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特表2024-509957体液から生合成ナノ粒子を取り出すための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】体液から生合成ナノ粒子を取り出すための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/09 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240227BHJP
   A61P 7/08 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240227BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07F9/09 U CSP
A61K9/19
A61K47/40
A61K35/12
A61P7/08
A61K47/24
A61K31/685
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555536
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022019872
(87)【国際公開番号】W WO2022192619
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/159,547
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/692,289
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522413995
【氏名又は名称】カロサイト・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kalocyte, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】515293665
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・メリーランド・ボルティモア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MARYLAND, BALTIMORE
(71)【出願人】
【識別番号】505236528
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・メリーランド・ボルティモア・カウンティ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MARYLAND BALTIMORE COUNTY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】パン,ディパンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドクター,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル,ニベシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C087
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076BB11
4C076CC14
4C076DD63
4C076EE39
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA41
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA44
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA52
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB62
4C087DA28
4C087MA44
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA52
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
体液から生合成ナノ粒子を取り出すための誘引と捕捉の方法および組成物。生合成ナノ粒子は誘引および捕捉の複合体の2分の1で誘引され、凍結乾燥される。誘引された生合成ナノ粒子は再構成され、診断または治療目的で対象に投与される。生体合成ナノ粒子を体内から取り出すために、誘引された生体合成ナノ粒子を含む体液を、誘引および捕捉の複合体の捕捉部分と接触させる。生体合成ナノ粒子が取り出された体液は、対象に戻すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
で示される化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物および生合成ナノ粒子を含む組成物であって、請求項1に記載の化合物のアダマンタン官能基が、前記生合成ナノ粒子の表面に位置している、組成物。
