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特表2024-509977加圧ガス、特に水素を収容するためのタンクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】加圧ガス、特に水素を収容するためのタンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
F17C1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555830
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2022055957
(87)【国際公開番号】W WO2022189470
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2102315
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523347132
【氏名又は名称】フォルシア・システム・デシャプモン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルク・モレ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・ドゥ・ブリュー
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB02
3E172BC01
3E172BC04
3E172BD03
3E172BD10
3E172DA38
3E172EA02
3E172EB02
(57)【要約】
本発明は、タンクの内部空洞内に加圧ガスを貯蔵するための、連続繊維強化材と、角柱形状と、厚さeとを有する複合タンクの製造方法であって、当該タンクが、内部空洞を通って当該タンクの2つの非隣接面の間に延在する繊維を含む、製造方法に関する。本方法は、(i)厚さeを有し、厚さ全体にわたって三次元連続補強材を含む角柱形状繊維プリフォームを得る工程(720)と、(ii)角柱の全ての面にわたって延在する複合外側シェルを構成するように、厚さeの1/4未満の厚さにわたって当該プリフォームの外側層にポリマーを含浸させる工程(760)と、(iii)外側シェルとタンクの空洞内に収容された繊維網との間の厚さeの1/10未満である厚さを有する、内側ライニングを構成する封止層を形成する工程(790)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの内部空洞内に加圧ガスを貯蔵するための、連続繊維強化材と、角柱形状と、厚さeとを有する複合タンク(100、201、202、301、302)の製造方法であって、前記タンクは、前記内部空洞(490、590)を通って前記タンクの2つの非隣接面間に延在する繊維(404、504、804)を含み、前記製造方法は、
i.その厚さ全体にわたって連続的な三次元強化材を含む、厚さeの角柱形状繊維プリフォームを得る工程(620、720)と、
ii.前記角柱の全ての面にわたって延在する複合外側シェルを構成するように、前記厚さeの1/4未満の厚さ(471、571)にわたって前記プリフォームの外側層(410、510)にポリマーを含浸させる工程(640、760)と、
iii.前記外側シェルと前記タンクの前記空洞内に収容された前記繊維網との間の前記厚さeの1/10未満である厚さ(472、572)を有する、内側ライニングを構成する封止層(420、520)を形成する工程(610、790)とを含む製造方法。
【請求項2】
工程iii)が、工程i)の前に、
iii.プラスチック注入方法によって前記内側ライニングを構成するシェルを得る工程(610)を含み、
工程i)が、
i.a前記内側ライニング(420)を構成する前記シェルの外面上に前記繊維プライ(611、612)をドレーピング(620)する工程と、
i.b工程i.a)で堆積された前記繊維プライ及び工程iii.a)で得られた内側ライニングを通って前記プリフォームの2つの非隣接面の間にステッチング(630)によって繊維を挿入する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iii.a)で得られた前記内側ライニングが、その非隣接面のうちの2つの間に延在する中空スペーサ(691)を含み、工程i.b)のステッチングによって挿入された前記繊維(404)が前記スペーサの内部を通過する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程ii)が、工程i)の後に、
ii.工程i)で得られた前記プリフォームを密封された筐体内に詰める工程と、
ii.b前記プリフォームを含む前記筐体内に真空を生成する工程と、
