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特表2024-509914ニューレグリン1(NRG1)遺伝子融合に関連する腫瘍を処置するための抗ERBB3(HER3)モノクローナル抗体の投与量および投与
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ニューレグリン1(NRG1)遺伝子融合に関連する腫瘍を処置するための抗ERBB3(HER3)モノクローナル抗体の投与量および投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240227BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALN20240227BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240227BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12Q1/6841 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555216
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022019745
(87)【国際公開番号】W WO2022192534
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/159,575
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523342012
【氏名又は名称】エレベーション オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リーランド, ショーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】クンケル, ロリ
(72)【発明者】
【氏名】プレシンガー, ダグ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン, バレリー マリバン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗ERBB3抗体を使用した、NRG1遺伝子融合に関連する腫瘍の臨床処置のための方法が提供される。特定の臨床投与量レジメン(すなわち、特定の用量で、かつ、特異的な投与スケジュールに従って)に従って抗ERBB3抗体を患者に投与することによる、ヒト患者における腫瘍を処置するための方法であって、腫瘍がNRG1融合遺伝子を含む、方法が、本明細書に提供される。本明細書に記載されている方法は、予後不良に関連する公知発癌性ドライバーであるNRG1融合遺伝子を有する患者において、抗体の定常状態濃度を達成し、ERBB3経路活性の最大阻害を送達するという点において特に有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置する方法であって、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を前記対象に投与するステップを含み、前記抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、前記抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、方法。
【請求項2】
前記抗体の毎週1回投与が、処置をもたらすのに不十分である場合に中断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベースラインと比較した、臨床疾患進行あり、増加した症状あり、寛容性あり、および/または臨床改善なしである場合、前記抗体の毎週1回投与が、処置をもたらすのに不十分であるであると決定される、2に記載の方法。
【請求項4】
前記決定が、X線検査による評価によって評価される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定が、「固形腫瘍効果判定基準」(RECIST)バージョン1.1ガイドラインによって評価される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記決定が、1種または複数種の腫瘍マーカーによって評価される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記1種または複数種の腫瘍マーカーが、炭水化物抗原(CA19-9)、がん胎児抗原(CEA)、がん抗原125(CA-125)およびがん抗原15-3(CA 15-3)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記決定が、肝機能検査(LFT)によって評価される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、前記毎週1回の抗体用量が、25%低減される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記毎週1回の抗体用量が、2,250mgに低減される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、前記毎週1回の抗体用量が、50%低減される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記毎週1回の抗体用量が、1,500mgに低減される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、静脈内投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、約1時間かけて静脈内投与される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記処置が、腫瘍のサイズの低減、経時的な転移性病変の数の低減、完全奏効、部分奏効および安定疾患から選択される少なくとも1種の治療効果を生じる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、腫瘍生検または液体生検アッセイによって測定して、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有すると決定された、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記アッセイが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)または次世代配列決定(NGS)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記NGSが、RNAに基づくまたはDNAに基づく検査である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍が、局所的進行型または転移性固形腫瘍である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍が、扁平上皮癌、肺がん(例えば、浸潤性粘液性腺癌(IMA)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC)、神経膠腫、胃腸がん、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、膵管腺癌(PDAC)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頸部がん、胃がん、膀胱がん、胆嚢がん(GBC)、胆管がん(胆管癌)、ヘパトーマ、乳がん、結腸癌および頭頸部がん(または癌)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、上咽頭の神経内分泌腫瘍、胃がん、胚細胞腫瘍、肉腫、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫等の転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、腟の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、食道胃接合部(GEJ)がん、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたがんを含む環境誘発性のがん、ならびにウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連腫瘍またはHPVに起源をもつ腫瘍))からなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍型が、浸潤性粘液性腺癌(IMA)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍型が、卵巣がんである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記NRG1融合が、DOC4、CLU、STMN2、PCM1、CD74;SLC3A2;SDC4;ATP1B1;ROCK1;FOXA1;AKAP13;THBS1;PDE7A;THAP7;SMAD4;RAB3IL1;PMEPA1;STMN2;SLC3A2;VAMP2;RBPMS;WRN;RAB2IL1;SARAF;APP;KIF13B;ADAM9;CDH1;COX10-AS1;DIP2B;DPYSL2;GDF15;HMBOX1;MDK;MRPL13;NOTCH2;PARP8;POMK;SETD4;TNC;TSHZ2;VTCN1;WHSC1L1;INTS9;およびZMYM2からなる群から選択される遺伝子を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、それぞれ配列番号2および4を含む重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、それぞれ配列番号12および13を含む重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
標的化療法、放射線照射、化学療法、免疫療法および/または化学免疫療法の投与をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記標的化療法が、EGFR、ALK、ROS、NTRK、mTOR、PI3K、MEK、ERKまたはMETに対するものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗エストロゲン剤の投与をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象におけるがんを処置するためのキットであって、
(a)それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗ERBB3抗体の用量と、
(b)先行する請求項のいずれか一項に記載の方法において前記抗体を使用するための指示と
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年3月11日に出願された米国特許仮出願第63/159,575号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2022年3月9日に作成された前記ASCIIコピーは、FNJ-026_Sequence_Listing.txtと命名され、24,462バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
背景
ニューレグリン-1(NRG1)遺伝子融合は、多くの異なるがん型にわたって、新たに出現した潜在的にアクショナブルな発癌性ドライバーを表す(Drilon A, et al. (2018) Cancer Discov;8:686-959)。NRG1融合は、種々の腫瘍型において検出されており、NRG1の細胞外EGF様ドメインおよび特異的融合パートナーの膜貫通ドメインを保持するタンパク質を含む。このようなタンパク質は、ERBB3(HER3)およびERBB4(HER4)受容体のリガンドとして機能する(Fernandez-Cuesta L, et al. (2014) Cancer Discov;4:415-22)。次に、ERBB3は、EGF様ドメインからの接触分泌シグナル伝達および分泌されたNRG1の自己分泌シグナル伝達を介して活性化され得る(Wen D, et al. (1994) Mol Cell Biol 1994;14:1909-199)。その後のERBB3とERBB2とのヘテロ二量体化は、ERK、PI3K、AKTおよびNFκBを含む経路によって媒介される、腫瘍発生において重要な病的な下流シグナル伝達を活性化する。
NRG1融合は、全腫瘍の0.1~0.2%において同定される、希少なかつ再発性の臨床的にアクショナブルな染色体転座である(例えば、Jonna C, et al. (2019) Clin. Cancer Res. 25:4966-4972;Drilon A, et al. (2018) Cancer Discov. 8:686-695を参照)。ニューレグリン-1遺伝子(NRG1)が関与する融合は、1997年に乳がん細胞系において最初に同定された(Schaefer G, et al. (1997) Oncogene 15:1385-1394)。その後、NRG1遺伝子と多くの異なる上流パートナーとの融合が、いくつかのグループによって、肺および他のがんにおいて発現されることが示された(Jonna C, et al. (2019) Clin. Cancer Res. 25:4966-4972;Drilon A, et al. (2018) Cancer Discov. 8:686-695)。異なるがん型の間のNRG1融合の分布に注目した最大の試験において、14/21,858個の腫瘍が、融合を有しており、発生率は、腫瘍型によって広く変動し、0.5%胆嚢がん、0.5%腎明細胞癌、0.5%膵がん、0.4%卵巣がんおよび0.2%肉腫(Jonna C, et al. (2019) Clin. Cancer Res. 25:4966-4972)であった。非小細胞肺がんおよび乳がんにおける発生率は、およそ0.2%である(Jonna C, et al. (2019) Clin. Cancer Res. 25:4966-4972)。NRG1融合は、子宮がんおよび頭頸部がんにおいても同定された(Drilon A, et al. (2018) Cancer Discov. 8:686-695)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Drilon A, et al. (2018) Cancer Discov. 8:686-695
【非特許文献2】Fernandez-Cuesta L, et al. (2014) Cancer Discov;4:415-22
【非特許文献3】Wen D, et al. (1994) Mol Cell Biol 1994;14:1909-199
【非特許文献4】Jonna C, et al. (2019) Clin. Cancer Res. 25:4966-4972
【非特許文献5】Schaefer G, et al. (1997) Oncogene 15:1385-1394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腫瘍治療の改善にもかかわらず、現在、進行型NRG1融合陽性固形腫瘍を有する患者のための、NRG1融合を特異的に標的化する承認された治療は存在しない。利用できる化学療法、免疫療法および適応外(off-label)治療は、進行型NRG1融合陽性NSCLCにおいて例証される、このようなゲノム的に定義された患者集団のために有意義な臨床的有用性を提供しない(例えば、Drilon A, et al. (J. Clin. Oncol. 2021 Sep 1;39(25):2791-2802を参照)。よって、依然として、特に、進行型がんまたは転移性固形腫瘍の場合に、確立された治療を最適化し、高いクオリティ・オブ・ライフを維持しつつ患者の寿命を延長する新たな有望な治療を開発する決定的な必要がある。したがって、本発明の目的は、ERBB3シグナル伝達を有効に阻害し、NRG1融合に関連する種々の腫瘍の処置および診断に使用することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
特定の臨床投与量レジメン(すなわち、特定の用量で、かつ、特異的な投与スケジュールに従って)に従って抗ERBB3抗体を患者に投与することによる、ヒト患者における腫瘍を処置するための方法であって、腫瘍がNRG1融合遺伝子を含む、方法が、本明細書に提供される。本明細書に記載されている方法は、予後不良に関連する公知発癌性ドライバーであるNRG1融合遺伝子を有する患者において、抗体の定常状態濃度を達成し、ERBB3経路活性の最大阻害を送達するという点において特に有利である。一実施形態では、ヒト患者は、腫瘍(例えば、局所的進行型または転移性固形腫瘍)を患う。
【0007】
いずれか適した抗ERBB3抗体を、本明細書に記載されている方法において使用することができる。例示的な抗ERBB3抗体は、セリバンツマブ(seribantumab)(「FTN001」および「MM-121」としても公知)である。一実施形態では、抗体は、配列番号1に示される核酸配列によってコードされる重鎖可変領域(VH)を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号3に示される核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域(VL)を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1および3に示される核酸配列によってコードされるVHおよびVLを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むVLを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号2および4に示されるアミノ酸配列を含むVHおよびVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、(アミノ末端からカルボキシ末端への順序で)配列番号5(CDRH1)、配列番号6(CDRH2)および配列番号7(CDRH3)に示されるアミノ酸配列を含むCDRH1、CDRH2およびCDRH3配列、ならびに/または(アミノ末端からカルボキシ末端への順序で)配列番号8(CDRL1)、配列番号9(CDRL2)および配列番号10(CDRL3)に示されるアミノ酸配列を含むCDRL1、CDRL2およびCDRL3配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および13に示されるアミノ酸配列を含むHCおよびLCを含む。別の実施形態では、上述の抗体と結合について競合する、および/または上述の抗体と同じヒトERBB3上のエピトープに結合する、抗体が使用される。特定の実施形態では、エピトープは、ヒトERBB3(配列番号11)の残基92~104を含む。別の実施形態では、抗体は、ヒトERBB3への結合について抗体と競合し、上述の抗ERBB3抗体(例えば、それらの内容が明確に参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,846,440号および米国特許第8,691,225号を参照)と少なくとも90%可変領域アミノ酸配列同一性を有する。別の実施形態では、抗体は、セリバンツマブのバイオシミラーを含む。
【0008】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象(例えば、ヒト患者)を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)毎週1回投与される、方法が提供される。一実施形態では、抗体は、疾患進行も許容できない毒性もない場合、毎週1回、3,000mgの用量で静脈内投与される。
【0009】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、方法が提供される。
【0010】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与される、方法が提供される。
【0011】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量の3ERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、方法が提供される。
【0012】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量の3ERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号2および4を含む重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、方法が提供される。
【0013】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号12および13を含む重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む、方法が提供される。
【0014】
ある特定の実施形態では、投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、有効な応答)をもたらすように調整される。例えば、一部の実施形態では、処置をもたらすのに不十分である場合(例えば、ベースラインと比較した、臨床疾患進行、増加した症状、寛容性および/または臨床改善なしによって証明される通り)、毎週1回の抗体の投与は中断される。毎週1回の投与が処置をもたらすのに不十分であることの決定は、いずれか適した手段によって為すことができる。一実施形態では、決定は、X線検査による評価(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出断層撮影法(PET)および/または磁気共鳴画像法(MRI)による)によって評価される。別の実施形態では、決定は、「固形腫瘍効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)」(RECIST)バージョン1.1ガイドラインによって評価される(例えば、Eisenhauer, E. et al., (2009), "New response evaluation criteria in solid tumors: prevised RECIST guideline (version 1.1)," European Journal of Cancer (Oxford, England: 1990), 45(2), 228-47)を参照)。別の実施形態では、決定は、肝機能検査(LFT)によって評価される。別の実施形態では、決定は、1種または複数種の疾患(例えば、腫瘍)マーカー(例えば、炭水化物抗原(CA19-9)、がん胎児抗原(CEA)、がん抗原125(CA-125)およびがん抗原15-3(CA 15-3)によって評価される。
【0015】
別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験する場合、処置は、最大3週間中断される。例示的な臨床的に有意な有害事象は、血液学的毒性(例えば、発熱性好中球減少、好中球減少性感染、グレード4好中球減少>7日間、グレード≧3血小板減少、>7日間、臨床的に有意な出血を伴うグレード≧3血小板減少、グレード4血小板減少およびグレード≧3貧血>7日間)を含むがこれらに限定されない。別の例示的な臨床的に有意な有害事象は、非血液学的毒性(例えば、(1)制吐薬または止痢薬による最適な医療支援にもかかわらず72時間を超えて持続するグレード≧3悪心、嘔吐または下痢、(2)持続時間とは無関係な、グレード4(生命を脅かす)嘔吐または下痢、(3)<7日間持続するグレード≧3疲労および食欲不振またはグレード≦2注入関連反応を除いた、他のいずれかのグレード≧3有害事象)である。
【0016】
別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、低減される。例えば、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、5%、10%、15%、20%、25%または30%低減される。一実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、25%低減される。別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,750mg、2,500mg、2,250mg、2,000mg、1,750mgまたは1,500mgに低減される。一実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,250mgに低減される。
【0017】
別の実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、50%低減される。例えば、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%低減される。一実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、50%低減される。別の実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,250mg、2,000mg、1,750mg、1,500mg、1,250mg、1,000mg、750mgまたは500mgに低減される。一実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、1,500mgに低減される。
【0018】
一実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量が、25%またはそれよりも多く低減される(例えば、2,750mg、2,500mg、2,250mg、2,000mg、1,750mgまたは1,500mgに低減される)、方法が提供される。
【0019】
一実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量が、50%またはそれよりも多く低減される(例えば、2,250mg、2,000mg、1,750mg、1,500mg、1,250mg、1,000mg、750mgまたは500mgに低減される)、方法が提供される。
【0020】
