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特表2024-510074QMR技術を実施する生物医学的使用のための電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】QMR技術を実施する生物医学的使用のための電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543083
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 IB2022056240
(87)【国際公開番号】W WO2023281412
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102021000017783
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523268930
【氏名又は名称】テレア メディカル グループ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポッツァート,ジャンアントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ポッツァート,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK02
4C160KK03
4C160KK15
(57)【要約】
生物医学的使用の電子デバイス(1)は、電圧(21)によって電力を供給することができる、無線周波数回路(3)と、出無線周波数回路(3)への出力部に接続され、かつ人体の一部に適用可能である、少なくとも1つの電極(4)と、を備える。無線周波数回路(3)は、2MHz以上の基本周波数を伴い、かつ少なくとも二次高調波の存在によって歪められた電流波(5)を、出力として生成するよう構成される。二次高調波における電流波(5)のピーク振幅と、基本周波数における電流波(5)のピーク振幅との間の、第1の百分率は、約100オームの負荷が電極(4)に加えられたときに20~70%から成り、その一方で前記第1の百分率は、約830オームの負荷が電極(4)に加えられたときに25~120%から成る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物医学的使用の電子デバイス(1)であって、
電圧(21)によって電力を供給することができる、無線周波数回路(3)と、
前記無線周波数回路(3)への出力部に接続され、人体の一部に適用可能な、少なくとも1つの電極(4)と、を備え、
前記無線周波数回路(3)は、2MHz以上の基本周波数で、かつ少なくとも二次高調波の存在によって歪められた電流波(5)を、出力として生成するよう構成され、
ここで前記電子デバイス(1)は、
前記二次高調波における前記電流波(5)のピーク振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間における、第1の百分率は、約100オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに20~70%から成り、前記第1の百分率は、約830オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに25~120%から成ることを特徴とする、電子デバイス(1)。
【請求項2】
前記電流波(5)は、歪められた正弦形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の電子デバイス(1)。
【請求項3】
前記第1の百分率は、約100オームの負荷が、少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに35~65%から成り、約830オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに70~120%から成ることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子デバイス(1)。
【請求項4】
前記二次高調波における前記電流波(5)のピーク振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間の、前記第1の百分率は、約430オームの負荷が、少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに70~90%から成ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイス(1)。
【請求項5】
前記第1の百分率は、約430オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに75~85%から成ることを特徴とする、請求項4に記載の電子デバイス(1)。
