(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】細胞又は細胞小器官の選択的分析のための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20240227BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240227BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20240227BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20240227BHJP
C12Q 1/25 20060101ALI20240227BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20240227BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/48 Z
C12Q1/34
C12Q1/25
C12Q1/6888 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556512
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022057187
(87)【国際公開番号】W WO2022195089
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521286743
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
【氏名又は名称原語表記】PARIS SCIENCES ET LETTRES
【住所又は居所原語表記】60, rue Mazarine, 75006 Paris, FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】518364366
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィシック エ ドゥ シミー アンダストリエル ドゥ ラ ビル ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック ロンドレ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】ガエル ブリベ-バイイ
(72)【発明者】
【氏名】パブロ イバネ
(72)【発明者】
【氏名】サティヤム バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ギネ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ マシュリエ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ53
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4B063QS25
4B063QS36
(57)【要約】
本発明は、細胞又は細胞小器官マーカーの存在をシグナルに変換することができる適合されたDNAツールボックスの実装を介して、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法に関する。本方法は、目的の表現型を有する細胞又は細胞小器官を選択し、当該細胞又は細胞小器官のタンパク質を分析し、かつ/又は当該細胞のDNA及び/若しくはRNAを配列決定するために特に有用である。本発明はまた、上記で定義された細胞又は細胞小器官の選択的分析の方法を実施するためのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法であって、前記方法が、
a)前記細胞又は細胞小器官を複数の区画に分割することであって、前記区画の大部分が、1つの細胞型の単一細胞又は1つの細胞型の単一細胞小器官より多くを含まず、
少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと一緒であり、かつ
少なくとも1つのポリメラーゼと、少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素と、シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドと、を含む、DNAツールボックス混合物を有するように、分割すること、
b)各区画において、前記細胞又は細胞小器官マーカーに結合された前記アクチベーターオリゴヌクレオチド及び/又は前記リプレッサーオリゴヌクレオチドを、一緒にかつ前記DNAツールボックス混合物の構成要素と相互作用させて、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド及び/又は1つ以上のアンチシグナルオリゴヌクレオチドを生成し、前記シグナルオリゴヌクレオチドを増幅すること、
c)少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する前記区画の前記細胞又は細胞小器官を分析することを含む、方法。
【請求項2】
前記DNAツールボックス混合物が、前記シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる1つ以上の漏出吸収オリゴヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞又は細胞小器官マーカーが、表面マーカー、内部マーカー、分泌又は放出されたマーカー及び膜マーカーからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルが、少なくとも2つの共区画化された細胞又は細胞小器官の間の相互作用によって修飾され、ステップc)が、前記細胞又は細胞小器官の間の前記相互作用の分析を可能にする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マーカーが、分泌又は放出されたマーカーではなく、前記方法が、ステップa)の前に、
-前記細胞又は細胞小器官を、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと混合することと、
-任意選択で、前記細胞又は細胞小器官を洗浄して、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた未結合の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを除去することと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
-前記細胞若しくは細胞小器官マーカー特異的リガンドにカップリングされた前記アクチベーターオリゴヌクレオチドが、前記ポリメラーゼの鋳型として、及び/若しくはプライマーとして作用することによって1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチドを生成し、かつ/又は
-前記細胞若しくは細胞小器官マーカー特異的リガンドにカップリングされた前記リプレッサーオリゴヌクレオチドが、前記ポリメラーゼの鋳型として、及び/若しくはプライマーとして作用することによって1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた前記細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドが、少なくとも1つの対のリガンドを含み、前記対のリガンドが、第1の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド及び第2の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを含み、前記第1及び第2のリガンドのそれらのマーカーへの結合が、前記第1のリガンドにカップリングされた前記アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドと前記第2のリガンドにカップリングされた前記アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドとの間の近接伸長又は近接ライゲーションを誘導し、前記近接伸長又は近接ライゲーションが、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドの生成及び前記シグナルオリゴヌクレオチドの増幅をもたらす、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドが、膜アンカーであり、ステップc)における前記シグナルオリゴヌクレオチドの濃度が、区画化された細胞の存在若しくは非存在及び/又は区画化された細胞の数及び/又は前記区画化された細胞のサイズの関数であるように、ステップb)において、区画中に存在するアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドの量が、封入された細胞の膜の表面に比例する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シグナルオリゴヌクレオチドが、少なくとも2つの異なるシグナルオリゴヌクレオチドから産生されるマスターシグナルオリゴヌクレオチドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)において、前記DNAツールボックス混合物が、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される少なくとも1つの酵素を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記区画が、微小液滴、微小区画、又はケージである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)が、20℃~45℃を含んだ温度で実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)が、レポータープローブを添加することによってシグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定することであって、前記レポータープローブが、前記シグナルオリゴヌクレオチドによって特異的に活性化される、決定することと、前記シグナルオリゴヌクレオチドに結合された前記レポータープローブによって放出されるシグナルを検出することと、を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)は、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する前記区画の内容物を回収することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記回収された内容物の内容物が、細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸配列を配列決定することによって分析される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップc)は、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する前記区画の前記細胞を回収することと、更なる分析の前に前記細胞を培養することと、を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
同じ区画内に位置する前記細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸配列が、区画特異的バーコード配列と関連付けられている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸が、更に、バーコード化プライマー上のcDNAの伸長、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド上のcDNAの伸長、バーコード化アダプターのライゲーション、又はバーコード化組換え部位での組換えへの区画特異的バーコード配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バーコード化プライマー、前記バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、前記バーコード化アダプター、又は前記バーコード化組換え部位が、少なくとも1つの光解離性保護基を含み、ステップc)において、前記レポータープローブからの前記シグナルが閾値を上回るか又は下回る区画について、前記バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位の光脱保護によって、前記細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸と区画特異的バーコード配列との選択的関連付けが可能になる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バーコード化プライマー、前記バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、前記バーコード化アダプター、又は前記バーコード化組換え部位が、光切断可能な連結を含み、ステップc)において、前記レポータープローブからの前記シグナルが閾値を上回るか又は下回る区画について、前記バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位の光切断が生じ、それによって、プライマー配列、鋳型スイッチングオリゴ配列、アダプター配列、又は組換え部位、及び区画特異的配列バーコードを含む前記細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸の固体支持体からの選択的放出が可能になる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ステップc)において、前記シグナルオリゴヌクレオチドの結合、及び任意選択で、伸長が、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位及び区画特異的配列バーコードを含む前記細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸の固体支持体からの選択的放出をもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記固体支持体が、ビーズであり、各区画が、単一ビーズ以下を含み、前記バーコード化プライマー、前記バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、前記バーコード化アダプター、又は前記バーコード化組換え部位が、前記区画の前記ビーズに特異的なバーコード配列を担持する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記固体支持体が、微小区画又はケージの壁であり、前記バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位が、区画特異的バーコード配列を担持する、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
-ステップa)における前記DNAツールボックス混合物が、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを含み、
-ステップa)における各区画が、区画特異的バーコード配列及びRNAに結合することができる領域を担持するオリゴヌクレオチドを含み、前記オリゴヌクレオチドが、固体支持体に結合されており、
-ステップc)において、前記細胞又は細胞小器官が、溶解され、それによってRNAを放出し、区画特異的バーコード配列及びRNAに結合することができる領域を担持する前記オリゴヌクレオチドが、前記放出されたRNAに対して、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼによって触媒されるcDNA合成をプライミングするために使用され、前記区画特異的バーコードを担持するcDNAをもたらし、
-ステップc)において、少なくともシグナルオリゴヌクレオチドが、閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する場合に、前記区画特異的バーコードを担持する前記cDNAが、前記固体支持体から放出され、放出されたバーコード化cDNA及び/又は放出されていないバーコード化cDNAが、配列決定によって分析される、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記区画の前記回収された内容物が、前記シグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定するために配列決定によって分析される、請求項14~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップc)が、定量化オリゴヌクレオチドを添加することによって前記少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定することを含み、前記定量化オリゴヌクレオチドは、前記少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する場合に、特異的に増幅される、請求項14~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
同じ区画内に位置する前記定量化オリゴヌクレオチドが、区画特異的バーコード配列と関連付けられている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記定量化オリゴヌクレオチドが、更に、バーコード化プライマー上のcDNAの伸長、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド上のcDNAの伸長、バーコード化アダプターのライゲーション、又はバーコード化組換え部位での組換えへの区画特異的バーコード配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、
a)少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つのニッキング酵素又は制限酵素、並びに任意選択で、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される少なくとも1つの酵素と、
b)少なくとも1つのアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと、
c)シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチド、並びに任意選択で、非特異的増幅を回避するための漏出吸収オリゴヌクレオチド、前記アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドをシグナル抗シグナルオリゴヌクレオチドに変換することができる変換オリゴヌクレオチド、シグナルオリゴヌクレオチドの検出を可能にするレポートプローブ、及びシグナルオリゴヌクレオチドの濃度の決定を可能にする定量化オリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと、
d)任意選択で、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位を含むバーコード化核酸のセットと、
e)任意選択で、マイクロ流体デバイスと、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞又は細胞小器官の選択的分析のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一細胞マルチオーム(multi-omic)分析は、成長分野である。2018年の市場は、3億ドルであり、2022年には16億ドルになると予測されている(BioInformatics,LLC)。
【0003】
細胞集団の分析はその不均一性を明らかにすることができないため、単一細胞分析は、健常及び悪性組織の細胞不均一性を克服するために不可欠なツールとなっている。
【0004】
更に、複雑で異質な生物学的システムのより良い理解が非常に必要とされており、これは、それらの表現型(発現されたリガンド、膜受容体、発現されたタンパク質など)によって定義され、非常にわずかしか表されていない(例えば、出発試料の1%未満)目的の亜集団のオーム情報を必要とする。
【0005】
オミクス(-omics)又は表現型の分析は、現在、単一細胞スケールで、高流速で可能であるが、試料の全ての細胞の配列決定を必要とする。
【0006】
配列決定される細胞の数を低減させることは、稀な事象、細胞集団の複雑なセットに焦点を合わせること、又はセラノステクスの目的のための競合的ツールを提供することを可能にする。配列決定のために亜集団を選択する可能性は、単一細胞分析の前にフローサイトメトリーを使用することを除いて、いずれの市販の解決策によっても現在提案されていない。しかしながら、フローサイトメトリー、それに続く単一細胞分析は、高価な機器を必要とし、ある種の細胞には好適ではなく、細胞の時間的追跡にも好適でない。
【0007】
したがって、現在、配列決定によって分析される亜集団を選択するためのハイスループット能力を有する単一細胞区画化のための技術は存在しない。既存の技術は、例えば、以下の欠点を有する。
-フローサイトメトリー、FACS:多数の細胞を、所与の時間でのある特定の膜マーカーの存在に対して選別する必要がある。単一細胞分析を実施するために、別の技術へのカップリングを必要とする。
-ドロップマイクロ流体工学、「10Xゲノミクス」:経時的な可視化又は選別を伴わない単一細胞レベルでの分析。
-マイクロ流体トラップ、「Fluidigm C1」:可視化を伴うが、選別を伴わない、最大で数百から数千個の単一細胞の分析。
-マイクロウェル、ナノディスペンサ、「CellenONE」:経時的な可視化及び選別を伴う少数の単一細胞のみの分析。
【0008】
したがって、既存のシステムは、細胞を単離し、それらを個々にマークを付け、配列決定を実施することを可能にするが、細胞の表現型をそのオームの特徴(例えば、ゲノムの特徴、トランスクリプトームの特徴など)にカップリングすることも、異質のプールから目的の細胞を選択し、それらを個々に配列決定することもできない。
【0009】
したがって、細胞又は細胞小器官の選択的分析のための改善された方法が必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、適合されたDNAツールボックスの実装を介して、細胞又は細胞小器官の表現型マーカーを増幅されたDNAシグナルに「変換」し、シグナルを使用して、これらの細胞又は細胞小器官の選択的分析のために、例えば、配列決定のために、この表現型マーカーを表示する区画化された単一細胞又は細胞小器官を選択する方法を設計した。表現型の選択は、表面マーカー、内部マーカー、分泌若しくは放出されたマーカー、膜マーカー、又はいくつかのマーカーの組み合わせに従って有利に行われ得る。表現型基準に基づいて亜集団を選別及び配列決定することを可能にするこの新しい方法は、技術的なブレークスルーのように見受けられる。
【0011】
本発明は、有利なことに、非常に競争力のあるコスト条件下で高速細胞選択動作(分析当たり10,000細胞超)を実施することを可能にする。
【0012】
本発明は、東京大学(University of Tokyo)及びESPCI ParisにおいてYannick Rondelezのチームによって開発された、DNAツールボックスと称される分子生物学反応の動的回路に基づくものである(Baccouche et al.(2014)Methods 67:234-249)。これらの回路は、オリゴヌクレオチド配列(鋳型とも称される)の短いストレッチ、並びにポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、及びニッカーゼを含む酵素から作製される。
【0013】
したがって、本発明による方法は、DNA増幅反応に依存し、そのための実施条件は、生細胞の表現型分析と両立しないようである。しかしながら、驚くべきことに、本発明の方法はまた、生細胞の選択的分析にも使用され得る。
【0014】
したがって、本発明の第1の目的は、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法であって、当該方法が、
a)当該細胞又は細胞小器官を複数の区画に分割することであって、区画の大部分が、1つの細胞型の単一細胞又は1つの細胞型の単一細胞小器官より多くを含まず、
少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと一緒であり、かつ
少なくとも1つのポリメラーゼと、少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素と、シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドと、を含む、DNAツールボックス混合物を有するように、分割すること、
b)各区画において、細胞又は細胞小器官マーカーに結合されたアクチベーターオリゴヌクレオチド及び/又はリプレッサーオリゴヌクレオチドを、一緒にかつDNAツールボックス混合物の構成要素と相互作用させて、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド及び/又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成し、当該シグナルオリゴヌクレオチドを増幅すること、
c)少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の細胞又は細胞小器官を分析することを含む、方法である。
【0015】
本発明の別の目的は、上記で定義された方法を実施するためのキットであって、当該キットが、
a)少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つのニッキング酵素又は制限酵素、並びに任意選択で、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される少なくとも1つの酵素と、
b)少なくとも1つのアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと、
c)シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチド、並びに任意選択で、非特異的増幅を回避するための漏出吸収オリゴヌクレオチド、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドをシグナル又は抗シグナルオリゴヌクレオチドに変換することができる変換オリゴヌクレオチド、シグナルオリゴヌクレオチドの検出を可能にするレポートプローブ、及びシグナルオリゴヌクレオチドの濃度の決定を可能にする定量化オリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと、
d)任意選択で、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位を含むバーコード化核酸のセットと、
e)任意選択で、マイクロ流体デバイスと、を含む、キットである。
【0016】
本発明の別の目的は、特に、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための、上記で定義されたキットの使用である。
【0017】
細胞又は細胞小器官
本発明は、特に、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルなどのそれらの表現型に基づいて、目的の細胞又は細胞小器官の亜集団を選択することを可能にする。
【0018】
「それらの表現型に基づいて細胞又は細胞小器官の亜集団を選択する」とは、本明細書では、特に、細胞又は細胞小器官の異質な集団の中から、目的の表現型を有する細胞又は細胞小器官のセットを選択することを意味する。
【0019】
細胞は、例えば、生細胞、凍結された細胞又は透過処理された細胞、例えば、固定され、透過処理された細胞であり得る。
【0020】
細胞は、当業者に周知の任意の方法によって透過処理され得る。
【0021】
細胞は、例えば、真核細胞又は原核細胞であり得る。
【0022】
細胞は、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞である。
【0023】
非ヒト哺乳動物細胞の非限定的な例としては、ラット細胞、マウス細胞、ハムスター細胞又はサル細胞が挙げられる。
【0024】
哺乳動物細胞は、好ましくは、ヒト細胞である。
【0025】
細胞は、細胞株又は対象の試料から得られ得る。
【0026】
細胞は、好ましくは、対象、例えば、ヒト対象の試料から得られる。当該対象は、健康な対象、又は疾患に罹患するリスクがあるか若しくは疾患に罹患している対象であり得る。
【0027】
試料は、例えば、組織試料又は血液試料などの流体試料であり得る。
【0028】
組織試料は、例えば、腫瘍試料又は炎症組織試料であり得る。
【0029】
細胞は、例えば、T細胞及び抗原提示細胞(antigen-presenting cell、APC)などの2つの異なる種類の細胞を含み得る。
【0030】
細胞小器官は、例えば、ミトコンドリア又は核であり得る。
【0031】
細胞小器官は、特に、当業者に周知の任意の方法によって、上記で定義された細胞から得られ得る。
【0032】
細胞又は細胞小器官マーカー
上記で定義されるように、特に、それらの表現型に基づいて、目的の細胞又は細胞小器官の亜集団を選択するために、本発明は、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーの存在又は非存在を検出することを可能にする。
【0033】
細胞又は細胞小器官マーカーは、例えば、受容体であり得る。
【0034】
細胞又は細胞小器官マーカーは、例えば、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、又は炭水化物であり得る。
