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特表2024-509898C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法
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  • 特表-C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/152 20060101AFI20240227BHJP
   C07C 11/09 20060101ALI20240227BHJP
   C07C 7/04 20060101ALI20240227BHJP
   B01J 31/08 20060101ALI20240227BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C07C7/152
C07C11/09
C07C7/04
B01J31/08 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554889
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022055187
(87)【国際公開番号】W WO2022189219
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161220.5
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】スマン・トトラ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ギュンター・ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ・フーゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヘリット・ヴァーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヒュプナー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ニューダート
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ロシエール
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA23B
4G169BA42A
4G169CB25
4G169CB38
4G169CB63
4G169CB71
4G169DA06
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC13
4H006AC43
4H006AC80
4H006AD11
4H006BA72
4H006BC37
4H006BD40
4H006BD51
4H006BD84
4H006DA64
4H039CA20
4H039CA61
4H039CF10
4H039CG90
(57)【要約】
本発明は、エーテル化ユニット(3)、第1の蒸留ユニット(5)、エーテル開裂ユニット(10)および第2の蒸留ユニット(12)を含むプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物(1)からイソブテンを得るための方法に関し、この方法は、(a)エーテル化ユニット(3)内で、C4炭化水素混合物(1)を第一級アルコール(2)と接触させ、酸性触媒の存在下で混合物を第一級アルコールと反応させて、対応するアルキルtert-ブチルエーテルを形成するステップ;(b)第1の蒸留ユニット(5)内で、エーテル化ユニット(3)からの反応混合物(4)を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物(6)として抜き出され、アルキルtert-ブチルエーテルが底部生成物(7)として抜き出される、ステップ;(c)蒸発器(8)内で第1の蒸留ユニット(5)からの底部生成物を気化させて蒸気流(9)を得るステップ;(d)エーテル開裂ユニット(10)内で、ステップ(c)の蒸気流(9)を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよび第一級アルコールを得るステップ;(e)前記第2の蒸留ユニット(12)内で、エーテル開裂ユニット(10)からの反応混合物(11)を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物(13)として抜き出され、第一級アルコールおよびジイソブテンが底部生成物(14)として抜き出され、エーテル化ユニット(3)に再利用される、ステップを含む方法であって;ステップ(c)においてアルキルtert-ブチルエーテルの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流(15)が蒸発器(8)から抜き出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル化ユニット(3)、第1の蒸留ユニット(5)、エーテル開裂ユニット(10)および第2の蒸留ユニット(12)を含むプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物(1)からイソブテンを得るための方法であって、前記方法が、
(a)前記エーテル化ユニット(3)内で、前記C4炭化水素混合物(1)を第一級アルコール(2)と接触させ、酸性触媒の存在下で前記混合物を前記第一級アルコールと反応させて、対応するアルキルtert-ブチルエーテルを形成するステップと;
(b)前記第1の蒸留ユニット(5)内で、前記エーテル化ユニット(3)からの反応混合物(4)を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物(6)として抜き出され、前記アルキルtert-ブチルエーテルが底部生成物(7)として抜き出される、ステップと;
(c)蒸発器(8)内で前記第1の蒸留ユニット(5)からの前記底部生成物を気化させて蒸気流(9)を得るステップと;
(d)前記エーテル開裂ユニット(10)内で、ステップ(c)の前記蒸気流(9)を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよび前記第一級アルコールを得るステップと;
(e)前記第2の蒸留ユニット(12)内で、前記エーテル開裂ユニット(10)からの前記反応混合物(11)を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物(13)として抜き出され、前記第一級アルコールが底部生成物(14)として抜き出され、前記エーテル化ユニット(3)に再利用される、ステップとを含む方法において;
前記アルキルtert-ブチルエーテルの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流(15)が、ステップ(c)において前記蒸発器(8)から抜き出されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プラントが、前記第2の蒸留ユニット(12)の前記底部生成物の一部が供給される副生成物分離ユニット(17)をさらに含み、前記第一級アルコールに富むアルコール生成物流がこの供給流から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一級アルコールが前記エーテル化ユニットに再利用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)において、前記蒸発器からの前記パージ流(15)が前記副生成物分離ユニット(17)に供給される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の蒸留ユニット(12)からの前記底部生成物流に含まれるアルキルtert-ブチルエーテルが、前記副生成物精製ユニット(17)で分離され、蒸発のためのステップ(c)の前記蒸発器(8)および/または前記エーテル開裂ユニット(10)に再利用される、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記副生成物分離ユニット(17)に供給される前記第2の蒸留ユニット(12)の前記底部生成物が、少なくとも3つの副生成物流に分割され、第1の副生成物流(18)はジイソブテンに富み、第2の副生成物流(19)は前記第一級アルコールに富む前記アルコール生成物流であり、第3の副生成物流(20)は110℃を超える標準沸点を有する成分に富む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコール生成物流中の前記第一級アルコールの質量分率が少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%である、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の副生成物流(18)が少なくとも2つのさらなる副生成物流にさらに分割され、第4の副生成物流(21)がジイソブテンに富み、第5の副生成物流(22)がアルキルtert-ブチルエーテルに富む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の副生成物流(18)中のジイソブテンの前記質量分率が、少なくとも30重量%であり、前記第4の副生成物流(21)中のジイソブテンの前記質量分率が、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の蒸留ユニット(5)が蒸留塔を備え、前記底部生成物(7)が、前記供給段の下の段で前記蒸留塔から副流として抜き出され、高沸点成分に富むパージ流(23)が、前記蒸留塔のサンプから抜き出される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の蒸留ユニット(5)の前記蒸留塔の前記サンプからの前記パージ流(23)が前記副生成物分離ユニット(17)に供給される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第5の副生成物流(22)が、蒸発のために前記蒸発器(8)および/または前記エーテル開裂ユニット(10)に少なくとも部分的に再利用される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸発器(8)が、自然循環蒸発器、特にロバート型蒸発器であり、前記パージ流(15)が、前記蒸発器(8)の前記底部の前記液相から抜き出される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一級アルコールがイソブタノールであり、前記アルキルtert-ブチルエーテルがイソブチルtert-ブチルエーテル(IBTBE)である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気分解装置または流動接触分解装置(FCC)ユニットからのC4留分は、飽和炭化水素イソブタンおよびn-ブタンと共にブタジエン、イソブテン、1-ブテンおよび2-ブテンから本質的になる。このようなC4留分に対して世界中で使用されている慣用的な後処理方法は、以下のステップを含む:最初に、ブタジエンの大部分を除去する。イソブテン、1-ブテンおよび2-ブテンと共に飽和炭化水素を含むラフィネート1と呼ばれる炭化水素混合物が残る。この混合物からイソブテンを除去する可能な方法は、第一級アルコールと反応させてアルキルtert-ブチルエーテルを形成することである。これにより、飽和炭化水素および直鎖ブテンが残る。ブタジエンおよびイソブテンを除去した後に得られたC4混合物はラフィネート2と呼ばれる。
【0003】
文献欧州特許第0003305号明細書は、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを除去する方法であって、(a)酸性イオン交換樹脂の存在下で混合物を第一級アルコールと反応させて、アルキルtert-ブチルエーテルを形成するステップと;(b)反応混合物を蒸留して、未変換炭化水素を含む塔頂生成物、およびアルキルtert-ブチルエーテルを含む底部生成物を得るステップと;(c)底部生成物をエーテル開裂ユニットに供給して、アルキルtert-ブチルエーテルを分解して、イソブテンおよび第一級アルコールを得るステップと;(d)ステップ(c)で生成されたイソブテンおよび第一級アルコールの混合物を蒸留して、イソブテンを含む塔頂生成物、および第一級アルコールを含む底部生成物を得るステップと;(e)ステップ(d)の底部生成物をステップ(a)に再利用するステップとを含む、方法を開示している。
【0004】
文献中国特許第1158228号明細書は、イソオレフィンを含有する混合炭化水素流をアルコールと反応させて、第三級アルキルエーテル生成物を得ることによって、イソオレフィンおよび/または第三級アルキルエーテルを製造する方法を開示している。第三級アルキルエーテル生成物を蒸留塔で分離し、第三級アルキルエーテルおよび/またはイソオレフィンを調製するための装置コストおよびエネルギー消費を低減するために、高純度第三級アルキルエーテル生成物を蒸留塔のストリッピングセクションからサイドドローとして抜き出す。
【0005】
文献中国特許第1239444号明細書は、イソオレフィンの製造方法であって、(a)イソオレフィン含有炭化水素混合物およびアルコールをエーテル化反応器に供給するステップと、(b)第1の精留塔および第2の精留塔で第三級アルキルエーテルを主に含有する得られた生成物を分離するステップと、(c)ヒータによって生成物を加熱し、次いで、エーテル分解反応器に供給して、未反応第三級アルキルエーテル、イソオレフィン、およびアルコールを主に含有する生成物を得るステップと、(d)生成物を第3の精留塔による高沸点留分除去に供して、イソオレフィンを得るステップとを含む、方法を開示している。
【0006】
C4炭化水素混合物からイソブテンを反応分離するためのプラント施設があるにもかかわらず、これらのプラントを運転する際に、その運転窓、すなわち、プラントの安定運転を保証するために満たすべきプロセス条件の範囲に関していくつかの課題が残っている。典型的には、これらのプラントは、所定の範囲の供給成分用に設計される。成分またはそれらの質量分率のより大きな偏差が生じるとすぐに、プラントを安定なモードで運転することが困難になるか、または不可能にさえなる。さらなる課題は、プラントが、アルキルtert-ブチルエーテルの生成、そのイソブテンおよびアルコールへの逆分解、アルコールのエーテル生成反応器への再利用に関して、閉ループで働くように設計されていることである。最初は小さな攪乱が不純物のようにこのループ内で蓄積して、プラントまたはプラントの一部分の一時的な停止を必要とする状況につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0003305号明細書
【特許文献2】中国特許第1158228号明細書
【特許文献3】中国特許第1239444号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、内部または外部の攪乱に対してより堅牢なアルキルtert-ブチルエーテルの生成および逆分解を介してC4炭化水素混合物からイソブテンを反応分離する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載の方法によって本発明により達成される。この方法の有利な変形は、請求項2から14に提示されている。
【0010】
本発明の主題は、エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法であって、
(a)エーテル化ユニット内で、C4炭化水素混合物を第一級アルコールと接触させ、酸性触媒の存在下で混合物を第一級アルコールと反応させて、対応するアルキルtert-ブチルエーテルを形成するステップ;
(b)第1の蒸留ユニット内で、エーテル化ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物として抜き出され、アルキルtert-ブチルエーテルが底部生成物として抜き出される、ステップ;
(c)蒸発器内で第1の蒸留ユニットからの底部生成物を気化させて蒸気流を得るステップ;
(d)エーテル開裂ユニット内で、ステップ(c)の蒸気流を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよび第一級アルコールを得るステップ;および
(e)第2の蒸留ユニット内でエーテル開裂ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物として抜き出され、第一級アルコールが底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される、ステップ
を含む方法である。
【0011】