【請求項6】
前記電流波(5)は三次高調波の存在によっても歪められ、前記三次高調波における前記電流波(5)の振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間における第2の百分率は、約100オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに2~60%から成り、前記第2の百分率は、約830オームの負荷が前記電極(4)に加えられたときに4~120%から成ることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子デバイス(1)。
【請求項7】
前記第2の百分率は、約100オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに15~50%から成り、約830オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに60~120%から成ることを特徴とする、請求項6に記載の電子デバイス(1)。
【請求項8】
前記三次高調波における前記電流波(5)のピーク振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間の、前記第2の百分率は、約430オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに45~70%から成ることを特徴とする、請求項6または7に記載の電子デバイス(1)。
【請求項9】
前記電流波(5)は四次高調波の存在によっても歪められ、前記四次高調波における前記電流波(5)のピーク振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間における第3の百分率は、約100オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに0~40%から成り、前記百分率は、約830オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに0~50%から成ることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子デバイス(1)。
【請求項10】
前記第3の百分率は、約100オームの負荷が、少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに8~35%から成り、約830オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに10~50%から成ることを特徴とする、請求項9に記載の電子デバイス(1)。
【請求項11】
前記四次高調波における前記電流波(5)のピーク振幅と、前記基本周波数における前記電流波(5)のピーク振幅との間の、前記第3の百分率は、約430オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに10~45%から成ることを特徴とする、請求項9または10に記載の電子デバイス(1)。
【請求項12】
前記第3の百分率は、約430オームの負荷が少なくとも1つの前記電極(4)に加えられたときに15~40%から成ることを特徴とする、請求項11に記載の電子デバイス(1)。
【請求項13】
前記電流波(5)は、2~64MHz、好ましくは2~16MHzから成る基本周波数を示し、さらにより好ましくは、前記電流波(5)は、約4MHzの基本周波数を示すことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QMR技術を実施する生物医学的使用のための電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電流の通過、またはむしろ電界が、生物学的組織を通して熱効果を生成することに加えて、細胞膜における表面電荷の配分を改変できることが、生物学において公知である。電荷配分の、このような変動は、膜タンパク質の改変、及び中でも特に電位依存性のイオンチャネルの開閉、を誘発できる。
【0003】
特定の強度で、電流は、膜で電気穿孔法を行うことができ、比較的大きい分子でも、膜自体を越えて分子の移動を可能にする。
【0004】
膜電位における電流の影響は、低周波電流を伴う疼痛管理、または栄養機能及び筋肉性能の向上など、重要な生物学的応答をその後誘発し得る。
【0005】
特に、2MHzよりも高く、かつ高調波の存在によって歪められた基本周波数を有する電流波を適用することで、分子にエネルギーを伝達することが、本出願者によって実証された。分子には、これらの電流波が加えられ、それは所謂「分子共鳴」に相当し、量子分子共鳴(QMR)として公知である。
【0006】
欧州特許第1087691号明細書で記載されているように、このQMRエネルギーは、電流の通過に関連した分子中の結合を破壊するために過不足なく、例えば外科用メスに適用されたときに、特に有用となる。特に、このような分子共鳴は、このような電界が加えられた組織における温度の上昇を制限することを、有利に可能にする。
