(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】ベニテングタケからムシモールを抽出するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 36/07 20060101AFI20240227BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240227BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240227BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240227BHJP
A61K 31/42 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61K36/07
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/06
A61K9/12
A61P25/22
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/20
A61P21/02
A61P25/18
A61P43/00 111
A23L33/10
A61K31/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579641
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 CA2022050378
(87)【国際公開番号】W WO2022187974
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523348760
【氏名又は名称】サイクト ウェルネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タンコウニー,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
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(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、テングタケ属(Amanita)キノコからのムシモール抽出の方法、より詳細には、ムシモール含有量を増大させ且つイボテン酸含有量を減少させる、且つヒトの健康のための調製物に有用な液体及び粉末抽出物を提供するプロセスを含めた、蒸留、還流、及び加圧によるものを含む、ベニテングタケ(Amanita muscaria)からの向上されたムシモール抽出プロセスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ抽出物のイボテン酸含有量を低下させる方法であって:
a.熱の存在下でベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコバイオマスの水抽出を実施して、抽出物を生成することと;
b.前記抽出物のpHを約2.0~約4.0に低下させることと;
c.前記抽出物を濃縮することと;
を含み、前記キノコ抽出物のイボテン酸含有量を減少させ、且つ前記抽出物のムシモール含有量を増大させる方法。
【請求項2】
前記ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコバイオマスが、前記水抽出の前に粉砕して粉末にされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キノコバイオマスが、前記粉砕及び水抽出の前に、約1%~約10%、約2%~7%、約4%~7%、又は約2%、3%、又は4%の含水率まで乾燥される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水抽出が、約0.5時間~3時間にわたって、65℃~120℃、70℃~100℃、又は75℃~95℃に加熱された水中で実施される(ここでは、各範囲は端点値を含む)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水温が、約1時間又は少なくとも1時間、約75℃又は約95℃に維持される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水抽出物が、加圧力の非存在又は存在下で濾過される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記pHが、約2.0、約2.5、又は約3.0に低下される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記濃縮ステップが、好ましくは遮光条件下での、蒸留、還流、加圧調理、又はそのあらゆる組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記蒸留が、約200°F~350°F(約93℃~約177℃)の温度での約15psi~約25psi(約1.0~約1.7バール)の圧力での減圧蒸留を含む(ここでは、各範囲は端点値を含む)、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸留が、約0.5時間~4時間、又は約1時間、2時間、3時間、若しくは4時間、進行する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物を得る方法であって:
a.ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコと加熱した水との混合物にフィルターを通して圧力をかけて、濾液を生じることと;
b.前記濾液を濃縮することと;
c.前記濾液のpHを約2.5~3.5に低下させ、それによって、前記抽出物中のムシモールを増大させ、且つ前記抽出物中のイボテン酸を減少させることと
を含む方法。
【請求項12】
前記低下ステップ後に、前記抽出物を、乾燥するまで加熱することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記乾燥させた抽出物を粉砕することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物を得る方法であって:
a.ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコを粉砕して粉末を形成することと;
b.水に入れた前記粉末を加熱することによって水抽出を実施して、前記抽出物を生成することと;
c.酸を添加することによってpHを低下させることと;
d.前記抽出物を濃縮することと;
e.前記抽出物を収集すること
とを含む(ここでは、前記酸性化及び濃縮ステップは、抽出物のイボテン酸含有量を低下させ、且つムシモール含有量を増大させる)方法。
【請求項15】
前記ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物が、スチゾロビニン酸を含まず、且つ最大で0.09ppmのカドミウム、0.03ppmのヒ素、0.09ppmの鉛、及び0.02ppmの水銀を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物が、18mg/g未満のムシモール、600μg/g未満のムシモール、及び20μg/g未満のイボテン酸を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物が、USP 561における制限値未満の各農薬を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物が、経口、舌下、頬側、粘膜、注射による、鼻腔内、吸入、又は局所投与に適している、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
溶液、懸濁液、チンキ、飲料濃縮物、飲料、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、ソフトジェル、経皮適用のためのクリーム、軟膏、ジェル、フォーム、又は液体として調製される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前述の方法のいずれかによって得られる、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項21】
ムシモールとイボテン酸を、少なくとも約20:1~約150:1の比率で含む、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項22】
ムシモールとイボテン酸を、少なくとも100:1の比率で含む、請求項21に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項23】
少なくとも15000μg/gのムシモールを含む、請求項21又は22のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項24】
少なくとも1.5%の強度を有するムシモールを含む、請求項21又は22のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項25】
250μg/g未満のイボテン酸を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項26】
0.025%未満の強度を有するイボテン酸を含む、請求項21又は22のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項27】
液体留出物として得られる、請求項21~26のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項28】
粉砕された粉末として得られる、請求項21~26のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項29】
少なくとも90%のムシモール純度を有する、請求項21~28のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項30】
スチゾロビニン酸を含まず、且つ最大でそれぞれ0.09ppm、0.03ppm、0.09ppm、及び0.02ppmの、カドミウム、ヒ素、鉛、及び水銀の成分を含む、請求項20~29のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項31】
18mg/g未満のムシモール、600μg/g未満のムシモール、及び20μg/g未満のイボテン酸を含む、請求項20~29のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項32】
USP 561における制限値未満の各農薬を含む、請求項20~31のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項33】
90%以上のムシモール純度に規格化される、請求項20~31のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項34】
約0.5%~約5.0%のムシモール強度に規格化される、請求項20~31のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項35】
経口、舌下、頬側、粘膜、注射による、鼻腔内、吸入、又は局所投与に適した、請求項20~34のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【請求項36】
溶液、懸濁液、チンキ、飲料濃縮物、飲料、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、ソフトジェル、経皮適用のためのクリーム、軟膏、ジェル、フォーム、又は液体中の、請求項20~35のいずれか一項に記載のベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、本出願の譲受人に譲渡され、及び本明細書に完全に説明されるかのようにあらゆる目的のために参照によって組み込まれる、2021年3月12日に米国特許商標庁(U.S.Patent and Trademark Office)に出願され米国特許出願第63/160,721号に指定された、「PROCESSES FOR EXTRACTING MUSCIMOL FROM AMANITA MUSCARIA」という題名の米国仮特許出願に対する、PCT第8条(1)及びPCT規則4.10の下での優先権を主張する。
【0002】
技術分野
テングタケ属(Amanita)キノコからのムシモール抽出、より詳細には、ヒトの健康のための調製物に有用な液体及び粉末抽出物をもたらす、蒸留、還流、及び加圧によるものを含む、ベニテングタケ(Amanita muscaria)からの向上されたムシモール抽出プロセス。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ハエトリタケ(fly agaric)としても公知であるベニテングタケ(Amanita muscaria)は、北半球の温帯及び寒帯に自生する菌根の担子菌菌類である。これは、南半球の国々にも導入されている。ベニテングタケ(Amanita muscaria)は、およそ600種が含まれるテングタケ属のすべてのメンバーのうちで最もアイコン的で、ほぼ間違いなく最も良く知られている。
【0004】
