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特表2024-509872ナファモスタットの放出調節組成物及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ナファモスタットの放出調節組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/235 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K31/235
A61P43/00 111
A61K9/16
A61K9/12
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554302
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022019262
(87)【国際公開番号】W WO2022192195
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,654
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523337889
【氏名又は名称】エンサイス バイオサイエンシズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カークパトリック,リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA31
4C076BB01
4C076BB21
4C076CC29
4C076DD28C
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD49M
4C076DD67
4C076EE10M
4C076EE12M
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF05
4C076FF09
4C076FF31
4C206AA01
4C206HA10
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA61
4C206MA72
4C206MA76
4C206NA10
4C206ZC20
(57)【要約】
本開示の態様は、長時間にわたって、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の対象への制御放出を提供する、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物を含む。特定の実施形態による組成物は、複数の放出制御ビーズを含み、各ビーズは、コア、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を有する活性薬剤層、及びナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された1種以上のポリマーを有する制御放出層を含む。制御放出ナファモスタット組成物を対象に投与する(例えば、経口)方法も記載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の長時間の制御放出を提供する、組成物。
【請求項2】
組成物が複数の制御放出ビーズを含み、各ビーズは、以下:
コア;
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層;及び
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された1種以上のポリマーを含む制御放出層
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コアが、セルロースポリマー、又は二酸化ケイ素、又はグルコース、スクロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、及びソルビトールからなる群から選択される糖を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
活性薬剤層が、結合剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
制御放出層が、以下:
100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含むアクリレートコポリマーA;及び
100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含むアクリレートコポリマーB
の組み合わせを含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
制御放出層が、以下:
95重量%のアクリレートコポリマーBと5重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
93重量%のアクリレートコポリマーBと7重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
92重量%のアクリレートコポリマーBと8重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
90重量%のアクリレートコポリマーBと10重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
87重量%のアクリレートコポリマーBと13重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
80重量%のアクリレートコポリマーBと20重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー;又は
70重量%のアクリレートコポリマーBと30重量%のアクリレートコポリマーAを含むアクリレートコポリマー
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
制御放出層が、前記複数のビーズのそれぞれの5重量%~30重量%を構成する、請求項2~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
活性薬剤層と制御放出層の1つ以上が可塑剤をさらに含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
複数のビーズのそれぞれが、5重量%~20重量%のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が複数の制御放出ビーズを含み、各ビーズは、以下:
微結晶性セルロースコア;
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩と水溶性メチルセルロースポリマーとを含む活性薬剤層;並びに
以下のもの:
100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含む第1のポリマー;
100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含む第2のポリマー;
クエン酸トリエチル;及び
微粒子化タルク及びシロイドから選択される滑剤
を含む制御放出層であって、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するように処方される、前記制御放出層
を含む、請求項2~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
制御放出層が、投与後6時間以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の60%以上の放出を提供するように処方される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
制御放出層が、第1の所定時間、第1の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出を提供し、その後、第2の所定時間、第2の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出を提供するように処方される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出を提供する即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物を、それを必要とする対象に経口投与することを含む方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物を、それを必要とする対象の呼吸器系に投与することを含む方法であって、対象の呼吸器系への投与が、吸入、気管内注入、気管内送達、通気、ネブライゼーション又はそれらの組合せを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月9日に出願された米国仮特許出願第63/158,654号に関連し;この出願の開示内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
序文
処方オピオイドの乱用、中毒、過剰摂取などの薬物乱用は、患者と社会にとって大きな負担であり、多額の費用、病気、死亡をもたらす。薬物乱用によるこのような有害な影響を避けるために、薬物の過剰摂取の可能性を、特に対象によるそのような薬物の過剰摂取後でさえも、明確に減少させる医薬組成物が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示は、医薬組成物(例えば、経口投与される医薬組成物)、及びその使用方法を提供し、ここで、医薬組成物は、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含み、長時間にわたってナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供する。一部の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、トリプシンなどの1種以上の胃腸(GI)酵素を阻害するのに十分な量で組成物中に存在する。特定の実施形態において、制御放出ナファモスタット組成物は、12時間以上、例えば24時間以上の期間、対象にナファモスタットの制御放出を提供する。
【0004】
特定の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出組成物は、複数の制御放出ビーズを含み、ここで各ビーズは、コア、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層、及びナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された(formulated)1種以上のポリマーを含む制御放出層を含む。一部の実施形態において、複数のビーズは、カプセル剤中にカプセル化される。
【0005】
一部の実施形態において、コアは、1種以上の多糖から形成される。一部の場合、コアは、セルロースポリマーから形成される。特定の場合、コアは、微結晶性セルロースから形成される。
【0006】
一部の実施形態において、活性薬剤層は、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む。一部の場合、活性薬剤層は、ナファモスタット遊離塩基を含む。一部の場合、活性薬剤層は、ナファモスタットの薬学的に許容される塩を含む。特定の場合、活性薬剤層は、メシル酸ナファモスタット(nafamostat mesylate)を含む。
【0007】
一部の実施形態において、活性薬剤層は結合剤を含む。一部の場合、結合剤は、水溶性フィルム形成ポリマーである。特定の場合、可溶性フィルム形成ポリマーは、水溶性セルロースポリマーなどの多糖類である。特定の実施形態において、活性薬剤層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0008】
制御放出層は、1種以上のアクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、1種以上のアクリレートポリマー若しくはメタクリレートポリマーのコポリマー、又はそれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態において、制御放出層は、エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレートのモノマーから形成されるアクリレートコポリマーを含む。特定の場合、制御放出層は、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含む。ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)は、異なる量の第四級アンモニウム基、例えば100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基(アクリレートコポリマーA)、又は100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基(アクリレートコポリマーB)を含み得る。異なる比のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAを有する制御放出層を含むビーズが提供される。例えば、制御放出層は、5%~100%のアクリレートコポリマーBと、5%~100%のアクリレートコポリマーAとを含み得る。特定の実施形態において、制御放出層は、80:20のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば87:13のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば90:10のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば92:8のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比を含み、95:5のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比を含む。
【0009】
特定の実施形態において、目的の組成物は、対象にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出を提供する、即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩をさらに含み得る。一部の場合、即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、粉末又は顆粒として経口組成物中に存在する。一部の場合、即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、複数のビーズの制御放出層の上にコーティングされた即時放出層として経口組成物中に存在する。
