(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】金属探知機の操作方法および金属探知機
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20240227BHJP
【FI】
G01V3/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557153
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022056750
(87)【国際公開番号】W WO2022194893
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511241516
【氏名又は名称】メトラー-トレド・セーフライン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】リスト,イアン
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH05
(57)【要約】
この方法は、送信ユニット(1)に接続される送信コイル(21)と、信号処理ユニット(45)に接続される受信ユニット(3)の入力に接続される第1および第2の受信コイル(22A、22B)と、を備えた平衡コイルシステム(2)を含む金属探知機を動作させるのに役立つ。送信ユニット(1)は、少なくとも1つの固定または選択可能な動作周波数を有する送信信号(tx)のための送信信号経路(tp)を含み、この送信信号(tx)は、増幅された送信信号(tx)を直接または送信整合ユニット(13)を介して送信コイル(21)に転送する送信増幅器(12)の入力に印加される。受信ユニット(3)は、平衡コイルシステム(2)から受信された受信信号(rs)が直接または受信整合ユニット(31)を介して受信増幅器(33)に印加される少なくとも1つの受信信号経路(rp)を含み、受信増幅器(33)は、増幅された受信信号(rs)を、受信ユニット(3)に設けられるかまたは信号処理ユニット(45)に実装される受信復調器(35;4535)に直接または間接的に転送する。受信復調器(35;4535)は、同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)を有する復調された複素受信信号(rsc)を提供する。同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)は、信号処理ユニット(45)に設けられた少なくとも1つの信号処理経路(sp)で処理され、信号処理ユニット(45)では、製品またはノイズに関連する複素受信信号(rsc)の信号成分が抑制され、金属汚染物に由来する信号成分がさらに処理される。本発明は、受信信号経路(rp)から取り出された少なくとも1つの測定信号(ms)を測定チャネル(8)に提供するステップと、評価モジュール(88)または受信制御モジュール(488)において測定信号(ms)を分析し、得られた測定情報に基づいて、関連する測定情報を提供するステップと、受信制御モジュール(488)において、受信信号経路(rp)における信号処理が損なわれている可能性がある臨界状態が存在するか否かを判定するステップと、臨界状態が存在する場合に実行される金属探知機における臨界状態の処理手順を提供するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ユニット(1)に接続される送信コイル(21)と、信号処理ユニット(45)に接続される受信ユニット(3)の入力に接続される第1および第2の受信コイル(22A、22B)と、を備えた平衡コイルシステム(2)を含む金属探知機の動作方法であって、
送信ユニット(1)は、少なくとも1つの固定または選択可能な動作周波数を有する送信信号(tx)のための送信信号経路(tp)を含み、この送信信号(tx)は、増幅された送信信号(tx)を直接または送信整合ユニット(13)を介して前記送信コイル(21)に転送する送信増幅器(12)の入力に印加され、
送信ユニット(1)は、基準送信信号(tx)と基準直交信号(tx90°)を受信ユニット(3)または信号処理ユニット(45)に提供し、
受信ユニット(3)は、平衡コイルシステム(2)から受信された受信信号(rs)が直接または受信整合ユニット(31)を介して受信増幅器(33)に印加される少なくとも1つの受信信号経路(rp)を含み、受信増幅器(33)は、増幅された受信信号(rs)を、受信ユニット(3)に設けられるかまたは信号処理ユニット(45)に実装される受信復調器(35;4535)に直接または間接的に転送し、
受信復調器(35;4535)は、送信ユニット(1)から受信した基準送信信号(tx)および基準直交信号(tx90°)に基づいて、同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)を有する復調された複素受信信号(rsc)を提供し、
同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)は、前記信号処理ユニット(45)に設けられた少なくとも1つの信号処理経路(sp)で処理され、信号処理ユニット(45)では、製品またはノイズに関連する複素受信信号(rsc)の信号成分が抑制され、金属汚染物に由来する信号成分がさらに処理され、
前記受信信号経路(rp)から取り出された少なくとも1つの測定信号(ms)を測定チャネル(8)に提供するステップと、
評価モジュール(88)または受信制御モジュール(488)において前記測定信号(ms)を分析し、関連する測定情報を提供するステップと、
得られた測定情報に基づいて、
前記受信制御モジュール(488)において、前記受信信号経路(rp)における信号処理が損なわれている可能性がある臨界状態が存在するか否かを決定するステップと、
臨界状態が存在する場合に実行される金属探知機における臨界状態の処理手順を提供するステップ、
によって特徴づけられる、金属探知機の動作方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記受信制御モジュール(488)において前記測定情報を評価し、前記測定情報を分類し、前記測定情報を少なくとも1つ、好ましくは少なくとも第1または第2の臨界状態のクラスに割り当て、前記金属探知機における臨界状態の処理手順に、臨界状態の各クラスの指示を提供するステップ、
を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記測定情報に従って前記臨界状態を、
-製品または汚染物質によって引き起こされる臨界状態に関連する第1のクラス、または
-振動などの外部影響によって引き起こされる臨界状態に関連する第2のクラス、または
-電子機器の故障などの前記金属探知機の不規則な状態によって引き起こされる臨界状態に関連する第3のクラス、または
-前記金属探知機に発生したドリフトによって引き起こされる臨界状態に関連する第4のクラス、
に割り当てるステップ、
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、
臨界状態の処理手順の実行は、
a)前記受信ユニット(3)をリセットするため、または前記受信ユニット(3)もしくはその一部を通常の動作状態に戻すため、または前記受信ユニット(3)もしくはその一部を安定した状態に保持するために、前記受信信号経路(rp)に設けられた少なくとも1つの機能モジュール(33、34)に制御情報または制御信号(gc;fc)を提供し、適用するステップと、
b)前記信号処理ユニット(45)をリセットするため、または前記信号処理ユニット(45)もしくはその一部を通常の動作状態に戻すため、または前記信号処理ユニット(45)もしくはその一部を安定した状態に保持するために、前記信号処理経路(sp)内の少なくとも1つの機能モジュール(4533)に制御情報(pc)を提供し、適用するステップと、
c)前記制御ユニット(4)に実装された制御プログラム(40)に情報(pc)を提供するステップであって、制御プログラム(40)は、前記金属探知機が発する音響的または光学的警報信号を開始する、ステップと、
d)前記制御ユニット(4)に実装された前記制御プログラム(40)に情報(pc)を提供するステップであって、制御プログラム(40)は、臨界状態の発生のために設けられたプロトコルに従って測定データを処理する、ステップと、
