IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオインヴェント インターナショナル アーベーの特許一覧 ▶ ユニバーシティ、オブ、サウサンプトンの特許一覧

特表2024-509944抗体の新規の組み合わせ及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】抗体の新規の組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240227BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240227BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555375
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022056037
(87)【国際公開番号】W WO2022189508
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161460.7
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506209743
【氏名又は名称】バイオインヴェント インターナショナル アーベー
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・フレンデウス
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・モルテンソン
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド・テイゲ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・クラッグ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・オールダム
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ビアーズ
(72)【発明者】
【氏名】アリ・ロガニアン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085CC03
4C085CC21
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、概して、抗体の組み合わせ及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含み、
前記がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、組み合わせ。
【請求項2】
患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、の使用であって、
前記がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、使用。
【請求項3】
患者におけるがんを治療するための方法であって、前記方法が、前記患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を投与することを含み、
前記がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、方法。
【請求項4】
患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子、及び
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子との組み合わせで使用するためのものであり、
前記がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、第1の抗体分子。
【請求項5】
患者におけるがんの治療に使用するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
前記第1の抗体分子が、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対する前記がんにおける耐性を低減及び/又は防止することを特徴とする、第1の抗体分子。
【請求項6】
薬学的組成物であって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含む、薬学的組成物。
【請求項7】
キットであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含む、キット。
【請求項8】
前記第1の抗体分子が、Fc領域を欠くか、又は非グリコシル化Fc領域を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項9】
前記第1の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項10】
前記第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変重鎖(VH)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191。
【請求項11】
前記第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
【請求項12】
前記第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26。
【請求項13】
前記第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、及び配列番号50。
【請求項14】
前記第1の抗体分子が、以下のCDRアミノ酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53及び配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59及び配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65及び配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71及び配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77及び配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83及び配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89及び配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95及び配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101及び配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107及び配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113及び配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119及び配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125及び配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131及び配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137及び配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143及び配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149及び配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155及び配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161及び配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167及び配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173及び配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179及び配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185及び配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191及び配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
【請求項15】
前記第1の抗体分子が、以下のアミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号3及び配列番号27、又は
(ii)配列番号4及び配列番号28、又は
(iii)配列番号5及び配列番号29、又は
(iv)配列番号6及び配列番号30、又は
(v)配列番号7及び配列番号31、又は
(vi)配列番号8及び配列番号32、又は
(vii)配列番号9及び配列番号33、又は
(viii)配列番号10及び配列番号34、又は
(ix)配列番号11及び配列番号35、又は
(x)配列番号12及び配列番号36、又は
(xi)配列番号13及び配列番号37、又は
(xii)配列番号14及び配列番号38、又は
(xiii)配列番号15及び配列番号39、又は
(xiv)配列番号16及び配列番号40、又は
(xv)配列番号17及び配列番号41、又は
(xvi)配列番号18及び配列番号42、又は
(xvii)配列番号19及び配列番号43、又は
(xviii)配列番号20及び配列番号44、又は
(xix)配列番号21及び配列番号45、又は
(xx)配列番号22及び配列番号46、又は
(xxi)配列番号23及び配列番号47、又は
(xxii)配列番号24及び配列番号48、又は
(xxiii)配列番号25及び配列番号49、又は
(xxiv)配列番号26及び配列番号50。
【請求項16】
前記がんが、FcyRllb陽性B細胞がんであるか、又はFcyRllb陰性がんである、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
【請求項17】
前記FcyRllb陰性がんが、固形がん、例えば、がん腫、肉腫、及びリンパ腫を含む群から選択される固形がん、例えば、黒色腫、前立腺がん、大腸がん、肝細胞がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、メルケル細胞がん、若しくは卵巣がんを含む群から選択される固形がんであり、かつ/又は前記固形がんが、免疫放棄腫瘍(immune deserted tumour)、若しくは免疫除外腫瘍(immune excluded tumour)、若しくは免疫浸潤が不十分な腫瘍である、請求項16に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
【請求項18】
PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である前記がんが、再発がん及び/又は難治性がんである、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
【請求項19】
前記第2の抗体分子及び/又は前記第3の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項20】
患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子の使用であって、第1の抗体分子が、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
前記第1の抗体分子が、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子による治療に対する前記がんにおける耐性を低減及び/又は防止することを特徴とする、使用。
【請求項21】
前記第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で投与される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含み、
前記組み合わせが、許容治療用量よりも低い前記第2の抗体分子の用量を含むことを特徴とする、組み合わせ。
【請求項23】
患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、の使用であって、
組み合わせが、許容治療用量よりも低い前記第2の抗体分子の用量を含むことを特徴とする、使用。
【請求項24】
個体におけるがんを治療するための方法であって、前記方法が、患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を投与することを含み、
投与される前記第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低いことを特徴とする、方法。
【請求項25】
患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との組み合わせで使用するためのものであり、
使用される前記第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低いことを特徴とする、第1の抗体分子。
【請求項26】
薬学的組成物であって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
前記第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在することを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項27】
キットであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
前記第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在することを特徴とする、キット。
【請求項28】
前記第2の抗体分子の前記用量が、最大許容治療用量よりも低く、例えば、前記許容治療用量よりも少なくとも50%低い、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項29】
前記第2の抗体分子の前記用量が、最小有効治療用量よりも低い、請求項22~28のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項30】
より低用量で使用される前記第1の抗体分子及び前記第2の抗体分子の治療効果が、前記第1の抗体分子の不在下の、前記第2の抗体分子の前記最大許容治療用量での前記第2の抗体分子の治療効果に匹敵する、請求項22~29のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項31】
前記より低用量での前記第2の抗体分子の使用が、前記第2の抗体分子の許容性を改善する、請求項22~30のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項32】
前記より低用量での前記第2の抗体分子の前記使用が、前記第2の抗体分子の前記使用に関連する対象における副作用を低減し、かつ/又は毒性を低減する、請求項22~31のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項33】
前記第2の抗体分子が、イピリムマブ及び/又はトレメリムマブである、請求項22~32のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項34】
前記第2の抗体分子の前記用量が、10mg/kgよりも低い、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項35】
前記第1の抗体分子が、Fc領域を欠く、請求項22~34のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項36】
前記第1の抗体分子が、そのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、非グリコシル化Fc領域を有する、請求項22~35のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項37】
前記第1の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、請求項22~36のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項38】
前記第1の抗体分子が、請求項10~15のいずれかに定義されるとおりである、請求項22~37のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
【請求項39】
前記がんが、請求項16又は17のいずれかに定義されるとおりである、請求項22~38のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、の組み合わせに関する。本発明はまた、第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含む組み合わせに関し、第2の抗体分子が、許容治療用量(tolerated therapeutic dose)よりも低い用量で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体による免疫療法は、血液がん及び固形がんを有する患者の生存率を増加させた。臨床的に成功した抗体は、腫瘍細胞を直接標的とすることによって[1~4]、又は腫瘍微小環境でがん細胞を探し出して殺す免疫細胞(いわゆる「免疫チェックポイント抗体」)を標的化及び活性化することによって、抗腫瘍活性を発揮する[5~13]。両方のタイプの抗体は、がんを治癒する可能性があり、非常に強力だが、かなりの割合の患者は応答しないか、又は療法中に耐性を獲得する[14~17]。
【0003】
腫瘍標的化抗体の治療活性を制御する上で、FcγRには重要な役割があることは長らく知られている。しかしながら、免疫調節性抗体(例えば、免疫抑制性チェックポイントCTLA-4及びPD-1/PD-L1を標的とするもの)の有効性及び耐性を制御するFcγRの役割は、予測しにくい。CTLA-4、PD-1、及びPD-L1を標的とする抗体は、エフェクターT細胞における抑制性シグナル伝達を遮断する能力、すなわち、免疫系の「ブレーキを解除する」能力に基づいて開発され、それ自体は通常、CTLA-4、PD-1/PD-L1、又はFcγRを発現しないがん細胞を根絶した。
【0004】
したがって、驚くべきことに、本発明者らは最近、CTLA-4特異的抗体であるイピリムマブの治療活性の根底にあるFcγRの役割を報告した[18]。FcγRIIIAを活性化する高親和性一塩基多型(SNP)を発現する黒色腫患者は、黒色腫腫瘍がCTLA-4に対して陰性であるにもかかわらず、イピリムマブ療法に応答して生存率の改善を示した。反対に、PD-1に向けられた抗体の独立した研究は、FcγRの抗腫瘍活性における有害な役割を示しており、FcγRを活性化及び抑制する提案されている基礎となるメカニズム及び役割が矛盾している[19、20]。したがって、抗CTLA-4抗体及び抗PD-1/PD-L1抗体の治療効果に対するFcγR遮断の効果は予測不可能である。
【0005】
その背景を踏まえて、本発明者らは、FcγR特異的抗体を使用して、インビボでの抗CTLA-4及びPD-1抗体の治療活性に対するFcγR遮断の効果を評価した。驚くべきことに、Fc:FcγR結合(Fc:FcγR-engagement)をサイレンシングするための操作された抗体を使用するFcγRの遮断が、抗CTLA-4抗体及び抗PD1/PD-L1抗体を組み合わせて使用した場合、治療活性を高めることが見出されている。これは、抗CTLA-4抗体及び抗PD1/PD-L1抗体による治療に耐性のある患者の治療に影響を与える。更に、本発明者らはまた、Fc:FcγR結合をサイレンシングするための操作された抗体を使用するFcγRの遮断が、予期せず、より低い治療用量の抗CTLA-4抗体の使用を可能にし、それによって、望ましくない副作用及び毒性の可能性を低減することを見出した。
【発明の概要】
【0006】
上で考察されたように、本発明は、概して、第1の抗体分子と、第2の抗体分子と、第3の抗体分子と、を含む組み合わせに関する。これに関連する本発明の第1~第7の態様を以下に説明する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせを提供し、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含み、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である。
【0008】
第2の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、の使用を提供し、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である。
【0009】
第3の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための方法を提供し、本方法が、患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を投与することを含み、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である。
【0010】
第4の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子、及び
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子の組み合わせで使用するためのものであり、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、第1の抗体分子を提供する。
【0011】
第5の態様では、本発明は、患者におけるがんの治療に使用するための第1の抗体分子を提供し、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、第1の抗体分子が、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対するがんにおける耐性を低減及び/又は防止することを特徴とする。
【0012】
第6の態様では、本発明は、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含む薬学的組成物を提供する。
【0013】
第7の態様では、本発明は、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含むキットを提供する。
【0014】
本明細書に記載の第1の抗体分子は、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減されている。Fc受容体は、マクロファージなどの免疫エフェクター細胞の細胞表面に見られる膜タンパク質として当該技術分野で周知である。この名称は、抗体が受容体に結合する通常の方法である、抗体のFc領域に対するそれらの結合特異性に由来する。しかし、特定の抗体は、抗体が1つ以上のFc受容体に特異的に結合する場合、抗体のCDR配列を介してFc受容体に結合することもできる。
【0015】
Fc受容体のサブグループには、IgG抗体に特異的であるFcγ受容体(Fc-ガンマ受容体、FcガンマR)がある。Fcγ受容体には、活性化Fcγ受容体(activating Fcγ receptor)(活性化Fcγ受容体(activatory Fcγ receptor)とも表される)及び抑制性Fcγ受容体(inhibitory Fcγ receptor)の2つのタイプがある。活性化受容体及び抑制性受容体は、それぞれ、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)又は免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を介して、それらのシグナルを伝達する。ヒトでは、FcγRIIb(CD32b)は、抑制性Fcγ受容体であり、一方、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、FcγRIIIa(CD16a)、及びFcγRIVは、活性化Fcγ受容体である。FcγγRIIIbは、好中球上で発現するGPI結合受容体であり、ITAMモチーフを欠くが、脂質ラフトを架橋し、他の受容体と会合するその能力によって活性化ともみなされる。マウスでは、活性化受容体は、FcγRI、FcγRIII、及びFcγRIVである。
【0016】
抗体がFcγ受容体との相互作用を介して免疫細胞活性を調節することは周知である。具体的には、抗体免疫複合体が免疫細胞の活性化をどのように調節するかは、活性化Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体の相対的な関与によって決定される。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で活性化Fcγ受容体及び抑制性Fcγ受容体に結合し、結果として異なるA:I比(活性化:抑制の比率)をもたらす(Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510-2)。
【0017】
抑制性Fcγ受容体に結合することにより、抗体は、エフェクター細胞の機能を阻害、遮断、及び/又は下方調節することができる。
【0018】
抗体は、活性化Fcγ受容体に結合することにより、エフェクター細胞の機能を活性化し、それによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン放出、及び/又は抗体依存性エンドサイトーシス、並びに好中球の場合はネトーシス(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化及び放出)などのメカニズムを誘発することができる。活性化Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、及び/又はCD86などの特定の活性化マーカーの増加につながり得る。
【0019】
FcγRIIbに特異的に結合する本発明による第1の抗体分子は、抗体のFab領域を介して、すなわち、重鎖及び軽鎖の各々の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインで構成される、抗原に結合する抗体上の抗原結合領域を介して、このFcγ受容体に結合又はそれと相互作用する。特に、それは、免疫エフェクター細胞上に存在するFcγRIIb(特に、免疫エフェクター細胞の表面に存在するFcγRIIb)に結合する。この抗体が通常のFc領域又は普通のFc領域を有していた場合、抗体は、Fc領域とFc受容体との間の正常な相互作用により活性化Fcγ受容体に結合することもできただろう。しかし、本発明によれば、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、Fc領域が完全に欠如しているか、又はFcγ受容体への結合が低減しており、これは、Fab領域を介してFcγRIIbに特異的に結合若しくは相互作用する抗体分子がFcγ受容体に十分に結合しない、若しくはFcγ受容体に全く結合できない、若しくは相互作用できないことを意味する。これは、以下の少なくとも2つの治療上重要な結果を有すると考えられる:
