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特表2024-509890プロテアーゼ切断可能なプロドラッグ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】プロテアーゼ切断可能なプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240227BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20240227BHJP
   C07K 16/32 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C07K14/725
C12N15/115 Z
C07K16/32
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/11 Z
A61K47/68
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554811
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 IB2022052118
(87)【国際公開番号】W WO2022190008
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,785
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/159,043
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】515146556
【氏名又は名称】モレキュラー パートナーズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ボスハート アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グリム セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アールスコグ ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】シュレーレス ベルント
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本出願は、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによって結合剤に接続された薬物分子を含むプロドラッグであって、薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害するプロドラッグ、及び阻害性結合剤自体に関する。本明細書に記載される組換えタンパク質をコードする核酸、及び当該組換えタンパク質を作製する方法、並びに治療の方法及び組換えタンパク質の医学的使用も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)結合部分と、(ii)薬物分子と、を含む、組換えタンパク質であって、
前記結合部分が、前記薬物分子に可逆的に結合し、
前記結合部分が、結合されると、前記薬物分子の生物学的活性を阻害し、前記結合部分及び前記薬物分子が、ペプチドリンカーによって接続され、前記ペプチドリンカーが、プロテアーゼ切断部位を含む、組換えタンパク質。
【請求項2】
前記結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、請求項1に記載の組換えタンパク質。
【請求項3】
前記結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、請求項1又は2に記載の組換えタンパク質。
【請求項4】
前記結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、請求項1又は2に記載の組換えタンパク質。
【請求項5】
前記結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項6】
前記結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項7】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、前記薬物分子の生物学的標的への結合である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項8】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、酵素活性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項9】
前記組換えタンパク質の哺乳動物への投与時の前記プロテアーゼ切断部位における前記ペプチドリンカーの切断が、前記結合部分からの前記薬物分子の放出を可能にする、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項10】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項9に記載の組換えタンパク質。
【請求項11】
前記ペプチドリンカーの前記切断が、腫瘍組織において生じる、請求項9又は10に記載の組換えタンパク質。
【請求項12】
前記プロテアーゼ切断部位が、腫瘍組織に存在するプロテアーゼによって認識される部位である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項13】
前記結合部分が、約1μM未満、例えば、約1μM未満、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満、又は約50nM未満の解離定数(KD)で前記薬物分子を結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項14】
前記結合部分が、約1μM~約10pM、例えば、約1μM~約10pM、約1μM~約20pM、約1μM~約50pM、又は約1μM~約100pMの解離定数(KD)で前記薬物分子を結合する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項15】
前記解離定数(KD)が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で測定される、請求項13又は14に記載の組換えタンパク質。
【請求項16】
前記結合部分が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項17】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける9個までのアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、請求項16に記載の組換えタンパク質。
【請求項18】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~12及び(2)配列番号1~12のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項16又は17に記載の組換えタンパク質。
【請求項19】
前記薬物分子が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項20】
前記薬物分子が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項21】
前記薬物分子が、非免疫グロブリン分子を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項22】
前記薬物分子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項23】
前記薬物分子が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項24】
前記薬物分子が、CD3に対して結合特異性を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項25】
前記薬物分子が、腫瘍関連抗原(TAA)に対して結合特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項26】
前記薬物分子が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項27】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、CD3に対して結合特異性を有する、請求項26に記載の組換えタンパク質。
【請求項28】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26又は27に記載の組換えタンパク質。
【請求項29】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、約100nM未満の解離定数(KD)でCD3に結合する、請求項27又は28に記載の組換えタンパク質。
【請求項30】
前記薬物分子が、抗体を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項31】
前記抗体が、CD3に対して結合特異性を有する、請求項30に記載の組換えタンパク質。
【請求項32】
前記薬物分子が、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である、請求項1~31のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項33】
前記TCEが、CD3に結合する結合ドメインを含み、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメインを更に含む、請求項32に記載の組換えタンパク質。
【請求項34】
前記結合部分の前記TCE薬物分子への結合が、前記TCE薬物分子のT細胞への結合及び/又はT細胞の活性化を阻害する、請求項32又は33に記載の組換えタンパク質。
【請求項35】
前記TCEが、二重特異性又は多重特異性抗体である、請求項32~34のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項36】
前記TCEが、二重特異性又は多重特異性アンキリン反復タンパク質である、請求項32~34のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項37】
CD3に結合する前記結合ドメインが、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する前記結合ドメインのC末端側に位置する、請求項33~36のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項38】
前記結合部分が、前記薬物分子の抗イディオタイプ結合剤である、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項39】
前記結合部分が、CD3に対して結合特異性を有する前記設計されたアンキリン反復ドメインの抗イディオタイプ結合剤である、請求項38に記載の組換えタンパク質。
【請求項40】
前記結合部分が、CD3に対して結合特異性を有する前記抗体の抗イディオタイプ結合剤である、請求項38に記載の組換えタンパク質。
【請求項41】
前記結合部分、前記薬物分子、及び前記ペプチドリンカーが、N末端からC末端に向かって、以下の形式:薬物分子-ペプチドリンカー-結合部分で配置されている、請求項1~40のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項42】
前記結合部分、CD3に結合する前記結合ドメイン、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する前記結合ドメイン、及び前記ペプチドリンカーが、N末端からC末端に向かって、以下の形式:腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメイン-CD3に結合する結合ドメイン-ペプチドリンカー-結合部分で配置されている、請求項1~41のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項43】
哺乳動物における前記組換えタンパク質の血清半減期を延長する薬剤を更に含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項44】
哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、血清アルブミンに対して結合特異性を有する、請求項43に記載の組換えタンパク質。
【請求項45】
哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、血清アルブミンに対して結合特異性を有する設計されたアンキリン反復ドメインを含む、請求項44に記載の組換えタンパク質。
【請求項46】
血清アルブミンに対して結合特異性を有する前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号65~67及び(2)配列番号65~67のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項45に記載の組換えタンパク質。
【請求項47】
哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、前記ペプチドリンカーの、前記結合部分と同じ側に位置する、請求項43~46のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項48】
前記結合部分及び哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、両方とも前記ペプチドリンカーのC末端側に位置する、請求項47に記載の組換えタンパク質。
【請求項49】
哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、前記結合部分のC末端側に位置する、請求項43~47のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項50】
前記結合部分、CD3に結合する前記結合ドメイン、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する前記結合ドメイン、前記ペプチドリンカー、及び哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する前記薬剤が、N末端からC末端に向かって、以下の形式:腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメイン-CD3に結合する結合ドメイン-ペプチドリンカー-結合部分-哺乳動物における前記組換えタンパク質の前記血清半減期を延長する薬剤で配置されている、請求項43~49のいずれか一項に記載の組換えタンパク質。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質をコードする、核酸。
【請求項52】
請求項51に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項53】
前記組換えタンパク質が発現される条件下で、請求項52に記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質を作製する方法。
【請求項54】
前記宿主細胞が、原核宿主細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記宿主細胞が、真核宿主細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質又は請求項51に記載の核酸を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、医薬組成物。
【請求項57】
療法に使用するための、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、請求項51に記載の核酸、又は請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
増殖性疾患の治療において使用するためのものであり、前記増殖性疾患が、がんである、請求項57に記載の使用するための組換えタンパク質、核酸、又は医薬組成物。
【請求項59】
治療の方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、請求項51に記載の核酸、又は請求項56に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、治療の方法。
【請求項60】
前記方法が、増殖性疾患を治療する方法であり、任意選択で、前記増殖性疾患が、がんである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
T細胞活性化を必要とする対象におけるT細胞活性化の方法であって、請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、請求項51に記載の核酸、又は請求項56に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項62】
請求項1~50のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、請求項51に記載の核酸、又は請求項56に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、インビボで活性薬物分子の放出を制御する方法。
【請求項63】
前記対象が、ヒトである、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
薬物分子の生物学的活性を制御する方法であって、請求項1~6、13~18、及び38~40のいずれか一項に定義された結合部分を、プロテアーゼ切断部位を含むペプチドリンカーを用いて、請求項19~37のいずれか一項に定義された薬物分子と接続して、組換えタンパク質を形成することと、前記組換えタンパク質を、それを必要とする患者に投与することと、を含み、前記プロテアーゼ切断部位が、腫瘍組織に存在するプロテアーゼによって認識される、方法。
【請求項65】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、前記薬物分子の生物学的標的への結合である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、酵素活性である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
薬物分子に対して結合特異性を有する結合部分であって、前記結合部分が、ペプチドリンカーによって前記薬物分子に接続されると、前記薬物分子の生物学的活性を阻害する、結合部分。
【請求項68】
前記結合部分の前記薬物分子への結合が、前記薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害する複合体を形成する、請求項67に記載の結合部分。
【請求項69】
前記結合部分が、前記薬物分子の抗イディオタイプ結合剤である、請求項67又は68に記載の結合部分。
【請求項70】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、前記薬物分子の生物学的標的への結合である、請求項67又は69に記載の結合部分。
【請求項71】
前記薬物分子の前記生物学的活性が、酵素活性である、請求項67~69のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項72】
約1μM未満、例えば、約1μM未満、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満、又は約50nM未満の、前記薬物分子に対する結合親和性(KD)を有する、請求項67~71のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項73】
前記結合部分が、約1μM~約10pM、例えば、約1μM~約10pM、約1μM~約20pM、約1μM~約50pM、又は約1μM~約100pMの解離定数(KD)で前記薬物分子を結合する、請求項67~72のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項74】
前記解離定数(KD)が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で測定される、請求項72又は73に記載の結合部分。
【請求項75】
前記結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、請求項67~74のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項76】
前記結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、請求項67~75のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項77】
前記結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、請求項67~76のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項78】
前記結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、請求項67~77のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項79】
前記結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、請求項67~78のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項80】
前記結合部分が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、請求項67~79のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項81】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける9個までのアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、請求項80に記載の結合部分。
【請求項82】
前記設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~12及び(2)配列番号1~12のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項80又は81に記載の結合部分。
【請求項83】
請求項67~82のいずれか一項に記載の結合部分をコードする、核酸。
【請求項84】
請求項80~82のいずれか一項に記載の設計されたアンキリン反復ドメインをコードする、核酸。
【請求項85】
請求項83又は84に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項86】
前記結合部分が発現される条件下で、請求項85に記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項67~82のいずれか一項に記載の結合部分を作製する方法。
【請求項87】
前記宿主細胞が、原核宿主細胞である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記宿主細胞が、真核宿主細胞である、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
請求項67~82のいずれか一項に記載の結合部分、又は請求項83若しくは84に記載の核酸を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、医薬組成物。
【請求項90】
療法に使用するための、請求項67~82のいずれか一項に記載の結合部分、請求項83若しくは84に記載の核酸、又は請求項89に記載の医薬組成物。
【請求項91】
治療の方法であって、それを必要とする対象に、請求項67~82のいずれか一項に記載の結合部分、請求項83若しくは84に記載の核酸、又は請求項89に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、治療の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月9日に出願された米国特許出願第63/158,785号及び2021年03月10日に出願された米国特許出願第63/159,043号に対して優先権の利益を主張するものである。これら特許出願の開示は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによって結合剤に接続された薬物分子を含むプロドラッグであって、薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害するプロドラッグ、及び阻害性結合剤自体に関する。本明細書に記載される組換えタンパク質をコードする核酸、及び当該組換えタンパク質を作製する方法、並びに治療の方法及び組換えタンパク質の医学的使用も記載される。
【背景技術】
【0003】
薬物候補は、ある特定の有効性基準を満たさなければならないが、それらはまた、許容される安全性プロファイルを呈さなければならない。多くの薬物分子は、いくつかの有害なオフターゲット及び/又はオンターゲット副作用を有し、いくつかの薬物分子はまた、薬物分子の意図される標的における過剰な有害な薬理作用により、有害なオンターゲット作用を引き起こし得る。ある特定の薬物では、有害作用を回避することができないので、有害作用を軽減する必要がある。これにはいくつかの選択肢がある。例えば、非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug、NSAID)は、胃の内膜を損傷し得るため、胃を保護する薬剤、例えば、プロトンポンプ阻害剤オメプラゾールと共投与されることが多い。他の薬物分子については、薬物が複数回用量で、又はより長い期間にわたって連続的に患者に投与されるような特定の投与レジメンを使用して、有害作用又はそのリスクを軽減することができる。これの例には、薬物を一日に複数回服用すること、又は薬物の静脈内(intravenous、IV)注入が含まれ得る。
【0004】
分割投与及び静脈内薬物注入は、認識され受け入れられている投薬の方法であるが、欠点がないわけではない。患者にとって面倒な投与レジメン(例えば、比較的短い期間にわたって複数回の投薬を必要とする投与レジメン)は、患者の服薬遵守不良に結びつき、その結果として治療結果がより悪くなる。静脈内注入法は、患者の服薬遵守不良に悩まされる可能性が低いが、患者は医療の下にいる必要がある。これは、患者にとって混乱を起こさせるものであり、医療制度に追加の負担をもたらす。結果として、有害な薬物作用を軽減する改善された方法が当該技術分野において必要とされている。
【0005】
