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特表2024-509937IGE FC受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質の製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】IGE FC受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240227BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240227BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K39/395 V ZNA
A61K39/395 Y
A61P11/06
A61P29/00
A61P37/00
A61P37/08
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/34
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555346
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 KR2022003207
(87)【国際公開番号】W WO2022191550
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0030501
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520244430
【氏名又は名称】ジーアイ・イノベイション・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GI INNOVATION, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ミョンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンギュ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スンタク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076BB40
4C076CC03
4C076DD51
4C076DD60
4C076EE23
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF51
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF68
4C085AA34
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB42
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質二量体に最適化した製剤に関する。具体的には、本発明は、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質二量体、ヒスチジン、プロリン、メチオニン、およびポロキサマー188を含む水性医薬製剤であって、pHが6.0から7.0である水性医薬製剤に関する。本発明の製剤中に存在する融合タンパク質は、高濃度で含まれ、安定性が改善され、好都合に皮下注射により投与することができ、抗IgE抗体を含む従来の治療薬と比べて良好なIgE結合能を有している。そのため、IgEによって媒介されるアレルギー疾患の処置のための注射として有用に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含む融合タンパク質二量体を含む水性医薬製剤であって、pHが6.0から7.0である水性医薬製剤。
【請求項2】
皮下注射用である、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項3】
融合タンパク質二量体が2つの単量体を含み、それぞれがIgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項4】
単量体が改変Fc領域を含み、該改変Fc領域とIgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインがヒンジを介して連結されている、請求項3に記載の水性医薬製剤。
【請求項5】
改変Fc領域が配列番号2からなる、請求項4に記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
ヒンジが免疫グロブリンIgDまたはそのバリアント由来のヒンジ領域である、請求項4に記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインが配列番号1のアミノ酸配列またはその断片からなる、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
融合タンパク質二量体が50 mg/mLから150 mg/mLの濃度である、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
バッファおよび安定剤をさらに含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
バッファがヒスチジンである、請求項9に記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
ヒスチジンが10 mMから100 mMの濃度である、請求項10に記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
安定剤がプロリンである、請求項9に記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
プロリンが200 mMから300 mMの濃度である、請求項12に記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
抗酸化物質をさらに含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
抗酸化物質がメチオニンである、請求項14に記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
メチオニンが10 mg/mLから30 mg/mLの濃度である、請求項15に記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項18】
界面活性剤がポロキサマー188である、請求項17に記載の水性医薬製剤。
【請求項19】
ポロキサマー188が0.01 w/v%から1 w/v%の濃度である、請求項18に記載の水性医薬製剤。
【請求項20】
i) IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質二量体を50 mg/mLから150 mg/mLの濃度で;
ii) ヒスチジンを10 mMから100 mMの濃度で;
iii) プロリンを200 mMから300 mMの濃度で;
iv) メチオニンを10 mg/mLから30 mg/mLの濃度で; および
v) ポロキサマー188を0.01 w/v%から1 w/v%の濃度で
