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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】フタロニトリル系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/22 20060101AFI20240227BHJP
   C07C 255/51 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07C253/22
C07C255/51
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555624
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2021009452
(87)【国際公開番号】W WO2023003058
(87)【国際公開日】2023-01-26
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロ,キ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ナム ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン オン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC54
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BC31
4H006BD33
4H006BD51
4H006BE06
4H006BE90
4H006QN22
(57)【要約】
本発明の一実施例は、(a)フタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を製造する段階;(b)前記混合物を反応させる段階を含み、前記(b)段階は、前記ニトリル系化合物の超臨界条件下で行われる、フタロニトリル系化合物の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を製造する段階;及び
(b)前記混合物を反応させる段階を含み、
前記(b)段階は、前記ニトリル系化合物の超臨界条件下で行われることを特徴とする、フタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項2】
前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項4】
前記ニトリル系化合物は、アセトニトリルであることを特徴とする、請求項3に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階の混合物は、フタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成されることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項6】
前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項7】
前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記(b)段階は、260~350℃、40~200barの条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項9】
前記(b)段階は、1~500分間行われることを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項10】
前記(b)段階以後、(c)前記(b)段階の生成物を分離する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【請求項11】
前記(c)段階で分離された残部化合物を前記(a)段階で再使用することを特徴とする、請求項10に記載のフタロニトリル系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、フタロニトリル系化合物の製造方法に関し、より詳しくは、フタル酸系化合物から直接フタロニトリル系化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロニトリル系化合物は、繊維-形成線形重合体の製造において中間体として用いられる重要な化合物である。また、フタロニトリル系化合物は、アミン、酸-アミド及び複合窒素染料など多様な精密化学製品の有機合成中間体として用いられ、それ以外にも可塑剤、アルキド樹脂改質剤、殺虫剤などに用いられる高付加価値原料である。
【0003】
従来では、酸化触媒の存在下でキシレン化合物をアンモニア及び酸素含有気体と接触及び脱水反応させてフタロニトリル系化合物を製造した。しかし、このような方法は、有害な化学物質であるアンモニア気体を用い、高温、高圧で触媒の存在下で行われるアンモ酸化(ammoxidation)反応であるため、工程が複雑であり、高沸点不純物を蒸溜を通じて精製、分離しなければならないので、副産物の除去が難しいという問題点がある。また、このような従来のフタロニトリル系化合物の製造方法は、アンモ酸化反応に用いられる触媒の種類、酸素含有気体の割合によって生成物の収率が変わり、反応温度によって前駆物質であるキシレン化合物の転換率が変動し工程の制御が難しい。
【0004】
したがって、経済的で且つ環境にやさしい方法で高純度のフタロニトリル系化合物を製造する工程に対する要求が増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の一目的は、フタル酸系化合物からフタロニトリル系化合物を直接製造する方法を提供することである。
【0006】
また、本明細書の他の一目的は、環境にやさしいフタロニトリル系化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面によると、(a)フタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を製造する段階;及び(b)前記混合物を反応させる段階を含み、前記(b)段階は、前記ニトリル系化合物の超臨界条件下で行われる、フタロニトリル系化合物の製造方法が提供される。
【0008】
一実施例において、前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であってもよい。