典型的に副作用を伴う薬物の1つのクラスは、抗がん剤である。T細胞エンゲージャー薬(T-cell engager drug、TCE)は、標的細胞上の腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)及びT細胞上のCD3受容体に同時に結合し、それによって人工免疫シナプスを形成することによって、腫瘍細胞に細胞傷害性T細胞応答を指向させる。TCEは、α-CD19×α-CD3二重特異性抗体であるブリナツモマブによって例示されるように、非常に強力な抗腫瘍薬であることが示されている。しかしながら、血液学的腫瘍及び固形腫瘍のためのTCEの開発は、いくつかの要因によって妨げられてきた。TCEは、その抗腫瘍活性に加えて、特に初回用量投与後に、全身性内皮活性化及び大量のリンパ球再分布、並びに神経毒性と関連する(Velasquez,Blood,2018,131(1),30-38)。TCEはまた、T細胞のオンターゲット/オフ腫瘍動員、並びにサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)及び高サイトカイン血症(「サイトカインストーム」としても知られる)によって誘発される重度の毒性に関連する。
【0006】
CRS又は高サイトカイン血症は、典型的には、薬物の初回投与後に急速に起こり、体内でのサイトカインの制御されない過剰な放出を特徴とする。サイトカイン放出は正常な免疫機能の重要な部分であるが、血中へのあまりに多くのサイトカインのあまりに急速な放出は、高熱、炎症、重度の倦怠感、吐気などの症状、及び時には更に多臓器不全及び死を引き起こし得る。B細胞慢性リンパ球性白血病及びリウマチ性関節炎の治療を目的としたTheralizumab(セラリズマブ)薬物の臨床治験は、参加者が重度の高サイトカイン血症を発症した後に断念する必要があった。症状の発症は、投薬の1時間以内に生じ、治験の参加者全員が緊急の入院治療を必要とした。CRSはまた、免疫療法によって影響を受けた免疫細胞から血液へのサイトカインの大量かつ急速な放出によって引き起こされる。CRSの症状としては、発熱、悪心、頭痛、発疹、動悸、低血圧、及び呼吸困難が挙げられる。場合により、CRSは重篤であるか、又は生命を脅かすことがある。
【0007】
オンターゲット/オフ腫瘍毒性による免疫療法の重篤な有害作用は、腫瘍及び健常組織の両方上で発現される標的抗原を有する患者において生じる。このような発現パターンは、例えば上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)ファミリーのある特定のメンバーなど、標的がん療法に使用される多くの標的抗原に典型的である。このような抗原の一例はHer2であり、これは腫瘍において40~100倍過剰発現され得るので、がん療法の魅力的な標的である。Her2は、長い間、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))などのモノクローナル抗体を使用する治療の標的とされてきた。Her2はまた、免疫療法の標的にもなっている。トラスツズマブ配列に基づくHer2 CAR-T細胞療法は、大腸がん患者を治療するために使用されていたが、残念なことに、患者の心肺系のオフ腫瘍標的化が致死毒性を引き起こした(Morgan et al.,Mol Ther.,2010;18(4):843-851)。細胞注入後の血清試料は、サイトカインストームと一致する様々なサイトカインの顕著な増加を示し、このサイトカインストームは、投与された細胞による肺上皮細胞上の低レベルのHer2の認識によって引き起こされた可能性が高い。この有害作用は、トラスツズマブの臨床研究に基づいて、又は前臨床動物研究に基づいて予見されなかった。
【0008】
これらの毒性は、臨床治験設計及び用量漸増戦略に影響を与えることが多く、特に高い疾患負担を有する患者において、重症度により用量制限があることが証明されている。前投薬及び/又は積極的な治療介入も必要とされる場合があり、最終的に複雑な臨床治験設計につながる。T細胞エンゲージャー薬の投与に関連するCRSの臨床管理のために、いくつかの戦略が考案されている。これらには、段階的投薬(段階的用量漸増)、ステロイド(特にデキサメタゾン)による前治療、又はトシリズマブ(抗IL6レセプター抗体)による治療が含まれる(例えば、Aldoss et al.,Current Oncology Reports,2019,21:4を参照されたい)。ステロイドによる前治療は、治療の開始を遅らせ、これは侵攻的な疾患状態には推奨されず、ステロイドの使用は、高いボディマス指数(body mass index、BMI)及び/又は血圧を有する患者において禁忌であることがある。CRSを回避するためのトシリズマブによる治療は、2017年にFDAによって承認された。しかしながら、この薬物の免疫抑制作用により、患者は他の感染性疾患に罹患しやすくなることがある。
【0009】
総合すると、がんを含む疾患の治療に使用される薬物の有害作用又はそのリスクを回避、低減、又は軽減するための新規の又は改善されたアプローチが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本出願は、薬物分子の投与後の有害作用又はそのリスクを回避又は軽減するための新規アプローチを提供しようとするものである。本発明は、薬物分子に可逆的に結合し、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによって薬物分子に連結される結合部分によって、薬物分子の生物学的活性を阻害する方法を提供する。結合部分によって阻害される薬物分子の生物学的活性は、例えば、生物学的標的への薬物分子の結合であり得る。プロテアーゼ(例えば、腫瘍組織において発現されるプロテアーゼ)によるペプチドリンカーの切断の際に、結合部分は、薬物分子から解離し、それによって、タンパク質分解切断の部位において活性薬物分子を体内に放出する。この方法は、投与直後の体内の活性薬物分子濃度のピークを回避し、活性薬物分子の放出を適切なプロテアーゼの発現部位に局在化させる。このアプローチの有益な適用例は、TCE及びプロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによってそれに接続された阻害性結合部分を含むプロドラッグTCEタンパク質の投与後のオンターゲット/オフ腫瘍毒性及びCRSのリスクの低減である。
【0011】
本出願は、(i)結合部分と、(ii)薬物分子と、を含む、新規プロドラッグタンパク質であって、当該結合部分が、当該薬物分子に可逆的に結合し、当該結合部分が、結合されると、当該薬物分子の生物学的活性を阻害し、当該結合部分及び当該薬物分子が、ペプチドリンカーによって接続され、当該ペプチドリンカーが、1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含む、新規プロドラッグタンパク質を記載する。優先的に、ペプチドリンカーを切断することができるプロテアーゼは、腫瘍組織などの薬物分子の標的組織において高レベルで発現する。種々の薬物分子と組み合わせてこのようなプロドラッグアプローチにおいて使用され得る特異的結合部分が、本出願において更に記載される。本発明の結合部分は、薬物分子の抗イディオタイプ結合剤であり得る。いくつかの実施形態では、本発明のプロドラッグタンパク質は、血清半減期延長部分を更に含む。優先的には、そのような半減期延長部分は、ペプチドリンカーのタンパク質分解性切断の際に、半減期延長部分が結合部分と一緒に薬物分子から切断されるように、阻害性結合部分に共有結合している。このようにして、プロドラッグタンパク質は延長された血清半減期を有するが、ペプチドリンカーのタンパク質分解性切断の際に放出される活性薬物分子は延長された血清半減期を有しない。したがって、薬物分子の生物学的活性は、持続時間が比較的短く、それによって、腫瘍組織から体内の他の部位への活性薬物分子の分布時に起こり得るオンターゲット/オフ腫瘍毒性の回避に更に寄与する。
【0012】
このプロドラッグアプローチの特定の適用において、本発明は、プロテアーゼ切断可能なリンカーを介して抗イディオタイプ抗CD3結合剤結合部分(以下、結合剤と呼ぶ)に連結されたTAA結合剤及びCD3結合剤を含むDARPin(登録商標)TCEプロドラッグ(CD3-PDD)を提供する(図1を参照されたい)。このα-TAA×α-CD3×結合剤プロドラッグは、その非切断状態ではT細胞を結合して動員することができないが、腫瘍関連プロテアーゼによるリンカーの切断時に腫瘍微小環境(tumor microenvironment、TME)において活性化されるように設計されている。
【0013】
そのようなプロテアーゼ活性化可能なプロドラッグの根底にある考えは、腫瘍微小環境におけるプロテアーゼの誤調節を利用することであり、すなわち、循環及び健常組織においては不活性であるが、腫瘍関連プロテアーゼによるプロテアーゼ感受性リンカーの切断によってTMEに入ると活性化されるプロドラッグ分子を構築することによるものである(図1を参照されたい)。
【0014】
プロドラッグの遮断概念は、「強制近接」の現象、すなわち、CD3結合剤の近傍における結合剤の非常に高い濃度に依存する。これは、リンカーによって課される距離制約のためであり、結合剤がCD3結合剤の周りのある特定の体積のみにアクセスすることを可能にする。腫瘍関連プロテアーゼによってリンカーが切断されると、強制近接がなくなり、結合剤は自由に拡散することができ、結合剤とCD3結合剤との間のオフレートによってのみ制限される。
【0015】
1つの実施形態では、半減期延長部分(例えば、HSA結合剤)は、TCEプロドラッグ分子の遮断部分(すなわち、結合剤)に結合される。これは、別の安全層を提供する:切断時に、T細胞エンゲージャーは活性にされるが、同時にその半減期延長部分を失う。したがって、TMEから循環中に漏出して戻る活性TCEは、サイズが小さく、半減期が短いために、系から迅速に除去される。
【0016】
要約すると、条件付きで活性化可能なTCEプロドラッグであって、対応する構成的に活性な(すなわち、遮断されていない)TCEと同様の有効性を示すが、毒性は示さない、TCEプロドラッグが本明細書に記載される。記載されたプロドラッグアプローチは、将来のプロドラッグTCE治療剤の開発に有望であり、腫瘍関連抗原(TAA)がいくつかの非標的組織(すなわち、健常組織)においても発現される場合でさえ、それらを非常に強力なTCEの標的として利用することを可能にする。
【0017】
まとめると、本発明は、結合した場合に薬物分子の生物学的活性を阻害する結合部分にプロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによって接続された薬物分子を含む、条件付きで活性化可能なプロドラッグを提供する。更に、本発明は、様々なプロドラッグにおいて使用することができる阻害性結合部分それ自体を提供する。本明細書に記載の組換えタンパク質をコードする核酸、及び宿主細胞を使用して当該組換えタンパク質を作製する方法、並びに組換えタンパク質を使用する医学的使用及び治療の方法も提供される。
【0018】
本明細書で提供される開示に基づいて、当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の実施形態(E)によって包含されることが意図される。
【0019】
第1の実施形態では、本発明は、(i)結合部分と、(ii)薬物分子と、を含む、組換えタンパク質であって、
当該結合部分が、当該薬物分子に可逆的に結合し、
当該結合部分が、結合されると、当該薬物分子の生物学的活性を阻害し、当該結合部分及び当該薬物分子が、ペプチドリンカーによって接続され、当該ペプチドリンカーが、プロテアーゼ切断部位を含む、組換えタンパク質に関する。
【0020】
第2の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、実施形態1の組換えタンパク質に関する。
【0021】
第3の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、実施形態1又は2の組換えタンパク質に関する。
【0022】
第4の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、実施形態1又は2の組換えタンパク質に関する。
【0023】
第5の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0024】
第6の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(T cell receptor、TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態1~4のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0025】
第7の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、当該薬物分子の生物学的標的への結合である、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0026】
第8の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0027】
第9の実施形態では、本発明は、当該組換えタンパク質の哺乳動物への投与時の当該プロテアーゼ切断部位における当該ペプチドリンカーの切断が、当該結合部分からの当該薬物分子の放出を可能にする、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0028】
第10の実施形態では、本発明は、当該哺乳動物が、ヒトである、実施形態9の組換えタンパク質に関する。
【0029】
第11の実施形態では、本発明は、当該ペプチドリンカーの当該切断が、腫瘍組織において生じる、実施形態9又は10の組換えタンパク質に関する。
【0030】
第12の実施形態では、本発明は、当該プロテアーゼ切断部位が、腫瘍組織に存在するプロテアーゼによって認識される部位である、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0031】
第13の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、約1μM未満、例えば、約1μM未満、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満、又は約50nM未満の解離定数(KD)で当該薬物分子を結合する、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0032】
第14の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、約1μM~約10pM、例えば、約1μM~約10pM、約1μM~約20pM、約1μM~約50pM、又は約1μM~約100pMの解離定数(KD)で当該薬物分子を結合する、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0033】
第15の実施形態では、本発明は、当該解離定数(KD)が、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)中で測定される、実施形態13又は14の組換えタンパク質に関する。
【0034】
第16の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0035】
第17の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける9個までのアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、実施形態16の組換えタンパク質に関する。
【0036】
第18の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~12及び(2)配列番号1~12のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態16又は17の組換えタンパク質に関する。
【0037】
第19の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0038】
第20の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0039】
第21の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、非免疫グロブリン分子を含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0040】
第22の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0041】
第23の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0042】
第24の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、CD3に対して結合特異性を有する、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0043】
第25の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、腫瘍関連抗原(TAA)に対して結合特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0044】
第26の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0045】
第27の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、CD3に対して結合特異性を有する、実施形態26の組換えタンパク質に関する。
【0046】
第28の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態26又は27の組換えタンパク質に関する。
【0047】
第29の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、約100nM未満の解離定数(KD)でCD3に結合する、実施形態27又は28の組換えタンパク質に関する。
【0048】
第30の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、抗体を含む、実施形態1~25のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0049】
第31の実施形態では、本発明は、当該抗体が、CD3に対して結合特異性を有する、実施形態30の組換えタンパク質に関する。
【0050】
第32の実施形態では、本発明は、当該薬物分子が、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0051】
第33の実施形態では、本発明は、当該TCEが、CD3に結合する結合ドメインを含み、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメインを更に含む、実施形態32の組換えタンパク質に関する。
【0052】
第34の実施形態では、本発明は、当該結合部分の当該TCE薬物分子への結合が、当該TCE薬物分子のT細胞への結合及び/又はT細胞の活性化を阻害する、実施形態32又は33の組換えタンパク質に関する。
【0053】
第35の実施形態では、本発明は、当該TCEが、二重特異性又は多重特異性抗体である、実施形態32~34のいずれか1つの組換えタンパク質に関する。
【0054】
第36の実施形態では、本発明は、当該TCEが、二重特異性又は多重特異性アンキリン反復タンパク質である、実施形態32~34のいずれか1つの組換えタンパク質に関する。
【0055】
第37の実施形態では、本発明は、CD3に結合する当該結合ドメインが、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する当該結合ドメインのC末端側に位置する、実施形態33~36のいずれか1つの組換えタンパク質に関する。
【0056】
第38の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、当該薬物分子の抗イディオタイプ結合剤である、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0057】
第39の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、CD3に対して結合特異性を有する当該設計されたアンキリン反復ドメインの抗イディオタイプ結合剤である、実施形態38の組換えタンパク質に関する。
【0058】
第40の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、CD3に対して結合特異性を有する当該抗体の抗イディオタイプ結合剤である、実施形態38の組換えタンパク質に関する。
【0059】
第41の実施形態では、本発明は、当該結合部分、当該薬物分子、及び当該ペプチドリンカーが、N末端からC末端に向かって、以下の形式:薬物分子-ペプチドリンカー-結合部分で配置されている、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0060】
第42の実施形態では、本発明は、当該結合部分、CD3に結合する当該結合ドメイン、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する当該結合ドメイン、及び当該ペプチドリンカーが、N末端からC末端に向かって、以下の形式:腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメイン-CD3に結合する結合ドメイン-ペプチドリンカー-結合部分で配置されている、実施形態1~41のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0061】
第43の実施形態では、本発明は、哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する薬剤を更に含む、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0062】
第44の実施形態では、本発明は、哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、血清アルブミンに対して結合特異性を有する、実施形態43の組換えタンパク質に関する。
【0063】
第45の実施形態では、本発明は、哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、血清アルブミンに対して結合特異性を有する設計されたアンキリン反復ドメインを含む、実施形態44の組換えタンパク質に関する。
【0064】
第46の実施形態では、本発明は、血清アルブミンに対して結合特異性を有する当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号65~67及び(2)配列番号65~67のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態45の組換えタンパク質に関する。更なる実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、約100nM未満の解離定数(KD)でヒト血清アルブミンに結合する、実施形態46の組換えタンパク質に関する。
【0065】
第47の実施形態では、本発明は、哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、当該ペプチドリンカーの、当該結合部分と同じ側に位置する、実施形態43~46のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0066】
第48の実施形態では、本発明は、当該結合部分及び哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、両方とも当該ペプチドリンカーのC末端側に位置する、実施形態47の組換えタンパク質に関する。
【0067】
第49の実施形態では、本発明は、哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、当該結合部分のC末端側に位置する、実施形態43~47のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0068】
第50の実施形態では、本発明は、当該結合部分、CD3に結合する当該結合ドメイン、腫瘍関連抗原(TAA)を結合する当該結合ドメイン、当該ペプチドリンカー、及び哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する当該薬剤が、N末端からC末端に向かって、以下の形式:腫瘍関連抗原(TAA)を結合する結合ドメイン-CD3に結合する結合ドメイン-ペプチドリンカー-結合部分-哺乳動物における組換えタンパク質の血清半減期を延長する薬剤で配置されている、実施形態43~49のうちのいずれかの組換えタンパク質に関する。
【0069】
第51の実施形態では、本発明は、先行実施形態のうちのいずれかの組換えタンパク質をコードする、核酸に関する。
【0070】
第52の実施形態では、本発明は、実施形態51の核酸分子を含む、宿主細胞に関する。
【0071】
第53の実施形態では、本発明は、当該組換えタンパク質が発現される条件下で、実施形態52の宿主細胞を培養することを含む、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質を作製する方法に関する。
【0072】
第54の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、原核宿主細胞である、実施形態53の方法に関する。
【0073】
第55の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、真核宿主細胞である、実施形態53の方法に関する。
【0074】
第56の実施形態では、本発明は、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質又は実施形態51の核酸を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、医薬組成物に関する。
【0075】
第57の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質、実施形態51の核酸、又は実施形態56の医薬組成物に関する。
【0076】
第58の実施形態では、本発明は、増殖性疾患の治療において使用するための、実施形態57による使用のための組換えタンパク質、核酸、又は医薬組成物であって、任意選択で、当該増殖性疾患が、がんである、組換えタンパク質、核酸、又は医薬組成物に関する。
【0077】
第59の実施形態では、本発明は、治療の方法であって、それを必要とする対象に、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質、実施形態51の核酸、又は実施形態56の医薬組成物を投与する工程を含む、治療の方法に関する。
【0078】
第60の実施形態では、本発明は、当該方法が、増殖性疾患を治療する方法であり、任意選択で、当該増殖性疾患が、がんである、実施形態59の方法に関する。
【0079】
第61の実施形態では、本発明は、T細胞活性化を必要とする対象におけるT細胞活性化の方法であって、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質、実施形態51の核酸、又は実施形態56の医薬組成物を当該対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0080】
第62の実施形態では、本発明は、実施形態1~50のいずれか1つの組換えタンパク質、実施形態51の核酸、又は実施形態56の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、インビボで活性薬物分子の放出を制御する方法に関する。
【0081】
第63の実施形態では、本発明は、当該対象が、ヒトである、実施形態59~62のいずれか1つの方法に関する。
【0082】
第64の実施形態では、本発明は、薬物分子の生物学的活性を制御する方法であって、実施形態1~6、13~18及び38~40のうちのいずれか1つに定義された結合部分を、プロテアーゼ切断部位を含むペプチドリンカーを用いて、実施形態19~37のうちのいずれか1つに定義された薬物分子と接続して、組換えタンパク質を形成することと、当該組換えタンパク質を、それを必要とする患者に投与することと、を含み、当該プロテアーゼ切断部位が、腫瘍組織に存在するプロテアーゼによって認識される、方法に関する。
