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特表2024-510046複数の種類の核酸サンプルから二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時増幅法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】複数の種類の核酸サンプルから二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時増幅法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240227BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240227BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023574880
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2022051620
(87)【国際公開番号】W WO2022180557
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/152,856
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/496,796
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514005364
【氏名又は名称】エージェンシー・フォー・サイエンス・テクノロジー・アンド・リサーチ
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】コー,リアン チェー ウィンストン
(72)【発明者】
【氏名】ソウ,イーチー
(72)【発明者】
【氏名】ホン,シアン ショーン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QR77
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、複数の種類の核酸サンプルから二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時増幅法に関する。特に、本発明は、従来のDNAライブラリの調製方法と比較して、比較的短いターンアラウンド時間内に、実質的に増幅間及びcDNA調製と増幅との間の精製ステップなしに、サンプル中の非核酸分子と比較して実質的に少量の複数の種類の核酸から二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時増幅法を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非核酸分子と比較して実質的に少量の複数の種類の核酸サンプルからライブラリを調製するための不偏同時増幅方法であって、前記方法は:
一本鎖及び/又は二本鎖のDNA及び/又はRNAを含む複数の種類の核酸のサンプルを、その後の伸長及び増幅のテンプレートとして提供する工程と;
前記サンプルから第1のDNA鎖を調製する工程であって、第1のDNA鎖生成プライマをDNA及び/又はRNAテンプレートの何れかにアニーリングすることと、DNA及び/又はRNAテンプレートの何れか又は両方からの前記第1のDNA鎖のワンポット合成を可能にするDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた第1のDNA鎖生成プライマから伸長することと、を含み、前記第1のDNA鎖生成プライマは:
第1のヌクレオチド配列であって、5’末端に第1のアダプタ配列を含み、その後にポリチミジン配列及び2つのランダムなヌクレオチドが続き、前記ポリチミジン配列は、少なくとも10個のチミジン塩基を含み、その後にランダムなヌクレオチドVが続き、更にランダムなヌクレオチドNが続き、ここで、V及びNは、IUPACヌクレオチドコードによるものである、第1のヌクレオチド配列と、
第2のヌクレオチド配列であって、5’末端に第1のアダプタ配列を含み、その後に6つの反復ランダムヌクレオチドが続き、前記6つの反復ランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードによる、B、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される、第2のヌクレオチド配列と、
を含んでいる工程と、
DNA又はDNAフラグメントの第2の鎖を調製する工程であって、DNA及び/又はRNAテンプレートからの解離及びその変性の後で、第2のDNA鎖生成プライマを前記第1のDNA鎖にアニ―リングすることと、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた前記第2のDNA鎖生成プライマから伸長することと、を含み、前記第2のDNA鎖生成プライマは:
3’末端にランダムな複数のヌクレオチドを含むランダムなヌクレオチド配列と、
前記ランダムなヌクレオチド配列に物理的に連結されたその5’末端における第2のアダプタ配列と、
を含んでおり、
前記複数のランダムなヌクレオチドは、8つの反復ランダムヌクレオチドを含み、前記8つの反復ランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードによる、B、V、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される、工程と;
DNA又はDNAフラグメントの前記第2の鎖をポリメラーゼ連鎖反応を介して増幅する工程であって、増幅プライマの1つの5’末端において前記第1のアダプタ配列を含み、増幅プライマの別の1つの5’末端において前記第2のアダプタ配列を含んでいる、一対の増幅プライマを、DNA又はDNAフラグメントの前記第2の鎖にアニ―リングして、複数のアンプリコンを得ることを含み、それにより、前記アンプリコンの各々は、少なくとも第1及び第2のアダプタ配列を含み、前記第1及び第2のアダプタ配列の各々は、メチル化によって修飾された少なくとも1つのヌクレオチドを有している、工程と;
