(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】親和剤
(51)【国際特許分類】
C07K 7/64 20060101AFI20240227BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240227BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
C12N5/071
C07K17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555265
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2022019839
(87)【国際公開番号】W WO2022192597
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523099840
【氏名又は名称】アヴィタイド エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダドソン, ウィリアム スコット
(72)【発明者】
【氏名】ダウ, イーサン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, イー
(72)【発明者】
【氏名】コイル, ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】カーンズ, ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ケット, ウォーレン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD39
4B065BD50
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA30
4H045BA60
4H045BA63
4H045EA50
4H045FA33
(57)【要約】
本明細書では、標的分子に特異的に結合するリガンドを含む親和剤が提供される。親和剤は、結合、単離、及び/または精製に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含むCD81に結合するリガンドを含む親和剤であって、
配列番号1:X
1YWRB
1VWFPHAQGB
2VX
2X
2、
式中、X
1はHまたはNを表し、X
2はSまたはTを表し、B
1及びB
2はペプチドが環化される単位を表す、前記親和剤。
【請求項2】
表5に示される少なくとも1つのアミノ酸配列、例えば、配列番号2~126のいずれか1つを含むリガンドを含む、親和剤。
【請求項3】
CD81に結合する配列番号1のアミノ酸配列を含むリガンドを含む親和剤。
【請求項4】
1つまたは複数のエクソソームに結合する配列番号1のアミノ酸配列を含むリガンドを含む親和剤。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列、あるいは3つ以下の置換、付加、もしくは欠失、2つ以下の置換、付加、もしくは欠失、または1つ以下の置換、付加、及び/もしくは欠失によって異なるアミノ酸配列を含むリガンドを含む親和剤。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸配列を含む環状ペプチドを含む1つまたは複数のエクソソームに結合するリガンドを含む親和剤であって、
配列番号1:X
1YWRB
1VWFPHAQGB
2VX
2X
2、
式中、X
1はHまたはNを表し、X
2はSまたはTを表し、B
1及びB
2はペプチドが環化される単位を表す、前記親和剤。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸配列を含むリガンドを含む親和剤。
【請求項8】
配列番号2~126のいずれか1つの少なくとも1つのアミノ酸配列、あるいは3つ以下の置換、付加、もしくは欠失、2つ以下の置換、付加、もしくは欠失、または1つ以下の置換、付加、及び/もしくは欠失によって異なるアミノ酸配列を含むリガンドを含む親和剤。
【請求項9】
前記リガンドが固体表面に結合している、請求項1~8のいずれか一項に記載の親和剤。
【請求項10】
前記固体表面が樹脂またはビーズである、請求項9に記載の親和剤。
【請求項11】
前記固体表面が膜である、請求項9に記載の親和剤。
【請求項12】
前記固体表面がモノリスである、請求項9に記載の親和剤。
【請求項13】
前記リガンドが、リンカーを介して前記固体表面に共役している、請求項9~12のいずれか一項に記載の親和剤。
【請求項14】
1つまたは複数のエクソソームの精製に使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の親和剤。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のリガンドを固体表面に共役させることを含む、親和剤の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2021年3月10日に出願された米国仮特許出願第63/159,336号の利益を主張するものであり、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的に生成された治療薬の純度は、安全性と有効性を確保するために、当局によって厳しく精査され、規制されている。したがって、生物学的に生成された治療薬を高純度まで効率的に精製する手段が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
先端医療医薬品(ATMP)の臨床的取り組みをサポートするために、遺伝子組換え源からATMPを効率的に精製するための組成物と方法が必要である。親和性精製は、数ステップまたは単一ステップでタンパク質を単離及び/または所望の純度を達成するための手段である。しかし、親和剤(例えば、親和性リガンドを含む)の開発は、リソース集約的で時間のかかる作業になる可能性があるため、親和剤は非常に少数のタンパク質に対してのみに存在する。親和剤がない場合、精製は通常、マルチカラムプロセスなどの非効率的なプロセスを伴う。
【0004】
エクソソームは、大きな治療可能性を秘めた新興ATMPである(Madhusoodanan 2020)。これらは細胞外小胞のサブクラスであり、微小胞及びアポトーシス小体も含まれる(Zaborowski et al.2015)。治療目的でのエクソソームの製造は難しく、高価である。細胞培養の生産性は低く、通常は1リットルあたり1011~1014個のエクソソームに達する。精製は主にイオン交換クロマトグラフィーで行われる。ただし、この方法はエクソソームに対して選択的ではないため、他の細胞外小胞との同時精製が行われ、宿主細胞タンパク質の除去が不十分になる。したがって、エクソソームを選択的に精製する必要性が依然として存在する。
【0005】
標的を選択的に精製する親和性精製の能力が認められていることから、現代のバイオプロセシングの厳密さを満たす親和剤の必要性が存在する。免疫親和性、すなわち親和性リガンドとしての抗体の使用は、エクソソームの精製に必要な選択性を実証している(Kowal et al.2016)。抗体は、エクソソームの特徴である表面マーカー、テトラスパニン、CD9、CD63、及びCD81に選択的に結合する。しかし、抗体はバイオプロセスには不適切である、及び/または消毒剤や洗浄剤と適合するのに十分な安定性が欠けている。したがって、バイオプロセスに適した親和剤の必要性が存在する。
【0006】
エクソソームに結合し、単離及び/または親和精製に有用な親和剤が本明細書に記載されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列をさらに含む、環状ペプチドを含む親和剤が本明細書に提供される。
配列番号1:X1YWRB1VWFPHAQGB2VX2X2
【0008】
式中、X1はHまたはNを表し、X2はSまたはTを表し、B1及びB2はペプチドが環化される単位を表す。
【0009】
いくつかの実施形態では、親和剤は、表5に示される少なくとも1つのアミノ酸配列、例えば、配列番号2~126のいずれか1つを含むリガンドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、CD81に結合する配列番号1のアミノ酸配列を含む少なくとも1つのリガンドを含む、親和剤が本明細書に提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、エクソソームに結合する配列番号1のアミノ酸配列を含む少なくとも1つのリガンドを含む、親和剤が本明細書に提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列、または置換、付加、欠失が3つ以下、2つ以下、または1つ以下で異なるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのリガンドを含む親和剤が本明細書に提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の親和性リガンドを含む親和剤が本明細書に提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、エクソソームの精製に使用される親和剤が本明細書に提供される。