含む水性医薬製剤であって、pHが6.0から7.0である水性医薬製剤。
【請求項21】
バイアル、カートリッジ、シリンジ、および自動注入装置よりなる群から選択される容器内に存在する、請求項20に記載の水性医薬製剤。
【請求項22】
皮下投与用である、請求項20に記載の水性医薬製剤。
【請求項23】
アレルギー疾患の予防または処置用である、請求項20に記載の水性医薬製剤。
【請求項24】
アレルギー疾患が、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、特発性の慢性蕁麻疹、慢性特発性蕁麻疹、およびアレルギー性接触皮膚炎よりなる群から選択される1つである、請求項23に記載の水性医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質二量体を最適化した製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息を含む、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、および食物アレルギーなどのアレルギー疾患が、工業化および西洋化された近代社会の中で急速に増加しており、重大なアレルギー疾患であるアナフィラキシーの発生も増加している。これらの慢性免疫疾患は、個々人の生活の質を著しく損ない、社会経済的コストもそれに従い上昇している。そのため、このような疾患を克服する手段に対する切実な必要性が存在している。
【0003】
多くのアレルギー疾患は免疫グロブリンE(IgE)の過剰な免疫応答により引き起こされる。IgEは、通常下、極低レベルの濃度で血清中に存在する抗体である。IgEは通常、無害な抗原によっても産生される。特別な刺激なしに、IgEの数が増加する場合がある。このような場合はアレルギー疾患に至ることもある。異常に増加した数のIgEは、マスト細胞、好塩基球などの表面に発現している高親和性IgE Fc受容体(FcεRI)に結合しうる。このような結合は、マスト細胞または好塩基球に、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、ブラジキニン、および血小板活性化因子などの化学伝達物質の放出を引き起こす。これら化学伝達物質の放出はアレルギー症状をもたらす。特に、アレルギー疾患は、IgEとFcεRIの結合により、症状の悪化を示すことがある。
【0004】
現在、抗原回避、抗アレルギー薬の投与、体内のIgE合成の調節、および抗IgE抗体の開発などの様々な方法が、アレルギー疾患を処置するために提案されている。しかしながら、これまで知られる治療方法は、アレルギーの根本原因の解消能力の不足、不十分な薬効、重大な副作用の発生などの多くの欠点を有している。
【0005】
加えて、IgEとFcγRIIbに高い親和力で結合でき、IgE発現細胞を阻害できる免疫グロブリン組成物が研究されている(KR 10-1783272 B1)。このような組成物は、アレルギーや喘息を含むIgE媒介障害の処置に対し有用であると報告されている。
【0006】
そこで、IgE抗体のFc部位を標的とするオマリズマブ(商品名: ゾレア)が開発され、難治性重症喘息と難治性蕁麻疹の治療薬として使用されている。しかし、治療効果を維持するためのオマリズマブの高用量投与は、高い費用負荷、血管浮腫やアナフィラキシー反応などの副作用につながる。加えて、市販後の結果から、アレルギー性肉芽腫性血管炎と特発性重症血小板減少症が報告されている。したがって、副作用なく効果的にアレルギー疾患を処置できる治療薬の開発の必要性が高まっている。
【0007】
副作用なく効果的にアレルギー疾患を処置しうる治療薬を開発するために、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質を開発し、その融合タンパク質はアレルギー疾患を処置しうることを確認した(KR 10-2038675 B1)。アレルギー疾患の処置にこのタンパク質を効率的に応用するには、投薬・投与利点を提供する安定的な高濃度タンパク質製剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、IgEにより媒介されるアレルギー疾患の処置のための融合タンパク質二量体を商用化するために最適化した製剤を提供することである。具体的には、本発明者らは、その融合タンパク質二量体を商用化するために、皮下注射に最適化した高濃度水性医薬製剤を開発し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含む融合タンパク質二量体を含み、pHが6.0から7.0である水性医薬製剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含み、pHが6.0から7.0である、融合タンパク質二量体を含む本発明による水性医薬製剤は、優れた安定性を有する。さらに、高濃度で融合タンパク質二量体を含む本発明による製剤は、皮下注射により、素早く、好都合に投与することができる。加えて、本製剤は優れた安定性を有しており、凝集体形成を減少することにより、保存期間を長くすることができる。それゆえ、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含む本製剤は、アレルギー疾患用注射として、有利に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】750 W/m2の条件下で、7.5時間、光ストレスを受けたサンプル(#1から#4)の写真である。
【0012】
図2】35℃、200 rpmの条件下で、5日間、ストレスを受けたサンプル(#1から#6)の写真である。
【0013】
図3】35℃、200 rpmの条件下で、14日間、ストレスを受けたサンプル(#1から#6)の写真である。
【0014】
図4】35℃、200 rpmの条件下で、14日間、ストレスを受けたサンプル(#1から#6)の回収率(%)を示すグラフである。
【0015】
図5】各ストレス条件による、サンプルのメインピーク面積を示すグラフである。
【0016】
図6】各ストレス条件による、サンプルの凝集体面積を示すグラフである。
【0017】
図7】各ストレス条件による、サンプルの断片面積を示すグラフである。
【0018】
図8】初期状態におけるサンプル(#1または#2)を充填したシリンジと、35℃、200 rpmで14日間ストレスに曝した後のシリンジの写真。
【0019】
図9】力/長さダイアグラムを示すグラフである。この場合は、190 mm/minの押し出し速度で実施した。
【0020】
図10】各ストレス条件による、サンプル(#1と#2)のメインピーク面積を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
融合タンパク質二量体に最適化された製剤
本発明のある態様では、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含む融合タンパク質二量体を含む水性医薬製剤を提供する。ここで、その水性医薬製剤のpHは6.0から7.0、6.1から7.0、6.2から6.9、6.3から6.8、6.4から6.8、または6.4から6.6の範囲であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される「医薬製剤」なる用語は、有効成分の生物活性が明らかに効果的となる形態で存在し、その製剤が投与された対象に副作用を引き起こす成分を含まない調製物を意味する。