【請求項3】
前記生合成ナノ粒子が、生合成ナノサイト代用血液である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物および生合成ナノ粒子を含む凍結乾燥組成物であって、請求項1に記載の化合物の官能基が、生合成ナノ粒子代用血液の表面に位置している、凍結乾燥組成物。
【請求項5】
前記生合成ナノ粒子が、生合成ナノサイト代用血液である、請求項4に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項6】
モノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリンおよびアミノポリスチレンビーズを含む組成物。
【請求項7】
体液から生合成ナノ粒子を取り出す方法であって、請求項1に記載の化合物を生合成ナノ粒子に複合化させること、請求項1に記載の化合物に複合化された生合成ナノ粒子を対象に投与すること、および、続いて体液をモノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリン官能基化されたポリスチレンビーズと接触させること、を含み、これによって請求項1に記載の化合物に複合化された生合成ナノ粒子を前記体液から取り出す、方法。
【請求項8】
前記生合成ナノ粒子が生合成ナノサイト代用血液であり、前記体液が全血である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
包装および輸送のために前記複合化工程の結果物を凍結乾燥すること、および前記投与工程の前に前記凍結乾燥工程の結果物を再構成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液および他の溶液から生合成ナノ粒子を取り出しおよび/または分離するための方法および組成物に関する。
【0002】
人工酸素(O2)担体は、保存血が利用できない、あるいはその利用が望ましくない場合に使用するために必要とされている。この必要性に対処するため、本発明者らは、ファースト・イン・クラスの生合成ナノサイト代用血液であるエリスロマー(ErythroMer, EM)を開発した。EMは、自己組織化する、変形可能な、脂質-オリゴマーを基礎とするハイブリッド型ナノ粒子であり、これは、粒子あたり高いペイロードのヘモグロビン(Hb)を取り込んでいる(図1)。この「人工細胞」の設計により、赤血球(RBC)の生理学における重要な要素を模擬した原型(プロトタイプ)が得られ、輸血医学に革新的な付加価値をもたらすことになった。これまでのところ、Hbを基礎とする酸素担体(HBOC)の開発努力は、RBCの生理的相互作用を維持できない設計上の欠陥のため、特に、HBOCは肺でO2を捕捉するが、O2を組織へ効果的に放出せず、また、HBOCは内皮の一酸化窒素(NO)をトラッピングし、これは血管収縮を引き起こすことから、失敗に終わっている。EMの設計(図1)は、これらの弱点を、1)表面積と体積の比を最適化した、新規な形状のナノ粒子にHbを封入すること、2)HbのO2親和性を低下させるように設計された小分子(RSR13、エファプロキシラール(efaproxiral))の新規なシャトルでO2の捕捉/放出を制御すること、3)外殻(シェル)性質によりNOの取り込みを減弱すること、および4)還元系を共パッケージング(コパッケージング)することによりメトヘモグロビン(metHb)の形成を阻止すること、によって克服するものである。さらに、EMは、5)無菌凍結乾燥用に設計され、長期間、周囲が乾燥している保存後、容易に再構成され得る。EMは、複雑なニーズに対する実際的なアプローチを提供し、費用対効果の高いスケール生産ができるように設計されている。
【0003】
EMのプロトタイプは、厳格な初期のエクスビボおよびインビボでの「概念実証(プローフ・オブ・コンセプト)」試験に合格した。O2送達は、新規マウスモデルにおいて実証されており、ここでは、トランスジェニック低酸素誘導因子(HIF-1α)生物発光構築物を用いた、輸血後細胞O2送達が報告されている。EMはまた、出血性ショックと多発外傷のウサギモデルにおいても検証されている。
【発明の概要】
【0004】
EMは、循環系の血漿部分に無細胞形態のヘモグロビンを提供するため、血清および血漿の色の干渉またはナノ粒子の外殻自体により、臨床検査室に独特の課題を与える。エリスロマーがインビボで存在している間に採取された血液検体は、溶血しているように見える。溶血は臨床検査室でよく理解されている問題であるが、エリスロマーを投与された患者は、典型的な溶血で見られる遊離ヘモグロビン濃度を超える濃度に達することがある。さらに、エリスロマーは、光散乱分析法に影響を与える可能性があるナノ粒子であり、この可能性は、分析前にブランクを作成するか、または粒子を完全に除去する場合を除いて、分析中に実際には回避することができない。
【0005】
