(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】電解槽
(51)【国際特許分類】
C25B 15/08 20060101AFI20240227BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240227BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240227BHJP
C25B 9/15 20210101ALI20240227BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C25B15/08 304
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/15
C25B13/02 301
C25B15/08 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557127
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022057238
(87)【国際公開番号】W WO2022195110
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523352653
【氏名又は名称】スーパークリティカル ソリューションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラス,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴバイル-シャウ,ゲル ピーター アブラハム
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BB04
4K021DA06
4K021DA15
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
超臨界条件において動作するための電解槽(10、20、50)が開示され、それぞれの流体反応生成物を保持するためのチャンバ(200、210、520)が、それを通る電解質液の流れを可能にし、それぞれの反応生成物の逆流を抑制する多孔質壁によって分離されている。コントローラが、電解質液の超臨界条件を維持するように、流動制御機器を制御する。電解槽を動作させる方法、および、そのような電解槽のための複合多孔質電極を製造する方法も開示される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質液の連続電解を実施するための電解槽であって、
第1の電極および第2の電極と、
前記電極の間に配置されており、電解質液の流れを受け入れるように構成されている入口チャンバと、
それぞれの前記電極において生成される流体反応生成物を保持するための、前記電極のうちの1つと関連付けられる保持チャンバであって、それぞれの前記流体反応生成物を放出するための出口を有する、保持チャンバと、
前記入口チャンバと前記保持チャンバとを分離する多孔質壁であって、電解質液が前記入口チャンバから前記保持チャンバへと流れることを可能にするように構成されており、それぞれの前記流体反応生成物の前記保持チャンバから前記入口チャンバへの返流を抑制するように構成されている、多孔質壁と、
前記入口チャンバおよび前記保持チャンバ内の前記電解質液の超臨界条件を維持するように、前記電解槽内の熱力学的条件および/または流速条件を制御するための流動制御機器を制御するように構成されているコントローラと
を備える、電解槽。
【請求項2】
前記多孔質壁は、前記多孔質壁をまたいで圧力差がないとき、および/または、前記入口チャンバから前記保持チャンバまで前記多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するとき、前記保持チャンバから前記入口チャンバへのそれぞれの前記流体反応生成物の返流を抑制するように構成されている、請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記多孔質壁およびそれぞれの前記電極は、前記入口チャンバと前記保持チャンバとを分離する複合多孔質電極によって提供され、
前記複合多孔質壁は、前記入口チャンバに隣接する入口側と、前記保持チャンバに隣接する出口側と、を有し、
前記電極は、前記複合多孔質電極の電解触媒領域によって提供される、請求項1または2に記載の電解槽。
【請求項4】
前記電解触媒領域は、電解触媒を含むコーティングまたは層を含み、
前記コーティングまたは層は、前記複合多孔質電極の前記出口側を画定する、請求項3に記載の電解槽。
【請求項5】
前記複合多孔質電極は、長手方向軸に沿って直線的に延在し、前記入口側から前記出口側への直交する厚さ方向を有し、
前記複合多孔質電極は、各々が前記長手方向軸と前記厚さ方向の両方に関して傾斜している、電解質液が前記入口チャンバから前記保持チャンバへと流れることを可能にするように構成されている複数の傾斜チャネルによって画定される異方性多孔質構造を有し、
任意選択で、前記傾斜チャネルは、前記電解触媒領域の少なくとも一部分を通じて延在する、請求項3または4に記載の電解槽。
【請求項6】
各チャネルは、前記厚さ方向に沿って発散する断面を有する、請求項5に記載の電解槽。
【請求項7】
前記複合多孔質電極の前記入口側は、前記電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、もしくは、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されている受動領域によって画定され、および/または
前記受動領域は、前記複合多孔質電極の前記入口側を画定する不動態化コーティングを含む、請求項5または6に記載の電解槽。
【請求項8】
各チャネルは、前記チャネルの長さに沿って25~150μmの平均直径を有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項9】
前記入口チャンバから前記保持チャンバへの電解質液の流路が存在し、
前記流路は、
前記多孔質壁の受動領域を通る上流部分と、
前記保持チャンバと関連付けられる前記電極の電解触媒領域を通るかまたは前記電解触媒領域に隣接する下流部分と、を備え、
前記受動領域は、前記電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項10】
前記多孔質壁の前記受動領域は、厚さt
wおよび透過率k
wを有し、
前記下流部分は、厚さt
eおよび透過率k
eを有する電解触媒領域を通り、
前記受動領域および前記電解触媒領域の相対流れ透過率は、以下の不等式:
【数1】
を満たす、請求項9に記載の電解槽。
【請求項11】
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに対向するそれぞれのイオン交換境界を有し、
各イオン交換境界は、それぞれの前記電極の電解触媒表面またはそれぞれの前記電極の電解触媒領域の境界であり、
前記イオン交換境界のうちの1つの表面積の少なくとも50%について、前記対向するイオン交換境界までの実質的に一定の最短分離距離が存在し、および/または
前記対向するイオン交換境界は、実質的に互いに局所的に平行である、請求項1~10のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項12】
前記保持チャンバと関連付けられる前記電極はアノードであり、
水性電解質液による使用において、
カソードである他方の前記電極において生成される水素が、前記アノードにおける酸化によって前記アノードと関連付けられる前記保持チャンバへと移行することが抑制され、
前記アノードにおいて生成される酸素が、前記多孔質壁を通じて前記入口チャンバへと移行することが抑制される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項13】
前記入口チャンバおよび前記保持チャンバのうちの一方は、外側環状チャンバであり、他方が、前記外側環状チャンバによって包囲される内側コアチャンバである、請求項1~12のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項14】
前記保持チャンバは、前記第1の電極と関連付けられ、前記保持チャンバの前記出口は、第1の出口であり、
前記第2の電極は、前記入口チャンバの壁を画定するフローパスト電極であり、
前記入口チャンバは、前記第2の電極において生成される流体反応生成物を保持するためのものであり、それぞれの前記流体反応生成物を放出するための第2の出口を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項15】
前記電解槽は、
前記第1の電極において生成される流体反応生成物を保持し、第1の出口を通じて前記流体反応生成物を放出するための、前記第1の電極と関連付けられる第1の保持チャンバと、
前記第2の電極において生成される前記流体反応生成物を保持し、第2の出口を通じて前記流体反応生成物を放出するための、前記第2の電極と関連付けられる第2の保持チャンバと、を備え、
前記電解槽は、各々が前記入口チャンバと、それぞれの前記保持チャンバとを分離する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項16】
前記入口チャンバは環状チャンバであり、
前記第1の保持チャンバおよび前記第2の保持チャンバのうちの一方は、前記入口チャンバによって包囲される内側コアチャンバであり、
前記第1の保持チャンバおよび前記第2の保持チャンバのうちの他方は、前記入口チャンバを包囲する外側環状チャンバである、請求項15に記載の電解槽。
【請求項17】
前記コントローラは、水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃の、前記入口チャンバおよび前記保持チャンバ内の前記電解質液に対する超臨界圧条件および温度条件を維持するように流れ制御装置を制御するように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項18】
前記電解槽は、
前記第1の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、前記第1の電極と関連付けられる第1の出口と、
前記第2の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、前記第2の電極と関連付けられる第2の出口と、を有し、
前記流動制御機器は、それぞれ前記第1の出口および前記第2の出口と流体連通する第1の放出弁および第2の放出弁を含む、請求項16または17に記載の電解槽。
【請求項19】
前記第1の放出弁は、前記弁の上流において第1の目標圧力を維持するように構成されており、
前記第2の放出弁は、前記弁の上流において第2の目標圧力を維持するように構成されており、
前記第1の放出弁および前記第2の放出弁は、前記入口チャンバから前記多孔質壁を通じて前記保持チャンバに入る電解質液の分岐流を駆動する、前記多孔質壁をまたいだ圧力降下を引き起こすために、異なる目標圧力を維持するように構成されており、または、
前記第1の放出弁および前記第2の放出弁は、同じ前記目標圧力を維持するように構成されており、前記入口チャンバから前記多孔質壁を通じて前記保持チャンバに入る電解質液の圧力駆動分岐流が抑制され、
任意選択で、前記コントローラは、前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、それぞれの前記目標圧力を維持するように制御するように構成されている、請求項14または18に記載の電解槽。
【請求項20】
前記コントローラは、前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、
前記コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/または組成データに基づいて、前記第1の出口および前記第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速または目標組成を維持するように、および/または
前記コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/または組成データに基づいて、前記第1の出口から出る流れと前記第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように制御するように構成されており、
任意選択で、前記目標流速比は、
前記第1の出口を出る総流速と前記第2の出口を出る総流速との比、または
前記第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と前記第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応する、請求項18または19に記載の電解槽。
【請求項21】
前記コントローラは、それぞれの出口流について前記コントローラにおいて受信される組成データに基づいて、前記第1の出口を通る出口流中に過量の前記第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されており、または、前記第2の出口を通る出口流中に過量の前記第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されており、
前記コントローラは、前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、前記判定に基づいて前記電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御するように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項22】
電解質液、任意選択で水性電解質液の供給源と、
前記電解質液の連続電解を実施するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の電解槽と
を備える、電解設備。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の電解槽を動作させる方法であって、
それぞれの流体反応生成物を生成するために前記第1の電極および前記第2の電極によって電解半反応を実行するために電解質液の入口流を前記入口チャンバに提供することと、
前記入口チャンバと前記保持チャンバまたは各保持チャンバ内の前記電解質液に対する超臨界温度条件および圧条件を維持するように、熱力学的条件および/または流速条件を制御することと、を含み、
前記電解質液および/または関連付けられるイオンは少なくとも部分的に前記または各多孔質壁を通じて流れてそれぞれの前記電極と反応し、
前記保持チャンバまたは各保持チャンバは、それぞれの前記流体反応生成物を保持し、それぞれの前記多孔質壁は、前記流体反応生成物の前記保持チャンバから前記入口チャンバへの返流を抑制する、方法。
【請求項24】
前記多孔質壁または各多孔質壁をまたいだ圧力差がないように、および/または、前記入口チャンバからそれぞれの前記保持チャンバまで前記多孔質壁または各多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、前記電解槽の入口および/または出口条件を制御することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記電解質液は、それぞれの前記多孔質壁のみを通じて前記保持チャンバまたは各保持チャンバに受け入れられる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記保持チャンバと関連付けられるか、または、前記保持チャンバのうちの1つと関連付けられる前記電極がアノードになるように、前記電解槽を動作させることを含み、
前記電解質液は水性電解質液であり、それにより、カソードである他方の前記電極において生成される水素が、前記アノードにおける酸化によって前記アノードと関連付けられる前記保持チャンバへと移行することが抑制され、
前記アノードにおいて生成される酸素が、前記多孔質壁を通じて前記入口チャンバへと移行することが抑制される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記電解槽は、請求項7~9のうちの1つに記載のものであり、
保持チャンバと関連付けられる各電極について、それぞれの前記電解触媒領域における電解のそれぞれの半反応の速度は、それぞれの前記受動領域における電解の半反応の速度よりも大きい、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記電解槽は、請求項9に記載のものであり、電解質液の前記保持チャンバへの流れ、または、前記保持チャンバの各々へのそれぞれの流れは、前記受動領域を通る前記流路の前記上流部分に沿って通過し、前記電解触媒領域と反応する前の流れにおいて圧力降下をもたらす、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃の、前記入口チャンバおよび前記保持チャンバまたは各保持チャンバ内の前記電解質液に対する超臨界圧条件および温度条件を維持するように、熱力学的条件および/または流速条件が制御される、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電解槽は、請求項19に記載のものであり、
前記第1の放出弁は、前記弁の上流において第1の目標圧力を維持し、
前記第2の放出弁は、前記弁の上流において第2の目標圧力を維持し、
前記入口チャンバから前記多孔質壁を通じて前記保持チャンバに入る電解質液の分岐流を駆動する、前記多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、前記第1の目標圧力と前記第2の目標圧力とは異なり、または
前記入口チャンバから前記多孔質壁を通じて前記保持チャンバに入る電解質液の圧力駆動分岐流が存在するように、前記第1の目標圧力と前記第2の目標圧力とは実質的に等しく、
任意選択で、前記コントローラは、前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、それぞれの前記目標圧力を維持するように制御する、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記電解槽は、請求項18に記載のものであり、
前記方法は、前記コントローラが、前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、
前記コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/または組成データに基づいて、前記第1の出口および前記第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速または目標組成を維持するように、および/または
前記コントローラによって受信される流速データおよび/または組成データに基づいて、前記第1の出口から出る流れと前記第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように制御することを含み、
任意選択で、前記目標流速比は、
前記第1の出口を出る総流速と前記第2の出口を出る総流速との比、または
前記第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と前記第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応する、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電解槽は、請求項18に記載のものであり、前記方法は、前記コントローラが、
それぞれの出口流について前記コントローラにおいて受信される組成データに基づいて、前記第1の出口を通る出口流中に過量の前記第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定すること、または、前記第2の出口を通る出口流中に過量の前記第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定することと、
前記第1の放出弁および/または前記第2の放出弁を、前記判定に基づいて前記電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御することと
を含む、請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解槽に関する。特に、本発明は、超臨界水の電解を実施するための電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
電解の1つの用途は、エネルギー貯蔵のための水素の生成である。電気を使用して、水から水素と酸素とを分離することができる。貯蔵された水素と酸素とを燃料電池内で再結合して、電気を生成することができる。その間に、水素(および酸素)は貯蔵および輸送され得る。電解および燃料電池技術の効率の改善によって、多くのエネルギー貯蔵問題、特に、再生可能エネルギー源からのエネルギーの貯蔵に対する解決策として、水素エネルギー貯蔵が提案されている。
【0003】
電解の効率は、電解セルの設計に内在する損失に依存する。そのような損失は、電解セルに過電圧を与えると考えることができ、これは、セルが、電解反応を継続するために理論的に熱力学的に必要とされるよりも多くのエネルギーを必要とすることを表す。
【0004】
過電圧は、複数の異なる要因によって生じ得る。たとえば、水の電解の傑出した方法は、イオン輸送を可能にしながら、水素および酸素反応生成物の混合を防止するためにカソードとアノードとを分離するポリマー電解質膜の使用(PEM電解)に依拠する。しかしながら、PEM膜が存在することによって、システムに過電圧が導入される。
【0005】
電極表面上に存在し、これを塞ぐ反応生成物気泡(たとえば、水素および酸素気泡)の形成によって、および、電解質の存在(たとえば、電極の周囲の電解質液中の)によって、さらなる過電圧が導入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電解と関連付けられる過電圧を減少させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、電解質液の連続電解を実施するための電解槽であって、
第1の電極および第2の電極と、
電極の間に配置されており、電解質液の流れを受け入れるように構成されている入口チャンバと、
それぞれの電極において生成される流体反応生成物を保持するための、電極のうちの1つと関連付けられる保持チャンバであって、それぞれの流体反応生成物を放出するための出口を有する、保持チャンバと、
入口チャンバと保持チャンバとを分離する多孔質壁であって、電解質液が入口チャンバから保持チャンバへと流れることを可能にするように構成されており、それぞれの流体反応生成物の保持チャンバから入口チャンバへの返流を抑制するように構成されている、多孔質壁と
を備える、電解槽が提供される。
【0008】
「連続電解」という表現は、反応中に補充されない電解質液を使用して電解が実施されるバッチプロセスとは対照的に、入口電解質液が、チャンバから放出されている反応生成物(および任意の残留電解質液)と同時に、電解反応のためにチャンバに提供される電解プロセスを指す。本明細書において使用されるものとしての「反応」という表現は、電解を指し、この文脈において、それぞれの電極における電解の半反応を指し得る。
【0009】
それぞれの反応生成物の返流を抑制する多孔質壁によって入口チャンバと保持チャンバとを分離することによって、電解槽は、イオン交換膜(この膜は、別の場合には電解槽の動作に損失および過電圧を導入する可能性がある。ポリマー電解質膜、PEMなど)に依拠することなくそれぞれの電極において生成される反応生成物を分離する方法を提供する。多孔質壁は、流体流を通過させるのに十分に多孔性であるため、本質的に、いずれかの方向におけるイオン交換も可能にする。
【0010】
入口チャンバと保持チャンバとの間の電解質液の連続流を可能にすることによって、多孔質壁は、入口チャンバと保持チャンバとを互いに流体連通させ、結果、それぞれのチャンバ内の圧力がリンクされる。そのようなチャンバ間の流体連通を妨げる構成と比較して、これは、壁および電解槽の完全性を変形させるかまたは他の様態で損傷するおそれがある過剰な圧力差が壁をまたいで確立されるのを防止することができる。そのような損傷のリスクは、電解質液が超臨界圧に維持されるときなど、高圧において動作するときに特に顕著であり得る。したがって、それぞれの反応生成物を保持するチャンバを分離するために多孔質壁を提供することによって、特に高圧動作について、電解槽の構造的完全性を保護するか、または、向上させることができる。
【0011】
多孔質壁は、多孔質壁をまたいで圧力差がないとき、および/または、入口チャンバから保持チャンバまで多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するとき、保持チャンバから入口チャンバへのそれぞれの流体反応生成物の返流を抑制するように構成することができる。
【0012】
多孔質壁をまたいだ圧力差が存在しないとき、電解槽内の圧力差は、流体が多孔質壁を通じて流れるための原動力を提供しない。多孔質壁は、保持チャンバ内に保持されている反応生成物が入口チャンバへと流れ戻るのを防止する、流れに対する抵抗を提供することができる。多孔質壁をまたいだ圧力降下は、入口チャンバに戻る保持チャンバ内の流れが圧力勾配に従わないとき、そのような流れに対する抵抗を提供する。これは、圧力勾配、または、多孔質壁をまたいだ圧力駆動流による流体反応生成物の逆流の抑制として参照され得る。
【0013】
多孔質壁およびそれぞれの電極は、入口チャンバと保持チャンバとを分離する複合多孔質電極によって提供されてもよく、複合多孔質壁は、入口チャンバに隣接する入口側と、保持チャンバに隣接する出口側とを有する。電極は、複合多孔質電極の電解触媒領域によって提供されてもよい。
【0014】
電解触媒領域は、複合多孔質領域の部分領域であってもよい。
【0015】
電解触媒領域は、電解質液の電解の半反応に触媒作用を及ぼすのに適した電解触媒を含んでもよく、電解触媒領域は電解触媒として活性である。電解反応は、水または水溶性(水性)電解質液の電解であってもよい。
【0016】
電解触媒領域は、電解触媒領域の電解質液との電解質界面(すなわち、使用中に電解質液に隣接する電解触媒領域の表面領域)にある電解触媒を含んでもよい。たとえば、電解触媒領域の電解質界面にある電解触媒領域の表面領域は、電解触媒を含んでもよい。表面領域は、電解触媒領域の、電解質界面において電解質液に隣接する領域であってもよい。表面領域は、電解質界面から1μmの厚さを有してもよい。
【0017】
多孔質電解触媒領域について、電解質界面は、多孔質領域の細孔またはチャネルの内面(または表面)を含んでもよい。電解触媒領域は、マトリックス(またはボディ)を含んでもよく、電解触媒は、電解質界面を画定するマトリックス(またはボディ)の上のコーティングとして提供されてもよい。他の様態で、たとえば、電解質界面を形成するコーティングがない場合、電解触媒領域のマトリックス(またはボディ)が、電解触媒を含んでもよく、電解質界面を画定してもよい。
【0018】
電解触媒領域は、複合多孔質電極の出口側を画定する電解触媒のコーティングまたは層を含んでもよく、結果、電解触媒領域の電解質界面は、複合多孔質電極の出口側、および、任意選択で、コーティングまたは層を通じて延在する細孔またはチャネルの内面(または表面)の一部分を含む。本明細書においてコーティングが参照されている場合、これは、任意の適切なプロセス、たとえば、CVD(化学気相成長)プロセス、スパッタリングプロセス(マグネトロンスパッタリングなど)または電気めっきによるものであってもよい。
【0019】
コーティングが本明細書に記載されているように多孔質構造(たとえば、多孔質マトリックス構造)の外面に被着されるとき、コーティングはそれぞれの表面における多孔質構造の物理的表面のみをコーティングし得、細孔を閉じるようにその表面内の細孔にまたがって延在(すなわち、架橋)し得ないため、コーティングは、多孔質構造の多孔性を採用してもよい。
【0020】
電解質界面(たとえば、表面領域内の)において、電解触媒領域は、少なくとも50重量%、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%の電解触媒を含んでもよく、または、実質的に電解触媒から成ってもよい。コーティングが電解触媒領域の電解質界面を画定するとき、コーティングは、少なくとも50重量%、たとえば、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%の電解触媒を含んでもよく、または、実質的に電解触媒から成ってもよい。
【0021】
電解触媒がコーティングとして提供されるときの電解質界面における電解触媒の質量負荷は、少なくとも0.001mg/cm-2、たとえば0.001~10mg/cm-2、たとえば0.01~1mg/cm-2であってもよい。
【0022】
電解触媒領域は、複合多孔質電極内に埋め込まれてもよく、結果、入口側まで延在しない。電極を複合多孔質電極の一部として提供することによって、それぞれの流体反応生成物が入口チャンバから下流にあるロケーションにおいてのみ生成されることを依然として補償しながら、電解槽内の電極および多孔質壁の特に単純な製造および組み立て様式を提供することができる。この製造および組み立て様式は、電極を提供するために電解触媒領域を(たとえば、メッシュ電極として)多孔質壁上に付加的にコーティングまたは他の様態で提供する必要をなくすことができるため、特に単純であり得る。たとえば、複合多孔質壁は、電解触媒領域を組み込むように、付加製造または粉末プレスプロセス(熱間プレス(HP)もしくは冷間静水圧プレス、または熱間静水圧プレス(HIP)など)によって作成されてもよい。