1)活性化FcγRへのFc媒介性結合の欠如により、(他の)治療用抗がん抗体、例えば、本明細書で定義される第2及び/又は第3の抗体分子のFcへの結合に利用可能な活性化Fcガンマ受容体がより多く残される。これは、増え続ける活性化FcγR(対抑制性FcγR;Nimmerjahn et al;Science.2005 Dec 2;310(5753):1510~2)のクラスター形成により、チェックポイント阻害薬とともに免疫アゴニスト、及び抗IL-2Rなどの他の免疫調節性抗体の活性の根底にあるメカニズムの、エフェクター細胞媒介標的細胞の欠失が増加することが既知であることから、重要である。
2)抑制性FcγRへのFc媒介性結合の欠如又は低減により、FcγR発現免疫エフェクター細胞において抑制性シグナル伝達が低減することが示された。したがって、FcγRIIB標的抗体のFcγRへのFc媒介性結合の欠如又は低減により、第2の免疫調節性抗がん抗体に応答する免疫エフェクター細胞における活性化FcγRの向上及び抑制性Fcγシグナル伝達の低減の両方を含む、少なくとも2つのメカニズムにより治療効果がおそらく向上する。
【0020】
本発明の上記第1の態様~第7の態様の場合、これは、CTLA-4(及び/又はいくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1)に特異的に結合する抗体が、免疫エフェクター細胞上でそれらの標的分子の両方に結合することを可能にし、これは、がん細胞に対する免疫応答を上方制御し、また、これらの抗体が活性化FcγRに特異的に結合し、免疫応答を更に上方制御することを可能にするため、有利である。この効果は、そのような療法に耐性である患者において、CTLA-4/PD-1/PD-L1に特異的に結合する抗体の治療効果を驚くほど回復させることができる。
【0021】
「Fc領域を欠く」とは、Fc領域を有しない任意の抗体又はその抗体断片を含み、したがって、抗体又は抗体断片のFcγ受容体へのFc媒介性結合を防止する。かかる抗体は、Fab領域を介してFcyRllbへの特異的結合を保持する。Fc領域を欠き、本発明のこの実施形態に適合する抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv、scFv、dsFv、VH、VL、又はそのPEG化バージョンが挙げられる。
【0022】
「Fcγ受容体への結合の低減」(「親和性が低減した結合」とも称される)によって、抗体分子がFcγ受容体へのFc媒介性結合を低減させたこと、言い換えれば、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子のFc領域が、正常なヒトIgG1のFc領域よりも低い親和性で活性化Fcγ受容体に結合することを含む。結合の低減は、表面プラズモン共鳴などの技術を使用して評価することができる。これに関連して、「正常なIgG1」とは、そのグリコシル化を変化させるようには産生されていない、非変異Fc領域を有する従来どおりに産生されたIgG1を意味する。この「正常なIgG1」の基準として、CHO細胞で産生されたリツキシマブを、なんら改変せずに使用することができる(Tipton et al,Blood 2015 125:1901-1909;リツキシマブは、例えば、EP0605442に記載されている)。ヒトIgG2及びヒトIgG4は、ヒトIgG1と比較して、Fcγ受容体への親和性が低減して結合する抗体アイソタイプの例である。したがって、ヒトIgG2及びIgG4に基づく抗体は、この用語の意味の範囲内で「Fcγ受容体への結合が低減」している。
【0023】
「結合の低減」とは、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子のFc領域の活性化Fcγ受容体への結合が、正常なヒトIgG1のFc領域の同じ受容体への結合に比べて、全てのFc受容体で少なくとも10倍低減することを意味し得る。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも20倍低減する。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも30倍低減する。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも40倍低減する。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも50倍低減する。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも60倍低減する。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも70倍低減する。
【0024】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ラマ抗体、特にラマhcIgGであってよい。全ての哺乳類と同様に、ラクダ科動物は、2つの重鎖と2つの軽鎖がジスルフィド結合でY字型に結合した従来の抗体を産生する(IgG)。しかしながら、それらはまた、重鎖IgG(hcIgG)としても既知である、免疫グロブリンGの2つの特有のサブクラスであるIgG及びIgGを産生する。これらの抗体は、CH1領域が欠如する2つの重鎖のみで構成されているが、それらのN末端にVHと呼ばれる抗原結合ドメインを保持している。従来のIgは、抗原抗体相互作用の高度な多様性を可能にするように、重鎖と軽鎖の両方からの可変領域の結合を必要とする。単離された重鎖と軽鎖は依然としてこの能力を示すが、重鎖と軽鎖の対と比較すると、それらは極めて低い親和性を示す。hcIgGの特有の特徴は、別の領域と対形成する必要がなく、従来の抗体に相当する特異性、親和性、特に多様性とともに抗原に結合するそれらの単量体抗原結合領域の能力である。
【0025】
いくつかの実施形態では、結合の低減は、抗体がFcγRIへの結合に関して20倍低減した親和性を有することを意味する。
【0026】
Fc受容体への結合が低減したIgG抗体(例えば、IgG1又はIgG2抗体)を得るために、非グリコシル化(aglycosylation)によりIgG抗体のFc領域を改変することが可能である。例えば、IgG1抗体のそのような非グリコシル化は、例えば、抗体鎖の297位(N297X)におけるアスパラギンのアミノ酸置換によって達成され得る。置換は、グルタミン(N297Q)、若しくはアラニン(N297A)、若しくはグリシン(N297G)、若しくはアスパラギン(N297D)で、又はセリン(N297S)によって行われてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、置換は、グルタミン(N297Q)での置換である。
【0027】
Fc領域は、例えば、Jacobsen FW et al.,JBC 2017,292,1865~1875に記載の更なる置換により修飾されてもよい(例えば表1を参照されたい)。そのような更なる置換には、L242C、V259C、A287C、R292C、V302C、L306C、V323C、I332C、及び/又はK334Cが含まれる。そのような修飾には、IgG1における以下の置換の組み合わせも含まれる:
L242C、N297G、K334C、
A287C、N297G、L306C、
R292C、N297G、V302C、
N297G、V323C、I332C、及び
V259C、N297G、L306C。
【0028】
代替的に、Fc領域において炭水化物は酵素的に切断されることができ、及び/又は抗体を生成するために使用される細胞は、炭水化物の付加を障害する培地で増殖されることができ、及び/又は糖を付加する能力が欠如するように操作された細胞は、抗体生成のために、又は抗体をグリコシル化しない、若しくは機能的にグリコシル化しない宿主細胞、例えば上記で説明したように、E.coliを含む原核生物中での抗体の生成によって用いることができる。
【0029】
Fcガンマ受容体に対する親和性の低減は、抗体のFc領域におけるアミノ酸の操作(このような修飾は、例えば、Xencor、Macrogenics、及びGenentechによってこれまでに説明されている)を介して、又は抗体をグリコシル化しない、若しくは機能的にグリコシル化しない宿主細胞、例えば、E.coliを含む原核生物中での抗体の生成によって更に達成し得る。
【0030】
Fc領域を介してFcγ受容体への結合が低減していることに加えて、いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子が、標的に結合するときにFcγRIIbのリン酸化を引き起こさないことが好ましい。FcγRIIbのITIMのリン酸化は、免疫細胞の活性を遮断する抑制現象である。
【0031】
Fcガンマ受容体を発現する免疫エフェクター細胞は、本明細書では主に自然エフェクター細胞を指し、具体的には、マクロファージ、好中球、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、肥満細胞、及び血小板を含む。細胞傷害性T細胞及びメモリーT細胞は、通常はFcγRを発現しないが、特定の状況では発現し得る。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、自然免疫エフェクター細胞である。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、マクロファージである。
【0032】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト抗体である。
【0033】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト由来の抗体、すなわち、本明細書に記載されるように改変された元々ヒトの抗体である。
【0034】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体との類似性を高めるように改変された元々非ヒトの抗体である。ヒト化抗体は、例えば、マウス抗体又はラマ抗体であってよい。
【0035】
上で考察されたように、第1の抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル起源の抗体分子であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下の定常領域(CH及びCL)を含む:
IgG1-CH[配列番号1]
【化1】
IgG1-CL[配列番号2]
【化2】
これらの定常領域(配列番号1及び配列番号2)は、ヒト由来である。Fc領域は、そのFc領域を介してFcγ受容体への結合を低減させるために更に改変されている。本明細書で言及されるように、いくつかの実施形態では、配列番号1がN297Q置換により非グリコシル化され、次いで、IgG1-CHが以下のCH配列[配列番号195]を有し、297Q残基が太字でマークされていることが好ましい。
【化3】
いくつかの実施形態及び/又は例では、マウス抗体分子が使用される。これらはサロゲート抗体にも使用できる。これらは、以下の定常領域(CH及びCL)を含む。
CH[配列番号196]
【化4】
CL[配列番号197]
【化5】
したがって、これらの定常領域(配列番号196及び配列番号197)はマウス由来のものである。配列番号196は、N297A変異を含む(上の配列では、297A残基は太字で示されている)。マウス配列中のこのN297A変異は、ヒト配列中のN297Q変異に対応する。
【0037】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下のクローンのうちの1つ以上の配列を含む:
【0038】
抗体クローン: 1A01
1A01-VH[配列番号3]
【化6】
1A01-VL[配列番号27]
【化7】
CDR領域
CDRH1: DYYMN[配列番号51]
CDRH2: LIGWDGGSTYYADSVKG[配列番号52]
CDRH3: AYSGYELDY[配列番号53]
CDRL1: SGSSSNIGNNAVN[配列番号54]
CDRL2: DNNNRPS[配列番号55]
CDRL3: AAWDDSLNASI[配列番号56]
【0039】
抗体クローン: 1B07
1B07-VH[配列番号4]
【化8】
1B07-VL[配列番号28]
【化9】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号57]
CDRH2: FTRYDGSNKYYADSVRG[配列番号58]
CDRH3: ENIDAFDV[配列番号59]
CDRL1: SGSSSNIGNNAVN[配列番号60]
CDRL2: DNQQRPS[配列番号61]
CDRL3: WDDRLFGPV[配列番号62]
【0040】
抗体クローン: 1C04
1C04-VH[配列番号5]
【化10】
1C04-VL[配列番号29]
【化11】
CDR領域
CDRH1: SYAMS[配列番号63]
CDRH2: SISDSGAGRYYADSVEG[配列番号64]
CDRH3: THDSGELLDAFDI[配列番号65]
CDRL1: SGSSSNIGSNHVL[配列番号66]
CDRL2: GNSNRPS[配列番号67]
CDRL3: AAWDDSLNGWV[配列番号68]
【0041】
抗体クローン: 1E05
1E05-VH[配列番号6]
【化12】
1E05-VL[配列番号30]
【化13】
CDR領域
CDRH1: TYAMN[配列番号69]
CDRH2: VISYDGSNKNYVDSVKG[配列番号70]
CDRH3: NFDNSGYAIPDAFDI[配列番号71]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号72]
CDRL2: DNNSRPS[配列番号73]
CDRL3: AAWDDSLGGPV[配列番号74]
【0042】
抗体クローン: 2A09
2A09-VH[配列番号7]
【化14】
2A09-VL[配列番号31]
【化15】
CDR領域
CDRH1: NAWMS[配列番号75]
CDRH2: YISRDADITHYPASVKG[配列番号76]
CDRH3: GFDYAGDDAFDI[配列番号77]
CDRL1: SGSSSNIGSNAVN[配列番号78]
CDRL2: GNSDRPS[配列番号79]
CDRL3: AAWDDSLNGRWV[配列番号80]
【0043】
抗体クローン: 2B08
2B08-VH[配列番号8]
【化16】
2B08-VL[配列番号32]
【化17】
CDR領域
CDRH1: DYYMS[配列番号81]
CDRH2: LIGHDGNNKYYLDSLEG[配列番号82]
CDRH3: ATDSGYDLLY[配列番号83]
CDRL1: SGSSSNIGNNAVN[配列番号84]
CDRL2: YDDLLPS[配列番号85]
CDRL3: TTWDDSLSGVV[配列番号86]
【0044】
抗体クローン: 2E8-VH
2E8-VH[配列番号9]
【化18】
2E8-VL[配列番号33]
【化19】
CDR領域
CDRH1: DYYMS[配列番号87]
CDRH2: AIGFSDDNTYYADSVKG[配列番号88]
CDRH3: GDGSGWSF[配列番号89]
CDRL1: SGSSSNIGNNAVN[配列番号90]
CDRL2: DNNKRPS[配列番号91]
CDRL3: ATWDDSLRGWV[配列番号92]
【0045】
抗体クローン: 5C04
5C04-VH[配列番号10]
【化20】
5C04-VL[配列番号34]
【化21】
CDR領域
CDRH1: NYGMH[配列番号93]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号94]
CDRH3: WRDAFDI[配列番号95]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号96]
CDRL2: SDNQRPS[配列番号97]
CDRL3: AAWDDSLSGSWV[配列番号98]
【0046】
抗体クローン: 5C05
5C05-VH[配列番号11]
【化22】
5C05-VL[配列番号35]
【化23】
CDR領域
CDRH1: TYGMH[配列番号99]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号100]
CDRH3: ENFDAFDV[配列番号101]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号102]
CDRL2: SNSQRPS[配列番号103]
CDRL3: AAWDDSLNGQVV[配列番号104]
【0047】
抗体クローン: 5D07
5D07-VH[配列番号12]
【化24】
5D07-VL[配列番号36]
【化25】
CDR領域
CDRH1: TYGMH[配列番号105]
CDRH2: VIAYDGSKKDYADSVKG[配列番号106]
CDRH3: EYRDAFDI[配列番号107]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号108]
CDRL2: GNSNRPS[配列番号109]
CDRL3: AAWDDSVSGWM[配列番号110]
【0048】
抗体クローン: 5E12
5E12-VH[配列番号13]
【化26】
5E12-VL[配列番号37]
【化27】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号111]
CDRH2: VISYDGINKDYADSMKG[配列番号112]
CDRH3: ERKDAFDI[配列番号113]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号114]
CDRL2: SNNQRPS[配列番号115]
CDRL3: ATWDDSLNGLV[配列番号116]
【0049】
抗体クローン: 5G08
5G08-VH[配列番号14]
【化28】
5G08-VL[配列番号38]
【化29】
CDR領域
CDRH1: NYGMH[配列番号117]
CDRH2: VISYDGSNRYYADSVKG[配列番号118]
CDRH3: DRWNGMDV[配列番号119]
CDRL1: SGSSSNIGAGYDVH[配列番号120]
CDRL2: ANNQRPS[配列番号121]
CDRL3: AAWDDSLNGPWV[配列番号122]
【0050】
抗体クローン: 5H06
5H06-VH[配列番号15]
【化30】
5H06-VL[配列番号39]
【化31】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号123]
CDRH2: VISYDGSDTAYADSVKG[配列番号124]
CDRH3: DHSVIGAFDI[配列番号125]
CDRL1: SGSSSNIGSNTVN[配列番号126]
CDRL2: DNNKRPS[配列番号127]
CDRL3: SSYAGSNNVV[配列番号128]
【0051】
抗体クローン: 6A09
6A09-VH[配列番号16]
【化32】
6A09-VL[配列番号40]
【化33】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号129]
CDRH2: VTSYDGNTKYYANSVKG[配列番号130]
CDRH3: EDCGGDCFDY[配列番号131]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号132]
CDRL2: GNSNRPS[配列番号133]
CDRL3: AAWDDSLNEGV[配列番号134]
【0052】
抗体クローン: 6B01
6B01-VH[配列番号17]
【化34】
6B01-VL[配列番号41]
【化35】
CDR領域
CDRH1: NYGMH[配列番号135]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号136]
CDRH3: DQLGEAFDI[配列番号137]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号138]
CDRL2: DNNKRPS[配列番号139]
CDRL3: ATWDDSLSGPV[配列番号140]
【0053】
抗体クローン: 6C11
6C11-VH[配列番号18]
【化36】
6C11-VL[配列番号42]
【化37】
CDR領域
CDRH1: DYGMS[配列番号141]
CDRH2: AISGSGSSTYYADSVKG[配列番号142]
CDRH3: GDIDYFDY[配列番号143]
CDRL1: TGSSSNFGAGYDVH[配列番号144]
CDRL2: ENNKRPS[配列番号145]
CDRL3: AAWDDSLNGPV[配列番号146]
【0054】
抗体クローン: 6C12
6C12-VH[配列番号19]
【化38】
6C12-VL[配列番号43]
【化39】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号147]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号148]
CDRH3: ERRDAFDI[配列番号149]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号150]
CDRL2: SDNQRPS[配列番号151]
CDRL3: ATWDSDTPV[配列番号152]
【0055】
抗体クローン: 6D01
6D01-VH[配列番号20]
【化40】
6D01-VL[配列番号44]
【化41】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号153]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号154]
CDRH3: DHSAAGYFDY[配列番号155]
CDRL1: SGSSSNIGSNTVN[配列番号156]
CDRL2: GNSIRPS[配列番号157]
CDRL3: ASWDDSLSSPV[配列番号158]
【0056】
抗体クローン: 6G03
6G03-VH[配列番号21]
【化42】
6G03-VL[配列番号45]
【化43】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号159]
CDRH2: GISWDSAIIDYAGSVKG[配列番号160]
CDRH3: DEAAAGAFDI[配列番号161]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号162]
CDRL2: GNTDRPS[配列番号163]
CDRL3: AAWDDSLSGPVV[配列番号164]
【0057】
抗体クローン: 6G08
6G08-VH[配列番号22]
【化44】
6G08-VL[配列番号46]
【化45】
CDR領域
CDRH1: SYGIS[配列番号165]
CDRH2: GISGSGGNTYYADSVKG[配列番号166]
CDRH3: SVGAYANDAFDI[配列番号167]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号168]
CDRL2: GDTNRPS[配列番号169]
CDRL3: AAWDDSLNGPV[配列番号170]
【0058】
抗体クローン: 6G11
6G11-VH[配列番号23]
【化46】
6G11-VL[配列番号47]
【化47】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号171]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号172]
CDRH3: ELYDAFDI[配列番号173]
CDRL1: TGSSSNIGAGYDVH[配列番号174]
CDRL2: ADDHRPS[配列番号175]
CDRL3: ASWDDSQRAVI[配列番号176]
【0059】
抗体クローン: 6H08
6H08-VH[配列番号24]
【化48】
6H08-VL[配列番号48]
【化49】
CDR領域
CDRH1: NYGMH[配列番号177]
CDRH2: VISYDGSNKYYAD SVKG[配列番号178]
CDRH3: EYKDAFDI[配列番号179]
CDRL1: TGSSSNIGSNTVN[配列番号180]
CDRL2: DNNKRPS[配列番号181]
CDRL3: QAWGTGIRV[配列番号182]
【0060】
抗体クローン: 7C07
7C07-VH[配列番号25]
【化50】
7C07-VL[配列番号49]
【化51】
CDR領域
CDRH1: SYGMH[配列番号183]
CDRH2: VISYDGSNKYYADSVKG[配列番号184]
CDRH3: EFGYIILDY[配列番号185]
CDRL1: SGSSSNIGSNTVN[配列番号186]
CDRL2: RDYERPS[配列番号187]
CDRL3: MAWDDSLSGVV[配列番号188]
【0061】
抗体クローン: 4B02
4B02-VH[配列番号26]
【化52】
4B02-VL[配列番号50]
【化53】
CDR領域
CDRH1: NHGMH[配列番号189]
CDRH2: VISYDGTNKYYADSVRG[配列番号190]
CDRH3: ETWDAFDV[配列番号191]
CDRL1: SGSSSNIGSNNAN[配列番号192]
CDRL2: DNNKRPS[配列番号193]
CDRL3: QAWDSSTVV[配列番号194]
【0062】
したがって、いくつかの実施形態では、第1の抗体分子は、以下のCDRを含む可変重鎖(VH)を含み得る:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191。
【0063】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、以下のCDRを含む可変軽鎖(VL)を含む:
(i)配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
【0064】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、以下からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む:配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26。
【0065】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、以下からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、及び配列番号50。
