(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ブレーキシステム、鉄道車両を減速させるコンピュータ実装方法、コンピュータプログラム、および不揮発性データキャリア
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20240227BHJP
B61H 13/00 20060101ALI20240227BHJP
B60T 8/58 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B61H13/00
B60T8/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557102
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2021081228
(87)【国際公開番号】W WO2022194405
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351900
【氏名又は名称】デルナー ブベンツァー アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリム、ヴィクトル
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA17
3D246BA02
3D246BA03
3D246BA05
3D246CA05
3D246DA01
3D246DA02
3D246GA23
3D246GB11
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA67A
3D246HA93A
3D246JA03
3D246JA14
3D246JB47
3D246LA03Z
3D246LA16Z
3D246LA51Z
3D246LA56Z
3D246LA73Z
(57)【要約】
鉄道車両は、少なくとも2つの車両(111、112、11n)と、少なくとも1つが各車両内に配置された制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)を備えたブレーキシステムとを有する。各制御ユニットは、ブレーキ入力信号(B)を受信し、それに応じて、制御信号(c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3、cn4)を生成する。制御信号が、車両(111、112、11n)のそれぞれの移動量を表す少なくとも1つの運動パラメータにさらに基づいて生成される。少なくとも1つのブレーキアクチュエータ(1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2a、13n2b)が各車両内に配置される。各ブレーキアクチュエータは、ブレーキアクチュエータが位置している車両と同じ車両内の制御ユニットにより生成される制御信号を受信し、それに基づいて、ブレーキユニット(141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4)に対するブレーキ力信号(f11、f12、f13、f14、f21、f22、f23、f24、fn1、fn2、fn3、fn4)を生成する。それに応じて、各ブレーキユニットは、回転可能な部材に対してブレーキ力を押圧部材に加えさせて、鉄道車両内の車両の少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの車両(111、112、11n)を備える鉄道車両用のブレーキシステムであって、前記ブレーキシステムが、
いくつかの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)であって、少なくとも1つが前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)の各1つに配置されており、少なくとも2つの前記制御ユニットそれぞれは、ブレーキ入力信号(B)を受信し、それに応じて制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成するように構成されているいくつかの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)、
前記少なくとも2つの車両それぞれにおいて配置されたいくつかのブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)であって、前記ブレーキアクチュエータそれぞれは、前記ブレーキアクチュエータと同じ前記車両内に備えられた少なくとも1つの前記制御ユニットの1つにより生成された前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を受信し、前記制御信号に基づいてブレーキ力信号(f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3、f
n4)を生成するように構成されている、いくつかのブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)、ならびに
押圧部材と、前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)の1つの少なくとも1つの車輪に機械的に連結された回転可能な部材とをそれぞれが備えている、いくつかのブレーキユニット(141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4)であって、前記ブレーキユニットそれぞれは、前記ブレーキユニットと同じ車両内に備えられた前記ブレーキアクチュエータにより生成された前記ブレーキ力信号(f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3、f
n4)を受信し、前記ブレーキ力信号に応じて、前記回転可能な部材に対するブレーキ力を前記押圧部材に加えさせて、前記少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させるように構成されている、いくつかのブレーキユニット(141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4)、
を備えており、
前記少なくとも1つの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)は、前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれの、それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表す少なくとも1つの運動パラメータ(a
X、a
Y、a
Z、a
R、a
P、a
W;ω)にさらに基づいて前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成するように構成されている、ブレーキシステム。
【請求項2】
前記鉄道車両は、前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれに対して前記ブレーキ入力信号(B)を供給するように構成された第1の通信バス(151)を備える、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれは、少なくとも1つの加速度計(211)であって、前記少なくとも1つの加速度計(211)が備えられた前記車両の少なくとも1つの次元における加速度(a
X、a
Y、a
Z、a
R、a
P、a
W)を表す少なくとも1つのベクトル信号を生成するように構成された少なくとも1つの加速度計(211)を備えており、前記少なくとも1つのベクトル信号は前記車両の前記それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表しており、
前記少なくとも1つの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)は、前記少なくとも1つのベクトル信号を受信し、それに基づいて前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成するように構成されている、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれは、少なくとも1つの回転速度センサ(212)であって、前記少なくとも1つの回転速度センサ(212)が備えられた前記車両の車輪(221)のそれぞれの速度(ω)を表す少なくとも1つの速度信号(s
ω)を生成するように構成された少なくとも1つの回転速度センサ(212)を備えており、前記少なくとも1つの速度信号(s
ω)は前記車両の前記移動量(m
1、m
2、m
n)を表しており、
前記車両内の前記少なくとも1つの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)は、前記少なくとも1つの速度信号(s
ω)を受信し、それに基づいて前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれは、
