IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナノワイヤード ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-ナノワイヤの成長 図1
  • 特表-ナノワイヤの成長 図2
  • 特表-ナノワイヤの成長 図3a
  • 特表-ナノワイヤの成長 図3b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ナノワイヤの成長
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/02 20060101AFI20240227BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20240227BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20240227BHJP
   C25D 5/06 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C25D5/02 D
B82Y40/00
B82Y30/00
C25D5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553549
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022054381
(87)【国際公開番号】W WO2022184503
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105125.8
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519323089
【氏名又は名称】ナノワイヤード ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NanoWired GmbH
【住所又は居所原語表記】Emanuel-Merck-Strasse 99, 64579 Gernsheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビヨレム,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ダッシンガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケドナウ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ルステイエ,ファラフ
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AB01
4K024BC08
4K024BC10
4K024CB17
4K024CB26
4K024FA23
4K024GA16
(57)【要約】
複数のナノワイヤ(1)を表面(2)上にガルバニック成長させる方法であって、a)ホイル(3)を表面(2)に載せるステップであって、ホイル(3)は、複数の貫通孔(4)を有し、貫通孔(4)の中でナノワイヤ(1)を電解液から成長させることができる、ステップと、b)電解液を透過させる弾性要素(5)をホイル(3)に載せるステップであって、電解液は、弾性要素(5)を介してホイル(3)に接触する、ステップと、c)第1の成長期間の間、複数のナノワイヤ(1)をガルバニック成長させるステップと、d)弾性要素(5)を除去するステップと、e)第2の成長期間の間、複数のナノワイヤ(1)のガルバニック成長を継続するステップと、を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノワイヤ(1)を表面(2)上にガルバニック成長させる方法であって、
a)ホイル(3)を前記表面(2)に載せるステップであって、
前記ホイル(3)は、複数の貫通孔(4)を有し、
前記貫通孔(4)の中で前記ナノワイヤ(1)を電解液から成長させることができる、ステップと、
b)前記電解液を透過させる弾性要素(5)を前記ホイル(3)に載せるステップであって、
前記電解液は、前記弾性要素(5)を介して前記ホイル(3)に接触する、ステップと、
c)第1の成長期間の間、前記複数のナノワイヤ(1)をガルバニック成長させるステップと、
d)前記弾性要素(5)を除去するステップと、
