(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ピリジン窒素酸化物の結晶形態およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 213/89 20060101AFI20240227BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07D213/89 CSP
A61P11/14
A61P25/04
A61P29/02
A61P43/00 111
A61K31/4406
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555355
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2022080430
(87)【国際公開番号】W WO2022188872
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】202110265997.3
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210195905.3
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155852
【氏名又は名称】シャンハイ ジェミンケア ファーマシューティカル カンパニー,リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】521155863
【氏名又は名称】チアンシー ジェミンケア グループ カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ツァォ、チァン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チィンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チァン、ホンミン
(72)【発明者】
【氏名】パン、ヂィェンピアォ
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
【Fターム(参考)】
4C055AA17
4C055BA01
4C055CA02
4C055CA28
4C055CB08
4C055DA01
4C055GA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZC41
(57)【要約】
ピリジン窒素酸化物の結晶形態およびその使用であって、具体的には、式(I)に示す化合物の結晶形態、医薬組成物およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示す化合物の結晶形態Aであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:16.63±0.2°、18.04±0.2°、20.59±0.2°、23.38±0.2°、23.96±0.2°、29.19±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態A。
【化1】
【請求項2】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.46±0.2°、13.11±0.2°、16.63±0.2°、18.04±0.2°、20.59±0.2°、23.38±0.2°、23.96±0.2°、27.66±0.2°、29.19±0.2°、29.82±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶形態A。
【請求項3】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項2に記載の結晶形態A。
【請求項4】
水和物であり、前記水和物の水分含有量が3.0wt%~5.0wt%であることを特徴とする、請求項3に記載の結晶形態A。
【請求項5】
式(I)に示す化合物の結晶形態Bであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.28±0.2°、14.47±0.2°、18.86±0.2°、23.09±0.2°、25.50±0.2°、27.58±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態B。
【請求項6】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.28±0.2°、14.47±0.2°、16.81±0.2°、18.86±0.2°、19.78±0.2°、23.09±0.2°、25.09±0.2°、25.50±0.2°、27.58±0.2°、28.19±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項5に記載の結晶形態B。
【請求項7】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図4に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項6に記載の結晶形態B。
【請求項8】
式(I)に示す化合物の結晶形態Cであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:8.22±0.2°、17.33±0.2°、19.55±0.2°、20.27±0.2°、21.99±0.2°、24.90±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態C。
【請求項9】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:8.22±0.2°、13.80±0.2°、17.33±0.2°、19.55±0.2°、20.27±0.2°、21.99±0.2°、23.00±0.2°、23.95±0.2°、24.90±0.2°、26.10±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項8に記載の結晶形態C。
【請求項10】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図7に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項9に記載の結晶形態C。
【請求項11】
1,4-ジオキサン溶媒和物であり、1,4-ジオキサンの含有量が3wt%~17wt%であることを特徴とする、請求項10に記載の結晶形態C。
【請求項12】
式(I)に示す化合物の結晶形態Dであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.63±0.2°、16.81±0.2°、20.40±0.2°、21.50±0.2°、22.23±0.2°、26.08±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態D。
【請求項13】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.63±0.2°、11.02±0.2°、16.81±0.2°、19.58±0.2°、20.40±0.2°、21.50±0.2°、22.23±0.2°、24.17±0.2°、26.08±0.2°、28.44±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項12に記載の結晶形態D。
【請求項14】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図10に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項13に記載の結晶形態D。
【請求項15】
メチルエチルケトン溶媒和物であり、メチルエチルケトンの含有量が4wt%~14wt%であることを特徴とする、請求項14に記載の結晶形態D。
【請求項16】
式(I)に示す化合物の結晶形態Eであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.75±0.2°、13.71±0.2°、18.29±0.2°、20.18±0.2°、22.92±0.2°、23.96±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態E。
【請求項17】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.75±0.2°、13.71±0.2°、16.65±0.2°、17.17±0.2°、18.29±0.2°、20.18±0.2°、22.92±0.2°、23.96±0.2°、24.76±0.2°、29.18±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項16に記載の結晶形態E。
【請求項18】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図13に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項17に記載の結晶形態E。
【請求項19】
テトラヒドロフラン溶媒和物であり、テトラヒドロフランの含有量が2wt%~14wt%であることを特徴とする、請求項18に記載の結晶形態E。
【請求項20】
式(I)に示す化合物の結晶形態Fであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:17.24±0.2°、20.28±0.2°、23.03±0.2°、23.96±0.2°、24.89±0.2°、28.96±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態F。
【請求項21】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.78±0.2°、14.31±0.2°、17.24±0.2°、20.28±0.2°、22.06±0.2°、23.03±0.2°、23.96±0.2°、24.89±0.2°、26.27±0.2°、28.96±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項20に記載の結晶形態F。
【請求項22】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図16に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項21に記載の結晶形態F。
【請求項23】
クロロホルム溶媒和物であり、クロロホルムの含有量が5wt%~21wt%であることを特徴とする、請求項22に記載の結晶形態F。
【請求項24】
式(I)に示す化合物の結晶形態Gであって、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:15.53±0.2°、17.08±0.2°、21.41±0.2°、23.23±0.2°、26.00±0.2°、28.49±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、式(I)に示す化合物の結晶形態G。
【請求項25】
X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:10.54±0.2°、13.02±0.2°、15.53±0.2°、17.08±0.2°、21.41±0.2°、23.23±0.2°、25.10±0.2°、26.00±0.2°、27.17±0.2°、28.49±0.2°において特徴的回折ピークを有することを特徴とする、請求項24に記載の結晶形態G。
【請求項26】
X線粉末回折スペクトルが、実質的に
図19に示すようなX線粉末回折スペクトルを有することを特徴とする、請求項25に記載の結晶形態G。
