(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】腟微生物叢関連方法、組成物及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240227BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240227BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240227BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/70
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/02
A61K9/20
A61K9/50
A61K9/19
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61P15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553508
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2022000099
(87)【国際公開番号】W WO2022185121
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523334109
【氏名又は名称】フレイヤ バイオサイエンシーズ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アコスタ, コリーン デニス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒルカマ フリーフ, ヨハン イー. ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン, トーマス グンデルンド
(72)【発明者】
【氏名】ボスマ, エレケ フェナ
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン, ブリンユルフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA03
4C076AA06
4C076AA07
4C076AA09
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4C076AA24
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4C087MA56
4C087NA14
4C087ZA81
(57)【要約】
本発明は、ヒト対象の女性の尿生殖路における炎症を治療する際に使用するための医薬組成物に関し、女性対象は尿生殖路におけるディスバイオシス微生物叢を示す。医薬組成物は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、ここで、調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;及び(ii)Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み;医薬組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。本発明はさらに、前記組成物を調製する方法、ならびにそれを含む及び/または使用するデバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象の女性尿生殖路の炎症を治療するのに使用するための医薬組成物であって、前記女性対象が前記尿生殖路のディスバイオシス微生物叢を示し、前記方法が、有効量の前記医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記医薬組成物が実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、
前記調製物が、
(i)前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択される、Lactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、;及び
(ii)Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み;
前記医薬組成物が、薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記女性対象が、前記炎症の治療前または治療中に抗生物質で治療されていない、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用のための医薬組成物であって、それを必要とする前記対象の腟腔に投与される、前記医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物を投与する前に腟洗浄が行われる、及び/または前記腟洗浄に続いて乳酸によるすすぎが行われる、請求項3に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記腟洗浄が生理食塩水、乳酸または消毒剤を用いて行われ、場合により前記消毒剤がポビドンヨードまたはクロロヘキシジンである、請求項4に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記対象が細菌性腟炎と診断されていない、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が、腟漏出液及び/または粘液をさらに含み、場合により前記粘液が子宮頸腟粘液である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記組成物が添加された凍結保護剤を含まない、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が、約0.5~2%の濃度、好ましくは約1~1.5%の濃度の乳酸をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が、薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%がLactobacillus crispatusからなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%が、
(a) Lactobacillus crispatus;
(b) Lactobacillus iners;
(c) Lactobacillus crispatus及びLactobacillus iners;
(d) Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jensenii;
(e) Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jensenii;
(f) Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri及びLactobacillus jensenii;
(g) Lactobacillus iners及びLactobacillus jensenii;
(h) Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseri;
(i) Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseri;または
(j) Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriからなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
(c)~(j)についてLactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriが、前記調製物中に存在する他の腟lactobacilliのうちの1つ以上よりも多い相対量で存在し得る、請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記炎症の治療が、前記女性の尿生殖路の炎症に関連する疾患、障害または望ましくない状態を前記対象が発症するリスクを治療または低減する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記女性対象の尿生殖路における前記ディスバイオシスの腟微生物叢の全ての検出可能な細菌種の10%未満がLactobacillus属に属し、前記ディスバイオシスの腟微生物叢の全ての検出可能な細菌種の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上が、Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属からなる群から選択される病原体または病原性共生生物である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記女性ヒト対象が子宮内避妊器具(IUD)を着用していないことを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記IUDがホルモン性IUDまたは非ホルモン性IUDである、請求項16に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
実質的に完全な腟微生物叢調製物またはこれを含む医薬組成物であって、前記調製物が
(i)前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択される、Lactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、;及び
(ii)Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み;
前記調製物及び/または医薬組成物が薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、前記調製物または医薬組成物。
【請求項19】
前記調製物または医薬組成物が、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、軟膏、半固体フォーム、フィルム、粉末、カプセル、洗浄液または圧注用溶液、卵、腟用インサート、タンポン、錠剤またはマイクロカプセル化製品の形態である、請求項18に記載の調製物または医薬組成物。
【請求項20】
少なくとも約10
6個の生存細菌細胞、好ましくは少なくとも約10
7個の生存細菌細胞を含む、請求項18または19に記載の調製物または医薬組成物。
【請求項21】
前記薬学的に許容される担体または希釈剤が生理食塩水である、請求項18~20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記調製物または医薬組成物が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、またはLactobacillus gasseri以外のさらなるlactobacilliを含み、前記さらなるlactobacilliが前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01~1%の濃度で存在する、請求項18~21のいずれか1項に記載の調製物または医薬組成物。
【請求項23】
前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が培養非依存性方法によって得られる、請求項18~22のいずれか1項に記載の調製物または医薬組成物。
【請求項24】
腟投与用に製剤化された、請求項18~23のいずれか1項に記載の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む剤形であって、固体、半固体、液体製剤またはフィルム形成製剤である、前記剤形。
【請求項25】
前記固体剤形が、カプセル、錠剤、凍結乾燥ゲル及びフィルムから選択される、請求項24に記載の剤形。
【請求項26】
請求項25に記載の剤形であって、
a) 前記凍結乾燥ゲルが、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)またはヒアルロン酸を含み;
b) 前記錠剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)またはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMCを含み;または
c) 前記フィルムがポリビニルアルコール(PVA)を含む、前記剤形。
【請求項27】
前記半固体剤形が、坐剤、軟膏、予め形成されたゲル、凍結ゲル、クリームまたはフォームから選択される、請求項24に記載の剤形。
【請求項28】
前記予め形成されたゲルまたは凍結ゲルがヒアルロン酸を含む、請求項27に記載の剤形。
【請求項29】
アプリケータ、ディスペンサまたは坐剤に適した剤形の、請求項18~23のいずれか1項に記載の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む、腟腔に投与するための腟送達システム。
【請求項30】
前記医薬組成物または前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が液体または半固体の形態であり、場合により、前記医薬組成物または前記実質的に完全な腟微生物叢調製物がゲル形態(例えば、凍結乾燥または凍結)またはフィルム形態である、請求項29に記載の腟送達システム。
【請求項31】
前記医薬組成物または前記実質的に完全な腟微生物叢調製物が凍結乾燥され、任意選択的にゲル形成賦形剤と共に、任意選択的に前記アプリケータまたはディスペンサとは別個の貯蔵容器(例えば、キットとして提供される)に製剤化される、請求項29または30に記載の腟送達システム。
【請求項32】
前記凍結乾燥医薬組成物または前記凍結乾燥された実質的に完全な腟微生物叢調製物が再構成され、次いで、前記アプリケータまたはディスペンサと組み合わされる、請求項31に記載の腟送達システム。
【請求項33】
ヒト女性対象への請求項18~23のいずれか1項に記載の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物の腟内投与のための方法であって、前記組成物または調製物がデバイスを使用して投与され、前記デバイスが、前記腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、前記開口端を通して前記組成物または調製物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含み、前記方法が、
a)前記開口端を腟腔に導入することと、
b)前記組成物または調製物を前記腟腔に排出し、
それによって前記組成物または調製物を前記腟腔に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項34】
前記組成物を排出することが、前記腟の粘膜または子宮内膜表面を接触させることを含む、請求項33に記載の腟投与のための方法。
【請求項35】
前記女性ヒト対象への投与が、前記対象が砕石位にある間に行われる、請求項33または34に記載の腟投与のための方法。
【請求項36】
前記組成物または調製物が、前記対象が立位にある場合、前記組成物または調製物の大部分が少なくとも5、10、20、または30分間前記腟腔に留まることを可能にする適切な粘度のものである、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記デバイスが、前記腟腔への投与当たり少なくとも約10
6個の生存細菌細胞、好ましくは少なくとも約10
7個のlactobacilliの生存細菌細胞を投与する、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
投与が、3~21日の期間内に1回、2回または3回行われる、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
投与が1回または複数回行われ、場合により、投与が1~6ヶ月の期間にわたって1~4週間ごとに行われる、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法であって、
A.ドナー女性尿生殖路から微生物叢サンプルを提供することであって;工程Aが、以下の工程(1)、(2)、(3)またはその任意の組合せのうちの1つ、2つ、または3つ、及び工程(4)及び(5)の両方を含む、提供すること:
(1)前記微生物叢サンプルに希釈剤を加えて希釈サンプルを作成すること、
(2)試験(例えば、核酸配列決定)のために、前記希釈された微生物叢サンプルの一部を除去すること、
(3)残りの前記微生物叢サンプルを冷蔵または凍結するために予冷すること、
(4)前記冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること、
(5)1つ以上の伝染性病原体の実質的な存在を排除するために前記ドナーを検査すること(例、血液、及び/または子宮腟部分泌物、及び/または尿サンプルの検査)、(b)前記微生物叢の組成及び生存能力を確認すること、または(c)ドナー提供後30~90日以内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって前記女性ドナーの健康状態をさらに確認することの任意の組合せが完了するまで、前記冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること;及び
B.前記実質的に完全な腟微生物叢調製物を規定するために、前記冷蔵または凍結された微生物叢サンプルを隔離から解放することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記調製物が、
(1)前記調製物の全ての検出可能な細菌種の>80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択される、Lactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、及び
(ii)Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項40または41に記載の方法によって得ることができる実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項43】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらが共に、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物が、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む、前記調節物。
【請求項44】
L.gasseriが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の最大10%を構成する、請求項43に記載の単離調製物。
【請求項45】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらが共に、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物が、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む、前記調節物。
【請求項46】
L.inersが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の10%~90%を構成する、請求項45に記載の単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項47】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらが共に、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物が、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む、前記調節物。
【請求項48】
L.inersが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも25%を構成する、請求項47に記載の単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項49】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらが共に、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物が、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む、前記調節物。
【請求項50】
(i)L.jenseniiが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%または70%を構成する;
(ii)L.inersが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%または70%を構成する;または
(iii)L.crispatusが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%または70%を構成する、請求項49に記載の単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項51】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、Lactobacillus iners、Lactobacillus gasseri及びLactobacillus jenseniiを含み、これらが共に、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、さらに、前記調製物が、Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を5%未満含む、前記調製物。
【請求項52】
請求項51に記載の単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、
(ii)L.inersが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%または70%を構成する;
(ii)L.jenseniiが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、または50%を構成する;または
(iii)L.gasseriが、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の最大20%を構成する、前記調製物。
【請求項53】
前記Lactobacillus種が、女性レシピエントの尿生殖路に生着(例えば、定着)することができ、前記調製物が、粘液及び乳酸をさらに含み、任意選択的に、前記調製物が、薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~52のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項54】
lactobacilliの少なくとも約10
6個の生細胞、好ましくは少なくとも約10
7個の生細胞を含む、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~53のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項55】
前記Lactobacillus種が、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間または7週間の期間安定して生着する(例えば、定着)ことができる、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~54のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項56】
前記Lactobacillus種が、少なくとも1回の月経周期、2回の月経周期、3回の月経周期またはそれ以上にわたって安定して生着する(例えば、定着)ことができる、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~55のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項57】
前記調製物が頸腟粘液を含み、少なくとも150mg、200mg、250mg、300mg、またはそれ以上の重量である、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~56のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項58】
凍結後の前記調製物の総CFUまたはVCCが、前記調製物を凍結する前の総CFU/VCCよりも2log未満、好ましくは1log未満低く、任意選択で、前記CFU/VCCが、少なくとも10
6CFU/VCC、少なくとも10
7CFU/VCCまたは少なくとも10
8CFU/VCCである、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~57のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項59】
凍結保護剤が前記調製物に添加されていない、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~58のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【請求項60】
約0.5ml~約2ml、1ml~2ml、または約1.5~1.8mlの投与量を有する、請求項18~23もしくは42のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物、または請求項43~59のいずれか1項に記載の腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月3日に出願された米国仮出願第63/156,328号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
腟は、女性の子宮から体外に通じる線維筋管である。健康な腟には、その宿主を腟感染から保護する微生物、特にLactobacillus属の相互に共生するフローラが定着する。妊娠可能年齢の女性の健康な腟の酸性度(pH約3.8~4.5)は、lactobacilliによる分泌グリコーゲン/グルコースの乳酸及び酢酸への分解に起因すると考えられている。酸性条件は、細菌、原虫及びウイルスを含む多くの病原性微生物及び病原性共生生物の増殖に好ましくない。しかしながら、腟微生物叢の不均衡は、病原性微生物及び病原性共生生物の過剰増殖をもたらし、ディスバイオシス、炎症及び/または感染症をもたらし得る。
【0003】
関与する病原性微生物、例えば細菌性腟炎、腟カンジダ症、及びトリコモナス症ならびにその組合せに応じて、複数の種類の腟感染症(腟炎)が存在する。
【0004】
腟内または経口使用のためのLactobacillus含有製品(例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus rhamnosusまたはLactobacillus gasseriを含む)は、長年にわたって入手可能である。これらの製品には、凍結乾燥Lactobacillus acidophilusまたはヒト起源の他のLactobacillus種(例えば、Lactobacillus rhamnosusまたはLactobacillus gasseri)及び様々な栄養補助剤を含有する腟坐剤が含まれる。これらの製品は、製品が外因性lactobacilliを腟に定着させることができないため、ほとんど効果的でなかった。これは、品質の低さまたは生態学的に不適切な株の使用に起因する可能性がある。
【0005】
腟の微生物ニッチにおける単離された細菌、例えば、単一株の定着及び確立は、in vitro実験から予測することが困難であり、例えば、腟の微生物ニッチにおける異なる細菌種が相互作用することが一般的であり、これらの相互作用は、実験室で再現することが困難である。異なる女性に異なる組成のlactobacilliの種/株が定着し得ること、及びこのlactobacilliの組成が経時的に変化することは十分に確立され、広く受け入れられている。したがって、たとえ細菌種が有望なin vitro結果を示したとしても、それはin vivoで定着または生着せず、所望の治療効果を提供しない可能性があるか、または送達された株(複数可)が集合的に適応して経時的に定着を維持することができないため、効果は一過性である。例えば、腟粘膜(腟上皮細胞-VEC)への付着、抗微生物/抗病原性物質、例えば、過酸化水素及び/またはバクテリオシンを産生する能力、酸性化のために乳酸を産生する能力、ならびに速い倍加時間についての特定の値は、培養中にin vitroで測定されることが多いが、これらの特徴は、特定の株がin vivoで腟ニッチに生着する能力(腟に定着する能力)の予測の成功を日常的にもたらしてはいない。
【0006】
したがって、女性における腟疾患及び有害な健康状態のためのさらなる治療用組成物の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、組成物、実質的に完全な腟微生物叢調製物、それらを産生する方法及び治療方法を提供することによって、この満たされていない必要性に対処する。組成物及び実質的に完全な腟微生物叢調製物は、泌尿生殖路の炎症を含む女性泌尿生殖路の疾患、症状及び/または障害の治療に有効であり、忍容性が高く、有害作用がなく、及び/または腟ニッチに効果的に定着する。
【0008】
例えば、第1の態様について論じられているトピックは、技術的文脈がそうでないことを要求しない限り、または論じられているトピックが1つの態様のみに明確に関連しない限り、第2の態様及び任意の他の態様にも適用されることを理解されたい。例えば、第1の態様の文脈において、実質的に完全な腟微生物叢調製物はLactobacillus属の4つの細菌種を含み、1~4つの細菌種は調製物の約80~99.9%を構成し、1~4つのLactobacillusは、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含むことが言及される。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus inersを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含んでもよい。
【0009】
第2の態様または他の態様の文脈において、実質的に完全な腟微生物叢調製物が言及される場合、これはまた、第2の態様については明示的に言及されていない場合であっても、第2の態様または任意の他の態様の実質的に完全な腟微生物叢調製物において、第1の態様と同じLactobacillus種、相対量及び組合せが使用され得ることが意図されることを意味する。
【0010】
したがって、第1、第2、及び任意の他の態様の開示は、関連のない別個の章としてではなく、同じ包括的な原理の実施形態を反映するものとして組み合わせて評価されるものとする。
【0011】
ヒト対象の女性尿生殖路における炎症を治療するのに使用するための医薬組成物が本明細書において第1の態様で説明され、ここで、女性対象は尿生殖路においてディスバイオシス微生物叢を示し、前記方法は、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含み、医薬組成物は実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;及び(ii)5%未満のGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を含み;前記医薬組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0012】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物が本明細書において第2の態様で提供され、調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;及び(ii)Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を<5%含み;ヒト対象の女性の尿生殖路における炎症を治療する際に使用するための薬学的に許容される担体または希釈剤を任意に含み、女性対象は尿生殖路におけるディスバイオシス微生物叢を示す。
【0013】
実質的に完全な腟微生物叢調製物またはこれを含む医薬組成物が本明細書において第3の態様で提供され、前記調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;及び(ii)5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含み;医薬組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0014】
腟投与用に製剤化された本明細書に記載の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む剤形であって、固体、半固体、液体製剤またはフィルム形成製剤である、剤形が本明細書において第4の態様で提供される。
【0015】
第5の態様では、本発明は、本明細書に記載の剤形を含む腟送達システムを提供し、前記剤形は腟腔への投与に適しており、剤形はアプリケータ、ディスペンサまたは坐剤である。
【0016】
本明細書に記載の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物をヒト女性対象に腟投与する方法が本明細書において第6の態様で提供され、組成物または調製物は、デバイスを使用して投与され、デバイスは、腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、開口端を通して組成物または調製物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含み、方法は、a)開口端を腟腔に導入することと、b)組成物または調製物を腟腔に排出し、それによって組成物または調製物を腟腔に投与することとを含む。
【0017】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法が本明細書において第7の態様で提供され、前記方法は、A.ドナーの女性尿生殖路から微生物叢サンプルを提供することであって;工程Aが、工程(1)、(2)、(3)のうちの1つ、2つ、もしくは3つ、またはその任意の組合せ、ならびに工程(4)及び(5)の両方:(1)希釈剤を微生物叢サンプルに添加して、希釈サンプルを作成すること、(2)試験(例えば、核酸配列決定)のために希釈微生物叢サンプルの一部を除去すること、(3)残りの微生物叢サンプルを冷蔵または凍結するために予冷すること、(4)冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離下で保存すること、(5)(a)1つ以上の伝染性病原体の実質的な存在を排除するためにドナーを試験すること(例えば、血液、及び/または子宮腟部分泌物、及び/または尿サンプル試験)、(b)微生物叢の組成及び生存能力を確認すること、または(c)ドナー提供後30~90日以内の期間に行われる複数のスクリーニング後の検査によって女性ドナーの健康状態をさらに確認することの任意の組合せを任意に完了するまで、冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離下で保持することの、1つ、2つ、または3つを含む、提供すること;及びB.実質的に完全な腟微生物叢調製物を規定するために、冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離から解放することを含む。
【0018】
本明細書に記載の方法によって入手可能な実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第8の態様で提供される。
【0019】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第9の態様で提供され、前記調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは一緒になって、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む。
【0020】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第10の態様で提供され、前記調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは一緒になって、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む。
【0021】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第11の態様で提供され、前記調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらは一緒になって、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む。
【0022】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第12の態様で提供され、前記調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは一緒になって、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、前記調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む。
【0023】
腟投与に適した単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書において第13の態様で提供され、前記調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus gasseri及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは一緒になって、前記調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、さらに前記調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含む。
【0024】
腟送達システムであって;a)組成物を腟腔に投与するのに適した剤形、及びb)実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を含む、腟送達システムが本明細書においてさらなる態様で提供され、ここで、(i)調製物はLactobacillus属由来の1つ~5つの細菌種を含み、及び(ii)1つ~5つの細菌種は調製物の約80~99.9%を構成し、かつ組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、Lactobacillus属由来の1つ~4つの細菌種を含む。実施形態では、剤形は、アプリケータ、ディスペンサまたは坐剤であり得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。
【0025】
調製物は、約80~99.9%のLactobacillus inersを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含み得る。
【0026】
調製物は、病原体及び病原性共生生物を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。病原体または病原性共生生物は、Gardnerella属、Atopobium属、Prevotella属の1つ以上である。調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み得る。
【0027】
調製物は、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。
【0028】
調製物は、ヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。
【0029】
腟微生物叢調製物に加えて、組成物は殺精子剤をさらに含み得る。組成物はさらに酸性化剤を含んでもよい。組成物はさらに乳酸を含んでもよい。調製物はグリカンを含んでもよい。グリカンは粘液であってもよい。
【0030】
調製物は、Lactobacillus属以外の30未満または20未満の種を含み得る。
【0031】
組成物は、腟微生物叢に対して酸性化効果を有し得る。組成物は、4.5以下のpHを有し得る。
【0032】
剤形は、102~1011のCFU/VCCのlactobacilliを含み得る。好ましくは、剤形は、少なくとも106のCFU/VCC、少なくとも107のCFU/VCC、または少なくとも108のCFU/VCCを含む。組成物は、剤形に分配または製剤化されていてもよい。剤形は滅菌包装することができる。
【0033】
アプリケータまたはディスペンサは、腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを備えてもよい。
【0034】
調製物は、培養非依存性方法によって得ることができる。
【0035】
剤形を較正することができる(例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有する)。剤形は、単回使用または複数回使用のデバイスであり得る。剤形は、ポリスチレンまたはポリプロピレン等の不活性ポリマー材料から設計することができる。
【0036】
