IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギーセッケ+デブリエント カレンシー テクノロジー ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-510032有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法
<>
  • 特表-有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法 図1
  • 特表-有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法 図2
  • 特表-有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法 図3
  • 特表-有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/28 20190101AFI20240227BHJP
【FI】
G07D11/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557304
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022025093
(87)【国際公開番号】W WO2022194422
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021001397.2
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523353960
【氏名又は名称】ギーセッケ+デブリエント カレンシー テクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ニューハウザー,リチャード
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA06
3E141EA06
3E141FG11
3E141FL06
(57)【要約】
本発明は、有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法に関する。システムは、有価書類を設定可能な処理率(R)でもって処理し、特に個別化し、搬送し、且つ/又は検査し、また少なくとも2つの結束装置(23、33)のそれぞれの結束装置に供給するように設計されている、少なくとも1つの処理装置(10)と、結束装置(23、33)にそれぞれ供給された有価書類によって形成される少なくとも1つのスタックに結束帯(B)を設けるように設計されており、結束装置(23、33)は、各結束装置(23、33)において時間単位当たりに結束することができる有価書類の最大数を表すそれぞれの最大結束率(B1max、B2max)によってそれぞれ特徴付けられる、少なくとも2つの結束装置(23、33)と、i)結束装置(23、33)の最大結束率(B1max、B2max)およびii)有価書類が結束装置(23、33)に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける少なくとも1つの頻度パラメータに基づいて、処理率(R)を設定する制御装置(15)とを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価書類、特に銀行券を処理するシステムにおいて、
-有価書類を設定可能な処理率(R)でもって処理し、特に個別化し、搬送し、且つ/又は検査し、また特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて、少なくとも2つの結束装置(23、33、43、53)のそれぞれの結束装置に供給するように設計されている少なくとも1つの処理装置(10)と、
-結束装置(23、33、43、53)にそれぞれ供給された前記有価書類によって形成される少なくとも1つのスタックに結束帯(B)を設けるように設計されており、前記結束装置(23、33、43、53)は、前記各結束装置(23、33、43、53)において時間単位当たりに結束することができる有価書類の最大数を表すそれぞれの最大結束率(B1max-B4max)によってそれぞれ特徴付けられる、少なくとも2つの結束装置(23、33、43、53)と、
-i)前記結束装置(23、33、43、53)の最大結束率(B1max-B4max)およびii)特に前記少なくとも1つの分類判定基準に基づいて予想又は想定される、前記有価書類が前記結束装置(23、33、43、53)に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける少なくとも1つの頻度パラメータ(h1-h4)に基づいて、処理率(R)を設定する制御装置(15)と
を有するシステム。
【請求項2】
前記制御装置(15)は、前記結束装置(23、33、43、53)の内の少なくとも1つの結束装置の最大結束率(B1max-B4max)よりも大きい処理率(R)を設定するように設計されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置(15)は、前記結束装置(23、33、43、53)に前記有価書類を分配させる際の、予想される統計的な頻度の精度又は信頼度を特徴付ける、少なくとも1つの信頼度パラメータ(K)に更に基づいて、処理率(R)を設定するように設計されている、請求項1又は2記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置(15)は、それぞれが、前記結束装置(23、33、43、53)の内の1つの結束装置の最大結束率(B1max-B4max)と、前記有価書類が当該結束装置(23、33、43、53)に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける頻度パラメータ(h1-h4)との商に相当する、少なくとも1つの上側の処理率(B1max/h1、B2max/h2)よりも小さい処理率(R)を設定するように設計されている、請求項1から3のいずれか一項記載のシステム。
【請求項5】
前記制御装置(15)は、少なくとも1つの信頼度パラメータ(K)に基づき低減された上側の処理率(B1max/h1、B2max/h2)に相当する、少なくとも1つの低減された処理率((B1max/h1)xK、(B2max/h2)xK、但し0<K<1)と最大でも同じ大きさである処理率(R)を設定するように設計されている、請求項3及び4記載のシステム。
【請求項6】