【0015】
定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を以下に定義する。別途定義されない限り、技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、目的の1つ以上の値に適用される場合、記載された基準値に類似した値を指す。ある特定の実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または異なる意味が文脈から明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に収まる値の範囲を指す(ただし、そのような値が、取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0017】
生物活性:本明細書で使用される「生物活性」という用語は、生物系、特に生物において活性を有する任意の薬剤の特徴を指す。例えば、生物に投与されると、その生物に対して生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であると考えられる。
【0018】
保存的及び非保存的置換:「保存的」アミノ酸置換とは、1つのアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する他のアミノ酸残基に置換されているアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H))、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E))、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン(G)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、システイン(C))、非極性側鎖(例えば、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、トリプトファン(W))、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン(T)、バリン(V)、イソロイシン(I))及び芳香族側鎖(例えば、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H))を含む。例えば、チロシンに対するフェニルアラニンの置換は保存的置換である。いくつかの実施形態では、リガンドの配列における保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合を付与または改善する。いくつかの実施形態では、リガンドの配列における保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの結合を減少または無効にしない。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合に有意な影響を及ぼさない。選択的結合親和性を与える、変更する、または維持するヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換及び非保存的置換を同定する方法は、当技術分野で知られている(例えば、Brummell、Biochem.32:1180-1187(1993)、Kobayashi,ProteinEng.12(10):879-884(1999)、及びBurks,PNAS94:412-417(1997)を参照)。いくつかの実施形態では、リガンドの配列における非保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合を付与または改善する。いくつかの実施形態では、リガンドの配列における非保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの結合を減少または無効にしない。いくつかの実施形態では、非保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合に有意な影響を及ぼさない。
【0019】
リンカー:本明細書で使用される場合、「リンカー」は、そうでなければ独立した機能ドメインを連結するように機能するペプチドまたは他の化学結合を指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、リガンドと、そうでなければ独立した機能ドメインを含む別のポリペプチド成分との間に位置する。いくつかの実施形態では、リンカーは、リガンドと表面との間に位置するペプチドまたは他の化学結合である。
【0020】
天然に存在する:核酸分子、ポリペプチド、及び宿主細胞などの生体物質に関連して使用される場合の「天然に存在する」という用語は、自然界に存在し、人間によって改変されていないものを指す。逆に、「非天然」または「合成」は、生体物質に関連して使用される場合、自然界には見られない、及び/または人間によって改変されたものを指す。
【0021】
「非天然アミノ酸」、「アミノ酸類似体」、及び「非標準アミノ酸残基」は、本明細書では同義に使用される。本明細書で提供されるリガンドにおいて置換され得る非天然アミノ酸は、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、プロリンに置換できる4-ヒドロキシプロリン、リジンに置換できる5-ヒドロキシリジン、ヒスチジンに置換できる3-メチルヒスチジン、セリンに置換できるホモセリン、及び、リジンに置換できるオルニチンである。ポリペプチドリガンドで置換できる非天然アミノ酸の追加の例には、これらの分子に限定されないが、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファーアミノイソ酪酸、Aーアミノ酪酸、Abu、2ーアミノ酪酸、ガンマーAbu、エプシロン-Ahx、6ーアミノヘキサン酸、Aib、2ーアミノイソ酪酸、3ーアミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、tーブチルグリシン、tーブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベーターアラニン、ランチオニン、デヒドロアラニン、γーアミノ酪酸、セレノシステイン、及びピロリジンフルオロアミノ酸、ベーターメチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、Cアルファーメチルアミノ酸、及びNアルファーメチルアミノ酸が挙げられる。
【0022】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」:本明細書で同義に使用される場合、ポリヌクレオチド及び核酸分子は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語には、DNA、RNA、cDNA(相補的DNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、shRNA(小型ヘアピンRNA)、snRNA(小型核RNA)、snoRNA(短核小体RNA)、miRNA(マイクロRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNA、及び/またはtRNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
作動可能に連結された:本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、2つの分子がそれぞれ機能的活性を保持するように結合されていることを示す。2つの分子は、直接的または間接的に結合されているかどうかにかかわらず、「作動可能に連結」している。
【0024】
ペプチドタグ:本明細書で使用される「ペプチドタグ」という用語は、得られる融合物に機能を提供するために、別のタンパク質の一部であるか、別のタンパク質に(例えば、遺伝子工学によって)付着しているペプチド配列を指す。ペプチドタグは通常、それらが融合しているタンパク質と比較して比較的短い。いくつかの実施形態では、ペプチドタグは、5、6、7、8、9、10、15、20、または25以上のアミノ酸など、長さが4以上のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、リガンドは、ペプチドタグを含むタンパク質である。本明細書で提供される用途を有する多数のペプチドタグが当技術分野で知られている。リガンド融合タンパク質の成分またはリガンドによって結合された標的(例えば、リガンド融合タンパク質)であり得るペプチドタグの例には、HA(ヘマグルチニン)、c-myc、ヘルペスシンプレックスウイルス糖タンパク質D(gD)、T7、GST、GFP、MBP、Strepタグ、Hisタグ、Mycタグ、TAPタグ、及びFLAGタグ(EastmanKodak,Rochester,N.Y.)が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、タグに対する抗体エピトープは、例えば親和性精製、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、及び細胞の免疫染色における融合タンパク質の検出及び局在化を可能にする。