本明細書中において、さらなる態様では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む腟投与用に製剤化された医薬組成物であって、(i)調製物はLactobacillus属由来の1つ~5つの細菌種を含み、及び(ii)1つ~5つの細菌種は調製物の約80~99.9%を構成し、組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬組成物は、Lactobacillus属由来の1つ~4つの細菌種を含む。調製物は、80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。調製物は、80~99.9%のLactobacillus inersを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含み得る。
【0037】
調製物は、さらなるLactobacillus種をさらに含んでいてもよく、ここで、さらなるLactobacillus種は、低相対量、例えば、0.001%、0.001~0.002%、0.002~0.005%、0.005~0.01%、0.01~0.05%、0.05~0.1%または0.1~1%で存在してもよい。
【0038】
調製物は、病原体及び病原性共生生物を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。病原体または病原性共生生物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属の1つ以上であり得る。調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み得る。調製物は、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まなくてもよい。調製物は、ヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まなくてもよい。
【0039】
組成物はさらに殺精子剤を含んでもよい。組成物はさらに酸性化剤を含んでもよい。組成物はさらに乳酸を含んでもよい。調製物はグリカンを含んでもよい。グリカンは粘液であってもよい。
【0040】
調製物は、Lactobacillus属以外の20未満の種を含み得る。
【0041】
組成物は、4.5以下のpHを有し得る。
【0042】
調製物は、培養非依存性方法によって得ることができる。
【0043】
本明細書において、さらなる態様では、デバイスを使用して実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を、それを必要とするヒト女性対象に腟投与する方法が提供され、デバイスは、腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、開口端を通して組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含み、方法は:a)開口端を腟腔に導入すること、b)組成物を腟腔に排出し、それによって組成物を腟腔に投与することを含む。デバイスは、本明細書に記載のアプリケータまたはディスペンサであってもよい。組成物は、本明細書に記載の医薬組成物であり得る。
【0044】
組成物を放出することは、腟の粘膜または子宮内膜表面を接触させることを含み得る。対象は、腟の健康の改善を必要としている。対象への投与は、対象が砕石位にある間に実施され得る。組成物は、対象が立位にある際に、組成物の大部分が少なくとも5、10、20、または30分間腟腔に留まることを可能にする適切な粘度のものであり得る。
【0045】
デバイスを較正することができる(例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有する)。デバイスは、投与当たり約102~1011のCFUのlactobacilliを投与することができる。好ましくは、デバイスは、少なくとも106のCFU/VCC、少なくとも107のCFU/VCC、または少なくとも108のCFU/VCCを投与することができる。
【0046】
投与は、3~21日以内に1回、2回もしくは3回、または1サイクル当たり1回で、1サイクル、2サイクル、3サイクルまたはそれ以上のサイクルにわたって行われ得る。投与は、1~4週間に1回、1~6ヶ月間の期間で行ってもよい。デバイスは、単回使用デバイスまたは複数回使用デバイスであり得る。
【0047】
この方法は、腟粘膜に1つ以上のLactobacillus種を定着させることをさらに含み得る。1つ以上のLactobacillus種は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つであり得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus inersを含む。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含んでもよい。
【0048】
調製物は、病原体及び病原性共生生物を実質的に含まなくてもよい。病原体または病原性共生生物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属の1つ以上であり得る。調製物は、Gardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を5%未満含み得る。調製物は、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まなくてもよい。調製物は、ヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まなくてもよい。
【0049】
組成物はさらに殺精子剤を含んでもよい。組成物はさらに酸性化剤を含んでもよい。組成物はさらに乳酸を含んでもよい。調製物はグリカンを含んでもよい。グリカンは粘液であってもよい。
【0050】
調製物は、Lactobacillus属以外の20未満の種を含み得る。
【0051】
組成物は、4.5以下のpHを有し得る。組成物は、約pH3.5~4.5の腟管のpHを達成するのに有効なpHを有し得る。
【0052】
調製物は、培養非依存性方法によって得ることができる。
【0053】
本明細書において、別の態様では、上記の剤形(a)及び組成物(b)を含むキットが提供される。剤形(a)及び組成物(b)は、別々の滅菌パッケージにすることができる。剤形は、多剤形であり得る。剤形(a)及び/または組成物(b)は、複数回用量を含み得る。剤形は、単回使用または複数回使用のデバイスであり得る。組成物は、凍結乾燥(freeze-dried)または凍結乾燥(lyophilized)することができる。キットは、凍結乾燥(freeze-dried)または凍結乾燥(lyophilized)組成物のための再懸濁媒体をさらに含み得る。
【0054】
本明細書において、別の態様では、女性ドナーの尿生殖路(例えば、腟の微生物ニッチ)分泌物に由来するLactobacillus属の1~5つ、または1~4つの細菌種を含む実質的に完全な腟微生物叢調製物が提供され、1~5つの細菌種は調製物の約80~99.9%を構成し、前記細菌種の1つ以上の種は女性レシピエントの尿生殖路に生着(例えば、定着)することができる。一実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物はLactobacillus属由来の1つ~4つの細菌種を含む。
【0055】
調製物は、尿生殖路の健康な(例えば、非ディスバイオシス)マイクロバイオーム(例えば、腟の微生物ニッチ)に典型的に見られるLactobacillus種を80~99.9%含み得る。これらのLactobacillus種には、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriが含まれ得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus inersを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。調製物は、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含み得る。
【0056】
調製物は、本明細書に記載の医薬組成物として製剤化され得る。医薬組成物は、抗生物質、免疫学的薬剤、ホルモン剤、代謝産物またはペプチドで構成される群から選択される活性薬剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、医薬組成物に含まれる調製物に添加される少なくとも1つのLactobacillus株を含み得る。医薬組成物は、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、粉末、カプセル、洗浄液用溶液、卵、腟用インサート、タンポン、錠剤またはマイクロカプセル化製品の形態であり得る。
【0057】
本明細書において、別の態様では、先行請求項のいずれか1項に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法が提供され、前記方法は:A.ドナー女性尿生殖路から微生物叢サンプルを提供することであって、工程Aが、任意に(1)、(2)、(3)、(4)、(5)またはその任意の組合せ:(1)希釈剤を微生物叢サンプルに添加して希釈サンプルを作製すること、(2)試験(例えば、核酸配列決定)のために希釈微生物叢サンプルの一部を除去すること、(3)残りの微生物叢サンプルを冷蔵または凍結するために予冷すること、(4)冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離下で保存すること、(5)(a)1つ以上の伝染性病原体の実質的な存在を排除するためにドナーを試験すること(例えば、血液、及び/または子宮腟部分泌物、及び/または尿サンプル検査)、(b)微生物叢の組成及び生存能力を確認すること、または(c)ドナー提供後30~90日の期間内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって女性ドナーの健康をさらに確認することの任意の組合せを完了するまで、冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離下で保持することを含む、提供すること;及びB.実質的に完全な腟微生物叢調製物を規定するために、冷蔵または凍結微生物叢サンプルを隔離から解放することを含む。
【0058】
ドナー女性由来の微生物叢サンプルは、子宮腟部分泌物であり得る。微生物叢サンプルはグリカンを含み得る。グリカンは粘液であってもよい。微生物叢サンプルの重量は、少なくとも100mg、150mg、200mgまたはそれ以上であり得る。微生物叢サンプルは、尿生殖路の健康な(例えば、非ディスバイオシス)マイクロバイオーム(例えば、腟の微生物ニッチ)に典型的に見られるLactobacillus種を80~99.9%含み得る。これらのLactobacillus種は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み得る。微生物叢サンプルは、約80~99.9%のLactobacillus crispatusを含み得る。微生物叢サンプルは、約80~99.9%のLactobacillus inersを含み得る。微生物叢サンプルは、約80~99.9%のLactobacillus jenseniiを含み得る。微生物叢サンプルは、約80~99.9%のLactobacillus gasseriを含み得る。微生物叢サンプルは、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99.9%含み得る。
【0059】
本方法の工程Bは、微生物叢サンプルが病原体及び病原性共生生物を実質的に含まないと判定することを含み得る。工程Bは、微生物叢サンプルがGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を実質的に含まないと判定することを含み得る。工程Bは、微生物叢サンプルが抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まないと判定することを含み得る。工程Bは、微生物叢サンプルがヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まないと判定することを含み得る。工程Bは、女性ドナーが、(i)細菌性腟炎に関与する細菌(例えば、Gardnerella属、及びPrevotella属)、(ii)酵母(例えば、Candida、Cryptococcus及びSaccharomycesの種)、(iii)性感染病原体(例えば、Neisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis及びTrichomonas vaginalis)、(iv)尿路感染症に関与する細菌(例えば、E.coli、Staphylococcus、Chlamydia及びMycoplasma)、及び(v)ウイルス(例えば、HIV、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HSV-2)、またはその任意の組合せのうちのいずれか1つ以上(2つ以上、3つ以上、または4つ以上)を実質的に含まないと判定することを含み得る。
【0060】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路における健康なヒト腟微生物叢のバランスを回復させる方法であって、そのような回復を必要とする対象に、任意に腟送達システムを使用して、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を投与し、それにより、健康な腟微生物叢のバランスを回復させることを含む方法が提供される。女性対象は、尿生殖路においてディスバイオシス微生物叢を示し得、健康な腟微生物叢のバランスを回復させることにより、ディスバイオシスの治療が提供される。女性対象は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物の投与前に、存在するディスバイオシス微生物叢を実質的に減少させるために有効量の抗菌剤(例えば、抗生物質)で治療してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、女性対象は、病原体負荷を低減するために、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与前に腟洗浄に供される。腟洗浄は、生理食塩水、酸性溶液、または消毒液を含むがこれらに限定されない任意の適切な溶液を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、酸性溶液は乳酸であり、任意選択的に、乳酸溶液は約3.5~4.5、任意選択的に約pH3.8~4.3のpHを有する。消毒液はクロルヘキシジンまたはプロビドン(providone)-ヨウ素であり得、ポビドンヨード溶液は約10%または5~10%のポビドンヨードを含む。特定の実施形態では、腟洗浄はクロルヘキシジンを用いて行われ、溶液は約0.5%のクロルヘキシジンを含む。
【0062】
健康な腟微生物叢のバランスを回復することは、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物によって提供される1つ以上の種の定着及び生着を含み得る。健康な腟微生物叢のバランスを回復させることは:実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物の投与前に同じ対象において決定された(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の値と比較した場合、(a)尿生殖路に存在する病原体及び/または病原性共生生物の相対存在量の減少(例えば、10%未満の相対存在量の病原体及び/または病原性共生生物)、(b)50%超(60%超、または70%超)のLactobacillusの相対存在量の増加、(c)1つ以上の炎症促進性マーカーの減少(例えば、局所的または全身的)、及び/または(d)腟のpHの低下(例えば、少なくともpH0.3、0.5、1.0または1.5)、及び/または(e)Ison-Hayスコアリングシステムに基づくグレードの変化(例えば、グレード0またはグレードI)のうちの1つ以上を含み得る。健康な腟微生物叢のバランスを回復することは、1つ以上の乳酸産生細菌によって支配された微生物コミュニティ(例えば、少なくとも50%、60%、70%または少なくとも80%)の生着を含む。
【0063】
乳酸産生細菌の1つ以上の種は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つから選択され得る。
【0064】
健康な腟微生物叢のバランスを回復することは、約pH3.5~4.5の腟管のpHを達成することを含み得る。好ましくは、乳酸産生細菌の1つ以上の種の投与は、腟のpHを約3.7~約4.2、より好ましくは約3.8~約4.0に回復させる。微生物コミュニティは、少なくとも1週間、または少なくとも2、3、4週間、乳酸産生細菌(例えば、lactobacilli)によって支配されたままであり得る。微生物コミュニティは、少なくとも2、3、4、5または少なくとも6ヶ月間、乳酸産生細菌(例えば、lactobacilli)によって支配されたままであり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、調製物の投与は、さらなるLactobacillus種の投与をさらに含み、さらなるLactobacillus種は、低相対量、例えば、0.001%、0.001~0.002%、0.002~0.005%、0.005~0.01%、0.01~0.05%、0.05~0.1%または0.1~1%で存在し得る。
【0066】
この方法は、抗生物質、免疫学的薬剤、及びホルモン剤からなる群から選択される1つ以上の追加の活性剤を投与することを含み得る。
【0067】
対象はコーカサス人であり得る。対象はアジア人であり得る。対象は、黒人/アフリカ人であり得る。対象はヒスパニックであり得る。対象は、妊娠可能年齢または閉経前であり得る。対象は、閉経後の対象であり得る。
【0068】
健康な腟微生物叢のバランスを回復することは、抗病原性微生物ニッチ/腟環境を提供し得る。健康な腟微生物叢のバランスを回復することは、抗炎症性または低炎症性の微生物ニッチ/腟環境を提供し得る。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、腟微小環境においてLactobacillus支配的な微生物叢をもたらし、その結果、腟のpHが低下し、病原性細菌の量が低下し、腟微生物叢のバランスが回復する。さらに、対象が腟症状を全く示さないとしても、ディスバイオシスの腟ニッチの炎症が治療される。
【0069】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路におけるディスバイオシスを治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意で請求項のいずれか1項に記載の腟送達システムを使用して投与し、それによりディスバイオシスを治療することを含む方法が提供される。ディスバイオシスは、尿生殖路の感染に関連し得る。感染は、(再発性)細菌性腟炎(BV)、腟カンジダ症及びトリコモナス症の1つ以上であり得る。
【0070】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路における(慢性)炎症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意で請求項のいずれか1項に記載の腟送達システムを使用して投与し、それにより炎症を治療することを含む方法が提供される。
【0071】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路における(再発性)細菌性腟炎(BV)を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意で腟送達システムを使用して投与し、それにより(再発性)BVを治療することを含む方法が提供される。
【0072】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路における腟カンジダ症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意で腟送達システムを使用して投与し、それにより腟カンジダ症を治療することを含む方法が提供される。
【0073】
本明細書において、他の態様では、ヒト対象の女性尿生殖路におけるトリコモナス症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意で腟送達システムを使用して投与し、それによりトリコモナス症を治療することを含む方法が提供される。
【0074】
本明細書に記載の方法は、抗生物質、抗真菌剤、免疫学的薬剤、及びホルモン剤からなる群から選択される1つ以上の追加の活性剤を投与することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】実質的に完全な腟微生物叢調製物を産生するためのドナープログラムの概略図である。ドナーは、マイクロバイオーム配列決定、医学的検査、及び特定の疾患の非存在に基づいて選択された。試験は、ドナー提供来院の前後の両方で実施した。ドナーによって提供された全てのサンプルを品質管理(例えば、
図5を参照されたい)に供した。サンプルは、ドナー及びサンプルが全ての要件を満たした場合にのみ放出された。
【
図2】子宮腟部分泌物を得るための適切なドナーを同定するためにショットガンDNA配列決定によって評価された96人の女性対象のコホートからの腟マイクロバイオームの分布を示す。細菌の相対存在量を測定し、示された分類パラメータを使用して、対象を「健康」、「ディスバイオシス」及び「未定義」として分類した。
【
図3】ショットガン配列決定によって評価した、健康な腟マイクロバイオーム(n=61)を有する96人の女性対象(
図2を参照されたい)のコホートからのドナーにおける相対的な細菌存在量の積み重ね棒グラフを示す。このグラフ中の全てのドナーマイクロバイオームは、少なくとも80%の腟Lactobacillus種(Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus iners)またはその混合物、及び5%未満の選択された病原体(Atopobium属、Prevotella属、B.vaginale、及びF.vaginae)またはその混合物を含有する。
【
図4】ショットガン配列決定によって評価した、ディスバイオシス腟マイクロバイオーム(左、n=27)または未定義のマイクロバイオーム(右、n=8)を有する96人の女性対象(
図2を参照されたい)のコホートからのドナーにおける相対的細菌存在量の積み重ね棒グラフを示す。ディスバイオシスマイクロバイオームは、選択された腟病原体(Atopobium属、Prevotella属、B.vaginale、及びF.vaginae)またはその混合物からの少なくとも20%の種、及び10%未満の腟Lactobacillus種(Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus iners)またはその混合物を含有する。
【
図5A】子宮腟部分泌物を得るための例示的な手順及びその処理を示すフローチャートを示す。
図5Aは一般的な概要を提供し、
図5Bは手順の具体的な例示的実施形態を提供する。分泌物を、特性評価、及び品質管理(例えば、生存率カウント、DNA配列決定及び病原体スクリーニングを含む)ならびに実質的に完全な腟微生物叢調製物への加工のためのサンプルに分割した。
【
図5B】子宮腟部分泌物を得るための例示的な手順及びその処理を示すフローチャートを示す。
図5Aは一般的な概要を提供し、
図5Bは手順の具体的な例示的実施形態を提供する。分泌物を、特性評価、及び品質管理(例えば、生存率カウント、DNA配列決定及び病原体スクリーニングを含む)ならびに実質的に完全な腟微生物叢調製物への加工のためのサンプルに分割した。
【
図6A】
図6A~6Cは、ショットガン配列決定によって評価した、9人のドナー(A~I)由来の実質的に完全な腟微生物叢調製物中に存在する4つの主要なLactobacillus種の積み重ね棒グラフを示す。8回の代表的なドナー提供来院の結果が、各ドナーについて示されている。存在する場合、垂直線は、再発ドナーとしての新しい来院回を示す。
【
図6B】
図6A~6Cは、ショットガン配列決定によって評価した、9人のドナー(A~I)由来の実質的に完全な腟微生物叢調製物中に存在する4つの主要なLactobacillus種の積み重ね棒グラフを示す。8回の代表的なドナー提供来院の結果が、各ドナーについて示されている。存在する場合、垂直線は、再発ドナーとしての新しい来院回を示す。
【
図6C】
図6A~6Cは、ショットガン配列決定によって評価した、9人のドナー(A~I)由来の実質的に完全な腟微生物叢調製物中に存在する4つの主要なLactobacillus種の積み重ね棒グラフを示す。8回の代表的なドナー提供来院の結果が、各ドナーについて示されている。存在する場合、垂直線は、再発ドナーとしての新しい来院回を示す。
【
図7】-80℃で最大11ヶ月間貯蔵した後の実質的に完全な腟微生物叢調製物の安定性を示すプロットを示す。各データ点は1つのサンプルを表し;各接続線は、1人のドナーの1回の提供来院からのサンプルを示す。同様の記号及び陰影は、同様のマイクロバイオームを示す。
【
図8】-80℃から解凍した後の実質的に完全な腟微生物叢調製物の生存率の棒グラフを示す。A.サンプルを徐々に解凍し、約30℃まで加温する。B.細胞生存率に対する周囲温度(RT=室温)での反復凍結解凍サイクルまたは長期インキュベーションの効果。
【
図9A】
図9A~9Bは、ショットガン配列決定によって測定した、実質的に完全な腟微生物叢調製物の2人のレシピエント(A~B)及びそのそれぞれのドナーにおける相対的細菌存在量の積み重ね棒グラフを示す。スクリーニング時のマイクロバイオームに基づいて、全てのレシピエントを登録し;投与直前にベースラインマイクロバイオームサンプルを採取した。アスタリスク(*)は、サンプルが採取される前に1回の月経が起こったことを示す。2つのアスタリスク(**)は、2回の月経周期が経過したことを示す。
【
図9B】
図9A~9Bは、ショットガン配列決定によって測定した、実質的に完全な腟微生物叢調製物の2人のレシピエント(A~B)及びそのそれぞれのドナーにおける相対的細菌存在量の積み重ね棒グラフを示す。スクリーニング時のマイクロバイオームに基づいて、全てのレシピエントを登録し;投与直前にベースラインマイクロバイオームサンプルを採取した。アスタリスク(*)は、サンプルが採取される前に1回の月経が起こったことを示す。2つのアスタリスク(**)は、2回の月経周期が経過したことを示す。
【
図10】実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与前及び投与後の2人のレシピエント、ならびにそのそれぞれのドナーについての主成分分析(PCA)プロットを示す。入力値として使用される変数は、ショットガン配列決定によって測定される細菌種の相対存在量である。
図9のグラフと同じ入力値を使用した。
【
図11A】ディスバイオシス(n=19)及び健康(n=41)のマイクロバイオームを有する女性を比較した、スクリーニングコホート(n=60)における炎症マーカーのパネルのプロットを示す。A.PCAプロット(各ドットは1人の女性に対応し;92の炎症パネルマーカーを変数として使用した)。アスタリスク(*)は、例えばCandida等の認識されていない感染症を有する可能性がある健康なマイクロバイオームを有する女性を示す。B.細菌性腟炎に関連する選択された炎症マーカーの箱ひげ図。
【
図11B】ディスバイオシス(n=19)及び健康(n=41)のマイクロバイオームを有する女性を比較した、スクリーニングコホート(n=60)における炎症マーカーのパネルのプロットを示す。A.PCAプロット(各ドットは1人の女性に対応し;92の炎症パネルマーカーを変数として使用した)。アスタリスク(*)は、例えばCandida等の認識されていない感染症を有する可能性がある健康なマイクロバイオームを有する女性を示す。B.細菌性腟炎に関連する選択された炎症マーカーの箱ひげ図。
【
図12A】実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与前及び投与後のレシピエント2における、
図11に記載される炎症パネルからの炎症マーカーのプロットを示す。A.ドナーサンプル及び比較のためのスクリーニングコホートのサブセットと比較した、投与前及び投与後のレシピエントにおける炎症状態のシフトを示すPCAプロット。92の炎症パネルマーカーを変数として使用した。B.投与前及び投与後のレシピエント2のドットプロットであり、スクリーニングコホートについて
図11Bと同じ選択された炎症マーカーを示す。水平線は中央値を表し;各ドットは技術的複製を表し:各時点について、同じサンプルの2つのアリコートを使用し、それらを2つ組で実行した。
【
図12B】実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与前及び投与後のレシピエント2における、
図11に記載される炎症パネルからの炎症マーカーのプロットを示す。A.ドナーサンプル及び比較のためのスクリーニングコホートのサブセットと比較した、投与前及び投与後のレシピエントにおける炎症状態のシフトを示すPCAプロット。92の炎症パネルマーカーを変数として使用した。B.投与前及び投与後のレシピエント2のドットプロットであり、スクリーニングコホートについて
図11Bと同じ選択された炎症マーカーを示す。水平線は中央値を表し;各ドットは技術的複製を表し:各時点について、同じサンプルの2つのアリコートを使用し、それらを2つ組で実行した。
【
図13】
図13は、3つの異なる設定(
図13A、
図13B及び
図13C)における例示的な腟送達システム(100)を示す。
図13Aは、予め充填された構成の腟送達システムを示す。基本的な分配デバイス(102)は、分配端(例えば、プランジャまたはピストン)(101)であって、任意選択的に手動または電気機械的に構成されていてもよい分配端;及び腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)(105)であって、任意選択的に、腟腔への挿入を改善するのに適した任意の形態に成形することができる開口端、を含む。任意選択的に、デバイス(102)は、あるタイプの較正部(104)を含み、例えば、投与を支援するために、例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有する。予め充填された構成では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物(103)(例えば、凍結形態または液体形態)は、分注デバイス(102)に含まれる。組成物(103)を投与するために、分配端(101)は、いくらかの力によって分配デバイス(102)内に押し込まれ、組成物は、開口端(105)を通って、例えば腟腔に排出される。内容物が凍結形態で提供される場合、ユーザは、投与前に最初に凍結内容物(103)を解凍する。
図13Bは、代替的な構成の腟送達システム(100)を示す。分配デバイス(102)は、予め充填されておらず、空である。実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物(103)は、分注デバイス(102)とは別個に、例えば、クライオバイアルまたは他の適切な貯蔵容器等のキャップ(106)を有する容器(107)内に提供される。分配デバイス及び容器は、別々に包装、出荷、及び/または保管することができる。次いで、ユーザは、通常、使用(例えば、泌尿生殖路への投与)の直前に、容器(107)の内容物(103)を分配し、内容物を分配デバイス(102)に分配する。必要に応じて、内容物(103)を凍結させることができ、この場合、ユーザは投与前に凍結内容物(103)を解凍するか、または内容物(103)を凍結乾燥形態で提供することができ、この場合、ユーザは投与前に凍結乾燥内容物(103)を再水和させる。分配端(101)は、図示のように、分配デバイス(102)から取り外された状態で提供されてもよく、または代替的にそれに取り付けられ、その後、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物(103)で分配デバイス(102)を充填する直前に取り外されてもよい。
図13Cは、代替的な構成の腟送達システム(100)を示す。分配デバイス(108)は、分配端(101)及び開口端(105)を含むが、(102)とは異なり、分配デバイス(108)は、例えば迅速な接続を可能にするために、カートリッジ等の容器(109)との接続を可能にするドッキングプラットフォーム(110)を含む。任意選択的に、容器(109)は、分配デバイス(108)内で、例えばドッキングプラットフォーム(110)と分配端(101)との間の適切な空間内に装填することができる。容器(109)は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物(103)と、任意選択的に、あるタイプの較正部(104)と、両端のキャップ(106)と、を含む。容器(109)の一端を分配デバイス(108)のドッキングプラットフォーム(110)に接続し、他端を分配端(101)に接続することができる。容器(109)のキャップ(106)は、それらのシールがドッキングプラットフォーム(110)及び分配端(101)と接触すると破壊されるように構成されてもよく、例えば、内容物(103)を放出するためにドッキングプラットフォーム(110)及び分配端(101)の両方によって穿孔され得る軟質材料(例えば、ゴムまたは他の軟質ポリマーもしくはフィルム等)から作られる。 全ての構成は、単回使用または複数回使用の用途に適合させることができる。例えば、
図13Cに例示されている腟送達システム(100)は、腟送達システムの分配端(101)を分配デバイス(108、破線)に永久的に取り付けたままにすることによって複数回使用に適合させることができ、(105)及び/または(110)を構成して、各使用後に廃棄されるようにするか、または洗浄可能/滅菌可能な複数回使用可能材料で作られ、デバイス(108)から取り外し可能となるようにすることができる。
【
図14】最初の臨床試験の設計を示す。本試験は、レシピエントへの実質的に完全な腟微生物叢調製物の3回の連続投与が行われた場合の腟マイクロバイオームのシフトを調査し、マッピングする。レシピエントは、腟サンプルのメタゲノム配列決定から、定義された基準に基づいて、腟ディスバイオシスを有するかどうかスクリーニングする。
【
図15】実質的に完全な腟微生物叢調製物と共に抗生物質を投与する臨床試験の例示的な設計の概略図である。
【
図16】第2の臨床試験の設計を示す。本試験は、実質的に完全な腟微生物叢調製物のレシピエントへの最大3回の投与が行われ、フォローアップ来院及び治療成功の評価によって分離された場合の腟マイクロバイオームのシフトを調査し、マッピングする。レシピエントは、腟サンプルのメタゲノム配列決定から、定義された基準に基づいて、腟ディスバイオシスを有するかどうかスクリーニングする。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物、デバイス及びキット、ならびにそれらを作製及び使用する方法に関する。腟微生物叢の組成物が関与している状態及び疾患の予防または治療のための腟微生物叢の調節のための実質的に完全な腟微生物叢調製物及び組成物が本明細書で提供される。本出願人は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を作製するための安全で効果的なプロセスを開発しており、それを投与及び使用して、例えば、女性尿生殖路における健康なヒト腟微生物叢のバランスを回復または維持し、ディスバイオシス及び/または炎症状態を治療するためのデバイス及び方法を提供する。
【0077】
腟フローラ、腟微生物ニッチ
【0078】
健康な腟フローラは、主に乳酸菌、主にLactobacillusの種(腟の微生物ニッチに存在する)が生息する酸性環境を特徴とする。健康女性における微生物組成は異なり得るが、典型的には、4つのLactobacillus種:L.crispatus、L.iners、L.gasseri、L.jensenii及びその混合物のうちの1つが支配的である。妊娠可能年齢の女性の健康な腟は、流体1グラム当たり107~109のコロニー形成単位の乳酸産生細菌(例えば、Lactobacillus)が支配的であると推定される。種の分布は、地理的背景、異なる人種(例えば、アジア人、白人女性、黒人、ヒスパニック)、年齢、ライフスタイル等の女性間で異なる。腟フローラの組成はまた、どの特定の株及び/または種が女性の母親から遺伝したか、及び/またはどの株及び/または種が女性の消化管から泌尿生殖路に移動したかによって影響を受ける。健康な妊娠能力のある女性は、主に乳酸産生の結果として、腟に約3~5.5(より具体的には、pH3.5~4.5)のpHを示す。腟のpHは、誕生から閉経まで生理学的に変化する。4.0~4.5を超える腟pHの上昇は、Lactobacillus細菌の生存にとって有害であるが、他の微生物にとっては有害ではない。腟lactobacilliは、病原性微生物(例えば、酵母(Candida albicans)、Trichomonas vaginalis、Neisseria gonorrhoeae、及びChlamydia trachomatis、ならびにウイルス、例えば、HIV、HSV-2、及び様々な嫌気性生物)の腟での定着に対する保護効果を有し、例えば、Gardnerella vaginalis、Mobiluncus、Bacteroides、Prevotella及びEscherichia coli等の結腸に存在する細菌の腟での定着を防ぐと考えられている。
【0079】
いくつかの要因が腟フローラの撹乱に寄与し得る。要因としては、a)腟内のlactobacilliのレベルの有意な低下をもたらし得る病原性細菌を死滅させるための抗生物質の使用;b)ホルモン変化、特に女性の生涯のいくつかの段階(例えば、思春期、妊娠、妊娠可能年齢、閉経前及び閉経後)で観察されるエストロゲンレベルの変化(エストロゲンレベルは、腟におけるLactobacillusレベル(優位性)と関連していると考えられている);c)腟フローラを撹乱し得るpH上昇(精液は一般にアルカリ性である)に関連し得る性交(腟のpHが上昇すると、lactobacilli以外の細菌が繁殖し始める可能性があるため);d)医薬、例えば化学療法剤または抗真菌剤の使用;e)受胎調節製品の使用;f)月経中;g)(例えば、直腸から泌尿生殖器領域への微生物の望ましくない拡散を促進する)不十分な衛生状態;h)全身の健康状態(例えば、糖尿病に罹患している)が挙げられ得る。
【0080】
腟フローラの撹乱は、腟ディスバイオシス及び腟障害、例えば、世界中の女性に影響を及ぼす2つの一般的な腟障害であるカンジダ症及び細菌性腟炎をもたらし得る。細菌性腟炎は、腟乳酸産生細菌が、Gardnerella vaginalis、Bacteroides、Mobiluncus、Prevotella及びMycoplasma hominis等の様々な望ましくない種によって置換され、置き換えられた結果であると考えられている。腟感染症は、最も多くの場合、Escherichia、Enterococcus、Pseudomonas、Proteus、Klebsiella、Streptococcus、Staphylococcus、Gardnerella、Ureaplasma、Bacteroides、Peptococcus、Neisseria、Serratia、Corynebacterium、Clostridium、及びCandidaの1つ以上に関連している。
【0081】
腟lactobacilliの優位性は、乳酸の産生及び腟の酸性化、ならびに、例えば、過酸化水素等の他の抗菌生成物の産生による感染に対する耐性において重要な役割を果たすと考えられている。腟におけるlactobacilliの存在は、細菌性腟炎、酵母腟炎、及びNeisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis、及びTrichomonas vaginalisを含む性感染性病原体の頻度の低下に関連している。Lactobacillusの優位性は民族群間で異なる(アジア人及び白人女性において非常に優勢であるが、黒人及びヒスパニック女性ではそれほどではないと考えられているが、依然として大多数を占めている)。
【0082】
試験により、Lactobacillusが枯渇したコミュニティは、一過性であり、わずか数日間持続し得るが、他の例では、枯渇したコミュニティは、何週間も持続することが示されている。Lactobacillusが枯渇したコミュニティを有する一部の女性は、無症候性で健康なままである。しかしながら、そのような女性は、感染症及び性感染症(STD)のリスクがより高い可能性がある。
【0083】
いくつかの実施形態では、腟フローラは、撹乱された腟フローラに、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びその組成物を補充または追加することによって回復される。
【0084】
実質的に完全な腟微生物叢調製物及びlactobacilli
【0085】
本発明の態様は、実質的に完全な腟微生物叢調製物、それを作製及び使用する方法、ならびにそれを含む医薬組成物に関する。健康な腟フローラをそれを必要とする女性対象に補充するための非抗生物質の生態学的に適切なアプローチの開発に大きな関心が寄せられている。本明細書に記載される実質的に完全な腟微生物叢調製物は、単離され、培養増殖された定義された、もしくは単一の株の組成物、または複数の単離され、培養増殖された株を含む組成物を使用することによって過去に遭遇した問題の解決策を提供する。問題としては、腟腔を含む泌尿生殖路における投与された株の腟定着及び生着の欠如が挙げられる。本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、例えば、健康な腟微生物叢の維持のために腟の微生物ニッチを調節するため、及び不均衡な腟微生物叢の回復を助けるために腟腔に投与することができる。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、投与時に腟の微生物ニッチに効率的に定着することができるという点で、単一の培養増殖株を含有する組成物に好ましく、有利であることが見出された。
【0086】