【0083】
第65の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、当該薬物分子の生物学的標的への結合である、実施形態64の方法に関する。
【0084】
第66の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、実施形態64の方法に関する。
【0085】
第67の実施形態では、本発明は、薬物分子に対して結合特異性を有する結合部分であって、当該結合部分が、ペプチドリンカーによって当該薬物分子に接続されると、当該薬物分子の生物学的活性を阻害する、結合部分に関する。
【0086】
第68の実施形態では、本発明は、当該結合部分の当該薬物分子への結合が、当該薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害する複合体を形成する、実施形態67の結合部分に関する。
【0087】
第69の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、当該薬物分子の抗イディオタイプ結合剤である、実施形態67又は68の結合部分に関する。
【0088】
第70の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、当該薬物分子の生物学的標的への結合である、実施形態67又は69の結合部分に関する。
【0089】
第71の実施形態では、本発明は、当該薬物分子の当該生物学的活性が、酵素活性である、実施形態67~69のうちのいずれかの結合部分に関する。
【0090】
第72の実施形態では、本発明は、約1μM未満、例えば、約1μM未満、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満、又は約50nM未満の、当該薬物分子に対する結合親和性(KD)を有する、実施形態67~71のいずれか1つの結合部分に関する。
【0091】
第73の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、約1μM~約10pM、例えば、約1μM~約10pM、約1μM~約20pM、約1μM~約50pM、又は約1μM~約100pMの解離定数(KD)で当該薬物分子を結合する、実施形態67~72のいずれか1つの結合部分に関する。
【0092】
第74の実施形態では、本発明は、当該解離定数(KD)が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で測定される、実施形態72又は73の結合部分に関する。
【0093】
第75の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、抗体、代替足場、又はポリペプチドを含む、実施形態67~74のいずれか1つの結合部分に関する。
【0094】
第76の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、免疫グロブリン分子又はその断片を含む、実施形態67~75のいずれか1つの結合部分に関する。
【0095】
第77の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、非免疫グロブリン分子を含む、実施形態67~76のいずれか1つの結合部分に関する。
【0096】
第78の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、又は可変ドメイン(VHH)に由来する抗原結合ドメインを含む、実施形態67~77のいずれか1つの結合部分に関する。
【0097】
第79の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、アドネクチン、モノボディー、アフィボディー、アフィリン、アフィマー、アプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、反復タンパク質ドメイン、アルマジロ反復ドメイン、アトリマー、アビマー、アンキリン反復ドメイン、フィノマー、ノッチン、クニッツドメイン、又はT細胞受容体(TCR)に由来するか又はそれに関連する抗原結合ドメインを含む、実施形態67~78のいずれか1つの結合部分に関する。
【0098】
第80の実施形態では、本発明は、当該結合部分が、設計されたアンキリン反復ドメインを含む、実施形態67~79のいずれか1つの結合部分に関する。
【0099】
第81の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける9個までのアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、実施形態80の結合部分に関する。
【0100】
第82の実施形態では、本発明は、当該設計されたアンキリン反復ドメインが、(1)配列番号1~12及び(2)配列番号1~12のうちのいずれかとの少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態80又は81の結合部分に関する。
【0101】
第83の実施形態では、本発明は、実施形態67~82のうちのいずれかの結合部分をコードする、核酸に関する。
【0102】
第84の実施形態では、本発明は、実施形態80~82のいずれかの設計されたアンキリン反復ドメインをコードする、核酸に関する。
【0103】
第85の実施形態では、本発明は、実施形態83又は84の核酸分子を含む、宿主細胞に関する。
【0104】
第86の実施形態では、本発明は、当該結合部分が発現される条件下で、実施形態85に記載の宿主細胞を培養することを含む、実施形態67~82のいずれか1つの結合部分を作製する方法に関する。
【0105】
第87の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、原核宿主細胞である、実施形態86の方法に関する。
【0106】
第88の実施形態では、本発明は、当該宿主細胞が、真核宿主細胞である、実施形態86の方法に関する。
【0107】
第89の実施形態では、本発明は、実施形態67~82のいずれか1つの結合部分、又は実施形態83若しくは84の核酸を含み、薬学的に許容される担体又は賦形剤を追加的に含む、医薬組成物に関する。
【0108】
第90の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、実施形態67~82のうちのいずれか1つの結合部分、実施形態83若しくは84の核酸、又は実施形態89の医薬組成物に関する。
【0109】
第91の実施形態では、本発明は、治療の方法であって、それを必要とする対象に、実施形態67~82のいずれか1つの結合部分、実施形態83若しくは84の核酸、又は実施形態89の医薬組成物を投与する工程を含む、治療の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】条件付きで活性化可能なプロドラッグアプローチのグラフ図。プロドラッグは、(1)薬物分子(図示された例では、腫瘍関連抗原(TAA)結合ドメイン(α-TAA)及びCD3結合ドメイン(α-CD3)を含む)と、(2)薬物分子に可逆的に結合することができ、結合されると、薬物分子の生物学的活性を阻害する結合部分(図示された例では、α-CD3のパラトープに対する抗イディオタイプ結合ドメイン(結合剤))と、(3)任意選択で、半減期延長部分(図示された例では、インタクトなプロドラッグ分子の半減期延長のためのHSA結合ドメイン(α-HSA))と、を含む。薬物分子と結合部分との間のリンカー(図示された例では、α-CD3と結合剤との間のリンカー)は、プロテアーゼによって(図示された例では、腫瘍微小環境(TME)に存在する1つ以上のプロテアーゼによって)切断可能なペプチドリンカーを含む。プロドラッグ分子(図示された例では、DARPin(登録商標)TCEプロドラッグ(CD3-PDD))は、薬物分子のその標的への結合(図示された例では、α-CD3を介したT細胞への結合)が共有結合した結合部分(図示された例では、結合剤)によって阻害されるので、循環への注入時には不活性である。薬物分子の標的組織(図示された例では、腫瘍組織)に到達すると、薬物分子と結合部分との間のペプチドリンカー(図示された例では、α-CD3と結合剤との間のペプチドリンカー)は、標的組織中に存在するプロテアーゼ(図示された例では、1つ以上の腫瘍関連プロテアーゼ)によって切断される。ペプチドリンカーが切断されると、結合部分は薬物分子から離れて拡散し、薬物分子はその生物学的活性を発揮することができる(図示した例では、そのα-TAAアームを介して腫瘍細胞上のTAAに結合し、そのα-CD3アームを介してT細胞上のCD3に結合し、T細胞媒介性死滅を引き起こす)。
図2】室温での表面プラズモン共鳴(RU)によって決定した、5つの異なるCD3特異的結合ドメイン(配列番号13~17)(上)に対する4つの異なる結合部分(結合剤#1~結合剤#4;配列番号1~4、実施例1を参照されたい)の親和性(KD(単位:nM))。KD値(単位:nM)を、リガンドとしてビオチン化結合剤及び分析物としてCD3特異的結合ドメインを使用することによって決定した。親結合剤#1(配列番号1)が、5つの異なるCD3結合ドメインに対して最も高い親和性を示し、続いて結合剤#4(配列番号4)、2つの低親和性結合部分結合剤#2(配列番号2)、及び結合剤#3(配列番号3)の順で高い親和性を示した。
図3】1人の代表的なドナー(3人のドナーのうち)からのHCT116腫瘍細胞及び汎T細胞を使用し、2つの異なる抗CD3結合ドメインを有する活性TCE構築物(CD3に対してより低い親和性を有するC7v119(配列番号15)又はCD3に対してより高い親和性を有するC7v122(配列番号16))を、それらの対応する切断不可能なDARPin(登録商標)CD3-プロドラッグ(CD3-PDD NCL)対応物(すなわち、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーの代わりに切断不可能なペプチドリンカーを含む)と比較する標準的な腫瘍細胞死滅アッセイ。A)切断不可能なリンカーを介してCD3結合ドメインに連結された、活性TCE(白四角)、結合剤#3(配列番号3)を含むCD3-PDD NCL(下向きの白三角)、又は結合剤#4(配列番号4)を含むCD3-PDD NCL(上向きの白三角)のいずれかを使用した、CD3結合ドメインC7v119の状況における汎T細胞によるHCT116腫瘍細胞のT細胞媒介性死滅。CD3結合ドメインに対してより高い親和性を有する結合剤#4(図2を参照されたい)は、より低い親和性の結合剤#3より高いマスキング効率を示す。BA)と同じ実験設定であるが、活性TCE(黒四角)又はCD3-PDD NCL(上向き及び下向きの黒三角)を使用するCD3結合ドメインC7v122の状況である。C7v122 CD3結合ドメインの状況における結合剤#3及び#4のマスキング効率は、図2に示される親和性と一致して、A)に示される構築物よりも高い。
図4】細胞当たり約200kの抗原結合部位(antigen binding site、ABS)を有するEGFR高発現A431腫瘍細胞(EGFR+++)及び約20kのABS/細胞を有するEGFR中発現HCT116腫瘍細胞(EGFR+)を使用した、活性TCE(C7v14 CD3結合ドメイン(配列番号13)を含む)及びCD3-PDD NCL(C7v14 CD3結合ドメイン(配列番号13)及び結合剤#3(配列番号3)を含む)を用いた標準的なT細胞活性化アッセイ。活性TCEと比較したCD3-PDD NCLのマスキング効率は、EGFR+++A431腫瘍細胞(黒三角対黒四角)と比較して、EGFR+HCT116細胞(白三角対白四角)についてはるかに高い。
図5】CD3-PDD NCL(三角)、並びにマトリプターゼの添加なし(ゲルの左部分)及びマトリプターゼの添加及び37℃で24時間のインキュベーション後(ゲルの右側)の異なる切断可能なリンカー(CL、それぞれ黒色及び灰色の円)を含む2つのCD3-PDD。切断不可能なリンカーを有するCD3-PDD NCLは、マトリプターゼの添加によって影響を受けないが、2つのCD3-PDD CLは、活性TCE(2つのドメイン;2D)及び結合剤(1つのドメイン;1D)に実質的に完全に切断される。完全長3ドメインCD3-PDD(3D)、2ドメイン活性TCE(2D)及び1ドメイン切断結合剤(1D)のバンドを示す。
図6】切断不可能なCD3-PDD NCL及び切断可能なリンカー配列が異なる3つの異なる切断可能なCD3-PDD CLの切断速度。37℃で、5つの異なる組換え腫瘍関連プロテアーゼ(マトリプターゼ、ウロキナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-7(MMP-7)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)について、2.5μMの基質濃度で切断速度を調べ、切断速度(1/分)として示す。
図7】標的細胞としてのHCT116野生型(wt)又はHCT116 EGFRノックアウト(KO)細胞に対する、活性TCE(四角)、切断不可能なCD3-PDD NCL(三角)及び切断可能なCD3-PDD CL(丸)を使用した標準的な腫瘍細胞死滅(A)及びT細胞活性化(B)アッセイ法。強力な腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化が、HCT116 wt細胞上の活性TCEについて観察され、CD3-PDD CLについては、おそらくHCT116細胞によって分泌されるプロテアーゼによるCD3-PDD CLの切断に起因して、より少ない程度で観察される(図7を参照されたい)。切断不可能なCD3-PDD NCLは、HCT116 wt細胞による腫瘍細胞死滅又はT細胞活性化を示さない。TAA(HCT116 KO細胞)の非存在下では、腫瘍細胞死滅又はT細胞活性化は、構築物のうちのいずれについても観察することができなかった。
図8】汎T細胞及びA431腫瘍細胞を使用したT細胞活性化アッセイ(48時間)の終了時の切断不可能な及び切断可能なCD3-PDD(2つの異なる切断可能なリンカー#2及び#3、図6も参照されたい)試料の免疫沈降-ウエスタンブロット。最も高い濃度の化合物(10nM)を含む試料を免疫沈降させ、抗DARPin抗体による検出を用いてウエスタンブロット上で可視化した。CD3-PDD NCLは、アッセイの終了時に切断を示さなかったが、2つの異なる切断可能な構築物は、異なる程度の切断を呈し、これは、左のグラフに示される2つの構築物のそれぞれのT細胞活性化マスキングウィンドウにほぼ対応する。
図9】汎T細胞及びHCT116腫瘍細胞を使用する標準的な腫瘍細胞死滅アッセイによって決定される、CD3-PDD NCLのC末端に連結されたα-HSA結合ドメインのマスキング効率に対する効果。活性TCE(四角)とCD3-PDD NCL(三角)又は半減期延長(half-life extended、HLE)CD3-PDD NCL(菱形)との間のマスキング効率は、図A)に示す構築物においてほとんど変化していない。この図は、CD3結合ドメインに対して高い親和性を呈す(<1nMのKD)結合剤#1(配列番号1)を含むCD3-PDD構築物を示す。B)低親和性結合剤#3(配列番号3)(>100nMのKD)を含む構築物は、CD3-PDD NCLのC末端へのα-HSA結合ドメインの付加に際してマスキング効率のわずかな低下を示す。
図10】インビボ実験に利用された構築物の腫瘍細胞結合(HCT116細胞)、T細胞結合(Jurkat細胞)、T細胞活性化、及び腫瘍細胞死滅のインビトロデータ(HCT116細胞及び汎T細胞)(図11に示す)。CD3結合ドメインC7v119(配列番号15)(CD3に対する親和性がより低い)又はC7v122(配列番号16)(CD3に対する親和性がより高い)のいずれかを含む、活性TCE(四角)、切断不可能なCD3-PDD NCL(三角)、切断可能なCD3-PDD CL(丸)、及び切断前CD3-PDD CL(半黒丸)についてデータを生成した。全てのCD3-PDD構築物について、結合剤#4(配列番号4)を使用して、CD3結合ドメインC7v119又はC7v122をマスクした。切断可能なCD3-PDD CLについてのT細胞活性化及び腫瘍細胞死滅は、CD3-PDD NCLと比較してマスキングの低減を示し、これは、腫瘍細胞によって分泌されるプロテアーゼによる構築物の切断によるものである(図8を参照されたい)。示される活性化及び死滅データは、3人の個々のヒトドナー由来の汎T細胞を用いて3回実行された代表的な実験である。
図11-1】HCT116腫瘍細胞を生着させたヒト化マウスモデル(ヒト臍帯血由来の造血幹細胞(CD34+)を用いてヒト化)における活性TCE、切断可能なCD3-PDD CL、及び切断不可能なCD3-PDD NCLのインビボ実験。構築物のEGFR結合ドメインはヒト-マウス交差反応性であり、hHSCヒト化マウスにおいて強い毒性を誘発することが示されたので、抗腫瘍有効性及び安全性の読み出しの両方についてモデルを選択した。A)強い毒性所見に起因して毎日(ビヒクル対照、CD3-PDD CL及びCD3-PDD NCL)又は断続的に(活性TCE)処置した各6匹のマウスを用いた4つの群の研究設計。全ての構築物は、半減期が延長されていない。B)4つの群についての平均腫瘍成長曲線であり、各群について、処置を黒い矢印で上部に示す。エラーバーは、強い毒性のために2匹のマウスが12日目に失われ、1匹のマウスが13日目に失われた群#2(活性TCE)を除いて、n=6でのSEM値を示す。C)4つの群の個々の腫瘍成長曲線であり、処置を各グラフの上に黒い矢印で示す。D)最初の注射の前日における各群の平均BWを100%に設定した、実験の過程にわたる体重(BW)変化。各群についての処置、並びに処置の開始及び終了をグラフの上部に示す。ハッシュ記号は、死亡したか、又は臨床スコアが悪いため人道的理由で屠殺しなければならなかった動物を示す。E)各群の平均臨床健康スコア(実験者によって観察された異なる臨床徴候のスコアリング)であり、各群の処置をグラフの上部に矢印で示す。より色の濃いフィールドは、より重度の(すなわち、より悪い)臨床健康スコアを示す。F)腫瘍細胞生着前(投薬前/基礎)及び最初の処置の4時間後のヒトサイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-2、及びIL-6)。サイトカインレベルの上昇は、活性TCEについてのみ観察されたが、CD3-PDD NCL及びCD3-PDD CLは両方とも、サイトカインレベルの有意な上昇を示さなかった。各処置群をビヒクル対照と比較した(***、p<0.001)。
図11-2】HCT116腫瘍細胞を生着させたヒト化マウスモデル(ヒト臍帯血由来の造血幹細胞(CD34+)を用いてヒト化)における活性TCE、切断可能なCD3-PDD CL、及び切断不可能なCD3-PDD NCLのインビボ実験。構築物のEGFR結合ドメインはヒト-マウス交差反応性であり、hHSCヒト化マウスにおいて強い毒性を誘発することが示されたので、抗腫瘍有効性及び安全性の読み出しの両方についてモデルを選択した。A)強い毒性所見に起因して毎日(ビヒクル対照、CD3-PDD CL及びCD3-PDD NCL)又は断続的に(活性TCE)処置した各6匹のマウスを用いた4つの群の研究設計。全ての構築物は、半減期が延長されていない。B)4つの群についての平均腫瘍成長曲線であり、各群について、処置を黒い矢印で上部に示す。エラーバーは、強い毒性のために2匹のマウスが12日目に失われ、1匹のマウスが13日目に失われた群#2(活性TCE)を除いて、n=6でのSEM値を示す。C)4つの群の個々の腫瘍成長曲線であり、処置を各グラフの上に黒い矢印で示す。D)最初の注射の前日における各群の平均BWを100%に設定した、実験の過程にわたる体重(BW)変化。各群についての処置、並びに処置の開始及び終了をグラフの上部に示す。ハッシュ記号は、死亡したか、又は臨床スコアが悪いため人道的理由で屠殺しなければならなかった動物を示す。E)各群の平均臨床健康スコア(実験者によって観察された異なる臨床徴候のスコアリング)であり、各群の処置をグラフの上部に矢印で示す。より色の濃いフィールドは、より重度の(すなわち、より悪い)臨床健康スコアを示す。F)腫瘍細胞生着前(投薬前/基礎)及び最初の処置の4時間後のヒトサイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-2、及びIL-6)。サイトカインレベルの上昇は、活性TCEについてのみ観察されたが、CD3-PDD NCL及びCD3-PDD CLは両方とも、サイトカインレベルの有意な上昇を示さなかった。各処置群をビヒクル対照と比較した(***、p<0.001)。
図11-3】HCT116腫瘍細胞を生着させたヒト化マウスモデル(ヒト臍帯血由来の造血幹細胞(CD34+)を用いてヒト化)における活性TCE、切断可能なCD3-PDD CL、及び切断不可能なCD3-PDD NCLのインビボ実験。構築物のEGFR結合ドメインはヒト-マウス交差反応性であり、hHSCヒト化マウスにおいて強い毒性を誘発することが示されたので、抗腫瘍有効性及び安全性の読み出しの両方についてモデルを選択した。A)強い毒性所見に起因して毎日(ビヒクル対照、CD3-PDD CL及びCD3-PDD NCL)又は断続的に(活性TCE)処置した各6匹のマウスを用いた4つの群の研究設計。全ての構築物は、半減期が延長されていない。B)4つの群についての平均腫瘍成長曲線であり、各群について、処置を黒い矢印で上部に示す。エラーバーは、強い毒性のために2匹のマウスが12日目に失われ、1匹のマウスが13日目に失われた群#2(活性TCE)を除いて、n=6でのSEM値を示す。C)4つの群の個々の腫瘍成長曲線であり、処置を各グラフの上に黒い矢印で示す。D)最初の注射の前日における各群の平均BWを100%に設定した、実験の過程にわたる体重(BW)変化。各群についての処置、並びに処置の開始及び終了をグラフの上部に示す。ハッシュ記号は、死亡したか、又は臨床スコアが悪いため人道的理由で屠殺しなければならなかった動物を示す。E)各群の平均臨床健康スコア(実験者によって観察された異なる臨床徴候のスコアリング)であり、各群の処置をグラフの上部に矢印で示す。より色の濃いフィールドは、より重度の(すなわち、より悪い)臨床健康スコアを示す。F)腫瘍細胞生着前(投薬前/基礎)及び最初の処置の4時間後のヒトサイトカイン(TNF-α、IFN-γ、IL-2、及びIL-6)。サイトカインレベルの上昇は、活性TCEについてのみ観察されたが、CD3-PDD NCL及びCD3-PDD CLは両方とも、サイトカインレベルの有意な上昇を示さなかった。各処置群をビヒクル対照と比較した(***、p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0111】
概要
本出願は、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカーによって結合剤に接続された薬物分子を含むプロドラッグであって、薬物分子の生物学的活性を可逆的に阻害するプロドラッグ、及び阻害性結合剤自体に関する。本明細書に記載される組換えタンパク質をコードする核酸、及び当該組換えタンパク質を作製する方法、並びに治療の方法及び組換えタンパク質の医学的使用も記載される。
【0112】
本発明のプロテアーゼ切断可能なプロドラッグは、プロテアーゼ切断可能なリンカーによって連結された結合部分(例えば、抗イディオタイプ結合部分)及び薬物分子を含む。結合部分は、薬物分子に可逆的に結合し、結合されると、薬物分子の生物学的活性を阻害する。インビボ投与の際に、プロテアーゼ(例えば、腫瘍組織に存在するプロテアーゼ)は、結合部分と薬物分子との間のリンカーを切断し、薬物分子を体内に放出する(図1を参照されたい)。投与時に活性薬物分子を条件付きで放出することによって、そうでなければ薬物分子に関連する有害作用又はそのリスクを最小限に抑えることができる。
【0113】
理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の結合部分は、薬物分子に結合されると(例えば、結合部分がペプチドリンカーによって薬物分子に接続されると)、その生物活性(すなわち、作用機序)を阻害することが理解される。患者に投与されると、腫瘍組織に存在するプロテアーゼなどのプロテアーゼは、結合部分と薬物分子との間のペプチドリンカーを切断することができ、薬物分子からの結合部分の解離及び拡散による活性薬物分子の放出をもたらす。
【0114】
本発明は、プロテアーゼ切断可能なリンカーによって接続された薬物分子及び結合部分を含む組換えタンパク質、並びに結合部分自体に関する。
【0115】
本発明は更に、当該プロドラッグを含む医薬組成物及び療法における当該組成物の使用に関する。例えば、本発明は、がんなどの増殖性疾患の治療における、そのような組成物の使用に関する。
【0116】
本発明は更に、当該結合部分をコードする核酸、及び宿主細胞を用いてこれらを作製する方法に関する。
【0117】
定義
本明細書で別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。概して、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、及びタンパク質並びに核酸化学の技術に関連して使用される命名法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0118】
用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有/収容する(containing)」は、特に明記しない限り、非限定的用語として解釈されるべきである。本発明の態様で、ある特徴について、「~を含む」と説明されている場合、実施形態では、その特徴について「~からなる」又は「~から本質的になる」も考えられる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示を意味する文言(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図するものであり、別段の請求がない限り、本開示の範囲に制限を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素を本開示の実施に不可欠なものとして示すものとして解釈されるべきではない。実施されている例以外、又は別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」が当業者によって解釈されるように、その用語によって修飾されると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特に明記しない限り、所与の数値の±10%に相当する。
【0119】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、その範囲内に入る各別個の値及び各エンドポイントを個々に指す簡略法として役立つことを単に意図しており、各別個の値及びエンドポイントは、本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明の文脈において、用語「タンパク質」とは、ポリペプチドを含む分子を指し、ポリペプチドの少なくとも一部は、単一のポリペプチド鎖内及び/又は複数のポリペプチド鎖間において二次、三次、又は四次構造を形成することによって、定義された三次元配列を有する、又は獲得することができる。タンパク質が2つ以上のポリペプチド鎖を含む場合、個々のポリペプチド鎖は、非共有結合又は共有結合により、例えば、2つのポリペプチド間のジスルフィド結合により、結合され得る。二次及び/又は三次構造を形成することによって定義された三次元配列を個別に有する、又は獲得することができるタンパク質の一部は、「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。そのようなタンパク質ドメインは、当業者に周知である。
【0121】
用語「薬物分子」(用語「薬物」と本明細書で相互交換可能に使用される)は、ポリペプチド又はタンパク質を含む治療剤を指し、当該ポリペプチド又はタンパク質は、結合部分によって結合することができる部位を含有する。本発明で使用するのに好ましい薬物分子は、T細胞エンゲージャー又はTCE薬物分子である。