【0010】
本開示の態様はまた、本明細書に記載される組成物の1種以上を、それを必要とする対象に投与(例えば、経口投与)する方法を含む。一部の実施形態において、組成物を投与することは、長時間、例えば12時間以上(24時間以上を含む)にわたり、対象に1回以上の用量のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の徐放を提供するのに十分である。一部の場合、上記組成物を投与することは、対象に1回以上の用量のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の遅延された即時放出を提供するのに十分である。特定の場合、上記組成物を投与することは、対象に即時用量のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を提供し、その後、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の長時間にわたる徐放を提供するのに十分である。特定の場合、上記組成物を投与することは、対象にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の第1の即時用量を提供し、その後、第1の即時用量の後の所定時間に、対象にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の第2の即時放出用量を提供するのに十分である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、オキシコドン誘導体が、トリプシンなどの消化酵素の作用により活性オキシコドンに変換される生化学的機構を示す。
図2図2は、5mg/kgのオキシコドン誘導体KC-8を、0、0.1、0.5、又は1mg/kgのいずれかのナファモスタットと共に経口投与されたラットにおけるオキシコドンの経時的な平均血液濃度を示す。
図3図3は、50mg/kgのオキシコドン誘導体KC-8を、0、1、5、又は10mg/kgのいずれかのナファモスタットと共に経口投与されたラットにおけるオキシコドンの経時的な平均血液濃度を示す。
図4図4は、1、3、6、又は10個のヒドロモルフォン誘導体の丸剤を経口投与されたが、ナファモスタットは投与されなかったラットにおけるヒドロモルフォンの平均血液濃度を示す。
図5図5は、1、3、6、又は10個の、ナファモスタットも含むヒドロモルフォン誘導体の丸剤を経口投与されたラットにおけるヒドロモルフォンの平均血液濃度を示す。
図6A図6は、ヒドロモルフォン誘導体と0、1、又は10mgのナファモスタットとを投与された後の、複数のヒト患者のヒドロモルフォンの血液濃度を示す。
図6B図6は、ヒドロモルフォン誘導体と0、1、又は10mgのナファモスタットとを投与された後の、複数のヒト患者のヒドロモルフォンの血液濃度を示す。
図6C図6は、ヒドロモルフォン誘導体と0、1、又は10mgのナファモスタットとを投与された後の、複数のヒト患者のヒドロモルフォンの血液濃度を示す。
図7図7は、ビーズD中の様々な量のナファモスタットと共にKC-8を投与されたミニブタのオキシコドン濃度を示す。
図8図8は、ビーズE中のナファモスタットと共にKC-8を投与されたミニブタにおけるオキシコドン濃度を示す。
図9図9は、即時放出ナファモスタットと共にKC-8を投与されたミニブタにおけるオキシコドン濃度を示す。
図10図10は、ビーズF中のナファモスタットを投与されたミニブタにおけるオキシコドン濃度を示す。
図11図11は、即時放出ナファモスタットとビーズF中のナファモスタットとの組み合わせを投与されたミニブタにおけるオキシコドン及びKC-8の濃度を示す。
図12図12は、重量増加の増大による、87:13(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
図13図13は、重量増加の増大による、90:10(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
図14A図14Aは、制御放出ポリマー層におけるEudragit RS:Eudragit RLの異なる比による、5%重量増加での制御放出ビーズからのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較を示す。
図14B図14Bは、制御放出ポリマー層におけるEudragit RS:Eudragit RLの異なる比による、10%重量増加での制御放出ビーズからのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較を示す。
図15図15は、5%重量増加での92:8(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
図16図16は、微粒子化タルクの代わりにシロイド244FPを有する制御放出ポリマー層におけるEudragit RS:Eudragit RLの異なる比による、15%重量増加での制御放出ビーズからのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示の態様は、長時間にわたって、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の対象への制御放出を提供する、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物を含む。特定の実施形態による組成物は、複数の放出制御ビーズを含み、各ビーズは、コア、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を有する活性薬剤層、及びナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された1種以上のポリマーを有する制御放出層を含む。制御放出ナファモスタット組成物を対象に投与する(例えば、経口または呼吸器系を介して)方法も記載されている。
【0013】
本発明をさらに説明する前に、この発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、それ自体当然のことながら変動し得ることを理解されたい。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することは意図されないことも理解されたい。
【0014】
本明細書中で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数形も包含することが意図される。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」又はそれらの変形が、詳細な説明及び/又は請求項のいずれかにおいて使用される限り、このような用語は、「含む(comrising)」という用語と同様に包括的であることが意図される。移行的用語/表現(及びその任意の文法的変形)「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、「含む(comprise)」、「本質的に・・・からなる(consisting essentially of)」、「本質的に・・・からなる(consists essentially of)」、「からなる(consisting)」、「からなる(consists)」は、互換的に使用することができる。
【0015】
「約(about)」又は「約(approximately)」という用語は、当業者により決定される、特定の値についての許容可能な誤差範囲の範囲内にあることを意味し、この範囲は、部分的には、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定系の限界によって決まる。「約(about)」又は「約(approximately)」という用語が使用される成分の量を含む組成物の文脈において、これらの組成物は、記載値の前後0~10%の変動(誤差範囲)(X±10%)を有する記載量の成分を含む。
【0016】
本開示において、詳細に示すこと並びに範囲内の各値及び全ての値を記載しなければならないことを回避するために、範囲は簡略して記載される。範囲内の任意の適切な値を、必要に応じて、上限値、下限値、又は範囲の末端値として選択することができる。例えば、0.1~1.0の範囲は、0.1及び1.0の末端値、並びに0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9の中間値及び0.1~1.0の範囲内に包含される全ての中間範囲、例えば0.2~0.5、0.2~0.8、0.7~1.0等を表す。範囲内に少なくとも2つの有効桁を有する値が想定され、例えば5~10の範囲は、末端値を含む5.0~10.0並びに5.00~10.00の値の全てを示す。
【0017】
本明細書中で検討される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書中のいずれも、本発明が、先行発明を理由としてかかる刊行物に先行する権利を有さないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、実際の公開日と異なる可能性があり、この日付は、独立して確認される必要性があり得る。
【0018】
別段に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において、本明細書中に記載されている方法及び材料と類似の又は同等の任意の方法及び材料も使用することができるが、ここでは好ましい方法及び材料が記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物は、それに関連して刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するように、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0019】
別段に言及されている場合を除き、本実施形態の方法及び技術は、当技術分野で周知であり、且つ本明細書全体を通して引用及び検討されている、様々な一般的且つより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って一般的に実施される。
【0020】
明確性のために別々の実施形態の文脈において記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供することも可能であることが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載される本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0021】
本開示を読めば当業者には明らかであろうとおり、本明細書中に記載及び例示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離され得るか、又は組み合わせることができる別々の成分及び特徴を有する。任意の記載の方法は、記載される事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0022】
装置及び方法は、機能的な説明を伴う文法的流動性のために記載されているか又は記載されるが、特許請求の範囲は、米国特許法第112条(35 U.S.C. §112)の下で明確に説明されない限り、「手段」又は「ステップ」という限定の構文によりいかなる方法でも必然的に限定されると解されるべきではなく、均等論の下で特許請求の範囲により提供される定義の意味及び均等物の全範囲が認められるべきであり、特許請求の範囲が米国特許法第112条(35 U.S.C. §112)の下で明確に説明される場合、米国特許法第112条(35 U.S.C. §112)の下で全法定均等物が認められることを明確に理解されたい。
【0023】
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物
上記にまとめられるとおり、本開示の態様は、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の長時間の制御放出を提供する、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物を包含する。本明細書中に記載される場合、化合物ナファモスタットは、6-カルバミミドイルナフタレン-2-イル4-(ジアミノメチレンアミノ)ベンゾエート:
【0024】
【化1】
を指す。
【0025】
一部の実施形態において、組成物は、ナファモスタット遊離塩基を含む。他の実施形態において、組成物は、ナファモスタットの薬学的に許容される塩を含む。実施形態において、ナファモスタットの「塩」としては、限定するものではないが:(1) 無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと共に形成されるか;又は有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフト酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと共に形成される酸付加塩;あるいは(2) 化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンで置換される場合に形成される塩;又は有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミンなどとの配位化合物(coordinate)などを挙げることができる。特定の実施形態において、ナファモスタットの塩は、メシル酸ナファモスタットである。
【0026】
本明細書中で使用される「溶媒和物」という用語は、溶質の1つ以上の分子と、溶媒の1つ以上の分子により形成される複合体又は凝集体を指す。このような溶媒和物は、実質的に固定された溶質と溶媒のモル比を有する結晶性固体であり得る。代表的な溶媒としては、例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0027】
実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物は、投与後の活性化、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の長時間の制御放出を提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、経口投与組成物である。一部の実施形態において、組成物は、対象の呼吸器系への投与(例えば、吸入による)のために製剤化される。
【0028】
