(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】交流電界を用いてマクロファージの表現型をスキューイングすることによる、疾患を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240227BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240227BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/4409 20060101ALI20240227BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240227BHJP
A61N 1/40 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/04
A61P1/00
A61P11/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P9/00
A61P31/06
A61K31/43
A61K31/7036
A61K31/65
A61K31/546
A61K31/407
A61K31/7052
A61K31/7048
A61K31/4409
A61K31/573
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555617
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2022052226
(87)【国際公開番号】W WO2022190068
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タリ・ボロシン-セラ
(72)【発明者】
【氏名】リラチ・アヴィグドル
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・ブラント
【テーマコード(参考)】
4C053
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C053LL02
4C053LL20
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA96
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086CC01
4C086CC08
4C086CC12
4C086CC14
4C086DA10
4C086DA29
4C086EA09
4C086EA12
4C086EA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA96
4C086ZB35
(57)【要約】
組織に交流電界を印加し、その後、疾患又は感染の処置を投与する工程による、疾患及び感染を処置する方法が提供される。一部の場合において、交流電界は、少なくとも、疾患の兆候が十分に改善するまで印加され得る。典型的な方法は、腎臓、心臓、脳、及び骨の疾患及び状態を処置するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における感染を処置する方法であって、
消化器系に50から1,000kHzの間の周波数で交流電界を印加する工程、及び
感染を処置するために治療有効量の抗生物質を対象に投与する工程
を含み、
感染が、対象の
消化器系におけるトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属の感染、
肺におけるマイコバクテリウム属の感染、
脳におけるウシ型結核菌桿菌の感染、
骨若しくは関節におけるウシ型結核菌桿菌の感染、
心臓におけるウシ型結核菌桿菌の感染、又は
心臓の内膜におけるウシ型結核菌桿菌の感染
である、方法。
【請求項2】
感染が、対象の消化器系におけるトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属の感染であり、抗生物質が、ペニシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、セフトリアキソン、メロペネム、コトリモキサゾール、ドキシサイクリン、ヒドロキシクロロキン、フルオロキノロン、及びアジスロマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数が125から175kHzの間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
交流電界が少なくとも24時間印加される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
交流電界が、対象の消化器系がトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属に感染していない状態になるまで印加される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
感染が、対象の肺におけるマイコバクテリウム属の感染であり、抗生物質が、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、リファンピン、リファブチン、エタンブトール、ストレプトマイシン、及びアミカシンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
周波数が125から175kHzの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
交流電界が少なくとも24時間印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
交流電界が、対象の肺がマイコバクテリウム属に感染していない状態になるまで印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
感染が、対象の脳における又は骨若しくは関節における又は心臓におけるウシ型結核菌桿菌の感染であり、抗生物質が、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステロイドが、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