女性泌尿生殖路(生殖器-尿路としても知られる)は、相互接続された生物地理学的ニッチからなる。腟の微生物コミュニティからの細菌は、子宮頸部を通って泌尿生殖路の遠隔部位に移動することができる。腟の微生物コミュニティにおけるディスバイオシスは、遠隔部位におけるディスバイオシスをもたらし得る。これらの部位でのディスバイオシスは、尿路感染症(UTI)及び骨盤炎症性疾患(PID)を含む様々な疾患及び状態に関連している。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物の腟への投与は、泌尿生殖路の遠隔部位におけるディスバイオシスの解消を含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus属の1、2、3、4または5つの異なる細菌種を含む。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの異なる細菌種を含む。いくつかの実施形態では、細菌種は、調製物(調製物の全ての検出可能な細菌分類群(例えば、種)の合計)の約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約99.9%、80~99%、75%~95%、85%~95%、85%~99%、または90%~99%を構成する。
【0088】
いくつかの実施形態において、調製物は、(a)~(o)Lactobacillus種及び種の組合せのうちの1つを含む:a)Lactobacillus crispatus;(b)Lactobacillus iners;(c)Lactobacillus jensenii;(d)Lactobacillus gasseri;(e)Lactobacillus crispatus及びLactobacillus iners;(f)Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jensenii;(g)Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseri;(h)Lactobacillus iners及びLactobacillus jensenii;(i)Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseri;(j)Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseri;(k)Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jensenii;(l)Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseri;(m)Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseri;(n)Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseri;(o)Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseri。
【0089】
一態様では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、;及び(ii)5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含み;医薬組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つの細菌種を含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatusを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus inersを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus jenseniiを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus gasseriを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の2つの細菌種を含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の3つの細菌種を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びjenseniiを含む。いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%はLactobacillus crispatus及びLactobacillus iners及びgasseriを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の4つの細菌種を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、Lactobacillus crispatusまたはLactobacillus inersは、調製物の他の細菌種よりも多い相対量で存在し、例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物の全ての検出可能な細菌種の80~99.9%がLactobacillus crispatusであり得、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1%未満の他の細菌種をさらに含んでいてもよい。
【0096】
さらなるLactobacillus種
【0097】
いくつかの実施形態において、1つ以上のさらなるLactobacillus種が、少量(例えば、調製物のLactobacillus種の20%、15%、10%、5%、2%、1%未満)で調製物中に存在する。いくつかの実施形態では、これらのlactobacilli種は、実質的に完全な腟微生物叢調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01~1%、0.02~0.5%または0.01~0.3%の濃度で存在する。
【0098】
さらなる実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jenseniiまたはLactobacillus gasseri以外のさらなるlactobacilliを含み、ここで、さらなるLactobacillus種は、例えば、Lactobacillus acidophilus、Limosilactobacillus fermentum(以前はLactobacillus fermentumとして知られていた)、Lacticaseibacillus casei(以前はLactobacillus caseiとして知られていた)、及びLacticaseibacillus rhamnosus(以前はLactobacillus rhamnosusとして知られていた)を含む。本明細書で使用される場合、Limosilactobacillus fermentum、Lacticaseibacillus casei、Lacticaseibacillus rhamnosusは、Lactobacillusと呼ばれ、Lactobacillusの意味に含まれる。
【0099】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、5%未満のGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、10%未満、7%未満、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。本発明の調製物は、5%未満のGardnerella vaginalis、Atopobium属、及びPrevotella属及びFannyhessa vaginaeをさらに含むことができる。Gardnerella vaginalisは、歴史的に誤って分類されており、近年、Bifidobacteria属に属するとして再分類された。したがって、Gardnerella vaginalis及びBifidobacterium vaginalisという用語は互換的に使用される。Atopobium vaginae及びFannyhessea vagineaもまた、本出願を通して交換可能に使用される。
【0100】
動物またはヒト身体から分離された実質的に完全な腟微生物叢調製物(単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物)が本明細書で提供される。したがって、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、単離された実質的に完全な腟微生物叢調製物と交換可能に使用される。
【0101】
Lactobacillus crispatus優性調製物
【0102】
Lactobacillus crispatusが、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのそれぞれよりも多量に存在する、Lactobacillus crispatus優勢の実質的に完全な腟微生物叢調製物が本明細書で提供される。Lactobacillus crispatus優性の実質的に完全な腟微生物叢調製物の好ましい態様及び実施形態を以下に提供する。
【0103】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%の相対量でLactobacillus crispatusを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の90%、95%、99%または99.9%を超える相対量でLactobacillus crispatusを含む。いくつかの実施形態では、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriの種は、調製物中に検出可能な量で存在しない。
【0104】
他の態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseri及び/またはLactobacillus jenseniiを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の最大5%、10%、20%または30%を構成する。いくつかの実施形態において、本発明の調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約5~40%、例えば5~10%、10~20%、20~30%または30~40%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも5%、10%、20%、または30%を構成する。
【0105】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseri及び/またはLactobacillus inersを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約45%を構成する。いくつかの実施形態において、本発明の調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01~5%、5~10%、10~20%または30~40%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01%~5%を構成する。
【0106】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseriを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約20%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01~約15%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の約2%~15%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の約2%~10%を構成する。いくつかの実施形態において、本発明の調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01~5%、5~10%、または10~20%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01~5%、5~10%、または10~20%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、全ての検出可能な細菌種の最大15%を構成する。
【0107】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%、70%、または80%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01%~20%、0.2~15%または0.2~10%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01%~約5%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも60%を構成し、さらに、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~約10%を構成する。
【0108】
Lactobacillus iners優性調製物
【0109】
本発明はさらに、Lactobacillus inersが、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのそれぞれよりも多量に存在する、Lactobacillus iners優勢の実質的に完全な腟微生物叢調製物を提供する。Lactobacillus iners優性の実質的に完全な腟微生物叢調製物の好ましい態様及び実施形態を以下に提供する。
【0110】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%の相対量でLactobacillus inersを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の90%、95%、99%または99.9%を超える相対量でLactobacillus inersを含む。いくつかの実施形態では、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriの種は、調製物中に検出可能な量で存在しない。
【0111】
他の態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseriを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の20%未満、10%未満または5%未満を構成する。いくつかの実施形態において、本発明の調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~10%、0.01~5%、0.01~2%または0.01~1%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus crispatusを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも70%、Lactobacillus crispatusは、20%未満を構成する。
【0112】
他の態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseri及び/またはLactobacillus crispatusを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の1%、0.5%、0.2%、0.1%、0.05%または0.01%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01%~0.05%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも70%、Lactobacillus jenseniiは1%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも80%、Lactobacillus jenseniiは0.1%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも90%、Lactobacillus jenseniiは0.1%未満を構成する。
【0113】
他の態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus jensenii及び/またはLactobacillus crispatusを含まない。いくつかの実施形態では、Lactobacillus jensenii及び/またはLactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.1%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus gasseriは、調製物の全ての検出可能な細菌種の5%、4%、3%、2%または1%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus gasseriは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~5%、1~4%または1~3%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも70%、Lactobacillus gasseriは5%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも80%、Lactobacillus gasseriは5%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも90%、Lactobacillus gasseriは5%未満を構成する。
【0114】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus、及びLactobacillus jenseniiを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus gasseriを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約10%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約5%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01%~1%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus jenseniiを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus jenseniiはそれぞれ、調製物における全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。
【0115】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus、及びLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus jenseniiを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約10%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも0.01%~約5%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の約0.01%~1%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus gasseriは、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus crispatusは、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus iners、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の2%、1%、0.5%、0.2%未満を構成する。
【0116】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%、60%、70%、または80%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01%~25%、0.1~20%または0.2~15%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01%~約5%を構成する。いくつかの実施形態において、調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriを含み、これらは共に、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、Lactobacillus inersは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも50%を構成し、さらに、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus crispatus及びLactobacillus gasseriはそれぞれ、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~約25%を構成する。
【0117】
Lactobacillus jensenii優性調製物
【0118】
本発明はさらに、Lactobacillus jenseniiスが、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners及びLactobacillus gasseriのそれぞれよりも多量に存在する、Lactobacillus jensenii優勢の実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物を提供する。Lactobacillus jensenii優性の実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物の好ましい態様及び実施形態を以下に提供する。
【0119】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%の相対量で共に構成する、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、及びLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の60%、65%、70%または75%を超える相対量でLactobacillus jenseniiを含む。いくつかの実施形態において、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus gasseriのそれぞれは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~約20%を構成する。いくつかの実施形態において、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus gasseriのそれぞれは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.05~約15%を構成する。いくつかの実施形態において、Lactobacillus jenseniiは、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも65%を構成し、さらに、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus gasseriのそれぞれは、調製物の全ての検出可能な細菌種の0.01~約15%を構成する。
【0120】
Lactobacillus gasseri優性調製物
【0121】
本発明はさらに、Lactobacillus gasseriが、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのそれぞれよりも多量に存在する、Lactobacillus gasseri優勢の実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物を提供する。Lactobacillus gasseri優性の実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物の好ましい態様及び実施形態を以下に提供する。
【0122】
一態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%の相対量でLactobacillus gasseriを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の90%、95%、99%または99.9%を超える相対量でLactobacillus gasseriを含む。いくつかの実施形態では、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriの種は、調製物中に検出可能な量で存在しない。
【0123】
他の態様では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を共に構成する、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、及び/またはLactobacillus jenseniiを含み;5%未満のGardnerella属、Atopobium属、及びPrevotella属を含む。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus iners及び/またはLactobacillus jenseniiを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus crispatus及び/またはLactobacillus jenseniiを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、検出可能な量のLactobacillus iners及び/またはLactobacillus crispatusを含まない。いくつかの実施形態において、調製物は、調製物の全ての検出可能な細菌種の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%またはそれ以上の相対量でLactobacillus gasseriを含む。
【0124】
実質的に完全な腟微生物叢調製物及びそれを含む医薬組成物は、対象への投与、好ましくは腟投与に適している。対象はヒトであり得る。
【0125】
一態様では、本明細書で提供される実質的に完全な腟微生物叢調製物は、腟投与に適している。さらなる態様では、本明細書で提供される実質的に完全な腟微生物叢調製物は、炎症または炎症に関連する障害の治療に使用するためのものである。さらなる態様では、本明細書で提供される実質的に完全な腟微生物叢調製物は、レシピエントの腟ニッチに生着し、炎症を治療するための有効量の腟lactobacilliを含む。
【0126】
腟ニッチにおけるlactobacilli
【0127】
Lactobacilliは、腟の微生物コミュニティにおける主要な微生物であり、健康な泌尿生殖路の維持において主要な役割を果たす。Lactobacilliは、抗接着因子、過酸化水素、バクテリオシンの分泌及びグリコーゲンの乳酸への発酵を伴うと考えられる機構を介して、病原性微生物の付着及び増殖及び/または病原性共生生物の過剰増殖を防止することができ、それによって病原体及び病原性共生生物に敵対的な酸性環境を作り出すことができる。Lactobacillus属は、グラム陽性、耐気性嫌気性、乳酸産生細菌の表現型的に不均一な群を含む。他の典型的な特徴としては、カタラーゼ陰性及び棒状であることが挙げられ、一般的にグアニン(G)及びシトシン(C)の含有量が約50%未満と低いDNAを有する。それらはFirmicutes門、Bacilli綱、Lactobacillales目及びLactobacillaceae科のメンバーである。当技術分野の当業者は、標準的な技術を使用してLactobacillus種を同定することができるであろう。
【0128】
lactobacilliの種は、表現型的かつ遺伝的に、例えば、16S rRNA(リボソームRNA)配列(または一般的に16S rDNAと呼ばれる16S rRNAをコードするDNA)に基づいて同定することができる。遺伝子分析は、標準的な技術、例えば全ゲノム配列決定分析、ならびに数百のDNA配列及び少数の遺伝子断片におけるヌクレオチド変異に基づく広く使用されているタイピングアプローチを使用して行うことができる:例えば、Marcos Perez-Losada,M.et al.,「Microbial sequence typing in the genomic era」、Infection,Genetics and Evolution,Vol.63,Sep.2018,p.346-359で論じられているMulti-locus Sequence Typing(MLST)、Multi-locus Variable number of tandem repeat Analysis(MLVA))、rMLST及びcgMLST)。
【0129】
他の同定技術には、腟pH、Nugentスコア、Whiff試験、グルコース発酵産物の気液クロマトグラフィー分析、総嫌気性生物濃度、総好気生物濃度、酵素活性(例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼA2及びホスホリパーゼC、過酸化水素の産生)が含まれる。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、単離及び/または培養増殖細菌株(複数可)を含まない(それらに由来しない)。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、例えば、健康な腟フローラを有する女性ドナーの腟管から収集された子宮腟部分泌物(腟液)から調製することができる。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、月経液収集デバイス(ソフトカップまたはソフトディスク)、シリンジ、チューブ、スパチュラもしくはビーカー、または吸収性マトリクス等の市販の収集デバイスを使用する標準的な技術を使用して収集することができる。いくつかの実施形態では、月経液収集デバイスは腟用自己サンプリングデバイスである。腟用自己サンプリングデバイスは、例えば、別の人の助けを借りずに腟液または子宮腟部分泌物を収集するためにドナーによって使用され得る。
【0131】
任意選択で、収集された材料は遠心分離を受けている。遠心分離工程は、腟液成分を物理的に分離することなく、収集を容易にするために実施し得る。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、粘液(例えば、子宮頸部によって分泌される)、排出上皮細胞、腟漏出液、及び女性ドナーからの分泌物中に見られるlactobacilli以外の細菌のうちの1つ以上を含む。粘液及び分泌物の他の成分(他の細菌を含む)は、泌尿生殖路への投与時のLactobacillusの成長及び生存に有益であり、それにより、女性レシピエントにおける生着を支持すると考えられる。これは、単離された株(複数可)を含む組成物を超える利点を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、in vitroで培養(例えば、株分離の目的のために)または増殖されず、むしろ好ましくは4℃の冷蔵庫に保存されるか、または収集後直ちに凍結される(例えば、0℃、-20℃、-80℃、-190℃に凍結)か、または任意選択的に噴霧乾燥または凍結乾燥される。
【0132】
所望であれば、子宮腟部分泌物は、例えば冷蔵または凍結の前に、例えば無菌性のため、及び/または残留粒子、凝集体及び細胞を除去するための濾過、ならびに希釈剤を添加して、例えば本明細書で論じるような所望の体積、濃度(例えば、CFU/mL)及び/または粘度に達するようにさらに処理することができる。任意選択的に、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、剤形に製剤化され、及び/またはアプリケータまたはディスペンサに分配されるまで、冷蔵または凍結されたまま維持される。
【0133】
本明細書中に記載される実質的に完全な腟微生物叢調製物の他の利点には、いくつかの実施形態において、実質的な生着が、単離され、増殖させた株の生着を増大させるために時折使用される、粘膜へのlactobacilliの付着によって定着する能力を増大させるために粘液接着性賦形剤(例えば、親水コロイド、例えばキサンタンガム、ローカストビーンガムアルギネート等)の使用を必要としないことが含まれる。これは、粘液接着性賦形剤によるアレルギー反応等の有害な副作用を誘発するリスクを最小限に抑え、耐性を高める。本明細書中に記載される実質的に完全な腟微生物叢調製物の別の利点は、腟粘膜におけるlactobacilliの効率的かつ長期にわたる生着/定着である。いくつかの実施形態では、定着効果は、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与後、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ以上の月経周期にわたって持続する。
【0134】
本発明の方法及び調製のさらなる利点の1つは、抗生物質による前処置が、ディスバイオシス対象の炎症の治療を成功させるために必要ではないことであり、これは以前は不可能であった。これは、より小さいサンプル濃度または単一株の使用に起因する可能性が高いが、本明細書で提供される調製物は、腟微生物叢の全生態系だけでなく、調製物中のより高い濃度及び/または量の腟微生物叢も含む。最後に、抗生物質の十分な使用または過剰使用は、抗生物質耐性の増加の問題と直接関連している。本調製物は、治療前または治療中に抗生物質を使用することに依存しておらず、したがって、これは本発明のさらなる進歩及び有利な効果である。
【0135】
パイオニア種
【0136】
実質的に完全な腟微生物叢調製物の別の利点は、ドナーの腟微生物叢の実質的に完全な生態系の存在である。特定の実施形態では、0.01%またはさらには0.001%等の非常に少量で存在するlactobacilliであっても、調製物を投与することによってレシピエントへの移入が成功する。理論に束縛されるものではないが、実質的に完全な生態系は、例えば、より高いpHで、最適以下のレシピエントのディスバイオシスの腟ニッチに優先的に定着し、増殖する、例えば、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseri、及び/またはLactobacillus iners等のパイオニア種に最適な増殖条件を提供すると考えられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、本発明のパイオニア種は、最初に、ディスバイオシスの腟ニッチに生着して増殖し、それにより、例えば、代謝産物(アミノ酸を含む)を遊離させ、pHを低下させることができることを特徴とする。これにより、調製物及び腟腔に存在する他のlactobacilliの増殖を促進することが期待される。
【0138】
実質的に完全な生態系を提供することにより、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる腟Lactobacillus種は、ディスバイオシスを逆転させるように協調して作用し、特定の実施形態では、腟マイクロバイオームの「双子化」をもたらし、例えば、レシピエントの腟ニッチにおいてドナーの健康な腟微生物叢の近コピーを再現することができる。
【0139】
Lactobacillus種は、増殖して成長する種特異的な最適pH範囲を有すると考えられる。L.crispatusは、典型的には、約3.7~4.0のpH範囲、より最適にはpH3.7~3.9で良好に増殖する。L.inersは、典型的には、3.9~4.2のpH範囲で最も良好に増殖する。L.gasseri及びL.jenseniiは、約4.0~5.2のpH値で最も良好に増殖する。特に、L.jenseniiは、高pHで良好に増殖することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、これらは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、L.crispatusは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または約99.9%の相対濃度で存在し、さらに、投与後のL.jenseniiの生着率及び/または増殖率は、L.crispatusの生着率及び/または増殖率よりも高い。
【0141】
いくつかの実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、これらは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、L.crispatus及びL.inersは共に約30~45%で存在し、さらに、投与後のL.jenseniiの生着率及び/または増殖率は、L.crispatusの生着率及び/または増殖率と比較してより高い。
【0142】
いくつかの実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、これらは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、L.crispatus及びL.inersは共に約30~45%で存在し、さらに、投与後のL.gasseriの生着率及び/または増殖率は、L.crispatusの生着率及び/または増殖率と比較してより高い。
【0143】
いくつかの実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み、これらは、調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成し、L.crispatus及びL.inersは共に約30~45%で存在し、さらに、投与後のL.inersの生着率及び/または増殖率は、L.crispatusの生着率及び/または増殖率と比較してより高い。
【0144】
いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物は、約3.8~5.0、4.0~5.0、4.0~4.8、4.0~4.6、4.0~4.5、4.2~5.0、4.2~4.8、4.2~4.6、4.4~4.8またはpH4.4~5.0のpHで増殖することができるL.iners、L.gasseri及び/またはL.jensenii種を含む。いくつかの実施形態では、L.iners、L.gasseri及び/またはL.jenseniiの増殖は、レシピエントの腟ニッチのpHをL.crispatusの増殖に適したpHに低下させる。いくつかの実施形態では、L.iners、L.gasseri及び/またはL.jenseniiの増殖は、レシピエントの腟ニッチのpHをL.crispatusの増殖に適したpHに低下させる。いくつかの実施形態では、調製物の投与後、L.iners、L.gasseri及び/またはL.jenseniiのうちの少なくとも1つは、L.crispatusの率よりも高い最も高い生着率及び/または増殖率を有する。
【0145】
実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を使用したディスバイオシスの投与及び治療の成功によって、低い相対量で存在し得る少量の種を含む、ドナーの腟生態系がレシピエントに移入される。
【0146】
実質的に完全な腟微生物叢調製物をディスバイオシスレシピエントに投与した後、パイオニア種、例えば、L.iners、L.gasseri及び/またはL.jenseniiは、例えば、ディスバイオシスの腟ニッチにおける常在pHと適合するより高いpH範囲のそれらの特異的な耐容性に起因する増殖的利点を有し得る。したがって、生態系に含まれるLactobacillus種は、投与後に同じ率で定着及び増殖しない可能性があるが、例えば、ディスバイオシスの腟ニッチのpHに応じて、lactobacilliのサブセット、例えば、生態系のパイオニア種(例えば、L.iners、L.gasseri及び/またはL.jensenii)が最初に増殖するのに有利となり得る。このパイオニア種の初期増殖は、成長するためにより低いpHを好む、例えば、L.crispatus等の「フォロワー種」にとって、ディスバイオシスの腟ニッチを居住可能なものにする。L.iners、L.gasseri及び/またはL.jensenii等のパイオニア種の増殖は、pHレベルを例えばpH4.8から4.0に低下させるのを助け、それによってL.crispatusの増殖のためのより適した条件を作り出すことができる。
【0147】
実質的に完全な腟微生物叢調製物中に存在する異なるLactobacillus種間の相互作用は、ディスバイオシスの治療の成功に影響を及ぼすと予測される。この有利な効果は、単離された株または単離された種では観察できないであろう。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliは、ヒト腟に定着し、確立(生着)することができる。いくつかの実施形態において、定着及び生着は、月経排出中であっても起こる。実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliは、数回の月経周期にわたって投与後に腟内に存在し続けることができる。いくつかの実施形態では、lactobacilliは、腟投与時に1回または複数回(例えば、2、3、4、5または6)の月経周期にわたって腟の微生物ニッチに生着する。滞留時間は、例えば、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与前及び投与後の配列決定結果を比較する等、例えば、特異的なlactobacilliの核酸配列決定を使用して決定することができ、例えば、レシピエントの微生物コミュニティに対する新たに追加されたメンバー(例えば、1つ以上のlactobacilli)の同一性を決定し、次いで、所定の時間間隔(例えば、月経周期の前または後、任意選択的に、いくつかの月経周期にわたって)で、新たに追加されたメンバーの全てまたは特定のサブセットが依然として特定の時間間隔で実質的に存在することを(例えば、核酸配列決定を介して)決定する。いくつかの実施形態では、レシピエントのマイクロバイオームの滞留時間をドナーのマイクロバイオームと比較することができる。滞留時間は、ホルモンレベル(例えば、エストロゲン)、食事、性的活動、腟の酸性状態、ならびに生殖器感染症及び他の微生物撹乱の有無、例えば抗生物質による処置を含む様々な要因に応じて変化し得る。