前記アンプリコンを複数の二本鎖DNAフラグメントに断片化する工程であって、前記第1及び第2のアダプタ配列を欠く二本鎖DNAフラグメントを得るために、前記アンプリコンをメチル化特異的制限酵素と反応させることを含んだ工程と、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記第1のDNA鎖生成プライマのうちの1つは、配列番号1によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のDNA鎖生成プライマのうちの1つは、配列番号2によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のDNA鎖生成プライマのうちの1つは、配列番号3によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアダプタ配列は、配列番号4によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のアダプタ配列は、配列番号5によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
メチル化ヌクレオシド三リン酸が、前記第1及び/又は第2のDNA鎖又はDNAフラグメント調製及び/又は前記ポリメラーゼ連鎖反応における反応混合物に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記メチル化ヌクレオシド三リン酸は、0.01%~25%の濃度のデオキシメチルシチジン三リン酸であり、前記ポリメラーゼ連鎖反応後に前記アンプリコン全体で0.01%~25%のメチル化シトシンを生じさせる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
メチル化されたヌクレオチド塩基を有する複数のアンプリコンを得るために、前記第1のアダプタ配列中の1つのシトシンがメチル化によって修飾されてメチルシトシンになっている、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
メチル化されたヌクレオチド塩基を有する複数のアンプリコンを得るために、前記第2のアダプタ配列中の1つのシトシンがメチル化によって修飾されてメチルシトシンになっている、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のDNA鎖生成プライマは、複数のランダムヌクレオチドを含んだランダムヌクレオチド配列と、その後に2つ以上のランダムヌクレオチドが続くポリチミジン配列とを、それぞれ1:1の比率で含んだ2つの異なるプライマである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一対の二本鎖アダプタを付加する工程を更に含み、その両端に付加された二本鎖アダプタを含むサイズの1000ヌクレオチド未満の二本鎖DNA断片を得るために、その一方の鎖が、前記断片化後の二本鎖DNA断片の両端の4-ヌクレオチドオーバーハングと相補的な4-ランダムヌクレオチドオーバーハングを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
その後のバーコーディングのために、対応する二本鎖アダプタがそれぞれ付加された二本鎖DNA断片の両端に一対のシークエンスアダプタを付加する工程を更に含んでいる、請求項12記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照:
本出願は、2021年2月24日に出願された米国仮出願第63/152,856号、及び、2021年10月8日に出願され後に許可された米国本出願第17/496,796号の優先権を主張し、それらの開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、複数の種類の核酸サンプルから二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時(unbiased and simultaneous)増幅法に関する。特に、本発明は、サンプル中の非核酸分子と比較して実質的に少量の複数の種類の核酸から二本鎖DNAライブラリを調製するための不偏同時増幅法を提供する。
【背景技術】
【0003】
生物学的又は医学的サンプルからのハイスループットシーケンシングのためのライブラリの調製は、核酸の量が通常は著しく少ないため、必ずしも容易ではない。従来の多くの方法では、この制限に対処するために、より複雑な手順を必要とし、より時間とコストがかかるか、特定の種類の核酸サンプルに限定されるか、又は、幾つかの要素を失ったり元のサンプルに属さない要素を追加したりする可能性がある。それは、特に核酸サンプルの量がピコグラムレベル以下しかない場合には、同じ標的に対する異なる種類の核酸間の偏りを回避又は低下させるような核酸サンプルの同時増幅が行われていないことを意味している。
【0004】
Roland社による米国特許第5731171号(Bohlanderら)は、配列非依存性増幅(SIA)、即ち、顕微解剖された染色体材料などから微量のDNAを増幅できるPCRベースの方法を提供した。この方法では、3’末端に4~8個のランダムなヌクレオチドと、5’末端に10~30個の規定された(ランダムではない)配列と、からなる初期プライマを含み、ランダムなヌクレオチドは、G/A/T/Cの何れか(任意の順序)にすることができる。初期プライマの3’末端は、ターゲットDNAセグメント全体のランダムな部位に相補的である必要があるが、規定された配列は、自己相同性を形成せず、同じヌクレオチドが連続せず、過度に豊富なG:C又はA:Tを形成しないPCRプライマを構成する必要がある。
【0005】
Roland社による米国特許第6124120号(Lizardiら)は、一対の二本鎖DNAに相補的な2セットのプライマを使用する非PCRベースの多重鎖置換増幅(MDA)法を提供した。この方法では、介在するプライマの一部がポリメラーゼによる複製中に置換される。この特許の別の実施形態においても、全ゲノムを配列決定するためにランダムなプライマセットが使用される。複製には、高度に処理能力の高いポリメラーゼが使用され、ゲノム全体の重複するコピーを短時間で合成することができる。
【0006】