【0023】
複合多孔質電極は、(電解質液の電解のそれぞれの半反応について)電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、それぞれの半反応を抑制するように構成されている受動領域を含んでもよい。
【0024】
(全体としての)受動領域内のそれぞれの半反応の速度は、(全体としての)電解触媒領域内のそれぞれの半反応の速度よりも低くなり得、これによって、多孔質領域は、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性がより低くなり得る。それぞれの半反応の速度は、それぞれの領域内のそれぞれの流体反応生成物(すなわち、電極に応じて水素または酸素)の生成速度、たとえば、単位時間当たりに生成される流体反応生成物の質量(たとえば、水素のg/s)、または、それぞれの領域の電解質界面にわたって積分される電流密度(たとえば、A単位)であってもよい。本明細書において使用されるものとしてのそれぞれの領域の速度は、単位体積、厚さ、質量、または表面積(たとえば、複合多孔質電極の、または、複合多孔質電極のそれぞれの領域の電解質界面の)など当たりの特定の速度ではなく、それぞれの領域の総計速度である。受動領域および電解触媒領域は、(全体としての)受動領域内のそれぞれの半反応の速度が、(全体としての)電解触媒領域内のそれぞれの半反応の速度よりも低くなり得るように構成されてもよい。たとえば、受動領域内の速度は、電解触媒領域内の速度の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下であってもよい。受動領域内の速度は、実質的にゼロであってもよい。
【0025】
受動領域は、電解触媒領域よりも少ない電解触媒(電解質液の電解のそれぞれの半反応に電解触媒作用を及ぼすための)、たとえば、電解触媒領域のより少ない電解触媒を含み、および/または、受動領域の任意の電解触媒は、電解触媒領域の電解触媒よりも、それぞれの半反応に対する電解触媒としての活性が低くてもよい。
【0026】
受動領域は、受動領域の電解質液との電解質界面において(すなわち、使用中に電解質液に接触する受動領域の表面領域内)、電解触媒領域の電解質界面に(すなわち、電解触媒領域の表面領域内に)存在するよりも少ない、電解触媒領域の電解触媒を含んでもよい。言い換えれば、受動領域の電解質界面における(すなわち、表面領域内の)受動領域の材料組成は、それぞれの電解質界面における電解触媒領域の材料組成よりも少ない電解触媒を含んでもよい。たとえば、これは、5重量%よりも少ない電解触媒、1重量%よりも少ない電解触媒、0.1重量%よりも少ない電解触媒を含んでもよい。電解質界面における受動領域の組成は、たとえば、1μmの厚さを有する、使用中に電解質液に隣接する受動領域の表面領域を参照することによって評価されてもよい。
【0027】
多孔質受動領域について、電解質界面は、多孔質領域のチャネルまたは細孔の内面を含んでもよい。受動領域は、電解質界面を画定するマトリックス(またはボディ)を含んでもよく、マトリックス(またはボディ)は、5重量%よりも少ない電解触媒、1重量%よりも少ない電解触媒、または0.1重量%よりも少ない電解触媒を含む。受動領域は、電解質界面を画定し、マトリックス(またはボディ)よりも電解触媒としての活性が低い不動態化コーティングを設けられたマトリックス(またはボディ)を含んでもよく、不動態化コーティングは、5重量%よりも少ない電解触媒、1重量%よりも少ない電解触媒、または0.1重量%よりも少ない電解触媒を有する。被着され得る例示的な不動態化コーティングは、本明細書の他の箇所において説明する。
【0028】
電解触媒領域の表面領域は、第1の組成を有してもよい。受動領域の表面領域は、第2の組成を有してもよい。公称セル内の電解質液の電解のそれぞれの半反応を実行するための公称電極は、公称電極の電解質界面において電解質液に隣接する表面領域を有してもよい。表面領域は、電解質界面から1μmの厚さを有してもよい。
【0029】
第1の組成および第2の組成は、公称電極の表面領域が第1の組成を有するときに、公称セル内の公称電極において10mAcm-2の電流密度に達するのに必要とされる過電圧が、たとえば、22.5MPaおよび375℃の公称圧力および温度において、公称電極の表面領域が第2の組成を有するときの、公称セル内の公称電極において10mAcm-2の電流密度に達するのに必要とされる過電圧の半分以下、3分の1以下、または5分の1以下であるように、選択されてもよい。
【0030】
それぞれの半反応は、本明細書の他の箇所において論じられるように受動領域がパッシベーション層またはコーティングとして提供されることによって抑制され得る。
【0031】
電解触媒領域、受動領域、および電解触媒として活性である領域または電解触媒としての活性がより低い領域としてのそれらの領域の特性に関係する上記の陳述のいずれかは、詳細な説明において下記に論じられている実施例のいずれかに適用され得る。
【0032】
電解触媒領域は、電解触媒を含むコーティングまたは層を含み、コーティングまたは層は、複合多孔質電極の出口側を画定し得る。
【0033】
電解触媒は、上述したように、電解質液の電解の半反応に触媒作用を及ぼすのに適し得、適切な電解触媒は後述する。電解触媒領域が複合多孔質電極の出口側を画定する層を含むとき、層は、多孔質壁が製造される方法を問わず、多孔質壁に付着されるメッシュとして提供され得る。たとえば、メッシュは、電解触媒を含むホイル、または、コーティングとして電解触媒を設けられている導電性ホイルなどの、伸張されたホイルから形成されてもよい。適切な導電性ホイルまたはメッシュの例は、Niコーティング(ただし、他の適切な電解触媒が本明細書の他の箇所において説明される)などの電解触媒コーティングを有する、伸張された銅、ステンレス鋼またはチタンホイルまたはメッシュを含む。
【0034】
複合多孔質電極は、(電解質液の電解のそれぞれの半反応について)電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、それぞれの半反応を抑制するように構成されている受動領域を含んでもよい。受動領域は、電解触媒領域に関する比較定義に関する事項を含め、本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているようなものであってもよい。受動領域は多孔質であってもよく、電解触媒領域は、電解触媒を含み、複合多孔質電極の出口側を画定するコーティングまたは層によってのみ画定されてもよい。したがって、受動領域の電解質界面は、多孔質受動領域を通じて延在する細孔またはチャネルの内面(または表面)を含んでもよく、電解触媒領域の電解質界面は、複合多孔質電極の細孔またはチャネルの内面まで延在しなくてもよい。そのような構成において、電解触媒領域は、複合多孔質電極の出口側に向かって実質的に全体的に画定される。
【0035】
他の様態で、電解触媒領域は、付加的に、複合多孔質電極の多孔質領域を含んでもよく、ここで、電解触媒領域の電解質界面は、多孔質領域の細孔またはチャネルの内面(または表面)を含む。電解触媒領域は、マトリックス(またはボディ)を含んでもよく、電解触媒は、内面(または表面)を含む電解質界面を画定するためのマトリックス(またはボディ)の上のコーティングとして提供されてもよい。たとえば、このコーティングは、複合多孔質電極の出口側を画定するコーティングと同時に形成されてもよい。たとえば、コーティングは、マトリックス材料の内部および外部に被着されてもよい。次いで、不動態化コーティングが、下記に規定するように被着されてもよい。
【0036】
複合多孔質電極のマトリックス材料が電解触媒領域の電解質界面を画定するか否かにかかわらず(すなわち、任意のコーティングを被着する前のマトリックス材料が電解触媒として活性であるように意図されているか否かにかかわらず)、マトリックス材料は、導電性であってもよく、電解槽によって画定され、電極を含む電解回路内の電極の一部分および/または電気経路の一部としての役割を果たすように構成されてもよい。
【0037】
複合多孔質電極は、電解触媒領域および/または受動領域(存在する場合)を通じて延在する複数の傾斜チャネルによって画定される異方性多孔質構造を有してもよい。
【0038】
複合多孔質電極は、長手方向軸に沿って直線的に延在してもよく、入口側から出口側への直交する厚さ方向を有してもよい。複合多孔質電極は、各々が長手方向軸と厚さ方向の両方に関して傾斜している、電解質液が入口チャンバから保持チャンバへと流れることを可能にするように構成されている複数の傾斜チャネルによって画定される異方性多孔質構造を有してもよい。傾斜チャネルは、電解触媒領域の少なくとも一部分を通じて延在してもよい。
【0039】
長手方向軸に沿って直線的に延在する複合多孔質電極は、設置される体積および/または隣接する電解槽の間の空隙を最小限に抑えながら、電解反応のための表面積を最大化することができる。
【0040】
第2の態様に従って電解槽が電解設備内に設けられるとき、長手方向軸は、垂直に向けられてもよく、結果、傾斜チャネルは、保持チャンバに向かって上向きの構成要素によって(すなわち、上向きに)傾斜する。
【0041】
複合多孔質電極は、長手方向軸に関して軸対称であってもよく、結果、長手方向軸の周りの任意の点における厚さ方向は、長手方向軸を中心とした半径方向に対応する局所的な厚さ方向である。
【0042】
電解槽は、軸対称(たとえば、円筒形)複合多孔質電極によって実装されてもよく、この場合、長手方向軸は、複合多孔質電極の断面の重心を通過する軸であってもよい。電解槽は、横軸と長手方向軸の両方に沿って直線的に延在する平坦電極などの、非軸対称複合多孔質電極によって実装されてもよい。長手方向軸に沿った複合多孔質電極の延在範囲は、横軸に沿った延在範囲よりも相対的に大きくてもよく、結果、これは、長手方向軸に沿って長尺である。
【0043】
傾斜チャネルは、長手方向軸が実質的に垂直になり、傾斜チャネルが保持チャンバに向かって上向きに傾斜するように向けられるときに、それぞれの流体反応生成物の返流を抑制すると考えられる。特に、電解反応において、流体反応生成物(酸素および水素)は、水(または任意の適切な電解質液)よりも低い密度を有し、結果、それらの流体反応生成物に対する浮力は、それらの流体反応生成物を上向きに、したがって、保持チャンバに向かってそれぞれのチャネルに沿って駆動する傾向になる。
【0044】
チャネルは、チャネルの図心軸がそれぞれの軸または方向に対して傾斜するときに、ある軸または方向に対して傾斜し得る。
【0045】
各チャネルは、厚さ方向に沿って発散する断面を有してもよい。理論によって束縛されることを所望することなく、発散する断面は、電解質液の混合物の持続的な流れを助長し、混合物中の流体反応生成物の割合が電解触媒領域内での持続的な反応によって増大するため、厚さ方向に沿った流体反応生成物の密度をより低くすることを助長すると考えられる。発散する断面は、厚さ方向に沿った混合物の膨張に対応し、したがって、流体反応生成物の返流を抑制すると考えられ得る。
【0046】
複合多孔質電極の入口側は、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、もしくは、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されている受動領域によって画定されてもよく、および/または、受動領域は、複合多孔質電極の入口側を画定する不動態化コーティングを含んでもよい。
【0047】
受動領域は、電解触媒領域に関する比較定義に関する事項を含め、本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているようなものであってもよい。
【0048】
したがって、電解のそれぞれの半反応が、複合多孔質電極の入口側で発生することが抑制または防止され得、結果、反応は、電解質液(またはそれぞれのイオン)が電解触媒領域内の傾斜チャネルのうちの1つに入ったこと、または、傾斜チャネルを通過して、複合多孔質電極の出口側を画定する電解触媒領域に達したことを受けてのみ行われるか、または、主にこれを受けて行われてもよい。(たとえば、複合多孔質電極の出口側を画定する電解触媒領域との反応によって)保持チャンバ内で生成される任意の流体反応生成物が、複合多孔質電極を通じて流れ戻ることを抑制することができることがあってもよく、これは、より低密度の流体反応生成物が、浮力に抗してチャネルを通じて下向きに流れる必要があり得るためである。傾斜チャネル内の浮力が入口チャンバへの上流の流れではなく、保持チャンバへの下流の流れを促進するため、これは、下流に付勢された浮力効果による流体反応生成物の逆流の抑制として参照され得る。さらに、保持チャンバ内の流体反応生成物は、入口チャンバへと流れ戻るためには、そのような浮力に抗して流れる必要がある。
【0049】
受動領域が複合多孔質電極の入口側を画定する不動態化コーティングを含むとき、不動態化コーティングは、たとえば、シリカ(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、またはジルコニア(ZrO2)などの酸化物コーティング(たとえば、無機金属酸化物コーティング)などの、誘電体コーティングであってもよい。本明細書における、不動態化または不動態化コーティングの提供に対するすべての参照は、先行する文において記載されている例示的な材料のコーティングなどの、誘電体コーティングを被着させることを含み得る。
【0050】
複合多孔質電極の入口側を不動態化することによって、電極において生成されるそれぞれの流体反応生成物は、入口チャンバを区切る入口側ではなく、入口チャンバから下流にあるロケーション(たとえば、電解触媒領域内のまたは複合多孔質電極の出口側の複合多孔質電極内)においてのみ生成され得る。これによって、それぞれの流体反応生成物が入口チャンバ内で生成されるかまたは入口チャンバに移行することが抑制され得る。
【0051】
各チャネルは、その長さに沿って25~150μmの平均直径を有してもよい。
【0052】
上述したように、複合多孔質電極は、マトリックス(またはボディ)と、たとえば電解触媒を各チャネルの内面へと電気めっきすることによって形成されるものとしての、電解触媒を含み、各チャネルの内面を画定するコーティングとを備えてもよい。たとえば、複合多孔質電極のマトリックス(またはボディ)は、付加製造によって形成されてもよく、電気めっきされて、電解触媒コーティングを提供してもよい。次いで、不動態化コーティングが、たとえば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)またはチタニア(TiO2)などの不動態化物質のCVD(化学気相成長)によって、複合多孔質電極の入口側を画定するために一方の側に設けられてもよい。
【0053】
別の例において、チャネルは、たとえば、レーザ穿孔プロセスによって、多孔質壁または複合多孔質電極を形成するための加工片から材料を除去することによって形成されてもよい。
【0054】
入口チャンバから保持チャンバへの電解質液の流路が存在してもよく、流路は、多孔質壁の受動領域を通る上流部分と、保持チャンバと関連付けられる電極の電解触媒領域を通るかまたはそれに隣接する下流部分とを備える。受動領域は、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されてもよい。電解触媒領域は、本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているようなものであってもよい。受動領域は、電解触媒領域に関する比較定義に関する事項を含め、本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているようなものであってもよい。したがって、下流部分に達するすべての流れは、最初に、上流部分を通過する。言い換えれば、多孔質壁(本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているような複合多孔質電極の一部であってもよい)は、他方の電極に対向する入口側(たとえば、複合多孔質電極の入口側)を有してもよく、電解触媒領域は、他方の電極に対向し、入口側から離間される、イオン交換のためのイオン交換境界を有してもよい。いくつかの実施態様において、イオン交換境界は、本発明の第1の態様に関する上記の陳述のいずれかにおいて定義されているような複合多孔質電極内に埋め込まれてもよい。当然の帰結として、電解触媒領域は、複合多孔質電極内にあり、入口側まで延在しないものとして説明され得る。本明細書において、構成要素、表面または境界は、当該構成要素、表面または境界が別のエンティティに面するとき、別のエンティティに「対向する」。
【0055】
受動領域および電解触媒領域は、入口チャンバから保持チャンバへと多孔質壁をまたいだ圧力差があるか、または、圧力差がないかにかかわらず、受動領域が受動領域および電解触媒領域を通る流れに対する抵抗に寄与するように構成されてもよい。これは、受動領域の上流流れ抵抗による流体反応生成物の逆流の抑制として参照され得る。
【0056】
多孔質壁の受動領域は、厚さtwおよび透過率kwを有してもよく、下流部分は、厚さteおよび透過率keを有する電解触媒領域を通ってもよい。受動領域および電解触媒領域の相対流れ透過率は、以下の不等式を満たし得る。
【0057】
【0058】
言い換えれば、受動領域および電解触媒領域の相対流れ透過率は、それらのそれぞれの透過率の比に、それらの厚さの反比を乗算した値として算出される。
【0059】
相対流れ透過率は、2以下、たとえば1以下、0.5以下または0.2以下であってもよい。相対流れ透過率は、各領域が流路に沿った全体的な流れ抵抗に対して為す寄与に関係付けられる。入口チャンバと保持チャンバとの間に、流路に沿った電解質液の流れを駆動し、流路に沿った圧力降下を確立する圧力差が存在するとき、相対透過率は、それぞれの領域にわたる比例する圧力降下に関係付けられる。たとえば、5未満の相対透過率は、流路の上流および下流部分に沿った総圧力降下または流れ抵抗の少なくとも6分の1を提供する多孔質壁の受動領域にわたる圧力降下に対応し、一方、0.2の相対透過率は、受動領域にわたる圧力降下が、電極の電解触媒領域にわたる圧力降下よりも5倍大きいことに対応する。したがって、受動領域は、相当量の全体的な流れ抵抗を提供し、電極の電解触媒領域において生成される流体反応生成物が入口チャンバに戻ることを抑制する。
【0060】
電解槽のいくつかの実施態様において、多孔質壁および電極は、単一構造として(すなわち、複合多孔質電極として)提供されてもよく、結果、流路の上流および下流部分は互いに連続し、保持チャンバに入るすべての流れは、最初に、多孔質壁の受動領域、および、次の、電極の電解触媒領域の両方を通過する。多孔質壁は、電極と重なり合うことができる(すなわち、電解触媒領域は多孔質であってもよい)ことを理解されたい。
【0061】
受動領域(たとえば、多孔質壁の)、電極の電解触媒領域、または、そのような領域を提供し得る複合多孔質電極は、(i)非構造化多孔質媒体、または(ii)それぞれ壁、電極または複合部材に多孔性を提供するチャネルの構造化アレイを含んでもよい。
【0062】
たとえば、チャネルの構造化アレイは、たとえば、チャネルの構造化アレイが構成要素内に存在するように付加製造プロセスによってそれぞれの構成要素を形成することによって、および/または、(たとえば、レーザ穿孔プロセスによって)そのようなチャネルを提供するために構成要素から材料を除去することによって、多孔性を提供するために他の様態で非多孔質の材料内に設けられてもよい。「構造化チャネル」という表現は、複数のチャネルが互いに対して所定のパターンで(たとえば、均一に離間されて)方向付けられることを示すように意図されている。構造化チャネルは、離散的であってもよい(すなわち、交差しないチャネル)。構造チャネルは、一般的に、直線的であってもよい。チャネルの構造化アレイは、一般に、構成要素に異方性有孔率を提供することができ、本開示は、異方性有孔率を有するそのような構成要素にまで及ぶ。
【0063】
「非構造化多孔質媒体」という表現は、本明細書においては、たとえば、曲がりくねった(たとえば、非直線的に延在する)チャネルのネットワークを規定する、材料を通じた流れを可能にする細孔のネットワークを有する多孔質媒体を指すために使用される。「非構造化」という表現は、材料を通る特定の流路が一般的に不規則であることに関連する。たとえば、非構造化多孔質媒体は、空隙(たとえば、ランダムに分散した空隙)が融合産物中に残るように付加製造プロセスにおいて構築材料(たとえば、粉末状または粒状材料)の床を焼結することによって、または、同様に、粉末プレスプロセス(熱間プレス(HP)、冷間静水圧プレスまたは熱間静水圧プレス(HIP)など)によって提供されてもよい。非構造化多孔質媒体は、等方性有孔率を有してもよく、または、他の様態で、等方性多孔質媒体として、もしくは、等方性多孔質構造を有するものとして参照されてもよい。
【0064】
本明細書で開示される多孔質領域を通じた(すなわち、多孔質壁の、または、複合多孔質電極の)流速(または当然の帰結として、それぞれの領域の流れ抵抗)は、その透過率kの関数であり得る。多孔質壁を通る体積流量は、ダルシーの法則にしたがって、壁の面積A、多孔質壁の透過率k、流体の動的粘度、加えられる圧力差および厚さの関数であり得る。透過率は、有孔率、細孔径(または細孔径分布)の適切な選択によって変化し得る。本明細書に記載されているものとしての多孔質領域は、所与の動作条件(たとえば、圧力および温度)および多孔質領域の幾何形状について所望の流速において電解質流を可能にするように選択される適切な透過率を有し得る。たとえば、本明細書に記載されているものとしての1つのまたは任意の多孔質領域は、0.01~10μm2、たとえば0.05~5μm2、0.1~2μm2、または0.5~1.5μm2、たとえば0.7μm2の透過率を有してもよい。多孔質領域は、2~20μm、たとえば2~10μm、または5~10μmの平均細孔径を有してもよい。
【0065】
第1の電極および第2の電極は、互いに対向するそれぞれのイオン交換境界を有してもよく、各イオン交換境界は、それぞれの電極の電解触媒表面またはそれぞれの電極の電解触媒領域の境界である。イオン交換境界のうちの1つの表面積の少なくとも50%について、対向するイオン交換境界までの実質的に一定の最短分離距離が存在してもよく、および/または、対向するイオン交換境界は、実質的に互いに局所的に平行であってもよい。
【0066】
対向するイオン交換境界は、(たとえば、電解質液を通じた)イオン交換のために互いに面する対向する電極の境界、たとえば、それぞれの電極の電解触媒領域の境界である。
【0067】
それぞれのイオン交換境界の表面積の少なくとも80%、少なくとも90%、または実質的に全体について、実質的に一定の最短分離距離が存在してもよい。
【0068】
各々が第1の電極および第2の電極のうちのそれぞれの電極と関連付けられる、入口チャンバを区切る対向する表面が存在してもよい。複合多孔質電極が入口チャンバを区切るとき、これは、複合多孔質電極の受動領域の表面であってもよい。これらの表面のうちの1つの表面積の少なくとも50%について、対向する表面までの実質的に一定の最短分離距離が存在してもよい。これらの表面は、実質的に互いに局所的に平行であってもよい。
【0069】
対向するイオン交換境界間の分離を最小限に抑えることと、電極の延在範囲に沿って相対的に均一な反応速度を提供するように、分離を実質的に一定にすることの両方が望ましい。
【0070】
「局所的に平行」という表現は、イオン交換境界の一方または両方が非平坦である場合に、境界のうちの一方上の任意の点から他方の境界までの局所最短分離ベクトルと位置整合された平面が、対向する境界と交差して実質的に平行な線を規定することを意味するように意図されている。たとえば、対向するイオン交換境界は、円筒状または円錐状かつ同心であってもよく、結果、境界は互いに平行でなくてもよく、局所最短分離ベクトルに沿って2つの境界に局所的に交差する平面は、互いに実質的に平行である2つのそれぞれの線を規定する。
【0071】
第1の電極および第2の電極は各々、長手方向軸に平行に直線的に延在してもよく、各々、長手方向軸に沿って長尺であってもよい。電極がイオン交換のために同延である電極の長手方向延在範囲に沿って、電解槽の断面は、実質的に一定であってもよい。
【0072】
電極がイオン交換のために同延である一定の断面を有するように電解槽を構成することによって、電解槽の構成は、電解槽の容量(たとえば、反応速度、所与の反応効率(たとえば、それぞれの反応生成物を生成するために反応される電解質液の割合)に対する流速、またはkW単位で測定される電力入力によって測定され得るものとしての)を増大させるために、電極(および/または電解槽)の長尺の長さを容易に増大または低減するように適合可能である。
【0073】
第1の電極および第2の電極は、イオン交換のために、電極の対向するイオン交換境界間の平均最短分離距離が存在する同延長手方向延在範囲に沿って、互いに対向してもよい。同延長尺延在範囲と平均最短分離距離との比は、5以上、たとえば、10以上であってもよい。
【0074】
この比は、電解槽の細長い構成、特に、対向する電極間の分離間隙の細長い構成に対応する。対向する電極間の分離距離を減少させることが望ましいことが一般的に知られているが、それに沿って上記で考察した構成においてこれが可能である電極の長尺延在範囲は、(たとえば、イオン交換膜または層流緩衝剤、すなわち、反応生成物が一方の側から他方へと移行するのを防止するための層流条件を維持する電極間の流れによって)それぞれの電極において生成される反応生成物を分離したままにするための手段によって制限され得る。上記で考察した構成において、反応生成物を分離したままにするためのそれらの手段は、イオン交換膜を伴うか、または、任意の相当の長尺延在範囲にわたって維持することが困難である傾向にある。本発明は、細長い分離間隙、すなわち、電極間の分離距離よりもはるかに大きい長尺延在範囲(それに沿って電解質が流れる)を有する分離間隙によって電極が分離されることを可能にする。理論によって束縛されることを所望することなく、これは、保持チャンバから入口チャンバへの逆の流れに対する抵抗を提供し、入口チャンバから保持チャンバへの高い流れ慣性に依拠することなく逆の流れを防止する、多孔質壁の使用によって可能にされ得ると考えられる。高い流れ慣性は、多孔質壁の表面積を減少させる傾向にある、相対的に小さい流積を提供することによって達成され得る。高い流れ慣性に依拠するのではなく、(たとえば、壁をまたいだ圧力降下を実行することによって、または、本明細書に記載されているように他の様態で)逆の流れを抑制する多孔質壁を使用することによって、多孔質壁を通る所与の質量流に対する流積を増大させることができる。これによって、電極の間の分離間隙が本質的に細長くなることが可能であり、電極各それぞれの表面積と分離間隙内の電解質液の体積との間の比が増大する。電解質の速度(たとえば、電解槽を通過するときに反応される電解質液の体積の割合を参照することによって測定され得るものとしての)は、これらの比(すなわち、電極のそれぞれの表面積とそれらの電極の間の分離間隙内の電解質液の体積との比)が増大するにつれて増大する傾向にある。
【0075】
保持チャンバは、それぞれの多孔質壁のみを通じて電解質液を受け入れるように構成されてもよい。
【0076】
(たとえば、複合多孔質電極を提供することによって)多孔質壁を通るすべての流れがそれぞれの電極と相互作用するように電解槽が構成されるとき、保持チャンバがそれぞれの多孔質壁のみを通じて電解質液を受け入れるように電解槽を構成することによって、保持チャンバに入るすべての流れがそれぞれの電極と相互作用することが保証される。さらに、電解質液が多孔質壁のみを介して保持チャンバに入ることができることを可能にすることによって、保持チャンバへの流動様式(たとえば、流速)は、多孔質壁の特性、および/または、多孔質壁を通る電解質液の流速に影響を及ぼす特性を制御することによって確実に制御することができる。他の構成において、多孔質壁を通らない、保持チャンバへの1つまたは複数の入口が存在してもよい。
【0077】
保持チャンバと関連付けられる電極はアノードであってもよく、水性電解質液による使用において、カソードである他方の電極において生成される水素が、アノードにおける酸化によってアノードと関連付けられる保持チャンバへと移行することが抑制され、アノードにおいて生成される酸素が、多孔質壁を通じて入口チャンバへと移行することが抑制される。
【0078】
本開示において使用されるものとしての「水性電解質液」という表現は、少なくとも50重量%の水を含み、電解反応に適している任意の溶液を指し得る。例示的な水性電解質液は、本明細書の他の箇所において論じられる。電解質液は、水に加えて、他の無機溶媒を含んでもよい。
【0079】
電解槽は、保持チャンバと関連付けられる電極がアノードになり、他方の電極がカソードになるように電極に結合されている電源端子を備えてもよい。
【0080】
代替的に、保持チャンバと関連付けられる電極がカソードであってもよく、他方の電極がアノードであってもよい。
【0081】
電解槽が、第1の電極および第2の電極のうちのそれぞれの電極と各々関連付けられる2つの保持チャンバを備える場合、上記の特徴は、それらの保持チャンバのうちの1つのみに関係し、結果、保持チャンバのうちの1つが、アノードである電極と関連付けられ、他方の保持チャンバが、カソードである電極と関連付けられることを理解されたい。
【0082】
入口チャンバおよび保持チャンバのうちの一方は、外側環状チャンバであってもよく、他方が、外側環状チャンバによって包囲される内側コアチャンバであってもよい。
【0083】
外側環状チャンバおよび内側コアチャンバは、同心状に配置構成されてもよい。環状およびコアの構成は、それぞれの電極の表面積とそれらの電極の間の分離間隙の体積との間の相対的に高い比を可能にしながら、電解槽の特にコンパクトな構成を提供することができる。環状およびコアの構成は、半径方向外向きの圧力下での変形に対して、(たとえば、同じ構造質量および特性寸法の直線構造と比較して)相対的により耐性がある円筒状構造を使用することを可能にすることができる。
【0084】