【0035】
細胞マーカーは、目的の細胞の亜集団を選択するために使用される。
【0036】
細胞マーカーは、例えば、表面マーカー、内部マーカー、分泌若しくは放出されたマーカー、及び/又は膜マーカーからなる群から選択され得る。
【0037】
目的の表現型が内部マーカーの存在又は非存在に基づく場合、細胞は、好ましくは、透過処理される。
【0038】
目的の表現型が、細胞分泌された又は放出されたマーカーの存在又は非存在に基づく場合、細胞は、生細胞である。
【0039】
本方法が、選択された細胞の亜集団のDNA又はRNAを配列決定するために更に使用される場合、細胞は、好ましくは生細胞である。
【0040】
細胞小器官マーカーは、目的の細胞小器官の亜集団を選択するために使用される。
【0041】
細胞小器官マーカーは、例えば、表面マーカー、膜マーカー、内部マーカー、分泌又は放出された細胞小器官マーカーからなる群から選択され得る。
【0042】
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、上記で定義された細胞又は細胞小器官マーカーを検出するために使用される。
【0043】
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、当該細胞又は細胞小器官マーカーに特異的に結合することができる任意の分子であり得る。
【0044】
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、例えば、タンパク質、ペプチド、抗体又はその断片、アプタマー、RNA(Ribonucleic Acid、リボ核酸)、DNA(Deoxyribonucleic Acid、デオキシリボ核酸)、レクチン、及び膜アンカーからなる群から選択され得る。
【0045】
抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体である。
【0046】
「アプタマー」という用語は、本明細書では、特定の三次元立体構造をとるその能力を介して、標的、例えば、上記で定義された細胞又は細胞小器官マーカーに特異的に結合することができる核酸を意味する。アプタマーは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又は両方の種類のヌクレオチド残基の混合物を含み得る。アプタマーは、1つ以上の修飾塩基、糖、又はホスフェート骨格単位を更に含み得る。
【0047】
Ramos細胞に特異的なアプタマーは、例えば、配列番号16若しくは配列番号17の配列を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0048】
膜アンカーは、細胞膜に結合する。膜アンカーは、例えば、コレステロールであり得る。コレステロールなどの非特異的膜アンカーを使用する場合、細胞の亜集団は、全細胞集団に対応する。
【0049】
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、好ましくは、上記で定義された抗体又はアプタマーである。
【0050】
本発明に従って使用される細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、共有結合又は非共有結合を使用して、少なくとも1つのアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされる。
【0051】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドのマーカー特異的リガンドへのカップリングは、当業者に周知の任意の好適な方法によって実施され得る。
【0052】
例えば、DNAスペーサー又は非核酸スペーサーであり得るスペーサーが、使用され得る。当該スペーサーは、タンパク質ペプチドリガンド(抗体など)の場合、3’又は5’に結合され得る。カップリングは、ビオチンストレプトアビジン連結によって、又は共有結合修飾によって実施され得る(例えば、Dovgan,Igor,et al.「Antibody-oligonucleotide conjugates as therapeutic,imaging,and detection agents.」Bioconjugate chemistry 30.10(2019):2483-2501を参照されたい)。
【0053】
アプタマーの場合、2つの配列は、単に一緒に融合され得るか、又は任意選択で、スペーサー若しくはリンカーと融合され得る。
【0054】
「アクチベーターオリゴヌクレオチド」とは、本明細書では、シグナルオリゴヌクレオチドの産生をもたらし得るオリゴヌクレオチド、又はシグナルオリゴヌクレオチドを意味する。
【0055】
シグナルオリゴヌクレオチドの産生をもたらし得るオリゴヌクレオチドは、例えば、(i)前駆体オリゴヌクレオチド、(ii)変換オリゴヌクレオチド、又は(iii)変換オリゴヌクレオチド若しくはシグナル配列に相補的な配列に結合若しくは融合された前駆体オリゴヌクレオチドであり得る。
【0056】
「リプレッサーオリゴヌクレオチド」とは、本明細書では、抗シグナルオリゴヌクレオチドの産生をもたらし得るオリゴヌクレオチドを意味する。
【0057】
抗シグナルオリゴヌクレオチドの産生をもたらし得るオリゴヌクレオチドは、例として、(i)前駆体オリゴヌクレオチド、(ii)抗シグナル変換オリゴヌクレオチド、又は(iii)抗シグナル変換オリゴヌクレオチド若しくは抗シグナル配列に相補的な配列に結合若しくは融合された前駆体オリゴヌクレオチドであり得る。
【0058】
前駆体オリゴヌクレオチドは、変換又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドの領域、特に変換又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドの3’に位置する領域に相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0059】
「変換オリゴヌクレオチド」(「変換鋳型」、「コンバーター鋳型」又は「cT」とも称される)という用語は、本明細書では、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーの存在をシグナルオリゴヌクレオチド(本明細書では「トリガーオリゴヌクレオチド」又は「トリガーシグナル」とも称される)に変換するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0060】
「抗シグナル変換オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーの存在を抗シグナルオリゴヌクレオチド(本明細書では「トリガーオリゴヌクレオチド」又は「トリガーシグナル」とも称される)に変換するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0061】
変換オリゴヌクレオチドに結合又は融合された前駆体オリゴヌクレオチドは、重合のために既にプライミングされている変換オリゴヌクレオチドである。
【0062】
変換オリゴヌクレオチドに結合又は融合された前駆体オリゴヌクレオチドは、本明細書では「ソース鋳型」、「sT」又は「自己プライミング鋳型」とも称される。
【0063】
ソース鋳型は、好ましくは、5’から3’へ以下を含む:
-シグナルオリゴヌクレオチド又は抗シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な領域、
-任意選択で、最適化配列、例えば、GTTT又はGAGA、
-酵素認識部位、好ましくは、ニッキング酵素認識部位、及び
-ソース鋳型の3’末端が制限部位にハイブリダイゼーションし、ポリメラーゼによって伸長される準備ができていることを可能にするループ。
【0064】
DNAツールボックス混合物の存在下で、ソース鋳型は、シグナルオリゴヌクレオチド又は抗シグナルオリゴヌクレオチドを構成的に産生する。
【0065】
ソース鋳型は、細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドに、好ましくは、その5’末端を介して、例えば、ビオチン-ストレプトアビジン連結を介して結合される。
【0066】
ビオチンは、好ましくは、ソース鋳型の5’に結合される。
【0067】
抗シグナルオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドに少なくとも実質的に相補的であり、5’オーバーハングを含むオリゴヌクレオチドである。
【0068】
当該5’オーバーハングは、ポリメラーゼによって鋳型として使用されて、シグナルオリゴヌクレオチドを伸長し得、それによって、増幅鋳型上での伸長に対してそれを不活性化し得る。
【0069】
したがって、5’オーバーハングは、シグナルオリゴヌクレオチドへの不活性化テールの付加を可能にする。
【0070】
したがって、抗シグナルオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合し、シグナルオリゴヌクレオチドを不活性化することができるが、シグナルオリゴヌクレオチドを増幅することはできない。
【0071】
有利には、5’オーバーハングは短く、それにより、(i)リプレッサーオリゴヌクレオチドからの抗シグナル産生速度は高く、(ii)伸長シグナルオリゴヌクレオチドは、作用温度で抗シグナルオリゴヌクレオチドから自発的に脱ハイブリダイゼーションすることができ、それにより、1つの抗シグナルオリゴヌクレオチドが、複数のシグナルオリゴヌクレオチドの複数回の不活性化を実施することができる。
【0072】
抗シグナルオリゴヌクレオチドは、好ましくは、10~22ヌクレオチド、より好ましくは、10~15ヌクレオチド、例えば、12、13、14、15、16、又は17ヌクレオチドを含む。
【0073】
抗シグナルオリゴヌクレオチドがシグナルオリゴヌクレオチドを不活性化し得る機序は、例えば、文献、国際公開第2017/141067号又はMontagne et al.,2016,Nat Commun 7,13474(doi.org/10.1038/ncomms13474)に記載されている。
【0074】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、8~80ヌクレオチド、好ましくは、10~50ヌクレオチド、より好ましくは、10~30ヌクレオチド、例えば、15~25ヌクレオチド又は16~22ヌクレオチドを含み得る。
【0075】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチド又は部分的に二本鎖のオリゴヌクレオチドである。
【0076】
「オリゴヌクレオチドYに結合することができるオリゴヌクレオチドX」という表現は、本明細書では、オリゴヌクレオチドXが、当該オリゴヌクレオチドYの配列の領域に少なくとも部分的に相補的である配列を含み、当該相補性が、特に、特許請求される方法の条件下で、特異的結合を生じるのに十分であることを意味する。
【0077】
第2の配列に少なくとも部分的に相補的な配列は、当該第2の配列に相補的であるか、又は当該第2の配列に部分的に相補的であるかのいずれかである。
【0078】
第2の配列に「相補的」である配列は、本明細書では、第2の配列の逆相補体対応物を意味する。配列は、1つ以上のミスマッチ、好ましくは、最大で4つのミスマッチが存在する場合、又は第1の配列が第2の配列よりも短い場合、第2の配列に「部分的に相補的」である。
【0079】
本発明による使用のためのアクチベーターオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号6の配列、配列番号18の配列、配列番号10の配列、若しくはそれらの断片、例えば、配列番号10の配列のヌクレオチド11~32からなる断片を含み得るか又はそれらからなり得る。
【0080】
本発明による使用のための、アクチベーターオリゴヌクレオチドにカップリングされたRamos細胞に特異的なアプタマーは、例えば、配列番号8若しくは配列番号9の配列を含み得るか又はそれらからなり得る。
【0081】
DNAツールボックス
上記で説明したように、本発明の方法は、適合されたDNAツールボックスの実装を介して、細胞又は細胞小器官マーカーの存在を増幅されたDNAシグナルに「変換」する。
【0082】
DNAツールボックスは、本明細書中で鋳型とも称される短いオリゴヌクレオチドのセット、及び少なくとも2つの酵素の混合物に依存し、これらは、DNA鎖を産生及び分解することによって情報の流れを処理し、次いで、DNAツールボックスの他の構成要素を活性化又は阻害する。
【0083】
したがって、本発明の方法は、DNAツールボックス混合物の使用を含む。
【0084】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、少なくとも2つの酵素及び少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0085】
酵素
DNAツールボックス混合物は、少なくとも2つの酵素、好ましくは、少なくとも1つのポリメラーゼと、少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素と、を含む。
【0086】
「酵素」という用語は、本明細書では、触媒機能を有し、分子基質の変換を触媒することができるタンパク質を意味する。
【0087】
上記で定義された酵素は、好ましくは、ポリメラーゼ、ニッキング酵素、制限酵素、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される。
【0088】
ポリメラーゼ並びにニッキング酵素及び/又は制限酵素は、特に、シグナルオリゴヌクレオチドを産生及び増幅するのを可能にする。
【0089】
本発明による使用のためのポリメラーゼは、好ましくは、Bst 2.0 DNAポリメラーゼ、Bst大断片DNAポリメラーゼ、クレノウ断片(3’->5’エキソ-)、Phi29 DNAポリメラーゼ、Vent(エキソ-)DNAポリメラーゼからなる群から選択され、より具体的には、ポリメラーゼはVent(エキソ-)DNAポリメラーゼである(例えば、New England Biolabs(NEB)から購入される)。1つ超のポリメラーゼが、同時に使用され得る。
【0090】
本発明による使用のための、ニッカーゼとも称されるニッキング酵素は、好ましくは、Nb.BbvCI、Nb.BstI、Nb.BssSI、Nb.BsrDI、Nb.BsmI、及びNt.BstNBIからなる群から選択され、より好ましくは、Nb.BsmI及び/又はNt.BstNBIである(例えば、New England Biolabs(NEB)から購入される)。1つ超のニッカーゼが、同時に使用され得る。
【0091】
一実施形態によれば、ニッキング酵素は、制限酵素によって置き換えられ得る。
【0092】
DNA二本鎖の一方の鎖のみを切断するニッキング酵素とは対照的に、制限酵素は2つの鎖を切断する。したがって、ニッキング酵素の代わりに制限酵素を使用する場合、本発明の方法において使用される鋳型を保護する必要がある場合がある。この保護は、例えば、鋳型の化学修飾を実施することによって実施され得る。そのような修飾は、ホスホロチオエート連結などの骨格修飾を含む。
【0093】
1つ超の制限酵素、又はニッキング酵素及び制限酵素の組み合わせが、同時に使用され得る。
【0094】
DNAプロセシング酵素の非限定的な例は、APE1又はUDGである。
【0095】
エキソヌクレアーゼは特に、システムの飽和を回避することを可能にする。
【0096】
本発明による使用のためのエキソヌクレアーゼは、好ましくは、RecJf、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼVII、及びttRecJエキソヌクレアーゼからなる群から選択される。エキソヌクレアーゼは、好ましくは、Yamagata(Yamagata et al.,2001)によって記載されたプロトコルに従って得られるようなttRecJエキソヌクレアーゼである。1つ超のエキソヌクレアーゼが、同時に使用され得る。
【0097】
DNAツールボックス混合物は、特に、本方法が選択された細胞の集団のDNA又はRNAを配列決定するために更に使用される場合、逆転写酵素を更に含み得る。
【0098】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、少なくとも1つのポリメラーゼと、制限酵素及びニッキング酵素の中から選択される少なくとも1つの酵素と、を含む。
【0099】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、以下を含む。
-少なくとも1つのポリメラーゼであって、特に
o結合若しくは融合された前駆体オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して変換オリゴヌクレオチドの相補鎖を合成し、それによって二本鎖変換オリゴヌクレオチドを産生するため、
o結合若しくは融合された前駆体オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して抗シグナル変換オリゴヌクレオチドの相補鎖を合成し、それによって二本鎖抗シグナル変換オリゴヌクレオチドを産生するため、
o結合されたシグナルオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して増幅オリゴヌクレオチドの相補鎖を合成し、それによって二本鎖増幅オリゴヌクレオチドを産生するため、
o結合されたシグナルオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して漏出吸収オリゴヌクレオチド若しくは抗シグナルオリゴヌクレオチドの相補鎖を合成し、二本鎖漏出吸収オリゴヌクレオチド若しくは二本鎖抗シグナルオリゴヌクレオチドを産生するため、
o結合されたシグナルオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用して、レポートプローブの相補鎖を合成するため、
o使用されるポリメラーゼが鎖置換活性を有する場合、プライマーの伸長によって鋳型オリゴヌクレオチドに結合されたオリゴヌクレオチドを鎖置換するための、少なくとも1つのポリメラーゼ、並びに/又は
-制限酵素及び/若しくはニッカーゼから選択される少なくとも1つの酵素であって、特に、二本鎖変換オリゴヌクレオチドからシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは二本鎖抗シグナル変換オリゴヌクレオチドから抗シグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは二本鎖増幅オリゴヌクレオチドからシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは二本鎖漏出吸収若しくは二本鎖抗シグナルオリゴヌクレオチドからミスマッチシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは固体支持体からバーコード化プライマーを放出させることを可能にする、少なくとも1つの酵素、
-任意選択で、少なくとも1つのエキソヌクレアーゼ、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ、少なくとも1つのリガーゼ、少なくとも1つのリコンビナーゼ、少なくとも1つのグリコシラーゼ、及び/若しくは少なくとも1つのDNAプロセシング酵素、並びに
-任意選択で、少なくとも1つの逆転写酵素。
【0100】
オリゴヌクレオチド
DNAツールボックス混合物は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0101】
当業者には明らかであるように、「DNAツールボックス混合物がオリゴヌクレオチドXを含む」という表現は、当該混合物が当該オリゴヌクレオチドXの分子を含むことを意味する。例えば、DNAツールボックス混合物は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを所望の濃度、例えば、0.1nM~100nMで含み得る。
【0102】
オリゴヌクレオチドは、変換オリゴヌクレオチド、抗シグナル変換オリゴヌクレオチド、増幅オリゴヌクレオチド、漏出吸収オリゴヌクレオチド、及びレポートプローブからなる群から選択され得る。
【0103】
DNAツールボックス混合物において使用される変換オリゴヌクレオチド、増幅オリゴヌクレオチド、及び漏出吸収オリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる少なくとも1つの領域を含む。
【0104】
したがって、これらのオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドの配列によって連結される。
【0105】
シグナルオリゴヌクレオチドは、好ましくは、人工オリゴヌクレオチドである。シグナルオリゴヌクレオチドは、好ましくは、以下の特徴を有するように設計される。
-低い溶融温度、
-短い配列、好ましくは、8~20ヌクレオチド、より好ましくは、10~15ヌクレオチド、例えば、10、11、12、13、14又は15ヌクレオチド、及び
-高いAT/CG比。
【0106】
これらの特徴は、特に、増幅反応が37℃の温度で機能することを可能にし、この温度は、方法が生細胞に対して実施される場合に特に好適である。
【0107】
シグナルオリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0108】
シグナルオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号1若しくは配列番号11の配列を含み得るか、又はそれらからなり得る。
【0109】
DNAツールボックス混合物において使用される各オリゴヌクレオチドは、特定の機能を有し、最終的に、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーの存在のシグナルオリゴヌクレオチドへの変換、及び得られたシグナルオリゴヌクレオチドの増幅を、好ましくは、同時にバックグラウンド増幅、すなわち細胞又は細胞小器官マーカーの非存在下で起こるシグナル増幅反応を誘導することなく、可能にする。
【0110】
したがって、DNAツールボックスは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドを含む。
【0111】
「増幅オリゴヌクレオチド」(「自己触媒鋳型」又は「aT」とも称される)という用語は、本明細書では、上記で定義されたシグナルオリゴヌクレオチドを指数関数的に増幅することができるオリゴヌクレオチドを意味する。
【0112】
増幅オリゴヌクレオチドは、好ましくは、特に、5’の最初の1~5ヌクレオチド、例えば、5’の最初の3又は4ヌクレオチドが分解に対して保護される。
【0113】
増幅オリゴヌクレオチドは、好ましくは、5’から3’へ、シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる第1の領域、酵素認識部位(例えば、制限酵素又はニッキング酵素の)、及びシグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる第2の領域を含む。
【0114】
増幅オリゴヌクレオチドは、好ましくは、16~45ヌクレオチド、より好ましくは、20~40ヌクレオチド、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドを含む。
【0115】
シグナルオリゴヌクレオチドが増幅オリゴヌクレオチドに結合し、続いてポリメラーゼによって増幅すると、二本鎖増幅オリゴヌクレオチドが得られる。当該酵素認識部位を認識する酵素が作用すると、少なくとも2つのシグナルオリゴヌクレオチドが放出される。
【0116】
好ましい実施形態によれば、増幅オリゴヌクレオチドの3’末端は、好ましくは、シグナルオリゴヌクレオチドに対して低減された親和性を有する。
【0117】
DNAツールボックス混合物は、少なくとも1つの変換オリゴヌクレオチドを更に含み得る。
【0118】
上記に開示されるように、「変換オリゴヌクレオチド」は、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーの存在をシグナルオリゴヌクレオチドに変換する。
【0119】
いくつかの実施形態では、変換オリゴヌクレオチドは、DNAツールボックス混合物中に存在しないが、細胞又は細胞小器官特異的リガンドに結合されているアクチベーターオリゴヌクレオチドの形態で提供される。
【0120】
変換オリゴヌクレオチドは、8~50ヌクレオチド、好ましくは、10~45ヌクレオチド、より好ましくは、10~30ヌクレオチド、例えば、15~25ヌクレオチド又は16~22ヌクレオチドを含み得る。
【0121】
変換オリゴヌクレオチドは、分解(特に制限酵素又はヌクレアーゼによる)に対して保護されてもされなくてもよい。
【0122】
変換オリゴヌクレオチドは、上記で定義されたように、前駆体オリゴヌクレオチドに結合することができる。
【0123】
変換オリゴヌクレオチドは、好ましくは、5’から3’へ、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な第1の領域、酵素認識部位、好ましくは、ニッキング酵素認識部位、任意選択で、任意の配列のスペーサー領域、及び前駆体オリゴヌクレオチドに結合することができる第2の領域を含む。
【0124】
変換オリゴヌクレオチドはまた、5’から3’へ、第1の前駆体オリゴヌクレオチドに相補的な領域、リンカー、スペーサー、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な第1の領域、酵素認識部位、好ましくは、ニッキング酵素認識部位、任意選択で、任意の配列のスペーサー領域、及び第2の前駆体オリゴヌクレオチドに結合することができる第2の領域を含み得る。このような変換オリゴヌクレオチドは、一対のリガンドが使用される場合に有用であり得、
-変換オリゴヌクレオチドは、当該リガンドにカップリングされた第1の前駆体オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって、当該対の一方のリガンドに結合され、
-第2の前駆体オリゴヌクレオチドは、当該リガンドにカップリングされた第3の前駆体オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって、当該対の第2のリガンドに結合され、第2の前駆体オリゴヌクレオチドは、第3の前駆体オリゴヌクレオチドに相補的な領域、リンカー、及び当該変換オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。第1及び第3の前駆体オリゴヌクレオチドは、同一であっても異なっていてもよい。対の第1のリガンド及び第2のリガンドは、同一であり得る。
【0125】
リンカーは、例えば、nTからなる配列であり得、式中、nは、配列番号25の配列など、2以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上の整数である。
【0126】
スペーサーは、例えば、任意の配列のスペーサー領域又はスペーサーsp18であり得る。
【0127】
スペーサーsp18(本明細書では、intsp18とも称される)は、以下の式の化合物である。
【0128】
【0129】
上記で定義された変換オリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチド又は部分的二本鎖オリゴヌクレオチドであり得る。
【0130】
変換オリゴヌクレオチドが前駆体オリゴヌクレオチドに結合し、続いてポリメラーゼによって増幅すると、二本鎖変換オリゴヌクレオチドが得られる。当該酵素認識部位を認識する酵素、好ましくは、ニッキング酵素が作用すると、シグナルオリゴヌクレオチドと称される一本鎖オリゴヌクレオチドが得られる。
【0131】
DNAツールボックス混合物は、少なくとも1つの抗シグナル変換オリゴヌクレオチドを更に含み得る。
【0132】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、8~50ヌクレオチド、好ましくは、10~45ヌクレオチド、より好ましくは、10~30ヌクレオチド、例えば、15~25ヌクレオチド又は16~22ヌクレオチドを含み得る。
【0133】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、分解(特に制限酵素又はヌクレアーゼによる)に対して保護されてもされなくてもよい。
【0134】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、上記で定義されたように、前駆体オリゴヌクレオチドに結合することができる。
【0135】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、好ましくは、5’から3’へ、第2のオリゴヌクレオチドに融合されたシグナルオリゴヌクレオチドを含む第1の領域(全体として、抗シグナル配列の相補的配列を形成する)、酵素認識部位、好ましくは、ニッキング酵素認識部位、任意選択で、任意の配列のスペーサー領域、及び前駆体オリゴヌクレオチドに結合することができる第2の領域を含む。
【0136】
上記で定義された抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチド又は部分的二本鎖オリゴヌクレオチドであり得る。
【0137】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、好ましくは一本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0138】
抗シグナル変換オリゴヌクレオチドが前駆体オリゴヌクレオチドに結合し、続いてポリメラーゼによって増幅すると、二本鎖抗シグナル変換オリゴヌクレオチドが得られる。当該酵素認識部位を認識する酵素、好ましくは、ニッキング酵素が作用すると、抗シグナルオリゴヌクレオチドである一本鎖オリゴヌクレオチドが得られる。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗シグナル変換オリゴヌクレオチドは、DNAツールボックス混合物中に存在しないが、細胞又は細胞小器官特異的リガンドに結合されているリプレッサーオリゴヌクレオチドの形態で提供される。
【0140】
