(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】インテグリンヘテロ二量体に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240227BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240227BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240227BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240227BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240227BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/28
C07K16/46
A61K39/395 T
A61P35/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K48/00
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555222
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 IB2022052070
(87)【国際公開番号】W WO2022189978
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506222292
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】シドゥ,サチデブ エス
(72)【発明者】
【氏名】ガッロ,エウジェニオ
(72)【発明者】
【氏名】アダムズ,ジャレット ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイザー,レビ リン
(72)【発明者】
【氏名】カルダレッリ,ロディリア
(72)【発明者】
【氏名】ケリル,アブデラリ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
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4C084ZC75
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4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
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4C086MA02
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、ヒトITGAv/B1と結合する抗体、およびその使用の方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象に、抗ITGAv/B1抗体を投与することを含む、方法を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害する、二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
少なくとも第1のパラトープおよび第2のパラトープを含み、第1のパラトープが、インテグリンαvβ1ヘテロ二量体上の第1のエピトープと結合する、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
第2のパラトープが、インテグリンαvβ1ヘテロ二量体上の第2のエピトープと結合する、請求項2に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
第1のエピトープおよび第2のエピトープが同じではない、請求項3に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
第1の重鎖、第1の軽鎖、第2の重鎖、および第2の軽鎖を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
第1の重鎖および第2の重鎖が異なる、請求項5に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
第1の重鎖および第2の重鎖が異なり、第1の軽鎖および第2の軽鎖が同じである、請求項5または6に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
第1の重鎖が、可変重鎖相補性決定領域(VH1-CDR)1、VH1-CDR2、およびVH1-CDR3を含む第1の可変重鎖領域(「VH1」)を含み、VH1-CDR3が、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
VH1-CDR2が、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
VH1-CDR1が、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8または9に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
第1の軽鎖が、VL1-CDR1、VL1-CDR2、およびVL1-CDR3を含む第1の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL1-CDR3が、配列番号10、20、および30から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5から10のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
VL1-CDR2が、配列番号9、19、および29から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
VL1-CDR1が、配列番号8、18、および28から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11または12に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
(a)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、
(b)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、
(c)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、
(d)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
(e)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
(f)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
(a)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、
(b)配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、
(c)配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、
(d)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
(e)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
(f)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
(a)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、
(b)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、
(c)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、
(d)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
(e)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
(f)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
(a)配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、
(b)配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、
(c)配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、
(d)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
(e)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
(f)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
第2の重鎖が、VH2-CDR1、VH2-CDR2、およびVH2-CDR3を含む第2の可変重鎖領域(「VH2」)を含み、VH2-CDR3が、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5から17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項19】
VH2-CDR2が、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項20】
VH2-CDR1が、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18または19に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項21】
第2の軽鎖が、VL2-CDR1、VL2-CDR2、およびVL2-CDR3を含む第2の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL2-CDR3が、配列番号20および30から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項22】
VL2-CDR2が、配列番号19および29から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項23】
VH2-CDR1が、配列番号18および28から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項21または22に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項24】
(a)a.配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、
b.配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、および
c.配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3
を含む、第1の可変重鎖領域(VH1)、
(b)a.配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
b.配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
c.配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、第1の可変軽鎖領域(VL1)、
(c)a.配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、
b.配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、
c.配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3
を含む、第2の可変重鎖領域(VH2)、ならびに
(d)a.配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、
b.配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、および
c.配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3
を含む、第2の可変軽鎖領域(VL2)
を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項25】
(a)a.配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1と、
b.配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、および
c.配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3
を含む、第1の可変重鎖領域(VH1)、
(b)a.配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、
b.配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および
c.配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3
を含む、第1の可変軽鎖領域(VL1)、
(c)a.配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、
b.配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、
c.配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3
を含む、第2の可変重鎖領域(VH2)、ならびに
(d)a.配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、
b.配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、および
c.配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3
を含む、第2の可変軽鎖領域(VL2)
を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項26】
第1の可変重鎖領域(VH1)および第1の可変軽鎖領域(VL1)を含み、VH1が、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項27】
VL1が、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項28】
第2の可変重鎖領域(VH2)および第2の可変軽鎖領域(VL2)を含み、VH2が、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26または27に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項29】
VL2が、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項30】
a.VH1が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
b.VL1が、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
c.VH2が、配列番号12に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
d.VL2が、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項28または29に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項31】
a.VH1が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.VL1が、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.VH2が、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.VL2が、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項28から30のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項32】
a.VH1が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
b.VL1が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
c.VH2が、配列番号22に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
d.VL2が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項28または29に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項33】
a.VH1が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.VL1が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.VH2が、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.VL2が、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項28、29、および32のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項34】
第1の重鎖(H1)および第1の軽鎖(L1)を含み、H1が、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項35】
L1が、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項36】
第2の重鎖(H2)および第2の軽鎖(L2)を含み、H2が、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34または35に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項37】
L2が、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項34から36のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項38】
第1の重鎖が、第2の重鎖と会合している、請求項5から37のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項39】
第1の重鎖が、共有結合によって、第2の重鎖と会合している、請求項5から38のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項40】
第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれが、IgG定常領域または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むIgG定常領域を含む、請求項5から39のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項41】
1つまたは複数のアミノ酸置換が、第1の重鎖および第2の重鎖のヘテロ二量体化を促進する、請求項40に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項42】
第1の重鎖が、第1の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖が、第2の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換またはその抗原結合部分を含み、第1の重鎖のノブが、第2の重鎖のホールと会合する、請求項5から41のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項43】
第1の重鎖が、第1の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖が、第2の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第1の重鎖のホールが、第2の重鎖のノブと会合する、請求項5から41のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項44】
a.H1が、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
b.L1が、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
c.H2が、配列番号34に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
d.L2が、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項34から43のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項45】
a.H1が、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.L1が、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.H2が、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.L2が、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項34から44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項46】
a.H1が、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
b.L1が、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
c.H2が、配列番号37に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
d.L2が、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項34から43のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項47】
a.H1が、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.L1が、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.H2が、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.L2が、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項34から43および46のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項48】
二重特異性抗体が、
(a)二重特異性抗体が、インテグリン-αvβ1のLAP-TGFβ1との結合を阻害すること、
(b)二重特異性抗体が、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、およびこれらの任意の組合せから選択されるインテグリンαvと結合することができること、
(c)二重特異性抗体が、細胞接着を阻害すること、
(d)二重特異性抗体が、腫瘍成長および/または転移を阻害すること、
(e)二重特異性抗体が、無増悪生存期間を増大させること、
(f)二重特異性抗体が、全生存期間を増大させること、ならびに
(g)これらの任意の組合せ
からなる群から選択される1つまたは複数の特性を有する、請求項1から47のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項49】
(i)インテグリン-αvβ1のLAP-TGFβ1との結合を阻害すること、および(ii)細胞接着を阻害することが可能である、請求項1から48のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項50】
約10
-6M以下、約10
-7M以下、約10
-8M以下、約10
-9M以下、約10
-10M以下、約10
-11M以下、または約10
-12M以下のK
Dで、インテグリン-αvと結合する、請求項1から49のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項51】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3が、配列番号5、15、または25のアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項52】
VH-CDR2が、配列番号4、14、または24のアミノ酸配列を含む、請求項51に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項53】
VH-CDR1が、配列番号3、13、または23のアミノ酸配列を含む、請求項51または52に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項54】
VL-CDR3が、配列番号10、20、または30のアミノ酸配列を含む、請求項51から53のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項55】
VL-CDR2が、配列番号9、19、または29のアミノ酸配列を含む、請求項54に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項56】
VL-CDR1が、配列番号8、18、または28のアミノ酸配列を含む、請求項51または52に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項57】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、
a.VH-CDR1が、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.VH-CDR2が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.VH-CDR3が、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.VL-CDR1が、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含み、
e.VL-CDR2が、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含み、
f.VL-CDR3が、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む、
単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項58】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、
a.VH-CDR1が、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.VH-CDR2が、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.VH-CDR3が、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.VL-CDR1が、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含み、
e.VL-CDR2が、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含み、
f.VL-CDR3が、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含む、
単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項59】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、
a.VH-CDR1が、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含み、
b.VH-CDR2が、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含み、
c.VH-CDR3が、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含み、
d.VL-CDR1が、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含み、
e.VL-CDR2が、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含み、
f.VL-CDR3が、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む、
単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項60】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2、12、および22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項51から59のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項61】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VLが、配列番号7、17、および27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項51から60のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項62】
a.VHが、配列番号2から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
b.VHが、配列番号12から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または
c.VHが、配列番号22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項51から61のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項63】
a.VHが、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、
b.VHが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む、または
c.VHが、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む、
請求項51から62のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項64】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCが、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項51から63のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項65】
LCが、配列番号6、16、および16から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項64に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項66】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCが、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項51から65のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項67】
LCが、配列番号6、16、および26から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項64から66のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項68】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、
a.HCが、配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
b.HCが、配列番号11に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または
c.HC、配列番号21に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項51から67のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項69】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCが、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項51から68のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項70】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCが、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項51から68のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項71】
抗体またはその抗原結合部分が、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCが、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含み、LCが、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項51から68のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項72】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2、12、または22のアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項73】
VLが、配列番号7、17、または27のアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項72に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項74】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項75】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項76】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号22に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項77】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項78】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項79】
インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項80】
抗原結合部分である、請求項51から79のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項81】
Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結されたFv、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcである、請求項80に記載の抗原結合部分。
【請求項82】
請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分を含む、二重特異性抗体であって、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害することができる、二重特異性抗体。
【請求項83】
請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、または請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分を含む、多重特異性抗体であって、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害することができる、多重特異性抗体。
【請求項84】
請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、または請求項83に記載の多重特異性抗体を含む、抗体薬物コンジュゲート。
【請求項85】
検出可能なマーカーに融合された、請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、または請求項83に記載の多重特異性抗体。
【請求項86】
請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、または請求項83に記載の多重特異性抗体をコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット。
【請求項87】
a.請求項5から50のいずれか一項に記載の第1の重鎖をコードする、第1のポリヌクレオチド、
b.請求項5から50のいずれか一項に記載の第2の重鎖をコードする、第2のポリヌクレオチド、および
c.請求項5から50のいずれか一項に記載の第1の軽鎖をコードする、第3のポリヌクレオチド
を含む、ポリヌクレオチドのセット。
【請求項88】
請求項86に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、または請求項87に記載のポリヌクレオチドのセットを含む、ベクターまたはベクターのセット。
【請求項89】
請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、請求項83に記載の多重特異性抗体、請求項86に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、または請求項87に記載のポリヌクレオチドのセットを含む、細胞。
【請求項90】
請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、請求項83に記載の多重特異性抗体、請求項86に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、または請求項87に記載のポリヌクレオチドのセットと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項91】
二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、抗体もしくはその抗原結合部分、または多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分を作製する方法であって、請求項90に記載の宿主細胞を好適な条件下において培養すること、および二重特異性抗体を単離することを含む、方法。
【請求項92】
それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、対象に、請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、請求項83に記載の多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項84に記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項86に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、請求項87に記載のポリヌクレオチドのセット、請求項88に記載のベクターもしくはベクターのセット、請求項89に記載の細胞、または請求項90に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項93】
二重特異性抗体の投与が、対象におけるがんの転移を低減または阻害する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
それを必要とする対象においてがんの転移を低減または阻害する方法であって、対象に、請求項1から50および87のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項51から86のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、請求項88に記載の多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項89に記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項91に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、請求項92に記載のポリヌクレオチドのセット、請求項93に記載のベクターもしくはベクターのセット、請求項94に記載の細胞、または請求項95に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項95】
それを必要とする対象においてインテグリン-αvβ1に媒介されるTGFβの活性化を阻害する方法であって、対象に、請求項1から50および82のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項51から81のいずれか一項に記載の抗体もしくはその抗原結合部分、請求項83に記載の多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、請求項84に記載の抗体薬物コンジュゲート、請求項86に記載のポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、請求項87に記載のポリヌクレオチドのセット、請求項88に記載のベクターもしくはベクターのセット、請求項89に記載の細胞、または請求項90に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項96】
対象が、がんに罹患している、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
がんが、腫瘍を含む、請求項92から94および96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
がんが、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、扁平NSCLC、非扁平NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎臓がん、明細胞癌、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、腎細胞癌(RCC)、前立腺がん、ホルモン難治性前立腺腺癌、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵臓がん、神経膠芽腫(神経膠芽腫多型)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝細胞腫(肝細胞癌)、乳がん、結腸癌、頭頸部がん(または癌)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、胃がん、生殖細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫、転移性悪性黒色腫、皮膚または眼内悪性黒色腫、中皮腫、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸の癌、膣の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮細胞がん、アスベストによって誘導されるものを含む環境に誘導されるがん、ウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連または起源の腫瘍、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML、骨髄芽球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、巨核芽球性白血病、単発性顆粒球性肉腫、緑色腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ球系組織(MALT)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ球系統の造血系腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、骨髄腫、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫)、孤立性形質細胞腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞リンパ腫、ならびに前記がんの任意の組合せからなる群から選択される、請求項92から93、96、および97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
対象に、追加の抗がん療法を投与することをさらに含む、請求項92から98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
追加の抗がん療法が、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
追加の抗がん療法が、標準治療法を含む、請求項99または100に記載の方法。
【請求項102】
追加の抗がん療法が、チェックポイント阻害剤を含む、請求項99から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
追加の抗がん療法が、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、NKG2A、CD27、CD96、グルココルチコイドに誘導されるTNFR関連タンパク質(GITR)、およびヘルペスウイルス進入媒介因子(HVEM)、プログラム死-1(PD-1)、プログラム死リガンド-1(PD-L1)、CTLA-4、BおよびTリンパ球減弱因子(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG-1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CD160、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)の受容体、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CEACAM-1、CD52、HER2、ならびにこれらの任意の組合せから選択されるタンパク質と特異的に結合する、抗体またはその抗原結合部分を含む、請求項99から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
抗PD-1抗体が、ニボルマブまたはペンブロリズマブを含む、請求項103に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月9日に出願された米国仮出願第63/158,769号の優先権の利益を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願において提出された電子的に提出された配列表(名称:4756_001PC01_Seqlisting_ST25.txt、サイズ:68,219バイト、および作成日:2022年3月7日)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
RGDと結合するインテグリンのαvファミリーは、腫瘍促進因子として機能し得る多面的なサイトカインである形質転換成長因子β1(TGFβ1)の制御因子として特定されている。αvファミリーインテグリンは、インビボ(in vivo)でTGFβ1を活性し、活性TGFβ1の局所的な産生を通じて間接的に腫瘍進行を調節することができる。TGFβ1は、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換の強力な活性化因子である。したがって、αvファミリーインテグリンは、TGFβ1を活性化し、筋線維芽細胞形成を誘導し、マトリックスリモデリング、マトリックススティフニング(matrix-stiffening)、およびがん促進を含む、筋線維芽細胞依存性活性をもたらす。ここで、TGFβ1は、線維芽細胞を、収縮性創傷修復表現型をとり、腫瘍微小環境において分化転換をもたらすように誘導し、その結果、がん関連線維芽細胞(CAF)または腫瘍関連線維芽細胞(TAF)が生じる。さらに、TGFβ1は、脂肪細胞および循環骨髄由来サプレッサー細胞を含むいくつかの非線維芽細胞を、がん関連筋線維芽細胞へと分化転換するように誘導し得る。
【0004】
細胞外マトリックスの収縮を増大させることにより、筋線維芽細胞はまた、潜在性TGFβ1を活性化する可能性を増大させる。例えば、筋線維芽細胞は、ECMプロテアーゼ、成長因子、サイトカイン、およびケモカインを含む、がん進行をさらに増強する膨大な数のタンパク質を分泌する。同様に、TGFβ1活性化線維芽細胞は、腫瘍成長、EMT、および転移の促進に関係するRGD含有インテグリンリガンドであるオステオポンチンを分泌し得る。したがって、オステオポンチンの増大は、喉頭扁平上皮細胞癌、黒色腫、鼻咽頭癌、および乳がんを含む多種類のがんにおいて、転移の増大、およびしばしば生存の低さと相関する。
【0005】
TGFβ1はさらに、血管新生を促進し、ここで、αvインテグリンによるTGFβの局所的活性化は、腫瘍内の血管の発生を促進する。加えて、異なるαvインテグリンが、また、新しい血管の内皮細胞において上方制御され、それらの遊走を促進し、インテグリンαvβ3、αvβ5、およびαvβ8はすべてが、血管新生を制御する。
【0006】
任意のαvインテグリンによるTGFβの活性化は、局所的な炎症および免疫細胞に影響を及ぼし得、様々なエフェクターT細胞に対して免疫抑制作用を促進し、好中球およびマクロファージの両方において腫瘍促進表現型を誘導する。ここで、TGFβ1は、腫瘍促進性M2腫瘍関連マクロファージおよびN2腫瘍関連好中球の形成を促進する。「M1」を有するとして存在するマクロファージは、抗腫瘍特性を示すが、しかしながら、「M2」は、癌腫細胞においてTGFβ1、TGFBRI、およびTGFBRIIの転写を増大させる、腫瘍促進特徴を呈する。
【0007】
TGFβ1はまた、単球動員を刺激し、転移関連インターロイキン-6(IL-6)を増大させ、サイトカイン、例えば、IL-10、ならびに化学誘引物質CCL3およびCCL4を抑制することによって、マクロファージの炎症性遺伝子発現プロファイルを変更する。TGFβ1のマクロファージ刺激はまた、VEGF、MMP-9の産生、およびVEGF受容体Flk-1発現の上昇によって、低酸素条件下において血管新生を促進する。さらに、高いレベルのM2マクロファージは、様々ながんによる生存の低さとも相関する。これらには、膵臓および子宮頸がん、胃がんの拡がり、ならびに化学療法後の再発が含まれる。さらに、複数の研究が、M2細胞が転移を促進することを示唆している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
阻害性抗体によるTGFβ受容体の遮断は、有害な副作用を伴う全身標的化を促進するであろう。しかしながら、標的外作用を最小限に抑え、TGFβ活性化の局所的な制御をもたらす、好適な標的化療法は、いまだ開発されていない。がんおよび線維症においてTGFβ1活性を制御する手段として、αvインテグリンを特異的に標的とする治療用抗体が、本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害する、二重特異性抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0010】
いくつかの態様では、二重特異性抗体または抗原結合部分は、少なくとも第1のパラトープおよび第2のパラトープを含み、第1のパラトープは、インテグリンαvβ1ヘテロ二量体上の第1のエピトープと結合する。いくつかの態様では、第2のパラトープは、インテグリンαvβ1ヘテロ二量体上の第2のエピトープと結合する。いくつかの態様では、第1のエピトープおよび第2のエピトープは同じではない。
【0011】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の重鎖、第1の軽鎖、第2の重鎖、および第2の軽鎖を含む。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖は異なる。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖は異なり、第1の軽鎖および第2の軽鎖は同じである。
【0012】