前記鉄道車両内に備えられた他の車両それぞれの前記それぞれの移動量(m
2、m
n)を表す前記少なくとも1つの運動パラメータの少なくとも1つを受け取り、
受け取られた少なくとも1つの運動パラメータと、それぞれの1つの前記制御ユニット(121-1)が備えられた前記車両の前記移動量(m
1)を表す自身の運動パラメータとに基づいて平均運動パラメータ(m
avg)を判定し、
前記平均運動パラメータ(m
avg)により表されるものよりも大きい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合に、増加されたブレーキ力を少なくとも1つの前記押圧部材に加えさせる、少なくとも1つの前記ブレーキユニット(141-1;141-2)に対するそれぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記それぞれの1つの制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を生成する、
ように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれは、前記平均運動パラメータ(m
avg)により表されるものよりも小さい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、減少されたブレーキ力を前記少なくとも1つの押圧部材に加えさせる、前記少なくとも1つのブレーキユニット(141-1;141-2)に対するそれぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記それぞれの1つの制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を生成するように構成されている、請求項5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれは、前記平均運動パラメータ(m
avg)により表されるものと等しい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合に、維持されたブレーキ力を前記少なくとも1つの押圧部材に加えさせる、前記少なくとも1つのブレーキユニット(141-1;141-2)に対するブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記それぞれの1つの制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を生成するように構成されている、請求項5または6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記鉄道車両は、前記鉄道車両内に備えられた前記車両(111、112、11n)の前記それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表す前記運動パラメータを前記車両(111、112、11n)の間で交換するように構成されている第2の通信バス(152)を備える、請求項3~7のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記鉄道車両内に備えられた前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれは、少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニット(161、162および16n)であって、前記少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニットと同じ車両内に備えられている、前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)、および前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)へ電気エネルギを供給するように構成されている少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニット(161、162、16n)を備えている、請求項1~8のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記鉄道車両内に備えられた前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれは、前記鉄道車両の運転中に前記少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニット(161、162、16n)を充電するように構成されている少なくとも1つのバッテリ充電器を備える、請求項9に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
前記ブレーキ入力信号(B)は、常用ブレーキ指令、非常ブレーキ指令、および駐車ブレーキ指令の少なくとも1つに応じて生成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)の1つが回転速度(ω)を減少させるように構成されている前記少なくとも1つの車輪(221)それぞれは、前記少なくとも1つの車輪(221)の空転の度合いを反映する空転信号(s
11)を生成するように構成されている測定モジュール(214)によりその回転が監視される車輪(221)であり、
前記ブレーキアクチュエータ(131
1a)それぞれは、前記空転信号(s
11)を受信するように構成され、空転の前記度合いが閾値を超えた場合、前記ブレーキアクチュエータ(131
1a)は、前記回転可能な部材に対するブレーキ力を前記ブレーキユニット(141-1)が前記押圧部材に加えさせるように前記ブレーキ力信号(f
11)を生成するように構成され、前記ブレーキ力は、受信された前記制御信号(c
11)により指定されるブレーキ力よりも低い、請求項1~11のいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)、少なくとも1つのブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)、および少なくとも1つのブレーキユニット(141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4)をそれぞれが備える少なくとも2つの車両(111、112、11n)を備える鉄道車両を減速させるコンピュータ実装方法であって、前記方法が、
前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいてブレーキ入力信号(B)を受信することと、
前記ブレーキ入力信号(B)に応じて、それぞれの制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を、前記制御ユニットそれぞれにおいて生成することと、
前記制御信号を生成した前記制御ユニットと同じ車両内に備えられたブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)の1つにおいて前記それぞれの制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)それぞれを受信することと、
前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)に基づいて、それぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3、f
n4)を前記ブレーキアクチュエータそれぞれにおいて生成することと、
前記ブレーキ力信号を生成した前記ブレーキアクチュエータと同じ車両内に備えられていて、押圧部材と、前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)の少なくとも1つの車輪に機械的に連結された回転可能な部材とをそれぞれが備えているブレーキユニット(141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4)の1つにおいて、前記それぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3、f
n4)それぞれを受信することと、および
前記ブレーキ力信号に応じて、各ブレーキユニット内で、前記回転可能な部材に対するブレーキ力を前記押圧部材に加えさせて、前記少なくとも1つの前記車両(111、112、11n)の前記少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させることと、
を含んでおり、
前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれの、それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表す少なくとも1つの運動パラメータ(a
X、a
Y、a
Z、a
R、a
P、a
W;ω)にさらに基づいて、前記それぞれの制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を前記制御ユニットそれぞれにおいて生成すること