DNAツールボックス混合物は、少なくとも1つの前駆体オリゴヌクレオチドを更に含み得る。
【0141】
前駆体オリゴヌクレオチドは、上記で定義されたとおりである。
【0142】
いくつかの実施形態では、前駆体は、DNAツールボックス混合物中に存在しないが、細胞又は細胞小器官特異的リガンドに結合されているアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドの形態で提供される。
【0143】
DNAツールボックスは、少なくとも1つの漏出吸収オリゴヌクレオチドを更に含み得る。
【0144】
「漏出吸収オリゴヌクレオチド」(「擬似鋳型」又は「pT」とも称される)という用語は、本明細書では、増幅オリゴヌクレオチドの3’領域よりも強くシグナルオリゴヌクレオチドに結合し、その3’末端に数個のヌクレオチドを付加するだけであり、したがって、(その3’末端が増幅オリゴヌクレオチド上でミスマッチであるため)増幅オリゴヌクレオチド上での更なるプライミングに対してそれを不活性化するオリゴヌクレオチドを意味する。漏出吸収オリゴヌクレオチドは、本明細書ではバックグラウンド増幅(すなわち、細胞又は細胞小器官マーカーの非存在下で生じる増幅)とも称される非特異的増幅を回避することを可能にする。漏出吸収オリゴヌクレオチドは、漏出反応から合成されたシグナル配列の不活性化を駆動する。漏出吸収オリゴヌクレオチドは、増幅オリゴヌクレオチドと全く同様に、分解に対して保護され得る。
【0145】
漏出吸収オリゴヌクレオチドは、好ましくは、10~22ヌクレオチド、より好ましくは、10~15ヌクレオチド、例えば、12、13、14、15、16、又は17ヌクレオチドを含む。
【0146】
漏出吸収オリゴヌクレオチドは、5’から3’へ、シグナルオリゴヌクレオチドに不活性化テールを付加することを可能にする第1の領域と、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な第2の領域と、を含む。
【0147】
したがって、漏出吸収オリゴヌクレオチドは、リプレッサーオリゴヌクレオチドから産生される代わりに、DNAツールボックス混合物に直接添加される抗シグナルオリゴヌクレオチドである。
【0148】
好ましくは、高濃度の増幅された配列では、増幅オリゴヌクレオチドの反応が、漏出吸収オリゴヌクレオチド上の反応よりも速いが、低濃度の増幅された配列では、漏出吸収オリゴヌクレオチド上の反応が、増幅オリゴヌクレオチドの反応よりも速く、それによって、刺激閾値をまたがない限り、増幅を効果的に排除するように、増幅オリゴヌクレオチド及び漏出吸収オリゴヌクレオチドの濃度が選択される。
【0149】
上記に開示されるように、DNAツールボックス混合物の1つ以上のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、酵素分解に対して保護される。
【0150】
上記で定義されたオリゴヌクレオチドの分解に対する保護は、少なくとも1つの化学修飾など、当業者に周知の任意の方法によって得られ得る。
【0151】
当該化学修飾は、(i)骨格修飾、例えば、ホスホロチオエートの組み込み、(ii)塩基修飾、又は(iii)末端修飾からなる群から選択され得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つのホスホロチオエートをその5’末端に組み込むことによって、及び/又はビオチン-ストレプトアビジン修飾、反転ヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドなどの他のエキソヌクレアーゼ遮断手段によって保護され得る。
【0152】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、(i)少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドと、(ii)任意選択で、少なくとも1つの変換オリゴヌクレオチド又は少なくとも1つの前駆体オリゴヌクレオチドと、(iii)任意選択で、少なくとも1つの漏出吸収オリゴヌクレオチドと、を含む。
【0153】
DNAツールボックス混合物は、レポートプローブを更に含み得る。
【0154】
「レポートプローブ」(「レポート鋳型」又は「rT」とも称される)とは、本明細書では、上記で定義されたシグナルオリゴヌクレオチドの存在を検出可能なシグナルに翻訳することができる化合物を意味する。そのような検出可能なシグナルは、例えば、粒子凝集、媒体ゼリー化、電気化学シグナル、化学発光シグナル、又は蛍光シグナルである。
【0155】
レポートプローブは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができるオリゴヌクレオチド、好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドを含む。
【0156】
好ましい一実施形態では、レポートプローブは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合し、フルオロフォアなどの検出可能な化合物にカップリングされているオリゴヌクレオチド、好ましくは、一本鎖オリゴヌクレオチドを含む。
【0157】
更に別の好ましい実施形態では、レポートプローブは、フルオロフォア及び/又はクエンチャーによって両末端で修飾され、シグナルオリゴヌクレオチドに結合する領域を更に含む自己相補的DNA鎖である。本明細書中で使用される場合、「自己相補的」という用語は、同じ分子の2つの異なる部分が、塩基相補性(A-T及びG-C)に起因して互いにハイブリダイゼーションし得ることを意味する。本発明の場合、一本鎖プローブの2つの末端(例えば、3’及び5’部分上の数個のヌクレオチド)は、互いにハイブリダイゼーションして、クエンチャーによるフルオロフォアのクエンチを誘導し得る。シグナルオリゴヌクレオチドのレポートプローブの一部への結合により、ステムループ構造が開き、したがって蛍光シグナルの増強がもたらされる。
【0158】
レポートプローブはまた、ニッキング認識部位を含むループを含み得る。
【0159】
DNAツールボックス混合物は、特に、トークンオリゴヌクレオチドを生成するために、少なくとも1つの定量化オリゴヌクレオチドを更に含み得る。
【0160】
トークンオリゴヌクレオチドは、好ましくは、人工オリゴヌクレオチドである。トークンオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドの濃度の、例えば、配列決定による定量化を可能にする。
【0161】
トークンオリゴヌクレオチドは、8~50ヌクレオチド、好ましくは、15~45ヌクレオチド、より好ましくは、20~40ヌクレオチド、例えば、25~35ヌクレオチドを含み得る。
【0162】
トークンオリゴヌクレオチドは、好ましくは、5’から3’へ、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な領域、任意選択で、配列決定後にトークンを同定するための任意の配列を含む領域、及び任意選択で、以下に定義される、バーコード化核酸に相補的な一本鎖領域を含む。
【0163】
トークンオリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0164】
定量化オリゴヌクレオチドは、閾値を上回るか又は下回る濃度での少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドの存在をトークンオリゴヌクレオチドに変換する。したがって、定量化オリゴヌクレオチドは、トークンオリゴヌクレオチドの生成を介して、シグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定することを可能にする。
【0165】
定量化オリゴヌクレオチドは、16~70ヌクレオチド、好ましくは、25~55ヌクレオチド、より好ましくは、30~50ヌクレオチド、例えば、35~45ヌクレオチド又は36~42ヌクレオチドを含み得る。
【0166】
定量化オリゴヌクレオチドは、分解(特に制限酵素又はヌクレアーゼによる)に対して保護されてもされなくてもよい。
【0167】
定量化オリゴヌクレオチドは、上記で定義されたように、シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる。
【0168】
定量化オリゴヌクレオチドは、好ましくは、5’から3’へ、トークンオリゴヌクレオチドに相補的な第1の領域、酵素認識部位、好ましくは、ニッキング酵素認識部位、任意選択で、任意の配列のスペーサー領域、及びシグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる第2の領域を含む。
【0169】
上記で定義された定量化オリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチド又は部分的二本鎖オリゴヌクレオチドであり得る。
【0170】
定量化オリゴヌクレオチドがシグナルオリゴヌクレオチドに結合し、続いてポリメラーゼによって増幅すると、二本鎖定量化オリゴヌクレオチドが得られる。当該酵素認識部位を認識する酵素、好ましくは、ニッキング酵素が作用すると、トークンオリゴヌクレオチドと称される一本鎖オリゴヌクレオチドが得られる。
【0171】
本発明による使用のためのDNAツールボックス混合物は、例えば、配列番号5の配列の変換オリゴヌクレオチド、配列番号2の配列の増幅オリゴヌクレオチド、任意選択で、配列番号3の配列の漏出吸収オリゴヌクレオチド、及び任意選択で、配列番号4の配列のオリゴヌクレオチドを含むレポートプローブを含む。このDNAツールボックス混合物は、配列番号6の配列又は配列番号18の配列のアクチベーターオリゴヌクレオチドの存在下で、配列番号1の配列のシグナルオリゴヌクレオチドを産生することができる。
【0172】
本発明による使用のための別のDNAツールボックス混合物は、例えば、配列番号7の配列の変換オリゴヌクレオチド、配列番号2の配列の増幅オリゴヌクレオチド、任意選択で、配列番号3の配列の漏出吸収オリゴヌクレオチド、及び任意選択で、配列番号4の配列のオリゴヌクレオチドを含むレポートプローブを含む。このDNAツールボックス混合物は、配列番号10の配列のアクチベーターオリゴヌクレオチドの存在下で、配列番号1の配列のシグナルオリゴヌクレオチドを産生することができる。
【0173】
本発明による使用のための別のDNAツールボックス混合物は、例えば、配列番号15の配列の変換オリゴヌクレオチド、配列番号12の配列の増幅オリゴヌクレオチド、任意選択で、配列番号13の配列の漏出吸収オリゴヌクレオチド、及び任意選択で、配列番号14の配列のオリゴヌクレオチドを含むレポートプローブを含む。このDNAツールボックス混合物は、配列番号18の配列のアクチベーターオリゴヌクレオチドの存在下で、配列番号11の配列のシグナルオリゴヌクレオチドを産生することができる。
【0174】
したがって、上記で定義されたDNAツールボックス混合物は、好ましくは、以下を含む。
-上記で定義された少なくとも1つのポリメラーゼ、
-上記で定義された制限酵素及び/若しくはニッカーゼから選択される少なくとも1つの酵素であって、特に、二本鎖変換オリゴヌクレオチドからシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、二本鎖抗シグナル変換オリゴヌクレオチドから抗シグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは二本鎖増幅オリゴヌクレオチドからシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくはレポート鋳型からシグナルオリゴヌクレオチドを放出させること、及び/若しくは固体支持体からバーコード化プライマーを放出させることを可能にする、少なくとも1つの酵素、
-上記で定義された少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチド、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つのエキソヌクレアーゼ、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ、少なくとも1つのリガーゼ、少なくとも1つのリコンビナーゼ、少なくとも1つのグリコシラーゼ、及び/若しくは少なくとも1つのDNAプロセシング酵素、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つの逆転写酵素、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つの変換オリゴヌクレオチド若しくは上記で定義された少なくとも1つの前駆体オリゴヌクレオチド、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つの抗シグナル変換オリゴヌクレオチド、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つの漏出吸収ヌクレオチド、
-任意選択で、少なくとも1つの定量化オリゴヌクレオチド、
-任意選択で、上記で定義された少なくとも1つのレポータープローブ、並びに/又は
-任意選択で、以下に定義されるバーコード化プライマーのセット。
【0175】
その他の構成要素
DNAツールボックス混合物はまた、好ましくは緩衝液も含む。
【0176】
緩衝液は、DNAツールボックス混合物中に存在するオリゴヌクレオチドに適合され、好ましくは、細胞又は細胞小器官にも適合される。一実施形態では、緩衝液は、特に、生細胞又は細胞小器官を無傷に維持し、細胞又は細胞小器官に任意のストレスを誘導しないのに好適である。
【0177】
緩衝液は、特に、反応の阻害を回避するために、好ましくは、PBSを含まない。
【0178】
しかしながら、緩衝液は、反応を阻害することなく、低レベルのリン酸イオンを含んでもよい。例えば、緩衝液は、約0.7mMのリン酸イオンである6%未満のPBSを含み得る。
【0179】
より概して、緩衝液は、好ましくは、リン酸イオンを含まない。
【0180】
緩衝液は、好ましくは、Tris-HClを含む。
【0181】
緩衝液は、好ましくは、特に、本方法が配列決定に使用される場合、逆転写酵素による逆転写に好適である。
【0182】
したがって、緩衝液は、好ましくは、例えば、3mM~6mMの濃度でMgSO4を更に含む。
【0183】
緩衝液は、特に、生細胞を使用する場合、例えば、50%以下、好ましくは、25%以下、好ましくは、15%以下の濃度で、好ましくは、12,5%以下の濃度で、細胞培地を更に含み得、パーセンテージは、v/vで表される。
【0184】
任意の好適な細胞培養培地、例えば、RPMI、FBS(Fetal Bovine Serum、ウシ胎児血清)及び少なくとも1つの抗生物質(例えば、ペニシリン及び/又はストレプトマイシン)を含む細胞培養培地などが使用され得る。
【0185】
上記で定義された緩衝液は、例えば、Tris-HCl pH8.3、KCl、MgCl2、MgSO4、及び任意選択で細胞培養培地を含み得る。
【0186】
例えば、生細胞の亜集団を選択するのに好適な緩衝液は、50mMのTris HCl pH8.3、75mMのKCl、3mMのMgCl2、3mMのMgSO4、及び任意選択で細胞培養培地を含み得る。
【0187】
例えば、固定された細胞の亜集団を選択するために好適な緩衝液は、50mMのTris HCl pH8.3、75mMのKCl、3mMのMgCl2、10mMのDTT、及び6mMのMgSO4を含み得る。
【0188】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、dNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、deoxyribonucleotide triphosphate)ミックス、すなわち、dATP、dTTP、dCTP及びdGTPを含むミックスを、例えば、各dNTPについて25μM~500μMの濃度で更に含む。
【0189】
dNTPは、特に、ポリメラーゼによるDNA合成及び/又は逆転写酵素による逆転写に必要とされる。
【0190】
DNAツールボックス混合物は、例えば、2μMの濃度で、ネトロプシンを更に含み得る。
【0191】
DNAツールボックスは、特に、本発明の方法が配列決定のために使用される場合、バーコード化プライマーのセットを更に含み得る。
【0192】
バーコード化プライマーのセットは、バーコード化プライマーのサブセットを含み、1つのサブセットのバーコード化プライマーは、同一であるが、別のサブセットとは異なる。
【0193】
したがって、DNAツールボックス混合物を複数の区画に分割する場合、各区画は、この区画に特異的なバーコード化プライマーのサブセットを含む。
【0194】
代替的には、バーコード化プライマーは、DNAツールボックス混合物中に提供されない。
【0195】
バーコード化核酸は、一本鎖オリゴヌクレオチド又は二本鎖オリゴヌクレオチドであり得る。
【0196】
バーコード化核酸は、好ましくは、以下を含む。
-増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な領域、
-任意選択で、固有分子識別子(unique molecule identifier、UMI)として使用されるランダム配列、
-任意選択で、バーコード配列を含む領域、
-任意選択で、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖領域、
-任意選択で、RNA分子若しくはDNA分子上の相補的配列に結合することができる、好ましくは、3’における領域、又は
-任意選択で、トークンオリゴヌクレオチドに相補的な、好ましくは、3’における一本鎖領域、並びに
-任意選択で、好ましくは、固体支持体と全てのバーコード化プライマーにおいて同じである領域との間に位置する、光切断可能なリンカー、化学的に切断可能なリンカー、及び/又は酵素認識部位。
【0197】
RNA分子上の相補的配列に結合することができる領域は、例えば、RNAのポリ(A)テールへの結合を可能にするポリT配列を含む。
【0198】
例えば、上記で定義されるバーコード化核酸は、以下を含み得るバーコード化プライマーである。
-増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な一本鎖領域、
-任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用される一本鎖ランダム配列、
-バーコード配列を含む一本鎖領域、
-任意選択で、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖領域、
-RNA分子又はDNA分子上の相補的配列に結合することができる、好ましくは、3’における一本鎖領域、
-任意選択で、トークンオリゴヌクレオチドに相補的な、好ましくは、3’における一本鎖領域、並びに
-任意選択で、好ましくは、固体支持体と全てのバーコード化プライマーにおいて同じである領域との間に位置する、光切断可能なリンカー、化学的に切断可能なリンカー、及び/又は酵素認識部位。
【0199】
例えば、上記で定義されるバーコード化核酸は、以下を含み得るバーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドである。
-増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な一本鎖領域、
-任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用される一本鎖ランダム配列、
-任意選択で、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な一本鎖領域、
-RNA上の相補的配列に結合することができる、好ましくは、3’における一本鎖領域、
-任意選択で、トークンオリゴヌクレオチドに相補的な、好ましくは、3’における一本鎖領域、並びに
-任意選択で、好ましくは、固体支持体と全てのバーコード化プライマーにおいて同じである領域との間に位置する、光切断可能なリンカー、化学的に切断可能なリンカー、及び/又は酵素認識部位。
【0200】
そのような場合、バーコード化プライマーは、5’にバーコード配列を含む領域、並びに3’に増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な領域、任意選択で、UMIを含む一本鎖オリゴヌクレオチドと組み合わせて使用される。
【0201】
例えば、上記で定義されるバーコード化核酸は、以下を含み得るバーコード化アダプターである。
-増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な二本鎖領域、
-任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用される二本鎖ランダム配列、
-バーコード配列を含む二本鎖領域、並びに
-任意選択で、好ましくは、固体支持体と全てのバーコード化プライマーにおいて同じである領域との間に位置する、光切断可能なリンカー、化学的に切断可能なリンカー、及び/又は酵素認識部位。
【0202】
例えば、上記で定義されたバーコード化核酸は、以下を含み得るバーコード化組換え部位である。
-二本鎖モザイク末端配列、
-増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な領域、
-任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列、
-バーコード配列を含む領域、並びに
-任意選択で、好ましくは、固体支持体と全てのバーコード化プライマーにおいて同じである領域との間に位置する、光切断可能なリンカー、化学的に切断可能なリンカー、及び/又は酵素認識部位。
【0203】
バーコード化プライマーは、好ましくは、ビーズ又はDNAマイクロアレイなどの固体支持体に結合される。
【0204】
固体支持体がDNAマイクロアレイである場合、バーコードは、固体支持体上のバーコード化プライマーの位置、例えば、区画の位置をコードする。DNAマイクロアレイの各区画は、他の区画のサブセットとは異なる、同一のバーコード化プライマーのサブセットを含む。
【0205】
固体支持体がビーズである場合、各固体ビーズは、他のビーズのサブセットとは異なる同一のバーコード化プライマーのサブセットを有する。
【0206】
細胞又は細胞小器官の亜集団を選択するための方法
本発明は、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法に関する。
【0207】
当該方法は、例えば、目的の表現型を有する細胞若しくは細胞小器官の亜集団を選択すること、細胞若しくは細胞小器官の亜集団における特定のタンパク質の存在を検出すること、及び/又はこの細胞の亜集団のゲノムDNA若しくはRNAを配列決定することを可能にする。
【0208】
「細胞又は細胞小器官」及び「細胞又は細胞小器官マーカー」は、特に、上記で定義されたとおりである。
【0209】
少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルは、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドの濃度によって決定され、その産生は、当該少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルに依存する。
【0210】
したがって、本発明は、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法であって、当該方法が、
a)当該細胞又は細胞小器官を複数の区画に分割することであって、区画の大部分が、1つの細胞型の単一細胞又は1つの細胞型の単一細胞小器官より多くを含まず、
少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと一緒であり、かつ
少なくとも1つのポリメラーゼと、少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素と、シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドと、を含むDNAツールボックス混合物を有するように、分割すること、
b)各区画において、細胞又は細胞小器官マーカーに結合されたアクチベーターオリゴヌクレオチド及び/又はリプレッサーオリゴヌクレオチドを、一緒にかつDNAツールボックス混合物の構成要素と相互作用させて、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド及び/又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成し、当該シグナルオリゴヌクレオチドを増幅すること、
c)少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の細胞又は細胞小器官を分析することを含む、方法に関する。
【0211】
ステップa)
ステップaは、区画の大部分が、1つの細胞型の単一細胞又は1つの細胞型の単一細胞小器官より多くを含まず、少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと一緒であり、かつ少なくとも1つのポリメラーゼと、少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素と、シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチドと、を含むDNAツールボックス混合物を有するように、当該細胞又は細胞小器官を複数の区画に分割することを含む。
【0212】
区画は、例えば、微小液滴、微小区画、微小チャンバー、又はケージであり得る。
【0213】
「アクチベーターオリゴヌクレオチド」、「リプレッサーオリゴヌクレオチド」、「DNAツールボックス混合物」、「ポリメラーゼ」、「制限酵素又はニッキング酵素」、及び「シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる増幅オリゴヌクレオチド」は、特に、上記で定義されたとおりである。
【0214】
「区画の大部分」という表現は、本明細書では、区画の少なくとも50%、好ましくは、区画の少なくとも70%、より好ましくは、区画の少なくとも75%、更により好ましくは区画の少なくとも80%を意味する。
【0215】
「区画は、1つの細胞型の単一細胞又は1つの細胞型の単一細胞小器官より多くを含まない」という文は、区画が少なくとも2つの細胞を含む場合、当該細胞の各々が異なる細胞型であること、又は区画が少なくとも2つの細胞小器官を含む場合、当該細胞小器官の各々が異なる細胞型であることを意味する。
【0216】
ステップa)では、細胞又は細胞小器官は、当該細胞又は細胞小器官、当該少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド、及び/又は当該DNAツールボックス混合物を含む混合物の形態で提供され得るか、あるいはそれらは、当該少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド及び/又はDNAツールボックス混合物とは別個に提供され得る。
【0217】
細胞又は細胞小器官マーカーは、好ましくは、表面マーカー、内部マーカー、分泌又は放出されたマーカー及び膜マーカーからなる群より選択される。
【0218】
少なくとも2つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドが使用される場合、それらは、上記で定義された2つの異なる種類のマーカーに結合し得る。
【0219】
細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドが膜アンカーである場合、ステップb)における区画内に存在するアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドの量は、ステップc)におけるシグナルオリゴヌクレオチドの濃度が、区画化された細胞の存在若しくは非存在及び/又は区画化された細胞の数及び/又は区画化された細胞のサイズの関数であるように、封入された細胞の膜の表面に比例する。
【0220】
マーカーが分泌又は放出されたマーカーではない一実施形態では、上記で定義された方法は、ステップa)の前に、
-当該細胞又は細胞小器官を、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと混合することと、
-任意選択で、細胞又は細胞小器官を洗浄して、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた未結合の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを除去することと、を含み得る。
【0221】
ステップa)では、DNAツールボックス混合物は、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される少なくとも1つの酵素を更に含み得る。
【0222】
アクチベーターオリゴヌクレオチドがシグナルオリゴヌクレオチド自体である場合、対応する変換オリゴヌクレオチドも前駆体オリゴヌクレオチドもDNAツールボックス混合物中に必要とされない。したがって、DNAツールボックス混合物は、当該シグナルオリゴヌクレオチドに対応する増幅オリゴヌクレオチドと、任意選択で、当該シグナルオリゴヌクレオチドに対応する漏出吸収オリゴヌクレオチドと、を含み得る。
【0223】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドが前駆体オリゴヌクレオチドである場合、DNAツールボックス混合物は、好ましくは、(i)当該前駆体オリゴヌクレオチドに対応する変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドと、(ii)任意選択で、当該前駆体オリゴヌクレオチドに対応する抗シグナルオリゴヌクレオチドと、(iii)それぞれ当該変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドから(それが産生する抗シグナルオリゴヌクレオチドを介して)産生又は不活性化されたシグナルオリゴヌクレオチドに対応する増幅オリゴヌクレオチドと、(iv)任意選択で、当該シグナルオリゴヌクレオチドに対応する漏出吸収オリゴヌクレオチドと、を含む。