ii.c.前記プリフォームを含む前記筐体に液体(731)を充填する工程(730)と、
ii.d前記液体で浸漬された前記プリフォームを凍結する工程(740)と、
ii.e前記プリフォームの外側層を凍結乾燥する工程(750)と、
ii.f前記外側シェルを構成するように、前記外側層にポリマーを含浸させる工程(760)と、
ii.g前記プリフォームから残りの液体を排出する工程(780)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程ii.c)で導入される前記液体(731)が、水である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii.c)で導入される前記液体(731)が、ゾル-ゲルである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記外側シェルを含浸する工程ii)の前又は後に、前記外側シェル(410、510)を貫通し、前記プリフォームの内部と外部とを流体連通させることができる継手(130、140、150)を前記プリフォームに組み込む工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液体が水であり、前記継手が、前記プリフォームから水を排出する工程ii.g)で使用され、及び前記方法は、前記工程iii)中に、いったん前記水が排出されると、
iii.b前記内部空洞内の前記繊維網を固化させる工程(790)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程iii.b)が、前記内側ライニング(520、820)を構成するように、前記プリフォームの内側で前記継手(130)を通じてポリマーを噴霧することと、前記空洞内で前記繊維網を固化させることとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程iii.b)が、前記内部空洞へのゾル-ゲルの注入、及び前記ゾル-ゲルの液相の蒸発による前記空洞内での前記繊維網の固化を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
液体がゾル-ゲルであり、前記継手が、工程ii.g)中に使用されて、前記プリフォームの内部の前記ゾル-ゲルの液相を蒸発させ、前記工程iii)が、前記ゾル-ゲルの重合によって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
工程iii)の後に、
iv.フィラメントワインディングによって前記タンクを取り囲む保持ストリップ(160)を作成する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積が低減された加圧ガスを収容することができるタンクの製造方法に関し、より詳細には、限定するものではないが、角柱形状プレートの形態のタンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送可能なタンク内の加圧ガスの貯蔵は、一般に、金属又は複合材料製の円筒形又は球形のタンク内で行われる。
【0003】
その低密度のために、水素ガスは、比較的高い圧力、一般に200バール~700バール(2×10~7×10Pa)で貯蔵される。
【0004】
従来技術のこの種のタンクは、その形状及び容積により、車両に組み込むことが困難であり、この組み込みは一般に、上記車両の客室を犠牲にして行われる。
【0005】
米国特許第8,651,268号明細書に記載されているような角柱形状のタンクは、車両に組み込むのがより容易である。しかしながら、従来技術のこの文献に記載されているタンクは、5cm~500cmの範囲内の小容量を意図しており、特にエネルギーベクトルとして、水素製造現場での移動又は貯蔵の分野におけるほとんどの用途に適していない。
この目的のために、本発明者らは、同時係属出願第FR2102314号に記載されているタンクを設計しており、そのタンクは、角柱形状であり、連続繊維によって強化された複合材料で作製され、角柱の全ての面を覆い、ガスを貯蔵するための内部空洞を画定する外部シェルを備え、そのタンクは、タンクの2つの非隣接面の間で内部空洞の内側に延びる強化繊維を備える。
【0006】
したがって、タンク内部の繊維強化材は、タンクの強度に関与し、内圧によって生じる応力に対して外側シェル内の応力をより良好に分散させることができるだけでなく、外部応力に対するパネルの構造品質をタンクに付与することも可能にし、その角柱形状と組み合わせて、車両又は航空機の構造へのタンクの一体化を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,651,268号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タンクの内部空洞内に加圧ガスを貯蔵するための、連続繊維強化材と、角柱形状と、厚さeとを有する複合タンクの製造方法であって、タンクが、内部空洞を通って当該タンクの2つの非隣接面間に延在する繊維を含む、製造方法に関し、当該製造方法は、