周波数が125から175kHzの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
交流電界が少なくとも24時間印加される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
交流電界が、対象の脳、骨若しくは関節、又は心臓がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
感染が、対象の心臓の内膜におけるウシ型結核菌桿菌の感染であり、抗生物質が、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステロイドが、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
周波数が125から175kHzの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
交流電界が少なくとも24時間印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
交流電界が、対象の心臓がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2022年3月12日に出願された米国仮出願第63/160,437号の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍治療電場(TTField)は、強度の低い中間周波数(例えば、100~500kHz)の交流電界を標的領域に印加することを含む、有効な抗新生物治療である。
【0003】
インビボの状況において、TTField療法は、ウェアラブルかつポータブルな装置(Optune(登録商標))を使用して送達され得る。この送達システムは、電界発生器、4つの接着パッチ(非侵襲性の絶縁トランスデューサーアレイ)、充電式バッテリー、及びキャリーケースを含む。トランスデューサーアレイは皮膚に当てられ、装置及びバッテリーに接続されている。この治療法は、昼夜を通して可能な限り長い時間にわたり着用されるように設計されている。前臨床の状況では、TTFieldは、インビトロで、例えばInovitro(商標)TTFieldラボベンチシステムを使用して印加され得る。Inovitro(商標)は、TTField発生器、及びプレート当たり8枚のセラミックディッシュを有するベースプレートを含む。細胞は、各ディッシュの内側に置かれたカバースリップに播種される。TTFieldは、各ディッシュにおいて、高誘電率セラミックによって絶縁された2つの直角に交わるトランスデューサーアレイ対を使用して印加される。インビボ及びインビトロの両方の状況において、TTFieldの方向は1秒毎に90°切り替わり、こうして、細胞分裂の様々な方向軸を網羅する。
【0004】
マクロファージは、多くの病理において重要な役割を有しており、様々な免疫応答を引き起こし得る。Hirayamaら、The Phagocytic function of Macrophage-enforcing innate immunity and tissue homeostasis、Int J Mol Sci. 2018年1月、19(1): 92。Millsら、Macrophages at the fork in the road for disease or health、Front Immunol. 2015、6: 59。マクロファージは、状況に応じて、炎症性応答を促進又は阻害し得る様々なサイトカインを分泌する。Wangら、Molecular mechanisms that influence the macrophage m1-m2 polarization balance、Front Immunol. 2014 5:614。加えて、マクロファージは、創傷治癒及び線維症において主要な役割を有する。Gombozhapovaら、Macrophage activation and polarization in post-infraction remodelling、Journal of biomedical science (2017) 24:13、Fengら、Wnt/β-Catenin promoted macrophage alternative activation contributes to kidney fibrosis、J Am Soc Nephrol、2018 29(1):182~193。
【0005】
マクロファージは、2つのクラスの活性化マクロファージ、すなわちM1(M1-古典的活性化マクロファージ)及びM2(M2-選択的活性化マクロファージ)に分化し得る。Yunnaら、Macrophage M1/M2 polarization、Eur J Pharmacol、2020年6月15日、877。M1マクロファージは、炎症誘発性応答に典型的に関連する。M2マクロファージは、創傷治癒に関連し、通常、抗炎症性サイトカインを分泌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hirayamaら、The Phagocytic function of Macrophage- enforcing innate immunity and tissue homeostasis、Int J Mol Sci. 2018年1月、19(1): 92
【非特許文献2】Millsら、Macrophages at the fork in the road for disease or health、Front Immunol. 2015、6: 59
【非特許文献3】Wangら、Molecular mechanisms that influence the macrophage m1-m2 polarization balance、Front Immunol. 2014 5:614
【非特許文献4】Gombozhapovaら、Macrophage activation and polarization in post-infraction remodelling、Journal of biomedical science (2017) 24:13
【非特許文献5】Fengら、Wnt/β-Catenin promoted macrophage alternative activation contributes to kidney fibrosis、J Am Soc Nephrol、2018 29(1):182~193
【非特許文献6】Yunnaら、Macrophage M1/M2 polarization、Eur J Pharmacol、2020年6月15日、877