【0007】
実際QMR外科用メスは、切開の周りにおける断裂、裂傷、壊死、厚さの増減、液体内容物の変化、または他の変形影響、のいずれかの影響を生じさせることなく、対象領域の切開を可能にする。
【0008】
Dal Maschioらによる、「Biophysical effects of high-frequency electric field (4-64MHz) on muscle fibers in culture, BAM,2009」などの最近の研究も、いかにして、QMR処理された細胞の影響が、QMR範囲における電流波の周波数、及び同じ電流波の高調波スペクトルに依存できるかを実証している。
【0009】
使用される周波数及び高調波スペクトルに依存して、電界の適用は、実際に細胞膜の変形を誘発し、例えば細胞の損傷または処置された細胞の刺激をもたらす場合がある。
【0010】
特に、Dal Maschioらは、高周波数の電界を、筋肉細胞などの、刺激に敏感なタイプの細胞に適用すると、活動電位の閾値に達しない場合でさえ細胞応答を生成し、処置された細胞が接触しなくても、細胞内の信号経路の活性化を誘発することを実証した。
【0011】
さらに、Ferrariらによる「High Frequency Electrotherapy for the Treatment of Meibomian Gland Dysfunction, Clinical Science,2019」は、マイボーム腺機能不全の患者に対するQMRの適用が、いかにしてその症状に関連付けられた症状及び兆候を大幅に軽減させたかを示し、それによって、蒸発性ドライアイの処置における関連の役割を仮定した。
【0012】
さらに別の未発表の研究は、多形神経膠芽腫細胞にQMRを適用することで、いかにして、これら癌細胞の有糸分裂、運動性、及び攻撃性を軽減させ、例えば癌の転移を引き起こす、母体を貫通して移動する癌細胞の能力を減少させるか、を示した。
【0013】
これらの研究から、様々なタイプの細胞にQMRを適用することで、互いに完全に異なるものでさえ、生物学的応答を誘発できることが明白である。
【0014】
それだけではなく、Dal Maschioらによって示されたような、同じタイプであるが異なる周波数、とりわけ異なる高調波スペクトルのQMRを細胞に適用することでも、生物学的効果を有する細胞刺激を誘発でき、及び/または、完全に異なる細胞経路の活性化を生じさせる。
【0015】
この発見は、細胞機能を「調節」し、様々な生物学的補正及び実用的機能を得ることを可能にする。
【0016】
実際、本出願者は、詳細には歪められた正弦波である、QMR波を構成する高調波の間の比率を好適に変えることによって、特定の「細胞のコード化」を生成して、例えば様々な筋骨格系症状の効果的な治療、もしくは腫瘍を弱める治療、または耳鳴りの治療でさえ実現するように、成人幹細胞に作用することで細胞を再生する、所望の機能を得ることが可能であることを発見した。好適に調節された電流波のQMRは、美容医療(若返り医療)、または、これまでは侵襲的、不十分、かつ長続きせず、単なる一時的手段で処置された、他のタイプの症状においても効果的となる場合がある
【0017】
したがって、QMR電流に関連したパラメータを識別することが必要である。それらのパラメータは、変化することによって、処置される細胞または組織に依存し、したがってこのようなQMR電流を生成するよう構成されたデバイスに適用されるオーム負荷に依存して、様々な生物学的効果を誘発できる。
【0018】
有利には、本出願者は最近、QMR電流の基本的特性を識別した。それは、たとえ異なるタイプでも、処置された組織または細胞における所望の生物学的効果のいくつかを、調節することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許第1087691号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Dal Maschioらによる、「Biophysical effects of high-frequency electric field (4-64MHz) on muscle fibers in culture, BAM,2009」
【非特許文献2】Ferrariらによる「High Frequency Electrotherapy for the Treatment of Meibomian Gland Dysfunction, Clinical Science,2019」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
この情報に基づいて、本発明の目標は、QMR周波数の範囲における複数の電流を生成するよう適合された電子デバイスを開発することであり、さらにそれは、処置されることになる細胞及び組織に依存し、及び/または得られる生物学的効果に依存し、結果としてこのような電流を生成するよう構成されたデバイスに加えられるオーム負荷に依存して、電流を調節するよう構成される。
