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特表2024-509920EGFR活性化変異を欠くがんの治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】EGFR活性化変異を欠くがんの治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
C07K16/46
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555245
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2022052009
(87)【国際公開番号】W WO2022189942
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,552
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー,ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ムーアズ,シェリ エル.
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠く腫瘍を有するがんを有する対象の治療に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する前記対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞増殖因子受容体(c-Met)抗体を投与することを含む、方法。
【請求項2】
がんを有する対象を二重特異性抗EGFR/c-Met抗体により治療する方法であって、
a)前記対象由来の生体試料を提供することと、
b)前記試料におけるEGFR活性化変異の有無を判定することと、
c)EGFR活性化変異を欠くと判定された前記対象に、前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性化変異が、EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる変異である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
EGFRの前記少なくとも1つの生物活性が、チロシンキナーゼ活性、リガンド非依存性シグナル伝達、細胞増殖の増加、MAPK/ERK経路へのシグナル伝達、遺伝子転写、二量体化(EGFR:EGFR)、及びヘテロ二量体化(EGFR:HER2又はEGFR:HER3)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる前記少なくとも1つの活性化変異が、L718Q、G719A、G719X(Xは任意のアミノ酸である)、L861X(Xは任意のアミノ酸である)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、C797S、L858P又はT790Mの置換、E746~A750の欠失、R748~P753の欠失、M766とA767との間へのAla(A)の挿入、S768とV769との間へのSer、Val、及びAla(SVA)の挿入、P772とH773との間へのAsn及びSer(NS)の挿入、D761とE762、A763とY764、Y764とY765、M766とA767、A767とV768、S768とV769、V769とD770、D770とN771、N771とP772、P772とH773、H773とV774、V774、C775との間への1つ以上のアミノ酸の挿入、EGFRエキソン20における1つ以上の欠失、EGFRエキソン20における1つ以上の挿入、S768I、L861Q及びG719X(Xは任意のアミノ酸である)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、KRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異の有無を判定することと、前記活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつKRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異を欠くと判定された前記対象に、前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
KRASにおける前記少なくとも1つの変異が、G12V、G12C、G12A及びG12Dからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
KRASにおける前記少なくとも1つの変異が、G12Cである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
PI3Kにおける前記少なくとも1つの変異が、E545K、H1047L、及びPI3K増幅からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PTENにおける前記少なくとも1つの変異が、PTEN欠失である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、前記第1のドメインが、配列番号1の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、c-Metに結合する前記第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、請求項1~10に記載の方法。
【請求項12】
EGFRに特異的に結合する前記第1のドメインが、配列番号13の重鎖可変領域(VH)及び配列番号14の軽鎖可変領域(VL)を含み、c-Metに特異的に結合する前記第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1つ以上のFcサイレンシング変異を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のFcサイレンシング変異が、Fcγ受容体に対する親和性を減少させる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のFcサイレンシング変異が、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約1%~約15%の間のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、1つ以上の以前の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の以前の抗がん療法が、1つ以上の、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の以前の抗がん療法が、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、治療未経験である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんが、ALK、APC、BRAF、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、CDKN2B、CTNNB1、ERBB2、ERBB3、FGFR3、KIT、LRP1B、MET、MLH1、MSH3、NOTCH1、NTRK1、RET、ROS1、STK11、TP53、及びVEGFAからなる群から選択される遺伝子における少なくとも1つの変異について陽性である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記がんが、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、脳がん、上皮細胞に由来するがん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、咽頭がん、鼻のがん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、舌のがん、食道がん、膣がん、子宮頸がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、肝細胞がん(HCC)又は散発性若しくは遺伝性乳頭状腎細胞がん(PRCC)、あるいはそれらの任意の組み合わせである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、若しくは肺腺がん、肺肉腫様がん、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象に1つ以上の抗がん療法を更に施すことを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の抗がん療法が、化学療法、放射線療法、手術、標的抗がん療法、キナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記キナーゼ阻害剤が、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記キナーゼ阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約140mg~約2240mgの間の用量で投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2150mg、約2200、又は約2240mgの用量で投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1050mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1400mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1575mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1600mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、2100mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、2240mgの用量で投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回投与される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、静脈内投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、皮下投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月9日に出願された米国特許仮出願第63/158,552号に対する優先権を主張するものである。上記出願の全容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、2022年3月1日付けで作成された、「JBI6507WOPCT1SEQLIST.txt」というファイル名のASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された、29KBのサイズを有する配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠く腫瘍を有するがんを有する対象の治療に関する。
【背景技術】
【0004】
がんにおける上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)及び受容体チロシンキナーゼ間葉上皮移行因子(c-Met)の両方の個々の役割は十分に確立されており、これらの標的を併用療法にとって魅力的なものにしている。いずれの受容体も、同じ生存及び抗アポトーシス経路(ERK及びAKT)を通してシグナルを伝達し、このため、この対を合わせて阻害すると、代償経路が活性化される可能性を制限して、それによって全有効性を改善させ得る。
【0005】
腫瘍形成ドライバー変異に基づく進行性非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer、NSCLC)の分子分割は、処置可能なドライバー変異を有する患者の全生存期間及び生活の質を改善している。
【0006】
アミバンタマブ(amivantamab)は、EGFR及びc-METを標的とする二重特異性抗体である。その臨床活性は、臨床試験においてEGFR活性化変異の範囲にわたって調査されているが、EGFRに対して陽性であるがEGFR活性化変異を欠く肺がんの治療については評価されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
活性化変異を欠くEGFRを含む腫瘍を有するがんのより有効な治療を開発するために、改善された治療薬又は治療薬の組み合わせが必要とされている。
【0008】
本開示は、EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞増殖因子受容体(c-Met)抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、がんを有する対象を二重特異性抗EGFR/c-Met抗体により治療する方法であって、
a)対象由来の生体試料を提供することと、
b)試料におけるEGFR活性化変異の有無を判定することと、
c)EGFR活性化変異を欠くと判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を含む、方法を提供する。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1つの活性化変異は、EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる変異である。
【0011】
一実施形態では、EGFRの少なくとも1つの生物活性は、チロシンキナーゼ活性、リガンド非依存性シグナル伝達、細胞増殖の増加、MAPK/ERK経路へのシグナル伝達、遺伝子転写、二量体化(EGFR:EGFR)、及びヘテロ二量体化(EGFR:HER2又はEGFR:HER3)からなる群から選択される。
【0012】
一実施形態では、EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる少なくとも1つの活性化変異は、L718Q、G719A、G719X(Xは任意のアミノ酸である)、L861X(Xは任意のアミノ酸である)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、C797S、L858P又はT790Mの置換、E746~A750の欠失、R748~P753の欠失、M766とA767との間へのAla(A)の挿入、S768とV769との間へのSer、Val、及びAla(SVA)の挿入、P772とH773との間へのAsn及びSer(NS)の挿入、D761とE762、A763とY764、Y764とY765、M766とA767、A767とV768、S768とV769、V769とD770、D770とN771、N771とP772、P772とH773、H773とV774、V774とC775との間への1つ以上のアミノ酸の挿入、EGFRエキソン20における1つ以上の欠失、EGFRエキソン20における1つ以上の挿入、S768I、L861Q及びG719X(Xは任意のアミノ酸である)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む。
【0013】
一実施形態では、方法は、KRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異の有無を判定することと、活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつKRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異を欠くと判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む。
【0014】
一実施形態では、KRASにおける少なくとも1つの変異は、G12V、G12C、G12A及びG12Dからなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、KRASにおける少なくとも1つの変異は、G12Cである。
【0016】
一実施形態では、PI3Kにおける少なくとも1つの変異は、E545K、H1047L、及びPI3K増幅からなる群から選択される。
【0017】
一実施形態では、PTENにおける少なくとも1つの変異は、PTEN欠失である。
【0018】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインは、配列番号1の重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementarity determining region 1、HCDR1)、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(light chain complementarity determining region 1、LCDR1)、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、c-Metに結合する第2のドメインは、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0019】