i.その厚さ全体にわたって連続的な三次元強化材を含む、厚さeの角柱形状繊維プリフォームを得る工程と、
ii.角柱の全ての面にわたって延在する複合外側シェルを構成するように、厚さeの1/4未満の厚さにわたって当該プリフォームの外側層にポリマーを含浸させる工程と、
iii.外側シェルとタンクの空洞内に収容された繊維網との間の厚さeの1/10未満である厚さを有する、内側ライニングを構成する封止層を形成する工程と、を含む。
【0009】
本発明は、以下に開示される実施形態及び変形例に従って実施され、これらは個別に、又は任意の有効な組合せに従って考慮されるべきである。
【0010】
上記で示された工程の番号付けは、工程を実行する時系列順を規定するものではなく、この順序は、以下で説明される実施形態によって、又はこれらの実施形態の変形例によっても異なる。同じことが、これらの工程がそれらの実施のための中間工程を含む場合にも当てはまり、この場合、特定の中間工程は、他の主工程又は主工程の他の中間工程、あるいはこれらの他の工程の任意の中間工程の前、後、又は同時に実行することができるか、又は実行される。
【0011】
以下の説明は、実施形態がいつ必須であるかを特定する。
【0012】
特に指定されない限り、本文全体を通して、接続詞「又は」は、包括的であり、「及び/又は」と同等であると理解されるべきである。
【0013】
第1の実施形態によれば、本発明による方法の工程iii)は、工程i)の前に、
iii.プラスチック注入方法によって内側シェルを構成するシェルを得る工程を含み、
工程i)は、
i.a封止ライニングを構成するシェルの外面上に繊維プライドレーピングする工程と、
i.b工程i.a)で堆積された繊維プライ及び工程iii.a)で得られた内側シェルを通ってプリフォームの2つの非隣接面の間にステッチングによって繊維を挿入する工程とを含む。
【0014】
この実施形態は、大量生産に特に適している。
【0015】
本実施形態によれば、工程iii.a)で得られた内側シェルは、その非隣接面のうちの2つの間に延在する中空スペーサを含み、工程i.b)のステッチングによって挿入された繊維は、スペーサ内を通過する。
【0016】
本発明による方法の第2の実施形態によれば、工程ii)は、工程i)の後に、
ii.工程i)で得られたプリフォームを密封された筐体内に詰める工程と、
ii.bプリフォームを含む筐体内に真空を生成する工程と、
ii.c.プリフォームを含む筐体に液体を充填する工程と、
ii.d液体で浸漬されたプリフォームを凍結する工程と、
ii.eプリフォームの外側層を凍結乾燥する工程と、
ii.f外側シェルを構成するように、外側層にポリマーを含浸させる工程と、
ii.gプリフォームから残りの液体を排出する工程とを含む。
【0017】
本実施形態は、液体の存在によって、工程ii)中にポリマーを含浸させることを可能にし、外側層のみが後の外側シェルを構成する。特別に機械加工された工具を必要としないので、本実施形態は個別製造又は特注製造により適している。
【0018】
代替実施形態によれば、工程ii.c)で導入される液体は、水又はゾル-ゲルである。
【0019】
有利には、本発明による方法は、外側シェルを含浸する工程ii)の前又は後に、外側シェルを貫通し、プリフォームの内部と外部とを流体連通させることができる継手をプリフォームに組み込む工程を含む。
【0020】
この継手は、有利には、しかし必須ではないが、ガスタンクを充填し、当該タンクからガスを抽出するための完成部品において使用されるが、本発明の主題である製造方法中にも使用される。
【0021】
よって、工程ii.c)中に導入される液体が水であるとき、継手が、プリフォームから水を排出する工程ii.g)で使用され、及び本方法は、工程iii)中に、いったん水が排出されると、
iii.b内部空洞内の繊維網を固化させる工程を含む。
【0022】
一変形例によれば、工程iii.b)は、内側ライニングを構成し、当該空洞内の繊維網を強化するように、プリフォームの内部の継手を通ってポリマーを噴霧する工程を含む。
【0023】
別の変形例によれば、工程iii.b)は、内部空洞へのゾル-ゲルの注入と、ゾル-ゲルの液相の蒸発による当該空洞内での繊維網の固化とを含む。
【0024】
工程ii.c)中に導入される液体がゾル-ゲルである場合、継手が、工程ii.g)中に使用されて、プリフォームの内部のゾル-ゲルの液相を蒸発させ、工程iii)は、ゾル-ゲルの重合によって行われる。