【0022】
さらに本発明の目標は、このような電子デバイスを、同じタイプの細胞もしくは組織、または異なるタイプの細胞もしくは組織に実現される、生物学的効果に基づいて生成された電流を調節するよう、構成することである。
【0023】
さらに本発明の目標は、このような電子デバイスを、処置された細胞または組織に、同時に熱の影響を生じさせずに、このような電流を生成するよう構成することである。
【0024】
さらに本発明の目標は、このようなデバイスを、リアルタイムに、かつ独立して、受け取った細胞もしくは組織の応答に基づいて、したがって前述の電子デバイスに加えられたオーム負荷に依存して、生成された電流の1つまたは複数のパラメータを改変するよう構成することである。
【0025】
さらに本発明の目標は、このようなデバイスが良好な安全プロファイルを有することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述の目標は、独立請求項1に記載されるような、生物医学的使用のための電子デバイスによって実現される。
【0027】
特に、本発明による生物医学的使用のための電子デバイスは、好ましくは継続式の適切な電圧によって電力が供給される無線周波数回路と、出力部においてこの無線周波数回路に接続され、かつ特に皮膚または内部組織などの人体で適用可能である、少なくとも1つの電極と、を備える。この無線周波数回路は、2MHz以上、好ましくは4MHzの基本周波数を伴い、少なくとも二次高調波の存在によって歪められた電流波を、出力として生成するよう構成される。以降では第1の百分率と定義する、二次高調波の周波数における電流波のピーク振幅と、基本周波数における電流波のピーク振幅との間の百分率は、約100オームのオーム負荷が電極に加えられたときに20~70%から成る。その一方で、この第1の百分率は、約830オームのオーム負荷が電極に加えられたときに25~120%から成る。
【0028】
好ましくは、前述の電流波は、少なくとも前述の二次高調波によって歪められた正弦形状を有する。
【0029】
二次高調波に関連した電流波のピーク振幅と、基本周波数に関連した電流波のピーク振幅との間の、前述の第1の百分率におけるこれらの特定の値は、加えられた負荷に依存して、異なるタイプであっても、有利にはQMRの適用で得られた生物学的効果のいくつか、したがって組織または細胞で行われることになる処置のいくつか、を調節することを可能にする。
【0030】
特に、本発明における生物医学的使用のための前述の電子デバイスを用いて行うことができる、可能な処置の内いくつかは、前述のQMRを実施することで、非排他的に、手術、眼科、大きい傷の処置、美容医療、理学療法、組織再生、耳鳴り、及び癌治療に関係する。
【0031】
本デバイスの別の特徴は、従属請求項で説明する。
【0032】
前述の目標は、以下で言及することになる利点と共に、本発明のデバイスのいくつかの技術的詳細、及び与えられた本発明におけるいくつかの適用例の説明の間に、非限定例として添付の図表を参照して、より良好に強調されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の生物医学的使用のための電子デバイスの、概略構造図である。
図2】2つのモノポーラ電極が、人体に接触して電気回路を閉じるために接続された、本発明のデバイスの概略図である。
図3】1つのバイポーラ電極が、人体に接触して電気回路を閉じるために接続された、本発明のデバイスの概略図である。
図4】基本周波数及び高調波において、本発明のデバイスによって生成された電流波のピーク振幅値を測定するための、本発明のデバイスに対する測定器具の接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
前述のように、全体的に、本発明の好ましい実施形態による、図1で図示され、全て1で表わされる、本発明の生物医学的使用のための電子デバイスは、好ましくは、しかし必須ではないが、好ましくは商用電圧または任意の他の交流電圧源によって電力が供給され得る、整流回路2を備える。それによって、整流回路2からの出力部において、出力電圧21は、好ましくは所定の値を伴う継続式であり、好ましくは例えば20~300V、より好ましくは50~200Vから成る。
【0035】
しかし、生物医学的使用の電子デバイス1に整流回路2が設けられないが、好ましくは継続タイプの、例えば電気バッテリによって生成される電圧によって直接電力を供給することができる、本発明の実施形態の変形を排除できない。
【0036】
図1に示された好ましい実施形態に戻ると、デバイス1には、整流回路2が出力電圧21を印加する無線周波数回路3と、少なくとも1つの電極4とが、さらに設けられる。電極4は、無線周波数回路3への出力部で接続され、かつ人体、特に人の皮膚または内部組織に適用可能である。
