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特表2024-509933抗水痘帯状疱疹ウイルスの抗体およびその使用
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  • 特表-抗水痘帯状疱疹ウイルスの抗体およびその使用 図1
  • 特表-抗水痘帯状疱疹ウイルスの抗体およびその使用 図2
  • 特表-抗水痘帯状疱疹ウイルスの抗体およびその使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】抗水痘帯状疱疹ウイルスの抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240227BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 39/42 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240227BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/08 ZNA
C07K16/46
A61K39/25
A61K39/395 S
A61K39/42
A61K47/64
A61P31/22
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555313
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2022073199
(87)【国際公開番号】W WO2022188565
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202110259834.4
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522312126
【氏名又は名称】北京智仁美博生物科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522312137
【氏名又は名称】智翔(上海)医▲葯▼科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522312159
【氏名又は名称】重▲慶▼智翔金泰生物制▲葯▼股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ツァン シュエピン
(72)【発明者】
【氏名】リウ チガン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シャオワイ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】フー ジュンジェ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユーラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085AA37
4C085BA79
4C085BB36
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体、前記抗体をコードする核酸分子、前記核酸分子を含む発現ベクター、前記核酸分子またはベクターを含む宿主細胞、該抗体の製造および精製方法、並びに、前記抗体の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMSであり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMHであり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDVであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLAであり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT、QEGFYFPIN、QQATYFPINもしくはQQSSYFPIAであり、
HCDRおよびLCDRアミノ酸配列はKabatに準じて定義される、抗体。
【請求項2】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1、3、5または7に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10または28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有し、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有する、抗体。
【請求項6】
前記抗体は、完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片または一本鎖Fv断片(scFv)であり、好ましくは、完全ヒト型抗体であり、および/または
前記抗体は、モノクローナル抗体であり、および/または
前記抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプまたはIgG4サブタイプから選択される重鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、前記重鎖定常領域はIgG1サブタイプであり、および/または
前記抗体は、κサブタイプまたはλサブタイプから選択される軽鎖定常領域をさらに含み、好ましくは、前記軽鎖定常領域はκサブタイプである、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、水痘帯状疱疹ウイルスgH/gLタンパク質に結合され、および/または
前記抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
水痘および帯状疱疹を予防または治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
水痘および帯状疱疹を予防または治療するための医薬の製造における、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、請求項8に記載の核酸分子、または請求項9もしくは10に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
水痘および帯状疱疹の予防または治療方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体、または請求項9もしくは10に記載の医薬組成物を、これを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年3月10日に出願された中国特許出願第202110259834.4号の優先権を主張しており、その全ての内容は引用により全体として本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、遺伝子工学および抗体医薬品の分野に関し、具体的には、抗水痘帯状疱疹ウイルス抗体の分野およびその使用に関する。本発明は、新規な抗水痘帯状疱疹ウイルス抗体を開発しており、水痘および帯状疱疹の予防または治療における該抗体の使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV:Varicella zoster virus、「水痘・帯状疱疹ウイルス」または「水痘-帯状疱疹ウイルス」とも呼ばれる)は、ヘルペスウイルス属のα亜科で、被膜を持つDNAウイルスである。VZVは、最小のヒトヘルペスウイルスであり、ゲノム全長が約125,000bpであり、多様なタンパク質をコードする70種類以上のオープンリーディングフレームを含む(Davison, A. J., and J. E. Scott. 1986)。VZVは、gB(gp II)、gC(gp IV)、gE(gp I)、gH(gp III)、gIおよびgLのような少なくとも6種類の表面糖タンパク質を有し、感染した細胞膜上では、糖タンパク質gE、gBおよびgHが非常に豊富であり、それらが誘導する抗体はいずれもウイルスを中和することができる(Davison, A. J., C. M. Edson. 1986)。糖タンパク質gEはVZV感染細胞で最も発現量が高く、gIタンパク質と非共有結合し、免疫グロブリンIgGのFc断片に結合する。中和抗体の標的となるgBタンパク質は、ウイルスが宿主細胞に侵入する過程で機能し、gBのアミノ酸配列はVZVと単純ヘルペスウイルス-1(HSV-1)で高度に保存されている(Kapsenberk, J. G. 1964)。gHタンパク質は、ウイルスの被膜と細胞膜および細胞膜間の融合を媒介し、ウイルスの細胞間拡散を促進し、gHとgLの共発現は、グリコシル化され、細胞表面に輸送される(Forghani, B., L. Ni, and C. Grose. 1994)。
【0004】
VZVはヒト二倍体細胞とメラノーマ細胞に感染し、VERO細胞と初代アフリカミドリザル腎細胞でも複製できる。VZVは細胞表面のヘパリン硫酸プロテオグリカンを吸着し、さらに低親和性の第2受容体と結合して細胞に入り、感染細胞内でウイルスタンパク質を発現し、多核巨細胞を形成する(Zhu, Z., M. D. Gershon. 1995)。多数のウイルス粒子は細胞質液胞中に保持され、細胞外に遊離したウイルスを放出することはほとんどない。
【0005】
VZVは1つの血清型しかなく、遺伝的多様性が限られており、しかもこの遺伝的多様性はその感染性と毒力に影響しない。VZV感染は高い種特異性を持ち、動物貯蔵宿主を持たず、一部の非ヒト霊長類やモルモット(Chen, J. 2003)やラット(Sadzot-Delvaux. 1990)などの小動物に感染することはあるが、これらの動物に発症を引き起こすことはない。ヒトは唯一な既知の自然宿主であり、皮膚はウイルスの主要な標的器官である。VZVは飛沫や接触を通じて感染する可能性があり、子どもが初めて感染すると主に水痘を引き起こす。水痘は温帯地域で流行し、冬春に発症することが多い。水痘に感染すると終身免疫ができ、二次感染する例はまれである(Gershon, A. A.1984)。感染者の体内に残ったVZVは感覚神経軸索に沿って逆行することができ、あるいは感染したT細胞とニューロン細胞の融合を経て、脊髄後根神経節や頭蓋神経節内に移動して潜伏し、体の免疫力が低下すると、VZV特異的細胞の免疫が低下し、潜伏したウイルスが活性化されて大量に複製され、感覚神経軸索を介して皮膚に移動し、帯状疱疹を引き起こす。帯状疱疹は潜伏ウイルスの再活性化に起因するため、初感染を起こした患者のみが発症し、発症に季節性はない。帯状疱疹は主に45歳以上の人の中で発病して、発病率は年齢の増加に従って増加して、普通の人の帯状疱疹の発病率は(3~5)人/1000人/年で、そして年々2.5%~5.0%増加し、75歳以上の人では、10人/1000人/年に達し、子供の帯状疱疹の発病率は極めて低い(Guess, H. A. 1985)。帯状疱疹は免疫抑制剤治療を受けた患者およびHIVに感染した患者によく見られる。帯状疱疹は皮膚損傷のほかに激しい痛みを伴い、一般的な合併症は帯状疱疹後神経痛(PHN:Post Herpetic Neuralgia)で、数カ月から数年間持続する。
