに適合性ある材料で作製され得る。一部の実施例では、熱反応器は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンを含有する水と適合性ある耐腐食性材料で作製され、そのような材料にはチタン、鋼などが含まれる。
【0219】
反応器流出ガスは、収集され、必要に応じて圧縮されてもよい。塔から離れる液体は、冷却され、リサイクルされて塔に戻されもよく、または塔にリサイクルされている分割部分であってもよく、その残りは電気化学セルのアノードチャンバーにリサイクルされてもよい。プラントまたはシステムの構成材料は、プレストレストれんが張り、ハステロイ(Hastealloy)BおよびC、インコネル、ドーパント級チタン(例えば、エイコット,グレードII)、タンタル、カイナー、テフロン(登録商標)、PEEK、ガラス、またはその他のポリマーもしくはプラスチックを含んでいてもよい。反応器は、アノード電解質を反応器の中および外に連続的に流すように設計されてもよい。
【0220】
一部の実施例では、酸素ガスを形成する金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの熱反応は、約50℃から約500℃、例えば約50℃から約400℃、約50℃から約300℃など、例えば約50℃から約200℃、約50℃から約100℃などの温度;約10psigから約500psig、例えば約10psigから約400psig、約10psigから約300psigなど、例えば約10psigから約200psig、約10psigから約100psigなど、例えば約50psigから約350psig、約200psigから約300psigなどの圧力で;水酸化物イオンの存在下;触媒の存在下;約10よりも高いpHで;またはこれらの組合せを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の反応条件下、反応器で実施される。
【0221】
一部の実施例では、酸素ガスを形成するための金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの熱反応は、触媒の存在によって容易にすることができる。触媒の例には、限定するものではないが金属酸化物、例えば酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、または酸化アルミニウムなど;および/あるいは非金属ハロゲン化物、例えばアルカリ金属ハロゲン化物、またはアルカリ土類金属ハロゲン化物またはランタニドハロゲン化物などが含まれる。一部の実施例では、例えばCo2+、Ni2+、Fe2+、Ag、Cu2+、Mn2+、Sn4+、Pb2+、Hg2+、Ca2+、CI、CO 2-、MoO 2-、WO 2-、SiO 4-などのイオンが、熱反応器内で酸素ガスを発生させるための触媒として作用し得る。一部の実施例では、イオンの濃度は、約10-10Nから約10-1M、例えば約10-9Mから約10-4Mとすることができる。
【0222】
一部の実施例では、酸素ガスを形成する金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの熱反応は、水酸化物イオンの存在によって、または約10よりも上の、例えば約10から約12の、例えば約10から約14のpHで、容易になる。
【0223】
反応熱は、水を気化することによって、または熱交換ユニットを使用することによって、除去することができる。一部の実施例では、冷却表面は、反応器内で必要とされなくてもよく、したがって温度勾配または厳密な温度制御を必要としなくてもよい。
【0224】
一部の実施例では、システムは、運転コストを最小限に抑えるために熱統合型である。様々な熱統合手法を、本明細書で提供される方法およびシステムで使用することができる。一部の実施例では、システムはさらに、電気化学セルと熱反応器との間に供給/流出熱交換器を含み、熱反応器/反応から離れる溶液から熱反応器/反応に進入する流れに熱を回収する働きをする。一部の実施例では、熱反応器/反応で使用される熱の一部分は、別のプロセスからの熱によって提供される。別のプロセスからのこの熱は、通常の条件下で経済的に回収可能ではない廃熱であり得るか、または太陽熱システム、地熱システム、もしくは核プロセスなどのクリーンな熱源からの意図的な熱である。一部の実施例では、別のプロセスからの熱は、送達圧力まで水素を圧縮することによってまたは何らかのその他の流体加圧仕事によって発生したものであり得る。
【0225】
本明細書に記述される方法およびシステムの一部の実施例では、電気化学セル/反応または熱反応器/反応の少なくとも1つが高圧で動作される。水素送達圧力に関する要件により、一部の実施例では、電気化学セルを大気よりも上の圧力で動作することが有利となり得る。カソードで水素をおよびアノードで酸素を発生させる水分解電気化学セルの高圧動作に関する1つの懸念は、爆発性混合物をもたらす内部構成要素不全のリスクである可能性がある。一部の実施例では、電気化学セル内で酸素は発生せず、または非常に少量で発生し、それによってリスクが低減する。一部の実施例では、アノードで形成された最少量の酸素ガスが、カソードで形成された水素ガスを汚染し得る。そのような実施例では、水素酸素セパレーターは、本明細書の電気化学システム/方法に動作可能に接続して、水素ガスを酸素ガスから分離することができる。そのようなセパレーターの例には、限定するものではないが膜またはその他の多孔質セパレーターが含まれる。そのようなセパレーターは、市販されている。
【0226】
一部の実施例では、より低い圧力で熱反応器/反応を動作させることは、酸素の放出を容易にすることができる。このように、より低い圧力で熱反応器/反応を動作させることは、プロセスの安全性の理由でまたはその他の理由で、生成の全体コストを削減するのに行うことができる。例えば電気化学セルは、酸素発生を容易にするため熱反応器/反応をより低い圧力で動作させることができながら、水素の圧縮のコストを削減するように、より高い圧力で動作することができる。一部の実施例では、熱反応器/反応は真空下で生じてもよく、次いで大気圧に圧縮されてもよい。反応の経済性は、熱源および圧縮の相対的なコストに依存し得る。
【0227】