を含む、方法。
【請求項14】
前記鉄道車両内に備えられた第1の通信バス(151)を介して前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれに対して前記ブレーキ入力信号(B)を供給することを含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの次元における前記車両の加速度(a
X、a
Y、a
Z、a
R、a
P、a
W)を表す少なくとも1つのベクトル信号であって、前記少なくとも1つのベクトル信号が少なくとも1つの加速度計(211)により生成され、前記少なくとも1つのベクトル信号が前記車両の前記それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表す少なくとも1つのベクトル信号を、前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれにおいて生成することと、および
前記少なくとも1つのベクトル信号に基づいて前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成することと、
を含んでいる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つの車両(111、112、11n)それぞれにおいて、前記車両の車輪(221)のそれぞれの速度(ω)を表す少なくとも1つの速度信号(s
ω)であって、前記少なくとも1つの速度信号(s
ω)が少なくとも1つの回転速度センサ(212)により生成され、および前記少なくとも1つの速度信号(s
ω)が前記車両の前記移動量(m
1、m
2、m
n)を表している少なくとも1つの速度信号(s
ω)を生成することと、
前記少なくとも1つの速度信号(s
ω)に基づいて前記制御信号(c
11、c
12、c
13、c
14、c
21、c
22、c
23、c
24、c
n1、c
n2、c
n3、c
n4)を生成することと、
を含んでいる、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記鉄道車両内に備えられた他の車両それぞれの前記それぞれの移動量(m
2、m
n)を表す前記少なくとも1つの運動パラメータの少なくとも1つを、前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいて受け取ることと、
受け取られた前記少なくとも1つの運動パラメータと、それぞれの1つの前記制御ユニット(121-1)が備えられた前記車両の前記移動量(m
1)を表す自身の運動パラメータとに基づいて平均運動パラメータ(m
avg)を前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいて判定することと、および
前記平均運動パラメータ(m
avg)よりも大きい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合に、増加されたブレーキ力を少なくとも1つの前記押圧部材に加えさせる、前記少なくとも1つのブレーキユニット(141-1;141-2)に対する前記それぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を前記複数の制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいて生成することと、
をさらに含んでいる、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記平均運動パラメータ(m
avg)よりも大きい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合には増加されたブレーキ力を、前記平均運動パラメータ(m
avg)よりも小さい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合には減少されたブレーキ力を、前記少なくとも1つの押圧部材に加えさせる前記少なくとも1つのブレーキユニット(141-1;141-2)に対するそれぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいて生成すること、をさらに含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記平均運動パラメータ(m
avg)よりも大きい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合には増加されたブレーキ力を、前記平均運動パラメータ(m
avg)に等しい大きさを前記車両(111)の前記移動量(m
1)が有することを前記自身の運動パラメータが表す場合には維持されたブレーキ力を、前記少なくとも1つの押圧部材に加えさせる前記少なくとも1つのブレーキユニット(141-1;141-2)に対するそれぞれのブレーキ力信号(f
11、f
12)を、前記制御ユニット(121-1)により制御される前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b)に生成させるように前記制御信号(c
11、c
12)を前記制御ユニット(121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2)それぞれにおいて生成すること、をさらに含んでいる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記鉄道車両内に備えられた第2の通信バス(152)を介して、前記鉄道車両内に備えられた前記車両(111、112、11n)の前記それぞれの移動量(m
1、m
2、m
n)を表す前記運動パラメータを前記車両(111、112、11n)間で交換することを含んでいる、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
常用ブレーキ指令、非常ブレーキ指令、および駐車ブレーキ指令の少なくとも1つに応じて前記ブレーキ入力信号(B)を生成することを含んでいる、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ブレーキアクチュエータ(131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2a、13n
2b)の1つが回転速度(ω)を減少させるように構成されている前記少なくとも1つの車輪(221)それぞれの空転の度合いを反映する空転信号(s
11)であって、前記少なくとも1つの車輪(221)の回転を監視するように構成された測定モジュール(214)により生成される空転信号(s
11)を生成することと、その空転の度合いが閾値を超えた場合、
受信された前記制御信号(c
11)により指定されるブレーキ力よりも低い、前記回転可能な部材に対するブレーキ力を、前記ブレーキユニット(141-1)が前記押圧部材に加えさせるように前記ブレーキ力信号(f
11)を前記ブレーキアクチュエータ(131
1a)内で生成することと、
を含んでいる、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのプロセッサ(315;415)に、通信可能に接続された不揮発性データキャリア(316;416)にロード可能なコンピュータプログラム(317;417)であって、前記少なくとも1つのプロセッサ(315;415)上で前記コンピュータプログラム(317;417)が実行されるときに請求項13~22のいずれか1項に記載の方法を実行するためのソフトウェアを備える、コンピュータプログラム(317;417)。
【請求項24】
請求項23のコンピュータプログラム(317;417)を含んでいる不揮発性データキャリア(316;416)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、鉄道車両の減速制御に関する。特に、本発明は、2つ以上の車両を含む鉄道車両用のブレーキシステムと、そうした鉄道車両を減速させるコンピュータ実装方法とに関する。本発明は、コンピュータプログラムと、そうしたコンピュータプログラムを記憶する不揮発性データキャリアとにも関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両のブレーキが、鉄道車両の減速を制御し、および駐車ブレーキ機能を実現するために使用される。通常、同じブレーキが、常用ブレーキおよび非常ブレーキいずれにも使用される。従来の鉄道車両ブレーキは、荷重入力、すなわち、各車両の重量を反映するデータに依存する。今日の鉄道車両は多くの場合、空気圧で調整されるブレーキとして知られている、圧縮空気を使用して調整される。そうした空気ブレーキの欠点の1つは、それらがすばやく調整されることが可能でないということである。遅い調整のために、システムは、鉄道車両の個々の台車にかかる荷重を反映する総重量を知ることに依存する。ブレーキ力は、荷重とのからみで加えられ、とりわけ、種々の空転防止、および車輪ロック防止機構への重要な入力を表す。しかしながら、一般に、より大きい荷重は、より高いブレーキ力につながる。
【0003】