しかしながら、Borlanderら及びLizardiらの何れも、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はそれらの任意のアナログ(一本鎖若しくは二本鎖、又はその両方)を含む異なる核酸の混合物を含むサンプルを偏りなく同時に増幅するために使用することはできない。
【0007】
Roland社による米国特許第7402386号(Kurnら)は、DNA/RNAポリヌクレオチド標的を全体的に増幅するために、RNA-DNA複合プライマ、並びに、DNA依存性及びRNA依存性DNAポリメラーゼを使用することを開示している。この方法では、その後の増幅の前に、RNA/DNAヘテロ二本鎖からRNA部分を切断する必要がある。
【0008】
Roland社による米国特許第7718403号及び米国特許第8206913号(Kamberovら)は、ライブラリ生成工程とライブラリ増幅工程とを含んだ全ゲノム増幅(WGA)及び前トランスクリプトーム増幅(WTA)の方法を開示している。これには、DNA/RNAテンプレートから最初の鎖を生成するために、ライブラリ生成工程でのランダムプライマ及び特異的DNAポリメラーゼの使用が含まれる。ここで、プライマの可変領域は、プライマが互いにセルフハイブリダイズ又はクロスハイブリダイズしないように、それぞれ2つの非相補的ヌクレオチドで構成される最大3つのランダムなヌクレオチドを含んでいる。少なくとも3つの非相補的ヌクレオチド塩基で構成されるランダムなヌクレオチドではなく、2つの非相補的ヌクレオチド塩基で構成されるランダムなヌクレオチドを選択しても、PCRが短いアンプリコンの生成を促進するため、ランダムプライマのそれぞれに最大3つのランダムヌクレオチドしかない場合、ランダムプライマのプール間のクロスハイブリダイゼーションを効果的に減少させることはできない。非生産的な(unproductive)アンプリコンへのポリメラーゼの隔離を防ぐために、非特異的な(non-specific)アンプリコンを形成する能力を低下させることが重要である。
【0009】
Roland社による米国特許第8741606号(Casbonら)は、配列決定される核酸分子の両端に縮重塩基領域(DBR;degenerate base region)をタグ付けして、2つの異なるDBRにより非対称にタグ付けされた核酸分子を得る方法を開示している。DBRには、その後のPCRのための配列決定プライマ部位が含まれている。’606の特定の実施形態では、DBRは3~10個 のランダムなヌクレオチド長であってもよく、各DBRは異なる塩基組成を有していてもよく、例えば4塩基DBRは以下の組成の何れかを有していてもよい:NNNN;NRSN;SWSW;BDHV(IUPACヌクレオチドコードによる)。’606では、配列決定する核酸分子の両端に2つの異なるDBRを追加し、配列決定用のプライマ部位や固有の多重識別子などの幾つかの機能ドメインを付加するが、一本鎖又は二本鎖の何れかの形でDNA及びRNAの両方を含む異なる核酸の混合物からのライブラリ調製のために主に設計されたものではない。
【0010】
Roland社による米国特許第8728766号(Casbonら)は、最初の標的DNA分子のゲノムサンプルをハイブリダイズさせるために第1のプライマの集団(population)を使用することを含む、ゲノムDNAサンプルを処理する方法を開示している。ここで、第1のプライマは、標的特異的配列の5’側に異なるDBR配列を含み、そして、異なるDBR配列には、IUPACヌクレオチドコードによる、R、Y、S、W、K、M、B、D、H、V、N、又は、それらの修飾バージョンの少なくとも1つが含まれている。特定の例では、RYBがDBR配列として機能し、DHVBが標的特異的配列として機能する。これらの例では、それらのランダムなヌクレオチドからの異なる配列の総数は972(2×2×3×3×3×3×3)になる可能性がある。’766の第1のプライマで使用されたDBR配列には、ランダムなヌクレオチドが未だ3つしかなかった。適切な条件下では、プライマ間のクロスハイブリダイゼーションが依然として発生する可能性がある。
【0011】
Roland社による米国特許第9920355号(Osborneら)は、特定の制限酵素消化を使用してフラグメンテーションを容易にするために、第一鎖、第二鎖生成、及び/又はPCR増幅のためのRT反応ミックスに、異なる濃度のデオキシメチル-シチジン三リン酸を含めることを含むライブラリ調製方法を提供している。
【0012】
したがって、ハイスループットシーケンシングには、実質的に少量の異なる種類の核酸の混合物のサンプルから偏りなくDNAライブラリを調製するワンポット法が必要である。慎重に設計された一組のDNA鎖生成プライマーを使用してヌクレオチド配列のプールを標的とすることにより、どのような形態の核酸サンプルであっても、異なる形態の核酸の混合物のサンプルから同時に偏りのないライブラリ調製、即ち、ワンポット合成を行うことができると共に、核酸サンプルからDNA鎖を生成する際に、セルフプライミングが効率的に回避される。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の第1の態様では、非核酸分子と比較して実質的に少量の複数の種類の核酸サンプルからライブラリを調製するための不偏同時増幅方法が提供され、この本法は、以下の工程を含んでいる。
一本鎖及び/又は二本鎖のDNA及び/又はRNAを含む複数の種類の核酸のサンプルを、その後の伸長及び増幅のテンプレートとして提供する工程;
前記サンプルから第1のDNA鎖を調製する工程であって、第1のDNA鎖生成プライマをDNA及び/又はRNAテンプレートの何れかにアニーリングすることと、DNA及び/又はRNAテンプレートの何れか又は両方からの前記第1のDNA鎖のワンポット合成を可能にするDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた第1のDNA鎖生成プライマから伸長することと、を含み、前記第1のDNA鎖生成プライマは:
第1のヌクレオチド配列であって、5’末端にコンスタントアダプタ配列を含み、その後にポリチミジン配列及び2つのランダムなヌクレオチドが続き、前記ポリチミジン配列は、少なくとも10個のチミジン塩基を含み、その後にランダムなヌクレオチドVが続き、更にランダムなヌクレオチドNが続き、ここで、V及びNは、IUPACヌクレオチドコードによるものである、第1のヌクレオチド配列と、第2のヌクレオチド配列であって、5’末端にコンスタントアダプタ配列を含み、その後に、5つ、6つ、又は7つのランダムヌクレオチド、好ましくは6つの反復ランダムヌクレオチドが続き、前記6つの反復ランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードにに従って、B、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される、第2のヌクレオチド配列と、
を含んでいる工程、
DNA又はDNAフラグメントの第2の鎖を調製する工程であって、DNA及び/又はRNAテンプレートからの解離及びその変性の後で、第2のDNA鎖生成プライマを前記第1のDNA鎖にアニ―リングすることと、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた前記第2のDNA鎖生成プライマから伸長することと、を含み、前記第2のDNA鎖生成プライマは:
3’末端にランダムな複数のヌクレオチドを含むランダムなヌクレオチド配列と、
前記ランダムなヌクレオチド配列に物理的に連結されたその5’末端における第2のアダプタ配列と、
を含んでおり、
前記複数のランダムなヌクレオチドは、少なくとも8つのランダムヌクレオチド、より好ましくは8つの反復ランダムヌクレオチドを含み、前記少なくとも8つのランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードにに従って、B、V、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される、工程;
DNA又はDNAフラグメントの前記第2の鎖をポリメラーゼ連鎖反応を介して増幅する工程であって、増幅プライマの1つの5’末端において前記第1のアダプタ配列を含み、増幅プライマの別の1つの5’末端において前記第2のアダプタ配列を含んでいる、一対の増幅プライマを、DNA又はDNAフラグメントの前記第2の鎖にアニ―リングして、複数のアンプリコンを得ることを含み、それにより、前記アンプリコンの各々は、少なくとも第1及び第2のアダプタ配列を含み、前記第1及び第2のアダプタ配列の各々は、メチル化によって修飾された少なくとも1つのヌクレオチドを有している、工程;及び、
前記アンプリコンを複数の二本鎖DNAフラグメントに断片化する工程であって、前記第1及び第2のアダプタ配列を欠く二本鎖DNAフラグメントを得るために、前記アンプリコンをメチル化特異的制限酵素と反応させることを含んだ工程。
【0014】
一実施形態では、第2の鎖生成プライマ中のランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードに従って、B、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される。
【0015】
より具体的な実施形態では、第1の鎖生成プライマ及び/又は第2の鎖生成プライマのランダムヌクレオチド配列は、IUPACヌクレオチドコードに従って、最後のランダムヌクレオチドがランダムヌクレオチド配列の残りのランダムヌクレオチドと異っていてもよい6~8個のランダムヌクレオチドを含んでいる。
【0016】
別のより具体的な実施形態では、第1の鎖生成プライマ及び/又は第2の鎖生成プライマのランダムヌクレオチド配列は、最後のランダムヌクレオチドを除いて、ランダムヌクレオチド配列の残りのランダムヌクレオチドが、IUPACヌクレオチドコードに従って、4つのヌクレオチド塩基のうち3つがランダムに選択されるランダムヌクレオチドの1つから共同で選択される、6~8個のランダムヌクレオチドを含んでいる。
【0017】
別の実施形態では、メチル化ヌクレオシド三リン酸が、第1及び/又は第2のDNA鎖又はDNAフラグメント調製及び/又は前記ポリメラーゼ連鎖反応における反応混合物に添加される。
【0018】
好ましい実施形態では、上記メチル化ヌクレオシド三リン酸は、0.01%~25%の濃度のデオキシメチルシチジン三リン酸であり、ポリメラーゼ連鎖反応後に、メチル化される生成物中の0.01~25%のシトシンを生じさせる。
【0019】
他の実施形態では、メチル化されたヌクレオチド塩基を有する複数のアンプリコンを得るために、第1及び第2のアダプタ配列中の1つのシトシンが、増幅プライマにおいてメチル化によって修飾されてメチルシトシンになっている。
【0020】
更に別の実施形態では、本方法は、少なくとも一対の二本鎖アダプタを付加する(appending)工程を更に含み、その両端に付加された二本鎖アダプタを含むサイズの1000ヌクレオチド未満の二本鎖DNA断片を得るために、その一方の鎖が、前記断片化後の二本鎖DNA断片の両端の4-ヌクレオチドオーバーハングと相補的な4-ランダムヌクレオチドオーバーハングを含んでいる。
【0021】
更なる実施形態では、対応する二本鎖アダプタが付加された二本鎖DNAフラグメントには、任意の後続のバーコーディングのために、その両端に一対のシーケンシングアダプタが更に付加されていてもよい。
【0022】
別の実施形態では、対応する二本鎖アダプタが付加された二本鎖DNA断片は、その後のバーコーディングが意図されている場合、一対のシーケンシングアダプタを付加する前に、一対のプライマをアニーリングして増幅し、そのアンプリコンを更に生成する。
【0023】
本発明の第2の態様は、本明細書に記載の方法に従ってライブラリを生成するためのキットに関する。このキットは、一本鎖RNAテンプレート及び一本鎖mRNAを含むRNAテンプレートをアニーリングするための2つの第1の鎖生成プライマと結合した(conjugated)基質を含んでいる。このキットは、逆転写酵素、RNAse、及び、アニーリングされた第1の鎖生成プライマからの第1のDNA鎖の逆転写を開始するための反応混合物も含んでいる。このキットは、第2の鎖生成プライマ、鎖置換活性を有するポリメラーゼ、及び、逆転写後に液体から基質を分離した後、第1のDNA鎖から第2のDNA鎖を重合させるための反応混合物を更に含んでいる。加えて、このキットは、第2のDNA鎖を増幅するための、増幅プライマ、酵素、及び反応混合物を含んでおり、増幅プライマは、それぞれ、第1の鎖生成プライマ及び第2の鎖生成プライマのアダプタ配列に対応している。第2のDNA鎖のPCR増幅後の増幅物は、反応物の液相から回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態は、以下により、図面を参照して詳細に説明される。