別の態様では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象(例えば、ヒト患者)を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される、方法が提供される。例えば、一実施形態では、抗体は、2,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,250mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,500mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,750mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,250mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,550mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,750mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、4,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、不耐容(例えば、管理不能な毒性)が生じるまで、抗体は、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される。別の実施形態では、進行性疾患(PD)が生じるまで、抗体は、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される。一実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号2および4に示されるアミノ酸配列を含むVHおよびVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および13に示されるアミノ酸配列を含むHCおよびLCを含む。
【0021】
抗ERBB3抗体は、いずれか適した手段によって対象に投与することができる。例えば、一実施形態では、抗体は、静脈内投与される。別の実施形態では、抗体は、約1時間かけて静脈内投与される。
【0022】
本明細書に記載されている処置方法は、臨床的有用性が観察される限り、または管理不能な毒性もしくは疾患進行が発生するまで、続けることができる。例えば、一実施形態では、処置は、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間もしくは3年間またはそれよりも長く続けられる。
【0023】
本明細書に提供される処置方法の有効性は、いずれか適した手段を使用して評価することができる。一実施形態では、処置は、腫瘍のサイズの低減、経時的な転移性病変の数の低減、完全奏効、部分奏効および安定疾患からなる群から選択される少なくとも1種の治療効果を生じる。
【0024】
別の実施形態では、対象は、例えば、腫瘍生検または液体生検アッセイによって測定して、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有すると決定された。別の実施形態では、アッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)または次世代配列決定(NGS)、例えば、RNAに基づくまたはDNAに基づく検査を含む。
【0025】
別の実施形態では、対象は、局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する。別の実施形態では、対象は、進行型抵抗性固形腫瘍を有する。処置についてのがんの非限定的な例としては、扁平上皮癌、肺がん(例えば、浸潤性粘液性腺癌(IMA)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC)、神経膠腫、胃腸がん、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、膵管腺癌(PDAC)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頸部がん、胃がん、膀胱がん、胆嚢がん(GBC)、ヘパトーマ、乳がん、結腸癌および頭頸部がん(または癌)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、上咽頭の神経内分泌腫瘍、胃がん、胚細胞腫瘍、肉腫、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫等の転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、腟の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、食道胃接合部(GEJ)がん、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたがんを含む環境誘発性のがん、ウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連腫瘍またはHPVに起源をもつ腫瘍))が挙げられる。一実施形態では、対象は、IMAを有する。別の実施形態では、対象は、卵巣がんを有する。
【0026】
別の実施形態では、NRG1融合は、DOC4、CLU、STMN2、PCM1、表面抗原分類74(CD74);溶質キャリアファミリー3メンバー2(SLC3A2);シンデカン-4(SDC4);ATPaseサブユニットベータ-1(ATP1B1);rho関連、コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ1(ROCK1);フォークヘッドボックスタンパク質A1(FOXA1);A-キナーゼアンカータンパク質13(AKAP13);トロンボスポンジン1(THBS1);高親和性cAMP特異的3’,5’-サイクリックホスホジエステラーゼ7A(PDE7A);THAPドメイン含有タンパク質7(THAP7);SMAD4;RAB3A相互作用タンパク質様1(RAB3IL1);前立腺膜貫通タンパク質、アンドロゲン誘導性1(PMEPA1);スタスミン2(STMN2);溶質キャリアファミリー3メンバー2(SLC3A2);小胞結合膜タンパク質2(VAMP2);複数スプライシングを有するRNA結合タンパク質(RBPMS);インテグレーター複合体サブユニット9(INTS9);WRN RecQ様ヘリカーゼ(WRN);RAB2A相互作用タンパク質様1(RAB2IL1);ストア依存性カルシウム流入関連調節因子)(SARAF);アミロイド前駆体タンパク質(APP);キネシンファミリーメンバー13B(KIF13B);ADAMメタロペプチダーゼドメイン9(ADAM9);カドヘリン1(CDH1);COX10アンチセンスRNA1(COX10-AS1);disco相互作用タンパク質2ホモログB(DIP2B);ジヒドロピリミジナーゼ(dihydropyrimidinase)関連タンパク質2(DPYSL2);成長/分化因子15(GDF15);ホメオボックス含有1(HMBOX1);ミッドカイン(MDK);ミトコンドリアリボソームタンパク質L13(MRPL13);notch受容体2(NOTCH2);ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼファミリーメンバー8(PARP8);タンパク質O-マンノースキナーゼ(POMK);SETドメイン含有タンパク質4(SETD4);テネイシンC(TNC);teashirtジンクフィンガーホメオボックス2(TSHZ2);V-セットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1(VTCN1);ウォルフ・ヒルショルン症候群候補-1(WHSC1L1);およびジンクフィンガーMYM型タンパク質2(ZMYM2)からなる群から選択されるがこれらに限定されない遺伝子を含む。
【0027】
別の実施形態では、抗ERBB3抗体は、例えば、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、上皮成長因子受容体(EGFR)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1-R)、チロシンタンパク質キナーゼMet(C-MET)、ルイスY、ムチン1(MUC-1)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、がん抗原125(CA125)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFR-α)、血小板由来成長因子受容体ベータ(PDGFR-β)、プロテオ(proteo)癌遺伝子c-kit(C-KIT)または線維芽細胞成長因子(FGF)受容体に対する小分子阻害剤または抗体等の第2の標的化治療剤と共に投与される。さらに別の実施形態では、抗ERBB3抗体および第2の治療剤は、同時に(例えば、単一の製剤において、または別々の製剤として併せて)投与される。あるいは、別の実施形態では、抗ERBB3抗体および第2の治療剤は、逐次に(例えば、別々の製剤として)投与される。さらに別の実施形態では、抗ERBB3抗体は、第2の治療剤、例えば、ERBB阻害剤に連結される。例えば、第2の治療剤は、抗ERBB3抗体に連結された、例えば、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EGFR、IGF1-R、C-MET、ルイスY、MUC-1、EpCAM、CA125、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PDGFR-α、PDGFR-β、C-KITまたはFGF受容体に対する小分子阻害剤または抗体等の標的化治療薬である。
【0028】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、別の処置、例えば、放射線照射、外科手術、化学療法、免疫療法(例えば、モノクローナル抗体および臓器横断的治療(tumor-agnostic treatment)(チェックポイント阻害剤等)、腫瘍溶解性ウイルス療法、T細胞療法および/またはがんワクチン)または化学免疫療法(例えば、がんと戦う免疫系の能力を刺激または回復するための処置と組み合わせた、がん細胞を死滅させるかまたはその成長を遅らせる1種または複数種の薬物)と組み合わせて(例えば、同時にまたは別々に)利用することができる。
【0029】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、METシグナル伝達経路活性の阻害(アンタゴニズム)をさらに含む。したがって、一実施形態では、本明細書に記載されている方法は、MET阻害剤の投与をさらに含む。例示的なMET阻害剤は、クリゾチニブ、PHA-665752、SU11274、SGX-523、BMS-777607、JNJ-38877605、チバンチニブ、PF-04217903、MGCD-265、カプマチニブ、AMG 208、MK-2461、AMG 458、NVP-BVU972およびテポチニブを含むがこれらに限定されない。
【0030】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)シグナル伝達経路活性の阻害(アンタゴニズム)をさらに含む。したがって、一実施形態では、本明細書に記載されている方法は、mTOR阻害剤の投与をさらに含む。一実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC1を阻害する。別の実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC2を阻害する。さらに別の実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC1およびmTORC2の両方を阻害する。例示的なmTOR阻害剤は、ゲダトリシブ(gedatolisib)、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ダクトリシブ、AZD8055、ABTL-0812、PQR620、GNE-493、KU0063794、トルキニブ(torkinib)、リダフォロリムス、サパニセルチブ(sapanisertib)、ボクスタリシブ(voxtalisib)、トリン(torin)1、トリン2、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ、GSK1059615、WYE-354、ビスツセルチブ(vistusertib)、WYE-125132、BGT226、パロミド(palomid)529、WYE-687、WAY600、GDC-0349、XL388、ビミラリシブ(bimiralisib)(PQR309)、オミパリシブ(omipalisib)(GSK2126458、GSK458)、オナタセルチブ(onatasertib)(CC-223)、サモトリシブ(samotolisib)、オミパリシブ、RMC-5552およびGNE-477を含むがこれらに限定されない。
【0031】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、RET阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、KRAS G12C阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、NTRK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、EGFR阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、ALK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、MEK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、ERK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、AKT阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、PI3K阻害剤の投与をさらに含む。
【0032】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、フルベストラント、アロマターゼ阻害剤、タモキシフェン、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール)、ステロイド性アロマターゼ阻害剤(エキセメスタン)、新規選択的エストロゲン受容体デグレーダー(degrader)(SERD)および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))を含むがこれらに限定されない、1種または複数種の抗エストロゲン剤の投与をさらに含む。
【0033】
さらに別の態様では、対象におけるNRG1融合遺伝子を含む腫瘍を処置するためのキットであって、配列番号5(CDRH1)、配列番号6(CDRH2)および配列番号7(CDRH3)にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むCDRH1、CDRH2およびCDRH3配列、ならびに配列番号8(CDRL1)、配列番号9(CDRL2)および配列番号10(CDRL3)にそれぞれ示されるアミノ酸配列を含むCDRL1、CDRL2およびCDRL3配列を含む抗ERBB3抗体(例えば、FTN001)の用量と、本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて抗ERBB3抗体を使用するための指示とを含むキットが提供される。一実施形態では、本発明のキットは、少なくとも3,000mgの抗ERBB3抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A-1F】図1A~1Hは、セリバンツマブが、NRG1変更を有する細胞の成長を阻害することを実証する。それぞれMDA-MB-175-VIIおよびLUAD-0061AS3細胞におけるDOC4-NRG1(図1A)またはSLC3A2-NRG1(図2B)融合の発現は、RT-PCRによって決定された。HBECp53(NRG1融合陰性)およびHBECp53-SLC3A2-NRG1細胞は、それぞれ陰性および陽性対照として使用した。細胞を、示された濃度のセリバンツマブまたはアファチニブで96時間処置し、次いで、AlamarBlue生存率判定色素を用いて細胞の相対数を推定した(図1Cおよび図1D)。生存率結果は、各条件が3回繰り返した測定でアッセイされた2~5つの独立した実験の平均±SEMを表す。非線形回帰によって生存率データを解析し、GraphPad Prism 8を用いて成長阻害のIC50値および95%信頼区間を決定した。細胞を示される通りにアファチニブまたはセリバンツマブで処置し、次いで、24~48時間毎に計数した(図1E図1F図1Gおよび図1H)。結果は、各条件が2回繰り返してアッセイされた1つの実験についての平均±SDを表す。
図1G-1H】図1A~1Hは、セリバンツマブが、NRG1変更を有する細胞の成長を阻害することを実証する。それぞれMDA-MB-175-VIIおよびLUAD-0061AS3細胞におけるDOC4-NRG1(図1A)またはSLC3A2-NRG1(図2B)融合の発現は、RT-PCRによって決定された。HBECp53(NRG1融合陰性)およびHBECp53-SLC3A2-NRG1細胞は、それぞれ陰性および陽性対照として使用した。細胞を、示された濃度のセリバンツマブまたはアファチニブで96時間処置し、次いで、AlamarBlue生存率判定色素を用いて細胞の相対数を推定した(図1Cおよび図1D)。生存率結果は、各条件が3回繰り返した測定でアッセイされた2~5つの独立した実験の平均±SEMを表す。非線形回帰によって生存率データを解析し、GraphPad Prism 8を用いて成長阻害のIC50値および95%信頼区間を決定した。細胞を示される通りにアファチニブまたはセリバンツマブで処置し、次いで、24~48時間毎に計数した(図1E図1F図1Gおよび図1H)。結果は、各条件が2回繰り返してアッセイされた1つの実験についての平均±SDを表す。
【0035】
図2A-2E】図2A~2Eは、セリバンツマブが、NRG1依存性成長を特異的に遮断し、アポトーシスを誘導することを示す。MCF-7細胞を、示された濃度のNRG1-b1で10分間処置し、次いで、細胞抽出物を調製し、示されているリン酸化(p)タンパク質または総(t)タンパク質に対するウエスタンブロッティングに供した(図2A)。MCF-7細胞を、漸増用量のNRG1-b1およびセリバンツマブで96時間処置し、次いで、AlamarBlue生存率判定色素を使用して成長を決定した(図2B)。GraphPad Prism 8を使用した非線形回帰によってデータを解析した。各条件の4回繰り返しが為され、データは、平均±SDを表す。C、MCF-7細胞を、10ng/mL NRG1-b1による刺激に先立ち、2mmol/Lセリバンツマブで1時間前処置した。グラフに示される日に細胞を計数した。結果は、1つの代表的な実験における各条件の2回繰り返しの平均±SDを表す。MDA-MB-175-VII(図2D)およびLUAD-0061AS3(図2E)細胞を、示された濃度の阻害剤で48時間処置し、次いで、細胞ホモジネートにおいてカスパーゼ3/7酵素活性を測定した。カルフィルゾミブ(20Sプロテアソーム阻害剤)をアポトーシスに関する陽性対照として使用した。結果は、各条件が3回繰り返し測定でアッセイされた3つの独立した実験の平均±SEMである。いずれかのデータ点にエラーバーが存在しないことは、使用されているスケールで表すには小さ過ぎるエラー値を示す。
【0036】
図3A-3B】図3A~3Bは、セリバンツマブが、NRG1融合を有する肺がん細胞系における細胞内シグナル伝達を阻害することを示す。血清枯渇LUAD-0061AS3(図3A)およびHBECp53-CD74-NRG1(図3B)細胞を、示された濃度のセリバンツマブまたはアファチニブで1時間処置した。全ての処置の後に全細胞抽出物を調製し、SDS-PAGEと、それに続く各パネルに示すリン酸化(p)タンパク質または総(t)タンパク質に対するイムノブロッティングに供した。全てのウエスタンブロッティング試験を少なくとも2回実行し、リン酸化(p)タンパク質および総(t)タンパク質の代表的なイムノブロットを示す。
【0037】
図4A-4D】図4A~4Dは、セリバンツマブが、NRG1融合を有する乳がん細胞における細胞内シグナル伝達を阻害することを示す。血清枯渇MDA-MB-175-VII細胞を、示された濃度のセリバンツマブで3時間処置した(図4A)。血清枯渇MDA-MB-175-VII細胞を、2mmol/Lセリバンツマブで最大24時間処置した(図4B図4Cおよび図4D)。全ての処置の後に全細胞抽出物を調製し、SDS-PAGEと、それに続く各パネルに示すリン酸化(p)タンパク質または総(t)タンパク質に対するイムノブロッティングに供した。全てのウエスタンブロッティング試験を少なくとも2回実行し、リン酸化(p)タンパク質および総(t)タンパク質の代表的なイムノブロットを示す。
【0038】
図5A-5C】図5A~5Cは、NRG1融合を有するNSCLC PDXモデルにおけるセリバンツマブの有効性を実証する。LUAD-0063AS1 PDXモデルの特徴付け。H&E染色、TTF-1およびホスホ-HER3 IHC(図5A、左から右)。LUAD-0061AS3 PDX腫瘍を有するマウス(7匹の動物/群)を、示された用量のアファチニブ[毎日1回(QD)]またはセリバンツマブ[毎週2回(BIW)]で処置した(図5B)。腫瘍体積を毎週2回測定し、経時的にプロットした。結果は、平均±SEMを表す。処置の最後の14日間におけるズームイン(陰影を付けた区域)は、1mgセリバンツマブが、最高用量のアファチニブと同じ程度に有効であることを示す(右)。LUAD-0061AS3 PDX腫瘍を有するマウスを、ビヒクル、アファチニブまたはセリバンツマブの単一の投与で処置し、次いで、2、24または168時間に腫瘍を収集した。ウエスタンブロッティングをタンパク質毎に2回行い、リン酸化(p)タンパク質および総(t)タンパク質の代表的なイムノブロットを示す(図5C)。
【0039】
図6A-6C】図6A~6Cは、NRG1融合を有する卵巣がんPDXモデルにおけるセリバンツマブの有効性を示す。OV-10-0050 PDXモデルのIHCによる特徴付け(図6A)。H&E染色、WT1およびTP53 IHC(左から右)。OV-10-0050 PDX腫瘍を有するマウス(5~8匹の動物/群)を、ビヒクル、アファチニブ[5mg/kg、毎日1回(QD)]またはセリバンツマブ[毎週2回(BIW)]で処置した(図6B)。27日目に処置を終結し、腫瘍が最大許容サイズに達するまでまたは処置開始90日後まで、腫瘍再成長について動物をモニターした。結果は、平均腫瘍体積±SEMを表す。セリバンツマブ処置群のモニタリングの最後の40日間における腫瘍体積に関するズームイン像(右)。セリバンツマブの最高用量は、処置の休止後に腫瘍再成長を遮断した。個々の腫瘍の体積の変化(27日目と処置開始時の体積の比較)(図6C)。
【0040】
図7A-7B】図7A~7Eは、セリバンツマブが、不死化H6C7ヒト膵管上皮細胞におけるNRG1融合の過剰発現により活性化されたホスホ-HER3およびホスホ-AKTを阻害することを実証する。H6C7-EV(空ベクター)およびH6C7-ATP1B1-NRG1細胞を、ホスホ-プロテオミクスアレイを使用して、活性化された細胞内キナーゼについてプロファイリングした(図7A)。示されるNRG1融合を有するH6C7-EVおよびH6C7細胞を、ホスホ-RTKアレイを使用して、活性化された受容体チロシンキナーゼ(RTK)についてプロファイリングした(図7B)。リン酸化EGFR、HER2およびHER3の定量を示す(図7C)。NRG1融合を発現するH6C7-EVおよびH6C7細胞由来の細胞抽出物のウエスタンブロット解析(図7D~E)。細胞を、示された濃度のセリバンツマブで処置し、次いで、細胞全体ライセートを、ウエスタンブロッティングによって示されるホスホ-および総タンパク質についてプロファイリングした。全ての細胞は、実験の24時間前に、血清から開始した。
図7C図7A~7Eは、セリバンツマブが、不死化H6C7ヒト膵管上皮細胞におけるNRG1融合の過剰発現により活性化されたホスホ-HER3およびホスホ-AKTを阻害することを実証する。H6C7-EV(空ベクター)およびH6C7-ATP1B1-NRG1細胞を、ホスホ-プロテオミクスアレイを使用して、活性化された細胞内キナーゼについてプロファイリングした(図7A)。示されるNRG1融合を有するH6C7-EVおよびH6C7細胞を、ホスホ-RTKアレイを使用して、活性化された受容体チロシンキナーゼ(RTK)についてプロファイリングした(図7B)。リン酸化EGFR、HER2およびHER3の定量を示す(図7C)。NRG1融合を発現するH6C7-EVおよびH6C7細胞由来の細胞抽出物のウエスタンブロット解析(図7D~E)。細胞を、示された濃度のセリバンツマブで処置し、次いで、細胞全体ライセートを、ウエスタンブロッティングによって示されるホスホ-および総タンパク質についてプロファイリングした。全ての細胞は、実験の24時間前に、血清から開始した。
図7D-7E】図7A~7Eは、セリバンツマブが、不死化H6C7ヒト膵管上皮細胞におけるNRG1融合の過剰発現により活性化されたホスホ-HER3およびホスホ-AKTを阻害することを実証する。H6C7-EV(空ベクター)およびH6C7-ATP1B1-NRG1細胞を、ホスホ-プロテオミクスアレイを使用して、活性化された細胞内キナーゼについてプロファイリングした(図7A)。示されるNRG1融合を有するH6C7-EVおよびH6C7細胞を、ホスホ-RTKアレイを使用して、活性化された受容体チロシンキナーゼ(RTK)についてプロファイリングした(図7B)。リン酸化EGFR、HER2およびHER3の定量を示す(図7C)。NRG1融合を発現するH6C7-EVおよびH6C7細胞由来の細胞抽出物のウエスタンブロット解析(図7D~E)。細胞を、示された濃度のセリバンツマブで処置し、次いで、細胞全体ライセートを、ウエスタンブロッティングによって示されるホスホ-および総タンパク質についてプロファイリングした。全ての細胞は、実験の24時間前に、血清から開始した。
【0041】
図8A-8C】図8A~8Dは、セリバンツマブが、NRG1再編成膵腺癌PDXモデル(CTG-0943、APP-NRG1)の成長を阻害することを実証する。CTG-0943 PDX腫瘍を有するマウス(群当たり5~8匹のマウス)を、示される薬剤で処置した(図8A)。ビヒクル処置された腫瘍の代表的なH&E染色されたスライド(図8B)。腫瘍体積結果は、平均±SEMを表す。セリバンツマブ5mgおよび10mg群における動物に、最初の2用量について、それぞれセリバンツマブ5mg/kgおよび10mg/kgを投与した(図8C)。0日目と比較した、個々の腫瘍(ビヒクル:20日目;処置群:31日目)の体積の変化(%)(図8D)。ビヒクルおよびアファチニブおよびセリバンツマブ処置された腫瘍のウエスタンブロット解析。ビヒクル処置群は24日目、セリバンツマブ処置群は31日目、アファチニブ処置群は32日目に抽出された腫瘍残渣(residue)。ヒト(H)および/またはマウス(M)タンパク質との抗体反応性を示す。