代替的に、入口チャンバおよび外側チャンバは、他の構成を有してもよく、たとえば、それらは、(たとえば、電解槽の長手方向軸に垂直な平面内で)実質的に矩形の断面を有してもよい。
【0085】
保持チャンバは、第1の電極と関連付けられてもよく、第1の保持チャンバの出口は、第1の出口である。第2の電極は、入口チャンバの壁を画定するフローパスト電極であってもよい。入口チャンバは、第2の電極において生成される流体反応生成物を保持するためのものであってもよく、それぞれの流体反応生成物を放出するための第2の出口を有する。
【0086】
第2の電極は、第1の電極と関連付けられる多孔質壁に対向する入口チャンバの壁を画定してもよい。
【0087】
電解槽は、第1の電極において生成される流体反応生成物を保持し、第1の出口を通じて流体反応生成物を放出するための、第1の電極と関連付けられる第1の保持チャンバと、第2の電極において生成される流体反応生成物を保持し、第2の出口を通じて流体反応生成物を放出するための、第2の電極と関連付けられる第2の保持チャンバとを備えてもよい。電解槽は、各々が入口チャンバと、それぞれの保持チャンバとを分離する第1の多孔質壁および第2の多孔質壁を備えてもよい。
【0088】
言い換えれば、第1の態様と関連付けられる先行する陳述において記載されている保持チャンバは、電解槽の第1の保持チャンバおよび第2の保持チャンバのうちの一方であり、先行する陳述において記載されている多孔質壁は、電解槽の第1の多孔質壁および第2の多孔質壁のうちの一方である。
【0089】
各保持チャンバおよび各多孔質壁は、本発明の第1の態様に関して上述した特徴のうちのいずれかを有してもよい。たとえば、各多孔質壁は、それぞれの電極とともに、複合多孔質電極によって提供されてもよく、結果、電解槽は、本発明の第1の態様に関して上述した特徴のうちのいずれかを有する2つの複合多孔質電極を備える。
【0090】
第1の保持チャンバおよび/または第1の多孔質壁は、それぞれ第2の保持チャンバおよび/または第2の多孔質壁と異なる構成を有してもよく、たとえば、第1の保持チャンバは、本発明の第1の態様に関して上述した任意の特徴の第1の組合せを有してもよく、一方、第2の保持チャンバは、本発明の第1の態様に関して上述した任意の特徴の異なる第2の組合せを有してもよい。したがって、電解槽を定義する陳述は、とりわけ、第1の保持チャンバ、第1の多孔質壁(任意選択で、第1の複合多孔質電極によって提供される)、第2の保持チャンバ、および第2の多孔質壁(任意選択で、第2の複合多孔質電極によって提供される)を定義するように再公式化されてもよく、第1の保持チャンバおよび第2の保持チャンバならびに/または第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は、本発明の第1の態様に関して上述した任意のそれぞれの特徴の異なる組合せによって定義される。
【0091】
入口チャンバは、それぞれの多孔質壁を介した保持チャンバ以外の出口を有しなくてもよい。そのような構成において、入口チャンバに入った電解質液は、他の電解質液を保持チャンバへと外方に変位させざるを得ないため、それぞれの多孔質壁の各々をまたいだ重大な圧力降下がない場合であっても、入口チャンバに流れを提供することによって、それぞれの多孔質壁を通じた電解質液の流れを駆動することができる。それにもかかわらず、多孔質壁は、それぞれのチャンバ内の開放空間よりも多大な、流れに対する制約を提示するため、定常状態条件において、必然的に、壁をまたいだ圧力勾配が存在することになり、結果、各保持チャンバの下流の流体に対する抵抗が最小の経路はそれぞれの出口までのものとなり、入口チャンバへの流体反応生成物の逆流が効果的に抑制される。これは、電解質液の置換流による流体反応生成物の逆流の抑制として参照され得る。
【0092】
入口チャンバは環状チャンバであってもよく、第1の保持チャンバおよび第2の保持チャンバのうちの一方は、入口チャンバによって包囲される内側コアチャンバであってもよく、第1の保持チャンバおよび第2の保持チャンバのうちの他方は、入口チャンバを包囲する外側環状チャンバであってもよい。
【0093】
電解槽は、電解槽内の熱力学的条件および/または流速条件を制御するための流動制御機器を制御するように構成されているコントローラをさらに備えてもよい。
【0094】
たとえば、流動制御機器は、本明細書に記載されているような第1の出口および第2の出口の下流にある1つまたは複数の放出弁を含んでもよい。そのような弁は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。流動制御機器は、入口チャンバの上流の電解質液を加熱するように構成されている加熱器を備えてもよい。加熱器は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。流動制御機器は、入口チャンバの上流の電解質液を圧縮するように構成されている圧縮器を備えてもよい。圧縮器は、電解槽の一部であってもよく、または、電解設備において(またはその中に)電解槽とともに設置されてもよい。
【0095】
コントローラは、水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃などの、入口チャンバおよび保持チャンバ内の電解質液に対する超臨界圧条件および/または温度条件を維持するように流動制御装置を制御するように構成することができる。本明細書において論じられているいくつかの実施例は、超臨界条件における動作に関し、貼付の特許請求の範囲は、コントローラが超臨界条件を維持するように構成されている電解槽または電解槽設備を参照するが、本開示は、本明細書に記載されているような(たとえば、本開示において想定されている特徴の任意の組合せによる)、電解質液の超臨界条件を維持するためのそのようなコントローラまたは制御部が存在しない電解槽および電解槽設備ならびに動作方法を想定する。
【0096】
コントローラは、22~27MPaおよび374~550℃、たとえば374~400℃などの、入口チャンバおよび保持チャンバ内の電解質液に対する超臨界圧条件および/または温度条件を維持するように流動制御装置を制御するように構成することができる。超臨界条件を維持することによって、電解反応と関連付けられる損失を、(i)電極の表面上での反応生成物の気泡の形成を抑制すること、および/または、所与の量の電解質の所与の電解質濃度に対する電解質液の伝導率を増大させること(または逆に、相対的により低い濃度の電解質を使用して適切な伝導率を達成すること)によって、減少させることができる。
【0097】
電解槽は、第1の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、第1の電極と関連付けられる第1の出口と、第2の電極において生成される流体反応生成物を放出するための、第2の電極と関連付けられる第2の出口とを備えてもよい。流動制御機器は、それぞれ第1の出口および第2の出口と流体連通する第1の放出弁および第2の放出弁を含んでもよい。
【0098】
電解槽は、第1の放出弁および第2の放出弁を備えてもよい。第1の放出弁および/または第2の放出弁は、可変制御弁であってもよい。
【0099】
第1の放出弁は、弁の上流において第1の目標圧力を維持するように構成されてもよく、第2の放出弁は、弁の上流において第2の目標圧力を維持するように構成されてもよい。第1の放出弁および第2の放出弁は、入口チャンバから多孔質壁を通じて保持チャンバに入る電解質液の分岐流を駆動する、多孔質壁をまたいだ圧力降下を引き起こすために、異なる目標圧力を維持するように構成されてもよい。代替的に、第1の放出弁および第2の放出弁は、同じ目標圧力を維持するように構成されてもよく、入口チャンバから多孔質壁を通じて保持チャンバに入る電解質液の圧力駆動分岐流が抑制される。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、それぞれの目標圧力を維持するように制御するように構成されてもよい。
【0100】
コントローラは、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速もしくは目標組成を維持し、ならびに/または、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御するように構成されてもよい。目標流速比は、第1の出口を出る総流速と第2の出口を出る総流速との比、または、第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応してもよい。
【0101】
コントローラは、それぞれの放出流についてコントローラによって受信される流速データおよび/もしくは組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口の各々からの流れのそれぞれの目標流速またはそれぞれの目標組成を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御するように構成されてもよい。
【0102】
上記で参照されているものとしての目標流速は、それぞれの出口からの総流速であってもよく、または、それぞれの出口から流れる混合物の特定の成分流体の流速、たとえば、酸素および電解質液を含む混合物中の酸素の流速、もしくは、酸素および電解質液を含む混合物中の水素の流速であってもよい。目標流速は、質量流速であってもよい。
【0103】
流速データは、電解槽のセンサ、または、電解槽が設置されている設備のセンサによって決定されてもよい。たとえば、各それぞれの放出弁の下流に流量計が存在してもよい。電解槽が設置されている設備内の別個の装置の下流に1つまたは複数の流量計が存在してもよい。たとえば、分離装置は、各出口を通じて放出される流れを、それぞれの反応生成物の流れと、電解質液(または水)の流れとに分離してもよく、流量計は、各成分(すなわち、反応生成物および電解質液)の流速を監視するために分離手段上にまたはその各出口に設置されてもよい。放出弁、それぞれの弁を通じた流速を監視するための流量計、および、流量計からの信号に基づいて放出弁を制御するコントローラの組合せは、質量流コントローラを提供することができ、このコントローラは、目標流速を維持するために流量計からの信号に基づいて放出弁を制御する。
【0104】
上流圧力データが、弁の上流の電解質液の圧力を監視するために、電解槽の1つもしくは複数の圧力センサ、または、電解槽が設置されている設備の1つもしくは複数の圧力センサによって決定されてもよい。たとえば、圧力センサは、それぞれの反応生成物を保持するチャンバのうちの1つまたは各々の中へと延在してもよく、それぞれの圧力信号をコントローラに送るように構成されてもよく、または、差圧センサ(差圧トランスデューサであってもよい)が、チャンバ間の圧力差に応答し、差圧信号をコントローラに送るように構成されてもよい。たとえば、コントローラは、目標動作条件(たとえば、例として、出口を通じた1つまたは各それぞれの反応生成物の目標流速)を維持するために、それぞれの目標範囲内のそのもしくは各それぞれの圧力を維持するか、または、目標範囲内の圧力差を維持するように較正されてもよい。
【0105】
目標組成は、それぞれの出口を通じて放出される流れの中の流体反応生成物の目標割合であってもよい。組成は、質量分率であってもよい。組成データは、それぞれの出口を通じて放出される流れの各成分(すなわち、それぞれの反応生成物および電解質液)の流速の監視に基づいて得ることができる。
【0106】
コントローラは、流速または成分質量分率の数値を得ることができる流速データまたは組成データを受信しなくてもよく、コントローラを適切に較正することによって、目標流速、組成または流速比を維持することができるように、そのまたは各放出弁を制御するために使用することができる流れの流速または組成に関係するデータを受信することができる。
【0107】
コントローラは、それぞれの出口流についてコントローラにおいて受信される組成データに基づいて、第1の出口を通る出口流中に過量の第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されてもよく、または、第2の出口を通る出口流中に過量の第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定するように構成されてもよい。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、上記判定に基づいて電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御するように構成されてもよい。
【0108】
たとえば、コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、入口チャンバからそれぞれの出口までの圧力降下を増大させてそれぞれの出口を通じた流速を増大させるように制御されてもよい。たとえば、出口が多孔質壁の下流にあるとき、その多孔質壁を通じた流速を増大させることによって、(たとえば、多孔質壁を通る流れの慣性によって)その多孔質壁を通る反応生成物の逆流が抑制されてもよい。
【0109】
コントローラは、4000以下、たとえば2300以下である入口チャンバ内のレイノルズ数に対応する、電解槽を通る電解質液の熱力学的条件および/または流速条件を維持するように構成されてもよい。上記レイノルズ数基準を満たすように電解質液の条件を制御することによって、別の場合には第1の電極から電極間の分離間隙を越えて保持チャンバに向かう反応生成物の移行を促進するおそれがある、入口チャンバ内の乱流および/または遷移混合を防止することができる。
【0110】
本明細書において開示されている第1の電極および/または第2の電極は、水の電解のための(すなわち、水の電解の酸化または還元反応のための)電解触媒などの、電解触媒(他の様態で電解触媒材料として参照される場合がある)を含むそれぞれの電解触媒領域を含んでもよい。
【0111】
適切な電解触媒は、貴金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、Re)、dブロック遷移金属(すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rg、Cn)、fブロックランタニド(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、希土類金属(すなわち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、白金族金属(すなわち、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、P、S、Cおよび/またはそれらの組合せから選択される1つまたは複数の元素を含んでもよい。上記1つまたは複数の元素は、元素形態(たとえば、(実質的に)純金属として)、混合物中(たとえば、合金)、化合物中(たとえば、酸化物、水酸化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、リン化物、炭酸塩、および/または、金属有機構造体などの有機化合物)に存在してもよく、ならびに/または、ナノ粒子、ナノチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)、ナノケージ(たとえば、フラーレン)および/もしくはナノシート(たとえば、グラフェン)などのナノ材料に組み込まれてもよい。第1の電極の電解触媒領域は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、および/もしくはRe;Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rgおよび/もしくはCn;La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybおよび/もしくはLu;Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu;Ru、Rh、Pd、Os、Irおよび/もしくはPt;P;S;C、ならびに/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。たとえば、第1の電極の電解触媒領域は、Ag、Au、C、Cd、Ce、Cn、Co、Cr、Cu、Db、Ds、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Hg、Ho、Hs、Ir、La、Lu、Mn、Mo、Mt、Nb、Nd、Ni、Os、P、Pd、Pm、Pr、Pt、Re、Rf、Rg、Rh、Ru、S、Sc、Sm、Ta、Tb、Tc、Ti、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。第1の電極の電解触媒領域は、Pt、Ir、Pd、Ni、Fe、Co、P、S、Moおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。
【0112】
第2の電極の電解触媒領域は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、および/もしくはRe;Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rgおよび/もしくはCn;La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu;Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu;Ru、Rh、Pd、Os、Irおよび/もしくはPt;P;S;C、ならびに/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。たとえば、第2の電極の電解触媒領域は、Ag、Au、C、Cd、Ce、Cn、Co、Cr、Cu、Db、Ds、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Hg、Ho、Hs、Ir、La、Lu、Mn、Mo、Mt、Nb、Nd、Ni、Os、P、Pd、Pm、Pr、Pt、Re、Rf、Rg、Rh、Ru、S、Sc、Sm、Ta、Tb、Tc、Ti、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。第2の電極の電解触媒領域は、Pt、Ir、Pd、Ni、Fe、Co、P、S、Moおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含んでもよい(たとえば、それらから成ってもよい)。
【0113】
第1の電極および第2の電極のうちの一方はアノードであってもよく、第1の電極および第2の電極のうちの他方はカソードであってもよい。したがって、第1の電極および第2の電極のそれぞれの電解触媒領域は、互いに異なる電解触媒を含んでもよい。
【0114】
たとえば、第1の電極は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、および/もしくはRe;Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rgおよび/もしくはCn;La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybおよび/もしくはLu;Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybおよび/もしくはLu;Ru、Rh、Pd、Os、Irおよび/もしくはPt;P;S;C、ならびに/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第1の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するアノードであってもよく、第2の電極は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag、および/もしくはRe;Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、R、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Rf、Db、S、Rh、Hs、Mt、Ds、Rgおよび/もしくはCn;La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybおよび/もしくはLu;Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybおよび/もしくはLu;Ru、Rh、Pd、Os、Irおよび/もしくはPt;P;S;C、ならびにそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第2の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するカソードであってもよく、第1の電解触媒と第2の電解触媒とは異なってもよい(すなわち、異なる組成を有してもよい)。
【0115】
第1の電極は、Ag、Au、C、Cd、Ce、Cn、Co、Cr、Cu、Db、Ds、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Hg、Ho、Hs、Ir、La、Lu、Mn、Mo、Mt、Nb、Nd、Ni、Os、P、Pd、Pm、Pr、Pt、Re、Rf、Rg、Rh、Ru、S、Sc、Sm、Ta、Tb、Tc、Ti、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第1の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するアノードであってもよく、第2の電極は、Ag、Au、C、Cd、Ce、Cn、Co、Cr、Cu、Db、Ds、Dy、Er、Eu、Fe、Gd、Hf、Hg、Ho、Hs、Ir、La、Lu、Mn、Mo、Mt、Nb、Nd、Ni、Os、P、Pd、Pm、Pr、Pt、Re、Rf、Rg、Rh、Ru、S、Sc、Sm、Ta、Tb、Tc、Ti、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zr、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第2の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するカソードであってもよく、第1の電解触媒と第2の電解触媒とは異なってもよい(すなわち、異なる組成を有してもよい)。
【0116】
第1の電極は、Co、Fe、Ir、Li、Ni、P、S、Ti、Znおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するアノードであってもよく、第2の電極は、Ce、Co、Fe、Ho、Ir、Mo、Ni、Pd、Pt、Ru、Sm、Wおよび/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するカソードであってもよく、第1の電解触媒と第2の電解触媒とは異なってもよい(すなわち、異なる組成を有してもよい)。
【0117】
第1の電極は、Ni、Fe、Co、P、S、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第1の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するアノードであってもよく、第2の電極は、Pt、Ir、Pd、Ni、Mo、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第2の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するカソードであってもよく、第1の電解触媒と第2の電解触媒とは異なってもよい(すなわち、異なる組成を有してもよい)。
【0118】
第2の電極は、Ni、Fe、Co、P、S、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第2の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するアノードであってもよく、第1の電極は、Pt、Ir、Pd、Ni、Mo、および/またはそれらの組合せを含む(たとえば、それら基本的に構成されるかまたはそれらから成る)第1の電解触媒を含む(たとえば、それらから成る)電解触媒領域を有するカソードであってもよく、第1の電解触媒と第2の電解触媒とは異なってもよい(すなわち、異なる組成を有してもよい)。
【0119】
いくつかの例において、第1の電極の電解触媒領域は、Ni(たとえば、元素Ni)を含み(たとえば、それから基本的に構成されるかまたはそれから成り)、第2の電極の電解触媒領域は、Pt(たとえば、元素Pt)を含む(たとえば、それから基本的に構成されるかまたはそれから成る)。
【0120】
電解触媒領域は、コーティングとして電解触媒領域のマトリックス(またはボディ)上に被着される電解触媒を含んでもよく、または、マトリックス(またはボディ)が、電解触媒を含んでもよい(たとえば、電解触媒コーティングがない場合)。
【0121】
たとえば、複合多孔質電極などの電極のマトリックス(またはボディ)は、ニッケル基超合金などのニッケル基合金を含んでもよい(たとえば、それから成ってもよい)。ニッケル基合金(たとえば、ニッケル基超合金)は、インコネル(登録商標)合金などのニッケル・クロム合金(たとえば、ニッケル・クロム超合金)であってもよい。ニッケル・クロム合金(たとえば、ニッケル・クロム超合金)は、約50重量%以上、たとえば、約70重量%以上のニッケル、および、約5重量%以上、たとえば、約10重量%以上のクロムを含んでもよい。ニッケル・クロム合金(たとえば、ニッケル・クロム超合金)は、鉄、マンガン、銅、ケイ素、炭素および/または硫黄、ならびに通常の不純物をさらに含んでもよい。たとえば、ニッケル・クロム合金(たとえば、ニッケル・クロム超合金)は、インコネル(登録商標)600であってもよい。インコネル(登録商標)600は、約72.0重量%以上のニッケル、約14.0重量%~約17.0重量%のクロム、約6.0重量%~約10.0重量%の鉄、約1.0重量%以下(すなわち、0重量%を含む)のマンガン、約0.5重量%以下(すなわち、0重量%を含む)の銅、約0.5重量%以下(すなわち、0重量%を含む)のケイ素、約0.15重量%以下(すなわち、0重量%を含む)の炭素、約0.015重量%以下(すなわち、0重量%を含む)の硫黄、および、通常の不純物から成り、合金の合計含有量は100重量%になる。
【0122】
電解槽とともに使用するための水性(すなわち、水系)電解質溶液は、1つまたは複数のアルカリ金属水酸化物または炭酸塩などの、1つまたは複数のアルカリ金属塩の水溶液であってもよい。たとえば、電解質溶液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、またはそれらの任意の組合せ(リチウム、ナトリウムおよびカリウム炭酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3など)の水溶液であってもよい。1つの例において、電解質溶液は、1mol/L(すなわち、1M)の濃度を有する水酸化カリウム(KOH)の水溶液である。別の例において、電解質溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)および炭酸カリウム(K2CO3)の水溶液であり、溶液中の水酸化ナトリウム(NaOH)の濃度は1Mであり、溶液中の炭酸カリウム(K2CO3)の濃度は0.5Mである。水性電解質溶液のさらなる例は、有機物含有水性電解質溶液を含み、例示的な有機物は、炭水化物(たとえば、セルロース)、有機溶媒(たとえば、アルコール)および脂質(たとえば、トリグリセリド)を含む。
【0123】
第2の態様によれば、
電解質液、任意選択で水性電解質液の供給源と、
電解質液の連続電解を実施するための、第1の態様による電解槽と
を備える、電解設備が提供される。
【0124】
電解設備の電解槽の電極が電解触媒領域によって提供されるものとして定義される場合、電解触媒領域は、電解質液の電解の半反応に触媒作用を及ぼすのに適しており、電解触媒領域は電解触媒として活性である。電解槽が、電極と関連付けられる受動領域(たとえば、電解触媒領域を有する複合多孔質電極の受動領域)を含む場合、受動領域は、電解質液の電解のそれぞれの半反応に触媒作用を及ぼすためのそれぞれの電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い。
【0125】
電解設備は、本発明の第1の態様による複数の電解槽を備えてもよい。電解設備は、本明細書において定義されているような流動制御機器を備えてもよい。
【0126】
第3の態様によれば、第1の態様による電解槽を動作させる方法であって、
それぞれの流体反応生成物を生成するために第1の電極および第2の電極によって電解半反応を実行するために電解質液の入口流を入口チャンバに提供することを含み、
電解質液および/または関連付けられるイオンは少なくとも部分的に上記または各多孔質壁を通じて流れてそれぞれの電極と反応し、
上記または各保持チャンバは、それぞれの流体反応生成物を保持し、それぞれの多孔質壁は、流体反応生成物の保持チャンバから入口チャンバへの返流を抑制する、方法が提供される。
【0127】
本方法は、上記または各多孔質壁をまたいだ圧力差がないように、および/または、入口チャンバからそれぞれの保持チャンバまで上記または各多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、電解槽の入口および/または出口条件を制御することを含んでもよい。
【0128】
電解質液は、それぞれの多孔質壁のみを通じて上記または各保持チャンバに受け入れられてもよい。
【0129】