一部の実施例では、電気化学セルは、約40psiから約500psi、例えば約40psiから約400psi、約40psiから約300psiなど、例えば約40psiから約200psi、約40psiから約100psiなど、例えば約100psiから約200psi、約200psiから約300psiなど、例えば約300psiから約400psi、約400psiから約500psiなど、例えば約500psiから約3000psiの圧力で動作する。一部の実施例では、熱反応は、約14psiから約300psi、例えば約14psiから約200psi、約14psiから約100psiなど、例えば約14psiから約50psiの圧力で動作する。
【0228】
一部の実施例では、システムは、1つの反応器、または互いに接続されたもしくは別々に動作する一連の多数の反応器を含んでいてもよい。反応器は、充填材料で満たされた中空チューブ、パイプ、カラム、またはその他の槽などであるがこれらに限定されない充填床であってもよい。反応器は、トリクルベッド反応器であってもよい。一部の実施例では、反応器は棚段塔またはスプレー塔であってもよい。本明細書に記述される反応器の構成の任意のものが、本明細書で提供される方法/システムを実施するのに使用され得る。
【0229】
金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン溶液は、撹拌もしくは振盪または任意の所望の技法によって掻き混ぜられてもよく、例えば反応は、充填カラムなどのカラム、またはトリクルベッド反応器もしくは本明細書に記述される反応器で実施されてもよい。例えば、酸素ガスが形成されるとき、酸素ガスがカラムまたは反応器内を上向きに通過し、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン溶液がカラムまたは反応器内を下向きに通過する、向流技法が用いられてもよい。
【0230】
様々な形状、サイズ、構造、湿潤特性、および形態などの様々な充填材料が、本明細書に記述される充填床またはトリクルベッド反応器で使用されてよい。充填材料は、限定するものではないがポリマー(例えば、Teflon(登録商標)PTFEのみ)、セラミック、ガラス、金属、天然材(木材または樹皮)、またはこれらの組合せを含むことができる。一部の実施例では、充填材料は、構造化された充填材または緩んだもしくは構造化されていないもしくはランダムな充填材、またはこれらの組合せとすることができる。構造化された充填材の例には、限定するものではないが非流動性の波形金属板またはガーゼが含まれる。一部の実施例では、構造化充填材料は個々にまたは積層体として、反応器の直径に完全に適合する。非構造化充填材、または緩んだ充填材、またはランダムな充填材は、流動性の空隙を満たす充填材を含むことができる。
【0231】
緩んだまたは非構造化またはランダムな充填材料の例には、限定するものではないがラッシングリング(セラミック材料のものなど)、ポールリング(例えば、金属およびプラスチックのもの)、レッシングリング、Michael Bialeckiリング(例えば、金属のもの)、ベルルサドル、インタロックスサドル(例えば、セラミックのもの)、スーパーインタロックスサドル、tellerette(登録商標)リング(例えば、ポリマー材料による螺旋形状)などが含まれる。
【0232】
構造化充填材料の例には、限定するものではないが、特定の表面積を持つ種々の形状の薄い波型の金属板またはガーゼ(ハニカム構造)が含まれる。構造化充填材料は、リングもしくは層、またはリングもしくは層の積層体であって反応器の直径に適合し得る直径を有するものとして使用されてよい。リングは、反応器を完全に満たす個々のリングであってもリングの積層体であってもよい。一部の実施例では、反応器内の構造化充填により取り残された空隙は、非構造化充填材料で満たされる。
【0233】
構造化充填材料の例には、限定するものではないがFlexipac(登録商標)、Intalox(登録商標)、Flexipac(登録商標)HC(登録商標)などが含まれる。構造化充填材料では、波型シートは十字形パターンに配置されて、蒸気相用の流動チャネルを創出してもよい。波型シートの交差点は、液相と蒸気相との混合点を創出し得る。構造化充填材料は、カラム(反応器)軸を中心に回転して、蒸気と液体流との交差混合および全方向での拡がりとを提供してもよい。構造化充填材料は様々な波型サイズで使用されてもよく、充填構成は、反応器の最高の効率、容量、圧力降下要件を実現するように最適化され得る。構造化充填材料は、チタン、ステンレス鋼合金、炭素鋼、アルミニウム、ニッケル合金、銅合金、ジルコニウム、熱可塑性樹脂などを含むがこれらに限定されない建築材料で作製されてよい。構造化充填材料の波型捲縮は、水平から45°の傾斜角を有するY指定充填、または水平から60°の傾斜角を有するX指定充填を含むがこれらに限定されない任意のサイズのものであってよい。X充填は、同じ表面積での理論段当たり、より低い圧力降下を提供してもよい。構造化充填材の比表面積は、約50~800m/m、例えば約75m/mから約350m/m、約200m/mから約800m/mなど、例えば約150m/mから約800m/m、約500m/mから約800m/mなどであってよい。
【0234】
本明細書で提供されるシステムは、本明細書に記述される1つまたは複数の方法のいずれかに適用可能でありまたは使用することができる。一部の実施例では、本明細書で提供されるシステムは、さらに、熱反応器に動作可能に接続された酸素ガス送達システムを含む。酸素ガス送達システムは、酸素ガス収集ユニットに酸素ガスを提供するように構成することができる。酸素ガスは、熱反応器から酸素ガスの方向を定めるための任意の手段を使用して、酸素ガス収集ユニットに送達されてよい。熱反応器から酸素ガス送達システムに酸素ガスを方向付けるためのそのような手段は、当技術分野で周知であり、限定するものではないがパイプ、ダクト、およびコンジットなどを含む。一部の実施例では、熱反応器からの酸素ガスは、収集される前に精製されてもよく、必要に応じて圧縮されてもよい。
【0235】
一部の実施例では、本明細書で提供される反応器および/または電気化学セルならびにその構成要素は、電気化学セルのアノードチャンバーに導入される金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの量、熱反応器または第2の電気化学セルに導入されるアノード電解質の量、ユニットの温度および圧力、水の量、反応器内へのおよび反応器からの流量、電気化学セルに戻って行く水の時間および流量などの1つまたは複数を制御するように構成されている、制御ステーションを含むことができる。
【0236】
