(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】パターン転写時の離型を容易にするための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 59/02 20060101AFI20240227BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B29C59/02 Z
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555374
(86)(22)【出願日】2022-03-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2022055653
(87)【国際公開番号】W WO2022189313
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509343459
【氏名又は名称】オブダカット・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラサナ・ヴェンカテシュ・クリシュナン
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA21
4F209AA24
4F209AA28
4F209AF01
4F209AG05
4F209AK02
4F209AR06
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4F209PA08
4F209PB01
4F209PN03
4F209PN04
4F209PN13
5F146AA33
5F146AA34
(57)【要約】
インプリントテンプレートからの基板の離型を容易にするための方法であって、この方法は、テンプレートの構造化表面が基板のターゲット表面と接触するサンドイッチ構成でテンプレートおよび基板を提供するステップ(S510)と、ターゲット表面上の成形層を軟化させるように熱を加えるステップ(S520)であって、上記成形層は、最小ガラス転移温度Tg>50℃およびヤング率>1000MPaを有する熱可塑性材料であり、上記成形層はTgの上方に加熱される、ステップと、構造化表面のパターンを加熱された成形層にインプリントするために、サンドイッチ構成を一緒に押し付けるステップ(S530)と、成形層を硬化させるために、サンドイッチ構成を冷却液に漬けるステップ(S550)と、パターニングされた基板からテンプレートを分離するステップ(S560)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントテンプレートからの基板の離型を容易にするための方法であって、
前記テンプレートの構造化表面が前記基板のターゲット表面と接触するサンドイッチ構成で前記テンプレートおよび前記基板を提供するステップ(S510)と、
前記ターゲット表面上の成形層を軟化させるように熱を加えるステップ(S520)であって、前記成形層は、最小ガラス転移温度T
g>50℃およびヤング率>1000MPaを有する熱可塑性材料であり、前記成形層はT
gの上方に加熱される、ステップと、
前記構造化表面のパターンを前記加熱された成形層にインプリントするために、前記サンドイッチ構成を一緒に押し付けるステップ(S530)と、
前記成形層を硬化させるために、前記サンドイッチ構成を冷却液に漬けるステップ(S550)と、
パターニングされた前記基板から前記テンプレートを分離するステップ(S560)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記成形層は熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は全体が熱可塑性ポリマーで形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記成形層は、前記基板上に設けられたコーティングであり、前記基板は、前記成形層とは異なる材料で形成されたキャリア要素をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記押し付けるステップは、5MPaを超えない圧力を加えることによって実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記冷却液は4191Jkg
-1K
-1未満の比熱容量(c)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却液は、T
gより低い温度(T2)を保持し、漬けるステップは、前記サンドイッチ構造がT