【0025】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結されたアミノ酸の連続鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者は、この用語が長い鎖に限定されず、ペプチド結合を介して互いに連結された2つのアミノ酸を含む最小鎖を指すことができることを理解するであろう。当業者に知られているように、ポリペプチドはプロセシング及び/または改変され得る。
【0026】
タンパク質:本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、別個の単位として機能する1つまたは複数のポリペプチドを指す。単一のポリペプチドが別個の機能単位であり、別個の機能単位を形成するために他のポリペプチドとの永続的または一時的な物理的会合を必要としない場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は同義に使用され得る。別個の機能単位が互いに物理的に会合する複数のポリペプチドから構成される場合、「タンパク質」という用語は、物理的に結合され、別個の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。
【0027】
特異的に結合する:リガンドに関して本明細書で使用される「特異的に結合する」または「選択的親和性を有する」という用語は、リガンドがより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、より大きな親和性で、またはそれらの組み合わせで、関係のないタンパク質を含む代替物質とよりも、特定のエピトープ、タンパク質、または標的分子に対して反応または会合することを意味する。異なる種の相同タンパク質間の配列同一性のため、特異的結合は、複数の種のタンパク質または標的を認識する結合剤を含み得る。同様に、異なるタンパク質のポリペプチド配列のある領域内の相同性のため、特異的結合は、複数のタンパク質または標的を認識する結合剤を含み得る。特定の実施形態では、第1の標的に特異的に結合する結合剤は、第2の標的に特異的に結合してもしなくてもよいことが理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的結合、すなわち、単一の標的への結合を必ずしも必要としない(含めることはできるが)。したがって、リガンドまたは親和剤は、特定の実施形態では、複数の標的に特異的に結合し得る。特定の実施形態では、複数の標的が、親和剤上の同じ抗原結合部位によって結合され得る。
【0028】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の全または近完全(near-total)程度または度合いを示すという定量的状態を指す。生物学分野の当業者は、生物学的及び化学的現象が、もし存在する場合、めったに完了しないこと、及び/またはめったに完全に進まないこと、または絶対的な結果を達成または回避することはめったにないことを理解するであろう。従って「実質的に」という用語は、多くの生物学的現象及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】CD81ELISAについて得られた典型的な標準曲線を示す。
【0030】
【
図2】実施例6に記載の精製エクソソームのCD63ウェスタンブロット分析を示す。各レーンの説明(左から右へ)は以下の通りである:(1)分子量マーカー、(2)CD63-Fc融合タンパク質、(3)エクソソーム標準、4E10粒子、(4)エクソソーム標準、8E9粒子、(5)エクソソーム標準、3E9粒子、(6)粗精製フィードストリーム、(7)粗精製フィードストリーム、10倍希釈、(8)カラムフロースルー、(9)ピーク頂点の溶出画分、(10)ストリップ、及び(11)溶出プール(ピーク全体)。
【0031】
【
図3】実施例6に記載の精製エクソソームのクロマトグラムを示す。
【0032】
【
図4】0.1M NaOHで18時間処理する前後の、配列番号43を含む樹脂の静的結合の比較を示す。ブランク(非誘導体化)ビーズを対照として含めた。
【0033】
【
図5】配列番号58に対応する固定化リガンドに対する様々な濃度のFc-CD81融合タンパク質の結合についてのセンサーグラムを示す。
【0034】
【
図6】いくつかのリガンドのFc-CD81への結合についての用量反応曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は、とりわけ、同定及び特徴付けられたペプチドリガンドから調製された親和剤が、1つまたは複数の目的の標的、例えば、いくつかの実施形態ではウイルス粒子の高度に精製された調製物を生成することが示されるという認識を包含する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の親和性樹脂は、とりわけ、タンパク質産物関連の不純物及び宿主細胞由来の汚染物質の除去に有用である。
【0036】
親和剤で使用するための目的の標的に結合するリガンド
標的に結合するリガンドの特徴は、そのような活性を評価するための当技術分野で知られている既知のまたは改変されたアッセイ、バイオアッセイ、及び/または動物モデルを使用して決定することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「標的に対する結合親和性」、「標的に結合する」などの用語は、例えば、親和定数(例えば、所定の抗原濃度で結合及び解離するリガンドの量)の決定を通じて直接測定され得るリガンドの特性を示す。このような分子相互作用を特徴付けるために、例えば、競合分析、平衡分析及び微量熱量分析、並びに表面プラズモン共鳴相互作用に基づくリアルタイム相互作用分析(BIACORE装置などを使用)など、いくつかの方法を利用することができる。これらの方法は当業者に周知であり、Neri D et al.(1996)Tibtech14:465-470及びJansson M et al.(1997)J Biol Chem272:8189-8197などの刊行物で論じられている。
【0038】
所定のリガンド結合イベントの親和性要件は、結合マトリックスの組成と複雑さ、リガンドと標的分子の両方の原子価と密度、及びリガンドの機能的適用を含むがこれらに限定されない様々な要因に左右される。いくつかの実施形態では、リガンドは、5×10-3M、10-3M,5×10-4M、10-4M、5×10-5M、または10-5M以下の解離定数(KD)で目的の標的に結合する。いくつかの実施形態では、リガンドは、5×10-6M、10-6M,5×10-7M、10-7M、5×10-8M,または10-8M以下のKDで目的の標的に結合する。5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M,5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M以下のKDで目的の標的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法により生成されたリガンドは、約10-4M~約10-5M,約10-5M~約10-6M、約10-6M~約10-7M、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、または約10-11M~約10-12Mの解離定数を有する。
【0039】
KD及び解離速度を決定するための結合実験は、多くの条件で行うことができる。これらの溶液を作るための緩衝液は、当業者によって容易に決定することができ、最終溶液の所望のpHに大きく依存する。低pH溶液(<pH5.5)は、例えば、クエン酸緩衝液、グリシン-HCl緩衝液、またはコハク酸緩衝液で作成できる。高pH溶液は、例えば、Tris-HCl、リン酸緩衝液、または重炭酸ナトリウム緩衝液で作成できる。例えば、最適なpH及び/または塩濃度を決定する目的で、KD及び解離速度を決定するために、多くの条件を使用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、リガンドは、0.1~10-7秒-1、10-2~10-7秒-1、または0.5×10-2~10-7秒-1の範囲のkoffで目的の標的を特異的に結合する。いくつかの実施形態では、リガンドは、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1、または10-3秒-1未満のオフ速度(koff)で目的の標的を結合する。いくつかの実施形態では、リガンドは、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、または10-5秒-1、5x10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1、または10-7秒-1未満のオフ速度(koff)で目的の標的を結合する。