【0066】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、以下のCDRアミノ酸配列を含む:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53及び配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59及び配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65及び配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71及び配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77及び配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83及び配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89及び配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95及び配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101及び配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107及び配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113及び配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119及び配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125及び配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131及び配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137及び配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143及び配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149及び配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155及び配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161及び配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167及び配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173及び配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179及び配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185及び配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191及び配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
【0067】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第1の抗体分子は、以下のアミノ酸配列を含む:
(i)配列番号3及び配列番号27、又は
(ii)配列番号4及び配列番号28、又は
(iii)配列番号5及び配列番号29、又は
(iv)配列番号6及び配列番号30、又は
(v)配列番号7及び配列番号31、又は
(vi)配列番号8及び配列番号32、又は
(vii)配列番号9及び配列番号33、又は
(viii)配列番号10及び配列番号34、又は
(ix)配列番号11及び配列番号35、又は
(x)配列番号12及び配列番号36、又は
(xi)配列番号13及び配列番号37、又は
(xii)配列番号14及び配列番号38、又は
(xiii)配列番号15及び配列番号39、又は
(xiv)配列番号16及び配列番号40、又は
(xv)配列番号17及び配列番号41、又は
(xvi)配列番号18及び配列番号42、又は
(xvii)配列番号19及び配列番号43、又は
(xviii)配列番号20及び配列番号44、又は
(xix)配列番号21及び配列番号45、又は
(xx)配列番号22及び配列番号46、又は
(xxi)配列番号23及び配列番号47、又は
(xxii)配列番号24及び配列番号48、又は
(xxiii)配列番号25及び配列番号49、又は
(xxiv)配列番号26及び配列番号50。
【0068】
いくつかの実施形態、時として好ましい実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下のCDR領域を含む:配列番号171(CDRH1)、配列番号172(CDRH2)、配列番号173(CDRH3)、配列番号174(CDRL1)、配列番号175(CDRL2)、及び配列番号176(CDRL3)、すなわちクローン6G11のCDR領域。
【0069】
いくつかの実施形態、時として好ましい実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下の定常領域:配列番号1(CH)及び配列番号2(CL)、並びに以下の可変領域:配列番号23(VL)及び配列番号47(VH)、すなわちクローン6G11の定常領域及び可変領域を含み、この抗体分子は更に、そのFc領域を介してFcγ受容体への結合が低減するように改変されている。いくつかの実施形態、時として好ましい実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、以下の定常領域:配列番号195(CH)及び配列番号2(CL)、並びに以下の可変領域:配列番号23(VL)及び配列番号47(VH)、すなわち、N297Q変異を含むクローン6G11の定常領域及び可変領域を含む。
【0070】
第1の態様~第7の態様では本明細書で定義されるように、第2の抗体分子は、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する。本明細書で定義される第3の抗体分子は、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する。いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体分子は、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体にも結合する。いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体分子は、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体にも結合する。
【0071】
第2の抗体分子は、プログラム死リガンド1(PD-L1)、別名、CD274又はB7ホモログ1(B7-H1)に特異的に結合することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体分子は、抗PD-L1抗体の以下の非限定的な例のうちの1つ以上から選択される:
・アテゾリズマブ(現在使用が承認されている)、
・デュルバルマブ(現在使用が承認されている)、
・アベルマブ(現在使用が承認されている)、
・CS1001(現在臨床開発中)、
・KN035(エンバフォリマブ)-米国、中国、及び日本で現在臨床評価中の皮下製剤を有するPD-L1抗体、
・CK-301(Checkpoint Therapeuticsにより現在臨床開発中)
【0073】
好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、又はアベルマブである。いくつかの実施形態では、PD-L1に特異的に結合する抗体は、これらの抗体のうちの2つ以上の組み合わせである。
【0074】
代替的又は追加的な実施形態では、第2の抗体分子は、CD279としても知られるプログラム細胞死タンパク質1(PD1)に特異的に結合することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体分子は、抗PD-1抗体の以下の非限定的な例のうちの1つ以上から選択される:
・ペムブロリズマブ(現在使用が承認されている)、
・ニボルマブ(現在使用が承認されている)、
・セミプリマブ(現在使用が承認されている)、
・カムレリズマブ(現在使用が承認されている)、
・スパルタリズマブ(現在臨床開発中)、
・ドスタルリマブ(現在臨床開発中)、
・チスレリズマブ(現在臨床開発中)、
・JTX-4014(現在臨床開発中)、
・シンチリマブ(IBI308)(現在臨床開発中)、
・トリパリマブ(JS001)(現在臨床開発中)、
・AMP-224(現在臨床開発中)、
・AMP-514(MEDI0680)(現在臨床開発中)。
【0076】
好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、又はカムレリズマブである。いくつかの実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、これらの抗体のうちの2つ以上の組み合わせである。好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する抗体は、ペムブロリズマブである。
【0077】
第3の抗体分子は、CTLA-4に特異的に結合する。CTLA-4、すなわち、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4の略語であるCTLA4は、CD152としても既知である。それは、免疫チェックポイントとして機能し、免疫応答を下方制御するタンパク質受容体である。CTLA4は制御性T細胞において恒常的に発現されるが、活性化後に通常のT細胞でのみ上方制御される-特にがんにおいて注目すべき現象である。いくつかの実施形態では、第3の抗体分子は、イピリムマブ(Bristol-Myers SquibbからのYervoy(登録商標)など)である。いくつかの実施形態では、第3の抗体分子は、トレメリムマブ(CP-675,206、旧称チシリムマブ)であり、これは、CTLA-4に対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、以前はPfizerによる開発下にあり、現在はMedImmuneにより臨床開発中である。好ましい実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体は、イピリムマブである。
【0078】
チェックポイント抑制性受容体であるCTLA-4及びPD-1/PD-L1は、T細胞の活性化及び増殖を制限するように機能し、そのため、免疫ホメオスタシスの制御及び自己に対する反応の防止において重要である。同時に、腫瘍は、可溶性因子の放出によって、又は同種の相互作用を通して、T細胞の活性化及び増殖を制限するこれらの抑制性免疫受容体を上方制御及び/又は関与させる免疫攻撃を回避することができる。例えば、インターフェロンγの曝露に応答する腫瘍は、(エフェクターT細胞上の)PD-1分子のライゲーション時に、エフェクターT細胞の活性化、増殖、及び最終的にはエフェクターT細胞媒介性抗腫瘍免疫を低減するPD-L1を上方制御することができる。腫瘍からの他の因子(例えば、サイトカイン又はケモカイン)の放出は、免疫抑制性受容体の上方制御を伴って、例えば、腫瘍関連マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞、又はT制御細胞の成熟を促進し、CTLA-4又はPD-1をエフェクターT細胞にライゲーションするときに、T細胞の増殖及び活性化を制限し、T細胞媒介性抗腫瘍免疫を低減する可能性がある。したがって、CTLA-4、PD-1、及びPD-L1に対する抗体が抗腫瘍活性を増加させ得る1つのメカニズムは、CTLA-4及び/又はPD-1のそれらの天然リガンドとの相互作用、並びにCD8+又はCD4+であり得るエフェクターT細胞における関連する抑制性シグナル伝達を遮断することによるものである。
【0079】
対照的に、FcγRは、CTLA-4、PD-1、及びPD-L1に対する抗体の治療活性を異なる方法で調節する。抗CTLA-4抗体の治療活性は、FcγRのそれらの関与によって増強されるが[18、21]、抗PD-1抗体の活性は、FcγRの関与[19、20]及び公開されている特許出願第WO2021/009358号によって妨げられる。FcγRによる抗PD-L1抗体の治療活性の腫瘍微小環境の状況依存的な増強が記載されている[19][22]。
【0080】
特に抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体のFcγR調節を支配するメカニズムは完全には特徴付けられていないが、利用可能なデータは、FcγR媒介性の標的細胞の枯渇を引き起こすために、免疫抑制細胞では十分に高く発現されるが、免疫エフェクター細胞では十分に発現されない標的を有する抗体にとって、FcγRの関与が有益であることを示唆する。例えば、CTLA-4は、エフェクターT細胞と比較して、高く発現され、腫瘍内Tregにおいてより高く発現されている。したがって、FcγRヒト化マウスにおいて、(例えば、ヒトIgG1アイソタイプの)FcγR関与抗CTLA-4抗体は、Tregを効率的に枯渇させたが、CD8+エフェクター細胞は枯渇させなかった[18]。抗CTLA-4抗体の治療活性におけるFcγRの積極的な役割と更に一致して、FcγRIIIaの高親和性SNPを有する黒色腫患者は、ヒトFcγR関与IgG1抗CTLA-4抗体であるイピリムマブで治療した場合、低親和性SNPを発現する患者と比較して、生存率の改善を示した。
【0081】
逆に、PD-1は、ヒト腫瘍内CD8+T細胞を含むエフェクターCD8+T細胞[19]で高く発現され(例えば、公開されている特許出願第WO2021/009358号を参照)、(免疫抑制性)Treg細胞[19]と比較して、エフェクターでより高く発現され得る。CD8+T細胞を発現する抗体でコーティングされたPD-1のFcγR依存性枯渇[19]、又はCD8+T細胞から腫瘍関連マクロファージへの抗PD-1抗体のFcγR依存性伝達[20]のメカニズムによるかどうかにかかわらず、FcγRは、インビボで抗PD-1抗体の有効性を低減させることが示されている。ヒトの臨床環境との関連性は、臨床的に関連するニボルマブ及びペムブロリズマブ抗PD-1抗体、ヒトFcγR発現マクロファージ、並びにヒト腫瘍内環境に関連するレベルでPD-1を発現するヒトT細胞に関するインビトロメカニズムの研究によって提供される([20]及び公開された特許出願第WO2021/009358号)。
【0082】
第2の抗体分子はまた、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合することができる。第3の抗体分子は、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する。
【0083】
上で考察されたように、Fcγ受容体は、免疫エフェクター細胞上に存在する。少なくとも1つのFcγ受容体は、第1の抗体分子が結合するFcγRIIbと同じ免疫エフェクター細胞上に存在してもよく、かつ/又はそれは、別の免疫エフェクター細胞上に存在するFcγ受容体であってもよい。
【0084】
免疫エフェクター細胞は、以下を含み得るが、これらに限定されない:マクロファージ、好中球、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、肥満細胞、血小板、細胞傷害性T細胞、及びメモリーT細胞。いくつかの好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞は、マクロファージである。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子は、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される。
【0086】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子は、モノクローナル抗体分子又はモノクローナル由来の抗体分子である。
【0087】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子は、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそのFc領域を介してFcγ受容体に結合する能力を保持するそれらの抗原結合断片からなる群から選択される。
【0088】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子は、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体分子、又はヒト由来のIgG抗体分子である。
【0089】
第3の抗体分子(及びいくつかの実施形態では、第2の抗体分子)のFc領域によって特異的に結合されるFcγ受容体は、いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載される活性化Fcγ受容体であり得る。これは、エフェクター細胞の機能を活性化し、それによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン放出、及び/又は抗体依存性エンドサイトーシス、並びに好中球の場合はネトーシス(すなわち、NET(好中球細胞外トラップ)の活性化及び放出)などのメカニズムを誘発することができる。活性化Fcγ受容体に結合する抗体も、CD40、MHCII、CD38、CD80、及び/又はCD86などの特定の活性化マーカーの増加につながり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子は、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するために操作される。例えば、活性化Fcγ受容体に結合できるようにするために、第2の抗体分子及び/又は第3の抗体のFc領域は、いくつかの実施形態では、297位でグリコシル化され得る。この位置の炭水化物残基は、Fcγ受容体への結合に役立つ。いくつかの実施形態では、これらの残基は、末端ガラクトース残基及びシアル酸とともに、GlnNAc、マンノースを含む二分岐炭水化物であることが好ましい。Fc分子のCH部分を含む必要がある。好ましい実施形態では、第2の抗体分子は、PD-L1に特異的に結合し、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作される。
【0091】
他の実施形態では、第2の抗体は、FcγRへの結合を低減するために操作され得る。例えば、抗PD-1抗体チスレリズマブ(Beigene;IgG4 S228P、E233P、F234V、L235A、D265A、R409K)及び/又は抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(Roche/Genentech;IgG1 N297A)。
【0092】
本明細書に記載の第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子の組み合わせは、患者におけるがんの治療において使用することができる。
【0093】
本明細書に開示される第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子を含む薬学的組成物及びキットは、患者におけるがんの治療における使用にも好適であり、また、以下の実施形態は、本明細書に開示される薬学的組成物及びキットのそのような使用に適用されると理解されるであろう。
【0094】
「患者」(又は「対象」)という用語は、本明細書で使用される場合、がんを有すると診断された、又はがんを有する可能性が高いと特定された、及び/又はがんの症状を呈する、ヒトを含む動物を指す。がんは、FcγRIIb陰性がん又はFcγRIIb陰性がんである可能性が高いと考えられるがんであることを含む。また、がんは、FcγRIIb陽性がん又はFcγRIIb陽性がんである可能性が高いと考えられるがんであることを含む。
【0095】
患者は、哺乳類又は非哺乳類であり得る場合を含む。好ましくは、患者はヒトであるか、又はウマ、若しくはウシ、若しくはヒツジ、若しくはブタ、若しくはラクダ、若しくはイヌ、若しくはネコ等の哺乳類である。最も好ましくは、哺乳類患者は、ヒトである。
【0096】
「呈する」とは、対象が、がん症状及び/若しくはがん診断マーカーを表すこと、並びに/又はがん症状及び/若しくはがん診断マーカーを測定、及び/若しくは評価、及び/若しくは定量化することができることを含む。
【0097】
医薬当業者であれば、がん症状及びがん診断マーカーがどのようなものであるか、並びにがん症状の重症度に低減若しくは増加があるかどうか、又はがん診断マーカーに低減若しくは増加があるかどうかをどのように測定及び/若しくは評価及び/若しくは定量化するか、並びにがん症状及び/若しくはがん診断マーカーを使用して、どのようにがんに関する予後診断を形成することができるかは、容易に明らかであろう。
【0098】
がん治療は、多くの場合、一連の治療として投与される、すなわち治療剤は、ある期間にわたって投与される。一連の治療の時間の長さは、他の理由の中でもとりわけ、投与される治療薬の種類、治療されるがんの種類、治療されるがんの重症度、並びに患者の年齢及び健康状態を含むいくつかの要因に依存する。
【0099】
いくつかの実施形態では、がんは、FcyRllb陽性B細胞がんである。「FcyRllb陽性がん」とは、レベルが異なっていても、FcγRIIBを発現する任意のがんを含む。FcγRIIBの発現は、慢性リンパ球性白血病及びマントル細胞リンパ腫で最も顕著であり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では中程度であり、濾胞性リンパ腫では最も顕著ではない。しかしながら、場合によっては、一般的に低レベルのFcyRIIBを発現するがん(例えば、濾胞性リンパ腫)を有する対象は、非常に高いレベルのFcγRIIB発現を有し得る。異なるタイプのB細胞がんにおけるFcγRIIBの発現レベル(特に、上述のもの)は、抗体分子リツキシマブの内在化速度と相関する。したがって、FcyRIIBの発現及び抗体分子の関連する内在化は、B細胞がんによって共有される共通のメカニズムであると考えられる(Lim et al.,2011,Blood,118(9):2530-40)。抗体分子のFcyRIIB依存性初期化は、本明細書に開示されるFcyRIIBに対する抗体によって遮断することができる。
【0100】
したがって、本明細書に開示される抗体の組み合わせは、B細胞がん、特に、再発性マントル細胞リンパ腫及び/若しくは難治性マントル細胞リンパ腫、並びに/又は再発性濾胞性リンパ腫及び/若しくは難治性濾胞性リンパ腫、並びに/又は再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用することができる。
【0101】
より好ましい場合があるいくつかの他の実施形態では、がんは、FcγRIIb陰性がんである。「FcγRIIb陰性がん」とは、いずれのFcγRIIb受容体も提示しない任意のがんを含む。これは、抗FcγRIIB特異的抗体を使用して、Tutt et al,J Immunol,2015,195(11) 5503-5516に示されているような免疫組織化学及びフローサイトメトリーを含む様々な方法で検査することができる。
【0102】
いくつかの好ましい実施形態では、がんは、がん腫、肉腫、及びリンパ腫からなる群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、がんは、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、低分化がん又は未分化がん、大細胞がん及び小細胞がんからなる群から選択されるがん腫である。
【0104】
いくつかの実施形態では、がんは、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、及び平滑筋肉腫からなる群から選択される肉腫である。
【0105】
FcγRIIb陰性がんは、黒色腫、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、転移性ホルモン不応性前立腺がん、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、膀胱がん、腎臓がん、中皮腫、メルケル細胞がん、頭頸部がん、及び膵臓がんからなる群から選択され得る。
【0106】
追加的又は代替的な実施形態では、本明細書に記載されるがんは、CTLA-4及び/又はPD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する抗体による治療が示される任意のがんを含むことが意図されている。「示される」とは、当該抗体が、当該がんの治療において使用するために承認されている場合、又はこれらのがんに対する臨床試験において使用されている場合、又はこれらのがんの治療において潜在的に有用であると(例えば、インビボ動物モデル又はインビトロ研究から)示唆されている場合を意味する。
【0107】
上記のがんの各々はよく知られており、症状及びがん診断マーカーは、それらのがんを治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上述のタイプのがんを治療するために使用される症状、がん診断マーカー、及び治療剤は、医薬当業者には既知であろう。
【0108】
多数のがんの診断、予後診断、進行の臨床的定義は、病期分類として知られている特定の分類に依る。それらの病期分類システムは、いくつかの異なるがん診断マーカー及びがん症状を照合して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行の概要を提供するように機能する。病期分類システムを使用して、がんの診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行をどのように評価するか、並びにそうするためにどのがん診断マーカー及びがん症状を使用するべきかは、腫瘍学分野の当業者には既知であろう。
【0109】
「がんの病期分類」には、病期0、病期I、病期II、病期III、及び病期IVを含む、Raiの病期分類、並びに/又は病期A、病期B、及び病期Cを含む、Binetの病期分類、並びに/又は病期I、病期II、病期III、及び病期IVを含む、Ann Arbourの病期分類が挙げられる。
【0110】
がんは、細胞の形態に異常を引き起こし得ることが知られている。これらの異常は、多くの場合、特定のがんで再現性よく生じ、これは形態におけるこれらの変化の検査(あるいは組織学的検査としても知られる)が、がんの診断又は予後診断に使用され得ることを意味する。細胞の形態を検査するために試料を視覚化し、視覚化用の試料を準備するための技術、例えば、光学顕微鏡法又は共焦点顕微鏡法は、当該技術分野でよく知られている。
【0111】
「組織学的検査」とは、小さな成熟リンパ球の存在、並びに/又は細胞質の境界が狭い小さな成熟リンパ球の存在、識別可能な核小体を欠く高密度の核を有する小さな成熟リンパ球の存在、並びに/又は細胞質の境界が狭く、識別可能な核小体を欠く高密度の核を有する小さな成熟リンパ球の存在、及び/又は異型細胞、及び/若しくは非正円形細胞(cleaved cell)、及び/若しくは前リンパ球の存在が挙げられる。
【0112】
がんは、細胞のDNAの変異の結果であり、これにより、細胞が細胞死を回避し、又は細胞が制御不能に増殖するようになることはよく知られている。したがって、これらの変異の検査(細胞遺伝学的検査としても知られる)は、がんの診断及び/又は予後診断を評価するための有用なツールであり得る。この例は、染色体上の位置13q14.1の欠失であり、これは、慢性リンパ球性白血病の特徴である。細胞の変異を検査するための技術、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)は、当該技術分野でよく知られている。
【0113】
「細胞遺伝学的検査」とは、細胞(特に、染色体)のDNAの検査を含む。細胞遺伝学的検査を使用して、難治性がん及び/又は再発がんの存在と関連し得る、DNAの変化を特定することができる。かかるものとしては、以下が含まれ得る:13番染色体の長腕の欠失、及び/又は染色体位置13q14.1の欠失、及び/又は12番染色体のトリソミー、及び/又は12番染色体の長腕の欠失、及び/又は11番染色体の長腕の欠失、及び/又は11qの欠失、及び/又は6番染色体の長腕の欠失、及び/又は6qの欠失、並びに/又は17番染色体の短腕の欠失、及び/又は17pの欠失、及び/又はt(11:14)の転座、及び/又は(q13:q32)の転座、並びに/又は抗原遺伝子受容体の再編成、及び/又はBCL2の再編成、及び/又はBCL6の再編成、及び/又はt(14:18)の転座、及び/又はt(11:14)の転座、及び/又は(q13:q32)の転座、及び/又は(3:v)の転座、及び/又は(8:14)の転座、及び/又は(8:v)の転座、及び/又はt(11:14)及び(q13:q32)の転座。
【0114】
