(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】MECシステム
(51)【国際特許分類】
C25B 9/77 20210101AFI20240227BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20240227BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240227BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240227BHJP
C12P 5/02 20060101ALI20240227BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240227BHJP
C25B 1/04 20210101ALN20240227BHJP
【FI】
C25B9/77
C25B3/03
C25B3/26
C25B9/00 A
C25B9/00 G
C12P5/02
C12M1/00 C
C25B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556992
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022057017
(87)【国際公開番号】W WO2022195023
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021106890.8
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523320593
【氏名又は名称】エレクトロケア ゲーエムべーハー
【氏名又は名称原語表記】Electrochaea GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハーフェンブラドル,ドリス
(72)【発明者】
【氏名】エルベン,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ニタント
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ,ホセ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4K021
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B064AB03
4K021AA01
4K021AC02
4K021BA02
4K021BA07
4K021DB05
4K021DB18
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1のガス入口と少なくとも1の脱ガス要素を含む複数のMECセルを有するMECスタック、およびそれらのMECスタックにおいてバイオ触媒により触媒されるバイオ電気化学的メタン化反応を改善する方法を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2のMECセルを含む微生物電解セル(MEC)スタックにおけるバイオ電気化学的メタン生成プロセスのガス勾配を調整する方法であって、
a.カソードコンパートメントにおいて、前記MECおよび/またはMECスタックのスタック電流および/または電圧を測定するステップと、
b.ステップa)で評価した情報に基づいて、少なくとも1のガス入力点の入力ガス量を決定するステップと、
c.少なくとも1のガス入力点を介して決定した入力ガス量を供給し、それによりシステムにおける効率的なメタン生成のための体積要件を調整するステップと、
d.前記MECスタックのMECセルの後に配置された1または複数の脱ガス要素を介して、前記MECスタックを脱気するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
ステップa)において、さらに、
(i)カソライト回路内のカソライトのpH値、
(ii)カソライトの酸化還元電位、
(iii)カソライトの温度、
のうちの少なくとも1つを測定し、それにより、ステップc)において、カソライトのpH値および/または温度および/または酸化電位を調整することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
ステップa)が、2以上のガス入力点の前および/または後に配置されたpH測定システムを介して、カソライトのpH値を測定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
バイオ電気化学的メタン生成プラント内のMECスタック(1)であって、
少なくとも2のMECセル(10a、10b)を含み、
各MECセル(10a、10b)が、カソードコンパートメント(12a、12b)とアノードコンパートメント(14a、14b)とを備え、
前記MECセル(10a、10b)が並列または直列に流体接続され、
当該MECスタックが、当該MECスタックの2以上のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)を接続する、少なくとも1のカソライト回路(18)を備え、
2以上のガス入口(22a、22b)が、前記少なくとも1のカソライト回路(18)内に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項5】
請求項4に記載のMECスタック(1)において、
当該MECスタック(1)の1または複数の個々のMECセル(10a、10b)に少なくとも1のガス入口(22a、22b)を備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項6】
請求項5に記載のMECスタック(1)において、
1または複数の個々のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)内に少なくとも1のガス入口(22a、22b)を備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載のMECスタック(1)において、
各ガス入口(22a、22b)が、ガス源(20a、20b)からのガス入力を選択的に調整するためのそれぞれの流量コントローラを備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項8】
請求項4~7の何れか一項に記載のMECスタックにおいて、
当該MECスタック(1)が、当該MECスタック(1)から少なくとも第1のガス/プロセスガスの1つを抽出するための少なくとも1の脱ガス要素(30)を備え、前記脱ガス要素(30)の1つが、当該MECスタックの最後のMECセルの後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項9】
請求項8に記載のMECスタックにおいて、
1または複数の脱ガス要素が、他のMECセルの1または複数の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項10】
請求項4~9の何れか一項に記載のMECスタック(1)において、
pH測定システム(32)、ORP測定システム(34)、温度測定システム、体積測定システム、電流測定システムのなかから選択される少なくとも1のデバイスを含むことを特徴とするMECスタック。
【請求項11】
請求項10に記載のMECスタック(1)において、
pH測定システムおよび/またはORP測定システムおよび/または温度測定システムおよび/または体積測定システムおよび/または電流測定システムが、少なくとも1のガス入口(22a、22b)の前および/または後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項12】
バイオ電気化学的メタン生成プラントのMECスタック(1)であって、
少なくとも2のMECセル(10a、10b)を含み、
各MECセル(10a、10b)が、カソードコンパートメント(12a、12b)およびアノードコンパートメント(14a、14b)を備え、
前記MECセル(10a、10b)が、並列または直列に流体接続され、
当該MECスタックが、当該MECスタックの2以上のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)を接続する、カソライトのための少なくとも1のカソライト回路(18)を備え、
当該MECスタック(1)が、当該MECスタックの最初のMECセル(10a)に配置された入力ガス用の1つのガス入口(22a)を備え、
当該MECスタック(1)が、少なくとも1の出力ガスを抽出するための少なくとも2の脱ガス要素(30a、30b)を備え、前記脱ガス要素(30a、30b)の1つが、当該MECスタック(1)の最後のMECセル(10b)の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項13】
請求項12に記載のMECスタック(1)において、
少なくとも1の脱ガス要素(30a、30b)が、他のMECセルの1または複数の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項14】
請求項6~16の何れか一項に記載の2以上のMECスタック(10a、10b)を含むMECモジュール(100)であって、
前記2以上のMECスタック(10a、10b)が、前記カソライト回路(18)を介して流体接続されていることを特徴とするMECモジュール。
【請求項15】
バイオ電気化学的メタン生成プラントで使用するためのMECセルであって、
入力ガス用の1つのガス入口と2以上の脱ガス要素とを備えるか、または入力ガス用の2以上のガス入口と1または複数の脱ガス要素とを備えることを特徴とするMECセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物電解セル(MEC)システムに関し、特に、バイオ電気化学的メタン生成反応を行うために複数のMECをMECスタックに積層したMECシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
メタンは化石燃料の中で炭素原子1個当たりのエネルギー密度が最も高く、そのエネルギー変換の潜在力は、酸素の存在下での燃焼や燃料電池を使用した発電によって直接得られる他の天然ガスよりも遥かに大きい。メタンのエネルギー生成の潜在力は、世界市場でますます重要性を増している。
【0003】
再生可能資源から生成されるメタン(再生可能メタン)は、持続可能で再生可能なエネルギー源であり、今日すでに石炭や他の化石燃料の代替となりつつある。このため、再生可能メタンを生成するための多くの様々なプロセス、いわゆるメタン化プロセスが、先行技術において開発および最適化されている。
【0004】
一つのメタン化プロセスは、例えば、バイオ電気化学的メタン化と呼ばれる微生物電気化学技術(MET)に基づくことができる。このプロセスは、微生物を触媒として用いながら電気エネルギーを化学エネルギーに変換することができる特有のシステムである微生物電解セル(MEC)で実現される。このシステムは、電気分解とメタン生成の組合せを単一の反応器、いわゆるMECで実現する。MEC内でメタン生成微生物が例えばカソードコンパートメントまたはカソードに存在する場合、MECはバイオ電気化学的メタン化セルとみなされる。
【0005】
反応器は、例えば半透膜を介してアノードコンパートメントまたはチャンバから分離される単一のコンパートメント、すなわちカソードコンパートメントまたはチャンバを含むことができる。先行技術のいくつかの実施形態では、メタン生成微生物(例えば、メタン生成菌または古細菌)によるメタン生成が、バイオカソードコンパートメントで直接行われ、CO2からメタンへのカソード還元に必要な電子流が、アノードコンパートメントにおいて水の酸化によって補われる。
【0006】
より詳細には、このプロセスでは、電力を使用して、MECのアノードとカソードとの間の電位差を高め、バイオ電気化学的メタン化反応を可能にしている。
【0007】
カソードMECプロセスでは、例えば水素の形態で、電子供与体として利用される電子が発生し、炭素源、例えば二酸化炭素を価値ある生成物、例えばメタンに還元する。関連するバイオ電気化学的メタン化反応は、微生物、いわゆるバイオ触媒によって触媒される。
【0008】
本発明では、「入力ガス」という用語が使用され、化学反応を達成するためにMEC内の触媒に必要な任意のガスまたは触媒に適した任意のガスを包含するものとして理解される。適切な入力ガスは、CO2やCOのような典型的な炭素供与体のなかから選択することができるが、他の適切な炭素供与体を含む廃棄ガスからも選択することができる。
【0009】
本発明によれば、入力ガスは、例えばエタノール生成における微生物発酵、例えば石炭燃焼エネルギープラントにおける化石燃料の燃焼、あるいは例えば地熱発電所の副産物として、あるいは例えば牧畜や他の農業活動のような、大気中に拡散するガス組成物の放出をもたらすあらゆる人間の産業活動の結果として、化石燃料または農産業などの産業プロセスで実行される活動中に副産物として見出されるまたは生成されるCO2リッチ放出物および/または廃棄ガスとしても理解される。そのようなガスは、その発生源に応じて、非常に異なるガス組成を含み得る。それらは主に、空気と比較して比較的多量のCO2を含むという点で共通している。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、入力ガスの代わりに、電子等価物を含む別の無機炭素源を使用することもでき、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸アンモニウム、またはそれらの組合せからなる群のなかから選択される。
【0011】
バイオ電気化学的メタン化を用いてメタンの生成量を増加させるために、MECはいわゆるMECスタックに積み重ねられる。MECスタックは、本明細書ではMECセルとも呼ばれる複数のMECから構成される。MECは層から構築することができる。層とは、例えば、膜、電極、シーリング、(多孔質)輸送層、乱流促進材、電極-膜アセンブリ、バイポーラプレートなどである。この設計により、MECの拡張性が簡素化され、必要に応じて個々のMECや壊れたMECを容易に交換することができる。したがって、この設計により、たとえオペレータがバイオ電気化学システム全般の専門知識を有していなくても、オペレータによるメンテナンスを簡略化することができる。先行技術のMECスタックは、すべてのMECセルの反応に必要な入力ガスが、通常は最初のMECセルにある1つの入口に送られ、後続のMECを移動または流れるように構築される。このため、入力ガスは、ガス生成プロセス(例えば、メタン化)のそれぞれの反応のために、MECセル全体で順次使用される。
【0012】
先行技術では、MECスタックの使用および動作により、いくつかの問題が生じる。
【0013】
第一に、容積の問題が生じる。すべてのMECセル全体で実質的に最適な反応を行うためには大量の入力ガスが必要であり、それによりMECスタックに関連するサイズとコストの両方が増大する。
【0014】
第二の問題は、MECスタック内の反応効率に関連する。先行技術のMECスタックの連続動作中、非効率が常に付きまとう。例えば、炭素供給戦略は通常、各MECセル内の微生物の炭素源需要を満たさない。このため、MECセル内の電子供与体、例えば水素(還元力)が使用されないか、または非効率的に使用されることが多く、その結果、メタン生成量が低下し、出力ガス中に未使用の水素が実質的に多く含まれることになる。
【0015】
更なる問題は、システムへの入力ガスの導入によって引き起こされる微生物/菌株の物理化学的条件の変化に関連する。先行技術のMECスタックは、存在する菌株のための物理化学的条件の勾配を経験し、それにより微生物の代謝または例えばメタン生成に最適な条件を提供しないスタック内の領域をもたらし、その結果、そのようなMECスタックの理論的に計算された最大出力と比較して、CO2およびH2のメタンへの変換が明らかに減少する。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、先行技術の非効率に関する問題を少なくとも部分的に解決または改善する、MECスタック全体で最適化されたメタン生成プロセスを実行するための方法およびシステムを提供することである。
【0017】
このような方法およびシステムは、MECを用いたバイオ電気化学的メタン生成に関する独立請求項によって規定される。従属請求項は、方法およびシステムの両方の実施形態をそれぞれ特定する。
【0018】
すなわち、少なくとも2のMECセルを含む微生物電解セル(MEC)スタック内のプロセスにおけるガス勾配を調整する方法が提供される。この方法は、
a.測定するステップであって、
i.水素生成速度を決定するために、MECセルおよび/またはMECスタックの電流および電圧、
ii.任意選択的に、カソライト回路中のカソライトのpH値、および/または
iii.任意選択的に、カソライトの酸化還元電位、および/または
iv.任意選択的に、カソライトの温度を測定するステップと、
b.ステップa)で評価した情報に基づいて、1または複数のガス入力点の入力ガス量を決定するステップと、