【0006】
VZV感染は、IgG、IgMおよびIgA抗体を産生し、これらの抗体は、糖タンパク質、調節タンパク質、構造タンパク質および酵素を含むウイルスタンパク質に結合し(Bogger-Goren. 1984)、中和抗体が感染細胞の溶解を媒介する。gEやgIタンパク質に結合する中和抗体が中和作用を発揮するには補体が必要とされるが、gB、gH/gLタンパク質に結合する抗体は補体を必要としない。水痘に初感染した後、体内にIgG抗体、特に糖タンパク質抗体が長期に存在し、生体を二次感染から保護する。新生児、未免疫妊娠者や免疫機能低下者のVZV暴露後72時間以内にVZV免疫グロブリンを注射することは感染と体内ウイルス複製を抑制し(Zaia, J. A.,1983)、水痘の重症度を軽減させ、水痘性肺炎のリスクを下げることができるが、急性水痘患児の免疫グロブリン注射は臨床上病気の経過を改善することができない。抗ウイルス薬は水痘と帯状疱疹の重症度を有効に軽減させ、疾患の経過を短縮し、帯状疱疹による神経痛の発病率を下げることができる。帯状疱疹の治療は、現在、主に非特異性抗ウイルス治療であり、特異性抗ウイルス薬物はない。
【0007】
したがって、臨床的ニーズに基づき、水痘・帯状疱疹に対する抗体の探索と研究開発は生物学的および医学的に重大な意義がある。
【発明の概要】
【0008】
第1態様によれば、本発明は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMSであり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMHであり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDVであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLAであり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT、QEGFYFPIN、QQATYFPINもしくはQQSSYFPIAであり、
ここで、HCDRおよびLCDRアミノ酸配列はKabatに準じて定義される、
抗体を提供する。
【0009】
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1、3、5または7に示される。
【0010】
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10または28に示される。
【0011】
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示される。
【0012】
第2態様によれば、本発明は、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有し、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有する抗体を提供する。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片または一本鎖Fv断片(scFv)である。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプまたはIgG4サブタイプから選択される重鎖定常領域をさらに含む。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、κサブタイプまたはλサブタイプから選択される軽鎖定常領域をさらに含む。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、水痘帯状疱疹ウイルスgH/gLタンパク質に結合され、および/または前記抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する。
【0013】
第3態様によれば、本発明は、第1態様または第2態様に記載の抗体をコードする核酸分子を提供する。
【0014】
第4態様によれば、本発明は、第1態様または第2態様に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
第5態様によれば、本発明は、水痘および帯状疱疹を予防または治療するための医薬の製造における、第1態様または第2態様に記載の抗体、第3態様に記載の核酸分子、または第4態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0016】
第6態様によれば、本発明は、第1態様もしくは第2態様に記載の抗体、または第4態様に記載の医薬組成物を、これを必要とする個体に投与することを含む水痘および帯状疱疹の予防または治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体の、精製の抗組換えタンパク質gH/gLファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合への遮断能力のELISA解析を示す図である。その図A図Cは、それぞれ、抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体S8E1、S8B8、およびS7A10の遮断結果である。
図2】抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体H4H8-L1B7の、精製の抗組換えタンパク質gH/gLファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合への遮断能力のELISA解析を示す図である。
図3】Jurkat-Dual-CD16aレポーター遺伝子細胞に基づく、抗水痘帯状疱疹ウイルスモノクローナル抗体のADCC活性の評価を示す図である。
【0018】
配列の説明
SEQ ID NO:1は、モノクローナル抗体S7A10の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:2は、モノクローナル抗体S7A10の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:3は、モノクローナル抗体S8E1の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:4は、モノクローナル抗体S8E1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:5は、モノクローナル抗体S8B8の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:6は、モノクローナル抗体S8B8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:7は、モノクローナル抗体H4H8-L1B7、H4H8-L14H8、H4H8-L13C1、およびH4H8-L13C7の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:8は、モノクローナル抗体H4H8-L13C1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:9は、モノクローナル抗体H4H8-L13C7の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:10は、モノクローナル抗体H4H8-L14H8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:11は、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster virus)のgH糖タンパク質のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:12は、水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella zoster virus)のgL糖タンパク質のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:13は、Hisタグのアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:14は、ヒト(homo sapiens) IgG1サブタイプの重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:15は、ヒト(homo sapiens) IgG2サブタイプの重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:16は、ヒト(homo sapiens) IgG4サブタイプの重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:17は、マウス(mus musculus) IgG1サブタイプの重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:18は、マウス(mus musculus) IgG2aサブタイプの重鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:19は、ヒト(homo sapiens) κサブタイプの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:20は、ヒト(homo sapiens) λサブタイプの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:21は、マウス(mus musculus) κサブタイプの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:22は、マウス(mus musculus) λサブタイプの軽鎖定常領域のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:23は、プライマーPmCGRのヌクレオチド配列を示す。
SEQ ID NO:24は、プライマーPmCKRのヌクレオチド配列を示す。
SEQ ID NO:25は、一本鎖抗体S7A10のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:26は、一本鎖抗体S8E1のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:27は、一本鎖抗体S8B8のアミノ酸配列を示す。