特許文献1は、列車車両車輪ブレーキシステムにフィードバック機構を組み入れて、加えられたブレーキ力を調整するための装置および方法を開示している。フィードバック機構は、差し迫った車輪の空転または滑走を検出するのに十分な情報を電子制御された空気ブレーキシステムに提供する。車輪の空転/滑走情報に応じて、ブレーキ制御プロセッサは、ブレーキシステムが、列車車両車輪システム、または車両車輪が走行するレールを損傷することなく、ブレーキ力を加えることを可能にするように、列車車両車輪システムに加えられたブレーキ力を調整する。
【0004】
特許文献2は、車両を制動するためのブレーキ装置が、車両の輪軸に回転可能に固定連結されたブレーキ面と、ブレーキ面に対して、ブレーキ力により、押し付けられ得るブレーキライニングと、ブレーキ力を発生させるために制御ユニットに結合された作動要素とを有していることを開示している。制御ユニットは、車両の速度を測定するための速度センサに接続されており、および、速度に依存してブレーキ力を調整するように設定される。ブレーキ装置は、ブレーキ面に導入される、できるだけ高いブレーキ力を有する。制御ユニットは、各ケースにおける現在の速度への、ブレーキ力の連続的な適合を可能にするように、連続的な圧力調整のための装置を介して作動要素に結合される。ブレーキ力は有利には、車両の速度に反比例して調整される。
【0005】
特許文献3は、マイクロコンピュータ制御の電気機械ブレーキシステムが電気機械ブレーキ制御装置および電気機械ブレーキユニットを備えていることを開示している。電気機械ブレーキ制御装置は、ブレーキマイクロコンピュータ制御ユニット、電気機械制御ユニット、および予備電源モジュールを備えている。ブレーキマイクロコンピュータ制御ユニットは、運転士または自動運転システムにより、送出されたブレーキ指令信号を受信し、目標ブレーキ力の算出と、ブレーキ管理とを行い、同時に、列車群内の他の車両のブレーキマイクロコンピュータ制御ユニットと通信し得る。
【0006】
よって、たとえば車輪空転を回避することを目的として、制動中に、連続して適合されたブレーキ力を発生させるための解決策が知られている。従来技術には、列車車両の異なる車両内の制御ユニットが互いに通信してブレーキ性能を向上させるブレーキシステムの実施例も含まれている。知られている解決策に共通なのは、それらがすべて、ブレーキ操作を制御するために荷重情報に依存しているということである。これは、何らかのかたちで、各車両の重量が、異なるブレーキがどのようにしてかけられるかの基礎を形成することを意味する。しかし、荷重情報は、信頼できないパラメータである。というのは、不完全な尺度が不正確な測定値をもたらし、および台車の荷重は、乗客が車両間を歩行し得るため、走行中に変動し得るからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0088673号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0078991号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0198605号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決し、および、荷重情報を考慮することなく、鉄道車両の効率的で、安全、且つ信頼できる制動を可能にする解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、上記目的は、少なくとも2つの車両を有する鉄道車両用のブレーキシステムであって、いくつかの制御ユニットと、いくつかのブレーキアクチュエータと、いくつかのブレーキユニットとを含んでいる、ブレーキシステムにより、達成される。少なくとも1つの制御ユニットは、車両の各1つに配置されている。制御ユニットのそれぞれは、ブレーキ入力信号を受信し、それに応じて、それぞれの制御信号を生成するように構成される。ブレーキ入力信号はたとえば、操作者により発せられる常用ブレーキ指令、手動で、もしくは自動的に発せられる非常ブレーキ指令、または、手動で、もしくは自動的に発せられる駐車ブレーキ指令に応じて生成され得る。さらに、少なくとも1つのブレーキアクチュエータが各車両内に配置されており、各ブレーキアクチュエータは、当該ブレーキアクチュエータと同じ車両内の制御ユニットにより生成される制御信号を受信するように構成される。受信された制御信号に基づいて、ブレーキアクチュエータは、ブレーキ力信号を生成するように構成される。各ブレーキユニットは、押圧部材と、車両の1つの少なくとも1つの車輪に機械的に連結された回転可能な部材とを含んでいる。各ブレーキユニットは、当該ブレーキユニットと同じ車両内のブレーキアクチュエータにより生成されるブレーキ力信号を受信するように構成される。ブレーキ力信号に応じて、ブレーキユニットは、回転可能な部材に対するブレーキ力を押圧部材に加えさせて、少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させるように構成される。さらに、ブレーキ入力信号に加えて、各制御ユニットは、車両それぞれの、それぞれの移動量を表す少なくとも1つの運動パラメータに基づいて制御信号を生成するように構成される。
【0010】
上記ブレーキシステムは、各車両内のブレーキの高速且つ個々に適合された制御を可能にするので、有利である。このことは、鉄道車両内のジャーク(jerk)の度合いを低くするのみならず、それはさらに、個々の車両それぞれがそのブレーキの潜在能力をフルに利用することを可能にする。よって、可能な限り短い制動距離が実現可能である。上記システムは、さらに、従来の荷重ベースのシステムよりも速い応答時間を得て、それは、より少ない車輪フラット(wheel flats)をもたらす。ブレーキシステムは、電気/光制御によく適しているので、それは空気圧/油圧制御に基づいて制御される従来のブレーキシステムよりも軽い。しかし、何も、本発明によるブレーキシステムが空気圧/油圧で制御されるブレーキに適用されることを排除しないことに留意されるべきである。
【0011】
本発明のこの態様の一実施形態によれば、鉄道車両は、車両それぞれに対してブレーキ入力信号を供給するように構成された、たとえば電子または光形式の第1の通信バスを含んでいる。第1の通信バスは、各車両へ並列に、および、車両内の異なる制御ユニット間に直列に、などのように、制御ユニットすべてへ並列に供給され、一制御ユニットからその他の制御ユニットへ直列に供給され、または、直列および並列のハイブリッド方式により制御ユニットへ供給される場合がある。しかしながら、第1の通信バスは、車両全体内のブレーキ入力信号の信頼できる迅速な分配を可能にする。
【0012】
本発明のこの態様の別の実施形態によれば、車両それぞれは、少なくとも1つの加速度計が配置された上記車両の少なくとも1つの次元、たとえば上記車両の前後方向における加速度を表す少なくとも1つのベクトル信号を生成するように構成された少なくとも1つの加速度計を含んでいる。少なくとも1つのベクトル信号は、ブレーキ入力信号が生成される基礎にさらに基づいて、上記車両のそれぞれの移動量を表す。よって、少なくとも1つの制御ユニットは、少なくとも1つのベクトル信号を受信し、それに基づいて、制御信号を生成するように構成される。これは、そうした加速度データが、それぞれの車両内で十分なブレーキ力を割り当てるための確固たる基礎を形成するから、有利である。
【0013】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態によれば、上記少なくとも1つのベクトル信号を生成することの代わりに、またはそれに加えて、少なくとも2つの車両それぞれは、少なくとも1つの回転速度センサであって、当該少なくとも1つの回転速度センサを含んでいる車両の車輪のそれぞれの速度を表す少なくとも1つの速度信号を生成するように構成された、少なくとも1つの回転速度センサを含んでいる。よって、回転速度センサはたとえば、上記車両の車輪および/または車軸上に配置され得る。ともかく、少なくとも1つの速度信号は、車両の移動量を表し、上記と同様に、制御ユニットは、少なくとも1つの速度信号を受信し、それに基づいて制御信号を生成するように構成される。そうした速度測定は、それぞれの車両内で十分なブレーキ力を割り当てるための確固たる基礎を車輪速度が形成するから、有利である。
【0014】
本発明のこの態様のなお別の実施形態によれば、制御ユニットそれぞれは、鉄道車両内に備えられたそれぞれの他の車両のそれぞれの移動量を表す少なくとも1つの運動パラメータの少なくとも1つを受け取り、受け取られた少なくとも1つの運動パラメータと、それぞれの1つの当該制御ユニットが備えられた車両の移動量を表す自身の運動パラメータとに基づいて平均運動パラメータを判定し、および、平均運動パラメータにより表されるものよりも大きい大きさを車両の移動量が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、増加されたブレーキ力を少なくとも1つの押圧部材に加えさせる少なくとも1つのブレーキユニットに対するそれぞれのブレーキ力信号を、それぞれの1つの制御ユニットにより制御されるブレーキアクチュエータに生成させるように制御信号を生成するように、構成される。すなわち、ブレーキ力は、平均を上回る、動きの大きさを有する車両について増加される。加えられるブレーキ力が、短い間隔で繰り返し更新されるという条件で、これは、短い制動距離、および比較的低い度合いのジャークを保証する。