制御ステーションは、手動で、機械的に、もしくはデジタル制御されるひと組の弁もしくはマルチバルブシステムを含むことができ、または任意のその他の都合の良い流れ規制プロトコールを用いてよい。一部の実施例では、制御ステーションは、量および条件を制御するため入力および出力パラメーターをユーザーに提供するように構成されている、コンピューターインターフェースを含むことができる(規制がコンピューター支援されまたは全体としてコンピューターにより制御される場合)。
【0237】
方法およびシステムは、気体の流れまたは金属オキシアニオンもしくは非金属オキシアニオンの水/塩水中での濃度などをモニターするように構成されている、1つまたは複数の検出器を含むこともできる。モニタリングは、限定するものではないが、水性媒体および気体の圧力、温度、および組成に関するデータを収集することを含み得る。検出器は、モニターするように構成されている任意の都合の良いデバイス、例えば圧力センサー(例えば、電磁圧力センサー、電位差圧力センサーなど)、温度センサー(例えば、抵抗温度検出器、熱電対、ガス温度計、サーミスター、パイロメーター、赤外線センサーなど)、体積センサー(例えば、地球物理学的回折断層撮影、X線断層撮影、水中音響学的サーベイヤーなど)、および水性媒体または気体の化学構成を決定するためのデバイス(例えば、IR分光計、NMR分光計、UV-vis分光光度計、高速液体クロマトグラフ、誘導結合プラズマ発光分光計、誘導結合プラズマ質量分光計、イオンクロマトグラフ、X線回折計、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフィー-質量分光計、フローインジェクション分析、シンチレーションカウンター、酸滴定、およびフレーム発光分光計など)とすることができる。
【0238】
一部の実施例では、検出器は、電解質、金属オキシアニオン、または非金属オキシアニオン、および/または塩に関して収集されたデータをユーザーに提供するように構成されているコンピューターインターフェースを含むこともできる。例えば検出器は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオンの濃度を決定することができ、コンピューターインターフェースは、経時的な電解質中の組成の変化の概要を提供してもよい。一部の実施例では、概要は、コンピューター可読データファイルとして保存されてもよく、またはユーザー可読文書として印刷されてもよい。
【0239】
一部の実施例では、検出器は、電解質、金属オキシアニオン、または非金属オキシアニオン、および/または塩イオンに関する実時間データ(例えば、内圧、温度など)を収集できるように、モニタリングデバイスとすることができる。他の実施例では、検出器は、金属オキシアニオンまたは非金属オキシアニオン、および/または塩イオンのパラメーターを規則的な間隔で決定するように、例えば1分ごと、5分ごと、10分ごと、30分ごと、60分ごと、100分ごと、200分ごと、500分ごと、またはいずれかのその他の間隔で組成を決定するように構成されている、1つまたは複数の検出器とすることができる。
【0240】
以下の実施例は、当業者に、本発明をどのように作製し使用するかの完全な開示および記述を提供するように記述され、本発明者らが自分の発明であると見なす範囲を限定するものでもなく、以下の実験が全てでありまたは行われた唯一の実験であることを表すものでもない。本明細書に記述されるものに加えて本発明の様々な修正例が、前述の説明および添付図から当業者に明らかになる。そのような修正例は、添付される特許請求の範囲内に包含される。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするために努力がなされてきたが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度を単位とし、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【実施例
【0241】
(実施例1)
金属オキシアニオン酸化のための電気化学半電池反応
電気化学セルを、撹拌したビーカー内で構成して、酸素発生およびマンガン酸(MnO 2-)酸化のアノード半電池反応を研究した。セルは、ニッケルガーゼアノード、白金箔カソード、およびAg/AgCl参照電極を有していた。線形掃引ボルタンメトリーを、9M NaOHの溶液に対して、および0.25M MnO 2-を含む9M NaOHの溶液に対して25℃で行った。結果を図8に示す。アノードでの酸化は、100mA/cmの電流密度を持続するのに190mV少ない値を必要とした。0.55V(Ag/AgClに対して)で、マンガン酸溶液は100mA/cmを持続し、それに対してNaOHのみ含む溶液は14mA/cmを持続した。
(実施例2)
過マンガン酸塩からマンガン酸塩および酸素ガスへの熱反応
【0242】
10mLの8M NaOHおよび0.6M MnO (過マンガン酸イオン)を含む密閉容器を、100℃の水浴に入れた。試料を30および60分後に得た。マンガン酸(MnO 2-)に反応した過マンガン酸塩の量は、図9に示すとおりである。1時間後、過マンガン酸塩の14%が反応した。濃度は、UV-vis分光法により決定した。
(実施例3)
金属オキシアニオンの酸化ならびに水素ガスおよび酸素ガスの発生
【0243】
アノードおよびカソードを備える電気化学セルを、アニオン交換膜でチャンバーを分離して構成した。セルに、アノードチャンバーへの0.4Mの過マンガン酸カリウム(KMnO)、0.2Mのマンガン酸カリウム(KMnO)、および6Mの水酸化カリウム(KOH)の水溶液を、ならびにカソードチャンバーへの水酸化カリウムの水溶液を供給した。所望の全電流に応じて、1.3Vから3Vの間の電位を、アノードとカソードとの間に印加した。アノードではマンガン酸塩が酸化されて過マンガン酸塩にし、カソードでは水が還元されて水素ガスおよび水酸化物にした。水酸化物イオンは、カソードチャンバーからアノードチャンバーへとアニオン交換膜を通過することにより、系の電荷平衡を維持した。過マンガン酸塩に酸化されたマンガン酸塩の量は、約0.1Mであった。
【0244】
カソードチャンバーからの水素を、気-液分離用の槽で、KOH水溶液から分離した。カソードチャンバーからのKOH水溶液を、還元された水と置き換える量の水で再構成して、カソードチャンバーに供給する中間供給タンクに再循環した。
【0245】