本発明によれば、ステップ(c)において、アルキルtert-ブチルエーテルの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0012】
高沸点成分をアルキルtert-ブチルエーテルから除去することにより、閉鎖プロセスにおけるこれらの高沸点不純物の蓄積が防止され、イソブテン分離プロセスの容量が増加する。さらに、エーテル開裂ユニットにおける潜在的な触媒失活が防止される。本発明による方法は、不純物の蓄積のような内部攪乱ならびに供給組成の変動のような外部攪乱に対してより堅牢である。したがって、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得るためのプラントの運転窓が増加する。
【0013】
本発明の方法に適したイソブテン含有C4炭化水素混合物は、例えば、石油生成物の熱分解もしくは接触分解、液化石油ガス(LPG)、ナフサ、軽油などの熱分解、またはn-ブタンおよび/もしくはn-ブテンの接触脱水素から得られる。一般に、これらのC4炭化水素混合物は、イソブテンに加えて、オレフィンおよびパラフィン系C4炭化水素を含有する。これらはまた、ブタジエンおよびアセチレン、例えば1-ブチンおよびブテニンを含有し得る。ブタジエン含有C4炭化水素混合物は、そのままで、または例えば選択溶媒で抽出することによって、C4炭化水素混合物からブタジエンを除去した後に使用することができる。一般に、イソブテン含有C4炭化水素混合物は、5~95%重量、好ましくは10~90%重量、特に20~70%重量のイソブテンを含有する。好ましくは、イソブテンに加えて、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、トランス-2-ブテンおよびシス-2-ブテンを含有し、1,3-ブタジエンを含むまたは含まないC4炭化水素混合物が使用される。より好ましくは、「ラフィネート-1」として知られる、1,3-ブタジエンを含まないC4炭化水素混合物が本発明の方法に使用される。
【0014】
本発明の方法に適した第一級アルコールは、イソブテンと反応して対応するアルキルtert-ブチルエーテルを形成することができるものである。好ましくは、第一級アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびイソブタノールの群から選択される。より好ましくは、第一級アルコールがイソブタノールである。
【0015】
本発明の主題の第1の実施形態では、第一級アルコールがメタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である。エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法は、以下のステップ:
(a)エーテル化ユニット内で、C4炭化水素混合物をメタノールと接触させ、酸性触媒の存在下で混合物をメタノールと反応させて、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を形成するステップ;
(b)第1の蒸留ユニット内で、エーテル化ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物として抜き出され、MTBEが底部生成物として抜き出される、ステップ;
(c)蒸発器内で第1の蒸留ユニットからの底部生成物を気化させて蒸気流を得るステップ;
(d)エーテル開裂ユニット内で、ステップ(c)の蒸気流を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよびメタノールを得るステップ;および
(e)第2の蒸留ユニット内でエーテル開裂ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物として抜き出され、メタノールが底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される、ステップ
を含み;
ステップ(c)において、MTBEの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0016】
本発明の主題の第2の実施形態では、第一級アルコールがエタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがエチルtert-ブチルエーテル(ETBE)である。エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法は、以下のステップ:
(a)エーテル化ユニット内で、C4炭化水素混合物をエタノールと接触させ、酸性触媒の存在下で混合物をエタノールと反応させて、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)を形成するステップ;
(b)第1の蒸留ユニット内で、エーテル化ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物として抜き出され、ETBEが底部生成物として抜き出される、ステップ;
(c)蒸発器内で第1の蒸留ユニットからの底部生成物を気化させて蒸気流を得るステップ;
(d)エーテル開裂ユニット内で、ステップ(c)の蒸気流を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよびエタノールを得るステップ;および
(e)第2の蒸留ユニット内でエーテル開裂ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物として抜き出され、エタノールが底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される、ステップ
を含み;
ステップ(c)において、ETBEの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0017】
本発明の主題の第3の実施形態では、第一級アルコールがイソプロピルアルコールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソプロピルtert-ブチルエーテル(IPTBE)である。エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法は、以下のステップ:
(a)エーテル化ユニット内で、C4炭化水素混合物をイソプロピルアルコールと接触させ、酸性触媒の存在下で混合物をイソプロピルアルコールと反応させて、イソプロピルtert-ブチルエーテル(IPTBE)を形成するステップ;
(b)第1の蒸留ユニット内で、エーテル化ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物として抜き出され、IPTBEが底部生成物として抜き出される、ステップ;
(c)蒸発器内で第1の蒸留ユニットからの底部生成物を気化させて蒸気流を得るステップ;
(d)エーテル開裂ユニット内で、ステップ(c)の蒸気流を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよびイソプロピルアルコールを得るステップ;および
(e)第2の蒸留ユニット内でエーテル開裂ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物として抜き出され、イソプロピルアルコールが底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される、ステップ
を含み;
ステップ(c)において、IPTBEの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0018】
本発明の主題の第4の実施形態では、第一級アルコールがイソブタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソブチルtert-ブチルエーテル(IBTBE)である。エーテル化ユニット、第1の蒸留ユニット、エーテル開裂ユニットおよび第2の蒸留ユニットを備えるプラントにおいて、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法は、以下のステップ:
(a)エーテル化ユニット内で、C4炭化水素混合物をイソブタノールと接触させ、酸性触媒の存在下で混合物をイソブタノールと反応させて、イソブチルtert-ブチルエーテル(IBTBE)を形成するステップ;
(b)第1の蒸留ユニット内で、エーテル化ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、C4炭化水素ラフィネートが塔頂生成物として抜き出され、IBTBEが底部生成物として抜き出される、ステップ;