e)前記受信信号経路(rp)で発生する不均衡を除去するための平衡制御ループを使用し、前記平衡制御ループをリセットするため、または不均衡が少なくとも粗く補正されるか、または安定した値に保持される動作状態に前記平衡制御ループを戻すために、前記平衡制御ループに設けられた少なくとも1つの機能モジュール(32)に制御情報を提供し、適用するステップと、
f)前記受信信号経路(rp)で発生する不平衡を除去するための平衡制御ループを使用し、平衡制御ループは、前記受信信号(rs)から、または、臨界状態が存在する場合は、前記測定信号(ms)から不平衡信号を導出するステップと、
の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法において、
前記測定信号(ms)を前記測定チャネル(8)に設けられたまたは前記信号処理ユニット(45)に実装された測定復調器(85;4585)に印加するステップであって、測定復調器(85、4585)は、同相測定信号成分(ms-I)および直交測定信号成分(ms-Q)を有する復調された複素測定信号(msc)を提供し、同相測定信号成分(ms-I)および直交測定信号成分(ms-Q)は、前記信号処理ユニット(45)または前記受信制御モジュール(488)において分析され、関連する測定情報を提供するステップ、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法において、
前記受信復調器(35;4535)または前記測定復調器(85;4585)、または前記受信復調器(35;4535)および前記測定復調器(85;4585)を、位相感応検出器の実施形態に提供するステップであって、前記印加された受信信号(rs)または測定信号(ms)を、前記基準送信信号(tx)および関連する基準直交信号(tx90°)と比較し、前記復調された複素受信信号(rsc)または前記復調された複素測定信号(msc)を提供するステップ、
を含む、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法において、
少なくとも1つの測定基準信号または測定基準値(tha、thb)を提供し、前記測定信号(ms)または前記測定信号(ms)から導出された測定値を、少なくとも1つの測定基準信号または測定基準値(tha、thb)と比較し、臨界状態の有無を決定するステップ、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法において、
前記受信信号経路(rp)から取り出された前記測定信号(ms)を減衰させるための減衰器(80)を設けるか、または前記受信位相感応検出器(35、4535)よりも大きな範囲を有する測定位相感応検出器(85、4585)を設けるステップ、または
前記受信信号経路(rp)から取り出された前記測定信号(ms)を減衰させるための減衰器(80)を設け、前記受信感応検出器(35、4535)よりも大きな範囲を有する測定位相感応検出器(85、4585)を設けるステップ、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法において、
前記金属探知機に発生した不均衡に関する不均衡信号成分を決定するために前記受信信号(rs)を分析し、前記決定された不均衡信号成分に対応する補償信号(cs)を提供し、前記検出された不均衡信号成分を補償するために、前記補償信号(cs)を前記受信信号経路(rp)に設けられた補償ユニット(32)に印加するステップと、
臨界状態が検出された場合、前記金属探知機に発生した不均衡に関連する不均衡信号成分を決定するために前記測定信号(ms)を分析し、前記決定された不均衡信号成分に対応する補償信号(csm)を提供し、前記決定された不均衡信号成分を補償するために、前記補償信号(csm)を前記受信信号経路(rp)に設けられた前記補償ユニット(32)に印加するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法において、
前記測定信号(ms)または測定値を前記少なくとも1つの基準信号または基準値(tha、thb)と比較し、前記受信信号経路(rp)における飽和状態を決定するステップ、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法において、
前記金属探知機および前記測定プロセスの状態を捕捉または記録し、現在の状態情報または過去の状態情報などの関連する状態情報を、前記測定情報に関連する状態情報を考慮して前記測定情報を分類する前記受信制御モジュール(488)に提供するステップ、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法において、
-前記平衡コイルシステム(2)内の製品の存在、
-振動の存在、
-前記金属探知機における外部電磁干渉の存在、
の少なくとも1つを検出するステップと、
関連する状態情報を、得られた状態情報を考慮して前記測定情報を評価する前記受信制御モジュール(488)に提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法において、
前記受信信号経路(rp)に設置された増幅器段(34)のような少なくとも1つの制御可能な能動モジュールに対して、利得パラメータのような動作パラメータの動作値およびリセット値を提供し、前記動作パラメータをリセット値に設定し、利得リセット期間内に前記動作パラメータを前記リセット値から前記動作値に連続的に変化させることにより、臨界状態が検出された場合に、前記少なくとも1つの制御可能な能動モジュールをリセットするステップを含み、および/または、
前記受信信号経路(rp)に設置された少なくとも1つの制御可能なフィルタ段(33)のフィルタパラメータの動作値およびリセット値を提供するステップと、
前記フィルタパラメータをリセット値に設定し、フィルタリセット期間内に前記フィルタパラメータを前記リセット値から前記動作値に変化させることにより、臨界状態が検出された場合に、前記少なくとも1つのフィルタ段(33)をリセットするステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法において、
検出された臨界状態に応じて、
前記受信ユニット(3)の電子回路内の少なくとも1つのコンデンサ(C、C*)を放電または交換することにより、前記受信ユニット(3)を制御またはリセットするステップ、または
検出された臨界状態、特に汚染物質によって引き起こされた臨界状態に応じて、
前記受信ユニット(3)を現在の状態に保持するステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法において、
各動作周波数に対して、
専用の受信信号経路(rp)、および
専用の信号処理経路(sp)、を設け、
前記測定チャネル(8)における信号処理が前記動作周波数に依存する場合には、
専用の測定チャネル(8)、を設けるステップ、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法に従って動作する金属探知機。
【請求項17】
送信ユニット(1)に接続される送信コイル(21)と、信号処理ユニット(45)に接続される受信ユニット(3)の入力に接続される第1および第2の受信コイル(22A、22B)と、を備えた平衡コイルシステム(2)を含む請求項16に記載の金属探知機において、
送信ユニット(1)は、少なくとも1つの固定または選択可能な動作周波数を有する送信信号(tx)および関連する直交信号(tx90°)が提供される送信信号経路(tp)を含み、送信信号(tx)は、前記増幅された送信信号(tx)を直接または送信整合ユニット(13)を介して前記送信コイル(21)に転送する送信増幅器(12)の入力に適用可能であり、
受信ユニット(3)は、前記平衡コイルシステム(2)から受信された受信信号(rs)が直接または受信整合ユニット(31)を介して受信増幅器(33)に適用可能な少なくとも1つの受信信号経路(rp)を含み、受信増幅器(33)は、前記増幅された受信信号(rs)を、前記受信ユニット(3)に設けられるかまたは前記信号処理ユニット(45)に実装される受信位相感応検出器(35;4535)に直接または間接的に転送し、