いくつかの実施形態では、リガンドは、約103~107M-1秒-1、103~106M-1秒-1、または103~105M-1秒-1の範囲のkonで目的の標的に特異的を結合する。いくつかの実施形態では、リガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)は、103M-1秒-1、5×103M-1秒-1104M-1秒-1、または5×104M-1秒-1超のオン速度(kon)で目的の標的を結合する。追加の実施形態では、リガンドは、105M-1秒-1、5×105M-1秒-1、106M-1秒-1、5×106M-1秒-1、または107M-1秒-1超のkonで目的の標的を結合する。
【0041】
目的の標的
様々な実施形態によれば、リガンドによって特異的に結合される目的の標的は、親和剤のリガンドが結合することが望ましい任意の分子であり得る。例えば、リガンドによって特異的に結合される標的は、精製、製造、処方、治療、診断、または予後に関する関連性または価値のある任意の標的であり得る。非限定的な用途には、治療及び診断用途が含まれる。本明細書では、例としていくつかの例示的な標的を提供するが、これらは例示を目的としており、限定するものではない。目的の標的は、天然または合成であり得る。いくつかの実施形態では、標的は、AAV2及び/またはAAV2に由来する変異体である。
【0042】
リンカー
「リンカー」及び「スペーサー」という用語は、本明細書では同義に使用され、そうでなければ独立した機能ドメインを連結するように機能するペプチドまたは他の化学結合を指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、リガンドと、そうでなければ独立した機能ドメインを含む別のポリペプチド成分との間に位置する。2つ以上の連結したリガンドを連結するのに適したリンカーは、一般に、ペプチド、タンパク質または他の有機分子を連結するために当技術分野で使用される任意のリンカーであり得る。いくつかの実施形態では、そのようなリンカーは、薬学的使用を目的とするタンパク質またはポリペプチドを構築するのに適している。
【0043】
リガンドとリガンド融合タンパク質の追加成分を単鎖アミノ酸配列で作動可能に連結するのに適したリンカーには、グリシンリンカー、セリンリンカー、混合グリシン/セリンリンカー、グリシン及びセリンに富むリンカー、または大部分が極性のポリペプチドフラグメントで構成されるリンカーなどのポリペプチドリンカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びリジンから選択されるアミノ酸の大部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、アスパラギン酸、トレオニン、グルタミン、及びリジンから選択されるアミノ酸の大部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンドリンカーは、立体的に妨げられていない大部分のアミノ酸から構成される。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、セリン、及び/またはアラニンから選択されるアミノ酸の大部分を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、ポリグリシン((Gly)5及び(Gly)8など、ポリ(Gly-Ala)、及びポリアラニンから選択される。
【0045】
リンカーは、リガンドが目的の標的に結合することを可能にする方法でリガンドを作動可能に連結できる限り、任意のサイズまたは組成のものであってよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、約1~50個のアミノ酸、約1~20個のアミノ酸、約1~15個のアミノ酸、約1~10個のアミノ酸、約1~5個のアミノ酸、約2~20個のアミノ酸、約2~15個のアミノ酸、約2~10個のアミノ酸、または約2~5個のアミノ酸である。リンカー(複数可)の長さ、柔軟性の程度、及び/または他の特性が、目的の標的、または、目的の複数の他の標的タンパク質、または目的ではないタンパク質(つまり、非標的タンパク質)に対する親和性、特異性、または結合力など、親和剤で使用するためのリガンドの特定の特性に影響を与え得ることは明らかなはずである。いくつかの実施形態では、2つ以上のリンカーが利用される。いくつかの実施形態では、2つ以上のリンカーが同じである。いくつかの実施形態では、2つ以上のリンカーが異なる。
【0046】
いくつかの実施形態では、リンカーは、アルキルリンカーまたはPEGリンカーなどの非ペプチドリンカーである。例えば、-NH-(CH2)s-C(0)-(式中、s=2~20)などのアルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル、例えば、C1C6)低級アシル、ハロゲン(例えば、CI、Br)、CN、NH2、フェニルなどの任意の非立体障害基によってさらに置換されていてもよい。代表的な非ペプチドリンカーはPEGリンカーである。いくつかの実施形態では、PEGリンカーは、約100~5000kDa、または約100~500kDaの分子量を有する。
【0047】
リンカーは、本明細書に記載の技術及び/またはそうでなければ当技術分野で知られている技術を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、標的分子に結合するリガンドの能力を変更しない(例えば、破壊しない)。
【0048】
共役リガンドを含む親和剤
親和剤を調製するために、目的の標的への特異的結合を促進するリガンドを、様々なクロマトグラフィー組成物(例えば、ビーズ、樹脂、ゲル、膜、モノリスなど)に化学的に結合させることができる。リガンドを含む親和剤は特に、精製及び製造用途に有用である。
【0049】
いくつかの実施形態では、リガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)は、少なくとも1つの反応性残基を含む、または含有する。反応性残基は、例えば、化学療法薬などのコンジュゲートの結合部位として有用である。例示的な反応性アミノ酸残基はリジンである。反応性残基(例えば、リジン)は、いずれかの末端で、またはリガンド配列内でリガンドに付加することができ、及び/またはリガンドの配列中の別のアミノ酸と置換することができる。適切な反応性残基(例えば、リジンなど)は、付加または置換を必要とせずに、同定されたリガンドの配列内に位置することもできる。さらなる例示的な反応性アミノ酸残基はシステインである。
【0050】
固体表面への結合
「固体表面」、「支持体」、または「マトリックス」は、本明細書では同義に使用され、制限なく、直接的または間接的に(例えば、リンカーなどの他の結合パートナー中間体を介して)リガンド、親和剤、抗体または他のタンパク質が結合し得る(すなわち、カップリング、連結、接着)、またはリガンドが埋め込まれている可能性がある(例えば、受容体またはチャネルを介して)、任意のカラム(またはカラム材料)、ビーズ、試験管、マイクロタイター皿、固体粒子(例えば、アガロースまたはセファロース)、マイクロチップ(例えば、シリコン、シリコンガラス、または金チップ)、または膜(合成(例えば、フィルター)または生物学的(例えば、リポソームまたはベシクル)由来)を指す。固体支持体(例えば、マトリックス、樹脂、プラスチック等)にポリペプチドを結合させる試薬及び技術は当技術分野において周知である。適切な固体支持体には、クロマトグラフィー樹脂またはマトリックス(例えば、SEPHAROSE-4FFアガロースビーズ)、プラスチック製マイクロタイターディッシュのウェルの壁または床、シリカベースのバイオチップ、ポリアクリルアミド、アガロース、シリカ、ニトロセルロース、紙、プラスチック、ナイロン、金属、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。リガンド及び他の組成物は、当技術分野で知られている試薬及び技術を使用して、非共有結合または共有結合によって支持体材料に結合することができる。いくつかの実施形態では、リガンドは、リンカーを使用してクロマトグラフィー材料に結合される。
【0051】
リガンドの生成