がん患者は、特定の身体症状を呈することが既知であり、これは多くの場合、がんが身体に負担をかけている結果である。これらの症状は、多くの場合、同じがんで再発するため、疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行の特徴であり得る。医薬当業者であれば、どの身体症状がどのがんと関連するか、並びにそれらの身体系の評価が疾患の診断、及び/又は予後診断、及び/又は進行とどのように相関し得るかを理解するであろう。「身体症状」としては、肝腫及び/又は脾腫が挙げられる。
【0115】
本明細書に記載の組み合わせ、使用、方法、薬学的組成物、及びキットは、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性のあるがんの治療に有用である。
【0116】
「治療に対して耐性である」とは、患者が、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対する応答性のレベルが、以前のレベルの応答性若しくは予想されるレベルの応答性、又は他のタイプのがんを治療するときに見られる応答性のレベルと比較して低減していることを意味する。これには、患者が以前に当該抗体分子で治療された(すなわち、患者が耐性を獲得した)状況が含まれ、患者が当該抗体分子で治療されたことがない(すなわち、患者が本質的に耐性である)状況も含まれる。
【0117】
治療に対する抵抗性は、様々な方法で、例えば、患者をモニタリングして、がんが期待どおりに後退していることを確認し、治療に全く応答しない患者を特定することによって、測定することができる。治療に対する耐性は、例えば、当該技術分野で既知であり、本明細書に記載されるように、イムノスコア試験を使用して測定することができる。
【0118】
「治療に対して耐性である」とは、例えば、これらの抗体(又は抗体の組み合わせ)が測定可能な治療効果を発揮しないことが以前に見出されていた場合、PD-1、及び/又はPD-L1、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体による治療がまだ示されていないがんのタイプも含まれる。
【0119】
また、腫瘍変異負荷(TMB)が低い可能性のあるがんも含まれる。「腫瘍変異負荷」とは、がん細胞内の遺伝子変異の数を意味する。そのような測定は、当該技術分野で既知の臨床検査によって決定することができる。高いTMBを有する細胞は、異常であると認識される可能性が高く、免疫系によって攻撃されることが知られており、高いTMBが、PD-1/PD-L1遮断の応答バイオマーカーとして特定されている(Goodman et al.,2017,Mol Cancer Ther.,16(11):2598-2608)。したがって、低いTMBを有するがんは、本発明の組み合わせで首尾よく標的化され得、これは、上記のようなそのような免疫遮断抗体の効果を増強することができる。複数のバイオマーカーは、これまで、免疫チェックポイント阻害剤(「CPI」)応答と関連付けられており、これは、以下のカテゴリ:i)T細胞応答を誘発する抗原の供給源、ii)抵抗性を駆動する免疫回避のメカニズム、及びiii)免疫浸潤のマーカーに大まかに分類することができる。免疫チェックポイント遮断及び抗体ベースのがん免疫療法に対する応答を制御する更なる因子、逆に、応答の欠如及び耐性が記載されており、継続的に特定されている。例えば、CPI感作の多変量予測因子を検証するために標準化されたバイオインフォマティクスワークフロー及び臨床結果基準を利用して、8つの腫瘍タイプにわたる1000人超のCPI処置患者のCollat全エクソーム及びトランスクリプトームデータを含む最近の体系的な汎腫瘍分析は、CPI応答の最強の予測因子としてクローンTMBを特定し、続いてTMB及びCXCL9発現を確認した[23]。探索分析(discovery analysis)により、事前の機能的証拠によって裏付けられたCPI応答の2つの追加の決定因子:9q34.3(TRAF2)喪失及びCCND1増幅が特定され、いずれも、1600人超のCPI処置患者において独立して検証された。更に、クローン性新抗原反応性CD8-TILのscRNA配列決定により、CPIに応答する腫瘍のバルクRNAseq解析と組み合わせて、CCR5及びCXCL13をCPI感作のT細胞固有の媒介因子として特定した。
【0120】
当業者であれば、応答の可能性の新しいマーカー、並びに逆に、応答の欠如及び耐性が継続的に特定されており、例えば、最近記載及び考察されているように[23]、T細胞応答を誘発する抗原の供給源、耐性を駆動する免疫回避のメカニズム、並びに免疫浸潤のマーカーに関連し得ることを理解するであろう。
【0121】
いくつかの実施形態では、治療に耐性のあるがんは、再発がん及び/又は難治性がんであり得ることが理解されるであろう。
【0122】
再発がんは、以前に治療されており、その治療の結果として、対象が完全に又は部分的に回復したが(すなわち、対象は寛解中であると言われる)、治療の中止後に、がんが復帰又は悪化したがんである。換言すると、再発がんは、それが有効であり、対象が完全に又は部分的に回復した期間の後に、治療に耐性を有するようになったがんである。
【0123】
難治性がんは、治療されているが、その治療に応答しておらず、かつ/又は治療されているが、治療中に進行したがんである。換言すると、難治性がんは、治療に耐性のがんである。
【0124】
がんは、固有の耐性により難治性がんであり得ることが理解されるであろう。「固有の耐性」とは、がん、及び/又は対象、及び/又は標的細胞が、それが最初に投与されたときから、又はそれが投与される前から、特定の治療に耐性であるという意味を含む。
【0125】
がんは、獲得耐性(acquired resistance)のために、再発したがん、又は再発がん及び難治性がんであり得ることが理解されるであろう。「獲得耐性」とは、がん及び/又は対象及び/又は標的細胞が、特定の治療に対して、最初に施される前は耐性でなかったが、治療が少なくとも最初に施された後(例えば、治療が2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回施された後)、又はその間に耐性になったことを含む。
【0126】
再発がん及び/又は難治性がんは、医学分野の当業者によって容易に診断されるであろう。
【0127】
本発明は、典型的には免疫系によって十分に標的化されていないがん(当該技術分野では「非浸潤性腫瘍(cold tumour)」としても知られている)の治療に特に有用であり得る。そのような非浸潤性腫瘍は、以下のタイプに分類することができる:
-免疫放棄腫瘍(immune deserted tumour):すなわち、腫瘍浸潤性T細胞の欠如に起因する腫瘍における免疫応答の完全な欠如がある。
-免疫除外腫瘍(immune excluded tumour):すなわち、応答性T細胞が生成されるが、それに対する応答を開始するために腫瘍を透過することができない。T細胞は、腫瘍周辺に存在し得る。
-免疫浸潤が不十分な腫瘍:すなわち、腫瘍微小環境への免疫細胞(T細胞)の浸透レベルが低減しているか又は排除されている。
【0128】
そのような腫瘍を特定及び/又は分類するための方法は、当業者に既知であろう。例えば、免疫組織化学を使用して、腫瘍内のCD8+T細胞の存在又は不在を検出することができ、(異なるカットオフ及び試薬ではあるが)そのようなアプローチを使用して「イムノスコア」を生成する。
【0129】
これらの「非浸潤性腫瘍」のサブタイプに該当し得るがんには、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、大腸がん、肝細胞がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、メルケル細胞がん、又は卵巣がんが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
したがって、本発明は、FcγRIIbの同時遮断、並びに免疫エフェクター細胞の活性化の増強、その結果としての第2及び/又は第3の抗体分子の治療効果の増強を通して、これらのタイプの腫瘍を有する患者における抗CTLA-4、抗PD1、及び/又は抗PD-L1療法に対する耐性と闘う上で特に有用であり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である患者は、以前に、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子で治療されており、任意選択的に、患者は、当該治療後に耐性になっている。
【0132】
この実施形態では、患者が以前にPD-1に特異的に結合する第1の抗体で治療されており、本発明の第2の抗体分子がPD-1に特異的に結合する第2の抗体である(すなわち、本発明の第2の抗体分子は、患者を治療するために以前に使用された抗PD-1抗体とは異なる)状況が含まれる。いくつかの代替的な実施形態では、患者を治療するために以前に使用されたPD-1に特異的に結合する抗体は、PD-1に特異的に結合する本発明の第2の抗体分子と同じである。
【0133】
この実施形態では、患者が以前にPD-L1に特異的に結合する第1の抗体で治療されており、本発明の第2の抗体分子がPD-L1に特異的に結合する第2の抗体である(すなわち、本発明の第2の抗体分子は、患者を治療するために以前に使用された抗PD-L1抗体とは異なる)状況も含まれる。いくつかの代替的な実施形態では、患者を治療するために以前に使用されたPD-L1に特異的に結合する抗体は、PD-L1に特異的に結合する本発明の第2の抗体分子と同じである。
【0134】
この実施形態では、患者が以前にCTLA-4に特異的に結合する第1の抗体で治療されており、本発明の第3の抗体分子がCTLA-4に特異的に結合する第3の抗体である(すなわち、本発明の第3の抗体分子は、患者を治療するために以前に使用された抗CTLA-4抗体とは異なる)状況も含まれる。いくつかの代替的な実施形態では、患者を治療するために以前に使用されたCTLA-4に特異的に結合する抗体は、CTLA-4に特異的に結合する本発明の第3の抗体分子と同じである。
【0135】
上で考察されたように、いくつかの代替的な実施形態では、患者は、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子で以前に治療されていない。この実施形態では、患者は、当該治療に対して本質的に耐性であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子の組み合わせによる治療の恩恵を受ける可能性がある患者は、イムノスコア試験を使用して特定され得る、腫瘍が特定の標的抗原、この場合CTLA-4及び/又はPD-1及び/又はPD-L1に対して陽性又は陰性であるかを決定する。そのような決定は、問題の抗原の組織学的染色によって行われ得、その抗原を発現する細胞の割合が所定のカットオフ値を上回る場合(全染色又は部分染色のいずれかによって)、試料は陽性と記載される。そのようなスコアリングは、腫瘍割合スコア(TPS)と称される。TPSを使用して、患者がその抗原を標的とするモノクローナル抗体療法に応答するかどうかを予測することができる。
【0137】
例えば、PD-1又はPD-L1を標的とする抗体分子の場合、TPSが50%以上と決定された場合、試料が(任意の強度で膜染色を示す生存可能な腫瘍細胞について)PD-L1陽性とみなされることが確立されている。例えば、https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf15/P150013B.pdfでFDA承認試験を参照されたい。
【0138】
したがって、本明細書で定義される第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子の組み合わせによる治療の恩恵を受ける可能性がある患者を決定するために、上述の試験を使用してPD-L1陰性と決定された患者(すなわち、PD-L1に対して染色された1%~50%未満の生存腫瘍細胞を有する患者)を特定することが有利であり得る。この患者群は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体単独による(又はCTLA-4を標的とする抗体との組み合わせた)療法に応答する可能性は低いが、上記の理由により、本明細書に記載の併用療法に応答する可能性がより高い。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で定義される患者は、確立された診断試験又はIHC方法を使用してPD-L1陰性として定義される。そのような試験は、PD-L1などの特定のマーカーに対して陽性である免疫細胞及び/又は腫瘍細胞の割合を検出及び評価するための(当該技術分野で既知であり、本明細書で考察される)イムノスコア試験を含み得る。当業者は、同様の試験を実施して、患者のCTLA-4の状態を決定することができることを理解するであろう。更に、同様の方法論を使用して、腫瘍を、T細胞及び追加の腫瘍浸潤リンパ球の状態について分析して、腫瘍が「浸潤性(hot)」の炎症性T細胞又は「非浸潤性(cold)」の免疫除外型又は免疫放棄型であるかどうかを示し、特定の患者が抗PD-1/L1及び/又は抗CTLA-4免疫チェックポイント遮断に耐性であるかどうか(しかし、本明細書に開示される併用治療に応答する可能性がある)を示すことができる。
【0139】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、本明細書で定義される第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子の組み合わせによる治療の恩恵を受ける可能性のある患者は、腫瘍に浸潤する免疫細胞の数が低減しているかどうかを決定するための免疫組織化学分析によって特定され得る。「低減」とは、腫瘍内の浸潤免疫細胞(例えば、T細胞)の数が、免疫浸潤が観察される正常な腫瘍について予想される数よりも少ないことを意味する。
【0140】
そのような試験の使用は、患者がこれまでPD-1、PD-L1、又はCTLA-4に特異的である抗体で治療されたことがない状況で特に有利である。この場合、上記の標準的な試験では、多くの患者がこれらの治療に応答しないものとして分類されるであろう。その場合、それらは使用されない可能性がある。本発明は、以前は応答性がないと考えられていた患者群へのこれらの治療の潜在的な使用を拡大することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する第1の抗体分子、及び第2の抗体分子、及び/又は第3の抗体分子は、同時に患者に投与される。すなわち、それらが一度に一緒に投与されるか、又は互いに非常に近い時間内に別々に投与されることを意味する。
【0142】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、第2の抗体分子の投与前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、第3の抗体分子の投与前に患者に投与される。
【0143】
このような連続投与は、抗体を時間的に分離することで達成され得る。代替的に、又は第1の選択肢と組み合わせて、連続投与は、抗体分子の空間的分離によっても達成され得る。FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子が、第2及び/又は第3の抗体分子の前にがんに達するように、腫瘍内投与などの方法で投与され、次いで、抗体分子が、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の後にがんに達するように、全身投与などの方法で投与される。
【0144】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の投与前に患者に投与される。いくつかの実施形態では、第3の抗体分子は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の投与前に患者に投与される。
【0145】
例えば、薬剤が身体に吸収される速度を変更するように、薬剤は、異なる添加物で改変することができ、例えば身体への特定の投与経路を可能にするように異なる形態で改変することができることは、医薬当業者には既知であろう。
【0146】
したがって、本明細書に記載の抗体及び組成物は、賦形剤、及び/又は薬学的に許容される担体、及び/又は薬学的に許容される希釈剤、及び/又はアジュバントと組み合わせ得る場合を含む。
【0147】
本発明の組み合わせ、及び/又は組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬物は、抗酸化剤、及び/若しくは緩衝剤、及び/若しくは静菌剤、及び/若しくは意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有することができる、水性及び/又は非水性の無菌注射溶液、並びに/又は懸濁剤及び/若しくは増粘剤を含むことができる水性及び/又は非水性の無菌懸濁液を含む非経口投与に好適であり得る場合を含む。本発明の組み合わせ、及び/又は組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、単位用量又は複数回投与の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用直前に無菌液担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0148】
即時注射液及び懸濁液剤は、前述の種類の滅菌散剤、及び/又は顆粒剤、及び/又は錠剤から調製され得る。
【0149】
ヒト患者への非経口投与の場合、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子、及び/又は第2の抗体分子、及び/又は第3の抗体分子の1日投与量レベルは、通常、1mg/kg~20mg/kg(患者体重)であり、あるいは場合によっては、最大100mg/kgを単回用量又は分割用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体分子の用量は、10mg/kg、3mg/kg、又は1mg/kgである。特別な状況下、例えば長期投与と組み合わせて、より低い用量を使用してもよい。いずれにしても、医師は個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を判定し、それは特定の患者の年齢、体重、及び反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いか又はより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0150】
通常は、本発明の組成物及び/又は薬物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子、及び/又は第2/第3の抗体を約2mg/ml~150mg/ml、又は約2mg/ml~200mg/mlの濃度で含有するであろう。好ましい実施形態では、本発明の薬物及び/又は組成物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子及び/又は第2/第3の抗体分子を10mg/mlの濃度で含有するであろう。
【0151】
一般に、ヒトでは、本発明の組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物の経口又は非経口投与が好ましい経路であり、最も便利である。獣医学的使用の場合、本発明の組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、通常の獣医学診療に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画及び投与経路を判定するであろう。したがって、本発明は、(上記及び以下で更に説明する)様々な状態を治療するのに有効な量の、本発明の抗体及び/又は薬剤を含む薬学的製剤を提供する。好ましくは、組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)、又は腫瘍内を含む群から選択される経路による送達に適合している。いくつかの好ましい実施形態では、投与は、静脈内投与である。
【0152】
いくつかの実施形態では、第1の抗体分子、及び/又は第2の抗体、及び/又は第3の抗体分子は、プラスミド又はウイルスの使用を通して投与され得る。次いで、そのようなプラスミドは、第1の抗体分子及び/又は第2の抗体、及び/又は第3の抗体分子のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体分子、及び/又は第2の抗体、及び/又は第3の抗体分子の一部の配列又は完全な配列をコードするヌクレオチド配列は、細胞若しくはウイルスゲノム若しくはウイルスのビロームに組み込まれ、次いで、そのような細胞若しくはウイルスは、第1の抗体分子、及び/又は第2の抗体、及び/又は第3の抗体分子の送達ビヒクル(あるいは第1の抗体分子、及び/又は第2の抗体、及び/又は第3の抗体分子をコードするヌクレオチド配列の送達ビヒクル)として作用する。例えば、いくつかの実施形態では、そのようなウイルスは、本明細書に記載される抗体分子の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列を含む治療上の腫瘍溶解性ウイルスの形態であってよい。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、完全長ヒトIgG抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。腫瘍溶解性ウイルスは、医薬及びウイルス学の当業者に既知である。
【0153】
本発明はまた、ポリペプチド結合部分の薬学的に許容される酸付加塩又は塩基付加塩を含む組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物を含む。本発明で有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモエート、[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩等の薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。また、薬学的に許容可能な塩基付加塩を使用して、本発明に従った薬剤の、薬学的に許容可能な塩の形態を生成してもよい。本質的に酸性である本薬剤の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性塩基塩を形成するものである。かかる非毒性塩基塩には、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アンモニウム又は水溶性アミン付加塩(例えば、N-メチルグルカミン-(メグルミン)及び低級アルカノールアンモニウム)、並びに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩などのそのような薬理学的に許容されるカチオンに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬剤及び/又はポリペプチド結合部分は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体で再構成されてもよい。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、及び/又は再構成技術を用いることができる。当業者は、凍結乾燥及び再構成が、様々な程度の抗体活性の損失につながる場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性の損失が大きい傾向がある)、使用レベルを上方に調整して補う必要があり得ることを理解するであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)ポリペプチド結合部分は、再水和した場合、(凍結乾燥前の)その活性のうちの約20%以下、又は約25%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約45%以下、又は約50%以下を損失する。
【0154】
本発明はまた、一般に、本発明の第8~第14の態様に本明細書に記載される第1の抗体及び第2の抗体を含む組み合わせに関する。
【0155】
更なる第8の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子の使用を提供し、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
第1の抗体分子が、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子による治療に対するがんにおける耐性を低減及び/又は予防することを特徴とする。この態様の特定の一実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子の用量は、治療用量よりも低い。
【0156】
第9の態様では、本発明はまた、患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせを提供し、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含み、
組み合わせが、許容治療用量よりも低い第2の抗体分子の用量を含む。
【0157】
第10の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、の使用を提供し、
組み合わせが、許容治療用量よりも低い第2の抗体分子の用量を含む。
【0158】
第11の態様では、本発明は、個体におけるがんを治療するための方法を提供し、本方法が、患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を投与することを含み、
投与される第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低い。
【0159】
第12の態様では、本発明は、患者におけるがんを治療するための第1の抗体であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との組み合わせで使用するためのものであり、
使用される第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低い、第1の抗体を提供する。
【0160】
第13の態様では、本発明は、薬学的組成物を提供し、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在する。
【0161】
第14の態様では、本発明は、キットを提供し、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在する。
【0162】
上で考察されたように、上記の態様による第2の抗体の用量は、許容治療用量よりも低いか、又は低い場合がある。
【0163】
したがって、本発明の第8~第14の態様は、第1の抗体分子と第2の抗体分子との組み合わせの際、第2の抗体分子は、第2の抗体が(同じ又は)より高い用量で単独で使用される場合と比較して、より低い、より許容される用量で使用することができ、治療効果が維持されているか又はより大きい。
【0164】
「許容治療用量(tolerated therapeutic dose)」とは、治療的に活性であると考えられる(すなわち、本明細書で定義される患者又は対象において望ましい治療効果を生じる)が、許容される(すなわち、患者において許容できないレベルの毒性又は副作用を生じない)と考えられる任意の用量を意味する。当業者は、選択される用量が、多くの場合、治療効果を達成することと、患者に許容できない毒性を引き起こさないこととの間の妥協点であることを理解するであろう。
【0165】
「治療的に活性な」とは、用量が、患者又は対象において所望の治療効果を生じる場合を含む。CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する第2の抗体分子の場合、そのような治療効果は、患者における腫瘍体積の低減であり得る。