いくつかの態様では、第1の重鎖は、可変重鎖相補性決定領域(VH1-CDR)1、VH1-CDR2、およびVH1-CDR3を含む第1の可変重鎖領域(「VH1」)を含み、VH1-CDR3は、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1-CDR2は、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1-CDR1は、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、第1の軽鎖は、VL1-CDR1、VL1-CDR2、およびVL1-CDR3を含む第1の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL1-CDR3は、配列番号10、20、および30から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL1-CDR2は、配列番号9、19、および29から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL1-CDR1は、配列番号8、18、および28から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの態様では、請求項1から13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、(iii)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、(iv)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(v)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(vi)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0014】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、(iii)配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、(iv)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(v)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(vi)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0015】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、(iii)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、(iv)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(v)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(vi)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0016】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、(iii)配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、(iv)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(v)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(vi)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。いくつかの態様では、第2の重鎖は、VH2-CDR1、VH2-CDR2、およびVH2-CDR3を含む第2の可変重鎖領域(「VH2」)を含み、VH2-CDR3は、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR2は、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR1は、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、第2の軽鎖は、VL2-CDR1、VL2-CDR2、およびVL2-CDR3を含む第2の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL2-CDR3は、配列番号20および30から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL2-CDR2は、配列番号19および29から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR1は、配列番号18および28から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(a)(i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、および(iii)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3を含む、第1の可変重鎖領域(VH1)、(b)(i)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(ii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(iii)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む、第1の可変軽鎖領域(VL1)、(c)(i)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、(ii)配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、(iii)配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3を含む、第2の可変重鎖領域(VH2)、ならびに(d)(i)配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、(ii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、(iii)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3を含む、第2の可変軽鎖領域(VL2)を含む。
【0018】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(a)(i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、(ii)配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、および(iii)配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3を含む、第1の可変重鎖領域(VH1)、(b)(i)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、(ii)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および(iii)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む、第1の可変軽鎖領域(VL1)、(c)(i)配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、(ii)配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、(iii)配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3を含む、第2の可変重鎖領域(VH2)、ならびに(d)(i)配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、(ii)配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、(iii)配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3を含む、第2の可変軽鎖領域(VL2)を含む。
【0019】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の可変重鎖領域(VH1)および第1の可変軽鎖領域(VL1)を含み、VH1は、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの態様では、VL1は、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第2の可変重鎖領域(VH2)および第2の可変軽鎖領域(VL2)を含み、VH2は、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの態様では、VL2は、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の重鎖(H1)および第1の軽鎖(L1)を含み、H1は、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの態様では、L1は、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第2の重鎖(H2)および第2の軽鎖(L2)を含み、H2は、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの態様では、L2は、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの態様では、第1の重鎖は、第2の重鎖と会合している。いくつかの態様では、第1の重鎖は、共有結合によって、第2の重鎖と会合している。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、IgG定常領域または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むIgG定常領域を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、第1の重鎖および第2の重鎖のヘテロ二量体化を促進する。
【0032】
いくつかの態様では、第1の重鎖は、第1の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖は、第2の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換またはその抗原結合部分を含み、第1の重鎖のノブは、第2の重鎖のホールと会合する。
【0033】
いくつかの態様では、第1の重鎖は、第1の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖は、第2の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第1の重鎖のホールは、第2の重鎖のノブと会合する。
【0034】
いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、(a)二重特異性抗体が、インテグリン-αvβ1のLAP-TGFβ1との結合を阻害すること、(b)二重特異性抗体が、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、およびこれらの任意の組合せから選択されるインテグリンαvと結合することができること、(c)二重特異性抗体が、細胞接着を阻害すること、(d)二重特異性抗体が、腫瘍成長および/または転移を阻害すること、(e)二重特異性抗体が、無増悪生存期間を増大させること、(f)二重特異性抗体が、全生存期間を増大させること、ならびに(g)これらの任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数の特性を有する。いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、(i)インテグリン-αvβ1のLAP-TGFβ1との結合を阻害すること、および(ii)細胞接着を阻害することが可能である。いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下のKDで、インテグリン-αvと結合する。
【0037】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む、可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む、可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3が、配列番号5、15、または25のアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。いくつかの態様では、VH-CDR2は、配列番号4、14、または24のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH-CDR1は、配列番号3、13、または23のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR3は、配列番号10、20、または30のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR2は、配列番号9、19、または29のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR1は、配列番号8、18、または28のアミノ酸配列を含む。
【0038】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、(i)VH-CDR1は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、(ii)VH-CDR2は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含み、(iii)VH-CDR3は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含み、(iv)VL-CDR1は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含み、(v)VL-CDR2は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含み、(vi)VL-CDR3は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0039】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、(i)VH-CDR1は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含み、(ii)VH-CDR2は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含み、(iii)VH-CDR3は、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含み、(iv)VL-CDR1は、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含み、(v)VL-CDR2は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含み、(vi)VL-CDR3は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0040】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、(i)VH-CDR1は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含み、(ii)VH-CDR2は、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含み、(iii)VH-CDR3は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含み、(iv)VL-CDR1は、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含み、(v)VL-CDR2は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含み、(vi)VL-CDR3は、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0041】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VHは、配列番号2、12、および22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VLは、配列番号7、17、および27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0043】
いくつかの態様では、(a)VHは、配列番号2から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、(b)VHは、配列番号12から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または(c)VHは、配列番号22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
いくつかの態様では、(a)VHは、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、(b)VHは、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む、または(c)VHは、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0046】
いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、および16から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、および26から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、(a)HCは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、(b)HCは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または(c)HCは、配列番号21に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0049】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2、12、または22のアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。いくつかの態様では、VLは、配列番号7、17、または27のアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0051】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0052】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号22に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0053】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0054】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0055】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、可変重鎖領域(「VH」)および可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VHが、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0056】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、抗原結合部分である。いくつかの態様では、抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結されたFv、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcである。
【0057】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示される抗体またはその抗原結合部分を含む二重特異性抗体であって、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害することができる、二重特異性抗体を対象とする。
【0058】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示されるに二重特異性抗体、または本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分を含む、多重特異性抗体であって、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害することができる、多重特異性抗体を対象とする。
【0059】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示される二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、または本明細書において開示される多重特異性抗体を含む、抗体薬物コンジュゲートを対象とする。いくつかの態様では、二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、抗体もしくはその抗原結合部分、または多重特異性抗体は、検出可能なマーカーに融合されている。
【0060】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示される二重特異性抗体、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、または本明細書において開示される多重特異性抗体をコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを対象とする。
【0061】
本開示のいくつかの態様は、(i)本明細書において開示される第1の重鎖をコードする、第1のポリヌクレオチド、(ii)本明細書において開示される第2の重鎖をコードする、第2のポリヌクレオチド、および(iii)本明細書において開示される第1の軽鎖をコードする、第3のポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドのセットを対象とする。
【0062】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチドを含む、ベクターまたはベクターのセットを対象とする。
【0063】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示される二重特異性抗体、本明細書において開示されるいずれか1つの抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される多重特異性抗体、または本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチドを含む、細胞を対象とする。
【0064】
本開示のいくつかの態様は、本明細書において開示される二重特異性抗体、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される多重特異性抗体、または本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチドと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物を対象とする。
【0065】
本開示のいくつかの態様は、二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、抗体もしくはその抗原結合部分、または多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分を作製する方法であって、本明細書において開示される宿主細胞を好適な条件下において培養すること、および二重特異性抗体を単離することを含む、方法を対象とする。
【0066】
本開示のいくつかの態様は、それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、対象に、本明細書において開示される二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体薬物コンジュゲート、本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクターもしくはベクターのセット、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される医薬組成物を投与することを含む、方法を対象とする。いくつかの態様では、二重特異性抗体の投与は、対象におけるがんの転移を低減または阻害する。
【0067】
本開示のいくつかの態様は、それを必要とする対象においてがんの転移を低減または阻害する方法であって、対象に、本明細書において開示される二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体薬物コンジュゲート、本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、本明細書において開示されるベクターもしくはベクターのセット、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される医薬組成物を投与することを含む、方法を対象とする。
【0068】
本開示のいくつかの態様は、それを必要とする対象においてインテグリン-αvβ1に媒介されるTGFβの活性化を阻害をする方法であって、対象に、本明細書において開示される二重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される多重特異性抗体もしくはその抗原結合部分、本明細書において開示される抗体薬物コンジュゲート、本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセットのポリヌクレオチド、本明細書において開示されるポリヌクレオチドのセット、本明細書において開示されるベクターもしくはベクターのセット、本明細書において開示される細胞、または本明細書において開示される医薬組成物を投与することを含む、方法を対象とする。
【0069】
いくつかの態様では、対象は、がんに罹患している。いくつかの態様では、がんは、腫瘍を含む。いくつかの態様では、がんは、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、扁平NSCLC、非扁平NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎臓がん、明細胞癌、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、腎細胞癌(RCC)、前立腺がん、ホルモン難治性前立腺腺癌、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵臓がん、神経膠芽腫(神経膠芽腫多型)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝細胞腫(肝細胞癌)、乳がん、結腸癌、頭頸部がん(または癌)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、胃がん、生殖細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫、転移性悪性黒色腫、皮膚または眼内悪性黒色腫、中皮腫、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸の癌、膣の癌、外陰部の癌、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、小児の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳がん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮細胞がん、アスベストによって誘導されるものを含む環境に誘導されるがん、ウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連または起源の腫瘍、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML、骨髄芽球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、巨核芽球性白血病、単発性(isolated)顆粒球性肉腫、緑色腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ球系組織(MALT)リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ球系統の造血系腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、骨髄腫、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫)、孤立性形質細胞腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞リンパ腫、ならびに前記がんの任意の組合せからなる群から選択される。
【0070】
いくつかの態様では、本方法は、対象に、追加の抗がん療法を投与することをさらに含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、またはこれらの任意の組合せを含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、標準治療法を含む。
【0071】
いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、NKG2A、CD27、CD96、グルココルチコイドに誘導されるTNFR関連タンパク質(GITR)、およびヘルペスウイルス進入媒介因子(HVEM)、プログラム死-1(PD-1)、プログラム死リガンド-1(PD-L1)、CTLA-4、BおよびTリンパ球減弱因子(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG-1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CD160、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)の受容体、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CEACAM-1、CD52、HER2、ならびにこれらの任意の組合せから選択されるタンパク質と特異的に結合する、抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブまたはペンブロリズマブを含む。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1A】
図1A~1Bは、抗インテグリン-αvβ1クローン10392(
図1A)およびクローン10404(
図1B)の力価測定の図である。
【
図1B】
図1A~1Bは、抗インテグリン-αvβ1クローン10392(
図1A)およびクローン10404(
図1B)の力価測定の図である。
【
図2A】
図2A~2Bは、抗インテグリン-αvβ1 Fab 10404(
図2A)およびFab 10392(
図2B)のエピトープビニングをまとめた棒グラフである。棒グラフの上のすべての数字は、パーセント値を表し、MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図2B】
図2A~2Bは、抗インテグリン-αvβ1 Fab 10404(
図2A)およびFab 10392(
図2B)のエピトープビニングをまとめた棒グラフである。棒グラフの上のすべての数字は、パーセント値を表し、MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図3A】
図3A~3Bは、異なるインテグリンCHO細胞株に対する抗インテグリン-αvβ1 Fab 10392(
図3A)およびFab 10404(
図3B)のIgG親和性力価測定検証を示す、散布図である。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図3B】
図3A~3Bは、異なるインテグリンCHO細胞株に対する抗インテグリン-αvβ1 Fab 10392(
図3A)およびFab 10404(
図3B)のIgG親和性力価測定検証を示す、散布図である。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図4】
図4は、組換えヒトインテグリン-αvβ1に対する抗体クローンの異なるモダリティのIgG親和性力価測定検証を示す、散布図である。
【
図5】
図5は、組換えマウスインテグリン-αvβ1に対する抗体クローンの異なるモダリティのIgG親和性力価測定検証を示す、散布図である。
【
図6A】
図6A~6Cは、IgGクローン10392(
図6A)、10404(
図6B)、および11867(
図6C)のサイズ排除クロマトグラフィーのグラフを示す。
【
図6B】
図6A~6Cは、IgGクローン10392(
図6A)、10404(
図6B)、および11867(
図6C)のサイズ排除クロマトグラフィーのグラフを示す。
【
図6C】
図6A~6Cは、IgGクローン10392(
図6A)、10404(
図6B)、および11867(
図6C)のサイズ排除クロマトグラフィーのグラフを示す。
【
図7】
図7A~7Bは、IgGクローン10404(
図7A)、10392(
図7B)について、発現および精製後のIgG純度の評価を示す、PAGE-SDSゲル画像である。
【
図8A】
図8A~8Bは、クローン11867および異なるIgGモダリティの凍結-解凍分析を示す、棒グラフである。
図8Aは、吸光280波長で分光測色法によって判定した濃度値を示すグラフを提供する。
図8Bは、フローサイトメトリー平均蛍光強度(MFI)値を示すグラフを提供する。IgG結合活性を、AvB1 CHO細胞を使用して測定し、すべてのサンプルを、それぞれの群の「処置なし」に対して正規化した。
【
図8B】
図8A~8Bは、クローン11867および異なるIgGモダリティの凍結-解凍分析を示す、棒グラフである。
図8Aは、吸光280波長で分光測色法によって判定した濃度値を示すグラフを提供する。
図8Bは、フローサイトメトリー平均蛍光強度(MFI)値を示すグラフを提供する。IgG結合活性を、AvB1 CHO細胞を使用して測定し、すべてのサンプルを、それぞれの群の「処置なし」に対して正規化した。
【
図9】
図9は、クローンIgG 10404、10392、および10404/10392の存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
【
図10A】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図10B】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図10C】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図10D】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図10E】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図10F】
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択的(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。
図10Bは、二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞のFab結合活性の概要の棒グラフである。
図10Cは、異なるFabクローンの存在下におけるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の二重特異性IgG結合活性の概要の棒グラフである。
図10Dは、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリン-αvβ1 CHO細胞接着の概要の棒グラフである。
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図10Fは、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図11A】
図11A~11Fは、異なる10404および10392クローンIgGモダリティからの阻害性特性の比較のデータを示す。
図11Aは、異なるインテグリン CHO細胞株を使用して、異なるクローンIgGのLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性値の概要の表である。
図11B~11Fは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用した、クローンIgG αvβ1(
図11B)、αvβ6(
図11C)、αvβ3(
図11D)、αvβ8(
図11E)、およびαvβ5(
図11F)のLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性力価測定曲線の概要のグラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図11B】
図11A~11Fは、異なる10404および10392クローンIgGモダリティからの阻害性特性の比較のデータを示す。
図11Aは、異なるインテグリン CHO細胞株を使用して、異なるクローンIgGのLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性値の概要の表である。
図11B~11Fは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用した、クローンIgG αvβ1(
図11B)、αvβ6(
図11C)、αvβ3(
図11D)、αvβ8(
図11E)、およびαvβ5(
図11F)のLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性力価測定曲線の概要のグラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図12A】
図12Aは、インテグリン-αvβ1 CHO細胞を使用して、10404 Fabタンパク質の存在下において、異なるIgG抗体のエピトープ結合競合を示す概要の棒グラフである。
図12Bは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用して、異なるLAP-TGFβへの細胞接着のIgG阻害の概要の棒グラフである。それぞれの細胞株について、実験において使用した異なるIgG抗体(11883、11855、11857、11874、11914、および11867)を、左から右に示す。
図12C~12Iは、トラスツズマブ(
図12C)、10404(
図12D)、11855(
図12E)、11857(
図12F)、11867(
図12G)、11883(
図12H)、および11914(
図12I)IgGクローンのサイズ排除クロマトグラフィーのグラフである。
図12Jは、異なるクローンIgGの親和性および阻害性の値の概要の表である。
図12Kは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図12Lは、異なるクローンIgGを使用した、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図12B】
図12Aは、インテグリン-αvβ1 CHO細胞を使用して、10404 Fabタンパク質の存在下において、異なるIgG抗体のエピトープ結合競合を示す概要の棒グラフである。
図12Bは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用して、異なるLAP-TGFβへの細胞接着のIgG阻害の概要の棒グラフである。それぞれの細胞株について、実験において使用した異なるIgG抗体(11883、11855、11857、11874、11914、および11867)を、左から右に示す。
図12C~12Iは、トラスツズマブ(
図12C)、10404(
図12D)、11855(
図12E)、11857(
図12F)、11867(
図12G)、11883(
図12H)、および11914(
図12I)IgGクローンのサイズ排除クロマトグラフィーのグラフである。
図12Jは、異なるクローンIgGの親和性および阻害性の値の概要の表である。
図12Kは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図12Lは、異なるクローンIgGを使用した、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図12C】
図12Aは、インテグリン-αvβ1 CHO細胞を使用して、10404 Fabタンパク質の存在下において、異なるIgG抗体のエピトープ結合競合を示す概要の棒グラフである。
図12Bは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用して、異なるLAP-TGFβへの細胞接着のIgG阻害の概要の棒グラフである。それぞれの細胞株について、実験において使用した異なるIgG抗体(11883、11855、11857、11874、11914、および11867)を、左から右に示す。
図12C~12Iは、トラスツズマブ(
図12C)、10404(
図12D)、11855(
図12E)、11857(
図12F)、11867(
図12G)、11883(
図12H)、および11914(
図12I)IgGクローンのサイズ排除クロマトグラフィーのグラフである。
図12Jは、異なるクローンIgGの親和性および阻害性の値の概要の表である。
図12Kは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図12Lは、異なるクローンIgGを使用した、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図12D】
図12Aは、インテグリン-αvβ1 CHO細胞を使用して、10404 Fabタンパク質の存在下において、異なるIgG抗体のエピトープ結合競合を示す概要の棒グラフである。
図12Bは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用して、異なるLAP-TGFβへの細胞接着のIgG阻害の概要の棒グラフである。それぞれの細胞株について、実験において使用した異なるIgG抗体(11883、11855、11857、11874、11914、および11867)を、左から右に示す。
図12C~12Iは、トラスツズマブ(
図12C)、10404(
図12D)、11855(
図12E)、11857(
図12F)、11867(
図12G)、11883(
図12H)、および11914(
図12I)IgGクローンのサイズ排除クロマトグラフィーのグラフである。
図12Jは、異なるクローンIgGの親和性および阻害性の値の概要の表である。
図12Kは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図12Lは、異なるクローンIgGを使用した、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図12E】
図12Aは、インテグリン-αvβ1 CHO細胞を使用して、10404 Fabタンパク質の存在下において、異なるIgG抗体のエピトープ結合競合を示す概要の棒グラフである。
図12Bは、異なるインテグリンCHO細胞株を使用して、異なるLAP-TGFβへの細胞接着のIgG阻害の概要の棒グラフである。それぞれの細胞株について、実験において使用した異なるIgG抗体(11883、11855、11857、11874、11914、および11867)を、左から右に示す。
図12C~12Iは、トラスツズマブ(
図12C)、10404(
図12D)、11855(
図12E)、11857(
図12F)、11867(
図12G)、11883(
図12H)、および11914(
図12I)IgGクローンのサイズ排除クロマトグラフィーのグラフである。
図12Jは、異なるクローンIgGの親和性および阻害性の値の概要の表である。
図12Kは、フローサイトメトリー測定によるインテグリン-αvβ1 CHO細胞の力価測定グラフである。
図12Lは、異なるクローンIgGを使用した、LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリン-αvβ1 CHO細胞の阻害力価測定のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図13】
図13Aおよび13C~13Fは、インテグリン CHO細胞株αvβ1(
図13A)、αvβ3(
図13C)、αvβ5(
図13D)、αvβ6(
図13E)、およびαvβ8(
図13F)に対する11867および10392 IgGモダリティの力価測定曲線を示す概要のグラフである。MFIは、平均からの平均蛍光を示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
図13Bは、異なるインテグリン CHO細胞株の親和性値の概要の表である。
【
図14】
図14Aおよび14C~14Fは、インテグリンCHO細胞株細胞株αvβ1(
図14A)、αvβ3(
図14C)、αvβ5(
図14D)、αvβ6(
図14E)、およびαvβ8(
図14F)を使用した、異なるクローンIgGのLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性力価測定曲線の概要のグラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
図14Bは、異なるインテグリン CHO細胞株を使用して、異なるクローンIgGのLAP-TGFβへの細胞接着の阻害性値の概要の表である。
【
図15A】
図15Aは、11876/10392二重IgGを使用したαv-およびβ1-サブユニットの発現レベルのフローサイトメトリーの概要のグラフであり、アイソタイプ対照抗体に対する選択的サブユニットのMFIシグナルの倍数変化のlog2値を示す。
図15Bは、11876/10392二重IgGの存在下における4日目のエンドポイント時点の肺細胞増殖の概要の棒グラフである。
図15C~15Gは、11876/10392二重IgGの存在下における肺がん細胞株A549(
図15C)、H292(
図15D)、H661(
図15E)、H460(
図15F)、およびH1563(
図15G)の細胞増殖を示す時系列グラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図15B】
図15Aは、11876/10392二重IgGを使用したαv-およびβ1-サブユニットの発現レベルのフローサイトメトリーの概要のグラフであり、アイソタイプ対照抗体に対する選択的サブユニットのMFIシグナルの倍数変化のlog2値を示す。
図15Bは、11876/10392二重IgGの存在下における4日目のエンドポイント時点の肺細胞増殖の概要の棒グラフである。
図15C~15Gは、11876/10392二重IgGの存在下における肺がん細胞株A549(
図15C)、H292(
図15D)、H661(
図15E)、H460(
図15F)、およびH1563(
図15G)の細胞増殖を示す時系列グラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図15C】
図15Aは、11876/10392二重IgGを使用したαv-およびβ1-サブユニットの発現レベルのフローサイトメトリーの概要のグラフであり、アイソタイプ対照抗体に対する選択的サブユニットのMFIシグナルの倍数変化のlog2値を示す。
図15Bは、11876/10392二重IgGの存在下における4日目のエンドポイント時点の肺細胞増殖の概要の棒グラフである。
図15C~15Gは、11876/10392二重IgGの存在下における肺がん細胞株A549(
図15C)、H292(
図15D)、H661(
図15E)、H460(
図15F)、およびH1563(
図15G)の細胞増殖を示す時系列グラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
【
図16】
図16Aは、11867/10392二重IgGを使用した異なる肺がん細胞株における阻害性力価測定評価を示す力価測定曲線グラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。
図16Bは、異なる肺がん細胞株における二重IgG 11867/10392から得られたIC50値の概要の表である。
【
図17A】
図17A~17Pは、二重IgG 11867/10392を使用した、細胞遊走阻害の評価のグラフ表示である。
図17A(A549)、17E(H460)、17I(H661)、および17M(H1563)は、異なる肺がん細胞株を使用した創傷治癒アッセイの低速度撮影グラフであり、エラーバーは、標準偏差を示す。それぞれの実験について、
図17B、17F、17J、および17Nは、未処置細胞の代表的な顕微鏡画像を示し、
図17C、17G、17K、および17Oは、対照細胞の代表的な顕微鏡画像を示し、
図17D、17H、17L、および17Pは、二重IgG 11867/10392処置細胞の代表的な顕微鏡画像を示す。
【
図17B】
図17A~17Pは、二重IgG 11867/10392を使用した、細胞遊走阻害の評価のグラフ表示である。
図17A(A549)、17E(H460)、17I(H661)、および17M(H1563)は、異なる肺がん細胞株を使用した創傷治癒アッセイの低速度撮影グラフであり、エラーバーは、標準偏差を示す。それぞれの実験について、
図17B、17F、17J、および17Nは、未処置細胞の代表的な顕微鏡画像を示し、
図17C、17G、17K、および17Oは、対照細胞の代表的な顕微鏡画像を示し、
図17D、17H、17L、および17Pは、二重IgG 11867/10392処置細胞の代表的な顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本開示は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害する、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、およびそれらの抗原結合断片に関する。本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害する、抗体またはその抗原結合部分を対象とする。本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害する、二重特異性抗体またはその抗原結合部分を対象とする。いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも第1のパラトープおよび第2のパラトープを含み、第1のパラトープは、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ヘテロ二量体上の第1のエピトープと結合し、第2のパラトープは、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ヘテロ二量体上の第2のエピトープと結合する。本開示の他の態様は、それを必要とする対象を処置する方法であって、対象に、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合し、インテグリン-αv媒介されるTGFβの活性化を阻害する、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはそれらの抗原結合断片を投与することを含む、方法に関する。いくつかの態様では、対象は、がんを有し、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはそれらの抗原結合断片が、対象におけるがんを処置する。
【0074】
I.用語
本明細書において説明がより容易に理解され得るために、特定の用語をまず定義する。さらなる定義は詳細な説明を通じて示されている。
【0075】
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指すことに留意されたく、例えば、「1つのヌクレオチド配列」は、1つまたは複数のヌクレオチド配列を表すことが理解される。したがって、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において同義的に使用することができる。
【0076】
さらに、「および/または」は、本明細書において使用されている場合、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれが、互いを伴う場合も伴わない場合もあるという具体的な開示として解釈されるものとする。したがって、用語「および/または」は、本明細書において「Aおよび/またはB」といった語句において使用されるとき、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(単独)」、ならびに「B(単独)」を含むことが意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/またはC」といった語句において使用されるとき、以下の態様:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0077】
態様が、「含む(comprising)」という言葉を用いて本明細書に記載されている場合、別途「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載される類似の態様もまた提供されることが理解される。
【0078】
別途定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press、
およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に、本開示において使用される用語の多くについての一般的な辞書を提供する。
【0079】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)に認められた形式で示される。数値範囲は、その範囲を定める数を含む。別途示されない限り、ヌクレオチド配列は、左から右に、5’から3’の方向で記述される。アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシの方向で記述される。本明細書において提供される見出しは、全体として本明細書への参照によって得ることができる、本開示の様々な態様を制限するものではない。したがって、すぐ下に定義されている用語は、本明細書を全体として参照することによってより完全に定義される。
【0080】
用語「約」は、およそ、大体、前後、またはその範囲を意味して本明細書において使用される。用語「約」が、数値範囲とともに使用されている場合、この用語は、境界を、記載されている数値の上下に拡大することにより、その範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、数値を、記述された値の上下、例えば、10パーセント上または下(高いかまたは低い)に修飾し得る。
【0081】
「抗体」という用語は、いくつかの態様では、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、VHと略される)および重鎖定常領域(本明細書において、CHと略される)から構成される。本明細書において、「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの抗原結合ドメイン、すなわち、少なくとも2つのパラトープを含む、抗体を指す。そのため、いくつかの態様では、二重特異性抗体は、少なくとも2つの重鎖可変領域(VH1およびVH2)、ならびに少なくとも2つの軽鎖可変領域(VL1およびVL2を含む。いくつかの態様では、少なくとも2つの重鎖可変領域は、同じであるか、または異なる。いくつかの態様では、少なくとも2つの軽鎖可変領域は、同じであるか、または異なる。本明細書において、「多重特異性抗体」は、少なくとも3つの抗原結合ドメイン、すなわち、少なくとも3つのパラトープを含む、抗体を指す。