e)第2の成長期間の間、前記複数のナノワイヤ(1)のガルバニック成長を継続するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
ステップc)において、前記ナノワイヤ(1)のガルバニック成長のために使用された電流から、転送された電荷を判定し、且つ、
前記転送された電荷が所定の限界値に達したときに、ステップc)が終了する、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記弾性要素(5)は、ステップc)において、前記ホイル(3)に押し当てられる、
方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の方法であって、
前記弾性要素(5)は、ステップd)において、グリッパ(6)によって前記ホイル(3)から持ち上げられる、
方法。
【請求項5】
複数のナノワイヤ(1)をガルバニック成長させる装置(7)であって、
-前記ナノワイヤ(1)をその上に成長させる表面(2)と、
-前記表面(2)に載せられたホイル(3)であって、
該ホイル(3)は、複数の貫通孔(4)を有し、
前記貫通孔(4)の中で前記ナノワイヤ(1)を電解液から成長させることができる、ホイル(3)と、
-前記ホイル(3)に載せられており且つ前記電解液を透過させる弾性要素(5)であって、
該弾性要素(5)を介して、前記電解液を前記ホイル(3)に接触させることができる、弾性要素(5)と、
-前記弾性要素(5)を前記ホイル(3)から除去するためのグリッパ(6)と
を備えた
装置(7)。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(7)であって、
制御ユニット(8)をさらに備えており、
前記制御ユニット(8)は、請求項1~4の何れか1項に記載の方法のステップc)~e)を行うように構成されている、
装置(7)。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、前記グリッパ(6)を自動的に作動させるための駆動部(9)をさらに備える、
装置(7)。
【請求項8】
請求項5~7の何れか1項に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、前記弾性要素(5)用の移動台(10)をさらに備える、
装置(7)。
【請求項9】
請求項8に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、前記移動台(10)を洗浄するための洗浄デバイス(11)をさらに備える
装置(7)。
【請求項10】
請求項5~9の何れか1項に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、電圧源(12)をさらに備え、
前記電圧源(12)は、前記ナノワイヤ(1)を成長させるための電圧を印加するために、電極(13)と前記表面(2)とに接続されている、
装置(7)。
【請求項11】
請求項10に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、基準電極(14)をさらに備え、
前記基準電極(14)は、前記表面(2)に接続されている、
装置(7)。
【請求項12】
請求項5~11の何れか1項に記載の装置(7)であって、
前記装置(7)は、マングル(15)をさらに備え、
前記マングル(15)は、前記弾性要素(5)が前記グリッパ(6)によって前記ホイル(3)から除去された状態のときに前記弾性要素(5)から前記電解液を絞り出すためのものである、
装置(7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤのガルバニック成長に関する。特に、本発明は、複数のナノワイヤを表面上に設けるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤを生成することが可能な方法及び装置が知られている。例えば、ガルバニックプロセスにより、又は、薄膜技術から知られている方法にを用いて、ナノワイヤを得ることができる。公知の方法の多くは、複雑な機械を必要とするのが一般的であり、特に、実験室及びクリーンルーム内でしか使用されない(使用できない)。特に、公知の方法のほとんどは工業用には適さない。
【0003】