【0224】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドが変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドである場合、DNAツールボックス混合物は、好ましくは、当該変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドに対応する前駆体オリゴヌクレオチドと、それぞれ当該変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドから(それが産生する抗シグナルオリゴヌクレオチドを介して)産生又は不活性化されたシグナルオリゴヌクレオチドに対応する増幅オリゴヌクレオチドと、任意選択で、当該シグナルオリゴヌクレオチドに対応する漏出吸収オリゴヌクレオチドと、を含む。
【0225】
アクチベーターオリゴヌクレオチドが、対応する前駆体オリゴヌクレオチドに融合された変換又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドである場合、DNAツールボックス混合物中に変換/抗シグナル変換オリゴヌクレオチドも前駆体オリゴヌクレオチドも必要とされない。したがって、DNAツールボックス混合物は、それぞれ当該変換オリゴヌクレオチド又は抗シグナル変換オリゴヌクレオチドから(それが産生する抗シグナルオリゴヌクレオチドを介して)産生又は不活性化されたシグナルオリゴヌクレオチドに対応する増幅オリゴヌクレオチドと、任意選択で、当該シグナルオリゴヌクレオチドに対応する漏出吸収オリゴヌクレオチドと、を含む。
【0226】
一実施形態では、細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドにカップリングされたアクチベーターオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼの鋳型として、及び/若しくはプライマーとして作用することによって1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチドを生成し、かつ/又は細胞若しくは細胞小器官マーカー特異的リガンドにカップリングされたリプレッサーオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼの鋳型として、及び/又はプライマーとして作用することによって1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成する。
【0227】
一実施形態では、少なくとも1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドは、少なくとも1つの対のリガンドを含み得、当該対のリガンドは、第1の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド及び第2の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを含み、当該第1及び第2のリガンドのそれらのマーカーへの結合は、当該第1のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドと、当該第2のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドとの間の近接伸長又は近接ライゲーションを誘導し、当該近接伸長又は近接ライゲーションは、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドの生成及び当該シグナルオリゴヌクレオチドの増幅をもたらす。
【0228】
一対のリガンドは、特に、分泌又は放出されたマーカーを使用する場合に、又は洗浄の必要性を除くため、又は洗浄ステップの数を制限するため、又は同じ細胞若しくは細胞小器官上の複数のマーカーの存在を研究するために使用される。
【0229】
一対のリガンドは、例えば、1つの細胞表面マーカー(例えば、当該リガンド分子の半分が第1のアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドでタグ付けされ、当該リガンド分子の半分が第2の1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドでタグ付けされている1つのリガンドのみを使用する)又は2つの細胞表面マーカー(2つの異なる表面マーカーに特異的な2つの異なるリガンドを使用し、各々が1つのアクチベーターオリゴヌクレオチド又はリプレッサーオリゴヌクレオチドでタグ付けされる)を標的とするために使用され得る。
【0230】
マーカー特異的リガンドは、好ましくは、上記で定義された少なくとも1つの対のリガンドを含み、当該対の第1及び第2のリガンドは、分泌又は放出されたマーカーに特異的であり、したがって、当該対の第1及び第2のリガンドは、当該分泌されたマーカーに同時に結合し得、それによって、当該第1のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドと、当該第2のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドとの間の近接伸長又はライゲーションを誘導し、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドの生成及び当該シグナルオリゴヌクレオチドの増幅をもたらす。
【0231】
近接伸長及び近接ライゲーションは、当業者に周知であり、例えば、Gullberg et al.,2004,PNAS,101(22)(doi.org/10.1073/pnas.0400552101)、Fredriksson et al.,2002,Nature Biotechnology vol 20,p473-477(https://doi.org/10.1038/nbt0502-473)、Di Giusto et al.,2005,Nucleic Acids Research,Vol 33(6),p e64(https://doi.org/10.1093/nar/gni063)、又はLundberg,2011,Nucleic Acids Research,Vol 39(15),p e102,(doi.org/10.1093/nar/gkr424)などである。
【0232】
同じ細胞又は細胞小器官上に存在するマーカーへの対の2つのリガンドの結合は、未結合オリゴヌクレオチドの効果と比較して、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドの生成速度を増加させ、その結果、ステップa)の前の洗浄ステップが減少又は抑制され得る。
【0233】
DNAツールボックス混合物は、好ましくは、シグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる1つ以上の漏出吸収オリゴヌクレオチドを含む。
【0234】
漏出吸収オリゴヌクレオチドは、特に、上記で定義されたとおりである。
【0235】
漏出吸収オリゴヌクレオチドは、アクチベーターオリゴヌクレオチドによって生成される刺激が閾値を下回る場合に、偽陽性を回避し、かつ/又はシグナル増幅を防止することを可能にする。
【0236】
使用され得る漏出吸収オリゴヌクレオチドは、例えば、文献国際公開第2017141067号又はMontagne et al.,2016,Nat Commun 7,13474(doi.org/10.1038/ncomms13474)に記載されている。
【0237】
漏出吸収オリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチドに特異的である。
【0238】
したがって、少なくとも2つのシグナルオリゴヌクレオチドが生成され、漏出吸収オリゴヌクレオチドがDNAツールボックス混合物中に存在する場合、各漏出吸収オリゴヌクレオチドは、1つのシグナルオリゴヌクレオチドに特異的である。
【0239】
アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドが上記で定義されたソース鋳型である場合、本方法は、好ましくは、ステップa)の前に、
-当該細胞又は細胞小器官を、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと混合することと、
-細胞又は細胞小器官を洗浄して、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた未結合の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを除去することと、を含む。
【0240】
ステップb)
ステップb)は、各区画において、細胞又は細胞小器官マーカーに結合されたアクチベーターオリゴヌクレオチド及び/又はリプレッサーオリゴヌクレオチドを、一緒にかつDNAツールボックス混合物の構成要素と相互作用させて、1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド及び/又は1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成し、当該シグナルオリゴヌクレオチドを増幅することを含む。
【0241】
「1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチドを生成する」という表現は、1種類のシグナルオリゴヌクレオチド又は少なくとも2つの異なる種類のシグナルオリゴヌクレオチドが生成されることを意味する。
【0242】
「1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドを生成する」という表現は、1種類のシグナルオリゴヌクレオチド又は少なくとも2つの異なる種類のシグナルオリゴヌクレオチドが生成されることを意味する。
【0243】
ステップb)では、シグナルオリゴヌクレオチドのみが増幅される。抗シグナルオリゴヌクレオチドは、増幅されない。
【0244】
ステップb)は、20℃~65℃、好ましくは、20℃~55℃、より好ましくは、20℃~45℃、例えば、35℃~40℃を含んだ温度で実施され得る。
【0245】
ステップc)
ステップc)は、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の細胞又は細胞小器官を分析することを含む。
【0246】
ステップc)では、ステップb)において少なくとも2つの異なる種類のシグナルオリゴヌクレオチドが生成され得る場合、各シグナルオリゴヌクレオチドがその対応する閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する場合、区画中の細胞又は細胞小器官が分析される。閾値は、実際に好ましくは、各シグナルオリゴヌクレオチドについて独立して設定される。
【0247】
上記で定義されたステップc)は、各シグナルオリゴヌクレオチド又はシグナルオリゴヌクレオチドの組み合わせがその対応する閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の細胞又は細胞小器官を分析することを含み得る。
【0248】
一実施形態では、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルは、少なくとも2つの共区画化された細胞又は細胞小器官の間の相互作用によって修飾され得、ステップc)は、細胞又は細胞小器官の間の相互作用の分析を可能にする。
【0249】
1つ以上のシグナルオリゴヌクレオチド及び1つ以上の抗シグナルオリゴヌクレオチドの生成、それに続くシグナルオリゴヌクレオチドの増幅は、マスターシグナルオリゴヌクレオチドと称される新しいシグナルオリゴヌクレオチドの増幅をもたらし得、マスターシグナルオリゴヌクレオチドの配列は、アクチベーターオリゴヌクレオチドから直接産生される任意のシグナルオリゴヌクレオチドの配列に関連しない。
【0250】
したがって、一実施形態では、シグナルオリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの異なるシグナルオリゴヌクレオチドに従って産生されるマスターシグナルオリゴヌクレオチドである。
【0251】
そのような場合、上記で定義されたステップb)は、複数のアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドからの入力を統合して、マスターシグナルオリゴヌクレオチドの形態で単一の出力を作製することを可能にする。
【0252】
上記で定義されたステップc)は、レポータープローブを添加することによってシグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定することであって、当該レポータープローブが、当該シグナルオリゴヌクレオチドによって特異的に活性化される、決定することと、当該シグナルオリゴヌクレオチドに結合されたレポータープローブによって放出されるシグナルを検出することと、を含み得る。
【0253】
レポータープローブは、上記で定義されたとおりであり得る。
【0254】
レポータープローブは、好ましくは、光学的レポータープローブであり、更により好ましくは、蛍光発生レポータープローブである。
【0255】
「活性化された」という用語は、本明細書では、レポータープローブと特異的シグナルオリゴヌクレオチドとの間の相互作用がレポータープローブの蛍光強度の変化をもたらすことを意味する。
【0256】
相互作用には、単純なハイブリダイゼーション、鎖置換、又はハイブリダイゼーション、それに続くポリメラーゼ伸長及び/若しくは制限酵素消化などの酵素活性を含み得る。
【0257】
したがって、上記で定義されたステップc)は、レポータープローブによって放出されるシグナルが閾値を上回るか又は下回る区画の細胞又は細胞小器官を選択的に分析することを含み得る。
【0258】
上記で定義されたステップc)は、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の内容物を回収することを含み得る。
【0259】
上記で定義されたステップc)は、定量化オリゴヌクレオチドを添加することによって少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドの濃度を決定することを含み得、当該定量化オリゴヌクレオチドは、当該少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する場合に、特異的に増幅される。
【0260】
定量化オリゴヌクレオチドは、特に、上記で定義されたとおりである。
【0261】
当該定量化オリゴヌクレオチドの増幅は、好ましくは、線形増幅からなり、より好ましくは、少なくとも1つのポリメラーゼ及び少なくとも1つの制限酵素又はニッキング酵素を使用する。
【0262】
同じ区画内に位置する定量化オリゴヌクレオチドは、区画特異的バーコード配列と関連付けられている。
【0263】
定量化オリゴヌクレオチドは、好ましくは、更に、バーコード化プライマー上のcDNAの伸長、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド上のcDNAの伸長、バーコード化アダプターのライゲーション、又はバーコード化組換え部位での組換えへの区画特異的バーコード配列を含む。
【0264】
次いで、当該回収された内容物は、細胞若しくは細胞小器官の核酸を配列決定すること、及び/又は核酸配列を標識することによって分析され得る。
【0265】
「標識核酸」とは、本明細書では、細胞若しくは細胞小器官マーカーに結合するリガンド、又は細胞若しくは細胞小器官マーカーと反応する分子を介して、細胞又は細胞小器官に結合された核酸を意味し、当該核酸の配列は、リガンド又は反応分子に特異的である。好ましい実施形態では、標識核酸は、細胞又は細胞小器官マーカーに結合する抗体と関連付けられる。
【0266】
上記で定義されたステップc)は、少なくとも1つのシグナルオリゴヌクレオチドが閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する区画の細胞を回収することと、更なる分析の前に細胞を培養することと、を含み得る。
【0267】
好ましい一実施形態では、同じ区画内に位置する細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸配列は、区画特異的バーコード配列と関連付けられている。
【0268】
細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸は、例えば、更に、バーコード化プライマー上のcDNAの伸長、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド上のcDNAの伸長、バーコード化アダプターのライゲーション、又はバーコード化組換え部位での組換えへの区画特異的バーコード配列を含み得る。
【0269】
上記で定義された好ましい方法において、シグナルオリゴヌクレオチド、例えば、マスターシグナルオリゴヌクレオチドの蓄積は、同じ区画内に位置する細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸配列の選択的配列決定をもたらす。
【0270】
細胞は、ステップb)の終わりに、特に、シグナルオリゴヌクレオチドの蓄積後に溶解され得る。
【0271】
上記で定義されたバーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位は、少なくとも1つの光解離性保護基を含み得、ステップc)において、レポータープローブからのシグナルが閾値を上回るか又は下回る区画について、当該バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位の光脱保護が生じ、それによって、細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸と区画特異的バーコード配列との選択的関連付けが可能になる。
【0272】
上記で定義されるバーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位は、光切断可能な連結を含み得、ステップc)において、レポータープローブからのシグナルが閾値を上回るか又は下回る区画について、当該バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位の光切断が生じ、それによって、プライマー配列、鋳型スイッチングオリゴ配列、アダプター配列、又は組換え部位、及び区画特異的配列バーコードを含む細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸の固体支持体からの選択的放出が可能になる。
【0273】
上記で定義されるステップc)では、シグナルオリゴヌクレオチドの結合、及び任意選択で、伸長は、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位及び区画特異的配列バーコードを含む細胞若しくは細胞小器官の核酸及び/又は標識核酸の固体支持体からの選択的放出をもたらし得る。
【0274】
一実施形態では、シグナルオリゴヌクレオチドの結合、及び任意選択で、伸長は、制限酵素又はエンドヌクレアーゼの認識部位の作製をもたらし、固体支持体からの放出は、対応する制限酵素又はエンドヌクレアーゼによる切断による。
【0275】
別の実施形態では、鎖置換活性を有するポリメラーゼによるシグナルオリゴヌクレオチドの結合及び伸長は、鎖侵入及び固体支持体からの放出をもたらす。
【0276】
「鎖侵入」という表現は、本明細書では、放出される核酸が、表面テザーオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって支持体に結合され、当該表面係留されたオリゴヌクレオチドは、シグナルオリゴヌクレオチド結合ドメインを含むこと、及び係留されたオリゴヌクレオチド上のシグナルオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ伸長(したがって鋳型として作用する)が、放出される核酸を鎖置換することを意味する。
【0277】
固体支持体がビーズである場合、各区画は、好ましくは、単一ビーズ以下を含み、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位は、当該区画のビーズに特異的なバーコード配列を担持する。
【0278】
固体支持体が、微小区画又はケージの壁である場合、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位は、好ましくは、区画特異的バーコード配列を担持する。
【0279】
微小区画又はケージの壁は、微小区画又はケージの上部、底部、又は側部であり得る。
【0280】
一実施形態では、
-ステップa)におけるDNAツールボックス混合物は、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼを含み、
-ステップa)における各区画は、区画特異的バーコード配列及びRNAに結合することができる領域を担持するオリゴヌクレオチドを含み、当該オリゴヌクレオチドは、固体支持体に結合されており、
-ステップc)において、細胞又は細胞小器官は、溶解され、それによってRNAを放出し、区画特異的バーコード配列及びRNAに結合することができる領域を担持するオリゴヌクレオチドは、放出されたRNAに対して、逆転写酵素活性を有するポリメラーゼによって触媒されるcDNA合成をプライミングするために使用され、区画特異的バーコードを担持するcDNAをもたらし、
-ステップc)において、少なくともシグナルオリゴヌクレオチドが、閾値を上回るか又は下回る濃度で存在する場合に、区画特異的バーコードを担持するcDNAが、固体支持体から放出され、放出されたバーコード化cDNA及び/又は放出されていないバーコード化cDNAが、配列決定によって分析され、かつ
-任意選択で、ステップc)において、トークンオリゴヌクレオチドは、区画特異的バーコードにハイブリダイゼーションされ、任意選択で、DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA合成をプライミングするために使用され、区画特異的バーコードを担持するDNAをもたらす。
【0281】
【0282】
図11は、DNAツールボックスの構成要素、表面マーカー、分泌された又は表面マーカーに対する近接効果、及びマーカーの組み合わせに関する異なる実施形態を示す。
【0283】
図11Aは、DNAツールボックスの構成要素を示す。DNAツールボックス中(溶液中)に存在する酵素及びオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用して、入ってくるオリゴヌクレオチド(ここではa)に対して様々な機能を実施し得る:変換(例えば、オリゴヌクレオチドaからオリゴヌクレオチドbへ)は、ポリメラーゼ(P)及びニッカーゼ(N)の作用下で、変換鋳型(変換オリゴヌクレオチドとも称される)によって実施され、抑制は、ポリメラーゼ(P)の作用下で、抗シグナルオリゴヌクレオチド又は漏出吸収オリゴヌクレオチドによって、入ってくるオリゴヌクレオチドに3’テールを付加する(例えば、ここでは、aをadに変換する)ことによって実施され、増幅は、ポリメラーゼ(P)及びニッカーゼ(N)の作用下で、増幅鋳型によって、例えば、1コピーのaから開始して2コピーのaを産生することによって実施される。変換/増幅と抑制効果との間のバランスに依存して、オリゴヌクレオチドは増幅され得るか又はされ得ない。増幅されたオリゴヌクレオチドは、様々な目的のために、例えば、レポーター鋳型を使用して蛍光読み出しを産生するために、固体支持体からプライマーを放出するために、又はプライマーを脱保護するために使用され得る。
【0284】
図11Bは、オリゴヌクレオチドコンジュゲートマーカー特異的リガンドのDNAツールボックスへのカップリングを示す。1)において、抗体コンジュゲート化アクチベーターオリゴヌクレオチドの3’部分は、増幅鋳型上で直接プライミングし、2)において、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、(溶液中で)同族コンバーター鋳型(変換オリゴヌクレオチドとも称される)と組み合わせて、シグナル又は抗シグナルオリゴヌクレオチドを産生する
【0285】
【0286】
【数2】
は、溶液中で提供されるマーカー特異的リガンド(抗体)及び対応する前駆体オリゴヌクレオチド(b)上に結合され得る。先のように、この構造は、コンバーター鋳型の出力に依存して、シグナルオリゴヌクレオチドa又は抗シグナルオリゴヌクレオチド
【0287】
【数3】
のいずれかを産生し得る。4)アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、重合のために既にプライミングされているコンバーター鋳型(変換オリゴヌクレオチドとも称される)であり得る。この設計はソース鋳型と称される。ソース鋳型は、安定な二重鎖であり得るか(示さず)、又はプライミング部分(b)は、鋳型部分に(例えば、DNAループ又は非DNAリンカーで)共有結合的に融合され得る。この自己プライミング鋳型は、シグナルオリゴヌクレオチドa又は抗シグナルオリゴヌクレオチド
【0288】
【数4】
を(ソース鋳型の出力に依存して)構成的に産生する。
【0289】
図11Cは、分泌された又は表面マーカーについての近接効果を示す。1)において、近接伸長設計:2つのマーカー特異的リガンドは、アクチベーターオリゴヌクレオチドで官能化する。可溶性標的に対する結合によってごく近接した場合、2つのアクチベーターオリゴヌクレオチドの間の相互作用は、シグナルオリゴヌクレオチド(又はリプレッサーオリゴヌクレオチドの場合は抗シグナル
【0290】
【数5】
)の産生を誘導する。様々な幾何学が可能である(左から右へ):一方のリガンドは、アクチベーターオリゴヌクレオチド(b)の5’末端にカップリングされており、他方は、変換オリゴヌクレオチド
【0291】
【数6】
の5’末端にカップリングされており、同じであるが、変換オリゴヌクレオチドはその3’末端を介してカップリングされる。両方のマーカー特異的リガンドは、交差相補性3’末端を有する変換鋳型の5’末端にカップリングされ、したがって、互いにプライミングすることができる。2)近接ライゲーション設計において、2つのマーカー特異的なリガンド結合されたアクチベーターオリゴヌクレオチドの間の標的誘導性近接は、ライゲーション反応(L)を可能にし、これは変換オリゴヌクレオチド(ここでは、bによってプライミングされる)を作製する。3)近接効果はまた、同じ標的ではなく、同じ細胞への2つのマーカー特異的リガンドの結合によっても誘導され得る。2つの標的マーカーは、化学的に同一(上部)であっても、化学的に異なっていてもよい(下部)。
【0292】
図11Dは、マーカーの組み合わせを示す。マーカーの特定の組み合わせの検出(すなわち、複数のマーカーのそれぞれのレベルが特定の条件に適合する場合の増幅の誘発)の場合。ここで、全てのケース1~3において、実施例は、2つのマーカーで示されているが、同じ原理が3つ以上のマーカーに適用される。1)2つのリガンド結合されたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、並行して作用し、複数のシグナルオリゴヌクレオチドを特異的に活性化又は抑制する。パネルBと同様に、各リガンド結合されたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、パネルBに示されるように、シグナル(a)、変換オリゴヌクレオチド
【0293】
【数7】
などであり得る。2)2つのリガンド結合されたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドは、同じシグナル及び/又は抗シグナルオリゴヌクレオチドを産生し、2つの間のバランスが、シグナルオリゴヌクレオチドが最終的に増幅されるかどうかを決定する。3)アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチド及びDNAツールボックス構成要素が、最終的にマスターシグナルmの増幅を誘導する中間種を産生する、より洗練された生体分子構造を、設計して、より複雑なマーカーパターンを示す細胞又は細胞小器官を選択し得る。
【0294】
【0295】
図12Aでは、単一の細胞、細胞小器官又は所定数の細胞若しくは細胞小器官を含有する区画内に存在する酵素及びオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用して、プライマーハイブリダイゼーションを介して目的の一本鎖配列のバーコード化を実施し得る。
【0296】
(i)において、核酸は、RNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む。プライマーのRNAへのハイブリダイゼーション及びプライマーの伸長は、増幅及び/又は配列決定のためのPCRプライマー部位と、区画特異的バーコードと、任意選択で、UMIと、を担持するcDNAの産生をもたらす。
【0297】
(ii)において、第1の核酸は、RNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、を含む。第2の核酸は、全長cDNAの末端に逆転写酵素によって付加された非鋳型化「CCC」3’-オーバーハングに相補的な配列(好ましくは、rGrGrG)と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「D」と、任意選択で、UMIと、を含む。第1の核酸のRNAへのハイブリダイゼーション及びプライマーの伸長は、非鋳型化「CCC」3’-オーバーハングを有する第1鎖cDNA分子の産生をもたらす。第2の核酸の「CCC」3’-オーバーハングへのハイブリダイゼーション、それに続く逆転写酵素の「鋳型スイッチング」は、増幅及び/又は配列決定のためのPCRプライマー部位と、区画特異的バーコードと、任意選択で、UMIと、を担持するcDNAの生成をもたらす。
【0298】
(iii)において、核酸は、DNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む。プライマーのDNAへのハイブリダイゼーション及びプライマーの伸長は、増幅及び/又は配列決定のためのPCRプライマー部位と、区画特異的バーコードと、任意選択で、UMIと、を担持するDNAの産生をもたらす。
【0299】