【請求項27】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態Aまたは請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶形態Bまたは請求項8~11のいずれか1項に記載の結晶形態Cまたは請求項12~15のいずれか1項に記載の結晶形態Dまたは請求項16~19のいずれか1項に記載の結晶形態Eまたは請求項20~23のいずれか1項に記載の結晶形態Fまたは請求項24~26のいずれか1項に記載の結晶形態Gを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項28】
薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、補助剤、ビヒクルまたはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態Aまたは請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶形態Bまたは請求項8~11のいずれか1項に記載の結晶形態Cまたは請求項12~15のいずれか1項に記載の結晶形態Dまたは請求項16~19のいずれか1項に記載の結晶形態Eまたは請求項20~23のいずれか1項に記載の結晶形態Fまたは請求項24~26のいずれか1項に記載の結晶形態Gまたは請求項27または28に記載の医薬組成物の、個体の電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するための医薬の製造における使用。
【請求項30】
前記電位依存性ナトリウムチャネルはNavl.8である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態Aまたは請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶形態Bまたは請求項8~11のいずれか1項に記載の結晶形態Cまたは請求項12~15のいずれか1項に記載の結晶形態Dまたは請求項16~19のいずれか1項に記載の結晶形態Eまたは請求項20~23のいずれか1項に記載の結晶形態Fまたは請求項24~26のいずれか1項に記載の結晶形態Gまたは請求項27または28に記載の医薬組成物の、個体の疼痛、咳を治療および/または予防するか、または、その重篤度を軽減するための医薬の製造における使用。
【請求項32】
前記疼痛は、慢性疼痛、腸痛、神経性疼痛、筋骨格痛、急性疼痛、炎症性疼痛、がん疼痛、原発性疼痛、手術後疼痛、内蔵痛、多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース症候群、失禁および不整脈から選択される、請求項31に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は以下の優先権を主張する。
出願番号:CN202110265997.3、出願日:2021年03月11日;
出願番号:CN202210195905.3、出願日:2022年03月01日。
【0002】
本発明は、式(I)に示す化合物の結晶形態、医薬組成物、およびその電位依存性ナトリウムイオンチャネル(Voltage-gated sodium channels、NaV)阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
疼痛は臨床において最も一般的な症状の1つであり、呼吸、脈拍、血圧および体温に続く第5のバイタルサインであり、患者の生活の質に著しく影響する。統計によれば、2018年のグローバルな鎮痛薬市場は約360億ドルであり、2023年には560億ドルに達する見通しである。そのうち急性中重度については主にアヘン系薬物に依存しており、鎮痛薬の市場シェアの3分の2前後を占め、将来は2.5%の複合年間成長率で安定的に成長すると見られる。一方、神経障害性疼痛(neuropathic pain)と関節炎疼痛を中心とする慢性疼痛患者数が毎年増加しており、市場が18%前後の複合年間成長率を呈することが見込まれ、今後10年間のグローバル疼痛市場の持続的成長を駆動する主な推進力である。
【0004】
神経障害性疼痛は、末梢体性感覚神経系の損傷または疾病によりもたらされる一種の慢性疼痛であり、自発性疼痛や、正常で無害な刺激に対して生じる異痛を含む。神経障害性疼痛を誘発する一般的な病因には、糖尿病、帯状疱疹、脊髄損傷、脳卒中、多発性硬化、がん、HIV感染、腰または頸部の神経根ニューロパチーならびに創傷または術後神経損傷等が含まれる。骨関節炎は退化性関節炎とも呼ばれ、種々の要因により引き起こされる骨関節軟骨の退化であり、関節骨表面の凸凹につながることがあるほか、骨棘が形成される可能性があり、臨床では主に関節の疼痛や関節のこわばりとして現れる。長期間にわたる痛みは、患者の睡眠や仕事、生活能力に影響するだけでなく、抑うつや不安等の感情障害の発病率を高めるおそれもあるため、患者の家庭および社会に重い経済的負担をもたらす。
【0005】
国際疼痛学会の神経障害性疼痛分科会(NeuPSIG)が発表したデータによると、神経障害性疼痛の罹患率は約3.3%~8.2%である。この推計によれば、我が国の国内だけで少なくとも5千万人以上の患者がいることになる。2017年には、米国、日本ならびに欧州連合の5大市場(フランス、ドイツ、イタリア、スペインおよび英国)で神経障害性疼痛患者が計3050万例あった上、毎年増加する傾向にある。神経障害性疼痛は最も治療が困難な疾病の1つであり、現在のところ、大半の治療プランが、十分な効果を依然として果たすことができていない。薬物治療によって速やかに痛みを止めることができた外来患者はわずか14.9%であり、つまり、約85%の疼痛患者は、速やかかつ有効な薬物治療を受けていないため、一部の患者は手術による介入的治療を検討せざるを得ない、との報道もある。現在、臨床の最前線で神経障害性疼痛の治療に用いられている薬物は主に、カルシウムイオンチャネル調節剤(プレガバリン、ガバペンチンなど)、三環系抗うつ薬および5-ヒドロキシトリプタミン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(デュロキセチン、ベンラファキシン等、抗けいれん・抗うつの薬物)である。これらの薬の治療効果には限界がある上、種々の副作用が伴う。デュロキセチンは、神経障害性疼痛治療の最前線で用いられている薬の1つであり、主な副作用には消化管反応、悪心、嗜眠、口渇、多汗、めまい等があり、これらに起因する投与中止率は15%~20%に達する。抗てんかん薬のガバペンチンとプレガバリンは、神経障害性疼痛を治療する主な薬物であるが、めまい、嗜眠、末梢性浮腫、体重増加、虚弱、頭痛、口渇等、多くの副作用を引き起こすおそれがある。近年には、プレガバリンが、ごく少数の患者に、薬物使用に関連する自殺念慮や自傷行為が生じる事態を招くことがあることも判明している。
【0006】
骨関節炎は患者数が膨大である。現在、骨関節炎患者は世界で4億人を超えており、中国の患者数はすでに1億人を上回っていると見られる。骨関節炎の痛みについても、これまでのところ有効な治療方法がない。臨床においては物理療法、薬物療法、手術治療がある。物理療法には温熱療法、水療法、超音波、マッサージ等が含まれるほか、装具は関節の圧力を低減して痛みを緩和するが、効果はいずれも限定的であり、大部分は依然として薬物に頼って治療しなければならない。これらの薬物にはいずれも、さまざまな程度の副作用がある。非ステロイド系抗炎症薬は軽中度の疼痛にのみ適応であり、しかも、消化管副作用や心臓・脳血管関係のリスクがある。アヘン系鎮痛薬は重度の疼痛に用いられるが、顕著な悪心・嘔吐、便秘や薬物依存等の副作用があり、長期間の服用には適さない。従って、新たな標的に狙いを定めた新たな機序と、安全で有効な鎮痛薬を研究開発し、これまで満たされていなかった臨床のニーズを満たすことには、重要な経済的意義と社会的意義がある。
【0007】
近年の研究成果によって、ナトリウムイオンチャネルのサブタイプ1.8(NaV1.8)が痛覚の発生と伝達の面で重要な役割を果たしていることが徐々に明らかになっている。NaV1.8は、一種の電位依存性ナトリウムイオンチャネルであり、感覚ニューロンを含む求心性ニューロン上に主に発現し、細胞へのナトリウムイオンの出入りを制御することによって、侵害性感覚ニューロンの興奮性の維持、活動電位の発生および持続、ならびに痛覚感受性の調節等の面で重要な役割を果たしている。NaV1.8活性化型突然変異患者には、小径線維ニューロパチー(主に痛覚の伝達を担うAδ線維および無髓線維のC線維が損傷を受ける)による一過性疼痛が出現する。慢性炎症や糖尿病等の疾病は、NaV1.8の発現の増加または性質の変化を起こすことにより侵害受容ニューロンを敏感にし、種々の疼痛を引き起こすことがある。そして、NaV1.8ノックアウトマウスは痛覚に対して鈍感である。
【0008】
慢性疼痛におけるNav1.8の地位が定まるに伴い、この標的に基づく薬物研究も日増しに盛んになっている。現在、国際的には、1つの小分子阻害剤が第2相臨床試験の段階にあり、他の複数の小分子阻害剤および抗体で臨床前開発が行われている。国内では、当該標的を対象とする他の新薬の研究開発は行われていない。研究開発の先端を行く米バーテックス(Vertex)社の小分子NaV1.8阻害剤VX-150は、現在までに、骨関節炎、急性疼痛および小径線維ニューロパチーに起因する疼痛の患者において第2相臨床試験をすでに実施している上、3項目の研究すべてで陽性の結果を得ており、NaV1.8の活性を阻害すれば、神経障害性疼痛を含む種々の疼痛を緩和することができると表明している。現在、VX-150は米FDAのブレークスルーセラピーに指定されており、中度~重度の疼痛を治療するために用いられ、NaV1.8は鎮痛について大いにポテンシャルのある標的であることを再び証明している。また、NaV1.8阻害剤の作用機序および第2相臨床試験から、その適応は幅広く、神経障害性疼痛、骨関節炎疼痛ならびに急性損傷疼痛等種々の疼痛を含み、かつ、安全性が相対的に高く、中毒性はなく、非ステロイド系抗炎症薬の消化管副作用および心臓・脳血管関係の副作用もなく、他の鎮痛薬と併用し、治療効果を高め、副作用を抑えることができることが明らかにされている。
【0009】
近年には、ナトリウムイオンチャネルのサブタイプ1.8(NaV1.8)が咳に対して一定のコントロール作用を有しており、NaV1.8阻害剤には、咳を治療するポテンシャルのある薬物としての可能性があることを明らかにした研究もある。
【0010】
出願番号がPCT/CN2020/114700(出願日は2020年09月11日)である出願において、以下の構造のNaV1.8阻害剤を提供している。
【化1】
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:16.63±0.2°、18.04±0.2°、20.59±0.2°、23.38±0.2°、23.96±0.2°、29.19±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Aを提供している。
【化2】
【0012】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態AのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.46±0.2°、13.11±0.2°、16.63±0.2°、18.04±0.2°、20.59±0.2°、23.38±0.2°、23.96±0.2°、27.66±0.2°、29.19±0.2°、29.82±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0013】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態AのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0014】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態AのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表1に示す通りである。
【表1】
【0015】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Aが150℃まで加熱されると3.9%の重量減少があり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0016】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aは、実質的に