アノードチャンバーからの溶液を、熱反応器に通した。この熱反応器では、溶液をより高い温度、100℃程度に加熱して、酸素発生および過マンガン酸還元に影響を及ぼし、これは水酸化物も消費してマンガン酸塩および水も発生させた。この反応器からの水を凝縮により分離し、水の一部を使用して、カソードチャンバーに供給されるKOH水溶液を再構成した。熱反応器からのKMnO、KMnO、およびKOHの水溶液を、アノードチャンバーへと供給するための中間タンクに戻して供給した。
【0246】
上記詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施することができる特定の実施形態を示す。これらの実施形態を、本明細書では「実施例」とも呼ぶ。そのような実施例は、図示されまたは記述されるものの他に要素を含むことができる。しかしながら本発明者らは、図示されまたは記述されるような要素のみ提供される実施例も企図する。さらに本発明者らは、図示されまたは記述される要素の任意の組合せまたは並べ替えを使用する実施例(またはそれらの1つもしくは複数の態様)も、本明細書に示されまたは記述される特定の実施例(またはそれらの1つもしくは複数の態様)に関してまたはその他の実施例(またはそれらの1つもしくは複数の態様)に関して企図する。
【0247】
本文書と参照により組み込まれるような任意の文書との間の一貫性のない利用の場合、本文書での利用が優先する。
【0248】
本文書では、「a」または「an」という用語は、特許文書で一般的であるように、任意のその他の場合または「少なくとも1つ」もしくは「1つまたは複数」の利用とは独立して、1または1より多くを含むように使用される。本文書では、「または」という用語は、他に示されない限り、非排他的であることを指すのに、または「AまたはB」が「BではなくA」、「AではなくB」、および「AおよびB」を含むように、使用される。本文書では、「含んでいる(including)」および「in which」という用語は、「含む(comprising)」および「wherein」というそれぞれの用語の平易な英語の均等物として使用される。また、以下の請求項において、「含む(including)」および「含む(comprising)」という用語は非制限的であり、即ち、請求項におけるそのような用語の後に列挙されたものに加えて要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、配合物、またはプロセスが、その請求項の範囲内に包含されると依然として考えられる。さらに、以下の請求項において、「第1の」、「第2の」、および「第3の」などの用語は、単に標識として使用され、それらの対象に数値要件を課すものではない。
【0249】
本明細書に記述される方法の実施例は、少なくとも部分的には機械またはコンピューターで実現することができる。一部の実施例は、上記実施例に記述される方法を行うために電子デバイスを構成するよう動作可能な命令がコードされたコンピューター可読媒体または機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実現には、コード、例えばマイクロコード、アセンブリ言語コード、または高レベル言語コードなどを含めることができる。そのようなコードは、様々な方法を行うためのコンピューター可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータープログラムプロダクトの部分を形成してもよい。さらに実施例では、コードは、1つまたは複数の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形コンピューター可読媒体を、実行中またはその他の時間などに明らかに保存することができる。これらの有形コンピューター可読媒体の例には、限定するものではないがハードディスク、取出し可能な磁気ディスク、取出し可能な光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、埋込み型フラッシュメモリ、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、およびリードオンリーメモリ(ROM)などを含めることができる。
【0250】
これまでの記述は例示的なものとし、制限的なものではない。例えば上述の実施例(またはその1つもしくは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。その他の実施形態は、上記説明を検討することによって当業者などにより使用することができる。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるように提供される。これは請求項の範囲または意味を解釈しまたは制限するよう使用されるものではないという理解と共に提出される。また、上記詳細な説明では、本開示を合理化するよう様々な特徴が一緒にグループ分けされてもよい。これは請求項に開示されていない特徴が任意の請求項に必須であることを意図すると解釈されるべきではない。むしろ本発明の対象は、特定の開示された実施形態の全ての特徴よりも少なく存在し得る。したがって下記の請求項は、実施例または実施形態として本明細書により詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自体が個別の実施形態として自立しており、そのような実施形態は、様々な組合せまたは並べ替えで互いに組み合わせることができることが企図される。本発明の範囲は、添付の請求項が権利を有する均等物の全範囲と共に、そのような請求項を参照しながら決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、前記アノード電解質は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること、
前記アノードで、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること、
カソードおよびカソード電解質を前記電気化学セル内に提供すること、ならびに
水素ガスおよび水酸化物イオンを前記カソードで形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法。
【請求項2】