c.1または複数のガス入力点を介して、決定した入力ガス量を供給し、それによりMECスタックにおける効率的なメタン生成のための体積要件を調整するステップと、
d.任意選択的に、MECスタックでの効率的なメタン生成のための物理化学的条件、例えばpH値および/または温度および/またはカソライトの酸化電位を調整するステップと、
e.MECスタックのMECセルの後に配置された1または複数の脱ガス要素を介してMECスタックを脱ガスするステップとを備える。
【0019】
本方法は、存在する微生物に対して改善された反応条件を提供し、MECスタック全体を通してバイオ電気化学的メタン生成プロセスのメタン生成の効率を改善する。
【0020】
本発明において、「ガス勾配」という用語は、個々のMECだけでなく、MECスタック内の相互接続されたMECの一定の容積を占めるガスの可変量または質量として理解されるべきである。さらに、「ガス勾配」は気相組成の勾配を指している。そのような勾配は、カソライトの圧力および温度の物理的パラメータだけでなく、微生物の代謝や反応物の利用可能性などの生物学的パラメータにも依存し、それらによって変動する。
【0021】
本発明のMECスタックは、少なくとも2のMECセルを含むが、2に限定されるものではない。3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のMECセルを有するMECスタックも想定される。MECスタックの少なくとも2のMECセルは、MECセルのカソードコンパートメントを通過するカソライト回路を共有する。カソライトは、入力ガスも含む増殖培地が微生物(菌株)に供給される流体、および/または反応中にMECセル内で生成されるガスが輸送される流体である。
【0022】
本方法によれば、第1のステップは電流およびセル電圧を測定することを含む。本発明によれば、水素生成速度を決定するためのMECセルおよび/またはMECスタックの電流および電圧は、HPR=CE×e-1×NA
-1×Iに基づいて、mol/秒で測定される。ここで、HPRは水素生成速度、CEはクーロン効率、eは素電荷、NAはアボガドロ数、Iは電流を示している。クーロン効率は、生成物(すなわち、水素)中の電子数と移動した電子の総数の比(電流×時間/e)で与えられ、MECの動作電圧範囲におけるMECの水素質量バランスに基づいて実験的に特定される必要がある。
【0023】
追加的および/または代替的には、カソードコンパートメント内の水素濃度は、溶存水素センサによって測定することができる。溶存水素センサの配置、すなわち、MECセルまたはスタックの前および/または後および/または内部への配置は、水素生成速度を決定するための生成プロセスの調整にとって重要である。
【0024】
このカソードコンパートメント内の水素濃度の測定と、更なる実施形態においては、カソライトのpH値、カソライトの酸化還元電位、および/またはカソライトの温度の任意選択的な測定はすべて、MEC内の反応条件を決定することを可能にし、よってMECスタック内のMECの反応プロセスおよびその結果としての生成能力を調整、改善および予測することを可能にする。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、MEC中のメタン生成微生物は水素とCO2をメタンに変換する。単一のMECセルのメタンの生成速度は、メタン生成微生物に供給される水素とCO2の比率、および菌株/微生物に提供される物理化学的条件に依存する。
【0026】
理論的には、メタン生成微生物が4部の水素と1部のCO2を利用できるときに、それらによって実質的に最適なメタン生成が達成される。理想的な条件下では、これにより、本発明によるエダクトからメタンへの転化率が実質的に100%になる。転化率は、MEC内の物理化学的条件に依存する生体触媒の活性によって決定される。したがって、最適化された転化率を達成するために、菌株にとって実質的に最適な条件を保証することが主な目的である。
【0027】
本発明によれば、それら条件を制御する非常に効果的な方法の一つは、MEC内で生じる(例えば、生成される)水素の量、よって更なる反応に利用可能な水素の量を監視および測定することである。そのような測定は、上述したように、1または複数のMECのカソードコンパートメントにおける電流および/または電圧を測定することによって最も効果的に達成される。
【0028】
測定した電流および/または電圧に応じて、MECセルで生成される水素の理論量が計算され、それに対応する量のCO2が提供され、それにより、ほぼ実質的に最適な反応条件および転化率が達成される。
【0029】
菌株の物理化学的条件に影響を与える更なる要因は、カソライトのpH値および酸化還元電位である。本発明の方法によれば、それらの追加的な測定も、カソライト中の菌株の物理化学的条件を調節および改善するのに有用である。
【0030】
カソライトは、好ましくは6~9のpH値、特に7.5~8.5のpH値、特に約8のpH値を有するべきである。pH値がそれよりも高いまたは低いと、メタン生成の背後にある最適な成長と代謝機能が阻害される。このため、適切なバランスは、本方法の任意のpH測定によって補助される。pH測定システムは、市販のpHセンサであってもよい。
【0031】
カソライトなどの水溶液の酸化還元電位(ORP)は、溶液が電子を獲得または失う傾向を決定する。MECセルでは、アノードとカソードの間に電位差を与えるために電力が使用される。アノードでは、水が電気化学的にプロトン、電子、酸素に分解される。カソードでは、電子が還元力として使用され、例えばH2が電子キャリアとして、電子受容体、例えばCO2がCH4に還元される。ORP測定システムは、市販のORPセンサであってもよい。
【0032】
pH測定システムおよびORP測定システムは、カソライト回路上に配置される。これらの測定システムは、例えば脱ガス要素に包含させることができる。したがって、カソライトの測定は、カソライトが脱気された後に行われる。
【0033】
ORPを規定値、好ましくは約-100mV以下に維持することが、水素の最適な生成、ひいてはメタンの最適な生成に重要である。
【0034】
また、カソライトの温度を測定および調整することは、菌株の環境を改善して転化率を向上させるのに役立つ。MECセルのカソード側は熱を発生し、カソライトを温める。通常は、カソードコンパートメントから流出するカソライトは、MECセル内の微生物や後続のMECセル内の微生物にとって温度が高過ぎるため、CO2とH2を効率的にメタンに変換することができない。したがって、カソライト温度の上昇による悪影響により、MECスタックのサイズが否定的に制限される。
【0035】
上述したように、ステップa.で測定したすべての可能性のある物理化学的条件は、MECセルまたはMECスタック全体のメタン生成反応に単独および/または共同で影響を及ぼす。したがって、MECスタックで生成されるメタンを含むガスの量および質は、個々のMECセル内の条件およびカソライトの特性に少なくとも部分的に依存する。
【0036】
本発明に係る方法の次のステップは、ステップa)において評価した情報に基づいて、少なくとも1のガス入力点においての入力ガス量を決定することを含む。
【0037】
特に、入力ガス量は、MECスタックのMECセルで生成される水素の量に応じて、例えば、水素とCO2の比率が菌株に最適になるように、有利には調整されるべきである。
【0038】
システム、特にカソライトに入力ガスを供給することは、カソライトのpH値、ORPおよび温度に影響を与え、よってカソードコンパートメント内の菌株の物理化学的条件にも影響を与える。
【0039】
このため、ステップa)で収集した情報に基づいて、システムで好ましくは必要とされる入力ガスの全体量が決定され、システムのバランスをとるために必要な入力ガスの相対量が計算され得る。特に、どれくらいの量の入力ガスがシステムに供給されるべきか、任意選択的には、システムの1または複数のガス入口に供給されるべきかが決定される。
【0040】
したがって、本方法の次のステップは、決定した入力ガス量を、少なくとも1のガス入力点、任意選択的には少なくとも2以上のガス入力点を介して供給することを含み、それによってMECにおける効率的なメタン生成のための体積要件を調整する。さらに、いくつかの実施形態では、決定した入力ガス量の供給は、カソライトのpH値および/または温度および/または酸化電位の調整にも使用され、それによりメタン生成のための反応条件が改善される。
【0041】
少なくとも1または複数のガス入口に必要な入力ガスを決定して、少なくとも1または複数のガス入口から入力ガスを供給することは、特に有利であり、予期せぬ相乗効果をもたらすことが証明されている。
【0042】