テングタケ属(Amanita)キノコは、長い間、ヒトの食事の一部であり、この属には、高く評価された食用の種が含まれる。この属には、合計すると世界中のすべてのキノコ死亡数の約95%を占める、最も致死的に有毒な公知のキノコのいくつかも含まれる。
【0005】
ある種のテングタケ属の種(これらの中で最も重要なベニテングタケ(Amanita muscaria)が含まれる)は、その向精神特性でも知られている。カムチャッカ半島のシベリア民族による、及びメキシコ高原のインディアンによる、ベニテングタケ(Amanita muscaria)の摂取は、何世紀にもわたって儀式で実施されてきた。向神経性効果は、シベリア及びカムチャッカの住人、バイキング、並びに一部の北米インディアン部族及びマヤ系グアテマラ人によって注視された。ベニテングタケ(Amanita muscaria)は、広く使用されており、気分に対する文書化された向神経性効果に関連しているが、それでもやはり、一般に、毒性の又は有毒なキノコであると考えられる。
【0006】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)は、いくつかの向精神化合物並びにいくらかの他の生物学的に活性な物質を含有することが公知である。したがって、化学者、薬理学者、及び民族植物学者は、これらのキノコの化学組成を解明しようとして、また、これらに起因する生理学的効果を説明しようとして、100年以上にわたって多大な取り組みを展開してきた。ムシモール(C4H6N2O2)は、ベニテングタケ(Amanita muscaria)の主要な向精神成分の一つである。ムシモールは、GABAA受容体に対するアゴニストであることが公知である(Johnston,Eurochem Res.2014;39(10):1942-7)。ムシモールは、GABAA受容体への結合時に、この受容体を活性化し、抗不安、抗けいれん、健忘、鎮静、催眠、多幸感誘因、及び筋弛緩特性をもたらす。ムシモールは、幻覚発現効果も有し得る。
【0007】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)のもう一つの向精神成分は、イボテン酸(C5H6N2O4)、すなわち、非選択的なグルタミン酸受容体アゴニストとして作用する、神経伝達物質グルタミン酸の立体構造的に制限された類似体である。イボテン酸は、神経毒としても作用する;実際、イボテン酸は、科学研究において、頭蓋注射による「脳破壊薬剤(brain-lesioning agent)」として用いられている。典型的なサンプルでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)は、ムシモールよりも多くのイボテン酸を含有する。ベニテングタケ(Amanita muscaria)中の少なくともある程度のイボテン酸は、胃の酸性環境内で、脱炭酸によってムシモールに変換される。したがって、イボテン酸は、ムシモールへのプロドラッグとして働く。しかし、多すぎるイボテン酸が消化される場合、これは、胃刺激、悪心、下痢、発汗及び唾液分泌、嗜眠及び眠気、運動失調、及び他の身体症状、並びに精神症状、例えば錯乱、多幸感、幻視及び幻聴、浮遊感、空間及び時間の歪み、及び逆向性健忘を引き起こす可能性がある(Moss et al.Clin Toxicol(Phila).2019;57(2):99-103)。
【0008】
ムスカリン(C9H20NO2+)は、典型的にはイボテン酸及びムシモールよりも存在する量が少ない、ベニテングタケ(Amanita muscaria)のさらなる成分である。ムスカリンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体の非選択的アゴニストである(Broadley et al.,Molecules,2001;6(3):142-193)。ムスカリンは、ある種のキノコ種に存在する濃度で毒性であり得るが、典型的にはベニテングタケ(Amanita muscaria)に存在する濃度で毒性ではない可能性がある。
【0009】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)の他の成分には、重金属、並びに特定のキノコの成長が見られる場所の土壌から吸収される他の潜在的に毒性の元素及び化合物が含まれ、したがって、こうした化合物は、それらが収集される場所に応じて、標本ごとに変わり得る。
【0010】
参照による組み込み
本出願に引用された各特許、刊行物、及び非特許文献は、それぞれが個々に参照によって組み込まれるかのように、その全体を参照によって本明細書に組み込まれる。他に特に記述されない限り、本明細書でのいずれかの文書への言及は、言及される文書、又は文書中のあらゆる内在する情報が、あらゆる管轄区域における従来の技術であるという承認と解釈されるべきではないか、又は当技術分野のよくある一般的知識の一部を形成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な概要
以下は、その基本的理解を提供するために、本発明のいくつかの実施形態の簡略化された概要を示す。この概要は、本発明の包括的概要ではない。これは、本発明の主要な又は重要な要素を特定することも、その全範囲を表現することも意図していない。その唯一の目的は、本発明のいくつかの実施形態を、後に示される、より詳細な説明への前置きとして、簡略化された形態で示すことである。
【0012】
ベニテングタケ(Amanita muscaria)由来のムシモールは、多くの公知の潜在的な健康上の利益を有する。しかし、高い収率、及び医薬及び栄養医薬品適用を含めたヒトの健康のための調製物にとって十分な純度で、ムシモールを確実に抽出するためのプロセスが必要とされる。
【0013】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ抽出物のイボテン酸含有量を低下させる方法である。あらゆる実施形態のいくつかでは、この方法は、熱の存在下でベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコバイオマスの水抽出を実施して、抽出物を生成することと;抽出物のpHを約2.0~約4.0に低下させることと;抽出物を濃縮することとを含み;ここでは、この方法は、キノコ抽出物のイボテン酸含有量を減少させ、及びキノコ抽出物のムシモール含有量を増大させる。あらゆる実施形態のいくつかでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコバイオマスは、水抽出の前に粉砕して粉末にされる。あらゆる実施形態のいくつかでは、キノコバイオマスは、粉砕及び水抽出の前に、約1%~約10%、約2%~7%、約4%~7%、又は約2%、3%、又は4%の含水率まで乾燥させる。
【0014】
あらゆる実施形態のいくつかでは、水抽出は、約0.5時間~3時間にわたって、65℃~120℃、70℃~100℃、又は75℃~95℃に加熱された水中で実施される(ここでは、各範囲は端点値を含む)。あらゆる実施形態のいくつかでは、水温は、約1時間又は少なくとも1時間、約75℃又は約95℃に維持される。あらゆる実施形態のいくつかでは、水抽出物は、加圧力の非存在又は存在下で濾過される。あらゆる実施形態のいくつかでは、pHは、約2.0、約2.5、又は約3.0に低下される。
【0015】
あらゆる実施形態のいくつかでは、濃縮ステップは、好ましくは遮光条件下での、蒸留、還流、加圧調理、又はそのあらゆる組み合わせを含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、蒸留は、約200°F~350°F(約93℃~約177℃)の温度での約15psi~約25psi(約1.0~約1.7バール)の圧力での減圧蒸留を含む(ここでは、各範囲は端点値を含む)。あらゆる実施形態のいくつかでは、蒸留は、約0.5時間~4時間、又は約1時間、2時間、3時間、若しくは4時間、進行する。
【0016】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物を得る方法である。あらゆる実施形態のいくつかでは、この方法は、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコと加熱した水との混合物に圧力をかけてフィルターを通し、濾液を生じることと;濾液を濃縮することと;濾液のpHを約2.5~3.5に低下し、それによって、抽出物中のムシモールを増大させ、及び抽出物中のイボテン酸を減少させることを含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、この方法は、低下ステップ後に、抽出物を、乾燥するまで加熱することをさらに含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、この方法は、乾燥させた抽出物を粉砕することをさらに含む。
【0017】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物を得る方法であって、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコを粉砕して粉末を形成することと;水に入れた粉末を加熱することによって水抽出を実施して、抽出物を生成することと;酸を添加することによってpHを低下させることと;抽出物を濃縮することと;抽出物を収集することとを含む(ここでは、酸性化及び濃縮ステップは、抽出物のイボテン酸含有量を低下させ、及びムシモール含有量を増大させる)方法である。
【0018】
あらゆる実施形態のいくつかでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、スチゾロビニン酸(stizolobinic acid)を含まず、及び最大で0.09ppmのカドミウム、0.03ppmのヒ素、0.09ppmの鉛、及び0.02ppmの水銀を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、18mg/g未満のムシモール、600μg/g未満のムシモール、及び20μg/g未満のイボテン酸を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、USP 561における制限値未満の各農薬を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、経口、舌下、頬側、粘膜、注射による、鼻腔内、吸入、又は局所投与に適している。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、溶液、懸濁液、チンキ、飲料濃縮物、飲料、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、ソフトジェル、経皮適用のためのクリーム、軟膏、ジェル、フォーム、又は液体として調製される。
【0019】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるのは、前述の方法のいずれかによって得られるベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコの抽出物である。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、ムシモールとイボテン酸を、少なくとも約20:1~約150:1の比率で含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、ムシモールとイボテン酸を、少なくとも100:1の比率で含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、少なくとも15000μg/gのムシモールを含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、少なくとも1.5%の強度を有するムシモールを含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、250μg/g未満のイボテン酸を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、0.025%未満の強度を有するイボテン酸を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、液体留出物として得られる。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、粉砕された粉末として得られる。
【0020】
あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、少なくとも90%のムシモール純度を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、スチゾロビニン酸を含まず、及び最大でそれぞれ0.09ppm、0.03ppm、0.09ppm、及び0.02ppmの、カドミウム、ヒ素、鉛、及び水銀の成分を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、18mg/g未満のムシモール、600μg/g未満のムシモール、及び20μg/g未満のイボテン酸を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、USP 561における制限値未満の各農薬を含む。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、90%以上のムシモール純度を含む。
【0021】
あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、約0.5%~約5.0%のムシモール強度に規格化される。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、経口、舌下、頬側、粘膜、注射による、鼻腔内、吸入、又は局所投与に適している。あらゆる実施形態のいくつかでは、抽出物は、溶液、懸濁液、チンキ、飲料濃縮物、飲料、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、ソフトジェル、経皮適用のためのクリーム、軟膏、ジェル、フォーム、又は液体中にある。
【0022】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、改良点、及び利点は、開示された実施形態及び実施例の以下の詳細な説明の概説から、及び添付の特許請求の範囲を参照することによって、より明確に理解及び認識されるであろう。前述の概要は、これが、本明細書に開示された目的及び実施形態のほんの一部の簡潔及び一般的な骨子とみなされ、並びに読み手の利益及び便宜のためだけに提供され、並びに範囲、又は等価物の範囲を、いかなる方式でも添付の特許請求の範囲が法律的に権利を与えられるものに限定することを意図しないという理解に基づいて示してきた。
【0023】
本発明の特許請求の範囲の主題も成す、本発明の追加の特徴を、以下に記載することとする。概念並びに開示された特定の方法及び構造が、本開示と同じ目的を成し遂げるために他の構造を改変する又は設計するための基礎として容易に利用できることが、当業者によって認識されよう。こうした等価な構造が、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことも理解されよう。
【0024】
図面の簡単な概要
本発明の種々の態様をさらに明らかにするために、本発明のより詳細な説明を、包含される図に例示されるそのある種の例示的な実施形態への参照によって与えることとする。これらの図は、本発明の例示される実施形態を描写するに過ぎず、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことが理解及び認識されよう。これらの図は、単に本発明のいくつかの実施形態のある種の概念の例示的説明として提供される。
【0025】
したがって、本発明のある種の態様は、添付の図面を参照して、やはりほんの一例に過ぎないが、さらに具体的及び詳細に、さらに記載及び説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態に従ってベニテングタケ(Amanita muscaria)からムシモールを抽出するための例示的プロセスのフローチャートである。
【
図2】
図1のプロセスにおける、酸性化後及び蒸留前の(すなわち、時間0での)、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析のグラフである。
【
図3】
図1のプロセスにおける、蒸留の1時間後の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析のグラフである。
【
図4】
図1のプロセスにおける、蒸留の2時間後の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析のグラフである。
【
図5】
図1のプロセスにおける、蒸留の3時間後の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析のグラフである。
【
図6】本発明の第2の実施形態に従ってベニテングタケ(Amanita muscaria)からムシモールを抽出するための例示的プロセスのフローチャートである。
【
図7】
図1のプロセスの一部として記載した通りに、加熱及び粉砕されたベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ乾燥粉末の定量分析のグラフである。
【
図8】外観検査時の高品質キノコの例の画像である。
【
図9】外観検査時の低品質キノコの例の画像である。
【
図10】種々の期間の間粉砕することによってもたらされたキノコ粉末の例の画像である。
【
図11】プラスチック袋に入れた細かく粉砕されたキノコ粉末の例の画像である。ここでは、これらの袋は、それぞれの袋の含有量を区別するために、さらにラベル付けされる。
【
図12】イボテン酸がムシモールに変換される脱炭酸反応を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明の実施形態を、特定の実施形態、実施例、及び適用例に関して、また、添付の図面に描写される例示的な実施形態への参照によって、ここでさらに説明するが、この説明は、その範囲を、いずれかのこうした実施形態、実施例、及び適用例に限定することを決して意図せず、記載された実施形態、実施例、適用例、及び本発明の他の項目中の、本明細書に例示される多くの改変、置き換え、代替、変更、及び変形を、本発明の趣旨、又は法律的に権利を与えられるすべての等価物を含めた添付の特許請求の範囲に記載される通りの本発明の範囲から逸脱せずに、当業者によって行うことができることが理解されよう。
【0028】
本明細書に記載及び例示された方法には、特定のステップが含まれ得るが、記載及び提示されるものよりも少ない、多い、又は異なるステップを含む他の方法、並びにこれらの特定のステップを異なる順序でステップを提供する方法も、本発明の趣旨及び範囲の範囲内であることが明らかであろう。したがって、論じられたあらゆる装置又は器具の方法及び使用並びに本明細書に示された関連するステップは、限定ではなく例示の目的で提供されるものと理解されよう。
【0029】
A.一般的定義及び用語
本発明又はその実施形態の要素を導入する時、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「前記」は、1つ以上の要素が存在することを意味することが意図される。したがって、単数での要素へのあらゆる言及は、特にそのように記述されない限り、「1つの及び1つだけの」を意味することが意図されず、むしろ「1つ以上の」を意味することが意図され;したがって、独立している用語「」は、文脈によってそうではないと要求されない限り、「及び/又は」と同じものを意味するものとする。用語「を含む」、「を含めた」、「などの」、及び「を有する」も、包括的であり排他的でないと意図される(すなわち、列挙された要素に加えて他の要素が存在し得る)。したがって、例えば、用語「を含めた」、「が含まれ得る」、及び「が含まれる」は、本明細書で使用する場合、表現「限定はされないが~が含まれる」を意味し、これと互換的に使用される。単語「例示的な」は、本明細書では、「例、実例、又は例示として働くこと」を意味するために使用される。したがって、「例示的な」として本明細書に記載されるあらゆる態様、実施形態、プロセス、又は道具は、他の物に対して必ずしも好ましい又は好都合と解釈されるべきではない。
【0030】
他に記述されない限り、後続の図及び特許請求の範囲を含めたこの明細書の中で(明示的又は黙示的に)定められるすべての測定値、数値、評点、位置、大きさ、寸法、配置、方向、立体配置、及び他の規格は、おおよその値であり、厳密ではない。これらは、これらが関連する機能及びこれらが属する技術分野で慣例的であるものと矛盾がない妥当な範囲を有することが意図される。他に記述されない限り、本発明のある種の実施形態を説明及び主張するために使用される、成分の量、濃度、反応条件、及びその他のものなどの特性を表すすべての数は、場合によっては用語「約」によって修飾されるものと理解されよう。用語「約」が、ある数値を修飾するために使用される場合、これは、当業者がその指定された数値と合理的にほぼ同じと考えるであろう、その指定された数値を含むある範囲の数値も包含されることを意味する。数値を、用語「約」によって修飾することができる場合、いくつかの実施形態では、こうした値は「約」によって修飾されるが、他の実施形態では、こうした値は、さらなる正確性の度合いの範囲内にあることが理解されよう。いくつかの実施形態では、「約」は、当技術分野で一般に許容される測定を使用する標準偏差の範囲内を意味する。いくつかの実施形態では、「約」は、製作公差の範囲内を意味する。他の実施形態では、「約」は、指定された値の±10%まで及ぶ範囲を意味する。したがって、いくつかの実施形態では、書かれる説明及び添付される特許請求の範囲において記述される数値パラメータは、概数であり、これは、特定の実施形態によって得られようとされる所望される特性に応じて変動し得る。本明細書のパラメータ又は特性を修飾するために適用される場合の用語「実質的に」は、確実性を提供するために、本発明の文脈で、また、当技術分野の知識に照らして、例えば、程度の用語としての「実質的に」の意味を推し量るために当技術分野で認められているスタンダードを使用することによって、又は当業者が解釈するであろう範囲を突き止めることによって解釈されることとなる。
【0031】
いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、また通常の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。本発明の広範にわたるいくつかの実施形態を説明する数値範囲及びパラメータは概数であるが、具体的な例において記述される数値は、例えば製作公差を考慮に入れて、可能な限り正確に報告される。したがって、本発明のいくつかの実施形態において示される数値は、そのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含有する可能性がある。
【0032】
一般に、本明細書で使用される命名法及び実施される手順は、本発明の1つ以上の態様のものに関連する分野において公知のものであり、また、こうした分野において周知及び一般に用いられることとなるものである。標準の技術及び手順は、当技術分野の従来の方法に従って一般に実施されるものとなる。他に定義されない限り、本明細書のすべての技術及び科学用語は、省略表現として簡単に「当業者」と称することができる、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解される通りの意味を有する。
【0033】
開示される実施形態を読み手が理解するのを助けるさらなる定義は、以下の通りである;しかし、添付の特許請求の範囲中で使用される言葉を考慮して明細書全体への参照(並びに関連分野における当業者に公知のいずれかの明白な意味)によって適切に解釈及び理解されるものとする、本発明の範囲を限定するために、これらを使用するつもりはないということを理解されたい。すなわち、本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明するためのものであるにすぎず、限定的であることは意図されない。
【0034】
「ベニテングタケ(Amanita muscaria)」には、本発明の範囲及び趣旨の範囲内でもあり、したがって、ベニテングタケ(Amanita muscaria)の定義の範囲内又はその等価物とみなされるものとする、ベニテングタケ変種ムスカリア(Amanita muscaria var.Muscaria)(ヨーロッパ~アジアのハエトリタケ)、ベニテングタケ変種フラビボルバータ(Amanita muscaria var.flavivolvata)(アメリカのハエトリタケ)、ベニテングタケ変種ゲソウィ(Amanita muscaria var.guessowii)(アメリカのハエトリタケ、黄色変種)、及びベニテングタケ変種インセンガエ(Amanita muscaria var.inzengae)(「インセンガ(Inzenga)の」ハエトリタケ)、及び当技術分野の一般的知識内であると容易に認識されるように、致死的に有毒であることが知られていないこうした他のイボテン酸及びムシモールを含有するテングタケ属の種が含まれることが理解されよう。
【0035】
「カサ」とは、例えばいぼ又は不規則な斑点としてそれに付着した外被膜の断片を含む、キノコの菌傘をいう。一般に、個々のテングタケ属(Amanita)キノコのカサは、手で又は他の機械的手段によって、その「柄」又は軸から容易に分離することができる。
【0036】
「イボテン酸」は、(S)-2-アミノ-2-(3-ヒドロキシイソキサゾール-5-イル)酢酸を意味する。
【0037】
「ムシモール」は、5-(アミノメチル)-1,2-オキサゾール-3(2H)-オンを意味する。
【0038】
「脱炭酸」とは、カルボキシル基を除去し、二酸化炭素(CO
2)を放出し、それによってカルボキシル基(-COOH)を水素原子(H)と置き換える(例えば、RCO
2H→RH+CO
2のような)化学反応をいう。イボテン酸がムシモールに変換される脱炭酸反応を、
図12に描写する。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ベニテングタケ(Amanita muscaria)からムシモールを抽出するためのプロセスが開示される。本発明の一例実施形態では、乾いた又は脱水されたベニテングタケ(Amanita muscaria)のカサは、粉砕され、沸騰させた水中で加熱されて、キノコのカサ中のイボテン酸の一部がムシモールに変換される。この混合物を濾過し、濾液に酸を添加して、イボテン酸の脱炭酸を引き起こし、イボテン酸のムシモールへの変換を増大させる。この酸性の混合物を還流させて、不純物を除去し、イボテン酸のムシモールへの変換をさらに増大させる。濾液中の小さい粒子は、還流中に凝集してより大きい粒子になる傾向があり、濾液からのその分離が容易になる。蒸留は、ベニテングタケ(Amanita muscaria)から抽出されるムシモールを、公知の従来の技術よりも著しく増大させることが判明している。