前記金属オキシアニオン中の前記金属イオンが、マンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、ハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨードイオンから選択されるハロゲンである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.1Mから約1Mである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.2Mから約1.5Mである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸素ガスが前記アノードで形成されず、またはファラデー効率の25%未満が前記アノードでの酸素発生反応に関するものである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質を、熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱反応の温度が、約50℃から約500℃である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を、前記電気化学セルから出して、第2の電気化学セルのカソード電解質に移送すること、
前記第2の電気化学セルの第2のカソードで、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに還元し、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを、前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンに還元すること
をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学セルが、2V未満の理論的電圧を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属オキシアニオンまたは前記非金属オキシアニオンに対応するカチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、前記アノードは、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と、
カソード、および水を含むカソード電解質であって、前記カソードは、前記水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む、水素ガスを発生させるシステム。
【請求項14】
前記電気化学セルに動作可能に接続され、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつ前記アノード電解質の前記部分を熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成するように構成されている、熱反応器をさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記電気化学セルに動作可能に接続された第2の電気化学セルをさらに含み、前記第2の電気化学セルが、
第2のアノードおよび第2のアノード電解質、
第2のカソードおよび第2のカソード電解質であって、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソード電解質は、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む、前記電気化学セルの前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように構成されており、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソードは、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを還元して前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを還元して前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンにするようにそれぞれ構成されている、第2のカソードおよび第2のカソード電解質
を含む、請求項13または請求項14に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0250
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0250】
これまでの記述は例示的なものとし、制限的なものではない。例えば上述の実施例(またはその1つもしくは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。その他の実施形態は、上記説明を検討することによって当業者などにより使用することができる。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるように提供される。これは請求項の範囲または意味を解釈しまたは制限するよう使用されるものではないという理解と共に提出される。また、上記詳細な説明では、本開示を合理化するよう様々な特徴が一緒にグループ分けされてもよい。これは請求項に開示されていない特徴が任意の請求項に必須であることを意図すると解釈されるべきではない。むしろ本発明の対象は、特定の開示された実施形態の全ての特徴よりも少なく存在し得る。したがって下記の請求項は、実施例または実施形態として本明細書により詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自体が個別の実施形態として自立しており、そのような実施形態は、様々な組合せまたは並べ替えで互いに組み合わせることができることが企図される。本発明の範囲は、添付の請求項が権利を有する均等物の全範囲と共に、そのような請求項を参照しながら決定されるべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
アノードおよびアノード電解質を電気化学セル内に提供することであって、前記アノード電解質は、金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むものである、提供すること、
前記アノードで、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにすること、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにすること、