例示的な目的のために、例えば2以上のガス入口で入力ガスを供給することを含む本発明の方法は、CH4の効率的な量をもたらし、また、必要な全体的エネルギー入力を実質的に低減し、特に水素の生成およびMECスタックの冷却を含む最適動作のために必要とされる電圧および/または電流を低減し、それでもなお、先行する公知のバイオ電気化学的メタン化設備と比較して、明らかに効率的なメタン生成をもたらすことができる。
【0043】
さらに、本明細書では「活性電極表面領域」または単に「活性領域」とも呼ばれる、MECセルの電極液体界面領域(面積)が増加することも利点である。入力ガスが広範囲に分布することにより、個々のMECセルは平均して入力ガスが少なくなり、それによりガス勾配が低くなると同時に、液相の量が多くなり、よって活性領域が増加する。
【0044】
活性領域を増加させることで、MECスタックのMECセルに予め規定された電流を流すのに必要なスタック電圧がより少なくなるか、または、予め規定された電圧でのMECスタックを介したH2生成量の増加とともに、より高い電流を達成することができる。このため、MECスタックの全体的なエネルギー消費は、効率を損なうことなく、大幅に削減される。
【0045】
この電力消費の改善は、MECスタックに2つのガス入口が存在することで既に達成することができ、MECスタックにより多くのガス入口、例えば各MECセルの前に1つのガス入口を追加すると増加する。よって、本方法によれば、メタン生成反応プロセスをより少ない電力で達成することができ、環境への影響を最小限に抑えることができる。このため、本方法により、より効率的なメタン生成とより少ない電力消費を達成することができ、より小型のMECセルを構築して使用することができる。
【0046】
入力ガスのために1または複数のガス入口、例えば2以上のガス入口を使用すると、入力ガスがカソライトに与える影響が分散されるという利点がある。例えば、CO2の局所的な導入によるカソライトのpHへの影響は、pH値の低下である。先行技術で行われているように、単一のガス入口から入力ガスを投入すると、カソライトでのバイオメタン化反応をサポートするために好ましくないpH値が確立される。そのため、そのようなガス入口の後に位置するMECセルは、物理化学的条件に乱れを生じ、それが転化率に悪影響を及ぼす。
【0047】
その代わりに、MECスタックの様々な位置にある複数のガス入口からガスを注入すると、ガスがより均一に分布し、カソライトのpHに対する入力ガスの局所的な影響が軽減される。その結果、菌株にとってより良い状態が形成され、それにより転化率が向上する。
【0048】
同様の概念は、当然のことながら、温度の調節にも当てはまる。供給ガス温度は通常、生物学的メタン化反応に最適な温度から外れている。(先行技術で行われているように)1つの入口から一度にガスを投入すると、カソライトの温度に勾配が生じ、最初のMECセル(例えば、より低温のカソライトを受け入れるセル)が非効率的な反応を示す。
【0049】
この場合も、複数の入口(例えば、少なくとも2の入口)から入力ガスを注入することで、より均一な温度分布が得られる。そのため、2以上の入口のうちの1つの直後にMECセルに循環するカソライトの温度は、先行技術よりも、最適条件からの逸脱が少なくなり、反応がより効率的になる。また、外部熱発生器および/または冷却要素の必要性も最小限に抑えられるため、製造コストを最小化すると同時に、環境に対してより肯定的な効果をもたらすことができる。
【0050】
pH値および温度の測定および影響に関して述べたのと同様の効率的な利点が、ORPでも生じる。増殖培地中の低い酸化還元電位(ORP)は、メタン生成にとって重要であると考えられている。このパラメータは、Na2Sなどの化学還元剤の添加によって制御することができる。CO2の量とそのpHへの影響により、Na2SがH2Sとして剥離しやすくなり、その結果、濃度が低下する可能性がある。この事実により、好ましくない条件までORPが上昇するであろう。培養条件は、酸化還元電位を約-100mV以下に適切に維持すべきである。
【0051】
菌株(例えば、メタン生成微生物)にとって実質的に最適な環境を作り出すことにより、メタン転化率がより高くなる。したがって、本方法によれば、より多くのメタンを生成することができ、その生成がより効率的となる。
【0052】
本方法で複数のガス入口を使用することの更なる利点は、そのような最適化法で使用できるMECセルのサイズが小さくなることである。
【0053】
先行技術では、入力ガスが、増殖培地とともに、MECスタック内で接続されたすべてのMECセルを通って流れる。これは、メタン化反応のためのすべてのMECセルの要求を満たすのに十分な入力ガスを最初のMECセルに供給する必要があることを意味する。このため、MECセルは必要以上に大きくなる。
【0054】
先行技術のMECセルのサイズにおける条件に関する実現可能な境界のために、適切な反応条件を損なうことなく、MECスタック全体の実質的に最適な反応のためのガス量を可能にする必要な量の入力ガスを供給することができない。これらすべてにより、MECスタック内のメタン生成反応に関する生成効率の低下が生じ、潜在的な能力を完全に使い切ることができない。
【0055】
バイオ電気化学的メタン生成プロセスにおけるガス勾配を調節する本発明および本方法により、そのような問題が克服され、最小限に抑えられる。特に、全体としてより多くの入力ガスをシステムに供給することが可能になり、その結果、メタン化プロセスに関与する反応がより効率的になり、メタンの生成速度が向上する。
【0056】
本方法の最後のステップは、MECスタックのMECセルの後に配置された少なくとも1の脱ガス要素を通してMECスタックを脱ガスすることを含む。このステップでは、少なくともMECスタックの最後のセルで、出力ガスの第1の部分である第1のガスが抜かれる。第1のガスは、例えばメタンであり得るが、これに限定されるものではない。また、個々のMECセルの反応中に生成される様々なプロセスガスの組合せとすることもできる。カソライトの脱ガスは、例えば、最後のMECセルの後に位置するカソライトリザーバで行うものであってもよい。
【0057】
本方法によれば、
図3にも見られるように、リソースがより効率的かつ実質的に完全に使用されるため、ガス生成(例えば、メタン生成)のエネルギー効率が向上する。これにより、本方法およびシステムは、リソースの有効利用を通じて生成コストを最小限に抑え、また、生成プロセスのより良い制御および調節を可能にすることにより、生成されたガス(例えば、メタン)の品質を向上させることができる。
【0058】
一実施形態によれば、ステップa)、すなわちカソライトの様々なパラメータの少なくとも1の測定は、上述したように、MECスタックの少なくとも2のMECセルにおける水素生成量を測定および/または計算することを含む。これは、例えば、それぞれのカソードコンパートメントにおける電流を測定することによって行うことができる。
【0059】
上述したように、生成される水素の量に関する知識は、理想的な反応効率を達成するためにカソライトに供給する必要がある入力ガス(例えば、CO2)の実質的に最適な量を決定するのに役立つ。測定は、例えば、最初と最後のMECセル、最初と中間のMECセル、または任意の2以上の異なるMECセルで行うことができる。さらに、電流に基づいて計算することもできる。
【0060】
また、すべてのMECセルの水素生成量の測定および/または計算は意図されており、本出願に包含される。前述したように、本発明によれば、よりエネルギー効率の高いプロセスが得られ、これは、MECセルでのより高い電流が可能になるか、またはスタック電圧を下げることができることを意味する。したがって、与えられた電気エネルギーの投入により、より多くの水素を製造することができる。このデータに基づくCO2の目標追加量により、より多くのメタンを生成することもできる。特に、電圧を介して電流を制御することで、MECセルおよび/またはMECスタックにおける水素生成を調整することができる。このため、生成される水素の量を設定することができ、本発明によれば、水素の量に基づいてCO2の目標追加を行うことができるため、MECスタックの効率を高めることができる。
【0061】
本方法の更なる実施形態によれば、ステップa)は、2以上のガス入力点の前および/または後に配置されたpH測定システムを通じてカソライトのpH値を追加的に測定することを含む。
【0062】
pH測定システムがガス入力点の前に配置されている場合、例えば必要な入力ガス量を決定するのに適している。測定システムは、例えば、カソライトリザーバ内に配置するか、ガス入口の直前のカソライト回路上に直接配置することができる。
【0063】