gを超える温度を保持するときに実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記成形層は環状オレフィンコポリマー、COCで形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却液は水を含み、15~25℃の温度(T2)を保持する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記成形層はポリカーボネート、PCで形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却液は水中に10~20体積%のイソプロピルアルコール(IPA)を含み、80~100℃の温度(T2)を保持する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成形層はポリメチルメタクリレート、PMMAで形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却液は、0~10℃の水に1~10体積%のアセトンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記成形層はポリエステルテレフタレート、PETで形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記成形層はポリスチレン、PSで形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却液は、水、アルコール、アセトン、トルエンから選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テンプレートの構造化表面を基板のターゲット表面の成形可能層と接触させるパターン転写の分野に関する。具体的には、この解決策は、パターン転写プロセスにおいて熱が加えられる方法に関する。提案される解決策はたとえばインプリントリソグラフィに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造、すなわち100nm以下のオーダーの構造を再現するための最も強力な技術の1つは、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)である。ナノインプリントリソグラフィにおいては、テンプレートの表面パターンの反転コピーが、成形可能表面層を有する基板を含む物体に転写される。この文脈において、基板は全体を成形可能材料で形成することができる。あるいは、基板は、しばしばレジストと呼ばれる成形可能層が適用されるキャリア本体を含むことができる。いくつかのプロセスにおいて、成形可能層は、フォトレジスト材料、すなわち放射線に感受性のある材料を含む。一例がポリマーまたは、たとえば紫外線(UV)放射に曝露すると架橋することによってポリマーへと硬化するプレポリマーである。これには、基板またはスタンプのいずれかが適用される放射線に対して透明であることが要求される。
【0003】
放射線感受性材料を使用するいくつかを含む多くのタイプのパターン転写において、パターン転写プロセスに熱を使用して、たとえば成形可能層を軟化または液化する。テンプレートのパターニングされた表面は、テンプレートと基板がサンドイッチ構成を形成するように、成形可能層と接触して配置される。成形可能層のポリマー材料のガラス転移温度を上回るような、適切な温度に加熱したあと、テンプレートは、成形可能層にテンプレートパターンのインプリントが形成またはエンボス加工されるように、成形可能層に向かって押し付けられる。これに続いて、基板からテンプレートを分離する前に、インプリントされた成形可能層を固化させるように冷却が行われる。パターニングされた基板のさらなる後処理が行われてもよい。
【0004】
このようなインプリントプロセスにおいて、テンプレートと基板、または少なくとも成形可能層は、異なる材料で作製される。これは、これらの材料の熱係数が大きく異なる可能性があることも意味し、そのため成形ステップの温度と基板の解体が行われる温度との間の相対的な膨張または収縮が異なる可能性がある。いくつかの用途において、これは、冷却および解体が慎重なステップであることを意味する。これはたとえば、テンプレート表面パターン、またはインプリントされた固化成形可能層、または両方を形成する材料が脆い場合、および/または表面構造がナノメートル領域のような微細スケールであるときである。高温を維持した状態での解体は、形成されたパターン構造がまだ柔らかい成形可能層に損傷を引き起こす可能性もある。
【0005】
これらの理由のため、制御された速度で冷却を実行することができる。また、通常は摂氏100度をはるかに超える高温の成形ステップ温度でのサンドイッチ材料の取り扱いには通常、問題がある。サンドイッチ構成はしたがって通常、解体のために前方に送られるインプリント機から除去される前に冷却される。結果として、インプリントプロセスは時間のかかるプロセスとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で提案される解決策の背後にある目的はしたがって、より効率的なインプリントプロセスを提供することである。一態様によれば、これは独立請求項に概説されるような方法によって提供される。有利な実施形態が従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、提案される解決策は、テンプレートの構造化表面のパターンを基板のターゲット表面上に転写するための方法を提供し、この方法は、
構造化表面がターゲット表面と接触するサンドイッチ構成で、テンプレートおよび基板をインプリント機に提供するステップと、
基板表面上の成形層を軟化させるように熱を加えるステップと、
加熱された成形層にパターンをインプリントするために、サンドイッチ構成を一緒に押し付けるステップと、
成形層を硬化させるために、サンドイッチ構成を冷却液に漬けるステップと、
パターニングされた基板からテンプレートを分離するステップと、
を含む。
【0008】
