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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】PDE10化合物のプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20240227BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240227BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61K31/506
A61P25/22
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556751
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 US2022020297
(87)【国際公開番号】W WO2022197647
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/162,333
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル,サチン
(72)【発明者】
【氏名】スクドラレク,ジェイソン・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ラヒーム,イザット・ティー
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB08
4C063BB09
4C063CC67
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC85
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA15
4C086ZA02
4C086ZA18
(57)【要約】
本発明は、ホスホジエステラーゼ10(PDE10)関連の中枢神経系障害の治療のための治療剤として有用な2-メチル-N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-アミンのプロドラッグに関するものである。本発明はまた、統合失調症、精神病又はハンチントン病などの神経障害及び精神障害、並びに線条体機能低下又は大脳基底核機能不全関連の神経障害及び精神障害の治療のためのそのような化合物の使用に関するものでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iの化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
は、
6)-C(O)OCHOC(O)R
7)-C(O)OC1-6アルキル[前記アルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
8)-C(O)-C6-10アリール、C(O)-C6-10ヘテロアリール、-C(O)-C1-6アルキル、-C(O)-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
9)-S-C6-10アリール、-S-C4-10ヘテロアリール、-S-C1-6アルキル、-S-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];及び
10)1~2個のR基で置換されていても良い-C(O)OCHジオキソリル
からなる群から選択され;
は、C1-6アルキル、C6-10アリール、C6-10ヘテロアリール、及びC3-6シクロアルキルからなる群から選択され;前記アルキル、アリールヘテロアリール、及びシクロアルキルは1~3個のR基で置換されていても良く;
は、独立にC1-6アルキル、OC1-6アルキル、オキソ、及びハロゲンからなる群から選択され;
nは1、2、3、又は4である。]
【請求項2】
が-C(O)OCHOC(O)Rである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がC6-10アリールであり、前記アリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記アリールがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がC1-6アルキルであり、前記アルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項7】
がC4-10ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項8】
前記ヘテロアリールが、置換されていないか1~3個のR基で置換されているピリジル及びピリミジニルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がC3-6シクロアルキルであり;前記シクロアルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項10】
前記シクロアルキルが、置換されていないか置換されているシクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルからなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がC(O)OC1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良い、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が-S-C6-10アリール又は-C(O)-C6-10アリールであり、前記アリールが1~3個のR基で置換されていても良い、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
がC(O)OCHジオキソリルであり、前記ジオキソリルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カーバメート;
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)-S-フェニルチオヒドロキシルアミン;
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)ベンズアミド;
ペンチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カーバメート;
((((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カルバモイル)オキシ)メチルベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルヘキサノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルプロパノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-4-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-2-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-3-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル4-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル3-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル3-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル4-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-メチルプロパノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルシクロヘキサンカルボキシレート;及び
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-エチルブタノエート;
である、請求項1に記載の化合物、又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項16】
下記のものから選択される化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【表1】
【請求項17】
【化2】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項18】
【化3】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項19】
【化4】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項20】
【化5】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項21】
【化6】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項22】
【化7】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項23】
【化8】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項24】
【化9】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項25】
薬学的に許容される担体及び請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項26】
薬学的に許容される担体及び下記のものから選択される化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【表2】
【請求項27】
薬学的に許容される担体及び
【化10】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項28】
薬学的に許容される担体及び
【化11】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される担体及び
【化12】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される担体及び
【化13】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項31】
薬学的に許容される担体及び
【化14】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体及び
【化15】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項33】
薬学的に許容される担体及び
【化16】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項34】
薬学的に許容される担体及び
【化17】
である化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項35】
精神障害、妄想性障害及び薬剤誘発性精神病;不安障害、運動障害、気分障害、及び神経変性障害から選択される障害の治療のための医薬の製造のための、請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩の使用。
【請求項36】
処置を必要とする哺乳動物患者におけるPDE10機能不全関連の神経障害又は精神障害の治療方法であって、当該患者に対して、治療上有効量の請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項37】
処置を必要とする哺乳動物患者における線条体機能低下又は大脳基底核機能不全関連の神経障害又は精神障害の治療方法であって、当該患者に対して、治療上有効量の請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項38】
処置を必要とする哺乳動物患者における統合失調症の治療方法であって、当該患者に対して、治療上有効量の請求項1~24のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
統合失調症は、脳の精神及び運動機能に影響を及ぼす消耗性障害である。代表的には、20代初期から中期の個人において診断され、症状としては、幻覚及び妄想又はその一方で、無快感症又は社会的ひきこもりが挙げられる。その観点からすると、それらの症状は認知機能障害及び機能的障害を示唆するものである。抗精神病薬治療で改善があるにもかかわらず、定型(ハロペリドール)及び非定型(クロザピン又はオラルトザピン(olartzapine))抗精神薬を含む現在の治療法は許容性が低く、結果的に服薬不履行又は投薬中断率が非常に高くなっている。治療に対する不満は、効力の欠如又は耐え難く受け入れ難い副作用に起因する。それらの副作用は、顕著な代謝性、錐体外路、プロラクチン性及び心臓性の有害事象に関連していた。Lieberman et al., N. Engl. J. Med.(2005)353:1209-1223を参照する。
【背景技術】
【0002】
精神病及び認知欠損に至る統合失調症の病因には複数の経路が関与すると考えられているが、環状グアノシン一リン酸(cGMP)レベル関連のグルタミン酸/NMDA機能障害及び環状アデノシン一リン酸(cAMP)関連のドーパミン作動性D2受容体の役割に多くの関心が寄せられている。これらの遍在的な二次メッセンジャーは、多くの細胞内タンパク質の機能を変化させるものである。環状AMPは、cAMP-依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の活性を制御し、次にイオンチャネル、酵素及び転写因子を含む多種類のタンパク質をリン酸化及び制御すると考えられている。同様に、cGMPはまた、キナーゼ及びイオンチャネルの下流制御も行う。
【0003】
cAMP及びcGMPなどの環状ヌクレオチドのレベルに影響する一つの経路は、3′,5′-環状ヌクレオチド特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)として知られるこれらの酵素を分解する酵素を変化させるか制御することである。PDE10の同定は三つのグループによって独立して報告され、そのアミノ酸配列、機能特性、及び組織分布に基づいて他のPDEと区別された(Fujishige et al., J. Biol. Chem. (1999) 274:18438-18445;Loughney et al., Gene(1999)234:109-117;Soderling et al., PNAS. USA(1999)96:7071-7076)。PDE10サブタイプは、現在のところ、N-末端(3個のバリアント)及びC-末端(2個のバリアント)の両端で選択的スプライスバリアントを有する唯一のメンバー、PDE10Aからなるが、これは、N-末端のGAFドメイン又はC-末端の触媒性ドメインに影響を及ぼさない。N-末端スプライすバリアント、PDE10A1及びPDE10A2は、A2バリアントが、活性化時、すなわち、cAMPレベル上昇に反応したPKAリン酸化時、結果として酵素の局在に対する細胞内変化が起こるPKAリン酸化部位を有するという点で異なる。PDE10Aは、保存的GAFドメインも有する他のPDEファミリーと比べて特有であり、すなわちそのリガンドはcAMPであり、一方で他のGAF-ドメインPDEについては、リガンドはcGMPである(Kehler et al., Expert Opin. Ther. Patents(2007)17(2):147-158)。PDE10Aは限定的であるが脳及び精巣で高発現する。PDE10に特有である、脳及び特に線条体のニューロンでの高発現から、それに対する阻害剤が、神経及び精神障害及び状態を処置するのに非常に適切であり得ることが示唆される。
