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特表2024-509891抗HER2抗体-免疫アゴニストコンジュゲート及びその使用
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  • 特表-抗HER2抗体-免疫アゴニストコンジュゲート及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】抗HER2抗体-免疫アゴニストコンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/083 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240227BHJP
   C07K 1/04 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C07K5/083
A61K47/64 ZNA
A61K47/60
A61K47/65
A61K47/68
A61K31/4745
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 L
A61K39/395 N
C07K16/28
C12N15/13
C07K1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554825
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2022079531
(87)【国際公開番号】W WO2022188743
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/079611
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516310910
【氏名又は名称】ジーンクアンタム ヘルスケア (スーチョウ) シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】GENEQUANTUM HEALTHCARE (SUZHOU)CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】516357432
【氏名又は名称】ブライトジーン バイオ-メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エイチ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ギャン・チン
(72)【発明者】
【氏名】ジンドン・ユエン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・リウ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA10
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA12
4H045BA40
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA30
4H045FA33
4H045FA70
(57)【要約】
本開示は、標的化分子-薬物コンジュゲートの連結ユニット分子、及び対応するコンジュゲート、その調製と使用に関し、特に新規タイプの癌療法としての抗HER2抗体-免疫アゴニストコンジュゲート(AIAC)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I-1)又は(I-2)の化合物であって、
【化1】
式中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-であり、kは1~5の整数であり、jは1~3の整数であり、
PLは前記B2部分に連結されたペイロードであり、
好ましくは、PLはレシキモド
【化2】
である、前記化合物。
【請求項2】
kは2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
jは1である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
以下の構造から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【化3】
【請求項5】
式(II-1)又は(II-2)の抗体薬物コンジュゲートであって、
【化4】
式中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-であり、kは1~5の整数であり、jは1~3の整数であり、
PLは前記B2部分に連結されたペイロードであり、
好ましくは、PLはレシキモド
【化5】
であり、
zは1~4の整数であり、好ましくは1~2であり、
Aは配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖と配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体である、前記抗体薬物コンジュゲート。
【請求項6】
kは2である、請求項5に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項7】
jは1である、請求項6に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項8】
以下の構造から選択され、
【化6】
zは1~4の整数であり、好ましくは1~2であり、
Aは配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖と配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体である、請求項5から7のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオ医薬品の分野に関し、特に標的化分子-免疫アゴニストコンジュゲートの連結ユニット、及び対応するコンジュゲート、その調製プロエスと使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)は、チロシンキナーゼ活性を有する上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーである。HER2の増幅又は過剰発現は、乳癌の約15~30%及び胃癌/胃食道癌の約10~30%において発生する。HER2過剰発現は、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、肺癌、結腸癌、頭頸部癌等、他の癌にいても見られている(Iqbal N. et al, Mol Biol Int. 2014:852748)。HER2指向性抗体又は抗体薬物コンジュゲート(ADC)等のHER2標的療法の効能により、HER2陽性疾患患者の平均余命が大幅に延長されるが、本質的に、HER2陽性乳癌は依然として悪性度の高い癌であり、HER2陰性(及びHR陽性)疾患患者よりも予後が悪く、転帰も不良である。また、他のHER2過剰発現癌ではその治療効果が期待外れであることが判明されている。HER2標的療法で投与された患者が耐性を持ってしまうことは、転帰不良の多くの原因の1つである。腫瘍細胞の免疫逃避がこのプロセスを助長する。
【0003】
免疫療法は強い効果を示している癌治療の新しいモダリティである。CLTA-4及びPD-1/L1モノクローナル抗体を代表とした免疫チェックポイント阻害薬は、基本的にT細胞ベースの治療法によるものであり、様々な癌適応症用に承認されたが、癌と戦う他の免疫系メカニズムを探索する多数の取り組みも行われている。骨髄細胞、主にマクロファージ、DCsを標的とすることは有望な方向となっている。アゴニスト又はマクロファージチェックポイント阻害剤によってマクロファージ及びDCsを活性化すれば、それらの腫瘍細胞を除去する食作用の能力だけでなく、抗原提示の機能も強化され、適応抗腫瘍免疫がより強力に誘発される。
【0004】