【0023】
「対象」なる用語は、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、およびラットなどの哺乳類である場合があり、好ましくはヒト、イヌ、またはネコである。
【0024】
本明細書で使用する「水性医薬製剤」なる用語は、水または水性/油性混合物(例えば、水とアルコールの混合物)などの好適な水性溶媒を使用する医薬製剤を意味する。その製剤は、安定性、例えば化学的または物理的な安定性を、または生物活性を維持しうる。
【0025】
「安定性」なる用語は、定常状態を維持する特性のことを意味し、タンパク質、ペプチド、または生物活性高分子(biologically active macromolecule)などの生物学的に活性な基質の分解、変性、凝集、またはアンフォールディングを最小化することと一般的に関係する。
【0026】
なお、製剤は液体製剤であってもよい。液体製剤は水溶液または懸濁液であり、室温、冷蔵(例えば2℃から8℃)、または冷凍(例えば-20℃または-70℃)で保管中、安定的に維持されうる。
【0027】
本発明の水性医薬製剤は非経口的に投与されうる。この場合、非経口投与は、皮下投与、静脈内投与、粘膜投与、および筋肉内投与などの方法によりなされうる。本発明のある実施形態では、製剤は好ましくは皮下注射で投与されうる。
【0028】
本発明のある実施形態では、水性医薬製剤内の融合タンパク質二量体は、高濃度で含まれていてもよく、具体的には50 mg/mL以上、60 mg/mL以上または70 mg/mL以上である。本発明のある実施形態では、融合タンパク質二量体の濃度は、50 mg/mLから150 mg/mL、50 mg/mLから130 mg/mL、50 mg/mLから120 mg/mL、50 mg/mLから110 mg/mL、50 mg/mLから100 mg/mL、50 mg/mLから90 mg/mL、50 mg/mLから80 mg/mL、60 mg/mLから150 mg/mL、60 mg/mLから130 mg/mL、60 mg/mLから120 mg/mL、60 mg/mLから110 mg/mL、60 mg/mLから100 mg/mL、60 mg/mLから90 mg/mL、60 mg/mLから80 mg/mL、70 mg/mLから150 mg/mL、70 mg/mLから130 mg/mL、70 mg/mLから120 mg/mL、70 mg/mLから110 mg/mL、70 mg/mLから100 mg/mL、70 mg/mLから90 mg/mLまたは70 mg/mLから80 mg/mLであってもよく、好ましくは75 mg/mLでありうるがそれらに限定されない。
【0029】
加えて、水性医薬製剤はさらにバッファと安定剤を含んでもよい。ここで、そのバッファはヒスチジンであってもよい。ヒスチジンは製剤中に10 mMから100 mMの濃度で存在してもよい。本発明のある実施形態では、バッファとしてのヒスチジンは、製剤中に10 mMから90 mM、10 mMから80 mM、10 mMから70 mM、10 mMから60 mM、20 mMから90 mM、20 mMから80 mM、20 mMから70 mM、20 mMから60 mM、30 mMから90 mM、30 mMから80 mM、30 mMから70 mM、30 mMから60 mM、40 mMから90 mM、40 mMから80 mM、40 mMから70 mM、40 mMから60 mM、50 mMから90 mM、50 mMから80 mM、50 mMから70 mM、または50 mMから60 mMの濃度で存在してもよい。好ましくは55 mMの濃度で存在しうる。
【0030】
ヒスチジンバッファはヒスチジンクロライド、ヒスチジン-酢酸、ヒスチジン-リン酸、ヒスチジン-硫酸を含みうるがそれらに限定されない。ヒスチジンバッファまたはヒスチジン-HClバッファのpHは5.5から7.5、6.0から7.0、6.1から7.0、6.2から6.9、6.3から6.8、6.4から6.8、または6.4から6.6の範囲であってもよく、好ましくはpH 6.5でありうる。
【0031】
安定剤はプロリンであってもよい。プロリンは製剤中に200 mMから300 mMの濃度で存在してもよい。本発明のある実施形態では、プロリンは製剤中に200 mMから290 mM、200 mMから280 mM、200 mMから270 mM、200 mMから260 mM、210 mMから290 mM、210 mMから280 mM、210 mMから270 mM、210 mMから260 mM、220 mMから290 mM、220 mMから280 mM、220 mMから270 mM、220 mMから260 mM、230 mMから290 mM、230 mMから280 mM、230 mMから270 mM、230 mMから260 mM、240 mMから290 mM、240 mMから280 mM、240 mMから270 mM、または240 mMから260 mMの濃度で存在してもよい。好ましくは250 mMの濃度で存在しうる。
【0032】
本発明の水性医薬製剤はさらに抗酸化物質を含んでもよい。ここで、その抗酸化物質はメチオニンであってもよい。メチオニンは製剤中に10 mg/mLから30 mg/mLの濃度で存在しうる。本発明のある実施形態では、メチオニンは製剤中に10 mg/mLから28 mg/mL、10 mg/mLから26 mg/mL、10 mg/mLから24 mg/mL、10 mg/mLから22 mg/mL、12 mg/mLから28 mg/mL、12 mg/mLから26 mg/mL、12 mg/mLから24 mg/mL、12 mg/mLから22 mg/mL、14 mg/mLから28 mg/mL、14 mg/mLから26 mg/mL、14 mg/mLから24 mg/mL、14 mg/mLから22 mg/mL、16 mg/mLから28 mg/mL、16 mg/mLから26 mg/mL、16 mg/mLから24 mg/mL、16 mg/mLから22 mg/mL、18 mg/mLから28 mg/mL、18 mg/mLから26 mg/mL、18 mg/mLから24 mg/mL、または18 mg/mLから22 mg/mLの濃度で存在してもよい。好ましくは20 mg/mLの濃度で存在しうる。
【0033】
抗酸化物質は、他の分子の酸化を阻害する物質であり、酸素を除去することにより、製剤中の凝集体形成を減少させうる。
【0034】
加えて、水性医薬製剤はさらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、液体の表面張力を低下させる物質であり、可溶性および不溶性の凝集体の形成を制御しうる。界面活性剤は非イオン性界面活性剤でもよく、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、およびポリソルベート85などのポリソルベート; ポロキサマー181、ポロキサマー188、およびポロキサマー407などのポロキサマー; またはポリエチレングリコール(PEG)でもよいがそれらに限定されない。好ましくは、界面活性剤はポロキサマーでありうる。
【0035】