カソードおよびカソード電解質を前記電気化学セル内に提供すること、ならびに
水素ガスおよび水酸化物イオンを前記カソードで形成すること
を含む、水素ガスを発生させる方法。
(項目2)
アニオン交換膜によって前記アノード電解質を前記カソード電解質から分離すること、および前記水酸化物イオンを前記カソード電解質から前記アノード電解質へ移動させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記金属オキシアニオン中の前記金属イオンが、マンガン、鉄、クロム、セレン、銅、スズ、銀、コバルト、ウラン、鉛、水銀、バナジウム、ビスマス、チタン、ルテニウム、オスミウム、ユウロピウム、亜鉛、カドミウム、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、テクネチウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記金属オキシアニオン中の前記金属イオンが、マンガン、クロム、銅、鉄、スズ、セレン、タンタル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンが、MnO 2- 、FeO 2- 、RuO 2- 、OsO 2- 、HSnO 、SeO 2- 、Cu O、CrO 3- 、およびTeO 2- からなる群から選択される、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンが、MnO 、HFeO 、RuO 、OsO 2- 、SnO 2- 、SeO 2- 、CuO 2- 、CrO 2- 、およびTeO 2- からなる群から選択される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがMnO 2- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがMnO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがFeO 2- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがHFeO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがRuO 2- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがRuO であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがOsO 2- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがOsO 2- であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがHSnO であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSnO 2- であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSeO 2- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがSeO 2- であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCu Oであり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCuO 2- であり、
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCrO 3- であり、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがCrO 2- であり、または
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがTeO 2- であり、および前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンがTeO 2- である、
項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、ハロゲン、炭素、硫黄、窒素、およびリンからなる群から選択される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記非金属オキシアニオン中の前記非金属イオンが、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨード原子から選択されるハロゲンである、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンが、NO 、PO 3- 、SO 2- 、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO からなる群から選択され、そして/または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンが、NO 、PO 3- 、SO 2- 、ClO 、ClO 、ClO 、BrO 、BrO 、BrO 、IO 、IO 、およびIO からなる群から選択される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがNO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがNO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがPO 3- であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがPO 3- であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがSO 2- であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがSO 2- であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがClO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがBrO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、または