本発明は、腫瘍標的免疫療法の新規薬物であるHER2指向性抗体-免疫アゴニストコンジュゲート(AIAC)を提供する。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、式(I-1)又は(I-2)の化合物であって、
【化1】
式中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-であり、kは1~5の整数であり、jは1~3の整数であり、
PLは前記B2部分に連結されたペイロードであり、
【0006】
好ましくは、PLはレシキモド
【化2】
である、前記化合物を提供する。
【0007】
別の態様において、式(II-1)又は(II-2)の抗体薬物コンジュゲートであって、
【化3】
式中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-であり、kは1~5の整数であり、jは1~3の整数であり、
PLは前記B2部分に連結されたペイロードであり、
【0008】
好ましくは、PLはレシキモド
【化4】
であり、
zは1~4の整数であり、好ましくは1~2であり、
Aは配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖と配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖とを含む抗体である、前記抗体薬物コンジュゲートを提供する。
【0009】
本発明の抗体-免疫アゴニストコンジュゲート(AIACs)は、新規タイプの腫瘍標的療法を提供する。インビトロ実験によると、該AIACsは、裸の未修飾抗体に比べて、より高いTNFα産生を誘導できる。該AIACsのインビボ実験では、抗腫瘍効果が示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】式(I’)の化合物の実例である。
図2】式(II’)の化合物の実例である。
図3】式(III’)の化合物の実例である。
図4】コンジュゲートAC102-5-1-1、AC102-6-1-1、及びそれらの対応する裸の未修飾抗体Ab0001(Trastuzumab,トラスツズマブ)及びアゴニストのレシキモドの、ヒトPBMC-NCI N87共培養におけるTNFα誘導活性。
図5】PBMCとNCI N87又はMDA-MB-468細胞のいずれかとの共培養におけるAC102-6-1-1及び抗体のTNFα誘導活性。
図6】PBMCとNCI N87細胞との共培養におけるAC102-9-1-1、AC102-12-1-1、AC102-10-1-1、AC102-13-1-1、及び抗体のTNFα誘導活性。
図7図7及び8において、X軸下の矢印は投与時点を示す。ビヒクル(PBS pH6.5)、抗体、及び試験コンジュゲート(AC102-5-1-1又はAC102-6-1-1)を5mg/kg投与したNCI N87 CDXモデルSCIDベージュマウスにおける腫瘍体積の経時変化。
図8図7及び8において、X軸下の矢印は投与時点を示す。AC102-6-1-1を3mg/kg及び10mg/kg、抗体を10mg/kg投与した、hHER2を過剰表現するMC38モデルにおける腫瘍体積の経時変化。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、具体的な実施形態を示して本開示の技術内容を説明する。当業者であれば、本明細書に開示された内容から、本開示の他の利点及び効果を容易に理解できる。本開示は他の異なる具体的実施形態により実施又は適用してもよい。当業者であれば、本開示の精神から逸脱することなく、様々な修飾及び変形を加えることが可能である。
【0012】
定義
以下において他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味である。本明細書で使用される技術は当該分野において一般的に理解される技術を指し、当業者にとって自明な変形及び等価置換を含む。以下の用語が当業者によってよく理解されると考えられるにも関わらず、本開示をよく説明するためにその定義を以下に記載する。本明細書に記載の商品名は対応する商品又はその有効成分を指すものである。本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0013】
特定の量、濃度、又は他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限もしくは好ましい下限の形で記載されていることは、任意の上限もしくは好ましい値と任意の下限もしくは好ましい値とを組み合わせた任意の範囲が、明記されているかどうかに関わらず、具体的に開示されていることと同等であると理解すべきである。特に断らない限り、本明細書で列挙される数値の範囲は範囲の端点及び該範囲内の全ての整数及び分数(小数)を含むよう意図される。例えば、「iは2~20の整数である」という表現は、iは2~20の任意の整数であることを意味し、例えば、iは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であり得る。他の類似表現も同様に理解すべきである。
【0014】
特に明記されていない限り、「1つ(one)」及び「前記(the)」のような単数形は複数形を含む。「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」という表現は1、2、3、4、5、6、7、8及び9又はそれ以上を表してもよい。
【0015】
用語「約」及び「およそ」は、数値変数に関連して使用される場合、一般に、変数の値及び変数の全ての値が実験誤差の範囲内(例えば、平均値の95%信頼区間内)又は指定値±10%以内、又はより広い範囲内にあることを意味する。
【0016】
用語「化学量論比」は特定量の重量で様々な物質を配合する意味である。例えば、本開示において、有効成分は指定された重量比で充填剤、結合剤、及び潤滑剤と混合される。
【0017】
用語「任意の」又は「任意に」は、その後に説明される事象が発生する可能性があるが、必ずしも発生するわけではないことを意味し、該表現は、前記事象又は状況が発生する場合又は発生しない場合を含む。
【0018】
表現「含む」又は類似の表現「備える」、「含有」及び「有する」等はオープンエンドなものであり、追加の列挙されていない要素、ステップ又は成分を排除しない。表現「…からなる」は、明確に示していない要素、ステップ又は成分をいずれも除外する。表現「実質的に…からなる」は、範囲を、指定の要素、ステップ又は成分、及び保護を請求する主題の重要な特徴及び新規な特徴に実質的な影響を及ぼさない任意に存在する元素、ステップ又は成分に限定することを意味する。表現「含む」は表現「実質的に…からなる」と「…からなる」を包含すると理解すべきである。
【0019】
用語「標的化分子」とは、特定のターゲット(例えば受容体、細胞表面タンパク質、サイトカイン等)に対して親和性を有する分子を意味する。標的化分子は、標的送達によりペイロードを生体内の特異部位に送達することができる。標的化分子は、1つ又は複数のターゲットを認識することができる。特異的な標的部位は、標的化分子が認識したターゲットによって定義される。例えば、受容体を標的とする標的化分子は、大量の前記受容体を含む部位にペイロードを送達することができる。標的化分子の例としては、抗体、抗体フラグメント、所与抗原の結合タンパク質、抗体模倣体、所与ターゲットに対して親和性を有する足場タンパク質、リガンド等を含むが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は広義に使用され、所望の生物学的活性を有する限り、インタクトモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含む。該抗体は任意のサブタイプ(IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA等)又はサブクラスであってもよく、任意の適切な種に由来してもよい。いくつかの実施形態において、該抗体はヒト又はマウス由来のものである。該抗体は完全ヒト抗体、ヒト化抗体又は組換え法によって調製されたキメラ抗体であってもよい。
【0021】