【0082】
いくつかの抗体、例えば、天然に存在するIgG抗体では、重鎖定常領域は、ヒンジ、ならびに3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3からなる。いくつかの抗体、例えば、天然に存在するIgG抗体では、各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、VLと略される)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(本明細書に置いて、CLと略される)からなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域と散在している超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主組織または因子、例えば、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および伝統的な補体系の第1の成分(Clq)との結合を媒介し得る。重鎖は、C末端リシンを有してもよくまたは有さなくてもよい。本明細書において別途指定されない限り、可変領域のアミノ酸は、カバットの番号付けシステムを使用して番号付けされ、定常領域のアミノ酸は、EUシステムを使用して番号付けされている。
【0083】
「IgG抗体」、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体は、本明細書において、いくつかの態様では、天然に存在するIgG抗体の構造を有する、すなわち、これは、同一のサブクラスの天然に存在するIgG抗体と同一の数の重鎖および軽鎖ならびにジスルフィド結合を有する。例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体は、2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)からなり、ここで、これらの2つのHCおよびLCは、それぞれ、天然に存在するIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体において生じるものと同一の数および位置のジスルフィド架橋によって連結されている(抗体が、ジスルフィド架橋を修飾するように突然変異されている場合を除く)。
【0084】
抗体は、通常、そのコグネイト抗原と、10-5~10-11M以下の解離定数(KD)によって反映される高親和性で特異的に結合する。約10-4Mより大きい任意のKDは、一般に、非特異的結合を示すと考えられる。本明細書において、抗原と「特異的に結合する」抗体とは、抗原および実質的に同一の抗原と、10-7M以下、10-8M以下、5×10-9M以下、または10-8Mから10-10M以下の間のKDを有することを意味する高親和性で結合するが、無関係の抗原とは高親和性で結合しない抗体である。抗原は、所与の抗原に対して高度の配列同一性を示す場合には、例えば、所与の抗原の配列に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%の配列同一性を示す場合に、所与の抗原と「実質的に同一」である。例として、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合する抗体は、いくつかの態様では、特定の霊長類種に由来するインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗原(例えば、カニクイザルインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1))との交差反応性を有するが、その他の種に由来するインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗原と、またはインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)以外の抗原とは、交差反応し得ない。
【0085】
免疫グロブリンは、それだけには限らないがIgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含めた、よく知られているアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGアイソタイプは、特定の種ではサブクラスに分けられる:ヒトでは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4ならびにマウスでは、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。いくつかの態様では、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体抗体は、IgG1サブタイプのものである。免疫グロブリン、例えば、IgG1は、多くても2、3個のアミノ酸で互いに異なるいくつかのアロタイプで存在する。「抗体」は、例として、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラおよびヒト化抗体、ヒトおよび非ヒト抗体、ならびに完全合成抗体を含む。
【0086】
本明細書において、抗体の「抗原結合部分」という用語は、抗原[例えば、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)]と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。抗体、例えば、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片(パパイン切断に由来する断片)または同様の一価の断片、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含むF(ab’)2断片(ペプシン切断に由来する断片)または同様の二価の断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の一本のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)適宜合成リンカーによって接続され得る2つ以上の単離されたCDRの組合せを含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域対が一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照のこと)を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによる組換え方法を使用して接続され得る。このような一本鎖抗体はまた、用語、抗体の「抗原結合部分」内に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同様の方法で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって、または無傷の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって生産され得る。
【0087】
「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と、2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含めた種々の方法によって生産できる。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)を参照のこと。いくつかの態様では、本明細書において開示される二重特異性抗体は、例えば、第1の重鎖の定常領域におけるアミノ酸配列または1つもしくは複数のアミノ酸側鎖の変更を通じて、第1の重鎖を、第2の重鎖に対する第1の重鎖の親和性を増大させる様式で修飾することによって、産生される。いくつかの態様では、修飾は、第1の重鎖および第2の重鎖の両方に行われる。いくつかの態様では、修飾は、第1および第2の重鎖のヘテロ二量体化を促進する。第1および第2の重鎖の親和性を増大させる任意の修飾を、使用することができる。特定の態様では、第1の重鎖は、ノブモチーフを含むように修飾され、第2の重鎖は、ホールモチーフを含むように修飾される。
【0088】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において、実質的に同種の抗体の集団に由来する抗体を指す、すなわち、集団内に含まれる個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る可能性のある変異体を除き、実質的に類似であり、同一のエピトープに結合する(例えば、抗体は、単一の結合特異性および親和性を示す)が、そのような変異体は、一般に、少量で存在している。「モノクローナル」という修飾語は、抗体が、実質的に同種の抗体集団から得られているという特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるものではない。用語「ヒトモノクローナル抗体」は、単一の結合特異性を示し、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および適宜定常領域を有する、実質的に同種の抗体集団に由来する抗体を指す。いくつかの態様では、ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および不死化された細胞と融合された軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0089】
本明細書において、用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製され、発現され、作製されるか、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックまたは導入染色体またはそれから調製されたハイブリドーマである動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを含む任意のその他の手段によって調製され、発現され、作製されるか、または単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列を利用し、生殖系列遺伝子によってコードされる可変および定常領域を含むが、その後の再編成および例えば、抗体成熟の間に起こる突然変異を含む。当技術分野で公知のように(例えば、Lonberg (2005) Nature Biotech. 23(9):1117-1125を参照のこと)、可変領域は、外来抗原に対して特異的な抗体を形成するよう再編成する種々の遺伝子によってコードされる抗原結合ドメインを含有する。可変領域は、再配列に加えて、外来抗原に対する抗体の親和性を増大するよう、複数の単一アミノ酸変更(体細胞突然変異または高頻度突然変異とも呼ばれる)によってさらに修飾され得る。定常領域は、抗原にさらに応じて変化する(すなわち、アイソタイプスイッチ)。したがって、抗原に応じた、軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする、再編成され、体細胞突然変異された核酸分子は、元の核酸分子との配列同一性を有し得ないが、その代わりに、実質的に同一または同様となる(すなわち、少なくとも80%の同一性を有する)。
【0090】
「ヒト」抗体(HuMAb)とは、フレームワークおよびCDR領域の両方が、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含有する場合には、定常領域はまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかし、本明細書において、用語「ヒト抗体」はマウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むよう意図されない。用語「ヒト」抗体および「完全ヒト」抗体は、同義的に使用される。
【0091】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト抗体のCDRドメインの外側のアミノ酸の一部、ほとんどまたはすべてが、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置換されている抗体を指す。抗体のヒト化形態のいくつかの態様では、CDRドメインの外側のアミノ酸の一部、ほとんどまたはすべてが、ヒト免疫グロブリンに由来するアミノ酸で置換されているが、1つまたは複数のCDR領域内の一部、ほとんどまたはすべてのアミノ酸は変更されていない。アミノ酸の小さい付加、欠失、挿入または置換または修飾は、抗体の特定の抗原と結合する能力を抑制しない限り許容される。「ヒト化」抗体は、元の抗体のものと同様の抗原特異性を保持する。
【0092】
「キメラ抗体」とは、可変領域がマウス抗体に由来し、定常領域がヒト抗体に由来する抗体などの、可変領域がある種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体を指す。
【0093】
本明細書において、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgE抗体)を指す。
【0094】
「アロタイプ」とは、特定のアイソタイプ群内の天然に存在する変異体を指し、これらの変異体は、2、3個のアミノ酸で異なっている(例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1を参照のこと)。本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体抗体は、任意のアロタイプのものであり得る。本明細書において、「IgG1f」、「IgG1.1f」または「IgG1.3f」アイソタイプと称される抗体は、それぞれ、アロタイプ「f」、すなわち、カバットにおけるEU指数による214R、356Eおよび358Mを有する、IgG1、エフェクターレスIgG1.1およびエフェクターレスIgG1.3抗体である。
【0095】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に対して特異的な抗体」は、本明細書において、用語「抗原と特異的に結合する抗体」と同義的に使用される。
【0096】
「単離された抗体」は、本明細書において、他のタンパク質および細胞材料を実質的に含まない抗体を指すことが意図される。
【0097】
本明細書において、「インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する」抗体は、例えば、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)をトランスフェクトしたCHO細胞またはインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を発現する腫瘍細胞を使用した結合アッセイにおいて、当技術分野において認識されている方法で、約25μg/mL以下、約23μg/mL以下、約20μg/mL以下、約15μg/mL以下、約10μg/mL以下、約5μg/mL以下、約3μg/mL以下、約2μg/mL以下、約1μg/mL以下、約0.5μg/mL以下、約0.45μg/mL以下、約0.4μg/mL以下、約0.35μg/mL以下、または約0.3μg/mL以下のEC50で、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と相互作用する、抗体を指すことが意図される。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約200nM以下、約175nM以下、約160nM以下、約150nM以下、約125nM以下、約110nM以下、約100nM以下、約80nM以下、約75nM以下、約60nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約35nM以下、約30nM以下、約25nM以下、約20nM以下、約15nM以下、約10nM以下、約9nM以下、約8nM以下、約7nM以下、約6nM以下、約5nM以下、約4nM以下、約3nM以下、約2nM以下、約1.9nM以下、約1.8nM以下、約1.7nM以下、約1.6nM以下、約1.5nM以下、約1.4nM以下、約1.3nM以下、約1.2nM以下、約1.1nM以下、約1.0nM以下、約0.9nM以下、約0.8nM以下、約0.7nM以下、約0.6nM以下、約0.5nM以下、約0.4nM以下、約0.3nM以下、約0.2nM以下、または約0.1nM以下のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現される、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約10nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約5nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約4nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約3.5nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約3nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約2.5nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約2.4nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約2.3nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約2.1nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約2.0nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.9nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.8nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.7nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.6nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.5nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.4nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.3nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.2nM未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。特定の態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、約1.0未満のEC50で、例えば、CHO細胞上に発現されるヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。
【0098】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域とFc受容体もしくはリガンドとの相互作用、またはそれにより生じる生化学的事象を指す。例示的「エフェクター機能」は、Clq結合、補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合、ADCCおよび抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)などのFcγR媒介性エフェクター機能ならびに細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御を含む。このようなエフェクター機能は、一般に、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を必要とする。
【0099】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」とは、例えば、それを同定するために使用される特定の方法によって定義される場合、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原(例えば、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1))上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸(普通、直鎖エピトープ)またはタンパク質の三次元フォールディングによって並置された非連続アミノ酸(普通、コンホメーションエピトープ)の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、通常、必ずではないが、変性溶媒に対する曝露の際に保持されるが、三次元フォールディングから形成されるエピトープは、通常、変性溶媒を用いる処理の際に失われる。エピトープは、通常、独特の空間コンホメーション中に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。所与の抗体(すなわち、エピトープマッピング)によって結合されるエピトープを決定する方法は、当技術分野で周知であり、例えば、(例えば、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)に由来する)重複ペプチドまたは連続ペプチドが、所与の抗体(例えば、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体)との反応性について試験される、免疫ブロット法および免疫沈降アッセイが挙げられる。エピトープの空間コンホメーションを決定する方法として、当技術分野における技術および本明細書に記載される技術、例えば、X線結晶学、X線共結晶学、抗原変異解析、2次元核磁気共鳴、およびHDX-MS(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed. (1996)を参照されたい)が挙げられる。用語「エピトープマッピング」とは、抗体抗原認識の分子決定基の同定のプロセスを指す。
【0100】
2種以上の抗体に関して、用語「同一エピトープと結合する」は、所与の方法によって決定されるように、抗体がアミノ酸残基の同一セグメントと結合することを意味する。本明細書に記載される抗体を用いて、抗体が「インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)上の同一エピトープ」と結合するか否かを調べる技術として、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析および水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)などのエピトープマッピング方法が挙げられる。その他の方法は、抗体の抗原断片との、または抗原の突然変異された変動との結合をモニタリングし、これでは、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の喪失が、エピトープ成分の指標と考えられることが多い。さらに、エピトープマッピングのための計算コンビナトリアル法を使用してもよい。これらの方法は、対象の抗体の、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特異的な短いペプチドを親和性単離する能力に依存する。同一のVHおよびVLまたは同一のCDR1、2および3配列を有する抗体は、同一のエピトープと結合することが予測される。
【0101】
「標的との結合について別の抗体と競合する」抗体とは、その他の抗体の標的との結合を阻害する(部分的にまたは完全に)抗体を指す。2種の抗体が、標的との結合について互いに競合するか否か、すなわち、ある抗体が、その他の抗体の標的との結合を阻害するか否か、およびどの程度阻害するかは、公知の競合実験、例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)解析などを使用して調べてもよい。いくつかの態様では、抗体は、別の抗体の標的との結合と、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または100%競合する、阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「ブロッキング抗体」であるか(すなわち、標的とともに最初にインキュベートされるコールド抗体)に応じて異なり得る。競合アッセイは、例えば、Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harb Protoc; 2006; doi:10.1101/pdb.prot4277 or in Chapter 11 of "Using Antibodies" by Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, USA 1999に記載されるように実施できる。2つの抗体は、一方の抗体が、競合実験において抗原と最初に接触するかまたは他方の抗体が最初に接触するかにかかわらず、互いに、両方の方向で少なくとも50%遮断する場合に、「交差競合する」。
【0102】
2つの抗体が、結合に関して競合または交差競合するかどうかを判定するための競合的結合アッセイには、例えば、フローサイトメトリー、例えば、実施例に記載されるものによる、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を発現する細胞との結合についての競合が含まれる。その他の方法として、SPR(例えば、BIACORE(登録商標))、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983)を参照のこと);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)を参照のこと);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)を参照のこと);1-125標識を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)を参照のこと);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546 (1990));および直接標識化RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))が挙げられる。
【0103】
本明細書において、「パラトープ」という用語は、抗原上のエピトープと相互作用する、抗体またはその抗原結合断片に存在する1つまたは複数のアミノ酸を指す。
【0104】
本明細書において、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」とは、所定の抗原上のエピトープとの抗体結合を指す。通常、抗体は、(i)例えば、分析物として所定の抗原、例えば、組換えヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)およびリガンドとして抗体を使用したBIACORE(登録商標)2000における表面プラズモン共鳴(SPR)技術または抗体の抗原陽性細胞との結合のスキャッチャード解析法によって決定される場合に、およそ10-7M未満、例えば、およそ10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはさらにそれより小さい平衡解離定数(KD)で結合し、(ii)所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合に対するその親和性よりも、少なくとも2倍大きい親和性で所定の抗原と結合する。したがって、「ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合する」抗体とは、10-7M以下、例えば、およそ10-8M、10-9Mまたは10-10M未満またはさらにそれより小さいKDで、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する抗体を指す。
【0105】
本明細書において、用語「kassoc」または「ka」とは、特定の抗体抗原相互作用の会合速度を指すものとするのに対し、本明細書において、用語「kdis」または「kd」は、特定の抗体抗原相互作用の解離速度を指すものとする。用語「KD」は、本明細書において、解離定数を指すものとし、これはkaに対するkdの割合(すなわち、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定できる。抗体のKDを決定する利用可能な方法は、表面プラズモン共鳴、BIACORE(登録商標)システム、またはフローサイトメトリーおよびスキャッチャード解析法を含む。
【0106】
本明細書において、IgG抗体に関する用語「高親和性」は、抗体が、標的抗原に対して、10-8M以下、10-9M以下または10-10M以下のKDを有することを指す。しかしながら、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプについては変動し得る。例えば、IgMアイソタイプに関する「高親和性」結合は、抗体が、10-10M以下または10-8M以下のKDを有することを指す。
【0107】
用語、抗体またはその抗原結合断片を使用するインビトロまたはインビボアッセイに関連して「EC50」とは、最大応答の50%、すなわち、最大応答とベースラインの間の中間である応答を誘導する抗体またはその抗原結合部分の濃度を指す。
【0108】
用語、本明細書において対象に適用されるような「天然に存在する」とは、対象が自然界において見出され得るという事実を指す。例えば、実験室において人によって意図的に修飾されていない、自然界における供給源から単離され得る生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列が天然に存在する。
【0109】
「ポリペプチド」とは、少なくとも2個の連続して連結しているアミノ酸残基を含む鎖を指し、鎖の長さに上限はない。タンパク質中の1個または複数のアミノ酸残基は、それだけには限らないが、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合形成などの修飾を含有し得る。「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチドを含み得る。
【0110】
用語「核酸分子」とは、本明細書において、DNA分子およびRNA分子を含むものとする。核酸分子は、一本鎖であっても、二本鎖であってもよく、cDNAであり得る。
【0111】
「保存的アミノ酸置換」は、同様の側鎖を有するアミノ酸残基とのアミノ酸残基の置換を指す。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で規定されている。これらのファミリーとして、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体中の予想される非必須アミノ酸残基は、同一側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸残基と置換される。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を同定する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Brummel et al., Biochem. 32:1180-1187 (1993); Kobayashi et al. Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);およびBurks et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:412-417 (1997)を参照のこと)。
【0112】
核酸については、用語「実質的な相同性」は、2種の核酸またはその指定された配列は、最適にアラインされ、比較される場合に、ヌクレオチドの少なくとも約80%、少なくとも約90%~95%、またはヌクレオチドの少なくとも約98%~99.5%において適当なヌクレオチド挿入または欠失を用いて同一であることを示す。あるいは、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で、鎖の相補体とハイブリダイズする場合に、実質的な相同性が存在する。
【0113】
ポリペプチドについては、用語「実質的な相同性」は、2種のポリペプチドまたはその指定された配列が、最適にアラインされ、比較される場合に、アミノ酸の少なくとも約80%、少なくとも約90%~95%、またはアミノ酸の少なくとも約98%~99.5%において適当なアミノ酸挿入または欠失を用いて同一であることを示す。
【0114】
2種の配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数であり(すなわち、相同性%=同一位置の数/位置の総数×100)、2種の配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップの数、各ギャップの長さを考慮する。2種の配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、以下の限定されない例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0115】
2種のヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(worldwideweb.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を使用して決定できる。2種のヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(CABIOS, 4:11-17 (1989))を使用し、PAM120加重残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用して決定できる。さらに、2種のアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラム中に組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかおよび16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を使用して決定できる。
【0116】
本明細書に記載される核酸およびタンパク質配列は、例えば、関連配列を同定するための公開データベースに対する検索を実施するための「クエリー配列」としてさらに使用され得る。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。本明細書に記載された核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施できる。本明細書に記載されたタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長(wordlength)=3を用いて実施できる。比較目的でギャップ付きアラインメント得るために、Altschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されるようなギャップ付きBLASTを利用できる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を使用できる。worldwideweb.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0117】
核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分精製されたかもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知のその他のものを含めた標準技術によって、その他の細胞成分またはその他の夾雑物、例えば、その他の細胞性核酸(例えば、染色体のその他の部分)またはタンパク質から精製された場合に「単離される」かまたは「実質的に純粋にされる」。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照のこと。
【0118】
核酸、例えば、cDNAは、遺伝子配列を提供するための標準技術に従って突然変異してもよい。コード配列については、これらの突然変異は、所望されるアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、天然のV、D、J、定常、スイッチおよび本明細書に記載される他のそのような配列と実質的に相同であるか、またはそれらに由来する、DNA配列が考慮される(ここで、「由来する」とは、配列が、別の配列と同一であるか、またはそれから修飾されていることを示す)。
【0119】
本明細書において、用語「ベクター」は、それに連結している別の核酸を輸送可能な核酸分子を指すものとする。ある種のベクターは、「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、これでは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それによって、宿主ゲノムとともに複製され得る。さらに、特定のベクターは、作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示可能である。このようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、ベクターの最もよく使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、同義的に使用され得る。しかし、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などのその他の形態の発現ベクターもまた含まれる。
【0120】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、本明細書において、細胞中に天然に存在しない核酸を含み、組換え発現ベクターが導入されている細胞であり得る細胞を指すものとする。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけではなく、このような細胞の後代も指すということは理解されなければならない。特定の修飾は、突然変異または環境的影響のいずれかによって後世において起こり得るので、このような後代は実際、親の細胞と同一ではない場合もあるが、本明細書において、用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0121】
「免疫応答」とは、当技術分野において理解される通りであり、一般に、外来物質または異常な、例えば、がん性細胞に対する脊椎動物内の生物学的応答を指し、この応答が、これらの物質およびそれらによって引き起こされる疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の1つまたは複数の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞または好中球)およびこれらの細胞のいずれかまたは肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用によって媒介され、これは、進入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん性もしくはその他の異常な細胞、または自己免疫もしくは病的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織との選択的標的化、結合、損傷、破壊および/またはそれらの脊椎動物の身体からの排除をもたらす。免疫反応には、例えば、T細胞、例えば、エフェクターT細胞、Th細胞、CD4+細胞、CD8+T細胞もしくはTreg細胞の活性化もしくは阻害、または免疫系の任意の他の細胞、例えば、NK細胞の活性化もしくは阻害が含まれる。
【0122】
「免疫調節物質(immunomodulator)」または「免疫制御物質(immunoregulator)」とは、免疫応答の調節、制御または修飾に関与し得る物質、例えば、シグナル伝達経路の成分を標的とする物質を指す。免疫応答の「調節」、「制御」または「修飾」とは、免疫系の細胞における、またはこのような細胞(例えば、Th1細胞などのエフェクターT細胞)の活性における任意の変更を指す。このような調節は、免疫系の刺激または抑制を含み、種々の細胞型の数の増大もしくは減少、これらの細胞の活性の増大もしくは減少または免疫系内で起こり得る任意のその他の変化によって示され得る。阻害的および刺激的免疫調節物質の両方とも同定されており、その一部は、腫瘍微小環境において増強された機能を有し得る。いくつかの態様では、免疫調節物質は、T細胞の表面上の分子を標的とする。「免疫調節性標的」または「免疫制御性標的」は、物質、作用物質、部分、化合物または分子による結合に対して標的化される分子、例えば細胞表面分子であり、その活性は、物質、作用物質、部分、化合物または分子の結合によって変更される。免疫調節性標的は、例えば、細胞の表面の受容体(「免疫調節性受容体」)および受容体リガンド(「免疫調節性リガンド」)を含む。
【0123】
「免疫療法」とは、免疫系または免疫応答を誘導、増強、抑制またはそうでなければ修飾することを含む方法によって、疾患の再発に苦しむまたは、それを起こすまたは患う危険にある対象の治療を指す。
【0124】
本明細書において、用語「連結している」とは、2つ以上の分子の会合を指す。連結は、共有結合である場合も、非共有結合である場合もある。連結はまた、遺伝的であり(すなわち、組換えによって融合され)得る。このような連結は、化学的コンジュゲーションおよび組換えタンパク質生産などの様々な当技術分野において認識される技術を使用して達成され得る。
【0125】
本明細書において、「投与すること」は、種々の方法および送達システムのいずれかを使用して、治療薬を含む組成物の対象への物理的導入を指す。本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の別の投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊髄または例えば、注射もしくは注入によるその他の非経口投与経路を含む。本明細書において、語句「非経口投与」とは、経腸および局所投与以外の、普通、注射による投与様式を意味し、制限するものではないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ内、病巣内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。あるいは、本明細書に記載される抗体は、局所、上皮または粘膜投与経路などの非経口ではない経路によって、例えば、鼻腔内に、経口的に、経膣的に、直腸性に、舌下にまたは局所的に投与され得る。投与することは、例えば、1回、複数回および/または1回もしくは複数回の長期間にわたって実施され得る。
【0126】
本明細書において、語句「腫瘍の成長を阻害する」には、腫瘍の成長における任意の測定可能な減少、例えば、腫瘍の成長の、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約99%または100%の阻害が含まれる。いくつかの態様では、腫瘍成長の阻害は、腫瘍成長阻害パーセント(TGI%)として測定される。TGI%は、式:[1-((Tt/T0)/(Ct/C0))]/[(Ct-C0)/Ct]*100[式1](式中、Tt=時間「t」における処置動物の個々の腫瘍サイズ、T0=1回目の測定における処置動物の個々の腫瘍サイズ、Ct=時間「t」における対照動物の中央値腫瘍サイズ、C0=1回目の測定における対照動物の中央値腫瘍サイズ)に従って、すべての処置動物から計算されたたデータ「t」におけるTGIを計算することによって、決定することができる。
【0127】
本明細書において、「がん」は、身体中での異常な細胞の制御されない成長を特徴とする疾患の広い群を指す。未制御細胞分裂は、隣接する組織へ浸潤し、リンパ系または血流によって身体の遠隔部位へ転移し得る悪性腫瘍または細胞の形成をもたらし得る。
【0128】
用語「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、本明細書において、症状の進行、発生、重症度もしくは再発、合併症、疾病と関連している状態または生化学的兆候を逆転させ、軽減し、寛解し、阻害し、または減速し、または予防すること、または全般的な生存を増強することを目的とした、対象で実施される任意の種類の介入もしくはプロセスまたは対象へ活性薬剤を投与することを指す。処置は、疾患を有する対象または疾患を有さない対象(例えば、予防のため)のものであってもよい。
【0129】
用語「有効用量」または「有効投与量」は、所望の効果を達成または少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。薬物または治療剤の「治療上有効な量」または「治療上有効な投与量」は、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用される場合に、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および期間の増大、全生存期間(疾患、例えば、がんの診断日もしくは処置開始日から、疾患が診断された患者が依然として生存している時間の長さ)の増大、または疾患苦痛による機能障害もしくは能力障害の防止によって証明される疾患退縮を促進する、薬物の任意の量である。薬物の治療上有効な量または投与量は、単独で、または別の治療薬と組み合わせて、疾患を発生するか、または疾患の再発を患う危険性にある対象に投与される場合に、疾患の発生または再発を阻害する薬物の量である、「予防的有効量」または「予防的有効投与量」を含む。治療薬の疾患退縮を促進する能力または疾患の発生もしくは再発を阻害する能力は、臨床治験の際にヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、インビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによってなど、種々の方法を使用して評価できる。
【0130】
例として、抗がん剤は、対象において、がん退縮を促進する薬物である。いくつかの態様では、治療上有効な量の薬物は、がんを排除するところまでがん退縮を促進する。「がん退縮を促進すること」とは、有効量の薬物を、単独で、または抗新生物剤と組み合わせて投与することが、患者において、腫瘍成長または大きさの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1種の疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および期間の増大、全生存期間の増大、疾患苦痛による機能障害もしくは能力障害の防止、またはそれ以外では疾患症状の寛解をもたらすことを意味する。さらに、処置に関する用語「有効」および「有効性」には、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方が含まれる。薬理学的有効性とは、薬物の患者においてがん退縮を促進する能力を指す。生理学的安全性とは、薬物の投与に起因する、毒性のレベルまたは細胞、臓器および/または生物レベルでのその他の有害な生理学的効果(有害効果)を指す。
【0131】
腫瘍の治療の例として、薬物の治療上有効な量または投与量は、未治療の対象と比較して、細胞成長または腫瘍成長を少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%阻害する。いくつかの態様では、薬物の治療上有効な量または投与量は、細胞成長または腫瘍成長を完全に阻害し、すなわち、細胞成長または腫瘍成長を100%阻害する。化合物の腫瘍成長を阻害する能力は、以下に記載されるアッセイを使用して評価できる。あるいは、この組成物の特性は、化合物の細胞成長を阻害する能力を調べることによって評価でき、このような阻害は、任意のアッセイによってインビトロで測定され得る。本明細書に記載されるいくつかの態様では、腫瘍退縮が観察され得、少なくとも約20日、少なくとも約40日、または少なくとも約60日の期間継続し得る。
【0132】
用語「患者」は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を含む。
【0133】
本明細書において、用語「対象」には、任意のヒトまたは非ヒト動物が含まれる。例えば、本明細書に記載される方法および組成物は、がんを有する対象を治療するために使用され得る。用語「非ヒト動物」は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリなどの哺乳動物および非哺乳動物、両生類、爬虫類などを含む。
【0134】
本明細書において、用語「ug」および「uM」は、それぞれ、「μg」および「μΜ」と同義的に使用される。
【0135】
本明細書に記載される種々の態様は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載される。
【0136】
II.本開示の組成物
本開示の特定の態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害、予防または低減する、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害、予防または低減する、二重特異性抗体を対象とする。本開示のいくつかの態様は、それを必要とする対象において疾患または状態を処置する方法であって、対象に、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害、予防、または低減する、抗体もしくはその抗原結合部分または二重特異性抗体を投与することを含む、方法を対象とする。
【0137】
いくつかの態様では、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化は、本開示の抗体もしくはその抗原結合部分または二重特異性抗体との接触前のインテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化のレベルと比べて、少なくとも約1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍低減される。いくつかの態様では、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化は、本開示の抗体もしくはその抗原結合部分または二重特異性抗体と接触した後に、完全に除去される。
【0138】
II.A.抗インテグリン-αvヘテロ二量体抗体
本開示の特定の態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、インテグリン-αvに媒介されるTGFβの活性化を阻害、予防または低減する、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3は、配列番号5、15、または15のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH-CDR2は、配列番号4、14、または24のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH-CDR1は、配列番号3、13、または23のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR3は、配列番号10、20、または30のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR2は、配列番号9、19、または29のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL-CDR1は、配列番号8、18、または28のアミノ酸配列を含む。
【0139】
【0140】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体との結合について、参照抗体またはその抗原結合部分と交差競合する、抗体またはその抗原結合部分であって、参照抗体が、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3が、配列番号5、15、または15のアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0141】
本開示のいくつかの態様は、参照抗体またはその抗原結合部分と同じインテグリン-αvヘテロ二量体上のエピトープと結合する抗体またはその抗原結合部分であって、参照抗体が、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3が、配列番号5、15、または15のアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0142】
本開示のいくつかの態様は、参照抗体またはその抗原結合部分によって認識されるエピトープとオーバーラップする少なくとも1つのアミノ酸残基を有するインテグリン-αvヘテロ二量体上のエピトープと結合する抗体またはその抗原結合部分であって、参照抗体が、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR3が、配列番号5、15、または15のアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0143】
いくつかの態様では、参照抗体のVH-CDR2は、配列番号4、14、または24のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体のVH-CDR1は、配列番号3、13、または23のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体のVL-CDR3は、配列番号10、20、または30のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体のVL-CDR2は、配列番号9、19、または29のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体のVL-CDR1は、配列番号8、18、または28のアミノ酸配列を含む。
【0144】
いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR1は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1は、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2は、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0145】
いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR1は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3は、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1は、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0146】
いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、可変重鎖相補性決定領域(VH-CDR)1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含む可変重鎖領域(「VH」)、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含む可変軽鎖領域(「VL」)を含み、VH-CDR1は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2は、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1は、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3は、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0147】
いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VHは、配列番号2、12、および22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体は、配列番号2、12、および22から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域(「VH」)および軽鎖可変領域(「VL」)を含み、VLは、配列番号7、17、および27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、配列番号7、17、および27から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、参照抗体またはその抗原結合部分は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0149】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含むVH、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含むVLを含み、VH-CDR1が、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3が、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1が、配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2が、配列番号9に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3が、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0150】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含むVH、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含むVLを含み、VH-CDR1が、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2が、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3が、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1が、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2が、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3が、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0151】
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体と特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3を含むVH、ならびにVL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3を含むVLを含み、VH-CDR1が、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR2が、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含み、VH-CDR3が、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR1が、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR2が、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含み、VL-CDR3が、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を対象とする。
【0152】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0153】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖(「HC」)および軽鎖(「LC」)を含み、HCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、または少なくとも約50個の点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、1つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、2つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、3つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、4つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、5つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、または21に記載されるアミノ酸配列と比べて、10個の点突然変異を含む。
【0154】
いくつかの態様では、HCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、HCは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、HCは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、HCは、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0155】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、LCは、配列番号6、16、および26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、または少なくとも約50個の点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、1つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、2つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、3つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、4つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、5つの点突然変異を含む。いくつかの態様では、LCは、配列番号6、16、または26に記載されるアミノ酸配列と比べて、10個の点突然変異を含む。
【0156】
いくつかの態様では、LCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、LCは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、LCは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、LCは、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0157】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号1、11、および21から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号6、16、および26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号21に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0158】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、HCおよびLCを含み、HCは、配列番号21に記載されるアミノ酸配列を含み、LCは、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0159】
いくつかの態様では、抗体は、抗体の抗原結合部分である。いくつかの態様では、抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結されたFv、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcである。
【0160】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍細胞増殖を低減または阻害する。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍細胞遊走を低減または阻害する。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍細胞転移を低減または阻害する。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍細胞死を増大させる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行うことができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、腫瘍体積の低減を、それを必要とする対象において行うことができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、無増悪生存期間の増大を、それを必要とする対象において行うことができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、全生存期間の増大を、それを必要とする対象において行うことができる。
【0161】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体は、高い親和性で、例えば、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、10-12M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、または10-9M~10-7MのKDで、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体は、例えば、BIACORE(商標)(例えば、実施例に記載される)を使用して、例えば、表面プラズモン共鳴によって判定される場合、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、または10-8M~10-7MのKDで、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、例えばELISA、例えば、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ELISAキットによって判定される場合、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100nM~0.01nM、100nM~0.1nM、100nM~1nM、もしくは10nM~1nM、または10ug/mL以下、5ug/mL以下、1ug/mL以下、0.9ug/mL以下、0.8ug/mL以下、0.7ug/mL以下、0.6ug/mL以下、0.5ug/mL以下、0.4ug/mL以下、0.3ug/mL以下、0.2ug/mL以下、0.1ug/mL以下、0.05ug/mL以下、もしくは0.01ug/mL以下のEC50のEC50で、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と結合する。
【0162】
いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体は、約5×10-4M以下、約1×10-4M以下、5×10-5M以下、約1×10-5M以下、約1×10-6M以下、約1×10-7M以下、または約1×10-8M以下のKDで、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、KDは、表面プラズモン共鳴(Biacore)分析によって測定される。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体は、少なくとも約1×103ms-1、少なくとも約5×103ms-1、少なくとも約1×104ms-1、少なくとも約5×104ms-1、少なくとも約1×105ms-1、少なくとも約5×105ms-1、または少なくとも約1×106ms-1の結合速度定数(ka)で、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、kaは、表面プラズモン共鳴(Biacore)分析によって測定される。
【0163】
いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体は、約0.1s-1以下、0.05s-1以下、0.01s-1以下、5×10-3s-1以下、1×10-3s-1以下、5×10-4s-1以下、1×10-4s-1以下、5×10-5s-1以下、または1×10-5s-1以下の解離速度定数(kd)で、ヒトインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合し、KDは、表面プラズモン共鳴(Biacore)分析によって測定される。
【0164】
本明細書に記載されるVHドメインまたはその1つもしくは複数のCDRは、重鎖、例えば、全長重鎖を形成するために、定常ドメインと連結され得る。同様に、本明細書に記載されるVLドメインまたはその1つもしくは複数のCDRは、軽鎖、例えば、全長軽鎖を形成するために、定常ドメインと連結され得る。全長重鎖[適宜C末端リシン(K)またはC末端グリシンおよびリシン(GK)は、不在であってもよいため、除外する]ならびに全長軽鎖が、組み合わさって、全長抗体が形成され得る。
【0165】
本明細書に記載されるVHドメインは、天然に存在するか、または例えば、本明細書にさらに記載されるように修飾されているかのいずれかである、ヒトIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の定常ドメインに融合され得る。例えば、VHドメインは、ヒトIgG、例えば、IgG1、定常領域、例えば、以下の野生型ヒトIgG1定常ドメインのアミノ酸配列:
【化1】
(配列番号40)
または配列番号40のアロタイプ変異体のものに融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含み得、以下のアミノ酸配列:
【化2】
(配列番号41、アロタイプ特異的アミノ酸残基は、太字および下線で示す)を有し得る。
【0166】
抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体のVHドメインは、エフェクターレス定常領域、例えば、以下のエフェクターレスヒトIgG1定常ドメインアミノ酸配列:
【化3】
(配列番号42、「IgG1.1f」、下線で示される置換L234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sを含む)
または
【化4】
(配列番号43、「IgG1.3f」、下線で示される置換L234A、L235EおよびG237Aを含む)に融合された、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0167】
例えば、IgG1のアロタイプ変異体は、配列番号40において番号付けされるK97R、D239E、および/またはL241M(上記において下線および太字で示される)を含む。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の定常領域は、配列番号41、42、および43において番号付けされるアミノ酸L117、A118、G120、A213、およびP214(上記において下線で示される)、またはEU番号付けによるL234、A235、G237、A330、およびP331に、1つまたは複数の突然変異または置換をさらに含み得る。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の定常領域は、配列番号40のアミノ酸L117A、A118E、G120A、A213SおよびP214S、またはEU番号付けによるL234A、L235E、G237A、A330SおよびP331Sに、1つまたは複数の突然変異または置換を含む。抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の定常領域はまた、配列番号40のL117A、A118EおよびG120A、またはEU番号付けによるL234A、L235EおよびG237Aに、1つまたは複数の突然変異または置換を含んでもよい。
【0168】
あるいは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体のVHドメインは、ヒトIgG4定常領域、例えば、以下のヒトIgG4アミノ酸配列またはその変異体:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(配列番号44、S228Pを含む)に融合した、本明細書に記載される任意のVHドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0169】
本明細書に記載されるVLドメインは、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖の定常ドメインに融合され得る。例えば、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体のVLドメインは、以下のヒトIgG1カッパ軽鎖アミノ酸配列:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号45)に融合した、本明細書に記載される任意のVLドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0170】
いくつかの態様では、重鎖定常領域は、C末端にリシンまたは別のアミノ酸を含み、例えば、それは、重鎖において、以下の最後のアミノ酸:LSPGK(配列番号46)を含む。いくつかの態様では、重鎖定常領域は、C末端における1つまたは複数のアミノ酸が欠如しており、例えば、C末端配列LSPG(配列番号47)またはLSP(配列番号48)を有する。
【0171】
抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み得、ここで、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数は、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体に基づく指定のアミノ酸配列またはそれらの保存的修飾形態を含み、抗体は、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の所望される機能的特性を保持する。
【0172】
保存的アミノ酸置換は、CDR以外の抗体の部分に行われてもよく、またはCDRに加えて行われてもよい。例えば、保存的アミノ酸修飾は、フレームワーク領域またはFc領域に行われてもよい。可変領域または重鎖もしくは軽鎖は、本明細書に提供される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体配列と比べて、1個、2個、3個、4個、5個、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~10個、1~15個、1~20個、1~25個または1~50個の保存的アミノ酸置換を含み得る。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、保存的アミノ酸修飾および非保存的アミノ修飾の組合せを含む。
【0173】
修飾された抗体を遺伝子操作するために、出発材料として本明細書において開示されるVHおよび/またはVL配列のうち1種または複数を有する抗体を使用して調製され得る、遺伝子操作された、および修飾された抗体もまた提供され、この修飾された抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内の、例えば、1つまたは複数のCDR領域内の、および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1個または複数の残基を修飾することによって、遺伝子操作され得る。さらに、またはあるいは、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能(単数または複数)を変更するために、定常領域(単数または複数)内の残基を修飾することによって遺伝子操作され得る。
【0174】
実施され得る1種の可変領域遺伝子操作として、CDRグラフティングがある。抗体は、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は、ほとんどの抗体抗原相互作用に関与しているので、異なる特性を有する異なる抗体に由来するフレームワーク配列上にグラフトされた特定の天然に存在する抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature 321:522-525; Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許第5,225,539号およびQueen et alの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号を参照のこと)。
【0175】
したがって、本明細書に記載されるいくつかの態様は、本明細書に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびに本明細書に記載されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。したがって、そのような抗体は、本明細書に記載されるモノクローナル抗体のVHおよびVL CDR配列を含み、さらに、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含んでもよい。
【0176】
このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは公開参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネット上でwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseにおいて利用可能)に、ならびにKabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops" I. Mol. Biol. 227:776-798; and Cox, J. P. L. et al. (1994) "A Directory of Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836に見出すことができ、それらの各々の内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0177】
いくつかの態様では、本明細書において記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体において使用するためのフレームワーク配列は、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に同様であるものである。VH CDR1、CDR2およびCDR3配列ならびにVL CDR1、CDR2およびCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子において見られるものと同一配列を有するフレームワーク領域上にグラフトされ得るか、またはCDR配列は、生殖系列配列と比較した場合に1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領域上にグラフトされ得る。例えば、特定の場合には、抗体の抗原結合能力を維持または増強するために、フレームワーク領域内の残基を突然変異させることが有益であることがわかっている(例えば、Queen et alの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号を参照のこと)。
【0178】
本明細書に記載される遺伝子操作された抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、例えば、抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾が行われているものを含む。通常、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるよう行われる。例えば、1つのアプローチとして、1個または複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰突然変異」することがある。より詳しくは、体細胞突然変異を起こしている抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列に対して比較することによって同定できる。フレームワーク領域配列をその生殖系列立体配置に戻すために、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発によって、体細胞突然変異を生殖系列配列に「復帰突然変異する」ことができる。このような「復帰突然変異された」抗体も包含されるものとする。別の種類のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって、抗体の免疫原性の可能性を低減するために、フレームワーク領域内の、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1個または複数の残基を突然変異することを含む。このアプローチはまた、「脱免疫化」と呼ばれ、Carr et alによる米国特許公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0179】
別の種類の可変領域修飾は、それにより対象の抗体の1種または複数の結合特性(例えば、親和性)を改善するためにVHならびに/またはVL CDR1、CDR2および/もしくはCDR3領域内のアミノ酸残基を突然変異することである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発を実施して、抗体結合または対象のその他の機能的特性に対して突然変異(単数または複数)および効果を導入でき、本明細書に記載され実施例において提供されるインビトロまたはインビボでのアッセイにおいて評価することができる。いくつかの態様では、保存的修飾(上記で論じられるような)が導入される。突然変異は、アミノ酸置換、付加、または欠失であり得る。さらに、通常、CDR領域内の1、2、3、4または5個以下の残基が変更される。
【0180】
抗体のCDR中のメチオニン残基は、酸化され、その結果、化学的分解の可能性および結果としての抗体の効力の低減をもたらし得る。したがって、重鎖および/または軽鎖CDR中の1個または複数のメチオニン残基は、酸化分解を受けないアミノ酸残基と置換されている抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体もまた、提供される。
【0181】
同様に、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体から、特に、CDR中の脱アミド化部位も除去され得る。
【0182】
本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)可変領域は、Fc、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fcと連結され得(例えば、共有結合によって連結されるか、または融合される)、これは、例えば、IgG1の任意のアロタイプまたはイソアロタイプ:G1m、G1m1(a)、G1m2(x)、G1m3(f)、G1m17(z);IgG2の任意のアロタイプまたはイソアロタイプ:G2m、G2m23(n);IgG3の任意のアロタイプまたはイソアロタイプ:G3m、G3m21(g1)、G3m28(g5)、G3m11(b0)、G3m5(b1)、G3m13(b3)、G3m14(b4)、G3m10(b5)、G3m15(s)、G3m16(t)、G3m6(c3)、G3m24(c5)、G3m26(u)、G3m27(v)およびK:Km、Km1、Km2、Km3であり得る(例えば、Jefferis et al. (2009) mAbs 1:1を参照のこと)。
【0183】
一般に、本明細書に記載される可変領域は、典型的には、抗体の1つまたは複数の機能的特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、抗原依存性細胞性細胞傷害性、および/または抗原依存性細胞性ファゴサイトーシスを変更するために、1つまたは複数の修飾を含むFcと連結され得る。さらに、本明細書に記載される抗体は、化学的に修飾され得る(例えば、1種または複数の化学部分は、抗体と結合され得る)か、またはそのグリコシル化を変更するよう、抗体の1種または複数の機能的特性を変更するよう修飾され得る。これらの態様の各々は、以下に詳細に記載される。Fc領域中の残基の番号付けは、カバットのEU指数のものである。
【0184】
Fc領域は、定常領域の断片、類似体、変異体、突然変異体または誘導体を含む、免疫グロブリンの定常領域に由来するドメインを包含する。好適な免疫グロブリンとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、ならびにIgA、IgD、IgEおよびIgMなどのその他のクラスが挙げられる。免疫グロブリンの定常領域は、免疫グロブリンC末端領域と相同な天然に存在するポリペプチドまたは合成により産生されたポリペプチドとして定義され、これには、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインが、別個または組合せで含まれ得る。
【0185】
Ig分子は、複数のクラスの細胞受容体と相互作用する。例えば、IgG分子は、IgGクラスの抗体に特異的な3つのクラスのFcγ受容体(FcγR)、すなわち、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIと相互作用する。IgGのFcγR受容体との結合に重要な配列は、CH2およびCH3ドメインに位置することが報告されている。抗体の血清半減期は、その抗体がFc受容体(FcR)と結合する能力によって影響を受ける。
【0186】
いくつかの態様では、Fc領域は、変異体Fc領域、例えば、親Fc配列(例えば、未修飾のFcポリペプチドであり、これが、後で修飾されて変異体が生成される)と比べて、望ましい構造的特性および/または生物学的活性を提供するように修飾されている(例えば、アミノ酸置換、欠失および/または挿入によって)Fc配列である。
【0187】
一般に、定常領域またはその部分、例えば、CH1、CL、ヒンジ、CH2またはCH3ドメインの変異体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個もしくはそれ以上の突然変異ならびに/または多くとも10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個もしくは1個の突然変異または1~10個もしくは1~5個の突然変異を含み得るか、あるいは対応する野生型領域またはドメイン(それぞれ、CH1、CL、ヒンジ、CH2またはCH3ドメイン)のものと少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含み得るが、ただし、特定の変異体を含む重鎖定常領域が、必要な生物活性を保持することを条件とする。
【0188】
例えば、親のFcと比べて、(a)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および/もしくは抗体依存性細胞性ファゴサイトーシス(ADCP)の増大もしくは減少を媒介する、(b)補体媒介性細胞傷害性(CDC)の増大もしくは減少を媒介する、(c)C1qに対する親和性が増大もしくは減少した、ならびに/または(d)Fc受容体に対する親和性が増大もしくは減少した、Fc変異体を生成するために、Fc領域内に修飾を行うことができる。このようなFc領域変異体は、一般に、Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾を組み合わせることは、特に望ましいと考えられる。例えば、変異体Fc領域は、中に、本明細書において同定される特定のFc領域位置の2、3、4、5つなどの置換を含み得る。
【0189】
変異体Fc領域はまた、ジスルフィド結合の形成に関与するアミノ酸が、除去されるかまたはその他のアミノ酸と置換される、配列の変更も含み得る。そのような除去により、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を産生するために使用される宿主細胞に存在するその他のシステイン含有タンパク質との反応を回避することができる。システイン残基を除去した場合であっても、一本鎖Fcドメインは、依然として、二量体Fcドメインを形成することができ、これは、非共有結合的に一緒に保持される。いくつかの態様では、Fc領域は、選択された宿主細胞との適合性が高くなるように修飾され得る。例えば、典型的な天然のFc領域のN末端の近傍のPA配列を除去してもよく、これは、プロリンイミノペプチダーゼなど、大腸菌における消化酵素によって認識され得る。いくつかの態様では、Fcドメイン内の1つまたは複数のグリコシル化部位が、除去され得る。典型的にはグリコシル化されている残基(例えば、アスパラギン)は、細胞溶解性応答をもたらし得る。そのような残基は、欠失させてもよく、または非グリコシル化残基(例えば、アラニン)と置換してもよい。いくつかの態様では、C1q結合部位など、補体との相互作用に関与する部位が、Fc領域から除去され得る。例えば、ヒトIgG1のEKK配列を、欠失または置換してもよい。いくつかの態様では、Fc受容体との結合に影響を及ぼす部位、好ましくは、サルベージ受容体結合部位以外の部位が除去され得る。いくつかの態様では、Fc領域は、ADCC部位を除去するよう修飾され得る。ADCC部位は、当技術分野で公知である、例えば、IgG1中のADCC部位に関しては、Molec. Immunol. 29 (5): 633-9 (1992)を参照のこと。変異体Fcドメインの具体的な例は、例えば、WO97/34631、WO96/32478およびWO07/041635に開示されている。
【0190】
いくつかの態様では、Fcのヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変更されるように、例えば、増大または減少されるように、修飾される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。Fcのヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリーを容易にするように、または抗体の安定性を増大もしくは減少させるように、変更されている。いくつかの態様では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるように突然変異される。より具体的には、抗体が、天然のFc-ヒンジドメインのブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合と比べて、損傷されたSpA結合を有するように、1つまたは複数のアミノ酸突然変異が、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメインの界面領域に導入される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0191】
いくつかの態様では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を変更するよう、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基と置換することによって変更される。例えば、抗体が、エフェクターリガンドに対して低減した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力は保持するよう、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、322、330、および/または331から選択される1個または複数のアミノ酸が、異なるアミノ酸残基と置換され得る。それに対する親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、いずれもWinterらによる米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0192】
別の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1個または複数のアミノ酸は、抗体が、変更されたC1q結合および/または低減もしくは消失された補体依存性細胞傷害性(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基と置き換えられ得る。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0193】
別の例では、アミノ酸位置231~239内の1個または複数のアミノ酸残基が変更され、それによって、抗体が補体と結合する能力を変更する。このアプローチは、BodmerらによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0194】
別の例では、Fc領域は、Fcγに対する親和性を増強させ、マクロファージ媒介性ファゴサイトーシスを増大させるように、修飾され得る。例えば、Richard et al., Mo. Cancer. Ther. 7(8):2517-27 (2008)を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の態様では、Fc領域は、阻害性FcγRIIbと比べて、FcγRIIaに対する親和性を増大させるように修飾され得る。1つの特定の点突然変異であるG236A(この番号付けは、EUインデックスに従う)は、阻害性FcγRIIbと比べて、FcγRIIaに対する増大した親和性を有すると特定されている。このFcRIIaに対する親和性の増大は、天然IgG1と比べて増大したマクロファージ媒介性ファゴサイトーシスと相関していた。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体のFc領域は、G236A、I332E、S239/I332E、I332E/G236A、およびS239D/I332E/G236Aから選択される1つもしくは複数の突然変異または突然変異の組合せを含む。Fc領域に対する他の修飾は、例えば、活性化受容体、例えば、FcγRIおよび/またはFcγRIIIaに対する親和性を増大させることによって、抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を増大させ得る。例えば、G236A置換、ならびに例えば、332および239における置換を含むがこれらに限定されない、G236A置換と活性化受容体(例えば、FcγRIおよび/またはFcγRIIIa)に対する親和性を改善する修飾との組合せは、親野生型抗体と比べて実質的に改善されたADCCをもたらす。米国特許第9,040,041号を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0195】
別の実施例では、Fc領域は、以下の位置:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438または439で1個または複数のアミノ酸を修飾することによって、抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を低減するよう、および/またはFcγ受容体に対する親和性を低減するよう修飾され得る。例示的置換として、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332Dおよび332Eが挙げられる。例示的変異体として、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324Tおよび267E/268F/324Tが挙げられる。FcγRおよび補体相互作用を増強するためのその他の修飾として、それだけには限らないが、置換298A、333A、334A、326A、247I、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、305Iおよび396Lが挙げられる。これらおよびその他の修飾は、Strohl (2009) Current Opinion in Biotechnology 20:685-691に概説されている。
【0196】
Fcγ受容体との結合を増大させるFc修飾は、Fc領域のアミノ酸238位、239位、248位、249位、252位、254位、255位、256位、258位、265位、267位、268位、269位、270位、272位、279位、280位、283位、285位、298位、289位、290位、292位、293位、294位、295位、296位、298位、301位、303位、305位、307位、312位、315位、324位、327位、329位、330位、335位、337位、338位、340位、360位、373位、376位、379位、382位、388位、389位、398位、414位、416位、419位、430位、434位、435位、437位、438位または439位のうちの任意の1つまたは複数におけるアミノ酸修飾を含み、ここで、Fc領域における残基の番号付けは、カバットにおけるEU指数のものである(WO00/42072)。
【0197】
適宜、Fc領域は、追加および/または代替的な位置に、非天然のアミノ酸残基を含み得る(例えば、米国特許第5,624,821号、同第6,277,375号、同第6,737,056号、同第6,194,551号、同第7,317,091号、同第8,101,720号、同第9,040,041号、PCX特許公開第WO00/42072、WO01/58957、WO02/06919、WO04/016750、WO04/029207、WO04/035752、WO04/074455、WO04/099249、WO04/063351、WO05/070963、WO05/040217、WO05/092925およびWO06/020114を参照のこと)。
【0198】
Fc領域のそのリガンドに対する親和性および結合特性は、それだけには限らないが、平衡方法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))または速度論(例えば、BIACORE分析)および間接結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)などのその他の方法を含めた、当技術分野で公知の種々のインビトロアッセイ法(生化学または免疫学ベースのアッセイ)によって決定され得る。これらおよびその他の方法は、調べられている1種もしくは複数の成分上の標識を利用してもよく、および/またはそれだけには限らないが、クロマトグラフィー、蛍光、発光もしくは同位体標識を含めた種々の検出方法を使用してもよい。結合親和性および速度論の詳細な説明は、抗体免疫原相互作用に焦点を当てる、Paul, W. E., ed., Fundamental immunology, 4th Ed., Lippincott-Raven, Philadelphia (1999)に見出すことができる。
【0199】
いくつかの態様では、抗体は、その生物学的半減期を増大するよう修飾される。種々のアプローチが可能である。例えば、これは、Fc領域のFcRnに対する結合親和性を増大することによって行うことができる。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されるように、以下の残基のうちの1個または複数が、突然変異され得る:252、254、256、433、435、436。特定の例示的な置換としては、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:T252L、T254Sおよび/またはT256F。あるいは、生物学的半減期を増大させるために、抗体は、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および同第6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られたサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で変更され得る。FcRnとの結合を増大し、および/または薬物動態特性を改善するその他の例示的変異体は、位置259、308、428、および434での置換を含み、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、4341 1、434F、434Yおよび434X1が挙げられる。FcRnとのFc結合を増大するその他の変異体として、250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hinton et al. 2004、J. Biol. Chem. 279(8): 6213-6216、Hinton et al. 2006 Journal of Immunology 176:346-356)、256A、272A、286A、305A、307A、307Q、311A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shields et al, Journal of Biological Chemistry, 2001, 276(9):6591-6604)、252F、252T252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、311S、433R、433S、4331、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acqua et al. Journal of Immunology, 2002, 169:5171-5180, Dall'Acqua et al., 2006, Journal of Biological Chemistry 281:23514-23524)が挙げられる。FcRn結合を調節するためのその他の修飾は、Yeung et al., 2010, J Immunol, 182:7663-7671に記載されている。
【0200】
いくつかの態様では、特定の生物学的特徴を有するハイブリッドIgGアイソタイプを、使用することができる。例えば、IgG1/IgG3ハイブリッド変異体は、CH2および/またはCH3領域中のIgG1位置を、2種のアイソタイプが異なる位置でIgG3に由来するアミノ酸と置換することによって構築され得る。このようにして、1つまたは複数の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435Rおよび436Fを含むハイブリッド変異体IgG抗体が、構築され得る。本明細書に記載されるいくつかの態様では、CH2および/またはCH3領域中のIgG2位置を、2種のアイソタイプが異なる位置でIgG1に由来するアミノ酸と置換することによって、IgG1/IgG2ハイブリッド変異体が構築され得る。このようにして、1つまたは複数の置換、例えば、以下のアミノ酸置換:233E、234L、235L、-236G(236位でのグリシンの挿入を指す)および327Aのうち1つまたは複数を含むハイブリッド変異体IgG抗体が構築され得る。
【0201】
さらに、ヒトIgG1におけるFcγRI、FcγRII、FcγRIII、およびFcRnに対する結合部位が、マッピングされており、改善された結合を有する変異体が、説明されている(Shields, R.L. et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604を参照のこと)。256位、290位、298位、333位、334位および339位における特定の突然変異は、FcγRIIIとの結合を改善することが示された。加えて、組合せ突然変異体T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334Aは、FcγRIII結合を改善することが示されており、これらは、増強されたFcγRIIIa結合およびADCC活性を示すことが示されている(Shields et al., 2001)。S239D/I332EおよびS239D/I332E/A330L突然変異を有する変異体を含めた、FcγRIIIaとの結合が強力に増強されたその他のIgG1変異体が同定されており、これは、FcγRIIIaに対する親和性の最大の増大、FcγRIIb結合の減少およびカニクイザルにおける強力な細胞傷害性活性を示した(Lazar et al., 2006)。アレムツズマブ(CD52特異的)、トラスツズマブ(HER2/neu特異的)、リツキシマブ(CD20特異的)およびセツキシマブ(EGFR特異的)などの抗体中への三重突然変異の導入は、インビトロで大きく増強されたADCC活性に変換され、S239D/I332E変異体は、サルにおいてB細胞を枯渇させる増強された能力を示した(Lazar et al., 2006)。さらに、B細胞悪性腫瘍および乳がんのモデルにおいてヒトFcγRIIIaを発現するトランスジェニックマウスにおいて、FcγRIIIaとの増強された結合および同時に増強されたADCC活性を示した、L235V、F243L、R292P、Y300LおよびP396L突然変異を含有するIgG1突然変異体が同定された(Stavenhagen et al., 2007、Nordstrom et al., 2011)。使用することができるその他のFc突然変異体としては、以下のものが挙げられる:S298A/E333A/L334A、S239D/I332E、S239D/I332E/A330L、L235V/F243L/R292P/Y300L/P396LおよびM428L/N434S。
【0202】
234、235、236、239、267、268、293、295、324、327、328、330、および332の位置における特定の突然変異は、FcγRIIaとの結合を改善し、および/またはFcγRIIbとの結合を低減し、ADCCおよび/またはADCP活性の増強をもたらすことが示されていた(Richards et al., Mol. Cancer Ther. 7(8):2517-2527; U.S. Patent No. 9,040,041)。特に、FcγRIIbと比べて1つもしくは複数のヒト活性化受容体との結合を選択的に改善するか、または1つもしくは複数の活性化受容体と比べてFcγRIIbとの結合を選択的に改善する、Fc変異体は、234G、234I、235D、235E、235I、235Y、236A、236S、239D、267D、267E、267Q、268D、268E、293R、295E、324G、324I、327H、328A、328F、328I、330I、330L、330Y、332D、および332Eからなる群から選択される置換を含み得る。さらに組み合わせることができる追加の置換としては、FcγR親和性および補体活性を調節する他の置換が挙げられ、これには、298A、298T、326A、326D、326E、326W、326Y、333A、333S、334L、および334Aが挙げられるがこれらに限定されない(米国特許第6,737,056号、Shields et al, Journal of Biological Chemistry, 2001, 276(9):6591-6604、米国特許第6,528,624号、Idusogie et al., 2001, J. Immunology 166:2571-2572)。他のFc変異体と組み合わせるのに特に有用であり得る好ましい変異体としては、置換298A、326A、333A、および334Aを含むものが挙げられる。FcγR選択的変異体と組み合わせることができる追加の置換としては、247L、255L、270E、392T、396L、および421K(米国出願第10/754,922号、米国出願第10/902,588号)、ならびに280H、280Q、および280Y(米国出願第10/370,749号)が挙げられる。
【0203】
IgG4定常ドメインを使用する場合、これは、置換S228Pを含み得、この置換は、IgG1におけるヒンジ配列を模倣し、それによって、IgG4分子を安定化させる。
【0204】
II.B.二重特異性および多重特異性抗体
本開示のいくつかの態様は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)と特異的に結合する二重特異性または多重特異性抗体を対象とする。いくつかの態様では、二重特異性または多重特異性抗体は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)および第2の抗原と結合する。いくつかの態様では、第2の抗原は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ではない。いくつかの態様では、二重特異性または多重特異性抗体は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)上の第1のエピトープおよびインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)の第2のエピトープと結合する。いくつかの態様では、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、オーバーラップしない。
【0205】
本明細書に記載される任意の抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、二重特異性または多重特異性抗体を形成するために使用され得る。抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体またはその抗原結合部分は、誘導体化されるか、または別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体または受容体のリガンド)と連結されて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子と結合する二重特異性または多重特異性分子を生成し得る。いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、併用処置の潜在的な標的として使用することができる任意のタンパク質、例えば、本明細書に記載されるタンパク質と特異的に結合する抗体またはscFv(例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-2、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、CD96、VISTA、もしくはGITR、またはペグ化IL-2もしくはペグ化IL-10に対する抗体)と連結される。本明細書に記載される抗体は、実際、誘導されるか、2種以上のその他の機能的分子と連結されて、3種以上の異なる結合部位および/または標的分子と結合する多重特異性分子を生成し得;このような多重特異性分子もまた、本明細書において、用語「二重特異性分子」に包含されるものとする。本明細書に記載される二重特異性分子を作製するために、本明細書に記載される抗体を、二重特異性分子が結果として生じるような別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣物などの1種または複数のその他の結合分子と機能的に連結することができる(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合による結合または別の方法で)。