図2に示すような熱重量分析を有する。
【0017】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aの示差走査熱量測定分析(DSC)は、101.1℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0018】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aは、実質的に
図3に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0019】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aが水和物であり、前記水和物の水分含有量が2.0wt%~6.0wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0020】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aが水和物であり、前記水和物の水分含有量が3.0wt%~5.0wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0021】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Aが水和物であり、前記水和物の水分含有量が2.1wt%、2.3wt%、2.5wt%、2.8wt%、3.1wt%、3.2wt%、3.5wt%、3.8wt%、4.1wt%、4.2wt%、4.5wt%、4.8wt%、5.1wt%、5.2wt%、5.5wt%、5.8wt%または6.1wt%であり、±0.02%の誤差許容範囲が存在する。
【0022】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.28±0.2°、14.47±0.2°、18.86±0.2°、23.09±0.2°、25.50±0.2°、27.58±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Bを提供している。
【0023】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態BのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:12.28±0.2°、14.47±0.2°、16.81±0.2°、18.86±0.2°、19.78±0.2°、23.09±0.2°、25.09±0.2°、25.50±0.2°、27.58±0.2°、28.19±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0024】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態BのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図4に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0025】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態BのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表2に示す通りである。
【表2】
【0026】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Bについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Bが150℃まで加熱されると1.2%の重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0027】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Bは、実質的に
図5に示すような熱重量分析を有する。
【0028】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Bの示差走査熱量測定分析(DSC)は、148.4℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0029】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Bは、実質的に
図6に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0030】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Bが無水結晶形態である。
【0031】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:8.22±0.2°、17.33±0.2°、19.55±0.2°、20.27±0.2°、21.99±0.2°、24.90±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Cを提供している。
【0032】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態CのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:8.22±0.2°、13.80±0.2°、17.33±0.2°、19.55±0.2°、20.27±0.2°、21.99±0.2°、23.00±0.2°、23.95±0.2°、24.90±0.2°、26.10±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0033】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態CのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図7に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0034】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態CのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表3に示す通りである。
【表3】
【0035】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Cが80℃まで加熱されると1.2%の重量減少があり、80℃から150℃まで加熱されると7.0%の段階的重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0036】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cは、実質的に
図8に示すような熱重量分析を有する。
【0037】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cの示差走査熱量測定分析(DSC)は、106.6℃±3℃と111.3℃±3℃に、重なり合った吸熱ピークを有する。
【0038】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cは、実質的に
図9に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0039】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cが1,4-ジオキサン溶媒和物であり、前記1,4-ジオキサンの含有量が3wt%~17wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0040】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cが1,4-ジオキサン溶媒和物であり、前記1,4-ジオキサンの含有量が6wt%~16wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0041】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Cが1,4-ジオキサン溶媒和物であり、前記1,4-ジオキサンの含有量が3.1wt%、3.3wt%、3.5wt%、3.8wt%、4.1wt%、4.3wt%、4.5wt%、4.8wt%、5.1wt%、5.3wt%、5.5wt%、5.8wt%、6.1wt%、6.3wt%、6.5wt%、6.8wt%、7.1wt%、7.3wt%、7.5wt%、7.8wt%、8.1wt%、8.3wt%、8.5wt%、8.8wt%、9.1wt%、9.3wt%、9.5wt%、9.7wt%、10.1wt%、10.3wt%、10.5wt%、10.8wt%、11.1wt%、11.3wt%、11.5wt%、11.8wt%、12.1wt%、12.3wt%、12.5wt%、12.8wt%、13.1wt%、13.3wt%、13.5wt%、13.8wt%、14.1wt%、14.3wt%、14.5wt%、14.8wt%、15.1wt%、15.3wt%、15.5wt%、15.8wt%、16.1wt%、16.3wt%、16.5wt%、16.8wt%または17.1wt%であり、±0.02%の誤差許容範囲が存在する。
【0042】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.63±0.2°、16.81±0.2°、20.40±0.2°、21.50±0.2°、22.23±0.2°、26.08±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Dを提供している。
【0043】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態DのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.63±0.2°、11.02±0.2°、16.81±0.2°、19.58±0.2°、20.40±0.2°、21.50±0.2°、22.23±0.2°、24.17±0.2°、26.08±0.2°、28.44±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0044】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態DのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図10に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0045】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態DのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表4に示す通りである。
【表4】
【0046】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Dが80℃まで加熱されると0.9%の重量減少があり、80℃から150℃まで加熱されると7.0%の重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0047】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dは、実質的に
図11に示すような熱重量分析を有する。
【0048】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dの示差走査熱量測定分析(DSC)は、97.8℃±3℃と149.2℃±3℃に2つの吸熱ピークを有する。
【0049】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dは、実質的に