ユーザによる、少なくとも1つの分類判定基準及び/又は少なくとも1つの頻度パラメータ(h1-h4)及び/又は少なくとも1つの信頼度パラメータ(K)の設定を実現するように設計されているユーザインタフェース(17)を備えた、請求項1から5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
ユーザによる、前記制御装置(15)によって設定される処理率(R)の変更を実現するように設計されているユーザインタフェース(17)を備えた、請求項1から6のいずれか一項記載のシステム。
【請求項8】
前記結束装置(23、33、43、53)を特徴付ける最大結束率(B1max-B4max)が記憶されている少なくとも1つの記憶装置を備えた、請求項1から7のいずれか一項記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置(15)は、前記結束装置(23、33、43、53)の内の少なくとも1つの結束装置において時間単位当たりに結束される有価書類の数を特徴付ける少なくとも1つの目下の結束率(B1-B4)を検出する、且つ/又は求めるように設計されており、また該当する結束装置(23、33、43、53)の目下の結束率(B1-B4)の、当該結束装置(23、33、43、53)の最大結束率(B1max-B4max)からの偏差に応じて、前記システム及び/又は前記有価書類の処理を制御するように設計されている、請求項1から8のいずれか一項記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置(15)は、該当する前記結束装置(23、33、43、53)の目下の結束率(B1-B4)の、当該結束装置(23、33、43、53)の最大結束率(B1max-B4max)からの偏差が、設定された偏差値を下回る、且つ/又は時間と共に減少する場合に、
-特に前記少なくとも1つの分類判定基準及び/又は設定された分配に基づいて、前記該当する結束装置(23、33、43、53)に供給されるべき有価書類が、その代わりに、スタッカ装置に、特に余剰スタッカ又はリジェクトスタッカ(16)に供給されるように前記システムを制御する、且つ/又は、
-前記有価書類の処理を少なくとも一時的に停止する、且つ/又は、
-目下設定されている処理率(R)に比べて低減された処理率を設定する、且つ/又は、前記有価書類が目下の処理の間に搬送される際の目下の搬送速度に比べて低減された搬送速度を設定する、
ように設計されている、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
有価書類、特に銀行券を処理する方法において、
-少なくとも1つの処理装置(10)において、有価書類が、設定可能な処理率(R)でもって処理され、特に個別化され、搬送され、且つ/又は検査され、また特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて、少なくとも2つの結束装置(23、33、43、53)のそれぞれの結束装置に供給され、
-前記結束装置(23、33、43、53)に供給された有価書類がそれぞれ少なくとも1つのスタックを形成し、前記スタックに、結束帯(B)が設けられ、各結束装置(23、33、43、53)が、各結束装置(23、33、43、53)において時間単位当たりに結束することができる有価書類の最大数を表すそれぞれの最大結束率(B1max-B4max)によってそれぞれ特徴付けられ、
-i)前記結束装置(23、33、43、53)の最大結束率(B1max-B4max)およびii)特に前記少なくとも1つの分類判定基準に基づいて予想又は想定される、前記有価書類が前記結束装置に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける、少なくとも1つの頻度パラメータ(h1-h4)とに基づいて、前記処理率(R)が設定される方法。
【請求項12】
コンピュータによるプログラムの実行時に、請求項11記載の方法を実行することを前記コンピュータに指示する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
コンピュータによる実行時に、請求項11記載の方法を実行することを前記コンピュータに指示する命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
銀行券が機械によって処理される場合、銀行券は、銀行券処理装置において検査され、検査の結果に応じて、銀行券が種々の搬出区画又はスタッカ区画に搬出され、その際にスタックされることによって、銀行券は仕分けされる。続いて、スタックされた銀行券には、通常の場合、結束帯が設けられる。ここで使用される、結束器又は結束モジュールとも称される結束装置は、構造様式に応じて、時間単位当たりの所定最大数のスタック又は銀行券にしか結束帯を設けることができないので、これによって、時間単位当たりに処理装置において全体的に処理される、即ち検査、分類及び結束される銀行券の処理枚数が制限される。
【0003】
本発明の課題は、処理枚数が向上した、有価書類、特に銀行券を処理するためのシステム及び方法を提供することである。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載のシステム及び方法によって解決される。好適な実施形態は従属請求項の対象である。
【0005】
本発明の第1の態様による、有価書類、特に銀行券を処理するためのシステムは、有価書類を設定可能な又は設定された処理率(R)でもって処理し、特に個別化し、搬送し、且つ/又は検査し、また特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて、少なくとも2つの結束装置のそれぞれの結束装置に供給するように設計されている、少なくとも1つの処理装置と、結束装置にそれぞれ供給された有価書類によって形成される少なくとも1つのスタックに結束帯を設けるように設計されており、各結束装置は、各結束装置において時間単位当たりに結束することができる有価書類の最大数を表すそれぞれ1つの最大結束率(B1max、B2max、...)によって特徴付けられる、少なくとも2つの結束装置と、結束装置の最大結束率(B1max、B2max、...)およびii)特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて予想及び/又は想定される、有価書類が結束装置に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける少なくとも1つの頻度パラメータ(h1、h2、...)に基づいて、処理率(R)を設定する制御装置とを有する。
【0006】