一部の実施形態において、制御放出組成物は、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の1回以上の用量の徐放を提供する。一部の場合、ナファモスタットの徐放は、ゼロ次徐放である。他の例では、ナファモスタットの徐放は一次徐放である。例えば、制御放出ナファモスタット組成物は、0.000001μg/分以上のナファモスタット、例えば0.000005μg/分以上、例えば0.00001μg/分以上、例えば0.0005μg/分以上、例えば0.001μg/分以上、例えば0.005μg/分以上、例えば0.01μg/分以上、例えば0.05μg/分以上、例えば0.1μg/分以上、例えば0.5μg/分以上、例えば1μg/分以上、例えば5μg/分以上、例えば10μg/分以上、例えば100μg/分以上の徐放(250μg/分以上のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の徐放を含む)を提供し得る。
【0029】
一部の実施形態において、ナファモスタットの制御放出組成物は、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の遅延即時放出を提供する。「遅延即時放出」という用語は、本明細書中で、投与後にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩が放出されるタイミングであって、対象への投与後の所定時間に、該組成物からある量のナファモスタットが放出される、上記タイミングを指すために使用される。一部の場合、ナファモスタットの遅延即時放出組成物は、所定時間にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の50%以上を放出するように処方され(formulated)、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば97%以上、例えば99%以上を放出するように処方され、対象への組成物の投与後所定時間に組成物中のナファモスタットの全て(100%)を放出するように処方されることを含む。遅延放出の期間は変動し得、ここで一部の例では、目的の組成物は、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を、対象に組成物を経口投与してから5分以上後、例えば10分以上後、例えば15分以上後、例えば20分以上後、例えば30分以上後、例えば45分以上後、例えば60分以上後、例えば2時間以上後、例えば3時間以上後、例えば4時間以上後、例えば6時間以上後、例えば8時間以上後、例えば10時間以上後、例えば12時間以上後、例えば18時間以上後(対象に組成物を経口投与してから24時間以上後を含む)に放出するように処方される。
【0030】
一部の実施形態において、ナファモスタットの制御放出組成物は、投与後6時間以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の50%以上が放出される、例えば55%以上、例えば60%以上、例えば65%以上、例えば70%以上、例えば75%以上、例えば80%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、例えば97%以上、例えば99%以上が放出される放出プロファイルを提供し、対象への組成物の投与後6時間以内に組成物中のナファモスタットの全て(100%)を放出するように処方されることを含む。
【0031】
特定の実施形態において、制御放出組成物は、第1の所定時間の第1の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出、その後の第2の所定時間の第2の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出を提供する。一部の場合、制御放出組成物は、第1の所定時間に0.000001μg/分以上、例えば0.000005μg/分以上、例えば0.00001μg/分以上、例えば0.0005μg/分以上、例えば0.001μg/分以上、例えば0.005μg/分以上、例えば0.01μg/分以上、例えば0.05μg/分以上、例えば0.1μg/分以上、例えば0.5μg/分以上、例えば1μg/分以上、例えば5μg/分以上、例えば10μg/分以上、例えば100μg/分以上の速度でナファモスタットを放出するように構成され、第1の所定時間中に250μg/分以上放出することを含む。一部の場合、第1の所定時間は、5分以上、例えば10分以上、例えば15分以上、例えば20分以上、例えば30分以上、例えば45分以上、例えば60分以上、例えば2時間以上、例えば3時間以上、例えば4時間以上、例えば6時間以上、例えば8時間以上、例えば10時間以上、例えば12時間以上、例えば18時間以上であり、24時間以上を含む。一部の場合、第1の時間の後に、第2の所定時間の0.000001μg/分以上の速度でのナファモスタットの制御放出、例えば0.000005μg/分以上、例えば0.00001μg/分以上、例えば0.0005μg/分以上、例えば0.001μg/分以上、例えば0.005μg/分以上、例えば0.01μg/分以上、例えば0.05μg/分以上、例えば0.1μg/分以上、例えば0.5μg/分以上、例えば1μg/分以上、例えば5μg/分以上、例えば10μg/分以上、例えば100μg/分以上の速度でのナファモスタットの制御放出が続き、第2の所定時間の250μg/分以上の速度でのナファモスタットの制御放出を含む。一部の場合、第2の所定時間は、30分以上、例えば60分以上、例えば2時間以上、例えば3時間以上、例えば4時間以上、例えば6時間以上、例えば8時間以上、例えば12時間以上、例えば24時間以上、例えば48時間以上(72時間以上を含む)である。
【0032】
特定の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物は、複数の制御放出ビーズとして処方され、ここで各ビーズは、コア、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を有する活性薬剤層、及びナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された1種以上のポリマーを有する制御放出層を含む。一部の実施形態において、ビーズのサイズは、直径0.001mm~5mm、例えば0.005mm~4.5mm、例えば0.01mm~4mm、例えば0.05mm~3.5mm、例えば0.1mm~3mm、例えば0.5mm~2.5mm、例えば1mm~3mmであり、直径0.2mm~3mmを含む。
【0033】
一部の場合、コアは不活性物質から形成される。このような物質は、セルロースポリマー、二酸化ケイ素、糖、デンプン、又はそれらの組み合わせを含む。糖は、グルコース、スクロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトールはそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態において、コアは、微結晶性セルロースCellets(登録商標)コア、例えばCellets(登録商標)100、Cellets(登録商標)200、Cellets(登録商標)350、Cellets(登録商標)500、Cellets(登録商標)700、又はCellets(登録商標)1000 (Glatt Air Techniques Inc., Ramsey N.J.)から形成することができる。他の実施形態において、コアはde novoで調製され、例えば、ポリマー混合物を調製し、この混合物を押し出し、押し出された混合物を球形化(spheronizing)して球状又は半球状ビーズを形成することによって調製される。一部の実施形態において、ビーズは、それらを水性媒体に曝露するとそれらが膨潤して、活性成分を迅速且つ効率的に放出するように膨潤性である。一部の実施形態において、コアは、最終的に処方されたビーズの総重量の約10%~約50%を含む。一部の実施形態において、コアは、最終的に処方されたビーズの総重量の約15%~約40%を含む。一部の実施形態において、コアは、最終的に処方されたビーズの総重量の約20%~約30%を含む。一部の実施形態において、コアは、最終的に処方されたビーズの総重量の約20%を含む。一部の実施形態において、コアは、最終的に処方されたビーズの総重量の約25%を含む。特定の実施形態において、コアは、微結晶性セルロース(MCC)ビーズ、例えば、Cellets微結晶性セルロースビーズである。
【0034】
一部の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を有する活性薬剤層(例えば、ナファモスタット又はメシル酸ナファモスタット)は、コア上に形成される。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約1%~約50%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約2%~約40%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約5%~約30%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約7%~約25%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約8%~約15%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約8%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約10%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約12%を含む。一部の実施形態において、活性薬剤層は、ビーズの総重量の約15%を含む。
【0035】
一部の実施形態において、活性薬剤層の適用は、活性薬剤層の適用前の重量の約1%~約50%の重量増加をもたらす。したがって、例えば、活性薬剤層の適用前のコアの重量がXである場合、活性薬剤層の適用後、重量増加が1%である場合は各ビーズの重量は1.01Xであり、又は、重量増加が50%である場合は各ビーズの重量は1.5Xである。一部の実施形態において、重量増加は約5%~約45%である。一部の実施形態において、重量増加は約5%~約40%である。一部の実施形態において、重量増加は約5%~約35%である。一部の実施形態において、重量増加は約5%~約30%である。一部の実施形態において、重量増加は約10%~約25%である。
【0036】
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、各ビーズの活性薬剤層中に、0.000001mg以上、例えば0.00001mg以上、例えば0.0001mg以上、例えば0.001mg以上、例えば0.01mg以上、例えば0.1mg以上、例えば0.5mg以上、例えば1mg以上(2mg以上を含む)の量で存在し得る。一部の実施形態において、各ビーズのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の薬物ローディングは、1% w/w~25% w/w、例えば2% w/w~24% w/w、例えば3% w/w~23% w/w、例えば4% w/w~22% w/w、例えば5% w/w~21% w/w、例えば6% w/w~20% w/w、例えば7% w/w~19% w/w、例えば8% w/w~18% w/w、例えば9% w/w~15% w/w(11% w/w~13% w/wを含む)である。以下により詳細に記載されるとおり、本開示の実施形態によるナファモスタットの経口組成物は、10mg以上のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩、例えば15mg以上、例えば20mg以上、例えば25mg以上、例えば30mg以上、例えば35mg以上、例えば40mg以上、例えば45mg以上、例えば50mg以上、例えば60mg以上、例えば70mg以上、例えば80mg以上、例えば90mg以上、例えば100mg以上、例えば150mg以上(200mg以上を含む)のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0037】
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩に加えて、活性薬剤層は、結合剤をさらに含み得る。結合剤は、薬学的に許容されるポリマー、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、マルトデキストリン、セルロースアセテートフタレート、スクロース、加工デンプン、アルギン酸の塩、可溶性ガム、カラギーナン、アルキルセルロース、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、不溶性ガム、ポリメタクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)又はポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ポリビニルアルコール、シェラック、及びポリビニルアセテートフタレート又はそれらの任意の組み合わせであり得る。ヒドロキシアルキルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。アルキルセルロースは、セルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0038】
一部の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層は、脱粘着剤(de-tackifier)又はタルクなどの流動促進剤、シロイド(例えば、シロイド244FP)などの非晶質シリカ、モノグリセリド、ジグリセリド、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムをさらに含み得る。
【0039】