前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO であり、前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンがIO である、
項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.1Mから約1Mである、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンの濃度が、約0.2Mから約1.5Mである、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記電気化学セルの動作電圧が、約1.5Vから約2.5Vである、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記電気化学セルの温度が、約50℃から約100℃である、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記アノード電解質と前記カソード電解質との間で約1から約6の、定常状態のpH差を維持することをさらに含む、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
酸素ガスが前記アノードで形成されず、またはファラデー効率の25%未満が前記アノードでの酸素発生反応に関するものである、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記アノードで水酸化イオンを酸化して、酸素ガスを形成することをさらに含む、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記アノードで、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンから前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンへの酸化のために、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンから前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンへの酸化のために、より低い電流密度で前記電気化学セルを動作させること、および
前記アノードで、前記水酸化物イオンの酸化のために、より高い電流密度で前記電気化学セルを動作させて、酸素ガスを形成すること
をさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオン、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質を、熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成することをさらに含む、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記熱反応が、前記水酸化物イオンの存在下、10もしくはそれよりも高いpHで、および/または触媒の存在下で実施される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記触媒が金属酸化物である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記金属酸化物が、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、または酸化アルミニウムである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記熱反応の温度が、約50℃から約500℃である、項目20から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記熱反応の後、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを再循環させて、前記電気化学セル内の前記アノード電解質に戻すことをさらに含む、項目20から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記熱反応で使用される熱の一部分または全てを、廃熱ならびに/または太陽熱プロセス、地熱プロセス、および/もしくは核プロセスから選択されるクリーンな熱源からなる群から選択される別のプロセスから提供することをさらに含む、項目20から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記熱反応で使用される熱の一部分または全てを、前記水素ガスの圧縮により発生した熱から提供することをさらに含む、項目20から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記熱反応から離れる溶液から前記熱反応に進入する流れに熱を回収するように働く熱交換器を、前記電気化学セルと前記熱反応との間に設けることをさらに含む、項目20から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記電気化学セルまたは前記熱反応の少なくとも1つを高圧で動作させることをさらに含む、項目20から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記電気化学セルを高圧で動作させることが、前記水素ガスの圧縮コストを削減し、前記熱プロセスをより低い圧力で動作させることが、酸素発生を容易にする、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記電気化学セルが、約40psiから約500psiの圧力で動作する、項目29または30に記載の方法。
(項目32)
前記熱反応が、約14psiから約300psiの圧力で動作する、項目20から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を、前記電気化学セルから出して、第2の電気化学セルのカソード電解質に移送すること、
前記第2の電気化学セルの第2のカソードで、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに還元し、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを、前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンに還元すること