本発明の第2の態様による、有価書類、特に銀行券を処理するための方法では、有価書類が、少なくとも1つの処理装置において、設定可能な又は設定された処理率(R)でもって処理され、特に個別化され、搬送され、且つ/又は検査され、特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて、少なくとも2つの結束装置のそれぞれに供給される。各結束装置に供給された有価書類がそれぞれ少なくとも1つのスタックを形成し、スタックには結束帯が設けられ、各結束装置は、それら各結束装置において時間単位当たりに結束することができる有価書類の最大数を表すそれぞれ1つの最大結束率(B1max、B2max、...)によって特徴付けられる。処理率(R)は、i)結束装置の最大結束率(B1max、B2max、...)と、ii)特に少なくとも1つの分類判定基準に基づいて予想及び/又は想定される、有価書類が結束装置に分配される際の統計的な頻度を特徴付ける少なくとも1つの頻度パラメータ(h1、h2、...)とに基づいて、設定される。
【0007】
本発明の第3の態様によるコンピュータプログラム製品は、コンピュータによるプログラムの実行時に、本発明の第2の態様による方法を実行することをコンピュータに指示する命令を含む。
【0008】
本発明の第4の態様によるコンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによる実行時に、本発明の第2の態様による方法を実行することをコンピュータに指示する命令を含む。
【0009】
本発明の態様は、とりわけ、結束装置の最大結束率と、特に分類判定基準に応じて予想又は想定される、搬出区画又は結束装置への有価書類の統計的な分配とを考慮して、処理装置において有価書類を処理する際の処理率を設定又は調整するアプローチを基礎とする。
【0010】
結束装置の各最大結束率(B1max、B2max、...)は、例えば、「有価書類/分」又は「有価書類/秒」の単位で表され、とりわけ、予め記憶装置に記憶され、この記憶装置から、それらの最大結束率を制御装置によって呼び出すことができる。しかしながらまた、代替的又は付加的に、ユーザインタフェースを設けることもでき、このユーザインタフェースを介して、ユーザによって、それぞれの最大結束率を入力又は設定することができる。
【0011】
とりわけ、各分類判定基準について予想又は想定される頻度パラメータ(h1、h2、...)は、1%又は100%に正規化され、また各搬出区画又は各結束装置に有価書類が分配される際の0から1の間又は0%から100%の間の値範囲にある、予想又は想定される統計的な頻度を表す。
【0012】
搬出区画への有価書類のそれぞれ予想又は想定される統計的な分配及び/又は相応の頻度パラメータは、例えば、各分類判定基準(例えば、適合性又は額面金額)に関して類似するか又は同等である有価書類バッチの、同一の処理装置及び/又は他の処理装置における過去の処理の際にその分類判定基準に対して得られた有価書類の統計的な分配及び/又は経験値を基礎とすることができる。
【0013】
例えば、有価書類のバッチが適合性に関して分類される場合、適合性に関して類似するか又は同等である有価書類バッチの1回又は複数回の以前の処理の際に、平均して70%の有価書類が第1の搬出区画に搬出され(「適合」)、平均して30%の有価書類が第2の搬出区画に搬出された(「不適合」)場合、例えば、「適合」と等級付けられた有価書類が搬出される第1の搬出区画については、例えば0.7又は70%の頻度パラメータ(h1)を想定することができ、また「不適合」と等級付けられた有価書類が搬出される第2の搬出区画については、例えば0.3又は30%の頻度パラメータ(h2)を想定することができる。
【0014】
しかしながら、処理装置の処理率を求める際、又は設定する際に用いられる少なくとも1つの頻度パラメータは、必ずしも、過去の処理の多かれ少なかれ正確な統計的な評価を基礎とする必要はなく、むしろ単に、目下処理すべきバッチにおける有価書類が搬出区画に分配される際に見込まれる、予想される統計的な頻度の想定を基礎とすることができる。その種の想定は、例えば、過去の処理の際に取得された、適合性分類の際の統計的な分配及び/又は経験値に基づいて、例えば操作者が行うことができる。
【0015】
代替的に、例えば、検査された銀行券が、分類判定基準を考慮することなく、第1の結束装置及び第2の結束装置に交互に供給されるようにシステムが制御されることによって、搬出区画又は結束装置への処理された銀行券の分配を設定することも可能である。この場合には、相応に、第1の結束装置又は第2の結束装置への銀行券の統計的な分配は、それぞれ50%(h1=h2=0.5)が想定される。その種の統計的な分配の想定又は設定は、例えば、処理すべき銀行券が単にカウント且つ/又は記録される場合に用いられ、その際、狭義の意味での分類、即ち、例えば適合性及び/又は額面金額に関する分類は行われない。
【0016】
分類判定基準について予想又は想定される統計的な頻度分布を考慮して、通常の場合、各結束装置の最大結束率(B1max、B2max、...)よりも高い処理率(R)を設定することができる。例えば、2つの結束装置についての最大結束率が等しく、且つこの最大結束率が1000有価書類/分である場合、最も高い値を有する頻度パラメータ、つまり前述の例では0.7又は70%を考慮して、一方では、最大結束率(1000有価書類/分)よりも高い処理率であって、他方では、該当する搬出区画(つまり前述の例では、「適合」と等級付けされた有価書類のための第1の搬出区画)に対応付けられた結束装置の最大結束率を、場合によっては安全マージン又はいわゆる信頼区間を含めて上回らないように定められる処理率が設定される。本開示との関係において、「安全マージン」及び「信頼区間」という用語は同義に用いられる。
【0017】
前述の例では、例えば、1200有価書類/分又は1300有価書類/分の処理率を設定することができ、この処理率では、第1の搬出区画において、1200×0.7=840有価書類/分の率又は1300×0.7=910有価書類/分の率(即ち、いずれも1000/分の最大結束率を下回っている)での結束が行われることになり、これによって、有価書類の停滞が回避されるか、又は有価書類の連続的な処理が保証される。従って、1200有価書類/分又は1300有価書類/分の処理率が設定される場合、1000有価書類/分の最大結束率に対して、(1000-840)=160有価書類/分、又は(1000-910)=90有価書類/分の安全マージン又は信頼区間が維持される。
【0018】