【0025】
有利には、本発明による方法は、工程iii)の後に、
iv.フィラメントワインディングによってタンクを取り囲む保持ストリップを作成する工程を含む。
本発明は、図1図12を参照して、限定的ではない好ましい実施形態に従って以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるタンクの一実施形態の斜視上面図である。
図2】本発明によるタンクの自動車フレームへの例示的な組み込みを示す斜視図である。
図3】本発明によるタンクの航空機の床への例示的な見込みを示す斜視図である。
図4】本発明によるタンクの構造の第1の実施形態の図1のDDに沿って画定された断面図である。
図5】別の実施形態によるタンクの内部構造の図1のDDに沿って画定された概略断面図である。
図6】本発明による方法の第1の実施形態のブロック図である。
図7】本発明による方法の第2の実施形態のブロック図である。
図8】第2の実施形態による本発明の方法のドレーピング工程の変形例を示す。
図9】本発明による方法を実施するためのツールの一例の概略断面図である。
図10】継手の例示的な組み込みの、図1のAAに沿って画定された部分断面図であり、当該継手の切断詳細図を含む。
図11】本発明の方法による継手の組み込みの別の例を示す、図1のBBに沿って画定された部分断面図である。
図12】本発明の方法による継手の第3の組み込みの、図1のCCに沿って画定された部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の一実施形態によれば、本発明による方法によって得られるタンク(100)は、矩形の基部を有する略角柱形状であり、最大1000バール(10Pa)までの範囲であり得る圧力で、加圧ガス、特に水素を収容するように適合される。
【0028】
当該タンクは、任意選択的に、任意の手段によって、特にボルト締めによって、任意の構造体、特に車両の構造体に取り付けられ得るフランジ(110)を備える。当該フランジは、有利には、タンクの製造中に複合シェルに組み込まれ、上記シェルと同じ部品で作られる。
【0029】
タンク(100)は、それが収容するガスの充填及び抽出を可能にする継手(130、140、150)を備える。
【0030】
図1は、同じタンク上の継手の3つの例示的な実施形態を示し、当業者であれば、同じタンク上の複数の継手の可能性を排除することなく、これらの実施形態のいずれにおいても1つのみの継手が必要であることを理解するであろう。
【0031】
一実施形態によれば、タンク(100)は、一方では継手を保持し、他方ではタンクが使用中に受ける内圧及び外部応力の両方に対するタンクの耐性を向上させるように意図された1つ以上の補強ストリップ(160)を備える。
【0032】
図2及び図3の例示的な使用によれば、本発明のタンク(201、202、301、302)は、構造内の床要素として、例えば、燃料電池を有する電気自動車のシャーシ(200)内に、又は航空機(300)の構造の乗客床若しくは貨物床内に一体化される。
【0033】
実施形態にかかわらず、タンクは、繊維強化材と連続ポリマーマトリックスの複合材料で作られた外側シェルと、外側シェルの内面によって画定された封止内部空洞とを備え、内部空洞は、外側シェルの面の間に延在する強化材によって画定された複数の開放セルを備える。したがって、容器としての役割に加えて、タンクの空洞は、内圧に対するタンクの強度及び外部応力に対するタンクの抵抗の両方に関して構造的役割を有する。
【0034】
本発明による方法は、異なる実施形態によって、外側シェル及びセル状空洞を作成することを目的とする。
【0035】
図4の第1の実施形態によれば、本発明によるタンクは、内側シェル(420)を備え、内側シェルは、当該内側シェルの2つの面の間に延在し、これら2つの面の表面全体にわたって分散された複数の中空スペーサ(491)を備える。
【0036】
当該中空スペーサ(491)は任意の形状であるが、当該内側シェル(420)の内部容積の区画を密封しないように不連続である。同様に、当該スペーサは、それらが間に延在する壁に対して必ずしも垂直である必要はない。
【0037】
この実施形態によれば、開放セルは、当該スペーサによって内部空洞内で画定される。
【0038】
本実施形態によれば、管状スペーサ(491)は円筒形であり、内側シェルの壁と同じ部分から作られ、それらの内腔(492)は上記壁を貫通する。
【0039】
内側シェル(420)は、ガスを収容することができる封止内部空洞(490)を画定する。当該内側シェルは、例示的な実施形態によれば、高密度ポリエチレン又はポリアミドPA6で作製される。
【0040】