受信位相感応検出器(35、4535)は、前記受信信号(rs)を前記基準送信信号(tx)および前記基準直交信号(tx90°)と比較して、同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)を有する復調された複素受信信号(rsc)を生成するように設計され、
同相受信信号成分(rs-I)および直交受信信号成分(rs-Q)は、前記信号処理ユニット(45)に設けられた少なくとも1つの信号処理経路(sp)において処理され、信号処理ユニット(45)において、製品またはノイズに関連する前記複素受信信号(rsc)の信号成分が抑制され、金属汚染物に由来する信号成分がさらに処理され、
前記受信信号経路(rp)から取り出された測定信号(ms)を受信する少なくとも1つの測定チャネル(8)が設けられ、
前記測定信号(ms)を分析し、関連する測定情報を提供するために設計された少なくとも1つの評価モジュール(88、488)が設けられ、
臨界状態が存在するか否かを決定し、臨界状態が存在する場合に、前記測定プロセスを制御するため、または前記受信信号経路(rp)に設けられた少なくとも1つの機能モジュール(33、34、4534)を制御するため、あるいは、前記測定プロセスを制御するため、および前記受信信号経路(rp)に設けられた少なくとも1つの機能モジュール(33、34、4534)を制御するために、制御情報(gc、fc、pc)を提供するために設計された受信制御モジュール(488)が設けられる、
ことを特徴とする金属探知機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、1つまたは複数の動作周波数を使用する金属探知機の動作方法と、この方法に従って動作する金属探知機に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]例えばUS8587301B2に記載されているような金属探知機は、製品中の金属汚染を検出するために使用される。適切に取り付けられ操作されれば、製品中の金属汚染の低減に役立つ。最近の金属探知機の多くは、平衡コイルシステムを備えたサーチヘッドを使用する。この設計の検出器は、生鮮品および冷凍品など多種多様な製品に含まれる鉄、非鉄、ステンレスを含むすべての種類の金属汚染物を検出することができる。
【0003】
[0003]平衡コイルの原理に従って動作する金属探知機は、通常、送信コイルと2つの同じ受信コイルを含み、これらは、非金属フレームに巻かれ、それぞれは通常、他のコイルと平行である。受信コイルは、通常、送信コイルを中心に囲むように配置され、同一であるため、それぞれに同一の電圧が誘導される。システムが平衡状態にあるときにゼロとなる出力信号を受信するために、第1の受信コイルは、逆巻きの第2の受信コイルと直列に接続される。したがって、システムが平衡状態にあり、観察される製品に汚染物質が存在しない場合、同一振幅で逆極性である受信コイルに誘導される電圧は互いに相殺される。
【0004】
[0004]しかし、金属粒子がコイル配列を通過して磁場にさらされると、金属粒子に渦電流が流れる。この渦電流は二次磁場を発生させ、一次電磁場をまず一方の受信コイル付近で乱し、次に他方の受信コイル付近で乱す。金属粒子が受信コイルを通過する間、各受信コイルに誘導される電圧は通常ナノボルト単位で変化する。この平衡状態の変化により、検出コイルの出力に信号が生じ、この信号が、受信ユニットで処理、増幅され、その後、観察された製品中の金属汚染物の存在を検出するために使用されることが可能である。
【0005】
[0005]したがって、理想的な条件下では、製品または汚染物質が存在しない場合、平衡コイルシステムは出力信号を提供しない。しかしながら、US2020/333498A1に記載されているように、同一の検出コイルが工場現場でほぼ完全に平衡状態に設定されているにもかかわらず、汚染物質が存在しない状態で金属探知機が平衡状態にならない場合が依然として存在し、その結果、例えば完全に許容可能な食品が不合格になる。金属探知機の平衡状態は、システムに対する機械的な衝撃、環境条件の変化、金属探知機の近傍にある金属物体、または部品の弛緩や経年劣化によって乱れることがある。金属検出システムの高感度とコイルシステムの出力電圧に対する汚染物質の微小な影響を考慮すると、不均衡は受信チャネル、特に限られた信号電圧範囲でしか動作しない入力増幅器と位相感応検出器の飽和を引き起こす可能性がある。このような不均衡を取り除くために、駆動信号から得られる調整可能なバランス信号が検出器の出力信号と組み合わされ、出力信号の不均衡が補償されるまで変化される。
【0006】
[0006]不均衡を補償するために実装される補正ループは、走査対象物から発生する信号に影響を与えないようにするため、比較的高い時定数と低い帯域幅を有する。そのため、強い不均衡信号を補償するにはかなりの時間がかかる。強い入力信号は、外部からの影響によるこのような不均衡によって、金属物体を金属検出器の近傍に移動させることによって、観察される製品に含まれる比較的大きな金属物体によって、または金属探知機自体の誤動作、例えば送信チャネルで発生する発振によって、引き起こされる可能性がある。
【0007】
[0007]したがって、異なる影響が受信ユニットの出力信号に強い影響を及ぼし、あいまいさが生じる可能性がある。これらの影響により、出力信号は、汚染が存在しないにもかかわらず製品汚染の存在を示す、または汚染が存在するにもかかわらず汚染が存在しないことを示す可能性があり、望ましくない偽陽性報告または偽陰性報告につながる可能性がある。
【0008】
[0008]金属探知機は、測定信号を実数部と虚数部に分解するために基準信号を使用する。DE102017124407A1は、このような基準信号が受信コイルの接続点でタップされる金属探知機を開示している。
【0009】
[0009]US20150276964A1は、平衡コイルシステムを備えた金属検出システムの動作を監視する方法を開示している。この目的のために、受信コイルの少なくとも1つと誘導結合された監視コイルに、変調された監視周波数を有する試験信号または監視信号が印加され、その出力信号は、各動作周波数に対して復調された監視信号を提供する復調ユニットで復調され、この復調された監視信号は、金属探知機の性能に関する情報を得るために、位相および/または振幅が基準と比較される。
【0010】
[0010]US20120098667A1は、監視信号を導入することにより金属検出システムの故障を検出するさらなる方法を開示している。金属検出システムの第1段階で監視信号を導入し、第2段階で監視信号を抽出し、第3段階で抽出された監視信号を分析することは、多大な労力を要するが、金属検出システムの性能に関する貴重な情報を提供する。しかし、例えば受信段の出力信号が信号範囲の一方または他方の端でクリップされるような危機的状況が発生した場合、所望の情報が得られない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011]したがって、本発明は、1つまたは複数の動作周波数を使用する金属探知機を動作させるための改良された方法、およびこの方法に従って動作する改良された金属探知機を提供することを目的とする。
【0012】
[0012]本発明の方法により、金属探知機に発生する臨界状態によって引き起こされる望ましくない偽陽性報告、すなわち誤警報、さらに重要な偽陰性報告が回避される。
【0013】
[0013]このような偽報告の原因となり得る金属探知機に発生した臨界状態は、可能な限り短時間で検出されなければならず、それにより、必要な補正を行うことができ、偽報告の発行を回避することができる。
【0014】
[0014]さらに、臨界状態の発生後、金属探知機は、可能な限り最短時間で通常の動作状態に戻されなければならない。
【0015】
[0015]さらに、臨界状態は、金属探知機に試験信号または監視信号を導入することなく検出可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[0016]本方法は、送信ユニットに接続される送信コイルと、信号処理ユニットに接続される受信ユニットの入力に接続される第1および第2の受信コイルと、を備えた平衡コイルシステムを含む金属探知機を動作させるのに役立つ。送信ユニットは、少なくとも1つの固定または選択可能な動作周波数を有する送信信号のための送信信号経路を含む。送信信号および直交信号などの基準信号は、例えば信号処理ユニットによって、内部または外部の周波数源から提供される。