【0040】
蒸留手順の長さに応じて、ムシモール含有量を、蒸留後に、こうした蒸留前の含有量と比較して、例えば、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、又は少なくとも250%増大させることができる。
【0041】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、90%を超えるムシモール純度レベル、例えば、あるこうした例示的な実施形態では、91.37%のムシモールの純度が達成される。いくつかの実施形態では、化合物の純度は、その化合物の重量を、その純度が測定される化合物の総重量で割ることによって(すなわち、w/w%として)決定することができる。例えば、例示的な実施形態では、生成物ロット番号0001の化合物の重量を示す表3の分析証明を使用して、ムシモールの純度は、ムシモール(16922μg)の重量を、ムシモールと他の化合物(すなわち、ムスカリン(1468μg)、イボテン酸(159μg/g)、及び重金属カドミウム(0.14μg)、ヒ素(2.5μg)、水銀(0.12μg)、及び鉛(1.6μg))の総重量(これは、合計で18553.36μgに等しい)で割る、言い換えれば、16922μgを18553.36μgで割ることによって決定され、これは、91.21%のムシモールの純度をもたらす。いくつかの実施形態では、ムシモールの純度は、ムシモールの重量(16922μg)を、ムシモールと、重金属(例えば、カドミウム、ヒ素、水銀、又は鉛)ではない他の化合物(すなわち、ムスカリン及びイボテン酸)の総重量で割ることによって決定することができる。この場合、こうした純度は、16922/18549となり、これは、91.23%のムシモールの純度に等しい。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される通りの本発明の方法を利用することによって、少なくとも約75%(約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、及び99.9%超、例えば99.99%、及び100%までが含まれる)の純度を得ることができる。ある化合物の「実質的に純粋な」調製物は、HPLCプロファイル又は他の同様の検出方法の面積正規化によって決定される場合に、90%超、より好ましくは95%超、より好ましくは96%超、より好ましくは97%超、より好ましくは98%超、より好ましくは99%超、より好ましくは99.5%超、最も好ましくは99.9%超の、(その所望される化合物の)クロマトグラフィー的純度を有する調製物と定義することができる。好ましくは、実質的に純粋な化合物は、投与された場合に対象における影響を引き起こす可能性がある、及び対象に投与されることが意図されない、いずれの他の活性な化合物も実質的に含まない。この文脈では、「実質的に含まない」は、HPLCプロファイル又は他の同様の検出方法の面積正規化によって決定される場合に、対象化合物以外の化合物が、HPLC又は他の同様の検出方法によって検出可能ではないこと、又はこうした化合物が、閾値量未満の、例えば、10%未満の、より好ましくは5%未満の、より好ましくは4%未満の、より好ましくは3%未満の、より好ましくは2%未満の、より好ましくは1%未満の、より好ましくは0.5%未満の、最も好ましくは0.1%未満の純度を有することを意味すると解釈することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、強度は、w/w%によって、例えば、評価されることとなる化合物の重量を、抽出物の総重量で割ることによって決定することができる。例えば、例示的な実施形態では、生成物ロット番号0001の化合物の重量を示す表3の分析証明を使用して、ムシモールの強度は、ムシモールの重量(16922μg、すなわち、0.016922g)を、抽出物の等価重量(1g)で割ることによって決定され、表7にも示す通り、0.016922/1又は1.69%のムシモールの強度が得られる。
【0044】
いくつかの実施形態では、抽出物中のムシモールの強度は、本明細書に開示される通りの本発明の方法を利用することを介して得ることができる場合に、少なくとも約0.25%(約0.25%、0.50%、0.75%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、及び2.0%超が含まれる)である。いくつかの実施形態では、強度は、「濃度」と等価である。いくつかの実施形態では、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物(これは、任意選択でさらに濃縮することができる)は、規格化される。「規格化された」抽出物とは、ムシモールなどの生理活性化合物であり得る、ある指定された量の規格化された成分を含む抽出物をいう。したがって、実施形態では、生理活性化合物の量、例えばムシモールの量は、ある特定の濃度(例えば、抽出物のw/w又はw/v%)に規格化される。いくつかの実施形態では、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、又は5.0%w/w又はw/v(すなわち、こうした抽出物が乾燥粉末か液体かに応じて、1mg又は1mLの抽出物あたりのムシモール(mg))の量のムシモールを重量パーセントで含有するように規格化されることとなる。いくつかの実施形態では、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、0.05%以下、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、又は0.30%w/w又はw/v(すなわち、抽出物1mgあたりのムスカリン(mg))の量のムスカリンを重量パーセントで含有することとなる。例えば5.0%~10.0%、又は10%を超えるムシモール、0.30%を超えるムスカリンの量の(また、上に明示的に列挙されたものよりも少ない量も含まれる)、他の規格化w/w又はw/vのムシモール又はムスカリンは、容易に知られる通りとなる。
【0045】
規格化は、規格化されるべき抽出物中の化合物の濃度を測定すること、規格化されるべき化合物の濃度を決定すること、所望される(規格化される)濃度を得るために必要な賦形剤の量を決定すること、次いで、所望される(規格化される)濃度を得るために必要な量の賦形剤を添加すること、規格化された抽出物をもたらすことなどの、当業者に公知の方法によって達成することができる。賦形剤は、通常の技術によって知られる通りとなり、乾燥粉末又は液体の規格化された抽出物を作り出すための、乾燥又は液体賦形剤であり得る。任意選択で、規格化された抽出物中の規格化された化合物の濃度は、賦形剤の1つ以上の部分を添加した後に、又は最終の規格化された抽出物が調製された後に測定して、規格化方法を、また、品質管理について確認することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、さらに濃縮され、その結果、生理活性化合物(具体的にはムシモールが含まれる)は、最初の抽出物から、総濃度が上昇される(例えば、w/w%(粉末抽出物について)又はw/v%(液体抽出物について)での、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%(2X)、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%(3X)、少なくとも250%、少なくとも300%(4X)、少なくとも400%(5X)、少なくとも500%(6X)、少なくとも600%(7X)、少なくとも700%(8X)、少なくとも800%(9X)、少なくとも900%(10X)などの量の、及び1,000%以上の量の増大)。抽出物を濃縮する方法は、例えば、溶媒の一部又は全体を蒸発させて、所望される濃度のある体積の濃縮されたスラリーを作り出すことによるものなど、当技術分野で公知である通りとなる。
【0047】
本発明の第2の実施形態の一例では、乾いた又は脱水されたベニテングタケ(Amanita muscaria)のカサが、割り砕かれ、沸騰させた水中で加熱される。得られた加熱されたベニテングタケ(Amanita muscaria)のカサを、フィルターを通して加圧して、濾液を抽出する。濾液を加熱して脱水し、濾液の体積を低下させる。酸の添加によって、濾液のpHを下げ、再び加熱して、濾液を濃縮し、イボテン酸をムシモールに変換させる。得られた濾液を、混練及び粉砕する。
【0048】
B.実施形態1
図1は、本発明の第1の実施形態の例示的なプロセスのフローチャート100である。
図1の例では、採取されたベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ(ここでは、便宜のため、「キノコ」)が、好適な品質のものであることを確実にするために検査される(110)。こうした検査は、屑片、汚れ、及び他の有機物(これらは廃棄されることとなる)を識別することができ、正確な種を確認する及び誤った種、特に毒性又は有毒であるものを取り除くのに有用であり得る;及び/又は全体の外観、清潔さ、色、損傷、見かけの年齢、幼虫若しくは昆虫の形跡の存在若しくは非存在などを意味する一般的「品質」を決定するのを助けることができる。しかし、こうした検査は、必要とはされず、結果として、本明細書に開示される本発明を限定するものと解釈されるべきではないことに留意するべきである。任意選択的ステップ180は、さらなる加工(この時点でが解凍されるであろう)の前の保管の期間にキノコを凍結することを記載している。
【0049】
図8は、高品質のキノコのカサの例を示し、
図9は、低品質のキノコのカサの例を示す。当業者に直ちに明らかであるように、高品質のキノコのカサは、その本来の色、明瞭な模様、及び形状を保持する;一方で、低品質キノコのカサは、視覚的に乾いている(dessicated)、部分的に分解されている、カビが生えている、虫食い穴がある、濃淡が様々な茶色である、及び/又はその元々の形状を失っている。一例では、採取されたキノコは、成熟しているか、まだ成熟していない。いくつかの実施形態では、キノコは、産業汚染又は放射性降下物にさらされる地域から採取されない。
【0050】
実施形態では、キノコが完全である(すなわち、カサと、少なくとも一部分の柄を有する)ならば、キノコのカサは、柄から取り除かれることとなる。こうした実施形態では、加工は、好ましくは、キノコのカサを単独で使用する。なぜなら、キノコのカサは、キノコ内で最も高い濃度の対象化合物を有し、したがって、ムシモールの好ましい全収量をもたらすからである。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセス(
図1)に利用されるキノコは、十分に乾いており、重量で約2%~約3%の水分という含水率を有する。とはいえ、いくつかの実施形態では、キノコは、重量で2%未満又は3%超の水分を有する可能性がある。例えば、脱水されたキノコは、重量で約4%~約7%という含水率を有する可能性がある。採取時に十分に乾いていなければ、脱水機中で、又は限定はされないが伝導、対流、若しくは輻射を含めた当業者に公知のあらゆる考えられる方法における熱の適用によって、キノコを乾燥させる(「脱水する」とも称される)ことができる(120)。
【0052】
しかし、2%未満に又は高すぎる温度で乾燥されるならば、ムシモール及びイボテン酸は分解される可能性があり、このプロセスによって得られることとなるムシモールの最終収量が低下することが認識されるであろう。適切な量の乾燥は、実施される本発明の具体的実施形態のための通常の技術の実行によって決定することができる。適切なレベルの含水率を決定する、ある例示的な非限定的方式では、所望される水分範囲のキノコは、容易に2つに折れる。だから、脱水は、多くの場合、キノコが「クラッカー並みの乾燥(cracker dry)」になるまでに完遂される。これは、いくつかの実施形態では、キノコが単にしなやかであり及び割れやすくないならば、おそらく十分には乾燥していないことを意味する。キノコを粉砕して粉末にすることができるようになる時には、乾燥は十分であると認識されよう。
【0053】
とはいえ、採取されたキノコを乾燥させることは、以下でさらに論じる通り、単に任意選択的なステップにすぎない。したがって、キノコが、乾燥されない又は上で開示された範囲外の含水率のものである(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、又は7%超(ここでは、範囲は端点値を含み、各数字は用語「約」によって修飾することができる))実施形態において、本発明の方法は、それでも実施することができる。
【0054】
乾燥が実施される(120)いくつかの実施形態では、乾燥は、50℃の最大温度(49℃、48℃、47℃、46℃、45℃、44℃、43℃、42℃、41℃、40℃、39℃、38℃、37℃、36℃、35℃、34℃、33℃、32℃、31℃、30℃、29℃、28℃、27℃、26℃、25℃、24℃、23℃、22℃、21℃、20℃、又は20℃未満が含まれる)で完遂することができる。具体的に乾燥を実施することに関して、キノコは、循環空気脱水ユニット、通風式食品乾燥機、又は使用者によって設定される実質的に一定の温度を維持することが可能な他のあらゆるこうした装置(ここでは、加熱は、伝導(直接的加熱)、対流(気体若しくは液体の連続的な流れを介する加熱)、及び/又は輻射(より温かい物体からのより冷たい物体による熱の吸収を介する加熱)を介して完遂される)中で乾燥させることができる。
【0055】