図12Bでは、単一の細胞、細胞小器官又は所定数の細胞若しくは細胞小器官を含有する区画内に存在する酵素及びオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用して、アダプターライゲーションを介してバーコード化を実施し得る。区画において、細胞又は細胞小器官由来のDNAが断片化されて、付着末端又は平滑末端のいずれかを有する二本鎖DNA断片を生成する。同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含有する、二本鎖DNA断片のライゲーション(平滑末端付着末端ライゲーションを介して)に適合するDNAアダプター分子が、同じ区画内に存在する。細胞由来の断片化されたDNAのアダプターへのライゲーションは、増幅及び/又は配列決定のためのPCRプライマー部位と、区画特異的バーコードと、任意選択で、UMIと、を担持するDNAの産生をもたらす。
【0300】
図12Cでは、単一の細胞、細胞小器官又は所定数の細胞若しくは細胞小器官を含有する区画内に存在する酵素及びオリゴヌクレオチドの組み合わせを使用して、組換えを介して目的の二本鎖核酸のバーコード化を実施し得る。リコンビナーゼ(例えば、Tn5トランスポザーゼ)に、二本鎖モザイク末端配列「E」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む核酸に担持される。組換えは、細胞又は細胞小器官由来の二本鎖核酸の同時断片化及びバーコード化(「タグメンテーション」)をもたらす。
【0301】
図13は、蛍光発生レポーター鋳型を使用した蛍光読み出し後の光切断媒介選択を示す。
【0302】
図13Aでは、DNAツールボックスの増幅されたシグナルオリゴヌクレオチドを使用して、レポーター鋳型を使用する蛍光読み出しを産生し得る。区画における蛍光シグナルの検出によって与えられる情報は、目的の区画の選択的UV照射による光切断可能なスペーサー脱保護(a.)又は固体支持体からの放出(b.)を介して誘発するために使用される。放出された核酸は、RNA又はDNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む。放出された核酸の構造は、ライゲーション及び組換えによる細胞の核酸のバーコード化を可能にするように適合され得る(
図12を参照されたい)。この場合、放出された核酸は、配列「B」及び「C」のみを含み、断片化された細胞のDNAにライゲーションされるアダプターとして機能するか、又は細胞の核酸との組換えを可能にする二本鎖モザイク末端配列「E」を更に含む。
【0303】
図13Bでは、DNAツールボックスの増幅されたシグナルオリゴヌクレオチドを使用して、レポーター鋳型を使用する蛍光読み出しを産生し得る。区画における蛍光シグナルの検出によって与えられる情報は、目的の区画における光ケージ化核酸塩基の選択的UV照射によって、ハイブリダイゼーションを誘発し、エンドヌクレアーゼのための制限部位「X」を含有する二本鎖DNAのストレッチを形成して、固体支持体から核酸を放出させる(a.)ために使用される。代替的には、光ケージされた核酸塩基のUV照射は、RNA若しくはDNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」の脱保護(b.)、又は一本鎖DNA若しくはRNAへのハイブリダイゼーションを遮断するためのハイブリダイゼーションを介した保護(c.)を誘発し得る。代替的には、光ケージされた核酸塩基のUV照射は、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」、及び任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列、及びRNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」を分離することによって、増幅又は配列決定を防止するために、バーコード化プライマーの脱保護を誘発し得る(d.)。放出された核酸は、RNA又はDNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む。放出された核酸の構造は、ライゲーション及び組換えによる細胞の核酸のバーコード化を可能にするように適合され得る(
図12を参照されたい)。この場合、放出された核酸は、配列「B」及び「C」のみを含み、断片化された細胞のDNAにライゲーションされるアダプターとして機能するか、又は細胞の核酸との組換えを可能にする二本鎖モザイク末端配列「E」を更に含む。
【0304】
図14は、DNAツールボックスベースの直接選択を示す。
【0305】
図14Aでは、DNAツールボックスの増幅されたシグナルオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションした場合、重合を開始し、エンドヌクレアーゼのための制限部位「X」を含有する二本鎖DNAのストレッチを形成して、固体支持体から核酸を放出し得るか(a.)、又は鎖置換活性を有するポリメラーゼが使用される場合、鎖置換によって固体支持体上にグラフトされた核酸上に予めハイブリダイゼーションした一本鎖核酸を放出し得る(b.)。放出された核酸は、RNA又はDNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」と、同じ区画内に存在する核酸の同定のための区画特異的バーコード配列を含む配列「B」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、を含む。放出された核酸の構造は、ライゲーション及び組換えによる細胞の核酸のバーコード化を可能にするように適合され得る(
図12を参照されたい)。この場合、放出された核酸は、配列「B」及び「C」のみを含み、断片化された細胞のDNAにライゲーションされるアダプターとして機能するか、又は細胞の核酸との組換えを可能にする二本鎖モザイク末端配列「E」を更に含んだ。
【0306】
図14Bでは、DNAツールボックスの増幅されたシグナルオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションした場合、二本鎖DNAのストレッチを形成し得る。この二本鎖DNAストレッチは、バーコード化プライマーを脱保護するエンドヌクレアーゼのための制限部位「X」を含有する(a.)。代替的には、二本鎖DNAは、バーコード化プライマーを脱保護し、分離することによって増幅又は配列決定を防止するエンドヌクレアーゼの制限部位「X」と、増幅及び/又は配列決定のためのプライマーに相補的な配列「C」と、任意選択で、固有分子識別子(UMI)として使用されるランダム配列と、RNA分子上の相補的配列にハイブリダイゼーションする一本鎖配列「A」とを含有する(b.)。代替的には、DNAツールボックスの増幅されたシグナルオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、一本鎖DNA又はRNAへのハイブリダイゼーションを直接遮断する(c.)。このプロトコルは、ライゲーション及び組換えによる細胞の核酸のバーコード化を可能にするように適合され得る(
図12を参照されたい)。この場合、放出された核酸は、配列「B」及び「C」のみを含み、断片化された細胞のDNAにライゲーションされるアダプターとして機能するか、又は細胞の核酸との組換えを可能にする二本鎖モザイク末端配列「E」を更に含む。
【0307】
特許請求される方法を実装するためのキット及びその使用
本発明はまた、上記で定義された少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法を実装するためのキットに関する。
【0308】
上記で定義されたキットは、例えば、
a)少なくとも1つのポリメラーゼ、少なくとも1つのニッキング酵素又は制限酵素、並びに任意選択で、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、逆転写酵素、リガーゼ、リコンビナーゼ、グリコシラーゼ、及びDNAプロセシング酵素からなる群から選択される少なくとも1つの酵素と、
b)少なくとも1つのアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドと、
c)シグナルオリゴヌクレオチドに結合して増幅することができる少なくとも1つの増幅オリゴヌクレオチド、並びに任意選択で、非特異的増幅を回避するための漏出吸収オリゴヌクレオチド、アクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドをシグナル又は抗シグナルオリゴヌクレオチドに変換することができる変換オリゴヌクレオチド、シグナルオリゴヌクレオチドの検出を可能にするレポートプローブ、及びシグナルオリゴヌクレオチドの濃度の決定を可能にする定量化オリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1つのオリゴヌクレオチドと、
d)任意選択で、バーコード化プライマー、バーコード化鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド、バーコード化アダプター、又はバーコード化組換え部位を含むバーコード化核酸のセットと、
e)任意選択で、マイクロ流体デバイスと、を含む。
【0309】
a)の酵素、少なくとも1つのアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドにカップリングされた細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド、b)のオリゴヌクレオチド、及びバーコード化核酸のセットは、特に、上記で定義されたとおりである。
【0310】
バーコード化核酸は、好ましくは、ビーズなどの固体支持体に、又は微小区画若しくはケージの壁に結合される。
【0311】
バーコード化プライマーは、好ましくは、DNAツールボックス混合物の構成要素によって産生されるシグナルオリゴヌクレオチドに結合することができる配列、光切断可能領域、酵素切断可能領域、又は化学的切断可能領域、及びRNAに結合することができる領域を含む。
【0312】
上記で定義されたキットは、b)において、少なくとも1つの対の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを含み得、当該対のリガンドは、第1の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンド及び第2の細胞又は細胞小器官マーカー特異的リガンドを含み、当該第1及び第2のリガンドのそれらのマーカーへの結合は、当該第1のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドと、当該第2のリガンドにカップリングされたアクチベーター又はリプレッサーオリゴヌクレオチドとの間の、特に、上記で定義された近接伸長又は近接ライゲーションを誘導する。
【0313】
キットは、分配剤、好ましくは、ウンデカン-1-オール、シリコーン油、鉱油、及び/又は全フッ素置換油などの連続疎水性相を更に含み得る。
【0314】
本発明はまた、特に、少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルを決定することに基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための、上記で定義されたキットの使用に関する。
【0315】
本発明は、特に、上記で定義された少なくとも1つの細胞又は細胞小器官マーカーのレベルの決定に基づく、細胞又は細胞小器官の亜集団の選択的分析のための方法における、上記で定義されたキットの使用に関する。
【0316】
本発明を、以下の図面及び実施例によって更に説明する。しかしながら、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0317】
配列の簡単な説明
配列番号1の配列は、本明細書においてB11aと称されるシグナルオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0318】
配列番号2の配列は、本明細書においてCB11a-2PS3と称される増幅オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0319】
配列番号3の配列は、本明細書においてpTB11aPS3と称される漏出吸収オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0320】
配列番号4の配列は、レポートプローブのヌクレオチド配列に対応する。本明細書においてMBB11aBsmIAtto633と称されるレポートプローブは、5’にフルオロフォアAtto633、3’にクエンチャーBHQ2がカップリングされた配列番号4の配列のオリゴヌクレオチドからなる。
【0321】
配列番号5の配列は、本明細書においてTSBtoB11a-2+2Pと称される変換オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0322】
配列番号6の配列は、本明細書においてTotalSeqBと称されるアクチベーターオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0323】
配列番号7の配列は、本明細書においてLet7atoB11a-2+2Pと称される変換オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0324】
配列番号8の配列は、本明細書においてTD05_TotalSeqBと称される、アクチベーターオリゴヌクレオチドにカップリングされたアプタマーのヌクレオチド配列に対応する。
【0325】
配列番号9の配列は、本明細書においてTE02_TotalSeqBと称される、アクチベーターオリゴヌクレオチドにカップリングされたアプタマーのヌクレオチド配列に対応する。
【0326】
配列番号10の配列は、アクチベーターオリゴヌクレオチド(3’に)に連結されたリンカー配列(T)10(5’に)のヌクレオチド配列に対応する。(6-アミノ-6-オキソヘキシル)カルバミン酸リンカーによってプロリノールに連結されたコレステロール部分は、本明細書においてDLet7a T10 ChoProと称されるオリゴヌクレオチドの5’末端に結合される。
【0327】
配列番号11の配列は、本明細書においてBc12と称されるシグナルオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0328】
配列番号12の配列は、本明細書においてCBc12-2PS4と称される増幅オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0329】
配列番号13の配列は、本明細書においてpTBc12T5SPと称される漏出吸収オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0330】
配列番号14の配列は、レポートプローブのヌクレオチド配列に対応する。本明細書においてMBBcBsmIAtto633と称されるレポートプローブは、5’にフルオロフォアAtto633、3’にクエンチャーBHQ2がカップリングされた配列番号14の配列のオリゴヌクレオチドからなる。
【0331】
配列番号15の配列は、本明細書においてTSBtoBc-2+2Pと称される変換オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0332】
配列番号16の配列は、アプタマーのヌクレオチド配列に対応する。
【0333】
配列番号17の配列は、アプタマーのヌクレオチド配列に対応する。
【0334】
配列番号18の配列は、アクチベーターオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0335】
配列番号19の配列は、粒子に結合され得、シグナルオリゴヌクレオチドに相補的な3’部分を有するオリゴヌクレオチドのDNA配列に対応する。
【0336】
配列番号20の配列は、シグナルオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0337】
配列番号21の配列は、シグナルオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に対応する。
【0338】
配列番号22及び23の配列を表8に示す。
【0339】
配列番号24の配列は、配列番号22と配列番号23との間の共通のオリゴヌクレオチド配列である。
【0340】
配列番号25の配列は、柔軟なリンカーである。
【0341】
配列番号26~27の配列を表13に示す。
【0342】
配列番号29~31の配列を表15に示す。
【0343】
配列番号32~35の配列を表18に示す。
【0344】
配列番号36~38の配列を表19に示す。
【0345】
配列番号39~42の配列を表20に示す。
【0346】
配列番号43~45の配列を表21に示す。
【0347】
配列番号46~98の配列を表22に示す。
【0348】
配列番号99の配列を表24に示す。
【0349】
配列番号100~102の配列を表25に示す。
【0350】
配列番号103~107の配列を表26に示す。
【0351】
配列番号108及び109の配列を表27に示す。
【0352】
配列番号110及び111の配列を表28に示す。
【0353】
配列番号112及び113の配列を表29に示す。
【0354】
配列番号114の配列を表8に示し、配列番号115の配列を表15に示す。
【図面の簡単な説明】
【0355】
【
図1】リン酸緩衝生理食塩水は、DNAツールボックスの等温増幅反応に対して害を及ぼす 自己触媒反応は、オリゴヌクレオチドBc12を増幅するために設定される。増幅混合物は、様々な濃度のPBSを含有するように修飾される。トリガーBc12の非存在下(左)又は存在下(1nM、右)での増幅曲線。
【0356】
【
図2】分子プログラムを37℃で作動するように適合させる (a)50℃でTotalSeqBを検出するために最適化された分子プログラムのためにある範囲の温度を使用した。比Cq
NC/Cq
10pMは、検出の有効性を特徴付ける:比が高いほど、TotalSeqBの検出が良好である。TotalSeqB標的の濃度と高温(>46.3℃)での増幅時間(Cq)との間に明らかな用量応答が存在する。より低い温度では、異なる濃度のTotalSeqBを有する試料の増幅時間の間に実質的な差はなく、この増幅システムに対する温度の重要さを強調する。 (b)ある範囲のMgSO
4を、図aと同じ分子プログラムであるが、逆転写に使用したものに近い緩衝液中で、46℃で実現した。比Cq
NC/Cq
10pMは、検出の有効性を特徴付ける:比が高いほど、TotalSeqBの検出が良好である。この場合、3mMのMgSO
4が最良の選択のようである。 (c)TotalSeqBの範囲は、最適化された新しい緩衝液中で新しい分子プログラムを用いて37℃で実現された。DNAツールボックスの出力は、TotalSeqBの濃度に相関する。Cqが低いほど、TotalSeqBの濃度は高い。
【0357】
【
図3-1】細胞生存率及び分子プログラムからの増幅反応の両方に対する細胞培地の影響 (a)ある範囲の細胞培地(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を、それぞれTotalSeqBなし、1pMのTotalSeqB、及び10pMのTotalSeqBで実現した。Atto633蛍光を監視した(記録時間:1002分)。(i)10pMのTotalSeqB試料についてのAtto633(左)及びEvagreen挿入色素(右)についての増幅曲線。これらの曲線から、増幅開始時間Cq(ii)及び逸脱時間(iii)が抽出される:50%の細胞培地では、増幅は開始せず、25%以下から、細胞培地は、TotalSeqB配列によって誘発される増幅反応を妨害しなかった。50%及び25%では逸脱が観察されたが、12.5%以下では逸脱は観察されなかった。 (b)細胞生存に対する緩衝液の影響。3T3(i)及びJurkat(ii)細胞を、12.5%の細胞培地を補充したか又は補充していない、3mMのMgSO
4を含むFS緩衝液1×中、室温で一晩(16時間)置いた。細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリーによって分析して、生細胞及び死細胞の割合を抽出した。12.5%の細胞培地を添加すると、3T3細胞及びJurkat細胞についてそれぞれ、生細胞の割合が27%~79%(i)及び6%~25%(ii)に増加した。 (c)ある範囲の未染色又はDLet7aT10ChoPro染色Ramos細胞を、12.5%の(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を含有する増幅混合物とともにインキュベーションした。細胞数の関数のCqの負の相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量に相関するが、未染色細胞の濃度とは無関係に増幅は観察されなかった。細胞培地は、染色された細胞の検出に影響を及ぼさない。
【
図3-2】細胞生存率及び分子プログラムからの増幅反応の両方に対する細胞培地の影響 (a)ある範囲の細胞培地(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を、それぞれTotalSeqBなし、1pMのTotalSeqB、及び10pMのTotalSeqBで実現した。Atto633蛍光を監視した(記録時間:1002分)。(i)10pMのTotalSeqB試料についてのAtto633(左)及びEvagreen挿入色素(右)についての増幅曲線。これらの曲線から、増幅開始時間Cq(ii)及び逸脱時間(iii)が抽出される:50%の細胞培地では、増幅は開始せず、25%以下から、細胞培地は、TotalSeqB配列によって誘発される増幅反応を妨害しなかった。50%及び25%では逸脱が観察されたが、12.5%以下では逸脱は観察されなかった。 (b)細胞生存に対する緩衝液の影響。3T3(i)及びJurkat(ii)細胞を、12.5%の細胞培地を補充したか又は補充していない、3mMのMgSO
4を含むFS緩衝液1×中、室温で一晩(16時間)置いた。細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリーによって分析して、生細胞及び死細胞の割合を抽出した。12.5%の細胞培地を添加すると、3T3細胞及びJurkat細胞についてそれぞれ、生細胞の割合が27%~79%(i)及び6%~25%(ii)に増加した。 (c)ある範囲の未染色又はDLet7aT10ChoPro染色Ramos細胞を、12.5%の(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を含有する増幅混合物とともにインキュベーションした。細胞数の関数のCqの負の相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量に相関するが、未染色細胞の濃度とは無関係に増幅は観察されなかった。細胞培地は、染色された細胞の検出に影響を及ぼさない。
【
図3-3】細胞生存率及び分子プログラムからの増幅反応の両方に対する細胞培地の影響 (a)ある範囲の細胞培地(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を、それぞれTotalSeqBなし、1pMのTotalSeqB、及び10pMのTotalSeqBで実現した。Atto633蛍光を監視した(記録時間:1002分)。(i)10pMのTotalSeqB試料についてのAtto633(左)及びEvagreen挿入色素(右)についての増幅曲線。これらの曲線から、増幅開始時間Cq(ii)及び逸脱時間(iii)が抽出される:50%の細胞培地では、増幅は開始せず、25%以下から、細胞培地は、TotalSeqB配列によって誘発される増幅反応を妨害しなかった。50%及び25%では逸脱が観察されたが、12.5%以下では逸脱は観察されなかった。 (b)細胞生存に対する緩衝液の影響。3T3(i)及びJurkat(ii)細胞を、12.5%の細胞培地を補充したか又は補充していない、3mMのMgSO
4を含むFS緩衝液1×中、室温で一晩(16時間)置いた。細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリーによって分析して、生細胞及び死細胞の割合を抽出した。12.5%の細胞培地を添加すると、3T3細胞及びJurkat細胞についてそれぞれ、生細胞の割合が27%~79%(i)及び6%~25%(ii)に増加した。 (c)ある範囲の未染色又はDLet7aT10ChoPro染色Ramos細胞を、12.5%の(RPMI+10%のFBS+1%のP/S)を含有する増幅混合物とともにインキュベーションした。細胞数の関数のCqの負の相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量に相関するが、未染色細胞の濃度とは無関係に増幅は観察されなかった。細胞培地は、染色された細胞の検出に影響を及ぼさない。
【0358】
【
図4】抗体グラフト化オリゴヌクレオチドは、DNAツールボックスによって遊離オリゴヌクレオチドと同様に検出される (a)TotalSeqBオリゴ検出。様々な濃度のTotalSeqBでスパイクされた試料の増幅曲線(左)を37℃で監視し、Cqを抽出した(右)。 (b)TotalSeqBコンジュゲート抗体検出。様々な濃度の抗CD3-TotalSeqB抗体でスパイクされた試料の増幅曲線(左)を37℃で監視し、Cqを抽出した(右)。
【0359】
【
図5】オリゴヌクレオチドコンジュゲート抗体を使用したRamos細胞の検出 (a)TotalSeqBコンジュゲート抗CD3抗体で染色されたRamos細胞を、ToalSeqB特異的分子プログラムにおいて様々な濃度でインキュベーションした。増幅曲線をリアルタイムで監視し(左)、増幅時間を抽出した(右)。増幅曲線のCq値は、染色された細胞の数に反比例する。 (b)陰性対照は、様々な濃度の未染色細胞を用いて実施された。増幅曲線のCq値は互いに非常に近く、細胞の数を区別しない。
【0360】
【
図6-1】細胞特異的アプタマーで染色された細胞の検出 (a)アプタマーを修飾してツールボックスを活性化する方法を示す概略構造。報告されたアプタマー配列の3’に特定の配列(TotalSeqB)を付加した。 (b)細胞を特異的アプタマーで染色する。細胞が標的化されたマーカーを提示する場合、アプタマーはそれに結合し、したがって、DNAツールボックスによる入力として使用され得る。 (c)両方のアプタマーは、未染色細胞と比較してより低いCqによって示唆されるように、Ramos細胞に結合する。TD05_TotalSeqBは、最もよく増幅を開始することが示された。 (d)ある範囲のTD05_TotalSeqB染色Ramos細胞が実現された。細胞の数の関数のCqの相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量に比例するが、アプタマーなしで染色されたRamos細胞の場合はそうではない。
【
図6-2】細胞特異的アプタマーで染色された細胞の検出 (a)アプタマーを修飾してツールボックスを活性化する方法を示す概略構造。報告されたアプタマー配列の3’に特定の配列(TotalSeqB)を付加した。 (b)細胞を特異的アプタマーで染色する。細胞が標的化されたマーカーを提示する場合、アプタマーはそれに結合し、したがって、DNAツールボックスによる入力として使用され得る。 (c)両方のアプタマーは、未染色細胞と比較してより低いCqによって示唆されるように、Ramos細胞に結合する。TD05_TotalSeqBは、最もよく増幅を開始することが示された。 (d)ある範囲のTD05_TotalSeqB染色Ramos細胞が実現された。細胞の数の関数のCqの相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量に比例するが、アプタマーなしで染色されたRamos細胞の場合はそうではない。
【0361】
【
図7】コレステロールがコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドにより染色された細胞の検出 (a)使用されたオリゴヌクレオチドの概略構造:コレステロール分子を、T10リンカーを使用して所望のオリゴヌクレオチドの5’末端に結合させる。 (b)細胞をコレステロール修飾オリゴヌクレオチドで染色する。その特性により、コレステロールは細胞膜に挿入される。 (c)コレステロール修飾オリゴヌクレオチドで染色された細胞は、DNAツールボックスで検出され得る。コレステロール修飾オリゴヌクレオチドを入力として使用する。細胞がこのオリゴヌクレオチドで染色されない場合、DNAツールボックスへの入力はない。 (d)ある範囲の未染色又はdLet7aT10ChoPro染色Ramos細胞を増幅混合物とともにインキュベーションした。細胞数の関数のCqの相関係数によって示唆されるように、DNAツールボックスの出力は細胞の量と相関するが、未染色細胞の濃度とは無関係に増幅は観察されなかった。
【0362】
【
図8】オリゴヌクレオチドコンジュゲート抗体及びDNAツールボックス検出を使用した単一細胞同定。 (a)液滴実験の概略図。 (b)液滴中で生成された蛍光シグナルを、2Dチャンバー中で7時間の期間にわたって10分ごとに捕捉した。染色された集団の液滴は、マスターミックス、抗PD1TotalseqB抗体で染色されたT細胞を含有し、FITCでバーコード化された。この集団を、FITC+Cy5蛍光を使用してゲーティングした。
【0363】
未染色集団の液滴は、マスターミックス、未染色T細胞を含有し、カスケードブルーでバーコード化された。この集団を、カスケードブルー+Cy5蛍光を使用してゲーティングした。
【0364】
陽性対照集団の液滴は、マスターミックス、抗PD1TotalseqB抗体を有し、カスケードブルー及びFITCでバーコード化された。この集団を、カスケードブルー+FITC+Cy5蛍光を使用してゲーティングした。
【0365】
陰性対照集団の液滴は、マスターミックスのみを有した。この集団を、Cy5蛍光を使用してゲーティングした。
【0366】
各反応条件に存在する液滴の平均蛍光。平均を各集団の蛍光値から計算した。
【0367】
【
図9】固定された細胞の存在下でのDNAツールボックス反応及び逆転写との適合性 (a)5×10
4個の固定されたJurkat細胞を含有する反応によって生成された蛍光シグナル、DNAツールボックス、及び逆転写構成要素は、それぞれ10pM及び100fMのTotalSeqBによって誘発された。 (b)5×10
4個の固定されたJurkat細胞を含有する反応からの2μlの反応ミックスを含有する反応から生成された増幅曲線、DNAツールボックス、及び逆転写構成要素を、遺伝子特異的ハウスキーピング遺伝子プライマーを用いたPCRに供した。