【0009】
一実施例において、前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0010】
一実施例において、前記ニトリル系化合物は、アセトニトリルであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記(a)段階の混合物は、フタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成され得る。
【0012】
一実施例において、前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であってもよい。
【0013】
一実施例において、前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であってもよい。
【0014】
一実施例において、前記(b)段階は、260~350℃、40~200barの条件で行われ得る。
【0015】
一実施例において、前記(b)段階は、1~500分間行われ得る。
【0016】
一実施例において、前記(b)段階以後、(c)前記(b)段階の生成物を分離する段階をさらに含むことができる。
【0017】
一実施例において、前記(c)段階で分離された残部化合物を前記(a)段階で再使用することができる。
【発明の効果】
【0018】
一側面によると、フタル酸系化合物から高純度のフタロニトリル系化合物を直接製造することができる。
【0019】
他の一側面によると、環境にやさしいフタロニトリル系化合物を製造することができる。
【0020】
本明細書の記載事項の効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明又は請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、一実施例を参照して本明細書の一側面を説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は種々の異なる形態で具現され得、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、本明細書の実施のための各内容を明確に説明するために説明と関係ないか当該分野において広く知られている部分は省略した。
【0022】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0023】
本明細書で数値的値の範囲が記載されたとき、これの具体的な範囲が異に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。また、本明細書で複数の数値的値の例示が記載されたとき、明示的にこれらの中間値を除外するという記載がない限り、このような例示は、その中間値を含むことができる。例えば、「x、x、x又はx」は、「x~x」「x~x」、「x~x」、「x~x」、「x~x」、「x~x」の範囲を含むことができる。
【0024】
本明細書で「超臨界条件(supercritical condition)」とは、相平衡曲線(phase equilibrium curve)の末端点である臨界点(critical point)以上の条件を満足する状態を意味する。例えば、化合物Aの臨界温度がTであり、臨界圧力がPであると、化合物Aの超臨界条件は、温度がT以上であり、圧力がP以上である状態を意味する。
【0025】
以下、本明細書の一実施例を詳しく説明する。
【0026】
フタロニトリル系化合物の製造方法
一側面によるフタロニトリル系化合物の製造方法は、(a)フタル酸系化合物及びニトリル系化合物を含む混合物を製造する段階;及び(b)前記混合物を反応させる段階を含み、前記(b)段階は、前記ニトリル系化合物の超臨界条件下で行われ得る。
【0027】
前記フタル酸系化合物は、芳香族環と2以上のカルボキシル基を有する化合物であってもよい。一実施例において、前記フタル酸系化合物は、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物であってもよい。
【0028】
前記ニトリル系化合物は、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ピバロニトリル、スクシノニトリル、フマロニトリル、クロトニトリル及びベンゾニトリルからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記ニトリル系化合物がシアン化水素であると、前記(b)段階は、183.5℃以上、50bar以上の条件で行われ得る。前記ニトリル系化合物がアセトニトリルであると、前記(b)段階は、272℃以上、48.7bar以上の条件で行われ得る。前記ニトリル系化合物がアクリロニトリルであると、前記(b)段階は、267℃以上、46bar以上の条件で行われ得る。前記ニトリル系化合物がブチロニトリルであると、前記(b)段階は、309℃以上、37.8bar以上で行われ得る。前記ニトリル系化合物がイソブチロニトリルであると、前記(b)段階は、336℃以上、40bar以上で行われ得る。前記ニトリル系化合物がピバロニトリルであると、前記(b)段階は、343℃以上、34.4bar以上の条件で行われ得る。その外に、前記ニトリル系化合物の種類によって前記(b)段階の条件は変動され得る。したがって、前記条件は、全て例示的なものであり、本明細書の範囲を制限するものではない。前記ニトリル系化合物は、溶媒であると同時に反応物であってもよい。
【0029】
前記(b)段階で、前記混合物は、アンモニア、高濃度の酸素又は触媒などの別途の添加剤を含まずに反応が行われ得る。前記(b)段階の反応が別途の添加剤なしに行われ得るので、前記(a)段階の混合物がフタル酸系化合物及びニトリル系化合物で構成され得るが、これに限定されるものではない。例えば、前記混合物は、ニトリル系化合物溶媒に固体相であるフタル酸系化合物を溶解させたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記(a)段階で、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1~500重量部であってもよい。