外側シェル(410)は、炭素、ガラス、アラミド繊維、又はこれらの任意の組合せの40%~65%の繊維含有量で、複数の強化方向に繊維プライのスタックを含む、連続ポリマー及び繊維強化マトリックスを有する複合材料から作製されるが、これらの例は限定するものではない。
【0041】
繊維(404)は、外側シェル(410)内及びその面の間に延在し、タンクの内部空洞(490)を通過して中空スペーサ(491)の内腔(492)に入る。これらの繊維(404)は、中空スペーサの内腔(492)を充填する外側シェルのマトリックスを構成する熱硬化性又は熱可塑性のポリマーで含浸される。
【0042】
したがって、中空スペーサ(491)は、横方向補強材を構成する繊維(404)を含み、内部空洞(490)内の圧力によって引っ張られ、タンクの強度及び抵抗に関与する。中空スペーサはまた、タンクによって形成される複合プレートの剛性及び曲げ強度に寄与する補強材を構成する。
【0043】
図5では、第2の実施形態によれば、タンクは、意図された用途に応じて、機械的強度、並びに圧力、衝撃、及び凹みに対する耐性のタンク特性を付与するように、炭素、ガラス、アラミドの単独又は任意の組合せの繊維プライの三次元ネットワークの形態である。
【0044】
タンクは、外部シェル(510)を備え、繊維は、熱可塑性又は熱硬化性のポリマーマトリックス内に捕捉され、したがって、連続繊維強化材を有する複合シェルを構成する。このシェル(510)は、角柱の6つの面にわたって延在し、その内面に封止ライニング(520)を備える。
【0045】
この封止ライニング(520)は、ガス、特に二水素が圧力下で収容され得る内部空洞(590)を画定する。
【0046】
角柱の面のうちの1面上の外側シェル内に収容され、そこでマトリックス内に捕捉される繊維(501、502、503、504)は、シェルの別の面まで延在し、そこでまたポリマーマトリックス内に捕捉され、タンクの内部空洞(590)を通過する。内部空洞内の繊維含有量は、シェル内の繊維含有量と比較して大幅に低減される。したがって、内部空洞内の繊維又は繊維のセットは、この空洞内の開放セルの範囲を定める。
【0047】
実施形態にかかわらず、タンクは、好ましくは角柱の最大辺の1/10以下の厚さeを有する角柱形状プレートの形態である。
【0048】
外側シェル(410、510)の厚さ(471、571)は、タンク内に収容されるガスの圧力と、タンクが組み込まれる構造内でタンクが受ける応力と、繊維の性質及び含有量と、ポリマーの性質との関数である。この厚さは、典型的には厚さeの1/4未満、好ましくはタンクの厚さeの1/10未満であり、引用されたデータに従って計算により決定される。
【0049】
内側ライニング420、520の厚さは、典型的には、厚さeの1/10未満、好ましくは厚さeの1/30未満である。
【0050】
図6は、図4に示されたタンクのバージョンに適合される、本発明による方法の第1の実施形態によるものである。
【0051】
第1の工程(610)は、タンクの内側シェルを構成するシェルを得ることからなる。
【0052】
一実施形態によれば、この工程は、プラスチック注入方法を実行する。
【0053】
第1の変形例によれば、本方法は、2つのハーフシェル(621、622)を得ることからなり、各ハーフシェルは、中空ハーフスペーサ(691)を備え、ハーフスペーサの内腔(692)は、ハーフシェルが取り付けられるそれぞれのハーフシェルの壁を貫通する。
【0054】
次いで、ハーフシェルは、タンクの内側シェルを構成するように、例えば密封溶接によって組み付けられる。
【0055】
別の代替案(図示せず)によれば、内側シェルを得ることは、注入/膨張方法を実施する。
【0056】
非限定的な例として、内側シェルは、高密度ポリエチレン又はポリアミド(PA6)で作製される。
【0057】
図6は、スペーサ(691)が円筒状である特定の例を示しているが、当業者であれば、多種多様な形状をとることができることを理解するであろう。
【0058】
ドレーピング工程(620)では、連続繊維(611、612)が、先行する工程(610)で得られた内側シェル(420)の外面上に堆積される。例示的な実施形態によれば、この工程は、手動又は自動ドレーピングによって、コアとして使用されている内側シェルをオーバーブレーディングすることによって、又は当該内側シェル(625)を3D編みで得られた1つ以上のスリーブに通すことによって、又は当該内側シェル(420)の周りのフィラメントワインディング技法によって実施される。
【0059】
ドレーピング工程中に堆積される繊維(611、612)は、本発明の主題であるタンクの後の外側シェルの連続補強材の大部分を構成する。
【0060】
外側シェルを構成することが意図される複合材料の性質及び堆積方法に応じて、ドレーピング工程(620)中に堆積される繊維(611、612)は、乾燥繊維、粉末化、フィルム化、又はアンダーキャスティングによって熱硬化性又は熱可塑性ポリマーで事前に含浸された繊維である。
