(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555797
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022054706
(87)【国際公開番号】W WO2022189164
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】523347110
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ-サクレー
(71)【出願人】
【識別番号】303042729
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス
(71)【出願人】
【識別番号】523346353
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・セビーリャ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスエロ・グアルディオラ・サルメロン
(72)【発明者】
【氏名】アウグスト・マルケス
(72)【発明者】
【氏名】シャビエル・ムニョース-ベルベル
(72)【発明者】
【氏名】マリア・デル・カルメン・ヒメネス-ラモス
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル・ガルシア・ロペス
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188CC39
2G188DD05
2G188DD49
2G188EE36
2G188KK01
(57)【要約】
本発明は、電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定するためのデバイス、そのようなデバイスを備えるシステム、およびそのようなデバイスの使用に関する。より詳細には、デバイスは、反射フィルムと、少なくとも1つの光源と、放射線感受性フィルムと、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを含む光学センサシステムと、を備える。本発明はまた、前述のデバイスと、デバイスの光学センサシステムに接続された読出し集積回路と、読出し集積回路に接続された処理ユニットと、を備えるシステムに関する。本発明はまた、前述のデバイスの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルム(13)を通じて送達された放射線量を測定するためのデバイス(10)であって、
外面(11b)に対向する内面(11a)を有する反射フィルム(11)であり、前記内面が光を反射するように構成されている、反射フィルム(11)と、
前記反射フィルム(11)の前記内面(11a)に向かって少なくとも1つの光線を放射するように配置された少なくとも1つの光源(12)と、
前記反射フィルム(11)の前記内面(11a)に面する第1の面(13a)および反対側の第2の面(13b)を有する放射線感受性フィルム(13)と、
前記放射線感受性フィルム(13)の前記第2の面(13b)に面する第1の面(14a)を有し、かつ前記反射フィルム(11)の前記内面(11a)から反射した後の前記少なくとも1つの光源(12)からの前記光線を受け取るように構成された光学センサシステム(14)であり、前記第1の面(14a)に対向する第2の面(14b)を有する、光学センサシステム(14)と、
を備え、
前記光学センサシステム(14)の前記第1の面(14a)が、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを備え、前記1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットが、支持層に固定されており、
前記反射フィルム(11)、前記放射線感受性フィルム(13)、ならびに前記光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイが、基本的に平行であり、
前記少なくとも1つの光源(12)が、前記反射フィルム(11)の前記内面(11a)と前記放射線感受性フィルム(13)の前記第1の面(13a)との間に位置していない、
デバイス(10)。
【請求項2】
前記反射フィルム(11)と前記放射線感受性フィルム(13)と前記光学センサシステム(14)の前記支持層とが、可撓性である、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記デバイス(10)がポリマーに封入されている、請求項1または2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源(12)が、1つもしくは複数のLEDおよび/または1つもしくは複数のレーザを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
前記放射線感受性フィルム(13)が、ラジオクロミックフィルムである、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
前記放射線感受性フィルム(13)が、ポリカーボネート製である、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの光ガイドを備える請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
前記反射フィルム(11)が、金属化マイクロフィルムであるか、または、金属の層で被覆されたポリマーフィルムである、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
前記反射フィルム(11)が、100μm未満の厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(10)を備えるシステム(20)であって、
第1の接続(21)を介して前記デバイス(10)の前記光学センサシステム(14)に接続された読出し集積回路ユニット(22)と、
第2の接続(23)を介して前記読出し集積回路(22)に接続された処理ユニット(24)と、を備える、システム(20)。
【請求項11】
前記読出し集積回路(22)と前記処理ユニット(24)との間の前記第2の接続(23)が、前記処理ユニット(24)と通信する少なくとも1つのマイクロアンテナを含む、請求項10に記載のシステム(20)。
【請求項12】