【0025】
図1は、本発明の第1の鎖生成プライマ、第2の鎖生成プライマ、及び対応する増幅プライマを使用して、異なる核酸から二本鎖DNA分子を生成する本方法の実施形態を概略的に示している。
【0026】
図2は、図1に示すように、第2のDNA鎖の増幅から得られた二本鎖DNA分子を修飾して断片化し、1000ヌクレオチドより短い直線長の二本鎖DNA分子を生成する、本方法の一実施形態を概略的に示している。
【0027】
図3は、バーコーディングのために、図2に示されている断片化された二本鎖DNA分子に対応するアダプタ配列を付加する本方法の一実施形態を概略的に示している。
【0028】
図4は、本明細書に記載された本方法及び成分に従ってRNAテンプレートを用いてサンプルからライブラリを調製する本発明の一実施形態を概略的に示している。
【0029】
図5A~5Dは、実施例1に従って、5ng/500pgのHEK293細胞RNA(dT5ng/500pg)から、ヒト18S(図5A)、U2AF1(図5B)、GAPDHコード領域(図5C)、及びGAPDH3’UTR(図5D)に対するプライマを使用したqPCRによる入力RNAの正規化の結果と、5ng/500pgのdT-アダプターB6配列(dT:B65g/500pg)を使用して作成されたクリーニングされた(cleaned)ライブラリ製剤を示している。
【0030】
図6は、5ngのdTアダプタB6配列(dT:B65ng)及び5ngのdTを使用したサンプルの間、並びに、dT:B65ngとdT:B6500pgとの間の、転写リード(transcript reads)の2つのプロットを示している。
定義
【0031】
本明細書に記載される「ワンポット」とは、DNA及びRNAの両方の鋳型からcDNA鎖を生成できるように、適切な逆転写条件下でDNA伸長能力とRNA転写能力との両方を持つポリメラーゼを使用して、DNAをプライミングし、同時にmRNAなどのRNAをプライミングする(例えば、2つのランダムヌクレオチドの5’末端にオリゴdT配列を持つプライマによって)一連のプライマを使用する単一のステップを指していてもよく、通常の技術によって提供されるオリゴヌクレオチド合成スキームの制限のために、追加の精製及び/又は他の方法を使用せずに1つのタイプの核酸を他の核酸から分離する任意の他のオリゴヌクレオチド合成を指していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、異なる核酸の混合物から偏りなくライブラリを生成するための同時増幅法を、好ましい例として説明する。追加及び/又は置換を含む修正が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。特定の詳細は、本発明を不明瞭にしないために省略される場合がある。しかしながら、本開示は、当業者が過度の実験なしに本明細書の教示を実施できるように記載されている。
【0033】
本発明は、非核酸分子と比較して実質的に少量の複数の種類の核酸サンプルからライブラリを調製するための不偏同時増幅法を提供する。一本鎖及び/又は二本鎖のDNA及び/又はRNAを含む複数の種類の核酸のサンプルが、その後の伸長及び増幅のテンプレートとして提供される。第1のDNA鎖がサンプルから調製される。これには、第1のDNA鎖生成プライマをDNA及び/又はRNAテンプレートの何れかにアニーリングすることと、DNA及び/又はRNAテンプレートの何れか又は両方からの第1のDNA鎖のワンポット合成を可能にするDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた第1のDNA鎖生成プライマから伸長することと、が含まれる。
【0034】
第1のDNA鎖生成プライマは、5’末端にコンスタントアダプタ配列を有し、その後にポリチミジン配列及び2つのランダムなヌクレオチドが続く、第1のヌクレオチド配列を含んでいる。ポリチミジン配列は、少なくとも10個のチミジン塩基を含み、その後にランダムヌクレオチドVが続き、更にその後にランダムヌクレオチドNが続く。V及びNは、IUPACヌクレオチドコードに従ったものである。第2のヌクレオチド配列は、5’末端にコンスタントアダプタ配列と、それに続く5、6又は7個のランダムヌクレオチド、より好ましくは6個の反復ランダムヌクレオチドと、を含んでいる。6個の反復ランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードに従って、B、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される。
【0035】
DNA又はDNAフラグメントの第2の鎖が調製される。この調製には、DNA及び/又はRNAテンプレートからの解離及びその変性の後で、第2のDNA鎖生成プライマを前記第1のDNA鎖にアニ―リングすることと、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを使用して、アニールされた前記第2のDNA鎖生成プライマから伸長することと、を含んでいる。第2のDNA鎖生成プライマは、3’末端に複数のランダムなヌクレオチドを含むランダムヌクレオチド配列と、5’末端にこのランダム塩基配列に物理的に連結された第2のアダプタ配列と、を含んでいる。
【0036】
複数のランダムヌクレオチドは、少なくとも8つのランダムヌクレオチド、より好ましくは8つの反復ランダムヌクレオチドを含んでいる。8つのランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードに従って、B、V、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される。DNA又はDNAフラグメントの第2の鎖は、増幅プライマの1つの5’末端にある第1のアダプタ配列と、増幅プライマのもう1つの5’末端にある第2のアダプタ配列とを含んだ一対の増幅プライマを、DNA又はDNAフラグメントの第2の鎖にアニーリングすることを含む、ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される。各アンプリコンが少なくとも第1及び第2のアダプタ配列を含むように複数のアンプリコンが得られる;第1及び第2のアダプタ配列の各々は、メチル化によって修飾された少なくとも1つのヌクレオチドを有している。