SEQ ID NO:28は、モノクローナル抗体H4H8-L1B7の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発明者らは、抗体工学的手法により、水痘帯状疱疹ウイルスに対する新規抗体を開発した。本発明の様々な態様において、水痘帯状疱疹ウイルスに対する新規抗体、前記抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、前記核酸分子または前記ベクターを含む宿主細胞、前記抗体の製造および精製方法、および前記抗体の医学的および生物学的利用を提供する。本発明による抗体の可変領域のアミノ酸配列によれば、水痘および帯状疱疹の予防または治療のための医薬としての完全長抗体分子を構築することができる。
【0020】
特に断りのない限り、本発明の実施には、当該分野における通常の分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の技術が使用される。
特に断りのない限り、本発明において使用される用語は、当業者が通常理解する意味を有する。
【0021】
〔定義〕
本明細書で使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。標的には、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「抗体」は、完全抗体(すなわち完全長抗体)だけでなく、その抗原結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重抗体、線状抗体、一本鎖抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアントや共有結合修飾抗体を含む、所望の特異性の抗原認識部位を含む任意の他の免疫グロブリン分子の改変された構成を含む。
【0022】
通常、完全抗体または完全長抗体は2つの重鎖と2つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と、第1、第2および第3定常領域(CH1、CH2およびCH3)とを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と定常領域(CL)とを含む。完全長抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、またはIgM(または上記のサブクラス)のような任意の種類の抗体であってもよいが、抗体は任意の特定のクラスに属する必要はない。免疫グロブリンは、重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に基づき、異なるクラスに指定され得る。通常、免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの主要なクラスがあり、これらのクラスのいくつかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2のようなサブクラス(ホモタイプ)に分類され得る。異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は公知である。
【0023】
本明細書で使用される「抗原結合断片または抗原結合部分」という用語は、抗原結合を担当する完全抗体分子の一部または領域を指す。抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、または上記のその両方を含んでもよい。VHおよびVLの各々は、通常、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0024】
当業者には、相補性決定領域(CDR、通常、CDR1、CDR2およびCDR3)は、可変領域のうち抗体の親和性および特異性に最も大きな影響を与える領域であることが知られている。VHまたはVLのCDRアミノ酸配列には、Chothia定義とkabat定義の2つの一般的な定義方法がある(例えば、Kabat, 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,National Institutes of Health, Bethesda,Md. (1991);A1-Lazikaniら,J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997);およびMartinら,Proc. Natl. Acad. Sci.USA86:9268-9272 (1989))。所定の抗体の可変領域アミノ酸配列について、VHおよびVLアミノ酸配列のCDRアミノ酸配列は、Chothia定義またはKabat定義に従って決定されてもよい。本発明の実施形態において、CDRアミノ酸配列はKabatを用いて定義される。
【0025】
所定の抗体の可変領域アミノ酸配列については、可変領域アミノ酸配列中のCDRアミノ酸配列は、様々な方法で解析されてもよく、例えばオンラインソフトウェアAbysisを用いて決定されてもよい(http://www.abysis.org/)。
【0026】
抗原結合断片の例には、(1)VL-CL鎖およびVH-CH1鎖を有する1価断片であってもよいFab断片、(2)ヒンジ領域のジスルフィドブリッジ(すなわち、Fab’の二量体)を介して連結された2つのFab’断片を有する2価断片であってもよいF(ab’)断片、(3)抗体の単腕のVLおよびVHドメインを有するFv断片、(4)ペプチドリンカーを介してVHドメインおよびVLドメインからなる単一のポリペプチド鎖であってもよい一本鎖Fv(scFv)、および(5)ペプチドリンカーを介して連結された2つのVHドメインと、ジスルフィドブリッジを介して2つのVHドメインと組み合わされた2つのVLドメインとを含むことができる(scFv)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される「特異的結合」という用語は、抗体の抗原エピトープへの結合など、2つの分子間の非ランダム結合反応を指す。
【0028】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体を指し、すなわち、少数の個体で自然に起こる突然変異が存在する可能性があることを除いて、集団を構成する個々の抗体が同一である。本明細書に記載のモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体を含み、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応するアミノ酸配列と同一(identical)または相同(homologous)であり、重鎖および/または軽鎖の残りの部分は、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応するアミノ酸配列と同一(identical)または相同(homologous)であり、所望の生物学的活性(米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))を示す限り、そのような抗体の断片も含む。
【0029】
第1態様によれば、本発明は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWNであり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKNであり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMSであり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAYであり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLHであり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLASであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLTであり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMHであり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKGであり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDVであり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLAであり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQSであり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT、QEGFYFPIN、QQATYFPINもしくはQQSSYFPIAであり、
HCDRおよびLCDRアミノ酸配列は、Kabatに準じて定義される、
抗体を提供する。
【0030】
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1、3、5または7に示される。
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10または28に示される。
【0031】
第1態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示され、
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示される。
【0032】
第2態様によれば、本発明は、水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性(identity)を有し、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有する抗体を提供する。
第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性(homology)を有する。
【0033】
第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性を有する。
第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列とが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって異なる。
【0034】
第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列とが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって異なる。
第2態様のいくつかの実施形態において、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端領域は、前記抗体の重鎖可変領域の類似の機能を維持しながら、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸がさらに切断(トランケート)されてもよい。