提案される解決策によって、より効率的な全体的なインプリントプロセスが得られる。
【0009】
ツール設計、プロセス設計および工業化のカテゴリー内で、提案される解決策によりさまざまな利点が得られる。
【0010】
ツール設計の観点において、従来は考慮しなければならない精密加熱システムに対する要求は、ポリマー成形の通常のプロセスのように加熱と冷却を繰り返す必要性なく、単に所望の温度を維持するように見過ごし、または簡素化することができる。複雑なヒータ設計とともに、冷却システムの必要性も排除される。サンドイッチはポリマーのTg(ガラス転移点)を上回る温度に加熱されるため、処理のためにより低い圧力を使用することができ、ガス圧力供給に対する要求も低減される。
【0011】
プロセス設計に関して、異なるタイプのパターンに対する大規模なプロセス開発を必要とすることなく、プロセスの堅牢性が向上する。
【0012】
熱サイクルおよび正確な温度制御の必要性がなくなるため、提案される解決策により総プロセス時間が短縮されるので、断然最大の影響は工業化に関連している。これにより、プロセスの堅牢性および機械設計の簡素化とともに、提案される解決策の大量生産環境への導入が容易になる。
【0013】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】基板、テンプレート、およびインプリントプロセス中に温度を制御するために使用可能なインプリント支持部材を示す図である。
【
図1B】提案される方法で使用可能な基板の代替一実施形態を示しており、成形可能層がキャリア本体に適用されている図である。
【
図2】提案される解決策に関連するさまざまなステップを実行することができるインプリント装置を概略的に示す図である。
【
図3A】インプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図3B】インプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図3C】インプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図3D】インプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図4A】提案される解決策による改善されたインプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図4B】提案される解決策による改善されたインプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図4C】提案される解決策による改善されたインプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図4D】提案される解決策による改善されたインプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図4E】提案される解決策による改善されたインプリントプロセスの異なるステップを示す図である。
【
図5】提案される方法に含まれるさまざまなステップのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用されるようなインプリントプロセスという用語は、テンプレートまたはスタンプの表面パターンの反転コピーであって、ポリマーまたはプレポリマーのような成形可能層にこのスタンプを押し込んでこの層を変形させることによって生成されるものを作成するためのプロセスを指す。提案される解決策は有利には、ナノメートルまたはマイクロメートルスケール上の構造のインプリントに使用することができる。
【0016】
図1Aは、インプリントプロセスに関与し得るさまざまな要素を概略的に示す。ただし、通常、他の要素も関与する可能性があり、そのいくつかは参照して説明するが、提案される解決策の実質的な要素の一部を形成しないことが留意されるべきである。
【0017】
インプリントプロセスの目的は、物体の表面に意図された形状および寸法の構造化パターンを作成することである。本明細書で、この物体は基板100と呼ばれ、実質的に平らなシートまたはディスクとして示される。しかしながら、たとえば曲面を備えた基板の他の形状も考えられることが留意されるべきである。
【0018】
基板100は、パターンが作成されるべきターゲット表面110を有する。ターゲット表面110は、パターンを形成することができる成形可能層120を形成する。
図1Aの例において、基板は一体構造を有し、基板100全体が同じ材料で作製されている。成形可能層120はしたがって、たとえば基板のターゲット表面110から基板100のバルク内の特定の深さにまで及ぶ部分として定義される、基板100の表層部分として見なすことができる。
【0019】
図1Bに示す代替例として、成形可能層120をキャリア要素130上のコーティングとして設けることができる。別個の層としての成形可能層120の適用は、別個の前のプロセスで、またはインプリントプロセスの直前に実行することができる。提案される方法で使用可能な材料タイプのさまざまな例を以下のさまざまな場所で説明する。
【0020】
テンプレート200は、構造化表面210を有するマスターである。表面210における構造の形状は、基板100上に作成されるべき意図されたパターンの反転として形成される。テンプレート200は、インプリントプロセスを行うことができる温度において固体のままである任意の材料のものとすることができる。単なる例として、テンプレートは、金属、ガラス、透明な結晶材料などで作製することができる。さまざまな実施形態において、テンプレート200は、ポリマーのような可撓性材料で作製することができる。