例えば、前記ニトリル系化合物の含量は、前記フタル酸系化合物1重量部を基準として1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部、135重量部、140重量部、145重量部、150重量部、155重量部、160重量部、165重量部、170重量部、175重量部、180重量部、185重量部、190重量部、195重量部、200重量部、205重量部、210重量部、215重量部、220重量部、225重量部、230重量部、235重量部、240重量部、245重量部、250重量部、255重量部、260重量部、265重量部、270重量部、275重量部、280重量部、285重量部、290重量部、295重量部、300重量部、305重量部、310重量部、315重量部、320重量部、325重量部、330重量部、335重量部、340重量部、345重量部、350重量部、355重量部、360重量部、365重量部、370重量部、375重量部、380重量部、385重量部、390重量部、395重量部、400重量部、405重量部、410重量部、415重量部、420重量部、425重量部、430重量部、435重量部、440重量部、445重量部、450重量部、455重量部、460重量部、465重量部、470重量部、475重量部、480重量部、485重量部、490重量部、495重量部又は500重量部であってもよく、これらの中間範囲を含むことができる。前記ニトリル系化合物の含量が前記フタル酸系化合物の含量に比べて多いほど生成物の純度が上昇し得るが、前記ニトリル系化合物が過度に多いと、経済的な側面で不利であり得る。
【0031】
前記(a)段階で、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満であってもよい。例えば、前記混合物の水分含量は、6,000ppm未満、5,000ppm未満、4,000ppm未満、3,000ppm未満、2,000ppm未満、1,000ppm未満、750ppm未満、500ppm未満又は250ppm未満であってもよい。前記混合物の水分含量が低いほど生成物の純度が向上され得る。
【0032】
前記(b)段階の反応は、カルボキシル基とニトリル基の直接置換反応を通じたジニトリル化(di-nitrilation)であってよく、その一つの例示は、下の反応式のように表現され得る。
【0033】
【化1】
【0034】
前記反応式で、Rは、フェニレンなど芳香族環であり、R'は、炭素数が1~20であるアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基などであってもよい。
【0035】
前記(b)段階の温度及び圧力条件が前記ニトリル系化合物の臨界点以上であると、反応が行われ得る。前記(b)段階は、260~350℃、40~200barの条件で行われ得る。例えば、前記(b)段階は、反応温度260℃、265℃、270℃、275℃、280℃、285℃、290℃、295℃、300℃、305℃、310℃、315℃、320℃、325℃、330℃、335℃、340℃、345℃又は350℃で行われ得る。例えば、前記(b)段階は、反応圧力40bar、45bar、50bar、55bar、60bar、65bar、70bar、75bar、80bar、85bar、90bar、95bar、100bar、105bar、110bar、115bar、120bar、125bar、130bar、135bar、140bar、145bar、150bar、155bar、160bar、165bar、170bar、175bar、180bar、185bar、190bar、195bar又は200barで行われ得る。前記(b)の反応温度が過度に低いと、生成物の純度が下落するか、反応が行われないことがあり、反応温度が過度に高いと、副産物の生成が増加して純度が下落し得る。前記(b)段階の反応圧力が過度に低いと、反応が行われないことがあり、反応圧力が過度に高いと、安全性が悪くなり得る。
【0036】
前記(b)段階は、1~500分間行われ得る。例えば、前記(b)段階は、1分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、125分、130分、135分、140分、145分、150分、155分、160分、165分、170分、175分、180分、185分、190分、195分、200分、205分、210分、215分、220分、225分、230分、235分、240分、245分、250分、255分、260分、265分、270分、275分、280分、285分、290分、295分、300分、305分、310分、315分、320分、325分、330分、335分、340分、345分、350分、355分、360分、365分、370分、375分、380分、385分、390分、395分、400分、405分、410分、415分、420分、425分、430分、435分、440分、445分、450分、455分、460分、465分、470分、475分、480分、485分、490分、495分又は500分間行われ得、これらの中間範囲を含むことができる。前記(b)段階の反応時間が増加するほど生成物の純度が上昇し得るが、反応時間が過度に長いと、生産性が低下し得る。
【0037】
前記(b)段階以後、(c)前記(b)段階の生成物を分離する段階をさらに含むことができる。前記(c)段階の分離は、生成されたフタロニトリル系化合物と残部化合物に分離することであってもよく、蒸溜分離など公知の多様な方法によって行われ得る。前記残部化合物は、例えば、未反応フタル酸系化合物、未反応ニトリル系化合物及びフタル酸系化合物のカルボキシル基のうち一部のみ反応したフタル酸ニトリル系化合物からなる群より選択された一つ以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記(c)段階で分離された残部化合物を前記(a)段階で再使用することができる。一実施例によるフタロニトリル系化合物の製造方法は、触媒など別途の添加剤の使用なしに実行できるので、前記残部化合物を別途の精製なしに再使用することができる。
【0039】
一側面によるフタロニトリル系化合物の製造方法は、生成物の純度が60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上又は85%以上であってもよい。
【0040】
以下、本明細書の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容を縮小又は制限して解釈してはならない。下で明示的に提示しない本明細書の多くの具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0041】
実施例1