提供される方法のいくつかの実施形態を実施するのに有用なリガンドの生成は、当技術分野で知られている化学合成、半合成法、及び組換えDNA方法論のための様々な標準技術を使用して行うことができる。また、リガンドを個別にまたはマルチドメイン融合タンパク質の一部として、可溶性薬剤及び細胞関連タンパク質として生成する方法も提供される。いくつかの実施形態では、リガンドの全体的な生成スキームは、基準タンパク質足場を取得すること、及び改変のために足場内の複数の残基を同定することを含む。実施形態に応じて、基準足場は、1つまたは複数のアルファヘリックス領域を有するタンパク質構造、または他の三次構造を含み得る。いったん同定されると、複数の残基のいずれかを、例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換によって改変することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の保存的置換が行われる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の非保存的置換が行われる。いくつかの実施形態では、自然アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンのうちの1つ)は改変のために基準足場の標的位置に置換される。いくつかの実施形態において、改変は、システインまたはプロリンのいずれかにおける置換を含まない。特定の実施形態において所望される同定された位置で改変が行われた後、得られた改変ポリペプチド(例えば、候補リガンド)は、例えば、プラスミド、細菌、ファージ、または他のベクターにおいて組換え発現され得る(例えば、改変ポリペプチドのそれぞれの数を増加させるために)。次いで、改変ポリペプチドを精製し、スクリーニングして、目的の特定の標的に特異的に結合する改変ポリペプチドを同定することができる。改変ポリペプチドは、基準足場と比較して目的の標的に対して増強された結合特異性を示し得るか、または所定の目的の標的(または非標的タンパク質)に対してほとんど、または、全く結合を示さない可能性がある。いくつかの実施形態では、目的の標的に応じて、基準足場は、目的の標的との何らかの相互作用(例えば、非特異的相互作用)を示し得るが、特定の改変ポリペプチドは、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍(またはそれ以上)増加した目的の標的に対する結合特異性を示すであろう。リガンドの生成、選択、及び単離に関する追加の詳細は、以下でより詳細に提供される。
【0052】
リガンドの組換え発現
いくつかの実施形態では、リガンド融合タンパク質などのリガンドは、「組換えにより生成される」(すなわち、組換えDNA技術を使用して生成される)。リガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)を合成するために利用可能な例示的な組換え法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの合成、コンカテマー化、シームレスクローニング、及び再帰的方向性ライゲーション(RDL)が含まれるが、これらに限定されない(例えば、Meyer et al.,Biomacromolecules3:357-367(2002),Kurihara et al.,Biotechnol.Lett.27:665-670(2005),Haider et al.,Mol.Pharm.2:139-150(2005);及び、McMillan et al.,Macromolecules32(11):3643-3646(1999)を参照)。
【0053】
リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。そのようなポリヌクレオチドは、場合により、1つまたは複数の発現制御エレメントをさらに含む。例えば、ポリヌクレオチドは、発現制御エレメントとして、1つまたは複数のプロモーターまたは転写エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナル、及びポリアデニル化シグナルを含むことができる。ポリヌクレオチドは、発現のために任意の適切な宿主細胞内に含めることができる任意の適切なベクター内に挿入することができる。
【0054】
リガンドをコードする核酸の発現は、典型的には、リガンドをコードする核酸を発現ベクター内のプロモーターに作動可能に連結することによって達成される。典型的な発現ベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、及び所望の核酸配列の発現の制御に有用なプロモーターを含有する。E.coliでの発現に有用なプロモーターの例には、例えば、T7プロモーターが挙げられる。
【0055】
適切な転写/翻訳制御シグナルと一緒にリガンドをコードする核酸配列を含む発現ベクターを構築するために、当業者に周知の方法を用いることができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及び、インビボ遺伝子組換え/遺伝的組換えが含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの発現は、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞または哺乳動物細胞を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の適切な発現宿主で行うことができる。いくつかの実施形態では、リガンドをコードする核酸配列は、核酸配列が宿主においてリガンドに転写及び/または翻訳されるように、適切なプロモーター配列に作動可能に連結される。
【0056】
様々な宿主発現ベクター系を利用して、リガンドをコードする核酸を発現させることができる。リガンドをコードする核酸(例えば、個々のリガンドサブユニットまたはリガンド融合体)またはその一部もしくは断片を含むベクターには、プラスミドベクター、一本鎖及び二本鎖ファージベクター、並びに一本鎖及び二本鎖RNAまたはDNAウイルスベクターが含まれる。ファージ及びウイルスベクターは、感染及び形質導入のための既知の技術を使用して、パッケージ化またはカプセル化されたウイルスの形態で宿主細胞に導入することもできる。さらに、ウイルスベクターは、複製可能であるか、または代替的に複製欠陥であり得る。あるいは、無細胞翻訳系を用いて、DNA発現構築物由来のRNAを用いてタンパク質を生成することもできる(例えば、WO86/05807及びWO89/01036、ならびに米国特許第5,122,464号を参照)。
【0057】
一般に、任意のタイプの細胞または培養細胞株を使用して、本明細書で提供されるリガンドを発現させることができる。いくつかの実施形態では、操作された宿主細胞を生成するために使用されるバックグラウンド細胞株は、ファージ、細菌細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞である。リガンドまたはリガンド融合タンパク質をコードする核酸配列を発現させるために、様々な宿主発現ベクター系を使用することができる。哺乳動物細胞を、目的の標的をコードする核酸配列及びポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸配列を含むまたは含有する組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞系として使用することができる。細胞は、形質転換またはトランスジェニック性質の生物、培養物、または細胞株からの一次分離株であり得る。
【0058】
好適な宿主細胞には、微生物、例えば、リガンドコード配列を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);リガンドコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);リガンドコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、Baculovirus)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染するか、またはリガンドコード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
リガンドを産生する際の宿主細胞として有用な原核生物には、E.coli及びB.subtilisなどのグラム陰性生物またはグラム陽性生物が含まれる。原核宿主細胞で使用するための発現ベクターは、一般に、1つまたは複数の表現型選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性を付与するタンパク質または独立栄養要求を供給するタンパク質をコードする遺伝子)を含む。有用な原核宿主発現ベクターの例としては、pKK223-3(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pGEM1(Promega,Wis.,USA)、pET(Novagen,Wis.,USA)及びpRSET(Invitrogen,Calif.,USA)のベクラーシリーズが挙げられる(例えば、Studier,J.Mol.Biol.219:37(1991)及びSchoepfer,Gene124:83(1993)を参照)。原核宿主細胞発現ベクターで頻繁に使用される例示的なプロモーター配列には、T7(Rosenberg et al.,Gene56:125-135(1987)),beta-lactamase(penicillinase)、lactose promoter system(Chang et al.,Nature275:615(1978))、及び、Goeddel et al.,Nature281:544(1979)),tryptophan(trp)promoter system(Goeddel et al.,Nucl.AcidsRes.8:4057,(1980))、及び、tac promoter(Sambrook et al.,1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2dEd.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)が挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、リガンドをコードする核酸を含むまたは含有する本発明の組成物を生成するために使用できる例示的な酵母には、サッカロミセス属、ピキア属、アクチノミセス属、及びクルイベロミセス属由来の酵母が含まれる。酵母ベクターは通常、2mu酵母プラスミド由来の複製開始配列、自律複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、及び選択マーカー遺伝子を含む。酵母発現構築物におけるプロモーター配列の例としては、メタロチオネイン、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman,J.Biol.Chem.255:2073(1980))、及び、他の糖分解酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼのプロモーターが挙げられる。酵母発現及び酵母形質転換プロトコルで使用するための追加の適切なベクター及びプロモーターは、当技術分野で知られている。例えば、Fleer,Gene107:285-195(1991)及びHinnen,PNAS75:1929(1978)を参照。