pH測定システムがガス入口の後にある場合、入力ガスがカソライトのpH値に与える影響を確認することも有用である。これは、別のガス入口から供給される入力ガス量を決定するために使用される可能性があり、かつ/またはpH測定システムの前にガス入口から供給される入力ガスの量が、実際に、カソライトのpH値に対して期待された影響を確実に与えるようにするための制御機構として機能する可能性がある。
【0064】
また、位置の組合せも本願に包含される。pH測定デバイスは、いくつかのガス入口の前、および/または他のガス入口の後に配置することができる。また、pH測定システムは、あるガス入口の前後、または各ガス入口の前後も想定される。
【0065】
このため、それらは、カソライトの物理化学的条件を制御および/または調節し、微生物または菌株の増殖条件を安定化および改善するための機構である。
【0066】
更なる実施形態によれば、本方法は、更なる脱ガス要素を用いてMECスタックをさらに脱気するステップを含む。更なる脱ガス要素は、例えば、MECのスタックの個々のMECセルでの生成直後に出力ガス(例えば、メタン)の脱ガス効果を有するように、いくつかのMECセルまたはすべてのMECセルの後に配置され得る。
【0067】
このようにして、生成ガスなどの一部のガスは、1または複数の位置でシステムから抽出される。MECスタックの複数の位置でガスを抽出することにより、それぞれのMECセルにおけるそれぞれのガスの必要貯蔵量の最小化が達成され、同時にそれぞれのMECにおける活性領域が増大する。
【0068】
例えば、生成されたメタンは、流体接続されたすべてのMECセルを通ってカソライトにより輸送される代わりに、各MECセルから脱気される。そのため、MECセルは、先行するMECセルによって生成されたメタンを保持するための追加の容積を必要としない。したがって、MECセルをより小さくすることができ、または、追加の容積を、例えば水素および/または二酸化炭素のメタンへの追加の変換のためにより効率的に使用することができる。これにより、生成効率が大幅に向上する。
【0069】
このため、菌株にとって実質的に最適な増殖および/またはメタン化条件を作り出すように、条件をさらに安定化させ、カソライトを調節するために、脱ガスを使用することができる。
【0070】
さらに、様々な位置でMECスタックを脱気することも、菌株のための物理化学的条件に影響を及ぼす。MECスタックを脱気することにより、pH値、温度および/またはORPが、ガスの排出を通じて影響を受け、その結果、菌株に対する条件の改善または最適化が達成され得る。
【0071】
したがって、ガス勾配を調節する本方法は、カソライトの物理化学的条件、ひいてはMECスタックの各MECセルにおけるメタン化反応の制御および調整を最大化する。このため、メタン生成効率に関連する微生物のための物理化学的条件における多くの自由度は、1または複数のガス入口および1または複数の脱ガス要素の存在によって影響を受ける。
【0072】
したがって、本方法およびその実施形態は、より効率的に、実質的に少ないエネルギーでメタンを生成する。
【0073】
本発明によれば、バイオ電気化学的メタン生成プロセスにおけるガス勾配の調節を達成することができるシステムも提供される。
【0074】
本発明の一態様によれば、バイオ電気化学的メタン生成プラントにおけるMECスタックが提供される。MECスタックは、少なくとも2のMECセルを備え、各MECセルが、カソードコンパートメントおよびアノードコンパートメントを備える。MECセルは並列または直列に流体接続され、MECスタックは、MECスタックの2以上のMECセルのカソードコンパートメントを接続する少なくとも1のカソライト回路を備える。本発明は、少なくとも1のカソライト回路内に2以上のガス入口が配置されていることを特徴とする。
【0075】
本出願によれば、バイオ電気化学的メタン生成プラントは、少なくとも1のMECスタックを使用してメタンを生成するプロセスが実施されるシステム、プラント、コンテナ、施設などである。
【0076】
前述したように、本発明に係るMECスタックは、流体接続された少なくとも2のMECセルを含む。各MECセルは、カソードコンパートメントおよびアノードコンパートメントを備える。MECセルは、互いに並列または直列に流体接続されている。
【0077】
本出願において、「MECの接続」について議論する場合、少なくとも1のカソライト回路を介した並列または直列の流体接続が意図される。本発明に係る2つのMECセル間の流体接続は、少なくとも1の流体(例えば、カソライトおよび/またはガス)が、接続されたMECセルを通過して到達することができるような接続である。流体の接続は、例えば導管を使用して達成することができる。
【0078】
MECスタック内のMECセルも電気的に接続されているが、本発明は、明示的に述べられていない限り、電気的接続には言及しない。
【0079】
本発明によれば、MECスタックは、MECセルが専ら並列または直列に接続されることに限定されるものではない。また、MECセルの少なくとも2のグループが直列に接続されたスタックや、少なくとも2のグループが互いに並列に接続されたスタックも想定される。
【0080】
本発明によれば、MECスタックは、MECスタックの2以上のMECセルのカソードコンパートメントを接続する少なくとも1のカソライト回路を備える。カソライト回路は、メタン生成微生物の維持と代謝活性に必要な増殖培地をカソライトを介して輸送する。カソライト回路は、カソライトと、例えばMECセルのカソードコンパートメントに供給される1または複数のガスとを含む。
【0081】
本発明によれば、MECスタックは少なくとも1のカソライト回路を含む。これは複数のカソライト回路、例えば、2、3、4、5、6、7またはそれ以上の回路を含むことができることを意味する。MECスタックのいくつかのMECセルは第1のカソライト回路によって流体接続され、MECスタックのいくつかのMECセルは第2のカソライト回路によって流体接続され得る。更なる実施形態によれば、第1および第2のカソライト回路も互いに流体接続され得る。
【0082】
いくつかの例によれば、各奇数「番号」(例えば、第1、第3、第5など)のMECセルは第1のカソライト回路によって接続され、すべての偶数番号(例えば、第2、第4、第6など)のMECセルは第2のカソライト回路によって接続され得る。本願では、他の組合せも考慮および想定される。
【0083】
本発明によれば、MECスタック内のMECセルは概念的に配置され、各MECスタックが、第1および最後のMECセル、並びに、任意選択的に第2、第3および第4のMECセルなどを含むようになっている。
【0084】
一実施形態によれば、MECスタックが、少なくとも1のカソライト回路内に配置された少なくとも2のガス入口を備える。本方法に関して上述したように、MECスタック内および/またはカソライト回路内の例えば2つの異なる位置で、システムに入力ガスを供給することが驚くほど有利であることが証明されている。
【0085】
入力ガスの体積を回路全体に分散させることにより、手元にあるMECセルのサイズおよび容積を効率的に使用し、個々のMECセルの活性領域を最大にし、それにより、電気化学的メタン化反応の効率を最大化する。
【0086】
様々なセルにおける入力ガスの量を最小限に抑えて、MECセルの活性領域を最大化することにより、同じ電圧でより高い電流が生成され、かつ/または同じ電流を流すのに必要な電圧が低くなり、その結果、MECスタックの全体的な電力消費が、最小限に抑えられて、理論的な計算と比較して大幅に低減される。
【0087】
更なる利点は、pH値、カソライトの酸化還元電位および/またはカソライトの温度に関してカソライトをより適切に調節でき、それによってMECセル内の菌株のための物理化学的条件をより適切に調節できることである。
【0088】
様々な位置からガスを供給することで、カソライトへの影響を分散させ、同時に単一のガス入力点付近でのばらつきを最小限に抑えることができる。菌株の条件が改善されることで、メタン生成微生物が(先行技術のように)単一の入口のみによるカソライトのpH値、温度および/またはORPのピーク上昇/下降に直面または妨害されることがなくなるため、MECセルにおけるメタン化反応の驚くほど高い効率が達成される。
【0089】
更なる実施形態によれば、本発明に係る少なくとも2のガス入口をカソライト回路内の任意の段階に配置することができるが、少なくとも1のガス入口が最初のMECセルの前に配置されると有利であることが証明されている。
【0090】
更なる実施形態によれば、2を超えるガス入口が使用される。そのような一実施形態によれば、ガス入口の少なくとも1つが、MECスタックの1または複数の個々のMECセルに配置される。更なる実施形態によれば、ガス入口が、例えば2つのMECセルごとに、それらの前に配置され得る。
【0091】