モノクローナル抗体は、本明細書において、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体を指すために使用され、つまり、該集団を構成する個々の抗体は、少数の可能な自然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に対して高度に特異的である。用語「モノクローナル」とは、抗体の特性が実質的に均質な抗体集団に由来することを指し、抗体を生成するために何らかの特定の方法を必要とするものとして解釈されるべきではない。
【0022】
インタクト抗体又は完全長抗体は、本質的に、抗原結合可変領域、軽鎖定常領域(C)及び重鎖定常領域(C)を含み、該重鎖定常領域(C)は、抗体のサブタイプに応じて、C1、C2、C3及びC4を含み得る。抗原結合可変領域(フラグメント可変領域、Fvフラグメントとしても知られる)は、典型的に、軽鎖可変領域(V)及び重鎖可変領域(V)を含む。定常領域は、天然配列(ヒト天然配列を有する定常領域等)又はそのアミノ酸配列変異体を有する定常領域であってもよい。可変領域は標的抗原を認識し、それと相互作用する。定常領域は免疫系によって認識され得、それと相互作用する。
【0023】
抗体フラグメントは、インタクト抗体の一部、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含み得る。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、VとC1ドメインからなるFdフラグメント、Fvフラグメント、単一ドメイン抗体(dAb)フラグメント、及び単離された相補性決定領域(CDR)を含む。Fabフラグメントは全長免疫グロブリンをパパイン消化して得られた抗体フラグメント、又は、例えば組換え発現等により生成されたものと同じ構造を有するフラグメントである。Fabフラグメントは軽鎖(V及びCを含む)及び別の鎖を含み、前記別の鎖は、重鎖(V)の可変ドメイン及び重鎖(C1)の定常領域ドメインを含む。F(ab’)フラグメントは、免疫グロブリンをpH4.0~4.5でペプシン消化して得られた抗体フラグメント、又は、例えば組換え発現等により生成されたものと同じ構造を有するフラグメントである。F(ab’)フラグメントは本質的に2つのFabフラグメントを含み、各重鎖部分は、2つのフラグメントを接続するジスルフィド結合を形成するシステインを含むいくつかの追加のアミノ酸を含む。Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメント(1つの重鎖及び1つの軽鎖)の半分を含むフラグメントである。抗体フラグメントは、例えばジスルフィド結合及び/又はペプチド連結ユニットを介して結合された複数の鎖を含み得る。抗体フラグメントの例としては、単鎖Fv(scFv)、Fv、dsFv、ダイアボディ、Fd及びFd’フラグメント、及び、修飾フラグメントを含む他のフラグメントを含む。抗体フラグメントは、典型的に少なくとも又は約50個のアミノ酸、及び典型的に少なくとも又は約200個のアミノ酸を含む。抗原結合フラグメントは、抗体フレームワークに(例えば、対応する領域の置換によって)挿入されると抗原に免疫特異的に結合する抗体を生じ得る任意の抗体フラグメントを含み得る。
【0024】
本開示に係る抗体は、例えば、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術のような、本分野で公知の技術又はそれらの組合せ、又は他の本分野で公知の技術を使用して調製することができる。例えば、遺伝子操作された組換え抗体(又は抗体模倣体)は、適切な培養系(例えば、大腸菌又は哺乳類細胞)により発現可能である。該操作は、例えば、リガーゼ特異的認識配列を末端に導入することを指してもよい。
【0025】
HER2は、ヒト上皮成長因子受容体-2を指し、上皮成長因子(EGFR)受容体チロシンキナーゼファミリーに属する。本出願において、用語ErbB2とHER2は同じ意味を有し、互換的に使用することができる。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「標的化分子-薬物コンジュゲート」は、「コンジュゲート」と呼ばれる。コンジュゲートの例としては、抗体薬物コンジュゲートを含むが、それらに限定されない。
【0027】
小分子化合物は、医薬品において慣用される有機分子に匹敵するサイズの分子を指す。該用語は生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を包含しないが、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド等のような低分子量ペプチド又はその誘導体を包含する。典型的に、該小分子化合物の分子量は、例えば、約100~約2000Da、約200~約1000Da、約200~約900Da、約200~約800Da、約200~約700Da、約200~約600Da、約200~約500Daであってもよい。
【0028】
免疫アゴニストは、DCs、B細胞、マクロファージ、NK細胞、及びT細胞を含むがそれらに限定されない免疫細胞の活性化等を通じて、腫瘍に対する免疫応答を誘導又は増強できるアゴニストである。免疫アゴニストの非限定的な例として、TLR7及び/又はTLR8及び/又はTLR9アゴニスト(例えば、イミキモド、レシキモド、852A及びVTX-2337)を含むがそれらに限定されないTLRアゴニスト、及びSTINGアゴニスト(例えば、ADU-S100及びMK-1454)等は本分野で知られている。
【0029】
連結ユニットは、化合物又は材料中の2つ又はそれ以上の部分を共有結合する官能基を指す。例えば、該連結ユニットは、標的化分子及び/又はペイロードのアジュバント部分を共有結合するように働くことができる。
【0030】
スペーサーは、異なる構造モジュールの間に位置し、構造モジュールを空間的に分離できる構造である。スペーサーの定義は、特定の機能を有するかどうか、又は生体内で切断又は分解され得るかどうかによって限定されない。スペーサーの例としては、アミノ酸及び非アミノ酸構造を含むが、これらに限定されない。そのうち、非アミノ酸構造は、アミノ酸誘導体又は類似体であり得るが、これらに限定されない。「スペーサー配列」とは、スペーサーとして働くアミノ酸配列を指し、その例としては、Leu、Gln等の単一のアミノ酸、複数のアミノ酸を含む配列、例えばGA等の2つのアミノ酸を含む配列、又は例えばGGGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS等を含むが、これらに限定されない。スペーサーの他の例としては、例えば、PABC(p-benzyloxycarbonyl,p-ベンジルオキシカルボニル)等の自壊的スペーサーを含む。
【0031】
用語「アルキル基」とは、炭素原子と水素原子からなる直鎖又は分枝飽和脂肪族炭化水素基を意味し、該飽和脂肪族炭化水素基は単結合によって分子の残りの部分に連結されている。アルキル基は、1~20個の炭素原子を含み得、即ちC-C20アルキルであり得、例えば、C-Cアルキル基、C-Cアルキル基、C-Cアルキル基、Cアルキル基、Cアルキル基、C-Cアルキル基である。アルキルの非限定的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、又は1,2-ジメチルブチル基、又はそれらの異性体を含むが、これらに限定されない。二価ラジカルとは、対応する一価ラジカルの自由価電子を持つ炭素原子から水素原子を1つ除去することによって得られた基を意味する。二価ラジカルは、分子の残りの部分に連結されている2つの連結部位を有する。例えば、「アルキレン基」又は「アルキリデン基」とは、直鎖又は分枝鎖の飽和二価炭化水素基を指す。アルキレン基の例としては、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-C-)、プロピレン基(-C-)、ブチレン基(-C-)、ペンチレン基(-C10-)、ヘキシレン基(-C12-)、1-メチルエチレン基(-CH(CH)CH-)、2-メチルエチレン基(-CHCH(CH)-)、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基等を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用されるように、1つの基が他の基と組み合わされる場合、化学的に安定な構造が形成されるのであれば、基の連結は直鎖状でも分枝状でもよい。このような組合せによって形成される構造は、該構造内の任意の適切な原子によって、好ましくは指定の化学結合によって分子の他の部分に連結することができる。例えば、C1-4アルキレン基と、-CH-、-NH-、-(CO)-、-NH(CO)-、-(CO)NH-を含む基の1つとを組み合わせると記述する場合、C1-4アルキレン基は上記基と直鎖状連結を形成することができ、例えば、C1-4アルキレン-CH-、C1-4アルキレン-NH-、C1-4アルキレン-(CO)-、C1-4アルキレン-NH(CO)-、C1-4アルキレン-(CO)NH-、-CH-C1-4アルキレン、-NH-C1-4アルキレン、-(CO)-C1-4アルキレン、-NH(CO)-C1-4アルキレン、-(CO)NH-C1-4アルキレンを形成することができる。得られた二価構造は、分子の他の部分にさらに連結することができる。
