(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】耐環境コーティング用CMAS耐性トップコート
(51)【国際特許分類】
C04B 41/89 20060101AFI20240228BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240228BHJP
C23C 4/11 20160101ALI20240228BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C04B41/89 K
C23C26/00 C
C23C4/11
C23C28/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541355
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022013318
(87)【国際公開番号】W WO2022159708
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ディアンイン
【テーマコード(参考)】
4K031
4K044
【Fターム(参考)】
4K031AA08
4K031AB04
4K031AB09
4K031CB42
4K031CB47
4K031CB48
4K031DA01
4K031DA04
4K044AA13
4K044AB10
4K044BA12
4K044BA13
4K044BA14
4K044BB04
4K044BB13
4K044BC02
4K044BC12
4K044CA11
4K044CA13
4K044CA14
4K044CA53
(57)【要約】
カルシウム-マグネシウム-アルミノケイ酸塩(CMAS)分解に対する改善された耐性のための耐環境コーティングトップコートが開示される。CMAS緩和組成物は、スピネル含有材料に基づく。基材上のCMAS耐性多層構造体であって、該多層構造体が、基材上のボンドコーティング層と、ボンドコーティング層上の気密EBC層と、CMAS耐性トップコート層であって、AB2O4材料(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe、又はそれらの組合せ;及びB=Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せ)、AxOy(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe)とのAB2O4材料混合物、BxOy(B=Al、Fe、Cr、Co、V)とのAB2O4材料混合物;RE2Si2O7又はRE2SiO5ケイ酸塩とのAB2O4材料混合物(RE=希土類材料);希土類酸化物安定化ジルコニアを有するAB2O4;希土類酸化物安定化ハフニアを有するAB2O4;アルミノケイ酸塩を有するAB2O4;希土類ガーネットを有するAB2O4;及びMgO、NiO、Co2O3、Al2O3の少なくとも1つを含む、CMAS耐性トップコート層とを含む、CMAS耐性多層構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上のCMAS耐性多層構造体であって、前記多層構造体が、
前記基材上のボンドコーティング層と、
前記ボンドコーティング層上の気密耐環境コーティング(EBC)層と、
CMAS耐性トップコート層であって、
AB
2O
4材料(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe、又はそれらの組合せ;及びB=Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せ);
AxOy(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe)とのAB
2O
4材料混合物であって、前記混合物中のAxOyの重量パーセントが5重量%~95重量%の範囲である、AB
2O
4材料混合物;
BxOy(B=Al、Fe、Cr、Co、V)とのAB
2O
4材料混合物であって、前記混合物中のBxOyの重量パーセントが5重量%~95重量%の範囲である、AB
2O
4材料混合物;
RE
2Si
2O
7又はRE
2SiO
5ケイ酸塩(RE=Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)とのAB
2O
4材料混合物;
希土類酸化物安定化ジルコニアとのAB
2O
4材料混合物;
希土類酸化物安定化ハフニアとのAB
2O
4材料混合物;
アルミノケイ酸塩とのAB
2O
4材料混合物;
希土類ガーネットとのAB
2O
4材料混合物;及び
MgO、NiO、Co
2O
3、Al
2O
3のみ、又はMgO、NiO、Co
2O
3、Al
2O
3を含有する材料
のうち少なくとも1つを含む、CMAS耐性トップコート層と、
を含む、CMAS耐性多層構造体。
【請求項2】
前記気密耐環境コーティング(EBC)層が、RE
2Si
2O
7、RE
2SiO
5、ムライト、及びBSAS(BaO-SrO-Al
2O
3-SiO
2)
(式中、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの1つである)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項3】
前記ボンドコーティング層がSi;Si-酸化物(酸化物=Al
2O
3、B
2O
3、HfO
2、TiO
2 TaO
2、BaO、SrO)、ケイ化物(RESi、HfSi
2、TaSi
2、TiSi