【0004】
PDE10の阻害は、統合失調症及び、様々な神経、精神、不安及び/又は運動障害を含め、ニューロン内のcAMP及び/又はcGMPレベルを向上させることにより恩恵を受ける多岐にわたる状態又は障害の処置に有用であると考えられる。米国特許第9,062,059号(それの全体が本明細書に組み込まれる)には、神経障害及び精神障害の治療薬としての2-メチル-N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-6-(((1S,2S-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-アミンを含むPDE10阻害剤が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lieberman et al., N. Engl. J. Med.(2005)353:1209-1223
【非特許文献2】Fujishige et al., J. Biol. Chem. (1999) 274:18438-18445
【非特許文献3】Loughney et al., Gene(1999)234:109-117
【非特許文献4】Soderling et al., PNAS. USA(1999)96:7071-7076
【非特許文献5】Kehler et al., Expert Opin. Ther. Patents(2007)17(2):147-158
【発明の概要】
【0006】
本発明は、シクロピリミジンアミン誘導体の特定の誘導体に関する。式Iの化合物は、イン・ビボで2-メチル-N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-アミン(化合物A)に代謝され得るプロドラッグであると考えられており、PDE10を阻害する。化合物AはPDE10のポリメラーゼ機能を阻害し、詳細にはPDE10のcAMPに関連するドーパミン作動性D2受容体活性を阻害する。したがって、式Iの化合物は、例えば、ホスホジエステラーゼ10(PDE10)の阻害において、ホスホジエステラーゼ10(PDE10)に関連する中枢神経系障害の治療において、化合物Aの投与を容易にするために有用であり、そして統合失調症、並びに各種の神経障害、精神障害、不安障害、及び/又は運動障害の治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、構造式Iの化合物又はそれの薬学的に許容される塩に関するものである。
【化1】
式中、
は、
1)-C(O)OCHOC(O)R
2)-C(O)OC1-6アルキル[前記アルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
3)-C(O)-C6-10アリール、C(O)-C6-10ヘテロアリール、-C(O)-C1-6アルキル、-C(O)-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
4)-S-C6-10アリール、-S-C4-10ヘテロアリール、-S-C1-6アルキル、-S-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];及び
5)1~2個のR基で置換されていても良い-C(O)OCHジオキソリル
からなる群から選択され;
は、C1-6アルキル、C6-10アリール、C4-10ヘテロアリール、及びC3-6シクロアルキルからなる群から選択され;前記アルキル、アリールヘテロアリール、及びシクロアルキルは1~3個のR基で置換されていても良く;
は、独立にC1-6アルキル、OC1-6アルキル、オキソ、及びハロゲンからなる群から選択され;
nは1、2、3、又は4である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、Rが-C(O)OCHOC(O)Rである場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、RがC1-6アルキルである場合に実現され、前記アルキルは置換されていないか1~3個のR基で置換されている。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、RがC6-10アリールであり、前記アリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様のさらなる下位実施形態は、前記アリールが置換されていないか置換されているフェニル又はナフチルである場合に実現される。本発明のこの態様のさらに別の下位実施形態は、RがC6-10ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。.本発明のこの態様のさらなる下位実施形態は、である場合に実現される。前記ヘテロアリールが置換されていないか置換されているピリジル又はピリミジニル.本発明のこの態様のさらに別の下位実施形態は、RがC3-6シクロアルキルであり;前記シクロアルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様のさらなる下位実施形態は、前記シクロアルキルが置換されていないか置換されているシクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである場合に実現される。
【0009】
本発明の別の実施形態は、Rが、C1-6アルキル、フェニル、ピリジル及びシクロヘキシルからなる群から選択され、前記基が置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。
【0010】
本発明の別の実施形態は、RがC(O)OC1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。
【0011】
本発明の1実施形態は、Rが-C(O)OCHジオキソリルであり、前記ジオキソリルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記ジオキソリルが、置換されていないかRから独立に選択される1~2個の基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、前記ジオキソリルが置換されていない場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、前記ジオキソリルが独立に1~2個のC1-6アルキル又はオキソ基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、前記ジオキソリルが独立に1~2個のC1-6アルキル及びオキソ基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様のさらに別の下位実施形態は、ジオキソリルがCH及びオキソで置換されている場合に実現される。本発明のこの態様のさらに別の下位実施形態は、Rが(i)によって表される場合に実現される。
【化2】
式中、波線は結合箇所を表す。
【0012】
本発明の別の実施形態は、Rが-S-C6-10アリールであり、前記アリールが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか1~3個のR基で置換されているフェニルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないフェニルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されているフェニルである場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記アリールが置換されていないか置換されているナフチルである場合に実現される。
【0013】
本発明の別の実施形態は、Rが-S-C4-10ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記ヘテロアリールが、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキサゾリルなどから選択され、前記ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、及びオキサゾリルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか1~3個のR基で置換されているピリジルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピリミジニルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピロリルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピラゾリルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているオキサゾリルである場合に実現される。
【0014】
本発明の別の実施形態は、Rが-S-C1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明の別の実施形態は、Rが-S-C3-6シクロアルキルであり、前記シクロアルキルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記シクロアルキルがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択される場合に実現される。
【0015】
本発明の別の実施形態は、Rが-C(O)-C6-10アリールであり、前記アリールが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rがフェニルであり、置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないフェニルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されているフェニルである場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記アリールが置換されていないか置換されているナフチルである場合に実現される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、Rが-C(O)-C4-10ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記ヘテロアリールがピリジル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、オキサゾリルなどから選択され、前記ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、及びオキサゾリルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか1~3個のR基で置換されているピリジルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピリミジニルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピロリルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているピラゾリルである場合に実現される。本発明のこの態様の別の下位実施形態は、Rが置換されていないか置換されているオキサゾリルである場合に実現される。
【0017】
本発明の別の実施形態は、Rが-C(O)-C1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明の別の実施形態は、Rが-C(O)-C3-6シクロアルキルであり、前記シクロアルキルが1~3個のR基で置換されていても良い場合に実現される。本発明のこの態様の下位実施形態は、前記シクロアルキルがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択される場合に実現される。
【0018】
本発明は、本明細書に記載されるすべての構造式、実施形態及びクラスで定義される化合物の薬学的に許容される塩を含む。本明細書における式Iの化合物への言及は、式Iの化合物及びそれのすべての実施形態及びクラスを包含する。特定の式若しくは実施形態、例えば式I若しくはその実施形態、或いは本明細書に記載若しくは請求される他の一般構造式若しくは具体的な化合物としての本発明の化合物への言及は、それらの塩、特には別断の断りがない限りはそのような化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物(水和物など)及びそれらの溶媒和塩形態(そのような形態が可能な場合)などの当該式又は実施形態の範囲に含まれる具体的な化合物又は複数化合物を包含することを意図するものである。
【0019】
本発明は、本明細書に記載の各実施例、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。本発明はまた、有効量の本発明の化合物又はそれの薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を包含する。
【0020】
逆の意味が明瞭に記載されていない限り、挙げられた置換基による置換基は、そのような置換が化学的に許容され、安定な化合物を与えるのであれば、鎖若しくは環中のあらゆる原子上で可能である。「安定な」化合物は、製造及び単離が可能であり、本明細書に記載の目的(例えば、対象者への治療的若しくは予防的投与)のための当該化合物の使用を可能とするだけの期間にわたり実質的に未変化のままであるか、実質的に未変化のままとなるようにすることができる化合物である。本発明の化合物は、式Iによって包含される安定な化合物及びそれの実施形態に限定される。
【0021】
式Iの化合物において、原子がそれの天然同位体存在比を示す場合があるか、その原子のうちの1以上が同じ原子番号を有するが、天然において支配的に認められる原子質量若しくは質量数とは異なる原子質量若しくは質量数を有する特定の同位体を人為的に豊富とすることができる。本発明は、式Iの化合物の全ての好適な同位体型を含むものである。例えば、水素(H)の異なる同位体型には、プロチウム(H)及び重水素(H)などがある。プロチウムは、天然に認められる支配的な水素同位体である。重水素を豊富化することで、イン・ビボ半減期の増加又は必要投与量の削減などの治療上の利点が得られたり、生体サンプルの特性決定のための標準として有用な化合物が提供されることが可能となる。同位体豊富化された式Iに含まれる化合物は、当業者に公知の従来の技術により、又は適切な同位体豊富化された試薬及び/又は中間体を用いて本明細書中の図式及び実施例に記載されている方法と類似の方法によって、不要な実験を行うことなく製造することができる。
【0022】
本発明の例は、実施例及び本明細書に開示の具体的化合物である。対象化合物は、阻害を必要とする哺乳動物などの患者におけるPDE10機能不全関連の神経障害又は精神障害の治療方法であって、有効量の当該化合物を投与することを含む方法において有用である。霊長類、特にヒトに加えて、マウス、ラット、霊長類、サル、チンパンジー、大型類人猿、イヌ、及び飼い猫などの研究動物及び愛玩動物を含む、他の様々な哺乳動物を本発明の方法に従って治療することができる。対象化合物は、阻害を必要とする哺乳動物などの患者におけるPDE10活性を阻害する方法であって、有効量の当該化合物を投与することを含む方法において有用である。対象化合物は、処置を必要とする哺乳動物患者での線条体機能低下又は大脳基底核機能不全関連の神経障害若しくは精神障害を治療するのにも有用である。
【0023】