図12に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0050】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dがメチルエチルケトン溶媒和物であり、前記メチルエチルケトンの含有量が4wt%~14wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0051】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dがメチルエチルケトン溶媒和物であり、前記メチルエチルケトンの含有量が6wt%~14wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0052】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Dがメチルエチルケトン溶媒和物であり、前記メチルエチルケトンの含有量が4.1wt%、4.3wt%、4.5wt%、4.8wt%、5.1wt%、5.3wt%、5.5wt%、5.8wt%、6.1wt%、6.3wt%、6.5wt%、6.8wt%、7.1wt%、7.3wt%、7.4wt%、7.5wt%、7.8wt%、8.1wt%、8.3wt%、8.5wt%、8.8wt%、9.1wt%、9.3wt%、9.5wt%、9.8wt%、10.1wt%、10.3wt%、10.5wt%、10.7wt%、10.9wt%、11.1wt%、11.3wt%、11.5wt%、11.8wt%、12.1wt%、12.3wt%、12.5wt%、12.8wt%、13.1wt%、13.3wt%、13.5wt%、13.6wt%、13.8wt%または14.1wt%であり、±0.02%の誤差許容範囲が存在する。
【0053】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.75±0.2°、13.71±0.2°、18.29±0.2°、20.18±0.2°、22.92±0.2°、23.96±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Eを提供している。
【0054】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態EのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.75±0.2°、13.71±0.2°、16.65±0.2°、17.17±0.2°、18.29±0.2°、20.18±0.2°、22.92±0.2°、23.96±0.2°、24.76±0.2°、29.18±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0055】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態EのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図13に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0056】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態EのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表5に示す通りである。
【表5】
【0057】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Eが80℃まで加熱されると1.9%の重量減少があり、80℃から150℃まで加熱されると4.9%の重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0058】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eは、実質的に
図14に示すような熱重量分析を有する。
【0059】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eの示差走査熱量測定分析(DSC)は、94.1℃±3℃に、比較的幅広い1つの吸熱ピークを有する。
【0060】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eは、実質的に
図15に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0061】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eがテトラヒドロフラン溶媒和物であり、前記テトラヒドロフランの含有量が2wt%~14wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0062】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Eがテトラヒドロフラン溶媒和物であり、前記テトラヒドロフランの含有量が2.1wt%、2.3wt%、2.5wt%、2.8wt%、3.1wt%、3.3wt%、3.5wt%、3.8wt%、4.1wt%、4.3wt%、4.5wt%、4.8wt%、5.1wt%、5.3wt%、5.5wt%、5.8wt%、6.1wt%、6.3wt%、6.5wt%、6.8wt%、7.1wt%、7.3wt%、7.4wt%、7.5wt%、7.8wt%、8.1wt%、8.3wt%、8.5wt%、8.8wt%、9.1wt%、9.3wt%、9.5wt%、9.8wt%、10.1wt%、10.3wt%、10.5wt%、10.7wt%、10.9wt%、11.1wt%、11.3wt%、11.5wt%、11.8wt%、12.1wt%、12.3wt%、12.5wt%、12.8wt%、13.1wt%、13.3wt%、13.5wt%、13.6wt%、13.8wt%または14.1wt%であり、±0.02%の誤差許容範囲が存在する。本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:17.24±0.2°、20.28±0.2°、23.03±0.2°、23.96±0.2°、24.89±0.2°、28.96±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Fを提供している。
【0063】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態FのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:5.78±0.2°、14.31±0.2°、17.24±0.2°、20.28±0.2°、22.06±0.2°、23.03±0.2°、23.96±0.2°、24.89±0.2°、26.27±0.2°、28.96±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0064】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態FのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図16に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0065】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態FのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表6に示す通りである。
【表6】
【0066】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Fが150℃まで加熱されると11.5%の重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0067】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fは、実質的に
図17に示すような熱重量分析を有する。
【0068】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fの示差走査熱量測定分析(DSC)は、105.2℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0069】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fは、実質的に
図18に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0070】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fはクロロホルム溶媒和物であり、前記クロロホルムの含有量が5wt%~21wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0071】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fはクロロホルム溶媒和物であり、前記クロロホルムの含有量が11wt%~21wt%であり、±0.2%の誤差許容範囲が存在する。
【0072】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Fはクロロホルム溶媒和物であり、前記クロロホルムの含有量が5.1wt%、5.3wt%、5.5wt%、5.8wt%、6.1wt%、6.3wt%、6.5wt%、6.8wt%、7.1wt%、7.3wt%、7.4wt%、7.5wt%、7.8wt%、8.1wt%、8.3wt%、8.5wt%、8.8wt%、9.1wt%、9.3wt%、9.5wt%、9.8wt%、10.1wt%、10.3wt%、10.5wt%、10.7wt%、10.9wt%、11.1wt%、11.3wt%、11.5wt%、11.8wt%、12.1wt%、12.3wt%、12.5wt%、12.8wt%、13.1wt%、13.3wt%、13.5wt%、13.6wt%、13.8wt%、14.1wt%、14.3wt%、14.5wt%、14.8wt%、15.1wt%、15.3wt%、15.5wt%、15.8wt%、16.1wt%、16.3wt%、16.5wt%、16.8wt%、17.1wt%、17.3wt%、17.5wt%、17.8wt%、18.1wt%、18.3wt%、18.5wt%、18.8wt%、19.1wt%、19.3wt%、19.5wt%、19.8wt%、20.1wt%、20.3wt%、20.5wt%、20.6wt%、20.7wt%、20.8wt%または21.1wt%であり、±0.02%の誤差許容範囲が存在する。
【0073】
本発明の1つの態様において、本発明は、X線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:15.53±0.2°、17.08±0.2°、21.41±0.2°、23.23±0.2°、26.00±0.2°、28.49±0.2°において特徴的回折ピークを有する、式(I)に示す化合物の結晶形態Gを提供している。
【0074】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態GのX線粉末回折スペクトルが、以下の2θ角:10.54±0.2°、13.02±0.2°、15.53±0.2°、17.08±0.2°、21.41±0.2°、23.23±0.2°、25.10±0.2°、26.00±0.2°、27.17±0.2°、28.49±0.2°において特徴的回折ピークを有する。
【0075】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態GのX線粉末回折スペクトルが、実質的に
図19に示すようなX線粉末回折スペクトルを有する。
【0076】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態GのX線粉末回折スペクトル解析データは下記表7に示す通りである。
【表7】