他の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層は、脂質賦形剤、例えば、グリセリルベヘネート、脂肪酸のグリセロールエステル、グリセリルジベヘネート、ベヘノイルマクロゴグリセリド、グリセリルジステアレート、グリセロールジステアレート、グリセリルパルミトステアレート、ラウロイルマクロゴグリセリド、ステアロイルマクロゴグリセリド、abitec製品、グリセリルモノオレエート、中鎖モノグリセリド及びジグリセリド、グリセリルモノカプリレート、グリセリルトリカプリレート/カプレート/ステアレート、水素化植物油、水素化綿実油、水素化ダイズ油、水素化ダイズ油及びキャスターワックス、ポリオキシエチレン8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリオキシエチレン6カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリオキシエチレン32ラウリン酸グリセリド、ポリオキシエチレン6プロピル(prop.)グリコールエステル、ポリオキシエチレン7ココナッツグリセリド、ポリオキシエチレン30ココナッツグリセリド、ポリオキシエチレン80ココナッツグリセリド、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン26グリセリルエーテル、ポリオキシエチレン35ダイズグリセリド、ポリオキシエチレン20ソルビトール、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシプロピレン10セトステアリルエーテル、パーム核アミドジエタノールアミド、トリグリセロールモノオレエート、sasol製品、水素化ココグリセリド、セチルパルミテート、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、水素化パーム油、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、セテアリルアルコール、セチルアルコール、カプリン酸トリグリセリド、アセチル化グリセリド、グリセリルココエート、及びポリエチレングリコール又はそれらの組み合わせを含む。
【0040】
特定の実施形態において、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層は、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩とヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含む。
【0041】
一部の実施形態において、制御放出ビーズは、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するように処方された1種以上のポリマーを有する制御放出層を含む。ポリマーは薬学的に許容され、上記のように長時間にわたるナファモスタットの制御放出を提供するのに好適である。一部の場合、制御放出層のポリマーとしては、限定するものではないが、セルロースエテル(例えばEthocel(商標))、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、中性(メタ)アクリレートベースのポリマー(例えばEudragit(商標)NE 30D)、イオン性(メタ)アクリレートベースのポリマー(例えばEudragit(商標)RS又はRL)、ポリビニルアセテート、又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。特定の実施形態において、制御放出層のポリマーは、Kollicoat(商標)SRなどのポリビニルピロリドン(PVP)で安定化される。
【0042】
一部の実施形態において、制御放出層は、アクリレートコポリマーを含む。アクリレートコポリマーは、「ソフト」モノマー、「ハード」モノマー、又は「官能性(functional)」モノマーなどの様々なモノマーのコポリマーを含み得る。アクリレートコポリマーは、バイポリマー(すなわち、2つのモノマーで作製される)、ターポリマー(すなわち、3つのモノマーで作製される)、又はテトラポリマー(すなわち、4つのモノマーで作製される)を含むコポリマー、又はより大きな数のモノマーを有するコポリマーで構成され得る。アクリレートコポリマーは、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。ポリマーは、公知の方法で架橋されて、所望のポリマーを提供することができる。アクリレートコポリマーのモノマーは、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリレート、共重合可能な第二級モノマー又は官能基を有するモノマーを含む群から選択される2つ以上の構成成分を含み得る。モノマー(「ソフト」モノマー及び「ハード」モノマー)は、メトキシエチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、アクリロニトリル、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレートなどであり得る。特定の実施形態において、制御放出層は、メタクリレートアクリレートコポリマー又は2つ以上のメタクリレートアクリレートコポリマーの混合物を含む。一部の場合、目的のメタクリレートアクリレートコポリマーは、以下に記載されるEudragit(商標)アクリレートコポリマーと実質的に同じである。特定の場合、制御放出層は、Eudragit RSと実質的に同じアクリレートコポリマーを含む。特定の場合、制御放出層は、Eudragit RLと実質的に同じアクリレートコポリマーを含む。特定の場合、制御放出層は、Eudragit RSと実質的に同じ第1のアクリレートコポリマーと、Eudragit RLと実質的に同じ第2のアクリレートコポリマーを含む。
【0043】
一部の実施形態において、制御放出層は、2つの異なるポリマー(例えば2つの異なるアクリレートコポリマー)を含む。一部の場合、第1のポリマーは、制御放出層中に、0.01重量%~99.99重量%、例えば0.1重量%~99.9重量%、例えば0.5重量%~99.5重量%、例えば1重量%~99重量%、例えば2重量%~98重量%、例えば3重量%~97重量%、例えば4重量%~96重量%、例えば5重量%~95重量%、例えば6重量%~94重量%、例えば7重量%~93重量%、例えば8重量%~92重量%、例えば9重量%~91重量%、例えば10重量%~90重量%、例えば15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、例えば25重量%~75重量%、例えば30重量%~70重量%、例えば35重量%~65重量%、例えば40重量%~60重量%(45重量%~55重量%を含む)の量で存在する。一部の場合、第2のポリマーは、制御放出層中に、0.01重量%~99.99重量%、例えば0.1重量%~99.9重量%、例えば0.5重量%~99.5重量%、例えば1重量%~99重量%、例えば2重量%~98重量%、例えば3重量%~97重量%、例えば4重量%~96重量%、例えば5重量%~95重量%、例えば6重量%~94重量%、例えば7重量%~93重量%、例えば8重量%~92重量%、例えば9重量%~91重量%、例えば10重量%~90重量%、例えば15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、例えば25重量%~75重量%、例えば30重量%~70重量%、例えば35重量%~65重量%、例えば40重量%~60重量%(45重量%~55重量%を含む)の量で存在する。
【0044】
制御放出層中の第1のポリマー(例えば、第1のアクリレートコポリマー)と第2のポリマー(例えば、第2のアクリレートコポリマー)との重量比は、例えば、1:99~99:1、例えば5:95~95:5、例えば10:90~90:10、例えば20:80~80:20、例えば30:70~70:30、例えば40:60~60:40で変動し得、制御放出層中の第1のポリマーと第2のポリマーとの重量比が50:50である場合を含む。特定の実施形態において、制御放出層中の第1のポリマーと第2のポリマーとの重量比は80:20であり得、例えば第1のポリマーと第2のポリマーが87:13、例えば第1のポリマーと第2のポリマーの比が90:10、例えば第1のポリマーと第2のポリマーの比が92:8(第1のポリマーと第2のポリマーの比が95:5を含む)であり得る。
【0045】
一部の場合、制御放出層は、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及びクロロトリメチル-アミノニオエチルメタクリレートのコポリマーを含む。特定の場合、ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)である。例えば、アクリレートコポリマーは、以下のものの組み合わせであり得る:1) 100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)(本明細書中以降「アクリレートコポリマーA」;ここで一部の例では、アクリレートコポリマーAは、Eudragit(商標)RLと実質的に同じである) 及び2) 100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)(本明細書中以降、「アクリレートコポリマーB」;ここで一部の例では、アクリレートコポリマーBは、Eudragit(商標)RSと実質的に同じである)。一部の場合、アクリレートコポリマーAは、制御放出層のポリマー中に、0.01重量%~99.99重量%、例えば0.1重量%~99.9重量%、例えば0.5重量%~99.5重量%、例えば1重量%~99重量%、例えば2重量%~98重量%、例えば3重量%~97重量%、例えば4重量%~96重量%、例えば5重量%~95重量%、例えば6重量%~94重量%、例えば7重量%~93重量%、例えば8重量%~92重量%、例えば9重量%~91重量%、例えば10重量%~90重量%、例えば15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、例えば25重量%~75重量%、例えば30重量%~70重量%、例えば35重量%~65重量%、例えば40重量%~60重量%(45重量%~55重量%を含む)の量で存在する。一部の場合、アクリレートコポリマーBは、制御放出層のポリマー中に、0.01重量%~99.99重量%、例えば0.1重量%~99.9重量%、例えば0.5重量%~99.5重量%、例えば1重量%~99重量%、例えば2重量%~98重量%、例えば3重量%~97重量%、例えば4重量%~96重量%、例えば5重量%~95重量%
、例えば6重量%~94重量%、例えば7重量%~93重量%、例えば8重量%~92重量%、例えば9重量%~91重量%、例えば10重量%~90重量%、例えば15重量%~85重量%、例えば20重量%~80重量%、例えば25重量%~75重量%、例えば30重量%~70重量%、例えば35重量%~65重量%、例えば40重量%~60重量%(45重量%~55重量%を含む)の量で存在する。
【0046】
制御放出層中のアクリレートコポリマーAとアクリレートコポリマーBの重量比は、例えば1:99~99:1、例えば5:95~95:5、例えば10:90~90:10、例えば20:80~80:20、例えば30:70~70:30、例えば40:60~60:40で変動し得、制御放出層中のアクリレートコポリマーAとアクリレートコポリマーBの重量比が50:50である場合を含む。特定の実施形態において、制御放出層は、80:20のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば87:13のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば90:10のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比、例えば92:8のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比を含み、95:5のアクリレートコポリマーBとアクリレートコポリマーAの比を含む。
【0047】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、20重量%のアクリレートコポリマーBと80重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0048】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、50重量%のアクリレートコポリマーBと50重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0049】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、80重量%のアクリレートコポリマーBと20重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0050】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、100重量%のアクリレートコポリマーBを含む。
【0051】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、100重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0052】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、95重量%のアクリレートコポリマーBと5重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0053】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、93重量%のアクリレートコポリマーBと7重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0054】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、92重量%のアクリレートコポリマーBと8重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0055】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、90重量%のアクリレートコポリマーBと10重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0056】
特定の場合、制御放出層のポリマーは、87重量%のアクリレートコポリマーBと13重量%のアクリレートコポリマーAを含む。
【0057】
一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約1%~約50%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約2%~約40%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約5%~約30%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約7%~約25%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約8%~約15%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約8%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約10%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約12%を構成する。一部の実施形態において、制御放出層は、ビーズの総重量の約15%を構成する。