本発明は、医学で使用される本発明の化合物又はそれの薬学的に許容される塩に関する。本発明はさらに、処置を必要とする哺乳動物患者でのPDE10機能不全関連の神経障害若しくは精神障害を治療するための医薬の製造のための本発明の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の使用に関するものである。本発明はさらに、処置を必要とする哺乳動物患者での線条体機能低下又は大脳基底核機能不全関連の神経障害若しくは精神障害を治療するための医薬の製造のための本発明の化合物又はそれの薬学的に許容される塩の使用に関するものである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、指定の範囲内で指定数の炭素原子を有する分枝及び直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を指す。例えば、「C1-10アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、7、8、9又は10個の炭素原子を有するすべての可能な異性体を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、デシル、ノニル、オクチル、ヘプチル、ヘキシル及びペンチル異性体のそれぞれ、並びにn-、イソ-、sec-及びtert-ブチル(ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル;Bu=ブチル、総称して「-Cアルキル」)、n-及びイソプロピル(プロピル、i-プロピル、Pr=プロピル、総称して「-Cアルキル」)、エチル(Et)及びメチル(Me)を含む。「C1-4アルキル」は、1、2、3又は4個の炭素原子を有し、n-、イソ-、sec-及びtert-ブチル、n-及びi-プロピル、エチル及びメチルのそれぞれを含む。
【0025】
「シクロアルキル」とは、指定範囲の指定数の炭素原子を有する環化アルキル環を指す。したがって、例えば、「C3-8シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルのそれぞれを包含する。「C3-6シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルのそれぞれを包含する。シクロアルキルが式Iの化合物中のアルキル基上の置換基である場合、そのシクロアルキル置換基は、アルキル基中のいずれか利用可能な炭素に結合することができる。以下のものは、-C3-6シクロアルキル置換基の例示であり、置換基は太字でのシクロプロピルである。
【化3】
「アリール」とは、(i)フェニル、(ii)少なくとも一つの環が芳香族である9員又は10員の二環式縮合炭素環系、及び(iii)少なくとも一つの環が芳香族である11~14員の三環式縮合炭素環啓を指す。好適なアリールとしては、例えば、置換されている及び置換されていないフェニル及び置換されている及び置換されていないナフチルなどがある。特に興味深いアリールは、置換されていないか置換されているフェニルである。
【0026】
「ヘテロアリール」という用語は、(i)独立にN、O及びSから選択される1から4個のヘテロ原子を含む5員若しくは6員ヘテロ芳香環(各Nはオキサイドの形態であっても良い。)、及び(ii)9員若しくは10員の二環式縮合環系を指し、(ii)の縮合環系は独立にN、O及びSから選択される1から6個のヘテロ原子を含み、縮合環系中の各環は0個、1個若しくはそれより多いヘテロ原子を含み、少なくとも一つの環が芳香族であり、各Nはオキサイドの形態であっても良く、芳香族ではない環中の各SはS(O)又はS(O)であっても良い。好適な5員及び6員ヘテロ芳香環には、例えば、ピリジル、3-フルオロピリジル、4-フルオロピリジル、3-メトキシピリジル、4-メトキシピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジピラニル、ピリダジピラニル、トリアジニル、チエニル、フラピラニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル(すなわち、1,2,3-トリアゾリル又は1,2,4-トリアゾリル)、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(すなわち、1,2,3-、1,2,4-、1,2,5-(フラザニル)又は1,3,4-異性体)、オキサトリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル及びチアジアゾリルなどがある。好適な9員及び10員ヘテロ二環式縮合環系には、例えば、ベンゾフラピラニル、インドリル、インダゾリル、ナフチリジニル、イソベンゾフラピラニル、ベンゾピペリジニル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、クロメニル、キノリニル、イソキノリニル、イソインドリル、ベンゾピペリジニル、ベンゾフラニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、ベンゾトリアゾリル、インダゾリル、インドリニル及びイソインドリニルなどがある。ヘテロアリールのあるクラスは、置換されていないか置換されているピリジル又はピリミジル、特には置換されていないか置換されているピリジルを含む。
【0027】
「複素環式」又は「ヘテロシクリル」という用語は、(i)飽和の4~7員の環化環、及び(ii)炭素原子及び独立にO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子から構成される不飽和の非芳香族4~7員環化環を指す。本発明の範囲内の複素環には、例えば、アゼチジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピラゾリジニル、ヘキサヒドロピリミジニル、チアジナニル、チアゼパニル、アゼパニル、ジアゼパニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル及びジオキサニルなどがある。本発明の範囲内の4~7員の不飽和非芳香族複素環の例には、単結合が二重結合に置き換わっている(例えば、炭素-炭素単結合が炭素-炭素二重結合に置き換わっている)前述の文章で列記された飽和複素環に相当するモノ不飽和複素環などがある。あるクラスの複素環は、炭素原子及び1個若しくは2個のヘテロ原子から構成される4~6員飽和単環式環であり、そのヘテロ原子はN、O及びSから選択される。4~6員複素環の例には、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロチオピラニルなどがあるが、これらに限定されるものではなく、それの下位クラスは、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル又はテトラヒドロピラニルである。
【0028】
当業者には理解されるように、本発明の特定の化合物は互変異性体として存在できる可能性がある。これらの化合物のすべての互変異性体は、個々に単離されるか混合物で単離されるかにかかわらず、本発明の範囲内である。例えば、ヘテロ芳香環上で-OH置換基が許容され、ケト-エノール互変異性が可能である場合、その置換基は実際には全体又は一部がオキソ(=O)形態で存在する可能性があることが理解される。
【0029】
「安定な」化合物は、製造及び単離が可能で、且つ、当該化合物を本明細書中に記載されている目的(例えば、対象者への治療投与又は予防投与)のために使用することを可能とするだけの期間にわたってその構造及び特性が本質的に変化しないでいるか又は本質的に変化しない状態におくことが可能な化合物である。本発明の化合物は、式I及びそれの実施形態によって包含される安定な化合物に限定される。例えば、式Iで定義のある部分は、置換されていないか置換されていても良く、置換されている場合は、該部分に関して化学的に可能であり且つ安定な化合物を生じる置換パターン(すなわち、置換基の数及び種類)を包含するものである。
【0030】
式Iの化合物は、複数のキラル中心(不斉中心又は立体中心とも称される)を有し得る。本発明は、リン不斉中心及び式Iの化合物に存在し得る任意の別の不斉中心で(R)立体配置又は(S)立体配置を有する化合物、並びに、それらの立体異性体混合物を包含する。
【0031】
本発明は、個々のジアステレオマー、特に、エピマー(即ち、同じ化学式で表されるが単一の原子の周囲の空間配置が異なっている化合物)を包含する。本発明は、全ての比率でのジアステレオマーの混合物、特に、エピマーの混合物も含む。本発明の実施形態は、51%以上のエピマーのうちの1種類(これは、60%以上、70%以上、80%以上又は90%以上の1種類のエピマーを包含する)で富化されたエピマーの混合物も包含する。単一のエピマーが好ましい。個々の又は単一のエピマーは、キラル合成で得られた及び/又は一般に知られている分離及び精製技術を用いて得られたエピマーであって、1種類のエピマーが100%であり得るか、少量(例えば、10%以下)の反対のエピマーを含んでいてもよいエピマーを意味する。従って、個々のジアステレオマーは、純粋な形態(左旋性及び右旋性の両方の鏡像異性体として)での、ラセミ体形態での、そしてあらゆる比率での2種類のジアステレオマーの混合物の形態で、本発明の対象である。シス/トランス異性の場合、本発明は、シス型及びトランス型の両方並びに全ての比率でのこれら形態の混合物を包含する。
【0032】
個々の立体異性体の製造は、所望に応じて、慣習的な方法(例えば、クロマトグラフィー又は結晶化)で混合物を分離させることによって、合成に際して立体化学的に均一な原料を使用することによって、又は、立体選択的合成によって、実施することができる。任意に、立体異性体の分離に先立って誘導体化を実施しても良い。立体異性体の混合物の分離は、式Iの化合物の合成時に中間段階で実施することができるか、最終ラセミ生成物に対して実施することができる。絶対立体化学は、結晶生成物又は結晶中間体(これらは、必要に応じて、立体配置が既知である立体中心を含む試薬を用いて誘導体化されている)をX線結晶学によって確認することができる。あるいは、絶対立体化学は、振動円二色性(VCD)分光法分析によって確認することもできる。本発明は、そのような全ての異性体、並びに、そのようなラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー及び互変異体の塩、溶媒和物(水和物など)及び溶媒和塩、並びに、それらの混合物を包含する。
【0033】
当該化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的にも他の場合でも望ましくないものではない(例えば、それの被投与者にとって毒性もなく、それ以外の有害性もない)塩を指す。式Iの化合物は、定義によって少なくとも一つ塩基性基を含んでいるので、本発明は、その対応する薬学的に許容される塩を包含する。式Iの化合物が1以上の酸性基を含んでいる場合、本発明は、その対応する薬学的に許容される塩も包含する。従って、酸性基(例えば、-COOH)を含んでいる式Iの化合物は、本発明に従って、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩(これらに限定されるものではない)として使用することができる。そのような塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又は、アンモニア若しくは有機アミン(例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン又はアミノ酸)との塩などがあるが、これらに限定されるものではない。1以上の塩基性基(即ち、プロトン化され得る基)を含んでいる式Iの化合物は、本発明に従って、無機酸又は有機酸とのそれらの酸付加塩の形態で、例えば、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸(これらに限定されるものではない)などとの塩の形態で、使用することができる。式Iの化合物がその分子内に酸性基と塩基性基を同時に含んでいる場合、本発明は、上記塩形態に加え、分子内塩又はベタイン(両性イオン)も包含する。塩は、当業者に既知の慣習的な方法によって、例えば、溶媒若しくは分散剤中で有機若しくは無機の酸若しくは塩基と組み合わせることによって、又は、別の塩からアニオン交換若しくはカチオン交換によって、式Iの化合物から得ることができる。本発明は、さらにまた、生理的適合性が低いために医薬における使用に直接的には適していないが、例えば、化学反応のための中間体として又は薬学的に許容される塩を製造するための中間体として使用することが可能である式Iの化合物の全ての塩も包含する。
【0034】
さらに、本発明の化合物は、非晶質型及び/又は1以上の結晶型で存在することができ、式Iの化合物のそのようなすべての非晶質型及び結晶質型並びにそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれるものである。さらに、本開示の化合物の一部は、水との溶媒和物(即ち、水和物)又は通常の有機溶媒との溶媒和物を形成し得る。本発明の化合物のそのような溶媒和物及び水和物、特に、薬学的に許容される溶媒和物及び水和物は、同様に、該化合物の溶媒和されていない無水形態とともに、式Iによって定義される化合物及びその薬学的に許容される塩の範囲に包含される。
【0035】
したがって、一般構造式に含まれる化合物、実施形態及び本明細書に記載され特許請求される特定の化合物は、塩、すべての可能な立体異性体及び互変異体、物理的形態(例えば、非晶質及び結晶形態)、それらの溶媒和物及び水和物形態、並びにこれらの形態の任意の組み合わせ、並びにそれらの塩を包含し、別段の断りがない限り、そのような形態が可能である。
【0036】
本発明は、式Iの化合物又はその塩である化合物で構成される任意の組成物(これは、例えば、限定するものではないが、「共結晶」と称することができる1以上の別の分子及び/又はイオン成分と会合している当該化合物からなる組成物を包含する)を包含する。「共結晶」という用語は、本明細書中で使用される場合、2種類以上の異なる分子及び/又はイオン成分(一般に、化学量論比で)が非イオン性相互作用(例えば、限定するものではないが、水素結合、双極子-双極子相互作用、双極子-四極子相互作用、又は、分散力(ファンデルワールス))によって一緒に保持されている固相(これは、結晶質であっても、又は、なくてもよい)を意味する。この異なる成分の間ではプロトンの移動はなく、固相は、単塩でも溶媒和物でもない。共結晶に関する議論は、例えば、S. Aitipamula et al., Crystal Growth and Design, 2012, 12 (5), pp.2147-2152にある。
【0037】
より具体的には、本発明に関連して、共結晶は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と生理的にもそれ以外でも有害ではない(例えば、被投与者に毒性がなく、それ以外の有害性もない)1以上の薬学的に不活性な成分からなる。共結晶は、式Iの化合物又はそれの薬学的に許容される塩から、化学の技術分野において公知の慣習的な方法によって得ることができる。例えば、本発明の化合物からなる共結晶は、その化合物に望ましい化学量論量の酸又は中性分子を添加し、適切な溶媒を添加して溶解させ、その溶液を、例えば、沈澱させ、凍結乾燥させ又は濃縮して、固体組成物を得ることによって製造することができる。その共結晶は、限定するものではないが、その組成物が式の中性化合物(即ち、塩形態ではない)と1以上の薬学的に不活性な成分からなる実施形態であることができ;さらに別の実施形態では、該共結晶組成物は結晶性である。結晶性組成物は、例えば、式Iの化合物に望ましい化学量論量の酸又は中性分子を添加し、適切な溶媒を添加し、加熱して完全に溶解させ、次いで、その溶液を冷却して結晶を成長させることによって製造することができる。本開示は、さらにまた、生理的適合性が低いために医薬における使用に直接的には適していないが、例えば、化学反応のための中間体として又は薬学的に許容される共結晶又は塩を製造するための中間体として使用することが可能な、本開示の化合物のすべての共結晶も含む。
【0038】