具体的には、ポロキサマーはポロキサマー188でありうる。ポロキサマー188は製剤中に0.01 w/v% から1 w/v%の濃度で存在してもよい。本発明のある実施形態では、ポロキサマー188は製剤中に0.02 w/v%から0.8 w/v%、0.02 w/v%から0.6 w/v%、0.02 w/v%から0.4 w/v%、0.02 w/v%から0.2 w/v%、0.02 w/v%から0.15 w/v%、0.04 w/v%から0.8 w/v%、0.04 w/v%から0.6 w/v%、0.04 w/v%から0.4 w/v%、0.04 w/v%から0.2 w/v%、0.04 w/v%から0.15 w/v%、0.06 w/v%から0.8 w/v%、0.06 w/v%から0.6 w/v%、0.06 w/v%から0.4 w/v%、0.06 w/v%から0.2 w/v%、0.06 w/v%から0.15 w/v%、0.08 w/v%から0.8 w/v%、0.08 w/v%から0.6 w/v%、0.08 w/v%から0.4 w/v%、0.08 w/v%から0.2 w/v%、0.08 w/v%から0.15 w/v%、0.09 w/v%から0.8 w/v%、0.09 w/v%から0.6 w/v%、0.09 w/v%から0.4 w/v%、0.09 w/v%から0.2 w/v%、または0.09 w/v%から0.15 w/v%濃度で存在してもよい。好ましくは0.1 w/v%の濃度で存在しうる。
【0036】
本発明の他の態様では、i) 50 mg/mLから150 mg/mLの濃度のFcεRIα ECDを含む融合タンパク質二量体; ii) 10 mMから100 mMの濃度のヒスチジン; iii) 200 mMから300 mMの濃度のプロリン; iv) 10 mg/mLから30 mg/mLの濃度のメチオニン; およびv) 0.01 w/v%から1 w/v%の濃度のポロキサマー188を含む水性医薬製剤を提供する。ここで、その水性医薬製剤のpHは、6.0から7.0、6.1から7.0、6.2から6.9、6.3から6.8、6.4から6.8、または6.4から6.6の範囲にあってもよい。好ましくはpH 6.5でありうる。
【0037】
本発明のある実施形態では、水性医薬製剤は、i) 75 mg/mLの濃度のFcεRIα ECDを含む融合タンパク質二量体; ii) 55 mMの濃度のヒスチジン; iii) 250 mMの濃度のプロリン; iv) 20 mg/mLの濃度のメチオニン; およびv) 0. 1 w/v%の濃度のポロキサマー188を含みうる。
【0038】
水性医薬製剤は、バイアル、カートリッジ、シリンジ、および自動注入装置よりなる群から選択される容器に保管しうる。
【0039】
加えて、製剤が保管されている容器は、処置の必要な対象に投与するまで、室温、2℃から8℃、または25℃から40℃で保管しうる。
【0040】
製剤は非経口的に投与することができ、5 mL以下、3 mL以下、または2 mL以下の量で、18Gから32Gの針を用いて、皮下投与、静脈内投与、粘膜投与、筋肉内投与、または腹腔内投与などの非経口投与により投与されうるがそれらに限定されない。好ましくは、27Gの針を用いて、1mL以下の量で、静脈内に投与されうる。
【0041】
IgE FC受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含む融合タンパク質
上記に述べた融合タンパク質二量体は以下のとおりである。具体的には、二量体は2つの単量体を含み、それぞれがIgE FC受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)を含む。
【0042】
単量体は改変Fc領域を含んでもよく、その改変Fc領域とFcεRIα ECDはIgD抗体のヒンジを介して連結されうる。
【0043】
本明細書で使用する「IgE」なる用語は、免疫グロブリンEとして知られる抗体タンパク質を意味する。IgEはマスト細胞、血中の好塩基球などに親和性を有している。加えて、IgE抗体とそれに対応する抗原(アレルゲン)の反応は、炎症反応を引き起こす。加えて、IgEはマスト細胞または好塩基球の急な分泌により起こるアナフィラキシーを引き起こす抗体であると知られている。
【0044】
本明細書で使用する「IgE Fc受容体」はFcε受容体とも呼ばれ、IgEのFc部位に結合する。その受容体には2つのタイプが存在する。IgE Fcに高い親和性を有する受容体は、Fcε受容体I (FcεRI)と呼ばれる。IgE Fcに低い親和性を有する受容体は、Fcε受容体II (FcεRII)と呼ばれる。FcεRIはマスト細胞および好塩基球で発現している。FcεRIに結合したIgE抗体が多価抗原によりクロスリンクした場合、マスト細胞または好塩基球で脱顆粒が起こり、ヒスタミンを含む様々な化学伝達物質を放出する。この放出は、急なアレルギー反応へとつながる。
【0045】
FcεRIは、1つのα鎖と、1つのβ鎖と、ジスルフィド結合により連結した2つのγ鎖で構成される膜タンパク質である。これらの鎖の中で、IgEが結合する部分がα鎖(FcεRIα)であり、FcεRIαは約60 kDaのサイズを有し、細胞膜内側に存在する疎水性ドメインと細胞膜外側に存在する親水性ドメインから構成される。特に、IgEはα鎖の細胞外ドメインに結合する。
【0046】
具体的には、IgE Fc受容体のアルファサブユニットはNP_001992.1に定めるアミノ酸配列を含みうる。加えて、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα ECD)は、配列番号1のアミノ酸配列を有しうる。本明細書において、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインは、断片またはバリアントがIgEに結合できるかぎり、IgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインの断片またはバリアントであってもよい。
【0047】
バリアントは、FcεRIのα鎖の機能を変化させない手法であるかぎり、野生型FcεRIα ECD (細胞外ドメイン)の中の1以上のアミノ酸を置換、欠損、または付加する方法で調製しうる。このような様々なタンパク質またはペプチドは配列番号1のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上、同一でありうる。加えて、配列番号1のFcεRIα ECDは、配列番号5の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0048】
加えて、本明細書で使用する「改変Fc領域」なる用語は、抗体のFc部位の一部が改変された領域を意味する。ここで、「Fc領域」なる用語は、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)と重鎖定常領域3(CH3)を含み、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、および軽鎖定常領域1(CH1)を含まないタンパク質を意味する。特に、改変Fc領域は、Fc領域のいくつかのアミノ酸置換により、または異なるタイプのFc領域の組み合わせにより得られる領域を意味する。具体的には、改変Fc領域は、配列番号2のアミノ酸配列を有しうる。加えて、配列番号2の改変Fc領域は、配列番号6の配列を有するポリヌクレオチドによってコードされてもよい。
【0049】
加えて、本発明の「改変Fc領域」は、天然型における糖鎖、天然型に対して増加した糖鎖、天然型に対して減少した糖鎖を持つ形態、または糖鎖が除去された形態でもよい。免疫グロブリンFc糖鎖は、化学的方法、酵素学的方法、および微生物を使用した遺伝子工学的方法などの従来方法により改変しうる。
【0050】