【0077】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Gについて熱重量分析(TGA)を行ったとき、結晶形態Gが160℃まで加熱されると2.3%の重量減少があり、±0.1%の誤差許容範囲が存在する。
【0078】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Gは、実質的に
図20に示すような熱重量分析を有する。
【0079】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Gの示差走査熱量測定分析(DSC)は、149.0℃±3℃に吸熱ピークを有する。
【0080】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Gは、実質的に
図21に示すようなDSC示差走査熱量測定曲線を有する。
【0081】
本発明のいくつかの形態において、上記結晶形態Gが無水結晶形態である。
【0082】
本発明のもう1つの態様において、本発明は医薬組成物をさらに開示している。本発明のいくつかの形態において、上記医薬組成物は前述の結晶形態A~Gを含む。
【0083】
本発明のいくつかの形態において、上記医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、補助剤、ビヒクルまたはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0084】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、前述の結晶形態A~Gまたは前述の医薬組成物の、個体の電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するための医薬の製造における使用をさらに開示している。
【0085】
本発明のいくつかの形態において、上記電位依存性ナトリウムチャネルはNavl.8である。
【0086】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、前述の結晶形態A~Gの、個体の疼痛、咳を治療および/または予防するか、または、その重篤度を軽減するための医薬の製造における使用をさらに開示している。
【0087】
本発明のいくつかの形態において、上記疼痛は、慢性疼痛、腸痛、神経性疼痛、筋骨格痛、急性疼痛、炎症性疼痛、がん疼痛、原発性疼痛、手術後疼痛、内蔵痛、多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース症候群、失禁および不整脈から選択される。
【0088】
本発明のいくつかの形態において、上記腸痛は、炎症性腸疾患疼痛、クローン病疼痛および間質性膀胱炎疼痛から選択される。
【0089】
本発明のいくつかの形態において、上記神経性疼痛は、ヘルペス感染後神経痛、糖尿病性神経痛、有痛性HIV関連感覚ニューロパチー、三叉神経痛、口腔内灼熱症候群、切断後疼痛、幻肢痛、有痛性神経腫、外傷性神経腫、Morto神経腫、神経絞扼傷害、脊柱管狭窄症、手根管症候群、根性痛、坐骨神経痛、神経捻除傷害、腕神経叢捻除傷害、複合性局所疼痛症候群、薬物療法誘発性神経痛、がん化学療法誘発性神経痛、抗レトロウイルス療法誘発性神経痛、脊髄損傷後疼痛、原発性小線維ニューロパチー、原発性感覚性ニューロパチーおよび三叉神経・自律神経性頭痛から選択される。
【0090】
本発明のいくつかの形態において、上記筋骨格痛は、骨関節炎疼痛、背部痛、冷痛、火傷疼痛および歯痛から選択される。
【0091】
本発明のいくつかの形態において、上記炎症性疼痛は、関節リウマチ疼痛および外陰痛から選択される。
【0092】
本発明のいくつかの形態において、上記原発性疼痛は線維筋痛疼痛から選択される。
【0093】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、被験者の疼痛を治療または軽減する方法をさらに提示している。
【0094】
本発明のいくつかの形態において、前記方法は、治療有効量の前述の結晶形態A~Gまたは前述の医薬組成物を前記被験者に適用することを含む。本発明のいくつかの形態において、上記被験者の疼痛は、本発明が定義する通りである。
【0095】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、被験者の電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する方法をさらに提示している。
【0096】
本発明のいくつかの形態において、前記方法は、治療有効量の前述の結晶形態A~Gまたは前述の医薬組成物を前記被験者に適用することを含む。本発明のいくつかの形態において、上記電位依存性ナトリウムチャネルはNavl.8である。
【0097】
定義と説明
別途説明がある場合を除き、本発明で使用されるすべての技術・科学用語は、当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本発明に係るすべての特許および刊行物は、引用という方式によって、全体が本発明に取り入れられる。本発明の実践あるいは試験において、本発明に記載のものと類似するかまたは同一であるいかなる方法や物質も使用することができるが、本発明において記述しているのは、好ましい方法、装置および物質である。
【0098】
「結晶形態」または「結晶形」は、高度に規則的な化学構造を有する固体を指し、単一成分あるいは複数成分の結晶、および/または化合物の結晶多形、溶媒和物、水和物、包接化合物、共晶、塩、塩の溶媒和物、塩の水和物を含むが、これらにのみ限定されない。物質の結晶形は、本分野で公知の多くの方法によって得ることができる。このような方法は、例えば、ナノホールあるいはキャピラリーにおいては、表面あるいはプレート上で結晶させ、例えば、ポリマーにおいては、共結晶反分子など添加剤の存在下で結晶させ、溶媒を除去し、脱水し、急速に蒸発させ、急速に冷却し、ゆっくりと冷却し、蒸気を拡散させ、昇華させ、反応結晶させ、アンチソルベントを添加し、研磨し、そして溶媒を滴下して研磨するなどの、溶融結晶、溶融冷却、溶媒結晶、限定された空間での結晶を含むが、これらのみに限定されない。
【0099】
「アモルファス」または「アモルファス形態」は、物質の質点(分子、原子、イオン)が三次元空間で無周期的に並んだときに形成される物質を指し、拡散する、ピークのないX線粉末回折パターンを有するのが特徴である。アモルファスは固体物質の特殊な物理形態であり、部分的に秩序正しい構造的特徴が、結晶形態物質との間に、複雑に入り組んだつながりを有していることを示している。物質のアモルファス形態は、本分野で公知の多くの方法によって得ることができる。このような方法は、クエンチング法、アンチソルベント凝集法、ボールミル法、噴霧乾燥法、冷凍乾燥法、湿式造粒法、および固体分散体技術等を含むが、これらのみに限定されない。
【0100】
「溶媒」は、もう一種の物質(典型的には一種の固体)を完全にまたは部分的に溶解可能な一種の物質(典型的には一種の液体)を指す。本発明の実施に用いられる溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、1-メチル-2-ピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2-プロパノン、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物等を含むが、これらのみに限定されない。
【0101】
「アンチソルベント」は、生成物(または生成物の前駆体)が溶媒中から析出するのを促す流体を指す。アンチソルベントは、低温ガス、化学反応によって析出を促す流体、または、溶媒中での生成物の溶解度を低下させる流体を含んでいてよく、溶媒と同じの液体であるが異なる温度にあってよいか、あるいは、溶媒と同じ液体であってよい。
【0102】
「溶媒和物」は、結晶が、表面上に、または結晶格子中に、あるいは表面上ならびに結晶格子中に溶媒を有するものを指し、前記溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2-プロパノン、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンおよびそれらの混合物等であってよい。溶媒和物の1つの具体例は、表面上にあるか、または結晶格子中にあるか、あるいは表面上および結晶格子中にある、溶媒が水である水和物である。物質の表面上に、または結晶格子中に、あるいは表面上ならびに結晶格子中に、水和物は、水以外の他の溶媒を有していても有していなくてもよい。
【0103】
結晶形態またはアモルファスは、例えばX線粉末回折(XRPD)、赤外吸収スペクトル法(IR)、融点法、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析法(TGA)、核磁気共鳴法、ラマンスペクトル、X線単結晶回折、溶解熱量測定法、走査電子顕微鏡(SEM)、定量分析、溶解度および溶解速度等、種々の技術手段によって識別することができる。
【0104】
X線粉末回折(XRPD)は、結晶形態の変化、結晶化度、結晶構造状態等の情報を検出することができ、結晶形態を識別する一般的手段である。XRPDスペクトルのピーク位置は主に、結晶形態の構造に応じて決まり、実験の細部に対して相対的に敏感ではない一方、その相対的ピーク高さは、試料の調製や計器の幾何学的形状に関連する多くの要因に応じて決まる。従って、いくつかの実施例では、本発明の結晶形態の特徴は、実質的に、本発明の図面において提供するXRPDパターンに示す通りである、いくつかのピーク位置のXRPDパターンを有することにある。同時に、XRPDスペクトルの2θの測定値に実験誤差があってよく、異なる計器および異なる試料の間では、XRPDスペクトルの2θの測定値に多少差異がある可能性があるので、前記2θの数値は、絶対的なものと見なしてはならない。本発明の試験で用いる計器の状况に応じて、回折ピークに±0.2°の誤差許容範囲が存在する。
【0105】
示差走査熱量測定(DSC)は、プログラム制御の下、絶えず加熱または降温することによって、試料と、不活性な基準物質(α-Al2O3が一般的に用いられる)との間のエネルギー差の、温度に伴う変化を測定する技術である。DSC曲線の融解ピーク高さは、試料の調製や計器の幾何学的形状に関連する多くの要因に応じて決まり、ピーク位置は、実験の細部に対して相対的に敏感ではない。従って、いくつかの実施例では、本発明に記載の結晶形態の特徴は、実質的に、本発明の図面において提供するDSCパターンに示す通りである、特徴ピーク位置のDSCパターンを有することにある。同時に、DSCスペクトルに実験誤差があってよく、異なる計器および異なる試料の間では、DSCスペクトルのピーク位置とピーク値に多少差異がある可能性があるので、前記DSC吸熱ピークのピーク位置またはピーク値の数値は、絶対的なものと見なしてはならない。本発明の試験で用いる計器の状况に応じて、融解ピークに±3℃の誤差許容範囲が存在する。
【0106】
ガラス転移は、アモルファス物質の高弾性状態とガラス状態との間の転移を指し、当該物質の固有の特性であり、それが対応する転移温度がガラス転移温度(Tg)であり、アモルファス物質の重要な物理的特性である。ガラス転移は分子運動に関連する現象である。このため、ガラス転移温度(Tg)は主に、物質の構造に応じて決まる一方、実験の細部等に対して相対的に敏感ではない。いくつかの実施例では、本発明に記載のアモルファスのガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され、107.44℃のガラス転移温度を有することを特徴とする。本発明の試験で用いる計器の状况に応じて、ガラス転移温度に±3℃の誤差許容範囲が存在する。
【0107】
示差走査熱量測定(DSC)は、結晶形態に結晶転移または混晶現象があるかどうか検知・分析するためにも用いることができる。
【0108】
化学組成が同じ固体は、異なる熱力学的条件の下、結晶構造が異なる同質異性体を形成することがしばしばあり、変異体と呼ばれることもある、このような現象は、多形または同質異像現象と呼ばれる。温度・圧力条件が変化するとき、変異体同士に相互転移が生じることがあり、この現象は結晶形態転移と呼ばれる。結晶形態転移のため、結晶の力学的、電気的、磁気的等の性能に極めて大きな変化が生じ得る。結晶形態転移の温度が測定可能な範囲にある場合、示差走査熱量測定(DSC)パターンにおいて、この転移プロセスを見て取ることができ、その特徴は、DSCパターンが、この転移プロセスを反映する放熱ピークを有しており、かつ、2つまたは複数の吸熱ピークを同時に有しており、それぞれ転移前後の、異なる結晶形態の特徴的吸熱ピークである、という点にある。本発明の化合物の結晶形態またはアモルファスは、適当な条件下で結晶形態転移を生じることができる。