【0166】
「治療効果」とは、当の治療の使用に直接的又は間接的に起因する全ての効果を含む。これは、腫瘍体積の低減又は腫瘍サイズの低減(例えば、CTスキャンによって決定され得る)などの測定可能な治療効果であり得る。他の場合では、これは、患者によって報告される症状の重症度の低減などの、より主観的な効果であり得る。治療用抗体の投与に応答するがん患者における治療効果の測定は、当該技術分野でよく知られている。更に、所定の期間にわたる患者又は患者群の生存レベルは、治療効果の代替的な読み出しである。
【0167】
いくつかの場合では、許容治療用量よりも低い用量は、推奨される許容治療用量よりも低い。当業者は、承認された抗体療法のために、特定の用量(典型的には、mg/kgで表される)は、特定の患者群又は特定のタイプのがんを有する患者における使用のために推奨されることを認識するであろう。多くの場合、推奨治療用量は、承認された抗体治療薬の標識又は処方情報に記載される。それ以外の場合、当業者には、当該技術分野で既知の技法を使用して推奨される許容治療用量を決定する方法が明らかであろう。
【0168】
いくつかの他の場合では、許容治療用量よりも低い用量は、計算された治療用量よりも低い。計算された治療用量は、特定の患者について、すなわち、がんのタイプ、がんの病期、患者の体重、肥満度指数(Body Mass Index)(BMI)及び他の要因に基づいて計算され得る。
【0169】
いくつかの他の場合では、許容治療用量よりも低い用量は、最大(又は最大承認)許容治療用量よりも低い。最大許容治療用量とは、許容できない副作用を引き起こさない最高用量を意味する。
【0170】
いくつかの他の場合では、許容治療用量りも低い用量は、最小治療用量(それ以外の場合、最小有効量としても知られている)よりも低い。最小治療用量とは、上で定義されたように、患者において測定可能な治療効果を生み出すと考えられる最低用量を意味する。
【0171】
いくつかの他の場合では、許容治療用量よりも低い用量は、推奨される許容治療用量よりも低い。いくつかの実施形態では、これは、医薬品表示(drug label)に含まれる適応症のための推奨用量を含み得る。
【0172】
当業者は、上で定義された許容治療用量の実際の投与量値が、CTLA-4に特異的に結合する抗体の同一性、及びその組み合わせが使用される又はそれにおける使用に好適な患者に応じて異なることを理解するであろう。
【0173】
推奨用量は、FDA又はEMEAなどの規制当局によって承認された用量であることが理解されるであろう。この用量は、典型的には、異なる用量レベルを含み得る、多くの場合、後期プラセボ対照盲検試験及び無作為化臨床試験からの有効性及び許容性の両方のデータの審査後に特定される。がんにおいて、承認された用量は、治療上の利益を有し、許容される毒性を示すであろう。開発(初期段階から後期段階の臨床試験)を通して、より高い抗体用量がより有効であることが見出されることがあるが、許容できない毒性が伴うこともある。
【0174】
一般に、臨床試験中に用量漸増試験を使用して、特定の許容治療用量が任意の特定の抗体についてどのように定義されるかは、当業者には明らかであろう。例えば、CTLA-4に特異的に結合する例示的な抗体であるイピリムマブの許容治療用量は、薬物ラベルに記載されている(イピリムマブのFDAラベルを参照されたい:
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2018/125377s094lbl.pdf)。
【0175】
本明細書で考察されるように、イピリムマブの許容治療用量は、以下のとおりであり得る:
・切除不能又は転移性黒色腫の場合:3週間ごとに3mg/kgを90分間にわたって合計4回静脈内投与。
・アジュバント黒色腫の場合:3週間ごとに10mg/kgを90分間にわたって4回静脈内投与、続いて、最大3年間又は疾患の再発又は許容できない毒性が確認されるまで、12週間ごとに10mg/kgを静脈内投与。
・進行腎細胞がんの場合:ニボルマブ3mg/kgを30分間にわたって静脈内投与、続いて、同日、イピリムマブ1mg/kgを30分間にわたって静脈内投与、3週間ごとに最大4回の用量、次いで、2週間ごとにニボルマブ240mg又は4週間ごとに480mgを30分間にわたって静脈内投与。
【0176】
したがって、イピリムマブの許容治療用量は、いくつかの実施形態では、1mg/kg、3mg/kg、又は10mg/kgであり得る。
【0177】
まだ承認されていない抗体についての許容治療用量は、承認されているか又は広範な臨床試験を受けた類似の抗体の許容治療用量に基づいてもよい。
【0178】
第2の抗体が許容治療用量よりも低い用量で使用される先行する態様に記載される第1及び第2の抗体の組み合わせを提供することによって、本発明者らは、CTLA-4を標的とする同じ抗体をはるかに高い用量で単離に使用する場合と同様又は同等の治療効果を達成する方法を考案した。
【0179】
CTLA-4を標的とする高用量の抗体を使用することは、許容性の観点から一般的に望ましくない。CTLA-4は活性化T細胞によって発現し、抑制性シグナルをT細胞に伝達し、それによってT細胞応答を下方制御する。CTLA-4に特異的に結合する治療用抗体を使用してCTLA-4を遮断することは、この抑制性シグナルを防止し、それによって、がんを標的とすることができるT細胞をより多く活性化する。しかしながら、このメカニズムは無差別であり、腫瘍細胞には見られない自己特異的抗原を標的とするT細胞をより多く活性化することができ、すなわち、自己免疫応答を開始することができる。したがって、治療効果を生み出すために必要な抗CTLA-4抗体の用量を低減することによって、許容性に関連する問題を軽減することが可能である。
【0180】
より低い用量を使用し、同じ治療効果を達成することは、Fab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減した第1の抗体分子との組み合わせを使用して達成することができる。第1の抗体分子は、抑制性FcyRllbへの結合を遮断し、これは次に、がん細胞を標的とすることができるエフェクター免疫細胞(例えば、CD8エフェクターT細胞)を活性化することができる。
【0181】
これは、特に、抗CTLA-4治療に耐性がある患者、又はそれに対して耐性を獲得した患者、又はそれに対して耐性を獲得し得る患者において、抗CTLA-4抗体の用量を減らすことが、はるかに高い用量の同じ抗体を使用するのと同等の治療効果をもたらすことは予想されないため、驚くべきことである。
【0182】
したがって、CTLA-4に特異的に結合するより低用量の抗体分子を使用することは、より低い用量を使用することによって、患者が許容性(すなわち、許容性が改善される)、毒性、及び不快な副作用に関連する問題を有する可能性が低減されるため、有利である。また、投与に必要とされる抗体が少ないため、治療の費用対効果も改善される。
【0183】
いくつかの実施形態では、CTLA-4を標的とするより低用量の抗体の継続的な使用は、対象が耐性になるリスクを低減することができる。理論に拘束されることなく、本発明者らは、例えば、腫瘍内Treg枯渇がより良好に達成され、治療上より有効な作用機序が低い(より低い)抗CTLA-4用量で生じる場合、エフェクターT細胞における抑制性シグナル伝達の低レベル遮断と(本明細書に記載の第1及び第2の抗体分子の組み合わせを使用して)増強されたTreg枯渇とを組み合わせることで、耐性を低減及び/又は防止することができると考えている。
【0184】
したがって、本発明は、CTLA-4に特異的な抗体の治療域を延長することを可能にする。「治療域(therapeutic window)」とは、毒性効果又は許容性の問題を有することなく疾患を効果的に治療することができる薬物用量の範囲を意味する。したがって、本発明は、より低用量の抗CTLA-4抗体を使用することを可能にし、より低い用量に起因する有害作用の可能性を低下させながら、同じ又は同様の治療効果を達成する。
【0185】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子の用量は、本明細書で定義される許容治療用量のパーセンテージとして表すことができる。いくつかの実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体分子の許容治療用量よりも少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%低い。いくつかの好ましい実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体の許容治療用量よりも少なくとも50%低い。いくつかの他の好ましい実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体の許容治療用量より少なくとも70%低い。
【0186】
いくつかの好ましい実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体の許容治療用量よりも少なくとも80%低い(すなわち、80%以下)。
【0187】
上で考察されたように、いくつかの実施形態では、第2の抗体分子を許容治療用量よりも低い用量で使用した結果は、第1の抗体分子及びより低い用量で使用した第2の抗体分子の治療効果が、第1の抗体分子の不在下の、第2の抗体分子の最大許容治療用量での第2の抗体分子の治療効果に匹敵する。この効果は、治療効果の意味に関して上で考察されたように、当業者によって容易に測定されるであろう。
【0188】
また、上で考察されたように、第2の抗体分子を、許容治療用量よりも低い用量で使用すると、いくつかの実施形態では、対象における第2の抗体分子の許容性を改善することができる。
【0189】
本明細書で使用される場合、「許容性」という用語は、治療剤の有害作用が対象によって許容され得る程度を指す。「有害作用」とは、直接的若しくは間接的に治療剤によって引き起こされる、所望の治療効果ではない任意の効果、又は直接的若しくは間接的に治療剤に起因する任意の他の有益な効果を含む。
【0190】
CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体の文脈において、これらの副作用には、注入関連反応(IRR)、疲労、下痢、腸炎、悪心、嘔吐、掻痒、発疹、大腸炎、咳、頭痛、意図しない体重減少、食欲減退、不眠症、発熱、肝炎、皮膚炎、免疫介在性神経障害、及び免疫介在性内分泌障害のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0191】
・許容性の問題は、それらを経験する患者に対して異なるグレード(すなわち、異なる重症度)であり得る。それらが患者に不快感をもたらす場合もあれば、治療用抗体分子による治療の継続を妨げる深刻な問題を引き起こす場合もある。重度の場合、毒性は以下のように現れる可能性がある:
・腸における断裂又は穴(穿孔)を引き起こし得る腸の障害(大腸炎)、
・肝不全につながり得る肝臓の障害(肝炎)、
・重度の皮膚反応を引き起こし得る皮膚の障害、
・麻痺につながり得る神経の障害、
・ホルモン腺の障害(特に、下垂体、副腎、及び甲状腺)、
・肺の障害(肺炎)、
・腎炎及び腎不全を含む腎臓の障害、
・脳の炎症(脳炎)、
・最悪の場合、許容性の問題は、患者の死亡につながる可能性さえある。
【0192】
最も重篤なタイプの許容性の問題は、急性ではなく、むしろ現れるのに時間がかかり(数日~数週間)(特定のT細胞媒介性免疫応答を開始するのに最大2週間必要とする免疫系と一致する)、胃腸穿孔を含むことが理解されるであろう。
【0193】
本明細書に記載されるように改善され得る許容性の問題は、対象への治療用抗体分子の静脈内投与に関連して生じ得る有害事象である。
【0194】
いくつかの実施形態では、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量を使用することは、第2の抗体分子の使用に関連する対象における副作用を低減し、かつ/又は毒性を低減する。
【0195】
「副作用」には、治療剤によって引き起こされた、許容性に関連して上で考察された「有害作用」のいずれかが含まれる。治療用抗体の用量を減少させることは、関連する副作用を減少させることが知られているが、これが治療効果を減少させることも知られている(イピリムマブについて、Wolchok et al.,2010,Lancet Oncol.,11(2):155-164を参照されたい)。
【0196】
「毒性」とは、治療物質が生物に損傷を与え得る程度を意味する。当業者は、毒性及び許容性は相互に関連しており、両方とも投与される用量に依存していることを理解するであろう。
【0197】
本明細書で考察される治療用抗体の場合、大量の治療用抗体が体内に蓄積すると、毒性が生じ得る。したがって、毒性に関連するいかなる問題も最小限に抑えるために、より低用量の抗体治療剤を投与することが有利である。
【0198】
いくつかの他の実施形態では、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量を使用することは、第2の抗体分子の使用に関連する対象における任意のオフターゲット効果及び/又は自己免疫反応を低減し得る。
【0199】
本明細書に記載されるように、第2の抗体分子は、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する。CTLA-4は制御性T細胞において恒常的に発現されるが、活性化後に通常のT細胞でのみ増加する-特にがんにおいて注目すべき現象である。いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、イピリムマブ(Bristol-Myers SquibbからのYervoy(登録商標)など)である。いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、トレメリムマブ(CP-675,206、旧称チシリムマブ)であり、これはCTLA-4に対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、これまでPfizerによる開発下にあり、現在はMedImmuneにより臨床開発中である。
【0200】
したがって、いくつかの実施形態では、第2の抗体分子は、イピリムマブである。当業者は、イピリムマブの標準的な許容治療用量が、承認された薬物ラベルから決定され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、第2の抗体分子がイピリムマブである場合、許容治療用量は、10mg/kgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、10mg/kgよりも低い任意の用量である。この場合、治療は、アジュバント療法、すなわち、すでに1つ以上の一次治療(例えば、手術)で処置されたがんの治療のためのアジュバント療法であり得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子がイピリムマブである場合、許容治療用量は、3mg/kgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、3mg/kgよりも低い任意の用量である。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、第2の抗体の用量は、約2mg/kgであってもよく、又は2mg/kg未満であってもよく、例えば、1.5mg/kg~2.5mg/kgの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の抗体の用量は、2mg/kgである。いくつかの実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体がイピリムマブである場合、1mg/kgである。
【0202】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子の許容治療用量は、第2の抗体分子がイピリムマブである場合、1mg/kgである。したがって、この実施形態では、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、1mg/kgよりも低い任意の用量である。この実施形態では、イピリムマブは、別の治療用抗体、例えば、ニボルマブと組み合わせて使用することが承認されている。
【0203】
したがって、いくつかの実施形態では、第8~第14の態様に関して記載される使用又は方法は、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子の投与を伴わない、かつ/又は薬学的組成物若しくはキットは、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子も含まない。これらの実施形態では、イピリムマブの許容治療用量は、典型的には、3mg/kg以上である。
【0204】
第2の抗体分子がイピリムマブである実施形態では、第2の抗体分子は、承認されたラベルに提供される投与量スケジュールに従って投与されてもよく、又は代替的に、本明細書で企図されるより低い用量を使用して異なる投与量スケジュールが可能であってもよい。
【0205】
いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、第2の抗体分子は、トレメリムマブである。
【0206】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子がトレメリムマブである場合、許容治療用量は、750mgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、750mgよりも低い任意の用量である。いくつかの他の実施形態では、許容治療用量は、300mgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、300mgよりも低い任意の用量である。いくつかの他の実施形態では、許容治療用量は、75mgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、75mgよりも低い任意の用量である。
【0207】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子がトレメリムマブである場合、許容治療用量は、10mg/kgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、10mg/kgよりも低い任意の用量である。
【0208】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子がトレメリムマブである場合、許容治療用量は、3mg/kgである。したがって、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、3mg/kgよりも低い任意の用量である。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、第2の抗体の用量は、約2mg/kgであってもよく、又は2mg/kg未満であってもよく、例えば、1.5mg/kg~2.5mg/kgの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の抗体の用量は、2mg/kgである。いくつかの実施形態では、第2の抗体の用量は、第2の抗体がトレメリムマブである場合、1mg/kgである。
【0209】
いくつかの実施形態では、第2の抗体分子の許容治療用量は、第2の抗体分子がトレメリムマブである場合、1mg/kgである。したがって、この実施形態では、許容治療用量よりも低い第2の抗体の用量は、1mg/kgよりも低い任意の用量である。
【0210】
第2の抗体分子がトレメリムマブである実施形態では、第2の抗体分子は、承認されたラベルに提供される投与量スケジュールに従って投与されてもよく、又は代替的に、本明細書で企図されるより低い用量を使用して異なる投与量スケジュールが可能であってもよい。
【0211】
当業者は、第2の抗体分子が、本明細書で考察されるCTLA-4に特異的な抗体のうちのいずれかの組み合わせであってもよく、例えば、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子が、イピリムマブとトレメリムマブとの組み合わせであってもよいことを理解するであろう。
【0212】
また、CTLA-4に特異的な他の抗体も、具体的に考察されたものを除いて、本発明によって企図されることも理解されるであろう。
【0213】
上で考察されたように、第2の抗体分子は、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子による治療に対するがんにおける耐性を低減及び/又は防止することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、第8~第14の実施形態に記載の本発明は、治療に耐性のがんを有する対象の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、がんは、再発がん又は難治性がんであり得る。いくつかの実施形態では、がんは、免疫チェックポイント遮断を標的とする抗体(例えば、CTLA-4に特異的な抗体)による治療に耐性を有する可能性がある。
【0215】
「耐性である」、「耐性」、又は「治療に対して耐性である」とは、患者が、以前のレベルの応答性又は予想されるレベルの応答性と比較して、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対して低減したレベルの応答性を有することを意味する。これには、患者が以前に当該抗体分子で治療された(すなわち、患者が耐性を獲得した)状況が含まれ、患者が当該抗体分子で治療されたことがない(すなわち、患者が本質的に耐性である)状況も含まれる。いくつかの追加的又は代替的な実施形態では、患者は、PD-1及び/又はPD-L1に特異的に結合する抗体分子に対して低減したレベルの応答性を有し得る。
【0216】
治療に対する抵抗性は、様々な方法で、例えば、患者をモニタリングして、がんが期待どおりに後退していることを確認し、治療に全く応答しない患者を特定することによって、測定することができる。
【0217】
「治療に対して耐性である」とは、例えば、これらの抗体(又は抗体の組み合わせ)が測定可能な治療効果を発揮しないことが以前に見出されていた場合、CTLA-4に特異的に結合する抗体による治療がまだ示されていないがんのタイプも含まれる。
【0218】
また、腫瘍変異負荷(TMB)が低い可能性のあるがんも含まれる。「腫瘍変異負荷」とは、がん細胞内の遺伝子変異の数を意味する。そのような測定は、当該技術分野で既知の臨床検査によって決定することができる。高いTMBを有する細胞は、異常であると認識される可能性が高く、免疫系によって攻撃されることが知られており、高いTMBが、PD-1/PD-L1遮断の応答バイオマーカーとして特定されている(Goodman et al.,2017,Mol Cancer Ther.,16(11):2598-2608)。したがって、低いTMBを有するがんは、本発明の組み合わせで首尾よく標的化され得、これは、上記のようなそのような免疫遮断抗体の効果を強化することができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、治療に耐性のあるがんは、再発がん及び/又は難治性がんであり得ることが理解されるであろう。
【0220】
再発がんは、以前に治療されており、その治療の結果として、対象が完全に又は部分的に回復したが(すなわち、対象は寛解中であると言われる)、治療の中止後に、がんが復帰又は悪化したがんである。換言すると、再発がんは、それが有効であり、対象が完全に又は部分的に回復した期間の後に、治療に耐性を有するようになったがんである。
【0221】
難治性がんは、治療されているが、その治療に応答しておらず、かつ/又は治療されているが、治療中に進行したがんである。換言すると、難治性のがんは、治療に耐性のがんである。
【0222】
がんは、固有の耐性により難治性がんであり得ることが理解されるであろう。「固有の耐性」とは、がん、及び/又は対象、及び/又は標的細胞が、それが最初に投与されたときから、又はそれが投与される前から、特定の治療に耐性であるという意味を含む。
【0223】
がんは、獲得耐性(acquired resistance)のために、再発したがん、又は再発がん及び難治性がんであり得ることが理解されるであろう。「獲得耐性」とは、がん及び/又は対象及び/又は標的細胞が、特定の治療に対して、最初に施される前は耐性でなかったが、治療が少なくとも最初に施された後(例えば、治療が2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回施された後)、又はその間に耐性になったことを含む。
【0224】
再発がん及び/又は難治性がんは、医学分野の当業者によって容易に診断されるであろう。
【0225】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である患者は、以前に、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子で治療されており、任意選択的に、患者は、当該治療後に耐性になっている。
【0226】
この実施形態では、患者が以前にCTLA-4に特異的に結合する第1の抗体で治療されており、本発明の第2の抗体分子がCTLA-4に特異的に結合する第2の抗体である(すなわち、本発明の第2の抗体分子は、患者を治療するために以前に使用された抗CTLA-4抗体とは異なる)状況も含まれる。いくつかの代替的な実施形態では、患者を治療するために以前に使用されたCTLA-4に特異的に結合する抗体は、CTLA-4に特異的に結合する本発明の第2の抗体分子と同じである。
【0227】
上で考察されたように、いくつかの代替的な実施形態では、患者は、以前に、CTLA-4に特異的に結合する抗体分子で治療されていない。この実施形態では、患者は、当該治療に対して本質的に耐性であり得る。
【0228】
いくつかの実施形態では、がんは、FcyRllb陽性B細胞がんである。「FcyRllb陽性がん」とは、レベルが異なっていても、FcyRIIbを発現する任意のがん。FcγRIIBの発現は、慢性リンパ球性白血病及びマントル細胞リンパ腫で最も顕著であり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では中程度であり、濾胞性リンパ腫では最も顕著ではない。しかしながら、場合によっては、一般的に低レベルのFcγRIIBを発現するがん(例えば、濾胞性リンパ腫)を有する対象は、非常に高いレベルのFcγRIIb発現を有し得る。異なるタイプのB細胞がんにおけるFcγRIIBの発現レベル(特に、上述のもの)は、抗体分子リツキシマブの内在化速度と相関する。したがって、FcγRIIBの発現及び抗体分子の関連する内在化は、B細胞がんによって共有される共通のメカニズムであると考えられる(Lim et al.,2011)。抗体分子のFcγRIIB依存性初期化は、本明細書に開示されるFcγRIIBに対する抗体によって遮断することができる。
【0229】
したがって、本明細書に開示される組み合わせは、B細胞がん、特に、再発性マントル細胞リンパ腫及び/若しくは難治性マントル細胞リンパ腫、並びに/又は再発性濾胞性リンパ腫及び/若しくは難治性濾胞性リンパ腫、並びに/又は再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫及び/又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用することができる。
【0230】
いくつかの他のより好ましい実施形態では、がんは、FcγRIIb陰性がんである。「FcγRIIb陰性がん」とは、いずれのFcγRIIb受容体も提示しない任意のがんを含む。これは、抗FcγRIIB特異的抗体を使用して、Tutt et al,J Immunol,2015,195(11) 5503-5516に示されているような免疫組織化学及びフローサイトメトリーを含む様々な方法で検査することができる。
【0231】