【0033】
式(I’)の化合物
一態様において、式(I’)(式(I’-1)又は式(I’-2)又はそれらの混合物)の化合物であって、
【化5】
式中、
B2は-(CHk1(CO)-NH-(C-O)-(CHk2(CO)-Lys-R、-(CH(CO)-NH-(C-O)-H、又は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-Rであり、
は-C1-6アルキル基であり、
は水素及び-C1-6アルキル基から選ばれ、
はペイロード内の基と反応する時に離れることができる基であり、
k、k、kはそれぞれ独立して1~5の整数であり、jは1~3の整数であり、dは1又は2である、前記化合物を提供する。
【0034】
1つの実施形態において、式(I’-1)及び(I’-2)中のB2は同じである。
【0035】
1つの実施形態において、dは1である。
【0036】
1つの実施形態において、末端基は水素である。1つの実施形態において、Rはヒドロキシ基又は
【化6】
である。
【0037】
1つの実施形態において、末端基RはB2とペイロードの反応から生じた生成物分子に現れない構造部分を表すため、連結ユニット-ペイロード中間体(下記参照)では、B2に対応する構造部分は上記二価基のうちの1つ、又は2つもしくは複数の組合せである。
【0038】
チオスクシンイミドは生理学的条件下で不安定であり、コンジュゲーション部位での切断を引き起こすようにマイケル付加を逆転させる傾向にある。また、系内に別のチオール化合物が存在する場合、チオスクシンイミドは他のチオール化合物とチオール交換する可能性もある。両方の反応ともペイロードの減少を引き起こし、有毒な副作用をもたらす。
【0039】
本開示において、開環スクシンイミド構造
【化7】
は、逆マイケル付加又はチオール交換を行わなくなるため、生成物はより安定する。開環反応の方法はWO2015165413A1を参照すればよい。
【0040】
式(I’)化合物の具体的実施形態
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CHk1(CO)-NH-(C-O)-(CHk2(CO)-(Lys-OH)であり、k1は5であり、jは3であり、k2は1であり、Lysはそのαアミノ基を介してB2の残りの部分に接続され、連結ユニットの構造は以下の2つの構造の混合物である(連結ユニットLN102-5)。
【化8】
【0041】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-Hであり、kは2であり、jは1であり、連結ユニットの構造は以下の2つの構造の混合物である(連結ユニットLN102-6)。
【化9】
【0042】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-Rであり、kは2であり、dは1であり、Rは(S)-メチル基であり、Rは水素であり、連結ユニットの構造は以下の2つの混合物である(連結ユニットLN102-9)。
【化10】
【0043】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-Rであり、kは2であり、dは1であり、Rは(R)-メチル基であり、Rは水素であり、連結ユニットの構造は以下の2つの混合物である(連結ユニットLN102-10)。
【化11】
【0044】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-Rであり、kは2であり、dは2であり、R及びRはメチル基であり、R1’は(S)-メチル基であり、R2’は水素であり、連結ユニットの構造は以下の2つの混合物である(連結ユニットLN102-12)。
【化12】
【0045】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-Rであり、kは2であり、dは2であり、R及びRはメチル基であり、R1’は(R)-メチル基であり、R2’は水素であり、連結ユニットの構造は以下の2つの混合物である(連結ユニットLN102-13)。
【化13】
【0046】
1つの実施形態において、式(I’)の化合物は図1に示す化合物の1つである。
【0047】
分子内に2つ又はそれ以上の-(CHC(O)-基がある場合、各kの値は独立して選ばれることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、分子内の「k」は付加の数字が付いているか又は付いておらず、例えばk1、k2、k3等であり、ここで、該数字は順序を示すものではなく、単に「k」を区別するためのものである。他の下付き文字g、j、dは同様に理解すべきである。
【0048】
2つ又はそれ以上のR(xは1、2、3、4、5、6、7等)がある場合、各Rは独立して選ばれることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、分子内の「x」は付加のアポストロフィ(’)又はアポストロフィ(’’、’’’、’’’’等)が付いているか又は付いておらず、例えばR、R1’、R1’’、R1’’’、R2’、R2’’、R2’’’等である。R等の他のRは同様に理解すべきである。
【0049】
連結ユニットとしての式(I’)の化合物
1つの実施形態において、B2に含まれる反応性基は、式(I’)の化合物がペイロードを担持するように、別の反応性基を含有するペイロードと共有結合的にコンジュゲートするために用いることができる。
【0050】
別の実施形態において、式(I’)に含まれるリガーゼ認識配列GGG(Gはグリシン)は、対応するリガーゼ認識配列LPETGGとのリガーゼによるコンジュゲーションに用いることができる。
【0051】
したがって、式(I’)の化合物は、標的化分子(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)及び/又はペイロードに連結可能な連結ユニットとして使用することができる。
【0052】
当業者であれば、従来の固相法又は液相法によって連結ユニットを合成することができる。
【0053】
ペイロード担持式(I’)化合物
B2に含まれる反応性基は、別の反応性基を含有するペイロードと共有結合的にコンジュゲートされてペイロード担持式(I’)化合物を提供する。
【0054】
別の態様において、式(II’-1)又は(II’-2)の構造を有する化合物であって、
【化14】
式中、
PLは式(I’)の化合物のB2部分に連結されたペイロードである、前記化合物を提供する。
【0055】
ペイロード
本開示において、ペイロードは、小分子化合物、核酸及びその類似体、トレーサー分子(蛍光分子等を含む)、短ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、及びタンパク質から選ばれてもよい。1つの実施形態において、ペイロードは小分子化合物、核酸分子、及びトレーサー分子から選ばれる。好ましい実施形態において、ペイロードは小分子化合物から選ばれる。より好ましい実施形態において、ペイロードは細胞毒及びそのフラグメントから選ばれる。より好ましい実施形態において、ペイロードは免疫アゴニスト及びそのフラグメントから選ばれる。
【0056】
1つの実施形態において、免疫アゴニストはTLRアゴニスト(例えば、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、TLR7/8アゴニスト)等のTLRアゴニスト及びSTINGアゴニストから選ばれる。1つの実施形態において、免疫アゴニストはTLRアゴニストから選ばれる。