ここで、本発明の「改変Fc領域」は、FcγRまたはC1qの結合サイトを有さないことにより、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能および補体依存性細胞傷害(CDC)機能を欠いている領域であってもよい。加えて、改変Fc領域およびFcεRIα ECDは、IgD抗体のヒンジを介して連結されうる。IgD抗体のヒンジは64個のアミノ酸配列で構成され、20から60個の連続したアミノ酸、25から50個の連続したアミノ酸、または30から40個のアミノ酸を選択的に含みうる。ある実施形態では、IgD抗体のヒンジは以下に示すように30または49個のアミノ酸で構成されうる。加えて、IgD抗体のヒンジは、ヒンジ領域を改変することにより得られるヒンジバリアントであってもよく、ヒンジ領域は少なくとも1個のシステインを含みうる。ここで、そのヒンジバリアントは、タンパク質産生工程の間の切断型生成を最小化するためにIgD抗体のヒンジ配列をいくらか改変することにより得られうる。
【0051】
ある実施形態では、ヒンジは以下の配列: Arg Asn Thr Gly Arg Gly Gly Glu Glu Lys Lys Xaa1 Xaa2 Lys Glu Lys Glu Glu Gln Glu Glu Arg Glu Thr Lys Thr Pro Glu Cys Pro (配列番号17) を含んでよく、ここでXaa1はLysまたはGlyであってよく、Xaa2はGlu、Gly、またはSerであってよい。具体的には、ヒンジは配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列を有してもよく、それによりタンパク質産生工程の間の切断型生成を最小化する。
【0052】
ある実施形態では、ヒンジは以下の配列: Ala Gln Pro Gln Ala Glu Gly Ser Leu Ala Lys Ala Thr Thr Ala Pro Ala Thr Thr Arg Asn Thr Gly Arg Gly Gly Glu Glu Lys Lys Xaa3 Xaa4 Lys Glu Lys Glu Glu Gln Glu Glu Arg Glu Thr Lys Thr Pro Glu Cys Pro (配列番号18) を含んでよく、ここでXaa3はLysまたはGlyであってよく、Xaa4はGlu、Gly、またはSerであってよい。具体的には、ヒンジは配列番号4のアミノ酸配列を有してもよく、それによりタンパク質産生工程の間の切断型生成を最小化する。
【0053】
特に、配列番号4の配列を有するヒンジの少なくとも1つのThrは、グリコシル化されていてもよい。具体的には、配列番号18のアミノ酸の13th、14th、18th、および19thのThrがグリコシル化されうる。好ましくは、4個すべてのアミノ酸がグリコシル化されうる。ここで、そのグリコシル化はO-グリコシル化であってもよい。
【0054】
加えて、上記で述べたように、本発明が提供する融合タンパク質二量体は2つの単量体が互いに結合している形態であってもよく、各単量体は、IgE Fc受容体と改変Fc領域のアルファサブユニットの細胞外ドメインの結合により得られる。融合タンパク質二量体は同じ2つの単量体がヒンジ部位に位置するシステインにより互いに結合する形態であってもよい。加えて、融合タンパク質二量体は2つの異なる単量体が互いに結合する形態であってもよい。例えば、2つの単量体が互いに異なる場合、そのポリペプチド二量体は、1つの単量体がIgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインを含み、もう一方がIgE Fc受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメインの断片を含む形態であってもよい。ここで、単量体のある実施形態は、配列番号20、配列番号21、または配列番号22のアミノ酸配列を有していてもよい。
【0055】
加えて、本発明が提供する融合タンパク質二量体は、抗IgE抗体であるオマリズマブよりも10から100倍、20から90倍、20から70倍、30から70倍、または40から70倍高いIgEへの親和性を示し、好ましくはオマリズマブよりも70倍高いIgEへの結合親和性を示しうる。
【0056】
融合タンパク質二量体に最適化した製剤の治療上の使用
本発明の別の態様では、アレルギー疾患の予防または処置のための融合タンパク質二量体を含む水性医薬製剤の使用を提供する。
【0057】
本明細書では、「アレルギー疾患」なる用語は、マスト細胞の脱顆粒などのマスト細胞の活性化により媒介されるアレルギー反応により引き起こされる病的症状のことを意味する。このようなアレルギー疾患は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アナフィラキシー、蕁麻疹、そう痒、昆虫アレルギー、特発性の慢性蕁麻疹(chronic idiopathic urticaria)、慢性特発性蕁麻疹(chronic spontaneous urticaria)、薬アレルギーなどを含む。特に、アレルギー疾患はIgE媒介性でありうる。
【0058】
本発明の水性医薬製剤は、アレルギー疾患処置に有効な投与レジメンと用量に従い、対象に投与されうる。本発明の製剤中の融合タンパク質二量体は、有効成分が抗アレルギー活性を示すことができる限り、任意の量(有効量)で含まれうる。有効成分の典型的な有効量は、組成物の全重量に基づき、0.001重量%から20.0重量%の範囲内で決定される。ここで、「有効量」は抗アレルギー効果を誘導することが可能な量を意味する。このような有効量は、当業者の一般技術の範囲内で実験的に決定されうる。
【0059】
本製剤の好ましい一日投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢、疾患重度、または投与経路に依って、0.01 μg/kgから10 g/kg、好ましくは0.01 mg/kgから1 g/kgの範囲である。投与は一日一回または数回なされうる。このような投与量は本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。
【0060】
他方で、本発明は、融合タンパク質二量体を含む水性医薬製剤を対象に投与することを含む、アレルギー疾患を処置または予防するための方法を提供する。
【0061】
対象は哺乳類、好ましくはヒトでありうる。この場合、投与は非経口経路で実施されうる。この場合、非経口投与は皮下投与、静脈内投与、粘膜投与、および筋肉内投与などにより実施されうる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の実施形態
以降、以下の実施例に関してより詳細に本発明を記載する。しかし、以下の実施例は単に本発明を説明しようとするものであって、本発明の範囲をそのことで制限するものではない。
【0063】
調製例1.FcεRIα ECDおよび改変Fc領域を含む融合タンパク質二量体GI-301の調製
IgE FC受容体のアルファサブユニットの細胞外ドメイン(FcεRIα-ECD)のC末端改変ポリペプチドを、米国特許第7,867,491号で開示される方法に従い調製した。
【0064】
最初に、配列番号1のアミノ酸配列を有するFcεRIのα鎖の細胞外ドメインと配列番号2の改変免疫グロブリンFcが、ぞれぞれ配列番号19のヒンジ、配列番号3のヒンジ、および配列番号4のヒンジを介して連結された、タンパク質(FcεRIαECD-Fc1)、タンパク質(FcεRIαECD-Fc2)、およびタンパク質(FcεR1αECD-Fc3)を発現するために、各タンパク質をコードする遺伝子を連結することにより得たカセットをベクターにクローニングし、FcεRIα ECD-Fcタンパク質発現ベクターを構築した。そして、各発現ベクターをCHO細胞にトランスフェクションした。