EMは、主に傷害時に使用されるように設計され、さらなる救命処置が行われる臨床現場への橋渡しとなる。臨床現場で外傷を管理するために、全血球計算(CBC)および総合代謝パネル(CMP)が実施されることで、血液が体の他の部分に酸素とエネルギーを供給して急性的に生命を維持させる血液の能力に影響を与える、血液中の様々な細胞、タンパク質および物質の量と濃度が評価される。ヘモグロビンの存在量(酸素運搬能)、血小板の存在量(凝固能力)、およびヘマトクリット(全血に占めるヘモグロビンのパーセント)の評価は、EMの影響を受ける。これらの評価は、失血している患者に対して15~30分ごとに行われ、血圧の変化と並行して考慮され、臨床現場においてさらなる輸血の必要性が判断される。予備的なデータでは、EMは、CBC(図2B)およびCMP(図2A、C)の測定に用いられる光学的方法を強く妨害することが示されている。したがって、血液検体からEMを選択的に取り出す戦略が急務である。
【0006】
本発明は、アダマンタン(「ADM」)とβ-CDのホスト-ゲスト相互作用に基づく超分子集合体に基づいて、全血検体からEMを効率的に取り出すための強固な「誘引と捕捉(bait and capture)」戦略に関する。この標的化捕捉戦略は、「誘引」としてのアダマンタン-タグ付きEMと、捕捉モデルとしてのβ-CD官能基化された(β-CD官能基を有する)PSビーズを含む。(図4) 本発明によれば、ADM官能基を提示するEMは、樹脂上で表面に豊富に存在するβ-CD官能基と強い内包複合体を形成し、血液からEMを選択的に取り出すことができる。ADMとβ-CDを「誘引と捕捉」のペアとして選択したのは、その強い結合親和性(K=5.2×104M-1)と優れた生物学的適合性のためである。炭素質のADMは、最小限の生物学的応答を引き起こすことが知られているが、β-CDは、ヒト血清アルブミンやグロブリンなどの他の遍在する生物学的物質と比較して、その分子と強い内包複合体を形成する。
【0007】
本発明のさらなる実施態様によれば、アダマンタン-タグ付きEMは、包装、輸送および/または保管のために凍結乾燥される。凍結乾燥されたアダマンタン-誘引化EMは、EM両親媒性前駆体、コレステロールおよびPEG-PEヘモグロビンおよびアロステリックエフェクター、アダマンタンタグを含み、場合により凍結保護物質も含む粉末である。元のEM生産濃度(または濃縮)に再構成するには、PBS/水と単純に混合することにより達成される。
【0008】
このように、本発明は、血液試料の臨床モニタリングのために全血検体からEMを取り出すといった、満たされていないニーズに対処するために、独自に設計された標的化捕捉戦略を提示する。上記および本明細書に提供されている実施例にかかわらず、本明細書に記載の標的化捕捉戦略および組成物は、全血、他の体液、および他の溶液から任意のタイプの生合成ナノ粒子を取り出すために使用できることが理解される。本発明の凍結乾燥誘引タグ付きEM組成物は、例えば、使用現場での再構成のために、予め充填されたチューブまたは他の容器の形態で包装、保存、輸送することができる。同様に、本発明の捕捉組成物は、例えば透析システム、CPBシステムなどの体外循環路を介して生きている患者の血流からタグ付きEMを取り出すための血液灌流カートリッジの形態で包装することができる。さらに、本発明の捕捉組成物は、エクスビボ臓器/オルガノイド調製における灌流液からタグ付きEMを取り出すために使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び1Bは、HBOCに対するエリスロマー(EM)V2の設計、特徴および利点を表したものであり、ここで、両親媒性前駆体は、(a)O2結合の状況応答性制御を可能にする、アロステリックエフェクター(RSR13)の利用可能性を制御するpH応答性基、および(b)細胞外表面(exofascial surface)の生体適合性を容易にする負に帯電した「ヘッド」を含む。この構築物は、内因性の生体分子を模倣しており、インビボで酵素消化および完全分解を受け、「天然」のペプチドおよび脂質と同一の最終生成物にある。
【0010】
図2図2は、EM干渉の結果: EMの有無によるヒト血漿の(A)代謝パネルと(B)CBCパネル;(C)代謝パネルのスペクトルスキャン(300~900nm)の重ね合わせ、を示している。
【0011】
図3図3は、本発明の実施態様による誘引と捕捉の設計戦略の提示である。両親媒性前駆体KC01003をアダマンタン-PE(4)と共自己組織化させることで、表面に「誘引」官能性を提示したEM-1003を作製する。表面被覆は、有害な生物学的影響を避けるために、最小数の「誘引」分子を有するように最適化されている。このカラムには、β-シクロデキストリン官能性を結合させたポリスチレン(PS)ビーズが充填されている。ホスト-ゲスト化学によるアダマンタンとβ-シクロデキストリンとの間の高選択的相互作用により、血液からEMを効率的に分離することができる。
【0012】
図4A図4Aは、「誘引」成分である、アダマンタン官能基化されたPPE(ADM-DPPE)の合成スキームを示す。
【0013】
図4B図4Bは、捕捉剤である、β-シクロデキストリン官能基化されたPSビーズ(CD-PS)の合成スキームを示す。
【0014】
図5図5は、PSビーズ(ピレンとインキュベート;ビーズサイズ0.98 nm)上のβ-DC官能基化の確認を示す。
【0015】
図6A図6Aは、ナノ粒子追跡分析(ZetaView)を用いた、粒子数によるEM捕捉の確認を示す。
【0016】
図6B図6Bは、ナノ粒子トラッキング解析(ZetaView)を用いた、捕捉後の直径によるEM捕捉の確認を示す。
【0017】