また、公知の装置及び方法の多くは、得られる各ナノワイヤが特性の点でばらつきが大きく、特に品質に関してばらつきが大きいという欠点を有する。一般的に、異なる成長プロセスから得られたナノワイヤは、同一又は同じ機械や出発材料や作り方を用いたとしても、部分的に非常に異なっている。しばしばナノワイヤの品質は、特に対応する装置のユーザ又は対応する方法のユーザの技能や、環境的な影響や、単なる偶然に依存する。これらは全て、ナノワイヤが光学顕微鏡でも可視化できないことがある構造体であるということから、さらに悪化する。そのため、前述の特性(及び特にそのばらつき)をそもそも検出できるようにするために、手間のかかる試験が必要となることがある。
【0004】
特に、前述の品質差が原因で、公知の方法及び装置では、より大きな表面域にナノワイヤを成長させることは不可能であることが多い。したがって、より大きな表面域で成長させた場合、その表面域の中の異なる領域においてナノワイヤの特性が異なる可能性が高い。多くの用途において、これは不利となり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に基づき、本発明の目的は、特に一定の品質で、複数のナノワイヤを製造するための方法及び装置を提供することである。
【0006】
前記の目的は、独立請求項に記載の方法及び装置によって達成される。従属請求項はそれぞれ、さらに有利な構成を示している。特許請求の範囲及び明細書に詳述する特徴は、技術的に有意な任意の態様で互いに組み合わせ可能である。
【0007】
本発明によれば、複数のナノワイヤを表面上にガルバニック成長させる方法を提供する。本方法は、
a)ホイルを表面に載せるステップであって、ホイルは貫通孔を複数有し、これらの貫通孔の中でナノワイヤを電解液から成長させることができる、ステップと、
b)電解液を透過させる弾性要素をホイルに載せるステップであって、電解液は弾性要素介してホイルに接触する、ステップと、
c)第1の成長期間の間、複数のナノワイヤをガルバニック成長させるステップと、
d)弾性要素を除去するステップと、
e)第2の成長期間の間、複数のナノワイヤのガルバニック成長を継続するステップと、
を含む。
【0008】
ステップa)及びb)は、所望の順序で順次行うことができ、又は、完全に若しくは部分的に重複させて行うことができる。ステップc)~e)は、ステップa)及びb)の後に、記載した順序で実施される。
【0009】
本方法により、ナノワイヤを生成できる。本明細書におけるナノワイヤとは、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲のサイズをワイヤ状の任意の材料体を意味するものと理解されるべきである。ナノワイヤは、例えば円形状、楕円形状、多角形状の底面を有してもよい。特に、ナノワイヤは六角形状の底面を有してもよい。
【0010】
ナノワイヤは、100nm[ナノメートル]~100μm[マイクロメートル]の範囲の長さ、特に500nm~60μmの範囲の長さを有することが好ましい。さらに、ナノワイヤは、10nm~10μmの範囲の直径、特に30nm~2μmの範囲の直径を有することが好ましい。本明細書における「直径」という表現は円形の底面に関するものであり、これから逸脱する底面の場合には、同様の直径の定義を用いるものとする。使用される全てのナノワイヤが同じ長さ及び同じ直径を有することが特に好ましい。
【0011】
本方法は、様々な種類のナノワイヤ材料に使用可能である。ナノワイヤの材料としては、導電性材料が好ましく、特に、銅、銀、金、ニッケル、スズ、白金等の金属が好ましい。しかし、金属酸化物等の非導電性材料も好ましい。全てのナノワイヤは、同じ材料から形成されていることが好ましい。
【0012】
ナノワイヤを成長させる表面は、導電性に構成されていることが好ましい。そうではなくて表面が非導電性の本体(基板等)の一部である場合は、金属被覆等によって導電性を実現してもよい。例えば、非導電性の基板を金属の薄膜で被覆することが可能である。金属被覆によって、特に電極層を生成することが可能である。表面又は電極層又はその両方の材料によっては、好適には、表面と電極層との間に接着層を提供してもよく、この接着層は表面と電極層との接着を促進する。
【0013】
表面は導電性であるため、ナノワイヤのガルバニック成長用の電極として使用できる。この基板は、特に、シリコン基板を使用することができる。表面は、特に、導電性の構造を有する本体の表面であってもよい。この本体には、特に、シリコンチップ又はいわゆるプリント回路基板(PCB:printed circuit board)使用することができる。