【0122】
組換えタンパク質及び組換えポリペプチドなどで使用される用語「組換え」とは、当該タンパク質又はポリペプチドが、当業者に周知の組換えDNA技術の使用によって産生されることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードする組換えDNA分子(例えば遺伝子合成によって産生される)を細菌発現プラスミド(例えばpQE30、QIAgen)、酵母発現プラスミド、哺乳動物発現プラスミド、若しくは植物発現プラスミド、又はインビトロ発現を可能にするDNAにクローニングすることができる。例えば、そのような組換え細菌発現プラスミドを適切な細菌(例えば、Escherichia coli)に挿入すると、これらの細菌は、この組換えDNAによってコードされたポリペプチドを産生することができる。それに応じて生産されたポリペプチド又はタンパク質は、組換えポリペプチド又は組換えタンパク質と呼ばれる。組換えポリペプチド又は組換えタンパク質はまた、他の核酸分子(例えば、当該ポリペプチド又はタンパク質をコードするmRNA)から発現され得る。
【0123】
本発明の文脈において、用語「結合部分」又は「結合剤」は、ポリペプチド又はタンパク質を含む結合剤を指し、当該ポリペプチド又はタンパク質は、薬物分子に非共有結合することができる。結合部分は、必ずしも薬物分子の活性部位に結合する必要はない。しかしながら、結合部分は、薬物の作用機序を阻害するような様式で結合する必要がある。これは、薬物の活性部位に結合することによるものであってもよいが、薬物分子上の別の部位に結合して、当該薬物の立体構造を変化させる(すなわち、アロステリック阻害)か、又は薬物分子の活性部位の立体障害になることによるものであってもよい。薬物分子の活性部位は、薬物分子の生物学的活性に関与する。生物学的活性は、酵素活性又は生物学的標的への結合であり得る。薬物分子への結合部分の結合は、薬物分子の生物学的活性を阻害する。例えば、薬物分子への結合部分の結合は、薬物分子の酵素活性を阻害するか、又は生物学的標的への薬物分子の結合を阻害する。薬物分子への結合部分の結合は、抗イディオタイプであってもよい。したがって、結合部分は、薬物分子の抗イディオタイプ結合剤であってもよい。
【0124】
本発明において使用される結合部分は、抗体、代替足場、及びポリペプチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫系が外来抗原を検出するときに典型的に生成されるものなどのインタクトな抗体分子だけでなく、抗原結合能力を保持する抗体分子の任意の断片、バリアント及び合成又は操作された類似体も指す。そのような断片及びバリアントもまた、当該技術分野で周知であり、インビトロ及びインビボの両方で正しく使用されている。したがって、用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン分子、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2などの抗体断片、及び単鎖V領域断片(scFv)、二重特異性又は多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合タンパク質、非従来型抗体、並びに免疫グロブリン分子由来の抗原結合ドメインを含むタンパク質を包含する。本明細書で使用される場合、用語「代替足場」は、タンパク質を含むか、又はタンパク質からなるが、抗体ではない任意の分子を指す。
【0125】
これらの異なる構造型のうちのいずれかの結合部分は、薬物分子に結合することができ、結合されると、薬物分子の作用様式を阻害する。好ましい一実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含む。別の好ましい実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有する抗体を含む。別の好ましい実施形態では、結合部分は、薬物分子に対して結合特異性を有する代替足場を含み、代替足場は、アンキリン反復ドメインを含まない。好ましい一実施形態では、薬物分子は、抗体を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該抗体に対して結合特異性を有する抗イディオタイプ抗体である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、抗体を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該抗体に対して結合特異性を有する、例えばアンキリン反復ドメインなどの抗イディオタイプ代替足場である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、例えばアンキリン反復ドメインなどの代替足場を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該代替足場に対して結合特異性を有する抗イディオタイプ抗体である。別の好ましい実施形態では、薬物分子は、例えばアンキリン反復ドメインなどの代替足場を含み、結合部分は、当該薬物分子に含まれる当該代替足場に対して結合特異性を有する、例えばアンキリン反復ドメインなどの抗イディオタイプ代替足場である。
【0126】
用語「核酸」又は「核酸分子」は、リボ核酸(ribonucleic acid、RNA)分子又は一本鎖若しくは二本鎖のいずれかのデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)分子であることができるポリヌクレオチド分子を指し、DNA又はRNAの修飾形態及び人工形態を含む。核酸分子は、単離された形態で存在するか、又は組換え核酸分子若しくはベクターに含まれているかのいずれかであることができる。
【0127】
用語「生物学的標的」は、核酸分子、ポリペプチド若しくはタンパク質、炭水化物、又は任意の他の天然に存在する分子などの個々の分子を指し、そのような個々の分子の任意の一部を含むか、又はそのような分子の2つ以上の複合体、又は細胞全体若しくは組織試料、又は任意の非天然化合物を指す。好ましくは、標的は天然に存在する、若しくは、非天然のポリペプチド若しくはタンパク質、又は、例えば、天然に存在する若しくは非天然のリン酸化、アセチル化、若しくはメチル化によって修飾された、化学修飾を含むポリペプチド若しくはタンパク質である。いくつかの実施形態では、生物学的標的は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞、又は別のタイプの免疫細胞などの免疫細胞である。いくつかの他の実施形態では、生物学的標的は、腫瘍細胞である。
【0128】
本発明の文脈において、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合された、複数、すなわち2つ以上のアミノ酸の鎖からなる分子に関する。好ましくは、ポリペプチドは、ペプチド結合によって結合された8個超のアミノ酸からなる。用語「ポリペプチド」はまた、システインのS-S架橋によって結合されたアミノ酸の複数の鎖も含む。ポリペプチドは、当業者に周知である。
【0129】
特許出願公開第WO2002/020565号及びForrer et al.,2003(Forrer,P.,Stumpp,M.T.,Binz,H.K.,Pluckthun,A.,2003.FEBS Letters 539,2-6)には、反復タンパク質の特徴及び反復ドメインの特徴、技術、及び用途の一般的な説明が含まれる。用語「反復タンパク質」とは、1つ以上の反復ドメインドメインを含むタンパク質を指す。好ましくは、反復タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの反復ドメインを含む。更に、当該反復タンパク質は、追加の非反復タンパク質ドメイン、ポリペプチドタグ、及び/又はペプチドリンカーを含んでもよい。反復ドメインは、結合ドメインであり得る。用語「反復ドメイン」は、構造単位として2つ以上の連続する反復モジュールを含むタンパク質ドメインを指し、当該反復モジュールは、構造相同性及び配列相同性を有する。好ましくは、反復ドメインはまた、N末端及び/又はC末端キャッピングモジュールも含む。明確にするために、キャッピングモジュールは、反復モジュールであり得る。そのような反復ドメイン、反復モジュール、及びキャッピングモジュール、配列モチーフ、並びに構造相同性及び配列相同性は、アンキリン反復ドメイン(Binz et al.,J.Mol.Biol.332,489-503,2003;Binz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004)、国際公開第2002/020565号、国際公開第2012/069655号)、高ロイシン反復ドメイン(国際公開第2002/020565号)、テトラトリコペプチド反復ドメイン(Main,E.R.,Xiong,Y.,Cocco,M.J.,D’Andrea,L.,Regan,L.,Structure 11(5),497-508,2003)、及びアルマジロ反復ドメイン(国際公開第2009/040338号)の例から当業者に周知である。そのような反復ドメインが反復されるアミノ酸配列を含むタンパク質とは異なることは、当業者には更に周知であり、反復されるアミノ酸配列は全て、個々のドメイン(例えば、フィブロネクチンのFN3ドメイン)を形成することができる。
【0130】
用語「アンキリン反復ドメイン」は、構造単位として2つ以上の連続するアンキリン反復モジュールを含む反復ドメインを指す。アンキリン反復ドメインは、標準的な組換えDNA技術を使用して、任意選択で半減期延長ドメインとともに、より大きなアンキリン反復タンパク質にモジュール式に組み立てられてもよい(例えば、Forrer,P.,et al.,FEBS letters 539,2-6,2003、国際公開第2002/020565号、国際公開第2016/156596号、国際公開第2018/054971号を参照されたい)。
【0131】
設計されたアンキリン反復タンパク質及び設計されたアンキリン反復ドメインなどにおいて使用される用語「設計された」は、そのような反復タンパク質及び反復ドメインがそれぞれ人工のものであり、自然界では生じないという特性を指す。本明細書に記載の設計された反復タンパク質は、少なくとも1つの設計された反復ドメインを含む。好ましくは、設計された反復ドメインは、設計されたアンキリン反復ドメインである。
【0132】
用語「標的相互作用残基」は、薬物分子との直接相互作用に寄与する結合部分のアミノ酸残基を指す。例えば、結合部分が設計されたアンキリン反復ドメインである場合、用語「標的相互作用残基」は、薬物分子との直接相互作用に寄与する設計されたアンキリン反復ドメインのアミノ酸残基を指す。
【0133】
用語「フレームワーク残基」又は「フレームワーク位置」は、反復モジュールのアミノ酸残基を指し、これは、折り畳みトポロジーに寄与する、すなわち、当該反復モジュールの折り畳みに寄与するか、又は隣接モジュールとの相互作用に寄与する。そのような寄与は、反復モジュール内の他の残基との相互作用、又はα-ヘリックス若しくはβ-シートに見られるポリペプチド骨格構造への影響、又は直鎖ポリペプチド若しくはループを形成するアミノ酸ストレッチへの関与であってもよい。そのようなフレームワーク及び標的相互作用残基は、X線結晶解析、NMR及び/若しくはCD分光法などの物理化学法によって得られる構造データの分析によって、又は構造生物学及び/若しくはバイオインフォマティクスにおいて当業者に周知の既知の関連する構造情報と比較することによって同定され得る。
【0134】
用語「反復モジュール」は、元々は天然に生じる反復タンパク質の反復単位に由来する、設計された反復ドメインの反復アミノ酸配列及び構造単位を指す。反復ドメインに含まれる各反復モジュールは、天然に存在する反復タンパク質のファミリー又はサブファミリー、好ましくは、アンキリン反復タンパク質ファミリーの1つ以上の反復単位に由来する。更に、反復ドメインに含まれる各反復モジュールは、標的上で選択された反復ドメインから得られた、同じ標的特異性を有する相同反復モジュールから推定される「反復配列モチーフ」を含み得る。
【0135】
したがって、用語「アンキリン反復モジュール」は、元々天然に存在するアンキリン反復タンパク質の反復単位に由来する反復モジュールを指す。アンキリン反復タンパク質は、当業者に周知である。設計されたアンキリン反復タンパク質は、以前に記載されており、例えば、国際公開第2002/020565号、同第2010/060748号、同第2011/135067号、同第2012/069654号、同第2012/069655号、同第2014/001442号、同第2014/191574号、同第2014/083208号、同第2016/156596号、及び同第2018/054971号を参照されたく、これらは全て、その全体が参照により組み込まれる。典型的には、アンキリン反復モジュールは、ループによって分離された2つのアルファヘリックスを形成する約31~33個のアミノ酸残基を含む。
【0136】
反復モジュールは、標的特異的反復ドメインを選択する目的で、ライブラリー内でランダム化されていないアミノ酸残基を有する位置(本明細書で相互交換可能に使用される「非ランダム化された位置」又は「固定された位置」)及び標的特異的反復ドメインを選択する目的で、ライブラリー内でランダム化されたアミノ酸残基を有する位置(「ランダム化された位置」)を含み得る。非ランダム化された位置は、フレームワーク残基を含む。ランダム化された位置は、標的相互作用残基を含む。「ランダム化された」とは、例えば、反復モジュールのアミノ酸位置で2つ以上のアミノ酸が許可され、通常の20個の天然に存在するアミノ酸のいずれかが許可された、若しくはシステイン以外のアミノ酸、又はグリシン、システイン、及びプロリン以外のアミノ酸などの、20個の天然に存在するアミノ酸のほとんどが許可されたことを意味する。
【0137】
用語「反復配列モチーフ」は、1つ以上の反復モジュールから推定されるアミノ酸配列を指す。好ましくは、当該反復モジュールは、同じ標的に対して結合特異性を有する反復ドメインに由来する。そのような反復配列モチーフは、フレームワーク残基位置及び標的相互作用残基位置を含む。当該フレームワーク残基位置は、反復モジュールのフレームワーク残基の位置に対応する。同様に、当該標的相互作用残基位置は、反復モジュールの標的相互作用残基の位置に対応する。反復配列モチーフは、非ランダム化位置及びランダム化位置を含む。
【0138】
用語「反復単位」は、1つ以上の天然に存在するタンパク質の配列モチーフを含むアミノ酸配列を指し、当該「反復単位」は、複数のコピーに見出され、タンパク質の折り畳みを決定する全ての当該モチーフに共通の定義された折り畳みトポロジーを呈す。そのような反復単位の例としては、ロイシンに富む反復単位、アンキリン反復単位、アルマジロ反復単位、テトラトリコペプチド反復単位、HEAT反復単位、及びロイシンに富むバリアント反復単位が挙げられる。
【0139】
結合部分は、代替標的(例えば、細胞又は物質)の場合よりも、特定の薬物分子とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、より高い親和性及び/又はより高い親和力で反応又は会合する場合、薬物分子に「特異的に結合する」又は「優先的に結合する」(本明細書で互換的に使用される)。結合部分は、所与のセットの条件下で、適切な薬物分子への結合を代替の薬物分子への結合と比較することによって、結合の特異性について試験され得る。いくつかの実施形態では、結合分子が、代替の薬物分子に対するよりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍高い親和性で適切な薬物分子に結合する場合、それは特異的であるとみなされる。また、この定義を読むことにより、例えば、第1の薬物分子に特異的又は優先的に結合する結合部分が、第2の薬物分子に特異的又は優先的に結合してもしなくてもよいことが理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的な結合を必ずしも必要としない(しかし、それを含むことができる)。概して、結合部分は、指定されたアッセイ条件下で特定の薬物分子に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の成分に有意な量で結合しない。
【0140】
様々なアッセイ形式を使用して、目的の薬物分子に特異的に結合する結合部分を選択又は特徴付けることができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway,NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park,CA)及びウエスタンブロット分析は、標的薬物分子に特異的に結合する結合部分を同定するために使用され得る多くのアッセイの一部である。典型的には、特異的又は選択的結合は、少なくとも2倍のバックグラウンドシグナル又はノイズ、より典型的には10倍超のバックグラウンドシグナルである。より具体的には、結合部分は、平衡解離定数(KD)値が<1μM、例えば、<500nM、<100nM、<10nM、<1nM、<100pM、又は<10pMである場合、標的に「特異的に結合する」と言われる。
【0141】
結合親和性を測定する様々な方法は、技術分野で周知であり、それらのいずれも、本発明の目的のために使用することができる。例えば、本明細書に例示されるように、薬物分子標的に対する特定の結合部分の結合親和性は、KD値として表すことができ、これは、結合部分及び薬物分子標的の解離定数を指す。KDは、「オフレート(koff)」とも呼ばれる解離速度と、会合速度又は「オンレート(kon)」との比率である。したがって、KDはKoff/Konに等しく、モル濃度(M)として表され、KDが小さいほど、結合の親和性が強くなる。
【0142】
D値は、任意の適切な方法を使用して決定することができる。KDを測定するための1つの例示的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である(例えば、Nguyen et al.Sensors(Basel).2015 May 5;15(5):10481-510を参照されたい)。KD値は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用するSPRによって測定されてもよい。BIAcore動的分析は、例えば、それらの表面上の固定化分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの抗原の結合及び解離を分析することを含む。タンパク質のKDを決定するための別の方法は、Bio-Layer Interferometryを使用することである(例えば、Shah et al.J Vis Exp.2014;(84):51383を参照されたい)。KD値は、OCTET(登録商標)テクノロジー(Octet QKe system、ForteBio)を使用して測定することができる。代替的に又は追加的に、Sapidyne Instruments(Boise,Id.)から入手可能なKinExA(登録商標)(動的排除アッセイ)アッセイを使用することもできる。2つの結合パートナー間の結合親和性を評価するのに好適な任意の方法が本明細書に包含される。表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance、SPR)が特に好ましい。最も好ましくは、KD値は、PBS中及びSPRによって決定される。
【0143】
用語「PBS」は、137mM NaCl、10mMリン酸塩及び2.7mM KClを含み、pHが7.4であるリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0144】
用語「治療する」、並びにそれに関連する単語は、必ずしも100%又は完全な治癒を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有するものとして認識する治療の程度は様々である。この点で、本明細書に記載の治療方法及び医薬使用は、任意の量又は任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本開示の方法によって提供される治療は、1つ又は複数の病態又は症状の治療(すなわち、緩和する)を含むことができる。例示的な態様では、本発明は、患者へのプロドラッグ分子の投与を含む、プロドラッグ分子による治療の方法であって、患者が体験する有害作用又はそのリスクが、同量の薬物分子がプロドラッグの形態(すなわち、プロテアーゼ切断可能なリンカーによって本発明の結合部分に接続されていない)で投与された場合に患者が体験する有害作用又はそのリスクと比較して低減される、治療の方法を提供する。したがって、プロドラッグ分子を形成するための、本発明の結合部分の使用は、低減された有害作用若しくは低減されたそのリスクを伴う治療方法、及び/又はより高用量の薬物分子若しくは短期間にわたる薬物分子の投与を伴う、治療方法を可能にする。
【0145】
任意の所与の疾患又は状態における治療応答は、その疾患又は状態に特異的な標準化された応答基準によって決定することができる。療法を受けている対象は、治療剤の投与に関連する有害作用又はそのリスクの低減とともに、疾患に関連する症状の改善という有益な効果を体験し得る。
【0146】
本明細書で使用される場合、用語「増殖性疾患」は、細胞の過剰産生を特徴とする疾患を指す。増殖性疾患の例としては、がん、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、乾癬、特発性肺線維症、強皮症及び肝硬変が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、増殖性疾患は、がんである。
【0147】
結合部分
本明細書に記載の結合部分は、薬物分子に特異的に結合することができる、様々な異なる構造を有するポリペプチド又はタンパク質である。本発明で使用するための結合部分は、抗体、代替足場、及びポリペプチドを含む。
【0148】
抗体は、抗体又は免疫グロブリン分子に由来する抗原結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質を含む。抗原結合ドメインは、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、及び例えば、ヒト又はラクダ科動物起源の可変ドメイン(VHH)に由来し得る。いくつかの例では、抗原結合ドメインが、結合部分が最終的に使用されるのと同じ種に由来することが有益である。例えば、ヒトにおける使用のために、本明細書に記載の結合部分の抗原結合ドメインが、ヒト又はヒト化抗原結合ドメインを含むことは有益であり得る。抗体は、当該技術分野で周知の技術を用いて得ることができる。
【0149】
一実施形態では、結合部分は、ラクダ科ナノボディーである。ラクダ科ナノボディー(ラクダ科単一ドメイン抗体又はVHHとしても知られる)は、ラマ、ラクダ、及びアルパカなどの哺乳動物のラクダ科に由来する。他の抗体とは異なり、ラクダ科抗体は軽鎖を欠き、2つの同一の重鎖から構成される。ラクダ科抗体は、典型的には、約15kDaの領域の比較的低い分子量を有する。
【0150】
一実施形態では、結合部分は、サメ抗体ドメインである。ラクダ科ナノボディーと同様に、サメ抗体ドメインも軽鎖を欠いている。
【0151】
抗原(薬物分子など)に結合することができ、抗体又は免疫グロブリン分子に由来しない結合ドメインを含む任意のポリペプチド又はタンパク質を、代替足場は含む。代替足場の結合ドメインは、様々な異なるポリペプチド又はタンパク質構造を含んでもよく、又はそれに由来してもよい。代替足場としては、アドネクチン(モノボディー)、アフィボディー、アフィリン、アフィマー及びアプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベースの足場、アトリマー、アビマー、アンキリン反復タンパク質ベースの足場(例えば、DARPin(登録商標)タンパク質)、フィノマー、ノッチン、及びクニッツドメインペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。代替足場は、例えば、Yu et al.,Annu Rev Anal Chem(Palo Alto Calif).2017 June 12;10(1):293-320.doi:10.1146/annurevanchem-061516-045205に記載されている。
【0152】
アドネクチンは、元々はヒトフィブロネクチンIII型タンパク質型タンパク質(10Fn3)の10番目の細胞外ドメインに由来する。フィブロネクチンIII型ドメインは、7又は8個のβ鎖を有し、これらは2つのβシートの間に分布しており、βシート自体が互いにパッキングしてタンパク質のコアを形成し、更にループ(CDRに類似)を含み、ループはベータ鎖を互いに接続し、溶媒が露出している。βシートサンドイッチの各縁部には少なくとも3つのそのようなループが存在し、縁部は、β鎖の方向に垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,818,418号を参照されたい)。この構造のために、この非抗体足場は、抗体の抗原結合特性の性質及び親和性に類似した抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスに類似するインビトロでのループ無作為化及びシャッフリング手法において使用することができる。
【0153】
アフィボディー親和性リガンドは、細菌Staphylococcus aureus由来の表面タンパク質であるプロテインAのIgG結合ドメインのうちの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルから構成される。この足場ドメインは58個のアミノ酸からなり、そのうちの13個を無作為化して、多数のリガンドバリアントを有するアフィボディーライブラリーを作製する(例えば、米国特許第5,831,012号を参照されたい)。アフィボディー分子は抗体を模倣しているが、抗体の場合の約150kDaと比較して、約6kDaの分子量を有し、かなり小さくなっている。サイズの違いにもかかわらず、アフィボディー分子の結合部位は抗体の結合部位と類似性を有する。
【0154】
アフィリンは、構造的にヒトユビキチンに由来する(歴史的にはγ-Bクリスタリンにも由来する)合成抗体模倣物である。アフィリンは、主にβシート構造及び約20kDaの総分子量を有する2つの同一のドメインからなる。アフィリンは、修飾に好適ないくつかの表面露出したアミノ酸を含有する。アフィリンは、抗原に対する親和性及び特異性において抗体に似ているが、構造においては似ていない。
【0155】
アフィマーは、ペプチドアプタマの一種であり、SQT(Stefin A quadruple mutant-Tracy)(ステフィンA四重変異体-トレイシー)として知られる構造を有する。アプタマー及びアフィマーは、結合ペプチドのN末端及びC末端両方が不活性な足場に埋め込まれた、構造上の制約のために不活性で剛性のあるタンパク質足場と親和的に結合する原因となる短いペプチドである。
【0156】
アフィチンは、特異的結合親和性を得るように操作されたDNA結合タンパク質Sac7dのバリアントである。Sac7dは、元々は超好熱菌古細菌Sulfolobus acidocaldariusに由来し、DNAと結合してそれの熱変性を防止する。アフィチンは、商業的にはNanofitinとして知られている。
【0157】
アルファボディーは、様々な抗原に結合するように操作された小さな(約10kDa)タンパク質であり、したがって抗体模倣物である。アルファボディー足場は、コイルドコイル構造に基づいてコンピュータで設計される。標準的なアルファボディー足場は、高グリシン/セリンリンカーを介して連結された、各々4つのヘプタッド反復(7残基のストレッチ)から構成される3つのαヘリックスを含有する。標準的なヘプタッド配列は、「IAAIQKQ」である。細胞外及び細胞内タンパク質を標的とするアルファボディーの能力は、それらの高い結合親和性と組み合わせて、抗体では到達することができない標的にそれらが結合することを可能にし得る。
【0158】