【0015】
好ましくは、制御ユニットそれぞれは、平均運動パラメータにより表されるものよりも小さい大きさを車両の移動量が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、減少されたブレーキ力を少なくとも1つの押圧部材に加えさせる少なくとも1つのブレーキユニットに対するそれぞれのブレーキ力信号を、それぞれの1つの制御ユニットにより制御されるブレーキアクチュエータに生成させるように制御信号を生成するように、さらに構成される。それにより、全体の、ジャークの度合いがさらに低減され得る。
【0016】
さらに、好ましくは、制御ユニットそれぞれが、平均運動パラメータにより表されるものに等しい大きさを車両の移動量が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、維持されたブレーキ力を少なくとも1つの押圧部材に加えさせる少なくとも1つのブレーキユニットに対するそれぞれのブレーキ力信号を、それぞれの1つの制御ユニットにより制御されるブレーキアクチュエータに生成させるように制御信号を生成するように、構成される。実際には、これは普通でない場合があるが、そうしたストラテジは、同様に、制動中に、低い度合いのジャークを実現することに関して有益である。
【0017】
本発明のこの態様の別の実施形態によれば、鉄道車両は、鉄道車両に含まれている車両のそれぞれの移動量を表す運動パラメータを車両間で交換するように構成された第2の通信バスを含んでいる。第2の通信バスは、第1の通信バスと物理的におよび/もしくは論理的に別個であり、または、その物理的に一体化された部分を形成する、および/もしくはその論理的に一体化された部分を形成する、場合がある。いずれにせよ、バス構成は、異なる車両間でデータを交換する効率的な手段を提供するから、一般的に好ましい。
【0018】
本発明のこの態様のさらに別の実施形態によれば、鉄道車両内の車両それぞれは、少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニットであって、当該少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニットと同じ車両内に位置付けられた制御ユニットおよびブレーキアクチュエータへ電気エネルギを供給するように構成された、少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニットを備えている。少なくとも1つのバッテリユニットのそれぞれの1つは、各制御ユニット内に備えられ、もしくは、各制御ユニットと同じ場所に配置される場合があり、或いは、2つ以上の制御ユニットおよび/または2つ以上のブレーキアクチュエータが、共通のバッテリユニットを共有し得る。後者の場合、バッテリユニットは、好ましくは、制御ユニットに一体化されない。しかし、技術的な観点からは、これも排除されない。ともかく、バッテリユニットは、プレーキシステムへの主電源が故障した場合に、ブレーキ機能を発揮するための重要なバックアップエネルギ源を提供する。
【0019】
好ましくは、車両それぞれは、少なくとも1つのそれぞれのバッテリユニットを鉄道車両の運転中に充電して、少なくとも1つのバッテリユニットが必要に応じて動作可能であることを確実にするように構成された少なくとも1つのバッテリ充電器も含んでいる。
【0020】
空気圧/油圧で制御されるブレーキを備えるブレーキシステムでは、加圧されたガス/流体を保持するアキュムレータタンクは、ブレーキ制御システムの誤動作の場合に非常ブレーキ機能を提供するバッテリの交換品としての役割を果たし得る。
【0021】
本発明のこの態様のなお別の実施形態によれば、ブレーキアクチュエータの1つが回転速度を減少させるように構成されている少なくとも1つの車輪それぞれは、少なくとも1つの車輪の空転の度合いを反映する空転信号を生成するように構成されている測定モジュールによりその回転速度が監視される車輪である。ブレーキアクチュエータそれぞれは、空転信号を受信するように構成され、空転の度合いが閾値を超えた場合、ブレーキアクチュエータは、回転可能な部材に対するブレーキ力をブレーキユニットが押圧部材に加えさせるようにブレーキ力信号を生成するように構成され、そのブレーキ力は、受信された制御信号により指定されたブレーキ力よりも低い。よって、車輪空転/ロックのリスクは低く保たれ得る。これは、結果として、制動距離と、いわゆるフラットスポットまたは車輪のフラットを回避することとに関して有益である。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、目的は、少なくとも1つの制御ユニット、少なくとも1つのブレーキアクチュエータ、および少なくとも1つのブレーキユニットをそれぞれが含んでいる、少なくとも2つの車両を含んでいる鉄道車両を減速させるコンピュータ実装方法により、達成される。当該方法には、制御ユニットそれぞれにおいてブレーキ入力信号を受信することと、ブレーキ入力信号に応じて、それぞれの制御信号を、制御ユニットそれぞれにおいて生成することと、および、制御信号を生成した制御ユニットと同じ車両内のブレーキアクチュエータの1つにおいてそれぞれの制御信号それぞれを受信することと、が関係する。さらに、当該方法には、制御信号に基づいて、それぞれのブレーキ力信号をブレーキアクチュエータそれぞれにおいて生成することと、ブレーキ力信号を生成したブレーキアクチュエータと同じ車両内のブレーキユニットの1つにおいて、それぞれのブレーキ力信号それぞれを受信することと、およびブレーキ力信号に応じて、各ブレーキユニット内で、回転可能な部材に対するブレーキ力を押圧部材に加えさせて、少なくとも1つの車両の少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させることと、が関係している。特に、当該方法には、車両それぞれの、それぞれの移動量を表す少なくとも1つの運動パラメータにさらに基づいて、それぞれの制御信号を制御ユニットそれぞれにおいて生成することを備えている。この方法、およびその好ましい実施形態の利点は、提案された制御ユニットを参照して上記記述から明らかである。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、目的は、処理ユニットに通信可能に接続された不揮発性データキャリアにロード可能なコンピュータプログラムにより達成される。コンピュータプログラムは、プログラムが処理ユニット上で実行されるときに上記方法を実行するためのソフトウェアを含んでいる。
【0024】
本発明の別の態様によれば、目的は、上記コンピュータプログラムを含んでいる不揮発性データキャリアにより達成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のさらなる利点、有益な特徴、および用途は、以下の説明、および従属請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明が、実施例として開示されている好ましい実施形態により、および添付図面を参照して、より詳細に説明される。
【0027】
【
図1】本発明によるシステムの一実施形態が実現される鉄道車両を概略的に示す。
【
図2a】本発明の一実施形態による、車両の移動量を記録するための加速度計を示す。
【
図2b】本発明の実施形態による、車輪速度および車輪空転の形式で車両の移動量を記録するためのセンサを示す。
【
図3】本発明の一実施形態による制御ユニットのブロック図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態によるブレーキアクチュエータのブロック図を示す。
【
図5】本発明の好ましい実施形態による方法をフロー図により示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明の一実施形態が実現された鉄道車両の概略図がみられる。
【0029】
鉄道車両は、nがたとえば3~200の任意の数を表し得る場合に、ここでは、111、112、および11nまでにより例示される少なくとも2つの車両を含んでいる。鉄道車両には、ブレーキシステムが装備されており、そのためそれは、いくつかの制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2、いくつかのブレーキアクチュエータ1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2aおよび13n2b、ならびに、いくつかのブレーキユニット141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3および14n-4を含んでいる。
【0030】
制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2は、各車両内に少なくとも1つの制御ユニット、たとえば、車両毎に1つ、または各車両の台車毎に1つが存在するように、車両111、112および11n内に配置されている。