一実施形態では、EGFRに特異的に結合する第1のドメインは、配列番号13の重鎖可変領域(VH)及び配列番号14の軽鎖可変領域(VL)を含み、c-Metに特異的に結合する第2のドメインは、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む。
【0020】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0021】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む。
【0022】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、1つ以上のFcサイレンシング変異を含む。
【0023】
一実施形態では、1つ以上のFcサイレンシング変異は、Fcγ受容体に対する親和性を減少させる。
【0024】
一実施形態では、1つ以上のFcサイレンシング変異は、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sを含む。
【0025】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1%~約15%の間のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む。
【0026】
一実施形態では、対象は、1つ以上の以前の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である。
【0027】
一実施形態では、1つ以上の以前の抗がん療法は、1つ以上の、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0028】
一実施形態では、1つ以上の以前の抗がん療法は、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0029】
一実施形態では、対象は、治療未経験(treatment naive)である。
【0030】
一実施形態では、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんは、ALK、APC、BRAF、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、CDKN2B、CTNNB1、ERBB2、ERBB3、FGFR3、KIT、LRP1B、MET、MLH1、MSH3、NOTCH1、NTRK1、RET、ROS1、STK11、TP53、及びVEGFAからなる群から選択される遺伝子における少なくとも1つの変異について陽性である。
【0031】
一実施形態では、がんは、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、脳がん、上皮細胞に由来するがん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、咽頭がん、鼻のがん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、舌のがん、食道がん、膣がん、子宮頸がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma、HCC)、又は散発性若しくは遺伝性の乳頭状腎細胞がん(hereditary papillary renal cell carcinoma、PRCC)、あるいはそれらの任意の組み合わせである。
【0032】
一実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(small cell lung cancer、SCLC)若しくは肺腺がん、肺肉腫様がん、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0033】
一実施形態では、方法は、対象に1つ以上の抗がん療法を更に施すことを含む。
【0034】
一実施形態では、1つ以上の抗がん療法は、化学療法、放射線療法、手術、標的抗がん療法、キナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0035】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である。
【0036】
一実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである。
【0037】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約140mg~約2240mgの間の用量で投与される。
【0038】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2150mg、約2200、又は約2240mgの用量で投与される。
【0039】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1050mgの用量で投与される。
【0040】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1400mgの用量で投与される。
【0041】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回投与される。
【0042】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1575mgの用量で投与される。
【0043】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1600mgの用量で投与される。
【0044】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約2100mgの用量で投与される。
【0045】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約2240mgの用量で投与される。
【0046】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回投与される。
【0047】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、静脈内投与される。
【0048】
一実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、皮下投与される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A】EGFR(図1A)及びMET(図1B)のPLAスコアとしてのシグナル伝達に対してプロットした、IHCスコアとしての受容体発現を示す。
図1B】EGFR(図1A)及びMET(図1B)のPLAスコアとしてのシグナル伝達に対してプロットした、IHCスコアとしての受容体発現を示す。
図2A】LXFA677(図2A)、LXFA1584(図2B)、及びLXFA2158(図2C)についてのマウス異種移植片腫瘍におけるアミバンタマブ、FcサイレントEGFR/MET、又はアイソタイプ対照の代表的なインビボ有効性プロットを示す。
図2B】LXFA677(図2A)、LXFA1584(図2B)、及びLXFA2158(図2C)についてのマウス異種移植片腫瘍におけるアミバンタマブ、FcサイレントEGFR/MET、又はアイソタイプ対照の代表的なインビボ有効性プロットを示す。
図2C】LXFA677(図2A)、LXFA1584(図2B)、及びLXFA2158(図2C)についてのマウス異種移植片腫瘍におけるアミバンタマブ、FcサイレントEGFR/MET、又はアイソタイプ対照の代表的なインビボ有効性プロットを示す。
図3A】EGFR IHC Hスコア(図3A)及びPLAスコア(図3B)、並びにMET IHC Hスコア(図3C)及びPLAスコア(図3D)に関してプロットした、活性化変異を欠くEGFRを有する選択されたPDXモデルにおける腫瘍増殖阻害%(%TGI))としてアミバンタマブの有効性を示す。
図3B】EGFR IHC Hスコア(図3A)及びPLAスコア(図3B)、並びにMET IHC Hスコア(図3C)及びPLAスコア(図3D)に関してプロットした、活性化変異を欠くEGFRを有する選択されたPDXモデルにおける腫瘍増殖阻害%(%TGI))としてアミバンタマブの有効性を示す。
図3C】EGFR IHC Hスコア(図3A)及びPLAスコア(図3B)、並びにMET IHC Hスコア(図3C)及びPLAスコア(図3D)に関してプロットした、活性化変異を欠くEGFRを有する選択されたPDXモデルにおける腫瘍増殖阻害%(%TGI))としてアミバンタマブの有効性を示す。
図3D】EGFR IHC Hスコア(図3A)及びPLAスコア(図3B)、並びにMET IHC Hスコア(図3C)及びPLAスコア(図3D)に関してプロットした、活性化変異を欠くEGFRを有する選択されたPDXモデルにおける腫瘍増殖阻害%(%TGI))としてアミバンタマブの有効性を示す。
図4A】活性化変異を欠くEGFRを有するPDXモデルにおける一般的ながん遺伝子の発現(図4A)及び変異状態(図4B)を示し、有効性が試験され、腫瘍増殖阻害%(%TGI))(図4C)として示す。矢印は、KRAS又はPI3K経路に変異を有するモデルを示す。
図4B】活性化変異を欠くEGFRを有するPDXモデルにおける一般的ながん遺伝子の発現(図4A)及び変異状態(図4B)を示し、有効性が試験され、腫瘍増殖阻害%(%TGI))(図4C)として示す。矢印は、KRAS又はPI3K経路に変異を有するモデルを示す。
図4C】活性化変異を欠くEGFRを有するPDXモデルにおける一般的ながん遺伝子の発現(図4A)及び変異状態(図4B)を示し、有効性が試験され、腫瘍増殖阻害%(%TGI))(図4C)として示す。矢印は、KRAS又はPI3K経路に変異を有するモデルを示す。
図5A】選択モデルにおけるEGFR(図5A)及びMET(図5B)についての、組み合わされたIHC Hスコア及びPLAスコア(IHC+PLA)に対する腫瘍増殖阻害%(%TGI)として示される、アミバンタマブの有効性の相関プロットを示す。
図5B】選択モデルにおけるEGFR(図5A)及びMET(図5B)についての、組み合わされたIHC Hスコア及びPLAスコア(IHC+PLA)に対する腫瘍増殖阻害%(%TGI)として示される、アミバンタマブの有効性の相関プロットを示す。
図6】百万のキロベース当たりの転写物(Transcripts Per Kilobase Million、TPM)を使用してRNA-Seqによって測定された、EGFRリガンドアンフィレギュリン(amphiregulin、AREG)の発現に対する腫瘍増殖阻害%(%TGI)として示される、アミバンタマブの有効性の相関プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義
本明細書に引用される、特許及び特許出願を含むがそれらに限定されない全ての刊行物は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみに使用され、限定することを意図するものではないと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0052】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用することができるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が使用される。
【0053】
リストが提示される場合、特に指定されない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストの全ての組み合わせは別個の実施形態であることを、理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるべきである。
【0054】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞の組み合わせなどが含まれる。
【0055】
複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続句は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つが、意味の範疇に含まれ、したがって、本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味の範疇に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0056】
移行句「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる)」は、特許用語において概ね受け入れられている意味を含意することを意図しており、すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、その他の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる」は、特許請求の範囲において特定されていない、あらゆる要素、工程、又は成分を除外し、並びに(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、並びに、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲の範囲を制限する。語句「含む」(又はその同義語)を伴って記載される実施形態はまた、「からなる」及び「から本質的になる」を伴って独立して記載される実施形態として提供する。
【0057】
「共投与」、「とともに投与」、「と組み合わせて投与」、「と組み合わせて」などは、選択された治療薬又は薬物の単一の患者への投与を包含し、治療薬又は薬物が同じ若しくは異なる投与経路によって又は同じ若しくは異なる時間に投与される治療レジメンを含むことを意図する。
【0058】
「単離された」は、組換え細胞などの分子が生成される系の他の成分から離して実質的に分離及び/又は精製された分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、又はウイルス)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離された」は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離されている分子を包含する。
【0059】
がんなどの疾患又は障害を「治療する」、「治療している」、又は「治療」は、障害の重症度及び/若しくは期間を低減する、治療される障害に特徴的な症状の悪化を阻害する、以前障害を有していた対象における障害の再発を制限若しくは予防する、又は以前障害について症候性であった対象における症状の再発を制限若しくは予防する、のうちの1つ以上を達成することを指す。
【0060】
疾患又は障害を「予防する」、「予防している」、「予防(prevention)」、又は「予防(prophylaxis)」は、対象において障害が発生するのを防ぐことを意味する。
【0061】
「診断する」又は「診断」は、対象が所与の疾患若しくは病態に罹患しているかどうか、又は将来的に所与の疾患若しくは病態を発症し得るかどうか、又は以前に診断された疾患若しくは病態に対する治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する、すなわち、治療に対して応答する可能性について患者集団を層別化する方法を指す。診断は、典型的には、診断される疾患についての全般的な指針、又は対象が特定の治療に応答する可能性が高いことを示す他の基準に基づいて医師によって行われる。
【0062】
「応答性である」、「応答性」、又は「応答する可能性が高い」は、検出可能か若しくは検出不可能であるかにかかわらず、任意の種類の改善又は陽性応答、例えば、1つ以上の症状の軽減又は回復、疾患の程度の減少、安定化した(すなわち悪化しない)疾患状態、疾患の蔓延の防止、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的であっても全体的であっても)を指す。
【0063】
「新たに診断された」は、EGFR又はc-Met発現がんと診断されてはいるが、多発性骨髄腫の治療をまだ受けたことがない対象を指す。
【0064】
「治療有効量」は、必要な用量及び期間で所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を誘発する治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって変動し得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の改善された健康が挙げられる。
【0065】
「難治性」は、治療に応答しない疾患を指す。難治性疾患は、治療前若しくは治療開始時に治療に抵抗性であり得るか、又は難治性疾患は、治療中に抵抗性疾患となり得る。
【0066】
「再発性」は、治療薬による前治療後の改善期間後に疾患又は疾患の徴候及び症状が再開することを指す。