アンチカリンは、リポカリンに見出される強固で保存的なβバレル構造を有する結合タンパク質の群である。リポカリンは、シグナル伝達分子などの様々な生物学的分子の認識、貯蔵、及び輸送を担う1つのペプチド鎖(150~190アミノ酸)を含む細胞外タンパク質の一種である。
【0159】
アルマジロ反復タンパク質ベースの足場は、真核生物において豊富であり、広範な生物学的プロセス、特に核輸送に関連するプロセスに関与する。アルマジロ反復タンパク質ベースの足場は、通常、3~5個の内部反復及び2個のキャッピングエレメントからなる。それらはまた、タンデム伸長スーパーヘリックス構造を有し、これは、伸長された立体構造で対応するペプチドリガンドと結合することが可能である。
【0160】
アトリマーは、テトラネクチンとして知られるトリマー血漿タンパク質に由来する足場であり、3つの同一の単位からなるC型レクチンのファミリーに属する。テトラネクチン内のC型レクチンドメイン(C-type lectin domain、CTLD)の構造は、標的化分子との相互作用を媒介する5つの柔軟なループを有する。
【0161】
アビマーは、HER3などの天然のAドメイン含有タンパク質に由来し、アミノ酸リンカーを介して連結された多数の異なる「Aドメイン」モノマー(2~10)からなる。例えば、米国特許出願公開第2004/0175756号、同第2005/0053973号、同第2005/0048512号、及び同第2006/0008844号に記載される方法論を使用して、標的抗原に結合することができるアビマーを作製することができる。
【0162】
一実施形態では、結合部分は、アンキリン反復タンパク質である。設計又は操作されたアンキリン反復タンパク質(DARPin(登録商標)タンパク質など)は、抗体模倣タンパク質のように機能することができ、典型的には、特異性の高いかつ高親和性の標的結合を呈す。設計されたアンキリン反復タンパク質は、1つ以上の設計されたアンキリン反復ドメインを含む。設計されたアンキリン反復ドメインは、天然アンキリン反復タンパク質に由来し、各設計されたアンキリン反復ドメインは、典型的には、高い特異性及び高親和性で標的タンパク質に結合する。設計されたアンキリン反復タンパク質は、その高い特異性、安定性、効力及び親和性により、並びに単一特異性、二重特異性又は多重特異性タンパク質を生成するためのフォーマッティングにおけるその柔軟性により、高親和性結合部分としての使用に特に好適である。設計されたアンキリン反復タンパク質薬物候補はまた、迅速、低コスト及び高収率製造並びに4℃での数年までの貯蔵寿命を含む好ましい開発特性を示す。設計されたアンキリン反復タンパク質は、本発明の結合部分の好ましい実施形態である。DARPin(登録商標)は、Molecular Partners AG.所有の登録商標である。
【0163】
フィノマーは、ヒトFynチロシンキナーゼのSrc相同ドメイン3(SH3)のアミノ酸83~145から進化した小さな球状タンパク質(約7kDa)である。フィノマーは、その高い熱安定性、システインを含まない足場、及びヒト起源により、潜在的な免疫原性を低減する、魅力的な結合分子である。
【0164】
システインノットミニタンパク質としても知られているノッチンは、典型的には、3つの逆平行βシートと、システインノットを作り出すジスルフィド結合によって縛られた拘束ループとを含む30アミノ酸長のタンパク質である。このジスルフィド結合が高い熱安定性を与え、ノッチンを魅力的な抗体模倣物にしている。
【0165】
クニッツドメインペプチド又はクニッツドメイン阻害剤は、構造フレームワークを不安定化することなく変異され得る3つのジスルフィド結合及び3つのループを有する約60個のアミノ酸を含む不規則な二次構造を有するプロテアーゼ阻害剤の一種である。
【0166】
一実施形態では、結合部分は、T細胞受容体(TCR)に由来する抗原結合ドメインを含むポリペプチド又はタンパク質である。
【0167】
結合部分の例
本発明で結合部分として使用するためのアンキリン反復ドメインの例が、配列番号1~12によって提供される。
【0168】
配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号13~17から選択されるアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。例えば、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列又は配列番号14のアミノ酸配列又は配列番号15のアミノ酸配列又は配列番号16のアミノ酸配列又は配列番号17のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。
【0169】
一実施形態では、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号13のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。別の実施形態では、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。別の実施形態では、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。別の実施形態では、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。別の実施形態では、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列を有するCD3特異的結合分子に特異的に結合する。
【0170】
したがって、一実施形態では、本発明の結合部分は、配列番号1~12からなる群から選択されるアンキリン反復ドメインとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアンキリン反復ドメインである
【0171】
一実施形態では、結合部分は、配列番号1~12からなる群から選択されるアンキリン反復ドメインとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアンキリン反復ドメインである
【0172】
一実施形態では、結合部分は、アンキリン反復ドメインであり、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号1~12からなる群から選択される。
【0173】
一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号1~12及び(2)配列番号1~12のうちのいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む設計されたアンキリン反復ドメインである。
【0174】
一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける9個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける8個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける7個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける6個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける5個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける4個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける3個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける2個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。一実施形態では、結合部分は、(1)配列番号45~64及び(2)配列番号45~64のうちのいずれかにおける1個までのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアンキリン反復モジュールを含む、設計されたアンキリン反復タンパク質である。
【0175】
本明細書に記載されるアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸によって置換され得る。いくつかの実施形態では、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個までの置換が、本明細書に記載の結合部分のいずれかにおいて行われる。
【0176】
いくつかの実施形態では、15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までの置換が、配列番号1~12の配列のいずれかに対して、任意のアンキリン反復ドメインにおいて行われるいくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、15個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、14個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、13個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、12個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、11個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、10個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、9個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、8個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、7個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、6個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、5個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、4個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のうちのいずれかに対して、3個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のいずれかに対して、2個までの置換が行われる。いくつかの実施形態では、配列番号1~12の配列のいずれかに対して、1個までの置換が行われる。
【0177】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は全て、フレームワーク位置で行われる。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は全て、非無作為化位置で行われる。設計されたアンキリン反復ドメインにおける無作為化位置の場所は、例えば、Binz et al.,Nature Biotech.22(5):575-582(2004)に開示されている。
【0178】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、非置換結合部分のKD値と比較して、KD値を約1000倍超、約100倍超、又は約10倍超変化させない。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号1~12の配列のいずれかを含む結合部分を、配列番号13~17の配列のいずれかを含む薬物分子の結合のKD値と比較して、KD値を約1000倍超、約300倍超、約100倍超、約50倍超、約25倍超、約10倍超、又は約5倍超変化させない。
【0179】
ある特定の実施形態では、結合部分におけるアミノ酸置換は、以下の表1による保存的置換である。
【0180】
【表1】
【0181】
結合部分が、アンキリン反復ドメインである場合、いくつかの実施形態では、置換は、アンキリン反復ドメインの構造的コア残基の外側、例えば、アルファヘリックスを接続するベータループ内で行われ得る。他の実施形態では、置換は、アンキリン反復ドメインの構造的コア残基内で行われ得る。例えば、アンキリンドメインは、コンセンサス配列:xDxxGxTPLHLAxxxGxxxlVxVLLxxGADVNA(配列番号68)を含んでもよく、式中、「x」は、任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、又はプロリンではない)を表し、又はxDxxGxTPLHLAAxxGHLEIVEVLLKzGADVNA(配列番号69)を含んでもよく、式中、「x」は、任意のアミノ酸(好ましくはシステイン、グリシン、又はプロリンではない)を表し、「z」は、アスパラギン、ヒスチジン、又はチロシンからなる群から選択される。一実施形態では、置換は、「x」として指定される残基に対して行われる。別の実施形態では、置換は、「x」として指定される残基の外側で行われる。
【0182】
加えて、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの最後から2番目の位置は、「A」若しくは「L」であり得、かつ/又は最後の位置は、「A」若しくは「N」であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列1~12のいずれか1つと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、最後から2番目の位置のAがLで置換されており、かつ/又は最後の位置のAがNで置換されている。例示的な実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列番号1~12のいずれか1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、任意選択で、最後から2番目の位置のAがLで置換されており、かつ/又は最後の位置のAがNで置換されている。更に、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの配列は、任意選択で、そのN末端でG、S、又はGSを含んでもよい(以下を参照されたい)。
【0183】
加えて、結合部分の各アンキリン反復ドメインは、任意選択で、そのN末端に「G」、「S」、又は「GS」配列を含んでもよい。したがって、いくつかの実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列1~12のいずれか1つと少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸配列を含み、更に任意選択で、そのN末端にG、S、又はGSを含む。例示的な実施形態では、結合部分のアンキリン反復ドメインは、配列番号1~12のいずれか1つと少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含み、当該アンキリン反復ドメインは、任意選択で、そのN末端にG、S、又はGSを更に含む。更に、結合部分の任意のアンキリン反復ドメインの配列は、任意選択で、Lで置換された最後から2番目の位置のA、及び/又はNで置換された最後の位置のAを有していてもよい(上記を参照されたい)。
【0184】
N末端及びC末端キャッピング配列
本明細書に記載の結合部分がアンキリン反復ドメインを含む場合、アンキリン反復ドメインは、N末端又はC末端キャッピング配列を含み得る。キャッピング配列は、アンキリン反復配列モチーフ又はモジュールのN末端又はC末端に融合された追加のポリペプチド配列を指し、当該キャッピング配列は、隣接アンキリン反復配列モチーフ又はアンキリン反復ドメインのモジュールとの強固な三次相互作用(すなわち、三次構造相互作用)を形成し、それによって、側面のアンキリン反復ドメインの疎水性コアを、溶媒に曝露することから遮蔽するキャップを提供する。
【0185】
N末端及び/又はC末端のキャッピング配列は、キャッピング単位、又は反復単位に隣接する天然に存在する反復タンパク質中に見出される他の構造単位に由来してもよい。キャッピング配列の例は、国際公開第2002/020565号及び同第2012/069655号、米国特許公開第2013/0296221号、並びにInterlandi et al.,J Mol Biol.2008 Jan 18;375(3):837-54に記載されている。N末端アンキリンキャッピングモジュール(すなわち、N末端キャッピング反復)の例としては、配列番号70~73が挙げられ、C末端キャッピングモジュール(すなわち、C末端キャッピング反復)の例としては、配列番号74~77が挙げられる。
【0186】
薬物分子
本発明の文脈内で、薬物分子は、ポリペプチド又はタンパク質を含む治療剤であり、当該ポリペプチド又はタンパク質は、結合部分によって結合することができる部位を含有する。本発明で使用するための薬物分子は、結合部分によって結合され得る限り、特に限定されない。これは、例えば、薬物分子が結合部分と同じ「クラス/種(class)」に属してもよく、結合部分と異なる「クラス/種」に属してもよいことを意味し、その結果、例えば、薬物分子及び結合部分の両方が抗体であり得るか、又は薬物分子及び結合部分の両方が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得るか、又は薬物分子が抗体であり得、結合部分が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得るか、又は薬物分子が代替足場(例えば、アンキリン反復タンパク質)であり得、結合部分が抗体であり得る。これは更に、例えば、薬物分子自体が異なる構造部分、例えば、抗体部分と代替足場部分との組み合わせ、又は異なる代替足場構造の部分の組み合わせを含み得ることを意味する。薬物分子及び結合部分の両方が抗体である場合、抗体が、結合特異性に関するものを含めて、互いに異なることは当業者には明らかであろう。同様に、薬物分子及び結合部分の両方が代替足場である場合、代替足場が、結合特異性に関するものを含めて、互いに異なることは当業者には明らかであろう。
【0187】
更に、本発明で使用するための薬物分子は、半減期延長部分を含有し得る。半減期延長部分は、半減期延長部分を有していない同じタンパク質と比較して、薬物分子のインビボでの血清半減期を延長する。半減期延長部分の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(glutathione S transferase、GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)、ヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)結合ドメイン、又はポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、半減期延長部分は、HSAに対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み得る。他の例では、半減期延長部分は、免疫グロブリンドメイン、例えば、Fcドメイン、例えば、ヒトIgG1のFcドメイン、又はそのバリアント若しくは誘導体を含み得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含み、代替足場は、アドネクチン(モノボディー)、アフィボディー、アフィリン、アフィマー及びアプタマー、アフィチン、アルファボディー、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベースの足場、アトリマー、アビマー、アンキリン反復タンパク質ベースの足場(DARPin(登録商標)タンパク質など)、フィノマー、ノッチン、及びクニッツドメインペプチドから選択される。代替足場は、例えば、Yu et al.,Annu Rev Anal Chem(Palo Alto Calif).2017 June 12;10(1):293-320.doi:10.1146/annurevanchem-061516-045205に記載されている。
【0189】
本発明で使用するための薬物分子としてはまた、以下のものなどの臨床使用のために現在承認されている異なるカテゴリーの薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、
(2)二重特異性抗体、及び
(3)遺伝子改変された免疫細胞、例えばT細胞、特にキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)発現免疫細胞、例えばCAR-T細胞。
【0190】
本発明で使用するための薬物分子としてはまた、本明細書において「免疫チェックポイント調節因子」と呼ばれる、免疫チェックポイントの活性を上方制御又は下方制御する分子が挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイントは、免疫シグナルを増加させる(共刺激分子)又は減少させる(阻害分子)免疫系における分子である。がん患者において、腫瘍は、これらの免疫チェックポイントを使用して、特にT細胞による免疫系攻撃から自身を保護することがある。免疫チェックポイント療法において使用される薬物分子は、阻害性免疫チェックポイント分子を遮断するか、又は刺激性免疫チェックポイント分子を活性化し、それによって免疫系機能を回復させることができる。近年、免疫チェックポイント薬は、重要な新規のがん治療選択肢となっている。免疫チェックポイント分子としては、CD27、CD137、CD137L、2B4、TIGIT、CD155、ICOS、HVEM、CD40L、LIGHT、TIM-1、OX40、OX40L、DNAM-1、PD-L1、PD1、PD-L2、CTLA-4、CD8、CD40、CEACAMI、CD48、CD70、A2AR、CD39、CD73、B7-H3、B7-H4、BTLA、C5AR1、CCR8、CD226、CD28、CD33、CD38、CD3e、CD47、CD94、ETAR、NKG2A、SIRPα、TLR8、TNFRSF18、IDO1、IDO2、TDO、KIR、LAG-3、TIM-3、TIM-4及びVISTAが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、薬物分子は、免疫チェックポイント調節因子である。
【0191】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、二重特異性抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、多重特異性抗体を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である抗体を含む。
【0192】
二重特異性抗体にはTCEが含まれる。TCEである二重特異性抗体の例は、BiTE(商標)分子として知られる分子である。これらは、単一のペプチド鎖上の2つの単鎖可変断片(scFv)からなる抗がん薬である。そのようなTCEは、scFvのうちの1つを介してT細胞の表面上のCD3(表面抗原分類3)分子に結合し、一方、他のscFvは、腫瘍細胞の表面上の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する。CD3に結合し、T細胞を腫瘍細胞に連結することによって、T細胞は、「活性化」され、腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を発揮することができる。TCEである二重特異性抗体の一例はブリナツモマブであり、これはT細胞の表面上のCD3及びB細胞の表面上のCD19に結合する。ブリナツモマブは、急性リンパ芽球性白血病の治療での使用が承認されている。
【0193】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、二重特異性代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、多重特異性代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子(TCE)である代替足場分子を含む。好ましい実施形態では、当該代替足場は、アンキリン反復ドメインである。更に好ましい実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、代替足場を含み、当該代替足場は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインであり、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号13~17から選択されるアミノ酸配列を含む。更に好ましい実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号13~17から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号13を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号14を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号15を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号16を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3に対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号17を含む。
【0194】
二重特異性又は多重特異性代替足場分子にはTCEが含まれる。一実施形態では、薬物分子は、二重特異性又は多重特異性代替足場分子であり、当該代替足場分子は、(i)アンキリン反復ドメインであるCD3特異的結合ドメイン、及び(ii)アンキリン反復ドメインであるTAA特異的結合ドメインを含むTCEである。BiTE(商標)分子として知られるTCEと同様に、代替足場を含むそのようなTCEは、結合ドメインの1つを介してT細胞の表面上のCD3分子に結合する一方で、他の結合ドメインが腫瘍細胞の表面上の腫瘍関連抗原(TAA)に結合する抗がん薬である。CD3に結合し、T細胞を腫瘍細胞に連結することによって、T細胞は、「活性化」され、腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を発揮することができる。
【0195】
薬物分子がTCEである場合、本発明の結合部分の好ましい結合部位は、TCEのCD3特異的結合ドメインである。TCEのCD3特異的結合ドメインに結合することによって、結合部分は、TCEがT細胞に結合するのを妨げることによって、TCEの作用機序を遮断する。一実施形態では、TCEのCD3特異的結合ドメインへの結合部分の結合は、抗イディオタイプである。
【0196】
以下に列挙されるものを含む、TCEである多数の二重特異性抗体が記載されており、それらのそれぞれの結合標的が括弧内に提供されている。例えば、上記のように、ブリナツモマブ(CD19xCD3、Amgen)は、T細胞上のCD3抗原、及びB細胞系統から生じた腫瘍細胞上のCD19抗原に結合する。TCEである他の二重特異性抗体としては、AMG330(CD33xCD3)、フロテツズマブ(CD123xCD3、Macrogenics)、MCLA117(Clec12AXCD3、Merus)、AMG160(HLE PSMAxCD3、Amgen)、AMG427(HLE FLT3xCD3、Amgen)、AMG562(HLE CD19xCD3、Amgen)、AMG596(HLE EGFRvIIIxCD3、Amgen)、AMG673(HLE CD33xCD3、Amgen)、AMG701(HLE BCMAxCD3、Amgen)、AMG757(HLE DLL3xCD3、Amgen)、AMG910(HLE Claudin18.2xCD3、Amgen)、オドロンエクスタマブ(CD20xCD3、Regeneron)、モスネツツズマブ(CD20xCD3、Roche)、glofitamab(CD20xCD3、Roche)、及びエピコリタマブ(CD20xCD3、Genmab)が挙げられるが、これらに限定されない。そのようなTCEのいずれも、本発明の組換え結合タンパク質中の薬物分子として使用され得る。