図8D図8A~8Dは、セリバンツマブが、NRG1再編成膵腺癌PDXモデル(CTG-0943、APP-NRG1)の成長を阻害することを実証する。CTG-0943 PDX腫瘍を有するマウス(群当たり5~8匹のマウス)を、示される薬剤で処置した(図8A)。ビヒクル処置された腫瘍の代表的なH&E染色されたスライド(図8B)。腫瘍体積結果は、平均±SEMを表す。セリバンツマブ5mgおよび10mg群における動物に、最初の2用量について、それぞれセリバンツマブ5mg/kgおよび10mg/kgを投与した(図8C)。0日目と比較した、個々の腫瘍(ビヒクル:20日目;処置群:31日目)の体積の変化(%)(図8D)。ビヒクルおよびアファチニブおよびセリバンツマブ処置された腫瘍のウエスタンブロット解析。ビヒクル処置群は24日目、セリバンツマブ処置群は31日目、アファチニブ処置群は32日目に抽出された腫瘍残渣(residue)。ヒト(H)および/またはマウス(M)タンパク質との抗体反応性を示す。
【0042】
図9A-9C】図9A~9Eは、標的化された組合せが、追加の公知ドライバー変更を有するNRG1再編成胆管癌PDXモデル(CH-17-0068、RBPMS-NRG1)の成長を阻害することを実証する。代表的なH&E染色されたCH-17-0068 PDX腫瘍(図9A)。RNAseqによって同定されたゲノム変更、および対応する治験標的療法(図9B)。CH-17-0068 PDX腫瘍を有するマウス(群当たり5~6匹のマウス)を、セリバンツマブまたはアファチニブ単独療法で30日間処置した(図9C)。次に、アファチニブ(5mg/kg QD)またはAG-120(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ[IDH]阻害剤、150mg/kg 毎日2回[BID])を、示される群に加えた。結果は、平均±SEMを表す。30日目(図9D)または試験の終わり(図9E)における個々の腫瘍の体積の変化。
図9D-9E】図9A~9Eは、標的化された組合せが、追加の公知ドライバー変更を有するNRG1再編成胆管癌PDXモデル(CH-17-0068、RBPMS-NRG1)の成長を阻害することを実証する。代表的なH&E染色されたCH-17-0068 PDX腫瘍(図9A)。RNAseqによって同定されたゲノム変更、および対応する治験標的療法(図9B)。CH-17-0068 PDX腫瘍を有するマウス(群当たり5~6匹のマウス)を、セリバンツマブまたはアファチニブ単独療法で30日間処置した(図9C)。次に、アファチニブ(5mg/kg QD)またはAG-120(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ[IDH]阻害剤、150mg/kg 毎日2回[BID])を、示される群に加えた。結果は、平均±SEMを表す。30日目(図9D)または試験の終わり(図9E)における個々の腫瘍の体積の変化。
【0043】
図10A-10B】図10A~10Bは、ATP1B1-NRG1遺伝子融合を有するKRAS WT膵がんを有する患者における肝臓転移の代表的なコンピュータ断層撮影法(CT)画像である。患者をセリバンツマブで処置した。2020年11月からのセリバンツマブを開始する前の肝臓転移(NTL1肝臓seg 8 26×26mm;図10A)と、患者がセリバンツマブを受けている間の2021年6月における同じ肝臓転移(NTL1肝臓seg 8消散;図10B)。
【0044】
図11図11は、セリバンツマブで処置されたATP1B1-NRG1遺伝子融合を有するKRAS WT膵がんを有する患者における、CA19-9腫瘍マーカーおよび標的病変の和のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
I.定義
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有するヒト、例えば、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍(局所的進行型または転移性固形腫瘍等)を有することが決定されたヒトである。
【0046】
用語「ニューレグリン1」または「NRG1」(グリア細胞成長因子(GGF)、HGL、HRG、NDF;アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)、GGF2、HRG1、HRGA、SMDF、MST131、MSTP131またはNRG1-IT2とも称される)は、膜糖タンパク質であり、受容体のEGFRファミリーに作用するニューレグリンファミリーにおける4種のタンパク質のうち1種である。用語「NRG1」は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログを含む。NRG1は、細胞間シグナル伝達を媒介し、多臓器系の成長および発生における決定的な役割を果たす。オルタナティブなプロモーター使用およびスプライシングを介して、NRG1遺伝子から種々の異なるアイソフォームが産生される。これらのアイソフォームは、組織特異的様式で発現され、それらの構造が有意に異なり、I、II、III、IV、VおよびVI型として分類される(Mei and Xiong (2008) Nat Rev Neurosci 9(6): 437-452)。この遺伝子の調節不全は、がん、統合失調症、心疾患および双極性障害(BPD)等の疾患に関連付けられてきた。
【0047】
用語「融合遺伝子」は、2種の以前に別々のものであった遺伝子を含むハイブリッド遺伝子を指す、すなわち、この2種の別々の遺伝子は、共に融合した。融合遺伝子は、転座、中間部欠失または染色体逆位の結果として発生し得る。融合遺伝子は、遺伝子によってコードされるタンパク質を産生し(すなわち、発現させ)て、融合タンパク質を形成することにより、腫瘍形成に寄与することが公知である。
【0048】
用語「NRG1融合遺伝子」は、NRG1(すなわち、ニューレグリン1)またはその部分をコードする遺伝子、および第2のタンパク質またはその部分をコードする第2の遺伝子(すなわち、融合パートナー)を含む融合遺伝子を指す。2種の遺伝子の発現は、NRG1融合タンパク質(「NRG1融合」とも本明細書で称される)の形成をもたらす。例えば、NRG1融合は、NRG1の細胞外EGF様ドメインおよび融合パートナーの膜貫通ドメインを含むことができる。別の実施形態では、NRG1融合遺伝子は、NRG1のEGF様ドメインを欠如する。次に、このようなタンパク質は、ERBB3(HER3)およびERBB4(HER4)受容体のリガンドとして機能する。次に、ERBB3は、EGF様ドメインからの接触分泌シグナル伝達および分泌されたNRG1の自己分泌シグナル伝達を介して活性化され得る。その後のERBB3とERBB2とのヘテロ二量体化は、細胞モデルに記載されている、ERK、PI3K、AKTおよびNFκBを含む経路によって媒介される腫瘍発生において重要な下流シグナル伝達を活性化する。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「ERBB3」は、ErbB/EGFR受容体チロシンキナーゼファミリーに属する148kD膜貫通受容体であるERBB3受容体を指すが、内因性キナーゼ活性を欠如する。ErbB受容体は、複数のシグナルトランスダクション経路のリガンド依存性(および一部の場合では、リガンド非依存性)活性化を媒介することにより、細胞および臓器の生理学に影響するホモおよびヘテロ二量体型複合体を形成する。腫瘍細胞におけるERBB3含有ヘテロ二量体(ERBB2/ERBB3等)は、ErbBファミリー内で最も分裂促進的かつ発癌性の受容体複合体であることが示された。その生理的リガンドへの結合後に、ERBB3受容体は、他のErbBファミリーメンバー、主にERBB2と二量体化する。ERBB3/ERBB2二量体化は、タンパク質の細胞質側テイル内に含有されるチロシン残基におけるERBB3のトランスリン酸化をもたらす。これらの部位のリン酸化は、PI3-キナーゼを含むSH2含有タンパク質のためのSH2ドッキング部位を創出する。ERBB3は、リン酸化されたときにホスホイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)のための優れた結合部位として機能するYXXMモチーフを有する6個のチロシンリン酸化部位を保有し、その作用が、AKT経路のその後の下流活性化をもたらすため、ERBB3含有ヘテロ二量体型複合体は、したがって、AKTの強力な活性化因子である。これらの6個のPI3K部位は、ERBB3シグナル伝達の強い増幅因子として機能する。この経路の活性化は、細胞成長、遊走および生存等、腫瘍発生に関与するいくつかの重要な生物学的過程をさらに誘発する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「有効な処置」は、有益な効果、例えば、疾患または障害の少なくとも1種の症状の軽快を生じる処置を指す。有益な効果は、ベースラインを上回る改善、すなわち、本方法に従った治療の開始に先立ち為された測定または観察を上回る改善の形態を取ることができる。有益な効果は、NRG1融合遺伝子を有する腫瘍の有害な進行を抑止すること、遅らせること、遅滞させることまたは安定化することの形態を取ることもできる。有効な処置は、腫瘍に関連するがんの少なくとも1種の症状の軽減を指すことができる。そのような有効な処置は、例えば、患者の疼痛を低減させることができる、病変のサイズおよび/または数を低減させることができる、腫瘍の転移を低減もしくは予防することができる、および/または腫瘍成長を遅らせることができる。
【0051】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的および/または予防的結果をもたらす薬剤の量を指す。このような結果は、疾患の徴候、症状もしくは原因のうち1種もしくは複数の低減、軽快、緩和、低下、遅延および/もしくは軽減、または生物システムの他のいずれかの所望の変更であり得る。がんを参照した場合、有効量は、腫瘍を縮小させるのに、および/または腫瘍の成長速度を減少させる(腫瘍成長を抑制する等)のに、または他の望まれない細胞増殖を予防するもしくは遅延させるのに十分な量を含む。一部の実施形態では、有効量は、腫瘍発達を遅延させるのに十分な量である。一部の実施形態では、有効量は、腫瘍再発を予防するまたは遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回または複数の投与で施行することができる。薬物または組成物の有効量は、(i)がん細胞の数を低減させることができる;(ii)腫瘍サイズを低減させることができる;(iii)末梢臓器へのがん細胞浸潤をある程度まで阻害する、遅滞させる、遅らせることができ、これを停止することができる;(iv)腫瘍転移をある程度まで阻害する(すなわち、遅らせる)ことができ、これを停止することができる;(v)腫瘍成長を阻害することができる;(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発を予防するもしくは遅延させることができる;ならびに/または(vii)がんに関連する症状のうち1種もしくは複数をある程度まで和らげることができる。一例では、「有効量」は、腫瘍の成長の有意な減少をもたらすおよび/またはがんの進行を遅らせることが臨床的に立証された抗ERBB3抗体の量である。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「固定用量」、「一定(flat)用量」および「一定固定用量」は、互換的に使用され、患者の体重または体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される用量を指す。したがって、固定または一定用量は、mg/kg用量として提供されないが、むしろ、薬剤(例えば、抗ERBB3抗体)の絶対量として提供される。
【0053】
用語「抗体」は、ERBB3に特異的に結合する少なくとも1個の抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域またはFvまたは相補性決定領域 - CDR)を含むポリペプチドを表す。したがって、用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体全体、およびそのいずれかの抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)または単鎖を含む。抗体は、公知形態の抗体を含む。例えば、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二特異性抗体またはキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディまたはドメイン抗体であってもよい。抗体は、次のアイソタイプのうちいずれかのものであってもよい:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgE。抗体は、天然に存在する抗体であり得る、または変更された(例えば、変異、欠失、置換、非抗体部分へのコンジュゲーションによって)抗体であり得る。例えば、抗体は、抗体の特性(例えば、機能特性)を変化させる1個または複数のバリアントアミノ酸(天然に存在する抗体と比較した)を含むことができる。例えば、例えば、半減期、エフェクター機能および/または患者における抗体に対する免疫応答に影響を与える、多数のそのような変更が当技術分野で公知である。抗体という用語は、少なくとも1個の抗体由来抗原結合部位を含む人工ポリペプチド構築物も含む。
【0054】
II.抗ERBB3抗体
いずれか適した抗ERBB3抗体を、本明細書に記載されている方法において使用することができる。本発明における使用に適した例示的な抗ERBB3抗体は、セリバンツマブ(US7,846,440においてはFTN001、MM-121および「Ab #6」とも称される)、ならびにセリバンツマブと同じ活性を有するセリバンツマブの機能的におよび/または構造的に等価な抗体、すなわち、バリアントである。本発明における使用のための抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。
【0055】
一実施形態では、抗体は、配列番号1に示される核酸配列によってコードされる重鎖可変領域(VH)を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号3に示される核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域(VL)を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1および3に示される核酸配列によってコードされるVHおよびVLを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むVLを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号2および4に示されるアミノ酸配列を含むVHおよびVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、(アミノ末端からカルボキシ末端への順序で)配列番号5(CDRH1)、配列番号6(CDRH2)および配列番号7(CDRH3)に示されるアミノ酸配列を含むCDRH1、CDRH2およびCDRH3配列、ならびに/または(アミノ末端からカルボキシ末端への順序で)配列番号8(CDRL1)、配列番号9(CDRL2)および配列番号10(CDRL3)に示されるアミノ酸配列を含むCDRL1、CDRL2およびCDRL3配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および13に示されるアミノ酸配列を含むHCおよびLCを含む。別の実施形態では、抗体は、セリバンツマブのバイオシミラーを含む。本明細書で使用される場合、バイオシミラーは、別の既に承認された生物学的薬(例えば、参照薬)に高度に類似した(例えば、構造、機能および特性が)製品である。
【0056】
他の実施形態では、抗体は、ERBB3に結合し、ERBB3のHRGおよびEGF様リガンド誘導性細胞内リン酸化を防止する、IgG2等の完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0057】
セリバンツマブ等の抗ERBB3抗体は、例えば、当技術分野で周知の方法を使用して、原核または真核細胞において生成することができる。一実施形態では、抗体は、CHO細胞等、タンパク質をグリコシル化することができる細胞系において産生される。モノクローナル抗体は、当業者に知られた様々な技法によって得ることができる。手短に説明すると、所望の抗原で免疫された動物由来の脾臓細胞は、一般的に骨髄腫細胞との融合によって不死化される(Kohler & Milstein, Eur. J. Immunol. 6: 511-519 (1976)を参照)。不死化の代替方法は、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子もしくはレトロウイルスによる形質転換、または当技術分野で周知の他の方法を含む。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対して所望の特異性および親和性の抗体の産生についてスクリーニングされ、そのような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含む様々な技法によって増強され得る。あるいは、Huse, et al., Science 246: 1275-1281 (1989)によって概要が述べられている一般プロトコールに従ってヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。
【0058】
III.医薬組成物
患者への投与に適した医薬組成物は典型的に、非経口投与に適した形態、例えば、液体担体中であるか、または静脈内投与のための液体の溶液もしくは懸濁液への復元に適した形態である。
【0059】
一般に、組成物は典型的に、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、動物、特に、ヒトにおける使用のために、政府の規制機関によって承認されている、または米国薬局方もしくは別の一般に認識される薬局方に収載されていることを意味する。用語「担体」は、それと共に化合物が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬品担体は、滅菌液体、例えば、水および、石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油、リシノール酸グリセロールポリエチレングリコールなどであり得る。水または水溶液食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に、注射用液剤(例えば、抗ERBB3抗体を含む)のための担体として用いることができる。非経口投与のための液体組成物は、注射または継続的注入による投与のために製剤化することができる。注射または注入による投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、く髄腔内および皮下を含む。一実施形態では、抗ERBB3抗体は、静脈内投与される(例えば、1時間の経過にわたり)。
【0060】
セリバンツマブは、25mg/mL(40mLバイアル当たり1,000mg;10mLバイアル当たり250mg)の濃度で注射用途のための使い捨てバイアル中に無菌の清澄な液剤として供給される。
【0061】
IV.患者集団
特定の投与量レジメンに従って抗ERBB3抗体を使用して、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象(すなわち、ヒト対象)を処置するための有効な方法が本明細書に提供される。
【0062】
一実施形態では、主題の方法を使用した処置のためのヒト患者は、例えば、PCR、NGS(RNAまたはDNA)またはFISH検査等の分子アッセイを含む腫瘍生検または液体生検アッセイによって評価される通り、NRG1融合遺伝子を含む局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する。
【0063】
別の実施形態では、対象は、局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する。別の実施形態では、対象は、進行型抵抗性固形腫瘍を有する。処置についてのがんの非限定的な例としては、扁平上皮癌、肺がん(例えば、浸潤性粘液性腺癌(IMA)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC)、神経膠腫、胃腸がん、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン抵抗性前立腺腺癌)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、膵管腺癌(PDAC)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫)、子宮頸部がん、胃がん、膀胱がん、胆嚢がん(GBC)、ヘパトーマ、乳がん、結腸癌および頭頸部がん(または癌)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、上咽頭の神経内分泌腫瘍、胃がん、胚細胞腫瘍、肉腫、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫等の転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、ファロピウス管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、腟の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児期の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、食道胃接合部(GEJ)がん、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたがんを含む環境誘発性のがん、ウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連腫瘍またはHPVに起源をもつ腫瘍))が挙げられる。一実施形態では、対象は、IMAを有する。別の実施形態では、対象は、卵巣がんを有する。
【0064】
別の実施形態では、対象は、NRG1融合を含む腫瘍を有し、NRG1融合は、DOC4、CLU、STMN2、PCM1、CD74;SLC3A2;SDC4;ATP1B1;ROCK1;FOXA1;AKAP13;THBS1;PDE7A;THAP7;SMAD4;RAB3IL1;PMEPA1;STMN2;SLC3A2;VAMP2;RBPMS;WRN;RAB2IL1;SARAF;APP;KIF13B;INTS9;ADAM9;CDH1;COX10-AS1;DIP2B;DPYSL2;GDF15;HMBOX1;MDK;MRPL13;NOTCH2;PARP8;POMK;SETD4;TNC;TSHZ2;VTCN1;WHSC1L1;およびZMYM2からなる群から選択されるがこれらに限定されない遺伝子(すなわち、融合パートナー)を含む。
【0065】
患者は、処置の前に、その間にまたはその後に、上に記載されている臨床属性のうち1種または複数について検査または選択することができる。
【0066】
V.処置プロトコール
特定の臨床投与量レジメン(すなわち、特定の用量で、かつ、特異的な投与スケジュールに従って)に従って抗ERBB3抗体を患者に投与することによる、ヒト患者における腫瘍を処置するための方法であって、腫瘍がNRG1融合遺伝子を含む、方法が、本明細書に提供される。1つの実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象(例えば、ヒト患者)を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)毎週1回投与される、方法が提供される。一実施形態では、抗体は、毎週1回、3,000mgの用量で静脈内投与される。
【0067】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、方法が提供される。
【0068】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与される、方法が提供される。
【0069】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、方法が提供される。
【0070】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号2および4を含む重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、方法が提供される。
【0071】
別の実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号12および13を含む重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む、方法が提供される。
【0072】
ある特定の実施形態では、投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、有効な応答)をもたらすように調整される。例えば、一部の実施形態では、処置をもたらすのに不十分である場合(例えば、ベースラインと比較した、臨床疾患進行、増加した症状および/または臨床改善なしによって証明される通り)、毎週1回の抗体の投与は中断される。毎週1回の投与が処置をもたらすのに不十分であることの決定は、いずれか適した手段によって為すことができる。一実施形態では、決定は、X線検査による評価(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出断層撮影法(PET)および/または磁気共鳴画像法(MRI)による)によって評価される。別の実施形態では、決定は、「固形腫瘍効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)」(RECIST)バージョン1.1ガイドラインによって評価される。別の実施形態では、決定は、肝機能検査(LFT)によって評価される。別の実施形態では、決定は、1種または複数種の疾患(例えば、腫瘍)マーカー(例えば、炭水化物抗原(CA19-9)、がん胎児抗原(CEA)、がん抗原125(CA-125)および/またはがん抗原15-3(CA 15-3)によって評価される。