さらに、乾燥は、いくつかの実施形態では、約24時間~約48時間(24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、37時間、38時間、39時間、40時間、41時間、42時間、43時間、44時間、45時間、46時間、47時間、及び48時間が含まれる)(ここでは、範囲は端点値を含み、各値は、用語「約」によって修飾されるものと修飾されないものの両方であることが理解されよう)、持続させることができる。同様に、実施形態では、加熱は、24時間未満、例えば20時間、16時間、12時間、8時間、若しくは8時間未満;又は48時間超、例えば56時間、60時間、65時間、72時間、又は80時間(端点値を含む)、完遂することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、キノコが脱水されるかどうかに関わりなく、キノコを、プラスチック袋又は気密容器に入れて密封し、加工まで暗所に保管することができる。こうした実施形態では、キノコが保管される温度は、加工をどのぐらい早く行うことができるかと合致するべきである。一般に、キノコは、約-25℃~約3℃で保管される。しかし、理論に拘泥されるべきではないが、前述の範囲の、より温かい温度での保管は、加工が差し迫って(例えば約5日以内に)行われることとなる場合にのみ推奨される。なぜなら、3℃を超える温度での長期の保管は、強度の損失、及び肉眼で見える及び顕微鏡でしか見えない生物によるキノコの徐々の破壊をもたらす可能性があるからである。
【0057】
いくつかの実施形態では、キノコは、粉砕される(130)。キノコは、フードプロセッサー、コーヒーグラインダー、ブレンダー、又は同様の装置によって、いくつかの実施形態では約10秒、約20秒、約45秒、又は約1分間(端点値を含む)、粉砕して粉末(これは、実質的に細かい粉末であってもなくてもよい)にすることができる。
【0058】
任意選択的ステップ(190)では、キノコは、粉砕の前に、品質保証分析にかけられる。当業者は、適切な大きさの粉末をどのようにして得るかということを容易に認識するであろうが、視覚的表示は、
図10及び11において参照することができる。現時点では、いくつかの実施形態において、粉砕された粉末の少量回分を任意選択で分析して、ムシモール、ムスカリン、及びイボテン酸が、安全性及び製造の規格内であるかどうかを決定することができる。さらに、その回分を、重金属及び農薬含有量について分析してもよいししなくてもよい。分析は、こうした分析を完遂することが可能な、当業者に公知のあらゆる装置(ある非限定的な例は、高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(「HPLC-MS/MS」)である)によって実施することができる。いくつかの実施形態では、回分は、本発明の方法を進行するために、1グラムあたり少なくとも約500マイクログラムのムシモールを含まなければならない。
【0059】
次いで、水(これは、いくつかの実施形態では、蒸留水である)を入手し、pHを決定する。水のpHが約7でないならば、別の水サンプルを選択及び試験して、結果を確認する、及び/又は必要に応じて水のpHを調整する。水が汚染されている又は不適当なpHのものであるならば、単に新しい供給源に変更することが最も簡単であり得ることが、容易に認識されるであろう。
【0060】
次いで、水を沸騰させて(140)、水中の不純物を除去する。キノコ(これは、粉砕されていてもいなくてもよい)を、沸騰させた水(140)に入れ、撹拌する。この水と粉砕されたキノコとの混合物の温度を、約95℃~約100℃(約95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、及び100℃が含まれる)(ここでは、範囲は端点値を含み、各値は用語「約」によって修飾することができる)の温度に維持する。
【0061】
具体的に撹拌することに関しては、混合物は、約5分~約180分間(5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、125分、130分、135分、140分、145分、150分、155分、160分、165分、170分、175分、180分、又は180分超が含まれる)(ここでは、範囲は端点値を含み、各値は用語「約」によって修飾することができる);700rpm~2500rpmで(約750rpm、800rpm、850rpm、900rpm、950rpm、1000rpm、1050rpm、1100rpm、1150rpm、1200rpm、1250rpm、1300rpm、1350rpm、1400rpm、1450rpm、1500rpm、1550rpm、1600rpm、1650rpm、1700rpm、1750rpm、1800rpm、1850rpm、1900rpm、1950rpm、2000rpm、2050rpm、2100rpm、2150rpm、2200rpm、2250rpm、2300rpm、2350rpm、2400rpm、2450rpm、2500rpm、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は用語「約」によって修飾することができる)、撹拌される。いくつかの実施形態では、混合物は、1120rpmで約60分間撹拌される。
【0062】
撹拌のための時間の長さは様々であり得るが、期間は、キノコ粉末と水が実質的に均質なスラリーを形成するように溶媒を混合するのに十分な期間であればよいことが容易に認識されるであろう。だから、混合が適切に完遂される限り、混合の方法は重要ではない。これは、混合を、泡立て器、スプーン、又はへらなどの撹拌用具の利用を介して手で;スターラープレートを使用して、電動ハンドミキサーを使用して、独自アームを有する電動混合機(mixture)を使用して、又は、いくつかの実施形態では、本発明の混合物を保持し、及び少なくとも1つのかき混ぜ手段(限定はされないが、撹拌棒又はアームなど)を有することが可能な実質的に固体の材料で作られた工業用バットを使用して、行うことができることを意味する。必要とされるのは、必要とされる量の時間、必要な量のかき混ぜを提供することが可能な器具又は用具だけである。
【0063】
具体的に時間に関しては、言及した通り、かき混ぜは、約5分、~少なくとも120分間-実行される所与の実施形態を反映する、必要とされる特定の量の時間、完遂することができる。これは、いくつかの実施形態では、かき混ぜに必要とされる時間の長さは、その所与の実施形態(例えば、限定はされないが、示唆されるかき混ぜ時間が60分である実施形態)について知られている標準の量に基づくことができることを意味する。他の実施形態では、かき混ぜは、混合物が実質的に均質なスラリーを形成した時にかき混ぜをやめる、繰り返しプロセスであり得る。本明細書に開示される通りの本発明に関しては、実質的に均質なスラリーは、水の内部のキノコ粒子の実質的に一様な分散を特徴とし、これは、肉眼で明確に分かり、当業者に直ちに明らかであろう。しかし、こうした一様な分散は、さらに、標本分散を決定することが可能な、当業者に公知の装置を使用して、電子的に決定することができる。
【0064】
言及した通り、水は、いくつかの実施形態では約95℃~約100℃に加熱される。こうした高温は、キノコの組織からムシモールを抽出するのを助ける。いくつかの実施形態では、粉砕されたキノコのカサと水との比は、約1グラムのキノコ:40mLの水であり得、その結果、1グラム、5グラム、7グラム、10グラム、12グラム、15グラム、17グラム、20グラム、25グラム、30グラム、35グラム、40グラム、45グラム、50グラム、55グラム、60グラム、65グラム、70グラム、75グラム、80グラム、85グラム、90グラム、95グラム、又は100グラムのキノコ抽出物を、それぞれ、40mL、80mL、280mL、400mL、480mL、600mL、680mL、800mL、1000mL、1200mL、1400mL、1600mL、2000mL、2200mL、2400mL、2600mL、2800mL、3000mL、3200mL、3400mL、3600mL、3800mL、4000mLと組み合わせることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、キノコ粉末は、約65℃~約150℃の水に添加される。いくつかの実施形態では、水温は、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃、約135℃、約140℃、約145℃、約150℃である。いくつかの実施形態では、沸騰させた水を、粉砕されたキノコを添加する前に、約75℃に冷却させる。いくつかの実施形態では、水は、粉砕されたキノコを添加する前に、約75℃に加熱される。いくつかの実施形態では、水は、粉砕されたキノコを添加する前に、75℃の温度に維持される。
【0066】
いくつかの実施形態では、混合物は、次いで、固体を除去するために、濾過される(150)。フィルターが大きい粒子と小さい粒子の両方を濾過して取り除くことが可能である限り、当業者に公知のあらゆるフィルターを利用することができる。実際、いくつかの実施形態では、複数のフィルターを使用することができ、ここでは、フィルターが加わるごとに、孔径は小さくなる。こうした実施形態では、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は5つより多いフィルターを利用することができる。これは、濾液中に所与の大きさのある一定の粒子が所望される、又は個々に単離されるべきである場合に特に有用である。
【0067】
いくつかの実施形態では、より大きい粒子を除去するために、フィルターとしてチーズクロスを利用することができ、一方で、より小さい粒子を除去するために、フィルターとしてグラスウールを使用することができる。いくつかの実施形態では、濾液は、エルレンマイヤーフラスコなどのフラスコ中に収集することができる。しかし、これは、単に、例示的な非限定的実施形態である。当業者には明らかであろう通り、漏れることなく濾液を含有するのに十分な、あらゆるこうした実質的に固体の容器を、収集のために使用することができる。いくつかの実施形態では、濾過プロセス(200)中に、例えばフルーツプレスを使用して、圧力がかけられる。
【0068】
さらに他の実施形態では、混合物を、真空濾過によって、フィルターを通して吸引することができる。フィルターが詰まっていないならば、濾過は約15分で済むが;フィルターが詰まってしまうと、濾過には例えば約30分~約60分かかる可能性があるということを理解されたい。別の例では、混合物を、75ミクロンフィルターバッグなどのナイロンフィルターバッグに入れ、例えば60分にわたるフィルタープレスによってゆっくりと濾過することができる。任意選択的実施形態では、濾液は、遠心分離されて、粒子状物質と上清が分離される(210)。
【0069】
いくつかの実施形態では、濾液のpHを、フラスコに酸を添加することによって調整することができる(160)。pHは、約7(蒸留水のpH)である濾液のpHから、例えば、約5~6の範囲のpH、又はそれ未満に低下させることができる。いくつかの実施形態では、pHは、約1.0~約4.0のpHに低下される。いくつかの実施形態では、pHは、約1.0に、約1.5に、約2.0に、約2.5に、約3.0に、約3.5に、又は約4.0に低下される(ここでは、範囲は端点値を含む)。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、硝酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、又は濾液のpHを下げることが可能な当業者に公知のあらゆる他の化合物である。
【0070】
いくつかの実施形態では、酸は、HClであり得、pHは、例えば1M HClの添加によって、例えば約3.0に下げることができる。いくつかの実施形態では、pHは、約2.5に下げることができる。理論に拘泥されないが、上に論じた通り、酸性環境の増大が、脱炭酸反応によって、イボテン酸をムシモールに変換させる。キノコが、(約2%~約3%の含水率まで)十分に乾燥されないならば、イボテン酸のムシモールへの同じ程度の変換を達成するために、より高い濃度のHCl又は他の酸が必要である可能性がある。より高い濃度のHClは、当業者に容易に公知の標準の警戒的手順の下でこのプロセスを実施するために、安全フードの使用を必要とする可能性がある。
【0071】
本発明のこの実施形態によれば、この酸性混合物を、次いで、蒸留器具を通して還流させて、濾液中に依然として存在する夾雑物及び毒素を除去することによって、抽出物を濃縮する(170)。当業者に公知の濃縮の他の機構も、本明細書に記載される方法に適用することができる。夾雑物及び毒素は、ベニテングタケ(Amanita muscaria)と似ている可能性がある他のキノコからのものである可能性もあるし、そのうちのいくつかが毒性であり得るベニテングタケ(Amanita muscaria)と共に収集される可能性もある。例えば、概してより高いレベルの毒素を有するテングタケ(Amanita pantherina)が存在する可能性がある。当業者は、タマゴテングダケ(Amanita phalloides)、アマニタ・オクレアータ(Amanita ocreata)、及びドクツルタケ(Amanita virosa)などの、テングタケ属(Amanita)の致死的に有毒な種が、本発明の手法に使用されるはずはないことが容易にわかるであろう。また、その識別は、当業者によって一般に理解されるであろう。
【0072】