【0197】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、抗体及び代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、2つの異なる代替足場を含む。別の実施形態では、薬物分子は、T細胞受容体(TCR)由来抗原認識ドメインを含む。
【0198】
一実施形態では、本発明で使用するための薬物分子は、遺伝子改変された免疫細胞を含む。好ましい実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する。一実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、CAR発現T細胞(CAR-T細胞)などの遺伝子改変されたT細胞である。別の実施形態では、当該遺伝子改変された免疫細胞は、CAR発現NK細胞(CAR-NK細胞)などの遺伝子改変されたナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0199】
結合親和性
本発明の結合部分は、薬物分子に特異的に結合する。
ある特定の実施形態では、薬物分子に対する結合部分の結合親和性は、KDに関して記載される。例示的な実施形態では、KDは、約10-6M、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、又は約10-11M以下、約10-6M~約10-11M、約10-6M~約10-10M、約10-6M~約10-9M、約10-6M~約10-8M、約10-6M~約10-7M、約10-7M~約10-11M、約10-7M~約10-10M、約10-7M~約10-9M、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-11M、約10-8M~約10-10M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-11M、又は約10-9M~約10-10M、又は約10-10M~約10-11Mである。
【0200】
例示的な実施形態では、結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM以下のKD値で薬物分子に結合する。例示的な一実施形態では、結合部分は、約1μM以下のKD値で薬物分子に結合する。別の例示的な実施形態では、結合部分は、約500nM以下のKD値で薬物分子に結合する。別の例示的な実施形態では、結合部分は、約100pM以下のKD値で薬物分子に結合する。更に別の例示的な実施形態では、結合部分は、約10pM以下のKD値で薬物分子に結合する。一実施形態では、結合部分は、約1μM未満、例えば、約1μM未満、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満、又は約50nM未満の解離定数(KD)で薬物分子を結合する。別の実施形態では、結合部分は、約1μM~約10pM、例えば、約1μM~約10pM、約1μM~約20pM、約1μM~約50pM、又は約1μM~約100pMの解離定数(KD)で薬物分子を結合する。
【0201】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号1との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0202】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号2との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0203】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号3との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0204】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号4との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0205】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号5との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0206】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号6との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0207】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号7との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0208】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号8との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0209】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号9との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0210】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号10との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0211】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号11との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号11との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0212】
いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号12との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM、750nm、500nm、250nm、100nM、約50nM、約25nM、約10nM、約5nM、約2nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約100pM、約50pM、約25pM、又は約10pM未満のKD値で当該薬物分子に結合する。いくつかの実施形態では、結合部分は、配列番号12との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、薬物分子は、配列番号13~17との少なくとも約85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含み、当該結合部分は、約1μM~約10pMの範囲のKD値で当該薬物分子に結合する。
【0213】
結合部分が薬物分子に結合される場合、薬物分子は、生物学的活性、例えば、生物学的標的分子への結合を発揮することができない。本発明の組換えタンパク質中の結合部分と薬物分子とを接続するペプチドリンカーのタンパク質分解切断の際に、活性薬物が対象中に放出される。
【0214】
組換え結合タンパク質
本発明の組換え結合タンパク質は、(i)本明細書で定義される結合部分と、(ii)本明細書で定義される薬物分子と、を含む。当該結合部分は当該薬物分子に可逆的に結合し、結合の作用は当該薬物分子の生物学的活性を阻害する。本明細書に記載されるように、結合部分及び薬物分子は、プロテアーゼ切断部位を含むペプチドリンカーによって接続される。
【0215】
「リンカー」又は「連結部分」は、2つの別個の実体を接続する分子又は分子群である。2つのタイプのリンカーが本発明に包含される:プロテアーゼ切断可能なリンカー及びプロテアーゼ切断不可能なリンカー。本発明の組換えタンパク質において、結合部分と薬物分子との間のリンカーは、薬物分子が結合部分との結合から「放出」されることを可能にするために、プロテアーゼ切断可能なリンカーであるべきである。しかしながら、プロテアーゼ切断不可能なリンカーは、結合分子と半減期延長部分との間、及び/又はCD3に対する特異性を有する結合ドメイン及び腫瘍関連抗原(TAA)に対する特異性を有する結合ドメインなどの薬物分子の異なるドメイン間などのプロドラッグ分子中に存在し得る。これらの異なるタイプのリンカーの例を図1に示す。プロテアーゼ切断可能なリンカーは、図1において、結合剤とCD3結合部分との間に示されている。図1に示すように、α-CD3と結合剤との間のリンカーは、腫瘍微小環境においてプロテアーゼによって切断可能なペプチドリンカーから構成される。プロドラッグCD3-PDDは、そのα-CD3アームを介したT細胞への結合が共有結合した結合剤によって阻害されるため、循環への注入時には不活性である。腫瘍微小環境(TME)に入ると、α-CD3と結合剤との間のペプチドリンカーは、腫瘍関連プロテアーゼによって切断され、次いで、薬物分子は、そのα-TAAアームを介して腫瘍細胞上のTAAに結合し、そのα-CD3アームを介してT細胞上のCD3に結合することによって、その生物学的活性を発揮することができ、T細胞媒介性腫瘍死滅を引き起こす。
【0216】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断可能なリンカーは、配列番号18~20からなる群から選択されるアミノ酸配列との少なくとも少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0217】
プロテアーゼ切断不可能なリンカーは、ヘテロ二量体タンパク質を生成するために、共有結合リンカー(例えば、ジスルフィド結合、ポリペプチド結合、若しくは架橋剤)又は非共有結合リンカーを含み得る。プロテアーゼ切断不可能なリンカーは、例えば、結合部分と半減期延長部分との間に存在し得る。
【0218】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼ切断不可能なリンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、約1~50個のアミノ酸残基を含む。例示的なリンカーとしては、例えば、グリシンリッチペプチド;グリシン及びセリンを含むペプチド;配列[Gly-Gly-Ser]nを有し、式中、nが1、2、3、4、5又は6であるペプチド;又は配列[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]n(配列番号83)を有し、式中、nが、1、2、3、4、5、又は6であるペプチドが挙げられる。グリシンリッチペプチドリンカーはペプチドリンカーを含み、残基の少なくとも25%はグリシンである。グリシンリッチペプチドリンカーは、技術分野において周知である(例えば、chili et al.Protein Sci.2013 February;22(2):153-167)。
【0219】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、プロリン-スレオニンリッチペプチドリンカーである。一実施形態では、リンカーは、配列番号78~82のいずれか1つのプロリン-スレオニンリッチペプチドリンカーである。例示的な実施形態では、リンカーは、配列番号81のプロリン-スレオニンリッチペプチドリンカーである。別の例示的な実施形態では、リンカーは、配列番号82のプロリン-スレオニンリッチペプチドリンカーである。
【0220】
本発明の組換え結合タンパク質において、上に列挙した任意の結合部分は、結合部分が薬物分子に対する所望の結合親和性及び特異性を有するという条件で、上に列挙した任意の薬物分子と組み合わせてもよい。特に、上記の任意の結合部分及び薬物分子、特に、明示的に開示される結合係数(例えば、KD)を有する具体的に開示される任意の組み合わせは、本発明に包含される。
【0221】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号1及び(2)配列番号1との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0222】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0223】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む
【0224】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0225】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号1の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0226】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号1を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0227】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号2及び(2)配列番号2との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0228】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0229】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0230】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0231】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号2の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0232】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号2を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0233】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号3及び(2)配列番号3との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0234】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0235】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0236】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0237】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号3の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0238】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号3を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0239】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号4及び(2)配列番号4との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0240】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0241】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0242】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0243】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号4の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、又は1個個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0244】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号4を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0245】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号5及び(2)配列番号5との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0246】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0247】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0248】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0249】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号5の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0250】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号5を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0251】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号6及び(2)配列番号6との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0252】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0253】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0254】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0255】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号6の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0256】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号6を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0257】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号7及び(2)配列番号7との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0258】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0259】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0260】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0261】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号7の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0262】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号7を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0263】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号8及び(2)配列番号8との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0264】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0265】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0266】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0267】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号8の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0268】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号8を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0269】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号9及び(2)配列番号9との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0270】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0271】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0272】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0273】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号9の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0274】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号9を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0275】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号10及び(2)配列番号10との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0276】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0277】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0278】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0279】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号10の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0280】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号10を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0281】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号11及び(2)配列番号11との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0282】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0283】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0284】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号11の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0285】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号11の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号11の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0286】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号11を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0287】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(i)(1)配列番号12及び(2)配列番号12との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(ii)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0288】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0289】
一実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12との少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0290】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号12の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)(a)配列番号13~17及び(2)配列番号13~17との少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0291】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号12の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかとの少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有するアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12のアミノ酸配列を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分であって、任意選択で、配列番号12の15個まで、14個まで、13個まで、12個まで、11個まで、10個まで、9個まで、8個まで、7個まで、6個まで、5個まで、4個まで、3個まで、2、又は1個までのアミノ酸は、他のアミノ酸によって置換されている、結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含む薬物分子と、を含む。
【0292】
別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号13~17のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。別の実施形態では、組換え結合タンパク質は、(1)配列番号12を有するアンキリン反復ドメインを含む結合部分と、(2)配列番号15~16のいずれかを含むアンキリン反復ドメインを含む薬物分子と、を含む。