【0017】
[0017]送信信号は、増幅された送信信号を直接または送信整合ユニットを介して送信コイルに転送する送信増幅器の入力に印加される。受信ユニットは、平衡コイルシステムから受信された受信信号が直接または受信整合ユニットを介して受信増幅器に印加される少なくとも1つの受信信号経路を含み、受信増幅器は、増幅された受信信号を、受信ユニットに設けられるかまたは信号処理ユニットに実装される受信復調器に直接または間接的に転送する。受信復調器は、同相受信信号成分および直交受信信号成分を有する復調された複素受信信号を提供し、同相受信信号成分および直交受信信号成分は、信号処理ユニットに設けられた少なくとも1つの信号処理経路で処理され、信号処理ユニットでは、製品またはノイズに関連する複素受信信号の信号成分が抑制され、金属汚染物に由来する信号成分がさらに処理される。
【0018】
[0018]本発明は、受信信号経路から取り出され、測定チャネルに提供される少なくとも1つの測定信号を提供するステップと、評価モジュールまたは受信制御モジュールにおいて測定信号を分析し、関連する測定情報を提供するステップと、得られた測定情報に基づいて、受信制御モジュールにおいて、受信信号経路における信号処理が損なわれているか、または損なわれている可能性がある臨界状態が存在するか否かを決定するステップと、を含む。さらに、臨界状態が存在する場合、金属探知機における臨界状態の処理手順が実行され、この手順は、少なくとも1つの適切なアクション、または個別にまたは組み合わせて開始することができる複数の適切なアクションを定義する。
【0019】
[0019]したがって、臨界状態は、臨界状態によって悪影響を受ける可能性のある金属探知機に試験信号または監視信号を導入することなく、確実に検出することができる。
【0020】
[0020]検出された臨界状態は、受信信号経路における信号処理が損なわれている、または損なわれている可能性がある状態に関する。臨界状態では、受信段の少なくとも1つが指定された動作条件を超えている、または超えていると予想され、誤った測定結果を引き起こす可能性がある。
【0021】
[0021]試験手順または校正手順の間、1つまたは複数の受信段における受信ユニットの動作と、それに対応する測定信号の変化を観察するために、例えば意図的に臨界状態を発生させることができる。例えば、大きな金属片をコイルシステムに導入し、受信信号が歪んだりクリップしたり、直線的に増幅されなくなるまで、測定信号と受信段の受信信号を上昇させることができる。あるいは、金属物体(場合によっては磁気を帯びた金属物体)をコイルシステムの近傍に持ち込むことで、臨界状態をシミュレートすることもできる。したがって、測定信号を観察することにより、いつ臨界状態が発生し、受信信号経路における信号処理が損なわれるか、または損なわれる可能性があるかを判断することができる。例えば、上記の実施例によれば、受信段の1つの飽和が検出されるまで、受信ユニットへの入力信号を増加させることができる。測定信号は、場合によってはマージン分だけ減少し、その後、受信ユニットの臨界状況の指標とすることができる。
【0022】
[0022]好ましい実施形態では、測定情報は、測定情報を分類し、測定情報を少なくとも1つ、好ましくは少なくとも第1または第2の臨界状態のクラスに割り当て、臨界状態の分類に従って複素受信信号をどのように処理するか、およびどのように是正措置を適用するかを決定するために、好ましくは制御ユニットまたは信号処理ユニットに実装される受信制御モジュールにおいて評価される。
【0023】
[0023]測定情報に従って、臨界状態は、好ましくは、
-製品または汚染物質によって引き起こされる臨界状態に関連する第1のクラス、または
-外部影響によって引き起こされる臨界状態に関連する第2のクラス、または
-飽和状態などの金属探知機の不規則な状態によって引き起こされる臨界状態に関連する第3のクラス、または
-金属探知機に発生したドリフトによって引き起こされる臨界状態に関連する第4のクラス、に割り当てられる。
これらの各クラスに対して、臨界状態の処理手順は、臨界状態を終了するための適切なアクションを定義する。
【0024】
[0024]臨界状態の処理手順の実行は、好ましくは、
a)受信ユニットをリセットするため、または受信ユニットもしくはその一部を通常の動作状態に戻すため、または受信ユニットもしくはその一部を安定した状態に保持するために、受信信号経路に設けられた少なくとも1つの機能モジュールに制御情報または制御信号を提供し、適用するステップ、および/または、
b)信号処理ユニットをリセットするため、または信号処理ユニットもしくはその一部を通常の動作状態に戻すため、または信号処理ユニットもしくはその一部を安定した状態に保持するために、信号処理経路内の少なくとも1つの機能モジュールに制御情報を提供し、適用するステップ、および/または、
c)制御ユニットに実装された制御プログラムに情報を提供するステップであって、制御プログラムは、金属探知機が発する音響的または光学的警報信号を開始する、ステップ、および/または、
d)制御ユニットに実装された制御プログラムに情報を提供するステップであって、制御プログラムは、臨界状態の発生のために設けられたプロトコルに従って測定データを処理する、ステップ、および/または、
e)受信信号経路で発生する不均衡を除去するための平衡制御ループを使用し、平衡制御ループをリセットするため、または不均衡が少なくとも粗く補正されるか、または安定した値に保持される動作状態に平衡制御ループを戻すために、平衡制御ループに設けられた少なくとも1つの機能モジュールに制御情報を提供し、適用するステップ、および/または、
f)受信信号経路で発生する不平衡を除去するための平衡制御ループを使用し、平衡制御ループは、受信信号から、または、臨界状態が存在する場合は、測定信号から不平衡信号を導出するステップ、
の少なくとも1つを含む。
【0025】
[0025]さらに、1つまたは複数のクラスの臨界状態に対して、金属探知機に特定の動作モードを提供することができる。したがって、臨界状態の検出後、金属探知機の動作モードを適切なモードに変更することができる。
【0026】
[0026]金属探知機が2つ以上の動作周波数を使用する場合、好ましくは、各動作周波数に対して専用の受信信号経路と専用の信号処理経路が設けられ、測定チャネルにおける信号処理が動作周波数に依存する場合には、専用の測定チャネルが設けられる。したがって、信号処理は、各動作周波数に対して、異なる信号チャネルで並列に実行される。
【0027】
[0027]測定チャネルは、測定信号が処理される測定信号経路を含む。好ましい実施形態では、測定信号は、測定チャネルに設けられるか、または信号処理ユニットに実装される測定復調器に印加される。測定復調器は、同相測定信号成分と直交測定信号成分とを有する復調された複素測定信号を提供する。同相測定信号成分と直交測定信号成分は、信号処理ユニットまたは受信制御モジュールで分析され、関連する測定情報を提供する。したがって、測定信号は、例えば信号振幅または信号エネルギーを少なくとも1つの基準値と比較することによって復調前に分析されるだけでなく、ベースバンド信号の異常を検出するために復調後に分析されてもよい。
【0028】
[0028]受信信号経路の特定の点における受信信号に対応する少なくとも1つの測定信号は、好ましくは、受信ユニットに設けられた増幅器などの能動モジュールの入力または出力でピックアップされる。好ましくは、臨界状態の発生を、その発生の正確な位置とともに確実に検出できるように、2つ以上の測定信号が受信信号経路の異なる地点でピックアップされる。
【0029】
[0029]受信復調器および/または測定復調器は、好ましくは、位相感応検出器の実施形態で提供され、この検出器は、印加された受信信号または測定信号を基準送信信号および関連する基準直交信号と比較して、復調された複素受信信号または復調された複素測定信号を提供する。以下に説明するすべての実施形態において、受信復調器または測定復調器は、好ましくは位相感応検出器であり、それに従って説明される。しかしながら、各実施形態において、復調器は、当業者に公知の他の任意の実施形態で提供することができる。
【0030】