(c)蒸発器内で第1の蒸留ユニットからの底部生成物を気化させて蒸気流を得るステップ;
(d)エーテル開裂ユニット内で、ステップ(c)の蒸気流を酸性触媒の存在下で反応させて、反応生成物としてイソブテンおよびイソブタノールを得るステップ;および
(e)第2の蒸留ユニット内でエーテル開裂ユニットからの反応混合物を蒸留するステップであって、イソブテンが塔頂生成物として抜き出され、イソブタノールが底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される、ステップ
を含み;
ステップ(c)において、IBTBEの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0019】
エーテル化ユニット
エーテル化は、第一級アルコールと、イソブテン含有C4炭化水素混合物、例えばラフィネート1に含有されるイソブテンの選択的反応に基づく。形成される生成物は、それぞれのアルキルtert-ブチルエーテルである。他のC4炭化水素はエーテル化反応に関与しない。エーテル化は、例えば、1つもしくは複数の撹拌釜または1つもしくは複数の固定床反応器で行うことができ、後者が好ましい。
【0020】
ジイソブテンは、エーテル化反応中に主副生成物として形成される。第三級ブタノールは、特に水およびイソブテンが酸性触媒上に存在する場合に、さらなる副生成物として形成され得る。
【0021】
エーテル化反応は、不均一エーテル化触媒として作用する酸性イオン交換樹脂の存在下で起こる。酸性イオン交換樹脂は、酸性形態のカチオン交換体である。一実施形態では、酸性イオン交換樹脂が、スルホン酸またはリン酸イオン交換樹脂を含む。好ましくは、酸性イオン交換樹脂が、マクロ網状イオン交換樹脂を含む。適切なイオン交換樹脂の例は、スルホン化フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クマロン-インデン縮合生成物から誘導されるスルホン化樹脂、特にスルホン化ポリスチレン樹脂である。好ましい実施形態では、酸性イオン交換樹脂が、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、例えばスルホン酸基で官能化された架橋スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーを含む。
【0022】
一実施形態では、酸性イオン交換樹脂が、乾燥樹脂1グラム当たり少なくとも約1ミリ当量のH+の酸性イオン交換基の濃度を有することができる。一般に、イオン交換樹脂の量は、反応器体積1リットル当たり0.01~1リットルのバルク体積である。
【0023】
エーテル化反応は平衡反応である。よって、平衡に達するためには、ある特定の滞留時間が必要である。しかしながら、実用的な観点から、エーテル化を連続的に行うことが好ましく、この場合、反応ゾーンの体積(体積単位)と1時間当たりの体積単位でのスループットの商が、一般に0.01~5時間、好ましくは0.02~1時間、特に0.03~1時間である。
【0024】
一般に、エーテル化反応は、90%以上、好ましくは95%以上、特に96%以上の、C4炭化水素混合物に含有されるイソブテンのアルキルtert-ブチルエーテルへの転化率をもたらす。
【0025】
イソブテンに対してモル過剰の第一級アルコールは、イソブテンの高い転化率に達し、イソブテンオリゴマーの形成を抑制するのに有利である。転化率は、第一級アルコールのイソブテンに対するモル比が増加するにつれて増加する。好ましくは、第一級アルコールのC4炭化水素混合物に含有されるイソブテンに対するモル比が100:1~1:1、より好ましくは20:1~1.2:1、特に4:1~1.3:1である。
【0026】
エーテル化は、大気圧下で行うことができる。しかしながら、例えば1.01~30バール、特に2~20バールの過圧下で作動することが有利である。イソブテン含有C4炭化水素混合物は、圧力および温度に応じて、液体または気体として使用することができる。好ましくは、液体イソブテン含有C4炭化水素混合物が使用される。エーテル化ユニット内で気化が起こらないことを確実にするために、圧力が12~20バールの範囲に維持される。
【0027】
好ましくは、エーテル化ユニットからの反応混合物の出口温度が、25~65℃、好ましくは30~60℃、特に30~50℃である。エーテル化は発熱反応である。エーテル形成は、低温で有利である。低い副生成物形成と共に高い反応速度および高いイソブテン転化率に達するために、反応器系が好ましくはカスケードされ、70℃未満の温度が適用される。一実施形態では、複数の断熱固定床反応器、例えば3つの断熱固定床反応器が直列で使用される。典型的な反応器入口温度は、30~40℃の範囲である。転化率は第1の反応器で最も高く、第2の反応器は残りのイソブテンを変換し、最後の反応器はエーテル化反応の平衡状態を達成するためにより長い滞留時間を有する。
【0028】
触媒の劣化が進むにつれて、総転化率に対する主な寄与は、第1の反応器から第2の反応器に移行する。反応器の入口温度は、意図された転化率を達成するように調整され、触媒の各々の活性に依存する。第3の反応器の入口温度は通常最も低く、この反応器の出口で平衡条件を依然として達成しながら可能な限り低く保たれる。
【0029】
一般に、第1の反応器の触媒は、供給原料内の汚染物質が第1の反応器の触媒をより高い確率で失活させるので、第2および第3の反応器の触媒よりも頻繁に交換され、転化率は典型的には、第1の反応器内で最も高い。
【0030】
反応器段に並列反応器を設けることにより、エーテル化ユニット全体を停止する必要のない触媒の交換が可能になる。並列に接続された反応器は、任意の反応器段、例えば2つの第1の反応器、2つの第2の反応器および/または2つの第3の反応器に設けることができる。
【0031】
第1の蒸留ユニット
エーテル化ユニットから抜き出された反応混合物は、アルキルtert-ブチルエーテル、ジイソブテン、未変換炭化水素および未反応第一級アルコールを含有する。エーテル化反応に関与しなかったC4炭化水素は、第1の蒸留ユニット内でアルキルtert-ブチルエーテルおよび過剰の第一級アルコールから分離される。取り除かれた塔頂生成物は、イソブテンを実質的に含まないC4炭化水素ラフィネートである。一般に、イソブテン含有量は、5%重量以下、好ましくは2.5%重量以下、特に1.5%重量以下である。塔頂生成物中のイソブテン含有量は、エーテル化ユニット中の転化率およびイソブテン含有C4炭化水素混合物、例えばラフィネート1の初期組成によって決定される。塔頂生成物中のイソブテン含有量は、塔頂生成物の一部をエーテル化ユニットに再利用することによって減少させることができる。
【0032】
好ましくは、塔頂生成物中のアルキルtert-ブチルエーテルおよび/またはジ-イソブチルエーテルの合計量は、200重量ppm以下である。塔頂生成物は「ラフィネート2」とも呼ばれる。
【0033】
好ましくは、ラフィネート2生成物流が、蒸留塔の塔頂においてサイドドローで抜き出される。ラフィネート2成分の沸点よりも低い沸点を有する成分は、好ましくは、オフガスとして蒸留塔の塔頂凝縮器から抜き出される。これらの軽質成分は、窒素、C3炭化水素または潜在的に形成された第三級ブタノールを含むことがある。
【0034】
第1の蒸留ユニットからの底部生成物は、主にアルキルtert-ブチルエーテルおよびジイソブテン、ならびにアルキルtert-ブチルエーテルよりも高い沸点を有する成分を含む。底部生成物は、過剰な第一級アルコールを含んでも含まなくてもよい。有利には、1,000重量ppm以下、好ましくは500重量ppm以下、特に100重量ppm以下のC4炭化水素を含有する底部生成物が取り出される。
【0035】
好都合には、第1の蒸留ユニットが約4~8バールの圧力下で運転され、底部温度が165~200℃、例えば約170℃である。
【0036】
一実施形態では、第1の蒸留ユニットからのアルキルtert-ブチルエーテル含有底部生成物が、液相に抜き出される。本発明による方法の別の実施形態では、第1の蒸留ユニットからのアルキルtert-ブチルエーテル含有底部生成物は、気相または二相気液流として取り出される蒸気相に抜き出される。
【0037】
本発明によれば、第1の蒸留ユニットからの底部生成物は蒸発器内で気化され、アルキルtert-ブチルエーテルの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流が蒸発器から抜き出される。
【0038】
可能性のある気化器は全て、慣用的なタイプの気化器、例えば流下膜式蒸発器、螺旋管、薄膜蒸発器、外部または内部循環を有する自然対流蒸発器、例えばロバート蒸発器、または強制循環蒸発器である。ロバート蒸発器または流下膜式蒸発器が好ましい。