【0149】
実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliの定着及び生着の成功は、腟腔及び腟の微生物ニッチにおける(例えば、同じ対象(例えば、投与及び生着の前に)または非処置対照対象のベースラインと比較した場合の)、pHの低下、乳酸含量の増加、抗生物質耐性遺伝子の存在量の低下、真菌DNAの量の減少、毒素含量の減少、病原性因子の減少、炎症性サイトカイン及びケモカインの減少、免疫細胞浸潤の減少、総細菌DNA量の減少、総病原性DNA量の減少、粘弾性の増加、シアログリカン含量の増加、病原性共生生物または病原体の相対的もしくは絶対的存在量の減少、またはその任意の組合せの1つ以上によって示され得る。
【0150】
安定性
【0151】
実質的に完全な腟微生物叢調製物、または本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物と共に製剤化された医薬組成物に含まれるlactobacilliは、一般的に、冷蔵庫に4℃で保存した場合には最大1週間、約-18℃、または好ましくは約-80℃で凍結保存した場合には最大数ヶ月(例えば、1、2、3、4、5、6、9、12、15、18、もしくは24ヶ月、またはそれ以上)生存可能である。生存率は経時的に低下する。本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物またはその医薬組成物は、使用前に少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、または少なくとも80%の生存細菌を保持する場合、投与に適している。生細胞は、一般的に、定着及び生着することができる。生存率は、集団中の生存細菌の割合を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物をさらに処理して、例えば生理食塩水等の希釈剤を添加し、例えば医薬組成物を製剤化する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物またはその組成物は、例えば、容易な貯蔵、包装、例えば組成物に製剤化及び輸送のために凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))されるようにさらに処理され、投与前に再水和され得る。
【0152】
いくつかの組成物特徴
【0153】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物等の組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、i)例えば1つ以上のLactobacillus種及び任意選択的に1つ以上の子宮腟部分泌物の残留成分(例えば、腟粘液、腟漏出液、他の腟液、及び腟上皮細胞)を含む実質的に完全な腟微生物叢調製物、ii)薬学的に許容される緩衝剤もしくは希釈剤または他の賦形剤、例えば生理食塩水(例えば、組成物の粘度及び/または等張性/浸透圧を調整するため)、iii)1つ以上の酸性化剤、例えば乳酸またはホウ酸(例えば、組成物のpHを、例えばpH5未満、またはpH3.0~4.5に調整するため)、iv)1つ以上の他の活性剤、例えばプレバイオティクス(例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物とのシンバイオティクス混合物を生成するため)、殺精子剤(例えば、調製物中の残留精子を死滅または不活化するため);ホルモン剤(例えば、エストロゲン)、抗炎症剤等を含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、(i)及び(ii)を含む。一実施形態では、医薬組成物は(i)及び(ii)からなる。一実施形態では、医薬組成物は、(i)及び(ii)を含むが、(iii)及び(iv)を含まない。一実施形態では、医薬組成物は、(i)、(ii)及び(iii)を含むが、(iv)を含まない。一実施形態では、医薬組成物は、(i)、(ii)、(iii)及び殺精子剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プレバイオティクス、ホルモン剤または抗炎症剤を含まない。
【0154】
酸性化剤
【0155】
本明細書中に記載される実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、任意選択的に、1つ以上の酸性化剤、例えば、有機酸またはその塩等を含み得る。いくつかの実施形態では、酸性化剤を使用して、組成物のpHを、例えばpH5.5または5.0未満、例えばpH3.5~4.5、またはpH3.0~4.5に低下させることができる。pHの低下において、そのような酸性化薬は、抗菌剤として(例えば、Candidaまたは病原性細菌を阻害するために)作用し得る。酸性化剤は、例えば、乳酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、葉酸、ソルビン酸またはホウ酸を含む。他の実施形態では、酸性化剤は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物とは別に;例えば、組成物の投与前、投与と同時、または投与後に(例えば、異なる剤形、例えば、坐剤、クリーム、ゲル、粉末、圧注または同様のもので)、例えば、1~7日間、または1~10日間投与される。これらの実施形態では、酸性化剤を使用して、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliの生存及び生着を促進することができる。酸性化剤はまた、殺精子剤として、例えば調製物中に存在し得る残留精子を死滅させるまたは不活性化するために有用であり得る。一実施形態において、殺精子活性は、乳酸を添加することによってもたらされる。一実施形態では、乳酸は、D-及びL-異性体のラセミ混合物として、または例えばD-乳酸のみまたはL-乳酸のみを含む異なる適切な比で提供され得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%または5%の酸性化薬(例えば、乳酸)を添加することによって酸性化される。好ましい実施形態では、酸性化薬は、0.5%~1.5%、または0.2%~2%(w/w)、または健康な腟に適合する同様の濃度で添加される。
【0157】
粘度
【0158】
本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤もしくは希釈剤または他の賦形剤を含み得る。好ましい実施形態では、希釈剤は生理食塩水(例えば、0.9%のNaCl)、例えば滅菌生理食塩水である。一実施形態では、希釈剤は、組成物の粘度を調整するために、例えば、子宮腟部分泌物に由来する実質的に完全な腟微生物叢調製物の粘度を低下させるために使用され、それにより、例えば、アプリケータもしくはディスペンサまたは同様の腟送達システムを使用して、女性レシピエントに組成物を投与する能力を増加させる。他の実施形態では、1つ以上の賦形剤を使用して、組成物を異なる剤形、例えば坐剤、クリームまたは溶解フィルムもしくは錠剤に製剤化する。
【0159】
いくつかの実施形態では、剤形は、液体、固体または半固体である。固体剤形は、好ましくは錠剤、カプセル剤またはフィルムを含む。半固体剤形は、好ましくは、坐剤、軟膏、ゲル、クリームまたは硬質フォームを含む。好ましい実施形態では、剤形はゲルである。
【0160】
例えば、アプリケータまたはディスペンサを使用して、女性レシピエントの腟腔に投与するために粘度を調整する場合、腟腔に容易に(例えば、液体組成物を排出するために大きな力を加える必要なしに)分注できるように粘度を調整するように注意すべきであるが、組成物を、投与後に相当な時間にわたって腟腔に留まらない流体/液体にすることは避けるべきである。したがって、腟腔からの急速な排出を防止するのに適した粘度を選択すべきである。本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、好ましくは、女性レシピエントが立位にあるとき、その大部分が少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間腟内に留まることを可能にする粘度のものであるが、投与は好ましくは、例えば女性レシピエントを臥床させた砕石位で行われる。粘度は、例えば、粘度計を使用して測定することができる。
【0161】
殺精子剤
【0162】
本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、1つ以上の殺精子剤を含み得る。ノノキシノール-9(N-9)を使用する場合、その膜破壊特性(子宮腟部上皮の損傷を引き起こすことによって腟組織の透過性を増加させる)のため、注意すべきであり、Lactobacillus種に有害であることが示されている。他の殺精子剤としては、オクトキシノール-9、コール酸ナトリウム、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。一実施形態では、乳酸が使用される。他の実施形態では、乳酸は、例えばクエン酸と組み合わせて使用されてもよい。
【0163】
プレバイオティクス
【0164】
本明細書で使用される「プレバイオティクス」は、例えばin vitroで測定することができるような、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる細菌(lactobacilli等)の増殖を増加させる増殖基質である。所望であれば、一般的に必要ではないが、プレバイオティクスを本明細書に記載の組成物に添加して、例えば、シンバイオティクス混合物を作製することができ、例えば、女性レシピエントの泌尿生殖路への投与時に実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる細菌の増殖を増加させることができる。これは、特定の状況下では、定着及び生着の成功を増加させ得る。他の実施形態では、プレバイオティクスは、生着した調製物及び/または全体的な腟の健康を維持するために使用され得る。
【0165】
プレバイオティクスが望まれる場合、女性レシピエントの尿生殖路に存在し得る任意の酵母(例えば、Candida種)、病原性共生生物または病原体(例えば、E.coli及び他のグラム陰性細菌)によって大きく代謝され得ないように(例えば、それらの成長の促進を回避するために)慎重に選択されるべきである。プレバイオティクスとしては、例えば、ラクチトール、ラクツロースが挙げられ、場合によっては、他のオリゴ糖及び可溶性繊維、例えば、フラクトオリゴ糖(FOS)、グルコオリゴ糖(GOS)及びイヌリンも挙げられる。
【0166】
他の活性剤
【0167】
所望であれば、例えば、レシピエント女性における細菌または真菌感染症及び/または性感染症に対処するために、他の活性剤、例えば、抗菌剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗寄生虫剤(例えば、Trichomonas vaginalisに対する活性を有する)、抗炎症剤等を本明細書に記載の組成物に添加してもよい。これらの薬剤を医薬組成物に製剤化する場合、組成物に含まれる実質的に完全な腟微生物叢調製物(及びlactobacilli)の活性及び有効性を実質的に妨げないように注意しなければならない。
【0168】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はエストロゲンの形態を含む。適切なレベルのエストロゲンは腟粘膜の栄養作用(trophism)において役割を果たし、エストロゲンはグリコーゲンの細胞含有量を増加させる。
【0169】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えばlactobacilliの抗病原性効果を増強するためにチオ硫酸塩を含む。
【0170】
所望であれば、医薬組成物は、抗生物質、例えばメトロニダゾール、または以下のクラスの1つ以上の抗生物質をさらに含有することができる:マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン及びエリスロマイシン)、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、チゲサイクリン)、フルオロキノロン(例えば、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン及びモシフロキサシン)、セファロスポリン(例えば、セフトリアキソン、デフォタキシム、セフタジジム、セフェピム)、ペニシリン(例えば、アモキシシリン、アモキシシリンとクラブラン酸、アンピシリン、ピペラシリン、及びチカルシリン)と場合によりベータラクタマーゼ阻害剤(例えば、スルバクタム、タゾバクタム及びクラブラン酸)、例えばアンピシリン-スルバクタム、ピペラシリン-タゾバクタム及びチカルシリンとクラブラネート、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アルベカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、及びアプラマイシン)、ペネムまたはカルバペネム(例えば、ドリペネム、エルタペネム、イミペネム及びメロペネム)、モノバクタム(例えば、アズトレオナム)、オキサゾリジノン(例えば、リネゾリド)、バンコマイシン、糖ペプチド抗生物質(例えば、テラバンシン)等。
【0171】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン、ナイスタチン、アジスロマイシン、エリスロマイシン、オフロキサシン、ドキシサイクリン、レボフロキサシン、アモキシシリン及びフルコナゾールから選択される抗菌剤(抗生物質または抗真菌剤)をさらに含有することができる。
【0172】
所望であれば、医薬組成物は、マイコバクテリアによる感染症を治療するための薬剤を含有することができる。マイコバクテリアによる感染症を治療するのに適した剤としては、アミノグリコシド(例えば、カプレオマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン)、イソジアニド及びイソジアニド類似体(例えば、エチオンアミド)、アミノサリチル酸、サイクロセリン、ジアリールキノリン、エタンブトール、ピラジナミド、プロチオナミド、リファンピン等が挙げられる。
【0173】
所望であれば、医薬組成物は、レムデシビル、オセルタミビル、ザナマビル、アマンチジンまたはリマンタジン、リバビリン、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカビル、Cytogam(登録商標)(サイトメガロウイルス免疫グロブリン)、プレコナリル、ルピントリビル、パリビズマブ、モタビズマブ、シタラビン、ドコサノール、デノチビル、シドホビル及びアシクロビル等の適切な抗ウイルス剤を含有することができる。
【0174】
所望であれば、医薬組成物は、ポリエン(例えば、ナイスタチン及びナタマイシン)及びイミダゾール抗真菌剤(例えば、フルカノゾール及びクロトリマゾール)等の好適な抗真菌剤を含有することができる。
【0175】
所望であれば、医薬組成物は、1つ以上の適切なステロイドを含有することができる。例えば、組成物は、アンドロゲン/アナボリックステロイド、エストロゲン、プロゲストゲン、コルチコステロイド、ニューロステロイド、エストラジオール、エストロピペート、プレマリン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、レボノルゲストレル、テストステロン、フルオキシメステロン、メチルテストステロン(methylesterosterone)、オキサンドロロン、及びオキシメトロンを含み得る。
【0176】
併用療法
【0177】
有効量の組成物、例えば本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物を投与することによって、治療を必要とする対象、例えばヒト女性、例えばディスバイオシス(例えば、泌尿生殖路におけるディスバイオシス)を示す対象を治療する方法も本明細書で提供される。
【0178】
治療のための投与レジメンが、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物及び組成物の投与と組み合わせた1つ以上の他の療法を含み得ることは当技術分野の当業者によって理解されよう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の腟ディスバイオシスを治療する方法は、標準治療処置を実施することをさらに含み得る。例えば、本明細書に記載の腟ディスバイオシスを治療する方法は、抗菌剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗寄生虫剤(例えば、Trichomonas vaginalisに対する活性を有する)、抗炎症剤等を投与することをさらに含み得る。現在の標準的な治療用抗菌剤(抗生物質、抗真菌剤)としては、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン、ナイスタチン、アジスロマイシン、エリスロマイシン、オフロキサシン、ドキシサイクリン、レボフロキサシン、アモキシシリン及びフルコナゾールが挙げられる。別の例において、本明細書中に記載される腟ディスバイオシスを治療するための方法は、例えば、腟微生物叢の再定着を助け、病原性因子の再増殖、したがって再発を防止するために、チオ硫酸塩を投与する工程をさらに含み得る。
【0179】
本明細書に記載される任意の治療剤を、a)実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物としての製剤化のために、またはb)併用療法として考慮することができる。これらの併用療法は、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物及び組成物の投与と一緒にまたは別個に、かつそれと同時に(実質的に同時に)またはそれに連続して(例えば、前または後に)実施し得る。それらは、経口(例えば、丸剤として)または局所(例えば、ゲルとして)等の異なる投与経路及び剤形を使用して投与し得る。併用療法の使用は、治療が組成物に含まれる実質的に完全な腟微生物叢調製物(及びlactobacilli)の活性及び有効性を実質的に妨害しないことを決定するために評価されるべきであり、実施する場合、妨害を最小限に抑えるためにレジメン(例えば、タイミング、投薬、配列決定等)を調整するべきである。
【0180】
腟送達システム
【0181】
【0182】
腟送達システムを使用して、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を、例えば女性(例えば、腟腔)に投与することができる。腟送達システムは、組成物を腟腔に投与するための手段を提供する。それは、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の腟送達に適したデバイスまたは剤形から構成され得る。例えば、適切なデバイスは、腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、開口端を通して組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含む。実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、いずれかの端部を通して充填することができ、例えば包装することができ、予め充填するかまたは組成物から分離することができる。所望であれば、包装は無菌である。次いで、デバイスは、投与のために直接使用され得る(予め充填されている場合)、またはユーザによる投与の直前に(または少し前に)組成物で充填され得る。あるいは、デバイスに組成物を充填し、投与前に数日間から約1週間まで冷蔵下で保存する(またはより長期間保存する場合は凍結する)。場合によっては、例えば、デバイスがアプリケータまたはディスペンサである場合、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の腟腔における放出後、デバイスは腟腔から取り出される。適切なデバイスには、アプリケータ及びディスペンサ、例えば医学及び科学において一般的に使用されるものが含まれる。アプリケータ及びディスペンサは、手動で操作されてもよく、または電気機械的補助を含んでもよい。
【0183】
所望であれば、腟送達システムは、例えば、投与を助けるために、例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有するように較正される。一実施形態では、腟送達システムは単回使用デバイスであり、各使用後に廃棄される。別の実施形態では、腟送達システムは複数回使用デバイスであり、その場合、各使用後に洗浄し、任意選択的に滅菌しなければならない。単回使用及び複数回使用のアプリケータの両方は、例えばポリスチレンまたはポリプロピレン等の不活性ポリマー材料等の任意の適切な材料のものであってもよい。
【0184】
【0185】
他の実施形態では、腟送達システムは、溶解するまで腟腔に留まる腟坐剤を含む。腟坐剤または錠剤を製剤化する場合、例えば製剤化プロセス中に圧力または熱が加えられて製剤が不活性化され得る場合、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる細菌(lactobacilli)を損傷しないように注意する必要がある。微生物に対する熱及び圧力の影響を低減するための対策を講じるべきである。さらなる実施形態では、腟送達システムは、例えば、女性用衛生おむつ、パンティライナー、生理用ナプキン、タンポン、パンティガードまたは失禁ガード等の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を含む吸収性製品を含む。
【0186】
本明細書に記載の腟送達システムは、任意選択的に、乾燥形態、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥され、次いで任意選択的に本明細書に記載の剤形に製剤化されるか、または、使用前に例えば滅菌水、弱酸性溶液、ゲルもしくは緩衝液で再構成される実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を含み得る。組成物が再構成されない場合、剤形の正確な製剤に応じて、例えば常在腟液によって補助されて、腟腔内で再水和が達成され得る。凍結乾燥によって生存細菌を保存する方法は、微生物の長期保存を促進することができる。当技術分野の当業者は、標準的な技術を使用して細菌を凍結乾燥することができるであろう。
【0187】
これらの実施形態の全てにおいて、染料、香料、pH緩衝剤、乾燥剤もしくは再懸濁剤、または製剤のための他の標準物質を組成物及びデバイスに組み込むことができる。
【0188】
これらの実施形態の全てにおいて、本明細書に記載のデバイス及び組成物は、適切な包装、例えばボトル、小瓶、ブリスターパック、カートリッジ、アプリケータまたはディスペンサに包装されてもよい。一実施形態では、腟送達システムは、組成物または調製物を腟腔に投与するのに適した、本発明の医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む剤形を含み、剤形はアプリケータ、ディスペンサまたは坐剤である。さらなる実施形態では、医薬組成物または実質的に完全な腟微生物叢調製物は、液体または半固体形態である。固体剤形は、カプセル、錠剤及びフィルムを含む。半固体剤形は、坐剤、軟膏、ゲル、クリームまたは硬質フォームを含む。
【0189】
剤形及び製剤
【0190】
腟送達システムに適した実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む複数の剤形が本明細書で企図され、懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、軟膏、粉末、(ゼラチンまたは植物セルロース)カプセル、洗浄液または圧注用溶液、フォーム、フィルム、卵、腟用インサート(例えばタンポン)、錠剤、ディスク、ウェハ(例えば、蒸発によるフィルム上の乾燥)、または当技術分野の当業者に公知の賦形剤及び製剤技術を使用するマイクロカプセル化製品が挙げられる。特に好ましい剤形には、形成されたゲル、凍結乾燥ゲル、錠剤、凍結製剤及びフィルムが含まれる。
【0191】
増量剤、ポリマー、炭素源、粘膜付着剤、またはpH調整剤及び/または緩衝剤等のいくつかの適切な賦形剤を使用して、実質的に完全な腟微生物叢調製物を製剤化することができる。
【0192】
炭素源賦形剤は、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる微生物叢の炭素源として作用し得る。そのような炭素コース(carbon courses)は、マンニトール、マルトデキストラン、及びグアーガムを含む。いくつかの賦形剤は、粘膜付着剤または粘性剤としてさらに機能し得る。増量剤は、マンニトール、微結晶セルロース、マルトデキストラン、グアーガム、イヌリンまたはアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム)の1つ以上を含み得る。ポリマーは、構造ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ムチン、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール、CMCナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Carbopol(例えば、Carbopol934)及びポロキサマー(例えば、Poloxamer407)の1つ以上を含む。粘膜付着剤には、アルギン酸(アルギン酸ナトリウム)及びCMCナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。粘性剤には、グアーガム及びCarbopol934が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
いくつかの賦形剤は、pH調整剤及び/または緩衝液、例えば乳酸及び酢酸緩衝液として機能する。
【0194】
適切な製剤は、適切な垂直面上にほとんどまたは全く流れを示さず、製剤化時及び(長期)貯蔵中の両方で高い細菌生存率(例えば、CFUカウント)を維持する。
【0195】
所望の製剤選択パラメータとしては、例えば、(例えば、腟管内の再構成された生成物の)粘膜付着;(再構成された製品の)粘度(例えばゲルベースの製品の最終粘度は、周囲温度で注入可能である必要があり、好ましくは37℃(体温で、例えば腟管で)で凝固させる必要がある);(再構成された製品の)全糖含量(例えば、理想的には生理学的濃度以下(約0.5~1.0mg/mL));再構成された製品の体積(例えば最大3mL);(例えば、ゲル/マトリクスの)水和速度/崩壊速度(例えば、所望の放出速度を提供するのに十分な物理的完全性);pH(例えば、約pH3.4~3.9(例えば、競合的腟細菌の阻害を促進するため));(例えば、乾燥製剤の)水分活性/含水量(例えば0.5~3%の水(例えば、長期間の乾燥製剤安定性のため));微生物多様性(例えば、Lactobacillus種、例えば、L.crispatus、L.gasseri、L.jensenii及びL.inersの相対存在量);総用量/効力(例えば、好ましくは投与当たり少なくとも約1×105のCFU/VCC、少なくとも約106のCFU/VCC、少なくとも約107のCFU/VCCまたは少なくとも約108のCFU/VCC(投与当たり))、様々な温度での貯蔵寿命(再構成されない)、及び微生物限界(例えば、微生物、例えば、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicans、Staphylococcus aureusの非存在、Ph Eur基準5.1.4、2.6.12及び2.6.13)が挙げられる。
【0196】
適切な試験方法としては、例えば生菌数、用量決定、貯蔵寿命についてのプレートカウント(例えば、MRS寒天);例えば、粘膜付着及び粘度のためのレオメーター、pHメーター、Karl Fisher/水分活性計、例えば微生物負荷のためのPh Eur試験等の標準的なアッセイが挙げられる。
【0197】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を凍結乾燥することができ、
【0198】
例えば、ゲル及び錠剤、ならびに例えばカプセル等の凍結乾燥生成物を充填することができる他の剤形に製剤化される。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、凍結可能なゲル、及び凍結可能な液体媒体(例えば、グリセロールを含む)中に製剤化することもできる。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、例えばディスク状の形状であり得る(空気乾燥された)フィルムに製剤化することもできる。生存率の損失は、賦形剤及び剤形に応じて、製剤化段階で約0.5log~1logの範囲になる。
【0199】
好ましい実施形態では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、錠剤、予め形成されたゲル、凍結乾燥ゲル、液体製剤、凍結製剤、フィルム形成製剤またはフィルムから選択される剤形で提供される。
【0200】
予め形成され凍結されたゲル
【0201】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、予め形成されたゲルに含まれ得る。いくつかの実施形態では、予め形成されたゲルは、例えばシリンジ内に引き上げるために、バイアル内に提供される。いくつかの実施形態では、予め形成されたゲルは、例えば
図13に示すように、適切なアプリケータで提供される。予め形成されたゲルは、実質的に完全な腟微生物叢調製物の安定性を維持するために、凍結または冷蔵保存され得る。いくつかの実施形態では、予め形成されたゲルはヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は約0.3~3%の濃度で含まれる。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は約0.5~2%の濃度で含まれる。いくつかの実施形態において、ヒアルロン酸を含む予め形成されたゲルは、-80℃で凍結されてもよい。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸を含む凍結された予め形成されたゲルは、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって実質的に安定である。
【0202】
凍結乾燥ゲル
【0203】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、凍結乾燥ゲルに含まれ得る。凍結乾燥ゲルは安定であり得、2~8℃で長期間保存され得る。凍結乾燥ゲルは、凍結乾燥された実質的に完全な腟微生物叢調製物及びゲル形成賦形剤を含む。凍結乾燥ゲルは、バイアルに提供され得る。凍結乾燥ゲルは、再構成剤による投与(例えば、臨床または家庭環境において)の前に再構成することができる。いくつかの実施形態では、再構成剤は、ゲル、ゲル形成剤、または液体を含む。液体は、水、生理食塩水、または再構成及びその後の対象への投与に適した別の液体を含み得る。
【0204】
特定の実施形態では、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む凍結乾燥ゲルは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)をさらに含む。いくつかの実施形態では、Na-CMCが約1~3%の濃度で含まれる。いくつかの実施形態では、Na-CMCが約2%の濃度で含まれる。特定の実施形態では、凍結乾燥ゲルは、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は約0.3~3%の濃度で含まれる。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸は約0.5~2%の濃度で含まれる。特定の実施形態では、凍結乾燥ゲルは、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物、ならびに上記の濃度のヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)を含む。NA-CMP、ヒアルロン酸、または両方の組合せを含む凍結乾燥ゲルは、2~8℃または-20℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって安定である。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸を含む凍結乾燥ゲルを-80℃で凍結させることができる。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸を含む凍結乾燥ゲルは、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって安定である。いくつかの実施形態では、凍結乾燥ゲル及び再構成剤はキットとして提供される。
【0205】
フィルム形成製剤
【0206】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、フィルム形成製剤に含まれ得る。本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、ポリマー賦形剤と共に製剤化することができ、ポリマー賦形剤は、生体接着特性及びフィルム形成能力を有する。フィルム形成製剤のための例示的なポリマー賦形剤には、ポリビニルアルコール(PVA)、乳酸ナトリウム及び乳酸が含まれる。特定の実施形態では、フィルム形成製剤はポリビニルアルコール(PVA)を含む。いくつかの実施形態では、PVAは、約10~25%、10~20%、または約12~15%の濃度で含まれる。特定の実施形態では、フィルム形成製剤は、約12%の濃度でPVAを含む。いくつかの実施形態では、フィルム形成製剤は、例えば約10~25%、10~20%、12~15%または12%の濃度でPVAを含み、空気乾燥される。いくつかの実施形態では、フィルム形成製剤は、ディスクまたはウェハとして提供される。いくつかの実施形態では、フィルム形成製剤は、粘膜付着性ペッサリーまたはパッチとして提供される。フィルム形成製剤は、2~8℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって実質的に安定である。いくつかの実施形態では、フィルム形成製剤は、流体、例えば子宮腟部液と接触して急速に分散または溶解して、腟内に粘性の生体接着性ゲルを形成する。いくつかの実施形態では、生体接着性分散液の形成は、長期間にわたって腟内に保持される。
【0207】
錠剤
【0208】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、錠剤に含まれ得る。錠剤は、ゲル形成特性、粘膜付着特性、または両方の組合せを有する剤を含み得る。錠剤は、賦形剤、例えば、膨潤剤、増量剤、乳酸、Carbopol、HPMC、アルギネートまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、増量剤は、微結晶セルロース、HPMC/PVP、マルトデキストラン、またはPoloxamer407を含む。特定の実施形態では、錠剤は、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びNa-CMCを含む。特定の実施形態では、錠剤は、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む。錠剤はさらに、実質的に安定であり得、例えば、Lactobacilliの生存率を実質的に保持し得る。錠剤は、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって、2~8℃または室温(約25℃)で実質的に安定であり得る。特定の実施形態では、錠剤は、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)を含み、2~8℃または室温(約25℃)で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって安定である。特定の実施形態では、錠剤は、本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物及びポリビニルピロリドン(PVP)を含み、2~8℃または室温(約25℃)で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって安定である。
【0209】
液体製剤
【0210】
本発明の実質的に完全な腟微生物叢調製物は、液体製剤に含まれ得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、凍結製剤として提供され得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、ゲル化剤と共にキットで提供される。液体製剤は、グリセロール等の凍結保護剤を含んでもよく、グリセロール濃度は、任意選択的に25%未満、20%未満、15%未満、または10%未満である。いくつかの実施形態において、液体製剤は、例えば-20℃または-80℃で凍結されてもよく、Lactobacillus生存率を実質的に保持する。いくつかの実施形態では、液体製剤は乳酸をさらに含む。好ましい実施形態では、液体製剤は、乳酸及びグリセロール等の凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤及び任意選択的に乳酸を含む凍結液体製剤は、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月またはそれ以上の期間にわたって実質的に安定である。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む液体製剤は、ゲル化剤と共にキットとして提供される。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む凍結液体製剤は、ゲル化剤と共にキットとして提供される。いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含まない凍結液体製剤は、凍結乾燥ゲルと共にキットとして提供され、凍結乾燥ゲルは実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む。
【0211】
キット
【0212】
本明細書で提供されるのはまた、任意選択的にユーザのための説明書を含む、本明細書に記載の1つ以上の剤形またはデバイス及び他の剤を含む腟送達システムを含むキットである。いくつかの実施形態では、剤形またはデバイス及び組成物は、別々の滅菌パッケージ中にある。いくつかの実施形態では、剤形及び/または組成物は複数回用量を含む。いくつかの実施形態では、剤形またはデバイスは即時使用可能である。別の実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物またはその組成物を再構成する必要がある。そのような実施形態では、キットは、再構成のための媒体をさらに含む。キットは、単一剤形または複数剤形を含み得る。
【0213】
調製物及び組成物の製造方法ならびにドナーの考慮事項
【0214】
本発明の態様は、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法を含む。これらの方法は、腟液、好ましくは子宮腟部分泌物のサンプルを提供するために適切な女性ドナーを選択すること、及び本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物(医薬組成物等)を提供するためにサンプルを処理することを含む。ドナー女性は一般的に健康であり、腟微生物叢のディスバイオシスを示さず、任意選択で1つ以上の追加の健康試験に供される。本明細書で提供される実質的に完全な腟微生物叢調製物は、(i)調製物の全ての検出可能な細菌種の約80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;(ii)Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を5%未満含む。例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物を産生する方法は、健康な女性ドナーから微生物叢サンプル(例えば、子宮腟部分泌物)を提供する工程と、例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物を必要とする女性レシピエントに投与するために、処理されたサンプルを(医薬)組成物として隔離から(例えば、1つ以上の所定の(品質)パラメータ、例えば、以下の工程5(a)~5(e)のうちの1つ以上を実行することによって得られるパラメータを満たすことに基づいて)解放する工程とを含む。
【0215】
一般的に、健康な女性ドナーからの微生物叢サンプル(例えば、子宮腟部分泌物)を提供及び処理する工程は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の工程、及び任意の組合せ、例えば、任意の2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の工程を含むことができ、これには:(1)希釈剤(例えば、生理食塩水)、緩衝液、または他の賦形剤を微生物叢サンプルに添加して希釈サンプルを作成すること;(2)試験(例えば、核酸配列決定)のために希釈された微生物叢サンプルの一部を除去すること;(3)残りの微生物叢サンプルを凍結または凍結するために予冷すること;(4)冷蔵または凍結された微生物叢サンプルを隔離下で保存すること、及び/または(5)冷蔵または凍結された微生物叢サンプルを(a)、(b)、(c)、(d)及び/または(e)の任意の組合せ:(a)伝染性病原体の存在を排除するためにドナーを試験すること(例えば、血液、腟スワブ、及び/または尿サンプル検査)、(b)ドナーサンプルの微生物叢の組成及び生存能力を確認すること(例えば、lactobacilli)、(c)ドナー提供後30~90日(あるいは、10~120日、または30~60日)の期間内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって女性ドナーの健康をさらに確認すること、(d)精子細胞の存在について試験すること、及び/または(e)サンプルのpHを試験すること(例えば、