[0030]受信信号経路の観察には、測定チャネルと測定信号の分析によって、臨界状態の検出を可能にし、受信ユニットの出力信号の解釈をサポートする情報が得られるという利点がある。受信制御ユニットによって提供される制御情報により、送信ユニットおよび/または受信ユニットおよび/または信号処理ユニット、および/または平衡制御ループまたはこれらの段階の機能モジュールなどの実体を有する金属探知機を、検出された臨界状態に応答して制御することができる。このようにして、金属探知機を可能な限り短時間で正常動作に戻すことができる。さらに、制御情報により、測定プロセスと測定データの取り扱いを制御することができる。測定データが有効か無効かを判断することができる。その結果、臨界状態発生時に、偽陽性報告および偽陰性報告を避けることができる。さらに、臨界状態をオペレータに知らせ、好ましくは、測定結果が損なわれる前に、受信ユニットまたはその一部をリセットするなどの対策を自動的に開始することができる。定期的に、測定プロセスを妨げることなく、臨界状態を補正することができる。しかし、臨界状態を時間内に補正できない場合、または臨界状態が測定情報を破損する可能性がある場合は、測定プロセスの中断が最終的な選択肢となる。
【0031】
[0031]測定信号は、ハードウェア領域またはソフトウェア領域で分析することができる。したがって、評価モジュールおよび/または受信制御モジュールは、ハードウェア領域に設けることも、制御ユニットまたは信号処理ユニットに実装することもできる。評価モジュールは、受信制御モジュールが評価サブモジュールと制御サブモジュールを含むように、受信制御モジュールに統合することもできる。
【0032】
[0032]ハードウェア領域では、少なくとも1つの比較器ユニットにおいて測定信号または測定信号から導出された測定値と比較される、少なくとも1つの基準信号または基準値または閾値が提供されることが好ましい。測定信号または測定値を基準信号または基準値信号と比較することにより、飽和状態を検出することができる。測定信号または測定値を2つ以上の基準信号または基準値と比較することにより、信号範囲の両端で信号クリッピングを伴う飽和を検出することができる。また、適宜設定された基準値により、測定プロセスがまだ妨害されていない間に、測定信号に対応する受信信号が臨界範囲に達したかどうかを検出することもできる。
【0033】
[0033]受信信号経路で飽和が発生すると、出力電圧が一方または他方の極値になることがある。しかし、飽和はしばしば受信ユニットの未定義または非線形動作を引き起こし、適切に解釈することができない。受信信号経路において、第1の増幅器が飽和する一方で、後続の増幅器の動作が未定義になることがある。例えば、第1の増幅器が飽和状態にある場合、背中合わせの増幅器配置の第2の増幅器が入力信号の飽和増幅コピーを出力することは保証されない。その結果、金属探知機は正常な状態に見えるが、実際には臨界状態にあることがある。したがって、本発明の方法では、本発明の方法がなければ偽陽性または偽陰性の反応を引き起こすような臨界状態を検出することができる。
【0034】
[0034]受信信号経路に飽和状態が存在する場合に、測定チャネルも共に飽和することはなく依然として測定信号を処理できる、ことが重要である。この目的のために、測定信号を必要に応じて減衰させることができる減衰器、好ましくは制御可能な減衰器が提供される。代わりに、またはそれに加えて、測定信号は位相感応検出器によって処理される場合があり、位相感応検出器は、受信位相感応検出器と比較して、受信信号経路で飽和を引き起こすような高振幅の信号などを処理することができる、より大きな範囲を有する。
【0035】
[0035]測定チャネルはまた、臨界状態を引き起こした可能性のある不均衡を、受信ユニットが通常の動作状態に戻ることができる程度まで少なくとも補償することができる補助平衡制御ループの一部として有利に使用することができる。金属探知機では、受信信号は通常、金属探知機で発生した不均衡に関連する不均衡信号成分を決定するために分析または処理される。決定された不均衡信号成分に基づいて補償信号が導出または合成され、この補償信号は、決定された不均衡を補償するために受信信号経路に設けられた補償ユニットに印加される。受信信号から不均衡信号成分を導き出すことができない臨界状態の場合、金属探知機内で発生した不均衡に関連する不均衡信号成分を決定し、補償信号を提供するために、測定信号が分析または処理される。測定信号から得られた補償信号は、決定された不均衡信号成分を補償するために、受信信号経路に設けられた補償ユニットに印加される。したがって、測定チャネルは補助補正ループの一部となり、金属探知機で発生した不均衡状態を粗いが迅速に補正することができる。したがって、臨界状況の検出後、制御ユニットは、動作モードを変更し、受信ユニットが通常動作に戻るまで、好ましくは、測定信号が、受信信号が許容範囲に戻ったことを示すまで、補助平衡制御ループを一時的に使用することができる。
【0036】
[0036]好ましくは、将来の臨界状態を予測でき、予防措置を迅速に講じることができ、または臨界状態の発生時に、現在の臨界状態を解釈するための追加データを利用できるように、測定信号の履歴および/または測定信号の分析から得られたデータおよび/または臨界状態に関連する金属探知機の状態データが記録される。
【0037】
[0037]受信ユニットが、汚染物質が存在すること、または汚染物質が存在しないことを示す出力信号を提示する場合、偽陽性報告および偽陰性報告を回避することができるように、その信号情報は、測定信号の分析によって得られた情報によって検証される。不均衡によって受信信号が極端な値、最大信号値または最小信号値になった場合、受信信号を正しく解釈することができ、直ちに是正措置を講じることができる。
【0038】
[0038]好ましい実施形態では、測定信号またはそこから導出された測定値は、受信信号経路における飽和状態を決定するために、少なくとも1つの基準信号または基準値と比較される。飽和状態は、フィルタ段または利得段などの受信段におけるオペアンプなどの能動モジュールの入力が最大入力電圧以上に上昇したことを示し、これにより能動モジュールまたは関連する受信段が非線形または未定義の挙動を示すか、最小または最大の出力電圧または信号クリッピングなどを提供する。最悪の場合、飽和状態は、汚染物質が存在するにもかかわらず、汚染物質が存在しないことを示す信号出力を受信ユニットが示す原因となる可能性がある。
【0039】
[0039]さらに、金属探知機および測定プロセスの状態は、好ましくは連続的に観察され、関連する状態情報が受信制御モジュールに提供され、受信制御モジュールは、測定情報に関連する状態情報を考慮して測定情報を分類する。状態情報が、平衡コイルシステムに製品が存在しないことを示す場合、臨界状態の第1のクラスへの割り当ては除外される。振動が検出されたことを状態が示している場合、臨界状態は第2のクラスに割り当てられる。補正ループが、不均衡を補償するために高い補正信号が印加されていることを示す場合、臨界状態は第4のクラスに割り当てられる。
【0040】
[0040]臨界状態の解釈のために、状態情報は、好ましくは、臨界状態の発生を追跡することができ、臨界状態を対策によって回避することができるように、一定期間観察され、記録される。したがって、履歴情報は、臨界状態を関連するクラスに正しく割り当てるために有利に使用することができる。
【0041】
[0041]受信信号経路の飽和が検出された場合、受信ユニットが正常な状態に戻されるように、信号受信経路の少なくとも1つの能動素子またはモジュールがリセットされるのが好ましい。例えば、飽和状態に関連する少なくとも1つのコンデンサが放電されるか、放電されたコンデンサと交換される。あるいは、増幅器段およびフィルタ段がリセットされ、通常の動作状態に戻される。あるいは、臨界状態の評価に基づいて、例えば、信号経路を一時的に遮断するか、コンデンサの電荷を一時的に保持することによって、受信ユニットまたはその素子をその状態に保持することもできる。
【0042】