前記読出し集積回路(22)と前記処理ユニット(24)との間の前記第2の接続(23)が、RFIDタグである、請求項10に記載のシステム(20)。
【請求項13】
前記処理ユニット(24)が、遠隔制御システムである、請求項10から12のいずれか一項に記載のシステム(20)。
【請求項14】
電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルム(13)を通じて送達された放射線量を測定するための、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(10)または請求項10から13のいずれか一項に記載のシステム(20)、の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定するためのデバイス、そのようなデバイスを備えるシステム、および、そのようなデバイスまたはシステムの使用に関する。
【0002】
より詳細には、デバイスは、反射フィルムと、少なくとも1つの光源と、放射線感受性フィルムと、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを含む光学センサシステムと、を備える。本発明はまた、前述のデバイスと、デバイスの光学センサシステムに接続された読出し集積回路と、読出し集積回路に接続された処理ユニットとを備えるシステムに関する。本発明はまた、前述のデバイスまたはシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
医学、化学、またはセキュリティにおける照射は、それにより対象物が放射線に暴露されるプロセスである。最も頻繁には、放射線という用語は、電離放射線を意味する。電離放射線は様々な原因によって生成され、そのような原因は、例えば宇宙線もしくは地球放射といった自然のものであるか、または、例えば放射線の医学上のもしくは産業上の使用といった人工のものであり得る。様々なタイプの電離放射線の中で、一部の電離放射線は健康への影響を有し、そのような健康への影響は、細胞の死滅による確定的影響、または、癌の発生につながり得る体細胞の変異の形成もしくは他の過程による確率的影響の間でグループ化される。
【0004】
電離放射線の影響は、放射される放射線のタイプに依存するが、送達され吸収される放射線量にも依存する。吸収線量(absorbed dose)という用語は、対象物または個人によって吸収された放射線の量を説明する。吸収線量のための単位は、グレイ(Gy)である。吸収線量は、電離放射線から吸収媒体において局所的に堆積されるエネルギーを質量単位によって示す。ある放射線量が、高線量率または低線量率において、例えば複数分割用量(multiple fractionated doses)によって、送達され得る。
【0005】
電離放射線によりある場所へ送達される放射線量の正確な評価は、複数の技術分野において欠かせないものである。例えば放射線療法では、特定の放射線量が患者の特定の領域へ送達されなければならない。処方された正確な特定の放射線量が、期待された率により標的とされた場所において適切に送達されることが、使用されるデバイスから期待される。放射線防護および放射線療法の両方において、電離放射線を測定または監視することは、放射線に対する防御に適した機器の決定、または、放射線量および状況に従うデバイスの有効な動作の決定を可能にする、重要な側面である。
【0006】
伝統的に、GAFchromic(商標)フィルムなどのラジオクロミックフィルムが、放射線量確認のための領域における基本的な二次元受動型検出器と見なされている。ラジオクロミックフィルムは、その高い空間分解能、低いエネルギー依存性、および準水等量(quasi water-equivalence)のために、品質保証測定および処置検証に広く使用されている(非特許文献1)。電離放射線への暴露下において、ラジオクロミックフィルムのアクティブ層内で重合反応が起こり、それがフィルムの光学濃度の変化、すなわちフィルム色調の変化を生じさせ、この変化は、追加的な化学的後処理を伴わずに、フィルム内の送達放射線量(delivered dose)に関係付けられ得る。
【0007】
しかし、それらの光学濃度の標準的定量法は、画像走査に基づくものであり、照射後の後処理を必要とする。実際、照射時刻とフィルム走査との間には24時間の最短所要時間が推奨されている(非特許文献2)。
【0008】
したがって、送達された放射線量を評価するのにかなりの時間遅延が存在する。実際には、送達された放射線量は、放射線療法ソフトウェア内の治療計画システムに実装された解析的モデルを用いて計算されるが、リアルタイムで実験的に検証されない。光学濃度が、送達放射線量に関係付けられるべき唯一のパラメータと見なされるならば、ラジオクロミックフィルムの解析時間遅延は、それらをリアルタイムかつインサイチュの日常線量評価には実行不可能なツールにする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Devic,S.、Radiochromic film dosimetry:Past, present and future、Phys. Med.、2011年、27、122~134頁
【非特許文献2】Niroomand-Rad,A.、Blackwell, C.R.、Coursey, B.M.、Gall, K.P.、Galvin,J.M.、McLaughlin,W.Lら、Radiochromic film dosimetry:Recommendations of AAPM Radiation Therapy Committee Task Group 55、Med. Phys.、1998年、25、2093~2115頁
【非特許文献3】Clough R.L.ら、Polymer Degradation and Stability 49 (1995) 305~313頁
【非特許文献4】Nouh S.A.、Radiation Protection Dosimetry、Volume 183、Issue 4、2019年6月、450~459頁、2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、特定の場所へ送達された放射線量をリアルタイムかつインサイチュに測定することを可能にするデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その趣旨で、本発明は、電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定するためのデバイスであって、