従って、式Iの化合物、その実施形態並びに本明細書中で記載及び特許請求されている具体的化合物は、すべての可能な薬学的に許容される塩、立体異性体、互変異体、物理的形態(例えば、非晶質型及び結晶質型)、共結晶組成物、溶媒和物型及び水和物型、並びに、上記形態が可能である場合には、そのような形態の任意の組合せを包含する。
【0039】
本明細書に記載の式Iの化合物は、プロドラッグである。プロドラッグに関する議論は、以下のものに記載されている:(a)Stella, V. J.; Borchardt, R. T.; Hageman, M. J.; Oliyai, R.; Maag, H. et al. Prodrugs: Challenges and Rewards Part 1 and Part 2; Springer, p.726: New York, NY, USA, 2007;(b)Rautio, J.; Kumpulainen, H.; Heimbach, T.; Oliyai, R.; Oh, D. et al. Prodrugs: design and clinical applications. Nat. Rev. Drug Discov. 2008, 7, 255;(c)T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems (1987) 14 of the A.C.S. Symposium Series;及び、(d)Bioreversible Carriers in Drug Design, (1987) Edward B. Roche, ed., American Pharmaceutical Association and Pergamon Press。より具体的には、式Iの化合物(又はそれの任意の実施形態及びそれの薬学的に許容される塩)は、化合物Aのプロドラッグ修飾物である。式Iの化合物は、細胞内で(イン・ビボ、又は、イン・ビトロで)相当する化合物Aに変換され得る。その変換は、1以上の機序、例えば、酵素が触媒する化学反応、代謝的化学反応、及び/又は、自然の化学反応(例えば、加溶媒分解)によって、例えば、血中での加水分解によって生じ得る。特定の理論に拘束されるものではないが、化合物Aは、一般に、PDE10の阻害に関与するものと理解されている。
【0040】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物であって、当該化合物又はその塩が実質的に純粋な形態である化合物である。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」は、式Iの化合物又はその塩を含む生成物(例えば、該化合物又は塩を与える反応混合物から単離された生成物)の、好適には少なくとも約60重量%、代表的には少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、さらに好ましくは少なくとも約90重量%(例えば、約90重量%~約99重量%)、さらに一層好ましくは少なくとも約95重量%(例えば、約95重量%~約99重量%、又は、約98重量%~100重量%)及び最も好ましくは少なくとも約99重量%(例えば、100重量%)が当該化合物又は塩からなることを意味する。該化合物及び塩の純度のレベルは、高速液体クロマトグラフィー及び/又は質量分析又はNMR技術などの標準的な分析方法を使用して測定することができる。2種類以上の分析方法を使用して、それらの方法が、測定された純度のレベルにおいて実験的に有意な差をもたらす場合、純度の最も高いレベルを与える方法を優先する。純度100%の化合物又は塩は、標準的な分析法によって測定したときに検出可能な不純物を含んでいない化合物又は塩である。2以上の不斉中心を有していて立体異性体の混合物として存在し得る本発明の化合物に関し、実質的に純粋な化合物は、実質的に純粋な立体異性体混合物であることができるか又は実質的に純粋な個々の立体異性体であることができる。
【0041】
本明細書の式Iの化合物、及びその薬学的に許容される塩は、イン・ビトロ及びイン・ビボでのPDE10の阻害に有用である。疾患状態の「治療する」又は「治療」は、1)疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態にさらされているか、又はその素因があるがその疾患状態を経験しておらず、症状を示していない対象者において疾患状態の臨床症状が発症しないようにすること;2)疾患状態を阻害すること、すなわち疾患状態又はそれの臨床症状の進行を阻止すること;3)又は疾患状態を緩和すること、すなわち疾患状態又はその臨床症状の一時的又は永久的な後退を引き起こすことを含む。
【0042】
本方法で治療される対象者は、概して哺乳動物、特には治療が望まれる男性若しくは女性のヒトである。「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床担当者が追求している組織、系、動物若しくはヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する対象化合物の量を意味する。障害に現在罹患している患者を治療することで、又はそのような障害に罹患している患者を有効量の本発明の化合物で予防的に処置することで、当業者が神経障害及び精神障害に影響を及ぼし得ることは明らかである。本明細書で使用される場合、「治療」及び「治療する」という用語は、本明細書に記載される神経障害及び精神障害の進行を遅らせ、中断し、停止し、抑制し、又は止めるすべてのプロセスを指すが、必ずしもすべての障害症状の完全な除去を示すものではなく、特にそのような疾患や障害にかかりやすい患者において、注目される状態の進行を遅らせたりリスクを軽減したりするための予防療法も指す。
【0043】
本願人らは、PDE10の阻害剤、特にはPDE10Aの阻害剤が、精神障害及び認知障害を患う個体に対して治療効果を提供することを提案するものである。大脳基底核内に皮質及びドーパミン作動性入力のための主要部位を形成している線条体の中型有棘投射神経細胞におけるPDE10Aの特有かつ独占的分布は、PDE10の阻害剤を確認して、この部位内での望ましくない細胞内シグナル伝達を改善又は除外することが可能かつ望ましい可能性があることを示唆する。いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、本願人らは、線条体におけるPDE10Aの阻害によって、cAMP/cGMPシグナル伝達及び線条体出力増加が生じ、それは統合失調症などの認知疾患で障害される行動阻害を回復する可能性を有するものであると考えている。グルタミン酸作動性及びドーパミン作動性入力の調節及び統合は、望ましくない行動を抑制若しくは軽減しながら認知行動を増強し得る。従って、1実施形態において、本発明の化合物は、線条体機能低下が顕著な特徴である疾患若しくは状態、又は大脳基底核機能不全が何らかの役割を果たす疾患若しくは状態、例えばパーキンソン病、ハンチントン病、統合失調症、強迫性障害、中毒及び精神病の治療又は寛解方法を提供する。本明細書に記載の阻害剤が望ましく有用な効果を有し得る他の状態には、活性低下又は精神運動刺激剤に対する応答低下を必要とし、多くの場合で臨床的抗精神病活性を予測させるものである条件的回避応答を軽減することが望ましいと考えられる状態などがある。本明細書で使用される場合、「選択的PDE10阻害剤」という用語は、PDE10ファミリーからの酵素をPDE1~9又はPDE11ファミリーからの酵素より強く有効に阻害する有機分子を指す。1実施形態において、選択的PDE10阻害剤は、別のPDE酵素の阻害剤である物質の1/10より低い又は約1/10であるPDE2阻害のKiを有する有機分子である。
【0044】
PDE10などのホスホジエステラーゼ酵素が、広範囲の生理機能で示唆されている。ヒトその他の動物種での多様な疾患プロセスでのこれら酵素についての可能な役割を示唆しているものである。本発明の化合物は、各種神経障害及び精神障害を治療する上での有用性を有する。
【0045】
具体的な実施形態において、本発明の化合物は、統合失調症又は精神病の治療方法であって、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-IV-TR)(2000、American Psychiatric Association, Washington DC)は、偏執型、解体型、緊張型又は未分化型の統合失調症及び物質誘発性精神障害を含む診断手段を提供する。本明細書で使用される場合、「統合失調症又は精神病」という用語は、DSM-IV-TRに記載のこれら精神疾患の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の同様の障害を含むものである。本明細書で包含される障害及び状態には、統合失調症又は精神病などの状態若しくは疾患、例えば統合失調症(偏執型、解体型、緊張型、未分化型又は残留型)、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、例えば妄想型若しくは鬱型のもの、妄想性障害、精神異常、短時間精神障害、共有精神障害、全身病状及び物質誘発若しくは薬物誘発による精神障害(例えば、アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、オピオイド類、フェンシクリジン、ケタミン及び他の解離性麻酔薬、及び他の覚醒剤によって誘発される精神病)、精神病精神障害(psychosispsychotic disorder)、情動障害関連の精神病、短期反応精神病、統合失調性精神病、統合失調症又は統合失調症性人格障害などの「統合失調症-スペクトラム」障害、妄想型の人格障害、統合失調症型の人格障害、統合失調症及び他の精神病の陽性症状及び陰性症状の両方を含む精神病関連の疾病(例えば、大鬱病、躁鬱病(双極性障害)、アルツハイマー病及び心的外傷後ストレス症候群)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
別の具体的な実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して有効量の本発明の化合物を投与することを含む認知障害の治療方法を提供する。DSM-IV-TRはさらに、認知症、譫妄、健忘障害及び加齢関連認知低下などの認知障害を含む診断手段を提供する。本明細書で使用される場合、「認知障害」という用語は、DSM-IV-TRに記載のこれら障害の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の類似の障害を含むものである。本明細書に包含される障害及び状態には、症状として認知症(アルツハイマー病、虚血、多発梗塞性認知症、外傷、頭蓋内腫瘍、脳外傷、血管問題又は卒中、アルコール性認知症又は他の薬物関連認知症、AIDS、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病、周生期低酸素症、他の全身病状又は薬物乱用関連)、アルツハイマー病、多発梗塞性認知症、AIDS関連認知症、及び前頭側頭認知症、譫妄、健忘障害又は加齢性認知低下などの注意及び/又は認識における欠損を含む障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む不安障害の治療方法を提供する。DSM-IV-TRはまた、全般性不安障害、強迫性障害及びパニック発作としての不安障害を含む診断手段を提供する。本明細書で使用される場合、「不安障害」という用語は、DSM-IV-TRに記載のこれら精神障害の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の類似の障害を含むものである。本明細書に包含される障害及び状態には、急性ストレス障害、広場恐怖、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、分離不安障害、対人恐怖症、特定恐怖症、物質誘発不安障害及び全身病状による不安などの不安障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む、物質関連障害及び常習行為の治療方法を提供する。DSM-IV-TRはまた、薬物乱用によって誘発される持続性認知症、持続性健忘障害、精神異常又は不安障害、並びに乱用薬物の耐性、依存症又はそれからの禁断症状を含む診断手段を提供する。本明細書で使用される場合、「物質関連状態及び常習行為」という用語は、DSM-IV-TRに記載のこれら精神障害の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の類似の障害を含むものである。本明細書に包含される障害及び状態には、物質関連状態及び常習行為、例えば物質誘発譫妄、持続性認知症、持続性健忘障害、精神障害又は不安障害、薬物中毒、アルコール、アンフェタミン類、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入薬、ニコチン、オピオイド類、フェンシクリジン、鎮静薬、睡眠薬又は抗不安薬などの物質の耐性、及び依存症若しくはそれからの禁断症状などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む、過剰な食物摂取関連の肥満又は摂食障害、及びそれに関連する合併症の治療方法を提供する。現在のところ、肥満は、the International Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD-10)(1992世界保健機構)の第10版に全身病状として含まれている。DSM-IV-TRはまた、病状に影響する心理的因子の存在下での肥満を含む診断手段を提供する。本明細書で使用される場合、「過剰な食物摂取関連の肥満又は摂食障害」という用語は、ICD-10及びDSM-IV-TRに記載のこれら病状及び障害の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の類似の障害を含むものである。本明細書に包含される障害及び状態には、肥満、神経性過食症及び強迫性摂食障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む、気分障害及び抑鬱障害の治療方法を提供する。本明細書で使用される場合、「気分障害及び抑鬱障害」という用語は、DSM-IV-TRに記載のこれら病状及び障害の診断及び分類を含み、その用語は他の情報源に記載の類似の障害を含むものである。本明細書に包含される障害及び状態には、双極性障害、抑鬱障害などの気分障害、軽度、中等度若しくは重度型の大鬱病エピソード、躁病エピソード若しくは混合気分エピソード、軽躁気分エピソード、非定型的特徴を有する抑鬱エピソード、メランコリー的特徴を有する抑鬱エピソード、緊張型特徴を有する抑鬱エピソード、産後発症のある気分エピソード、卒中後抑鬱;大鬱病性障害、気分変調性障害、小鬱病性障害、月経前不快気分障害、統合失調症の精神病後抑鬱障害、妄想性障害若しくは統合失調症などの精神障害に併発する大鬱病性障害、双極性障害、例えば、双極性I型障害、双極性II型障害、気分循環性障害、単極性鬱病、季節性情動障害及び産後抑鬱などの抑鬱、月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PDD)、全身病状による気分障害、及び物質誘発気分障害などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
別の具体的実施形態において、本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して、有効量の本発明の化合物を投与することを含む、疼痛の治療方法を提供する。特定の疼痛実施形態は、骨痛及び関節痛(骨関節炎)、反復動作疼痛、歯痛、癌痛、筋筋膜痛(筋損傷、線維筋痛)、周術期疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛及び神経因性疼痛である。
【0052】