2)、RE
2Si
2O
7-Si;RE
2Si
2O
7-ケイ化物;ムライト-Si;及びムライト-ケイ化物(式中、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1つである)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項4】
前記基材がSiC及びSi
3N
4のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項5】
前記CMAS耐性トップコート層の厚さが10μm~2000μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項6】
前記気密EBC層の厚さが10μm~1000μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項7】
前記ボンドコーティング層の厚さが、2μm~500μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項8】
前記基材の厚さが40milを超える、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月22日に出願された米国仮出願第63/140,339号の利益及び優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
1.開示の分野
例示的な実施形態は、ケイ素系セラミックマトリックス複合材(CMC)を保護するためのコーティングに関する。具体的には、例示的な実施形態は、カルシウム-マグネシウム-アルミノケイ酸塩(CMAS)耐性多層コーティング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景情報
一般式RE2SiO5(一ケイ酸塩)及びRE2Si2O7(二ケイ酸塩)を有する希土類ケイ酸塩が、耐環境コーティング(EBC)材料候補として一般に使用されている。しかしながら、これらの材料は、EBCをCMAS攻撃から保護することができるとは限らず、CMAS攻撃はEBCの厚みの減少を引き起こす可能性があり、この現象は減肉と呼ばれる。
【発明の概要】
【0003】
酸化及び水蒸気の攻撃からCMCを保護するために、EBCをSi系CMC基材上に堆積させる。高温ガスタービンエンジン環境では、例えば、CMASダストの侵入(penetration:貫入)又はEBCとの化学反応により、EBCが破砕し、したがって下にあるCMC基材をCMAS攻撃から保護することができなくなる可能性がある。
【0004】
希土類ケイ酸塩(RE2SiO5又はRE2Si2O7)に基づく現在のEBC多層構造体は、EBCをCMAS攻撃から完全に保護することができない可能性がある。そのため、新たなEBC材料は、それらのCMAS耐性特性を改善する可能性がある。他のこのような材料は、一般に、希土類酸化物安定化ジルコニア若しくはハフニア、又は希土類ケイ酸塩系に基づく。
【0005】
例示的な実施形態は、ケイ素系CMCを保護するためのCMAS耐性コーティング構造に関する。例示的な実施形態では、トップコートとしてスピネル含有材料(例えば、酸化マグネシウムアルミニウム)を含む多層セラミックコーティング構造体は、CMAS攻撃によるEBCの分解に対する耐性を実質的に改善し、EBCの分解を低減又は排除する。スピネル含有材料は、多層構造体内の希土類ケイ酸塩EBCの上にデポジット(堆積)されて、例えば溶融CMASがEBCの希土類ケイ酸塩に侵入又はそれと反応するのを阻止又は防止し、したがって、特に高温でのCMAS損傷から下にあるEBCを保護することができる。CMAS耐性に加えて、スピネル含有材料は、様々な例示的な実施形態によれば、EBCを構成することが多い希土類ケイ酸塩よりも改善された蒸気ベースの減肉耐性を示す。例示的な実施形態では、スピネル系トップコートは、セラミックマトリックス複合材(CMC)の部品寿命、例えばエンジン部品寿命を著しく改善し、したがってCMASダスト含有環境でのエンジン寿命を改善することができる。
【0006】
例示的な実施形態では、下にあるEBCをCMAS攻撃から保護するために、トップコートの形態のスピネル含有材料を有する多層コーティング構造体が提供される。スピネルは、一般式AB2O4(Aは、Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe又はそれらの組合せの群から選択することができ、Bは、Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せの群から選択することができる)を有する材料のクラスである。
【0007】
例示的な実施形態では、1300℃でのCMAS試験は、空気プラズマ溶射(APS)プロセスによって生成されたスピネル含有コーティングがEBC系のCMAS侵入を首尾よく防止することを示す。CMAS試験は、例えばCMASダスト又は材料等のCMASが豊富な環境への多層構造体の曝露であり得る。CMAS組成物及びCMFAS組成物の例を以下の表1に示す。
【表1】
【0008】
例示的な実施形態では、スピネル含有多層構造体は、以下の組成を有し得る。
【0009】
1.AB2O4材料(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe、又はそれらの組合せ;及びB=Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せ)。
【0010】