【0067】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが挙げられる。用語「対象」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用される。
【0068】
「約」は、当業者によって求められた特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち、測定システムの制限事項に部分的に依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において、実施例又は明細書の他の箇所に別途明示的に記載されない限り、「約」は、当該技術分野の実施につき1つの標準偏差、又は5%までの範囲のうちのいずれか大きい方の範囲内であることを意味する。
【0069】
「がん」は、無制御に増殖し、場合によっては、患者の身体の他の領域に転移(拡散)する傾向がある細胞の異常な成長を指す。
【0070】
「EGFR又はc-Met発現がん」は、EGFR若しくはc-Metの検出可能な発現を有するか、又はEGFR若しくはc-Metの変異若しくは増幅を有するがんを指す。EGFR又はc-Metの発現、増幅、及び変異状態は、配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、免疫組織化学的検査、フローサイトメトリー、又はウェスタンブロッティングなどの既知の方法を使用して検出することができる。
【0071】
「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」は、UniProt identifier:P00533-1(配列番号21)に示されているアミノ酸配列を有するヒトEGFR(HER1又はErbB1としても知られている(Ullrich et al.,Nature 309:418-425,1984)に加えて、その天然に存在するバリアント又は変異体を指す。
【0072】
配列番号21:
MRPSGTAGAALLALLAALCPASRALEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFMRRRHIVRKRTLRRLLQERELVEPLTPSGEAPNQALLRILKETEFKKIKVLGSGAFGTVYKGLWIPEGEKVKIPVAIKELREATSPKANKEILDEAYVMASVDNPHVCRLLGICLTSTVQLITQLMPFGCLLDYVREHKDNIGSQYLLNWCVQIAKGMNYLEDRRLVHRDLAARNVLVKTPQHVKITDFGLAKLLGAEEKEYHAEGGKVPIKWMALESILHRIYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGSKPYDGIPASEISSILEKGERLPQPPICTIDVYMIMVKCWMIDADSRPKFRELIIEFSKMARDPQRYLVIQGDERMHLPSPTDSNFYRALMDEEDMDDVVDADEYLIPQQGFFSSPSTSRTPLLSSLSATSNNSTVACIDRNGLQSCPIKEDSFLQRYSSDPTGALTEDSIDDTFLPVPEYINQSVPKRPAGSVQNPVYHNQPLNPAPSRDPHYQDPHSTAVGNPEYLNTVQPTCVNSTFDSPAHWAQKGSHQISLDNPDYQQDFFPKEAKPNGIFKGSTAENAEYLRVAPQSSEFIGA
【0073】
本明細書で使用される場合、「肝細胞成長因子受容体」又は「c-Met」は、GenBankアクセッション番号NP_001120972に示されているアミノ酸配列を有するヒトc-Met及びその天然のバリアントを指す。
【0074】
「二重特異性抗EGFR/c-Met抗体」又は「二重特異性EGFR/c-Met抗体」は、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を有する、二重特異性抗体を指す。EGFR及びc-Metに特異的に結合するドメインは、典型的には、VH/VL対であり、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、EGFR及びc-Metに対する結合に関して一価である。
【0075】
「特異的結合」、又は「特異的に結合する」、又は「特異的な結合」、又は「結合する」は、抗体が、抗原又は抗原内のエピトープに、他の抗原よりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、典型的には平衡解離定数(K)が、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合についてのKよりも少なくとも100倍小さい、約5×10-8M以下、例えば、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、約1×10-12M以下のKで抗原又は抗原内のエピトープに結合する。解離定数は、既知のプロトコルを使用して測定することができる。しかしながら、抗原又は抗原内のエピトープに結合する抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)又はPan troglodytes(チンパンジー、chimp)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合がある。単一特異性抗体は、1つの抗原又は1つのエピトープに結合するが、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原又は2つの異なるエピトープに結合する。
【0076】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、及び必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)から構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。
【0077】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med 132:211-50)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901-17)、IMGT(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77)、及びAbM(Martin and Thornton(1996)J Bmol Biol 263:800-15)などの、様々な記述を使用して定義することができる。様々な記述と、可変領域の付番との間の対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77、Honegger and Pluckthun,(2001)J Mol Biol 309:657-70、及びInternational ImMunoGeneTics(IMGT)database;Web resources,http://www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを描写することができる。本明細書で使用される場合、用語「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」は、本明細書に別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
【0078】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0079】
「抗原結合断片」とは、抗原に結合する免疫グロブリン分子の一部分を指す。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってもよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して結合し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、別個の一本鎖抗体構築物により発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
【0080】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体分子の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、抗体重鎖からのC末端リジンの除去、あるいはアミノ酸の異性化若しくは脱アミド、メチオニンの酸化、又はアスパラギン若しくはグルタミンの脱アミドなどの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってもよく、又は、二重特異性などの多重特異性、一価、二価、若しくは多価であってもよい。
【0081】
「組換え体」は、異なる供給源由来のセグメントが接合して組換えDNA、抗体、又はタンパク質を生成するときに、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
【0082】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原内の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus)(例えば、カニクイザル(cynomolgus、cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは2つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0083】
「アンタゴニスト」又は「阻害剤」は、細胞タンパク質に結合したとき、そのタンパク質の天然のリガンドによって誘導される少なくとも1つの反応又は活性を抑制する分子を指す。少なくとも1つの反応又は活性が、アンタゴニストの非存在下(例えば、陰性対照)で抑制される少なくとも1つの反応又は活性よりも少なくとも約20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%多く抑制されたとき、あるいはアンタゴニストの非存在下における抑制と比較して抑制が統計的に有意であるとき、分子はアンタゴニストである。
【0084】
「PD-(L)1軸阻害剤」は、PD-1下流シグナル伝達を阻害する分子を指す。PD-(L)1軸阻害剤は、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に結合する分子であってもよい。
【0085】
「生体試料」は、対象から単離された類似の流体、細胞、又は組織に加えて、対象内に存在する流体、細胞、又は組織の収集物を指す。例示的な試料は、生物学的流体、例えば、血液、血清及び漿膜液、血漿、リンパ液、尿、唾液、嚢胞液、涙液、糞便、喀痰、分泌組織及び器官の粘膜分泌液、膣分泌液、腹水、胸膜腔、心膜腔、腹膜腔、腹腔、及び他の体腔の流体、気管支洗浄によって回収された流体、滑液、対象又は生物学的起源、例えば、細胞又は器官の馴化培地を含む細胞及び器官の培養培地、洗浄液などと接触した液体溶液、組織生検、腫瘍組織生検、腫瘍組織試料、穿刺吸引、外科的に切除された組織、器官培養物又は細胞培養物である。
【0086】
本出願で使用される「低フコース」又は「低フコース含量」は、抗体が約1%~15%の間のフコース含量を有することを指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「正常なフコース」又は「正常なフコース含量」とは、抗体が約50%を超える、典型的には、80%を超える又は85%を超えるフコース含量を有することを指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「サイレントFc」は、非改変Fcと比較して、Fcγ受容体(FcγR)への結合が減少するように改変されているか、又はADCC、ADCP及び/又はCDCなどのエフェクター機能が減少するように修飾されているFcドメインを指す。Fcの修飾は、位置214、233、234、235、236、237、238、265、267、268、270、295、297、309、327、328、329、330、331又は365における変異であり得る。単独で、又は組み合わせて加えることができる例示的な変異は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4における、変異K214T、E233P、L234V、L234A、G236の欠失、V234A、F234A、L235A、G237A、P238A、P238S、D265A、S267E、H268A、H268Q、Q268A、N297A、A327Q、P329A、D270A、Q295A、V309L、A327S、L328F、A330S、及びP331Sである。ADCCが低下した抗体をもたらす例示的な変異の組み合わせは、IgG1における変異L234A/L235A、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプにおけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及び、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sである。CDCが低下した抗体をもたらす例示的な変異は、K322A変異である。残基の付番は、EU付番に従う(例えば、IMGT(登録商標)Web resources;IMGT(登録商標)Repertoire(IG and TR);Proteins and alleles;allotypesを参照されたい)。
【0089】
本開示の方法
アミバンタマブ又はJNJ-61186372(JNJ-372)は、米国特許第9,593,164号に記載されているIgG1抗EGFR/c-Met二重特異性抗体である。
【0090】
本開示は、少なくとも部分的に、EGFR活性化変異を欠く腫瘍の治療においてアミバンタマブが有効であるという知見に基づく。
【0091】
がんに関連し得るEGFR活性化変異としては、EGFRの少なくとも1つの生物活性の増加(例えばチロシンキナーゼ活性の上昇など)、リガンド結合の増強、リガンド非依存性シグナル伝達、細胞増殖の増加、MAPK/ERK経路へのシグナル伝達、遺伝子転写、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、二量体化(EGFR:EGFR)、ヘテロ二量体化(EGFR:HER2又はEGFR:HER3)をもたらす点変異、欠失変異、挿入変異、逆位又は遺伝子増幅が挙げられる。変異は、EGFR遺伝子、又はEGFR遺伝子に関連する調節領域の任意の部分に位置してもよく、エキソン18、19、20、若しくは21における変異、又はキナーゼドメインにおける変異を含む。EGFR活性化変異の他の例は、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許出願公開第2005/0272083号を参照されたい)。受容体ホモ及びヘテロ二量体、受容体リガンド、自己リン酸化部位、並びにErbBの媒介によるシグナル伝達に関与するシグナル伝達分子を含むEGFR及び他のErbB受容体に関する情報は、当該技術分野において既知である(例えば、Hynes and Lane,Nature Reviews Cancer 5:341-354,2005を参照されたい)。
【0092】
いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異は、L718Q、G719A、G719X(Xは任意のアミノ酸である)、L861X(Xは任意のアミノ酸である)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、C797S、L858P、若しくはT790Mの置換、E746~A750の欠失、R748~P753の欠失、M766とA767との間へのAla(A)の挿入、S768とV769との間へのSer、Val、及びAla(SVA)の挿入、P772とH773との間へのAsn及びSer(NS)の挿入、D761とE762、A763とY764、Y764とY765、M766とA767、A767とV768、S768とV769、V769とD770、D770とN771、N771とP772、P772とH773、H773とV774、V774とC775との間への1つ以上のアミノ酸の挿入、EGFRエキソン20における1つ以上の欠失、又はEGFRエキソン20における1つ以上の挿入、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。EGFRエキソン20変異(1つ以上のアミノ酸の挿入)を有する対象は、概して、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor、TKI)に対して抵抗性である(例えば、国際公開第2018/094225号を参照)。
【0093】
いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異は、S768I、L861Q及びG719Xなどの1つ以上の珍しいEGFR活性化変異を含む。
【0094】