【0073】
別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験する場合、処置は、最大3週間中断される。例示的な臨床的に有意な有害事象は、血液学的毒性(例えば、発熱性好中球減少、好中球減少性感染、グレード4好中球減少>7日間、グレード≧3血小板減少、>7日間、臨床的に有意な出血を伴うグレード≧3血小板減少、グレード4血小板減少およびグレード≧3貧血>7日間)を含むがこれらに限定されない。別の例示的な臨床的に有意な有害事象は、非血液学的毒性(例えば、(1)制吐薬または止痢薬による最適な医療支援にもかかわらず72時間を超えて持続するグレード≧3悪心、嘔吐または下痢、(2)持続時間とは無関係な、グレード4(生命を脅かす)嘔吐または下痢、(3)<7日間持続するグレード≧3疲労および食欲不振またはグレード≦2注入関連反応を除いた、他のいずれかのグレード≧3有害事象)である。
【0074】
別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、低減される。例えば、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、5%、10%、15%、20%、25%または30%低減される。一実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、25%低減される。別の実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,750mg、2,500mg、2,250mg、2,000mg、1,750mgまたは1,500mgに低減される。一実施形態では、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,250mgに低減される。
【0075】
別の実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象(例えば、グレード≧3)を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、50%低減される。例えば、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%低減される。一実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、50%低減される。別の実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、2,250mg、2,000mg、1,750mg、1,500mg、1,250mg、1,000mg、750mgまたは500mgに低減される。一実施形態では、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量は、1,500mgに低減される。
【0076】
一実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、対象が、臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量が、25%またはそれよりも多く低減される(例えば、2,750mg、2,500mg、2,250mg、2,000mg、1,750mgまたは1,500mgに低減される)、方法が提供される。
【0077】
一実施形態では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、3,000mgの用量で投与され、抗体が、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、対象が、2種またはそれよりも多い臨床的に有意な有害事象を経験した後に、処置再開の際に、毎週1回の抗体用量が、50%またはそれよりも多く低減される(例えば、2,250mg、2,000mg、1,750mg、1,500mg、1,250mg、1,000mg、750mgまたは500mgに低減される)、方法が提供される。
【0078】
別の態様では、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象(例えば、ヒト患者)を処置するための方法であって、方法が、治療有効量のERBB3(HER3)抗体を対象に投与するステップを含み、抗体が、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される、方法が提供される。例えば、一実施形態では、抗体は、2,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,250mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,500mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、2,750mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,250mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,550mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、3,750mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、抗体は、4,000mgの用量で1週間に1回投与される。別の実施形態では、不耐容(例えば、管理不能な毒性)が生じるまで、抗体は、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される。別の実施形態では、進行性疾患(PD)が生じるまで、抗体は、毎週1回、約2,000mg~約4,000の間の用量で(例えば、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、3,500mg、3,750mgまたは4,000mgの用量で)投与される。一実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号5、6および7を含む重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、ならびにそれぞれ配列番号8、9および10を含む軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号2および4に示されるアミノ酸配列を含むVHおよびVL領域を含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および13に示されるアミノ酸配列を含むHCおよびLCを含む。
【0079】
抗ERBB3抗体は、いずれか適した手段によって対象に投与することができる。例えば、一実施形態では、抗体は、静脈内投与される。別の実施形態では、抗体は、約1時間かけて静脈内投与される。
【0080】
本明細書に記載されている処置方法は、臨床的有用性が観察される限り、または管理不能な毒性もしくは疾患進行が発生するまで、続けることができる。例えば、一実施形態では、処置は、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、24ヶ月間もしくは3年間またはそれよりも長く続けられる。
【0081】
VI.併用療法
本明細書に提供される場合、抗ERBB3抗体(例えば、セリバンツマブ)は、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する対象における改善をもたらすために第2の治療剤と共投与することができる。一実施形態では、第2の治療剤は、例えば、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、EGFR、IGF1-R、C-MET、ルイスY、MUC-1、EpCAM、CA125、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PDGFR-α、PDGFR-β、C-KITまたはFGF受容体に対する小分子阻害剤または抗体等の標的化治療薬である。例えば、一実施形態では、第2の治療剤は、HER2/HER3経路を標的化するFTN002(MM-111とも称される)である抗体である(例えば、その内容が明確に参照により本明細書に組み込まれるPCT/US2012/029292を参照)。
【0082】
本明細書で使用される場合、共投与(組み合わせた投与)は、同じもしくは異なる剤形における化合物の同時の投与、または化合物の別々の投与(例えば、逐次投与)を含む。例えば、抗ERBB3抗体(例えば、セリバンツマブ)は、第2の治療剤(例えば、小分子阻害剤または第2の抗体)と同時に投与することができ、この場合、抗体および第2の薬剤の両方は、一緒に製剤化される。あるいは、抗ERBB3抗体は、第2の薬剤と組み合わせて投与することができ、この場合、抗体および第2の薬剤の両方は、別々の投与のために製剤化され、併せてまたは逐次に投与される。例えば、先ず抗体を投与し、続いて、第2の薬剤を投与することができる、または逆もまた同じである。そのような同時のまたは逐次の投与は、好ましくは、セリバンツマブおよび第2の治療剤の両方が、処置されている患者の中に同時に存在するという結果になる。
【0083】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、別の処置、例えば、放射線照射、外科手術、免疫療法(例えば、モノクローナル抗体および臓器横断的治療(チェックポイント阻害剤等)、腫瘍溶解性ウイルス療法、T細胞療法および/またはがんワクチン)、化学免疫療法(例えば、がんと戦う免疫系の能力を刺激または回復するための処置と組み合わせた、がん細胞を死滅させるかまたはその成長を遅らせる1種または複数種の薬物)または化学療法(例えば、カンプトテシン(CPT-11)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン-パクリタキセル(Taxol)、ドキソルビシン、5-fuまたはカンプトテシン+apo2l/TRAIL(6×コンボ))、1種もしくは複数のプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはMG132)、1種もしくは複数のBcl-2阻害剤(例えば、BH3I-2’(bcl-xl阻害剤)、インドールアミンジオキシゲナーゼ-1阻害剤(例えば、INCB24360、インドキシモド(indoximod)、NLG-919またはF001287)、AT-101(R-(-)-ゴシポール誘導体)、ABT-263(小分子)、GX-15-070(オバトクラクス)またはMCL-1(骨髄性白血病細胞分化タンパク質-1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質の阻害剤)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smacミメティック、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15を参照)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG-35156(GEM-640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、血管新生阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、VEGFおよびVEGFRを標的化する抗血管新生剤(例えば、アバスチン)、合成トリテルペノイド(Hyer et al., Cancer Research 2005;65:4799-808を参照)、c-FLIP(細胞FLICE阻害タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ)、トラスツズマブ、セツキシマブ、テムシロリムス、mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシンおよびテムシロリムス、ボルテゾミブ、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、レナリドミド(Lenalildomide)、GSK3β阻害剤、IAP阻害剤、ならびに/または遺伝毒性薬と組み合わせて(例えば、同時にまたは別々に)利用することができる。
【0084】
本明細書に記載されている方法は、さらに、1種または複数種の抗増殖性細胞傷害性薬剤と組み合わせて使用することができる。抗増殖性細胞傷害性薬剤として使用することができる化合物のクラスは、次のものを含むがこれらに限定されない:
【0085】
アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレアおよびトリアゼンを限定することなく含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(商標))、イホスファミド(fosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン(Triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミド。
【0086】
代謝拮抗薬(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を限定することなく含む):メトトレキセート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、ペントスタチン(Pentostatine)およびゲムシタビン。
【0087】
本明細書に記載されている方法と組み合わせるのに適した抗増殖性薬剤は、当技術分野で公知の他の微小管(microtubuline)安定化剤に加えて、タキサン、パクリタキセル(パクリタキセルは、TAXOL(商標)として市販されている)、ドセタキセル、ディスコデルモライド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシド(Peloruside)A、エポチロン類、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]-デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13-シクロプロピル-エポチロンA、C6-C8架橋エポチロンA、トランス-9,10-デヒドロエポチロンD、シス-9,10-デヒドロエポチロンD、16-デスメチルエポチロンB、エポチロンB10、ディスコデルモライド(discoderomolide)、パツピロン(patupilone)(EPO-906)、KOS-862、KOS-1584、ZK-EPO、ABJ-789、XAA296A(ディスコデルモライド)、TZT-1027(ソブリドチン)、ILX-651(タシドチン(tasidotin)塩酸塩)、ハリコンドリンB、エリブリンメシル酸塩(E-7389)、ヘミアステリン(HTI-286)、E-7974、クリプトフィシン(Cyrptophycin)、LY-355703、マイタンシノイドイムノコンジュゲート(DM-1)、MKC-1、ABT-751、T1-38067、T-900607、SB-715992(イスピネシブ)、SB-743921、MK-0731、STA-5312、エリュテロビン、17ベータ-アセトキシ-2-エトキシ-6-オキソ-B-ホモ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、シクロストレプチン(cyclostreptin)、イソラウリマリド、ラウリマリド、4-エピ-7-デヒドロキシ-14,16-ジデメチル-(+)-ディスコデルモライドおよびクリプトチロン(cryptothilone)1を限定することなく含む。
【0088】
本明細書に記載されている方法による処置と併せてまたはその前に異常増殖性細胞を静止状態にすることが望ましい場合、ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む)、例えば、17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、アビラテロン、エンザルタミド、アンドロゲン受容体デグレーダー(ARD)、プレドニゾン、フルオキシメステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸エステル(Dromostanolone propionate)、テストラクトン、メゲストロール酢酸エステル、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ZOLADEX(商標)または抗エストロゲン剤(例えば、フルベストラント、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール)、ステロイド性アロマターゼ阻害剤(エキセメスタン)および新規選択的エストロゲン受容体デグレーダー(SERD)および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))を患者に投与することもできる。本明細書に記載されている方法または組成物を用いる場合、アンチミメティック(antimimetic)等、臨床現場で腫瘍成長または転移のモジュレーションにおいて使用される他の薬剤を所望の通りに投与することもできる。
【0089】
化学療法剤の安全かつ有効な投与のための方法は、当業者にとって公知である。加えて、その投与は、標準的な文献に記載されている。例えば、化学療法剤の多くの投与は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Physicians' Desk Reference (PDR)、例えば、1996 edition (Medical Economics Company, Montvale, N.J. 07645-1742, USA)に記載されている。化学療法剤(複数可)、免疫療法剤(複数可)、化学免疫療法剤(複数可)および/または放射線療法は、当技術分野で周知の治療プロトコールに従って投与することができる。当業者には、そのような薬剤(複数可)および/または放射線療法の投与が、処置されている疾患ならびに当該疾患における薬剤(複数可)および/または放射線療法の公知効果に応じて変動され得ることが明らかであろう。また、熟練の臨床医の知識に従って、治療プロトコール(例えば、投与の量および投与の時間)は、患者における投与された治療剤の観察された効果を考慮して、また、投与された治療剤に対する疾患の観察された応答を考慮して変動され得る。
【0090】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、METシグナル伝達経路活性の阻害(アンタゴニズム)をさらに含む。例示的なMET阻害剤は、クリゾチニブ、PHA-665752、SU11274、SGX-523、BMS-777607、JNJ-38877605、チバンチニブ、PF-04217903、MGCD-265、カプマチニブ、AMG 208、MK-2461、AMG 458、NVP-BVU972およびテポチニブを含むがこれらに限定されない。
【0091】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)シグナル伝達経路活性の阻害(アンタゴニズム)をさらに含む。用語「mTOR」は、PI3Kファミリーに関するセリン/スレオニンキナーゼであり、PI3K/AKTシグナル伝達経路の下流エフェクターであるタンパク質、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質を指す。mTORは、細胞成長および代謝の調節因子として機能し、2種の複合体、mTORC1およびmTORC2において存在する。
【0092】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載されている方法は、mTOR阻害剤の投与をさらに含む。一実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC1を阻害する。別の実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC2を阻害する。さらに別の実施形態では、mTOR阻害剤は、mTORC1およびmTORC2の両方を阻害する。mTOR阻害剤は、当技術分野で周知であり、例えば、ゲダトリシブ(gedatolisib)、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ダクトリシブ、AZD8055、ABTL-0812、PQR620、GNE-493、KU0063794、トルキニブ(torkinib)、リダフォロリムス、サパニセルチブ(sapanisertib)、ボクスタリシブ(voxtalisib)、トリン(torin)1、トリン2、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ、GSK1059615、WYE-354、ビスツセルチブ(vistusertib)、WYE-125132、BGT226、パロミド(palomid)529、WYE-687、WAY600、GDC-0349、XL388、ビミラリシブ(bimiralisib)(PQR309)、オミパリシブ(omipalisib)(GSK2126458、GSK458)、オナタセルチブ(onatasertib)(CC-223)、サモトリシブ(samotolisib)、オミパリシブ、RMC-5552およびGNE-477が挙げられる。
【0093】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、RET阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、KRAS G12C阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、NTRK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、EGFR阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、ALK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、MEK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、ERK阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、AKT阻害剤の投与をさらに含む。別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、PI3K阻害剤の投与をさらに含む。
【0094】
別の実施形態では、本明細書に記載されている方法は、フルベストラント、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール)、ステロイド性アロマターゼ阻害剤(エキセメスタン)、および新規選択的エストロゲン受容体デグレーダー(degrader)(SERD)および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))を含むがこれらに限定されない、1種または複数種の抗エストロゲン剤の投与をさらに含む。
【0095】
VII.アウトカム
標的病変に関して、治療に対する応答は、次のものを含むことができる:
完全奏効(CR):全ての標的病変の消失。いずれかの病的リンパ節(標的であれ非標的であれ)の短軸が、<10mmに低減している必要がある;
部分奏効(PR):ベースライン和直径を基準として、標的病変の直径の和の少なくとも30%減少;
進行性疾患(PD):試験における最小和(これは、試験における最小である場合のベースライン和を含む)を基準として、標的病変の直径の和の少なくとも20%増加。20%の相対的増加に加えて、和は、少なくとも5mmの絶対的増加を実証する必要もある(注記:1個または複数の新たな病変の出現も、進行とみなされる);および
安定疾患(SD):試験中の最小和直径を基準として、PRの認定に十分な縮小も、PDの認定に十分な増加もないこと(注記:直径の和を5mmまたはそれよりも多く増加させない、20%またはそれ未満の変化は、安定疾患としてコード化される)。安定疾患の状態に割り当てるために、測定値は、6週間の最小間隔で試験エントリー後に少なくとも1回、安定疾患基準を満たしている必要がある。
【0096】
非標的病変に関して、治療に対する応答は、次のものを含むことができる:
完全奏効(CR):全ての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正常化。全てのリンパ節が、非病的なサイズ(<10mm短軸)である必要がある。腫瘍マーカーが初期に正常範囲の上限を上回る場合、患者が完全臨床応答にあるとみなされるためには、腫瘍マーカーが正常化する必要がある;
非CR/非PD:1個もしくは複数の非標的病変の持続および/または正常範囲を上回る腫瘍マーカーレベルの維持;ならびに
進行性疾患(PD):1個もしくは複数の新たな病変の出現および/または既存の非標的病変の明白な進行。明白な進行は、通常、標的病変状態をしのぐことはない。これは、単一の病変増加ではなく、全体的な疾患状態変化を表すものであるはずである。
【0097】
例示的なアウトカムにおいて、本明細書に開示されている方法に従って処置された患者は、処置に対する応答性の少なくとも1種の徴候の改善を経験することができる。例えば、一実施形態では、そのように処置された患者は、CR、PRまたはSDを示す。別の実施形態では、そのように処置された患者は、腫瘍縮小および/または成長速度の減少、すなわち、腫瘍成長の抑制を経験する。別の実施形態では、望まれない細胞増殖が低減または阻害される。さらに別の実施形態では、次のうち1種または複数が発生し得る:がん細胞の数が低減され得る;腫瘍サイズが低減され得る;末梢臓器へのがん細胞浸潤が阻害され得る、遅滞され得る、遅らされ得るまたは停止され得る;腫瘍転移が遅らされ得るまたは阻害され得る;腫瘍成長が阻害され得る;腫瘍の再発が予防され得るまたは遅延され得る;がんに関連する症状のうち1種または複数がある程度まで和らげられ得る。
【0098】
他の実施形態では、そのような改善は、測定可能な腫瘍病変の含量および/またはサイズの低減によって測定される。測定可能な病変は、CTスキャン(5mm以下のCTスキャンスライスの厚さ)によって≧10mmとして、臨床試験によって10mmノギス測定値として、または胸部X線によって>20mmとして、少なくとも1つの寸法において正確に測定することができる(最長の直径が記録されるべきである)病変として定義される。改善のために非標的病変、例えば、病的リンパ節のサイズを測定することもできる。一実施形態では、病変は、胸部x線またはCTまたはMRIフィルムにおいて測定することができる。