【0031】
ともかく、各制御ユニットは、発揮されるべきブレーキ動作を指定するブレーキ入力信号Bを受信するように構成される。たとえば、ブレーキ入力信号Bは、常用ブレーキ指令、非常ブレーキ指令、または駐車ブレーキ指令に応じて生成されている場合がある。そのためこれらの指令はそれぞれ、手動で(すなわち、人間の操作者により)、または、鉄道車両内の安全性および/もしくは快適性機構により自動的に生成され得る。
【0032】
ブレーキ入力信号Bは、
図1に示されるように、車両111、112および11nすべてへ並列に供給され、または、たとえば、先ず車両111へ、次に車両111から第2の車両112へ等、車両111、112および11nへ直列に供給される場合がある。あるいは、ブレーキ入力信号Bは、並列および直列のハイブリッド方式で車両111、112および11nへ供給される場合があり、たとえば、ブレーキ入力信号Bは、車両111、112および11nすべてへ並列に到達し、しかし、各車両内では、ブレーキ入力信号Bは、1つの制御ユニットからその他のものへ直列に分配され得る。
【0033】
それは一般に、鉄道車両が、少なくとも2つの車両111、112および11nそれぞれへ、たとえば鉄道車両(図示せず)内の機関車からブレーキ入力信号Bを供給するように構成された第1の通信バス151を有する場合に、好ましい。好ましくは、本発明によれば、機関車は、鉄道車両内の最前部車両とみなされ、それは、乗客および/または物品も運搬するように構成されていても構成されていなくてもよい。第1の通信バス151は、電子または光形式のものであり得る。
【0034】
あるいは、バス形式を使用する代わりに、データおよび制御信号は、たとえばパルス幅変調を使用したアナログ形式で車両111、112および11n間で交換され得る。
【0035】
ブレーキ入力信号Bに応じて、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2それぞれは、少なくとも1つの制御信号c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3、cn4をそれぞれ生成するように構成され、制御信号は、加えられるべき所望のブレーキ力を指定する。たとえば、操作者は、フルブレーキ能力の40%を指定する常用ブレーキ指令を生成してもよい。非常ブレーキの場合、ブレーキ入力信号Bはフルブレーキ能力の100%と同等である。
【0036】
各ブレーキアクチュエータ1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2aおよび13n2bはそれぞれ、当該ブレーキアクチュエータ自体と同じ車両内に位置している制御ユニットの1つにより生成された制御信号を受信するように構成される。たとえば、制御ユニット121-1は、制御信号c11およびc12をブレーキアクチュエータ1311aおよび1311bへ供給し、その結果それらは、結果として生じるブレーキ力信号f11、f12をブレーキユニット141-1および141-2へそれぞれ供給し、そのブレーキユニット141-1および141-2それぞれは、特定の台車、たとえば、第1の車両111の前方台車内の別々の車輪対を制動することを受け持っている。同様に、残りの制御ユニット122-1、122-2、12n-1および12n-2それぞれは、鉄道車両の車両111、112および11n内のそれぞれの台車の制動を制御するように構成され得る。
【0037】
それぞれの制御信号c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3およびcn4に基づいて、各ブレーキアクチュエータ1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2aおよび13n2bは、ブレーキ力信号f11、f12、f13、f14、f21、f22、f23、f24、fn1、fn2、fn3およびfn4をそれぞれ生成するように構成され、それは、特定のブレーキユニット141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3および14n-4へ供給される。ブレーキユニットそれぞれが、押圧部材と、車両111、112または11nの少なくとも1つの車輪に機械的に連結された回転可能な部材とを有する。
【0038】
ブレーキユニットは、ブレーキアクチュエータ131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2aおよび13n
2bにより生成されたブレーキ力信号f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3およびf
n4をそれぞれ受信するように構成される。具体的には、特定のブレーキユニットは、たとえば、上述され、且つ
図1に示されるように、当該ブレーキユニット自体と同じ車両内に位置しているブレーキアクチュエータにより生成されたブレーキ力信号を受信する。ブレーキ力信号f
11、f
12、f
13、f
14、f
21、f
22、f
23、f
24、f
n1、f
n2、f
n3およびf
n4に応じて、ブレーキユニット141-1、141-2、141-3、141-4、142-1、142-2、142-3、142-4、14n-1、14n-2、14n-3、14n-4はそれぞれ、回転可能な部材に対するブレーキ力を押圧部材に加えさせて、回転可能な部材が機械的に連結されている少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させる。
【0039】
本発明によれば、ブレーキ入力信号Bのみが、制御信号c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3、cn4の基礎となるのではない。すなわち、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2それぞれは、車両111、112および11nのそれぞれの移動量m1、m2、およびmnを表す少なくとも1つの運動パラメータにさらに基づいて、それぞれの制御信号c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3、cn4を生成するように構成される。
【0040】
当該技術分野においてよく知られているように、たとえば通勤電車および路面電車の車両において、種々の形態の連結式の車両が存在している。この種の車両を備えた鉄道車両では、いわゆる連接台車(Jacobs bogies)が一般的に使用されている。連接台車は、2つの、車両、すなわち連結式の車両のセグメント間に配置される。それにより、隣接する車両/セグメントの重量は、連接台車全体に分散される。この設計は、さらなる重量および抗力を必要とすることなく、台車車両のスムーズな乗り心地をもたらす。本発明では、連接台車を越えて連結されている連結式の車両のセグメントは、1つの同じ車両の一部を構成しているとみなされる。よって、これらのセグメンチには、上記により、同一の移動量m1、m2、mnが割り当てられる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、ブレーキアクチュエータが電気的に制御されることが想定される。したがって、車両111、112および11nそれぞれは少なくとも1つのバッテリユニット161、162および16nをそれぞれ含んでいる。バッテリユニット161、162および16nは、少なくとも1つのバッテリユニット161、162および16n自体が位置している車両と同じ車両内に位置している、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2、ならびにブレーキアクチュエータ1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2aおよび13n2bへ電気エネルギを供給するように構成される。バッテリユニット161、162または16nは、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2の特定の1つに備えられるか、またはそれぞれ制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1および12n-2の特定の1つと同じ場所に配置される場合がある。
【0042】
ともかく、特定の車両111内の2つ以上の制御ユニット、たとえば121-1および121-2は、共通のバッテリユニット161を共有し得る。同様に、特定の車両111内の2つ以上のブレーキアクチュエータ、たとえば1311a、1311b、1312a、1312bは、共通のバッテリユニット161を共有し得る。上記バッテリユニット161がそうした共有リソースを構成する場合、それは、好ましくは、制御ユニットの1つに一体化されない。しかし、技術的な観点からは、これも排除されない。ともかく、バッテリユニットは、プレーキシステムへの主電源が故障した場合に、ブレーキ機能を発揮するための重要なバックアップエネルギ源を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのバッテリ充電器(図示せず)が、車両111、112および11nそれぞれにおいて含まれており、少なくとも1つのバッテリ充電器は、鉄道車両の運転中に少なくとも1つのバッテリユニット161、162および16nを充電するように構成される。よって、信頼できるバックアップエネルギが、ブレーキシステムへ常に供給され得る。