【0061】
ステッチング工程(630)中、繊維は、ステッチ線(604)に沿って、ドレーピング工程(620)後に得られるプリフォームにステッチされる。有利には、このようにステッチされた繊維は、スペーサの内腔を通過し、プリフォームの厚さ全体を通過して、タンクの後の横方向補強材を構成する。
【0062】
したがって、ステッチングによってプリフォーム内に挿入された繊維(604)は、スペーサの内腔内の、それらが接続するタンクの壁に対して実質的に垂直な後の空洞内だけでなく、これらの壁に対して実質的に平行なタンクの壁の厚さ内にも延在する。
【0063】
含浸及び固化工程(640)中、外側シェルを形成する繊維スタックは、ポリマーで含浸され、固化されて、外側シェル及び横方向補強材の両方に繊維補強材を有する複合材料を得る。
【0064】
繊維及びマトリックスを構成するポリマーの性質に応じて、含浸及び固化工程(640)は、乾燥繊維及び熱硬化性マトリックスの場合には既知の方法に従って樹脂を注入又は導入することによって得られ、この注入の後に焼成が行われるか、又は繊維が熱硬化性若しくは熱可塑性ポリマーで含浸される場合には溶融-架橋若しくは溶融-固化が行われるか、又は特に外側シェルがいくつかのポリマー、例えば衝撃強度を改善するために外側層上に熱可塑性ポリマーマトリックスを含む場合には、これらの様々なプロセスの組合せが行われる。
【0065】
これらの含浸-固化方法は、従来技術から知られており、上記では説明しない。それらは、真空下又は加圧下で、オートクレーブ中又は独立した装置において実施される。
【0066】
以下に説明する他の実施形態と比較して、この第1の実施形態は、大量生産の実施形態により適している。射出溶接又は射出吹き付けによって内側シェルを製造するための動作、乾燥繊維からの3D編み又はオーバーブレーディングによる繊維スリーブの製造、又は熱可塑性ポリマーを含浸させた繊維スリーブの製造、及び最後に含浸-固化動作は、対応する特定の手段を実装する離れた製造現場で行うことができる。
【0067】
図7では、別の実施形態によれば、測定又はユニットの製造により適しているが、限定するものではないが、ドレーピング工程(710)中に実質的に角柱形状の乾燥プリフォームが得られる。
【0068】
本実施形態は、図5に示されるタンクの実施形態に対応する。
【0069】
この場合、以下に開示される代替実施形態によれば、一般的な原理は、得られた繊維プリフォームに液体を充填し、この液体によって、外側シェルを構成するための含浸ゾーンを制御することからなる。
【0070】
例示的な一実施形態によれば、ドレーピングは、角柱の側面を接続する緯糸繊維(501)と、経糸繊維とを含み、断面配向がそれぞれ0°~45°(502、503)で変化して、角柱の他の2つの側面間並びに上面と下面との間の結合を確実にするように織られた一般にインターロックと呼ばれる織り型の伸縮性三次元布地を使用する。
【0071】
ステッチング工程(720)によれば、このようにして得られたプリフォームは、角柱の2つの対向面の間に延在するステッチ(504)によって補強される。
【0072】
図8では、代替的に、ドレーピング工程は、貯蔵容積を生成するために、将来の内部空洞に対応するゾーンに、三次元不織布で作製されたスペーサ(891)を含む繊維網を作り出す。この変形例では、繊維網は、タンクの側面を接続する交差方向の撚糸型又はタフタ型の織物(805、805)のスタックからなる。
【0073】
同様に、この乾燥プリフォームは、対向面の間を延在するステッチ(804)によって補強される。
【0074】
したがって、プリフォーム内に挿入された繊維(804)は、それらが接続するタンクの壁に実質的に垂直な後の空洞内だけでなく、これらの壁に実質的に平行なタンクの壁の厚さ内にも延在する。
【0075】
「三次元不織布」という用語は、広く解釈されるべきである。非限定的な例によれば、それは、連続気泡を含む発泡体又はポリマーワイヤの不織マットである。
【0076】
図7に戻ると、充填工程(730)によれば、含浸の準備として、乾燥プリフォームが、真空が生成される封止空洞を備えるツール内に配置される。内部が真空になると、プリフォームを含む封止空洞は、ツール内に注入される液体(731)で充填される。
【0077】
図9は、このツールの原理の一例を示す。本実施形態によれば、ツールは、プリフォームが収容される封止空洞(911)を画定する防水シート(901)を備える。当該ツールは、より一般的には商標名GoreTex(登録商標)と呼ばれる延伸ポリテトラフルオロエチレンの半透膜(932)によって保護された真空ポンプ(931)に接続された1つ以上の吸引オリフィス(930)と、弁(図示せず)を備える1つ以上の注入オリフィス(935)とを備える。ポンプ(931)は、空洞(911)及び注入ポート(935)を排気して当該空洞を充填することを可能にする。