【0065】
ここで、細胞株へ形質導入する際に、α-2,6-シアル酸転移酵素遺伝子をベクター内にクローニングすることにより得られた発現ベクターを同時にトランスフェクションし、シアル酸を付加したFcεRIα ECD-Fc2STタンパク質とFcεRIα ECD-Fc3STタンパク質を発現可能な細胞株を別に準備した。その細胞株から産生された融合タンパク質二量体を「GI-301」と名付けた。
【0066】
実施例1.高濃度GI-301の生産のためのバッファとpHの条件の最適化
GI-301基質を約100 mg/mL含む皮下注射用の水性製剤を開発するために実験を行った。製剤は2℃から8℃の保管で安定であるべきで、製剤の粘度は注射をするに十分低くあるべきである。最初にバッファとpHの条件を最適化した。
【0067】
適切な製剤バッファを決定するために、様々なpH、バッファ成分、イオン強度、および安定剤の合計25種類の様々なバッファを実験計画法(DOE)により選択し、前スクリーニング(ステップ1とステップ2)および最終スクリーニング(ステップ3)を実施した。
i) 前スクリーニング(ステップ1とステップ2)
- 動的光散乱をサンプルのコロイド安定性および熱力学的安定性を確認するため、DLSプレートリーダーで測定した。
- サンプルを各条件の製剤バッファで透析した。
- コロイド安定性を、各製剤バッファ中における各濃度のサンプルの流体力学的半径を測定し、タンパク質-タンパク質相互作用を確認することにより決定した。これらの結果を、操作中や保管中のタンパク質凝集のリスクが低い製剤候補を予測するために使用した。
- 変性温度(熱力学的安定性)を、各製剤バッファ中における各温度のサンプルの流体力学的半径を測定することで決定した。これらの結果を、操作中や保管中のタンパク質凝集のリスクが低い製剤候補を予測するために使用した。タンパク質ドメインが変性し始めると、そのタンパク質の流体力学的半径は有意に増加した。アンフォールディングの開始温度は、タンパク質の二次構造安定性の指標とみなすことができる。
ii) 最終スクリーニング(ステップ3)
- コロイド安定性(分子間相互作用、A2)を、CG-MALS(組成勾配多角度光散乱)で測定した。
- 熱力学的安定を、ナノDSC(ナノ示差走査熱量測定)で測定した。
- タンパク質の凝集状態を、SE-HPLCで確認した。
- 相対力価を、ELISAで測定した。
- 上記の結果に従い、4個の最も好適な製剤を選択した。
【0068】
具体的には、表1の最初の14個のサンプル中で、pH、バッファ成分、およびイオン強度に関するGI-301の一般的物理特性を評価した。サンプルは各製剤バッファでGI-301を透析して準備した。
【0069】
pHを皮下注射にとって許容可能なpH範囲である6.0から7.4に調整した。各pH値に対して、好適なバッファ成分を十分な緩衝能力を達成できるよう選択した。バッファ成分を医薬的に許容可能な添加物から選択した。製剤のイオン強度を調整するために塩化ナトリウムを添加した(最大イオン強度は等張に設定)。最初の前スクリーニングの結果を以下の表1にまとめる。
【表1】
【0070】
一般的に、GI-301のコロイド安定性は高イオン強度で低く、使用するバッファ系および製剤のpHとは独立している。低イオン強度で、バッファ成分はGI-301のコロイド安定性に最も大きい影響を示した。pHの影響は大きくなかった。最も良好なコロイド安定性は、His/HClバッファ系で観察され、続いてTris/HCl、リン酸ナトリウム、そしてクエン酸ナトリウムであった。一般的に、より酸性である製剤のpH値は、あるバッファ群の中では、低いコロイド安定性につながる。良好なコロイド安定性は、サンプル#8(10 mM His/HCl、pH 6.7)、サンプル#10(10 mM His/HCl、pH 6.0)、およびサンプル#4(10 mM Tris/HCl、pH 7.4)の製剤で観察された。
【0071】
GI-301の熱力学的安定性は、サンプル#9と#10以外、すべての製剤サンプルで同様であった。GI-301は、一般的に使用される薬保管温度にて、高い熱力学的安定性を示した。
【0072】
透析サンプルの実際のpH値は、製剤サンプル#8以外望ましいpH値に合い、わずかなドナン効果が観察された。
【0073】
これらの結果を考慮し、pH 6.7のHis/HClとpH 7.4のTris/HClを、GI-301に対する最も適切なバッファとして選択した。液体および/または凍結乾燥にとって好適な安定剤と非イオン性等張剤を、サンプル#15から#20で試験した。試験で使用する添加物はトレハロース(凍結乾燥で使用される凍結保護物質)、マンニトール(凍結乾燥で使用される充填剤および非イオン性等張剤)、およびプロリン(液体製剤で使用されるアミノ酸安定剤、非イオン性)であった。添加物に対する2ステップのスクリーニング結果を以下の表2にまとめる。
【0074】
【表2】
His/HClとTris/HClの両方のバッファ系で、マンニトールおよびプロリンの添加によりコロイド安定性の増加が観察された。トレハロースの添加で、わずかなコロイド安定性の減少が見られた。上記添加物は、GI-301の熱力学的安定性にも実際のpHにも注目すべき影響を示さなかった。
【0075】
最終スクリーニング実験では、液体および凍結乾燥において、最も有望な製剤サンプルを、CG-MALS (A2)、ナノDSC (T開始)、SE-HPLC (相対単量体含量)およびELISA(相対力価)を用いて調べた。最終スクリーニングの結果を以下の表3にまとめる。
【0076】
【表3】
コロイド安定性とT開始についての5サンプルの相対順位はDLSで得られた前の結果と同様であった。CG-MALSの結果は、すべての製剤サンプルにおいて、強い反発的なタンパク質-タンパク質相互作用を示した。熱によるアンフォールディングのT開始は、DLS測定と比べて、ナノDSC測定において低かった。DLSは、熱によるアンフォールディングによる凝集の結果起きるタンパク質の水力学的半径の増加を測定している。対照的にナノDSCは、折りたたみタンパク質から変性タンパク質への熱力学的転移を測定し、そしてT開始について低い値を示した。ELISAにより測定した相対力価はすべての製剤サンプルにおいてほとんど100%だった。
【0077】
上記結果に基づき、以下の表4に記載する項目を考慮する「濃度負荷試験」を実施した。
【表4】
【0078】
実施例2.高濃度GI-301の可能性試験
実施例1で試験した25サンプルの中で、4個の最も適切なサンプルを、濃度負荷試験用に選択した。実施例1の結果に基づき選択した4個の候補製剤サンプルを、以下の表5にまとめた。
【0079】
【表5】
上記4個の製剤候補を以下のように試験した。
- 目標濃度である約100 mg/mLを各製剤サンプルで達成できるか確認した(限外ろ過とプロセス関連時間間隔を使用)。
- 濃縮および混合したサンプルのpH値をドナン効果によるpHシフトをモニタリングして測定した。
- サンプルを0.22 μmメンブレンフィルターを使用してろ過し、滅菌プランジャーチップを使用した多連ピペットで、2Rバイアルへと無菌的に充填した(100 mg/mLで1.2 mLの目標充填量)。
- 4℃および35℃で72時間保管することにより、すべての高濃度サンプルにおける負荷試験を実施した。
- 72時間後、サンプルを濁度および沈殿について外観的に分析した。