[0042]好ましくは、受信信号経路に設置された少なくとも1つの制御可能な増幅段に対して、利得パラメータの動作値とリセット値が提供される。受信ユニットの飽和に関連する臨界状態が発生した場合、利得パラメータをリセット値に設定することにより、少なくとも1つの増幅段がリセットされる。その後、利得パラメータは、利得リセット期間内にリセット値から動作値に連続的に変更される。さらに、またはその代わりに、受信信号経路に設置された少なくとも1つの制御可能なフィルタ段のフィルタパラメータの動作値とリセット値が提供される。受信ユニットの飽和に関連する臨界状態が発生した場合、フィルタパラメータをリセット値に設定することにより、少なくとも1つのフィルタ段がリセットされ、その後、フィルタパラメータは、フィルタリセット期間内にリセット値から動作値に変更される。利得リセット期間とフィルタリセット期間は、可能な限り短く、かついかなる飽和状態も確実に除去されるように選択される。利得パラメータまたはフィルタパラメータのリセット値から動作値への変更は、線形または曲線に従うことができる。
【0043】
[0043]したがって、本発明の方法は、受信信号経路の能動モジュールの飽和のような臨界状態を検出し、可能な限り最短時間で適切な補正動作を開始することを可能にする。
[0044]本発明の詳細な態様および実施例を、図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】送信ユニット1、平衡コイルシステム2、受信ユニット3、および、受信信号経路rpから取り出された少なくとも1つの測定信号ms、msxが、受信ユニット3において発生した飽和状態などの臨界状態を検出するために分析される測定チャネル8を有する制御ユニット4に統合された信号処理ユニット45、を含む本発明の金属探知機の好ましい実施形態を示す図である。
【
図2】位相感応検出器85で復調された測定信号msが制御ユニット4で分析される、さらに好ましい実施形態における
図1の金属探知機を示す図である。
【
図3】動作周波数txが信号処理ユニット45によって提供され、受信チャネル3と測定チャネル8の位相感応検出器435、485が信号処理ユニット45に実装された、好ましい実施形態における
図2の金属探知機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[0045]
図1は、好ましい実施形態における本発明の金属探知機のブロック図を示しており、この金属探知機は、送信ユニット1、送信コイル21と第1および第2の受信コイル22A、22Bとを備えた平衡コイルシステム2、受信ユニット3、制御プログラム40およびデジタル信号処理ユニット45を含む制御ユニット4、ならびにインターフェース、および入出力装置を含む。金属探知機がコンベア6を含み、そのコンベア6上を製品が平衡コイルシステム2を通って搬送されることが象徴的に示されている。
【0046】
[0046]送信ユニット1は、シンセサイザのような内部周波数源11、または例えば制御ユニット4に配置された外部周波数源11を有する送信信号経路tp、送信増幅器12、および好ましくは送信整合ユニット13を含む。送信信号経路tpは、フィルタ装置などのさらなるモジュールを含み得る。周波数源11は、少なくとも1つの固定または選択可能な動作周波数を有する送信信号txを提供する。周波数源11はさらに、送信信号txに対して位相が90°オフセットされた直交信号tx90°を提供する。送信信号txは、送信増幅器12の入力に印加され、この増幅器は、例えばクラスAまたはクラスBモードで動作してもよく、またはHブリッジの実施形態で提供されてもよい。
【0047】
[0047]送信増幅器12の出力は、送信整合ユニット13の入力に接続され、この整合ユニット13は、好ましくは、少なくとも1つの1次コイルと2次コイルとを有する結合変圧器を含み、送信増幅器12を送信コイル21に適合させることができる。インピーダンス整合ユニット13はまた、好ましくは、選択された動作周波数に同調される共振回路を形成するために、送信コイル21に選択的に接続可能な同調コンデンサを含む。
【0048】
[0048]平衡コイルシステム2では、汚染物質を含む製品が平衡コイルシステム2を通って搬送されるとき、受信信号rsは磁場で発生する外乱によって変調される。しかし、受信コイル22A、22Bが同一であり、工場現場で平衡状態に設定されていても、製品が存在しない状態で平衡コイルシステムが平衡状態にならない場合があり、その結果、完全に許容できる製品が不合格になる可能性がある。金属探知機の平衡状態は、システムに対する機械的な衝撃、周囲条件の変化、探知機の近傍にある金属物、または部品の弛緩や経年劣化によって乱れることがある。金属検出システムの感度が高く、汚染物質がコイルシステムの出力電圧に及ぼす影響が微小であることを考慮すると、不均衡は受信チャネル、特に限られた電圧信号範囲でのみ動作する入力増幅器と位相感応検出器およびアナログデジタル変換器の飽和を引き起こす可能性もある。このような不均衡を除去するために、平衡制御ループは、受信信号と組み合わされ、不均衡が補償されるまで変化する調整可能な補償信号を備えて提供される。
【0049】
[0049]受信ユニット3は、平衡コイルシステムインピーダンスを受信チャネルインピーダンスに適合させる、例えば平衡変圧器を含む受信整合ユニット31を好ましくは備えた少なくとも1つの受信信号経路rpを含む。受信整合ユニット31によって提供される受信信号rsと補償信号csは、加算ユニットまたは減算ユニットなどの補償ユニット32に印加される。補償信号csにより、受信信号rsに含まれる不均衡が補償され、補償された受信信号が、場合によってはフィルタ段33を介して、受信増幅器34の入力に転送される。フィルタ段33と受信増幅器34は、好ましくは制御信号gc、fcによって制御可能である。制御信号gcにより、受信増幅器34の利得を設定することができる。制御信号fcにより、フィルタ段33の少なくとも1つのフィルタパラメータを設定することができる。一例として示したこれらの制御信号gc、fcおよび制御可能な機能素子33、34は、臨界状態が検出された場合に受信ユニット3をリセットするために使用することができる。
【0050】
[0050]受信増幅器34は、増幅および補償された受信信号rsを、受信位相感応検出器35(PSD)の実施形態における受信復調器35(DEM)に送出し、この受信復調器35(DEM)において、受信信号rsは、同相基準信号および直交基準信号、すなわち、周波数源11によって提供される送信信号txおよび関連する直交信号tx90°と比較される。受信位相感応検波器35の出力には、同相受信信号成分rs-Iおよび直交受信信号成分rs-Qを有する復調された複素受信信号rscが提供される。
【0051】
[0051]複素受信信号rscは、受信位相感応検出器35から受信アナログデジタル変換器36-I;36-Qを経由して、デジタル信号処理ユニット45、例えば制御ユニット4に設けられたデジタル信号プロセッサに転送される。制御ユニット4は、さらに、動作プログラムまたは制御プログラム40を含み、このプログラムにより、校正中および動作中の金属探知機のすべてのプロセスが制御される。
【0052】
[0052]金属探知機が複数の動作周波数を使用する場合、受信ユニット3は、好ましくは、各動作周波数に対して個別に受信信号経路rpを含む。したがって、受信信号は、互いに並列に配置された異なる受信経路rpにおいて、異なる動作周波数に対して処理されることになる。
【0053】
[0053]信号処理ユニット45では、信号処理経路spが実装され、この経路で複素受信信号rscが処理される。製品またはノイズに関連する複素受信信号rscの信号成分は好ましくは抑制され、金属汚染物に由来する信号成分はさらに処理され検出される。
【0054】
[0054]さらに、信号処理経路spに沿って、複素受信信号rscは、受信信号に存在する不均衡成分を決定し、一定であるかまたは非常に低い周波数を有する決定された不均衡が受信機信号rsから除去された補償信号csを提供するために処理される。信号処理ユニット45によって提供されるデジタル補償信号は、変調後に、受信ユニット3の補償ユニット32に転送されるアナログ補償信号csを提供するデジタルアナログ変換器91に転送される。
【0055】
[0055]金属探知機は、受信信号経路rpから取り出された測定信号msを入力で受信する調整モジュール81を備えた測定チャネル8をさらに含む。本実施形態では、測定信号msは受信増幅器34の出力から取り出される。象徴的に、複数の測定信号ms、msxが受信信号経路rpに沿ってピックアップされ、測定信号経路mpに沿って測定チャネル8で処理され得ることが示されている。ピックアップされた測定信号ms、msxは、調整モジュール81に時間多重されるか、互いに並列に配置された専用の測定チャネル8で処理される。各測定チャネル8は、適用される測定信号ms、msxに適合させることができる。