【0014】
前述の方法によって、表面上のホイルの孔の中にナノワイヤをガルバニック成長させることができる。このために、電解液が使用される。ナノワイヤの成長中、当該表面にホイルが密接し且つこのホイル全体に電解液が均一に広がっていると、ナノワイヤを特に一定品質で設けることができる。前述の方法においては、これは、成長を2段階に分けることによって、実現する。第1の成長段階では、弾性要素がホイルに接して置かれ、これによりホイルは表面上に保持される。弾性要素は電解液を透過させるので、弾性要素を介して電解液をホイルの上に送出できる。第1の成長段階では、ホイルがナノワイヤによって表面上に保持される程度まで、ナノワイヤを成長させる。第2の成長段階では、弾性要素は不要となっている。したがって、弾性要素は除去され、これにより、電解液を表面全体にわたってさらに均一に広げることができる。
【0015】
ステップa)において、ホイルは、成長させる表面に載置される。ホイルは、好ましくは、プラスチック材料で形成されており、特にポリマー材料で形成されている。特に、ホイルは、滑らないように表面に接続されていることが好ましい。これは、成長させたナノワイヤの品質を低下させる可能性がある。
【0016】
ホイルは、複数の貫通孔を有し、その孔でナノワイヤを成長させることができる。孔がホイルの中を通って延在していることにより、ホイルの上側からホイルの下側に続く流路が孔によって形成される態様が実現することが好ましい。特に、孔が円筒形状であることが好ましい。しかし、孔が湾曲した輪郭を有する流路として形成されていてもよい。孔は、例えば円形状、楕円形状、多角形状の底面を有してもよい。特に、孔は六角形状の底面を有してもよい。孔は、均一に構成されていることが好ましい(つまり、孔は、サイズ、形状、配置、及び間隔の少なくとも1つに関して隣接する孔と異なっていないことが好ましい)。ステップc)及びd)においてナノワイヤが成長した場合、孔にはガルバニック堆積した材料が(特に完全に)充填されていることが好ましい。このようにして、ナノワイヤは、孔のサイズ、形状、及び配置のものとなる。このようにホイル又はその中の孔を選択することによって、成長させるナノワイヤの特性が決まる、又は、成長させるナノワイヤの特性に影響を与えることができる。したがって、ホイルは「テンプレート」、「テンプレートホイル」、又は「パターン」とも呼ばれることがある。
【0017】
ステップb)において、電解液を透過させる弾性要素がホイル上に載置される。この弾性要素は、少なくとも1つの送液点において電解液を送出するように、構成されていることが好ましい。この送液点は、平らに構成されていることが好ましく、電解液を送液域全体にわたって均一に送出できることが特に好ましい。さらに、弾性要素は、ホイルを完全に覆うことが好ましい。例えば、弾性要素をスポンジ又は布にしてもよい。弾性要素は、ホイルの固定も行えるように構成されていることが好ましい。これは、特に、電解液を供給する手段が平らに且つホイルを表面に押し当てるように構成されていることによって実現される。
【0018】
ステップc)及びe)において、ナノワイヤを成長させる。これは、初めに、ステップc)により、第1の成長プロセスにおいて行われる。このために、成長させる表面と電極との間に電圧が印加される。この表面と電極の両方が電解液に接触している。したがって、各ナノワイヤは、電解液から、表面上のホイルの孔の中で成長させられる。第1の成長期間の間、弾性要素はホイルに載置されている。これにより、ホイルの位置ずれを防止できる。第1の成長期間では、ナノワイヤがホイルを保持する程度まで、ナノワイヤを形成する。それ以降、弾性要素は不要である。したがって、ステップd)において、弾性要素を除去する。ステップd)の期間中は、印加されていた電圧をオフに切り換えられてもよく、これにより、成長がこの時点で中断される。ただし、ステップd)においても成長がするように、成長を中断せずに継続することも考えられる。この場合は、第1の成長期間と第2の成長期間は、これら2つの段階の間で弾性要素が除去されることのみによって、互いに区切られる。ステップe)において、ナノワイヤの成長は、第2の成長期間にわたって継続される。これは、原則としてステップc)と同様であるが、弾性要素がない。したがって、ステップe)では、弾性要素がホイルに接していない。この場合、電解液を表面に直接接触させることができる。これにより、電解液を表面に供給することがより容易になる。したがって、より容易に、十分な電解液を表面のあらゆる箇所にいつでも存在させることができる。そうならない場合は、電圧を印加しても、それぞれの箇所で、ナノワイヤが成長しないことになる。これは、得られたナノワイヤの品質を損ねる可能性がある。