【0078】
本発明の主題である方法の実施中、ツールは、温度が制御される1つ以上の連続チャンバ内に配置される。
【0079】
変形例によれば、単一のツールが特定の方法の全ての工程に使用されるか、又は複数のツールが様々な工程で使用される。
【0080】
したがって、充填工程(730)中、吸引ポートを通して空気を引き出すことによって、乾燥プリフォームを備えるツールの内側に真空が生成され、次いで、注入ポートを介して液体(731)で充填される。
【0081】
第1の代替実施形態によれば、充填工程中に使用される液体(731)は水であり、当該充填工程の後に凍結工程(740)が続く。この工程中、水に完全に浸漬されたプリフォームを含むツールアセンブリは、水を凍結させるように、-20℃~-80℃の温度にされる。次に、プリフォームを氷中に捕捉する(741)。
【0082】
昇華工程(750)中、アセンブリは、プリフォームを捕捉している氷の一部を昇華させるように、真空下で徐々に加熱される。この昇華プロセスは、昇温速度及び真空圧力によって制御される。これらの条件は、試験を通じて策定された。
【0083】
一代替実施形態によれば、この昇華工程は、プリフォームがツール内に配置されている間に実行され、その吸引手段は、真空を制御するために使用され、ツールは、温度制御を可能にする筐体内に配置される。
【0084】
別の変形形態によれば、この工程は、氷から引き出されたプリフォームをツールから取り出し、真空及び温度が制御されている凍結乾燥チャンバ内にプリフォームを配置することによって実行される。この場合、プリフォームは、実行される後続の工程のためにツール内に配置される。
【0085】
両方の場合において、加熱はプリフォームの外側によって行われ、昇華した氷の厚さはプリフォームの外側から中心に向かって広がり、この厚さの繊維を凍結乾燥し、水蒸気はツールの吸引ポートを通じて、又は凍結乾燥チャンバによって引き出される。
【0086】
十分な厚さの層が凍結乾燥されると、必要であれば、プリフォームを注入又は導入ツールに置き換えた後、注入工程(760)中に液体樹脂(761)が当該層に注入又は導入されて、凍結乾燥された繊維を含浸させる。プリフォームの繊維の残りは、氷の中に捕捉されたままである。
【0087】
したがって、樹脂の注入中に、外側層のみが含浸されてプリフォームの外側シェルを構成する。
【0088】
焼成工程(770)中に、後の外部シェルに注入された樹脂は、機械的特性を付与するように架橋される。氷の融解から生じる水は、プリフォームの内側に捕捉されたままであり、プリフォームは、タンクの後の空洞を形成する。
【0089】
次に、このようにして得られたブランクを金型から取り出す。
【0090】
空にする工程(780)中に、外側シェルを通って、先行する工程で得られたブランクの内側まで延びる1つ以上の継手(160)が挿入され、当該ブランクの内側に収容される水を排出するために使用される。
【0091】
空にして乾燥させた後、セル状空洞を固化する工程(790)中に、封止ライニング(520)を構成し、空洞内の繊維を含浸させるように、継手(160)によってプリフォームの内側に樹脂が噴霧される。
【0092】
封止ライニング(520)の外側では、繊維は、マトリックスを構成することなく繊維にある程度の剛性を与えるように、噴霧中に単に含浸され、したがって、ガスを収容するために空洞の内側に自由セル容積を残す。
【0093】
一代替実施形態(図示せず)によれば、空にする工程(780)に備えて設置される継手又はその一部は、ドレーピング工程時に、又はドレーピング工程(720)と準備工程(730)との間でプリフォーム内に設置される。この場合、当該継手は、例えば、2つの部品で作られ、コネクタと呼ばれる当該部品の一方は、プリフォームに組み込まれ、プリフォームの外面と面一であり、キャップによって閉鎖される。
【0094】
有利なことに、この同じ継手は、任意選択で別の形態の接続部をコネクタに接続することによって、後のタンクにガスを充填するか、又は将来のタンクからガスを引き出すために使用される。
【0095】
一代替実施形態によれば、充填工程(730)は、プリフォームを収容する空洞を充填するゾル-ゲルを実施する。
【0096】
以下の工程は、空にする工程(780)まで同じであり、ここで、ゾル-ゲルの液相は、1つ以上の継手を通して、例えば、先行する工程で得られたブランクを加熱することによって蒸発させられる。したがって、セル状空洞を固化する工程(790)は、その液相が蒸発によって除去されるのと同時に、繊維上のゾル-ゲルの凝縮によって行われる。
【0097】