【0037】
整流回路2が存在しない代替の実施形態によると、好ましくは継続タイプである、前述の外部電圧は、無線周波数回路3への入力部に設置される。電極4に関して、好ましくは、しかし排他的ではないが、絶縁ハンドピース、ニードル形状、ループ形状ボール、もしくはブレード導電性電極、導電性手袋、または人体の一部に接触させることができる好適な形状である、任意のタイプの電極などの、モノポーラ電極41であってよい。この場合、図2に図示されるように、デバイス1は、デバイスによって画定された電気回路を正確に閉じることで、電流が人体の少なくとも一部を通して流れるのを可能にするように、無線周波数回路3に接続された第2のリターン電極42の存在を、好ましくは提供する。
【0038】
例えば非限定で、第2の戻り電極42は、前述の電気回路を前述の人体を通して閉じるよう、処置されることになる各々に接触するよう設置するために、平坦面を有し得る。
【0039】
しかし、第2の電極42が想定され得ず、回路を閉じることが接地によって実現されることも排除されない。
【0040】
代替として、図3に図示されるように、電極4を、当然ながら互いから離された2つの極が設けられ、人体に接触した電気回路を閉じるよう構成された、例えばバイポーラ導電性鉗子、バイポーラはさみ、バイポーラクランプなどの、バイポーラ電極43としてもよい。
【0041】
特に、本発明による無線周波数回路3に関して、2MHz以上の基本周波数を伴い、かつ少なくとも二次高調波の存在によって歪められた電流波5を、出力として生成するよう構成される。
【0042】
好ましくは、しかし必須ではないが、このような電流波5は、少なくとも前述の二次高調波の存在によって歪められた正弦形状を有する。
【0043】
さらに好ましくは、この電流波は、基本周波数として、2~64MHz、特に2~16MHzから成る周波数を有する。
【0044】
さらにより好ましくは、無線周波数回路3によって生成される電流波は、基本周波数として、約4MHzを有する。
【0045】
本発明によると、無線周波数回路3は、以降では第1の百分率と定義する、二次高調波における電流波5のピーク振幅と、基本周波数における電流波5のピーク振幅との間における百分率の値が、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに20~70%から成るよう構成される。同じ無線周波数回路3は、同じ第1の百分率の値が、約830オームの負荷が前述の電極4に加えられたときに25~120%から成るよう構成される。
【0046】
実際、出願者は、実験の結果として、デバイスに加えられる負荷の変動に依存して、上述の範囲にある、第1の百分率の値の適切な変動は、特定のQMR処置の効果が、この技術が適用される組織または細胞に依存して最適化される、ということを見出した。
【0047】
好ましくは、前述のピーク振幅は、基本周波数及び関連の二次高調波で測定された電圧Vrms(二乗平均平方根)の値と同等である。
【0048】
本発明によると、好ましくは、しかし必須ではないが、無線周波数回路3は、前述の第1の百分率が、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに25~95%から成るようにも構成される。
【0049】
前述の第1の百分率の値における、この追加の制御は、実施されるよう意図されたQMR処置の効果を、さらに最適にするのを有利に可能にする。
【0050】
追加として、好ましくは、しかし必須ではないが、無線周波数回路3によって生成された電流波5も、三次高調波の存在によって歪められるよう、無線周波数回路3は構成される。
【0051】
この場合、特に無線周波数回路3は、以下で第2の百分率として定義される、三次高調波における電流波5のピーク振幅と、基本周波数における電流波のピーク振幅との間の、百分率の値が、約100オームの負荷が電極4に加えれたときに2~60%から成るよう構成され、その一方で、この第2の百分率は、約830オームの負荷が同じ電極4に加えられたときに4~120%から成るよう構成される。
【0052】
さらに、好ましくは、しかし必須ではないが、三次高調波における電流波5のピーク振幅と、基本周波数における電流波のピーク振幅との間の、第2の百分率が、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに2~90%から成るよう提供され、さらに好ましくは、この第2の百分率は、430オームの負荷のときに2~70%から成るよう提供される。
【0053】
さらにこの場合、デバイス1の電極4に加えられる負荷の、前述の3つの値について、三次高調波における電流波5のピーク値をさらに制御することで、実施されることになるQMR処置の効果を、さらに最適化するのを可能にする。
【0054】
さらに具体的に、好ましくは、無線周波数回路3によって生成された電流波5も、四次高調波の存在によって歪められるよう、無線周波数回路3は構成される。