【0019】
第1の成長期間の長さは、第2の成長期間の長さの少なくとも10%であることが好ましく、第2の成長期間の少なくとも50%であることがより好ましい。
【0020】
第1の成長期間の長さと、第2の成長期間の長さは、一定であってもよい。本方法の別の好ましい実施形態においては、ステップc)において、ナノワイヤのガルバニック成長のために使用された電流から、転送された電荷を判定し、且つ、転送された電荷が所定の限界値に達したときに、ステップc)が終了する。
【0021】
この実施形態において、第1の成長期間の長さは変化する。弾性要素なしにナノワイヤがホイルを保持できる程度になるまでナノワイヤの成長が進んだら、直ちにステップc)は終了する。この場合、ナノワイヤの成長の進み具合は、直接測定されない。代わりに、ガルバニック成長中に転送された電荷が求められる。これは、ガルバニック成長に従って変換された原子の数の測定である。転送された電荷は、ナノワイヤのガルバニック成長のために使用された電流から時間積分をすることによって求めることができる。電流強度が一定である場合は、電流強度に時間を掛けることによって電荷が得られる。ナノワイヤのガルバニック成長のために使用される電流は、表面と電極との間に流れる電子電流である。
【0022】
本実施形態においては、転送された電荷が所定の限界値に達すると、ステップc)は終了する。適切な限界値は、試験によって定めることができる。この限界値は、ステップc)が完了した後においてホイルがナノワイヤによって所望の程度まで表面上に保持されるように、選択されることが好ましい。
【0023】
本方法のさらに好適な実施形態においては、弾性要素は、ステップc)において、ホイルに押し当てられる。
【0024】
弾性要素をホイルに押し当てると、より容易に電解液を供給することができる。例えば、スポンジを押圧することによって、電解液をスポンジから絞り出すことができる。この押圧のために、ばねが設けられることが好ましい。ばねが弾性要素をホイルに押し当てる力は調整可能である。弾性デバイス又は塑性デバイス、モータ駆動式又は油圧式又は空気圧式又はこれらを組み合わせた方式のユニット又はレバー機構を、この押圧力を生じさせるために使用することもできる
この力を調整することによって、電解液の送液量を制御することができる。さらに、弾性要素はホイルを表面に押し当てるために使用され、これにより、ホイルが形状嵌めによって保持されて所定位置に固定され、空気の混入(ホイルと表面との間、及び、ホイル内の孔の中)を阻止している。
【0025】
ステップc)において弾性要素がホイルに押し当てられるというのは、ステップc)の少なくとも一部において、弾性要素がホイルに押し当てられることを意味する。弾性要素は、ステップc)の全継続時間にわたって、ホイルに押し当てられていることが好ましい。
【0026】
本実施形態において、弾性要素の重さを超える力で弾性要素がホイルに押し当てられる程度で、弾性要素はホイルに押し当てられる。したがって、弾性要素の自体の重さは、本実施形態において規定されているように弾性要素を押し当てるためには十分ではない。本実施形態の選択肢の1つとして、ステップc)の継続時間全体にわたって、弾性要素は、ホイルに押し当てられのではなく、ホイルに載置されているのでもよい。
【0027】
本方法のさらに好適な実施形態においては、弾性要素は、ステップd)において、グリッパによってホイルから持ち上げられる。
【0028】
このグリッパによって、弾性要素をホイルから自動的に除去することができる。これにより、本方法の全体を自動的に行うことができるので、エラーを回避することができる。グリッパは、例えば、ニードルグリッパとして構成されていてもよい。
【0029】
本発明のさらなる態様として、複数のナノワイヤをガルバニック成長させる装置を提供する。本装置は、
-ナノワイヤをその上に成長させる表面と、
-表面に載せられたホイルであって、該ホイルは、複数の貫通孔を有し、貫通孔の中でナノワイヤを電解液から成長させることができる、ホイルと、
-ホイルに載せられており且つ電解液を透過させる弾性要素であって、該弾性要素を介して、電解液をホイルに接触させることができる、弾性要素と、
-弾性要素をホイルから除去するためのグリッパと