【0206】
したがって、少なくとも1つのインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)に対する第1の結合特異性および第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二重特異性分子が本明細書において提供される。二重特異性分子が多重特異性である本明細書に記載されるいくつかの態様では、分子は、第3の結合特異性をさらに含み得る。
【0207】
いくつかの態様では、本明細書に記載される二重特異性分子は、結合特異性として少なくとも1種の抗体または例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvもしくは一本鎖Fv(scFV)を含めたその抗体断片を含む。Ladner et al.米国特許第4,946,778号に記載されるように、抗体はまた、軽鎖または重鎖二量体またはFvもしくは一本鎖コンストラクトなどのその任意の最小断片であり得る。
【0208】
ヒトモノクローナル抗体が好ましいが、本明細書に記載される二重特異性分子において利用することができるその他の抗体には、マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体がある。
【0209】
本明細書に記載される二重特異性分子は、当技術分野において公知の方法を使用して、構成要素としての結合特異性をコンジュゲートすることによって調製することができる。例えば、二重特異性分子のそれぞれの結合特異性を、別個に生成し、次いで、互いにコンジュゲートすることができる。結合特異性が、タンパク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤または架橋剤を、共有結合によるコンジュゲーションに使用することができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160: 1686、Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照のこと)。他の方法としては、Paulus (1985)Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132、Brennan et al. (1985)Science 229:81-83)およびGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375)に記載されているものが挙げられる。いくつかのコンジュゲーション剤としては、SATAおよびスルホ-SMCCがあり、いずれも、Pierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
【0210】
結合特異性が抗体である場合、これらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によってコンジュゲートされ得る。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、コンジュゲーションの前に、奇数、好ましくは、1つのスルフヒドロリ残基を含むように修飾される。
【0211】
あるいは、両方の結合特異性が、同じベクターにおいてコードされて、同じ宿主細胞において発現され、アセンブリーされてもよい。この方法は、二重特異性分子が、mAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、mAb×(scFv)2融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク質またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。二重特異性抗体は、それぞれの重鎖のC末端にscFvを含む抗体を含み得る。本明細書に記載される二重特異性分子は、1つの一本鎖抗体および結合性決定基を含む一本鎖分子であってもよく、または2つの結合性決定基を含む一本鎖二重特異性分子であってもよい。二重特異性分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0212】
二重特異性分子の、その特異的標的との結合は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、FACS分析、生物検定法(例えば、成長阻害)またはウエスタンブロットアッセイなどの当技術分野で認識される方法を使用して確認され得る。これらのアッセイは各々、一般に、対象の複合体に対して特異的な標識試薬(例えば、抗体)を使用することによって、特に対象とされるタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0213】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、少なくとも第1のパラトープおよび第2のパラトープを含み、第1のパラトープは、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ヘテロ二量体上の第1のエピトープと結合する。いくつかの態様では、第2のパラトープは、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)ヘテロ二量体上の第2のエピトープと結合する。いくつかの態様では、第1のエピトープおよび第2のエピトープは同じではない。いくつかの態様では、第1のエピトープおよび第2のエピトープは、オーバーラップしない。
【0214】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の重鎖、第1の軽鎖、第2の重鎖、および第2の軽鎖を含む。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖は異なる。いくつかの態様では、第1の軽鎖および第2の軽鎖は異なる。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖は異なり、第1の軽鎖および第2の軽鎖は同じである。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖は同じであり、第1の軽鎖および第2の軽鎖は異なる。
【0215】
第1の重鎖、第2の重鎖、第1の軽鎖、および第2の軽鎖は、本明細書において開示される任意の重鎖または軽鎖を含み得る。いくつかの態様では、第1の重鎖は、可変重鎖相補性決定領域(VH1-CDR)1、VH1-CDR2、およびVH1-CDR3を含む第1の可変重鎖領域(「VH1」)を含み、VH1-CDR3は、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1-CDR2は、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1-CDR1は、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、第1の軽鎖は、VL1-CDR1、VL1-CDR2、およびVL1-CDR3を含む第1の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL1-CDR3は、配列番号10、20、および30から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL1-CDR2は、配列番号9、19、および29から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL1-CDR1は、配列番号8、18、および28から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0216】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0217】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0218】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0219】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、および配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3を含む。
【0220】
いくつかの態様では、第2の重鎖は、VH2-CDR1、VH2-CDR2、およびVH2-CDR3を含む第2の可変重鎖領域(「VH2」)を含み、VH2-CDR3は、配列番号5、15、および25から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR2は、配列番号4、14、および24から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR1は、配列番号3、13、および23から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、第2の軽鎖は、VL2-CDR1、VL2-CDR2、およびVL2-CDR3を含む第2の可変軽鎖領域(「VL1」)を含み、VL2-CDR3は、配列番号20および30から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL2-CDR2は、配列番号19および29から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH2-CDR1は、配列番号18および28から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0221】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3、配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、配列番号15に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、および配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3を含む。
【0222】
特定の態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR1、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR2、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むVH1-CDR3、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR1、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR2、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL1-CDR3、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR1、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR2、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むVH2-CDR3、配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR1、配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR2、および配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むVL2-CDR3を含む。
【0223】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の可変重鎖領域(VH1)および第1の可変軽鎖領域(VL1)を含み、VH1は、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL1は、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0224】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第2の可変重鎖領域(VH2)および第2の可変軽鎖領域(VL2)を含み、VH2は、配列番号2、12、または22から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VL2は、配列番号7、17、または27から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0225】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VL1は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含み、VH2は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含み、VL2は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0226】
いくつかの態様では、(a)VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)VL1は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)VH2は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)VL2は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VH1は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含み、VL1は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含み、VH2は、配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、VL2は、配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0227】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第1の重鎖(H1)および第1の軽鎖(L1)を含み、H1は、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、L1は、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0228】
いくつかの態様では、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、第2の重鎖(H2)および第2の軽鎖(L2)を含み、H2は、配列番号1、11、21、31、34、または37から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、L2は、配列番号6、16、または26から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0229】
いくつかの態様では、第1の重鎖は、第2の重鎖と会合している。いくつかの態様では、第1の重鎖は、1つまたは複数の共有結合によって、第2の重鎖と会合している。いくつかの態様では、第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれは、IgG定常領域または1つもしくは複数のアミノ酸置換を含むIgG定常領域を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換は、第1の重鎖および第2の重鎖のヘテロ二量体化を促進する。任意のアミノ酸置換を、ヘテロ二量体化を促進するために使用することができる。いくつかの態様では、第1の重鎖は、第1の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖は、第2の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換またはその抗原結合部分を含み、第1の重鎖のノブは、第2の重鎖のホールと会合する。いくつかの態様では、第1の重鎖は、第1の重鎖の定常領域に、ホールを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第2の重鎖は、第2の重鎖の定常領域に、ノブを作成する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含み、第1の重鎖のホールは、第2の重鎖のノブと会合する。
【0230】
いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0231】
いくつかの態様では、H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、L1は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含み、H2は、配列番号34に記載されるアミノ酸配列を含み、L2は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0232】
いくつかの態様では、(a)H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)L1は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)H2は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(d)L2は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0233】
いくつかの態様では、H1は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含み、L1は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含み、H2は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含み、L2は、配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0234】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)のLAP-TGFβ1との結合を阻害する。いくつかの態様では、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)のLAP-TGFβ1との結合は、二重特異性抗体の不在下におけるインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)のLAP-TGFβ1との結合のレベルと比べて、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満に低減される。
【0235】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8、およびこれらの任意の組合せから選択されるインテグリンαvヘテロ二量体と結合することができる。
【0236】
いくつかの態様では、二重特異性抗体は、細胞接着を阻害する。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、腫瘍成長および/または転移を阻害する。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、無増悪生存期間を増大させる。いくつかの態様では、二重特異性抗体は、全生存期間を増大させる。
【0237】
II.C.イムノコンジュゲート、抗体誘導体および診断
本明細書に記載される抗インテグリンαv抗体は、サンプルの試験およびインビボ撮像を含む診断目的で使用することができ、この目的で、抗体(またはその結合断片)を、適当な検出可能な薬剤とコンジュゲートして、イムノコンジュゲートを形成することができる。診断目的では、適当な薬剤は、全身撮像のための放射性同位体ならびにサンプルの試験のための放射性同位体、酵素、蛍光標識および他の好適な抗体タグを含む、検出可能な標識である。
【0238】
本明細書に記載される任意の抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と連結させることができる検出可能な標識は、コロイド金などの金属ゾルを含む粒子標識、例えば、N2S2、N3S、もしくはN4型のペプチド性キレート剤とともに提示されるI125またはTc99などの同位体、蛍光マーカー、発光マーカー、リン光マーカーなどを含む発色団、ならびに所与の基質を検出可能なマーカーに変換する酵素標識およびポリメラーゼ連鎖反応などによる増幅後に示されるポリヌクレオチドタグを含め、インビトロ(in vitro)診断の分野において現在使用されている様々な種類のうちのいずれかであり得る。好適な酵素標識として、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどが挙げられる。例えば、標識は、アダマンチルメトキシホスホリルオキシフェニルジオキセタン(AMPPD)、ジナトリウム3-(4-(メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ{3.3.1.1 3,7}デカン}-4-イル)フェニルホスフェート(CSPD)などの1,2ジオキセタン基質ならびにCDPおよびCDP-STAR(登録商標)または当業者に周知の他の発光性基質、例えば、テルビウム(III)およびユーロピウム(III)などの好適なランタニドのキレートの変換後の化学発光の存在または形成を測定することによって検出される、酵素アルカリホスファターゼであり得る。検出手段は、選択された標識によって決定される。標識またはその反応産物の出現は、標識が粒子であり、適当なレベルで蓄積する場合には、裸眼で、または分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計などの機器を使用して、達成され得るが、すべて標準的な慣例に従う。
【0239】
いくつかの態様では、コンジュゲーション法は、実質的に(またはほぼ)非免疫原性である結合、例えば、ペプチド(すなわち、アミド)結合、スルフィド結合(立体障害)、ジスルフィド結合、ヒドラゾン結合およびエーテル結合を生じる。これらの結合は、ほぼ非免疫原性であり、血清内で妥当な安定性を示す(例えば、Senter, P. D., Curr. Opin. Chem. Biol. 13 (2009) 235-244、WO2009/059278、WO95/17886を参照のこと)。
【0240】
部分および抗体の生化学的性質に応じて、異なるコンジュゲーション戦略を用いることができる。部分が、50~500個のアミノ酸の天然に存在するまたは組換えである場合、標準的な手順は、タンパク質コンジュゲートの合成のための化学反応について記載した教則本にあり、当業者であれば容易に従うことができる(例えば、Hackenberger, C. P. R., and Schwarzer, D., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47 (2008) 10030-10074を参照されたい)。いくつかの態様では、抗体または部分内のマレイミド部分とシステイン残基との反応が使用される。これは、例えば、抗体のFabまたはFab’断片が使用される場合に、特に好適なカップリング化学反応である。あるいは、いくつかの態様では、抗体または部分のC末端へのカップリングが行われる。タンパク質、例えば、Fab断片のC末端修飾は、記載されるように行われ得る(Sunbul, M. and Yin, J., Org. Biomol. Chem. 7 (2009) 3361-3371)。
【0241】
一般に、部位特異的反応および共有結合カップリングは、天然のアミノ酸を、存在する他の官能基の反応性に直交性である反応性を有するアミノ酸に変換することに基づく。例えば、稀な配列構成内の特定のシステインは、アルデヒドに酵素変換され得る(Frese, M. A., and Dierks, T., ChemBioChem. 10 (2009) 425-427を参照のこと)。所与の配列構成における特定の酵素の、天然のアミノ酸との特異的酵素反応性を利用することによって、所望されるアミノ酸修飾を得ることもまた可能である(例えば、Taki, M. et al., Prot. Eng. Des. Sel. 17 (2004) 119-126、Gautier, A. et al. Chem. Biol. 15 (2008) 128-136を参照のこと。プロテアーゼに触媒されるC--N結合の形成は、Bordusa, F., Highlights in Bioorganic Chemistry (2004) 389-403で使用される)。部位特異的反応および共有結合カップリングはまた、末端アミノ酸の、適当な修飾試薬との選択的反応によっても達成され得る。
【0242】
N末端システインの、ベンゾニトリルとの反応性(Ren. H. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 48 (2009) 9658-9662を参照のこと)を使用して、部位特異的共有結合カップリングを達成することができる。
【0243】
天然の化学的ライゲーションはまた、C末端システイン残基に依存し得る(Taylor, E. Vogel; Imperiali, B, Nucleic Acids and Molecular Biology (2009), 22 (Protein Engineering), 65-96)。
【0244】
US6437095B1は、負に荷電したアミノ酸のストレッチ内のシステインの、正に荷電したアミノ酸のストレッチ内に位置するシステインとの早い反応に基づくコンジュゲーション法について記載している。
【0245】
部分はまた、合成ペプチドまたはペプチド模倣体であってもよい。ポリペプチドが化学合成される場合、直交性化学反応性を有するアミノ酸は、このような合成中に組み込まれ得る(例えば、de Graaf. A. J. et al., Bioconjug. Chem. 20 (2009) 1281-1295を参照のこと)。多種多様な直交性官能基が問題となっており、合成ペプチドに導入され得るため、このようなペプチドの、リンカーとのコンジュゲーションは、標準化学反応である。
【0246】
単一標識ポリペプチドを得るために、1:1の化学量論のコンジュゲートを、他のコンジュゲーション副産物からクロマトグラフィーによって分離してもよい。この手順は、色素標識した結合対メンバーおよび荷電リンカーを使用することにより容易となり得る。この種類の標識および高度に負に荷電した結合対メンバーを使用することにより、モノコンジュゲートしたポリペプチドは、非標識ポリペプチドおよび1種を上回るリンカーを有するポリペプチドから容易に分離されるが、これは、電荷および分子量における相違を分離に使用できるためである。蛍光色素は、標識した一価結合剤などの未結合成分から複合体を精製するのに有用であり得る。
【0247】
いくつかの態様では、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と結合する部分は、結合部分、標識部分、および生物学的に活性な部分からなる群から選択される。
【0248】
本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、イムノコンジュゲート、例えば、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成するように、治療剤とコンジュゲートされ得る。好適な治療剤として、抗代謝剤、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCにおいて、抗体および治療剤は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィドまたはヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。いくつかの態様では、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val(配列番号108)、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、またはGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号、同第6,989,452号および同第7,129,261号、PCT公開WO02/096910、WO07/038658、WO07/051081、WO07/059404、WO08/083312およびWO08/103693、米国特許公開第20060024317号、同第20060004081号および同第20060247295号に記載されるように調製することができる。
【0249】
いくつかの態様では、治療剤は、細胞毒素、非細胞毒性薬、放射性薬剤、第2の抗体、酵素、抗新生物剤、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0250】
いくつかの態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および細胞毒素を含む。細胞毒素は、当技術分野において公知の任意の細胞毒素から選択され得る。いくつかの態様では、細胞毒素は、ドラスタチン、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、マイタンシン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、センタナマイシン、SN38、ドキソルビシン、これらの誘導体、これらの合成類似体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。特定の態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および細胞毒素Aを含む。他の態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および非細胞毒性薬を含む。
【0251】
いくつかの態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および放射性薬剤を含む。いくつかの態様では、放射性薬剤は、放射性ヌクレオチドである。特定の態様では、放射性薬剤は、放射性ヨウ素を含む。特定の態様では、放射性薬剤は、131-ヨウ素を含む。他の態様では、放射性薬剤は、放射性アイソトープイットリウム-90を含む。
【0252】
いくつかの態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の抗体を含む。第2の抗体は、本開示に記載される任意の抗体であってもよく、これには、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-2、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、VISTA、CD96、CD27、GITR、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質と特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および抗PD-1抗体を含む。別の態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体およびニボルマブを含む。
【0253】
一態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体およびペグ化IL-2またはペグ化IL-10を含む。
【0254】
特定の態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および酵素を含む。いくつかの態様では、酵素は、グルコースオキシダーゼを含む。いくつかの態様では、酵素は、ペルオキシダーゼを含む。いくつかの態様では、酵素は、ミエロペルオキシダーゼを含む。いくつかの態様では、酵素は、グルコースオキシダーゼを含む。いくつかの態様では、酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼを含む。
【0255】
特定の態様では、イムノコンジュゲートは、抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および抗新生物剤を含む。抗新生物剤は、当技術分野において公知の任意のそのような薬剤であり得る。いくつかの態様では、抗新生物剤は、エピルビシンである。いくつかの態様では、抗新生物剤は、スーパー抗原である。特定の態様では、スーパー抗原は、ブドウ球菌エンテロトキシンA(staphylococcal enterotoxin A)(SEA/E-120、エスタフェナトックス)である。
【0256】
抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、本明細書に記載されるものは、インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を検出するためにも使用することができる。抗体は、例えば、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーにおいて、使用することができる。
【0257】
例えば、単剤療法または併用療法としての抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の他の使用は、本明細書の他の箇所、例えば、併用処置に関する節において提供される。
【0258】
II.D.核酸分子
本明細書に記載される別の態様は、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体をコードする核酸分子に関係する。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知のその他のものを含めた標準技術によって、その他の細胞成分またはその他の夾雑物、例えば、その他の細胞性核酸(例えば、その他の染色体DNA、例えば、自然界では単離されたDNAと連結している染色体DNA)またはタンパク質から精製された場合に、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分精製されたかもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、「単離される」かまたは「実質的に純粋にされる」。F. Ausubel, et al., ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照のこと。本明細書に記載される核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含有する場合も、含有しない場合もある。いくつかの態様では、核酸は、cDNA分子である。
【0259】
本明細書に記載される核酸は、標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載されるようなヒト免疫グロブリン遺伝子を保持するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体については、ハイブリドーマによって作製された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)から得られる抗体については、抗体をコードする核酸は、ライブラリーから回収され得る。
【0260】
本明細書に記載される一部の核酸分子は、抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体のVHおよびVL配列をコードするものである。
【0261】
本明細書に記載される核酸分子は、特定の配列、例えば、制限酵素認識配列を欠失するように、またはコドンを最適化するように、修飾されていてもよい。
【0262】
本明細書において開示される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を作製するための方法は、シグナルペプチドとともに重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む細胞株において、重鎖および軽鎖を発現させることを含み得る。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は、本明細書に包含される。
【0263】
VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するよう、標準組換えDNA技術によってこれらのDNA断片をさらに操作できる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域または可動性リンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片と作動可能に連結している。この文脈において使用されるような、用語「作動可能に連結された」は、2種のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるよう、2種のDNA断片が接続されることを意味するものとする。
【0264】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2、および/またはCH3)をコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えば、IgG1領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結され得る。
【0265】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、κまたはλ定常領域であり得る。
【0266】
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNA断片を、可動性リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする、別の断片に作動可能に連結し、その結果、VHおよびVL配列が、可動性リンカーによって接続されたVLおよびVH領域を有する連続した一本鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426;Huston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0267】
さらに、例えば、コドン最適化のために、保存的置換(すなわち、核酸分子の翻訳時に得られるアミノ酸配列を変更しない置換)を有する核酸分子が、本明細書において提供される。
【0268】
II.E.医薬組成物
医薬上許容される担体と一緒に製剤化された、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、または他の標的に対する抗体との組合せ、またはその抗原結合部分(単数または複数)のうちの1種または組合せを含有する組成物、例えば、医薬組成物がさらに提供される。このような組成物は、(例えば、2種以上の異なる)本明細書に記載される抗体またはイムノコンジュゲートまたは二重特異性分子のうち1種または組合せを含み得る。例えば、本明細書に記載される医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープと結合するか、または補完的活性を有する抗体(イムノコンジュゲートまたは二重特異体を含む)の組合せを含み得る。
【0269】
いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、1~300mg/mlもしくは100~300mg/mlの濃度で抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を含む。
【0270】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、併用療法において、すなわち、その他の薬剤と組み合わせて投与できる。例えば、併用療法は、少なくとも1種のその他の抗がん剤および/または例えば、T細胞刺激(例えば、活性化)剤などの免疫調節物質と組み合わせた、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を含み得る。併用療法において使用され得る治療薬の例は、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の使用に関する節において以下により詳細に記載される。
【0271】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、化学療法薬、小分子薬、および所与のがんに対する免疫応答を刺激する抗体から選択される少なくとも1つの他の薬剤と組み合わされる。いくつかの場合には、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、例えば、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35、および/もしくはTXGP1Lとしても知られる)抗体(例えば、BMS986178、もしくはMDX-1803)、抗CD137抗体、抗LAG-3抗体、抗GITR抗体、抗KIR抗体、抗TGFβ抗体、抗IL-10抗体、長時間作用型IL-10分子(例えば、IL-10-Fc融合体、もしくはペグ化IL-10、例えば、ARMO BioSciencesのAM0010)、長時間作用型IL-2(例えば、ペグ化IL-2分子、例えば、NektarのNKTR-214、US8,252,275、WO12/065086、およびWO15/125159を参照されたい)、抗VISTA抗体、抗CD96抗体、抗IL-8抗体、抗B7-H4、抗Fasリガンド抗体、抗CXCR4抗体、抗メソテリン抗体、抗CD27抗体、抗MICA/B抗体、またはこれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数と組み合わされる。
【0272】
他の態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、第2の抗体とともに製剤化される。いくつかの態様では、第2の抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-2、VISTA、CD96、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITR、MICA/B、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるタンパク質と特異的に結合する。
【0273】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗PD-1抗体である。抗PD-1抗体は、PD-1と結合し、PD-1およびPD-L1の相互作用を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、本明細書において開示される任意の抗PD-1抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、ニボルマブである。いくつかの態様では、第2の抗体は、ペンブロリズマブである。
【0274】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗PD-L1抗体である。抗PD-L1抗体は、PD-L1と結合し、PD-1およびPD-L1の相互作用を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書において開示される任意の抗PD-L1抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、アテゾリズマブである。いくつかの態様では、第2の抗体は、デュルバルマブである。いくつかの態様では、第2の抗体は、アベルマブである。
【0275】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗CTLA-4抗体である。抗CTLA-4抗体は、CTLA-4と結合し、その活性を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗CTLA-4抗体は、本明細書において開示される任意の抗CTLA-4抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、トレメリムマブである。いくつかの態様では、第2の抗体は、イピリムマブである。
【0276】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗LAG3抗体である。抗LAG3抗体は、LAG-3と結合し、その活性を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗LAG3抗体は、本明細書において開示される任意の抗LAG3抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、25F7である。
【0277】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗CD137抗体である。抗CD137抗体は、CD137と結合し、その活性を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、本明細書において開示される任意の抗CD137抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、ウレルマブである。
【0278】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗KIR抗体である。抗KIR抗体は、KIRと結合し、その活性を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗KIR抗体は、本明細書において開示される任意の抗KIR抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、リリルマブである。
【0279】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗GITR抗体である。抗GITR抗体は、GITRと結合し、その活性を阻害する、任意の抗体であり得る。いくつかの態様では、抗GITR抗体は、本明細書において開示される任意の抗GITR抗体である。いくつかの態様では、第2の抗体は、MK4166である。いくつかの態様では、第2の抗体は、TRX518である。
【0280】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗CD96抗体である。
【0281】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗TIM3抗体である。
【0282】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗VISTA抗体である。
【0283】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗NKG2a抗体である。
【0284】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗ICOS抗体である。
【0285】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗OX40抗体である。
【0286】
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗IL8抗体、例えば、HuMax(登録商標)-IL8(BMS-986253)である。
【0287】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、長時間作用型IL-10分子とともに製剤化される。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、IL-10-Fc融合分子とともに製剤化される。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、ペグ化IL-10、例えば、ARMO BioSciencesのAM0010とともに製剤化される。
【0288】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、長時間作用型IL-2とともに製剤化される。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、ペグ化IL-2分子、例えば、NektarのNKTR-214とともに製剤化される。US8,252,275、WO12/065086、およびWO15/125159を参照されたい。
【0289】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、増量剤をさらに含む。増量剤は、NaCl、マンニトール、グリシン、アラニン、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。他の態様では、本開示の組成物は、安定化剤を含む。安定化剤は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、アルギニン、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。他の態様では、本開示の組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、ポリソルベート80(PS80)、ポリソルベート20(PS20)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。特定の態様では、組成物は、キレート剤をさらに含む。キレート剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。
【0290】
他の態様では、組成物は、第3の抗体を含む。いくつかの態様では、第3の抗体は、本明細書において開示される任意の抗体である。
【0291】
一態様では、組成物は、NaCl、マンニトール、ペンテト酸(DTPA)、スクロース、PS80、およびこれらの任意の組合せをさらに含む。
【0292】
本明細書において、「医薬上許容される担体」として、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。いくつかの態様では、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮投与(例えば、注射または注入による)に好適である。皮下注射のオプションは、Halozyme TherapeuticsのENHANZE(登録商標)薬物デリバリー技術に基づき、これは、抗体を組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素(rHuPH20)とともに共製剤化することを含み、これにより、細胞外マトリックスに起因した皮下に送達することができる生物製剤および薬物の体積に対する従来的な制限が除去される(米国特許第7,767,429号)。投与経路に応じて、化合物を、酸および化合物を不活性化し得るその他の天然条件作用から保護するために、材料において、活性化合物、すなわち、抗体、免疫複合体または二重特異性分子をコーティングしてもよい。
【0293】
本明細書に記載される医薬化合物は、1種または複数の医薬上許容される塩を含み得る。「医薬上許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、何らかの望ましくない毒物学的影響を付与しない塩を指す(例えば、Berge, S. M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと)。このような塩の例として、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩として、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などといった非毒性無機酸に由来するものならびに脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などといった非毒性有機酸に由来するものが挙げられる。塩基付加塩として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどといったアルカリ土類金属に由来するものならびにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどといった非毒性有機アミンに由来するものが挙げられる。
【0294】
本明細書に記載される医薬組成物はまた、医薬上許容される抗酸化物質を含み得る。医薬上許容される抗酸化物質の例として、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどといった水溶性抗酸化物質、(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどといった油溶性抗酸化物質および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などといった金属キレート化剤が挙げられる。
【0295】
本明細書に記載される医薬組成物において使用され得る、適した水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどといった)およびそれらの適した混合物、オリーブオイルなどの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持できる。
【0296】
これらの組成物はまた、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌法手順、前掲によって、また種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることの両方によって確実にできる。糖、塩化ナトリウムなどといった等張剤を組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延する薬剤を含めることによって、注射用医薬品形態の長期の吸収を引き起こすことができる。
【0297】
医薬上許容される担体として、滅菌水溶液または分散物および滅菌注射用溶液または分散物の即時調製のための滅菌散剤が挙げられる。医薬上活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除いて、本明細書に記載される医薬組成物におけるその使用が考慮される。医薬組成物は、保存剤を含んでもよく、または保存剤を含まなくてもよい。補足活性化合物は、組成物中に組み込まれ得る。
【0298】