【0056】
[0056]調整モジュール81は、測定信号msを処理して、受信増幅器34の出力における受信信号を表し、制御ユニット4、好ましくは制御ユニット4に実装された受信制御モジュール488によって提供される少なくとも1つの基準信号または基準値tha、thbと比較可能な信号を得る。本実施例では、2つの基準電圧または閾値tha、thbが提供され、これらは、通常動作中に測定信号msがあるべき信号範囲の上限および下限を定義する。
【0057】
[0057]基準信号tha、thbおよび調整モジュール81の出力信号は、第1の比較器モジュール82Aおよび第2の比較器モジュール82Bに個々に印加され、これらの比較器モジュール82A、82Bは、測定信号msが信号範囲または閾値tha、thbを超えた臨界状態の発生を示す関連出力信号isa、isbを提供する。
【0058】
[0058]調整モジュール81は、整流器によって測定信号msを直流電圧に変換することができ、この直流電圧は、比較器モジュール82A、82Bによって、少なくとも1つの基準電圧または閾値tha、thbと比較される。複数の基準電圧または閾値tha、thbは、異なる値に設定されてもよい。第1の閾値thaは、金属探知機の通常動作時には通常超えないが、受信信号rsの臨界レベルをまだ示さない信号範囲に対応する値に設定することができる。第2の閾値thbは、信号クリッピングまたは受信飽和の可能性を示す値に設定される。したがって、測定信号msは、比較器82A、82Bによって分析され、測定情報を送出することができ、これらの情報または出力信号isa、isbは、受信制御モジュール488に転送され、受信制御モジュール488は、臨界状態が発生したかどうかを決定し、それに応じて対策を開始する。
【0059】
[0059]この作業を容易にし、臨界状態が発生したときに適切な是正措置を開始するために、受信制御モジュール488は、好ましくは、金属探知機の現在の状態に関する補足情報を受信する。センサユニット51により、平衡コイルシステム2内の製品の存在が感知され、信号s51で受信制御モジュール488に報告される。センサまたはセンサグループ52により、振動および/または温度状態などの外部影響が測定され、信号s52により受信制御モジュール488に報告される。さらに、閾値tha、thbのいずれかが超過された、または外部影響が発生した継続時間を報告するタイマが提供されてもよい。
【0060】
[0060]受信した測定情報および状態情報に基づいて、受信制御モジュール488は、好ましくは、臨界状態を、例えば、製品または汚染物質によって引き起こされる臨界状態に関連する第1のクラス、または振動などの外部影響によって引き起こされる臨界状態に関連する第2のクラス、または飽和状態などの金属探知機の不規則な状態によって引き起こされる臨界状態に関連する第3のクラス、または金属探知機に発生したドリフトによって引き起こされる臨界状態に関連する第4のクラスに分類する。臨界状態の分類に基づいて、受信制御モジュール488は、割り当てられたクラスに対して予め決定された補正手順を開始することができる。
【0061】
[0061]受信制御モジュール488は、例えば、製品が平衡コイルシステム2に入り、測定信号msが第1および/または第2の閾値tha、thbを同時に超えることを観察することができる。したがって、受信制御モジュール488は、この臨界状態を第1のクラスに割り当てることができる。閾値tha、thbを超えた時間に応じて、受信制御モジュール488は通常動作を継続するか、または是正措置を開始することができる。
【0062】
[0062]振動などの外部からの影響が検出されている間に閾値tha、thbの超過が報告された場合、臨界状態は第2のクラスに割り当てられる。是正措置として、金属検出プロセスが停止され、オペレータに臨界状態が通知される。この手順には、各クラスの臨界状態に対して適切な処置を選択的に講じることができるという利点がある。例えば、臨界状態が、測定結果が無効である可能性を示す場合にのみ、測定データを破棄することができる。
【0063】
[0063]平衡コイルシステム2内に製品が存在せず、外部からの影響も検出されていない状態で、閾値tha、thbの超過が検出された場合、金属探知機の状態が不規則である可能性があり、臨界状態は第3のクラスに割り当てられる。この場合、通常は常に是正措置が開始される。
【0064】
[0064]大きな補償信号csと共に閾値tha、thbの超過が検出された場合、第4のクラスによるドリフトまたは不均衡が存在する可能性がある。この状態は、例えば音または光、あるいは制御ユニット4のディスプレイ上のメッセージによって、オペレータに再度通知される。
【0065】
[0065]測定情報の分類または解釈は、履歴データによってさらに支援されることがある。この目的のために、臨界状態のデータ、関連する状態データおよび分類データ、ならびに好ましくは外部影響のデータおよび補償信号csの経過が、好ましくは登録される。好ましくは、測定信号のレベルが、適宜設定された2つの閾値tha、thbの間の臨界範囲に発生した期間も登録することができる。このような履歴データは、将来の臨界状態の分析、あるいは予防措置にも使用することができる。現在のデータパターンが登録されたデータパターンに対応する場合、臨界状態が同じように分類される可能性が高い。
【0066】
[0066]本発明の方法は、以前は解釈できなかった臨界状態の説明を提供することができる。臨界状態の原因を知ることにより、しかしながら、選択的に適切な是正措置を講じることができ、これにより、金属探知機は可能な限り最短時間で正常動作に復帰する。
【0067】
[0067]閾値thbを超え、受信ユニット3内の持続的な飽和状態が検出された場合、受信チャネルまたは受信チャネルのアクティブモジュール(少なくとも1つのフィルタまたは増幅器など)がリセットされ、通常の動作状態に戻される。したがって、検出された飽和状態は可能な限り短時間で終了し、測定プロセスは、中断することなく、または短時間で、続行することができる。
【0068】
[0068]通常、飽和状態は、フィルタ、増幅器、または積分器の一部であるコンデンサなどの充電されたコンデンサによって引き起こされ、維持される。飽和状態に関連する受信信号経路rpで使用されるコンデンサを放電することで、飽和状態を解除することができる。例えば、コンデンサに並列に電界効果トランジスタなどのスイッチで抵抗を接続し、必要なときにコンデンサを放電できるようにすることができる。コンデンサの放電には時間がかかるので、コンデンサを対にして、交互に電子回路に接続できるようにしてもよい。このような配置により、充電されたコンデンサを放電されたコンデンサと瞬時に交換することができ、受信ユニット3をすぐに通常動作に戻すことができる。一例として、充電された第1のコンデンサCを持つRCフィルタを、放電された第2のコンデンサC*を持つ同一のRC*フィルタに変更することができる。
図1は、制御信号fcで作動するスイッチS、第1のコンデンサCまたは第2のコンデンサC*がフィルタ段33に接続可能であることを示している。スイッチSの設定を変更することにより、第1のコンデンサCは電子回路内で第2のコンデンサC*に置き換えられ、その逆も同様である。
【0069】
[0069]あるいは、例えば大きな金属汚染物によって引き起こされた臨界状態を検出する場合、受信ユニット3は、例えば受信信号経路を中断することによって、またはオペアンプのような能動モジュールに接続され得るコンデンサの電荷を一定に保持することによって、好ましくは一時的に現在の状態に保持される。これは、金属探知機が、さらなる動作を必要とすることなく、自動的に通常の動作状態に戻ることができるという利点を有する。
【0070】
[0070]さらに好ましい実施形態では、受信信号経路rpに設置された少なくとも1つの制御可能なフィルタ段33に対して、フィルタパラメータの動作値およびリセット値が提供される。臨界状態が検出された場合、少なくとも1つのフィルタ段33は、好ましくは、フィルタパラメータをリセット値に設定することによってリセットされ、その後、フィルタパラメータは、フィルタリセット期間内にリセット値から動作値に変更される。フィルタ段33のリセットは、アナログ領域およびデジタル領域で実行することができる。フィルタパラメータは、フィルタ段33に印加されるフィルタ制御信号fcで設定および変更することができる。