を備える。
【0030】
本方法の利点及び特徴は、本装置に適用可能且つ転用可能であり、その逆も同様である。本方法は、本装置によって実施されることが好ましい。本装置は、本方法に従って動作させるように意図され且つ構成されていることが好ましい。
【0031】
好適な実施形態の1つにおいて、本装置は、制御ユニットをさらに備えており、この制御ユニットは、本方法の少なくともステップc)~e)を行うように構成されている。この制御ユニットは、本方法が自動化される程度で、本方法を行うように構成されている。したがって、この制御ユニットは、例えば、ガルバニック成長を制御ユニットによって制御するために必要な電圧によって、ガルバニック成長を制御してもよい。弾性要素をホイルに押しつけることは、例えば油圧ラムによって弾性要素がホイルに押し当てられる程度に、ステップc)において制御ユニットによって制御されてもよい。このようなラムは、制御ユニットによって制御することができる。ステップa)及びb)の少なくとも一方も自動的に行われる場合は、これらのステップも制御ユニットによって制御されてもよい。
【0032】
本装置は、本装置の全ての要素がその中に配置されるハウジングを有することが好ましい。このハウジングは、引き出し用の収容部を有することが好ましい。成長させる表面を有する物体が、その上にホイルが載置され且つ弾性要素が一番上に載置された状態で、引き出しの中に挿入されて、引き出しと共に収容部に押し込まれてもよい。この点に関して、成長させる表面を有する物体は、その上にホイルが載置され且つ弾性要素が一番上に載置された状態で、ハウジングの内部に配置されてもよい。ハウジング内に配置されることによって、ナノワイヤを成長させることが可能な、特に使い勝手の良い機械が得られる。
【0033】
さらに好適な実施形態においては、本装置は、グリッパを自動的に作動させるための駆動部をさらに備える。
【0034】
駆動部によって、ステップd)を自動的に行うことができる。この駆動部は、例えば、弾性要素を把持する又は弾性要素を表面から持ち上げる又はその両方のために、ステップd)においてグリッパを弾性要素に接触させるように構成されていてもよい。したがって、この駆動部によって、グリッパの位置を変えたり、グリッパを作動させたりすることができる。グリッパを作動させるとは、弾性要素をグリッパによって把持し、再び解放させることができることを意味すると理解されたい。グリッパは、例えばニードルグリッパであってもよい。
【0035】
さらに好適な実施形態においては、本装置は、弾性要素用の移動台をさらに備える。
【0036】
ステップd)において、弾性要素は、グリッパによって把持されて表面から持ち上げることができる。その後、移動台を、表面と弾性要素との間に押し込むことができる。弾性要素は、グリッパによって、移動台の上に載置されて、解放されることができる。その後、弾性要素を、移動台によって搬出すことができる。その後、弾性要素を、移動台から除去することができる。これは自動的に行われてもよく、例えば、分離点からは弾性要素が移動台の移動に追従できないように移動台を移動させることによって、行ってもよい。この分離点は、例えば、弾性要用の空間が全くない移動台収容部に移動台を案内することから生じるようにしてもよい。この場合、弾性要素は、移動台収容部の端縁にぶら下がっている。弾性要素は、コンパートメント内に置かれてもよくそこから、弾性要素を手動で取り出すことができる。
【0037】
移動台は、モータ等によって、自動的に移動されてもよい。移動台は、可撓性材料、例えばプラスチックから形成されていることが好ましい。したがって、移動台が不要なときは、移動台を省スペースで収納できる。例えば、移動台を偏向ローラによって案内してもよく、これにより、移動台が不要なとき、基板の表面に対して90°回転した位置に移動台を収納できる。
【0038】
さらに好適な実施形態においては、本装置は、移動台を洗浄するための洗浄デバイスをさらに備える。
【0039】
洗浄デバイスは、移動台に洗浄液を噴射するように構成されていることが好ましい。洗浄は、例えば、弾性要素が移動台によって搬出された後、又は、移動台から除去された後、行うことができる。弾性要素が移動台から除去されたら移動台が洗浄デバイスを通って案内されるように、洗浄デバイスが配置されていることが好ましい。
【0040】
さらに好適な実施形態においては、本装置は、電圧源をさらに備えており、この電圧源は、ナノワイヤを成長させるための電圧を印加するために、電極と表面とに接続されている。