【0055】
この場合、以下で第3の百分率として定義される、四次高調波における電流波5のピーク振幅と、基本周波数における電流波のピーク振幅との間の、百分率の値は、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに0~40%から成り、その一方で約830オームの負荷が同じ電極4に加えられたときに0~50%から成る。
【0056】
有利には、さらに好ましくは、しかし必須ではないが、前述の第3の率は、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに0~45%から成り、さらに好ましくは4~40%から成る。
【0057】
本明細書で説明する、本発明の好ましい実施形態によると、無線周波数回路3は電子スイッチ31を備え、それは、出力電位21によって電力を供給され、かつ適切な駆動回路32によって駆動される。
【0058】
さらに、無線周波数回路3は、前述の電子スイッチ31への出力部に接続された、電気変圧器33を備え、それによって好ましくは、同じ電子スイッチ31と共に、同じ無線周波数回路3によって生成された波の基本周波数に対応した周波数帯において、共振回路34を画定する。
【0059】
しかし、前述の出力電圧21から始まる、上記で示した特性を伴う電流波を生成できるならば、本発明の代替えの実施形態による無線周波数回路3が、前述の電子スイッチ31を含む代わりに、異なるパワー電子構成要素を備え得ることも排除されない。
【0060】
さらに、本明細書で説明する、好ましい実施形態に対する別の代替として、無線周波数回路3は、前述の電気変圧器33の代わりに、上記で示した特性を伴う出力電流波の通過を可能にするよう好適に構成された、広域帯フィルタを備え得る。
【0061】
無線周波数回路3の構成モードに関して、出力部において上記で示した特性を伴う電流波5を得るのを可能にするために、好ましくは、無線周波数回路3を構成する電気/電子構成要素、特に前述の電子変圧器33、さらに詳細には、前述の変圧器33における一次巻線331及び二次巻線332の巻き数、を好適に構成することを想定する。
【0062】
本発明の代替の実施形態において、このような構成モードは、電子スイッチ31の前述の駆動回路32における制御ソフトウエア設定を好適に選択することによって、詳細には、好ましくは、しかし必須ではないが、前述の駆動回路におけるデューティサイクルの百分率値を好適に選択することによって、実現され得る。
【0063】
さらに正確に、本発明のこの後者の実施形態によると、生物医学的使用の電子デバイス1は、使用中、特に1つの電極または複数の電極4が人体の一部に接触して設置されたとき、人体の一部のインイーダンス値を、このデバイスによって、特に無線周波数回路3によって測定するよう構成される。前述のインピーダンス値に基づいて、本発明のデバイス1は、好ましくは、しかし必須ではないが、考慮するインピーダンスに依存して、上記に示された特性を有する、歪められた電流波5を生成するために、デューティサイクルの百分率値を改変するよう構成される。
【0064】
しかし、別の実施形態の変形における、上記に示された特性を伴う電流波5を得るために、前述の電気/電子構成要素、特に変圧器33と、デューティサイクルの値との両方を好適に構成するよう提供されることも、排除されない。
【0065】
追加として、本発明のデバイス1は、実施されることになる処置に基づいて送達され得る、公称電力値の選択を可能にするよう構成される。特に、デバイス1は、前述の公称電力値を、所定の電力範囲内で選択することを可能にするよう構成される。
【0066】
特に、好ましくは、しかし必須ではないが、この電力範囲は、特定の結合インピーダンス値において、0~150ワットの送達可能な電力から成る。
【0067】
この時点で、明白な測定プロトコルを識別し、それを用いて、様々な高調波のピーク振幅と、基本周波数のピーク振幅との間の、前述の比率の値を判断することが必要である。
【0068】
初めに、測定を、オシロスコープOによって、好ましくはKeysight Thechnologies社の、Agilent Infiniium DS09104Aのオシロスコープ、または代替として、同じ機能及び設定特性を有する同等のオシロスコープによって、実施しなければならないことを確立することが望ましい。
【0069】
短く記載された方法で接続された、差動プローブSを使用することも想定される。特に、KEYSIGHT N2891Aの差動プローブを使用することが好ましい。この場合でも、同等の機能特性を有する類似の差動プローブが使用され得る。
【0070】
さらに、上記で示した周波数の範囲内で動作するのに好適で、各々が所与のオーム値を有して直列で接続可能である複数の抵抗Rを伴う、インピーダンスバンクIを使用することが想定される。
【0071】
特に、好ましくは、上記の測定を実施するために、以下の抵抗Rを使用することが推奨される:
-100オームのオーム値を有する、ARCOL社のFPA100 100R J;