【0037】
これらのアンプリコンは、複数の二本鎖DNAフラグメントに断片化され、この工程は、第1及び第2のアダプタ配列を欠く二本鎖DNAフラグメントを得るために、アンプリコンをメチル化特異的制限酵素と反応させることを含んでいる。
【0038】
一実施形態では、第2の鎖生成プライマ中のランダムヌクレオチドの各々は、IUPACヌクレオチドコードに従って、B、D、H、又はVから共同して又は独立して選択される。
【0039】
より具体的な実施形態では、第1の鎖生成プライマ及び/又は第2の鎖生成プライマのランダムヌクレオチド配列は、IUPACヌクレオチドコードに従って、最後のランダムヌクレオチドがランダムヌクレオチド配列の残りのランダムヌクレオチドと異っていてもよい6~8個のランダムヌクレオチドを含んでいる。
【0040】
別のより具体的な実施形態では、第1の鎖生成プライマ及び/又は第2の鎖生成プライマのランダムヌクレオチド配列は、最後のランダムヌクレオチドを除いて、ランダムヌクレオチド配列の残りのランダムヌクレオチドが、IUPACヌクレオチドコードに従って、4つのヌクレオチド塩基のうち3つがランダムに選択されるランダムヌクレオチドの1つから共同で選択される、6~8個のランダムヌクレオチドを含んでいる。
【0041】
別の実施形態では、メチル化ヌクレオシド三リン酸が、第1及び/又は第2のDNA鎖又はDNAフラグメント調製及び/又は前記ポリメラーゼ連鎖反応における反応混合物に添加される。
【0042】
好ましい実施形態では、上記メチル化ヌクレオシド三リン酸は、0.01%~25%の濃度のデオキシメチルシチジン三リン酸であり、ポリメラーゼ連鎖反応後に、メチル化される生成物中の0.01~25%のシトシンを生じさせる。
【0043】
他の実施形態では、メチル化されたヌクレオチド塩基を有する複数のアンプリコンを得るために、第1及び第2のアダプタ配列中の1つのシトシンが、増幅プライマにおいてメチル化によって修飾されてメチルシトシンになっている。
【0044】
更に別の実施形態では、本方法は、少なくとも一対の二本鎖アダプタを付加する工程を更に含み、その両端に付加された二本鎖アダプタを含むサイズの1000ヌクレオチド未満の二本鎖DNA断片を得るために、その一方の鎖が、前記断片化後の二本鎖DNA断片の両端の4-ヌクレオチドオーバーハングと相補的な4-ランダムヌクレオチドオーバーハングを含んでいる。
【0045】
更なる実施形態では、対応する二本鎖アダプタが付加された二本鎖DNAフラグメントには、任意の後続のバーコーディングのために、その両端に一対のシーケンシングアダプタが更に付加されてもよい。
【0046】
別の実施形態では、対応する二本鎖アダプタが付加された二本鎖DNA断片は、その後のバーコーディングが意図されている場合、一対のシーケンシングアダプタを付加する前に、一対のプライマをアニーリングして増幅し、そのアンプリコンを更に生成する。
【0047】
本発明の第2の態様は、本明細書に記載の方法に従ってライブラリを生成するためのキットに関する。このキットは、一本鎖RNAテンプレート及び一本鎖mRNAを含むRNAテンプレートをアニーリングするための2つの第1の鎖生成プライマと結合した基質を含んでいる。このキットは、逆転写酵素、RNAse、及び、アニーリングされた第1の鎖生成プライマからの第1のDNA鎖の逆転写を開始するための反応混合物も含んでいる。このキットは、第2の鎖生成プライマ、鎖置換活性を有するポリメラーゼ、及び、逆転写後に液体から基質を分離した後、第1のDNA鎖から第2のDNA鎖を重合させるための反応混合物を更に含んでいる。加えて、このキットは、第2のDNA鎖を増幅するための、増幅プライマ、酵素、及び反応混合物を含んでおり、増幅プライマは、それぞれ、第1の鎖生成プライマ及び第2の鎖生成プライマのアダプタ配列に対応している。第2のDNA鎖のPCR増幅後の増幅物は、反応物の液相から回収することができる。
【0048】
以下は、シーケンス用のライブラリ調製物(library preparation)を生成するために本方法を使用する利点の一部である。
(1)第1の鎖の生成では、DNA分子及びRNA分子の両方へのランダム配列の結合を可能にするメルトプロトコルを使用して、第1の鎖が全核酸から生成される。第1の鎖生成プライマにおいて特定の逆転写酵素及びアダプタ配列を使用して第1のDNA鎖を生成することにより、異なる核酸の混合物から第1の鎖DNAテンプレートをワンポットで合成できるため、バイアスを回避することができる。
(2)第2の鎖の生成では、第2の鎖生成プライマは、第1のDNA鎖から第2の鎖を生成する間のコンカテマー形成を避けるためのランダム配列を含有している。第1のDNA鎖はアダプタ配列を含有しているため、第2の鎖生成プライマの相補的アダプタ配列により、第2のDNA鎖の両端に固有の識別子を有する生成物がもたらされる。
(3)第1及び第2の鎖生成プライマのアダプタ配列の両方を含む増幅プライマにメチル化dCTを組み込み、デオキシメチル化シトシン三リン酸をPCR反応混合物に加えることにより、1000ヌクレオチド以下の断片のサイズを小さくするために、メチル化された塩基において、それらのアンプリコンに特異的なその後の制限酵素消化が可能になる。
(4)4nt5’オーバーハングを有するアダプタ配列を付加すると、後続のシーケンシングPCR及びバーコーディングのために、DNA断片の両端にアダプタを後から連結(later ligation)することが可能となる。
【0049】
実施例
【0050】
例1:HEK293細胞からのライブラリ調製
【0051】