EGFR変異状態は、当該技術分野で既知の方法、例えば、サンガー法、次世代シーケンシング(next-generation sequencing、NGS)、全エクソーム解析(whole exome sequencing、WES)、RNA-Seq、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法、又は免疫組織化学などを使用して検出することができる。
【0095】
本開示は、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞増殖因子受容体(c-Met)抗体することを含む、方法を提供する。
【0096】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0097】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く非小細胞肺がん(NSCLC)を有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0098】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く小細胞肺がん(SCLC)を有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象に、治療有効量の治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0099】
本開示はまた、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺腺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺腺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
本開示はまた、がんを有する対象を二重特異性抗EGFR/c-Met抗体により治療する方法であって、
対象由来の生体試料を提供することと、
試料における活性化変異を欠くEGFRの有無を判定することと、
活性化変異を欠くEGFRを有すると判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を含む、方法を提供する。
【0101】
いくつかの実施形態では、生体試料は、血液試料である。
【0102】
いくつかの実施形態では、生体試料は、腫瘍組織生検である。
【0103】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、
EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインは、配列番号1の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインは、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、EGFRに特異的に結合する第1のドメインは、配列番号13の重鎖可変領域(VH)及び配列番号14の軽鎖可変領域(VL)を含み、c-Metに特異的に結合する第2のドメインは、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0106】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、およそ1%~約15%の間のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む。
【0108】
低フコース含量を有する抗体は、以下などの二分岐複合体型のFcオリゴ糖を有する比較的高度に脱フコシル化された抗体の発現を成功させることが報告されている様々な方法を使用して作製することができる:培養物の浸透圧の制御(Konnoet al.,Cytotechnology 64(:249-65,2012)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733-26740,2002)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010;印刷前に電子出版;PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466-3473,2003)、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Moriet al.,Biotechnol Bioeng88:901-908,2004)、又はβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII又は強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害剤であるキフネンシンの共発現(Ferraraet al.,J Biol Chem281:5032-5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851-861,2006、Xhouet al.,Biotechnol Bioeng 99:652-65,2008)。概して、抗体のグリカン中のフコース含量を低下させることにより、抗体媒介性細胞毒性(antibody-meidated cellular cytotoxicity、ADCC)が増強される。
【0109】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、方法を提供する。
【0110】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、方法を提供する。
【0111】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、方法を提供する。
【0112】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象に、治療有効量の二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-MET抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-METに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、方法を提供する。
【0113】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺腺がんを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠く肺腺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-METに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、方法を提供する。
【0114】
本開示は、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0115】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法も提供する。
【0116】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象を治療する方法であって、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0117】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0118】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺腺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺腺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0119】
本開示は、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプであり、かつEGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0120】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプであり、かつEGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0121】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるNSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプであり、かつEGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0122】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプであり、かつEGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0123】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺腺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺腺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプであり、かつEGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号13のVH及び配列番号14のVLを含み、第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、方法を提供する。
【0124】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、IgG1アイソタイプである。IgG1定常ドメイン内にはいくらかのバリエーション(例えば、周知のアロタイプ)が存在し、214、356、358、422、431、435、又は436位(EU付番に従った残基の付番)にバリエーションがある(例えば、IMGT Web resources;IMGT Repertoire(IG and TR);Proteins and alleles;allotypesを参照されたい)。二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、G1m17、G1m3、G1m1、G1m2、G1m27、又はG1m28などの任意のIgG1アロタイプであってもよい。
【0125】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17のHC1、配列番号18のLC1、配列番号19のHC2、及び配列番号20のLC2を含む、方法を提供する。
【0126】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17のHC1、配列番号18のLC1、配列番号19のHC2、及び配列番号20のLC2を含む、方法を提供する。
【0127】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くNSCLCを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるNSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17のHC1、配列番号18のLC1、配列番号19のHC2、及び配列番号20のLC2を含む、方法を提供する。
【0128】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠くSCLCを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるSCLCを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17のHC1、配列番号18のLC1、配列番号19のHC2、及び配列番号20のLC2を含む、方法を提供する。
【0129】
本開示はまた、EGFR活性化変異を欠く肺腺がんを有する対象を治療する方法であって、活性化変異を欠くEGFRについて陽性である肺腺がんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与することを含み、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17のHC1、配列番号18のLC1、配列番号19のHC2、及び配列番号20のLC2を含む、方法を提供する。
【0130】
いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の以前の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である。
【0131】
いくつかの実施形態では、1つ以上の以前の抗がん療法は、1つ以上の、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である。
【0133】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである。
【0134】
いくつかの実施形態では、1つ以上の以前の抗がん療法は、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤に対して抵抗性であるか又は抵抗性を獲得している。がんが抵抗性を獲得し得る例示的なEGFR阻害剤は、抗EGFR抗体であるセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パンチヌムマブ(VECTIBIX(登録商標))、マツズマブ、ニモツズマブ、低分子EGFR阻害剤であるエルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、EKB-569(ペリチニブ、不可逆性EGFR TKI)、汎ErbB及び他の受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、ペリチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、バンデタニブ(ZD6474、ZACTIMA(商標)、EGFR、VEGFR2、及びRET TKI)、PF00299804(ダコミチニブ、不可逆性汎ErbB TKI)、CI-1033(不可逆性汎erbB TKI)、アファチニブ(BIBW2992、不可逆性汎ErbB TKI)、AV-412(二重EGFR及びErbB2阻害剤)、EXEL-7647(EGFR、ErbB2、GEVGR、及びEphB4阻害剤)、CO-1686(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、AZD9291(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、並びにHKI-272(ネラチニブ、不可逆性EGFR/ErbB2阻害剤)である。
【0136】
様々な定性的及び/又は定量的な方法を使用して、対象が抗がん療法による治療に対して抵抗性であるかどうか、抵抗性を発現しているかどうか、又は抵抗性を発現しやすいかどうかを判定することができる。抗がん療法に対する抵抗性に関連し得る症状としては、患者の健康の低下若しくは定常状態、腫瘍サイズの増大、腫瘍の成長の低減の停止若しくは減速、及び/又は1つの位置から他の器官、組織、若しくは細胞への体内におけるがん性細胞の拡散が挙げられる。食欲低下、認知障害、うつ病、呼吸困難、倦怠感、ホルモン撹乱、好中球減少、疼痛、末梢神経障害、及び性機能不全などのがんに関連する様々な症状の再確立又は悪化も、対象が抗がん療法に対する抵抗性を発現しているか又は発現しやすいことの指標となり得る。がんに関連する症状は、がんの種類に応じて異なり得る。例えば、子宮頸部がんに関連する症状としては、異常出血、異常な激しい膣分泌物、通常の月経周期に関連しない骨盤痛、膀胱痛又は排尿中の疼痛、及び定期的な月経期間の間、性交、膣洗浄、又は内診後の出血を挙げることができる。肺がんに関連する症状としては、しつこい咳、喀血、息切れ、ぜーぜーする胸痛、食欲減退、意図しない体重減少、及び倦怠感を挙げることができる。肝臓がんの症状としては、食欲及び体重の減少、特に背部及び肩部に及び得る腹部の右上部分における腹痛、悪心及び嘔吐、全身の衰弱及び倦怠感、肝肥大、腹部膨潤(腹水)、並びに皮膚及び白眼の黄変(黄疸)を挙げることができる。腫瘍学の当業者であれば、特定の種類のがんに関連する症状を容易に特定することができる。
【0137】
例示的なPD-(L)1軸阻害剤は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペンブロリムマブ(KEYTRUDA(登録商標))、シンチリマブ、セミプリマブ(LIBTAYO(登録商標))、トリポリバマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、ドストラリマブ、ゲノリムズマブ、若しくはセトレリマブなどのPD-1に結合する抗体、又はPD-L1に結合する抗体であり、例えば、PD-L1抗体は、エンバホリマブ、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))、及びアベルマブ(BAVENCIO(登録商標))である。