【非特許文献7】www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/016324s034s035lbl.pdf
【非特許文献8】Edin S、The Distribution of Macrophages with a M1 or M2 Phenotype in Relation to Prognosis and the Molecular Characteristics of Colorectal Cancer. PLoS ONE 7(10)(2012)
【非特許文献9】Sicaら、Macrophage polarization in pathology、Cell. Mol. Life Sci、2015
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において記載されるように、標的領域(例えば、組織、及び生きている対象、又はカバースリップに播種された細胞)内のマクロファージの表現型は、標的領域内の細胞に交流電界を印加することによってスキューイングされ得る。一部の場合において、疾患又は状態の処置を必要としている対象を薬剤又は他の処置を用いて処置する前又は最中に、その対象の標的組織、位置、又は細胞型に交流電界を印加することによって、マクロファージの表現型をM0又はM2表現型からM1表現型にスキューイングすることができる。
【0009】
本明細書において記載されるように、対象のマクロファージの表現型をM0表現型(ナイーブ)又はM2表現型(古典的活性化型ではない)からM1表現型(古典的活性化型)にスキューイング又はシフトすることで、「炎症誘発性の」免疫応答が誘導され、これによって、ある特定の病理を有する対象が、処置の影響をより受けやすくなる。したがって、疾患又は状態(例えば、細菌感染、心内膜炎)の処置の前に、交流電界を用いてマクロファージのサブタイプをM1表現型に向けて「後押しする」ことで、処置の有効性を増大させる、又は必要な処置用量を低下させる、及び不必要な副作用を避けることができる。
【0010】
一態様において、対象の消化器系に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びトロフェリマ・ホウィッペリ(Tropheryma whipplei)、サルモネラ属(Salmonella)、又はマイコバクテリウム属(Mycobacterium)の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の消化器系におけるトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属の感染を処置することを含む、第1の方法が提供される。
【0011】
別の態様において、対象の肺に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びマイコバクテリウム属の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の肺におけるマイコバクテリウム属の感染を処置することを含む、第2の方法が提供される。
【0012】
更なる態様において、対象の脳に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びマイコバクテリウム属の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の脳におけるウシ型結核菌桿菌(Mycobacterium bovis bacillus)の感染を処置することを含む、第3の方法が提供される。
【0013】
更に別の態様において、対象の骨又は関節に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の骨又は関節におけるウシ型結核菌桿菌の感染を処置することを含む、第4の方法が提供される。
【0014】
別の態様において、対象の心臓に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の心臓におけるウシ型結核菌桿菌の感染を処置することを含む、第5の方法が提供される。
【0015】
更なる態様において、対象の心臓に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の心臓の内膜におけるウシ型結核菌桿菌の感染によって生じる心内膜炎を処置することを含む、第6の方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】コントロールM0マクロファージ及びTTField処置された(24時間及び48時間)M0マクロファージの細胞傷害性(コントロールに対するパーセントで表されている細胞数)の典型的分析を示す図である。
【
図1B】処置なし(コントロール)又は48時間のTTField処置の後の、炎症誘発性のM1マクロファージ表現型に分極化されたM0マクロファージの典型的なフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図1C】
図1Bのデータを示す典型的な棒グラフであり、コントロールマクロファージ及び交流電界で処置されたM0マクロファージの細胞表面でのCD80+/MHCII
高の発現量についての結果、並びにCD80+細胞及びMHCII
高細胞でのMFI(平均蛍光強度)による結果を示している。
【
図1D】コントロール細胞と比較した、TTFieldで48時間処置されたM0マクロファージの典型的なサイトカイン分泌プロファイルを示す図であり、コントロールの未処置M0マクロファージに対する、発現の増大倍率(分泌プロファイル)を示している。
【
図2A】分極化した未処置M1マクロファージ及びTTField処置された(24時間)分極化したM1マクロファージの細胞傷害性(コントロールに対するパーセントで表されている細胞数)の典型的な分析を示す図である。
【
図2B】処置なし(コントロール)又は24時間のTTField処置の後の、分極化したM1マクロファージの典型的なフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図2C】
図2Bのデータを示す典型的な棒グラフであり、コントロールマクロファージ及び交流電界で処置された分極化したM1マクロファージの細胞表面でのCD80+/MHCII
高の発現量についての結果、CD80+細胞及びMHCII