HEK293細胞から採取した10ng又は1ngのDNAseI処理RNAを、500nMのアダプタA-B6(5’-CAGACTACCATGACCTGAGTCBBBBBB-3’)(配列番号1)及びアダプタA-オリゴdT(5’-CAGACTACCATGACCTGAGTCTTTTTTTTTTTTTVN-3’)(配列番号2)を1:1の比率で、又はアダプタA-オリゴdTを単独で、メーカーの指示に従ってPROMEGAMMLV逆転写酵素を使用して、10μlの逆転写反応混合物に溶解させ、40℃で15分間反応させた後、70℃で5分間変性させた。5μlをqPCR用に保存した。1μlの10μMアダプタB-B8(5’-GTCAGAGTCGAATGCGTACTGBBBBBBB-3’)(配列番号3)を残りの5μlのRT反応混合物に添加し、70℃まで2分間加熱し、その後サーモサイクラで4℃に冷却した。次に、1.5μlの等温緩衝液、1.0μlの25mM MgSO、2.0μlの2mM dNTP、3.5μlの水、及び1μlのBst3.0を加え、サーモサイクラ内で45℃で20秒間インキュベートし、20秒ごとに1℃ずつ60℃まで上昇させ、60℃で12分間保持した。2.25μlの10μMメチル化アダプタAプライマ(5’-CAGACTACmCATGACCTGAGTC-3’)(配列番号4)及びメチル化アダプタBプライマ(5’GTCAGAGTmCGAATGCGTACTG-3’)(配列番号5)、4.5μlの2mM dNTP、0.9μlの1μM dmCTP、3.6μlのKOD緩衝液、2.25μlの25mM MgSO、0.45μlのKODを加え、水を満たして45μlにした。次に、テンプレートを95℃で2分間加熱し、95℃で10秒間、58℃で10秒間、70℃で2分間を10サイクル繰り返した。次いで、得られた50μlの反応混合物を、製造業者の指示に従って、1.0xAmpureXPビーズで洗浄し、10μlで溶出した(図4)。
【0052】
例2-入力RNAの正規化のためのqPCR
【0053】
5μlのRTは5ng/500pgのHEK293RNAインプットに相当し、10μlのAmpureXP洗浄ライブラリ調製物は同じインプットに相当する。例1から保存したRT反応混合物を1:20に希釈し、ライブラリ調製物を1:10に希釈し、qPCRごとに1μlを使用して、ヒト18S(図5A)、U2AF1(図5B)、GAPDHコード領域(図5C)及びGAPDH3’UTR(図5D)に対するプライマを使用してqPCRを行った。本明細書に記載の方法による増幅後、全てのアンプリコンは、本明細書に記載の不偏増幅法を用いて増幅されることが実証された。
【0054】
例3-DNA断片化及びライブラリ調製
【0055】
次いで、例1からのAmpureXP精製ライブラリ3μlを、製造業者の指示に従って、5μlの反応物中で37℃で15分間、MspJIによって消化して、ライブラリを断片化した。1.5μlの二本鎖アダプタであって、そのうちの1つは(5’-AGATGTGTATAAGAGACAG-3’)(配列番号6)によって表され、4ntの5’オーバーハングを有するもう1つは(5’-NNNCTGTCTCTTATACACATCT-3’)(配列番号7)によって表される、二本鎖アダプタと、7μlの2xQuickリガーゼバッファ(NEB)と、0.5μlの2mM dNTPと、0.3μlの組換えTaqと、0.7μlのQuickリガーゼと、を添加して、アダプタを末端にライゲートした。次いで、これを、2つのプライマ(5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号8)及び5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG-3’(配列番号9))を用いて、アニーリング温度60℃、伸長40秒、10サイクルのKOD反応において増幅した。次に、ILLUMINAバーコーディングプライマを使用して、反応をバーコード化し、製造業者のプロトコルに従って、iSeq100上でシークエンスした。
【0056】
表1及び表2の試薬からライブラリを生成するために使用するサーモサイクラの設定及び条件(表3~10)を提供する例を以下に示す。
1)3μl以下のサンプル核酸を、配列番号1~2で表される1μlのプライマ、ヌクレオチドと水との反応混合物に加え、更に必要に応じて、ヌクレアーゼを含まない水(nuclease-free water)で4μlまで満たす。以下の設定でサーモサイクラに入れる(表1)。
【表1】
2)1μlの逆転写酵素(NEB製)を加え、以下の設定でサーモサイクラに入れる(表2)。
【表2】
3)配列番号3で表されるプライマー4μlと、等温緩衝液、オリゴヌクレオチド、及び水を含む反応混合物、並びに氷上で鎖置換活性を有するポリメラーゼ1μlを加えて合計10μlとし、次の設定でサーモサイクラに入れる(表3)。
【表3】
4)KODキットの試薬15μlと、配列番号4及び5で表される一対の増幅プライマ(各増幅プライマーの5’末端から9番目のシトシンがメチル化されている)を加え、以下の設定でサーモサイクラに入れる(表4)。
【表4】
5)室温に戻したAmpureXP(希釈)ビーズ25μlを加え、ピペットで少なくとも10回上下に混合し、サンプルをビーズと共に室温で少なくとも3分間インキュベートする。
6)磁気ラックを使用してビーズを引き出す。ラックの上に少なくとも2分間放置する。
7)上清を除去し、新しく調製した80%エタノール100μlにビーズを再懸濁する。ビーズを引き出すために磁気ラック上に20秒間放置する。この手順をもう一度繰り返す。
8)上清を除去し、ビーズを室温で5分間乾燥させた後、8μlのヌクレアーゼを含まない水によく再懸濁する。磁気ラックに置く前に、室温で1分間インキュベートする。
9)溶出液を慎重に除去し、新しいチューブに移す。
10)溶出液4μlを採取し、MspJIキットの試薬1μlを新しいチューブに加え、以下の設定のサーモサイクラに入れる(表5)。
【表5】
11)それぞれが配列番号6及び7で表されるプライマを有するQuickリガーゼ及びTaqキットからの試薬10μlをサンプルに加えて合計15μlとし、次の設定でサーモサイクラに入れる(表6)。
【表6】
12)それぞれが配列番号8及び9で表されるプライマを有するKODキットからの試薬25μlをサンプルに加えて合計40μlとし、次の設定でサーモサイクラに入れる(表7)。
【表7】
13)ステップ12からのサンプル5μlを採取し、各バーコーディングプライマ0.8μlとステップ12と同じKODキットからの試薬13.4μlを加えて合計20μlにし、以下の設定でサーモサイクラに入れる(表8)。
【表8】
14)室温に戻したAmpureXP(希釈)ビーズ20μlを加え、ピペットで少なくとも10回上下に混合し、サンプルをビーズと共に室温で少なくとも3分間インキュベートする。
15)磁気ラックを使用してビーズを引き出す。ラックの上に少なくとも2分間放置する。