【0044】
ブレーキが空気圧/油圧で制御されるブレーキシステムでは、加圧ガス/流体を保持するアキュムレータタンクが、ブレーキ制御システムの誤動作の場合にブレーキ機能を可能にするバックアップエネルギ源を提供するバッテリ同等物としての役割を果たし得ることは注目に値する。
【0045】
図2aは、本発明の一実施形態による、車両111、112および11nの移動量m
1、m
2、m
nをそれぞれ記録するための加速度計211を示す。
【0046】
211により例示される加速度計は、車両111、112および11nそれぞれにおいて備えられ、および各加速度計は、少なくとも1つの加速度計211が備えられた車両の少なくとも1つの次元における加速度を表す少なくとも1つのベクトル信号を生成するように構成される。たとえば、少なくとも1つの加速度計211は、車両の、3つの空間方向aX、aY、aZにおけるそれぞれの加速度、ならびに/または、回転加速度であるヨーaR、ピッチaP、およびロールaWを表すベクトル信号を生成し得る。ともかく、少なくとも1つのベクトル信号は、それぞれ、車両111、112および11nのそれぞれの移動量m1、m2、mnを表す。
【0047】
さらに、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2それぞれは、鉄道車両内の各車両111、112および11n内の各加速度計から、少なくとも1つのベクトル信号それぞれを受信し、それに基づいて、制御信号c11、c12、c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3、cn4をそれぞれ生成するように構成される。
【0048】
図2bは、本発明の別の実施形態による、車両111、112、11nの移動量m
1、m
2、m
nをそれぞれ記録するための回転速度センサ212を示す。
【0049】
ここでは、車両111、112、11nそれぞれは、212により例示される少なくとも1つの回転速度センサを含んでおり、その少なくとも1つの回転速度センサ212は、少なくとも1つの回転速度センサ212が備えられた車両の車輪221のそれぞれの速度ωを表す少なくとも1つの速度信号sωを生成するように構成される。よって、回転速度センサ212は、車両の1つもしくは複数の車輪上に、および/または1つもしくは複数の車軸上に配置されたセンサ素子を有し得る。ともかく、少なくとも1つの速度信号sωは、車両の移動量m1、m2、mnをそれぞれ表す。
【0050】
以上によれば、制御ユニット121-1、121-2、122-1、122-2、12n-1、12n-2それぞれは、鉄道車両内の各車両111、112および11nから少なくとも1つの速度信号sωを受信し、それに基づいて、制御信号c11、c12c13、c14、c21、c22、c23、c24、cn1、cn2、cn3およびcn4をそれぞれ生成するように構成される。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、各制御ユニット、たとえば、車両111内の121-1は、鉄道車両内の他の車両112および11nそれぞれの、それぞれの移動量、すなわち、m2およびmnをそれぞれ表す少なくとも1つの運動パラメータの少なくとも1つを受け取るように構成される。
【0052】
制御ユニット121-1は、受け取られた少なくとも1つの運動パラメータm2およびmnと、制御ユニット121-1が備えられた車両の移動量m1を表す自身の運動パラメータとに基づいて、平均運動パラメータmavgを判定するようにさらに構成される。ここでは、移動量m1、m2およびmnを表す運動パラメータは、たとえば、車両111、112および11nの前後方向における、それぞれの速度信号sωおよび/またはそれぞれの加速度aYにより表され得る。
【0053】
さらに、制御ユニット121-1は、ブレーキ入力信号Bのみにより与えられるものと比べて修正されたブレーキ力をブレーキユニット141-1、141-2の押圧部材にそれぞれ加えさせるブレーキ力信号f11、f12を、それぞれ制御ユニット121-1により制御されるブレーキアクチュエータ1311a、1311bに生成させるように、それぞれの制御信号c11、c12を生成するように構成される。具体的には、制御ユニット121-1は、平均運動パラメータmavgにより表されるものよりも大きい大きさを車両111の移動量m1が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、増加されたブレーキ力をもたらす、ブレーキユニット141-1および141-2に対するそれぞれのブレーキ力信号f11、f12をブレーキアクチュエータ1311a、1311bに生成させるように、それぞれの制御信号c11およびc12を生成するように構成される。すなわち、自身の車両111が、鉄道車両内の車両の動きの現在の平均の大きさよりも幾分速く走っている場合、自身の車両111内のブレーキは、少し強く制動する。
【0054】
同様に、本発明の一実施形態によれば、各制御ユニット121-1は、平均運動パラメータmavgにより表されるものよりも小さい大きさを車両111の移動量m1が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、減少されたブレーキ力を少なくとも1つの押圧部材に加えさせる、ブレーキユニット141-1および141-2に対するそれぞれのブレーキ力信号f11、f12を、制御ユニット121-1によりそれぞれ制御されるブレーキアクチュエータ1311a、1311bに生成させるように、制御信号c11、およびc12を生成するように構成される。すなわち、自身の車両111が、鉄道車両内の車両の動きの現在の平均の大きさよりも幾分遅く走っている場合、自身の車両111内のブレーキは、少し弱く制動する。これは、比較的ジャークのないブレーキプロセスをもたらす。
【0055】
鉄道車両内の車両の動きの現在の平均的な大きさよりも、自身の車両111が、それぞれ速く、または遅く走行することが判明した場合に、ブレーキが厳密にどの程度強く、または弱く制御されるかは、設計パラメータであり、それはとりわけ、移動量m1、m2およびmnを表す運動パラメータが更新される頻度に依存する。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、各制御ユニット121-1は、平均運動パラメータmavgにより表されるものに等しい大きさを車両111の移動量m1が有することを自身の運動パラメータが表す場合に、維持されたブレーキ力を少なくとも1つの押圧部材に加えさせる、ブレーキユニット141-1および141-2に対するそれぞれのブレーキ力信号f11、f12を、制御ユニット121-1によりそれぞれ制御されるブレーキアクチュエータ1311a、1311bに生成させるように、制御信号c11、c12を生成するように構成される。すなわち、自身の車両111が鉄道車両内の車両の動きの現在の平均の大きさに一致する動きの大きさを有する場合、自身の車両111内のブレーキは、全体的にスムーズなブレーキプロセスを得るためにそのまま制動し続ける。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、鉄道車両は、車両111、112および11nの、それぞれの移動量m1、m2およびmnをそれぞれ表す運動パラメータを交換するように構成された第2の通信バス152を含んでいる。第2の通信バス152は電子または光形式のものである場合があり、第2の通信バス152は、第1の通信バス151と物理的に、および/または論理的に別個である場合があり、或いは、第2の通信バス152は、第1の通信バス151の物理的に一体化された部分を形成する場合があり、および/または、第2の通信バス152は、第1の通信バス151の論理的に一体化された部分を形成する場合がある。いずれにせよ、バス形式は異なる車両111、112および11n間でデータを交換する効率的な手段を提供するので、通信バスは一般に、運動パラメータを交換するのに好ましい。
【0058】
再度、
図2bを参照すると、本発明の一実施形態によれば、測定モジュール214が、ブレーキアクチュエータ131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、131
1a、131
1b、131
2a、131
2b、13n
1a、13n
1b、13n
2aおよび13n
2bの1つが回転速度ωを減少させるように構成されている各車輪221において配置され、測定モジュール214は、車輪221の空転の度合いを反映する空転信号s
11を生成するように構成される。さらに、各ブレーキアクチュエータ、たとえば131
1aは、空転信号s
11を受信するように構成され、空転の度合いが閾値を超えた場合、ブレーキアクチュエータ131
1aは、回転可能な部材に対するブレーキ力をブレーキユニット141-1が押圧部材に加えさせるようにブレーキ力信号f
11を生成するように構成され、そのブレーキ力は、受信された制御信号c
11のみにより指定されるブレーキ力よりも低い。これは、比較的ジャークのない状態にブレーキプロセスが保たれる一方で、比較的短い制動距離をもたらす。