他の具体的実施形態において、本発明の化合物は、他の種類の認知、学習及び精神関連の障害、例えば、読書障害、算数障害若しくは文書表現の障害などの学習障害、注意欠陥/多動性障害、加齢性認知低下、自閉性障害などの広汎性発達障害、注意欠陥過活動性障害(ADHD)及び行為障害などの注意障害;NMDA受容体関連障害、例えば自閉症、抑鬱、良性健忘症、小児学習障害及び閉鎖性頭部外傷;神経変性性の障害又は状態、例えば脳外傷、卒中、脳梗塞、癲癇性発作、神経毒中毒又は低血糖誘発神経変性関連の神経変性;多系統萎縮症;運動障害、例えば無動症及び無動性硬直症候群(例えば、パーキンソン病、薬物誘発パーキンソニズム、脳炎後のパーキンソン病、進行性核上まひ、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、パーキンソニズム-ALS認知症症候群及び基底核石灰化症)、投薬誘発パーキンソニズム(例えば、神経遮断薬誘発パーキンソニズム、神経弛緩薬性悪性症候群、神経遮断薬誘発急性ジストニア、神経遮断薬誘発急性アカシジア、神経遮断薬誘発遅発性ジスキネジー及び薬剤誘発姿勢振戦)、ハンチントン病、ドーパミン作動薬療法関連運動障害、ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群、癲癇、筋痙攣及び筋痙縮関連の障害又は振戦などの衰弱;運動障害、例えば振戦(例えば、静止時振戦、姿勢振戦、企図振戦及び本態性振戦)、下肢静止不能症候群、舞踏病(例えば、シデナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病及び片側バリズム)、ミオクローヌス(例えば、全身性ミオクローヌス及び焦点性ミオクローヌス)、チック(例えば、単純チック、複雑チック及び症候性チック)、ジストニア(例えば、全身性、特発性、薬剤誘発性、症候性、発作性及び限局性(例えば眼瞼痙攣、顎口腔、痙性、痙性斜頸、軸性ジストニア、片麻痺性及びジストニア性書痙));尿失禁;神経損傷(例えば、眼損傷、網膜症又は眼球の黄斑変性、耳鳴、聴覚障害及び聴覚消失、及び脳浮腫);嘔吐;並びに睡眠障害、例えば不眠症及びナルコレプシー(これらに限定されるものではない)の治療方法を提供する。上記の障害のうち、統合失調症、双極性障害、抑鬱、例えば単極性鬱病、季節性情動障害及び産後鬱病、月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PDD)、学習障害、広汎性発達障害、例えば自閉性障害、注意障害、例えば注意欠陥過活動性障害、自閉症、チック障害、例えばトゥレット障害、不安障害、例えば恐怖症及び心的外傷後ストレス障害、認知症関連の認知障害、AIDS認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、痙攣、ミオクローヌス、筋痙攣、耳鳴及び聴覚障害及び聴覚消失の治療が特に重要である。
【0053】
PDE10阻害剤としての本発明による化合物の活性は、当技術分野で周知の蛍光偏光(FP)法(Huang, et al., J. Biomol Screen, 2002, 7:215)を用いて、不要な実験なく容易に決定され得る。特に、本明細書で開示の化合物は、環状ヌクレオチドのホスホスフェート(phosphosphate)エステル結合の加水分解の阻害能を示すことによって、参照アッセイにおいて活性を有した。1μΜを下回るK(阻害定数)を示す何れの化合物も、例えば化合物Aは、本明細書中で定められるようなPDE10阻害剤とみなされるであろう。
【0054】
本発明の化合物は、化合物Aのプロドラッグであり、例えば、ホスホジエステラーゼ10(PDE10)の阻害における薬剤として、ホスホジエステラーゼ10(PDE10)関連の中枢神経系障害の治療のために化合物Aの投与を促進するのに、及び各種の神経、精神、不安及び/又は運動障害などの統合失調症の治療のために有用である。
【0055】
代表的な実験において、化合物Aなどの化合物のPDE10阻害活性を、次の実験方法に従い決定した。Kozakコンセンサス配列を含有するヒトPDE10A2(受託番号AF127480、Genbank Identifier 4894716)のヌクレオチド56~77に対応するフォワードプライマー及びヒトPDE10A2(受託番号AF127480、Genbank Identifier 4894716)のヌクレオチド2406~2413に対応するリバースプライマーを用いて、ヒト胎児脳cDNA(Clontech, Mountain View, CA)からPDE10A2を増幅させた。Easy-Aポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)での増幅は、95℃で2分間行った後、続いて、95℃で40秒、55℃で30秒及び72℃で2分48秒を33サイクル行った。最後の伸長は、72℃で7分間であった。標準的なプロトコールに従い、PCR産物をpcDNA3.2-TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)にTAクローニングした。製造者の使用説明書に従い、Lipofectamine 2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、70~80%集密度のAD293細胞に一時的にヒトPDE10A2/pcDNA3.2-TOPOをトランスフェクションした。トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、20mM HEPES、1mM EDTA及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を含有する緩衝液中で超音波処理(3に設定、10X5秒パルス)によって細胞溶解を行った。溶解物を75,000×gで20分間の遠心によって回収した。PDE10A2活性の評価のために、細胞質分画を含有する上清を使用した。Molecular Devices,Sunnyvale,CA(製品番号R8139)により供給されたIMAP(登録商標)FPキットを用いて、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼについての蛍光偏光アッセイを行った。IMAP(登録商標)技術は、以前にホスホジエステラーゼアッセイに適用されている(Huang, W. et al, J. Biomol Screen, 2002, 7:215)。20.2μLのインキュベーション体積で、384ウェルマイクロタイタープレートで室温にてアッセイを行った。DMSO中で試験化合物の溶液を調製し、DMSOで連続希釈して、プレートあたり32の連続希釈液とし、濃度が3倍異なる10種類の溶液それぞれ8μLを得た。100%阻害は、既知のPDE10阻害剤を用いて決定されるが、この阻害剤は、次のように、例えばパパベリン(Siuciak et al., Neuropharmacology (2006) 51:386-396;Becker et al., Behav Brain Res (2008)186(2):155-60;Threlfell et al., J Pharmacol Exp Ther(2009)328(3):785-795参照)、2-{4-[ピリジン-4-イル-1-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1H-ピラゾール-3-イル]フェノキシメチル}キノリンコハク酸又は2-[4-(1-メチル-4-ピリジン-4-イル-1H-ピラゾール-3-イル)-フェノキシメチル]キノリンコハク酸(Schmidt et al., J Pharmacol Exp Ther (2008) 325:681-690;Threlfell et al., J Pharmacol Exp Ther(2009)328(3):785-795参照)など、記載のアッセイにおいてそのK値の5000倍存在する化合物であることができる。0%の阻害はDMSO(1%最終濃度)を用いることによって決定される。
【0056】
Labcyte Echo 555(Labcyte,Sunnyvale,CA)を使用して、滴定プレートの各ウェルから384ウェルのアッセイプレートに200nLを分注する。酵素の溶液(小分け量から1/1600希釈;20%の基質変換を生じさせるのに十分)及び50nMの最終濃度のMolecular DevicesからのFAM標識cAMP PDEの別個の溶液(製品番号R7506)をアッセイ緩衝液(10mM Tris HCl、pH7.2、10mM MgCl、0.05%NaN 0.01%Tween-20及び1mM DTT)中で作る。次に、酵素及び基質を、10μLの2連続添加でアッセイプレートに加え、振盪させて混和させる。反応を、室温で30分間進行させる。次に、80%溶液A、20%溶液B及び総結合溶液の1/600の体積の結合試薬から構成されるキット成分から、結合溶液を調製する。アッセイプレートの各ウェルに結合溶液60μLを加えることによって酵素反応を停止させ、プレートを密封し、10秒間振盪する。このプレートを室温で少なくとも1時間インキュベートしてから、蛍光偏光(FP)を測定する。Perkin Elmer EnVision(商標名)プレートリーダー(Waltham, MA)を用いて、プレートの各ウェルの平行及び垂直蛍光を測定した。
【0057】
次の方程式を用いて、各サンプルウェルの平行(S)及び垂直(P)蛍光及び基質のみを含有する中央値対照ウェルについての類似値(So及びPo)から、蛍光偏光(mP)を計算した:偏光(mP)=1000*(S/So-P/Po)/(S/So+P/Po)。
【0058】
mPデータを下記で与えられる4パラメータ方程式に適合させることによって、各化合物についての用量-阻害プロファイルの特徴を評価した。見かけの阻害定数(K)、「100%阻害対照」(Imax;例えば1=>この対照と同じ)に対して低いプラトーでの最大阻害、「0%阻害対照」(Imin、例えば0=>薬物対照なしと同じ)に対して高いプラトーでの最小阻害及びヒルスロープ(nH)は、次の方程式を使用し、Mosser et al., JALA, 2003, 8:54-63により記載されている手順に基づく社内ソフトウェアを使用して、化合物の用量の関数としてのmP値の非線形最小二乗フィッティングにより求められる。
【数1】
「0%阻害対照」の中央値シグナル(0%mP)及び「100%阻害対照」の中央値シグナル(100%mP)は、各アッセイプレートの列1~2及び23~24に位置する対照から決定される定数である。150nMのFAM標識cAMPに対する見かけの(K)は、基質及び選択された薬物濃度の同時変動を通じて、別個の実験で求めた。
【0059】
IMAP(登録商標)技術を用いて、他のPDEファミリーと比較した場合の、PDE10に対する選択性を評価した。一時的にトランスフェクションされたHEK細胞の細胞質分画から、アカゲザルPDE2A3及びヒトPDE10A2酵素を調製した。全ての他のPDEは、昆虫細胞で発現されたGST Tagヒト酵素であり、BPS Bioscience(San Diego, CA)から得た:PDE1A(カタログ番号60010)、PDE3A(カタログ番号60030)、PDE4A1A(カタログ番号60040)、PDE5A1(カタログ番号60050)、PDE6C(カタログ番号60060)、PDE7A(カタログ番号60070)、PDE8A1(カタログ番号60080)、PDE9A2(カタログ番号60090)、PDE11A4(カタログ番号60110)。
【0060】
20.2μLのインキュベーション体積で、384ウェルマイクロタイタープレート中で室温にて、PDE1~11についてのアッセイを並行して行った。試験化合物の溶液をDMSO中で調製し、DMSOで連続希釈して、プレートあたり32連続希釈液で濃度が3倍異なる10種類の溶液それぞれ30μLを得た。100%阻害は、酵素の代わりに緩衝液を添加することによって求め、0%阻害は、DMSO(1%最終濃度)を使用することによって求める。Labcyte POD810(Labcyte,Sunnyvale,CA)を使用して、滴定プレートの各ウェルから200nLを分注することで、各PDE酵素に対して1コピーで、各滴定に関してアッセイプレート11コピーを作製した。アッセイ緩衝液(10mM Tris・HCl、pH7.2、10mM MgCl、0.05%NaN 0.01%Tween-20及び1mM DTT)中で、各酵素の溶液(小分け量から希釈、20%基質変換を生じさせるのに十分)及び50nMの最終濃度のMolecular DevicesからのFAM標識cAMP又はFAM標識cGMPの別個の溶液(Sunnyvale, CA、製品番号R7506又はcGMP番号R7508)を調製した。留意すべき点として、PDE2の基質は、1000nMのcGMPを含有する50nM FAM cAMPである。次いで、酵素及び基質を10μLの2連続添加でアッセイプレートに添加し、次いで振盪して混和させた。反応を、室温で60分間進行させた。次に、80%溶液A、20%溶液B及び総結合溶液の1/600の体積の結合試薬から構成されるキット成分から、結合溶液を調製した。アッセイプレートの各ウェルに結合溶液60μLを加えることによって酵素反応を停止させた。プレートを密封し、10秒間振盪した。このプレートを室温で1時間インキュベートしてから、Tecan Genios Proプレートリーダー(Tecan, Switzerland)を用いて平行及び垂直蛍光を測定した。各酵素及び基質の組み合わせについての次の見かけのK値を使用して、PDE10 FPアッセイについて記載の方法に従って、平行及び垂直蛍光読み取りから、全11種類のPDEに対する化合物の見かけの阻害定数を決定した:PDE1A(FAM cGMP)70nM、アカゲザルPD2A3(FAM cAMP)10,000nM、PDE3A(FAM cAMP)50nM、PDE4A1A(FAM cAMP)1500nM、PDE5A1(FAM cGMP)400nM、PDE6C(FAM cGMP)700nM、PDE7A(FAM cAMP)150nM、PDE8A1(FAM cAMP)50nM、PDE9A2(FAM cGMP)60nM、PDE10A2(FAM cAMP)150nM、PDE11A4(FAM cAMP)1000nM。本発明に従い使用され得る化合物の固有のPDE10阻害活性をこれらのアッセイによって求めることができる。
【0061】
化合物Aは、一般に約1mM未満のKiでヒトPDE10酵素を阻害する活性を有していた。このような結果は、PDE10酵素の阻害剤として使用される化合物の固有の活性を示している。化合物Aのプロドラッグに関するデータは、下記の実施例で提供される。
【0062】
対象化合物は、本明細書中で記される疾患、障害及び状態の、予防、処置、抑制、改善又はリスク低下のための方法においてさらに有用である。対象化合物は、他の薬剤と組み合わせて、上述の疾患、障害及び状態の、予防、処置、抑制、改善又はリスク低下のための方法においてさらに有用である。本発明の化合物は、本発明の化合物又は他薬剤が有用であり得る疾患又は状態の、処置、予防、抑制、改善又はリスク低下において、この他薬剤の1以上と組み合わせて使用することができ、一緒にされるこの薬物の組み合わせは、何れかの薬物単独よりも安全であるか又は効果的である。このような他薬剤(複数可)は、それに一般的に使用される経路によって及び量で、本発明の化合物と同時に又は連続的に投与され得る。本発明の化合物が1以上の他薬剤と同時に使用される場合、このような他薬剤及び本発明の化合物を含有する単位剤形の医薬組成物が望ましい場合がある。しかしながら、併用療法にはまた、異なる重複スケジュールで本発明の化合物及び1以上の他薬剤が投与される療法も含まれ得る。1以上の他の有効成分と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物及び他の有効成分が、それぞれが単独で使用される場合よりも低用量で使用され得ることも想定される。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1以上の他の有効成分を含有するものを含む。上記組み合わせには、一つの他の活性化合物とだけでなく、2以上の他の活性化合物との本発明の化合物の組み合わせが含まれる。同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患又は状態の、予防、処置、抑制、改善又はリスク低下において使用される他薬剤と組み合わせて使用され得る。このような他薬剤は、一般的に使用される経路によって及び量で、したがって本発明の化合物と同時に又は連続的に投与され得る。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1以上の他の有効成分も含有するものを含む。本発明の化合物の第二の有効成分に対する重量比は変動し得るものであり、各成分の有効用量によって決まる。一般に、それぞれの有効用量が使用される。したがって、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合、本発明の化合物の他薬剤に対する重量比は一般に、約1000:1~約1:1000、例えば約200:1~約1:200などの範囲である。