【0368】
【
図10】微粒子からの一本鎖DNAの放出 (a)DNAコンジュゲート粒子を反応混合物に浸漬する。α鎖の存在下で、粒子結合オリゴの3’末端は、DNAポリメラーゼ(Bst)及び制限酵素(BsmI)を使用して溶液中に放出される。 (b)1つの微粒子断面のキモグラム(時間対位置)(Evagreen蛍光)。 (c)6つのオリゴヌクレオチドコンジュゲート粒子の蛍光時間追跡。
【0369】
【
図11-1】A.DNAツールボックス構成要素、B.表面マーカー、C.分泌されたマーカー又は表面マーカーについての近接効果、及びD.マーカーの組み合わせの異なる実施形態
【
図11-2】A.DNAツールボックス構成要素、B.表面マーカー、C.分泌されたマーカー又は表面マーカーについての近接効果、及びD.マーカーの組み合わせの異なる実施形態
【0370】
【
図12】単一細胞バーコード化戦略。矢じりは、核酸の3’末端を示す
【0371】
【
図13】蛍光読み出し後の光切断媒介選択(蛍光発生レポーター鋳型を使用)
【0372】
【
図14-1】DNAツールボックスベースの直接選択
【
図14-2】DNAツールボックスベースの直接選択
【0373】
【
図15】一対のオリゴコンジュゲート抗体を使用した2つの表面マーカーを標的とする細胞の表現型決定の概略図。抗体が標的に結合し、DNAポリメラーゼ及びニッカーゼ活性によりB11aを産生する場合、オリゴは互いに相補的である。B11aは、特定の2マーカー表現型の細胞の存在を確認する蛍光読み出しを産生するDNAツールボックスを誘発する。
【0374】
【
図16】近接オリゴコンジュゲート抗体対を使用した2つの表面マーカーを標的とする細胞型の表現型決定。
図16:CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2及びCD3-totalseqB-aTSB-B11b-2toa(CD3-CD3)、CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2及びCD45-totalseqB-aTSB-B11b-2toa(CD3-CD45)で表現型決定されたJurkat細胞の増幅曲線。CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2のみ(CD3)で標識されたJurkat細胞を陰性対照として使用した。
【0375】
【
図17】近接オリゴコンジュゲート抗体対を使用した2つの表面マーカーを標的とする細胞型の表現型決定。
図17:増幅曲線からのCq値は、抗体対にコンジュゲートされた近接オリゴを使用して、2つの表面マーカーを標的とする細胞の成功裏の表現型決定を示す。
【0376】
【
図18】近接オリゴヌクレオチドコンジュゲート抗体対及びDNAツールボックスを使用した単一細胞同定。個々の液滴のCy5蛍光強度を、液滴分析パイプラインを使用してデジタル的に取得した。蛍光強度は、各時点での液滴の蛍光強度値を時点ゼロでの蛍光強度値で割ることによって正規化した。画像化の期間にわたって閾値を上回る各集団の液滴数をプロットするために、1.5の閾値を考慮した。
【0377】
【
図19】標的タンパク質の検出に基づく近接アッセイの概念を説明する概略図
【0378】
【
図20】近接アッセイを使用したrTNFα検出のための抗体希釈の決定。各オリゴコンジュゲート抗体の1:10
4倍希釈は、0~15nMのrTNFαを検出及び区別することが見出された。抗体のより低い希釈は、偽近接を産生した。
【0379】
【
図21】30及び0nMのTNFαを含有する近接アッセイ反応の増幅曲線の平均Cq値。
【0380】
【
図22】液滴中の近接アッセイによる30nMのrTNFα検出。個々の液滴のCy5蛍光強度を、液滴分析パイプラインを使用してデジタル的に取得した。蛍光強度は、各時点での液滴の蛍光強度値を時点ゼロでの蛍光強度値で割ることによって正規化した。画像化の期間にわたって閾値を上回る各集団の液滴数をプロットするために、1.5の閾値を考慮した。30nMのrTNFαを含有する液滴の大部分は、30~48分以内にCy5蛍光閾値をまたいだ。30nMのrTNFαを含有する非常に少数の液滴は、後の様々な時点でCy5蛍光閾値をまたいだ。TNFαを含まない液滴は、430分後にCy5蛍光閾値をまたいだ。
【0381】
【
図23】PUMAに基づく近接伸長アッセイの原理スキーム。それぞれ、灰色の星及び灰色の長方形によって表される、タンパク質の部分を認識する2つのアプタマー(黒色及び灰色)が選択される。アプタマーのうちの一方は、その5’末端にcTを担持し、他方のものは、その3’末端に、cTにハイブリダイゼーションすることができるアクチベーターを担持する。アプタマーとcT又はアクチベーターとの間にリンカーが存在する。標的タンパク質の存在下で、アプタマーは最初にそれらのそれぞれの標的に結合し、cT及びアクチベーターを接近させる。次いで、アクチベーターは、cTにハイブリダイゼーションし、ポリメラーゼによって伸長され、ニックを入れられて、トリガー分子を産生する。設計が可逆的であるため、オリゴヌクレオチドはそれらの初期状態に戻る。標的タンパク質の非存在下では、アクチベーター及びcTはハイブリダイゼーションせず、トリガー産生をもたらさない。
【0382】
【
図24】近接伸長アッセイ。ヒトアルファ-トロンビン検出のための異なるアプタマーの組み合わせ。15mer及び29merの2つのアプタマーを、ヒトアルファ-トロンビンの検出のために選択した。ii 15merは、cTを担持し、29merは、アクチベーターを担持しながら、ある範囲のヒトアルファ-トロンビンが実現された。等モル範囲のアプタマーを実施した。i.15merは、アクチベーターを担持し、29merはcTを担持しながらのヒトアルファ-トロンビンの範囲。等モル範囲のアプタマーを実施した。異なるヒトアルファ-トロンビン濃度についての増幅時間は、棒グラフによって与えられ(左軸)、スコア
100nMは、黒色の点によって与えられる(右軸)。
【0383】
【
図25】近接伸長アッセイ:ヒトアルファ-トロンビン検出最適化。i.ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを、10nMの15mer-cT及び29mer-アクチベーター(29mer-act)の存在下で、mir緩衝液1×又はFS緩衝液1×中で実現した。ii.ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを、10nMの15mer-cT及び10nMの29mer-act又は29mer-act-V2のいずれかの存在下で、FS緩衝液1x中で実現した。29mer-act-V2は、29mer-actより1塩基少ないcTとマッチする。異なるヒトアルファ-トロンビン濃度についての増幅時間は、棒グラフによって与えられ(左軸)、スコア100nMは、黒色の点によって与えられる(右軸)。iii.ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを、10nMの15mer-cT及び29mer-actを含有するFS緩衝液中で実現した。10nMのごちゃまぜにされたアプタマーを有する対照が実現されている。ごちゃまぜにされたアプタマーは、アプタマー名称の前に「S」によって示される。
【0384】
【
図26】近接伸長アッセイ:ヒトアルファ-トロンビン検出。ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを、100nMの15mer-cT-GAGA/29mer-act-GAGA(a.)及び100nMの15mer-cT-GATT/29mer-act-GATT(b.)を有するFS緩衝液中で実現した。異なるヒトアルファ-トロンビン濃度についての増幅時間は、棒グラフによって与えられ(左軸)、スコア
1μMは、黒色の点によって与えられる(右軸)。
【0385】
【
図27】最適化。a.自己プライミング鋳型のスキーム。4塩基が、Nt.Bst.NBIニッキング部位とトリガー相補配列との間に存在する。Nは、A、T、C、又はG塩基のいずれかを表す。b.PUMAに使用された変換モジュール:sTは、重合/ニッキングサイクルを受け、したがって、トリガーを産生する。c.産生速度実験の原理。sTは、rTの存在下で重合/ニッキングサイクルを受ける。トリガーは、線形に産生され、rTの開放速度は、sTの産生速度に相関する。d.各試験された配列について得られた増幅時間の逆数の関数としての産生速度。
【0386】
【
図28】自己プライミング鋳型:ホスホロチオエート最適化。e.i.sTのスキーム。「
*」によって記号化されたホスホロチオエートは、sTの骨格に付加され得る。トリガー相補部分に対応して、その5’末端にいくつかを付加するように選択された。ii.産生速度は、sT骨格に付加されたホスホロチオエートの数の関数である。ホスホロチオエートの数を除いて、sTの配列は、全ての試験された条件について同じであった。
【0387】
【
図29】自己プライミング鋳型:ビオチン位置最適化。f.sTビオチン(黒丸)位置。ビオチンは、T5-Sp18リンカーを介して5’末端(i.)、又はアミノ-dTビルディングブロックを介して自己プライミング鋳型のステムループの内側(ii.)のいずれかに配置された。
【0388】
【
図30】i.異なるsTについてVentを用いて得られた産生速度の関数における、Bst 2.0 WSを用いて得られた産生速度。点線は、産生速度の同等性を表す。上の点は、Vent(エキソ-)を用いたよりもBst 2.0 WSを用いた産生速度が高い。j.異なる自己プライミング鋳型について50℃でVentを用いて得られたBcトリガーの産生速度の関数における、37℃でBst LFを用いて得られたB11aトリガーの産生速度。点線は、産生速度の同等性を表す。
【0389】
【
図31】自己プライミング鋳型は、0.25当量のストレプトアビジンの存在下で変動する。トリガー相補的部位とNt.BstNBIニッキング部位との間の塩基の2つの組み合わせを試験した:GTTT及びGAGA。
【0390】
【
図32】自己プライミング鋳型のTSB_full_toB11a-2+2設計。
【0391】
【
図33】自己プライミング鋳型のNBItoB11a-2+2Sp18T5Biot GAGA設計。
【0392】
【
図34】TSB_full_toB11a-2+2にハイブリダイゼーションした抗CD3 totalseqB抗体及びDNAツールボックスを使用した単一細胞同定。個々の液滴のCy5蛍光強度を、液滴分析パイプラインを使用してデジタル的に取得した。蛍光強度は、各時点での液滴の蛍光強度値を時点ゼロでの蛍光強度値で割ることによって正規化した。画像化の期間にわたって閾値を上回る各集団の液滴数をプロットするために、1.5の閾値を考慮した。
【0393】
【
図35】NBItoB11a-2+2Sp18T5Biot GAGAとコンジュゲートしたストレプトアビジンタグ化抗CD3抗体を使用したJurkat細胞の表現型決定。自己プライミング鋳型タグ化抗体で/それなしで標識されたJurkat細胞を表現型決定するDNAツールボックスバルク反応の増幅曲線のCq値。
【0394】
【
図36】0分及び20分の時点でのマウス細胞及びjurkat細胞を含有する液滴の2D経時画像化のスナップショット。
【0395】
【
図37】37℃で2時間後に、ある濃度範囲の合成seqshaveで処理した場合のプライマー放出のパーセンテージを示すグラフ。30pmolの合成seqshaveは、ヒドロゲルビーズからのバーコード化プライマーの77%の放出をもたらす。40pmolのseqshaveは、約90%の放出を引き起こし、seqshave濃度の更なる増加は、放出のパーセンテージを有意に変化させない。
【0396】
【
図38】ヒドロゲルビーズからのDNAツールボックス媒介プライマー放出。グラフは、漸増濃度のseqshaveコンバーター鋳型(B11a-3toseqshave-6TTS4)を含有するツールボックスによるプライマー放出のパーセンテージを示す。放出のパーセンテージは、コンバーター鋳型の濃度の増加とともに直線的に増加する。
【0397】
【
図39】Cy5標識蛍光プライマー及び自己プライミング鋳型タグ化抗体標識された細胞を含有するヒドロゲルビーズを含有する液滴の経時画像化のスナップショット。2時間後、標識された細胞及びバーコード化ヒドロゲルビーズを含有する液滴のみが、蛍光プライマーの放出を示すが、標識された細胞を含有しない液滴は、プライマー放出を示さない。
【0398】
【
図40】標識された細胞、バーコード化ヒドロゲルビーズ、及びDNAツールボックスを含有する液滴中の時間に対する平均Cy5蛍光強度を計算し、時間に対してプロットした。液滴の経時画像化を10分ごとに行った。各時点における液滴のCy5蛍光強度を、ImageJを使用して評価した。細胞表面に結合された自己プライミング鋳型コンジュゲート抗体は、ヒドロゲルビーズからの蛍光プライマーのDNAツールボックス媒介放出を誘発する。液滴中のCy5強度は、反応が時間とともに進行するにつれて増加する。プライマーの放出は、10~120分で著しく増加し、時間が経過するにつれて飽和する。
【0399】
【
図41】バーコード化ヒドロゲルビーズ及びDNAツールボックスを含有する液滴中の時間に対する平均Cy5蛍光強度。自己プライミング鋳型標識された細胞が存在しないため、これらの液滴中のDNAツールボックスは不活性化されたままである。したがって、時間に対するCy5蛍光強度の増加がないことによって示されるように、プライマー放出は観察されない。
【0400】
【
図42-1】低濃度のリン酸イオンは、DNAツールボックスの等温増幅反応に適合する。自己触媒反応は、様々な濃度のPBS(0、0.5、0.9、1.9、3.8、又は30%)の存在下でオリゴヌクレオチドBc12を増幅するように設定される。(a)トリガーBc12の非存在下(左)又は存在下(1nM、右)での増幅曲線。(b)パネル(a)から抽出された増幅時間は、低濃度のPBSが増幅反応を阻害しないことを明らかにする。
【
図42-2】低濃度のリン酸イオンは、DNAツールボックスの等温増幅反応に適合する。自己触媒反応は、様々な濃度のPBS(0、0.5、0.9、1.9、3.8、又は30%)の存在下でオリゴヌクレオチドBc12を増幅するように設定される。(a)トリガーBc12の非存在下(左)又は存在下(1nM、右)での増幅曲線。(b)パネル(a)から抽出された増幅時間は、低濃度のPBSが増幅反応を阻害しないことを明らかにする。
【実施例】
【0401】
方法及び材料
オリゴヌクレオチド
本発明において使用された全てのオリゴヌクレオチド(鋳型及びアプタマー)を、Biomers(Germany)から購入し、かつHPLCによって精製されたか、又は高純度無塩グレードのEurofins(カートリッジ精製)から購入されたかのいずれかであった。鋳型配列は、5’ホスホロチオエート修飾を使用してエキソヌクレアーゼttRecJによる分解から保護される。
【0402】
当該オリゴヌクレオチドを以下の表1に示す。
表1.本発明において使用されるオリゴヌクレオチド配列。「*」は、ホスホロチオエート骨格修飾を示す。「p」は、3’ホスフェート修飾を示す。「ChoPro」は、オリゴヌクレオチドの5’末端において(6-アミノ-6-オキソヘキシル)カルバミン酸リンカーによってプロリノールに連結されたコレステロールを示す。「aT」、「pT」、「rT」、及び「cT」は、それぞれ自己触媒鋳型、擬似鋳型、レポート鋳型、及び変換鋳型に対応する。Atto633及びBHQ2は、フルオロフォア/クエンチャー対に対応する。下線を引いた配列は、報告されたアプタマー配列に対応する(Tang et al.(2007)Analytical Chemistry,79:4900-4907)。
【0403】
【0404】
細胞培養
Ramos及びJurkat細胞株の基礎培地は、ATCC処方RPMI-1640培地(ATCC 30-2001)である。完全培地は、10%ウシ胎児血清(ATCC 30-2020)を補充したRPMI-1640からなる。細胞を完全培地に懸濁し、25cm2又は75cm2の培養フラスコに播種する。培養物を37℃、5%CO2でインキュベーター中に維持する。75~80%コンフルエントに達したら、細胞を継代する。細胞培養物から回収後、細胞を最終的にTBS1×中に2.106細胞.mL-1の濃度で再懸濁した。
【0405】
アプタマーフォールディング
アプタマーを、アプタマーフォールディング緩衝液(1×Trisホウ酸生理食塩水(Tris Borate Saline、TBS)、5mMのMgCl2、4.5g.L-1のグルコース)中で500nMに希釈し、95℃に5分間加熱し(Thermomixer、Eppendorf)、次いで、氷上で10分間冷却した。このプロトコルは、文献(Delley et al.(2018)ScientificReports 8:1-8)から適合された。
【0406】
細胞染色
アプタマー染色:
全ての染色ステップは、0.5mLのDNA LoBindチューブ(Eppendorf)中、4℃で実施された。2.105個の細胞を、500μLの染色緩衝液(1×TBS、5mMのMgCl2、4.5g.L-1のグルコース、1mg.ml-1のBSA(SigmaAldrich)、及び21nMの濃度のアプタマーを有する0.1mg.ml-1のサケ精子DNA)中に再懸濁し、氷上で30分間置いた。次いで、細胞を染色緩衝液で3回(遠心分離300rpm、5分間、4℃、染色緩衝液に再懸濁)、TBS1×で更に2回洗浄した。最後に、細胞を、チューブ中でTBS1×中に所望の濃度で希釈した。
【0407】
抗体染色:
それぞれの培地に再懸濁した200万個の細胞(jurkat/ramos/ヒトT細胞)を細胞培養物から回収した。細胞を37℃で5分間、250rcfで遠心分離し、上清を捨て、細胞を1mlの1×TBSに再懸濁する。細胞を再び37℃で5分間、250rcfで遠心分離し、上清を捨て、最後に200μLの1×TBSに再懸濁した。2.7pmolの抗体を含有する100μlのBiolegend染色緩衝液を細胞懸濁液に添加し、4℃で30分間インキュベーションする。インキュベーション後、細胞を4℃で5分間、250rcfで遠心分離し、上清を捨て、細胞を1mlの1×TBSに再懸濁する。洗浄ステップを1mlの1×TBSで5回繰り返して、未結合抗体の完全な除去を確実にする。最後に、細胞を100μLの1×TBS中に再懸濁し、更なる使用のために氷上で維持した。
【0408】
反応混合物アセンブリ
全ての反応混合物を200μLのPCRチューブ(Bio-Rad)中で、4℃でアセンブリした。鋳型(cT、aT、pT、及びrT)及び細胞を、1%のEvagreen 20×(Biotium)及び酵素(200U.ml-1のNb.BsmI(NEB)、10U.ml-1のNt.BstNBI(NEB)、80U.ml-1のVent(エキソ-)(NEB)、又は36U.ml-1のBst大断片(NEB)及び23nMのttRecJ(社内醸造))とともに、反応緩衝液(FS緩衝液1×(NEB)、TBS 0.2×(細胞懸濁液由来)又は12.5%の細胞培地(RPMI+10%のウシ胎児血清+1%のペニシリン/ストレプトマイシン)、25μMの各dNTP(NEB)、3mMのMgSO4、及び200U.μl-1のBSA(NEB)と混合した。
【0409】
次いで、混合物をサーモサイクラー(CFX 96ウェル、Biorad)中、37℃でインキュベーションし、Atto633及びEvagreen蛍光を監視した。
【0410】
実施例1:細胞の存在下でのDNAツールボックス反応の適合性及び反応中の細胞生存率の維持。
DNAツールボックス反応は通常、特定のイオン濃度を有する特定の緩衝液中で45℃~50℃で行われる。好熱性酵素を使用しており、その適正温度は、Bstポリメラーゼ大断片、Vent(エキソ-)ポリメラーゼ、Nt.BstNBI、Nb.BsmI、及びttRecJについて、それぞれ65℃、75℃、55℃、65℃、及び60℃である。本発明者らはまた、少量の破壊された細胞がDNAツールボックス反応を阻害することを発見した。したがって、細胞の破裂を回避するために、DNAツールボックスを生理学的温度及び条件に適合させ、細胞を安定化させるためにいくつかの構成要素を添加することが必要であった。加えて、本発明者らは、細胞懸濁液の再懸濁媒体として一般的に使用されるリン酸緩衝生理食塩水が、DNAツールボックス反応に対して強い阻害効果を有することを観察した(
図1)。
【0411】
実験条件は以下のとおりである。
【0412】
【0413】
【0414】
本発明者らは、PBSの非存在下で増幅反応が生じたことを観察した(Bc12の非存在下で約800分、1nMのBc12を用いて約100分で自己触媒反応が開始した)。6%という低い濃度のPBSの存在下では、実験期間(1000分)中に増幅は記録されなかった。塩濃度が反応を阻害しないことが知られていることを考慮すると(6%のPBSについて、8.2mMのNa
+、0.3mMのK
+、及び8.4mMのCl
-)、毒性効果はリン酸イオンの存在に起因し得る(6%のPBSについて0.7mM)。それにもかかわらず、0.7mM未満のリン酸イオン濃度(6%のPBS)は、増幅反応を阻害しない(
図42を参照されたい)。
【0415】
したがって、DNAツールボックス反応の適切な機能を可能にしながら、細胞操作を可能にし、細胞生存率を維持する条件を見出すことが必要であった。
【0416】
最初に、細胞操作のための緩衝液組成物をTris緩衝生理食塩水(50mMのTris、150mMの塩化ナトリウム)に変更し、細胞の生存及び分子回路の適切な機能のための栄養素を提供するように注意深く調製した。
【0417】
第2に、42℃~50℃でのみ実施される以前に使用された分子プログラム(BBaccouche et al.(2014)Methods 67:234-249、Montagne et al.(2011)Molecular Systems Biology 7:466、Padirac et al.(2012)Proceedings of the National Academy of Sciences 109:E3212-E3220)を、37℃で作動するように適合させた。50℃でTotalSeqBを検出するために最適化された分子プログラムのためにある範囲の温度を実現した。
図2aに見られ得るように、TotalSeqB標的の濃度と高温(>46.3℃)での増幅時間(Cq)との間に明らかな用量応答が存在する。より低い温度では、異なる濃度のTotalSeqBを有する試料の増幅時間の間に実質的な差はなく、この増幅システムに対する温度の重要さを強調する。特に、本発明者らは、温度が低いほど、陰性対照(標的の非存在下で偽陽性と称される)の増幅が早くなることを観察した。偽陽性は、少数のトリガーオリゴヌクレオチドを非特異的に産生する偽反応によるものである。漏出として知られるこの現象は、温度が低い場合に増大し、TotalSeqB標的の高感度検出を妨げる。加えて、酵素は、それらの最適温度をはるかに下回る温度で使用される場合、活性を失い、産生物阻害を受けやすくなる。要するに、本発明者らは、古典的なDNAツールボックス設計は37℃では実施しないと結論付けることができる。
【0418】
しかしながら、トリガーを短縮するか、又はそれらの配列をより高いAT/GC含量に向けて調節することによって得られ得る、対応する自己触媒鋳型上のトリガーの融解温度を低下させることにより、この問題が解決することが見出された。より低い融解温度の結果は、非特異的に産生されたトリガーが、自己触媒鋳型上で効率的に再捕捉されず、以前に報告された動的プロセス下で擬似鋳型によって不活性化される可能性が最も高いことである(Montagne et al.(2016)Nature Communications 7:13474)。加えて、この変化はまた、ニックの入った産物が自発的に脱ハイブリダイゼーションして、酵素阻害を回避し得るため、酵素の問題を解決した。
【0419】
更に、プロセスのその後のステップ、例えば、細胞RNAのトランスクリプトーム分析との適合性を確実にするために、DNAツールボックスシステムに古典的に使用されるもの(Gines et al.,(2020)Science Advances)とは異なる緩衝液を使用し、それを逆転写と適合する緩衝液に変更することが必要であった。最初に、RT緩衝液にdNTP及びMgSO
4を補充する必要があった。ある範囲のMgSO
4が、必要とされる濃度を較正するために実現された(
図2b)。緩衝液に3mMのMgSO
4を補充することにより、最良のシグナル対ノイズ比が得られる。この最適化された緩衝液において、ある範囲のTotalSeqBが、新しい分子プログラムを用いて37℃で実現された。TotalSeqBの濃度が高いほど、Cqが低くなることが観察され、これは、この緩衝液中、37℃で100fMまでの標的の効率的な感知が、細胞統合性及び逆転写に適合することを実証している(
図2c)。
【0420】
第3に、ある割合の細胞培地を分子プログラム緩衝液に添加することにより、分子プログラム効率に対する負の影響を回避しながら、細胞生存率を維持することができることが見出された。
【0421】
まず、増幅反応の特異性に対する細胞培地の影響を評価するために、ある範囲の細胞培地(RPMI+10%のFBS+1%のペニシリン/ストレプトマイシン[P/S])を、それぞれ0、1及び10pMのTotalSeqBで試験した(
図3)。Atto633及びEvaGreen蛍光を監視して、増幅の開始時間及びシステムの最終的な非特異的産生の両方(「逸脱」と称される)を調べた(Urtel et al.(2019)Biochemistry 58:2675-2681)。12.5%の細胞培地及びそれ以下で、分子プログラムからの特異的増幅が生じ、逸脱は観察されなかったことが示されている。しかし、12.5%を上回る細胞培地(この場合、25%及び50%)では、逸脱が起こり、50%の培地では、特異的増幅は起こらなかった。
【0422】
次に、本発明者らは、3mMのMgSO
4を有するFS緩衝液1×中で、12.5%の細胞培地を有して/有しないで細胞死を監視した。Jurkat及び3T3細胞を、それらの2つの緩衝液中で室温で一晩(16時間)置き、ヨウ化プロピジウムで染色した。細胞をフローサイトメトリーを介して分析し、生存細胞及び死滅細胞の割合を推定した(
図3b、3T3細胞(i)及びJurkat細胞(ii))。本発明者らは、12.5%の細胞培地の存在下で、生存細胞の割合が、3T3細胞については27%~79%に増加し、Jurkat細胞については6%~25%に増加することを観察した。
【0423】
最後に、本発明者らは、未染色又はコレステロール修飾オリゴヌクレオチドで染色されたいずれかのRamos細胞(実施例5を参照されたい)の検出を、12.5%の細胞培地の存在下で分子プログラムを用いて実施した。未染色細胞では増幅は観察されなかったが(監視時間=730分)、染色された細胞の濃度は、増幅時間に逆相関した(すなわち、細胞が多いほど、増幅が早い)。これらの結果は、反応緩衝液に細胞培地を含めることによって細胞生存率を維持しながら、細胞結合オリゴヌクレオチドの特異的検出に分子プログラムを使用することが可能であることを実証している。
【0424】
実施例2:DNAツールボックスは、抗体標識されたオリゴヌクレオチド並びに遊離オリゴヌクレオチドを検出することができる。
DNAツールボックスを用いて特定の細胞型を表現型決定するプロセスは、標的細胞の細胞表面マーカーに特異的なDNAタグ化抗体を使用することによって達成され得る。次いで、DNAタグを、DNAツールボックスによる検出のための入力として使用することができる。本発明者らは、市販のTotalSeqBタグ化抗体(Biolegend製)を使用して実現可能性を試験した。実験の目標は、DNAツールボックスを使用してDNA標識された抗体を検出することであり、タグ化DNAは、ツールボックス反応のトリガーとして働く。
【0425】
本発明者らは最初に、逆転写緩衝液中、37℃での分子プログラムによる非コンジュゲートトリガーオリゴヌクレオチド(TotalSeqB)の検出を調査した。TotalSeqBオリゴ及び抗体のmilliQ水中の10倍連続希釈物を、逆転写緩衝液、分子プログラムの4つのオリゴヌクレオチド及び4つの酵素からなる増幅混合物中にスパイクした。10μLの試料をBioRad CFX96リアルタイムPCRにおいて37℃でインキュベーションし、プローブ(Atto633)の蛍光を2分ごとに記録した。
図4aは、増幅時間追跡を示す。予想どおり、TotalSeqBオリゴヌクレオチド標的が濃縮されればされるほど、増幅が早くなり、増幅反応の特異性が実証される。
【0426】
次に、本発明者らは、抗体コンジュゲートオリゴヌクレオチドが増幅反応を誘発する能力を保持していることを確認した。
図4bは、様々な濃度の段階希釈したTotalSeqB抗PD1抗体(Biolegendカタログ番号329961)を有する試料スパイクの増幅時間追跡を示す。抗体の非存在下では、増幅は観察されなかった。予想どおり、増幅時間(Cq)は、酵素コンジュゲートオリゴヌクレオチドと負に相関しており、係留されたTotalSeqB配列が増幅を誘発することができることを実証している。
【0427】
結論として、ツールボックスは、TotalSeqB標識された抗体及び自由に浮遊するDNAタグ化TotalSeqBを検出し得る。分子回路は、明確に区別された時点での蛍光シグナルを産生する様々な濃度のオリゴ/抗体を明確に区別する。このシステムは、反応中の非常に低濃度のオリゴ(100fM)及び抗体(50pg)を検出するのに十分な感度であった。
【0428】
【0429】
実施例3:DNAツールボックスは、細胞特異的オリゴ標識された抗体で染色された細胞を検出し得る
本実施例では、DNAツールボックスを使用した細胞表現型決定のためのDNAタグ化抗体の使用を試験した(
図5)。
【0430】
材料及び方法:1×106個のRamos細胞を、TotalSeqB抗CD3抗体(カタログ番号300477)で標識し、洗浄ステップを繰り返して、任意の未結合/弱く結合された抗体を除去した(Biolegend細胞染色緩衝液(カタログ番号420201))。最後に、細胞を1×FS緩衝液に再懸濁した。8μlのマスターミックス及び2μlのオリゴ/抗体希釈物を混合し、BioRadCFX96リアルタイムPCRにおいて37℃で実行した。
【0431】
【0432】
図5に示される結果から分かり得るように、DNAツールボックスは、CD3発現Ramos細胞を表現型決定することができ、細胞の表面上に存在するCD3陽性抗体の数に基づいて細胞の数を区別することができた。このシステムは、異質な細胞の表面上の表面マーカーの発現について成功裏に試験され得る。
【0433】
実施例4:DNAツールボックスは、細胞特異的アプタマーで染色された細胞を検出し得る
本実施例では、DNAツールボックスを使用した細胞表現型決定のための修飾細胞特異的アプタマーの使用を試験した。
【0434】