外面に対向する内面を有する反射フィルムであり、内面が光を反射するように構成されている、反射フィルムと、
反射フィルムの内面に向かって少なくとも1つの光線を放射するように配置された少なくとも1つの光源と、
反射フィルムの内面に面する第1の面および反対側の第2の面を有する放射線感受性フィルムと、
放射線感受性フィルムの第2の面に面する第1の面を有し、かつ反射フィルムの内面から反射した後の少なくとも1つの光源からの光線を受け取るように構成された光学センサシステムであり、第1の面に対向する第2の面を有する、光学センサシステムと、
を備え、
光学センサシステムの第1の面が、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを備え、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットが、支持層に固定されており、
反射フィルム、放射線感受性フィルム、ならびに光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイが、基本的に平行であり、
少なくとも1つの光源が、反射フィルムの内面と放射線感受性フィルムの第1の面との間に位置していない、
デバイスを開示する。
【0012】
そのようなデバイスは、特定の場所へ送達された放射線量をリアルタイムかつインサイチュに測定することを可能にする。
【0013】
「放射線感受性フィルム」に関しては、その構造的および/または光学的な特性が照射に応答して変化する材料を含むフィルムであると理解される。
【0014】
「1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイ」に関しては、行列または格子として配置されており、したがって並んでいて、放射線感受性フィルムに基本的に平行な光学センサ面を形成している、複数の光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットであると理解される。2Dアレイの光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットは、反射フィルムによって反射されて放射線感受性フィルムを通過した光を受け取るように構成されている。
【0015】
光学センサシステムの光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットは、そこに衝突する光に応答して、電流または抵抗変化をもたらす。そのようなユニットは、空間的な、スペクトルの、および/または時間的な光の特徴を捕捉しかつ記録するために、様々な分野において使用される。光導電セルユニットまたは半導体ユニットの2Dアレイは、入射電磁放射線を電気信号に変換する、密集した検出器要素のモザイクに相当し得る。光学センサシステムの「光導電セルユニット」に関しては、素子の高感度表面上に光を受けることに対してその抵抗が低下する受動素子と理解される。「光導電セルユニット」に関してはまた、半導体基板を備える光導電セルと理解され得る。光学センサシステムの「半導体ユニット」に関しては、光が半導体ユニットまたは光ダイオードに衝突したときに変調される、高抵抗の半導体または高抵抗を有するようにドープされた半導体と理解され得る。
【0016】
「反射フィルム、放射線感受性フィルム、ならびに光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイは基本的に平行である」に関しては、反射フィルム、放射線感受性フィルム、ならびに光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイのそれぞれが、ある平面に相当し得ること、および、それらの平面のそれぞれが互いに基本的に平行であることと理解される。反射フィルム、放射線感受性フィルム、ならびに光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイが湾曲しているかまたは任意の特定の形状を有している場合、反射フィルム、放射線感受性フィルム、ならびに光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイのそれぞれの表面は互いに平行である表面に相当し、つまり、それらの表面のそれぞれは他の表面から一定の垂直距離にそれぞれ位置する点を有することが、理解される。
【0017】
「少なくとも1つの光源は反射フィルムの内面と放射線感受性フィルムの第1の面との間に位置していない」に関しては、少なくとも1つの光源が、反射フィルムの内面と放射線感受性フィルムの第1の面との間に形成される空間の周りに位置するように配置されると理解される。少なくとも1つの光源のそのような位置は、誤った測定につながり得ることである、電離放射線が少なくとも1つの光源を通過することにより光源に潜在的に影響を及ぼしかつ/または減衰するか偏向するかもしくは反射されること、を防止する。実際、光源は、照射野の範囲外に設置されるべきである。また、そのような位置は、反射フィルムの反射面上の光線の反射と放射線感受性フィルムとの間に光源が位置することからもたらされる、放射線感受性フィルム上での影の形成、またはデバイスに衝突する放射線源からの散乱を防止する。
【0018】
そのようなデバイスは、電離放射線への暴露により放射線感受性フィルムが照射されるときに放射線感受性フィルム内へ送達される放射線量のリアルタイムの読取りを可能にする。
【0019】
有利なことには、反射フィルム、放射線感受性フィルム、および光学センサシステムの支持層は、可撓性である。そのような可撓性要素を用いることで、デバイスは、相補的な形を有する物体の形状に適合するように、湾曲または屈曲され得る。例えば、そのような可撓性の反射フィルム、放射線感受性フィルム、および光学センサシステムを備えるデバイスは、人体の形状に従うように湾曲され得る。
【0020】
有利なことには、光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットは、1つまたは複数の可撓性プリント回路に組み込まれる。
【0021】
光学センサシステムは1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットを備えるので、可撓性支持層との組み合わせの際に、または、光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットが1つまたは複数の可撓性プリント回路に組み込まれているときに、光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットが互いに独立して変位され得るので、デバイスは屈曲され得る。