本方法は、保持チャンバと関連付けられるか、または、保持チャンバのうちの1つと関連付けられる電極がアノードになるように、電解槽を動作させることを含んでもよい。電解質液は水性電解質液であってもよく、結果、カソードである他方の電極において生成される水素が、アノードにおける酸化によってアノードと関連付けられる保持チャンバへと移行することが抑制され、アノードにおいて生成される酸素が、多孔質壁を通じて入口チャンバへと移行することが抑制される。
【0130】
電極は、受動領域、たとえば、電極を画定するそれぞれの複合多孔質電極の受動領域、または、それぞれの電極を通じて延在する、入口チャンバから保持チャンバまでの流路に沿った受動領域と関連付けられてもよい。受動領域は、上記の任意の陳述のいずれかにおいて定義されているようなものであってもよい。受動領域は、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、電解のそれぞれの半反応を抑制するように構成されてもよい。保持チャンバと関連付けられる各電極について、それぞれの電解触媒領域における電解のそれぞれの半反応の速度は、それぞれの受動領域における電解の半反応の速度よりも大きい。
【0131】
それぞれの半反応の速度は、たとえばkg/s単位の、それぞれの流体反応生成物(すなわち、電極に応じて水素または酸素)の生成速度であってもよい。本明細書において使用されるものとしてのそれぞれの領域の速度は、単位体積、厚さまたは質量など当たりの特定の速度ではなく、それぞれの領域の総計速度である。たとえば、受動領域内の速度は、電解触媒領域内の速度の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下であってもよい。受動領域内の速度は、実質的にゼロであってもよい。
【0132】
受動領域は、上記で定義したような、入口チャンバから保持チャンバまでの流路に沿った上流部分を画定し得る。電解質液の保持チャンバへの流れ、または、保持チャンバの各々へのそれぞれの流れは、受動領域を通る流路の上流部分に沿って通過し、電解触媒領域と反応する前の流れにおいて圧力降下をもたらすことができる。
【0133】
水性電解質液に関する、少なくとも22MPaの圧力および少なくとも374℃などの、入口チャンバおよび上記または各保持チャンバ内の電解質液に対する超臨界圧条件および温度条件を維持するように、熱力学的条件および/または流速条件が制御されてもよい。
【0134】
電解槽は、上記で定義したような第1の放出弁および第2の放出弁を備えてもよい。第1の放出弁は、弁の上流において第1の目標圧力を維持してもよく、第2の放出弁は、弁の上流において第2の目標圧力を維持してもよい。入口チャンバから多孔質壁を通じて保持チャンバに入る電解質液の分岐流を駆動する、多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在するように、第1の目標圧力と第2の目標圧力とは異なってもよい。代替的に、入口チャンバから多孔質壁を通じて保持チャンバに入る電解質液の圧力駆動分岐流が存在するように、第1の目標圧力と第2の目標圧力とは実質的に等しくてもよい。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、それぞれの目標圧力を維持するように制御してもよい。
【0135】
コントローラは、コントローラによって受信される流速データ、上流圧力データおよび/または組成データに基づいて、第1の出口および第2の出口のうちの一方または各々からの目標流速または目標組成を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御してもよい。コントローラは、コントローラによって受信される流速データおよび/または組成データに基づいて、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比を維持するように、第1の放出弁および/または第2の放出弁を制御してもよい。目標流速比は、第1の出口を出る総流速と第2の出口を出る総流速との比、または、第1の出口を出る第1の流体反応生成物の流速と第2の出口を出る第2の流体反応生成物の流速との比に対応してもよい。
【0136】
コントローラは、たとえば、それぞれの出口流についてコントローラにおいて受信される組成データに基づいて、第1の出口を通る出口流中に過量の第2の流体反応生成物が存在するか否かを判定してもよく、または、第2の出口を通る出口流中に過量の第1の流体反応生成物が存在するか否かを判定してもよい。コントローラは、第1の放出弁および/または第2の放出弁を、上記判定に基づいて電解槽の多孔質壁を通じた流速を変化させるように制御してもよい。
【0137】
電解槽は、入口チャンバ内のレイノルズ数が4000以下、たとえば2300以下であるように、熱力学的条件および/または流速条件を維持するように動作させられてもよい。
【0138】
第4の態様によれば、電解槽の複合多孔質電極を操作する方法であって、
多孔質電極の2つの対向する主面の間の厚さ方向を有するシート状または管状壁の形態で、付加製造または粉末プレスプロセスによって複合多孔質電極を形成することを含み、
付加製造プロセスの構築材料または粉末プレスプロセスの粉末は、異なる材料組成を有する少なくとも2つの層を含む2つの主面間の層状構造によって複合多孔質電極が形成されるように分散され、使用時、厚さ方向に沿って2つの対向する主面の間で多孔質電極を通る流れが、少なくとも2つの層を通過し、
上記層のうちの1つは、電極の主面のうちの少なくとも一方から離間されている多孔質電極の電解触媒領域を形成する、方法が提供される。
【0139】
電解触媒領域は、水性電解質液による酸化または還元反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒を含んでもよい。
【0140】
電解触媒領域以外の多孔質電極の層は、電解質液の電解のそれぞれの半反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い受動領域を提供し、受動領域は、任意選択で、電解質液の電解のそれぞれの半反応を抑制するための絶縁または誘電体材料を含んでもよい。
【0141】
本方法は、第1の態様または第2の態様による電解槽または電解槽設備を提供するために、電解槽内に複合多孔質電極を設置することを含んでもよい。
【0142】
第5の態様によれば、電解槽の複合多孔質電極を製造する方法であって、
複合多孔質電極のボディを、ボディが長手方向軸に沿って直線的に延在し、第1の主面から対向する主面への直交する厚さ方向を有するように形成することと、
各々が長手方向軸と厚さ方向の両方に関して傾斜している、第1の主面および第2の主面からボディを通って延在する複数の傾斜チャネルを形成することと
を含み、
複数の傾斜チャネルは、
付加製造プロセスによるボディの製造中、または
ボディの製造後に、たとえば、レーザ穿孔プロセスなどによってボディから材料を除去することによって形成される、方法が提供される。
【0143】
チャネルは、チャネルの図心軸がそれぞれの軸または方向に対して傾斜するときに、ある軸または方向に対して傾斜し得る。
【0144】
各チャネルは、その長さに沿って25~150μm、たとえば、25~100μm、25~75μmまたは約50μmの平均直径を有してもよい。
【0145】
ボディは、長手方向軸に関して軸対称であってもよく、結果、長手方向軸の周りの任意の点における厚さ方向は、長手方向軸を中心とした半径方向に対応する局所的な厚さ方向である。
【0146】
ボディは、横軸と長手方向軸の両方に沿って直線的に延在する平坦電極のように、非軸対称であってもよい。長手方向軸に沿った複合多孔質電極の延在範囲は、横軸に沿った延在範囲よりも相対的に大きくてもよく、結果、これは、長手方向軸に沿って長尺である。
【0147】
ボディは、電解質液の電解の半反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒材料(すなわち、電解触媒)を含んでもよい。使用されてもよい適切な触媒および電解質液は、本明細書の他の箇所において論じる。
【0148】
各チャネルは、厚さ方向に沿って発散する断面を有するように形成されてもよい。
【0149】
本方法は、ボディの電解触媒領域を提供するために、チャネルの内面上および/またはボディの一方もしくは両方の主面上に電解触媒を含むコーティングを提供すること、ならびに/あるいは、任意選択で、電解触媒を含むコーティングの上で、ボディの主面上に不動態化コーティングを提供することをさらに含んでもよい。
【0150】
本明細書に記載されているコントローラは、プロセッサを含んでもよい。コントローラおよび/またはプロセッサは、本明細書に記載されており、図面に示されているような方法を実施させる任意の適切な回路を含んでもよい。コントローラまたはプロセッサは、本方法、および/または、コントローラもしくはプロセッサがそれ向けに構成されている、記載されている機能を実施するための、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または、シングルもしくはマルチプロセッサアーキテクチャ、および/または、シーケンシャル(フォン・ノイマン)/並列アーキテクチャ、および/または、少なくとも1つのプログラマブル論理コントローラ(PLC)、および/または、少なくとも1つのマイクロプロセッサ、および/または、少なくとも1つのマイクロコントローラ、および/または、中央処理装置(CPU)を含んでもよい。
【0151】
コントローラは、本明細書に記載されているデータを記憶し、ならびに/または、本明細書に記載されているプロセスおよび機能(たとえば、パラメータの決定および制御ルーチンの実行)を実施するための機械可読命令(たとえば、ソフトウェア)を記憶する1つまたは複数のメモリを含んでもよく、または、プロセッサが、当該メモリを含んでもよく、もしくは、メモリと通信してもよい。
【0152】
メモリは、任意の適切な非一時的コンピュータ可読記憶媒体、1つまたは複数のデータ記憶デバイスであってもよく、ハードディスクおよび/またはソリッドステートメモリ(フラッシュメモリなど)を含んでもよい。いくつかの例において、コンピュータ可読命令は、ワイヤレス信号を介してまたは有線信号を介してメモリに転送されてもよい。メモリは、永続的取り外し不能メモリであってもよく、または、取り外し可能メモリ(ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブなど)であってもよい。メモリは、プロセッサまたはコントローラによって読み出されると、本明細書に記載されており、および/または、図面に示されているような方法を実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶してもよい。コンピュータプログラムは、ソフトウェアもしくはファームウェアであってもよく、または、ソフトウェアとファームウェアとの組合せであってもよい。
【0153】
相互に排他的である場合を除いて、上記の態様のいずれか1つに関連して記載されている特徴は、変更すべきところは変更して任意の他の態様に適用されてもよい。さらに、相互に排他的である場合を除いて、本明細書に記載されている任意の特徴は、任意の態様に適用されてもよく、および/または、本明細書に記載されている任意の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0154】
ここで例示のみを目的として、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【
図1】第1の例示的な電解槽を概略的に示す断面図である。
【
図2】第2の例示的な電解槽を概略的に示す断面図である。
【
図3a】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3b】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3c】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3d】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3e】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3f】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図3g】本明細書に開示されているような電解槽の例示的な電極配置構成を概略的に示す断面図である。
【
図4a】複合多孔質電極を製造する方法の流れ図である。
【
図4b】複合多孔質電極を製造する方法の流れ図である。
【
図5】第3の例示的な電解槽を概略的に示す断面図である。
【
図7】電解設備の動作を制御する方法の流れ図である。
【
図8a】複合多孔質電極を製造する方法の流れ図である。
【
図8b】複合多孔質電極を製造する方法の流れ図である。
【
図9】アルミナをコーティングされたインコネル(登録商標)合金625チューブの壁の中へとチャネルをレーザ穿孔することによって形成される多孔質電極の表面の光学顕微鏡写真(倍率377.5倍)の図である。
【
図10】X線コンピュータ断層撮影(XCT)によって得られる、
図9に示す多孔質電極の断面の画像を示す図である。
【
図11(b)】アルミナをコーティングされたインコネル(登録商標)合金625チューブの壁の中へとチャネルをレーザ穿孔することによって形成される多孔質電極の表面の光学顕微鏡写真(倍率377.5倍)の図である。
【
図12(a)】(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関連する3つのピークを特徴付ける、本発明による電解槽から得られるカソードガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
【
図12(b)】(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関連する3つのピークを特徴付ける、本発明による電解槽から得られるアノードガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
【
図13(a)】酸素較正ガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
【
図13(b)】水素および窒素較正ガスの代表的なガスクロマトグラムの図である。
【
図14】モデル電解槽を通る流れのシミュレーションの等高線図である。
【
図15】モデル電解槽を通る流れのシミュレーションの等高線図である。
【
図16】モデル電解槽を通る流れのシミュレーションの等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0156】
図1は、入口チャンバ100、保持チャンバ110を備える電解槽10の第1の例示的な構成を概略断面図において示す。
【0157】
この例において、電解槽10は、第1の多孔質壁115によって区分された隣り合う入口チャンバ100および保持チャンバ110を有する直線形ダクトの形態である。チャンバ100、110は、電解槽の長手方向軸方向Aに沿って、入口チャンバ100への入口12が存在する第1の端部から、保持チャンバ110の第1の出口113および入口チャンバ100の第2の出口104が存在する、対向する第2の端部まで長尺である。他の例において、入口チャンバおよび保持チャンバは、任意の適切な形状または形態であってもよく、本開示は、この第1の例にあるような直線形態を有するチャンバに限定されない。
【0158】
この例において、保持チャンバ110は、第1の電極111と関連付けられ、使用時に第1の電極111において生成される流体反応生成物を保持するように構成されており、一方、入口チャンバ100は、第2の電極102と関連付けられ、使用時に第2の電極102において生成される流体反応生成物を保持するように構成されている。第1の電極111および第2の電極102は、使用時に電源を備える電解回路に接続され、その一部を形成してもよい。
【0159】
入口チャンバ100への入口12は、使用時に入口12に結合されている電解質液の供給源から電解質液を受け入れるように構成されている。入口チャンバ100は、入口チャンバ100に沿って入口12から対向する第2の出口104へと電解質液を搬送するように構成されており、結果、電解質液(または関連付けられるイオン)は、入口チャンバ100と関連付けられる第2の電極102と反応する。
【0160】
この例において、第2の電極102は、入口チャンバ100の壁、特に、第1の多孔質壁115および第1の電極111に対向する壁を画定する(下記により詳細に説明するように)フローパスト電極であり、結果、入口チャンバ100は、第1の多孔質壁115と第2の電極102との間に画定され、多孔質壁115は、第1の電極111と第2の電極102との間に配置される。
【0161】
第1の多孔質壁115は、入口チャンバ100内の電解質液の分岐流が、第1の多孔質壁115を通じて流れて保持チャンバ110に入ることを可能にするように構成されている。多孔質媒体は、流れに対する抵抗を提供し、結果、多孔質媒体を通る電解質液の流速は、媒体をまたいだ圧力差および多孔質媒体の透過率の関数となる。
【0162】
たとえば、電解質液の分岐流は、入口チャンバ100と保持チャンバ110との間の圧力差の作用下で、第1の多孔質壁115を通じて流されてもよい。第1の多孔質壁115は、入口チャンバと出口チャンバとの間に圧力差が存在するときに、第1の多孔質壁115が、電解質液の分岐流が第1の多孔質壁115を通過するときに分岐流に対応する圧力降下を実行する(すなわち、引き起こす)ように構成されている。圧力降下は、多孔質壁115を通る流れに対する自然抵抗性を表す。
【0163】
当然の帰結として、流速は上記で言及したように圧力差および透過率の関数であるため、第1の多孔質壁115は、それをまたいだ圧力差が存在しない場合に、流れに対する抵抗を依然として提供する。したがって、第1の多孔質壁を通る逆流を駆動するためには、多孔質壁の出口側において、入口側よりも高い圧力が必要とされる。
【0164】
したがって、第1の多孔質壁115は、電解質液および/または第1の電極111において生成される任意の流体反応生成物の逆流(すなわち、保持チャンバ110から入口チャンバ100に向かう逆流)を抑制するように構成されている。これは、そのような逆流が、第1の多孔質壁115を通じた圧力勾配に抗するため(すなわち、第1の多孔質壁115を通る圧力駆動分岐流の場合)、または、壁をまたいだ圧力差がない場合に、そのような逆流が、第1の多孔質壁の流れ抵抗を克服する原動力を有しないためである。
【0165】
第1の多孔質壁によって提供される流れ抵抗のこれら2つのモードまたはメカニズム(すなわち(i)入口チャンバから多孔質壁を通じて保持チャンバに至る圧力駆動分岐流を通じた圧力勾配によるもの、および、(ii)多孔質壁をまたいだ圧力差がない場合に圧力駆動逆流がないことによるもの)は、本明細書に記載されているような多孔質壁のすべての実施態様に適用され、結果、後述する実施形態は、これらのメカニズムのさらなる詳細な論述を含まない場合がある。多孔質壁の特定の構成は、意図される動作条件、および、電解槽が圧力駆動分岐流によって、または、壁をまたいだ圧力差がない状態で動作させられるべきであるか否かに基づいて決定されてもよいことが、当業者には理解されよう。たとえば、壁をまたいだ圧力差がない状態で動作させられるべき多孔質壁については相対的により低い透過率および/または相対的により大きい厚さが選択されてもよく、一方、保持チャンバへの圧力駆動分岐流を駆動する圧力差によって動作させられるべきある多孔質壁については相対的により高い透過率および/または相対的により小さい厚さが選択されてもよい。これは、分岐流が、多孔質壁を通じた圧力勾配、およびまた、分岐流の慣性によって追加の流れ抵抗を提供することができるためである。
【0166】
第1の電極111は、使用時に、第1の多孔質壁115を通過して保持チャンバ120に至る電解質液の分岐流が第1の電極111と反応するように配置構成される。
【0167】
この例において、第1の電極111は、第1の多孔質壁115に隣接し、これと実質的に同延の層の形態で提供される。下記のさらなる論述から明らかになるように、本開示は、いくつかの実施態様において、第1の電極111が、第1の多孔質壁115に結合されるかもしくはそれと一体化されることを想定し、または、他の実施態様においては、第1の多孔質壁115から分離されることを想定する。たとえば、第1の多孔質壁と第1の電極の両方が、複合多孔質電極によって提供されてもよい。
【0168】
この例において、入口チャンバ100から保持チャンバ110への電解質液の流路が存在し、流路は、第1の多孔質壁115の受動部分を通る上流部分と、第1の電極111の電解触媒領域を通るかまたはそれに隣接する下流部分とを備える。「受動」という表現は、本明細書においては、電解質液の電解のそれぞれの半反応のための電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低いか、または、それぞれの半反応を抑制することを意味するために使用される。電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い受動領域の材料を選択することは、当業者の技能の範疇である。受動領域が電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低いことに関する定義は、本明細書の他の箇所において与えられており(概要部分を含む)、この例および他の例に適用され得る。一例としてのみ、受動領域および電解触媒領域は、電解質液の電解のそれぞれの半反応の速度が、(全体としての)受動領域内で、(全体としての)電解触媒領域内よりも低くなり得るように構成されてもよい。受動領域は、本明細書の他の箇所において論じられているような誘電体コーティングなどの、マトリックス(またはボディ)のうちの不動態化コーティングによって提供されてもよい。
【0169】
第1の電極111がフロースルー電極として実装されるとき、たとえば、第1の多孔質壁に結合されるかまたはそれと一体化されるとき、流路の下流部分は、電解触媒領域を通る。たとえば、第1の電極が多孔質壁から分離される(たとえば、保持チャンバの対向する壁上に提供される)とき、下流部分は、電解触媒領域に隣接してもよい。
【0170】
したがって、この例において、上述したような多孔質壁によって提供される流れ抵抗は、多孔質壁の受動領域によって、電極の電解触媒領域に対して上流のロケーションにおいて提供される。使用時に、第1の反応生成物は、多孔質壁の受動領域の下流の電極の電解触媒領域において生成され、結果、流体反応生成物の逆流が、上述したように第1の反応生成物の逆流を抑制する多孔質壁の受動領域によって提供される上流の流れ抵抗によって抑制される。
【0171】
本明細書において想定されるような電解槽のいくつかの実施態様において、第1の多孔質壁および第1の電極は、複合多孔質電極によって提供されてもよく、結果、流路の下流部分は、それぞれの電解触媒領域を(それに隣接するのではなく)通る。電解触媒領域の上流境界(すなわち、入口チャンバに対向し、保持チャンバへの分岐流が通過する電解触媒領域の第1の部分である境界)は、電極のイオン交換境界として参照されてもよい。電解触媒領域は、多孔質であってもよく、受動領域と同じように流れに対する抵抗を呈することができる。それにもかかわらず、流体反応生成物は、電解触媒領域内の任意のロケーションにおいて生成することができ、結果、この例において、逆流の抑制に関連する複合多孔質電極の部分は、上流受動領域となる。上記で言及したように、流れ抵抗は、圧力差および透過率の関数であると考えられる。多孔質壁、特に、受動領域の特定の構成(たとえば、その透過率および厚さ)は、意図される動作条件、および、上述したようにそれぞれの反応生成物の逆流を抑制するために依拠されるモードまたはメカニズムに基づいて決定されてもよい。それにもかかわらず、この例において、複合多孔質電極は、流路の上流部分が上流部分および下流部分によって提供される総流れ抵抗の相当の割合を提供するように構成されている。
【0172】
これは、多孔質壁の非電解触媒領域および電極の電解触媒領域の相対流れ透過率として表現することができ、特に、相対流れ透過率は、以下の不等式を満たし得る。
【0173】
【0174】
式中、kは透過率であり、tは厚さであり、下付き文字eは、電極(または電解触媒領域)を示し、下付き文字wは、壁(または非電解触媒領域)を示す。相対透過率は、2以下、たとえば1以下、0.5以下または0.2以下であってもよい。5未満の相対透過率は、流路の上流および下流部分に沿った総圧力降下または流れ抵抗の少なくとも6分の1を提供する多孔質壁の非電解触媒領域にわたる圧力降下に対応し、一方、0.2の相対透過率は、非電解触媒領域にわたる圧力降下が、電極の電解触媒領域にわたる圧力降下よりも5倍大きいことに対応する。
【0175】
第1の電極111と第2の電極102との間には、イオン交換のための、この特定の例においては電極111、102の並列配置構成によって電極に沿った点の間の実質的に一定の最短分離距離を有する分離間隙(すなわち、電極のそれぞれのイオン交換境界の間の距離)が存在する。この特定の実施形態において、両方の電極111、102は、長手方向軸Aに平行に直線的に延在する。
【0176】
この例において、保持チャンバ110および入口チャンバ100は、長手方向軸Aに沿って長尺であり、隣接する第1の出口113および第2の出口104に向かって同延の長手方向延在範囲に沿って互いに隣り合って延在するが、他の構成が可能であることを理解されたい。たとえば、出口113、104は、互いに隣接する必要はなく、異なる方向に沿ってそれぞれの流れを放出してもよい。
【0177】
適切な電解質液およびそれぞれの電極の電解触媒材料は、概要において開示されており、この例および本明細書におけるすべての例に適用可能である。
【0178】
ここで、第1の例示的な電解槽100の動作を、亜臨界条件、たとえば、22MPa未満の入口圧力および360℃未満の入口温度、たとえば、100℃の温度における20MPaにおいて、液体水系(水性)電解質液(たとえば、電解質溶液)である電解質液による電解を例示的に参照することによって、説明する。電解質液は、0.5M濃度のNaOHを含む水溶液を含んでもよい。この動作例において、第1の電極111はアノードであり、第2の電極102はカソードである。使用時に、イオンが電極間で移動される。この特定の例において、水酸化物イオン(OH-)が、アノードにおいて第1の反応生成物(酸素)を生成するために電解質液を通じてアノードへと移動される。
【0179】
電解質液の入口流は、入口12を介して入口チャンバ100へと提供され、アノードへの移動のために水酸化物イオンとともに、この例では気体水素である第2の反応生成物を生成するために第2の電極102(カソード)において還元反応を受ける。第2の反応生成物(水素)は、液体電解質液の密度よりも低い密度を有し、結果、電解槽10の長手方向軸Aが垂直に向けられているとき、結果もたらされる多成分混合物の密度は不均一になり、反応生成物が生成される場所では密度がより低くなるため、第2の反応生成物の生成は、電解質液の流れを浮力効果の下で入口チャンバ100を通じて第2の出口114に向かって上向きに駆動する傾向にある。この浮力効果は、分離間隙をまたいで第1の電極111に向かう第2の反応生成物の移行を抑制すると考えられる。
【0180】
この特定の例において、入口チャンバ100と保持チャンバ110との間には圧力差が存在し、結果、第1の多孔質壁をまたいだ圧力降下が存在する。圧力差は、電解質液の分岐流を、第1の多孔質壁115を通じて保持チャンバ110へと駆動し、この特定の例においては上述したように第1の多孔質壁115に隣接して提供される第1の電極111を通過させる。電解質液の分岐流は、第1の電極111において反応して、(アノードへの電子の移動とともに)この例では気体酸素である第1の反応生成物を生成する。第1の反応生成物は、液体電解質液の分岐流よりも低い密度を有し、したがって、電解質液の流れを、上述したように浮力効果の下で保持チャンバ110を通じて第1の出口113に向かって上向きに駆動し得る。
【0181】
この動作例において、第1の反応生成物(酸素)は、第1の電極111を通過し、保持チャンバ110内に保持されるように、分岐流に同伴される。第1の電極111は、第1の電極111において生成される第1の反応生成物が保持チャンバ内に保持されるため、保持チャンバ110と関連付けられるものとして規定される。いくつかの例において、第1の電極111は、保持チャンバ110内になくてもよく、または、保持チャンバに隣接しなくてもよい。たとえば、第1の電極は、入口チャンバ100と保持チャンバ110とを分離する第1の多孔質壁115に取り付けられてもよく、または、第1の多孔質壁と一体化されてもよい。
【0182】
第1の多孔質壁115をまたいだ圧力降下によって、第1の反応生成物は、第1の多孔質壁115を通じた圧力勾配および分岐流の慣性に抗するため、入口チャンバ100に向かって移行する傾向にない。したがって、流体反応生成物の逆流が、圧力勾配、および/または、多孔質壁をまたいだ圧力駆動流によって抑制される。したがって、第1の多孔質壁115は、入口チャンバ100内で第1の電極および第2の電極において生成される反応生成物の混合を抑制する。
【0183】
さらに、第2の反応生成物が保持チャンバ110に移行して第1の反応生成物と混合することを抑制することができる。第1に、入口チャンバ100内の流速および浮力効果は、下記にさらに詳細に説明するように、第2の反応生成物が第1の多孔質壁115に向かって移行し、第1の多孔質壁に達して、保持チャンバ110内へと移動する傾向にないようなものであり得る。第2に、第2の電極がカソードであり、第1の電極がアノードであるとき、第2の反応生成物は、正電荷を帯びるように第1の電極に行き当たるのを受けてその電子を剥奪され得、したがって、イオンとして(たとえば、第2の反応生成物が水素であるときはプロトンとして)、保持チャンバ110に入るのではなく、第2の電極に向かって戻るように方向を反転され得る。
【0184】
上記の例においては第1の電極がアノードであり、第2の電極がカソードであり、各電極においてそれぞれ酸化反応および還元反応があるが、他の例においては、電極の極性は反転されてもよいことを理解されたい。