【0021】
提案される方法のインプリントプロセスにおいて、温度調節される支持要素300を使用することができる。支持要素300は、インプリントプロセス中、テンプレートまたは基板に対する直接的な支持体として機能することができる。支持要素300はしたがって、インプリント装置内でテンプレート200と基板100が一緒に押し付けられるときに圧力を提供するための対抗要素として機能することができる。支持要素は、加熱要素320を含む、またはこれに接続することができる。加熱要素はたとえば電気加熱機構を含むことができ、加熱電極が支持要素300に組み込みまたは接続されている。動作中、制御された方法で支持要素300の温度を上昇させるように、加熱要素320によって熱を提供することができる。また、支持要素300は任意選択で、支持要素300に形成された、冷却流体用のダクトのような冷却要素330を含むことができる。
【0022】
図2は、インプリントプロセスを実行することができるインプリント装置20を概略的に示す。インプリント装置はフレーム構造21を含むことができ、これは支持要素300をインプリント位置で保持または支持する。圧力部材22が支持要素300に隣接して懸下され、基板100およびテンプレート200をインプリント位置24に積載するために圧力部材22と支持部材300が互いに離れるように変位することができるようにフレーム構造21に接続されている。圧力部材22を続いて動作させて、基板100とテンプレートを一緒に押し付けるように、インプリントプロセス中、圧力を加えることができる。インプリント装置は、インプリントプロセス中、支持要素300の加熱および冷却を制御するための、および加えられる圧力を制御するための制御機構(図示せず)をさらに含むことができる。
【0023】
図3A~
図3Dは、技術の現状によるインプリントプロセスで実行されるさまざまなステップを概略的に示す。
【0024】
図3Aにおいて、基板100とテンプレート200がサンドイッチ構成で一緒に配置され、支持要素300に配置される。これらの図はテンプレート200の上に基板100を示しているが、いくつかの実施形態において反対の配置を代わりに使用することができる。
【0025】
図3Bにおいて加熱要素320を使用して熱が加えられる。このプロセスにおいて、基板100の成形可能層が影響を受けて軟化し得る。基板100の成形可能層が熱可塑性ポリマーである場合、基板100の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgを超えるように加熱を実行することができる。図中の矢印で示すように、パターンのインプリントを作製するように、パターニングされたテンプレート表面210の構造が基板100の成形可能基板層にエンボス加工されるように圧力がさらに加えられる。
【0026】
図3Cにおいて、冷却要素330を動作させて基板100とテンプレート200のサンドイッチ構成全体を冷却する。これは、意図されたパターン転写が確実に得られるように、圧力を維持しながら実行することができる。基板100の成形可能層が熱可塑性ポリマーである場合、温度T<Tgまたはより低くに達するまで冷却を実行することができる。
【0027】
図3Dは、冷却後、サンドイッチ構成をインプリント位置から取り出し、分割することができるということを概略的に示している。
【0028】
図4A~
図4Eは、提案される解決策によるインプリントプロセスのさまざまなステップを概略的に示す。ここで、
図4Aおよび
図4Bで実行されるプロセスステップは
図3Aおよび
図3Bのプロセスステップと同様であり得る。
【0029】
基板100は熱可塑性ポリマーを含むことができ、サンドイッチ構成でテンプレート200のパターニング表面210と接触して配置される。これは、サンドイッチ構成をインプリント機20において支持要素300と接触させて配置する前に実行することができる。基板100は全体が熱可塑性材料で形成されてもよく、または熱可塑性材料120はキャリア要素130上に設けられたコーティングであってもよく、キャリア要素130は異なる材料で形成されてもよい。
【0030】
図4Aにおいて、支持要素300上にサンドイッチ構成で一緒に配置されたときの基板100とテンプレート200が示されている。これらの図はテンプレート200の上に基板100を示しているが、いくつかの実施形態において反対の配置を代わりに使用することができる。支持要素300は、インプリント装置20に設けられた温度調節されるヒータブロックとして作用する。
【0031】
図4Bにおいて加熱要素320を使用して熱が加えられる。このプロセスにおいて、基板100の成形可能層が影響を受けて軟化し得る。いくつかの実施形態において、基板100の熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgを超えるように、支持要素300、ひいては基板100における温度Tを上昇させるように熱が加えられる。図中の矢印で示すように、パターンのインプリントを作製するように、パターニングされたテンプレート表面210の構造が基板100の成形可能基板層にエンボス加工されるように圧力がさらに加えられる。
【0032】
図4Cは、