治療用組成物は、通常、製造および貯蔵の条件下で無菌で、安定でなくてはならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に適したその他の秩序構造として製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって維持できる。多くの場合、組成物は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムなどのポリアルコールを含むことができる。組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって、注射用組成物の長期吸収を引き起こすことができる。
【0299】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、上記で列挙された成分のうち1種または組合せとともに、適当な溶媒中に必要な量の活性化合物を組み込むことと、それに続く、滅菌精密濾過によって調製できる。一般に、分散物は、基本分散媒および本明細書で列挙されたものから必要なその他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌散剤の場合には、調製の方法として、その前もって滅菌濾過された溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)がある。
【0300】
単一投与形を生産するための担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療されている対象および特定の投与様式に応じて変わる。単一投与形を生産するための担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、一般に、治療効果を生産する組成物の量となる。一般に、医薬上許容される担体との組合せにおいて、この量は、100パーセントのうち、有効成分の約0.01パーセント~約99パーセント、約0.1パーセント~約70パーセント、または有効成分の約1パーセント~約30パーセントの範囲となる。
【0301】
投与計画は、最適の所望の応答(例えば、治療的応答)を提供するよう調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急事態によって示されるように、用量を比例的に低減または増大してもよい。投与の容易性および投与形の均一性のための投与単位形に非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書において、投与単位形とは、治療されている対象の単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生産するよう算出された所定の量の活性化合物を含有する。本明細書に記載される投与単位形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果ならびに(b)個体における感受性の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限によって決定され、それらに直接左右される。
【0302】
抗体は、持続放出製剤として投与でき、この場合には、あまり頻繁ではない投与が必要とされる。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変わる。一般に、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。投与の投与量および頻度は、治療が予防的であるか、治療的であるかに応じて変わり得る。予防的適用では、比較的少ない投与量が、比較的頻繁ではない間隔で長期間にわたって投与される。一部の患者は、生涯治療を受け続ける。治療的適用では、疾患の進行が低減または終結されるまで、患者が疾患の症状の部分的または完全寛解を示すまで、比較的短い間隔の比較的多い投与量が時には必要である。その後、患者は、予防的投与計画を投与されることがある。
【0303】
本明細書に記載される医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者とって毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効である有効成分の量を得るよう変えてもよい。選択される投与量レベルは、使用される本明細書に記載される特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与の時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用されるその他の薬物、化合物および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康および先の病歴および医薬の技術分野において周知の同様の因子を含めた種々の薬物動態因子に応じて変わる。
【0304】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の「治療上有効な投与量」は、疾患症状の重症度の低減、疾患症状のない期間の頻度および期間の増大または疾患苦痛による機能障害もしくは能力障害の防止をもたらし得る。がんに関連して、治療上有効な用量は、生存、例えば、全生存期間の増大、および/またはがんと関連する身体症状のさらなる増悪の予防をもたらし得る。がんの症状は、当技術分野で周知であり、例えば、普通ではない黒子の特徴、非対称、境界、色および/または直径を含めた黒子の外観の変化、新規に着色した皮膚領域、異常な黒子、爪の下の黒くなった領域、乳房のしこり、乳頭の変化、乳房嚢胞、乳房疼痛、死亡、体重減少、脱力感、過度の疲労、摂食障害、食欲の喪失、慢性の咳、息切れの悪化、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝臓転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、鼓腸、腹膜腔中の流体、膣出血、便秘、腹部膨隆、結腸の穿孔、急性腹膜炎(感染、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、多量の発汗、発熱、高血圧症、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋痙攣、結腸転移、肺転移、膀胱転移、肝臓転移、骨転移、腎臓転移および膵臓転移、嚥下困難などが挙げられる。
【0305】
疾患の早期または先行する徴候が存在する場合に望まれ得るような治療上有効な用量は、がんの発生を防ぐかまたは遅延し得る。がんの診断において使用される実験室試験は、化学(インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)レベルの測定を含む)、血液学、血清学および放射線学を含む。したがって、前記のうちいずれかをモニタリングする任意の臨床または生化学アッセイを使用して、特定の治療が、がんを治療するための治療上有効な用量であるか否かを調べてもよい。
【0306】
本明細書に記載される組成物は、当技術分野で公知の1種または複数の種々の方法を使用して、1種または複数の投与経路によって投与できる。投与経路および/または投与様式は、所望の結果に応じて変わる。本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与経路として、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または例えば、注射もしくは注入によるその他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書において、語句「非経口投与」とは、経腸および局所投与以外の、普通、注射による投与様式を意味し、制限するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が挙げられる。
【0307】
あるいは、本明細書に記載される抗体は潜在的に、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸性、舌下にまたは局所になど、非経口ではない経路によって投与できる。
【0308】
留置用剤、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含めた徐放性製剤など、活性化合物を、化合物を迅速な放出から保護する担体を用いて調製できる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤を調製するための多数の方法が、一般的に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。
【0309】
治療用組成物は、当技術分野で公知の医療装置を用いて投与できる。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載される治療用組成物は、米国特許第5,399,163号;同5,383,851号;同5,312,335号;同5,064,413号;同4,941,880号;同4,790,824号;または同4,596,556号に開示される装置などの注射針無し皮下注射装置を用いて投与できる。本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体とともに使用するための周知の留置用剤およびモジュールの例として、制御された速度で医薬を分配するための埋め込み可能な微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;皮膚を通って医薬を投与するための治療用装置を開示する同4,486,194号;正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する同4,447,233号;連続薬物送達のための可変流動埋め込み可能注入器具を開示する同4,447,224号;マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達システムを開示する同4,439,196号;および浸透圧薬物送達システムを開示する同4,475,196号が挙げられる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0310】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、インビボでの適切な分布を確実にするよう製剤化できる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多数の高親水性化合物を排除する。本明細書に記載される治療用化合物が、BBBを通過することを確実にするために(所望される場合、例えば、脳のがんについて)、それらを例えば、リポソーム中に製剤化できる。リポソームを作製する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;同5,374,548号;および同5,399,331号を参照のこと。リポソームは、特定の細胞または臓器中に選択的に輸送され、したがって、標的化された薬物送達を増強する1つまたは複数の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。例示的標的化部分として、葉酸またはビオチン(例えば、Low et al.の米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられ、K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0311】
III.本開示の方法
III.A.使用および方法
本開示の特定の態様は、対象を処置する方法であって、対象に、本明細書において開示される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体をコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を含むイムノコンジュゲート、またはこれらの任意の組合せを投与することを含む、方法を対象とする。
【0312】
本開示の特定の態様は、それを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物(例えば、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、イムノコンジュゲート、または医薬組成物)を投与することを含む、方法を対象とする。他の態様では、本開示は、それを必要とする対象において腫瘍細胞によるインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)の流出を阻害する方法であって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物を投与することを含む、方法を対象とする。他の態様では、本開示は、それを必要とする対象において、血清中のインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)の流出を低減する、および/または細胞表面上のインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を保持する方法であって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物を投与することを含む、方法を対象とする。他の態様では、本開示は、それを必要とする対象において腫瘍細胞を殺滅する行う方法であって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物を投与することを含む、方法を対象とする。他の態様では、本開示は、それを必要とする対象において腫瘍のサイズを低減させる方法であって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物を投与することを含む、方法を対象とする。他の態様では、本開示は、それを必要とする対象において腫瘍の転移を阻害することであって、対象に、有効用量の本明細書において開示される組成物を投与することを含む、腫瘍の転移の阻害を対象とする。いくつかの態様では、対象は、ヒトである。
【0313】
本開示の組成物は、任意の薬学的に許容される経路を使用して投与され得る。いくつかの態様では、組成物(例えば、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、イムノコンジュゲート、または医薬組成物)は、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内、局所、表皮、粘膜、またはこれらの任意の組合せで、投与される。いくつかの態様では、組成物は、静脈内投与される。いくつかの態様では、組成物は、皮下投与される。
【0314】
特定の態様では、本方法は、対象におけるがんのサイズ、例えば、腫瘍のサイズを低減させる。いくつかの態様では、がんのサイズは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%低減される。
【0315】
いくつかの態様では、本方法は、対象の全生存期間を増大させる。いくつかの態様では、全生存期間は、同じがんを有するが異なる治療法で処置された対象の平均全生存期間と比べて増大する。特定の態様では、全生存期間は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍増大する。いくつかの態様では、全生存期間は、少なくとも約1カ月、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約7カ月、少なくとも約8カ月、少なくとも約9カ月、少なくとも約10カ月、少なくとも約1カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約15カ月、少なくとも約18カ月、少なくとも約21カ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、または少なくとも約10年増大する。
【0316】
いくつかの態様では、本方法は、対象の無増悪生存期間を増大させる。いくつかの態様では、全生存期間は、同じがんを有するが異なる治療法で処置された対象の平均無増悪生存期間と比べて増大する。特定の態様では、無増悪生存期間は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍増大する。いくつかの態様では、全生存期間は、少なくとも約1カ月、少なくとも約2カ月、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、少なくとも約6カ月、少なくとも約7カ月、少なくとも約8カ月、少なくとも約9カ月、少なくとも約10カ月、少なくとも約1カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約15カ月、少なくとも約18カ月、少なくとも約21カ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、または少なくとも約10年増大する。
【0317】
いくつかの態様では、本方法は、対象の奏効率を増大させる。特定の態様では、本方法は、対象において完全奏功を誘導する。いくつかの態様では、本方法は、対象において部分奏功を誘導する。
【0318】
いくつかの態様では、本方法は、本明細書において開示される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(またはポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、もしくはイムノコンジュゲート)、および第2の治療法を投与することを含む。いくつかの態様では、第2の治療法は、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の前に投与される。いくつかの態様では、第2の治療法は、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の後に投与される。いくつかの態様では、第2の治療法は、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と同時に投与される。特定の態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の治療法は、別個に投与される。他の態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の治療法は、単一の製剤において投与される。
【0319】
第2の治療法は、当技術分野において公知の任意の他の治療法であり得る。いくつかの態様では、第2の治療法は、免疫療法を含む。いくつかの態様では、第2の治療法は、化学療法を含む。いくつかの態様では、第2の治療法は、放射線療法を含む。いくつかの態様では、第2の治療法は、外科手術を含む。いくつかの態様では、第2の治療法は、第2の治療剤を投与することを含む。
【0320】
特定の態様では、第2の治療剤は、第2の抗体を含む。いくつかの態様では、第2の治療剤は、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、NKG2A、CD27、グルココルチコイドに誘導されるTNFR関連タンパク質(GITR)、およびヘルペスウイルス進入媒介因子(HVEM)、プログラム死-1(PD-1)、プログラム死リガンド-1(PD-L1)、CTLA-4、BおよびTリンパ球減弱因子(BTLA)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、キラー細胞レクチン様受容体G1(KLRG-1)、ナチュラルキラー細胞受容体2B4(CD244)、CD160、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、およびT細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)の受容体、NKG2a、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CEACAM-1、CD96、CD52、HER2、ならびにこれらの任意の組合せから選択されるタンパク質と特異的に結合する、有効量の抗体を含む。
【0321】
XI.A.抗PD-1抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗PD-1抗体である。当技術分野において公知である抗PD-1抗体を、本明細書に記載される組成物および方法において使用することができる。高い親和性でPD-1と特異的に結合する様々なヒトモノクローナル抗体は、米国特許第8,008,449号に開示されている。米国特許第8,008,449号に開示されている抗PD-1ヒト抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を示すことが示されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用して表面プラズモン共鳴によって判定される場合、1×10-7M以下のKDで、ヒトPD-1と結合すること、(b)ヒトCD28、CTLA-4、またはICOSと実質的に結合しないこと、(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、T細胞増殖を増大させること、(d)MLRアッセイにおいて、インターフェロン-γ産生を増大させること、(e)MLRアッセイにおいて、IL-2分泌を増大させること、(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1と結合すること、(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1との結合を阻害すること、(h)抗原特異的メモリー応答を刺激すること、(i)抗体応答を刺激すること、ならびに(j)インビボで腫瘍細胞成長を阻害すること。本開示において使用可能な抗PD-1抗体としては、ヒトPD-1と特異的に結合し、前述の特徴のうちの少なくとも1つ、いくつかの態様では少なくとも5つを示す、モノクローナル抗体が挙げられる。
【0322】
他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第6,808,710号、同第7,488,802号、同第8,168,757号、および同第8,354,509号、米国出願第2016/0272708号、ならびにPCT出願WO2012/145493号、同WO2008/156712号、WO2015/112900、WO2012/145493、WO2015/112800、WO2014/206107、WO2015/35606、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2017/020291、WO2017/020858、WO2016/197367、WO2017/024515、WO2017/025051、WO2017/123557、WO2016/106159、WO2014/194302、WO2017/040790、WO2017/133540、WO2017/132827、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/106061、WO2017/19846、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、および同WO2017/133540号に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0323】
いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、5C4、BMS-936558、MDX-1106、およびONO-4538としても知られている)、ペンブロリズマブ(Merck、KEYTRUDA(登録商標)、ランブロリズマブ、およびMK-3475としても知られている、WO2008/156712を参照されたい)、PDR001(Novartis、WO2015/112900を参照されたい)、MEDI-0680(AstraZeneca、AMP-514としても知られている、WO2012/145493を参照されたい)、セミプリマブ(Regeneron、REGN-2810としても知られている、WO2015/112800を参照されたい)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA、Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照されたい)、BGB-A317(Beigene、WO2015/35606およびUS2015/0079109を参照されたい)、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine、SHR-1210としても知られている、WO2015/085847、Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照されたい)、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical、ANB011としても知られている、WO2014/179664を参照されたい)、GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals、WBP3055としても知られている、Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照されたい)、AM-0001(Armo)、STI-1110(Sorrento Therapeutics、WO2014/194302を参照されたい)、AGEN2034(Agenus、WO2017/040790を参照されたい)、MGA012(Macrogenics、WO2017/19846を参照されたい)、ならびにIBI308(Innovent、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、およびWO2017/133540を参照されたい)からなる群から選択される。
【0324】
一態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブである。ニボルマブは、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に防止し、それによって、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許第8,008,449号、Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846-56)。
【0325】
別の態様では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブである。ペンブロリズマブは、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)を対象とするヒト化モノクローナルIgG4(S228P)抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、米国特許第8,354,509号および同第8,900,587号に記載されている。
【0326】
開示される組成物および方法において使用可能な抗PD-1抗体としてはまた、ヒトPD-1と特異的に結合し、ヒトPD-1との結合について、本明細書において開示される任意の抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブと交差競合する、単離された抗体が挙げられる(例えば、米国特許第8,008,449号および同第8,779,105号、WO2013/173223を参照されたい)。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載される抗PD-1抗体のうちのいずれか、例えば、ニボルマブと同一のエピトープと結合する。抗原との結合について交差競合する抗体の能力は、これらのモノクローナル抗体が、抗原の同一のエピトープ領域と結合し、他の交差競合する抗体のその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合する抗体は、PD-1の同一のエピトープ領域との結合を踏まえると、参照抗体、例えば、ニボルマブのものと非常に類似する機能的特性を有することが予測される。交差競合する抗体は、標準的なPD-1結合アッセイ、例えば、Biacore分析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーにおいて、ニボルマブと交差競合する能力に基づいて容易に特定することができる(例えば、WO2013/173223を参照されたい)。
【0327】
特定の態様では、ヒトPD-1との結合について、ヒトPD-1抗体、ニボルマブと交差競合するか、またはそれと同一のエピトープ領域と結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与に関して、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、遺伝子操作された抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、遺伝子操作、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法によって調製および単離することができる。
【0328】
開示される本開示の組成物および方法において使用可能な抗PD-1抗体としてはまた、上述の抗体の抗原結合部分が挙げられる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが十分に示されている。
【0329】
開示される組成物および方法における使用に好適な抗PD-1抗体は、高い特異性および親和性でPD-1と結合し、PD-L1およびまたはPD-L2の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻害する抗体である。本明細書において開示される組成物または方法のいずれにおいても、抗PD-1「抗体」は、PD-1受容体と結合し、リガンド結合の阻害および免疫系の上方制御に関して完全抗体のものと類似の機能的特性を示す、抗原結合部分または断片を含む。特定の態様では、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1との結合について、ニボルマブと交差競合する。
【0330】
XI.B.抗PD-L1抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗PD-L1抗体である。当技術分野において公知である抗PD-L1抗体を、本開示の組成物および方法において使用することができる。本開示の組成物および方法において有用な抗PD-L1抗体の例は、米国特許第9,580,507号に開示される抗体を含む。米国特許第9,580,507号に開示されている抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を示すことが実証されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用して表面プラズモン共鳴によって判定される場合、1×10-7M以下のKDで、ヒトPD-L1と結合すること、(b)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、T細胞増殖を増大させること、(c)MLRアッセイにおいて、インターフェロン-γ産生を増大させること、(d)MLRアッセイにおいて、IL-2分泌を増大させること、(e)抗体応答を刺激すること、ならびに(f)T細胞、エフェクター細胞、および/または樹状細胞に対する制御性T細胞の作用を逆転させること。本開示において使用可能な抗PD-L1抗体としては、ヒトPD-L1と特異的に結合し、前述の特徴のうちの少なくとも1つ、いくつかの態様では少なくとも5つを示す、モノクローナル抗体が挙げられる。
【0331】
特定の態様では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(12A4、MDX-1105としても知られている、例えば、米国特許第7,943,743号およびWO2013/173223を参照されたい)、アテゾリズマブ(Roche、TECENTRIQ(登録商標)、MPDL3280A、RG7446としても知られている、米国特許第8,217,149号を参照されたく、またHerbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000も参照されたい)、デュルバルマブ(AstraZeneca、IMFINZI(商標)、MEDI-4736としても知られている、WO2011/066389を参照されたい)、アベルマブ(Pfizer、BAVENCIO(登録商標)、MSB-0010718Cとしても知られている、WO2013/079174を参照されたい)、STI-1014(Sorrento、WO2013/181634を参照されたい)、CX-072(Cytomx、WO2016/149201を参照されたい)、KN035(3D Med/Alphamab、Zhang et al., Cell Discov. 7:3 (March 2017)を参照されたい、LY3300054(Eli Lilly Co、例えば、WO2017/034916を参照されたい)、およびCK-301(Checkpoint Therapeutics、Gorelik et al., AACR:Abstract 4606 (Apr 2016)を参照されたい)からなる群から選択される。
【0332】
特定の態様では、PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))である。アテゾリズマブは、完全ヒト化IgG1モノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0333】
特定の態様では、PD-L1抗体は、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))である。デュルバルマブは、ヒトIgG1カッパモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0334】
特定の態様では、PD-L1抗体は、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))である。アベルマブは、ヒトIgG1ラムダモノクローナル抗PD-L1抗体である。
【0335】
他の態様では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、28-8、28-1、28-12、29-8、5H1、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0336】
開示される組成物および方法において使用可能な抗PD-L1抗体としてはまた、ヒトPD-L1と特異的に結合し、ヒトPD-L1との結合について、本明細書において開示される任意の抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、および/またはアベルマブと交差競合する、単離された抗体も挙げられる。いくつかの態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される抗PD-L1抗体のうちのいずれか、例えば、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、および/またはアベルマブと同一のエピトープと結合する。抗原との結合について交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が、抗原の同一のエピトープ領域と結合し、他の交差競合する抗体のその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合する抗体は、PD-L1の同一のエピトープ領域との結合を踏まえると、参照抗体、例えば、アテゾリズマブおよび/またはアベルマブのものと非常に類似する機能的特性を有することが予測される。交差競合する抗体は、標準的なPD-L1結合アッセイ、例えば、Biacore分析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーにおいて、アテゾリズマブおよび/またはアベルマブと交差競合する能力に基づいて容易に特定することができる(例えば、WO2013/173223を参照されたい)。
【0337】
特定の態様では、ヒトPD-L1との結合について、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、および/またはアベルマブのようなヒトPD-L1抗体と交差競合するか、またはそれと同一のエピトープ領域と結合する、抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与に関して、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、遺伝子操作された抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、遺伝子操作、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法によって調製および単離することができる。
【0338】
開示される本開示の組成物および方法において使用可能な抗PD-L1抗体としてはまた、上述の抗体の抗原結合部分が挙げられる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが十分に示されている。
【0339】
開示される組成物または方法における使用に好適な抗PD-L1抗体は、高い特異性および親和性でPD-L1と結合し、PD-1の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻害する抗体である。本明細書において開示される組成物または方法のいずれにおいても、抗PD-L1「抗体」は、PD-L1と結合し、受容体結合の阻害および免疫系の上方制御に関して完全抗体のものと類似の機能的特性を示す、抗原結合部分または断片を含む。特定の態様では、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-L1との結合について、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、および/またはアベルマブと交差競合する。
【0340】
XI.C.抗CTLA-4抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗CTLA-4抗体である。当技術分野において公知である抗CTLA-4抗体を、本開示の組成物および方法において使用することができる。本開示の抗CTLA-4抗体は、CTLA-4のヒトB7受容体との相互作用を破壊するように、ヒトCTLA-4と結合する。CTLA-4のB7との相互作用により、CTLA-4受容体を有するT細胞の不活性化をもたらすシグナルが伝達されるため、この相互作用の破壊は、そのようなT細胞の活性化を効果的に誘導、増強、または延長し、それによって、免疫応答を誘導、増強、または延長する。
【0341】
高い親和性でCTLA-4と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第6,984,720号に開示されている。その他の抗CTLA-4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第5,977,318号、同第6,051,227号、同第6,682,736号、および同第7,034,121号、ならびに国際公開WO2012/122444、WO2007/113648、WO2016/196237、およびWO2000/037504に記載されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許第6,984,720号において開示されている抗CTLA-4ヒトモノクローナル抗体は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を示すことが実証されている:(a)Biacore分析によって判定される場合、少なくとも約107M-1、または約109M-1、または約1010M-1~1011M-1、またはそれより高い平衡結合定数(Ka)によって反映される結合親和性で、ヒトCTLA-4と特異的に結合すること、(b)少なくとも約103、約104、または約105m-1s-1の動力学的結合定数(ka)、(c)少なくとも約103、約104、または約105m-1s-1の動力学的解離定数(kd)、ならびに(d)CTLA-4のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)との結合を阻害すること。本開示に有用な抗CTLA-4抗体としては、ヒトCTLA-4と特異的に結合し、前述の特徴のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つを示す、モノクローナル抗体が挙げられる。
【0342】
特定の態様では、CTLA-4抗体は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標)、MDX-010、10D1としても知られる、米国特許第6,984,720号を参照されたい)、MK-1308(Merck)、AGEN-1884(Agenus Inc.、WO2016/196237を参照されたい)、およびトレメリムマブ(AstraZeneca、チシリムマブ、CP-675,206としても知られる、WO2000/037504およびRibas, Update Cancer Ther. 2(3): 133-39 (2007)を参照されたい)からなる群から選択される。具体的な態様では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。
【0343】
具体的な態様では、CTLA-4抗体は、本明細書において開示される組成物および方法における使用に関して、イピリムマブである。イピリムマブは、CTLA-4のそのB7リガンドとの結合を遮断し、それによって、T細胞活性化を刺激し、進行性黒色腫を有する患者において全生存期間(OS)を改善する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体である。
【0344】
具体的な態様では、CTLA-4抗体は、トレメリムマブである。
【0345】
具体的な態様では、CTLA-4抗体は、MK-1308である。
【0346】
具体的な態様では、CTLA-4抗体は、AGEN-1884である。
【0347】
いくつかの態様では、CTLA-4抗体は、非フコシル化または低フコシル化である。いくつかの態様では、CTLA-4抗体は、ADCCおよび/またはADCP活性の増強を示す。いくつかの態様では、CTLA-4抗体は、PCT/US18/19868に記載されるBMS-986218である。
【0348】
開示される組成物および方法において使用可能な抗CTLA-4抗体はまた、ヒトCTLA-4と特異的に結合し、ヒトCTLA-4との結合について、本明細書において開示される任意の抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する、単離された抗体を含む。いくつかの態様では、抗CTLA-4抗体は、本明細書に記載される抗CTLA-4抗体のうちのいずれか、例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと同一のエピトープと結合する。抗原との結合について交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が、抗原の同一のエピトープ領域と結合し、他の交差競合する抗体のその特定のエピトープ領域との結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合する抗体は、CTLA-4の同一のエピトープ領域との結合を踏まえると、参照抗体、例えば、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブのものと非常に類似する機能的特性を有することが予測される。交差競合する抗体は、標準的なCTLA-4結合アッセイ、例えば、Biacore分析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーにおいて、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する能力に基づいて容易に特定することができる(例えば、WO2013/173223を参照されたい)。
【0349】
特定の態様では、ヒトCTLA-4との結合について、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブのようなヒトCTLA-4抗体と交差競合するか、またはそれと同一のエピトープ領域と結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与に関して、これらの交差競合する抗体は、キメラ抗体、遺伝子操作された抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体である。そのようなキメラ、遺伝子操作、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野において周知の方法によって調製および単離することができる。
【0350】
開示される本開示の組成物および方法において使用可能な抗CTLA-4抗体としてはまた、上述の抗体の抗原結合部分が挙げられる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが十分に示されている。
【0351】
開示される方法または組成物における使用に好適な抗CTLA-4抗体は、高い特異性および親和性でCTLA-4と結合し、CTLA-4の活性を遮断し、CTLA-4のヒトB7受容体との相互作用を破壊する抗体である。本明細書において開示される組成物または方法のいずれにおいても、抗CTLA-4「抗体」は、CTLA-4と結合し、CTLA-4のヒトB7受容体との相互作用の阻害および免疫系の上方制御に関して完全抗体のものと類似の機能的特性を示す、抗原結合部分または断片を含む。特定の態様では、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA-4との結合について、イピリムマブおよび/またはトレメリムマブと交差競合する。
【0352】
XI.D.抗LAG-3抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗LAG-3抗体である。本開示の抗LAG-3抗体は、ヒトLAG-3と結合する。LAG-3と結合する抗体は、国際公開第WO/2015/042246号ならびに米国公開第2014/0093511号および同第2011/0150892号に開示されている。
【0353】
本開示において有用な例示的なLAG-3抗体は、25F7(米国公開第2011/0150892号に記載される)である。本開示において有用な追加の例示的なLAG-3抗体は、BMS-986016である。一態様では、組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と交差競合する。別の態様では、組成物に有用な抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016と同一のエピトープと結合する。他の態様では、抗LAG-3抗体は、25F7またはBMS-986016の6つのCDRを含む。
【0354】
XI.E.抗CD137抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗CD137抗体である。抗CD137抗体は、CD137を発現する免疫細胞と特異的に結合し、それを活性化し、腫瘍細胞に対する免疫応答、特に、細胞傷害性T細胞応答を刺激する。CD137と結合する抗体は、米国公開第2005/0095244号、ならびに米国特許第7,288,638号、同第6,887,673号、同第7,214,493号、同第6,303,121号、同第6,569,997号、同第6,905,685号、同第6,355,476号、同第6,362,325号、同第6,974,863号、および同第6,210,669号に開示されている。
【0355】
いくつかの態様では、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号に記載されているウレルマブ(BMS-663513)(20H4.9-IgG4[10C7またはBMS-663513])である。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、米国特許第7,288,638号に記載されているBMS-663031(20H4.9-IgG1)である。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、米国特許第6,887,673号に記載されている4E9またはBMS-554271である。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、米国特許第7,214,493号、同第6,303,121号、同第6,569,997号、同第6,905,685号、または同第6,355,476号に開示されている抗体である。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、米国特許第6,362,325号に記載されている1D8もしくはBMS-469492、3H3もしくはBMS-469497、または3E1である。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、発行された米国特許第6,974,863号に開示されている抗体である(例えば、53A2)。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、発光された米国特許第6,210,669号に開示されている抗体である(例えば、1D8、3B8、または3E1)。いくつかの態様では、抗体は、PfizerのPF-05082566(PF-2566)である。他の態様では、本開示に有用な抗CD137抗体は、本明細書において開示される抗CD137抗体と交差競合する。いくつかの態様では、抗CD137抗体は、本明細書において開示される抗CD137抗体と同一のエピトープと結合する。他の態様では、本開示において有用な抗CD137抗体は、本明細書において開示される抗CD137抗体の6つのCDRを含む。
【0356】
XI.F.抗KIR抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗KIR3抗体である。KIRと特異的に結合する抗体は、NK細胞上のキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)とそれらのリガンドとの間の相互作用を遮断する。これらの受容体を遮断することにより、NK細胞の活性化、および潜在的には後者による腫瘍細胞の破壊が促進される。抗KIR抗体の例は、国際公開第WO/2014/055648号、同WO2005/003168号、同WO2005/009465号、同WO2006/072625号、同WO2006/072626号、同WO2007/042573号、同WO2008/084106号、同WO2010/065939号、同WO2012/071411号、および同第WO/2012/160448号に開示されている。
【0357】
本開示において有用な1つの抗KIR抗体は、国際公開WO2008/084106号に最初に記載された、リリルマブ(BMS-986015、IPH2102、または1-7F9のS241P変異体とも称される)である。本開示において有用な追加の抗KIR抗体は、国際公開WO2006/003179号に記載される、1-7F9(IPH2101とも称される)である。一態様では、本組成物の抗KIR抗体は、KIRとの結合に関して、リリルマブまたはI-7F9と交差競合する。別の態様では、抗KIR抗体は、リリルマブまたはI-7F9と同一のエピトープと結合する。他の態様では、抗KIR抗体は、リリルマブまたはI-7F9の6つのCDRを含む。
【0358】
XI.G.抗GITR抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗GITR抗体である。抗GITR抗体は、ヒトGITR標的と特異的に結合し、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(GITR)を活性化する、任意の抗GITR抗体であり得る。GITRは、制御性T細胞、エフェクターT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および活性化樹状細胞を含む、複数種類の免疫細胞の表面上に発現される、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである(「抗GITRアゴニスト抗体」)。具体的には、GITR活性化は、エフェクターT細胞の増殖および機能を増大させ、同様に、活性化制御性T細胞によって誘導される抑制を抑止する。加えて、GITR刺激は、他の免疫細胞、例えば、NK細胞、抗原提示細胞、およびB細胞の活性を増大させることによって、抗腫瘍免疫を促進する。抗GITR抗体の例は、国際公開第WO/2015/031667号、同第WO2015/184,099号、同第WO2015/026,684号、同第WO11/028683号、および同第WO/2006/105021号、米国特許第7,812,135号および同第8,388,967号、ならびに米国公開第2009/0136494号、同第2014/0220002号、同第2013/0183321号、および同第2014/0348841号に開示されている。
【0359】
一態様では、本開示において有用な抗GITR抗体は、TRX518(例えば、Schaer et al. Curr Opin Immunol. (2012) Apr; 24(2): 217-224およびWO/2006/105021に記載される)である。別の態様では、抗GITR抗体は、MK4166、MK1248、ならびにWO11/028683およびU.S. 8,709,424に記載される抗体から選択され、例えば、配列番号104を含むVH鎖、および配列番号105を含むVL鎖を含む(配列番号は、WO11/028683またはU.S. 8,709,424からのものである)。特定の態様では、抗GITR抗体は、WO2015/031667に開示される抗GITR抗体、例えば、それぞれ、WO2015/031667の配列番号31、71、および63を含むVH CDR1~3、ならびにWO2015/031667の配列番号5、14、および30を含むVL CDR1~3を含む抗体である。特定の態様では、抗GITR抗体は、WO2015/184099に開示される抗GITR抗体、例えば、抗体Hum231#1もしくはHum231#2、またはそれらのCDR、またはそれらの誘導体(例えば、pab1967、pab1975、もしくはpab1979)である。特定の態様では、抗GITR抗体は、JP2008278814、WO09/009116、WO2013/039954、US20140072566、US20140072565、US20140065152、もしくはWO2015/026684に開示される抗GITR抗体であるか、またはINBRX-110(INHIBRx)、LKZ-145(Novartis)、もしくはMEDI-1873(MedImmune)である。特定の態様では、抗GITR抗体は、PCT/US2015/033991に記載される抗GITR抗体(例えば、28F3、18E10、または19D3の可変領域を含む抗体)である。例えば、抗GITR抗体は、以下のVHおよびVL鎖、またはそれらのCDRを含む抗体である。
VH:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVS(配列番号78)、および
VL:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号79);または
VH:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGFHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKFYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGQLDYYYYYVMDVWGQGTTVTVSS(配列番号80)、および