高細胞でのMFI(平均蛍光強度)による結果、並びに炎症誘発性マーカーである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)による結果を示している。
【
図2D】コントロール細胞と比較した、TTFieldで24時間処置された分極化したM1マクロファージの典型的なサイトカイン分泌プロファイルを示す図であり、コントロールの未処置の分極化したM1マクロファージに対する、発現の増大倍率(分泌プロファイル)を示している。
【
図3A】コントロールの分極化したM2マクロファージ及びTTField処置された(24時間)分極化したM2マクロファージの細胞傷害性(コントロールに対するパーセントで表されている細胞数)の典型的な分析を示す図である。
【
図3B】処置なし(コントロール)又は48時間のTTField処置の後の、分極化したM2マクロファージの典型的なフローサイトメトリー分析を示す図である。
【
図3C】
図3Bのデータを示す典型的な棒グラフであり、コントロールマクロファージ及び交流電界で処置された分極化したM2マクロファージの細胞表面でのCD80+/MHCII
高の発現量についての結果、CD80+細胞及びMHCII
高細胞でのMFI(平均蛍光強度)による結果、並びに炎症性マーカーである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)による結果を示している。
【
図3D】コントロール細胞と比較した、TTFieldで48時間処置された分極化したM2細胞の典型的なサイトカイン分泌プロファイルを示す図であり、コントロールの未処置の分極化したM2細胞に対する、発現の増大倍率(分泌プロファイル)を示している。
【
図4】M1マクロファージ及びM2マクロファージに対するTTFieldの影響を示す図である。
【
図5】TTFieldがM2マクロファージを炎症誘発性のM1表現型に分極化させ、M1マクロファージの炎症誘発性の性質を上昇させたことを示す図である。
【
図6】TTFieldがマクロファージのサイトカイン分泌を炎症誘発性パターンに変化させたことを示す図である。
【
図7】M1マクロファージ及びM2マクロファージにおける表現型マーカーの発現に対するTTFieldの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
限定はしないが特許及び特許出願を含む、本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
交流電界を対象の身体の領域に印加して、例えばマクロファージの表現型を「炎症性」M1表現型にシフト又はスキューイングすることによって、免疫系を刺激することができる。M1表現型へのマクロファージ表現型のスキューイングは、対象を、疾患又は状態、例えば感染の処置の影響を更に受けやすくし得、それは、対象の免疫系が刺激されているためである。本明細書において記載されているように、交流電界は、疾患又は状態の処置の前又は最中に、身体の領域に印加することができる。
【0019】
本明細書において論じられる交流電界は、腫瘍治療電場(TTField)に類似しており、Novocure社のOptune(登録商標)装置に類似のハードウェアを使用して、Optuneが使用するものと同一の200kHzの周波数で、又は異なる周波数(例えば、50から1000kHz若しくは100から500kHz)で印加することができる。交流電界を対象の身体に印加するために使用されるトランスデューサーアレイのサイズ及び形状は、交流電界が印加される解剖学的位置に応じて変化する。「TTField」という用語は、本明細書及び図面において使用される場合、「交流電界」という用語と同義である。
【0020】
一態様において、対象の消化器系に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の消化器系におけるトロフェリマ・ホウィッペリ、サルモネラ属、又はマイコバクテリウム属の感染を処置することを含む、第1の方法が提供される。
【0021】
第1の方法の一部の場合において、抗生物質は、ペニシリン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、セフトリアキソン、メロペネム、コトリモキサゾール、ドキシサイクリン、ヒドロキシクロロキン、フルオロキノロン、及びアジスロマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0022】
第1の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第1の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第1の方法の一部の場合において、交流電界は、対象の消化器系がマイコバクテリウム属に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0023】
「治療有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、指定された疾患又は状態を改善、予防、処置、又は治癒するというその意図された目的を達成するために十分な、薬剤の量又は薬剤の用量を指す。治療有効量の薬剤は、例えば、当業者によって、薬剤若しくは製品のラベルから、又は、薬剤の治療有効用量、薬物動態学、若しくは他の特性を決定するために設計された実験若しくは臨床試験の結果から決定することができる。
【0024】
例えば、当業者は、www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/016324s034s035lbl.pdfで入手可能な、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているアザチオプリンの薬剤ラベルを参考にすることによって、アザチオプリンの治療有効用量を決定することができる。当業者は、本明細書において参照されるあらゆる承認されている薬剤又は処置について、FDA又は他の規制当局によって承認されている製品ラベルを参考にすることができる。「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、対象への薬剤又は処置を処方すること、投与すること、又は他者に投与の指示を出すことを指す。
【0025】
マクロファージの表現型のスキューイング又はシフトは、例えば、本明細書において開示されている適切な方法(例えば、フローサイトメトリー、生検の免疫組織化学染色)を使用してM1マクロファージ表現型のM2マクロファージ表現型に対する比を決定することによって、又は他の適切な方法によって(例えば、Edin S、The Distribution of Macrophages with a M1 or M2 Phenotype in Relation to Prognosis and the Molecular Characteristics of Colorectal Cancer. PLoS ONE 7(10)(2012); Sicaら、Macrophage polarization in pathology、Cell. Mol. Life Sci, 2015を参照されたい)、決定することができる。
【0026】
別の態様において、対象の肺に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びマイコバクテリウム属の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の肺におけるマイコバクテリウム属の感染を処置することを含む、第2の方法が提供される。
【0027】
第2の方法の一部の場合において、抗生物質は、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、リファンピン、リファブチン、エタンブトール、ストレプトマイシン、及びアミカシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0028】
第2の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第2の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第2の方法の一部の場合において、交流電界は、対象の肺がマイコバクテリウム属に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0029】
更なる態様において、対象の脳に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の脳におけるウシ型結核菌桿菌の感染を処置することを含む、第3の方法が提供される。
【0030】
第3の方法の一部の場合において、抗生物質は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0031】
一部の場合において、第3の方法は、対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む。ステロイドは、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択することができる。
【0032】
第3の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第3の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第3の方法の一部の場合において、交流電界は、対象の脳がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0033】
更に別の態様において、対象の骨又は関節に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の骨又は関節におけるウシ型結核菌桿菌の感染を処置することを含む、第4の方法が提供される。
【0034】
第4の方法の一部の場合において、抗生物質は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0035】
一部の場合において、第4の方法は、対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む。ステロイドは、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択することができる。
【0036】
第4の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第4の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第4の方法の一部の場合において、交流電界は、対象の骨又は関節がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0037】
別の態様において、対象の心臓に100から500kHzの間の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の心臓におけるウシ型結核菌桿菌の感染を処置することを含む、第5の方法が提供される。
【0038】
第5の方法の一部の場合において、抗生物質は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0039】
一部の場合において、第5の方法は、対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む。ステロイドは、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択することができる。
【0040】
第5の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第5の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第5の方法の一部の場合において、交流電界は、対象の心臓がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0041】
更なる態様において、対象の心臓に100から500kHzの間の周波数で交流電界を印加する工程、及びウシ型結核菌桿菌の感染を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の心臓の内膜におけるウシ型結核菌桿菌の感染によって生じる心内膜炎を処置することを含む、第6の方法が提供される。
【0042】
第6の方法の一部の場合において、抗生物質は、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、モキシフロキサシン、ピラジナミド、及びストレプトマイシンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0043】