いくつかの実施形態では、酸性化されたキノコ濾液又は抽出物は、イボテン酸のムシモールへの脱炭酸を加速するために濃縮される。いくつかの実施形態では、濃縮ステップは、酸性化されたキノコ抽出物を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、熱曝露の期間は、約0.5時間~約6時間である(ここでは、範囲は端点値を含む)。いくつかの実施形態では、熱曝露の期間は、約0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、又は6時間である。いくつかの実施形態では、熱曝露は、6時間を超える。いくつかの実施形態では、抽出物は、約75℃~約177℃(200°F~350°F)(約76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃、131℃、132℃、133℃、134℃、135℃、136℃、137℃、138℃、139℃、140℃、141℃、142℃、143℃、144℃、145℃、146℃、147℃、148℃、149℃、150℃、151℃、152℃、153℃、154℃、155℃、156℃、157℃、158℃、159℃、160℃、161℃、162℃、163℃、164℃、165℃、166℃、167℃、168℃、169℃、170℃、171℃、172℃、173℃、174℃、175℃、176℃、177℃、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾される)に加熱される。
【0073】
いくつかの実施形態では、濃縮ステップは、圧力の適用を含む。いくつかの実施形態では、加圧力は、当業者には明らかであろう通り、約10psi~約25psi(少なくとも約10psi、11psi、12psi、13psi、14psi、15psi、16psi、17psi、18psi、19psi、20psi、21psi、22psi、23psi、24psi、25psi、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、これらの値は、用語「約」によって修飾される)である。いくつかの好ましい実施形態では、加圧力は、15psiである。当業者に公知である通り、本明細書に記載される圧力は、異なる単位、例えば、1psi=6.9kPa=0.069バールに変換することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、濃縮は、熱及び圧力の使用を伴って実施される。いくつかの実施形態では、蒸留が、イボテン酸のムシモールへの変換を助ける。いくつかの実施形態では、還流が、イボテン酸のムシモールへの変換を助ける。いくつかの実施形態では、蒸留と還流の組み合わせが、イボテン酸のムシモールへの変換を助ける。いくつかの実施形態では、加圧調理が、イボテン酸のムシモールへの変換を助ける。
【0075】
いくつかの実施形態では、冷却器を使用することができ、冷却器の非限定的な例は、Pyrexグラハム型(Graham)冷却器である。当技術分野で公知である通り、グラハム型冷却器は、蒸気凝縮路として働く、冷却器の全長にわたる、冷却材で覆われるらせん状のコイルを含む。グラハム型冷却器は、例えば収集のための、丸底フラスコなどの別のフラスコに取り付けることができる。グラハム型冷却器は、酸性の混合物が、底部で冷却器に入るように、蒸留のために下向きに配置することができる。使用されないネックはプラグで栓をされる。いくつかの実施形態では、ムシモール分解の可能性に起因して、プロセス全体を通して光への曝露を避けるためのステップが採用される。ある非限定的な例では、丸底フラスコの周囲及び冷却器の上に部分的にアルミ箔を巻き、還流中の丸底フラスコへの光強度を下げることができる。しかし、このプロセスを暗室で完遂すること、フラスコ自体を囲いの中に設置すること、光を反射する不透明なフラスコを使用することなどを含めた、光の透過を低下させるあらゆるこうした方法が許容される。
【0076】
概して、冷却器のコイルは、ポンプによって送り込まれる冷却された水で冷却される。この機構は、例えば加熱マントルを用いて、圧力下で加熱される。いくつかの実施形態では、むらのない加熱を容易にするために、留出物は、さらに撹拌される。これは、こうしたマントルが利用される実施形態では、加熱マントルと連動する磁気撹拌機を用いて完遂することができるが、当業者に公知のあらゆるこうした装置を用いて完遂することもできる。さらに、加熱手段からフラスコに熱を移動させることが可能な任意の装置によって、それ自体を加熱することを完遂することができる。これは、直火を介する、加熱器具、例えば、限定はされないが、前述の加熱マントルを介するものであってもよいし、そこから突出している蒸留器具を伴うフラスコが入れられるオーブンであってもよい。
【0077】
加熱手段に関係なく、また、混合物がかき混ぜられるかどうかに関わりなく、蒸留が開始するまでは高熱が適用され(例えば、加熱マントルを「高(high)」に合わせる)、次いで、例えば、留出物収集の速度が1秒につき約1滴となるように調整する。いくつかの実施形態では、こうした「高」熱は、約110℃~約130℃(111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃、130℃、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾することができる)である。いくつかの実施形態では、温度は、約121℃であり、圧力は、約15psiである。同じ実施形態であってもなくてもよいいくつかの実施形態では、専門家は、混合物が酸性であることから、蒸留プロセスをドラフト内で完遂することを選ぶことができる。
【0078】
一例では、蒸留は、約0.5時間~約6時間実施される。いくつかの実施形態では、蒸留は、約5~約6時間実施される。別の例では、これは、約2~約3時間実施される。別の例では、これは、約3時間実施される。3時間の蒸留は、例えば、ムシモール含有量を、
図2~5を通して示す通り、かなりの量増大させる;またイボテン酸に対するムシモールの量を、例えば、少なくとも90%のムシモール含有量を有する抽出物まで、増大させることが判明している。さらに、ムシモールは、3時間の熱に曝露された後、(非常にわずかな程度)分解し始めることが発見されており、熱に曝露される時間が長いほど、減少が戻る可能性が示される。しかし、いくつかの実施形態では、3時間を超える、例えば4時間、5時間、6時間、又は6時間超のさらなる蒸留が、好都合であり得る。いくつかの実施形態では、得られるムシモール抽出物は、液体である。
【0079】
ステップ150における濾過の後、濾液を、任意選択で遠心分離することができる。遠心分離が完遂される実施形態では、遠心分離は、約1~約25分間(1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾することができる);約2000~約6000rpm(約2100rpm、2200rpm、2300rpm、2400rpm、2500rpm、2600rpm、2700rpm、2800rpm、2900rpm、3000rpm、3100rpm、3200rpm、3300rpm、3400rpm、3500rpm、3600rpm、3700rpm、3800rpm、3900rpm、4000rpm、4100rpm、4200rpm、4300rpm、4400rpm、4500rpm、4600rpm、4700rpm、4800rpm、4900rpm、5000rpm、5100rpm、5200rpm、5300rpm、5400rpm、5500rpm、5600rpm、5700rpm、5800rpm、5900rpm、6000rpm、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾することができる)で行うことができる。いくつかの実施形態では、遠心分離は、室温で約4000rpmで約15分間行うことができる。いずれかのこうした実施形態では、生じた不溶性及び/又は線維性材料のペレットが存在するならば、これは廃棄される。次いで、上清を収集する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、ムシモールとイボテン酸を少なくとも3:1の比率で含む抽出物を生成する。いくつかの実施形態では、ムシモールとイボテン酸の比率は、約3:1~約150:1(ここでは、範囲は端点値を含み、また、これらの間の値が含まれる)である。いくつかの実施形態では、ムシモールとイボテン酸の比率は、約10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、100:1、105:1、110:1、115:1、120:1、125:1、130:1、135:1、140:1、145:1、又は150:1である。いくつかの実施形態では、抽出物は、包装及びラベル付けされる(220)。いくつかの実施形態では、抽出物は、遮光条件下で保管される。いくつかの実施形態では、抽出物は、緑色、琥珀色、半透明、又は不透明な容器中で保管される。いくつかの実施形態では、抽出物を保持する容器を覆うために、箔、例えばアルミ箔などの不透明な材料が使用される。
【0081】
C.実施形態2
本発明の第2の実施形態では、イボテン酸及びムシモールを含有するキノコ材料をフィルターを通して加圧することによって濾過が実施される、収量を増大させるための異なる濾過プロセスが提供される。ムシモールを含む得られる液体濾液を脱水し、続いて、ムシモールを粉末の形態で収集する。
図6は、第2の実施形態の一例のフローチャートである。
【0082】
本発明の第2の実施形態の一例では、乾いていることを確実にするために、第1の実施形態にあるように、テングタケ属(Amanita)(又は、本明細書では一般名で「キノコ」)のカサが検査され;もしそうでないなら、ステップ610及び615において、上で論じた通り、これを脱水する。次いで、キノコのカサを、
図10に示す通り、小片に切断するか、又は手で砕くことができる。例えば、切断されるならば、小片は、約1cm×1cmであり得る。
【0083】
上に開示された通り、次いで、本発明で利用される水のpHが決定される。いくつかの実施形態では、水は、蒸留水、水道水、脱イオン水、ミネラルウォーター、又はそれらの混合物のいずれかであり得る。較正されたpHメーターを用いてpHが約7であると確認されたならば、水を沸騰させる(620)。次いで、切断された、砕かれた、又は微粉砕されたキノコを、加熱した水に入れ(625)、これら自体を、約80℃~約105℃(約81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾される)で、約5分~約25分(約5分、約6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、及びこれらの間の値が含まれる)(ここでは、各値は、用語「約」によって修飾される)間、加熱することができる。いくつかの実施形態では、切断された、砕かれた、又は微粉砕されたキノコは、加熱した水に添加され、これら自体が、約75℃で約10分間加熱される。
【0084】
本発明の第2の実施形態によれば、次いで、キノコの小片は、ステップ630において、フィルターを通して加圧される。キノコの小片は、例えばフルーツプレスによって、又はそうではない機械的加圧手段(好ましくは、てこの作用を提供する、又はそうではなく力を高める手段(例えば、クランク又はダブルラチェット(double-ratchet)機構)が含まれる)の使用によって、加圧することができる。これらのキノコ小片を、ミクロンナイロンフィルターバッグなどのフィルターバッグに入れ、加圧機に入れることができる。加圧機の圧力は、ある期間にわたって、例えば、1時間という過程の間に、例えば5分ごとに、周期的に増大させることができる。ある実施形態では、圧力は、例えばオペレーターアームの強度を使用して増大される。次いで、圧縮されたキノコが潰されたものを取り出し、完遂されるまでこのプロセスを繰り返す。
【0085】
フィルターを通して加圧することによって、ムシモール含有量が増大されることが判明している。本発明のこの実施形態の範囲を限定しないが、フィルターを通した加圧中にキノコ組織に適用された機械的な力が、キノコ細胞中のキチンを壊してばらばらにし、またキノコ中の他のバイオマスをばらばらにし、より多くのムシモール及び他の化合物が抽出物及び収集されるようになると考えられている。これには、このプロセスの後続のステップにおいて酸の添加後にムシモールに変換されることとなるイボテン酸が含まれる。これは、上述の第1の実施形態における濾過にも適用することができるということを理解されたい。
【0086】
収集される濾液は、一般に、高い含水量、例えば、約50%~約70%を有する。だから、ステップ635において、この濾液を加熱して、含水量を低下させ、体積を減少させる。濾液は、オーブン、電子レンジ、又は過剰な含水量を取り除くために十分な量の熱を濾液に移動させるのに有用な当業者に公知の任意の他のこうした装置中で加熱することができる。その体積は、例えば、濾液の元々の体積の約10%に低下させることができる。
【0087】
次いで、ステップ640において、濾液のpHを低下させる。pHは、約7(蒸留水のpH)である濾液のpHから、例えば、約5~約6の範囲のpHに低下させることができる。いくつかの実施形態では、pHは、約1.0~約4.0のpHに低下される。いくつかの実施形態では、pHは、約1.0に、約1.5に、約2.0に、約2.5に、約3.0に、約3.5に、又は約4.0に(ここでは、範囲は端点値を含む)に低下される。いくつかの実施形態では、酸は、酢酸、ホウ酸、炭酸、クエン酸、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、硝酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、又は濾液のpHを下げることが可能な当業者に公知のあらゆる他の化合物である。いくつかの実施形態では、pHは、1M HClを添加することによって約3.0に低下させることができる。上述の通り、酸性条件は、イボテン酸を、脱炭酸によって、より容易にムシモールに変換させる。