【0022】
有利なことには、デバイスは、ポリマーに封入される。ポリマーは、水等価であることが好ましい。例えば、ポリマーは、ポリメチルシロキサン(PDMS)、ポリエステル、ポリイミド、もしくはナイロンに基づくかまたはそれらを含む。ポリマーは、200nm以下の厚さの透明な極薄ポリマーであることが好ましい。そのような封入は、デバイスを保護すること、および、操作されている間にデバイスの要素を一緒にして維持することを可能にする。
【0023】
有利なことには、少なくとも1つの光源は、1つもしくは複数のLEDおよび/または1つもしくは複数のレーザを含む。少なくとも1つの光源は、例えば好ましくは1ワット当たり少なくとも100ルーメン、さらに好ましくは1ワット当たり少なくとも200ルーメンの発光効率を有する、低出力光源であることが好ましい。少なくとも1つの光源は、少なくとも1つの緑色光源を含むことが好ましい。少なくとも1つの光源は、緑色光源に基づくことがさらに好ましい。緑色光源は、放射線感受性フィルムを通過する光の光学センサシステムによる検出に関して、より高い効率を可能にする。
【0024】
有利なことには、放射線感受性フィルムは、例えばポリエステルといったポリマー、または結晶ポリアセチレン、特にジアセチレンなどの染料を含むポリマーを含み、ポリマーは、その構造的および/または光学的な特性が、照射に応答して、例えば電離放射線に暴露されたときに色調を変えることによって、変化するポリマーである。
【0025】
有利なことには、放射線感受性フィルムは、ラジオクロミックフィルムである。ラジオクロミックフィルムは、ラジオクロミック線量計を意味する場合があり、ラジオクロミック線量計は、液体、ゲル、およびペレットの形態で一般に使用され、本発明ではフィルムとして使用される。
【0026】
電離放射線への暴露下において、ラジオクロミックフィルムのアクティブ層内で重合反応が起こり、それがフィルムの光学濃度の不可逆変化、すなわちフィルム色調の不可逆変化を生じさせ、この変化は、追加的な化学的後処理を伴わずに、フィルム内の送達放射線量に関係付けられ得る。ラジオクロミックフィルムは、通常、2つの層の間にアクティブ層を備え、アクティブ層は、吸収線量の増大とともにその暗さが強まる標識染料(marker dye)を含む。黄色標識染料を含むポリジアセチレン材料に基づくGafchromic(商標)EBT3フィルムなどのGafchromic(商標)フィルムが、放射線感受性フィルムの例である。
【0027】
有利なことには、放射線感受性フィルムは、ポリカーボネートで作られる。例えば、ポリカーボネートフィルムは、例えば紫外線C(UVC)暴露に起因するフェージング効果により、核応用において使用され得る。
【0028】
有利なことには、デバイスは、少なくとも1つの光ガイドを備える。「光ガイド」に関しては、少なくとも1つの光源からの放射光線を反射フィルムに内部反射を通じて伝達することができるガラスまたはプラスチックなどの透明な材料と理解される。あるいは、「光ガイド」に関しては、剛体のまたは可撓性のプラスチックチューブを含む光ファイバなどの光パイプと理解される。光ガイドは、放射線感受性フィルムにわたって均質な反射を得るために、少なくとも1つの光源からの放射光線を集束し、その放射光線を所望の形状で反射フィルム上に一様に広げる。したがって、そのような少なくとも1つの光ガイドは、放射線感受性フィルム上での光の均質な反射および拡散を向上させることを可能にし、したがって、放射線感受性フィルムを通過し光学センサシステムによって受け取られる光のより良好な測定を可能にする。そのような少なくとも1つの光ガイドは、少なくとも1つの光源と反射フィルムとの間に位置することが好ましいが、反射フィルムの内面と放射線感受性フィルムの第1の面との間には位置しない。
【0029】
有利なことには、反射フィルムは、金属化マイクロフィルムであるか、または、アルミニウムなどの金属の層で被覆されたポリマーフィルムである。そのような金属化マイクロフィルムは、デバイスの少なくとも1つの光源からの光を効率的に反射することを可能にする。金属化マイクロフィルムは、金属化BoPETフィルム、すなわちMylar(商標)などの2軸延伸テレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0030】
有利なことには、反射フィルムは、100μm未満、好ましくは20μm未満の厚さを有する。そのような反射フィルムは、1μm以下の厚さを有することがさらに好ましく、好ましい厚さは、0.5~1μmである。反射フィルムのそのような厚さは、電離放射線が乱されること、偏向すること、反射されること、または減少することなしに反射フィルムを通過することを可能にし、したがって、デバイスが提供されていなかった場合に放射線発生デバイスによって放射されていたであろう送達放射線量を測定することを可能にする。特定の実施形態では、反射フィルムは、例えば10nm~1μmの反射フィルムを得ることを可能にする物理的蒸気堆積によって得られ得る。
【0031】
本発明はまた、前述のデバイスのうちの1つを備えるシステムを開示し、そのシステムは、第1の接続を介してデバイスの光学センサシステムに接続された読出し集積回路と、第2の接続を介して読出し集積回路に接続された処理ユニットとを備える。
【0032】
読出し回路が、電気信号を各検出器要素または画素、例えば本発明による光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットから、出力、例えば出力増幅器へ中継するが、しかしこのような例に限定されない。例えば、読出し回路は、少なくとも1つの光線が光源によって放射されたときに電圧変化を測定することができ、電圧変化は、処理ユニットに伝達される。具体的には、読出し回路は、情報をユーザに伝達するための任意の種類の処理ユニットとの接続を可能にする。
【0033】
処理ユニットに関しては、読出し回路から情報を受信することができ、また、そのような情報を変換、解釈、計算、または表示することによりそのような情報を管理することができる、任意の要素と理解される。処理ユニットは、コンピュータ、遠隔制御システム、携帯電話、または任意の類似のデバイスに相当し得る。
【0034】
有利なことには、読出し集積回路と処理ユニットとの間の第2の接続は、処理ユニットと通信する少なくとも1つのマイクロアンテナを含む。第2の接続は、無線接続でありかつ例えばブルートゥース(登録商標)またはWifi接続に相当することが、好ましい。