いくつかの好ましい実施形態では、がんは、がん腫、肉腫、及びリンパ腫からなる群から選択される。
【0232】
いくつかの実施形態では、がんは、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、低分化がん又は未分化がん、大細胞がん及び小細胞がんからなる群から選択されるがん腫である。
【0233】
いくつかの実施形態では、がんは、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、及び平滑筋肉腫からなる群から選択される肉腫である。
【0234】
FcγRIIb陰性がんは、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、転移性ホルモン不応性前立腺がん、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん腫(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、膀胱がん、腎臓がん、中皮腫、メルケル細胞がん、頭頸部がん、及び膵臓がんからなる群から選択される。
【0235】
上記のがんの各々はよく知られており、症状及びがん診断マーカーは、それらのがんを治療するのに使用される治療剤であるため、十分に説明されている。したがって、上述のタイプのがんを治療するために使用される症状、がん診断マーカー、及び治療剤は、本発明の第1~第7の態様に関して上で考察されたように、医薬当業者には既知であろう。
【0236】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する第1の抗体分子及びCTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子は、同時に患者に投与される。すなわち、それらが一度に一緒に投与されるか、又は互いに非常に近い時間内に別々に投与されることを意味する。
【0237】
いくつかの実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子は、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子の投与前に、患者に投与される。
【0238】
このような連続投与は、抗体を時間的に分離することで達成され得る。代替的に、又は第1の選択肢と組み合わせて、連続投与は、抗体分子の空間的分離によっても達成され得る。FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子が、第2の抗体分子の前にがんに達するように、腫瘍内投与などの方法で投与され、次いで、抗体分子が、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の後にがんに達するように、全身投与などの方法で投与される。
【0239】
いくつかの実施形態では、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子は、例えば、上記の空間モード又は時間モードを使用して、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の投与前に、患者に投与される。
【0240】
例えば、薬剤が身体に吸収される速度を変更するように、薬剤は、異なる添加物で改変することができ、例えば身体への特定の投与経路を可能にするように異なる形態で改変することができることは、医薬当業者には既知であろう。
【0241】
したがって、本明細書に記載の抗体及び組成物は、賦形剤、及び/又は薬学的に許容される担体、及び/又は薬学的に許容される希釈剤、及び/又はアジュバントと組み合わせ得る場合を含む。
【0242】
本発明の組み合わせ、及び/又は組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬物は、抗酸化剤、及び/若しくは緩衝剤、及び/若しくは静菌剤、及び/若しくは意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有することができる、水性及び/又は非水性の無菌注射溶液、並びに/又は懸濁剤及び/若しくは増粘剤を含むことができる水性及び/又は非水性の無菌懸濁液を含む非経口投与に好適であり得る場合を含む。本発明の組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、単位用量又は複数回投与の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供されてもよく、使用直前に無菌液担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0243】
即時注射液及び懸濁液剤は、前述の種類の滅菌散剤、及び/又は顆粒剤、及び/又は錠剤から調製され得る。
【0244】
ヒト患者への非経口投与の場合、別段の定義がない限り、本明細書で定義される、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子、及び/又は第2の抗体分子、及び/又は第3の抗体分子の1日投与量レベルは、通常、1mg/kg~20mg/kg(患者体重)であり、あるいは場合によっては、最大100mg/kgを単回用量又は分割用量で投与される。いくつかの好ましい実施形態では、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子の用量は、10mg/kgとなる。状況によっては、例えば、長期投与と組み合わせて、より低い用量を使用してもよい。いずれにしても、医師は個々の患者に最も好適であろう実際の投与量を判定し、それは特定の患者の年齢、体重、及び反応によって変動するであろう。上述の投与量は平均的な場合の例示である。当然ながら、より高いか又はより低い投与量範囲が妥当である個々の症例があり得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【0245】
典型的には、本発明の組成物及び/又は薬物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子を、約2mg/ml~150mg/ml、又は約2mg/ml~200mg/mlの濃度で含有するであろう。好ましい実施形態では、本発明の薬物及び/又は組成物は、FcγRIIbに特異的に結合する抗体分子を、10mg/mlの濃度で含有するであろう。
【0246】
一般に、ヒトでは、本発明の組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物の経口又は非経口投与が好ましい経路であり、最も便利である。獣医学的使用の場合、本発明の組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、通常の獣医学診療に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医師は、ある特定の動物にとって最も適切であろう投与計画及び投与経路を判定するであろう。したがって、本発明は、(上記及び以下で更に説明する)様々な状態を治療するのに有効な量の、本発明の抗体及び/又は薬剤を含む薬学的製剤を提供する。好ましくは、組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物は、静脈内(IV)、皮下(SC)、筋肉内(IM)、又は腫瘍内を含む群から選択される経路による送達に適合している。いくつかの好ましい実施形態では、投与は、静脈内投与である。
【0247】
いくつかの実施形態では、第1の抗体分子又は第2の抗体のいずれか若しくは両方は、プラスミド又はウイルスを用いて投与されてもよい。次いで、そのようなプラスミドは、第1の抗体分子又は第2の抗体のいずれか若しくは両方をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体分子又は第2の抗体のいずれか若しくはその両方の一部又は完全配列をコードするヌクレオチド配列は、細胞若しくはウイルスゲノム若しくはウイルスのビロームに組み込まれ、次いで、そのような細胞若しくはウイルスは、第1の抗体分子又は第2の抗体もいずれか、若しくはその両方の送達ビヒクル(あるいは第1の抗体分子又は第2の抗体のいずれか、若しくはその両方をコードするヌクレオチド配列の送達ビヒクル)として作用する。例えば、いくつかの実施形態では、そのようなウイルスは、本明細書に記載される抗体分子の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列を含む治療上の腫瘍溶解性ウイルスの形態であってよい。いくつかの実施形態では、そのような腫瘍溶解性ウイルスは、完全長ヒトIgG抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。腫瘍溶解性ウイルスは、医薬及びウイルス学の当業者に既知である。
【0248】
本発明はまた、本発明のポリペプチド結合部分の薬学的に許容される酸付加塩又は塩基付加塩を含む組成物、及び/又は抗体、及び/又は薬剤、及び/又は薬物を含む。本発明で有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用される酸は、とりわけ、非毒性の酸付加塩、すなわち塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、重酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモエート[すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエート)]塩などの薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。また、薬学的に許容可能な塩基付加塩を使用して、本発明に従った薬剤の、薬学的に許容可能な塩の形態を生成してもよい。本質的に酸性である本薬剤の薬学的に許容される塩基塩を調製するための試薬として使用され得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性塩基塩を形成するものである。かかる非毒性塩基塩には、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アンモニウム又は水溶性アミン付加塩(例えば、N-メチルグルカミン-(メグルミン)及び低級アルカノールアンモニウム)、並びに他の薬学的に許容される有機アミンの塩基塩などのそのような薬理学的に許容されるカチオンに由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬剤及び/又はポリペプチド結合部分は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体で再構成されてもよい。任意の好適な凍結乾燥法(例えば、噴霧乾燥、ケーキ乾燥)、及び/又は再構成技術を用いることができる。当業者は、凍結乾燥及び再構成が、様々な程度の抗体活性の損失につながる場合があり(例えば、従来の免疫グロブリンでは、IgM抗体はIgG抗体よりも活性の損失が大きい傾向がある)、使用レベルを上方に調整して補う必要があり得ることを理解するであろう。一実施形態では、凍結乾燥(フリーズドライ)ポリペプチド結合部分は、再水和した場合、(凍結乾燥前の)その活性のうちの約20%以下、又は約25%以下、又は約30%以下、又は約35%以下、又は約40%以下、又は約45%以下、又は約50%以下を損失する。
【0249】
第8~第14の態様に関して本明細書で定義される第1の抗体は、先行する態様に関して本明細書で定義されるのと同じ抗体であってもよい。第1の抗体の同一性及び抗体配列に関する実施形態及び実施例の全ては、第8~第14の態様に記載される本発明に等しく適用される。
【0250】
第8~第14の態様に関して本明細書で定義される第2の抗体は、先行する第1~第7の態様に関して本明細書で定義される第3の抗体分子と同じ抗体であってもよい。CTLA-4に特異的に結合する第3の抗体の同一性に関する実施形態及び実施例の全ては、これらの態様の第2の抗体分子に関する限り、第8~第14の態様に記載される本発明に等しく適用される。
【0251】
本明細書で言及される抗体分子(すなわち、第1の抗体分子、第2の抗体分子、及び第3の抗体分子)は、免疫学及び分子生物学の分野の当業者にはよく知られている。典型的には、抗体は、2つの重鎖(H)と、2つの軽鎖(L)と、を含む。本明細書では、時には、この完全な抗体分子を、フルサイズ抗体又は完全長抗体と称する。抗体の重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と、3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)と、を含み、抗体分子の軽鎖は、1つの可変ドメイン(VL)と、1つの定常ドメイン(CL)と、を含む。可変ドメイン(時には、F領域と総称される)は、抗体の標的、又は抗原に結合する。各可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)と称される3つのループを含み、これらは、標的の結合に関与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、様々なエフェクター機能を呈する。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、ヒトでは、これらのうちのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、並びにIgA1及びIgA2に分けられる。
【0252】
抗体の別の部分は、Fc領域(あるいは断片結晶化可能ドメインとしても知られている)であり、抗体の重鎖の各々の2つの定常ドメインを含む。上述されるように、Fc領域は抗体とFc受容体との間の相互作用に関与する。
【0253】
本明細書で使用される場合、抗体分子という用語は、完全長抗体又はフルサイズ抗体、並びに完全長抗体の機能的断片及びかかる抗体分子の誘導体を包含する。
【0254】
フルサイズ抗体の機能的断片は、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有し、対応するフルサイズ抗体と同じ可変ドメイン(すなわち、VH配列及びVL配列)並びに/又は同じCDR配列のいずれかを含む。機能的断片が、対応するフルサイズ抗体と同じ抗原結合特徴を有するということは、それがフルサイズ抗体と同じ標的上のエピトープに結合することを意味する。このような機能的断片は、フルサイズ抗体のFv部分に対応し得る。代替的に、このような断片は、Fc部分を含まない一価の抗原結合断片であるFab(F(ab)とも表される)、又はジスルフィド結合によって一緒に結合された2つの抗原結合Fab部分を含む二価の抗原結合断片であるF(ab’)、又はF(ab’)(すなわち、F(ab’)の一価のバリアント)であり得る。このような断片は、単鎖可変断片(scFv)でもあり得る。
【0255】
機能的断片には、対応するフルサイズ抗体の6つのCDR全てが常に含まれているわけではない。3つ以下のCDR領域(場合によっては、単一のCDRだけ又はその一部)を含有する分子は、そのCDRに由来する抗体の抗原結合活性を保持することが可能であることが理解される。例えば、Gao et al.,1994,J.Biol.Chem.,269:32389-93には、全VL鎖(3つのCDR全てを含む)がその基質に対して高い親和性を有することが記載されている。
【0256】
2つのCDR領域を含む分子については、例えば、Vaughan & Sollazzo 2001,Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening,4:417-430に記載されている。418頁に(右欄-3(設計のための本発明者らの戦略))、フレームワーク領域内に散在するH1及びH2 CDR超可変領域のみを含むミニボディが記載されている。ミニボディは、標的に結合することが可能であると記載されている。Pessi et al.,1993,Nature,362:367-9 and Bianchi et al.,1994,J.Mol.Biol.,236:649-59は、Vaughan & Sollazzoによって参照されており、H1及びH2ミニボディ、並びにその特性がより詳細に記載されている。Qiu et al.,2007,Nature Biotechnology,25:921-9では、2つの結合されたCDRからなる分子が抗原に結合することが可能であることが示されている。Quiocho 1993,Nature,362:293-4は、「ミニボディ」技術の概要を提供している。Ladner 2007,Nature Biotechnology,25:875-7は、2つのCDRを含む分子が抗原結合活性を保持することが可能であるとコメントしている。
【0257】
単一のCDR領域を含む抗体分子は、例えば、Laune et al.,1997,JBC,272:30937-44に記載されている。ここでは、CDRに由来する様々なヘキサペプチドが抗原結合活性を示すことが実証されており、完全な単一のCDRの合成ペプチドが強力な結合活性を示すことが指摘されている。Monnet et al.,1999,JBC,274:3789-96では、様々な12-merペプチド及び関連するフレームワーク領域が抗原結合活性を有することが示されており、CDR3様ペプチド単独で抗原に結合することが可能であるとコメントされている。Heap et al.,2005,J.Gen.Virol.,86:1791-1800では、「マイクロ抗体」(単一のCDRを含む分子)が抗原に結合することが可能であることが報告されており、抗HIV抗体からの環状ペプチドが抗原結合活性及び機能を有することが示されている。Nicaise et al.,2004,Protein Science,13:1882-91では、単一のCDRが、そのリゾチーム抗原に対する抗原結合活性及び親和性を付与し得ることが示されている。
【0258】
したがって、5つ、4つ、3つ以下のCDRを有する抗体分子は、それらが由来する完全長抗体の抗原結合特性を保持することが可能である。
【0259】
抗体分子は、完全長抗体の誘導体又はかかる抗体の断片であってもよい。誘導体が使用される場合、完全長抗体と同じ標的上のエピトープに結合するという意味で、対応する完全長抗体と同じ抗原結合特徴を有するべきである。
【0260】
したがって、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、全てのタイプの抗体分子、並びにそれらの機能的断片及びそれらの誘導体を含み、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、組換え産生された抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト由来の抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖のホモ二量体、抗体軽鎖のホモ二量体、抗体重鎖のヘテロ二量体、抗体軽鎖のヘテロ二量体、そのようなホモ二量体及びヘテロ二量体の抗原結合機能的断片を含む。
【0261】
更に、本明細書で使用される場合、「抗体分子」という用語は、以下を含む、全てのクラスの抗体分子及び機能的断片を含む:(特に明記しない限り)IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、及びIgE。
【0262】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG1である。当業者は、マウスIgG2a及びヒトIgG1が、活性化Fcガンマ受容体と結合し、例えばADCP及びADCCによる、活性化Fcガンマ受容体を担持する免疫細胞の活性化により、標的細胞の欠失を活性化する能力を共有していることを認識する。このように、マウスIgG2aがマウスにおける欠失に好ましいアイソタイプである実施形態では、ヒトIgG1は、そのような実施形態においてヒトにおける欠失に好ましいアイソタイプである。
【0263】
上で概説したように、抗体分子の異なるタイプ及び形態は、本発明に包含され、免疫学分野の当業者には既知であろう。治療目的に使用される抗体は、多くの場合、抗体分子の特性を改変する追加の構成成分を用いて改変されることがよく知られている。
【0264】
したがって、本発明者らは、本発明の抗体分子又は本発明に従って使用される抗体分子(例えば、モノクローナル抗体分子、及び/又はポリクローナル抗体分子、及び/又は二重特異性抗体分子)が、検出可能な部分及び/又は細胞傷害性部分を含むことを含める。
【0265】
「検出可能な部分」とは、酵素、放射性原子、蛍光部分、化学発光部分、生物発光部分で構成される群からの1つ以上を含む。検出可能な部分は、抗体分子をインビトロ、及び/又はインビボ、及び/又はエクスビボで視覚化することを可能にする。
【0266】
「細胞傷害性部分」とは、放射性部分及び/又は酵素が挙げられ、酵素は、カスパーゼ及び/又は毒素であり、毒素は、細菌毒素又は毒液であり、細胞傷害性部分は、細胞溶解を誘導することが可能である。
【0267】
本発明者らは更に、抗体分子が、単離された形態及び/又は精製された形態であり得、かつ/又はPEG化され得ることを含める。PEG化は、その挙動を改変する、例えば、その流体力学的サイズを増加させ、腎クリアランスを防止することでその半減期を延ばすように、ポリエチレングリコールポリマーを、抗体分子又は誘導体などの分子に付加する方法である。
【0268】
上で考察されたように、抗体のCDRは、抗体標的に結合する。本明細書に記載の各CDRへのアミノ酸の割り当ては、Kabat EA et al.1991,In”Sequences of Proteins of Immunological Interest”Fifth Edition,NIH Publication No.91-3242,pp xv-xviiによる定義に従う。
【0269】
当業者が認識するように、アミノ酸を各CDRに割り当てるための他の方法も存在する。例えば、International ImMunoGeneTics information system(IMGT(登録商標))(http://www.imgt.org/and Lefranc and Lefranc”The Immunoglobulin FactsBook”published by Academic Press,2001)。
【0270】
更なる実施形態では、本発明の抗体分子、又は本発明に従って使用される抗体分子は、本明細書で提供される特定の抗体と競合することが可能である抗体分子であり、特定の標的に結合するため、例えば、配列番号1~194に提示されるアミノ酸配列のうちのいずれかを含む抗体分子である。
【0271】
「競合することが可能である」とは、競合抗体が、本明細書で定義される抗体分子の特定の標的への結合を少なくとも部分的に抑制又はその他の方法で干渉する能力があることを意味する。
【0272】
例えば、そのような競合抗体分子は、本明細書に記載の抗体分子の結合を、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約100%抑制する能力があり得、かつ/あるいは特定の標的への結合を防止若しくは低減する本明細書に記載の抗体の結合能力を少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%抑制することが可能であり得る。
【0273】
競合結合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等の当業者によく知られた方法によって判定することができる。
【0274】
ELISAアッセイを使用して、エピトープ改変抗体又は遮断抗体を評価することができる。競合抗体を特定するために好適な追加の方法は、参照により本明細書に組み込まれるAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow & Laneに開示されている(例えば、567~569頁、574~576頁、583頁、及び590~612頁、1988,CSHL,NY,ISBN0-87969-314-2を参照されたい)。
【0275】
抗体が、定義された標的分子若しくは抗原に特異的に結合する、又はそれと相互作用することはよく知られている。つまり、抗体は、その標的に優先的かつ選択的に結合し、標的ではない分子には結合しない。
【0276】
タンパク質の結合を評価する方法は、生化学及び免疫学の当業者には既知である。当業者であれば、それらの方法を使用して、抗体の標的への結合及び/又は抗体のFc領域のFc受容体への結合、並びにそれらの相互作用の相対的な強度、若しくは特異性、若しくは抑制、若しくは防止、若しくは低減を評価することができることを理解するであろう。タンパク質の結合を評価するために使用され得る方法の例には、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)がある(抗体特異性に関する考察については、Fundamental Immunology Second Edition,Raven Press,New Yorkの332~336頁(1989)を参照されたい)。
【0277】
したがって、「特異的に結合する抗体分子」とは、抗体分子が標的に特異的に結合するが、非標的には結合しないか、又は標的よりも非標的により弱く(例えば、より低い親和性で)結合することを含む。
【0278】
また、抗体が、非標的よりも標的に、少なくとも2倍強く、又は少なくとも5倍強く、又は少なくとも10倍強く、又は少なくとも20倍強く、又は少なくとも50倍強く、又は少なくとも100倍強く、又は少なくとも200倍強く、又は少なくとも500倍強く、又は少なくとも約1000倍強く、特異的に結合するという意味を含む。
【0279】
加えて、抗体が標的に、少なくとも約10-1、又は少なくとも約10-2、又は少なくとも約10-3、又は少なくとも約10-4、又は少なくとも約10-5、又は少なくとも約10-6、又は少なくとも約10-7、又は少なくとも約10-8、又は少なくとも約10-9、又は少なくとも約10-10、又は少なくとも約10-11、又は少なくとも約10-12、又は少なくとも約10-13、又は少なくとも約10-14、又は少なくとも約10-15のKで結合する場合、抗体が標的に特異的に結合するという意味を含む。
【0280】
ここで、以下の図面及び実施例を参照して、本発明の特定の態様を具体化する、好ましい非限定的な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0281】
図1】Fc:FcγR非結合性(binding impaired)抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合性(binding proficient)FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2a及びmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性及びインビボでの生存を高める。MC38腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、又は200μgの示された抗FcγRIIB抗体バリアント若しくはアイソタイプ対照(WR17)との組み合わせで3回(100μlのPBS中の5×10腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、及び15日目)処置した。最初の処置では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処置のために、両方の抗体を一緒に投与した。全ての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、MC38について、225mmの面積に達したときに末期であるとみなした。グラフは、動物の腫瘍増殖及び生存を示す。(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図2】Fc:FcγR非結合性抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG1 NA)ではなく、Fc:FcγR結合性抗FcγRIIB(AT-130-2 mIgG2a及びmIgG1)が、抗PD-1抗体の治療有効性及びインビボでの生存を高める。CT26腫瘍担持マウスを、200μgの抗PD-1(クローン29F.1A12;Bioxcell)抗体単独で、又は200μgの示された抗FcγRIIB抗体バリアント若しくはアイソタイプ対照(WR17)との組み合わせで3回(100μlのPBS中の5×10腫瘍細胞を皮下接種した後、8日目、12日目、及び15日目)処置した。最初の処置では、抗PD1抗体の6時間前にAT130-2を投与した。その後の処置のために、両方の抗体を一緒に投与した。全ての注射は、200μlのPBS中で腹腔内に注射した。腫瘍は、CT26について、400mmの面積に達したときに末期であるとみなした。グラフは、動物の腫瘍増殖及び生存を示す。(**P<0.01;ログランク検定)。実験は8~14週齢の雌マウスで行われた。