【0063】
本発明の化合物及び他の活性成分の組み合わせもまた、一般に上述の範囲内であるが、各場合において、各活性成分の有効用量が使用されるべきである。このような組み合わせにおいて、本発明の化合物及び他の活性薬剤が個別に又は併せて投与され得る。さらに、ある要素の投与は、他薬剤の、投与前、投与と同時又は投与に続くものであることができる。
【0064】
したがって、対象化合物は単独で、又は対象適応症において有益であることが知られている他薬剤又は、本発明の化合物の効力、安全性、利便性を向上させるか又は望ましくない副作用若しくは毒性を減少させるか何れかの受容体若しくは酵素に影響を及ぼす他薬剤と組み合わせて使用され得る。併用療法で又は固定された組み合わせでの何れかで、対象化合物及び他薬剤を共投与することができる。
【0065】
1実施形態において、対象化合物は、抗アルツハイマー薬、β-セクレターゼ阻害剤、γ-セクレターゼ阻害剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、イブプロフェンなどのNSAID、ビタミンE及び抗アミロイド抗体と組み合わせて用いることができる。
【0066】
別の実施形態において、対象化合物は、鎮静剤、睡眠薬、精神安定剤、抗精神病薬、抗不安薬、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT-2アンタゴニストなど、例えば:アジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、非定型抗精神薬、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスプリオン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼパート、クロルジアゼポキシド、クロレタート(clorethate)、クロルプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デキスクラモール、ジアゼパム、ジクロラールフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エスクロルビノール、エトミダート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルル、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバマート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾレート、トラニルシプロマイン(tranylcypromaine)、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフルオロペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデム及びそれらの塩、及びそれらの組み合わせなどと組み合わせて用いられ得るか、又は対象化合物は、光療法又は電気刺激などの理学的方法の使用と併せて投与することができる。
【0067】
別の実施形態において、対象化合物は、レボドパ(選択的な脳外デカルボキシラーゼ阻害剤、例えばカルビドパ又はベンセラジドなどとともに、又はこれらなしで)、抗コリン作動薬、例えばビペリデン(任意にその塩酸塩又は乳酸塩として)及びトリヘキシフェニジル(ベンズヘキソール)塩酸塩など、COMT阻害剤、例えばエンタカポンなど、MOA-B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト及びドーパミン受容体アゴニスト、例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミぺキソールと組み合わせて用いられ得る。当然のことながら、ドーパミンアゴニストは、薬学的に許容される塩、例えば、アレンテモール臭化水素酸塩、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸フェノルドパム、ナキサゴリド塩酸塩及びメシル酸ペルゴリドの形態であり得る。リスリド及びプラミペキソールは非塩形態で一般に使用される。
【0068】
別の実施形態において、対象化合物は、神経弛緩薬の、フェノチアジン、チオキサンテン、複素環ジベンザゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジン及びインドロンクラスからの化合物と組み合わせて用いることができる。フェノチアジンの好適な例としては、クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン及びトリフルオペラジンが挙げられる。チオキサンテンの好適な例としては、クロルプロチキセン及びチオチキセンが挙げられる。ジベンザゼピンの例はクロザピンである。ブチロフェノンの例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの例はピモジドである。インドロンの例はモリンドロンである。他の神経弛緩薬としては、ロキサピン、スルピリド及びリスペリドンが挙げられる。当然のことながら、対象化合物と組み合わせて使用される場合、神経弛緩薬は、薬学的に許容される塩の形態、例えば、クロルプロマジン塩酸塩、ベシル酸メソリダジン、チオリダジン塩酸塩、マレイン酸アセトフェナジン、フルフェナジン塩酸塩、エナント酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、チオチキセン塩酸塩、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピン及びモリンドン塩酸塩などであり得る。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジド及びリスペリドンは、一般に非塩形態で使用される。したがって、対象化合物は、アセトフェナジン、アレンテモール、アリピプラゾール、アミスルプリド、ベンズヘキソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、ベンセラジドとレボドパ、カルビドパとレボドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、クエチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシフェニジル、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジン又はジプラシドンと組み合わせて用いられ得る。
【0069】
別の実施形態において、対象化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(三級アミン三環系及び二級アミン三環系を含む。)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRis)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOis)、モノアミンオキシダーゼの可逆性阻害剤(RIMA)、セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRis)、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、ニューロキニン-1受容体アンタゴニスト、非定型抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、5-HTAアゴニスト又はアンタゴニスト、特に5-HTA部分アゴニスト及びコルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストを含め、抗うつ薬又は抗不安薬と組み合わせて用いられ得る。具体的な薬剤としては、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン及びトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン及びプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン及びセレギリン;モクロベミド:ベンラファキシン;デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドン及びビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム及びプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロン及びイプサピロン及び薬学的に許容されるそれらの塩が挙げられる。
【0070】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、脳室内(ICV)、嚢内注射又は点滴、皮下注射又は移植)により、吸入スプレー、鼻腔、膣、直腸、舌下又は局所投与経路により投与することができ、単独で又は一緒に、各投与経路に適切な従来からの無毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント及びビヒクルを含有する適切な投与単位製剤中で、処方され得る。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの温血動物の処置に加えて、本発明の化合物はヒトでの使用に有効である。化合物「の投与」及び又は化合物を「投与すること」という用語は、処置を必要とする個体に、本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを提供することを意味すると理解されたい。
【0071】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、所定の量又は割合の指定の成分を含む生成物並びに、指定の量の指定の成分の組み合わせの結果、直接的又は間接的に得られる何らかの生成物を包含するものとする。医薬組成物に関連するこのような用語は、活性成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物並びに、何らかの2以上の成分の組み合わせ、錯体化又は凝集の結果、又は1以上の成分の解離の結果、又は他のタイプの反応若しくは1以上の成分の相互作用から直接的又は間接的に得られる何らかの生成物を包含するものとする。一般に、医薬組成物は、活性成分を液体担体若しくは微粉化固形担体又は両方と均一に及び密に合わせ、次に必要に応じて所望の製剤に生成物を成型することによって調製される。医薬組成物において、活性目的化合物は、疾患の過程及び状態において望ましい効果を生じさせるのに十分な量、含まれる。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体の混合により調製される何らかの組成物を包含する。
【0072】
経口使用を対象とした医薬組成物は、医薬組成物の製造に対して当技術分野で公知の何らかの方法に従い調製され得るものであり、このような組成物は、医薬的に洗練され、口当たりが良い製剤を提供するために、甘味料、香味料、着色料及び保存料からなる群から選択される1以上の物質を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適切な無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合において有効成分を含有する。錠剤は、被覆されていなくてもよいし、又はこれらは、消化管での分解及び吸収を遅延させるための公知の技術によって被覆されていてもよく、それによって、より長時間にわたる持続作用がもたらされる。経口使用のための組成物はまた、有効成分が不活性の固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される場合は硬ゼラチンカプセルとして、又は、活性成分が水又は油媒体、例えばピーナツ油、流動パラフィン又はオリーブ油と混合される場合は、軟ゼラチンカプセルとしても与えられ得る。当技術分野で公知の標準的な方法によって、水性縣濁液、油性縣濁液、分散性粉末又は顆粒剤、水中油乳濁液及び滅菌注射用水性又は油性縣濁液を調製し得る。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、処方物の他の成分と適合性でなければならず、その受容者に対して有害であってはならないものである。
【0073】
対象化合物は、本明細書中で記される疾患、障害及び状態の、予防、処置、調節、改善又はリスク低下のための方法においてさらに有用である。本発明の組成物中の有効成分の投与量は変動し得るが、有効成分の量は、適切な投与形態が得られるようなものである必要がある。有効成分は、最適な医薬的有効性をもたらすであろう投与量でこのような処置を必要とする患者(動物及びヒト)に投与され得る。選択される投与量は、所望の治療効果に、投与経路に、及び処置の持続時間によって決まる。用量は、疾患の性質及び重度、患者の体重、患者がその時に従っている特定の食事制限、併用投薬及び当業者が認めるであろう他の要因に依存して、患者ごとに変動する。一般に、患者、例えば、ヒト及び老人に、毎日0.001~10mg/kg体重の間の投与量レベルが投与される。投与量範囲は、一般に約0.5mg~1.0g/患者/日となり、これは単回又は複数回で投与され得る。ある実施形態において、投与量範囲は、約0.5mg~500mg/患者/日となり;別の実施形態において、約0.5mg~200mg/患者/日となり;また別の実施形態において、約5mg~50mg/患者/日となる。本発明の医薬組成物は、約0.5mg~500mgの有効成分を含むか又は約1mg~250mgの有効成分を含むなど、固形製剤中で提供され得る。本医薬組成物は、約1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg又は250mgの有効成分を含む固形製剤中で提供され得る。経口投与の場合、本組成物は、処置しようとする患者への投与量の対症的調節のため、1.0~1000ミリグラムの有効成分、例えば1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000ミリグラムなどの有効成分を含有する錠剤の形態で提供され得る。本化合物は、1日あたり1~4回、例えば1日あたり1回又は2回などの投薬計画で投与され得る。
【0074】
本発明の化合物を調製するためのいくつかの方法を次のスキーム及び実施例で説明する。出発材料及び必要な中間体は、いくつかの場合では市販されているか又は、文献の手順に従い、若しくは本明細書中で説明されるように調製され得る。本発明の化合物は、次の図式で示されるような反応を、文献中で知られているか又は実験手順で例示される他の標準的な操作に加えて用いることによって調製され得る。図式で示されるような置換基の付番は、特許請求の範囲で使用されるものと必ずしも対応せず、多くの場合、明確にするために、本明細書の上記の定義のもとで複数の置換基が可能となる場合、その化合物に連結される一つの置換基が示される。本発明の化合物を生成させるために使用される反応は、文献中で知られ得るか又は実験手順で例示され得るように、エステル加水分解、保護基の切断など、他の標準的な操作に加えて、本明細書中の図式及び実施例で示されるような反応を用いることによって調製される。出発材料は、当技術分野で公知であるか又は本明細書中で説明されるような手順に従い調製される。本明細書中で次の略語を使用する:Me:メチル;Et:エチル;t-Bu:tert-ブチル;Ar:アリール;Ph:フェニル;Bn:ベンジル;Ac:アセチル;THF:テトラヒドロフラン;Boc:tert-ブチルオキシカルボニル;DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DPPA:ジフェニルホスホリルアジド;EDC:N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド;EtOAc:酢酸エチル;HOBt:ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;TEA:トリエチルアミン;DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;rt:室温;HPLC:高速液体クロマトグラフィー;NMR:核磁気共鳴;TLC:薄層クロマトグラフィー;DMSO:ジメチルスルホキシド;TFA:トリフルオロ酢酸;aqu.:水溶液;CELITE:珪藻土;,:アセトニトリル;UPLC:超高速液体クロマトグラフィー、XRPD:X線粉末回折。