【0138】
市販の抗体は、認可された販売業者又は薬局を介して購入することができる。低分子のアミノ酸配列構造は、CAS registryからの企業によるUSAN及び/又はINN寄託から見出すことができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、対象は、治療未経験である。
【0140】
いくつかの実施形態では、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんは、CDK4増幅、EGFR増幅、KRAS増幅、MDM2増幅、TERT増幅、NF1 R2450;RAD50 L597Vfs5、MET c.3082+3A>G、循環HGFの増加したレベル、c-MET増幅、又はそれらの任意の組み合わせについて陽性である。
【0141】
いくつかの実施形態において、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんは、ALK、APC、BRAF、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、CDKN2B、CTNNB1、ERBB2、ERBB3、FGFR3、KIT、LRP1B、MET、MLH1、MSH3、NOTCH1、NTRK1、RET、ROS1、STK11、TP53、及びVEGFAからなる群から選択される遺伝子における少なくとも1つの変異について陽性である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、点変異、欠失変異、挿入変異、逆位、遺伝子増幅、及び遺伝子融合からなる群から選択される変異である。変異は、遺伝子又は遺伝子に関連する調節領域の任意の部分に位置し得る。変異は、当該技術分野で既知の方法、例えば、サンガー法、次世代シーケンシング(NGS)、全エクソーム解析(WES)、RNA-Seq、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法、又は免疫組織化学などを使用して検出することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、APCにおける少なくとも1つの変異は、S2621C、N813S、E1317Q、又はR549Gである。
【0143】
いくつかの実施形態では、BRCA1における少なくとも1つの変異は、M128V、G275S、Y179C、F486L、又はN550Hである。
【0144】
いくつかの実施形態では、BRCA2における少なくとも1つの変異は、S326R、R2973H、R2034C、I283V、R672X、G25X、R468X、又はI1929M(Xは任意のアミノ酸である)である。
【0145】
いくつかの実施形態では、CDKN2Aにおける少なくとも1つの変異は、G23X、A100X、D84H、C72X、H83N、又はG111X(Xは任意のアミノ酸である)である。
【0146】
いくつかの実施形態では、CTNNB1における少なくとも1つの変異は、T41Aである。
【0147】
いくつかの実施形態では、ERBB2における少なくとも1つの変異は、R1146W、V1180X(Xは任意のアミノ酸である)、又はA386Dである。
【0148】
いくつかの実施形態では、ERBB3における少なくとも1つの変異は、K998R、L1177I、又はG513Dである。
【0149】
いくつかの実施形態では、FGFR3における少なくとも1つの変異は、G639R又はE85Kである。
【0150】
いくつかの実施形態では、LRP1Bにおける少なくとも1つの変異は、P4512A、A3816V、T3393K、Q3636H、M1V、C1554S、S1083N、T2482S、C3522Y、G1965C、P2882T、P3372A、I1266L、L4268X(Xは任意のアミノ酸である)、S449T、E4352G、C864R、F1435I、D3697Y、V2033F、A3308S、S1281N、D1807Eである。
【0151】
いくつかの実施形態では、METにおける少なくとも1つの変異は、E168Dである。
【0152】
いくつかの実施形態では、MSH3における少なくとも1つの変異は、E1036Qである。
【0153】
いくつかの実施形態では、NOTCH1における少なくとも1つの変異は、A1696V、R1279C、E1450K、Q2184R、Q2184K、T701P、又はC612Yである。
【0154】
いくつかの実施形態では、TP53における少なくとも1つの変異は、R280G、P278S、E198X、H193L、R379S、V172X、G245D、L194R、H179Y、L265P、R110L、R158L、R248W、I332M、G244C、R273H、Y163C、H193R、R158L、Y103X、M237I、R273L、R273H、E171X、又はR249M(Xは任意のアミノ酸である)である。
【0155】
いくつかの実施形態では、VEGFAにおける少なくとも1つの変異は、R114W、R87W又はR335Cである。
【0156】
例示的なc-Met活性化変異としては、チロシンキナーゼ活性の上昇、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、リガンド結合の強化などのc-Metタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増加させる点変異、欠失変異、挿入変異、逆位、又は遺伝子増幅が挙げられる。変異は、c-Met遺伝子の任意の部分又はc-Metのキナーゼドメインにおける変異などの遺伝子に関連する制御領域に位置し得る。例示的なc-Met活性化変異は、残基位置N375、V13、V923、R175、V136、L229、S323、R988、S1058/T1010、及びE168における変異である。EGFR及びc-Metの変異又は遺伝子増幅を検出する方法は周知である。
【0157】
いくつかの実施形態では、変異体KRASは、G12V、G12C、G12A、若しくはG12Dの置換、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0158】
いくつかの実施形態において、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんは、少なくとも1つのEGFRリガンドの発現について陽性である。EGFRリガンドの例としては、上皮成長因子(Epidermal growth factor、EGF)、アンフィレグリン(AREG)、形質転換成長因子α(transforming growth factor α、TGFα)、ヘパリン結合EGF様成長因子(heparin-binding EGF-like growth factor、HBEGF)、ベタセルリン(betacellulin、BTC)、エピレグリン(epiregulin、EREG)、及びエピジェン(epigen、EPGN)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
いくつかの実施形態では、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを治療する方法は、少なくとも1つのEGFRリガンドのレベルを判定することと、活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつ少なくとも1つのEGFRリガンドの遺伝子発現レベル若しくはタンパク質レベルについて陽性であると判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんを治療する方法は、アンフィレグリンのレベルを判定することと、活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつアンフィレグリン遺伝子発現レベル若しくはタンパク質レベルについて陽性であると判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、アンフィレグリン遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルを対照値と比較することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、脳がん、上皮細胞がんに由来するがん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、咽頭がん、鼻のがん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、舌のがん、食道がん、膣がん、子宮頸がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、肝細胞がん(HCC)又は散発性若しくは遺伝性乳頭状腎細胞がん(PRCC)、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、肺がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、胃がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、結腸直腸がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、脳がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、上皮細胞がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、乳がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、卵巣がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、結腸直腸がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、肛門がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、前立腺がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、腎臓がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、膀胱がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、頭頸部がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、咽頭がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、鼻のがんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、膵臓がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、皮膚がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、口腔がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、舌のがんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、食道がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、膣がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、子宮頸がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、脾臓のがんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、精巣がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、胃がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、胸腺のがんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、結腸がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、甲状腺がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、肝臓がんを含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、肝細胞がん(HCC)を含む。いくつかの実施形態では、EGFR活性化変異を欠くがんは、散発性若しくは遺伝性乳頭状腎細胞がん(PRCC)を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、NSCLCは、扁平上皮がん、腺がん、及び大細胞がんを含む。いくつかの実施形態では、NSCLCの細胞は、上皮表現型を有する。いくつかの実施形態では、NSCLCは、1つ以上のEGFR阻害剤による治療に対する抵抗性を獲得している。
【0163】
いくつかの実施形態では、対象には、1つ以上の抗がん療法が更に施される。
【0164】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗がん療法は、化学療法、放射線療法、手術、標的抗がん療法、若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、c-Metの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER2の阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER3の阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、VEGFRの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、又はAXLの阻害剤である。
【0166】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである。
【0167】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ラパチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、バンデタニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、アファチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、オシメルチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ラゼルチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ポジオチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、クリオチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、カボザンチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、カプマチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、アキシチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、レンバチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ニンテダニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、レゴラフェニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、パゾパニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ソラフェニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、スニチニブである。
【0168】