図7図7は、本発明の実施態様による凍結乾燥および最終凍結乾燥AMタグ付きEM産物の提示である。
【0018】
図8図8は、凍結乾燥前、再構成4日後、および再構成14日後の、本発明の実施態様によるAMタグ付きEM粒子の様々な性質を示す。
【0019】
詳細な説明
本発明の実施態様によれば、全血検体からEMを取り出すための生物工学的な大規模化可能な方法(アプローチ)が提供される。(図3) 提案された超分子アプローチは、例えば以下のようないくつかの利点を提供する:(i)周囲条件下にて内包複合体が容易に形成できることにより、特別な遺伝学的または生化学的技術を導入することなく、パイロットスケールの研究が実行できる;(ii)比較的小分子のアダマンタン(「ADM」)タグは、EMの構造および機能にほとんど影響を与えないことが期待される;(iii)ポリスチレン(PS)ビーズ上のβ-シクロデキストリン(β-CD)官能基化の最適な比率は、カラムビーズの孔径に取るに足りない変化をもたらすため、血流を安全にきれいにする。本発明は、人工RBCの翻訳への経路を開くものである。本発明のさらなる実施態様によれば、誘引と捕捉の設計は、ポイントオブケア(診療現場)設定での使いやすさを考慮して最適化されている。これは、既に存在する採血および試料処理技術への妨害を最小化した、患者の血液試料からエリスロマーを効果的に取り出す機構に関連し、その機構には、既存の採血管をカスタマイズしてエリスロマーをチューブ自体に捕捉して保持でき、全血成分を遊離させてさらなる分析に供することを含む。これは、血液からEMを特異的かつ完全に効果的に取り出す濃度に用量設定された採血管に捕捉システムを固定化する包括的な開発を可能とし、これにより、特別な捕捉機能を備えた採血管は大規模化が可能となり、既存の製造方法からの変更を最小化して商業的に製造できるという目標が達成できることに留意すべきである。同時に、この誘引は、エリスロマーの最終的で最も安定した形態に適した凍結乾燥プロセスに適合している。
【0020】
「誘引」機能性を示すEMの設計、合成および物理化学的特徴づけ
【0021】
実施例1. 「誘引」タグ付きEMの設計および合成
ADMタグ付きEMを調製し、小分子およびナノ粒子をβ-CD含有樹脂との超分子ホスト-ゲスト化学のために物理化学的に特徴づけた。アミノ(-NH2)基1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)を、1-アダマンタンカルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(ADM-NHS)を用いてADMタグで官能化した。(図4A)この化合物ADM-DPPEを純度分析的に特徴づけ、モル比を変化させてEMのナノ集合体に導入する。次に、EM粒子上のADM-DPPEタグの最適濃度は、2つのパラメーター:(i)最高の結合能および(ii)最適なHb封入効率、に基づいて決定する。したがって、異なるADM-タグ比を有する製剤をまず一定濃度のβ-CDと相互作用させ、それぞれの等温熱量測定曲線からタグ付きEM粒子の結合能を計算する。最も高い結合効率を有する粒子を選択し、ADM-タグの濃度を最適なものとして使用する。次に、この最適化EM粒子にヘモグロビンを担持させ、封入効率を計算する。
【0022】
実施例2. 物理化学的な特徴づけ
流体力学的粒子径、多分散性、および電気泳動電位、TEM、AFM、および安定性を評価する。EM-1003-誘引の長期保存安定性を調べるため、-20℃、5℃、25℃、および40℃の加速条件下(凍結乾燥したEMをガラス皿に薄く均質な層ができるように散布する)で12ヶ月間の試験を行う。熱(乾熱)加速ストレス安定性分析は、40℃、50℃、60℃で12ヶ月間まで実施し、80℃で1ヶ月間実施する。EMをまた、酸性(0.1M HCl:pH 1;0.01M HCl:pH 2;HCl:pH 4.5)およびアルカリ性(0.1M NaOH:pH 13;0.01M NaOH:pH 12)の条件下で、25℃および40℃で7日間まで熱ストレスにかける。すべての溶液のpHは、RTでpHメーターを用いて測定する。異なる時間間隔にわたる粒子径とコロイド安定性は、Nanosizer ZSおよびZetaViewを用いて測定する。
【0023】
「捕捉」樹脂の開発と特徴づけ、および分離能の実証。
【0024】
実施例3. 捕捉樹脂の調製と特徴づけ:β-シクロデキストリンは、その水溶性、低細胞毒性および優れた生体適合性から、ホスト-ゲスト超分子集合体のホスト担体として使用することが多い。このような観点から、ADM/β-CDホスト-ゲストペアが、確立された超分子システムとして好ましい。モノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリンは、1-(p-トルエンスルホニル)イミダゾールおよびβ-シクロデキストリンから合成する。次に、この化合物をアミノポリスチレン(NH2-PS)ビーズの官能基化に使用することで、弱アルカリ性条件下でβ-シクロデキストリン化PS(CD-PS)ビーズを製造する。(図4B)β-シクロデキストリンによるPSビーズの官能基化が成功したことを確認するために、CD-PSビーズをピレンのエタノール溶液と混合し、10000rcfで2分間遠心分離し、エタノールで2回洗浄することで遊離ピレンを除去し、次に、蛍光顕微鏡で画像化することで、官能基化ビーズの蛍光を可視化する。官能基化に成功したPSビーズは高い緑色発光を示すが、未官能基化ビーズはバックグラウンド蛍光を示していない。(図5)このことから、捕捉樹脂の調製が成功し、ADM-DPPEタグ付きEM粒子で試験する準備が整ったことが確認される。