【0035】
第2態様のいくつかの実施形態において、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端領域には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸が付加されてもよく、得られたアミノ酸配列が前記抗体の重鎖可変領域の類似の機能を維持する。
第2態様のいくつかの実施形態において、変化させたアミノ酸配列が前記抗体の重鎖可変領域の類似の機能を維持できる限り、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端以外の領域には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸が付加または欠失されてもよい。
【0036】
第2態様のいくつかの実施形態において、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端領域は、前記抗体の軽鎖可変領域の類似の機能を維持しながら、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸がさらに切断されてもよい。
第2態様のいくつかの実施形態において、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端領域には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸が付加されてもよく、得られたアミノ酸配列は前記抗体の軽鎖可変領域の類似の機能を維持する。
【0037】
第2態様のいくつかの実施形態において、変化させたアミノ酸配列が前記抗体の軽鎖可変領と類似の機能を維持できる限り、SEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のC末端またはN末端以外の領域には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25個以上のアミノ酸が付加または欠失されてもよい。
【0038】
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片または一本鎖Fv断片(scFv)である。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、完全ヒト型抗体である。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体である。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプまたはIgG4サブタイプから選択される重鎖定常領域をさらに含む。
【0039】
第1態様および第2態様のいくつかの特定の実施形態において、前記重鎖定常領域は、IgG1サブタイプである。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、κサブタイプまたはλサブタイプから選択される軽鎖定常領域をさらに含む。
第1態様および第2態様のいくつかの特定の実施形態において、前記軽鎖定常領域は、κサブタイプである。
第1態様および第2態様のいくつかの実施形態において、前記抗体は、水痘帯状疱疹ウイルスgH/gLタンパク質に結合され、および/または前記抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する。
【0040】
第3態様によれば、本発明は、第1態様または第2態様に記載の抗体をコードする核酸分子を提供する。
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、前記ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識され得る調節アミノ酸配列に作動可能に連結されている。
【0041】
第4態様によれば、本発明は、第1態様または第2態様に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、水痘および帯状疱疹を予防または治療することに用いられる。
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウムや鉱物油など)、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、安息香酸、防腐剤(例えば、ソルビン酸やプロピオン酸カルシウムなど)、甘味増強剤および/または香味剤などの1種または2種以上をさらに含んでもよい。
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、錠剤、丸剤、粉剤、錠剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ剤、坐剤またはカプセルなどの形態として調製されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、経口投与、非経口投与、経鼻投与、直腸投与、腹膜内投与、血管内注射、皮下投与、経皮投与、吸入投与などを含むがこれらに限定されない任意の生理学的に許容可能な投与方法を利用して送達されてもよい。
いくつかの実施形態において、治療用医薬組成物は、所望の純度を有する試薬と、場合に応じて薬学的に許容される担体、賦形剤などとを混合することにより、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態で貯蔵するように製造されてもよい。
【0044】
第5態様によれば、本発明は、水痘および帯状疱疹を予防または治療するための医薬の製造における、第1態様または第2態様に記載の抗体、第3態様に記載の核酸分子、または第4態様に記載の的医薬組成物の使用を提供する。
第6態様によれば、本発明は、第1態様もしくは第2態様に記載の抗体、または第4態様に記載の医薬組成物を、これを必要とする個体に投与することを含む、水痘および帯状疱疹の予防または治療方法を提供する。
【0045】
他の態様によれば、本発明はまた、本発明の抗体またはその軽鎖または重鎖をコードする単離核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、前記ベクターを含む宿主細胞、および前記抗体を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、前記ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識され得る調節アミノ酸配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、抗体を産生する方法は、宿主細胞を培養して核酸を発現させることを含む。いくつかの実施形態において、抗体を産生する方法は、宿主細胞の培地から抗体を回収することを含む。
【0046】
さらに、本明細書に記載の水痘帯状疱疹ウイルスに対して特異的な抗体は、生体サンプル中の水痘帯状疱疹ウイルスの存在を検出することにも用いられ得る。抗体に基づく検出方法は当該分野に公知であり、例えばELISA、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光、免疫沈降や他の関連技術を含む。
なお、以上の詳細な説明は、当業者に本発明の内容をより明確に理解させるためだけのものであり、いかなる態様においても限定することを意図していない。当業者は、前記実施形態に様々な変更および変化を加えることができる。
【実施例
【0047】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定する目的ではなく、説明のためにのみ使用される。
実施例1:組換えタンパク質の製造
水痘帯状疱疹ウイルスに特異的な抗体の製造および同定には、gH糖タンパク質(SEQ ID NO:11)およびgL糖タンパク質(SEQ ID NO:12)が使用される。gHとgLは細胞内で別々に合成され、一緒に折り畳まれてgH/gL二量体を形成して初めて有効な分泌発現ができ、しかも、gH/gL二量体は大量の翻訳後修飾(例えばグリコシル化やジスルフィド結合など)があるので、哺乳動物細胞の発現系を利用することは、組換えタンパク質の構造と機能を維持することは更に有利である。さらに、gH糖タンパク質のC末端にHisタグ(SEQ ID NO:13)を付加することにより、組換えタンパク質の精製やモノクローナル抗体機能の同定がより容易になる。Uniprotのテータベースにある水痘帯状疱疹ウイルスOka株のgH糖タンパク質およびgL糖タンパク質のアミノ酸配列から、gH(Hisタグを含む)およびgL組換えタンパク質をコードする遺伝子を設計して合成した。gH-HisおよびgLをコードする合成された組換えタンパク質遺伝子を、従来の分子生物学的手法を用いて、適切な真核発現ベクター(例えば、invitrogen社のpcDNA3.1など)にそれぞれクローニングし、その後、リポソーム(例えば、invitrogen社の293fectinなど)または他のトランスフェクション試薬(例えば、PEIなど)を用いて、製造された組換えタンパク質発現プラスミドをHEK293細胞(例えば、invitrogen社のHEK293F)にトランスフェクションし、無血清懸濁培養条件下で3~5日間培養した。その後、遠心分離などで培養上清を得た。金属キレートアフィニティークロマトグラフィーカラム(例えば、GE社のHisTrap FFなど)を用いて、上清中の組換えタンパク質をさらに精製した。その後、脱塩カラム(例えば、GE社のHitrap desaultingなど)を用いて、組換えタンパク質保存緩衝液をPBS(pH7.0)または他の適切な緩衝液に置換した。必要に応じて、サンプルをろ過除菌した後、個別に包装して-20℃に保存した。
【0048】
組換え抗体を製造する場合、抗体の重鎖定常領域は、ヒトIgG1サブタイプ(SEQ ID NO:14)、ヒトIgG2サブタイプ(SEQ ID NO:15)、ヒトIgG4サブタイプ(SEQ ID NO:16)、またはマウスIgG1サブタイプ(SEQ ID NO:17)、マウスIgG2aサブタイプ(SEQ ID NO:18)であり、軽鎖定常領域は、ヒトκサブタイプ(SEQ ID NO:19)、ヒトλサブタイプ(SEQ ID NO:20)、マウスκサブタイプ(SEQ ID NO:21)、マウスλサブタイプ(SEQ ID NO:22)であり得る。従来の分子生物学的手段を用いて、重鎖定常領域および軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列を融合した真核発現ベクター(例えば、invitrogen社のpcDNA3.1など)に、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列をそれぞれクローニングして組み合わせ、完全抗体を発現させた。リポソーム(例えば、invitrogen社の293fectinなど)または他のトランスフェクション試薬(例えば、PEIなど)を用いて、製造された組換え抗体発現プラスミドをHEK293細胞(例えば、invitrogen社のHEK293F)にトランスフェクションし、無血清懸濁培養条件下で3~5日間培養した。その後、遠心分離などで培養上清を得て、ProteinA/Gアフィニティーカラム(例えば、GE社のMabselect SUREなど)を用いて、さらに精製した。その後、脱塩カラム(例えば、GE社のHitrap desaultingなど)を用いて、組換えタンパク質保存緩衝液をPBS(pH7.0)または他の適切な緩衝液に置換した。必要に応じて、抗体サンプルをろ過除菌した後、個別に包装して-20℃に保存した。