2.AxOy(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe)とのAB2O4材料混合物、混合物中のAxOyの重量パーセントは、5重量%~95重量%の範囲である。
【0011】
3.BxOy(B=Al、Fe、Cr、Co、V)とのAB2O4材料混合物、混合物中のBxOyの重量パーセントは、5重量%~95重量%の範囲である。BxOyの重量パーセントが95%超、例えば99%である場合、EBCの劣化に対する耐性のスピネルAB2O4によって提供される利点は低減又は排除され、BxOyのそのような高い重量パーセント、すなわち95%超は望ましくない。BxOyの重量パーセントが5重量%未満である場合、BxOyの量は、EBCの劣化に対する耐性の利点を提供するのに十分ではなく、BxOyのそのような低い重量パーセント、すなわち5%未満は望ましくない。
【0012】
4.RE2Si2O7又はRE2SiO5ケイ酸塩(RE=Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)とのAB2O4材料混合物。
【0013】
5.希土類酸化物安定化ジルコニアとのAB2O4材料混合物。
【0014】
6.希土類酸化物安定化ハフニアとのAB2O4材料混合物。
【0015】
7.アルミノケイ酸塩とのAB2O4材料混合物。
【0016】
8.希土類ガーネットとのAB2O4材料混合物。
【0017】
9.MgO、NiO、Co2O3若しくはAl2O3のみ;又はMgO、NiO、Co2O3、Al2O3を含有する材料。
【0018】
10.上記の組合せ。
【0019】
例示的な実施形態では、CMAS耐性コーティングは、下塗りのボンディングコートとしてSi、ケイ化物、セラミック酸化物、又はセラミックケイ酸塩を有する多層の構成を有することができる。EBC層は、希土類ケイ酸塩(RE2Si2O7 or RE2SiO5)、BSAS(BaO-SrO-Al2O3-SiO2)、ムライト、又はそれらの混合物を含むことができる。スピネルトップコートは、上述の材料系上にデポジット(堆積)されてもよい。熱溶射によってコーティングを製造するために使用される粉末製造方法は、融合及び粉砕された、凝集した、凝集及び焼結された、又はブレンドされた材料のいずれかであり得る。
【0020】
例示的な実施形態では、CMAS耐性トップコートは、2%~40%、好ましくは5%~15%の範囲の空隙率(porosity:多孔度)を有し得る。この範囲外であるCMAS耐性コーティングの空隙率は、下にある構造体の良好な保護を効率的に保証しない可能性がある。例えば、空隙率が40%を超える場合、CMAS耐性コーティングは、下にある構造体の良好な耐浸食性を保証しない可能性がある。CMAS耐性コーティングの空隙率が2%未満である場合、トップコートは緻密すぎ、熱サイクル中に破砕が発生する可能性がある。例示的な実施形態では、CMAS耐性コーティング又はトップコートは、CMAS耐性に加えてより高い歪み耐性を提供するために、多孔質垂直亀裂微細構造又は高密度垂直亀裂微細構造を有する。例示的な実施形態では、CMAS耐性コーティング又はトップコートは、摩耗性層であってもよい。
【0021】
例示的な実施形態では、上述の多層構造体は、空気プラズマ溶射(APS)、高速フレーム溶射(HVOF:High Velocity Oxy-Fuel)、減圧プラズマ溶射(LPPS)、プラズマ溶射物理蒸着(PS-PVD)、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、電子ビーム-物理蒸着(EB-PVD)、懸濁液/溶液プラズマ溶射(SPS)、懸濁液/溶液HVOF(S-HVOF)、及びスラリープロセスのいずれか1つを用いてデポジットされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示は、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として、言及された複数の図面を参照して、以下の詳細な説明においてさらに説明される。
【0023】
【
図1】
図1は、様々な例示的な実施形態による、多層CMAS耐性多層構造体を示す。
【0024】
【
図2】
図2は、様々な例示的な実施形態による、多層CMAS耐性多層構造体を示す。
【0025】
【
図3】
図3は、様々な例示的な実施形態による、
図1のCMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0026】
【
図4】
図4は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0027】
【
図5】
図5は、様々な例示的な実施形態による、
図4のCMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0028】
【
図6】
図6は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0029】
【
図7】
図7は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0030】
【
図8】
図8は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0031】
【
図9】
図9は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の様々な態様、実施形態、及び/又は特定の特徴のうちの1つ以上を通じて、具体的に上述及び後述するような利点のうちの1つ以上を引き出すことが意図されている。
【0033】
図1は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体を説明する。