【0041】
電圧源は、ガルバニック成長のために必要な電流を供給する役割を担う。電圧源は、パルス電圧を発生させるように、特にパルス周波数が0.1~10msの範囲のパルス電圧を発生させるように構成されていることが好ましい。パルス電圧によってナノワイヤの品質を向上できることが試験によって証明されている。
【0042】
さらに好適な実施形態においては、本装置は、基準電極をさらに備え、基準電極は、表面に接続されている。
【0043】
基準電極によって、ナノワイヤの成長を監視することができる。このために、電極と基準電極との間の電圧を基準電極によって測定できる。本装置は、1つ又は複数の基準電極を備えてもよい。
【0044】
電極は、第1のケーブルを介して、電圧源に接続されていることが好ましい。成長させる表面は、第2のケーブルを介して、電圧源に接続されていることが好ましい。基準電極は、第3のケーブルを介して、電圧計に接続されていることが好ましい。表面は、特に第2のケーブルとは独立に、第4のケーブルによって、電圧計に接続されていることが好ましい。第2のケーブル及び第4のケーブルはそれぞれ、表面に直接接続されていることが好ましい。このために、表面は、対応する接触パッドを有ししてもよく、この接触パッドを介して、第2のケーブル及び第4のケーブルは、例えば対応する導電テープによって、表面に接続されている。したがって、基準電極は、第2のケーブルの分岐により基準電極を接続することによって表面に接続されているだけではない。表面に基準電極を直接接続させることでより正確な結果が得られることが、比較から分かっている。
【0045】
成長させる表面を有する物体と基準電極は、引き出しの中に配置されていることが好ましい。
【0046】
第1のケーブル、第2のケーブル、第3のケーブル、及び第4のケーブルはそれぞれ、いくつかの部分に分割されてもよく、これらの部分は、プラグイン接続部等を介して、互いに接続されている。第2のケーブル、第3のケーブル、及び第4のケーブルのうちの少なくとも1つは、それぞれ複数の部分に分割されてもよく、これにより、対応するケーブルの隣接し合う2つの部分の間の境目は、引き出しの端縁に配置されるようになっている。この引き出しは、これら3本の各ケーブル用の対応するコネクタを有してもよい。したがって、引き出しが収容部に押し込まれたとき、3つのプラグイン接続部が形成されることによって、表面と基準電極との間が電気的に接触することができる。電圧計及び電圧源は、ハウジング内で且つ引き出し用の収容部の外側に、配置されていることが好ましい。
【0047】
さらに好適な実施形態の一つにおいて、本装置は、(特に電動)マングルをさらに備えており、このマングルは、弾性要素がグリッパによってホイルから除去された状態のときに弾性要素から電解液を絞り出すためのものである。
【0048】
マングルは、2つのローラを有してもよく、これらローラの間に弾性要素を通り抜けさせる。この場合、弾性要素内に存在する電解液を弾性要素が放出するように、これらのローラによって弾性要素に圧力を加えることができる。これにより、電解液のかなりの部分を弾性要素から除去することができて、再使用可能となる。
【0049】
本発明は、図面に基づいて以下により詳細に説明する。図面には、特に好ましい例示的実施形態を示す。しかし、本発明はそれに制限されない。特に、図面、特に図示されるサイズ比は、模式的なものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明における装置であって、複数のナノワイヤをガルバニック成長させる装置を示している。
図2図1に対して、本装置用の基準電極の接続を示している。
図3図3a及び図3bは、図1に対して、構成のさらなる要素を、2つの異なる状態で示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、複数のナノワイヤ1をガルバニック成長させる装置7を示している。装置7は、表面2を有する基板16を備えており、この表面2にナノワイヤ1を成長させる。装置7は、ホイル3がさらに備えており、このホイル3は、複数の貫通孔4を有し、これら貫通孔4の中でナノワイヤ1を電解液から成長させることができる。ホイル3は、表面2上に載置されている。表面2は、隙間18のある構造化層17を有する。隙間18の中でのみ、ナノワイヤ1を成長させることができる。したがって、ナノワイヤ1の成長を局所的に選択的に行うことができる。さらに、装置7は、電解液に対して透過性である弾性要素5を備えており、この弾性要素5は、ホイル3の上に載置されている。弾性要素5を介して、電解液をホイル3に接触させることができる。装置7は、電圧源12をさらに備えており、この電圧源12は、ナノワイヤ2を成長させるための電圧を印加するために、電極13と表面2とに接続されている。電圧源12は、制御ユニット8にも接続されている。ラム19によって、電極13を弾性要素5に押し当てることができる。