【0049】
実施例2:マウス抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体のスクリーニング
2.1 マウス免疫および免疫抗体ライブラリーの作製
実施例1で製造された組換えタンパク質gH-His/gLを抗原として、6~8週齢のBALB/cマウスを、免疫用量50μg/匹で免疫し、14日ごとに追加免疫を1回行い、初回免疫後8週間でマウスを殺し、脾臓細胞を採取した。マウスリンパ球分離液(ダコウィバイオテクノロジー株式会社、CAT#DKW33-R0100)を用いて、マウス脾臓リンパ球を分離した。細胞総RNA抽出キット(天根生物化科技(北京)有限公司、CAT#DP430)を利用し、分離したリンパ球の総RNAの抽出を行った。抽出された総RNAをテンプレートとして、第1鎖cDNA合成キット(Thermo scientific、CAT#K1621)を用いて、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域のcDNAをそれぞれ合成し、逆転写プライマーとして遺伝子特異的プライマーを用いた。プライマー対合領域は、それぞれ、抗体の重鎖定常領域と抗体の軽鎖定常領域に位置し、具体的な配列は、それぞれ、PmCGR: TGCATTTGAACTCCTTGCC(SEQ ID NO:23)とPmCKR: CCATCAATCTTCCACTTGAC(SEQ ID NO:24)である。合成したcDNAを直ちに-70℃で保存した。その後、逆転写により得られたcDNAをテンプレートとして、文献(Krebber A, Bornhauser S, Burmester J, et al. Reliable cloning of functional antibody variable domains from hybridomas and spleen cell repertoires employing a reengineered phage display system. J Immunol Methods. 1997;201(1):35-55、この文献の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる)を参照してプライマーを合成し、PCRを用いてマウス抗体VHおよびVKをコードするヌクレオチド配列をそれぞれ増幅した後、オーバーラップエクステンションPCR技術を用いて、一本鎖抗体(scFv)遺伝子を構築した。最後に、製造されたマウス一本鎖抗体ヌクレオチド配列をベクターpADSCFV-Sにクローニングし(実験技術の流れは中国特許出願第201510097117.0号の実施例1を参照することができ、上記特許出願の全ての内容は引用によって本明細書に組み込まれる)、scFvライブラリーを構築した。抗体ライブラリーの容量は2.13E+08に達し、正解率は50%であった。
【0050】
2.2 抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLマウス一本鎖抗体のスクリーニング
文献(実験技術の流れは中国特許出願第201510097117.0号を参照することができ、上記特許出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる)を参照して、実施例1で製造された組換えタンパク質gH-His/gLを抗原として、固相スクリーニング戦略(実験案はファージディスプレイを参照:一般的な実験ガイドライン/(米)クラークソンClackson,T.)、(米)ローマン(Lowman,H.B.)編集、馬嵐ら翻訳、化学工業出版社、2008.5、この文献の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる)を用いて、上記で構築したマウス一本鎖抗体をディスプレイするファージライブラリーをスクリーニングし、結合、溶出、中和、感染、増幅により3回のスクリーニングを行い、最終的にS7A10(アミノ酸配列がSEQ ID NO:25に示される)、S8E1(アミノ酸配列がSEQ ID NO:26に示される)、およびS8B8(アミノ酸配列がSEQ ID NO:27に示される)のクローンを含む、配列が異なるが組換えタンパク質gH-His/gLに特異的に結合し得る複数の一本鎖抗体を得た。
【0051】
実施例3:マウス抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体の親和性解析
通常の分子生物学的方法を用いて、gH/gLに特異的に結合する一本鎖抗体の軽重鎖をコードするヌクレオチド配列を真核発現ベクターにクローニングし、組換えヒトIgG1-κ形式のマウス-ヒトキメラ抗体を製造した。
【0052】
Biacore X100を用いて、表面プラズモン共鳴法により、抗gH/gL抗体の親和性を測定した。アミノ結合キット(BR-1000-50)、ヒト抗体捕捉キット(BR-1008-39)、CM5チップ(BR100012)、pH7.4の10×HBS-EP(BR100669)などの関連試薬と消耗品は、全てGEヘルスケア社から購入した。キットの取扱書に従って、カルボキシル化CM5チップの表面を、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC:1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS:N-Hydroxysuccinimide)で活性化し、抗ヒトIgG(Fc)抗体(捕捉抗体)を、10mM pH5.0の酢酸ナトリウムで25μg/mLに希釈した後、約10000応答単位(RU)までの結合量を達成するために、流速10μL/minで注射した。捕捉抗体を注射した後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基をブロックした。動態測定では、抗gH/gL抗体を0.5~1μg/mLに希釈し、10μL/minで注射することにより、50RU程度の抗体が抗ヒトFc抗体に捕捉されることを確保した。その後、組換えタンパク質gH/gLを一連の濃度勾配(例えば、1.23nM、3.7nM、11.1nM、33.3nM、および100nM)を設定し、25℃で低濃度から高濃度まで30μL/minで注射し、結合時間を120s、解離時間を3600sとして、3MのMgClを10μL/minで30s注射し、チップ表面を再生した。Biacore X100評価ソフトウェアバージョン2.0.1を使用して、結合および解離センシングマップを1:1結合モデルでフィッティングすることにより、結合速度(K)と解離速度(K)を算出した。比率K/Kで解離平衡定数(K)を算出した。フィッティング結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例4:マウス抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体のエピトープ解析
水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLを96ウェルELISAプレート(3μg/mL、100μL/ウェル)に被覆し、4℃の冷蔵庫に一晩放置した。ブロック液PBS-0.1%トウェイン+20~3%牛乳を37℃で1時間ブロックした。一定の濃度(5×1010~1×1011cfu/mL)の精製の抗組換えタンパク質gH/gLファージ(S7A10、S8B8、およびS8E1)のそれぞれを用いて、組換えタンパク質gH/gL抗体(S7A10、S8B8、およびS8E1)に対して勾配希釈を行い、開始濃度を10μg/mLとして、8~10個の濃度勾配で3倍勾配希釈し、100μL/ウェルでブロック済みの96ウェルELISAプレートに入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBS-0.1%トウェイン20を使用してELISAプレートを洗浄し、その後、HRP抗M13二次抗体(北京義翹神州科技股▲フン▼有限公司、11973-MM05T-H)を加えて、37℃で1時間インキュベートした。ELISAプレートをPBS-0.1%トウェイン20で洗浄し、OPD基質発色液を加え、5~10分後に1MのHSOを用いて発色を中止し、マイクロプレートリーダを用いて492nm/630nmの二波長光学濃度値を測定した。ELISA解析の結果、図1に示すように、S8E1-IgG1モノクローナル抗体は、S8B8ファージ、S7A10ファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合を遮断することができない(図1A)。S8B8-IgG1モノクローナル抗体は、S8E1ファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合シグナルを部分的に遮断することができるが、S7A10ファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合には影響を及ぼさない(図1B)。S7A10-IgG1モノクローナル抗体は、S8B8ファージ、S7A10ファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合を遮断することができない(図1C)。
【0055】
実施例5:マウス抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体の中和活性
抗体(S7A10、S8B8、およびS8E1)中和活性は、抗体とVZVウイルスとを混合した後、MRC5細胞に感染することにより形成されるプラークが減少することによって決定される。MRC-5細胞を1.5×10個/ウェルで6ウェル細胞培養プレートに接種し、72時間培養して単層細胞とし、90%が敷き詰められると、培養液上清を除去し、ウイルス維持液(2%血清含有MEM培地)を1ウェルあたり400μL加えた。VZV(Oka)をウイルス維持液で2000pfu/mLに希釈し、すなわち、抗体と等体積で混合した後に100μLあたり100pfuのVZVを含むように希釈した。抗体をウイルス希釈液で2倍勾配希釈し、開始濃度を20μg/mLとして、8個の濃度勾配とし、すなわち、VZVと等体積と混合した後の抗体濃度は、10μg/mL、5μg/mL、2.5μg/mL、1.25μg/mL、0.62μg/mL、0.31μg/mL、0.16μg/mL、および0.08μg/mLであった。VZVを抗体と等体積で混合し、25℃で1時間放置し、6ウェルプレート内のMRC5細胞を1ウェル当たり100μL感染させた。37℃で1時間吸着し、上清を吸引して捨てて、PBSで2回洗浄し、1ウェルあたり3mLの維持液を加え、37℃で8日間維持培養し、上清を除去し、PBSで1回洗浄し、1ウェルあたり1mLのクーマシー・ブリリアント・ブルー染色液を加え、10分間作用させた後、PBSで1回洗浄し、明るい所に置いてプラークを計数し、プラークが50%減少した抗体濃度(PRNT50)をReedとMuench法で算出した。実験結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例6:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体によるウイルスの細胞間伝播に対する阻害の活性