図1では、CMAS耐性多層構造体100は、基材110上に堆積される。例示的な実施形態では、CMAS耐性多層構造体100は、基材110上にボンドコーティング層120を備える。ボンドコーティング層は、Si;Si-酸化物(酸化物=Al
2O
3、B
2O
3、HfO
2、TiO
2 TaO
2、BaO、SrO)、ケイ化物(RESi、HfSi
2、TaSi
2、TiSi
2)、RE
2Si
2O
7-Si;RE
2Si
2O
7-ケイ化物;ムライト-Si;及びムライト-ケイ化物(式中、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1つである)のうちの少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0034】
例示的な実施形態では、気密EBC層130がボンドコーティング層120上にデポジットされ、気密EBC層130は、例えばタービンエンジンの高温ガス中に存在する蒸気が、蒸気と反応することが知られているSi及びCをベースとするセラミックマトリックス複合材であり得る、又はそれを含み得る基材に到達しないように十分に緻密で閉じている。気密EBC層130は、RE2Si2O7、RE2SiO5、ムライト、及びBSAS(BaO-SrO-Al2O3-SiO2)のうちの少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでもよく、式中、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuのうちの1つである。EBCは、特に高温での酸化及び水蒸気攻撃からCMCを保護するために、Si系セラミックマトリックス複合材(CMC)層上にデポジットされる。しかしながら、CMAS攻撃の場合、EBCは侵入(貫入)され得る。
【0035】
例示的な実施形態では、CMAS耐性トップコート層140は、気密EBC層130上にデポジットされる。CMAS耐性トップコート層140は、AB2O4材料(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe、又はそれらの組合せ;及びB=Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せ);AxOy(A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Zn、Be、Fe)とのAB2O4材料混合物、混合物中のAxOyの重量パーセントは、5重量%~95重量%の範囲である;BxOy(B=Al、Fe、Cr、Co、V)とのAB2O4材料混合物、混合物中のBxOyの重量パーセントは、5重量%~95重量%の範囲である;RE2Si2O7又はRE2SiO5ケイ酸塩(RE=Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)とのAB2O4材料混合物;希土類酸化物安定化ジルコニアとのAB2O4材料混合物;希土類酸化物安定化ハフニアとのAB2O4材料混合物;アルミノケイ酸塩とのAB2O4材料混合物;希土類ガーネットとのAB2O4材料混合物;並びにMgO、NiO、Co2O3若しくはAl2O3のみ;又はMgO、NiO、Co2O3、Al2O3を含有する材料のうちの少なくとも1つであってもよく、又はそれらを含んでもよい。
【0036】
例示的な実施形態では、表2は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の構造及び組成を例示する。
【0037】
【0038】
例示的な実施形態では、CMAS耐性トップコート、気密EBC又はボンドコーティング層をコーティングするためのコーティングプロセスとしては、空気プラズマ溶射(APS)、高速フレーム溶射(HVOF:High Velocity Oxy-Fuel)、減圧プラズマ溶射(LPPS)、プラズマ溶射物理蒸着(PS-PVD)、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、電子ビーム-物理蒸着(EB-PVD)、懸濁液/溶液プラズマ溶射(SPS)、懸濁液/溶液HVOF(S-HVOF)、及びスラリープロセスが挙げられる。例えば、以下の表3に示すように、APSプロセスは、以下のパラメータを含み得る。
【0039】
【0040】
図2は、様々な例示的な実施形態による、多層CMAS耐性多層構造体200を説明する。
図2において、CMAS耐性多層構造体200は、基材210上にボンドコーティング層220を含み、ボンドコーティング層220上に気密EBC層230がデポジット(堆積)され、CMAS耐性トップコート層240が多層構造体全体にデポジットされる。
図2において、層210~240は、バッファ層235が気密EBC層230とCMAS耐性トップコート層240との間に配置されることを除いて、
図1に示される層110~140と同様である。例示的な実施形態では、バッファ層235は、所定の割合のEBC層230と同様の化合物と、所定の割合のCMAS耐性トップコート層240と同様の化合物との混合物を含む。
【0041】
図3は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。
図3において、様々な例示的な実施形態によれば、CMAS耐性多層構造体は、SiCセラミック基材上に、トップコートとしてのスピネル-Al
2O
3、中間EBCとしてのYb
2Si
2O
7層、ボンディングコートとしてのSiを含む。具体的には、CMAS耐性層は、スピネル含有コーティングを含む、
【0042】