撹拌機が具備された1,000mLの反応器(autoclave)にイソフタル酸(isophthalic acid、IPA)5重量部及びアセトニトリル(acetonitrile、ACN)100重量部を投入して反応系を形成した。前記反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。常圧で前記反応器を400rpmで撹拌しながら内部温度を280~300℃に昇温した。反応温度を維持しながら4時間の間反応させた。反応圧力70~100barであった。反応が終了した後、反応系を室温まで冷却した。その後、反応系を減圧蒸溜してアセトニトリルとイソフタロニトリル(isophthalonitrile、IPN)を分離した。アセトニトリルは再使用し、イソフタロニトリルは、気体クロマトグラフィー(Gas chromatography、GC)で分析して生成物の純度を確認した。
【0042】
実施例2
撹拌機が具備された1,000mLの反応器にイソフタル酸5重量部、アセトニトリル100重量部を投入して反応系を形成した。前記反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。常圧で前記反応器を400rpmで撹拌しながら内部温度を290℃に昇温した。反応温度を維持しながら1~6時間の間反応させた。反応圧力は、90~95barであった。反応が終了した後、反応系を室温まで冷却した。その後、反応系を減圧蒸溜してアセトニトリルとイソフタロニトリルを分離した。アセトニトリルは再使用し、イソフタロニトリルは、気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認した。
【0043】
実施例3
撹拌機が具備された1,000mLの反応器にイソフタル酸5重量部、アセトニトリル50~150重量部を投入して反応系を形成した。前記反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。常圧で前記反応器を400rpmで撹拌しながら内部温度を290℃に昇温した。反応温度を維持しながら4時間の間反応させた。反応圧力は、90~95barであった。反応が終了した後、反応系を室温まで冷却した。その後、反応系を減圧蒸溜してアセトニトリルとイソフタロニトリルを分離した。アセトニトリルは再使用し、イソフタロニトリルは、気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認した。
【0044】
実施例4
撹拌機が具備された1,000mLの反応器にイソフタル酸5重量部、アセトニトリル100重量部を投入して反応系を形成した。前記反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。前記反応系の水分含量を260~6,000ppmに調節した。常圧で前記反応器を400rpmで撹拌しながら内部温度を280℃に昇温した。反応温度を維持しながら4時間の間反応させた。反応圧力は、70~75barであった。反応が終了した後、反応系を室温まで冷却した。その後、反応系を減圧蒸溜してアセトニトリルとイソフタロニトリルを分離した。アセトニトリルは再使用し、イソフタロニトリルは、気体クロマトグラフィーで分析して純度を確認した。
【0045】
実施例5
撹拌機が具備された1,000mLの反応器にテレフタル酸(terephthalic acid,TPA)5重量部、アセトニトリル100重量部を投入して反応系を形成した。前記反応器の内部に2~3barの圧力で窒素を3回置換した。常圧で前記反応器を400rpmで撹拌しながら内部温度を280~290℃に昇温した。反応温度を維持しながら4時間の間反応させた。反応圧力は、75~95barであった。反応が終了した後、反応系を室温まで冷却した。その後、反応系を減圧蒸溜してアセトニトリルとテレフタロニトリル(terephthalonitrile、TPN)を分離した。アセトニトリルは再使用し、テレフタロニトリルは、気体クロマトグラフィーで分析して生成物の純度を確認した。
【0046】
前記実施例1~5の反応条件と生成物の純度を下表1に整理して示した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1を参考すると、反応温度が高くなると、生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇するが、反応温度が過度に高いと、副産物が増加して純度が逆に下落した。
【0049】
実施例2を参考すると、反応時間が増加するほど生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇した。
【0050】
また、実施例3を参考すると、アセトニトリルに比べてイソフタル酸の量が少ないほど生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇する傾向を確認した。
【0051】
実施例4を参考すると、反応系内の水分含量が高いほど副産物が増加して生成物であるイソフタロニトリルの純度が下落した。
【0052】
実施例5を参考すると、イソフタル酸の代わりにテレフタル酸を用いて類似した反応メカニズムでテレフタロニトリルの製造か可能であることが確認できる。また、反応温度が高くなると、生成物であるイソフタロニトリルの純度が上昇した。
【0053】
前記実施例1~実施例5を参照すると、アンモニア、酸触媒など有害化合物質を用いる従来のアンモニア反応を利用した製造工程とは異なり、本明細書の一実施例は、別途の触媒や付加物の投入なしに固体フタル酸化合物からフタロニトリル系化合物を高い収率で製造することができる。
【0054】
具体的に、前記実施例1~実施例5は、フタル酸系化合物であるイソフタル酸又はテレフタル酸を反応物として、有機ニトリルであるアセトニトリルを溶媒であると同時に反応物として用いた。これらの混合物に別途の触媒や付加物の投入なしに直接加熱して高温、高圧の超臨界状態(T:275℃以上、P:48bar以上)を形成し、酸とニトリルの交換反応を誘導してフタロニトリル系化合物を直接生成した。
【0055】
前述した本明細書の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の一側面が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能なことが理解できるであろう。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0056】
本明細書の範囲は、後述する特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【国際調査報告】