【0099】
他の実施形態では、細胞学的検査または組織学的検査を使用して、治療に対する応答性を評価することができる。測定可能な腫瘍が、応答または安定疾患のための基準を満たした場合、処置中に出現または悪化するいずれかの浸出液の新生物起源の細胞学的確認は、応答または安定疾患(浸出液は、処置の副作用であり得る)と進行性疾患との間を区別するものと考えられ得る。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法のいずれかに従った有効量の抗ERBB3抗体の投与は、腫瘍のサイズの低減、経時的に出現する転移性病変の数の低減、完全寛解、部分寛解、安定疾患、全体的な奏効率の増加、または病理学的完全奏効からなる群から選択される少なくとも1種の治療効果を生じる。一部の実施形態では、提供される処置方法は、抗ERBB3抗体の投与なしで達成されるものよりも優れた、匹敵する臨床的有用率(CBR=CR+PR+SD≧6ヶ月間)を生じる。他の実施形態では、臨床的有用率の改善は、約20%20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれよりも大きい。
【0101】
VIII.キットおよび単位剤形
先行する方法における使用に適応された治療有効量で、セリバンツマブ等の抗ERBB3抗体および薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を含むキットも提供される。キットは、必要に応じて、例えば、従事者(例えば、医師、看護師または患者)が、その中に含有される組成物を投与することを可能にして、NRG1融合遺伝子を含む腫瘍を有する患者に該組成物を投与するための投与スケジュールを含む、指示を含むこともできる。一実施形態では、キットは、使用のための指示をさらに含む。別の実施形態では、キットは、シリンジを含む。
【0102】
必要に応じて、キットは、上に提供される方法に従った単一の投与のための有効量の抗体(例えば、セリバンツマブ)をそれぞれ含有する単一用量医薬組成物(複数可)の複数包装を含む。必要に応じて、医薬組成物(複数可)の投与に必要な器具またはデバイスがキットに含まれてよい。例えば、キットは、上述の方法における投与のために示されるmg/kg単位の用量の約100倍であるセリバンツマブの量を含有する1個または複数の予め充填されたシリンジを提供することができる。
【0103】
次の実施例は、単なる説明を目的としており、多くの変種および均等物が、本開示を読めば当業者には明らかとなるため、決して本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書に引用されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0105】
(実施例1)
NRG1再編成がんの新規患者由来および同質遺伝子的モデルを開発および使用して、下で詳細に考察される通り、in vitroおよびin vivoで成長、アポトーシスおよび細胞内シグナル伝達におけるセリバンツマブの効果を試験した。
【0106】
1.材料と方法
施設内審査委員会承認の生物検体プロトコールに基づいて、患者由来細胞系および異種移植片を開発し、腫瘍材料の収集のために患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。Memorial Sloan Kettering Cancer Center(New York, NY)Institutional Animal Care and Use CommitteeおよびResearch Animal Resource Centerによって承認されたプロトコールに従って、マウスの世話をし、実験を実行した。
【0107】
SLC3A2-NRG1融合駆動性肺がんを有する患者から得られた試料からLUAD-0061AS3 PDXモデルを生成した。患者は、試料収集の時点で、アファチニブ(40mg/日)による処置中に疾患進行を示した。胸腔穿刺を行い、胸水液試料を得た。1mg/L流体の最終濃度となるようにヘパリンを添加した。遠心分離(300×g、5分間、卓上遠心分離機において)によって全細胞を単離し、ACK(塩化アンモニウム-カリウム(ammonium-chloride-potassium))溶解バッファー(Thermo Fisher Scientific、A1049201)中で5分間インキュベートすることにより赤血球細胞を除去した。次に、6週齢雌NSG(NOD/SCIDガンマ)マウス(Envigo)の皮下側腹部に、総計20×10個の細胞を植え込んだ。7回の連続した継代の後に得られたLUAD-0061AS3 PDX腫瘍組織から、LUAD-0061AS3細胞系を生成した。手短に説明すると、新鮮な腫瘍を小片にカットし、次いで、5mL無血清DME:F12培地におけるMiltenyi Biotec(130-095-929)から得られた腫瘍解離酵素のカクテル中で、5~10分毎にボルテックスしつつ1時間37℃で消化した。消化された試料を45mL完全成長培地に再懸濁して、解離酵素を不活性化し、次いで遠心分離によって細胞をペレットにした。最後に、細胞を完全成長培地においてプレーティングし、アファチニブの非存在下で複数世代にわたって増やし、継代培養することが必要な場合はトリプシン処理し、最終的に単一の細胞のみが残った。WuXi AppTecによって、CLU-NRG1融合(NRG1エクソン6に融合したCLUエクソン8)を有する外科的に切除された臨床試料からOV-10-0050 PDXモデルを確立した(Drilon A, et al., Cancer Discov 2018;8:686-95)。モデルが確立されたとみなされる前に、PDX腫瘍を3回連続して移植した。
【0108】
乳がん上皮細胞系、MDA-MB-175-VII(カタログ番号HTB-25、RRID:CVCL_1400)およびMCF-7(カタログ番号HTB-22、RRID:CVCL_0031)をATCCから得た。MDA-MB-175-VII細胞は、DOC4-NRG1融合を発現する(Drilon A, et al. 2018およびTrombetta D, et al., Oncotarget 2018;9:9661-71)。MCF-7細胞は、乳がんを有する患者から単離された胸水(pleura effusion)に由来し、エストロゲン受容体陽性である(Bowtell DD, et al., Nat. Rev. Cancer 2015;15:668-79)。この細胞系は、Broad Institute Depmapプログラムによってプロファイリングされており、いかなるNRG1再編成も有しない(Mitra AK, et al., Gynecol. Oncol. 2015; 138:372-7)。ヒト気管支上皮細胞は、CDK4およびTERTの過剰発現によって不死化されており(HBEC-3KT細胞系)、John Minna博士(UT South Western、Dallas、TX;Kobel, et al., Int. J. Gynecol. Pathol. 2016;35:430-41)から得た。以前に記載された通りに(Ishikawa F, et al., Blood 2005;106: 1565-73)、p53 C末端変異体をHBEC-3KTに導入し(HBECp53)、cDNAのレンチウイルス媒介性形質導入により、このような細胞においてCD74-NRG1融合を発現させた。200mg/mLハイグロマイシンを使用して、融合を発現する細胞を選択した。本出願人らが、ROS1およびBRAF融合について以前に記載した通り(Cadranel J, et al., Oncologist 2021;26:7-16およびGeuijen CAW, et al., Cancer Cell 2018;33: 922-36)、HBECp53-SLC3A2-NRG1細胞は、CRISPR-Cas9媒介性ゲノム編集によってSLC3A2-NRG1融合が導入された、選択されない集団である。William Lockwood博士(BC Cancer Center、Vancouver、British Columbia、Canada、RRID:CVCL_5137)からHCC-95細胞を得て、このような細胞は、全エクソーム配列決定によってNRG1増幅を有することが見出された(Drilon A, et al., 2018)。6ヶ月毎にMycoplasmaについて細胞系を検査し(MycoAltert Kit、Lonza)、最新の検査は、本明細書に記載されている試験完了の6ヶ月前に実行された。試験の1年前にATCCから購入した認証細胞系を増やし、ストックを凍結した。細胞の新たなバイアルを解凍し、10~15回の継代(2ヶ月毎)に使用し、毎回RT-PCRによって公知癌遺伝子を検証した。公知癌遺伝子融合を検査することにより、創出された細胞系の同一性をルーチンに確認した。
【0109】
MDA-MB-175-VII細胞系を、20%FBSを補充したDMEM:Ham F12(1:1)培地において維持した。実験のため、MDA-MB-175-VII細胞を、10%FBSを含有するDMEM:Ham F12培地においてプレーティングし成長させた。MCF-7細胞を、10%FBSを補充したDMEMにおいて成長させた。HBECp53細胞を、ウシ下垂体抽出物およびEGFを補充したKSMにおいて成長させた。NRG1融合を発現する同質遺伝子的HBECp53細胞系を、10%FBSを補充したDMEM:Ham F12(1:1)培地において成長させた。HCC-95細胞を、10%FBSを補充したRPMI 1640培地において成長させた。全ての成長培地に、1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン混合物)を補充した。ストックフラスコが75%集密度に達したときに、トリプシン(0.25%)/EDTA(1mmol/L)を使用して細胞を継代培養し、1:3希釈で再プレーティングした。5%CO2を注入し37℃に維持した加湿インキュベーター内に細胞を保った。
【0110】
時間経過実験のため、12ウェル組織培養プレートにおいてウェル当たり5,000(HCC-95)または10,000(その他全て)個の細胞の密度で細胞をプレーティングし、次いで、24時間後(0時点)に、それぞれの薬剤で処置した。MCF-7成長アッセイのため、細胞を、1mmol/Lセリバンツマブで1時間処置し、その後、10ng/mL NRG1-b1と共にインキュベーションした。グラフに示す関連する時点において細胞をトリプシン処理し、計数した。用量応答試験のため、白色クリアボトム96ウェルプレートにおいて、90mL完全成長培地および10×濃度で添加した10mL化学物質(1×濃度を達成するために)の体積にした、100mLの最終体積中、7,500~10,000個の細胞の密度で細胞をプレーティングした。96時間インキュベーション後に、10%の最終濃度を達成するように10mL AlamarBlue細胞生存率試薬を添加した。AlamarBlueは、ミトコンドリアに進入する際に還元され、異なる波長で蛍光を発する細胞透過性pH感受性色素である(Gloeckner H, J. Immunol. Methods 2001;252:131-8)。以前に記載された通りに(Somwar R, J. Biomol. Screen 2009;14:1176-84)、Molecular Dynamics Spectramax M2蛍光プレートリーダーを使用して蛍光を測定した(励起、530nmおよび発光、585nm)。各実験において、高濃度で大部分の細胞にとって毒性がある1mmol/Lの20Sプロテアソーム阻害剤、カルフィルゾミブで処置された細胞においてバックグラウンド蛍光を決定し、全ての値からこれを引いた。各条件の3~4回繰り返しを行った。可変的勾配モデル、または阻害が部分的でしかなかった場合は3パラメーターフィットのいずれかを使用して、GraphPad Prism 8ソフトウェアを使用した非線形回帰解析によって、相対的IC50値および95%信頼区間値を決定した。カーブフィッティングは、データセットについてR2>0.8をもたらした。各条件を2~5つの独立した実験において3回繰り返してアッセイした。
【0111】
粉砕されたPDX腫瘍試料をマトリゲル(50%)と混合し、6週齢雌NSG(LUAD-0061AS3)またはBalb/cヌード(OV-10-0050)マウスの皮下側腹部に注射した。腫瘍がおよそ100~150mm3に達したら、マウスを5~8の群にランダムに割り当て、処置を開始した。LUAD-0061AS3 PDXモデルにおけるタンパク質リン酸化/発現試験のための両側性側腹部腫瘍を有する、群当たり2匹のマウスが存在した。薬物を1回投与し、次いで、処置の2、24および168時間後に腫瘍を収集した。5日間オンおよび2日間オフのスケジュールで、懸濁液(0.5%メチルセルロース-0.4%Tween(登録商標)-80における)として経口経管栄養によってアファチニブを毎日1回投与した。毎週2回投与(BIW)スケジュールのための3日毎に1回の腹膜腔への注射によって、PBSにおいてセリバンツマブを投与した。罹患率および死亡率の徴候について、処置期間を通して毎日マウスを観察した。腫瘍の長さおよび幅ならびに動物の体重を毎週2回測定した。経験式V=長さ×幅×0.52を使用して、腫瘍体積を計算した。式[(V2-V1)/V1)]×100(式中、V1は出発腫瘍体積であり、V2は最終腫瘍体積である)を使用して、各腫瘍の腫瘍体積のパーセンテージ変化を計算した。
【0112】
SLC3A2-NRG1融合転写物の検出のため、製造業者の指示に従って、Qiagen RNA Miniキットを使用してRNAを抽出し、SuperScript IV VILO(Thermo Fisher Scientific)を使用してcDNAを合成した。5’-ATGCTTGCTGGTGC-CGTGGTCA-3’(フォワード、SLC3A2エクソン4)および5’-GGTCTTTCAC-CATGAAGCACTCCCC-3’(リバース、NRG1エクソン6)プライマーを使用したRT-PCRによって、SLC3A2-NRG1融合を検出した。CD74-NRG1融合の検出のため、CD74エクソン6を標的とするフォワードプライマー(5’-AGAGCTGGATGCACCATTGG-3’)を使用した。CLU-NRG1融合の検出のため、CLUを標的とするフォワードプライマー(5’-TGAAGACTCTGCTGCTGTTTGTG-3’)およびNRG1を標的とする2種のリバースプライマー(R1:5’-GTTTTCTCCTTCTCCGCACA-TTTおよびR2:5’-TATCTCGAGGGGTTTGAAAGGTC-3’)を使用した。qPCRによるNRG1スプライスバリアントの発現のため、TaqMan遺伝子発現マスターミックスを次の発現アッセイで使用した(Thermo Fisher Scientific、4369016):NRG1a(Hs01103794_m1)、NRG1b(Hs00247624_m1)およびGAPDH(Hs02786624_G1)。NRG1 mRNAレベルは、GAPDH mRNAレベルと比較して表す。全ての細胞系の値は、HBECp53細胞に対して正規化した。
【0113】
以前に記載された通りに(Liu Z, Clin. Cancer Res. 2015;21:1752-63)、組織学的検査およびIHCを行った。手短に説明すると、異種移植片組織を収集し、室温にて24時間、4%緩衝ホルマリン食塩水中で固定し、パラフィンブロック中に包埋し、次いで4mm厚さの切片をガラススライド上に乗せた。脱パラフィン後に、組織切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色に供した、またはIHC染色のために抗原修復に供した。IHCアッセイのため、スライドを3%H2O2中に5分間浸漬し、洗浄し、次いで5%BSA中で15分間ブロッキングした。一次抗体中でスライドを一晩4℃にてインキュベートし、洗浄し、次いでジアミノベンジジン(DAB)キット(Dako)を使用してビオチン化抗ウサギ二次抗体と共に30分間37℃でインキュベートした。製造業者の指示に従ってDAB検出キットを使用して、IHC染色による陽性シグナルを検出した。スライドを、WT1(6F-H2、Dako)、p53(318-6-11、Dako)、ホスホ-HER3 Y1289(21D3、Cell Signaling Technology)およびTTF-1(8G7G3/1、Dako)に対する抗体で染色し、ヘマトキシリンで対比染色した。
【0114】
ダネットまたはチューキー多重比較検定による二元配置ANOVAによって腫瘍データセットを比較して、有意性を決定した。P<0.05が、2つの値またはデータセットの間の統計的に有意な差であるとみなされた。全ての統計解析は、GraphPad Prism 8ソフトウェア(RRID:SCR_002798)を使用して実行された。台形公式(Gagnon RC, J. Pharmacokinet. Biopharm. 1998;26:87-102)によってAUCを計算し、一元配置ANOVAを使用して群を比較した。スチューデントt検定を使用して、カスパーゼ3/7活性を比較した。全ての実験が、条件当たり2~3回繰り返しからなり、データを平均±SDまたはSEMとして表す。
【0115】
2.結果
a.NRG1変更を有する患者由来細胞系におけるNRG1アルファおよびベータアイソフォームの発現
発癌性NRG1融合は、NRG1のごく小さな部分を保持し、この部分は、EGF様ドメインを必ず含む。NRG1におけるこのドメインは、2種の形態、すなわち、アルファおよびベータアイソフォームで存在する。異なる細胞系におけるNRG1の発現レベルを比較目的で評価するために、EGF様ドメインが焦点であったが、その理由として、これが形質転換に必要とされ、アイソフォーム特異的qPCRアッセイにおいて使用されることが挙げられる。NRG1融合またはNRG1増幅を有するがん細胞系を、NRG1変更がない細胞と比較した。これは、NRG1のアルファおよびベータスプライスバリアントのそれぞれに特異的なTaqManアッセイを使用したqPCR解析によって達成された。乳がん細胞系MDA-MB-175-VIIは、NRG1およびDOC4の間に染色体転座を有し、肺がん細胞系LUAD-0061AS3は、NRG1およびSLC3A2の間に転座を有する。細胞系におけるDOC4-NRG1およびSLC3A2-NRG1融合の発現は、RT-PCRによって確認された(図1Aおよび図1B)。HCC-95細胞系は、NRG1の増幅を有する肺がん細胞系である。比較のため、MCF-7乳がん細胞系およびHBECp53細胞系(非形質転換不死化ヒト細気管支上皮細胞)を使用した;どちらの細胞系も、いずれのNRG1変更を有するとは知られていない。全ての細胞系が、変動するレベルでNRG1αおよびNRG1β mRNAを発現した。各細胞系におけるmRNAレベルは、HBECp53細胞における対応するmRNAと比較して表した。MCF-7細胞は、NRG1アイソフォームの最低発現を有することが見出された。HCC-95細胞は、おそらくNRG1増幅が原因で、非常に高レベルのNRG1αおよびNRG1β mRNAを発現した。HCC-95細胞は、NRG1融合を有する細胞系および対照細胞と比較して最高レベルのNRG1α mRNA発現を有した一方で、LUAD-0061AS3細胞系は、最高レベルのNRG1β mRNAを有した。HCC-95細胞は、MDA-MB-175-VII細胞よりも14倍多いNRG1β mRNAを有した。これらの結果は、NRG1変更を有する細胞系が、両方のNRG1アイソフォームを発現することを示唆する。しかし、限られた数の細胞系が解析されたことは、これらの結果の解釈において注意を払うべきであることを示唆する。
【0116】
b.セリバンツマブは、NRG1変更を有する細胞の成長を阻害する
NRG1融合を発現する細胞は、成長および生存のためにHER3の活性化に頼る。本明細書において、NRG1再編成を有する2種の細胞系(MDA-MB-175-VII、DOC4-NRG1融合およびLUAD-0061AS3、SLC3A2-NRG1融合)の成長を阻害するセリバンツマブの能力を、NRG1融合がない腫瘍および非腫瘍細胞系(それぞれMCF-7およびHBECp53)との比較において評価した。セリバンツマブまたはアファチニブによる2種のNRG1融合陽性細胞系の処置は、用量依存性様式で成長を低減させた(図1Cおよび図1D)。セリバンツマブおよびアファチニブは両者共に、MCF-7乳がん細胞またはHBECp53細胞の成長における最小効果を有した。成長阻害について得られる推定IC50値が決定される。MDA-MB-175-VII(IC50=0.02μmol/L)およびLUAD-0061AS3(IC50=1.4μmol/L)細胞は、それぞれMCF-7細胞(IC50=45.2μmol/L)よりもおよそ2,260倍および32.3倍高い、セリバンツマブに対する感受性であった。同様に、MDA-MB-175-VIIおよびLUAD-0061AS3細胞は、非腫瘍HBECp53細胞(IC50=203μmol/L)よりもおよそ10,000倍および145倍高い、セリバンツマブに対する感受性であった。
【0117】
セリバンツマブによる細胞成長阻害の時間的性質をさらに探索するために、最大12日間、ビヒクル、セリバンツマブ(0.1、1および10μmol/L)またはアファチニブ(0.05μmol/L)で細胞を処置し、次いで増殖を推定した。これらの実験において、MDA-MB-175およびLUAD-0061AS3細胞系、CD74-NRG1融合を異所的に発現する同質遺伝子的HBECp53細胞、およびNRG1増幅肺がん細胞系HCC-95(図1E図1H)を使用した。RT-PCRは、HBECp53-CD74-NRG1細胞におけるCD74-NRG1融合の存在を確認した。セリバンツマブは、処置が開始されてから24時間後もの早さで、MDA-MB-175-VII細胞の成長を遅らせ、1および10μmol/L濃度によって、12日間の実験期間の全体にわたり成長が遮断された(図1E)。LUAD-0061AS3細胞により同様の結果が得られた(図1F)。HBECp53-CD74-NRG1細胞は、セリバンツマブに対する感受性が、LUAD-0061AS3およびMDA-MB-171-VII細胞よりも低かったが、にもかかわらず、最高濃度のセリバンツマブにおけるほとんど完全な成長阻害(図1G)が観察された。HCC-95細胞は、セリバンツマブに対して最も感受性が高く、成長は、最低抗体濃度で完全に阻害された(図1H)。アファチニブ処置(0.05μmol/L)もまた、NRG1再編成を有する3種の細胞系の成長の阻害において有効であった(図1C図1G)。HCC-95細胞のアファチニブ感受性は、本試験では試験されなかった。これらの結果は、セリバンツマブが、NRG1融合またはNRG1増幅を有する腫瘍細胞系の成長を有効に阻害することを示唆する。
【0118】
c.セリバンツマブは、NRG1依存性細胞成長を特異的に阻害する
第1の目標(goald)は、NRG1が、MCF-7細胞における公知マイトジェン活性化経路を活性化することができることを確認することであった。この目的のため、細胞を、漸増濃度のNRG1-β1(EGF様ドメイン)で10分間処置し、次いでタンパク質リン酸化をウエスタンブロッティングによって決定した(図2A)。NRG1-β1によるMCF-7細胞の処置は、EGFR、HER3およびHER4のリン酸化の用量依存性増加を引き起こした。10ng/mLもの少なさのNRG1-β1により、3種の受容体のリン酸化増加が観察され、EGFRのリン酸化が最小の感受性であった。これは、AKT、ERK1/2、およびリボソームタンパク質S6を含むmTOR経路のエレメントのリン酸化の増加を伴った(図2A)。次に、MCF-7細胞のNRG1刺激性成長を遮断するセリバンツマブの能力を試験した。細胞を、96時間にわたり、さまざまな濃度のNRG1-β1(0~5ng/mL)およびセリバンツマブ(0~0.5μmol/L)で同時に処置し、次いで生存率を決定した。NRG1-β1によるMCF-7細胞の処置は、おそらく増殖の増強により、細胞生存率の有意な増加をもたらした(図2B)。使用されたセリバンツマブの最低濃度(0.125μmol/L)は、大部分は、NRG1-β1刺激性MCF-7細胞の成長を抑制した。これは、最大10日間にわたる10ng/mL NRG1-β1の添加前にMCF-7細胞が2μmol/Lセリバンツマブで1時間前処置され、成長が評価された、時間的試験においてさらに探索された。セリバンツマブ前処置は、NRG1-β1刺激性成長を完全に予防した(図2C)。結果は、セリバンツマブによるHER3の阻害が、NRG1依存性細胞増殖を有効に遮断することを実証する。
【0119】
d.セリバンツマブは、NRG1再編成を有する細胞におけるアポトーシスを誘導する
セリバンツマブが、細胞死を誘導することができるかどうかを試験するために、アポトーシスの代用として、細胞ホモジネートにおけるカスパーゼ3/7酵素活性を測定した。MDA-MB-175-VIIおよびLUAD-0061AS3細胞を、0~10μmol/Lセリバンツマブまたはアファチニブで48時間処置した。カスパーゼ3/7の活性化の陽性対照として、1μmol/Lカルフィルゾミブを使用した。アファチニブまたはセリバンツマブで処置した細胞におけるカスパーゼ3/7活性の用量依存性増加が観察された(図2D)。アファチニブは、MDA-MB-175-VIIにおいてより低い濃度で、セリバンツマブよりも、カスパーゼ3/7の活性化において有効であった。しかし、10μmol/L濃度で、アファチニブおよびセリバンツマブは、カスパーゼ3/7の活性化において等しく有効であり(アファチニブ、対照を14.1±3.6倍上回る、およびセリバンツマブ、対照を12.7±4.2倍上回る)、カルフィルゾミブによって刺激されたカスパーゼ3/7活性のレベルに匹敵した(対照を16.6±1.9倍上回る)。アファチニブおよびセリバンツマブは、LUAD-0061AS3において使用された最高濃度で同様の程度までカスパーゼ3/7活性を刺激したが(図2E)、応答の規模は、MDA-MB-175-VII細胞において観察されるものよりもはるかに低かった(アファチニブ、対照を3.3±0.1倍上回る、およびセリバンツマブ、対照を4.0±0.3倍上回る)。これは、MDA-MB-175-VII細胞と比較して、LUAD-0061AS3細胞におけるより低い活性のアポトーシス経路を反映する可能性があり、その理由として、カルフィルゾミブもまた、この細胞系においてより低いカスパーゼ3/7活性を刺激したからであった(対照を5.8±1.3倍上回る)。これらの結果は、セリバンツマブが、NRG1融合陽性乳および肺がん細胞系において用量依存性様式でアポトーシスを誘導することができることを示唆する。
【0120】
e.セリバンツマブは、NRG1変更を有する細胞における下流メディエーターのリン酸化を阻害する