VL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号81);または
VH:
VQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYAGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGRIAVAFYYSMDVWGQGTTVTVSS(配列番号82)、および
VL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIK(配列番号83)
【0360】
特定の態様では、上記のVHおよびVL軽鎖の対、またはそれらのCDRを含む抗体は、野生型、または例えばエフェクターレスとなるような突然変異型のいずれかである、IgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。一態様では、抗GITR抗体は、以下の重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0361】
重鎖:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYEGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGGSMVRGDYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号84)、および
【0362】
軽鎖:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号85)、または
【0363】
重鎖:
qvqlvesgggvvqpgrslrlscaasgftfssygmhwvrqapgkglewvaviwyegsnkyyadsvkgrftisrdnskntlylqmnslraedtavyycarggsmvrgdyyygmdvwgqgttvtvssastkgpsvfplapsskstsggtaalgclvkdyfpepvtvswnsgaltsgvhtfpavlqssglyslssvvtvpssslgtqtyicnvnhkpsntkvdkrvepkscdkthtcppcpapeaegapsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevkfnwyvdgvevhnaktkpreeqynstyrvvsvltvlhqdwlngkeykckvsnkalpssiektiskakgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppvldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspg(配列番号86)、および
【0364】
軽鎖:
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSALAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号87)
【0365】
ある特定の態様では、抗GITR抗体は、本明細書に記載される抗GITR抗体、例えば、TRX518、MK4166、または本明細書に記載されるVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体と交差競合する。いくつかの態様では、抗GITR抗体は、本明細書に記載される抗GITR抗体、例えば、TRX518、MK4166、または本明細書に記載されるVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体のものと同一のエピトープと結合する。特定の態様では、抗GITR抗体は、TRX518、MK4166の6つのCDR、または本明細書に記載されるVHドメインおよびVLドメインアミノ酸配列を含む抗体のものを含む。
【0366】
XI.H.抗TIM3抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗TIM3抗体である。いくつかの態様では、抗TIM3抗体は、国際公開第WO2018013818号、同第WO/2015/117002号(例えば、MGB453、Novartis)、同第WO/2016/161270号(例えば、TSR-022、Tesaro/AnaptysBio)、同第WO2011155607号、同第WO2016/144803号(例えば、STI-600、Sorrento Therapeutics)、同第WO2016/071448号、同第WO17055399号、同第WO17055404号、同第WO17178493号、同第WO18036561号、同第WO18039020号(例えば、Ly-3221367、Eli Lilly)、同第WO2017205721号、同第WO17079112号、同第WO17079115号、同第WO17079116号、同第WO11159877号、同第WO13006490号、同第WO2016068802号、同第WO2016068803号、同第WO2016/111947号、同第WO/2017/031242号に開示される抗TIM3抗体から選択される。
【0367】
XI.I.抗OX40抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35、および/またはTXGP1Lとしても知られている)抗体である。いくつかの態様では、抗OX40抗体は、国際公開第WO20160196228号に記載されるBMS-986178(Bristol-Myers Squibb Company)である。いくつかの態様では、抗OX40抗体は、国際公開第WO95012673号、同第WO199942585号、同第WO14148895号、同第WO15153513号、同第WO15153514号、同第WO13038191号、同第WO16057667号、同第WO03106498号、同第WO12027328号、同第WO13028231号、同第WO16200836号、同WO17063162号、同第WO17134292号、同WO17096179号、同WO17096281号、および同WO17096182号に記載される抗OX40抗体から選択される。
【0368】
XI.J.抗NKG2A抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗NKG2A抗体である。NKG2Aは、ナチュラルキラー(NK)細胞およびTリンパ球のサブセットに発現されるC型レクチン受容体ファミリーのメンバーである。具体的には、NKG2Aは、主として、腫瘍浸潤先天免疫エフェクターNK細胞、ならびに一部のCD8+ T細胞に発現される。その天然のリガンドであるヒト白血球抗原E(HLA-E)は、固形腫瘍および血液腫瘍に発現される。NKG2Aは、HLA-Eと結合する阻害性受容体である。
【0369】
いくつかの態様では、抗NKG2A抗体は、NKG2AのそのリガンドHLA-Eとの相互作用を遮断し、したがって抗腫瘍免疫応答の活性化を可能にする、ヒトモノクローナル抗体であるBMS-986315である。いくつかの態様では、抗NKG2A抗体は、T細胞、NK細胞、および/または腫瘍浸潤免疫細胞を活性化するチェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、抗NKG2A抗体は、例えば、WO2006/070286(Innate Pharma S.A.、University of Genova)、米国特許第8,993,319号(Innate Pharma S.A.、University of Genova)、WO2007/042573(Innate Pharma S/A、Novo Nordisk A/S、University of Genova)、米国特許第9,447,185号(Innate Pharma S/A、Novo Nordisk A/S、University of Genova)、WO2008/009545(Novo Nordisk A/S)、米国特許第8,206,709号、同第8,901,283号、同第9,683,041号(Novo Nordisk A/S)、WO2009/092805(Novo Nordisk A/S)、米国特許第8,796,427号および同第9,422,368号(Novo Nordisk A/S)、WO2016/134371(Ohio State Innovation Foundation)、WO2016/032334(Janssen)、WO2016/041947(Innate)、WO2016/041945(Academisch Ziekenhuis Leiden H.O.D.N. LUMC)、WO2016/041947(Innate Pharma)、ならびにWO2016/041945(Innate Pharma)に記載される抗NKG2A抗体から選択される。
【0370】
XI.K.抗ICOS抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗ICOS抗体である。ICOSは、CD28スーパーファミリーのメンバーである免疫チェックポイントタンパク質である。ICOSは、T細胞活性化後にT細胞上に発現される55~60kDaのI型膜貫通タンパク質であり、そのリガンドであるICOS-L(B7H2)と結合した後にT細胞活性化を共刺激する。ICOSはまた、誘導性T細胞共刺激因子、CVID1、AILIM、誘導性共刺激因子、CD278、活性化誘導性リンパ球免疫媒介性分子、およびCD278抗原としても知られている。
【0371】
いくつかの態様では、抗ICOS抗体は、ヒトICOSと結合しそれを刺激するヒト化IgGモノクローナル抗体である、BMS-986226である。いくつかの態様では、抗ICOS抗体は、例えば、WO2016/154177(Jounce Therapeutics, Inc.)、WO2008/137915(MedImmune)、WO2012/131004(INSERM、French National Institute of Health and Medical Research)、EP3147297(INSERM、French National Institute of Health and Medical Research)、WO2011/041613(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)、EP2482849(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)、WO1999/15553(Robert Koch Institute)、米国特許第7,259,247号および同第7,722,872号(Robert Kotch Institute)、WO1998/038216(Japan Tobacco Inc.)、米国特許第7,045,615号、同第7,112,655号、および同第8,389,690号(Japan Tobacco Inc.)、米国特許第9,738,718号および同第9,771,424号(GlaxoSmithKline)、ならびにWO2017/220988(Kymab Limited)に記載される抗ICOS抗体から選択される。
【0372】
XI.L.抗TIGIT抗体
いくつかの態様では、第2の抗体は、抗TIGIT抗体である。いくつかの態様では、抗TIGIT抗体は、BMS-986207である。いくつかの態様では、抗TIGIT抗体は、WO2016/106302に記載されるクローン22G2である。いくつかの態様では、抗TIGIT抗体は、WO2017/053748に記載されるMTIG7192A/RG6058/RO7092284またはクローン4.1D3である。いくつかの態様では、抗TIGIT抗体は、例えば、WO2016/106302(Bristol-Myers Squibb Company)およびWO2017/053748(Genentech)に記載される抗TIGIT抗体から選択される。
【0373】
XI.M.追加の抗がん剤
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗IL-10抗体と組み合わせて使用される。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、長時間作用型IL-10分子と組み合わせて使用される。いくつかの態様では、長時間作用型IL-10分子は、IL-10-Fc融合分子であり得る。いくつかの態様では、長時間作用型IL-10分子は、ペグ化IL-10、例えば、AM0010(ARMO BioSciences)であり得る。
【0374】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗IL-2抗体と組み合わせて使用される。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、長時間作用型IL-2分子と組み合わせて使用される。いくつかの態様では、長時間作用型IL-2は、ペグ化IL-2、例えば、NKTR-214(Nektar、US8,252,275、WO12/065086、およびWO15/125159を参照されたい)であり得る。
【0375】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗VISTA抗体と組み合わせて使用される。
【0376】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗CD96抗体と組み合わせて使用される。
【0377】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗IL-8抗体、例えば、HuMax(登録商標)-IL8と組み合わせて使用される。
【0378】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗TGFβ抗体と組み合わせて使用される。
【0379】
いくつかの他の態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗B7-H4抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗B7-H4抗体は、国際公開第WO/2009/073533号に開示される抗B7-H4である。
【0380】
特定の態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗Fasリガンド抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗Fasリガンド抗体は、国際公開第WO/2009/073533号に開示される抗Fasリガンドである。
【0381】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗CXCR4抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗CXCR4抗体は、米国公開第2014/0322208号に開示される抗CXCR4[例えば、ウルクプルマブ(BMS-936564)]である。
【0382】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗メソテリン抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗メソテリン抗体は、米国特許第8,399,623号に開示される抗メソテリンである。
【0383】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗HER2抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗HER2抗体は、ハーセプチン(米国特許第5,821,337号)、トラスツズマブ、またはアド-トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla、例えば、WO/2001/000244)である。
【0384】
態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗CD27抗体と組み合わせて使用される。態様では、抗CD-27抗体は、例えば、米国特許第9,169,325号に開示されるヒトCD27のアゴニストであるヒトIgG1抗体である、バルリルマブ(「CDX-1127」および「1F5」としても知られている)である。
【0385】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、抗CD73抗体と組み合わせて使用される。特定の態様では、抗CD73抗体は、CD73.4.IgG2C219S.IgG1.1fである。
【0386】
特定の態様では、第2の治療法は、化学療法剤を投与することを含む。いくつかの態様では、化学療法剤は、腫瘍細胞上のインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)発現を誘導する。いくつかの態様では、化学療法剤は、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬(IMiD)、Bet阻害剤、およびこれらの任意の組合せから選択される。いくつかの態様では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、カーフィルゾミブ、オプロゾミブ、およびマリゾミブから選択される。特定の態様では、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブを含む。
【0387】
いくつかの態様では、第2の治療法は、放射線療法を含む。当技術分野において公知の任意の放射線療法を、第2の治療法として使用することができる。
【0388】
いくつかの態様では、第2の治療法は、先天免疫細胞を活性化する薬剤を投与することを含む。いくつかの態様では、先天免疫細胞を活性化する薬剤は、NLRP3アゴニストを含む。いくつかの態様では、NLRP3アゴニストは、尿酸一ナトリウム一水和物(MSU)および/またはワクチンアジュバントであるミョウバンを含む。いくつかの態様では、先天免疫細胞を活性化する薬剤は、toll様受容体7(TLR7)アゴニストである。いくつかの態様では、TLR7アゴニストは、イミキモド(R837)、GS-9620(Tsai et al., J. Virology doi:10.1128/JVI.02166-16 (Feb. 8, 2017)を参照されたい)、ORN R-2336(Miltenyl Biotec)、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0389】
いくつかの態様では、第2の治療法は、ナチュラルキラー(NK)細胞、CD8+ T細胞、またはその両方の生存を増強させる薬剤を投与することを含む。いくつかの態様では、薬剤は、IL-2を含む。特定の態様では、薬剤は、ペグ化IL-2を含む。
【0390】
特定の態様では、第2の治療法は、ドキソルビシン[ADRIAMYCIN(登録商標)]、シスプラチン、カルボプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル[LEUKERAN(登録商標)]、シクロホスファミド[CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標)]、レナリドマイド[REVLIMID(登録商標)]、ボルテゾミブ[VELCADE(登録商標)]、デキサメタゾン、ミトキサントロン、エトポシド、シタラビン、ベンダムスチン[TREANDA(登録商標)]、リツキシマブ[RITUXAN(登録商標)]、イホスファミド、ビンクリスチン[ONCOVIN(登録商標)]、フルダラビン[FLUDARA(登録商標)]、サリドマイド[THALOMID(登録商標)]、アレムツズマブ[CAMPATH(登録商標)]、オファツムマブ[ARZERRA(登録商標)]、エベロリムス[AFINITOR(登録商標)、ZORTRESS(登録商標)]、カーフィルゾミブ(KYPROLISTM)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される薬剤を投与することを含む。
【0391】
XI.N.がん
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、がんを有する患者におけるがん性細胞に対する免疫応答を増強し得る。がんを有する対象を処置するための方法であって、対象が処置される、例えば、その結果、がん性腫瘍の成長が阻害もしくは低減される、および/または腫瘍が退縮する、および/または生存期間が延長されるように、対象に、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を単独で使用して、がん性腫瘍の成長を阻害することができる。あるいは、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、以下に記載されるように、別の薬剤、例えば、別の免疫原性剤、標準がん処置または別の抗体とともに使用することができる。
【0392】
したがって、対象において、例えば、腫瘍細胞の成長を阻害することによって、がんを処置する方法であって、対象に、治療上有効な量の、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、野生型IgG定常領域または変更されたエフェクター機能を有する定常領域変異体を有するMICA.36、MICA.52、MICA.54、MICA.2、および71C2、またはその抗原結合部分を投与することを含む方法が、本明細書において提供される。抗体は、ヒト抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(例えば、本明細書に記載されるヒト抗ヒトインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体のうちのいずれか)であり得る。本開示の抗体を使用して成長を阻害することができるがんには、典型的に免疫療法に応答性であるがんおよび典型的に免疫療法に応答性でないものが含まれる。処置することができるがんにはまた、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)陽性がんも含まれる。がんは、固形腫瘍または血液悪性腫瘍(液体腫瘍)を伴うがんであってもよい。治療のためのがんの限定されない例として、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平非小細胞肺がん(NSCLC)および非扁平NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(例えば、明細胞癌)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン難治性前立腺腺癌)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵臓がん、神経膠芽腫(神経膠芽腫多形)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸癌腫および頭頸部がん(または癌腫)、胃がん(gastric cancer)、生殖細胞腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼球内悪性黒色腫などの転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門領域のがん、精巣がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、上皮小体腺のがん、副腎のがん、柔組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、直腸がん、小児の固形腫瘍、尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄の軸の腫瘍、脳のがん、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、アスベストによって誘導されるものを含めた環境誘導性がん、ウイルス関連がんまたはウイルス起源のがん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連もしくは起源の腫瘍))および前記のがんの任意の組合せが挙げられる。
【0393】
処置のためのがんの非限定的な例としては、2種の主要な血液細胞系統のいずれか、すなわち、骨髄系細胞株(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、および肥満細胞を産生する)またはリンパ球系細胞株(B、T、NK、および形質細胞を産生する)に由来する血液悪性腫瘍、例えば、すべての種類の白血病、リンパ腫、および骨髄腫、例えば、急性、慢性、リンパ球性、および/または骨髄性白血病、例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(MO)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3変異体[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加症を伴うM4変異体[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、単発性顆粒球性肉腫、および緑色腫;リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞血液悪性腫瘍、例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ球系組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞型リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性、およびリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、真性組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ球系統の造血系腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉症またはセザリー症候群とも呼ばれる)、およびワルデンストレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);骨髄腫、例えば、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞リンパ腫;骨髄系統の造血系腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫(rhabdomyoscarcoma)を含む間葉系起源の腫瘍;セミノーマ、奇形癌腫、星状細胞腫、シュワン腫を含む中枢および末梢神経の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、セミノーマ、甲状腺濾胞性がん、および奇形癌を含む、その他の腫瘍、リンパ球系統の造血系腫瘍、例えば、T細胞障害、例えば、小細胞および大脳様細胞型を含むT前リンパ球性白血病(T-PLL)を含むがこれらに限定されない、T細胞およびB細胞腫瘍;T細胞型の大顆粒リンパ球性白血病(LGL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管中心性(鼻腔)T細胞リンパ腫;ならびに前記のがんの任意の組合せが挙げられる。
【0394】
本明細書に記載される方法はまた、転移性がん、切除不能な難治性がん(例えば、遮断性CTLA-4またはPD-1抗体を用いる、例えば、これまでの免疫療法に対して難治性のがん)および/または再発性がんの治療のために使用してもよい。
【0395】
いくつかの態様では、対象は、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、黒色腫、膀胱がん、膵臓がん、胃がん、結腸がん、腎細胞癌(RCC)、小細胞肺がん(SCLC)、中皮腫、肝細胞癌、前立腺がん、多発性骨髄腫、および前記がんの組合せから選択されるがんを有する。
【0396】
いくつかの態様では、対象は、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、黒色腫、膀胱がん、膵臓がん、胃がん、結腸がん、および前記がんの組合せから選択されるがんを有する。
【0397】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、以前の処置、例えば、免疫-腫瘍学薬物もしくは免疫療法薬を用いた以前の処置に対して不適切な応答を示したかもしくはその後進行したがんを有する患者に、または不応性もしくは耐性、本質的に不応性もしくは耐性のいずれかである(例えば、PD-1経路アンタゴニストに対して不応性である)がんを有する患者に、または耐性もしくは不応性状態が獲得された場合に投与される。例えば、第1の治療法に対して応答性でないかもしくは十分に応答性でない対象、または処置後、例えば、抗PD-1での処置後に、疾患の進行が見られる対象を、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の、単独または別の治療法(例えば、抗PD-1治療法)と組み合わせた投与によって、処置することができる。
【0398】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、これまでに免疫-腫瘍学薬剤、例えば、PD-1経路アンタゴニストを受容していない(すなわち、それを用いた処置を受けていない)患者に、投与される。
【0399】
いくつかの態様では、対象におけるがんを処置する方法は、まず、対象が、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)陽性である、例えば、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を発現する腫瘍細胞を有するかどうかを判定すること、ならびに対象がインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)陽性がん細胞を有する場合、対象に、例えば、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を投与することを含む。がんを有する対象を、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体で処置する方法は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を発現するがん細胞を有する対象に、治療上有効な量のインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を投与することを含み得る。対象が、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体での処置に応答するかどうかを予測するための方法であって、患者のがん細胞におけるインテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)のレベルを判定することを含み、ならびに対象のがん細胞が、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)陽性である場合、対象は、インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体での処置に応答する可能性が高い、方法もまた、本明細書において提供される。
【0400】
いくつかの態様では、対象におけるがんを処置する方法は、まず、対象が、PD-L1またはPD-1陽性である、例えば、PD-L1またはPD-1を発現する腫瘍細胞またはTILを有するかどうかを判定すること、ならびに対象がPD-L1またはPD-1陽性がん細胞またはTIL細胞を有する場合、対象に、例えば、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(および適宜PD-1またはPD-L1アンタゴニスト)を投与することを含む。がんを有する対象を、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(および適宜PD-1またはPD-L1アンタゴニスト)で処置する方法は、PD-1またはPD-L1を発現するがん細胞またはTIL細胞を有する対象に、治療上有効な量の抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(および適宜PD-L1またはPD-1アンタゴニスト)を投与することを含み得る。対象が、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体(および適宜PD-1またはPD-L1アンタゴニスト)での処置に応答するかどうかを予測するための方法であって、患者のがんまたはTIL細胞におけるPD-L1またはPD-1のレベルを判定することを含み、ならびに対象のがんまたはTIL細胞が、PD-L1またはPD-1陽性である場合、対象は、MICA抗体(および適宜PD-1またはPD-L1アンタゴニスト)での処置に応答する可能性が高い、方法もまた、本明細書において提供される。
【0401】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、標準治療処置とともに投与され得る。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、維持療法、例えば、腫瘍の発生または再発を予防することを意図する治療法として、投与されてもよい。
【0402】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、別の処置、例えば、放射線、外科手術または化学療法とともに、投与され得る。例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の補助療法は、微小転移が存在し得る危険性がある場合、および/または再発の危険性を低減するために、投与され得る。
【0403】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、単剤療法として投与されてもよく、唯一の免疫刺激療法として投与されてもよい。インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)に対する抗体、例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)はまた、免疫原性剤、例えば、がん性細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞ならびに免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトした細胞と組み合わせることができる(He et al (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの限定されない例として、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1および/もしくはチロシナーゼのペプチドなどの黒色腫抗原のペプチドまたはサイトカインGM-CSFを発現するようトランスフェクトされた腫瘍細胞が挙げられる。(以下にさらに論じられる)。
【0404】
ヒトにおいて、黒色腫などの一部の腫瘍は、免疫原性であることが示されている。血漿中の可溶性インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)のレベルを低減させることによってT細胞活性化の閾値を低下させることにより、宿主における腫瘍応答が活性化され、非免疫原性腫瘍または限定された免疫原性を有するものの処置が可能となり得る。
【0405】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、ワクチン接種プロトコールと組み合わせることができる。腫瘍に対するワクチン接種のための多数の実験戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62; Logothetis, C, 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738を参照のこと; DeVita et al. (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Edition中のRestifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043も参照のこと)。これらの戦略のうちの1つでは、ワクチンは、自己または同種腫瘍細胞を使用して調製される。これらの細胞性ワクチンは、腫瘍細胞がGM-CSFを発現するよう形質導入される場合に最も有効であるとわかっている。GM-CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力なアクチベーターであるとわかっている(Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 3539-43)。
【0406】
種々の腫瘍における遺伝子発現および大規模遺伝子発現パターンの研究は、いわゆる腫瘍特異的抗原の定義につながった(Rosenberg, S A (1999) Immunity 10: 281-7)。多くの場合には、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍において、また腫瘍が生じた細胞において発現される分化抗原、例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp-2である。より重要なことに、これらの抗原の多くは、宿主における腫瘍特異的T細胞の標的であると示され得る。これらのタンパク質に対する免疫応答を生じさせるために、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの収集物とともに使用できる。これらのタンパク質は、正常には、自己抗原として免疫系によって見なされ、したがって、それらに対して寛容である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成に必要であり、ヒトがんの85%超において、および限定された数の体細胞組織のみにおいて発現されるタンパク質テロメラーゼを含み得る(Kim et al. (1994) Science 266: 2011-2013)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を変更するか、または2種の無関係の配列間の融合タンパク質(すなわち、フィラデルフィア染色体中のbcr-abl)もしくはB細胞腫瘍からのイディオタイプを作製する体細胞突然変異のためにがん細胞において発現される「ネオ抗原」であり得る。
【0407】
その他の腫瘍ワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)のようなヒトがんに関わるウイルスに由来するタンパク質を含み得る。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与とともに使用することができる腫瘍特異的抗原の別の形態として、腫瘍組織自体から単離された精製された熱ショックタンパク質(HSP)がある。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞に由来するタンパク質の断片を含有し、これらのHSPは、腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達で高度に効率的である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588; Tamura et al. (1997) Science 278:117-120)。
【0408】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答をプライムするために使用できる強力な抗原提示細胞である。DCは、エキソビボで生産され、種々のタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物を搭載させることができる(Nestle et al. (1998) Nature Medicine 4: 328-332)。DCはまた、同様にこれらの腫瘍抗原を発現するよう遺伝的手段によって形質導入できる。DCはまた、免疫処置を目的として腫瘍細胞と直接融合されている(Kugler et al. (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン化の方法として、より強力な抗腫瘍応答を活性化するよう、DC免疫処置を、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与と効率的に組み合わせることができる。
【0409】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与はまた、標準がん治療(例えば、外科手術、放射線および化学療法)と組み合わせることができる。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与は、化学療法治療計画と効率的に組み合わせることができる。これらの場合には、投与される化学療法試薬の用量を低減することが可能であり得る(Mokyr et al. (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの一例として、黒色腫の治療のためのデカルバジン(decarbazine)と組み合わせた抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体がある。このような組合せの別の例として、黒色腫の処置のためのインターロイキン-2(IL-2)、例えば、ペグ化IL-2と組み合わせた抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体がある。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および化学療法の組合せ使用の背後の科学的論拠は、ほとんどの化学療法薬化合物の細胞傷害性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増大をもたらすはずであるということである。細胞死による、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与との相乗作用をもたらし得るその他の併用治療として、放射線照射、手術およびホルモン欠乏がある。これらのプロトコールの各々は、宿主において腫瘍抗原の供給源を作製する。血管新生阻害剤もまた、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の投与と組み合わせることができる。血管新生の阻害は、腫瘍細胞死につながり、これが、腫瘍抗原を宿主抗原提示経路に供給し得る。
【0410】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、適宜免疫-腫瘍学薬剤(例えば、抗PD-1抗体)とともに、腫瘍細胞に対するFcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を標的とする二重特異性抗体と組み合わせて使用できる(例えば、米国特許第5,922,845号および同第5,837,243号を参照のこと)。2種の別個の抗原を標的とするよう二重特異性抗体を使用できる。例えば、抗Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her-2/neu)二重特異性抗体が、腫瘍の部位に対するマクロファージを標的とするために使用されている。この標的化は、腫瘍特異的応答を効率的に活性化し得る。これらの応答のT細胞アームは、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の作用によって増大される。あるいは、抗原は、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーと結合する二重特異性抗体の使用によってDCに直接送達され得る。
【0411】
腫瘍は、多種多様な機序によって宿主免疫監視を回避する。これらの機序のうち多くは、腫瘍によって発現され、免疫抑制であるタンパク質の不活性化によって克服され得る。これらは、中でも、TGF-β(Kehrl et al. (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL-10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahne et al. (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。これらの実体の各々に対する抗体は、免疫抑制剤の効果に対抗し、宿主による腫瘍免疫応答に有利に働くよう、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせて使用できる。
【0412】
宿主免疫応答性を活性化するその他の抗体を、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせて使用できる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する樹状細胞の表面上の分子を含む。抗CD40抗体は、効率的に、T細胞ヘルパー活性の代わりとなることができ(Ridge et al. (1998) Nature 393: 474-478)、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体とともに使用できる。CTLA-4(例えば、米国特許第5,811,097)、OX-40(Weinberg et al. (2000) Immunol 164: 2160-2169)、4-1BB(Melero et al. (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997)およびICOS(Hutloff et al. (1999) Nature 397: 262-266)などのT細胞共刺激分子に対する抗体を活性化することはまた、T細胞活性化のレベルの増大を提供し得る。PD1またはPD-L1の阻害剤もまた、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体とともに使用してもよい。その他の組合せは、本明細書の別の箇所に提供される。
【0413】
骨髄移植は現在、造血起源の種々の腫瘍を処置するために使用されている。この処置の結果として、移植片対宿主病があるが、治療的利点が、移植片対腫瘍の応答から得ることができる。インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)阻害を使用して、ドナーから移植された腫瘍特異的T細胞の有効性を増大することができる。
【0414】
抗原特異的T細胞のエキソビボ活性化および拡大、および腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するのための、これらの細胞のレシピエントへの養子移植を含むいくつかの実験治療プロトコールも存在する(Greenberg & RiddellScience 285: 546-51)。これらの方法はまた、CMVなどの感染性病原体に対するT細胞応答を活性化するよう使用できる。抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の存在下でのエキソビボ活性化は、養子導入されたT細胞の頻度および活性を増大することができる。
【0415】
III.B.併用療法
上記に提供される併用療法に加えて、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、本明細書に記載されるものはまた、例えば、以下に記載されるように、がんを処置するための併用療法において使用できる。
【0416】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を、1種または複数のさらなる薬剤、例えば、免疫応答を刺激するのに有効である小分子薬、抗体またはその抗原結合部分と同時投与し、それによって、対象において免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御する併用療法の方法が、本明細書において提供される。
【0417】
一般に、例えば、本明細書に記載される、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、(i)刺激性(例えば、共刺激性)分子(例えば、受容体もしくはリガンド)のアゴニストならびに/または(ii)免疫細胞、例えば、T細胞上の阻害性シグナルもしくは分子(例えば、受容体もしくはリガンド)のアンタゴニストと組み合わせることができ、これらのいずれも、免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答の増幅をもたらす。いくつかの態様では、免疫-腫瘍学薬剤は、(i)刺激性(共刺激性を含む)分子(例えば、受容体もしくはリガンド)のアゴニスト、または(ii)細胞、例えば、T細胞活性化を阻害するものまたは自然免疫に関与するもの、例えば、NK細胞上の阻害性(共阻害性を含む)分子(例えば、受容体もしくはリガンド)のアンタゴニストであり、ここで、免疫-腫瘍学薬剤は、自然免疫を増強する。そのような免疫-腫瘍学薬剤は、しばしば、免疫チェックポイント制御因子、例えば、免疫チェックポイント阻害剤または免疫チェックポイント刺激剤と称される。
【0418】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーである、刺激性分子または阻害性分子を標的とする薬剤とともに投与される。例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、本明細書に記載されるものは、免疫応答を増大させるために、IgSFファミリーのメンバーを標的とする薬剤とともに、対象に投与され得る。例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、B7-1、B7-2、B7-H1(PD-L1)、B7-DC(PD-L2)、B7-H2(ICOS-L)、B7-H3、B7-H4、B7-H5(VISTA)およびB7-H6を含む、膜結合型リガンドのB7ファミリーのメンバー、またはB7ファミリーメンバーと特異的に結合する共刺激性もしくは共阻害性受容体もしくはリガンドを標的とする(もしくはそれと特異的に結合する)、薬剤とともに、投与され得る。
【0419】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、分子のTNFおよびTNFRファミリーのメンバー(リガンドまたは受容体)、例えば、CD40およびCD40L、OX-40、OX-40L、CD70、CD27L、CD30、CD30L、4-lBBL、CD137、TRAIL/Apo2-L、TRAILR1/DR4、TRAILR2/DR5、TRAILR3、TRAILR4、OPG、RANK、RANKL、TWEAKR/Fn 14、TWEAK、BAFFR、EDAR、XEDAR、TACI、APRIL、BCMA、LTpR、LIGHT、DcR3、HVEM、VEGI/TL1A、TRAMP/DR3、EDA1、EDA2、TNFR1、リンホトキシンa/TNFp、TNFR2、TNFa、LTpR、リンホトキシンa1β2、FAS、FASL、RELT、DR6、TROYならびにNGFRを標的とする薬剤とともに、投与され得る(例えば、Tansey (2009) Drug Discovery Today 00: 1を参照のこと)。
【0420】
いくつかの態様では、本方法は、本明細書において開示される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、および以下の薬剤のうちの1つまたは複数を投与することを含む。
(1)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、GITR、およびLAG-3、ガレクチン9、CEACAM-1、BTLA、CD69、ガレクチン-1、TIGIT、CD113、GPR56、VISTA、B7-H3、B7-H4、2B4、CD48、GARP、PD1H、LAIR1、TIM-1、TIM-3、およびTIM-4など、T細胞活性化を阻害するタンパク質(例えば、免疫チェックポイント阻害因子)のアンタゴニスト(阻害剤もしくは遮断剤)、ならびに/または
(2)B7-1、B7-2、CD28、4-1BB(CD137)、4-1BBL、GITR、ICOS、ICOS-L、OX40、OX40L、CD70、CD27、CD40、DR3およびCD28Hなど、T細胞活性化を刺激するタンパク質のアゴニスト。
【0421】
上記のタンパク質のうちの1つを調節し、がんを治療するために抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、例えば、本明細書に記載されるものと組み合わせることができる例示的薬剤として、YERVOY(登録商標)(イピリムマブ)またはトレメリムマブ(CTLA-4に対する)、ガリキシマブ(B7.1に対する)、BMS-936558(PD-1に対する)、MK-3475(PD-1に対する)、アテゾリズマブ(TECECTRIQ(登録商標))、AMP224(B7DCに対する)、BMS-936559(B7-H1に対する)、MPDL3280A(B7-H1に対する)、MEDI-570(ICOSに対する)、AMG557(B7H2に対する)、MGA271(B7H3に対する)、IMP321(LAG-3に対する)、BMS-663513(CD137に対する)、PF-05082566(CD137に対する)、CDX-1127(CD27に対する)、抗OX-40(Providence Health Services)、huMAbOX40L(OX40Lに対する)、アタシセプト(TACIに対する)、CP-870893(CD40に対する)、ルカツムマブ(CD40に対する)、ダセツズマブ(CD40に対する)、ムロモナブ-CD3(CD3に対する)、抗GITR抗体MK4166、TRX518、Medi1873、INBRX-110、LK2-145、GWN-323、GITRL-Fc、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0422】
がんの治療のために抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせることができるその他の分子として、NK細胞上の阻害性受容体のアンタゴニストまたはNK細胞上の活性化受容体のアゴニストが挙げられる。例えば、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を、KIRのアンタゴニスト(例えば、リリルマブ(lirilumab))と組み合わせることができる。
【0423】
T細胞活性化は、可溶性サイトカインによっても制御され、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、T細胞活性化を阻害するサイトカインのアンタゴニストまたはT細胞活性化を刺激するサイトカインのアゴニストとともに、例えばがんを有する対象に投与され得る。
【0424】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を、(i)T細胞活性化を阻害する、IgSFファミリーもしくはB7ファミリーもしくはTNFファミリーのタンパク質のアンタゴニスト(または阻害剤もしくは遮断剤)またはT細胞活性化を阻害するサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、TGF-β、VEGF「免疫抑制サイトカイン」)のアンタゴニストおよび/または(ii)免疫応答を刺激するための、例えば、がんなどの増殖性疾患を治療するためのIgSFファミリー、B7ファミリーもしくはTNFファミリーの、またはT細胞活性化を刺激するサイトカインの刺激性受容体のアゴニストと組み合わせて使用できる。
【0425】