Ramos細胞を用いて概念実証が実施された:文献(Tang et al.(2007)Analytical Chemistry 79:4900-4907)に報告された2つのRamos特異的アプタマー(TD05及びTE02)が試験された。cT「TSBtoB11a-2+2P」の3’末端の相補的配列を、これらのアプタマー配列の3’部分に付加した(
図6)。結果として、アプタマーの存在は、cT「TSBtoB11a-2+2P」によるトリガーB11aの産生をもたらすはずである。(
図6b)。Ramos細胞をアプタマーのいずれかで染色した場合、未染色細胞よりも早く増幅が生じた。効果は、TE02と比較してTD05で有意に高く、細胞結合されたTD05による増幅の特異的誘発を実証した。(
図6c)。
図6dは、未染色又はTD05_TotalSeqB鎖で染色されたいずれかの、漸増濃度のRamos細胞の存在下での増幅開始を示す。>0の各細胞濃度について、染色された細胞は、未染色細胞と比較してより速い増幅(より低いCq)を誘導した。更に、染色された細胞のより高い濃度は、より早い増幅と相関した。全体として、これらの結果は、本発明者らが修飾特異的アプタマーで細胞を染色することに成功したこと、及び細胞に結合された修飾アプタマーが増幅を特異的に誘発することができることを実証している。
【0435】
実施例5:コレステロールがコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを使用して非特異的に染色された細胞の検出
本実施例では、コレステロールコンジュゲートオリゴヌクレオチド(DLet7aT10ChoPro)を使用した細胞の染色及び検出を実証した(
図7a)。その特性により、コレステロール部分が細胞膜に挿入されることが既知であり(You et al.(2017)Nature Nanotechnology 12:453-459)、それによってオリゴヌクレオチドをその表面に結合させる(
図7b)。DLet7aT10ChoProオリゴヌクレオチドの3’部分を、cTLet7atoB11aに対する入力として使用し、B11aトリガーの産生を誘導した(
図7c)。
図7dは、未染色又はコレステロール修飾オリゴヌクレオチドで染色された様々な濃度のRamos細胞を増幅混合物と一緒にインキュベーションした実験を示す。未染色細胞では、増幅は観察されなかったが(730分まで)、染色細胞は、増幅を誘発することができた。更に、染色された細胞の濃度は、増幅時間に逆相関した(すなわち、細胞が多いほど、増幅が早い)。これらの結果は、細胞アンカーされたDNA鎖による増幅の特異的誘発を実証している。
【0436】
実施例6:DNAツールボックスによる微小液滴中に封入された単一細胞の表現型決定。
異質な集団中の個々の細胞を表現型決定するために、アッセイは単一細胞用に設計される必要がある。したがって、単一細胞を表現型決定するためのDNAツールボックスを実装するために、分子プログラムを液滴マイクロ流体システムにおいて使用した(
図8a)。実験は、各液滴が単一細胞をDNAツールボックス試薬とともに封入する何千もの液滴を生成するように設計された。
【0437】
材料及び方法
細胞染色:2×106個のT細胞(PD-1陽性及び陰性細胞の両方を含有する)を、200μlの1×TBS緩衝液に再懸濁し、4℃で30分間インキュベーションすることによって抗PD1 TotalSeqB抗体(Biolegendカタログ番号329961)で染色した。インキュベーション後、細胞を4℃、300gでの10分間の遠心分離によってペレット化し、上清を捨てた。未結合抗体を除去するために、細胞ペレットを1mlの1×TBS(氷上に維持)に再懸濁し、4℃、300gで10分間遠心分離し、上清を捨てた。この洗浄ステップを3回繰り返して、未結合抗体を完全に取り除いた。洗浄後、細胞を1×FS緩衝液(Invitrogen)中に再懸濁した。
【0438】
【0439】
マスターミックスを4等分に分割して、以下のような様々な試験集団の液滴を作製した。
水相:以下の反応ミックスを液滴封入化のために調製した。
a.陽性対照:この反応ミックスは、マスターミックス、抗PD1 TotalseqB抗体、カスケードブルー、及びFITCからなった。この反応ミックスを使用して、DNAツールボックス陽性対照として機能する液滴を作製し、抗PD1抗体上に存在するDNAタグによって誘発される分子プログラムによってCy5蛍光を産生した。この集団の液滴を他から分離するために、反応ミックスを、カスケードブルー及びFITCのミックスでバーコード化した。したがって、分析中、カスケードブルー及びFITC陽性である液滴から生成されたCy5蛍光のみを陽性対照とみなされる。
b.陰性対照:この反応ミックスはマスターミックスのみからなった。反応を誘発するシグナル分子は提供されなかった。したがって、このミックスから産生された液滴は、自己誘発のために非常に遅い時点でCy5蛍光を産生するであろう。分析中、Cy5陽性のみである液滴から生成された蛍光を陰性対照とみなされる。
c.染色:この反応ミックスは、マスターミックス、抗PD1 TotalseqB抗体で染色されたT細胞、及びFITCからなった。反応ミックスに添加された細胞の数は、0.2~0.4のλを達成するように調整され、これは、67%の空の液滴、27%が1つの細胞を含有し、6%が1つ超の細胞を含有するポアソン分布を与える。分析中、FITC及びCy5陽性である液滴から生成された蛍光は、染色された試験とみなされる。
d.未染色:この反応ミックスは、マスターミックス、未染色T細胞及びカスケードブルーからなった。ここでもまた、反応に添加される細胞の数は、0.2~0.4のλを達成するように調整された。分析中、カスケードブルー及びCy5陽性である液滴から生成された蛍光は、未染色とみなされる。
【0440】
液滴作製及びチャンバー充填:液滴は、ポリ-(ジメチルシロキサン)(PDMS、poly-(dimethylsiloxane))中でソフトリソグラフィーを使用して製造された、幅25μm、深さ30μm、及び長さ40μmのノズルを備えるマイクロ流体デバイス上で流体力学的フロー焦点化によって作製された。連続相は、HFE7500全フッ素置換油中の2%(w/w)008-フルオロ界面活性剤(RAN Biotechnologies)からなった。水相の各集団を、PDMSデバイス上の別々のチップ上に共フローさせて、50~80pL体積の液滴を産生し、別々に収集した。最後に、各集団の液滴を一緒にプールし、1000μlチップを使用してピペッティングすることによって混合した。チップの口を切断して、液滴破壊をもたらす圧力を生じさせないように、より大きな開口部を作製した。2~3回穏やかに混合した後、プールされた液滴をチャンバーに注入し、チャンバー内でz方向にわずかに物理的に閉じ込めることによって二次元(two-dimensional、2D)アレイに固定し、それを経時的に観察し、液滴の動態分析を可能にした。
【0441】
データ取得及び分析。画像化は、電動ステージを備えたNikon(Ti-E)倒立顕微鏡を使用して実施された。励起光は、LED光源(SOLA光エンジン、Lumencor Inc.)によって提供された。適切なバンドパスフィルタ(GFP及びTRITCフィルタセット、Nikon、及びCy5フィルタセット、Semrock)及びカメラ設定(Orca R2、Hamamatsu)を使用して、37℃及び周囲酸素濃度で、特定のチャネルの蛍光を記録した。10×対物レンズ(NA0.45)を使用して画像を取得した。蛍光顕微鏡は、青色(カスケード青色バーコード)、緑色(FITCバーコード)、赤色(プローブシグナル)、及び明視野チャネルを使用して、7時間、10分ごとに画像を撮影するようにプログラムされた。アレイは、全体を通して1つのチャネルで撮像され、チャネルはその後変更され、アレイが再撮像された。次いで、カスタムMatlabスクリプト(Mathworks)を使用して画像を分析した。蛍光ゲーティングを、各集団に使用した蛍光バーコードに従って実施した(すなわち、染色された試験=FITC+Cy5、未染色=カスケードブルー+Cy5、陽性対照=FITC+カスケードブルー+Cy5、陰性対照=Cy5)。各時点での特定の集団の各液滴の平均蛍光を計算した。平均蛍光対時間の点をプロットして、異なる反応条件間の時間差を分析した。
【0442】
結果
ピコリットル液滴中に封入されたDNAツールボックスは、蛍光読み出しに成功し、各反応集団を、それらの割り当てられたそれぞれのカラーバーコードに従って同定することができた(
図8)。蛍光シグナルは、平均して、未染色の細胞を含有する液滴よりも染色さえた細胞を含有する液滴においてより早く現れた(
図8b)。陽性対照液滴の蛍光シグナルは、陽性対照液滴中の抗体の濃度が低いために、平均して、染色された細胞よりわずかに遅く現れた(それは、細胞を含有する液滴だけでなく、全ての液滴にわたって分布している)。陰性対照液滴のほとんどはシグナルを示さなかったが、いくつかの液滴は細胞破片又は液滴融合により生じる可能性のある偽陽性シグナルを生成した。散乱プロットによって反映されるように(データ示さず)、染色された集団(bc1)のいくつかの液滴の蛍光シグナルは、おそらく陰性集団(bc3)と分類され、これもまた偽陽性観察を説明した。
【0443】
実施例7:固定された細胞の存在下でのDNAツールボックス及び逆転写との適合性。
DNAツールボックスによる固定された細胞の検出も試験した。実験は、細胞表面マーカー特異的抗体を使用した固定された細胞の表現型決定のために設計された。表現型決定後の更なる遺伝子型決定のために、本発明者らは、DNAツールボックスが逆転写試薬の存在下で機能することができるかどうか、及びcDNA合成のプロセスが同じ反応設定で生じ得るかどうかを調べたいと望んだ。
【0444】
材料及び方法:
固定:800μlの無水メタノール(-20℃で予冷したもの)を、200μlのTris緩衝生理食塩水(50mMのTris、150mMの塩化ナトリウム、pH7.4)に再懸濁した106個の細胞に滴下した。次いで、1000μlの懸濁液を-20℃で30分間インキュベーションした。
【0445】
固定された細胞の再懸濁:固定された細胞を4℃で10分間、300gで遠心分離した。ペレット化された細胞をTris緩衝生理食塩水(50mMのTris、150mMの塩化ナトリウム、pH7.4)中に再懸濁した。
【0446】
【0447】
8μlの上記マスター及び5.104個の固定されたJurkat細胞(1×FS緩衝液中に再懸濁された)を、Biorad CFXチューブ中で混合し、以下のプログラムを用いてBioRad CFXリアルタイムPCR装置で実行した。
【0448】
【0449】
上記反応の完了後、2μlの反応ミックスを鋳型として取り、SYBRグリーン色素、ampliTaqゴールドDNAポリメラーゼ、dNTP、及びハウスキーピング遺伝子特異的プライマーを用いたPCRに供した。
【0450】
結果
Jurkat細胞は、
図9aに示される陽性蛍光シグナルによって反映されるDNAツールボックス反応中、生存可能であった。37℃~55℃への温度の増加は、細胞の溶解及び逆転写によってcDNAに変換されたmRNAの放出をもたらした。逆転写の成功は、PCRにおける陽性増幅曲線によって反映される(
図9b)。これらの結果は、DNAツールボックス及び逆転写を連続的に進行させることができ、生細胞の表現型決定を行い、続いて遺伝子型決定を行うことができることを明確に反映している。
【0451】
実施例8:微粒子からの一本鎖DNA放出
本実施例では、内因性DNAツールボックス増幅反応によって産生された入力鎖の存在を条件とする、ヒドロゲル粒子からの一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドの放出が実証される(
図10a)。ストレプトアビジン修飾ヒドロゲル粒子(Streptavidin Sepharose High Performance親和性樹脂、GE Healthcare)に、ビオチン化オリゴヌクレオチド(Cbe12-1S4bioteg、Biomers)を、粒子当たり375アトモル(約2.3.10
8個の鎖)の平均密度でグラフトした。オリゴヌクレオチドは、放出可能な3’入力部位(配列αに相補的であり、αは、5’ATTCAGGATCG3’、配列番号20である)及び配列α’(α’は、5’CATTCAGGATCG3’、配列番号21である)に相補的な5’出力部位を含むように設計される。オリゴヌクレオチドはまた、入力部位と出力部位との間に酵素BsmI(New England Biolabs、NEB)の制限部位を含む。これらのDNAグラフト化粒子を、反応緩衝液及びDNAツールボックス増幅混合物(α鎖の増幅鋳型、DNAポリメラーゼ[Bstウォームスタート、NEB]、ニッキング酵素[Nb.BsmI、NEB]、制限酵素[BsmI、NEB]、エキソヌクレアーゼ[ttRecJ]、及び二本鎖特異的色素[Evagreen、Biotium])を含有する反応混合物に浸漬する(以下の表を参照されたい)。
【0452】
【0453】
反応物をインキュベーションし、ビーズを蛍光顕微鏡によって観察する(
図10b~
図10c)。最初は、少量の鎖アルファのみが存在し、EvaGreenによって誘導されるビーズの蛍光は安定である。続いて、重合/ニッキングサイクルによって駆動される増幅反応、キックインし、多くのα’鎖が産生される。これらのα’鎖は、ビーズグラフト化オリゴヌクレオチドの相補的配列に結合し、ポリメラーゼによって伸長される。この反応は、一本鎖オリゴヌクレオチドを二本鎖形態に変換し、粒子の蛍光の時間的増加をもたらす。新たに形成された二本鎖は制限酵素によって切断され、粒子結合オリゴヌクレオチドの3’部分を溶液中に放出し、これはビーズの蛍光強度の減少によって観察される。粒子の蛍光時間追跡のベル形状(
図10c)から、一本鎖DNAは、制限酵素の存在下で、鎖αの産生に条件的に、ヒドロゲル粒子から効率的に放出されると結論付けられ得る。
【0454】
実施例9:近接オリゴコンジュゲート抗体対を使用する、2つの表面マーカーを標的とする細胞型の表現型決定。
一対のオリゴコンジュゲート抗体を使用した2つの表面マーカーを標的とする細胞の表現型決定の概略図を
図15に示す。
【0455】
先に実施例2で記載したように、totalseqBオリゴタグ化抗体を使用して、細胞表面マーカーを標的とする特定の細胞型を表現型決定し得る。ここで、本発明者らは、抗体が細胞表面マーカーにごく近接して結合する場合、互いに相補的である一本鎖オリゴでタグ付けされた一対の抗体を使用して、細胞表現型決定のための2つの表面マーカーを標的とした。一本鎖オリゴは、それらの相補的ハイブリダイゼーションが、Bst大断片ポリメラーゼによる鎖伸長をもたらし、NbBsmIニッキング部位を産生し、続いて伸長(B11a)のニッカーゼ媒介放出をもたらし、これが次にDNAツールボックスを誘発するように設計される。このアプローチは、1つの細胞表面マーカー(1つの抗体のみを使用し、分子の半分が相補鎖のうちの一方でタグ付けされ、半分が他方でタグ付けされた)又は2つの細胞表面マーカー(2つの異なる表面マーカーに特異的な2つの異なる抗体を使用し、各々が相補鎖のうちの一方でタグ付けされる)を標的とするために使用され得る。これは、本発明者らが、異質な集団からの細胞の更により特異的な亜型を表現型決定することを可能にする。
【0456】
本発明者らは、最初に、近接オリゴ設計及び反応パラメータをバルクで調査した。ヒト抗CD3-TotalseqB及びヒト抗CD45-TotalseqB抗体をアッセイに使用して、細胞表面マーカーCD3及びCD45を標的とした。以下のオリゴ配列は、オリゴがtotalseqB抗体にハイブリダイゼーションし得るように、totalseqB相補的配列を含むように設計された。
【0457】
【0458】
aTSB-B11b-2及びaTSB-B11b-2toaにおける共通のオリゴヌクレオチド配列(5’TTGCTAGGACCGGCCTTAAAGC、(配列番号24))は、TotalseqB配列に相補的であり、抗体上の鎖をハイブリダイゼーションするために使用される。TTTTTTTTTTTT(配列番号25)は、柔軟なリンカーとして作用する。共通配列の下流は、aTSB-B11b-2中のアクチベーター配列であり、これはDNAポリメラーゼによって伸長される。aTSB-B11b-2toa鎖において、共通配列の下流は、非オリゴヌクレオチドスペーサーsp18(18原子ヘキサ-エチレングリコールスペーサー)であり、続いてB11bからB11aへのコンバーター配列である。sp18は、アクチベーター配列がDNAポリメラーゼによってコンバーター配列に伸長することを可能にしない。
【0459】
以下を使用して、CD3及びCD45表面マーカーを標的とするJurkat細胞を表現型決定した:
CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2及びCD3-totalseqB-aTSB-B11b-2toa(CD3-CD3)の組み合わせ、又は、
CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2及びCD45-totalseqB-aTSB-B11b-2toa(CD3-CD45)の組み合わせ
【0460】
上記オリゴコンジュゲート抗体を以下のように調製した。
【0461】
【0462】
【0463】
【0464】
上記コンジュゲートを室温で一晩インキュベーションし、使用前に4℃で保存した。200μlの1×TBS及び200μlのBiolegend染色緩衝液中に懸濁した1×106個のJurkat細胞を、2μlの各抗体対で染色し、4℃で30分間インキュベーションした。1mlの1×TBS中で2回洗浄し、250rcfで5分間遠心分離することによって、未結合抗体を細胞懸濁液から除去した。最後に、細胞ペレットを50μlの1×TBSに再懸濁した。
【0465】
以下のマスターミックスを調製した。
【0466】
【0467】
【表15】
「
*」は、塩基に対するホスホチオエート(PTO)修飾を示す
【0468】
約50000個の標識された細胞を、上記マスターミックスからなる増幅混合物にスパイクした。10μLの試料をBioRad CFX96リアルタイムPCRにおいて37℃でインキュベーションし、プローブ(Atto633)の蛍光を2分ごとに記録した。
【0469】
増幅曲線からのCq値は、抗体対にコンジュゲートされた近接オリゴを使用して、2つの表面マーカーを標的とする細胞の成功裏の表現型決定を示す(
図16及び
図17を参照されたい)。CD3-CD3及びCD3-CD45実験におけるCq値の類似性は、抗体標的に関係なく近接オリゴの再現性を反映する。反応は、両方のオリゴコンジュゲートが存在する場合にのみ誘発される。1つのコンジュゲートの存在は、陰性対照(CD3)によって示されるように分子プログラムを誘発しない。
【0470】
実施例10:液滴中の近接オリゴコンジュゲート抗体対を使用して2つの表面マーカーを標的とする、微小液滴封入化単一細胞の表現型決定。
異質な集団由来の単一細胞亜型の表現型特異性を増加させるために、本発明者らは、微小滴中に封入された細胞上の2つの表面マーカーを標的とする近接伸長アッセイを使用した単一細胞表現型決定を導入した。上記の実施例に記載されるように、抗体-オリゴコンジュゲート対を使用して、液滴封入化単一細胞を表現型決定した。1×106個のJurkat細胞を、CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2及びCD3-totalseqB-aTSB-B11b-2toa(CD3-CD3)の組み合わせを使用して染色し、未結合抗体を先に説明したように除去した。1×106個のJurkat細胞を、CD3-totalseqB-aTSB-B11b-2(CD3)を使用して染色した。この集団は陰性対照として機能した。以下のマスターミックスを調製した。
【0471】
【0472】
20%のカルボキシメチルセルロース(Carboxymethylcellulose、CMC)を使用して、マスターミックスの密度を維持し、液滴封入化のプロセス中の細胞沈殿を回避した。CMCは、分子プログラムに影響を及ぼさないことが分かった(データは示さず)。マスターミックスでの細胞の封入化、チャンバー充填、データ取得、及び分析を、先に説明したように実施した。CD3-CD3標識された細胞を含有する液滴エマルジョンは、無色としてカラーバーコード化されたが、CD3標識された細胞を含有する液滴エマルジョンは、1%のカスケードブルーを使用して青色にカラーバーコード化された。
【0473】
図18に見られるように、個々の液滴のCy5蛍光強度を、液滴分析パイプラインを使用してデジタル的に取得した。蛍光強度は、各時点での液滴の蛍光強度値を時点ゼロでの蛍光強度値で割ることによって正規化した。画像化の期間にわたって閾値を上回る各集団の液滴数をプロットするために、1.5の閾値を考慮した。近接オリゴタグ化抗体対(CD3-CD3)で標識された細胞を含有する最大液滴が誘発され、20~38分の時点の間に閾値をまたぐが、一方、1つの抗体(CD3)で標識された細胞を含有する数滴のみが70分後に閾値をまたぐ。これは、特異的反応と非特異的反応との間の約30分の時間窓を示す。それはまた、アッセイが3%未満の偽陽性の低下を有することを示す。
【0474】
実施例11:近接伸長アッセイ及びバルク反応におけるDNAツールボックスを使用した分泌サイトカインの検出
サイトカインを分泌するそれらの能力に基づく細胞の表現型決定は、オリゴコンジュゲート抗体を使用して達成され得る。異質な集団中の細胞型又は集団中の細胞の亜型がサイトカインを放出する能力は、その活性化状態及びシグナル伝達に対する情報を提供する。本発明者らは、近接伸長及びDNAツールボックスの組み合わせを使用して、細胞分泌分子を検出する。分泌分子上の2つの異なるエピトープに特異的な一対の一本鎖オリゴコンジュゲート抗体は、抗体がその標的に結合する場合にハイブリダイゼーションし、ポリメラーゼ媒介鎖伸長及びシグナル配列(B11a)のニッカーゼ媒介放出をもたらし、これは、DNAツールボックスを誘発し、次いで、細胞によるサイトカインの分泌を確認する蛍光読み取りを産生する。
【0475】
図19は、標的タンパク質の検出に基づく近接アッセイの概念を説明する概略図である。標的タンパク質の2つの異なるエピトープに特異的な一対の抗体が使用される。これらの抗体は、塩基相補的末端を有する一本鎖オリゴで共有結合的にグラフトされる。抗体は、標的タンパク質に結合すると、オリゴの相補的塩基対形成をもたらす。DNAポリメラーゼ媒介鎖伸長は、二本鎖ニッキング部位の作製をもたらすであろう。伸長された鎖のニッカーゼ媒介放出は、標的タンパク質の存在を確認する蛍光読み出しを産生するDNAツールボックスを活性化する。標的タンパク質の非存在下では、抗体対は相互作用せず、したがって、DNAツールボックスは不活性化されたままであり、蛍光を引き起こさない。
【0476】
蛍光読み出しは、細胞によって産生されるサイトカインの濃度の関数であり、より高いサイトカインレベルは、より早い蛍光スイッチングをもたらす。このアプローチを使用して、細胞を表現型決定し、サイトカイン発現に基づいて分類し得る。複数のサイトカインに特異的なオリゴコンジュゲート抗体のカスケードもまた、DNAツールボックスとともに使用され得る。
【0477】
本発明者らは、TNFαに対する2つの異なるエピトープに特異的なBiolegend抗ヒトモノクローナルTNFα抗体(MAb1及びMAb11、1mg/ml)を使用した。Abcamオリゴヌクレオチドコンジュゲーションキット(ab218260)を使用して、「リンク30」と称される5’アミノ化30bp共通配列を抗体に結合させた。抗体-オリゴコンジュゲーション後、室温で一晩インキュベーションすることによって、リンク30相補的cLink30-T12-B11b-2をMAb1にハイブリダイゼーションさせ、cLink30-T12-B11b-2toaをMAb11にハイブリダイゼーションさせた。オリゴコンジュゲート抗体を沈殿させ(未結合オリゴを除去するため)、製造業者のプロトコルに従って再懸濁した。
【0478】
【0479】
上記で説明したように、両方のオリゴにおける共通配列を使用して、抗体上にコンジュゲートされたcLink30上の鎖をハイブリダイゼーションし、非オリゴヌクレオチドスペーサーsp18は、相補鎖がコンバーター配列を超えて伸長するのを防ぐ。
【0480】
本発明者らは、未結合抗体を除去するための洗浄ステップがないので、アッセイにおいて使用されるオリゴコンジュゲート抗体の濃度が重要なパラメータであることを見出した。反応中の抗体分子が多すぎると、偽近接を誘発する可能性がある。そこで、偽近接を誘発しない抗体の最大濃度を最初に調査した。抗TNF抗体-オリゴコンジュゲートを連続希釈し、15nMの組換えTNFα(rTNFα)とともに、又はそれを含まず、4℃で30分間インキュベーションした。インキュベーション後、以下のマスターミックスを添加し、CFX96を使用して37℃で2分ごとにDNAツールボックスレポータープローブの蛍光強度を記録した。各反応の増幅曲線のCq値を抽出し、プロットした。各オリゴコンジュゲート抗体の1:104倍希釈は、0nM~15nMのrTNFαを検出及び区別することが見出された。より高い濃度の抗体は偽近接を産生した。
【0481】
【0482】
最初に、近接アッセイを使用してrTNFα検出のための抗体希釈を決定した(
図20を参照されたい)。各オリゴコンジュゲート抗体の1:10
4倍希釈は、0~15nMのrTNFαを検出及び区別することが見出された。抗体のより低い希釈は、偽近接を産生した。
【0483】
次いで、本発明者らは、抗体の1:104希釈を使用して、様々な濃度のrTNFαを検出した。マスターミックス組成物、反応設定、及びデータ取得を上記のように実施した。アッセイは明らかに反応ミックス中のrTNFαを検出することができた。システムの自動誘発は、90分後に起こり、少なくとも40分の時間窓を与えた。
【0484】
コンジュゲートオリゴの近接媒介ハイブリダイゼーションを引き起こす30nMのTNFαの存在は、約50分でDNAツールボックスの誘発をもたらす。反応の自動誘発は、少なくとも90分後に生じる(
図21を参照されたい)。
【0485】
実施例12:近接伸長アッセイ及び液滴中のDNAツールボックスを使用したrTNFαの検出
液滴中の近接アッセイによって分泌サイトカインを検出する目的のために、本発明者らは、抗TNFα抗体(MAb1及びMAb11)コンジュゲート近接オリゴ(先に説明したとおり)を使用して、30nMの組換えTNFαを検出した。30nMのrTNFαを、1:10
4希釈の各抗体とともに室温で30分間インキュベーションし、以下のマスターミックスと混合した。1×TBSと混合した抗体を、陰性対照としての抗体とともに同様にインキュベーションした。1%のカスケードブルーを陰性対照反応物と混合した。80pLの液滴を、別々のPDMSデバイスを使用して、マスターミックス、30nMのrTNFα、及び抗体を含有するミックス(液滴コード無色)、並びにマスターミックス、1×TBS、及び抗体を含有するミックス(液滴コード青色)から作製した。両方のミックスからの液滴エマルジョンを一緒に収集し、先に説明したように2D経時画像化によって分析した。
図22に示されるように、近接オリゴコンジュゲート抗体は液滴中のrTNFαを成功裏に検出した。30nMのサイトカインを含有する液滴の大部分は、30~48分以内に蛍光シグナルを産生した。サイトカインを含有しない液滴は、430分後に蛍光シグナルを産生した。これは、抗体上にコンジュゲートされたオリゴを含有する近接アッセイが、サイトカインの検出において効率的であり、標的の存在下で1時間以内に特異的反応を誘発することを証明している。偽近接誘発された反応は、非常に遅い時点で生じる。
【0486】
【0487】
実施例13:アプタマーベースの近接伸長アッセイ
図23は、PUMAに基づく近接伸長アッセイの原理スキームを示す。
【0488】
本実施例では、本発明者らは、アプタマー近接伸長アッセイを介してヒトアルファ-トロンビンを検出する可能性を調査した。この設計は、FS緩衝液1×中、37℃でNb.BsmIニッカーゼ酵素を用いて、及びBst大断片(BstLF)ポリメラーゼを用いて機能する。cT及びアクチベーターは、9塩基上で互いにハイブリダイゼーションしている。Nb.BsmIニッキング部位配列のために、設計は可逆的である。その場合、アクチベーターがcTにハイブリダイゼーションし、ポリメラーゼによって伸長され、次いでニックを入れられてトリガーを放出すると、オリゴヌクレオチドはそれらの初期状態、すなわちポリメラーゼによる伸長前に戻る。したがって、トリガー産生は、2つのオリゴヌクレオチド間の平衡をシフトせず、バックグラウンド増幅を低減させる。
【0489】
アプタマーを用いる原理の証明のために、本発明者らは、同じ総説(Deng、2014)において報告された2つのアプタマー:15mer及び29merを用いてヒトアルファ-トロンビンを標的とすることを決定した。
図23に示されるように、本発明者らによって最適化されたアクチベーター及びcT配列、並びにT12リンカーを、2つの選択されたアプタマーの配列に付加した。
【0490】
【0491】
cTは、アプタマーの5’末端に付加され、アクチベーターは、3’末端に付加される。15merアクチベーター(15mer-act)/29mer-cTのKd及び15mer-cT/29mer-actのKdを計算し(表2参照)、両方のオリゴヌクレオチドセットについて、37℃で104nMのKdが得られた。第1のステップは、0、1、10、及び100nMの15mer-act/29mer-cTの等モルミックスの存在下(
図24b.i.)、又は0、1、10及び100nMの15mer-cT/29mer-acTの等モルミックスの存在下(
図24b.ii.)で、それぞれ0、1、10、及び100nMの範囲のヒトアルファ-トロンビンを担持することであった。組み合わせ15mer-act/29mer-cTは、ヒトアルファ-トロンビン検出を可能にしなかった。しかしながら、10nM及び100nMの15mer-cT/29mer-actは、100nMのヒトアルファ-トロンビンの検出を可能にした。0及び1nMの15mer-cT/29mer-actは、ヒトアルファ-トロンビン検出を可能にしなかった。100nMのヒトアルファ-トロンビンの検出についてのスコア
100nMを計算し、
図24b.iiに報告した。最も高いスコアは、10nMの15mer-cT/29mer-actで得られ、したがって、本発明者らは、更なる最適化のためにこれらの条件を選択した。15mer-cT/29mer-act及び15mer-act/29mer-cTの両方の組み合わせを試験する必要性が示されている。オリゴヌクレオチドの空間的配座のために、これらの組み合わせのうちの1つのみが機能する可能性がある。更に、リンカー、cT、又はアクチベーターをアプタマーに付加することは、その特性を修飾し、したがって、標的化されたタンパク質へのその結合を妨げる可能性がある。
【0492】