【0071】
[0071]別の好ましい実施形態では、受信信号経路rpに設置された少なくとも1つの制御可能な増幅段34に対して、利得パラメータの動作値とリセット値が提供される。臨界状態が検出された場合、少なくとも1つの増幅段34は、利得パラメータをリセット値に設定することによってリセットされ、その後、利得パラメータは、利得リセット期間内にリセット値から動作値に連続的に変更される。利得パラメータは、受信増幅器34に印加される制御信号gcによって設定および変更することができる。
【0072】
[0072]フィルタ段33および増幅段34は、変調された受信信号rsを増幅およびフィルタリングするために、受信位相感応検出器35の入力側に設けられるか、および/または復調された受信信号またはベースバンド信号rsを増幅およびフィルタリングするために、受信位相感応検出器35の出力側に、好ましくは設けられる。
【0073】
[0073]
図2は、さらに好ましい実施形態における
図1の金属探知機を示す。この実施形態では、測定信号msは、測定チャネル8において、好ましくは位相感応検出器85(PSD)の実施形態で提供される測定復調器85(DEM)に印加される。測定位相感応検出器85は、受信増幅器34の出力から取り出された測定信号msを、同相基準信号および直交基準信号、すなわち、好ましくは周波数源11によって提供される送信信号txおよび関連する直交信号tx90°と比較し、同相測定信号成分ms-Iおよび直交測定成分ms-Qを有する復調された複素測定信号mscを生成し、これらはアナログデジタル変換器86-I;86-Qを介して信号処理ユニット45に転送される。
【0074】
[0074]前述のように、受信信号経路rpに飽和状態が存在する場合に、測定チャネル8も共に飽和することはなく依然として測定信号msを処理できる、ことが重要である。この目的のために、測定チャネル8は、測定信号msを減衰させる減衰器80を任意で含む。あるいは、測定位相感応検出器85は、より高い精度で動作する受信位相感応検出器35と比較して、より大きな範囲を任意に備える。したがって、測定位相感応検出器85は、受信位相感応検出器35を飽和させるような高振幅の信号を処理することができる。減衰器80は、所望の減衰量を設定するために制御信号acを印加できる制御入力を有することが好ましい。減衰は、好ましくは制御ユニット4、好ましくは信号制御ユニット45または受信制御ユニット488によって設定される。
【0075】
[0075]測定信号msまたはmsxは、測定復調器85(DEM)または測定位相感応検出器85(PSD)の入力に印加される前に、必要に応じて、受信信号経路rpに沿った別の点でピックアップされ、測定信号経路mpに沿って増幅および/または減衰され得る。
【0076】
[0076]信号処理ユニット45または受信制御モジュール488では、複素測定信号mscが分析され、関連する測定情報が提供される。得られた測定情報に基づいて、受信制御モジュール488は、臨界状態が存在するかどうかを決定する。上述したように、臨界状態は分類され、関連するクラスに対して提供される是正措置が適用され得る。この実施形態は、測定信号ms、msxを、その信号処理ユニット45または受信制御モジュール488によってデジタル領域でより容易に分析できるという利点を有する。しかしながら、測定信号ms、msxは継続的に分析され、測定情報は好ましくは受信信号経路rpにおいて飽和が発生する前に収集されることが勧められる。
【0077】
[0077]
図1を参照して説明したように、金属探知機で発生する不均衡をキャンセルする平衡制御ループが提供される。複素受信信号rscは、信号処理ユニット45の信号処理経路spに沿って処理され、複素受信信号rscにおける不均衡成分を決定し、対応する補償信号csを提供し、この補償信号csは、デジタルアナログ変換器91を介して受信ユニット3の補償ユニット32に転送される。
【0078】
[0078]測定チャネル8は、臨界状態が受信ユニット3の適切な機能を阻害しているときでも動作可能であるので、測定信号msは、好ましくは、金属探知機に発生する不均衡に関連する不均衡信号成分を決定するため、および決定された不均衡信号成分に対応する補償信号csmを提供するために、臨界状態の検出後に分析される。測定信号msから得られる補償信号csmを受信信号経路rpに設けられた補償ユニット32に適用することにより、決定された不均衡が補償される。その結果、測定チャネル8は、臨界状態が発生したときに起動される補助平衡制御ループの一部を形成する。したがって、補助平衡制御ループは、不均衡の補償を最適化するために、通常の平衡制御ループを再活性化できる状態に受信ユニット3を戻す。
【0079】
[0079]臨界状態の検出後、受信制御モジュール488は、是正措置を開始することができる。プロセス制御コマンドpcにより、金属探知機の測定プロセスまたは動作モードが必要に応じて変更される。制御信号gc、fcにより、増幅器ユニット34およびフィルタユニット33の動作パラメータを変更することができる。制御信号pcは、補助平衡制御ループを作動または非作動にすることができる。
【0080】
[0080]
図3は、信号処理ユニット45によって送信信号txまたは動作周波数が提供される、好ましい実施形態における
図2の金属探知機を示す。受信ユニット3および測定チャネル8の位相感応検出器435、485は、信号処理ユニット45に実装される。さらに、受信信号rsの復調された同相信号成分および直交信号成分を処理するためのフィルタモジュール4533と、測定信号msの復調された同相信号成分および直交信号成分を処理するためのフィルタモジュール4583が、信号処理ユニット45に実装される。不平衡信号成分は低周波数範囲に存在するため、フィルタモジュール4533は受信信号rsに含まれる不平衡信号成分を提供し、フィルタモジュール4583は測定信号msに含まれる不平衡信号成分を提供することができる。したがって、補償信号は、必要に応じて、通常平衡制御ループでの適用に対しては受信信号rsから、補助平衡制御ループでの適用に対しては測定信号msから導出することができる。
【符号の説明】
【0081】
[0082]
1 送信ユニット
11 周波数源,シンセサイザ
12 送信増幅器
13 送信整合ユニット
2 コイルシステム
21 送信コイル
22A、22B 受信コイル
3 受信ユニット
31 受信整合ユニット
32 補償ユニット
33 フィルタユニット
34 受信増幅器
35、4335 受信位相感応検出器/復調器
36I、36Q 受信アナログデジタル変換器
4 制御ユニット
40 制御プログラム
45 信号処理ユニット/モジュール
435、485 位相感応検出器
488 受信制御モジュール
4533 信号rsのms-I信号成分処理用フィルタモジュール
4583 信号msのms-Q信号成分処理用フィルタモジュール
51 製品センサ
52 外部影響測定センサ/振動センサ
6 製品コンベア
8 測定チャネル
80 減衰器
81 調整ユニット
82A、82B 比較器
85、4585 測定位相感応検出器/復調器
86I、86Q 測定アナログデジタル変換器
88 評価モジュール
9 補償チャネル
91 補償チャネルのデジタルアナログ変換器
92 補償チャネルの増幅器
ac 減衰器80への制御信号
cs 補償信号
csm 決定された不平衡信号成分に対応する補償信号
gc 利得または受信増幅器34を設定するための制御信号
fc フィルタ段33の少なくとも1つのフィルタパラメータを設定するための制御信号
isa、isb 出力信号
mp 測定信号経路
ms、msx 測定信号
msc 複素測定信号
ms-I 同相測定信号成分
ms-Q 直交測定成分
pc プロセス制御コマンド
rp 受信信号経路
rs 受信信号
rsc 複素受信信号
rs-I 同相受信信号成分
rs-Q 直交受信信号成分
sp 信号処理経路
s51 センサ51の信号
s52 センサ52の信号
tha、thb 基準信号閾値/基準値
tp 送信信号経路
tx 送信信号
tx90° 直交信号(送信信号に対して90°位相オフセット)
C 第1コンデンサ
C* 第2コンデンサ
S スイッチ
【国際調査報告】