セリバンツマブによって影響される細胞シグナル伝達ネットワークを調査するために、示された濃度のセリバンツマブによる血清飢餓LUAD-0061AS3、HBECp53-CD74-NRG1およびMDA-MB-175-VII細胞の処置後に、EGFR、HER2、HER3、HER4、ならびにPI3K、mTORおよびMAPK経路のエレメントのリン酸化状態をウエスタンブロッティングによって試験した(図3および図4A)。セリバンツマブによるLUAD-0061AS3細胞の処置は、EGFR、HER2、HER3、HER4、AKTおよびSTAT3のリン酸化のほとんど完全な阻害をもたらした(図3A)。ERK1/2のリン酸化は、セリバンツマブ処置に対する感受性が低かった。タンパク質リン酸化におけるセリバンツマブの阻害効果は、大部分の例において、アファチニブにより得られるものと同様であった(図3A)。HBECp53-CD74-NRG1細胞において、セリバンツマブ処置は、HER3リン酸化を完全に阻害し、程度は低いがHER2、EGFRおよびHER4のリン酸化を低減させた(図3B)。LUAD-0061AS3細胞における観察と同様に、AKT、p70S6KおよびSTAT3のリン酸化は、セリバンツマブ処置によってほとんど完全に阻害された(図3B)。MDA-MB-175-VII細胞において、セリバンツマブは、HER3、HER2、EGFRおよびHER4のリン酸化を完全に阻害し、大いにAKT、ERK1/2およびSTAT3のリン酸化を低減させた(図4A)。セリバンツマブもアファチニブも、処置後にいずれかのタンパク質の発現におけるいかなる効果も有さず、セリバンツマブ処置に応答して観察されるリン酸化の損失が、完全に、シグナルトランスダクションにおける遮断によるものであったことを示唆する。HCC-95細胞において、セリバンツマブ処置はまた、HER2、HER3および下流エフェクターのリン酸化を阻害し、EGFRリン酸化における効果はほとんどなかった。まとめると、これらの結果は、セリバンツマブによる処置が、HER3依存性シグナル伝達を破壊し、ERBB受容体および下流シグナル伝達のリン酸化を遮断し、細胞周期タンパク質の発現を低減させ、アポトーシス促進性タンパク質の発現を誘導することができることを示唆する。これらの事象は、最終的に、成長の阻害および生存障害に至る可能性がある。
【0121】
セリバンツマブの機構的作用についてさらに包括的な理解を得るために、セリバンツマブ処置と、シグナル伝達タンパク質のリン酸化またはアポトーシスおよび細胞周期を調節するタンパク質の発現との間の時間的関係性を評価した。血清欠乏性MDA-MB-175-VII細胞を、2mmol/Lセリバンツマブで最大24時間処置し、次いで全細胞抽出物を調製し、ウエスタンブロッティングに供した。セリバンツマブ処置は、HER3、HER4および下流シグナル伝達のリン酸化を急速に低減させ、完全阻害は、処置が開始されてから30分後に観察された(図4B)。12および24時間の時点でHER3、HER4およびp70S6キナーゼリン酸化に僅かな増加があるようであっても、AKTのリン酸化は、24時間の処置期間全体にわたり完全に阻害された状態を維持した。MEK1/2およびERK1/2のリン酸化は、急速に阻害されたが、HER3およびHER4について観察されるよりも早く再活性化が見られた(図4B)。アポトーシス促進性タンパク質である切断型PARPおよびPUMAの発現は、セリバンツマブ処置によって時間依存性様式で上昇し(図4C)、上昇を6~24時間維持した。これは、図2Dに示される観察と一致し、セリバンツマブが、処置48時間までにカスパーゼ3/7の活性化を誘導したことを強調する。細胞周期のG1期を通った移行を可能にするタンパク質であるサイクリンD1のレベルは、1時間までにセリバンツマブ処置細胞において低減され、6時間までに検出不能となった(図4D)。一部のタンパク質のリン酸化により観察される通り、サイクリンD1レベルは、12時間までに回復し始めた(図4D)。
【0122】
f.セリバンツマブ処置は、SLC3A2-NRG1再編成を有するNSCLC PDXモデルにおける腫瘍退縮を誘導する
セリバンツマブによるNRG1融合を有する細胞系およびNRG1刺激性MCF-7細胞の成長の阻害は、in vivoにおけるセリバンツマブ有効性の評価を支持した。SLC3A2-NRG1融合を有する浸潤性粘液性腺癌患者からNSCLC PDXモデルを生成した。PDX腫瘍の組織学的特徴付けを図5Aに示す。予想通り、腫瘍は、TTF-1(肺腺癌マーカー)が陽性であり、以前に実証された通り(Trombetta D, et al., Oncotarget 2018;9:9661-71)、膜性ホスホ-HER3染色を示した。
【0123】
LUAD-0061AS3 PDX腫瘍を、免疫低下状態のマウス(7匹の動物/群)の皮下側腹部に植え込み、2週間後に、セリバンツマブ(用量当たり0.6、0.75または1mg、毎週2回)またはアファチニブ(5、10または15mg/kg、毎日1回)による処置を開始した。アファチニブの5mg/kgの日用量は、患者に対する最大承認用量である50mg毎日のヒト用量と等価である。セリバンツマブは、第II相臨床試験(CRESTONE、NCT04383210)において3,000mg毎週で評価されており、これは、マウスにおける11.5mg週2回の用量と等価である。
【0124】
時間の関数としての腫瘍体積は、図5Bに説明されており、全群が生存する動物を有した最後の日(35日目)における群間の腫瘍体積の比較を容易にするための群毎に算出されたAUCを決定した。5mg/kgアファチニブ用量は、腫瘍成長の僅かであるが有意な低減を引き起こした(図5B)。しかし、アファチニブのより高い用量および検査したセリバンツマブの全用量は、腫瘍体積のより大幅な減少を引き起こした(図5B)。0.75または1mgセリバンツマブによる処置は、それぞれ7個の腫瘍のうち4個および7個の腫瘍のうち6個の退縮をもたらした。1mgセリバンツマブ群における腫瘍は、縮小し続け、42日までに57.2%±2.6%の最大腫瘍低減をもたらし、これは、さらに2週間維持された。アファチニブの最高用量(15mg/kg)もまた、7個の腫瘍のうち6個の退縮を引き起こすのに有効であった。しかし、15mg/kgアファチニブ用量に対する最大応答は、数日間を超えて持続されず、動物がまだ処置を受けている間に、ゆっくりとした腫瘍再成長が観察された。ヒト投与量よりも低い1mg BIWセリバンツマブ投与量は、アファチニブの15mg/kg 日用量と同じほどに有効であった(図5B、右)。処置は、動物体重のいかなる統計的に有意な低減を引き起こすことも、いずれかの顕著な仕方で動物健康にマイナスに影響することもなかった。まとめると、これらの結果は、セリバンツマブが、腫瘍成長の低減において、アファチニブよりも有効であることを示唆する。
【0125】
g.セリバンツマブ処置は、in vivoで、公知成長モジュレーターのリン酸化を遮断し、アポトーシスマーカーの発現を誘導する
上に提示されるデータは、セリバンツマブが、起源の組織または融合パートナーとは無関係に、成長を有効に低減させ、NRG1融合を有するがん細胞系における成長促進経路の活性化を遮断し、NRG1融合陽性細胞系およびLUAD-0061AS3 PDX腫瘍の成長を抑止したことを示す。HER2、HER3、AKTおよびERK1/2のリン酸化を試験して、NRG1依存性シグナル伝達に干渉するセリバンツマブおよびアファチニブの能力を評価した。LUAD-0061AS3 PDX腫瘍を有する動物に、セリバンツマブ(0.6、0.75または1mg)またはアファチニブ(5、10または15mg/kg)の単一の投与を与え、次いで薬物投与の2、24または168時間後に腫瘍を除去した。次に、PDX腫瘍ライセートのウエスタンブロッティングにより、タンパク質リン酸化を検出した。
【0126】
図5C(左)に示す通り、セリバンツマブの全用量は、2時間の時点までにHER2、HER3、AKTおよびERK1/2のリン酸化低減をもたらし、より高い用量は、より長い時点でより有効であった。より後の時点におけるHER3、AKTおよびERK1/2のリン酸化のある程度の再活性化があったが、HER2リン酸化は、より高い用量で、処置168時間後であっても、阻害された状態を維持した。同様に、アファチニブは、HER2、HER3、AKTおよびERK1/2のリン酸化を低減させ、最良の効果は、試験された最高用量(15mg/kg)で認められた。HER2を除いて、より後の時点においてタンパク質リン酸化の再活性化が観察された(図5C、右)。臨床的に使用されるものと等価な用量(マウスからヒトの用量等価性は、FDAガイドラインを使用してアロメトリックに(allometrically)推定される)である、マウスにおける5mg/kgで、アファチニブは、2時間までに完全にHER2リン酸化を阻害することができ、HER3リン酸化に大きな損失を引き起こした。
【0127】
次に、タンパク質リン酸化について上で探索された同じ腫瘍ライセートにおいてアポトーシス促進性タンパク質、BIMの発現を誘導するセリバンツマブおよびアファチニブの能力を試験した。BIM発現の誘導は、セリバンツマブの全用量による処置24時間後に明らかに認められた。0.75および1mgセリバンツマブで処置されたマウスから単離された腫瘍は、薬物投与後2時間までに、ビヒクル処置腫瘍よりも高いレベルのBIMを有した。BIMの上昇は、試験されたセリバンツマブの全用量の投与後168時間の時点で存在した。より高い用量のアファチニブのみが、持続したBIM発現を誘導することができたが、これは、セリバンツマブによって誘発されるものよりも少ない程度であった(図5C、右)。重要なことに、アファチニブの臨床的に関連する用量(マウスにおける5mg/kg 毎日1回)は、BIMレベルの僅かであるが一過性の増加を引き起こした。
【0128】
h.セリバンツマブ処置は、CLU-NRG1再編成を有するHGSOC PDXモデルにおける完全な腫瘍退縮を誘導する
高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)は、卵巣がん関連死の70%~80%を占め、全生存期間は、数十年間有意に変化していない(Bowtell DD, Nat. Rev. Cancer 2015;15:668-79)。セリバンツマブは、HGSOC組織学的検査を示す(Mitra AK, et al., Gynecol. Oncol. 2015; 138:372-7)、OVCAR8細胞から生成された異種移植片腫瘍の成長を遮断することが以前に示された(Sheng Q, et al., Cancer Cell 2010;17:298-310)。本明細書において、外科的に切除された卵巣腫瘍に由来し、CLU-NRG1融合を有する、卵巣PDXモデル(OV-10-0050)におけるセリバンツマブの有効性を試験した。RT-PCRは、CLU-NRG1融合の存在を確認した。異種移植片組織形態およびIHCマーカー(WT1について陽性であり、TP53について強い核染色)は、HGSOC組織学的検査と一致した(図6A;Kobel M, et al., Int. J. Gynecol. Pathol. 2016;35:430-41)。OV-10-0050 PDX腫瘍を有するマウス(5~8匹の動物/群)を、1、2.5、5もしくは10mgセリバンツマブ(毎週2回)または5mg/kgアファチニブ(毎日1回)で処置し、腫瘍成長を評価した。NSCLC PDXモデルにおける上述の実験と同様に、本明細書で使用されるセリバンツマブの用量は、患者において使用される用量よりも低かった。27日目に処置を終結し、さらに63日間(処置開始後90日間または腫瘍が最大許容サイズに達したら)腫瘍成長をモニターした。時間の関数としての腫瘍体積は、図6Bに説明されており、群毎にAUCを算出して、処置最終日に群間の腫瘍体積を比較した。アファチニブ処置は、腫瘍成長の僅かであるが有意な減少を引き起こした(P=0.003;図6B)。セリバンツマブ投与は、OV-10-0050 PDX腫瘍の成長を急速に阻害し、検査された全用量で有意な腫瘍縮小をもたらした(図6B)。最後の処置の時点における平均腫瘍体積は、983.7±254.5(ビヒクル);786.4±190.5(アファチニブ);1.3±0.3(1mgセリバンツマブ);1.9±0.6(2.5mgセリバンツマブ);17.9±14.5(5mgセリバンツマブ);および2.1±0.6(10mgセリバンツマブ)であり、腫瘍サイズのパーセンテージ変化として図6Cに図示されている。処置休止後に、セリバンツマブで以前に処置された腫瘍は、縮小し続けたが、ビヒクルおよびアファチニブ処置群における腫瘍は、成長し続けた(図6B、右)。処置を始めてから41日後に、高い腫瘍負荷のため、ビヒクルおよびアファチニブ処置腫瘍を有するマウスを屠殺した。73日目(処置終結後46日)までに、腫瘍は、1、2.5および5mgセリバンツマブ群において再成長を開始した。しかし、8個の腫瘍のうち1個のみが、試験の終わりに2種の最高用量群において再成長を開始し、セリバンツマブが、腫瘍細胞の大部分を排除した可能性があることを示唆した。処置は、全体的な動物の健康または体重にいかなる有意な変化も引き起こさなかった。
【0129】
3.考察
NRG1融合遺伝子は、HER3とエンゲージして、組織学とは無関係に腫瘍発生を駆動するキメラタンパク質をコードし、したがって、NRG1融合陽性がんの治療のためにHER3を標的化することは、活用され得る合理的な治療戦略を構成する。現在、NRG1融合駆動性がんを有する患者のためのFDA承認治療は存在しない。この群の悪性病変のための臨床試験における唯一のHER3特異的標的化薬剤は、モノクローナル抗HER3抗体、セリバンツマブである。
【0130】
NRG1融合駆動性肺、乳および卵巣がん(それぞれ異なるNRG1融合パートナーを有する)を表す新規疾患モデルを利用することにより、成長、アポトーシス、ならびに増殖、細胞周期進行および生存を調節するシグナル伝達分子の活性化状態におけるセリバンツマブの効果を解析した。本明細書で実証される通り、抗HER3抗体(セリバンツマブ)は、アファチニブによる観察と同様に、NRG1融合陽性細胞系における全てのERBBファミリーメンバーの活性化を遮断することができる。ERBBファミリーのこの顕著な遮断は、PI3K-AKT、mTORおよびERK経路の下流活性化の損失をもたらし、結果的に、増殖の有意な低減およびアポトーシスの誘導に至る。培養下の細胞において、アファチニブは、成長の阻害において、セリバンツマブよりも有効であった。この差の理由は不明である。培養培地中の他の成長因子の存在が、セリバンツマブのin vitro有効性を弱めることができる可能性がある。
【0131】
2種のin vivo PDXモデルにおいて、セリバンツマブ投与は、ヒト治験において使用されるものよりも低い投与量において、NSCLC PDXモデルにおける50%超の実質的な腫瘍退縮およびCLU-NRG1融合を有するHGSOCのPDXモデルにおける100%退縮をもたらした。HGSOCは、卵巣がん関連死の70%~80%を占める(Bowtell DD, et al., Nat. Rev. Cancer, 2015;15:668-79)。HGSOCモデルにおいて、腫瘍成長は、処置が停止された後63日間にわたり大部分は抑圧され、腫瘍再成長について動物をモニターした。セリバンツマブの有効性とは対照的に、HER2リン酸化の完全阻害(アファチニブの腫瘍浸透が問題ではないことを示す)にもかかわらず、5mg/kgアファチニブ日用量(50mg毎日のヒト等価用量)は、腫瘍成長の不十分なアンタゴニストであった。これらの観察は、アファチニブが、細胞成長の遮断においてより有効であったin vitro結果とは反対であった。マウスのNSG系統は、成熟T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞を欠如して(Ishikawa F, et al., Blood 2005;106: 1565-73)、いかなるADCC媒介性効果も排除されるので、in vivo試験において観察されるセリバンツマブのより高い有効性が、いずれかの抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性によるものである可能性は低い。その代わりに、セリバンツマブのより高いin vivo効力は、部分的に、アファチニブと比較した、PDX腫瘍におけるBIM等のアポトーシス促進性タンパク質の発現の持続した増加に起因し得る。アファチニブ(5mg/kg 毎日1回)投与は、PDX腫瘍におけるBIM発現を誘導しなかった。細胞死の欠如は、本試験における2種のPDXモデルに、および報告された症例の大部分において安定疾患、応答の短い持続時間または無応答があった臨床報告に見られる、アファチニブに対する不十分な応答に寄与し得る。これらの結果は、臓器横断的様式でのmAb、セリバンツマブによるHER3の特異的阻害を、NRG1融合依存性がんのための治療として探索するべきであることを示唆する。
【0132】
NRG1融合駆動性がんのための治療の開発を試みる前臨床試験の主要な弱点の1つは、患者由来モデルの欠如である。大部分の試験は、NRG1融合が人為的に発現されたマウスNIH-3T3細胞またはがん細胞系のいずれかを用いる。本試験において、患者由来乳、肺および卵巣がん細胞系ならびにPDXモデルを使用して、セリバンツマブの有効性を評価した。本明細書に提示される前臨床結果は、セリバンツマブが、おそらく、全てのERBBファミリーメンバーの活性化を遮断し、これにより細胞周期を阻害し、アポトーシスを誘導するその能力に助けられた、NRG1再編成から生じるがんのための有効な治療剤であることを実証する。重要なことに、セリバンツマブが、NRG1増幅を有する肺がん細胞系の成長を遮断することができることが示された。より多くの診断的なプラットフォームがNRG1変更についてプロファイリングを始めるにつれて、NRG1増幅が、分子的に定義されたがんサブセットとして現れ得ることが可能である。これらの新規モデルを使用して、HER2-HER3二特異性抗体、MCLA-128および他のHER3抗体等、NRG1融合を有するがんのための他の潜在的な治療を徹底的に比較することができ、ベストインクラスの薬物をより良く認識することができる。
【0133】
まとめると、セリバンツマブは、MCF-7細胞のNRG1刺激性成長の遮断において有効であった。内在性NRG1融合を有する細胞において、セリバンツマブによるHER3の遮断は、他のERBBファミリーメンバー(HER2、HER4およびEGFR)ならびにPI3K-AKT-mTOR、RAS-MAPKおよびSTAT3経路の活性化を低減させた。重要なことに、セリバンツマブは、in vitroおよびin vivoで、乳、肺および卵巣がんに由来するNRG1融合モデルにおいて成長を遮断し、アポトーシスを誘導した。言い換えると、セリバンツマブは、臨床的に達成可能でありかつヒト投与量よりも低い投与量で、NRG1再編成(rear-rangement)を有する3種の異なる組織学的がんサブタイプに由来する疾患モデルにおいて成長を低減させ、アポトーシスを誘導する。これらの結果は、NRG1遺伝子融合陽性固形腫瘍を処置するための、セリバンツマブの臓器横断的治験のための明らかな前臨床理論的根拠を提供する。
【0134】
(実施例2)
ニューレグリン1遺伝子(NRG1)の発癌性再編成は、上皮成長因子(EGF)様ドメインを保持する3’NRG1配列に融合された5’パートナーからなり、肺、乳および胃腸(GI)がんを含む固形腫瘍のおよそ0.2%において見出される(Jonna S. et al., Clin. Cancer Res. 2019; 25:4865-4867)。膵および胆管癌を含むGI起源の癌は、NRG1融合を有する固形腫瘍の20%前後を表し、この群のがんのために承認された治療は存在しない(Jonna S. et al., J. Clin. Oncol. 2020; 38(15_suppl):3113)。キメラNRG1腫瘍性タンパク質は、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3/ERBB3)に結合し、他のERBBファミリーメンバーのトランス活性化をもたらし、最終的に発癌に至るシグナル伝達カスケードを誘発する。HER3の標的化は、NRG1融合を有するがんのための合理的な治療戦略を表すが、これは、NRG1変更を有するGI悪性病変のために相対的に探索されないままであった。本試験において、NRG1駆動性GIがんの前臨床モデルにおける抗HER3モノクローナル抗体セリバンツマブの有効性を調査した。
【0135】
不死化ヒト膵管細胞(H6c7)におけるATP1B1-NRG1およびSLC3A2-NRG1融合のレンチウイルス媒介性cDNA発現により、NRG1融合を有する同質遺伝子的膵がん細胞のモデルを開発した。同質遺伝子的細胞系において、ならびに膵腺癌(CTG-0943、APP-NRG1融合)および肝内胆管癌(CH-07-0068、RBPMS-NRG1融合)の患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいて、セリバンツマブ有効性を評価した。ウエスタンブロッティング解析を使用して、タンパク質リン酸化および発現を評価した。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)および次世代配列決定(NGS)によってNRG1融合の存在を確認した。
【0136】
H6c7細胞におけるNRG1融合の発現は、空ベクター対照細胞(H6c7-EV)と比較して、HER3およびAKTの増強されたリン酸化をもたらした。セリバンツマブによるH6c7-ATP1B1-NRG1およびH6c7-SLC3A2-NRG1膵細胞の処置は、HER3およびAKTリン酸化の用量依存性阻害をもたらした(図7A図7E)。APP-NRG1再編成を有する膵腺癌(CTG-0943)のPDXマウスモデルへの5mgまたは10mg毎週2回[BIW]セリバンツマブの投与後に、腫瘍成長阻害が観察された。この2種の用量のセリバンツマブは、このモデルにおいて汎ERBB阻害剤であるアファチニブ(5mg/kg QD)よりも有効であり、最大55%(23~77%範囲)の腫瘍縮小を引き起こした。アファチニブ処置膵PDX腫瘍の退縮はなかった。処置後に、ウエスタンブロッティング解析のために残存CTG-0943腫瘍を抽出した(ビヒクルのために24日目、ならびにそれぞれセリバンツマブおよびアファチニブ群のために31または32日目)。試験の終わりのセリバンツマブ処置腫瘍におけるリン酸化されたおよび総てのEGFR、HER2およびHER3、サイクリンD1等の損失は、異種移植片腫瘍におけるヒト腫瘍細胞の大部分の損失を示唆する。これは、ヒト特異的GAPH抗体を使用して確認された。
【0137】
RPBMS-NRG1融合(図8A図8D)ならびにERBB4およびIDH1における変異(CH-17-0068)(図9A図9E)を有する肝内胆管癌PDXモデルにおいてセリバンツマブをさらに評価した。単独療法セリバンツマブ(用量当たり5mgおよび10mg、BIW)は、このモデルにおいてアファチニブ(5mg/kg 毎日1回[QD])と等しく有効であったが、併用療法により増強された腫瘍退縮が観察された。セリバンツマブ10mg BIWとアファチニブおよびIDH阻害剤であるAG-120の三重組合せは、腫瘍の大部分に退縮をもたらした。アロメトリックスケーリング(FDAガイドラインに基づく)は、マウスにおける5mg/kgアファチニブが、およそ50mg毎日のヒト用量と等価であることを示す。
【0138】
まとめると、NRG1融合は、GIがんにおける希少であるが反復性の発癌性ドライバーである(例えば、Jonna S. et al., Clin. Cancer Res. 2019; 25:4865-4867およびJonna S. et al., J. Clin. Oncol. 2020; 38(15_suppl):3113を参照)。不死化ヒト膵管上皮H6C7細胞におけるNRG1融合の過剰発現は、HER3およびAKTを活性化した。セリバンツマブは、NRG1融合を有するH6C7細胞におけるHER3およびAKTリン酸化を阻害する。セリバンツマブによるNRG1融合陽性膵PDXモデルの処置は、臨床的に達成可能な用量で腫瘍成長を阻害する。残存腫瘍異種移植片は、ウエスタンブロッティングによって評価されたときに、枯渇されたヒト腫瘍細胞内容物を示す。3種のゲノム変更(NRG1融合ならびにERBB4およびIDH1変異)を有する胆管癌PDXモデルの調査は、追加の発癌性ドライバーを有するNRG1融合駆動性腫瘍の処置が、疾患進行における各ゲノム変更の寄与に対処するために、併用療法を必要とし得ることを示唆する。これらのデータは、進行中の第2相CRESTONE試験(NCT#04383210)における、NRG1融合によって特有に駆動されるGIおよび他のがんを処置するための、単独療法セリバンツマブの使用を支持する。
【0139】
(実施例3)
包括的ゲノムプロファイリング(CGP)は、標的化可能な発癌性ドライバーを明らかにして、腫瘍組織学的検査および起源に純粋に基づき、従来の化学療法薬を越えた処置選択肢を通知することができる。これは、潜在的なアクショナブルな変異および対応するバイオマーカー駆動治療を同定するために、いずれかの組織像の進行型固形腫瘍を有する患者の分子スクリーニングを用いる、Cancer Molecular Screening and Therapeutics(MoST)プログラムに由来する症例シリーズである。本試験の目的は、ゲノム所見が、処置抵抗性胃腸(GI)がんを有する患者のために新規治療機会を提供し、アウトカムを改善することができる仕方を説明することであった。
【0140】
手短に記載すると、いずれかの組織像の進行型固形腫瘍を有する患者は、分子スクリーニングを受ける。ゲノム変更は、適切なバイオマーカー適合治療下位試験を同定するために、分子腫瘍委員会でレビューされる。ATP1B1-NRG1遺伝子融合を有するKRAS WT膵がんを有する患者を含む、症例レビューによって耐久性のある臨床的有用性を有する7名のGIがん患者を同定した。ニューレグリン1(NRG1)遺伝子融合タンパク質は、KRAS野生型PDACの間で富化された(8~10%)、重要な発癌性ドライバーである(Aguirre AJ., Clin. Cancer Res. 2019 Aug; 25(15))。NRG1は、ERBB3の優勢なリガンドである。このような融合タンパク質は、異常ERBB3活性化を介して腫瘍進行を駆動する。ATP1B1-NRG1遺伝子融合を有するde novo KRAS wt膵管腺癌(肝臓転移を有する)を有する38歳女性の同定は、セリバンツマブへのコンパッショネートアクセスを可能にした。この患者は、利用できる治療を以前に使い果たしており、次の通りに処置されていた:(1)2019年10月~2020年1月、FOLFIRINOX、(2)2020年1月~2020年6月、FOLFIRI、(3)2020年6月~2020年8月、ゲムシタビン/アブラキサン、(4)2020年8月~2020年12月、FOLFIRI。2020年12月に、彼女は、NRG1融合を有する自身の腫瘍に与えられたセリバンツマブにより処置された。セリバンツマブによる処置は、部分奏効をもたらし、プレゼンテーションのためのデータカットオフ時点において8ヶ月間にわたる処置が進行中であった(図10A図10Bおよび図11)。
【0141】
結論として、CGPは、進行型GIがん患者のために臨床アウトカムを改善する潜在力を有する、希少であるが治療的に関連するゲノム変更を同定することができる。その後の研究は、この精密な腫瘍学アプローチから最大の利益を導き出すであろう患者を最も良く同定する仕方に焦点を合わせるべきである。