【0039】
吸熱反応および細孔凝縮によるエーテル開裂触媒上での縮合を防止するために、気相を過熱させることがさらに好ましい。
【0040】
第1の好ましい実施形態では、第1の蒸留ユニットが蒸留塔を備え、底部生成物が、供給段の下の段で蒸留塔から副流として抜き出され、高沸点成分に富むパージ流が、蒸留塔のサンプから抜き出される。副流は、蒸気または液体として抜き出され得る。副流として底部生成物を抜き出すことは、エーテル開裂プロセスの劣化をもたらし得る高沸点成分が底部生成物において劇的に低減されるという利点を有する。
【0041】
第1の蒸留ユニットの蒸留塔のサンプからのパージ流が副生成物分離ユニットに供給されることがこの実施形態にとってさらに好ましい。高沸点成分を含有するパージ流は、副生成物分離ユニット内で貴重な生成物に分離され得る。これは、副生成物の損失を減らすことによってイソブテン分離プロセスの全体的な効率を高める。
【0042】
蒸発器が、自然循環蒸発器、特にロバート型蒸発器であり、底部パージ流が、蒸発器の底部の液相から抜き出されることがこの実施形態ではさらに好ましい。これにより、高沸点成分を容易かつ効率的に除去することができる。
【0043】
蒸発器からのパージ流が副生成物分離ユニットに供給されることがこの実施形態ではさらに好ましい。高沸点成分を含有するパージ流は、副生成物分離ユニット内で貴重な生成物に分離され得る。これは、副生成物の損失を減らすことによってイソブテン分離プロセスの全体的な効率を高める。
【0044】
エーテル開裂ユニット
エーテル開裂ユニットでは、アルキルtert-ブチルエーテルが、高温において酸触媒の存在下でイソブテンおよび第一級アルコールに分解される。好ましくは、第1の蒸留ユニットからのアルキルtert-ブチルエーテル含有底部生成物が、存在し得る過剰の第一級アルコールを除去することなくエーテル開裂ユニットに移される。あるいは、第一級アルコールの一部または全部を除去することが可能である。
【0045】
アルキルtert-ブチルエーテルの分解は、酸触媒上、気相中で実施される。これはバッチ式で行われ得るが、好ましくは連続的に行われる。
【0046】
エーテル開裂反応は平衡反応であり、分割は高温によって支持される。典型的な転化率は90%超である。エーテル開裂反応は、直列および/または並列に接続された1つまたは複数の反応器内で行われ得る。有用な反応器には、加熱管状反応器、例えば蒸気加熱管状反応器、または加熱管状反応器とそれに続く第2の加熱管状反応器もしくは断熱固定床反応器からなる2つの反応器系が含まれる。代替として、エーテル開裂反応を、二相反応器を使用して二相系で実施することができる。
【0047】
適切な酸触媒の例は、酸形態のイオン交換体、例えばスルホン化石炭、スルホン化フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クマロン-インデン縮合生成物から誘導されるスルホン化樹脂、特にスルホン化ポリスチレン樹脂、例えばスルホン化架橋スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである。
【0048】
有利に使用され得る他の触媒は、固体担体上にモノリン酸または好ましくはポリリン酸を含む固体リン酸触媒である。リン酸触媒に適した担体の例は、アルミナ、シリカ、活性炭、珪藻土または軽石である。シリカゲルが好ましい担体である。
【0049】
他の適切な酸触媒は、金属硫酸塩、例えば、重硫酸ナトリウム、重硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸コバルト、硫酸カドミウムおよび硫酸ストロンチウムである。これらの硫酸塩は、非担持で使用され得るが、好ましくは担体上で使用される。適切な担体の例は、シリカゲル、活性炭、アルミナおよび軽石である。
【0050】
分解にさらに適した触媒は、シリカゲルまたはアルミナ自体である。
【0051】
本発明による方法のさらなる実施形態では、金属リン酸塩、特に金属リン酸水素塩が酸分解触媒として使用される。これらのリン酸塩はまた、酸性金属リン酸塩の化学量論組成に対応する量に対して過剰の、例えば最大65%、好ましくは1~50%、特に10~20%過剰のリン酸を含有し得る。このような金属リン酸塩の例は、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、リン酸銅、リン酸コバルト、リン酸カドミウム、リン酸鉄(II)、リン酸クロム、特にリン酸アルミニウムである。金属リン酸塩触媒は、そのまままたは担体上で使用することができる。適切な担体の例は、アルミナ、シリカ、活性炭および酸化亜鉛である。
【0052】
酸触媒の量は、一般に、1時間当たりに反応器を通過するアルキルtert-ブチルエーテル1 kg当たり約0.01~1 kg、好ましくは約0.03~0.3 kgである。好ましくは、固定床反応器がアルキルtert-ブチルエーテルの分解に使用される。
【0053】
第三級エーテルの分解温度は、酸触媒の性質および接触時間によって変化するが、一般に50℃~350℃、好ましくは80℃~300℃、特に100℃~250℃である。金属リン酸塩またはリン酸触媒が分解触媒として使用される場合、分解は、一般に、80℃~350℃、好ましくは90℃~260℃、特に170℃~210℃で行われる。
【0054】
気化したアルキルtert-ブチルエーテルの接触時間は、有利には0.1~20秒、好ましくは1~10秒である。
【0055】
アルキルtert-ブチルエーテルの分解は、大気圧下で行うことができるが、一般に、過圧下、例えば最大30バール、好ましくは最大20バールで行われる。有利には、アルキルtert-ブチルエーテルの分解が、2~15バール、好ましくは3~12バール、特に4~12バールの圧力下で行われる。しかしながら、分解を減圧下で行うこともできる。
【0056】
一実施形態では、エーテル開裂ユニットが、直列に接続された第1のエーテル開裂反応器および第2のエーテル開裂反応器を備える。第1のエーテル開裂反応器の高い初期活性のために、この反応器ではほぼ完全な変換が達成される。第1の反応器のアウトプット中に開裂可能なエーテルが存在しないと、第2の反応器内で望ましくない副反応、例えば第一級アルコールの水およびイソブテンへの脱水が生じる場合がある。第1のエーテル開裂反応器の活性が経時的に低下し、第1のエーテル開裂反応器のアウトプットが所定濃度のアルキルtert-ブチルエーテルを含有する場合、第2のエーテル開裂反応器の運転が開始される。
【0057】
好ましい実施形態では、第1のエーテル開裂反応器および第2のエーテル開裂反応器が、順番および/もしくは第1のエーテル開裂反応器を通る流れ方向において周期的に交互にされる、ならびに/または第2のエーテル開裂反応器が周期的に変化する。2つの反応器を切り替え、反応器を通る流れ方向を周期的に変更する可能性は、反応器の長さにわたるより均一な失活およびより良好な反応制御をもたらし得る。最終的に、全体的な実行時間を改善することができる。
【0058】
第2の蒸留ユニット
エーテル開裂ユニットから得られた反応混合物は、反応生成物としてイソブテンおよび第一級アルコールを含有し、第2の蒸留ユニットに供給される。第2の蒸留ユニットでは、高純度イソブテンが、蒸留により、重質成分、例えば第一級アルコール、非反応アルキルtert-ブチルエーテル、およびさらなる重質化合物、例えばジイソブテンから分離される。
【0059】
本発明の主題の第1の実施形態では、第一級アルコールがメタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である場合、第2の蒸留ユニットが、好ましくはメタノール抽出ユニットおよびイソブテン精製塔を備える。エーテル開裂ユニットからの反応混合物は、メタノール抽出ユニットに供給され、そこで溶媒、好ましくは溶媒としての水と向流接触される。さらなる処理およびメタノールのエーテル化ユニットへの再利用のために、水およびメタノールに富む流れが抽出ユニットの底部から抜き出される。イソブテンに富む流れは、抽出ユニットの塔頂から抜き出され、イソブテン精製塔に供給され、そこでイソブテンが高沸点成分から分離され、イソブテン精製塔の塔頂生成物として抜き出される。好ましくは、イソブテン生成物流が、塔が全液体還流で運転されている間に、イソブテン精製塔の塔頂でサイドドローで抜き出される。イソブテンの沸点よりも低い沸点を有する成分は、好ましくは、オフガスとして塔の塔頂凝縮器から抜き出される。これらの軽質成分は、窒素またはC3炭化水素を含み得る。
【0060】