-330オームのオーム値を有する、ARCOL社のFRA100 330R J;
-1000オームのオーム値を有する、ARCOL社のFPA 1K J;
-500オームのオーム値を有する、OHMITE社のTGHLV500RJE;
-50オームのオーム値を有する、OHMITE社のTGHHV50R0JE;
-250オームのオーム値を有する、OHMITE社のTGHLV25R0JE。
【0072】
しかし、異なるタイプの抵抗、及び/または抵抗の異なるオーム値を使用して、上記の測定を実施し得ることも、それらが上記で示した周波数の範囲内で動作するために好適であり、かつ上記で示したオーム値が、デバイス1の電極4に加えられることになる負荷として画定できるなら、排除されない。
【0073】
最後に、上記で紹介された測定器具と、本発明のデバイス1との接続について、1メートルの長さで、好ましくは両端部に「バナナ」コネクタが設けられた、電気ケーブルCを使用することが想定される。
【0074】
特に、好ましくは使用されることになる前述のケーブルCは、各導体が0.25mm2の断面を有し、250Vの最大動作電圧、100オーム/kmの電気抵抗、及び1500Vの絶縁試験電圧である、ポリウレタンがコーティングされた、柔軟で、赤銅コネクタを伴うバイポーラケーブルであってよい。
【0075】
この場合でも、代替として、直前に説明したものと同等の電気ケーブルを使用できることを、排除できない。
【0076】
測定設定に関し、図4で概略確認されるように、ケーブルCは、本発明のデバイス1における出力コネクタに接続されることになり、特にモノポーラ動作モードの場合に、ニュートラルコネクタ及び位相コネクタに接続され、それらに前述の電極41及び42が、標準的に接続される。ケーブルCは、概ね50cmの距離で互いに対して平行に配置されることになる。
【0077】
バイポーラ動作モードの場合、これらのケーブルCは、デバイス1におけるバイポーラコネクタの2つの極に接続しなければならない。
【0078】
この場合、好ましくは、前述のケーブルを、互いから最小距離で互いに対して平行に配置しなければならず、さらに好ましくは、それらは同じリボンケーブルに付属するのが望ましい。
【0079】
ケーブルCの反対側の両端部は、本発明のデバイス1に加えることになる負荷の全オーム値を画定するために、インピーダンスバンクIに接続されることになる。このオーム値は、上記で示した値すなわち100オーム、830オーム、及び430オーム、の少なくとも3つの値から選択されている。
【0080】
差動プローブSの2つの入力部S1及びS2は、前述のケーブルCの各々と、インピーダンスバンクIとの間に接続されることになる。
【0081】
好ましくは、この接続は、これらケーブルCの各々とインピーダンスバンクIとの間に挿置された、3方向アダプタAによって実現されることになる。
【0082】
差動プローブSは、1/100と等しい減衰を伴って設定しなければならない。
【0083】
差動プローブSは、測定されることになる信号によって影響されないよう、可能な限り測定ケーブルCから離して位置付けなければならない。
【0084】
差動プローブSの出力部S3は、オシロスコープOの入力部に接続させなければならない。
【0085】
オシロスコープOは、入力電流波5のFFT(高速フーリエ変換)分析、ならびに、基本周波数、及び入力電流波5の二次、三次、及び四次高調波の周波数における信号のDCV値rms(すなわち連続した構成要素を取り外さない、信号のrms(二乗平均平方根)値)の測定、を実施するよう設定しなければならない。
【0086】
追加として:
-高調波のピークを測定するために、ハニングフィルタを設定することと;
-本発明のデバイス1によって選択可能な値の範囲内で、送達電力値を設定することによって、本発明のデバイス1を起動することと;
-基本周波数、ならびに上記で示したオーム負荷の各々、すなわち100オーム、830オーム、及び430オームについての高調波における、電圧値Vrmsを得ることと、
が想定される。
【0087】
これらの得られた値から、前述の第1の百分率、第2の百分率、及び第3の百分率の値が、考慮される負荷値の各々について計算される。
[第1の適用例]
【0088】
特に外科用メス、または筋骨格系症状、眼の症状、腫瘍などの処置に好適である、本発明の生物医学的使用の電子デバイス1における、第1の適用例によると、生成された電流波の基本周波数が約4MHzに設定されるよう、及び約100オームの負荷が電力4に加えられたときに、前述の第1の百分率が35~65%から成るよう、構成される。
【0089】
さらに、この第1の百分率は、約830オームの負荷が電極4に加えられたときに70~120%から成る。より正確には、好ましくは、しかし必須ではないが、830オームの負荷の場合、この第1の百分率は約75%及び100%である。
【0090】
さらに、好ましくは、この第1の百分率は、約430オームの負荷がこの電極4に加えられたときに70~90%から成り、特にこの第1の百分率は75~85%から成る。