【0185】
電解槽10の第2の動作例は、入口チャンバと保持チャンバとの間に実質的な圧力差がなく、したがって、第1の多孔質壁115を通る電解質液の圧力駆動流が実質的にあり得ず、第1の多孔質壁115をまたいだ圧力降下がないか、または、最小限であり得るという点においてのみ、上述した第1の例と異なる。それにもかかわらず、第1の多孔質壁115は電解質液の流れを可能にするように構成されているため、第1の多孔質壁はまた、多孔質壁のチャネルまたは細孔を通じたイオンの流れを可能にするようにも構成される。したがって、この第2の動作例の変形において、イオンは、第1の多孔質壁を通じた電解質液の実質的な流れが存在しない状態で、第1の電極111と第2の電極102との間で移動される。
【0186】
この第2の動作例の変形において、イオンは、たとえば、起電力の作用下で、入口チャンバ100から第1の多孔質壁115を通じて第1の電極111へと流れてもよい。第1の多孔質壁115は、非電解触媒性であり、結果、イオンは、第1の電極111のみと反応して、第1の多孔質壁115を通過した第1の反応生成物を生成し得る。たとえば、上述したように、第1の電極111は、第1の多孔質壁の出口側(すなわち、入口チャンバ100に隣接する側に対向するような、保持チャンバ110に隣接する側)に層として提供されてもよい。第1の電極111は、第1の多孔質壁115に取り付けられている電解触媒材料を含むメッシュまたはホイルとして、あるいは、第1の多孔質壁115上またはそれに取り付けられたメッシュもしくはホイル上に提供される電解触媒材料のコーティングとして提供されてもよい。一変形例において、第1の電極111は、たとえば、保持チャンバ110内でフロースルー電極として支持されるか、または、第1の多孔質壁に対向する保持チャンバ110の壁を画定して(すなわち、フローパスト電極として)、第1の多孔質壁115から離間されてもよい。
【0187】
本開示は、上述したように多孔質壁と関連付けて提供されている電極が、多孔質壁から独立した電解回路への電気経路を有し得ることを想定するが、
図1を参照して本明細書において説明されている例示的な電解槽10において、第1の多孔質壁115は、導電性であり、第1の電極111から電解回路へと電流を流すように構成されている。この特定の実施形態において、第1の多孔質壁115はまた、第1の電極111を構造的に支持する。
【0188】
上述したように、この変形例において、第1の反応生成物は、電解質液と関連付けられるイオンが、保持チャンバ110内に配置されているかまたはその壁を画定する第1の電極111と反応するのを受けて生成され、結果、第1の反応生成物は、たとえば、第1の電極の電解触媒領域内でまたは保持チャンバ110内で、第1の多孔質壁115の受動領域の下流において生成される。それにもかかわらず、保持チャンバ110への電解質液の分岐流を駆動する入口チャンバ100と保持チャンバ110との間に実質的な圧力差がない状態で、第1の多孔質壁115は、上述したような入口チャンバ100への第1の反応生成物の逆流を抑制する。特に、多孔質媒体として、第1の多孔質壁は、保持チャンバ110を通る第1の出口113までの流路よりも大きい、第1の反応生成物の保持チャンバから入口チャンバへの流れに対する抵抗を呈し、結果、第1の反応生成物は優先的に第1の出口113に向かって流れる。したがって、流体反応生成物の逆流が、受動多孔質領域の上流流れ抵抗によって抑制される。流れに対する抵抗は、本明細書の他の箇所において説明されているように、多孔質壁の透過率および厚さの関数であり得る。さらに、電解質液よりも低い密度において第1の反応生成物が生成されることによって、第1の反応生成物は、第1の多孔質壁115を通る逆流(長手方向軸Aが垂直に位置整合されるときに、使用時に水平成分を有し得る経路)よりも優先して、第1の出口113に向かって上向きに駆動され得る。
【0189】
図2は、第2の例示的な電解槽20を示す。
図1の第1の例示的な電解槽10と同様に、電解槽20は、第1の多孔質壁215によって分離されているそれぞれの第1の出口213および第2の出口204を有する保持チャンバ210および入口チャンバ200を有し、入口22を通じて入口チャンバ200へと電解質液の流れを受け入れるように構成されており、そこから、電解質液の分岐流が第1の多孔質壁215を通じて保持チャンバ210へと通過することができる。
【0190】
電解槽20は、入口チャンバ200が環状外側チャンバであり、保持チャンバ210が入口チャンバ200によって包囲されているコア内側チャンバであるように配置構成されている。この特定の例において、チャンバ200、210は、長尺軸Aを中心として同心状に配置構成されており、チャンバ200、210は、円筒状の外側境界を有する。様々な例において、電解槽は、他の同心および非同心構成を有してもよい。たとえば、それぞれのチャンバの境界は、円錐状かつ同心状であってもよい。
【0191】
この例において、第1の多孔質壁215(複合多孔質電極の多孔質受動領域であってもよい)と第1の電極211(複合多孔質電極の電解触媒領域)の両方を画定する複合多孔質電極217が存在する。複合多孔質電極217は、入口チャンバ200と保持チャンバ210とを分離し、結果、第1の電極211はフロースルー電極となる。この例において、入口チャンバ200には、入口チャンバ200の円筒外壁の半径方向内面を画定し、フローパスト電極である第2の電極202が提供される。
【0192】
第1の例示的な電解槽10に関して上述したように、複合多孔質電極217は、電解質液が入口チャンバ200から保持チャンバ210へと流れることを可能にするように構成されているが、複合多孔質電極において(特に、複合多孔質電極の電解触媒領域において)生成される反応生成物の入口チャンバ200に向かって戻る逆流を抑制するように構成されている。複合多孔質電極は、壁をまたいだ圧力差が存在するときに、上述したような圧力勾配または圧力駆動流による反応生成物の逆流を抑制するように構成されている。複合多孔質電極はまた、複合多孔質電極をまたいだ圧力差の存在下もしくは不在下を含め、下記に説明するような受動領域の上流流れ抵抗によって、ならびに/または、
図3および
図5を参照して下記に想定されるように修正されるときには他のメカニズムによって、反応生成物の逆流を抑制することもできる。
【0193】
入口チャンバ200の上流には、ポート21において電解質液の供給源から電解質液を受け入れ、電解質液の環状流を入口チャンバ200の環状入口22に提供するように構成されている入口マニホールド23が存在する。この例において、入口マニホールド23は、円錐状分流器24の周りに電解質流を誘導するように構成されている発散円錐状プロファイルを有する。変形例において、マニホールド23は、任意の適切な形状または構成をとってもよい。たとえば、マニホールド23は、円筒外壁を有してもよく、環状入口22に向かって流れを誘導するための円錐状分流器がマニホールド23内に存在してもよい。
【0194】
ここで、第2の例示的な電解槽20の使用を、例としてのみ、たとえば、22.5MPaの入口圧力および375℃の入口温度にある超臨界水系(水性)電解質液である電解質液による電解を参照することによって、説明する。
【0195】
超臨界条件において、流体は、明確に区別できる液相および気相を有しないように挙動する。超臨界電解質液は、亜臨界電解質液と比較して、電解に使用するのに有利であり得る。特に、超臨界流体は、互いと完全に混和性であり、結果、流体の混合物は、それらの間に界面または表面張力が存在しない単相を形成する。したがって、反応生成物が、それらが生成されるときに気体ではなく超臨界のままであるとき(たとえば、電解質液よりも低い臨界温度および圧力を有するか、または、温度および圧力が他の様態でそれぞれの臨界点よりも高いことによって)、それらの反応生成物は、電解質液と完全に混和性であるままである。したがって、反応生成物の気泡が電極の表面上に蓄積しない。そのような蓄積は、そうでない場合に、電解質液と電極との間の局所的な相互作用を妨げることによって、反応を抑制する可能性がある。
【0196】
さらに、電解質液の伝導率は、上昇した温度および圧力においてより高くなる傾向にあることが知られている(たとえば、論文「High Pressure Electrolyte Conductivity of the Homogeneous, Fluid Water-Sodium Hydroxide System to 400℃ and 3000bar」、A. EberzおよびE.U. Franck, Ber. Bunsenges. Phys. Chem. 99、1091-1103 (1995) No. 9、特に表2を参照されたい)。理論によって束縛されることを所望することなく、水の解離定数および伝導率は、温度および圧力の上昇とともに増大すると考えられる。さらに、電解質または電解質液(たとえば、電解質溶液)の伝導率は、圧力および温度の関数であり、圧力および温度が臨界点に向かって増大すると、伝導率が増大することが観測される。超臨界範囲内(すなわち、温度が少なくとも流体の臨界温度であり、圧力が少なくとも流体の臨界圧力である圧力および温度の条件の範囲内)で、伝導率は、一定の圧力で温度が上昇することによって低減し得る。しかしながら、伝導率は、圧力が増大されるときに、超臨界範囲内で増大し得る。したがって、電解質溶液中の電解質の濃度は、相対的に高い温度および圧力において動作することによって減少し得る。超臨界範囲は、相対的に高い圧力および温度条件の一例であり、超臨界範囲内での動作は、臨界温度および臨界圧力を大幅に下回る温度および圧力にある亜臨界範囲内での動作と比較して、電解質液の相対的により高い伝導率を提供することができると考えられる。電解質液の伝導率がより高いような条件における動作によって、適切な伝導率を依然として提供しながら、電解質と関連付けられる抵抗損を減少させることができ、または、他の様態で、減少した抵抗損と関連付けられる異なる電解質を使用することができる。
【0197】
例としてのみ、上述した第1の例示的な電解槽および/または第2の例示的な電解槽とともに使用するのに適した電解質液は、NaOHを電解質として含む水性電解質溶液である。上記で述べたように、電解質液の伝導率は、温度および圧力とともに増大する傾向にある。
【0198】
圧力および温度とともに増大する伝導率の上記の傾向を例示するために、上記で参照したEberzおよびFranckの論文を参照することができ、それによれば、0.1MPaおよび25℃において、17重量%の濃度を有するNaOHから構成される電解質が、0.4Scm-1の伝導率を呈し、一方、30MPaおよび400℃において、電解質は、1.3Scm-1の伝導率を呈する。0.5MのNaOH溶液について、22.5MPaおよび375℃における伝導率は約150~200mScm-1になり、一方、0.1MPaおよび25℃において、伝導率は約100mScm-1であり得ると推定される。
【0199】
この例において、第1の電極211はアノードであり、第2の電極202はカソードである。使用時に、イオンが電極間で移動される。
【0200】
電解槽20の第1の動作例において、電解質液の入口流は、入口チャンバ200の環状入口22へと入口マニホールド23を介して、入口チャンバ200に提供される。電解質液は、アノードへの移動のために水酸化物イオンとともに、この例では超臨界水素である第2の反応生成物を生成するために第2の電極202(カソード)において還元反応を受ける。第2の反応生成物(水素)は、電解質液の密度未満の密度を有するが、両方が超臨界であるため、電解質液と完全に混和性であるままである。それにもかかわらず、電解槽の長手方向軸Aが垂直に向けられているとき、第2の反応生成物の生成は、電解質液の流れを浮力効果の下で入口チャンバ200を通じて第2の出口204に向かって上向きに駆動する傾向にある。第1の例を参照した上記のように、この浮力効果は、分離間隙をまたいで第1の電極211(第1の複合多孔質電極217によって提供されるような)に向かう第2の反応生成物の移行を抑制することができると考えられる。
【0201】
電解質液の分岐流は、第1の複合多孔質電極217を通じて保持チャンバ210内へと流れ、第1の多孔質壁215および第1の電極211を通過する。電解質液または関連付けられるイオン(たとえば、水酸化物イオン)は、第1の電極(アノード)211において酸化反応を受けて、(アノードへの電子の移動とともに)この例では超臨界酸素である第1の反応生成物を生成する。第1の反応生成物は、電解質液よりも低い密度を有し、したがって、分岐流の流れを、上述したように浮力効果の下で保持チャンバ210を通じて第1の出口213に向かって上向きに駆動し得る。
【0202】
第1の反応生成物(酸素)は、第1の電極211を通過し、保持チャンバ210内に保持されるように、分岐流に同伴され得る。
【0203】
第1の電解槽10の第1の動作例に関して上述したように、第1の複合多孔質電極217は、たとえば、多孔質壁によって提供される流れに対する抵抗によって、電解質液および/または第1の電極211において生成される任意の流体反応生成物の逆流を抑制する。目下の動作例は、多孔質壁をまたいだ圧力勾配または圧力駆動流によって逆流が抑制されるような、入口チャンバ200と保持チャンバ210との間の圧力差を参照しているが、例示的な電解槽20は、第1の例示的な電解槽10に関して上述したように、圧力差がない状態で等しく動作させることができ、受動領域の上流流れ抵抗によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0204】
本発明者らは、上述したように反応生成物の混合を妨げることによって、電極を、それらの間の最短分離距離を相対的に短くして配置することができ、それによって、電解槽内の抵抗損が減少することを見出した。
【0205】
さらに、本発明者らは、本明細書に記載されているように保持チャンバから入口チャンバへの逆流を抑制する多孔質壁を提供することによって、たとえ所与の量の流れについて、多孔質壁の面積が、以前に考察した構成と比較して相対的に大きい場合であっても(すなわち、多孔質壁を通じた単位面積当たりの流速が相対的に低いときであっても)、多孔質壁を通る任意の流れが実質的に一方向であることを見出した。以前に考察した構成においては、フロースルー電極が長尺のダクトに及ぶように適用され得、結果、電極の面積が流速に関連して相対的に低くなるか、または、フロースルー電極を通じた単位面積当たりの流速が相対的に高くなる。以前に考察した構成においてフロースルー電極を通じた相対的に高い流速を提供することによって、流れの慣性によって逆流を防止することができると考えられる。
【0206】
電解質液の所与の流速について、そのような以前に考察した構成において電極の面積が増大されると、そのような慣性効果が減少し得、反応生成物の混合を可能にし得る局所的な流れ反転のリスクがあり得る。本明細書において開示されているような多孔質壁を提供することによって、本明細書に記載されているように多孔質壁に依拠して流れ反転を防止しながら、電極の所与の反応面積について単位面積当たりの流速を相対的に低いままにすることができる(または、逆に、所与の流速について反応面積を相対的に大きくすることができる)。
【0207】
したがって、本発明者らは、多孔質壁が所与の流速について相対的に大きい面積を有する電解槽の構成を提供することができることを見出した。その結果として、電極は、電解槽への電解質液の、および/または、電解槽によって生成される反応生成物の所与の流速について、相対的により大きい表面積を有することができ、電解反応を実行するための相対的により大きい表面積が可能になり、これによって、電解質液の所与の流速について、より高い反応速度が可能になり得る。これらの利点は、本明細書におけるすべての例示的な構成に等しく適用される。電極を参照して本明細書において使用されるものとしての「表面積」という表現は、電極の電解触媒領域のそれぞれの境界にわたって延在する実質的に連続的な表面の面積を指すように意図されており、そのような電解触媒領域のすべての細孔およびチャネルの総表面積(電解触媒領域の電解質界面の面積、または、使用時に電解質液に隣接する電解触媒領域の表面領域の面積として参照される場合がある)ではない。たとえば、長手方向延在範囲Xおよび横方向延在範囲Yを有する実質的に平坦で矩形の複合多孔質電極(または多孔質電解触媒領域)について、表面積は、多孔質電極の任意の細孔およびチャネル全体を通じたすべての電解触媒表面の総表面積ではなく、寸法XおよびYの乗算を参照する。
【0208】
その結果として、電極のサイズを、入口チャンバによって画定される断面積および/または分離間隙と比較して相対的に大きくすることができるため、電極間の分離間隙は、相対的に細長くすることができる。これらの利点は、本明細書におけるすべての例示的な構成に適用される。たとえば、第1の電極および第2の電極は、イオン交換のために、電極の対向するイオン交換面間の平均最短分離距離が存在する同延長手方向延在範囲に沿って、互いに対向してもよい。同延長手方向延在範囲(すなわち、電極がイオン交換のために互いに対向する長手方向軸Aに沿った距離)と、平均最短分離距離との比は、少なくとも5、たとえば、少なくとも20または少なくとも50(5~200、20~200、50~150など)であってもよい。
【0209】
図2に示す第2の電解槽200の特定の例において、電極の同延長尺延在範囲は100mmであり、一方、平均最短分離距離は1mmであり、結果、比は100になる。第1の複合多孔質壁までの対応する半径は、約6~7mmであってもよく、結果、実際に、電極間の間隙は図面に見られるよりも細長くなる。この例において、複合多孔質電極は、0.7μm
2の20℃の空気について測定される透過率kを有し、これは、10kPaの圧力差によって複合多孔質電極を通る空気の約4m
3/s/m
2の流速に対応する。
【0210】
上述した超臨界条件(すなわち、22.5MPaおよび375℃)における使用時に、電解のための熱中性電圧は約1.3Vであり、これは、生成される1kgの水素反応生成物当たり35.62kWHに対応する。これは、水素のより高い加熱値(39.4kWh/kg)の110%であり、水素のより低い加熱値(33.3kWh)の93.5%であり、したがって、効率的な電解を表す。これらの条件において電解反応を維持するためには、電解槽の抵抗損は0.120V以下とすべきである。この例において、電解槽の抵抗損(約150mScm-1の予測伝導率を有する0.5M NaOHの例示的な電解質液を通じたイオン交換と関連付けられる)は、電極間隔が1mmであるときは約0.11Vであり、一方、電極における気泡形成と関連付けられる抵抗損は、超臨界状態における動作によって排除される。電極間隔は、1mm未満、たとえば、0.5mmまたは0.5mm~1mmであってもよい。適切な電解触媒は、当業者によって決定されてもよく、本明細書の他の箇所において論じられているが、一例としてのみ、適切な電解触媒は、アノード(第1の電極であってもよい)におけるニッケルまたはニッケル合金、および、カソード(第2の電極であってもよい)の白金を含んでもよい。
【0211】
抵抗損は、電解質伝導率および電極間隔の関数である。たとえば、電極が3mm離間される場合、2000mScm-1などのより高い電解質伝導率が必要とされ得る。
【0212】
第1の例示的な電解槽は、水性電解質溶液に対して亜臨界条件において動作するものとして説明されているが、第1の例示的な電解槽および第2の例示的な電解槽ならびにそれらの変形形態のいずれかは、超臨界条件における動作に適し得る。たとえば、第1の例示的な電解槽および第2の例示的な電解槽のいずれかは、電解質液の圧力が22MPa~27MPaであるように、かつ、電解質液の温度が少なくとも374℃、たとえば374~550℃または374~400℃であるときに動作するように構成されてもよい。一般的に、臨界点に向かうより低い温度および圧力において動作することが望ましい場合があり、これによって、電解質液を加圧および加熱するためのエネルギー資源を最小限に抑えることができる。抵抗損は、より高い温度および圧力においてより低くなり得るが、上昇した温度および圧力の条件において得られることになる効率上の利点は、電解質液を加熱および/または加圧するために必要とされる追加のエネルギーによって、そのような追加のエネルギーが余剰エネルギーとして(たとえば、別の場合には熱回収されることなく放出されることになる加熱ソースからの余剰熱として)利用可能でない限り、相殺され得ると考えられる。
【0213】
図3a~
図3fは、
図1および
図2を参照して説明した第1の例示的な電解槽10または第2の例示的な電解槽20のいずれかの電解槽とともに使用するための例示的な電極構成を示す。
図3a~
図3eは、電極が長手方向軸と平行な平面内で長手方向軸Aに沿って同延である領域における、それぞれの電解槽10、20の断面図である。そのような構成が、長尺軸に垂直な平面内で矩形断面を有する第1の例示的な電解槽10に適用されるとき、
図3a~
図3eに示す例示的な断面構成は、矩形ダクトの深さ全体を通じて投影される(すなわち、長手方向軸に直交し、
図3a~
図3eに示す断面に垂直な横軸に沿って投影される)。図示されている右端境界312が、ダクトの壁に対応する。
【0214】
そのような構成が、環状外側チャンバおよびコア内側チャンバを画定するために長手方向軸を中心とした軸対称構成を有する第2の例示的な電解槽20に適用されるとき、
図3a~
図3eに示す例示的な断面構成は、長手方向軸Aを中心として360°回転され、図示されている右端境界312が、電解槽の長手方向軸に対応する。
【0215】
単純にするために、例示的な電極構成の以下の説明は、必要に応じて対応する参照符号を使用して、第2の例示的な電解槽20のみを参照するが、上記で示したように、第1の例示的な電解槽にも等しく適用可能かつ適合可能である。
【0216】
図3aは、電解槽の長手方向軸Aに交差し、長手方向軸において終端する平面に沿った軸対称電解槽20の部分断面プロファイル310を示す。部分断面プロファイルは、入口チャンバ200の入口と入口チャンバ200の第2の出口204との間の電解槽20の長手方向部分に対応し、それに沿って、第1の電極211および第2の電極202は、それらの間の分離間隙に沿ったイオン移動のために同延である。
【0217】
図2に関して上述したように、入口チャンバ200は環状であり、コア保持チャンバ210を包囲し、2つのチャンバ200、210は、円筒状の第1の多孔質壁215によって分離されている。入口チャンバ200の半径方向外側円筒壁は、この例ではフローパスト電極である(すなわち、それを通る電解質液の流れを妨げるように構成されている)第2の電極202によって画定される。多孔質壁215の第1の半径方向外側入口側は、入口チャンバ200の半径方向内側境界を画定し、入口チャンバ200を横断して第2の電極202に対向する(すなわち、それに面する)。
【0218】
図3aの例示的な構成において、多孔質壁215は、第1の電極211から分離されており、多孔質壁215は、いかなる電解反応にも寄与せず、または、第1の電極211へのもしくは第1の電極からの電流を伝導しないように、いかなる電源もしくは回路からも接続切断されている。さらに、多孔質壁215は、本明細書において定義されているものとして受動的であってもよく、たとえば、ステンレス鋼316を含んでもよい(ステンレス鋼から成ってもよい)。多孔質壁は、等方性多孔質構造を有してもよい。第2の電極202から外方に面する多孔質壁215の半径方向内側出口側は、保持チャンバ210の長尺境界を画定する。入口チャンバ200の入口22に隣接する保持チャンバ210の第1の端部は、壁によって画定され、一方、保持チャンバ210の対向する端部は、上述したような保持チャンバ210の第1の出口を画定するために開いている。
【0219】
この例において、第1の電極211は、第1の電極と多孔質壁215との間に小さい半径方向の間隙(たとえば、0.25mm)をおいて保持チャンバ210内に配置される。したがって、イオン移動のための電極間の分離間隙は、それぞれ第1の電極211および第2の電極202のそれぞれのイオン交換境界である(これらはそれぞれの反応を実行するためのそれぞれの電極の電解触媒領域の最も近い境界であるため)、第1の電極211の半径方向外側表面と第2の電極202の半径方向内側表面との間の半径方向距離である。この例において、この分離間隙は、電極の周りに、長手方向軸に沿ったその長さに沿って、実質的に一定の半径方向最短距離を有する。言い換えれば、いずれかのイオン交換境界に沿った各点において、対向する電極の対向するイオン交換境界までの最短距離は、長尺軸に関する半径方向に沿っており、その最短距離は、電極上のすべての点から実質的に一定である。この例において、電極は円筒状かつ同心であり、結果、イオン交換境界は局所的に互いに(すなわち、電極を通じて任意のそれぞれの点に交差する半径方向平面内で)平行である。変形例において、対向するイオン交換境界までの半径方向最短距離は、イオン交換境界のうちの1つの表面積の少なくとも50%にわたって実質的に一定であってもよい。
【0220】
図3aの例において、第1の電極211は、フロースルーメッシュ電極として提供されてもよい。フロースルーメッシュ電極は、たとえば、第1の多孔質壁215よりも高い透過率および/またはより小さい厚さを有することによって、第1の多孔質壁215よりも流れに対するより低い抵抗を呈し、結果、入口チャンバ200と保持チャンバ210との間の任意の圧力降下が、主に多孔質壁215において発生し、流速は、第1の電極221のそれではなく、多孔質壁215の構成および流れに対する抵抗によって決定されてもよい。
【0221】
例としてのみ、第1の多孔質壁215は、ステンレス鋼316またはチタンなどの、電解のそれぞれの半反応について電解触媒として活性でないか、または、電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い材料を含んでもよい(たとえば、その材料から成ってもよい)。第1の多孔質壁215は、任意の適切な材料(たとえば、それぞれの半反応について電解触媒として活性であるか否かを問わず)から成るマトリックス(またはボディ)を含んでもよく、本明細書の他の箇所において説明されているように、電解のそれぞれの半反応を抑制するための誘電体コーティングにおいてコーティングされてもよい。第1の多孔質壁215は、電解質液を搬送するための相互接続された細孔またはチャネルのネットワークを有する等方性多孔質構造などの多孔質構造を提供するために、付加製造または粉末プレスプロセスによって製造されてもよい。例として、第1の電極211は、ニッケルを含む電解触媒コーティングを提供されているステンレス鋼316のコアを含んでもよい。第2の電極211は、白金を含む電解触媒コーティングを提供されているステンレス鋼のコアを含んでもよい。
【0222】
図2の電解槽20を有する
図3aの電極配列の実施態様は、複合多孔質電極を有しない構成をもたらし、結果、
図2の電解槽20を参照して上述した、複合多孔質電極の使用に排他的に関連する任意の特徴は適用されない。たとえば、第1の多孔質壁215は、第1の電極211へのまたは第1の電極からの電流を伝導しない。上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3aの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができ、および/または、受動領域の上流流れ抵抗によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0223】
図3bは、第1の電極221および第1の多孔質壁215が複合多孔質電極217によって提供されるという点において、
図3aに関して上述した構成とは異なる、さらなる例示的な電極構成320を示す。この例において、複合多孔質電極は、全体を通じて多孔質であるが、第1の電極211(電解触媒領域)を画定するために、部分領域のみが電解触媒性であり得る。電解触媒領域は、電解のそれぞれの半反応に電解触媒作用を及ぼすための電解触媒(電解触媒材料)を含む。
【0224】
この特定の例において、電解触媒領域211は、複合多孔質電極の受動領域上のコーティングとして形成される層である。電解触媒領域211は、保持チャンバ210の長尺境界としての役割を果たし、第2の電極202から外方に面する複合多孔質電極217の半径方向内側出口側を画定する。
【0225】
複合多孔質電極217の受動領域は、それぞれの反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒がないことによって、電解反応について電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低いように構成されている。
【0226】
したがって、この特定の例において、電極211のイオン交換境界は、受動多孔質領域215とその上に被着される電解触媒コーティングとの間の境界である。電解触媒領域は、複合多孔質電極217内にあり、したがって、第2の電極202に対向し、入口チャンバ200を区切る複合多孔質電極217の入口側から離間されている。したがって、使用時に、電解質液の分岐流は、それぞれの半反応を受けるために電解触媒領域211に行き当たる前に、受動多孔質領域215を通過し、上述したような電解触媒領域211において生成される第1の反応生成物の逆流が抑制される。
【0227】
この例において、第1の電極211は、電解のそれぞれの半反応について電解触媒として実質的に不活性であるにもかかわらず、第1の電極211へのまたは第1の電極からの電流を伝導するために導電性である、複合多孔質電極の受動領域を介して電解を実行するための電子回路に結合されるように構成されている。
【0228】
第1の電極211がアノードであり、電解質液が超臨界水溶液である、
図2に関して上述した第2の例示的な電解槽20に電極配列を適用するために、複合多孔質電極217のマトリックス材料に適した例示的な材料は、チタンまたはステンレス鋼(たとえば、ステンレス鋼316)であってもよく、一方、第1の電極211を形成する電解触媒領域に適した例示的な電解触媒は、ニッケルであるコーティングであってもよい。第2の電極(カソードとして機能する)に適した材料は、白金の電解触媒コーティングを有するステンレス鋼であってもよい。
【0229】