【0057】
1つの実施形態において、免疫アゴニストはレシキモドである。
【化15】
【0058】
1つの実施形態において、連結ユニットとペイロードは、縮合反応、求核付加、求電子付加等を含むがそれらに限定されない本分野で知られている任意の反応によって、上記で定義された反応性基を介して接続される。
【0059】
1つの実施形態において、ペイロードは免疫アゴニストであり、抗体-免疫アゴニストコンジュゲート(LPxで番号付けられ)は下記表及び図2に示す化合物の1つである。
【0060】
【表1】
【0061】
ペイロード担持式(I’)化合物の調製
1つの実施形態において、連結ユニットとペイロードは、縮合反応、求核付加、求電子付加等を含むがそれらに限定されない本分野で知られている任意の反応によって、上記で定義された反応性基を介して接続される。
【0062】
式(III’)の化合物
一態様において、式(III’)の化合物であって、
【化16】
式中、B2は式(I’)に定義されたとおりである、前記化合物を提供する。
【0063】
1つの実施形態において、式(III’)の化合物は以下のルートによってペイロード担持式(I’)化合物を調製するために用いることができる。
【化17】
【0064】
ペイロード担持式(III’)化合物からペイロード担持式(I’)化合物への変換は、本分野の任意の知られている方法で、又は本明細書で説明したように、行うことができる。例えば、単一ステップ又は複数ステップ合成を行って構造フラグメント
【化18】
をペイロード担持式(III’)化合物中のマレイミド環に導入することができ、そして得られたスクシンイミド部分を含有する分子は、開環反応を行ってスクシンイミド環を開け、ペイロード担持式(I’)化合物(即ち、式(II’)化合物)を得ることができる。1つの実施形態において、LU102は、式(III’)化合物に含有されるマレイミド基とLU102のチオール基との反応によってペイロード担持式(III’)化合物に導入される。
【0065】
コンジュゲート及びその調製
別の態様において、式(IV’-1)又は(IV’-2)の構造を有するコンジュゲートであって、
【化19】
式中、
PLは式(I’)の化合物のB2部分に連結されたペイロードであり、
Aは式(I’)の化合物のD1又はD2部分に連結された標的化分子であり、
zは1又は2である、前記コンジュゲートを提供する。
【0066】
1つの実施形態において、ペイロードは、上記で定義された免疫アゴニストである。1つの実施形態において、コンジュゲートは抗体-免疫アゴニストコンジュゲートである。
【0067】
標的化分子
1つの実施形態において、標的化分子は抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態において、標的化分子(例えば、抗体又はその抗原結合フラグメント)により認識されるターゲットは、CD19、CD22、CD25、CD30/TNFRSF8、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD71、CD74、CD79b、CD117/KIT、CD123、CD138、CD142、CD174、CD227/MUC1、CD352、CLDN18.2、DLL3、ErbB2/HER2、CN33、GPNMB、ENPP3、Nectin-4、EGFRvIII、SLC44A4/AGS-5、メソテリン、CEACAM5、PSMA、TIM1、LY6E、LIV1、ネクチン4、SLITRK6、HGFR/cMet、SLAMF7/CS1、EGFR、BCMA、AXL、NaPi2B、GCC、STEAP1、MUC16、Mesothelin、ETBR、EphA2、5T4、FOLR1、LAMP1、カドヘリン6、FGFR2、FGFR3、CA6、CanAg、インテグリンαV、TDGF1、エフリンA4、Trop2、PTK7、NOTCH3、C4.4A、FLT3を含むが、それらに限定されない。
【0069】
1つの実施形態において、標的化分子は抗ヒトHER2抗体又はその抗原結合フラグメントである。抗ヒトHER2抗体の例としては、トラスツズマブを含むが、それに限定されない。トラスツズマブはHER2の第4細胞外ドメイン(ECD4)に結合され、Her2陽性乳癌及び胃癌の治療用に承認される。
【0070】
好ましい実施形態において、抗ヒトHER2抗体はトラスツズマブに基づく操作された抗HER2抗体から選ばれる1つ又は複数である。
【0071】
好ましい実施形態において、抗ヒトHER2抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体フラグメント、及び抗体模倣体から選ばれる組換え抗体である。1つの実施形態において、抗体模倣体は、scFv、ミニボディ、ダイアボディ、ナノボディから選ばれる。式(I’)の化合物とのコンジュゲーションのために、本開示の標的化分子は、式(I’)の化合物と接続するための修飾部分を含み得る。このような修飾部分の導入位置は限定されず、例えば、標的化分子が抗体である場合、その導入位置は、抗体の重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端としてもよいが、それらに限定されない。
【0072】
1つの実施形態において、本開示の標的化分子は抗体又はその抗原結合フラグメントであり、末端修飾を含み得る。末端修飾とは、抗体の重鎖又は軽鎖のC末端又はN末端での修飾を指し、例えば、リガーゼ認識配列を含む。別の実施形態において、末端修飾は、2~10個のアミノ酸を含むスペーサーSp1をさらに含んでもよく、ここで抗体、Sp2及びリガーゼ認識配列は順次連結される。特定の実施形態において、Sp2はGA、GGGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS、特にGAから選ばれるスペーサー配列である。
【0073】
好ましい実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖は、野生型(LC)と、リガーゼ認識配列LPETGGの直接導入によって修飾されたC末端修飾軽鎖(LCCT)と、短鎖ペプチドスペーサー及びリガーゼ供与体基質認識配列LPETGGの導入によって修飾されたC末端修飾軽鎖(LCCT)との3つのタイプを含む。抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖は、野生型(HC)と、リガーゼ認識配列LPETGGの直接導入によって修飾されたC末端修飾重鎖(HCCT)と、短鎖ペプチドスペーサー及びリガーゼ供与体基質認識配列LPETGGの導入によって修飾されたC末端修飾重鎖(HCCT)との3つのタイプを含む。アミノ酸配列表に示すように、式(IV’)の化合物におけるzが1又は2である場合、上記重鎖と軽鎖の組合せは8つの好ましい抗体分子を形成することができる。
【0074】
本開示のコンジュゲートはペイロードをさらに含んでもよい。ペイロードは上述したとおりである。
【0075】
コンジュゲートの具体的実施形態
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CHk1(CO)-NH-(C-O)-(CHk2(CO)-(Lys-OH)-であり、k1は5であり、jは3であり、k2は1であり、Lysはαアミノ基を介してB2の残りの部分に接続され、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-5)。
【化20】
【0076】
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CH(CO)-NH-(C-O)-であり、kは2であり、jは1であり、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-6)。
【化21】
【0077】
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-であり、kは2であり、dは1であり、Rは(S)-メチル基であり、Rは水素であり、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-9)。