本発明の主題の第2の実施形態では、第一級アルコールがエタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがエチルtert-ブチルエーテル(ETBE)である場合、第2の蒸留ユニットが、好ましくはエタノール抽出ユニットおよびイソブテン精製塔を備える。エーテル開裂ユニットからの反応混合物は、エタノール抽出ユニットに供給され、そこで溶媒、好ましくは溶媒としての水と向流接触される。さらなる処理およびエタノールのエーテル化ユニットへの再利用のために、水およびエタノールに富む流れが抽出ユニットの底部から抜き出される。イソブテンに富む流れは、抽出ユニットの塔頂から抜き出され、イソブテン精製塔に供給され、そこでイソブテンが高沸点成分から分離され、イソブテン精製塔の塔頂生成物として抜き出される。好ましくは、イソブテン生成物流が、塔が全液体還流で運転されている間に、イソブテン精製塔の塔頂でサイドドローで抜き出される。イソブテンの沸点よりも低い沸点を有する成分は、好ましくは、オフガスとして塔の塔頂凝縮器から抜き出される。これらの軽質成分は、窒素またはC3炭化水素を含み得る。
【0061】
本発明の主題の第3の実施形態では、第一級アルコールがイソプロピルアルコールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソプロピルtert-ブチルエーテル(IPTBE)である場合、第2の蒸留ユニットが、好ましくはイソプロピルアルコール抽出ユニットおよびイソブテン精製塔を備える。エーテル開裂ユニットからの反応混合物は、イソプロピルアルコール抽出ユニットに供給され、そこで溶媒、好ましくは溶媒としての水と向流接触される。さらなる処理およびエタノールのエーテル化ユニットへの再利用のために、水およびイソプロピルアルコールに富む流れが抽出ユニットの底部から抜き出される。イソブテンに富む流れは、抽出ユニットの塔頂から抜き出され、イソブテン精製塔に供給され、そこでイソブテンが高沸点成分から分離され、イソブテン精製塔の塔頂生成物として抜き出される。好ましくは、イソブテン生成物流が、塔が全液体還流で運転されている間に、イソブテン精製塔の塔頂でサイドドローで抜き出される。イソブテンの沸点よりも低い沸点を有する成分は、好ましくは、オフガスとして塔の塔頂凝縮器から抜き出される。これらの軽質成分は、窒素またはC3炭化水素を含み得る。
【0062】
本発明の主題の第4の実施形態では、第一級アルコールがイソブタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソブチルtert-ブチルエーテル(IBTBE)である場合、第2の蒸留ユニットが、好ましくはエーテル開裂ユニットから反応混合物を供給される蒸留塔を備える。イソブテンはその塔から塔頂生成物として抜き出され、イソブタノールおよびジイソブテンは底部生成物として抜き出され、エーテル化ユニットに再利用される。底部温度は、好ましくは150℃~200℃であり、塔内の圧力は、好ましくは4~8バールである。好ましい変形では、イソブテン生成物流が、塔が全液体還流で運転されている間に、塔の塔頂でサイドドローで抜き出される。イソブテンの沸点よりも低い沸点を有する成分は、好ましくは、オフガスとして塔の塔頂凝縮器から抜き出される。これらの軽質成分は、窒素またはC3炭化水素を含み得る。
【0063】
有利には、塔頂生成物が、99.3重量%以上、好ましくは99.5重量%以上、特に99.7重量%以上のイソブテンを含有する。好ましくは、500重量ppm以下、好ましくは100重量ppm以下、特に50重量ppm以下の第一級アルコールを含有するイソブテンが塔頂生成物として取り出される。
【0064】
好ましくは、高純度イソブテン生成物が、塔頂に近い第2の蒸留ユニットのサイドドローから取り出される。プロセス中に副生成物として生成され得る水は、例えば蒸留塔の塔頂凝縮器の還流ドラム内で、系から除去することができる。
【0065】
底部生成物は、主に第一級アルコール、アルキルtert-ブチルエーテルおよびジイソブテンを含有する。有利には、底部生成物が、80~85重量%の第一級アルコール、8~10重量%のアルキルtert-ブチルエーテルおよび4~5重量%のジイソブテンを含有する。底部生成物の大部分は、エーテル化ユニットに再利用される。必要に応じて、再利用流に新たな第一級アルコールが補充され得る。
【0066】
副生成物分離ユニット
好ましい実施形態では、プラントは、第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部を供給される副生成物分離ユニットをさらに含む。副生成物分離ユニットに導かれる底部生成物と、エーテル化ユニットに再利用される底部生成物との重量比は、好ましくは1:20~1:5、より好ましくは約1:10の範囲である。第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される副生成物分離ユニットを設けることで、イソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得るためのプラントの運転窓が大幅に増加する。第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部の除去により、系からの高沸点不純物の連続的除去が可能になる。本発明による方法は、不純物の蓄積のような内部攪乱ならびに供給組成の変動のような外部攪乱に対してより堅牢である。
【0067】
第一級アルコールに富むアルコール生成物流は、その中の副生成物分離ユニットに供給される流れから分離されることがさらに好ましい。
【0068】
より好ましくは、第一級アルコールはエーテル化ユニットに再利用される。第一級アルコールの再利用は、イソブテン分離に必要な新たな第一級アルコールの量を減らすことによって、イソブテン分離プロセスの全体的な効率を高める。先行技術による方法では、第2の蒸留ユニットから取り出されたパージ流に含有される第一級アルコールの量は、典型的には排出される。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、アルコール生成物流中の第一級アルコールの質量分率は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%である。第2の副生成物流がエーテル化ユニットに再利用されると、第一級アルコールの純度が高いため、イソブテン分離に必要な新たな第一級アルコールの量が減少し、イソブテン分離プロセスの全体的な効率が向上する。
【0070】
好ましい実施形態では、第2の蒸留ユニットからの底部生成物流に含まれるアルキルtert-ブチルエーテルは、副生成物精製ユニットで分離され、蒸発のためにステップ(c)の蒸発器、エーテル開裂ユニットまたは蒸発器とエーテル開裂ユニットの両方に再利用される。第2の蒸留塔からの底部流に含まれるアルキルtert-ブチルエーテルを分離して再利用すると、アルキルtert-ブチルエーテルに含まれる貴重な生成物イソブテンの損失が減少し、イソブテン分離プロセスの全体的な効率が向上する。先行技術による方法では、第2の蒸留ユニットから取り出されたパージ流は、典型的には排出される。
【0071】
さらに好ましい実施形態では、副生成物分離ユニットに供給される第2の蒸留ユニットの底部生成物は、少なくとも3つの副生成物流に分割され、第1の副生成物流はジイソブテンに富み、第2の副生成物流は第一級アルコールに富むアルコール生成物流であり、第3の副生成物流は、110℃を超える標準沸点を有する成分に富む。第2の蒸留ユニットの底部生成物の抜き出された部分を3つの異なる画分に分離することにより、より具体的な再利用戦略、より高いプロセス統合、したがって運転コストの削減が可能になる。貴重な副生成物ジイソブテンは、排出される既知の方法とは対照的に、容易に回収される。
【0072】
メタノール/MTBE
本発明の主題の第1の実施形態では、第一級アルコールがメタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である場合、副生成物分離ユニットが、好ましくは少なくとも2つの蒸留塔を備える。
【0073】
一実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にメタノール、MTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。メタノールに富む第2の副生成物流は、第1の塔の塔頂から抜き出される。この第2の副生成物流は、MTBEをさらに含有し得る。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出され、標準沸点が110℃を超える成分に富む第3の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0074】