【0025】
実施例4. EMと血液の混合物からのEM捕捉の実証:CD-PSビーズ介在EM捕捉を実証するために、蛍光NBD-PEドーピングを施した最適化ADMタグ付きEM粒子を調製する。同様の方法で、CD-PSビーズをこれらの蛍光タグ付きEM粒子で処理し、緩衝液に懸濁し、遠心分離し、洗浄し、蛍光顕微鏡で画像化する。CD-PSビーズによるEM粒子の捕捉を成功的に確認した後、ADMタグ付きEM粒子にヘモグロビンを担持させる。次に、Hbを担持したADMタグ付きEM粒子を血液に懸濁し、全血検体からEM粒子の捕捉をモニターする。
【0026】
実施例5. EM表面の実証と最適化:PSビーズへのβ-CDでの官能基化%はpH滴定から計算する。中和pHの変化を未官能基化アミノPSビーズとCD-PSビーズの間で比較し、PSビーズ1gmあたりのβ-CD官能基化%を計算する。次に、アミノPSビーズと反応したモノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリンの濃度を制御することにより、PSビーズ1gmあたりのβ-CDの比率を変化させる。最適なβ-CD濃度は、全血検体からのEMの取り出しの最大効率に基づいて選択する。
【0027】
実施例6. 予備的生体適合性試験
予備的補体活性化分析および血液塗抹標本作製試験を実施する。CH50酵素免疫測定法(EIA)(Sigma)を使用して、EM-1003-誘引のヒト血清への添加の結果としての補体活性化の大きさを評価する。キットはメーカーのプロトコールに従って使用する。血液塗抹標本作製を行い、臨床顕微鏡技術(通常の光学顕微鏡)を用いてリンパ球の形態学的変化と血液凝集を高倍率の視野下で観察する。特に、EM-1003およびEM-1003-誘引(血液:NP=9:1)で処理した血球の有意な凝集または形態変化を観察することに注意を払う。
【0028】
予想される結果とリスク要因。
表面上にADM官能基を有するEM粒子を合成する。モノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリンは、1-(p-トルエンスルホニル)イミダゾールおよびβ-CDから合成し、それをアミノポリスチレン(NH2-PS)ビーズの官能基化に使用することで、CD-PSビーズを製造する。本発明は、Hbの封入の有無にかかわらず、CD-PSビーズによるEM粒子の捕捉を検証するものである。Hbを担持したAdタグ付きEM粒子を血液に懸濁し、EM粒子の捕捉をモニターする。さらに、CBCおよび代謝パネル分析を行い、EM干渉がうまく消失したことを確認する。本発明の超分子アプローチは、いくつかの利点をもたらす。例えば、(i)アンビエント条件下での内包複合体の容易な形成により、特別な遺伝学的または生化学的技術を導入することなく、パイロットスケール試験が実現可能である;(ii)比較的小さなADM-タグは、EMの構造および機能にほとんど影響を与えないことが予想される;(iii)PSビーズ上のβ-CD官能基化の最適な比率は、カラムビーズの孔径に取るに足らない変化をもたらし、それゆえ安全に血流をきれいにする。
【0029】
予備的な捕捉試験から、EMは捕捉樹脂にうまく捕捉されることを見出した。(図6)β-CDタグ付き捕捉樹脂で処理した場合のみ、EM粒子の平均数が減少することが観察された。CD-PSの濃度が高くなると、EM粒子は有意に減少した(図6A)。さらに、β-CDタグ付き樹脂介在捕捉に成功した後、EM粒子の平均流体力学的直径が増加することが観察された(図6B)。EMの安定性が問題になる場合は、「誘引」官能基を最適化することで最大限の安定性を得ることができる。
【0030】
アダマンタン-タグ付きEMを、包装、輸送および/または保存のために凍結乾燥させる。凍結乾燥されたアダマンタン誘引化EMは、EM両親媒性前駆体、コレステロールおよびPEG-PEヘモグロビンならびにアロステリックエフェクター、アダマンタンタンタグ、および任意に凍結保護物質も含む粉末である。元のEM生産濃度(または濃縮)に再構成するには、PBS/水と単純に混合し、穏やかにボルテックス/攪拌することによりで達成される。
【0031】
本明細書に記載の誘引と捕捉の方法および組成物は、あらゆるタイプの生合成ナノ粒子をあらゆる体液またはその構成部分から取り出すために使用され得ることに留意すべきである。
【0032】
本開示のいくつかの実施態様および方法論が説明され、図面に示されているが、本開示が当技術分野で許容される限り広い範囲であること、および本明細書が同様に読まれることが意図されているので、本開示がそれに限定されることは意図されていない。したがって、上記の説明は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に特定の実施形態および方法論の例示として解釈されるべきである。当業者であれば、本明細書に添付された
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】