本開示の方法において二重特異性抗EGFR/c-Met抗体と組み合わせて施され得る抗がん療法としては、化学療法薬又は当業者に既知の他の抗がん治療薬のうちの任意の1つ以上が挙げられる。化学療法剤は、がんの治療に有用な化学化合物であり、増殖阻害剤又は他の細胞毒性剤を含み、アルキル化剤、抗代謝剤、抗微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート及び5-FU;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;副腎皮質ホルモン合成阻害薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤(folic acid replenisher)、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン(triaziquone);2,2′,2″-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド又はタキサンファミリーのメンバー、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))及びその類似体;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、パゾパニブ(VOTRIENT(商標))、トセラニブ(PALLADIA(商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(商標))、セジラニブ(RECENTIN(登録商標))、レゴラフェニブ(BAY73-4506)、アキシチニブ(AG013736)、レスタウルチニブ(CEP-701)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、アファチニブ(BIBW 2992)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、ネラチニブ(HKI-272)などを含む受容体チロシンキナーゼ及び/若しくは血管新生の阻害剤、並びに上述のいずれかの医薬的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を制御又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標))を含む抗エストロゲン薬;並びに抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに上述のいずれかの医薬的に許容される塩、酸又は誘導体もまた、この定義に含まれる。Wiemann et al.,1985,Medical Oncology(Calabresi et aL,eds.),Chapter 10,McMillan Publishingに開示されている他の従来の細胞毒性化合物も、本発明の方法に適用可能である。
【0169】
投与
二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、医薬的に許容される担体中で投与され得る。「担体」は、本発明の抗体がともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体であってもよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを使用して、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を製剤化してもよい。これらの溶液は滅菌され、概して粒子状物質を含まない。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。非経口投与の場合、担体は、滅菌水を含み得、溶解度の上昇又は保存のために他の賦形剤を添加してもよい。注射用の懸濁液又は溶液はまた、水性担体を適切な添加剤とともに利用して調製してもよい。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21stEdition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp691-1092に記載され、特に、pp.958~989を参照されたい。
【0170】
投与モードは、錠剤、カプセル剤、液剤、散剤、ゲル剤、粒子の製剤を使用して、宿主に二重特異性抗EGFR-c-Met抗体を送達する任意の好適な経路、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下などの非経口投与、肺、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸内)であってもよく、製剤はシリンジ、埋込デバイス、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当該技術分野において周知の、当業者によって認識される他の手段に収容されていてもよい。部位特異的投与は、例えば、腫瘍内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸内、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、静脈内(intravenously、IV)投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、皮下(subcutaneously、SC)投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、オンボディ型デリバリーデバイス(on-body delivery device)を使用して投与される。
【0171】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約140mg~約2240mgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約140mg~約2240mgの間の用量で投与される。
【0172】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、約600mg、約610mg、約620mg、約630mg、約640mg、約650mg、約660mg、約670mg、約680mg、約690mg、約700mg、約710mg、約720mg、約730mg、約740mg、約750mg、約760mg、約770mg、約780mg、約790mg、約800mg、約810mg、約820mg、約830mg、約840mg、約850mg、約860mg、約870mg、約880mg、約890mg、約900mg、約910mg、約920mg、約930mg、約940mg、約950mg、約960mg、約970mg、約980mg、約990mg、約1000mg、約1010mg、約1020mg、約1030mg、約1040mg、約1050mg、約1060mg、約1070mg、約1080mg、約1090mg、約1100mg、約1110mg、約1120mg、約1130mg、約1140mg、約1150mg、約1160mg、約1170mg、約1180mg、約1190mg、約1200mg、約1210mg、約1220mg、約1230mg、約1240mg、約1250mg、約1260mg、約1270mg、約1280mg、約1290mg、約1300mg、約1310mg、約1320mg、約1330mg、約1340mg、約1350mg、約1360mg、約1370mg、約1380mg、約1390mg、約1400mg、約1410mg、約1420mg、約1430mg、約1440mg、約1450mg、約1460mg、約1470mg、約1480mg、約1490mg、約1500mg、約1510mg、約1520mg、約1530mg、約1540mg、約1550mg、約1560mg、約1570mg、約1575mg、約1580mg、約1590mg、約1600mg、約1610mg、1620mg、約1630mg、約1640mg、約1650mg、約1660mg、約1670mg、約1680mg、約1690mg、約1700mg、約1710mg、約1720mg、約1730mg、約1740mg、約1750mg、約1760mg、約1770mg、約1780mg、約1790mg、約1800mg、約1810mg、約1820mg、約1830mg、約1840mg、約1850mg、約1860mg、約1870mg、約1880mg、1890mg、約1900mg、約1910mg、約1920mg、約1930mg、約1940mg、約1950mg、約1960mg、約1970mg、約1980mg、約1990mg、約2000mg、約2010mg、約2020mg、約2030mg、約2040mg、約2050mg、約2060mg、約2070mg、約2080mg、約2090mg、約2100mg、約2110mg、約2120mg、約2130mg、約2140mg、約2150mg、約2160mg、約2170mg、約2180mg、約2190mg、約2200mg、約2210mg、約2220mg、約2230mg、約2240mg、約2250mg、約2260mg、約2270mg、約2280mg、約2290mg、約2300mgの用量で投与される。
【0173】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約350mg、約700mg、約1050mg、約1400mg、約1575mg、約1600、約2100mg、又は約2240mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約350mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約700mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約750mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約800mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約850mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約900mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約950mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1000mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1050mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1100mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1150mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1250mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1350mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1400mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1575mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約1600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約2100mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、約2240mgの用量で投与される。
【0174】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、約1050mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、約1400mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、約1575mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、約1600mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態では、約2100mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、約2240mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。
【0175】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約1050mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約1400mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約1575mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約1600mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約2100mgの二重特異性抗は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、約2240mgの二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。
【0176】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週2回投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、週1回投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、2週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、3週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、4週間に1回投与される。
【0177】
併用療法の場合、1つ以上の抗がん剤は、推奨用量及び抗がん剤の投与量を使用して投与され得る。
【0178】
本開示の方法で使用される二重特異性抗EGFR/c-Met抗体の生成
本開示の方法において使用することができる例示的な二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、アミバンタマブである。アミバンタマブは、以下のアミノ酸配列を特徴とする:
EGFR結合アーム
>配列番号1(HCDR1、EGFR結合アーム)
TYGMH
>配列番号2(HCDR2、EGFR結合アーム)
VIWDDGSYKYYGDSVKG
>配列番号3(HCDR3、EGFR結合アーム)
DGITMVRGVMKDYFDY
>配列番号4(LCDR1、EGFR結合アーム)
RASQDISSALV
>配列番号5(LCDR2、EGFR結合アーム)
DASSLES
>配列番号6(LCDR3、EGFR結合アーム)
QQFNSYPLT
>配列番号7(HCDR1、c-Met結合アーム)
SYGIS
>配列番号8(HCDR2、c-Met結合アーム)
WISAYNGYTNYAQKLQG
>配列番号9(HCDR3、c-Met結合アーム)
DLRGTNYFDY
>配列番号10(LCDR1、c-Met結合アーム)
RASQGISNWLA
>配列番号11(LCDR2、c-Met結合アーム)
AASSLLS
>配列番号12(LCDR3、c-Met結合アーム)
QQANSFPIT
>配列番号13(VH、EGFR結合アーム)
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWDDGSYKYYGDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGITMVRGVMKDYFDYWGQGTLVTVSS
>配列番号14(VL、EGFR結合アーム)
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISSALVWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSESGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPLTFGGGTKVEIK
>配列番号15(VH、c-Met結合アーム)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCETSGYTFTSYGISWVRQAPGHGLEWMGWISAYNGYTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDLRGTNYFDYWGQGTLVTVSS
>配列番号16(VL、c-Met結合アーム)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISNWLAWFQHKPGKAPKLLIYAASSLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPITFGQGTRLEIK
>配列番号17 HC1
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWDDGSYKYYGDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGITMVRGVMKDYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
>配列番号18 LC1
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISSALVWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSESGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
>配列番号19 HC2