【0035】
有利なことには、読出し集積回路と処理ユニットとの間の第2の接続は、無線自動識別(RFID)タグである。
【0036】
有利なことには、処理ユニットは、遠隔制御システムである。
【0037】
本発明はまた、電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定するための前述のデバイスまたは前述のシステムの使用を開示する。
【0038】
本発明は、すべてが互いに組み合わせられ得る様々な有利な特徴に準じて説明されている。
【0039】
以下のいくつかの例示的な実施形態に関する以下の説明およびその添付の図から、本発明はより良く理解されるであろうし、その様々な特性および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】本発明のデバイスを備える本発明のシステムを表す図である。
【
図3】本発明のデバイスの光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイによる光の検出に対応する画素分布による2Dマップを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書において、本発明は、本発明の様々なデバイスおよび関連するシステムに関連する例として説明される。
【0042】
本発明のデバイスは、電離放射線への暴露下において放射線感受性フィルムを通じて送達された放射線量を測定することを可能にする。具体的には、デバイスは、特定の場所へ送達された放射線量をリアルタイムかつインサイチュに測定することを可能にする。デバイスは、外面に対向する内面を有する反射フィルムを備え、内面は、光を反射するように構成されている。
【0043】
反射フィルムの内面は、デバイスの内側に面する面に相当し、一方で反射フィルムの外面は、デバイスの外側に面する。内面は光を反射するように構成されるが、外面は、いかなる光もデバイスの内側にアクセスするのを防ぐ一方で電離放射線が反射フィルムを通過するのを可能にするように構成されることが好ましい。具体的には、光源によって放射された光線は、反射フィルムの内面に向けられて、デバイスの内側に反射される。そのような光線は、デバイスが使用されているときに均質かつ一定であることが好ましい。また、光は、反射フィルム上、放射線感受性フィルム上、さらには光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイ上でのその反射の後で焦点を合わせられることが好ましい。
【0044】
光源の数は、光源から光を受け取る放射線感受性フィルムのサイズおよび表面に直接依存することを、当業者は理解するであろう。放射線感受性フィルムのサイズおよび表面は、送達された放射線量を測定するために本発明のデバイスによって覆われるべき表面に依存する。
【0045】
反射フィルムの外側表面は、いかなる光も反射フィルムを通過するのを防ぐことが好ましい。また、反射フィルムは、反射フィルムを通過する電離放射線に変更を加えないこと、例えば、反射フィルムを通過するいずれの電離放射線も反射しないこと、減少させないこと、乱さないこと、または偏向させないことが、好ましい。
【0046】
少なくとも1つの光源から放射される光線は、反射フィルムの内面に向かって放射され、光源は、反射フィルムの内面と放射線感受性フィルムの第1の面との間には位置していない。したがって、光線は、反射フィルムに向かって放射される。
【0047】
光線は、反射後に放射線感受性フィルムを通過する。光線は、デバイスに衝突している放射線によって放射される電離放射線に従って変化している場合がある放射線感受性フィルムの構造的および/または光学的な特性に基づいて、放射線感受性フィルムを違うように通過することになる。典型的には、放射線感受性フィルムの厚さは100~300μmの厚さであるが、好ましい厚さは150μm未満であり、さらに好ましい厚さは、100μm以下である。
【0048】
いくつかの実施形態では、放射線感受性フィルムは、ラジオクロミックフィルムである。ラジオクロミックフィルムは、電離放射線に暴露されたときに色調を変える染料を含む少なくとも1つのアクティブ層を備える。例えば、放射線感受性フィルムは、例えば25μmの2枚の接着剤フィルムの間に挟まれた例えば25μmの透明ポリエステルを備えるGAFCHROMIC(商標)MD-55フィルムなどのラジオクロミックフィルムであり、透明ポリエステルおよび接着剤フィルムは、例えば16μmの2つのアクティブ層の間に挟まれており、また、透明ポリエステル、接着剤フィルム、およびアクティブ層は、さらに例えば67μmの2枚の透明ポリエステルフィルムの間に挟まれている。GAFCHROMIC(商標)MD-55フィルムは、25Gyにおける0.90の純密度、および、50Gyにおける1.75の純密度を有し、純密度は、吸収された放射線量に起因する密度の変化である。放射線感受性フィルムはまた、0.75μmの表面層と例えば約97μmの透明ポリエステルとの間に挟まれた例えば約6.5μmのアクティブ層を有するGAFCHROMIC(商標)HD-810などのラジオクロミックフィルムであってもよく、GAFCHROMIC(商標)MD-55フィルムは、100Gyにおける0.30の純密度および500Gyにおける1.15の純密度を有する。例えば125μmの2つの透明ポリエステルの間に挟まれた例えば約28μmのアクティブ層を備えるGAFCHROMIC(商標)EBT3フィルムが使用されてもよい。
【0049】
ラジオクロミックフィルムの最適放射線量範囲、およびラジオクロミックフィルムを通過することが期待される電離放射線の放射線量または放射線療法において処方される放射線量に従って、GAFCHROMIC(商標)DM-1260、GAFCHROMIC(商標)MD-55-2、GAFCHROMIC(商標)FWT-60などの他のラジオクロミックフィルムが使用されてもよい。
【0050】
具体的には、EBT、EBT-XD、EBT2、およびEBT3などのGAFCHROMIC(商標)EBTが使用される。GAFCHROMIC(商標)EBT3は、0.2~10Gyの放射線量範囲のために設計されており、かつ、黄色標識染料を含む約28μmのアクティブ層を備え、アクティブ層は、約125μmの2つの艶消しポリエステル基質の間に配置されており、艶消しポリエステル基質は、表面に埋め込まれたシリカ粒子を含む。GAFCHROMIC(商標)EBT2は、一方の側の約175μmの滑らかなポリエステル層と他方の側の約20μmのアクリル接着剤層との間に約28μmのアクティブ層を備える。アクリル接着剤層の反対側は、約50μmの艶消しポリエステル基質に面する。