一部の場合において、第6の方法は、対象に治療有効量のステロイドを投与する工程を更に含む。ステロイドは、プレドニゾン及びデキサメタゾンの1つ又は複数からなる群から選択することができる。
【0044】
第6の方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。第6の方法の一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。第6の方法の一部の場合において、交流電界は、心臓の内膜がウシ型結核菌桿菌に感染していない状態になるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0045】
更に別の態様において、対象の腎臓に50から1000kHzの間(例えば、100から500kHzの間)の周波数で交流電界を印加する工程、及びループス腎炎を処置するための治療有効量の薬剤を対象に投与する工程によって、対象の腎臓におけるループス腎炎を処置することを含む、方法が提供される。
【0046】
対象の腎臓におけるループス腎炎を処置する方法の一部の場合において、交流電界は、少なくとも24時間又は少なくとも48時間印加される。一部の場合において、周波数は、125から175kHzの間である。一部の場合において、交流電界は、対象がループス腎炎ともはや診断されなくなるまで印加される。交流電界は、疾患又は状態の標準治療又は他の処置の前、最中、又は後に印加することができる。
【0047】
対象の腎臓におけるループス腎炎を処置する方法の一部の場合において、ループス腎炎を処置するための薬剤は、アザチオプリン、シクロホスファミド、プレドニゾン、プレドニゾロン、ボクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸、及びリツキシマブの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0048】
一部の場合において、対象の腎臓におけるループス腎炎を処置する方法は、治療有効量のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はアンギオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)を対象に投与する工程を更に含む。
【0049】
ACE阻害剤は、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、及びトランドラプリルの1つ又は複数からなる群から選択することができ、ARBは、アジルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、及びバルサルタンの1つ又は複数からなる群から選択される。
【0050】
本明細書において記載される典型的な実験において、骨髄細胞を5~8週齢のBalb/Cマウスの大腿骨及び脛骨から流し出して、骨髄由来マクロファージ(BMDM)を生成し、GM-CSFで7日間分化させた。TTFieldに対する個々のマクロファージの応答を調べるために、マクロファージをLPS+IFN-γ(M1分極化)又はIL-4(M2分極化)で24時間刺激し、その後、TTField(150kHz)で24時間処置し、プロファイリングした。M1分極化及びM2分極化は、TTFieldへの48時間の曝露後に細胞死をもたらした。したがって、以下に記載されるように、M1分極化したマクロファージ及びM2分極化したマクロファージを使用した実験は、48時間ではなく24時間で評価した。
【0051】
フローサイトメトリーを使用して、F4/80(マクロファージバイオマーカー)、並びに主要組織適合複合体クラスII(MHC II)、CD80、及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を含む活性化マーカーの表面発現を評価した。
【0052】
TTFieldは、Inovitro(商標)システムを使用して印加した。これらの例において、細胞は、1.75V/cm(RMS)の強度の、150kHzの周波数のTTFieldで24時間又は48時間(h)処置した。
【0053】
フローサイトメトリー(MACSQuant Analyzer 10、Miltenyi Biotec社、ベルギッシュ・グラートバッハ、ドイツ)を使用して、F4/80(汎マクロファージバイオマーカー)、並びに主要組織適合複合体クラスII(MHC II)、CD80、及び誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を含む活性化マーカーの表面発現を評価した。Viobility 405/452 Fixable Dye(Viobility Dye)を使用して、死細胞を区別した。細胞傷害性を、シングルセルカウントからのF4/80陽性細胞のパーセントに基づいて分析した。
【0054】
マルチプレックス分泌アッセイを使用して、刺激されたマクロファージの不均質性を測定した(LEGENDplex(商標)マウスマクロファージ/ミクログリアパネル(13-plex)カタログ番号740846、Biolegend社)。TTFieldへの曝露の後の13の異なるサイトカイン(CXCL1(KC)、IL-18、IL-23、IL-12p70、IL6、TNF-α、IL-12p40、遊離活性TGF-β1、CCL22(MDC)、IL-10、IL-6、G-CSF、CCL17(TARC)、及びIL-1β)の分泌の増大又は低下の倍率を測定した。サイトカイン分泌のレベルをコントロールに対して正規化した。
【0055】
データは、平均±SEMとして表されている。差の統計的有意性を、GraphPad Prism 9ソフトウェア(GraphPad Software社、ラホヤ、CA)を使用して評価した。群間の差は、0.05>*p>0.01、**p<0.01、及び***p<0.001の値で有意であるとみなされた。
【0056】
以下の実施例1及び2は、BMDMへのTTFieldの印加が、M1分極化したBMDMの炎症誘発性の表現型を上昇させ、M2分極化したBMDMからM1表現型への表現型のスキューイングを誘発したことを示している、試験データを提供している。これらの結果は、マクロファージの分極化に対するTTFieldの新たな免疫調節的役割を解明している。
【実施例】
【0057】
実施例1
図1A~
図1Dは、M0マクロファージがTTFieldによって炎症誘発性のM1表現型に分極化されることを示している。
【0058】