別の好ましい実施形態では、副生成物分離ユニットは、少なくとも3つの蒸留塔を備える。副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にメタノール、MTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。MTBEに富む流れは、第1の塔の塔頂から抜き出される。MTBEよりも高い標準沸点を有する成分は、第1の塔の底部から抜き出され、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。メタノールに富む第2の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出される。第2の塔の底部生成物流は引き出され、副生成物分離ユニットの第3の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第3の塔の塔頂から抜き出され、標準沸点が110℃を超える成分に富む第3の副生成物流は、第3の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0075】
エタノール/ETBE
本発明の主題の第2の実施形態では、第一級アルコールがエタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがエチルtert-ブチルエーテル(ETBE)である場合、副生成物分離ユニットが、好ましくは少なくとも2つの蒸留塔を備える。
【0076】
一実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にエタノール、ETBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。エタノールに富む第2の副生成物流は、第1の塔の塔頂から抜き出される。この第2の副生成物流は、ETBEをさらに含有し得る。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出され、標準沸点が110℃を超える成分に富む第3の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0077】
別の好ましい実施形態では、副生成物分離ユニットは、少なくとも3つの蒸留塔を備える。副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にエタノール、ETBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。第1の蒸留塔は、ETBEおよびエタノールに富む流れが塔の塔頂から抜き出され、ジイソブテンおよび高沸点成分に富む流れが塔の底部から抜き出される予備分留塔である。塔頂生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給され、ETBEに富む流れが第2の塔の塔頂から抜き出され、エタノールに富む第2の副生成物流が第2の塔の底部から抜き出される。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第3の蒸留塔に供給され、ジイソブテンに富む第1の副生成物流が、第3の塔の塔頂から抜き出され、110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流が、第3の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0078】
イソプロピルアルコール/IPTBE
本発明の主題の第3の実施形態では、第一級アルコールがイソプロピルアルコールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソプロピルtert-ブチルエーテル(IPTBE)である場合、副生成物分離ユニットが、好ましくは少なくとも2つの蒸留塔を備える。
【0079】
一実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソプロピルアルコール、IPTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。イソプロピルアルコールに富む第2の副生成物流は、第1の塔の塔頂から抜き出される。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出される。この第1の副生成物流は、IPTBEをさらに含有し得る。110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0080】
別の好ましい実施形態では、副生成物分離ユニットは、少なくとも3つの蒸留塔を備える。副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソプロピルアルコール、IPTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。第1の蒸留塔は、IPTBEおよびイソプロピルアルコールに富む流れが塔の塔頂から抜き出され、ジイソブテンおよび高沸点成分に富む流れが塔の底部から抜き出される予備分留塔である。塔頂生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給され、イソプロピルアルコールに富む第2の副生成物流が第2の塔の塔頂から抜き出され、IPTBEに富む流れが第2の塔の底部から抜き出される。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第3の蒸留塔に供給され、ジイソブテンに富む第1の副生成物流が、第3の塔の塔頂から抜き出され、110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流が、第3の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、トリイソブテンのような高沸点成分を含有し得る。
【0081】
イソブタノール/IBTBE
本発明の主題の第4の実施形態では、第一級アルコールがイソブタノールであり、アルキルtert-ブチルエーテルがイソブチルtert-ブチルエーテル(IBTBE)である場合、副生成物分離ユニットが、好ましくは少なくとも2つの蒸留塔を備える。
【0082】
一実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソブタノール、IBTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第1の塔の塔頂から抜き出される。第1の塔の底部生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。イソブタノールに富む第2の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出され、110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、主にIBTBEを含有し、ジイソブチルエーテル(DIBE)および/またはトリイソブテンのようなさらなる高沸点成分を含有し得る。
【0083】
2つの塔を有する代替実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソブタノール、IBTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流は、第1の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、主にIBTBEを含有し、ジイソブチルエーテル(DIBE)および/またはトリイソブテンのようなさらなる高沸点成分を含有し得る。第1の塔の塔頂生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第2の塔の塔頂から抜き出され、イソブタノールに富む第2の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。
【0084】