とりわけ、この安全マージン又は信頼区間の大きさは、有価書類の予想される統計的な分配の信頼性又は精度に応じて選択される。この例において想定される70%又は30%の統計的な分配が、多数の有価書類バッチの過去の処理に基づく場合、その分配の信頼性又は精度は高いと等級付けすることができ、それによって、1200有価書類/分又は1300有価書類/分の処理率が設定される場合には、最大結束率に対して十分に大きい安全マージンが維持される。これに対して、想定される統計的な分配が単なる想定又は粗い推定に基づく場合、例えば1100有価書類/分の若干低い処理率を設定することによって、(1000-(1100x0.7))=230有価書類/分の相応に若干大きい安全マージンを調整することができる。
【0019】
即ち、1000有価書類/分の最大結束率に基づき、設定された1100有価書類/分、1200有価書類/分又は1300有価書類/分の率でもって有価書類を処理することによって、10%、20%又は30%の処理枚数向上が達成される。
【0020】
つまり総じて、本発明によって、有価書類、特に銀行券を処理する際の処理枚数が向上する。
【0021】
とりわけ、制御装置によって設定される処理率(R)は、複数の結束装置の内の少なくとも1つの結束装置の最大結束率(B1max、B2max...)よりも大きい。これによって、該当する結束装置の最大結束率に関して、常に処理枚数の向上が達成される。ここで、結束装置への有価書類の予想又は設定された分配に応じて、処理率は、それどころか、システムの最大限可能な処理率まで設定することができる。システムの最大限可能な処理率は、例えば、スタックの形で提供される有価書類の個別化のために設けられたセパレータの最大個別化率によって与えることができる。
【0022】
前述の実施形態において、各結束装置における有価書類の停滞を回避するため、また連続的な動作を保証するために、とりわけ、それぞれの目下の結束率を検出することができ、且つ/又は求めることができ、その目下の結束率は、複数の結束装置の内の少なくとも1つの結束装置の時間単位当たりに結束される有価書類の数を特徴付け、またシステム及び/又は有価書類の処理は、該当する結束装置の目下の結束率の、その結束装置の各最大結束率からの偏差に応じて制御することができる。例えば、このようにして、複数の結束装置の内の1つの結束装置において有価書類の停滞が差し迫っていることが求められた場合には、少なくとも1つの分類判定基準、例えば適合性に基づいて、該当する結束装置に、例えば「適合」と等級付けられた有価書類のための搬出区画における結束装置に供給されるべき有価書類が、その代わりに、スタッカ装置に、特に余剰スタッカ又はリジェクトスタッカに供給されるように、システムを制御することができる。それらの別個に搬出された有価書類は、例えばセパレータに導入させることによって、処理及び分類のために新たにシステムに供給することができる。
【0023】
とりわけ、制御装置は、複数の結束装置に有価書類を分配させる際の、予想される統計的な頻度の信頼性及び/又は精度を特徴付ける、少なくとも1つの信頼度パラメータ(K)に更に基づいて、処理率を設定するように設計されている。信頼度パラメータ(K)は、例えば、0と1の間の係数(例えば0=信頼性なし、1=最高の信頼性、又はその逆)であってよく、この信頼度パラメータ(K)によって、相対的な安全マージンが特徴付けられる。しかしながらまた、代替的に、信頼度パラメータ(K)は、例えば有価書類/分の単位で、絶対的な安全マージンを表すこともできる。信頼度パラメータ(K)を設定又は選択することによって、統計的に予想されるか又は必要とされる結束率(R×h1又はR×h2)と、各結束装置における最大結束率(B1max又はB2max)との間の安全マージンの大きさを、簡単且つ信頼性の高いやり方で調整することができる。
【0024】
しかしながらまた、停滞のおそれがある場合の有価書類の前述の特別な搬出の代わりに、又はそれに加えて、複数の結束装置の内の1つの結束装置における有価書類の停滞を確実に回避するため、また有価書類を処理する際の連続的な動作を維持するために、設定された処理率を、下記においてより詳細に説明する上側の処理率又は低減された処理率を用いて、上側に向かって制限することも可能である。
【0025】
とりわけ、制御装置によって設定される処理率は、少なくとも1つの上側の処理率(B1max/h1、B2max/h2、...)よりも小さく、この上側の処理率は、それぞれ、複数の結束装置の内の1つの結束装置の最大結束率(B1max、B2max、...)と、有価書類がその結束装置に分配される際の、予想される統計的な頻度を特徴付ける頻度パラメータ(h1、h2、...)との商に相当する。とりわけ、設定される処理率は、全ての上側の処理率よりも小さいか、又は設定される処理率は、計算された複数の上側の処理率のうち最も小さい上側の処理率よりも小さい。前述の例では、それぞれ1000有価書類/分の最大結束率と、2つの結束装置への有価書類の分配の70%又は30%の統計的な頻度とを用いる前述の例では、上側の処理率は、1000/0.7=1429有価書類/分、又は1000/0.3=3333有価書類/分となる。従って、この例では、いずれの場合においても1429有価書類/分よりも小さい、とりわけ著しく小さい処理率(R)が設定される。これによって、簡単なやり方で、各結束装置において統計的に予想されるか、又は必要とされる結束率を、最大結束率よりも常に小さくすること、とりわけ著しく小さくすることが実現される。これによって、価値書類を処理する際の総処理枚数が向上するにもかかわらず、各結束装置における有価書類の停滞を回避することができ、従って連続的な動作を実現することができる。
【0026】
とりわけ、制御装置は、少なくとも1つの信頼度パラメータ(K)に基づいて低減された上側の処理率(B1max/h1、B2max/h2)に対応する少なくとも1つの低減された処理率と、最大でも同じ大きさとなる(即ち、その低減された処理率以下である)処理率(R)を設定するように設計されている。信頼度パラメータ(K)が、例えば0と1の間の係数(0<K<1)である場合、低減された各処理率は、(B1max/h1)xK又は(B2max/h2)xKのように算出される。設定される処理率(R)については、R≦(B1max/h1)xK且つR≦(B2max/h2)xKが該当する。前述の実施形態例と同様に、この好適な実施形態では、設定される処理率は、とりわけ、信頼度パラメータを用いて低減された複数の上側の処理率のうちの最も小さい上側の処理率以下である。例えば、信頼度パラメータ(K)について、0.84の値を想定した場合、前述の例(1000有価書類/分の最大結束率、統計的な頻度70%又は30%)においては、処理率の設定にとって重要な、低減された上側の処理率は、(1000/0.7)x0.84=1200有価書類/分となる。複数の結束装置に有価書類を分配させる際の、それぞれ想定又は予想される統計的な頻度の信頼性又は精度に応じて、信頼度パラメータ(K)は、勿論、より小さい値又はより大きい値、例えば0.7、0.75又は0.8若しくは0.9又は0.95等を取ってもよい。これによって、有価書類を処理する際の総処理枚数が向上するにもかかわらず、各結束装置における有価書類の停滞を回避することができ、ひいては、特に高い信頼性でもって連続的な動作を保証することができる。