【0051】
通過することが可能となる光線は、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを備える光学センサシステムによって受け取られるべきである。これらの1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイは、2D-放射線量マップを作り出すことを可能にする画素タイプの分布を有する。実際、各ユニットのサイズは、好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは700μm以下であり得る。光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットが小さければ小さいほど、放射線量マップはより正確になる。したがって、ユニットのそれぞれによって受け取られた光の強度に従って画素の2D-放射線量マップを決定することが可能であり、各画素は、電離放射線の送達放射線量に相当する受け取られた光強度と関連し得る。
【0052】
そのような1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイは、マルチアレイシステムと呼ばれ得る。そのようなシステムは、リソグラフィ技法を用いて特別あつらえのパターンを作り出すことを可能にする。そのような類いの材料および微細加工技法は、任意の所望の空間分解能を有する注文仕立ての微細構造を作り出すことを可能にする。さらに、半導体ユニットの半導体材料は、抵抗特性を変化させるために、したがって放射線感受性範囲を選択するために、ドープされ得る。例えば、マイクロ技術において典型的に使用されるシリコン半導体の場合、より薄い最終結果のために、シリコンオンインシュレータ(SOI)が使用され得る。デバイスのシリコンは、例えば、3.5kΩ・cmよりも大きな公称抵抗値と10±0.5μmおよび20±0.5μmの公称厚さとを有する、リンでドープされたn型(100)であり得る。ウェハは、所望のレイアウトでパターン化され得るだけでなく、各光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットに対応する明瞭な画素を拡散するまたは埋め込むことによって作り出され得る。
【0053】
例えば、輪状円筒形のエングレービングが、1つの「ユニットセル」の画素上で中心に作られ、続いて、基質のタイプに応じてドーパント型N+またはP+を用いて必要とされる抵抗範囲に従ってドープされ得る。これらの画素は、25~200μmのピッチにより多重アレイにおいて分散されて、数センチメートルの領域を覆うために横方向に並べられ得る。標準的な300μmウェハも同様の手順に従い得る。手順の終わりに、例えば本発明のデバイスが皮膚に付着されたときに患者体内での電離放射線の散乱を回避するのに十分な薄さである膜様のデバイスを得るために、化学エッチングまたは反応性イオンプロセスを通じて基質の薄化プロセスが行われ得る。半導体は、とりわけ、Si、Ge、SiC、CdTe、CdS、CdZnTe、GaAs、B4Cであってもよい。
【0054】
例えばシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェハといった半導体ウェハを備える半導体ユニットを使用する場合、SOIの支持ウェハは、2~50μmの厚さのものである半導体ユニットの層を有するために、除去され得る。
【0055】
典型的には剛体である支持ウェハの除去がなくとも、半導体ユニットが十分に小さいかまたは十分に小さなピースに分離もしくはダイスカットされる場合、半導体ユニットは、デバイスのいかなる屈曲にも、またこの場合は光学センサシステムの屈曲にも従うように、光学センサシステムの支持層に組み込まれ得る。
【0056】
例えば、光導電セルユニットまたは半導体ユニットの2Dアレイは、0.2ミリメートル~20センチメートルに及ぶサイズのユニットを備え得る。市販されている光ダイオードなどの光学センサシステムの半導体ユニットが使用され得るが、他の光ダイオードも集められる場合がある。例えば、CdSe、CdS、CdTe、InSb、InP、PbS、PbSe、Ge、Is、GaAs、などのような光ダイオードの半導体が、マスクを用いてパターンを作り出すために、および、空間分解能を最大限に高めて任意の領域を覆うために、使用され得る。CdSなどの高抵抗の半導体が好ましいが、他の何らかの半導体が、高抵抗を得るためにドープされてもよい。
【0057】
デバイスは、使用される前に較正されることが好ましい。較正に関しては、放射線感受性フィルムが任意の電離放射線を受け取る前に参照光または基礎値が光学センサシステムによって受け取られて確立されることを意味する。光が、それまで電離放射線を受け取っていない放射線感受性フィルムを通過した後で光学センサシステムの第1の面に反射するように、少なくとも1つの光源から反射フィルムに向かって放射される。そのような参照光または基礎値は、光学センサシステムによって受け取られた光の特有の値に基づいて送達放射線量を判定するのではなく、電離放射線による放射線感受性フィルムの照射の前後での放射線感受性フィルムを通過する光の差に基づいて送達放射線量を判定することを可能にする。そのような較正はまた、光学センサシステムによって受け取られる参照光が原判定の代わりに相対的判定を可能にするので、デバイスの任意の要素の何らかの欠陥を考慮に入れることを可能にする。
【0058】
デバイスの較正中、少なくとも1つの光源によって放射される光は、反射フィルムによるその光の反射および放射線感受性フィルムのその光の通過後に光学センサシステムによって受け取られることになる光の唯一の源であり続けることが、特に重要である。
【0059】
本発明のデバイスは、古典的な知られたラジオクロミックフィルムに限定されるものではない。実際、照射されたフィルムの色調変化はまた、より低いまたはより高い密度の電離放射線においてではあるが、他のポリマーにわたってもたらされ得る。これは、それらの材料の構造的および光学的な特性を変える、照射後の不可避な化学反応に起因するものである。照射は、ポリマーをベースとする材料内へ一次および二次のラジカルを作り出し、それが、C-C結合変換、二重結合、および交差結合を引き起こす(非特許文献3、4)。それらの影響は、ポリマーの光学的特性に変更を加え、かつ、放射線のタイプに依存する。
【0060】