【0142】
(実施例4)
セリバンツマブの第2相臨床試験(「CRESTONE、プロトコールバージョン4.0」と称される)が、ニューレグリン-1(NRG1)融合陽性局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する成人患者において実行される。
【0143】
1.目的
試験の一次目的は、「固形腫瘍効果判定基準」(RECIST 1.1;例えば、Eisenhauer, E. et al., (2009), "New response evaluation criteria in solid tumors: revised RECIST guideline (version 1.1)," European Journal of Cancer (Oxford, England: 1990), 45(2), 228-47)を参照)に従って、確認されたNRG1遺伝子融合陽性進行型がんを有する患者において、単剤セリバンツマブに対する独立した放射線学的レビューによる客観的奏効率(ORR)を決定することである。
【0144】
試験の二次目的は、(1)次の臨床アウトカムパラメーター(例えば、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および臨床的有用率(完全奏効(CR)、部分奏効(PR)および安定疾患(SD)>24週間))の評価により、様々な進行型がんを有するNRG1遺伝子融合陽性患者における単剤セリバンツマブの全体的な有効性を決定すること、および(2)NRG1遺伝子融合陽性患者におけるセリバンツマブの安全性プロファイルを記載することを含む。
【0145】
探索目的は、(1)NRG1遺伝子融合陽性進行型固形腫瘍を有する患者におけるセリバンツマブ投与スケジュールの薬物動態、および(2)腫瘍組織または血液試料由来の機構的に関連付けされた探索性バイオマーカーが、臨床アウトカムと相関するかどうかを評価することを含む。
【0146】
2.試験設計
本試験は、地方の検査に基づきNRG1遺伝子融合を有する反復性局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する成人患者における、オープンラベル国際的多施設第2相試験である。患者は、1種または複数種の以前の標準治療後に進行した、利用できる根治的治療が存在しない、局所的進行型または転移性固形腫瘍を有する。
【0147】
全患者は、さらなるスクリーニング手順の開始に先立ち、地方の検査機関が主導する解析による腫瘍組織の地方の検査に基づき、NRG1遺伝子融合陽性であると決定された。全てのスクリーニング手順および試験処置の適格性の決定が完了した後に、適格患者は、以前の処置歴および地方のNRG1遺伝子融合検査結果に基づき、適切なコホートに割り当てられる。患者は、次の通りに処置コホートに割り当てられる:
コホート1:ERBB/HER2/HER3処置ナイーブであり、かつ、EGF様ドメインインタクトを有するNRG1遺伝子融合を有する、中央で確認されたNRG1遺伝子融合を有する最小で55名の患者。
コホート2:以前のERBB/HER2/HER3を対象とした処置を含む以前の標準治療の後に進行した、EGF様ドメインインタクトを有するNRG1遺伝子融合を有する最大で10名の患者。
コホート3:EGF様ドメインなしのNRG1融合(NRG1-PMEPA1、NRG1-STMN2、PCM1-NRG1およびINTS9-NRG1を含むがこれらに限定されない)を有する最大で10名の患者;他のNRG1変更(すなわち、再編成)を有する患者;NRG1融合および標準処置選択肢を欠如する他の分子異常を有する患者;ならびにNRG1遺伝子融合状態の中央による確認のために十分な組織を提供することができない患者。
【0148】
10名を超える患者を、承認後にコホート2および3の下に登録することができる。
【0149】
処置の1サイクルは、28日間からなる。投与は、サイクル1の1週目(C1W1)来院から始まる。患者が、1種または複数種のプロトコール特異的処置中断基準を満たすまで、コホート1、2および3に割り当てられた全患者のための処置は、セリバンツマブ3,000mg、1時間静脈内(IV)毎週1回からなる。処置関連の毒性を管理するための用量修飾および/または処置休止が、毎週の投与の間、許可される。
【0150】
適格性確認後に処置コホートの1つに割り当てられた同意した全患者のために、処置は、コホート割当て後7日以内に開始する。患者は、進行性疾患または許容できない毒性が生じるまで、処置されることが予想される。腫瘍評価は、6週目(C2W2)、12週目(C3W4)、18週目(C5W2)および24週目(C7W2)(+/-2週間)に開始して、その後、1年目まで8週間毎に(+/-2週間)、続いて、その後疾患進行まで12週間(+/-2週間)毎に地方の放射線科医によって測定および記録され、RECISTガイドライン(バージョン1.1)を使用して評価される。疾患進行(PD)以外の理由で処置を中断する全患者は、処置終了時の来院の時点でスキャンを行ってもらう。加えて、スキャンの独立した中央レビューレが実行される。全画像は、この目的のために中央イメージング施設に提出され、独立した審査者によって評価される。患者が、セリバンツマブ処置を中断した後に、死亡または試験の終了のどちらかが最初に発生するまで、生存情報およびその後の治療に関する情報が収集される。進行時点で、必要に応じた生検を得て、セリバンツマブ抵抗性の機構を探索することができる。
【0151】
3.試験集団
本試験のための標的集団は、局所的進行型または転移性固形腫瘍を有するNRG1遺伝子融合陽性患者である。そのような患者は、その腫瘍型のための標準または根治的治療の後に進行している。
【0152】
A.参入基準
試験参加に適格となるために、患者は、次の基準を満たさなければならない。
i.CLIA認証されたまたは同様に認可された検査機関によるPCR、NGS(RNAまたはDNA)またはFISH等の分子アッセイにより同定された、NRG1遺伝子融合を有する局所的進行型または転移性固形腫瘍;
ii.NRG1遺伝子融合状態の登録後確認のための中央検査機関への提出のための、新鮮なまたはアーカイブされたFFPE腫瘍試料の利用能(コホート1のみ;コホート2および3の要件ではない);
iii.患者は、その腫瘍型および疾患ステージに適切な最小で1種の以前の標準治療を受けて、その後に進行したことがあり、さらに利用できる根治的治療の選択肢がない;
iv.≧18歳
v.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)0、1または2;
vi.患者は、RECIST v1.1によって定義される少なくとも1個の測定可能な頭蓋外病変を有しなければならない;
vii.次の通りに定義される適切な肝機能:血清ASTおよび血清ALT<2.5×正常上限(ULN)、または根底にある悪性病変が原因の肝機能異常性および総ビリルビン<2.0×ULNである場合は、ASTおよびALT<5×ULN。ジルベール病の公知病歴および間接的ビリルビンの単独の上昇を有する対象は、適格である。総ビリルビン≦3.0×ULNである場合、実証された肝合併症を有する対象は適格である;
viii.次の通りに定義される適切な血液学的状態:スクリーニングに先立つ少なくとも7日間にわたり成長因子サポートを要求しない、好中球絶対数(ANC)≧1.5×10/L、スクリーニングに先立つ少なくとも7日間にわたり輸血サポートを要求しない、血小板数≧100.0×10/L、およびスクリーニングに先立つ少なくとも7日間にわたり輸血サポートを要求しない、ヘモグロビン≧8g/dL;
ix.インフォームドコンセントを提供する能力があるか、またはそれを行う能力と意志がある法定代理人を有する;
x.試験参加の持続時間にわたり、外来処置、検査機関モニタリングおよび要求されるクリニック来院に従う能力;ならびに
xi.処置の持続時間および試験完了後3ヶ月間にわたり、従来のかつ有効な避妊を順守する意志が、生殖能がある男性および女性にあること。
【0153】
B.除外基準
次の基準のいずれかを満たす患者は、本試験の参加から除外される:
i.利用できる標準治療が指示された、NRG1融合以外の公知のアクショナブルな発癌性ドライバー変異(コホート1および2のみ;コホート3の要件ではない);
ii.平均余命<3ヶ月間;
iii.妊娠中または授乳中;
iv.ERBB3/HER3を対象とした治療による以前の処置(コホート1のみ);
v.汎ERBBまたはいずれかのERBB/HER2/HER3を対象とした治療による以前の処置(コホート1のみ);
vi.症候性または無処置脳転移。安定した(例えば、≧2週間にわたり同じ用量)低用量コルチコステロイドレジメン中の患者を含む、放射線照射または外科手術で処置された、スクリーニング時にイメージングによる進行の証拠がない、無症候性脳転移を有する患者は、試験の参加に適格である;
vii.セリバンツマブの計画された開始に先立つ28日以内または5半減期以内のどちらか短い方で、他の全身性抗がん療法(治験用または標準の化学療法、免疫療法または標的化療法)を受けた;
viii.セリバンツマブ処置の開始に先立ち、患者は、以前の抗がんもしくは試験的治療による臨床的に有意な毒性または急性放射線毒性から回復していなければならない;
ix.全身性治療を要求する、他のいずれかの活動性悪性病変;
x.セリバンツマブの構成成分のいずれかに対する公知過敏症、または完全にヒトモノクローナル抗体に対する以前の「有害事象共通用語規準(common terminology criteria for adverse events)」(CTCAE)グレード3もしくはそれよりも高い過敏症反応;
xi.症候性うっ血性心不全、不安定狭心症、計画された第1の投与の12ヶ月以内の急性心筋梗塞、または治療を要求する不安定心不整脈(トルサード・ド・ポアンツを含む)を含む、臨床的に有意な心疾患;
xii.活動性の制御されない全身性細菌、ウイルスまたは真菌感染;および
xiii.治験責任医師によって判断された他のいずれかの理由で、本臨床試験の参加に適切な候補ではない患者。
【0154】
C.アーカイブまたは新鮮腫瘍検体要件
本試験は、NRG1遺伝子融合陽性腫瘍を有する患者のみを登録する。患者の腫瘍NRG1状態は、CLIA認証されたまたは他の同様に認可された検査機関によってルーチンに行われる通り、PCR、NGS(RNAまたはDNA)またはFISH等の分子アッセイによって同定される。検査に利用できる適切なアーカイブされた腫瘍組織がない患者のため、安全に行うことができる場合、試験参加よりも前に新鮮腫瘍生検が得られる。地方のNRG1融合検査方法は、認定施設によって変動し得るが、CLIA認証されたまたは同様に認定された検査機関によって行われる。
【0155】
加えて、適切なアーカイブまたは新鮮腫瘍試料はまた、登録およびコホート1への割当て後に、中央検査機関によって行われる認定されたRNAに基づくNGS検査を使用したNRG1遺伝子融合確認に要求される。アーカイブおよび/または新鮮腫瘍試料は、利用できる場合、コホート2およびコホート3患者から収集される。
【0156】
D.試験処置中断
患者は、いずれかの時点でいずれかの理由により、試験を中止することができる。試験の経過にわたり、患者は、次の理由のいずれかにより、処置を中止することができる:
i.疾患進行(RECIST v1.1を使用して評価される通り);セリバンツマブによる処置を続けることが許される可能性がある、臨床的有用性を得ている患者を除く;
ii.応答の説得力のある客観的な放射線学的証拠があり、代替処置がなく、セリバンツマブの継続が患者にとって最良の利益であり、患者が合意する場合を除き、3週間よりも長い回復期間を要求する臨床的に有意な薬物関連の毒性;
iii.プロトコール要件を満たす能力を損なう介入性疾病;
iv.代替処置の要求;
v.プロトコールへの重大な非遵守;
vi.患者による同意の中止;
vii.患者が追跡不能例である;および
viii.死亡。
【0157】
患者は、いずれかの理由で処置を中断される場合、最後の用量の4週間以内に処置終了時の来院の評価を受けることになる。有害事象の結果として処置を中断する全患者は、有害事象の消散または安定化まで追跡される。患者が試験処置を中止した時点で、中断の理由(複数可)を決定するための試みが為される。
【0158】
処置の中止後に、患者は、処置終了時の来院の完了後に3ヶ月毎に、生存ならびにその後の疾患および処置情報について追跡され続ける。
【0159】
4.試験処置
患者が、地方の検査に基づきNRG1遺伝子融合陽性であると決定された場合、治験責任医師は、患者が、他の全ての適格性基準を満たすかどうかを決定する。適格性のために使用される地方の検査毎のNRG1遺伝子融合を同定する編集済みの分子病理学報告書のコピーは、患者登録に先立つレビューのために提出される。全ての試験登録基準が満たされたら、患者は、以前のERBB処置歴およびNRG1融合検査結果に基づき適切な処置コホートに割り当てられる。登録後に、治験責任医師および/または施設スタッフは、検査機関マニュアルによるNRG1融合状態の確認のために、要求される腫瘍試料を中央検査機関に提出する。
【0160】
A.セリバンツマブ
セリバンツマブは、IV投与のために、滅菌された無色の液体として、25mg/mLで供給される。これは、コーティングされたゴム栓およびフランジを備えるフリップオフ(flip-off)キャップで閉じられた、滅菌された使い捨ての透明なホウケイ酸塩1型ガラスバイアル内に包装されている。
【0161】
セリバンツマブの複数のバイアルは、厚紙容器内に包装されている。個々のバイアルと共に、厚紙容器の外側は、規制上の要件に従って、かつその国に特有のガイドラインを遵守してラベルが貼られている。
【0162】
セリバンツマブ薬物製品は、遮光されつつ冷蔵(2~8℃)貯蔵される。遮光は、調製または注入の際に要求されない。セリバンツマブは、凍結してはならない。
【0163】
利用できる安定性データに基づき、注射用液剤のための濃縮物は、臨床供給ラベルに指定された条件に従って貯蔵した場合、少なくとも36ヶ月間安定している。継続した安定性データは作成中であり、試験の経過において、より長い安定性が利用できる可能性がある。有効期限は、薬物ラベルに、または地方条例によって要求される他の薬局通告により記されている。セリバンツマブは、有効期限を越えて使用されない。セリバンツマブの投与は、全て同じロット番号に起源をもつべきである、複数のバイアルを要求する。セリバンツマブは、0.9%生理食塩水との混合に先立ち室温に置かれる。バイアルは振盪されない。適切な含量の試験薬物が、バイアルから取り出され、250mLの最終総体積となるように0.9%生理食塩水でさらに希釈され、低タンパク質結合性0.20または0.22ミクロンインラインフィルターを使用して60分間(±15分間)かけて投与される。全注入液が、注入関連反応の非存在下で60分間(±15分間)かけて投与される。試験薬物注入の前および後に、ラインを洗う。試験薬物は、ボーラスまたはプッシュとして投与されない。セリバンツマブは、以前の投与から少なくとも7日間以上後に投与される。
【0164】
B.セリバンツマブ投与
登録された患者は、患者が1種または複数種のプロトコール特異的処置中断基準を満たすまで、セリバンツマブ3,000mg、1時間IV、毎週1回による処置を開始する。処置関連の毒性を管理するための用量修飾および/または処置休止が、毎週の投与の間、許可される。
【0165】
C.セリバンツマブに関連する毒性の管理
患者は、28日間の期間にわたり毎週投与の間(すなわち、C1W1、C1W2、C1W3およびC1W4を通して)、DLTの発生についてモニターされる。セリバンツマブに関連するとみなされるいずれかのグレード3または4血液学的または非血液学的毒性は、用量制限とみなされる。DLTは、セリバンツマブとの関係性を無視することができない場合の、セリバンツマブによる毎週の処置において発生する、下に収載される基準を満たすいずれかの有害事象(AE)として定義される。AEのグレード分類は、「有害事象共通用語規準」(CTCAE)バージョン5.0に基づく。血液学的毒性は、発熱性好中球減少、好中球減少性感染、グレード4好中球減少>7日間、グレード≧3血小板減少、>7日間、臨床的に有意な出血を伴うグレード≧3血小板減少、グレード4血小板減少、およびグレード≧3貧血>7日間を含む。非血液学的毒性は、(1)制吐薬または止痢薬による最適な医療支援にもかかわらず72時間を超えて持続するグレード≧3悪心、嘔吐または下痢、(2)グレード4(生命を脅かす)嘔吐または下痢は、持続時間とは無関係にDLTとみなされる、(3)<7日間持続するグレード≧3疲労および食欲不振またはグレード≦2注入関連反応(グレード3またはそれよりも高い注入関連反応(IRR)のため、セリバンツマブは、永久に中断される)を除いた、他のいずれかのグレード≧3 AEを含む。
【0166】
疾患進行[PD]に関係する症状を除いて、セリバンツマブ処置の中断または用量低減をもたらすいかなる毒性も、CTCAEグレードに関係なく、DLTとみなされる。
【0167】
D.注入関連反応の管理
モノクローナル抗体の他のIV注入と同様に、セリバンツマブ投与は、注入関連反応(IRR)を伴う可能性がある。注入関連反応は、アレルギー性反応/注入反応およびアナフィラキシーの国立がん研究所(National Cancer Institute)CTCAE(バージョン5.0)定義に従って定義される。過去の臨床試験(n=847名の患者を処置)において、セリバンツマブによるIRRは、希少であり、患者の<1%がIRRを経験し、そのうち全てがグレード1または2であった。試験施設のポリシーまたは表2に示す次の処置ガイドラインは、注入反応の管理のために使用される。
【0168】
【表2】
【0169】
グレード1またはグレード2注入反応を経験する患者のため、その後の注入は、90分間かけて投与することができる。加えて、その後のグレード1または2注入反応を経験する患者のため、デキサメタゾン10mg IVを投与する。その後の注入は全て、ジフェンヒドラミン塩酸塩50mg IV、デキサメタゾン10mg IVおよびアセトアミノフェン500~650mg経口を前投薬される。
【0170】
グレード3または4注入反応を経験する患者のため、抗セリバンツマブ抗体力価は、可能な限り注入反応の開始の近い時点で測定される。抗セリバンツマブ抗体力価はまた、事象の消散時におよび事象の28日後(+/-2日間)に得られる。
【0171】
E.毒性管理ガイドライン
患者が、セリバンツマブに関連する注入関連反応を除外して、いずれかのグレード3またはグレード4血液学的または非血液学的毒性を経験する場合、次の毒性管理ガイドラインに従う:
【0172】
血液学的毒性のための用量休止および低減:≧グレード3血液学的毒性のため、セリバンツマブ投与は、≦グレード2に消散するまたは患者のベースラインになるまで保留される。血液学的毒性が、≦グレード2に消散するとまたは患者のベースラインになると、セリバンツマブは、本来の用量の25%低減で再び開始される。
【0173】
≧グレード3血液学的毒性の再発のため、セリバンツマブは、≦グレード2に消散するまたは患者のベースラインになるまで再度保留される。血液学的毒性が、≦グレード2に消散するとまたは患者のベースラインになると、セリバンツマブは、本来の用量の50%低減で再び開始される。
【0174】
血液学的毒性が原因でセリバンツマブの用量低減をした患者のため、治験責任医師は、毒性が、低減された用量で、処置の少なくとも1サイクルにわたり≦グレード1に消散したという条件で、本来の割り当てられた用量でセリバンツマブを再び開始することができる。
【0175】
患者が、50%用量低減にもかかわらず、反復性グレード3またはそれよりも高い処置関連の血液学的毒性を経験する場合、セリバンツマブは、永久に中断される。
【0176】
非血液学的毒性のための用量休止および低減:≧グレード3非血液学的毒性のため、セリバンツマブ投与は、≦グレード1に消散するまたは患者のベースラインになるまで保留される。非血液学的毒性が、≦グレード1に消散するとまたは患者のベースラインになると、セリバンツマブは、本来の用量の25%低減で再び開始される。
【0177】
≧グレード3非血液学的毒性の再発のため、セリバンツマブは、≦グレード1に消散するまたは患者のベースラインになるまで再度保留される。非血液学的毒性が、≦グレード1に消散するとまたは患者のベースラインになると、セリバンツマブは、本来の用量の50%低減で再び開始される。
【0178】
非血液学的毒性が原因でセリバンツマブの用量低減をした患者のため、毒性が、低減された用量で、処置の少なくとも1サイクルにわたり≦グレード1に消散したという条件で、セリバンツマブは、本来の割り当てられた用量で再び開始することができる。
【0179】
患者が、50%用量低減にもかかわらず、反復性グレード3またはそれよりも高い処置関連の非血液学的毒性を経験する場合、セリバンツマブは、永久に中断される。
【0180】
用量再漸増は、(1)用量低減にもかかわらず、臨床的に有意であると決定された反復性グレード3有害事象または(2)用量低減にもかかわらず、反復性グレード4有害事象を経験する患者のために許可されない。
【0181】
セリバンツマブは、生命を脅かすグレード4有害事象を経験する患者のために永久に中断される。
【0182】
F.セリバンツマブによる潜在的毒性
標準治療に対して抵抗性である43名の進行型固形腫瘍患者において単独療法としてセリバンツマブを評価する以前に実行された第I相用量漸増および拡大試験において、大部分の一般的に報告された有害事象は、グレード1または2発疹、悪心、下痢および疲労を含んだ。グレード1低マグネシウム血症も観察された。全体的に見て、本試験において最大耐用量に達することはなく、試験の用量漸増および用量拡大相において、試験された最高用量レベルで処置された22名の患者において用量制限毒性は観察されなかった。40/20毎週投与レジメン(40mg/kg負荷用量と、それに続く20mg/kg毎週1回)である試験された最高用量レベルは、セリバンツマブが標準化学療法、ホルモンまたは標的化療法と組み合わされた、その後に実行された第1および2相試験のための推奨される投与レジメンとして同定された。
【0183】
進行型固形腫瘍を有する総計43名の患者が関与するこのセリバンツマブ単独療法試験における有害事象は、>20%発生率を有するいずれかの処置下で発現した有害事象(TEAE)として初期に定義された(全てのグレードであり、関係性に関係ない)。この定義に基づき、次の有害事象が観察されており、大部分は、軽度から中等度の重症度である:疲労、悪心、下痢、嘔吐、食欲減少、高血糖、低カリウム血症および発疹。
【0184】
全体的に見て、セリバンツマブに関連する用量制限毒性は、この単独療法試験において40/20mg/kg毎週投与レジメンレベルで処置された22名の患者において観察されなかった。本試験において、6名の患者を、3,000mg負荷用量と、それに続く2,000mg毎週を3週間からなる誘導レジメンによる安全性導入(run-in)相において処置した。安全性導入コホートにおける患者は、用量制限毒性を経験せず、TEAEは、グレード1下痢、悪心、疲労、発疹およびそう痒症から主になった。3,000mg毎週1回を4週間からなる誘導レジメン2下で登録を続けた。登録された次の6名の患者を誘導レジメン2で処置した。全体的に見て、誘導レジメン2で処置された最初の6名の患者のいずれも、DLTを経験せず、TEAEは、グレード1下痢、悪心、疲労、発疹およびそう痒症から主になった。
【0185】
G.用量修飾
臨床的に有意な有害事象(グレード≧3)を経験する患者は、セリバンツマブ投与を最大3週間にわたり保留させて、回復を可能にすることができ、再び開始した後に、セリバンツマブ用量を次の通りに25%(最初の発生)または50%(再発)のいずれかだけ低減させることができた:
【0186】
【表3】
【0187】
セリバンツマブは、生命を脅かすグレード4有害事象を経験する患者のために永久に中断される。セリバンツマブは、応答の説得力のある客観的な放射線学的証拠があり、代替処置がない場合を除き、3週間よりも長い回復期間を要求する臨床的に有意な薬物関連の有害事象を経験する患者のために永久に中断される。
【0188】
H.臨床手順および評価
全ての臨床手順は、表4に示す評価のスケジュールに従って行われる。
【0189】
【表4】
1. システムのレビュー:スクリーニングの間、HEENT、四肢、GI/腹部、リンパ節、筋骨格、呼吸器/肺および皮膚、体重および身長。体重の測定を含む、症状を対象とする身体的および神経学的試験は、他の時点で行われる。スクリーニング後に、身体検査は、サイクル1において毎週、およびその後に全サイクルの1週目に行われる。
2. ヘモグロビン、ヘマトクリット、RBC数、百分率によるWBC数(好中球[数およびパーセント]およびリンパ球、単球、好酸球、好塩基球[パーセント])および血小板数。アドホック試料が要求され得る。
3. アルカリホスファターゼ、アルブミン、ALT、AST、血中尿素窒素(BUN)、コレステロール、クレアチニン、グルコース、LDH、尿酸、総および直接ビリルビン、総タンパク質、ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩化物、炭酸水素塩、マグネシウムならびにリン酸塩を含む、血清または血漿化学(非絶食時)。アドホック試料が要求され得る。
4. セリバンツマブPKサンプリング:C1W1において、サンプリングは、投与の直前に、注入の終わり(EOI)におよびEOIの1時間後に行われる。C1W3、C2W1、C2W3、C3W1、C3W3、C4W1、C5W1およびC6W1において:試料は、各投与の直前および注入の終わり(EOI)に収集される。サンプリングは、セリバンツマブ注入の開始または完了の15分以内に行われる。アドホックPK試料が要求され得る。
5. スクリーニングECGは、3回繰り返して行われる。EOT ECG読み取りは、EOT来院時の初期読み取りが処置下で発現した異常性を示した場合にのみ反復される。アドホックECGが要求され得る。
6. 免疫原性試料は、スケジュールされた時点において投与に先立ち収集される。患者が、試験において注入反応を経験する場合、事象の24時間以内に抗セリバンツマブ抗体アッセイが為される。グレード3または4注入反応を経験する患者のため、抗セリバンツマブ抗体力価を、可能な限り注入反応の開始の近くで、消散後に、および事象の28日後に(±2日間)測る。
7. cfDNA解析のための全血は、C1W1およびC2W1において処置に先立ち得られる。cfDNA解析のための全血は、X線検査による疾患評価が行われない場合であっても、EOT来院時に得られる。
8. セリバンツマブ投与に先立ち行われる。
9. セリバンツマブ投与は、試験処置中断基準が満たされるまで、毎週1時間注入からなる。セリバンツマブ用量は、少なくとも7日間以上離して投与される。
10. 全AEおよびSAEは、インフォームドコンセントの時点からEOT来院まで収集および報告される。