【0027】
とりわけ、ユーザによる少なくとも1つの分類判定基準及び/又は各最大結束率及び/又は少なくとも1つの頻度パラメータ及び/又は少なくとも1つの信頼度パラメータの設定を実現するように設計されているユーザインタフェースを更に設けることもできる。ユーザインタフェースは、例えば、キーボード、タッチスクリーン、及び/又は選択キーを有することができ、それらを介して、前述のパラメータの内の1つ又は複数のパラメータの所望の値を選択及び設定することができる。しかしながらまた、代替的又は付加的に、ユーザインタフェースは、音声又は音声制御を用いて、該当する値を入力するように設計することもできる。これによって、処理率を求めるため、又は設定するためにそれぞれ必要とされるパラメータを、簡単且つ高速なやり方で入力又は設定することができるので、処理率を、それぞれ処理される有価書類のバッチに、また分類判定基準に応じて予想される、各搬出区画への有価書類の予想される統計的な分配に確実且つ高速に適合させることができ、それによって、処理時の可能な限り連続的な動作が保証される。
【0028】
代替的又は付加的に、制御装置によって設定される処理率を、ユーザによって変更できるように設計されているユーザインタフェースを設けることもできる。ユーザインターフェイスは、例えば、キーボード、タッチスクリーン、及び/又は選択キーを有することができ、それらを介して、処理率を変更することができ、特に増大又は低減することができる。特に簡単な構成では、例えば、2つのキー「スピードアップ」又は「加速」と、「スピードダウン」又は「減速」を設けることができ、それらのキーを操作することによって、差し当たり求められている又は設定されている処理率を増大又は低減することができる。しかしながらまた、代替的又は付加的に、音声入力又は音声制御を用いた処理率の変更を実現するように、ユーザインタフェースを設計することもできる。これによって、一方では、更に高い総処理枚数を達成するために、また他方では、搬出区画又は結束装置における有価書類の停滞を阻止するために、それぞれの設定された処理率を操作者によって更に最適化することができる。
【0029】
とりわけ、結束装置を特徴付ける最大結束率が記憶さている、少なくとも1つの記憶装置が設けられている。結束装置の最大結束率は、通常の場合、変化しない又は大きく変化しないので、最大結束率の設定が操作者によって必要とされることなく、その最大結束率を、制御装置によって簡単に記憶装置から呼び出すことができ、また処理率を求める際に考慮することができる。これによって、処理率が非常に高速に求められて設定され、また操作者による最大結束率の入力時の誤りを排除することができるので、信頼性が高まる。
【0030】
とりわけ、制御装置は、複数の結束装置の内の少なくとも1つの結束装置において時間単位当たりに結束される有価書類の数を特徴付ける少なくとも1つの目下の結束率(B1からB4)を検出する、且つ/又は求めるように設計されており、また該当する結束装置の目下の結束率(B1からB4)の、その結束装置の各最大結束率(B1max又はB2max)からの偏差に応じて、システム及び/又は有価書類の処理を制御するように設計されている。例えば、検出された目下の結束率の、各最大結束率からの偏差(例えば、B1max-B1又はB2max-B2)を、設定された安全マージン又は信頼区間と比較することができる。偏差が安全マージン又は信頼区間よりも小さい場合には、例えば、複数の結束装置の内の1つの結束装置における有価書類の停滞を確実に阻止するために、又は有価書類の連続的な処理を更に確実に保証するために、設定された処理率を低減することができる。これに対して、偏差が安全マージン又は信頼区間よりも大きい場合には、目下設定されている処理率が維持されるか、又は偏差が例えば比較的大きい場合には、僅かに増大される。これによって、非常に信頼性の高いやり方で、有価書類の連続的な処理が実現されるのと同時に、高い処理枚数も実現される。
【0031】
とりわけ、制御装置は、該当する結束装置の目下の結束率の、その結束装置の最大結束率からの偏差が、設定された偏差値を下回る場合、及び/又は、この偏差値が時間と共に減少する場合、即ち、目下の結束率が最大結束率に近づく場合、特定の措置を講じるように設計されており、この措置によって、有価書類を処理する際の連続的な動作が確実に維持される、且つ/又は搬出区画又は結束装置における有価書類の停滞が回避される。例えば、この場合、少なくとも1つの分類判定基準、例えば適合性に基づいて、該当する結束装置に、例えば「適合」と等級付けされた有価書類のための搬出区画における結束装置に供給されるべき有価書類が、その代わりに、スタッカ装置に、特に余剰スタッカ又はリジェクトスタッカに供給されるようにシステムが制御される。代替的又は付加的に、有価書類の処理を、少なくとも一時的に停止させることもできる。ここでは特に、有価書類の個別化、検査、及び搬出区画への搬出のみが停止され、これに対して、該当する結束装置における結束が継続され、これによって、該当する結束装置において有価書類が停滞するおそれが既に前もって阻止される。代替的又は付加的に、目下設定されている処理率に比べて低減された処理率を設定することもでき、且つ/又は、目下の処理中に、特に個別化、検査、及び搬出の間に、又はそれらの後に有価書類を搬出する際の目下の搬送速度に比べて低減された搬送速度を設定することができる。とりわけ、この場合においても、有価書類の結束は、該当する結束装置において継続されるので、結束装置において有価書類が停滞する危険を確実に阻止することができる。
【0032】
本発明の更なる利点、特徴及び利用可能性は、図面と関連させた以下の説明より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】有価書類を処理するためのシステムの一例を示す。
図2】有価書類を処理する際のシステムの第1の適用例を示す。
図3】有価書類を処理する際のシステムの第2の適用例を示す。
図4】有価書類を処理する際のシステムの第3の適用例を示す。
【0034】
図1は、有価書類を処理するためのシステムの一例を概略的に示し、以下では、このシステムを、銀行券の処理に基づいて詳細に説明する。
【0035】
この例では、システムが、ベースモジュール10、第1のモジュール20、及び第2のモジュール30を有する。ベースモジュール10は、いわゆるセパレータ11を有し、このセパレータ11は、スタック12として与えられた銀行券を、スタック12から個別に取り出して、搬送路13に供給するように構成されている。
【0036】