【0061】
昆虫及び植物宿主細胞培養系も、本明細書に記載のリガンドを生産するのに有用である。このような宿主細胞系には、例えば、リガンドをコードする核酸配列を含むまたは含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、またはリガンドをコードする核酸配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系が挙げられ、限定されないが、米国特許第6,815,184号、米国出願第60/365,769号、及び同第60/368,047号、並びにWO2004/057002、WO2004/024927、及びWO2003/078614に教示された発現系を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス)に感染した動物細胞系を含む宿主細胞系を使用することができ、これには、2分染色体で安定して増幅されたリガンド(CHO/dhfr)、または不安定に増幅されたリガンド(例:マウス細胞株)のいずれかをコードするDNAの複数のコピーを含むように操作された細胞株を含む。いくつかの実施形態では、リガンドをコードするポリヌクレオチド(複数可)を含むベクターは多シストロン性である。これらの組成物を生成するのに有用な例示的な哺乳動物細胞には、293細胞(例えば、293T及び293F)、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウスミエローマ細胞、PER細胞、PER.C6(Crucell、Netherlands)細胞VERY、Hela細胞、COS細胞、MDCK細胞、3T3細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT20細胞、T47D細胞、CRL7O30細胞、HsS78Bst細胞、ハイブリドーマ細胞、及びその他の哺乳動物細胞が挙げられる。本発明を実施するのに有用なさらなる例示的な哺乳動物宿主細胞には、T細胞が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な発現系及び選択方法は当技術分野で知られており、以下の参考文献及びそこで引用されている参考文献に記載されているものを含む:Borth et al.,Biotechnol.Bioen.71(4):266-73(2000),in Werner et al.,Arzneimittelforschung/Drug Res.48(8):870-80(1998),Andersen et al.,Curr.Op.Biotechnol.13:117-123(2002),Chadd et al.,Curr.Op,Biotechnol.12:188-194(2001)、及び、Giddings,Curr.Op.Biotechnol.12:450-454(2001)。発現系及び選択方法のさらなる例は、Logan et al.,PNAS81:355-359(1984),Birtner et al.Methods Enzymol.153:51-544(1987))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現ベクターの転写及び翻訳制御配列は、ウイルスゲノムに由来することが多い。哺乳動物発現ベクターで一般的に使用されるプロモーター配列及びエンハンサー配列には、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来の配列が含まれる。哺乳動物宿主細胞で使用するための例示的な市販の発現ベクターには、pCEP4(Invitrogen)及びpcDNA3(Invitrogen)が含まれる。
【0063】
核酸を宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、微量注入法、電気穿孔法等が含まれる。ベクター及び/または外因性核酸を含む細胞を生成する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NewYork)を参照されたい。
【0064】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照されたい。
【0065】
目的のDNA及びRNAポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する方法には、細胞のエレクトロポレーションが含まれ、このエレクトロポレーションでは、細胞膜の透過性を高めるために細胞に電場を印加し、化学物質、薬物、またはポリヌクレオチドを宿主細胞に導入できるようにする。DNAまたはRNA構築物を含むリガンドは、エレクトロポレーションを使用して哺乳動物細胞または原核細胞に導入することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、細胞のエレクトロポレーションは、T細胞、NK細胞、及び/またはNKT細胞の表面上でリガンド-CARの発現をもたらす。そのような発現は、細胞の寿命にわたって一過性または安定であり得る。エレクトロポレーションは、MaxCyteGT(登録商標)及びSTX(登録商標)Transfection Systems(MaxCyte,Gaithersburg,MD,USA)を含む当技術分野で知られている方法で達成することができる。
【0067】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、並びに水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質に基づく系が含まれる。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームであるか、リポソームを含み得る。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)のために企図される。いくつかの実施形態において、核酸は、脂質と関連する。脂質と関連する核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に関連する連結分子を介してリポソームに付着し、リポソームに捕捉され、リポソームと複合体を形成し、脂質を含む溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中に懸濁液として含まれ、ミセルを含むかミセルと複合体を形成し、またはそうでなければ脂質と会合されてもよい。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、ミセルとして、または「崩壊した」構造で、二重層構造に存在することができる。また、単に溶液中に点在している可能性があり、サイズや形状が均一でない凝集体を形成する可能性がある。脂質は、天然脂質または合成脂質である脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質で自然に発生する脂肪滴、及び、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素とその誘導体を含む化合物のクラスが含まれる。
【0068】