【0088】
この段階での濾液は、濃厚で、暗い色の(darkly colored)黒色又はほぼ黒色である。この濾液を、ステップ645において再び乾燥(硬化)させて、含水率をさらに低下させる。ムシモールが分解されないように、この濾液は、このステップでは、前のステップよりも低い出力で乾燥させる。このステップでは、濾液は、例えば1分間隔で80%出力で、電子レンジ中で加熱することができる。濾液は、加熱の合間に、残留する濾液が黒から薄い茶色に変わるまで撹拌することができる。ある実施形態では、加熱は1時間であり、合計時間は(例えば、使用される加熱装置の出力、又はその設定に起因して)変動し得るが、時間は、当業者によって容易に決定されることとなる。濾液は、濾液がむらなく乾燥されており過乾燥(これはムシモールを分解する可能性がある)されていないことを確実にするために、混練することができる。混練することは、生成物の柔軟性及び硬さの触覚による決定を可能にし、過乾燥を防止することとなる。
【0089】
次いで、濾液を、ステップ650において粉砕及び保管する。濾液を粉砕するために使用される装置の大きさに応じて、濾液は、例えばナイフを使用することによって、粉砕のために小片に切断される必要がある可能性がある。濾液は、例えば、冷却しながら切断することができる。次いで、濾液を、例えばフードプロセッサー又はコーヒーグラインダーを使用して、例えば、
図10にあるように、粉砕して細かい粉末にし、保管することができる。この粉末は、例えば、-15℃で、密封容器中で、暗所で保管することができる。
【0090】
しかし、粉末は、約-25℃~約3℃の温度で保管することができ、具体的な温度は、加工を行うまでの時間の長さに依存する。言及した通り、より温かい温度での長期の保管は、強度の損失をもたらす可能性がある。したがって、この範囲でのより温かい温度で保管することは、加工が差し迫って(例えば約5日以内に)行われることとなる場合にのみ推奨される。
【0091】
用途及び使用
本発明の実施形態に従って調製されるベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、例示的な及び非限定的な例の通り、疼痛を軽減する及び疼痛障害を治療すること、炎症及び炎症性障害を軽減及び治療すること、免疫に利益を与える及び自己免疫性疾患及び障害を含めた免疫異常の症状を軽減又は治療することを含めた、ヒトの健康の増進のための、並びに、リラクゼーション及び睡眠改善を含めた身体の健康及びウェルネスの全般的向上のための、多数の用途を有する。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、上に記載された目的のために、例えば、溶液、懸濁液、チンキ、飲料濃縮物、又は飲料の形態での摂取のために調製することができる。本発明の別の実施形態によれば、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、上に記載された目的のために、錠剤、カプセル、ソフトジェル、及びジェルキャップの形態での摂取のために調製することができ、本発明の別の実施形態によれば、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、例えば、疼痛、そう痒、及び炎症を緩和するための、並びに、潤いを与える、若返らせる、及び皮膚及び近くの組織に免疫ブーストを提供するするための、経皮適用のためのクリーム、軟膏、ジェル、フォーム、及び液体組成物の形態での局所投与のために調製することができる。こうした製剤を調製するための方法は、当技術分野で公知である。
【実施例】
【0093】
D.実際の実施例
実施例1
実施例1は、本発明の第1の実施形態の例である。本発明の実施形態によるプロセスに使用するためのベニテングタケ(Amanita muscaria)(「キノコ」)は、Vashon Island,Washingtonから入手した。このキノコは、2020年の秋に収穫され、重量で約2%~約4%の含水率に乾燥され、プラスチック4リットル袋に入れて密封され、使用されるまで-15℃で暗所で凍結保管された。本実施例のためのキノコを、室温に解凍させ、次いで、プラスチック袋から取り出し、次いで、容易に粉末に粉砕することができるように、乾燥を確実にするために検査した。この実施例では、乾燥は、キノコのカサを2つに折ってみることによって決定した。所望される乾燥の範囲のキノコのカサは、2つに折れた。これは、抽出プロセスを開始する1時間前に決定された。
【0094】
十分に乾いていなかったキノコは、通風式食品脱水機(内部寸法、30cm×30cm×30cm)中で、50℃で90分間脱水した。各キノコが十分に脱水されるまで、乾燥を継続した。この実施例における十分な脱水は、重量で 約2~3%の含水率である。
【0095】
乾燥させたキノコを、蒸留水と混合した。最初に、蒸留水のpHを、pHメーターで、較正後に測定した。Hanna Instruments(Woonsocket,RI)からのHanna HI 98128pHメーターを使用した。このpHメーターを、Atlas Scientific,LLC(Queens,NY)から入手できるpH4、pH7、及びpH10較正溶液を含むpH較正溶液を用いて較正した。蒸留水のpHは、約4であった。蒸留水は、プラスチック容器中で保管したので、プラスチック容器から水に浸出している可能性があるいかなる有機材料も除去するために、蒸留水を沸騰させた。1000mLの蒸留水を、2000mLのPyrexビーカーに入れ、電子レンジ中で100℃で10分間沸騰させた。
【0096】
キノコのカサは、おおよそ非常に粗い~おおよそ非常に細かい粉砕加減に相当するサイズ範囲に粉砕することができ、これは、例えば、好適なコーヒー若しくはスパイスグラインダー、又は工業的等価物によって実施することができる。ここでは、カサは、Capresso Company(Montvale,NJ)から入手できるJura-CapressoコーヒーグラインダーModel No.501(120ボルト AC、100ワット、60Hz)によって粉砕した。カサは、45秒間粉砕し、例えば、
図10における外観がもたらされた。
【0097】
沸騰させた水のビーカーを、電子レンジから取り出し、加熱プレートに乗せた。25グラムの粉砕されたキノコのカサを、熱水に添加し、ガラス棒で10分間、穏やかに撹拌した。温度は95℃に維持した。蒸留水に対するキノコのカサの比率は、1000mLの水に対して25グラムであった。
【0098】
次いで、ビーカー中の加熱した水に入った粉砕されたキノコのカサの混合物を、濾過した。ブフナー漏斗を、真空濾過のために設置した。ブフナー漏斗は、オンラインで市販品として供給される、標準の24/20ジョイントと真空鋸歯状管状部(内径94mm、深さ100mm)を備えた、QWORK 500 ML Filtering Buchner Funnel Medium Frit(G2)Lab Glasswareであった。真空濾過は、General Electric(Schenectady,NY)から入手できる、General Electric Motor Model 5KH45AB49(サイクル:60 1/4馬力、PH:1 フォームB、1725 RPM、110ボルト、4.8アンペア、温度上昇:40℃、時間定格:連続、N.P.55890-B、最大真空:-0.7バール)によって駆動させた。
【0099】
10cm×10cm×5cmのグラスウールの23グラムの小片を、ブフナー漏斗とほぼ同じ直径の円形に切断した。これを、漏斗内のガラスフィルターの上部に乗せた。グラスウールは、Thomas Sci.Co.(Swedesboro,NJ)から入手できる、Thomas(No.20A00H747、カタログ番号GLW500)のグラスウールであった。25cm×30cmの寸法の4グラムのチーズクロスを、4層に折り畳み、グラスウールの上部に乗せた。チーズクロスが、より大きい粒子を捕捉したのに対して、グラスウールは、より小さい粒子を捕捉した。
【0100】
このフィルター機構を、1000mlエルレンマイヤーフラスコに取り付けた。この機構の真空のスイッチを入れるが、このフィルター層は、前に沸騰させた100mlの蒸留水を注ぐことによって固定される。フィルターを通して水を注いだ後、フラスコから濾液を取り出す。
【0101】
粉砕されたキノコと水との混合物を濾過するために、混合物を、ビーカー中で2分間沈降させた。次いで、この混合物を、この手順のほぼ最後までビーカーの底の粉砕されたキノコ粉末がフィルターに注がれないように、フィルターにゆっくりとデカントした。これにより、詰まりが低下し、フィルターを通したより良い流れが維持される。真空ポンプのスイッチを入れて、-0.7バールの圧力で、抽出物を濾過し始めた。
【0102】
抽出物が濾過された時、真空としてのこのフィルター機構を、あらかじめ沸騰させた30mlの蒸留水で洗い流した。このプロセスは、単回の実行として実施される場合、フラスコ中に約925mL~約975mLの濾液をもたらす。濾液は、濁っているように見えた。
【0103】
濾液のpHを、1M塩酸の添加によって、約7のpH(蒸留水のpH)から、約3.0のpHに調整した。塩酸は、Thermo Fisher Scientific(Hampton,New Hampshire)から入手した。
【0104】
塩酸の添加後、濾液を、蒸気凝縮路として働く、冷却器の全長にわたる、冷却材で覆われるらせん状のコイルを有する、Pyrexグラハム型冷却器を通して還流した。グラハム型冷却器の長さは、43cmであった。ウォータージャケットの長さは、30cmであり、24/60ガラスジョイントを有していた。このグラハム型冷却器を、収集のための2000ml丸底フラスコに取り付けた。グラハム型冷却器は、蒸留のために下向きに配置した。使用されないネックを、ガラス24/40プラグで栓をした。グラハム型冷却器を、Petmate Low Voltage Fountainウォーターポンプ(Model Number TP 200 LVU、AC 12ボルト、60Hz.、ヘッド0~70cm)と連結した。
【0105】
丸底フラスコを、一般名60cm高さのリングスタンドに取り付けられた、Eisco Lab(Victor,NY)のビュレット/試験管クランプを用いて、冷却器に固定した。還流中の丸底フラスコへの光強度を下げるために、丸底フラスコの周囲及び冷却器の上に部分的にアルミ箔を巻いた。エルレンマイヤーフラスコを、グラハム型冷却器の入口に取り付けた。
【0106】
冷却器のコイルは、ポンプによって送り込まれる冷水で冷却した。この機構のグラハム型冷却器は、加熱マントル/磁気撹拌機を用いて加熱した。蒸留は、ドラフト内で実施した。蒸留は、15psi(約1.0バール)で250°F(約121℃)で行った。蒸留を開始する前に、蒸留されることとなるpH留出物に、2.5cmの磁気撹拌子を入れた。蒸留中、突沸を防止するために、約30rpm~約60rpmでの磁気撹拌が提供された。蒸留が開始するまでは、加熱レベルを高(high)に設定し、次いで、1秒につき1滴が観察及び収集されるように調整した。磁気撹拌機は、2000mLモデル98-11-B 450 W(Huanghua Faithful Instr.,Co.,Huanghua,China)であった。
【0107】
次いで、還流させた抽出物を、3時間にわたって蒸留した。以下でさらに論じる通り、蒸留の前、蒸留の1時間、2時間、及び3時間後に、サンプルを採取した。蒸留後、冷蔵庫内で濾液を3℃に冷却した。冷却の約3時間後、濾液中に懸濁している凝集した材料が存在していた。濾液中のこの凝集した材料を、上に記載した真空濾過機構を通した真空濾過(チーズクロスは用いない)を介して除去した。濾過後、フィルター機構を、濾液への30mLの蒸留水で、真空中ですすぎ洗いした。
【0108】
実施例1に記載されたプロセスの様々な段階でのキノコ及び抽出物を分析するために、高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(「HPLC-MS/MS」)を使用した。
図7は、乾燥された/加熱された及び粉砕されたベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ、すなわち記載される抽出プロセスのための出発材料の、ムシモール(625μg/g)、ムスカリン(340μg/g)、及びイボテン酸(2930μg/g)含有量を示す。
【0109】
図2~5は、3時間の蒸留の1時間ごとの時点での、キノコ抽出物の定量HPLC-MS/MS分析の結果を示す。
図2は、酸性化後及び蒸留前の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析を示す。蒸留されていない抽出物は、44.3μg/gのムシモール、12.4μg/gのムスカリン、及び228μg/gのイボテン酸を含有していた。
【0110】
図3は、蒸留の1時間後の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコ抽出物の含有量を示す。出発材料と比較して、ムシモールの量は、約3倍(44.3μg/gから144μg/gに)増大したのに対して、イボテン酸の量は、(228μg/gから44.9μg/gに)かなり減少した。
【0111】
図4は、蒸留の2時間後の、ベニテングタケ(Amanita muscaria)単離抽出物の定量分析を示す。このプロセスは、ムシモールのレベルを、162μg/gに、さらに増大させた。イボテン酸レベルは、下がり続けた(7.37μg/g)が、ムスカリンの量は、1時間で観察されたレベルに匹敵するレベルのままであった(12.7μg/g)。