このようにして、例えば、2つの後続のMECセルにおける実質的な最適反応に必要な量の入力ガスが、2つのMECセルのうちの最初のMECセルの前でカソライトに挿入される。2番目のMECセルの後、入力ガスはメタン化プロセスに完全に使用される。これは、MECセルのスタックの後続の2つのMECセルごとに繰り返すことができる。
【0092】
このため、各MECセルの前にガス入口を設けることも想定される。そのような実施形態では、各MECセルの前にカソライトに挿入されるガスが、単一のMECセルの実質的に最適な要件に対応する。これは、メタンへの変換のために、入力ガスをカソライトに、ひいてはMECセルに供給する効率的な方法である。このようにして、入力ガスの変換が効率的に調節され、カソライトへの影響が考慮されて効率的に制御され、バイオ触媒(例えば、菌株)の最適化された増殖およびメタン化条件により、メタン生成が増加する。これらすべては、先行技術のMECスタックよりも少ないエネルギー入力で達成される。
【0093】
更なる実施形態によれば、MECスタックは、1または複数の個々のMECセルのカソードコンパートメント内に少なくとも1のガス入口を備える。いくつかの実施形態では、カソードコンパートメントごとに2以上のガス入口を備えることができる。
【0094】
この実施形態では、ガス入口がカソードコンパートメント内のカソライトに直接挿入される。そうすることで、カソライトの物理化学的条件に対する入力ガスの影響をより適切に制御することができるため、MECセルの効率をさらに調整することができる。
【0095】
更なる実施形態によれば、各ガス入口は、ガス源からのガス入力を選択的に調節するためのそれぞれの流量コントローラを備える。他の実施形態によれば、MECスタックにはいくつかの流量コントローラのみが配置される。
【0096】
流量制御は、例えばバルブなどである。流量制御は、上述した方法の測定から受信したデータ、またはMECスタックの様々な位置に配置されたセンサから直接受信したデータを評価し、各ガス入口を通過する入力ガスの量を調節するコンピュータ化された手段も包含することができる。
【0097】
本発明の更なる実施形態によれば、MECスタックが、MECスタックから少なくとも第1のガスを抽出するための少なくとも1の脱ガス要素を備え、少なくとも1の脱ガス要素のうちの少なくとも1つが、MECスタックの最後のMECセルの後に配置される。
【0098】
この脱ガス要素は、MECスタックから少なくとも第1のガスを抽出するために使用され、第1のガスは、触媒反応中にMECスタック内で生成される任意の生成ガス(例えば、メタンおよび/または水素)および/またはMECスタック内に既に存在する他の任意のガスであり得る。第1のガスの抽出後、カソライト回路を介してカソライトを再循環させることができる。
【0099】
MECスタックシステムにおいて少なくとも1の脱ガス要素を使用することは、MECスタックを効率的に管理および操作するための更なる方法である。少なくとも1の脱ガス要素、特に2または3以上の脱ガス要素を使用することにより、第1のガスを抽出すると同時に、新たな入力ガスのためのかつ/または追加の水素の変換およびより多くの水素生成のための容積空間をMECセル内に形成することができる。
【0100】
脱ガス要素はさらに、菌株のための物理化学的条件の調整システムとして使用される。脱ガスは、カソライトのpH値、温度、ORPに影響を与え、ひいては菌株の状態に影響を与える。MECスタックをより多くの位置でガスを抜くことで、それら物理化学的条件をより適切に調整することができ、その結果、より優れたより効率的なメタン生成を達成することができる。
【0101】
同様に、本方法に関して述べたように、複数のMECセル内の活性相が増加し、MECスタックの動作に必要なエネルギーが少なくなり、その結果、より環境に優しくなる。
【0102】
上述したように、更なる実施形態によれば、1または複数の脱ガス要素が、1または複数の他のMECセルの後に配置される。このようにして、本発明による第1のガスの一部と考えられる生成ガスおよび他のガスは、生成直後に抽出され、すべての異なるMECセルを通過して最後のMECセルで脱気される必要がなく、その結果、MECセルの活性表面も最大化することができる。したがって、効率的なメタン化反応および対応するメタン生成に必要なエネルギーがさらに少なくなる。
【0103】
更なる実施形態によれば、MECスタックは、pH測定システム、ORP測定システム、温度測定システム、および電流/電圧測定システムのなかから選択される少なくとも1のデバイスを備える。更なる実施形態によれば、pH測定システムおよび/またはORP測定システムおよび/または温度測定システムおよび/または電流測定システムが、少なくとも1のガス入口の前および/または後に配置される。
【0104】
方法に関して既に述べたように、MECスタックおよび各MECセルの反応効率は、上述した値のうちの1または複数の影響を受ける。ガス入口からのガス入力または脱ガス要素からのガス出力は、例えば、カソライトの温度および/またはpHの値および/またはORP値を低下または上昇させることにより、それらの値を不安定にする。
【0105】
したがって、それらの値を測定し、ガス入口からどれだけの量のガスを注入し、脱ガス要素からどれだけの量のガスを抽出すべきかを評価することができる測定システムが必要である。
【0106】
さらに、測定デバイスのいくつかは、カソライト回路上のガス入口の前に配置することができ、入力ガスが供給される前にカソライトの値を測定することができる。そうすることで、カソライトのそれらの値の調整を制御し、調節することができる。
【0107】
測定システムは、カソライト回路のガス入口の直後に配置することもできる。したがって、このシステムは、それらの値(例えば、pH、温度、ORP)が(1または複数のMECセルを通って流れる)カソライトに期待される効果を実際に与えているかを制御する制御機構として機能する。
【0108】
本発明によれば、上述した方法に沿って、複数のガス入口と少なくとも1の脱ガス要素を備えたMECが述べられている。
【0109】
2以上のガス入口を有するシステムと実質的に同じ利点と技術的効果を提供する更なる代替例は、1のガス入口と2以上の脱ガス要素を有するシステムである。
【0110】
このため、バイオ電気化学的メタン生成プラントのMECスタックが、少なくとも2のMECセルを含み、各MECセルが、カソードコンパートメントおよびアノードコンパートメントを含む。MECセルは、並列または直列に流体接続され、MECスタックは、MECスタックの2以上のMECセルのカソードコンパートメントを接続する、カソライトのための少なくとも1のカソライト回路を備える。
【0111】
MECスタックは、この実施形態では、MECスタックの最初のMECセルに配置された入力ガス用の1のガス入口を備え、MECスタックは、少なくとも1の第1のガスを抽出するための少なくとも2の脱ガス要素を備えることを特徴とする。少なくとも1の脱ガス要素は、MECスタックの最後のMECセルの後にも配置される。
【0112】
この実施形態では、入力ガスが最初のMECセルで供給される。MECスタック全体が必要とする全量の入力ガスは、最初のMECセルに配置された第1のガス入口から供給される。この実施形態のMECスタックは少なくとも2の脱ガス要素を含むため、1の脱ガス要素が、MECスタックの最後にガスを抽出するために最後のMECセルに配置されている。少なくとも1の他の脱ガス要素は、特にMECスタックに沿った任意の適切な位置、例えば初期または中間のMECセルに配置することができる。
【0113】
複数の脱ガス要素を有することにより、MECセルの活性表面を増加させることが可能であり、それにより、反応プロセスに必要な水素生成のための必要電圧を下げ、かつ/または電流を増加させることができ、その結果、MECスタックの電力消費を最小限に抑えることができる。
【0114】
さらに、2以上の脱ガス要素を介してMECスタックを異なる位置でガスを抜くことは、カソライト中のガス勾配を安定化させるという利点がある。脱ガスの調節は、上述したように、菌株にとって実質的に最適な物理化学的条件を作り出すのを助けることができる。
【0115】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1の脱ガス要素が、他のMECセルの1または複数の後に配置される。
【0116】
更なる発明のアイデアは、個々のMECスタックを、少なくとも2のMECセルをそれぞれ有する2以上のMECスタックを含むMECモジュールに拡張することである。MECスタックは、MECモジュール内で互いに流体的に接続され、それにより直列または並列の両方で流体的に接続することができる。
【0117】