16)上清を除去し、新しく調製した80%エタノール100μlにビーズを再懸濁する。ビーズを引き出すために磁気ラック上に20秒間放置する。この手順をもう一度繰り返す。
17)上清を除去し、ビーズを室温で5分間乾燥させた後、8μlのヌクレアーゼを含まない水によく再懸濁する。磁気ラックに置く前に、室温で1分間インキュベートする。
18)溶出液を慎重に除去し、新しいチューブに移す。
19)ライブラリはシーケンス処理の準備ができている。
注意:サイクル数を示す列のボックスが空白の場合は、1サイクルを表す可能性がある。
【0057】
図6及び表9に示すような配列決定の結果は、本方法によって調製されたライブラリが、読み取り深度が60000~90000の間のHEK細胞に発現する9000以上の遺伝子を検出できることを示唆している。
【0058】
【表9】
【0059】
更に、dT_5ngサンプル及びdT_B6_5ngサンプルの読み取り分布は、7SK、mt-RNR1、及びmt-RNR2などのpolyAテールのない転写産物を除いて、非常によく似ている。これらの結果は、この方法が偏りのない(unbiased)代表的なライブラリを生成することを示唆している。
【0060】
例4-バックグラウンド増幅に関するN、B、D、H及びNTCの比較
【0061】
潜在的なバックグラウンド増幅を特定するために、N6(CAGACTACCATGACCTGAGTCNNNNNN)(配列番号10)、B6(CAGACTACCATGACCTGAGTCBBBBBB)(配列番号1)、D6(CAGACTACCATGACCTGAGTCDDDDDD)(配列番号11)、又はH6(CAGACTACCATGACCTGAGTCHHHHHH)(配列番号:12)を、0.2μlの25mM dNTP、1.0μlの5xPROMEGAMMLV逆転写酵素バッファ、及び3.1μlの水と混合し、70℃まで30秒間加熱し、4℃に冷却した。次に、0.5μlのPROMEGAMMLV逆転写酵素を添加し、反応物を40℃で15分間、続いて70℃で5分間インキュベートした。
【0062】
1.5μlのNEB等温緩衝液、0.75μlの25mM MgSO、1.5μlの2mM dNTP、0.5μlのBst3.0、4.8μlの水、及び1.0μlのN8(GTCAGAGTCGAATGCGTACTGNNNNNNNN)(配列番号13)、B8(GTCAGAGTCGAATGCGTACTGBBBBBBB)(配列番号3)、D8(GTCAGAGTCGAATGCGTACTGDDDDDDDD)(配列番号14)、又はH6(GTCAGAGTCGAATGCGTACTGHHHHHHHH)(配列番号15)を、上記のようにそれぞれのサンプル管に加えた。
【0063】
サンプルを45℃で20秒間インキュベートし、サンプルが60℃に達するまで20秒ごとに1℃ずつ上昇させた。サンプルを更に60℃で10分間インキュベートした。
【0064】
得られたサンプルを1/100に希釈し、メーカーの指示に従ってSolisBiodyneのFIREPOLSyBrGreenqPCRマスターミックスと、以下のプライマ(GTCAGAGTCGAATGCGTACTG)(配列番号17)及び(CAGACTACCATGACCTGAGTC)(配列番号18)とを、以下のプロトコルで繰り返した:95℃15秒、60℃15秒、72℃40秒を、50サイクル。
【0065】
得られたqPCRCt(表10)は、ランダムな六量体及び八量体の異なるセットを使用した「空の」反応のバックグラウンドレベルを明らかにする。Nの場合の低いCtは、バックグラウンド信号がB、D、又はHのベースセットよりも著しく高いことを示している。
【0066】
したがって、第1及び第2のDNA鎖生成プライマのアダプタ配列の3’末端におけるB、D、又はHのランダムな六量体又は八量体の繰り返しは、鎖生成プライマの同じ領域の繰り返しNに対して、非特異的プライミングの機会が減少する。
【0067】
【表10】
【0068】
例5
【0069】
以下の例は、本発明の他の実施形態に従ってDNAライブラリがどのように調製されるかを示す。
1.9.5μlの100μMB5Y1(配列番号で表される)と、0.5μlのdT(配列番号2で表される)とを、190μlの水と混合させて、1.5μMのB5Y1:dTを作製する;
2.オリゴヌクレオチド製造業者から供給されるままの100μMB7Y1(配列番号3)を使用する;
3.3μlの100μMmCF(5’末端から9番目のヌクレオチドのシトシンがメチル化されている;配列番号4で表される)と、3μlの100μMmCR(5’末端から9番目のヌクレオチドのシトシンがメチル化されている;配列番号5で表される)と、1μlの10mMdmCTP(NEB)と、23μlの水と、を混合する;
4.3μlの100μMアダプタF(配列番号6で表される)と、3μlの100μMアダプタR(配列番号7で表される)と、3μlの1M塩化ナトリウムと、3μlの10xTE緩衝液と、18μlの水と、を混合する。95℃まで加熱し、毎秒0.25℃の速度で4℃まで冷却し、10μmのアダプタ混合物を作製する;
5.15μlの100μM i5F(配列番号8で表される)と、15μlの100μMi7R(配列番号9で表される)とを混合して、50μM i5i7アンプを作製する。
15μlチューブは、別のボックスでバーコーディングの準備ができている異なったプライマを使用して調製される。
【0070】
例6-DNAライブラリ調製の機能的品質管理(QC):
【0071】
3μl中5ngのHEK293をAmpREキットで処理し、ゲル又はTapeStationで実行する。200~500ntのスミアが見られるべきである。
【0072】
本発明の上述の説明は、例示及び説明の目的で提供されたものである。網羅的であること、又は、開示された正確な形態に本発明を限定することは意図されていない。当業者には、多くの修正及び変形が明らかであろう。
【0073】
実施形態は、本発明の原理及びその実際の応用を最もよく説明するために選択及び説明され、それにより、当業者は、様々な実施形態及び考えられる特定の用途に適した様々な修正で本発明を理解できるようになる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によって定義されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【国際調査報告】