搬送の過程において、銀行券は、1つ以上のセンサ14を通過し、センサは、例えば銀行券の光学的、音響的、及び/又は磁気的な1つ以上の特性を検出し、相応のセンサ信号に変換する。センサ信号は、制御装置15において評価され、銀行券の検査及び/又は等級分け及び/又は識別に用いられる。
【0037】
検査又は等級分けの結果に応じて、銀行券が異なる搬出区画16、21、22、31、32に供給されることによって、銀行券は分類される。この実施例では、システムが、いわゆるリジェクト区画16を有し、このリジェクト区画16には、例えば角折れ、汚れ、及び/又は破れに起因して、検査、等級分け若しくは識別を行えなかった、又は確実に行えなかった銀行券が搬出され、それらの紙幣は、改めて、手作業で事後的に処理されなければならない。更に、第1のモジュール20は、2つのスタッカ区画21及び22を有し、これらのスタッカ区間21及び22には、第1のモジュール20に対応付けられた等級に属する銀行券、又は特定の分類判定基準を満たす若しくは満たさない銀行券が搬出されてスタックされる。この例では、第2のモジュール30も、2つのスタッカ区画31及び32を有し、これらのスタッカ区間31及び32には、第2のモジュール30に対応付けられた等級に属する銀行券、又は分類判定基準を満たす若しくは満たさない銀行券が搬出されてスタックされる。
【0038】
更に、第1のモジュール20及び第2のモジュール30は、それぞれ結束器22又は33を有し、これらの結束器22又は33は、スタッカ区画21及び22又は31及び32において形成された銀行券のスタックに結束帯Bを設けるように設計されている。ここで、モジュール20、30は、とりわけ、特定数の、とりわけ設定可能な数の、例えば100枚の銀行券を含むスタックにのみ結束帯Bが設けられるように構成されている。
【0039】
この例では、各モジュール20又は30の2つのスタッカ区画21及び22又は31及び32が、それぞれ1つの結束器23又は33に対応付けられている。従って、結束器23又は33は、共有結束器(英語:「shared bander」)とも称され、2つのスタック区画21及び22又は31及び32は、タンデムスタッカ(英語:「tandem stacker」)とも称される。第1のモジュール20及び第2のモジュール30におけるタンデムスタッカ21、22又は31、32は、電子的な信号処理又は画像処理におけるハイパスフィルタと同様の効果を有する:各スタッカ区画21、22又は31、32における銀行券が設定された数、例えば100に達するための所要時間が、各結束器23又は33によるスタックの結束に必要とされる時間(いわゆるサイクル時間)よりも短くない限り、更なる銀行券をスタッカ区画21、22又は31、32によって収容することができる。これに対して、多数の銀行券が各モジュール20、30の内の1つに搬出され、各スタッカ区画における銀行券が設定された数に達するためにそれぞれ必要とされる時間が各結束器23又は33のサイクル時間よりも短くな、る場合、所定の時点以降、該当するモジュール20、30には、それ以上更なる銀行券を収容することはできない。
【0040】
代替的に、スタッカ区画21及び22又は31及び32の各々に、固有の結束器(図示せず)が設けられてもよいし、モジュール20、30毎に、1つのスタッカ区画21若しくは22、又は31若しくは32及び1つの結束器のみが設けられてもよい。
【0041】
システムの構成及び/又は用途に応じて、例示的に図示した2つのモジュール20及び30の他に、破線の矢印によって示唆されているように、1つ以上の更なるモジュールが設けられてもよい。
【0042】
ベースモジュール10は、スタック12の個々の銀行券を、設定可能な又は調整可能な処理率R(銀行券/分)でもって処理するように、即ち、特に、個別化し、搬送し、検査し、2つのモジュール20、30の内の1つのモジュール、又はリジェクト区画16に供給するように設計されている。モジュール20、30にそれぞれ供給された銀行券は、それらのモジュール20、30において、結束率B1又はB2(銀行券/分)でもって結束される。時間単位当たりにリジェクト区画16に搬出される銀行券の拒絶率Z(いわゆるリジェクト率)を考慮すると、連続の方程式R=B1+B2+Zが適用される。
【0043】
モジュール20、30において、又は該当する結束器23又は33によって時間単位当たりに結束することができる銀行券の最大数は、技術的に、又は各モジュール20、30及び/又は結束器23又は33の構造による制約を受け、それぞれ、最大結束率B1max又はB2max(銀行券/分)によって特徴付けられている。
【0044】
本開示の特に好適な態様によれば、ベースモジュール10における銀行券の設定される処理率Rは、モジュール20、30の最大結束率B1max及びB2maxよりも大きい。ここではとりわけ、最大結束率B1max、B2maxを考慮して、また少なくとも1つの分類判定基準に基づいた、2つのモジュール20、30への銀行券の予想又は想定される統計的な分配を考慮して、処理率Rが求められる、又は設定される。予想又は想定される統計的な分配は、とりわけ、少なくとも1つの頻度パラメータによって特徴付けられる。
【0045】
オプションとして、ここでは付加的に、想定される統計的な分配の、特に信頼度パラメータ及び/又は信頼区間としての、信頼性についての度合が考慮されてもよい。
【0046】
更に、オプションとして、銀行券を処理する際の連続的な動作を保証するために、目下処理されているバッチの銀行券を分類する際の、モジュール20、30への銀行券の想定される統計的な分配からの偏差に対応することができる措置が講じられてもよい。
【0047】
以下では、前述の態様を、複数の適用例に基づいて詳細に説明する。
【0048】
図2は、有価書類を処理するためのシステムの第1の適用例を示す。システムの構造及び機能に関しては、図1に図示した例と関連させた前述の説明が相応に該当する。
【0049】
この適用例及び以下において説明する適用例では、ベースモジュール10において、2000銀行券/分までの処理率Rでもって銀行券を処理できることを想定する。更には、結束器23、33が、それぞれ、スタックを結束するために6秒のサイクル時間を必要とすることを想定し、このことは、10スタック/分に相当する。つまり、各束において予定されている銀行券の数が例えば100である場合、結束器23、33の最大結束率B1max、B2maxは、10スタック/分×100銀行券/スタック=1000銀行券/分に相当する。
【0050】
この適用例では、銀行券のバッチが適合性(分類判定基準)に関して検査され、相応に分類されて、2つのモジュール20、30に供給されるべきである。この例では、「不適合」と等級分けされた銀行券が第1のモジュール20に供給され、「適合」と等級分けされた銀行券が第2のモジュール30に供給される。過去における適合性に応じた分類の際に銀行券バッチの処理から取得されたデータ及び/又は経験値に基づき、この適用例では、「適合」又は「不適合」と等級付けられた銀行券の統計的な分配は、70%(h1=0.7)又は30%(h2=0.3)であると想定される。