【化22】
【0078】
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-であり、kは2であり、dは1であり、Rは(R)-メチル基であり、Rは水素であり、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-10)。
【化23】
【0079】
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-であり、kは2であり、dは2であり、R及びRはメチル基であり、R1’は(S)-メチル基であり、R2’は水素であり、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-12)。
【化24】
【0080】
1つの実施形態において、式(IV’)中、B2は-(CH(CO)-(NH-CR-(CO))-であり、kは2であり、dは2であり、R及びRはメチル基であり、R1’は(R)-メチル基であり、R2’は水素であり、コンジュゲートの構造は以下のとおりである(式AC102-13)。
【化25】
【0081】
コンジュゲートの調製
本開示のコンジュゲートは本分野における任意の知られている方法によって調製することができる。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは標的化分子とペイロード担持式(I’)化合物のリガーゼ触媒部位特異的コンジュゲーションによって調製され、ここで標的化分子はリガーゼ認識配列によって修飾される。該方法はステップA及びステップBを含む。
【0082】
ステップA、連結ユニット-ペイロード中間体の調製
好ましい実施形態において、式(I’)の化合物中のB2を、反応性基を介して対応する反応性基を含有するペイロードに共有連結し、ここで該反応性基はそれぞれ上記で定義されたとおりである。
【0083】
本開示の式(I’)の化合物を用いて調製された連結ユニット-ペイロード中間体は明確な構造、明確な組成及び高い純度を有するため、抗体とのコンジュゲーション反応を行う際に、導入される不純物がより少ない、又は他の不純物が導入されない。リガーゼ認識配列を含有する修飾抗体とのリガーゼ触媒部位特異的コンジュゲーションにこのような中間体を使用すると、得られたADCは均質で高度に制御可能な品質を有する。
【0084】
ステップB、ペイロード担持式(I’)化合物への標的化分子の連結
本開示の標的化分子は本分野における任意の知られている方法によってペイロード担持式(I’)化合物(即ち、式(II’)の化合物)とコンジュゲートすることができる。例えば、リガーゼ触媒部位特異的コンジュゲーション技術を適用し、基質のリガーゼ特異的認識配列を介して標的化分子とペイロード担持式(I’)化合物を互いに連結する。1つの実施形態において、標的化分子は軽鎖及び/又は重鎖のC末端に導入された認識配列に基づく末端修飾を有する抗体であり、該標的化分子は、野生型の又は最適に操作されたリガーゼ又はそれらの任意の組合せの触媒作用下で、適切な触媒反応条件下で、式(II’)の化合物とコンジュゲートされる。
【0085】
特定の実施形態において、リガーゼはソルターゼAであり、コンジュゲーション反応は以下のスキームで表すことができる。
【化26】
【0086】
三角形及び五角形は、それぞれ、抗体の一部又は式(II’)の化合物の一部のいずれかを表す。nはそれぞれ上記で定義されたとおりである。受容体基質の対応する認識配列であるGとコンジュゲートされる場合、LPETGG配列におけるグリシンの上流のペプチド結合はソルターゼAにより切断され、得られた中間体はGの遊離N末端に連結されて新しいペプチド結合を生成する。得られたアミノ酸配列はLPETGである。配列G及びLPETGGは上記で定義されたとおりである。
【0087】
具体的なコンジュゲートの表
1つの実施形態において、ペイロードは免疫アゴニストである。1つの実施形態において、抗体-免疫アゴニストコンジュゲートは下記表及び図3に示すとおりである。
【0088】
【表2】
【0089】
医薬組成物及び医薬製剤
本開示の別の目的は、予防的又は治療的有効量の本開示のコンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供することである。
【0090】
本開示の医薬組成物は、ヒト又は動物の症状を予防、軽減、防止又は治癒する効果を達成できる限り、任意の方式で投与してもよい。例えば、投与経路に応じて、様々な適切な剤形、特に注射用凍結乾燥粉末、注射薬、又は注射用滅菌粉末等の注射剤を調製することができる。
【0091】
用語「薬学的に許容される」とは、通常の医学的判断の範囲内で患者の組織と接触した場合に、不当な毒性、刺激、又はアレルギー反応等が生じず、妥当な利点/欠点比を有し、使用目的に有効であることを意味する。
【0092】
薬学的に許容される担体という用語は、薬学的に許容され、コンジュゲートの生物活性及び特性を妨げない担体材料をいう。水性担体の例としては、緩衝食塩水等を含むが、それらに限定されない。薬学的に許容される担体は、組成物を生理的条件に近付ける担体材料、例えばpH調整剤、緩衝剤、毒性調整剤等、及び酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等をも含む。
【0093】
1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は1~20の整数又は非整数の薬物抗体比(DAR)を有し、例えば1~10、1~8、1~6、1~4、1~3.5、1~3、1~2.5であり、好ましくは1~2である。1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は約1.4~約2のDARを有し、好ましくは約1.5~約2であり、より好ましくは約1.55~約1.95である。1つの実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1.6~約1.8のDARを有する。
【0094】
治療方法及び使用
本開示のコンジュゲートは腫瘍及び/又は自己免疫疾患の治療に有用である。コンジュゲート治療の影響を受けやすい腫瘍は、特定の腫瘍関連抗原又は細胞表面受容体によって特徴付けられる腫瘍、及びコンジュゲート中の標的化分子により認識され、コンジュゲート中のアゴニストの免疫細胞活性化活性の影響を受け得る腫瘍を含む。
【0095】
それに応じて、別の態様において、腫瘍又は自己免疫疾患から選択される疾患、障害又は症状を治療する薬剤を製造するための、本開示のコンジュゲート又は本開示の医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0096】
別の態様において、腫瘍又は自己免疫疾患を治療するための、本開示のコンジュゲート又は本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【0097】
さらなる態様において、腫瘍又は自己免疫疾患を治療する方法であって、需要のある個体に有効量の本開示のコンジュゲート又は本開示の医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0098】
好ましい実施形態において、抗ヒトHER2抗体とペイロードのコンジュゲーションによって形成された本開示のコンジュゲートは、腫瘍細胞表面上のHER2に特異的に結合し、HER2発現腫瘍細胞を選択的に死滅させることができる。別の好ましい実施形態において、HER2陽性腫瘍から選択される疾患、障害又は症状を治療する薬剤を製造するための、本開示のコンジュゲート又は本開示の医薬組成物の使用を提供する。より好ましい実施形態において、該疾患、障害又は症状は、乳癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、尿路上皮癌等から選択される。
【0099】
対象に投与されるコンジュゲートの用量は、かなりの範囲で調整することができる。該用量は、特定の投与経路及び対象のニーズに応じて変化してもよく、医療専門家の判断に従ってもよい。
【0100】
有益な効果