使用に好適な脂質は商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,MOから入手することができ;ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,NY)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手することができ;ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及びその他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の原液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用することができる。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される、様々な単層及び多層の脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部の水性媒体を有する小胞構造を有することを特徴とすることができる。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁すると自然に形成される。脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再編成を受け、脂質二重層の間に水と溶解した溶質を閉じ込める(Ghosh et al.,Glycobiology5:505-510(1991))。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる構造を溶液中で有する組成物も含まれる。例えば、脂質はミセル構造をとるか、単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する可能性がある。また、リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0069】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法に関係なく、宿主細胞における組換え核酸配列の存在は、当技術分野で知られている様々なアッセイによって日常的に確認することができる。そのようなアッセイには、例えば、サウザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなど、当技術分野で知られている「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)または本明細書に記載のアッセイによって、特定のペプチドの存在または非存在を検出して、薬剤を同定するような「生化学的」アッセイが含まれる。
【0070】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定し、制御配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物、組織もしくは細胞に存在せず、またはそれによって発現されず、発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性により明らかになるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリ性ホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が挙げられるが、それらに限定されない(例えば、Ui-Tei et al.,FEBSLett.479:79-82(2000))。好適な発現系は当該技術分野において周知であり、既知の技法を使用して調製されるか、または商業的に入手することができる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’フランキング領域を持つ構築物がプロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、通常、レポーター遺伝子に連結することができ、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用することができる。
【0071】
単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell22:817(1980))遺伝子を含むがこれらに限定されない多数の選択系を哺乳動物宿主-ベクター発現系で使用することができる。さらに、代謝拮抗剤耐性は、例えば、dhfr、gpt、neo、hygro、trpB、hisD、ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)、及びグルタミンシンターゼ系の選択の基礎として使用することができる。
【0072】
リガンド精製
リガンドまたはリガンド融合タンパク質が組換え発現によって生成されると、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質の精製のための他の標準的な技術による、組換えタンパク質の精製のための当技術分野で公知の方法によって精製することができる。いくつかの実施形態では、リガンドは、精製を容易にするために、本明細書に具体的に開示されているか、またはそうでなければ当技術分野で知られている異種ポリペプチド配列に場合によって融合される。いくつかの実施形態において、リガンド(例えば、抗体及び他の親和性マトリックス)は、リガンド親和性カラムのため及び/または親和性精製のためであり、場合により、これらのリガンドによって結合されるリガンドまたはリガンド融合組成物の他の成分は、当技術分野で知られている技術を使用して、リガンドの最終調製の前に組成物から除去される。
【0073】
リガンドの化学合成
組換え法に加えて、当技術分野で知られている様々な液相及び固相化学プロセスを使用して、所望のポリペプチドの有機化学合成を使用してリガンド生成を行うこともできる。様々な自動合成装置が市販されており、既知のプロトコルに従って使用することができる。例えば、Tam et al.,J.Am.Chem.Soc.,105:6442(1983);Merrifield,Science,232:341-347(1986);Barany and Merrifield,ThePeptides,Gross and Meienhofer,eds,Academic Press,New York,1-284;Barany et al.,Int.J.Pep.Protein Res.,30:705739(1987);Kelley et al.in Genetic Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.,ed.Plenum Press,NY.1990,vol.12,pp.1-19;Stewart et al.,Solid-Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco,1989を参照されたい。これらの方法論の1つの利点は、リガンドのアミノ酸配列への非天然アミノ酸残基の組み込みを可能にすることである。
【0074】
本発明の方法で使用されるリガンドは、合成または翻訳の間または後に、例えば、グリコシル化、アセチル化、ベンジル化、リン酸化、アミド化、ペグ化、ホルミル化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子への結合、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、ユビキチン化などによって、改変され得る。(例えば、Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties,2d Ed.(W.H.Freeman and Co.,N.Y.,1992);Postranslational Covalent Modification of Proteins,Johnson,ed.(Academic Press,New York,1983),pp.1-12;Seifter,Meth.Enzymol.,182:626-646(1990);Rattan,Ann.NY Acad.Sci.,663:48-62(1992)を参照のこと)。いくつかの実施形態において、リガンドは、N末端でアセチル化され、及び/またはC末端でアミド化される。
【0075】
多数の化学修飾のいずれも、アセチル化、ホルミル化などを含むがこれらに限定されない既知の技術によって行うことができる。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、ペプチド主鎖の環化または大環状化は、側鎖から側鎖への結合形成によって達成される。これを達成するための方法は当技術分野で周知であり、天然及び非天然のアミノ酸を必要とし得る。アプローチには、ジスルフィド形成、ランチオニン形成またはチオールアルキル化(例えば、マイケル付加)、アミノ側鎖とカルボキシレート側鎖間のアミド化、クリックケミストリー(例えば、アジド-アルキン縮合)、ペプチドステープル、閉環メタセシス、及び酵素の使用が含まれる。
【0077】
精製用親和剤
親和性クロマトグラフィーに基づく精製では、目的の標的(例えば、タンパク質または分子)は、典型的にはクロマトグラフィーマトリックスに共有結合されているリガンドに特異的かつ可逆的に結合するそれらの能力に従って選択的に単離される。いくつかの実施形態では、リガンドは、組換え源または生体試料(例えば、血清)などの天然源からの目的の標的の親和性精製のための試薬として使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、目的の標的に特異的に結合するリガンドをビーズに固定し、次いで標的を親和性精製するために使用する。
【0079】