図4は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。
図4において、CMAS耐性多層構造体は、様々な例示的な実施形態による、1300℃で8時間のCMAS試験が行われた後の
図3に示すものである。
図3及び
図4の比較は、スピネル含有トップコートがEBC系のCMAS侵入の防止に成功したことを明らかにする。
【0043】
図5は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。
図5において、CMAS耐性多層構造体は、
図3及び
図4に示すものであり、カルシウム(Ca)マッピングのための領域を示す。コーティング系に侵入したいくつかの元素、例えば、CMASの成分であるCaが存在するかどうかを決定するために、断面に対してEDS(エネルギー分散型X線分光法)を使用してCaマッピングを行う。CMAS耐性層の場合、コーティング内部にCaの存在は検出されず、外部CMAS攻撃がコーティングに侵入して損傷しなかったことを示している。
【0044】
図6は、様々な例示的な実施形態による、CMAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。
図6では、CMAS耐性多層構造体は、
図3~
図5に示すものであり、様々な例示的な実施形態により、CMASがYb
2Si
2O
7層に到達せず、スピネル-Al
2O
3/CMAS界面で停止したことを示す。
図6では、Caマッピングの暗い領域はCaの存在を示しておらず、CMASは、やはり暗い保護最上層の表面にのみ存在し、したがってCMAS耐性層の保護効果を示している。
【0045】
図7は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。CMFASは、カルシウム-マグネシウム-鉄-アルミニウム-ケイ酸塩を表し、この場合、(CaO-6MgO-14FeO-12Al
2O
3-48SiO
2)である。
図7は、1300℃で8時間後のCMFAS攻撃(代替試験)及び対応するCaマッピング後の、トップコートとしてスピネル-8重量%Al
2O
3を有するCMAS耐性多層構造体のSEM断面を図説し、CMAS耐性コーティング中にCa元素が存在しないことを示す。
図7の左側では、多層構造体は、様々な例示的な実施形態により、SiCセラミック基材上に、スピネル-8重量%Al
2O
3を含むトップコートを有するEBC、中間EBC層としてのYb
2Si
2O
7層、ボンディングコートとしてのSiを含む。多層構造体を1300℃で8時間CMFASに曝露する。右側は、CMFASがYb
2Si
2O
7EBC層に到達せず、スピネル-8重量%Al
2O
3層/CMFAS界面で停止したことを示すCa元素マッピングを図説する。したがって、スピネル-8重量%Al
2O
3コーティングは、1300℃で8時間後であっても、EBC層へのCMFASの侵入を防止するのに成功した。
【0046】
図8は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。この場合のCMFASは、(CaO-6MgO-14FeO-12Al
2O
3-48SiO
2)である。
図8は、1350℃で8時間後のCMFAS攻撃(代替試験)及び対応するCaマッピング後の、トップコートとしてスピネル-8重量%Al
2O
3を有するCMAS耐性多層構造体のSEM断面を図説する。
図8の左側では、多層構造体は、様々な例示的な実施形態により、SiCセラミック基材上に、スピネル-8重量%Al
2O
3を含むトップコートを有するEBC、中間EBC層としてのYb
2Si
2O
7層、ボンディングコートとしてのSiを含む。多層構造体を1350℃で8時間CMFASに曝露する。右側は、CMFASがYb
2Si
2O
7EBC層に到達せず、スピネル-8重量%Al
2O
3層/CMFAS界面で停止したことを示すCa元素マッピングを図説する。したがって、スピネル-8重量%Al
2O
3コーティングは、1350℃で8時間後であっても、EBC層へのCMFASの侵入を防止するのに成功した。
【0047】
図9は、様々な例示的な実施形態による、CMFAS耐性多層構造体の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図説する。この場合のCMFASは、(CaO-6MgO-14FeO-12Al
2O
3-48SiO
2)である。
図9は、1350℃で8時間後のCMFAS攻撃(代替試験)及び対応するCaマッピング後の、トップコートとしてスピネル-20重量%Al
2O
3を有するCMAS耐性多層構造体のSEM断面を図説する。
図9の左側では、多層構造体は、様々な例示的な実施形態により、SiCセラミック基材上に、スピネル-20重量%Al
2O
3を含むトップコートを有するEBC、中間EBC層としてのYb
2Si
2O
7層、ボンディングコートとしてのSiを含む。多層構造体を1350℃で8時間CMFASに曝露する。右側は、CMFASがYb
2Si
2O
7EBC層に到達せず、スピネル-20重量%Al
2O
3層/CMFAS界面で停止したことを示すCa元素マッピングを図説している。したがって、スピネル-20重量%Al
2O
3コーティングは、1350℃で8時間後であっても、EBC層へのCMFASの侵入を防止するのに成功した。
【0048】