【0109】
熱重量分析(TGA)は、プログラム制御の下、物質の質量の、温度に伴う変化を測定する技術であり、結晶中の溶媒の喪失または試料の昇華・分解のプロセスを検査するのに適しており、結晶中の結晶含有水または結晶溶媒の状況を推測することができる。TGA曲線が示す質量変化は、試料の調製や計器等、多くの要因に応じて決まり、異なる計器および異なる試料の間では、TGAが検出する質量変化に多少差異がある。いくつかの実施例では、本発明に記載のカルシウム塩の結晶形態Aは、温度150℃前後で重量減少が5.1%前後である。本発明の試験で用いる計器の状况に応じて、質量変化に±0.3%の誤差許容範囲が存在する。
【0110】
本発明の文脈において、X線粉末回折パターン中の2θ値は、いずれも度(°)を単位とする。
【0111】
説明を要するのは、「wt%」は質量比(g/g)を指し、例えば水和物において、結晶形態Aの水分含有量が3.0wt%であるというのは、当該結晶形態A中の水の質量と、当該結晶形態Aの質量との比率(g/g)が3.0であることを指し、また例えば、溶媒和物において、結晶形態C中の1,4-ジオキサンの含有量が3.1wt%であるというのは、当該結晶形態C中の1,4-ジオキサンの質量と、当該結晶形態Cの質量との比率(g/g)が3.1であることを指す、という点である。
【0112】
「実質的に図に示すような」という用語は、X線粉末回折パターンまたはDSCパターンまたはTGAの結果のうち少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%のピークが、その図中に示されていることを指す。
【0113】
スペクトルまたは/および図中に出現するデータに言及する場合、「ピーク」は、当業者が識別可能な、背景ノイズに帰属することのない1つの特徴を指す。
【0114】
「実質的に清浄な」は、一種の結晶形態が、他の一種のまたは種々の結晶形態を実質的に含まず、つまり、結晶形態の純度が少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.6%、または少なくとも99.7%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%であるか、または結晶形態に他の結晶形態が含まれており、前記他の結晶形態の、結晶形態の総体積または総重量における百分率が、20%未満であるか、または10%未満であるか、または5%未満であるか、または3%未満であるか、または1%未満であるか、または0.5%未満であるか、または0.1%未満であるか、または0.01%未満であることを指す。
【0115】
「実質的に含まない」は、一種または種々の他の結晶形態の、結晶形態の総体積または総重量における百分率が、20%未満であるか、または10%未満であるか、または5%未満であるか、または4%未満であるか、または3%未満であるか、または2%未満であるか、または1%未満であるか、または0.5%未満であるか、または0.1%未満であるか、または0.01%未満であることを指す。
【0116】
「相対強度」は、X線粉末回折(XRPD)パターンのあらゆる回折ピークのうち一番強いピークの強度が100%であるとき、他のピークの強度と一番強いピークの強度との比の値を指す。
【0117】
本発明の文脈において、「実質的に」または「約」等の字句を使用しているか、あるいは、使用しているか否かにかかわらず、所定の値または範囲の10%以内にあり、好適には5%以内にあり、特に1%以内にあることを表す。あるいは、当業者にとっては、「実質的に」または「約」という用語は、平均値の、受け入れ可能な標準誤差の範囲内にあることを表す。N値を有する数字を1つ開示するたびに、N+/-1%、N+/-2%、N+/-3%、N+/-5%、N+/-7%、N+/-8%またはN+/-10%の値以内を有するいかなる数字も明確に開示され、ここで、「+/-」は、プラスまたはマイナスを指す。
【0118】
「を含む」という用語は開放式表現であり、すなわち、本発明が明示する内容を含むが、他の面の内容を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】結晶形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】結晶形態Aの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図3】結晶形態Aの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図4】結晶形態BのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図5】結晶形態Bの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図6】結晶形態Bの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図7】結晶形態CのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図8】結晶形態Cの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図9】結晶形態Cの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図10】結晶形態DのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図11】結晶形態Dの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図12】結晶形態Dの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図13】結晶形態EのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図14】結晶形態Eの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図15】結晶形態Eの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図16】結晶形態FのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図17】結晶形態Fの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図18】結晶形態Fの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図19】結晶形態GのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図20】結晶形態Gの熱重量分析(TGA)パターンである。
【
図21】結晶形態Gの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図22】結晶形態Bの
1H NMRパターンである。
【
図23】結晶形態Cの
1H NMRパターンである。
【
図24】結晶形態Eの
1H NMRパターンである。
【
図25】結晶形態Fの
1H NMRパターンである。
【
図26】結晶形態Gの
1H NMRパターンである。
【
図27】混濁競争後の固体のXRPDパターンオーバーレイ(I/III)である。
【
図28】混濁競争後の固体のXRPDパターンオーバーレイ(II/III)である。
【
図29】混濁競争後の固体のXRPDパターンオーバーレイ(III/III)である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
以下、実施例を通じて本出願について詳述するが、そのことは、本出願について何らかの不利な制限が存在することを意味しない。本明細書はすでに本出願について詳しく記述しており、その中でその具体的実施例方式も開示している。当業者にとっては、本出願の趣旨および範囲を逸脱しない状況で本出願の具体的実施形態について種々の変更や改良を行うことは自明であろう。
【0121】
本発明のXRPDの結果は、PANalyticalのX線粉末回折分析装置EmpyreanおよびX’Pert3において収集され、走査パラメータは下記表8に示す通りである。
【表8】
【0122】
本発明のTGAおよびDSCパターンはそれぞれ熱重量分析装置TA Q5000/Discovery 5500と示差走査熱量測定装置TA Discovery 2500において収集され、表9は試験パラメータを列記している。
【表9】
【0123】
本発明の動的水分吸着(DVS)曲線は、SMS(Surface Measurement Systems)のDVS Intrinsicにおいて収集する。25℃のときの相対湿度は、LiCl、Mg(NO
3)
2およびKClの潮解点を用いて較正する。DVS試験パラメータは表10に列記する。
【表10】
【0124】
本発明の液体核磁気共鳴スペクトルはBrukerの核磁気共鳴装置400Mにおいて収集され、DMSO-d6を溶媒とする。
【0125】
本発明で用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)試験中の安定性試験は、アジレント・テクノロジーの1260高速液体クロマトグラフにより試験され、分析条件は表11に示す通りである。
【表11】
【0126】
本発明で採用する溶媒の略称または英語表記の中国語の意味は、下記表12に示す通りである。
【表12】
【0127】
本発明の実施例は、式(I)の化合物の結晶形態およびそれらの調製方法を開示している。当業者は本発明の内容を参考にし、プロセスパラメータを適宜改良することにより実現することができる。特に指摘を要するのは、類似するすべての置換および修正は、当業者にとっては自明であり、それらはいずれも本発明に含まれると見なされる、という点である。本発明の方法についてはすでに、好ましい実施例によって記述しており、関係者は明らかに、本発明の内容、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法を修正するかまたは適宜変更し、組み合わせることにより、本発明の技術を実現および応用することができる。
【0128】
本発明をさらに理解するため、以下、実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
【0129】
実施例1:式(I)の化合物の調製
【化3】
国際公開第2019/014352号中の方法を参照して中間体D5を合成調製する。反応瓶にジクロロメタン200mLを加え、攪拌条件の下、反応瓶にD5 40g、HATU 53.8g、D6 19.1gをそれぞれ加えて引き続き攪拌する。反応瓶にDIPEA 42.2gをゆっくりと滴加し、滴加プロセスにおいて反応瓶の内部温度が35℃を上回らないよう制御し、滴加完了後に、反応瓶の内部温度を30~35℃に保って引き続き16時間攪拌する。反応終了後に、反応系を25~30℃まで降温し、ジクロロメタン100mLを追加し、調製済みの5%炭酸カリウム水溶液240mLを系に加えて0.5時間攪拌し、静置して分液する。5%のクエン酸水溶液、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液、および清浄水を順に用いて有機相を洗浄した後、減圧濃縮し、式(I)の化合物を得る。
【0130】
LCMS: m/z 459.0 (M+H)+; 1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 10.83 (s, 1H), 8.61 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 8.00-7.98 (m, 1H), 7.47-7.44 (m, 2H), 7.40-7.34 (m, 3H), 7.21-7.16 (m, 2H).