本開示は独特の構造を有する連結ユニットを利用し、リガーゼを使用して抗HER2抗体とアゴニストのコンジュゲーションを触媒する。本開示のコンジュゲートは高い均質性、高い活性及び高い選択性を有する。特に、標的抗原の発現が低い、又は発現していない細胞に対する細胞増殖毒性が大幅に軽減する。さらに、連結ユニット-アゴニスト中間体の毒性は遊離アゴニストより遥かに低いため、薬物の製造プロセスによる悪影響が少なく、工業生産に有利である。
【0101】
本開示のコンジュゲートは以下の少なくとも1つの技術効果を達成する。
(1)標的細胞に対する高い阻害活性、又は標的細胞に対する強力な死滅効果。
(2)良好な物理化学的特性(例えば、溶解性、物理的及び/又は化学的安定性)。
(3)良好な薬物動態特性(例えば、血漿中での高い安定性、適切な半減期及び作用持続時間)。
(4)高い安全性(標的外の正常細胞又は組織に対する毒性が低く、及び/又は副作用が少なく、治療ウィンドウが広い)等。
【0102】
該薬物はHER2標的療法に対する患者の耐性を防止し、骨髄細胞を活性化して自然免疫応答と適応免疫応答を強化することができる。現在のHER2指向性療法の反応率の低さを克服することができる。
【0103】
実施例
調製例
発明の目的及び技術的解決手段をより明確に説明するために、以下において具体例により本開示をさらに説明する。これらの実施例は本開示の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。以下の実施例に記載されていない具体的な実験方法は、従来の実験方法に従って実施する。
【0104】
器具、材料及び試薬
特に断らない限り、実施例において使用される器具及び試薬は市販されるものである。試薬はさらに精製することなく直接使用できる。
MS:Thermo Fisher Q Exactive Plus、Water2795-Quattro micro三連四重極質量分析計
HPLC:Waters2695、Agilent1100、Agilent1200
セミ分取HPLC:Lisure HP plus 50D
フローサイトメトリー:CytoFLEX S
HIC-HPLC:Butyl-HIC、移動相A:25mM PB、2M (NHSO、pH7.0、移動相B:25mM PB、pH7.0、流量:0.8ml/min、収集時間:25min、試料注入量:20μg、カラム温度:25℃、検出波長:280nm、サンプル室温度:8℃。
SEC-HPLC:カラム:TSK-gel G3000 SWXL、TOSOH 7.8mm ID × 300mm、5μm、移動相:0.2M KHPO、0.25M KCl、pH6.2、流量:0.5ml/min、収集時間:30min、試料注入量:50μl、カラム温度:25℃、検出波長:280nm、サンプルトレイ温度:8℃。
CHOはThermo Fisher Scientificから入手した。pcDNA3.3はLife Technologyから入手した。HEK293FはPrejinから入手した。PEIMAXトランスフェクション試薬はPolyscienceから入手した。MabSelect Sure ProAはGEから入手した。Capto S ImpActはGEから入手した。リンクアミドMBHA樹脂及びジクロロ樹脂はNankai synthesisから入手した。HCC1954はATCC CAT# CRL-2338として入手した。SK-BR-3はATCC CAT# HTB-30として入手した。BT474細胞はATCC CAT# HTB-20として入手した。JIMT1細胞はDSMZ CAT#ACC589として入手した。Colo205細胞はATCC CAT# CRL-222として入手した。MC38hHER2マウス結腸直腸癌細胞はBiocytogenから入手した。NUGC4ヒト胃癌細胞はJCRB CAT#JCRB0834として入手した。NCI-N87細胞(ATCC CAT# CRL-5822)。MDA-MB-468はATCC CAT# HTB-132として入手した。
【0105】
実施例1 抗体発現ベクターの構築、抗体発現、精製及び同定
1.1 修飾抗ヒトHER2抗体Ab0001-LCCT-HCの産生
抗体Ab0001-LCCT-HC(軽鎖:配列番号1、重鎖:配列番号2)の発現プラスミドは次のように構築される。抗体Ab0001-LCCT-HCの配列をトラスツズマブのアミノ酸配列に基づくものとし、GALPETGGを軽鎖のC末端に導入し、ここでLPETGGはリガーゼ供与体基質の認識配列であり、GAはスペーサー配列である。プラスミドをCHO細胞内にトランスフェクトし、高発現細胞集団のための細胞集団を構築しスクリーニングし、該細胞集団はトラスツズマブの培養プロセスを参照して5~10Lの反応器内で培養されたものであり、そして上清を回収した。
【0106】
1.2 抗体Ab0001-LCCT-HCの精製
Ab0001-LCCT-HCの精製はMabSelectアフィニティークロマトグラフィーとSepharose S陽イオン交換クロマトグラフィーの組合せを使用した標準プロセスで実施し、精製物を元のトラスツズマブ薬物緩衝液(5mMヒスチジンHCl、2%トレハロース、0.009%ポリソルベート20、PH6.0)で溶解し、少量ずつ凍結させる。
【0107】
1.3抗体Ab0001-LCCT-HCの品質管理
上記精製された抗体Ab0001-LCCT-HCの純度はSDS-PAGEで98.5%であり、サンプルの高分子量ポリマー含有量はSEC-HPLCで0.4%未満であり、エンドトキシン含有量は0.098EU/mg未満である。
【0108】
1.4 他の修飾抗ヒト抗体の調製
同様な方法に従って、リガーゼ認識配列に基づく末端修飾をトラスツズマブの軽鎖及び/又は重鎖のC末端にそれぞれ導入し、修飾抗体を得た。
【0109】
Ab0001(トラスツズマブ)に基づく修飾抗ヒトHER2抗体を表1に示す。末端修飾配列におけるLPETGGはリガーゼ供与体基質の認識配列であり、GAはスペーサー配列である。
【0110】
【表3】
【0111】
実施例2 中間体の調製
2.1 連結ユニットの調製
A及びLmが存在する連結ユニット
【化27】
【0112】
リンクアミドMBHA樹脂又はジクロロ樹脂を使用して従来の固相ポリペプチド合成によって式(I’)の部分Aを含有する連結ユニットフラグメントLU102を合成した。連結ユニット内のLk構造のアミノ酸及びアミノ基を保護するためにFmocを使用した。コンジュゲーション試薬はHOBT、HOAt/DIC、DCC、EDCI又はHATUから選ばれる。合成後、トリフルオロ酢酸を用いて樹脂を切断した。生成物をHPLCで精製し、凍結乾燥し、保存して使用に備える。連結ユニットフラグメントを下記表に示す。
【0113】
【表4】
【0114】
上記表における連結ユニットフラグメントを、マレイミド構造又はその誘導体を含有する連結ユニットフラグメントと反応させ、続いてWO2015165413A1に記載の方法を用いて開環反応を行って連結ユニットLN102-5、LN102-6、LN102-9、LN102-10、LN102-12、LN102-13を得た。それらの構造は上記で示したとおりである。下記表において、
【表5】
【0115】
2.2 連結ユニット-アゴニスト中間体の調製
2.2.1 連結ユニット-アゴニスト中間体LP102-6-1の調製
【化28】
【0116】
ステップ1で、レシキモド(25.0g、79.5mmol)をMeCN(500mL)で溶解し、Trt-Cl(33.25g、119.3mmol)、続いてTEA(20.12mL、20.12mmol)で処理した。反応を2~3h還流した(TLC)。反応混合物を真空中で濃縮した。次いで、混合物をAcOEt(700mL)及びHO(400mL)で処理し、30min撹拌し、分離した。有機相を真空中で300mLまで濃縮し、n-ヘプタン(400mL)で処理した。次いで、混合物を20min撹拌する。濾過後、ケーキをEtOH/HO(1:1、200mL)で叩き、濾過した。ケーキを真空中で乾燥させて白色固体の目的化合物HX20031-aを得た(43.9g、99.1%)。
【0117】