【0058】
一部の実施形態において、制御放出層の適用は、制御放出層の適用前の重量の約1%~約50%の重量増加をもたらす。したがって、例えば、制御放出層の適用前のコア及び活性薬剤層の重量がXである場合、制御放出層の適用後、重量増加が1%である場合は各ビーズの重量は1.01Xであり、又は、重量増加が50%である場合は各ビーズの重量は1.5Xである。一部の実施形態において、重量増加は約5%~約45%である。一部の実施形態において、重量増加は、約5%~約40%である。一部の実施形態において、重量増加は、約5%~約35%である。一部の実施形態において、重量増加は、約5%~約30%である。一部の実施形態において、重量増加は約10%~約25%、例えば15%である。
【0059】
メシル酸ナファモスタットの組成物の特定の非限定的な例は、以下の表1及び表2に提供される:
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
一部の実施形態において、制御放出層は、グリセロールモノステアレートなどの離型剤をさらに含む。一部の実施形態において、制御放出層は、1種以上の可塑剤も含む。一部の実施形態において、可塑剤は、フタレートベースの可塑剤、トリメリテート、アジペートベースの可塑剤、セバケートベースの可塑剤、有機リン酸塩、マレイン酸塩、スルホンアミド、グリコール類又はポリエーテル、アセチル化モノグリセリド、及びクエン酸アルキルからなる群から選択される。特定の実施形態において、セバケートベースの可塑剤は、ジブチルセバケート(DBS)である。特定の実施形態において、可塑剤はクエン酸トリエチルである。一部の実施形態において、可塑剤は、制御放出層の重量の約1%~約20%、又は約5重量%~約15重量%、又は約7重量%~約10重量%で存在する。特定の実施形態において、制御放出層は、香味剤をさらに含み得る。特定の場合、活性薬剤層及び/又は制御放出層は、ケイ酸マグネシウムを含む。
【0063】
特定の実施形態において、複数の制御放出ビーズは、制御放出層の上にコーティングされたナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出層を含む。一部の場合、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出層は、対象への組成物の投与の10分以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上を放出するように処方され、対象への組成物の投与の10分以内に99%以上を放出するように処方されることを含む。特定の場合、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出層は、対象への組成物の投与の10分以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の全て(すなわち、100%)を放出するように処方される。特定の場合、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出層は、対象への組成物の投与の直後に、ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の50%以上、例えば60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上を放出するように処方され、対象への組成物の投与の直後にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の99%以上を放出するように処方されることを含む。
【0064】
各ビーズの即時放出層中に存在するナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の量は、0.000001mg以上、例えば0.00001mg以上、例えば0.0001mg以上、例えば0.001mg以上、例えば0.01mg以上、例えば0.1mg以上、例えば0.5mg以上、例えば1mg以上であり得、2mg以上を含む。一部の実施形態において、各ビーズの即時放出層中のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の薬物ローディングは、1% w/w~25% w/w、例えば2% w/w~24% w/w、例えば3% w/w~23% w/w、例えば4% w/w~22% w/w、例えば5% w/w~21% w/w、例えば6% w/w~20% w/w、例えば7% w/w~19% w/w、例えば8% w/w~18% w/w、例えば9% w/w~15% w/wであり、11% w/w~13% w/wを含む。
【0065】
制御放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の組成物は、経口(口腔及び舌下を含む)投与に適した任意の好都合な形態で、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末剤、懸濁剤、分散剤又はエマルション剤として製剤化され得る。一部の実施形態において、制御放出ナファモスタットまたはその薬学的に許容される塩は、肺投与など、対象の呼吸器系への投与のために製剤化される。例えば、本明細書に記載の組成物は、吸入(例えば、ドライパウダー吸入及びエアロゾル吸入)、気管内注入(注射器による気道への送達)、気管内送達及び通気(insufflation)(注射器又は任意の他の類似のデバイスによる粉末製剤の気道への投与)、ネブライゼーションによる投与のために製剤化され得る。一部の実施態様において、組成物は、ドライパウダー吸入又はエアロゾル吸入用に製剤化され、ヒドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、プロパン、窒素、又はそれらの混合物などのプロペラント(propellant)を含むことができる。エアロゾル製剤は、気体媒体中の固体材料及び液滴の安定な分散物又は懸濁物であり、ヒドロフルオロアルカン(HFA-134a及びHFA-227などのHFA、又はそれらの混合物)、ジクロロジフルオロメタン(又は、プロペラント11,12、及び/又は114の混合物などの他のクロロフルオロカーボンプロペラント)、プロパン、窒素などの加圧された許容可能なプロペラントに入れることができる。
【0066】
本組成物は、医薬製剤においては従来の成分、例えば1種以上の担体、結合剤、潤滑剤、賦形剤(例えば、制御放出特性を付与するための)、pH改変剤、甘味剤、増量剤、着色剤又はさらなる活性薬剤を含み得る。本実施形態による医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
【0067】
単位組成物、例えば制御放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩のカプセル剤中のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の量としては、1mg~500mgのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩、例えば1~10mg、10~20mg、20~30mg、30~40mg、40~50mg、50~60mg、60~70mg、70~80mg、80~90mg、90~100mg、100~110mg、110~120mg、120~130mg、130~140mg、140~150mg、150~160mg、160~170mg、170~180mg、180~190mg、190~200mg、200~210mg、210~220mg、220~230mg、230~240mg、240~250mg、250~260mg、260~270mg、270~280mg、280~290mg、290~300mg、300~310mg、310~320mg、320~330mg、330~340mg、340~350mg、350~360mg、360~370mg、370~380mg、380~390mg、390~400mg、400~410mg、410~420mg、420~430mg、430~440mg、440~450mg、450~460mg、460~470mg、470~480mg、480~490mg、及び490~500mgのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を挙げることができる。
【0068】
特定の実施形態において、制御放出組成物は、例えば制御放出ビーズのカプセル剤中に含まれる、ある量の即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩をさらに含む。一部の場合、即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、粉末形態で組成物中に(例えば、カプセル剤中に)存在する。他の例では、即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩は、顆粒形態で組成物中に(例えば、カプセル剤中に)存在する。組成物中に存在する即時放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の量は、1mg~200mg、例えば2mg~190mg、例えば3mg~180mg、例えば4mg~170mg、例えば5mg~160mg、例えば6mg~150mg、例えば7mg~140mg、例えば8mg~130mg、例えば9mg~120mg及び10mg~100mgであり得る。
【0069】
本開示の態様は、対象に制御放出ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を投与するための方法も含む。特定の実施形態による主題の方法の実施において、制御放出ナファモスタット組成物の1回以上の用量が、対象に、経口(口腔又は舌下を含む)投与される。特定の実施形態において、制御放出ナファモスタット組成物は、肺投与など、呼吸器系に投与される。例えば、本明細書に記載の組成物は、吸入(例えば、ドライパウダー吸入及びエアロゾル吸入)、気管内注入(注射器による気道への送達)、気管内送達及び通気(insufflation)(注射器又は任意の他の類似のデバイスによる粉末製剤の気道への投与)、ネブライゼーションによって特定の実施形態にしたがって投与され得る。一部の実施態様において、投与は、ヒドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、プロパン、窒素、又はそれらの混合物などのプロペラント(propellant)と一緒にドライパウダー吸入又はエアロゾル吸入によって行われる。エアロゾル製剤は、気体媒体中の固体材料及び液滴の安定な分散物又は懸濁物であり、ヒドロフルオロアルカン(HFA-134a及びHFA-227などのHFA、又はそれらの混合物)、ジクロロジフルオロメタン(又は、プロペラント11,12、及び/又は114の混合物などの他のクロロフルオロカーボンプロペラント)、プロパン、窒素などの加圧された許容可能なプロペラントに入れることができる。
【0070】
対象に投与される制御放出ナファモスタット組成物の投与量は、1日当たり約0.01mg/kg~20mg/kg、例えば1日当たり0.05mg/kg~19mg/kg、例えば1日当たり0.1mg/kg~18mg/kg、例えば1日当たり0.5mg/kg~17mg/kg、例えば1日当たり1mg/kg~16mg/kgで変動し得、1日当たり1mg/kg~15mg/kgを含む。実施形態において、制御放出ナファモスタット組成物は、1日当たり1回、1日当たり2回、1日当たり3回、1日当たり4回、1日当たり5回又はいくつかの他の間隔で対象に投与され得る。
【0071】
制御放出ナファモスタット組成物による各治療間隔は、1日以上、例えば2日間以上、例えば3日間以上、例えば4日間以上、例えば5日間以上、例えば6日間以上、例えば7日間以上、例えば2週間以上、例えば3週間以上、例えば4週間以上、例えば8週間以上、例えば12週間以上、例えば16週間以上、例えば20週間以上、例えば24週間以上、例えば28週間以上、例えば32週間以上、例えば36週間以上、例えば40週間以上、例えば44週間以上、例えば48週間以上であり得、52週間以上を含む。特定の実施形態において、プロトコルは、複数の投与間隔を含み得る。本開示の方法の実施において、治療レジメンは、2つ以上の投与間隔、例えば3つ以上の投与間隔、例えば4つ以上の投与間隔、例えば5つ以上の投与間隔(10以上の投与間隔を含む)を含み得る。
【0072】
複数投与間隔治療プロトコルにおける投与間隔間の期間は、対象の生理機能に応じて、又は医療専門家により決定される治療プロトコルによって変動し得る。例えば、複数回投与治療プロトコルにおける投与間隔間の期間を予め決定し、その後一定間隔で後続することができる。このため、投与間隔間の時間は変動する可能性があり、1日以上、例えば2日間以上、例えば4日間以上、例えば6日間以上、例えば8日間以上、例えば12日間以上、例えば16日間以上(24日間以上を含む)であり得る。特定の実施形態において、複数回投与間隔プロトコルは、1週間以上、例えば2週間以上、例えば3週間以上、例えば4週間以上、例えば5週間以上(6週間以上を含む)の投与間隔間の時間を提供する。
【0073】
特定の実施形態において、本明細書に記載される制御放出ナファモスタット組成物は、同一又は関連しない状態を治療するための他の治療剤に先行して、当該他の治療剤と同時に、又は当該治療剤の後で投与され得る。 他の治療剤と同時に提供される場合、制御放出ナファモスタット組成物は、同じ組成物で又は異なる組成物で投与することができる。このように、制御放出ナファモスタット組成物と他の治療剤とは、併用療法によって対象に投与することができる。「併用治療」とは、治療を受ける対象において、物質の組み合わせによる治療効果が生じるような対象への投与が意図される。別個の医薬組成物の投与は、治療を受ける対象にこれらの物質の組み合わせによる治療効果が生じる限り、同時に、又は異なる時期に(すなわち、順次、いずれかの順序で、同じ日に、又は異なる日に)行うことができる。
【0074】
本明細書中に記載される主題の態様(実施形態を含む)は、単独で又は1つ以上の他の態様又は実施形態と組み合わせて、有利であり得る。記載を限定するものではないが、1~40と付番された本開示の特定の非限定的な態様が以下に提供される。この開示を読めば当業者には明らかであろうとおり、個別に付番された態様のそれぞれを使用してもよく、又は先行若しくは後続する個別に付番された態様のいずれかと組み合わせてもよい。これは、態様のこのような組み合わせの全てに対する裏付けを提供することを意図し、以下に明確に提供される態様の組み合わせに限定されない。
【0075】
1. ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の長時間の制御放出を提供する、組成物。
【0076】
2. 組成物が複数の制御放出ビーズを含み、各ビーズは、以下:
コア;
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む活性薬剤層;及び
ナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の制御放出を提供するのに十分な量で処方された1種以上のポリマーを含む制御放出層
を含む、1の組成物。
【0077】
3. コアが、セルロースポリマー、又は二酸化ケイ素、又はグルコース、スクロース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、及びソルビトールからなる群から選択される糖を含む、2の組成物。
【0078】
4. コアが、微結晶性セルロース(MCC)を含む、3の組成物。
【0079】
5. 活性薬剤層が、結合剤をさらに含む、1~4のいずれか1つの組成物。
【0080】
6. 結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、1~4のいずれか1つの組成物。
【0081】
7. 制御放出層が、アクリレートコポリマーを含む、1~6のいずれか1つの組成物。
【0082】
8. アクリレートコポリマーが、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含む、7の組成物。
【0083】
9. アクリレートコポリマーが、第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含む、8の組成物。
【0084】
10. 前記アクリレートコポリマーが、以下:
100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含むアクリレートコポリマーA;及び
100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基を含む、ポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)を含むアクリレートコポリマーB
の組み合わせを含む、9の組成物。
【0085】
11. アクリレートコポリマーが、20重量%のアクリレートコポリマーBと80重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0086】
12. アクリレートコポリマーが、50重量%のアクリレートコポリマーBと50重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0087】
13. アクリレートコポリマーが、80重量%のアクリレートコポリマーBと20重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0088】
14. アクリレートコポリマーが、100重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0089】
15. アクリレートコポリマーが、100重量%のアクリレートコポリマーBを含む、10の組成物。
【0090】
16. アクリレートコポリマーが、95重量%のアクリレートコポリマーBと5重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0091】
17. アクリレートコポリマーが、93重量%のアクリレートコポリマーBと7重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0092】
18. アクリレートコポリマーが、92重量%のアクリレートコポリマーBと8重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0093】
19. アクリレートコポリマーが、90重量%のアクリレートコポリマーBと10重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0094】
20. アクリレートコポリマーが、87重量%のアクリレートコポリマーBと13重量%のアクリレートコポリマーAを含む、10の組成物。
【0095】
21. アクリレートコポリマーが、複数のビーズのそれぞれの5重量%~30重量%を構成する、7~20のいずれか1つの組成物。
【0096】
22. 活性薬剤層と制御放出層の1つ以上がケイ酸マグネシウムをさらに含む、2~21のいずれか1つの組成物。
【0097】
23. 活性薬剤層と制御放出層の1つ以上が可塑剤をさらに含む、2~22のいずれか1つの組成物。
【0098】
24. 可塑剤がクエン酸トリエチルである、23の組成物。
【0099】
25. 複数のビーズのそれぞれが、5重量%~20重量%のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む、2~24のいずれか1つの組成物。
【0100】
26. 複数のビーズのそれぞれが、10重量%~15重量%のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む、25の組成物。
【0101】
27. 複数のビーズのそれぞれが、11重量%~12重量%のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む、25の組成物。
【0102】
28. 複数のビーズが、投与後6時間以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の50%以上を放出するように構成される、1~27のいずれか1つに記載の組成物。
【0103】
29. 複数のビーズが、投与後6時間以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の75%以上を放出するように構成される、1~27のいずれか1つに記載の組成物。
【0104】
30. 複数のビーズが、投与後6時間以内にナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の90%以上を放出するように構成される、1~27のいずれか1つに記載の組成物。
【0105】
31. 複数のビーズが、第1の所定時間、第1の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出を提供し、その後、第2の所定時間、第2の速度でのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の放出を提供するように構成される、1~27のいずれか1つに記載の組成物。
【0106】
32. 対象へのナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の即時放出を提供する即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩をさらに含む、1~31のいずれか1つの組成物。
【0107】
33. 即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩が、粉末形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩を含む、32の組成物。
【0108】
34. 即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩が、複数の制御放出ビーズの制御放出層の上に位置するナファモスタット又はその薬学的に許容される塩の層を含む、32の組成物。
【0109】
35. 即時放出形態のナファモスタット又はその薬学的に許容される塩が、複数の即時放出ビーズを含む、32の組成物。
【0110】
36. 1~35のいずれか1つの組成物を、それを必要とする対象に経口投与することを含む方法。
【0111】
37. 1~35のいずれか1つの組成物を、それを必要とする対象の呼吸器系に投与することを含む方法。
【0112】
38. 組成物が、吸入、気管内注入、気管内送達、通気、ネブライゼーション又はそれらの組合せによって投与される、37の方法。
【0113】
39. 組成物がプロペラントをさらに含む、37~38のいずれか1つの方法。
【0114】
40. プロペラントが、ヒドロフルオロアルカン、クロロフルオロカーボン、プロパン、窒素、又はそれらの混合物である、39の方法。
【実施例
【0115】
以下の実施例は、当業者に実施形態の作製方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために示され、本発明者が自らの発明であるとみなす範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が、実施された全ての又は唯一の実験であることを示すことを意図するものでものない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関する正確性を確保する努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び逸脱が説明されるべきである。別段に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧か、大気圧に近い。標準的な略語を使用することができる。
【0116】
本実験において使用されるオキシコドン誘導体は、本明細書において、KC-8 (N-1-[3-(オキシコドン-6-エノール-カルボニル-メチルアミノ)-2,2-ジメチル-プロピルアミン]-アルギニン-グリシン-マロン酸)と称し、以下に示す構造を有する。分子の左側はオキシコドン基である。右に移ると、構造-C(O)N(CH3)CH2C(CH3)2CH2-を有するリンカー、それに後続する式Arg-Gly-Malのペプチドである。
【0117】
【化2】
【0118】
図1は、消化器系によりKC-8がどのように活性化され得るかについて示す。最初に、リンカーとペプチド基間のN-C結合が、消化酵素トリプシンにより切断又は生体内活性化される。このため、KC-8は、トリプシン活性化されるということができる。次に、リンカーの末端アミン基がペプチド保護基から分離した後、リンカーが分子内環化を受け、これにより環状尿素副生成物を放出する。その結果、オキシコドン分子が形成され、その後これが疼痛阻害などの薬理作用をもたらし得る。したがって、活性オキシコドン薬物の生成は、消化管中に位置する酵素であるトリプシンによるN-C結合の切断の切断により引き起こすことが可能である。
【0119】
実施例1:ラットにおいてナファモスタットがKC-8の薬物動態に与える影響
薬物メシル酸ナファモスタットを、KC-8オキシコドン誘導体を含有する製剤に加えた。本明細書中に記載される実施例において、用語「メシル酸ナファモスタット」と「ナファモスタット」は互換的に使用される。
【0120】
KC-8と任意選択的にナファモスタットの両方を含む製剤を、ラットに経口投与した。KC-8用量は5mg/kgであり、ナファモスタット濃度は、0、0.1、0.5、又は1mg/kgであった。活性オキシコドンの血漿濃度を、投与後24時間にわたり様々な時間間隔で測定した。
【0121】
図2に示されるとおり、0 mg/kg又は0.1mg/kgのナファモスタットを伴うと、オキシコドン濃度は、約2時間で急上昇し、約1.3ng/ml又は1.4ng/mlの濃度になった。対照的に、さらなるナファモスタットは、最大オキシコドン濃度を約5時間で約0.75ng/mlのピークに低下させた。エラーバーは、1つの標準偏差を表す。
【0122】
図3に示されるとおり、ラットに、10個のKC-8の丸剤を摂取する場合にヒトが受けるであろう用量とほぼ等しい、より高濃度のKC-8とナファモスタットの両方を投与した。特に、ラットは、50mg/kgのKC-8と、0、1、5、又は10mg/kgのナファモスタットを受けた。ナファモスタットゼロで、血漿濃度は、約2時間で最大の約22ng/mlとなり、その後濃度は急速に低下した。図2のデータと一致して、より高濃度のナファモスタットは、ピーク濃度を約8時間で約3ng/mlまで低下させた。
【0123】
別の公知の鎮痛剤であるヒドロモルフォンの誘導体(本明細書中PF329と呼ばれる)を用いて、ラット実験を反復した。図4及び5は、ナファモスタットを有するか又は有さない1、3、6又は10個の丸剤の投与後の活性ヒドロモルフォン(HM)の血液濃度を示す。言い換えると、図5の丸剤はナファモスタットを含んでいたが、図4の丸剤は含んでいなかった。上記の図は、図4においてより多くの丸剤を投与すると、ヒドロモルフォン濃度の顕著な増加がもたらされるが、図5においては、ナファモスタットの緩和効果により、増加がほとんどなかったことを示す。
【0124】
したがって、実験1は、ナファモスタットとオキシコドン又はヒドロモルフォン誘導体との共投与が、血漿中の活性薬物の最大濃度を有意に低下させ、経時的に活性薬物のより安定な濃度も生じさせたことを示した
【0125】
実施例2:ヒトにおいてナファモスタットがKC-8の薬物動態に与える影響
【0126】
実施例1の実験は、ラットにおけるナファモスタットの影響について試験したが、実験2は、ヒトに投与された場合の影響を測定した。ヒトにおける薬物動態は、ラットにおける薬物動態とは異なるように見えた。図6に示されるとおり、PF329のヒドロモルフォン誘導体を、0mg、1mg、又は10mgのナファモスタットと共に投与した。0mgのナファモスタットでは、ヒドロモルフォンの血液濃度は、0時間で開始して増加し、約0.4ng/mlに到達した。1mg又は10mgのナファモスタットを用いた場合、増加は1時間又は2時間まで遅延したが、ピーク濃度は、同様に約0.4ng/mlに達したように見えた。したがって、ヒトにおけるナファモスタットの影響は、ラットにおけるナファモスタットの影響とは異なると考えられた。
【0127】
実施例3:即時放出ナファモスタット組成物の調製
即時放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各即時放出ビーズは、微結晶性セルロースコアとメシル酸ナファモスタットの活性薬剤層とを含む。
【0128】
メシル酸ナファモスタットのコーティング溶液を、メトセル(methocel)を水に加え、250rpmで25分間撹拌したままにすることにより調製した。29gのメシル酸ナファモスタットをゆっくりと加え、完全に溶解するまでさらに5分間撹拌した。これにより、5重量%のメシル酸ナファモスタット溶液が生成した。次いで、残りのメシル酸ナファモスタットをさらに10分間かけて加え、さらに10分間混合し、白色の均一な懸濁液を得た。この懸濁液を一晩撹拌したままにした。コーティング溶液をトップパンてんびん(top pan balance)上に置き、溶液がコーティング工程を通して確実に完全に分散した状態を維持するようにオーバーヘッドスターラーを設定した。即時放出ナファモスタットコーティング組成物の成分は、表3にまとめた。