2つの塔を有する別の代替実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソブタノール、IBTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流は、第1の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、主にIBTBEを含有し、ジイソブチルエーテル(DIBE)および/またはトリイソブテンのようなさらなる高沸点成分を含有し得る。イソブタノールに富む第2の副生成物流は、第1の塔からサイドドローとして抜き出される。第1の塔の塔頂生成物流は、副生成物分離ユニットの第2の蒸留塔に供給される。ジイソブテンに富む第1の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第2の塔の塔頂生成物は、第1の塔に再利用される。
【0085】
より好ましくは、副生成物分離ユニットが、少なくとも3つの蒸留塔を備える。
【0086】
3つの塔を有する一実施形態では、副生成物分離ユニットの第1の蒸留塔には、主にイソブタノール、IBTBEおよびジイソブテンを含有する第2の蒸留ユニットの底部生成物の一部が供給される。110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富む第3の副生成物流は、第1の塔の底部から抜き出される。第3の副生成物流は、主にトリイソブテンのような高沸点成分を含有する。第1の塔の塔頂生成物流は、第2の蒸留塔に供給される。イソブタノールに富む第2の副生成物流は、第2の塔の底部から抜き出される。第2の塔の塔頂生成物流は第3の蒸留塔に供給され、ジイソブテンに富む第1の副生成物流は塔の底部から抜き出される。第1の副生成物流はまた、IBTBEおよび/またはジイソブチルエーテル(DIBE)を含有し得る。
【0087】
好ましい実施形態では、第1の副生成物流は少なくとも2つのさらなる副生成物流にさらに分割され、第4の副生成物流はジイソブテンに富み、第5の副生成物流はアルキルtert-ブチルエーテルに富む。第1の副生成物流のさらなる分割を設けることにより、例えば、流れを専用のプロセスユニットに再利用することによるプロセス統合に関して、イソブテン分離プロセスの柔軟性が増加する。さらに、プロセスの全体的な効率が高まる。
【0088】
第1の副生成物流が少なくとも2つのさらなる副生成物流にさらに分割されるプロセスの場合、第1の副生成物流中のジイソブテンの質量分率が少なくとも30重量%であり、第4の副生成物流中のジイソブテンの質量分率が少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%であることが好ましい。高純度から非常に高純度のジイソブテンを有する副生成物流を設けることは、様々な用途でその成分を使用することが可能になり、よって、イソブテン分離プロセスの全体的な効率が向上する。
【0089】
第1の副生成物流が少なくとも2つのさらなる副生成物流にさらに分割されるプロセスの場合、第5の副生成物流が、蒸発のために蒸発器および/またはエーテル開裂ユニットに少なくとも部分的に再利用されることが好ましい。アルキルtert-ブチルエーテルに富む第5の生成物流を再利用することによって、アルキルtert-ブチルエーテルに含有される貴重な生成物イソブテンの損失が低減される。これはイソブテン分離プロセスの全体的な効率を高める。
【0090】
本発明を、図面を参照して以下により詳細に説明する。図面は、原則的な提示として解釈されるべきである。これらは、例えば特定の実施形態に関して、本発明のいかなる制限も構成しない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本発明による方法の第1の実施形態のブロック図である。
図2】本発明による方法の第2の実施形態のブロック図である。
図3】本発明による方法の第3の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1は、本発明によるイソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法の第1の実施形態のブロック図を示す。イソブテン含有C4炭化水素供給流1および第一級アルコール供給流2は、酸性触媒、好ましくはイオン交換樹脂を有する少なくとも1つの反応器を備えるエーテル化ユニット3に供給される。有利には、エーテル化ユニット3が、固定床反応器、例えば流通管もしくはループ反応器、または両方のタイプの組み合わせを備える。C4炭化水素混合物を第一級アルコールと接触させ、混合物を酸触媒の存在下で反応させて、対応するアルキルtert-ブチルエーテルを形成する。ジイソブテンは副生成物として得られる。
【0093】
得られた反応混合物4は、第1の蒸留ユニット5に供給される。C4炭化水素ラフィネート流6は、第1の蒸留ユニット5の塔頂生成物として抜き出される。第1の蒸留ユニット5から抜き出された底部生成物流7は、主にアルキルtert-ブチルエーテルおよびジイソブテンを含む。過剰な第一級アルコールおよび典型的には110℃超の標準沸点を有する重質成分も、底部生成物流7中に存在し得る。
【0094】
第1の蒸留ユニット5からの底部生成物流7は、蒸発器8内で気化され、蒸気流9が得られる。アルキルtert-ブチルエーテルの沸点よりも高い標準沸点を有する高沸点成分を含有するパージ流15が蒸発器8から抜き出される。
【0095】
蒸気状のアルキルtert-ブチルエーテル流9は、酸性触媒、好ましくはイオン交換樹脂を有する少なくとも1つの反応器を備えるエーテル開裂ユニット10に供給される。有利には、エーテル開裂ユニット10内の少なくとも1つの反応器が固定床反応器である。イソブテンおよび第一級アルコールは、反応生成物として得られる。
【0096】
得られた反応混合物11は、第2の蒸留ユニット12に供給される。高純度イソブテン生成物流13は、第2の蒸留ユニット12の塔頂生成物として抜き出される。第2の蒸留ユニット12から抜き出された底部生成物は、主に第一級アルコールおよびジイソブテンを含む。典型的には110℃超の標準沸点を有する重質成分も、底部生成物中に存在し得る。第2の蒸留ユニット12の底部生成物は、第一級アルコール再利用流14でエーテル化ユニット3に再利用される。必要に応じて、再利用流に新たな第一級アルコールが補充され得る。
【0097】
図2は、本発明によるイソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法の第2の実施形態のブロック図を示す。この実施形態では、第2の蒸留ユニット12の底部生成物の主要部分は、第一級アルコール再利用流14でエーテル化ユニット3に再利用されるが、第2の蒸留ユニット12の底部生成物の残りのより小さい部分は、副生成物分離ユニット17に供給される。蒸発器パージ流15は、副生成物分離ユニット17にも供給される。このユニットでは、副生成物分離ユニット供給流16が、少なくとも3つの副生成物流、好ましくは3つの相互接続された蒸留塔に分割される。第1の副生成物流18はジイソブテンに富み、プラントから除去される。第2の副生成物流19は第一級アルコールに富み、エーテル化ユニット3に再利用される。第3の副生成物流20は、110℃よりも高い標準沸点を有する成分に富み、同様にプラントから除去される。
【0098】
図3は、本発明によるイソブテン含有C4炭化水素混合物からイソブテンを得る方法の第3の実施形態のブロック図を示す。この実施形態では、第1の副生成物流18は、少なくとも2つのさらなる副生成物流にさらに分割され、第4の副生成物流21はジイソブテンに富み、第5の副生成物流22はアルキルtert-ブチルエーテルに富む。第5の副生成物流22は、エーテル開裂ユニット10に少なくとも部分的に再利用される。第1の蒸留ユニット5は蒸留塔を備え、底部生成物7は、供給段の下の段で蒸留塔から副流として抜き出され、高沸点成分に富むパージ流23は、蒸留塔のサンプから抜き出される。第1の蒸留ユニット5の蒸留塔のサンプからの高沸点パージ流23は、副生成物分離ユニット17に供給される。
【符号の説明】
【0099】
1 C4炭化水素供給流
2 第一級アルコール供給流
3 エーテル化ユニット
4 反応混合物流
5 第1の蒸留ユニット
6 C4炭化水素ラフィネート流
7 アルキルtert-ブチルエーテル底部流
8 蒸発器
9 蒸気流
10 エーテル開裂ユニット
11 反応混合物流
12 第2の蒸留ユニット
13 イソブテン生成物流
14 第一級アルコール再利用流
15 蒸発器パージ流
16 副生成物分離ユニット供給流
17 副生成物分離ユニット
18 第1の副生成物流
19 第2の副生成物流
20 第3の副生成物流
21 第4の副生成物流
22 第5の副生成物流
23 高沸点パージ流
図1
図2
図3
【国際調査報告】