ステップ2で、化合物(HX20031-a)(40.02g、72.9mmol)をDMF(200mL)で溶解し、0~10℃に冷却した。NaH(60%、3.74g、93.4mmol)をバッチで添加した。懸濁液を0~10℃で1h強く撹拌し、次いで20~30℃に加温して1h撹拌した。続いて混合物を0~10℃に冷却し、化合物1186g(20.88g、93.4mmol)で一括処理した。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで10%NaHPO(1L)とAcOEt(1L)の混合物で緩徐に処理した。反応混合物を3時間撹拌し、濾過した。有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘプタン→n-ヘプタン/AcOEt = 10:1→n-ヘプタン/AcOEt = 4:1)によって精製して目的化合物HX20031-bを得た(24.89g、46.9%)。
【0118】
ステップ3で、化合物(HX20031-b)(10g、14.3mmol)をTFA(40mL)とHO(80mL)の混合物で処理した。反応混合物を室温で24h撹拌した。次いで混合物をMTBE(400mL)に注ぎ、2h撹拌した。濾過後、ケーキをMTBE(200mL)で叩き、濾過した。ケーキを真空中で乾燥させて白色固体の目的化合物HX20031-cを得た(8.51g、100%)。
【0119】
ステップ4で、化合物HX20031-c(6.0g、10.2mmol)をDMF(50mL)で溶解し、DIPEA(3.5mL、20.4mmol)及びN-スクシンイミジル3-マレイミドプロピオネート(3.27g、12.3mmol)で処理した。反応を室温で3h(HPLC)維持し、次いで混合物を次のステップに直接使用した。
【0120】
ステップ5~6で、ステップ4からの混合物を連結ユニットLU102(5.5g、15.3mmol)及びHO(50mL)の溶液で処理した。混合物を0~40℃で0.5~20h反応させた。続いて反応混合物を適量のトリス塩基溶液又は開環反応を促進する他の溶液と混合し、反応を0~40℃で0.2~20h行った。反応完了後、生成物を半分取/分取HPLCで精製し、凍結乾燥して連結ユニット-アゴニストLP102-6-1を得た(3.3g、3ステップで30%)。MS m/z 1065.6[M+H]
【0121】
【表6】
【0122】
実施例3 標的化分子-薬剤コンジュゲートの調製
連結ユニット-アゴニスト中間体をリガーゼによって部位特異的に抗体にそれぞれコンジュゲーしてAIACを形成した。コンジュゲーション反応の方法はWO2015165413A1を参照すればよい。得られたAIACsは下記表に示すとおりである。
【0123】
【表7】
【0124】
効果例1 インビトロでの抗体免疫アゴニストコンジュゲートの評価
ヒト末梢単核細胞の単離
SepMate50及びLymphoprep(Stem Cell Technologies)を使用して健康な献血者からヒト末梢単核細胞を単離した。生細胞を計数し、10%FBSを含むRPMI1640培地で細胞濃度を1.25x10/mlに調整した。腫瘍細胞をトリプシンによって剥離し、回収した。細胞を計数し、10%FBSを含むRPMI1640培地で細胞濃度を2.5x10/mlに調整した。12.5x10のヒトPBMC及び2.5x10の腫瘍細胞(PBMC:腫瘍細胞=5:1)を96ウェルプレートのウェルに添加し、次いで抗体又はコンジュゲートを指定の濃度で添加した。細胞混合物を薬物とともに18時間インキュベートしてから、ヒトTNFα ELISA用に無細胞上清を収集した。
【0125】
HER2標的免疫コンジュゲートの活性を評価するために、ヒトPBMC及びNCI N87ヒト胃癌細胞を5:1の比率で共培養し、抗体又は試験免疫コンジュゲート(AC102-6-1-1又はAC102-5-1-1)を指定の濃度で添加した。AC102-6-1-1は抗体Ab0001より高いTNFα産生を誘導し、AC102-6-1-1の有効濃度はペイロードのレシキモドより遥かに低かった。他の免疫コンジュゲートAC102-5-1-1はAb0001と比べて明らかに異なる活性を示さなかった(図4)。AC102-6-1-1の活性はヒトPBMCとMDA-MB-468 HER2陰性細胞の共培養において観察されず、AC102-6-1-1の活性が標的腫瘍細胞上のHER2発現に大きく依存することが分かる(図5)。
【0126】
同様な実験設定において、他のいくつかのコンジュゲートのインビトロ活性を評価した(図6)。
【0127】
効果例2 インビボでの抗体免疫アゴニストコンジュゲートの評価
インビボ抗腫瘍効果研究のために、1x10のNCI N87ヒト胃癌細胞をSCIDベージュマウスの右脇腹に皮下接種した。6日後、腫瘍体積が平均173mmに達した時、腫瘍担持マウスを振り分け、Ab0001又は試験免疫コンジュゲート(AC102-5-1-1又はAC102-6-1-1)を5mg/kg静脈内投与した。腫瘍体積を週に2回ノギスで測定した。抗体自体、Ab0001は、非常に限られた抗腫瘍活性を示した。AC102-5-1-1及びAC102-6-1-1は最終的に腫瘍をほぼ治癒した(図7)。
【0128】
MC38hHER2マウス結腸直腸癌細胞を過剰発現する5x10のヒトHER2をC57BL/6マウスの右脇腹に皮下接種した。8日後、腫瘍体積が平均90mmに達した時、腫瘍担持マウスを振り分け、Ab0001又はAC102-6-1-1を静脈内投与した。10mg/kgのAb0001は明らかな抗腫瘍活性を示さなかった。3mg/kg及び10mg/kgのAC102-6-1-1は用量依存的に腫瘍増殖を阻害した(図8)。
【0129】
[配列表]
配列番号1: Ab0001-LCCT-HC 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECGALPETGG

配列番号2: Ab0001-LCCT-HC 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK

配列番号3: Ab0001-LC-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

配列番号4: Ab0001-LC-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKLPETGG

配列番号5: Ab0001-LC-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

配列番号6: Ab0001-LC-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGALPETGG

配列番号7: Ab0001-LCCT-HC 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECLPETGG

配列番号8: Ab0001-LCCT-HC 重鎖:
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配列番号9: Ab0001-LCCT-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECLPETGG

配列番号10: Ab0001-LCCT-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKLPETGG

配列番号11: Ab0001-LCCT-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECLPETGG

配列番号12: Ab0001-LCCT-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGALPETGG

配列番号13: Ab0001-LCCT-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECGALPETGG

配列番号14: Ab0001-LCCT-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKLPETGG

配列番号15: Ab0001-LCCT-HCCT 軽鎖:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECGALPETGG

配列番号16: Ab0001-LCCT-HCCT 重鎖:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGALPETGG
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024509891000001.app
【国際調査報告】