図1Aは、TTFieldを24時間及び48時間印加することによって生じるM0マクロファージへの細胞傷害性が最小限であることを示している。
【0059】
図1Bは、TTFieldへの48時間の曝露の後にCD80マーカー及びMHC-IIマーカーの発現が21.1パーセントから44.4パーセントまで増大したことを示す典型的なフローサイトメトリープロットを示している。これらの結果は、M0マクロファージ表現型からM1マクロファージ表現型へのスキューイングを実証している。
【0060】
図1Cは、
図1Bのフローサイトメトリーの結果を定量している棒グラフを示しており、また、CD80マーカー及びMHC-IIマーカーの蛍光強度の増大と連動した、炎症誘発性のCD80マーカー及びMHC-IIマーカーの発現の増大を示している。
【0061】
図1Dは、48時間にわたるTTFieldの印加の後の炎症誘発性サイトカインの分泌の増大倍率を示している。以下のTable 1(表1)は、測定された炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインを示している。
図1Dのy軸で表されている「分泌プロファイル」は、TTFieldに曝露されていないコントロールマクロファージと比較したサイトカインレベルの増大倍率を示している。ほとんどの炎症誘発性サイトカイン(例えば、CXCL1、TNFα、IL1β)の発現の増大は、M0マクロファージから炎症誘発性のM1マクロファージ表現型へのシフトを更に示している。
【0062】
【0063】
総合すると、
図1A~
図1Dの結果は、TTFieldの印加によって誘発された、M0マクロファージからM1表現型への有意なシフトを実証している。
【0064】
図2A~
図2Dは、IFN-γ及びLPSによってM1表現型に既に分極化しているM1マクロファージの炎症誘発性の表現型を、TTFieldが更に促進することを実証している。上述したように、IFN-γ及びLPSでのマクロファージの刺激は、48時間後に細胞死をもたらし得る。したがって、24時間のTTField曝露を
図2A~
図2Dの典型的な実験において使用した。
【0065】
図2Aは、M1分極化したマクロファージにTTFieldを24時間印加することによって生じる最小限の細胞傷害性を示している。
【0066】
図2Bは、IFN-γ及びLPSによってM1表現型に向けて既に刺激されているM1マクロファージにTTFieldを24時間曝露した後に、CD80マーカー及びMHC-IIマーカーの発現が58.5パーセントから73.3パーセントまで増大したことを示す、典型的なフローサイトメトリープロットを示している。これらの結果は、M1分極化したマクロファージから更に炎症誘発性のM1マクロファージ表現型への更なるスキューイングを実証している。
【0067】
図2Cは、
図2Bのフローサイトメトリーの結果を定量している棒グラフを示しており、また、炎症誘発性のCD80マーカー及びMHC-IIマーカーの発現の増大、CD80マーカー及びMHC-IIマーカーの蛍光強度の増大、並びに炎症誘発性のiNOSマーカーのパーセンテージの増大を示している。
【0068】
図2Dは、24時間にわたるTTFieldの印加の後の、M1分極化したマクロファージにおける炎症誘発性サイトカインの分泌の増大倍率を示している。ほとんどの炎症誘発性サイトカイン(例えば、CXCL1、IL-6、TNFα)の発現の増大は、分極化したM1マクロファージから更に炎症誘発性のM1マクロファージ表現型へのシフトを更に示している。
【0069】
総合すると、
図2A~
図2Dの結果は、TTFieldの印加によって誘発された、分極化したM1マクロファージから更に炎症誘発性のM1表現型への有意なシフトを実証している。
【0070】
図3A~
図3Dは、TTFieldが、CD80+細胞及びMHC-II
高細胞のパーセンテージの増大によって示されるように、IL-4で分極化したM2マクロファージからM1表現型への表現型のスキューイングを誘発することを実証している。上述したように、IL-4でのマクロファージの刺激は、48時間後に細胞死を生じさせ得る。したがって、24時間のTTField曝露を、
図3A~
図3Dの典型的な実験において使用した。
【0071】
図3Aは、IL-4で分極化したM2マクロファージにTTFieldを24時間印加することによって生じる最小限の細胞傷害性を示している。
【0072】
図3Bは、IL-4で分極化したM2マクロファージにおいてTTFieldに24時間曝露した後に、CD80マーカー及びMHC-IIマーカーの発現が34.2パーセントから52.2パーセントまで更に増大したことを示す、典型的なフローサイトメトリープロットを示している。これらの結果は、IL-4で分極化したM2マクロファージからM1マクロファージ表現型へのスキューイングを実証している。
【0073】
図3Cは、
図3Bのフローサイトメトリーの結果を定量している棒グラフを示しており、また、炎症誘発性のCD80マーカーの発現の増大、及びCD80マーカーの蛍光強度の増大を示している。有意な変化は、MHCIIの発現レベルでもiNOSの発現レベルでも見られなかった。
【0074】
図3Dは、24時間にわたるTTFieldの印加の後の、炎症誘発性サイトカインの分泌の増大倍率を示している。ほとんどの炎症誘発性サイトカイン(例えば、CXCL1、IL-6)の発現の増大は、分極化したM2マクロファージからM1マクロファージ表現型へのシフトを更に示している。
【0075】
実施例2
図4は、TTFieldがM2マクロファージにおいて形態学的変化を誘発してこれらを樹状様のM1表現型に変換する一方で、M1マクロファージは不変のままであることを示している。
【0076】
図5は、TTFieldが、M2マクロファージを炎症誘発性のM1表現型に分極化し、また、CD80及びMHC-IIの発現の上昇によって示されるように、M1マクロファージの炎症誘発性の性質を上昇させたことを示している。
【0077】
図6は、TTFieldがマクロファージのサイトカイン分泌を炎症誘発性のパターンに変化させ、それに伴い、M2においてCXCL1が有意に上昇したことを示している。
【0078】
図7は、TTFieldがM1マクロファージ及びM2マクロファージの両方においてM2表現型マーカーCD206及びARG-1の発現を弱めたが、M1表現型マーカーであるiNOSの発現には影響しなかったことを示している。
【0079】