図3の方法とは対照的に、基板100とテンプレート200の組み合わせのサンドイッチ構成が、冷却なしまたは実質的に冷却なしで支持要素から除去され、したがって上昇した温度T>Tgが保持されることを示している。
【0033】
図4Dは、支持要素300によってサンドイッチ構成を冷却する代わりに、組み合わせられた基板100とテンプレート200が続いて冷却環境、好ましくは容器41内の冷却液40によって提供される液体浴にさらされ、これにより温度T<Tgが保持されることをさらに示している。これにより、ポリマーのガラス転移温度Tgより低い温度に保持された媒体40内でテンプレート200とともに基板100の熱可塑性ポリマーを急冷することによって、実質的に瞬間的な冷却ステップが作成される。
【0034】
図4Eは、組み合わせられた基板100とテンプレート200を液体浴から除去したあと、インプリントされた基板100がテンプレート200から分割されることを示している。これはたとえば剥離プロセスによって実行することができる。パターニングされた基板100は続いて、第2のパターン転写プロセスにおける、またはたとえば基板100上に部品を形成するための新たなテンプレートとして使用することができる。
【0035】
これらのステップによって定義されるような本発明はプロセス効率の向上を提供する。1つの技術的な効果は、冷却ステップが短縮されることである。また、インプリント装置内の冷却構成が要求されず、または制御が不要であるため、プロセスが簡素化される。
【0036】
図5は、テンプレート200の構造化表面210のパターンを基板100のターゲット表面110上に転写するための方法のさまざまなプロセスステップを含むフローチャートを示す。
【0037】
ステップS510において、テンプレート200および基板100が、構造化表面210がターゲット表面110に接触するサンドイッチ構成で、インプリント機20に提供される。
【0038】
ステップS520において、基板表面110上の成形層100、120を軟化させるように熱が加えられる。ターゲット温度は通常、ターゲット表面110の成形可能層の材料に依存する。
【0039】
ステップS530において、サンドイッチ構成を一緒に押し付けて、加熱された成形層にパターンをインプリントする。
【0040】
ステップS540において、圧力が解放され、サンドイッチ構造がインプリント機のインプリント位置から除去される。これは、自動排出機構によって、または場合によっては手動で実行することができる。たとえば圧力解放の直前、または圧力解放と併せて、支持要素300の加熱を停止することもできる。
【0041】
ステップS550において、サンドイッチ構成は、基板100の成形層を硬化させるため、たとえば液体浴に漬けることによって、冷却液にさらされる。
【0042】
ステップS560において、サンドイッチ構造は、今やパターニングされた基板100からテンプレート200を分離するように解体される。このステップは、まずサンドイッチ構造を液体浴から除去したあとに実行することができる。
【0043】
上述のプロセスは、異なる実施形態において異なる方法で具体的に構成することができる多くの特徴を提供する。このようなさまざまな実施形態の異なる特徴を以下に概説する。矛盾する場合を除いて、これらの実施形態の特徴は任意の方法で組み合わせることができるということが留意されるべきである。
【0044】
いくつかの実施形態において、成形層は熱可塑性ポリマーを含む。さまざまな実施形態において、基板の成形可能層120は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)またはその他から選択される材料で形成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、基板100は全体が、成形可能層120を形成する熱可塑性ポリマーで形成される。基板の材料はたとえば、PC、PMMA、COCポリマー、PS、またはPPの1つとすることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、成形層120は、上記成形層120とは異なる材料で形成された基板キャリア要素130上に設けられたコーティングである。さまざまな実施形態において、キャリアは、金属、シリコン、石英、および成形層120の機能性材料のTgに耐えることができるポリマーの1つまたは組み合わせで形成することができる。さらに別の例において、基板100は、複合材料、たとえばガラス強化PPのような強化プラスチックで形成することができ、複合材料は熱可塑性材料を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、熱を加えるステップは、熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgを超える温度T1にサンドイッチ構造を加熱するステップを含む。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは結晶性熱可塑性プラスチックとすることができる。このような実施形態において、熱を加えるステップは、結晶性熱可塑性プラスチックの融点を超える温度T1にサンドイッチ構造を加熱するステップを含むことができる。
【0048】
さまざまな実施形態において、冷却液40は、Tgより低い温度T2を保持し、漬けるステップは、サンドイッチ構造がTgを超える温度を保持するときに実行される。