【0129】
【表3】
【0130】
700gのMCC CP-305スフェアを量り分け、容器中にロードし、コーティングを開始した。ポンプ速度を、1g/分から、最大スプレー速度が達成されるまで10~20分毎に徐々に増加させた。ブローバックサイクルは必要ではなかった。コーティングを合計4.75時間実施し、顕著なツイニング(twinning)又は凝集は全く観察されなかった。ビーズを回収前に30分間硬化させた。工程パラメータは、表4に示される。600μm篩を通してビーズを回収し、698gの許容可能な個々のビーズを回収したが、一方で72gのツイン化ビーズ(twinned beads)を回収した。
【0131】
【表4】
【0132】
ビーズを回収し、600μm篩に通して698gの個々のビーズを回収したが、一方で72gがツイン化した。合計で702gのコーティング溶液をスプレーし、7.99% w/wの理論的遊離薬物ローディングを達成した。LOD、アッセイ、関連物質及び水分含有量についてビーズを試験した。上記ビーズは優れた均一性を示し、均一なコーティングが達成されたことを示していた。
【0133】
実施例4:制御放出ナファモスタット組成物の活性薬剤層の調製
ナファモスタット制御放出ビーズの活性薬剤層を調製した。各ビーズを、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットのコーティング層から調製した。コーティング溶液の組成は表5に示される。
【0134】
【表5】
【0135】
メシル酸ナファモスタットのコーティング溶液を、即時放出ナファモスタットビーズ組成物について上記したように調製し、一晩撹拌したままにした。650グラムの微結晶性セルロースCP-305スフェアを量り分け、容器中にロードし、コーティングを開始した。ポンプ速度を1g/分で15分間維持し、その後1.5g/分に増加させた。ポンプ速度を、実施された観察に基づいて次の1時間かけて3.0g/分まで徐々に増加させた。この時間中、ポンプ速度に従ってノズル圧を徐々に増加させ、良好なスプレーパターンを維持した。上記の工程を、何の阻害もなく、又はブローバック特性の必要性を伴わずに、合計で4.5時間実施した。流動床容器内で40℃にて30分間ビーズを硬化させ、コーティングパラメータは表4に示されるとおりである。
【0136】
ビーズを回収して600μm篩に通し、532gの個々のビーズを回収したが、一方で194gがツイン化した。合計で655gのコーティング溶液をスプレーし、8.40% w/wの理論的遊離薬物ローディングが達成された。ビーズを、LOD、アッセイ、関連物質及び水分含有量について試験した。
【0137】
実施例6:制御放出ナファモスタット組成物の調製
制御放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各制御放出ビーズは、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層及び制御放出ポリマーコーティング層とを含む。メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層を、実施例4に示されるとおりに調製した。87:13比のEudragit RS:Eudragit RLを有するポリマー制御放出コーティング溶液を、表6にまとめたとおりに調製した。別の実施形態では、表7に示されるとおり、溶液中のタルクの割合を、他の成分に対して半分にした。
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【0140】
Procept製流動床を、1L容器、0.4mmノズルを使用して、wursterカラムは使用せずに設定した。250gの活性薬剤層含有ビーズ(上記のとおりに調製した、メシル酸ナファモスタットでコーティングされた微結晶性セルロース)を量り分け、容器中に入れた。コーティング溶液を調製し、均一に分散した白色の不透明な溶液を生成した。コーティング溶液をトップパンてんびん上に置き、オーバーヘッドスターラーを250rpmに設定して、コーティング工程を通して溶液が確実に完全に分散した状態を維持するようにした。コーティング溶液をライン及びガン(line and gun)に入れ、漏出/気泡についてチェックした。
【0141】
0.5g/分の初期スプレー速度でコーティングを開始し、最大の2.5g/分が達成されるまでコーティング工程の期間を通して徐々に増加させた。大量のビーズが容器の内側及びフィルター上に張り付く顕著な静電問題(static issue)が観察された。ビーズが堆積して流れを止めることがないことを確実にするように、静電ガン(static gun)をほぼ常に使用しなければならなかった。2.5時間後、ビーズの凝集塊が形成し始めたため、工程を停止した。タルクがライン中で堆積していたことが認められ、おそらくはこれがビーズの凝集の一因であった。約207gのコーティング溶液をスプレーし、4.73%のコーティング重量増加が生じた。600μm篩を使用して、ERコーティングされたビーズを、ツイン(twins)についてスクリーニングした。
【0142】
図12は、重量増加の増大による、87:13(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
【0143】
実施例7:制御放出ナファモスタット組成物の調製
制御放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各制御放出ビーズは、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層及び制御放出ポリマーコーティング層とを含む。メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層を、実施例4に示されるとおりに調製した。90:10比のEudragit RS:Eudragit RLを有するポリマー制御放出コーティング溶液を、表8にまとめられるとおりに調製した。
【0144】
【表8】
【0145】
より遅い放出速度を有する制御放出ビーズを製造するため、Eudragit RS:Eudragit RLの比を90:10に変更した。Procept製流動床を先に記載したとおりに設定し、250gのナファモスタット活性薬剤層含有ビーズ(上記)を量り分けて容器中に入れた。コーティング溶液を調製し、均一に分散した白色の不透明な溶液を生成した。
【0146】
コーティングを開始し、コーティング工程中は2.0g/分のままとした。大量のビーズが容器の内側及びフィルター上に張り付く、静電問題が観察された。このコーティングラン中にフィルター圧が急速に増加し、わずか30分間で50mbarに達した。流動床上のブローバック特性について検証したが、フィルター圧には顕著な変化を全くもたらさなかった。このため、空気速度、ノズル流及びノズル圧を低下させ、上記工程がより長く継続し得るように厳しく制御した。
【0147】
上記工程を約4時間30分実施し、理論的に20%の重量増加を達成した。ビーズのサンプルを、5%、10%及び20%で採取した。バルクビーズを容器中で40℃にて30分間硬化させ、サンプルを、一晩硬化のため40℃でオーブン中に置いた。
【0148】
翌朝、容器中の同じバルクビーズ及び同じコーティング溶液を用いて、上記工程を再開した。フィルターが75mbarを超えたため、これらフィルターを交換した。このさらなるコーティングの目的は、30%重量増加(先に達成された20%の上のさらなる10%)を試み、これを達成することであった。上記の工程をさらに2時間実施し、30%重量増加でビーズのサンプルを取り出し、オーブン中に入れた。約772gのコーティング溶液をスプレーし、30%の理論的コーティング重量増加が生じた。600μm篩を使用して、ERコーティングされたビーズを、ツインについてスクリーニングした。重量増加サンプルを全て採取し、溶解及びLODについて分析した。図13は、重量増加の増大による、90:10(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
【0149】
実施例8:制御放出ナファモスタット組成物の調製
制御放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各制御放出ビーズは、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層及び制御放出ポリマーコーティング層とを含む。実施例4に示されるとおりに、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層を調製した。80:20比のEudragit RS:Eudragit RLを有するポリマー制御放出コーティング溶液を、表9にまとめられるとおりに調製した。
【0150】
【表9】
【0151】
より速い放出速度を有する制御放出ビーズを製造するため、Eudragit RS:Eudragit RLの比を80:20に変更した。Procept製流動床を、先に記載したとおりに設定し、250gのナファモスタット活性薬剤層含有ビーズ(上記のとおり)を量り分け、容器中に入れた。コーティング溶液を調製し、均一に分散した白色の不透明な溶液を生成した。この試験では静電気が顕著であったが、静電ガンの使用により抑制することができた。フィルターの底に鍾乳(stalactites)が形成されたが、自ずと分散し得た。ガラス容器への接触を回避することは、ガラス上のビーズの堆積(build-up)の低減に役立った。
【0152】
上記の工程を約3時間実施し、15%重量増加を達成した。ビーズのサンプルを5%及び10%で採取した。バルクビーズを容器中で硬化させ、次いで金属トレーに移し、サンプルビーズと一緒に、40℃でオーブン中に一晩置いた。ノズル圧及びノズル流を注意深く制御することにより、フィルターは40mbarを超えず、上記工程の実施を円滑に継続することを可能とした。約369gのコーティング溶液をスプレーし、15%の理論的コーティング重量増加が生じた。600μm篩を使用して、ERコーティングされたビーズをツインについてスクリーニングした。
【0153】
異なるEudragit RS:Eudragit RLの比による、5%重量増加でコーティングされたビーズについてのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較は、図14Aに示される。異なるEudragit RS:Eudragit RLの比による、10%重量増加でコーティングされたビーズについてのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較は、図14Bに示される。
実施例9:制御放出ナファモスタット組成物の調製
制御放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各制御放出ビーズは、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層及び制御放出ポリマーコーティング層とを含む。メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層を、実施例4に示されるとおりに調製した。92:8比のEudragit RS:Eudragit RLを有するポリマー制御放出コーティング溶液を、表10にまとめられるとおりに調製した。ノズル閉塞及び生成したビーズのツイン化の増加に起因して、微粒子化タルクの代わりにシロイド244FPを使用した。
【0154】
【表10】
【0155】
Procept製流動床を先に記載したとおりに設定し、250gのナファモスタット活性薬剤層含有ビーズ(上記)を量り分け、容器中に入れた。上記の工程を約3時間実施し、理論的15%重量増加を達成した。バルクビーズを容器中で40℃にて15分間硬化させ、次いで金属トレーに移し、40℃でオーブン中に一晩置いた。一晩硬化後にLODを測定し、前のバッチと同等であることが見出された(0.85%)。ノズル圧及びノズル流を注意深く制御することにより、フィルターは40mbarを超えず、上記工程の実施を円滑に継続することを可能とした。約385gのコーティング溶液をスプレーし、15%のコーティング重量増加を生じた。600μm篩を使用して、ERコーティングされたビーズをツインについてスクリーニングした。図15は、5%重量増加で92:8(Eudragit RS:Eudragit RL)比を有する制御放出ビーズからのナファモスタットの放出プロファイルの比較を示す。
【0156】
実施例10:制御放出ナファモスタット組成物の調製
制御放出ビーズを含むナファモスタット組成物を調製した。各制御放出ビーズは、微結晶性セルロースコアと、メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層及び制御放出ポリマーコーティング層とを含む。メシル酸ナファモスタットの活性薬剤層を、実施例4に示されるとおりに調製した。Eudragit RS:Eudragit RLの92:8比を有するポリマー制御放出コーティング溶液を、表11にまとめられるとおりに調製した。ノズル閉塞及び生成したビーズのツイン化の増加に起因して、微粒子化タルクの代わりにシロイド244FPを使用した。
【0157】
【表11】
【0158】
Procept製流動床を、先に記載したとおりに設定し、250gのナファモスタット活性薬剤層含有ビーズ(上記)を量り分け、容器中に入れた。上記の工程を約3時間実施し、14.7%重量増加を達成した。バルクビーズを容器中で40℃にて10分間硬化させ、その後金属トレーに移し、40℃のオーブン中に一晩置いた。一晩硬化後にLODを測定し、前のバッチと同等であることが見出された(0.68%)。ノズル圧及びノズル流を注意深く制御することにより、フィルターは40mbarを超えず、上記工程の実施を円滑に継続することを可能とした。約324gのコーティング溶液をスプレーし、14.7%の理論的コーティング重量増加がもたらされた。600μm篩を使用して、ERコーティングされたビーズをツインについてスクリーニングした。図16は、微粒子化タルクの代わりにシロイド244FPを有する制御放出ポリマー層における異なるEudragit RS:Eudragit RLの比による、15%重量増加での制御放出ビーズからのナファモスタットの平均放出プロファイルの比較を示す。
【0159】
実施例11:ミニブタにおける持続放出及び即時放出ナファモスタット
持続放出ビーズを使用したナファモスタットを含む薬物製剤を合成した。言い換えると、本実施例3は、実施例1及び2の製剤(本明細書中即時放出と呼ばれる)におけるナファモスタットを、持続放出ビーズにおけるナファモスタットと置き換えることの影響について試験した。ナファモスタット製剤の影響を、同様に投与されたKC-8から放出されるオキシコドンの血液濃度により測定した。
【0160】