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCETSGYTFTSYGISWVRQAPGHGLEWMGWISAYNGYTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDLRGTNYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
>配列番号20 LC2
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISNWLAWFQHKPGKAPKLLIYAASSLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0179】
米国特許第9,593,164号に記載されているように、アミバンタマブと比較したときに同様の特徴を示す限り、公に利用可能な他の二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を本開示の方法で使用してもよい。本開示の方法で使用され得る二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、公に入手可能であるEGFR結合VH/VLドメインとc-Met結合VH/VLドメインとを組み合わせ、得られた二重特異性抗体を米国特許第9,593,164号に記載のとおりその特徴について試験することによっても生成され得る。
【0180】
本開示の方法で使用される二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、例えば、無細胞環境においてインビトロで又は共発現を使用して、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体を形成しやすくなるように各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成することができる。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異性抗体のうちの1つの得られた遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により放出され及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体形成よりもヘテロ二量体形成に有利となるように操作されてもよい。得られる生成物は、各々異なるエピトープ、すなわち、EGFRにおけるエピトープ及びc-Metにおけるエピトープに結合する2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。例えば、本発明の二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載の技術を使用して生成することができる。IgG1抗体の場合、一方の重鎖における変異F405L及び他方の重鎖におけるK409Rを使用することができる。IgG2抗体では、F405L及びR409K置換を有する野生型IgG2及びIgG2抗体を使用してもよい。IgG4抗体では、F405L及びR409K置換を有する野生型IgG4及びIgG4抗体を使用してもよい。二重特異性抗体を生成するために、第1の単一特異性二価抗体及び第2の単一特異性二価抗体を、Fc領域に前述の変異を有するように操作し、ヒンジ領域でシステインがジスルフィド結合異性化を受けることができる十分な還元条件下で、抗体を一緒にインキュベートし、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールである。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0181】
本開示の方法で使用される二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、ノブ-イン-ホール(Genentech)、CrossMAb(Roche)及び静電的適合(electrostatically-matched)(Chugai,Amgen,NovoNordisk,Oncomed)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、及びBiclonic(Merus)などの設計を使用して生成することもできる。
【0182】
「ノブ-イン-ホール」手法(例えば、国際公開第2006/028936号を参照されたい)において、ヒトIgGのCH3ドメインの界面を形成する選択アミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置に変異を導入され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換ペアは、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表現される)。
【0183】
Fabアーム交換のプロモータへの「ノブ-イン-ホール」手法の利用に加えて、CrossMAb技術は、半アームのうちの1つにCH1/CLドメイン交換を利用して、得られる二重特異性抗体の正しい軽鎖の対合を保証する(例えば、米国特許第8,242,247号を参照されたい)。
【0184】
他の交差手法を使用して、二重特異性抗体の重鎖と軽鎖の間又は重鎖内で、一方又は両方のアームにおいて、可変又は定常、又は両ドメインを交換することによって、本発明の完全長二重特異性抗体を生成してもよい。これらの交換としては、例えば、国際公開第2009/080254号、同第2009/080251号、同第2009/018386号、及び同第2009/080252号に記載されるVH-CH1とVL-CL、VHとVL、CH3とCL、及びCH3とCH1が挙げられる。
【0185】
他の手法、例えば、あるCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体化の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用されてもよい。他の手法では、ヘテロ二量体化は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号に記載されているように、以下の置換:L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表す)により促進することができる。
【0186】
SEEDbody技術を利用して、本発明の二重特異性抗体を生成してもよい。SEEDbodyは、それらの定常ドメインにおいて、米国特許出願公開第20070287170号に記載されるように、ヘテロ二量体化を促進するためにIgA残基で置換された選択IgG残基を有する。
【0187】
変異は、典型的には、標準的な方法を使用して、抗体の定常ドメインなどの分子に対してDNAレベルで行われる。
【0188】
実施形態
1)EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する対象を治療する方法であって、EGFRについて陽性であり、かつ少なくとも1つのEGFR活性化変異を欠くがんを有する対象に、治療有効量の単離された二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞増殖因子受容体(c-Met)抗体を投与することを含む、方法。
2)がんを有する対象を二重特異性抗EGFR/c-Met抗体により治療する方法であって、
a)対象由来の生体試料を提供することと、
b)試料における活性化変異を欠くEGFRの有無を判定することと、
c)EGFR活性化変異を欠くと判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を含む、方法。
3)少なくとも1つの活性化変異が、EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる変異である、実施形態1又は2に記載の方法。
4)EGFRの少なくとも1つの生物活性が、チロシンキナーゼ活性、リガンド非依存性シグナル伝達、細胞増殖の増加、MAPK/ERK経路へのシグナル伝達、遺伝子転写、二量体化(EGFR:EGFR)、及びヘテロ二量体化(EGFR:HER2又はEGFR:HER3)からなる群から選択される、実施形態3に記載の方法。
5)EGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる少なくとも1つの活性化変異が、L718Q、G719A、G719X(Xは任意のアミノ酸である)、L861X(Xは任意のアミノ酸である)、L858R、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、C797S、L858P又はT790Mの置換、E746~A750の欠失、R748~P753の欠失、M766とA767との間へのAla(A)の挿入、S768とV769との間へのSer、Val、及びAla(SVA)の挿入、P772とH773との間へのAsn及びSer(NS)の挿入、D761とE762、A763とY764、Y764とY765、M766とA767、A767とV768、S768とV769、V769とD770、D770とN771、N771とP772、P772とH773、H773とV774、V774とC775との間への1つ以上のアミノ酸の挿入、EGFRエキソン20における1つ以上の欠失、EGFRエキソン20における1つ以上の挿入、S768I、L861Q及びG719X(Xは任意のアミノ酸である)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む、実施形態3に記載の方法。
6)方法が、KRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異の有無を判定することと、活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつKRAS、PIK3CA、及びPTENからなる群から選択されるいずれか1つの遺伝子における少なくとも1つの変異を欠くと判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7)KRASにおける少なくとも1つの変異が、G12V、G12C、G12A及びG12Dからなる群から選択される、実施形態6に記載の方法。
8)KRASにおける少なくとも1つの変異が、G12Cである、実施形態7に記載の方法。
9)PI3Kにおける少なくとも1つの変異が、E545K、H1047L、及びPI3K増幅からなる群から選択される、実施形態8に記載の方法。
10)PTENにおける少なくとも1つの変異が、PTEN欠失である、実施形態6に記載の方法。
11)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含み、第1のドメインが、配列番号1の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含み、c-Metに結合する第2のドメインが、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2、及び配列番号12のLCDR3を含む、実施形態1~10に記載の方法。
12)EGFRに特異的に結合する第1のドメインが、配列番号13の重鎖可変領域(VH)及び配列番号14の軽鎖可変領域(VL)を含み、c-Metに特異的に結合する第2のドメインが、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、IgG1アイソタイプである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1つ以上のFcサイレンシング変異を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16)1つ以上のFcサイレンシング変異が、Fcγ受容体に対する親和性を減少させる、実施形態14に記載の方法。
17)1つ以上のFcサイレンシング変異が、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sを含む、実施形態15又は16に記載の方法。
18)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約1%~約15%の間のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19)対象が、1つ以上の以前の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
20)1つ以上の以前の抗がん療法が、1つ以上の、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態19に記載の方法。
21)1つ以上の以前の抗がん療法が、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態20に記載の方法。
22)対象が、治療未経験である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
23)活性化変異を欠くEGFRについて陽性であるがんは、ALK、APC、BRAF、BRCA1、BRCA2、CDKN2A、CDKN2B、CTNNB1、ERBB2、ERBB3、FGFR3、KIT、LRP1B、MET、MLH1、MSH3、NOTCH1、NTRK1、RET、ROS1、STK11、TP53、及びVEGFAからなる群から選択される遺伝子における少なくとも1つの変異について陽性である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24)がんが、肺がん、胃がん、結腸直腸がん、脳がん、上皮細胞に由来するがん、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、咽頭がん、鼻のがん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、舌のがん、食道がん、膣がん、子宮頸がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、肝細胞がん(HCC)又は散発性若しくは遺伝性乳頭状腎細胞がん(PRCC)、あるいはそれらの任意の組み合わせである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25)肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、若しくは肺腺がん、肺肉腫様がん、又はそれらの任意の組み合わせである、実施形態24に記載の方法。
26)対象に1つ以上の抗がん療法を更に施すことを含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
27)1つ以上の抗がん療法が、化学療法、放射線療法、手術、標的抗がん治療、キナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態26に記載の方法。
28)キナーゼ阻害剤が、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である、実施形態20に記載の方法。
29)キナーゼ阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである、実施形態28に記載の方法。
30)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約140mg~約2240mgの間の用量で投与される、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
31)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1575mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、約2000mg、約2050mg、約2100mg、約2150mg、約2200、又は約2240mgの用量で投与される、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1050mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1400mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
34)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1575mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
35)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、1600mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
36)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、2100mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
37)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、2240mgの用量で投与される、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