【0075】
一部の場合において、最終生成物は、例えば置換基の操作によってさらに修飾され得る。これらの操作としては、当業者にとって一般的に知られている、還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が挙げられるがこれらに限定されるものではない。一部の場合において、先述の反応図式を行う順序は、反応を促進するか又は不要な反応生成物を回避するために変更され得る。次の実施例は、本発明についての理解をより深め得るように提供されるものである。これらの実施例は例示的なものに過ぎず、いかなる形でも本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【0076】
本発明の化合物のいくつかの製造方法を、下記の図式及び実施例で説明する。
【実施例
【0077】
一般法
市販の溶媒、試薬、中間体は、入荷時の状態で使用した。市販されていない試薬及び中間体は下記の方法で製造した。H NMRスペクトラムは、MeSiからのppm低磁場として報告され、プロトン数、多重度、及び結合定数(単位:ヘルツ)が括弧内に示されている。LC/MSデータが示されている場合は、観察された親イオンが提供されている。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、プレパック順相シリカ又はバルクシリカを使用し、代表的には100%ヘキサン/石油エーテルから100%酢酸エチルまでのヘキサン又は石油エーテル及び酢酸エチルの勾配溶離を使用して実行した。逆相精製は、Sunfire Prep C18 OBD 5μm (30x150mm)又は10μm(50x150mm)カラムを使用し、代表的には調整剤として0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル及び水の勾配溶離を使用して行った。
【0078】
実施例1
(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル(カルバメート)
【化4】
段階A-化合物1の合成
2-メチル-N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-アミン(1a、500mg、1.31mmol)及び(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル4-ニトロフェニルカーボネート[CAS173604-87-0](867mg、2.94mmol)のDMF(6.5mL)中溶液をトリエチルアミン(729μL、5.23mmol)で処理し、70℃で4.5時間加熱した。追加の(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル4-ニトロフェニルカーボネート(490mg、1.66mmol)及びトリエチルアミン(600μL、4.30mmol)を加え、加熱を終夜続けた。追加の(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル4-ニトロフェニルカーボネート(300mg)及びトリエチルアミン(400μL)を加え、加熱をさらに6.5時間続けた。追加の(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル4-ニトロフェニルカーボネート(260mg)を加え、加熱を再度終夜続けた。
【0079】
冷却した反応液を水で希釈し、飽和NaCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をブライン及び飽和NaCO水溶液の組み合わせで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物を、アセトニトリル/水+0.1%TFA10%から50%で溶離を行う分取HPLC(逆相C-18)を用いて精製した。標的化合物を含む分画を合わせ、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮して1を得た。MS:m/z539.2=[M+H]、H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.27(s、1H)、7.36(d、J=8.4Hz、1H)、7.14(s、1H)、7.05(d、J=8.4Hz、1H)、5.58(s、2H)、4.98(s、2H)、4.40-4.42(m、1H)、4.31-4.34(m、1H)、2.73(s、3H)、2.54(s、3H)、2.28(s、3H)、2.20(s、3H)、2.05-2.09(m、1H)、1.87-1.92(m、1H)、1.29-1.33(m、1H)、1.04-1.07(m、1H)。
【0080】
実施例2
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)-5′-フェニルチオヒドロキシルアミン
【化5】
段階A-化合物2の合成
1a(300mg、0.784mmol)及びN-(フェニルチオ)フタルイミド(220mg、0.863mmol)のDMF(6.5mL)中溶液を100℃で終夜攪拌した。冷却した反応液を濃縮し、残留物を、アセトニトリル/水+0.1%TFA10%から55%で溶離を行う分取HPLC(逆相C-18)を用いて精製した。標的物を含む分画を合わせ、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物について、アセトニトリル/水+0.1%TFA10%から55%で溶離を行う分取HPLC(逆相C-18)を用いて2回目の精製を行った。標的化合物を含む分画を合わせ、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮して2を得た。MS:m/z491.1=[M+H]、H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.26(s、1H)、7.34(d、J=12Hz、1H)、7.26-7.29(m、2H)、7.17-7.20(m、1H)、7.11(d、J=8.4Hz、2H)、7.02(d、J=7.8Hz、1H)、6.58(s、1H)、5.46(s、2H)、4.31-4.34(m、1H)、4.26-4.29(m、1H)、2.71(s、3H)、2.54(s、3H)、2.26(s、3H)、2.02-2.05(m、1H)、1.82-1.88(m、1H)、1.25-1.30(m、1H)、1.01-1.04(m、1H)。
【0081】
実施例3
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)ベンズアミド
【化6】
段階A-化合物3の合成
1a(250mg、0.654mmol)のジオキサン(2.61mL)中溶液をジイソプロピルエチルアミン(171μL、0.980mmol)及び塩化ベンゾイル(99μL、0.85mmol)で処理し、室温で攪拌した。3.5時間後、追加のジイソプロピルエチルアミン(57μL)及び塩化ベンゾイル(38μL)を加え、攪拌を終夜続けた。反応液をブライン及び飽和NaHCO水溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物を、アセトニトリル/水+0.1%TFA10%から45%で溶離を行う分取HPLC(逆相C-18)を用いて精製した。標的物を含む分画を合わせ、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで抽出した。
【0082】
有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮して3を得た。MS:m/z487.2=[M+H]。H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.25(s、1H)、7.39-7.44(m、3H)、7.33-7.35(m、1H)、7.30(t、J=7.8Hz、2H)、6.99(d、J=7.8Hz、1H)、5.92(s、1H)、5.61(s、2H)、4.18-4.25(m、2H)、2.73(s、3H)、2.50(s、3H)、2.27(s、3H)、1.94-1.97(m、1H)、1.74-1.80(m、1H)、1.22-1.26(m、1H)、0.93-0.96(m、1H)。
【0083】
実施例4
ペンチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カーバメート
【化7】
段階A-化合物4の合成
1a(150mg、0.392mmol)のDMF(1.12mL)中溶液を4-ジメチルアミノピリジン(9.6mg、0.078mmol)、トリエチルアミン(131μL、0.941mmol)、及びクロルギ酸ペンチル(227μL、1.57mmol)で処理し、60℃で4.5時間加熱した。追加のクロルギ酸ペンチル(114μL)を加え、加熱を終夜続けた。翌朝及び再度午後に、追加のトリエチルアミン(131μL)及びクロルギ酸ペンチル(227μL)を加え、加熱を終夜続けた。翌朝及び再度午後に、追加のトリエチルアミン(131μL)及びクロルギ酸ペンチル(227μL)を加え、加熱を終夜続けた。
【0084】
冷却した反応液を水で希釈し、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、次に酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をブライン及び飽和NaCO水溶液の組み合わせで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物を、0%から65%EtOAc/ヘキサンで溶離を行うシリカゲルによって精製して、4を得た。MS:m/z497.3=[M+H]、H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.27(s、1H)、7.35(dd、J=8.4、1.8Hz、1H)、7.21(s、1H)、7.04(d、J=8.4Hz、1H)、5.58(s、2H)、4.37-4.40(m、1H)、4.30-4.33(m、1H)、4.21(t、J=6.6Hz、2H)、2.72(s、3H)、2.53(s、3H)、2.27(s、3H)、2.04-2.07(m、1H)、1.86-1.89(m、1H)、1.65-1.69(m、2H)、1.25-1.33(m、5H)、1.03-1.06(m、1H)、0.88(t、J=6.6Hz、3H)。
【0085】
実施例5
((((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カルバモイル)オキシ)メチルベンゾエート
【化8】
段階A-化合物5の合成
1a(150mg、0.392mmol)のジクロロメタン(980μL)中溶液を冷却して0℃とし、クロルギ酸クロロメチル(105μL、1.18mmol)を急速に滴下し、昇温させて室温とした。2時間後、反応液をジクロロメタン及び飽和NaHCO水溶液で希釈した。有機層を分離し、水相をジクロロメタンで2回目抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物をDMF(2mL)に取り、安息香酸(144mg、1.18mmol)及び炭酸セシウム(192mg、0.588mmol)を加え、反応液を70℃で3時間加熱した。冷却した反応液を、アセトニトリル/水+0.1%TFA10%から70%で溶離を行う分取HPLC(逆相C-18)を用いて精製した。標的物を含む分画を合わせ、飽和NaHCO水溶液で塩基性とし、酢酸エチルで抽出した。
【0086】
有機層をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮して5を得た。MS:m/z561.3=[M+H]。H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.27(s、1H)、8.04(d、J=7.2Hz、2H)、7.60(t、J=6.6Hz、1H)、7.45(t、J=7.8Hz、2H)、7.36(d、J=6.6Hz、1H)、7.19(s、1H)、7.05(d、J=7.8Hz、1H)、6.11(s、2H)、5.61(s、2H)、4.37-4.40(m、1H)、4.30-4.33(m、1H)、2.60(s、3H)、2.52(s、3H)、2.28(s、3H)、2.05-2.08(m、1H)、1.85-1.91(m、1H)、1.29-1.32(m、1H)、1.03-1.06(m、1H)。
【0087】
実施例6
化合物5の別途製造
【化9】
段階A-化合物6bの合成
6a(5.00g、21.6mmol)のアセトン(54.0mL)中溶液をヨウ化ナトリウム(9.71g、64.8mmol)及び重炭酸ナトリウム(0.363g、4.32mmol)で処理し、得られた懸濁液を40℃で12時間加熱した。追加の6a(5.00g、21.6mmol)、ヨウ化ナトリウム(9.71g、64.8mmol)、重炭酸ナトリウム(0.363g、4.32mmol)、及びアセトン(25mL)を加え、加熱を終夜続けた。冷却した反応液をアセトンで希釈し、Celite(商標名)で濾過し、アセトンで洗浄した。得られた黄色濾液を濃縮し、得られた固体を水に取り、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和NaSO水溶液で洗浄し、次にブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮して6bを油状物として得て、それをそれ以上精製せずに用いた。H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.30-8.32(m、2H)、7.42-7.44(m、2H)、6.07(s、2H)。
【0088】
段階B-化合物6cの合成
6b(13.2g、40.9mmol)、安息香酸(7.49g、61.3mmol)、及び炭酸銀(16.90g、61.3mmol)のトルエン(272mL)中混合物を80℃で4時間15分加熱した。冷却した反応液をCelite(商標名)で濾過し、トルエンで洗浄した。濾液を水で洗浄し、次にブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物を、0%から30%EtOAc/ヘキサンで溶離を行うシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して6cを油状物として得た。H NMR(600MHz、CDCl、ppm):δ8.28-8.31(m、2H)、8.11-8.13(m、2H)、7.63-7.66(m、1H)、7.48-7.51(m、2H)、7.41-7.44(m、2H)、6.14(s、2H)。
【0089】
段階C-化合物5の合成
1a(100mg、0.261mmol)及び6c(190mg、0.588mmol)のジクロロエタン(800μL)及びシクロヘキサン(800μL)中混合物を加え、85℃で終夜加熱した。冷却した反応液をジクロロメタンで希釈し、半飽和NaCO水溶液で洗浄した。有機層を分離し、水系部分をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を半飽和NaCO水溶液で洗浄し、MgSOで脱水し、濃縮した。残留物を、10%から100%EtOAc/ヘキサンで溶離を行うシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。単離物について、10%から100%EtOAc/ヘキサンで溶離を行うシリカゲルクロマトグラフィーによって2回目の精製を行って、5を得た。
【0090】
適切な反応物及び/又は試薬を代わりに用い、上記の実施例5又は6に記載の方法を用いて、以下の本発明の化合物を製造した。
【表1】
溶解度及び安定性
化合物の水溶解度を、過剰な固体(代表的には5~10mg)をpH7のリン酸緩衝生理食塩水又は同等のpH7緩衝液に懸濁させ、超音波処理(30分間)し、スラリー化(2時間、1000rpm)することによって測定した。次いで、懸濁液を再度30分間超音波処理し、再び1000rpmで少なくとも6~24時間撹拌した。サンプル約400μLを取り出し、スピンフィルターに入れた。各サンプルを、0.45pmPVDFスピンフィルターを使用して14Krpmで10分間遠心した。濾液の一部を取り出し、1:1のACN:HOで希釈した。得られたサンプルをUPLC分析を使用して分析した。固体の残留をXRPDによって調べて、材料が結晶性であるか非晶質であるかを判定した。化合物Aの溶解度を、PBS緩衝液中、pH7.4で140μg/mLで測定した。表1に開示されている化合物1~19は、比較的低い水溶解度を示したことから、長期間にわたる制御放出が可能であった。化合物Aの溶解度を、PBS緩衝液中、pH7.4で140μg/mLで測定した。表1に開示されている化合物1~19は、相対的に低い水溶解度を示し、したがって、長期間にわたる、例えば数日又は数週間にわたる制御放出を可能にする。
【0091】
10%CO環境下、37℃で凍結サル及びヒト血漿において、化合物1~19(1μM)の血漿安定性評価した。分析物の安定性は、0、0.25、0.5、1、及び3時間にわたる薬物損失のパーセンテージを求めることによって評価した。さらに、同じ時間経過で化合物Aの出現を測定した。内部標準との比率に基づく薬物損失のパーセント。分析物濃度はLC/MS/MSによって測定した。線形回帰は、平均T0値と線形時間値の対数変換パーセントを使用して実行した。この回帰直線の傾きから消失速度定数(ke)を算出し、消失速度定数に基づいて半減期(T1/2)を算出した。
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2022-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iの化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
は、
)-C(O)OCHOC(O)R
)-C(O)OC1-6アルキル[前記アルキルは、1~3個のR基で置換されていても良く、-C(O)OC 1-6 アルキルのC 1-6 アルキルは、t-ブチルではない。];
)-C(O)-C6-10アリール、C(O)-C6-10ヘテロアリール、-C(O)-C1-6アルキル、-C(O)-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
)-S-C6-10アリール、-S-C4-10ヘテロアリール、-S-C1-6アルキル、-S-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];及び
)1~2個のR基で置換されていても良い-C(O)OCHジオキソリル
からなる群から選択され;
は、C1-6アルキル、C6-10アリール、C6-10ヘテロアリール、及びC3-6シクロアルキルからなる群から選択され;前記アルキル、アリールヘテロアリール、及びシクロアルキルは1~3個のR基で置換されていても良く;
は、独立にC1-6アルキル、OC1-6アルキル、オキソ、及びハロゲンからなる群から選択され;
nは1、2、3、又は4である。]
【請求項2】
が-C(O)OCHOC(O)Rである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がC6-10アリールであり、前記アリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項4】
前記アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記アリールがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がC1-6アルキルであり、前記アルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項7】
がC4-10ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項8】
前記ヘテロアリールが、置換されていないか1~3個のR基で置換されているピリジル及びピリミジニルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がC3-6シクロアルキルであり;前記シクロアルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項10】
前記シクロアルキルが、置換されていないか置換されているシクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルからなる群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がC(O)OC1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良く、ここで、-C(O)OC 1-6 アルキルのC 1-6 アルキルは、t-ブチルではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
が-S-C6-10アリール又は-C(O)-C6-10アリールであり、前記アリールが1~3個のR基で置換されていても良い、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
がC(O)OCHジオキソリルであり、前記ジオキソリルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式Iの化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、
は、
1)-C(O)OCHOC(O)R
2)-C(O)OC1-6アルキル[前記アルキルは、1~3個のR基で置換されていても良く、-C(O)OC1-6アルキルのC1-6アルキルは、t-ブチルではない。];
3)-C(O)-C6-10アリール、C(O)-C -10ヘテロアリール、-C(O)-C1-6アルキル、-C(O)-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];
4)-S-C6-10アリール、-S-C4-10ヘテロアリール、-S-C1-6アルキル、-S-C3-6シクロアルキル[前記アリール、ヘテロアリール、アルキル及びシクロアルキルは、1~3個のR基で置換されていても良い。];及び
5)1~2個のR基で置換されていても良い-C(O)OCHジオキソリル
からなる群から選択され;
は、C1-6アルキル、C6-10アリール、C -10ヘテロアリール、及びC3-6シクロアルキルからなる群から選択され;前記アルキル、アリールヘテロアリール、及びシクロアルキルは1~3個のR基で置換されていても良く;
は、独立にC1-6アルキル、OC1-6アルキル、オキソ、及びハロゲンからなる群から選択される。]
【請求項2】
が-C(O)OCHOC(O)Rである、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項3】
がC6-10アリールであり、前記アリールが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1又はのいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項4】
がフェニル又はナフチルであり、前記フェニル及びナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項5】
前記 置換されていないか1~3個のR基で置換されているフェニルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項6】
置換されていないか1~3個のR基で置換されている 1-6 アルキルである、請求項1又はのいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項7】
置換されていないか1~3個のR基で置換されている 4-10 ヘテロアリールである、請求項1又はのいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項8】
前記 ピリジル又はピリミジニルでありここで、ピリジル及びピリミジニルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項7に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項9】
がC3-6シクロアルキルであり;前記シクロアルキルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1又はのいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項10】
前記 シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり、ここで、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが置換されていないか1~3個のR 基で置換されている、請求項9に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項11】
C(O)OC1-6アルキルであり、前記アルキルが1~3個のR基で置換されていても良く、ここで、-C(O)OC1-6アルキルのC1-6アルキルは、t-ブチルではない、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項12】
が-S-C6-10アリール又は-C(O)-C6-10アリールであり、前記アリールが1~3個のR基で置換されていても良い、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項13】
前記アリールがフェニル又はナフチルであり、前記フェニル又はナフチルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項12に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項14】
C(O)OCHジオキソリルであり、前記ジオキソリルが置換されていないか1~3個のR基で置換されている、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩
【請求項15】
(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソール-4-イル)メチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カーバメート;
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)-S-フェニルチオヒドロキシルアミン;
N-((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)-N-(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)ベンズアミド;
ペンチル((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カーバメート;
((((5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル)(2-メチル-6-(((1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル)メトキシ)ピリミジン-4-イル)カルバモイル)オキシ)メチルベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルヘキサノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルプロパノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-4-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-2-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルピリジン-3-カルボキシレート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル4-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル3-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-フルオロベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル3-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル4-メトキシベンゾエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-メチルプロパノエート;
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチルシクロヘキサンカルボキシレート;又は
({(2-メチル-6-{[(1S,2S)-2-(5-メチルピリジン-2-イル)シクロプロピル]メトキシ}ピリミジン-4-イル)[(5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)メチル]カルバモイル}オキシ)メチル2-エチルブタノエート;
である、請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項16】
【化2】
から選択される化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項17】
薬学的に許容される担体及び請求項1に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物が、
【化3】
又はこれらの薬学的に許容される塩である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
【化4】
である、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
精神障害、妄想性障害及び薬剤誘発性精神病;不安障害、運動障害及び神経変性障害から選択される障害の治療のための医薬の製造のための、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩の使用。
【請求項21】
統合失調症の治療のための医薬の製造のための、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩の使用。
【請求項22】
処置を必要とする哺乳動物患者におけるPDE10機能不全関連の神経障害又は精神障害を治療するための医薬組成物であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【国際調査報告】