【0049】
さまざまな実施形態において、冷却液は、水、アルコール、トルエン、アセトンのような溶媒などから選択される1つまたは複数の成分を含む。
【0050】
例
提案される方法の多くの例を次に提供し、さまざまな態様についてより具体的な詳細を概説する。
【0051】
第1の例において、100nmの範囲の構造高さおよび150nmの範囲の幅を有するブルーレイパターンを示す表面219を有するニッケルテンプレート200を使用してインプリントが実行される。ZEOn ChemicalsからのCOC(シクロオレフィンコポリマー)であるZeonor ZF14フォイルの形態で、150℃、50バールで3分間、インプリント機20において、パターンが基板100にインプリントされる。ZeonorフォイルをNiテンプレートとともにインプリント機20から搬出し、ほぼ室温の15~25℃、たとえば19℃で水浴に漬けた。ガラス転移温度Tgのかなり下方までの冷却は実質的に瞬間的であり、数ミリ秒で起こる。さまざまな実施形態において、サンドイッチ状のテンプレートおよび基板は、本例において少なくとも3ミリ秒など、水温を考慮して十分な時間、浴中に維持することができる。基板100をその後テンプレート200から分割した。
【0052】
第2の例において、直径340nmおよび深さ470nmのナノパターンピラーを備えたシリコンテンプレート200を、170℃、35バールで5分間、PC(Markofolフォイル)基板100にインプリントした。次いで、支持要素300内の冷却要素330を使用してインプリントを160℃に冷却した。この予冷段階の目的は、テンプレートおよび基板を含むサンドイッチ構造を急冷前にPCのTg(約145℃)に近づけることである。これは、この例において転写されるパターンのようなより微細なパターンに特に有益であり得、より高温からの急冷によって引き起こされる可能性のある構造の歪みを回避するのに役立つ。その予冷段階のあと、PC基板100ならびにシリコンテンプレート200を含むサンドイッチ構造をインプリント機から搬出し、90℃の温度で水中15体積%のイソプロピルアルコール(IPA)の浴に漬けた。ここでも、これはパターン固有の溶液である。格子構造では、冷却は、160℃~90℃からのみであるが、実質的に瞬間的である。浴温度が低ければ、構造が歪む危険性がある。基板100をその後テンプレート200から分割した。
【0053】
第3の例において、基板は石英基板キャリア130を含む。石英キャリア130は、成形可能層120を形成するようにmr-I PMMA(Microresist GmbH)でスピンコーティングされた。80nmの幅および90nmの高さを有するラインパターンを表面が示すNiテンプレート200を使用してパターンをPMMA被覆基板100にインプリントした。好ましくは18mN/m未満の低い表面エネルギーを得るようにNi表面を前処理した。165℃で5分間インプリントを実行した。テンプレート200およびPMMA被覆石英基板100を含むサンドイッチ構成をインプリント機から除去し、5℃で水と混合された5体積%のアセトンの浴に漬けた。実質的に瞬間的な冷却には数ミリ秒のみが要求されるが、投下および溶液からの除去の行為は合計で約3~5秒で実行することができる。アセトンは沸点が低いため、実験では室温をはるかに下回る任意の値が選択された。また、PMMAの機能層は石英キャリアを通して冷却することもできるため、RTをはるかに下回る温度を使用することができる。基板100をその後テンプレート200から分割した。
【0054】
技術の現状による典型的なプロセスの概要は次のステップを含むことができる。
1.Tgの下方でマスター上にIPSフォイルを適用する
2.加圧下でTgの上方にサンドイッチを加熱する 60~120
3.処理時間 180~300秒
4.離型温度までの制御された冷却 60~600秒(パターンおよび冷却に使用される空気/水に依存する)
5.手動離型 30秒
【0055】
本明細書で提案されるようなe解決策では、対応するプロセスは次のステップを含むことができる。
1.Tgのすぐ上方でIPSフォイルを適用する
2.処理時間 180~300秒
3.浴中での急冷 3~5秒(ほとんどの場合、急冷中に型の分離が発生する)
【0056】
基本的に、節約される時間はプロセスごとに120~720秒の間で変化する。この理由の1つは、サンドイッチ構造がインプリント機から除去されたあとに冷却が実行されるため、システムのガラス転移温度を超えて加熱するステップが1つ要求されるのみであることである。これは、連続するインプリントステップの間に周期的な加熱と冷却が要求されないことを意味する。
【0057】
急冷のために浴中で使用される冷却液体組成物は、さまざまな実施形態において水を含むことができる。いくつかの実施形態において、アセトンまたはIPAのような、水より低い沸点を有する溶媒が添加される。溶媒は、組成物に対して5~10重量%添加することができる。このような溶媒の使用は、基板が比較的厚く、瞬間的な冷却でより高い熱エネルギーを取り出す必要があるときに有益であり得る。
【符号の説明】
【0058】
20 インプリント装置
21 フレーム構造
22 圧力部材
24 インプリント位置
40 冷却液
41 容器
100 基板
110 基板表面、ターゲット表面
120 成形可能層
130 キャリア要素
200 テンプレート
210 構造化表面、テンプレート表面
300 支持要素
320 加熱要素
330 冷却要素
【国際調査報告】