図14)が完了するまで隔離下で保持することが含まれる。工程(1)~(5)及び5(a)~5(e)はいずれも任意選択的であり、所望の任意の特定の順序で順次または並行して実行することができる。
【0216】
一実施形態において、実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法は、
A. ドナー女性尿生殖路から微生物叢サンプルを提供することであって;工程Aが、工程(1)、(2)、(3)またはその任意の組合せのうちの1つ、2つ、または3つ、及び工程(4)及び(5)の両方を含む、提供すること:
(1) 微生物叢サンプルに希釈剤を加えて希釈サンプルを作成すること、
(2) 試験(例えば、核酸配列決定)のために、希釈された微生物叢サンプルの一部を除去すること、
(3) 残りの微生物叢サンプルを冷蔵または凍結するために予冷すること、
(4) 冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること、
(5) (a)1つ以上の伝染性病原体の実質的な存在を排除するためにドナーを検査すること(例、血液及び/または子宮腟部分泌物、及び/または尿サンプルの検査)、(b)微生物叢の組成及び生存能力を確認すること、または(c)ドナー提供後30~90日以内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって女性ドナーの健康状態をさらに確認することの任意の組合せが完了するまで、冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること;及び
B. 実質的に完全な腟微生物叢調製物を規定するために、冷蔵または凍結された微生物叢サンプルを隔離から解放することを含む。
【0217】
工程(1)は、例えば、酸性化剤を(例えば、サンプルのpHを調整するために)添加すること;サンプルの粘度を(例えば、本明細書中に記載されるような投与を補助するために)調整すること;等張性/浸透圧を調整すること;及び/または殺精子剤、抗菌剤、ホルモン剤、抗炎症剤、及び任意選択的にプレバイオティクスを含む、本明細書に記載されるもの等の1つ以上の他の活性剤を添加することを含んでもよい。一実施形態では、酸性化剤は乳酸である。
【0218】
工程(2)について、微生物叢サンプル(例えば、腟液/腟分泌物のサンプル)は、好ましくは少なくとも75mgまたは100mg、より好ましくは少なくとも150mgであり、核酸配列決定のために一部が除去される。微生物叢サンプルは、75mg、100mg、150mg、200mg、250mgまたは300mgであり得る。さらなる実施形態では、微生物叢サンプル(例えば、腟液/腟分泌物のサンプル)は、少なくとも200mg、300mg、400mg、500mg、500mg、700mgまたはそれ以上である。一実施形態では、微生物叢サンプル(例えば、腟液/腟分泌物のサンプル)は少なくとも500mgである。
【0219】
ドナー微生物叢サンプルの微生物コミュニティを評価し、適切なドナー女性を選択するために、配列決定を行う。好ましくは、Lactobacillus属由来の1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの異なる細菌種の存在が、核酸配列決定によってドナー微生物叢サンプル中で検出される。最も好ましくは、Lactobacillus属由来の1つの(優勢な)細菌種が、核酸配列決定によってドナー微生物叢サンプル中で検出される。いくつかの実施形態では、核酸配列決定は、ドナー微生物叢サンプルが、調製物中の全ての検出可能な種の合計のうちの1つの種の80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.5%、約99.9%、80~99.9%、75%~95%、85%~95%、85%~99.9%、または90%~99.9%のlactobacilliを含むと決定する。いくつかの実施形態では、核酸配列決定は、ドナー微生物叢サンプルが、調製物中の全ての検出可能な種の合計のうちの1つより多い種(例えば、2つ、3つ、4つまたは5つの種)の80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99.9%、約99.5%、約99.9%、80~99%、75%~95%、85%~95%、85%~99.9%、または90%~99.9%のlactobacilliを含むと決定する。好ましくは、核酸配列決定は、ドナー微生物叢サンプルが、a)Lactobacillus crispatus(b)Lactobacillus iners;(c)Lactobacillus jensenii;(d)Lactobacillus gasseri、またはその任意の組合せ(2つ、3つ、または4つ全ての種の組合せを含む)から選択されるLactobacillus種を含むと決定する。
【0220】
任意選択的に、核酸配列決定は、ドナーサンプル中の任意の病原体または病原性共生生物を同定するために、例えば、ドナーサンプルが病原体及び病原性共生生物を実質的に含まないことを決定するために行われる。例えば、核酸配列決定は、Gardnerella属、Atopobium属、及び/またはPrevotella属の1つ以上の存在を検出するために行われる。いくつかの実施形態では、核酸配列決定は、Gardnerella属、Atopobium属、Prevotella属及び/またはFannyhessa vaginaeの1つ以上の存在を検出するために行われる。いくつかの実施形態では、核酸配列決定は、Gardnerella vaginalis、Bacteroides、Mobiluncus属、Sneathia属及びMycoplasma hominisの1つ以上の存在を検出するために行われる。いくつかの実施形態では、核酸配列決定は、Escherichia、Enterococcus、Pseudomonas、Proteus、Klebsiella、Streptococcus、Staphylococcus、Gardnerella、Ureaplasma、Bacteroides、Peptococcus、Neisseria、Serratia、Corynebacterium、Clostridium及びCandidaの1つ以上の存在を検出するために行われる。これらの種のいずれか1つ以上の存在は、望ましくない種による健康な腟乳酸産生細菌の置換を示唆し、腟ディスバイオシスの存在を知らせる。1つ以上の望ましくない種に属する種を約1%、3%、5%、8%、10%超または約15%超含むドナーサンプルは、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を生成するためのさらなる処理には使用されない。一実施形態では、1つ以上の望ましくない種(例えば、Gardnerella属、Atopobium属及び/またはPrevotella属)に属する種を約5%超含むドナーサンプルは、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を生成するためのさらなる処理に使用されない。
【0221】
任意選択的に、核酸配列決定は、ドナーサンプル中の任意の抗菌剤耐性(AMR)遺伝子の存在を同定するために、例えば、ドナーサンプルが抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まないことを決定するために行われる。抗菌剤耐性(AMR)遺伝子には、例えばアミノグリコシド、ベータラクタム、テトラサイクリン、及びスルホンアミドを含む1つ以上の抗生物質(例えば、NCBI National Database of Antibiotic Resistant Organisms(NDARO)に記載及びカタログ化されている)質に対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。抗生物質の広範な使用のために、カットオフはゼロではないことが理解されよう。AMR遺伝子の存在についてある程度の合理的な許容がなされる。正確なカットオフは、例えばAMR遺伝子の性質(例えば、健康上の懸念の程度)及び公衆衛生の勧告に基づいて、当業者によって決定され得る。
【0222】
代替的に、または付加的に、ドナーサンプルが、グラム陰性毒素(例えば、エンドトキシンまたはリポ多糖(LPS)ならびに他の分泌外毒素及びエンテロトキシン)、病原性因子/細菌病原性因子及び/または定着因子(例えば、運動性、付着性、侵襲性等)のうちの1つ以上を実質的に含まないことを明らかにするための試験が行われる。
【0223】
任意選択的に、例えば、ドナーサンプルがヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まないことを決定するために、ドナーサンプル中の任意のヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))の存在を同定するための試験が(例えば、顕微鏡法によって)行われる。
【0224】
工程(3)は、貯蔵、隔離及び投与のための使用のための所望の期間に応じて、その後の冷蔵(例えば、4℃)または凍結(例えば、-18℃または-80℃)のための予冷を含むことができる。この工程はまた、例えば、容易な貯蔵、包装、製剤化及び輸送のための凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilizing))を含み得る。さらに、この工程は、任意選択的に、例えば冷蔵、凍結または凍結乾燥時の生存率試験、例えば実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliの生存率を含み得る。
【0225】
工程(4)及び(5)は、冷蔵、凍結または凍結乾燥された微生物叢サンプルを隔離下で保存すること、及び保存された微生物叢サンプルを、ドナー微生物叢サンプル及び/またはサンプルドナーに対して行われたいくつかの試験が完了するまで隔離下で保持することを含む。隔離が解除され、サンプルは、実質的に完全な腟微生物叢調製物または組成物(例えば、医薬組成物)として使用するために、例えば、サンプル及び/またはドナーが1つ以上の所定の試験(サンプルの品質及び/または女性ドナーの健康試験)に合格した際に、レシピエント女性への投与のために放出される。それらには、以下のうちの1つ以上が含まれる:(a)伝染性病原体の存在を排除するためにドナーを試験すること(例えば、血液、腟スワブ、及び/または尿サンプル検査);(b)ドナーサンプルの微生物叢の組成及び生存能力を確認すること(例えば、lactobacilli)、及び/または(c)ドナー提供後30~90日(あるいは、10~120日、または30~60日)の期間内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって、女性ドナーの健康をさらに確認すること。
【0226】
伝染性(及び潜在的に感染性)の病原体の存在を排除するための工程5の試験(例えば、血液、腟スワブ、及び/または尿サンプル検査)は、女性ドナーが、(i)細菌性腟炎に関与する細菌(例えば、Gardnerella及びMobiluncus)、(ii)酵母(例えば、Candida、Cryptococcus及びSaccharomycesの種)、(iii)性感染性病原体(Neisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis及びTrichomonas vaginalisを含む)、(iv)尿路感染症に関与する細菌(例えば、E.coli、Staphylococcus、Chlamydia及びMycoplasma)、及び(v)ウイルス(例えば、HIV、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HSV-2)のうちのいずれか1つ以上(2つ以上、3つ以上、または4つ以上)を実質的に含まないと判定することを含み得る。
【0227】
工程5の試験は、女性ドナーが、クラミジア感染症、軟性下疳、毛ジラミ(ケジラミ)、生殖器ヘルペス、生殖器疣贅、B型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス/後天性免疫不全症候群、ヒトパピローマウイルス、トリコモナス症、伝染性軟属腫、骨盤炎症性疾患、梅毒、淋病、及び酵母感染症を含むいずれか1つ以上の性感染症または疾患(STI、STD)を実質的に含まないと判定することを含み得る。
【0228】
工程5の試験は、例えば、細菌性腟炎(BV)及び細菌感染症についての1つ以上の確立された試験によって、女性ドナーが腟管でディスバイオシスを示さないと判定することを含み得る。そのような試験には、Amsel基準、Nugentグラム染色スコアリングシステム、及びHay-Ison基準が含まれる。あるいは、例えば、BV Blue試験またはAffirm Microbial Identification Testを使用して、ディスバイオシスの非存在を判定するために他の方法を使用してもよい。
【0229】
Amsel基準は、以下の4つの症状のうちの3つの存在を含む:(a)薄い均質な悪臭放出;(b)腟pH液>4.5;(c)10%のKOH添加時の腟液からのアミン臭;及び(d)「クルー」細胞(細胞周縁を不明瞭にする付着性細菌を有する腟上皮細胞)の存在(Amsel et al.,Am.J.Med.74:14-22(1983))。
【0230】
Nugentグラム染色スコアリングシステムは、3つの形態型の細菌の相対存在量について正常に調製されたグラム染色を評価すること、次いで、大きいグラム陽性ロッド(lactobacilli形態型;lactobacilliの減少を0~4としてスコア化する)、小さいグラム陰性及び可変ロッド(Bacteroides及びGardnerella形態型;0~4としてスコア化)、及び湾曲したグラム可変ロッド(Mobiluncus属形態型;0~2としてスコア化)の量に基づいて、いわゆるNugentスコアを計算することを含む。Nugentスコアは0~10の範囲であり得、スコア0~3が正常(非BV)、4~6が中間、7~10がBVについて陽性であると考えられる。
【0231】
Hay-Ison基準(あるいは、Ison-Hayスコアリングシステム)は、以下の5つのグレードのフローラを示す:a)グレード0、細菌を含まない上皮細胞;b)グレードI、正常な腟フローラ(lactobacillus形態型のみ);c)グレードII、混合細菌フローラを有するlactobacillus形態型の数の減少;d)グレードIII、混合細菌フローラのみ、lactobacillus形態型がほとんどまたは全くない;e)グレードIV、グラム陽性球菌のみ。
【0232】
グレード0、I及びIVは、BVのない女性に見られる。グレードIIは中間であり、Amsel基準によって定義されるBVを有する女性には見られない。グレードIIIは、Amsel基準によって診断されるBVと一致する。グレードIIIのフローラは、BV(C.A.Ison及びP.E.Hay、Sex Transm Infect.2002 Dec;78(6):413-5)を示す。
【0233】
BV BLUE試験(Gryphus diagnostics)は、Gardnerella vaginalis、Bacteroides属、Prevotella属及びMobiluncus属等のBV関連細菌によって産生される酵素であるシアリダーゼ活性を検出する。腟液サンプルを、シアリダーゼの発色基質を含む試験容器に入れる。インキュベーション後、現像液を添加し、サンプルが高レベルのシアリダーゼを含有する場合、青色または緑色が見られる。シアリダーゼを含まないか、またはこの酵素のレベルが低いサンプルは、反応において黄色を生じる。
【0234】
AFFIRM Microbial Identification Test(Beckton Dickinson)は、3種類の腟炎関連生物:Candida属、G.vaginalis及びT.vaginalisの鑑別検出及び同定のためのDNAプローブに基づく診断試験である。
【0235】
いくつかの実施形態では、ドナー女性は、定期的で予測可能な月経周期を有する18歳以上の一般に健康な閉経前の女性から選択される。いくつかの実施形態では、ドナー女性は、一般的に健康な閉経後の女性から選択される。いくつかの実施形態では、ドナー女性は、閉経前及び閉経後の両方の女性から選択される。ドナーは、経口避妊薬、ホルモン避妊薬、ホルモン子宮内避妊器具を必要とし得るか、または避妊薬を必要とし得ない。ドナーは、臭気、分泌物またはかゆみ等の腟症状を実質的に含まない。任意選択で、ドナーは、サンプル提供期間中、例えば最初のドナースクリーニングから最終提供までの間:a)生理用ナプキンは許容されるが、挿入される腟用女性製品、例えば、タンポン、月経カップ、性的玩具を使用すること;b)他の腟用製品、例えば、クレンジング製品、殺精子剤、潤滑剤、衛生粉末及びスプレーを使用すること;c)腟及び肛門の性交を有すること;d)入浴し、水泳し、温水槽に座ること、及び/またはe)ソング下着を着用することの1つ以上(またはa~eの全て)を使用または実施しない。
【0236】
以下の(例えば、ウイルス、真菌、及び細菌の病原体及び/または病原性共生生物負荷に関する所定の閾値のセットを超える試験であって、個々の最大閾値を、例えば0を超えるように設定することができ、例えば、実質的にそれを含まない試験):(a)細菌性腟炎、再発性酵母感染、トリコモナス症、梅毒、生殖器疣贅を含むヒトパピローマウイルス(HPV)、高悪性度パップスメア、ヘルペス、骨盤炎症性疾患、再発性尿路感染及びmycoplasma、またはその任意の組合せのうちの1つ以上の健康歴;(b)HIV、A/B/C型肝炎、梅毒、ヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)-I/II、WNV、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、風疹、トキソプラズマ・ゴンディ(toxoplasma gondii)、単純ヘルペスウイルス(HSV)-1/2、クラミジア感染症、淋病、mycoplasma genitalium、Trichomonas vaginalis、HPV、及び病原性/異常であると考えられる及び/または抗生物質耐性を示す他の酵母もしくは細菌、またはその任意の組合せの1つ以上について試験が陽性であること、(c)例えばqPCRによって決定されるような、一般的な腟lactobacillus種の1つによって支配されない腟液/子宮腟部分泌物;及び/または(d)淋病もしくはクラミジア感染症(例えば、スクリーニング前12ヶ月以内)の病歴、または(a)、(b)、(c)及び(d)の任意の組合せのうちの1つ以上を示す場合、ドナーを除外することができる。
【0237】
さらに、ドナーは、以下のうちの1つ以上を示す場合、除外され得る:子宮摘出術、子宮内避妊器具の挿入もしくは取り外し、子宮頸管凍結療法、または子宮頸管レーザー治療(例えば、スクリーニング前2ヶ月以内)、全身抗生物質の定期的な使用を必要とする任意の状態、長時間作用性ホルモン治療の使用、社会的、医学的、または精神医学的状態、例えば薬物またはアルコール乱用の病歴、閉経(例えば、別の原因が知られていない12ヶ月超継続する無月経として定義される)、不規則な月経周期、他の薬物の使用、あるいはその任意の組合せ。好ましくは、ドナーは現在妊娠または授乳していない。
【0238】
所望であれば、サイトメガロウイルス(CMV)、風疹及び水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)IgG、またはその任意の組合せの1つ以上を示すドナーは、CMV陽性及び/または風疹及び/またはVZV陽性レシピエントとのみ一致するか、除外され得る。
【0239】
投与方法
【0240】
本発明の態様は、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物のヒト女性対象への腟投与のための方法を含む。本方法は、投与のためのデバイスを使用することを含んでもよく、例えば、これらの方法は通常、医療提供者によって(例えば、クリニックにおいて)実行される。例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、例えばクライオバイアル中で凍結されて提供され、次いで解凍され、37℃に予熱され、次いで医療提供者によってシリンジ/アプリケータに分注され、次いでレシピエントに投与される。あるいは、本方法は、例えば坐剤、錠剤、カプセル、フィルム、クリーム等の本明細書に記載の代替剤形を使用することを含む。本方法は、所望であれば、例えば自己投与によって、レシピエント自身によって(例えば、家で)実施することができる。本方法はまた、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物または組成物を提供することに加えて、健康問題を診断し、標準的なケアを提供する等の他のヘルスケア関連活動も含み得る。この活動は、本明細書で提供される1つ以上の併用療法を含むことができる。例えば、本明細書に記載の投与方法は、抗菌剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗生物質、抗寄生虫剤(例えば、Trichomonas vaginalisに対する活性を有する)、抗炎症剤等を投与することをさらに含み得る。
【0241】
投与がデバイスを使用して行われる実施形態では、デバイスは、典型的には、腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、開口端を通して組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含む。投与工程は、a)開口端を腟腔に導入すること、b)組成物を腟腔に排出すること、c)(所望の用量を投与した後)デバイスを腟腔から取り出すことを含む。投与は、好ましくは、レシピエントが砕石位にある状態で、例えば、女性レシピエントが砕石位にある状態で行われる。いくつかの実施形態では、レシピエントは、腟腔内での実質的に完全な腟微生物叢調製物または組成物の十分な滞留時間、例えば、腟の粘膜表面または子宮内膜表面との十分な接触時間を可能にするために、立位に戻る前に、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、砕石位に留まることになる。いくつかの実施形態では、投与は、腟腔内の高い領域、例えば腟円蓋付近を標的として行われる。
【0242】
必要に応じて、投与のタイミングを決定する際に、レシピエント女性の月経周期が考慮される。例えば、月経中に処置を回避することができる。いくつかの実施形態では、例えば排卵前及び月経前を含む時間窓の間を含む、月経中以外の時期が投与を実施するために好ましい。
【0243】
いくつかの実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれる細菌(例えば、lactobacilli)がレシピエント女性の腟に定着し、確立(生着)するのに最適な条件を提供するために、手順の正確な工程、タイミング及び長さはレシピエント間で異なる(例えば、医療提供者によって決定される)。
【0244】
治療方法及びレシピエントの考慮事項
【0245】
適切な女性レシピエントには、腟微生物叢のディスバイオシスを示す女性、及びディスバイオシス、例えば感染症(例えば、病原体)及び/または(慢性)炎症に関連するディスバイオシスの治療を必要とする女性が含まれる。
【0246】
本発明の態様は、女性の尿生殖路における健康なヒト腟微生物叢のバランスを回復させるための方法に関する。本方法は、ヒト腟または腟上皮に定着または生息することができ、病原性微生物の増殖を妨げ、炎症促進性ではない(例えば、抗炎症性である)微生物ニッチを提供する微生物種のコミュニティを提供する目的で、腟微生物叢のバランスの回復を必要とする女性対象に、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物を投与することを含む。本方法は、腟微生物叢のバランスを必要とする女性対象に、健康な腟微生物叢または健康な腟微生物叢のバランスを維持する目的で、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物を投与することを含む。
【0247】
一態様では、本発明は、ヒト対象の女性尿生殖路の炎症を治療するのに使用するための医薬組成物であって、女性対象が尿生殖路のディスバイオシス微生物叢を示す、医薬組成物を提供し、方法は、有効量の医薬組成物を対象に投与することを含み、医薬組成物は実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、
【0248】
(i)調製物は、
(i) 調製物の全ての検出可能な細菌種の>80~99.9%を構成する、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus属の1つ、2つ、3つまたは4つの細菌種を含み;及び
(ii) Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を<5%含み;医薬組成物は薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0249】
炎症及び炎症に関連する障害、状態または疾患は交換可能に使用され、急性及び慢性炎症を含む。ディスバイオシスの腟微生物叢は、炎症に関連し得る。
【0250】
対象は無症候性対象であり得、無症候性対象は、Amsel基準、Nugentスコアまたは細菌性腟炎(BV)に関連する症状の他の尺度を有しないことを特徴とする。一態様では、レシピエントは無症候性のディスバイオシスの女性である。
【0251】
腟洗浄
【0252】
ディスバイオシスレシピエントの腟腔における病原体の量を減少させるために、いくつかの実施形態では、医薬組成物を投与する前に、腟腔をすすぐ、例えば腟洗浄を行う。
【0253】
腟洗浄は、洗浄溶液に予め浸漬された吸収材料を用いて行われてもよい。一実施形態では、吸収材料はガーゼである。いくつかの実施形態では、タンポン形状のガーゼを使用することができる。洗浄は、典型的には、婦人科医等の医療専門家によって行われ、レシピエントは砕石位にあり、予め浸漬された吸収材料は、腟上皮の表面を洗浄するためにプライヤと共に使用される。腟洗浄を行った後、過剰な洗浄液は、乾燥した吸収材料、例えば、乾燥したタンポン形状のガーゼによって吸収され得る。
【0254】
腟洗浄は、これに限定されないが、生理食塩水、消毒剤、または乳酸を含む、腟腔内の病原体の量を減少させるのに適した任意の溶液を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、腟洗浄は、生理食塩水による腟洗浄、乳酸洗浄、または消毒液による洗浄を含む。適切な消毒液には、クロロヘキシジン及びポビドンヨードが含まれる。特定の実施形態では、腟洗浄は生理食塩水を用いて行われる。別の特定の実施形態では、腟洗浄は乳酸を用いて行われ、場合により、乳酸は約3.5~4.5のpHを有する。特定の実施形態において、腟洗浄は、約3.8~4.3または3.8~約4.0のpHを有する乳酸を用いて行われる。さらなる特定の実施形態では、腟洗浄は消毒液を用いて行われ、任意選択的に消毒液はクロロヘキシジンまたはポビドンヨードである。特定の実施形態では、腟洗浄はポビドンヨードを用いて行われ、溶液は約10%のポビドンヨードを含む。特定の実施形態では、腟洗浄はクロルヘキシジンを用いて行われ、溶液は約0.5%のクロルヘキシジンを含む。
【0255】
腟微生物叢のホメオスタシス
【0256】
健康なヒト腟微生物叢のバランスには、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の投与後に測定した場合に、各種の相対数または腟Lactobacilli(例えば、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus gasseriから選択されるLactobacillus)の合計がホメオスタシスにある、選択された様々な微生物種(1つ以上のLactobacillus種を含む)の確立(例えば、生着を含む)が含まれる。ホメオスタシスは、一般的に、集団中の各種の相対存在量が、生殖可能年齢の女性において、所与の期間にわたって、例えば、少なくとも1日間、3日間、5日間、7日間、10日間、14日間、21日間、30日間、60日間、90日間、6ヶ月間もしくは少なくとも12ヶ月間にわたって、または例えば数回(1、2、3、4、5、6)の月経周期にわたって実質的に変化しない状態である。ホメオスタシスは、例えば、MLST及びMLVA等のメタゲノム配列決定、16S配列決定及び/またはqPCRによって測定し得る。所望であれば、CFUカウントは、例えば、健康な細菌のコロニー形成単位の持続性を測定するために行われ得る。
【0257】
ホメオスタシス状態(好ましくは、lactobacilliに富む、例えば、少なくとも50%、60%、70%または少なくとも80%のlactobacilli、例えば、L.crispatus、L.iners、L.gasseri及びL.jenseniiの1つ以上から選択されるもの)における健康なヒト腟微生物叢のバランスは、例えば、腟病原体(非病原性)によって引き起こされる撹乱に対する耐性を付与し、及び/または抗炎症環境を提供し、一定期間安定である。しかしながら、健康な腟微生物叢は、全ての病原体が完全に存在しないことを必要としない。多くの健康な女性は、その微生物叢に存在する酵母及び/または病原性共生生物のレベルが低い。
【0258】
いくつかの実施形態では、女性の尿生殖路において健康なヒト腟微生物叢のバランスを回復させるための方法は、尿生殖路において非炎症促進性または抗炎症性環境を提供することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、投与されると(例えば、治療のために)、尿生殖路に抗炎症活性を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、投与された場合(例えば、治療のために)、対象またはレシピエントにおいて局所的または全身的な炎症または免疫応答を引き起こさない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、投与された場合(例えば、治療のために)、対象またはレシピエントにおいて局所的または全身的な抗炎症または免疫応答を促進する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物は、投与された場合(例えば、治療のために)、泌尿生殖路の腟上皮細胞における抗炎症性メディエータ及び炎症促進性メディエータのバランスの維持を提供する。
【0259】
炎症マーカー
【0260】
本明細書中に記載される方法によって調節され得る炎症促進性サイトカインとしては、例えば、IL-1β、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17、IL-23及びTNF-αが挙げられる。一実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与は、炎症マーカーのレベルの低下または安定化をもたらし、マーカーは、IL-1a、IFN-γ、IL-18、IL-12及びMMP-10のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、抗炎症マーカーは、本発明の調製物の投与後に増加する。
【0261】
本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるlactobacilliの投与及び生着時の抗炎症性及び炎症促進性メディエータは、適切な市販のバイオマーカーパネルを使用して、腟サンプル(例えば、腟液/分泌物)または全身性サンプル(例えば、血液)を回収して測定することができる。
【0262】
女性の尿生殖路の(慢性)炎症を治療する方法が本明細書で提供される。この方法は、治療を必要とする女性対象に、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物を投与することを含む。本明細書に記載される方法によって治療される対象には、尿路感染症(UTI)等のいくつかの有害な健康転帰をもたらし得る炎症(場合によっては慢性炎症)を示す女性が含まれる。
【0263】
ディスバイオシス
【0264】
女性の尿生殖路のディスバイオシスを治療する方法が本明細書で提供される。この方法は、治療を必要とする女性対象に、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物を投与することを含む。本明細書中に記載される方法によって治療される対象には、病原性微生物及び病原性共生生物を過剰増殖させ、ディスバイオシス、炎症及び/または感染症をもたらし得る腟微生物叢の不均衡を示す女性が含まれる。本方法は、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物による、細菌性腟炎、腟カンジダ症及びトリコモナス症等の腟感染症(腟炎)ならびにその組合せの治療を含む。
【0265】
腟ディスバイオシスは、女性成人対象の約30~40%に生じる一般的な状態である。いくつかの実施形態では、ディスバイオシス女性対象は、いかなる症状も示さない(無症候性)。他の実施形態では、ディスバイオシス女性対象は、Amsel基準、Nugentスコア基準またはHay-Ison基準によって特徴付けられる腟症状に罹患している。
【0266】
細菌性腟炎(BV)は、最も一般的な腟感染症であり、妊娠中の合併症及び性感染症のリスク増加に関連する。これは、天然に存在する細菌フローラの不均衡によって引き起こされ、lactobacilliが嫌気性細菌の混合フローラによって過剰増殖する。他の診断基準の中でも、4.5を超えるpHは、細菌性腟炎を示唆すると考えられている。BVは、Amsel基準、Nugentスコア、Hay-Ison基準、または別の適切な診断方法を使用して診断することができる。現在の治療選択肢は、メトロニダゾール及びクリンダマイシン等の古典的な抗生物質の経口または腟投与に依存しているが、最初の曝露後3ヶ月以内に50%を超える高い再発率が認められる。代替的な治療選択肢には、乳酸または酢酸等の天然に存在する酸による腟の酸性化が含まれる。
【0267】
一実施形態では、BVの1つ以上の診断徴候を示す女性対象を、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物で治療する。一実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物の投与を含む治療は、さらに、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の女性対象への投与前、投与と同時、または投与後のいずれかに、例えばメトロニダゾール及びクリンダマイシン等の抗生物質の投与及び/または例えば乳酸もしくは酢酸等の酸性化剤での腟の酸性化等の、BVの標準治療を提供することを含む併用療法(本明細書に記載)を含む。
【0268】
腟カンジダ症は、Candida albicansが最も一般的であるCandida種(酵母)のいずれかの真菌感染症である。ほとんどのCandida感染は治療可能であり、赤みまたはかゆみ等の合併症は最小限である。しかしながら、合併症はまた、免疫不全状態の患者等の特定の集団において未処置のままである場合、重篤であるか、または致命的なものとなる場合さえある。洗剤の外部使用または内部撹乱(ホルモン性または生理学的)は、正常な腟フローラを撹乱し、感染を引き起こすCandida細胞の過剰増殖をもたらし得る。妊娠及び経口避妊薬の使用も危険因子として報告されている。臨床現場では、カンジダ症は、クロトリマゾール、ナイスタチン、フルコナゾール及びケトコナゾール等の抗真菌剤で一般的に治療される。しかしながら、例えばC.albicans等の特定の酵母は、前記抗真菌剤に対する耐性を発現し得る。
【0269】
一実施形態では、カンジダ症の1つ以上の診断徴候を示す女性対象を、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物で治療する。一実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物の投与を含む治療は、さらに、(本明細書に記載されるような)併用療法を含み、例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の女性対象への投与前、投与と同時、または投与後のいずれかに、例えばクロトリマゾール、ナイスタチン、フルコナゾール及び/またはケトコナゾール等の抗真菌剤を投与すること等、カンジダ症に対する標準治療を提供することを含む。
【0270】
トリコモナス症は、泌尿生殖路の性感染症であり、寄生生物であるTrichomonas vaginalisによって引き起こされる。症状としては、かゆみ及び灼熱感を生じる子宮頸部、尿道及び腟の炎症が挙げられる。治療選択肢には、抗生物質/抗原虫薬(例えば、メトロニダゾール)または抗寄生虫薬(例えば、チニダゾール)の使用が含まれる。しかしながら、ほとんどの抗菌薬と同様に、耐性が生じ得る。
【0271】
一実施形態では、トリコモナス症の1つ以上の診断徴候を示す女性対象を、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物で治療する。一実施形態では、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の組成物の投与を含む治療は、トリコモナス症の標準治療を提供すること、例えば、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の女性対象への投与の前、投与と同時、または投与後のいずれかに、例えば抗生物質/抗原虫剤(例えば、メトロニダゾール)または抗寄生虫剤(例えば、チニダゾール)等の抗真菌剤を投与することを含む、併用療法(本明細書に記載)をさらに含む。
【0272】
定義
【0273】
以下の定義は、本明細書に開示される全ての態様に適用される。例えば、「実質的に完全な腟微生物叢調製物」という用語は、腟送達システムに関する第1の態様の文脈で使用される場合、または医薬組成物に関する第2の態様の文脈で使用される場合、または本明細書に開示される任意の他の態様の文脈で使用される場合、同じ意味を有するものとする。
【0274】
一般項目
【0275】
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料を、本開示の実施または試験に使用することができることを理解されたい。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本開示の他の特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0276】
単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。同様に、「または」という単語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、「及び」を含むことを意図している。「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語exempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象、状況または置換物が起こり得るか起こり得ないことと、その記載が、事象または状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことと、を意味する。
【0277】
別段の指示がない限り、本明細書または特許請求の範囲で使用される成分の量、時間等を表す全ての数は、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、特に暗示的または明示的に示されない限り、または文脈がより決定的な構成を有すると当技術分野の当業者によって適切に理解されない限り、記載された数値パラメータは、当技術分野の当業者に知られている標準試験条件/方法の下で求められる所望の特性及び/または検出の限界に依存し得る近似値である。
【0278】
好ましい実施形態では、「約」という用語は、示された数値から±10%、さらにより好ましくは±5%の偏差を許容するものとする。
【0279】
「含む(comprising)」という用語は、「なる(consisting)」という用語を好ましい選択肢として同時に開示すると理解されるべきである。例えば、組成物が3つの成分を含むと言われる場合、これはまた、好ましい実施形態としてこれらの3つの成分からなる組成物を開示する。
【0280】
「含む(comprising)」という用語が(a)薬学的に活性な化合物(複数可)、細菌(複数可)等を指すときに使用される場合、これはまた、薬学的に活性な化合物(複数可)、細菌(複数可)等が、好ましくは唯一の薬学的に活性な化合物(複数可)、細菌(複数可)等であることも同時に開示すると理解されるべきである。例えば、ドナーサンプルがLactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含むと言われる場合、これは同時に、好ましくは、ドナーサンプルが唯一の細菌としてLactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを含むことを開示する。ドナーサンプルがLactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、及び賦形剤を含むと言われる場合、これは同時に、好ましくは、ドナーサンプルがLactobacillus crispatus及びLactobacillus inersを唯一の細菌として含み、加えて賦形剤を含むことを開示する。さらに、ドナーサンプルが、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、及び賦形剤からなることが開示されている。
【0281】
特定される全ての特許、特許出願、及び出版物は、例えば、本発明と関連して使用され得る、かかる出版物等に記載される方法論を説明及び開示する目的で参照することにより、明白に本明細書に組み込まれる。
【0282】
本明細書で使用される「尿生殖路」または「泌尿生殖路」には、子宮、卵管、卵巣、腟、子宮頸部、外陰部、及び尿路が含まれる。いくつかの例では、本明細書で使用されるのは、「腟管」、「腟腔」または「腟」を具体的に呼び出す教示及び例示である。当業者は、これらの例示及び教示が例示的なものにすぎず、かつ非限定的であり、したがって、適切な場合には、腟だけでなく尿生殖路または泌尿生殖路の他の解剖学的部位にも適用されることを理解するであろう。
【0283】