同様に、送達放射線量のインサイチュかつリアルタイムの測定を可能にする本発明のデバイスによれば、ポリマーおよび材料のどちらも、恒久的なまたはアニール処理可能な色中心をラジオクロミックフィルムにおいて作り出すことができる電離放射線に従って選択される。
【0061】
放射線療法では、デバイスは、治療されるべき患者身体と電離放射線を放射する放射線発生デバイスとの間に設置され得る。放射線発生デバイスによって放射された電離放射線は、放射線感受性フィルムに影響を及ぼし、放射線感受性フィルムは、放射線感受性フィルムを通過する少なくとも1つの光源によって放射される光線の伝達を、そのような光線が反射フィルム上に反射した後で変更する。放射線発生デバイスによる電離放射線の放射後に放射線感受性フィルムを通過するであろう光の量は、放射前に放射線感受性フィルムを通過するであろう光の量とは異なるべきである。量に加えて、本発明のデバイスは、放射線感受性フィルムが照射された1つまたは複数の場所を判定すること、および、それらの1つまたは複数の場所における送達された放射線量を判定することを、特に可能にする。
【0062】
特定の実施形態では、デバイスは、内面および接着剤面を含む接着剤層を備え得る。内面は、デバイスに固定され、一方で、接着剤面は、電離放射線が測定されるべき任意の場所に設置される。そのような接着剤層は、任意の手段をさらに用いてデバイスを維持することが必要とされないような方法でデバイスを特定の場所に設置することを可能にする。例えば、接着剤層は、その内面により、光学センサシステムの外面14b上に少なくとも部分的に固定され得る。接着剤層はまた、その内面により、読出し集積回路ユニット上に少なくとも部分的に固定されてもよい。接着剤層は、その内面により、デバイスを封入しているポリマーに固定されてもよい。接着剤層を備えるそのようなデバイスは、パッチと見なされ得る。
【0063】
本発明の任意の実施形態において、本発明のデバイスは、放射線感受性フィルムを交換するために放射線感受性フィルムへのアクセスを提供する開口部を備える。この開口部は、放射線感受性フィルムを交換するだけでデバイスを再利用することを可能にする。デバイスがポリマーに封入されている実施形態では、ポリマーは、放射線感受性フィルムを交換することまたはポリマーをデバイスの残りの部分から分離することを可能にする開口部を備える。
【0064】
あるいは、デバイスは、任意の創傷ケア製品または任意の既存のパッチに組み込まれ得る。
【0065】
特定の実施形態では、デバイスは、ポータブルデバイスであり得る。そのようなデバイスは、腕輪または任意の他のポータブルデバイスに組み込まれ得る。
【0066】
放射線感受性フィルムと光学センサシステムとの間には空間が存在しないことが好ましい。
【0067】
図1は、本発明のデバイスであって、外面11bに対向する内面11aを有する反射フィルム11であり、内面が光を反射するように構成されている、反射フィルム11と、反射フィルムの内面11aに向かって少なくとも1つの光線を放射するように配置された2つの光源12と、反射フィルムの内面11aに面する第1の面13aおよび反対側の第2の面13bを有する放射線感受性フィルム13と、放射線感受性フィルム13の第2の面13bに面しかつ反射フィルム11の内面11aから反射した後の少なくとも1つの光源12からの光線を受け取るように構成された第1の面14aを有する光学センサシステム14であり、第1の面14aに対向する第2の面14bを有する、光学センサシステムと、を備えるデバイスを表す。光学センサシステム14の第1の面14aは、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットの2Dアレイを備え、1つまたは複数の光導電セルユニットおよび/もしくは半導体ユニットは、支持層に固定されている。反射フィルム11、放射線感受性フィルム13、ならびに光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイは、基本的に平行であり、2つの光源12は、反射フィルム11の内面11aと放射線感受性フィルム13の第1の面13aとの間に位置していない。
【0068】
図2は、本発明のデバイス10を備える本発明のシステム20を表す。システム20は、第1の接続21を介してデバイス10の光学センサシステム14に接続された読出し集積回路ユニット22と、第2の接続23を介して読出し集積回路22に接続された処理ユニット24と、を備える。
【0069】
第1の接続21は、光導電セルおよび/または半導体検出器ユニットと読出し回路との間の任意の知られたタイプの接続であり得る。第2の接続23は、各光導電セルおよび/または半導体検出器ユニットから得られた電気信号を伝達することが可能な任意の知られた有線接続または任意の知られた無線接続であり得る。
【0070】
処理ユニット24は、読出し回路22からの電気信号などの任意の情報を受信することができ、また、そのような情報を変換、解釈、計算、または表示することによりそのような情報を管理することができる、任意の要素であり得る。処理ユニット24は、コンピュータ、遠隔制御システム、携帯電話、または任意の類似の電子デバイスに相当し得る。そのような処理ユニットは、標準的な有線接続、無線接続、またはブルートゥース(登録商標)接続を用いてインストールされるアプリケーションもしくはソフトウェアを備え得る。
【0071】
本発明の放射線療法への適用の場合、情報の伝達は、そのような情報が医学的個人データに関連するのであれば、機密性であり得る。そのような状況では、本発明のデバイスによって得られた情報を伝達するための適切な手段は、個人データの保護に関するEU規制(EU2016/679、GDPR)または任意の他の国家規制などの規制に従って使用されるべきである。
【0072】
読出し集積回路22と処理ユニット24との間の第2の接続23は、処理ユニット24と通信する少なくとも1つのマイクロアンテナを含み得る。第2の接続23は、無線接続でありかつ例えばブルートゥース(登録商標)またはWifi接続に相当することが、好ましい。また、読出し集積回路22と処理ユニット24との間の第2の接続は、RFIDタグを含み得る。
【0073】
システムは、患者身体に付着されたデバイス10からの出力信号を外部の放射線療法制御室に送信するための統合されたマイクロアンテナを含み得る。複数の無線周波数アンテナが、本発明のデバイスまたはシステムとともに組み立てられて、各2Dアレイ画素における蓄積線量をリアルタイムで即時に伝達してもよい。
【0074】