【0052】
図1に示されているのは、装置7の全体ではない。さらなる要素が図2図3a、及び図3bに示されている。
【0053】
図2は、図1に対して、装置7のさらなる要素を示している。全体を明瞭にするために、図2に示されているのは、図1に記載された要素の全てではない。したがって、電圧源12、電極13、表面2を有する基板16に加えて、装置7は、基準電極14をさらに有する。基準電極14は、電圧計20を介して、表面2に接続されている。電圧源12及び基準電極14は、互いに独立に表面2に接続されている。
【0054】
図3a及び図3bは、図1及び図2に対して、装置7のさらなる要素を示す。全体を明瞭にするために、図3a及び図3bに示されているのは、図1及び図2の要素の全てではない。特に図3a及び図3bから分かるのは、装置7は、弾性要素5をホイル3から除去するためのグリッパ6を有することである。図3aに示されているのは、ホイル3の上の弾性要素5が基板16の表面2に載っている状態である。弾性要素5は、グリッパ6によって把持されて、表面2から持ち上げることができる。これは、図3bに示されている。図3bにおいては、弾性要素5はホイル3の上には載置されてはいないので、この意味において、本発明における装置7は図3bには示されていない。装置7は、グリッパ6を自動的に作動させるための駆動部9を備える。さらに、装置7は、弾性要素5のための移動台10を備える。図3aでは、移動台10は、表面2に対して90°回転した位置に収納されている。その理由は、移動台10は図に示した状態では不要であるからである。図3bでは、移動台10は、表面2と弾性要素5との間に押し込まれている。このようにして、弾性要素5を移動台10の上に載置できる。その後、移動台10を図3aに示されている状態に戻すことによって、弾性要素5を移動台10によって搬出することができる。したがって、例えば弾性要素5を移動台10の下への移動に追従させないことによって、弾性要素5を移動台10から離すことができる。弾性要素5が移動台10から離れたら直ちに、洗浄デバイス11によって移動台10を洗浄することができる。このために、洗浄デバイス11によって移動台10に洗浄液を噴射することができる。装置7は、電動マングル15をさらに有し、このマングル15は、弾性要素5がグリッパ6によってホイル3から除去された状態のときに、弾性要素5から電解液を絞り出すためのものである。マングル15は、2つのローラを有し、その間に弾性要素5を、力の作用させて通り抜けさせることができる。
【0055】
装置7は、制御ユニット8をさらに備える。制御ユニット8は、以下に記載する方法のステップc)~e)を行うために構成されており、この方法は、
a)ホイル3を表面2に載せるステップであって、ホイル3は貫通孔4を複数有し、これらの貫通孔4の中でナノワイヤ1を電解液から成長させることができる、ステップと、
b)電解液を透過させる弾性要素5をホイル3に載せるステップであって、電解液は弾性要素5を介してホイル3に接触する、ステップと、
c)第1の成長期間の間、弾性要素5はホイル3に押し当てられた状態で複数のナノワイヤ1をガルバニック成長させるステップと、
d)グリッパ6によって弾性要素5をホイル3から持ち上げることにより、弾性要素5を除去するステップと、
e)第2の成長期間の間、複数のナノワイヤ1のガルバニック成長を継続するステップと、
を含む。
【0056】
ステップc)において、ナノワイヤ1をガルバニック成長させるために使用された電流から、転送された電荷を判定し、転送された電荷が所定の限界値に達すると、ステップc)を終了させる。
【符号の説明】
【0057】
1 ナノワイヤ
2 表面
3 ホイル
4 孔
5 弾性要素
6 グリッパ
7 装置
8 制御ユニット
9 駆動部
10 移動台
11 洗浄デバイス
12 電圧源
13 電極
14 基準電極
15 マングル
16 基板
17 構造化層
18 隙間
19 ラム
20 電圧計
図1
図2
図3a
図3b
【国際調査報告】