併用療法のためのさらにその他の薬剤として、マクロファージまたは単球を阻害または枯渇させる薬剤、それだけには限らないが、RG7155(WO11/70024、WO11/107553、WO11/131407、WO13/87699、WO13/119716、WO13/132044)またはFPA-008(WO11/140249、WO13169264、WO14/036357)を含めたCSF-1Rアンタゴニスト抗体などのCSF-1Rアンタゴニストが挙げられる。
【0426】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、TGF-βシグナル伝達を阻害する薬剤とともに投与してもよい。
【0427】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせることができるさらなる薬剤として、腫瘍抗原提示を増強する薬剤、例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞性ワクチン、CpGオリゴヌクレオチドおよびイミキモド、または腫瘍細胞の免疫原性を増強する治療法(例えば、アントラサイクリン)が挙げられる。
【0428】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせることができるさらなる他の治療法として、Treg細胞を枯渇または遮断する治療法、例えば、CD25に特異的に結合する薬剤が挙げられる。
【0429】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせることができる別の治療法は、インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼまたは一酸化窒素シンテターゼなどの代謝酵素を阻害する治療法である。好適なIDOアンタゴニストとして、例えば、INCB-024360(WO2006/122150、WO07/75598、WO08/36653、WO08/36642)、インドキシモド、NLG-919(WO09/73620、WO09/1156652、WO11/56652、WO12/142237)、またはF001287が挙げられる。
【0430】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体とともに使用され得る別のクラスの薬剤として、アデノシンの形成を阻害する薬剤、例えばCD73阻害剤またはアデノシンA2A受容体を阻害する薬剤が挙げられる。
【0431】
がんを治療するために抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体と組み合わせることができる他の治療法として、T細胞アネルギーまたはT細胞消耗を逆転/防止する治療法ならびに腫瘍部位における先天免疫活性化および/または炎症を引き起こす治療法が挙げられる。
【0432】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、1種を上回る免疫-腫瘍学薬剤と組み合わせてもよく、例えば、次の:腫瘍抗原の提示を増強する治療法(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞性ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド);例えば、CTLA-4および/もしくはPD1/PD-L1/PD-L2経路を阻害するならびに/またはTregもしくは他の免疫抑制細胞を枯渇もしくは遮断することによって、負の免疫制御を阻害する治療法;例えば、CD-137、OX-40および/もしくはCD40もしくはGITR経路を刺激するアゴニストならびに/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストを用いて、正の免疫調節を刺激する治療法;抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増大させる治療法;例えば、CD25のアンタゴニスト(例えば、ダクリズマブ)を使用してまたはエキソビボでの抗CD25ビーズ枯渇によって腫瘍におけるTregなどのTregを枯渇または阻害する治療法;腫瘍における抑制骨髄系細胞の機能に影響を及ぼす治療法;腫瘍細胞の免疫原性を増強する治療法(例えば、アントラサイクリン);遺伝子修飾された細胞、例えば、キメラ抗原受容体によって修飾された細胞(CAR-T療法)を含む、養子T細胞またはNK細胞移入;インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼまたは一酸化窒素シンテターゼなどの代謝酵素を阻害する治療法;T細胞アネルギーまたはT細胞消耗を逆転/防止する治療法;腫瘍部位における先天免疫活性化および/または炎症を引き起こす治療法;免疫刺激サイトカインの投与;あるいは免疫抑制サイトカインの遮断のうちの1種または複数など、免疫経路の複数の要素を標的とするコンビナトリアルアプローチと組み合わせてもよい。
【0433】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、1種または複数の、陽性共刺激性受容体をライゲーションするアゴニスト剤、阻害性受容体によるシグナル伝達を減弱する遮断薬、アンタゴニストならびに1種または複数の、抗腫瘍T細胞の頻度を全身性に増大する薬剤、腫瘍微小環境内のそれぞれの免疫抑制経路に克服する(例えば阻害性受容体の関与(例えば、PD-L1/PD-1相互作用)を遮断しTregを枯渇または阻害し(例えば、抗CD25モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ)を使用して、またはエキソビボ抗CD25ビーズ枯渇によって)、IDOなどの代謝酵素を阻害するか、またはT細胞アネルギーもしくは消耗を逆転させる/防ぐ)薬剤および先天性免疫活性化および/または腫瘍部位での炎症の引き金を引く薬剤と一緒に使用できる。
【0434】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、対象が、BRAF V600突然変異に関して陽性である場合、BRAF阻害剤と一緒に対象に投与される。
【0435】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、IL-2、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、VISTA、CD96、GITR、またはこれらの任意の組合せと特異的に結合する抗体と一緒に、対象に投与される。
【0436】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および組合せ療法を、治療されている適応症(例えば、がん)に対するその特定の有用性について選択されるその他の周知の療法とともに使用してもよい。本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体の組合せを、公知の医薬上許容される薬剤(単数または複数)と逐次使用してもよい。
【0437】
例えば、本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および組合せ療法は、放射線照射および/または化学療法、(例えば、カンプトテシン(CPT-11)、5-フルオロウラシル(5-FU)、シスプラチン、ドキソルビシン、イリノテカン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン-パクリタキセル(タキソール)、ドキソルビシン、5-FUまたはカンプトテシン+apo2l/TRAIL(6X combo)を使用する)、1種または複数のプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはMG132)、1種または複数のBcl-2阻害剤(例えば、BH3I-2’(bcl-xl阻害剤)、インドールアミンジオキシゲナーゼ-1(IDO1)阻害剤(例えば、INCB24360、インドキシモド、NLG-919、またはF001287)、AT-101(R-(-)-ゴシポール誘導体)、ABT-263(小分子)、GX-15-070(オバトクラックス(obatoclax))またはMCL-1(骨髄系白血病細胞分化タンパク質-1)アンタゴニスト)、iAP(アポトーシスタンパク質の阻害剤)アンタゴニスト(例えば、smac7、smac4、小分子smacミメティック、合成smacペプチド(Fulda et al., Nat Med 2002;8:808-15)、ISIS23722(LY2181308)またはAEG-35156(GEM-640))、HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)阻害剤、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、血管新生阻害剤(例えば、ベバシズマブ)、VEGFおよびVEGFRを標的化する抗血管新生剤(例えば、アバスチン)、合成トリテルペノイド(Hyer et al, Cancer Research 2005;65:4799-808を参照のこと)、c-FLIP(細胞性FLICE阻害性タンパク質)モジュレーター(例えば、PPARy(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の天然および合成リガンド、5809354または5569100)、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブ)、トラスツズマブ、セツキシマブ、テムシロリムス、ラパマイシンおよびテムシロリムスなどのmTOR阻害剤、ボルテゾミブ、JAK2阻害剤、HSP90阻害剤、PI3K-AKT阻害剤、レナリドマイド(Lenalildomide)、GSK3P阻害剤、IAP阻害剤および/または遺伝毒性薬物などのさらなる治療と組み合わせて(例えば、同時または別個に)使用できる。
【0438】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および組合せ療法は、1種または複数の抗増殖性細胞傷害性薬剤と組み合わせてさらに使用できる。抗増殖性細胞傷害性薬剤として使用してもよい化合物のクラスとして、それだけには限らないが、以下が挙げられる:
【0439】
アルキル化剤(制限するものではないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素およびトリアゼンを含む):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))ホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジンおよびテモゾロミド。
【0440】
代謝拮抗剤(制限するものではないが、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含む):メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカププリン、6-チオグアニン、フルダラビンホスフェート、ペントスタチンおよびゲムシタビン。
【0441】
当技術分野で公知のその他のマイクロチューブリン分解防止剤に加えて、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体、制限するものではないが、タキサン、パクリタキセル(パクリタキセルは、TAXOLTMとして市販されている)、ドセタキセル、ディスコデルモリド(DDM)、ジクチオスタチン(DCT)、ペロルシド(Peloruside)A、エポチロン、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、フラノエポチロンD、デスオキシエポチロンBl、[17]-デヒドロデスオキシエポチロンB、[18]デヒドロデスオキシエポチロンB、C12,13-シクロプロピル-エポチロンA、C6-C8架橋エポチロンA、トランス-9,10-デヒドロエポチロンD、シス-9,10-デヒドロエポチロンD、16-デスメチルエポチロンB、エポチロンBIO、ディスコデルモリド(discoderomolide)、パツピロン(patupilone)(EPO-906)、KOS-862、KOS-1584、ZK-EPO、ABJ-789、XAA296A(ディスコデルモリド(discoderomolide))、TZT-1027(ソブリドチン)、ILX-651(タシドチン塩酸塩(tasidotin hydrochloride))、ハリコンドリンB、エリブリンメシル酸塩(Eribulin mesylate)(E-7389)、ヘミアステリン(HTI-286)、E-7974、クリプトフィシン、LY-355703、マイタンシノイドイムノコンジュゲート(DM-1)、MKC-1、ABT-751、T1-38067、T-900607、SB-715992(イスピネシブ(ispinesib))、SB-743921、MK-0731、STA-5312、エリュテロビン、17β-アセトキシ-2-エトキシ-6-オキソ-B-ホモ-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、シクロストレプチン、イソラウリマリド、ラウリマリド、4-エピ-7-デヒドロキシ-14,16-ジデメチル-(+)-ディスコデルモリドおよびクリプトチロン(cryptothilone)1と組み合わせるための適した抗増殖性薬剤。
【0442】
本明細書に記載される抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を用いる治療とともに、またはそれに先立って異常に増殖性の細胞を静止状態にすることが望ましい場合には、17a-エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、メゲストロールアセテート、メチルプレドニゾロン、メチル-テストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、メドロキシプロゲステロンアセテート、リュープロリド、フルタミド、トレミフェン、ZOLADEXTM(登録商標)などのホルモンおよびステロイド(合成類似体を含む)も、患者に投与できる。本明細書に記載される方法または組成物を使用する場合には、鎮吐剤などの、臨床設定において腫瘍成長または転移の調節において使用されるその他の薬剤も、望まれるように投与できる。
【0443】
いくつかの態様では、本明細書において論じられる抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の薬剤の組合せを、医薬上許容される担体中の単一組成物として同時に、または医薬上許容される担体中の抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の薬剤を有する別個の組成物として同時に、投与できる。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および第2の薬剤の組合せは、逐次的に投与され得る。2つの薬剤の投与は、例えば、30分間、60分間、90分間、120分間、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日間、5日間、7日間、または1週間もしくは数週間離れた時点で開始してもよく、または第2の薬剤の投与は、例えば、第1の薬剤を投与した30分後、60分後、90分後、120分後、3時間後、6時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、3日後、5日後、7日後、または1週間後もしくは数週間後に開始してもよい。
【0444】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体および/または第2の薬剤と組み合わせることができる抗新生物抗体としては、リツキサン(登録商標)(リツキシマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、ベキサール(登録商標)(トシツモマブ)、ゼヴァリン(登録商標)(イブリツモマブ)、キャンパス(登録商標)(アレムツズマブ)、リンホサイド(Lymphocide)(登録商標)(エプルツズマブ(eprtuzumab))、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)およびタルセバ(登録商標)(エルロチニブ)またはこれらの任意の組合せが挙げられる。いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体との併用療法に有用な第2の抗体は、抗体薬物コンジュゲートであり得る。
【0445】
いくつかの態様では、抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、単独または別の薬剤と組み合わせて、造血起源の様々な腫瘍を処置するために、骨髄移植と同時にまたは逐次的に使用される。
【0446】
抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を、第2の薬剤を伴って、または伴わずに対象に投与することを含む、免疫賦活性薬剤を用いる過剰増殖性疾患(例えば、がん)の治療と関連する有害事象を変更するための方法が、本明細書において提供される。例えば、本明細書に記載される方法は、患者に非吸収性ステロイドを投与することによって、免疫賦活性治療用抗体誘導性大腸炎または下痢の罹患率を低減する方法を提供する。本明細書において、「非吸収性ステロイド」は、広範な初回通過代謝を示し、その結果、肝臓における代謝後に、ステロイドのバイオアベイラビリティが低い、すなわち、約20%未満であるグルココルチコイドである。本明細書に記載されるいくつかの態様では、非吸収性ステロイドは、ブデソニドである。ブデソニドは、経口投与後に広範に、主に肝臓によって代謝される局所活性糖質コルチコイドである。ENTOCORT EC(登録商標)(Astra-Zeneca)は、回腸および結腸全体への薬物送達を最適化するために開発されたブデソニドのpHおよび時間依存性経口製剤である。ENTOCORT EC(登録商標)は、回腸および/または上行結腸が関与する軽度から中程度のクローン病の治療のために米国において承認されている。いくつかの態様では、非吸収性ステロイドを伴う抗インテグリン-αvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を、サリチル酸とさらに組み合わせることができる。サリチル酸として、例えば、スルファサラジン(AZULFIDINE(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DJPENTUM(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals,Inc.);およびメサラミン(ASACOL(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;PENTASA(登録商標)、Shire US;CANASA(登録商標)、Axcan Scandipharm,Inc.;ROWASA(登録商標)、Solvay)などの5-ASA薬剤が挙げられる。
【0447】
III.C.抗インテグリンαvヘテロ二量体抗体を作製する方法
本明細書に記載されるモノクローナル抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)によって記載される標準体細胞ハイブリダイゼーション技術などの様々な公知の技術を使用して産生することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順は好ましいが、原理上、モノクローナル抗体を産生するためのその他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルス性または発がん性形質転換、ヒト抗体遺伝子のライブラリーを使用するファージディスプレイ技術も使用できる。
【0448】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系として、マウス系がある。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、極めて十分に確立された手順である。免疫処置プロトコールおよび技術および融合のために免疫処置された脾細胞を単離するための技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0449】
本明細書に記載されるキメラまたはヒト化抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、上記のように調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。標準分子生物学技術を使用して、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、対象のマウスハイブリドーマから得、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するよう遺伝子操作することができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当技術分野で公知の方法を使用して、マウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ヒト化抗体を作製するために、当技術分野で公知の方法を使用して、ヒトフレームワーク中にマウスCDR領域を挿入できる(例えば、Winterの米国特許第5,225,539号およびQueen et alの米国特許第5,530,101号;同5,585,089号;同5,693,762号および同6,180,370号を参照のこと)。
【0450】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を対象とするこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を保持するトランスジェニックまたはトランスクロモソミック(transchromosomic)マウスを使用して作製することができる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミック(transchromosomic)マウスは、本明細書において、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書において、まとめて「ヒトIgマウス」と呼ばれる。
【0451】
HUMAB-MOUSE(登録商標)(Medarex,Inc.)は、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的化された突然変異と一緒に含む(例えば、Lonberg, et al., (1994) Nature 368(6474): 856-859を参照されたい)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫処置に応じて、導入されたヒト重鎖および軽鎖 導入遺伝子は、クラススイッチおよび体細胞突然変異を受けて、高親和性ヒトIgGKモノクローナルを生成する(Lonberg, N. et al. (1994)、前掲; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93およびHarding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546に概説されている)。HuMabマウスの調製および使用ならびにこのようなマウスによって保持されるゲノム修飾は、Taylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20: 6287-6295; Chen, J. et al., (1993) International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al. (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12: 821-830;Tuaillon et al. (1994) Immunol. 152:2912-2920;Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6: 579-591;およびFishwild, D. et al. (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851にさらに記載されている。さらに、すべてLonbergおよびKayの米国特許第5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;同5,789,650号;同5,877,397号;同5,661,016号;同5,814,318号;同5,874,299号;および同5,770,429号;Surani et al.,の米国特許第5,545,807号;すべてLonbergおよびKayのPCT公開番号WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884およびWO 99/45962ならびにKorman et al.のPCT公開番号WO01/14424を参照のこと。
【0452】
いくつかの態様では、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保持するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保持するマウスを使用して作製される。本明細書において「KMマウス」と呼ばれるこのようなマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0453】
なおもさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物系が、当技術分野で利用可能であり、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を作製するために使用することができる。例えば、Xenomouse(Abgenix、Inc.)と呼ばれる代替トランスジェニック系を使用でき、このようなマウスは、例えば、Kucherlapati et al.の米国特許第5,939,598号;同6,075,181号;同6,114,598号;同6、150,584号および同6,162,963号に記載されている。
【0454】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスクロモソミック動物系が、当技術分野で利用可能であり、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を作製するために使用することができる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖導入染色体(transchromosome)およびヒト軽鎖導入染色体(tranchromosome)の両方を保持するマウスを使用でき、このようなマウスは、Tomizuka et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。さらに、ヒト重鎖および軽鎖導入染色体を保持するウシが、当技術分野で記載されており(Kuroiwa et al. (2002) Nature Biotechnology 20:889-894)、本明細書に記載される抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を作製するために使用することができる。
【0455】
ヒト抗体、例えば、ヒト抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体を作製するための当技術分野において記載されるさらなるマウス系として、(i)内因性マウス重鎖および軽鎖可変領域が、相同組換えによって、内因性マウス定常領域に作動可能に連結されたヒト重鎖および軽鎖可変領域と置換されており、その結果、マウスにおいてキメラ抗体(ヒトV/マウスC)が作製され、次いで、その後、標準組換えDNA技術を使用して完全ヒト抗体に変換された、VELOCLMMUNE(登録商標)マウス(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)、ならびに(ii)マウスが再編成されていないヒト重鎖可変領域を含むが、単一の再変性されたヒト共通軽鎖可変領域を含む、MEMO(登録商標)マウス(Merus Biopharmaceuticals,Inc.)が挙げられる。このようなマウスおよび抗体を作製するためのその使用は、例えば、WO2009/15777、US2010/0069614、WO2011/072204、WO2011/097603、WO2011/163311、WO2011/163314、WO2012/148873、US2012/0070861およびUS2012/0073004に記載されている。
【0456】
本明細書に記載されるヒトモノクローナル抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製することができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、当技術分野で確立されている。例えば、Ladner et al.の米国特許第5,223,409号;同5,403,484号;および同5,571,698号;Dower et al.の米国特許第5,427,908号および同5,580,717号; McCafferty et al.の米国特許第5,969,108号および同6,172,197号;ならびにGriffiths et al.の米国特許第5,885,793号;同6,521,404号;同6,544,731号;同6,555,313号;同6,582,915号および同6,593,081号を参照のこと。
【0457】
本明細書に記載されるヒトモノクローナル抗インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)抗体はまた、免疫処置の際にヒト抗体応答が生じ得るように、ヒト免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを使用して調製することができる。このようなマウスは、例えば、Wilson et alの米国特許第5,476,996号および同5,698,767号に記載されている。
【0458】
本開示の実施には、別途示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来的な技法が用いられ、これらは、当業者の技能の範囲内である。そのような技法は、文献に完全に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY)、D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II、Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis、Mullis et al. U.S. Pat. No. 4,683,195、Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization、Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation、Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.)、Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986)、Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning、the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.)、Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory)、Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155、Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London)、Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV、Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986); )、Crooks, Antisense drug Technology: Principles, strategies and applications, 2nd Ed. CRC Press (2007)およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照のこと。
【0459】
以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提供されるものである。
【実施例】
【0460】
[実施例1]
抗体の生成およびスクリーニング
細胞株および培養の実施
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)インテグリン発現細胞を、ORF cDNA標的遺伝子配列を安定に導入したトランスポゾンに基づく系を使用して生成した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において培養した。がん肺パネルを、American Type Culture Collection(ATCC)から得、細胞を、ATCCの手順に従って培養した。
【0461】
細胞抗原での抗体選択
抗原陰性細胞株をバックグラウンド枯渇ステップとして使用し、抗原過剰発現細胞株を標的選択工程として使用して、Fabファージを、4回の結合選択に循環させた。接着細胞株を、リン酸緩衝食塩水(PBS)に10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えたものを使用して、懸濁液にした。1000万個の再懸濁細胞を、1mLの細胞成長培地において、3×1013 Fabファージライブラリーとともに、4℃で2時間、穏やかに回転させながらインキュベートした。Fabファージを、温度制御されたマイクロ遠心分離機を利用して、バックグラウンド枯渇細胞(親CHO)から標的選択細胞(CHO AvB1)へ循環させて、細胞を穏やかにペレットにし、上清を移した。標的抗原発現細胞の標識化の後に、細胞を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充した低温PBS緩衝液を利用して4回洗浄した。最後の細胞洗浄後に、Fabファージを、0.1M塩酸を使用して細胞ペレットから溶出させ、室温で10分間インキュベートし、続いて、11M Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)緩衝液を使用して中和した。細胞残屑を、高速遠心分離によって除去し、透明なFabファージ溶離液を、清潔なバイアルに移した。4回目に、Fabファージを、次世代シーケンシング(NGS)方法を使用して分析するために、両方の株(抗原陰性および陽性細胞)のペレットから溶出したことに留意されたい。
【0462】
Fabファージの増幅
各回の選択の後に、500μlの体積のFabファージ溶離液を使用して、5mlのOmniMAX大腸菌(E.coli)細胞を、O.D.600で2YT培地に接種した。細胞を、37℃で30分間、200RPMで、Fabファージとともにインキュベートした。続いて、細胞に、1×108pfu/mlの最終濃度でM13KO7ヘルパーファージを接種し、37℃で45分間、200RPMでインキュベートした。細胞を、その後に、振盪フラスコに移し、100μg/mlのカルベニシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを補充した2YT培地で最終体積50mlにし、37℃で一晩、200RPMで成長させた。翌日、細胞を遠心分離し、上清を、1/5の体積の20%ポリエチレン-グリコール-8000および2.5Mの塩化ナトリウムの溶液を含む清潔なチューブに移した。上清を、4℃で20分間インキュベートし、次いで、4℃で20分間、13,000xgで遠心分離した。沈殿したFabファージペレットを、1% BSAを補充したPBSを使用して再懸濁させ、4℃で保管した。
【0463】
FabおよびIgGタンパク質の発現および精製
Fab DNA配列を、Fabファージファージミドまたは合成したDNAからPCR増幅させた。Fab領域を、修飾されたpET21タンパク質発現プラスミドにサブクローニングし、ここで、可変軽鎖および重鎖領域を、オペロンカセットに導入し、Fabの周辺質発現をもたらした。続いて、プラスミドを形質転換し、大腸菌BL21細胞において発現させた。細胞を、カルベニシリンを含む2×酵母抽出物トリプトン培地においてO.D.600 0.8~1.0まで培養し、37℃で3時間、1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導した。細胞を、次いで、遠心分離によって採取し、細胞ペレットを、液体窒素を使用して瞬間凍結させた。続いて、細胞ペレットを解凍し、50mM Tris、150mM NaCl、1%Triton X-100、1mg/mlリゾチーム、2mM MgCl
2、および10単位のベンゾナーゼを含む溶解緩衝液を使用して再懸濁させ、4℃で1時間インキュベートした。ライセートを、遠心分離によって除去し、rProtein A-Sepharoseカラムに適用し、10カラム体積の50mM Tris、150mM NaCl、pH7.4で洗浄した。Fabタンパク質は、100mMリン酸緩衝液、pH2.5(50mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、100mM H
3PO
4)で、1M Tris、pH8.0からなる中和緩衝液中に溶出させた。溶出したFabタンパク質を、PBS中に緩衝液交換し、Amicon-Ultra遠心濾過ユニットを使用して濃縮した。続いて、Fabを、SDS-PAGEゲルクロマトグラフィーによって純度に関して、および280nmでの吸光で分光測色法によって濃度に関して特徴付けた(
図7A~7B、データは示されない)。
【0464】
全長IgG抗体の産生のために、プラスミドを、DNA合成したか、またはFabファージからサブクローニングし、可変ドメインのDNA配列を重鎖および軽鎖発現のための2つの哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。プラスミドを、製造業者の説明書に従ってFuGENE(登録商標)6トランスフェクション試薬を使用して、Expi293細胞にコトランスフェクトした。細胞培養培地を、トランスフェクションの5~6日後に採取し、rProtein A親和性カラムに適用した。IgGタンパク質を、25mM H3PO4、pH2.8、100mM NaClで溶出させ、0.5M Na3PO4、pH8.6で中和した。対象の溶出された画分を合わせ、濃縮し、PBS、pH7.4中に透析した。
【0465】
FabファージELISAおよび細胞ELISA
4回の細胞選択の後に、ファージを、96ウェル形式で成長させた個々のクローンから産生させた。より具体的に、大腸菌Omnimaxを有するファージミドのコロニーを、カルベニシリンおよびM13-KO7ヘルパーファージを補充した450μlの2YT培地に直接接種し、培養物を、96ウェル形式において37℃で一晩成長させた。Fabファージを含む培養上清を、1% BSAを補充したPBS緩衝液中に2倍希釈し、室温で15分間インキュベートした。ELISAのために、Fabファージを、Maxisorp 384ウェルプレートにおいて4℃で一晩事前にインキュベートした標的抗原に対してインキュベートした。プレートを、PBS+0.05% Tweenを用いて洗浄し、室温で30分間、抗M13 HRPコンジュゲート抗体で提示させ、次いで、比色読み取りによってアッセイした。細胞ELISAのために、Fabファージ混合物を、細胞培地に添加し、親、対する抗原発現接着細胞をコーティングしたプレートに、95~100%のコンフルエンスで添加し、室温で30分間インキュベートした。続いて、プレートを、PBSで穏やかに洗浄し、細胞を、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、次いで、PBSで再び洗浄した。細胞を、1% BSAを補充したPBS緩衝液中で、西洋ワサビペルオキシダーゼ/抗M13抗体コンジュゲートとともに、30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質キットで顕色させ、1.0Mリン酸でクエンチし、吸光度を、450nmの波長で判定した。陽性結合クローンは、抗原発現細胞のシグナルの閾値を親細胞よりも1.5倍以上に設定することによって判定した。すべての陽性クローンを、次いで、サンガーDNA配列分析に供した。
【0466】
バイオレイヤーインターフェロメトリー
親和性推定および特異性測定を、Octet HTX機器を使用して行った。組換えインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を、AHQ BLIセンサー(18-5001、PALL)で捕捉し、アッセイ緩衝液(PBS、1% BSA、0.05% Tween20)中100nM抗体溶液に移し、会合を、300秒間モニタリングした。センサーを、次いで、アッセイ緩衝液に移し、解離を、さらに300秒間モニタリングした。エンドポイント応答値を、表にし、曲線を、Octetデータ分析ソフトウェアバージョン9.0を使用して、ラングミュアモデルに当てはめた。すべてのアッセイ工程に関して、振盪速度は1000rpmであり、温度は25℃であった。
【0467】
IgGクローン10404および10392の親和性値力価測定グラフを、それぞれ、
図1Aおよび1Bに示す。
図2A~2Bは、それぞれのクローンのIgG形態によるインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞の標識化、続いて、Fab結合測定による、異なる抗体のエピトープビニングの概要を提供する。
図9は、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞接着の概要を提供する。
【0468】
フローサイトメトリー検証および細胞結合力価測定
接着細胞を、10mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を補充したPBSを使用して懸濁液にした。細胞を、PBSで洗浄し、1% BSAを補充したPBS中に再懸濁させ、4℃で15分間インキュベートした。細胞を、50μlのFabファージ培養上清、または500nM Fab、またはIgGで、4℃において30分間標識し、次いで、PBSで洗浄し、1% BSAを補充したPBS中に再懸濁させた。次に、細胞を、抗Fab(Fabファージについて)、または抗Flag(Fabについて)、または抗Fc(IgGについて)をコンジュゲートしたAlexa-488二次抗体で、製造業者の説明書に従って標識した。データを、CytoFLEX-Sフローサイトメーターを使用し、488nmのレーザーを530/25nmのフィルタ設定で使用して収集した。細胞をPBS中で分析し、すべての取得した生事象は、サンプル当たり10,000個の細胞を上回った。定量分析を、FlowJo v10.2ソフトウェアを使用して行った。抗体細胞力価測定分析のために、抗体を、二連のサンプルにおいて、500pM~1μMの範囲で抗原陽性細胞に添加した。平均蛍光シグナル値を、対照の抗原陰性細胞シグナルから差し引き、EC50を、Graph-pad Prismを使用して判定したが、ここで、xはFab濃度である。
【0469】
【0470】
異なる細胞インテグリンについて特定された抗体クローンの親和性検証を、
図3A~3Bおよび表2に示す。表2は、異なるインテグリンCHO細胞株のそれぞれについて、独特のクローン識別子および対応するEC50親和性値を示す。組換えヒトおよびマウスインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)に対する抗体クローンの異なるモダリティの親和性検証を、それぞれ、
図4および5に示し、具体的な値は、表3および4に提供されている。
【0471】
【0472】
【0473】
【0474】
サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、様々なIgGクローンをさらに特徴付けた(
図6A~6C)。使用した移動相は、PBS、pH7.4であり、50ugのIgGを0.5ml/分の流速において1g/lで注入した。凍結-解凍分析は、少なくとも3回の解凍の後に安定性を示す(
図8A~8B)。
【0475】
細胞結合アッセイ
96ウェルプレートを、PBS中10ug/mlのI型コラーゲンリガンドでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日に、それぞれのウェルを、PBS中の2%熱不活性化BSAを使用して、37℃で1時間ブロッキングした。次に、親またはインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)発現CHO細胞を、TrypLE Express細胞解離試薬を利用して懸濁液にし、次いで、PBS(カルシウムおよびマグネシウムを含む)中で2回洗浄した。これらの細胞を、次いで、Fabタンパク質またはIgGで提示させ、37℃で30分間インキュベートした。BSAを含む96ウェルプレートを、PBS(カルシウムおよびマグネシウムを含む)を使用して3回洗浄した。細胞を、次いで、96ウェルプレートに三連に播種し、37℃で60分間インキュベートし、次いで、PBS(カルシウムおよびマグネシウムを含む)を使用して穏やかに3回洗浄した。細胞コンフルエンス計数を、IncuCyte S2顕微鏡を用いて判定し、IncuCyte S2ソフトウェアを用いて分析した。
【0476】
細胞増殖および遊走アッセイ
細胞を、100μlの成長培地を使用して、96ウェルの組織培養処理プレートに播種し、組織培養インキュベーターにおいて成長させた。三連のサンプルを、200nM IgGで処置し、位相差顕微鏡によって、IncuCyte S2顕微鏡を使用して2時間ごとに1ウェル当たり4つの画像を測定した。すべてのサンプルは、増殖アッセイでは細胞コンフルエンスパーセンテージに関して、および遊走アッセイでは創傷治癒に関して、Incucyte S2ソフトウェアを使用して分析した。
【0477】
NGSサンプルの準備およびIllumina読み取り
PCRアンプリコンを、拡大した4回目のFabファージプールを利用して生成したが、ここで、フォワードプライマーおよびリバースプライマーは、相補性決定領域(CDR)VL3およびVH3の間のFab領域に隣接していた。フォワードプライマーおよびリバースプライマーはいずれも、24塩基対の長さの鋳型アニーリング領域を含み、続いて、6~8塩基対の長さの独特のヌクレオチド「バーコード」識別子、ならびにIlluminaユニバーサルアダプタータグ(リバースについてはPE1およびフォワードプライマーについてはPE2)を含んでいた。アンプリコンを、製造業者の説明書に従って、ゲル電気泳動、続いて、アガロースゲル抽出によって単離した。サンプル濃度を、マイクロ体積分光測色計を利用して二連に判定した。すべての単離したアンプリコンを正規化し、プールし、Illumina HiSeq 2500機器を対合末端300サイクルの設定で使用してシーケンシングした。全CDRをカバーするために、PE1およびPE2 Illuminaプライマーに加えて、前のVH2およびVH1領域をアニーリングするカスタムプライマーも含まれた。
【0478】
陽性選択および陰性選択における度数分布間のスコア付け分離
陽性選択プールおよび陰性選択プールにおけるモチーフの2つの度数分布間での分離をスコア付けするために、本発明者らは、ランクトランスフォーメーションと併用で、ウェルチ-サタスウェイトバージョンのt検定を利用した。このアプローチは、本発明者らの度数分布における非正規性および不等分散の両方の望ましくない作用に同時に対抗する利点を有する。まず、2つの度数分布を合わせ、昇順で配置し、同順位の度数は、それらの位置の平均に等しいランクを与える。2つのランク分布xPおよびxNが陽性選択プールおよび陰性選択プールの度数に対応するとして、すべてそれぞれ、
【0479】
【0480】
【数3】
は平均であり、s
Pおよびs
Nは標準偏差であり、n
Pおよびn
Pはサイズである。本発明者らは、以下に記載される手順に従って、tスコアの統計学的有意性を評価するために、p値を計算する。
【0481】
本発明者らは、まず、tスコアを、
【0482】
【0483】
本発明者らは、次いで、自由度を、
【0484】
【0485】
本発明者らは、最後に、p値を、
【0486】
【0487】
tはtスコアであり、fは自由度であり、Γ(.)はガンマ関数であり、pは、自由度fを有する分布tからの単回の観察が、区間[-∞,t]に入る確率である。言い換えると、pは、tスコアt以下である任意のtスコアを偶然に有する確率である。したがって、p値pが低いほど、tスコアtの有意性は高く、結果として、陽性選択および陰性選択における2つの度数分布間の分離が高くなる。本発明者らは、
【0488】
【数7】
のストリンジェントなカットオフを使用して、p値をフィルタリングして、高度に特異的な抗体クローンを特定した。p値を補足するために、本発明者らは、Cohenの効果量係数dを計算して、陽性選択および陰性選択における度数平均間の差を評価し、巨大な効果量(d>2)を有するp値を保持した。
【0489】
【0490】
CDR配列におけるコンセンサスモチーフの列挙
コンセンサスモチーフは、配列群間で共通している線形情報を表すために利用される。モチーフにおける特定の位置は、定義されているが(例えば、「P..R」における「P」または「R」)、その他のものは、定義されておらず、ワイルドカードと呼ばれる(例えば、「P..R」における「.」)。本発明者らは、ここで、コンセンサスモチーフを用いて、候補抗体ならびに陽性選択および陰性選択における残りの抗体のCDR配列間で共通している線形情報を調べる。この目的で、本発明者らは、タンパク質における線形情報を調べるために最初に開発されたアルゴリズムDALELを適合させた。モチーフ数が爆発的に増加するのを回避するために、本発明者らは、それぞれのモチーフにおいて許容されるワイルドカードの数を、その長さの55%に制限した。加えて、本発明者らは、陽性選択内のマッチング配列における異なるアミノ酸にマッチするワイルドカードを有するモチーフのみを考慮し、例えば、モチーフ「P.R」におけるワイルドカードは、マッチング配列「PYR」および「PSR」におけるアミノ酸「Y」および「S」にマッチする。最後に、本発明者らは、すべてのモチーフにマッチする陽性選択内の最小配列数を、100に制限することによって、モチーフの数を最も代表的なものに制限した。
[実施例2]
【0491】
インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)を標的とする二重特異性抗体の生成および特徴付け
インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)をさらに標的化するために、実施例1に記載される様々なIgG単一特異性抗体の成分を使用して、2つの二重特異性抗体を生成した。特に、IgGクローン10404、10392、および11867の重鎖および軽鎖を交換し、機能的特性および細胞結合力価測定を評価した。
図10Aは、異なる二重特異性IgGの図であり、nullは、非選択性(ランダムCDR)二重IgGアームを示す。二重特異性IgG 10404/10392の存在下におけるインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞に対するFab結合活性を、
図10Bに示す。二重特異性IgG 10404/10392は、(i)配列番号1と比べてノブモチーフを導入する修飾を含む重鎖10392配列(配列番号31)、(ii)配列番号11と比べてホールモチーフを導入する修飾を有する重鎖10404配列(配列番号34)、(iii)2つの10404軽鎖配列(配列番号16)を含む。重鎖のノブおよびホール配列が、2つの重鎖のヘテロ二量体化を促進する。
【0492】
異なるFabクローンの存在下におけるインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞に対する10404-10392、10392/null、および10404/nullの二重特異性IgGの結合親和性を、
図10Cに示し、異なるクローンIgGの存在下におけるLAP-TGFβに対するインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞接着を、
図10Dに示し、
図10Eは、フローサイトメトリー測定によるインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞の力価測定グラフを提供する。LAP-TGFβに対する接着に関するインテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)CHO細胞の阻害性力価測定を、
図10Eに示す。
【0493】
10404/10392二重特異性抗体の阻害性特性を、次いで、10404および10392単一特異性抗体のものと比較した(
図11A~11F)。
【0494】
10404クローンの追加の変異体を開発し、特徴付けした(
図12A~12L)。IgGクローン11867を、改善された特性を有するとして特定し、(i)配列番号1と比べてノブモチーフを導入する修飾を含む重鎖10392配列(配列番号31)、(ii)配列番号21と比べてホールモチーフを導入する修飾を含む重鎖11867配列(配列番号37)、および(iii)2つの11867軽鎖配列(配列番号26)を含む第2の二重特異性抗体を生成した。11867/10392二重特異性抗体の阻害性特性を、次いで、11867および10392単一特異性抗体のものと比較した(
図13A~13Fおよび14A~14F)。
[実施例3]
【0495】
インビトロでの腫瘍細胞増殖の阻害
二重特異性IgG 11867/10392抗体を、次いで、インビトロで腫瘍細胞増殖を阻害する能力についてアッセイした。A549、H292、H661、H460、およびH1563を含む様々な肺がん細胞株を、二重特異性IgG 11867/10392または対照IgGの存在下において培養し、48時間にわたって細胞コンフルエンスに関してアッセイした(
図15B~15G)。二重特異性IgG 11867/10392の存在下において培養した腫瘍細胞は、複数の細胞型において増殖の減少を示し(
図16A)、二重特異性IgG 11867/10392が、腫瘍細胞増殖を阻害することができることが示唆された。
【0496】
インテグリンαvヘテロ二量体(例えば、インテグリン-αvβ1)は、細胞遊走において役割を果たすため、二重特異性IgG 11867/10392が腫瘍細胞遊走を阻害する能力を、次いで、アッセイした。肺腫瘍細胞株A549、H460、H661、およびH1563を使用した創傷治癒アッセイにより、細胞を二重特異性IgG 11867/10392の存在下において培養した場合に、未処置細胞および対照細胞と比較して、相対創傷密度の減少が示された(
図17A~17P)。
【0497】
特定の態様に関する前述の説明は、本開示の一般概念から逸脱することなく、当業者が技能の範囲内の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなくそのような特定の態様を容易に修正する、および/または様々な用途に適応することができる、本開示の一般的な本質を完全に明らかにしようとするものである。したがって、そのような適応および修正は、本明細書に提示される教示および案内に基づいて、開示される態様の均等物の意味および範囲内であることが意図される。本明細書における表現法または語法は、説明を目的とするものであり、制限を目的とするものではなく、そのため、本明細書の語法または表現法は、当業者が教示および案内を踏まえて解釈すべきものであることを、理解されたい。
【0498】
本開示の他の態様は、本明細書の考察および本明細書において開示される開示の実施により、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示と見なされるにすぎないことが意図され、本開示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0499】
本明細書において開示されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】