38)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回投与される、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
39)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、静脈内投与される、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
40)二重特異性抗EGFR/c-Met抗体が、皮下投与される、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
41)方法が、アンフィレグリンのレベルを判定することと、活性化変異を欠くEGFRを有すると判定され、かつアンフィレグリンについて陽性であると判定された対象に、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を投与するか又は投与を提供することと、を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
次に、本発明を以下の特定の非限定的な実施例を参照して説明する。
【0190】
実施例1.活性化変異を欠くEGFRを発現する非小細胞肺がん(NSCLC)患者由来異種移植片(patient-derived xenograft、PDX)腫瘍の特徴付け。
免疫組織化学(immunohistochemistry、IHC)によって決定される、EGFR及びMETタンパク質レベル;近接ライゲーションアッセイ(proximity ligation assay、PLA)によって決定される、シグナル伝達;並びに腫瘍関連マクロファージ(tumor associated macrophage、TAM)含量を、活性化変異を欠くEGFRを有する39個のNSCLC患者由来異種移植片(PDX)モデルにおいて評価した。EGFRにおける活性化変異の欠如を、全エクソーム解析(WES)によって判定した。ホルマリン固定及びパラフィン包埋(formalin fixed and paraffin embedded、FFPE)された、活性化変異を欠くEGFRを有する39個のNSCLC PDX腫瘍を、Charles River Laboratory(CRL,Freiburg,Germany)から入手した。腫瘍は、19個の腺がん及び20個の類表皮NSCLCを含んでいた。IHC及びPLAを使用して、これらのモデルにおけるEGFR及びMETの両方について、受容体タンパク質レベルと受容体シグナル伝達との間の相関を評価した。
【0191】
IHC研究のために、組織切片を、Smithら(2015)に記載のとおり処理した(Annotation of human cancers with EGFR signaling-associated protein complexes using proximity ligation assays.Matthew A.Smith et.al.2015、Science Signaling、8(359):ra4)。簡単に説明すると、切片を再水和し、抗原を回収した。1.5%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)とのインキュベーションによって非特異的結合をブロックし、EGFRを標的とするウサギ抗体(Ventana、クローン5B7)を使用して、又はMETクローンD1C2(Cell Signaling)及びホスホ-METクローンD26(Cell Signaling)とともに、0.5%PBST中のBSA中で一晩インキュベートした。スライドをPBSTで2回洗浄し、EnVision+抗ウサギ(K400311-2、Agilent)とともに1時間インキュベートし、DAB(diaminobenzidine、ジアミノベンジジン)によって可視化した。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、再水和し、しっかり取り付けた(hard-mounted)。Hスコアを計算するために、細胞の染色強度をスコア化し(0、1+、2+、3+)、各強度での細胞のパーセンテージを決定した。次いで、式[1×(%細胞1+)+2×(%細胞2+)+3×(%細胞3+)]を使用して、各PDXモデルについて0~300の範囲のHスコアを計算した。
【0192】
近接ライゲーションアッセイ(PLA)は、公開されたプロトコル(Annotation of human cancers with EGFR signaling-associated protein complexes using proximity ligation assays.Matthew A.Smith et.al.2015、Science Signaling、8(359):ra4)に従って実施した。簡潔には、FFPE PDX腫瘍の5μm切片を含有するスライドを、キシレン及び段階的アルコールによって再水和させた。熱誘導性エピトープ回復を、トリス-EDTA(pH9)中、プレッシャークッカー中で20分間行い、次いで20分間冷却した。1.5%ウシ血清アルブミン(BSA)とともに室温で30分間インキュベートすることによって非特異的結合をブロックした。一次抗体を、1:300に希釈したEGFRを標的とするウサギ抗体(クローンD38B1、Cell Signaling Technology)又はMETクローンD1C2(Cell Signaling)、及び増殖因子受容体結合タンパク質2(GRB2)(クローン81、BD Biosciences)を標的とするマウス抗体を使用して、0.5%リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline、PBS)-Tween20(PBST)中の1.5%BSA中で一晩インキュベートした。PLAプローブは、ウサギ(-)及びマウス(+)であり、Duolink(商標)In Situ PLA Far Redキット(Sigma-Aldrich)で検出した。Alexa Fluor488結合抗サイトケラチンを使用して、上皮領域(クローンAE1/AE3、eBioscience)を区別した。
【0193】
共焦点像は、40×1.25NA(数値開口)プランアポクロマート油浸対物レンズ(Leica Microsystems CMS GmbH)を通して、Leica TCS SP5 AOBS(Acousto Optical Bream Splitter、音響光学ビームスプリッタ)レーザ走査共焦点顕微鏡で取得した。ダイオード(405)及びHeNe(647)レーザ線を適用して試料を励起し、調整可能な発光を使用して蛍光色素間のクロストークを最小限にした。各試料のZ-スタック(0.5μm厚スライス)画像を光電子増倍管検出器で捕捉し、LAS AFソフトウェアバージョン2.6(Leica Microsystems)を用いて最大投影を作成した。更なる蛍光画像を、40×1.25NA油浸対物レンズ、並びにDAPI及びCy5フィルターキューブを備えた完全自動化直立Zeiss AxioImagerZ.1顕微鏡で取得した。AxioCam MRm CCD(電荷結合素子)カメラ及びAxiovisionバージョン4.6ソフトウェアスイート(Carl Zeiss Inc.)を使用して画像を生成した。全ての組織ベースのPLA及びAQUA分析画像は、完全電動ステージ並びにDAPI、Cy3、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、及びCy5フィルターキューブを備えたAQUAワークステーション(PM-2000、HistoRx)上で20×対物レンズ(乾燥)を使用して取得した。画像を個々のチャネルとして保存し、マージされたRGB TIFF画像としてエクスポートした(Annotation of human cancers with EGFR signaling-associated protein complexes using proximity ligation assays.Matthew A.Smith et.al.2015,Science Signaling、8(359):8(359):ra4、MET-GRB2 Signaling-Associated Complexes Correlate with Oncogenic MET Signaling and Sensitivity to MET Kinase Inhibitors.Matthew A.Smith et.al.2017,Clin Cancer Res.2017,23(22):7084-7096)。
【0194】
PLAスコアを前述のように決定した(Smith et.al.2015)。簡潔には、PLAを、細胞あたりの病巣に基づくスコアリング基準を使用して手動で定量化し(0、検出不能;1+、細胞あたり1~5の病巣;2+、細胞あたり>5~20の病巣;3+、細胞あたり>20の病巣)、「高」(両方のコアにおいて2+~3+)又は「低」(0~1+)と注釈した。
【0195】
結果は、IHCスコアとPLAスコアとの間の統計的に有意な相関が、EGFR(r=0.63、p<0.0001、図1A参照)及びMET(r=0.83、p<0.0001、図2A参照)の両方について観察されたことを示唆した。スピアマンの相関係数を使用してr値を計算し、両側検定を使用してp値を計算した(Prism Graphpad v.7.0.0)。具体的には、17個未満のXY対が存在する場合、並べ替え検定を使用して、スピアマン相関係数のp値を計算した。そうでない場合、統計値
【0196】
【数1】
(式中、rはスピアマンの相関係数であり、nはXY対の数である)を自由度n-2でスチューデントのt分布と比較した。
【0197】
実施例2.Fc受容体の関与は、活性化変異を欠くEGFRを有するNSCLCモデルにおけるアミバンタマブの有効性に必要ではない。
次に、活性化変異を欠くEGFRを有するNSCLCモデルにおけるアミバンタマブの有効性をインビボで試験した。
【0198】
インビボ研究は、Janssen Animal and Care and Use Committeeの方針及び手順に従って、Charles River Laboratory(CRL、Freiburg,Germany)で行った。14個のNSCLC PDX腫瘍を、NMRI nu/nuマウス(CRL)の側腹部に皮下移植し、腫瘍が50~200mmに達したときに処置群に無作為化した。処置は、10mg/kgのアイソタイプ対照、又はアミバンタマブ、又はサイレントFcを有するEGFR/MET二重特異性抗体のいずれかの腹腔内注射によって、週2回、3週間投与した。EGFR/MET-サイレントFc抗体は、アミバンタマブのEGFR及びMETアームを保持し、Fcγ受容体及びCq1補体に対する親和性を統計的に有意に減少させるために重鎖に対して行われた置換V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sを有する。腫瘍をノギスで測定し、次式:(長さ×(幅))/2を使用して腫瘍体積を計算した。腫瘍増殖阻害パーセント(%TGI)値を、式:{1-[(処置-処置)/(対照-対照)]}×100を使用して、最終投与の7日後に計算した。
【0199】
結果は、アミバンタマブが、試験した14個のPDXモデルのうち13個において腫瘍増殖を阻害したことを示唆した(代表的な効果プロットを図2A及び図2Bに示す)。アミバンタマブが活性を示したこれらの13個のモデルのうち、Fc受容体への結合を欠くEGFR/MET-サイレントFc抗体は、同等の効力を有していた(図2A及び図2B)。MET遺伝子増幅を有するモデルであるLXFA2158は、アミバンタマブのFc結合が有効性にとって重要である唯一のPDXモデルであった(図2C)。これは、MET増幅及びEGFR変異体モデル系におけるアミバンタマブとFcとの相互作用の必要性を実証した以前に報告されたデータ(Smruthi Vijayaraghavan et.al.2020、Molecular Cancer Therapeutics、19(10):2044-2056)と一致する。
【0200】
実施例3.受容体発現及びシグナル伝達とアミバンタマブのインビボでの有効性との間の関係。
次に、受容体発現又はシグナル伝達とアミバンタマブのインビボでの有効性との間の関係を評価した。
【0201】
IHC及びPLAアッセイは、実施例1に記載のように実施した。活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍におけるアミバンタマブの有効性(%TGI)を、EGFR及びMETのIHC Hスコア並びにPLAスコアに関してプロットした(図3A図3D参照)。EGFRについては、有効性とIHC及びPLAの両方との間に正の相関が決定されたが(IHC:r=0.397、PLA:r=0.22)、いずれの相関も統計的に有意ではなかった(p>0.05)。腫瘍有効性とMET発現又はシグナル伝達との間に正の相関関係は観察されなかった。
【0202】
実施例4.PDX腫瘍のゲノム解析。
次に、活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍の発現及び変異状態と、実施例2で得られた腫瘍増殖阻害%との関連を評価した。実施例2で使用した、活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍における一般的ながん遺伝子の発現データ及び変異状態は、Charles River Laboratory(Freiburg,Germany)によって提供され、完全に所有されている。図4Aに列挙された一般的ながん遺伝子の発現をRNA-Seqによって決定し、変異状態を全エクソーム解析によって決定した(図4B)。アミバンタマブは、活性化変異を欠くEGFRを有するこれらのNSCLC PDXモデルの多くにおいて非常に有効であったが(図4C)、KRAS及びPI3K経路における変異は、抗腫瘍活性の低下を示すバイオマーカーとして同定された(図4A図4C参照)。
【0203】
有効性に対するEGFR相関を評価するとき、本発明者らは、観察された%TGIがデータセットの線形フィットを下回る傾向にあったが、EGFRレベルが比較的高かったモデルのサブセットを観察した(図3A)。興味深いことに、モデルのこのサブセットは、KRAS又はPI3K経路に変異を有することが見出され、これらの経路における異常なシグナル伝達がアミバンタマブの活性を低下させ得ることを示唆した。
【0204】
実施例5.KRAS及びPI3Kの経路変異を欠くPDX腫瘍は、アミバンタマブの有効性の増加に関連していた。
次に、実施例2からのPDX腫瘍のサブグループにおいて、アミバンタマブの有効性(%TGI)と、Hスコア及びPLAスコアの合計(表1参照)との関連を評価した。ここで、KRAS及びPI3KなどのEGFR及びMETの下流の既知の腫瘍形成ドライバー変異について陽性の腫瘍を除去した(表2参照)。相関係数及びp値は、実施例1に記載のように、スピアマンの相関係数及び両側検定(Prism Graphpad 7.00)を使用して計算した。
【0205】
結果は、KRAS又はPI3K経路変異を有する腫瘍の排除が、アミバンタマブの有効性とEGFR発現及びシグナル伝達との間の統計的に有意な相関をもたらしたことを示した(IHC+PLA-r=0.88、p=0.0032、図5A参照)。実際に、EGFR Hスコア≧170を有し、代替ドライバー変異を有さないモデルは、アミバンタマブによる処置で長期の腫瘍静止又は完全な腫瘍退縮を達成した(代表的な腫瘍増殖曲線を図2A及び図2Bに示す)。アミバンタマブの有効性とMET発現及びシグナル伝達との相関は観察されなかった(図5B)。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
実施例6.活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍におけるEGFRリガンドの発現とアミバンタマブの有効性との関連の分析。
次に、活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍におけるEGFRリガンドの発現と、実施例2で得られた腫瘍増殖阻害%との関連を評価した。実施例2で使用された活性化変異を欠くEGFRを有するPDX腫瘍における上皮成長因子(EGF)、アンフィレグリン(AREG)、形質転換成長因子α(TGFα)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HBEGF)、ベタセルリン(BTC)、エピレグリン(EREG)、及びエピジェン(EPGN)の発現を、RNA-Seqを使用して決定した。これらのデータは、Charles River Laboratory(Freiburg,Germany)によって提供され、完全に所有されている。アンフィレグリン発現は、インビボでの有効性が試験された14個のNSCLCモデルのうちの11個についてのみ利用可能であった(LXFA2158、LXFA2165、及びLXFA2201についてはデータは利用可能でなかった)。統計的に有意な相関(r=0.66、p=0.03)が、アンフィレグリン発現とアミバンタマブのインビボでの有効性との間に見出された(図6)。アンフィレグリン発現とアミバンタマブの有効性との間のこの関連は、KRAS及びPI3K経路変異とは無関係であった。したがって、アンフィレグリン発現は、アミバンタマブによる治療から臨床上の利益を得る可能性が高い患者を同定することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
【配列表】
2024509920000001.app
【国際調査報告】