例としてのみ、複合多孔質電極は、付加製造または粉末プレスプロセスによって非電解触媒性マトリックス材料の多孔質壁を形成し、たとえば、化学気相成長(CVD)プロセスによって、電解触媒材料によって多孔質壁の一方の側をコーティングすることによって製造されてもよい。
【0230】
第1の複合多孔質電極217は、非電解触媒領域と電解触媒領域の両方全体を通じて相対的に一定の透過率を有してもよく(たとえば、相対的に一定の有孔率および/または細孔径を有することによって)、結果、分岐流速を決定する流れ抵抗は、全体としての第1の複合多孔質電極217の流れ抵抗になる。
【0231】
上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3bの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができ、および/または、受動領域の上流流れ抵抗によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0232】
代替の製造プロセスによれば、電解触媒領域211は、
図3cを参照して下記にさらに説明されるように、付加製造プロセスを使用してコーティングとして被着されるのではなく、受動多孔質領域215と一体的に形成されてもよい。
【0233】
図3cは、第1の複合多孔質電極217の電解触媒領域211が、全体的に複合多孔質電極内にあり、多孔質受動領域と複合多孔質電極217との間に埋め込まれる層として提供されるという点において、
図3bに関して上述した構成とは異なる、さらなる例示的な電極構成330を示す。したがって、電解触媒領域は、第1の複合多孔質電極217の半径方向外側入口側または半径方向内側出口側を画定しない。
【0234】
複合多孔質電極217の残りの部分(すなわち、電解触媒領域でない部分)が電解反応の実行において本明細書に記載されているように受動的である(たとえば、電解触媒としての活性がより低いかまたは電解触媒として不活性である)ことによって、反応は、主にまたは全体的に電解触媒領域211内で行われる。したがって、上記のように、それぞれのイオン交換境界は、上述したように、受動領域の上流流れ抵抗によって電解触媒領域211において生成される第1の反応生成物の逆流を妨げる受動多孔質領域215の下流の位置において、複合多孔質電極217内に埋め込まれる。
【0235】
第1の複合多孔質電極217の出口側(すなわち、保持チャンバ210に隣接する表面)は、本明細書において規定されているように受動的であるため、それぞれの電解反応は、第1の複合多孔質電極の出口側においてまたは保持チャンバ210自体の中で行われなくてもよい。この結果として、反応速度は、より直接的に、複合多孔質電極217を通る電解質液および/または関連付けられるイオンの流速に関係付けられ得、これによって、下記にさらに詳細に説明するように、電解槽を通る流れを調整することによって反応速度のより正確な制御が可能になり得る。
【0236】
上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3cの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができ、および/または、受動領域の上流流れ抵抗によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0237】
例としてのみ、第1の複合多孔質電極は、付加製造または粉末プレスプロセスによって製造されてもよい。付加製造プロセスの構築材料または粉末プレスプロセスの粉末は、複合多孔質電極が、複合多孔質電極の入口側および出口側に対応する2つの主面の間の層状構造によって形成されるように、分散されてもよい。この場合、層状構造は、入口側を画定する受動多孔質領域215、出口側を画定する受動多孔質領域、および第1の電極211に対応するそれらの間の電解触媒領域に対応する3つの層を有する。
【0238】
たとえば、
図8aを参照して下記にさらに詳細に説明するように、付加製造プロセスにおいて、複合多孔質電極は、長手方向軸に沿って層ごとに製造されてもよく、構築材料は、複合多孔質電極の各連続長手方向スライスを形成するように分散され、選択で融合される。受動構築材料および電解触媒領域のための電解触媒を含む構築材料が、第1の複合多孔質電極217の受動領域および電解触媒領域のロケーションに対応するロケーションにおいて各層上に選択で施与されてもよく、結果、電解触媒領域は、元々製造されていたように、複合多孔質電極内に埋め込まれる。
【0239】
同様のプロセスが、
図3bに示すような2つのみの領域、たとえば、複合多孔質電極の入口側を画定する受動領域、および、複合多孔質電極の出口表面を画定する電解触媒領域を有する複合多孔質電極を提供するために使用されてもよい。
【0240】
少なくとも1つの非電解触媒領域および少なくとも1つの電解触媒領域を含む複数の領域を有する複合多孔質電極は、
図8bを参照して下記にさらに詳細に説明するように、粉末プレスプロセスなどの他の方法によって形成されてもよい。粉末プレスプロセスは、製品の所望の形状に関係する形状を有するキャニスタまたはダイ内に粉末を提供することと、多孔質構造を有する構成要素を形成するために、上昇した温度および圧力の下で粉末を焼結することとを含んでもよい。
【0241】
図3cの例において、第2の電極は、
図3aおよび
図3bを参照して上述したように製造されてもよい。
【0242】
図3dは、第2の電極202に対向し、内側チャンバ200を区切る第1の複合多孔質電極217の入口側が、複合多孔質電極の入口側における反応を抑制するために不動態化されるという点において、上述した構成とは異なる、さらなる例示的な電極構成340を示す。たとえば、複合多孔質電極217には、入口側を画定し、電解のそれぞれの半反応に対する不動態化効果を有する不動態化コーティング219が提供されてもよい。コーティング219は、絶縁または誘電体コーティング、たとえば、シリカ(SiO
2)、酸化亜鉛(ZnO
2)、またはジルコニア(ZrO
2)などの酸化物コーティング(たとえば、無機金属酸化物コーティング)であってもよい。本明細書において開示されている例において、不動態化コーティングの厚さは、複合多孔質電極の厚さのうちの相対的に低い割合であってもよい。たとえば、1mmの厚さを有する複合多孔質電極において、不動態化コーティングの厚さは、1~20μm、たとえば、5~10μmであってもよい。厚さが増大すると、下にある表面の被覆率が増大するが、過剰な厚さは細孔を閉塞させる可能性がある。したがって、細孔を開いたままにしながら被覆率を平衡させるために、適切な厚さが選択され得る。
【0243】
第1の複合多孔質電極217の入口表面を不動態化することによって、電解のそれぞれの半反応が入口チャンバに隣接する複合多孔質電極の入口側において行われることを妨げるために、電解触媒領域211のイオン交換境界が第1の複合多孔質電極217内に埋め込まれる(すなわち、入口側から離間される)ことを保証することができる。
【0244】
この例において、コーティング219が被着される第1の複合多孔質電極217のマトリックス(またはボディ)211は多孔質であり、電解触媒として活性であり、複合多孔質電極の電解触媒領域211を提供する。
【0245】
上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3bの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0246】
例としてのみ、
図3dの複合多孔質電極217は、多孔質構造としての複合多孔質電極のマトリックス(またはボディ)211、たとえば、実質的に等方性の多孔質構造を提供するために、本明細書の他の箇所において説明されているように付加製造または粉末プレスプロセスを使用して製造されてもよい。ボディ211の製造のための構築材料または粉末は、電解触媒を含んでもよく、結果、マトリックス(またはボディ)211は、電解触媒として活性になり、複合多孔質電極217の電解触媒領域を形成する。
【0247】
たとえば、マトリックス(またはボディ)211は、ニッケル、または、ニッケル基超合金などのニッケル基合金を含んでもよい(たとえば、それから成ってもよい)。適切な例は、インコネル(登録商標)合金(たとえば、インコネル(登録商標)600)などのニッケル・クロム合金である。そのような材料は、アノードにおいては電解の半反応に触媒作用を及ぼすための、および、カソードにおいては、水性電解質液のための、適切な電解触媒であってもよい。
【0248】
その後、不動態化コーティング219が、マトリックス(またはボディ)211に被着されてもよい。たとえば、マトリックス(またはボディ)211は、コーティングが必要ない箇所で(たとえば、この例においては複合多孔質電極の出口側で)マスキングされてもよく、たとえば、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングプロセスによって、不動態化コーティング219でコーティングされてもよい。
【0249】
代替的な例として、
図3dの複合多孔質電極217のマトリックス(またはボディ)211は、上述したように、多孔質構造を提供するために、ただし、電解のそれぞれの半反応について電解触媒として実質的に不活性であるか、または、電解触媒としての活性が不十分である構築材料によって製造されてもよい。たとえば、構築材料は、ステンレス鋼316またはチタンを含んでもよい(たとえば、ステンレス鋼またはチタンから成ってもよい)。その後、マトリックス(またはボディ)211は、電解触媒を含むコーティングでコーティングされてもよい。たとえば、マトリックス(またはボディ)211は、複合多孔質電極の電解触媒領域を提供するために、適切な電解触媒のコーティングによって電気めっきされてもよい。コーティングは、内部(すなわち、マトリックス211の細孔またはチャネルの中)と外部(たとえば、マトリックスの入口側および/または出口側)の両方に被着されてもよい。電解触媒領域を提供するためにマトリックス(またはボディ)211をコーティングすることは、電解触媒が高価であるか、または、複合多孔質電極の支持構造としての役割を果たすマトリックスを製造するのに適していない場合に、特に有利であり得る。たとえば、カソードの電解触媒領域は、たとえば、白金などの電解触媒のコーティングを被着させるために、このように提供されてもよい。その後、上述したように、不動態化コーティング219が、マトリックス(またはボディ)211に被着されてもよい。
【0250】
図3eは、マトリックス(またはボディ)211が下記に説明するように電解触媒コーティング211’によって付加的に提供されるという点において、
図3dに関して上述した構成とは異なる、さらなる例示的な電極構成345を示す。
【0251】
図3eの例において、マトリックス(またはボディ)211は、コーティング211’よりも電解触媒としての活性が低い第1の電解触媒材料(すなわち、電解触媒)を含んでもよい(たとえば、それから成ってもよい)。したがって、複合多孔質電極217の電解触媒領域は、マトリックス(またはボディ)211と、複合多孔質電極の出口側を画定する電解触媒コーティング211’の両方を含んでもよい。たとえば、マトリックス(またはボディ)211は、
図3dに関して上述したような例示的な製造方法に従って多孔質構造として形成されてもよく、ステンレス鋼316を含んでもよい(またはそれから成ってもよい)。その後、電解触媒のコーティング211’が、たとえば、化学気相成長(CVD)プロセスによって、マトリックス(またはボディ)211の出口側に被着されてもよい。コーティング211’は、ニッケル(複合多孔質電極がアノードであるとき)または白金(複合多孔質電極がカソードであるとき)などの、電解のそれぞれの半反応について電解触媒としての活性が相対的により高い電解触媒を含んでもよい。その後、上述したように、不動態化コーティング219が、複合多孔質電極217の入口側を画定するために被着されてもよい。したがって、複合多孔質電極のイオン交換境界は、不動態化コーティングによって画定される受動領域219とマトリックス(またはボディ)211との間の界面に存在してもよく、ただし、電解のそれぞれの半反応の大部分は、マトリックス上に提供される電解触媒コーティング211’によって画定される電解触媒領域の部分において行われてもよい。
【0252】
上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3eの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができ、および/または、受動領域の上流流れ抵抗によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。
【0253】
図3fは、第1の複合多孔質電極217が、長手方向軸Aに沿って(すなわち、これに平行に)直線的に延在し、入口チャンバ200に隣接する入口側から保持チャンバ210に隣接する出口側までの直交する厚さ方向Tを有するさらなる例示的な電極構成350を示す。
【0254】
電極構成350は、複合多孔質電極217が、第1の複合多孔質電極217の厚さを通じて延在し、電解質液が入口チャンバ200から保持チャンバ210へと流れることを可能にするように構成されている複数のチャネル352によって画定される異方性多孔質構造を有するという点において、
図3a~
図3eの各々に関して上述したものとは異なる。チャネルは、複合多孔質電極217の電解触媒領域211を通じて延在してもよい。複合多孔質電極217は、チャネルが、特定の方向に沿って方向付けられて、流れがその方向において他の方向よりも容易に複合多孔質電極に浸透することを可能にするように、構造化アレイに配置構成されている異方性構造を有する。この例において、チャネル352は、長手方向軸Aと厚さ方向の両方に対して傾斜しており、結果、長手方向軸Aが(
図3fに示すように)垂直に向けられているときに、入口側から出口側までのチャネル352に沿った流れが上向き成分を有する。傾斜チャネルは、
図3gに示すようにそれぞれの保持チャンバに向かう方向に沿って発散する(すなわち、拡大する)断面を有してもよく、
図3gは、この点に関してのみ(すなわち、傾斜チャネルが発散する断面を有するという点においてのみ)
図3fの電極構成と異なるさらなる例示的な電極構成355を示す。各チャネルの図心軸は、長手方向軸Aと厚さ方向Tの両方に対して傾斜される。発散する断面は、複合多孔質電極の電解触媒領域において生成されるより低い密度の流体反応生成物が、下流に(すなわち、チャネルに沿って保持チャンバに向かって)優先的に拡大し、流れることを可能にし得ると考えられる。
【0255】
図3fおよび
図3gの電極構成350、355の両方において、複合多孔質電極217は、複合多孔質電極の入口表面を画定する非電解触媒性または不動態化コーティング219をさらに備える。
【0256】
例としてのみ、
図3gの複合多孔質電極217は、
図4aを参照して説明されるような方法40によって製造されてもよい。
【0257】
ブロック41において、複合多孔質電極のためのボディが提供される。たとえば、ボディは、複合多孔質電極の電解触媒領域211に対応する形状およびサイズを有してもよい。ボディは、所望の形状およびサイズに機械加工されてもよい。ボディは、電解触媒材料(電解触媒)を含んでもよく(たとえば、それから成ってもよく)、電解質液の電解のそれぞれの半反応のための適切な電解触媒は、本明細書の他の箇所において論じられている。例としてのみ、ボディは、インコネル(登録商標)合金(たとえば、インコネル(登録商標)600)などのニッケル超合金を含んでもよい。
【0258】
ブロック42において、上述したように、不動態化コーティング(たとえば、誘電体コーティング)219が、複合多孔質電極の受動領域219を画定するために、たとえば、複合多孔質電極217の入口側を画定するために、ボディの一方の側に被着されてもよい。不動態化コーティングは、任意の適切なプロセス、たとえば、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングプロセスによって被着されてもよい。ボディの一方の側は、不動態化コーティングによるコーティングを妨げるためにマスキングされてもよい(たとえば、ボディの出口側)。任意選択で、不動態化コーティングは、ボディの両側(すなわち、いずれかの側もマスキングされることなく、入口側と出口側の両方)に被着されてもよい。
【0259】
ブロック43において、上述したような異方性多孔質構造を提供するために、傾斜チャネルがボディ内に形成される。たとえば、傾斜チャネルは、レーザ穿孔プロセスを使用することなど、ボディから材料を除去することによって形成されてもよい。傾斜チャネルには、それらの長さに沿って25~150μm、たとえば、25~100μm、25~75μmまたは約50μmの平均断面直径が提供されてもよい。適切なレーザ穿孔機器の例は、日本のDMG森精機株式会社から入手可能な「Lasertec 50 Powerdrill」、または、ドイツのAmphos GmbHから入手可能な高出力超短パルスレーザ(たとえば、「Amphos 2302」または「Amphos 3000」シリーズレーザ)である。
【0260】
適切なレーザ穿孔プロセスは、超短パルスレーザ穿孔(レーザマイクロマシニングとしても知られる)であってもよく、超短レーザパルスは、10ps、または0.1ps~10psなどの、ピコ秒またはフェムト秒単位である。そのような機械加工プロセスは、https://www.intechopen.com/books/micromachining/pico-and-femtosecond-laser-micromachining-for-surface-texturingにおいても利用可能な引用文献Aizawa TatsuhikoおよびInohara Tadahiko(2019)「Pico- and Femtosecond Laser Micromachining for Surface Texturing」10.5772/intechopen.83741において論じられている。
【0261】
傾斜チャネルは、
図3gを参照して上述したように、複合多孔質電極の入口側から出口側へと発散する(たとえば、拡大する)断面を提供するように形成されてもよい。たとえば、これは、レーザ穿孔プロセスにおいて、チャネルの図心軸に対して傾斜されたビームを、図心軸を中心として回転させることによって達成されてもよい。AizawaおよびInoharaによる上記文献に論じられているように、そのような回転は、レーザ穿孔装置内の1つまたは複数のレンズ素子が回転して、ある軸を中心として(すなわち、傾斜チャネルの図心軸を中心として)ビームを軸対称に回転させる、ビーム回転子によって実施されてもよい。
【0262】
図3fの複合多孔質電極217を製造するための代替的な方法45は、例として
図4bを参照して説明されるように、付加製造プロセスを使用することである。
【0263】
ブロック46において、複合多孔質電極の異方性多孔質マトリックス(またはボディ)が形成される。この例において、これは、付加製造プロセスによって、たとえば、付加製造プロセス中に傾斜チャネル352がマトリックス中に形成されるように、構築材料を層ごとに選択で融合することによって形成される。適切な付加製造プロセスは、選択的レーザ焼結(SLS)または金属バインダジェッティングであってもよい。
【0264】
傾斜チャネルは、それらの長さに沿って約50~200μm、たとえば、100~200μmの平均断面直径を有してもよく、そのようなチャネルは、30μmの層分解能を有する付加製造装置によって適切に製造することができる。付加製造に適した構築材料は、ニッケル粉末(または、インコネル(登録商標)600などの、本明細書の他の箇所において論じられているようなインコネル(登録商標)合金などの、ニッケル合金)であってもよい。
【0265】
この例において、構築材料は、電解質液の電解のそれぞれの半反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒を含み、したがって、ブロック46において形成されるものとしての複合多孔質電極の異方性マトリックスは、複合多孔質電極の電解触媒領域を提供する。しかしながら、他の例においては、構築材料は、半反応に触媒作用を及ぼすのに必要とされ得るよりも電解触媒としての活性が低くてもよく、たとえば、構築材料は、チタンであってもよい。本方法は、任意選択で、ブロック47において、複合多孔質電極の電解触媒領域211を形成するように、マトリックス状にそれぞれの半反応のための電解触媒を含む(たとえば、それから成る)コーティングを提供することを含む。たとえば、コーティングは、マトリックス上に電気めっきされてもよい。たとえば、内面および/またはボディの一方もしくは両方の主面(複合多孔質電極の入口表面および出口表面に対応する)は、電解触媒によってコーティングされてもよい。
【0266】
ブロック48において、上述したように、不動態化コーティング(たとえば、誘電体コーティング)が、複合多孔質電極217の受動領域219を画定するために、電解触媒領域211の入口側に被着される。
【0267】
したがって、
図4aおよび
図4bの例示的な方法40、45において、複合多孔質電極219の実質的に大部分が、電解触媒領域211によって形成されてもよく、受動領域219は、不動態化されている入口側のみに提供されてもよい。任意選択で、さらなる受動領域が、
図4aの方法40を参照して上述したように、出口側上にコーティングとして提供されてもよい。
【0268】
電解触媒領域の電解質界面(すなわち、使用時に電解のそれぞれの半反応のために電解質液に隣接する電解触媒領域の表面領域)が、電解触媒の追加のコーティングによってではなく、マトリックスによって画定されるように、電解触媒を含む複合多孔質電極のためのマトリックスを提供することによって、複合多孔質電極は、より単純かつ信頼可能に製造することができる。特に、
図4aの方法40と
図4bの方法45との比較から明らかであるように、マトリックスが電解質界面を画定するとき、追加のコーティングが被着される必要はない。マトリックスを通じてチャネルまたは細孔の内面に被着されるコーティングは、たとえば、その幾何形状がそれぞれの表面にわたって不均一な電流密度をもたらす場合、不均一であってもよい。さらに、マトリックスが電解質界面を画定するとき(すなわち、追加のコーティングがない場合)、電解触媒界面は、コーティングがそうであり得るように、剥離する傾向にない。
【0269】
図2の電解槽20の第1の動作例は、例示的な超臨界動作条件、適切な電解質液、および、第1の電極がアノードであり、第2の電極がカソードである構成を参照して上述されている。
図2の電解槽20が
図3fの電極配列350または
図3gの電極配列355を含む、電解槽20の修正された動作例(すなわち、上述した第1の例に対して修正されている)を、ここで説明する。
【0270】
この例において、電解質液は、上述したように、超臨界条件において入口22に提供される。この動作例は、それを通る電解質液の分岐流を駆動する第1の複合多孔質電極217にわたる圧力差を有する電解槽の動作、および、そのような圧力差がない電解槽の動作に等しく適用可能である。
【0271】
電解質液は、上述したように、入口チャンバ200を通じて第2の出口204へと流れてもよく、結果、電解質液または関連付けられるイオンが第2の電極202(カソード)と反応して第2の流体反応生成物(たとえば、水素)を生成する。
【0272】
入口チャンバ200は、第1の流体反応生成物(たとえば、酸素)を生成するための第1の複合多孔質電極217の入口側における電解反応を抑制するために、一方の側において、第1の複合多孔質電極217の不動態化コーティング219によって境界付けられる。
【0273】
電解質液および/または関連付けられるイオンは、電解質液の一般的運動によって、または、イオンに対する起電力によって、たとえば、第1の複合多孔質電極217を通る電解質液の分岐流に同伴されるものとして、動作中に第1の複合多孔質電極217のチャネル352に入る。
【0274】
チャネル352に入ると、電解質液および/または関連付けられるイオンは、電解触媒領域211(第1の電極)と反応する。たとえば、反応は、電解触媒領域の電解質界面を提供し、複合多孔質電極の電解触媒として活性のマトリックス材料、または、上述したようなマトリックス材料にわたって提供される電解触媒として活性のコーティングのいずれかによって画定されてもよい、チャネル352の内面において行われてもよい。反応は、第1の流体反応生成物(酸素)を生成する。第1の流体反応生成物は、電解質液よりも低い密度を有するが、超臨界条件にあり、電解質液と完全に混和性であるままである。生成される第1の流体反応生成物のより低い密度によって、第1の流体反応生成物は、それぞれのチャネル352を通じて上向き方向に沿って流れるように駆動され、そうする際に、保持チャンバ210へと導き、そこから、第1の流体反応生成物は、保持チャンバ210の第1の出口213を通じて放出される。チャネル352を通じて上向きの(および、第1の出口213を通じて前向きの)第1の流体反応生成物の浮力駆動流が、電解質液の置換流をチャネルへと引き込んでもよい。
【0275】
それによって、傾斜チャネルは、下流にバイアスされた浮力効果によって、第1の複合多孔質電極217を通じて入口チャンバ200に向かう第1の流体反応生成物の逆流を抑制する。
【0276】
電解のそれぞれの半反応が電解触媒領域内の複合多孔質壁内で行われるように、傾斜チャネルは電解触媒領域を通じて延在してもよい。電解のそれぞれの半反応が出口側において保持チャンバ210内で実行され得るように、電解触媒領域がまた、複合多孔質壁217の出口側を画定してもよい。代替的に、上述したように、電解のそれぞれの半反応が実質的に全体的に傾斜チャネル内で(たとえば、その中でのみ)行われるように、複合多孔質壁の出口側は、受動領域によって(たとえば、傾斜チャネルが形成される前に複合多孔質壁のボディの両側に被着される不動態化コーティングによって)画定されてもよい。
【0277】
上述したような例示的な電解槽に適用されるとき、
図3fまたは
図3gの電極構成は、入口チャンバから保持チャンバまでに圧力降下が存在するとき、第1の多孔質壁にわたる圧力勾配、もしくは、多孔質壁を通る圧力駆動流による流体反応生成物の逆流を抑制することができる。複合多孔質電極の入口側を画定する受動領域の適切な厚さによって、これは、受動領域の上流流れ抵抗による流体反応生成物の逆流を抑制することができる。さらに、電極構成は、上述したように、下流にバイアスされた浮力効果によって流体反応生成物の逆流を抑制することができる。異方性複合多孔質電極が、
図1~
図3eの例を参照して本明細書に記載されているような他の特徴とともに使用されてもよい。たとえば、本明細書に記載されているような複合多孔質電極の例示的な構成のいずれかは、それぞれの多孔質壁または複合多孔質電極が、付加的に、上述したような下流にバイアスされた浮力効果によってそれぞれの流体反応生成物の逆流を抑制するように機能することができるように、多孔質壁または複合多孔質電極内に傾斜チャネルを備えるように修正されてもよい。下流にバイアスされた浮力効果は、圧力勾配または圧力駆動流が逆流を抑制するように確立するよりも優先して依拠され得、流体反応生成物の逆流が、多孔質壁または複合多孔質電極をまたいだ圧力差がない状態でより良好に抑制されることを可能にすることができる。
【0278】
さらに、複合多孔質電極の傾斜チャネル内の反応速度は、複合多孔質電極の入口側の近くに(ただし、そこではなく)電解触媒領域を提供することによって改善され得ると考えられるが、傾斜チャネルは、複合多孔質壁の受動領域を通る流路の上流部分が、受動多孔質領域もしくは壁、または、複合多孔質電極を通る全流路の相当の割合もしくは大部分を占める複合多孔質電極において使用されてもよい。
【0279】
図5は、
図2を参照して上述した電解槽20と同様であるさらなる例示的な電解槽50を示し、結果、同様の特徴の上記の記述が、
図5の電解槽50に等しく適用され、同じ参照符号が同様の構成要素に使用される。
図5の電解槽50は、それぞれの第1の電極および第2の電極において生成される流体反応生成物を保持するために、入口チャンバ200の対向する両側に第1の保持チャンバ210および第2の保持チャンバ520を備えるという点において、
図2に関して上述した電解槽20とは異なる。第1の多孔質壁および第2の多孔質壁は、入口チャンバ200を、それぞれ第1の保持チャンバ210および第2の保持チャンバ520から分離する。
図2の電解槽20に対して、第2の多孔質壁および第2の電極は、
図2の入口チャンバ200の半径方向外壁を画定する第2の電極202に置き換わる。
【0280】
図5の例示的な電解槽50において、第1の保持チャンバ210および第2の保持チャンバ520と関連付けられるそれぞれの多孔質壁および電極を提供する第1の複合多孔質電極217および第2の複合多孔質電極528が存在する。この特定の例において、第1の複合多孔質電極217および第2の複合多孔質電極528は、実質的に、
図3fに関して上述したようなものであり、それぞれの電極において生成される流体反応生成物がチャネルに沿って上向きにそれぞれの反応チャンバへと流れるのを促進する傾斜チャネルを有し、浮力に抗するチャネルを通じた下向きのそのような流体反応生成物の逆流を妨げる。しかしながら、複合多孔質電極のいずれかまたは両方が、電極および多孔質壁の任意の適切な配置構成、たとえば、
図1~
図3gを参照して上述したような任意の配置構成と置き換えられてもよいことを理解されたい。
【0281】
図5の例示的な電解槽は、環状構成を有し、入口チャンバ200が、コア内側チャンバである第1の保持チャンバ210を包囲する中間環状チャンバである。第2の保持チャンバ220は、入口チャンバ200(中間環状チャンバ)を包囲する外側環状チャンバである。しかしながら、
図5の断面配置構成は、
図1の電解槽10と同様であるが、二重保持チャンバ配置構成を有する、入口チャンバ200、第1の保持チャンバ210および第2の保持チャンバ520が平坦な複合多孔質電極によって分離されている直線形ダクトである電解槽に等しく適用することができることを理解されたい。
【0282】