をさらに含む、項目1から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
水酸化物イオンを第2のカソード電解質から第2のアノード電解質に、前記第2の電気化学セル内のアニオン交換膜を通して移動させること、および前記第2の電気化学セル内の第2のアノードで前記水酸化物イオンを酸化して、酸素ガスを形成することをさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記アノード電解質のpHが、約10またはそれよりも高い、項目1から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記電気化学セルが、2V未満の理論的電圧を有する、項目1から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記金属オキシアニオンまたは前記非金属オキシアニオンに対応するカチオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、項目1から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記アルカリ金属または前記アルカリ土類金属を、前記アノード電解質から前記カソード電解質に移動させることをさらに含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を前記カソード電解質中で形成することをさらに含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記電気化学セルの動作電圧が、より低い過電位、より低いサーモニュートラル電圧、より低い半電池電位、またはこれらの組合せの1つまたは複数に起因して、前記アノードで酸素ガスを形成するセルの対応する動作電圧よりも低い、項目1から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記アノード電解質が、アルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物をさらに含む、項目1から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記アノード電解質が、水をさらに含み、前記金属オキシアニオンまたは前記非金属オキシアニオンが、部分的にまたは完全に前記アノード電解質に可溶である、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
アノード、および金属イオンがより低い酸化状態にある金属オキシアニオンまたは非金属イオンがより低い酸化状態にある非金属オキシアニオンを含むアノード電解質であって、前記アノードは、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを酸化して、前記金属イオンがより高い酸化状態にある金属オキシアニオンにするように、または前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを酸化して、前記非金属イオンがより高い酸化状態にある非金属オキシアニオンにするように構成されている、アノードおよびアノード電解質と、
カソード、および水を含むカソード電解質であって、前記カソードは、前記水を還元して水酸化物イオンおよび水素ガスを形成するように構成されている、カソードおよびカソード電解質と
を含む、電気化学セルを含む、水素ガスを発生させるシステム。
(項目44)
前記電気化学セルに動作可能に接続され、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように、かつ前記アノード電解質の前記部分を熱反応に供して、酸素ガスと、前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンとをそれぞれ形成するように構成されている、熱反応器をさらに含む、項目43に記載のシステム。
(項目45)
前記アノード電解質と前記カソード電解質との間に配置され、前記水酸化物イオンを前記カソード電解質から前記アノード電解質に移動させるように構成されている、アニオン交換膜をさらに含む、項目43または44に記載のシステム。
(項目46)
前記電気化学セルが、前記アノード電解質と前記カソード電解質との間で約1から約6の定常状態のpH差を維持するように構成されている、項目43から45のいずれか一項に記載のシステム。
(項目47)
前記アノードが、前記水酸化物イオンを酸化して酸素ガスを形成するようにさらに構成されている、項目43から46のいずれか一項に記載のシステム。
(項目48)
前記電気化学セルに動作可能に接続された第2の電気化学セルをさらに含み、前記第2の電気化学セルが、
第2のアノードおよび第2のアノード電解質、
第2のカソードおよび第2のカソード電解質であって、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソード電解質は、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンまたは前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを含む、前記電気化学セルの前記アノード電解質の少なくとも一部分を受容するように構成されており、前記第2の電気化学セルの前記第2のカソードは、前記金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記金属オキシアニオンを還元して前記金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記金属オキシアニオンに、または前記非金属イオンが前記より高い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンを還元して前記非金属イオンが前記より低い酸化状態にある前記非金属オキシアニオンにするようにそれぞれ構成されている、第2のカソードおよび第2のカソード電解質
を含む、項目43から47のいずれか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】