本明細書に記載の実施形態の例示は、様々な実施形態の一般的な理解を提供することを意図している。例示は、本明細書に記載の構造又は方法を利用する装置及びシステムの要素及び特徴の全体の完全な説明として役立つことを意図するものではない。多くの他の実施形態は、本開示を検討すれば当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を利用及び導きだすことができる。さらに、例示は単に代表的なものであり、縮尺通りに描かれていない場合がある。例示内の特定の割合は誇張されている場合があり、一方で他の割合は最小限に抑えられている場合がある。したがって、本開示及び図面は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。
【0049】
本開示の1つ以上の実施形態は、単に便宜上、及び本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に限定することを意図することなく、「発明」という用語によって個々に及び/又は集合的に本明細書において言及され得る。さらに、特定の実施形態を本明細書で例示及び説明したが、同じ又は同様の目的を達成するように設計された任意の後続の構成が、示された特定の実施形態の代わりに使用されてもよいことを理解されたい。本開示は、様々な実施形態のありとあらゆるその後の適合又は変形を網羅することを意図している。上記の実施形態の組合せ、及び本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、説明を検討すれば当業者には明らかであろう。
【0050】
本開示の要約は、特許請求の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないことを理解して提出される。さらに、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴を一緒にグループ化するか、又は単一の実施形態で説明する場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の発明内容は、開示された実施形態のいずれかの特徴の全てよりも少ないものを対象とし得る。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個に特許請求される発明内容を規定するものとして独立している。
【0051】
上記で開示された発明内容は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に入る全てのそのような修正、強化、及び他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法によって許容される最大限の範囲で、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上のCMAS耐性多層構造体であって、前記多層構造体が、
前記基材上のボンドコーティング層と、
前記ボンドコーティング層上の気密耐環境コーティング(EBC)層と、
CMAS耐性トップコート層であって、
AB
2O
4材料
、
AxOy、BxOy、RE
2
Si
2
O
7
、RE
2
SiO
5
ケイ酸塩、希土類酸化物安定化ジルコニア、希土類酸化物安定化ハフニア、アルミノケイ酸塩、及び/又はREガーネットとのAB
2
O
4
材料混合物
のうち少なくとも1つを含み、
ここで、A=Mg、Ni、Co、Cu、Mn、Ti、Be、Fe、又はそれらの組合せであり、
B=Al、Fe、Cr、Co、V又はそれらの組合せであり、
RE=Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luであり、前記混合物中のAxOy及びBxOyの重量パーセントが5重量%~95重量%の範囲である、
CMAS耐性トップコート層と、
を含む、CMAS耐性多層構造体。
【請求項2】
前記気密耐環境コーティング(EBC)層が、RE
2Si
2O
7、RE
2SiO
5、ムライト、及びBSAS(BaO-SrO-Al
2O
3-SiO
2)
(式中、REは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの1つである)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項3】
前記ボンドコーティング層がSi;Si-酸化物(酸化物=Al
2O
3、B
2O
3、HfO
2、TiO
2 TaO
2、BaO、SrO)、ケイ化物(RESi、HfSi
2、TaSi
2、TiSi
2)、RE
2Si
2O
7-Si;RE
2Si
2O
7-ケイ化物;ムライト-Si;及びムライト-ケイ化物(式中、Reは、Y、La、Ce、Sc、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1つである)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項4】
前記基材がSiC及びSi
3N
4のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項5】
前記CMAS耐性トップコート層の厚さが10μm~2000μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項6】
前記気密EBC層の厚さが10μm~1000μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項7】
前記ボンドコーティング層の厚さが、2μm~500μmの範囲内である、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【請求項8】
前記基材の厚さが40milを超える、請求項1に記載のCMAS耐性多層構造体。
【国際調査報告】