【0112】
図5は、蒸留の3時間後の、テングタケ属(Amanita)単離抽出物の定量分析を示す。ムシモールのレベルは、2時間の蒸留での定量から(162μg/gから146μg/gに)減少することが観察された。ムスカリンのレベルは、酸性化後に行われた以前の定量に匹敵するレベルのままであり(12.1μg/g)、イボテン酸レベルは、1.38μg/gに、さらに減少した。
【0113】
まとめると、HPLC-MS/MS分析を使用して、未加工の材料、すなわち乾燥及び粉砕されたベニテングタケ(Amanita muscaria) キノコを、蒸留プロセスの1時間ごとの時点でのキノコ抽出物と比較した。粉砕されたキノコ粉末中のムシモール含有量は、1グラムあたり625マイクログラムであり、加工に反応して減少した(44.3μg/g)が、蒸留時間と共に著しく増大した(2時間の蒸留時に162μg/g)。キノコのイボテン酸含有量は、加工及び蒸留の全体を通して継続的に減少し、(未加工の材料中の 2930μgから)1.38μg/gまでのレベルに到達した。ムシモール含有量は、2時間の蒸留から3時間の蒸留まで、減少することが観察されたが、減少は小さく、また、イボテン酸は、好都合なごくわずかな量に減少した。生成物は、飽和点に到達するまで、一定限度までしか蒸留できないことが容易に認識されるであろう。さらに、元々のムスカリン含有量も、加工に起因して減少したが、蒸留プロセスの全体を通して低いレベルのままであった(約12μg/g)。
【0114】
誘導結合プラズマ質量分析(「ICPMS」)によって、実施例1のキノコのカドミウム、ヒ素、水銀、及び鉛含有量の定量分析も実施した。加熱された粉砕されたキノコ粉末のカドミウム含有量は、10.2百万分率(「PPM」)であることが分かり、ヒ素含有量は、1.67PPMであることが分かり、水銀含有量は、1.18PPMであることが分かり、鉛含有量は、0.865PPMであることが分かった。還流の開始前、カドミウム含有量は、0.073百万分率(「PPM」)であることが分かり、ヒ素含有量は、0.018PPMであることが分かり、水銀含有量は、未検出(0.001PPM未満)であることが分かり、鉛含有量は、0.011PPMであることが分かり、これらは有意な向上であった。重金属は、水中での洗浄という最初のステップから還流ステップまでに減少することが理解されよう。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
実施例1のプロセスに由来するベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物の4つの回分についての分析証明を、以下の表3、表4、表5、及び表6にまとめる。4つの回分は、表1及び表2内のすべての試験規格を満たす。さらに、表7は、ロット番号0001で登録された生じた生成物の強度(下の表3中で蛍光マーカー付けされたもの)を示し、本明細書の抽出物の他の回分並びに本明細書の教示及び当分野の技術に基づいて本発明の方法に従って調製されたあらゆる抽出物について、ムシモール、イボテン酸、及び本明細書で論じられた他の化合物についての同様の強度パーセンテージ、並びにこうしたすべての化合物についての純度パーセンテージを算出することができる。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
科学の専門家の独立審査パネルは、本発明の第1の実施形態による、及び上の表3~7に従う組成を有する、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物が、様々な完成された通常の食品生成物のための(妊婦及び授乳婦を除く18歳を超える一般の成人集団(「対象集団」)に使用するためのものが含まれる)バルク成分として、一般に安全と認められている(Generally Recognized As Safe)(「GRAS」)と結論付けた。本発明の第1の実施形態によるベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、2.89mg/1人/日のムシモール、ムスカリン、及びイボテン酸(「アルカロイドブレンド(Alkaloid Blend)」又は「AMAB」と称される)を含有する872mg/1人/日の最大総1日分量での、飲料粉末としての及びそのまま飲める飲料中での使用について、対象集団においてGRASである。本発明の第1の実施形態によるベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、より大きい2.917mg/1人/日のAMABを含有する880mg/1人/日の最大総1日分量での、対象集団における栄養補助食品中での使用について、GRASである。
【0127】
実施例2
実施例2は、第1の実施形態などの、ある実施形態の別の例である。ベニテングタケ(Amanita muscaria)キノコを特定し、柄を切断することによって手で採取し、新鮮なカサを容器に入れる。次いで、このキノコを、加工設備に移動させる。このキノコを、通風式食品乾燥機中で、+50℃で24~48時間、空気乾燥させる。キノコは、2つに折れ、「クラッカー並みの乾燥(cracker dry)」である場合に、乾いているとみなされる(脱水されたベニテングタケ(Amanita muscaria)の含水率は、乾燥重量ベースで4%~7%の範囲となる)。キノコを過乾燥させることは、強度の損失をもたらす。ムシモールは、不安定な化合物である。したがって、キノコが、乾燥重量ベースで4%~7%の目標含水率に到達した時に、キノコを脱水機から取り出す。脱水されたキノコを、プラスチック袋又は他の気密容器に入れて密封し、最終の加工まで-15℃で暗所で保管する。キノコが5日以内に加工場所に輸送されるならば、キノコを、3℃で保管することができる。+20℃又は3℃での長期の保管は、強度の損失、及び肉眼で見える及び顕微鏡でしか見えない生物によるキノコの徐々の破壊をもたらす。キノコは、1kg~3kgの量でプラスチック袋に入れて密封され、輸送されるキノコの量のためのサイズのボックスに入れて輸送される。
【0128】
水抽出物を生じるための、加工の最初のステップでは、乾燥されたカサは、(室温で)フードグラインダー又はフードプロセッサーを使用して、粉砕して細かい粉末にされる。抽出プロトコルを続行する前に、キノコは、品質保証試験に合格しなければならない。各調製物の少量回分が、分析を受けて、ムシモール、ムスカリン、及びイボテン酸の量が、安全性及び製造の規格の範囲内にあることを確実にする。前述のものの他に、抽出の前に分析される他のパラメータには、重金属及び農薬が含まれる。この後、それぞれの試験されるキノコの抽出が続く。7000mlの体積の蒸留水が75℃に加熱され、キノコ粉末がそれに添加される。この混合物を、1120rpm(75℃)で1時間、絶えず撹拌する。続いて、水性のキノコ混合物を、フィルタープレス(75μmナイロンフィルターバッグ)を通して濾過し、60分かけてゆっくりと加圧する。速すぎる加圧又は過剰な圧力は、フィルターバッグを膨らませ、フィルタープレスチャンバーの内部で壊れる可能性があるので、このステップは、ゆっくりと実施する。
【0129】
次のステップでは、濾液が、15分間遠心分離され(4000rpm、室温)、ペレットが廃棄される。収集された上清を、大きいビーカーに入れ、pHを3M HCl(0.1~0.3%)を使用して2.5に調整しながら撹拌する。必要とされるHClの量は、体積に応じた範囲となる。
【0130】
次に、この上清を、圧力下で(15psiで250°F)40分間(時間は体積に依存する)加熱することによって濃縮する。例えば、上に記載された蒸留システムを使用することができる。次いで、得られた抽出物を、分析及び瓶詰めすることができる。本明細書に記載される方法は、実施例1の方法と比較した場合に、より大きい体積の、より迅速な抽出を可能にする。
【0131】
上の表1は、実施形態1(実施例1及び2)に記載された通りの、本発明の実施形態に従って作成された、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物のための試験規格及び試験方法の例を示す。ベニテングタケ(Amanita muscaria)は、他の食用キノコと同様に、土壌中の重金属の強力な生体蓄積者(bio-accumulator)であるとみなされる(Demirbas,Food Chemistry,2001;74(3):293-301)。ムシモール、ムスカリン、イボテン酸、スチゾロビニン酸、並びに重金属のヒ素、カドミウム、水銀、及び鉛についての、許容される規格が示される。この例の試験規格では、ベニテングタケ(Amanita muscaria)抽出物は、18mg/g未満のムシモール、600μg/g未満のムシモール、及び20μg/g未満のイボテン酸を含む。さらに、この例の試験規格では、それぞれ、最大で0.09ppm、0.03ppm、0.09ppm、及び0.02ppmの、カドミウム、ヒ素、鉛、及び水銀。スチゾロビニン酸の存在は、テングタケ(Amanita pantherina)の存在を暗示し、これは、毒性であり、したがって、正しくないテングタケ属(Amanita)キノコを特定する。この例の試験規格では、スチゾロビニン酸が存在しない可能性がある。農薬は、適合すると示される。上の表2は、USP 561による農薬の完全パネルのための試験規格を示す。試験されたすべての農薬についての制限が満たされた。
【0132】
実施例3
実施例3は、本発明の第2の実施形態の一例である。実施例2では、本発明の第1の実施形態、及び実施例1と比較した場合に、収量を増大させるための異なる濾過プロセスが提供される。この例では、実施例1におけるものと同じベニテングタケ(Amanita muscaria)(「キノコ」)を、フィルターを通して加圧して、濾過された抽出物を得た。
【0133】
総量1.5kgのキノコを、実施例1にあるように、検査及び脱水し、次いで、約1cm×1cmの寸法を有する小片に切断した。蒸留水のpHを、較正されたpHメーターによって、約7であると確認し、実施例1にあるように、この水を10分間沸騰させた。切断されたキノコの小片を、沸騰させた水に入れた。水の温度を、95℃に維持した。
【0134】
この実施例では、実施例1の真空濾過プロセスの代わりに、フルーツプレスを使用して、フィルターを通してキノコを加圧して、濾液を抽出した。濾液を収集するために、フルーツプレスの底部に、1Lビーカーを加えた。25グラムの加熱されたキノコ小片を、40リットルの体積を有する125ミクロンフィルターバッグに添加した。フルーツプレスは、市販品として入手可能な、オンラインで供給される、1.3リットルの標準のアルミニウム及びステンレス鋼のプレスであり、本明細書のプロセスに、材料変更を行わずに、同様のフルーツプレスが使用されることが可能となる。
【0135】
キノコ小片を含有するフィルターバッグを、フルーツプレスに入れ、フルーツプレスの圧力を、1時間という過程の間に約5分刻みで増大させて、フィルターバッグを通してキノコ小片を加圧した。25グラムの加熱されたキノコ小片を含有する第2の袋を用いて、このプロセスを繰り返した。約50%~約70%の含水率を有する、14~15リットルの濾液を収集した。含有量を分析するために、水分計を使用した。本明細書に記載した通り、濾過の後、抽出物を酸性化させた。
【0136】
濾液を、Pyrexビーカーに入れ、電子レンジ内の加熱プレートに乗せ、100%出力で2時間加熱して、体積を、Pyrexビーカーで測定される場合に元々の量の10%に低下させた。
【0137】
加熱後、外観検査時の濾液は、濃厚で、黒色であり、したがって、濾液が、さらに乾燥又はされる必要があることが決定された。濾液を、濾液の色が黒から薄い茶色に変わる(含水率の所望される変化を示す)まで、合計1時間、合間に撹拌しながら、1分間隔で80%出力で、電子レンジ中で再び加熱した。得られた濾液は、外観検査時に濃厚な外観を有し、触覚検査時に、物理的な硬さにおいて、パン生地と類似であった。
【0138】
濾液を冷却している時、濾液を、約3cm~約4cmの長さ及び幅を有する小片に切断した。コーヒーグラインダーを使用して、それぞれの小片を、
図10の例に記載及び描写されたものと視覚的に同様のレベルまで、粉砕して細かい粉末にした。粉砕された粉末を、密封されるプラスチック袋に入れ(描写された通り)、これを、例えば、
図11に示された通りに、-15℃で暗所に保管した。この実施例における方法から得られたムシモール及びイボテン酸のレベルは、液体抽出物をもたらす、以前の方法によって生成されたものに匹敵していた。乾燥された抽出物の利点には、保管のしやすさ及び保管安定性の向上が含まれる。
【0139】
前述の説明は、解説の目的で、本発明の実施形態の徹底的な理解を提供するための特定の命名法を使用している。しかし、本発明の実施形態を実行するために、具体的な詳細は必要とされないことが、当業者に明らかであろう。したがって、本発明の具体的実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で与えられる。網羅的であること、又は本発明を、開示された正確な形態に限定することは意図されない;上述のことを考慮して、明らかに、多くの改変及び変形が可能である。本発明の原理及びその実際的応用を、具体例の解明を通じて最良に説明するために、また、それによって、他の当業者が、こうした使用が、開示された具体例の範囲を超える場合に、企図される特定の使用に適合させた様々な改変を伴う本発明及び種々の実施形態を最良に利用することができるように、実施形態を選択及び記載した。したがって、本発明の範囲は、もっぱら以下の特許請求の範囲及びその等価物によって定義されるものとする。
【国際調査報告】