図3】α-CTLA-4とBI-1607サロゲートAT130-2 mIgG1 N297Aとの併用処置は、MC38腫瘍モデルにおいて、生存率の向上をもたらす。1×10個のMC38細胞を、C57BL/6マウスに皮下(s.c.)注射し、確立させた。腫瘍が直径6mmに達したら、マウスを処置した。マウスを、mIgG2aとしての200μgの抗FcγRIIB抗体(クローンAT130-2)、又は400μgのmIgG1 N297A及び/又は200μgの抗CTLA-4抗体(クローン9H10)で処置した。その後、マウスを、最初の投与の3日後及び7日後、単一のmAb又は組み合わせたmAbで処置した。全ての抗体は、200μlのPBS中で腹腔内(i.p.)投与した。腫瘍を、週3回測定し、サイズを各処置群の個々のマウスの腫瘍体積(幅×長さ×0.52)として提示した。1群当たりN=Xである。この図は、X回の異なる実験の要約である。
図4】抗CTLA-4及びFcγRIIB遮断による併用療法を示す。5×10のCT26細胞を雌のBALB/cマウスに皮下注射した。腫瘍の幅×長さが約100mmになったときに、マウスを無作為に処置群に分けた。処置は、0、2、4及び11日目に行われた。9H10(ハムスター抗マウスCTLA4)のみのマウスに、200μlのPBS中200μgの抗体を毎日腹腔内投与した。0日目に、併用マウスに200μlのPBS中100μgのAT130-2N297A(抗マウスCD32)を腹腔内投与し、6時間後に200μlのPBS中200μgの9H10を腹腔内投与した。2、4、及び11日目に、併用マウスに、両抗体(200μgの9H10及び100μgのAT130-2NA)を200μlの単回腹腔内注射で投与した。腫瘍の幅及び長さを測定し、腫瘍の長さ×幅が400mmを超えたときにマウスを殺処分した。図A)処置スケジュールを表す。群1:抗体なし、群2:抗mCD32(AT130-2NA;100μg)、群3:抗CTLA-4(9H10;200μg)、群4:AT130-2の6時間後に(PC61)の組み合わせ。腫瘍を確立させ、100mmにおいて処置した。12日目に追加の用量を投与した。図B)個々の腫瘍の増殖を示す。図C)平均腫瘍面積+/-SD又はSEMを表す。図D)動物の生存を表す。図E)生存を示す2つの別個の実験(n=10/群)からの複合。9H10とAT130-2NAとの組み合わせ(NAコンボ)は、9H10単独よりも生存期間の延長において有意により強力であることを示した(p=0.0179)。
図5】マウスにMC38腫瘍細胞を接種し、腫瘍が約7×7mmのサイズに達したら、抗体を注射した。3回の抗体の注射の24時間後、処置開始後7~8日目にマウスを犠牲にし、腫瘍を採取した。腫瘍単一細胞懸濁液をFACSによって免疫細胞含有量について分析した。図5A~Cは、腫瘍における異なる細胞集団のパーセンテージを示し、図5Dは、CD8+/Treg比を示す。抗CTLA4とBI-1607サロゲート(AT130-2 mIgG1 N297A)との併用処置は、CD4+/CD25+細胞の数の減少及びCD8/Treg比の改善をもたらす。
図6】10~12日後、マウスから脾臓を取り出し、単一細胞懸濁液を調製し、次いで、SCIDマウスに腹腔内注射した(10~15×10/マウス)。1時間後、SCIDマウスを、10mg/kgのYervoy、抗CD25(バシリキシマブ)、Yervoy+BI-1607サロゲート(AT130-2 mIgG1 N297A)、又はアイソタイプ対照mAbのいずれかで腹腔内処置した。抗体の腹腔内注射の24時間後、マウスから液を採取し、液中の細胞を、FACSを使用して分析した。図6Aは、ヒトCD45細胞の総数のうちのCD45CD3CD4CD25CD127低/陰性として定義された染色Tregのパーセンテージを示す。図6Bは、ヒトCD45+細胞の総数のうちのエフェクターT細胞(CD8)のパーセンテージを示す。図6Cは、CD8+/Treg比を示す。YervoyをBI-1607サロゲート(AT130-2 mIgG1 N297A)と組み合わせると、Yervoy単独と比較して、Tregsのパーセンテージは減少し、CD8+の割合は増加し、CD8+/Treg比は改善した。1群当たりn=4~5。
図7】野生型又はNA変異型mAbを用いた抗IL2R mAb+/-FcγRIIB遮断によるTreg欠失の評価。野生型AT130-2は、欠失のいかなる向上も見られないが、一方NAバリアントは、向上が見られる。100μgのAT130-2NA又はmIgG1野生型AT130-2を、雌Balb/cマウスに腹腔内投与した。6時間後、100μgのPC61を腹腔内投与した。4日後、脾臓中のTreg(FoxP3)をFACにより判定した。マウスを殺処分し、脾臓から得られた単細胞懸濁液をFAC cantoで分析する前に、細胞内FoxP3染色に先立ってCD4、CD8及びB220に対する抗体で染色した。各組織の白血球数を判定した。Tregは、CD8-CD4+FoxP3+と定義し、Tregの数は白血球数を使用して算出した。野生型mIgG1 AT130-2と比較して、N297A抗体をPC61と組み合わせて4日間投与したマウスの脾臓では、Tregの数が有意に少なかった(対応のないT検定、P=0.044)。
図8】α-CTLA-4とBI-1607サロゲートAT130-2 mIgG1 N297Aとの併用処置は、抗CTLA-4のより低い用量により、増強された有効性及び保持された生存をもたらす。1×10個のMC38細胞を、C57BL/6マウスに皮下注射し、確立した。腫瘍が6mmの直径に達したら、マウスを処置した。マウスを、2又は0.4mg/kgの抗CTLA-4(クローン9H10)単独で、又は20mg/kgのmIgG1 N297Aとしての抗FcγRIIB抗体(クローンAT130-2)を、10mg/kgの抗CTLA-4、20mg/kgのmIgG1 N297AとしてのAT130-2と組み合わせて、又はアイソタイプ対照で処置した。その後、マウスを、最初の投与の3日後及び7日後、単一のmAb又は組み合わせたmAbで処置した。全ての抗体は、200μlのPBS中で腹腔内投与した。図8A)腫瘍を、週3回測定し、サイズを各処置群の個々のマウスの腫瘍体積(幅2×長さ×0.52)として提示した。1群当たりN=10。図8B)異なるグループのマウスの生存(全てのグループが示されているわけではない)。
図9】BI-1607サロゲートAT130-2 mIgG1 N297Aを併用CTLA-4/PD-1処置に加えると、処置耐性B16モデルにおいて治療有効性が向上する。1×10個のB16細胞を、C57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍接種の4日後、マウスを処置した。マウスを、10mg/kgの抗PD-1+2又は0.4mg/kgの抗CTLA-4(クローン9H10)単独で、又は20mg/kgのmIgG1 N297Aとしての抗FcγRIIB抗体(クローンAT130-2)と組み合わせて処置した。更に、対照群を、10mg/kgの抗PD-1、10mg/kgの抗PD-1+20mg/kgのAT130-2-N297Aで、又はアイソタイプ対照で処置した。その後、マウスを、最初の投与の3日後及び7日後、単一のmAb又は組み合わせたmAbで処置した。全ての抗体は、200μlのPBS中で腹腔内投与した。腫瘍を、週3回測定し、サイズを各処置群の個々のマウスの腫瘍体積(幅2×長さ×0.52)として提示した。1群当たりN=4~10。
図10】BI-1607サロゲートAT130-2 mIgG1 N297Aを併用CTLA-4/PD-1処置に加えると、処置耐性B16モデルにおいて生存率が向上する。1×10個のB16細胞を、C57BL/6マウスに皮下注射した。腫瘍接種の4日後、マウスを処置した。マウスを、10mg/kgの抗PD-1+2又は0.4mg/kgの抗CTLA-4(クローン9H10)単独で、又は20mg/kgのmIgG1 N297Aとしての抗FcγRIIB抗体(クローンAT130-2)と組み合わせて処置した。更に、対照群を、10mg/kgの抗PD-1、10mg/kgの抗PD-1+20mg/kgのAT130-2-N297Aで、又はアイソタイプ対照で処置した。その後、マウスを、最初の投与の3日後及び7日後、単一のmAb又は組み合わせたmAbで処置した。全ての抗体は、200μlのPBS中で腹腔内投与した。腫瘍は、倫理的エンドポイントであると予め定められたサイズに達するまで、週に3回測定した。1群当たりN=4~10。
【実施例
【0282】
背景
mFcγRIIB遮断サロゲートmAbの生成
本発明者らは、抑制性FcγRIIBを効果的に遮断することができるヒト抗体を以前に生成している。hFcγRIIB特異的抗体6G11に由来する2つの抗体バリアント、活性化FcγR及び抑制性FcγRの両方に結合する能力がある野生型Fcドメインを有するhIgG1、並びに全てのFcγRへのFc結合能が著しく損なわれたhIgG1N297Aが生成された[24]。
【0283】
固形がんにおける免疫調節性抗体(例えば、抗PD-1及び抗CTLA-4抗体)の活性を増強するためのFcγRを遮断する治療可能性を評価するために、本発明者らは、免疫能のある(immune competent)同系マウス腫瘍モデルにおける研究に好適なサロゲートマウスFcγRIIB遮断抗体を以前に生成した。
【0284】
ヒトリード臨床候補抗体をFcγRIIBに一致させるFc:FcγR結合性(proficient)抗体及びFc:FcγR非結合性(deficient)抗体は、マウスFcγRIIB特異的抗体であるAT-130のFv配列を、それぞれマウスIgG2a(Fc:FcγR結合性)及びマウスIgG1N297A(Fc:FcγR非結合性)定常ドメインに融合させることによって構築した。更に、活性化FcγR(mFcγRIII)及び抑制性mFcγRIIのうちの1つにのみ結合し、したがって、「中程度」のFc:FcγR結合能力を示す、抗FcγR mIgG1アイソタイプ抗体を生成した。生成された全ての抗体は、組換えタンパク質、インビトロ細胞結合、及び遮断アッセイを用いたELISAで評価した場合、マウスFcγRIIBへの非常に特異的で高い親和性のFv媒介性の結合を示した[25]。
【0285】
材料及び方法
細胞
MC38及びCT26マウス結腸がん細胞株、並びにB16マウス黒色腫細胞株は、ATCCから入手した。細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を補充した、2mMのL-グルタミンを含有するRPMI1640培地中で維持した。移植用の細胞を採取する前、細胞の対数成長期を確保した。
【0286】
ヒトPBMC(Hospital of Halmstad)を、Ficoll Paque PLUSを使用して単離し、洗浄した後、細胞を、75×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。
【0287】
試験物質及び対照物質
抗マウスCTLA-4クローン9H10及び抗マウスPD-1クローン29F.1A12は、Bioxcellから購入し、Yervoy(イピリムマブ)及びバシリキシマブは、Apoteketから購入した。AT130-2(抗FcγRIIB)抗体を、ハイブリドーマから精製した。AT130-2及びアイソタイプ対照抗体のアイソタイプバリアントは、HEK293細胞において一過的に発現された。
【0288】
精製された研究バッチの特異性は、発光に基づくELISA又はFACS分析で実証された。抗体のエンドトキシンのレベルは、LAL-アメーボサイト試験によって決定されるように、<0.1IU/mLであることがわかった。
【0289】
マウスモデル
皮下MC38腫瘍モデル
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6マウス(n=10)(Taconic,Denmarkで繁殖)。100μLのPBS中100万(1×10)個のMC38腫瘍細胞を、脇腹に皮下注射した。処置は、腫瘍が直径6×6~8×8mm(ノギスで測定)に達したときに開始した(1日目)。以下の処置スケジュールに従って処置を開始した(1日目)。
【0290】
皮下CT26腫瘍モデル
6~8週齢(17~20g)の雌Balb/cマウス(n=10)(Southampton Universityで繁殖、元のブリーダーはCharles River)。100μLのPBS中5×10個のCT26腫瘍細胞を、脇腹に皮下注射した。処置は、腫瘍が直径xmm(ノギスで測定)に達したときに開始した(1日目)。
【0291】
皮下B16腫瘍モデル
6~8週齢(17~20g)の雌C57/BL6マウス(n=10)は、Taconicから入手した。100μLのPBS中100万(1×10)個のB16腫瘍細胞を、脇腹に皮下注射した。処置は、以下の処置スケジュールに従って、腫瘍細胞の接種(1日目)の4日後に開始した。
【0292】
NOG-PBMC-SCIDマウスモデル
NOGマウスに、15~20×10個のPBMC細胞を静脈内(i.v.)注射した。注射の2週間後、脾臓を単離し、単一細胞懸濁液にした。細胞は、50×10細胞/mlで滅菌PBSに再懸濁した。SCIDマウスに、(50~60%のヒトT細胞を含む)10×10細胞/マウスに相当する200μlの懸濁液を腹腔内(i.p.)注射した。1時間後、マウスを、(以下の第2の処置スケジュールに従って)10mg/kgのYervoy、バシリキシマブ、BI-1607サロゲート(AT130-2 mIgG1 N297A)又はアイソタイプ対照mAbで処置した。24時間後、マウスの腹腔内液を採取した。ヒトT細胞のサブセットを、以下のマーカー:CD45、CD3、CD4、CD8、CD25、CD127(全てBD Biosciencesから)を使用して、FACSによって同定及び定量化した。
【0293】
処置スケジュール
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0294】
動物のモニタリング
腫瘍のサイズを、ノギスで週2回測定し、腫瘍面積(幅×長さ)又は腫瘍体積(幅×長さ×0.52)を計算した。
【0295】
腫瘍が倫理的エンドポイントに達したとき、又は以下のいずれかが発生した場合、動物をCO又は頸部脱臼によって安楽死させた。
・ハンチング
・汚れた毛皮
・可動性の低下
【0296】
腫瘍免疫浸潤物の分析
腫瘍を、小片に切断し、37℃でDNAse及びLiberaseの混合物で酵素的に消化した。更に、腫瘍溶液をセルストレーナーを通して濾過して、単一細胞溶液を得た。細胞溶液を、IVIGでブロッキングした後、染色した。免疫細胞を、以下のマーカー:CD45、CD3、CD4、CD8、CD25(全てBD Biosciencesから)を使用して、FACSによって同定及び定量化した。
【0297】
統計解析
抗体媒介性マウス生存の統計解析は、ログランク(Mantel-Cox)検定(GraphPad Prism)を使用して計算した。統計的有意性は、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001について考慮された。
【0298】
実施例1-FcγRIIB遮断mAbは、インビボで抗PD-1及び抗CTLA-4抗腫瘍活性を差次的に調節する
本発明者らはまた、以前に、同系MC38腫瘍を移植した免疫能のあるC57BL/6マウス、又は同系CT26腫瘍を移植したBalb/Cマウスにおける抗PD-1の治療活性を向上させるためのFc:FcγR結合性及びFc:FcγR非結合性抗FcγRIIBの能力も評価した。両方の腫瘍モデルは、CD8+T細胞、Treg、及びマクロファージを含む免疫細胞によって浸潤され、部分的に応答する(MC38)か又は応答しない(CT26)、及び抗PD-1抗体療法であることが知られており、ヒトのがんで観察された部分的な応答性を反映し、有効性を改善する余地を残している。驚くべきことに、FcγR結合性抗FcγRIIBによる併用処置は、応答性MC38モデル(図1A~F)において、抗腫瘍活性及び抗PD-1処置動物の生存を有意に向上させ、抗PD-1耐性CT26腫瘍モデル(図2)において、抗腫瘍活性及び生存を誘導した。逆に、Fc:FcγR非結合性抗FcγRIIBと抗PD-1との併用処置は、抗PD-1治療活性を向上させることができなかったか、又は更には損なわれた。
【0299】
逆に、抗PD-1について見出されたものとは全く対照的に、本発明者らは、MC38腫瘍担持動物における腫瘍増殖の減少及び生存期間の延長によって実証されるように、FcγR結合性ではなく、FcγR非結合性抗FcγRIIBとの併用療法が、抗CTLA-4の有効性を向上させたと判定した(図3)。FcγR非結合性抗FcγRIIBの同様の抗CTLA-4増強効果は、CT26腫瘍担持Balb/cマウスにおいて以前に観察された(図4)。
【0300】
まとめて、これらの知見は、抗FcγRIIB抗体の異なるバリアントが、CTLA-4及びPD-1に対する免疫チェックポイント遮断抗体のインビボ治療活性を増強するために必要であり、有用であることを実証した。
【0301】
実施例2-抗CTLA-4抗腫瘍活性のFcγRサイレンシング抗FcγRIIB増強はインビボでのTregの枯渇と相関する
本発明者らは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗体調節を評価することによって、抗CTLA-4抗腫瘍活性のFcγRサイレンシング抗FcγRIIB増強の基礎となる細胞メカニズムを評価することにした。以前の研究では、抗CTLA-4抗体療法が、活性化Fcガンマ受容体[21]との抗体Fc相互作用に依存すること、並びにFcガンマ受容体結合に対して最適化された抗体定常ドメインの改善された療法が、増強されたTreg枯渇及びそれに伴うより高い比率の腫瘍内CD8+:Treg比[18]と相関することが確立されていた。
【0302】
更に、以前の研究では、抗体でコーティングされた標的細胞の枯渇が、それぞれ枯渇を促進及び相殺する活性化及び抑制性(FcγRIIB)FcgRへの結合に対する抗体Fcの競合によって調節されることが確立されていた。
【0303】
これらの観察と一致して、抗CTLA-4単独での処置は、腫瘍内Tregの数を減少させ、CD8+:Treg比を改善した(図5)。FcγRサイレンシング抗FcγRIIB単独での処置は、CD8+T細胞又はTregの数に影響を与えなかったが、抗CTLA-4とFcγRサイレンシング抗FcγRIIBとの併用処置は、腫瘍内Tregの数を更に減少させ、CD8+:Treg比を改善した(図5)。
【0304】
Treg枯渇のFcγRサイレンシング抗FcγRIIB増強を含むインビボの作用機序を更に支持するように、PBMCヒト化マウスのFcγR非結合性抗ヒトFcγRIIB(6G11N297Q)及び抗ヒトCTLA-4(イピリムマブ)による併用処置は、イピリムマブ単独と比較して、より強いヒトTreg枯渇をもたらし、ヒトCD8+T細胞:Treg比の改善をもたらした(図6)。
【0305】
重要なことに、このモデルは、Treg及びCD8+Tエフェクター細胞の両方でのヒト腫瘍内関連CTLA-4の発現を特徴とする(図6)。最後に、以前に示されたように、FcγRサイレンシング抗FcγRIIBは、FcγRIIBの遺伝子欠失後に観察されたのと同様に、野生型C57BL/6マウスにおけるTreg細胞の抗IL-2抗体の枯渇を増強した(図7)[26]。
【0306】
まとめて、これらのデータは、FcγRサイレンシング抗FcγRIIBが、抑制性FcγRIIBの選択的遮断を通して、抗CTLA-4抗体の抗腫瘍活性を増強するように作用し、FcγR依存性抗CTLA-4Treg枯渇の活性化を改善し、CD8+:Treg比の改善をもたらすことを示唆した。したがって、発明者らは、この知見を利用して、これがCTLA-4の治療域を改善するかどうかを決定しようとした。
【0307】
実施例3-FcγRIIB遮断は、インビボでの抗CTLA-4治療域を改善する
PD-1及びPD-L1と並んで、CTLA-4は、免疫チェックポイント遮断のための数少ない臨床的に検証された標的の1つであり、イピリムマブは、がん免疫療法のための唯一承認された抗CTLA-4抗体である。黒色腫を含む進行期のがん患者では、抗CTLA-4抗体が長期間持続する応答を誘導し、治癒するように見える能力があるもかかわらず、重篤で自己免疫性である可能性のある許容性の懸念により、広範囲の使用が制限され、より低い最大以下の有効用量を含む療法の開発がもたらされた。新たなデータは、抗CTLA-4抗体が、エフェクターT細胞とTreg細胞の両方に作用して、抗腫瘍活性を発揮し得ることを示す。具体的には、CTLA-4:B7ファミリー相互作用の遮断及び中央区画内のCD4+及びCD8+エフェクターT細胞における免疫抑制性シグナル伝達の遮断は、抗CTLA-4誘導性適応抗腫瘍免疫の開始に寄与するが、更に、非腫瘍、自己免疫応答、及び自己免疫症状の誘導に寄与し得ると考えられている[27、28]。腫瘍において、抗CTLA-4抗体は、(腫瘍内)エフェクターT細胞及び末梢性Treg細胞と比較して、CTLA-4を過剰発現する、高免疫抑制性Treg細胞のFcガンマ受容体依存性枯渇をもたらすことが示されている[18]。
【0308】
したがって、より低いより良好な許容性の抗CTLA-4用量のFcガンマ受容体依存性Treg枯渇を増強することは、強力でありながら安全な抗CTLA-4抗体免疫療法を達成するための魅力的な戦略であり得る。
【0309】
イピリムマブの治療活性及び毒性は関連しており、用量依存的であることが十分に確立されている[29]。したがって、がんの種類及び単剤に応じて、又は抗PD-1承認イピリムマブとの併用に応じて、用量は1~10mg/kgに及ぶ。
【0310】
安全に投与することができる有効なイピリムマブ用量に対するFcγR非結合性抗ヒトFcγRIIBの免疫増強効果の可能性を調べるために、本発明者らは、MC38腫瘍担持マウスを2又は0.4mg/kgの用量の抗CTLA-4抗体単独で、又は10mg/kgのFcγR非結合性抗ヒトFcγRIIBの全治療用量と組み合わせて処置し、抗腫瘍効果を腫瘍増殖及び生存の障害として記録した。対照IgGでの処置、又は10mg/kgの抗CTLA-4の最大有効用量での処置は、陰性対照及び陽性対照として機能した。驚くべきことに、FcγR非結合性抗ヒトFcγRIIB(BI-1607サロゲート)と組み合わせた場合、5倍低用量のイピリムマブ(mg)は、腫瘍増殖の抑制及び付与された生存の両方によって評価されるように、10mg/kgの最大有効用量のイピリムマブに対して同等に有効であった(図8A及び8B)。FcγR非結合性抗ヒトFcγRIIBを用いた単剤療法は、対照抗体処置と比較して、腫瘍増殖又は生存に影響を及ぼさなかった。
【0311】
これらの知見は、FcγR非結合性抗ヒトFcγRIIBが、実際にインビボで抗CTLA-4の治療域を改善することができることを実証した。
【0312】
実施例4-FcγRIIB遮断は、インビボで抗CTLA-4及び抗PD-1の両方による免疫チェックポイント阻害に対する耐性を克服する。
患者の生存に対するICBの全体的な貢献は誇張することはできないが、多くの患者は治療中に応答しないか、又は抵抗性を獲得しない。ICBに対する応答性又は耐性を決定するものについてはまだ多くのことがわかっていないが、免疫炎症性の腫瘍を有する患者は、免疫浸潤が不十分な腫瘍を有する患者よりも応答する可能性が高いことが広く受け入れられている。免疫除外又は「非浸潤性」腫瘍を有する患者は、ICBに反応する可能性は低い。メカニズムにかかわらず、抗CTLA-4及び抗PD-1/PD-L1の両方に耐性の患者は、特に重篤な予後を有する。
【0313】
これらの観察に照らして、ICBに対する耐性は、満たされていない重要な医療ニーズを構成し、耐性の克服に役立つ可能性のある薬物は、治療上非常に有望である。上記の研究は、抗CTLA-4及び抗PD-1自体を増強するために異なる種類の抗FcγRIIB抗体が必要であることを明確に示したが、本発明者らは、抗CTLA-4と抗PD-1との組み合わせに対するFcγR非結合性抗FcγRIIBの潜在的な抗腫瘍免疫増強効果を評価した。この目的のために、C57BL/6マウスに、同系B16腫瘍細胞(免疫浸潤が不十分であり、抗CTLA-4及び抗PD-1 ICBの両方に耐性があることが知られている「非浸潤性腫瘍」タイプのモデル)を移植した。このモデルの非常に耐性な性質と一致して、全治療用量の抗PD-1(10mg/kg)単独での処置も、臨床的に適切な用量の2mg/kgの抗CTLA-4と10mg/kgの抗PD-1との併用処置も、この設定において生存上の利点をもたらさなかった(図9及び10)。10mg/kgの最大有効用量のCTLA-4と10mg/kgの抗PD-1との組み合わせのみが、非常に耐性な腫瘍微小環境のこのモデルにおいて抗腫瘍活性を示した。
【0314】
次いで、驚くべきことに、FcγR非結合性抗FcγRIIBとの併用処置は、非有効用量の2mg/kgの抗CTLA-4及び10mg/kgの抗PD-1を、30%の動物で耐性を克服し、治癒を誘発した非常に有効な用量に変換し(図9及び10A)、高い(10+10mg/kg)抗CTLA-4/抗PD-1投薬レジメンの生存期間を約2倍にした(図9及び10B)。
【0315】
マウス腫瘍モデルにおけるマウスサロゲート抗体の用量は、がん対象において承認されたヒト抗体に直接推定することはできないが、B16/C57BL6マウス腫瘍モデルにおける合計データは、以下のことを実証する。第一に、独立した研究者による独立した報告(Jiao et al.,Int.J.Mol.Sci.,(2020)21,773:doi:10.3390/ijms21030773)と一致して、B16モデルは、抗CTLA-4又は抗PD-1の全治療最大有効用量に耐性であり、抗CTLA-4(例えば、2mg/kg)及び(全治療用量の)抗PD-1のヒトの治療上適切な併用用量(最大未満の有効用量)に耐性である。第二に、低用量(2mg/kg)の抗CTLA-4及びFcγR非結合性抗FcγRIIBとの併用処置は、最大有効用量(10mg/kg)の抗CTLA-4単独と比較して同等に有効であった。これは、FcγR非結合性抗FcγRIIBが、抗CTLA-4の治療域を改善し、FcγR非結合性抗FcγRIIBが、(毒性の)抗CTLA-4単剤治療と比較して、十分に許容される用量の抗CTLA-4を最大未満から全治療活性当量に変換することができることを示している。第三に、そして最も重要なことに、これらのデータは、FcγR非結合性抗FcγRIIBと抗CTLA-4/抗PD-1との併用治療が、免疫チェックポイント遮断に対する「非浸潤性腫瘍」の耐性を克服することを実証する。
【0316】
参考文献
1. Cheson,B.D.and J.P.Leonard,Monoclonal antibody therapy for B-cell non-Hodgkin’s lymphoma.N Engl J Med,2008.359(6): p.613-26.
2. Gradishar,W.J.,HER2 therapy--an abundance of riches.N Engl J Med,2012.366(2): p.176-8.
3. Jonker,D.J.,et al.,Cetuximab for the treatment of colorectal cancer.N Engl J Med,2007.357(20): p.2040-8.
4. Lokhorst,H.M.,et al.,Targeting CD38 with Daratumumab Monotherapy in Multiple Myeloma.N Engl J Med,2015.373(13): p.1207-19.