一部の態様において、電界の印加は休止によって中断されてもよい。例えば、セッションの間で2時間の休止を伴う、それぞれ12時間の持続時間のセッションを6回。別の態様において、電界を印加する工程は、少なくとも3時間の持続時間を有する。一部の場合において、交流電界は、150kHz、175V/m(RMS)の強度で、24時間又は48時間にわたり印加することができる。
【0080】
更に別の態様において、交流電界の周波数は、50から1MHzの間、100から500kHzの間、125から175kHzの間、又は150kHzである。別の態様において、薬剤は、治療有効濃度で組織、位置、又は細胞に送達され、交流電界は、組織、位置、又は細胞の少なくとも一部において少なくとも1V/cmの電界強度を有する。
【0081】
更に別の態様において、交流電界は、0.1から10V/cm、1.30から4.0V/cm、1.50から2.0V/cm、1.70から1.80V/cm(RMS)の電界強度を有する。特定の態様において、交流電界は、1.75V/cm(RMS)の電界強度を有する。
【0082】
更に別の態様において、印加工程の少なくとも一部は、投与工程の少なくとも一部と同時に行われる。
【0083】
本明細書において記載されるインビトロ実験は、Novocure社のInovitro(商標)システムを使用して行った。これらの実験において、交流電界の方向は、2つの直角に交わる方向の間で、1秒間隔で切り替えた。しかし、代替的な実施形態では、交流電界の方向は、より速い速度(例えば、1から1000msの間の間隔)で又はより遅い速度(例えば、1から100秒の間の間隔)で切り替えることができる。
【0084】
本明細書において記載されるインビトロ実験では、交流電界の方向は、2D空間で互いに90°離れて置かれている2対の電極に交互の順序でAC電圧を印加することによって、2つの直角に交わる方向の間で切り替えた。しかし、代替的な実施形態では、交流電界の方向は、電極対を置き直すことによって、直角に交わっていない2つの方向の間で、又は3つ以上の方向の間で(追加の電極対が提供されている場合)、切り替えてもよい。例えば、交流電界の方向は3つの方向の間で切り替えてもよく、これら方向のそれぞれは、それ自体の電極対を置くことによって決定される。場合によって、これら3つの電極対は、生じる電界が3D空間で互いに90°離れて位置するように置かれてもよい。他の代替的な実施形態において、電極は対で配置される必要はない。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,565,205号において記載されている電極の位置付けを参照されたい。他の代替的な実施形態において、電界の方向は一定のままである。
【0085】
本明細書において記載される、Inovitro(商標)システムを使用するインビトロ実験において、Inovitro(商標)システムはディッシュの側壁の外面に置かれた導電性電極を使用し、また、側壁のセラミック材料が誘電体として作用するため、電界は培養物に容量結合された。しかし、代替的な実施形態では、電界は、容量結合することなく(例えば、Inovitro(商標)システムの立体構造を変えて、導電性電極が側壁の外面ではなく側壁の内面に置かれるようにすることによって)、細胞に直接印加してもよい。
【0086】
本明細書において記載される方法はまた、生きている対象の身体の標的領域に交流電界を印加することによって(例えば、Novocure社のOptune(登録商標)システムを使用して)、インビボの背景において適用することもできる。これは、例えば、対象の皮膚上又は皮膚の下に電極を位置付けて、これらの電極の選択されたサブセットの間でのAC電圧の印加が対象の身体の標的領域において交流電界を与えるようにすることによって、行うことができる。
【0087】
例えば、関連する細胞が対象の脳にある状況では、一対の電極を対象の頭部の前部及び後部に位置付けることができ、2番目の電極対を対象の頭部の右側及び左側に位置付けることができる。一部の実施形態では、電極は、対象の身体に容量結合している(例えば、導電性プレートを含み、また、導電性プレートと対象の身体との間に誘電体層が置かれている、電極を使用することによって)。しかし、代替的な実施形態では、誘電体層は省略され得、このケースでは、導電性プレートは対象の身体と直接接触することになる。別の実施形態では、電極は、患者の皮膚の下に皮下挿入され得る。AC電圧発生器は、第1の時間(例えば1秒間)にわたり、右側の電極と左側の電極との間で、選択された周波数(例えば200kHz)のAC電圧を印加し、これが、力線の最も主要な成分が対象の身体の横断軸に平行である交流電界を誘導する。
【0088】
次いで、AC電圧発生器は、第2の時間(例えば1秒間)にわたり、前方の電極と後方の電極との間で、同一の周波数(又は異なる周波数)のAC電圧を印加し、これが、力線の最も主要な成分が対象の身体の矢状軸に平行である交流電界を誘導する。この2ステップのシーケンスは、次いで、処置の期間にわたり反復される。場合によって、熱センサーが電極に含まれていてもよく、AC電圧発生器は、電極で感知された温度が高くなりすぎる場合には電極に印加されるAC電圧の振幅を下げるように、構成することができる。一部の実施形態では、1つ又は複数の追加の電極対を追加し、シーケンスに含めてもよい。代替的な実施形態では、単一の電極対のみが使用され、このケースにおいては、力線の方向は切り替えられない。このインビボでの実施形態でのパラメータのいずれも(例えば、周波数、電界強度、時間、方向を切り替える速度、及び電極の配置)、インビトロでの実施形態に関連して上記で記載したように変化し得ることに留意されたい。しかし、インビボの背景では、電界が常に対象にとって安全なままであることを確実にするための留意がなされるべきである。
【0089】
本明細書において記載される実験において、交流電界が、中断のない時間間隔(例えば、24時間、48時間)にわたり印加されたことに留意されたい。しかし、代替的な実施形態において、交流電界の印加は、好ましくは短時間の休止によって中断されてもよい。例えば、24時間の時間間隔は、6回の4時間ブロックにわたる交流電界の印加、及びそれに伴うこれらブロックのそれぞれの間の1時間又は2時間の休止からなり得る。
【0090】
本発明はある特定の実施形態を参照して開示されているが、記載されている実施形態に対する多くの修正、改変、及び変更が、添付の特許請求の範囲において規定されている本発明の領域及び範囲から逸脱することなく、可能である。したがって、本発明は記載されている実施形態に限定されず、しかし、以下で列挙する請求項の記載によって規定される全範囲及びこれらの同等物を有するものである。
【0091】
【国際調査報告】