VZVウイルスがMRC5細胞に感染してから24時間後に、抗体(S7A10、S8B8、およびS8E1)を加え、形成されるプラークが減少することにより、抗体のウイルスの細胞間伝播に対する阻害の活性を決定した。MRC-5細胞を1.5×10個/ウェルで6ウェル細胞培養プレートに接種し、72時間培養して単層細胞とし、90%が敷き詰められると、培養上清を除去し、ウイルス維持液(2%血清含有MEM培地)を1ウェル当たり400μL加えた。VZVをウイルス維持液で1000pfu/mLに希釈し、6ウェルプレートのMRC5細胞に1ウェルあたり100μL感染させ、すなわち1ウェルあたり100pfuのVZVを感染させた。37℃で1時間吸着し、上清を吸引して捨てて、PBSで2回洗浄し、1ウェルあたり3mLの維持液を加え、37℃で24時間維持培養した。ウイルス希釈液で抗体を2倍勾配希釈し、開始濃度を400μg/mLとして、8つの濃度勾配とし、VZVに感染したMRC5細胞を6ウェルプレートに1ウェル当たり30μL加え、すなわち、培養液中の抗体濃度は、4μg/mL、2μg/mL、1μg/mL、0.5μg/mL、0.25μg/mL、および0.125μg/mLであった。37℃で7日間維持培養し、上清を除去し、PBSで1回洗浄し、1ウェルあたり1mLのクーマシー・ブリリアント・ブルー染色液を加え、10分間作用させた後、PBSで1回洗浄し、明るい所に置いてプラークを計数し、プラークが50%減少した抗体濃度を算出した。実験結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例7:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLの完全ヒト型モノクローナル抗体のスクリーニング
実施例1で製造された組換えタンパク質gH-His/gLを抗原として、固相スクリーニング戦略(実験案はファージディスプレイを参照:一般的な実験ガイドライン/(米)クラークソン(Clackson,T.)、(米)ローマン(Lowman,H.B.)編集、馬嵐ら翻訳、化学工業出版社、2008.5、この文献の全ての内容は引用により本明細書に組み入れる)を用いて、天然ヒトファージ抗体ライブラリーをスクリーニングし(実験技術の流れは中国特許出願第201510097117.0号の実施例1を参照することができ、上記特許出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれている)、最終的に、組換えタンパク質gH-His/gLに特異的に結合する完全ヒト型一本鎖抗体H4H8-L1B7を1株得た。
【0060】
実施例8:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLの完全ヒト型モノクローナル抗体のエピトープ解析
通常の分子生物学的方法を用いて、H4H8-L1B7をコードする軽重鎖を真核発現ベクターにクローニングし、組換えヒトIgG1-κ形式の完全ヒト型モノクローナル抗体を製造した。
【0061】
実施例4を参照して、一定の濃度(5×1010~1×1011cfu/mL)の精製の抗組換えタンパク質gH/gLファージ(S7A10、S8E1、S8B8およびH4H8-L1B7)のそれぞれを用いて、抗組換えタンパク質gH/gL抗体(H4H8-L1B7-IgG1)を勾配希釈し、組換えタンパク質gH/gLファージの組換えタンパク質gH/gLへの結合に対するヒト抗組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体H4H8-L1B7-IgG1の遮断を測定した。図2に示されるELISA解析の結果、H4H8-L1B7-IgG1モノクローナル抗体はH4H8-L1B7ファージおよびS8E1ファージと組換えタンパク質gH/gLとの結合シグナルを完全に遮断することができ、他の2種類のファージ(S7A10とS8B8)と組換えタンパク質gH/gLとの結合シグナルには何の影響も与えなかった。
【0062】
実施例9:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLの完全ヒト型モノクローナル抗体H4H8-L1B7軽鎖突然変異ライブラリーの構築およびスクリーニング
9.1 H4H8-L1B7軽鎖突然変異ライブラリーの構築およびスクリーニング
デュアルベクターファージディスプレイシステムに基づき、軽鎖CDR突然変異の戦略(具体的な操作は、出願人が以前に提出した中国特許第201510097117.0号の実施例5を参照することができ、上記特許出願の全ての内容は引用によって本明細書に組み込まれる)を用いて、H4H8-L1B7モノクローナル抗体の体外親和性を測定した。古典的なオーバーラップエクステンションPCR法を用いて、容量5.5E+07を超えるLCDR3突然変異ライブラリーを構築し、突然変異ライブラリーの設計案を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
組換えタンパク質gH-His/gLを抗原として、H4H8-L1B7重鎖を基礎とし、固相スクリーニング戦略を用いてL1B7(SEQ ID NO:28)のLCDR3突然変異ライブラリーを2回スクリーニングし、最終的に3つの軽鎖変異体L13C1(SEQ ID NO:8)、L13C7(SEQ ID NO:9)、およびL14H8(SEQ ID NO:10)を得た。
【0065】
9.2 H4H8-L1B7軽鎖変異体の親和性解析
通常の分子生物学的方法を用いて、H4H8-L14H8、H4H8-L13C1、およびH4H8-L13C7をコードする軽重鎖を真核発現ベクターにクローニングし、組換えヒトIgG1-κ形式の完全ヒト型モノクローナル抗体を製造した。
実施例3を参照して、Biacore X100評価ソフトウェアバージョン2.0.1を用いてH4H8-L1B7軽鎖変異体の親和性を解析し、その結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
実施例10:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体の中和活性
実施例5を参照して、モノクローナル抗体H4H8-L14H8、H4H8-L13C1およびH4H8-L13C7の中和活性を測定した。実験結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
実施例11:抗水痘帯状疱疹ウイルス組換えタンパク質gH/gLモノクローナル抗体によるウイルスの細胞間伝播に対する阻害の活性
実施例6を参照して、モノクローナル抗体H4H8-L14H8、H4H8-L13C1およびH4H8-L13C7のウイルスの細胞間伝播に対する阻害の活性を測定した。実験結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
実施例12:抗水痘帯状疱疹ウイルスモノクローナル抗体による感染細胞に対するADCC作用への媒介
本発明の発明者らは、CD16aプラスミドをInvivogen社のjurkat-dual細胞に導入することにより、Ju rkat-dual-CD16aレポーター遺伝子細胞株を構築した。抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC:antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)効果が発生する場合、活性化シグナルはCD16a分子を介して下流のNF-κB経路に転送され、最後に、ADCC活性は、ルシフェラーゼを介して検出された。T75細胞培養瓶に90%敷き詰められたMRC5細胞にMOI=0.01で水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)を感染させ、鏡視下で観察したところ、培養瓶に入った細胞の50~60%に病変が生じ(感染96時間)、膵臓酵素で消化した後、細胞を採取した。Jurkat-Dual-CD16a細胞と、VZVに感染した標的細胞(MRC-5細胞)とをエフェクター細胞・ターゲット細胞比15:1の割合で混合した。被検分子H4H8-L14H8-IgG1、H4H8-L13C1-IgG1、H4H8-L1B7-IgG1とホモタイプ対照IgG1抗体はそれぞれ最終濃度60μg/mLで開始し、3倍勾配希釈し、合計10個の濃度点とし、上記の混合細胞と共培養した。20hインキュベートした後、遠心分離して50μLの上清を取り、マイクロプレートリーダに自動サンプルプログラムを設置し、各ウェルに50μLのルシフェラーゼ検出液quanti-luc(invivogen、品番rep-qlc2)を加え、全波長検出を行って蛍光強度を測定した。Jurkat-Dual-CD16aレポーター遺伝子系に基づくADCC活性の結果(図3)では、H4H8-L14H8-IgG1およびH4H8-L13C1-IgG1は、ADCC活性がH4H8-L1B7-IgG1よりも良好であることが示された。
【0072】
以上は、本発明の様々な発明の例示的な実施形態について説明したが、当業者は、本明細書の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に記載された例示的な実施形態を修正または改良することができ、その得られる変形または同等の態様も本発明の範囲に属する。
【0073】
参考文献
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図1
図2
図3
【配列表】