本明細書で使用される「ディスバイオシス」は、通常は優勢な種の量が減少し、あまり優勢でない種がより豊富及び/または優勢になる微生物の不均衡を意味する。腟ディスバイオシスは、健康な状態の異常である腟における微生物の不均衡である。ディスバイオシスは、一般に、(a)微生物叢自体の含有量または量の定性的及び定量的変化、(b)その代謝活性の変化のうちの1つ以上及び/または(c)その局所分布の変化に関連する。ディスバイオシスのヒト腟微生物叢のバランスは、腟の組織の炎症を促進する、及び/または1つ以上の病原性微生物の定着または増殖を可能にするかまたは促進する環境に寄与するかまたはそれを確立する腟微生物の集団を指す。ディスバイオシスはまた、腟のホメオスタシスの撹乱を指す。いくつかの実施形態では、ディスバイオシスナ腟微生物叢は、一般的に、健康な微生物叢と比較してpHの上昇、例えば4.5を超えるpH、例えば5.0、5.5、6.0、6.5、7.0またはそれ以上のpHをもたらす。いくつかの実施形態において、腟ディスバイオシスは、Lactobacillus種の減少、及び腟の嫌気性細菌の多様性の増加を特徴とする。腟ディスバイオシスは、上部生殖管感染症または骨盤炎症性疾患(PDI)、及び性感染症のリスク増加に関連する。ディスバイオシスは、選択された病原体の相対量、例えば>20%の選択された病原体、及び低い相対的存在量の腟lactobacilliの、例えば<10%の腟lactobacilli(L.crispatus、L.iners、L.jensenii、L.gasseri)を特徴とし得る。
【0284】
本明細書で使用されるディスバイオシス対象には、腟症状を有する対象(症候性対象)及び腟症状を何ら有しない対象(無症候性対象)が含まれ、ここで、症状は、Amsel基準、Nugentスコア及び/またはHay/Isonスコアによって特徴付けられる。
【0285】
対照的に、用語「正常」または「健康」「腟フローラ」または「腟ニッチ」「微生物叢」または「状態」または同様の用語は、女性が腟の愁訴を有さず、腟の病態(例えば、腟の病変に対応する、またはそれから生じる徴候または症状がない)を示さないことを意味し、腟の状態は、性感染症及び病原体に対する感受性が比較的低いようなものであり、一般に低pH、例えばpH4.5以下、例えば3.2~4.5であり;一般的に乳酸産生細菌(例えば、Lactobacillus種)が支配的である。正常な腟微生物叢または正常なフローラは、正常で健康な状態、すなわち、非病理学的、非病原性及び/または非ディスバイオシス状態で腟に局在する微生物のコミュニティである。
【0286】
「子宮腟部分泌物」(「CVS」)または「腟液」は、女性の子宮頸部によって分泌された粘液、排出上皮細胞、腟漏出液、及び腟に見られる細菌の混合物を指す。
【0287】
「単離された細菌株」は、他の株(例えば、腟細菌コミュニティに由来するもの、例えば、子宮腟部分泌物または腟液のサンプルに由来するもの)から分離され、前記株を含む培養物中でin vitroで培養された株を意味する。単離された細菌株は、その天然の状態(例えば、腟粘液及び上皮細胞等)でそれが由来する材料に付随する汚染物質または成分を実質的に含まない。
【0288】
「培養非依存性方法」は、例えば培養物中の細菌株の単離及び/またはin vitro増殖を含まない方法を意味する。
【0289】
「微生物(microbe)」という用語は、「微生物(microorganism)」という用語と同義に使用され、細菌(古細菌、真正細菌)、酵母、真菌、及びウイルスを含む。「種」という用語は、本明細書では、分類学的及び/または遺伝学的に異なる微生物群を指すために使用される。種は、1つ以上の区別可能な(例えば、配列決定によって)株を含み得る。
【0290】
「微生物叢」という用語は、別個の共有環境(「微生物ニッチ」)に局在する微生物のコミュニティを指す。例えば、「腟微生物叢」は、腟に局在するか、または腟に見出される1つ以上の種の微生物のコミュニティである。「マイクロフローラ」または「フローラ」という用語は、「微生物叢」という用語と同義に使用される。健康なまたは正常な微生物叢は、腟等の宿主の特定の微生物ニッチに定着する(生息する)共生微生物のコミュニティを示す。細菌は、通常のフローラの最も多数の微生物成分である。
【0291】
本明細書で使用される「粘膜(mucosa)」は、粘膜(mucosa membrane)を示す。粘液は、粘膜によって産生され、粘膜を覆う分泌物である。粘液は粘性であり、典型的には粘膜及び粘膜下腺に見られる粘膜細胞(例えば、杯細胞)から産生され、消毒酵素(リゾチーム等)、免疫グロブリン、無機塩、ラクトフェリン等のタンパク質、及び糖タンパク質(ムチン)が豊富である。粘膜表面は、生殖管(腟)の上皮裏打ちを含み、例えば、lactobacilliは、腟粘膜表面に定着することができる。
【0292】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、典型的な対象(例えば、女性レシピエント)に投与されるべき(例えば、組成物または調製物の)量であって、対象において所望の有益なまたは治療的な効果をもたらすのに十分な量を意味する。所望の有益な効果または治療効果には、例えば、ディスバイオシス、炎症または感染または泌尿生殖路の予防及び/または治療が含まれ、また、腟微生物叢(例えば、ホメオスタシスを達成するため)の回復及び/またはリバランス、例えば、泌尿生殖路及び腟微生物叢の抗炎症性及び/または抗病原性の状態も含まれる。有効量は、例えば、少なくとも1つ以上の症状を緩和する、症状の発症を遅らせる、症状の経過を変える(例えば、症状の進行を遅らせること)、または症状を逆転させるのに(例えば、必要な投与量及び期間で)十分な量である。有効量は、一般的に、統計的に有意な測定可能な変化を引き起こす。
【0293】
送達システムにおける有効量は、特定の薬剤、意図される用途、予想される放出速度及びシステムが治療を提供すると予想される時間に応じて変化する。投与量を投与するために、様々なサイズを有する様々なデバイスを製剤化することができる。当技術分野の当業者は、各特定の適用及び送達システムに必要な活性剤の有効量を容易に決定することができる。有効量は、例えば、臨床試験及び動物試験において決定することができる。「有効量」という用語は、「治療有効量」という用語と交換可能に使用される。
【0294】
「凍結乾燥(lyophilized)」または「凍結乾燥(freeze-dried)」組成物は、例えば容易な貯蔵及び輸送のために水分が除去された組成物を指す。そのような組成物は、使用(例えば、投与)前に再水和することができる。
【0295】
本明細書で使用される場合、「生存可能な」という用語は、所与の状態(例えば、温度、湿度を含む特定の貯蔵条件下での一定期間の貯蔵)で生存することができ、一般的に、その状態に曝露された後に定着し、繁殖する(例えば、泌尿生殖路において)ことができる細胞(例えば、細菌細胞)を指す。生存率パーセントは、集団中の生存細胞の割合を指す。例えば、生存率パーセントは、腟粘膜表面への適用時に生存し(例えば、冷蔵、凍結及び/または貯蔵)、定着する医薬組成物中のlactobacilliの割合を指すことができる。
【0296】
略語「cfu」は、「コロニー形成単位」を意味する。
【0297】
略語「VCC」は、生細胞数(生細胞染色によって決定される)を意味する。
【0298】
本明細書で使用される「賦形剤」、「薬学的に許容される担体」、「希釈剤」または「緩衝剤」という語句は、最終製剤の一部を形成するために添加される、及び/または対象への送達のための形態の薬物もしくは他の薬剤を維持する、非活性の薬学的に許容される材料、成分、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、好ましくは、製剤の他の成分と適合性であり、例えば、担体は、治療に対する有効成分または薬剤の影響を減少させず、例えば、担体は薬学的に不活性である。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、水以外の担体(例えば、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、フィルム、軟膏及び/または腟用デバイスを含む)であり得る。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体及び/または希釈剤(例えば、生理食塩水)と共に実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む医薬組成物が提供される。これらの組成物は、当業者に公知の手段による調製物の容易な投与を可能にする。いくつかの実施形態では、緩衝剤、例えば、酸性度を選択されたレベル(例えば、pH3.5~4.5の間)に維持し、酸性度の急速な変化を防ぐ弱酸または弱塩基が添加される。
【0299】
用語「接触させる」、「投与する」または「供する」、より具体的には、「腟適用」または「腟投与」は、本明細書において交換可能に使用され、例えば、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物に含まれるように、所望の細菌コミュニティ(例えば、lactobacilliを含む)を定着させ、生着させる目的で、対象(例えば、女性レシピエント)または特定の器官または他の生理学的部位(例えば、泌尿生殖路もしくは腟腔またはその一部、例えば、腟壁(粘膜または子宮内膜表面)または腟円蓋)の部位及び対象または部位に提供または与えられるデバイス、剤形または医薬組成物に関する。一実施形態では、投与は局所的に行われる。一実施形態では、投与は、例えば、疾患または障害の治療との関連で、例えば腟の健康を改善するために腟に行われる。
【0300】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」または「治療用組成物」という用語は、薬学的に許容される担体、例えば製薬業界で一般的に使用される担体、または追加の活性剤と組み合わせた活性剤(例えば、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物)を指す。医薬組成物は、生理学的及び薬理学的に許容される。一般的に、化合物、材料(デバイス)、組成物、及び/または剤形は、健全な医学的判断(例えば、医師または規制機関による)の範囲内で、合理的な利益/リスク比(例えば、所望の利益(複数可)対副作用(有害事象))に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしにヒトの組織と接触させて使用するのに適している場合、「薬学的」「治療的」であるか、または「薬学的に許容される」。医薬組成物は、一般的に、貯蔵における緩衝及び保存のための剤を含み、投与経路に応じて、適切な送達のための緩衝液及び担体を含み得る。医薬組成物は、従来、単位用量で投与することができる。「単位用量」という用語は、対象の単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な生理学的に許容される希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性材料を含む。
【0301】
「用量」及び「投与量」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。用量は、各投与時に個体に与えられる有効成分の量を指す。用量は、投与頻度(例えば、毎日、週に1回以上、月に1回以上、または3ヶ月に1回以上);個体のサイズ及び許容範囲;状態の重大度;意図する結果(例えば、微生物コミュニティの処置、予防、調節または回復)、ならびに投与経路を含むいくつかの要因に応じて変化する。ベースライン用量は、対象の初期応答に基づいて投与及び変更することができる。例えば、本明細書中に記載される実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物の単回用量は、104~1010コロニー形成単位(用量当たり)の範囲であり得る。他の実施形態では、組成物の単回用量は、103~1012、104~109、105~109、105~108、106~109、107~109、または107~1010コロニー形成単位(用量当たり)の範囲であり得る。
【0302】
「剤形」は、医薬組成物の特定の物理的形態を指し、例えば、所望の量の活性薬剤を送達するのに必要な用量及び投与経路に依存する。例えば、剤形は、坐剤、錠剤、カプセル、フィルム、クリーム等、または例えば腟投与用のアプリケータもしくはディスペンサ等のデバイスであり得る。剤形は、単回または複数回使用剤形であり得る。
【0303】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、「治療すること」という用語は、予防的及び治療的処置を指し、目的は、疾患または障害に関連する病態の状態または徴候の進行または重症度を予防、逆転、緩和、改善、阻害、減速または停止することである。治療は、(疾患または状態の)症状またはマーカーを改善すること、ならびに治療の非存在下で予想される症状を停止することまたはその進行もしくは悪化を少なくとも遅延することを含む。治療有効性は、1つ以上の症状または臨床マーカーをモニタリングすることによって測定することができ、例えば、投与前の対象の状態及び症状、または治療を受けていない対照対象と比較される。一例では、腟感染症を治療することは、感染因子(例えば、細胞またはウイルス粒子の数)の量を減少させること、症状の重症度を減少させること、及び/または症状の頻度を減少させることを指す。病原体のレベルを、免疫系によって、または健康な腟微生物叢によって確立された状態(例えば、感染は、例えば症状または一般的な診断技術によってもはや検出できない)によって抑制されるものに低下させる治療は、本用語が本明細書で使用される場合、有効であると考えられる。
【0304】
本明細書で使用される場合、「定着」または「生着」という用語は、微生物、例えば細菌(例えば、lactobacilli)による環境(例えば、微生物ニッチ)、例えば腟または腟上皮の定着を指し、その微生物の生存可能な集団は、例えばニッチに一定期間存在し続けるようになる。微生物がニッチに存在し続ける期間に応じて、生着は一過性または安定であり得る。定着及び生着(及び滞留時間)は、例えば、コロニー形成単位(CFU)/グラムの数をカウントすること、及び/または一定期間にわたって採取された1つ以上の腟サンプルに含まれる微生物の核酸配列決定を行うことによって定量化することができる。
【0305】
「対象」という用語は、治療、観察または試験に供されたヒト(例えば、ヒト女性)を指す。一実施形態において、対象は、思春期の対象である。一実施形態では、対象は妊娠している。一実施形態では、対象は妊娠可能年齢の対象である。一実施形態では、対象は閉経前の対象である。一実施形態において、対象は、閉経後の対象である。一実施形態では、対象は、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物のレシピエント、例えばレシピエント女性である。一実施形態において、対象は、微生物サンプルを提供するドナー女性である。いくつかの実施形態では、対象は、微生物の不均衡(例えば、ディスバイオシス、感染症、または炎症状態)に関連する臨床状態に罹患しているかまたはそれを示すヒト女性である。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載の組成物及び調製物を予防的に使用するヒト女性である。
【0306】
「増加した」、「増加する」、「増強する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは100%以下の増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍以上の任意の増加を意味することができる。
【0307】
用語「より低い」、「低減された」、「低減」または「減少」、「下方制御」または「阻害する」は、参照レベルと比較して少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%以下の減少(すなわち、参照サンプルと比較して存在しないレベル(または検出限界未満のレベル))、あるいは参照レベルと比較して10~100%の任意の減少を意味する。
【0308】
「実質的に」という用語は、大きなまたは有意な程度までを意味する。例えば、病原体を「実質的に含まない」サンプルの場合、この用語は、サンプルが大部分、または本質的に、しかし完全ではない可能性があるが、病原体がないことを意味する。選択された病原体を実質的に含まないサンプルは、選択された病原体を約5%、<5%、<4%、<3%、<2%、または<1%含むサンプルを指し得る。特定の実施形態では、「実質的に含まない」という用語は、<5%を含む。
【0309】
「炎症」、「炎症性障害」、「炎症に関連する疾患」、「炎症に関連する状態」という用語は交換可能に使用され、炎症を含むか、またはそれを特徴とする任意の病態、障害、疾患または状態を表す。炎症は、急性炎症または慢性炎症であり得る。
【実施例】
【0310】
実施例
【0311】
実施例1:ドナー及びレシピエントを同定するための女性のスクリーニング
【0312】
本実施例は、腟マイクロバイオーム組成及び病原体の非存在の分析に基づいて適切なドナーを同定するプロセスを記載する。スクリーニングの概略を
図1に示す。
【0313】
参加者の登録及び腟サンプル
【0314】
腟の健康問題の病歴のない健康な女性を募集した。参加者に通知し、同意を得て、マイクロバイオーム分析のための腟スワブ及びHPV分析のための別個のスワブを提供した。合計96人の女性が同意し、サンプルを提供した。スクリーニングされた最後の60人の女性について、腟スワブの代わりに、腟用自己サンプリングデバイス(例えば、同様に「Flex disc」という名称で販売されている、The Flex Companyによるソフトディスク月経カップ等の、腟腔に挿入される柔軟な月経カップ)を使用して子宮腟部分泌物(CVS)サンプルを得て、マイクロバイオーム及びバイオマーカー分析の両方、ならびにHPVスクリーニング専用スワブを可能にした。両方のサンプルタイプは、正しいサンプリング手順に関するドナーへの徹底的な指示の後、ドナーによる自己サンプリングによって得られた。
【0315】
マイクロバイオーム分析
【0316】
腟スワブまたはCVSサンプルからのマイクロバイオーム組成をショットガンDNA配列決定分析によって決定した。腟マイクロバイオーム分析のためのスワブを、DNA抽出の前に4℃で最大48時間維持した。CVSサンプルを生理食塩水で希釈して粘度を低下させ、等分し(手順については、実施例3を参照されたい)、DNA抽出前に-80℃で保存した。微生物DNAを抽出し、ヒトDNAを除去するために示差的溶解法を使用するMolysis Complete5キット(MolZym)を使用して、両方のサンプルタイプからDNAを抽出した。マイクロバイオームのショットガン配列決定及びバイオインフォマティクス分析を、Seqbiome(Cork、IE)によって行った。全てのサンプルを、Nextera XTインデックスキット(Illumina)を用いて多重化するための固有の二重インデックスを使用して、Illumina Nextera XTライブラリ調製キットガイドラインに従ってショットガンメタゲノム配列決定のために調製した。サンプルを、Teagasc DNA配列決定施設において、標準的なIllumina配列決定プロトコルを使用して、v2.5キット(300サイクルキット/150bp PE配列決定)を備えたIllumina NextSeq 500配列決定プラットフォームで配列決定した。生の配列決定データの品質は、FastQCを使用して評価した。最小品質チェックカットオフまたは少なくとも4Mリードの配列決定深度を満たさなかったサンプルを再配列決定した。次に、ショットガンメタゲノム配列決定データを、Kneaddata wrapperツールを利用する分析ワークフローによって処理した。Trimmomatic及びBowtie2を利用して、品質フィルタリング及び宿主ゲノム除染(ヒト)を行った。品質フィルタリングされたリードの分類学的分類を、古細菌、真菌及びウイルスゲノムに属する参照配列も含むゲノム分類データベース(GTDB)のカスタマイズされたバージョンを使用して、Kraken2種分類器を使用してさらに行った。次いで、Kraken2分類をBrackenツールに渡して、種レベルの存在量を推定した。細菌種の存在及び相対存在量に関する情報を得ることによって、各推定ドナー及びレシピエントについて腟マイクロバイオーム組成を決定した。
【0317】
この試験では、ドナーとして適格とするために、腟マイクロバイオーム組成は、少なくとも80%の腟lactobacilli(L.crispatus、L.iners、L.jensenii、L.gasseri)を含むこと、及び5%未満の選択された病原体(Atopobium属、Prevotella属、B.vaginale、及びF.vaginae)を含むことという2つの基準を満たさなければならなかった。96人の女性のうち61人(64%)の腟マイクロバイオーム組成は、これらの2つの基準を満たし、健康な腟マイクロバイオームと考えられた。腟微生物叢中に存在するlactobacilliの相対存在量を
図3に示し、各バーは単一の健康なドナーのマイクロバイオーム組成を表す。種の相対量をy軸に示す。スクリーニングされたドナーのマイクロバイオームは、それらの相対組成が異なっていた。いくつかの例では、マイクロバイオームは単一の種、例えば、L.crispatusによって支配されており、他のマイクロバイオームは、例えば、L.crispatus、L.iners及びL.jenseniiの組合せを含む、lactobacilliの不均一な集団を示した。注目すべきことに、0.05%未満等のわずかな相対量でさえも検出することができた(表2を参照されたい)。
【0318】
スクリーニングされた96人の女性のうち、28%(n=27)がディスバイオシスマイクロバイオーム(選択された病原体が>20%、腟lactobacilliが<10%と定義される)を示した(
図2及び
図4を参照されたい)。ディスバイオシスの腟微生物叢を示した女性は、腟疾患の症状がなく、全体的に健康状態が良好であった。残りの8%(n=8)は、健康マイクロバイオーム分類とディスバイオシスマイクロバイオーム分類の間に入り、腟疾患症状を示さず、またはスクリーニング基準で分類/定義されていない種を含んでいた(
図4)。これらの女性は、推定上のドナーまたはレシピエントとして適格ではなかった。
【0319】
健康なコホート(n=61)のマイクロバイオーム組成は、99.26%の腟lactobacilli存在量の中央値及び0.03%の選択された病原体を有した。対照的に、ディスバイオシスコホート(n=27)は、0.34%の腟lactobacilli存在量の中央値及び87.21%の選択された病原体を特徴とした。未定義のコホート(n=8)は、35.76%の腟Lactobacilli存在量の中央値及び61.83%の選択された病原体を特徴とした。
【0320】
これは、選択基準(
図2を参照されたい)が、健康及びディスバイオシスの腟微生物叢を高い確実性で確実に区別することができることを示唆している。健康な腟マイクロバイオームのみを推定ドナーとみなし、さらなるストリンジェントなスクリーニング手順を行った。
【0321】
HPVスクリーニング
【0322】
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、非常に一般的なウイルス感染であり、そのいくつかの株は子宮頸癌に関連している。HPV陽性女性の有病率は高い。ドナーのスクリーニング来院中にHPVスクリーニングのために採取した腟スワブについて、Qiagen QIAmp DNAミニキットを使用してDNA抽出を実施した。各ドナーサンプルから抽出したDNAをSeeGene Anyplex II HPV 28キットで使用し、BioRad CFX96 Dx qPCR装置で半定量的に実行し、これを設定し、このアッセイのために較正した(TrioLab、DK)。半定量的方法は、全ての既知の高リスク遺伝子型を含む28の異なる遺伝子型のHPVについて3つの量レベルを提供する。HPV陰性のサンプルのみを適切な推定ドナーとみなした。
【0323】
医療従事者による病原体の確認及び検査
【0324】
レシピエントに対する有害作用を最小限に抑えるために、推定上のドナー(健康なマイクロバイオームを有し、HPVスクリーニングに合格した女性)を、病原体、病原性共生生物及び性感染症の存在について婦人科医によってさらにスクリーニングし、がんまたは子宮内膜症等の他の疾患の存在を評価するために医学的及び婦人科的検査を受けた。この手順には、さらなるHPV検査が含まれた。
【0325】
HIV、A型肝炎、B型肝炎、及びC型肝炎、サイトメガロウイルス、Treponema、尿路感染症、HPV、クラミジア感染症、淋病、Trichomonas、性器ヘルペス、Candida、Mycoplasma、ならびにA型、B型、C型、及びG型のStreptococcusについて標準的な診断試験を実施した。健康診断中、推定ドナーを、病歴及び投薬使用、人口統計、心拍数、及び血圧測定を含む一般的な健康チェックに供した。
【0326】
承認されたドナーについては、指定された期間(
図1を参照されたい)にわたって、最後のドナー提供の後に、同じ試験をフォローアップ来院時に再度行った。承認されたドナーがフォローアップ来院時に試験に合格し、全てのサンプルが全ての品質チェック(実施例4を参照されたい)に合格するまで、サンプルは隔離されたままであり、レシピエントへの投与のために放出されなかった。
【0327】
ドナー選択
【0328】
ドナーは、マイクロバイオーム分析、病原体スクリーニング、ならびに医学的及び婦人科的検査を含む上記のスクリーニング手順で選択された。健康な腟マイクロバイオームを有し、病原体試験で陽性を有さず、医学的及び婦人科的検査で異常な所見を有さない対象のみが、適切なドナーと見なされ、プログラムに登録された(実施例2も参照されたい)。
【0329】
スクリーニングプロトコルに従って、スクリーニングを受けた96人の女性のうち12人(13%)をドナープログラムに登録し、彼らのドナー提供来院を開始した。これらのうち3人は、十分なドナー提供ができなかったか、またはフォローアップスクリーニング中に失敗した。全体として、、スクリーニングに登録した全96人の女性のうち、9%が全てのスクリーニング基準に完全に合格し、これにより9人の承認されたドナー(n=9)が得られた(表1)。
【0330】
表1は、HPVスクリーニングに合格したドナー対象(n=38)においてスクリーニングされた病原体及び病原性共生生物の概要を提供する。
【表1】
【0331】
完全に承認されたドナー(n=9)を含む全てのスクリーニングされた対象(n=96)の実質的に完全な腟微生物叢調製物の組成を表2に要約する。
【0332】
表2 4つのコホートの腟微生物叢組成:(i)健康、(ii)完全に承認されたドナー、(iii)ディスバイオシス、及び(iv)未定義。サンプル調製物中の検出可能な種の総量に対する中央値及び四分位範囲(IQR)(%)の定量化された細菌の相対量を示す。
【表2】
【0333】
「健康」、「ディスバイオシス」及び「未定義」コホートを、上記の腟lactobacilli及び病原体の相対量に基づいて分類した(
図2も参照されたい)。「完全に承認されたドナー」とは、第1のスクリーニングに合格することに加えて、例えば上述のようなSTIならびに他の感染症及び医学的状態を除外するための追加のスクリーニングに成功した対象を指す。全てのスクリーニング基準に合格し、適切なドナーとして認定された対象(n=9)は、99.62%の腟lactobacilli濃度の中央値及び0.01%の選択された病原体を有していた。承認されたドナーは、選択された腟lactobacilliの量が最も多く、群の腟病原体の量が最も少なかった。完全に承認されたドナーは、L.crispatusが優勢な腟微生物叢組成物に限定されず、lactobacilli種の混合物を含んでいたか、またはL.inersが優勢であった。
【0334】
レシピエント選択
【0335】
レシピエントを募集し、臨床試験に登録した。1つの試験では、18歳~45歳の健康なボランティア女性をスクリーニング及び参加のために募集した。腟疾患の症状がなく、概して健康状態が良好な女性のみをスクリーニングに登録した。別の試験では、腟症状を有する単一の患者が登録された。全てのレシピエントを、上で定義した包含基準(
図2を参照されたい):選択された病原体Atopobium属、Prevotella属、B.vaginale、及びF.vaginaeが>20%及び腟lactobacilliが<10%に従って、腟ディスバイオシス(ディスバイオシスの腟マイクロバイオームを有する)を有するとして分類した。
【0336】
実施例2:ドナーCVSサンプルの取得
【0337】
この実施例は、ドナーから腟微生物叢サンプルを得るプロセスを記載する。サンプルは、実質的に完全な腟微生物叢を含む。
【0338】
ドナー来院設定
【0339】
実施例1に記載されるスクリーニングプロセスに成功して合格したドナーに、2回の婦人科医/病原体検査来院の間の40日以内に子宮腟部分泌物(CVS)を提供するよう依頼した(
図1を参照されたい)。各ドナーは、月経中の日及びその後1日を除いて、40日間の任意の時点で10~15回のドナー提供を行った。ドナー提供は少なくとも16時間の間隔を置いて行った。
【0340】
ドナー提供期間中、ドナーは以下の制限を遵守する必要があった:腟及び肛門の性交の禁止;湖、ジャグジー及び水泳プールでの水泳をしない;腟内製品(例えば、タンポン、石鹸)を使用しないこと。各来院時に、ドナーは、一般的な健康上の質問と共にこれらの制限の遵守を確認するためにアンケートに記入した。
【0341】
ドナー提供期間後、ドナーは、婦人科医においてフォローアップ検査を受けた。このフォローアップ検査に合格した場合にのみ、サンプルの放出及び投与への使用を検討した(
図1、実施例1を参照されたい)。その時点まで、及び全てのサンプルが全ての品質チェック(実施例4を参照されたい)に合格するまで、全てのサンプルを隔離したままにした。
【0342】
CVSのドナー自己収集
【0343】
腟頸部分泌物(CVS)サンプルは、徹底的な指示の後に腟自己サンプリングデバイスを使用して自己収集によって得た。ドナーは、専用の衛生的に設計されたドナー室でCVSサンプルを得た。ドナールームを各ドナーの後に70%エタノールで洗浄し、Enterobacteriaceae、全好気性微生物数、ならびに酵母及びカビについて確認するために隔週の環境モニタリングに供した。この設定は、例えばホームサンプリングと比較して、清浄度を最大化し、処理時間を最小化する。ドナーがサンプリング手順に正しく従わなかったことによって引き起こされた、皮膚細菌からなるドナーサンプルの1つにおいて単一の汚染のみが検出された。
【0344】
腟用自己サンプリングデバイスは、可撓性/柔軟なリング及びプラスチック箔カップを備えた単回使用月経カップであった(実施例1に記載)。CVSのドナー提供のために、それは子宮頸部の上に月経カップのように着用されず、その代わりに、それを腟内に部分的に折り畳んで挿入し、約10秒間長手方向位置に残し、除去しながらその長手方向軸に沿ってねじることによって大きなスワブとして使用された。ドナーは、提供された標識され予め秤量された滅菌50mLチューブに腟自己サンプリングデバイスを入れた。15~20分後、別の滅菌50mLチューブに入れた新しい腟自己サンプリングデバイスを用いて、このプロセスの2回目を繰り返した。
【0345】
腟用自己サンプリングデバイスの柔らかく柔軟な材料は、腟管に部分的に折り畳まれて挿入されるのと併せて、腟を損傷または刺激することなく、腟腔の表面からCVSを効果的に収集することを可能にする。腟用自己サンプリングデバイスは、腟での使用が意図されており、安全であるが、最大限のドナーの安全性及び制御を確保するために、デバイスの各バッチをEnterobacteriaceaeの汚染についてスクリーニングし、いかなる汚染もないことを確認した。
【0346】
本明細書に記載の手順は、子宮頸部上の収集デバイスとして長期間にわたって腟自己サンプリングデバイスを使用することに勝るいくつかの利点を有すると考えられる。上記の方法では、CVSサンプルに含まれる細菌は、腟自己サンプリングデバイスとの接触に費やす時間が短くなり、収集される腟粘液及び腟細菌の量が増加する。腟上皮は、腟マイクロバイオームの基質を含む。したがって、このようにして得られたサンプルは、より高い濃度の生存可能な腟lactobacilli及び粘液、ならびに子宮内膜からのより少ない量の体液を有する。
【0347】
実施例3:実質的に完全な腟微生物叢調製物の製造
【0348】
この実施例は、子宮腟部分泌物からの実質的に完全な腟微生物叢調製物の産生を実証する。
【0349】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造するためのプロセス
【0350】
サンプル処理の概略図を
図5A及び
図5Bに示す。各来院時に、ドナーに、事前に標識し、事前に秤量した2つの50mL滅菌チューブと、2つの腟自己サンプリングデバイスとを、アンケート(実施例1及び2を参照されたい)と共に提供した。CVSを190×g及び周囲温度で5分間遠心分離することによって収集した。低速により、層に相分離しないで、デバイスからCVSを収集する。さらなる工程は全て、周囲温度の滅菌条件下で行った。自己サンプリングデバイスをチューブから廃棄し、CVSサンプル重量を決定した。合計(2本のチューブを合わせた)重量が200mg未満のサンプルを廃棄した。血液が目に見えるサンプルを廃棄した。
【0351】
各チューブ中のサンプルを1mLの生理食塩水と混合して粘度を低下させ、その後、2つのサンプルを合わせ、保存及びさらなる試験のために等分した。次いで、
図5Bに示すように、2つの合わせたサンプルを品質管理(実施例4を参照されたい)及び保存のためにいくつかのアリコートに分配した。
【0352】
保存用のサンプルを含むクライオバイアルをCoolCell(Corning)に入れ、次いで-80℃に置いた。CoolCellは、1℃/分の制御された冷却速度を有し、これにより、サンプルの最大生存率を維持することが保証される。最低2時間後、サンプルを「隔離」とラベル付けされた通常の-80℃保管箱に移した。サンプルは、全ての解放基準が満たされた後にのみ解放された(
図5B及び上記を参照されたい)。
【0353】
実施例4:品質管理
【0354】
本実施例は、子宮腟部分泌物から製造された実質的に完全な腟微生物叢調製物の品質管理を記載しているので、投与のために安全に使用することができる。
【0355】
全体的な手順
【0356】
品質管理に関する詳細を有するサンプル処理手順の概略図を
図5A及び
図5Bに示す。この手順は、分析及び品質管理に使用される体積が、実質的に完全な腟微生物叢調製物の喪失を最小限に抑えるために可能な限り低くなるように、高度に最適化される。pH測定に用いたサンプルは、測定後に廃棄する。保持バイアルは、安全上の理由(例えば、レシピエントにSTIが発生した場合にSTIをチェックするため)のために投与後少なくとも1年間維持される。各ドナーの最初と最後のサンプルを全てqPCR分析に供して、多剤耐性遺伝子(MDR遺伝子)の非存在を確認した。
【0357】
品質管理のための分析
【0358】
pHは、マイクロpHプローブを用いて測定した。技術的な三連測定を実施し、測定値間の差が>0.2である場合に繰り返した。pH測定に用いたサンプルは、測定後に廃棄する。顕微鏡検査を行った。精子細胞の非存在を、顕微鏡法によって、及び精子細胞を同定するための高感度かつ選択的な方法である酸性リン酸塩紙を使用して光学的に決定した。生存率は、de Man、Rogosa及びSharpe(MRS)寒天プレート上のコロニー形成単位(CFU)数によって、またはスクリーニング時にL.crispatus、L.jensenii、もしくはL.gasseriが優勢であったドナーの生細胞数(VCC)によって試験した。スクリーニング時にL.inersが優勢であったドナーについては、この方法を使用することができなかった。代わりに、BacLight生/死染色(ThermoFisher Scientific)を使用し、顕微鏡下のThoma細胞計数チャンバで生細胞/mLを計数して、これらのサンプルの生存率を試験した。サンプルを投与に使用してから1週間以内に、安定性バイアルを使用して腟投与時の細胞生存率及び用量計算を試験した。
【0359】
DNA抽出を、製造者の指示に従ってMolysis Complete5キット(Molzym)を使用して行い、十分な細菌配列リードを得て、メタゲノムデータ(使用される方法については実施例1を参照されたい)に基づいて投与後にin silico生着チェックを行った。アッセイ用に較正したBioRad CFX96 Dx qPCR装置でSeeGene Allplex Entero-DR qPCRアッセイキットを使用して、ショットガン配列決定に使用したものと同じDNAを使用して、多剤耐性(MDR)マーカーqPCRを行った。このキットは、カルバペネマーゼ遺伝子(NDM、KPC、OXA-48、VIM、IMP)、広域ベータラクタマーゼ(ESBL)遺伝子(CTX-M)、及びバンコマイシン耐性遺伝子(VanA、VanB)の単一または複数の検出を可能にする。
【0360】
実施例5:ドナーマイクロバイオームの特性評価
【0361】
この実施例は、腟投与に適した実質的に完全な腟微生物叢調製物を記載する。
【0362】
ドナー提供期間中のマイクロバイオーム組成
【0363】
女性の腟マイクロバイオームは、月経周期にわたってまたは性行動に応じて変動し得ることが知られている(Gajer et al.,2012,Science Translational Medicine)。避妊を使用しなかった混合種組成物を有するドナー(表3)については、月経周期(
図6A、B)にわたって種間の変動が観察されたが、サンプル中のL.crispatus、L.iners、L.jensenii、L.gasseriの全体が>80%で安定したままであった。L.crispatusが非常に優勢なマイクロバイオームを有するドナーのマイクロバイオームは、長期間にわたって非常に安定していた(例えば、ドナー7、
図6G)。
【0364】
L.iners優勢ドナーのマイクロバイオームはほとんどが安定していたが、ある場合には、L.inersとL.crispatusとの間のシフトがドナー提供期間の終わりに向かって観察された(
図6I)。このドナーは、避妊に起因して月経周期を有していなかった。ドナーにおいて観察されるマイクロバイオームの安定性は、ドナーが遵守する制限、例えば、性交をしないことによって補助される可能性が高い。
【0365】
一部のドナーは、2回目のドナー提供来院のために戻ってきた。
図6では、これを縦線で示している。ドナー2、5及び7については2回の間が1ヶ月間、ドナー1については1、5ヶ月間であった。ドナー6については、2回の間が2ヶ月間があり、そのドナーは1回目の避妊ピルの使用から2回目のホルモン避妊薬の非使用に変更した。
【0366】
いくつかのドナーサンプルでは、特定の種(ほとんどがL.jensenii)が少量であるが非常に一貫した量(0.3~3.5%)で存在した。これらのドナーの1つでは、さらに少量のL.inersが一貫して存在した(0.07~0.33%)。さらに少量のL.iners(0.02~0.10%)及びL.jensenii(0.01~0.03%)の両方が、さらに別のL.crispatus優性ドナーにおいて一貫して観察された。混合種組成を有する2人のドナーでは、相対存在量が0.27%ほどの低さに低下することもあったが、ドナー提供期間にわたって混合物中に存在する種のいずれも完全に消失したわけではなかった(検出レベル未満)。全体として、これは、腟マイクロバイオームが安定した生態系であることを意味し、1人の人における異なるLactobacillus種間の共生関係を指し示す。これは、実施例7に記載されているように、調製物の腟投与の観察結果によってさらに実証される。
【0367】
4つの主要な腟lactobacilli(L.crispatus、L.iners、L.jensenii、L.gasseri)に加えて、他のlactobacilli:L.acetotolerans、L.acidophilus、L.amylovorus、L.gallinarum、L.gigeriorum、L.helveticus、L.johnsonii、L.kefiranofaciens、L.kitasatonis、L.paragasseri、L.psittaci、Lactobacillus sp002911475、L.taiwanensis、L.ultunensis、L.coleohominis、L.reuteri、及びL.vaginalisが、ドナーサンプル中に少量で一貫して存在することが規則的に観察された(ほとんど<0.05%)。これらのlactobacilliの安定した存在は、健康な腟ニッチを促進及び維持するために全体的に必要とされ得る複雑な生態系をさらに指し示す。
【0368】
いくつかの他のlactobacilliは、ドナーサンプルのサブセットにおいて散発的に出現した。L.helveticusは、2人のL.iners優勢ドナーでは観察されず、L.iners優勢からL.crispatus優勢にシフトした1人のドナーの最後の来院時にのみ出現したが、これは、特定の種が互いに共生を好む一方で、他の種は生態系において適合しない可能性があることを示唆し得る。L.iners優勢ドナーが投与に適していると考えられなかった文献の報告とは対照的に、データは、完全に承認されたドナーのL.iners優勢マイクロバイオームが非常に安定した健康な生態系を有し(実施例8の炎症マーカーデータも参照)、実質的に完全な腟微生物叢調製物に適したドナーであることを示唆している。
【0369】
L.gasseriは、優性種としてまれに観察されたが(
図3)、典型的には、いくつかのドナーにおいて少量で見出された(
図6、表1)。L.gasseriは、L.crispatus優勢ドナー4(
図6D)において0.01~2.23%の相対濃度;混合マイクロバイオームドナー1(
図6A)において0.01~0.07%の相対濃度;L.iners優勢ドナー8(
図6H)において0.3~7.14%の相対濃度で検出された。少量のLactobacillus種の一貫した維持は、少量の種が腟生態系の維持または安定性においてこれまで知られていない役割を果たす可能性があることを示唆する。
【0370】
得られたサンプルの物性
【0371】
サンプルの重量は、同じドナーのドナー提供物間及びドナー間で変動したが、平均で>200mgであった。CFU及びpHは安定したままであり、<4.5の定義された閾値内であった(表3)。全体として、マイクロバイオーム組成及びサンプルの特性の両方に対するこの安定性は、ドナーマイクロバイオームの健康及び安定性を示す。
【0372】
表3は、生成されるCVS及び実質的に完全な腟微生物叢調製物の特性をまとめたものである。各行は、40日間にわたる10~15回のドナー提供中の一人のドナーのデータを含む。「時間窓」欄は、ドナーが「提供者数」欄に列挙されたサンプル数を提供した日数を列挙している。ドナーIDは、
図6のマイクロバイオームグラフと同じである。重量は、生理食塩水を添加する前にドナーによって提供された2つのサンプルの合計重量である。用量は、分析のための全体積が取り出された後(
図5Bを参照されたい)、レシピエントに投与するために使用される実質的に完全なマイクロバイオーム調製バイアル内のmLの最終量である。最大用量は、クライオバイアルに適合するように1.8mLである。生存細胞/用量を、2つのL.iners優性ドナー(8及び9)を除く全ての種について2~3日間嫌気的に成長させたMRS培地上でのCFUプレート計数によって決定した。これらについて、生細胞/用量を、生/死染色及び顕微鏡下の計数チャンバでの生細胞の計数によって決定した。略語:hIUD:ホルモン子宮内避妊デバイス;ピル:経口避妊薬。