- 粘度と通針性: 各製剤サンプルの通針性を、押し出し力を測定することにより評価した。シリンジ内容物を、移動力試験装置を用いて、所定の通過速度で付属の針を通して分注した。サンプルを以下の項目について分析した: 外観、UV 280による濃度、pH、キャピラリー粘度計を用いた粘度、比濁分析測定による濁度、浸透圧、ELISAによる相対力価、およびSE-HPLCによる凝集状態。
【0080】
結果として、上記表5の4個の製剤サンプルを100 mg/mLの濃度に濃縮することに成功できた。バイアル内の高粘性(100 mg/mL)溶液は35℃、72時間の保管後、沈殿または認識できる濁度を示さなかった。
【0081】
通針性試験により、すべての100 mg/mLサンプルについて、30Gのカニューレの使用は、20Nを超える押し出し力の制限につながることがわかった。27Gカニューレを使用した場合、押し出し力は許容可能であった。50 mg/mLに希釈した場合、30Gカニューレは許容可能であった。
【0082】
濃縮の結果、pHは約0.4から0.8減少した(ドナン効果)。ドナン効果を補うために、pH値を高濃度L-ヒスチジンおよびTRIS基質を用いて、元の値に調整した。
【0083】
最終タンパク質濃度は約65 mg/mLであった。1 mLのサンプルを充填した1 mLシリンジを、引張機を通して押し出し、せん断応力の働いた物質(シリンジから押し出された内容物)を分析した。
【0084】
結果を以下の表6に示す。
【表6】
65 mg/mL以下の濃度でタンパク質を使用した場合、30Gカニューレでも4サンプルすべてで通針性が確認された。
【0085】
GI-301タンパク質は、4製剤サンプルすべてで、100 mg/mL以下の濃度において、短期間の保管でとても安定であった。
【0086】
長期間安定性は、短期間安定性から予測できず、加速安定性試験を追加で実施した。
【0087】
4個の製剤候補は、上記表6で示したような同様の結果を示した。
【0088】
実施例3.加速安定性試験(強制的な分解試験I)
実施例2では、タンパク質は、4個の製剤バッファにおいて、高濃度に濃縮でき、通針性も検証した。4個のサンプルの分析結果として、注目すべき差異がないことが確認できた。したがって、強制的な分解試験を、2Rバイアルを用いて、実施例2(表5を参照)の4個のサンプルで追加実施した。
【0089】
目標タンパク質濃度50 mg/mLの4個の製剤候補を調製し、以下のステップを実施した:
- サンプルごとに10個の2Rバイアルに無菌的に充填
- 強制的な温度ストレスと撹拌: 35℃、200 rpmで2週間または5日間
- 光への暴露: 750 W/m2の条件下で7.5時間
- サンプルを以下の項目について分析した: 外観、UV 280による濃度、pH、比濁分析機による濁度、浸透圧、ELISAによる相対力価、およびSE-HPLCによる凝集状態
【0090】
4個の製剤サンプルを、十分なpHシフトの補正をして、約50 mg/mLの濃度に濃縮することに成功した。その後、加速ストレス安定性試験を、2Rバイアルを用いて実施した。
【0091】
最もよい(√)と最も悪い(X)の結果を以下の表7に示す。
【0092】
【表7】
結果によると、サンプル#3(プロリン、ヒスチジン/HCl、pH6.7)が次の開発ステップにとって、最も好適なバッファであった。加えて、上記サンプルはクロスフローろ過後の150 mg/mL濃度で実施のために使用された。
【0093】
一方で、SE-HPLCの結果として、すべての製剤サンプルは有意なネガティブな効果はなく、3回凍結/解凍することができた。
【0094】
実施例4.クロスフローろ過後の高濃度の実行可能性分析
実施例3の結果に基づき、250 mMプロリン、10 mMヒスチジン/HCl、pH 6.7をクロスフローろ過後の高濃度(150 mg/mL)実行可能性分析の製剤として選択した。その目的は濃縮されたタンパク質溶液(150 mg/mL)を得ることである。
【0095】
実施例4.1.クロスフローろ過とpH調整
第1ステップでは、7.5 mg/mLの基質1,400 gを約200 mLの体積に濃縮した。濃縮は1.0 barの膜間圧力差(TMP)で実施した。
【0096】
このステップの後、バッファ交換(透析ろ過)を等容性様式(isovolumetric manner)で開始した。
【0097】
透過ドレインをターゲットバッファに置換し、クロスフロー装置の撹拌容器に供給した。ターゲットバッファの全供給量は950 gだった。元のDSバッファの濃度は、透析ろ過ステップの最後で、1%以下であった。
【0098】
そして、第2の濃縮ステップを約110 gの体積に到達するまで実行した。6.70のpH目標は、150 mM ヒスチジン/250 mMプロリンバッファで調整した。その後、濃縮ステップを継続した。
【0099】
透析体積が減少し、クロスフローろ過装置がピーク圧アラームを鳴らした時、最大濃度に到達したことを確認した。pHを細かく調整し濃縮物を回収した。得られた溶液を1 μmフィルタで前ろ過し、無菌条件下で0.2 μmフィルタでろ過し、さらなる工程まで2℃から8℃で保管した。
【0100】
実施例4.2.外観検査
透析ろ過と濃縮の後、溶液はわずかに黄色がかり、濁度を示した。
【0101】
1.0 μmと0.2 μmのフィルタでろ過して得られた溶液は、透明でわずかに黄色がかっていた。
【0102】
実施例4.3.UV 280
得られた溶液の濃度は、ろ過後106.3 mg/mL±2.6 mg/mLであった(n=3)。
【0103】
実施例4.4.通針性
表8は測定時の最大押し出し力を示している。27Gカニューレは約100 mg/mLの濃度のGI-301にとって好適であった。30Gカニューレは約100 mg/mLの濃度で、かなり高い押し出し力を示した。上記実験のそれぞれは2回繰り返した(n=2)。
【0104】
【表8】
【0105】
GI-301のクロスフロー濃縮は実現可能と確認した。目標濃度(150 mg/mL)は、高濃度での溶液の高粘度により達成できなかった。透析ろ過後の濃度は約106 mg/mLであった。通針性は、27Gカニューレで約11Nの適度な押し出し力で実証した。
【0106】
実施例5.加速安定性試験(強制分解試験II)
実施例4では、バッファ組成(250 mMプロリン、ヒスチジン/HCl、pH 6.7)を、クロスフローろ過を経て、最大濃度である約106 mg/mLに濃縮した。したがって、強制分解試験IIは、100 mg/mLのGI-301の目標濃度で実施した。界面活性剤および/または抗酸化物質メチオニンを、これら添加物の利点を確認するため、実施例2で得たサンプル#3に添加した(表9)。2Rバイアルに対応する溶液1.5 mLを充填し、サンプルを温度/機械的ストレスと光ストレスに曝した後に分析した。
【0107】
【表9】
界面活性剤とメチオニンを添加した強制分解試験の製剤サンプルは以下のとおりである。
#1: 添加物なしの製剤(PS80なし、メチオニンなし)
#2: メチオニン(20 mg/mL)を含む製剤
#3: Tween 80 (0.1 w/v%)を含む製剤
#4: Tween 80 (0.1 w/v%)とメチオニン(20 mg/mL)を含む製剤
#5: ポロキサマー188 (0.1 w/v%)とメチオニン(20 mg/mL)を含む製剤
#6: Tween 20 (0.1 w/v%)とメチオニン(20 mg/mL)を含む製剤
【0108】
実施例5.1.外観検査