5. Hodi,F.S.,et al.,Improved survival with ipilimumab in patients with metastatic melanoma.N Engl J Med,2010.363(8): p.711-23.
6. Larkin,J.,F.S.Hodi,and J.D.Wolchok,Combined Nivolumab and Ipilimumab or Monotherapy in Untreated Melanoma.N Engl J Med,2015.373(13): p.1270-1.
7. Brahmer,J.R.,et al.,Safety and activity of anti-PD-L1 antibody in patients with advanced cancer.N Engl J Med,2012.366(26): p.2455-65.
8. Topalian,S.L.,et al.,Safety,activity,and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer.N Engl J Med,2012.366(26): p.2443-54.
9. Ribas,A.,et al.,Pembrolizumab versus investigator-choice chemotherapy for ipilimumab-refractory melanoma (KEYNOTE-002): a randomised,controlled,phase 2 trial.Lancet Oncol,2015.16(8): p.908-18.
10. Robert,C.,et al.,Ipilimumab plus dacarbazine for previously untreated metastatic melanoma.N Engl J Med,2011.364(26): p.2517-26.
11. Robert,C.,et al.,Anti-programmed-death-receptor-1 treatment with pembrolizumab in ipilimumab-refractory advanced melanoma: a randomised dose-comparison cohort of a phase 1 trial.Lancet,2014.384(9948): p.1109-17.
12. Robert,C.,et al.,Nivolumab in previously untreated melanoma without BRAF mutation.N Engl J Med,2015.372(4): p.320-30.
13. Weber,J.S.,et al.,Nivolumab versus chemotherapy in patients with advanced melanoma who progressed after anti-CTLA-4 treatment (CheckMate 037): a randomised,controlled,open-label,phase 3 trial.Lancet Oncol,2015.16(4): p.375-84.
14. Sharma,P.,et al.,Primary,Adaptive,and Acquired Resistance to Cancer Immunotherapy.Cell,2017.168(4): p.707-723.
15. Goede,V.,et al.,Obinutuzumab plus chlorambucil in patients with CLL and coexisting conditions.N Engl J Med,2014.370(12): p.1101-10.
16. Baselga,J.,et al.,Pertuzumab plus trastuzumab plus docetaxel for metastatic breast cancer.N Engl J Med,2012.366(2): p.109-19.
17. Gopal,A.K.,et al.,PI3Kdelta inhibition by idelalisib in patients with relapsed indolent lymphoma.N Engl J Med,2014.370(11): p.1008-18.
18. Arce Vargas,F.,et al.,Fc Effector Function Contributes to the Activity of Human Anti-CTLA-4 Antibodies.Cancer Cell,2018.33(4): p.649-663 e4.
19. Dahan,R.,et al.,FcgammaRs Modulate the Anti-tumor Activity of Antibodies Targeting the PD-1/PD-L1 Axis.Cancer Cell,2015.28(3): p.285-95.
20. Arlauckas,S.P.,et al.,In vivo imaging reveals a tumor-associated macrophage-mediated resistance pathway in anti-PD-1 therapy.Sci Transl Med,2017.9(389).
21. Simpson,T.R.,et al.,Fc-dependent depletion of tumor-infiltrating regulatory T cells co-defines the efficacy of anti-CTLA-4 therapy against melanoma.J Exp Med,2013.210(9): p.1695-710.
22. Sow,H.S.,et al.,FcgammaR interaction is not required for effective anti-PD-L1 immunotherapy but can add additional benefit depending on the tumor model.Int J Cancer,2019.144(2): p.345-354.
23. Litchfield,K.,et al.,Meta-analysis of tumor- and T cell-intrinsic mechanisms of sensitization to checkpoint inhibition.Cell,2021.184(3): p.596-614 e14.
24. Roghanian,A.,et al.,Antagonistic human FcgammaRIIB (CD32B) antibodies have anti-tumor activity and overcome resistance to antibody therapy in vivo.Cancer Cell,2015.27(4): p.473-88.
25. Tutt,A.L.,et al.,Development and Characterization of Monoclonal Antibodies Specific for Mouse and Human Fcgamma Receptors.J Immunol,2015.195(11): p.5503-16.
26. Arce Vargas,F.,et al.,Fc-Optimized Anti-CD25 Depletes Tumor-Infiltrating Regulatory T Cells and Synergizes with PD-1 Blockade to Eradicate Established Tumors.Immunity,2017.46(4): p.577-586.
27. Tivol,E.A.,et al.,Loss of CTLA-4 leads to massive lymphoproliferation and fatal multiorgan tissue destruction,revealing a critical negative regulatory role of CTLA-4.Immunity,1995.3(5): p.541-7.
28. Waterhouse,P.,et al.,Lymphoproliferative disorders with early lethality in mice deficient in Ctla-4.Science,1995.270(5238): p.985-8.
29. Bertrand,A.,et al.,Immune related adverse events associated with anti-CTLA-4 antibodies: systematic review and meta-analysis.BMC Med,2015.13: p.211.
【0317】
本発明の実施形態はまた、以下の番号付き段落に記載される。
1. 患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含み、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、組み合わせ。
2. 患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、の使用であって、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、使用。
3. 患者におけるがんを治療するための方法であって、方法が、患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を投与することを含み、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、方法。
4. 患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子、及び
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子との組み合わせで使用するためのものであり、
がんが、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性である、第1の抗体分子。
5. 患者におけるがんの治療に使用するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
第1の抗体分子が、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に対するがんにおける耐性を低減及び/又は防止することを特徴とする、第1の抗体分子。
6. 薬学的組成物であって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含む、薬学的組成物。
7. キットであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、第2の抗体分子と、
-第3の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第3の抗体分子と、を含む、キット。
8. 第1の抗体分子が、Fc領域を欠く、段落1~7のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
9. 第1の抗体分子が、そのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、非グリコシル化Fc領域を有する、段落1~7のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
10. 第1の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、段落1~9のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
11. 第1の抗体分子が、モノクローナル抗体分子又はモノクローナル由来の抗体分子である、段落1~10のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
12. 第1の抗体分子が、全長抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、(Fab’)2断片、Fab’断片、(Fab’)2断片、Fv断片、及びscFv断片からなる群から選択される、段落1~11のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
13. 第1の抗体分子が、非グリコシル化Fc領域を有するヒトlgG抗体分子又は非グリコシル化Fc領域を有するヒト由来のlgG抗体分子である、段落1~12のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
14. lgG抗体分子が、lgG1又はlgG2抗体分子である、段落13に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
15. lgG抗体分子が、非グリコシル化ヒトlgG1、又は非グリコシル化ヒト化マウス抗体、又は非グリコシル化ヒト化ラマhclgG抗体、又は非グリコシル化キメラ化マウスlgGである、段落14に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
16. 第1の抗体が、297位のアミノ酸置換により非グリコシル化されている、段落15に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
17. 第1の抗体が、N297Q置換により非グリコシル化されている、段落16に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
18. 第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変重鎖(VH)を含む、段落1~17のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191。
19. 第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変軽鎖(VL)を含む、段落1~18のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
20. 第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む、段落1~19のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26。
21. 第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む、段落1~20のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、及び配列番号50。
22. 第1の抗体分子が、以下のCDRアミノ酸配列を含む、段落1~21のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53及び配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59及び配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65及び配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71及び配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77及び配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83及び配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89及び配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95及び配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101及び配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107及び配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113及び配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119及び配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125及び配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131及び配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137及び配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143及び配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149及び配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155及び配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161及び配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167及び配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173及び配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179及び配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185及び配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191及び配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
23. 第1の抗体分子が、以下のアミノ酸配列を含む、段落1~22のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号3及び配列番号27、又は
(ii)配列番号4及び配列番号28、又は
(iii)配列番号5及び配列番号29、又は
(iv)配列番号6及び配列番号30、又は
(v)配列番号7及び配列番号31、又は
(vi)配列番号8及び配列番号32、又は
(vii)配列番号9及び配列番号33、又は
(viii)配列番号10及び配列番号34、又は
(ix)配列番号11及び配列番号35、又は
(x)配列番号12及び配列番号36、又は
(xi)配列番号13及び配列番号37、又は
(xii)配列番号14及び配列番号38、又は
(xiii)配列番号15及び配列番号39、又は
(xiv)配列番号16及び配列番号40、又は
(xv)配列番号17及び配列番号41、又は
(xvi)配列番号18及び配列番号42、又は
(xvii)配列番号19及び配列番号43、又は
(xviii)配列番号20及び配列番号44、又は
(xix)配列番号21及び配列番号45、又は
(xx)配列番号22及び配列番号46、又は
(xxi)配列番号23及び配列番号47、又は
(xxii)配列番号24及び配列番号48、又は
(xxiii)配列番号25及び配列番号49、又は
(xxiv)配列番号26及び配列番号50。
24. 第1の抗体分子が、FcyRllbへの結合に対して段落18~23のいずれか1つに記載の抗体分子と競合することができる抗体分子である、段落1~17のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
25. がんが、FcyRllb陽性B細胞がんである、段落1~5及び8~24のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
26. がんが、FcyRllb陰性がんである、段落1~5及び8~24のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
27. FcyRllb陰性がんが、固形がんである、段落26に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
28. 固形がんが、がん腫、肉腫、及びリンパ腫を含む群から選択される、段落27に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
29. 固形がんが、黒色腫、前立腺がん、大腸がん、肝細胞がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、胃がん、子宮頸がん、メルケル細胞がん、若しくは卵巣がんを含む群から選択され、かつ/又は固形がんが、免疫放棄腫瘍、若しくは免疫除外腫瘍、若しくは免疫浸潤が不十分な腫瘍である、段落27又は28に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
30. PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子による治療に耐性であるがんが、再発がん及び/又は難治性がんである、段落1~4及び8~29のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
31. 患者が、以前に、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子で治療されており、任意選択的に、患者が、当該治療後に耐性になっている、段落1~5及び8~30のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
32. 患者が、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子、及び/又はCTLA-4に特異的に結合する抗体分子で以前に治療されておらず、任意選択的に、患者が、当該治療に本質的に耐性である、段落1~5及び8~30のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
33. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、段落1~32のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
34. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、モノクローナル抗体分子又はモノクローナル由来の抗体分子である、段落1~33のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
35. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、そのFc領域を介してFcγ受容体に結合する能力を保持する、フルサイズ抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、及びそれらの抗原結合断片からなる群から選択される、段落1~34のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
36. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、ヒトIgG抗体、ヒト化IgG抗体分子、又はヒト由来のIgG抗体分子である、段落1~35のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
37. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、そのFc領域を介して少なくとも1つの活性化Fcγ受容体に結合する、段落1~36のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
38. 第2の抗体分子及び/又は第3の抗体分子が、活性化Fcガンマ受容体への結合を改善するように操作されている、段落1~36のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
39. 患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子の使用であって、第1の抗体分子が、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
第1の抗体分子が、CTLA-4に特異的に結合する第2の抗体分子による治療に対するがんにおける耐性を低減及び/又は防止することを特徴とする、使用。
40. 第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で投与される、段落39に記載の使用。
41. 患者におけるがんの治療に使用するための組み合わせであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、を含み、
組み合わせが、許容治療用量よりも低い第2の抗体分子の用量を含むことを特徴とする、組み合わせ。
42. 患者におけるがんを治療するための薬物の製造における、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子と、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子と、の使用であって、
組み合わせが、許容治療用量よりも低い第2の抗体分子の用量を含むことを特徴とする、使用。
43. 個体におけるがんを治療するための方法であって、方法が、患者に、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を投与することを含み、
投与される第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低いことを特徴とする、方法。
44. 患者におけるがんを治療するための第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子との組み合わせで使用するためのものであり、
使用される第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも低いことを特徴とする、第1の抗体分子。
45. 薬学的組成物であって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在することを特徴とする、薬学的組成物。
46. キットであって、
-第1の抗体分子であって、そのFab領域を介してFcyRllbに特異的に結合し、Fc領域を欠くか又はそのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減された、第1の抗体分子、
-第2の抗体分子であって、CTLA-4に特異的に結合し、そのFc領域を介して少なくとも1つのFcγ受容体に結合する、第2の抗体分子、を含み、
第2の抗体分子が、許容治療用量よりも低い用量で存在することを特徴とする、キット。
47. 第2の抗体分子の用量が、最大許容治療用量よりも低い、段落40~46のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
48. 第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも少なくとも50%低い、段落40~47のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
49. 第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも少なくとも70%低い、段落40~48のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
50. 第2の抗体分子の用量が、許容治療用量よりも少なくとも80%低い、段落40~49のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
51. 第2の抗体分子の用量が、最小有効治療用量よりも低い、段落40~50のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
52. より低用量で使用される第1の抗体分子及び第2の抗体分子の治療効果が、第1の抗体分子の不在下の、第2の抗体分子の最大許容治療用量での第2の抗体分子の治療効果に匹敵する、段落40~51のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
53. より低用量での第2の抗体分子の使用が、第2の抗体分子の許容性を改善する、段落40~52のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
54. より低用量での第2の抗体分子の使用が、第2の抗体分子の使用に関連する対象における副作用を低減し、かつ/又は毒性を低減する、段落40~53のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
55. 第2の抗体分子が、イピリムマブ及び/又はトレメリムマブである、段落39~54のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
56. 第2の抗体分子の用量が、10mg/kgよりも低い、段落39~56のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
57. 第2の抗体分子の用量が、3mg/kg又は3mg/kgよりも低い、段落39~56のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体、薬学的組成物、又はキット。
58. 第2の抗体分子の用量が、2mg/kg又は2mg/kgよりも低い、段落39~57のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
59. 第2の抗体分子の用量が、1mg/kg又は1mg/kgよりも低い、段落39~58のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
60. 使用又は方法がまた、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子の投与を伴わない、かつ/又は薬学的組成物又はキットがまた、PD-1若しくはPD-L1に特異的に結合する抗体分子を含まない、段落39~59のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
61. 第1の抗体分子が、Fc領域を欠く、段落39~60のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
62. 第1の抗体分子が、そのFc領域を介したFcγ受容体への結合が低減され、非グリコシル化Fc領域を有する、段落39~60のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
63. 第1の抗体分子が、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、及びヒト由来の抗体分子からなる群から選択される、段落39~62のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
64. 第1の抗体分子が、モノクローナル抗体分子又はモノクローナル由来の抗体分子である、段落39~63のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
65. 第1の抗体分子が、全長抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、(Fab’)2断片、Fab’断片、(Fab’)2断片、Fv断片、及びscFv断片からなる群から選択される、段落39~64のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
66. 第1の抗体分子が、非グリコシル化Fc領域を有するヒトlgG抗体分子又は非グリコシル化Fc領域を有するヒト由来のlgG抗体分子である、段落39~65のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
67. lgG抗体分子が、lgG1又はlgG2抗体分子である、段落66に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、使用のための薬学的組成物、又は使用のためのキット。
68. lgG抗体分子が、非グリコシル化ヒトlgG1、又は非グリコシル化ヒト化マウス抗体、又は非グリコシル化ヒト化ラマhclgG抗体、又は非グリコシル化キメラ化マウスlgGである、段落67に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
69. 第1の抗体分子が、297位のアミノ酸置換により非グリコシル化されている、段落68に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
70. 第1の抗体分子が、N297Q置換により非グリコシル化されている、段落69に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
71. 第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変重鎖(VH)を含む、段落39~70のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191。
72. 第1の抗体分子が、以下のCDRを含む可変軽鎖(VL)を含む、段落39~71のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
73. 第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む、段落39~72のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26。
74. 第1の抗体分子が、以下からなる群から選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む、段落39~73のいずれか一項に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、及び配列番号50。
75. 第1の抗体分子が、以下のCDRアミノ酸配列を含む、段落39~74のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号51及び配列番号52及び配列番号53及び配列番号54及び配列番号55及び配列番号56、又は
(ii)配列番号57及び配列番号58及び配列番号59及び配列番号60及び配列番号61及び配列番号62、又は
(iii)配列番号63及び配列番号64及び配列番号65及び配列番号66及び配列番号67及び配列番号68、又は
(iv)配列番号69及び配列番号70及び配列番号71及び配列番号72及び配列番号73及び配列番号74、又は
(v)配列番号75及び配列番号76及び配列番号77及び配列番号78及び配列番号79及び配列番号80、又は
(vi)配列番号81及び配列番号82及び配列番号83及び配列番号84及び配列番号85及び配列番号86、又は
(vii)配列番号87及び配列番号88及び配列番号89及び配列番号90及び配列番号91及び配列番号92、又は
(viii)配列番号93及び配列番号94及び配列番号95及び配列番号96及び配列番号97及び配列番号98、又は
(ix)配列番号99及び配列番号100及び配列番号101及び配列番号102及び配列番号103及び配列番号104、又は
(x)配列番号105及び配列番号106及び配列番号107及び配列番号108及び配列番号109及び配列番号110、又は
(xi)配列番号111及び配列番号112及び配列番号113及び配列番号114及び配列番号115及び配列番号116、又は
(xii)配列番号117及び配列番号118及び配列番号119及び配列番号120及び配列番号121及び配列番号122、又は
(xiii)配列番号123及び配列番号124及び配列番号125及び配列番号126及び配列番号127及び配列番号128、又は
(xiv)配列番号129及び配列番号130及び配列番号131及び配列番号132及び配列番号133及び配列番号134、又は
(xv)配列番号135及び配列番号136及び配列番号137及び配列番号138及び配列番号139及び配列番号140、又は
(xvi)配列番号141及び配列番号142及び配列番号143及び配列番号144及び配列番号145及び配列番号146、又は
(xvii)配列番号147及び配列番号148及び配列番号149及び配列番号150及び配列番号151及び配列番号152、又は
(xviii)配列番号153及び配列番号154及び配列番号155及び配列番号156及び配列番号157及び配列番号158、又は
(xix)配列番号159及び配列番号160及び配列番号161及び配列番号162及び配列番号163及び配列番号164、又は
(xx)配列番号165及び配列番号166及び配列番号167及び配列番号168及び配列番号169及び配列番号170、又は
(xxi)配列番号171及び配列番号172及び配列番号173及び配列番号174及び配列番号175及び配列番号176、又は
(xxii)配列番号177及び配列番号178及び配列番号179及び配列番号180及び配列番号181及び配列番号182、又は
(xxiii)配列番号183及び配列番号184及び配列番号185及び配列番号186及び配列番号187及び配列番号188、又は
(xxiv)配列番号189及び配列番号190及び配列番号191及び配列番号192及び配列番号193及び配列番号194。
76. 第1の抗体分子が、以下のアミノ酸配列を含む、段落39~75のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット:
(i)配列番号3及び配列番号27、又は
(ii)配列番号4及び配列番号28、又は
(iii)配列番号5及び配列番号29、又は
(iv)配列番号6及び配列番号30、又は
(v)配列番号7及び配列番号31、又は
(vi)配列番号8及び配列番号32、又は
(vii)配列番号9及び配列番号33、又は
(viii)配列番号10及び配列番号34、又は
(ix)配列番号11及び配列番号35、又は
(x)配列番号12及び配列番号36、又は
(xi)配列番号13及び配列番号37、又は
(xii)配列番号14及び配列番号38、又は
(xiii)配列番号15及び配列番号39、又は
(xiv)配列番号16及び配列番号40、又は
(xv)配列番号17及び配列番号41、又は
(xvi)配列番号18及び配列番号42、又は
(xvii)配列番号19及び配列番号43、又は
(xviii)配列番号20及び配列番号44、又は
(xix)配列番号21及び配列番号45、又は
(xx)配列番号22及び配列番号46、又は
(xxi)配列番号23及び配列番号47、又は
(xxii)配列番号24及び配列番号48、又は
(xxiii)配列番号25及び配列番号49、又は
(xxiv)配列番号26及び配列番号50。
77. 第1の抗体分子が、FcyRllbへの結合に対して段落71~76のいずれか1つに記載の抗体分子と競合することができる抗体分子である、段落39~70のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
78. がんが、FcyRllb陽性B細胞がんである、段落39~44及び47~77のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
79. がんが、FcyRllb陰性がんである、段落39~44又は47~77のいずれか1つに記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
80. FcyRllb陰性がんが、固形がんである、段落79に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
81. 固形がんが、がん腫、肉腫、及びリンパ腫を含む群から選択される、段落80に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
82. 固形がんが、黒色腫、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、中皮腫、メルケル細胞がん、胃がん、子宮頸がん、卵巣がん、及び頭頸部がんを含む群から選択される、段落80又は81に記載の使用のための組み合わせ、使用、方法、又は使用のための第1の抗体分子。
83. 添付の番号付き段落、特許請求の範囲、明細書、実施例、及び図面を参照して、実質的に本明細書で特許請求される使用のための組み合わせ、使用、方法、使用のための第1の抗体分子、薬学的組成物、又はキット。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10-1】
図10-2】
【配列表】
2024509944000001.app
【国際調査報告】