【表3】
【0373】
反復CVSの提供がサンプルの組成に影響を及ぼすかどうかをさらに評価した。ドナーは、6時間間隔で1日2回及び4時間間隔で1日3回、2つのサンプルを提供した。反復CVSの提供手順の両方が、pHの有意な増加(約0.4の増加)、ならびにサンプル重量(約200mgまたはそれ未満まで)及びCFU(1log)の減少をもたらし、1日以内の反復サンプリングを不適切にした。これは、マイクロバイオームがサンプリング後に完全に再生するのに6時間超を必要とすることを示唆している。その結果、ドナーは、最大で1日に1回、約16時間の提供間隔でサンプルを与えることができた。
【0374】
実質的に完全な腟微生物叢調製物の安定性
【0375】
異なる腟マイクロバイオーム組成を含む実質的に完全な腟微生物叢調製物の安定性を、2週間~11ヶ月間の異なる保存期間後に試験した(
図7)。50μLアリコートで安定性を試験し、これは全容量バイアルの代表であることが分かった(データは示さず)。
【0376】
一般に、生存率は、全ての種について経時的に高いままであり、有意な損失は観察されなかった(生存率の平均損失は1log未満)。種間の生存率の大きな差は観察されなかった。他の研究者らは、L.crispatus優勢ではない腟微生物叢組成物について、9ヶ月後に2logの生存率低下を報告した。ここで見られる改善された安定性は、少なくとも部分的には、本明細書で提供される子宮腟部分泌物を得る収集方法に起因する可能性があり、これは、収集カップがドナー対象の内部に着用される長期間に依存せず、代わりに腟粘液及び細菌を収集カップに短時間だけ曝露する。理論に束縛されるものではないが、lactobacilliが腟上皮に接触せず、または付着することができずに月経カップ内に長く存在するほど、生存率が悪化すると考えられ、これはL.iners等の感受性種に特に関連し得る。
【0377】
本明細書に記載のサンプルを得てそれを処理するプロセスは、全ての試験種組成物について長期間にわたって安定である実質的に完全な腟微生物叢調製物を提供する。
【0378】
さらに、サンプルを解凍する様式が、調製物に含まれるlactobacilliの生存率に影響を及ぼすかどうかを評価した。クリニックで調製物の腟内投与を行う場合、臨床医は一般に、必要な全ての材料を30~37℃に予熱する。サンプルを解凍し、以下の2つの選択的方法で約30℃まで加温した後、サンプルの生存率を試験した:(i)-80℃~4℃、次いで室温(RT)及び30℃まで解凍する、または(ii)同じ手順を行うが、ただし4℃の工程は行わない。
【0379】
図8Aは結果を示し、「CFU新鮮」は、サンプリング直後及び保存前に新鮮なサンプルを播種したときに得られたCFUである。「4C及びRTで解凍されたCFU」は、サンプルを-80℃の貯蔵から取り出し、それを4℃で30分間、次いで室温(RT)で30分間、次いで30℃に置くことによって徐々に温めた後のCFUである。「RTによって解凍されたCFU」は、同じ手順に従うが、4℃での工程を省略する。
【0380】
CFU及び細胞生存率は試験した全てのサンプルで安定したままであり、前者の方法は2つのサンプルでわずかに良好な生存率をもたらしたが、第3のサンプルでは後者の方法がわずかに良好であった(
図8A)。しかし、差は小さく、一般に許容される生存率が維持された。これは、4℃工程を省略することができ、調製物の腟投与中に方法(ii)をクリニックでの実施に使用したことを示唆している。
【0381】
凍結解凍サイクルの繰り返し
【0382】
安定性の別の態様は、凍結解凍サイクルの繰り返しに耐える能力である。これは、レシピエントが実質的に完全な腟微生物叢調製物を受ける予約のために来院することができず、後の時点での投与のためにサンプルを再凍結しなければならない場合に実際に関連する。あるいは、出荷が遅れ、途中で解凍した後に再凍結が必要になる可能性がある。したがって、サンプルに対する凍結解凍サイクルの効果、ならびに室温(RT)での長期インキュベーションを評価した。
【0383】
図8Bは予備データを示し、「CFU新鮮」は、サンプリング直後及び保存前に新鮮なサンプルを播種したときに得られたCFUである。「1凍結/解凍サイクル」は、サンプルを-80℃の貯蔵から取り出し、室温で約40分間放置し、約30分間約30~37℃に予熱した後のCFUである。「2凍結/解凍サイクル」は、この凍結解凍サイクルをもう1回繰り返したが30~37℃に加熱せずに、サンプルを解凍サイクルの間の-80℃で2~3週間貯蔵した後のCFUである。「4時間解凍」は、サンプルを-80℃の貯蔵から取り出し、播種前に30分ではなく4時間室温(RT)に置いた後のCFUである。結果は、凍結解凍サイクルを2回受けると、サイクルを1回だけ受けた場合よりも生存率が低下することを示している。L.crispatus-L.jensenii混合物は最も堅牢であり、他の試験した組成物よりも良好に反復凍結解凍サイクルに耐えることができた(
図8B)。
【0384】
RTでの長時間(4時間)のインキュベーションは、生存率を1log超または1log近く低下させたので、避けるべきである。これらの予備データは、全てのサンプルが、RTで長期間放置されない場合、少なくとも1回の凍結解凍サイクルの間、細胞生存率を維持することができることを実証している。これは、サンプルを再凍結することができ、廃棄する必要がない臨床現場で有用である。
【0385】
実施例6:調製物の腟投与のための適合ドナー及びレシピエント
【0386】
投与前にin vitroでドナーサンプルを選択できるかどうかを評価するために、以下のアッセイを実施した。B.vaginale優性(以前はGardnerella vaginalisと呼ばれていた)であったレシピエント2からのCVS材料(
図8B)を、バイオバンキングプロトコル(実施例8参照)に従って処理し、Gardnerella vaginalis培地(ThermoFisher Scientific、PB5067A)に播種し、ガスパックを備えた嫌気性ジャー内で37℃で一晩増殖させた。1mLの滅菌生理食塩水をプレートに添加した後、コロニーを掻き取り、再懸濁し、約0.5のマクファーランド標準の密度に希釈した。100μLの希釈レシピエントサンプルを4つの新しいGardnerella vaginalisプレートに播種し、5分間風乾した。次いで、それぞれ直径約3mmの4つの滅菌孔を各プレートにパンチした。ドナー由来の実質的に完全な腟微生物叢調製物を各孔に沈着させた(希釈していないサンプルで2回反復し、5倍希釈したサンプルで2回反復した)。これらのプレートを、ガスパックを備えた嫌気性ジャー内で37℃で嫌気的にインキュベートした。孔の周囲に形成されたハローの存在及びサイズを5日後及び7日後に測定した。ハローは、視覚的に決定することができる外観の明確な変化によって特徴付けられるウェルの周りのゾーンである。孔が病原性細胞の増殖に悪影響を及ぼす薬剤を含む場合(細菌排除ゾーン)、孔の周りにレシピエントからの病原性細胞の増殖の非存在または阻害を観察することができた。ウェルの周りのハローが大きいほど、阻害/排除は強くなる。実質的に完全な腟微生物叢調製物全体が投与されたので、ここで観察された効果は完全な組成物の結果である。したがって、ハローアッセイは、どのドナーが適切であり、病原体、例えばレシピエントの腟腔に存在する病原体の細胞増殖を阻害する最良の機会を有するかを評価するための読み出し情報を提供する。lactobacilliが支配的な微生物調製物がニッチ(例えば、レシピエントの腟腔)における常在病原体の増殖を阻害する能力は、ニッチへの投与時に生着及び安定した定着を助けると予想される。Gardnerella vaginalis培地は、lactobacilliが感受性である抗生物質を含まず、したがって抗生物質を含まない投与を表す。
【0387】
【0388】
ドナー1及び5由来の希釈されていないサンプルは、病原体の増殖に対する強力な阻害効果を示す同等に大きなハロー(3mm)を示した。同じサンプルを5倍希釈したところ、有効性が低下した。これはドナー1のハローの減少によって認められ得る。ドナー5の場合、希釈は阻害効果を無効にした。ドナー4及び9からのサンプルは、いずれの濃度でも病原体の増殖を阻害するのに有効ではなかった。
【0389】
これらのデータは、ドナー1が、ドナー5、4及び9よりもこのレシピエントに対する実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与に潜在的により良好に適合することができ、このレシピエントに存在するディスバイオシスマイクロバイオームの治療に成功する可能性を高めることができることを示唆している。したがって、ドナー1のこのサンプルは、臨床現場でレシピエント2に投与するために使用された(以下の実施例7において説明する)。
【0390】
実施例7:調製物の腟投与によるディスバイオシスマイクロバイオームの処置
【0391】
この実施例は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を使用して、腟投与によりレシピエントのディスバイオシスマイクロバイオームをドナーの健康なマイクロバイオームに復帰させ、それによってディスバイオシスマイクロバイオームを治療する方法を実証する。
【0392】
実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与及び結果
【0393】
実質的に完全な腟微生物叢調製物サンプルを最初に、-80℃から室温まで40分間移動させることによって解凍した。その後、サンプルを37℃のインキュベータ内に30分間入れた。次いで、サンプルを含むチューブを穏やかに5回反転させて混合した。サンプルを5mLシリンジに引き上げ、5mLシリンジに取り付けられた授精カテーテルを使用して、砕石位にあるレシピエントの腟内に適用した。サンプルを腟内に挿入した後、レシピエントに、水平位で横たわった状態を30分間保つように指示した。
【0394】
実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与後のディスバイオシス腟微生物叢の2つの代表的な変化を
図9に示す。レシピエント1は3回の投与(3連続日にわたって1回の投与/日)を受け(
図9A)、レシピエント2は単回投与のみを受けた(
図9B)。レシピエント2の成功の可能性を高めるために、実施例6に記載されるように、in vitroでのドナー-レシピエント適合アッセイを行った。ドナー1からのそのアッセイにおいて最も良好に機能したサンプル(表4を参照されたい)は、レシピエント2における投与での使用に成功した。レシピエントは、調製物の投与前または投与中に抗生物質で前処置されなかった。調製物の投与後、レシピエントのマイクロバイオームの変化は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を単独で投与することによって、実質的に完全な腟微生物叢調製物が、ディスバイオシスマイクロバイオームをドナーのものによりよく似たマイクロバイオームに変化させることができることを示す(すなわち、抗生物質による処置なし)。
【0395】
全てのレシピエントは、スクリーニング時にマイクロバイオームに基づいて登録された。これは概して来院の1ヶ月前に行った。実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与のための来院時に、それらのマイクロバイオームをベースライン測定として再びチェックした。レシピエント1は腟無症候性であったが、レシピエント2は投与時に腟疾患症状を示した。レシピエント2は、製剤投与の1週間後に症状が顕著に減少し、2週間後に全ての腟疾患の症状が完全に消失したことを報告した。
【0396】
レシピエントの投与後のマイクロバイオームは、ドナーと同様に見え(「マイクロバイオームの双子化」と呼ばれ得る)、かなり安定したままであった。全体として、投与後のレシピエントでは、教師なし主成分分析(PCA)プロットにおいてドナーサンプルと一緒にクラスターが形成されたが、投与前のレシピエントでは、別個のクラスターが形成された(
図10)。これは、調製物の投与後のレシピエントの腟マイクロバイオームが、ディスバイオシス状態から変化しただけでなく、健康で非ディスバイオシスのドナーの腟マイクロバイオーム組成に似ていることを示唆している。
【0397】
実質的に完全な腟微生物叢調製物(複数可)の投与前及び投与後のレシピエントのマイクロバイオーム組成、ならびにそれぞれのドナーの組成を表5に要約する。表は、ドナー及びレシピエントのサンプル中の種の相対存在量(ショットガン配列決定によって決定される)を示す。調製物の投与後、「マイクロバイオームの双子化」、すなわち、ドナーマイクロバイオーム中に少量存在し、調製物の投与前にレシピエントに存在しなかった種を含むレシピエントの腟ニッチで培養されたドナー種が、各場合で観察された。この現象が観察される関連種は、灰色の列で強調されている。
【0398】
レシピエントの投与後のマイクロバイオームには、ドナーマイクロバイオームに少量存在する種が含まれ(表5;(表中、L.はLactobacillusであり、B.はBifidobacteriumである))、安定した生態系全体がドナーからレシピエントに移されたことが示唆された。これらの種は、ほとんどのドナーの全ての提供来院時に安定して存在することも観察された(実施例5を参照されたい)。実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与によるレシピエントへの生態系全体の移入は、存在する病原体及び病原性共生生物を根絶し、実質的に空の微生物ニッチを作り出すために使用される抗生物質による前処理がない場合でも、Lactobacillusが支配的なドナーマイクロバイオームの生着及び定着の成功を可能にし得る。これは、以前に試験された単一種または単一株の調製物が概して良好に機能しない理由を説明し得る。これに代えて、またはこれに加えて、初期の生着を支援するために、実質的に完全な腟微生物叢調製物(例えば、ムチン、乳酸等。)において特定の物質が必要とされる可能性がある。
【0399】
さらに、投与の2週間後以降、レシピエント2のマイクロバイオームは、混合種組成であったが、ドナーのものとほぼ同一となり、投与後1週間で、L.jenseniiが第1の優勢なLactobacillus種となった。これは、他の種の定着の道を開く「パイオニア種」の存在を示し得る。この現象は、異なる種の異なる基質利用能またはpH最適条件によって説明され得る。しかし、レシピエント1等の他のレシピエントの一部では、1週間後、マイクロバイオームは既にドナーのものとほぼ同一となった。ドナーにおいて観察されたマイクロバイオーム内の種の変動は、レシピエントにおいても観察され、生態系の移動が示唆された。レシピエント1に使用された材料は、レシピエント2に使用されたものと同じドナーからのものであったが、異なる来院時のものであった。それらのサンプルにわたって、種は同じであるが、それらの相対存在量は異なり、種の存在量が必ずしも決定要因ではないことを示している。さらに、実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物は、単回投与及び複数回投与の両方で有効であった。
【0400】
生態系全体がドナー材料中に存在する場合、生着は成功したと考えられ、したがって、実質的に完全な調製を必要とする。
【0401】
他の研究者は、L.inersの有害な役割を以前に示唆している。しかし、L.inersは、試験したドナーマイクロバイオームに存在する。本明細書に記載のストリンジェントなスクリーニング基準を満たす女性では、L.inersはまた、健康で安定なマイクロバイオームを示すのに有益な役割を果たし得る。これにより、調製物の投与に4つの主要なlactobacillus種全てを使用する選択プロセスが確認される。
【0402】
盲検アプローチとして、レシピエントの腟ニッチの1つにおける特定のドナーマイクロバイオームによる生着を確認するために、処置後のレシピエントマイクロバイオームを全てのドナーマイクロバイオームのライブラリー(メタゲノム配列決定データ)と比較した。レシピエントマイクロバイオームとの近さに基づいてドナーライブラリーから正しいドナーサンプルを同定することが可能であり、レシピエントにおけるドナーマイクロバイオームの生着が成功したことが示唆された。
【0403】
したがって、この実施例は、実質的に完全な腟微生物叢調製物をディスバイオシスレシピエントに投与することによるディスバイオシス腟マイクロバイオームの治療に成功し、投与後、レシピエントの微生物叢組成はドナーの微生物叢組成によく似ていたことを実証する。投与前の抗生物質治療が、他の者によって提案されているように、必要であると考えられていたが、これらのデータは、実質的に完全な生態系を含む実質的に完全な腟微生物叢調製物が提供される場合、抗生物質による前処理は必要ないことを実証している。
【表5-1】
【表5-2】
【0404】
実施例8:ディスバイオシス女性における腟炎症マーカーの上昇
【0405】
この実施例は、ディスバイオシス腟マイクロバイオームが、健康な女性とは異なる局所炎症状態を表すことを実証する。
【0406】
バイオマーカー分析のためのスクリーニングコホートCVSのバイオバンキング
【0407】
実質的に完全な腟微生物叢調製物(実施例2を参照されたい)について記載したように、CVSサンプルを収集したが、以下の違いがあった:サンプルは、受け取ったときすぐに氷上に置き、処理手順全体を通して冷却した状態を保った。室温ではなく冷滅菌生理食塩水を使用し、CoolCellを使用せずにサンプルを-80℃に凍結した。サンプル当たり1mlの滅菌生理食塩水を添加する代わりに、サンプル1mg当たり2.5μLを添加し、その結果、分析前に全てのサンプルの重量を正規化した。配列決定以外の品質チェックは省略した(CFU、pH、精子細胞検査)。
【0408】
炎症性タンパク質の分析
【0409】
細菌性腟炎(BV)関連及びディスバイオシス腟微生物叢は、IL-1a、IL-1b、IL-8、IL-12、IL-18、及びFMS関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT-3L)、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)等のいくつかの炎症促進性サイトカインの濃度の増加に関連している。スクリーニングコホートにおける無症候性及びディスバイオシスの女性及び健康な女性の炎症状態を調査するために、O-link分析(BioXpedia、Aarhus、DK)を実施した。O-linkは、抗体結合オリゴヌクレオチドを使用することによってタンパク質に対してqPCRが行われる、高度に特異的な標的化プロテオミクス法である。92個の炎症マーカーを定量化するためにここで使用される炎症パネル等、異なるサブセットを標的とするマルチウェルプレートの異なるパネルが利用可能である。
【0410】
炎症性タンパク質マーカーに基づく明確な分離が、スクリーニングコホートにおけるディスバイオシス群と健康群との間で観察された(
図11A)。1つの健康なマイクロバイオームサンプルのみが、細菌メタゲノム配列決定によって検出されない未確定感染、例えばCandida(このデータは、婦人科検査及び病原体スクリーニングの前に生成され、全ての女性は無症候性であった)に起因し得る、ディスバイオシスサンプルを用いてクラスター化した。BVにおいて上方制御されることが知られているいくつかの炎症促進性サイトカイン、例えば、IFNγ、IL-1α、IL-12、IL-18及びMMP-10(参考文献及び
図11Bを参照されたい)(Th1サイトカイン(IFNγ、IL-12)、先天性/炎症関連サイトカイン(IL-1、IL-18)及びメタロプロテイナーゼ(例えば、MMP-10)に属する)もまた、ディスバイオシス参加者において上方制御された。水平線は中央値を表す。
【0411】
実施例9:実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与は、腟ニッチの炎症状態を低下させる
【0412】
この実施例は、局所炎症状態を減少させることによる実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与によって誘導されるディスバイオシス腟マイクロバイオームの変化を記載する。
【0413】
バイオマーカー分析のためのドナー及びレシピエントCVSのバイオバンキング
【0414】
いくつかの時点で、レシピエント2から採取したCVSサンプルをOlink炎症バイオマーカー分析に使用した。サンプルは、実施例8のスクリーニングコホートのバイオバンキングサンプルと同じ方法で処理した。レシピエント2に使用されたものを含む各ドナーについて、5回目の来院では投与は行わず、代わりにバイオバンキング法に従った処理が行われた。これにより、バイオバンキングのみを目的とした多数のアリコートが得られた。
【0415】
炎症性タンパク質の分析
【0416】
レシピエント2からのサンプルを、Olinkプレート間のバッチ間変動を有することなく、ディスバイオシス及び健康な腟マイクロバイオームサンプルと比較できるようにするために、スクリーニングからのサンプルのサブセット(サンプルの利用可能性に基づく)を、レシピエントサンプルと同じOlink炎症プレート上で再度泳動した。レシピエント2に使用したドナーのバイオバンキングサンプルを同じプレート上で泳動した。
【0417】
再泳動スクリーニングコホートサンプルのサブセットは、再び、ディスバイオシス群と健康群との間の炎症性タンパク質マーカーに基づく明確な分離を示した(
図12A)。ドナーバイオバンキングサンプルは、健康/lactobacilli優性スクリーニングサンプルと一緒にクラスター化した。投与前、すなわち実質的に完全な腟微生物叢調製物をレシピエントに投与する前に、レシピエント2のサンプルは、ディスバイオシスサンプルとクラスターを形成し、ドナー及び健康コホートから分離した(
図12A)。レシピエントへの調製物の投与の1ヶ月後、レシピエントのマイクロバイオームは、健康なコホートとクラスターを形成し、これは、
図12AのPCAプロットにおける「1m後」のデータ点によって見ることができ、健康な対象を表す実線の円に非常に近い。したがって、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与は、レシピエントの腟マイクロバイオームをディスバイオシスマイクロバイオームから健康なドナーのマイクロバイオームにシフトさせた(
図12A)。投与後ドットとドナードットは正確に重なり合っておらず、これは、Olinkについてアッセイされ、レシピエントへの投与に使用されたドナーサンプル(同じドナーであるが、提供日及び調製日が異なる)におけるわずかな違いに起因し得る。さらに、健康なドナーのマイクロバイオームは、lactobacilliの相対量も変動するので(
図6A~Cを参照)、ドナーとレシピエントとの間のわずかな変動が予想される。
【0418】
少数の利用可能なデータ点によって制限されるが、ディスバイオシス及び健康コホートで差次的に発現された選択されたBV関連炎症促進性マーカー(
図11B)は変化しなかったか、投与後に下方制御される傾向を示した(
図12B)ことから、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与によるディスバイオシスの治療が腟腔の局所炎症を治療または改善し得ることが示唆された。
【0419】
実施例10:臨床試験
【0420】
この実施例は、腟ディスバイオシスの処置として、本明細書中に提供されるような実質的に完全な腟微生物叢調製物を使用することの有効性を評価することを目的とした2つの臨床試験を記載する。
【0421】
実質的に完全な腟微生物叢調製物での処置の結果としての腟マイクロバイオームのシフトを調査し、マッピングする2つの臨床試験を行う。
【0422】
第1の試験の主な目的は、腟スワブサンプルのメタゲノム配列決定から定義された基準に基づいて、腟ディスバイオシスを有するとスクリーニングされた健康で無症候性のボランティア女性への健康なドナーからの3回の連続した実質的に完全な腟微生物叢調製物投与の効果を評価することである。実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与を、3回の異なるかつ3日連続の来院時に3回行い、対象及びそれらの腟マイクロバイオームを、最初の投与の約6ヶ月後まで追跡する。この試験は、18歳~45歳のn=40人の健康なボランティア女性における、単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、二群アーム、並行群の試験である。これは合計11回の試験来院を含む(
図14)。
【0423】
第2の試験の主な目的は、腟スワブサンプルのメタゲノム配列決定から定義された基準に基づいて腟ディスバイオシスを有するとスクリーニングされた健康な無症候性または症候性の女性ボランティアへの、健康なドナーからの、フォローアップ来院によって分離された最大3つの個別投与の効果を評価することである。単回投与での処置は最大3回実施され、フォローアップ来院によって分離され、対象及びその腟マイクロバイオームは、最初の投与の約6ヶ月後まで追跡される。各投与は、レシピエントのディスバイオシスマイクロバイオームのシフトの成功について個別に評価される。第2の投与は、第1の投与後のフォローアップ来院において、第1の投与が腟マイクロバイオームを健康なLactobacillus優性の分類学的プロファイルにうまくシフトさせなかったと判定された場合にのみ行われる。同様に、第3の投与は、第2の投与後のフォローアップ来院で、ディスバイオシスの腟マイクロバイオームが残っていることが示された場合にのみ行われる。この試験は、18歳~40歳のn=48人の健康なボランティア女性における、単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、二群アーム、並行群の試験である。これは合計10回の試験来院を含む(
図16)。
【0424】
本治験製品は、約1.4~1.8mLの実質的に完全な腟微生物叢調製物を含有するクライオバイアルである。実質的に完全な腟微生物叢調製物を得るために使用されたドナーは、本明細書に記載のスクリーニング及びフォローアップの手順を経た。参照製品(プラセボ)は、本試験製品と同様のクライオバイアルで提供されるが、約1.3mlの滅菌生理食塩水のみを含む。
【0425】
試験には、参加のための全ての基準がチェックされ、メタゲノム配列決定に基づいて予め定義されたディスバイオシス基準が満たされているかどうかをチェックするために腟スワブが得られるスクリーニング来院が含まれる(下記参照)。全ての基準が確認された場合、ベースライン来院、来院2は、各個々の対象の次の月経周期の8日目(試験1)または10日目(試験2)頃に実行されるように予定される。ベースライン評価に加えて、対象を、「アクティブ」実質的に完全な腟微生物叢調製物または「プラセボ」の群に、3(アクティブ):1(プラセボ)の比で無作為化し、最初の投与を行う。試験1の場合、来院2、3及び4(来院2と同じ月経周期の8、9及び10日目に実施)は、それぞれ1回の投与を合計3回受けることからなる。試験2では、投与1がうまくいかなかった場合、参加者のサイクルの10日目に2回目の投与を行う。投与3は、投与2がうまくいかなかった場合、参加者のサイクルの10日目の来院6でも実施される。
【0426】
合計で、試験1では、最後の投与後最大6ヶ月の期間中に7回のフォローアップ来院(来院5~11)が行われるように予定される。試験2では、合計3回のフォローアップ来院(来院7~9)が最初の投与後最大6ヶ月の期間中に行われるように予定される。全てのフォローアップ来院は、来院間に1つの月経周期を有する対象の月経周期の8日目(試験1)または10日目(試験2)頃に行われるように予定される。全てのフォローアップ来院時に、腟サンプル中の微生物叢のメタゲノム配列決定評価を実施する。
【0427】
参加者は、参加資格を得るために、以下の基準の全てを満たさなければならない。
【0428】
書面によるインフォームドコンセントを与えることができ、その意思があること。
【0429】
≧18~≦45(試験1)または≧18~≦40(試験2)であること。
【0430】
治験責任医師によって、概して健康であると判定されること。
【0431】
腟症状がないこと(試験1のみ)。
【0432】
閉経前であること。
【0433】
腟ディスバイオシスの以下の所定の基準を満たすこと:腟サンプルのメタゲノム配列決定に基づいて、組み合わせたLactobacilli相対存在量が10%未満、及び組み合わせたGardnerella+Atopobium+Prevotellaの相対存在量が20%超である。
【0434】
既知の長さの規則的で予測可能な月経周期を有するか、または長時間作用型プロゲスチンもしくはホルモン避妊薬の使用に起因して少なくとも3ヶ月間無月経であったこと。
【0435】
個人的な医学的、性的及び行動履歴についての質問を進んで受けること。
【0436】
SCVMPで3回または最大3回の処置を進んで受けること。
【0437】
クリニックで子宮腟部分泌物及び腟スワブサンプルを進んで自己収集すること。
【0438】
治療後の少なくとも1つの月経周期(28日間)の間、補助的殺精子剤または潤滑剤を使用せずに、コンドームを使用しない限り、腟性交を控える意思があること。
【0439】
治療後少なくとも1つの月経周期(28日間)の間、入浴、水泳、温水槽での着席、またはソング下着の着用を進んで回避すること。
【0440】
治験責任医師によって、治療後の少なくとも1つの月経周期(28日間)の間の使用を承認されていない挿入型腟用女性用製品(例えば、タンポン、月経カップ、性的玩具)、腟用クレンジング製品、殺精子剤、潤滑剤、または他の腟用製品の使用を進んで控えること。
【0441】
試験参加期間中に妊娠しないこと、及び試験参加期間中における性交中にコンドームを使用する意思があること(試験2のみ)。
【0442】
以下の基準のいずれかが存在する場合、参加者は試験から除外される。
【0443】
閉経後の参加者であって、長時間作用型プロゲスチンまたはホルモン避妊薬の使用以外の別の既知の原因のない12ヶ月超連続して無月経であると定義される参加者。
【0444】
妊娠、授乳及び/または過去2ヶ月以内に妊娠している参加者、または試験2の場合、今後6ヶ月以内に妊娠することを計画している/希望している参加者。
【0445】
試験1の場合、現在妊娠の可能性があるが、有効な避妊方法を使用していない参加者について:
a.治療の2週間前、臨床試験を通して、フォローアップ手順の完了まで、または参加者が試験を早期に中止した場合の試験参加の中止後2週間の性交を完全に控えること。(この方法を利用する参加者は、性的に活動的になるべきである場合、また最終来院のためにクリニックに来院したときに、その前の2週間禁欲していたかどうかについて照会される場合、避妊の代替方法を使用することに同意しなければならない)。
b.スクリーニング来院前に外科的に滅菌されており、その参加者にとって唯一の男性パートナーである男性パートナーを有すること。
c.殺精子剤、機械的バリア(例えば、男性用コンドーム、女性用ペッサリー)、または避妊ピル等の許容可能な避妊方法を使用すること。参加者は、試験終了後少なくとも1週間、この方法を使用しなければならない。
d.最も高い予想失敗率が1%未満/年であることを示すデータが公開されている任意の非ホルモン性子宮内避妊器具(IUD)または避妊インプラントの使用。参加者は、最初のスクリーニング来院の少なくとも3ヶ月前、試験全体を通して、及び試験終了後2週間、デバイスを挿入しなければならない。
【0446】
同性関係にある女性、または試験全体を通して他の女性と性的関係を有する可能性が高い女性(試験1のみ)。
【0447】
HIV/AIDSまたは他の免疫不全を有する参加者。
【0448】
HIV、chlamydia、淋病、Mycoplasma genitalium及び/またはtrichomonas vaginalis;(試験2については)及び/または尿hCGのスクリーニングの検査で陽性された参加者。
【0449】
治験責任医師の意見により本治験への参加を禁忌とする処置を必要とする現在の腟Candida感染の参加者(試験1のみ)。
【0450】
参加者は、実験薬を含む治療を受けていない可能性がある。参加者が最近の実験的試験に参加していた場合、これらは本試験の30日以上前に完了していなければならない。
【0451】
スクリーニング(すなわち、IUD除去、子宮頸管凍結療法または子宮頸管レーザー治療)前の最後の2ヶ月以内に子宮頸部への外傷を含む何らかの種類の処置を受けた参加者。
【0452】
参加者が試験中に抗生物質治療を必要とする可能性が高いことを示唆する、抗生物質の定期的な使用を必要とする任意の既知の状態を有する参加者。
【0453】
スクリーニング前の最後の1ヶ月以内に全身及び/または腟に適用された抗生物質の使用(試験1のみ)。
【0454】
治験責任医師の意見で、参加者が試験に適合する可能性を低くする、または参加者からのデータの解釈を複雑にすると考えられる任意の社会的、医学的、または精神医学的状態を有する参加者。
【0455】
治験責任医師の意見で、参加者が試験に適合する可能性を低くする、または参加者からのデータの解釈を複雑にする薬物またはアルコール乱用の病歴を有する参加者(試験1のみ)。
【0456】
治験責任医師の意見で、参加の妨げとなる婦人科癌、婦人科状態または外科的婦人科病歴の病歴を有する参加者(試験1のみ)。
【0457】
治験責任医師の意見で、参加の妨げとなるスクリーニング検査での異常所見を有する参加者。
【0458】
試験1と同一であるが、実質的に完全な腟微生物叢調製物に加えて抗生物質をさらに投与する修正臨床試験を
図15に示す。
【0459】
予備結果
【0460】
2つの試験にわたって、実質的に完全な腟微生物叢調製物の投与のために使用されたドナーサンプルと類似またはほぼ類似した分類学的プロファイルを有するLactobacillus優性の健康な腟マイクロバイオームに、腟マイクロバイオームをディスバイオシスからシフトすることにおいて、以下の成功率が観察された。データは、レシピエントにおける避妊方法で層別化され、積極的介入に無作為化されたレシピエント(プラセボレシピエントではない)についてのみ示される(表6)。
【表6】
【0461】
非IUDホルモン避妊を使用して治療された8人のディスバイオシス対象のうち3人(38%)が、ディスバイオシス腟マイクロバイオームから健康な腟マイクロバイオームへのシフトに成功した。同様に、ホルモン避妊を使用せずに治療した9人のディスバイオシス対象のうち3人(33%)が、ディスバイオシス腟マイクロバイオームから健康な腟マイクロバイオームへのシフトに成功した。したがって、これらの2つの群の17人の対象のうち合計6人(35%)が、ディスバイオシス腟マイクロバイオームから健康な腟マイクロバイオームへのシフトに成功した。子宮内避妊器具(IUD)を装着している7人のディスバイオシス対象者は全て、ディスバイオシス腟マイクロバイオームの復帰に成功しなかった。IUDを使用した7人の参加者のうち、4人はホルモンIUDブランドMirenaを有し、1人はホルモンIUDブランドJaydessを有し、1人はホルモン未知のIUDブランドを有し、1人の参加者は未知のブランドを有する銅IUDを有していた。データは、少なくとも処置中にIUDを使用していないレシピエントについて、対象の約1/3が実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物を使用した処置に成功したことを示唆している。この成功率は、抗生物質による(前)処置がない場合でも達成された。これは、抗生物質及びそれらの使用に関連する有害作用の非存在下で、本明細書に記載の実質的に完全な腟マイクロバイオーム調製物を投与することによるディスバイオシスの治療の成功が実現可能であることを示唆している。
【0462】
実施例11:模擬腟液を使用した様々な製剤のマルチパラメータ評価
【0463】
形成されたゲル、凍結乾燥ゲル、錠剤、及びフィルムを含む、本明細書に記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を製剤化するための様々な適切な剤形を評価した。マンニトール、微結晶セルロース、ムチン(ブタ、Sigma)、ヒアルロン酸(Sigma)、マルトデキストリン、グアーガム(Sigma)、イヌリン(Sigma)、アルギン酸(アルギン酸ナトリウム、Dupont)、ポリビニルアルコール(PVA Parteck SRP 80、Merck)、CMCナトリウム(Ac-Di-sol、カルボキシメチルセルロースナトリウム、DuPont)、ポリビニルピロリドン(Kollidon(PVP)、BASF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel K 4 M(HPMC)、Colorcon)、ポロキサマー(poloxamer407(Kolliphor)、BASF)、Carbopol(Carbopol 934、Serva)、乳酸、及び酢酸緩衝液を含むいくつかの賦形剤を評価して、適切な剤形を得た。
【0464】
塩基性製剤
【0465】
例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、HPMC/PVP及びpoloxamer407を含む賦形剤を使用して、形成されたゲルを調製した。ゲルをpH調整して、約pH3.4~pH3.9のpHを維持した。乳酸緩衝液と酢酸緩衝液の組み合わせを評価した。
【0466】
錠剤は、賦形剤、例えば、微結晶セルロース、HPMC/PVP、マルトデキストラン及びpoloxamer407を含む増量剤ならびに圧縮を使用して調製した。凍結乾燥賦形剤も、粘膜付着及び/またはゲル化が改善されるかどうかを決定するために評価した。乳酸緩衝塩と酢酸緩衝塩の組み合わせを含めるために評価した。錠剤引張強度は、過度の破壊の欠如及び良好な加工性を確実にするために、約1.0MPaを目標とした。再構成錠剤(例えば、腟腔の内側)のpHの目標は、約pH3.4~pH3.9であった。低液体体積環境(例えば、腟腔の内側)での崩壊プロファイルも評価した。
【0467】
凍結乾燥ゲルの場合、例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、HPMC/PVP及びpoloxamer407を含むいくつかの賦形剤を凍結乾燥した。全てのゲルを、約pH3.4~pH3.9のpHを維持するようにpH調整した。乳酸緩衝液と酢酸緩衝液の組み合わせを評価した。目標の凍結乾燥外観は、きれいな均一のケーキであった。目標含水量は、一般に3%w/w未満の水(例えば、原薬のバイアビリティを増加させるために)であった。バイアル内の目標再構成時間は、手の旋回で2分未満であった。
【0468】
フィルム(空気乾燥)について、様々な濃度のPVAを評価した。例えば、乾燥時間、フィルムの最終的な柔軟性、粘膜付着等を修正するために、PVAにCMCナトリウム及び他の賦形剤を補充した。乳酸緩衝液と酢酸緩衝液の組み合わせを評価し、模擬腟液への浸漬に対するpH効果を評価した。標的フィルム特性は、適用のための十分な柔軟性(例えば、腟管に対して)、非粘着性、加工を容易にするための許容可能な乾燥時間、適切なフィルム厚、及び低液体体積環境(例えば、腟腔の内側)での崩壊プロファイル、ならびに原薬の効果的な放出及び移植を含んでいた。再構成フィルム(例えば、腟腔の内側)のpHの目標は、約pH3.4~pH3.9であった。
【0469】
全ての成分を、粘度の最適化(例えば、37℃で、例えば、腟腔の内側)、粘膜付着の増強(例えば、上皮、粘膜表面、例えば腟腔の内側に)及び/または原薬安定性に対する正の影響(例えば、製剤化及び保存時の細菌生存率)について評価した。理想的な製剤は、適切な垂直面上にほとんどまたは全く流れを示さず、製剤化時及び(長期)貯蔵中の両方で高い細菌生存率(例えば、CFUカウント)を維持する。
【0470】
評価された製剤選択パラメータとしては(例えば、腟管内の再構成された生成物の)粘膜付着;(再構成された製品の)粘度(例えば、ゲルベースの製品の最終粘度は、周囲温度で注入可能である必要があり、好ましくは37℃(体温で、例えば腟管で)で凝固させる必要がある);(再構成された製品の)全糖含量、例えば、理想的には生理学的濃度以下(約0.5~1.0mg/mL);再構成された製品の体積、例えば最大3mL;水和速度/崩壊速度(例えば、ゲル/マトリクス)、例えば、所望の放出速度を提供するのに十分な物理的完全性;pH、例えば、約pH3.4~3.9(例えば、競合的腟細菌の阻害を促進するため);水分活性/含水量(例えば、乾燥製剤)、例えば0.5~3%の水(例えば、長期間の乾燥製剤安定性について);微生物多様性、例えば、Lactobacillus種、例えば、L.crispatus、L.gasseri、L.jensenii及びL.inersの相対存在量;総用量/効力、例えば、好ましくは投与当たり1×105超のCFU/VCC、1×106超のCFU/VCC、1×107超のCFU/VCCまたは1×108超のCFU/VCC(投与当たり)、様々な温度での貯蔵寿命(再構成されない)、及び微生物限界、例えば、微生物、例えば、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicans、Staphylococcus aureusの非存在、Ph Eur基準5.1.4、2.6.12及び2.6.13)が挙げられる。
【0471】
例えば、生菌数、用量決定、貯蔵寿命について、プレートカウント(例えば、MRS寒天)または生細胞数(VCC、例えば、蛍光染色液を用いたQuantom Tx自動計数システム(AM620)の使用);例えば、粘膜付着及び粘度のためのレオメーター、pHメーター、Karl Fisher/水分活性計、例えば微生物負荷のためのPh Eur試験を含む標準的なアッセイを使用して試験を行った。
【0472】
ゲル製剤
【0473】
以下の賦形剤を用いてゲル製剤を調製した:
【0474】
0.5%及び2%のヒアルロン酸
【0475】
HPMC+Carbopol+PVP
【0476】
ポロキサマー20%+アルギン酸ナトリウム2%
【0477】
PVA3%+NaCMC2%
【0478】
ポロキサマー20%+グアーガム2%
【0479】
0.5%及び2%のグアーガム
【0480】
ムチン5%
【0481】
イヌリン8%
【0482】
周囲温度での重力下の流速(粘度、mPa・sec/剪断速度1/sec)を、ヒアルロン酸0.5%、HPMC Kollidon 25+Carbopol、グアーガム0.5%、模擬粘液及びイヌリンについて、56mmガラススライド上で0.5mLを用いて決定した。得られた値は、配合物に応じて、0~3の剪断速度での300~1×107mPa・secから100 1/secの剪断速度での7,000mPa・secの範囲であった。グアーガム(0.5%)及びヒアルロン酸(0.5%)はゲルを形成しなかったようであり、低い粘度をもたらした。15℃~45℃(10s-1の固定剪断速度を有する)の温度に対する粘度も決定した。ポロキサマーは、約25℃(約10,000~約12,000mPa・sec)で粘度の増加を伴う熱可逆性ゲル化挙動を示したが、他の製剤は、製剤に応じて、15℃で約500~12,000mPa・sec及び45℃で約200~11,000の様々なレベルで粘度の小さな変化を主に示した。
【0483】