2024509933000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWN(SEQ ID NO:29)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKN(SEQ ID NO:30)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAY(SEQ ID NO:31)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMH(SEQ ID NO:32)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLAS(SEQ ID NO:33)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFT(SEQ ID NO:34)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWN(SEQ ID NO:35)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKN(SEQ ID NO:36)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDY(SEQ ID NO:37)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLH(SEQ ID NO:38)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFS(SEQ ID NO:39)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWT(SEQ ID NO:40)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMS(SEQ ID NO:41)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKG(SEQ ID NO:42)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAY(SEQ ID NO:43)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLH(SEQ ID NO:44)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLAS(SEQ ID NO:45)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLT(SEQ ID NO:46)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMH(SEQ ID NO:47)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKG(SEQ ID NO:48)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDV(SEQ ID NO:49)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLA(SEQ ID NO:50)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQS(SEQ ID NO:51)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT(SEQ ID NO:52)、QEGFYFPIN(SEQ ID NO:53)、QQATYFPIN(SEQ ID NO:54)もしくはQQSSYFPIA(SEQ ID NO:55)であり、
HCDRおよびLCDRアミノ酸配列はKabatに準じて定義される、抗体。
【請求項2】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1、3、5または7に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10または28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有し、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体は、完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片または一本鎖Fv断片(scFv)であり、および/または
前記抗体は、完全ヒト型抗体であり、および/または
前記抗体は、モノクローナル抗体であり、および/または
前記抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプまたはIgG4サブタイプから選択される重鎖定常領域をさらに含み、および/または
前記抗体は、κサブタイプまたはλサブタイプから選択される軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、水痘帯状疱疹ウイルスgH/gLタンパク質に結合され、および/または
前記抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する、請求項1~のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
水痘および帯状疱疹を予防または治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
第1態様によれば、本発明は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWN(SEQ ID NO:29)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKN(SEQ ID NO:30)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAY(SEQ ID NO:31)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMH(SEQ ID NO:32)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLAS(SEQ ID NO:33)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFT(SEQ ID NO:34)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWN(SEQ ID NO:35)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKN(SEQ ID NO:36)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDY(SEQ ID NO:37)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLH(SEQ ID NO:38)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFS(SEQ ID NO:39)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWT(SEQ ID NO:40)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMS(SEQ ID NO:41)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKG(SEQ ID NO:42)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAY(SEQ ID NO:43)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLH(SEQ ID NO:44)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLAS(SEQ ID NO:45)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLT(SEQ ID NO:46)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMH(SEQ ID NO:47)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKG(SEQ ID NO:48)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDV(SEQ ID NO:49)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLA(SEQ ID NO:50)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQS(SEQ ID NO:51)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT(SEQ ID NO:52)、QEGFYFPIN(SEQ ID NO:53)、QQATYFPIN(SEQ ID NO:54)もしくはQQSSYFPIA(SEQ ID NO:55)であり、
ここで、HCDRおよびLCDRアミノ酸配列はKabatに準じて定義される、
抗体を提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
第1態様によれば、本発明は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWN(SEQ ID NO:29)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKN(SEQ ID NO:30)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAY(SEQ ID NO:31)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMH(SEQ ID NO:32)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLAS(SEQ ID NO:33)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFT(SEQ ID NO:34)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWN(SEQ ID NO:35)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKN(SEQ ID NO:36)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDY(SEQ ID NO:37)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLH(SEQ ID NO:38)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFS(SEQ ID NO:39)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWT(SEQ ID NO:40)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMS(SEQ ID NO:41)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKG(SEQ ID NO:42)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAY(SEQ ID NO:43)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLH(SEQ ID NO:44)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLAS(SEQ ID NO:45)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLT(SEQ ID NO:46)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMH(SEQ ID NO:47)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKG(SEQ ID NO:48)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDV(SEQ ID NO:49)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLA(SEQ ID NO:50)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQS(SEQ ID NO:51)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT(SEQ ID NO:52)、QEGFYFPIN(SEQ ID NO:53)、QQATYFPIN(SEQ ID NO:54)もしくはQQSSYFPIA(SEQ ID NO:55)であり、
HCDRおよびLCDRアミノ酸配列は、Kabatに準じて定義される、
抗体を提供する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
第3態様によれば、本発明は、第1態様または第2態様に記載の抗体をコードする核酸分子を提供する。
いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、前記ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識され得る調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
他の態様によれば、本発明はまた、本発明の抗体またはその軽鎖または重鎖をコードする単離核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、前記ベクターを含む宿主細胞、および前記抗体を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記核酸分子は、前記ベクターで形質転換された宿主細胞によって認識され得る調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、抗体を産生する方法は、宿主細胞を培養して核酸を発現させることを含む。いくつかの実施形態において、抗体を産生する方法は、宿主細胞の培地から抗体を回収することを含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024509933000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体であって、
HCDR1、HCDR2およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMH(SEQ ID NO:47)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKG(SEQ ID NO:48)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDV(SEQ ID NO:49)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLA(SEQ ID NO:50)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQS(SEQ ID NO:51)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQEGFYFPIN(SEQ ID NO:53)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGNYWN(SEQ ID NO:29)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSTYYNPSLKN(SEQ ID NO:30)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はGYYGYWFAY(SEQ ID NO:31)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASSSVSYMH(SEQ ID NO:32)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はATSNLAS(SEQ ID NO:33)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQWSSNPFT(SEQ ID NO:34)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSGYYWN(SEQ ID NO:35)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はYISYDGSNNYNTSLKN(SEQ ID NO:36)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はEDVNYPPYALDY(SEQ ID NO:37)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRSSQSLVHSNGNTYLH(SEQ ID NO:38)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はKVSNRFS(SEQ ID NO:39)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はSQSTHVPWT(SEQ ID NO:40)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はSYTMS(SEQ ID NO:41)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はFISNGGDNNYYADTVKG(SEQ ID NO:42)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はHNGNWGFAY(SEQ ID NO:43)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はSASSSISSNYLH(SEQ ID NO:44)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はRTSNLAS(SEQ ID NO:45)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQGSSIPLT(SEQ ID NO:46)であり、または
前記HCDR1アミノ酸配列はTYAMH(SEQ ID NO:47)であり、前記HCDR2アミノ酸配列はVISYGGGNRYYAASVKG(SEQ ID NO:48)であり、前記HCDR3アミノ酸配列はARDNHYFFGMDV(SEQ ID NO:49)であり、前記LCDR1アミノ酸配列はRASQGISSWLA(SEQ ID NO:50)であり、前記LCDR2アミノ酸配列はAASSLQS(SEQ ID NO:51)であり、前記LCDR3アミノ酸配列はQQANSFPLT(SEQ ID NO:52)、QQATYFPIN(SEQ ID NO:54)もしくはQQSSYFPIA(SEQ ID NO:55)であり、
HCDRおよびLCDRアミノ酸配列はKabatに準じて定義される、抗体。
【請求項2】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1、3、5または7に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10または28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、または
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:28に示される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1、3、5および7のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有し、前記抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2、4、6、8、9、10、および28のいずれか1つとが少なくとも90%の同一性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体は、完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片または一本鎖Fv断片(scFv)であり、および/または
前記抗体は、完全ヒト型抗体であり、および/または
前記抗体は、モノクローナル抗体であり、および/または
前記抗体は、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプまたはIgG4サブタイプから選択される重鎖定常領域をさらに含み、および/または
前記抗体は、κサブタイプまたはλサブタイプから選択される軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、水痘帯状疱疹ウイルスgH/gLタンパク質に結合され、および/または
前記抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を媒介する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体をコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
水痘および帯状疱疹を予防または治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】