このようにして、本発明のMECスタックの上述した特徴および利点により、大型プラントの生産量を増加させ、同時に効率を改善することができる。
【0118】
本発明によれば、単一のMECが、バイオ電気化学的メタン生成反応のための個別化可能なセルとしても提供される。MECセルは、MECスタックおよび対応するバイオ電気化学的メタン生成プラントのMECモデルでの使用に適している。
【0119】
本発明によれば、MECセルは入力ガス用の1のガス入口と2以上の脱ガス要素によって、代替的には入力ガス用の2以上のガス入口と1または複数の脱ガス要素によって特徴付けられる。したがって、MECスタックに関して上述したように、各MECセルも少なくとも2のガス入口を有することができる。いずれの選択肢も、カソライトに対する調節効果を有し、よってMECセル内のメタンの生成効率に直接的な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
次に、本方法およびシステムの具体的な実施形態を、以下の図面を通じて開示する。
【
図1】
図1aは、本発明の例示的な一実施形態に係る、2つのガス入口および1つの脱ガス要素を含む2つのMECセルを有する概略的なMECスタックを示している。
図1bは、本発明の例示的な一実施形態に係る、2つのガス入口および1つの脱ガス要素を含む2つのMECセルを有するMECスタックの代替的なよりコンパクトな実施形態の概略図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態に係る、1つのガス入口および2つの脱ガス要素を含む2つのMECセルを有する概略的なMECスタックを示している。
【
図3】
図3は、
図1aおよび
図1bの例における、ガス入口の数および位置に応じたメタン生成速度を示すグラフである。3つの実験すべてにおいて、同量の入力ガス(CO2供給)が使用されたが、この単純な実験は、1または複数のガス入口の位置の違いが、MECスタックのメタン生成速度に劇的な影響を与えることをすでに示している。
【
図4】
図4は、n個のMECセルを有する先行技術のMECスタックのカソードコンパートメントの例示的な概略構成を示している。ガス入口は最初のMECの前にあり、図示のように、この入口を介してガスの総量がMECスタック内に供給され、これにより、最初のMECにおいて(活性領域に対応する)液相の割合がかなり制限されるという上述した容積の問題が生じ、一方で、MECカソードコンパートメント容積の高い割合がエダクト(CO2、H2)および生成ガス(CH4)によって占められ、生成ガスの割合がセル数の増加とともに増加する。
【
図5】
図5は、本発明の例示的な一実施形態に係る、各MECセルの前のガス入口および最後のMECセルの1つの脱ガス要素を含むn個のMECセルカソードコンパートメントを有するMECスタックの例示的な概略構成を示している。
【
図6】
図6は、本発明の例示的な一実施形態に係る、各MECセルの前のガス入口および各MECセルの後の1つの脱ガス要素を含むn個のMECセルカソードコンパートメントを有するMECスタックの例示的な概略構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0121】
図1aおよび
図1bに示すように、MECスタック1のこの例示的な実施形態は、2つのMECセル10a、10bを含む。各MECセル10a、10bは、カソード12a、12bおよびアノード14a、14bを備える。
図1aおよび
図1bの左側部分は、MECスタックのアノード側を示すが、その詳細な説明は省略することとする。MECスタック1のカソード側は、2つのMECセル10a、10bを流体接続するカソライト回路18を備える。
【0122】
図1aおよび
図1bのMECスタック1は、2つのガス入口22a、22bを備え、それぞれのガス源20a、20bが、カソライトに入力ガスを供給するために使用される。ガス源20a、20bは、この例では二酸化炭素CO2を含むが、これに限定されるものではない。図示のように、2つのガス入口は、各MECセル10a、10bの前にそれぞれ配置されている。
【0123】
カソライト回路18上であって、第2のMECセル10bの後には、カソライト回路18のカソライトを脱気するために脱ガス要素30が配置されている。さらに、pH測定システム32およびORP測定システム34が、カソライト回路18上に配置されている。それら測定システムは、この例では脱ガス要素30に包含されている。したがって、カソライト上の測定は、カソライトが脱気された後に行われる。
【0124】
図2に示すように、MECスタック1のこの例示的な実施形態は、2つのMECセル10a、10bを備える。各MECセル10a、10bは、カソード12a、12bおよびアノード14a、14bを備える。
図2の左側部分は、MECスタックのアノード側を示しているが、ここでは説明を省略する。
【0125】
MECスタック1のカソード側は、2つのMECセル10a、10bを流体接続するカソライト回路18を含む。
図2のMECスタックは、それぞれのガス源20aを有する1つのガス入口22aを含む。この例では、ガス源20aが二酸化炭素である。この実施形態によれば、MECスタック1が、ともにカソライト回路18上に配置された2つの脱ガス要素30a、30bを備える。第1の脱ガス要素30aは、第1のMECセル10aの後に配置され、第2の脱ガス要素30bは、第2の(または最後の)MECセル10bの後に配置されている。
【0126】
さらに、カソライト回路18上には、pH測定システム32およびORP測定システム34が配置されている。それら測定システムは、この例では脱ガス要素30bに包含されている。このため、カソライト上の測定は、カソライトが脱気された後に行われる。
【0127】
図3は、2つの異なるCO2供給構成を有する
図1aのシステムのメタン転化率を示している。
【0128】
最初の棒は、
図1aのガス入口22aが1つだけの場合のメタン転化率を示しており、これは先行技術を表している。2番目の棒は、
図1の本発明の例示的な実施形態に係る、2つのガス入口22a、22bを有する場合のメタン転化率を示している。グラフから分かるように、MECスタック1に2つのガス入口22a、22bを配置した場合に、メタン転化率が最も高くなる。前述したように、これは、分散した的を絞った入力ガス供給により、菌株にとって物理化学的条件がより良好になるためである。
【0129】
図4は、先行技術のMECスタックのMECセル内のガスおよびカソライト(液相)の分布を示している。この図から分かるように、入力ガス(この例ではCO2)は、最初のMECセルの前にある単一のガス入口22a点から供給されている。最初のMECセルはさらに、限られた体積の液相を有し、電気分解によって生成された水素も示している。最初のMECセルでは、CO2の一部がメタン(CH4)に変換され、メタンおよび残りのCO2が、カソライト回路内のカソライトによって2番目のMECセルのカソライトコンパートメント12bに移動する。
【0130】
2番目のMECセルではさらに反応が起こり、さらにメタンが生成されて、残りのCO2とともに3番目のMECセルのカソライトコンパートメント12cに送られる。このプロセスは最後のMECセルのカソライトコンパートメント12nまで続き、このコンパートメントでは、ガスのほとんどが生成されたメタンとなり、最後のMECセルのカソライトコンパートメント12bでメタンを生成するための少なくとももう1回の反応に十分なCO2が存在する。その後、生成されたメタン97は、脱ガス要素30aを介して最後のMECセルの後に脱気される。残りのカソライトは、その後、回路を通って最初のMECセルに送り戻され、そこで再び入力ガスで富化される。
【0131】
見て分かるように、先行技術のこのシステムでは、MECセルは大量の入力ガス(例えば、CO2)に直面し、生成されたメタンと残りのCO2の両方がすべてのMECセルを通って移動するために、かなりのエネルギーと効率が無駄にされる。
【0132】
この図面の液相は、それぞれのMECセルの活性領域を示している。
【0133】
図5は、各MECセルの前にそれぞれのガス入口が配置されている、本発明の例示的な一実施形態に係るMECスタックのMECセル内のガスおよび物質の分布を示している。MECセルのカソライトコンパートメント12a~12nはカソライト回路18によって接続されているが、ここでは、各MECセルの前に、それぞれのMECセルのカソライトコンパートメント12a~12nの前にガス入口22a~22nが配置されている。最初のMECセル内の分布から分かるように、平均液相は
図4の例よりもかなり大きい。したがって、
図5のMECセル内の活性領域が増加し、より少ない電力消費でより効率的な反応を実現することができる。
【0134】