【0051】
最大結束率B1max、B2max及び予想される統計的な分配、又は相応の頻度パラメータh1、h2を考慮して、一方では、処理される銀行券の可能な限り高い総処理枚数が達成され、他方では、最大結束率B1max、B2maxに達しないことによって銀行券を処理する際の連続的な動作が危険に晒されないように、処理率Rを求めることができるか、又は設定することができる。
【0052】
この例では、1200銀行券/分の処理率Rが設定され、この処理率Rに基づいて、予想される統計的な分配を考慮して、第1のモジュール20においては、約360銀行券/分が搬出されて結束されなければならず、また第2のモジュール30においては、約840銀行券/分が搬出されて結束されなければならない。ここでは更に、オプションとして、例えば36銀行券/分の拒絶率Z(処理率Rの3%に相当)を考慮することができるので、第1のモジュール20においては、約349銀行券/分が搬出されて結束されなければならず、また第2のモジュールにおいては、約815銀行券/分が搬出されて結束されなければならない。従って、それぞれ必要とされる結束率は、特に銀行券の70%が搬出される第2のモジュール30についても、1000銀行券/分の最大結束率B1max又はB2maxの十分な安全マージン内にあるので、想定される統計的な分配からのある程度の限界内で偏差が存在する場合であっても、それぞれの最大結束率B1max、B2maxに達することも、それを超過することもない。
【0053】
目下処理されているバッチにおいて、70%から30%までの想定された分配(「適合」から「不適合」)から偏差して、例えば75%から25%までの統計的な分配が生じた場合、(36銀行券/分の拒絶率Zをオプションとして考慮して)、第1のモジュールにおいては300(291)銀行券/分が搬出され、第2のモジュールにおいては900(873)銀行券/分が搬出され、また、1000銀行券/分のレベルにおいてそれぞれの最大結束率B1max又はB2maxよりも依然として小さい相応の結束率でもって結束される。
【0054】
従って、1000銀行券/分の最大結束率B1max、B2maxに関して、設定された1200銀行券/分の処理率Rは20%高い。所与の最大結束率によって処理プロセスが制限されるにもかかわらず、これによって、銀行券の処理において20%高い総処理枚数が達成される。
【0055】
とりわけ、ユーザインタフェース17が設けられており、このユーザインタフェース17によって、操作者は、本来設定されている処理率Rを変更することができ、特に増大又は低減することができる。最も単純な場合には、このために、例えば2つのキー(例えば「スピードアップ」及び「スピードダウン」)を設けることができる。これによって、一方では可能な限り高い総処理枚数を達成するために、他方では銀行券の連続的な処理を維持するために、処理率Rを更に最適化することができる。
【0056】
代替的又は付加的に、制御装置15は、モジュール20、30の内の少なくとも1つのモジュールにおいて、目下必要とされている結束率B1、B2が、それぞれの最大結束率B1max又はB2maxに到達する(即ちその最大結束率に近づく)おそれれがあるか、又は到達するか、又はそれぞれの最大結束率B1max又はB2maxを超過する場合には、ベースモジュール10において処理された銀行券を、モジュール20、30の代わりに、リジェクト区画16又は他のスタッカ区画(図示せず)に供給するように設計されてもよい。
【0057】
しかしながらまた、代替的又は付加的に、処理された銀行券のその種の「迂回」の代わりに、例えば、ベースモジュール10における処理の際に銀行券を搬送する搬送速度を少なくとも一時的に低下させることによって、制御装置15及び/又はユーザインタフェース17を介する相応の入力を用いて、ベースモジュール10における銀行券の処理の速度を低下させることもできる。最も極端な場合には、ベースモジュール10における銀行券の処理を少なくとも一時的に停止させることもできる。
【0058】
図3は、有価書類を処理する際のシステムの第2の適用例を示す。システムの構造及び機能に関しては、図1及び図2に図示した例と関連させた前述の説明が相応に該当する。
【0059】
この適用例では、「適合」とみなされた50ユーロ銀行券のバッチが(即ち、そのバッチには額面金額のみが含まれている)処理される。その種の適用事例は、例えば、キャッシュディスペンサに存在し、且つ少なくとも部分的に銀行券で満たされたカセット(いわゆるATMカセット)が、キャッシュディスペンサから取り出され、セントラルステーション、例えばいわゆるキャッシュセンタに戻される場合に生じることが考えられる。
【0060】
この例では、処理される銀行券の狭義の意味での分類、即ち、例えば適合性又は額面金額のような分類類判定基準に応じた分類は行われないが、その代わりに、処理される銀行券、例えばセンサにより検出された、カウントされた、且つ/又はそれらの通し番号に基づいて識別された銀行券が、一種の「タンデム動作」において利用される2つのモジュール20、30に同じ割合で分配される。即ち、この場合に想定又は設定される、2つのモジュール20、30への銀行券の統計的な分配は、それぞれ50%である(h1=h2=0.5)。
【0061】
前述の第1の適用例と同様に、ここでもまた、最大結束率B1max、B2max、及び想定又は設定された統計的な分配又は相応の頻度パラメータh1、h2を考慮して、処理率Rを求めることができるか、又は一方では、処理される銀行券の可能な限り高い総処理枚数が達成され、他方ではモジュール20、30において最大結束率に達するか又はその最大結束率を超過することによって銀行券を処理する際の連続的な動作が危険に晒されることがないように処理率Rを設定することができる。
【0062】
この例では、1600銀行券/分の処理率Rが設定され、この処理率Rに基づいて、想定又は設定された統計的な分配を考慮して、第1のモジュール20及び第2のモジュール30においては、それぞれ800銀行券/分が搬出されて、結束されなければならない。ここでは更に、オプションとして、例えば48銀行券/分の拒絶率Z(処理率Rの3%に相当)を考慮することができ、これによって、第1のモジュール20及び第2のモジュール30においては、約776銀行券/分が搬出されて結束されなければならない。従って、それぞれ必要とされる結束率は、1000銀行券/分の最大結束率B1max又はB2maxの十分な安全マージン内にある。処理される有価書類の分配が一定に設定されるこの適用例では、それぞれの最大結束率B1max又はB2maxの安全マージンを、処理される有価書類の設定又は想定される分配が経験値、見積り又は以前の評価に基づく適用例よりも相応に小さくすることができる。