持続放出製剤は、複数のビーズを含むカプセル剤であり、ここで各ビーズは、活性薬剤層でコーティングされた微結晶性セルロースの球状コアを有し、これはその後、制御放出層(すなわち、持続放出層又は放出調節層)でコーティングされた。活性薬剤層は、ナファモスタットとヒプロメロース(hypomellose)(ヒドロキシルプロピルメチルセルロース(HPMC)としても公知)との混合物を含んでいた。制御放出層は、クエン酸トリエチル及びタルクと共に、様々な比のポリマーAとポリマーBを含んでいた。ポリマーAは、100gのポリマー当たり約50mEqの第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)であった。ポリマーAは、Eudragit RLとして購入した。ポリマーBは、100gのポリマー当たり約25mEqの第四級アンモニウム基を含むポリ(エチルアクリレート、メチル-メタクリレート及びクロロトリメチル-アンモニオエチルメタクリレート)。ポリマーBは、Eudragit RSとして購入した。
【0161】
以下の表に示されるとおり、5つの異なるタイプの制御放出ビーズを、異なる比のポリマーAとポリマーBに基づいて合成した。
【0162】
【表12】
【0163】
以下の表に記載されるとおりに、6つの異なる試験を行った。各試験において、KC-8をナファモスタットと共に投与した。試験1~5は、即時放出ナファモスタット又は持続放出ナファモスタットのいずれかを含んでいたが、試験6は、等量の即時放出ナファモスタットと持続放出ナファモスタットの両方を含んでいた。
【0164】
【表13】
【0165】
試験1は、KC-8と、ビーズB、C、又はDのいずれかを投与することを包含していた。ビーズB及びCは、高いオキシコドンの最大濃度に対応していたが、一方、ビーズDは、比較的低いオキシコドンの最大濃度を生じさせたことが見出された。
【0166】
試験2は、ミニブタに、KC-8を、ナファモスタットなし(対照)、又はビーズD中の10mg、50mg若しくは100mgのナファモスタットのいずれかと共に投与することを包含していた。結果は図7に示される。ナファモスタット濃度を0mgから10mg、その後50mgに増加させると、2~4時間のTmaxの遅延をもたらし、最大オキシコドン濃度の10ng/mlから約5ng/mlへの低下を生じさせたことが見出された。100mgナファモスタットビーズDが、6時間までのTmaxの遅延をもたらしたことが見出された。
【0167】
試験3は、ビーズEを投与することを包含し、ビーズEは100:0比のポリマーAとポリマーBを有していた。図8に示されるとおり、ナファモスタット濃度が0mg/kgから1mg/kg~5mg/kgに増加したとき、最大オキシコドン濃度は、1時間のTmaxで約34ng/mlから約20ng/mlに低下した。10mg/kgナファモスタットは、最大オキシコドン濃度に達するまでの時間(Tmax)を2時間まで遅延させた。
【0168】
試験4は、図9に示されるとおり、持続放出ビーズのパートではない即時放出ナファモスタットを投与することを包含していた。即時放出ナファモスタットの量を0mgから50mgに増加させると、最大オキシコドンの2ng/mlから1ng/mlへの低下をもたらした。即時放出ナファモスタットの100mgへのさらなる増加は、最大オキシコドンを約0.2ng/mlにさらに低下させた。
【0169】
試験5は、ビーズF中のナファモスタットを投与することを包含していた。図10に示されるとおり、最大オキシコドンは、2時間のTmaxで、ナファモスタットなしの場合は2ng/mlであったが、ビーズFにおいて100mgのナファモスタットを用いた場合はわずか約1.5ng/mlであった。ナファモスタット用量を100mgに増加させると、6時間のオキシコドン血液レベルのTmaxをもたらした。
【0170】
試験6は、等量の即時放出ナファモスタットとビーズFナファモスタットの両方を投与することを包含していた。特に、ミニブタは、ナファモスタットなし(対照)、25mgの即時放出及び25mgのビーズFナファモスタット、又は100mgの即時放出及び100mgのビーズFナファモスタットのいずれかを受けた。図11は、オキシコドンの濃度だけでなく、KC-8のオキシコドン誘導体の濃度も示す。即時放出ナファモスタットと併せてビーズFナファモスタットの量を増加させると、最大オキシコドン濃度は約2ng/mlから約0.3ng/ml又は0.1ng/mlに低下した。同時に、KC-8濃度は、即時放出ナファモスタットと併せてビーズFナファモスタットが増加するにつれて増加した。
【0171】
実施例12:即時放出製剤及び持続放出製剤中のKC-8及びナファモスタットを用いたヒト試験
即時放出ナファモスタット及び持続放出ナファモスタットがKC-8代謝に与える影響を調査し得るヒト試験を行うことができる。
【0172】
上記の試験は、例えば対象の血液中のオキシコドン濃度に関する観察に応じて、持続放出ナファモスタットビーズ中のナファモスタットの用量(dosage)及び/又はポリマーAとポリマーBの比を修正することを含み得る。言い換えると、ポリマーA及びBを含む制御放出層は、対象の血液中のオキシコドンの最適濃度のために放出動態を改変し得るように修正することができる。一部の例において、製剤は、例えば、一部の場合、それを医薬効果のために迅速に利用し得るように、制御放出ビーズ中にはないナファモスタットも含み得る。
【0173】
健常な対象において、即時放出溶液製剤及び/又は持続放出(ER)カプセル製剤としてKC-8溶液が共投与される場合の、オキシコドン、KC-8、PFR06082、及びナファモスタットの薬物動態を評価するための単回用量2パート試験。
【0174】
パート1の主な目的は、KC-8溶液を単独で、及び即時放出(IR)溶液及び/又は持続放出(ER)カプセルのプロトタイプとしてナファモスタットと共に投与する場合の、オキシコドンの薬物動態(PK)を評価することであり得る。パート2の主な目的は、ナファモスタットIR溶液及び/又はERプロトタイプカプセル剤(1つ又は複数)の選択された組み合わせが、KC-8溶液と選択されたナファモスタットIR/ER製剤の複数回用量レベルでオキシコドンのPKに与える影響を決定することであり得る。
【0175】
パート1の方法論
本試験のパート1は、6期間、無作為化、オープンラベル設計を有する。パート1の6期間全てに参加する意思を有するほぼ等しい人数の男性及び女性による、24人の健常な対象を登録することが予定される。24人の登録される対象は、可能な限りほぼ等しい人数の男性及び女性を有する偶数の男性と偶数の女性(例えば、12人の男性と12人の女性;14人の男性と10人の女性、等)からなる。次いで、対象は、1群当たり約8人の評価可能な対象を得るために、それぞれ12人の対象の2つの群(群1又は群2)の間で無作為化される。
【0176】
いずれの群でも、対象は、KC-8溶液を、単独で(基準;第1期)及びナファモスタットと同時に(第2期~第6期にIR溶液及び/又はERプロトタイプカプセル[1つ又は複数]として)受ける。さらに、全ての期間において各レジメンの前後に、対象は、オピオイド関連副作用を低減するために、オピエートアンタゴニストであるナルトレキソンのブロッキング用量を受ける。
【0177】
両群は並行して投与されることが予定される(スケジューリングの目的のため、投与日はある程度の柔軟性を有する);しかし、第3期(レジメン1C及び2C)の後で、上記の群を統合する選択肢がある。将来の試験で進展する可能性が高いレジメンにおけるPKパラメータの精度を高めるため、後続の期間中に群を統合することができる(全対象が任意の投与期間中同じレジメンを受ける)。この選択肢が進展する場合、新たに出現したPK及び安全性データに基づく後続のレジメンのため、統合された群を再び群1と群2に分けるという選択肢もある。
【0178】
以下を決定するため、投与後48時間までのオキシコドン、KC-8及びPFR06082についての安全性及びPKデータの中間レビューは、第2期、第3期、第4期及び第5期の後に行われる:
後続の期間に投与するためのナファモスタット製剤(1つ又は複数)(IR溶液の用量、及び/又は、該当する場合は、ERプロトタイプカプセル[1つ又は複数]の放出速度及び用量);
第3期後のみ:群を統合するか又は分割するか;
第4期後のみ(第5期が分割される場合は、各群について):第5期の食事の状態(摂食対絶食);
第5期後のみ(第6期が分割される場合は、各群について):第6期のKC-8溶液とナファモスタット製剤の両方についての用量レベル
【0179】
持続放出プロトタイプカプセル製剤は、放出速度(90%が2~16時間で放出するEudragit RS:RLコーティング比により決定される)及び用量(1~100mg)についての製剤変数(formulation variables)を記述する2次元設計空間(2-dimensional design space)から選択される。
【0180】
第5期で摂食状態(fed state)において投与されるナファモスタット製剤(IR及び/又はER)は、本試験のパート2において投与するために選択される製剤であることに留意すること。
【0181】
次頁に示されるレジメン(IMP KC-8及びナファモスタット、並びにNIMPナルトレキソン)は、各群に連続的な様式で投与される。
【0182】
パート2の方法論
本試験のパート2は、5期間、非無作為化、オープンラベル設計を有する。最低8人の評価可能な対象を得るため、12人の健常な対象が本試験のパート2に登録されることが予定される。
【0183】
対象は、パート1由来のナファモスタットIR溶液及び/又はERプロトタイプカプセル剤(1つ又は複数)の選択された組み合わせと同時にKC-8溶液を受ける(1投与単位として定義される;すなわち、1投与単位 = KC-8溶液[25mg] + 選択されたナファモスタット製剤[IR及び/又はERプロトタイプカプセル剤{ZZ mg}])。各期間中、対象は増加数の投与単位を受ける。このため、過剰投与をシミュレートするため、固定比のKC-8:ナファモスタットが増加用量レベルで投与される。これは過剰投与のシミュレーションであるが;しかし、第1相単回漸増投与試験において送達された場合と同様に、KC-8の総用量は200mg(80mgオキシコドンと当量)を超えず、したがって安全且つ忍容性が良好なレベルの範囲内のままであることに留意されたい。さらに、パート2について選択された固定比は、パート1より高いKC-8/ナファモスタット用量比である。パート2において、KC-8対ナファモスタットの10:1用量比が使用されることが予想される。パート1は、より低い用量、1:1~2.5:1の比を使用することが予定される;しかし、これらの比は、パート1に由来する新たに出現するPKデータに基づいて修正することができる。
【0184】
さらに、各レジメンの前後に、対象は、オピオイド関連副作用を低減するためにオピエートアンタゴニストであるナルトレキソンの投与を受ける。
【0185】
第1期(レジメンG)におけるナファモスタットIR溶液及び/又はERプロトタイプカプセル剤(1つ又は複数)の組み合わせ及び投与すべき用量は、パート1の投与後48時間までの安全性及びPKデータの中間レビューに従って決定される。次に予定される投与単位数まで漸増を進めることが可能か否か、及び投与すべき投与単位数を決定するために、投与後48時間までの安全性及びPKデータの中間レビューは、第1期、第2期、第3期及び第4期の後にも行われる。さらに、投与される最高用量レベルになると予測されるレジメンK(第5期)においてナファモスタットPKを評価することが予定される。しかし、このレジメンがパート2における最高用量レベルを投与しない場合、前のレジメンから得られたPKバックアップサンプルを使用して、ナファモスタットPKについて前のレジメンを分析するという選択肢がある。この決定は、第4期の後の中間レビューの間に行われる。
【0186】
臨床試験レポートにおいて報告するデータの前に中間データを検討するため、第5期の後に最終レビューがある。
【0187】
パート2において投与されるKC-8溶液の最高用量レベルは200mg(8×25mg)であり、これは80mgオキシコドンと当量である。KC-8を用いた前のSAD試験において、200mg(80mgオキシコドン)までの用量は、安全及び忍容性が良好であることが示されている。投与され得るナファモスタットの最高用量レベルは200mgであり、これは、200mg健常ボランティアSADデータから、安全及び忍容性が良好であることが示されている。
【0188】
前述の発明は、理解を明確にする目的のため、例示及び実施例により幾分詳細に記載されているが、この発明の教示を踏まえると、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなくそれに特定の変更及び改変をなし得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0189】
したがって、前述の記載は本発明の原理を例示するにすぎない。当業者であれば、本明細書中に明確に記載又は示されてはいないが、本発明の原理を具体化し且つその精神及び範囲に包含される様々なアレンジメントを考案し得ることが理解されるであろう。さらに、本明細書中に記載される全ての実施例及び条件付き言語(conditional language)は、本発明の原理及び当該技術を促進するために本発明者が貢献した概念についての読者の理解を補助することを意図し、具体的に記載される実施例及び条件への限定を伴わないと解されるべきである。さらに、本明細書中で列挙する本発明の原理、態様、及び実施形態並びにそれらの具体例についての本明細書中の全ての記載は、その構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することが意図される。さらに、このような均等物は、現在公知の均等物と、将来開発される均等物、すなわち、構造に関わらず同じ機能を発揮する任意の開発されるエレメントの両方を包含することが意図される。さらに、本明細書中に開示されるいずれも、このような開示が特許請求の範囲に明確に記載されているか否かに関わらず、公に捧げられることは意図されない。
【0190】
したがって、本発明の範囲は、本明細書中に示され且つ記載される例示的な実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲により具体化される。特許請求の範囲において、米国特許法第112条(f)(35 U.S.C. §112(f))又は米国特許法第112条(6)(35 U.S.C. §112(6))は、「・・・するための手段」という厳密な表現又は「・・・するためのステップ」という厳密な表現がこのような特許請求の範囲中の限定の冒頭に記載されている場合にのみ、特許請求の範囲中の限定に対して援用されると明確に規定されている。このような厳密な表現が特許請求の範囲中の限定において使用されない場合、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は援用されない。
図1
図2
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図5
図6A
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【国際調査報告】