次の工程には、どのゲル基剤を凍結乾燥及び再構成して許容可能なゲルを形成することができるかを含め、評価した。「ケーキ」の外観も、均一性を示すために評価した。
【0484】
以下の組成を用いて、模擬腟液(SVF)を生成した:35mgのNaCl、14mgのKOH、22mgの水酸化カルシウム、20mgの乳酸、10mgの酢酸、1.6mgのグリセロール、10mLの水に溶解し、HCLを用いてpH4.2に調整した50mgのグルコース。
【0485】
単一バイアルを使用して、SVFを用いた単一の子宮腟部分泌物の提供をシミュレートし、使用した容量は、典型的な提供から予想される約0.5mL~1.5mLの範囲を表すと考えられた。適切な賦形剤を決定した後、これらの賦形剤を使用して、1.5mLのSVFを添加することによってゲルを形成した。SVFの添加は、正確なpHバランスを可能にし、賦形剤ベースへの実質的に完全な腟微生物調製物の添加をシミュレートする。サンプルをバイアル内で手動で振盪して均一なゲルを形成し、次いで凍結乾燥した。いくつかの賦形剤は、凍結乾燥後に許容可能な外観を生じた。PVA、グアーガム及びHA、形成された許容可能な(透明な)ゲル;Kolliphor P 407(Poloxamer407)及びMethocel K4Mは、白色の結晶性ケーキを形成した;マルトデキストリン及びPVPは変色を示した(例えば、黄色)が、アルギン酸ナトリウム、ムチン及びNaCMCは変色(例えば、茶色)を伴う不均一なケーキを生成した。驚くべきことに、典型的には一貫して許容されるケーキを形成するマンニトールは結晶性であり、これはおそらくSVF中の塩含有量に起因する。
【0486】
得られたゲルを凍結乾燥後に1.5mLの脱イオン水で再構成した。HA、グアーガム、及びPVAは容易に再構成され、再構成時間はそれぞれ2:30分、2:30分、及び1:30分であった。HAはpH4.6の均一なゲルを形成した。グアーガムはpH4.5の不均一なゲルを形成した。PVAは、いくらかの発泡を伴う、pH4.7の均質な液体を形成した。PVP、NaCMC、ポロキサマー、アルギン酸ナトリウム及びHPMCは、半均質なゲルを形成した。全てが再構成のために3分超を必要とした。PVPは4.1のpHでゆっくり溶解した。NaCMCは、pH4.9の非均質な粘性液体を形成した。ポロキサマーは、pH5.4でいくらかの発泡を示した。HPMCは、いくらかの発泡を伴う、pH4.4のゲルを形成した。アルギン酸ナトリウムはpH5.5で非均質であった。マンニトールは均質な液体を形成し、一部の結晶はpH4.4で残存した。
【0487】
適用時の製剤の重力下での効果を試験するために粘膜付着試験を行った。このために、粘膜表面(腟腔に存在するもの等)をシミュレートした。500mgのムチンを、平らな2cmツーリングを用いて約3トンの圧力までディスクaに圧縮した。次いで、これらを基材、例えばプラスチックボックスの底部に接着した。次いで、各ディスクを約200μLの脱イオン水で濡らし、ムチンの表面の粘着性が手触りで認められるまで、手袋をした指で擦った。次いで、約0.5mLのサンプル(錠剤及びPVAフィルムの場合は完全投薬単位)を水平な位置で適用し、2分間静置させた。次いで、サンプルが垂直位置になるように箱を持ち上げ、グアーガム、ポロキサマー、マンニトール、PVP、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、CMC、HPMC、及びPVAゲルサンプルの付着特性(粘膜付着試験)に関して目視評価を行った。ヒアルロン酸、NaCMC、アルギン酸ナトリウム及びHPMCは、この試験において最良の粘膜付着を示した。
【0488】
ポロキサマーは、以前の試験で熱可逆性挙動を示したので、粘膜付着試験を、予熱したプラスチックボックス及び37℃のムチンディスクで繰り返した。形成されたゲルは周囲温度の場合よりも粘性が高く、湿潤したムチンディスクの表面に保持されていることが確認された。これは、ポロキサマーが体温で適切な粘度であり得ることを示す。
【0489】
濃度を調整した後、3%(45mg)のcarbopol、4%(60mg)のアルギン酸ナトリウム、3%(45mg)のHPMC及び1.9%(30mg)のCMCナトリウム、ならびに24%(360mg)のポロキサマーも、注射容易性(Syringeability)を評価した。これらは、SVF:乳酸緩衝液混合物を用いて調製した。約3.4~4のpH範囲の乳酸緩衝液を含めることにより、例えば、潜在的に既存の微生物ニッチに存在する望ましくない細菌分類群の競合を最小限に抑えることによって、in vivoでの乳酸菌の生着を促進することができる(例えば、腟管において)。賦形剤を1.5mLのSVF+乳酸緩衝液と混合した。Carbopol及びポロキサマーは両方とも、手で振盪した後に、沈降したときに分散するいくらかの気泡を伴う均質なゲルを形成した。アルギン酸ナトリウム及びHPMC+Na-CMCは均一なゲルを形成しなかった。
【0490】
実質的に完全な腟微生物調製物のための剤形としての凍結乾燥ゲルフォーマットは、例えば、賦形剤とブレンドし、続いて例えばバイアルで凍結乾燥及び包装することによって製造することができる。次いで、例えばシリンジ等のアプリケータを使用することによって、バイアルを、例えばクリニックの環境で水で再構成して、再構成された薬物製品の適用前にバイアル内にゲルを形成し、実質的に完全な腟微生物調製物を含む組成物を対象の腟管に投与することができる。
【0491】
凍結ゲルは、ゲル化賦形剤(場合により適切な乳酸緩衝液と共に)とブレンドされた実質的に完全な腟微生物調製物のための剤形を表し、次いで、液体ゲル形態は凍結され(-80℃で)、バイアルまたはプレフィルドシリンジのいずれかに保存される(例えば、
図13を参照のこと)。
【0492】
錠剤評価
【0493】
ゲルに加えて、錠剤-ペッサリーを追加の剤形として生成した。以下の態様が考慮された:錠剤を形成するための圧縮及び凍結乾燥に適した賦形剤の選択、ならびに許容可能なレベルの粘膜付着を提供するための賦形剤の選択、場合により個々の子宮頸腟液提供物から調製された単一の錠剤を得ることを目的とした、約pH3.5~4のpH目標を有する乳酸緩衝液の任意の包含。Carbopol、HPMC、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポロキサマー、NaCMC及びペクチンを含む、許容な可能なゲル形成及び許容可能な凍結乾燥の両方をもたらした評価した賦形剤の全て(例えば、さらなる処理のために適度に自由流動性の粉末を形成するため)を、手動の錠剤圧縮での錠剤化の質について、(追加の賦形剤と一緒に)評価した。錠剤を5.5mmのツーリングで約1トンaで圧縮して錠剤を形成した。先に記載したように、錠剤を湿潤ムチンディスクに穏やかに添加し、粘膜付着を評価した。
【0494】
全ての錠剤は、5分間にわたって付着したままであった。接着の影響を評価するために、錠剤を毎分すすいだ。NaCMCがゲルに膨潤し始めた。carbopol、HPMC、アルギネート、NaCMCの錠剤は、十分な錠剤の完全性を示した。ポロキサマーは錠剤を形成したが、比較的低い強度であった。ペクチン及びゼラチンの錠剤は、低い硬度及びいくらかの脆性を示した。
【0495】
高分子フィルム
【0496】
フィルム形成/キャスティングは、生きている生体物質の生存能力を維持する潜在的な経路である。これを調査するために、以下の賦形剤試験サンプルを生成した:
【0497】
PVA3%
【0498】
PVA20%
【0499】
PVA3%、NaCMC2%
【0500】
PVA20%、NaCMC5%
【0501】
全てのサンプルを必要に応じて混合してゲル/フィルムを作製し、プラスチックブリスターパック(サイズ0)に移し、周囲条件で約48時間保存して固化させた。
【0502】
3%のPVAを含有する両方のサンプルは、適切なフィルムを形成しなかった。NaCMCを含有するフィルムは脆性を示し、ブリスターモールドから除去することが困難であった。20%PVAサンプルはフィルムを形成し、ブリスターモールドから容易に除去することができた。フィルムは可撓性であり、引き裂きに耐性があった。
【0503】
実質的に完全な腟微生物調製物を含むフィルムを形成することが可能であるかどうかを評価するために、フィルム調製への「サンドイッチ」アプローチを試みた。これを上向きのKarl Fischer蓋(PTFEライニング付き)で実施して、平らなディスク設計のモールドを製造した。12%PVA溶液(前の20%から)を使用して初期粘度を低下させ、ピペットによるより一貫したサンプル調製を可能にした。調製は以下のように行った:
【0504】
0.25mLの12%PVAを各モールドにピペットで入れ、続いて0.5mLのSVFを入れた(実質的に完全な腟微生物調製物をシミュレートするため)。さらに0.25mLの12%PVAを上部にピペットで移して「サンドイッチ」を完成させた。モールドを固化させたままにした。
【0505】
約48時間後、ディスクが形成され、これは可撓性であり、PTFEライニング上に明らかな残留物は残っていなかった。これは、PTFEが成形に適した材料であり得、フィルムがこの表面から容易に回収されたことを示唆している。
【0506】
前述のように、ムチンディスクにフィルムを穏やかに添加し、粘膜付着を評価した。PVAディスクはムチン表面からの移動を示さず、良好な粘膜付着を示した。5分後に約2mLのSVFでの洗浄を実施したが、これはPVAディスクをムチン表面から移動させなかった。
【表7】
【0507】
実施例12:実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む剤形の製剤
【0508】
模擬腟液を用いた製剤研究から得られた賦形剤データ(実施例11)及び行われた生存性試験(データは示さず)に基づいて、実質的に完全な腟微生物叢調製物(SCVMP)を含有する多数の製剤を生成した。
【0509】
凍結乾燥ゲル1:
【0510】
この製剤は、NaCMC及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、凍結乾燥に供した。
【0511】
NaCMC30mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いで凍結乾燥した。
【0512】
凍結乾燥ゲル2:
【0513】
製剤は、ポロキサマー及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、凍結乾燥に供した。
【0514】
Poloxamer407 240mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いで凍結乾燥した。
【0515】
凍結ゲル1:
【0516】
製剤は、ヒアルロン酸及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、-80℃で凍結に供した。
【0517】
ヒアルロン酸45mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いでこれを-80℃で凍結した。
【0518】
凍結ゲル2:
【0519】
製剤は、ポロキサマー及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、-80℃で凍結に供した。
【0520】
Poloxamer407 240mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いでこれを-80℃で凍結した。
【0521】
凍結乾燥錠剤1:
【0522】
この製剤は、NaCMC及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、凍結乾燥に供した。
【0523】
NaCMC30mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いで凍結乾燥させた。凍結乾燥したら、NaCMC300mgを物質に添加し、1トンに圧縮した。
【0524】
凍結乾燥錠剤2:
【0525】
製剤は、ポロキサマー及び実質的に完全な腟微生物叢調製物を含み、凍結乾燥に供した。
【0526】
Poloxamer407 30mgを秤量し、凍結乾燥バイアルに移した。1 SCVMPを凍結乾燥バイアルに移した。1mLの乳酸緩衝液を使用して、任意の残っているSCVMPをすすぎ、そのバイアルから取り出し、次いでこれを凍結乾燥バイアルに移した。バイアルに蓋をし、手で旋回させて均一なゲルを形成し、次いで凍結乾燥した。凍結乾燥したら、300mgのPVP(Kollidon)を物質に添加し、0.5トンに圧縮した。
【0527】
PVAフィルムディスク
【0528】
製剤は、12%のPVAと、2つのPVA層の間に挟まれた実質的に完全な腟微生物叢調製物(層当たり約0.25mLのPVA)とを含んでいた。
【0529】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を製剤化した後、t=0で生存細胞数(VCC)を決定した。1ヶ月後及び2ヶ月後の生存率も測定しており、VCC及びCFUの両方を評価する。
【表8】
【0530】
実質的に完全な腟微生物叢調製物を凍結乾燥し、例えばゲル及び錠剤、ならびに凍結乾燥生成物、例えばカプセルで充填することができる他の剤形に製剤化することができる。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、凍結可能なゲル、及び凍結可能な液体媒体(例えば、グリセロールを含む)中に製剤化することもできる。実質的に完全な腟微生物叢調製物は、例えばディスク状の形状であり得る(空気乾燥された)フィルムに製剤化することもできる。生存率の損失は、賦形剤と剤形に応じて、製剤化段階で約0.5log~1logの範囲になる。
【0531】
参考文献
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【0532】
列挙された項目
1.腟送達システムであって;
a) 組成物を腟腔に投与するのに適した剤形、及び
b) 実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物であって、(i)前記調製物がLactobacillus属由来の1~5つの細菌種を含み、(ii)前記1~5つの細菌種が前記調製物の約80~99%を構成し、前記組成物が薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む組成物を含む、前記腟送達システム。
【0533】
2.前記剤形がアプリケータ、ディスペンサまたは坐剤である、項目1に記載の腟送達システム。
【0534】
3.前記調製物が約80~99%のLactobacillus crispatusを含む、項目1または2に記載の腟送達システム。
【0535】
4.前記調製物が約80~99%のLactobacillus inersを含む、項目1または2に記載の腟送達システム。
【0536】
5.前記調製物が約80~99%のLactobacillus jenseniiを含む、項目1または2に記載の腟送達システム。
【0537】
6.前記調製物が約80~99%のLactobacillus gasseriを含む、項目1または2に記載の腟送達システム。
【0538】
7.前記調製物が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99%含む、項目1または2に記載の腟送達システム。
【0539】
8.前記調製物が病原体及び病原性共生生物を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つの腟送達システム。
【0540】
9.前記病原体または病原性共生生物が、Gardnerella属、Atopobium属、Prevotella属の1つ以上である、項目8に記載の腟送達システム。
【0541】
10.前記調製物が、5%未満のGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を含む、項目8に記載の腟送達システム。
【0542】
11.前記調製物が、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0543】
12.前記調製物がヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0544】
13.前記組成物が殺精子剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0545】
14.前記組成物が酸性化剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0546】
15.前記組成物が乳酸をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0547】
16.前記調製物がグリカンを含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0548】
17.前記グリカンが粘液である、項目16に記載の腟送達システム。
【0549】
18.前記調製物が、Lactobacillus属以外の20種未満を含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0550】
19.前記組成物が4.5以下のpHを有する、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0551】
20.前記剤形が102~1010CFUのlactobacilliを含む、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0552】
21.前記組成物が剤形に分配または製剤化されている、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0553】
22.前記剤形が滅菌包装されている、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0554】
23.前記アプリケータまたはディスペンサが、前記腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、前記組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含む、項目2に記載の腟送達システム。
【0555】
24.前記調製物が培養非依存性方法によって得られる、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0556】
25.前記剤形が較正されている(例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有する)、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0557】
26.前記剤形が単回使用または複数回使用のデバイスである、先行項目のいずれか1つに記載の腟送達システム。
【0558】
27.前記剤形が、ポリスチレンまたはポリプロピレン等の不活性ポリマー材料から設計される、先行項目のいずれか1つの腟送達システム。
【0559】
28.実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む腟投与用に製剤化された医薬組成物であって、(i)前記調製物が、Lactobacillus属由来の1~5つの細菌種を含み、(ii)前記1~5つの細菌種が、前記調製物の約80~99%を構成し、前記組成物が、薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む、前記医薬組成物。
【0560】
29.前記調製物が80~99%のLactobacillus crispatusを含む、項目28に記載の医薬組成物。
【0561】
30.前記調製物が80~99%Lactobacillus inersを含む、項目28に記載の医薬組成物。
【0562】
31.前記調製物が約80~99%Lactobacillus jenseniiを含む、項目28に記載の医薬組成物。
【0563】
32.前記調製物が約80~99%Lactobacillus gasseriを含む、項目28に記載の医薬組成物。
【0564】
33.前記調製物が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99%含む、項目28に記載の医薬組成物。
【0565】
34.前記調製物が病原体及び病原性共生生物を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0566】
35.前記病原体または病原性共生生物が、Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属のうちの1つ以上である、項目34に記載の医薬組成物。
【0567】
36.前記調製物が、5%未満のGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を含む、項目34に記載の医薬組成物。
【0568】
37.前記調製物が、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0569】
38.前記調製物がヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まない、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0570】
39.前記組成物が殺精子剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0571】
40.前記組成物が酸性化剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0572】
41.前記組成物が乳酸をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0573】
42.前記調製物がグリカンを含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0574】
43.前記グリカンが粘液である、項目42に記載の医薬組成物。
【0575】
44.前記調製物が、Lactobacillus属以外の20種未満を含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0576】
45.前記組成物が4.5以下のpHを有する、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0577】
46.前記調製物が培養非依存性方法によって得られる、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0578】
47.デバイスを使用して実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む組成物を、それを必要とするヒト女性対象に腟投与するための方法であって、前記デバイスが、前記腟腔に挿入するための開口端(例えば、先端)と、前記開口端を通して前記組成物を排出するための分配端(例えば、プランジャまたはピストン)とを含み、前記方法が、
a) 前記開口端を腟腔に導入することと、
b) 前記組成物を前記腟腔に排出することと、を含み、
それによって前記組成物を前記腟腔に投与する、前記方法。
【0579】
48.前記デバイスが、項目2~27のいずれか1つに記載のアプリケータまたはディスペンサである、項目47に記載の方法。
【0580】
49.前記組成物が、項目28~46のいずれか1つに記載の医薬組成物である、項目47に記載の方法。
【0581】
50.前記組成物を排出することが、前記腟の粘膜または子宮内膜表面を接触させることを含む、先行項目のいずれかに記載の方法。
【0582】
51.前記対象が腟の健康を改善する必要がある、項目47~50のいずれか1つに記載の方法。
【0583】
52.前記対象への投与が、前記対象が砕石位にある間に行われる、項目47~51のいずれか1つに記載の方法。
【0584】
53.前記組成物が、前記対象が立位にあるとき、前記組成物の大部分が少なくとも5、10、20、または30分間前記腟腔に留まることを可能にする適切な粘度のものである、項目47~52のいずれか1つに記載の方法。
【0585】
54.前記デバイスが較正される(例えば、体積指示または最大体積指示または制御部を有する)、項目47~53のいずれか1つに記載の方法。
【0586】
55.前記デバイスが、投与当たり約102~1010CFUのlactobacilliを投与する、項目47~54のいずれか1つに記載の方法。
【0587】
56.投与が3~21日以内に1回、2回または3回行われる、項目47~55のいずれか1つに記載の方法。
【0588】
57.投与が1~6ヶ月の期間にわたって1~4週間ごとに1回実施される、項目47~55のいずれか1つに記載の方法。
【0589】
58.前記デバイスが、単回使用または複数回使用デバイスである、項目47~57のいずれか1つに記載の方法。
【0590】
59.前記腟粘膜に1つ以上のLactobacillus種を定着させることをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の方法。
【0591】
60.1つ以上のLactobacillus種が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つである、項目59に記載の方法。
【0592】
61.前記調製物が約80~99%のLactobacillus crispatusを含む、項目59または60に記載の方法。
【0593】
62.前記調製物が約80~99%のLactobacillus inersを含む、項目59または60に記載の方法。
【0594】
63.前記調製物が約80~99%のLactobacillus jenseniiを含む、項目59または60に記載の方法。
【0595】
64.前記調製物が約80~99%のLactobacillus gasseriを含む、項目59または60に記載の方法。
【0596】
65.前記調製物が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99%含む、項目59または60に記載の方法。
【0597】
66.前記調製物が病原体及び病原性共生生物を実質的に含まない、項目47~65のいずれか1つに記載の方法。
【0598】
67.前記病原体または病原性共生生物が、Gardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属のうちの1つ以上である、項目66に記載の方法。
【0599】
68.前記調製物が、5%未満のGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を含む、項目66に記載の方法。
【0600】
69.前記調製物が、抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まない、項目47~68のいずれか1つに記載の方法。
【0601】
70.前記調製物がヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まない、項目47~69のいずれか1つに記載の方法。
【0602】
71.前記組成物が殺精子剤をさらに含む、項目47~70のいずれか1つに記載の方法。
【0603】
72.前記組成物が酸性化剤をさらに含む、項目47~71のいずれか1つに記載の方法。
【0604】
73.前記組成物が乳酸をさらに含む、項目47~72のいずれか1つに記載の方法。
【0605】
74.前記調製物がグリカンを含む、項目47~73のいずれか1つに記載の方法。
【0606】
75.前記グリカンが粘液である、項目74に記載の方法。
【0607】
76.前記調製物が、Lactobacillus属以外の20種未満を含む、項目47~75のいずれか1つに記載の方法。
【0608】
77.前記組成物が4.5以下のpHを有する、項目47~76のいずれか1つに記載の方法。
【0609】
78.前記調製物が培養非依存性方法によって得られる、項目47~77のいずれか1つに記載の方法。
【0610】
79.項目1~46のいずれか1つに記載の剤形(a)及び組成物(b)を含むキット。
【0611】
80.前記剤形(a)及び組成物(b)が別々の滅菌包装内にある、項目79のキット。
【0612】
81.前記剤形が多剤形である、項目79または80に記載のキット。
【0613】
82.前記剤形(a)及び/または前記組成物(b)が複数用量を含む、項目79~81のいずれか1つに記載のキット。
【0614】
83.前記剤形が単回使用または複数回使用のデバイスである、項目79~82のいずれか1つに記載のキット。
【0615】
84.前記組成物が凍結乾燥(freeze-dried)または凍結乾燥(lyophilized)されている、項目79~83のいずれか1つに記載のキット。
【0616】
85.前記凍結乾燥(freeze-dried)または凍結乾燥(lyophilized)された組成物のための再懸濁媒体をさらに含む、項目84に記載のキット。
【0617】
86.女性ドナーの尿生殖路(例えば、腟の微生物ニッチ)分泌物に由来するLactobacillus属の1~5つの細菌種を含む実質的に完全な腟微生物叢調製物であって、前記1~5つの細菌種が前記調製物の約80~99%を構成し、前記細菌種の1つ以上の種が女性レシピエントの尿生殖路に生着(例えば、定着)することができる、前記調製物。
【0618】
87.約80~99%のLactobacillus crispatusを含む、項目86に記載の調製物。
【0619】
88.約80~99%のLactobacillus inersを含む、項目86に記載の調製物。
【0620】
89.約80~99%のLactobacillus jenseniiを含む、項目86に記載の調製物。
【0621】
90.約80~99%のLactobacillus gasseriを含む、項目86に記載の調製物。
【0622】
91.前記調製物が、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99%含む、項目86に記載の調製物。
【0623】
92.医薬組成物(例えば、項目28~47のいずれか1つに記載の医薬組成物)として製剤化された、項目86に記載の調製物。
【0624】
93.抗生物質、免疫学的薬剤、及びホルモン剤からなる群から選択される活性薬剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0625】
94.懸濁液、スプレー、ゲル、クリーム、粉末、カプセル、洗浄液用溶液、卵、腟用インサート、タンポン、錠剤またはマイクロカプセル化製品の形態である、先行項目のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0626】
95.先行項目のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を製造する方法であって、
A. ドナー女性尿生殖路から微生物叢サンプルを提供することであって;工程Aが、任意に、工程(1)、(2)、(3)、(4)、(5)またはその任意の組合せを含む、前記提供すること:
(1) 前記微生物叢サンプルに希釈剤を加えて希釈サンプルを作成すること、
(2) 試験(例えば、核酸配列決定)のために、前記希釈された微生物叢サンプルの一部を除去すること、
(3) 残りの前記微生物叢サンプルを冷蔵または凍結するために予冷すること、
(4) 前記冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること、
(5) (a)1つ以上の伝染性病原体の実質的な存在を排除するために前記ドナーを検査すること(例、血液及び/または子宮腟部分泌物、及び/または尿サンプルの検査)、(b)前記微生物叢の組成及び生存能力を確認すること、または(c)ドナー提供後30~90日以内に行われる複数のスクリーニング後の検査によって前記女性ドナーの健康状態をさらに確認することの任意の組合せが完了するまで、前記冷蔵または凍結した微生物叢サンプルを隔離下で保管すること;及び
B. 実質的に完全な腟微生物叢調製物を規定するために、前記冷蔵または凍結された微生物叢サンプルを隔離から解放することを含む、前記方法。
【0627】
96.前記ドナー女性由来の微生物叢サンプルが子宮腟部分泌物である、項目95に記載の方法。
【0628】
97.前記微生物叢サンプルがグリカンを含む、項目95または96に記載の方法。
【0629】
98.前記グリカンが粘液である、項目97に記載の方法。
【0630】
99.前記微生物叢サンプルが少なくとも150mgで構成される、項目95~98のいずれか1つに記載の方法。
【0631】
100.前記微生物叢サンプルが約80~99%のLactobacillus crispatusを含む、項目95~99のいずれか1つに記載の方法。
【0632】
101.前記微生物叢サンプルが約80~99%のLactobacillus inersを含む、項目95~99のいずれか1つに記載の方法。
【0633】
102.前記微生物叢サンプルが約80~99%のLactobacillus jenseniiを含む、項目95~99のいずれか1つに記載の方法。
【0634】
103.前記微生物叢サンプルが約80~99%のLactobacillus gasseriを含む、項目95~99のいずれか1つに記載の方法。
【0635】
104.前記微生物叢サンプルが、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つを約80~99%含む、項目95~103のいずれか1つに記載の方法。
【0636】
105.項目95の工程Bが、前記微生物叢サンプルが病原体及び病原性共生生物を実質的に含まないと決定することを含む、項目95~104のいずれか1つに記載の方法。
【0637】
106.項目95の工程Bが、前記微生物叢サンプルがGardnerella属、Atopobium属及びPrevotella属を実質的に含まないと決定することを含む、項目95~105のいずれか1つに記載の方法。
【0638】
107.項目95の工程Bが、前記微生物叢サンプルが抗菌剤耐性(AMR)遺伝子を実質的に含まないと判定することを含む、項目95~106のいずれか1つに記載の方法。
【0639】
108.項目95の工程Bが、前記微生物叢サンプルがヒト精子(sperm)(精子(spermatozoa))を実質的に含まないと決定することを含む、項目95~107のいずれか1つに記載の方法。
【0640】
109.項目の工程Bが、前記女性ドナーが、(i)細菌性腟炎に関与する細菌(例えば、Gardnerella属、及びPrevotella属)、(ii)酵母(例えば、Candida、Cryptococcus及びSaccharomycesの種)、(iii)性感染病原体(例えば、Neisseria gonorrhea、Chlamydia trachomatis及びTrichomonas vaginalis)、(iv)尿路感染症に関与する細菌(例えば、E.coli、Staphylococcus、Chlamydia及びMycoplasma)、及び(v)ウイルス(例えば、HIV、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HSV-2)、またはその任意の組合せのうちのいずれか1つ以上(2つ以上、3つ以上、または4つ以上)を実質的に含まないと判定することを含む、項目95~108のいずれか1つに記載の方法。
【0641】
110.ヒト対象の女性尿生殖路における健康なヒト腟微生物叢のバランスを回復させるための方法であって、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、必要に応じて項目1~27のいずれか1つに記載の腟送達システムを使用して、そのような回復を必要とする対象に投与し、それにより、健康な腟微生物叢のバランスを回復させることを含む、前記方法。
【0642】
111.前記女性対象は、前記尿生殖路においてディスバイオシス微生物叢を示し、健康な腟微生物叢のバランスを回復させることにより、ディスバイオシスの治療が提供される、項目110に記載の方法。
【0643】
112.前記女性対象は、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む前記医薬組成物の投与前に、前記存在するディスバイオシス微生物叢を実質的に減少させるために有効量の抗菌剤(例えば、抗生物質)で治療される、項目110または111に記載の方法。
【0644】
113.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることが、実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む前記医薬組成物によって提供される1つ以上の種の定着及び生着を含む、項目110~112のいずれか1つに記載の方法。
【0645】
114.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることは:実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む前記医薬組成物の投与前に同じ対象において決定された(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の値と比較した場合、(a)前記尿生殖路に存在する病原体及び/または病原性共生生物の相対存在量の減少(例えば、10%未満の相対存在量の病原体及び/または病原性共生生物)、(b)50%超(60%超、または70%超)のLactobacillusの相対存在量の増加、(c)1つ以上の炎症促進性マーカーの減少(例えば、局所的または全身的)、及び/または(d)腟のpHの低下(例えば、少なくともpH0.3、0.5、1.0または1.5)、及び/または(e)Ison-Hayスコアリングシステムに基づくグレードの変化(例えば、グレード0またはグレードI)のうちの1つ以上を含む、項目110~113のいずれか1つに記載の方法。
【0646】
115.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることが、乳酸産生細菌の1つ以上の種によって支配された(例えば、少なくとも50%、60%、70%または少なくとも80%)微生物コミュニティの生着を含む、項目110~114のいずれか1つに記載の方法。
【0647】
116.前記乳酸産生細菌の1つ以上の種は、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii及びLactobacillus gasseriのうちの1つ、2つ、3つまたは4つから選択される、項目115に記載の方法。
【0648】
117.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることが、約pH3.5~4.5の腟管のpHを達成することを含む、項目110~116のいずれか1つに記載の方法。
【0649】
118.前記微生物コミュニティが、少なくとも1週間、または少なくとも2、3、4週間、乳酸産生細菌(例えば、lactobacilli)によって支配されたままである、項目115または116に記載の方法。
【0650】
119.前記微生物コミュニティが、少なくとも2、3、4、5または少なくとも6ヶ月間、乳酸産生細菌(例えば、lactobacilli)によって支配されたままである、項目115または116に記載の方法。
【0651】
120.抗生物質、免疫学的薬剤、及びホルモン剤からなる群から選択される1つ以上の追加の活性剤を投与することをさらに含む、項目110~119のいずれか1つに記載の方法。
【0652】
121.前記対象がコーカサス人である、項目110~120のいずれか1つに記載の方法。
【0653】
122.前記対象がアジア人である、項目110~120のいずれか1つに記載の方法。
【0654】
123.前記対象が黒人/アフリカ人である、項目110~120のいずれか1つに記載の方法。
【0655】
124.前記対象がヒスパニックである、項目110~120のいずれか1つに記載の方法。
【0656】
125.前記対象が出産可能年齢である、項目110~124のいずれか1つに記載の方法。
【0657】
126.前記対象が閉経後の対象である、項目110~124のいずれか1つに記載の方法。
【0658】
127.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることが、抗病原性微生物ニッチ/腟環境を提供する、項目110~126のいずれか1つに記載の方法。
【0659】
128.健康な腟微生物叢のバランスを回復させることが、抗炎症性または低炎症性の微生物ニッチ/腟環境を提供する、項目110~127のいずれか1つに記載の方法。
【0660】
129.ヒト対象の女性尿生殖路におけるディスバイオシスを治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意選択で項目1~27のいずれか1つに記載の腟送達システムを使用して投与し、それにより前記ディスバイオシスを治療することを含む、前記方法。
【0661】
130.前記ディスバイオシスが尿生殖路の感染に関連する、項目129に記載の方法。
【0662】
131.前記感染が、(再発性)細菌性腟炎(BV)、腟カンジダ症及びトリコモナス症のうちの1つ以上である、項目129または130に記載の方法。
【0663】
132.ヒト対象の女性尿生殖路の(慢性)炎症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意選択で項目1~27のいずれか1つに記載の腟送達システムを使用して投与し、それにより前記炎症を治療することを含む、前記方法。
【0664】
133.ヒト対象の女性尿生殖路における(再発性)細菌性腟炎(BV)を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意選択で項目1~27のいずれか1つに記載の腟送達システムを使用して投与し、それにより、(再発性)BVを治療することを含む前記方法。
【0665】
134.ヒト対象の女性尿生殖路における腟カンジダ症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意選択で項目1~27のいずれか対象に記載の腟送達システムを使用して投与し、それにより腟カンジダ症を治療することを含む、前記方法。
【0666】
135.ヒト対象の女性尿生殖路におけるトリコモナス症を治療する方法であって、このような治療を必要とする対象に、項目28~46のいずれか1つに記載の実質的に完全な腟微生物叢調製物を含む有効量の医薬組成物を、任意選択で項目1~27のいずれか1つに記載の腟送達システムを使用して投与し、それによりトリコモナス症を治療することを含む、前記方法。
【0667】
136.抗生物質、免疫学的薬剤、及びホルモン剤からなる群から選択される1つ以上の追加の活性剤を投与することをさらに含む、項目129~135のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】