タンパク質を表面に共有結合させる方法は当業者に知られており、リガンドを固体表面に結合させるために使用できるペプチドタグは当業者に知られている。さらに、リガンドは、当技術分野で知られている任意の試薬または技術を使用して、固体表面に結合(すなわち、カップリング、連結、及び/または付着)することができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ビーズ、ガラス、スライド、チップ、及び/またはゼラチンを含む。したがって、当技術分野で知られている技術を使用して、一連のリガンドを使用して固体表面上にアレイを作成することができる。例えば、米国出願公開第2004/0009530号は、アレイを調製する方法を開示している。
【0080】
いくつかの実施形態では、リガンドを使用して、親和性クロマトグラフィーによって目的の標的を単離する。いくつかの実施形態では、リガンドは固体支持体上に固定化される。リガンドは、本明細書に記載、そうでなければ当技術分野で周知の技術及び試薬を使用して固体支持体上に固定化することができる。適切な固体支持体は、本明細書に記載されているか、そうでなければ当技術分野で周知であり、特定の実施形態では、クロマトグラフィーカラムを充填するのに適している。次いで、固定化されたリガンドを、リガンドと目的の標的との間で複合体を形成するのに適した条件下で溶液を充填または溶液と接触させることができる。非結合物質は洗い流すことができる。当業者は、適切な洗浄条件を容易に決定することができる。適切な洗浄条件の例は、Shukla and Hinckley,Biotechnol Prog.2008Sep-Oct;24(5):1115-21.doi:10.1002/btpr.50に記載されている。
【0081】
いくつかの実施形態において、クロマトグラフィーは、目的の標的及びリガンドを含有する溶液を混合し、次いで目的の標的及びリガンドの複合体を単離することによって実施される。例えば、リガンドは、ビーズなどの固体支持体に固定され、次いで濾過によって目的の標的とともに溶液から分離される。いくつかの実施形態では、リガンドは、固定化金属親和性クロマトグラフィー樹脂またはストレプトアビジンコーティング基材を使用して複合体が形成された後、リガンドを単離するために使用できる、ポリ-Hisテールまたはストレプトアビジン結合領域などのペプチドタグを含む融合タンパク質であるか、またはそれを含む。分離されると、目的の標的は、溶出条件下でリガンドから放出され、精製された形で回収される。
【実施例】
【0082】
実施例1
ペプチドを、標準的なFmoc固相ペプチド合成技術によって合成し、分取逆相HPLCによって精製した。ペプチドの純度は、UV及び四重極飛行時間型質量分析検出の両方を備えたRPUPLCによって評価した。
【0083】
実施例2
この実施例は、バイオレイヤー干渉法(ForteBio,MenloPark,CA)を使用して、CD81キャプシドへのビオチン化リガンドの結合を示す。ビオチン化リガンドをセンサー上に固定化し、0.01%(w/v)ウシ血清アルブミン及び0.1%(v/v)Tween(登録商標)20、pH7.4を含むPBS中の異なる濃度のFc-CD81(R&DSystems,Minneapolis,MN)を含む溶液とともにインキュベートした。ブランクセンサーを対照として含めた。センサーグラムの例を
図5に示し、例データを
図6に示す。
【0084】
実施例3
この実施例は、テトラスパニンエクソソームマーカーCD9、CD63、及びCD81をモニタリングするために使用されるアッセイについて説明する。ウェスタンブロット用の試薬を表1に示す。ゲルをPVDF膜にブロットし、GOBlotプロセッサー(Cytoskeleton,Denver,CO)で処理した。ブロットは、Super Signal(商標)West Pico PLUS化学発光基質(Thermo Scientific,Waltham,MA)で展開し、Bio Rad Chemi Doc MPシステム(BioRad, Hercules, CA)で画像化した。
【表1】
【0085】
CD81は、PSCapture(商標)ExosomeELISAKit(Fujifilm,Richmond,VA)を適用することによってもアッセイした。キットに含まれる抗CD63抗体の代わりに、1:500に希釈した抗CD81抗体MA5-13548(Invitrogen,Waltham,MA)を使用した。標準曲線の例を
図1に示す。
【0086】
実施例4
この実施例は、本明細書で同定及び記載されたリガンドを含む親和剤の生成及び特徴付けを実証する。親和性樹脂は、アミノ化リガンドをアガロースビーズに共役させることによって調製されました。RAPIDRUN6%アガロースビーズ(ABT,Madrid,Spain)及びPraesto(登録商標)JettedA50ビーズ(Purolite,KingofPrussia,PA)を炭酸ジスクシンイミジルで活性化し、リガンド密度1~8mg/mL樹脂でリガンドと結合させた。すべての樹脂の実際のリガンド密度は、次の式に従ってサブトラクティブRP-HPLC法を使用して測定した。
実際のリガンド密度=(フィード中で測定された[リガンド]―排水中で測定された[リガンド])。
【0087】
アガロースビーズに共役したチオール化リガンドを有する親和性樹脂を調製するために、Praesto(登録商標)JettedA50ビーズ(Purolite,King of Prussia,PA)を炭酸ジスクシンイミジルで活性化し、過剰のエチレンジアミンと結合させた。洗浄後、EDC活性化を使用してブロモアセテートをアミノ化ビーズに共役させた。洗浄後、室温でリガンドをビーズに共役させた。洗浄後、ビーズを過剰のチオグリセロールで不活性化させた。リガンド密度は上記のように決定した。
【0088】
実施例5
この実施例は、エクソソームの親和捕捉のための、本明細書に記載の結合リガンドを含む親和剤の結合能力を実証する。デュラポア膜を用いたフィルタープレート結合実験。Cat#MSHVS4510(Millipore、BurlingtonMA)を表2に示すように操作した。
【表2】
【0089】
樹脂は、リガンドをA50ビーズに共役させることによって調製された。各樹脂のリガンド密度と捕捉効率を表3に示す。
【表3】
【0090】
実施例6
この実施例は、エクソソームの精製のための、本明細書に記載の結合リガンドを含む親和剤の使用を実証する。配列番号43に対応するリガンドを11.2mg/mLのリガンド密度で含む樹脂を使用して0.18mLのガラスカラム(3×25mm)に充填し、表4に記載のように操作した。
【表4】
【0091】
図2に示すように、カラム操作からの画分をエクソソームマーカーCD63についてウェスタンブロッティングにより分析し、クロマトグラムを
図3に示す。ウェスタンブロットは、樹脂がエクソソームの捕捉と溶出に効果的であることを明確に示している。
【0092】
実施例7
この実施例は、本明細書に記載されるリガンドを含む親和剤の水酸化ナトリウムに対する安定性を実証する。配列番号43を含む樹脂を0.1MNaOHとともに18時間インキュベートし、洗浄し、実施例5に記載のように静的結合実験を行った。0.1MNaOHとともにインキュベートしなかった樹脂を対照として含め、結合の比較を
図4に示しており、これは樹脂が0.1MNaOHに対して安定であることを明らかに示している。
【0093】
上の開示される実施形態の特定の特徴及び態様の種々の組み合わせまたは部分的組合せを行うことができ、かつ本発明の範囲にあることが企図される。さらに、一実施形態と関連する本明細書の開示の任意の特定の特徴(feature)、態様、方法、特性、特徴(characteristic)、品質、特質、要素等は、本明細書に示されるすべての他の実施形態において使用され得る。したがって、開示される実施形態の種々の特徴及び態様は、互いに組み合わせられるか、または置き換えられ得ることを理解されたい。このため、本明細書に記載される本発明の範囲は、上記で説明された特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は、様々な修正及び代替形態を受け入れるが、その具体的な実施例を図面中に示し、本明細書で詳細に説明されるただし、本発明を開示される特定の形態または方法に限定するものではないが、一方で本発明は、記載される実施形態の趣旨及び範囲内に含まれる、すべての修正、相当物、及び代替案を網羅することが意図されることを理解されたい。
【0094】
本明細書に開示される方法は、列挙された順序で実行される必要はない。本明細書で開示される方法は、開業医によって行われる特定の行動を含むが、ただし、明示的または暗示的に、これらの行動に関する第三者の指示を含めることもできる。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
・X
1=HまたはN
・X
2-=SまたはT
・Ac-はN末端アセチル化を意味する
・-アミドはC末端アミド化を意味する
・5は、カルボキシル側鎖が、4で示されるリジン残基のεアミノ基、または、2で示される2,3-ジアミノプロピオン酸残基のβアミノ基のいずれかに結合しているアスパラギン酸残基を示す。
・Sucはコハク酸(ブタン二酸)を意味する
・3は3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを意味する
・(Peg)3-は12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸サブユニットを意味する
・システイン残基は分子内ジスルフィド結合を形成し得る
【配列表】
【国際調査報告】