RFIDタグを使用する場合、本発明のシステム20は、例えばデバイスが照射されたときにアンテナと無線通信することができるデバイスである固定RFID読取り機に通し番号を伝達することができる。各RFIDタグは、ユーザまたは患者に関連付けられる識別番号を有し得る。同様に、個人データの保護に関するEU規制(EU2016/679、GDPR)または任意の他の国家規制が適用されるべきときにはそのような規制などの規制に従って臨床医が放射線治療中に制御室からの情報を収集することを可能にするために、遠方界通信(FFC)システムが使用されてもよい。無線読出し回路ユニットが、デジタル出力において電圧を伝達してもよい。処理ユニットによって受信されると、その電圧を蓄積線量に変換するために、各放射線感受性フィルムバッチに従って含まれた較正曲線が使用され得る。
【0075】
図3は、本発明のデバイスの光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイによる光の検出に対応する10×10画素の画素分布による2Dマップ30を表す。
図3の2Dマップは、処理ユニットによりユーザに伝達されるグラフィカルユーザインターフェースに相当し得る。そのような2D放射線量マップは、電離放射線の送達放射線量に関連する異なる光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットによって受け取られた光の強度を異なる色調または異なるグレーの色合で示す。
図3は、一例に相当するものであり、10×10画素の分布に限定されない多くの異なる画素分布が使用され得る。逆に、本発明のデバイスによって覆われるべき表面に応じて、特定のパターンに従う画素分布が、特定の用途のために使用され得る。画素の数が多いほど、送達放射線量に関するより詳細な情報が提供され得る。
【0076】
図3の2Dマップによれば、画素4は空白であり、参照光または基礎値に等しい強度を有する光を受け取った画素に相当し、したがって、光が放射線感受性フィルムを通過するのを妨げない放射線感受性フィルムの領域に対応する画素に相当する。したがって、放射線感受性フィルムのそのような領域は、電離放射線によって変更を加えられていない。そのような画素4から、電離放射線がそのような領域を通過していないこと、および、この領域による送達放射線量は無視できることが、判断され得る。
【0077】
図3の2Dマップによれば、画素3はライトグレーであり、参照光または基礎値をわずかに下回る強度の光を受け取った画素に相当し、したがって、光が放射線感受性フィルムを通過するのをわずかに妨げた放射線感受性フィルムの領域に対応する画素に相当する。したがって、放射線感受性フィルムのそのような領域は、電離放射線によってほんのわずかに変更を加えられている。そのような画素3から、第1の量の電離放射線がそのような領域を通過したこと、および、この領域による送達放射線量が画素4の領域における送達放射線量よりも多いことが、判断され得る。例えば、本発明に対する制限ではないが、画素3による送達された放射線量は、0.1Gyであり得る。
【0078】
図3の2Dマップによれば、画素2および画素1は、グレーおよびダークグレーであり、参照光または基礎値を下回る強度を有する光を受け取った画素に相当し、したがって、光が放射線感受性フィルムを通過するのを妨げた放射線感受性フィルムの領域に対応する画素に相当する。したがって、放射線感受性フィルムのそのような領域は、電離放射線によって変更を加えられている。そのような画素2および画素1から、第2および第3の量の電離放射線がそのような領域を通過したこと、ならびに、それらの領域による送達放射線量が画素3および画素4の領域における送達放射線量よりも多いことが、判断され得る。例えば、本発明に対する制限ではないが、画素2による送達された放射線量は、0.2Gyであり得、画素1による送達された放射線量は、1Gyであり得る。画素間の他の放射線量の勾配が使用されてもよい。
【0079】
本発明はまた、視覚的な線量測定指標による2D放射線量マップをもたらす光導電セルユニットおよび/または半導体ユニットの2Dアレイのすべての電圧のデータをFFCにより取得しかつ記憶する、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)に関する。光導電セルの電圧は、2つの連続したステップ、すなわち照射前(Vi)および照射後(Vf)において記録され得る。Viは、光導電セルもしくは半導体ユニットに対応する各画素または領域のための参照または基礎値に相当する。Vf-Viは、各画素または領域に対する光導電セルまたは半導体ユニットにおける電圧の最終的な変動を、対応する較正曲線を用いて示し、結果は、使い勝手の良いGUIにおいてプロットされる。
【0080】
本発明のデバイスおよびシステムは、電離放射線の監視によって関連付けられる様々な技術分野における用途を有し得る。したがって、そのようなデバイスおよびシステムは、放射線療法、または放射線防護などの核応用において使用され得る。しかし、これらのデバイスは、任意の環境において電離放射線を監視するために、日常生活のデバイスとしても使用され得る。
【0081】
本発明のデバイスまたはシステムは、小型化され、身につけることができ、低コストであり、かつ、ヒトの皮膚上に設置され得る。本発明のデバイスまたはシステムは、市販のgafchromic(商標)フィルムまたは放射線暴露のためにこの用途用に製造された任意の他の放射線感受性フィルムを使用して比色分析化学試薬とともに皮膚パッチされるものであってもよい。そのようなデバイスおよびシステムは、特定の暴露に従う皮膚上でのリアルタイムの送達放射線量に関する情報をユーザに提供することを可能にする。本発明のデバイスおよびシステムは、使い捨てであり得る。
【0082】
本発明のデバイスおよびシステムは、例えば放射線療法中の患者といった特定の場所に送達される放射線量をリアルタイムかつインサイチュに測定することを可能にするデバイスの要求を満たすことを可能にするが、従来の検出システムは、放射線感受性フィルムを走査することにより送達放射線量を測定するために、遅延を必要とする。
【0083】
上記の例は、本発明の実施形態の例示として挙げられたものである。それらの例は、決して本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0084】
1 画素
2 画素
3 画素
4 画素
10 デバイス
11 反射フィルム
11a 内面
11b 外面
12 光源
13 放射線感受性フィルム
13a 第1の面
13b 第2の面
14 光学センサシステム
14a 第1の面
14b 外面、第2の面
20 システム
21 第1の接続
23 第2の接続
24 処理ユニット
30 2Dマップ
【国際調査報告】