【0293】
一実施形態では、上記の当該組換え結合タンパク質のいずれかに含まれる当該薬物分子は、T細胞エンゲージャー薬物分子である。
【0294】
プロドラッグ分子
本発明のプロドラッグ分子は、本明細書に記載される組換え結合タンパク質を含む。したがって、本発明のプロドラッグ分子は、プロテアーゼ切断可能なリンカーによって連結された結合部分及び薬物分子を含む。一実施形態では、薬物分子は、CD3特異的結合ドメインと、腫瘍関連抗原(TAA)特異的結合ドメインと、を含むT細胞エンゲージャー(TCE)分子である。本発明のプロドラッグ分子は、半減期延長部分などの他の部分を更に含んでもよい。
【0295】
本発明のプロドラッグ分子において使用され得るTAA特異的結合ドメインの性質には特に制限はない。本発明のプロドラッグ分子において使用され得るTAA特異的結合ドメインは、TAAに対して結合特異性を有する任意の結合ドメインを含む。一例は、配列番号27の結合ドメインなどのEGFR特異的結合ドメインである。
【0296】
本発明で使用するためのプロドラッグ分子は、半減期延長部分を含有してもよい。半減期延長部分は、半減期延長部分を有していない同じタンパク質と比較して、薬物分子のインビボでの血清半減期を延長する。半減期延長部分の例としては、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質(MBP)、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン、又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、半減期延長部分は、HSAに対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含み得る。他の例では、半減期延長部分は、免疫グロブリンドメイン、例えば、Fcドメイン、例えば、ヒトIgG1のFcドメイン、又はそのバリアント若しくは誘導体を含み得る。一実施形態では、半減期延長部分は、HSAに対する結合特異性を持つアンキリン反復ドメインを含み、当該アンキリン反復ドメインは、配列番号65~67のいずれか1つとの少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0297】
プロドラッグ分子の成分は、結合部分及び薬物分子がプロテアーゼ切断可能なリンカーによって連結されるという条件で、任意の順序で組み合わせてもよい。一実施形態では、プロドラッグ分子中の異なる成分の配向は、N末端からC末端へ向かって、(TAA結合ドメイン)-(CD3結合ドメイン)-(プロテアーゼ切断可能なリンカー)-(結合部分)-(半減期延長部分)である。
【0298】
核酸及び方法
本発明は更に、本明細書で定義される設計されたアンキリン反復ドメインを含む結合部分をコードする、核酸に関する。そのような核酸の例は、配列番号21~24によって提供される。本発明は更に、当該核酸を含む、宿主細胞に関する。
【0299】
本発明は更に、本明細書で定義される結合部分を作製する方法であって、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で本明細書で定義される宿主細胞を培養することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、当該宿主細胞は、真核宿主細胞である。他の実施形態では、当該宿主細胞は、原核宿主細胞である。一実施形態では、結合部分を作製する方法は、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養することを含み、当該結合部分は、設計されたアンキリン反復ドメインを含み、当該宿主細胞は、例えばE.coliなどの原核宿主細胞である。別の実施形態では、結合部分を作製する方法は、当該組換え結合タンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養することを含み、当該結合部分は、抗体を含み、当該宿主細胞は、例えば、CHO細胞などの真核宿主細胞である。
【0300】
医薬組成物
本発明は更に、本明細書に記載の結合部分、組換え結合タンパク質又はプロドラッグと、薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物はまた、本明細書中に記載される核酸と、薬学的に受容可能なキャリア又は賦形剤と、を含んでもよい。
【0301】
当該医薬組成物の使用及びそれを用いる治療方法も本明細書に記載されている。本発明に包含される方法及び使用は、以下により詳細に記載されている。医薬組成物、方法及び使用により、医薬組成物を作製するために使用される薬物分子によって治療される疾患適応症を治療することに留意されたい。
【0302】
本明細書に記載の医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法を用いて調製することができる。
【0303】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい。標準的な医薬担体としては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水又は水/油エマルジョンなどのエマルジョン、及び様々な種類の湿潤剤が挙げられる。
【0304】
医薬組成物は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアロゾル推進剤、空気置換剤、アルカリ化剤、抗硬化剤、抗凝固剤、抗菌防腐剤、抗酸化剤、消毒剤、基材、結合剤、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗剤、希釈剤、消毒薬、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、充填剤、フィルム形成剤、調味料、香味料、フローエンハンサー、ゲル化剤、造粒剤、保湿剤、潤滑剤、粘膜付着剤、軟膏基剤、軟膏、油性ビヒクル、有機基剤、パステル基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、防腐剤、封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶剤、安定剤、坐剤基剤、界面活性剤、界面活性物質、懸濁化剤、甘味剤、治療剤、増粘剤、張性剤、毒性剤、増粘剤、吸水性剤、水混和性共溶媒、軟水剤、又は湿潤剤を含む、任意の他の薬学的に許容される成分を含むことができる。例えば、参照によりその全体が組み込まれる、Handbook of Pharmaceutical Excipients,Third Edition,A.H.Kibbe(Pharmaceutical Press,London,UK,2000)を参照されたい。参照によりその全体が組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)。
【0305】
医薬組成物は、生理学的に適合性のあるpHを達成するように製剤化することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、例えば、約4又は約5~約8.0、又は約4.5~約7.5、又は約5.0~約7.5であり得る。例示的な実施形態では、医薬組成物のpHは、約5.5~約7.5である。
【0306】
一実施形態では、本発明は、T細胞活性化又はNK細胞活性化などの免疫細胞活性化を、それを必要とする対象において行う方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を、当該対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0307】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、インビボで活性薬物分子の放出を制御する方法に関する。
【0308】
別の実施形態では、本発明は、対象を治療する方法であって、有効量の本明細書で定義される医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、本方法は、増殖性疾患を治療する方法である。いくつかの実施形態は、本方法は、がんを治療する方法である。
【0309】
別の実施形態では、本発明は、療法に使用するための、本明細書で定義される医薬組成物に関する。好ましくは、本明細書で定義される医薬組成物は、増殖性疾患の治療で使用するために提供される。より好ましい実施形態では、増殖性疾患は、がんである。
【0310】
本発明の医薬組成物は、典型的には、薬物分子に典型的に関連する有害作用に関して重大なリスクを有すると同定された対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物である。好ましい実施態様では、対象は、ヒトである。
【0311】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の単回投与が十分であり得る。他の実施形態では、反復投与が必要であり得る。対象の年齢及び全般的な健康状態、並びに薬物分子の性質及び典型的な投与レジメンなどの様々な因子が、投与の回数及び頻度に影響を及ぼす。
【0312】
本明細書に記載の医薬組成物は、非経口、経鼻、経口、肺、局所、膣内、又は直腸投与などの任意の好適な投与経路を介して対象に投与することができる。非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含むことができる水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。詳細については、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986))を参照されたい。
【実施例
【0313】
材料及び方法
以下に開示の出発物質及び試薬は、当業者に既知であり、市販されている、及び/又は周知の技術を用いて調製することができる。
【0314】
材料
化学物質はSigma-Aldrich(USA)より購入した。オリゴヌクレオチドはMicrosynth(Switzerland)より購入した。特に明記しない限り、DNAポリメラーゼ、制限酵素、及び緩衝液は、New England Biolabs(USA)又はFermentas/Thermo Fisher Scientific(USA)より購入した。誘導性E.coli発現株は、例えば、E.coli XL1-blue(Stratagene、USA)又はBL21(Novagen、USA)などのクローニング及びタンパク質産生に使用した。SPR測定のためのNLCチップは、BioRad(BioRad、USA)製であった。HTRF試薬は、Cisbio(Cisbio、France)製であった。Pan-T細胞単離キットは、Miltenyi Biotec(Germany)製であった。細胞毒性検出(LDH放出による)キットは、Roche製であった。組換えプロテアーゼは、R&D Systems(Minneapolis,USA)又はSigma-Aldrich(USA)製であった。
【0315】
分子生物学
特に明記しない限り、方法は、既知のプロトコルに従って実施される(例えば、Sambrook J.,Fritsch E.F.及びManiatis T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory 1989,New Yorkを参照されたい)。
【0316】
設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリー
設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリーを生成する方法は、例えば、米国特許第7,417,130号、Binz et al.2003,上記引用、Binz et al.2004,上記引用に記載されている。このような方法により、ランダム化アンキリン反復モジュール及び/又はランダム化キャッピングモジュールを有する、設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリーを構築することができる。したがって、例えば、そのようなライブラリーは、固定されたN末端キャッピングモジュール又はランダム化されたN末端キャッピングモジュール、1つ以上のランダム化された反復モジュール、及び固定されたC末端キャッピングモジュール又はランダム化されたC末端キャッピングモジュールに基づいて組み立てることができる。好ましくは、そのようなライブラリーは、反復又はキャッピングモジュールのランダム化された位置にアミノ酸C、G、M、N(G残基の前)及びPのいずれも有することがないように組み立てられる。
【0317】
更に、そのようなライブラリー内のそのようなランダム化されたモジュールは、ランダム化されたアミノ酸位置を有する追加のポリペプチドループ挿入を含んでもよい。そのようなポリペプチドループ挿入の例は、抗体又はデノボ生成ペプチドライブラリーの補体決定領域(CDR)ループライブラリーである。例えば、そのようなループ挿入は、ガイダンスとして、ヒトリボヌクレアーゼLのN末端アンキリン反復ドメインの構造を用いて設計することができた(Tanaka,N.,Nakanishi,M,Kusakabe,Y,Goto,Y.,Kitade,Y,Nakamura,K.T.,EMBO J.23(30),3929-3938,2004)。2個のアンキリン反復の境界近くに存在するベータターンの中に10個のアミノ酸が挿入されているこのアンキリン反復ドメインと同様に、アンキリンリピートタンパク質ライブラリーは、アンキリン反復ドメインの1個以上のベータターンの中に挿入された可変長(例えば、1個~20個のアミノ酸)のランダム化されたループ(固定された位置及びランダム化された位置を有する)を含有することができる。
【0318】
アンキリン反復タンパク質ライブラリーのN末端キャッピングモジュールは、好ましくはRILLAA、RILLKA又はRELLKAモチーフを有し、アンキリン反復タンパク質ライブラリーの任意のそのようなC末端キャッピングモジュールは、好ましくはKLN、KLA又はKAAモチーフを有する。
【0319】
そのようなアンキリン反復タンパク質ライブラリーの設計は、標的と相互作用するアンキリン反復ドメインの既知の構造によって誘導され得る。タンパク質構造データバンク(Protein Data Bank、PDB)の独自の受託コード又は識別コード(PDB-ID)によって識別される、そのような構造の例は、1WDY、3V31、3V30、3V2X、3V2O、3UXG、3TWQ-3TWX、1N11、1S70、及び2ZGDである。
【0320】
N2C及びN3Cで設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリーなどの、設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリーの例が説明されている(米国特許第7,417,130号、Binz et al.2003,上記引用、Binz et al.2004,上記引用)。N2C及びN3Cの数字は、N末端及びC末端のキャッピングモジュール間に存在するランダム化反復モジュールの数を説明している。
【0321】
反復単位及びモジュール内の位置を定義するために使用される命名法は、Binz et al.(2004年)の上記引用に基づき、アンキリン反復モジュールとアンキリン反復単位との境界が、1アミノ酸位置シフトするという修飾を伴う。例えば、Binz et al.(2004年)の上記引用のアンキリン反復モジュールの位置1は、本開示のアンキリン反復モジュールの位置2に対応し、結果として、Binz et al.(2004年)の上記引用のアンキリン反復モジュールの位置33は、本開示の以下のアンキリン反復モジュールの位置1に相当する。
【0322】
EGFR特異的結合ドメイン
EGFRを例示的なTAAとして選択したのは、同じモデルにおける安全性及び有効性(すなわち、治療濃度域)のインビボでの同時試験を可能にするヒト-マウス交差反応性のアンキリン反復結合ドメインが利用可能であるからである。
EGFR特異的結合剤は、Binz et al.2004(上記引用)によって記載されたものと同様の方法で、ヒトEGFR(L25-S645)のビオチン化全長細胞外ドメイン(extracellular domain、ECD)に対するリボソームディスプレイによってDARPin(登録商標)ライブラリーから選択した。
ラウンド1からラウンド4まで、標的濃度を減少させた。得られたDARPin分子のプールをPCR増幅し、細菌発現用ベクターにライゲーションした。
Escherichia coli XL1-Blueを、以前に記載されたようなプラスミドDNAの単離のために、及び発現培養物の接種のために、得られたプラスミドプールで形質転換した。発現培養物を回収し、溶解し、得られたDARPin粗抽出物を、ヒトEGFR及びマウスEGFR-Fc(L25-S647、RnD Systems)のECDに結合する能力についてELISAによってスクリーニングした。0.1% Tween-20(Sigma)を含有するPBSを使用して、個々のインキュベーション工程の間に自動洗浄を実行した。
EGFRのサブドメインIII内のマスクされていないエピトープに対する結合剤を、均一時間分解蛍光(Homogeneous Time Resolved Fluorescence、HTRF)によって同定した。ビオチン化hEGFR(最終4nM)を10倍過剰のErbitux(登録商標)(Merck)とともに室温で1時間プレインキュベートした。検出試薬mAb抗6HIS-Tbクリプテート及びストレプトアビジン-d2(CisBio社製)を製造業者の推奨に従って希釈し、DARPin分子とともに最終10nMで添加した。結合シグナルを660nmで測定し、Infinite M1000 Pro装置(Tecan)を用いて620nmシグナルに対して正規化した。
【0323】
表面プラズモン共鳴(SPR)による組換えヒト及びマウスEGFRへのEGFR特異的アンキリン反復ドメインの結合
全てのSPR測定は、ProteOn(商標)XPR36 Protein Interaction Array System(Bio-Rad)を使用して実行した。ビオチン化一価抗EGFR DARPin(登録商標)を、hEGFRに対する親和性測定のために約48RU及び約55RUまで、又はmEGFR(ACRObiosystems)に対する親和性測定のために約66RU及び約127RUまで、それぞれ、NLCニュートラアビジンセンサーチップ上に捕捉した。0.005% Tween-20(Sigma)を含有するPBS(pH7.4)をフロー緩衝液として使用し、mEGFR標的の場合には1mg/mLのBSAを更に補充した。0.74nM~60nMのhEGFR又はmEGFRの3倍希釈系列を100μl/分の流速で180秒間注入し、解離を1800秒間記録した。捕捉されたDARPin分子を、10mMグリシン-HCl、pH2.5+1M NaClの単一パルスによって再生した。インタースポット(表面参照)及びブランク注入(緩衝液参照)を使用して、データを二重参照した。各個々の希釈セットをLangmuir-1:1モデルに適合させた。
【0324】
ヒト及びマウスEGFR ECDに対するヒト-マウス交差反応性EGFR結合剤の親和性をSPRによって測定した。表2は、一価形式のEGFR結合DARPin(登録商標)についての結合動態データを示し、これは、ヒトEGFR ECDに対する約470pMのKD及びマウスEGFR ECDに対する約490pMのKDを示す。
【0325】
【表2】
【0326】
組換えプロテアーゼによる切断実験
マトリックスメタロプロテイナーゼ(R&D Systems)を、使用前に製造業者によって記載されているようにp-アミノフェニル水銀アセテート(aminophenylmercuric acetate、APMA)で活性化した。基質(CD3-PDD CL)を、TBS-CB(50mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、10mM CaCl2、0.05%Brij-35)中で、5μMの2倍ストック濃度に希釈した。等容量のプロテアーゼ(反応速度に応じて10ng/mL~1000ng/mLの濃度)の添加を使用して反応を開始し、この反応は、適切に調節したヒートブロック内で37℃で実行した。規則的な間隔で、反応の試料を取り出し、直ちにSDSを含有するLabChip緩衝液と混合して、混合物の全てのタンパク質を変性させ、したがって反応を停止させた。これらの試料を、LabChip HT Protein Expressキャピラリー電気泳動システム(Perkin Elmer,USA)を用いて、3ドメインCD3-PDDの1ドメイン結合剤及び2ドメイン活性TCEへの切断について分析した。
【0327】
FCによるHCT116腫瘍細胞上のヒトEGFR及びJurkat wt細胞上のヒトCD3への結合
Flow Cytometer Attune Nxtを使用して、Jurkat細胞上のヒトCD3を用いてCD3結合の決定、及びHCT116腫瘍細胞を有する細胞上のhEGFRへの結合の決定を実行した。プロドラッグDARPin分子の滴定物を、ウェル当たり200’000細胞(Jurkat及びHCT116細胞の両方について)とともに4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、DARPin(登録商標)分子のCD3結合を、過剰な抗DARPin抗体を洗い流した後に添加した、対応する二次抗体抗ウサギIgG Alexa Fluor 488(4℃で30分間のインキュベーション)との1:1000希釈された抗DARPin(登録商標)抗体ミックス(4℃で1時間のインキュベーション)によって検出した。続いて、細胞を洗浄し、生死について染色し(aqua、1:1000、thermofisher)、Cytofix固定緩衝液(BD Biosciences)に再懸濁した。生細胞上に結合するAlexa Fluor 488の平均蛍光強度の中央値をフローサイトメトリーで測定し、GraphPad Prism 8を使用してデータをプロットした。
【0328】
T細胞活性化
CD3エンゲージDARPin分子の特異性及び効力を、CD8+T細胞上のCD25活性化マーカーを測定するFACSによるインビトロ短期T細胞活性化アッセイにおいて評価した。故に、1ウェル当たり100,000個のヒト汎Tエフェクター細胞及び20,000個のHCT116標的細胞を、600μMヒト血清アルブミンの存在下、37℃で48時間、プロドラッグ試料の段階希釈物と2連で共インキュベートした(E:T比5:1)。48時間後、細胞を洗浄し、1:5’000のLive/Dead FITC(Thermo Fisher)、1:250のマウス抗ヒトCD8 Pasific Blue(BD)、及び1:250のマウス抗ヒト-CD25 PerCP-Cy5.5(BC96、eBiosciences)抗体を用いて4℃で30分間染色した。洗浄及び固定後、細胞をFlow Cytometer Attune Nxt上で分析した。T細胞活性化を、Live/Dead陰性及びCD8陽性ゲートT細胞上のCD25陽性細胞を測定することによって評価した。FlowJoソフトウェアを用いてFACSデータを分析し、GraphPad Prism8を用いてデータをプロットした。アッセイを、3人の個々のヒトドナー由来の汎T細胞を用いて3回実行した。
【0329】
腫瘍細胞死滅:LDH放出によるインビトロ短期細胞毒性アッセイ。
CD3エンゲージDARPin分子の特異性及び効力を、LDH放出によるインビトロ短期細胞毒性アッセイによって評価した。エフェクター細胞及び標的細胞を、600μMのヒト血清アルブミン(生理学的濃度を模倣するため)の存在下で、5:1のE:T比で96ウェルプレート中、2連で共インキュベートした。pan-T細胞単離キット(Miltenyi)を使用することによって、ヒトPBMCから付着していない(untouched)T細胞を単離した。1ウェル当たり100,000個の精製された汎T細胞(エフェクター細胞)及び20,000個のHCT116細胞(標的細胞)を、選択されたプロドラッグDARPin分子の段階希釈物とともにインキュベートした。様々な対照を含めた(すなわち、T細胞のみ、腫瘍細胞のみ、Triton対照、結合部分のみ)。48時間インキュベートした後、細胞をスピンダウンし、100μl/ウェルの上清及び100μl/ウェルのLDH反応混合物(LDH検出キット;Roche Applied Science)を30分間インキュベートした。吸光度を、TECAN infinite M1000Proリーダーによって492nm~620nmで測定した。バックグラウンド補正後、GraphPad Prism8を使用してOD値をプロットした。アッセイを、3人の個々のヒトドナー由来の汎T細胞を用いて3回実行した。
【0330】
インビボ実験
インビボ実験は、雌NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull免疫不全マウス系統(NCG)を使用してTranscure SA(TCS)(Archamps,France)によって実行した。マウスを、ヒト臍帯血から単離された造血幹細胞(CD34+、HLA-B35+)を使用して、TCS独自のヒト化プロトコルに従ってヒト化した(hu-マウス)。ヒト化マウスを選択し、腫瘍細胞生着の1週間前に、ヒトサイトカインIL-3、IL-4、IL-15、Flt3-L及びGM-CSFの一過性発現に基づく流体力学的ブーストを受けることによって、T細胞、NK細胞及び骨髄細胞集団について増強した。25%を超えるヒト化率(hCD45/総CD45)を有するマウスのみを使用した。
ATCCの推奨に従って、HCT-116腫瘍細胞をインビトロで増殖させた。生存率チェックの後、対数増殖期の腫瘍細胞をPBS中で動物の右脇腹に皮下注射した(3×106個の細胞)。腫瘍生着を実験0日目(D0)として定義した。
全てのインビボ手順は、地方倫理委員会(CELEAG)によって審査され、承認されている。
【0331】
実施例1:CD3特異的結合ドメインに対して結合特異性を有するアンキリン反復ドメインの選択
概要
リボソームディスプレイ(Hanes,J.and Pluckthun,A.,PNAS 94,4937-42,1997)を用いて、二重特異性T細胞エンゲージャー分子(TCE)のCD3特異的結合ドメインに対して結合特異性を有する複数のアンキリン反復ドメインを、Binz et al.2004(上記引用)によって説明されているものと同様の方法で、DARPin(登録商標)ライブラリーから選択し、具体的な条件及び追加の選択解除ステップは以下であった。CD3特異的結合ドメインに対する選択されたクローンの結合及び特異性を、E.coli粗抽出物ホモジニアス時間分解蛍光測定(HTRF)によって評価したところ、CD3特異的結合ドメインに特異的に結合する複数の結合タンパク質が首尾よく選択されたことが示された。これらの最初に同定された結合タンパク質を更に開発して、TCEのCD3特異的結合ドメインに対して更に高い親和性及び/又はそれからの更に低いオフレートを有する結合タンパク質を得た。例えば、配列番号1~12のアンキリン反復ドメインは、二重特異性T細胞エンゲージャー分子のCD3特異的結合ドメインに対する結合特異性並びに高い結合親和性及び/又はそれからの低いオフレートを有するアンキリン反復ドメインを含む結合タンパク質のアミノ酸配列を構成する。
【0332】
標的及び選択材料としてのCD3特異的結合ドメイン
二重特異的TCEのCD3特異的結合ドメインを標的及び選択材料として使用した。そのような標的ドメインは、配列番号13~17のポリペプチドから選択された。標的タンパク質を、標準的な方法を用いてビオチン化した。
【0333】
リボソームディスプレイによるCD3特異的結合ドメインに対して特異性を有するアンキリン反復タンパク質の選択