【0131】
実施例2:結晶形態Aの調製および同定
20.2mgの、式(I)に示す化合物を、0.3mLのMTBEの中で、室温で10日間叩解することによって結晶形態Aを得、XRPDの結果は
図1に示す通りであり、TGAの結果は
図2に示す通りであり、DSCの結果は
図3に示す通りである。TGAの結果は、試料が150℃まで加熱されると3.9%の重量減少がある(1つの結晶水の理論含有量は約3.8%である)ことを示している。DSCの結果は、試料が86.3℃(初期温度)において比較的幅広い1つの吸熱ピークを有することを示している。
【0132】
実施例3:結晶形態Bの調製および同定
19.9mgの、式(I)に示す化合物を、0.3mLのアセトンの中で、室温で10日間叩解することによって結晶形態Bを得る。XRPDの結果は
図4に示す通りであり、TGAの結果は
図5に示す通りであり、DSCの結果は
図6に示す通りである。TGAの結果は、150℃まで昇温すると1.2%の重量減少があることを示している。DSCの結果は、試料が146.6℃(初期温度)に1つの吸熱ピークを有することを示している。
1H NMRの結果(
図22)は、当該試料において、極めて少量(0.04wt%)のアセトンが残留していることのみ見出されることを明らかにしている。
【0133】
実施例4:結晶形態Cの調製および同定
20.0mgの、式(I)に示す化合物を0.5mLの1,4-ジオキサン/トルエン(1:4、v/v)の中で、室温で10日間叩解することによって結晶形態Cを得る。XRPDの結果は
図7に示す通りであり、TGAの結果は
図8に示す通りであり、DSCの結果は
図9に示す通りである。TGAの結果は、試料が80℃まで昇温されると1.2%の重量減少があり、80℃から150℃まで加熱されると7.0%の段階的重量減少があることを示している。DSCの結果は、試料には106.6℃と111.3℃(ピーク値温度)に、重なり合った吸熱ピークが見られることを示している。
1H NMRの結果(
図23)は、6.3wt%の1,4-ジオキサンが検出されたことを示している。
【0134】
実施例5:結晶形態Dの調製および同定
15.0mgの、式(I)に示す化合物を、4mLのMEKの中で1週間にわたり気体固体拡散することによって結晶形態Dを得る。XRPDの結果は
図10に示す通りであり、TGAの結果は
図11に示す通りであり、DSCの結果は
図12に示す通りである。TGAの結果は、試料が80℃まで昇温すると0.9%の重量減少があり、80℃から150℃まで加熱されると7.0%の重量減少があることを示している。DSCの結果は、試料が97.8℃と149.2℃(ピーク値温度)に2つの吸熱ピークを有することを示している。
【0135】
実施例6:結晶形態Eの調製および同定
15.0mgの、式(I)に示す化合物を、4mLのTHFの中で、室温で1週間にわたり気体固体拡散することによって結晶形態Eを得る。XRPDの結果は
図13に示す通りであり、TGAの結果は
図14に示す通りであり、DSCの結果は
図15に示す通りである。TGAの結果は、室温から80℃まで昇温すると、試料の重量減少が1.9%であり、80℃から150℃まで昇温すると、試料の重量減少が4.9%であることを示している。DSCの結果は、試料は85.1℃(初期温度)に比較的幅広い1つの吸熱ピークを有することを示している。
1H NMRの結果(
図24)は、3.8wt%のTHFが検出されたことを示している。
【0136】
実施例7:結晶形態Fの調製および同定
15.1mgの、式(I)に示す化合物を、4mLのCHCl
3の中で、室温で1週間にわたり気体固体拡散することによって結晶形態Fを得る。XRPDの結果は
図16に示す通りであり、TGAの結果は
図17に示す通りであり、DSCの結果は
図18に示す通りである。TGAの結果は、150℃まで昇温すると11.5%の重量減少があることを示している。DSCの結果は、試料は95.7℃(初期温度)に1つの吸熱ピークを有することを示している。
1H NMRの結果(
図25)は、11.1wt%のCHCl
3(TGAの重量減少と一致)が検出されたことを示している。
【0137】
実施例8:結晶形態Gの調製および同定
約20mgの、式(I)に示す化合物を、DMSOの中で、室温で約4日間にわたり気体固体拡散した後、窒素ガスの保護下で100℃まで加熱した後、室温まで降温することによって結晶形態Gを得る。XRPDの結果は
図19に示す通りであり、TGAの結果は
図20に示す通りであり、DSCの結果は
図21に示す通りである。TGAの結果は、結晶形態Gの試料を160℃まで昇温すると2.3%の重量減少があることを示している。DSCの結果は、試料が146.8℃(初期温度)に1つの吸熱ピークを有することを示している。
1H NMRの結果(
図26)は、1.0wt%のDMSO溶媒残留が検出されたことを示している。
【0138】
実施例9:固体状態安定性実験
遊離状態の無水結晶形態Bの固体状態安定性を評価するため、それぞれ適量の試料を秤量して60℃の条件で、閉口して24時間放置し、25℃/60%RHおよび40℃/75%RHの条件で、開口して1週間放置する。異なる条件下で放置した固体試料について、XRPDによって結晶形態の変化を試験し、HPLCで純度を試験して化学的安定性を評価する。特性評価の結果は表13にまとめている。結果は、結晶形態Bの試料は試験条件下においてHPLC純度に顕著な低下が見られず、かつ、結晶形態に変化が生じていないことを示している。
【表13】
【0139】
遊離状態の無水結晶形態と水和物結晶形態との間の転換関係をさらに検討するため、無水結晶形態B/Gおよび水和物結晶形態Aについて混濁競争試験を行った。まず、ACN中で5℃、室温、50℃、およびEtOAc中で室温で無水結晶形態BとGの間の混濁競争試験を設定した。具体的なステップは次の通りである。1)対応する温度下の、遊離状態の、異なる溶媒系における飽和溶液を調製し、2)相応の遊離状態の結晶形態試料を、0.5mLの飽和溶液に加えて懸濁液を形成し、3)それぞれ、相応の温度条件下で磁力攪拌し、4)1~5日間にわたり攪拌してから固体を分離してXRPDを試験する。結果は表14に示す通りであり、試験条件下ではいずれも遊離状態の結晶形態Bのみが得られた。
【0140】
このため、室温で安定する無水結晶形態Bと水和物結晶形態AのACN/H
2Oの、室温の、異なる水分活性(a
w=0/0.2/0.4/0.6/.0.8/1.0)における混濁競争試験を設定した。結果は表14に示す通りであり、a
w=0~0.4の条件下で無水結晶形態Bが得られ、a
w=0.6~1(純水)中で水和物結晶形態Aが得られた。試験で得られた固体のXRPDスペクトルは
図27~間違い!引用元が見つかっていないに示す通りである。
【表14】
【0141】
上記表から、遊離状態の無水結晶形態Bは、一定の水分活性条件下で安定的に存在可能であり、かつ、水和物結晶形態には、後続の開発において脱水リスクが存在する可能性があるため、無水結晶形態Bの安定性および後続の創薬可能性が、より優れていることが分かる。
【0142】
効果の実施例:
一.式(I)の化合物の、ナトリウムイオンチャネル1.8(NaV1.8)に対する阻害活性
【0143】
1.試験方法:パッチクランプ法で、電位依存性ナトリウムイオンチャネル(NaV)1.1~1.8サブタイプ電流に対する化合物の影響を検出した。
【0144】
2.投与製剤の調製および分析
2.1 投与製剤保存液の調製方法
【0145】
対照:適当な体積のDMSOを保存液として秤量した。