【0063】
1000銀行券/分の最大結束率B1max、B2maxに関して、この適用例において設定される1600銀行券/分の所定の処理率Rは、従って60%高い。所与の最大結束率によって処理プロセスが制限されるにもかかわらず、これによって、銀行券の処理において60%高い総処理枚数が達成される。
【0064】
第1の適用例と同様に、この適用例においても、操作者は、本来設定されている処理率Rを、ユーザインタフェース17を介する相応の入力によって変更することができ、特に増大又は低減することができる。最も単純な場合には、このために、例えば2つのキー(例えば「スピードアップ」及び「スピードダウン」)を設けることができる。これによって、一方では可能な限り高い総処理枚数を達成するために、他方では銀行券の連続的な処理を維持するために、処理率Rを更に最適化することができる。また、制御装置15は、予測できない理由から、モジュール20、30の内の少なくとも1つのモジュールにおいて、目下必要とされている結束率B1、B2が、それぞれの最大結束率B1max又はB2maxに到達する(即ちその最大結束率に近づく)おそれがあるか、又は到達するか、又はその最大結束率を超過する場合には、ベースモジュール10において処理された銀行券を、モジュール20、30の代わりに、リジェクト区画16又は他のスタッカ区画(図示せず)に供給するように設計されてもよい。また、処理された銀行券のその種の「迂回」の代わりに、例えば、ベースモジュール10における処理の際に銀行券を搬送する搬送速度を少なくとも一時的に低下させることによって、制御装置15及び/又はユーザインタフェース17を介する相応の入力を用いて、ベースモジュール10における銀行券の処理の速度を低下させることもできる。最も極端な場合には、ベースモジュール10における銀行券の処理を少なくとも一時的に停止させることもできる。
【0065】
図4は、有価書類を処理する際のシステムの第3の適用例を示す。システムの構造及び機能に関しては、図1から図3に図示した例と関連させた前述の説明が相応に該当する。
【0066】
この適用例では、4つの異なる額面金額の銀行券、即ち5ユーロ、10ユーロ、20ユーロ、50ユーロの銀行券のバッチが処理される。システムは、相応に、第1のモジュール20及び第2のモジュール30の他に、第3のモジュール40及び第4のモジュール50を有し、これらのモジュール40、50は、構造及び機能に関して、第1のモジュール20及び第2のモジュール30と同一であるか、又は少なくとも実質的に同一である。
【0067】
経験値に基づいて、且つ/又は額面金額の分類時に、過去において銀行券のバッチを処理する際に取得されたデータに基づいて、この適用例では、処理すべきバッチに含まれる銀行券の統計的な分配が、20%(5ユーロ)、20%(10ユーロ)、30%(20ユーロ)、及び30%(50ユーロ)と想定される。従って、相応の統計的な頻度(頻度パラメータ)は、5ユーロ及び10ユーロの銀行券については、h1=h2=0.2となり、20ユーロ及び50ユーロの銀行券については、h3=h4=0.3となる。
【0068】
この例では、ベースモジュール10の最大限達成可能な処理率に相当する、2000銀行券/分の処理率Rが設定される。
【0069】
予想される統計的な分配を考慮して(また、処理率Rの3%に相当する、例えば60銀行券/分の拒絶率Zをオプションとして考慮して)、以下に示す数の銀行券が毎分、モジュール20、30、40及び50に搬出され、そこにおいて結束される。すなわち、第1のモジュール20及び第2のモジュール30ではそれぞれ400(388)銀行券/分、また第3のモジュール及び第4のモジュール40ではそれぞれ600(582)銀行券/分である。
【0070】
従って、それぞれ必要とされる結束率は、全ての結束器23、33、43及び53に対して、それぞれ1000銀行券/分のそれぞれの最大結束率B1max B2max、B3max又はB4maxを著しく下回っている。これによって、バッチを処理する際に生じた統計的な分配が想定された分配から比較的大きく偏差した場合であっても、それぞれの最大結束率B1max、B2max、B3max又はB4maxには到達しないか、又はそれを超過しないことが保証されている。即ち、モジュール20、30、40、50の各モジュールにおける1000銀行券/分のそれぞれの最大結束率に関して、2000銀行券/分の設定された率Rでもって有価書類を処理することによって、100%の処理枚数向上が達成される。これによって総じて、一方では、処理されたる行券の高い総処理枚数が達成され、他方では、銀行券を処理する際の連続的な動作が確実に保証される。
【0071】
前述した第1の適用例及び/又は第2の適用例と同様に、この適用例においても、操作者が、ユーザインタフェース17を介する相応の入力によって、本来設定されている処理率Rを変更することができる。本来設定されている最大限可能な2000銀行券/分の処理率Rに基づき、この例では、差し当たり処理率Rの低減、例えば1900銀行券/分又は1800銀行券/分への低減のみが考慮される。処理の更なる経過において、相応のユーザ入力によって処理率Rを再びある程度、例えば1950銀行券/分又は2000銀行券/分に増大させることが必要になるか、又は有利となる場合も考えられる。これによって、一方では可能な限り高い総処理枚数を達成するために、他方では銀行券の連続的な処理を維持するために、処理率Rを更に最適化することができる。また、制御装置15は、モジュール20、30、40及び50の内の少なくとも1つのモジュールにおいて、それぞれの目下必要とされている結束率B1からB4が、それぞれの最大結束率B1max、B2max、B3max又はB4maxに到達する(即ちその最大結束率に近づく)おそれがあるか、又は到達するか、又はその最大結束率を超過する場合には、ベースモジュール10において処理された銀行券を、モジュール20、30、40及び50の代わりに、リジェクト区画16又は他のスタッカ区画(図示せず)に供給するように設計されてもよい。また、処理された銀行券のその種の「迂回」の代わりに、例えば、ベースモジュール10における処理の際に銀行券を搬送する搬送速度を少なくとも一時的に低下させることによって、制御装置15及び/又はユーザインタフェース17を介する相応の入力を用いて、ベースモジュール10における銀行券の処理の速度を低下させることもできる。最も極端な場合には、ベースモジュール10における銀行券の処理を少なくとも一時的に停止させることもできる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】