したがって、この変形例によれば、凍結乾燥工程中と、空にする工程及び組み合わされた固化工程中との両方において、ゾル-ゲルは、それぞれ、外側シェル側の後の空洞の表面で重合し、次いで、タンクの空洞内で、空にする工程中にこの空洞内に収容される繊維上で重合することによって、封止ライニングを生成する。
【0098】
さらに別の実施形態によれば、充填工程中に注入される液体(731)は水であり、本方法は、空にする工程(780)までを含めて、上述のように行われる。
【0099】
固化工程(790)の前に、ゾル-ゲルが、その水が予め空にされた内部空洞に注入され、乾燥させられる。
【0100】
したがって、固化工程は、ゾル-ゲルの液相の蒸発、及び内部空洞内の繊維上での重合によって実行される。
【0101】
実施形態にかかわらず、外側シェル中の繊維の割合は、シェルに高い機械的特性を付与するように、40%~65%である。
【0102】
内部空洞内の繊維の割合は著しく減少し、4%~10%である。
【0103】
したがって、外側シェルに含まれ、2つの面の間の空洞を通って延びる繊維は、内圧及び外部応力の両方に関してタンクの機械的強度に関与するが、加圧ガスを収容することができる容積を空洞内に提供する。これらの値は、タンクの機械的強度と容量との間の妥協に関する好ましい実施形態を示すが、当業者であれば、空洞内のこの繊維含有量は、意図された用途に応じて、容量を犠牲にして機械的強度を増加させるために有利に増加されるか、又はその逆であることを理解するであろう。
【0104】
上述の実施形態は、単一容積の内部空洞を考慮しており、横方向補強材は、区画化を行うことなく当該空洞内に延在している。
【0105】
当業者であれば、本発明による方法が、考慮される実施形態にかかわらず、区画化された内部空洞を作成することを可能にし、後者は、外側シェルの含浸及び固化に関することを除いて、区画ごとに説明された工程を実施することによって容易に適合されることを理解するであろう。
【0106】
図1に戻ると、実施される方法にかかわらず、ツールは、タンクに充填し、タンクから引き出すように意図された1つ以上の継手(160)を備える。当該継手は、有利には、繊維プリフォームがポリマーで含浸される前に、繊維プリフォームに組み込まれる。
【0107】
図10の第1の実施形態によれば、継手(130)は、ダクトを接続するための外側部分と、タンクの複合シェル(510)を通って内部空洞(590)内に延びる内側部分(331)とを備える。継手(130)は、例えば、意図される用途に応じて、水素脆化の現象に耐性があるように選択される金属材料、例えば、銅又はアルミニウム合金で作製される。
【0108】
この例示的な実施形態によれば、タンクの内側に延在する継手の部分(1031)は、ねじ切りされている。このねじ山(131)は、繊維を損傷することなく、継手に引裂き抵抗を与える。
【0109】
図11の別の実施形態によれば、継手(140)は、金属材料で作製された継手ブロック(1140)に組み込まれ、金属材料は、意図される用途に応じて、水素脆化の現象に耐えるように選択され、例えば、銅又はアルミニウム合金である。
【0110】
図11は、雌継手(140)を示すが、当業者であれば、雄継手が同じ原理の下で実現され得ることを理解するであろう。
【0111】
継手ブロック(1140)は、好ましくは円錐形の針(1141)を備え、この針は、繊維を損傷することなく、ガスを含む空洞(590)内の繊維スタック内に貫入することができる。
【0112】
金属又は好ましくはフィラメントワインディングによって得られる複合材料で作られた1つ以上の保持ストリップ(160)が、タンクの周りに延在し、タンクに対する継手ブロック(1140)の保持を確実にする。
【0113】
図12の別の実施形態によれば、継手(150)は、外側シェル(510)及び繊維スタックを通ってタンクの空洞(590)の内側に貫通するリブ付き針(1251)を備える。前述の実施形態によれば、継手(150)は、銅又はアルミニウム合金などの、適切な場合には水素脆化に耐性のある金属材料で作製される。
【0114】
この例示的な実施形態によれば、当該継手は、1つ以上の保持ストリップ(160)によっても保持される金属フランジ(1250)によって所定の位置に保持される。
【0115】
前述の実施例は、図5に示されるバージョンに従って製造されたタンクにおける異なる継手変形例の組み込みを示すが、当業者であれば、これらの実施形態が図4及び図8に示されるタンクのバージョンに適用可能であることを理解するであろう。
【0116】
上記の説明及び例示的な実施形態は、本発明が、加圧ガスを収容することができる封止内部空洞と、タンクの非隣接面の間の上記空洞を通過する横方向補強材とを備える角柱複合タンクの大量生産又は個別製造に適合された経済的な方法を提案することによって、意図された目標を達成することを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】