外観検査の結果として、溶液は光ストレスによってより黄色がかった。35℃、200 rpmで14日保管した後、サンプル#1、#3および#4で濁度は増加し、サンプル#6でわずかな濁度を示し、サンプル#2および#5では透明な溶液の状態を示した(図1から3)。表10はそれぞれのサンプルの外観検査の結果を示している。
【0109】
【表10】
【0110】
実施例5.2.UV 280
表11は強制分解試験後のサンプル濃度を示している。ストレス暴露による注目すべき差異はなかった。
【0111】
【表11】
【0112】
実施例5.3.pH測定
表12は強制分解試験後のサンプルのpHを示している。pHに注目すべき変化はなかった。
【0113】
【表12】
【0114】
実施例5.4.サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)
SE-HPLCは、凝集した、断片化したタンパク質の検出のための標準的方法である。SEC測定の結果を表13と図5から7に示す。
【0115】
【表13】
【0116】
表13に示すように、35℃、200 rpmで14日間のストレス状態下での回収率は、外観検査と同等であった。サンプル#2、#5、および#6は高い回収率を示した(図4)。
【0117】
加えて、図5に示すように、メインピークを測定した結果として、良好な結果が、温度/機械的ストレスを与えられたサンプル#2、#4、および#5で得られ、サンプル#1と#6は良好でない結果を示した。一方、図6に示すようにタンパク質凝集がサンプル#6で示された。光ストレス下で、サンプル#2は最も少ない量のタンパク質凝集を示した。図7に示すように、サンプル#2はタンパク質断片に関して、最も良好な結果を示した。
【0118】
実施例5.5.ELISAベースのGI-301の力価分析
GI-301の相対力価はELISAに基づく力価分析の結果により決定した。この分析の原理はヒトIgEに結合可能なGI-301分子を定量することである。
【0119】
ELISAにより分析した相対力価を表14に示す。全サンプルが高い結合親和性を維持していた。
【0120】
【表14】
【0121】
実施例5.6.比濁分析測定による濁度
表15は濁度測定の結果を示している。外観と濁度測定の間にはっきりとした関係性はなかった(35℃で5日間保管した後、サンプル#3と#4を比較)。この不一致の潜在的な原因は、濃縮タンパク質溶液中のタンパク光(opalescence)が増加し、濁度のベースが増加したからかもしれない。結果として、視認できる濁度が、タンパク質の凝集によって、基本的な濁度よりも高くなりうる。そこで、サンプルを35℃で14日間保管し、DLSで分析した。
【0122】
【表15】
【0123】
実施例5.7.浸透圧
表16は浸透圧結果を示している。予想されるようにメチオニンは浸透圧を増加させる。
【0124】
【表16】
【0125】
実施例5.8.測定結果の分析
以下の表17に結果をまとめた。
【0126】
【表17】
結果に基づき、最も好適な製剤サンプルは以下である:
サンプル#2: His/プロリン pH6.7; 20 mg/mL メチオニン
サンプル#5: His/プロリン pH 6.7; 20 mg/mL メチオニン; 0.1 w/v% ポロキサマー188
試験結果として、サンプル#2とサンプル#5が上記表17の中で好適な結果であった。
【0127】
実施例6.シリンジを用いた強制分解試験
2つの製剤を、2Rバイアルを使用した実施例5により選択した: 250 mMプロリン、ヒスチジン/HCl、pH 6.7、0.1 w/v%ポロキサマー188 有/無、20 mg/mLメチオニン(抗酸化物質)。上記結果に基づき、抗酸化物質と界面活性剤をサンプルに添加した(表18)。サンプルの目標濃度は100 mg/mLであった。2.25 mLシリンジに1.75 mLの対応する溶液を充填し、温度/機械的ストレスに14日間曝した後、サンプルを分析した。
【0128】
強制分解試験のサンプルは以下のとおりである。
#1: メチオニンを含む製剤(20 mg/mL)
#2: ポロキサマー188(0.1 w/v%)とメチオニン(20 mg/mL)を含む製剤
【0129】
【表18】
【0130】
実施例6.1.外観検査
表19に外観検査の結果を示す。図8に示すように、35℃で14日間保管後、注目すべき差異はなかった。
【表19】
【0131】
実施例6.2.押し出し力測定
表20は、引張機の結果を示している。27Gカニューレを使用した場合、20Nを超える押し出し力が両サンプルで発生した。それゆえ、内径の大きい、または針サイズの大きい(例えば、25G)シリンジを、100 mg/mLの濃度のタンパク質に耐えるために選択すべきである。
【0132】
【表20】
【0133】
実施例6.3.UV 280
表21は、強制分解試験後のサンプル濃度を示している。ストレス暴露後に注目すべき差異はなかった。
【表21】
【0134】
実施例6.4.pH測定
表22は、強制分解試験後のサンプルのpHを示している。pHに注目すべき変化はなかった。
【0135】
【表22】
【0136】
実施例6.5.サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)
SEC測定の結果を表23と図10に示す。
【0137】
【表23】
【0138】
35℃と200 rpmで14日間保管後、2つのサンプルの差異はわずかであった。しかし、サンプル#1(ポロキサマー無し)と比べて、サンプル#2(ポロキサマー有り)は、メインピーク面積のより良い結果を示した。バイアルの結果と比べて、断片面積は約4%増加した。このことはメインピーク結果と一致した(図10)。
【0139】
実施例6.6.浸透圧
表24は浸透圧結果を示している。浸透圧はストレス暴露後も同レベルに維持された。
【0140】
【表24】
【0141】
実施例6.7.肉眼で見えない粒子
肉眼で見えない粒子の量はフローイメージング顕微鏡を用いて評価した。水を充填したストレス後のシリンジは粒子負荷が低かった。このことは、シリコン処理シリンジが粒子負荷に及ぼす影響は限定的であることを示している。
【0142】
サンプル#1とサンプル#2は同等の粒子負荷を示した。観察された粒子のほとんどはシリコン粒子であり、タンパク質凝集体/沈殿を示す粒子は観察されなかった。
【0143】
実施例6.8.測定結果の分析
表25に結果をまとめている。
【0144】
【表25】
【0145】
両サンプルはほとんど同様の結果を示した。唯一の差異は、サンプル#2がSEC分析で、わずかにより良い結果を示したことである(メインピーク面積比較)。
【0146】
上記結果によれば、100 mg/mLの濃度のGI-301、抗酸化物質として20 mg/mLメチオニン、および界面活性剤として0.1 w/v%ポロキサマー188を含む、250 mM プロリン、10 mM ヒスチジン/HCl、pH 6.7のバッファ製剤が、GI-301にとって最も好適な製剤であった。
【0147】
しかし、上記条件の場合、最終濃度100 mg/mLを満たすための限外ろ過プロセスで起こるドナン効果によって、pHは目標pH6.7より低下した。pHの低下を補うため、限外ろ過後の高濃度ヒスチジン添加によるpH調整プロセスを追加した。最終的に、75 mg/mLのGI-301、20 mg/mLメチオニン、250 mMプロリン、55 mM ヒスチジン/HCl、0.1 w/v% ポロキサマー188、pH 6.5を、GI-301の製剤条件として設定した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】