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で4℃でアセンブルした。miR緩衝液4×をmQ水中で希釈して、1×最終濃度に到達させた。次いで、鋳型を添加して、所望の濃度のアプタマー1-cT及びアプタマー2-act、100nMのaT、30nMのpT、及び50nMのrTに到達させた。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nb.BsmI(300U/mL)、Bst大断片(36U/mL)、ttRecJ(23nM)]。ヒトアルファ-トロンビンを最初にmQ水中に10倍に希釈し、低結合チップ(Eppendorf)を使用して5%のグリセロール中のパラフィルム上で連続希釈した。
【0493】
標的タンパク質を最初にサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で37℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、Atを最大蛍光シグナルの20%として決定した。
【0494】
図24に示される結果がmiR緩衝液1×を用いて得られたため、本発明者らは、FS緩衝液1×及びmiR緩衝液1×において、10nMの15mer-cT/29mer-actを用いて、ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを実現することを決定した(
図25c.i.)。100nMのヒトアルファ-トロンビンの検出についてのスコア
100nMを計算し、図に報告した。最高スコアがFS緩衝液1×で得られたため、本発明者らは、この緩衝液中でPEAを実施し続けることを決定した。注目すべきことに、LODは、
図24b.iiの結果よりも低い。これは、本発明者らがより正確なタンパク質希釈を実現することを可能にする、新しい低結合ピペットチップ、Corningの使用によるものである。更に、固有の阻害効果は、1μMのヒトアルファ-トロンビンについて見られる。トリガーの非特異的産生を低減させるために、本発明者らは、10nMの15mer-cT及び10nMの29mer-act又は29mer-act-V2のいずれかでのヒトアルファ-トロンビンの検出を比較した。29mer-act-V2は、29mer-actより1塩基少ない8塩基上でcTにマッチするアクチベーターを有する(
図25c.ii.)。この失われた塩基はアクチベーターの5’にあり、したがって、ポリメラーゼ伸長によって回収することができない。スコア
100nMを計算し、図に報告した。スコアは、15mer-cT/29mer-actオリゴヌクレオチドセットがより高い。更に、15mer-cT/29mer-act-V2での10nMのヒトアルファ-トロンビンの検出は、15mer-act/29mer-cTでの検出よりも約5倍遅い。15mer-cT/29mer-act-V2のKdを計算し(表21を参照されたい)、37℃で156nMのKdが得られた。15mer-cT/29mer-actオリゴヌクレオチドセットより高いKdでは、トリガーの産生がより遅くなり、したがって増幅時間がより長くなることが論理的である。
【0495】
最後に、ある範囲のヒトアルファ-トロンビンを、10nMの15mer-cT及び29mer-actを含有するFS緩衝液中で実現した。10nMのごちゃまぜにされたアプタマーを有する対照が実現された。ごちゃまぜにされたアプタマーは、アプタマーの名称の前に「S」によって示される(
図25c.iii.)。100nMのヒトアルファ-トロンビンの検出は、アプタマーについてのみ達成され、ごちゃまぜにされたバージョンについてはそうではなく、検出の特異性を実証した。
【0496】
【0497】
全ての反応混合物を、200μlのPCRチューブ中、4℃で、25μMのdNTP、3mMのMgSO4、及び2μMのネトロプシンを補充した、1×最終濃度に達するようにmQ水中に希釈されたFS緩衝液5×(NEB)中、又は1×最終濃度に達するようにmQ水中に希釈されたmir緩衝液4×中のいずれかでアセンブルした。
【0498】
次いで、鋳型を添加して、10nMのアプタマー1-cT、10nMのアプタマー2-act、100nMのaT、30nMのpT、及び50nMのrTの所望の濃度に到達させた。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nb.BsmI(300U/mL)、Bst大断片(36U/mL)、ttRecJ(23nM)]。ヒトアルファ-トロンビンを最初にmQ水中に10倍に希釈し、低結合チップ(Eppendorf)を使用して5%のグリセロール中のパラフィルム上で連続希釈した。
【0499】
標的タンパク質を最初にサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で37℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、Atを最大蛍光シグナルの20%として決定した。
【0500】
ヒトアルファ-トロンビンの検出速度を加速する試みにおいて、本発明者らは、Nt.BstNBIとともに働く2セットのアクチベーター/cTを設計した。1つは、トリガー相補体とNt.BstNBIニッキング部位との間に配列GAGAを含有し、1つは、配列GATTを含有する(実施例、自己プライミング鋳型を参照されたい)。GAGAアクチベーター/cT及びGATTアクチベーター/cTセットのKdを計算し(表21を参照されたい)、37℃でそれぞれ29及び69nMのKdが得られた。Kdが低いほど、2つのオリゴヌクレオチドの親和性が高く、トリガーの非特異的産生の可能性が高い。Nt.BstNBI PEA設計は可逆的ではないことに留意されたい。したがって、非特異的トリガー産生は、Nb.BmsI設計と比較して増加する。
【0501】
これらの2つのセットを試験した(
図26d)。GAGAアクチベーター/cTセットは、ヒトアルファ-トロンビンを有する及びそれを有しないGATTアクチベーター/cTセットよりも速い。1μMのヒトアルファ-トロンビンの検出についてのスコア
1μMを計算し、図に報告した。より高いスコアは、GAGAオリゴヌクレオチドセットについて得られる。更に、GAGAオリゴヌクレオチドセットは、10nMのヒトアルファ-トロンビンの検出を可能にし、1μMによって誘導される阻害効果に感受性ではない。GATTオリゴヌクレオチドセットは、10nMのヒトアルファ-トロンビンの検出を可能にせず、1μMによって誘導される阻害効果に感受性である。
【0502】
【0503】
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で4℃でアセンブルした。FS緩衝液5×(NEB)をmQ水中に希釈して1×最終濃度に到達させ、25μMのdNTP、3mMのMgSO4、及び2μMのネトロプシンを補充した。次いで、鋳型を、10nMのアプタマー1-cT、10nMのアプタマー2-act、100nMのaT、30nMのpT、及び50nMのrTの最終濃度に添加した。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nb.BsmI(300U/mL)、Nt.BstNBI(10U/mL)、Bst大断片(36U/mL)、ttRecJ(23nM)]。ヒトアルファ-トロンビンを最初にmQ水中に10倍に希釈し、低結合チップ(Eppendorf)を使用して5%のグリセロール中のパラフィルム上で連続希釈した。
【0504】
標的タンパク質を最初にサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で37℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、Atを最大蛍光シグナルの20%として決定した。
【0505】
【0506】
表21:所与の温度での2つの異なるオリゴヌクレオチドのKd。データは、Nupackを介して得た。Na+の濃度を0.08Mに設定し、Mg++の濃度を0.01Mに設定した。異なるオリゴヌクレオチドの濃度を1μMに設定した。
【0507】
実施例14:自己プライミング鋳型
cTは、トリガーの非特異的増幅に関与する主要構成要素である。この問題に取り組むために、本発明者らは、cTを用いない方法に移行した。実際、細胞染色の洗浄ステップを利用することにより、自己プライミング鋳型(sT)を含めることができる。この鋳型は、それぞれ5’から3’の順に、3つの部分:トリガーに相補的な部分、Nt.BstNBIニッキング部位、及び3’末端がニッキング部位にハイブリダイゼーションし、ポリメラーゼによって伸長される準備を可能にするステムループからなる。ストレプトアビジンを介してsTをビオチン化抗体に結合させるために、sTの5’にビオチンを付加する必要がある。したがって、標的タンパク質の存在下では、sTは存在するが、標的タンパク質の非存在下では、sTは存在しない。次いで、様々なPUMA構成要素を添加して、sTからのトリガー産生を可能にする。原理を
図27aに示す。
【0508】
本発明者らは、トリガーの産生に対するニッキング認識部位の周辺塩基の影響を調査した。これを行うために、本発明者らは、sTの配列(表1の配列番号1)を選択し、配列番号1と比較して2塩基修飾を有する48個の配列及びより多くの修飾を有する5個の配列(表1の配列番号49~番号53)を順序付けた。次いで、本発明者らは、PUMAを用いて1pMのsTについて増幅時間を調べ(
図27b)、50℃でのBcスイッチについて1nMのsTについて線形トリガー産生速度を調べた(
図27c)。次いで、増幅時間の逆数の関数としての産生速度をプロットして、それらが相関しているかどうかを調べた(
図27d)。予想どおり、これらの2つのパラメータの間に相関が存在する。産生速度が高いほど、増幅時間が短い。これにより、sTの産生速度が、PUMAによるその検出の効率を評価するための関連パラメータであることが確認される。配列に依存する産生速度に関して非常に強い不一致が観察された(表1)。
【0509】
【0510】
【0511】
【0512】
【0513】
産生速度:
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で4℃でアセンブルした。miR緩衝液4×をmQ水中で希釈して、1×最終濃度に到達させた。次いで、50nMのrT(MBBcBsmIAtto633)を添加した。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nt.BstNBI(10U/mL)及びVent(エキソ-)(80U/mL)]。標的化されたsTを、低結合DNAチップ(Eppendorf)を使用して、1×Tris-EDTA緩衝液(Sigma Aldrich)中のパラフィルム上で連続希釈した。最初に、sTを、1nMの最終濃度に達するようにサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で50℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、導出し、産生速度を抽出した。
【0514】
【0515】
増幅時間:
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で4℃でアセンブルした。miR緩衝液4×をmQ水中で希釈して、1×最終濃度に到達させた。次いで、鋳型を添加して、50nMのCBc12-2PS4、10nMのpTBc12T5SP、及び50nMのMBBcBsmIAtto633の最終濃度に到達させた。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nb.BsmI(300U/mL)、Nt.BstNBI(10U/mL)、Vent(エキソ-)(80U/mL)、ttRecJ(23nM)]。標的化されたsTを、低結合DNAチップ(Eppendorf)を使用して、1pMの最終濃度のsTに達するように、1×Tris-EDTA緩衝液(SigmaAldrich)中のパラフィルム上で連続希釈した。最初に、sTをサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で50℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、Atを最大蛍光シグナルの20%として決定した。
【0516】
【表25】
「
*」は、塩基に対するホスホチオエート(PTO)修飾を示す
【0517】
次いで、本発明者らは、sTの5’末端にホスホロチオエートを付加して、産生されたトリガーと自己プライミング鋳型との間の融解温度を低下させることによってトリガー産生を加速する可能性を調べた(Jaroszewski、1996)。この目的のために、1~6個のホスホロチオエートを同じ自己プライミング鋳型に添加することによって、産生速度実験を実施した(
図28e.i.)。結果を
図28e.iiに示す。
【0518】
本発明者らは、ホスホロチオエートの存在が産生速度を更に増加させないことを見出した。これは、sTからのトリガーの放出が出力の脱ハイブリダイゼーション速度によって制限されないことを示唆している。
【0519】
産生速度は、上で説明したように得られた。
【0520】
【0521】
本発明者らは、ビオチン-ストレプトアビジン連結を介してこのsTを検出抗体上にグラフトすることを望んだ。したがって、それらは、sTにビオチンを付加する必要があった。このビオチンの2つの位置を試験した。T5-Sp18リンカー(TTTTT-sp18リンカー)を有する5’末端(
図29f.i.)、及びアミノ-dTビルディングブロックを介したループの内側位置(
図29f.ii.)。これら2つの異なるオリゴヌクレオチドの範囲を、0.25ストレプトアビジン等価物の存在下又は非存在下で行った。
図29gに見られ得るように、ストレプトアビジンなしでは、2つの可能性の間に有意差はない。しかしながら、ストレプトアビジンの存在下では、5’末端にビオチンを有するオリゴヌクレオチドは、内部位置にビオチンを有するオリゴヌクレオチドよりもはるかによく検出される(
図29h)。本発明者らによって既に示されたように、オリゴヌクレオチド上のビオチン-ストレプトアビジン基の存在は、ポリメラーゼを妨害し得る(Gines、2017)。sTの5’末端のT5-Sp18リンカーは、立体障害を誘導しないようである。
【0522】
増幅時間は実施例dについて説明したように得た。ストレプトアビジンにコンジュゲートされたsT-Biotの場合、40nMのsT-Biot:ストレプトアビジン(1:0.25)の溶液を調製し、低結合DNAチップ(Eppendorf)を使用して、1×Tris-EDTA緩衝液(Sigma Aldrich)中のパラフィルム上で連続希釈した。
【0523】
次いで、より速い検出を得る試みにおいて、本発明者は、別のポリメラーゼ:Bst 2.0 WSの使用を調べた。表1に示される全ての配列について、0.5%のBst 2.0 WSの存在下及び4%のVent(エキソ-)の存在下で産生速度実験を実施した。
図30iに見られ得るように、試験された配列の大部分について、産生速度は、Bst 2.0 WSの存在下でより高い。これは、sTの検出を促進する。注目すべきことに、Bst 2.0 WSを用いて得られた産生速度は、両方の場合において非常に遅いいくつかの配列を除いて、Vent(エキソ-)を用いて得られた産生速度と強く相関しない。これは、産生速度に対する自己プライミング鋳型の配列の影響が、主にポリメラーゼによるものであることを示唆している。
【0524】
50℃でのBcスイッチについてのsT配列至適化で得られた結果に基づいて、本発明者らは、それらを37℃で作動するB11aスイッチに移す可能性を調査した。したがって、異なるsTについて、50℃でVentを用いて得られたBcトリガーの産生速度の関数として、37℃でBstLFを用いて得られたB11aトリガーのトリガー産生速度を調べた。5つの異なる配列を、sTのNt.BstNBIニッキング部位周辺の塩基について試験した。これらの配列を表3に示す。
図30jに見られ得るように、結果は、2つの産生速度間で非常に類似している。B11aトリガーについてより高い産生速度を有するNt.BstNBIニッキング部位の周りの配列はまた、Bcトリガーでより高い産生速度を与えられた配列である。
【0525】
【0526】
Bst 2.0 WSを用いた50℃でのBcスイッチについての産生速度を、上で説明したように得た。Vent(エキソ-)(80U/mL)をBst 2.0 WS(40U/mL)で置き換えた。
【0527】
37℃でのB11aスイッチの産生速度は、以下のように得られた。
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で、4℃でアセンブルした。FS緩衝液5×(NEB)をmQ水中に希釈して1×最終濃度に到達させ、25μMのdNTP及び3mMのMgSO4を補充した。次いで、50nMのrT(MBB11aBsmIAtto633)を添加した。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nt.BstNBI(10U/mL)及びBst大断片(36U/mL)]。標的化されたsTを、低結合DNAチップ(Eppendorf)を使用して、1×Tris-EDTA緩衝液(Sigma Aldrich)中のパラフィルム上で連続希釈した。最初に、sTを、1nMの最終濃度に達するようにサーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で37℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、導出し、産生速度を抽出した。
【0528】
【0529】
37℃でのBstLFを用いたB11aトリガーの産生のためのトリガー相補的部位とNt.BstNBIニッキング部位との間の塩基の配列最適化について得られた結果に従って、本発明者らは、これらの最適化された自己プライミング鋳型を使用することを決定した。B11aスイッチ自己プライミング鋳型の2つの設計を、0.25当量のストレプトアビジンの存在下で試験した(
図31k):Sp18-T5リンカー及びそれらの5’末端にビオチンを有するGTTT及びGAGA設計。より速い設計はGAGAであり、検出速度のためのsT配列の重要性を強調する。この結果は、NBItoB11a-2+2 Sp18-T5-Biot GAGAオリゴヌクレオチドが細胞表現型決定に使用され得ることを示唆している。
【0530】
増幅時間:
全ての反応混合物を200μlのPCRチューブ中で、4℃でアセンブルした。FS緩衝液5×(NEB)をmQ水中に希釈して1×最終濃度に到達させ、25μMのdNTP、3mMのMgSO4、及び2μMのネトロプシンを補充した。次いで、鋳型を添加して、50nMのCB11a-2PS3、10nMのpTB11aPS3、及び50nMのMBB11aBsmIAtto633の最終濃度に到達させた。ホモジナイゼーション後、BSA(200mg/mL)及び酵素を添加した[Nb.BsmI(300U/mL)、Nt.BstNBI(10U/mL)、Bst大断片(36U/mL)、ttRecJ(23nM)]。標的化されたsTを、低結合DNAチップ(Eppendorf)を使用して、1×Tris-EDTA緩衝液(Sigma Aldrich)中のパラフィルム上で連続希釈した。最初に、sTを、サーモサイクラーチューブ(Bio-rad)に添加し、緩衝液、鋳型、及び酵素を含有する混合物を添加して、10μLの最終体積に到達させた。試料をサーモサイクラー(CFX96 Touch、Bio-Rad)中で37℃でインキュベーションし、蛍光をリアルタイムで記録した。時間追跡を正規化し、Atを最大蛍光シグナルの20%として決定した。
【0531】
実施例15:表現型決定のための抗体コンジュゲート自己プライミング鋳型
【0532】
【0533】
TotalseqBコンバーター鋳型TSBtoB11a-2+2Pは、抗体へコンジュゲートされる鋳型の2つの新しい設計を導入することによってシステムから除去された。
【0534】
NBItoB11a-2+2 Sp18-T5-Biot GAGAは、コンバーター鋳型を必要とせずにDNAポリメラーゼの存在下でDNAツールボックストリガーB11aを産生するビオチン化ヘアピン鋳型である(
図33)。sp18の存在は、ヘアピンループが更に伸長されることを防ぎながら、いくらかの柔軟性を提供し、したがってB11a配列を生成する。ビオチン化鋳型は、室温での一晩のインキュベーションによってストレプトアビジンタグ化抗体上にコンジュゲートされ得る。この設計は、抗体上のTotalseqBタグの必要性を除去する。
【0535】
TSB_full_toB11a-2+2は、totalseqBタグに相補的なコンバーター鋳型であり、室温での一晩のインキュベーションによって抗体にハイブリダイゼーションされ得る(
図32)。抗体コンジュゲートコンバーター鋳型は、任意の追加のコンバーター鋳型も必要とせずにB11aを産生する。
【0536】
鋳型は、「自己プライミング鋳型」と称される。これらの2つの設計は、先に説明したように、バルク及び液滴反応において細胞を表現型決定するために成功裏に試験された。
【0537】
図34は、TSB_full_toB11a-2+2にハイブリダイゼーションされた抗CD3totalseqB抗体及びDNAツールボックスを使用した単一細胞同定を示す。CD3自己プライミング鋳型標識された細胞を含有する95%超の液滴が、20~50分でCy5蛍光閾値をまたいだ。一方、標識されていない細胞を含有する液滴の大部分は、200分後に閾値をまたいだ。
【0538】
図35は、NBItoB11a-2+2Sp18T5Biot GAGAとコンジュゲートしたストレプトアビジンタグ化抗CD3抗体を使用したJurkat細胞の表現型決定を示す。標識された細胞は、24分でDNAツールボックスを誘発させるが、標識されていない細胞は、反応を誘発させない。
【0539】
実施例16:異質の集団における特異的細胞型のDNAツールボックス媒介表現型決定
本発明者らは、jurkat及びマウス(P388D1)細胞を混合することによって、細胞の異質のプールを作製した(各1×106個の細胞)。抗CD3自己プライミング鋳型抗体(先に説明した)を使用して、異質のプール中のjurkat細胞を表現型決定した。マウス細胞を、画像化の間にそれらをjurkat細胞から区別することを可能にするカルセインAMで染色した。4℃で30分間インキュベーションすることによって抗CD3自己プライミング鋳型抗体で細胞の異質のプールを標識した後、200gで5分間遠心分離することによって細胞を1×TBSで3回洗浄することによって、未結合抗体を除去した。次いで、細胞を、DNAツールボックスマスターミックスを含有する80pLの液滴中に封入した。液滴エマルジョンを、先に説明したように、2D経時画像化によって分析した。抗CD3自己プライミング鋳型抗体は、異質のプール中のCD3発現jurkat細胞を選択的に標識した。したがって、jurkat細胞を含有する液滴のみが、DNAツールボックスを誘発し、20分でCy5蛍光を産生することができた。細胞を含まない液滴は、アッセイの特異性を示すCy5蛍光を全く産生しなかった。したがって、DNAツールボックスは、異質の集団における特定の細胞型を選択的に表現型決定するのに効率的である。
【0540】
図36に示すように、時点ゼロ(T=0分)では、全ての液滴がゼロCy5蛍光を有していた(すなわち、液滴中にバックグラウンドがなかった)。20分の反応(T=20分)後、jurkat細胞を含有する液滴は、DNAツールボックス媒介蛍光(すなわち、液滴中のバックグラウンド色)を産生したが、マウス細胞を含有する液滴は、DNAツールボックスを活性化しなかったので、外観は変化しないままであった。
【0541】
選択的表現型決定及び遺伝子型決定
概念:
異質の集団由来の細胞を選択的に表現型決定する最終目的は、配列決定である。これにより、目的の亜集団のゲノム又はトランスクリプトーム情報を得ることが可能になる。単一細胞選択的表現型決定及び遺伝子型決定は、細胞、バーコード化ヒドロゲルビーズ、及びDNAツールボックスマスターミックスの液滴封入化によって達成される。1つの液滴は、1つの細胞と、1つのバーコード化ヒドロゲルビーズと、DNAツールボックス鋳型、緩衝液、及び酵素を含有するマスターミックスと、を含有するであろう。細胞は、DNAツールボックスを誘発するであろう単一/複数のオリゴコンジュゲート抗体若しくはアプタマー、又はコレステロールコンジュゲートオリゴを使用して、細胞表面マーカー、分泌分子、細胞小器官などを標的とするいずれかによって表現型決定されるであろう。DNAツールボックス(B11a)の出力は、蛍光読み出しのためのレポーター蛍光プローブとともに使用され得るか、又は特定の遺伝子若しくはトータルmRNAを捕捉するためのバーコード化プライマーを有するヒドロゲルビーズとともに使用され得る。選択的プライマー放出のために、DNAツールボックス(B11a)の出力は、コンバーター鋳型によって「seqshave」と称される配列に変換される。バーコード化プライマー上の領域へのseqshaveの相補的ハイブリダイゼーションは、BclI制限部位を作製するポリメラーゼ媒介鎖伸長をもたらし、続いて、マスターミックス中に存在するBclI制限酵素によるプライマーの放出をもたらす。蛍光読み出しと同様に、バーコード化プライマー放出は、表現型決定された細胞を含有する液滴中で起こるであろう。捕捉された遺伝子は、直線的に増幅されるか、又はmRNAが液滴中でcDNAへ変換される。選択的プライマー放出により、表現型決定された細胞由来のバーコード化DNAは溶液中にあるが、表現型決定されていない細胞由来のDNAはビーズ上にハイブリダイゼーションしたままであろう。エマルジョン破壊後の遠心分離は、表現型決定された細胞の遺伝情報を、表現型決定されていない細胞から分離するであろう。バーコード化DNAを配列決定ライブラリーに変換し、配列決定するであろう。
【0542】
ヒドロゲルビーズは、acryditedランダム配列、続くBclI制限部位、DNAツールボックス出力ハイブリダイゼーション部位、バーコード、固有分子インデックス、プライマーを含有する10pLのアクリルアミドビーズである。バーコード化は、スプリットアンドプール法(Grosselin,K.et al,2019)によって実施される。したがって、各ビーズは、それで封入化された細胞の情報を与える特異的バーコードを有し、UMIは、PCR複製物を除去するのに役立つ。
【0543】
実施例17:ヒドロゲルビーズからの表現型決定された細胞媒介性選択的プライマー放出
バーコード化プライマーのDNAツールボックス媒介放出を観察するために、本発明者らは、Cy5フルオロフォア(3’末端)で標識された200μMの合成プライマーをヒドロゲルビーズ上でライゲーションした。異なる濃度の合成seqshave、Cy5標識されたプライマーを有する20000個のビーズ、及び以下のマスターミックスを含有する20μlのバルク反応を行った。
【0544】
【0545】
反応ミックスを37℃で2時間インキュベーションし、フローサイトメーターを使用してビーズの蛍光中央値を評価した。時点ゼロ及び時点2時間でのビーズの蛍光中央値の差を使用して、ある範囲の合成seqshave濃度で処理した場合に放出されたプライマーのパーセンテージを計算し、プロットした。40pmolの合成seqshaveは、約90%のプライマー放出をもたらし、これは、濃度を増加させても有意に変化しない(
図37)。これは、本発明者らに概念の初期証明を提供した。
【0546】
seqshaveコンバーター鋳型(B11a-3toseqshave-6TTS4)を使用して、DNAツールボックス媒介プライマー放出の可能性を、フローサイトメーター読み出しを使用して評価した。本発明者らは、バルク反応におけるseqshaveコンバーター鋳型(B11a-3toseqshave-6TTS4)の設計を最適化し、バーコード化プライマーの放出がコンバーター鋳型の濃度に正比例することを見出した(
図38)。
【0547】
実施例18:液滴における表現型決定された細胞媒介性プライマー放出
(TSB_full_toB11a-2+2にハイブリダイゼーションしたTSB標識された抗体からなる)CD3-自己プライミング鋳型抗体で標識されたJurkat細胞を、1つの液滴が多くとも1つの細胞及び1つのヒドロゲルビーズを含有するように、Cy5プライマーがライゲーションされたヒドロゲルビーズ及びマスターミックスを有する100pLの液滴中に封入した。液滴エマルジョンを2Dチャンバーに充填し、先に説明したように、3時間、5分ごとに経時画像化によって評価した。蛍光ヒドロゲルビーズを含まない液滴空間の平均蛍光強度を、ImageJを使用して評価した。ビーズ及び抗体標識された細胞を含有する液滴、並びにビーズのみを含有する液滴の平均蛍光強度を時間に対してプロットした。ビーズ及び標識された細胞を含有する液滴中のCy5蛍光の強度は、時間とともに増加したが、ビーズのみを含有する液滴中のCy5蛍光に変化はなかった(
図39~
図41)。これは、ヒドロゲルビーズからのプライマーの表現型決定された細胞媒介放出を証明する。
【0548】
【0549】
【表32】
「
*」は、塩基に対するホスホチオエート(PTO)修飾を示す
【0550】
参考文献:
K.Grosselin,A.Durand,J.Marsolier,A.Poitou,E.Marangoni,F.Nemati,...& A.Gerard.High-throughput single-cell ChIP-seq identifies heterogeneity of chromatin states in breast cancer.Nature genetics,51(6),1060-1066,2019
G.Gines,A.S.Zadorin,J.-C.Galas,T.Fujii,A.Estevez-Torres,and Y.Rondelez.Microscopic agents programmed by DNA circuits.Nature Nanotechnology,12(4):351-359,May 2017.
Bin Deng,Yanwen Lin,Chuan Wang,Feng Li,Zhixin Wang,Hongquan Zhang,Xing-Fang Li,and X.Chris Le.Aptamer binding assays for proteins:The thrombin example-A review.Analytica Chimica Acta,837:1-15,July 2014.
J.W.Jaroszewski,V.Clausen,J.S.Cohen,and O.Dahl.NMR investigations of duplex stability of phosphorothioate and phosphorodithioate DNA analogues modified in both strands.Nucleic Acids Research,24(5):829-834,March 1996.
【配列表】
【国際調査報告】