11. ベースライン疾患評価:セリバンツマブ投与(第1の投与)の28日以内の、胸部、腹部および骨盤と、適宜、疾患に罹った追加の領域のCT(コンピュータ断層撮影法)またはCT/PET(ポジトロン放出断層撮影法)または磁気共鳴画像法(MRI)、ならびに脳(脳合併症が疑われる場合)のCTまたはMRIを使用した、X線検査による腫瘍測定。明らかな禁忌(例えば、標準予防的処置により対処することができない、減少した腎機能またはアレルギー)がある場合を除き、コントラストを利用するべきである(胸部のCTを除外して)。疾患評価は、RECIST v1.1を利用する。疾患評価は、投与日にセリバンツマブ投与に先立ち行われ、±14日間ウィンドウ内に行われる。
12. 進行性疾患以外の理由で処置を止めた全患者は、EOT来院時に行われる疾患評価がある。
13. 処置の終わり(EOT)来院は、試験薬物投与の最後の投与の4週間以内に完了される。
14. 必要に応じた新鮮腫瘍生検は、セリバンツマブに対する抵抗性の潜在的パターンを評価することが実現可能であれば、進行の時点におよびEOT評価の完了に先立ち行われる。
15. 全ての生存追跡は、EOT来院後に為されるいずれかの新たな抗がん療法および手順の収集を含むべきである。患者が、生存追跡を拒絶するかまたはこれから脱落する場合、公的な記録により利用できるいずれかの死亡情報を得るための試みを為すべきである。
16. 治験責任医師が、Q2W投与の期間後に毎週1回投与するように調整する場合、毎週投与のための評価のスケジュールに従って手順を行うべきである。
【0190】
I.併用療法および禁止療法
標準支持的薬物療法は、施設内ガイドラインおよび治験責任医師の裁量に従って使用することができる。そのようなものは、アメリカ臨床腫瘍学会(American Society for Clinical Oncology)(ASCO)ガイドラインに従って好中球減少、血小板減少または貧血を処置するための造血成長因子(ただし、サイクル1における予防法のためではない)、輸血、制吐薬、止痢薬、抗生物質、解熱薬およびコルチコステロイド(より高い用量のための説得力のある臨床理論的根拠が明瞭になる場合を除き、1日当たり最大10mgプレドニゾンまたは等価物;許可されるコルチコステロイド使用は、外用/皮膚、眼、鼻および吸入ステロイド、ならびに喘息、慢性閉塞性肺疾患または他の非がん関連状態を処置するための短い経過を含む)を含むことができる。
【0191】
併用療法(非治験薬)は、試験処置開始の28日前と試験処置中断来院との間に患者によって使用される、いずれかの処方薬、処方箋が不要の製剤、ハーブ療法または放射線療法を含む。処置終了時の来院の後に、抗がん療法のみが、生存情報に加えて収集される。
【0192】
次の治療は、試験処置中に許可されない:(1)細胞毒(cytotoxics)、標的化剤、内分泌療法または他の抗体を含む他の抗新生物療法(試験エントリーに先立ち90日間を超えてGnRHアナログ治療中であった患者は、試験中に続けることができる)、(2)放射線療法(緩和的放射線療法の短い経過を要求する患者は、治験責任医師とスポンサーとの間で議論した後で、試験処置中に続けることができる)および(3)他のいずれかの試験的治療。
【0193】
J.有害事象および入院評価報告
治験責任医師は、全てのルーチンおよび標準治療評価を完了して、薬物誘発性有害事象の毒性および症状を評価する。これは、患者および/または介護者からの口頭の報告、身体的試験ならびに検査機関所見を含むことができるがこれらに限定されない。有害事象は、試験の経過を通して収集および報告される。
【0194】
バイタルサインは、スクリーニング時におよび投与来院時のセリバンツマブ投与に先立ち収集され、身長(スクリーニングのみ)、体重、安静時血圧、脈拍、呼吸数および体温を含む。
【0195】
Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)は、患者の機能的な能力について患者に質問することにより得られる。
【0196】
12誘導心電図(ECG)は、心拍数、律動、間隔持続時間および全体的な所見の記述を含む。補正QT間隔(QTc)は、Fridericia法(QTcF)を使用して計算される。
【0197】
腫瘍応答は、CTまたはMRIによって疾患進行を確立するために、RECISTバージョン1.1に従って地方の放射線科医によって評価される。加えて、新生物関与の部位を評価するために、治験責任医師によって適切であると判断される、他のX線検査によるまたはシンチグラフィーによる手順(放射性核種骨スキャン等)が行われる。試験を通して同じ評価方法が使用される。地方の放射線科医によって行われるレビューに加えて、全てのスキャンの独立したレトロスペクティブ中央レビューを実行することができる。治験責任医師は、RECIST v1.1ガイドラインに従って標的および非標的病変を選ぶ。追跡測定および全体的な応答も、これらのガイドラインに従う。確認された部分奏効(PR)または完全奏効(CR)の状態に割り当てられるために、腫瘍測定値の変化は、応答のための基準が最初に満たされてから≧30日後に行われる反復評価によって確認されなければならない。
【0198】
疾患は、処置割当てから24週目まで6週間毎に(±2週間)、次いで、1年目の終わりまで8週間毎に(±2週間)、続いて、試験に対する処置から患者が除去され、処置終了時の来院を完了するまで12週間毎に(±2週間)評価される。進行性疾患以外の理由で処置を止めた全患者は、処置終了時の来院の時点でスキャンを行う。
【0199】
K.検査機関手順および評価
全血球数(CBC)は、次のものを含む:ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、RBC、百分率によるWBC(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球および他の細胞)。
【0200】
血清化学(非絶食時)は、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩化物、炭酸水素塩、マグネシウムおよびリン酸塩)、BUN、血清クレアチニン、コレステロール、グルコース、総および直接ビリルビン、AST、ALT、アルカリホスファターゼ、LDH、尿酸、総タンパク質、ならびにアルブミンを含む。
【0201】
尿または血清妊娠検査は、妊娠の可能性がある全ての女性のために、スクリーニング中に、28日毎におよび処置終了時の来院に得られる。免除された女性患者は、両側性卵巣摘出術もしくは子宮摘出術を受けた女性患者、または閉経期(少なくとも連続して12ヶ月間にわたる月経周期の非存在として定義)の女性患者を含む。
【0202】
薬物動態(PK)試料のための血漿試料は、患者から得られる。C1W1において、サンプリングは、投与の直前に、注入の終わり(EOI)におよびEOIの1時間後に行われる。C1W3、C2W1、C2W3、C3W1、C3W3、C4W1、C5W1およびC6W1において:試料は、各投与の直前および注入の終わり(EOI)に収集される。
【0203】
血清試料を、スケジュールされた時点で投与に先立ち収集して、セリバンツマブ投与中にグレード3またはそれよりも高い注入反応を経験するいずれかの患者のため、セリバンツマブに対する免疫性反応(すなわち、ヒト抗ヒト抗体;HAHA)の存在を決定する。検査機関マニュアルには、これらの試料を収集、処理および輸送するための指示が備わっている。
【0204】
バイオマーカーデータを、収集された組織(必要に応じた生検を受ける患者のため、処置に先立ちおよびEOT来院時に)および無細胞DNA(cfDNA)のための全血試料から探索して、腫瘍応答との潜在的関連を評価する。予め指定された機構的バイオマーカー解析のために考慮される有効性アウトカムは、OS、PFSおよびORRを含むがこれらに限定されない。
【0205】
アーカイブされた腫瘍組織が利用できる場合、コホート1に割り当てられた患者のため、試験登録の時点にNRG1遺伝子融合状態の中央による確認のため、新鮮腫瘍生検を得る代わりにこれが提出される。適切なアーカイブ組織が利用できない患者については、ASCO(Levit et al., J Clin Oncol. 2019;37:2368-2377)からの近年のガイダンスによる、外来ベースで行われる腫瘍生検手順、および主要併発症の低リスクに関連する腫瘍生検手順が、施設特異的同意および標準手順に従って、処置担当医師によって考慮され得る。
【0206】
コホート2患者のため、HER経路治療(例えば、アファチニブ、HER2に基づく処置、MCLA128)における近年の進歩が実証または観察された場合、以前の処置における進歩のための機構をより良く理解するために、利用できるアーカイブ組織に加えて、ASCOガイダンスによる、外来ベースで行うことができる新鮮腫瘍生検、および主要併発症の低リスクに関連する新鮮腫瘍生検が好まれる。
【0207】
NRG1遺伝子融合状態の中央による確認は、それらのRNAに基づくNGS検査、MI Transcriptome(商標)を利用して、Caris Life Sciencesによってプロスペクティブベースで行われる。登録の直後に、治験責任医師および試験スタッフは、中央による確証的検査のために要求されるアーカイブ腫瘍組織を得る、処理するおよび輸送することを要求される。RNAに基づくNGS検査方法に基づき、中央で確認されたNRG1遺伝子融合陽性腫瘍を有する最小で55名の患者は、コホート1に登録される。初期に登録され、コホート2またはコホート3に割り当てられた患者のための中央による確証的検査は、要求されない。
【0208】
中央検査機関検査が、NRG1融合の存在を確認できない場合、または登録後に中央検査のために不十分な腫瘍組織が提供された場合、患者は、処置中断のための基準を満たさない限りにおいて、治験責任医師の裁量で試験に参加を続けることが許可される。
【0209】
全血試料は、指定の時点において投与に先立ち収集される。試料は、NRG1融合陽性進行型固形腫瘍患者におけるセリバンツマブに対する応答の予測または評価に役立ち得る可能なバイオマーカーをさらに特徴付けて相関させるために、探索性試験の実行に使用される。これらの解析の実行後に利用できる残っている試料が存在する場合、これは、セリバンツマブ活性に機構的に関連付けされ得るバイオマーカーの将来の解析のために使用される。
【0210】
5.有害事象および報告
有害事象(AE)は、医薬製品を投与された患者または臨床研究患者におけるいずれか有害な医学的出来事であり、必ずしもこの処置と因果関係がある必要はない。したがって、有害事象は、医薬品に関連するとみなされるか否かにかかわらず、医薬品の使用と時間的に関連する異常な検査機関所見、症状または疾患を含む、いずれか好ましくないかつ意図されない徴候であり得る。
【0211】
書面によるインフォームドコンセントが得られた時点から処置終了時の来院までに発生する全ての有害事象、苦情または症状が記録される(試験薬物の第1の投与に先立ち発生する事象は、病歴とみなされ、試験薬物の第1の投与の最中またはその後に発生する事象は、処置下で発現した有害事象とみなされる)。ドキュメンテーションは、患者の原診療記録におけるエントリーによって裏付けられる。試験中に検出される、またはスクリーニング時に存在し試験中に有意に悪化する、臨床的に有意な異常検査機関または他の試験(例えば、ECG)所見は、有害事象として報告される。各有害事象は、持続時間、重症度、および治験薬との因果関係、根底にある疾患または他の因子について評価される。
【0212】
状態の重症度、頻度もしくは持続時間の増加、または有意により悪いアウトカムとの関連のいずれかが存在する場合、既存の医学的状態(すなわち、糖尿病、片頭痛)の悪化は、有害事象とみなされる。疾患進行それ自体は、有害事象または重篤有害事象とみなされない。
【0213】
前処置条件のための介入(すなわち、待機的美容外科手術)、または試験登録に先立ち計画されていた医学的手順は、有害事象とみなされない。
【0214】
死亡をもたらす有害事象については、アウトカムは、死亡を引き起こす事象と共に記録される。試験の終了時または死亡の時に進行中の有害事象は、「継続中(continuing)」として記述されるべきである。
【0215】
治験責任医師は、異常な検査機関所見または他の異常な評価が臨床的に有意であるかどうかを決断する際に、医学的および科学的な判断を下す。臨床試験中に発生する臨床的に有意な異常な検査機関値は、反復検査が、正常に戻る、安定化するまたはもはや臨床的に有意ではなくなるまで追跡される。エラーであると決定されるいずれかの異常な検査は、有害事象としての報告を要求しない。
【0216】
各有害事象は、国立がん研究所(NCI)「有害事象共通用語規準」(CTCAE)バージョン5.0に従ってグレード分類される。CTCAEに収載されていない事象のため、重症度は、表5に示す次の定義により、NCI CTCAEにおけるそれぞれグレード1、2、3、4および5に対応する、軽度、中等度、重度または生命を脅かすまたは致死的と称される:
【0217】
【表5】
【0218】
重篤有害事象(SAE)は、いずれかの用量で:(1)死亡をもたらす、(2)生命を脅かす、(3)入院患者(in-patient)の入院もしくは現在の入院の延長を要求する、(4)持続的なもしくは有意な障害/機能不全をもたらす、(5)先天異常もしくは先天性欠損である、または(6)重要な医学的事象である、いずれか有害な医学的出来事である。
【0219】
用語「重度の」は、事象の強度(重症度)を表すために使用されることが多いが、事象それ自体は、相対的に重大性小さいものであり得る(重度頭痛等)。これは、患者の生命または機能にリスクを課す患者/事象アウトカムまたは事象と通常関連する行動基準に基づく「重篤」と同じものではない。
【0220】
6.統計方法
A.エンドポイント
一次エンドポイントは、RECIST 1.1に従って独立した放射線学的レビューによって評価される客観的奏効率である。二次エンドポイントは、奏効期間(DoR)、NRG1遺伝子融合陽性患者におけるセリバンツマブの安全性、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および臨床的有用率(CR、PR、SD>24週間)を含む。探索性エンドポイントは、毎週、Q2WおよびQ3W投与後の薬物動態パラメーターおよび、機構的に関連付けされたバイオマーカーと臨床アウトカムとの間の関連を探索することを含む。
【0221】
B.解析集団
安全性集団は、安全性データの解析のために主に使用され、セリバンツマブの1または複数用量を受ける全登録患者からなる。
【0222】
治療を意図した集団(ITT)は、12週間標的誘導レジメンまたは毎週投与レジメンによるセリバンツマブ治療の少なくとも1用量を受ける、コホート1に割り当ておよび登録された全ての適格な中央で確認されたNRG1遺伝子融合患者を含む。
C.標本サイズの決定
【0223】
治験は、推定ORRに関する両側95%正確二項信頼区間(CI)の下方境界が、30%の最小閾値を超える場合、セリバンツマブの臨床的に有意義な効果の統計的に説得力のある証拠を提供するように設計されている。利益の証拠のレベルのこの閾値は、以前の標準治療に対する応答を停止する患者のゲノム的に定義された集団のための承認された標的化療法に使用される標準と一致するであろう。計画された一次有効性解析の下で、セリバンツマブがNRG1遺伝子融合陽性がんを有する患者に投与されたときに、観察されたORRが≧50%である場合、登録され、12週間標的誘導レジメンおよび休止なしで毎週投与への移行または登録時点から毎週1回投与のいずれかで処置された、NRG1遺伝子融合状態の中央による確認を有する55名の患者の標本サイズを有する治験は、陽性についての予め指定された標的化閾値を達成するための80%超の検出力を有するであろう。
【0224】
D.統計的考察
カテゴリー変数は、度数分布(患者の数およびパーセンテージ)によって要約され、連続変数は、記述統計学(平均、標準偏差、中央値、最小、最大)によって要約される。
【0225】
スクリーニング、処置および中断されたものを含む、患者の性質が要約される。中断の理由が要約される。人口動態およびベースライン特徴が要約される。病歴および以前の薬物療法が作表される。
【0226】
進行中のCOVID-19パンデミックにより、臨床試験データにおけるCOVID-19の影響を評価するために、追加の解析(例えば、感度解析)が行われる。安全性および有効性データの収集に使用されるプロトコール指定の評価および/または代替手順を得ることができないことの理由のドキュメンテーションが要求される。
【0227】
客観的奏効率(ORR)は、RECIST v1.1(CR+PR)によって決定され、独立したX線検査によるレビューによって評価される。ORRの推定およびその95%CIが計算される。一次有効性解析は、コホート1のためのITT集団において行われる。応答評価のための予め定義された因子は、(1)局所的進行型および/または転移性疾患のための以前の全身性処置の数(1、2または3);(2)腫瘍型;ならびに(3)NRG1遺伝子融合パートナーを含む。
【0228】
奏効期間は、独立したX線検査によるレビューに基づく。DORは、確認されたCRまたはPRを達成する対象のために計算される。そのような対象のため、DORは、CRまたはPR(最初に観察され、その後に確認される方の応答状態)の開始日から、RECIST v1.1を使用した最初に実証されたX線検査による疾患進行の日付またはいずれかの原因による死亡の日付のいずれか早い方までの月数として定義される。奏効期間は、セリバンツマブによる毎週の再誘導投与を受ける患者を含む全患者のために、最初のX線検査による進行の時点で決定される。
【0229】
無増悪生存期間(PFS)は、治験責任医師の評価に基づく。PFSは、セリバンツマブ処置開始(用量1)の日付から、RECIST 1.1を使用した最初に実証されたX線検査による疾患進行またはいずれかの原因による死亡のいずれか早い方までの時間として定義される。カプラン・マイヤー法を使用して、処置コホート毎にPFSを推定する。加えて、セリバンツマブの開始後のPFSの解析は、セリバンツマブの開始に先立つその最新のラインの治療中の患者毎に観察されたPFSと比較される。PFSは、セリバンツマブによる毎週の再誘導投与を受ける患者を含む全患者のために、最初のX線検査による進行の時点で決定される。
【0230】
全生存期間(OS)は、セリバンツマブ処置開始(用量1)の処置の日付から、いずれかの原因による死亡の日付までの時間として定義される。カプラン・マイヤー法を使用して、処置コホート毎にOSを推定する。OSの全体的分布の推定に加えて、中央値、6ヶ月間および12ヶ月間生存率が推定される。
【0231】
様々な試験集団を使用して、追加のOS、PFS、ORRおよびTTP感度解析が実行される。加えて、様々な打ち切り規則を、PFSの解析において適用して、仕様の変化に対する感度を評価する。これらは、統計解析計画書(SAP)において明確に詳述される。
【0232】
安全性解析(有害事象および検査機関解析)は、安全性集団を使用して行われる。有害事象は、最新のMedDRA辞書を使用してコード化される。重症度は、NCI CTCAEバージョン5.0に従ってグレード分類される。
【0233】
処置下で発現した有害事象(TEAE)、グレード3およびそれより高いTEAE、TEAE関連、SAE、およびAEによる中断は、頻度およびパーセント概要によって報告される。有害事象は、器官別大分類および基本語によって要約される。全有害事象データは、患者によって収載される。TEAEは、試験薬物の第1の投与の後に発生し、試験薬物投与に先立ち存在していない、または試験薬物投与後に重症度が悪化した、いずれかの事象として定義される。TEAEは、処置終了時の来院まで収集される。
【0234】
検査機関、バイタルサインおよびECGデータは、パラメーター型に従って要約される。
【0235】
収集された組織および血清由来のバイオマーカーデータを使用して、より高い率の腫瘍応答の潜在力を有する富化された集団を探す。これらの探索性解析において考慮される有効性アウトカムは、ORR、OSおよびPFSを含む。これらの記述的解析においてカプラン・マイヤー法が使用される。
【0236】
対象、サイクル、日および時間による血漿濃度が、セリバンツマブによる処置中の様々な時点において得られ、実証される。ORR(一次エンドポイント)および奏効期間(二次エンドポイント)を評価するために、スキャンの独立したレトロスペクティブ中央レビューが実行される。全画像は、この目的のために中央イメージング施設に提出され、イメージングチャーター(Imaging Charter)に従って独立した審査者によって評価される。
7.以前のCRESTONE投与スケジュール
【0237】
CRESTONE、プロトコールバージョン4.0(上で詳細に記載されている)の承認に先立ち、全ての適格患者のための処置は、セリバンツマブによる初期誘導(毎週1回投与を4週間)と、それに続く2週間毎の(Q2W)維持投与からなった。
【0238】
A.誘導レジメン1
C1W1来院における負荷用量としてのセリバンツマブ3,000mg 1時間IVと、それに続くC1W2、C1W3およびC1W4における2,000mg 1時間IV毎週1回。誘導レジメン1により観察されるDLTは存在しなかった。レビュー後に、次の6名の患者が、登録し、誘導レジメン2による処置を開始した。
【0239】
B.誘導レジメン2
C1W1、C1W2、C1W3およびC1W4来院におけるセリバンツマブ3,000mg 1時間IV毎週1回。誘導レジメン2で処置された最初の6名の患者において観察されるDLTは存在しなかった。レビュー後に、プロトコールバージョン2.0下で処置された全てのその後に登録された患者が、誘導レジメン2による処置を開始した。
【0240】
プロトコールバージョン3.0の承認により、その後に登録された患者が、12週間標的誘導レジメンによる処置を開始した。
C.12週間標的誘導レジメン
【0241】
セリバンツマブ3,000mg 1時間IV毎週1回を総計12週間(C1W1、C1W2、C1W3、C1W4、C2W1、C2W2、C2W3、C2W4、C3W1、C3W2、C3W3およびC3W4来院)。注目すべきことに、プロトコールバージョン3.0についての承認の時点に毎週誘導相投与を続けている、誘導レジメン2に登録された患者を、拡大12週間標的誘導レジメンにスイッチした。
【0242】
D.Q2週投与:
プロトコールバージョン4.0の承認に先立ち、試験に対する処置を続けた、誘導レジメン1、誘導レジメン2または12週間標的誘導レジメンによる誘導相投与を完了した全患者は、その後、最終毎週誘導投与の完了のおよそ14日後に開始する、セリバンツマブ3,000mg 1時間IV2週間毎に1回を受けた。これらの患者のため、患者が1種または複数種のプロトコール特異的処置中断基準を満たすまで、2週間毎に投与を続けた。
【0243】
プロトコールバージョン2.0は、試験参加の残りのために、6用量にわたるQ2W投与(強化投与)と、それに続くQ3W投与(維持投与)を含んだ。プロトコールバージョン3.0の承認によりプロトコールからQ3W投与を除去した。患者は、Q3W投与で処置されなかった。
【0244】
E.再誘導投与:
プロトコールバージョン4.0の承認に先立ち、(a)X線検査による評価の間で悪化する疾患または臨床進行の徴候を実証していた、または(b)実証されたX線検査によるまたは臨床進行を経験していた、また、治験責任医師の意見において、患者が引き続き利益を得る可能性がある、または(c)処置関連の毒性の非存在下で延長された処置休止>3週間を経験した(例えば、COVID-19併発症を管理するために)、Q2W投与による処置を続けている患者は、再誘導し、診察後に毎週投与スケジュールにスイッチバックすることができる。患者が、以前の毎週投与において用量修飾を要求した場合を除き、再誘導は、セリバンツマブ3,000mg 1時間IV毎週からなった。
【0245】
プロトコールバージョン3.0の承認により、毎週の再誘導投与を考慮するには、患者は、次の基準を満たすことを要求された:(1)患者は、セリバンツマブによる再誘導の目的、リスクおよび利益ならびにその代替治療を知らされた;ならび患者は、にセリバンツマブによる再誘導に対する口頭のまたは書面による同意をした、(2)臨床的に有意な疾患進行を示す臨床症状または徴候の非存在、(3)パフォーマンスステータスの臨床的に有意な減退なし、(4)緊急代替医学的介入を要求する急速疾患進行または重要臓器に対する脅威または決定的な解剖学的部位(例えば、CNS転移、腫瘍関与による呼吸不全、脊髄圧迫)の非存在、(5)セリバンツマブに関連する有意な、許容できないまたは不可逆的な毒性なし、ならびに(6)以前の毎週セリバンツマブ投与において用量低減が要求された場合、毎週の再誘導投与が、以前に投与された最終修飾用量レベルで開始される。
【0246】
8.連続的毎週投与に患者をスイッチするためのガイダンス
プロトコールバージョン4.0の承認後に、以前のプロトコールバージョン下に登録された患者は、次の通りに管理される。毎週誘導投与(すなわち、誘導レジメン2または12週間標的誘導レジメン)を能動的に受けている患者は、疾患進行または許容できない毒性が生じるまで、自身の現在の用量レベルで毎週投与を続ける。毎週誘導投与を完了しており、プロトコールの以前のバージョン下で2週間毎の(Q2W)投与を受けている患者は、次の基準が満たされることを条件として、毎週投与にスイッチされる:(1)患者は、セリバンツマブによる連続的毎週投与の目的、リスクおよび利益ならびにその代替治療を知らされた;ならびに患者は、セリバンツマブによる連続的毎週投与に対する口頭のまたは書面による同意をした、(2)臨床的に有意な疾患進行を示す臨床症状または徴候の非存在、(3)パフォーマンスステータスの臨床的に有意な減退なし、(4)緊急代替医学的介入を要求する急速疾患進行または重要臓器に対する脅威または決定的な解剖学的部位(例えば、CNS転移、腫瘍関与による呼吸不全、脊髄圧迫)の非存在、(5)セリバンツマブに関連する有意な、許容できないまたは不可逆的な毒性なし、ならびに(6)以前の毎週セリバンツマブ投与において用量低減が要求された場合、毎週投与が、以前に投与され、患者によって耐容された最終修飾用量レベルで再び開始される。
【0247】
患者が、以前の毎週投与において用量修飾を要求した場合を除き、毎週投与を再び開始することは、セリバンツマブ3,000mg 1時間IV毎週からなり、患者が、いずれかの処置関連のグレード3またはグレード4血液学的または非血液学的毒性を経験する場合、適正な用量修飾および/または休止を伴う。
【0248】
当業者は、本明細書に記載されている特異的な実施形態の多くの均等物を認識し、単なる日常的な実験を使用して、これを確認および実施することができる。そのような均等物は、次の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。従属請求項に開示されている実施形態のいずれかの組合せは、本開示の範囲内にある。
【0249】
本明細書に引用されているあらゆる特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0250】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
図1A-1F】
図1G-1H】
図2A-2E】
図3A-3B】
図4A-4D】
図5A-5C】
図6A-6C】
図7A-7B】
図7C
図7D-7E】
図8A-8C】
図8D
図9A-9C】
図9D-9E】
図10A
図10B
図11
【配列表】
2024509914000001.app
【国際調査報告】