この(環状の)例示的な電解槽50において、第1の電極(第1の複合多孔質電極217の)において生成される第1の流体反応生成物を放出するための第1の出口213は、第1の保持チャンバ210の上端にある。
図2の電解槽20とは異なり、入口チャンバ200の上端に第2の出口は存在しない。代わりに、第2の電極(第2の複合多孔質電極528の)において生成される第2の流体反応生成物を放出するための第2の出口524が、第2の保持チャンバ520の上端にあり、したがって、これはこの例における環状出口である。
【0283】
動作の一例が、二重保持チャンバ構成によってもたらされ得る(すなわち、
図2の電解槽20に関して上述した動作の第1の例と比較しての)差のみに注目して簡潔に説明される。
【0284】
使用時に、超臨界電解質液が、上述したように、入口マニホールド23の環状入口22を介して入口チャンバ200に(たとえば、動作中に連続的に)提供される。電解質液の供給は、電解質液を入口チャンバから変位させ、入口チャンバからの出口ポートがない状態で、そのような変位された流体は、複合多孔質壁を通じて保持チャンバへと、第1の分岐流および第2の分岐流として駆動される。したがって、この例において、各複合多孔質壁を通じた変位電解質液の流れは、それぞれの複合多孔質電極をまたいだ圧力降下の確立または維持によってではなく、入口流速によって確立されてもよい。
【0285】
入口チャンバ200内の圧力は、入口22における圧力に対応し、一方、それぞれの保持チャンバ210、220内の圧力は、第1の出口213および第2の出口523における圧力に対応する。多孔質部材として、各複合多孔質電極は、入口チャンバと保持チャンバとの間の圧力差に基づいて、電解質液のそれぞれの保持チャンバへの流速を制約し得る。したがって、入口22と、それぞれ第1の複合多孔質電極217および第2の複合多孔質電極528を通る電解質液の第1の分岐流および第2の分岐流に対応する第1の出口213および第2の出口524の各々との間に、圧力差が確立され得る。分岐流の相対流速は、下記に説明するように、出口と関連付けられる圧力または流速を制御することによって制御されてもよい。
【0286】
この例において、第1の複合多孔質電極217および第2の複合多孔質電極528の各々は、実質的に、
図3fの複合多孔質電極217を参照して上述したようなものである。使用時に、電解質液および/または関連付けられるイオンは、複合多孔質電極のそれぞれの入口側を画定する不動態化コーティング(単純にするために
図5には示されていない)の存在によって、入口チャンバに隣接するそれらのそれぞれの入口側において複合多孔質電極217、528と反応しない。したがって、入口チャンバ200の内容物は、実質的に、電解質液および関連付けられるイオンから成り、実質的に、それぞれの電極において流体反応生成物は生成されない。
【0287】
各分岐流は、電解質液および/または関連付けられるイオンをそれぞれの傾斜チャネル内へと、および、それぞれの複合多孔質電極の電解触媒領域へと搬送し、そこで、それぞれの電解半反応が行われて、それぞれの流体反応生成物が生成される。流体反応生成物の(電解質液と比較して)相対的により低い密度によって、流体反応生成物は、上向きに、したがって傾斜チャネルに沿って流れて、下流においてそれぞれの反応チャンバ内に保持される傾向にある。
【0288】
本明細書の他の箇所において論じるような、電解触媒の適切な選択によって、複合多孔質電極のいずれかは、アノードとして機能することができ、他方はカソードとして機能することができる。
【0289】
図5の例示的な電解槽において、複合多孔質電極を通じた流体反応生成物の逆流は、上述したような圧力勾配、または電解質液の圧力駆動流もしくは変位流が存在することによって、および/あるいは、上述したような下流にバイアスされた浮力効果によって、抑制することができる。任意選択で(たとえば、不動態化層の厚さに応じて)、逆流は、先行する例に関して上述したような受動領域の上流流れ抵抗によって抑制されてもよい。
【0290】
図3a~
図3gのいずれかの電極配列が
図5の電解槽に適用され、結果、各々がそれぞれの多孔質壁または複合多孔質電極を有する、それぞれの反応生成物の保持チャンバの二重配置構成が存在するとき、逆流は、それらの多孔質壁または複合多孔質電極を通る電解質流の変位流によって抑制されてもよい。
【0291】
図6は、本明細書において想定されている任意の実施形態によるものであってもよいが、
図5を参照して(さらに
図2および
図3fを参照して)上述したような例示的な電解槽50を参照して説明する電解槽50を備える例示的な電解槽設備400を示す。
【0292】
電解槽設備は、他の様態では、
図1~
図3gおよび
図5を参照して上述した特徴および
図6を参照して説明されることになる追加の特徴のいずれかを備える電解槽として理解されてもよい。これに関連して、本明細書における「電解槽設備」への参照は、「電解槽」への参照と交換可能であることが理解されよう。
【0293】
順次的な流れの順序において、例示的な電解槽設備400は、電解質液の供給源401と、電解質液を圧縮(加圧)するための圧縮器402と、電解質液を加熱するための加熱器403と、監視マニホールド405に至る入口導管404と、上述したような電解槽50と、第1の放出マニホールド420と、第2の放出マニホールド430とを備える。
【0294】
この例において、電解槽設備は、たとえば、
図2の電解槽20の第1の動作例に関して上述したような、水性電解質溶液を含む電解質液による超臨界条件における動作のためのものである。したがって、圧縮器402は、電解質液を、少なくとも22MPa、たとえば22MPa~27MPaの圧力まで圧縮するように構成されている。さらに、加熱器403は、電解質液を、少なくとも374℃、たとえば、374℃~550℃または374℃~400℃の温度まで加熱するように構成されている。
【0295】
入口導管404は、加熱および加圧された電解質液を入口マニホールド405に導き、入口マニホールドは、監視マニホールド内の電解質の温度を監視するための温度センサ406を支持し、温度センサは、接続407を介してコントローラ450に結合されている。接続407は、
図6において温度センサ406とは別個に示されているが、接続407は、任意の適切な形態の接続、たとえば有線または無線リンクであってもよいことを理解されたい。
【0296】
電解質液は、
図1~
図5に関して上述したような電解反応のために電解槽50に流入する。それぞれ電解槽の第1の出口および第2の出口と結合されている別個の第1の出口通路411および第2の出口通路421が存在する(第1の出口および第2の出口は、それぞれ第1の流体反応生成物および第2の流体反応生成物を放出するように構成されている)。
図6は、電解槽50の中心に位置する第1の出口に結合されている第1の出口通路411を概略的に示しており、一方、第2の出口通路421は、電解槽50の半径方向外向きの(たとえば、環状の)第2の出口に結合されている。
【0297】
第1の出口通路411は、第1の放出マニホールド410と流体連通しており、第1の放出マニホールドは、電解槽20の第1の出口から電解質液および第1の反応生成物の流れを受け入れる。第1の放出マニホールド410は、放出ライン416を介して第1の放出弁418に流体結合されている。第1の放出弁418は、それを通る流れに可変制約を提供する制御弁であってもよい。
【0298】
第2の出口通路421は、第2の放出マニホールド420と流体連通している。
図6に概略的に示すように、この例において、第1の出口通路411は、機能的には第2の放出マニホールドをバイパスしながら(すなわち、第1の出口通路411内の流れが第2の放出マニホールド420内の流れと混合しないように)、第2の放出マニホールド420を通じて延在するが、他の実施態様においては、別様に構成されてもよい。第1の放出マニホールド410と同様に、第2の放出マニホールド420は、放出ライン426を介して、第1の放出弁418と同様のタイプのものであってもよい第2の放出弁428に流体結合されている。
【0299】
任意選択で、第1の放出マニホールド410および第2の放出マニホールド420の各々には、電解槽のそれぞれの(第1のまたは第2の)出口から放出されるか、または、出口のすぐ上流にあるそれぞれのチャンバ内の流体と連通する圧力センサ素子を有するそれぞれの圧力センサ414、424が提供される。各圧力センサ414、424は、それぞれの圧力信号をコントローラ450に提供するために、それぞれの接続415、425を介してコントローラ450に結合されている(上記のように、図面においては接続415、425はそれぞれの圧力センサ414、424とは別個のものとして示されているにもかかわらず、任意の適切な形態の接続が提供されてもよい)。代替的にまたは付加的に、それぞれの放出マニホールドまたは出口通路と連通し、圧力差信号をコントローラ450に提供するためにコントローラ450に接続されている圧力差センサが提供されてもよい。
【0300】
第1の放出弁418および/または第2の放出弁428は、制御弁であってもよい。たとえば、第1の放出弁418および/または第2の放出弁428は、電解槽50内の目標動作条件(たとえば、電解質液の超臨界圧条件)に対応してそれぞれの弁の上流の目標圧力を維持するように構成されている制御可能圧力維持弁であってもよい。第1の放出弁418および/または第2の放出弁428は、流れをより低い圧力、たとえば、それぞれの反応生成物が気体であり、残留電解質液が液体である圧力に拡大することができ、それぞれの反応生成物を電解質液からより容易に分離することができる(たとえば、蓄積タンク内の相分離によって)。残留電解質液は、電解質液の供給源401へと再循環させることができる。
【0301】
任意選択で、電解設備は、それぞれの流体反応生成物を電解質液から分離するための、それぞれの放出弁418、428の下流のセパレータ430、436を備える。各セパレータ430、436は、再使用のために電解質液の供給源へと戻ることができる、セパレータからの放出電解質液432、438の流れのためのそれぞれの戻りライン432、438を有する。各セパレータ430、436は、それぞれの流体反応生成物を放出するための出口ライン434、440をさらに備える。流体反応生成物は、それぞれのセパレータ内で気体形態であってもよく、出口ラインを通じて気体として放出されてもよい。任意選択で、監視装置は、後述するように、各々がそれぞれの信号をコントローラ450に出力する、それぞれの流体反応生成物の流速を監視するための流量計435、442を、それぞれの出口ライン上に備える。
【0302】
図6に示すように、電解槽設備400の動作を制御するために流れ制御装置および監視装置に結合されているコントローラ450が存在する。監視装置は、電解質液の入口温度を監視するための温度センサ406、それぞれ電解槽50の第1の出口および第2の出口内のまたはそこから放出される流体の圧力を監視するための圧力センサ414、424(または圧力差センサ)、ならびに、反応生成物の出口流を監視するための出口ライン434、440上の流量計435、442を備えることができる。流れ制御装置は、監視装置を備えることができる。
【0303】
流れ制御装置は、電解槽内の熱力学的条件および/または流速条件などの、電解槽内の条件を決定する(すなわち、影響を及ぼすかまたは影響を与える)1つまたは複数の構成要素を含む。
【0304】
熱力学的条件は、電解槽内の流体の圧力および温度、たとえば、電解槽に提供される電解質液の圧力および温度、または、電解槽内でそれらが保持されているそれぞれのチャンバ内の第1の反応生成物および/または第2の反応生成物と組み合わされた電解質液の圧力および温度に関する。この例において、熱力学的条件は、電解質液が圧縮器402において加圧される圧力、電解質液が加熱器403において加熱される温度、ならびに、第1の放出弁418および第2の放出弁428の動作(たとえば、弁が弁の上流で維持するように構成されている目標背圧)の関数である。
【0305】
流速条件は、電解槽に提供される電解質液の流速、および、任意選択で、入口チャンバからそれぞれの多孔質壁を介してそのまたは各保持チャンバへと通過する電解質液の分岐流のそのまたは各流速に関する。
【0306】
定常状態条件において、電解槽への流速は、それぞれの第1の出口および第2の出口から出る第1の流速および第2の流速の合計と等価である。各出口流は、圧縮器402と第1の放出弁418および第2の放出弁428のそれぞれとの間の圧力差、ならびに、それぞれの流路(たとえば、主に任意の関連付けられる多孔質壁、ただし、曲げおよび流量制約などの、圧力降下を生じ得る流路の任意の他の特徴も)に沿った任意の流れ抵抗に依存する。
【0307】
電解槽の第1の出口および第2の出口のいずれかを通じた流速(上流多孔質壁を通る分岐流に対応し得る)は、第1の出口および第2の出口における相対圧力に依存し得る。
【0308】
イオン交換および電解反応を持続させるために、それぞれの電極において反応が行われる速度が平衡されることが望ましい場合がある。
【0309】
各電極における反応速度は、電解質液の組成、電解質液とそれぞれの電極との間の流体相互作用、各それぞれの電極の電解触媒領域の電解質界面(すなわち、使用時に電解質液に隣接する電解触媒領域の表面領域)の面積、それぞれの電解質界面の表面積と電極に暴露された(たとえば、電極間の分離間隙内の)電解質液の体積との比、および、それぞれの電極と関連付けられる電解質液の流速(フロースルー電極の場合は電極を通じた流速であってもよく、または、フローパスト電極の場合は電極を過ぎる流速であってもよい)を含む、複数の変数の関数であってもよい。
【0310】
多孔質壁の流れ抵抗特性は、多孔質壁を通る電解質液の分岐流の適切な流速を達成するように選択されてもよい。流速は、電解槽の設計および構成において変化し得る複数の変数の関数であることを理解されたい。一般に、デバイスを通じた流速は、下記の式1に示すように、流動係数Kvについて式を再構成することによって決定することができる。
【0311】
【0312】
式中、Qは流速(m3h-1)であり、Kvは多孔質壁の流動係数(m3h-1bar-0.5)であり、ΔPは多孔質壁をまたいだ圧力降下(bar)であり、SGは流体の比重である。
【0313】
流動係数は、多孔質壁に対する定数であってもよく、多孔質壁の様々な特性は、適切な流動係数、たとえば、多孔質壁の有孔率および多孔質壁の厚さを達成するために変更することができることを理解されたい。
【0314】
流速は、下記の式2に示すように、ダルシーの法則によって決定することができる。
【0315】
【0316】
式中、qは瞬間フラックス(すなわち、Q/Aと等価の、流積のm2当たりの流体のm3s-1、Aは流積である)、kは媒体の透過率(m2)であり、μは動粘性係数(Pa.s-1)であり、ΔPは総圧力降下(Pa)である。
【0317】
多孔質壁をまたいだ圧力降下ΔPは、電解槽の第1の出口および第2の出口と流体連通する放出弁418、428によって各それぞれのチャンバに加えられる目標背圧の関数として決定することができる。
【0318】
それぞれのチャンバに提供される電解質液よりも密度が低い、電極における反応生成物の生成によって、電解槽のチャンバ内には圧力勾配が存在し得る。したがって、圧力は、多孔質壁に隣接するロケーションと、それぞれの放出弁と連通する電解槽のそれぞれの出口との間のチャンバ内で変化し得る。したがって、放出弁が背圧を維持するように構成されるとき、入口チャンバに提供される電解質液とそれぞれの背圧との間の圧力差は、それらの間に配置されている多孔質壁をまたいだ圧力差に等しくない場合がある。それにもかかわらず、それぞれのチャンバ内のそのような圧力勾配は、一定の動作条件(たとえば、流速、圧力および温度設定点、電解回路の電圧および電流)において使用時に定常状態になり、結果、多孔質壁の出口側における圧力は、下流の放出弁において加えられる背圧の関数になり得る。したがって、各多孔質壁をまたいだ圧力降下は、放出弁によってそれぞれのチャンバに加えられる背圧の関数であり得る。
【0319】
各チャンバと関連付けられる放出弁は、たとえば、コントローラによって背圧を変化させるように制御可能であってもよい。これは、使用のために電解槽を較正すること、または、使用中にその動作条件を変更することを可能にすることができる。代替的に、放出弁は、固定背圧、たとえば、電解槽の設計において意図された動作状態における使用に適するように決定されている圧力を維持するように構成されてもよい。
【0320】
図6の例示的な設備において、使用時に、コントローラ450は、電解槽内の所望の条件を維持するように流れ制御装置の動作を制御する。コントローラ450は、フィードバックループを使用して所望の条件を維持するために、監視装置からの出力に基づいて、流れ制御装置、たとえば、第1の放出弁および/または第2の放出弁の動作を制御する。一変形例において、コントローラは存在しなくてもよく、および/または、流れ制御装置の構成要素が、電解槽の所定の動作条件に対応する動作点を設定するように、予め構成されてもよい。
【0321】
コントローラ450は、層流または層および/もしくは遷移流などの、所望の流動様式に対応する電解槽の入口チャンバおよび/またはそのもしくは各保持チャンバ内の流速を維持するために、流れ制御装置を制御することができる。入口チャンバが反応生成物のうちの1つを保持するように構成されるとき(たとえば、第1の電極と関連付けられる単一の保持チャンバが存在し、入口チャンバが第2の電極と関連付けられるとき)、一方の電極において生成される反応生成物の他方の電極に向かう移動を抑制するために、入口チャンバ内の乱流を回避することが望ましい場合がある。層または遷移流動様式は、流れの中の均一な流線にわたる流体(非イオン性)成分の移動を防止することによって、そのような移動を回避することができる。したがって、コントローラ450は、4000(遷移流に関する限界であると考えられる)以下、または2300(層流に関する限界であると考えられる)以下のレイノルズ数に対応する入口チャンバ内の流速を維持するように、流れ制御装置を制御するように構成することができる。たとえば、それぞれのチャンバの特製寸法(たとえば、入口チャンバの半径方向延在範囲)、ならびに流体の慣性および粘性定数などの、レイノルズ数の算出における速度以外の変数は、定数であり得、コントローラに提供され得ることを理解されたい。
【0322】
電解設備のいくつかの実施態様において、
図6の設備400のコントローラ450などのコントローラは、たとえば、電解反応中の流れを目標範囲内に維持するか、または、電解半反応を平衡させるように、電解設備の動作を制御することができる。
【0323】
電解反応を制御する例示的な方法は、例としてのみ、電解設備400を参照して、および、
図7の流れ図を参照して、下記に説明される。
【0324】
図7は、それぞれ第1の流体反応生成物と電解質液との混合物、および、第2の流体反応生成物と電解質液との混合物を含む出口流と関連付けられるそのまたは各放出弁418、428を制御する方法700の流れ図である。
【0325】
ブロック702は、コントローラ450において、監視装置の関連付けられるセンサから受信される監視データを表す。
【0326】
ブロック704において、監視データが、コントローラにおいて、監視装置の関連付けられるセンサから受信される。たとえば、データは、連続的に、定期的に、要求に応じて、またはそれぞれのセンサの主導で(たとえば、センサが所定の条件を検出したときに)受信されてもよい。
【0327】
ブロック706において、コントローラは、監視データに関係する目標基準を評価する。
【0328】
ブロック708において、コントローラは、ブロック706における目標基準の評価に基づいて、電解設備の動作を制御するための、放出弁418、428のうちの1つまたは複数に関する設定を決定する。本方法は、ブロック704に戻ることによって連続的に繰り返す。
【0329】
方法700の第1の例において、監視データは、電解槽のそれぞれの第1の出口および第2の出口(すなわち、電解槽のそれぞれのチャンバの出口)から、または、圧力差センサから放出される流体の圧力を監視するように構成されている圧力センサ414、425から受信される上流圧力データである。
【0330】
目標基準の評価は、(たとえば、第1の保持チャンバ210と関連付けられる)第1の出口213を通じて放出される流体の圧力と、(たとえば、第2の保持チャンバ210、または、電解槽が単一のフロースルー電極を有するときは入口チャンバと関連付けられる)第2の出口524を通じて放出される流体の圧力との間の差を決定すること、または、それぞれの出口から放出される流体の圧力を、流体の圧力の目標範囲と比較することを含んでもよい。
【0331】
ブロック708において、放出弁のうちの1つまたは複数に関する設定が、目標基準の評価に基づいて決定され得る。たとえば、圧力差の所定の目標範囲が存在してもよく、設定は、圧力差を目標範囲に維持するかまたは戻すように決定されてもよい。出口の間に圧力差がない状態で電解槽が操作されるとき、目標範囲は、ゼロ圧力差を含んでもよい。出口の間に圧力差がある状態で電解槽が操作されるとき、目標範囲は、ゼロ圧力差を含まなくてもよい。目標範囲(または各圧力のそれぞれの目標範囲)は、たとえば、出口間の流速の適切な平衡がとられた、電解設備の満足のいく性能に対応する圧力差を決定するための電解設備の作動に基づいて、予め定められてもよい。したがって、圧力または圧力差をそれぞれの目標範囲内に維持する結果として、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比が維持され得る。
【0332】
方法700の第2の例において、監視データは、たとえば、(それぞれの放出ライン416、426に沿ってなど、それぞれの放出弁418、428の上流か、または、それぞれの放出弁の下流かにかかわらず)電解槽のそれぞれの出口213、524から放出される流体反応生成物および電解質液の流れの混合物の流速を監視するように構成されている流量計から受信されるものとしての、流速データであってもよい。流速データは、たとえば、放出弁418、428の下流のセパレータ430、436からそれぞれの流体反応生成物を放出するための出口ライン上に設置されている流量計435、442からの、電解質液から分離されるそれぞれの流体反応生成物の成分流速を監視するように構成されている流量計から受信されてもよい。
【0333】
目標基準は、出口のうちの1つもしくは各々から出る目標流速の維持、または、第1の出口から出る流れと第2の出口から出る流れとの間の目標流速比の維持に対応し得る。目標基準の評価は、関連付けられる流速データを所定の目標と比較すること、または、出口から出るそれぞれの流速の比を決定することを含んでもよい。コントローラは、流速または流速比を目標範囲内の維持するための一方または両方の弁の制御設定を決定することができる。
【0334】
方法700の第3の例において、監視データは、それぞれの出口から出る流体の混合物の組成に関係する組成データであってもよい。たとえば、組成データは、たとえば、電解槽のそれぞれのチャンバから放出される流体混合物中のそれぞれの流体反応生成物の質量分率を決定するために、セパレータから出る成分流体反応生成物の流速と、それぞれの出口から放出される流体の総流速とを比較することによって決定されてもよい。代替的に、組成データは、電解質液がそれぞれの出口から放出された流速に関係なく、それぞれの流体反応生成物の流速として決定されてもよい。
【0335】
目標基準は、それぞれの出口から出る目標組成、たとえば、電解槽の満足のいく性能に対応すると考えられ得る流体反応生成物の目標質量分率または目標流速の維持に対応してもよい。コントローラは、組成データに基づいてそれぞれの放出弁の設定を決定することができる。たとえば、反応生成物の質量分率が目標範囲を下回ると判定される場合、これは、それぞれのチャンバを通じて流れる電解質液が多すぎることに対応し得る。したがって、コントローラは、放出弁を通る流れをさらに制約し、それによって、それぞれの流体反応生成物の質量分率を上昇させ得るように、放出弁の設定を調整することを決定することができる。
【0336】
代替的に、目標基準は、電解槽のそれぞれの出口から出るそれぞれの流体反応生成物の流速の目標比の維持に対応してもよい。たとえば、例として第1の反応生成物の流速が第2の反応生成物の流速に対する所望の比の目標範囲内にあることによる、電解槽の満足のいく性能に対応する比の目標範囲が存在してもよい。所望の比は、それぞれの電解反応の持続可能な性能(すなわち、それぞれの半反応の平衡がとれている)に対応してもよい。
【0337】
上述したような流速は、質量流速であってもよい。流量計が、流体の体積流速を監視することができ、流量計またはコントローラに、質量流速に対応するパラメータを判定するためのそれぞれの流体の密度に対応する情報が提供され得る。
【0338】
方法の第4の例において、監視データは、反応チャンバのそれぞれの出口から出る流体流中の汚染流体反応生成物の量に関係する組成データであってもよい。たとえば、上述したように、第1の流体反応生成物は、電解槽の第1の出口を通じた放出のためにチャンバ(保持チャンバ)内に保持されることになり、一方、第2の流体反応生成物は、電解槽の第2の出口を通じた放出のためにチャンバ(たとえば、別の保持チャンバまたは入口チャンバ)内に保持されることになる。第1の出口を通じて第2の流体反応生成物が放出されることは、それぞれの出口流中に汚染流体反応生成物が存在することに対応し、逆も同様である。監視データは、たとえば、(たとえば、上述したようなそれぞれの流量計435、442のロケーションにある)それぞれの流体反応生成物のセパレータの下流の、ガスの組成を監視するように構成されている成分ガスセンサから受信されてもよい。任意の適切なセンサが選択されてもよいが、一例としてのみ、フローストリーム内の温度プローブを目標レベルに維持するために、監視されているエネルギー量(たとえば、電力)に基づいてフローストリームの組成を判定するように構成されている熱伝導センサが使用されてもよい。放出されると期待されているそれぞれの流体反応生成物(たとえば、水素)、および、汚染流体反応生成物(たとえば、酸素)に基づいて較正されるとき、たとえば、流体反応生成物のそれぞれの比熱容量に基づいて、センサ、または、センサが結合されているコントローラは、フローストリームがいつ一定量の汚染流体反応生成物を含むかを判定するように構成されている。たとえば、それは、その量が閾値を上回ることを示すように較正されてもよく、または、それぞれの流体反応生成物(たとえば、水素および酸素)の質量分率を推定もしくは算出するように構成されてもよい。
【0339】
汚染流体反応生成物の存在は、汚染流体反応生成物を含む出口流が放出される、電解槽のそれぞれのチャンバに向かう流れのバイアスを示すことができる。したがって、コントローラは、バイアスを減少させるかまたは除去するように、放出弁のうちの1つまたは複数の設定を調整することを決定することができる。たとえば、第1の放出弁218と関連付けられる出口流中で過剰な量の汚染流体反応生成物が判定された場合、コントローラは、第1の放出弁218を通じた流速を減少させるように(たとえば、弁を部分的に閉じるか、または、より高い背圧が維持されるように設定することによって)第1の放出弁218を制御することができる。
【0340】
上記の例は、電解槽の目標動作パラメータを維持するためのリアクティブ制御方法を論じているが、そのような制御方法は、任意選択であってもよく、電解槽は、電解反応がそのような介入なしに進行するように構成されてもよい。保持チャンバは、多孔質壁を通る電解質液の分岐流を駆動するために入口チャンバよりも低い圧力に維持されるべきであり得るため、放出弁の制御は、単一の多孔質壁を有する電解槽(たとえば、
図3a~
図3gに示すような電極配列)に特に適し得る。二重多孔質壁構成(たとえば、
図5を参照して上述したような)を有する電解槽は、それぞれの出口に加えられる背圧を制御することなく動作するように、より容易に構成することができてもよい。たとえば、それぞれの多孔質壁は、たとえば、それぞれの多孔質壁の透過率および/または有孔率を適切に選択することによって、出口圧力をリアクティブに制御するか、または、平衡させることなく、使用時に所望の流速の電解質液が多孔質壁の各々を通過するように構成することができてもよい。
【0341】
図3b~
図3gの電極構成のいずれかを使用して
図1、
図2、および
図5のいずれかに関して上述したような電解槽10、20、50とともに使用するための複合多孔質電極を製造するさらなる例示的な方法を、例として、ここで
図8aの方法70および
図8bの方法75を参照して説明する。
【0342】
下記に説明する例において、複合多孔質電極は、複合多孔質電極の2つの対向する主面(すなわち、複合多孔質電極の第1の表面および第2の表面)の間の厚さ方向を有するシート状または管状壁の形態で、付加製造または粉末プレスプロセスによって形成される。複合多孔質電極は、
図3b~
図3eを参照して上述したような電解触媒領域および受動領域などの、異なる材料組成を有する少なくとも2つの層または層状領域を含む、電極の2つの主面の間の層状構造を有するように形成される。したがって、使用時に、厚さ方向(電解槽が軸対称構成を有するときは半径方向)に沿った2つの対向する主面の間で(たとえば、入口チャンバに隣接する入口表面からそれぞれの保持チャンバに隣接する出口表面まで)複合多孔質電極を通る電解質液の分岐流は、少なくとも2つの層または層状領域を通過する。層または層状領域のうちの1つは、電極の主面のうちの少なくとも一方から離間されている多孔質電極の電解触媒領域を形成する。例として、
図3b~
図3eの例に関して上述したように、電解触媒領域211は、電解質液の電解のそれぞれの半反応について電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低くなるように、または、それぞれの半反応を抑制するように構成されている複合多孔質電極の受動領域によって、少なくとも、第2の電極202に対向する第1の複合多孔質電極217の入口側から離間される。
【0343】
図8aの方法70において、複合多孔質電極は、付加製造プロセスによって形成される。複合多孔質電極は、層ごとに(またはスライスごとに)形成されてもよく(付加製造プロセスの連続する各層は、形成される構成要素の層状電解触媒および/または非電解触媒領域と関連付けられず、以下の説明においてはスライスとして参照される)、ここで、構築材料(たとえば、粉末)が、連続する層内のベッドまたはプラットフォーム上に堆積され、連続する層は、漸進的に選択で焼結または融合されて、複合多孔質電極がスライスごとに形成される。適切な付加製造プロセスは、選択的レーザ焼結(SLS)および金属バインダジェッティングを含む。