設計されたアンキリン反復タンパク質ライブラリー(N2C及びN3C)を、標的として使用されるCD3特異的結合ドメイン(配列番号13)に対するリボソームディスプレイ選択において使用した(Binz et al.,Nat Biotechnol 22,575-582(2004);Zahnd et al.,Nat Methods 4,269-279 (2007);Hanes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,14130-14135(1998)を参照されたい)。標的及びライブラリーごとに4回の選択ラウンドを行った。4ラウンドの選択は、標準的なリボソームディスプレイ選択を採用し、標的濃度を減少させ、洗浄ストリンジェンシを増加させて、ラウンド1からラウンド4への選択圧力を増加させる(Binz et al.2004,上記引用)。各選択ラウンドの後の逆転写(RT)-PCRサイクルの数を、結合剤の濃縮により、収率に合わせて調整して、連続的に減少させた。次いで、得られた3つのプールを、結合剤スクリーニングに供した。
【0334】
選択されたクローンは、粗抽出物HTRFによって示されるように、TCEのCD3特異的結合ドメインに特異的に結合する。
溶液中でTCEのCD3特異的結合ドメインに特異的に結合する個々に選択されたアンキリン反復タンパク質を、標準的なプロトコルを用いて、アンキリン反復タンパク質発現Escherichia coli細胞の粗抽出物を使用するホモジニアス時間分解蛍光測定(HTRF)アッセイによって同定した。リボソームディスプレイによって選択されたアンキリン反復タンパク質クローンを、形式H-C-X(式中、Hはヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメインを示し、CはCD3結合ドメイン(配列番号13)を示し、Xは選択されたアンキリン反復タンパク質を示す)でpQE30(Qiagen)発現ベクターの誘導体にクローニングした。E.coli XL1-Blue(Stratagene)に形質転換し、LB-寒天(1%のグルコース及び50μg/mLのアンピシリンを含有)上に播種し、次いで、37℃で一晩インキュベートした。200μlの成長培地(1%のグルコース及び50μg/mLのアンピシリンを含有するLB)を含有する96ウェルプレートに単一のコロニーを播種し(単一のウェル中に各クローン)、37℃で、800rpmで振盪しながら、一晩インキュベートした。50μg/mLのアンピシリンを含有する150μlのTB培地に、新鮮な96深型ウェルプレートで10μlの一晩培養物を接種した。37℃及び850rpmで120分間インキュベートした後、発現をIPTG(最終濃度0.5mM)で誘導し、6時間続けた。プレートの遠心分離によって細胞を収集し、上清を廃棄し、ペレットを-20℃で一晩凍結させた後、10μlのB-PERII(Thermo Scientific)中に再懸濁し、振盪(600rpm)しながら室温で1時間インキュベートした。次いで、160μlのPBSを添加し、細胞片を遠心分離によって除去した(3220gで10分間)。各溶解したクローンの抽出物を、12.5nM(最終濃度)のビオチン化CD3結合ドメイン、1:300(最終濃度)の抗FLAG-D2 HTRF抗体-FRET受容体コンジュゲート(Cisbio)及び1:300(最終濃度)の抗strep-Tb抗体FRETドナーコンジュゲート(Cisbio,France)と一緒に、PBSTB(0.1%のTween20(登録商標)及び0.1%(w/v)のBSA、pH7.4を補充したPBS)で1:800希釈(最終濃度)として384ウェルプレートのウェルに加え、暗所にて室温で120分間インキュベートした。HTRFを、Tecan M1000上で、340nm励起波長、並びにバックグラウンド蛍光検出のための620±10nm発光フィルター及び特異的結合について蛍光シグナルを検出するための665±10nm発光フィルターを用いて読み取った。同じ溶解物を、12.5nM(最終濃度)のビオチン化HSA、1:300(最終濃度)の抗FLAG-D2 HTRF抗体-FRETアクセプターコンジュゲート(Cisbio)、及び1:300(最終濃度)の抗strep-Tb抗体FRETドナーコンジュゲート(Cisbio、France)と、384ウェルプレートのウェルに混合し、暗所にて室温で120分間インキュベートした。HTRFを、Tecan M1000上で、340nm励起波長、並びにバックグラウンド蛍光検出のための620±10nm発光フィルター及び特異的結合について蛍光シグナルを検出するための665±10nm発光フィルターを用いて読み取った。各溶解クローンの抽出物を、ビオチン化CD3結合標的ドメインへの結合の阻害及びビオチン化HSAへの妨害されない結合について試験して、CD3結合ドメインへの特異的結合を評価した。
【0335】
標的タンパク質に対してより低い親和性を有する結合タンパク質の更なる分析及び選択
合計744個の結合タンパク質が最初に同定された。結合プロファイルに基づいて、176個の候補を選択して96ウェルフォーマットで発現させ、DNA配列決定と並行して均質になるまで精製した。候補を、サイズ排除クロマトグラフィによって生物物理学的に特徴付けた。これらから、24個の結合剤を選択し、クローニングし、X形式で作製した。一価の精製された結合剤を、サイズ排除クロマトグラフィ、Sypro-Orange熱安定性評価(Niesen et al.,Nat Protoc 2,2212-2221,(2007)を参照されたい)、ProteOn表面プラズモン共鳴(SPR)標的親和性評価、ELISA、標的タンパク質競合HTRF実験、及び/又はSDS-PAGEによって生物物理学的に特徴付けた。特徴付けたこれら24個の結合剤から、結合剤#1(配列番号1)を親和性ダウンチューニングのために選択した。
CD3結合ドメインの同じエピトープを異なる親和性で結合するダウンチューニングされた結合剤のパネルを、結合剤#1の選択されたアミノ酸残基をアラニンで置換することによって生成した。ダウンチューニングされた結合タンパク質の親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって検証した。結合剤#2~#12(配列番号2~12)は、この方法によって生成され、親結合剤#1に由来した。総合すると、このアプローチから得られた以下の12個の結合タンパク質(配列番号1~12)は、本発明の結合部分を構成する:
結合剤#1(配列番号1)、結合剤#2(配列番号2)、結合剤#3(配列番号3)、結合剤#4(配列番号4)、結合剤#5(配列番号5)、結合剤#6(配列番号6)、結合剤#7(配列番号7)、結合剤#8(配列番号8)、結合剤#9(配列番号9)、結合剤#10(配列番号10)、結合剤#11(配列番号11)、及び結合剤#12(配列番号12)。
【0336】
結合剤#1~結合剤#12の生物物理学的特性の分析のため、及び標的タンパク質に対するそれらの結合親和性の決定のため(実施例2を参照されたい)、より容易な精製のために、N末端で融合されたHisタグ(配列番号25)を有する結合部分をコードする発現ベクターを構築した。
【0337】
分析のために選択された結合タンパク質の高レベル及び可溶性発現。
更なる分析のために、結合剤をE.coli細胞において発現させ、標準的なプロトコルに従ってそれらのHisタグを使用して精製した。50mLの静置一晩培養物(TB、1%のグルコース、50mg/lのアンピシリン;37℃)を使用して、1000mLの培養物(TB、50mg/lのアンピシリン、37℃)に接種した。600nmで1.0~1.5の吸光度において、培養物を0.5mM IPTGで誘導し、振盪しながら37℃で4~5時間インキュベートした。培養物を遠心分離し、得られたペレットを、25mLのTBS500(50mMのTris-HCl、500mMのNaCl、pH8)中に再懸濁し、溶解した(超音波処理又はフレンチプレス)。溶解後、試料を50KU DNase/mLと混合し、62.5℃で30分間の熱処理工程の前に15分間インキュベートし、遠心分離し、上清を回収し、濾過した。Triton X100(1%(v/v)の最終濃度)及びイミダゾール(20mMの最終濃度)をホモジネートに添加した。タンパク質を、Ni-ニトリロ三酢(Ni-NTA)酸カラム、続いて、AKTAxpress(商標)システム上のサイズ排除クロマトグラフィで、当業者に既知の標準的なプロトコル及び樹脂に従って精製した。TCE CD3結合ドメインに対して結合特異性を有する高可溶性アンキリン反復タンパク質は、4~12%のSDS-PAGEから推定される95%超の純度で、E.coli培養物から精製した(培養物1リットル当たり200mgまでのアンキリン反復タンパク質)。
【0338】
実施例2:SPR結合アッセイ
本発明の結合部分の重要な特徴は、薬物分子に対するその親和性である。関連する態様には、薬物分子からの結合部分のオフレート及び得られる遮断半減期が含まれる。表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して、TCE薬物分子のCD3結合ドメインに対するアンキリン反復結合ドメインの結合親和性を決定した。全てのSPRデータを、ランニングバッファーとしてPBS-T(0.005%のTween 20)を用いてBio-Rad ProteOn XPR36装置を使用して生成した。新しいニュートラアビジンセンサーチップ(NLC)を空気で初期化し、Bio-Radマニュアルに従って調整した。SPRデータは、NLCチップ上に捕捉されたビオチン化結合剤#1~#4(上の実施例1に列挙されるような)及びそれぞれ分析物として用いた配列番号13~17を有するCD3特異的結合ドメインへの結合について生成した。データは、25℃で、50nM(結合剤#1)又は300nM(結合剤#2、#3及び#4)のいずれかで開始する標的の1:3希釈系列を用いて生成し、40分間のオン速度(kon)、オフ速度(koff)を測定し、結合剤#1及び#2についての平衡解離定数(KD)を導出した。結合剤#3及び#4についての解離定数(KD)を、平衡適合によって得た。全ての結合剤-CD3特異的結合ドメインの組み合わせについて得られたKD値を図2に示し、より詳細な情報を表3に示す。
全ての結合剤は、2桁のpM~3桁のnMの範囲のKD値を示した。したがって、これらの実験は、結合剤#1~#4が、TCE薬物分子において使用されるCD3特異的結合ドメインに対して広範な親和性を包含することを示した。
【0339】
【表3】
【0340】
実施例3:CD3-PDDは、抗CD3結合ドメイン及び互いに異なる親和性を有する結合剤を使用して構築することができる
CD3-PDDは、CD3に対する親和性が異なる抗CD3結合ドメイン及びこれらに対する異なる結合剤を使用して構築することができる。図3は、3人のドナーのうちの代表的な1人からのHCT116腫瘍細胞及び汎T細胞を使用する標準的な腫瘍細胞死滅アッセイを示す。CD3に対してより低い親和性を有する抗CD3結合ドメインC7v119又はCD3に対してより高い親和性を有する抗CD3結合ドメインC7v122のいずれかを含む活性TCE(抗EGFR×抗CD3)を、抗CD3ドメインに対する2つの異なる結合剤(結合剤#3又は#4)を含むそれらの対応するCD3-PDD NCL対応物と比較した。
図2に示されるそれぞれのCD3結合ドメインに対する結合剤の測定された親和性と一致して、両方のCD3結合ドメインに対してより高い親和性を有する結合剤#4は、より低い親和性の結合剤#3よりも全体的に高いマスキング効率を示した。加えて、C7v122 CD3結合ドメイン(図3B)の状況における結合剤#3及び#4のマスキング効率は、CD3結合ドメインC7v119(図3A)を有する構築物よりも高いことが見出された。EC50値(単位:pM)を表4に示す。
【0341】
【表4】
n.a.:該当なし
【0342】
実施例5:CD3-PDDのマスキング効率は、標的細胞上の抗原発現レベルに依存する
マスキング効率に対する腫瘍関連抗原(TAA)発現レベルの影響を理解するために、2つの異なるEGFR発現腫瘍細胞株、すなわち、扁平上皮がん細胞株A431及び結腸直腸がん細胞株HCT116を用いてT細胞活性化アッセイを実行した。QUIFIKITによる定量の結果、A431細胞上には約230kのEGFR分子(EGFR+++)が、HCT116細胞上には約18kのEGFR分子(EGFR+)が存在した。これら2つの細胞株と活性TCE又は切断不可能なCD3-PDD NCL(いずれもCD3結合ドメイン結合剤C7v14を含む)を使用したT細胞活性化実験を図4に示し、これは、EGFR中~低発現HCT116細胞については、マスキングウィンドウ(すなわち、活性TCEとCD3-PDD NCLとの間のEC50差)が非常に大きいのに対して、EGFR高発現A431細胞については、マスキングウィンドウがわずか約200倍であることを実証している。腫瘍抗原発現レベルに対するマスキング効率のこの依存性はまた、本明細書中に記載されるものと類似のプロドラッグ概念について、Geiger et al.,(Nat Communication,2020)によって記載されている。
表5は、T細胞活性化アッセイにおいて測定されたEC50値(単位:pM)をまとめたものである。
【0343】
【表5】
【0344】
実施例6:組換えプロテアーゼは、CD3-PDD CLを効率的にインビトロで切断する
切断不可能なプロドラッグCD3-PDD(NCL)並びに切断可能なリンカー#2及びCD3結合ドメインC7v119又はC7v122のいずれかを含有する切断可能なCD3-PDD(CL)を、マトリプターゼ(1:10’000酵素:基質比)の存在下又は非存在下でインキュベートし、37℃で20時間インキュベートした後、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis、SDS-PAGE)で切断を分析した(図5)。CD3-PDD NCLは、マトリプターゼによって影響を受けなかったが、C7v119又はC7v122のいずれかを含む2つのCD3-PDD CLは、主に1ドメイン(1D)結合剤及び2ドメイン(2D)活性TCEに切断された。次いで、切断されたCD3-PDD CLを、図10に示されるように、T細胞活性化及び腫瘍細胞死滅アッセイにおいて切断前対照として利用し、活性TCEとほぼ同様に機能的であることが証明された。
次の工程において、3つの異なる切断可能なリンカー配列(リンカー#1~#3)を含有するCD3-PDD CL、並びにCD3-PDD NCLを、5つの異なる腫瘍関連プロテアーゼ、すなわちマトリプターゼ、ウロキナーゼ、MMP-2、-7、及び-9を用いて詳細に調査した。各プロテアーゼによる各構築物の切断速度は、切断進行曲線を記録し、得られた1D及び2D断片をキャピラリー電気泳動分離装置(LabChip)で分析することによって決定した。切断速度(酵素分子及び1分当たりの切断されたCD3-PDD CL分子)を計算し、図6に示す。リンカー#1はマトリプターゼ及びウロキナーゼによってのみ切断を呈し、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix-metalloprotease、MMP)はこれらの構築物を切断することができなかった。対照的に、リンカー#2は、MMP-7を除く調査した全てのプロテアーゼによって効率的に切断されたが、リンカー#3は、5つ全てのプロテアーゼによって切断された。リンカー#2の全体的な切断速度はリンカー#3よりも優れていたので、リンカー#2を含有する構築物を更なる調査のために選択した。
【0345】
実施例7:CD3-PDDは、標的細胞上のTAAと、リンカーの切断の両方の存在下でのみ活性である
条件付きで活性化されるCD3-プロドラッグの概念は、論理ANDゲートの形態を構成する:事象1(TAA結合ドメインがTAAに結合する)、並びに事象2(腫瘍関連プロテアーゼがリンカーを切断することによってCD3-結合剤を遮断しない)が存在する場合にのみ、薬物は、T細胞、薬物及び標的細胞の間で三分子複合体を形成することができる。したがって、事象1又は2のいずれかが欠けていると、CD3-PDDは、この三分子複合体を形成することができないはずである。
この仮説を調査するために、本発明者らは、CD3-PDD NCL及びCLが、腫瘍細胞上のTAAの非存在下で(事象1)、又はマスクされたCD3結合ドメインを用いて(事象2)、T細胞活性化及び腫瘍細胞死滅を示すかどうかを確認した。したがって、HCT116のEGFRノックアウト細胞株を生成し、腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化について野生型細胞株と一緒に試験した(それぞれ図7A及び図7Bを参照されたい)。TAA EGFRの非存在下では、いずれの構築物も腫瘍細胞死滅又はT細胞活性化を呈さず、事象1が活性の前提条件であることが確認された。CD3結合ドメインと結合剤との間に切断不可能なリンカーを含有するCD3-PDD NCLについては、腫瘍細胞死滅又はT細胞活性化に関して活性は観察されなかった。対照的に、切断可能なリンカー#2を含有するCD3-PDD CLについては、腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化を観察することができたが、効力及び有効性レベルはより低かった。この観察は、インビトロアッセイにおいて細胞によって分泌されるプロテアーゼによるCD3-PDD CL分子の部分的切断に起因するものである(図8を参照されたい)。
表6は、1人の代表的なドナーのEGFR+又はEGFR KO HCT116腫瘍細胞及び汎T細胞のいずれかを使用する腫瘍細胞死滅及びT細胞活性化アッセイにおいて測定されたEC50値(単位:pM)をまとめたものである。
【0346】
【表6】
n.a.:該当なし
【0347】
実施例8:インビトロ細胞アッセイにおいて分泌されるプロテアーゼは、CD3-PDD CLの活性化をもたらす
CD3-PDD CLは、切断不可能なCD3-PDD NCLについて観察されたものよりも高いT細胞活性化及び腫瘍細胞死滅活性を再現可能に呈したことが観察されている。優勢な仮説は、腫瘍細胞又はT細胞によって分泌されるプロテアーゼがCD3-PDD CLを切断し、したがってそれを活性化させるというものであった。この仮説を確認するために、汎T細胞及びA431腫瘍細胞のT細胞活性化実験の上清を実験の終了時(すなわち、48時間のインキュベーション後)に回収し、免疫沈降及びウエスタンブロットによって分析した(図8)。実際、2つの異なるリンカー配列(リンカー#2及び#3)を有する構築物は、それぞれ35kDa及び17kDaにおける1ドメイン(1D)及び2ドメイン(2D)バンドの存在によって例示されるように、有意な程度まで切断されることが見出された。切断の程度はまた、それぞれのCD3-PDD CL構築物のEC50と相関した。対照的に、切断不可能なリンカーを有するCD3-PDD NCLは、いかなる切断も示さず、100倍超のマスキングウィンドウを示した(活性TCEとCD3-PDD NCLとの間のEC50差)。
【0348】
実施例9:CD3-PDD構築物は、抗HSA結合ドメインをそれらのC末端に結合させることによって半減期を延長できる
CD3-PDD構築物は、抗HSA結合ドメインをそれらのC末端に結合させることによって容易に半減期を延長(HLE)することができる。これは、腫瘍関連プロテアーゼによるプロテアーゼ切断可能なリンカーの切断時に、長寿命のCD3-PDD分子を短寿命の活性TCE(抗TAA×抗CD3)に変換することができるという利点をもたらす。短寿命の活性TCEは、腫瘍から出て循環に入ると迅速に除去され、副作用が少なくなる。
【0349】
抗CD3ドメイン上の結合剤のマスキング効果に対するHSAの潜在的に負の立体効果を調査するために、本発明者らは、活性TCE、半減期延長されていないCD3-PDD NCL、及び半減期延長されたCD3-PDD NCLを、汎T細胞及びHCT116腫瘍細胞を用いた標準的な腫瘍死滅アッセイにおいて、600μMのHSAの存在下で比較した。非HLE及びHLE CD3-PDD構築物の両方を、遮断相互作用をより緊密にすることによって立体障害に潜在的に対抗するために、2つの異なる結合剤に関して研究した。結合剤#1はCD3結合ドメインに対して高い親和性(<1nMのKD)を呈し、結合剤#3はCD3結合ドメインに対してより低い親和性(>100nMのKD)を示す(それぞれ図9A及び図9Bを参照されたい)。
より低い親和性の結合剤#3(>100nMのKD)を含有するCD3-PDD構築物は、それらのC末端に結合した抗HSA結合ドメインによるマスキング効果のわずかな低下を示すことが見出され、したがって、実際にHSAの存在が結合剤-抗CD3ドメイン相互作用に対してわずかに負の立体効果を有し得ることが示された。しかしながら、マスキング効率におけるこのわずかな損失は、CD3-PDD構築物に対してより高い親和性の結合剤を選択することによって克服することができる。
【0350】
実施例10:細胞結合
HCT116腫瘍細胞上のヒトEGFR及びJurkat wt細胞上のヒトCD3への結合をFCによって評価し、ここで、DARPin分子を蛍光標識抗DARPin抗体を用いて検出した。この目的のために、活性TCE(抗EGFR×抗CD3)及びCL又はNCLを有するCD3-PDD構築物を直接比較した。予想通り、HCT116細胞への結合は、試験した全ての構築物について350~600pMの範囲のEC50値と同等であった(図10、第1列及び表7を参照されたい)。
Jurkat wt細胞への結合は、より低い親和性CD3結合剤C7v119(配列番号15)(EC50>10nM、図10、第2列を参照されたい)を含む活性TCEと比較して、より高い親和性のCD3結合剤C7v122(配列番号16)(EC50=7.9nM)を含む活性TCEについてわずかに強いことが見出された。CL又はNCLを有するCD3-PDD構築物は、CD3を介したT細胞への結合を示さず、したがって、マスキング概念の機能性が確認された。
【0351】
【表7】
【0352】
実施例11:T細胞活性化/腫瘍細胞死滅アッセイ
T細胞活性化及び腫瘍細胞死滅アッセイのために、標的腫瘍細胞及びエフェクターT細胞(健康な血液ドナーからの汎T細胞)を、5:1のエフェクター対標的細胞比で組み合わせ、プロドラッグ試料を添加し、混合物を37℃で48時間インキュベートした。死滅した腫瘍細胞のLDH放出について上清を分析し、CD8+T細胞上の活性化マーカー(CD25)のレベルをFACS(CD25モノクローナル抗体(BC96)、PerCP-Cyanine5.5、eBioscience(商標)を使用)によって決定した。様々な対照を含めた(すなわち、T細胞のみ、腫瘍細胞のみ、Triton対照、結合部分のみ)。
アッセイを、3人の個々のヒトドナー由来の汎T細胞を用いて3回実行した。
この目的のために、CD3結合ドメインC7v119(配列番号15)(CD3に対してより低い親和性)又はC7v122(配列番号16)(CD3に対するより高い親和性)のいずれかを含む活性TCE(抗EGFR×抗CD3)、CD3-PDD NCL、CD3-PDD CL、及び予め切断されたCD3-PDD CLを直接比較した。全てのCD3-PDD構築物について、結合剤#4(配列番号4)を使用して、CD3結合ドメインC7v119又はC7v122をマスクした。
【0353】
活性TCE及び切断前CD3-PDD CLは、T細胞活性化(図10、第3列及び表8を参照されたい)及び腫瘍細胞死滅アッセイ(図10、第4列及び表8を参照されたい)において、1桁~低い2桁のpM範囲のEC50値を示した。活性TCE及び予め切断されたCD3-PDD CLと比較して、CD3-PDD CL構築物は、T細胞活性化及び腫瘍細胞死滅アッセイにおいて約10~20倍高いEC50値を示したが、これはおそらく、試験されたインビトロ条件下で存在するプロテアーゼによるそれらの制限された切断に起因する。
加えて、C7v122ドメインを含む構築物(図10、下列及び表8を参照されたい)と比較して、CD3結合ドメインC7v119を含むCD3-PDD CL構築物(図10、上列及び表8を参照されたい)では、より低い効力及びより低い有効性が観察された。したがって、C7v122ベースの構築物を、それぞれの対照とともにPoCインビボ研究に移した。
CD3-PDD NCL構築物は、T細胞活性化も腫瘍細胞死滅も引き起こさなかった。
【0354】
【表8】
【0355】
実施例12:切断可能なCD3-PDDは、HCT116腫瘍細胞を生着させたCD34+hu-マウスにおいてインビボで有効であり、忍容性が良好である
T細胞結合、T細胞活性化及び腫瘍細胞死滅について実施例10及び11で試験したより高い親和性CD3結合ドメインC7v122(配列番号16)を使用した構築物(図10)を、概念実証インビボ試験のために選択した。このインビボ研究では、いずれの分子も半減期が延長されなかった。
インビボ研究の目的は、造血幹細胞(CD34+)でヒト化され、ヒト骨髄細胞の存在について最適化された免疫不全マウスを使用して、ヒト結腸がん異種移植モデル(HCT116)における切断可能なCD3-PDDの耐容性及び有効性を評価することであった。EGFR結合剤のマウス交差反応性に起因して、この動物モデルは、治療濃度域について、すなわち抗腫瘍有効性及び安全性の両方について同時に評価することを可能にした。24匹のhu-マウスに、D0に3×106個のHCT-116細胞を皮下生着させた。流体力学的プラスミド送達(IL-3、IL-4、Flt3L、IL-15及びGM-CSFのサイトカイン追加免疫)を、腫瘍細胞生着の7日前に実行した。腫瘍が35mm3の平均容積に達したら、マウスを、それらの腫瘍体積、hCD3 T血球数、ヒト型化率、及び臍帯血ドナーに従って、以下のように6匹のマウスの4群に無作為化した。
・第1群:ビヒクル対照(PBS+0.05% Tween-20)
・第2群30nmol/kgの活性TCE対照
・第3群30nmol/kgのプロテアーゼ切断可能なリンカー(CL)を有するCD3-PDD
・第4群30nmol/kgの切断不可能なリンカー(non-cleavable linker、NCL)を有するCD3-PDD
処置関連毒性の誘導のためにD8、D9、D11、及びD18に4回の注射のみを受けた活性T細胞エンゲージャー対照群を除いて、全ての群について、毎日の腹腔内注射をD8に17日間開始した。血液を、血漿収集及び下流のサイトカイン測定のために、D-1に最初の処置から4時間後(D8)に腫瘍細胞生着の前に収集した。腫瘍体積を週に3回モニターした。体重及び臨床健康スコアを、処置開始まで週に3回、及び処置期間中は毎日測定した。
切断可能なCD3-PDDは、活性な遮断されていないTCEで観察されたものと同様の強い抗腫瘍活性を実証した(図11B)。CD3-NCLの抗腫瘍有効性は、活性TCEとビヒクルとの中間であった。しかしながら、最も重要なことには、CD3-PDD CL及びNCLの両方を、毒性の徴候なしに毎日投与することができたのに対して、活性TCEの投与は、強い毒性のために停止しなければならず、3/6匹の動物の損失さえ引き起こした。この毒性は、2回の注射後に既に活性TCEで処置された群の体重(BW)の強い減少(図11D)、並びにこの群の動物の臨床健康スコアの急速な低下(図11E)に表される。注射前及び最初の用量の注射の4時間後のマウスの血清から決定されたサイトカインは、CD3-PDD CL及びNCLで処置した群のマウスについてはサイトカインの上昇をほとんど示さなかったが、活性TCEで処置した動物については有意に上昇したレベルを示した。要約すると、CD3-PDD CLで処置された動物は、活性TCEの有害な毒性作用なしに強い抗腫瘍効力を示した。
【0356】
本明細書は、明細書内で引用された参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例示を提供し、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明に包含されることを容易に認識する。本開示で引用された全ての刊行物、特許、及びGenBank配列は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか、又は一致しない限り、本明細書は、任意のそのような資料に優先する。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
【0357】
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0358】
【表9-1】
【0359】
【表9-2】
【0360】
【表9-3】
【0361】
【表9-4】
【0362】
【表9-5】
【0363】
【表9-6】
【0364】
【表9-7】
【0365】
【表9-8】
【0366】
【表9-9】
【0367】
【表9-10】
【0368】
【表9-11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
【配列表】
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【国際調査報告】