【0146】
試験化合物:適当な質量の、式(I)の化合物(実際量=理論濃度*体積×分子量/純度)を秤量し、式に基づいて、必要なDMSOの体積を算出した後、最終的に必要なDMSOの質量に換算した。続いて、秤量したDMSOで粉末を溶解した。最終的なDMSO使用量に基づいて実際の保存液濃度を算出するが、一般に、実際の保存液濃度と理論濃度はわずかに異なった。
【0147】
2.2 投与製剤の作業溶液の調製方法および濃度
NaVチャネル電流試験の前に、対照と試験化合物保存液を10mLの細胞外液に希釈して作業溶液とし、20minにわたり超音波を当てる。
【0148】
3.実験システム
3.1.細胞培養
1)Nav1.8チャネルを安定的に発現するCHO細胞系の具体的情報は次の通り:SCN10A:NM_006514。
2)細胞は、10%のウシ胎児血清および10μg/mLのブラストサイジン、200μg/mLのハイグロマイシン Bおよび100μg/mLのゼオシンを含有するHAM’S/F-12培地の中で培養され、培養温度は37℃であり、二酸化炭素濃度は5%であった。
3)細胞の継代:旧培地を除去してPBSで1回洗浄した後、1mLの0.25%-トリプシン-EDTA溶液を加え、37℃で1.5minにわたりインキュベートした。細胞が皿底からはがれたとき、37℃に予熱した5mLの完全培地を加えた。ピペットで細胞懸濁液に軽く吹き付けて、凝集している細胞を分離させた。細胞懸濁液を無菌の遠心管の中に移し、1000rpmで5minにわたり遠心して細胞を集めた。増幅または維持培養を行い、細胞を6センチメートルの細胞培養皿に接種し、各細胞培養皿の接種細胞量は2.5×105細胞である(最終体積:5mL)。
4)細胞の電気生理活性を維持するため、細胞密度は80%を超えてはならない。
5)パッチクランプ検出し、実験の前に細胞を0.25%-トリプシン-EDTAで分離し、あらかじめカバーガラスをセットした24穴プレートに1穴につき8×103の細胞密度で接種し(最終体積:500μL)、テトラサイクリンを加え、2日目に実験検出を行なった。
【0149】
3.2.電気生理溶液
1)細胞外液:140mM NaCl、3.5mM KCl、2mM CaCl2、10mM HEPES、1.25mM NaH2PO4、1mM MgCl2、10mM グルコース、pH=7.4(NaOH)。
2)細胞内液:50mM CsCl、10mM NaCl、10mM HEPES、20mM EGTA、60mM CsF、pH=7.2(CsOH)。
【0150】
4.試験方法
4.1.計器については表15に示す通りである。
【表15】
【0151】
4.2 パッチクランプ検出
Navチャネル電流を記録する全細胞パッチクランプの電圧刺激スキームは次の通りであった。まず、細胞の膜電位を-130mVにクランプした後、10mVのステップ間隔で、電圧を-40mVあるいは-20mVまでステップ、8sにわたり持続させた。クランプ電圧は-120mVに維持され、20秒毎に繰り返しデータを収集した。その内向電流のピーク値振幅を測定し、その半不活化電圧を判定した。
【0152】
細胞クランプ電位は-120mVに設定された。ナトリウム電流の終息と半不活化阻害はダブルパルスモードを用いて測定した。ダブルパルスモードは、2つの50msにわたり継続する0mVの脱分極試験パルス(TP1およびTP2)により遂行された。2つの脱分極パルスの間の条件電圧は、半不活化電圧付近に設定された(8sにわたり持続)。2つ目の脱分極パルスを与える前に、細胞膜電位を-120mvにクランプし、20msにわたり持続させることで化合物を未結合にし、かつ、不活化状態にあるチャネルを回復させた。20sの間隔でデータを繰り返し収集し、2つの試験パルスにおける電流ピーク値を測定した。
【0153】
実験データはアンプEPC-10(HEKA)により収集され、ソフトウェアPatchMaster(HEKA)(ソフトウェアバージョン:v2x73.2)に保存された。
【0154】
マイクロピペットプラー(P97,Sutter Instruments)でガラスキャピラリー(BF150-86-10,Sutter Instruments)を引き抜いて記録電極にした。倒立顕微鏡(IX71)下でマイクロ電極マニピュレーター(MP285)を操作して、記録電極を細胞に接触させ、負圧をかけて吸引し、ギガオームシールを形成した。ギガオームシールを形成した後、急速容量補償を行い、しかるのちに引き続き負圧をかけ、吸引して細胞膜を破壊し、全細胞記録モードを形成した。しかるのちに低速容量の補償を行って膜容量および直列抵抗を記録し、漏電補償は行わなかった。
【0155】
全細胞において記録されたNavチャネル電流が安定してから薬物投与を開始し、個々の薬物濃度が5分間適用され(あるいは電流が安定した)後に次の濃度が検出され、1つの試験化合物毎に複数の濃度が検出された。細胞が蒔かれたカバーガラスを倒立顕微の中の記録槽にセットし、試験化合物と、化合物を含まない外液とが、重力灌流の方法を利用して低濃度から高濃度へと記録室を順次流れることにより細胞に作用し、記録中に真空ポンプを利用して液体交換を行った。個々の細胞について、化合物を含まない外液で検出された電流を、自らの対照群とした。複数の細胞が独立して繰り返し検出された。電気生理実験はすべて室温下で行われた。
【0156】
4.3 データ分析
まず、個々の薬物濃度が適用された後の電流とブランク対照電流を規格化し、しかるのちに、個々の薬物濃度に対応する阻害率を計算した。個々の濃度について平均数と標準誤差を計算し、以上すべての数値はMicrosoft Excel 2013を利用して算出した。このほか、ソフトウェアIGORによって以下の方程式により、各化合物の半阻害濃度を計算した。阻害率=1/[1+(IC50/c)h]。
【0157】
以上の方程式で用量依存効果について非線形近似を行い、ここで、cは薬物濃度を表し、IC50は半阻害濃度であり、hはヒル係数を表す。曲線近似およびIC50の計算はソフトウェアIGORを用いて遂行した(ソフトウェアバージョン:6.0.1.0)。
【0158】
本実施例において測定した、NaVl.8に対する式(I)の化合物の半数阻害活性(IC
50)は表16に示す通りである。
【表16】
【0159】
式(I)の化合物はNaV1.8チャネルの活性に対して顕著な阻害効果を有する。
【0160】
二.式(I)の化合物の薬物動態学実験の結果
本実験例はラットに対し、単回静脈注射または胃内注入経口投与によって、体内での薬物動態学的評価を行った。
【0161】
実験方法および条件:雄のSprague Dawleyラットに、動物はいずれも一晩絶食させ、検査対象化合物1mg/Kg(静脈注射、溶媒5%DMSO/10%Solutol/85%Saline)と10mg/Kg(胃内注入)をそれぞれ単回与え、投与後5、15、30min、1、2、4、6、8および24hrに顎下静脈から採血し、個々の試料を約0.20mL収集し、ヘパリンナトリウムが凝固を妨げ、収集後に氷の上に置き、1時間以内に血漿を遠心分離して測定に備えた。血漿中の血中薬物濃度の検出には液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を採用し、測定された濃度は、薬物動態学パラメータを計算するために用いられた。結果は下記表17および表18に示す通りである。
【表17】
【表18】
【0162】
式(I)の化合物はラット内での薬物代謝・吸収が良好であり、薬物動態学的優位性を有する。
【国際調査報告】