【0344】
本方法のブロック72において、付加製造プロセスのための構築材料が、異なる材料組成を有するそれぞれの層によって複合多孔質電極を形成することができるように、分配される。本方法のブロック74において、複合多孔質電極が、構築材料を焼結または融合することによって漸進的に形成される。理解されるように、付加製造プロセスにおいて、ブロック72および74は、構築材料の連続する各層について繰り返される。
【0345】
多孔質電極が実質的に平坦である例において、異なる材料組成を有する電極の少なくとも2つの層状領域は、第1の組成を有する第1の構築材料のスライスを堆積させ、次いで、焼結または融合して、(典型的には構築材料の複数の融合したスライスから形成される)受動領域などの層状領域のうちの1つを形成し、次いで、異なる第2の組成を有する第2の構築材料のスライスの堆積および焼結または融合に遷移して、電解触媒領域などの別の層状領域を形成することによって形成されてもよい。
【0346】
他の例において、たとえば、多孔質電極が、層状領域が電極の長手方向延在範囲に沿って環状かつ同延である管状構造を有する場合、異なる材料組成を有する電極の少なくとも2つの層状領域は、電極の長手方向に対応する積層方向においてスライスを堆積させ、選択で焼結または融合することによって形成されてもよく、スライスは、異なる組成を有する第1の構築材料と第2の構築材料の両方を、層状領域の断面プロファイルに対応するパターンで含む。構築材料のスライスは、それぞれ複合多孔質電極の受動領域および電解触媒領域に対応する第1の構築材料および第2の構築材料を含んでもよい。
【0347】
複合多孔質電極が粉末プレスプロセスによって形成されるとき、異なる材料組成を有する少なくとも2つの層は、これより例として
図8bの方法75を参照して説明するように、順次的に形成されてもよい。
【0348】
ブロック76において、第1の粉末材料(たとえば、ステンレス鋼316またはチタンなどの、複合多孔質壁の電解触媒としての活性が相対的により低い受動領域のための)が、製造されることになる複合多孔質電極の第1の層(たとえば、受動領域)に対応する形状を有する第1のダイ内に提供され得、ブロック77において、第1のダイが、包含される粉末を適切な有孔率においてプレスするための圧力を受けて、中間生成物が提供され得る。ブロック78において、中間生成物が、第1の層および第2の層(たとえば、電解触媒領域)の結合に対応する形状を有する第2のダイに移動され得、第2の粉末材料(たとえば、電解触媒領域のための、ニッケル、または、本明細書に記載されているようなニッケル合金、たとえば、インコネル(登録商標)600などのインコネル(登録商標)合金など)が、第2の層に対応するダイのロケーション内に添加され得る。ブロック79において、第2の粉末材料を適切な有孔率においてプレスするために第2のプレス加工が適用されて、それぞれの組成を有する両方の層(たとえば、受動領域および電解触媒領域)を有する2層生成物が提供される。第2のプレス加工または別個のプロセスが適応されて、2つの層または領域がともに焼結されて、一体化された複合多孔質電極が(たとえば、上昇した温度および圧力を加えることによって)提供され得る。たとえば、中間生成物は第1のダイ内で(たとえば、熱間プレスプロセスにおいて)焼結されてもよく、または、第1のダイから除去された後で、かつ、第2のダイに挿入する前に(たとえば、熱間または冷間プレスプロセスにおいて)焼結されてもよい。中間生成物は、第1のダイにおいてプレスされ、ただし焼結はされなくてもよく、2つの層は、同じダイ内かまたは別個のダイ内かにかかわらず、両方の層がともにプレスされた後にのみ焼結されてもよい。さらなる領域または層が、さらなるダイおよびプレス加工を使用して追加されてもよい。熱間プレス(HP)、冷間静水圧プレスまたは熱間静水圧プレス(HIP)などの、任意の適切な粉末プレス技法が使用されてもよい。
【0349】
任意選択で、ブロック80において、一体化された複合多孔質電極が、適切なサイズに機械加工されてもよい。たとえば、2つ以上の領域のためのダイは、生成物(たとえば、一体化された複合多孔質電極)が、完成した複合多孔質電極の正味の形状よりも大きいサイズおよび形状を有するように構成されてもよい。たとえば、それぞれの領域は、完成した複合多孔質電極の厚さよりも大きい厚さを有してもよく、これは、ダイ間の移動について中間生成物の構造的完全性を維持する助けとなり得、寸法正確度に対する要件を、プレス加工ステップではなく機械加工ステップに移行することができる。完成した複合多孔質電極が環状になるべきであるとき、それぞれの内側領域は、円筒として形成されてもよい。機械加工は、複合多孔質電極の半径方向内側表面を画定するためにコアを穿孔することを含んでもよい。さらなる機械加工が、材料を除去して(たとえば、旋盤加工によって)複合多孔質電極の半径方向外側表面を画定するために実施されてもよい。
【0350】
電解槽のいくつかの例示的な構成が本明細書において開示されているが、本発明は、特許請求の範囲において定義され、図面に示され、図面を参照して説明されているいかなる特定の構成にも限定され得ないことを理解されたい。
【0351】
実施例
電解質液の供給源401、圧縮器402、加熱器403、監視マニホールド405に至る入口導管404、電解槽50、第1の放出マニホールド410、および第2の放出マニホールド420を含む試験電解設備を、
図6に概略的に示すように配置構成した。
【0352】
電解槽50を、
図5に概略的に示すように環状電解槽の形態で構築した。電解槽50は、入口チャンバ200の対向する両側に、第1の保持チャンバ210および第2の保持チャンバ520を備えるものとした。入口チャンバ200を、電解槽50の電極として機能する第1の(内側)多孔質壁217によって第1の保持チャンバ210から分離した。入口チャンバ200を、同じく電解槽50の電極として機能する第2の(外側)多孔質壁528によって第2の保持チャンバ520から分離した。第1の(内側)多孔質壁および第2の(外側)多孔質壁を各々、第1の(内側)多孔質壁がカソードとして機能し、第2の(外側)多孔質壁がアノードとして機能するようにバイアスされた電源に接続した。
【0353】
第1の多孔質壁を、インコネル(登録商標)合金625(鉄、モリブデン、ニオブおよび他の合金化元素も含有するニッケル・クロム合金)から形成される第1のチューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。第1のチューブは、0.25インチ(6.35mm)の外径、0.889mmのチューブ壁厚および215mmの長手方向長さを有するものとした。レーザ穿孔の前に、第1のチューブの外面および内面を、化学気相成長(CVD)によってアルミナ(Al
2O
3)でコーティングすることによって不動態化した。アルミナのコーティングは、重量推定によって判定されるものとして、約1μmの厚さとした。チャネルは、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して(アルミナコーティングを含む)第1のチューブ壁の全厚を貫通して穿孔した。チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°傾斜させた。チャネルを複数の行において穿孔して、
図9に示すようなパターンを形成した。パターンを、0.2mmのチャネル間オフセット、0.2mmの行間オフセット(結果、1mm当たり5つの行が存在した)、および、チューブの周当たり99個の孔の周方向チャネル数密度によって特徴付けた。各チャネルを、30個のレーザパルスを使用して形成し、0.2Jのエネルギーを必要とした。チャネルの寸法を、X線コンピュータ断層撮影(XCT)および光学顕微鏡法ならびに結果もたらされる画像の分析を使用して評価した。その結果は、
図10、
図11(a)および
図11(b)に示す。チャネルは、チャネルの入口および出口(すなわち、チューブの外側および内側の外面)において約60μm~約80μmの直径を有することが分かった。
図11(a)は、XCTを使用して約40μmの内部半径を有することが分かったチャネルを示す。
図11(b)は、光学顕微鏡法によって約69.6μm、約74.6μmおよび約65.4μmの入口直径を有することが分かったチャネルを示す。
【0354】
第2の多孔質壁を、インコネル(登録商標)合金625から形成される第2のチューブ内へとチャネルをレーザ穿孔することによって作成した。第2のチューブは、0.375インチ(9.525mm)の外径、0.889mmのチューブ壁厚および142mmの長手方向長さを有するものとした。レーザ穿孔の前に、第2のチューブの外面および内面を、化学気相成長(CVD)によってアルミナ(Al
2O
3)でコーティングすることによって不動態化した。アルミナのコーティングは、重量推定によって判定されるものとして、約1μmの厚さとした。チャネルは、500Hzにおいて動作するミリ秒レーザを使用して(アルミナコーティングを含む)第2のチューブ壁の全厚を貫通して穿孔した。チューブの長手方向軸が垂直方向に位置整合されたときに、チャネルを水平方向に対して20°傾斜させた。チャネルを複数の行において穿孔して、
図9に示すようなパターンを形成した。パターンを、0.152mmのチャネル間オフセット、0.2mmの行間オフセット(結果、1mm当たり5つの行が存在した)、および、チューブの周当たり196個の孔の周方向チャネル数密度によって特徴付けた。各チャネルを、20個のレーザパルスを使用して形成し、0.18Jのエネルギーを必要とした。チャネルの寸法を、XCTおよび光学顕微鏡法ならびに結果もたらされる画像の分析を使用して評価した。チャネルは、チャネルの入口および出口(すなわち、チューブの内側および外側の外面)において約60μm~約80μmの直径を有することが分かった。
【0355】
第1の多孔質壁217および第2の多孔質壁528を、約0.692mmの分離間隙をおいて
図5に示すように配置した。第1の壁および第2の壁を、19.05mmの直径を有する外側管状ハウジングによって包囲した。第1のコア保持チャンバ210を、第1の多孔質壁217によって包囲された内部空間として画定した。第2の外側保持チャンバ520を、第2の多孔質壁528と外側管状ハウジングとの間の空間として画定した。入口チャンバ200を、第1の多孔質壁217と第2の多孔質壁528との間の空間として画定した。組み立て構成において、放射状流およびイオン移動について入口チャンバに暴露される電極の有効長が等しく、約40mmになるように、第1のチューブおよび第2のチューブを設置した。
【0356】
電解槽を、水中の水酸化リチウム(LiOH)の0.5モル(1.2重量%)溶液から成る電解質を使用して動作させた。電解質は、98%試薬グレード水酸化リチウム(Sigma-Aldrichから入手可能)を脱イオン水を用いて希釈して所望の濃度を得ることによって調製した。
【0357】
加熱器および圧縮器を、システムを230bar(23MPa)の圧力および385℃の温度に保持するように動作させた。
【0358】
電解槽を通じた電解質の流速は、10ml/分になるように制御した。
【0359】
脱イオン水を使用したシステムの初期加圧および加熱の後、動作圧力および温度に達したのを受けて、電解槽を通じて電解質を圧送した。電源上で電圧降下が観測されるまで電解槽セルを監視し、次いで、セルに供給される電流を、1.56Vにおける500mAの動作条件(水素のより低い加熱値の80%に対応する)に達するまで、漸進的に増大させた。次いで、電解質の電解を15分にわたって実行した。
【0360】
電解中に第1の保持チャンバおよび第2の保持チャンバから第1の放出マニホールドおよび第2の放出マニホールド内へと出力されるガスを、脱イオン水で充填した対応するガラス容器内で収集した(生成物ガスは、収集されたときに容器内の水を変位させる)。ガラス容器内に収集されたガスを、担体ガスとしてアルゴンを供給されるShincarbon STカラム(日本の信和化工株式会社から入手可能)を備えたAgilent 6890ガスクロマトグラフ(アメリカのAgilent Technologies, Inc.から入手可能)を使用したガスクロマトグラフィによって分析した。ガスは、Agilent 6890ガスクロマトグラフに内蔵されている熱伝導度検出器を使用して検出した。ガスクロマトグラフィ作動は、35℃において等温的に実施した。100μLのガス試料を、一度にカラムに注入した。様々な量の酸素および水素をガスクロマトグラフ内に注入し、結果を分析することによって、較正プロットも生成した。
【0361】
電解槽の作動から得られたガスの代表的なガスクロマトグラフィ結果を、
図12および
図13に示す。
図12(a)は、(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関係する3つのピークを特徴付ける、カソードから得られるガス(カソードガス)の代表的なクロマトグラムである。
図12(b)は、同じく(左から右に向かって)水素、酸素および窒素内容物に関係する3つのピークを特徴付ける、アノードから得られるガス(アノードガス)の代表的なクロマトグラムである。
図13(a)は、酸素較正ガスの代表的なクロマトグラムである。
図13(b)は、水素および窒素較正ガスの代表的なクロマトグラムである。
【0362】
ガスクロマトグラフィによって得られるものとしての、カソードガスおよびアノードガスの組成を、表1に与える。これらの結果は、3つの異なる注入試料にわたる測定値を平均することによって得た。測定値の対応する標準偏差も与える。
【0363】
【0364】
表1の値は、各試料中に存在する窒素の量を定量化し、空気中の窒素と酸素との比に従って当量の酸素を差し引くことによって、ガス貯蔵容器内への空気侵入を計上するように補正されている。たとえば、空気中のN2:O2の比が3.7であると仮定すると、空気汚染から生じる試料中の酸素の体積は、試料中の窒素の測定体積を3.7で除算した値として算出することができる。
【0365】
モデル化およびシミュレーション
例示的な電解槽セルを通る超臨界流のシミュレーションを実行して、水素および酸素反応生成物の組成分布を決定し、それぞれの保持チャンバ間の種の拡散および交差に関係する流れパターンを評価した。
【0366】
シミュレーションは、入口チャンバ、内側複合多孔質電極によって入口チャンバから分離されている半径方向内側(コア)保持チャンバ、および、外側複合多孔質電極によって入口チャンバから分離されている半径方向外側保持チャンバを有する例示的な軸対称電解槽構成に関係する。この例示的な構成において、内側電極はアノードであり、結果、内側保持チャンバは、反応生成物としての酸素を保持および放出するためのものとなり、外側電極はカソードであり、結果、外側保持チャンバは、反応生成物としての水素を保持および放出するためのものとなる。
【0367】
モデル幾何形状
モデル幾何形状は、
図14~
図16の各々に示されており、複合多孔質壁の主要半径方向寸法およびそれらの分離は、実質的に、被試験例に関して上述したものに対応する。
【0368】
モデルは、図面に示すものとして垂直の向きを有し、結果、重力は図面の向きにおいて下向きである。モデルは、
図14に示すような軸対称の長手方向軸Aによって、軸対称である。
【0369】
図14に示されているように、モデルは、上述したような質量流条件を有する流入境界921を有する、その下端にある入口マニホールド923を有する。
【0370】
マニホールド923は、入口922において、100mmの長さに沿って2つの複合多孔質電極9217、9518の間で実質的に直線的に延在する環状入口チャンバ9200へと開いている。この長さは、本明細書の他の箇所において説明されているように、電極がイオン交換のために互いに対向する長さに対応する。環状入口チャンバの内側半径は0.125インチ(3.175mm)であり、環状入口チャンバの外側半径は3.675mmであり、結果、0.6875mmの複合多孔質電極の間に分離が存在する。
【0371】
複合多孔質電極9217、9518の各々は、0.9mmの厚さを有し、環状入口チャンバ9200のものと等しい長さでシミュレートされる。
【0372】
(第1の)半径方向内側複合多孔質電極9217の半径方向内側において、第1の複合多孔質電極9217の内寸に対応する半径を有する円筒体である(第1の)半径方向内側保持チャンバ9210が存在する。内側保持チャンバ9210は、上側の第1の流出境界9213に向かって(モデル化されているものとしての)複合多孔質電極の長手方向延在範囲を100mmだけ越えて上向きに延在する。
【0373】
(第2の)半径方向外側複合多孔質電極の半径方向外側において、第2の複合多孔質電極9518の外寸の外側半径に対応する内側半径、および0.375インチ(9.525mm)の外側半径を有する環状体である(第2の)半径方向外側保持チャンバ9520が存在する。外側保持チャンバ9520は、上側の第1の流出境界9524に向かって(モデル化されているものとしての)複合多孔質電極の長手方向延在範囲を越えて上向きに延在する。
【0374】
モデル定義および条件
スウェーデンのCOMSOL ABによって開発されているCOMSOL Multiphysics(登録商標)5.6によって提供されるシミュレーションソフトウェアを使用してシミュレーションを実行した。
【0375】
シミュレーションモデルは、以下の仮定を反映する。NaOH電解質による水素-酸素-水混合物は、すべての関心条件(圧力>22.MPa、温度>380℃)において完全に混和性であり、超臨界単相である。電解槽への最大30g/分の入口流は、動作条件にある電解槽内で層流のままである。
【0376】
シミュレーションは、水素-酸素-水混合物の成分の拡散をモデル化する。密度および粘度が、400℃の基準温度についての、局所的組成、および圧力の関数としてモデル化される。シミュレーションは、(浮力をモデル化するために)重力を含む、弱圧縮性ナビエ・ストークス方程式を使用して流体流をモデル化する。シミュレーションは、定常状態流条件を解く。
【0377】
シミュレーションは、入口流を指定の質量流速における完全に発展した(放物状の)層流プロファイルとしてモデル化する。シミュレーションは、流出境界を一定の出口圧力境界(23MPaにおける)としてモデル化する。モデルのチャンバの壁には、滑りなし条件が適用される。シミュレーションは、入口流を、23MPaの圧力、および、400℃の温度(134kg/m-3の密度、27.4μPaの粘度に対応する)における水としてモデル化する。
【0378】
シミュレーションは、電極を多孔質媒体としてモデル化する。シミュレーションは、ε=0.2の有孔率および10μmの孔径を有する等方性多孔質電極をモデル化する。
【0379】
シミュレーションは、それぞれの加水分解半反応が均一な電流密度に基づいて多孔質電極全体を通じて発生するという仮定を反映するように定義される。シミュレーションは、多孔質電極中のそれぞれの成分の供給源およびシンクを使用して反応をモデル化する。
【0380】
シミュレーションは、並列な150個のセルに関する1.42kg.h-1の目標水素生成速度に対応する、250Aの仮定された動作電流を反映する。
【0381】
シミュレーション条件
3つのシミュレーションの結果を、下記に論じる。
【0382】
第1のシミュレーションにおいては、両方の電極が、等方性多孔質電極としてモデル化される。
【0383】
第2のシミュレーションにおいては、本明細書の他の箇所において開示されているような傾斜チャネルの効果をシミュレートするために、両方の電極が、異方性有孔率によってモデル化される。異方性有孔率は、垂直から20°のチャネル傾斜を反映するように実装される。異方性有孔率を実装する効果を分離して研究するために、シミュレーションの他のパラメータは、第1のシミュレーションと同一である。
【0384】
第3のシミュレーションは、直接的に第1のシミュレーションに対応するが、シミュレーションは、重力の効果をモデル化することなく(すなわち、浮力なしで)実施される。
【0385】
シミュレーション結果
3つのシミュレーションの結果は、それぞれ、
図14~
図16に示されている(シミュレーション1-
図14、シミュレーション2-
図15、シミュレーション3-
図16)。各図は、注釈のようにH
2O、O
2およびH
2の局所モル濃度の等高線を示す3つの等高線プロットを含む。等高線は、局所モル濃度の変動を0.1の無次元間隔において示す(0~1のスケール上で)。流入境界は、1に等しいH
2Oのモル濃度を有し、したがって、流出境界に向かう流れ方向に沿ったH
2O等高線プロット内の各漸進的等高線は、0.1のそれぞれのモル濃度の増分的減少を表すことを理解されたい。同様に、他の成分(H
2およびO
2)の流入境界は、流入境界において0であり、したがって、流出境界に向かう各漸進的等高線は、0.1のそれぞれのモル濃度の増分的増大を表すことを理解されたい。等高線は、一般に曲線であり、したがって、直線形である電極およびチャンバの間の境界から容易に区別される。
【0386】
図14に示し、下記の表2に報告するように、第1のシミュレーションは、第1の複合多孔質電極9217(アノードとしての役割を果たす)と関連付けられる第1の保持チャンバ9210内の相対的に高いレベルのO
2をもたらし、カソードとしての役割を果たす第2の複合多孔質電極9528と関連付けられる第2の保持チャンバ9520内に存在するO
2のレベルは相対的により低い。同様に、第2の保持チャンバ9520内には相対的に高いレベルのH
2が存在し、第1の保持チャンバ内には相対的により低いレベルのO
2が存在する。
【0387】
H2O濃度の等高線プロットに示すように、H2O濃度は、顕著な層状化で、外側保持チャンバ内よりも内側保持チャンバの流出9213に向かって大幅により低い。シミュレーションが、浮力効果を考慮に入れ、流出9213、9524を一定の圧力境界として定義するとき、概して第1の保持チャンバ9210内に保持されているより高密度のO2が、より高密度のH2Oさえも、第1の保持チャンバ9210から効果的に変位させると考えられる。言い換えれば、未反応のH2Oは、対向する保持チャンバ内に累積するH2よりも相対的に密度が高い内側保持チャンバ内のO2のカラムの累積によって、内側保持チャンバ内に蓄積せず、平衡する浮力が、外側電極に向かう、および、それを通って外側保持チャンバに至る分岐流中の流れ(たとえば、未反応のH2Oの流れ)をバイアスする。
【0388】
結果として、第1のシミュレーションにおいて、流れ(たとえば、未反応のH2Oの)は、外側保持チャンバ9520内のH2Oの相対的に高いモル濃度によって実証されるように、半径方向外側複合多孔質電極9528(カソード)に向かって、および、それを通じてバイアスされ得る。分岐流のこのバイアスは、複合多孔質電極と関連付けられる流動特性に依存し、流出条件は、本明細書の他の箇所において想定されているとおりである。分岐流におけるこのバイアスは、アノード(内側複合多孔質電極)および関連付けられる内側保持チャンバからのO2の相対的により高い交差流を可能にしながら、カソード(外側複合多孔質電極)を通じたH2の逆流の防止を促進することができると考えられる。
【0389】
上記で定義したように、第2のシミュレーションは、モデルが傾斜チャネルを表す異方性有孔率をシミュレートするように適合されるという点において、第1のシミュレーションと異なる。
図15に示すように、第2のシミュレーションは、成分濃度においては概して同様の流れパターンをもたらすが、反応生成物の分離は改善されており、交差のレベルがより低くなっている(すなわち、カソードと関連付けられる保持チャンバ内のより低いレベルのO
2、および、アノードと関連付けられる保持チャンバ内のより低いレベルのH
2)。
【0390】
これは、下記の表2ならびに
図17aおよび
図17bのグラフに最もよく示されている。下記の表2は、それぞれの流出における成分の局所モル濃度および質量濃度を報告する。
図17aは、それぞれの保持チャンバにおけるH
2およびO
2の回収を、各それぞれの反応生成物の総質量の百分率として報告する。
図17bは、成分の回収をモル濃度として報告する。
【0391】
【0392】
本明細書の他の箇所において述べられているように、傾斜チャネルに対応する有孔率の異方性が、それぞれの反応生成物の逆流(たとえば、逆拡散)を抑制すると考えられる。特に、そのような逆流は、それぞれのチャネルを通じた正味の流れ方向に抗し、また、水と比較してそれぞれの複合多孔質電極において生成される反応生成物の相対的により低い密度を考慮して浮力の方向にも抗する。
【0393】
特に、第1のシミュレーションに対する第2のシミュレーションの分離性能(すなわち、交差低減)は、両方のガスについて与えられ、両方の方向における交差流が低減される(すなわち、それぞれの電極を通る反応生成物の逆流が低減される)。
【0394】
結果として、第2のシミュレーションと第1のシミュレーションとの比較は、異方性有孔率を利用するための修正が一方の電極または他方の電極に向かうH2Oの未反応流のバイアスを調整するに過ぎないという結論を支持しない。特に、上記の表1に示すように、それぞれの流出を通じた未反応のH2Oの流れは、2つのシミュレーションの間で実質的に同じであると思われ、結果、分岐流において根底にある(しかし許容可能な)バイアスは依然として持続すると考えられる。これにかかわらず、異方性電極は、アノードを通じたO2の逆流に良好に抵抗すると思われる。この結果として、内側保持チャンバ内のO2の濃度が相対的により高いことに起因して、また、別の場合には流体を層状化するために分岐流内でバイアスを駆動する傾向にある浮力の作用にもかかわらず、内側および外側流出において(また、保持チャンバの長手方向延在範囲に沿って)観測される流体密度の間の差がより大きくなる。
【0395】
上記で定義したように、第3のシミュレーション(結果を
図16に示す)は、第1のシミュレーションに対応するが、重力がシミュレートされない(すなわち、浮力が存在しない)という点において異なる。これは非物質的シミュレーションであるが、未反応のH
2Oの流れパターンおよび分岐流に対する影響の比較例を与える。特に、保持チャンバ内の反応生成物の層状化を駆動する浮力がない場合、内側保持チャンバ内に相対的により大きい割合の未反応のH
2Oが存在し、外側保持チャンバ内の量は相対的により低くなり、これは、分岐流の任意のバイアスの変化を示す。これに対応して、下記の表3に報告する結果に示すように、外側保持チャンバへのO
2の相対的により低い交差流が存在するが、内側保持チャンバへのH
2の拡散は相対的により高くなる。
【0396】
【0397】
一方の電極に向かう分岐流のバイアスが存在する文脈において上述した流れパターン、ならびに、反応生成物および任意の交差流の分離に対する関連付けられる影響は、本明細書の他の箇所において想定されている。特に、本明細書の他の箇所において、複合多孔質電極(または多孔質壁)を通じた正味の分岐流が、それを通じた関連付けられる反応生成物の逆流を防止する役割をどのように果たすか、ならびに、それぞれの複合多孔質電極の各々を通じて導かれる流れの割合が、たとえば、それぞれの複合多孔質電極が呈する流れ抵抗(分岐流のパターンに影響を与えるように調整され得る)および維持される背圧などの流出条件を含む、複数の要因に応じて変化し得ることが論じられている。
【0398】
本開示は、以下のナンバリングされた項の主題にまで及ぶ。
【0399】
項1.電解槽の複合多孔質電極を製造する方法であって、
多孔質電極の2つの対向する主面の間の厚さ方向を有するシート状または管状壁の形態で、付加製造または粉末プレスプロセスによって複合多孔質電極を形成することを含み、
付加製造プロセスの構築材料または粉末プレスプロセスの粉末は、異なる材料組成を有する少なくとも2つの層を含む2つの主面間の層状構造によって複合多孔質電極が形成されるように分散され、使用時、厚さ方向に沿って2つの対向する主面の間で多孔質電極を通る流れが、少なくとも2つの層を通過し、
上記層のうちの1つは、電極の主面のうちの少なくとも一方から離間されている多孔質電極の電解触媒領域を形成する、方法。
【0400】
項2.電解触媒領域は、水性電解質液による酸化または還元反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒を含む、項1に記載の方法。
【0401】
項3.電解触媒領域以外の多孔質電極の層は、電解質液の電解のそれぞれの半反応に触媒作用を及ぼすための電解触媒領域よりも電解触媒としての活性が低い受動領域を提供し、受動領域は、任意選択で、電解質液の電解のそれぞれの半反応を抑制するための絶縁または誘電体材料を含む、項1または2に記載の方法。
【0402】
項4.第1の態様もしくは第2の態様、または添付の請求項1~22のいずれか一項による電解槽または電解槽設備を提供するために、電解槽内に複合多孔質電極を設置することを含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0403】
項5.電解槽の複合多孔質電極を製造する方法であって、
複合多孔質電極のボディを、ボディが長手方向軸に沿って直線的に延在し、第1の主面から対向する主面への直交する厚さ方向を有するように形成することと、
各々が長手方向軸と厚さ方向の両方に関して傾斜している、第1の主面および第2の主面からボディを通って延在する複数の傾斜チャネルを形成することと
を含み、
複数の傾斜チャネルは、
付加製造プロセスによるボディの製造中、または
ボディの製造後に、たとえば、レーザ穿孔プロセスなどによってボディから材料を除去することによって形成される、方法。
【0404】
項6.各チャネルは、厚さ方向に沿って発散する断面を有するように形成される、項5に記載の方法。
【0405】
項7.
ボディの電解触媒領域を提供するために、チャネルの内面上および/またはボディの一方もしくは両方の主面上に電解触媒を含むコーティングを提供すること、ならびに/あるいは
任意選択で、電解触媒を含むコーティングの上で、ボディの主面上に不動態化コーティングを提供すること
をさらに含む、項5または6に記載の方法。
【国際調査報告】