【0091】
さらに、好ましくは、この第1の適用例によると、第2の百分率は、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに15~50%から成り、約830オームの負荷が電極4に加えられたときに60~120%から成る。
【0092】
好ましくは、しかし必須ではないが、この第2の百分率は、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに45~70%から成る。
【0093】
さらに、好ましくは、しかし必須ではないが、第3の百分率は、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに8~35%から成り、その一方で約830オームの負荷が電極4に加えられたときに10~50%から成る。
【0094】
さらに、より好ましくは、しかし必須ではないが、前述の第3の率は、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに10~45%から成り、さらに好ましくは15~40%から成る。
【0095】
前述の第1の適用例による、本発明のデバイス1が使用される処置のタイプも、説明した本質的な特性に依存することに加えて、同じデバイス1に接続されるよう選択された電極4のタイプにも依存する。
[第2の適用例]
【0096】
本発明の生物医学的使用の電子デバイス1における、第2の適用例は、主に美容処置に特に好適であるが、筋骨格系症状及び炎症・変性症状にも好適である。それは、生成された電流波の基本周波数が、約4MHzに設定されるよう、及び前述の第1の百分率が、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに15~45%から成るよう、構成される。
【0097】
さらに、この第1の百分率は、約830オームの負荷が電極4に加えられたときに25~50%から成る。より正確には、好ましくは、しかし必須ではないが、830オームの負荷の場合、この第1の百分率は30~45%から成る。
【0098】
さらに、好ましくは、この第1の百分率は、約430オームの負荷がこの電極4に加えられたときに25~45%から成り、特にこの第1の百分率は28~40%から成る。
【0099】
さらに、好ましくは、この第2の適用例によると、第2の百分率は、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに1~10%から成り、約830オームの負荷が電極4に加えられたときに1~15%から成る。
【0100】
好ましくは、しかし必須ではないが、この第2の百分率は、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに1~15%から成る。
【0101】
さらに、好ましくは、しかし必須ではないが、第3の百分率は、約100オームの負荷が電極4に加えられたときに0~5%から成り、その一方で約830オームの負荷が電極4に加えられたときに0~5%から成る。
【0102】
さらに、より好ましくは、しかし必須ではないが、前述の第3の率は、約430オームの負荷が電極4に加えられたときに0~5%から成る。
【0103】
前述の第2の適用例による、本発明のデバイス1が使用される処置のタイプも、説明した本質的な特性に依存することに加えて、同じデバイス1に接続されるよう選択された電極4のタイプに依存する。
【0104】
前述に基づくと、このように、本発明の生物医学的使用の電子デバイス1は、意図した目標を全て実現する。
【0105】
特に、QMR周波数の範囲における複数の電流を生成するよう適合された電子デバイス、さらには、処置されることになる細胞及び組織に依存し、及び/または得られる生物学的効果に依存し、それによってこのような電流を生成するよう構成されたデバイスに加えられるオーム負荷に依存して、電流を調節するよう構成された電子デバイス、を開発するという目標は達成された。
【0106】
処置された細胞または組織に、同時に熱の影響を生じさせずに、このような電流を生成するよう構成されたデバイスを実現する目標も、達成された。
【0107】
達成された別の目標は、リアルタイムに、かつ独立して、受け取った細胞もしくは組織対応に基づいて、したがって前述の電子デバイスに加えられたオーム負荷に依存して、生成された電流のパラメータの内、1つまたは複数を改変するよう構成されたデバイスを実現することである。
【0108】
良好な安全プロファイルを伴うデバイスを実現する目標も達成された。
【0109】
有利には、前述の第1の百分率、第2の百分率、及び第3の百分率の特定の値は、QMRの適用で得られた生物学的効果、したがって異なるタイプの組織または細胞でさえ実行するよう意図された処置、のいくつかを調節するよう有利に可能にする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】