ガス入口22aを介して、MECセルのカソライトコンパートメント12aのメタン化プロセスに必要な量のCO2がMECセルのカソライトコンパートメント12aに供給される。ガス入口22bを介して、MECセルのカソライトコンパートメント12bのメタン化プロセスに必要な量のCO2がMECセルのカソライトコンパートメント12bに供給される。残りのMECセルについても同様である。このため、2番目のMECセル内のメタン部分は、
図4の2番目のMECセル内のメタン部分よりも大きくなる。
【0135】
図5では、MECセル内の液相がMECセル間で減少している。最後のMECセルのカソライトコンパートメント12nは、12a~12n-1の前のMECセルのカソライトコンパートメントで生成されたメタンの完全な量98、MECセルのカソライトコンパートメント12nの最後の反応に必要な入力二酸化炭素、およびMECスタック内のすべてのMECセルの中で最も少ない液相の量を有する。この実施形態では、全体的に液相が増加し、よって活性領域が大きくなるため、エネルギー消費が、
図4に係る例と比較して最小限に抑えられる。このため、MECスタック全体がより効率的になる。
【0136】
図6は、本発明に係る例示的なMECスタックの更なる発展例を示している。
図6のMECスタックは、個々のMECセルの前の複数のガス入口に加えて、個々のMECセルの後の複数の脱ガス要素を含む点を除いて、
図5のものと同様である。このようにして、図から読み取れるように、液相は各MECセルのカソライトコンパートメント内で高いレベルでほぼ一定であるため、活性領域が絶えず増加する。この例では、電力消費が
図5のMECスタックより少なく、メタン生成99a~99nは依然としてより効率的である。
【0137】
驚くべきことに、MECスタック全体のエネルギー消費量が、個々のMECセルすべてのエネルギー消費量の合計よりも少なくても、より効率的なメタン化率と単位エネルギー当たりの高いメタン生成量を維持できることが判明している。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ電気化学的メタン生成プラントで使用するための微生物電解セル(MEC)であって、
入力ガス用の1つのガス入口と2以上の脱ガス要素とを備えるか、または入力ガス用の2以上のガス入口と1または複数の脱ガス要素とを備えることを特徴とするMECセル。
【請求項2】
バイオ電気化学的メタン生成プラント内のMECスタック(1)であって、
請求項1に記載のMECセル(10a、10b)を
少なくとも2つ含み、
各MECセル(10a、10b)が、カソードコンパートメント(12a、12b)とアノードコンパートメント(14a、14b)とを備え、
前記MECセル(10a、10b)が並列または直列に流体接続され、
当該MECスタックが、当該MECスタックの2以上のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)を接続する、少なくとも1のカソライト回路(18)を備え、
2以上のガス入口(22a、22b)が、前記少なくとも1のカソライト回路(18)内に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項3】
請求項
2に記載のMECスタック(1)において、
当該MECスタック(1)の1または複数の個々のMECセル(10a、10b)に少なくとも1のガス入口(22a、22b)を備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項4】
請求項
3に記載のMECスタック(1)において、
1または複数の個々のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)内に少なくとも1のガス入口(22a、22b)を備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項5】
請求項
2~
4の何れか一項に記載のMECスタック(1)において、
各ガス入口(22a、22b)が、ガス源(20a、20b)からのガス入力を選択的に調整するためのそれぞれの流量コントローラを備えることを特徴とするMECスタック。
【請求項6】
請求項
2~
5の何れか一項に記載のMECスタックにおいて、
当該MECスタック(1)が、当該MECスタック(1)から少なくとも第1のガス/プロセスガスの1つを抽出するための少なくとも1の脱ガス要素(30)を備え、前記脱ガス要素(30)の1つが、当該MECスタックの最後のMECセルの後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項7】
請求項
6に記載のMECスタックにおいて、
1または複数の脱ガス要素が、他のMECセルの1または複数の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項8】
請求項
2~
5の何れか一項に記載のMECスタック(1)において、
pH測定システム(32)、ORP測定システム(34)、温度測定システム、体積測定システム、電流測定システムのなかから選択される少なくとも1のデバイスを含むことを特徴とするMECスタック。
【請求項9】
請求項
8に記載のMECスタック(1)において、
pH測定システムおよび/またはORP測定システムおよび/または温度測定システムおよび/または体積測定システムおよび/または電流測定システムが、少なくとも1のガス入口(22a、22b)の前および/または後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項10】
バイオ電気化学的メタン生成プラントのMECスタック(1)であって、
請求項1に記載のMECセル(10a、10b)を
少なくとも2つ含み、
各MECセル(10a、10b)が、カソードコンパートメント(12a、12b)およびアノードコンパートメント(14a、14b)を備え、
前記MECセル(10a、10b)が、並列または直列に流体接続され、
当該MECスタックが、当該MECスタックの2以上のMECセル(10a、10b)のカソードコンパートメント(12a、12b)を接続する、カソライトのための少なくとも1のカソライト回路(18)を備え、
当該MECスタック(1)が、当該MECスタックの最初のMECセル(10a)に配置された入力ガス用の1つのガス入口(22a)を備え、
当該MECスタック(1)が、少なくとも1の出力ガスを抽出するための少なくとも2の脱ガス要素(30a、30b)を備え、前記脱ガス要素(30a、30b)の1つが、当該MECスタック(1)の最後のMECセル(10b)の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項11】
請求項
10に記載のMECスタック(1)において、
少なくとも1の脱ガス要素(30a、30b)が、他のMECセルの1または複数の後に配置されていることを特徴とするMECスタック。
【請求項12】
請求項
2~
11の何れか一項に記載の2以上のMECスタック(10a、10b)を含むMECモジュール(100)であって、
前記2以上のMECスタック(10a、10b)が、前記カソライト回路(18)を介して流体接続されていることを特徴とするMECモジュール。
【請求項13】
少なくとも2のMECセルを含む微生物電解セル(MEC)スタックにおけるバイオ電気化学的メタン生成プロセスのガス勾配を調整する方法であって、
a.カソードコンパートメントにおいて、前記MECおよび/またはMECスタックのスタック電流および/または電圧を測定するステップと、
b.ステップa)で評価した情報に基づいて、少なくとも1のガス入力点の入力ガス量を決定するステップと、
c.少なくとも1のガス入力点を介して決定した入力ガス量を供給し、それによりシステムにおける効率的なメタン生成のための体積要件を調整するステップと、
d.前記MECスタックのMECセルの後に配置された1または複数の脱ガス要素を介して、前記MECスタックを脱気するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
ステップa)において、さらに、
(i)カソライト回路内のカソライトのpH値、
(ii)カソライトの酸化還元電位、
(iii)カソライトの温度、
のうちの少なくとも1つを測定し、それにより、ステップc)において、カソライトのpH値および/または温度および/または酸化電位を調整することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
ステップa)が、2以上のガス入力点の前および/または後に配置されたpH測定システムを介して、カソライトのpH値を測定することを含むことを特徴とする方法。
【国際調査報告】