【0059】
ブレーキ力を厳密にどの程度低下させるかは設計パラメータであり、それはとりわけ、空転の度合いに関する閾値と、空転信号s11が更新される頻度とに依存する。
【0060】
ブレーキアクチュエータ1311a、1311b、1312a、1312b、1311a、1311b、1312a、1312b、13n1a、13n1b、13n2aおよび13n2bの2つ以上が、互いとの間で空転関連情報を交換する場合、さらに有利である。すなわち、これは、空転の度合いが第1のブレーキユニットにおける閾値を超えているが、第2のブレーキユニットの閾値を超えていない場合に、第2のブレーキユニットたとえば141-2がブレーキの責任の一部を第1のブレーキユニットたとえば141-1から引き継ぐことを可能にする。
【0061】
一般に、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行することにより自動的に上記ブレーキ手順が行われると、有利である。したがって、各制御ユニットおよびブレーキアクチュエータはそれぞれ、好ましくは、処理回路、およびプログラムされたメモリユニットを含んでおり、それらの設計については
図3および4を参照して以下に簡単に説明される。
【0062】
図3は、本発明の一実施形態による制御ユニット121-1のブロック図を示す。制御ユニット121-1は、少なくとも1つのプロセッサ315と、コンピュータプログラム317を記憶していて、そのため、コンピュータプログラム317が少なくとも1つのプロセッサ315上で実行されるときに本開示で言及された動作を少なくとも1つのプロセッサ315に実行させるためのソフトウェアを含んでいる、メモリユニット316すなわち不揮発性データキャリアとによる形態の処理回路を含んでいる。
【0063】
上述されたように、制御ユニット121-1は、ブレーキ入力信号Bと、鉄道車両内のその他の車両112および11nのそれぞれの移動量m2およびmnを表す運動パラメータとを受信し、ここではc11により、例示される少なくとも1つの制御信号を出力するように構成される。
【0064】
図4は、本発明の一実施形態によるブレーキアクチュエータ131
1aのブロック図を示す。ブレーキアクチュエータ131
1aは、少なくとも1つのプロセッサ415と、コンピュータプログラム417を記憶していて、そのためコンピュータプログラム417が少なくとも1つのプロセッサ415上で実行されるときに本開示で言及された動作を少なくとも1つのプロセッサ415に実行させるためのソフトウェアを含んでいる、メモリユニット416すなわち不揮発性データキャリアとによる形態の処理回路を含んでいる。
【0065】
上述されたように、ブレーキアクチュエータ1311aは、制御信号c11と、好ましくは、空転信号s11とを受信し、ブレーキ力信号f11を出力するように構成される。
【0066】
当然、制御ユニット121-1およびブレーキアクチュエータ1311aについて、以上では別個のエンティティとして説明してきたが、これらのエンティティは同様に、部分的に、または完全に、互いに、同じ場所に配置され/一体化され得る。特に、本発明によれば、少なくとも1つの制御ユニットおよび少なくとも1つのブレーキアクチュエータ、2つ以上の制御ユニットおよび/または2つ以上のブレーキアクチュエータは、共通の処理リソースを共有し得る。
【0067】
総括するために、
図5中のフロー図を参照して、少なくとも1つの制御ユニットと、少なくとも1つのブレーキアクチュエータと、少なくとも1つのブレーキユニットとを、各車両が含んでいる、少なくとも2つの車両を含んでいる鉄道車両を減速させる、本発明によるコンピュータ実装方法について次に説明する。
【0068】
第1のステップ510では、ブレーキ入力信号が受信されているかをチェックする。そうである場合、ステップ520が続き、さもなければ、手順はループバックしてステップ510に留まる。
【0069】
ステップ520では、各車両のそれぞれの移動量が、たとえば加速度測定および/または車輪速度測定により、判定される。その後、それぞれの制御信号を、制御ユニットそれぞれにおいて生成するステップ530が続く。ここでは、各制御信号が、ブレーキ入力信号に応じて生成される。制御信号は、その車両自体の移動量およびその他の車両の移動量に基づく。上述されたように、その車両自体の移動量と、鉄道車両内の複数の車両すべての平均移動量との間の関係は、加えられるブレーキ力を、受信されるブレーキ入力信号により規定されるものに対して、上下させるのに影響を及ぼし得る。
【0070】
ステップ530において生成された制御信号は、それぞれのブレーキアクチュエータへ供給される。具体的には、各制御ユニットは、当該制御ユニット自体と同じ車両内に位置している1つ以上のブレーキアクチュエータに対してその制御信号を供給する。
【0071】
ステップ530に後続するステップ540では、各ブレーキアクチュエータは、制御ユニットから受信された制御信号に基づいてそれぞれのブレーキ力信号を生成する。各ブレーキ力信号は、ブレーキアクチュエータ自体と同じ車両に位置している1つ以上のブレーキユニットへ供給される。
【0072】
次いで、ステップ550では、各ブレーキユニットは、ブレーキ力信号に応じて、車両の少なくとも1つの車輪に機械的に連結された回転可能な部材にブレーキ力を押圧部材に加えさせて、少なくとも1つの車輪の回転速度を低下させる。
【0073】
その後、手順は終了する。当然、実際には、たとえば更新されたブレーキ入力信号が受信されているかをチェックするために、ステップ510が再度実行され得る。
【0074】
図5を参照して説明されたプロセスステップ、およびステップの任意のサブシーケンスはすべて、プログラムされたプロセッサにより制御され得る。さらに、図面を参照して上述された本発明の実施形態は、プロセッサと、少なくとも1つのプロセッサにおいて行われるプロセスとを含んでいるが、本発明は、本発明を実施するのに適したコンピュータプログラム、特にキャリア上の、またはキャリア内のコンピュータプログラムまでにもおよぶ。プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形式のようなソースおよびオブジェクトコードの中間のコード、または、本発明によるプロセスの実現における使用に好適な任意の他の形式であり得る。プログラムは、オペレーティングシステムの一部、または別個のアプリケーションであり得る。キャリアは、プログラムを担持することができる任意のエンティティまたはデバイスであり得る。たとえば、キャリアは、記憶媒体、たとえばフラッシュメモリ、ROM(リードオンリーメモリ)、たとえばDVD(デジタルビデオ/多用途ディスク)、CD(コンパクトディスク)もしくは半導体ROM、EPROM(消去・プログラム可能なリードオンリーメモリ)、EEPROM(電気的に消去・プログラム可能なリードオンリーメモリ)、または磁気記録媒体、たとえば、フロッピーディスクもしくはハードディスクを備え得る。さらに、キャリアは、電気ケーブルもしくは光ケーブルを介して、もしくは無線により、または他の手段により、伝達され得る、電気または光信号などの送信可能なキャリアであり得る。プログラムが、ケーブルまたは他の装置もしくは手段により直接伝達され得る信号において具現化される場合、キャリアは、そうしたケーブルまたはデバイスもしくは手段により構成され得る。あるいは、キャリアは、プログラムが内蔵された集積回路であり得、集積回路は、関連するプロセスを行うために、または関連するプロセスの実行における使用のために適合された集積回路であり得る。
【0075】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、本開示、および添付された請求項の検討から、クレームされた発明を実施するうえで、当業者により理解され、且つ実施され得る。
【0076】
本明細書中で使用される、「comprises/comprising」との語は、記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を規定するものと解される。上記語は、1つまたは複数のさらなる要素、特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除するものでない。不定冠詞「a」または「an」は、複数形を排除するものでない。請求項では、「or」との語は、排他的論理和(「XOR」と呼ばれる場合もある)として解釈されるものでない。逆に、「AまたはB」などの表現は、別途明記しない限り、「Aであり、およびBでない」、「Bであり、およびAでない」、「Aであり、およびBである」とのケースすべてにおよぶ。特定の方策が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものでない。
【0077】
請求項中のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるものでない。
【0078】
本明細書中に記載された種々の実施形態からの特徴は、当該組み合わせが不適当であると明示的に記載されていない限り、自由に組み合わせられ得ることにも留意されたい。
【0079】
本発明は、図に記載された実施形態に制限されるものでなく、請求項の範囲内で自由に変更され得る。
【国際調査報告】